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産業構造審議会 知的財産分科会 特許制度小委員会 第49回

2022-12-19一次資料(出典)

議事録・配布資料の全文(政府公表資料より。要約でなく原文に基づく参照用)。

産業構造審議会 知的財産分科会 特許制度小委員会 第49回 資料産業構造審議会 知的財産分科会 特許制度小委員会 第49回 資料産業構造審議会 知的財産分科会 特許制度小委員会 第49回 資料産業構造審議会 知的財産分科会 特許制度小委員会 第49回 資料産業構造審議会 知的財産分科会 特許制度小委員会 第49回 資料産業構造審議会 知的財産分科会 特許制度小委員会 第49回 資料産業構造審議会 知的財産分科会 特許制度小委員会 第49回 資料産業構造審議会 知的財産分科会 特許制度小委員会 第49回 資料

議事要旨

。 産業構造審議会 知的財産分科会 第49回特許制度小委員会 議事要旨 1. 日時・場所 日時:令和4年12月19日(月曜日) 10時00分~12時00分 場所:特許庁特別会議室(特許庁庁舎16階)+Web会議室 2. 出席者 蘆立委員、淺見委員、伊東委員、相良委員、杉村委員、鈴木委員、玉井委員長、田村委員、長澤委員、中島委員、中畑委員、萩野委員、山本委員 3. 議題 (1)報告書案の提示 4. 議事内容 事務局より、資料1に沿って、説明が行われた。 議題について、自由討議が行われた。 以上 [更新日 2022年12月26日] このページの先頭へ 知的財産権関連リンク集 サイトマップ プライバシーポリシー このサイトについて 住所:〒100-8915 東京都千代田区霞が関3丁目4番3号 電話番号:03-3581-1101(代表) Copyright © Japan Patent office. All Rights Reserved.

資料1

産業構造審議会知的財産分科会 第49回特許制度小委員会 議事次第・配布資料一覧 日 時:令和4年12月19日(月)10時00分開会 会 場:特許庁庁舎16階特別会議室+Teams会議室 (議事次第) 1.開会 2.報告書案の提示 3.閉会 (配布資料) 議事次第・配布資料一覧 委員名簿 資料1 知財活用促進に向けた特許制度の在り方(案)

資料2

令和4年12月19日 第49回特許制度小委員会 産業構造審議会 知的財産分科会 特許制度小委員会 委員名簿 淺見 節子 明治大学専門職大学院法務研究科 客員教授 蘆立 順美 東北大学大学院法学研究科 伊東 正樹 一般社団法人日本知的財産協会 理事長/ 株式会社豊田自動織機知的財産部 部長 教授 相良 由里子 中村合同特許法律事務所 パートナー弁護士 杉村 純子 プロメテ国際特許事務所 代表弁理士 杉山 悦子 一橋大学法学部法学研究科 教授 鈴木 賴子 日本製薬工業協会 知的財産委員/ アステラス製薬株式会社法務部 委員長 玉井 克哉 知的財産担当部長 東京大学先端科学技術研究センター 信州大学経法学部 教授 田村 善之 東京大学大学院法学政治学研究科 長澤 健一 日本経済団体連合会知的財産委員会 キヤノン株式会社 教授/ 教授 専務執行役員 企画部会長/ 知的財産法務本部長 経済安 全保障統括室長 中島 基至 東京地方裁判所(知的財産権部) 部総括判事 中畑 稔 One ip 弁理士法人 代表パートナー弁理士 萩野 源次郎 大和合金株式会社 代表取締役社長 松山 智恵 TMI 総合法律事務所 山本 敬三 京都大学大学院法学研究科 パートナー弁護士 教授 (敬称略、五十音順)

資料3

知財活用促進に向けた 特許制度の在り方(案) 令和 4 年 12 月 19 日 産業構造審議会 知的財産分科会 特許制度小委員会 産業構造審議会知的財産分科会特許制度小委員会の開催経緯 本小委員会においては、特許庁政策推進懇談会で示された、知的財産政策に 関する今後の検討の方向性等も踏まえつつ、知財活用促進に向けた特許制度の 在り方に関する検討を行った。 第 47 回小委員会 令和 4 年 9 月 26 日(月) 議事 (1)当面の検討課題について (2)一事不再理の考え方の見直しについて (3)送達制度の見直しについて (4)書面手続デジタル化について 第 48 回小委員会 令和 4 年 11 月 21 日(月) 議事 (1)裁定関係書類の閲覧制限について (2)ライセンス促進策について 第 49 回小委員会 令和 4 年 12 月 19 日(月) 議事 報告書案の提示 1 産業構造審議会 知的財産分科会 委員名簿 特許制度小委員会 淺見 節子 明治大学専門職大学院法務研究科 客員教授 蘆立 順美 東北大学大学院法学研究科 伊東 正樹 一般社団法人日本知的財産協会 理事長 株式会社豊田自動織機知的財産部 部長 教授 相良 由里子 中村合同特許法律事務所 パートナー弁護士 杉村 純子 プロメテ国際特許事務所 代表弁理士 杉山 悦子 一橋大学法学部法学研究科 教授 鈴木 賴子 日本製薬工業協会 知的財産委員 アステラス製薬株式会社法務部 委員長 玉井 克哉 知的財産担当部長 東京大学先端科学技術研究センター 信州大学経法学部 教授 田村 善之 東京大学大学院法学政治学研究科 長澤 健一 日本経済団体連合会知的財産委員会 キヤノン株式会社 教授 教授 専務執行役員 企画部会長 知的財産法務本部長 経済安全保障統括室長 中島 基至 東京地方裁判所(知的財産権部) 部総括判事 中畑 稔 One ip 弁理士法人 代表パートナー弁理士 萩野 源次郎 大和合金株式会社 代表取締役社長 松山 智恵 TMI 総合法律事務所 山本 敬三 京都大学大学院法学研究科 パートナー弁護士 教授 (敬称略、五十音順) 2 目次 はじめに ............................................................ 4 1.一事不再理の考え方の見直し ....................................... 5 2.送達制度の見直し ................................................ 10 3.書面手続デジタル化 .............................................. 16 4.裁定制度の閲覧制限導入 .......................................... 20 5.ライセンス促進策 ................................................ 22 おわりに ........................................................... 28 3 はじめに デジタル化・グローバル化の進展への対応、中小企業・スタートアップ・大学 等の知財活用の更なる促進、特許庁自身の一層のデジタル化による業務の効率 化の必要があるという問題意識の下、2022 年 6 月の特許庁政策推進懇談会とり まとめ「知財活用促進に向けた知的財産制度の在り方」において示された、知的 財産政策に関する今後の検討の方向性等も踏まえつつ、以下の課題について、第 47 回以降の特許制度小委員会にて検討を実施した。なお、特許制度における発 明の「実施」の定義に関しては、今年度は特許庁において調査研究を実施するこ ととした。 ➢ ➢ ➢ ➢ ➢ 一事不再理の考え方の見直し 送達制度の見直し 書面手続デジタル化 裁定関係書類の閲覧制限 ライセンス促進策 本報告書は、これまでの審議内容を取りまとめ、ユーザーの利便性の向上や知 的財産の一層の活用促進のための特許制度の在り方について提言するものであ る。 4 1.一事不再理の考え方の見直し (1)現行制度の概要 ①一事不再理の規定1 特許法第 167 条において、 「特許無効審判又は延長登録無効審判の審決が確 定したときは、当事者及び参加人は、同一の事実及び同一の証拠に基づいて その審判を請求することができない。」という一事不再理の規定が設けられて いる。