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産業構造審議会 知的財産分科会 特許制度小委員会 第53回

2025-04-22一次資料(出典)

議事録・配布資料の全文(政府公表資料より。要約でなく原文に基づく参照用)。

産業構造審議会 知的財産分科会 特許制度小委員会 第53回 資料産業構造審議会 知的財産分科会 特許制度小委員会 第53回 資料産業構造審議会 知的財産分科会 特許制度小委員会 第53回 資料産業構造審議会 知的財産分科会 特許制度小委員会 第53回 資料産業構造審議会 知的財産分科会 特許制度小委員会 第53回 資料産業構造審議会 知的財産分科会 特許制度小委員会 第53回 資料産業構造審議会 知的財産分科会 特許制度小委員会 第53回 資料産業構造審議会 知的財産分科会 特許制度小委員会 第53回 資料

議事要旨

。 産業構造審議会 知的財産分科会 第53回特許制度小委員会 議事要旨 1. 日時・場所 日時:令和7年4月22日(火曜日)14時00分~16時00分 場所:特許庁特別会議室(特許庁庁舎16階)+Web会議室 2. 出席者 石井委員、今村委員、井本委員、木元委員、工藤委員、相良委員、杉村委員、杉山委員、玉井委員長、田村委員、中尾委員、中畑委員、橋本委員、松山委員、山中委員 3. 議題 AI技術の発達を踏まえた特許制度上の適切な対応について 知的財産の侵害抑止へ向けた取組について 国際的な事業活動におけるネットワーク関連発明等の適切な権利保護について 4. 議事内容 事務局より、資料1に沿って、説明が行われた。 議題について、自由討議が行われた。 以上 [更新日 2025年4月25日] このページの先頭へ 知的財産権関連リンク集 サイトマップ プライバシーポリシー このサイトについて 住所:〒100-8915 東京都千代田区霞が関3丁目4番3号 電話番号:03-3581-1101(代表) Copyright © Japan Patent office. All Rights Reserved.

資料1

産業構造審議会知的財産分科会 第53回特許制度小委員会 議事次第・配布資料一覧 日 時:令和7年4月22日(火)14時00分開会 会 場:特許庁庁舎16階特別会議室+Web会議室 (議事次第) 1.開会 2.AI技術の発達を踏まえた特許制度上の適切な対応について 3.知的財産の侵害抑止へ向けた取組について 4.国際的な事業活動におけるネットワーク関連発明等の適切な権利保護について 5.閉会 (配布資料) 議事次第・配布資料一覧 委員名簿 資料1 特許制度に関する検討課題について

資料2

令 和 7 年 4 月 22 日 第 53 回特許制度小委員会 産業構造審議会 知的財産分科会 特許制度小委員会 委員名簿 石井 夏生利 中央大学国際情報学部 教授 今村 玲英子 創英国際特許法律事務所 井本 史生 日本経済団体連合会知的財産・国際標準戦略委員会 員/日本電気株式会社 委員長 弁理士 知的財産&ルールメイキング部門長 木元 哲也 株式会社木元省美堂 工藤 郁子 大阪大学社会技術共創研究センター 相良 由里子 日弁連知的財産センター 委員長/ 中村合同特許法律事務所 パートナー弁護士 代表取締役社長 特任准教授 杉村 純子 プロメテ国際特許事務所 代表弁理士 杉山 悦子 一橋大学大学院法学研究科 教授 玉井 克哉 東京大学先端科学技術研究センター 信州大学社会基盤研究所 特任教授/ 特任教授 田村 善之 東京大学大学院法学政治学研究科 教授 中尾 直樹 日本弁理士会知財制度検討委員会 委員長/ 中尾国際特許事務所 企画部会委 弁理士 中島 基至 東京地方裁判所(知的財産権部) 部総括判事 中畑 稔 One ip 弁理士法人 橋本 佳幸 京都大学大学院法学研究科 松山 智恵 TMI 総合法律事務所 山中 昭利 一般社団法人日本知的財産協会 理事長/ 株式会社デンソー 担当部長 代表パートナー弁理士 教授 パートナー弁護士 技術企画部 (敬称略、五十音順)

資料3

資料1 特許制度に関する検討課題について 産業構造審議会知的財産分科会 第53回特許制度小委員会 令和7年4月22日 1.AI技術の発達を踏まえた特許制度上の適切な対応 1 これまでの経緯と今後の進め方 これまでの経緯 ➢ AIの技術発展は著しく、ノーベル賞含め、機械学習技術や、その利活用が注目されており、令和7年2月 には内閣府が「人工知能関連技術の研究開発及び活用の推進に関する法律案」を国会に提出している状況。 ➢ AIと知的財産権に関しては、内閣府では「AI時代の知的財産権検討会 中間とりまとめ」や「知的財産推 進計画2024」において特許法等に対して一定の考え方が示されるとともに、特許庁としても、AIと特許 法(令和5年度、令和6年度)、AIと意匠法(令和6年度)に関する調査研究を実施するなど、政府全体 として検討が進展している。 ➢ 特許法に規定する「発明者」は自然人に限られるとする判決(ダバス事件判決)が出されるなど、状況が 日々変化する中、本小委員会において事務局より検討の論点をお示ししたところ、論点は、おおむね網羅 的、包括的であるという意見が多数を占めた。また、発明該当性、発明者認定及び引用発明適格性等の個別 の論点に問題意識が示されるとともに、新規性・進歩性、記載要件の変化及び審査の質の観点、技術発展の 早さを踏まえ迅速な議論が重要である点、論点の加除が常に起こり得る点等、議論の進め方の観点を含め、 様々な御意見をいただいた。 今後の進め方 ➢ 前回の本小委員会でいただいた御意見に関して、次頁以降で対応の方向性を整理した。 2 前回の内容を踏まえた今回の本小委員会の予定 ➢ 前回の本小委員会の内容を踏まえ、以下の3点について事務局から御説明する。 ① 前回の本小委員会での御意見に対する対応の方向性 ② 発明創作過程におけるAIの関与程度について ③ 論点の整理及び各論点の分析 ➢ その上で、事務局からの御報告・御提案について御意見をいただきたい。 3 ①前回の本小委員会での御意見に対する対応の方向性 第52回特許制度小委員会における御意見の概要 ➢ 前回本小委員会にていただいた御意見について、事務局として整理した概要は以下のとおり。 論点(案)の他に検討を要する論点に関する御意見 1. 先使用権に関しても検討すべきではないか。 2. 人がAIを利用した際に、発明は完成しているが発明者が不在となる場合について検討すべきではないか。 3. AI開発者への権利付与の在り方、共同発明の在り方について、発明者の論点に含めて検討すべきではないか。 検討の観点に関する御意見 4. AI技術やAI発明をどのように定義するか、議論の前提が必要ではないか。 5. 産業の発展を妨げないような法制度、ルールを整備するべきではないか。 6. 国際的ハーモナイゼーションに配慮し検討すべきではないか。 4 ①前回の本小委員会での御意見に対する対応の方向性 御意見に対する対応の方向性 論点(案)の他に検討を要する論点に関する御意見 進め方/留意点に関する御意見 1.先使用権に関しても検討すべきではないか。 対応の方向性 事務局の考え方 ✓ 特許法第79条(先使用権)は「特許出願に係る発明の内容を知らないで自らその発明をし、又は 特許出願に係る発明の内容を知らないでその発明をした者から知得して、特許出願の際現に日本 国内においてその発明の実施である事業をしている者又はその事業の準備をしている者」につい て、その特許出願に係る特許権について通常実施権を有する旨を定めている。 ✓ 先使用権を有するには、先願者の特許出願以前から、独立して同一内容の発明を完成させること が要件の一つであると解されるところ(※)、AIが自律的に創作した「発明」を対象に含めるかど うか問題となり得る。(例えば、そのような「発明」の実施である事業の準備をしているような 場合が考えられる。) ✓ AIが自律的に創作した「発明」を、先使用権の要件が求める「独立した同一内容の発明」に含め るかどうか、また、特許法第79条の他に影響が及ぶ条文の有無と、制度的措置の要否については、 検討項目に含める方針で整理していく。 (※)参考 :先使用権制度の円滑な活用に向けて ―戦略的なノウハウ管理のために― (第2版) 特許庁 7頁 https://www.jpo.go.jp/system/patent/gaiyo/senshiyo/document/index/senshiyouken_2han.pdf#page=7 5 ①前回の本小委員会での御意見に対する対応の方向性 御意見に対する対応の方向性 論点(案)の他に検討を要する論点に関する御意見 進め方/留意点に関する御意見 2.人がAIを利用した際に、発明は完成しているが発明者が不在となる場合について検討すべきでは ないか。 事務局の考え方 対応の方向性 ✓ 現行の特許法では、「発明の技術的特徴部分の具体化に創作的に関与した者」を「発明者」とす る、と解される(※)。 ✓ AI技術が進展すると、発明の創作過程への人の関与が減少すると想定されるところ、人が関与し ているが「発明の技術的特徴部分の具体化に創作的に関与した」者が存在しない場合も、今後、 生じ得ることが考えられる。 ✓ 特許法の目的の一つは、同法第1条に規定されているように、「発明を奨励し、もつて産業の発 達に寄与すること」であるところ、発明は完成しているが発明者が不在となり特許権が付与され ない状況が適切か、産業の発達の観点からも検討する必要がある。 ✓ そのため、「発明者」の論点に、上記観点も含め、考え方を整理することを目指したい。 (※)特許庁 令和5年度調査研究「AIを利活用した創作の特許法上の保護の在り方に関する調査研究」 https://www.jpo.go.jp/system/patent/gaiyo/sesaku/ai/ai_protection_chousa.html 6 ①前回の本小委員会での御意見に対する対応の方向性 御意見に対する対応の方向性 論点(案)の他に検討を要する論点に関する御意見 進め方/留意点に関する御意見 3.AI開発者への権利付与の在り方、共同発明の在り方について、発明者の論点に含めて検討すべき ではないか。 事務局の考え方 対応の方向性 ✓ 内閣府知的財産戦略推進事務局第3回構想委員会において、次のような問題提起が行われている (※)。 ◼ 今後、生成AIを利用した発明を特許出願する場合、当該発明の発明者については、使用した生成AIの開発 者(例えば、学習データの選択、ファインチューニングを行った者等)や利用者(プロンプトを入力した 者等)、発明の効果を確認した者が含まれ得るか否か、また含まれる場合の類型や判断手法などの検討が 必要ではないか。 ✓ 同委員会では、AIを利用した発明創作活動については、既に、研究開発活動の中で生じており、 発明創作活動に対するAI開発者等の関与も増えていくことが予測されることが指摘されており、 本小委員会において、発明者の論点に含めながら考え方の整理を行いたい。 (※)参考 :IPトランスフォーメーション(2) ~新たな知的創造サイクルの構築に向けて~ 内閣府 20頁 https://www.kantei.go.jp/jp/singi/titeki2/tyousakai/kousou/2025/dai3/siryou1.pdf#page=21 7 ①前回の本小委員会での御意見に対する対応の方向性 御意見に対する対応の方向性 検討の観点に関する御意見 進め方/留意点に関する御意見 4.AI技術やAI発明をどのように定義するか、議論の前提が必要ではないか。 