量子コンピューティングの現状と課題を分析し、2030年・2040年に向けた市場獲得と技術開発の戦略目標を提示している。
タグ: 量子コンピューティング, 経済安全保障, 産業競争力, スタートアップ, 技術開発
1. 現状認識と目指す姿【目標】 量子 量子コンピューティング (1)現状 ① 現状 ・量子コンピューティングは、従来技術と異なる原理で極めて高速かつ複雑な計算が可能。産業や社会にインパクトを与える汎用技術で、今後、基盤産業のゲームチェンジャーとなり得る。 ・国家安全保障とも直結することから、世界中で開発競争が激化。近年、我が国も年1000億円規模の大型政府投資を実施したものの、中国や欧米の官民投資は、依然として数倍程度の差がある状況。 ・我が国は、戦略的不可欠性と言える装置・部素材の開発・生産企業の存在を含め、量子コンピュータのハードウェアを作り上げる力を持つ数少ない国。ユーザーとなる多様な産業群、アルゴリズム・量子ビット制御等の基礎研究にも強みがある。足元では、大企業での事業化やスタートアップの隆盛など産業化が始まっている一方、民間投資やスタートアップの資金調達は伸びていない。 ② 取り巻く環境と構造変化 ・AIの急速な発展で、計算能力が国力を左右。「信頼できる計算基盤」の構築と幅広いユーザーに使われる商用サービスの展開が国際的にも求められている。古典計算と量子計算の得意領域を組み合わせたハイブリッド計算の活用も進展している。 ・AIと量子の間で相互補完的に技術発展が進捗(例:量子の誤り低減でのAI活用等)。量子・高性能計算基盤(スーパーコンピュータ等)・AI・データセンター等の統合計算環境の整備や担い手の形成が進みつつある。 ・研究・実証から産業化への進展で、垂直統合型のエコシステムに、水平分業の導入が始まる。大企業によるスタートアップへの投資や協業、M&Aが進展。装置・部素材産業の重要性が高まっている。 ③ 経済的・戦略的な重要性 ・経済的重要性:産業化の芽が出始めたばかりであるが、今後の進展により大きな市場形成の可能性。関連産業への波及効果も大きく、デジタル赤字是正にも貢献。 ・戦略的重要性:装置・部素材等で競争力を持つ事業者が国内に存在、経済安全保障上の自律性の確保に加え、不可欠性の強化に寄与。材料・医療・エネルギー・金融・通信等の基盤産業での活用が期待され、防衛等安全保障上も重要。 (2) 目標 ① 国内外で獲得を目指す市場 ・量子コンピュータの世界市場は、2030年以降2.3~4.5兆円から2040年以降14~26兆円へと拡大。関連産業での予想されるユースケースを含めると、2040年以降68~128兆円との試算※。 ・国内では、ソフトウェアやアルゴリズムを含めた国産量子コンピュータシステムを確立するとともに、装置・部素材を含む研究・実証からユーザーまでを一体的につなぐ量子関連産業エコシステムの形成を目指す。 ・海外では、欧米諸国に加え、ASEANやインド等のグローバルサウスでの国産量子コンピュータの導入を目指す。 ② 達成すべき戦略的目標 ・2030年:小規模又は部分的な誤り耐性を持つ量子コンピュータや1万物理量子ビット超の超伝導量子コンピュータの実現 ・2040年:実用的かつ安全性の高い国産量子古典ハイブリッド計算基盤の実現 ※ 出典:BCG「What Happens When ‘If’ Turns to ‘When’ in Quantum Computing?」(2021)1ドル150円で換算 65