これは、先の審判の当事者及び参加人は、先の審判において主張立証 を尽くすことができたものであるから、審決が確定した後に同一の事実及び 同一の証拠に基づいて紛争の蒸返しができるとすることは不合理であると考 えられたためである。なお、事実又は証拠が異なれば、当事者等であっても、 一事不再理の制限は及ばず、先の審判の審決の確定後であっても無効審判を 請求することができる。 ②一事不再理に関する実務 特許法第 167 条の適用に当たっては、条文上「同一の事実及び同一の証拠」 とされているものの、証拠については、証拠が追加された場合に再度の請求 を制限した裁判例2や「「同一の事実」とは,同一の無効理由に係る主張事実を 指し, 「同一の証拠」とは,当該主張事実を根拠づけるための実質的に同一の 証拠を指す」と述べた裁判例 3が存在している。また、審判便覧においても、 同一の証拠とは、同一性のある証拠の意味であり、証拠自体が異なっていて も、内容が実質的に同一である場合には同一の証拠と解される旨が説明され ており4、審判実務においても裁判例で示されたのと同様の判断基準で運用が されている。 (2)現行制度の課題 ①蒸返し的な複数回の無効審判請求 現行制度においては、先の審判の審決の確定後、当事者等は、同一の事実及 び同一の証拠に基づいて再度の審判請求をすることができないとされている ものの、事実又は証拠が異なれば、無効審判を請求することができることから、 紛争の蒸返しを防止する規定としては不十分なのではないか、との意見があ 1 平成 23 年の一部改正前は、 「何人も、特許無効審判又は延長登録無効審判の確定審決の登 録があつたときは、同一の事実及び同一の証拠に基づいてその審判を請求することができ ない。 」と規定されており、審判に関与しなかった第三者に対しても一事不再理効が及ぶと されていた(確定審決の第三者効)が、平成 23 年の一部改正において、確定審決の第三者 効が廃止された(特許庁総務部総務課制度審議室編「工業所有権法(産業財産権法)逐条解 説〔第 22 版〕 」559~561 ページ参照)。 2 例えば、東京高判平成 16 年 3 月 23 日(平成 15 年(行ケ)第 43 号)、知財高判平成 26 年 3 月 13 日(平成 25 年(行ケ)第 10226 号) 、知財高判平成 28 年 9 月 28 日(平成 27 年(行 ケ)第 10260 号) 3 知財高判令和 2 年 6 月 11 日(令和元年(行ケ)第 10077 号) 4 審判便覧(第 19 版)「30-02 一事不再理」参照 (https://www.jpo.go.jp/system/trial_appeal/sinpan-binran.html) 5 る。また、大企業が中小企業に対して、蒸返し的な無効審判請求を繰り返して いるのではないか、との意見もある。 同一人による複数の無効審判請求の禁止については、平成 22 年度の知的財 産政策部会において、制度濫用的な請求について、何らかの形で制限をすべき という意見があった一方で、新たな証拠や理由に基づく正当な無効審判請求 まで制限すべきではないといった意見もあり、引き続き検討すべきとされて いた5。 ②特許法第 167 条の「同一の事実及び同一の証拠」という文言、及び、一事不 再理効の客観的範囲について (1)②のとおり、裁判例、審判実務においては、一事不再理効の客観的範囲 が「同一の事実、実質的に同一の証拠」と解釈されている6。 しかしながら、現行の特許法第 167 条の「同一の事実及び同一の証拠」とい う文言が非常に狭い印象を与えるのではないかとの意見もある。他方で、企業 ユーザー等からは、一事不再理効の認められる客観的範囲を大幅に拡張する ことに慎重な意見もある7。 (3)本小委員会での検討 ①同一請求人による 2 回目以降の特許無効審判請求について8 2017 年から 2021 年の 5 年間に請求された特許無効審判において、同一の特 5 平成 23 年 2 月「特許制度に関する法制的な課題について」報告書 43~45 ページ参照 (https://www.jpo.go.jp/resources/shingikai/sangyokouzou/shousai/tokkyo_shoi/document/index/housei_kadai.pdf) 6 平成 23 年の一部改正により第三者効が廃止されたことから、 「同一の事実及び同一の証 拠」について狭義に(文言どおりに)解するのは、紛争の蒸返し防止の観点から相当ではな く、特許無効審判の一回的紛争解決を図るという趣旨をより重視して解するのが相当であ る旨判示された裁判例(前掲注 2 の第 3 判決)もあり、より具体的には、第三者効を有して いた平成 23 年の一部改正前と比較して「同一の証拠」について拡張的に解釈された裁判例 が複数存在する(小泉直樹・田村善之編、別冊ジュリスト 244 号 特許判例百選[第 5 版] (有斐閣)160~161 ページ参照) 。 7 特許庁政策推進懇談会『知財活用促進に向けた知的財産制度の在り方~とりまとめ~』 48 ページ参照 (https://www.jpo.go.jp/resources/shingikai/kenkyukai/kondankai/index.html) 8 令和 4 年 5 月 17 日時点特許庁調べ。 ⚫ 延長登録無効審判は含まない。 ⚫ 請求人が複数の場合には、1つの審判事件番号について請求人分の件数としてカウント した。 ⚫ 請求人、被請求人の属性については、資本金及び従業員数を各企業のウェブサイトで確 認し、中小企業基本法第 2 条第 1 項の基準で分類した。調査時点での資本金及び従業員 数であるため、審判請求時における状況とは異なる可能性がある。また、各企業の主た る業種を正確に特定することは困難な場合もあり、必ずしも正確ではない可能性があ る。 ⚫ 請求の理由における事実及び証拠については、目視で確認した。 6 許権に対して同一人が請求した 2 回目以降の無効審判は 127 件であり、その うち最初の無効審判が確定した後に請求されたものは 40 件であることが事務 局から示された。なお、この 40 件のうち大企業が中小企業を相手に請求して いるものは 2 件のみであり、いずれも同一の事実及び同一の証拠に基づいて 請求しているもの(いわゆる蒸返しに当たるもの)ではなかった。 図 同一請求人による 2 回目以降の特許無効審判請求の分析 ②一事不再理効の客観的範囲の拡張について 一事不再理効の客観的範囲について、現状の運用で認められている、同一の 事実及び実質的に同一の証拠の範囲よりも拡張する必要があるかどうかにつ いて検討を行った。客観的範囲については、紛争の一回的解決の観点から、こ れを拡張すべきとの意見がある一方で、大幅に拡張すべきではないという意 見もある。これらの意見も踏まえ、無効審判では要旨変更とならない範囲で請 求の理由を補正可能であることから、これを一の無効審判の中で審理可能な 範囲であると捉え、一事不再理効の客観的範囲をこの範囲まで拡張する案、す なわち、後の無効審判の請求の理由が先の無効審判における請求の理由に比 して要旨変更とならない範囲である場合に一事不再理効を認めるという案 (案 1)について検討を行った。 ③特許法第 167 条の「同一の事実及び同一の証拠」という文言について 一事不再理効の客観的範囲を拡張しない場合に、条文の「同一の事実及び同 一の証拠」という文言を変更する必要があるかどうかについて検討を行った。 条文の当該文言については、少なくとも「同一の証拠」という文言は狭すぎ る(狭い印象を与える)という意見がある一方で、 「実質的に」との文言を加 えても、何が実質的に同一であるか、という解釈上の難点が残るという意見や、 裁判例の解釈である程度解決できるといった意見があるところ、条文を審判 実務・裁判例に整合するような文言で明示的に規定する案(一事不再理効の客 観的範囲が同一の事実及び実質的に同一の証拠であることを条文で明示的に 規定する案) (案 2(1))、及び、法改正せず現状の運用の更なる周知等で対処 する案(案 2(2))について検討を行った。 