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産業構造審議会 知的財産分科会 商標制度小委員会 第9回

2022-09-29一次資料(出典)

議事録・配布資料の全文(政府公表資料より。要約でなく原文に基づく参照用)。

産業構造審議会 知的財産分科会 商標制度小委員会 第9回 資料産業構造審議会 知的財産分科会 商標制度小委員会 第9回 資料産業構造審議会 知的財産分科会 商標制度小委員会 第9回 資料産業構造審議会 知的財産分科会 商標制度小委員会 第9回 資料産業構造審議会 知的財産分科会 商標制度小委員会 第9回 資料産業構造審議会 知的財産分科会 商標制度小委員会 第9回 資料産業構造審議会 知的財産分科会 商標制度小委員会 第9回 資料産業構造審議会 知的財産分科会 商標制度小委員会 第9回 資料

議事録

時・令和4年9月29日(木) 於・特許庁特別会議室+Teams会議室 産業構造審議会知的財産分科会 第9回商標制度小委員会速記録 特 許 庁 目 1. 開 次 会 …………………………………………………………………………1 2. 新 委 員 紹 介 …………………………………………………………………………1 3. 配布資料の確認等 ………………………………………………………………………2 4. 議事の運営等について 5. 特許庁長官挨拶 …………………………………………………………………2 …………………………………………………………………………3 6.議 事 ➀ 商標審査の現状について ……………………………………………………………4 ② 当面の検討課題について ……………………………………………………………6 ③ 他人の氏名を含む商標の登録要件緩和について ④ コンセント制度の導入について ⑤ Madrid e-Filingにより商標の国際登録出願する際の本国官庁手数料の 納付方法の変更について 7.閉 会 …………………………………7 ……………………………………………………30 ……………………………………………………………35 …………………………………………………………………………36 開 ○松本制度審議室長 会 定刻になりましたので、ただいまから産業構造審議会知的財産分科 会第9回商標制度小委員会を開会いたします。 本日は、御多忙の中御出席を賜りまして、誠にありがとうございます。本年7月1日付 で着任いたしました、事務局を担当します特許庁制度審議室長の松本でございます。よろ しくお願いいたします。 早速ではございますが、本日の議事進行につきましては、田村委員長にお願いしたいと 思います。どうぞよろしくお願いいたします。 ○田村委員長 ありがとうございます。 議事に移る前に、新たな委員の御紹介、委員の出欠状況及び定足数等につきまして、事 務局から御説明をお願いいたします。 新 委 員 紹 介 ○松本制度審議室長 それでは、今回新たに御就任された委員を御紹介いたします。一言 ずつ御挨拶を頂戴できますと幸いです。 日本大学商学部准教授、弁護士・石井美緒委員。 ○石井委員 石井と申します。AIPPI・JAPANさんの他人の氏名等を含む商標に 関する調査研究委員会の委員に加えて頂いておりました。本会でも末席を汚させて頂ける ことになり、皆様にいろいろ御教示いただきながらやっていきたいと思いますので、どう ぞよろしくお願いいたします。 ○松本制度審議室長 日本弁理士会執行理事、酒井国際特許事務所商標部部長、弁理士・ 橋本千賀子委員。 ○橋本委員 弁理士の橋本と申します。私、長年、商標の実務を担当してまいりました。 どうぞよろしくお願いいたします。 ○松本制度審議室長 日本弁護士連合会知的財産センター意匠・商標・不競法PT座長、 TMI総合法律事務所パートナー弁護士・宮川美津子委員。 ○宮川委員 宮川美津子と申します。長年、商標・意匠等の仕事をさせていただいており -1- ます。これまでの経験にもとづき、これからの商標制度に関しまして、微力ですけれども お力になれるように頑張りたいと思います。よろしくお願いいたします。 ○松本制度審議室長 ありがとうございます。以上3名の方に新たに委員に御就任いただ きました。どうぞよろしくお願いいたします。 次に、委員の皆様の出欠状況につきまして、本日は、田村委員長、石井委員、大向委員、 國分委員、齊藤委員、橋本委員、宮川委員におかれましては会議室から御出席、蘆立委員、 井関委員、島並委員におかれましてはTeams会議室から御出席いただいております。 高崎委員におかれましては、オンラインで遅れて参加の御予定でございます。 本日は、商標制度小委員会に所属する11名の委員のうち、現時点で過半数を超える10名 の委員に御出席いただいておりますので、産業構造審議会運営規程第13条6項に基づき、 本日の委員会は成立となります。 また、議題3の「他人の氏名を含む商標の登録要件緩和について」に関して、オブザー バーとして熊本大学大学院人文社会科学研究部(法学系)教授・大日方信春様、京都大学 大学院法学研究科教授・山本敬三様、東京大学大学院法学政治学研究科教授・米村滋人様 の3名の方に御参加いただいております。米村様におかれましては、後ほど遅れて御参加 されます。 配布資料の確認等 ○松本制度審議室長 続きまして、配布資料の確認をさせていただきます。事前にデータ でもお送りさせていただいておりますが、「座席表」「議事次第・配布資料一覧」「タブレ ットの使い方」についてはお手元に紙で配布させていただき、その他の資料についてはお 手元のタブレットで御覧いただければと存じます。 タブレットの使い方についてお困りの場合は、お席で挙手いただくなど合図していただ ければ担当の者が対応いたしますので、よろしくお願いいたします。 議事の運営等について ○松本制度審議室長 続きまして議事の公開について、本小委員会では、新型コロナウイ ルス対応のため、一般傍聴及びプレスの傍聴につきましては、Web傍聴に限って可能と -2- しております。また、配布資料、議事要旨及び議事録も原則として公開いたします。 事務局からは以上となります。 ○田村委員長 ありがとうございました。 特許庁長官挨拶 ○田村委員長 続きまして、本日の議題に入る前に、特許庁の濱野長官から御挨拶いただ きたく思います。よろしくお願いします。 ○濱野長官 本年7月1日付で特許庁の長官を拝命いたしました濱野でございます。どう ぞよろしくお願いいたします。 田村委員長はじめ委員の皆様には、本日、大変御多忙の折御出席を賜りまして、誠にあ りがとうございます。また、今回新しく委員をお引き受けいただきました皆様、誠にあり がとうございます。どうぞよろしくお願い申し上げます。 委員の皆様には、私ども特許庁の行政に対しまして平素より格別な御理解、御協力を賜 りまして、誠にありがとうございます。改めまして厚く御礼申し上げます。 本商標制度小委員会の開会に当たりまして、一言御挨拶を申し上げます。 まず、一昨年、商標制度小委員会において御審議を賜りました商標の使用の定義の見直 し、国際商標登録出願に係る手続の整備等を措置する法律案でございますが、令和3年5 月14日に可決・成立をいたしまして、同年5月21日に公布をされてございます。この場を お借りしまして、厚く御礼を申し上げます。 商標の使用の定義の見直しにつきましては令和4年の10月1日に、国際商標登録出願に 係る手続の整備につきましては令和5年4月1日に施行予定でございます。円滑な施行に 向けまして、ユーザーに対する周知に努めてまいります。 さて、本年4月から6月にかけまして、今後の知財制度の改善、支援の在り方について 検討するため、特許庁政策推進懇談会が開催されました。この懇談会での議論を踏まえま して、産構審知財分科会の各小委員会において議論を深めてまいりたいと考えてございま す。既に今月の9日に意匠制度小委員会、26日には特許制度小委員会を開催しまして、委 員の皆様から貴重な御意見、御議論を賜りました。 本日の商標制度小委員会におきましては、ユーザーの利便性や国際的な制度調和の観点 を踏まえまして、他人の氏名を含む商標の登録要件緩和、先行商標権者の同意により、同 -3- 一または類似する後願商標の登録を可能とするコンセント制度の導入、手数料の支払いを WIPOに対し一括で済ませられるような制度改正、e-Filingによる手数料一括納付等が 議題とされてございます。このうち他人の氏名を含む商標の登録要件緩和の御審議に当た りましては、オブザーバーとして熊本大学の大日方教授、京都大学の山本教授、東京大学 の米村教授に御参加をいただいてございます。心より御礼申し上げます。 懇談会でも活発に御議論いただいた論点等でございますけれども、本日の小委員会で御 審議を賜り、具体的な対応策の検討を進めてまいりたいと考えてございます。本日は限ら れた時間でございますが、委員の皆様におかれましては忌憚のない御意見、御議論を頂戴 できれば幸いでございます。どうぞよろしくお願い申し上げます。 ○田村委員長 ありがとうございました。 議 ① ○田村委員長 事 商標審査の現状について それでは、議事に入ります。 まず初めに、商標審査の現状について、資料1を基に事務局から御説明をいただきます。 よろしくお願いいたします。 ○髙野商標課長 商標課長の髙野でございます。よろしくお願いいたします。 それでは、商標審査の現状を御説明させていただきます。資料1を御覧ください。 まず、商標出願件数の推移でございますが、2021年度の出願件数は約18万5,000件とな ってございます。2014年と比較すると約1.5倍ということで、商標の出願件数は年々増加 傾向にございます。増加傾向の要因としては、技術の進展に伴って新しい商品、サービス が生まれるであるとか、eコマースの発達、または個人、中小企業からの出願の増加等が 要因の一つではないかと想定してございます。 続きまして、次のスライドを御覧ください。では、産業分野別に出願区分数の推移がど のようになっているかでございますが、2021年は化学分野の出願が減少してございます。 また、食品分野においても2020年に少し減少傾向にありますが、他の分野については増加 傾向にあるということでございます。 続きまして、次のスライドを御覧ください。近年の出願件数増加の要因、1つとして、 個人、中小企業による出願が堅調に増えてございます。こちらのグラフを見ていただきま -4- すと、大体商標出願全体の6~7割が個人、中小企業からの出願ということになってござ います。これは弊庁出願の特徴の一つだと考えてございます。2021年の個人、中小企業の 出願の割合は、2015年と比較しますと約1.2倍に増加しているということが御覧いただけ るかと思います。 続きまして、次のスライドを御覧ください。この商標出願の増加傾向でございますが、 世界的に見ますと、アメリカ、ヨーロッパ、中国、韓国でも、商標出願は増加傾向にござ います。特に中国での商標出願が増加しているところが顕著に見てとれます。また、昨今、 アメリカの出願増も顕著に表れているところでございます。 続きまして、次のスライドを御覧ください。商標審査における処理件数の推移でござい ますが、商標出願の増加に伴って、商標審査の処理件数も増加させてございます。2021年 は前年比で約1.2倍の審査処理を達成してございます。 日本の審査処理を世界各国と比較すると、右側のグラフになります。こちら出願件数で はなくて審査区分数になりますけれども、審査官1人当たりの審査区分数は、韓国、アメ リカ、ヨーロッパと比較しても、日本の審査官1人当たりの審査区分数は多うございます。 続きまして、次のスライドを御覧ください。近年の商標出願増の影響により、2020年ま では審査期間が長期化する傾向にございました。そこで、2019年6月21日に閣議決定をし ました成長戦略の中で、2022年度末までに商標の権利化までの期間を国際的に遜色ないス ピードである8月とするという目標を掲げまして、これに向けて審査期間の短縮に努めて まいりました。