対応の方向性 事務局の考え方 ✓ 令和7年2月に国会に提出された「人工知能関連技術の研究開発及び活用の推進に関する法律 案」では、「人工知能関連技術」とは、「人工的な方法により人間の認知、推論及び判断に係る 知的な能力を代替する機能を実現するために必要な技術並びに入力された情報を当該技術を利用 して処理し、その結果を出力する機能を実現するための情報処理システムに関する技術」とされ ている(※1)。 ✓ また、ダバス事件の高裁判決中では、「AI発明」につき、一定の留保を付した上で、「人工知能 (AI)が自律的にした発明」という定義を用いている(※2)。 ✓ 議論の前提となるAI技術やAI発明の態様は、各論点により異なり得ることが想定されるところ、 上記法律案やダバス事件判決を参考にしながら、共通理解の醸成を期すべく、AIの関与程度段階 のイメージを事務局から提示した上で検討を進めたい。 (※1)内閣府 国会提出法案 第217回 通常国会「人工知能関連技術の研究開発及び活用の推進に関する法律案」 https://www.cao.go.jp/houan/217/index.html (※2)ダバス知財高裁判決:令和7年1月30日知財高裁判決(令和6年(行コ)第10006号) 8 ①前回の本小委員会での御意見に対する対応の方向性 御意見に対する対応の方向性 検討の観点に関する御意見 進め方/留意点に関する御意見 5.産業の発展を妨げないような法制度、ルールを整備するべきではないか。 6.国際的ハーモナイゼーションに配慮し検討すべきではないか。 事務局の考え方 対応の方向性 ✓ 特許庁としても、令和5年度・令和6年度にAIに関連する調査研究を実施するなど、産業界の動 向を注視しながら検討を進めている状況。 ✓ 引き続き、特許庁において令和7年度もAIに関連する調査研究を実施する予定であり、産業の発 展に資する制度を検討するための情報収集を継続していく。 ✓ 国際的ハーモナイゼーションは重要な観点であり、国際動向も含め、調査研究等を通じ適時の情 報収集を行い、審議に資する形での情報提供に努めたい。 9 ② 発明創作過程におけるAIの関与程度について 発明創作過程におけるAIの関与程度について ➢ 前回本小委員会での委員の御指摘、及び、これまでの調査研究の結果を踏まえると、議論の前提と なるAI技術やAI発明の態様は、各論点により異なり得ることが想定される。 ➢ 前回本小委員会での御意見にあるように「AI技術やAI発明をどのように定義するか」も踏まえ、本 小委員会での共通理解を醸成することを期すべく、AIの関与程度を、次の4段階(※各段階の詳細 は次頁以降に例示)に整理した上で議論を深めたい。 <AIの関与程度(イメージ)> (1) (2) (3) (4) 人のみによる発明 人が大部分を 創作した発明 AIが大部分を 創作した発明 (いわゆる) AI自律発明 概要 AIを用いておらず、 自然人が発明者と認 められる生成物 AIを用いているが、 発明者と認めるに足 る自然人の関与があ る生成物 AIが創作過程の大部 分を担い、発明者足 り得る自然人の関与 が不明な生成物 AIが自律的に発明し 発明者と認められる 自然人の関与がある とはいえない生成物 関与の 程度 AI:0% 人:100% AI:20% 人:80% AI:80% 人:20% AI:100% 人:0% 10 ② 発明創作過程におけるAIの関与程度について 特許庁におけるAI技術の調査研究等について ➢ 発明創作過程におけるAIの関与程度を4段階に整理するに当たり、特許庁において過去2年にわ たり実施した審査実務の観点も含むAIに関する調査研究を活用。 ➢ AI技術の技術水準を把握するために、調査研究に加え研究機関へのヒアリング等も実施。 ◼ 特許庁実施の調査研究の概要(一部再掲) <審査実務的側面> <技術的側面> (※1)配布は125者 令和5年度 令和6年度 産業技術総合研究所(AIST)等へのヒアリング 公開情報調査 文献調査 文献調査 国内アンケート調査 45者(※1) ー ➢ 触媒の設計、触媒合成方法、触媒プロセスの評価に人間 が介在せず、AI等により自動化。 国内ヒアリング調査 12者 20者 海外質問票調査 8者 6者 海外ヒアリング調査 5者 ー 委員会 計3回 計4回 (出典)国立研究開発法人産業 技術総合研究所「マテリアル・ プロセスイノベーションプラッ トフォーム」より抜粋。 https://unit.aist.go.jp/rpmc/pdf/MPI_pamphlet.pdf# page=4 <法的側面> ✓ これまでの調査等を踏まえた上で、AI技術の最新状況の把握及び特許法・特許制度のあるべき姿 を検討すべく、今年度(令和7年度)新たに調査研究を実施予定。 11 ② 発明創作過程におけるAIの関与程度について 仮想事例 -寒冷地用接着剤-((1)人のみによる発明) 発明 寒冷地用接着剤 課題 低温環境下において接着力、 耐久性、硬化速度に優れた 接着剤を提供すること。 事例の背景 ➢ 寒冷地での製品組立て作業の負担が大きいという問題があった。 ➢ 組立て作業のうち、特に、部品の接合工程に時間を要していた。 ➢ 従来の接着剤では十分な接着力等が得られず、接合工程に利用できなかった。 願望・ニーズの把握 設置作業がもっと楽になったらいいなぁ。 作業者 課題の着想 着想者 解決手段の発案・設計 接合工程の負担が特に大きい。 低温環境下でも接着力等に優れた接着剤があれば、 簡易迅速に接合でき、作業負担が減るはず。 伝統的なシミュレーション(※)による検討の結果、低温硬化樹脂に特定 の化合物群を配合することで、寒冷地でも有効な接着剤が作れそう。 設計者 候補選別・試作 (※)数理モデルシミュレーションは、本議論のAI技術(機械学習等)とは異なるものと整理。 化合物群の膨大な候補から実験により 最適な組合せ、配合比等を探索。 実験者 性能評価 試料の初期評価、実環境での試験等により、 性能基準を満たしているか評価。 評価者 発明完成 AIを用いずに全ての工程を人が実施し、人手による膨大な実験を経て発明が完成。 12 ② 発明創作過程におけるAIの関与程度について 仮想事例 -寒冷地用接着剤-((2)人が大部分を創作した発明) ➢ 各工程でAIをツールとして利用することは、現在も広く行われている。 ➢ 発明完成に至るまでの全ての工程において、人が大部分に関与している。 願望・ニーズの把握 設置作業がもっと楽になったらいいなぁ。 作業者 課題の着想 着想者 解決手段の発案・設計 設計者 候補選別・試作 ブレインストーミングにより、 多様な観点から課題の着想に 繋がるアイデア出しを実行。 高速シミュレーションソフトを 用いて必要な性能基準や適する 樹脂、化合物群等の検討。 ツールとしてのAI活用例: ・アイデア出しの壁打ち ・シミュレーションの高速化 ・実験データの解析 ・原材料の組合せ候補の生成 ・材料特性の予測 等 過去の実験データを解析し、最適な原材料の 組合せ、配合比等を探索。 実験者 性能評価 材料特性を予測し、試料が性能基準 を満たしているか評価。 評価者 発明完成 主に人の専門知識や経験等に基づいて創作され、AIは補助的なツールとして利用。 13 ② 発明創作過程におけるAIの関与程度について 仮想事例 -寒冷地用接着剤-((3)AIが大部分を創作した発明) ➢ 発明の大部分はAIが創作し、AI開発者やデータ提供者等はAI開発を通じて発明の創作に関与して いる。 ➢ 調査研究等を踏まえると、近い将来に、この段階に到達する可能性がある。 願望・ニーズの把握 設置作業がもっと楽になったらいいなぁ。 作業者 問題の検討、課題の設定、解決手段の発案を 主導的に実行。 課題の着想 解決手段の発案・設計 候補選別・試作 着想・ 設計者 AIが出力した結果を評価、必要に応じて微調整。 データの調整 AIへの学習 モデル構築 AI開発者 ・データ 提供者等 入力 性能評価済み 接着剤情報 出力 データベース 作製条件探索 接着剤作成 特化型AI 要求される 性能基準 性能評価 サーバ 測定結果追加 最適な 作製条件 入力 出力 測定結果 試料作製・性能評価 実験管理者 発明完成 創作工程自体はAIが主導的に実施し、人はAIの出力結果のチェック・微調整等を実施。 一方で、AIの開発や調整は人が実施。 14 ② 発明創作過程におけるAIの関与程度について 仮想事例 -寒冷地用接着剤-((4)(いわゆる)AI自律発明) ➢ 願望・ニーズの把握、課題の着想から性能評価まで、全ての工程をAIが実施。 ➢ 調査研究等を踏まえると、この段階の実現は遠い未来であり、足下の実現可能性は低いと想定される。 願望・ニーズの把握 課題の着想 解決手段の発案・設計 候補選別・試作 性能評価 発明完成 この製品の組立て作業は寒冷地の屋外 で行われており、作業者の負担が大き いです。作業の負担軽減が望まれます。 作業全体のうち、接合工程の負担が特に大きいです。 低温環境下でも接着力等に優れた接着剤があれば、簡易迅速に接合 でき、作業負担が減ります。 分析・検討の結果、低温硬化樹脂に特定の化合物群を配合することで、寒 冷地でも十分な接着力等のある接着剤が作ることができます。 これまでに蓄積されたデータや自律学習等に基づいて、特定 の性能基準を満たすような原材料の組合せ、最適な配合比を 探索します。 実際の使用環境に即した条件下において、試料の性能が基準 を満たしているか評価します。 全ての工程をAIが完全に実施し、発明の創作において人の関与はない。 15 ② 発明創作過程におけるAIの関与程度について <参考>令和6年度 調査研究(※)における、「AI自律発明」の実現可能性に係る主な御意見 概要 (※)特許庁 令和6年度調査研究「AI技術の進展を踏まえた発明の保護の在り方に関する調査研究報告書」 ➢ 令和6年度 調査研究(※)においても、「AI自律発明」の実現可能性についてヒアリングを実施。 ➢ 現時点で「AI自律発明」が実施されているという意見は見られなかった。 ➢ 他方、「AI自律発明」は、長期的にも実現困難とする意見と、中長期的には実現可能とする意見が見られた。 ヒアリング結果の概要 • 「AI自律発明」は実現可能 であるが、将来の可能性であ る、とするもの。 中長期的には 実現可能と する御意見 ヒアリング内容(一部要約) • 未来の話ではあるが、複数の生成AIを組み合わせた結果、人間がほとんど関与しな い形で新しい発明が生まれる可能性がある。(研究機関) • AIは課題自体を見つけることも可能になる。生成AI同士が会話をし、方向性を見出 すことで、課題解決や発明創出がさらに効率化される。生成AIが複数連携すること で、人間が考えつかないような答えを導き出す可能性がある。現在は人間が設定を 行う必要があるが、将来的にはロボットが自律的に生成AIを運用し、結果をフィー ドバックし続ける仕組みが現れるのではないか。(研究機関) • 現在、世界中の研究室や企業で、自律的な材料生成の仕組みが進行している。目標 とする特性を満たす無機材料を作るために、ロボットが自律的に合成を行い、計測 も自動で実施し、目的の特性を満たす材料を提供する仕組みが既に動き始めてい る。・・・(中略)・・・これらの装置は完全に自動で動作するわけではなく、人 間が微調整を行う必要がある。しかし、部分的には自動化が実現している。(研究 機関) • AIの完全自律発明というのはまだ個人的にはおとぎ話に近い。(法学者) • AIが人間に取って代わるというような議論もあるが、AIはあくまでツールであり、 人間が主体となって発明を創作し特許を取得するという基本的な枠組みは変わらな いと考えられる。(研究機関) • 現時点では完全自律ではない が、一部自動化が実現してい るとするもの。 長期的にも 実現困難と する御意見 • 「AI自律発明」は、長期的 にも実現困難、とするもの。 16 ③ 論点の整理及び各論点の分析 論点と具体的な検討事項の整理 ➢ 前回(第52回)本小委員会で頂いた委員の意見を踏まえて、先使用権を追加した6つの論点及び検討事項について、 以下のとおり番号を付した。 