7 表 各案のメリットとデメリット メリット デメリット ➢ 紛争の蒸返しを防止できる 範囲が広がる。 ➢ 請求の理由の補正の要件と 同一の判断基準であり、 案 2(1)と比べて予見性が 高い。 ➢ 該当する裁判例がない。 ➢ ユーザーからは範囲を拡張す ることに慎重な意見がある。 ➢ 立法事実に乏しい。 案 2(1) 条文を審判実務・ 裁判例に整合する ような文言で明示 的に規定する案 ➢ 条文から受ける印象が現状 の審判実務及び裁判例と整 合する。 ➢ 条文を「実質的に同一」とい うような文言に変更しても、 不明確さは残り、条文解釈に 難点が生じる。(現状の審判 実務及び裁判例と整合させる ように条文を変更したにもか かわらず、意図したものと異 なる解釈が生ずる可能性があ る。) 案 2(2) 法改正せず現状の 運用の更なる周知 等で対処する案 ➢ 裁判例が蓄積されているた め、予見性が高い。 ➢ 実務者からは現状の運用で 問題無いとの声が多い。 ➢ 法改正に伴う実務の混乱を 招かない。 ➢ 現行条文の文言から、裁判例 や運用で確立されている一事 不再理効が認められる範囲よ りも狭い印象を持たれるおそ れがある。 案1 客観的範囲を請求 の理由の要旨を変 更しない範囲に拡 張する案 ④各案に対する委員の意見 悪意のある繰返し又は不当な蒸返し目的の無効審判は防ぐべきであるが、 現状の実務でも問題なく、法改正の必要は無いという意見で一致した。 案 1 については、企業ユーザーや弁理士・弁護士からの法改正に対する要 望もないため立法事実に乏しいという意見、及び、今の時点で法改正をすると 予見性が低下するという意見が示された。また、一事不再理効の客観的範囲を 拡張することについては、主引例が同じで副引例が異なる場合も特許法第 167 条で制限するのであれば一事不再理効の客観的範囲の拡張が必要になるが、 副引例が異なる場合は、主引例が同じとはいえ新しく見つかった副引例の方 が組み合わせるロジックがしっかり組み立てられるという事案もあるため、 全てを不当な蒸返しとして制限してしまうのはやり過ぎであるという意見が 示された。 他方、特許法第 167 条の同一事実・同一証拠という文言は法制定以来変わっ ていない一方、法改正により、特許法第 131 条の 2 において審判請求の理由 の補正がその要旨を変更するものであってはならないという条文が入ってい るため、それに合わせて一事不再理効の客観的範囲も請求の理由の要旨の変 更とならない範囲とすべきという議論にも理があるという意見も示された。 案 2(1)については、現行法において適切な運用がされているところ、実 8 質的という文言を入れることで曖昧になるという意見、及び、事実と証拠の一 方だけ実質的に同一とするのはむしろ予見性が下がるという意見が示された。 案 2(2)については、権利者と無効審判請求人(侵害訴訟の被告)とのバ ランスが重要であるところ、現状は特許庁、裁判所においてバランスの取れた 対応がされており実務上の問題は無いという意見等、法改正せず現状の運用 の更なる周知等で対処するという当案に対して多くの委員から賛成が示され、 当案に反対する意見や他の案を支持する意見は示されなかった。周知の仕方 については、審判便覧において、現在記載されている判決に加えて新たな判決 を追加するとともに、どういうものであれば同一の証拠になり、どういうもの では同一とならないのかという説明をすれば良いのではないかという案が示 された。 (4)まとめ 以上のとおり、一事不再理の考え方について検討したところ、悪意のある繰 返し又は不当な蒸返し等の無効審判制度の濫用は防ぐべきであるという意識 は共通するものの、現状の裁判例や審判実務により実務上の問題は生じてお らず、一事不再理の客観的範囲の拡張を求める意見はなかった。また、裁判例 や現行の運用に則して法文で明示することを求める意見もなかった。 したがって、現時点では、法改正せず、現状の運用の更なる周知等を行うこ ととするのが適当である。 ただし、今回法改正をしないことが、無効審判制度の濫用を容認することを 意味するものではなく、今後、実務の動向を注視しつつ、状況が変化した場合 には、本小委員会において改めて検討すべきである。 9 2.送達制度の見直し (1)オンライン発送制度の見直し ①現行制度の概要 特許法第 52 条(査定の方式)、第 189 条(送達)等において規定する送達し なければならない書類は、郵便により行うことが原則であるが(同法第 190 条 において読み替えて準用する民事訴訟法第 99 条第 1 項)、工業所有権に関す る手続等の特例に関する法律(以下「特例法」という。)第 5 条第 1 項本文に おいて、特許等関係法令の規定による通知又は命令であって経済産業省令で 定めるもの(以下「特定通知等」という。)については、電子情報処理組織を 使用して行うことができる旨を規定している。 電子情報処理組織を使用して行われた特定通知等の相手方への到達時点に ついては、特例法第 5 条第 3 項の規定により、特定通知等の相手方たる出願 人等の使用に係る電子計算機に備えられたファイルへの記録がされた時に相 手方に到達したものとみなしており、実際には、出願人等が、特許庁が提供す るアプリケーション(以下「出願ソフト」という。)を通じ、自らのパソコン に書類データをダウンロードすることにより、相手方に到達したものとして いる。 したがって、出願人等が出願ソフトを起動し、自己のファイルに特定通知等 を記録しない限り、特定通知等は到達したものとみなされず、その結果、出願 ソフトにおいて書類を受領しない出願人等に対しては、拒絶査定の謄本や却 下処分書の謄本等の送達すべき書類について、送達の効力は確定しない。 これに対応するため、現在は、特許庁が特定通知等により送付する書類を特 許庁のサーバに格納してから(=出願人等が当該書類データを出願ソフトを 通じてダウンロード可能な状態になってから)10 開庁日経過しても、出願人 等が自己の使用するパソコンに書類データをダウンロードしない、すなわち 出願人等の使用に係る電子計算機に備えられたファイルへの記録がされない 場合は、送達の効力を発生させるため、書面の郵送による発送に切り替える運 用を行っている9。 また、特許法第 191 条第 1 項では、 「送達を受けるべき者の住所、居所その 他送達をすべき場所が知れないとき、又は前条において準用する民事訴訟法 第 107 条第 1 項(第 2 号及び第 3 号を除く。)の規定により送達をすることが できないときは、公示送達をすることができる」と規定しており、特許法第 191 条第 2 項の規定により、官報及び特許公報に掲載するとともに特許庁の掲示 場に掲示することにより行うことで、公示送達を実施することとしている。 ②現行制度の課題 上記のとおり、現在の特許庁におけるオンライン発送制度は、出願人等が特 許庁のサーバに格納された書類を出願ソフトを通じて受け取らない限り、送 9 オンライン発送を希望しながらも 10 開庁日以内に書類をオンラインで受け取らず、紙発 送となった件数は 3 万 7,353 件であり、法令上オンライン発送が可能な書類の全発送件数 122 万 406 件のうち約 3.1%。 (件数は 2021 年のもの。2022 年 8 月 15 日時点特許庁調べ) 10 達の効力が確定しない点で、不安定さを含んだ仕組みとなっている。また、サ ーバ格納後 10 開庁日以内にオンライン発送書類を受け取らない出願人等に対 しては、紙媒体での発送に切り替えているが、リモートワークにより受け取れ ない場合も生じており、この場合送達の効力を確定させることができない。 また、令和 4 年に民事訴訟法が改正(以下、改正後の民事訴訟法を「改正民 訴法」という。)され、オンライン送達制度が導入されたことも踏まえ、書面 による発送のコスト削減や簡易・迅速な手続の実現を通じたユーザーの利便 性向上のため、オンライン発送制度の見直しの検討を行った。 