具体的な方策については参考資料に書いておりますので、後ほど御覧いた だければと思います。 結果としまして、2021年度の平均審査期間でございますが、ファーストアクション期間、 いわゆる最初の審査結果の通知までが8月、TP期間、最終処分までが9.6月となってお りまして、順調に審査期間を短縮しているところでございます。2022年度末までに権利化 までの期間を8月とするという目標ですが、現在、その目標に向けて審査を進めており、 達成できる見込みになってございます。 以上でございます。ありがとうございました。 ○田村委員長 ありがとうございました。ただいまの事務局からの御説明に関して、御意 見、御質問等のある方はいらっしゃいますでしょうか。発言いただく際には、会議室にい らっしゃいます方は挙手いただきまして、指名されましたら卓上マイクをオンにしてから 御発言ください。できるだけマイクに近づいて御発言いただきますようお願いいたします。 -5- また、オンラインにて御出席の皆様につきましては、チャット欄に御発言御希望の旨を御 記入ください。書き込みを見て御指名いたしますので、御発言いただく際にはマイクをオ ンにしていただくようお願いをいたします。 特に御質問御発言等ないようですね。オンラインのほうもよさそうですね。 では、どうもありがとうございました。 ② ○田村委員長 当面の検討課題について 次に、当面の検討課題について、資料2を基に事務局から御説明をいただ きます。よろしくお願いいたします。 ○松本制度審議室長 それでは、資料2を御覧ください。当面の検討課題についてでござ います。 特許庁政策推進懇談会についてでございますけれども、今年、令和4年4月に有識者か らなる特許庁政策推進懇談会を立ち上げ、5回開催をいたしました。6月30日に報告書を 取りまとめてございます。デジタル化・グローバル化の進展への対応、大企業に加え中小 企業・スタートアップ、大学等の知財活用の更なる促進、併せて特許庁自身の一層のデジ タル化による業務の効率化に取り組んでいく必要がある、こういった観点から御議論をい ただきまして、この特許庁政策推進懇談会で示された知的財産政策に関する今後の検討の 方向性等も踏まえつつ、各論点について産業構造審議会知的財産分科会の各小委員会にお いて御議論いただくという位置づけにしてございます。 次のページ、当面の検討課題でございますけれども、この商標制度小委員会におきまし ては、他人の氏名を含む商標、コンセント制度、e-Filing納付等を当面の検討課題として ございます。 参考として、意匠制度小委員会、特許制度小委員会につきましても、御覧のような検討 課題を予定しているところでございます。※の1つ目ですけれども、書面手続のデジタル 化等につきましては、特許制度小委員会の検討課題として記載してございますけれども、 こういった意匠、商標に関わる論点につきましては、意匠制度小委員会及び商標制度小委 員会においても御報告させていただく予定としてございます。 当面の進め方ですけれども、月1回程度の開催を予定してございます。議論が深まった 論点については、適時に方向性を取りまとめるという形でお願いできればと考えておりま -6- す。 事務局からは以上になります。 ○田村委員長 ありがとうございました。ただいまの事務局からの御説明に関して、御意 見、御質問等のある方はいらっしゃいますでしょうか。御発言御希望の方は、挙手または チャット欄への書き込みをお願いいたします。 御発言よろしいでしょうか。なさそうですね。それでは、ありがとうございました。 ③ ○田村委員長 他人の氏名を含む商標の登録要件緩和について 次に、他人の氏名を含む商標の登録要件緩和について、資料3を基に事務 局から御説明をいただき、その後、質疑に移りたいと思います。よろしくお願いいたしま す。 ○根岸商標制度企画室長 商標制度企画室長の根岸でございます。よろしくお願いいたし ます。他人の氏名を含む商標の登録要件緩和につきまして、資料3に基づいて御説明させ ていただきます。 それでは、資料の2ページを御覧ください。先ほど紹介がありましたが、特許庁政策推 進懇談会における議論をまとめたものでございます。同懇談会におけるメンバーの方々か らの主な御意見、御示唆をいただいた方向性を御確認いただき、改めて本委員会において 御審議いただきたく存じます。 3ページを御覧ください。商標の構成中に他人の氏名を含む商標は、商標法4条1項8 号により、その他人の承諾がない限り登録することはできません。その趣旨は、他人の人 格的利益の保護にあるとされています。現行の商標審査においては、氏名を表す文字種、 他人の周知・著名性の有無、出願商標の周知・著名性の有無などにかかわらず本規定が適 用されます。 4ページを御覧ください。氏名を含む商標については、ファッション業界などを中心に、 創業者やデザイナーの氏名をブランド名として採用する傾向がございます。しかしながら、 4条1項8号により、新興のブランドも広く一般に知られたブランドも、商標中に含まれ る氏名と同名の他人が存在すれば、一律に出願が拒絶されています。このような状況は、 氏名からなるブランドの商標としての保護に欠けるという御指摘がございます。また、氏 名を含む商標が採用されることの多いファッションブランドの多くはいわゆる中小企業で -7- あり、中小企業やスタートアップ企業のブランド保護の観点からも検討が有用と考えてお ります。そこで昨年度、見直し検討の基礎資料とするための調査研究を実施しております。 5ページを御覧ください。こちらは、参考として本規定の氏名に関する近年の裁判例、 審査における拒絶事例を掲載してございます。説明は割愛させていただきまして、6ペー ジを御覧ください。 昨年度の調査研究において、氏名権に知見を有する学識経験者の方々からは、他人の氏 名の無断使用それ自体が当然に氏名権の侵害となる可能性は低いという御見解や、4条1 項8号は過度に他人の人格的利益を保護している印象があるという御見解が示されました。 また、この調査研究で調査した国、地域におきましては、他人の氏名を含む商標について、 その拒絶理由等の対象となる他人の氏名には一定の知名度の要件が課せられていることが 確認されました。この点におきまして、日本のみが他人の氏名の一定の知名度の有無にか かわらず登録が拒絶されているということでございます。 7ページを御覧ください。このような調査研究の結果も踏まえて整理いたしますと、現 行制度の問題ですが、これは出願人の商標登録を受ける利益よりも他人の氏名に係る人格 的利益が過度に優先された結果生じているものと存じます。そこで、他人の人格的利益の 保護という4条1項8号の趣旨を変えることなく、両利益の調整方法を見直すことが妥当 ではないか、その調整方法としては、他人の氏名側に何らかの要件を課す方向で検討すべ きではないか、このように整理いたしました。 8ページを御覧ください。その場合の他人側に課す要件についてですけれども、ユーザ ーニーズや国際的な制度調和などを踏まえれば、他人側の知名度を考慮する方向で検討す べきところです。その前提として、4条1項8号で保護すべき人格権、氏名権については、 出願に係る指定商品や指定役務と氏名とが結びつけられることによる弊害、又は不利益を 受けない権利と整理できるのではないかと考えます。 そのような人格権、氏名権との関係において、他人の氏名の知名度が高ければ、その結 びつきによる弊害や不利益が大きくなり、氏名権侵害の蓋然性が高くなる。逆に他人の氏 名の知名度が低ければ、氏名権侵害の蓋然性は低いといえるのではないかと考えます。こ のような知名度に関する要件が仮に採用された場合でも、登録された商標の使用に氏名権 等の侵害があった場合は、民法に基づく請求が妨げられるものではなく行為が規制され得 るため、法的な救済が可能ではないかと考えてございます。 9ページを御覧ください。ここまでの整理により対応の方向性をまとめますと、ユーザ -8- ーニーズ、国際制度調和を踏まえ、4条1項8号の趣旨等に鑑みれば、出願人の商標登録 を受ける利益と他人の氏名に係る人格的利益とのバランスを調整し、同号における他人の 氏名に一定の知名度の要件を課すというような方向での法改正を検討すべきではないか、 となります。このような整理や方向性の適否につきまして、この後の留意事項も含めまし て御審議いただきたく存じます。 10ページを御覧ください。検討事項1は、一定の知名度を検討するに当たっての留意事 項となります。具体的な条文や審査基準等の検討を進めていくに当たりまして、その一定 の知名度の程度、知名度の判断基準となる需要者の範囲などについて留意すべき事項を挙 げさせていただきました。こちらの適否や過不足等について御確認をお願いいたします。 11ページを御覧ください。こちらは参考として、周知・著名性に関連する商標法の規定 とその解釈を抜粋したものになります。説明は割愛させていただきまして、12ページを御 覧ください。 こちらも参考資料となりますが、他人の氏名に一定の知名度の要件を課す法改正をした 場合に、その一定の知名度を有しない他人の側から見て懸念を生じないかという観点から まとめさせていただいた資料になります。細かい説明は割愛させていただきまして、13ペ ージを御覧ください。 こちらも参考資料になりますが、4条1項8号の対象範囲について、現行と仮に見直し た場合とを比較した図になります。見直し後の4条1項8号においては、氏名権侵害の蓋 然性が低い場合は出願人側の商標登録を受ける権利を保護し、商標としての使用意思に疑 義がなく、出願の経緯に不正の目的がないなど、8号以外の拒絶理由にも該当しなければ 登録となり得ます。ただし、商標登録されたとしても、見直し前と同様に自己の氏名を普 通に用いられる方法で表示して使用する場合などには商標権の効力は及ばず、また登録さ れた商標の使用が氏名権を侵害する場合があれば、民法に基づく請求を妨げるものではご ざいません。 14ページを御覧ください。検討事項2としまして、法改正や改正後の審査運用を検討し ていくに当たり、留意すべき課題の適否、過不足について御確認をお願いいたします。5 つ挙げておりますけれども、①が商標に含まれる氏名と無関係な者による出願、②が無関 係とまではいえない者による先取り出願についてですが、いずれも4条1項8号以外の拒 絶理由との対応範囲について検討を要するというような課題とさせていただいてございま す。④は審査判断のばらつきに関する課題でございまして、①、②、④につきましては、 -9- 本小委員会で御示唆いただいた後、具体的なところは商標審査基準ワーキンググループに おきまして検討をお願いするものと存じます。 ③は出願時においては一定の知名度を有しなかった他人が事後的に知名度を獲得した場 合となりますが、商標一般において現行法下でも起こり得ることですけれども、氏名を含 む商標につきましては、民法に基づく請求や商標法26条による抗弁などもあり得ると存じ ます。⑤は法改正の検討を進めていくに当たっては、例えば継続的使用権の措置の要否な ども確認すべき留意事項とさせていただいております。 15ページを御覧ください。検討事項3としまして、関連する規定の改正要否について御 確認をお願いいたします。現行の4条1項8号で氏名と同列に規定されている肖像及び名 称の見直しの要否、商標権の効力制限を規定する26条の見直しの要否、無効審判の除斥期 間を規定する47条の見直しの要否についてでございます。いずれも今回の改正による見直 しは不要と整理させていただいております。 16ページを御覧ください。最後になりますけれども、検討事項4として、昨年8月に判 決が出ましたマツモトキヨシ音商標事件判決を踏まえた審査運用の見直しについてでござ います。こちらにつきましては、今回提案させていただいている法改正による検討を優先 しまして、審査運用の見直しのタイミング及び要否については、慎重に検討を進めてはど うかとさせていただいております。この点、御確認をお願いいたします。 本資料につきましての御説明は以上になります。 ○田村委員長 ありがとうございました。それでは、ただいまの事務局からの御説明に関 して自由討議を行いたいと思いますが、まずは、本日オブザーバーとして参加いただいて いる大日方様、山本様、米村様より御発言をいただければ幸いです。今の順でお願いでき ますか。 それでは、大日方様、よろしくお願いいたします。 ○大日方オブザーバー 熊本大学の大日方でございます。憲法学においても、氏名につい ては個人の人格の象徴であると理解してきたと思います。また氏名権についても、人格権 の一内容を構成するものと理解してきていると思います。したがって、氏名権は人格権に 由来するものとして憲法13条の幸福追求権において保障されているといえるのでしょうけ れども、憲法は国家行為を規制する法規範ですので、氏名権を憲法上の権利として捉える 場面は少なかったかと思います。 最高裁が憲法上の権利として氏名権について本格的に判断したのは、平成27年の大法廷 - 10 - 判決である夫婦同姓違憲訴訟においてであったと思います。本件は、婚姻の際に夫又は妻 の氏を称するとしている民法750条が憲法13条に反するのではないかという点が主な争点 だったと思いますが、氏名権の内容と思われる氏の変更を強制されない自由について、憲 法上の権利として保障される人格権の一内容であるとはいえず、民法750条は憲法13条に 反するものではないと判示されております。 また、氏名権に関するものとしては、一般的には、人格権に由来するものとして氏名を みだりに利用されない権利が説かれることがあります。この権利は、憲法13条で保護され ているプライバシー権を自己情報コントロール権と捉えた場合の保護法益の一つであると 理解できると思います。 さらに、必ずしも裁判例で認容されたものではございませんが、例えばマイナンバー制 度のように個人を番号で識別するような制度について、人格権に由来するものとして、番 号で呼ばれない権利や名前で呼んでもらう権利のようなものが説かれることもあります。 先の最高裁判決も含めてですが、こうした権利主張の保護利益を考えてみると、それは一 言でいうと、氏名に関する個人の感情や思い、こだわりのようなものの毀損の防止といえ るのではないかと考えております。氏名にまつわる感情侵害の防止、これを人格権の内容 としてみていこうということなのかと思います。もっとも、こうした法益を憲法上の権利 の内容と考えたとしても、それは無制約ではありません。公共の福祉や公共の利益との調 整を必要としている。先の例でいえば、戸籍制度や個人情報を扱う様々な制度の下で、ほ かの利益との関係で制約され得るものとして理解すべきでしょう。 翻って、今御議論されている商標法4条1項8号の改正問題については、仮に氏名にま つわる感情侵害の防止という法益が憲法上のものであるとされても、ほかの正当な目的の ため、本件では氏名を含む商標の保護ということでしょうけれども、こういう目的のため に適切な方法での制約は許されると解されると思います。また、その判断において一定の 知名度など氏名については、登録後のトラブルを未然に防ぐというような目的で、なお従 前のままであるという判断もあり得るかと思います。 したがって、今御議論されているような法改正の内容について、憲法学の見地から特に 違和感はございません。 私からは以上です。 ○田村委員長 ありがとうございました。続きまして、山本様からお願いできますでしょ うか。 - 11 - ○山本オブザーバー 山本です。私のほうからは、私の専門である民法学の観点から、氏 名権の理解と改正提案の評価についてコメントをさせていただきます。 まず、氏名権の理解については、氏名そのものと氏名に関する権利を分けて考える必要 があります。氏名そのものは、社会における個人の識別記号に当たります。これは個人を 識別するための制度を前提としたもので、国家制度としては、氏名制度は戸籍制度と結び つけられていますが、より広い社会的制度としての氏名制度は、戸籍制度とは別に広く受 容され機能しているとみることができます。 いずれにしても重要なのは、同じ氏名を使用することが制度上許容されている。つまり、 特定の氏名の排他的使用は制度上認められていないということです。 次に、氏名権の内容は、氏名の決定保持権、氏名表示権、氏名利用権という3つに整理 することができます。氏名決定保持権というのは、自分の氏名はAであると決定する、自 分の氏名はAであることを保持する権利です。氏名表示権というのは、自分の氏名はAで あると表示する、あるいは表示しない権利。氏名利用権は、自分の氏名はAであることを 利用する権利、これは利用するかどうかを決める権利を含みます。ただ氏名権の特徴は、 そういう氏名の決定保持・表示・利用を介して、その人と他の人格権ないし人格的利益と 結合するところにあります。そうした他の人格権ないし人格的利益の中核をなすのは、自 己同一性ないしアイデンティティーに係る権利ですが、さらにプライバシー権や平穏生活 権、名誉・信用・パブリシティー権などと結びつく可能性があります。実際の紛争では、 氏名を介してそれらの人格権あるいは人格的利益が事案に応じて問題になるとみることが できます。 次に、氏名権の侵害に関しては、憲法や民法ではこれまで、氏名権を持たないものが氏 名権を侵害する場合が議論されてきました。例えば国による氏名権の侵害としては、戦前 の創氏改名や今も出てきましたような夫婦同姓などが問題とされてきました。他の指示に よる氏名権の侵害としては、例えばネームプレートの着用義務のように、氏名の表示・利 用を強制するものや、あるいは冒認などのように他人が氏名を表示・利用する場合が問題 とされてきました。 それに対して、同じ氏名を有する者同士の間では氏名権と氏名権が衝突します。こうし た衝突の調整をどのように行うかについて、これまで民法では十分に検討されてきたとは いえません。ただ、こうした場合には、それぞれの氏名権者が有するどのような人格権や 人格的利益が侵害されているかによって、衝突の調整を考える必要があると考えられます。 - 12 - 商標法4条1項8号では、様々な場合があり得るのですが、最も問題になるのは、こう した氏名権を有する者同士の間の衝突が問題になる場合だと思います。現在の規定は、氏 名を含む商標の登録を認めると他人の氏名表示・利用権が侵害されるおそれがあることか ら、承諾がない限り、一律に商標登録を受けることはできないとしていると考えられます。 これはあり得る一つの調整の仕方ですが、これによって氏名と結合した他の人格権ないし 人格的利益、とりわけパブリシティー権等の保護が少な過ぎる、過少になっているのでは ないかということが今回の改正提案の趣旨だと考えられます。 ここで、この改正提案で考えられている方向は、指定商品・役務と氏名の結合によって 特定の人が想起されるかどうかによって氏名表示・利用権の侵害の有無を判定する。特定 の人が想起されなければ、他人の氏名表示・利用権が侵害されていないので商標登録を認 めてもよいけれども、想起されるのであれば商標登録を認めない。要するに氏名表示・利 用権の侵害があるかどうかによって見直しをする、そういう提案だと理解することができ ます。このように理解しますと、改正提案は、あり得る一つの調整の在り方として是認さ れるだろうと思います。 ただし、そうしますと次の課題は、氏名により特定の人が想起されない、したがって、 その人の氏名表示・利用権が侵害されないということを確保するための要件をどのように 設定するのが適当かということです。改正案を詰める際には、その点は特に重要になると いうことを指摘しておきたいと思います。 私からは以上のとおりです。 ○田村委員長 ありがとうございました。続いて、米村様、お願いできますでしょうか。 ○米村オブザーバー 東京大学の米村でございます。私も、今直前でお話しくださいまし た山本先生と同様に民法を専門とする研究者でございまして、民法の観点からコメントさ せていただくということになるかと存じます。 基本的な内容は、山本先生に御説明いただいたとおりですので、一般的な話はそれほど 突っ込んだところはお話ししないということにさせていただきたいと思いますけれども、 日本では、氏名権に関してそれほど民法学の中で手厚い検討がされてきたとは言いがたい ところでありまして、氏名権の内容や具体的な侵害行為としてどのようなものがあり得る のか、あるいは複数の権利者が存在した場合の調整方法といったものも明確な形で議論さ れてこなかったところがございます。しかしながら、商標法においてはその点がかなり問 題となる事例が想定されることから、従来法において一定の整理がされ、氏名権を手厚く - 13 - 保護する法制度が採用されてきたということであろうと考えております。 しかしながら、従来の法制度はかなり氏名権の保護に手厚過ぎるところがあったように 思っております。およそ民法上、氏名権の侵害、衝突が生じないような場面も含めて、何 らかの個人の氏名が入っていると、一般的に商標としての使用が許可されないという形に なっておりまして、それは権利保護の在り方としてはやや過剰であったというようにみる ことができるかと思います。 今回の御提案は、一定の知名度要件というものを導入することによって、民法上の氏名 権侵害が発生し得る一定の場面に限って商標使用を許可しないというような仕組みにする という御提案かと理解いたしております。その方向性自体は、一定の侵害場面に限って商 標の使用許可のところでの解決として、それ以外の問題については他の法制度あるいは商 標制度の他の規定の中で解決をするということを考えておられるということであろうと思 いますので、一つの法政策の在り方としては十分あり得るものであろうと考えております。 ただ、直前で山本先生からの御指摘にもございましたが、その際に具体的要件としてど のようなものを設定するのかというのは一つの大きな問題でありまして、私といたしまし て、知名度要件というのが物理的な著名性といったものに限定して運用されるとすると、 民法上の侵害行為との齟齬が生じる場面が増えてくるような印象がございまして、いわゆ る知名度、どのぐらいの人に広く知られているかということのほかに、もう少し様々な背 景・事情を考慮した柔軟な判断枠組みが実現できることが望ましいのではないかというよ うなことを感じた次第でございます。 あまり具体化した議論というのは現段階では難しい部分もございますけれども、例えば 知名度要件というのを直接的に取り上げますと、どうしてもパブリシティー権との関係性 がどうなるのかということが一般的には問題とされそうな印象がございます。パブリシテ ィー権に関しては、顧客吸引力の利用という要素がございますので、顧客吸引力を有する 氏名を利用した場合に初めて侵害が起こるという整理になるかと思われます。それと同等 な場合にだけ商標の使用許可をする形になるとすると、これは氏名権の保護としてはやや 狭くなる、むしろ狭過ぎてしまうというおそれもなきにしもあらずのように感じます。 したがいまして、パブリシティー権の保護の範囲とどのような関係に立つのかというこ とを一応整理した上で法律要件を定めていただくということが、差し当たっては実務的に も重要な課題になるように思った次第でございます。 以上でございます。 - 14 - ○田村委員長 ありがとうございました。それでは、委員の方からの御発言をいただきた く思います。御発言御希望の方は、挙手またはチャット欄への書き込みをお願いいたしま す。 橋本委員、お願いいたします。 ○橋本委員 橋本です。弁理士会では、4条1項8号の要件を緩和するということについ ては賛成でございます。私どもといたしましては、他人の氏名について一定の知名度を要 求するという点についても賛成でございますけれども、その知名度につきましては、周 知・著名という程度までは不要ではないかと考えております。 それから名称についてですけれども、こちらについても、できれば氏名と同様に取り扱 ったほうがよろしいのではないかと考えております。 