論点 ① 発明該当性 具体的な検討事項 ➀ー1 人がAIを利用して生成した発明は、特許法に規定する「発明」に該当するか。 ➀ー2 AI発明(AIが自律的にした発明)についてはどうか。 ➁-1 AIを利用して生成した発明の発明者の認定は、従前と同様で良いか。 ② 発明者 ➁-2 人の関与があるが発明者が存在しないという事態が生じ得る場合、当該発明は特許法 で保護されるか。権利の帰属主体は誰か。 ➁ー3 AI発明に対して、AIを発明者として認めるべきか。 ➁-4 出願する際に発明者を偽り得るところ、これは問題か。問題とする場合、どのように 対応をするか。 ③ ④ 引用発明 適格性 新規性・ 進歩性 ③-1AIを利用して生成した資料・論文等は、新規性・進歩性の判断の根拠(引用発明)と なるか。 ③-2引用発明と認定するために満たすべき要件や基準が必要となるか。 ④-1「当業者(その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者)」の考え方 等に影響があるか。 ④-2「公知」の考え方に影響があるか。 ⑤ 記載要件 ⑤-1記載を求める事項や程度を変更すべきか。 ⑥ その他・ 先使用権 ⑥-1AIが自律的に創作した「発明」を、先使用権の要件が求める「独立した同一内容の発 明」に含めるかどうか。 17 ③ 論点の整理及び各論点の分析 論点の評価に当たっての観点 ➢ AI技術は発明創作過程のどの工程においても関連するため、あるべき特許制度を踏まえた各論点の検 討に当たっては、次のI~IIIを考慮した上で、各論点で想定される特殊事情を踏まえた判断が必要で はないか。 論点の評価に当たっての観点 I. 技術的観点も含め近い将来における顕在化が想定される問題か。 II. 特許権者又は第三者の立場から検討のニーズがあるか。 III. 国内外での諸情勢を踏まえ検討すべきか。 ➢ また、あるべき特許制度の検討においては、最新のAI技術を把握するとともに、特許権者及び第三者 それぞれへの影響を評価し、特許権者の権利の保護及び第三者への負担のバランスに配慮し、現行特 許法及び他の法律による保護と整合する形で検討を深めることが必要。 ⚫ 以降では、前頁でまとめた各論点について、課題の整理を行うとともに、上記3つの観点に関し、 検討を進めるに当たっての評価を行った。 18 ③ 論点の整理及び各論点の分析 ①発明該当性 ―現行の制度、課題及び関連するヒアリング結果等― 具体的な 検討事項 現行の 制度 • AI技術は既存技術と質的に異なる発展を見せる可能性があるところ、次の点が課題となる。 ➀-1:人がAIを利用して生成した発明は、特許法に規定する「発明」に該当するか。 ➀ー2:(発明意欲の向上、情報公開の促進等を踏まえ)AI発明(AIが自律的にした発明)につい てはどうか。 • 特許法第2条は「発明」を「自然法則を利用した技術的思想の創作のうち高度のもの」と定義され ている。また、「発明者」や「引用発明適格性」など、他の論点を議論する前提にもなり得る。現 行法では、人がコンピュータ等を道具として用い生成した発明でも、特許法に規定する「発明」に 該当するが、AIが完全に自律的にした発明(いわゆるAI自律発明)は自然人が関与しないことから特 許法に規定する「発明」に該当しないと解され得る。 <I.近い将来における顕在化>・<II. 特許権者等の検討ニーズ> に関するヒアリング結果等 • ヒアリング等においては、技術分野によって、AIの利活用が 進展していることを示す意見も見られた。例えば、化学分野 <III. 国内外の諸情勢>・その他留意事項 • ダバス事件では、特許法第2条第1項の文言上、「発 明」は自然人により生み出されたものに限定されていな い旨が、当事者の一方により主張された。<III. 国内外 の諸情勢> • 米国「AIの支援を受けた発明の発明者適格に関するガイ ダンス」では「発明者および共同発明者は、自然人でな ければならない。」とした上で、「自然人が発明の創作 にAIを使用したからといって、発明者としての寄与が否 定されるわけではない。」としている(※1)。<III. 国 内外の諸情勢> では、AIの導入により化合物の設計をAIが担いつつある、と いう意見も見られた。<I.近い将来における顕在化> • AIによる「自律的」な発明について、特許法第2条第1項の 「発明」の定義を充足するという意見と、充足しないという 意見が見られた。また、「AI自律発明」は未だ不可能、「AI 自律発明」は特許保護する必要性が乏しいという意見も見ら れた。<II. 特許権者等の検討ニーズ> (※1)JETRO NY 2024年2月13日 https://www.jetro.go.jp/ext_images/_Ipnews/us/2024/20240213.pdf 19 ③ 論点の整理及び各論点の分析 ①発明該当性 ―評価― 各観点の評価 関連する観点 I. 近い将来 における 顕在化 II. 特許権者等 の 検討ニーズ III. 国内外の 諸情勢 評価の詳細 評価 ○ ○ ○ • 調査研究等を踏まえると、AI自律発明の現時点での実現可能性は高くないと想 定されるが、発明創作過程において、人がAIを利用することは現実に行われ ており、現時点でも顕在化している問題であると評価し得る。 • 「発明」の概念は「発明者」や「引用発明適格性」など、他の論点を議論する前提 にもなり得るものであり、議論を行う必要性が高いと考えられる。 • AI自律発明についても、現時点での実現可能性は高くないと想定されるが、発明該 当性を否定する意見もあれば、発明該当性を肯定する意見もあり、法的安定性の観 点から、AI自律発明の発明該当性を検討する利益はあると評価し得る。 • • ダバス事件において当事者の一方により主張されている。 米国「AIの支援を受けた発明の発明者適格に関するガイダンス」では「発明者 および共同発明者は、自然人でなければならない。」とし、「自然人が発明の 創作にAIを使用したからといって、発明者としての寄与が否定されるわけで はない。」と提示されるなど検討が望まれていると評価し得る。 20 ③ 論点の整理及び各論点の分析 ②発明者 ―現行の制度、課題及び関連するヒアリング結果等― AIを利活用した際、AIのみが「発明の特徴的部分の完成に創作的に寄与」し、イノベーションに関 与した自然人がいるにもかかわらず、「発明者が不在」となる恐れがあり、次の点が課題となる。 • 具体的な 検討事項 現行の 制度 ➁-1:AIを利用して生成した発明の発明者の認定は、従前と同様で良いか。 ➁-2:人の関与があるが発明者が存在しないという事態が生じ得る場合、当該発明は特許法で保護されるか。権 利の帰属主体は誰か。 現行の特許法では、発明者の定義について明文規定は無く、裁判例の蓄積により「発明の技術的特徴 部分の具体化に創作的に関与した者」が発明者たり得ると解されている。 • 材料メーカーα 研究者A…抽象的な着想のみ =発明者になれない? 入力 イオン伝導 率に着目! サーバー 測定結果 追加 出力 条 件 探 索 研究者A 仮に人間がなしていれば、「発明」に相 当しえた成果物(他方、AIは自然人で はない) 研究機関等では、人間が介在しない開発を試行。<I.近い将来におけ • • 程への貢献という観点から、着想や課題提起に関与しただけでも自然 人の発明者を認めても良いのではないか、という意見や、技術分野に より発明者認定の基準は異なり得るという意見があった。<II. 特許権 者等の検討ニーズ> 測定結果 試料作製・測定 <III. 国内外の諸情勢>・その他留意事項 現状、発明者として認めるには、発明の技術的特徴部分への創作的な 関与が必要、という点は共通した見解であった。政策的観点や創作過 入力 発明者が不在? る顕在化> • α社用特化 型システム 入力 最適な 作製条件 コンピュータ <I.近い将来における顕在化>・<II. 特許権者等の検討ニーズ> に関するヒアリング結果等 • データベース • ダバス事件とも関連し、①AIによる生成物は「発明」と認められな い、②AIは「発明者」と認められない等の理由により、AIによる 生成物が特許権を取得できない場合にも問題となり得る。 <III. 国 内外の諸情勢> 米国「AIの支援を受けた発明の発明者適格に関するガイダンス」で は「AI から特定の解決策を引き出す方法が顕著な貢献となる可能 性はある。」としている(※1) 。<III. 国内外の情勢> 内閣府知的財産戦略推進事務局における第3回構想委員会でも発明 者認定の評価の明確化が課題提起されている。<III. 国内外の諸情 (※1)JETRO NY 2024年2月13日 勢> https://www.jetro.go.jp/ext_images/_Ipnews/us/2024/20240213.pdf 21 ③ 論点の整理及び各論点の分析 ②発明者 ―現行の制度、課題及び関連するヒアリング結果等― 具体的な 検討事項 現行の 制度 • 発明促進等の観点から、➁-3:AI発明に対して、AIを発明者として認めるべきか、が課題となる。 また、仮にAIを発明者として認めない場合において、➁-4:出願する際に発明者を偽り得るとこ ろ(いわゆる「僭称問題」)、これは問題か。問題とする場合、どのように対応をするか、という点 も課題となる。 • 現行特許法では、権利能力のない存在を発明者とする発明について特許を付与するための手続は定め られておらず、そのため、「発明」の概念自体は自然人を発明者とする場合に限られないと解したと しても、権利能力のない存在を発明者とする「発明」について、特許法に基づく手続により特許権を 付与する余地はない(※1)、と解される。 (※1)ダバス知財高裁判決:令和7年1月30日知財高裁判決(令和6年(行コ)第10006号) 特許出願には「発明者」の記載が必要 AI自律発明 私が発明者 (出願)発明 ⇒ 発明者が不在? ・発明者ではない自然人 を「発明者」と記載 特許権 出願 本来は、特許が得られない発明 <I.近い将来における顕在化>・<II. 特許権者等の検討ニーズ> に関するヒアリング結果等 • ダバス事件においても提示された点であり、現在でも起こり得る事 <III. 国内外の諸情勢>・その他留意事項 • 象であると想定される。<I.近い将来における顕在化> • ヒアリング等においても、発明者と認めるに足るほど創作に関与し た自然人がいないにもかかわらず、なにがしかの自然人を「発明 者」として出願書類に記載して特許出願するケースへの対策が必要 か、という質問に対して、法学者、企業それぞれの立場から対策に ついて意見が見られるなど広く認知されている。<II. 特許権者等 の検討ニーズ> • ダバス事件において、知財高裁は、AI発明に特許権を付与するか否 かは、発明者が自然人であることを前提とする現在の特許権と同内 容の権利とすべきかを含め、AI発明が社会に及ぼすさまざまな影響 についての広汎かつ慎重な議論を踏まえた、立法化のための議論が 必要と判示している(※1)。<III. 国内外の諸情勢> 米国「AIの支援を受けた発明の発明者適格に関するガイダンス」で は「発明者および共同発明者は、自然人でなければならない。」と している(※2)。<III. 国内外の諸情勢> (※2)JETRO NY 2024年2月13日 https://www.jetro.go.jp/ext_images/_Ipnews/us/2024/20240213.pdf 22 ③ 論点の整理及び各論点の分析 ②発明者 ―評価― 各観点の評価 関連する観点 I. 近い将来 における 顕在化 評価の詳細 評価 • ○ • • II. 特許権者等 の 検討ニーズ III. 