加えて、改正民訴法において、インターネットを用いた公示送達の方法が措 置されたところ、特許法における公示送達の方法について、デジタル化を促進 する観点から、検討を行った。 ③本小委員会での検討 上記課題を踏まえ、本小委員会では、書面による発送のコスト削減や簡易・ 迅速な手続の実現を通じたユーザーの利便性向上のため、オンライン発送制 度及び公示送達の方法についての見直しを行うこととした。 (ア)オンライン発送制度の見直しの方向性 (i)対象とする書類について 特許関係法令に規定する送達すべき書類のみではなく、オンライン発 送可能な書類(特許関係法令上「送達する書類」とされているもの以外の 通知。)についても、制度見直しの対象書類とする。 (ii)送達の効力発生について 特許庁のサーバ格納後一定期間10経過しても発送書類を受け取らない 出願人等についても、当該期間経過後に書類が到達したものとみなす制 度を導入し、当該者への紙発送を廃止する。 (iii)対象となる者について オンライン発送を希望する者を対象とする。この際、改正民訴法に倣い、 代理を業として行う代理人については、この希望の有無によらず対象と することとする。 (イ)オンライン発送制度の見直し案の検討 上記見直しの方向性を踏まえ、以下 3 つの案を提示し、システム改造費等 のコスト面についても十分に考慮しつつ、それぞれの適否について検討を 行った。 10 見直し案 出願人等への通知方法 書類の到達時期 案1 出願人等が出願ソフトを 立ち上げた時に、 特許庁の受付サーバに発 送書類が格納された旨の 通知が送付される。 出願人等の電子計算機に備えられたファイル へ記録された時、 又は 特許庁の受付サーバに発送書類が格納された 時から一定期間経過した時、 後述④まとめのとおり「10 日間」とする。 11 案2 出願人等が出願ソフトを 立ち上げた時に、発送件数 等の通知はせずに、 自動的に発送書類が送付 される。 のいずれか早い時に、発送書類が出願人等に到 達したものとみなす。 案3 特許庁の受付サーバに発 送書類が格納された (出願 人等のファイルに記録が 可能になった)旨、電子メ ールで通知される。 出願人等の電子計算機に備えられたファイル へ記録された時、 又は 特許庁の受付サーバに発送書類が格納された 旨のメール通知を受けてから一定期間経過し た時、 のいずれか早い時に、発送書類が出願人等に到 達したものとみなす。 案1については、出願ソフトを頻繁に立ち上げる者にとっては、特許・実 用新案・意匠・商標の種別で発送書類待機件数を確認してから、件数を指定 して発送書類を受け取るといった現行に近い運用で対応できること、案 3 と 比べて特許庁システムの改造費等のコストが抑えられることから、本小委 員会において最も支持された。 他方、案 2 については、書類の受領を意図しないまま出願ソフトを立ち上 げただけで発送書類が送付されることとなり、書類が到達したものとみな されてしまうことから、案件管理等ユーザーの現行の運用に大きな影響が あるため、反対の意見が示された。 また、案 3 については、出願している件数の少ないユーザーにとっては、 メールでの通知の方が利便性が高いという意見もあった一方、出願件数が 多いユーザーにとっては、出願ソフトとは別にメールソフトでの管理を行 わなければならない煩雑さがあるとの指摘があったほか、案 1 及び案 2 と 比べて特許庁システムの改造費が高額になる。 (ウ)オンライン発送制度のその他の論点 みなし送達の効力が発生するまでの期間については、事務局から検討中 である旨を説明した。当該期間については、改正民訴法においては一週間が 設定されているが、コロナ禍における実務の状況を踏まえれば一週間では 心もとなく、過度に短い期間となることのないよう検討すべき旨の意見が 示された。 その他、出願ソフトを頻繁に立ち上げないユーザーへの周知を十分に行 うべきことや、発送書類が特許庁のサーバに格納された旨の通知について、 利便性の高いものにして欲しい旨の意見が示された。 (エ)公示送達の方法 改正民訴法を踏まえ、また、デジタル化を促進する観点から、従来実施し ている官報及び特許公報への掲載を廃止し、特許庁掲示場での掲示に加え 12 て、特許庁ホームページに掲載することとする案を提示したところ、賛成の 意見が示された。 ④まとめ 上記検討を踏まえ、特許庁におけるオンライン発送制度の見直しに当たっ ては、案 1 を基本として検討を進めることが適当である。その際、上記 2. (1) ③(ウ)に記載した意見が示されたことを踏まえ、送達の効力発生までの期間 については「10 日間」とするとともに、適切な運用を検討すべきである。 また、公示送達の方法についても、デジタル化を促進する観点から、官報及 び特許公報への掲載を廃止し、特許庁ホームページに掲載することにより実 施する方向で検討を進めることが適当である。 (2)新型コロナウイルス等の影響に対応した公示送達の見直し ①現行制度の概要 日本国内に住所又は居所を有しない者(以下「在外者」という。)は、原則、 特許管理人によらなければ手続等をすることができず、在外者に対しての送 達は、特許法第 192 条第 1 項において、「在外者に特許管理人があるときは、 その特許管理人に送達しなければならない。」と規定し、同条第 2 項において、 在外者に特許管理人がないときは、 「書類を航空扱いとした書留郵便等(中略) に付して発送することができる。」と規定している。そして、同条第 3 項にお いて、 (航空扱いとした) 「書留郵便等に付して発送したときは、発送の時に送 達があったものとみなす。」と規定している。 また、特許法第 191 条第 1 項は、 「送達を受けるべき者の住所、居所その他 送達をすべき場所が知れないとき、又は前条において準用する民事訴訟法第 107 条第 1 項(第 2 号及び第 3 号を除く。)の規定により送達をすることがで きないときは、公示送達をすることができる。」と規定している。 ②現行制度の課題 新型コロナウイルスの世界的な感染拡大に伴い、令和 2 年 4 月以降、日本 郵便株式会社が一部の国・地域宛ての航空便による郵便の引受停止をしたこ とにより、当該引受停止国に住所又は居所を有する在外者に対して特許法第 192 条第 2 項の規定による送達をすることができない状況が長期にわたり生 じている。また、令和 4 年 3 月には、ウクライナ情勢により引受停止国が更に 拡大し、送達できない件数が一時的ではあるが、大幅に増加した。 特許管理人がなく航空書留郵便等により送達をしているケースの一つとし て、商標登録取消審判がある。商標登録後に取消審判請求があった際に、在外 者である商標権者と特許管理人との委任契約が終了しており、特許管理人が いないことがあり、その場合(手続円滑化のため、直近の手続をした特許管理 人に対し、受任の意向を確認する運用を行っているが、それでも確認できない 場合)、被請求人である商標権者に、航空書留郵便等に付して審判請求書の副 本を送達することがある。 また、他の事例として、マドリッド協定議定書に基づく国際商標登録出願 13 (以下「マドプロ出願」という。)における拒絶査定の謄本の送達がある。在 外者である出願人が拒絶理由通知に相当する暫定拒絶通報に対して応答手続 をしない場合、拒絶の理由が解消されないため拒絶査定まで進むことがあり、 この場合は特許管理人を選任する必要性が生じないため、在外者である出願 人に航空書留郵便等に付して拒絶査定を送達することがある。 副本の送達が滞ることにより審判手続を進めることができない、あるいは 拒絶査定の謄本の送達が滞ることにより拒絶査定が確定せず、当該拒絶査定 されるべき案件に類似する出願が新たにされたとき、当該後の出願について の審査の判断が行えないといった弊害が発生している。 特許法では、こうした送達を実施できないことにより手続が進行できなく なってしまうことを回避して当事者の権利を保護するため、特許法第 191 条 において公示送達の規定を設けている。