登録の可否の判断に当たりましては、他人の人格権と出願人の経済的利益とを比較衡量 すべきであるということは、先生方がおっしゃっているとおりですけれども、人格権を保 護しつつ、出願人の登録を受ける権利にも配慮していただきたいところでございます。 また、出願人と当該氏名、名称を有する者との同一性あるいは関連性、同意書などをも らっているということも必要であると、当然ではあるかと思いますけれども、考えており ます。 以上です。 ○田村委員長 どうもありがとうございます。では、お願いいたします。 ○根岸商標制度企画室長 ありがとうございます。3つ御質問、御意見を頂いたと思って おります。 1つ目は、要件を検討するに当たって周知・著名までは不要ではないか、そこまでのレ ベルは不要ではないかということでございますけれども、先ほどの資料にもございました とおり、仮に今回の法改正を進めるに当たりましては、他人の氏名権の侵害が生じる蓋然 性の高さを考慮した法改正ということになりますけれども、それを考慮した形で、今後、 商標審査基準なりで方向性を定めていきたいと考えてございます。その際には、氏名の知 名度を判断するに当たっての需要者の範囲をどのような範囲にするか、その指定商品・役 務の需要者だけなのか、それともそれを含むような分野の需要者なのか、このあたりも検 討しまして具体的なことを定めていきたいと考えてございます。 2つ目の名称につきましては、氏名と同じように、現在、知名度要件がかかってござい ませんので、御意見があるということは承ります。氏名につきましては、実際に氏名を含 - 15 - む商標は登録されにくいというような問題が顕著化しておりますし、改正のニーズも非常 に高いと考えておりますので、氏名について今回整理させていただいた上で、名称につき ましてもニーズとか、また氏名と名称ですと性質というところも違ってきますので、そこ は全く一緒に検討できるかというところも含めまして、今後、そのようなニーズに応じて 検討してまいりたいと考えてございます。 それと出願商標側の同一性でございますけれども、例えば出願商標に含まれている氏名 と出願人との関係性ということかと認識してございますけれども、そちらにつきましては、 直接4条1項8号ということではなくて、商標法の中の他の規定との関係で拒絶すべきも のは拒絶する、もしくは出願人と氏名とが異なることによって、これが本当に自身が使用 する意思があるものかどうかを確認するような審査運用も併せて検討していきたいと考え てございます。 以上でございます。 ○田村委員長 ○橋本委員 ○田村委員長 よろしいでしょうか。 はい。ありがとうございます。 それでは、ほか、いかがでしょうか。 宮川委員、お願いいたします。 ○宮川委員 ありがとうございます。日弁連では、いただいた議題について十分時間をと って検討して、方向性を何か御提言するような段階にまで議論が進んではいませんが、本 日の議題を拝見して、商標PT(プロジェクトチーム)の委員の中からは、本日の資料3 で、これまでの事例として、例えば「TAKEO KIKUCHI」とか「ヨウジヤマモト」とか「ジ ュン アシダ」が登録できなかったという事例とか、マツモトキヨシの音商標の登録が当 初できずに知財高裁が登録を救済したと私は理解しているんですが、このような有名なデ ザイナーズブランドが登録できないというのは、やはり非常に違和感があるので、それを 救う方向での議論には賛同する、というようなコメントがございました。 以下は私の全くの私見ですけれども、個人の氏名を含む商標登録をより広く認めるよう にするかしないかというのは、結局どちら側ですかね、どの程度の登録まで認めるかとい うことで、マツモトキヨシの判例に出てきたように、自分の名前を登録しようという人に、 より課題というか知名度を求めて、それがある場合に登録するという方向性と、ただ自分 の名前を登録したいという人が、調べたところそんなに有名な人がいなければ登録を認め てあげようという、2つの方向性があって、どちらを採択するかでいろいろな議論がある - 16 - と理解しております。 今回の他人の氏名に何らかの要件をつけるということは、できるだけ有名でない人にも 商標登録を認めてあげようという、そういう方向をよしとするということになるのかと思 います。私は、そのどちらもあり得る選択だと思っておりますけれども、あまり有名では ない人の氏名を他人が使ってないから登録してあげようという制度をしたときに、複数の 同じ名前の人が今後出てきてビジネスをしにくくなるのではないかとか、そういう問題に ついては、釈迦に説法のような話ですけれども、26条の商標権の効力の問題ですね、自分 の名前は自分の名前として使えるという、そういう適用除外条項もありますので、例えば 「きくちたけお」さんという人がいて、自分が志してファッションビジネスをやるときに 名前を使えなくなるかというと、そういうわけではないと。ただ、それが商標として使え るかどうかという、そういう問題になってきますので、26条を柔軟に解釈することによっ て氏名権の侵害が、著しく困るほどの侵害が起きないようにできるということは十分あり 得ますので、出願人側により登録をしやすい方向で行くということもありと思っておりま す。 すみません、雑ぱくな意見で。 ○田村委員長 どうもありがとうございます。基本的に賛成と承りました。 齊藤委員、よろしくお願いします。 ○齊藤委員 齊藤です。私は、知的財産協会の商標委員会にもヒアリングをしまして、知 財協は御存じのようにユーザーの集まりでありますので、ユーザー視点での意見が幾つか 出てきておりました。今回の緩和については、今まで企業における特に商標担当にとって は、他人の氏名を含むものは商標としてはふさわしくないという固定概念があったものが、 商標の選択肢が広がるということは、いいのかなと考えております。 ただ、今回の法改正において「周知」という言葉については、いろいろとまだ議論する ところがあるのかなと思います。例えば地域的なもの、例えば関西では非常に有名だけど 北海道では全然周知性がないとか、どう考えるのかとか、最近はインターネット社会にな りまして、瞬時に日本全国に名前が広がるような傾向があるのでさほど懸念する必要はな いのかもしれませんが、気になる点ではありますので、御考慮いただきたいということで す。 あと、今回の法改正の改正そのものの周知については、やはり気をつけていただきたい ことがあります。これは先だっての特許庁によるヒアリングのときにも私から発言させて - 17 - いただいたんですが、例えば、今回の法改正が人名を商標化することについて、奨励だと か促進しているものではないということはしっかり伝えておく必要があると思っています。 あくまでも商標としての選択肢として人名というものがあるというものであって、決して 商標選択に困ったら人名で出しなさいなどとか、そういったものを促すものではないとい うことは重要な視点なのかと思っています。 これは、先ほどいろいろと説明がありましたけど、将来的には人格権に関わる問題等に 発展するようなところもあるのかというところ、例えば、子供のいじめにならないかとか、 要はそういった名前が、多感な子供の学校で、ある商品が子供の名前とたまたま同じだっ たからといって、そのことで子供のいじめにつながらないかとか、いろいろな社会現象を 生む場合も将来的には考えられるのではないかということなので、あくまでも商標を出願 する側の方々にとっては、本当にその商標が事業にとって有効なのかどうかということを しっかり考えた上で商標の選択を行うという、そういうところをしっかりメッセージとし て伝えるべきではないかという意見があります。 今回法改正により、人名商標の出願件数がどれだけ伸びているのかということを何かの 方法でモニタリングするというのも、ビフォー&アフターを測る上では重要ないい手法で はないかという意見も出ております。 あと、私からもう一点、先ほどの説明にありました判断、審査のばらつき、冒認出願と いうところにも関わってくるんですが、まず、冒認商標がこれを機に出てくる可能性は十 分考えられるかと。そのときに一つ参考にしていただきたいのは、この数年間、中国では 飛躍的に商標の件数が伸びています。昨年は約950万件と、こんな数の審査ができるのか と疑問が出るくらいに非常に大きな数が出願されております。その中に大量の冒認出願が 含まれていると考えられています。 冒認出願の典型の1つとして、人の氏名を使った商標出願が非常に多いという傾向があ ります。その中でも、他人の氏名の名前の文字の順番を変えるとか、同音異義語を多分に 含ませるという形で出願をしていくケースは非常に多いです。例えば「マツモトキヨシ」 を「マツトモヨシキ」とか、そういうような感じで出願したり、例えば私の名前の「齊藤 浩二」の「齊」という字を違う類似文字に置き換えて出願するとか、そういうようなケー スなども結構出ていますので、審査をするときには、皆さん大変になるかと思いますが、 そういった中国の事例等を参考に審査基準等を検討していただければと思っております。 そのあたりは非常に我々としても懸念するところで、冒認商標が先に取られてしまうと - 18 - いう点も今回の懸念事項でも書いておりますが、先取りされてしまったときにそういった 名前が、文字を巧みに変えた、場合によってはパロディーで片づけてしまう場合もありま すけど、パロディーとはいえないようなケースなどもたくさん出てくるんではないかとい うことを懸念しております。そのあたりも手当てしていただければと思います。 以上です。 ○田村委員長 ありがとうございました。 ○根岸商標制度企画室長 御意見いただきましてありがとうございます。幾つか御意見頂 きまして、周知活動につきましては、このまま見直しの方向で検討が進みましたら、委員 のおっしゃるとおり氏名を登録するということではなくて、あくまでも商標として使用す る場合に登録していただくというようなこと、それから、自己の氏名がそれをもって使え なくなるということではないということ、そういうあたりをしっかりと周知してまいりた いと考えてございます。 それから、いじめ等のお話をいただきました。今も氏名を含む商標は商標法の中で登録 できないということで、実際に使われている可能性もございます。改正後は登録されると いうことですので、その使用の場面に当たっては影響が出てくるかもしれないですけれど も、実際に個別の精神的な被害とか、それによる損害とかが生じた場合は、民法等で争っ ていただくことは、今と同じように可能と考えてございます。御意見も踏まえまして、そ ういうような点も含めまして検討してまいりたいと思います。 冒認につきましても、4条1項8号だけではなくて、今回の法改正に影響を受けて、そ のような商標が増えるという可能性もございますので、ほかの規定、悪意の冒認出願等の 商標をどうやって拒絶していくか、審査していくか検討してまいりたいと考えてございま す。 ○田村委員長 ありがとうございました。よろしいでしょうか。 オンラインのほうから蘆立委員が御発言御希望ですので、蘆立委員、お願いいたします。 ○蘆立委員 ありがとうございます。私も、今回4条1項8号に関して改正が必要だとい う点に関しては同意をいたします。ただ、今までの問題点として指摘されている事案にお いては、2つの異なる内容が一緒に含まれているように思われまして、1つは、8号の氏 名を含むというところの解釈ですけれども、これは氏名が入っているとみる可能性があれ ば該当するというような厳格な解釈を取られている裁判例等が一部ありますけれども、そ もそも氏名に関する人格的な利益を保護するという趣旨から考えれば、氏名に該当するよ - 19 - うな文字が入っていても、それの商標全体を見たときに氏名を想起させるものなのかどう かというところを考慮して、氏名が含まれている商標に当たるかどうかという判断は、恐 らくは現行法でもできるのではないかと思われます。となると、資料にもあったように、 デザイン化された商標の中に一部氏名が含まれているようなものに関しては、8号の該当 性の簡易なところで処理できる可能性もあると個人的には思っています。 