国内外の 諸情勢 ○ • • • • ○ • AI技術の進展により、発明の創作過程における人の関与が減少しつつあり、自然人 の関与はあるが「発明者」認定され得る自然人の関与がない場合も想起され得る。 他方、「AI自律発明」については足下の実現可能性が低い、とされているところ、 本論点は人の関与が前提であり、研究機関等では一部実現が見られており、足下で の実現可能性は高いと評価し得る。 調査研究等を踏まえると、「発明者」が不在となる場合も現実的に想起され得ると ころ、従前の制度では対応困難な状況が生じ得ることは法学者や企業に認識されて いる。 その中で、技術分野により発明者認定の基準は異なり得る等、様々な意見が見られ れており、特許権利者(発明者)の地位の法的安定性確保等の観点から、検討の ニーズがある。 また、僭称問題が生じた場合、特許制度の目的と整合するか検討が必要であり、検 討のニーズは高いと評価し得る。 ダバス事件で提起された点にも関連。 米国「AIの支援を受けた発明の発明者適格に関するガイダンス」でも「発明者およ び共同発明者は、自然人でなければならない。」、「AI から特定の解決策を引き出 す方法が顕著な貢献となる可能性はある。」と提示されている。 知的財産戦略推進事務局 構想委員会でも、AIの開発者も含めた発明者認定に課題感 が示されるなど検討が望まれていると評価し得る。 23 ③ 論点の整理及び各論点の分析 ③引用発明適格性 ―現行の制度、課題及び関連するヒアリング結果等― • 具体的な 検討事項 現行の 制度 AIを利活用し短時間で多量の技術情報が生成可能となっている。その中には、実施可能性が不明確 な内容や虚偽の内容も含まるため、次の点が課題となる。 ③-1:AIを利用して生成した資料・論文等は、新規性・進歩性の判断の根拠(引用発明)となるか。 ③-2:引用発明と認定するために満たすべき要件や基準が必要となるか。 • なお、特許法第2条と第29条は同一の「発明」という語を用いているため、第2条の「発明」の解 釈も併せて考慮する必要がある。 • 特許法第29条は、「次に掲げる発明」(第1項)のように、「発明」という語を用いて、新規性・ 進歩性による拒絶理由の根拠となる対象を定めている。 (出願)発明 新規性・進歩性 AIを利用して短時間で 大量の化合物の候補を生成 特許権 発明の内容と引用発明を比較 発明と引用発明が同じ →新規性を否定 確認 虚偽 審査官 <I.近い将来における顕在化>・<II. 特許権者等の検討ニーズ> に関するヒアリング結果等 • ヒアリング等では、AIが活用されることで、多量の技術情報が公知となり、 物質A 物質B • 企業からは、もっともらしく記載されたAIの生成物による拒絶理由に対す る対応について懸念する意見、無用な出願競争が生じることを懸念する意 見が見られた。<II. 特許権者等の検討ニーズ> 物質C 物質D 物質E <III. 国内外の諸情勢>・その他留意事項 • 特許取得が困難となり得る点への理解が見られた。<I.近い将来における 顕在化> ・・・ • • 現行の審査基準には、審査官は、刊行物の記載及び本願の出願時の技術常 識に基づいて、物(方法)の発明について、当業者がその物を作れる(そ の方法を使用できる)ことが明らかでない場合、当該刊行物に記載された 当該発明を「引用発明」とすることができない旨の記載がある(※1)。 令和6年12月6日の意匠制度小委員会でも類似する論点について議論が行 われている。<III. 国内外の諸情勢> 米国特許商標庁(USPTO)は「先行技術の判断」に関して、「(米国) 特許法102条(新規性要件)は、先行技術文献が自然人によるものである ことを求めているか」等の観点に関して意見募集を昨年(2024年)に実 施した(※2)。<III. 国内外の諸情勢> (※1)特許・実用新案審査基準第III部第2章第3節3.1.1(1)b (※2)JETRO NY 2024年5月6日 https://www.jetro.go.jp/ext_images/_Ipnews/us/2024/20240506_1.pdf 24 ③ 論点の整理及び各論点の分析 ③引用発明適格性 ―評価― 各観点の評価 関連する観点 I. 近い将来 における 顕在化 II. 特許権者等 の 検討ニーズ III. 国内外の 諸情勢 評価の詳細 評価 ○ • 発明創作過程におけるAIの利活用は現在でも既に行われつつあり、ヒアリン グでも、多量の技術情報が公知となり、特許取得が困難となり得る点への理解 が見られるなど、近い将来に顕在化し得る論点と評価し得る。 • ヒアリング等において、企業からも、もっともらしく記載されたAIの生成物 による拒絶理由が増加することを懸念する御意見、無用な出願競争が生じるこ とを懸念する意見が見られるなど、特許権者等の検討ニーズが存在すると評価 し得る。 • 昨年、米国特許商標庁による意見募集が行われるなど、国際的に見ても検討の ニーズは高い状況。 日本でも、意匠制度小委員会で、同様の論点について議論が開始されており、 他会議体の検討結果を相互にベンチマークとしつつ、早期の検討が望まれると 評価し得る。 ○ ○ • 25 ③ 論点の整理及び各論点の分析 ④新規性・進歩性 ―現行の制度、課題及び関連するヒアリング結果等― • ④-1:「当業者(その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者)」の考え方等に影響があるか。 すなわち、当業者が用いる通常の技術的手段にAIの利活用を含めること(AIの利活用を、進歩性を否定する論理付 けに利用すること)を肯定することなどが考えられる。 ④-2:「公知」の考え方に影響があるか。すなわち、AIによって出力された生成物は、どの時点(例えば、「AI が配布された時点」等)で「公知」とすべきか。また、それは従前の「公知」の認定から変化があるか。 具体的な 検討事項 現行の 制度 発明の創作において、より高度なAIを利用できるようになっており、当業者の創作能力が向上する と、次の点が課題となる。 • • 現行の特許実務では、特許要件の判断において、その発明の属する技術の分野における通常の知識を 有する者(「当業者」)という概念が用いられている。(例:特許法第36条第4項第1号) 当業者がAIを利活用しどのような知識を得るかは明確には定義されていない。 <I.近い将来における顕在化>・<II. 特許権者等の検討ニーズ> に関するヒアリング結果等 • AIを「当業者が使う技術的手段」とすることを否定しない意 <III. 国内外の諸情勢>・その他留意事項 • 米国特許商標庁(USPTO)は「当業者」に関して「USPTOは特定 の技術分野で利用される一般的なAIツールを特定すべきか。」等の 観点に関して意見募集を昨年(2024年)に実施した(※1)。<III. 国内外の諸情勢> • 特許庁令和6年度調査研究において、米独英欧中韓の有識者に対し 質問票調査が行われた。<III. 国内外の諸情勢> 当業者の概念について、全ての対象国・地域において当業者は自然 人が前提であるという回答が得られ、複数の対象国・地域で、AIの 利活用により、当業者の水準が高くなる趣旨の回答が見られた。 AIによって出力された生成物が「公知」となる時点については、対 象国・地域により差異が見られ、一貫した回答は見られなかった。 見が複数見られた。<I.近い将来における顕在化> • AIにより出力された生成物の「公知」の時点については、複 数の異なる意見が見られた。<I.近い将来における顕在化> • これらの観点について、法的な変化は不要とする意見や、 • 「公知」の時点確定の手段の困難性を指摘する意見が見られ た。<II. 特許権者等の検討ニーズ> • (※1)JETRO NY 2024年5月6日 https://www.jetro.go.jp/ext_images/_Ipnews/us/2024/20240506_1.pdf 26 ③ 論点の整理及び各論点の分析 ④新規性・進歩性 ―評価― 各観点の評価 関連する観点 I. 近い将来に おける 顕在化 II. 特許権者等 の 検討ニーズ III. 国内外の 諸情勢 評価の詳細 評価 ○ • 発明創作過程におけるAIの利活用は現在でも既に行われつつあり、ヒアリング でも具体的な検討事項に関連した意見が見られるなど、近い将来に顕在化する 論点と評価し得る。 • ヒアリング等においては、課題に対して理解は示されたものの、例えば「公 知」の時点を確定する手段の困難性を指摘する意見が見られたり、法的に何か を変える必要はないのではないか、とする意見が見られたりするなど、特許権 者等の検討ニーズは現状においては低いと評価し得る。 • 米国特許商標庁が意見募集を行うなど、一部、国際的な動きは見られるものの、 他論点に比して検討の活動は現状においては活発的ではないと評価し得る。 △ △ 27 ③ 論点の整理及び各論点の分析 ⑤記載要件 ―現行の制度、課題及び関連するヒアリング結果等― • 具体的な 検討事項 • 現行の 制度 • AIの出力結果のみが記載された明細書であって、その記載に関して実験などによる検証結果が記載 されていない場合には、出願人が意図したか否かにかかわらずその記載には虚偽の情報が含まれる可 能性がある。これに関連して次の点が課題となる。 ⑤-1:記載を求める事項や程度を変更すべきか。 例えば、実施可能要件やサポート要件を担保する観点から、使用したAIの詳細、AIの予測精度、ア ルゴリズムの特性などを出願書類に記載するという対策が考えられる。 現行の特許法では、発明創作過程や出願過程においてAIを利用した場合でも、AI利用有無等の出願 書類への記載を必要とする規定はない。 実施可能要件・サポート要件 (出願)発明 ・発明創作過程や出願過程に おいてAIを利用したことを、 出願書類に記載すべきか? ・発明の詳細な説明は当業者が実施できる 程度に明確かつ十分に記載されているか? ・請求項に係る発明が発明の詳細な説明に 記載した範囲を超えていないか? <I.近い将来における顕在化>・<II. 特許権者等の検討ニーズ> に関するヒアリング結果等 • ヒアリング等において、信頼性の乏しいAI生成物に対しては懸念が見られ • 能性が指摘されている。<I.近い将来における顕在化> 自然人の発明者が存在しないにもかかわらず、なにがしかの自然人を「発 明者」と出願書類に記載して特許出願するケース等への対処法として記載 要件を捉え、米国のような宣誓制度への言及が見られたが、米国のような 宣誓制度をそのまま日本に取り入れることは難しい、という意見が複数見 られた。<II. 特許権者等の検討ニーズ> 審査官 <III. 国内外の諸情勢>・その他留意事項 るが、制度設計の方法次第では適切に記載をした者の方が不利益を被る可 • 特許権 • 米国特許商標庁(USPTO)は「記載要件」に関して「AIツールの利用に より、記載要件に関する判断が変化し得るか」等の観点に関して意見募集 を昨年(2024年)に実施した(※1)。<III. 国内外の諸情勢> 米国「庁への手続におけるAIの使用に関するガイダンス」では、 「USPTO への手続において、原則として AI の使用を報告する義務はな いが、AI の使用が特許性判断において重要である場合には AI の使用を 報告する義務がある。」とされている(※2)。<III. 国内外の諸情勢> (※1)JETRO NY 2024年5月6日 https://www.jetro.go.jp/ext_images/_Ipnews/us/2024/20240506_1.pdf (※2)JETRO NY 2024年4月19日 https://www.jetro.go.jp/ext_images/_Ipnews/us/2024/20240419.pdf 28 ③ 論点の整理及び各論点の分析 ⑤記載要件 ―評価― 各観点の評価 関連する観点 I. 