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総合資源エネルギー調査会 電力・ガス基本政策小委員会 第86回

2025-02-28一次資料(出典)

議事録・配布資料の全文(政府公表資料より。要約でなく原文に基づく参照用)。

総合資源エネルギー調査会 電力・ガス基本政策小委員会 第86回 資料総合資源エネルギー調査会 電力・ガス基本政策小委員会 第86回 資料総合資源エネルギー調査会 電力・ガス基本政策小委員会 第86回 資料総合資源エネルギー調査会 電力・ガス基本政策小委員会 第86回 資料総合資源エネルギー調査会 電力・ガス基本政策小委員会 第86回 資料総合資源エネルギー調査会 電力・ガス基本政策小委員会 第86回 資料総合資源エネルギー調査会 電力・ガス基本政策小委員会 第86回 資料総合資源エネルギー調査会 電力・ガス基本政策小委員会 第86回 資料

議事録

総合資源エネルギー調査会電力・ガス事業分科会 第 86 回電力・ガス基本政策小委員会 日時 令和7年2月 28 日(金)11:00~11:42 場所 オンライン開催 ○小柳室長 それでは、定刻となりましたので、ただいまより総合資源エネルギー調査会第 86 回電力・ ガス基本政策小委員会を開催します。 委員及びオブザーバーの皆様方におかれましては、ご多忙のところご参加いただき、誠に ありがとうございます。 本日の小委員会についても、オンラインでの開催とさせていただきます。ウェブでの中継 も行っておりますので、そちらでの傍聴も可能となっております。よろしくお願いいたしま す。 本日、牛窪委員、武田委員におかれましては、ご欠席の連絡をいただいております。 出席いただいております本委員及び臨時委員の方の数は定足数を満たしております。 先日、2月 18 日にエネルギー基本計画について閣議決定がされましたので、この委員会 での議論を踏まえた形で、エネルギーシステムに関する事項も記載されておりますので、参 考資料として配付させていただいております。 それでは、以降の議事進行は、山内委員長にお願いいたします。 ○山内委員長 どうも山内でございます。よろしくお願いいたします。 お手元に議事次第があると思うんですけど、三つの議題ということになっていて、まずは 自由化の進捗状況。これは定例の議題ですけど。 それから、沖縄における電力システム改革の状況ということで、これは後で説明してもら うんですが、沖縄の特殊事情をどうするかという話。それからスマートメーターのオプトア ウトについてということになります。 それでは、議題1と議題2については、併せて議論したいというふうに思いますので、資 料の3と4、これをご説明いただいた後に、まとめて質疑の時間を取りたいと思います。ど うぞよろしくお願いいたします。 ○小柳室長 それでは、事務局から資料3に基づきまして、ご説明をさせていただきます。 2ページ目をご覧いただきまして、新電力のシェアですけれども、2024 年 10 月時点では 19.2%いうことになってございます。 1 3ページ目、 大手電力の域外進出ですけれども、2024 年 10 月時点で約3%ということで、 足元では横ばいの状態ということでございます。 少し飛びまして、7ページですけれども、小売電気事業者の登録数ということですけれど も、2025 年1月末時点で 747 社と、足元では横ばいという状態になってございます。 10 ページ、飛んでいただきまして、燃料輸入価格の推移ということですが、ロシアによ るウクライナ侵略の開始時と同程度の水準まで今落ち着いた状況が続いているということ でございます。 11 ページですけれども、電気料金の推移ということにつきましても、少し落ち着いた状 況が続いているということでございます。 こちらについては、この程度にしたいと思います。 次、資料の4に行っていただきまして、沖縄エリアにおける電力システム改革の状況につ いてということですけれども、2ページ目をご覧いただきますと、電力システム改革、震災 後、続けてきているわけですけれども、沖縄電力の供給区域については、地域の特性を踏ま えた改革を実施することとしています。 下のところに書いてありますけれども、沖縄における構造的な特殊性ということで、一つ は独立した小規模な電力系統が必要であるといったことであるとか、二つ目としては、本土 と電力系統が連携しておりませんので、広域融通ができないとか、卸電力取引所を通じた電 力取引が不可能であるといったことが挙げられてございます。 これまでも、自由化範囲を他エリアと比較して限定的に解除してきたわけですけれども、 2016 年以降については、ほかのエリアでは低圧の部門における経過措置料金が残っている わけですけれども、沖縄大きなエリアでは、高圧と低圧部門における料金規制が措置されて いるということでございます。 3ページがその具体的な絵ですけれども緑色の9エリアについては、一番右のところで すね。低圧部分については、新電力が参入が可能となっていて、大手電力も自由料金を設定 できるわけですけれども、経過措置料金として料金規制が残っていると。 沖縄エリアについては、下の一番右ですけれども、高圧、低圧のところの両方について、 沖縄電力さんに経過措置料金規制が残っていると、そういう形になってございます。 次、5ページ目を見ていただきまして、そういった中で、先ほどの説明とも若干重複する んですけれども、沖縄エリアの高圧分野における新電力シェアがどうなっているかという のが下の図でございます。 薄い紫色が沖縄のエリアでの新電力シェアですけれども、一番右の赤囲みを見ていただ きますと、12.2%ということになってございまして、四国地域であるとか中部地域、関西地 域などと比較しても、遜色ない水準にまで達してきているんじゃないかというふうに見て とれます。 こうした現状を見れば、本土と同様に、沖縄エリアの高圧分野における経過措置料金規制 についても解除しても差し支えないのではないかというふうに考えてございます。 2 一方で、需要家保護といった観点もありますので、例えば高圧料金の規制料金が解除され た後に、小売料金の値上げが行われていないかどうかとかを確認する必要も出てくるとい うふうには思っておりますので、こういった観点から、電力・ガス取引監視等委員会に対し て、沖縄エリアの高圧分野の料金規制等の解除を行うことに関する懸念の有無と、解除を行 う場合にどういった措置を講ずることが必要であるのかといったことについて、意見をお 伺いすることとしてはどうかというふうに考えてございます。 簡単ですけど、事務局からは以上でございます。 ○山内委員長 ありがとうございました。 議題の1と2ですね。進捗状況、定点観測ですけど、沖縄エリアの高圧の取扱いですね。 これについて、事務局からご説明いただきました。 ご質問あるいはご意見があればご発言もいただきますが、この会議はチャット欄でお名 前と発言を希望という旨をお知らせいただければ、こちらから指名したいというふうに思 います。いかがでございましょう。どなたかいらっしゃいますか。 牛窪委員、どうぞ、ご発言ください。 ○牛窪委員 牛窪でございます。聞こえていますでしょうか。 ○山内委員長 聞こえています。 ○牛窪委員 ご説明ありがとうございます。では、こちらの件について、1点コメントさせてください。 たしか、P5で記載いただいていたと思いますけど、高圧分野におけるエリア別のシェア のグラフを見ると、確かにご指摘のとおり、他エリアと比べても競争は一定程度進展してい ることが確認できたと思います。 電源のアクセス、沖縄エリアは内外無差別も担保されていると評価されているエリアで すので、電源アクセスの公平性は確保されているのではないかと考えられます。そのため、 今回ご提示いただいた事務局の案に賛同というふうに思っております。 ただ、ご説明にもありましたとおり、高圧料金の規制解除に当たっては、例えば規制料金 メニューを契約されていた需要家の方々に対して、どういった影響が及ぶのかとか、解除後 にどういった選択肢があるのかということに関しては、十分周知をしていくこととか、解除 後の競争環境の変化をしっかり見ていくことが重要だと思っております。 やっぱり沖縄はこの本件にかかわらず、電力を考える上では非常に難しい、いろいろ本州 3 とは異なる環境にございますので、そうした地域の特性をやっぱり理解した上で、本件にか かわらず、安定供給、トランジションという、我が国の電力が抱える問題に関しても検討し ていく必要があると改めて思いました。 以上でございます。 ○山内委員長 ありがとうございました。 冒頭、室長から、牛窪委員欠席というちょっと誤情報が入っており、大変申し訳ございま せん。 ○小柳室長 申し訳ございません。 ○山内委員長 牛窪委員、ありがとうございます。 ○牛窪委員 ちょっと遅参をするということで言っていて、最初の資料の説明は聞けずに、沖縄のとこ ろからちょうど入りましたので、ここだけちょっと聞かせていただきまして、質問、コメン トさせていただきました。大変失礼いたしました。 ○山内委員長 いや、とんでもない。ご意見、コメントいただき、ありがとうございます。 それでは、次、村松委員、どうぞご発言ください。 ○村松委員 ありがとうございます。ご説明いただきまして、ありがとうございました。 沖縄の件についてコメントさせていただければと思います。 高圧の規制料金解除について、検討開始されることについては賛成でございます。 気になっている点といたしましては、当初沖縄を例外扱いしていた要因について、どのよ うな進展・変化があったのかといった点です。 シェアの数字についてお示しいただいたんですけども、実際の電源の調達状況ですとか 競争環境というのはもう少し分析した形でお示しいただいて、当初懸念していた事項とい うのが、市場の自由化が進んでおり、今後、規制料金を解除しても、事業環境としては問題 がないのかといったところをご確認いただければと思っております。 特に電源調達方法が限られるという点、沖縄電力からの相対卸や常時バックアップに頼 4 らざるを得ないというような点は考慮すべきだと考えております。 以上です。 ○山内委員長 ありがとうございました。 原委員、どうぞご発言ください。 ○原委員 ありがとうございます。ご説明ありがとうございました。 資料3のほうの電力小売り全面自由化の進捗の8ページのスライドなんですけれども、 以前もお話が出ていたかと思いますけれども、供給実績なしの割合がやはり多いなという のが印象です。なぜ供給実績なしなのかというところを、やはりもう少し知りたいというこ とがあります。 こういったところを見直すことによって、それも消費者利益の一つとしてつながるかと 思いますので、お願いしたいと思いました。 以上です。 ○山内委員長 ありがとうございます。 ほか、いかがでしょうか。 それでは、電力・ガス取引監視等委員会の新川オブザーバー、どうぞ。 ○新川オブザーバー ありがとうございます。新川でございます。 沖縄エリアの高圧分野の規制料金解除に関して、解除を行うことに関する懸念の有無と、 解除を行う場合にどのような措置を講ずることが必要かについて、意見聴取を受ければ、電 力・ガス取引監視等委員会において検討の上、回答させていただきたいと考えております。 以上でございます。 ○山内委員長 ありがとうございます。 ほか、いかがでしょうか。よろしゅうございますかね。 それでは、事務局から今のコメント、質問に対してご回答いただきます。 ○小柳室長 牛窪委員からは、解除後にどういった選択肢があるのか、十分な周知をというご意見いた 5 だきました。あるいは、競争環境を見ていくことが重要だということでしたので、競争関係 を見ていくことについては、監視委員さんの意見なんかも踏まえながら検討していきたい というふうに思いますし、仮に解除するという場合であっても、一定の周知期間を置いたり をするということが大事なんだろうというふうに思っておりますので、そこはしっかり検 討していきたいと思います。 村松委員からいただいた電源の調達状況については、内外無差別みたいなこともあって、 一定程度関係は整っているんじゃないかというふうに理解をしておりますけれども、そう いったことも含めて、監視等委員会の意見をいただきたいなというふうには思ってござい ます。 原委員からいただきました供給実績なしの割合が多いんじゃないかというような話につ いてですけれども、今、検証の取りまとめ案とかを提示している中で、小売事業者の規範の 在り方とか規律の在り方みたいなことも検討したいというふうに思っておりますので、そ ういったことも含めて検討していきたいというふうに思ってございます。 ○山内委員長 ありがとうございました。 ということで、定点観測のほうは今度のまとめにも関係して、いろいろもう少し突っ込ん で、調べていただくということでよろしいかと思いますし、沖縄のエリアの扱いについては、 皆さんは事務局提案にご賛同いただいたというふうに受け取りましたので、今、新川オブザ ーバーからもありましたけれども、監視等委員会で意見聴取の手続を行うと、これを進めて いただければというふうに思います。よろしくお願いいたします。 それでは、議題の3番目、資料5、スマートメーターのオプトアウトであります。これに ついて、事務局からご説明をお願いします。 ○小柳室長 それでは、資料5に基づきまして、事務局からご説明いたします。 2ページ目、ご覧ください。オプトアウト制度についてでございます。 これまで次世代スマートメーター制度検討会では、需要家が希望した場合にスマートメ ーターの設置を拒否できる、いわゆるオプトアウトについて、追加のコスト負担については オプトアウトを選択した需要家に求めることを前提として、そういった具体的な手続であ るとか金額みたいなことについて議論を進めましょうというふうにされておりました。 また、この電ガ小委においても、原則全社一律で対象とか方法を定めた上で、検討してい きましょうということになっておりました。 今回、事務局において整理したオプトアウト案を提示しておりますので、ご議論いただき たいということでございます。 3ページですけれども、もともとスマートメーターですけれども、2010 年に閣議決定し 6 ました第3次エネルギー基本計画に基づいて、原則として全ての需要家に導入しようとい うことにしておりまして、2014 年度から設置を開始しております。 今年度末に沖縄エリアで導入完了することをもって全数導入が完了するといった、そう いった状況でございます。 次は、7ページ目まで飛んでいただきまして、スマートメーターの設置拒否、オプトアウ トの状況ですけれども、スマートメーター、2023 年度末時点で約 8,150 万台入っておりま すが、このうち4万件、0.05%程度が設置拒否をしておられるということでございます。 右側のグラフですけれども、スマートメーターがほかのエリアと比較して早期に導入完 了した東京エリアでは、2020 年の導入完了から足元まで、導入完了後も継続的にオプトア ウトの件数は増加しているといった状況が見てとれます。 次のページ、8ページ目ですけれども、スマートメーターの設置拒否によってどういった ことが発生するのかということでございますが、スマートメーター、通信機能がついている ので、遠隔検針なんかをして、業務効率化に資するということなんですけれども、スマート メーターの設置を拒否した場合には、計器の取り外し等の工事が発生するであるとか、毎月 の検針について検針員が実地検針しなきゃいけないとか、オプトアウトはじゃあもういい です、やっぱりオプトアウトやめますといったときには復元工事が必要となるといった形 で、追加的な業務とか費用が発生するといったことがございます。 二つ目のところですけれども、電気の使用制限、需給逼迫のような状況において、スマー トメーターが置いてあれば、遠隔で使用アンペアの制限とかをやることもできるわけです けれども、スマートメーター設置を拒否した需要家はこういったことを受けることもない といったこともありますので、電気の使用者の公平性といった観点からも問題があるんじ ゃないかとか。ちょっとここに書いてございませんけれども、小売事業者の立場になれば、 顧客の需要情報をスマートメーター系で把握をできると、そういったことも通じて計画時 同時同量の達成をしている方々もいらっしゃるということだと理解しておりますので、ス マートメーターを設置されない場合には、なかなか小売事業者としても電気の供給が難し くなるといった状態も発生するんじゃないかというふうに思ってございます。 次、9ページですけれども、今後の見込みということではありますが、今、4万件設置拒 否があると申し上げましたけれども、仮に東京エリアの 2020 年度から 2022 年度の平均増 加率 22%で増加するといった仮定を置きますと、2032 年時点で約 24 万件のオプトアウト が発生するんじゃないかと。増加率半分ぐらいにすると約 10 万件と、全く増加しない今の 横置きをしたとすると約4万件ということになるわけですけれども、こういったときに発 生する社会負担の費用というのは、送配電網協議会による試算によれば、2028 年から 2032 年度の期間において、10 社合計で大体 100 億円から 300 億円程度発生するんじゃないかと いうことになってございます。なので、見直しを行わない場合には、こういった費用が一般 負担として乗ってくるということになると思っております。 次、10 ページですけれども、ここからがオプトアウト制度の基本的な仕組みということ 7 ですが、下に書いてあるのは、6点程度、論点検討しております。 11 ページです。オプトアウトを認める需要家の範囲ということですけれども、例えば低 圧だけでいいんじゃないかとか、いろいろな考え方があると思うんですが、2ポツのところ に書いてあるように、現時点で、高圧以上であってもスマートメーターの設置拒否をしてい るような需要家が存在するということも踏まえれば、原則としては、全需要家に利用可能な 道を開いておくということが適切ではないかというふうに思ってございます。 一方で、一時的な電気の使用に限定される臨時接続送電サービス、こういったものについ ては、オプトアウトの対象外としてはどうかというのが事務局案でございます。 12 ページでございます。 オプトアウトの方法ですけれども、スマートメーターの設置を拒否された場合には、具体 的な対応方法として、旧型計器、円盤がついているぐるぐる回っているやつですけれども、 ああいったものに取り替えるというやり方もあれば、スマートメーターの通信部を外すと いうやり方もあるわけですけれども、現時点では、旧型計器の新規生産がされていないと、 こういったことも踏まえれば、オプトアウト制度導入後については、スマートメーターの通 信部を外すという対応に統一することとしてはどうかというふうに思ってございます。 仮に、今後スマートメーターの仕様変更があって、より効率的な方法があるということで あれば、見直しをやっていくということかなというふうに思ってございます。 13 ページです。 需要家に負担を求めないケースということなんですけれども、いろいろ書いてあります けれども、工事困難箇所など、一般送配電事業者の事情によりスマートメーターが未設置と なっている場合、こういった場合については、需要家負担を求めないこととしてはどうかと いうことでございます。 逆に言うと、需要家の方の希望でスマートメーターを設置しない場合ということについ ては、費用負担を求めていくということだと思ってございます。 14 ページ、費用負担額の考え方についてですけれども、需要家さんがオプトアウトを希 望した場合には、一般送配電事業所において、計器ごとに以下のような、下に書いてある1 から6のような業務費用が発生するということです。 オプトアウトの申込みを受け付ける、通信部を取り外す、毎月実地の検針を行う、オプト アウトの料金請求を行う、オプトアウト終了時には復元工事を行って、検針のためには移動 も発生するということでございます。 これも一定の仮定を置いて試算を行った場合、オプトアウト1件当たりの追加コストは、 これは送配電網協議会さんの試算ですけれども、10 年間で 12 万円から 26 万円程度という こととなっております。 この 10 年間というのは、検定満了までの期間ということですけれども、10 年間たって、 検定が満了した後に、メーターを交換する際に再度オプトアウトを希望するということで あれば、次の 10 年間に再度この同じ費用がかかるということになっております。 8 次、15 ページですけれども、オプトアウトをする需要家さんにどういった費用を求めて いくかということに関しては、考え方としては大きく二つのやり方があるんだろうという ふうに思っております。 一つは、需要家さんに実費相当をしっかり請求するということですし、もう一つは、事務 手数料として請求するという考え方があるのかなというふうに思っております。実費でお 支払いいただいた場合には、もらい過ぎた場合の返金とかもあるわけですけれども、事務手 数料ということであれば、返金は発生しないというふうな前提で考えています。 実費を請求する場合ですけれども、下の表にあるように、案1、案2のやり方があるんだ ろうというふうに思っております。 案1についてですけれども、実費について、初期費用プラス毎月のランニング費用を払っ ていただくというようなことがあると思いますけれども、これは下から2番目の欄にあり ますが、オプトアウト中止時には案1であればランニング費用の請求を止めればいいとい うことになります。 案2については、実費について最大 10 年分一括でお支払いいただくというようなことに なるわけですけれども、この場合はその制度申込み時に料金を支払っていただければいい んですけれども、オプトアウト中止時には回収金額の余剰分を変更するといったような事 務が発生するということになるのかなと思っています。 需要家さんが支払う金額のイメージは、最大で一括 26 万円みたいなことになるのかなと 思っています。 案3、事務手数料ですけれども、請求方法は事務手数料を一括でお支払いいただくという ことです。制度申込み時のみにお支払いをいただいて、先ほど申し上げましたとおり、中止 時には返金とかが発生しないという、こういった形になるだろうというふうに思っており ます。 上の箱、三つ目のポツですけれども、いずれの案であっても、検定満了してメーターを取 り替える前には、改めてオプトアウトの意思表示を求めまして、オプトアウトの継続を希望 する場合には、再度費用負担を求めるということになるんだろうというふうに思ってござ います。 16 ページです。 案1から案3について、それぞれどういったメリット、デメリットがあるかということな んですけれども、需要家の負担の平準化であるとか、負担の公平性の観点では案1が望まし いというふうに思っているわけですけれども、案1を選択した場合には、毎月請求が行われ ると、こういったことに対応する一般送配電事業者でシステム改修なんかも発生するとい うことになりますので、また、そのシステム改修コストが特定負担としてオプトアウトした 需要家に求められるということになれば、オプトアウトした需要家さんの負担額も大きく なっていくんじゃないかということだと思っております。 案2については、一括でお支払いいただくことになりますので、需要家の一時的な経済的 9 負担が大きくなるといったこともありますし、オプトアウトを解消した場合の返金手続と いった事務負担も大きくなるといったことがあるんだろうと、そういった懸念があるんだ ろうというふうに思っています。 案3については、オプトアウトした需要家の金銭的な負担と事業者の実務的な負担の軽 減が可能になるということだと思います。一方で、事務手数料の水準によっては一般負担が 残るというデメリットはあるわけですけれども、案1から案3、いろいろな特質がある中で、 総合的に勘案すると、案3がいいんじゃないかというのが、事務局としてのご提案でござい ます。 17 ページですけれども、仮に案3で行くということだとすると、じゃあ事務手数料をど ういった水準で設定するのかというのが論点になるわけですけれども、先ほども申し上げ たとおり、オプトアウト、一度発生すると一般送配電事業者の中では下の表の1から6に書 いてあるような事務が発生するということになります。 このうち、5番目の復元工事と検針のための移動コストについては、コストの特定が困難 なんですけれども、なので、この1から4に書いてあるようなコストを勘案して設定するこ とが妥当じゃないかというふうに思っております。 このうち、1番と2番と4番のコストですね。申込み受付処理と通信部の取り外しについ ては、1回切りのコストだということだと思いますし、検針については毎月 10 年間に 120 回発生するわけですけれども、この検針費用をどれだけ織り込んでいくのかというのが論 点になるんだろうというふうに思っています。 最大 10 年間のうちどれだけを織り込むかについてなんですけれども、一番下の賃貸の平 均入居期間の表にあるとおり、単身世代であっても大体3年程度はお住まいになるという ことですので、検針に関する費用については、最低限のコストとして3年分を織り込む形と してはどうかというふうに、事務局案としては考えております。 この前提で費用を試算すると、各社で4万 4,000 円ぐらいから8万 4,000 円ぐらいまで の幅があるわけですけれども、各社一律で計器ごとに4万 4,000 円の料金設定としてはど うかというふうに考えてございます。 これ、先ほど申し上げましたけれども、米の二つ目に書いてありますけれども、検定が満 了して、オプトアウトの継続を希望する場合には、再度4万 4,000 円の費用負担を求めるこ とになるというふうに思っていますし、仮にいろいろな環境変化があって、インフレなんか もあっていろいろ変わった場合には、必要に応じてこの料金設定を見直す必要があるんじ ゃないかというふうに思ってございます。 次、18 ページです。 オプトアウト時の業務フローについてですけれども、今、工事費負担金であるとか、そう いったものが参考になるんじゃないかなと思っていますので、そのフローと同等とする形 で、需要家さんからオプトアウトの希望があった場合には、事前にその需要家さんに電気を 供給している小売事業者さんに受付の可否を確認した上で、一般送配電事業者が需要家に 10 直接請求書等を送付するようなプロセスとしてはどうかと思っております。 またオプトアウトに必要な工事を行う前には、費用を先に払っていただいた上で、その支 払いを確認した上で、オプトアウトに係る工事を実施するということとしてはどうかとい うふうに思っております。 次、19 ページです。 オプトアウト制度の開始時期と経過措置についてということなんですけれども、オプト アウト制度の導入に当たっては、一定の経過措置期間、周知期間も含めて必要なんだろうと いうふうに思ってございます。需要家への十分な周知であるとか、需要家の方々がオプトア ウトをやるかどうかをちゃんと検討するとか、一般送配電事業者、あるいは小売電気事業者 が体制を整えるとかといったこともありますので、レベニューキャップの第二規制期間が 始まる 2028 年4月1日から、オプトアウト制度を開始することとしてはどうかというふう に思っております。 あとは、2028 年4月1日時点で、オプトアウト状態にある需要家に対しては、負担の公 平性の観点から、その時期にかかわらず、事務手数料の負担を求めることとしてはどうかと いうふうに思っていますし、もし未払いということであれば、通信部の復元工事を行うこと としてはどうかというふうに思ってございます。 また、仮に 2028 年4月1日までにオプトアウトを中止したという需要家に対しては、過 去に遡って事務手数料の負担を求めるということはしないということでいかがかというふ うに思ってございます。 20 ページですけれども、今ご説明したようなものを一旦整理すると、こういった形にな ります。 21 ページですけれども、今後のスケジュールということで、2025 年3月以降、各社ホー ムページとかで需要家への周知も行うということですし、2028 年4月1日にオプトアウト の制度を開始するということで、必要な約款の変更も行っていくということでどうかとい うことでございます。 事務局からは以上でございます。 ○山内委員長 ありがとうございました。 ということで、オプトアウトですね。オプトアウトという言葉も、あまり私もそんなに詳 しいわけじゃないですけれども、スマメについての負担ということについて、事務局からご 提案があったということでございます。 それでは、ご意見、ご質問等、チャット欄で書いていただければと思いますが、どなたか いらっしゃいますでしょうか。 基本的に、スマメを基本にするということが政策として決まっていてということであり ます。それを前提としてということでございます。いかがですか。 11 岩船委員、どうぞご発言ください。 ○岩船委員 ご説明ありがとうございました。 スマートメーターにすることは、いろいろなものを効率化していく上で価値は高いので すけれども、やはりこのオプトアウトをしたいという人は、どこの国でもこれまでも発生し ているようですので、きちんと対応していかなくてはいけないということで、今回の費用負 担の案にも、私は賛成したいと思います。なるべく簡易の仕組みにするのが望ましいと思い ます。 私がお願いしたいことは、責任の所在を明確にしてほしいということと、科学的な説明を しっかりしてほしいということです。 責任の所在という意味で、この特にオプトアウトの問題というのは、少し感情的な面もあ り、どうしても電力会社さんが悪者になるようなことも、SNS等を拝見しているとありま す。なので、これは国がきちんと進めている方策、スマートメーターの導入というのは国が 進めていることであり、国がこれは責任を持つんだということで、オプトアウトに関する 様々なルール決めの説明に関しても、国が前面に出て説明してほしいなと思いました。 それと併せて、各社さんからもうされているかもしれないんですけれども、科学的な説明 ですね。電磁波の影響、例えば携帯電話と比べてどうかとか、あとは様々な論文を参照する のか分からないんですけども、その辺りの科学的な知見をしっかり共通認識として整理し て、公的な資料として提示できるものを用意していただきたいなと思いました。 2点と言っていたんですけど、もう一つありまして、あとは、海外でもオプトアウトの特 に今回、費用感の話があると思うんですけども、幾つか資料にもあったと思うんですけども、 海外でどんなふうなルールになっているかというのも整理して、併せてご提示いただけれ ばいいのではないかと思いました。よろしくお願いします。 以上です。 ○山内委員長 ありがとうございます。 次は、村松委員、どうぞ。 ○村松委員 ありがとうございます。今回、オプトアウトの対応、論点整理いただきまして、案の提示 をありがとうございました。 大筋、事務局の出していただいた案に賛成でございます。幾つか注意すべき点があるかと 思いますので、そこだけコメントさせていただきます。 今回の対応プロセスですね。需要家とのやり取りは、送配電事業者が行うということです 12 が、小売事業者が関わるプロセスというのもどうしても発生すると拝見いたしました。オプ トアウトを選択することによってメニューや料金の変更ですね。また、サービス範囲の限定 というのも生じるかと思いますので、この辺り、小売事業者が需要家との間でやり取りをさ れると思うんですけども、ここの連携がスムーズに行われるように、小売事業者がきちんと 対応する前にスマートメーターの通信部分が外されてしまったというようなことがないよ うに、連携をうまくやっていただければと思っております。 それから、大変な手間がかかると思うのですが、28 年3月以前にオプトアウト、スマー トメーターを拒否された需要家の方には、遡及して 28 年4月以降にコスト負担が請求され るということだと理解しております。間違っていたらごめんなさい。 その場合、既にスマートメーターの通信部分は外された状況になっているので、後からコ スト請求されても、回収がスムーズにいかないケースというのも十分考えられると思いま す。これは貸し倒れリスクということになりますので、ある程度どういう対応を取るのかと いうのは、あらかじめシミュレーションしておいていただければと思いました。 それから、岩船委員がおっしゃっていたこととも被るのですが、オプトアウトを求める需 要家や団体、広く国民への働きかけというのをしていただければと思います。事業者だけで はなくて、国からもですね。 これはある意味、オプトアウトでお金を払えば権利として認められているという対応だ と思われてしまうと、それはそれで問題だと思うんですね。コスト負担をお願いするのは、 人によると思うんですけども、部分的なコスト負担であって、残ってしまった部分のコスト は一般需要家の方に広く負担をお願いすることになりますので、やはりできればオプトア ウトを選択する方を減らしたほうが良いと思います。 ですので、例えば通信業界でどのような働きかけをしたのかとか、そういった他業界での 事例も参考にしつつ、広く国民への理解を求めて、できればスマートメーターに収れんさせ ていただきたいといった働きかけを継続していただければと思います。 あと、細かいのですけど、会計処理面というのは恐らく電気事業会計規則等で扱いを決め てくださると思いますので、そこも混乱ないようにお願いできればと思います。 以上です。 ○山内委員長 ありがとうございます。 次は原委員、どうぞ。 ○原委員 ありがとうございます。 私もやむを得ないという意味で、この案は大体は賛成しております。 しかしながら、オプトアウトしたい方の理解を求めるというのは、今後かなり困難が予想 13 されると思います。 そこで、今までのお二人の委員のお話にもありましたけれども、きめ細かく、きちんと周 知するということは大事ですけれども、その周知の前に、やはりなぜこういった負担金の発 生があるかとか、本当に体への影響があって、そういう方々にどのように理解してもらうか、 そういうリスクコミュニケーションをぜひやっていただきたいと思います。 いきなり周知でこうなりましたというお知らせでは、やはり皆さん納得してもらえない と思いますので、周知の方法の前のリスクコミュニケーションをお願いしたいと思いまし た。 以上です。 ○山内委員長 ありがとうございます。 次は、村木委員、どうぞ。 ○村木委員 ありがとうございます。 スマート化を国として進める中で、スマートメーターを設置する方向性のメリット、デメ リットというのは費用負担だけではないので、もう少し丁寧な説明を残しておいたほうが よいのではないかなというふうに思いました。 あと、 費用を今のところ4万 4,000 円という一律でお考えのようですけれども、 8万 4,000 円の費用のかかるエリアもあるということからすると、オプトアウトの数が増えると、その 負担を誰がするのかといった明確な説明も残しておくことが大事ではないかと思います。 以上です。 ○山内委員長 ありがとうございます。 次は四元委員、どうぞ。 ○四元委員 四元です。聞こえますか。 ○山内委員長 聞こえております。 ○四元委員 ありがとうございます。 14 ご説明いただきまして、随分ご苦労してここまでの制度設計をいろいろご検討いただい たんだとは思います。 今回、六つの論点があって、④の費用負担額以外のところは、まず異存ありませんで、や はり難しいのが論点④の費用負担のところだと思いますけれども、15 ページ、16 ページ辺 りで案1から案3まであって、案1、案2が実費負担であると、案3は事務手数料であると いうことですから、事務手数料というネーミングにされてはいますけれども、案1、案2は 実費の全部負担、案3は実費の一部負担案なんだと思います。 実費の一部負担であれば、今、村木委員のご発言にもありましたけれど、各送配電事業者 でコストが変わるので、本来的にはここは変わってしかるべきところが、一律にするので、 名前としても事務手数料ということで位置づけられているのかなと思いました。 実費を全部負担させないとか、それから各社で一律の4万 4,000 円にするということに ついては、やはり需要家負担の公平性という観点からいうと、なかなか正面から正当化する 理屈って難しいんだとは思いますが、先ほどご説明にあったように、総合的なご判断、総合 的な経済合理性というところから、恐らく許容範囲なのかなと、私自身は賛同したいと思い ます。 ただ、将来的にこのオプトアウトの制度、どこまで認めるかとか、当然、費用の金額なん かも、また将来の状況に応じて見直していくべきものかなと思いました。 何より、周知がこれから大事になってくると思いますので、岩船委員がおっしゃったよう な科学的な観点も含めて、様々なやり方で周知を徹底していただければと思います。 以上です。 ○山内委員長 ありがとうございます。 委員の方、ほかにご意見、ご発言はありますか。 それでは取りあえず、送配電網協議会、山本オブザーバー、ご発言ください。 ○山本オブザーバー ありがとうございます。送配電網協議会、山本でございます。 このたび、スマートメーターのオプトアウトについて、整理いただきまして、感謝申し上 げます。 今後は円滑な制度導入に向けまして、資源エネルギー庁様、監視等委様にもご協力をいた だきながら、制度の詳細検討を進めていきたいと思います。 また、19 スライド、21 スライドに、需要家への周知とあり、今までの議論になっており ますけれども、一般送配電事業者としましても、国や関係機関とも連携しながら、需要家様、 小売電気事業者様などに対する丁寧な周知をしっかりと行っていきたいと考えております ので、引き続きよろしくお願い申し上げます。 15 私からは以上です。 ○山内委員長 ありがとうございます。 ほかにいらっしゃいますか。 それでは、幾つかご意見をいただきましたので、事務局からご回答、コメントをお願いい たします。 ○小柳室長 ありがとうございます。 周知については、事業者の方にお願いするところも出てくるとは思うんですけれども、国 としてもしっかり、オプトアウト制度のことだけではなくて、スマメ設置の意義とか、そう いったことも含めて、丁寧に周知をしていくということだろうというふうに思ってござい ます。 岩船委員から、オプトアウトの費用感、海外ルールについてという話がありましたけれど も、幾つか事例を見ている限りは、海外でも月額 1,000 円から 2,000 円みたいなところも あるというふうには聞いていますので、4万 4,000 円で3年間分だと思えば、そんなにずれ ていない感じかなという気もしています。 あとは、村松委員からは、小売事業者と需要家との連携がうまくいくようにと、小売事業 者が知らないところでオプトアウト化されないようにというお話だったと思いますけれど も、18 ページに書いているフローの中では、あくまで小売事業者さんの承諾をいただいた 上で、このオプトアウトのほうに進むということを前提にしていますので、そこは問題ない ようにちゃんとしていきたいなというふうに思っています。 会計上、 オプトアウトに4万 4,000 円の費用がどういうふうに整理されるかというのは、 しっかり整理したいなというふうに思ってございます。 あとは、村木委員、四元委員から、この金額の妥当性というか、オプトアウトが増えてい ったときにどうするのかといった話もありましたけれども、一応 17 ページのところにも小 さく書いていてあれなんですけれども、オプトアウトの需要家の増加とか、いろいろな環境 変化があった場合には、この金額が妥当なのかどうかというのは見直していこうというふ うに思ってございますので、その辺りもしっかりルールの運用の状況を見ながら検討して いきたいなというふうに思ってございます。 取りあえず、以上です。 ○山内委員長 ありがとうございました。 ということでありますので、皆さん、方向としてはご賛成いただいていると思いますので、 16 一応 28 年の4月制度導入ということですので、ちゃんと説明しなさいとか、ちゃんと情報 を出しなさいとか、そういうご意見が強かったと思いますが、その辺も気配りいただいて、 そういう準備を進めていただくのかなというふうに、今日のところは結論とさせていただ こうと思います。 よろしゅうございますか。 それでは、本日の議事は以上ということになります。 事務局の案では、本日も長時間にわたり活発にご議論とあるんですけど、そんなに長くな かったですけど、重要な議論をいただいたというふうに思っております。 次回のことについて事務局からとか、そういうことは特にあれですか、なしですか。 ○小柳室長 3月末の検証の取りまとめに向けて、今、パブコメなんかもやっていますので、3月に一 度開催して、検証の取りまとめに向けたことをやりたいなというふうに思ってございます。 ○山内委員長 ということでございますので、よろしくお願いいたします。 それでは、これをもちまして、第 86 回電力・ガス基本政策小委員会を閉会とさせていた だきます。どうもありがとうございました。 17

資料1

資料1 総合資源エネルギー調査会 電力・ガス事業分科会 第86回電力・ガス基本政策小委員会 令和7年2月28日 11:00~12:30 オ ン ラ イ ン 会 議 1. 議題 (1) 電力小売全面自由化の進捗状況について (2) 沖縄エリアにおける電力システム改革の状況について (3) スマートメーターのオプトアウトについて 配付資料 一覧 資料1 資料2 資料3 資料4 資料5 参考資料1 議事次第 委員等名簿 電力小売全面自由化の進捗状況について 沖縄エリアにおける電力システム改革の状況について スマートメーターのオプトアウトについて 第7次エネルギー基本計画

資料2

資料2 総合資源エネルギー調査会 電力・ガス事業分科会 電力・ガス基本政策小委員会 委員等名簿 ※五十音順、敬称略、◎は小委員長、○は小委員長代理 (委員) ○ 秋元 圭吾 公益財団法人地球環境産業技術研究機構 システム研究グループ グループリーダー 岩船 由美子 東京大学生産技術研究所 牛窪 株式会社みずほ銀行 恭彦 教授 常務執行役員 大橋 弘 東京大学大学院経済学研究科 原 郁子 日本消費生活アドバイザー・コンサルタント・相談員協会 理事・東日本支部 教授 支部長 松橋 隆治 東京大学大学院工学系研究科 松村 敏弘 東京大学社会科学研究所 村木 美貴 千葉大学大学院 工学研究科 建築・都市科学専攻 教授 村松 久美子 PwC Japan有限責任監査法人ディレクター 公認会計士 ◎ 山内 弘隆 四元 弘子 武蔵野大学経営学部 教授 教授 特任教授 森・濱田松本法律事務所 弁護士 (専門委員) 皆藤 寛 日本商工会議所 産業政策第二部 武田 孝治 一般社団法人日本経済団体連合会 資源・エネルギー対策委員会 課長 企画部会長 (オブザーバー) 大山 力 電力広域的運営推進機関 理事長 金本 良嗣 一般社団法人日本卸電力取引所 佐々木 敏春 電気事業連合会 新川 達也 電力・ガス取引監視等委員会 谷口 直行 株式会社エネット 早川 光毅 一般社団法人日本ガス協会 山本 竜太郎 送配電網協議会 理事長 副会長 事務局長 代表取締役社長 専務理事 理事・事務局長