ただ、そうはいっても名前をアルファベットで、それだけ単体で書かれたり、片仮名で 書かれたものについては8号の該当性の問題が出てくるということなので、そこを改正す るということについては、異論はありません。 今回の提案の内容は、他人側の知名度を要求するという形で厳格化するということです けれども、先ほどのほかの委員の御発言にもあったように、出願人側の知名度等について は直接の考慮の対象には入れていないということになっていまして、恐らくこれは、これ からビジネスしていくという人が自己の名前を使いたいというときに、その信用の蓄積を 確保するところを重視したと理解していますので、そういった判断はあるかと思うんです けれども、出願人側の要件は一切ここで考慮しないということになると、検討事項の2の ほうで書かれている懸念される事項というのが非常に多数出てくる可能性があるのではな いかと思います。 特に、先取りだったり、全く自分とは関係がない名前を出願してくる可能性というのも あり得るわけですし、特に商標の場合は、濫用的に出願されるという危険性は一層高いと も思われるので、ここに挙げられた課題の解決策で十分に対応できるかどうかということ については、検討が必要なのではないかという気がします。特に使用の意思、3条1項の 柱書のところは、従来あまり実質的には機能してこなかったような要件であるようにも思 われるので、これでどのくらい問題点が回避できるかということについては、検討の必要 があるという感想を持っています。 以上です。 ○田村委員長 ありがとうございました。いかがでしょうか。 ○根岸商標制度企画室長 御意見いただきましてありがとうございます。御指摘いただき ました点につきましては、よく考慮して検討してまいりたいと思います。出願人側のとこ ろも、今回の改正に当たっての審査基準や運用を考えるときに参考にさせていただきたい と思いますし、先ほどの最後のスライドにございましたマツモトキヨシ音商標判決、基本 的には今回、まずは法改正を優先して集中的に検討するという方向性で資料をつくってご - 20 - ざいますけれども、8号の改正に当たっての審査基準を検討しますので、その際に、併せ てこの判決の捉え方もよく検討して審査基準をつくっていきたいと考えてございます。3 条1項柱書のところも含めて、ほかの10号、15号、19号等の拒絶理由等も含めまして、そ ういうような御懸念がないような形で検討していきたいと考えてございます。 ○田村委員長 ○蘆立委員 ○田村委員長 蘆立委員、いかがでしょう。 ありがとうございます。よろしくお願いいたします。 蘆立委員、確認ですけれども、今の方向性にはご賛成で、その他について は、現行法でも審査基準等での対応可能という御説明であると理解しました。よろしいで しょうか。 ○蘆立委員 他人側の知名度を要求する、そのレベルはいろいろあるかと思いますけど、 その部分については異論ありません。現段階では、ほかの条文で全て解決できるのかどう かというところについては、もう少し検討してみる必要があるという感じもしております。 ○田村委員長 その点、いかがでしょう。 ○根岸商標制度企画室長 ○田村委員長 ○島並委員 御意見を踏まえ検討させていただきます。 ありがとうございます。島並委員、よろしくお願いします。 神戸大学の島並でございます。機会を頂きましてありがとうございます。 憲法上、民法上の人格権の一つとしての氏名権の中核は、何といっても自己の人格と切 り離せないペルソナであり、その意味でかけがえのない氏名を、使用し続ける権利・利益 であると理解しております。 ところで、仮に自己の氏名について他人に登録商標を取られたとしても、自分自身での 氏名の使用が非商業的な使用である場合には商標権の効力は及びませんし、他方で商業的 使用であっても26条1項1号、2号がございますので、不正競争目的がなければ使用し続 けることは可能でございます。そうすると、自己の氏名について他人に登録商標を取られ ることで損なわれるのは、自己の氏名について商標登録を受けて、市場でビジネス上、独 占的に使用する利益に限られるのではないかと私自身は理解しております。これは、結局 は、財産的な利益に関わるものであり、そのような利益の保護は基本的には登録商標法制 の基本である先願主義によって処理されるべきであると考えております。 したがいまして、本来この4条1項8号の役割はかなり小さいのではないかと従来から 考えておりました。ただし、それを前提としましても、他人の著名な氏名の信用にフリー ライドするような登録を阻むことは、人格的な利益の保護というよりも、むしろ公正な市 - 21 - 場の在り方という観点からなお必要だと考えております。 そうしますと、他人の氏名であることを理由に登録を拒絶するのは、著名な他人の氏名 にフリーライドするような場面に限定してよいのではないかと私は考えておりますので、 今般の事務局からの御提案については、基本的には方向性は賛成したいし、むしろ登録拒 絶のハードルをもっと上げてもいいのではないかとも考えております。 また、蘆立委員からも御指摘がありましたとおり、不正なフリーライダーかどうかとい う判断をするに際しては、他人と出願人の氏名の認知度を比較衡量するというようなこと があっても、私自身もよいと考えております。 私からは以上です。 ○田村委員長 ありがとうございました。いかがでしょうか。 ○根岸商標制度企画室長 ありがとうございます。今、委員に御意見いただきましたハー ドルを高く上げてもいいというのは、著名性の程度を上げるというような理解でしょうか。 ○島並委員 おっしゃるとおりです。かなりの程度、著名なものに限定して考えるという 意味で、ハードルを上げると申し上げました。 ○根岸商標制度企画室長 御意見ありがとうございます。今回、整理させていただきます 4条1項8号の趣旨、氏名権侵害の蓋然性の高低を踏まえて、その侵害性が高いものを拒 絶するというようなところも鑑みまして、そういうような審査運用とはどういうものなの か、検討してまいりたいと考えてございます。 ○田村委員長 ○高崎委員 高崎委員、よろしくお願いいたします。 中小企業の立場として、中小スタートアップの主にファッションに携わる 方々が自身の名前を商標登録できるということは、経営者として、あるいは企業家として モチベーションアップにつながるのではないかということで、方向性としては非常にいい 方向ではないかと思っております。 また、商標ということは、先ほど冒頭のお話にもありましたように、中小企業が6割ぐ らいを占めて増えているということで、中小企業の知財活用全般についてもいい方向性に 行くのではないかと思います。 一方、1つこういう懸念がないかと思っているのが、出願人側の商標登録を受ける権利 を保護するというふうなバランスを取った形になると思いますが、逆にそれが拡大解釈さ れて、自分の名前の商標登録を受ける権利があるというように思われてしまうと、例えば 私、高崎充弘(ミツヒロ)という名前で仮に商標登録が認められた場合、高崎充彦(ミツ - 22 - ヒコ)というようにヒロとヒコと、ヒコという人が、「いや、私もこれ自分の名前だから」 と言って同じサービス分野で出願した場合、それは拒絶理由になったりしますよね。そう いった場合、自分の同じ名前なのに、氏名なのに、高崎充弘(ミツヒロ)は登録されて、 高崎充彦(ミツヒコ)はちょっと違うというだけで登録されないのはおかしいというよう な議論が出ないかと若干心配はしております。 以上です。 ○田村委員長 いかがでしょうか。 ○根岸商標制度企画室長 あくまで商標として使用していただくものを登録していただい て、実際に登録した商標は事業で使っていただくということも含めて、よく周知してまい りたいと思います。 御質問に対するお答えになっていますでしょうか、もし違っていたら御指摘ください。 ○高崎委員 ○田村委員長 ○井関委員 ありがとうございます。 井関委員、お願いいたします。 発言の機会を与えていただきまして、ありがとうございます。この問題につ いては、私は御提案に基本的に賛成しておりますので、発言するつもりじゃなかったんで すけれども、今の島並先生の御発言を伺いまして、一言だけ発言したいと思いました。 基本的に、自己の氏名について他人に登録商標を取られることで損なわれるのは、自己 の氏名について商標登録を受けて、市場でビジネス上、独占的に使用する利益に限られ、 8号は、もともと役割として狭いものだという島並先生の御発言を伺いましたけれども、 私は、少し違うように思っております。一番最初に憲法の大日方先生がおっしゃいました ように、氏名にまつわる感情侵害の防止というところが、氏名権という人格権として重要 だと思っておりますので、そのように極限したものでは必ずしもないと思っております。 ただ本日の御提案につきましては、氏名権侵害みたいな場面がありましたら民法上の措置 も取れるということでしたので、基本的に問題ないと思っております。あと、他の御提案 としましては、蘆立先生がおっしゃった使う側の知名度とか、そういうことも考える必要 があるのではないかという御意見には、なるほどと思いました。 以上です。○田村委員長 ありがとうございました。今の点に関してございますでしょ うか。よろしいですか。 ○根岸商標制度企画室長 ○田村委員長 ありがとうございます。 ほか、いかがでしょうか。 - 23 - 石井委員、お願いします。 ○石井委員 石井です。発言の機会をいただきまして、ありがとうございます。私もご提 案に賛成致します。そして、先ほど井関先生がおっしゃったように、4条1項8号は、自 分が使用し続けるだけではなくて、自身と結びつけて考えられる、想起されること自体に 関する人格的利益の保護の規定と理解しております。そうすると、米村先生が、パブリシ ティ権と同等な場合にだけに限ると氏名権の保護として狭いのではないかとおっしゃって いた点と関係すると思いますが、一定の知名度とはどの程度かという問題や、齊藤委員が おっしゃったような地域的範囲をどうするかのほかにも、根岸室長がおっしゃっていた知 名度を判断する場合の対象(資料10ぺージ)について、指定商品・役務を中心としてある 程度幅を持った需要者を対象とすることも重要と思われます。例えば自由学園の判決です と、(「学校法人自由学園」の略称である「自由学園)について)コアな需要者ともいえる 学生よりも、教育関係者を始めとする知識人に知られていたので、本人を指し示すものと して一般に受け入れられているか否かの判断において広げており、一般人を基準にしたと きに、どこまで広く幅を持たせるかというところが問題となると思われます。この点は今 後、審査・運用の問題になると思いますが、ここがもしかしたら判断のばらつきにも関係 してくるかと思いました。 それから、蘆立先生がデザイン化された商標の中に一部氏名が含まれている場合につい て言及されていましたが、私は「氏名を含む」の文言を限定解釈、縮小解釈するというか、 この中でも読み取れるのではないかというお話と理解し、私も賛同致します。その上で、 反対に「他人を含む」をもう少し広げて解釈すれば、齊藤委員がご指摘されていた、名前 の順番を変えて出願される場合については、「他人を含む」を「他人を想起させる」とい う意味で、全く同じでなくても想起されれば含むとして解釈で対応できるような気も致し ました。 他には先物買い等についてですが、3条1項柱書等でどこまで対応できるかの問題に関 連して、先物買いの中でも出願時は知名度がそれほど高くないときにどうするかという懸 念が出ておりました。経済的利益を保護する4条1項のほかの号の問題としても先物買い があると思うんですけれども、これらと同じ基準でいいのか、仮に第三者の人格的利益の 問題も経済的利益の問題も同じと考えれば、基本的には今まで使っていた他の号のもので 対応・発展させればよいと思いますが、人格的利益ならではの問題があるという話になっ た場合には、プラスアルファの手当てが必要になるのだろうと思いました。