近い将来 における 顕在化 II. 特許権者等 の 検討ニーズ III. 国内外の 諸情勢 評価の詳細 評価 ○ • 発明創作過程におけるAIの利活用は現在でも既に行われつつあり、ヒアリング 等においても制度設計に関する意見が見られるなど、近い将来に顕在化し得る 論点と評価し得る。 • ヒアリング等において、課題に対して理解は示され、米国の宣誓制度のような課題 解決手段も示されたが、 AI利用を出願書類に記載することが不利に働く場合、申請 者は記載を回避するのではないかという意見が見られたり、そのような宣誓制度は 日本に取り入れることは容易ではないとする意見が複数見られたりするなど、特許 権者、第三者ともに検討ニーズは現時点では低いと評価し得る。 • 米国特許商標庁が意見募集やガイダンス発行を行うなど、一部、国際的な動き は見られるものの、他論点に比べると、現時点では検討の活きは活発的ではな いと評価し得る。 △ △ 29 ③ 論点の整理及び各論点の分析 ⑥先使用権 ―現行の制度、課題及び関連するヒアリング結果等― 具体的な 検討事項 • 特許法第79条は特許法2条と同一の「発明」という語を用いるところ、次の点が課題となる。 ⑥-1:AIが自律的に創作した「発明」を、先使用権の要件が求める「独立した同一内容の発 明」に含めるかどうか。 現行の 制度 • 特許法第79条は先使用権を定めるが、先使用権の認定において、先願者の特許出願以前から独立し て同一内容の発明を完成させることが要件の一つであると解される。 特許権 ・AIが自律的に発明した 「発明」の実施者Aは先使 用権を主張できるか? AIが自律的に 発明した技術を実施 特許権侵害を主張 研究者 事業実施者A 特許発明と同一の 実施技術 ➢ 本論点は、特許法第79条の他に影響が及ぶ条文の有無と、制度的措置の要否等について今後検討す る予定。 30 ③ 論点の整理及び各論点の分析 各論点の相対的な評価及び今後の検討の方向性 ➢ 各論点を、I. 技術的観点も含め近い将来における顕在化が想定される問題か、II. 特許権者又は第三者の立場から 検討のニーズがあるか、III.国内外での諸情勢を踏まえ検討すべきか、という観点から評価を行った。 ➢ (1)課題を検討し解決することへの特許権者等の検討ニーズがあるか否か、(2)国内外で議論が進められてい るものか否か、という点で評価の差異が生じている。 ① ② ③ ④ ⑤ ⑥ 発明該当性 発明者 引用発明 適格性 新規性 ・進歩性 記載要件 その他 ・先使用権 I ○ ○ ○ ○ ○ (※1) II ○ ○ ○ △ △ (※1) III ○ ○ ○ △ △ (※1) (※1)今後、検討を予定 今後の検討の方向性 ⚫ 特許法の概念(例:「発明」)は、上記複数の論点において関連するところ、必要に応じ、全論点の検討を深めることが 前提。 ⚫ その上で、論点①、②、③は、技術的観点も含め近い将来における顕在化が想定され、特許権者等からの検討のニーズも 見られ、国内外での諸情勢を踏まえ検討すべき論点と評価し得るものであり、相対的に早期に検討を行うことが適切では ないか。 31 御議論いただきたい事項 <各論点の相対的な評価について> ⚫ 前回の特許制度小委員会で御議論いただいた内容を踏まえ、 I. 技術的観点も含め近い将来における顕在化が想定される問題か II. 特許権者又は第三者の立場から検討のニーズがあるか、 III. 国内外での諸情勢を踏まえ検討すべきか、 という観点から、各論点の相対的な評価を行った。 <今後の検討の方向性について> ⚫ 相対的な評価を踏まえると、①発明該当性、②発明者、③引用発明適格性は、技術的観点 も含め近い将来における顕在化が想定され、特許権者等からの検討のニーズも見られ、国 内外での諸情勢含め検討が望まれている論点と評価し得る論点と考えられる。 ⚫ 必要に応じ、全論点の検討を深めることを前提としつつ、次回以降の本小委員会で、上記 ①、②、③の論点について相対的に早期に考え方を整理していくことが適切ではないか。 ⇒以上について、各論点の評価及び今後の方向性に関する御意見及び今後の検討に当たって 留意すべき点がないか御指摘があればいただきたい。 32 2.知的財産の侵害抑止へ向けた取組 33 知的財産の侵害抑止へ向けた取組に至る経緯 ➢ 政府全体の動きとして、「新しい資本主義実現会議」において、大企業と中小・小規模企業・ス タートアップの間の協力関係の確立を目的として、「中小・小規模企業・スタートアップが保有す る知的財産の侵害を抑止するため…知的財産を侵害させないための取組を行う」ことを掲げている。 (「新しい資本主義のグランドデザイン及び実行計画 2024 年改訂版」(令和6年6月)) ➢ また、石破茂内閣総理大臣は、第32回「新しい資本主義実現会議」において、「中小・小規模事 業者の知的財産の保護を強化」する旨を発言したところ(令和7年3月28日)。 ➢ さらに、政府では中小企業の価格転嫁対策にも取り組んできたところ、適切な価格転嫁の定着へ向 けて、公正取引委員会及び中小企業庁にて企業取引研究会を開催した(令和6年7月~)。主に下 請代金支払遅延等防止法の改正について議論を行い、同法案は令和7年3月11日に閣議決定がな され、今次通常国会へ提出された。 ➢ 同研究会では、中小企業に知的財産権の不当な侵害が生じているとの問題も提起された。知財侵害 は「侵害されたら訴訟で取り返す」ことが前提となるが、資金・人材が潤沢でない中小企業は提訴 を躊躇し、泣き寝入りしていることが多いことから、侵害が事前に強く抑止されることが必要であ ると指摘され、委員から以下①~③の提案がなされ、議論が行われた。 ①知財取引の実態に関する調査 / ②知財侵害抑止に資する指針の策定 / ③知財侵害抑止に資す る制度の導入 ➢ その結果、「企業取引研究会 報告書」(令和6年12月)において、中小企業庁及び公正取引委員 会は、幅広い業種を対象とした実態調査を行い、独占禁止法のガイドラインや下請法の運用基準の 見直しにつなげること等を講じていくべきと取りまとめられた。 政府全体の課題として知的財産の事前の侵害抑止が挙げられており、 特許庁としても取り組むべき課題となっている。 34 知的財産の侵害抑止へ向けた特許庁の取組 ➢ 特許庁は、知的財産権の侵害に対する問題について、令和元年に特許法の改正を行うなど、対応を 行ってきた。 ➢ 令和元年改正では、権利者の生産・販売能力を超える部分の損害を認めるべく損害賠償額の算定方 法(特許法第102条)を見直し、工場等への立入検査による証拠収集手続である査証制度を導入し た(特許法第105条の2)。同改正等の影響により、損害賠償額は増加傾向が認められる一方で、 今なお知財侵害の抑止の必要性を訴える声がある。 ➢ 侵害訴訟は資金や人的リソース等の負担が大きい上に、知的財産権は一度侵害されると十分な救済 を得ることが難しいという問題がある中、特許庁政策推進懇談会においても、知財侵害の抑止の重 要性について認識が共有され、「特許庁政策推進懇談会 中間整理(令和6年6月)」においても 国内外の動向を注視しつつ、知財侵害の抑止の在り方について適時に検討を行うことが適当である 旨取りまとめられた。 ➢ 知財侵害の事前抑止という課題に取り組むにあたっては、その検討の基礎として、日本国内外の実 態を把握する必要があるところ、令和6年度産業財産権制度問題調査研究「多様化する権利侵害を 抑制する知財保護システムに関する調査研究」(令和7年3月)及び中小企業等へのヒアリングを 実施した。 ◼ 調査研究の調査方法 実施内容 概要 公開情報調査 日本を含む4カ国(日本、米国、英国、オーストラリア)を対象として、特許権侵害抑止に関する制 度・施策等を網羅的・体系的に調査。 国内ヒアリング調査 特許権侵害抑止に関する諸制度の有識者(弁護士・弁理士・法学者)に対するヒアリング 35 ①令和6年度調査研究 国内外の侵害抑止に資する制度に関する公開情報調査 ➢ 日本国の特許権侵害の事前抑止に関する実効性検証の前提として、直接又は副次的に侵害抑止に 資すると考えられる制度を体系的に調査した。 ➢ また、海外制度として、特許権侵害の事前抑止という課題に対して、我が国の特許権侵害抑止に かかる制度・施策等の高度化に向けた知見の獲得へ向けて、主要国(米国、英国及びオーストラ リア)の制度(判例法を含む)を体系的に調査した。 各国比較において、損害賠償や差止めが主たる手段等の類似点が認められた一方で、懲罰的損害賠 償の有無、特許表示の意義、特許権侵害の刑事罰の有無等が主たる相違点として挙げられた。 相違点の分析 ✓ 損害賠償について、日本では不法行為法に基づくことから損害塡補こそが損害賠償の目的とされてきたが、 予防的な権利侵害の抑止効果も有しうるとも評価する余地がある。他方、米国では、故意又は不誠実な侵害 行為を抑止する目的で懲罰的損害賠償が導入されている。 ✓ 特許表示について、日本における制度趣旨が表示を附した物が特許権の対象であることを明示し権利侵害を 未然に防ぐ効果を有するとされているが、表示は努力義務とされている。他方、米国では特許表示をしてい なかった場合、侵害の通知がなされた後の侵害行為に対する損害賠償請求しか認められない点や、英国では 特許の存在を知らず、知らなかったことを推定する合理的な理由を示したときは損害賠償が制限されるとこ ろ、適切な特許表示がある場合にはこのような制限を受けない点など、日本と他国では特許表示の意義・位 置づけが異なっている。 ✓ 刑事罰について、対象国の中では日本のみだが、日本において検挙数が極めて少ないこと(過去6年で4 件)が明らかとなった。他方、他国においては、特許権侵害に対する救済は民事事件の中で経済的に十分な 補償を確保することで十分達成できるため刑事罰をもって対処する必要はないという考え方により、刑事罰 が制定されてないことがわかった。 36 ①令和6年度調査研究 国内外の侵害抑止に資する制度に関するヒアリング調査 ➢ 有識者(弁護士・弁理士・法学者)に対して、前頁の公開情報調査で得た結果を基に日本の侵害 抑止に資すると考えられる制度の候補一覧を示しつつ、特許権侵害の抑止に資する制度の実効性 及び課題に関するヒアリング調査を実施した。 ➢ 日本の侵害抑止に資すると考えられる制度の候補は、具体的には、間接侵害、差止請求、損害賠 償、信用回復措置等のその他の救済措置、特許表示、刑事罰を挙げた。 ➢ 日本の現行制度について、損害賠償や差止め(仮処分を含む)は侵害抑止に効果的であること、 差止めの仮処分や特許表示制度は侵害抑止との関係において課題があること、刑事罰は侵害抑止 へ向けた効果に乏しいことなどの見解を得た。 ➢ また、前頁の公開情報調査で得た海外制度についても、差止請求や損害賠償等制度の一覧を示し つつ、特許権侵害の抑止に資する制度の実効性に関するヒアリング調査を実施した結果、日本と 各国では、実現可能性が不明なるも、米国の懲罰的損害賠償や英国のディスクロージャー手続な ど証拠収集手続も侵害抑止に資するのではないかとの見解もあった。 ➢ ヒアリングにおいて、今後侵害抑止に関する検討を進めるに当たり検討の余地があるとして、以 下のような具体的な課題が示された。 ✓ 損害賠償については、高額な賠償額が認定されうる場合や被疑侵害者による設計変更が容易であるなど短期で 侵害が終わる場合においては侵害抑止の実効性があるが、総合すると侵害抑止効果を十分に発揮するに足りる ほどではない。 ✓ 差止めについては、侵害抑止の実効性が高いが、仮処分の命令や判決までの期間が長いことや仮処分は要件が 厳しく認められにくいといった課題がある。 ✓ 特許表示については、現状侵害抑止の手段として一般に認識されておらずマーケティングの位置づけが強い。 