資料3

資料3 電力小売全面自由化の進捗状況について 2025年2月28日 資源エネルギー庁 新電力のシェアの推移 ⚫ 全販売電力量に占める新電力のシェアは、2024年10月時点では約19.2%。 うち家庭等を含む低圧分野のシェアは、約25.6%。 35.0 全体 [%] 2016年度 2017年度 2018年度 特別高圧 2019年度 30.0 高圧 2020年度 低圧 2021年度 2022年度 2023年度 2024年度 低圧 25.6% 25.0 高圧 20.6% 20.0 15.0 全体 19.2% 特別高圧 9.8% 10.0 5.0 0.0 ※上記「新電力」には、供給区域外の大手電力(旧一般電気事業者)を含まず、大手電力の子会社を含む。 ※シェアは販売電力量ベースで算出したもの。 2 (出所)電力取引報 ※2025年2月12日時点 大手電力の域外進出 ⚫ 大手電力(旧一般電気事業者)の域外進出は、2024年10月時点で約3.0%。 ⚫ 燃料が高騰した2022年度に大きく減少したが、足元では横ばいの状態。 ※大手電力の100%子会社を除く。 全体 特別高圧 高圧 低圧 100% 0.1 0.0 5.2 6.0 6.3 3.8 4.9 5.0 0.2 90% 8.6 11.512.2 14.0 15.216.5 17.618.3 0.9 18.417.9 1.8 70% 0.8 1.3 3.7 2.8 4.8 5.0 6.0 4.5 8.1 8.7 8.9 10.1 3.7 3.8 15.0 15.2 16.7 18.517.918.0 20.018.6 0.5 22.021.4 3.9 0.2 8.6 0.3 3.5 4.0 80% 0.1 8.3 7.6 4.7 2.6 4.0 1.7 2.6 4.6 3.0 3.0 4.4 94.8 90.6 86.7 84.3 82.281.0 82.0 78.679.1 78.477.3 3.5 94.7 93.292.392.5 92.5 90.4 88.187.687.3 86.786.4 6.6 7.4 0.7 3.7 4.1 4.3 7.1 7.4 89.4 12.9 16.4 20.3 23.223.022.2 25.624.7 0.5 83.3 80.279.5 78.0 75.977.1 75.574.5 71.2 70.8 99.9 0.5 95.3 91.0 0.5 0.6 0.7 0.7 0.8 86.6 82.9 79.3 76.376.477.1 73.674.5 2016.4 2017.4 2018.4 2019.4 2020.4 2021.4 2022.4 2023.4 2024.4 2024.7 2024.10 2016.4 2017.4 2018.4 2019.4 2020.4 2021.4 2022.4 2023.4 2024.4 2024.7 2024.10 2016.4 2017.4 2018.4 2019.4 2020.4 2021.4 2022.4 2023.4 2024.4 2024.7 2024.10 2016.4 2017.4 2018.4 2019.4 2020.4 2021.4 2022.4 2023.4 2024.4 2024.7 2024.10 60% 3 ※シェアは販売電力量ベースで算出したもの。 (出所)電力取引報 ※2025年2月12日時点 供給区域別の新電力シェア(全電圧合計) ⚫ 全面自由化以降、供給区域別の新電力のシェアは以下のとおり。 北海道 東北 東京 中部 北陸 関西 中国 四国 九州 沖縄 35.0 30.0 25.0 20.0 15.0 10.0 5.0 0.0 ※シェアは各供給区域において、大手電力(旧一般電気事業者)以外の新電力の販売量を、供給区域内の全販売量で除したもの。 ※上記「新電力」には、供給区域外の大手電力を含まず、大手電力の子会社を含む。 4 (出所)電力取引報 ※2025年2月12日時点 電圧別の新電力シェア(供給区域別) ⚫ 電圧別の新電力のシェアは以下のとおり。 [%] 45.0 40.0 特別高圧 高圧 北海道 東北 低圧 45.0 45.0 40.0 40.0 35.0 35.0 東京 35.0 中部 東京 北陸 30.0 関西 30.0 東京 30.0 中国 25.0 四国 25.0 九州 20.0 15.0 10.0 5.0 0.0 20.0 沖縄 東京 中国 東北 九州 北海道 関西 四国 沖縄 北陸 中部 15.0 10.0 関西 25.0 東北 中国 北海道 20.0 九州 北陸 関西 15.0 中部 沖縄 四国 北海道 中部 九州 東北 沖縄 四国 中国 10.0 北陸 5.0 5.0 0.0 0.0 ※シェアは各供給区域において、大手電力(旧一般電気事業者)以外の新電力の販売量を、供給区域内の全販売量で除したもの。 ※上記「新電力」には、供給区域外の大手電力を含まず、大手電力の子会社を含む。 5 (出所)電力取引報 ※2025年2月12日時点 (参考)供給区域別・電圧別の新電力シェアの推移 ※シェアは各供給区域において、大手電力(旧一般電気事業者)以外の新電力の販売量を、供給区域内の全販売量で除したもの。 ※上記「新電力」には、供給区域外の大手電力を含まず、大手電力の子会社を含む。 6 (出所)電力取引報 ※2025年2月12日時点 小売電気事業者の登録数 ⚫ 小売事業者の登録数は足下では横ばい。2025年1月末時点で747者。 ⚫ そのうち2025年1月末時点の自由化以降の事業承継は累計で177件、事業 廃止や法人の解散等は126件となっている。 [件] 小売電気事業者の登録数の推移 800 700 600 500 400 300 200 2016年 2017年 2018年 2019年 2020年 2021年 2022年 2024年 1月 10月 7月 4月 1月 10月 7月 4月 2023年 4月 7月 10月 1月 4月 7月 10月 1月 4月 7月 10月 1月 4月 7月 10月 1月 4月 7月 10月 1月 4月 7月 10月 1月 4月 7月 10月 登録件数 1月 10月 7月 4月 1月 10月 7月 4月 1月 10月 7月 4月 1月 10月 7月 4月 1月 10月 7月 4月 1月 10月 7月 4月 1月 10月 4月 0 7月 100 2025年 1月 4月 7月 10月 1月 4月 7月 10月 1月 291 318 356 374 394 407 427 453 478 496 528 559 595 596 619 637 644 662 684 695 716 729 734 744 743 739 733 729 726 730 731 726 727 733 739 747 事業休止件数 0 1 1 1 2 2 2 2 2 2 2 2 2 2 2 2 3 3 4 4 5 14 14 事業承継件数 0 3 3 3 6 6 8 10 18 22 24 27 32 55 59 61 67 72 82 84 94 96 99 105 112 114 124 129 132 136 142 146 161 165 172 177 事業廃止・解 散・取消件数 2 4 4 4 7 8 8 9 9 10 11 12 12 15 16 16 20 25 27 33 38 38 42 ※登録件数は、月末時点で実際に登録されている件数の合計。 ※休止、承継、廃止・解散・取消は2016年4月以降の累計。 14 48 14 61 18 71 26 75 32 86 37 96 43 97 44 46 54 54 67 67 99 104 113 120 124 126 (出所)資源エネルギー庁調べ 7 供給実績がある小売電気事業者の推移 ⚫ 2024年10月中に供給実績がある事業者は500者。 登録件数 800 供給実績あり 供給実績なし 700 600 500 400 300 200 100 0 4月 7月 10月 1月 4月 7月 10月 1月 4月 7月 10月 1月 4月 7月 10月 1月 4月 7月 10月 1月 4月 7月 10月 1月 4月 7月 10月 1月 4月 7月 10月 1月 4月 7月 10月 2016年 2017年 2018年 ※登録件数は、月末時点で実際に登録されている件数の合計。 2019年 2020年 2021年 2022年 2023年 2024年 (出所)資源エネルギー庁調べ 8 電気料金の国際比較 ⚫ 各国における料金の推移を、毎年の為替レートを考慮して円換算すると、 下図のとおり。 ※各国で算定方法にばらつきがあるほか、電気料金は同国内でも地域によって様々あるため、下記グラフはあくまで傾向を示すも のであることに留意が必要。 家庭用電気料金 (円/kWh) 産業用電気料金 (円/kWh) 80.0 80.0 70.0 イギリス(63.5) ドイツ(61.9) イタリア(58.7) 60.0 60.0 50.0 ※ドイツ、イタリア、日本、イギリス、フランス、アメリカ、韓国はIEA発表のデータを引用。再エネ賦課金等を含んだもの(諸元は国ごとに異なる)。 ※上記料金は、各国の算定方法で求められた単純単価を、出典の資料に掲載されている各年の円ドル為替レートで変換したもの。 (出所)IEA Energy Prices and Taxes 2023 2022 2021 2020 2019 2018 2017 2016 2015 2023 2022 2021 2020 2019 2018 2017 2016 2015 2014 2013 2012 0.0 2011 0.0 2010 10.0 2009 10.0 2014 20.0 2013 アメリカ(22.5) 韓国(18.3) 20.0 フランス(31.2) ドイツ(30.9) 日本(24.4) 韓国(17.2) アメリカ(11.3) 30.0 2012 30.0 2011 フランス(35.9) 日本(30.2) 40.0 2010 40.0 イギリス(45.1) イタリア(38.1) 2009 50.0 70.0 等を基に資源エネルギー庁作成 9 燃料輸入価格の推移 ⚫ 電気料金への影響が大きいLNGと石炭の燃料価格は、2022年夏頃に高騰し たが、2023年には下落。現在、ロシアによるウクライナ侵略の開始時と同 程度の水準に回復し、推移。 円/t LNG 180,000 164,909円 ロシアによる ウクライナ侵略開始 160,000 石炭 電気・ガス価格 激変緩和対策事業開始 140,000 120,000 100,000 2024年12月 94,607円 80,000 59,180円 60,000 2024年12月 23,120円 40,000 20,000 0 1月 2月 3月 4月 5月 6月 7月 8月 9月 10月11月12月 1月 2月 3月 4月 5月 6月 7月 8月 9月 10月11月12月 1月 2月 3月 4月 5月 6月 7月 8月 9月 10月11月12月 2022年 2023年 ※財務省の貿易統計より。2024年12月分は、1月30日確報版。 2024年 10 電気料金の推移(1kWhあたり単価) ⚫ ロシアのウクライナ侵略等による燃料輸入価格の高騰に伴い、2022年以降、電 気料金は上昇(特に自由料金)。 ⚫ 2023年以降、規制料金値上げ(同年6月)を実施するも、電気・ガス価格激変 緩和対策事業に加え、燃料輸入価格が低下したことに伴い、電気料金は低下。 ※足元では新たな料金支援を実施中。 電気料金単価(低圧・電灯(家庭用))の推移 低圧電灯(規制) 45.0 ロシアによる ウクライナ侵略開始 40.0 低圧電灯(自由) 加重平均 (電気・ガス価格激変緩和対策 電気・ガス価格 事業の開始前) 激変緩和対策事業開始 2023年1月 (加重平均) 約37.8円 35.0 30.0 2024年10月 (加重平均) 約31.7円 25.0 ▲1.8円/kWh ▲4.0円/kWh ▲7円/kWh ▲3.5円/kWh 2024年10月 2024年9月 2024年8月 2024年7月 2024年6月 2024年5月 2024年4月 2024年3月 2024年2月 2024年1月 2023年12月 2023年11月 2023年10月 2023年9月 2023年8月 2023年7月 2023年6月 2023年5月 2023年4月 2023年3月 2023年2月 2023年1月 2022年12月 2022年11月 (出所)電力取引報より。FIT賦課金及び消費税を含む。 ※電力取引報から実績値を用いて計算。 2022年10月 2022年9月 2022年8月 2022年7月 2022年6月 2022年5月 2022年4月 2022年3月 2022年2月 2022年1月 20.0 (料金の請求月) 11 スポット市場価格の推移 ⚫ スポット市場の価格は全面自由化以降、年間平均で10円/kWh弱であったが、 2020年度冬期の需給ひっ迫や2021年度後半からの燃料価格の高騰等で価格高騰や 変動が発生。2023年1月以降は、燃料輸入価格の低下に伴い、市場価格は低下傾向。 取引価格(スポット市場) <2024年4月1日~2025年2月1日分> 275 250 225 200 175 50 システムプライス システムプライス(日別) 40 システムプライス(7日移動平均) 30 150 125 20 100 75 10 50 25 0 2016/4/1 2016/7/1 2016/10/1 2017/1/1 2017/4/1 2017/7/1 2017/10/1 2018/1/1 2018/4/1 2018/7/1 2018/10/1 2019/1/1 2019/4/1 2019/7/1 2019/10/1 2020/1/1 2020/4/1 2020/7/1 2020/10/1 2021/1/1 2021/4/1 2021/7/1 2021/10/1 2022/1/1 2022/4/1 2022/7/1 2022/10/1 2023/1/1 2023/4/1 2023/7/1 2023/10/1 2024/1/1 2024/4/1 2024/7/1 2024/10/1 2025/1/1 0 (出所)JEPXホームページ 2013年度 2014年度 2015年度 2016年度 2017年度 2018年度 2019年度 2020年度 2021年度 2022年度 2023年度 2024年度※ 平均価格(円/kWh) 最高価格(円/kWh) 200円/kWh超えの時間帯 100~200円/kWhの時間帯 (参考)0.01円/kWhの時間帯※ 16.5 55 0 0 0 14.7 44.6 0 0 0 ※2024年度の平均価格は2025年2月1日時点までの価格 9.8 44.9 0 0 0 8.5 40.0 0 0 0 9.7 50.0 0 0 0 9.8 75.0 0 0 0 7.9 60.0 0 0 0.1% 11.2 251.0 0.3% 1.6% 1.5% 13.5 80.0 0 0 1.6% 20.41 100.0 0 0.04% 3.3% 10.74 52.94 0 0 4.7% 12.24 45.01 0 0 2.3% 12 ※2024年度の平均価格は2025年2月1日時点までの価格 2025/1/1 2024/10/1 2024/7/1 2024/4/1 2024/1/1 2023/10/1 2023/7/1 2023/4/1 2023/1/1 2022/10/1 2022/7/1 2022/4/1 2022/1/1 2021/10/1 2021/7/1 2021/4/1 2021/1/1 2020/10/1 2020/7/1 2020/4/1 2020/1/1 2019/10/1 2019/7/1 [円/kWh] 2019/4/1 2019/1/1 2018/10/1 2018/7/1 2018/4/1 2018/1/1 2017/10/1 225 2017/7/1 250 2017/4/1 2017/1/1 2016/10/1 2016/7/1 2016/4/1 時間前市場価格の推移 ⚫ 時間前市場における取引価格もスポット市場の取引価格と概ね同様の傾向。なお、 2024年度は、平均13.0円/kWhで推移。 取引価格(時間前市場) 275 時間前平均価格(円/kWh) 日平均価格 7日移動平均 200 175 150 125 100 75 50 25 0 (出所)JEPXホームページ 13 全面自由化後の卸取引市場の状況(取引量) ⚫ 卸電力取引所の取引量は、小売全面自由化当初(2016年4月1日)には、 総需要の約2%であったのに対し、2024年10月時点で約32%程度。 JEPX取引量(約定量)のシェアの推移 100,000 総電力需要量 45.0% JEPX取引量(約定量)のシェア 80,000 40.0% 70,000 35.0% 60,000 30.0% 2023年10月 グロスビディング休止 50,000 25.0% 40,000 30,000 20.0% 2016年4月 総需要の約2% 2024年10月時点 総需要の約32%程度 15.0% 20,000 10.0% 10,000 5.0% 0 0.0% JEPX取引量(約定量)のシェア(%) 総電力需要量(百万kWh) 90,000 50.0% 14 (出所)JEPX、電力取引報 ※2025年2月12日時点

資料4

資料4 沖縄エリアにおける 電力システム改革の状況について 2025年2月28日 資源エネルギー庁 沖縄エリアにおける電力システム改革の状況 ⚫ 電力システム改革専門委員会報告書等において、沖縄電力の供給区域(以下「沖縄エリア」とい う。)における電力システム改革は、地域の特殊性を踏まえた改革を実施することとしている。 ⚫ 沖縄エリアにおける小売部門の自由化は、2000年(平成12年)3月に「電気の使用規模2万 kW以上、6万V電圧以上で受電する需要家」とされ、2004年(平成16年)4月に特別高圧 (2000kW以上)まで拡大された。 ※沖縄エリア以外のエリア(以下「本土」という。)においては、平成12年3月に特別高圧(2000kW以上)が、平成16年 4月に高圧(500kW以上。翌年4月から50kW以上。)が、完全自由化された。 ⚫ それ以降、上記の報告書等における整理も踏まえ、沖縄エリアでは高圧及び低圧部門における料 金規制が存置されている。 <電力システム改革の検討に当たって示された沖縄エリアにおける構造的な特殊性> ①広大な海域に島が点在しており、独立した小規模な電力系統が必要であること ②本土の電力系統と連系されておらず、広域融通の枠外であり、また卸電力取引所を通じた電力取引 も不可能であること ③電力需要が小さく、また地理的・地形的制約等から大規模な原子力発電や水力発電が困難であり、 火力発電に依存せざるを得ないこと 出典:第4回電力システム改革小委員会 制度設計WG(平成25年12月9日) 資料5-5から引用 2 (参考)各エリアにおける電力システム改革進展の経緯 ⚫ 沖縄エリアにおいては、構造的な特殊性を考慮し、本土とは異なる措置がなされてきた。 平成12年3月~ 平成16年4月~ 平成17年4月~ 特別 高圧 特別 高圧 特別 高圧 (工場等) 本 土 9 社 新電力参入可 料金自由化 高圧 (ビル等) 低圧 大手電力による 地域独占 料金規制 (家庭等) 沖 縄 エ リ ア 特別 高圧 高圧 新電力参入可 料金自由化 ※2万kW以上かつ 6万V以上 大手電力による 地域独占 高圧 新電力参入可 料金自由化 ※500kW以上 低圧 料金規制 特別 高圧 新電力参入可 料金自由化 高圧 大手電力による 地域独占 低圧 新電力参入可 料金自由化 高圧 大手電力による 地域独占 新電力参入可 低圧 料金規制 大手電力にのみ 料金規制 特別 高圧 新電力参入可 料金自由化 特別 高圧 新電力参入可 料金自由化 特別 高圧 新電力参入可 料金自由化 高圧 大手電力による 地域独占 高圧 大手電力による 地域独占 高圧 新電力参入可 料金規制 低圧 新電力参入可 料金自由化 平成28年4月~ 低圧 料金規制 低圧 料金規制 低圧 大手電力にのみ 料金規制 3 【参考】これまでの沖縄エリアにおける電力システム改革の方針等 ●電力システム改革専門委員会報告書(平成25年2月) Ⅱ. 小売全面自由化とそのために必要な制度改革 1.小売分野への参入の全面自由化 (4)沖縄における小売全面自由化 沖縄電力の供給区域においては、過去の電気事業制度改革において、系統が他の地域から独立し、広域的な 電力流通が実態として不可能であること、及び、区域内の離島需要が他の電力会社に比べて相対的に多いこと 等の沖縄地域固有の事情を考慮し、他地域とは異なる自由化範囲が設定されてきた。また、現時点では自由化 需要への新規参入実績が無い状況にある。 沖縄地域の固有の事情については一定の配慮が必要と考えられる分野も多いが、他方で需要家の選択肢の拡 大、多様な電源の参入といった政策目的は、沖縄地域においても他の地域と何ら変わることはなく、その実現に向け て改革を進めることが求められる。したがって、沖縄地域についても原則として他の地域と同様の制度改革を進める ことを基本とし、その上で、沖縄地域の特殊性にかんがみ一定の例外措置を設けるという考え方が適当である。具 体的には、小売全面自由化は原則として実施し、卸電力市場の活性化や送配電部門の広域化・中立化等、そ の他の論点については、沖縄の特殊性も踏まえた制度とする。 ●電力システムに関する改革方針(平成25年4月2日閣議決定) Ⅴ.小売分野への参入の全面自由化 今回の電力システム改革は、大きな事業体制変革を伴うものであり、関連する法令の手当等を含め、十分な準 備を行った上で慎重に改革を進めることが必要である。このため、実施を3段階に分け、各段階で課題克服のため の十分な検証を行い、その結果を踏まえた必要な措置を講じながら実行するものとする。 なお、沖縄地域については、地域の特殊性を踏まえた制度とする。 電力システム改革の速やかな実施に向け、 関係省庁は連携して改革の内容の具体化を進めるとともに、法律案その他の制度的準備を整える。 4 沖縄エリアの現状と高圧部門における規制の在り方について ⚫ 沖縄エリアにおける新電力シェアは高圧部門で12.2%に達し、本土と比較しても遜色ない水準 に達している。こうした現状に鑑みれば、本土と同様に沖縄エリアの高圧部門における料金規制 等を解除しても差し支えないのではないか。 ⚫ 他方で、高圧部門の料金規制等の解除に当たっては、小売料金の合理的ではない値上げが行 われていないか確認するなど、ガス事業における指定旧供給区域等の指定の解除の例も参考に、 需要家保護の観点から必要な措置を講ずることが適当と考えられる。このため、電力・ガス取引 監視等委員会に対して、沖縄エリアの高圧部門の料金規制等の解除を行うことに関する懸念 の有無と、解除を行う場合にどのような措置を講ずることが必要かについて、意見を聴くこととして はどうか。 [%] 45.0 供給区域別の新電力シェア(高圧) 北海道 東北 東京 中部 北陸 関西 中国 四国 九州 沖縄 40.0 35.0 東京 (31.0%) 30.0 東北 (23.4%) 25.0 中国 (19.3%) 北海道 (17.1%) 九州 (14.8%) 北陸 (14.6%) 関西 (14.4%) 中部 (13.8%) 沖縄 (12.2%) 四国 (11.7%) 20.0 15.0 10.0 5.0 0.0 ※シェアは各供給区域において、大手電力(旧一般電気事業者)以外の新電力の販売量を、供給区域内の全販売量で除したもの。 ※上記「新電力」には、供給区域外の大手電力を含まず、大手電力の子会社を含む。 (出所)電力取引報 5 (参考)供給区域別の新電力シェア(全電圧合計) ⚫ 全面自由化以降、供給区域別の新電力のシェアは以下のとおり。 [%] 北海道 東北 東京 中部 北陸 関西 中国 四国 九州 沖縄 35.0 30.0 東京 (28.8%) 25.0 20.0 北海道 (18.6%) 東北 (17.6%) 関西 (16.6%) 中国 (15.4%) 九州 (14.3%) 中部 (12.1%) 沖縄 (11.7%) 四国 (11.0%) 北陸 (9.1%) 15.0 10.0 5.0 0.0 ※シェアは各供給区域において、大手電力(旧一般電気事業者)以外の新電力の販売量を、供給区域内の全販売量で除したもの。 ※上記「新電力」には、供給区域外の大手電力を含まず、大手電力の子会社を含む。 (出所)電力取引報 6 第81回 電力・ガス基本政策小委員会 (2024年9月26日) 資料3から抜粋 (参考)経過措置の概要(料金規制の段階的撤廃) ⚫ 2016年4月の電力小売全面自由化に際しては、大手電力会社による「規制なき独占」に陥る 事態を防ぐため、低圧需要家向けの小売規制料金について経過措置を講じることとされた。 ⚫ 当該経過措置は、2020年3月末をもって撤廃されたものの、同年4月以降は、「電気の使用者 の利益を保護する必要性が特に高いと認められるもの」として経済産業大臣が指定した大手電力 会社の供給区域において、引き続き、規制料金(特定小売供給約款料金)が存続されている。 ⚫ 経済産業大臣の指定が解除されると、その供給区域の大手電力は、自由料金メニューのみを提 供することとなり、当該地域における低圧需要の最終保障供給は、地域の一般送配電事業者が 担うこととなる。 第5回電力・ガス基本政策小委員会(2017年10月24日)資料5より抜粋 小売全面自由化前 <~2016年3月末> 低圧 部門 小売全面自由化後(経過措置期間) <2016年4月~> 旧一般電気事業者 旧一般 電気事業者 電気供給約款 (規制料金) 規制料金 メニュー 選択約款 (規制料金) 自由料金 メニュー 新電力 自由料金 メニュー 経過措置撤廃後 (指定なし地域) 一般送配電 事業者 小売電気事業者 (旧一般、新電力) 一般送配電 事業者 離島供給 自由料金 メニュー 離島供給 ・ 最終保障供給 7 (参考)電力システム改革各分野における沖縄地域の取扱いについて (出所)第4回電力システム改革小 委員会 制度設計WG(平成25年 12月9日) 資料5-5から引用 8 (参考)電力システム改革各分野における沖縄地域の取扱いについて (出所)第4回電力システム改革小 委員会 制度設計WG(平成25年 12月9日) 資料5-5から引用 9 (参考)電力システム改革各分野における沖縄地域の取扱いについて (出所)第4回電力システム改革小 委員会 制度設計WG(平成25年 12月9日) 資料5-5から引用 10 (参考)関連条文 ○電気事業法等の一部を改正する法律(平成26年6月18日法律第72号) 附則 (みなし小売電気事業者の供給義務等) 第十六条 みなし小売電気事業者は、当分の間、正当な理由がなければ、当該みなし小売電気事業者に係る旧電気事業法第六条第二項第三号の供給区域(離島等(電気事業法 第二条第一項第八号イに規定する離島等をいう。)を除く。以下この項において同じ。)であって、小売電気事業者間の適正な競争関係が確保されていないことその他の事由により、当 該供給区域内の電気の使用者の利益を保護する必要性が特に高いと認められるものとして経済産業大臣が指定するもの(以下「指定旧供給区域」という。)における一般の需要(み なし登録特定送配電事業者が特別小売供給(附則第二十三条第一項に規定する特別小売供給をいう。)を開始した旧供給地点(附則第二十三条第一項に規定する旧供給地 点をいう。)における需要及び特定規模需要(旧電気事業法第二条第一項第七号に規定する特定規模需要に相当する需要をいう。)を除く。)であって次に掲げるもの以外のもの (次条第二項において「特定需要」という。)に応ずる電気の供給を保障するための電気の供給(以下「特定小売供給」という。)を拒んではならない。 一 当該みなし小売電気事業者から次に掲げる料金その他の供給条件により小売供給を受けているもの イ 当該みなし小売電気事業者と交渉により合意した料金その他の供給条件 ロ この法律の施行の際現に旧電気事業法第十九条第十二項の規定により届出がされている選択約款で設定された料金その他の供給条件に相当する料金その他の供給条件 ハ この法律の施行の際現に旧電気事業法第二十一条第一項ただし書の認可を受けている料金その他の供給条件(附則第十九条及び第二十条第七項において「旧認可供給条 件」という。)であって附則第十九条の承認を受けていないものに相当する料金その他の供給条件 二 当該みなし小売電気事業者以外の者から小売供給を受けているもの 2 経済産業大臣は、指定旧供給区域について前項に規定する指定の事由がなくなったと認めるときは、当該指定旧供給区域について同項の規定による指定を解除するものとする。 ○旧電気事業法 第二条第一項第七号 特定規模電気事業 電気の使用者の一定規模の需要であつて経済産業省令で定める要件に該当するもの(以下「特定規模需要」という。)に応ずる電気の供 給(第十七条第一項第一号に規定する供給に該当するもの及び同項の許可を受けて行うものを除く。)を行う事業であつて、一般電気事業者がその供給区域以外の地域における特 定規模需要に応じ他の一般電気事業者が維持し、及び運用する電線路を介して行うもの並びに一般電気事業者以外の者が行うものをいう。 ○旧電気事業法施行規則 第二条の二第一項 法第二条第一項第七号の経済産業省令で定める要件は、事項に定める一の需要場所における電気の使用者の需要が、次の各号のいずれかに該当することとする。 一 沖縄電力株式会社の供給区域以外の地域において一般電気事業者又は特定規模電気事業者が維持し、及び運用する特別高圧電線路又は高圧電線路から受電する者であって、 使用最大電力が原則として五十キロワット以上の者の需要 二 沖縄電力株式会社の供給区域内において一般電気事業者又は特定規模電気事業者が維持し、及び運用する特別高圧電線路から受電する者であって、使用最大電力が原則と して二千キロワット以上の者の需要 11

資料5

資料5 スマートメーターの オプトアウトについて 2025年2月28日 資源エネルギー庁 本日の御議論について • スマートメーターは、今年度中に日本全国で設置が完了する予定。 • 次世代スマートメーター制度検討会では、需要家が希望した場合にスマートメー ターの設置を拒否できる「オプトアウト」の考え方について、諸外国の事例も踏ま え、「追加のコスト負担については、オプトアウトを選択した需要家に求めるこ と」とし、「具体的な手続きや金額、開始時期等について、今後その対象や方法も 含めエネ庁の審議会等において議論を進める」とされたところ。 • そうした検討を受け、第35回電力・ガス基本政策小委員会において、具体的な手 続きや開始時期等については、その対象や方法を含め原則全社一律とし、一般送配 電事業者においてその詳細を検討することとした。 • 今般、一般送配電事業者における検討を踏まえ、事務局において整理したオプトア ウト制度の在り方について御議論いただきたい。 2 (参考)各電力会社の導入計画(概要) • 現行のスマートメーターは、第3次エネルギー基本計画(2010年6月閣議決定)において、 原則として全ての需要家に導入する方針を決定し、2014年から設置を開始。 • 高圧部門(工場等)については、平成28(2016)年度までで全数スマートメーター導入完 了。 • 低圧部門(家庭等)については、沖縄エリアの今年度末の導入完了をもって、全数導入が完 了する予定。 スマートメーターの導入完了時期 特高・高圧大口需要家 (契約電力500kW以上) 北海道 東北 東京 中部 北陸 関西 中国 四国 九州 沖縄 高圧 完了 完了 完了 完了 完了 完了 完了 完了 完了 完了 低圧 完了 完了 完了 完了 完了 完了 完了 完了 完了 2024 年度末 [約9万台] 高圧小口需要家 (契約電力500kW未満) [約78万台] 低圧需要家 [約8,070万台] スマートメーター設置台数 3 (参考)各電力会社のスマートメーター導入計画 各年度末のスマートメーター導入台数(2024年3月末時点) (設置台数/計画台数(~2023年度)・設置予定台数(2024年度~)) 2024年 3月末時点 電力会社 での設置 (設置予定台数) 台数※1(万台) 及び設置率 (374万台) 373.7※2 100% 東北電力 677.2※2 北海道電力 H26 2014 8/12 各社の計画 H27 2015 H28 2016 H29 2017 H30 2018 R1 2019 R2 2020 R3 2021 R4 2022 R5 2023 29/38 48/53 49/48 47/42 45/40 45/39 42/37 41/35 28/28 58/65 82/84 97/82 93/77 82/70 72/76 66/77 63/77 63/63 (677万台) 100% 東京電力 2,840.7※2 100% 150/190 315/320 595/570 585/570 584/570 417/442 343/367 967.5※2 100% 1/1 108/102 181/146 148/144 119/115 101/96 101/104 (2,840万台) 中部電力 (968万台) 北陸電力 (183万台) 関西電力 (1,305万台) 182.6※2 100% 1,305.4※2 100% (505万台) 505.1※2 100% 四国電力 263.0※2 中国電力 (263万台) 100% 九州電力 863.4※2 100% (863万台) (93万台) 85.8 92.0% 合計 8,064.4 99.9% 沖縄電力 15/15 20/20 17/18 154/160 174/170 210/170 182/170 126/106※3 95/80※3 71/65※3 48/50 31/33 314 /366 22/25 25/25 24/23 23/22 18/18 24/24 67/56 69/61 61/56 63/55 55/58 55/56 56/55 57/56 13/15 29/31 35/31 34/32 35/31 38/30 29/30 27/28 22/22 7/0 106/80 95/85 99/98 87/86 93/84※3 75/80※3 75/81※3 83/83※3 11/10 1,296 /1,226 11/10 1,198 /1,129 12/9 960 /931 1/1 744 /750 10/10 1,350 /1,225 11/9 848 /851 R6 2024 98/98 111/110 19/19 1/3 単位【万台】 11/9 444 /457 10/9 431 /446 ※1 試験導入にて設置したスマートメーターを含む ※2 一部取替作業が困難な場所などを除く(最終年度末時点) ※3 記載導入台数のほかに検定有効期間満了(検満)に伴うスマートメーターからスマートメーターへの取替を含む 9/9 280 /279 7 7 4 (参考)次世代スマートメーター制度検討会での議論 第5回 次世代スマートメーター制度検討会 資料3(2021年2月18日) 5 (参考)第35回電ガ小委での議論 第35回 電力・ガス基本政策小委員会 資料5(2021年5月25日) 6 スマートメーターの設置拒否の状況 • スマートメーターの総設置台数は2023年度末時点で約8150万台。このうち設置拒否件数は、 約4万件(約0.05%)に達している。 • スマートメーターの設置数が多く、導入が他のエリアより早期に完了した東京エリアでは、 特に拒否件数が多くなっているとともに導入完了後も継続的に増加している。 設置拒否件数の推移(東京PG) 設置拒否件数(2023年度) (ストックベース 単位:件) (ストックベース 単位:件) 40,914 21,559 15,793 導入完了 12,912 21,559 10,654 4,956 2,564 1,873 北 海 道 東 北 400 東 京 中 部 北 陸 一般送配電事業者への聞き取りによる 2,967 1,927 882 関 西 四 国 中 国 3,436 350 九 州 沖 縄 計 FY2020 FY2021 FY2022 FY2023 7 スマートメーターの設置拒否によって発生する影響 • 需要家がスマートメーターの設置を拒否した場合には、一般送配電事業者において は、計器の取り外し等の工事対応に加えて、検針員を派遣しての毎月の検針を行う など追加的な業務が生じる。加えて、需要家の転居等により設置拒否が中止された 場合には復元工事が必要となるなど追加的な費用が発生する。 • また、電気の使用制限が発動するような有事においても、スマートメーターの設置 拒否をした需要家は遠隔による使用アンペアの制限等をうけることなく電気を利用 できるなどの電気の使用者の公平性といった観点からの影響もある。 8 スマートメーターの設置拒否の社会的な影響(送配電網協議会による試算) • 今後の設置拒否件数の見通しについて、仮に東京エリアの2020年度から2022年度の平均増 加率※(22%)で各一送エリアが増加するケース(パターン①)や設置拒否件数の増加が鈍 化し、パターン①の半分の増加率(11%)で各エリアが増加するケース(パターン②)、 2023年度以降増加しないケース(パターン③)を考えた場合、社会負担費用の推移は下記 となり、RCの第二規制期間(2028~2032年度)において発生する社会負担費用は、10社 全体で約100~300億円となる。 ※スマメ導入完了後の期間において算定し、保守的に見積もる観点から特に増加率が大きかった2022年度から2023年度の増加率(37%)を除いて増加率を設定。 10社の社会負担費用とスマートメーター設置拒否件数の推移 120 件数(パターン①) 100 社 会 負 担 費 用 ( 億 円 ) 件数(パターン②) 件数(パターン③) 80 社会負担費用(パターン①) 60 2032年度における推定設置拒否件数は、 現在の設置台数(約8150万台)に占める割合で パターン①0.3%程度 パターン②0.1%程度 パターン③0.05%程度 30 約24万件 社会負担費用(パターン②) 約10万件 社会負担費用(パターン③) 40 約4万件 20 0 ス 25 マ ー ト メ 20 ー タ ー 15 設 置 拒 否 10 件 数 ( 5 万 件 ) 0 FY2023 実績値 FY2024 FY2025 FY2026 FY2027 FY2028 FY2029 FY2030 FY2031 FY2032 推定値 ※社会負担費用のうち、契約変更時の出向等の需要家によっては発生しない費用を除いた上で、 設置拒否をした需要家への対応として最低限発生する費用(工事及び検針費用等)を元に一般送配電事業者において試算を実施。 ※本試算は一定の仮定の上で実施したものであり、実際に発生する費用と一致しない場合がある。 9 オプトアウト制度の基本的な仕組み • オプトアウト制度を検討するに当たって検討するべき論点を以下のとおり整理した。 論点① オプトアウトを認める需要家の範囲 論点② オプトアウトの方法 論点③ 需要家に負担を求めないケースについて 論点④ 費用負担額の考え方 論点⑤ オプトアウト時の業務フロー 論点⑥ オプトアウト制度開始時期 10 論点①:オプトアウトを認める需要家の範囲 • 米国の一部の州や英国等では、健康被害やプライバシーへの懸念等を理由に、需要家が希望 した場合にオプトアウトを可能とする制度が整備されており、我が国においても同様の懸念 を持つ需要家が存在。 • 加えて、我が国においては、高圧以上であってもスマートメーターの設置拒否をしている需 要家が既に存在していることも踏まえ、オプトアウト制度は原則として全需要家が利用可能 とすることが適切ではないか。 • ただし、短期的に案件が増大すること等により一般送配電事業者のオプトアウト対応に関す る業務負荷の著しい増大を防止する観点から、一時的な電気の使用に限定される臨時接続送 電サービスについてはオプトアウトの対象外としてはどうか。 96.3% 第5回次世代スマートメーター制度検討会 11 論点②:オプトアウトの方法 • 需要家がスマートメーターのオプトアウトを希望した場合の具体的な対応策として、 ①旧型計器(誘導型等)への取り替え ②スマートメーターの通信部を外す という二通りの対応が選択肢となり得るが、現在は各一般送配電事業者の判断や計器の在庫 状況等により対応が統一されていない。 • 上記の対応については、 ➢ 主要な計器メーカーにおいて旧型計器の新規生産がなされていない※1こと ➢ 生産終了した計器を使用し続けることにより、適切な時期に計器の交換がなされず、計量 法違反(検定有効期間満了(以下、検満)を超過した計器の使用)に繋がること といった点を踏まえ、オプトアウト制度導入後については、②の対応に統一※2することとし てはどうか。 ※1一般送配電事業者による主要な計器メーカーへのヒアリング結果による。 ※2スマートメーターの仕様変更等が発生した場合には、通信部の取外しに限らずより効率的な方法に見直すこととする。 オプトアウト時の対応のイメージ ①:旧型計器への取り替え スマートメーター 旧型計器 (誘導型など) ②:SMの通信部外し スマートメーター 計量部 通信部 12 論点③:需要家に負担を求めないケースについて • 現状、通信部付きのスマートメーターが設置されていない事例は下記の4つの類型 が存在。 ① 工事困難箇所など一般送配電事業者の事情によりスマートメーターが未設置と なっている場合 ② 誘導型計器からスマートメーターへの取り替えを需要家が拒否し、旧型計器を 継続して取り付けている場合 ③ 誘導型計器からスマートメーターへの取り替えを実施し、その後、需要家希望 により再度誘導型計器を設置している場合 ④ 誘導型計器からスマートメーターへの取り替え時に、需要家の希望により通信 部を外し、または取替え後に通信部を外して設置している場合 • このうち、①のように一般送配電事業者側の事情によりスマートメーターの設置が 困難な場合については需要家負担を求めないこととしてはどうか。 13 論点④:費用負担額の考え方について(1) • 需要家がオプトアウトを希望した場合、一般送配電事業者において下記のような対応に関す るコストが計器毎※1に発生し、一定の仮定をおいて試算を行うとオプトアウト1件当たりの 追加コストは10年間で12万円~26万円程度※2となる。 • なお、オプトアウトを行った場合も通常時と同様に検満(最大10年)時には、通信部付きの 計器への取替えが必要となるため、検満前には改めてオプトアウトの意思表示を求める。 ※1双方向計器など複数契約を一つの計器で計量している場合が存在。 ※2オプトアウトへの対応に係る費用として特定可能な項目のみを考慮した試算 項目 検定有効期間内の発生頻度 費用特定の可否 試算に織り込んだ業務量 ①オプトアウトの申込受付処理 1回 可 1回 ②通信部取外し工事 1回 可 1回 ③検針 毎月 可 120回 請求方法による 可 1回 ④オプトアウトの料金請求 ⑤オプトアウト終了時の復元工事 ⑥検針のための移動 最大1回 否 (検満に伴う交換と同時に行う場合は復元工事は発 生しない。) (検満に伴う交換時との切り分け が困難) 毎月 否 (対象需要家だけの 移動費算定は困難) - - 14 ※送配電網協議会による試算 論点④:費用負担額の考え方について(2) • オプトアウト対応にかかる料金を請求する場合に考えられる方法は大きく2つ。 ①オプトアウトの対応に関して発生した需要家毎の実費に相当するコストを請求。 ②オプトアウトを希望する需要家への対応として共通して発生する最低限のコスト(実費の 一部)を元に設定した事務手数料として請求。 • 実費を請求する場合、請求の方法としては、工事等にかかる初期費用と検針等にかかる毎月 発生する費用をそれぞれ請求する形(案1)と検満(最大10年)までの費用を一括で請求す る形(案2)が想定され、事務手数料として請求する場合(案3)は制度申込時に一括して 請求する形が想定される。 • なお、いずれの案であっても、前頁の通り検満前には改めて意思表示を求め、オプトアウト の継続を希望する場合には、費用負担を求めることとなる。 案1 案2 請求の考え方 実費 実費 請求方法 初期費用+毎月 最大10年分の実費一括 事務手数料一括 請求等にかかる 事業者負担 毎月 制度申込時及び オプトアウト終了時 制度申込時のみ オプトアウト 中止時の対応 ランニング費用の請求停止 回収金額の余剰分を返還 ー 需要家が支払う 金額のイメージ 申込時:2,500円~9,500円程度 毎月:900円~2,500円程度 最大26万円程度 ※請求にかかる事業者の事務負担を考慮した 場合には増額の可能性あり 設定方法による ※送配電網協議会による システム構築費用を含まない試算 ※検定有効期間の残り期間等によって変動 案3 事務手数料 (実費の一部を元に設定) 15 論点④:費用負担額の考え方について(3) • 対象となる需要家の負担の平準化及び負担の公平性の観点では案1が望ましいと考えられるが、 案1を選択した場合、需要家に対し毎月請求が行なわれることとなり需要家にとって煩雑に なることに加え、一般送配電事業者等のシステム改修等に膨大なコストが発生し、オプトア ウトした需要家に求める負担額も大きくなることが想定される。 • 案2では、料金負担時の需要家の経済的負担が著しく大きくなる点や検満前にオプトアウトを 解消した場合の事務負担も大きくなるといった懸念が存在。 • 案3は、オプトアウトに係る費用の一部を託送料金を通じて一般の需要家が負担することとな るものの、オプトアウトした需要家の金銭的な負担と事業者の実務的な負担の軽減が可能。 • こうした各案の得失を総合的に勘案し案3としてはどうか。 案1 初期費用+毎月 一般送配電事業者等 の負担 オプトアウト需要家 の経済的な負担 オプトアウト需要家 以外の負担 案2 最大10年分一括 × × 管理のため大幅なシステム改修が発生 加えて毎月の請求負担有 小売事業者の事務負担も発生する可能性 管理のため大幅なシステム改修が発生 途中解約時の返金対応等の制度が複雑化 小売事業者の事務負担も発生する可能性 △ △ 毎月一定額の負担 事務コストが増えることで総額も増加 一回の支払いが数十万円程度 となる可能性あり ○ ○ 原則負担無し ※上記のシステム構築費用の負担整理が必要 原則負担無し ※上記のシステム構築費用の負担整理が必要 案3 事務手数料一括 ○ 途中解約時の返金対応等が発生しないことから 実務的には最も簡素な仕組み ○ 支払い額の軽減が可能 △ 費用の一部を託送料金で負担 16 論点④:費用負担額の考え方について(4) • オプトアウトに係る費用(下表)のうち、⑤と⑥については、対象となるコストの特定が困 難であるため、事務手数料の設定に当たっては最低限のコストとして①~④を勘案して設定 することが妥当ではないか。 • また、検針については、オプトアウト中は毎月発生するコストであり、基本ケースとしてど の程度の期間分の費用を織り込むことが妥当であるかが論点となるが、賃貸における平均入 居期間は、家族世帯と比較して短期間の使用となる単身世帯であっても3年程度となるため、 検針準備・現地検針に関しては最低限のコストとして3年分を織り込む形ではどうか。 • 上記の前提で各社の人件費と対応実績等を勘案し想定費用を試算すると、44,000円~84,000 円程度となるため、各社一律で計器毎に44,000円の料金設定※としてはどうか。 ※エスカレーションやオプトアウト需要家の増加など、相当程度の環境変化があった場合には、必要に応じて料金設定を見直すこととする。 ※検満前には改めて意思表示を求め、オプトアウトの継続を希望する場合には、再度44,000円の費用負担を求めることとなる。 ※上記の料金設定とした上で9頁の3つのパターンで設置拒否件数が増加した場合、一般負担となり得る費用は約60~230億円となる。 オプトアウトに係るコスト(再掲) 項目 ①申込受付処理 ②通信部外し工事 ③検針 ④料金請求 ⑤復元工事 ⑥検針のための移動 発生頻度 1回 1回 毎月 1回 1回 毎月 費用特定の可否 可 可 可 可 賃貸の平均入居期間(全国) 否 否 ※検満に伴う交換との 切分けが困難 ※対象需要家だけの 移動費算定は困難 日本賃貸住宅管理協会「日管協短観」より 2021年度 2022年度 2023年度 単身世帯 3年3ヶ月 3年3ヶ月 3年3ヶ月 家族世帯 5年1ヶ月 5年2ヶ月 5年3ヶ月 17 論点⑤:オプトアウト時の業務フローについて • 需要家がオプトアウトを希望した場合の取り扱いや業務フローについては、小売電気事業者 等の負担を鑑み、既存の工事費負担金の扱いや請求フローと同等とする形で、事前に小売電 気事業者等の受付の可否等の確認を行った上で※、需要家への費用請求に当たっては、一般送 配電事業者が需要家に直接請求書等を送付することとしてはどうか。 • また、支払いに関するトラブルを回避する観点から、オプトアウトに係る費用は着工前に支 払う形とし、オプトアウトに係る工事は支払確認後に実施することとしてはどうか。 ※需要家が離島等供給やLR供給を受けている場合や、対象となる地点が送配電買取のFIT売電を行っている場合には小売電気事業者等への確認等は発生しない。 業務フローのイメージ 申込受付 需 要 家 請 求 オプトアウ ト希望 電気料金 変更協議 請求情報 連携 入金確認 支払対応 ① 成 立 支払い な し 工 事 工事完了 工事未着手 工事予定日 連絡受領 支払い 支払い 電気料金算定 上の受付可否 確認 小 売 不可 可 料金メニュー 変更・小売 廃止手続等 小売へ 情報連携 小売へ 情報連携 小売承諾の 連絡 承諾連絡 ② 一 送 制度概要 説明 工事予定日 連絡 ③ 小売へ確認 申込受付 請求情報確認 請求書発行 不成立 連絡 支払確認 工事発注 工事準備 18 論点⑥:オプトアウト制度の開始時期と経過措置 • オプトアウト制度の導入に当たっては、需要家に追加の費用負担等が発生することや既にオ プトアウト状態となっている需要家が存在することから、一定の経過措置期間を設けること が必要ではないか。 • 上記の観点を踏まえると、需要家への十分な周知や需要家によるオプトアウトの是非の検討、 一般送配電事業者・小売電気事業者の体制構築、既にオプトアウト状態にある需要家がス マートメーターの設置を希望した場合の取替え工事にかかる時間等を確保する観点から、オ プトアウト制度の開始時期は2028年4月1日としてはどうか。 • なお、2028年4月1日時点で、オプトアウト状態にある需要家に対しては、負担の公平性の 観点から、オプトアウトを行った時期に関わらず、事務手数料の負担を求めることとし、未 払いの場合には通信部の復元工事を行うこととしてはどうか。(既にオプトアウト状態にあ る需要家であっても、2028年4月1日までにオプトアウトを中止している需要家に対しては、 事務手数料の負担を求めない。) オプトアウト制度導入にかかるスケジュールイメージ 2024fy 2025fy 2026fy 一送等による周知等 2027fy 2028fy 2028年4月より導入 19 各論点のまとめ • オプトアウト制度の導入に向け、下記の方向性に留意した上で、オプトアウトに関 する具体的なルール等については各一般送配電事業者の託送供給等約款等において 明確化する。 論点① オプトアウトの対象となる需要家の範 囲 (臨時接続送電サービスの利用者を除く) 論点② オプトアウトの方法 スマートメーターの通信部外し 論点③ 需要家に負担を求めないケース 一般送配電事業者の事情による場合は除外 論点④ 費用負担額の考え方 最低限のコストを元に事務手数料として 44,000円を請求 論点⑤ オプトアウト時の業務フロー 小売電気事業者に確認の上、一般送配電事 業者が需要家に請求書等を送付。支払確認 後にオプトアウトに係る工事等を実施 論点⑥ オプトアウト制度開始時期 2028年4月1日 全需要家 20 今後のスケジュール • オプトアウト制度の導入に向けた今後のスケジュールは以下の通り。 オプトアウト制度導入にかかるスケジュールのイメージ ○ 2025年3月以降 各社HP等による需要家への周知 ○ 2028年4月1日 オプトアウトの制度開始 ※各一般送配電事業者においては、上記のスケジュールに沿って託送供給等約款の変更認可申請や離島等供給約 款等の改訂を実施し、変更認可申請等以前にも需要家に対して十分な周知を行うこととする。 21