その場合、運 - 24 - 用の問題なのか文言の問題なのかは別として、周知性のレベルを下げて、一定の知名度が あって先物買いされそうなものは含むようにするのを周知の中に読み取るかどうかとか、 そういう問題も出てくるかもしれません。 あとは、4条1項7号が今後どこまで適用されるかというところが難しい問題かと思い ました。 以上です。 ○田村委員長 ありがとうございます。多岐にわたる御指摘がございましたけれども、い かがですか。 ○根岸商標制度企画室長 御意見ありがとうございます。需要者の範囲につきましては、 審査基準等をワーキングで検討いただくことを考えてございますけれども、基本的な考え 方は、資料に記載のとおり、指定商品・役務の需要者に限らず、その分野の中でどのよう な知名度があるか、その中で知名度の高低というところを、できるだけ審査のばらつきが 生じないような、ある程度均一的に審査できるような形を検討していければと考えてござ います。 また、単に文字だけではなくて、それがデザイン化されていたり、ほかの商標なり文字 と結合した場合は、現行運用においても8号をかけない場合もあり得るのではないかとの 御指摘については、今の審査基準でも、商標構成中に組み込まれてしまって、氏名の部分 を切り取ってそこだけを認識するというのが明らかに不自然な場合というのは、その文字 列が含まれていても8号をかけないということはございます。ただ、氏名の部分が切り取 られて見られてしまうような商標の態様ですと、これまでの裁判例等も踏まえて判断して いくと、どうしても氏名が含まれているという審査判断になるということでございまして、 今回、このような法律改正、制度の見直しというものを進めさせていただければと考えて おります。 事後的な知名度のところにつきましては、民法においても争えるということでございま すのと、周知性のレベルをどの程度下げるか、7号でどこまで適用できるかということも 今後の審査基準等で検討していければと考えてございます。 名前の一部や文字列が違った場合などは、本人を認識させるような状態になっているの であれば、略称のような形での拒絶理由ということもございます。 ○田村委員長 ○國分委員 ありがとうございました。國分委員、お願いします。 東京地裁の國分でございます。私のほうからは、裁判所の見解というよりは - 25 - 一裁判官としての見解を述べさせていただきます。「他人」に一定の知名度を要するとい うような要件が課されるということで改正がされた場合、具体的には、周知または著名と いうような要件が課された場合には、裁判官がそれを判断していかないといけないことに なると思うんですけれども、その判断をするに当たっては、なぜその要件が課されている のかという趣旨を判決等で示していくということになると思われます。今回資料でいただ いている13ページの参考の整理を見たときに、先ほど、まさに米村先生がおっしゃってい たように、一定の知名度を要件とする場合には、対立する利益がパブリシティー権とか商 業的なものであって、それとの調整で要件が課されているというふうに考えてしまうとこ ろがあります。これまでも各委員の先生方からお話があったように、知名度を要求するこ とで、それら以外のアイデンティティー等の人格的な利益との衝突を回避できるのかどう かというところは少し疑問があります。そうなってくると、この要件が課された場合の解 釈としては、対立利益として想定されているものが経済的なもの、すなわちパブリシティ ー権等になってくるし、判断基準としては、そのような利益に関する需要者とか消費者を 基準とした知名度といった枠組みで考えていくということになってくるのかと思いました。 他方で、それ以外の問題は民法上のところで対処するというような振り分けが頭の中に 浮かぶんですけれども、そうなってくると、「他人」の要件の限定はそういうタイプの利 益との対立を考えているんだというところを明確に制度趣旨として打ち出してもらわない と、解釈が揺れるんじゃないかと考えました。 ○田村委員長 いかがでしょうか。 ○根岸商標制度企画室長 ありがとうございます。委員の御意見いただいたところと事務 局側で考えているところは、多分内容としては同じ方向だと考えてございます。細かいと ころとかはまた整理していきたいと考えてございますけれども、登録の場面では今回のよ うな要件を課させていただき、使用の場面では、アイデンティティーのようなところにつ いて、引き続き何か侵害があれば民法等で争っていただくことを想定してございます。御 指摘も踏まえて整理していきたいと考えます。 ○田村委員長 ありがとうございます。ほか、いかがでしょうか。 大向委員、お願いいたします。 ○大向委員 大向です。お時間頂きまして、ありがとうございます。 オブザーバーの憲法、民法の先生方からの分析等を拝聴しまして、本件に関してより理 解を進められたように思います。今回の改正の方向性に関しましては、今日御説明いただ - 26 - いた方向性に私個人としては基本的には賛成でおりまして、少しだけ実務的な観点で感想 を含めて付け加えさせていただけたらと思います。 まず、他人側の知名度をどこまで要するかという点に関しましては、今回、周知性とい うことで御提案をいただいていると理解しております。これに関しては、いろいろなバラ ンスの中で、著名という要件よりは周知性というレベルで他人側の人格権についても配慮 されているという理解をしております。この周知性というところに関しては、資料で一覧 表を作成いただいておりまして、一つは4条1項10号の周知と並び立てられるのかなと思 うんですけれども、先ほどの、ほかの委員の先生方の中でも、他人側の知名度については、 ハードルは高めに考えてもいいのではないかという御発言もあった中では、4条1項10号 と同じぐらいだと仮にすると、それなりに高い(ハードルになっているように)と、実務 に関わっている人間としては感じたところです。もちろん需要者との関係で広く認識され ている、ということが前提であって、需要者の範囲も重要になると理解をしました。 他方で、付け加えというか、1点申し上げられればと思いますのが、冒認とか先取りの 懸念の御発言があった中で、出願人の要件をどういうふうに考えていくかというのがやは り課題かと感じます。出願人の周知性というか知名度については問わないというのが基本 だと。それは、これまで大変課題であったデザイナーさんやいろいろな皆さんの名称、氏 名に基づくブランド構築、ブランディングに関して課題があったところとの関係では、有 名になってから出願という要件になっては意味がないので、出願人の要件として知名度は 問わないというのが基本だと理解しており賛成です。 他方で、御指摘途中にありました3条1項柱書なり使用の意思ですとか、そういったと ころについて、日本は使用主義ではなくあくまで先願主義というところでありますけれど も、正当に使用していくという実態に関して何らか考慮がされるようなことがあれば、よ りバランスが取れる可能性はあると感じた次第です。 特にこの点に関しては、先に商標が取られても後で使用する人は例えば商標法26条があ るから大丈夫という点に関しては、弁護士としては少し慎重に思う面があります。過去の 裁判例、昭和57年とちょっと古い一つの例ですけれども、東京地裁の昭和57年6月16日の 山形屋事件というのが、26条を検討するときにハードル高いなと思う事案です。山形屋さ んの会社の商号に基づく名称の話ではあるんですけれども、条文上、「普通に用いられる 方法で表示する商標」という要件があって、字体を崩して商品のパッケージの正面にそう いった名称を記載していたものに関して、仮処分の事件ですが、債務者側が自己の氏名・ - 27 - 名称に関する26条1項1号の「普通に用いられる方法で表示する商標」として認められな かったという事案があります。 当該裁判例の事案は商号に由来する名称の話で、著名な略称なのか、など他の要件を含 めて争点はあるのであるので、今回の他人の氏名についての保護を行った場合と事案とし ては異なりますが、26条があれば自己の氏名は使えるので大丈夫という場合について、裁 判例上26条の要件に照らして否定される場面もあることは、やはり権利の登録が基本とい うことであると考えます。制度上、登録がない場合にも26条による使用は可能であるとい うことは重要な点ですけれども、登録の場面での冒認とか先取り合戦とかそういった場合 には、取られてしまった場合の対応、使用態様の検討等大変になってしまうことはいろい ろな商標実務の中でありますので、本件についても、商標登録制度として、出願の取扱い、 審査の基準というところは重要になってくるかと思います。 以上です。 ○田村委員長 ありがとうございます。 ○根岸商標制度企画室長 ありがとうございます。御指摘のとおり、商標の登録の場面で も、8号だけではなくてほかの条文とのパッケージで、拒絶すべきものについては拒絶で きるように考えていきたいと思いますし、登録された後の26条もございますけれども、そ れ以外にも、必要に応じて改正法に当たっての継続的に使用できる権利というような点も、 今後の検討の中に入れていきたいと考えてございます。登録時と登録された後のことにつ いて全体的に検討していきたいと思います。 ○田村委員長 ありがとうございます。 オブザーバーの米村様から御発言御希望がありますので、よろしくお願いいたします。 ○米村オブザーバー 米村でございます。あまり時間がないかと思いますので、手短にお 話しさせていただきます。 先ほど来何人かの委員の先生方に私のコメントに御言及いただきまして、特に國分委員 から重要な問題提起があったかと思いますので、その点に関連して、私のコメントで補足 を含めてお話しさせていただきます。 私の本日のコメントは、基本的に従前の、現行法の商標法4条1項も、また今回提案さ れている改正方針も、いずれも人格権としての氏名権を保護するという趣旨の制度を商標 法の中に設けるということを前提にした場合にどうなるのかということを申し上げたつも りでございます。ただ、その制度の在り方自体がそもそも所与の前提ではないということ - 28 - であるならば、話は変わってくるところがあるかと思います。 島並委員からも御指摘があったとおり、現行法ももしかするとそうではないかもしれま せんし、あるいは改正の方針として、従来はもしかすると人格権としての氏名権を保護し ていたかもしれないが、今後はあくまでパブリシティー権を中心とする経済的な利益のみ を保護する制度として運用していく方向に転換するということは十分あり得るところであ りまして、そういう方向性を取るかどうかは、商標法の先生方の御判断、先生方というか 特許庁含め商標法の立法政策に関する判断かと思っております。 ただ、人格権としての氏名権を保護するというように、引き続き保護するというように 考えた場合には、要件の設定の仕方はもう少し工夫する必要があるかもしれないというこ とを申し上げたところであります。あくまで民法上の人格権としての氏名権の保護は民法 に全て委ねるのであって、商標法はそこには立ち入らないということは、考え方としては あり得るということを一言申し上げておきたいと思います。 失礼いたしました。 ○田村委員長 大変貴重な御意見をありがとうございました。宮川委員、お願いします。 ○宮川委員 手短にさせていただきます。先ほど根岸さんから、他人の氏名に求める一定 の知名度のレベルというのは審査基準できちんと定めることになるという御説明をいただ いておりますけれども、資料も拝見しますと「一定の知名度」という言葉がよく使われて いるんですが、私の理解では、法文上規定されている「周知」あるいは「著名」という言 葉、「一定の知名度」という言葉ではなく、何か商標法に規定された言葉が使われて、そ の言葉の解釈について審査基準が決まるという、そういう理解でおりますけど、よろしい でしょうか。 ○根岸商標制度企画室長 ○宮川委員 ○田村委員長 委員の御理解のとおりでございます。 ありがとうございます。 ありがとうございました。