他方で、クリアランス調査に課題を感じる企業(特に中小企業やスタートアップ企業など)にとっては、特許 表示の存在によってクリアランス調査を補助する効果が期待される。 37 ①令和6年度調査研究 まとめ:制度・施策に関する課題 ➢ 調査研究では、公開情報調査において日本、米国、英国及びオーストラリアにおける特許権侵害 抑止に関する諸制度を調査し、ヒアリング調査においては、特許権侵害の抑止に資する制度の実 効性及び課題に関するヒアリングを実施したところ、その調査結果は前頁までに記載したとおり。 ➢ 調査研究の結論として、特許権侵害抑止に関する我が国の課題を以下のとおり整理した。 調査研究で得られた課題 ✓ 現状の損害賠償制度は侵害抑止効果を欠くこと 令和元年改正を経て、特許権侵害に基づく損害賠償額は増加傾向が認められるが、特許法第102 条の改正をした部分にとどまり、侵害抑止効果を十分に発揮するに足りるほどではない。 ✓ 差止め・仮処分に時間を要すること 差止め、特に差止仮処分は侵害抑止策として有効である一方で、審理に時間を要することや、厳 格な手続期限などのルールがないため、一部の被申立人側当事者による手続の引き延ばしが許容 されてしまうことが課題。 ✓ 特許表示の侵害抑止としての活用が乏しいこと 我が国では特許表示を行わないことで不利益を被ることが無いため、特許表示はマーケティング 的な位置づけが強く、侵害抑止策としての機能は限定的。 38 ②中小企業ヒアリング 中小企業等ヒアリング調査の結果概要(特許庁実施) ➢ 特許庁において、中小企業(繊維業、建設業、素材メーカー等)及び弁理士に対するヒアリング 調査を実施し、日本国の特許制度の権利侵害の事前抑止に関する実効性等について意見を聴取し たところ。 ➢ ヒアリングによれば、損害賠償は検討の余地があること、ただし懲罰的損害賠償ではなくバラン スの取れた制度が望まれること、差止めを含む訴訟提起にはハードルがあること及び特許表示は 活用の余地があることが判明した。 聴取された意見の概要 ✓ 懲罰的損害賠償で数倍にすべきという流れが過去にあったが、反対だった。中小企業は、権利行使をする立場だ けを考えるのではなく、他社の権利を侵害する恐れもあり、バランスを考えるべき。 ✓ 訴訟提起に踏み出せない主な理由は、金銭的なリターンがないこと、弁護士等の訴訟費用がかかること、相手方 等の周りとの関係の悪化の危険の3つである。 ✓ 特許の侵害抑止という意味では損害賠償の額を上げるのは非常に良いと思う。 ✓ 特許の存在を気付かせることが大事である。特許を誤って踏むことがない。 ✓ スタートアップでは、投資家向けや事業提携へ向けて、自社の技術力をアピールする目的で既に特許の表示をし ているから、特許表示の活用は受け入れやすい。 ✓ 競合製品の裏にある特許にたどり着くのが難しいので、自分が侵害者にならないという意味でも、特許表示が積 極活用されるのはありがたい。 39 今後の方向性について ➢ 知的財産の事前の侵害抑止が課題となっているところ、調査研究において3つの提言(損害賠償 の在り方検討、差止め・仮処分の迅速化、特許表示の機能向上)が示されたところ、中小企業等 へのヒアリング結果も踏まえて、各課題について以下の方向性で考えている。 ➢ 損害賠償の在り方について、懲罰的損害賠償は、特許庁では政策推進懇談会において導入の必要 性が高まった段階で改めて検討する方向性が示されたが、現状において導入の必要性の高まりは 見られていない。また、同制度は、実際に発生した損害を塡補する民法の原則(実損塡補の原 則)を逸脱すること及び企業への負担も大きいため、導入することが現実的ではない。 あくまでも実損塡補の原則の範囲内でバランスのある制度を目指し、他の検討課題との関係を見 つつ、必要に応じて、在り方を検討することが適当ではないか。 ➢ 差止め・仮処分の迅速化について、企業は裁判手続自体に負担がある点から、差止めに関する手 続を迅速化したとしても、そもそも特に中小企業は差止請求を行うことが難しく、侵害抑止の効 果が期待できない可能性があるため、他の論点に比して議論の必要性が劣後するのではないか。 特許表示は、訴訟と比較すると対応に要する負担が軽く、訴訟提起を要さずに事前に抑止効果が期待 できる可能性がある。特許表示の活用が広がれば、他社の特許権の存在に気付きやすくなることから 特にクリアランス体制に懸念がある企業ではクリアランス負担の軽減に繋がる点でも利点がある。特 許表示の活用は、競合する企業に対して裁判手続を経ない侵害の牽制策として現実的な方向性と考え られるため、今後集中的に検討を深めるべきではないか。 40 御議論いただきたい論点 今後の進め方 ➢ 政府全体で知的財産の事前の侵害抑止が課題となっており、特許庁も取り組む必要がある。 ➢ 令和6年調査研究を通じて、損害賠償、差止め、特許表示が重点的に検討すべき課題として提示 されたところ、訴訟提起を要さずに事前に抑止効果が期待できる点から、特許表示の機能向上に 関する検討を集中的に進めるべきではないか。 ➢ 検討を進めるにあたって、事前の侵害抑止に関してより詳細な実態を把握し、また、更なる知見 の獲得をすべく海外制度の実態を把握する必要があることから、令和7年度においても、以下の 要素について調査研究等を実施し、調査及び検討を継続する予定である。 ① 知財侵害の抑止の必要性について、中小企業をはじめ国内企業に対する知財侵害にかかる実 態調査を行う。 ② 欧州や韓国など令和6年度調査研究の調査対象外の国における、特許表示をはじめとする知 財侵害の抑止に資する制度の調査並びに米国及び英国の特許表示制度に関する深掘り調査を 実施し、更なる知見を収集する。 令和6年度調査研究の結果及び今後の方向性に関して御意見をいただきたい。 また、検討及び調査を進めるに当たり、留意すべき点がないか御意見をいただきたい。 41 参照条文 特許法(昭和三十四年法律第百二十一号) 抄 (差止請求権) 第百条 特許権者又は専用実施権者は、自己の特許権又は専用実施権を侵害する者又は侵害するおそれがある者に対し、その侵害の停 止又は予防を請求することができる。 2 特許権者又は専用実施権者は、前項の規定による請求をするに際し、侵害の行為を組成した物 (物を生産する方法の特許発明に あつては、侵害の行為により生じた物を含む。第百二条第一項において同じ。)の廃棄、侵害の行為に供した設備の除却その他の侵 害の予防に必要な行為を請求することができる。 (侵害とみなす行為) 第百一条 次に掲げる行為は、当該特許権又は専用実施権を侵害するものとみなす。 一 特許が物の発明についてされている場合において、業として、その物の生産にのみ用いる物の生産、譲渡等若しくは輸入又は譲 渡等の申出をする行為 二 特許が物の発明についてされている場合において、その物の生産に用いる物 (日本国内において広く一般に流通しているもの を除く。)であつてその発明による課題の解決に不可欠なものにつき、その発明が特許発明であること及びその物がその発明の実施 に用いられることを知りながら、業として、その生産、譲渡等若しくは輸入又は譲渡等の申出をする行為 三 特許が物の発明についてされている場合において、その物を業としての譲渡等又は輸出のために所持する行為 四 特許が方法の発明についてされている場合において、業として、その方法の使用にのみ用いる物の生産、譲渡等若しくは輸入又 は譲渡等の申出をする行為 五 特許が方法の発明についてされている場合において、その方法の使用に用いる物 (日本国内において広く一般に流通している ものを除く。)であつてその発明による課題の解決に不可欠なものにつき、その発明が特許発明であること及びその物がその発明の 実施に用いられることを知りながら、業として、その生産、譲渡等若しくは輸入又は譲渡等の申出をする行為 六 特許が物を生産する方法の発明についてされている場合において、その方法により生産した物を業としての譲渡等又は輸出のた めに所持する行為 42 参照条文 特許法(昭和三十四年法律第百二十一号) 抄 (損害の額の推定等) 第百二条 特許権者又は専用実施権者が故意又は過失により自己の特許権又は専用実施権を侵害した者に対しその侵害により自己が受 けた損害の賠償を請求する場合において、その者がその侵害の行為を組成した物を譲渡したときは、次の各号に掲げる額の合計額を、 特許権者又は専用実施権者が受けた損害の額とすることができる。 一 特許権者又は専用実施権者がその侵害の行為がなければ販売することができた物の単位数量当たりの利益の額に、自己の特許権 又は専用実施権を侵害した者が譲渡した物の数量(次号において「譲渡数量」という。)のうち当該特許権者又は専用実施権者の実 施の能力に応じた数量(同号において「実施相応数量」という。)を超えない部分(その全部又は一部に相当する数量を当該特許権 者又は専用実施権者が販売することができないとする事情があるときは、当該事情に相当する数量(同号において「特定数量」とい う。)を控除した数量)を乗じて得た額 二 譲渡数量のうち実施相応数量を超える数量又は特定数量がある場合(特許権者又は専用実施権者が、当該特許権者の特許権につ いての専用実施権の設定若しくは通常実施権の許諾又は当該専用実施権者の専用実施権についての通常実施権の許諾をし得たと認め られない場合を除く。)におけるこれらの数量に応じた当該特許権又は専用実施権に係る特許発明の実施に対し受けるべき金銭の額 に相当する額 2 特許権者又は専用実施権者が故意又は過失により自己の特許権又は専用実施権を侵害した者に対しその侵害により自己が受けた損 害の賠償を請求する場合において、その者がその侵害の行為により利益を受けているときは、その利益の額は、特許権者又は専用実 施権者が受けた損害の額と推定する。 3 特許権者又は専用実施権者は、故意又は過失により自己の特許権又は専用実施権を侵害した者に対し、その特許発明の実施に対し 受けるべき金銭の額に相当する額の金銭を、自己が受けた損害の額としてその賠償を請求することができる。 4 裁判所は、第一項第二号及び前項に規定する特許発明の実施に対し受けるべき金銭の額に相当する額を認定するに当たつては、特 許権者又は専用実施権者が、自己の特許権又は専用実施権に係る特許発明の実施の対価について、当該特許権又は専用実施権の侵害 があつたことを前提として当該特許権又は専用実施権を侵害した者との間で合意をするとしたならば、当該特許権者又は専用実施権 者が得ることとなるその対価を考慮することができる。 5 第三項の規定は、同項に規定する金額を超える損害の賠償の請求を妨げない。この場合において、特許権又は専用実施権を侵害し た者に故意又は重大な過失がなかつたときは、裁判所は、損害の賠償の額を定めるについて、これを参酌することができる。 43 参照条文 特許法(昭和三十四年法律第百二十一号) 抄 (信用回復の措置) 第百六条 故意又は過失により特許権又は専用実施権を侵害したことにより特許権者又は専用実施権者の業務上の信用を害した者に対 しては、裁判所は、特許権者又は専用実施権者の請求により、損害の賠償に代え、又は損害の賠償とともに、特許権者又は専用実施 権者の業務上の信用を回復するのに必要な措置を命ずることができる。 (特許表示) 第百八十七条 特許権者、専用実施権者又は通常実施権者は、経済産業省令で定めるところにより、物の特許発明におけるその物若し くは物を生産する方法の特許発明におけるその方法により生産した物(以下「特許に係る物」という。)又はその物の包装にその物 又は方法の発明が特許に係る旨の表示(以下「特許表示」という。)を附するように努めなければならない。 (侵害の罪) 第百九十六条 特許権又は専用実施権を侵害した者 (第百一条の規定により特許権又は専用実施権を侵害する行為とみなされる行為 を行つた者を除く。)