資料6

エネルギー基本計画 令和7年2月 目 次 Ⅰ.はじめに ·························································· 3 Ⅱ.東京電力福島第一原子力発電所事故後の歩み ·························· 6 1.総論 ···························································· 6 2.福島復興への取組状況 ············································ 6 3.今後の福島復興への取組 ·········································· 8 Ⅲ.第6次エネルギー基本計画以降の状況変化 ·························· 10 1.総論 ·························································· 10 2.ロシアによるウクライナ侵略等による経済安全保障上の要請の高まり ·························································· 10 3.DXやGXなどの進展に伴う電力需要増加の可能性 ················ 11 4.気候変動の野心維持と現実的かつ多様な対応 ······················ 12 5.エネルギー政策と産業政策の一体化 ······························ 12 Ⅳ.エネルギー政策の基本的視点(S+3E) ·························· 14 1.総論 ·························································· 14 2.安全性の確保(Safety) ········································ 14 3.エネルギー安定供給(Energy Security) ························· 14 4.経済効率性(Economic Efficiency) ····························· 15 5.環境適合性(Environment) ····································· 15 Ⅴ.2040年に向けた政策の方向性 ·································· 17 1.総論 ·························································· 17 (1)エネルギー政策の基本的考え方 (2)GX2040ビジョンとの関係 2.需要側の省エネルギー・非化石転換 ······························ 19 (1)基本的考え方 (2)省エネルギー (3)非化石転換 (4)産業・業務・家庭・運輸部門に求められる取組 ①産業 ②業務・家庭 ③運輸 3.脱炭素電源の拡大と系統整備 ···································· 24 (1)基本的考え方 (2)再生可能エネルギー ①総論 ②太陽光発電 1 ③風力発電 ④地熱発電 ⑤水力発電 ⑥バイオマス発電 (3)原子力発電 (4)火力発電とその脱炭素化 ①総論 ②LNG火力発電 ③石炭火力発電 ④石油等火力発電 (5)次世代電力ネットワークの構築 ①総論 ②電力ネットワーク(系統)の増強 ③系統・需給運用の高度化 4.次世代エネルギーの確保/供給体制 ······························ 49 (1)基本的考え方 (2)水素 (3)アンモニア (4)合成メタン等 (5)バイオ燃料、合成燃料 5.化石資源の確保/供給体制 ······································ 53 (1)基本的考え方 (2)天然ガス (3)石油(備蓄/サービスステーション(SS)等を含む) (4)LPガス (5)石炭 6.CO 2 回収・有効利用・貯留 ····································· 60 7.重要鉱物の確保 ················································ 63 8.エネルギーシステム改革 ········································ 66 9.国際協力と国際協調 ············································ 71 Ⅵ.カーボンニュートラル実現に向けたイノベーション ·················· 74 1.総論 ·························································· 74 2.各論 ·························································· 74 Ⅶ.国民各層とのコミュニケーション ·································· 82 1.総論 ·························································· 82 2.エネルギーに関する国民各層の理解促進 ·························· 82 3.政策立案プロセスの透明化と双方向的なコミュニケーションの充実 ·· 83 2 Ⅰ.はじめに 我が国は、すぐに使える資源に乏しく、国土を山と深い海に囲まれるなどの地 理的制約を抱えており、過去に幾度もエネルギー安定供給の危機に見舞われ、そ の都度、英知を結集してエネルギー安定供給の確保に取り組んできた。 1973年の石油危機に際しては、化石燃料の燃料種や調達国の多角化を進め ることに加え、ムーンライト計画などを通じた省エネルギーの推進に加え、サン シャイン計画による太陽光や、原子力、LNGなどの石油代替エネルギー源の開 発・活用を進め、その後も、バランスの取れたエネルギー供給体制の構築を目指 して取組を進めてきた。 しかし、2011年の東日本大震災及び東京電力福島第一原子力発電所事故以 降、原子力発電所の多くが停止した結果、化石燃料に対する依存が高まり、その 大宗を海外からの輸入に頼るという、エネルギー需給構造上の脆弱性が再び顕在 化することとなった。 こうした中、2022年2月には、ロシアによるウクライナ侵略が発生し、我 が国を取り巻くエネルギー情勢は一変した。エネルギー分野におけるインフレー ションが世界的に顕著となり、我が国においても電力需給ひっ迫やエネルギー価 格の高騰が生じるなど、石油危機以来のエネルギー危機が危惧される事態となっ た。翌年には、我が国が原油の9割以上を依存する中東地域における軍事的緊張 が高まり、化石燃料の調達に関する不確実性が上昇するなど、我が国が抱えるエ ネルギー需給構造上の課題が改めて浮き彫りとなった。 こうした課題は我が国の貿易収支にも大きな影響を与えている。2023年に は、自動車、半導体製造装置などの輸出で得た金額の大宗を、原油や天然ガスな どの鉱物性燃料の輸入に充てており、その総額は約26兆円にまで達している。 また、足下ではデジタル分野におけるサービス収支も悪化しており、将来の経済 成長を牽引するデジタル分野において赤字が増加する事態に陥れば、我が国の更 なる国富の流出は避けがたく、データセンターを始めとするデジタル分野の国内 投資の確保に向けても、エネルギー政策が重要となる。 エネルギーは国民生活や経済活動の基盤となるものであり、エネルギー安定供 給が損なわれることは決してあってはならない。化石燃料への過度な依存から脱 却し、エネルギー危機にも耐え得るエネルギー需給構造への転換を進めていくた めにも、我が国が有する技術や英知を再び結集させ、エネルギー安全保障に重点 を置いた政策の再構築を進めることが強く求められている。 世界的な異常気象や大規模な自然災害が発生する中、世界では多くの国・地域 が期限付きのカーボンニュートラル目標 1を表明し、脱炭素に向けた機運は高い状 態にある。こうした中、我が国では、エネルギー安定供給、経済成長、脱炭素の 1 2050年カーボンニュートラル宣言以降、閣議決定文書において「カーボンニュートラ ル」との用語を用いる例が多数であることから、本計画においても、原則は「カーボンニュ ートラル」との用語を用いることとする。なお、国際的な文脈では、「ネット・ゼロ」と表 現することが一般的であるが、両者の基本的な意味は同じという認識の下、「カーボンニュ ートラル」との用語を用いている。 3 同時実現を掲げ、2023年5月にGX推進法 2とGX脱炭素電源法 3、翌年5月に 水素社会推進法 4とCCS事業法 5 を成立させるとともに、GX推進戦略 6を策定し てグリーントランスフォーメーション(GX)実現に向けた取組の方向性を示す など、GX実現に向けた対応を強化させてきた。こうした取組を通じて、GXを 推進していくことは、化石燃料への過度な依存からの脱却に貢献するものであり、 中長期的なエネルギー安定供給の確保にもつながるものである。 欧米各国では、脱炭素に向けた野心的な目標を掲げる国も少なくないが、一部 では、経済性や安定供給との間でバランスを取る現実路線への転換も進めており、 目標と現実の乖離が拡大する傾向もみられる。我が国では、温室効果ガス排出・ 吸収量について、2050年カーボンニュートラルの実現に向け、これまでのと ころオントラックで排出削減を進めており、気候変動問題という人類共通の課題 に対して国家を挙げて対応する強い決意と行動を示している。 我が国では、人口の減少や省エネルギーの浸透などにより、2007年度以降、 電力需要が減少傾向にあったが、今後、デジタルトランスフォーメーション(D X)やGXの進展により、電力需要が増加に転じることが見込まれている。 生成AIの登場により拡大が見込まれるデータセンター、重要な戦略物資であ る半導体、鉄鋼や化学などの素材産業といった将来の成長産業は、いずれも国際 的に遜色ない価格で安定した品質の脱炭素エネルギー供給を必要としている。 電力需要の増加と脱炭素電源を求める動きは世界中で顕著なものとなっている。 特に、米国主要IT企業は、データセンター等の稼働に必要となる脱炭素電源が 成長の制約要因とならぬよう、再生可能エネルギーの確保に加え、次世代革新炉 や次世代型地熱発電などの革新技術への投資拡大を戦略的かつスピーディに進め ている。また、欧州においても、再生可能エネルギー拡大を進めており、欧州委 員会が2024年9月に公表したレポートによると、風力発電がガス火力発電を 抜き、再生可能エネルギーは2024年上半期の欧州の発電量の半分を占めるに 至った。原子力については、スウェーデンで原子力発電所の新設解禁への方針転 換や東欧における新設プロジェクトなど、原子力発電の拡大に向けた具体的な動 きが見られる。 世界では、脱炭素を経済成長に結実させるべく、脱炭素分野での投資を加速さ せるダイナミックな変化が起こっている中、我が国が産業を自国に維持・確保し 経済成長できるかは、脱炭素電源を十分確保できるかにかかっている。脱炭素電 源が十分確保できなければ、国内投資や経済成長の機会を逸することとなり、雇 用の確保や賃上げも困難となり、国民生活にも大きな影響を及ぼすこととなる。 2 脱炭素成長型経済構造への円滑な移行の推進に関する法律(令和5年法律第32号)。 脱炭素社会の実現に向けた電気供給体制の確立を図るための電気事業法等の一部を改正す る法律(令和5年法律第44号)。 4 脱炭素成長型経済構造への円滑な移行のための低炭素水素等の供給及び利用の促進に関す る法律(令和6年法律第37号)。 5 二酸化炭素の貯留事業に関する法律(令和6年法律第38号)。 6 脱炭素成長型経済構造移行推進戦略(2023年7月閣議決定)。 4 3 このためにも、脱炭素電源の拡大を図り、最大限活用していくことが必要不可欠 である。 特に、我が国の産業立地競争力の観点からは、国際的に遜色のない価格で安定 した品質のエネルギー供給が不可欠であり、GX2040ビジョンで示された方 針を踏まえ、エネルギー政策と経済政策を一体的に捉えながら、国が前面に立っ て脱炭素エネルギーの確保に向けた事業環境整備を進めていく必要がある。 こうした強い危機感の下、第7次エネルギー基本計画では、エネルギー安定供 給の確保に向けた投資を促進する観点から、2040年やその先のカーボンニュ ートラル実現に向けたエネルギー需給構造を視野に入れつつ、S+3Eの原則の 下、今後取り組むべき政策課題や対応の方向性をまとめている。 我が国が将来にわたって豊かな国として存続し、全ての国民が希望をもって暮 らせる社会を実現するためには、エネルギー安定供給、経済成長、脱炭素を同時 に実現していく必要がある。本計画が、「GX2040ビジョン」、「地球温暖化 対策計画」と一体的に活用されるとともに、我が国のエネルギー政策の将来像を 示し、エネルギー安定供給を将来にわたって確かなものとしていくものとなるよ う、ここに新たなエネルギー基本計画を示すこととする。 5 Ⅱ.東京電力福島第一原子力発電所事故後の歩み 1.総論 東日本大震災及び東京電力福島第一原子力発電所事故からまもなく14年が経 過するが、東京電力福島第一原子力発電所事故の経験、反省と教訓を肝に銘じて、 エネルギー政策を進めていくことが、エネルギー政策の原点である。 福島の復興なくして東北の復興なし、東北の復興なくして日本の再生なし。福 島の復興及び再生は、原子力政策を推進してきた国の社会的な責任を踏まえて行 われるべきものである。復興・再生に向けて、技術的に難易度の高い作業が見込 まれる廃炉や除去土壌等の最終処分に向けた取組など、これからが正念場と言う べき課題に直面しており、中長期的な対応が必要であるところ、事故を風化させ るようなことは決してあってはならない。事故の教訓と反省を忘れることなく、 今なお避難生活を強いられている被災者の方々の心の痛みにしっかりと向き合い、 現場主義を徹底しながら、国が前面に立ち、福島の復興に最後まで取り組んでい く。 東京電力福島第一原子力発電所事故を経験した我が国としては、前述した我が 国を取り巻く情勢変化も踏まえ、再生可能エネルギーを主力電源として最大限導 入する。 その上で、今後も原子力を活用し続ける上では、安全性の確保を最優先とし、 「安全神話」に陥って悲惨な事態を防ぐことができなかったという反省を一時た りとも忘れてはならない。 2.福島復興への取組状況 (1)東京電力福島第一原子力発電所の廃炉:オンサイト 福島復興の大前提である東京電力福島第一原子力発電所の廃炉は、世界にも前 例のない困難な事業である。事業者任せにせず、国が前面に立ち、 「東京電力ホー ルディングス(株)福島第一原子力発電所の廃止措置等に向けた中長期ロードマ ップ」(2019年12月 廃炉・汚染水・処理水対策関係閣僚等会議決定。以下 「中長期ロードマップ」という。)に基づき、国内外の叡智を結集し、一つ一つの 対策を安全かつ着実に履行する不退転の決意を持って取り組んでいる。 現行の中長期ロードマップでは、改めてリスクの早期低減・安全確保を最優先 に進めるべく、 「復興と廃炉の両立」を大原則として位置付けた。同原則の下、凍 土壁等の対策により、汚染水発生量は大幅に減少した 7。使用済燃料プールからの 燃料取出しは、3号機と4号機で全て完了した。2024年9月の2号機におけ る燃料デブリの試験的取出しの着手をもって、中長期ロードマップにおける、燃 料デブリ取出し開始から廃止措置終了までの期間である「第3期」に移行した。 7 540㎥/日(2014年5月)から80㎥/日(2023年度平均)まで減少。 6 東京電力福島第一原子力発電所の廃炉は先を見通すことの困難な作業であり、対 策の進捗状況や新たに判明した現場状況、燃料デブリの性状分析等から得られる 新たな知見、研究開発の動向等に加え、これらを加味した廃炉作業の工法の成立 性の検討状況なども踏まえて適切に工程を見直し、廃炉の完遂に向けて、安全か つ着実に対策を進めていく。ALPS処理水については、2023年8月の第6 回廃炉・汚染水・処理水対策関係閣僚等会議、第6回ALPS処理水の処分に関 する基本方針の着実な実行に向けた関係閣僚等会議(合同開催)を経て、同月2 4日からALPS処理水の海洋放出を開始した。モニタリングによりALPS処 理水の安全性が確認されているほか、国際原子力機関(IAEA)による評価に より、海洋放出が安全に行われていることが確認されている。 (2)福島の復興・再生:オフサイト 2020年3月までに帰還困難区域を除く全ての地域が避難指示解除に至り、 また、帰還困難区域についても、2023年11月までに全ての特定復興再生拠 点区域の避難指示が解除されている。避難指示の対象人口は、2013年8月の 8.1万人から2024年4月には、おおむね9割減の8千人まで縮小した。一 方で、まだ復興のスタートラインに立ったばかりの地域もある。帰還困難区域の うち、特定復興再生拠点区域外については、2020年代をかけて、帰還意向の ある住民が帰還できるよう、2023年6月に特定帰還居住区域制度が創設され た。2024年4月までに大熊町、双葉町、浪江町及び富岡町で特定帰還居住区 域復興再生計画が認定され、除染やインフラ整備等の避難指示解除に向けた取組 が始まっている。 また、避難指示が解除された地域では、被災事業者の事業・なりわいの再建や、 福島イノベーション・コースト構想等を通じた新産業の創出に向けた取組を進め てきた。2019年12月には「福島イノベーション・コースト構想を基軸とし た産業発展の青写真」(以下「「青写真」」という。)を策定し、同構想の更なる具 体化を進め、浜通り地域等が目指していく自立的・持続的な産業発展の姿を示し た。2024年6月には、同構想を更に発展させていくための、検討の論点を提 示した。 これまで、官民合同チームの個別支援等を通じて、2024年12月末時点で 約2,600者が事業再開を果たしたほか、福島ロボットテストフィールド等の 強みを活かした実用化開発等を通じて約80社のロボット関連企業が集積した。 2023年4月には福島イノベーション・コースト構想の中核・司令塔となる福 島国際研究教育機構(F-REI)が設立され、研究開発成果の産業化や、これ を担う人材の育成・確保に取り組んでいる。また、2022年5月に取りまとめ た「交流人口拡大アクションプラン」に基づき、交流人口・関係人口拡大にも取 り組んでいる。また、 「福島新エネ社会構想」に基づき、木質バイオマス発電設備 や、共用送電線の整備等が進んでいるところ、再生可能エネルギーの導入拡大や 7 水素の社会実装への取組を更に加速すべく、2024年9月に「福島新エネ社会 構想加速化プラン2.0」を策定した。 3.今後の福島復興への取組 福島の復興・再生は政府の最重要課題である。福島が復興を成し遂げるその日 まで、東京電力福島第一原子力発電所の廃炉、帰還困難区域の避難指示解除に向 けた取組、自立的な産業発展に向けた取組など、更なる難題を一つずつ解決して いく。 東京電力福島第一原子力発電所の廃炉については、周辺の住民の帰還を一層進める 上で重要であり、1号機及び2号機の使用済燃料プールからの燃料取出しや、燃料デ ブリ取出し等、難易度が極めて高い取組を安全確保に万全を期して行っていく必要が ある。そのため、これまで以上に、「復興と廃炉の両立」を意識した対応を行ってい く。その際、国は中長期ロードマップの下、技術的な難易度が高く、国が前面に立つ 必要がある研究開発については、引き続き必要な支援を実施する。また、廃炉に関す る技術や知見については、多国間協力の枠組み、米・英・仏の間での二国間協力の枠 組み等を通じて世界と共有し、各国の原子力施設における安全性の向上や防災機能の 強化に貢献するとともに、技術協力を通じて廃炉の完遂に向けて世界の叡智を結集す る観点から、廃炉に関する技術協力を進めていく。加えて、国立研究開発法人日本原 子力研究開発機構(JAEA)の大熊分析・研究センターの拠点整備を着実に進め、 同センター、楢葉遠隔技術開発センター及び廃炉環境国際共同研究センターにおいて 廃炉に関する技術基盤を確立し研究開発を推進するとともに、長期にわたる取組が持 続的に進められるよう、廃炉関連産業の集積促進や、分析人材等の廃炉を担う人材の 育成に取り組んでいく。特に、廃炉事業内容を具体化して地元企業に説明等を行うこ とや、地元企業の技術力を向上させること等を通じて、地元企業の廃炉関連産業への 積極的な参画を促進し、廃炉にまつわる経済効果を周辺地域に浸透させていく。加え て、廃炉現場の視察や地域住民との座談会等の機会を通して、双方向のコミュニケー ションを丁寧に行うことで、地域の理解を得ながら進めていく。また、廃炉の実施責 任を有する東京電力が廃炉を確実に実施するため、災害に対応し電力の安定供給を確 保する観点から、電力ネットワークの強靱化等を進めていく中でも、必要な資金の捻 出に支障を来すことのないよう、規制料金下にある送配電事業における合理化分を、 引き続き確実に廃炉に要する資金に充てることを可能とする対応を行う。 さらに、東京電力においては、これから本格化させていく燃料デブリの取出し等に あたり、国が認定した特別事業計画に基づいて取り組んできた非連続の経営改革や企 業価値の向上に向けた取組を一層進め、福島への責任を果たしていく必要がある。 ALPS処理水の海洋放出については、引き続き、安全確保に万全を期し、IAE Aによる評価も含め、国内外に向けて透明性高くわかりやすい情報発信に努めていく。 一部の国・地域による輸入規制に対しては、科学的根拠に基づかない措置の即時撤廃 を求めていくとともに、政府としてALPS処理水の処分が完了するまで全責任を持 って取り組むという方針を堅持し、全国の水産業支援に万全を期していく。 8 帰還困難区域については、たとえ長い年月を要するとしても、将来的に帰還困難区 域の全てを避難指示解除し、復興・再生に責任を持って取り組むとの決意の下、政府 一丸となって、帰還困難区域の1日も早い復興を目指して取り組むこととしている。 特定復興再生拠点区域については、2023年11月までに避難指示が全て解除され たところであり、今後も引き続き、住まい、買い物、医療・介護、子育て、教育等の 生活環境整備を進める。帰還困難区域における特定復興再生拠点区域外については、 まずは、2020年代をかけて、帰還意向のある住民が帰還できるよう、特定帰還居 住区域の除染やインフラ整備等、避難指示解除に向けた取組を進め、併せて住民への 帰還意向の確認にも丁寧に取り組む。また、特定復興再生拠点区域外において、地元 自治体の土地活用への強い意向がある場合に避難指示解除を可能とする仕組みを措 置しており、引き続き、各自治体の意向を十分に尊重し、運用していく。併せて、帰 還困難区域においても、今後、バリケード等物理的な防護措置を実施しない立入規制 の緩和を行うことや森林整備を始めとする活動の再開、それに伴うバイオマス発電施 設の活用も含め、地域のニーズを踏まえた活動の在り方を検討していく。残された土 地・家屋等の扱いについては、地元自治体と協議を重ねつつ、引き続き検討を進める。 中間貯蔵施設への除去土壌等の輸送等を着実に実施していくとともに、福島県内の 除去土壌等の県外最終処分に向けて、令和6年12月に設置された福島県内除去土壌 等の県外最終処分の実現に向けた再生利用等推進会議の下、除去土壌の再生利用の推 進及び全国での理解醸成活動を行う等、福島の環境再生に引き続き全力で取り組んで いく。 「福島新エネ社会構想」については、2024年9月に策定した「福島新エネ社会 構想加速化プラン2.0」に基づき、再生可能エネルギーの導入拡大や水素の社会実 装に向けた取組を更に加速していく。2024年7月に完成した総延長約86km の 共用送電線に、順次、風力発電所等を連系するとともに、分散型再生可能エネルギー システムやペロブスカイト太陽電池の先行活用等を推進する。福島での水素サプライ チェーン構築に向けて、2024年10月23日に施行された水素社会推進法を含む 様々な支援・制度の活用や需要・供給の両面からコスト等の課題の解決策を関係省庁 において連携して検討し、福島水素エネルギー研究フィールド(FH2R)の民間主 体による実用化、水素モビリティの利用拡大、産業集積の実現等の取組を進める。 浜通り地域等の自立的・持続的な産業発展に向けて、全ての前提となる「生活者の 日々の暮らし」を再建し持続させ、帰還・移住者に加え、個人・企業を始めとする交 流人口・関係人口を拡大しつつ、コミュニティの再構築や地域の賑わい・イノベーシ ョンの創出を行い、 「地域の稼ぎ」につなげる。社会課題解決の先進地として生まれ変 わるストーリーを発信し、脈々と人・企業が集い、イノベーションが創出される好循 環を生み出す。今後改定する「青写真」において、こうした取組の方向性を盛り込み、 自立的・持続的な経済発展の実現に向けて全力を尽くしていく。 9 Ⅲ.第6次エネルギー基本計画以降の状況変化 1.総論 第6次エネルギー基本計画が2021年10月に閣議決定されて以降、わずか3年 あまりの間に、我が国を取り巻くエネルギーに関する情勢は大きく変化した。 エネルギーに関しては、ロシアによるウクライナ侵略や中東情勢の緊迫化などを受 けたエネルギー安全保障の要請の高まりに加え、国内ではDXやGXの進展による電 力需要増加が見込まれる状況となっている。 脱炭素に関しては、欧米各国を中心に、2050年カーボンニュートラル実現に向 けた野心的な目標を堅持しながら、エネルギーの量・価格両面での不安定化を受け、 多様かつ現実的な取組を採用する傾向が見られる。特に、主要国では、気候変動対策 を産業政策と連動させながら、国内産業競争力を強化するための取組を強化するなど、 気候変動対策としてのエネルギー構造転換を産業政策と一体化させながら取り組ん でいく傾向が顕著となっている。こうしたGXを推進していくことは、化石燃料への 過度な依存からの脱却に貢献するものであり、中長期的なエネルギー安定供給の確保 にもつながるものである。 第7次エネルギー基本計画では、こうした国内外の情勢変化を十分踏まえた上で、 エネルギー政策の検討を進めていく必要がある。 2.ロシアによるウクライナ侵略等による経済安全保障上の要請の高まり 2021年頃から、新型コロナ禍からの経済回復や、寒波の到来等によるエネルギ ー需要の増加等が重なり、エネルギー価格が上昇を開始していたが、2022年2月 に、ロシアがウクライナ侵略を開始し、世界のエネルギー情勢は一変した。 当時、ロシアに対するエネルギー依存度を高めていた欧州各国を中心に、ロシア産 ガスから脱却する方針を示したことにより、短期的なエネルギー需給バランスが大き く崩れ、天然ガスは供給不足に陥り、その価格は、欧州のみならず、アジアのLNG 市場においても史上最高値を付けることとなった。 こうした中、エネルギー分野のインフレーションが契機となり、食品など様々な分 野において国際的なインフレーションが発生した。我が国においても、電力需給ひっ 迫やエネルギー価格の高騰が生じるなど、石油危機以来のエネルギー危機が危惧され る極めて緊迫した事態に直面することとなった。このような危機に直面し、我が国の エネルギー供給体制が脆弱であり、エネルギー安全保障上の課題を抱えたものである ことを再認識させられることとなった。 足下では、イスラエル・パレスチナ情勢の悪化やイスラエル・イラン間の軍事的緊 張関係の高まりなどにより、中東情勢が緊迫化している。原油の約9割以上を中東か らの輸入に依存する我が国にとって、チョークポイントが集結する中東地域の情勢悪 化はエネルギー安全保障に直結し、我が国の産業競争力に大きな影響を与えかねない 状況となっている。 また、2015年の国連気候変動枠組条約第21回締約国会議(COP21)にお 10 いてパリ協定が採択されたことを契機に、世界的な脱炭素の潮流が拡大している。こ うした中、化石燃料の上流投資が減少傾向となる一方で、アジア諸国の経済成長など によるエネルギー需要が増加しており、需給の不確実性が高まっている。また、再生 可能エネルギーや原子力などのクリーンエネルギーに対する投資は増加傾向にある 一方、化石燃料に対する投資は減少傾向にある。こうした状況の変化により、今後、 化石燃料価格のボラティリティが大きく上昇する可能性がある。 すぐに使える資源に乏しく、国土を山と深い海に囲まれ、地理的制約のある我が国 においては、エネルギー安定供給の確保は、いつの時代においても最優先課題である。 国民生活や経済活動の根幹となるエネルギー供給が質・量の両面において途切れるこ とがないよう、エネルギー安全保障の確保に向けて万全を尽くす必要がある。 3.DXやGXなどの進展に伴う電力需要増加の可能性 世界では、DXやGXなどの進展に伴う電力需要増加が見込まれている。 2024年10月に公表された国際エネルギー機関(IEA)の「World Energy Outlook2024」では、世界の電力需要が、STEPS(公表政策シナリオ:Stated Policies Scenario)において、2023年から2035年にかけて年率約3%で増 加すると予想されており、電力需要の主な変動要因として、データセンター需要、平 均気温の上昇、電気機器の省エネルギー、EV需要などが挙げられている。 将来の電力需要については、我が国においても同様の傾向にある。電力広域的運営 推進機関が2025年1月に公表した「全国及び供給区域ごとの需要想定」(202 5年度)では、2023年度までは人口減少や節電・省エネルギーなどにより電力需 要が減少傾向にあったが、2024年度以降は、節電・省エネルギーなどの影響は継 続しつつも、経済成長及びデータセンター・半導体工場の新増設に伴う需要増加によ り、電力需要が増加に転じ、2034年度にかけて電力需要が増加すると想定してい る。 こうした将来の電力需要増加への対応には、最先端半導体や光電融合技術などの最 先端の情報処理技術や、それを支える液体冷却技術などを用いる最先端の付帯設備を 活用することにより、データセンターのエネルギー効率の改善に向けた取組を強化す ることが重要であり、既にデータセンターごとのエネルギー使用量や効率の実績の情 報公開や規制を導入している国も存在する。 今後、高炉から電炉への転換などのGXの進展に伴う電化や、生成AIの普及拡大 に伴うデータセンターや半導体工場などの増加により、大幅な効率改善を見込んだと しても、将来の電力需要については増加する可能性が高いと考えられる。現時点にお いて、将来の電力需要を精緻に予想することは困難であるが、将来の電力需要増加の 可能性がある程度見込まれる以上、そうした場合においても必要となる脱炭素電源の 供給が確保されるように万全の備えを行うことが重要となる。 特に、将来の電力需要の増加に対しては、脱炭素電源を拡大することで対応する必 要があるところ、十分な脱炭素電源が確保できなかったが故に、国内においてデータ センターや半導体工場などの投資機会が失われ、我が国の経済成長や産業競争力強化 の機会が失われることは、決してあってはならない。また、足下では、化石燃料輸入 11 に伴う貿易赤字の悪化に加え、デジタル収支の悪化も拡大しており、我が国の国富を 維持し、経済安全保障を確保するためにも、国内で必要なデータセンター等の投資が 行われる必要がある。 4.気候変動の野心維持と現実的かつ多様な対応 国際エネルギー情勢の変化を受け、欧米各国を中心に、野心的な脱炭素目標を維持 した上で、エネルギー安定供給を確保するための現実的な取組が進められている。 気候変動問題に関しては、欧州委員会の「REPowerEU」計画に代表される ように、欧州各国では、ウクライナ侵略以降、ロシアからのエネルギー依存の脱却を 目指して、再生可能エネルギーの導入・省エネルギーの強化や、原子力や水素などの エネルギー供給源の多様化を進めるとともに、2024年2月には、欧州委員会が、 欧州科学諮問機関の助言に沿って、2040年までに温室効果ガス排出量を1990 年比で90%削減する非常に野心的な脱炭素に関する提案を行い、現在検討が行われ ている。 同時に、欧米各国では、エネルギー安定供給の確保に向けて現実的な取組も進めて いる。ウクライナ侵略以降、欧州各国が天然ガス貯蔵を進める中、世界最大のLNG 輸出国である米国は欧州に対するLNG輸出を強化している。また、2023年11 月から開催されたCOP28では、2030年までに再生可能エネルギー設備容量を 世界全体で3倍、エネルギー効率の改善率を世界平均で2倍へ拡大するといった野心 的な取組に加え、原子力、排出削減が困難な分野でのCO2回収・有効利用・貯留な どの低減・除去技術、低炭素水素製造を含む、排出ゼロ及び低排出技術を加速させる との記載が決定文書に盛り込まれるなど、カーボンニュートラル実現に向けてあらゆ る技術を活用していく方向性が示されている。 このように、主要国では、2050年カーボンニュートラル実現に向けた野心的な 目標を堅持しながらも、各国の置かれた固有の状況を踏まえ、経済性やエネルギー安 定供給との間でバランスを取る現実路線へ転換を進めており、野心的な脱炭素目標と 現実の乖離が拡大する傾向もみられる。 こうした中、脱炭素に向けたアプローチについて、2023年5月に開催されたG 7広島サミットにおいて、エネルギー安全保障、気候危機、地政学的リスクに一体的 に対応し、各国の事情に応じた多様な道筋を認めつつ、ネット・ゼロ実現という共通 のゴールを目指す方針が明記された。この方針は、2024年6月に開催されたG7 プーリアサミットでも継承されており、アジア・ゼロエミッション共同体(AZEC) においても、「AZEC原則」としてパートナー国との間で合意されている。 5.エネルギー政策と産業政策の一体化 欧米各国を中心に、世界各国では、気候変動対策と産業政策を連動させ、カーボン ニュートラル実現に向けた国内外のエネルギー転換を自国の産業競争力強化につな げるための政策を強化している。 12 米国では、2022年8月に成立したインフレ削減法8において、エネルギー安全 保障や気候変動関連分野への投資促進策が示され、再生可能エネルギーや原子力を 中心としたクリーン電力等に対して、10年間で3,690億ドル(約52兆円9) の政府支援が打ち出された。 欧州でも、2022年5月に「REPowerEU」計画、2023年2月には「グ リーンディール産業計画(Green Deal Industrial Plan)」が公表されるなど、エネ ルギーの脱ロシア依存を進めるとともに、米国や中国などへ対抗するため、積極的な グリーン産業への支援を進めてきた。 こうした中、2024年9月には、欧州中央銀行(ECB)前総裁・イタリア前首 相のマリオ・ドラギ氏が、EUの産業競争力強化に向けた「The future of European competitiveness」 (ドラギレポート)を公表している。同レポートには、脱炭素に向 けた目標は維持しつつも、その野心的な目標が、産業界に短期的な追加コストをもた らし、欧州産業界にとって大きな負担となっている点を踏まえ、脱炭素の野心に比較 して産業政策が不足していたとして、毎年、最大8,000億ユーロ(120兆円10) の追加投資が必要とするなど、産業政策の必要性を強調している。 我が国では、GXを、産業革命以来の化石エネルギー中心の経済・社会、産業構造 から、クリーンエネルギー中心のものに移行させ、経済社会システム全体の変革を行 うものと位置づけ、エネルギー安定供給、経済成長、脱炭素の同時実現を目指してお り、こうした取組を引き続き進めていく。 8 Inflation Reduction Act(2022年8月16日成立) 。 1ドル140円で換算した場合の金額。 10 1ユーロ150円で換算した場合の金額。 9 13 Ⅳ.エネルギー政策の基本的視点(S+3E) 1.総論 我が国のエネルギー政策の要諦は、安全性(Safety)を大前提に、エネルギー安定 供給(Energy Security)を第一として、経済効率性の向上(Economic Efficiency) と環境への適合(Environment)を図るという、「S+3Eの原則」にある。 特に、我が国は、すぐに使える資源に乏しく、国土を山と深い海に囲まれていると いった地理的制約を抱えているため、安全性の確保を大前提に、3つのE(エネルギ ー安定供給、経済効率性、環境適合性)の最適なバランスを追求していくことが、エ ネルギー政策の基本的視点となる。 こうしたS+3Eの原則に加えて、今後のエネルギー政策には、国際的な視点やサ プライチェーンの維持・確保といった視点も重要となる。 ロシアによるウクライナ侵略や中東情勢の緊迫化といった国際的な地政学リスク の高まりは、我が国のエネルギー安全保障を、世界のエネルギー情勢と切り離して考 えることが困難であることを再認識させるものである。気候変動問題など、一国のみ では十分な解決策が難しい課題も増加している中、国際的な視点がより重要となる。 また、エネルギー政策の推進に際しては、生産・調達から流通・消費までのエネル ギーサプライチェーン全体を俯瞰した上で、エネルギー安定供給に必要となるサプラ イチェーンの維持・確保に中長期的に取り組んでいくことが重要である。 こうした視点も踏まえつつ、S+3Eの大原則を改めて以下のとおり整理する。 2.安全性の確保(Safety) 安全性の確保(Safety)は、エネルギー政策の大前提である。特に原子力について は、いかなる事情よりも安全性を全てに優先させ、国民の懸念の解消に全力を挙げる 必要がある。 また、保安人材の高齢化などによる将来の人材不足への懸念、自然災害の頻発・激 甚化やサイバー攻撃の複雑化・巧妙化なども踏まえ、原子力のみならずあらゆるエネ ルギー源について、安全性確保への不断の取組が求められる。 3.エネルギー安定供給(Energy Security) 我が国は、すぐに使える資源に乏しく、国土を山と深い海に囲まれるなどの地理的 制約を抱えており、エネルギー自給率は2022年度時点で約12.6%とG7加盟 国の中でも最低となるなど、エネルギー安定供給上の脆弱性を抱えている。 こうした状況を踏まえ、我が国では、徹底した省エネルギーに加え、化石燃料の調 達国の多角化や特定のエネルギー源に過度に依存しない分散化の取組を進めること により、エネルギー安定供給の確保に努めてきた。今後、再生可能エネルギー、原子 力などエネルギー安全保障に寄与し、脱炭素効果の高い電源を最大限活用することに 14 より、エネルギー自給率を向上させる必要があり、「2040年度エネルギー需給見 通し」が実現した場合、2040年度エネルギー自給率は3~4割程度が見込まれる。 