ほか、委員の方、オブザーバーの方、御意見ご ざいますでしょうか。 では、大分議論も出尽くしたところだと思います。大変貴重な御意見を多数いただきま した。その中には、これから仮にこの改正があった場合に、審査基準を策定するに当たっ て非常に重要な御示唆が多々含まれていました。そういったものは、審査基準の検討の際 に受け止めようと思います。 他方、今回明らかになったこととしては、特許庁の原案である、一定の知名度の要件を - 29 - 課す案にコンセンサスが得られました。これは、改正する方向で考えたく思います。知名 度の程度については、審査基準で明らかにするということになりましたので、基準改訂の 議論の際に対応します。 ただ、今日いろいろと意見がございましたのが、出願人側に何がしか一定の知名度など 保護すべき利益があったほうがよいのか、そのほか、御自身がその人名とどの程度関わっ ているか等についてです。それに関する特許庁さんの原案は、3条1項柱書で処理する、 あるいは非常に悪意のある出願についてはほかの条文で処理することでした。これも一つ の方策だと思いますけれども、少し御意見が分かれておりました。 そこで、一旦引き取りまして、特許庁さんの原案どおりに4条1項8号以外の条文ある いは審査基準で対応できるのか、それとも、4条1項8号の中にその要素を考慮できるよ うな文言を入れるのか、検討させていただきます。そのうえで、次回以降か次々回に、ま たご相談させていただこうと思います。その間、またいろいろと御意見等の御協力をいた だければと思います。よろしいでしょうか。 それでは、大変ありがとうございました。 ④ ○田村委員長 コンセント制度の導入について それでは、続きまして、次の議題といたしましてコンセント制度の導入に ついて、資料4を基に事務局から御説明いただき、その後、質疑に移りたく思います。事 務局から御説明をよろしくお願いいたします。 ○根岸商標制度企画室長 それでは、コンセント制度の導入につきまして、資料4に基づ いて御説明させていただきます。 本日の委員会では、事務局よりコンセント制度に関する検討を再開することの御提案及 び対応の方向性について御提案させていただきます。 それでは、2ページを御覧ください。コンセント制度についても、特許庁政策推進懇談 会において御議論いただいております。同懇談会では対応の方向性として、コンセント制 度導入について更なる検討を行うべきである、当事者間の同意があってもなお出所混同の おそれがある場合には、審査官の判断で拒絶する留保型のコンセントを検討すべきではな いか。コンセントによる併存登録後に登録を取り消し得るような事後的な手当て等、具体 的内容について検討を深める必要がある、このように御示唆いただいております。このよ - 30 - うな議論も確認いただきつつ、改めて本小委員会においてコンセント制度について御審議 いただきたいという御提案になります。 3ページを御覧ください。コンセント制度の検討に関する背景でございます。商標法4 条1項11号の規定により、先願に係る他人の登録商標との関係で、商標及び指定商品・役 務が同一または類似する後続の出願については、商標登録を受けることはできません。審 査官からこの4条1項11号に基づく拒絶理由が通知された場合、一般に出願人が取ってい る対応は次のとおりです。1つ目として、拒絶理由に引用された先願に係る他人の登録商 標、これを引用商標といいますが、これと抵触する指定商品・役務の削除。2つ目として、 意見書を提出して、両商標が非類似である旨の主張。3つ目として、引用商標の権利者、 引用商標権者といいますけれども、同者との譲渡交渉やアサインバック。4つ目として、 引用商標に対する不使用取消審判等。このうち指定商品・役務の削除による拒絶理由の解 消ができない場合、他の対応では書面の作成や権利の移転等に一定の金銭的・時間的コス トがかかります。特に引用商標権者が出願人との関係で両商標の併存登録を許容するよう な場合には、アサインバックが利用されている実情がございます。 アサインバックというのは、出願人と引用商標権者の名義を一時的に一致させて、4条 1項11号に基づく拒絶理由を解消する手法です。例えば出願人の名義を一時的に引用商標 権者の名義に変更することで引用商標権者と出願人の名義を一致させて、4条1項11号に 基づく拒絶理由を解消し、登録を得た後で引用商標権者から元の出願人に再度名義変更を 行うような手法が該当いたします。 このような状況におきまして、ユーザーからは、より簡便、低廉な選択肢になり得ると して、引用商標権者の同意による4条1項11号の適用除外制度、いわゆるコンセント制度 の導入を求められているところです。 4ページを御覧ください。これまでもコンセント制度導入に関する議論が行われてまい りましたが、同一・類似商標が併存登録されることによる出所混同のおそれなどの理由か ら、現行制度の下で運用面による対応を行ってまいりました。直近の検討の結果、コンセ ント制度に類する仕組みとして、商標審査基準に、1として、商品・役務の類似判断にお ける取引の実情の考慮や、2として、出願人と引用商標権者の支配関係の考慮に関する規 定が導入され、平成29年(2017年)4月から運用が開始されています。 その運用が開始された年の8月に開催された第3回の本小委員会では、その審査基準で 導入された2つの取扱いの利用状況を見た上で、改めて我が国におけるコンセント制度の - 31 - 導入の必要性、導入方法等について検討を進めていくことが望ましいとされました。 5ページを御覧ください。当該審査基準の2つの取扱いについて、運用開始から現在ま で約5年間の利用状況についてです。まず1つ目の取扱いですが、商品・役務の類似判断 における取引の実情が考慮されて、4条1項11号非該当と判断された出願は1件となって おります。ユーザーからは、本取扱いでは、どの程度の商品同士であれば非類似と判断さ れるか分からないなどといった御意見をいただいております。次に、2つ目の取扱いです が、出願人と引用商標権者との支配関係が考慮されて、4条1項11号非該当と判断した出 願は約500件ほどございました。この支配関係を考慮する取扱いは、ユーザーの皆様に相 当程度利用いただいているというのが事務局の評価でございます。 他方で、資本関係を有しないグループ会社の場合や、資本関係の立証が難しい場合など は利用できないため、ユーザーからは認められる要件の拡充を求める御意見をいただいて おります。 次の6ページ目は、その商標審査基準の当該規定の抜粋になりますので、1つ飛ばしま して7ページを御覧ください。 前述のとおり、平成29年4月から運用を開始した取扱いの利用状況や、コンセント制度 が本小委員会での継続的な課題であることなども踏まえまして、昨年の7月以降、改めて ユーザー企業・団体や有識者へのヒアリングを実施いたしました。主な意見は記載のとお りですが、導入に積極的な御意見が多かった一方で、消極的な御意見も頂きました。消極 的な理由としては、類似商標が併存すると商標調査が煩雑になるというような御意見や、 明らかに類似の商標をいきなりコンセント制度で併存させるのは利用者に混乱を来すとい うものでございました。 8ページを御覧ください。以上の状況を踏まえますと、制度導入のニーズにつきまして は、おおむね次のように整理できるのではないかと存じます。日本でコンセント制度が利 用できないことは、特に海外ユーザーにとって日本での商標登録の障壁となっている。ア サインバックには権利の一時的な移転に伴うリスクがあり、交渉手続、費用の負担も大き いため、より簡便・低廉なコンセント制度の導入が求められている。平成29年4月から運 用が開始された審査基準の取扱いは、ユーザーにとって利用しにくい場面がある。このよ うなニーズを踏まえた対応の方向性について、事務局より次のような御提案をさせていた だきます。 近年のユーザーニーズの高まり、国際的な制度調和の観点から、我が国においても何ら - 32 - かの措置を講じる方向で改めて検討すべきではないか。法改正による制度導入を検討する 場合には、ユーザーからの消極的な意見にも十分留意しつつ、法目的の一つである需要者 の利益の保護、本規定における類似と出所混同のおそれの関係性の整理等について検討す るとともに、法改正に当たり手当てすべき事項についても検討すべきではないか。あわせ て現行の審査基準における取扱いを見直す余地があるかどうかも検討すべきではないか。 9ページを御覧ください。以上のとおり、本日の委員会では、事務局よりコンセント制 度に関する検討を再開することの御提案及び対応の方向性を御提案させていただきます。 本日、委員の皆様から検討再開の御了承を得られましたら、対応の方向性の是非を含め て次回の商標制度小委員会で詳細を御審議いただければと存じます。 次ページ以降は、コンセント制度の類型と各国のコンセント制度についての参考資料で すので、説明は割愛させていただきます。 本資料についての御説明は以上になります。 ○田村委員長 ありがとうございました。それでは、ただいまの事務局からの御説明に関 して、自由討議を行いたいと思います。 なお、本議題については、時間の都合上、委員の皆様から御意見をいただくのみとし、 回答が必要な御意見については、次回の委員会で事務局からお答えいただくことにいたし ます。 それでは、御発言御希望の方はよろしくお願いいたします。 井関委員、お願いいたします。 ○井関委員 同志社大学の井関でございます。手短に申し上げますと、私は、このコンセ ント制度には反対の意見を持っております。ユーザーの御意見が賛成というふうに出てい ましたけれども、多分御意見を聴取された方々というのは皆さん商標権者で、もともと推 進したいと思っている方々かなと思います。 それで、類似の商標が併存している、それが支配関係にあるならいいわけですけど、全 く無関係に併存するということで需要者がどう考えるかというのが非常に重要な点かと思 っております。ユーザーの意見に需要者の意見は反映されていないように思いますから、 これは私としては賛成できないと考えております。 以上です。 ○田村委員長 大変貴重な御発言をありがとうございました。ほかの方、いかがでしょう か。 - 33 - 橋本委員、お願いいたします。 ○橋本委員 橋本です。日本弁理士会としては、導入には以前からずっと賛成の立場でお ります。グローバルな観点などを考えますと、やはりコンセント制度は大変必要ではない かと思うんですけれども、ただ留保型とか完全型とかいったときに、留保型とか完全型と いっても、定義づけによって非常に似通ってきたりとか、どういうことなのか分からなく なるので、そこを明確にした上で議論させていただければと思っております。 以上です。 ○田村委員長 ありがとうございました。ほか、いかがでしょうか。 齊藤委員、お願いいたします。 ○齊藤委員 それでは、また知財協のユーザー視点のコメントをさせていただきます。今 回、ほかの課題、当面の課題というところでも話がありましたけれども、グローバル化と いうところに乗るためにも、コンセント制度というものは前向きに受け入れるべきではな いかというのが、我々ユーザー側の意見となっております。 その中で、このコンセントを締結しているということについて、何らかの形でユーザー 側から検索できるような、いわゆるJ-PlatPat等の中を検索することで何らか分かるよう にしていただければ、先ほど御指摘のあった商標の併存というものについての課題が少し でも緩和できるのではないかというところを、もちろんユーザー側からもそのあたりがす ぐ分かるというのは非常に便利なものではないかと考えております。ぜひ検討いただけれ ばと思っております。 ○田村委員長 ありがとうございました。ほかは、いかがでしょうか。 宮川委員、お願いいたします。 ○宮川委員 改めてですけれども、日弁連としては、このコンセント制度についても議論 を再開することには賛成しております。