しかしながら、同条は、送達を受ける べき者の住所等が知れないとき、又は民事訴訟法第 107 条第 1 項の規定によ り送達をすることができないときに、公示送達をすることができると規定し ているが、特許法第 192 条第 2 項の規定により送達を行えないときについて は、公示送達の要件として明記しておらず、公示送達を実施することができな い。 また、特許法第 191 条第 1 項後段の「民事訴訟法第 107 条第 1 項の規定に より送達をすることができないとき」は民事訴訟法において公示送達の要件 を規定した第 110 条第 1 項第 2 号と同じ規定の仕方であるところ、同号は国 内における送達について、送達を受けるべき者の就業場所しか知らず、書留郵 便に付する送達をすることができないときに公示送達を認める規定と解され ることから、同号と同じ規定の仕方である特許法第 191 条第 1 項後段の要件 も満たしていないと解される。 以上のとおり、特許管理人のいない在外者に対して航空便による郵便の引 受停止の状況により送達ができない状況では、特許法第 191 条の規定により 公示送達は行えず、権利関係が不確定な状況が続くことになる。 ③本小委員会での検討 上記課題を踏まえ、公示送達について規定した特許法第 191 条を改正し、国 際郵便引受停止等の理由により在外者に航空書留郵便等に付する発送ができ ないときにも、公示送達をすることができるよう、公示送達制度の見直しにつ いて検討を行った。 具体的には、現在発生しているような、戦争やコロナ禍の影響により現実に 国際郵便の引受けが停止され、当該国に対して航空書留郵便等に付する発送 ができない場合に公示送達を実施することができるよう、公示送達の要件を 見直す方向で検討を行った。 ただし、公示送達は通常の送達手段ができない場合の最後の手段と考える べきであるところ、国際郵便の引受停止の状況は短期間で解消される可能性 もある点を留意する必要があるため、特許法第 192 条 2 項の規定により、航 空書留郵便等に付して発送をすることが困難な状況が、長期間継続する(例え 14 ば 6 か月経過11)ことを、公示送達の要件として付加することとして検討を行 った。 見直しの方向性については反対の意見はなく、賛成の意見が示された。ただ し、特許管理人のいない在外者に対しては、その直近の国内代理人を通じ、特 許管理人を付けるべき旨の周知を行うべき旨や、送達の内容を別途了知させ る運用について検討すべき旨の意見も示された。 ④まとめ 上記検討を踏まえ、戦争やコロナ禍の影響により現実に国際郵便の引受け が停止され、当該国に対して航空書留郵便等に付する発送ができない状況が 長期間継続した場合には、公示送達を実施することができるよう、公示送達の 要件を見直す方向で検討を進めることが適当である。ただし、在外者へ公示送 達の内容を了知させる手段についても、ユーザー利便性等も勘案しながら、国 際郵便以外の方法について引き続き検討する必要がある。 11 民事訴訟法第 110 条第 1 項第 4 号では、外国における送達について当該国の管轄官庁等 に嘱託を発した後、6 か月経過しても送達を証する書面の送付がない場合を公示送達の要 件と規定している。 15 3.書面手続デジタル化 (1)書面手続デジタル化に向けた関係手続整備 ①現行制度の概要 工業所有権に関する手続のペーパーレス計画を実施するため、書面手続を 原則とする特許法等に対する「特例」として、特例法を平成 2 年に制定し、オ ンラインで特許等の手続を行えるようにした。そして、オンラインで可能な具 体的な手続(以下「特定手続」という。)は工業所有権に関する手続等の特例 に関する法律施行規則(以下「特例法施行規則」という。)において規定して いる。 具体的には、特例法第 3 条第 1 項において、特許等関係法令の規定による 手続であって省令で定めるもの(特定手続)は、電子情報処理組織を使用して 行うことができることとし、同条第 3 項において、特定手続については、特許 等関係法令に規定する書面の提出により行われたものとみなして、特許等関 係法令の規定を適用する、としている。 この特定手続は、特許庁のペーパーレス計画の進捗に応じて順次拡大して きており、現在は、オンライン申請可能な手続については、年間約 275 万件が オンラインで申請されている一方で、オンライン申請できない手続(書面での み手続が可能な申請)については、年間約 20 万件が書面により申請されてい る。なお、オンライン発送可能な手続については、年間約 95 万件がオンライ ンで発送されている一方で、オンライン発送できない手続については、年間約 280 万件が書面により発送されている(「特許庁における手続のデジタル化推 進計画12」)。 ②現行制度の課題 上記計画においては、特許庁に対する申請手続は令和 6 年 3 月までに原則 全ての申請手続をオンラインで可能とすることとしている。また、特許庁から の発送手続は発送件数やユーザーニーズを踏まえて順次デジタル化を進める こととしている13。 このうち、申請手続については、従来の特許庁システムで活用している XML 形式という特別なファイル形式ではなく、別の形式(経済産業省令で定めるこ ととし、PDF 形式を想定している。)にて受け付けることにより、特許庁シス テム改造費用の制約の中でも実現を図ることができるよう検討している。 そして、この別の形式にて申請手続をオンラインで受け付けるためには、所 要の法令改正を行う必要がある。 12 出典:特許庁「特許庁における手続のデジタル化推進計画~ユーザーの利便性向上と業務 最適化の両立に向けて~」 (令和 3 年 3 月 31 日) ( https://www.jpo.go.jp/system/laws/sesaku/document/tetsuzuki_digitalize/keikak u.pdf)なお、件数は、2019 年度のもの。 13 オンライン発送できない手続のうち、発送件数やユーザーニーズが高い「特許(登録) 証」、 「年金領収書」 、「自動納付通知」、「商標更新申請登録通知書」、「移転登録済通知書」、 「識別番号通知書」 、 「包括委任状番号通知」の 7 種類について、令和 6 年 3 月までにシステ ム開発を行い、オンライン発送サービスが開始できるよう準備を進めている。 16 ③本小委員会での検討 特許庁に対する申請手続に関する法令改正等の方向性として、以下の 3 点 について検討を行った。 (ア)申請書類の電子化 PDF 形式にて提出された手続について、書面で提出した場合と同様に、特 許庁システムにおいて処理可能な形での電子化(変換)を行う対象とすべく、 所要の措置を行う。 (イ)閲覧・交付の対応 PDF 形式にて提出された申請書類も閲覧・交付請求を可能とすべく、所要 の措置を行う。 (ウ)副本の送達等 相手方当事者に副本送達が必要な書類(無効審判請求書等)が PDF 形式で 提出された場合、当該 PDF をプリントアウトすることなく、PDF を記録した DVD 等により副本送達を可能とすべく、所要の措置を行う。 上記の検討事項については、ユーザーの利便性向上につながるものであり、 取組の加速をしていただきたい旨の意見が提出され、反対意見はなかった。 ④まとめ 上記のとおり、ユーザーの利便性向上につながることであり、一層の取組を 加速して欲しい旨の意見がなされ、反対意見も提示されなかったことから、書 面手続デジタル化に向けた関係手続整備を進めることが適当である。 (2)優先権証明書のオンライン化のための規定整備 ①現行制度の概要 同一の発明等について複数の国において出願日を確保する場合には、明細 書等の翻訳文の準備や国ごとに異なる手続を同時に行わなければならず、出 願人にとって負担が大きい。このような出願人の負担を軽減するための制度 として、パリ条約は優先権14の制度を設けている。 