は、十年以下の懲役若しくは千万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。 第百九十六条の二 第百一条の規定により特許権又は専用実施権を侵害する行為とみなされる行為を行つた者は、五年以下の懲役若し くは五百万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。 民法(明治二十九年法律第八十九号) 抄 (不当利得の返還義務) 第七百三条 法律上の原因なく他人の財産又は労務によって利益を受け、そのために他人に損失を及ぼした者(以下この章において 「受益者」という。)は、その利益の存する限度において、これを返還する義務を負う。 44 3.国際的な事業活動におけるネットワーク関連発明等の 適切な権利保護 45 これまでの経緯と今後の進め方 これまでの経緯 ➢ 実質的に国内の実施行為と認める要件を明文化する方向で検討を深めるに当たり、前回第52回の小委員会 では、第51回小委員会にて複数の御意見をいただいた「発明の実施行為の『一部』が国内」の要件を中心 に、ユーザーの実情とニーズに合った要件となるように想定事例も交えて検討を行った。 ➢ その結果、「発明の『技術的効果』と『経済的効果』が共に国内で発現していること」という要件に加え て、「特許発明の構成要素の『一部』が国内で実施」の要件も採用する方向性について、特に産業界を中 心に必要であるとの御意見を多数頂戴した。 ➢ 他方、それぞれの要件について、更なる検討を求める御意見もいただいたところ。 今後の進め方 ➢ 令和7年3月3日には、本論点と関連性の深い「ドワンゴ対FC2事件」(第1事件・第2事件)の最高 裁判決が言い渡されており、本論点の検討を進めるに当たり重要な判決であり参考とすべきと考えられる 。 ➢ そこで今回は、本小委員会で検討してきた内容を踏まえて当該最高裁判決を整理・分析し、今後の議論の 方向性を確認するとともに、主な検討事項と留意点を御議論いただきたい。 46 ドワンゴ対FC2事件の経緯 ➢ ➢ ➢ 原告ドワンゴは、動画コンテンツを再生しながらユーザーが投稿したコメントを表示する際の表示制御技術に関す る発明について、特許権を取得。 被告FC2らは、米国に存在するサーバーを用いて、日本国内に存在するユーザー端末にコメント付き動画配信サー ビスを提供。ドワンゴは、FC2らの当該行為について、特許発明に係るプログラムの「提供」等(第1事件)、シ ステムの「生産」(第2事件)に該当すると主張した。 サーバーが米国に存在する点で日本の特許権を行使できるか、いわゆる属地主義との関係で注目される裁判となった。 事案の概要 サーバー ユーザーが使用する端末における表示の例 ① 動 コ 画 メ リ ン ク ト エ 投 ス 稿 ト ・ 表示の流れ コメント ユーザー (端末) ② 表 コ 示 メ 制 ン 御 ト プ デ ロ ー グ タ ラ ・ ム 送 信 FC2のサーバーは日本国 外(米国)に存在 <原告ドワンゴの主張> 被告の行為は、原告特許権に係る • プログラムの「提供」【第1事件】 • システムの「生産」(※)【第2事件】 に該当する。 (※サーバーと端末とで構成されるもの) ③表示制御プログラムの実行 <動画配信サービスの概要> ※説明の便宜のため、処理等の一部を単純化して示している ① 端末で動画を視聴中のユーザーが、その動画に対してコメントを投稿する(コメントはサーバーに送信される) ② 動画の視聴を所望するユーザー(端末)に対し、サーバーから動画及びコメントデータ(ファイル)及び表示制御プログラム(JSファ イル)が送信される。 ③ 動画を再生すると、端末で実行される表示制御プログラムにより、コメントを付与した時間と対応する動画再生時間において、当該コ メントが動画に重ねて表示され、水平方向に移動するように表示制御される。(※コメントの具体的な表示制御に係る技術について、 特許権が成立) 判決の推移 東京地裁:特許権者敗訴 知財高裁:特許権者逆転勝訴 最高裁:特許権者勝訴確定(控訴審支持・令和7年3月3日) ✓ 実質的に我が国の領域内における実施行為に当たると評価でき、特許権の効力 が及ぶことを示した。 47 <参考>最高裁判決以前の第1事件の概要(第50回小委員会資料より再掲) ➢ 控訴審において、米国のサーバーから日本国内のユーザにプログラムを配信する行為が、特許法 第2条第3項第1号にいうプログラム等の「提供」に該当するかが主な争点となった。 ➢ 知財高裁は、被告の配信行為は、実質的に日本国内で行われたと評価できるとして、特許法第2 条第3項第1号にいう「提供」に該当すると判示した。 第一審判決 東京地判平成30年9月19日(平成28年(ワ)第38565号) ◼ 被告らの装置/プログラムは、文言上特許発明の技術的範囲に属さず、均等なものでもないと判示された。 (※属地主義に関しては判断されず。) 控訴審判決 知財高判令和4年7月20日(平成30年(ネ)第10077号) ◼ 知財高裁は、「特許発明の実施行為につき、形式的にはその全ての要素が日本国の領域内で完結するものでない としても、実質的かつ全体的にみて、それが日本国の領域内で行われたと評価し得るものであれば、これに日本 国の特許権の効力を及ぼしても、前記の属地主義には反しない」として、考慮すべき諸事情として、以下①~④ の4つを例示。本件配信は、日本国の領域内で行われたものと評価するのが相当であるとして、特許法第2条第 3項第1号にいう「提供」に該当すると結論付けた。 ①当該提供が日本国の領域外で行われる部分と領域内で行われる部分とに明確かつ容易に区別できるか ②当該提供の制御が日本国の領域内で行われているか ③当該提供が日本国の領域内に所在する顧客等に向けられたものか ④当該提供によって得られる特許発明の効果が日本国の領域内において発現しているか 48 <参考>最高裁判決以前の第2事件の概要(第50回小委員会資料より再掲) ➢ 米国にあるサーバーと国内にある端末とで構成されるシステムの「生産」行為について、日本国 内における「生産」に該当するかが争点となった。 ➢ 第一審では、サーバーが米国に存在するため「生産」に該当しないとされたが、控訴審(大合 議)では、「生産」行為が実質的に日本国内で行われたものとして、特許権侵害が認められた。 第一審判決 東京地判令和4年3月24日(令和元年(ワ)第25152号) ◼ 裁判所は、以下のように判断して、被告らによる被告システムの日本国内における生産は認められず、本件特許 権の侵害の事実を認めることはできないと判示した。 • 特許法第2条第3項第1号の「生産」に該当するためには、特許発明の構成要件を全て満たす物が日本国内において作り出される必要が あると解するのが相当である。 • 本件発明1の構成要件を全て充足するコメント配信システムが新たに作り出されるとしても、それは、米国内に存在する動画配信用サー バ及びコメント配信用サーバと日本国内に存在するユーザ端末とを構成要素とするコメント配信システム(被告システム1)が作り出さ れるものである。 • 完成した被告システム1のうち日本国内の構成要素であるユーザ端末のみでは本件発明1の全ての構成要件を充足しないことになるから、 直ちには、本件発明1の対象となる「物」である「コメント配信システム」が日本国内において「生産」されていると認めることができ ない。 控訴審判決(大合議判決) 知財高判令和5年5月26日(令和4年(ネ)第10046号) ◼ 「属地主義の原則は、・・・これを厳格に解釈し、サーバーが国外に存在することを理由に一律に特許法2条3項 の「実施」に該当しないと解することは、特許権の十分な保護を図ることができないこととなって妥当ではな い。」として、以下①~④等を総合考慮して、当該行為が我が国の領域内で行われたものとみることができると きは、特許法第2条第3項第1号の「生産」に該当するのが相当として、特許権侵害を認めた。 ①当該行為の具体的態様 ②当該システムを構成する各要素のうち国内に存在するものが当該発明において果たす機能・役割 ③当該システムの利用によって当該発明の効果が得られる場所 ④その利用が当該発明の特許権者の経済的利益に与える影響 49 最高裁判決のポイントと最高裁判決が明確にした点 ポイント ➢ 係争対象の事案について、「発明の効果」と「経済的な影響」を考慮要素として、被疑侵害者(FC2) の行為は、実質的に我が国の領域内における実施行為に当たると評価(特許権侵害を肯定)した。 ➢ 他方、あくでも上記考慮要素はドワンゴ対FC2事件という個別事案の結論を導くためのものとして言 及されており、他の事案にまで一般化し得る記載はない。 ⇨ まずは「最高裁判決が明確にした点」を確認した上(50~52頁)で、「明確に示していない点」につ いて整理し(53頁)、「最高裁判決後の状況(ユーザーの懸念・課題)」を把握したい(54~55頁)。 最高裁判決が明確にした点 ➢ 現行法の下でも、サーバーが国外にあっても、「実質的に我が国の領域内における実施行為に当たる と評価」できる場合がある。 ➢ 以下の2つの要素は、そのような上記評価における考慮要素となり得る。 ① 被疑侵害行為が「我が国所在の端末において」、「発明の効果を当然に奏させるようにするもの」であること ② 「経済的な影響を及ぼさないというべき事情もうかがわれない」こと ⇨ 次頁以降において、実際の判決文を引用しつつ重要な点を確認する。 50 ドワンゴ対FC2事件 第1事件及び第2事件の最高裁判決 ➢ 最高裁判決では、現行法の下でも、サーバーが国外に存在したとしても、実質的に我が国の領域内に おける実施行為に当たると評価できる場合には、特許権の効力が及ぶことが示された。 ✓ 「我が国の特許権の効力が及ぶと解することを妨げる理由はない」とした理由に関する主な記載は以下のとおり。 第1事件 第2事件 我が国の特許権の効力は、我が国の領域内においてのみ認め られるが・・・、電気通信回線を通じた国境を越える情報の 流通等が極めて容易となった現代において、 我が国の特許権の効力は、我が国の領域内においてのみ認めら れるが・・・、電気通信回線を通じた国境を越える情報の流通 等が極めて容易となった現代において、 プログラム等が、電気通信回線を通じて我が国の領域外から 送信されることにより、我が国の領域内に提供されている場 合に、 サーバと端末とを含むシステムについて、当該システムを構築 するための行為の一部が電気通信回線を通じて我が国の領域外 からされ、また、当該システムの構成の一部であるサーバが我 が国の領域外に所在する場合に、 我が国の領域外からの送信であることの一事をもって、常に 我が国の特許権の効力が及ばず、上記の提供が「電気通信回 線を通じた提供」(特許法2条3項1号)に当たらないとす れば、 我が国の領域外の行為や構成を含むからといって、常に我が国 の特許権の効力が及ばず、当該システムを構築するための行為 が特許法2条3項1号にいう「生産」に当たらないとすれば、 特許権者に業として特許発明の実施をする権利を専有させる などし、発明の保護、奨励を通じて産業の発達に寄与すると いう特許法の目的に沿わない。 特許権者に業として特許発明の実施をする権利を専有させるな どし、発明の保護、奨励を通じて産業の発達に寄与するという 特許法の目的に沿わない。 そうすると、そのような場合であっても、問題となる行為を 全体としてみて、実質的に我が国の領域内における「電気通 信回線を通じた提供」に当たると評価されるときは、当該行 為に我が国の特許権の効力が及ぶと解することを妨げる理由 はないというべきである。 