また、エネルギー安定供給を確保する上では、近年、自然災害が頻発・激甚化して いる状況や、エネルギーインフラ設備に対するサイバー攻撃などのリスクが上昇して いることも踏まえ、レジリエンスを強化する視点も必要となる。 足下の国際的なエネルギー情勢の変化も踏まえ、エネルギー安定供給の確保に重点 を置いた政策を再構築するとともに、多層的に構成されたエネルギーの供給体制が、 平時のみならず、有時にも適切に機能する強靱性(レジリエンス)を高めていくこと が必要である。 4.経済効率性(Economic Efficiency) 経済効率性(Economic Efficiency)の向上により、国際的に遜色ない価格でエネ ルギーを供給することが重要である。 エネルギーは、国民生活や経済活動の基盤となるものであり、特に、そのコストに ついては、日々の生活や事業活動に大きな影響を与える。今後、更なる脱炭素化を進 めていく上では、エネルギーコストの上昇も想定されるが、エネルギー多消費産業を 中心とする製造業では、国際的に遜色ない価格でエネルギー供給が行われるかが重要 な要素となる。足下では、欧米各国を中心に、脱炭素に向けた取組を自国の経済成長 につなげるべく、GX関連投資に対する政府支援を強化しており、国際的に遜色ない 価格でエネルギー供給を実現できるかは、企業の事業拠点を国内に留め、新たな投資 を我が国に呼び込み、我が国が更なる経済成長を実現していく上での前提条件となる。 特に、2050年カーボンニュートラルに向けては、排出削減が進むにつれて、温 室効果ガスの限界削減費用が相対的に高い対策にも取り組む必要があるため、脱炭素 化に伴う社会全体のコスト上昇を最大限抑制するべく、経済合理的な対策から優先し て導入することにより、経済効率性の向上を行うことが不可欠な視点となる。 5.環境適合性(Environment) 環境への適合(Environment)については、我が国では、温室効果ガス排出量の8割 以上をエネルギー起源CO2が占めており、エネルギー政策における対応が重要とな る。特に、気候変動問題が人類共通の課題となる中、カーボンニュートラル目標を表 明する国・地域が増加し、世界的に脱炭素の機運が高まっている。我が国においても 世界全体での1.5℃目標と整合的11で、2050年ネット・ゼロの実現に向けた直 線的な経路にある野心的な目標として、我が国は、2035年度、2040年度に、 温室効果ガスを2013年度からそれぞれ60%、73%削減することを目指すこと としており、気候変動問題に対して国家を挙げて対応する強い決意を表明している。 11 IPCCの第6次評価報告書統合報告書において示されている、オーバーシュートしない又は 限られたオーバーシュートを伴って温暖化を1.5℃(>50%)に抑える経路と整合的である。 15 エネルギー分野の脱炭素化に際しては、脱炭素化に伴う社会的コストが増加してい くことが想定されるため、脱炭素技術のコスト低減を最大限推進するとともに、エネ ルギー安定供給や経済効率性とのバランスを踏まえ、脱炭素エネルギーを利用する国 民や産業界の理解を丁寧に得ながら進めていく必要がある。 16 Ⅴ.2040年に向けた政策の方向性 1.総論 (1)エネルギー政策の基本的考え方 エネルギーは国民生活や経済活動の基盤であり、我々の生活に欠かすことができな いものである。とりわけ、DXやGXによる電力需要増加も見込まれる中、エネルギ ー政策は、産業構造、産業立地に関する政策と一体で展開していく必要がある。発電 設備の建設に必要となるリードタイムなどを勘案すると、エネルギー安定供給の確保 に向けては、GX2040ビジョンと一体で、今から2040年に向けたエネルギー 政策を展開する必要がある。その際には、S+3Eの原則の下、安全性の確保を前提 に、エネルギー安定供給を第一として、経済効率性と環境適合性の向上に向けて最大 限取組を進めていくことが重要となる。 我が国では、世界全体での1.5℃目標と整合的で、2050年ネット・ゼロの実 現に向けた直線的な経路にある野心的な目標として、我が国は、2035年度、20 40年度に、温室効果ガスを2013年度からそれぞれ60%、73%削減すること を目指すこととしているが、2040年時点におけるエネルギー関連技術のイノベー ションの状況や、各国のエネルギー政策の動向、DXやGXの進展状況などには不確 実な要素が多く、現時点で正確に将来を見通すことは困難である。 こうした不確実性が高い状況において、2040年に向けたエネルギー政策の検討 を進めていく上では、2050年カーボンニュートラル実現に向けて、使える技術は 全て活用するとの方針の下、あらゆる選択肢を追求していく必要がある。 すぐに使える資源に乏しく、国土を山と深い海に囲まれるなどの地理的制約を抱え ているという我が国の固有事情を踏まえれば、エネルギー安定供給と脱炭素を両立す る観点から、再生可能エネルギーを主力電源として最大限導入するとともに、特定の 電源や燃料源に過度に依存しないようバランスのとれた電源構成を目指していく。 その上で、化石エネルギーへの過度な依存からの脱却を目指し、需要サイドにおけ る徹底した省エネルギー、製造業の燃料転換などを進めるとともに、供給サイドにお いては、再生可能エネルギー、原子力などエネルギー安全保障に寄与し、脱炭素効果 の高い電源を最大限活用することが必要不可欠である。 特に、DXやGXの進展による電力需要増加が見込まれる中、それに見合った脱炭 素電源を十分確保できるかが我が国の経済成長や産業競争力を左右する状況にある。 脱炭素電源を拡大し、我が国の経済成長や産業競争力強化を実現できなければ、雇用 の維持や賃上げも困難となるため、再生可能エネルギーか原子力かといった二項対立 的な議論ではなく、再生可能エネルギーと原子力を共に最大限活用していくことが極 めて重要となる。 加えて、2040年に向けては、電化が困難であるなど、脱炭素化が難しい(Hard to Abate)分野においても脱炭素化を推進していくことが求められるため、天然ガス などへの燃料転換に加え、水素等(水素、アンモニア、合成燃料、合成メタン)やC CUSなどを活用した対策を進めていく必要がある。 17 こうした脱炭素化に向けた取組の実行にあたっては、脱炭素化に伴う社会全体のコ ストを最小化していく視点が重要となる。特に、排出削減が進むにつれて、温室効果 ガスの限界削減コストが相対的に高い対策にも取り組む必要があるため、経済合理的 な対策から優先的に導入していくといった視点が不可欠となる。こうした考え方の下、 S+3Eの原則に基づき、脱炭素化に伴うコスト上昇を最大限抑制するべく取り組ん でいく。 同時に、2050年カーボンニュートラル実現に向けては更なるイノベーションが 不可欠であるところ、2040年時点において再生可能エネルギー、水素等、CCS などの脱炭素技術の開発が期待されたほど進展せず、コスト低減等が十分に進まない ような事態(リスクケース)も想定していく必要がある。こうした場合にも、経済成 長を実現しながら、国民生活をエネルギー制約から守り抜く観点から、諸外国の対応 も踏まえつつ、LNGの長期契約の確保など、エネルギー安定供給の確保に万全を期 すことが重要である。 2040年に向けたエネルギー政策は、こうした点を十分踏まえた上で検討される 必要がある。まずは、2030年度エネルギー需給見通しなどで示した具体的な施策 を着実に実行していき、その上で、施策の進捗状況などを確認しながら、技術革新の 水準や、国際情勢、DXやGXの進展状況などを総合的に踏まえ、以下に示した20 40年に向けた方向性に基づき、施策を推進するとともに、必要な施策の更なる具体 化や見直しに取り組んでいく必要がある。 (2)GX2040ビジョンとの関係 世界では、脱炭素に伴うエネルギー需給構造の転換を自国の経済成長に結びつけよ うとする動きが広がっており、脱炭素関連投資の誘致が拡大している。こうした中、 我が国においても、長期的視点から、GX産業構造、GX産業立地、エネルギーを一 体的に政策展開するため、新たに「GX2040ビジョン」が策定される。 DXやGXの進展による電力需要増加が見込まれる中、それに見合った脱炭素電源 を確保できるかどうかが、我が国の経済成長・産業競争力に直結する状況となってお り、エネルギー政策と産業政策は密接不可分の関係にある。 本計画と「GX2040ビジョン」を一体的に遂行することにより、エネルギー 安定供給、経済成長、脱炭素の同時実現を目指す取組を加速していく。 18 2.需要側の省エネルギー・非化石転換 (1)基本的考え方 我が国では、化石燃料への過度な依存から脱却し、エネルギー危機にも耐え得る需 給構造への転換を進めるため、徹底した省エネルギーに向けた取組を進めてきた。 化石燃料の大宗を海外からの輸入に依存する我が国において、徹底した省エネルギ ーの重要性は不変であるが、今後、2050年カーボンニュートラルに向けて更に排 出削減対策を進めていく上では、需要サイドの取組として、徹底した省エネルギーに 加え、電化や非化石転換が占める割合も今まで以上に大きくなると考えられる。特に、 非電力が占める割合は約7割と高く、今後は熱需要の脱炭素化が重要となる。 このため、電化が可能な分野においては、S+3Eのバランスを確保しつつ、電源 の脱炭素化と電化を推進していくことが求められる。併せて、2050年カーボンニ ュートラル実現に向けては、電化が困難であるなど、脱炭素化が難しい分野において も脱炭素化を推進していくことが求められるため、天然ガスなどへの燃料転換に加え、 水素等やCCUSなどを活用した対策も進めていく必要がある。 その際、こうした排出削減対策は、温室効果ガスの限界削減コストが相対的に高い 対策も含まれるため、脱炭素化に向けた取組に伴うコスト上昇を最大限抑制するべく、 経済合理的な対策から優先して導入することが不可欠である。このため、今後は、各 対策がCO2をどれだけ削減できるかという観点から、省エネルギー、電化、非化石 転換などの選択肢を総合的に勘案した上で、コスト最適な手段を用いて政策を進めて いく必要がある。 (2)省エネルギー 石油危機を契機として1979年に「省エネ法12」が制定されて以降、我が国では、 規制と支援を一体的に講ずることで、徹底した省エネルギーに向けた取組を一貫して 推進してきた。こうした取組の成果もあり、我が国のエネルギー消費効率は1970 年代の石油危機以降、官民の努力により4割改善し、世界的にも高い水準にある。 世界に目を向けると、欧米各国を中心に2050年カーボンニュートラル実現に向 けた気候変動対策を強化していることに加え、ロシアによるウクライナ侵略などを契 機としたエネルギー安全保障への関心の高まりや、化石燃料の国際価格の上昇等を受 け、世界各国で省エネルギーを強化する動きが強まっている。 このような中、2023年5月のG7広島首脳会合では、省エネルギーが「第一の 燃料(first fuel)」として位置づけられ、 「クリーンエネルギー移行に不可欠な要素」 とされた。COP28のGST(Global Stocktake)決定文書には、2030年まで 12 制定当時は、 「エネルギーの使用の合理化に関する法律(昭和54年法律第49号) 」 。法改正 を経て現在は、 「エネルギーの使用の合理化及び非化石エネルギーへの転換等に関する法律(昭 和54年法律第49号)」 。 19 に世界全体のエネルギー効率の改善率を世界平均で2倍とする内容が盛り込まれる など、省エネルギーの重要性が世界でも再認識されている。 我が国では、徹底した省エネルギーの成果もあり、2005年以降、最終エネルギ ー消費量は減少傾向にあるが、足下では、経済活動の低下によって最終エネルギー消 費量が減少している割合も少なくない。我が国では、GXを通じてエネルギー安定供 給、経済成長、脱炭素を同時に実現する方針を掲げており、経済活動を低下させるこ となく、エネルギー効率の改善を進めていく必要がある。 特に、足下では、DXやGXの進展による電力需要増加が見込まれており、再生可 能エネルギーや原子力などの脱炭素電源の確保を進めると同時に、半導体の省エネル ギー性能の向上や光電融合などの最先端の技術を活用することにより、エネルギー消 費効率の改善を進めていく必要がある。データセンターについては、技術開発の促進 に加えて、事業者が満たすべき効率を設定した上でその取組を可視化するなど、諸外 国の取組も踏まえつつ、支援策と一体で制度面での対応を行う。加えて、データセン ターの効率改善をより適切に促すための評価指標の検討も行っていく。 今後、更なる省エネルギーのためには非連続的な技術開発・取組強化も必要となる ため、資源エネルギー庁と国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(N EDO)が策定する「省エネルギー・非化石エネルギー転換技術戦略」なども見直し ながら、NEDOプロジェクト等により、高効率機器・デジタル技術等のイノベーシ ョンを促進していく。さらに、我が国の温室効果ガス排出量の1~2割を占めるとさ れる中小企業においても、脱炭素を進めることが重要である。中小企業にとってGX の取組は、光熱費・燃料費の低減や自社製品のブランド力強化、取引先の拡充などの メリットも見込まれる。中小企業や家庭にとって、脱炭素の取組の「第一歩」は省エ ネルギーであることが多く、省エネルギーを契機とした脱炭素に向けた取組を進めて いく必要がある。 なお、支援と規制を一体的に進めていくことが重要であり、省エネ法のトップラン ナー制度やベンチマーク制度等について、事業者の取組状況等も踏まえつつ、対象、 指標等について継続して見直しを行いつつ、支援体制を充実させる。 (3)非化石転換 2050年カーボンニュートラル実現に向けては、S+3Eのバランスを確保しつ つ、まずは電源の脱炭素化と電化を進めていく。その上で、電化が困難な分野を中心 に、天然ガスなどへの燃料転換や、水素等やCCUSなどの活用を進めていく。 2022年度に実施した省エネ法改正では、法律名を「エネルギーの使用の合理化 及び非化石エネルギーへの転換等に関する法律」へと改め、省エネ法における「エネ ルギー」の定義を拡大し、エネルギー需要家に対して、非化石エネルギーへの転換の 目標に関する中長期計画及び非化石エネルギーの使用状況等の定期の報告を求める こととした。これにより、省エネ法では、化石燃料の省エネルギーに加え、非化石エ ネルギーへの転換及び非化石エネルギーの使用の合理化を促す枠組みを整備した。 電化や非化石転換にあたっては、特に、エネルギー多消費産業を中心として、抜本 的な製造プロセス転換が必要となる場合も少なくない。こうした分野では、設備投資 20 やサプライチェーンの構築などを計画的に進める必要があり、規制や支援を組み合わ せながら、官民が一体となって取組を進めていくことが、我が国の産業競争力を維持・ 向上させるために必要不可欠である。 2040年に向けては、こうした電化や非化石転換を中心としつつ、ディマンドリ スポンス(DR)の促進や、ヒートポンプやコージェネレーションなどの熱供給の効 率化を含むエネルギー使用の合理化なども一体的に進めながら、規制と支援の両輪で 各部門における取組を進めていく。 (4)産業・業務・家庭・運輸部門に求められる取組 ① 産業 2040年に向けては、徹底した省エネルギーの推進に加え、製造業を中心に、熱 需要や製造プロセスそのものの転換が必要となるため、再生可能エネルギーや原子力 などの脱炭素電源や水素等の脱炭素エネルギーの供給サイドの取組と併せて、燃料転 換や電化、非化石転換を大胆に進めていく必要がある。 特に、エネルギー多消費産業を中心として、製造プロセス転換に伴う生産設備等が 高額になることや、既存設備の耐久年数を考慮した設備の入替えのタイミング、省エ ネルギー技術が向上している中で長年活用を続けている工作機械を始めとする生産 設備等の省エネルギー性能の相対的な劣化、生産設備以外にも受電設備や配管等の脱 炭素に向けたインフラの整備も必要となること、などを考慮した上で、我が国の産業 競争力強化につながるよう官民一体となって取組を進めていく必要がある。 設備更新への投資促進に向けては、複数年の投資計画に切れ目なく対応できるよう に支援を進め、特に、高効率機器の導入や工場・事業所全体での大幅な省エネルギー、 電化・非化石転換、デジタル技術を活用した操業の最適化などを後押ししていく。中 小企業については、脱炭素に向けた潜在的なニーズを掘り起こすため、省エネルギー 診断を強化するとともに、金融機関や省エネルギー支援機関とも連携した、地域で中 小企業等の省エネルギーを支援する体制を構築していく。支援体制の充実に向けては、 省エネルギー等を助言することができる人材の確保にも併せて取り組む。 デジタル技術の活用により、エネルギー消費量を可視化の上、更なる省エネルギー を進めるべく、AIを含むDXの進展なども踏まえ、デジタル技術の活用を促す制度 面での対応を検討する。 省エネ法に基づく定期報告について、情報を積極的に開示する事業者の拡大等に取 り組む。また、省エネルギーの取組を拡大する観点から、省エネ法の規制対象につい ても適切に見直していく。加えて、非化石転換、DRを強力に進めていくため、工場 等の非化石エネルギー等導入余地にも着目しながら、制度面での対応を含め、検討を 進めていく。 ② 業務・家庭 業務・家庭部門においては、住宅・建築物は一度建築されると長期ストックとなる 性質上、速やかに省エネルギー性能の向上を進めるとともに、非化石転換やDRも推 進していく必要がある。 21 政府としては、2050年にストック平均でのZEH(Net Zero Energy House)・ ZEB(Net Zero Energy Building)基準の水準の省エネルギー性能の確保を目指し、 これに至る2030年度以降に新築される住宅・建築物はZEH・ZEB基準の水準 の省エネルギー性能の確保を目指すとの目標を掲げており、建築物省エネ法13などの 規制と支援措置を一体的に活用しながら、省エネルギー性能の向上及び再生可能エネ ルギーの導入拡大を進めていく。 規制・制度の在り方については、こうした目標と整合するよう、住宅・建築物にお ける省エネルギー基準の段階的な水準の引上げを遅くとも2030年度までに実施 する。エネルギー収支が正味ゼロとなることを目指す「ZEH」についても、今後は 更なるゼロ・エネルギー化を進める観点から、省エネルギー性能の大幅な引上げを実 施するとともに、自家消費型太陽光発電の促進を行うよう、その定義を見直す。また、 より高い省エネルギー水準の住宅の供給を促す枠組みを創設するとともに、住宅性能 表示制度における基準を充実させる。さらに、こうした省エネルギー性能の向上を建 材や設備の観点から支えるべく、トップランナー制度において、窓などの目標基準値 の改訂や対象拡大に取り組む。 これらに加え、家庭部門の非化石転換やDRも併せて進めていく観点から、家庭部 門のエネルギー消費の約3割を占める給湯器の省エネルギーや非化石転換の加速、D Rに必要な機能の具備の促進、開示を通じたエネルギー供給事業者の取組強化などの 制度面での対応を進める。 支援措置については、これらの規制や制度による手法と併せて、ZEH基準の水準 を大きく上回る省エネルギー性能等を有する住宅などの導入に対する支援を行う。さ らに、既存住宅・建築物の省エネルギーを進めるため、断熱窓への改修や高効率給湯 器の導入も含めた住宅の省エネルギー改修、建築物の省エネルギー改修を支援する。 また、ヒートポンプ給湯機やハイブリッド給湯機、家庭用燃料電池といった高効率 給湯器の導入や、設置スペース等の都合から高効率給湯器の導入が難しい賃貸集合住 宅向けには、潜熱回収型給湯器の導入を支援する。 ③ 運輸 運輸部門においては、自動車分野におけるライフサイクルを通じたCO2排出削減、 物流分野におけるエネルギー効率の向上、船舶・航空・鉄道・港湾分野における次世 代燃料の活用などの取組を進めていく。 自動車分野は、運輸部門のCO2排出量の86%(2022年度時点)を占めてお り、カーボンニュートラル化に向け、多様な選択肢を追求し、2050年に自動車の ライフサイクルを通じたCO2ゼロを目指す。 乗用車については、2035年までに、新車販売で電動車(電気自動車、燃料電池 自動車、プラグインハイブリッド自動車及びハイブリッド自動車)100%の実現を 目指す。また、商用車については、8トン以下の小型車については新車販売で、20 30年までに電動車20~30%、2040年までに電動車と合成燃料等の脱炭素燃 料車で100%を目指す。8トン超の大型車については、2020年代に5,000 13 建築物のエネルギー消費性能の向上等に関する法律(平成27年法律第53号) 。 22 台の先行導入を目指すとともに、水素や合成燃料等の価格低減に向けた技術開発・普 及の取組の進捗も踏まえ、2030年までに2040年の電動車の普及目標を設定す る。 このため、電動車の導入促進や、2030年に30万口を目標とする充電インフラ 整備の促進等の包括的な措置を講じる。乗用車の燃費規制については、2030年度 を目標年度とする燃費基準の下、更にエネルギー消費効率を高めつつ、通常の燃費試 験では反映されない省エネルギー技術を評価する制度を導入する。電動化に必要な蓄 電池については、遅くとも2030年までに国内製造基盤150GWh/年の確立を 目指して、蓄電池・部素材・製造装置の製造基盤の国内立地・技術開発への支援等を 進めていく。また、車載用蓄電池のリユースや車両からの給電設備の整備を促進し、 再生可能エネルギーの有効利用に貢献する。 商用車については、国が定めた非化石エネルギー自動車の保有や使用に関する目標 等に準じる計画を定めた輸送事業者や荷主等に対して、車両の導入を支援していくと ともに、国が定める目標の拡大について検討を行う。商用車に重点を置いた燃料電池 自動車の普及を進めるため、集中的に導入する重点地域に対して追加的支援を講じて いく。また、更なる燃費向上等を図るため、電動車の普及促進を見据えた重量車の新 たな燃費基準の検討を開始する。 また、内燃機関に係るガソリンの低炭素化・脱炭素化を進めるため、2050年カ ーボンニュートラル実現に向けて、ガソリンについては2030年度までにバイオエ タノールの最大濃度10%の低炭素ガソリンの供給開始を目指し、2040年度から 最大濃度20%の低炭素ガソリンの供給開始を追求する。また、対応車両の開発・拡 大を行う。加えてバイオディーゼルの導入を推進する。さらに、合成燃料については 2030年代前半までの商用化実現を目指し、その活用を行っていく。 物流分野においては、鉄道、船舶、航空、ダブル連結トラック等の多様な輸送モー ドを活用した新たなモーダルシフトの推進や物流施設等の脱炭素化を推進していく。 船舶分野においては、国際海事機関(IMO)などの国際動向や技術開発の状況を 踏まえ、ゼロエミッション船等の国内生産体制の整備支援に取り組み、導入を促進し ていく。 航空分野においては、持続可能な航空燃料(SAF)の導入促進、管制の高度化に よる運航方式の改善、機材・装備品等への新技術導入、空港施設・空港車両の省エネ ルギー化、空港の再生可能エネルギー拠点化等について、官民連携の取組を推進して いく。 鉄道分野においては、燃料電池鉄道車両の社会実装やバイオディーゼル燃料の導入 に向けた取組を推進する。 港湾分野においては、水素を燃料とする荷役機械の導入の促進や、脱炭素化の取組 状況を客観的に評価する認証制度の活用等により、脱炭素化を進める。 23 3.脱炭素電源の拡大と系統整備 (1)基本的考え方 ① 総論 2050年カーボンニュートラルに向けては、現状、電源構成の7割を占める火力 発電の脱炭素電源への置き換えや、火力発電の脱炭素化を推進していく必要がある。 加えて、国内における電力需要は、DXやGXの進展に伴い増加が見込まれ、こうし た将来の電力需要の増加に対しても、脱炭素電源を拡大することで対応する必要があ る。十分な脱炭素電源が確保できなかったが故に国内においてデータセンターや半導 体工場などの投資機会が失われ、我が国の経済成長や産業競争力強化の機会が失われ ることは厳に避ける必要があり、大規模な電源投資が必要な時代に突入している。こ うした電力システム改革時には必ずしも想定されていなかった状況の変化が生じて おり、脱炭素電源の供給力を抜本的に強化しなければ、将来的な電力の安定供給の見 通しは不透明となる。 電源構成における基本的な考え方としては、エネルギー安定供給と脱炭素を両立す る観点から、再生可能エネルギーを主力電源として最大限導入するとともに、特定の 電源や燃料源に過度に依存しないようバランスのとれた電源構成を目指していく必 要がある。これは、現時点で単独の完璧なエネルギー源は存在せず、特定のエネルギ ー源に過度に依存することはリスクが高まるため、多様な電源構成が重要であるとの 考え方に基づくものである。エネルギー危機にも耐え得るエネルギー需給構造を実現 するためには、S+3Eの大原則の下で、エネルギー源ごとの強みが最大限に発揮さ れ、弱みが他のエネルギー源によって適切に補完されるような組み合わせを持つ、多 層的な供給構造を実現することが必要である。 ロシアによるウクライナ侵略、中東での紛争などによる化石燃料の価格変動リスク 等もある中、脱炭素電源の拡大に向けては、足下の脱炭素電源構成が約3割という状 況を踏まえれば、再生可能エネルギーか原子力かといった二項対立的な議論ではなく、 再生可能エネルギー、原子力などエネルギー安全保障に寄与し、脱炭素効果の高い電 源を最大限活用することが必要不可欠である。 ② 供給力の確保と系統整備の必要性 加えて、トランジション(移行)期においては、電力の安定供給を大前提に、非効 率な石炭火力のフェードアウトや将来的な脱炭素化を前提としたLNG専焼火力の 新設・リプレース等の取組、必要な燃料の安定確保の取組も進めていく必要がある。 こうした観点からも、必要な供給力を確保するための長期脱炭素電源オークションを 含めた容量市場の着実な運用や見直しの検討、緊急時に備えた予備電源制度の継続的 な検討など、安定供給を確保するための取組も引き続き必要である。 また、発電事業者については、容量市場等の制度的な裏付けによる電源の確保や各 種の電力取引市場の整備等の対応が進められてきたところであり、電力供給を通じた 貢献が求められる。こうした観点から発電事業者に求められる役割や機能についても 電力システムの状況に応じて不断の検討を行うことが重要である。 24 また、脱炭素電源の拡大やトランジション期の供給力の確保に向けては、国民への 適切な情報提供を行うことによって、国民理解を高めていく必要があると同時に、立 地地域との共生に向けた取組、国際交渉や海外との連携も同時に適切に行っていく必 要がある。 さらに、電力の安定供給を確保しつつ、電力システムの脱炭素化を進めるため、電 力ネットワークの次世代化を進めることが不可欠である。このため、広域系統長期方 針(広域連系系統のマスタープラン)を踏まえた地域間連系線の整備や、地内基幹系 統等の増強を着実に進めていく必要がある。加えて、近年増加するデータセンター等 のDXやGXの推進に資する大規模需要を脱炭素電源の近傍等の適地に誘導し、電力 の安定的な供給を実現するため、先行的・計画的な系統整備を促す仕組みを検討する。 ③ 事業環境整備・市場環境整備 電源投資を取り巻く足下の環境を踏まえると、インフレや金利上昇などの要因によ り、今後も電力分野の建設コストは上昇していく可能性がある。特に、大型電源につ いては投資額が巨額となり、総事業期間も長期間となるため、収入と費用の変動リス クが大きく、電力自由化を始めとする現在の事業環境の下では、将来的な事業収入の 不確実性が大きい。こうした中では、長期の事業期間を見込む投資規模の大きな投資 や、技術開発の動向、制度変更、インフレ等により初期投資や費用の変動が大きくな ることが想定される投資については、事業者が新たな投資を躊躇する懸念がある。 そのため、これらのリスクや懸念に対応し、脱炭素電源への投資回収の予見性を高 め、事業者の新たな投資を促進し、電力の脱炭素化と安定供給を実現するため、事業 期間中の市場環境の変化等に伴う収入・費用の変動に対応できるような制度措置や市 場環境を整備する。 そして、脱炭素電源を拡大するため、発電や送配電などの分野において、長期にわ たり大規模な投資を継続していく必要があるが、市場環境が大きく変化し、事業の不 確実性が高まってきており、多額の有利子負債が生じている中で、事業者が、今後も 大規模かつ長期の資金を、継続して調達し続けることは容易ではない。しかも、投資 タイミングと回収期のギャップがある中で、今後、先行的かつ集中的に更なる投資の 拡大が求められていること、電気料金への影響を抑制しつつ投資を行っていく必要が あることも資金調達をより難しくしている。また、事業者のファイナンスを支える金 融機関・機関投資家等にとっても、融資・投資残高が大規模化しており、リスク管理 の重要性がこれまで以上に高まっている点や、その中で事業者に対して更に追加でど の程度の規模の融資・投資が可能かといった規模管理の点等から、事業者に対して融 資・投資を実行することへのハードルが高まってきていることが指摘されている。な お、2050年カーボンニュートラル実現に向けて、世界的にも巨額の投資が必要と なると見込まれており、そうした状況の中、諸外国においては電力分野におけるファ イナンス面での投資支援が行われている。 我が国においても、様々な電気事業の制度見直しと併せ、民間資金を最大限活用す る形で、電力分野における必要な投資資金を安定的に確保していくためのファイナン ス環境の整備に取り組む必要がある。具体的には、民間金融機関等が取り切れないリ 25 スクについて、公的な信用補完の活用とともに、政府の信用力を活用した融資等、脱 炭素投資に向けたファイナンス円滑化の方策等を検討する。 また、需要家や地域などが脱炭素電源へのアクセスを求めている状況等も踏まえつ つ、内外無差別などの卸取引に関するルールの在り方の検討も進める。 (2)再生可能エネルギー ① 総論 (ア)基本的考え方 再生可能エネルギーは、世界的に発電コストが急速に低減し、コスト競争力のある 電源となってきており、導入量が急増している。我が国においても、2012年7月 の固定価格買取制度(FIT制度)の導入以降、当時10%であった電源構成に占め る再生可能エネルギー比率は2022年度には約22%にまで拡大した。特に、我が 国は、陸上の平地面積が小さく、洋上は急峻な海底地形であるなど、地理的制約があ る中で、導入容量は再生可能エネルギー全体で世界第6位となるなど、導入が着実に 進展している。 今後とも、エネルギー政策の原則であるS+3Eを大前提に、電力部門の脱炭素化 に向け、再生可能エネルギーの主力電源化を徹底し、関係省庁や地方公共団体が連携 して施策を強化することで、地域との共生と国民負担の抑制を図りながら最大限の導 入を促す。再生可能エネルギーの主力電源化にあたっては、電力市場への統合に取り 組み、系統整備や調整力の確保に伴う社会全体での統合コストの最小化を図るととも に、再生可能エネルギーの長期安定電源化に取り組む。また、導入拡大にあたっては、 イノベーションの加速とサプライチェーンの構築を戦略的に進め、国産再生可能エネ ルギーの普及拡大による技術自給率の向上を図るとともに、使用済太陽光パネルへの 対応等を講じていく。 (イ)地域との共生等 (a)総論 FIT制度の導入を契機とした再生可能エネルギーの急速な導入拡大に伴い、様々 な事業者の参入が拡大した結果、安全面、防災面、景観、生物多様性の観点を含めた 環境への影響、将来の廃棄等に対する地域の懸念が高まっている。また、太陽光パネ ルについては、2030年代後半以降に排出量が顕著に増加すると想定され、計画的 な対応が必要となる。再生可能エネルギーが長期にわたり安定的に発電する電源とし て、地域や社会に受け入れられるよう、地域の理解の促進や適正な事業規律の確保に 取り組むことが重要である。 (b)2024年に施行された改正再エネ特措法等に基づく事業規律の強化 2024年に施行された改正再エネ特措法14に基づき、地域住民との適切なコミュ ニケーションを図るため、説明会の開催等による周辺地域の住民への事業内容の事前 14 再生可能エネルギー電気の利用の促進に関する特別措置法(平成23年法律第108号) 。 26 周知を認定基準とした。また、再生可能エネルギー発電事業の実施に関する関係法令 違反を早期に是正するため、違反事業者等に対してFIT・FIP15交付金を一時停 止する措置を導入した。併せて、森林法16における林地開発許可等、災害の危険に直 接影響を及ぼし得るような土地開発に関わる許認可について、2023年10月から、 再エネ特措法の認定手続を厳格化し、FIT・FIP認定申請の要件とした。 さらに、2023年に施行された改正電気事業法17に基づき、小規模な太陽光発電 設備に技術基準の適合維持義務を課す等の規律強化を行った。 これらの措置等を実効的に講じるため、2024年度から、全国の再生可能エネル ギー発電施設に対して現地調査を行う体制を構築する等、執行体制の強化を図ってお り、引き続き、適正に対応する。 (c)地元理解の促進に向けた取組/地域脱炭素の促進 全国の地方公共団体を対象とした連絡会等を開催するなど、地方公共団体との連携 を強化し、地域と共生した再生可能エネルギーの導入を図る地方公共団体の条例の策 定等を促進する。 加えて、地球温暖化対策推進法18に基づく地域脱炭素化促進事業制度により、促進 区域の設定及び地域共生型の再生可能エネルギーの導入を推進するため、人材・情報・ 資金の観点での地方公共団体への支援を強化し、制度の一層の活用を進める。国は、 少なくとも100箇所の地域で、2025年度までに脱炭素先行地域を選定し、地方 創生に資する脱炭素化の先行的な取組を2030年度までに実現するとともに、全国 各地で、地方公共団体が複数年度にわたり複合的に実施する屋根設置太陽光発電など の自家消費・地域消費型の再生可能エネルギー、蓄電池、ZEB・ZEH、EV等の 導入を重点的に加速させる。 災害の激甚化が進む中で、各地域における国土強靱化の観点も踏まえ、防災力・レ ジリエンスの強化に資する避難施設・防災拠点等の公共施設等への再生可能エネルギ ー及び蓄電池の導入を積極的に推進する。 (d)再生可能エネルギー発電設備の廃棄・リサイクルの運用徹底と制度化 再生可能エネルギー発電設備の適正な廃棄等を担保するため、事業用太陽光発電設 備の廃棄等費用について、2022年7月から、原則として源泉徴収的な外部積立て を求めており、本制度を着実に運用していく。 また、太陽光パネルについて、2030年代後半以降の排出量の増加に対応するた め、リユース・リサイクル・廃棄処分が徹底して行われるよう、義務的リサイクル制 度を含めた新制度の構築に向けて検討を進める。 (e)長期安定電源化 15 Feed-in Premium。市場価格を踏まえて計算される参照価格と基準価格の差額等をプレミアム として交付する制度であり、事業者の収入水準は市場価格に連動する。 16 森林法(昭和26年法律第249号) 。 17 電気事業法(昭和39年法律第170号) 。 18 地球温暖化対策の推進に関する法律(平成10年法律第117号)。 27 FIT・FIP制度に基づき国民負担による支援を受けて導入された電源が、調達 期間及び交付期間の終了後も、次世代にわたり長期安定的に事業継続されるよう、関 係事業者等の行動指針を整理した上で、同指針に基づき、再生可能エネルギー発電事 業に対する再投資やリパワリングを促すとともに、長期安定電源の担い手として責任 あるプレイヤーを長期安定適格太陽光発電事業者として認定し、同事業者への事業集 約を推進していく。 (ウ)国民負担の抑制等 我が国の再生可能エネルギーの発電コストは、着実に低減が進んできてはいるもの の、国際水準と比較すると依然高い。また、2024年度の再生可能エネルギー賦課 金は2.7兆円に達すると想定されている。国民負担の抑制を図るため、再生可能エ ネルギーのコストを競争力ある水準に低減させ、自立的に導入が進む状態を早期に実 現していく。 具体的には、FIT・FIP制度における入札制の活用等を推進するとともに、F IT・FIP制度を前提としないビジネスモデルによる再生可能エネルギー発電事業 を推進する。また、FIT・FIP認定後の迅速な事業実施を促すため、FIT・F IP認定の失効制度等を着実に運用していく。 (エ)電力市場への統合 (a)総論 再生可能エネルギーの主力電源化にあたり、出力の変動する再生可能エネルギーの 電力市場への統合を進めるため、揚水発電や蓄電池の活用など、調整力の確保を進め ていく。さらに、再生可能エネルギーの導入余地が大きい地域と需要地をつなぐ地域 間連系線の整備を推進する。また、再生可能エネルギーを最大限に活用する観点から、 その出力制御量の抑制に取り組む。 その上で、再生可能エネルギーの電力市場への統合にあたっては、社会全体での統 合コストの最小化が重要となる。この観点から、FIP制度の更なる活用を通じて、 再生可能エネルギー発電事業者が自ら電力市場の需給状況に応じた行動(蓄電池によ る供給シフト等)を取るように促すとともに、地域に賦存する再生可能エネルギーの 地産地消を推進していく。 (b)FIP制度の更なる活用 FIP制度は、再生可能エネルギーの電力市場への統合の鍵となるものであり、電 力システム全体のコスト低減、再生可能エネルギーの出力制御量の抑制等にも寄与す ることから、制度の更なる活用を進める。具体的には、FIT電源とFIP電源の需 給バランスの確保への貢献の度合いと公平性の確保の観点から、優先給電ルールにお ける出力制御の順番を見直す。併せて、FIP電源に係る蓄電池の活用や発電予測な どへの支援を強化する。 (c)再生可能エネルギーの地域活用 28 地域に賦存する再生可能エネルギーの地産地消は、災害時のエネルギーの安定供給 の確保や地域活性化の観点から重要である。また、再生可能エネルギーの出力変動に ついて、需給に近接した脱炭素化された調整力等による調整がなされることで、統合 コストの抑制が見込まれる。 このため、発電に近接した工場や家庭等で再生可能エネルギー電気を消費するモデ ルや、需要地内では消費し切れない再生可能エネルギー電気を地域内で消費するモデ ルなどを推進するとともに、FIT制度に基づく「地域活用要件」を通じて自家消費 や地域一体的な電源の活用を促す。 (オ)イノベーションの加速/サプライチェーン構築 再生可能エネルギーの導入が進展する中で、地域と共生しながら効率的に事業が実 施できる適地が不足している。こうした中で、今後再生可能エネルギーの更なる導入 拡大を図る上では、建築物の屋根や壁面、水深の深い海域等の新たな再生可能エネル ギー適地の開拓が必要であり、それを支える技術的なイノベーションの加速が重要と なる。