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A.2023年のBoehm et al. (2023)による価格変化から1年後のアーミントン弾性力は0.76程度。
出典: 内閣府『令和7年度 経済財政白書(全体版)』2025年7月公表
0.76程度
Boehm et al. (2023)による価格変化から1年後のアーミントン弾性力
このように、米国の関税政策による我が国経済への影響は多岐にわたる経路を通じて生じ得るものであるが、これらの影響が必ずしも全て短期的に発現するわけではない。例えば、輸出から生産・雇用を通じた国内民間最終需要への影響等については、一定の時間をかけて生じ得る可能性がある。また、米国の関税措置の直接的な影響を受け得る産業は、主にGDPの約2割を占める製造業が中心となるが、引き続き、国内産業への影響を勘案し、資金繰り支援など必要な対策を講じていくことが極めて重要である。同時に、外需面での下押しリスクに直面する中で、内需を中心とした着実な成長の実現が重要であり、回り始めた賃金と物価の好循環を持続的なものとして定着させるという観点が肝要である。 コラム1-1 関税引上げの影響と需要の価格弾力性について 本論で述べたように、米国の関税措置による我が国経済への影響のうち、直接的な影響については、追加関税が課される対象の製品について、米国現地の販売市場において、どの程度関税分が販売価格に転嫁されるか、転嫁される場合には、現地におけるこれら製品に対する需要が、価格変化に対してどの程度反応するか(需要の価格弾力性の大きさ)に依存する。本論で後述するように、日本貿易振興機構(JETRO)の2025年4月中旬時点の企業へのアンケート調査によれば、回答企業の4割超が関税引上げ分の価格転嫁を検討しているという状況であり、少なからぬ企業が価格転嫁を行うこととなれば、需要の価格弾力性は、関税措置による直接的な影響を考えるに当たって重要な要素となる。本コラムでは、価格弾力性に関する主だった先行研究をレビューしたい。 国際経済学の実証研究分野では、輸入国において、自国で生産・供給される財と、他国で生産・輸入され供給される財との間の代替弾力性、つまり、他国財の自国財に対する相対価格が1%上昇した場合に、他国財への需要が何%減少するかという「アーミントン弾力性」に関する実証分析が数多く蓄積している。その中で、Bajzik et al. (2020)においては、過去40年超にわたる3,500以上の文献を集積し、各分析の特徴の違いを考慮した上で、メタ分析を行い、アーミントン弾力性について、幅として2.5~5.1(中央値で3.8)という結果を導いている。これは基本的に「長期」の弾力性に関するメタ分析とみられる。長期の弾力性とは、消費者が、ある財について輸入品を消費している場合、同じ種類の財について、国内で生産される代替的な財が市場に現れ、消費者が代替財に切り替えられる段階、あるいは、企業が輸入された中間財や資本財を用いて商品を生産している場合、同じ種類の中間・資本財について国内で生産される代替的な財が市場に現れ、企業がそれらを用いた生産体制への調整が行われる段階における弾力性である。 さらに、その後に公表された主な文献であるBoehm et al. (2023)においては、アーミントン弾力性について、時間軸を考慮した分析がなされている。具体的には、1995~2018年における約180か国・地域の財別輸出入データ等から、1~10年程度のスパンでのアーミントン弾力性を導出している。これによれば、価格変化から1年後の短期では0.76程度の一 14