出願人がパリ条約の優先権の効果を得るために必要な手続として特許法第 43 条においては、パリ条約による優先権主張の手続が規定されており、同条 第 2 項(実用新案法第 11 条第 1 項、意匠法第 15 条第 1 項、同法第 60 条の 10 第 2 項及び商標法第 13 条第 1 項において準用)は、パリ条約第 4 条 D(1)の 規定により特許出願について優先権の主張をした者は、所定の期間内に特許 14 パリ条約による優先権とは、パリ条約の同盟国(第一国)において出願した者が、所定 の期間(特許及び実用新案:12 か月、意匠及び商標:6 か月)中に、その出願の出願書類 に記載された内容について他のパリ条約の同盟国(第二国)に出願する場合に、第二国に おける出願についての新規性・進歩性等の特許要件等の判断に関し、第一国における出願 の日に出願された場合と同様の取扱いを受ける権利である。 17 庁長官に第一国の発行した優先権に係る証明書類(以下「優先権証明書」とい う。)の提出をしなければならないと規定している15。 そして、優先権証明書の提出方法については、 (1)書面による原本の提出を 原則としつつ(特許法第 43 条第 2 項)、 (2)世界知的所有権機関のデジタルア クセスサービス(以下「DAS」という。)等を利用した優先権証明書に記載され ている事項(以下「優先権書類データ」という)の電子的交換の利用も許容し ている(同条第 5 項(実用新案法第 11 条第 1 項及び意匠法第 15 項第 1 項に おいて準用))。ただし、第一国が DAS に不参加の場合や、日本では DAS の対象 外となっている商標登録出願については、書面による原本の提出に限られる。 ②現行制度の課題 特許庁においては、デジタル社会への対応及び行政手続の更なる利便性向 上を目的として、電子申請できない全ての手続を原則デジタル化する方向で 検討を進めているが、優先権証明書のオンライン化については以下の課題が ある。 まず、優先権証明書の提出方法のうち、出願人が DAS 等を利用するために必 要なアクセスコードを特許庁に届け出ることにより、DAS 等により優先権書類 データが第一国と特許庁との間で電子的に交換されるところ、この場合には、 出願人は特許庁に対し優先権証明書の提出をする必要はない。他方で、第一国 が DAS に参加していない場合等、電子的交換を利用することができない場合 も存在しており、また、商標については、現在、DAS 等による電子的交換の対 象外であることから、このような場合においては優先権証明書を特許庁に提 出する必要があるが、我が国の特許法等においては、その提出方法が書面に限 られている。 この点、ユーザーからの電子的に提出することのニーズがあるところ、こう したニーズも踏まえ、第一国の官庁が書面で発行した優先権証明書を出願人 側で電子化(PDF 形式)したもの、すなわち優先権証明書の写しをオンライン で提出する方法を許容する必要がある。 次に、近年、優先権に係る証明書類について、書面の発行に加えて電子的に 提供する国が増加しているところ、ユーザーの入手形態及び提出方法に係る 選択肢を増やすべく、第一国の官庁が電子的に発行した優先権に係る証明書 類(PDF 形式)をオンラインで提出する方法を許容する必要がある。また、第 一国の官庁が電子的に提供した優先権に係る証明書類の電子形式が、仮に、特 許庁が受入れ可能な電子形式(PDF 形式)でない場合には、出願人側で特許庁 が受入れ可能な電子形式に変換したもの(写し)として提出する方法も許容す る必要がある。 また、特許法条約第 8 条(1)は、書類の送付の形式及び手段に関して締約 国が適用することができる要件を定めており、 「(d) 締約国は、期間を遵守す るための紙による書類の提出を認める。」ことを締約国の義務として規定がさ 15 世界貿易機関(WTO)の加盟国においてした出願に係る優先権主張の手続についても、 特許法 43 条を準用する同法第 43 条の 3 の規定により同様である。 18 れているところ、優先権証明書の写しの提出方法としてオンライン提出を許 容する場合には、書面による提出も許容する必要があることから、書面で発行 された優先権証明書を複写したもの及び電子的に提供された優先権に係る証 明書類を書面出力したものを提出する方法についても許容する必要がある。 ③本小委員会での検討 本小委員会では、上記の課題を踏まえ、特許法第 43 条第 2 項(実用新案法 第 11 条第 1 項、意匠法第 15 条第 1 項、同法第 60 条の 10 第 2 項及び商標法 第 13 条第 1 項にて準用)に規定する優先権証明書の提出手続について、その 写しの提出でも足りることとし、また、第一国の官庁が電子的に提供した優先 権に係る証明書類も受け入れることができるよう、制度改正をする方向で検 討を行ったところ、ユーザーの利便性向上につながるものであるため、取組の 加速をしていただきたい旨の意見が提出され、反対意見はなかった。 ④まとめ 上記のとおり、ユーザーの利便性向上につながることであり、一層の取組を 加速して欲しい旨の意見がなされ、反対意見も提示されなかったことから、優 先権証明書の写しの提出を許容するとともに、オンライン提出を可能とする ことが適当である。 19 4.裁定関係書類の閲覧制限 (1)現行制度の概要 ①裁定制度の概要 裁定制度とは、一定の要件が満たされた場合に、経済産業大臣又は特許庁長 官(以下「特許庁長官等」という。)の裁定により、特許発明、登録実用新案 又は登録意匠(以下「特許権等」という。)をその特許権者、実用新案権者又 は意匠権者(以下「特許権者等」という。)の同意を得ることなく第三者が実 施する権利を設定し得る制度である。特許法、実用新案法及び意匠法において、 以下の 3 つの場合の裁定を規定している。 ⚫ 不実施の場合の通常実施権の設定の裁定 (特許法第 83 条、実用新案法第 21 条) ⚫ 利用関係の場合の通常実施権の設定の裁定 (特許法第 92 条、実用新案法第 22 条、意匠法第 33 条) ⚫ 公共の利益のために特に必要な場合の通常実施権の設定の裁定 (特許法第 93 条、実用新案法第 23 条) 裁定を請求する者は特許庁長官等へ裁定請求書を提出し、それに対して特 許権者等は答弁書を提出することができ(特許法第 84 条等)、裁定は文書を もって行われることとなる(同法第 86 条等)。 ②閲覧制度の概要 特許法等には、何人も特許等に関する書類を閲覧等することができる閲覧 制度の規定があり(特許法第 186 条、実用新案法第 55 条第 1 項(特許法第 186 条の準用)、意匠法第 63 条)、裁定請求書、答弁書、裁定謄本等の裁定に係る 書類(以下「裁定関係書類」という。)についても同規定に基づき何人も閲覧 等を請求することができる。 他方、営業秘密の保護のために、判定(特許法第 71 条、実用新案法第 26 条 (特許法第 71 条の準用)、意匠法第 25 条)や無効審判(特許法第 123 条、実 用新案法第 37 条、意匠法第 48 条)に係る書類であって当事者等から営業秘 密が記載された旨の申出があったものについて、特許庁長官が秘密を保持す る必要があると認めるときは、その閲覧等を制限することができるとされて いる(特許法第 186 条第1項ただし書、同項第 2 号及び 4 号、意匠法第 63 条 第 1 項ただし書、同項第 3 号及び第 5 号)。 (2)現行制度の課題 裁定の手続においては、特許発明等の実施事実・計画の立証及び反証のため に、営業秘密を含む企業情報や技術情報が記載された書類の提出が必要とな り得る。 営業秘密は、公にされることにより企業の保護すべき利益を損なうおそれ があるが、現行制度では、裁定手続に係る書類に営業秘密等が記載されていて も、閲覧等を制限することができない。そのため、営業秘密の漏えいの懸念か ら、裁定請求人や特許権者等が立証及び反証のために必要な書類の提出を控 え、結果として適切な裁定判断ができないおそれがある。 20 (3)本小委員会での検討 裁定関係書類のうち営業秘密が記載された書類は、閲覧等を制限可能とす る案が事務局から提示された。 