その際、太陽光パネルの生産等の関連産業には、現状、海外依存度が高いもの が見られるが、再生可能エネルギーの導入拡大と併せて、地域経済への波及効果も踏 まえ、国内に強靱なサプライチェーンを構築し、産業競争力の強化を図るとともに、 人材育成を推進することが重要である。 (カ)その他の課題 自然由来の再生可能エネルギー熱は、地域性の高い重要なエネルギー源であり、経 済性や地域の特性に応じて進めていくことが重要である。太陽熱、地中熱、雪氷熱、 温泉熱、海水熱、河川熱、下水熱等の自然由来の再生可能エネルギー熱について、熱 供給設備の導入支援を図るとともに、複数の需要家群で熱を面的に融通する取組への 支援を行うことで、再生可能エネルギー熱の導入拡大を目指す。 また、波力・潮力等の海洋エネルギーを始めとする革新的な技術について、低コス ト化・高効率化や多様な用途の開拓に資する研究開発等を推進する。 ② 太陽光発電 (ア)基本的考え方 太陽光発電については、国土面積当たりの太陽光の導入容量は主要国最大となるな ど、我が国において導入が着実に進展している。さらに、自家消費や地産地消を行う 分散型エネルギーリソースとして、地域におけるレジリエンスの観点でも活用が期待 される。また、一定程度導入コストの低減が進んだことにより、FIT・FIP制度 によらずに事業を実施する形態も生じてきている。 一方で、太陽光発電の年間導入量は、地域と共生しながら効率的に事業が実施でき る適地の不足等を背景に、FIT制度導入当初に比べ低下している。さらに、発電量 が時間帯や天候に左右されるといった特性を踏まえる必要もある。 こうした中で、更なる導入拡大にあたっては、地域との共生と国民負担の抑制を前 提とし、需給近接型での導入が可能な建築物の屋根や壁面の有効活用を追求していく ことが重要である。 29 また、太陽光パネルの生産については、2000年代後半以降、急激に事業環境が 変化する中で、官民双方において、需要創出や投資の面で必ずしも十分な規模とスピ ードでの対応ができず、我が国はシェアを大きく減少させた。これを教訓として、次 世代型太陽電池について、国内に強靱なサプライチェーンを構築し、産業競争力の強 化を図ることが重要である。 (イ)屋根設置太陽光発電 今後の太陽光発電の導入拡大にあたっては、まずは、比較的地域共生がしやすく、 自家消費型で導入されることで系統負荷の低い屋根設置太陽光発電のポテンシャル を更に積極的に活用していく。 公共部門については、国が率先して、2030年に設置可能な建築物等の約50%、 更には、2040年に設置可能な建築物等の100%に太陽光発電設備を設置するこ とを目指す。この実現に向け、政府の新築建築物への太陽光発電設備の最大限設置を 徹底するとともに、既存ストックや公有地等への設置も推進する。さらに、工場・オ フィス等の民間部門については、ZEBや自家消費型事業の普及拡大、省エネ法に基 づく定期報告制度の活用、既存ストック対策の充実、建材一体型設備の導入等を進め る。また、投資回収の早期化や設置者の与信補完の観点から、FIT・FIP制度の 調達期間・交付期間の在り方を検討するとともに、関係省庁が連携して必要な支援を 検討する。 また、住宅用太陽光発電については、2050年において設置が合理的な住宅・建 築物には太陽光発電設備が設置されていることが一般的となることを目指し、これに 至る2030年において新築戸建住宅の6割に太陽光発電設備が設置されることを 目指す。この確実な達成に向けて、建売戸建及び注文戸建住宅に係る住宅トップラン ナー基準として、一定割合の太陽光発電設備の設置を求め、住宅への太陽光発電設備 の設置を促進する。 (ウ)地上設置太陽光発電 地上設置太陽光発電については、地方公共団体による再生可能エネルギー導入の目 標設定を促すとともに、目標の達成に向け、地域脱炭素化促進事業制度の活用による 具体的な再生可能エネルギー促進区域の設定(ポジティブゾーニング)等を推進する。 また、農地についても、優良農地の確保を前提に、営農が見込まれない荒廃農地への 再生可能エネルギーの導入拡大を進める。さらに、発電と営農が両立する営農型太陽 光発電については、事業規律や適切な営農の確保を前提として、地方公共団体の関与 等により適正性が確保された事業の導入の拡大を進める。加えて、空港、道路、鉄道、 港湾等のインフラ空間等を活用した太陽光発電の導入拡大を図る。 さらに、FIT・FIP制度を前提としない自家消費モデルや需要家等が遠隔地に 発電設備を設置し長期契約等に基づき受電する仕組み等による再生可能エネルギー 発電事業についても、導入を推進する。 (エ)次世代型太陽電池の早期社会実装 30 太陽光発電の適地が限られる中、従来設置が進んでいなかった耐荷重性の低い建築 物の屋根や建物の壁面等への設置を進める観点から、2024年11月に次世代型太 陽電池の導入拡大及び産業競争力強化に向けた官民協議会において策定した「次世代 型太陽電池戦略」に基づき、軽量・柔軟等の特徴を兼ね備えるペロブスカイト太陽電 池の早期の社会実装を進めていく。具体的には、2025年までに20円/kWh、 2030年までに14円/kWh、2040年までに10円~14円/kWh以下の 水準を目指して技術開発を進める。また、国内において強靱な生産体制を確立させる ことが重要であり、2030年を待たずにGW級の構築を目指す。官民関係者が総力 を挙げて、世界に引けを取らない規模とスピードで、量産技術の確立、生産体制整備、 需要の創出に三位一体で取り組み、2040年には約20GWの導入を目標とする。 また、海外市場にも本格的な展開を図るとともに、国立研究開発法人産業技術総合研 究所(産総研)等の専門機関とも連携し、信頼性評価等に関する国際標準の策定を目 指す。 ③ 風力発電 (ア)基本的考え方 風力発電の導入に関し、陸上では、開発しやすい平野部での適地が減少している。 また、洋上では、北海道や東北地方などの導入ポテンシャルの高い地域が存在するこ とに加え、陸上に比べて大規模開発が可能となる一方で、欧州に比べて急峻な地形・ 複雑な地層であるほか、風速が相対的に小さい地点があるなどの日本の地理的特性が ある。この中で、地域と共生しつつ適地を確保することが課題である。さらに、地元 との調整や環境アセスメントなどへの対応により、導入までのリードタイムは長い。 風力発電の更なる導入拡大に向けては、北海道などの風力発電の適地と需要地を結 ぶ送電網の整備が重要となる。広域連系系統のマスタープランを踏まえ、北海道・本 州間の海底直流送電を始めとする地域間連系線の整備等を進める。 (イ)洋上風力発電 洋上風力発電は、今後コスト低減が見込まれる電源として、我が国の電力供給の一 定割合を占めることが見込まれ、急速なコストダウンと案件形成が進展する海外と同 様、我が国の再生可能エネルギーの主力電源化に向けた「切り札」である。また、事 業規模が大きく、産業の裾野も広いことから、建設やO&M等を通じ雇用創出にも貢 献するなど、経済波及効果が期待される。 こうした点を踏まえ、再エネ海域利用法19に基づく公募制度等を通じて、2030 年までに10GW、2040年までに浮体式も含む30GW~45GWの案件を形成 することを目指す。このため、引き続き、初期段階から政府等が関与し、より迅速・ 効率的に地盤等の調査や適時の系統接続の確保等を行う仕組み(セントラル方式)の 対象海域を拡大するとともに、促進区域の指定の際に国が海洋環境調査を行う仕組み を検討する。さらに、地域間連系線や港湾等のインフラ整備を計画的に進めていく。 19 海洋再生可能エネルギー発電設備の整備に係る海域の利用の促進に関する法律(平成30年法 律第89号) 。 31 また、投資が大規模かつ総事業期間が長期間にわたることから、収入・費用の変動リ スクに対応できる強靱な事業組成を促進し、洋上風力発電への電源投資を確実に完遂 させるために必要な規律強化や環境整備を進める。加えて、我が国の広大な排他的経 済水域においても洋上風力発電設備を設置することができるよう必要な制度環境の 整備を行う。また、大型風車の設置・維持管理に必要な基地港湾の着実な整備や効率 的な運用を図るとともに、関係船舶の確保に向けた取組を進める。 その上で、洋上風力発電の大量導入と関連産業の競争力強化の「好循環」を実現す るには、国内に競争力があり強靱なサプライチェーンを形成することが重要である。 産業界においては、国内調達比率を2040年までに60%とする目標が掲げられて いる。特に浮体式洋上風力発電について、技術開発によるコスト低減と量産化、生産・ 設置基盤や最適な海上施工方法の確立を通じ、国内サプライチェーンの強化や国際展 開を進めるとともに、産業界と教育・研究機関が連携した人材育成を強力に推進する。 (ウ)陸上風力発電 陸上風力発電については、事業実施への地域の懸念を背景に、運転開始に至ってい ない事業が存在している。こうした地域の懸念に適切に対応した上で、導入を推進し ていく。具体的には、地方公共団体による再生可能エネルギー導入の目標設定を促す とともに、目標の達成に向け、地域脱炭素化促進事業制度の活用による具体的な再生 可能エネルギー促進区域の設定(ポジティブゾーニング)等を推進する。また、国土 保全及び環境保全の観点を前提としつつ、保安林について、ポジティブゾーニング推 進の方向性を踏まえた対応を進めるとともに、環境アセスメントについて、事業特性 を踏まえた効果的・効率的なアセスメントの実施を図るため、必要な措置を講じる。 ④ 地熱発電 (ア)基本的考え方 地熱発電は、安定的に発電を行うことが可能なエネルギー源であり、地域資源の有 効活用を通じて産業振興や地域社会に貢献し、地域活性化にも資するものである。日 本の地熱資源のポテンシャルは世界第3位であるが、地熱発電の開発には、開発リス ク・開発コストの高さ、リードタイムの長さ、地熱資源の有望地域の偏在による開発 適地や系統接続の制約、地元との調整や開発のための各種規制への対応等の課題があ る。こうした課題を克服し、中長期的には競争力ある自立化した電源としていく。現 状の4倍以上に地熱資源のポテンシャルを拡大する可能性がある次世代型地熱技術 の開発も進める。 (イ)今後の課題と対応 地熱開発の加速化のため、地熱資源の約8割が存在する自然公園内を中心に、経済 産業省が選定した複数の有望地域において、「地熱フロンティアプロジェクト」を立 ち上げる。選定された地域では、独立行政法人エネルギー・金属鉱物資源機構(JO GMEC)自らが、地熱資源の調査(噴気試験を含む。)を行い、調査データ等を事業 者に提供し、掘削した井戸を事業者の求めに応じて引き継ぐことで、事業者の開発リ スクと開発コストの低減を図るとともに、政府も地域の関係者との調整を積極的に支 32 援する。また、 「地熱開発加速化パッケージ」20の実行に向けて、自然環境や温泉事業 者への配慮を前提に、ステークホルダーの理解醸成、掘削コストの高騰や高い掘削リ スクへの対応、温泉法21や立地条件等に応じた自然公園法22・森林法等の各種許認可手 続への対応について、関係省庁が連携し、ワンストップでフォローアップに取り組む。 また、様々なプレイヤーの地熱発電への参画を促し、従来の手法にとらわれずに、小 型で機動的な掘削機や発電所のモジュール化等による迅速な地熱の開発も促進する。 海外では、日本企業も参画し、熱水のない場所でも発電が可能なクローズドループ や地熱増産システムなどの実証が進められている。また、日本でも、NEDOや産総 研等が、地下深くの高温・高圧な熱水を活用した超臨界地熱に関する調査を行ってい る。抜本的な地熱発電の導入拡大を実現するため、こうした次世代型地熱技術につい て、2030年代の早期の実用化を目指し、研究開発・実証を進め、事業化につなげ る。 地熱発電の導入をより短期間・低コストで、かつ円滑に実現できるよう、地域の理 解促進、リスクマネーの供給、探査技術の高度化等の掘削成功率や掘削効率の向上に 資する技術開発などの取組を進める。 今後、2040年に向けて地熱発電の導入を加速させていくための具体的な計画や 目標等を策定する。 さらに、発電後の熱水利用など、エネルギーの多段階利用を通じて、地域のエネル ギー供給の安定を支える役割を担う地熱発電の取組を推進する。JOGMECとの連 携により、地熱発電技術の海外展開を促進する。 ⑤ 水力発電 (ア)基本的考え方 水力発電は、安定した出力を長期的に維持することが可能な脱炭素電源として重要 である。また、地域に裨益する事業モデルを構築することで、地域産業の活性化・地 方創生に資する。しかしながら、開発コストや規制対応等に起因する開発リスクが高 いことに加え、堆砂の深刻化等による設備容量の減少、激甚化する豪雨災害等による 被害、経年に伴う設備の老朽化も見られる。また、地域との共生やコスト低減を図り つつ、自立化を実現していく必要がある。 (イ)今後の課題と対応 水力発電の開発リスクの低減や適切な再投資・維持・管理を通じた活用の促進に向 けて、長期脱炭素電源オークションを含む容量市場やFIT・FIP制度等を通じて 水力発電への電源投資を促進する。 さらに、中小水力発電の導入検討段階等で必要となる流量調査や地元理解の促進等 を支援する。中小水力発電の隠れた開発ポテンシャルを明らかにするため、全国水系 20 第43回総合資源エネルギー調査会資源・燃料分科会(2024年11月13日)において公 表。 21 温泉法(昭和23年法律第125号) 。 22 自然公園法(昭和32年法律第161号) 。 33 における開発可能な地点の広域的な調査や、地方公共団体主導の下での開発地点候補 の詳細調査・案件形成等を推進する。 加えて、水力エネルギーを最大限活用するため、 「流域総合水管理」の考え方も踏ま えつつ、ダム・導水路等のインフラを所管する関係省庁と連携し、治水機能の強化と 水力発電の促進を両立させるハイブリッドダムの取組として、ダムの運用の高度化、 既設ダムの発電施設の新増設、ダム改造・多目的ダムの建設を推進し、発電量の増加 を図る。また、電力ダムも含めた複数ダムの連携、既存設備のリプレースによる最適 化・高効率化、発電利用されていない既存ダムへの発電設備の設置等を推進する。以 上について、施策間での適切な役割分担を前提に、関係省庁で連携し対応していく。 ⑥ バイオマス発電 (ア)基本的考え方 バイオマス発電は、災害時のレジリエンス向上や地域産業の活性化を通じた経済・ 雇用への波及効果が大きいなど、地域分散型、地産地消型のエネルギー源として多様 な価値を有するエネルギー源である。 一方で、発電コストの大半を収集・運搬等の燃料費が占める構造にあることに加え、 昨今では燃料需給のひっ迫も見られ、事業の安定継続が課題である。このため、地域 の農林業等と連携してコスト低減や燃料安定調達等を進める。 (イ)今後の課題と対応 国産木質バイオマス燃料の供給拡大に向け、関係省庁が連携し、林地残材等の更な る利用に向けた体制構築、各地域に適した早生樹や広葉樹等の育林手法等の実証、適 正な再造林等を推進する。また、環境、社会・労働、ガバナンス、食料との競合、ラ イフサイクル温室効果ガスの排出量等の観点から持続可能性が確保されたバイオマ ス燃料の利用を求めていく。 さらに、地域の農林業等と連携し、エネルギー変換効率の高い熱利用・熱電併給の 地域内利用を推進するとともに、農山漁村再生可能エネルギー法23等を通じたエネル ギーの地産地消を積極的に推進し、農林漁業の健全な発展と調和を図りつつ、家畜排 せつ物、下水汚泥、食品廃棄物等の有効利用を進める。 大規模なバイオマス発電については、安定的かつ持続可能な燃料調達の確保やコス ト構造を踏まえた将来的な自立化の可能性が課題となっている中で、FIT・FIP 制度による支援の在り方や、調達期間及び交付期間が終了した後のバイオマス発電事 業の継続の確保について検討を進める。 (3)原子力発電 ① 総論 東京電力福島第一原子力発電所事故への真摯な反省は、決して忘れてはならない原 23 農林漁業の健全な発展と調和のとれた再生可能エネルギー電気の発電の促進に関する法律(平 成25年法律第81号) 。 34 子力政策の原点である。原子力の活用にあたっては、安全性の確保が大前提であり、 「安全神話」に二度と陥らないとの教訓を肝に銘じなければならない。また、原子力 の安全性やバックエンドの進捗に関する懸念の声があることを真摯に受け止める必 要がある。その上で、原子力基本法24を踏まえ、②に掲げる各事項について、国は前 面に立って責務を果たしていく。 原子力は、燃料投入量に対するエネルギー出力が圧倒的に大きく、数年にわたって 国内保有燃料だけで発電が維持できる準国産エネルギー源として、優れた安定供給性 と技術自給率を有する自律性が高い電源であり、他電源と遜色ないコスト水準で変動 も少ない。また、天候に左右されず一定出力で安定的に発電可能な脱炭素電源である。 DXやGXの進展等により増加が見込まれる電力需要、特に製造業のGX、定格稼 働するデータセンターや半導体工場等の新たな需要のニーズに、原子力という電源の 持つ特性は合致することも踏まえ、国民からの信頼確保に努め、安全性の確保を大前 提に、必要な規模を持続的に活用していく。 ② 今後の課題と対応 (ア)原子力政策の出発点 ―東京電力福島第一原子力発電所事故の教訓を踏まえた、 不断の安全性追求 東京電力福島第一原子力発電所事故について、国・事業者が「安全神話」に陥り悲 惨な事態を招いたことを片時も忘れず、真摯に反省するとともに、その教訓を踏まえ、 このような事故を二度と起こさないよう弛まぬ努力を続けることが必要である。 事故の教訓を踏まえた新規制基準に基づき、安全対策の強化が進められている。具 体的には、津波対策、電源多重化、耐震強化、竜巻対策、火災対策、多様な冷却手段 の確保、フィルタベントの設置等が進められ、こうした安全対策の強化により、新規 制基準に適合すると認められた川内、高浜、伊方、大飯、玄海、美浜、女川及び島根 において、再稼働が進んでいる。 原子力事業者を含む産業界は、産業界全体で一丸となった安全性追求が不可欠であ り、規制充足に留まらず、自主的に不断に安全を追求するべく、安全マネジメント体 制の改革、不断の安全向上を目指す組織文化の醸成に取り組む必要がある。国は、外 部評価を通じた改善や産業界全体での好事例や教訓の共有等、事業者の取組を指導し ていく。 また、原子力事業者は、確率論的リスク評価(PRA)等のリスク評価手法の高度 化など、リスク情報を活用した意思決定(RIDM)に向けて引き続き取り組む。さ らに、安全管理体制について相互に指摘しあうピア・レビュー活動を積み重ねるとと もに、国際機関等によるレビューも通じて、継続的な安全性向上につなげていくこと 等が求められる。 メーカー等も含めた事業者間の連携組織である原子力エネルギー協議会(ATEN A)が、学術界、海外機関等と連携しつつ、共通技術課題について、ガイドライン策 定等を通じて取組方針を示し、各事業者のコミットを得て実行状況を継続的に確認し ていく。こうした安全性向上へ向けた取組に際しては、規制当局と積極的な意見交換 24 原子力基本法(昭和30年法律第186号) 。 35 等を行い、共通理解の醸成を図り、安全規制やその中長期的な在り方と整合的になる よう取り組む必要がある。 核セキュリティ確保は原子力事業の基本であり、核セキュリティ文化の醸成と核物 質防護対策の徹底に常に取り組むことが求められる。新規制基準への適合はもとより、 機微情報の管理を徹底した上で、事業者間で核物質防護体制を相互に指摘し合うこと で、自主的に対策強化を図っていく。加えて、サイバーセキュリティについても、産 業界のガイドラインに基づき、各発電所での対策徹底に取り組む。そして、原子力発 電所等の警備に関し、警備当局、自衛隊、規制当局及び原子力事業者の協力関係を緊 密なものとし、関係省庁及び関係事業者は、連絡会議等を通じ連携強化に取り組む。 原子力防災体制の構築・充実については、自然災害との複合災害も引き続き想定し つつ、道路整備等による避難経路の確保等を含め、政府全体が一体的に取り組み、こ れを推進する。災害対策基本法25及び原子力災害対策特別措置法26の規定により、防災 基本計画及び原子力災害対策指針等に基づき策定される地域防災計画・避難計画につ いて、 「地域原子力防災協議会」の枠組みの下、国と関係地方公共団体等が一体となっ て、地域ごとに解決すべき課題を検討し、その計画の具体化・充実化を進める。これ らの地域防災計画・避難計画を含む地域の「緊急時対応」については、原子力災害対 策指針等に照らし、具体的かつ合理的であることを同協議会において確認し、内閣総 理大臣を議長とする「原子力防災会議」で了承していく。策定後も、最新の知見を積 極的に取り入れながら、地方公共団体等の関係者と連携し、訓練等を通じた継続的な 改善を行うとともに、原子力災害対策要員を育成する。また、原子力災害時の対応力 を向上させるため、防災業務関係者に対する研修等も実施していく。その上で、万が 一事故が起きた場合には、国は関係法令に基づき、責任をもって対処する。 (イ)立地地域との共生・国民各層とのコミュニケーション 我が国の原子力利用は、原子力立地地域の関係者の理解と協力に支えられてきた。 今後も原子力利用を進めていく上で、立地地域との共生に向けた取組が必要不可欠で ある。他方で、立地地域は、地域振興や避難道路の整備、防災体制の充実等、様々な 課題を抱えている。加えて、稼働停止の長期化、建設停止、再稼働、運転延長、廃炉 等の状況変化により、経済的・社会的な影響も生じている。国は、立地地域との丁寧 な対話を通じた認識の共有・信頼関係の深化に取り組むとともに、こうした課題に真 摯に向き合い、産業振興や住民福祉の向上、防災対策のための予算措置、原子力発電 施設等立地地域の振興に関する特別措置法27の活用、避難道路の多重化・強靱化を始 め課題解決に必要な財源確保に向けた方策の検討・具体化等も含め、先進的な課題へ の取組など立地地域の実情も踏まえつつ、関係府省庁が連携し、地域の持続的な発展 に向けた取組を進めていく。例えば、地域資源等の付加価値向上や再生可能エネルギ ーの利活用等の取組を進めている。また、福井県嶺南地域や青森県下北半島地域等で は、地域の実情やニーズを踏まえ産業の複線化や新産業・雇用の創出も含め、地方公 25 災害対策基本法(昭和36年法律第223号)。 原子力災害対策特別措置法(平成11年法律第156号)。 27 原子力発電施設等立地地域の振興に関する特別措置法(平成12年法律第148号) 。 26 36 共団体・国・事業者が地域の「将来像」を共に描き、取組を進めている。 こうした先進事例・ノウハウを共有し、全国大での議論を深めながら、地域の実情 に応じて様々な政策ツールを組み合わせて提案するなど、支援の在り方も高度化させ ていく。原子力事業者にも、原子力基本法に基づく責務として立地地域の様々な課題 解決に資する誠実な対応や主体的な貢献を求めていく。また、国と立地地域とのコミ ュニケーションにあたっては、率直な意見交換を通じて原子力政策の方向性や地域の 課題について認識を共有し、共に政策の実現や地域課題の解決を図っていく政策対話 の場(原子力政策地域会議)での議論も踏まえ、立地地域との共生に向けた政策を深 化・充実していく。 東京電力福島第一原子力発電所事故からまもなく14年が経過する今もなお、国民 の原子力や行政・事業者に対する不信・不安は払拭できておらず、原子力の安全性や バックエンドの進捗に関する懸念の声もある。この状況を真摯に受け止め、その反省 に立って信頼関係を構築するためにも、原子力に関する正確で客観的な情報提供や、 丁寧な広聴・広報を進める必要がある。国が前面に立ち、原子力立地地域のみならず、 これまで電力供給の恩恵を受けてきた消費地も含め、幅広い層を対象として理解醸成 に向けた取組を強化していく。 その際、原子力が持つリスクや事故による影響を始め、新規制基準や安全対策の状 況、重大事故を想定した防災対策、原子力の経済性、放射性廃棄物の処分等のバック エンドの取組、エネルギー政策の現状、地球温暖化対策への貢献、国際動向など、様々 なテーマに関して、科学的根拠や客観的事実に基づき、受け手のニーズに合致し、よ り伝わりやすくなるよう工夫を重ねていく。同時に、説明会等双方向の対話に加え、 ウェブ、SNS等の多様な広報手法を活用した情報発信、各地域のオピニオンリーダ ーや多様なステークホルダーとの丁寧な対話活動等、より効果的な理解活動の推進に 向けて不断に検討を行い、国民各層とのコミュニケーションの深化・充実等に、国が 前面に立って取り組む。災害時には、原子力発電所の状況等について国民の関心が高 いことから、令和6年能登半島地震での経験や教訓も踏まえ、国と原子力事業者・産 業界は、それぞれの役割に応じて、迅速、正確かつ丁寧な情報発信に取り組む。また、 世代を超えて丁寧な理解増進を図るため、原子力に関する教育の充実を図る。 (ウ)バックエンドプロセスの加速化 (a)総論 使用済燃料の再処理を始めとする核燃料サイクル、円滑かつ着実な廃炉、高レベル 放射性廃棄物の最終処分といったバックエンドへの対応はいずれも原子力を長期的 に利用していくにあたって重要な課題である。 (b)核燃料サイクルの推進 我が国は、資源の有効利用、高レベル放射性廃棄物の減容化・有害度低減等の観点 から、使用済燃料を再処理し、回収されるプルトニウム等を有効利用する核燃料サイ クルの推進を基本的方針としている。 核燃料サイクルについて、六ヶ所再処理工場の竣工遅延などが続いてきた現状を真 摯に受け止め、直面する課題を一つ一つ解決することが重要である。 37 核燃料サイクルの中核となる六ヶ所再処理工場とMOX燃料工場の竣工は、必ず成 し遂げるべき重要課題であり、同工場の竣工に向け、審査対応の進捗管理や必要な人 材確保などについて、官民一体で責任を持って取り組む。また、同工場の稼働に合わ せた所要の保障措置体制の強化に、官民それぞれで取り組む。さらに、同工場の竣工 後、安全性を確保した安定的な長期利用を行うため、メンテナンス技術の高度化、サ プライチェーン・技術の維持など、中長期での取組が必要な項目について、官民で対 応を進める。使用済MOX燃料の再処理については、国際連携による実証研究を含め、 2030年代後半を目途に技術を確立するべく研究開発を進めるとともに、その成果 を六ヶ所再処理工場に適用する場合を想定し、許認可の取得や実運用の検討に必要な データの充実化を進める。 また、平和的利用を大前提に、核不拡散へ貢献し、国際的な理解を得ながら取組を 着実に進めるため、利用目的のないプルトニウムは持たないとの原則を堅持し、「我 が国におけるプルトニウム利用の基本的な考え方」(2018年原子力委員会決定) を踏まえ、プルトニウム保有量を適切に管理し、削減に取り組む。さらに今後、原子 力発電所の安定的な運転や、六ヶ所再処理工場とMOX燃料工場の安定的な稼働を確 保しつつ、海外にあるプルトニウムに加え、同工場で取り出されるプルトニウムの着 実な利用を進め、核燃料サイクルを実効的に回していくため、プルトニウムの利用や 六ヶ所再処理工場への使用済燃料の搬入などに係る事業者間の連携・調整に国が関与 し、その機能強化を図る枠組みを検討し、必要な対応を進める。原子力事業者は、地 元理解を前提に、稼働する全ての原子力発電所を対象にプルサーマルが導入できるよ う検討を進め、2030年度までに、少なくとも12基の原子力発電所でプルサーマ ルの実施を目指す計画を示しており、事業者間の連携・協力を深めつつ、プルサーマ ルを一層推進する。 安定的かつ継続的に原子力発電を利用する上で、使用済燃料について、再処理する までの間、貯蔵する能力の拡大が重要である。こうした取組は、管理や輸送などの使 用済燃料対策の柔軟性を高め、中長期的なエネルギー安全保障に資するものであり、 原子力発電所の敷地内外を問わず、新たな地点の可能性を幅広く検討しながら、中間 貯蔵施設や乾式貯蔵施設等の建設・活用を促進する。また、事業者間の一層の連携強 化を進めることも、使用済燃料対策の柔軟性を確保する上で大きな意義がある。国も 使用済燃料対策について、事業者とともに前面に立ち、立地自治体の意向も踏まえな がら、原子力政策に関する理解の促進に主体的に取り組む。さらに、中間貯蔵施設等 に貯蔵された使用済燃料は六ヶ所再処理工場へ搬出するという方針のもと、そのため に必要となる同工場の安全性を確保した安定的な長期利用を進める。 (c)円滑かつ着実な廃炉の推進 国内では、東京電力福島第一原子力発電所を除き、18基の原子炉の廃止決定が行 われており、今後順次廃止措置が本格化すると見込まれている。浜岡原子力発電所1 号機及び2号機においては、国内初となる原子炉領域の解体撤去の申請が2024年 12月に認可された。こうした中、我が国全体の廃炉を円滑かつ着実に進めるため、 使用済燃料再処理・廃炉推進機構(NuRO)が廃炉推進業務として、廃炉の総合的 マネジメントを行うこととし、事業者が廃炉拠出金をNuROに納付する制度を導入 38 した。NuROは、廃炉の円滑化や効率化に向けて、今後取組の充実化を進めること となる。 廃炉等に伴って生じる廃棄物は、低レベル放射性廃棄物の処分場確保を含めた処 理・処分を、発生者責任の原則の下、原子力事業者等が着実に進めることを基本とし つつ、国として、その円滑な実現に向けた戦略を検討し、必要なサポートや指導を行 う。特に、クリアランス物については、廃止措置の円滑化及び資源の有効活用の観点 から、フリーリリースに向けたロードマップを策定するとともに、電炉メーカー等の 協力も得ながら、より需要規模の大きい建材加工に取り組み、更なる再利用先の拡大 を進め、早期のフリーリリースを実現する。加えて、クリアランス物の検認の効率化 に向けて、集中処理事業等の取組の支援を行い、関係者と連携して進めていく。 (d)高レベル放射性廃棄物の最終処分に向けた取組の抜本強化 高レベル放射性廃棄物については、廃棄物を発生させた現世代の責任として将来世 代に負担を先送りしないよう、ⅰ)長期にわたる制度的管理(人的管理)に依らない 最終処分を可能な限り目指す、ⅱ)その方法としては現時点では地層処分が最も有望 である、との国際認識の下、各国において地層処分に向けた取組が進められている。 「わが国における高レベル放射性廃棄物地層処分の技術的信頼性」(1999年)に て、我が国地質環境における地層処分の技術的な成立性及び信頼性が示されて以降も、 2014年、2024年に地質関係専門家による評価を行い、最新の科学的知見を踏 まえてなお、我が国において地層処分が技術的に実現可能であることを改めて確認し てきたところである。 最終処分の実現に向け、特定放射性廃棄物の最終処分に関する基本方針28に基づき、 国が前面に立ち取り組む。その際、最終処分事業の実現が社会全体の利益であるとの 認識に基づき、その実現に貢献する地域に対し、敬意や感謝の念を持つとともに、社 会として適切に利益を還元していく必要があるとの認識が、広く国民に共有されるこ とが重要である。 現在、全国3町村において処分地選定に向けた文献調査プロセスが進められている。 北海道寿都町と神恵内村では、2020年の調査開始以降、原子力発電環境整備機構 (NUMO)による調査と並行し、住民の方々が参加する「対話の場」を設置し、最 終処分に関する議論を深め、地域の将来像等についても御議論いただいてきた。20 24年11月には、NUMOが作成した文献調査報告書の知事等への送付及び縦覧、 説明会開催等の法定プロセスを開始した。 2024年6月には、佐賀県玄海町においても文献調査を開始している。引き続き、 「対話の場」等のあらゆる機会を通じ、周辺市町村等も含めた理解活動を推進し、地 域との共生の重要性を踏まえ、調査地域において、将来のまちづくりに資する情報の 収集分析や、適切な支援制度の活用促進等に取り組む。 全国のできるだけ多くの地域が地層処分事業に関心を持ち、文献調査を受入れてい ただけるよう、理解活動を積極的に行う。具体的には、対話型全国説明会の開催とと もに、全国の地方公共団体を個別訪問する全国行脚の実施等を通じ、国主導の働きか 28 特定放射性廃棄物の最終処分に関する基本方針(2023年4月閣議決定) 。 39 けを強化する。また、文献調査や概要調査の実施そのものが地層処分事業の議論を深 める契機となるものであり、北海道での法定プロセスに合わせ、全国における理解活 動に集中的に取り組む。その際、廃棄物の発生者としての基本的な責任を有する原子 力事業者は、地域に根ざした理解活動を主体的に行うとともに、最終処分場の必要性 について、広く国民に対し説明していくことが求められる。 地層処分の技術的信頼性の更なる向上に向け、引き続き、国、NUMO、JAEA 等の関係機関が、全体を俯瞰して技術開発を着実に進め、最新知見を定期的に反映す るとともに、その専門的な評価が国民に十分に共有されることが重要である。この際、 幌延の深地層研究施設等における研究成果を十分に活用していく。併せて、地層処分 を前提に取組を進めつつ、将来に向けた幅広い選択肢を確保する観点から、使用済燃 料の直接処分等の代替処分オプションや可逆性・回収可能性の維持に関する調査研究 等を進め、今後より良い処分方法が実用化された場合に将来世代が最良の処分方法を 選択できるようにする。 処分事業の実現に必要な知見を拡充するため、研究成果の発展や人材の継承に取り 組むほか、地域の理解を得ながら、国内外の関係機関と連携し、共通課題を抱える各 国と知見や経験の共有を図り、国内の取組に活用していく。 (エ)既設炉の最大限活用 原子力発電所の安全性については、原子力規制委員会の専門的な判断に委ね、東京 電力福島第一原子力発電所事故の教訓を踏まえて策定された新規制基準に適合する と原子力規制委員会が認めた原子力発電所についてのみ再稼働を進める。その際、国 も前面に立ち、立地自治体等関係者の理解と協力を得るよう、取り組む。 足下では、原子力の再稼働が進展している九州エリアや関西エリアでは、脱炭素電 源の比率は高くなり、電気料金は他エリアよりも最大で3割程度安い状況にある。ま た、再稼働の効果は、電気料金の引き下げ等の形で需要家に還元されている。このよ うに、電力供給構造の脆弱性、燃料費の削減等による電気料金引き下げ効果、今後の 産業競争力や経済成長を左右する脱炭素電源確保などの観点から、国民生活や経済活 動に寄与する原子力発電の重要性は高く、その活用を進める。そのため、再稼働の加 速に向け、原子力事業者を始めとした産業界は、 「再稼働加速タスクフォース」の下に 連携し、泊、大間、東通、女川、柏崎刈羽、東海第二、志賀、浜岡、敦賀及び島根に おいて、原子力規制委員会による設置変更許可等の審査への適切な対応、使用前事業 者検査の的確な実施、現場技術力の維持・向上を進める。国も、事業者間の協力強化 等を指導していく。また特に、東日本の電力供給構造の脆弱性、電気料金の東西の格 差などの観点から、柏崎刈羽原子力発電所の再稼働への理解が進むよう原子力関係閣 僚会議で示された方針に従って政府を挙げて対応を進めるとともに、他の再稼働して いない原子力発電所に関しても、原子力規制委員会の審査や原子力防災対策等の進展 状況も踏まえつつ、再稼働に向けて理解活動に取り組んでいくこととする。 原子力発電所の運転期間については、GX脱炭素電源法に基づき、運転期間に最長 60年という上限を設ける従来の枠組みは維持しつつ、利用政策の観点から、原子力 事業者から見て他律的な要素により停止していた期間に限り、60年の運転期間のカ ウントから除外することを認める新たな制度が整備された。国は、電力の安定供給確 40 保やGXへの貢献、安全マネジメント・防災対策の不断の改善に向けた組織運営態勢 の構築等の確認により、本制度を着実に執行していく。なお、利用政策上の判断にか かわらず、高経年化に対応した適切な管理が行われることについて原子力規制委員会 の厳正な審査に基づく認可を得なければ運転は認められないことは大前提である。国 は制度体系や確認結果等について、丁寧な説明を尽くしていく。また、事業者は、規 制による審査に適切に対応するだけでなく、産業界全体で連携し、他国の長期運転例 を参考にしつつ、経年劣化やその評価に関する技術的知見や経験の蓄積・拡充の取組 を進める。さらに、設備利用率の向上に向けては、ATENAが中心となり、トラブ ル低減の取組強化、安全性確保を大前提とした効率的な定期事業者検査の実施、運転 中保全の導入拡大、運転サイクルの長期化に向けた技術課題整理に係る規制当局との 議論等を引き続き進める。 (オ)次世代革新炉の開発・設置 2040年より前に既設炉のうち300万kW以上が運転期間60年に到達し、そ の後に既設炉の脱炭素電源としての供給力を大幅に喪失していくことを踏まえつつ、 2040年、そしてそれ以降の経済成長、国民生活の向上のために必要となる脱炭素 電源を確保するため、十数年から20年程度という相当長期のリードタイムが必要で あることを考慮しつつ対応を進めることが必要である。 脱炭素電源としての原子力を活用していくため、原子力の安全性向上を目指し、新 たな安全メカニズムを組み込んだ次世代革新炉の開発・設置に取り組む。そして、バ ランスの取れた電源構成の確保を目指し、廃炉を決定した原子力発電所を有する事業 者の原子力発電所のサイト内での次世代革新炉への建て替えを対象として、地域の産 業や雇用の維持・発展に寄与し、地域の理解が得られるものに限り、六ヶ所再処理工 場の竣工等のバックエンド問題の進展も踏まえつつ具体化を進めていく。その他の開 発などは、各地域における再稼働状況や理解確保等の進展等、今後の状況を踏まえて 検討していく。 革新軽水炉については、設計段階から新たな安全メカニズムを組み込むことにより、 事故の発生リスクを抑制し、万が一の事故があった場合にも放射性物質の放出を回 避・抑制するための機能を強化したより安全なものとなるよう実用化開発を進める。 規制予見性を高める意味で、ATENAと規制当局との間で実務レベルの技術的意見 交換会が設置されるなど、事業者による導入を見据えた動きが進展している。事業者 は、引き続き、更なる安全性向上を目的として革新軽水炉に組み込まれる新たな安全 メカニズム等と規制基準との関係性の整理に向けて、規制当局と積極的な意見交換等 を行い、共通理解の醸成を図る。また、新しい安全対策に係る技術開発を促進し、実 用化を加速する。また、高速炉、高温ガス炉、フュージョンエネルギーといった他の 次世代革新炉についても、実用化に向けた技術開発に継続的に取り組む。 (カ)持続的な活用への環境整備、サプライチェーン・人材の維持・強化 脱炭素電源として、原子力を持続的に活用していくためには、電力システム改革に よって競争が進展した環境下においても、大規模かつ長期にわたる投資、事業期間の 長さ、規制基準、バックエンド事業といった原子力事業の特徴も考慮し、安定的に事 41 業運営できるような事業環境の整備が必要であり、引き続き必要な対応についての検 討を進める。 