そうすると、そのような場合であっても、システムを構築する ための行為やそれによって構築されるシステムを全体としてみ て、当該行為が実質的に我が国の領域内における「生産」に当 たると評価されるときは、これに我が国の特許権の効力が及ぶ と解することを妨げる理由はないというべきである。 51 * 第1事件のみの存在する箇所は青字を、第2事件のみに存在する箇所は赤字を参照されたい。 ドワンゴ対FC2事件 ➢ 第1事件及び第2事件の最高裁判決 最高裁判決では、以下の2つの要素が、実質的に我が国の領域内における実施行為に当たるとの評価におけ る考慮要素となり得る点が示された。 ① 被疑侵害行為が「我が国所在の端末において」、「発明の効果を当然に奏させるようにするもの」であること ② 「経済的な影響を及ぼさないというべき事情もうかがわれない」こと ✓ 最高裁判決のうち、特に実質的に我が国の領域内における実施行為に当たるとの評価に係る部分は以下のとおり。 第1事件 第2事件 被疑侵害行為における本件配信は、我が国で本件各サービス を提供する際の情報処理の過程として行われ、我が国所在の 端末において、本件各プログラム発明の効果を当然に奏させ るようにするものであり、当該効果が奏されることとの関係 において、前記サーバの所在地が我が国の領域外にあること に特段の意味はないといえる。 要素① 本件配信による本件システムの構築は、我が国で本件各サー ビスを提供する際の情報処理の過程としてされ、我が国所在 の端末を含む本件システムを構成した上で、我が国所在の端 末で本件各発明の効果を当然に奏させるようにするものであ り、当該効果が奏されることとの関係において、前記サーバ の所在地が我が国の領域外にあることに特段の意味はないと いえる。 要素① そして、被上告人が本件特許権を有することとの関係で、上 記の態様によりされるものである本件配信が、被上告人に経 済的な影響を及ぼさないというべき事情もうかがわれない。 そして、被上告人が本件特許権を有することとの関係で、上 記の態様によるものである本件配信やその結果として構築さ れる本件システムが、被上告人に経済的な影響を及ぼさない というべき事情もうかがわれない。 要素② 要素② 本小委員会における議論との関係 * 第1事件のみの存在する箇所は青字を、第2事件のみに存在する箇所は赤字を参照されたい。 ✓今回の最高裁判決で考慮された要素①及び②は、今まで本委員会で議論されてきた、技術的効果と経済 的効果を共に要件として考慮するという方向性と整合的と考えられる。 52 最高裁判決が明確に示していない点 ➢ 最高裁判決は、あくでもドワンゴ対FC2事件という個別事案の結論を導くために以下の考慮要素①と ②に言及しているが、他の事案にまで一般化し得る記載がない。 ① 被疑侵害行為が「我が国所在の端末において」、「発明の効果を当然に奏させるようにするもの」であること ② 「経済的な影響を及ぼさないというべき事情もうかがわれない」こと 最高裁判決が必ずしも明確に示していない点 最高裁判決後もドワンゴ対FC2事件と異なる態様の 被疑侵害行為について以下の不明確な点が残る。 1. 最高裁判決で考慮された要素①及び②は、他の事案において、「実質的に我が国の領域内における実 施行為に当たると評価」する際にどのように考慮されるのか(①、②は条件として過不足がない か?) ✓ ①又は②のどちらか一方のみの事情から、そのような評価が導かれる場合があるか ✓ 上記の①、②以外の事情も考慮要素となり得るか。 2. ①について、「発明の効果」の具体的な認定や、国内で奏されているか否かの判断をどのように行うか。 3. ②について、「経済的な影響を及ぼさないというべき事情」を最高裁は示していないところ、具体的 にどのような事情が該当し得るか。 ➢ 最高裁判決後もドワンゴ対FC2事件と異なる態様の被疑侵害行為について権利保護の予見性が低い。 ➢ 最高裁判決以前から、知財高裁大合議判決における権利保護の予見性が低いというユーザーの懸念が 存在したところ最高裁判決はこれらの懸念を解消しうるか、最高裁判決後の状況を次頁以降で整理す る。 53 最高裁前後におけるユーザーの懸念 ➢ 本論点は令和元年に特許制度小委員会において議論が開始された後、本小委員会のみならず、調査研究の実施や政 策推進懇談会による議論も通して継続的に検討が進められてきた。 ➢ 当該検討を通して最高裁判決前に聴取された権利保護の予見性に関するユーザーの懸念の主なものは、以下のとおり。 権利保護の予見性に関する主なユーザーの懸念 ※「令和5年度調査研究」は、「国際的な事業活動におけるネットワーク関連発明等 の適切な権利保護の在り方に関する調査研究」を示す。 (1)特許権者の立場からの懸念 ✓ 予見可能性が低いため、交渉を進める余地が少なく、権利活用の選択肢が狭まってしまう。(令和5年度調査研究) (2)中小企業・スタートアップの立場からの懸念 ✓ 起業家や起業家に投資しているベンチャーキャピタルから、この特許で海外にサーバーがある場合にも本当に保護可能なのかと いった懸念を、ドワンゴ対FC2事件の前から実際に複数回示されたことがある。(第50回特許制度小委員) (3)事業実施者の立場からの懸念 ✓ 国内において特許発明の一部のみ実施した場合に特許権侵害を主張される可能性について、現在は、その予見可能性が低い状態 であると見受けられる。予見可能性が低い状態だと、パテントクリアランスにおいて検討すべき範囲が広がり、商品・サービス 開発のコスト増につながるおそれがある。(令和5年度調査研究) ✓ 侵害成立の有無がはっきりしないが、強硬に権利行使された場合は、訴訟回避のため、権利者と和解交渉をせざるを得なくなる。 (令和5年度調査研究) (4)裁判例の蓄積を待つことに対する懸念 ✓ 様々なビジネス形態があり、それらの様々な形態で判例を積み重ねるには10~20年要してしまうので、ポジティブに法改正を考 えてよいのではないか。(令和6年度特許庁政策推進懇談会、中間整理) 最高裁判決後の状況 ➢ 最高裁判決が明確に示していない点(前頁参照)を考慮すると、ドワンゴ対FC2事件と異なる態様の事案においては、 依然として以下の懸念が残っており、最高裁判決後も解消されていない。 (1)特許権者:交渉を進める余地が少なく、権利活用の選択肢が狭まってしまう懸念が残る (2)中小企業・スタートアップ:自社の特許権の使用可否が不明であり、資金調達に支障が出る懸念が残る (3)事業実施者:クリアランス調査の負担が増加する恐れや不必要な和解を強いられる懸念が残る ➢ (4)についても、現時点でネットワーク関連発明に関して、裁判例の蓄積が直ちに期待できる状況にはないので はないか(少なくとも事務局では今後参考になりそうな裁判事案を把握していない) 54 最高裁判決が出た現在においても残されている課題(当事者別) ➢ 先頁に示した最高裁判決後も解消していないユーザーの懸念を当事者別の視点で整理すると、現行制 度には、最高裁判決が出た現在においても以下の課題が残されていると考えられる。 当事者視点別の課題 ➢ 特許権者の立場から、ドワンゴ対FC2事件と異なる態様で事業を行う被疑侵害者から「海外にサー バーを配置している」等を主張された場合、現行法に明確な根拠がないため、被疑侵害行為をやめさ せるための交渉や訴訟のハードルが高く、結局断念せざるを得ない懸念(泣き寝入りの懸念)がある。 ✓ さらに、権利行使というオプションが取りにくく、有形資産に乏しい企業(中小企業・スタート アップ等)にとって、大きな資産である特許権が行使可能か明確でないと、資金調達など企業活 動そのものを阻害する恐れもある。 ➢ 事業実施者の立場から、例えば、日本にサーバーを置いておらず、事業内容が日本向けのサービスで もないときに、たまたま一部のユーザーが日本国内にいる状況などにおいて、日本の特許のクリアラ ンス調査の要否・範囲が不明となる上、クリアランス調査負担(件数)も過大となり得る。また、本 来不必要な出費(和解を含む)を強いられ得るなど、事業リスクの評価も困難である。 55 最高裁判決を踏まえた今後の議論の方向性 議論の方向性に関する経緯 ➢ 本論点は令和元年に特許制度小委員会において議論が開始され、継続的に検討が進められてきた。 ➢ 第50回小委員会では、当該議論の蓄積を踏まえて権利保護の予見性についての実際の懸念を確認し、実質的に国 内の実施行為と認める要件の明文化の検討を進める方向性について、おおむねコンセンサスを得たものの、第52 回に一部委員より、最高裁判決が出たことで一度様子を見てもよいのではないかとの意見もあった。 制度的措置を検討する意義 ➢ 最高裁判決(50~52頁参照)は一定の参考になるものの、あくまで個別の事案に対する判断であり、一般的な要件 まで示すものではないため、依然として現行制度には権利保護の予見性についての課題がある(53~55頁参照)。 ➢ そこで、本小委員会において「最高裁判決が必ずしも明確にしていない点」(53頁参照)等について、ユーザー の実情とニーズを踏まえた制度的措置を引き続き検討する意義は大きいと考えられる。 <制度的措置により期待されるメリット> ✓ 特許権者の立場から、明確な根拠を示した上で、被疑侵害行為をやめさせるための交渉や訴訟を進めることが できる。さらに、スタートアップ等においては、特許権の権利行使の可否を明確に把握した上で、資金調達と いった事業活動を進めることができる。 ✓ 事業実施者の立場から、要否・範囲を明確に把握した上で、日本の特許のクリアランス調査を進めることがで きる。また、最高裁判決の考慮要素に限らず適切に要件を設定することで、クリアランス調査負担(件数)が 過大にならないように調節できる。 今後の議論の方向性 ➢ 裁判例の蓄積による解釈の確立には長期間が必要となり得ることを踏まえれば、実質的に国内の実施行為と認め られる要件については、最高裁判決が出た現在においても、引き続き制度的措置を念頭に、歩みを止めることな く検討を進めることが適切ではないか。 56 御議論いただきたい論点 ➢ 制度的措置を念頭に検討を進める当たり、これまでの本小委員会における議論を踏まえ、主に以下の 検討事項について、議論を深めるべきではないかと考えられるところ、御意見をいただきたい。 これまでの本小委員会における議論 ➢ 本小委員会では、制度的措置を念頭に「実質的に国内と認める要件」について、ユーザーの実情とニー ズに合った要件となるように想定事例も交えて、以下のとおり検討を進めてきた。 ✓ 第51回小委員会では、「発明の『技術的効果』と『経済的効果』が共に国内で発現していること」の要件を採用 すること( 「技術的効果」と「経済的効果」を共に考慮すべきであること )について肯定的な御意見が複数聴取 された。 ✓ 第52回小委員会では、「特許発明の構成要素の『一部』が国内で実施」の要件を中心に、クリアランス負担の 軽減の観点から、当該要件(「技術的効果」、「経済的効果」以外の要件)が必要であるとの御意見を多数頂 戴した。 今後の主な検討事項 ➢ 「実質的に国内の実施行為と認める要件」について、これまでの本小委員会における議論を踏まえ、本 日整理した最高裁判決の内容も考慮して、更に検討を進めるべきではないか。 留意点 ➢ 検討に当たり、これまで御意見をいただいた以下の点について引き続き留意が必要と考えられる。 ✓ ✓ ✓ ✓ 特許権の十分な保護とクリアランス負担のバランス 要件の明確性 ネットワーク関連発明の技術進展の速さ 国際調和 57 4.次回の特許制度小委員会について(予定) 58 次回の特許制度小委員会について(予定) ➢ 開催予定日時 令和7年5月~6月頃を想定。 ➢ 御議論いただく内容 • AI技術の発達を踏まえた特許制度上の適切な対応及び国際的な事業活動におけるネットワーク関 連発明等の適切な権利保護について、引き続き御議論いただく予定。 ※あわせて、これまでの議論を簡潔に整理する予定。 59