各委員からは、裁定関係書類のうち営業秘密が記載された書類の閲覧等を 制限することに賛同する旨の意見が示された。 (4)まとめ 裁定関係書類のうち営業秘密が記載された書類は、閲覧等を制限可能とす ることが適当である。 21 5.ライセンス促進策 (1)検討の背景 特許制度は、発明の保護及び利用を図ることにより、発明を奨励し、産業の 発達に寄与することを目的としている。すなわち、特許の実施・利用を通じた イノベーションの促進が期待されている。 しかし、現状では特許の約半数が未利用であり16、未利用特許の活用促進、 特に、ライセンス促進策を検討する必要性がある。 (2)ライセンスに係る実態と要因 ①大企業の現状 (ア)ライセンサーとして 全未利用特許の 8 割強が大企業によるものとの実態から17、主として大企 業がライセンサーとなり、その未利用特許を活用した他者による事業化を 促すことが期待される。通常、事業化に向けたニーズを有する中小企業、ス タートアップが、その未利用特許を活用する場面が最も典型的に想定され る。 ライセンサーとしての大企業は、一般的に、自社が抱える未利用特許を単 なるコストではなく、収益に結びつくように活用することを目指し、開放可 能な特許のライセンス活動等に取り組んでいる。例えば、INPIT が提供する 「開放特許情報データベース」18には、大企業も含む多くの企業の開放可能 な特許が登録されている。しかしながら、問合せや成約がない企業が大多数 であるという実態があり、このデータベースによる開放可能特許の表面化 だけでは、中小企業、スタートアップの事業ニーズとの突き合わせに至らず、 その活用先を見つけ出せていないケースが多い。 (イ)ライセンシーとして ライセンシーとしての大企業は、自社の既存ビジネスに必要な特許を特 定し、そのライセンスを受ける場合や、新規事業創出や新たな製品の量産化 を目指し、業務提携/共同研究のため、不特定の企業等から特許ライセンス を受ける場合がある。 このような場合、大企業も「開放特許情報データベース」を活用して開放 特許を検索可能であるが、上記のとおり、これだけでは他者の特許を活用し た事業化に結びついていないという実態がある。 16 出典:特許行政年次報告書 2022 年版(特許庁),45 ページ参照 (https://www.jpo.go.jp/resources/report/nenji/2022/document/index/all.pdf) 17 出典:令和 3 年度知的財産活動調査(特許庁)から推計 18 インターネット上で、企業、大学、研究機関等の開放特許を登録、検索、閲覧できる公 的なサービス(無料)であり、キーワード、文章、登録者名、国際特許分類(IPC)、技術 分野、技術内容(機能)等から検索可能である。令和 4 年 11 月 9 日時点において、企業 571 社、大学・公的研究機関等 230 機関等の開放特許 2 万 3,623 件が登録されており、令 和 3 年度のアクセス実績は約 38 万 5,000 件である。(https://plidb.inpit.go.jp/) 22 ②大学の現状 (ア)ライセンサーとして 大学は不実施主体であるため、基本的に、ライセンサーとして特許を開放 しライセンス又は譲渡することを欲するが、現状、大学の保有特許の約 8 割 が未利用特許である19。 ライセンサーとしての大学は、TLO、URA(リサーチアドミニストレーター) 等が、大学の研究成果のうち開放可能な特許のライセンス活動等に取り組 んでいる。例えば、こうした者が「開放特許情報データベース」を利用する 場合、先に示した大企業の実態と同様、事業ニーズとの突き合わせに至らず、 その活用先を見つけ出せていないケースが多い。 (イ)ライセンシーとして 大学は不実施主体であり、事業実施者としてのライセンシーにはならな い。 ③中小企業の現状 (ア)ライセンサーとして 一般的に、研究開発型で特許取得に積極的である中小企業は、請負型の研 究開発である場合を除き、自社実施できない場合には特許をライセンスし、 少しでも収益にプラスになるよう活用する意図を有するが、そのようなケ ースは多くない。 ライセンサーとしての中小企業が「開放特許情報データベース」を利用す る場合には、大企業、大学と同様に、事業化ニーズとの突き合わせに至らず、 その活用先を見つけ出せていないケースがある。 (イ)ライセンシーとして 中小企業は、大企業等の特許のライセンスを受けて事業化するニーズは 高い20。 ライセンシーとしての中小企業は、 「開放特許情報データベース」を活用 し、開放特許を検索可能であるが、大企業と同様に、これだけでは他者の特 許を活用した事業化に結びついていないという実態がある。 ④スタートアップの現状 (ア)ライセンサーとして 通常、スタートアップは、自社実施が主であり、資金調達や M&A を想定し た知財デュー・デリジェンスへの対応のため、他者にライセンスを許諾する 優先度が低い21。他方、工場を持たずにライセンスを許諾した他者に製造を 19 出典:令和 3 年度知的財産活動調査(特許庁)から推計 出典:中小企業の知的財産活動に関する基本調査報告書(平成 31 年 3 月 特許 庁),100, 199 ページ参照(https://www.jpo.go.jp/resources/report/chiikichusho/document/report_chusho_chizai/honpen_zentai.pdf) 21 出典:スタートアップが直面する知的財産の課題に関する調査研究報告書(令和 4 年 3 20 23 行わせるファブレス型のビジネスモデルを実施しているスタートアップや、 大企業との業務提携や共同研究に必要なライセンスビジネスを行う不実施 主体のスタートアップも一部に存在する。 このようなライセンサーとしてのスタートアップにあっては、例えば、 「開放特許情報データベース」を利用するが、他の主体と同様に、事業化ニ ーズとの突き合わせに至らず、その活用先を見つけ出せていないケースが ある。 (イ)ライセンシーとして スタートアップは、ベンチャーキャピタルからの資金調達に当たり自社 に帰属する特許の存在が求められるところ、自ら特許権を保有する又は独 占的ライセンスを受けることを望む傾向にある。後者の場合、ライセンスを 希望する特許が特定されていることが多く、マッチングの必要性は低い。 ライセンシーとしてのスタートアップであって、上記のマッチングの必 要性がある場面においては、 「開放特許情報データベース」を活用して開放 特許を検索可能であるが、他の主体と同様、これだけでは他者の特許を活用 した事業化に結びついていないという実態がある。 (3)ライセンスの阻害要因 ライセンサー/ライセンシーの全ての主体において、 「開放特許情報デー タベース」の活用が期待されているが、現状のデータベースの内容では開放 特許の活用先が見いだせない/他者の特許を活用した事業化に結びつかな い実態にある。 この点について、ライセンスのマッチングの場面ではマッチングサービ ス提供事業者の利用が通例であるところ、マッチングサービス提供事業者 やそのサービス利用者からは、技術シーズと事業ニーズをマッチングする に際し、 「開放特許情報データベース」のライセンサーの開放特許情報(特 許公報に記載の技術等の概要に加え、実施・許諾実績の有無、譲渡・実施許 諾の可否等)とライセンシーの事業ニーズの情報のみでは不十分であり、以 下のような情報を併せて提供することも必要と指摘されている。 • • • ライセンシーが事業化に際して考慮すべきライセンサーが有する周辺 特許等の技術情報 その開放特許を活用して事業化を行うことが可能と考えられる製品・サ ービスに関する情報 その開放特許を用いて実用化のための研究開発を行う場合に提供され うる支援措置(補助金等)に関する情報 上記に加え、予算が乏しく、ライセンサー/ライセンシー(大学は除く) 月 特許庁), 135 ページ参照 (https://www.jpo.go.jp/resources/report/sonota/startup/document/index/startup_r 3_hokoku.pdf) 24 いずれの場合でも、民間のマッチング支援を受ける際の資金的課題もある 者も存在する。 