原子力損害賠償制度について、万が一、原子力事故が発生した場合における被害者 保護に万全を期すため、本賠償開始前の被害者への賠償の早期実現のための措置等を 講じた。賠償制度の見直しについては、東京電力福島第一原子力発電所事故に係る賠 償の実情や電力システム改革等を踏まえ、適切な賠償を迅速に実施することを前提に、 国民負担最小化、原子力事業者の予見可能性確保、安全性向上の評価といった観点等 も踏まえつつ、引き続き、総合的に検討を進め、必要な措置を講ずる。 また、我が国の原子力産業・人材基盤は、高い国産化率と技術を誇り、国内経済や 雇用に対する貢献度も高く、既設炉の再稼働や革新軽水炉・小型軽水炉等の次世代革 新炉の開発・設置に向けても不可欠である。震災以降の新規建設案件喪失で、この基 盤が脅かされつつある中、将来的な建設期間長期化・コスト増加や、機器・部素材・ 燃料加工・廃炉を含めた産業基盤・技術の途絶、規制対応の面を含めた原子力人材の 不足等を回避する必要がある。そのため、産業界、官公庁が連携した原子力サプライ チェーンプラットフォームを通じ、一般産業品活用等の事業承継支援、部品・素材の 供給途絶対策、人材育成・確保支援を拡充するとともに、 「未来社会に向けた先進的原 子力教育コンソーシアム」 (ANEC)などの関係機関の協力枠組みを活用しつつ、ス キル標準導入等の人材育成施策や産学官の交流を関係省庁が連携して進める。また、 新試験研究炉を含む研究基盤・人材育成体制を構築する。また、国内の次世代革新炉 開発・設置に向けて産業基盤を維持・強化する意味でも、市場拡大が想定される海外 プロジェクトへの参画を官民で後押ししていく。 ウラン燃料のサプライチェーンについて、戦略的にウランの濃縮、燃料加工等に関 する技術を維持するとともに、同志国間での連携を進めつつ、六ヶ所再処理工場で回 収されるウランの利用も含め、一定程度の自律性を有する持続可能な燃料供給体制を 確保するべく、官民で取組を進める。 (キ)国際的な共通課題の解決への貢献 世界では、原子力の利用が今後拡大する見込みであり、東京電力福島第一原子力発 電所事故の経験から得られた教訓や我が国が培ってきた経験に基づき、世界における 原子力安全の向上や、原子力の平和的利用、核不拡散及び核セキュリティ分野におい て積極的な貢献を行うとともに、地球温暖化対策に貢献していくことは我が国の責務 であり、世界からの期待でもある。そうした観点から、我が国としてはIAEA基準 等の原子力安全の国際標準の策定や安全性を高めた原子力技術と安全文化の共有等 を通じて、ウクライナを含む世界の原子力安全の向上に貢献する。また、核セキュリ ティ・核不拡散分野においては、核燃料の核拡散抵抗性の向上や、保障措置技術や核 鑑識・検知の強化等の研究開発において国際協力を進めるとともに、IAEAによる 保障措置の強化や効果的な輸出管理の促進といった努力を継続し、国際社会における 取組を強化していくことが重要である。こうした原子力安全・核セキュリティ・核不 拡散の確保を前提として、原子力利用検討国等に対する人材育成・制度整備・原子力 技術を含む支援の実施等を通じ、COP28において温暖化対策の手段として位置づ けられ、「原子力3倍宣言」等に掲げられる世界の適切な原子力利用の拡大に貢献し 42 ていく。また、これらの取組に際しては、米・英・仏等の同志国との二国間連携や、 IAEA、経済協力開発機構原子力機関(OECD/NEA)、G7等の多国間協力の 枠組みを通じ、国際社会と連携して取り組んでいく。 (4)火力発電とその脱炭素化 ① 総論 火力発電は、温室効果ガスを排出するという課題がある一方、足下で電源構成の7 割を占めるなど電力需要を満たす供給力、再生可能エネルギー等による出力変動や周 波数変動を補う調整力、系統の安定性を保つ慣性力・同期化力等として重要な役割を 担っている。 足下、再生可能エネルギー導入拡大に伴い、火力全体で稼働率が低下し、収益性の 低下や燃料の安定的な確保の難しさが増すことなどによって安定的な稼働が難しく なり、休廃止に向けた動きが徐々に進展しているが、変動性再生可能エネルギーの発 電量が少ない状態が長く続きやすい冬の悪天候時などを念頭に置くと、再生可能エネ ルギー及び蓄電池によって火力を完全に代替することは難しいと考えられる。また、 データセンターや半導体工場の新増設等による将来の電力需要の増加も見据える必 要もある。一方、足下の電力需給も予断を許さない状況である中、供給力不足の懸念 等から、非効率な石炭火力のフェードアウトは必ずしも十分に進展していない。 このため、火力全体で安定供給に必要な発電容量(kW)を維持・確保しつつ、非 効率な石炭火力を中心に発電量(kWh)を減らしていく。具体的には、トランジシ ョン手段としてのLNG火力の確保を燃料の確保と併せて進めるとともに、水素・ア ンモニア、CCUS等を活用した火力の脱炭素化について、技術開発やコストなどを 踏まえて時間軸や排出量にも留意し、事業者の予見可能性を確保しながら進めていく。 加えて、非効率な石炭火力のフェードアウトを促進する。その際、今後の電力需要の 高まりの可能性に備え、一層導入が拡大する変動性再生可能エネルギーとの共存の中 で高需要期の供給力としての貢献を期待できるよう、発電設備、燃料サプライチェー ンの維持等に留意しつつ、低稼働電源のkW維持に必要な制度的措置や、緊急時に備 えた予備電源制度について、不断の検討を行う。加えて、共同火力発電事業者や自家 発電事業者の非効率火力においても、脱炭素化に向けた取組が進められることが重要 である。 同時に、既存運転・保守の効率化によるコスト削減やより柔軟な運用等に向けて、 AI・IoTを活用した火力発電の運用の最適化・自動化、負荷変動対応や機動性に 優れた火力技術開発等に取り組む。また、こうした対応を進めるにあたっては、火力 の建設・運転・維持に必要なサプライチェーン等の維持、脱炭素化や休廃止等によっ て将来的に生じるおそれのある地域経済や雇用等への影響にも留意が必要である。発 電事業者から関係者に対し、トランジションの方向性が広く提示されるなど、各地域 の実情を踏まえ、関係者とコミュニケーションを重ねながら、脱炭素化に向けたトラ ンジションを進めることが重要である。 ② LNG火力発電 43 LNG火力は、石炭・石油火力と比べて温室効果ガスの排出量が少なく、将来的な 水素の活用やCCUSの導入などによる脱炭素化が可能である。経済性に劣る火力の 休廃止等が進みつつも、電力需要の増加が見込まれる中、電力の安定供給のために必 要な火力供給力を維持・確保し、需給両面での将来的な不確実性に備える観点からは、 電源の脱炭素化に向けたトランジションの手段としてLNG火力の活用は必要であ る。実際、海外においても、電力の安定供給の確保のため、LNG火力を活用する動 きが進んでいる。 こうした中、我が国においても長期脱炭素電源オークションを通じて、将来的な脱 炭素化を前提としたLNG専焼火力の新設・リプレースを促進している。今後も更に 火力の供給力を確保する観点から、需給バランスの将来動向も見ながら、LNG火力 の将来的な脱炭素化を前提とした新設・リプレースを一層促進する。さらに、水素や CCUS等を活用したLNG火力の脱炭素化についても、長期脱炭素電源オークショ ン等を通じて促進する。水素を活用した発電について、燃焼器の技術開発や発電実証 をグリーンイノベーション基金も活用しながら進めており、国内外の市場獲得も睨み ながら社会実装を目指していく。 一方、LNGは、長期間の貯蔵が困難であることや、地政学リスクによる需給バラ ンスの変化・価格高騰などといった燃料調達リスク等を踏まえると、LNG火力にお いては、燃料の安定確保が極めて重要である。2021年のLNG需給ひっ迫以降、 需給ひっ迫を予防するための発電用燃料に係るガイドラインの作成や、燃料在庫の定 期的なモニタリング、全国・地域連携スキームの構築、戦略的余剰LNG(SBL29) の導入等を進めてきた結果、必要な燃料を政府や関係事業者等が協調して確保する体 制が構築されつつある。他方、電力自由化の進展による販売電力量の予見性低下や、 それに伴う長期PPAの減少、変動性再生可能エネルギーの導入拡大に伴う燃料消費 量の季節変動の拡大、LNG火力の継続的な稼働率低下などの要因により、発電事業 者が長期契約により燃料を安定的に確保することが難しくなりつつあり、発電事業者 や需要家が燃料スポット価格の変動リスクにさらされる懸念が高まっている。 このような中、一時的な電力需要の増加等によりLNG在庫が急激に減少し、一部 のLNG火力で一時的な燃料制約が生じるケースも発生している。こうした状況を踏 まえ、電力需給のひっ迫や、国際情勢の急変に伴う燃料スポット価格の急騰等への備 えとして、安定的な電力供給が可能となる量のLNG長期契約の確保を促進するため の措置の検討など、平時と緊急時それぞれの燃料の安定的な確保の対応の在り方につ いて更に検討を進める。 ③ 石炭火力発電 石炭火力は現在、電源構成の約3割を占めているが、LNG火力等に比べて温室効 果ガスの排出量が多いため、2050年カーボンニュートラルの実現に向けて、電力 の安定供給の確保を大前提としつつ、非効率な石炭火力のフェードアウトを着実に推 進していくことが喫緊の課題である。 まずは、2030年に向け、非効率な石炭火力について、省エネ法や容量市場等の 29 Strategic Buffer LNGの略称。 44 制度的枠組みを活用し、引き続き、事業者の自主的な取組によるフェードアウトを促 進していく。 足下では、供給力不足の顕在化等により、非効率な石炭火力のフェードアウトは必 ずしも十分に進んでいないところ、GX促進の観点から2026年度に本格化される 排出量取引制度や、2028年度から新たに導入される見通しである化石燃料賦課金 等によりLNG火力と比べた石炭火力の経済優位性が失われ、フェードアウトが進展 していく可能性がある。今後、電力需要増加の可能性もあり、供給力不足に対する懸 念は一層高まる中、電力需要の増加の見通しや、脱炭素電源を始めとした供給力の状 況も見ながら、非効率な石炭火力のフェードアウトをより一層促進するため、制度的 な措置の強化を検討する。 また、アンモニアやCCUS等を活用した脱炭素化を、長期脱炭素電源オークショ ン等を通じて促進する。アンモニアを活用した発電について、燃焼器の技術開発や発 電実証をグリーンイノベーション基金も活用しながら進めており、国内外の市場獲得 も睨みながら社会実装を目指していく。 加えて、既存火力への追設等を念頭に、脱炭素化を見据え、石炭ガス化複合発電(I GCC)等の次世代の高効率火力発電技術の開発を推進する。 ④ 石油等火力発電 石油火力については、オイルショックを契機に石炭火力への転換、更にはその後の LNG火力への転換が進展し、従前より設備容量は減少している。足下でも、東日本 大震災直後や2021年頃の電力需給の厳しい局面での一時的な稼働率の上昇を除 き、石油火力の活用は減少し、休廃止が進展している。さらに、石油サプライチェー ンの維持が一層困難になる中、石油火力の休廃止が一層進展することが想定される。 一方、大規模災害等による電源の脱落や、需要の急増など、追加の供給力確保を行う 必要が生じた際の供給力としての機能も期待される。 (5)次世代電力ネットワークの構築 ① 総論 電力ネットワークの次世代化を進めることは、電力の安定供給を確保しつつ、電力 システムの脱炭素化を進めるために不可欠である。自然災害時等のレジリエンス強化 と再生可能エネルギーの最大限の活用を実現しつつ、電力の将来需要を見据えタイム リーな電力供給を可能とするためには、既存系統の最大限活用や電力広域的運営推進 機関が策定した広域連系系統のマスタープランを踏まえた地域間連系線の整備、地内 基幹系統等の増強を着実に進める必要がある。加えて、再生可能エネルギーの最大限 導入を進める中で、変動性再生可能エネルギーの導入量が更に増加することに伴い必 要となる調整力を確保し、系統・需給運用の高度化を進めることで、再生可能エネル ギーの変動性への柔軟性も確保した、次世代の電力ネットワークの構築を推進してい く。こうした対応の中では、系統整備に加え、需給運用、電源投資などにおいて、電 力広域的運営推進機関が重要な役割を果たしていく。また、地域の分散型エネルギー リソースを活用した取組を進めることは、地方創生にも資するものである。さらに、 45 能登半島地震等の自然災害に起因する大規模停電等を踏まえて、停電復旧への対応や 要因分析を踏まえた事業者間連携の強化等により安定供給確保に向けた対応を着実 に進める必要がある。 ② 電力ネットワーク(系統)の増強 (ア) 地域間連系線や地内基幹系統等の整備 これまで、既存系統を効率的に活用するため、ノンファーム型接続の推進等により、 活用可能な送電容量の拡大を進めてきた。こうした取組を引き続き推進しつつ、再生 可能エネルギーの更なる導入拡大と電力の安定供給を実現するため、系統の増強を進 めていく。地域間連系線については、再生可能エネルギーの導入等に計画的に対応す るため、広域連系系統のマスタープランを踏まえて整備を進め、費用を再生可能エネ ルギー賦課金や全国の託送料金等を通じて負担する仕組みを導入している。こうした 制度の下、北海道・本州間の海底直流送電や中国九州間連系設備(関門連系線)の整 備など、今後10年間程度で、過去10年間(約120万kW)と比べて8倍以上の 規模(1000万kW以上)で整備を目指しており、資金調達等の課題に対応するた めの必要な制度的措置等を検討していく。 また、今後、再生可能エネルギーの更なる導入や大規模電力需要の局地的な立地が 見込まれる中、地域間連系線の整備の在り方の見直しが必要になる可能性がある。こ のため、広域連系系統のマスタープランについて、将来の再生可能エネルギーの導入 状況や大規模需要の立地状況等を踏まえた見直しの検討を進めていく。 加えて、再生可能エネルギーを最大限活用するとともに、自然災害時等のレジリエ ンスを強化し、電力の安定供給を確保するためには、地内基幹系統等を効率的に整備 することも重要である。これまで地内基幹系統は、エリアの一般送配電事業者が整備 してきたが、更なる計画的整備のため、地域間連系線と一体的に整備するものや広域 的取引に資するものは、電力広域的運営推進機関の関与の下で、一般送配電事業者が 整備を進めることとした。こうした中、再生可能エネルギーの導入等に資する地内基 幹系統等についても、これまで以上に効率的な整備が必要となる。このため、各エリ アの一般送配電事業者等が、より効率的・計画的に整備を進めるための仕組みを検討 するとともに、再生可能エネルギー電源の立地地域の負担とその全国への裨益を踏ま え、エリアを越えた費用負担の仕組みも検討していく。これらと合わせ、無電柱化の 推進等の対応も進める。 (イ) 局地的な大規模需要の立地を見据えた送配電網の整備 データセンター等の付加価値の高い産業プロセスの維持・強化につながる国内投資 や電化等を通じた製造プロセス等の脱炭素化を促進していくためには、新たな大規模 需要に対し、迅速かつ確実に電力供給を行う必要がある。このため、データセンター 等の系統接続申込みの規律を確保するとともに、一般送配電事業者が早期に電力供給 を開始できる場所を示した「ウェルカムゾーンマップ」を通じた立地誘導を進める。 また、大規模需要を効率的な系統整備等の観点での適地に誘導するため、一般送配電 事業者が地方公共団体等の関係機関と連携し、適地における先行的・計画的な系統整 備を促す仕組みを検討する。また、整備を着実に推進しつつ需要家の公平性を確保す 46 るため、一般送配電事業者が行う先行的・計画的な系統整備に係る費用が確実に回収 される仕組みや、GXに資する取組等を実施する事業者において、整備費用が大規模 になった場合における費用負担の在り方を検討する。 (ウ) 送配電網の整備に係る資金調達等の課題への対応 一般送配電事業者等は、これまでも、地域間連系線の整備を含め巨額の投資を行っ てきたが、今後、脱炭素化や電力の安定供給確保に向けた投資や既存設備の更新等、 加速度的に巨額の投資が必要となる見込みである。こうした中、一般送配電事業者は、 レベニューキャップ制度の下、必要な系統整備等の費用の回収の蓋然性が高いとして も、一定規模以上の大規模投資の場合、工期が長く、費用回収に長期間を要すること から、キャッシュフローの悪化を懸念し、その結果、必要な投資が停滞する可能性が ある。また、SPC(特別目的会社)等を組成して行うプロジェクトファイナンスの 場合において、金融機関は、費用増額時等の費用回収のリスクを踏まえ、大規模な融 資を躊躇する傾向にあり、投資が遅れる可能性がある。 今後、電力需要の増加の可能性や再生可能エネルギーの導入拡大、自然災害発生リ スクの高まり等に伴い、北海道・本州間の海底直流送電や大規模地内基幹系統等への 機動的な投資が重要となる中、資金調達が制約となり必要な投資に遅れが生じてはな らない。このため、託送料金制度における費用の回収の在り方や資金を量的に確保す るための仕組みなど、制度的な対応を含めた資金調達環境の整備について検討を進め る。これらに加え、大規模な系統整備に不可欠な送配電分野の施工力確保に向けた対 応も検討していく。 ③ 系統・需給運用の高度化 (ア) 調整力の運用の高度化 安定供給確保のため調整力は重要である。現在調整力の大部分を火力発電や揚水発 電が占める中、調整力の広域調達・運用、市場原理による競争活性化等により調整力 コストを低減するため、2021年度に需給調整市場が創設され、2024年度から 調整力の全商品の市場取引が開始された。市場応札量増加に向けた対応など、更なる 運用改善を進める。 また、今後、変動性再生可能エネルギーの導入量が更に増加することに伴い、調整 力必要量や系統混雑の発生も増加することが想定される。このような中、系統制約も 考慮に入れた上で、供給力と調整力の同時約定により調整力の調達及び電源運用の最 適化を行う「同時市場」の導入に向けて、本格的に検討を深めていく。 (イ) 蓄電池・ディマンドリスポンス(DR)の活用促進 電力システムの柔軟性を供出するにあたり、蓄電池は、再生可能エネルギー等で発 電された電力を蓄電し、夕方の需要ピーク時などに電力供給できるほか、迅速な応答 性を有する調整電源として、DRは需給バランスを確保するための需要側へのアプロ ーチ手段として重要である。2021年度から補助金による系統用蓄電池の導入支援 を行い、2023年度に開始した長期脱炭素電源オークションにおいても応札対象と し導入促進を図っている。また、各電力市場で取引可能となる等、環境整備が整いつ 47 つあり、系統用蓄電池の接続検討受付件数は増加している。一方、価格競争に陥り安 全性や持続可能性が損なわれる懸念や系統接続の長期化、各電力市場での収益性評価 が不十分である等の課題も顕在化している。このため、支援措置における事業規律を 確保するための要件等の検討や収益性の評価等を通じ、安全性や持続可能性が確保さ れた蓄電池の導入を図ること等が必要である。 蓄電池やヒートポンプ給湯機、コージェネレーション等の分散型エネルギーリソー ス(DER30)の普及等に伴い、これらを活用したDRも進展している。今後、製造事 業者等に対して目標年度までにDRready機能を具備した製品の導入を求める 仕組みの導入、スマートメーターのIоTルートを利用したDR実証、蓄電・蓄熱等 を活用した電力貯蔵システムやコージェネレーション、負荷設備、蓄熱槽等のDER を活用したアグリゲーションビジネスの促進等を行い、DRの更なる普及を図ること が必要である。また、DERの活用にあたっては、地産地消による効率的なエネルギ ー利用や災害時のレジリエンス強化等にも資する地域マイクログリッドが重要であ る。今後は、一部の地域で見込まれる系統混雑の緩和等に向けて、技術的な実現可能 性を追求していく。 (ウ) 揚水の活用促進 揚水発電は、再生可能エネルギー等の電力を蓄電し、需要ピーク時などに電力供給 できるほか、短い応動時間で周波数変動を調整できる電源として、重要性が増してい る。今後も引き続き、既存設備の採算性向上に向けた設備投資促進、新規開発に向け た導入可能性調査等を進め、より一層新規投資を促していく。 30 需要家の受電点以下に接続されているエネルギーリソース(発電設備、蓄電設備、負荷設備) に加えて、系統に直接接続される発電設備、蓄電設備を総称するもの。 48 4.次世代エネルギーの確保/供給体制 (1)基本的考え方 水素はアンモニアや合成メタン、合成燃料の基盤となる材料であり、これら水素等 は幅広い分野(鉄鋼、化学、モビリティ分野、産業熱、発電等)での活用が期待され る、2050年カーボンニュートラル実現に向けた鍵となるエネルギーである。 世界では、技術開発支援にとどまらず、水素等の製造や設備投資等に対する大胆な 支援策が始まりつつある。また、豊富で安価な再生可能エネルギーや、天然ガス、C CS適地などの良質な環境条件や、水素関連技術の優位性など、各国が、自国の強み を活かした産業戦略を展開し、資源や適地の獲得競争が起こり始めている。 我が国は水素製造や輸送技術、燃焼技術など複数分野における技術で世界を先導し てきている。 「技術で勝って、ビジネスでも勝つ」べく、引き続きNEDO等と連携し ながら、グリーンイノベーション基金事業等で世界に先行した技術開発により競争力 を磨くとともに、世界の市場拡大を見据えて先行的な企業の設備投資を促していく。 社会実装に向けては、水素社会推進法に基づき、低炭素水素等の大規模サプライチ ェーンの構築を強力に支援していきながら、諸外国や企業の動向も踏まえて、国内外 を含めた更なる低炭素水素等の大規模な供給と利用に向けて、規制・支援一体的な政 策を引き続き講じ、コストの低減と利用の拡大を両輪で進めていく。また、地方創生 にもつながる地域資源を生かした水素等の利活用も進める。 (2)水素 諸外国において、補助金や税額控除といった金銭的支援策が講じられているものの、 インフレによる開発費の増大等により、特に市場が黎明期の水素等の新技術は価格転 嫁の壁が高く、新規需要者の獲得が困難となっている。また、欧州では、水素製造量 について、2030年目標が1,000万トン(電解槽容量100GW相当)である 一方、2023年9月時点での電解槽導入量は僅か0.2GWと、目標との乖離が大 きい状況である。一方で、目標達成のために主要産業の競争力を損なわない戦略的な 選択が重要であるとしつつ、脱炭素に向けた取組は堅持して、産業政策の推進の必要 性が強調されており、事業者も、多くが産業規模の水素プロジェクトを最終的な投資 準備段階まで進めている状況でもある。 現在、商用化されたサプライチェーンはまだ存在しておらず、コスト面や新規需要 の創出・拡大に引き続き課題はあるが、日本においても、掲げてきた目標(2030 年に30円/N㎥(CIF価格) ・最大300万t/年、2040年に1,200万t /年、2050年に20円/N㎥以下、2,000万t/年)の実現を引き続き目指 しつつ、水素社会推進法に基づく低炭素水素等のサプライチェーン構築のための3兆 円規模の価格差に着目した支援により、まずは、将来の産業競争力につながる黎明期 のユースケース作りをしたたかに進めていく。その際には、エネルギー安全保障の観 点からも、将来的に十分な価格低減と競争力を有する見込みのある国内事業を最大限 支援するとともに、国産技術等を活用して製造され、かつ大量に供給が可能な水素等 49 の輸入についても支援する。加えて、水電解装置や燃料電池、これらの部素材におけ る製造能力拡大に向けた投資や、将来的にコスト競争力のある水素の製造可能性を有 する高温ガス炉の技術開発を促進し、産業競争力の向上を図っていく。 また、水素社会推進法に基づき、大規模な利用ニーズの創出と効率的なサプライチ ェーン構築に資する、様々な事業者に広く裨益し得る設備に対する拠点整備支援や特 例措置を実施していくとともに、保安規制の合理化・適正化に取り組む。 水素等の利用拡大に向けて、運輸分野については、省エネ法に基づく非化石エネル ギー転換目標の設定などの規制・制度と一体となった、燃料電池商用車や大規模水素 ステーションの普及拡大に向けた支援を実施するほか、船舶における温室効果ガスの 排出量を削減する制度の検討や、ゼロエミッション船等の開発・建造の促進、燃料電 池鉄道車両の社会実装、大量の水素利用に必要な港湾の整備に向けた取組を進める。 電力分野については、大量の水素需要が見込めることから水素利用拡大のために引 き続き重要であり、燃焼器の技術開発や発電の実機実証を着実に進めていく。また、 長期脱炭素電源オークションにおいて、第2回入札から、水素・アンモニアの燃料費 のうち、固定的な支払部分を支援対象に追加したが、上限価格の引上げ等を含め、更 なる制度対応の必要性も継続的に検討しつつ、着実な社会実装を進めていく。 産業分野については、工業用原料や産業プロセスで必要な高温熱源として期待され ており、水素還元製鉄などの製造プロセスの大規模転換や、水素バーナー・ボイラー 等の技術開発・実証を引き続き進めていく。また、水素の供給側・需要側双方におけ る技術や市場環境等の状況と見通しを把握しながら、中期的には制度面での対応も含 め、適切かつ有効な非化石エネルギー転換の措置を講じていく。 また、地域の脱炭素化やエネルギー自給率向上、地方創生にもつながる、地域の再 生可能エネルギーや資源等を活用した水素の供給と輸送、面的な利用に向けた取組の ほか、レジリエンスの強化にも資する燃料電池の一層のコスト削減に向けた取組を進 める。 (3)アンモニア アンモニアも幅広い分野(化学や産業熱、船舶、発電等)で活用が期待されるエネ ルギーである。現時点で規模は小さいものの、肥料や化学製品の原料として既存サプ ライチェーンが存在しており、欧州では主に水素キャリアとして、アジアでは発電混 焼の燃料として、国際海運では舶用燃料として、注目されている。 アンモニアについても、諸外国において、補助金や税額控除といった金銭的支援策 が講じられているものの、インフレによる開発費の増大等により、厳しい状況にある。 他方で、こうした状況下においても、諸外国で製造プロジェクトは立ち上がりつつあ り、化学分野や発電分野における燃料転換に向けた動きは着実に進展している。現状 ではコスト面や新規需要の創出・拡大に課題もあるが、引き続き、想定してきた国内 需要(2030年に300万t/年(水素換算で約50万t/年)規模、2050年 に約3,000万t/年(水素換算で約500万t/年))やコスト目標(2030年 に10円台後半/N㎥(熱量等価水素換算))を目指しつつ、水素と同様、水素社会推 50 進法に基づく支援措置等により、まずは、将来の産業競争力につながる黎明期のユー スケース作りをしたたかに進めていく。 また、国内のみならず、早期にアジアを中心とする海外市場にも展開する観点から、 製造面での大規模化・コスト削減・CO2排出量低減に資する開発・実証や、利用面 での高混焼・専焼化に向けた技術開発を進めるほか、水素と同様、産業分野、船舶分 野、発電分野等において、利用を促進するための制度の在り方を検討していく。 (4)合成メタン等 ① 合成メタン 水素とCO2から合成(メタネーション)された合成メタンは、既存のインフラ等 を利用できるため、ガスの円滑な脱炭素化に寄与し得る。合成メタンの市場創出や利 用の拡大には、実用化・低コスト化に向けた技術開発と同時に、持続可能な形で投資 が継続される環境整備を進めることが重要である。 合成メタンの製造コストは、CO2回収コストやメタネーションの設備費等が含ま れるが、特に、水素製造コストが大きな割合を占めている。こうしたコストを低減す るため、既存のメタネーション技術より生産効率が飛躍的に高まる革新的メタネーシ ョン技術について、2030年の基盤技術の確立、2040年代の大量生産技術の実 現を目指し、引き続き、技術開発に取り組む。 2030年度において、供給量の1%相当の合成メタン又はバイオガスを導管に注 入し、その他の手段と合わせてガスの5%をカーボンニュートラル化していくため、 これらの導入目標をエネルギー供給構造高度化法31の判断の基準等に位置付け、その 導入コストのうち、ガスの一般的な調達費よりも割高になる部分は、ガス小売事業者 間の公平な競争環境を整備する観点から、託送料金原価に含めることができる仕組み を構築する。また、これらを踏まえ、地球温暖化対策推進法に基づく温室効果ガス排 出量算定・報告・公表制度における排出係数への反映や合成メタンの排出削減価値に 係る第三者認証機関に求める具体的な要件の検討を行うなど、必要なカウントルール の整備等を行う。 合成メタンやバイオガスの導入などの様々な手段を組み合わせ、2050年の都市 ガスのカーボンニュートラル化を実現するため、特定の事業者のみならず、全国の都 市ガス事業者により、日本全体として都市ガスのカーボンニュートラル化を推進する という視点から、必要な制度等の在り方について検討を行う。 ② グリーンLPガス グリーンLPガスは、バイオLPガスや合成LPガス等、化石燃料によらないLP ガスの総称である。現状ではバイオディーゼルとともに副生されるバイオLPガスが 主流であるが、バイオディーゼルとバイオLPガスの生産比率は10:1と、その大 量生産が課題であり、世界的にみても、その生産に特化した先進技術は確立されてい 31 エネルギー供給事業者によるエネルギー源の環境適合利用及び化石エネルギー原料の有効な利 用の促進に関する法律(平成21年法律第72号) 。 51 ない。今後、世界のLPガス需要は、燃料転換が進む中国、インドが牽引する形で拡 大していく見込みであり、グリーンLPガスの大量生産技術の確立が重要である。 グリーンLPガスの大量生産に向けて、革新的触媒等の技術開発や生産プロセス実 証を進め、2030年代の社会実装を目指す。その際、官民検討会等の場を活用しな がら、内外のプレイヤーの連携の下、海外市場も視野に入れた生産・流通網を含むビ ジネスモデルの構築など、必要な取組を進める。また、LPガスのカーボンニュート ラル対応を推進すべく、カーボンクレジットの利用拡大や、rDME(バイオ由来の ジメチルエーテル)を混入した低炭素LPガスの導入に向けた取組等を後押しする。 (5)バイオ燃料、合成燃料 バイオ燃料は植物、廃食油や廃棄物から製造され、原料の植物等が、成長過程で大 気中のCO2を吸収するため、化石燃料と比べ低炭素な燃料である。今後、次世代バ イオ原料の国産化に向けた技術開発に関する取組を進めるとともに、次世代バイオ原 料の資源国との連携を深め、サプライチェーンの構築・強化を進める。 自動車分野では、制度等の必要な環境を整備しながら、2050年カーボンニュー トラル実現に向けて、2030年度までに一部地域でガソリンへの直接混合も含めた バイオエタノール導入拡大により、最大濃度10%の低炭素ガソリン供給開始を目指 す。また、対応車両の普及状況やサプライチェーンの対策状況等を見極めて地域や規 模拡大を図り、2040年度から最大濃度20%の低炭素ガソリン供給開始を追求す る。 航空分野では、SAF導入拡大のため、GX経済移行債を活用した大規模なSAF 製造設備構築に係る設備投資支援や「戦略分野国内生産促進税制」による税額控除等 の先行投資支援、2030年のSAFの供給目標量を「2019年度に日本国内で生 産・供給されたジェット燃料のGHG排出量の5%相当量以上」と設定するなど、中 長期的な規制・制度的措置により国際競争力のある価格で安定的にSAFを供給でき る体制を構築する。また、今後バイオ由来のSAFは原料の争奪戦が予想されるため、 非可食原料の開拓による原料の多角化、安定的な原料確保に向けたサプライチェーン の構築・強化を行う必要がある。 自動車・船舶・鉄道・建設機械等の分野で幅広く使用される軽油に対しては、原料 供給制約があることも踏まえた上で、バイオディーゼルの導入を推進する。 合成燃料は既存の内燃機関や燃料インフラが活用できること、化石燃料と同等の高 いエネルギー密度を有することがメリットである。自動車分野では、e-ガソリンや e-ディーゼル、船舶分野ではe-メタノール、航空分野ではe-SAFとしての活 用が期待される。2030年代前半までの合成燃料商用化を目指し、NEDO等と連 携しながら実施する研究開発や国内事業の組成、出資等による海外事業への参画、国 際的な対話を通じた環境価値創出やビジネスモデルの構築など、商用化に向けた必要 な取組を進める。 52 5.化石資源の確保/供給体制 (1)基本的考え方 化石燃料は、我が国のエネルギー供給の大宗を担い、世界的な需要は減少の見通し であるが程度には幅があり、そのサプライチェーンは一度途絶すれば復元は相当困難 であり、安定供給を確保しつつ現実的なトランジションを進める必要がある。これら を踏まえ、化石燃料について、地理的な近接性や資源国との中長期的な協力関係等を 総合的に勘案しつつ、資源外交、国内外の資源開発、供給源の多角化、危機管理、サ プライチェーンの維持・強靱化等に取り組む。 特に、LNGの安定供給確保は、電力の安定供給の確保を大前提に非効率な石炭火 力の発電量を減らしていく中、現実的なトランジションの手段としてLNG火力を活 用する必要があることに加え、都市ガスの安定供給の観点から重要である。価格高騰 や供給途絶等のリスクに備え、官民一体となって必要なLNGの長期契約を確保する 必要がある。加えて、災害の多い我が国では、エネルギーの強靱性の観点から、可搬 かつ貯蔵可能な石油製品やLPガスの安定調達と供給体制確保は重要である。 将来的な脱炭素燃料・技術を含む資源獲得競争を勝ち抜くべく、国際競争力のある 「中核的企業」の創出や、これらの企業が「総合エネルギー産業」に変革し2050 年カーボンニュートラル社会実現のメインプレイヤーとなることも目指す。 (2)天然ガス ① 総論 天然ガスは、熱源として効率性が高く、地政学的リスクも相対的に低く、足下、電 源構成の約3割を占める。また、化石燃料の中で温室効果ガスの排出が最も少なく、 再生可能エネルギーの調整電源の中心的な役割を果たすと同時に、燃料転換等を通じ た天然ガスシフトが進むことで環境負荷低減にも寄与する。さらに、将来的な技術の 進展によりガス自体の脱炭素化の実現が見込まれ、水素等の原料としての利用拡大も 期待される等、カーボンニュートラル実現後も重要なエネルギー源である。 他方、ロシアによるウクライナ侵略等によりエネルギー安定供給の不確実性が生じ、 引き続きLNG市場は構造的にタイトである。こうした中でも、自主開発を推進し、 市場拡大や供給源多角化にあたっては、地理的な近接性や資源国との中長期的な協力 関係等を総合的に判断し、安定供給性・強靱性を向上させる必要がある。内閣総理大 臣を筆頭とした資源外交やJOGMECによるリスクマネーの供給、LNG産消会議 の継続等により、安定調達と供給体制の確保に取り組む。 日本の石油・天然ガス開発企業には、脱炭素燃料・技術の供給分野等で、メインプ レイヤーであり続けることが期待される。 ② 自主開発の更なる推進 石油・天然ガスの輸入依存による交渉力の限界や中東情勢等の影響の受けやすさと いった構造的課題のある我が国が、様々な情勢変化のもとでも安定供給を確保するた 53 めには、日本企業が直接開発・生産に携わる上流権益確保と国内資源開発による自主 開発を進めることが極めて重要である。石油・天然ガスの自主開発比率を2030年 に50%以上、2040年に60%以上に引き上げることを目指す。 ③ LNGの安定供給確保 2024年のLNG産消会議では、 (a)LNG火力は再生可能エネルギーによる変 動性を調整するために必要であること、 (b)LNGはアジア等経済成長する国々のエ ネルギー需要を満たし石炭からの移行を支援すること、 (c)確立されたLNGインフ ラは、低排出ガス開発の支援に転用できることが確認された。 また、LNGは、需要家に供給と価格の安定性を提供するためにも、長期契約での 一定量の確保が必要であるが、このLNG安定調達の度合いを測定・評価する指標を 設定し、政策支援につなげることを目指す。 なお、中長期的なLNG需要量は、新産業による電力需要の拡大、カーボンニュー トラル燃料価格の動向等によって、大きく影響を受ける。例えば、IEAは2040 年に向けて、産業のガス需要や電力消費需要の高まり、燃料転換の進展の度合いによ って大きくガス需要が増加する可能性を明記している。特に、不確実性の大きい需要 領域について、LNG確保に伴うリスクへの対応が必要であり、民間主導を前提に、 事業者間、官民の協調した確保が必要である。このため、IEA閣僚理事会等におい て重要性が確認されたガスリザーブメカニズムの考え方を踏まえ、地理的特性上ガス 貯蔵が困難な我が国においても有効な政策的措置や柔軟な契約の確保を講じること でセキュリティを強化する。特に有事においては、ガス貯蔵が難しくLNGとして輸 入に頼る我が国としては、SBL等の取組を通じ、事業者と連携し政府が主導して必 要量を確保する。一方、こうした措置には多額の費用が見込まれるため、平時からの LNGサプライチェーンの強化に向け、タンク容量の増強等の貯蔵能力強化やリロー ド設備拡充等の事業者間融通の促進策等を検討する。また、緊急時の相互融通等の協 力の基盤である政府間協力覚書の締結を更に進めるとともに、事業者のみでは対応し きれない緊急時のため、JOGMECを通じたLNG調達体制の構築に万全を期す。 加えて、公的金融支援は、緊急時調達等を実施する際のレバレッジとしての重要性も 増しており、エネルギー安全保障に貢献するため、一層厚みのある支援体制の整備が 求められている。また、日本のエネルギー安全保障上の観点から極めて重要な燃料調 達先を確保する観点から、資源国との間で必要な協議を継続する。 世界のLNG市場では、海外メジャー等は自らリスクを取り、更にプレゼンスを拡 大している。このような状況を認識し、日本企業の「外・外取引」を含むLNG取扱 量1億トンの目標を維持し、仕向地条項の柔軟化やアジア等のタンク施設の柔軟利用、 共同調達、トレーディング機能強化を始め、調達の在り方を検討し、世界に伍する日 本企業の輩出に向けて取り組む。エネルギー需要が拡大するアジア等においてLNG 導入に係る制度整備や人材育成等にも取り組む。 ④ LNGバリューチェーンの低炭素化への取組 LNGバリューチェーンの低炭素化に資する要素技術の排出削減効果や経済性を 分析し、生産者・消費者が低炭素化の道筋を示せる環境整備に向け、IEAとの協働 54 等に取り組む。メタン排出削減対策に関し、自発的なメタン削減の取組を慫慂するC LEANイニシアティブを推進し、国際メタンガス排出量観測所(IMEO)等の国 際機関やエネルギー企業との連携や技術実証を進め、測定・観測・報告・認証の国際 標準に日本の考え方や技術を反映しつつ、輸入国間での連携を推進する。低炭素化さ れたLNGに関する認証システムの構築に向けた検討を行う。 ⑤ 国内資源開発の促進、石油・天然ガス業界における人材確保・育成 海洋及び陸上における国内資源開発は、地政学リスクや為替の影響に左右されず安 定的なエネルギー供給の確保が可能であり、また、将来的に国産水素等の原料として の利用も期待されることから、継続的な推進が重要。中でもメタンハイドレート(砂 層型・表層型及びメタンプルーム)については、海洋基本計画32等に基づき、民間企 業が事業化する際に必要となる技術、制度等を確立するための技術開発等を推進する。 その際、世界的に先端的であり不確実性・難易度が高いことを踏まえつつ、技術開発 等の進捗状況や得られた成果の分析や評価を行い、2030年度までに民間企業が主 導する商業化に向けたプロジェクトが開始されることを目指す。石油・天然ガスにつ いては、三次元物理探査船「たんさ」を用いた国内石油・天然ガスの探査(2028 年度までに概ね5万平方キロメートル)とともに、有望海域での試掘を機動的に実施 する。また、国内外のCCS適地調査に同船を活用する等、より効果的な探査を実現 し、市場競争力を高める。 GXの実現及びエネルギー安定供給確保の両立と石油・天然ガス業界の変革を担う 多様な人材の確保・育成を後押しするため、産業界とも連携しエネキャリを開催した。 引き続き、学生等に向けた情報発信等を実施する。 (3)石油(備蓄/サービスステーション(SS)等を含む) ① 総論 石油は、一次エネルギーの約4割を占め、幅広い燃料用途や化学製品等素材用途を 持つ。調達に係る地政学リスクは大きく、また石油の国内需要も減少傾向にあるが、 エネルギー密度が高く、備蓄体制が整備され、可搬かつ貯蔵が容易であり、災害時に はエネルギー供給の最後の砦となる、国民生活・経済活動に不可欠なエネルギー源で ある。 ② 備蓄の確保 石油の国内需要は減少傾向にあるが、地政学リスクやアジアの石油需要の増加等を 踏まえると、石油備蓄は重要であり、必要な国内石油精製能力を確保しつつ石油備蓄 水準を維持する。備蓄放出の更なる機動性向上に向け、石油精製・元売各社との連携 強化、必要に応じた油種入替、放出訓練や机上訓練に加え、国家石油備蓄基地におけ る、基地の放出能力等に応じた、メリハリをつけた必要な設備修繕・改良等を継続す る。また、災害時に一部の製油所が稼働困難となる可能性があることも踏まえ、備蓄 32 海洋基本計画(2023年4月閣議決定)。 55 基地の分散配置にも引き続き取り組む必要がある。さらに、製油所の統廃合も進む中 における、災害による製油所の機能停止に備えた流通在庫の確保の在り方や、燃料の 移行状況を踏まえ、新燃料の貯蔵等のタンクの有効活用も含めた、燃料備蓄の在り方 を検討する。 その上で、有事の際は、機動性の高い民間備蓄と国家備蓄について機動性の高い基 地からの優先的な放出を速やかに実施する。さらに、アジアのエネルギー安全保障確 保のために産油国やアジア消費国との備蓄協力を進め、アジアの海域での地政学的な 問題が顕在化し、アジアでの石油需給がひっ迫するおそれ等がある場合の協調放出に 向けてIEAや加盟国との関係の維持・構築を進める。 ③ 石油供給体制の維持・移行 自動車燃費の向上や電動化等によりガソリン需要は減少するが、インバウンド需要 増等に伴い航空燃料需要は増加傾向にあるなど、国内の石油需要が減少する中でも製 品ごとに減少幅は異なる。こうした需要構造の変化に合わせ、安定供給を前提に供給 構造も変化させる必要がある。 また、需要減少の中で安定供給を確保するため、脱炭素化しつつ製油所の維持を図 るとともに、輸送体制強化等のサプライチェーンの柔軟性確保が重要である。特に災 害時は、停電等により平時には需要のない場所での燃料供給も求められるため、緊急 時にも対応できる強靱な供給体制を確保する必要がある。老朽化するプラントの維 持・管理や関係法令遵守を前提に、事業者間連携、デジタル技術の一層の活用、重油 分解能力向上を通じた原油の有効活用などの生産性向上や競争力強化の取組を後押 しすることにより、増加が見込まれる航空燃料を始めとする石油製品の安定供給を図 る。特別警報級の大雨・高潮対策を想定した製油所・油槽所の排水設備の増強等や、 令和6年能登半島地震の際の被災地への灯油等のドラム缶での出荷等の経験を踏ま えた、製油所・油槽所のドラム缶充填設備の設置・更新が重要である。さらに、各省 庁や都道府県の要請に対応する緊急要請発出・対応訓練、災害時石油供給連携計画に 基づく共同オペレーション訓練等を実施し、有事の際の体制を維持・構築する必要が ある。 また、石油精製業はこれまで総合エネルギー企業化に向けた取組を進めてきたが、 より積極的な新事業展開を行い、事業基盤の再構築を行うことが重要であり、事業者 のこうした既存のインフラ、ネットワーク・人材を活かした新たな燃料供給の挑戦を 後押しする。また、クリーンな石油精製プロセスに向けて、省エネルギー対策を一層 進めるとともに、CO2フリー水素の活用など、製油所の脱炭素化の取組を進める。 ④ SSによる供給ネットワークの維持・強化 (ア)総論 SSは、給油や灯油の配送等を通じて国民生活や経済活動を支える重要かつ不可欠 な社会インフラである。令和6年能登半島地震では、自身も被災しながらも、道路寸 断により孤立状態にあった被災地内の緊急車両や病院・避難所等への燃料供給に貢献 する等、地域の燃料供給を担うエッセンシャルワーカーとして活躍し、その重要性が 再認識された。一方で、SSの多くは中小零細企業であり、乗用車の燃費向上等によ 56 り石油製品の需要が減少する中、人手不足・後継者難、施設の老朽化等の課題も相ま って、SS数も減少を続けており、平時のみならず災害時の「最後の砦」として地域 を支えるSSネットワークの維持・強化に向けた取組の強化が喫緊の課題となってい る。 (イ)SSの経営力強化 平時からSSが健全に経営されてこそ、災害時に「最後の砦」としての役割を果た し得る。SSネットワークの維持・強化のためには、賃上げ等による人材確保や設備 投資を図るべく本業である石油製品販売で収益を確保することに加え、石油製品の販 売以外の収益拡大や効率化等に取り組み、SSの経営力を強化していくことが必要で ある。一方で、SSの多くが資金的・人材的に困難な状況にあることも配慮しつつ、 事業の多角化やデジタル技術を活用した人手不足対策、事業承継・M&A・グループ 化等、経営体質強化のための取組を、様々な支援施策を総動員して後押しする。また、 SSが石油製品の供給を継続しつつEVへの電力供給やFCVへの水素供給、合成燃 料やバイオ燃料の供給を担う「総合エネルギー拠点」としての発展を目指せるよう後 押しする。 (ウ)地方公共団体との連携強化を通じた安定供給確保 SSの災害対応能力強化の観点から、引き続き、非常用発電機を備えた中核SS(緊 急車両への優先給油を担うSS)や住民拠点SS(一般車両への給油を担うSS)等 の整備を進め、各地域における災害対応訓練や、有事に備えてガソリンを満タンにし ておく「満タン&灯油プラス1缶運動」を推進する。 その際、近年頻発する災害等を鑑みれば、地域防災の中心を担う地方公共団体と、 地域内の多数のSSが所属し、災害時にはSSの稼働情報等の集約拠点となる各都道 府県の石油組合が連携し、地域特性に応じた形で安定供給体制を確保することが必要 である。災害協定を締結するのみならず、平時からの取引関係を通じて、病院・福祉 施設や避難所等の重要施設のタンク容量や口径、配送ルート等の情報共有や連絡体制 を構築することが重要であり、「中小企業者に関する国等の契約の基本方針」を踏ま えた随意契約等を後押しする。また、豪雪や土砂災害等による燃料配送遮断リスクや、 水害により計量器等の設備が損壊するリスク等を踏まえ、地域内の燃料在庫拠点とな るSSを分散配置する必要性や災害時の燃料配送方法等について検討し計画を立て る等、地方公共団体と石油組合が連携した取組を後押しする。 SS過疎地対策としても、地方公共団体との連携強化が必要である。この10年で SS過疎市町村(地方公共団体内のSSが3カ所以下)が約100カ所増加しており、 上記取組に加え、地域内のSSが廃業する前に対応策を講じることができるよう、地 方公共団体と地域内のSS、石油組合や各種支援機関との普段からのコミュミケーシ ョンを含めた連携強化を推進する。民間事業者の経営努力ではSSの維持が困難な場 合は、地方公共団体のリーダーシップが特に重要であり、引き続き、地方公共団体が 地域住民の理解と協力を得ながら、「地域コミュニティインフラ」としてのSSを、 「公設民営」の形で承継・新設する等の取組を支援する。 57 (エ)公正かつ透明な石油製品取引構造の確立 石油製品は品質の差別化が難しく、競争は価格面に集中する傾向がある中、石油製 品の流通実態の把握に際しては、市場価格等がSSネットワークや災害対応に与える 影響も勘案しながら、引き続き公正・透明な石油製品取引構造の確立に取り組むこと が必要である。2022年に改定した「ガソリン等の流通における不当廉売、差別対 価等への対応について」 (公正取引委員会)を踏まえ、不当廉売等に対し厳正に対処す る。また、卸価格の決定方法等について望ましい行為を示した「ガソリン適正取引慣 行ガイドライン」 (資源エネルギー庁)を踏まえて、取引慣行の適正化を図る。一般的 に自己の取引上の地位が相手方に優越している元売等が、その地位を利用して、SS 事業者に対し、取引条件を一方的に決定する等により、正常な商慣習に照らして不当 に不利益を与える等独占禁止法に違反する疑いのある事案に接した場合には、適切に 対処する。 (4)LPガス LPガスは、化石燃料の中で温室効果ガス排出が少なく、約4割の家庭に供給され、 備蓄体制も整備されており、可搬かつ貯蔵が容易で品質劣化のない分散型エネルギー である。国内需要の8割を占める輸入先は米国、カナダ、豪州で9割超と地政学リス クが低く、エネルギー安全保障にも資するうえ、ボンベで全国のどこへでも供給可能 であり、災害時には、病院等の電源や避難所等の生活環境向上にも資する「最後の砦」 としても、重要なエネルギー源である。 LPガス備蓄については、有事の対応やアジアの需要増加に備え、現在の国家備蓄・ 民間備蓄を合わせた備蓄水準を維持する。LPガス業界やJOGMECと連携し、緊 急時を想定した国家備蓄基地からの放出訓練や各地への輸送に係る詳細なシミュレ ーションを実施する。また、災害時に備え、自家発電設備等を備えた中核充填所の新 設・設備強化を進めるとともに、病院・福祉施設や小中学校体育館等の避難所等にお ける備蓄強化、発電機やGHP等の併設による生活環境向上を促進する。「災害時石 油ガス供給連携計画」を不断に見直し、同計画に基づいた訓練を実施するほか、スマ ートメーターの導入による配送合理化等の取組を後押しし、人手不足な中でも安定供 給可能な体制を強化する。 なお、LPガスを巡る商慣行を是正し、消費者からの信頼を確保すべく、過大な営 業行為の制限等を内容とする新たな規律を設けたところ、その実効性確保のため、関 係省庁とも連携し、違反行為の取り締まりや市場監視・モニタリングを継続実施する。 (5)石炭 石炭は、現時点の技術を前提とすれば、化石燃料の中で最も温室効果ガス排出量が 大きいが、現時点では、調達に係る地政学リスクが相対的に低く、熱量当たりの単価 も比較的低い。また、保管も容易であることから、現時点では安定供給性や経済性に 優れた重要なエネルギー源である。また、国内炭は、地政学リスクや為替の影響に左 右されず、安定的な確保が可能である。非効率な石炭火力を中心に発電量(kWh) 58 を減らしていく中でも、石炭の安定供給は引き続き重要であり、石炭の自主開発比率 は2040年に60%を維持する。また、石炭の自主開発比率は、一般炭の調達環境 の変化に伴い低下しつつあるが、比較的長期の複数年のターム契約は安定的な調達に 資すると考えられ、一般炭については、自主開発比率に加え、複数年ターム契約の比 率も安定供給のための補完指標として計測し、必要な施策を検討する。 59 6.CO2回収・有効利用・貯留 (1)基本的考え方 CCUS(Carbon dioxide Capture, Utilization and Storage)は、鉄、セメン ト、化学、石油精製等の脱炭素化が難しい分野や発電所等で発生したCO2を地中貯 留・有効利用することで、電化や水素等を活用した非化石転換では脱炭素化が難しい 分野において脱炭素化を実現できるため、エネルギー安定供給、経済成長、脱炭素の 同時実現に不可欠となっている。 また、CDR33(Carbon Dioxide Removal)は、2050年カーボンニュートラル 実現のため、最大限排出削減をしたとしても最終的にCO2の排出が避けられない分 野からの排出(残余排出)を相殺する手段として、必要となると考えられる。 (2)CCS CCSは、GX推進戦略において2030年までの事業開始に向けた事業環境を整 備することとしている。2024年5月には、貯留事業の許可制度等を定めたCCS 事業法が成立しており、今後は「CCS長期ロードマップ」も踏まえて具体的な取組 を進めていく。 一方で、CCS事業は世界的にも予見可能性が低いため、欧米ではCCSに要する 費用とCO2を排出した際の対策費用のコスト差に着目した支援や比較的高い補助率 での支援措置を講じている。政府による支援により、CCSを先行的に事業化するこ とで、CCS事業の自立化を図るとともに、コスト競争力のあるCCSバリューチェ ーンを構築することが可能となる。 我が国でも、「先進的CCS事業」に対し試掘等の貯留地開発やCCSバリューチ ェーン全体への一体的な支援を行い、2030年までに年間貯留量600~1,20 0万トンの確保に目途を付けることを目指している。今後、諸外国の支援措置や「先 進的CCS事業」を通じて得た知見等を踏まえ、我が国の地理的状況やエネルギー政 策の方向性に合致する形で、継続的なコスト低減や事業者間競争を促す視点も含めて、 事業者によるCCS事業への投資を促すための支援制度を検討していく。その際、C CSの分野別投資戦略を踏まえた投資促進策の検討や、GX-ETSやJ-クレジッ ト、長期脱炭素電源オークションなど他の制度との連携、エネルギー・GX産業立地 の議論との連携を考慮していく。 こうした支援制度により先行してCCS事業を立ち上げ、我が国に世界的な競争力 のあるCCSバリューチェーンを構築することで、日本企業にCCS環境を提供し、 鉄、化学などの脱炭素化が難しい分野の国際競争力維持とエネルギーセクターの脱炭 素化を図るとともに、日本のCCS関連企業が各国のCCS事業の受注で優位に立つ ことが可能となることを目指す。 33 CDR(Carbon Dioxide Removal、二酸化炭素除去)とは、大気中のCO2を回収・吸収し、貯 留・固定化することでCO2を除去すること。 60 また、CCS事業の自立化に向けたコスト低減を進めるべく、分離回収分野では排 出ガス中のCO2濃度や圧力を踏まえた最適な技術の開発、輸送分野では船舶の大規 模化に向けた最適なタンク設計などの船舶輸送技術確立、貯留分野では低コストなモ ニタリング技術の導入を目指した国内外での実証を進める。 さらに、CCS事業の拡大には、2050年カーボンニュートラルに向けた意義、 科学的根拠に基づく安全性等について地域の理解を得つつ進めることが重要であり、 引き続き理解促進に取り組むとともに、2040年に向けた貯留量拡大を見据え、貯 留層のポテンシャル評価等の貯留地開発を推進する。 貯留量確保の観点では、海外には、枯渇油田ガス田を始め既に貯留先としての可能 性が明らかな地域があるため、我が国の技術も活用する形で我が国のCO 2を海外で 貯留することも条件が整えば有力な選択肢であり、関係国との具体的な対話や、将来 的な貯留権益確保を目指した相手国との共同調査を、順次実施していく。また、資源 国では、政府から石油天然ガスの上流開発時のCCS実施が求められる事例も出てき ており、エネルギー安定供給確保の観点からも海外CCSへのJОGMECによるリ スクマネー供給等を行う。加えて、海外でのCCSに付加価値を付けるため、CCS 事業での二国間クレジット制度(JCM)活用に向けたパートナー国との協議や、C CS事業による温室効果ガス排出量削減の方法論確立等の環境作りを進めていく。 (3)CCU/カーボンリサイクル CCUの中でもカーボンリサイクルは、CO2を資源として捉え、鉱物化や人工光 合成等により素材や燃料等へ再利用することでCO2排出抑制が可能となる。我が国 としては、 「カーボンリサイクルロードマップ」を踏まえて、技術開発・社会実装、国 際展開、CO2サプライチェーン構築を推進していく。 カーボンリサイクルを活用した製品は、従来品と比較してコスト高になることから、 水素やCO2の調達コスト低減に加え、製造プロセスの最適化、効率化を図るため、 NEDO等と連携しながら、広島県大崎上島に整備したカーボンリサイクル実証研究 拠点も活用して技術開発を推進していく。また、社会実装を進めるためには、CO 2 排出者と利用者を連携させる産業間連携を進め、CO2サプライチェーンを構築する ことが重要となる。こうした取組は、CO2の流通規模を拡大し、将来的なコスト低 減に寄与するほか、CO2削減効果の最大化や新産業育成による地域活性化につなが る可能性もある。このため、既存インフラを最大限活用しつつ、水素等、CCSなど による新たなインフラ整備と連携し、地域の事業者等が主体となったCO 2サプライ チェーンの構築を後押ししていく。また、カーボンリサイクルによるCO 2削減価値 を明確にしていくことも重要であり、地球温暖化対策推進法に基づく算定・報告・公 表制度における整理やJ-クレジットなどの活用についての検討を行う。 (4)CDR CDRは、大気中のCO2を回収・吸収し、貯留・固定化することによって、大気中 のCO2を除去することを指し、大きく工学的プロセスと自然プロセスの人為的加速 61 に分類される。代表的なCDRとしては、DACCS(Direct Air Capture and Carbon Storage)、BECCS(Bio-Energy with Carbon Capture and Storage)、新規植林・ 再植林・森林経営、バイオ炭、風化促進、沿岸のブルーカーボン生態系(マングロー ブ・塩性湿地、海草・海藻等)の保全・再生・創出が挙げられる。 IEAの調査報告書によると、「地球の気温上昇を抑えるためには、全ての温室効 果ガス排出源をゼロにするか、CDRで相殺する必要がある」とされ、民間の調査報 告書の中には、2050年カーボンニュートラルの実現にはCDRが不可欠とする分 析もある。電化が難しい分野や、鉄、化学、セメント、石油精製等の脱炭素化が難し い分野と、大型トラックや航空機、海運等、運輸部門での電化が困難な分野では、ど うしてもCO2排出が残ると考えられ、CDRが有用な手段となり得る。 欧米でも同様の認識の下、新規産業の創出も視野に入れたCDR技術に関する研究 開発や大規模な技術実証支援が行われており、一部では既に商業ベースでのプロジェ クトも動き始めている。 我が国では、2023年3月より「ネガティブエミッション市場創出に向けた検討 会」を設置し、有識者等との議論を経て、国内外におけるCDRの技術開発動向、事 業動向、及び各技術の産業化にあたり必要な要素を整理した。 CDR市場を創出するためには、①炭素除去の価値が評価される環境整備、②CD R市場の創出、③CDRの効率性を上げるための技術開発の加速が必要不可欠となる。 環境整備については、まずは、クレジット創出のための方法論の確立に取り組む必 要がある。足下、森林やバイオ炭のJ-クレジットが、ブルーカーボンについても、 Jブルークレジット(ボランタリークレジット)が創出されている。DACCSにつ いては、クレジット創出に向けた方法論を策定したところである。この技術について は、再生可能エネルギー等の脱炭素電源や海外の豊富なCCS適地を活用することも 有効と考えられ、我が国の排出削減に貢献するため、除去価値の国家間移転(二国間、 多国間合意)に向けた制度整備を検討していく。また優れた日本の技術が海外企業等 に利用され、脱炭素に貢献しながら産業競争力を向上させる視点も重要である。 CDR市場の創出のためには、今後のCDRの導入目標を始め、官民による需要創 出・拡大に向けた方策も検討していく。 同時に、コスト低減と効率性の向上のため、グリーンイノベーション基金やムーン ショット型研究開発事業等により研究開発を後押ししていく。 62 7.重要鉱物の確保 (1)基本的考え方 ① 総論 鉱物資源は、あらゆる工業製品の原材料として、国民生活及び経済活動を支える重 要な資源であり、DXやGXの進展や、それに伴い見込まれる電力需要増加への対応 に必要不可欠である。また、エネルギーの有効利用の鍵となり、今後、製品としても 日本企業の競争力を左右する蓄電池、モーター、半導体等の製造にあたっては、銅や、 レアメタル等の重要鉱物の安定的な供給確保が欠かせない。他方、重要鉱物は、鉱種 ごとに埋蔵・生産地の偏在性、中流工程の寡占度、価格安定性等の状況が異なり、上 流の鉱山開発から下流の最終製品化までに多様な供給リスクが存在している。 また、国内非鉄製錬所は、重要鉱物のサプライチェーンの要として、高品質な金属 地金供給、国内製錬ネットワークを活用した鉱石等の副産物であるレアメタル回収、 使用済製品のリサイクルによる資源循環等の重要な機能を担っているが、鉱石等の品 位の低下や新興国等の需要拡大に伴う国際的な競争激化等を背景として、非鉄製錬所 を取り巻く環境は厳しい状況となっている。 こうした状況の中で、これまで国は、JOGMECを通じた海外権益確保へのリス クマネー供給や経済安全保障推進法に基づく鉱物資源開発プロジェクトへの助成、資 源探査等を通じて、我が国企業による重要鉱物の安定的な供給確保を支援してきたと ころである。今後、供給途絶が懸念される鉱種の安定的な供給確保に向けて、供給途 絶に備えた十分な備蓄量の確保に加え、有志国との連携による上流開発プロジェクト の組成やリサイクルを通じた供給源の多角化、中下流での価格転嫁も含む長期調達コ ミットメントも踏まえた競争力のある価格での供給などの総合的な取組が重要とな り、鉱種ごとのサプライチェーンリスクの分析を踏まえて、経済安全保障の観点、産 業政策の観点の両面から今後のあるべき政策を更に進めていく。 ② 備蓄の確保 重要鉱物の短期的な供給途絶対策である備蓄制度について、需要家のニーズの変化 や鉱種ごとの供給動向等も踏まえ、必要な備蓄量を確保するとともに、備蓄鉱種を柔 軟に入れ替えるなど、機動的な対応が可能となるよう、不断に制度の改善を行ってい くとともに、供給状況に応じた柔軟な対応を行う。 ③ 供給源の多角化等 供給源の多角化に向けては、経済安全保障推進法に基づく助成金も活用した国内製 錬所等への投資支援に加え、国内製錬ネットワークの維持・強化を図るとともに、リ サイクル資源の活用に資する方策を検討する。また、フロンティア地域の中長期的に ポテンシャル拡大が見込める案件への日本企業の参加を促進する。具体的には、日本 企業による、フロンティア地域における上流権益の獲得の後押し、将来の種まきとし ての「資源ジュニア」等への出資の促進に向けた官民の役割分担や具体的な参画の在 63 り方、長期安定供給が見込める海外からの調達も含めたリサイクル資源の活用に資す る方策を検討する。 これらの取組と併せて、資源外交に関しては、米国、豪州、カナダ等の同志国と連 携した鉱物資源開発や、南部アフリカ諸国などのカントリーリスク・探鉱リスクを有 するフロンティア地域やチリ等の資源国との関係の強化を実施するとともに、首脳・ 閣僚レベルを始めとする包括的・総合的な資源外交政策を展開する。また、国際的に は持続可能なサプライチェーンの構築や国際標準化機構(ISО)等でのルール形成 に関する議論も進んでいるところ、そのための人材育成や体制強化を検討する。加え て、こうした方策の実現に向けて、日本企業に対する技術支援とファイナンス支援の 一体的な実施能力をもつJOGMECの事業コーディネートや各国政策把握などの 機能を強化する。 ④ 国産海洋鉱物資源の開発 我が国の領海・排他的経済水域等に賦存する国産海洋鉱物資源である金銀銅等が含 まれる海底熱水鉱床、コバルトリッチクラスト、マンガン団塊、レアアース泥につい ては、引き続き国際情勢をにらみつつ、採鉱・揚鉱、選鉱・製錬技術の確立、資源量 調査、環境影響把握等の取組を進めていく。 (2)レアメタル レアメタルについては、需要の増加が見込まれるものの、特定国からの輸入に大き く依存している状況である。 さらに、資源ナショナリズムの高まりや開発条件の悪化等により、資源開発リスク も引き続き上昇傾向にあり、一部のレアメタルについては、上流のみならず中流工程 についても特定国による寡占化が進みつつある。 特に、日本が多くのレアメタルの鉱山・製錬工程を特定国に依存している中、一部 物資の輸出管理の実施に伴い、輸出に政府の許可が必要な物資が増加している。半導 体材料に用いられるガリウム及びゲルマニウム関連品目や、蓄電池に用いられる黒鉛 関連品目については2023年に、アンチモン等の関連品目は2024年に輸出管理 が開始されたところであり、レアアース等他品目も含めてサプライチェーンの不確実 性が増している。 こうした中で、レアメタルについては、ベースメタル生産の副産物であることが多 いこと、権益比率とは関係なくオフテイク権が設定されることが多いことから、一律 の自給率目標は設けず、鉱種ごとに安定供給確保に取り組んでいくが、2050年カ ーボンニュートラル実現にとって不可欠なバッテリーメタル・レアアース・ウランに ついては、 「重要鉱物に係る安定供給確保を図るための取組方針」も踏まえ、2030 年時点で国内への供給に必要な需要量の確保を目指し、対応を進めていく。 (3)ベースメタル 64 ベースメタルについて、特に、非鉄金属の代表的なベースメタルである銅は、DX やGXの進展により、世界的な需要は増える見込みであるが、鉱山開発費用の高騰や、 これまでの最大の生産国であるチリの鉱山の品位の低下が進む中で、供給が需要に追 いつかず、新規鉱山開発やリサイクルの進展を考慮しても、銅価格の一層の上昇へつ ながる可能性がある。実際に、2000年代初頭に 1 トン当たり2,000ドル程度 で推移していた銅地金価格は、2024年には、約10,000ドルと5倍程度の水 準になっている。加えて、急速に銅製錬所の設備投資を進める中国に銅鉱石の輸出の 65%が集中する中で、各国の政府資本の入る企業も含めて権益確保を進めており、 安定的で低廉な長期調達を確保するための権益確保を巡る状況は厳しさを増してい る。 こうした中で、2022年度時点で37.7%にとどまっているベースメタルの自 給率について、2030年までに80%以上を達成することを目指し、対応を進めて いく。 65 8.エネルギーシステム改革 (1)基本的考え方 政府は、安定供給の確保、料金の最大限の抑制、需要家の選択肢や事業者の事業機 会の拡大を狙いとして、電力、ガス、熱のエネルギーシステム改革を実施してきた。 エネルギーを取り巻く経済社会環境が変化する中でも、安定的かつ持続可能なエネル ギーシステムの構築に向け、これまでの取組を検証しながら更なる取組を進める必要 がある。また、エネルギー事業者は、改めて、国民生活や産業活動を支える担い手と しての自覚を持ち、法令等遵守の観点から疑念を持たれることがないよう、適切かつ 公正な事業運営を行うことが求められる。 (2)脱炭素と安定供給を実現する持続的な電力システムの構築へ向けた取組 ① これからの電力システムが目指すべき方向性 電力システム改革の狙いに対して、広域融通の仕組みの構築や小売自由化による価 格の抑制、事業機会の創出といった点で、電力システム改革の狙いに対して一定の進 捗があったが、供給力の確保や、国際燃料価格の急騰等による電気料金の高騰といっ た課題に直面している。また、カーボンニュートラルの必要性の高まり、DXやGX の進展による電力需要の増加の可能性などへの対応も求められている。そうした中で、 産業競争力強化の観点から、脱炭素電源の確保、燃料費の抑制等による国際的に遜色 ない価格での電気の供給の重要性も高まっている。これらを踏まえれば、「国際情勢 の変化や需要増大の可能性に対応できる安定的な電力供給の実現」、 「電力システムの 脱炭素化の推進」、 「安定供給や脱炭素化、物価上昇等による価格への影響を抑制しつ つ、需要家に安定的な価格水準で電力を供給できる環境の整備」という三つの大きな 課題へ対応していくことが、これからの電力システムが目指すべき方向性である。 ② 電力システムが直面する課題と対応方針 (ア)安定供給を大前提とした、電源の脱炭素化の推進 現在の事業環境下では、将来的な電力収入の不確実性が大きいことが大規模・長期 の脱炭素電源投資が抱えるリスクと相まって、電源投資を躊躇させる一因となってい る。このため、事業期間中の市場環境の変化等に伴う収入・費用の変動に対応できる 市場や事業環境、併せて資金調達環境の整備を進めていく。また、多様なニーズに応 えつつ、脱炭素電源投資を推進する観点から、非化石証書の更なる活用を推進すると ともに、その在り方を検討する。加えて、火力の脱炭素化に向けた取組も着実に進め ていくとともに、需給バランスの将来動向も見ながら、将来的な脱炭素化を前提とし たLNG火力の新設・リプレースを一層促進する。 これらの検討を行うにあたっては、広域融通対象外である等、電源や系統規模等の 制約を有する離島等の地域の実情に留意する。 (イ)電源の効率的活用に向けた系統整備・立地誘導と柔軟な需給運用の仕組み構築 66 電力の安定供給確保や再生可能エネルギーの最大限の活用に向けて電力ネットワ ークの次世代化を進めるため、地域間連系線等の整備を行うとともに、局地的な大規 模需要の立地を見据えた系統増強を進めていく。このために必要な資金調達環境の整 備や、先行的・計画的な系統整備を促す仕組みを検討していく。 併せて、再生可能エネルギーが大量に導入される中で、需給運用を高度化していく ため、需給調整市場について、更なる運用改善を進めていき、中長期的には、系統制 約も考慮した上で、 「同時市場」の導入に向けて、本格的に検討を深めていく。 (ウ)市場を通じた、安定的な価格での電力供給に向けた小売事業の環境整備 全面自由化以降、新電力のシェアは2割程度に到達し、電気事業を取り巻く環境変 化や需要家のニーズ等に応じた様々な料金メニューやサービスが創出された。他方で、 市場環境の厳しい局面では、小売電気事業者の退出等が相次ぎ、需要家が意図しない 契約解除、特別高圧・高圧分野の最終保障供給への移行等が生じ、需要家に一定の負 担や混乱が生じた。また、国際燃料価格の急騰等に伴う電気料金の急激な変動が国民 経済に影響を与え、料金の大幅な変動は社会的に許容し難い状況にあることが明らか になった。 これらを踏まえれば、小売電気事業者には、需要家に安定的な価格水準での電力供 給を実現するとともに、脱炭素化等の需要家ニーズや社会的な環境変化に応え、電気 事業者と需要家の架け橋となるサービス提供者となることが期待される。このため、 小売電気事業者が創意工夫を発揮できる競争環境の実現に向けた市場環境整備や、必 要な規律の確保に向けた制度整備を行う。 具体的には、電力の安定供給や需要家保護、料金水準の過度な変動抑制等の観点か ら、小売電気事業者に安定的な事業実施を求めるための規律や、海外の事例も参考に、 供給力をスポット市場等において短期的に調達することのリスクや燃料確保・電源投 資への影響も踏まえた小売電気事業者の量的な供給力確保の在り方とその遵守を促 す仕組みを検討する。併せて、事業者間の公平性にも留意しつつ、現物の長期取引等 の相対取引や先物・先渡市場、ベースロード市場等の市場を含む取引制度の拡充・再 整備、こうした市場環境の変化を踏まえた間接送電権の在り方の見直し等を検討する。 また、価格変動リスクをヘッジする有力な手段の一つである電力先物取引の多くが 外国法に基づく商品取引所であること等にも留意した対応の検討や、需要家や地域な どが脱炭素電源へのアクセスを求める状況等も踏まえつつ、内外無差別などの卸取引 に関するルールの在り方の検討も進める。 ③ 電力産業の将来像(事業者に期待される役割・責任の方向性) 電力システムは、我が国産業の持続的な発展、経済安全保障の確保のために重要な 基盤であり、その脱炭素化は日本全体のGX実現の鍵である。これを支える中心的な 役割を担う電力産業には、上記のような、電力システムが直面する課題と対応方針を 踏まえ、 (a)安定供給と脱炭素化の実現に向けた脱炭素電源の設置や系統整備の担い 手、(b)発電から需要家に渡るまで安定的な量・価格で電気を供給する運営者、(c) 需要家が求める多様なニーズに応えるエネルギーサービスプロバイダーとしての役 割・責任が期待される。 67 再生可能エネルギーや原子力等の脱炭素電源の設置や系統整備の担い手としての 役割・責任を果たしていく上では、 「円滑で安定的なファイナンス」が必要である。今 後、電力需要の増加に対応しつつ、安定供給を大前提に脱炭素化を進めるためには、 長期にわたり、大規模な脱炭素電源や系統への投資が継続的に行われる必要がある。 そのために、前述のとおり、民間金融機関等が取り切れないリスクについて、公的な 信用補完の活用とともに、政府の信用力を活用した融資等、脱炭素投資に向けたファ イナンス円滑化の方策等を検討する。 また、電気事業者自身が、脱炭素電源投資や非化石価値の活用に加え、国際展開、 DXの推進等により収益性を上げ、成長性を示していくことも必要である。この中で も、「内外一体の電力産業の展開」は、電力需要の増加が見込まれる海外での事業展 開、再生可能エネルギーや蓄電池などのうち諸外国が先行している技術・ノウハウの 取り込み、燃料調達等のグローバルに広がるサプライチェーンを構築すること等によ り、事業の安定性や収益性向上につなげることが期待される。また、政府も、AZE C等の枠組みも活用し、電力産業の国際展開を促進していく。 電力産業が、電力を安定的に供給する事業者としての役割や責任を果たしていく上 では、 「安定的な供給に責任ある事業運営」が欠かせない。電気を需要家に届けるまで には、燃料確保、発電、取引所・仲介事業者を介した取引を含む卸売り、需給運用を 含む送配電、小売という複層的な段階で、多数の事業者が介在する。安定供給の実現 には、これらの事業者が、短期の環境変化に過度に影響されず、中長期的な視野をも って事業運営・取引を行うことが重要である。このため、再生可能エネルギーや蓄電 池等を含む発電、送配電、小売など、電気事業に関わる全ての事業者には、安定供給 の実現に向けてそれぞれの責任を果たすことが求められる。 特に、一般送配電事業者は、今後、短期間で局地的な大規模需要の増大が見込まれ る中、円滑に電力を供給するためにも、中立的かつ最終的な安定供給の担い手として、 定期的にエリアの電力需給に関する情報を発信していくことも期待される。さらに、 安定的な事業運営に向けては、災害大国である我が国の電気事業の現場を支え、高い 信頼性と技術の蓄積、安定供給を尊重する視点をもつ電力産業を支える人材の確保・ 定着、発電所や系統を構成する電力設備のサプライチェーンの確保・維持にも取り組 む必要がある。 エネルギーサービスプロバイダーとしての役割や責任を果たしていくため、需要側 の多様なニーズに応えた「分散型エネルギー源の活用促進とデジタル化」が必要であ る。今後、調整力の確保が一層必要となる中で、太陽光発電、蓄電池や需要家の機器 等の分散型エネルギー源をまとめて管理するアグリゲーター等の事業者が、需給運用 へ貢献することが期待される。そのため、電力消費量等のデータを多種類・高頻度に 取得し、ガスや水道メーターのデータも取得できる第二世代スマートメーターシステ ムを2030年代早期までに、原則全ての需要家に対して導入する。また、分散電源 も含む電力システムにおけるAI・IоT等のデジタル技術の活用を推進するととも に、これらのサイバーセキュリティ確保に万全を期す必要がある。そのため、政府と して、サプライチェーン対策や、小型太陽光発電を含む分散型エネルギー源のセキュ リティ対策等を進める。 68 政府は、2025年3月末までに取りまとめる電力システム改革の検証の結果も踏 まえ、公益性確保の観点から、系統整備、需給運用、電源投資などに関する公的役割 を担う電力広域的運営推進機関等の体制強化を進めるとともに、電力システムが直面 する課題に対応するため、制度や予算措置など、安定供給と脱炭素化の両立、電力産 業の活躍の促進等に必要な措置を講じる。 (3)ガスシステム改革の進捗とシステムの深化に向けた取組 ① 総論 ガスシステム改革については、ガスが安全かつ安定的に供給され、消費者に新たな サービスなど多様な選択肢が示されるガスシステムの構築に向け、ガス事業法の改正 により、2017年4月からガス小売全面自由化などを実施し、新規参入の拡大など 一定の成果が出ている。 また、2022年4月には、導管部門の中立性・公平性を高めるため、大手ガス事 業者(東京ガス、大阪ガス、東邦ガス)の導管部門の法的分離を実施し、一連のシス テム改革の工程が完了した。こうした中で、2050年カーボンニュートラルの実現 や国際的なLNG需給構造の変化といった新たな課題への対応が求められている。シ ステム改革の成果の更なる追求に加え、新たな課題に対応したガスシステムの構築が 重要であり、2027年3月までに、これまでのガスシステム改革の検証を行い、必 要な対応を進めていく。 ② 持続可能な競争・市場環境の整備 ガスシステム改革の成果を追求するための更なる競争促進に加え、経済社会環境の 変化に即応し、産業競争力を強化するため、持続可能な競争・市場環境整備が重要で ある。 新規参入の事業者が卸供給を受けやすくする仕組みやLNG基地の第三者利用な ど、これまでのガス事業における競争の活性化に向けた施策の進捗状況も踏まえつつ、 需要家の利益や選択肢の一層の拡大に資する競争・市場環境の在り方について検討す る。 ③ 脱炭素化に資するガスシステムの構築 脱炭素化に資するガスシステムを構築することも重要であり、合成メタンやバイオ ガスの導入などの様々な手段を組み合わせ、2050年の都市ガスのカーボンニュー トラルの実現を目指す。また、カーボンフリーメニュー等料金以外の価値を訴求する 多様な需要家ニーズが顕在化していることを踏まえ、新たなニーズに対応し、更なる 需要喚起にもつながる環境整備を進める。 ガスの熱量制度については、合成メタンが脱炭素化の有望な選択肢であることも踏 まえつつ、変更にあたっての対策コスト・移行期間、低炭素化効果、脱炭素技術の進 展状況・価格等の事情を総合的に考慮すれば、現時点では、2045~2050年に 標準熱量を40MJ/㎥へ移行することが最適である。