輸出開始企業では賃金上昇効果が確認される一方、海外投融資企業では国内賃金への波及効果が限定的であり、国内投資環境の整備が重要である。
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第3-2-20図 輸出開始企業による賃金上昇効果の比較 輸出開始企業では、近年にかけて、海外展開で得られた収益を雇用者の賃金上昇につなげている可能性 (1)2016年までのデータによる推計 (2)2023年までのデータによる推計 (賃金の変化率、%) (賃金の変化率、%) 4 4 2 2 0 0 -2 -2 -4 -4 -6 -6 -1 0 1 2 3 4 5(年後) -1 0 1 2 3 4 5(年後) 輸出 輸出 開始年 開始年 (備考) 1. 経済産業省「経済産業省企業活動基本調査」の調査票情報により作成。 賃金は全従業員一人当たりの賃金。 2. 推計期間は1997年度~2023年度。全産業を対象。 3. 輸出を開始する1年前の賃金を基準とした変化率。 傾向スコアにより、輸出を開始する確率が最も近い企業をマッチングし、それぞれの平均値を プロットしている。点線は±1標準誤差を示す。 4. 推計方法及び結果の詳細は、付注3-5を参照。 一方、海外投融資開始企業のうち、製造業においては、生産性と同様に、投融資開始後に賃金が高まる効果がみられるが、投融資非開始企業との間で明確な差があるわけではない。非製造業については、海外投融資を行っていない企業では賃金水準が低下しているのに対し、海外投融資開始企業では、投融資前の国内賃金水準が維持されている点において、海外展開の効果がみられる。一方、非製造業においても、投融資開始前に比べて国内雇用者の賃金が高まるとい点までは確認されない(第3-2-21図)。 このように、同じ国際化・海外展開企業の中でも、輸出開始企業については、輸出開始後において、国内の生産性・賃金が有意に上昇している一方で、海外投融資開始企業では、投融資開始による国内の生産性・賃金の引上げ効果は、部分的には観測できるものの、必ずしも明確に確認されるわけではない。これは、本章第1節で確認したように、我が国企業において、海外需要の取り込みを図るべく、直接投資を増加させてきた一方で、そこから得られる収益の多くは海外現地で留保・再投資されてきたということと裏腹の関係にあるとも言える。日本企業が、国内ではなく海外での投資や再投資を増やしてきた要因の一つには、国内投資によって得られる期待収益が低いと認識されてきたことが挙げられ、規制改革による事業環境の改善などを通じて、企業の資金が、より国内投資に回り、国内賃金の引上げにつながるような環境作りが重要と言える。 385