さらに、大学、中小企業、スタートアップにおいては、技術移転/ライセ ンス活動、ライセンス交渉・契約手続等の知見も不足していることが、ライ センサーとして自身の開放特許を他者の事業化に結びつけられない、又は、 ライセンシー(大学は除く)として他者の開放特許を自身の事業化に結び付 けられない要因の一つとなっている。 (4)本小委員会での検討 ①事務局の提案について 実際にマッチングを進める上での障害として指摘されている具体的な課題 に応じた、以下(ア)~(ウ)に示した対応策を講じる案が事務局から提示さ れた。 また、以下の(エ)を踏まえ、ライセンス促進策の一つと考えられる特許料 の減免拡充を行うよりも、ライセンスの実施につながる政策効果がより高い と考えられる上記対応策を講じることとし、特許料の減免の在り方について は、海外の「ライセンス・オブ・ライト制度」の実施状況等を引き続き注視し つつ、検討を行っていくことが提案された。 (ア)開放特許情報データベースの課題について 民間のマッチングサービス提供事業者が、開放特許情報と自身が保有す る上記(3)で示したような他の情報を組み合わせたユーザーニーズに合致 したサービスを提供できるよう、開放特許情報をまとまったデータとして 民間のマッチングサービス提供事業者やこれらの事業者に情報を提供する データベース事業者に提供する。 このため、開放特許情報の民間提供の在り方(データ提供のフォーマット、 提供形態等)、マッチングに有用な他の情報等について整理し、これを広く 公表することにより開放特許情報の利活用を促進していく。また、上記の開 放特許情報の提供拡充と併せて、開放特許情報の使用方法等に関するサポ ートの充実を検討する。 (イ)民間のマッチング支援を受ける際の資金的課題について 自身の開放特許をライセンスする場面及び開放特許のライセンスを受け て事業化を進める場面において、ライセンサー/ライセンシーがマッチン グサービス提供事業者等を利用し、技術移転/ライセンス契約した場合に、 その利用に係る費用を補助する施策の導入を検討する。 (ウ)ライセンス交渉・契約手続のノウハウ等に関する課題について INPIT の知財経営支援等において、大学やスタートアップが事業会社とラ イセンス契約等を締結する際の留意点を特許庁が取りまとめ、現在普及を 25 図っている「モデル契約書22」を十分に活用する。また、特許庁事業である 知財専門家によるスタートアップ向けメンタリングの内容強化、VC への知 財専門家派遣の拡大、金融機関や VC 職員向けのライセンス交渉に関する講 習会の実施を通じて、中小企業、スタートアップのライセンス交渉力強化を 支援する。 大学 URA 向け等にカスタマイズしたライセンススキル向上のためのセミ ナーを実施することにより、大学のライセンス交渉力強化も支援する。 (エ)特許料の減免拡充によるライセンス促進策について 例えば、以下の減免拡充の制度案 1、2 が考えられる。 • • (制度案 1)現行の軽減制度では 1-10 年目の特許料が軽減対象であるとこ ろ、一定の年次までにライセンスが行われた場合は 11 年目以降の特許料ま で軽減対象とする。 (制度案 2)ライセンスが行われた以降に納付する特許料(1-10 年目)につ いて、現行の軽減制度よりも軽減率を拡充する。 しかし、ライセンス促進策としての特許料の減免に関して、大学は不実施 主体であり、他者に実施させることが前提であるため元々開放意図を有し ており、また、中小企業、スタートアップは、そもそも自社実施が中心であ る(他者にライセンスするケースは多くない)が、自社実施できない場合に は他者へのライセンス実施を欲する実態がある。 そして、上記のように既にライセンス意欲を有している者は、そもそも他 者へのライセンス意欲を有しており、特許料の減免がライセンスの意思決 定のトリガーとなる(特許料の減免がないとライセンスしない)という場合 は想定しがたいことに加え、特許料減免策(制度案 1、2)の導入による減 免拡充額は、ライセンス実施に伴う収益に比して必ずしも大きいものでは なく、十分なインセンティブ効果を期待できないと考えられる。 また、英独等で「ライセンス・オブ・ライト制度」が導入されているが、 特許料減額のために使用されるだけであり、実際にオープンイノベーショ ンの促進につながっていないとの多数の指摘がある23。 22 知財等から生み出される事業価値の総和を最大化し両者が中長期的な目線で Win-Win と なることを目指すための契約書例。 「想定シーン」を設定して各条項のポイントを解説し たものであり、 「ゴールドスタンダード」ではない。 23 出典:令和 3 年度産業財産権制度各国比較調査研究等事業「ライセンス・オブ・ライト 及び実用新案に係る各国及び国内ニーズ調査」(令和 4 年 3 月,一般財団法人知的財産研究 教育財団, 知的財産研究所),140 ページ参照 (https://www.jpo.go.jp/resources/report/takoku/document/zaisanken_kouhyou/2021_ 06.pdf) 26 ②各委員からの意見について ライセンス促進策として特許料の減免拡充を行うよりも、実際にマッチン グを進める上での障害として指摘されている具体的な課題に応じた対応策 (上記①(ア)~(ウ))を講じる方向性で意見が一致した。 他方で、未利用特許の活用は、単にライセンスを増やすというのではなく、 イノベーションの創出に繋げることが趣旨であることから、施策の実施に当 たっては、未利用特許の実態を踏まえた対応とすることや、事業実施者のニー ズを適切に把握する必要性、不適切なマッチングが生じないようにするべき 旨等の意見が示された。 また、具体的な課題に応じた上記対応策を講じるに際して、特に、大学、中 小企業、スタートアップにあっては、弁理士・弁護士等の知財専門家が知財戦 略の視点から支援していくことも必要であり、弁理士会と INPIT とが協力し ていくことも重要である旨の意見が示された。 さらに、ライセンス交渉力強化を支援するに際し、特許庁が取りまとめ普及 を図っている「モデル契約書」を十分に活用するに当たっては、 「モデル契約 書」の位置づけ、コンセプトが誤解されないよう注意が必要であり、場合によ っては、この「モデル契約書」の契約例に拘泥するあまり、かえって、ライセ ンスを阻害するような事態になりかねないとの意見が示された。 ライセンス促進策としての減免制度について、中小企業にとって特許料減 免の拡充は望ましいことであるが、制度を導入するのであれば、事業化ではな く減免を目的として利用されることがないような制度作りが必要であるとの 意見が示された。 (5)まとめ 以上のとおり、現時点では、ライセンス促進策の一つと考えられる特許料の 減免拡充を行うのではなく、ライセンスの実施につながる政策効果がより高 いと考えられる、実際にマッチングを進める上での障害として指摘されてい る具体的な課題に応じた施策を講じることが適当である。 なお、上記施策の具体化、実施に際しては、各委員から示された意見も十分 に踏まえた検討を行う。また、特許料の減免の在り方については、海外の「ラ イセンス・オブ・ライト制度」の実施の状況等を引き続き注視しつつ、検討を 行っていく。 27 おわりに 新型コロナウイルスによる危機を乗り越えた先の新しい社会を見据えて、特 許庁は、更なるデジタル化の促進等、ユーザー利便性向上のための検討を引き続 き行っていく必要がある。また、イノベーションの原動力となる知的財産の活用 を促すためには、新領域における発明の適切な保護が必要である。特許制度にお ける発明の「実施」の定義に関する論点を始め、今後も変化するビジネス環境に 応じて、特許制度の在り方について、引き続き検討していくことが望ましいもの と結論付け、本小委員会において提言する。 28