なお、移行する熱量制度につ いては、2030年に確定することを目指し、都市ガスのカーボンニュートラルの実 69 現に向けた取組の進展や家庭用燃料機器の対応等の状況を踏まえ、必要に応じて、ガ スシステム改革の検証の一環として検証を行う。 ④ エネルギー安定供給に資するガスシステムの構築 安定供給に資するガスシステムの構築に向けて、バリューチェーンの各段階におけ る取組を総合的に進めることが必要である。調達先の多角化に加え、他のガス事業者 や電気事業者と調達や輸送面での協力関係を構築することで、安定的かつ柔軟なLN Gの調達に取り組む事業者も存在する。安定供給確保の観点からは、必要に応じてこ うした事業者間連携を検討することも重要である。 また、コージェネレーションの導入拡大等の電力も含めた安定供給に資する取組を 進める。加えて、最近では、遠隔での検針や開閉栓等を実現するスマートメーターの 検討など、デジタル技術の活用による保安・レジリエンスの向上に向けた取組が、一 部のガス事業者において進められている。こうしたデジタル技術の活用促進も含め、 更なるレジリエンスの強化に取り組む。さらに、事業者の経済性等の判断も踏まえな がら、天然ガスパイプライン等のインフラの整備も進めていく。 ガス事業者は総合エネルギー企業として、需要家が求める様々なエネルギー供給サ ービスを行うとともに、事業の多角化等により経営基盤の強化を進め、新事業の国際 展開や多様な分野の企業との連携による競争力強化を通じて、エネルギー需要が拡大 する国際市場を開拓していく。さらに、地域に根ざした事業者として、地域の需要家 のニーズに対応することに加え、地域におけるエネルギーの安定供給の確保や、地方 公共団体や地域企業との連携による地方創生、再生可能エネルギーや水素、バイオガ ス等の地域資源を活用した脱炭素化に貢献することが求められる。 (4)効率的な熱供給の推進 熱システム改革により、熱導管を面的に敷設して行う地域型の熱供給、都市再開発 事業などに伴いビル単位での事業や生活機能の確保も意識した地点型の熱電一体供 給など、熱供給サービスの形態も多様化している。こうした状況を踏まえ、コージェ ネレーションや廃熱等のエネルギーの面的利用を推進することにより、地域の省エネ ルギーの実現や再生可能エネルギーの導入拡大に伴う調整力の確保に貢献するとと もに、災害時のレジリエンス強化やエネルギーの地産地消等を後押しする。 また、産業部門を始めとする高温域に関しては、コージェネレーションや廃熱カス ケードの利用の促進に加え、製造プロセス技術開発、省エネルギー設備の導入促進を 行うことが重要である。また、民生部門を始めとする低温域に関しては、省エネルギ ー性能の高い住宅・建築物の普及により熱需要自体の削減を図るとともに、燃料電池 やヒートポンプなどの省エネルギー機器の普及を促進することが重要である。これら に加えて、引き続き、省エネ法による規制を通じて熱の効率的な利用を促進する。 70 9.国際協力と国際協調 (1) 基本的な考え方 ① 足下の資源・エネルギー情勢 世界のエネルギー需要は引き続き増加が見込まれる中、気候変動問題の対応への 関心の高まりを受け、多くの国がカーボンニュートラルの実現を表明するなど、世 界各国で脱炭素に向けた動きが加速している。他方で、ロシアによるウクライナ侵 略や中東情勢の緊迫化を始め、世界の資源・エネルギー情勢に大きな影響を与える 事象が各地で発生するなど、足下のエネルギー情勢も大きく変化している。 化石資源に乏しい我が国としては、世界のエネルギー情勢を注視しつつ、国際的 なサプライチェーン全体を俯瞰しながら、引き続き、二国間・多国間の様々な枠組 みを活用した国際協力を進め、資源・エネルギーの安定供給の確保やエネルギー需 給構造の安定化・効率化を通じたエネルギー安全保障の確保に取り組むとともに、 気候変動問題についても積極的に対応していくことが重要である。 こうした中で、カーボンニュートラルの実現に向けては、様々なリスクやシナリ オに備えながら、エネルギー安全保障を確保しつつ、経済成長と両立する形で取組 を進めていく必要がある。我が国は、エネルギー安全保障・経済成長・脱炭素の同 時実現を目指す考え方を基本とし、さらに、国ごとに異なる資源の賦存状況、産業 構造やエネルギー構成を踏まえつつ、多様な道筋により世界全体での脱炭素化を実 現することを目指し、我が国の様々な技術を活用しながら、世界全体での脱炭素化 にも貢献していく。加えて、石油・天然ガスや金属鉱物資源の安定供給確保、さら には水素等、CCUS/カーボンリサイクルといった脱炭素燃料・技術の将来的な 確保を一体的に推進すべく、包括的資源外交を展開していく必要がある。 ② 脱炭素技術の国際展開及び脱炭素化に向けたルール形成・技術協力 世界のCO2排出量の半分以上を占めるアジアを中心に世界の脱炭素化に貢献して いくことが重要である。我が国は、技術優位性を持つ一方、国内の削減対策よりコス ト効率的な対応も期待できるため、途上国等への優れた脱炭素技術等の普及や対策実 施を通じ、実現したGHG排出削減・吸収への我が国の貢献を定量評価しつつ、我が 国の温室効果ガス排出削減目標の達成に資する二国間クレジット制度の構築・実施に も取り組む。 また、脱炭素に資する我が国の製品やサービスの環境価値が国際社会でも評価され るよう、CFPや排出削減量に着目した指標(削減実績量、削減貢献量等)について、 AZECやGHGプロトコル、ISO、産業別の国際的なイニシアティブ等における 国際的なルール形成にも積極的に参画、または協力をし、普及を促進する。 加えて、今後の水素市場の立ち上がりを見据えつつ、G7広島サミットの首脳コミ ュニケにおいて重要性が認識された炭素集約度に基づく水素の取引の確立に向けて、 国際的な基準やルール形成に積極的に取り組んでいく。脱炭素化に向け、秩序あるエ ネルギー移行において役割を果たすガスのセキュリティ確保は重要であり、IEAと のガスリザーブメカニズムの研究等にも取り組む。さらに、次世代技術、水素やアン 71 モニア、CCUS/カーボンリサイクル、原子力等の幅広いクリーンエネルギー分野 でのイノベーション・社会実装に向けた技術協力を進め、我が国の優れた脱炭素技術 の普及を通じた世界全体での脱炭素に貢献していく。 ③ 我が国の取組の発信 資源・エネルギー分野における我が国の先進的な取組について、国際社会への情報 発信を進めていくことも重要である。対外発信の場として、 「大阪・関西万博」の会場 内にカーボンニュートラル実現に資する我が国の最先端技術を実装・展示するととも に、アジアグリーン成長パートナーシップ閣僚会合、ICEF(Innovation for Cool Earth Forum)、RD20国際会議、水素閣僚会議、カーボンリサイクル産学官国際会 議、LNG産消会議、GGXファイナンスサミットといった国際会議等を積極的に活 用し、我が国のGXに向けた取組を発信していく。 (2)各国との連携 ① 総論 我が国は、国内市場のみならず、海外市場を開拓し、スケールメリットを活かした コスト削減を通じて国内産業の競争力を強化するとともに、海外の資金、技術、販路、 経営を取り込んでいく必要がある。また、世界のエネルギー情勢変化の中、各国のエ ネルギー需給構造をより安定化・効率化するためには、一国での取組だけでなく、二 国間及び多国間のエネルギー協力を戦略的に組み合わせつつ、国際的な協力を拡大す ることが重要である。そこで、欧米といった先進国やアジアの新興国、中東その他の 資源国等との二国間関係を一層強化・発展させていくとともに、IEA、IAEA、 国際再生可能エネルギー機関(IRENA)、東アジア・アセアン経済研究センター (ERIA)等の国際機関との連携を強化し、G7、G20、アジア太平洋経済協力 (APEC)、インド太平洋経済枠組み(IPEF)等の国際的・地域的な枠組みやA ZECの取組にも貢献していく。 ② アジアのGXへの貢献 東南アジアの多くの国は、我が国と同様、電力の大宗を火力発電に依存し、経済に 占める製造業の役割が大きく、脱炭素化に向けた共通課題を抱えている。我が国は、 各国の事情に応じた多様な道筋による現実的な形でアジアの脱炭素を進めるべく、2 022年にAZECを提唱した。 AZECでは、 「脱炭素、経済成長、エネルギー安全保障の同時実現」及び「多様な 道筋によるネット・ゼロ実現」とのAZEC原則の下、2024年10月に首脳間で 採択された「今後10年のためのアクションプラン」に沿って、個別プロジェクトの 推進とルール形成を車の両輪として推進していく。ルール形成に向けた取組は、脱炭 素プロジェクトを持続的に組成し、様々な脱炭素技術を自律的に普及させる上で重要 であり、例えば、サプライチェーン全体のGHG排出量の見える化を推進するととも に、民間金融機関主導のアジア・トランジション・ファイナンス・スタディ・グルー 72 プ(ATF SG)の取組を軸にアジア開発銀行(ADB)等と連携し、トランジショ ン・ファイナンスを推進する。 さらに、排出量の多い電力、運輸、産業に関するイニシアティブ等を推進する。具 体的には、電力部門では、各国の事情を踏まえつつ、水素等、CCUS、バイオマス といった多様な技術を活用し、火力発電のゼロエミッション化を進めるとともに、再 生可能エネルギーの最大限導入に向けた取組等を進める。運輸部門では、持続可能燃 料の原料確保とアジアを軸としたサプライチェーン構築を進め、持続可能燃料の活用 を促進する。産業部門では、工業団地の脱炭素化やEVや持続可能燃料等を活用した 次世代自動車産業の構築を目指す。これらの取組を、ERIAに設置されたアジア・ ゼロエミッションセンターと協力しつつ進める。 また、アジア・エネルギー・トランジション・イニシアティブ(AETI)と連携 した脱炭素ロードマップの策定支援や脱炭素技術等の知見共有、AZECを支援する 賢人会議(AZECアドボカシーグループ)、ASEANとのクリーンエネルギー分 野の官民協力イニシアティブ(CEFIA)等の官民連携を通じ、AZECを軸とし たエネルギー協力及び対外発信の強化を図る。また、IPEFにおけるクリーン経済 分野では、各国の関心を踏まえつつ、水素、クリーン電力等における協力活動を有機 的に展開していく。 ③ カーボンニュートラルに向けた米欧等先進国との間での連携・協力 米国・欧州等の先進国との間では、世界全体でのカーボンニュートラル実現に向け、 エネルギー・環境技術分野でのイノベーション推進、新興国を始めとする第三国にお ける脱炭素化に向けた取組への支援等に取り組んでいく。 日米間では、エネルギー安全保障の確保に向けた協力を含め、幅広い分野での協力 関係の強化に向け取り組んでいく。例えば、日本のGX推進戦略の進展や米国のエネ ルギー政策の動向を踏まえつつ、エネルギー安全保障に関する協力やエネルギー技術 に関する協力等、幅広い分野での協力関係を追求していく。 日EU間では、日EUグリーン・アライアンスの下、再生可能エネルギー、水素、 CCUS/カーボンリサイクル、原子力、天然ガス等の協力を強化していく。 (3)包括的資源外交 包括的資源外交を展開していく上で、従来の二国間の枠組みに加えて、多国間の枠 組みを通じて、エネルギー移行や強靭性強化の必要性などの国際的な世論形成、脱炭 素燃料・技術に関する具体的協力案件の組成、化石燃料の脱炭素化に向けた関係国と のイノベーション協力、メタン対策や低炭素化認証、クレジット取引等のルール形成 にも積極的に関与する。カーボンニュートラル社会の実現の鍵となる水素等、CCU Sといった脱炭素燃料・技術の導入・拡大においても、これまで石油・天然ガスの資 源外交で培った資源国やアジア等の消費国とのネットワークも活用していく。我が国 の石油・天然ガス開発企業には、それら脱炭素燃料・技術の供給等においても、引き 続きメインプレイヤーとなることが期待される。 73 Ⅵ.カーボンニュートラル実現に向けたイノベーション 1.総論 我が国では、エネルギー安定供給、経済成長、脱炭素を同時に実現することにより、 2050年カーボンニュートラル実現を目指す方針を掲げており、経済活動量を維持 しながら、脱炭素化を進めていく必要がある。 このためには、再生可能エネルギーや原子力などの脱炭素電源や、省エネルギー型 半導体や光電融合技術などの省エネルギー技術、非化石転換に必要となる水素等の次 世代燃料技術、CCUSやDACCSなどの炭素回収除去技術などのGX関連技術の コストが大幅に低下している必要がある。 我が国では、サンシャイン計画等により、NEDO等が主導しながら、30年以上 かけてイノベーションに取り組み、太陽電池のコストを250分の1にすることに貢 献した実績もあり、今後も日本企業が保有するGX関連技術を活用しながら、更なる イノベーションに取り組んでいく必要がある。 また、我が国では「技術で勝って、ビジネスで負ける」といった苦い経験もあり、 今後は「技術で勝って、ビジネスでも勝つ」べく、明確な国際戦略を産学官で共有し ながら、イノベーションをビジネスにつなげていく必要がある。 こうした取組を通じて、非連続なイノベーションにより、社会実装可能な技術のコ ストを可能な限り早期に低減させ、経済合理性のあるビジネスとして成立させていく ことが、世界全体の温室効果ガスの排出削減に決定的に重要となる。 我が国では、こうした非連続なイノベーションの創出に向け、予算、税、金融、規 制改革、標準化などの分野横断的な政策ツールを総動員していくとともに、グリーン イノベーション基金や、GX経済移行債を活用しながら、GX関連技術の非連続なイ ノベーションを支援していく必要がある。またその際には、海外市場の開拓とともに、 その確度を高めるために、技術や制度に関する戦略的な国際標準化を研究開発の段階 から官民一体となって進めていくことも重要となる。 2.各論 (1)再生可能エネルギー 国産再生可能エネルギーの普及拡大を図り、技術自給率の向上を図ることは、20 50年カーボンニュートラルの実現等に向けた排出削減と我が国の産業競争力の強 化に資するものである。このため、次世代再生可能エネルギー技術の開発・実装を進 めていく。同時に、広域連系系統のマスタープランを踏まえた地域間連系線等の整備 を進めるとともに、再生可能エネルギーの電力需給調整を担う次世代蓄電池等の技術 開発やスマートエネルギーマネジメントシステムの社会実装を進めていく。 次世代型太陽電池については、2040年に約20GWの導入を目標としてペロブ スカイト太陽電池の早期社会実装を進めた上で、2050年を見据え、実証事業等に 74 より、タンデム型などの革新的な技術の開発を加速させる。また、宇宙太陽光発電シ ステム(SSPS)の研究開発・実証を着実に進める。 浮体式洋上風力発電については、技術開発等を通じて国内サプライチェーンの強化 等を図りつつ、排他的経済水域を含めた導入拡大を進め、2050年には、系統や調 整力のコストを含めて経済的に自立した電源となることを目指す。 次世代型地熱発電については、超臨界地熱発電やクローズドループなどの開発・普 及を進め、我が国の地熱発電のポテンシャルの最大限活用を図る。 調整力やスマートエネルギーマネジメントシステムについては、蓄電池や水素等に よる脱炭素化された調整力を活用する技術開発を促進するとともに、系統の安定性を 支える次世代インバータ等の開発を進めるなど、需給近接型の多様なリソースを組み 合わせることを通じた電力システムの柔軟性・安定性の向上を図る。 (2)原子力 次世代革新炉については、安全性向上はもとより、脱炭素の電力供給に留まらず、 分散エネルギー供給、廃棄物の減容化・有害度低減、カーボンフリーな水素・熱供給 など、炉型ごとに特徴を有しており、実用化に向けて取組を進めていく。炉型ごとの 用途や開発段階の相違、社会のニーズ等の要素も考慮して、研究開発、技術実装の円 滑化、規制当局との共通理解の醸成・改善への協働等について、国際連携も活用しつ つ、産学官で進めていく。 小型軽水炉は、小出力を活かした自然循環により、冷却ポンプ、外部電源なしで炉 心冷却を可能とするシステムを目指している。米国やカナダ始め国外では、データセ ンター等を始めとする電力多消費設備への脱炭素・安定電源としてのニーズが高まっ ており、2030年より前の実用化に向けた日本企業も参画するプロジェクトも進行 している。また、軽水炉以外の小型炉を含め様々な新たな炉型の開発もスタートアッ プにより進められている。我が国における将来ニーズを念頭に置いた選択肢確保の観 点から、我が国の産業基盤の維持・強化にも資するよう、日本の技術を活かした日本 企業の海外プロジェクトへの参画や研究開発を支援する。 高速炉については、高レベル放射性廃棄物の減容化・有害度低減や資源の有効利用 等に資する核燃料サイクルの効果をより高めることが期待されるとともに、空冷での 安定冷却など、安全性が高い設計が可能である。実証炉開発については、JAEA、 原子力事業者及び中核企業の技術者が集結する研究開発統合組織の統括の下、同志国 の米国や仏国との国際連携での技術的知見も活用しつつ、炉と燃料サイクル全体の集 中的な研究開発に取り組む。並行して、基本設計段階以降を見据えた事業運営体制の 構築や安全設計方針の在り方など、中長期を見据えた課題への対応を産学官で進めて いく。高速増殖原型炉もんじゅについては、安全の確保を最優先に、着実かつ計画的 な廃止措置に責任を持って取組を進めるとともに、国は地元の協力を得ながら、福井 県敦賀エリアを原子力・エネルギーの中核的研究開発拠点として整備していく。もん じゅの取組及び高速実験炉常陽の運転から得られる知見・技術については、実証炉を 含む将来の高速炉研究開発において最大限有効に活用する。 高温ガス炉については、高温熱を活かした準国産のカーボンフリーの水素や熱の供 75 給により、製鉄や化学などの素材産業の脱炭素化への貢献が期待される。高温工学試 験研究炉HTTRでは、カーボンフリーの水素製造に活用し得る950℃の高温熱の 生成を世界で初めて達成するとともに、2024年3月には、原子炉出力100%の 運転中に原子炉を冷却できない状況を引き起こしても、自然に原子炉出力が低下し、 安定な状態を維持することを確認する実証試験にも世界で初めて成功している。これ まで積み上げられてきた高温ガス炉の研究開発の成果を基礎として、HTTRを活用 した水素製造試験に向けた更なる挑戦を行うとともに、同志国の英国との国際連携も 活用し、産業界との幅広い連携により、実証炉開発を産学官で進めていく。 フュージョンエネルギーについては、「フュージョンエネルギー・イノベーション 戦略」を踏まえ、早期実現と産業化を目指し、国際熱核融合実験炉ITER、トカマ ク型超伝導プラズマ実験装置JT-60SA等で培った技術や人材を最大限活用し、 技術成熟度を高めるべく、スタートアップを含めた官民の研究開発力を強化する。世 界に先駆けた発電実証を目指し、原型炉開発と並行し、トカマク型、ヘリカル型、レ ーザー型等多様な方式の挑戦を促すとともに、科学的に合理的で国際協調した安全確 保の検討に取り組む。 (3)次世代電力ネットワーク(系統・調整力) 広域連系系統のマスタープランを踏まえ、2050年の再生可能エネルギーの導入 等を見据えた地域間連系線の整備や地内基幹系統等の増強・更新を着実に進めるとと もに、再生可能エネルギーの導入が拡大する中での系統接続・利用のルールについて、 必要な検討を深めていく。また、脱炭素化された調整力の確保や電力システムの柔軟 性の向上のため、DRready機能を具備した製品の普及促進やスマートメーター を活用した機器制御等によるDRの更なる活用を図る。加えて、蓄電池等の蓄電技術 の向上に取り組むとともに、再生可能エネルギーの普及拡大が進むにつれて必要性が 高まると考えられる長期エネルギー貯蔵を特徴とする電力貯蔵システム(LDES34) の導入も目指す。 (4)次世代エネルギー 2050年を見据えた中長期の水素等の利活用の拡大に向けては、 「製造」、 「輸送・ 貯蔵」、 「利用」において、革新的技術の産学官における着実な研究開発が必要となる。 「製造」については、高効率・高耐久・低コストな水電解技術、メタンの直接熱分解 (ターコイズ水素)や高温ガス炉等の高温熱源を活用した水素製造技術、天然水素、 水素生産船、光触媒を活用した水素製造技術、革新的アンモニア合成技術、合成燃料 の製造技術、革新的メタネーション技術の開発に取り組む。「輸送・貯蔵」について は、高効率水素液化機、水素吸蔵合金などの輸送・貯蔵技術、水素キャリアのコスト 低減及びアンモニアクラッキング技術、 「利用」については、水素等の混焼・専焼発電 技術、高効率・高耐久・低コストな燃料電池技術の製造技術開発等を進める。 34 Long Duration Energy Storage の略称。 76 (5)CО2分離・回収・吸収 CО2分離・回収設備の導入には、一層のコスト低減や省スペース化が重要であり、 膜技術などの新たな手法も活用し、排ガスごとの条件に適した分離・回収技術の実用 化・社会実装を推進する。こうした取組を通じ、現在、我が国企業が競争力を有する CО2分離・回収プラントの分野で更なる競争力の強化を図るとともに、原料として のCО2を安価で供給することで、カーボンリサイクルの社会実装を後押しする。こ うした削減の取組を行ってもなお残余排出が残ると考えられており、2050年カー ボンニュートラル実現に向けてはCDRの導入が求められる。更なるコスト低減、大 規模化が必要であり、我が国の技術を活かし、再生可能エネルギーやCCS適地等が 豊富な海外の活用も含め、商用化やビジネスモデルの構築を推進し、我が国企業の更 なる競争力強化につなげる。 (6)多排出産業 ① 鉄鋼 鉄鋼業においては、鉄鉱石をコークス(石炭)を用いて還元する現行の高炉法にお いて不可避的に多くのCО2が発生する一方で、需給の観点からは今後も鉄鉱石の還 元による鉄鋼生産が必要となることから、鉄鉱石還元時のCО2排出量を抑制するた めの技術開発を進めるとともに、脱炭素化のための投資を進めていく。具体的には、 高炉法を用いた水素還元技術、直接水素還元技術といった技術開発を進めていくとと もに、自動車用も含めた多用途の鋼材を生産できる革新的電炉等への投資を促進する。 また、脱炭素化投資を行った設備から生産されるグリーン鉄の普及拡大も図っていく。 ② 化学 2050年カーボンニュートラルの実現に向け、ナフサ分解炉の熱源や石炭火力等 の「燃料転換」、ナフサ由来の原料から転換する「原料転換」の取組を着実に進める。 その際、グリーンイノベーション基金を活用して開発している新技術の社会実装も進 め、既存のサプライチェーンの枠を超えて、GX製品を創出可能となる強靭なサプラ イチェーンに転換し、マーケットイン型の化学品の供給を更に推進する。これらを通 じて、自動車や半導体産業などを含むバリューチェーン全体の価値を向上させていく。 ③ セメント セメント産業は、焼成工程や石炭火力等の燃料を廃棄物やバイオマス等へ切り替え る「燃料転換」に加え、グリーンイノベーション基金を活用して開発している、CО 2回収技術、多様なカルシウム源を用いた炭酸塩化技術などを活用したグリーンなセ メントの供給力の確保を通じて、2050年カーボンニュートラルの実現を目指す。 併せて、災害廃棄物を受入れ処理するなど廃棄物を燃料や原料として無駄なく利用し、 循環型社会において重要な役割を引き続き果たしていく。 77 ④ 紙・パルプ産業 2050年カーボンニュートラルの実現に向け、石炭火力等の燃料を黒液(木材か らパルプを製造する際の副生物)等へ切り替える「燃料転換」と、パルプを軸とした バイオリファイナリー産業への事業展開を拡大させ、脱炭素化と産業競争力強化を一 体で実現する。特に、バイオリファイナリー事業で、化学メーカー等の異業種と連携 し新たなサプライチェーンを構築のうえ、スケールメリットを獲得できる供給体制を 確保する。国内で調達できるパルプの強みを最大限活かし、安定的なバイオエタノー ル等の供給により、紙業界にとどまらず、連携する他業界の脱炭素化と産業競争力強 化にもつなげる。 (7)半導体・デジタル産業 半導体はDXやGX、経済安全保障において不可欠な戦略物資であり、今後、AI や自動運転といったデジタル技術の更なる進展により、世界全体で半導体の需要が増 大することが見込まれる。 特に、クラウドとエッジ双方でのAI利活用が進むことで、現在半導体が組み込ま れていない製品への導入や、既存製品での半導体個数や性能の向上が進むと予想され る。その結果、半導体の性能向上が求められるとともに、増加が見込まれる電力需要 の増加幅の低減を実現する、高付加価値な半導体の需要が増加すると考えられる。電 力需要増加に対しては、最先端半導体に加えて、光電融合技術などの最先端情報処理 技術や、それを支える液体冷却技術などの最先端付帯設備の技術開発や設備投資によ り、データセンター等について大幅なエネルギー効率改善を実現していく。 また、AIやデジタル技術を活用し、自動制御等により複数機器・工場全体・工場 間での最適化を行うなど、非連続的なシステムとしての省エネルギー技術の開発を進 める。 また、経済安全保障の観点からは、半導体サプライチェーンの強靱化が求められ、 自国内で供給体制を構築するか、有志国・地域間での連携が引き続き必要となる。 (8)蓄電池産業 蓄電池は、モビリティの電動化や再生可能エネルギーの導入拡大等、2050年カ ーボンニュートラルを実現するために不可欠であり、我が国が世界の蓄電池のサプラ イチェーンにおける中核を占めるようになっていくことが重要である。経済安全保障 の観点から求められる、国内における蓄電池・部素材・製造装置の製造基盤の確立・ 強化に加えて、グローバル市場において日本の蓄電池関連の生産及び技術がプレゼン スを発揮し、競争力を強化するための取組を進める。特定国への依存脱却を含めたグ ローバルのサプライチェーン強靱化、次世代電池の技術開発等の市場獲得、人材の育 成・確保に向けた取組を推進する。また、蓄電池のリユース・リサイクルシステムの 確立・本格運用も通して資源循環及びレアメタル等の資源確保を目指す。 (9)資源循環産業 78 再生材利用促進の仕組みや高度な環境配慮設計の認定制度、リユース等のビジネス の推進、高付加価値な資源循環産業育成、情報流通プラットフォーム構築を進めると ともに、再生材の質・量の確保のため、選別・リサイクル技術や再生材の品質向上技 術などの技術革新を続け、資源循環ネットワーク形成・拠点構築を進め、高度な資源 循環システムを実現することで、環境と経済の好循環を更に推進する。また、国内で 確立した資源循環の技術・制度について、アジアを中心とした海外に展開し、日本を ハブとした国際的な資源循環システムの構築を実現する。これらにより、グローバル なサーキュラーエコノミー(CE)型ビジネス市場におけるフロントランナーとして の地位を確立するとともに、カーボンニュートラルへの貢献を通じて、世界をリード する循環型ビジネスモデルを確立する。 (10)バイオものづくり産業 バイオものづくり分野は、国民生活や経済活動由来のCO2を吸収したバイオマス や、大気中のCO2を直接の原料として、常温常圧の生物由来のプロセスにより有価 物を生産することから、カーボンニュートラルの実現を始め、様々な社会課題の解決 や緩和に向けた貢献が期待されている。産業領域ごとに対応が求められる社会課題や 適切なバイオものづくりの利活用の在り方を踏まえつつ、多様な産業への社会実装を 推進する。 具体的には、グリーンイノベーション基金やバイオものづくり革命推進事業等で開 発しているCO2や未利用バイオマス等からバイオプロセスを活用した製品(低LC A35かつ代替品の1.2倍以内の開発コスト)等について、国内外のシェア獲得・拡 大に向けたルール形成を進め、石油由来製品の代替となるよう推進することで、石油 への過度な依存からの脱却を加速する。また、現在開発中の、水素酸化細菌等を始め とする微生物・細胞設計プラットフォーム及びバイオファウンドリについて国内外に おける製造受託サービスの展開を進める。 (11)食料・農林水産業 「みどりの食料システム戦略」 (2021年5月)に基づき、調達、生産、加工・流 通、消費に至るサプライチェーン全体で、革新的な技術・生産体系の開発と社会実装 を推進し、2050年までに農林水産業のCO2ゼロエミッション化の実現を目指す。 具体的には、農林業機械・漁船の電化・水素化、化石燃料を使用しない園芸施設へ の移行や、農畜産業由来の温室効果ガスの削減、農地・海洋における炭素の長期・大 量貯蔵といった吸収源対策、農山漁村に適した地産地消型エネルギーシステムの構築 等を強力に推進する。また、森林・木材については、再造林等の適切な森林整備、高 層建築物等の木造化に資する建築部材や木質系新素材の開発、利用拡大等に取り組み、 森林吸収量の確保を図る。 35 ライフサイクルアセスメント(Life Cycle Assessment)の略称。 79 (12)運輸・インフラ ① 自動車 自動車分野においては、多様な選択肢を追求することを通じて、2050年に自動 車のライフサイクルを通じたCO2排出ゼロを目指す。そのため、自動車及び関連部 材の製造工程の脱炭素化、蓄電池・モーター等の高性能化のための技術開発、バイオ 燃料の導入拡大や合成燃料・低炭素水素等の安定供給・価格低減、蓄電池の二次利用・ リサイクルや再生材の供給・利用を進める。また、電動車、充電・水素充てん設備、 車両からの給電設備などの普及拡大を図るとともに、中堅・中小サプライヤーが参画 した脱炭素化に対応するサプライチェーンを構築する。 ② 航空機 拡大するアジア太平洋地域の単通路機市場を中心に、我が国航空機産業の参画率向 上と市場拡大を図る。機体事業では、環境新技術を採用した単通路機開発に、サブシ ステムやビジネスのインテグレーションも含めて参画する。エンジン事業では、超高 効率推進システムやハイブリッド電動推進システム等の新技術、国内の強靱なサプラ イチェーン等をレバレッジに、海外機体メーカーと共同で概念設計等の上流工程から 開発に取り組む。その上で、航空機市場の拡大に伴い重要性が高まるMRО36事業を 含む一貫した事業能力も基盤に、カーボンニュートラル実現に向けた軽量化・高効率 化、電動化、水素利用等の新技術を活用した次世代航空機の完成機事業に、国際連携 の下で取り組む。 ③ 海事 IMO(国際海事機関)において合意された国際海運からのGHG排出削減目標に 基づき、2040年までに2008年比で70~80%削減した後、2050年頃の GHG排出ゼロを目指すことになっている。このため、相当な進展が想定される化石 燃料から脱炭素燃料への燃料転換やバッテリーの利用拡大を一層推進するとともに、 更なる新エネルギーや新技術の登場に対応するため戦略的にIMOにおける国際ル ールの策定を主導する。また、新燃料への移行後に一層重要となる船舶の省エネルギ ー化に係る技術開発に加え、最新鋭の船舶の供給等において世界を主導すべく我が国 造船・舶用産業の基盤等の更なる強化を図る。これらの取組を通じ、燃料転換の普及・ 拡大が進んだ市場の中で、我が国海事産業の高い競争力及び安定的地位を確保する。 ④ 物流・人流・鉄道 グリーン物流の推進に向け、AI・IoT等の新技術を活用したサプライチェーン 全体での輸送の効率化等に取り組む。道路交通流対策を推進するとともに、ダブル連 結トラックの普及促進、自動物流道路の構築など物流効率化を推進する。人流におい 36 企業が購買・調達する資材の総称であり、maintenance, repair and operations の略称。 80 ては、地域における公共交通の確保や利便性向上による利用を促進する。鉄道分野に おいては水素燃料電池鉄道車両等の普及拡大を図る。 ⑤ インフラ(港湾、道路、ダム、上下水道等) コンパクト・プラス・ネットワークの構築、都市内のエリア単位の脱炭素化等を推 進する。グリーンインフラに関する評価手法の構築、グリーンファイナンスの活用促 進等を進める。水道において省エネルギー設備・再生可能エネルギー発電設備の導入 や施設配置の最適化を実施する。また、下水道においては水処理の新技術の開発を行 い、一層の省エネルギー化を進める。公共工事において新たな動力源を用いた建設機 械及び脱炭素資材等の導入・普及を促進する。各道路管理者が協働して道路の脱炭素 化を推進する。港湾分野では、2040年以降の水素等の需給動向や技術開発の進展 を踏まえ、水素等の受入環境の整備等により、カーボンニュートラルポートの形成を 推進する。 (13)地域・くらし(住宅・建築物を含む) 地域の脱炭素化に資する高度な脱炭素型製品・技術の地方公共団体主導での実装、 GX製品の国内需要創出を目指し、イノベーションを促進する。多くの地域で地域共 生型・地域裨益型の脱炭素を達成し、地方創生につながる取組を促進する。 住宅・建築物は、家庭・業務部門のカーボンニュートラルに向けて鍵となる分野で あり、外部からのエネルギーに依存しないゼロ・エネルギー化を可能な限り進める観 点から、より高い省エネルギー水準を有する自家消費型の住宅・建築物や、高度なエ ネルギーマネジメント・DRシステムの構築等の実現に向けて、次世代型太陽光、給 湯器、建材、蓄電池、電動車への充放電設備、コスト削減や狭小地でも活用できる小 型設備開発などに向けたイノベーションを促進していく。 81 Ⅶ.国民各層とのコミュニケーション 1.総論 エネルギーは、日々の生活に密接に関わるものであり、将来のエネルギーに関する 選択は、未来の選択にほかならない。このため、エネルギー政策について、国民一人 一人が当事者意識を持つことが何より重要であり、政府による情報開示を通じた国民 各層の理解促進や双方向のコミュニケーションを充実させていく必要がある。 2.エネルギーに関する国民各層の理解促進 (1)総論 我が国は、2030年度の温室効果ガス46%削減を目指し、さらに、50%の高 みに向けて挑戦を続けるとともに、2035年度60%削減、2040年度73%削 減、2050年カーボンニュートラル実現という野心的な目標を掲げている。カーボ ンニュートラル実現に向けては、これまでの化石燃料中心の経済・社会構造から、ク リーンエネルギー中心へ転換を行う必要があり、それは必然的に産業構造や社会生活 の大転換を伴うものとなる。 また、2040年に向けて更なる脱炭素化を進めていく上では、温室効果ガスの限 界削減費用が相対的に高い対策の導入も必要となるため、脱炭素化に伴う国民のコス ト負担が増加することが想定される。 こうしたエネルギーの転換期において、エネルギー政策を進めていくには、全ての 企業、国民一人一人がエネルギー事情を「じぶんごと」として捉え、内容を具体的に 理解した上で、行動を変容していくことが必要となる。 国民各層がエネルギーに関する理解を深め、適切な選択をしていくには、政府によ る情報開示や徹底した透明性の確保が何より重要である。こうした中で、かつて大き な障害となったのが、政府と事業者における「安全神話」の存在である。政府や事業 者が設定した基準や条件を満たせば、リスクはゼロとなり、それ以上の理解を必要と しないかのような印象を与えることとなった。東京電力福島第一原子力発電所事故以 前のエネルギー広報はこうした認識を改善することができず、事故後、政府や事業者 は、情報共有の在り方、地元とのコミュニケーションに関する問題意識の不足など多 くの批判を受けた。政府は、このことを深く反省するとともに、国民が自らの関心に 基づいて、適切に整理された情報を選択し、活用できるよう、科学的知見やデータに 基づいた客観的で多様な情報提供の体制を確立し、エネルギーに関する基礎用語、最 新の動向やトピックなど政策に関連する情報をできる限り分かりやすく表現するよ う継続的に努めていく必要がある。また、我が国のエネルギー事情や脱炭素に向けた 取組状況などについて、正確な情報を世界に対して発信していくという姿勢も重要と なる。 (2)エネルギー広報 82 東京電力福島第一原子力発電所事故以降、エネルギー政策に対する国民の関心は高 まっており、エネルギー広報は、国民各層がエネルギーに関する理解を深め、適切な 選択をしていく上で重要となる。 このため、資源エネルギー庁ホームページやパンフレットなどの各種媒体を活用し て、国内はもちろん外国に対しても丁寧に情報発信していく。また、メディア、民間 調査機関や非営利法人等に対しても情報提供を積極的に行い、第三者が独自の視点に 基づいて情報を様々な形で提供することで、国全体としてエネルギーに関する議論が 広く行われる環境を整備していく。 (3)エネルギー教育 エネルギーに対する関心を醸成し、国民理解を深めるには、学校教育の現場でエネ ルギーに関する基礎的な知識を学習する機会を設けることも重要である。こうした取 組を通じて、エネルギー事情を子どものうちから理解することは、大人になりエネル ギー選択に主体的に関与することになった時に適切な判断をする上で有益となる。 エネルギーに関する議論は、S+3Eの原則に代表されるように、複数の価値がト レードオフの関係にあり、唯一の「正解」が存在するわけではなく、子どもたちが自 らの考えを深められるテーマであると考えられる。このため、エネルギーを題材とし た教育の機会を設け、子どもたちが教職員や地域の人々とも議論を深めることは、自 らのキャリア形成とも関連付けつつ思考を深め、探求を進めることにも寄与する。こ ういった活動は、ひいては、高等教育段階においてエネルギーを専門分野として学ぶ 人材の増加、将来のエネルギー需給構造を支える人材の育成にもつながり得る。 こうした点を踏まえ、省エネなどを始めとしたエネルギー教育に関する授業展開例 や各種コンテンツを作成・改善し、ホームページや紙媒体などを通じて提供するとと もに、全国各地でエネルギー教育に取り組む教員等の創意工夫や自発的な取組を後押 ししていく。 3.政策立案プロセスの透明化と双方向的なコミュニケーションの充実 エネルギー政策について、双方向的なコミュニケーションを充実させるには、立案 プロセスの透明性を高め、政府に対する信頼を得ることが重要である。審議会等を通 じた政策立案のプロセスについて、最大限オープンにし、透明性を高めていく。 特に、エネルギー政策は内容が専門的で複雑であることが理解を妨げる要因となる こともあり、一方的に情報を伝えるだけでなく、多様なステークホルダーが参加する 形で、地域のエネルギーの活用の在り方を含めて、産学官の連携なども活用しながら 全国各地で丁寧な対話を深めることが重要であり、こうした取組を進めていく。また、 例えば、若者の間でも、原子力などの脱炭素電源に対する意見の相違や、気候変動を 重視する見解や将来の経済成長により重きを置く見解など、様々な考え方が存在して おり、若者を含む幅広い層とのコミュニケーションを充実させていく必要がある。 83
総合資源エネルギー調査会 電力・ガス基本政策小委員会 第86回 議事録・配布資料全文 | PPPT