ただ、これまで何回も議論されてきて、結局結論 をみなかったという、その経緯において問題とされたことが今回どのように解消されてい るのかという点を更に検討したいと考えております。 ○田村委員長 ありがとうございました。ほか、いかがでしょうか。──よろしいでしょ うか。どうもありがとうございます。 賛否含めて様々な御意見いただきまして、大変ありがとうございます。 本日頂いた御意見を踏まえて、事務局にて次回に向けた準備を進めるようにお願いいた します。 - 34 - コンセント制度の導入につきましては、導入の是非を含めて次回改めて御審議いただけ ればと思います。ありがとうございました。 ⑤ Madrid e-Filingにより商標の国際登録出願する際の 本国官庁手数料の納付方法の変更について ○田村委員長 次に、e-Filingにより商標の国際登録を出願する際の本国官庁手数料の納 付方法の変更について、資料5を基に事務局から御説明いただき、その後、質疑に移りた いと思います。事務局から御説明をよろしくお願いいたします。 ○鈴木国際意匠・商標出願室長 国際意匠・商標出願室長の鈴木でございます。よろしく お願いいたします。 それでは、資料5を御覧いただければと思います。Madrid e-Filingにより国際登録出 願をする際の本国官庁手数料納付方法の変更でございます。 スライド1を御覧いただければと思います。現行制度の概要でございますけれども、マ ドリッド協定議定書に基づく商標の国際登録出願、いわゆるマドプロ出願ですけれども、 これは自己の商標出願または登録を基礎として、WIPOにおいて商標の国際登録をする ことにより、出願人が指定した複数の指定国に商標出願がされた場合と同一の効果を得る ことを可能とする制度でございます。 本国官庁としての日本の特許庁に国際登録出願する場合には、出願時に納付すべき手数 料の納付先は、特許庁とWIPOとに分かれております。WIPOに対し納付すべき手数 料のうち、WIPOのための手数料であります基本手数料以外の手数料は、WIPOから 各指定国に送金されるという仕組みになってございます。 下の表を御覧いただきたいのですけれども、特許庁に納付すべき手数料は、基礎出願と 同一であるかを確認し認証するための本国官庁手数料でありますので、特許印紙等により 特許庁に対し納付いただくものであります。一方、WIPOに対し納付すべき手数料は、 WIPOが方式審査等を行うための手数料と、各指定国における審査料をスイスフランに てWIPO予納口座からの引き落としや銀行送金により納付するものに分かれております。 次のスライドを御覧ください。問題の所在でございますが、令和4年6月1日から、書 面の出願に加えまして、WIPOが提供するMadrid e-Filingと呼ばれる電子出願ツール - 35 - を利用した電子出願の受付を開始しております。e-Filingは、本国官庁手数料とWIPO に納付すべき手数料を一括してWIPOへ納付する機能を備えていますが、現行法におい て本国官庁手数料は特許庁長官に納付すべき手数料と規定されていることにより、出願人 は、WIPOへの納付手続に加え、特許印紙を貼付した書面等を用いて別途特許庁に本国 官庁手数料を納付しなければならず、オンラインの利便性を十分に享受できていないとい う状況でございます。 スライド3を御覧いただけますでしょうか。対応の方向性でございますが、本国官庁手 数料につきましても、他の手数料と一括で、スイスフランによるWIPOへの支払いを可 能とするために、国際登録出願をe-Filingで行う場合に限って、本国官庁手数料をWIP Oに納付するという改正を行いたいというものでございます。 なお、WIPOが徴収した本国官庁手数料は、後日、WIPOから送金を受けるという 形にする予定でございます。 御説明は以上となります。 ○田村委員長 ありがとうございました。それでは、ただいまの事務局からの御説明に関 して、自由討議を行いたく思います。御発言御希望の方は、挙手またはチャット欄への書 き込みをお願いいたします。 もしなければ、あるいは賛成ということで承ってよろしいでしょうか。 それでは、賛成していただいたということで、改正するということにいたしたく思いま す。どうもありがとうございました。 以上をもちまして本日の議論を終了いたします。 最後に、今後のスケジュールについて事務局から御説明をお願いいたします。 ○松本制度審議室長 御審議いただきましてありがとうございました。次回以降の具体的 な開催日程等につきましては、委員長と御相談の上、追って皆様に御連絡差し上げます。 ○田村委員長 ありがとうございました。 それでは、以上をもちまして産業構造審議会知的財産分科会第9回商標制度小委員会を 閉会いたします。本日は、長時間の御審議をありがとうございました。 閉 会 - 36 -

資料1

産業構造審議会知的財産分科会 第9回商標制度小委員会 議事次第・配布資料一覧 日 時:令和4年9月29日(木)10時00分開会 会 場:特許庁庁舎16階特別会議室+Teams会議室 (議事次第) 1.開会 2.商標審査の現状について 3.当面の検討課題について 4.他人の氏名を含む商標の登録要件緩和について 5.コンセント制度の導入について 6.Madrid e-Filingにより商標の国際登録出願する際の本国官庁手数料の納付方法の変更 について 7.閉会 (配布資料) 議事次第・配布資料一覧 委員名簿 資料1 商標審査の現状 資料2 当面の検討課題 資料3 他人の氏名を含む商標の登録要件緩和 参考資料1 「他人の氏名等を含む商標に関する調査研究」報告書要約版 資料4 コンセント制度の導入 資料5 Madrid e-Filingにより商標の国際登録出願する際の本国官庁手数料の納付方法の 変更

資料2

令和4年9月29日 第9回商標制度小委員会 産業構造審議会 知的財産分科会 商標制度小委員会 委員名簿 蘆立 順美 東北大学大学院法学研究科 教授 石井 美緒 日本大学商学部 井関 涼子 同志社大学法学部 大向 尚子 西村あさひ法律事務所 國分 隆文 東京地方裁判所(知的財産権部) 齊藤 浩二 日本知的財産協会 准教授・弁護士 教授 パートナー弁護士 部総括判事 常務理事・商標委員会担当 株式会社アシックス法務・知財統括部 委員長 島並 良 神戸大学大学院法学研究科 教授 高崎 充弘 株式会社エンジニア 田村 善之 東京大学大学院法学政治学研究科 橋本 千賀子 日本弁理士会 代表取締役社長 執行理事 弁理士法人酒井国際特許事務所 宮川 美津子 教授 商標部 部長・弁理士 日本弁護士連合会知的財産センター意匠・商標・不競法 PT TMI 総合法律事務所 座長 パートナー弁護士 (敬称略、五十音順)

資料3

資料1 商標審査の現状 産業構造審議会知的財産分科会 第9回商標制度小委員会 令和4年9月29日 商標出願件数の推移 ➢ 出願件数は増加傾向にあり、2021年の出願件数は、約18万5千件。 国内は約16万5千件、 国際商標登録出願は約2万件。 (件) 200,000 商標登録出願(国際商標登録出願以外) 190,939 国際商標登録出願 17,328 161,859 147,283 150,000 124,442 184,483 17,802 190,773 181,072 19,450 17,924 184,631 20,094 13,835 15,984 12,672 100,000 173,611 166,681 171,323 2018 2019 163,148 164,537 2020 2021 148,024 131,299 50,000 111,770 0 2014 2015 2016 2017 出典:特許行政年次報告書2022年版 (年) 1 産業分野別出願区分数の推移 ➢ 産業分野別では、全体的に出願増の傾向だが、2021年は食品、機械、雑貨繊維、役 務分野で出願が増加した一方、化学分野で出願が減少した。 (区分) 一般役務(41~45類) 雑貨繊維(14~18,20~28,34類) 70,000 68,496 65,978 産業役務(35~40類) 機械(6~13類,19類) 60,000 50,000 化学(1~5類) 58,903 食品(29~33類) 50,748 40,000 33,786 30,000 32,957 20,000 10,000 0 2011 2012 2013 2014 ※2022年8月1日時点特許庁調べ ※一部の料金未納により出願却下された出願を除く ※国際商標登録出願を除く 2015 2016 2017 2018 2019 2020 2021 (年) 2 近年の出願件数増加の要因 ➢ 個人・中小企業による出願が堅調に推移 ➡ 2021年は、2015年から約1.2倍に増加(国内出願の約6割) 中小企業 商標の出願件数の推移 (件) 個人 中小・個人以外 69% 69% 240,000 67% 国際商標登録出願 国内出願における個人・中小の割合 67% 66% 200,000 65% 190,939 161,859 160,000 147,283 13,835 15,984 45,959 40,000 54,160 17,802 54,499 19,450 53,125 64% 181,072 184,631 17,924 20,094 54,706 59,940 25,435 25,459 83,007 79,138 2020 2021 48,340 120,000 80,000 17,328 184,483 190,773 25,446 23,024 23,666 20,777 21,099 64,241 78,907 94,005 89,158 94,532 2017 2018 2019 0 2015 2016 (年) ※特許行政年次報告書2022年版を基に特許庁作成 3 5大特許庁における出願件数の比較 ➢ 世界的にも出願増の傾向。特に中国の出願増が顕著。 日米欧中韓における商標出願件数の推移 (件:CNIPA(中国)以外) 700,000 600,000 (区分:CNIPA(中国)) JPO(日本) USPTO(米国) KIPO(韓国) EUIPO(欧州) 9,000,000 8,000,000 CNIPA(中国) 7,000,000 500,000 6,000,000 400,000 5,000,000 300,000 4,000,000 3,000,000 200,000 2,000,000 100,000 1,000,000 0 0 2011 2012 2013 2014 2015 2016 2017 2018 2019 2020 出典: 日本・・・特許行政年次報告書2022年版 中国・・・中国商標戦略年度発展報告(~2017年)及びTM5におけるReport for Common Statistical Indicators(2018年~)を基に特許庁作成 その他・・・WIPO統計 ※中国は件数での公表を行っていないため、数値は区分数(右軸)。 4 商標審査における処理件数の推移(FA) ➢ 審査期間の短縮に向けて、審査官増員及び審査効率化等の施策を講じ、2021年は 前年比約1.2倍の処理を達成。 ➢ 日本では、効率的な審査体制の構築に努めており、主要国との比較でも、1人当た りの審査区分数は多い(2020年)。 (件数) 商標審査におけるFA処理件数の推移 220,000 213,224 200,000 172,931 180,000 140,000 168 161 160,000 137,463 126,407 180 170 160 134,834 150 ※TM5におけるReport for Common Statistical Indicatorsを元に特許庁作成 ※2020年 ※区分数のため、一人当たりの件数とは異 なる ※EUIPOは相対的拒絶理由を審査しない等 審査負担は国により相違 (区分) 2,200 2,047 2,000 1,800 1,617 1,600 1,394 1,400 120,000 100,000 審査官1人当たりの審査区分数 (審査官数) 140 136 140 136 130 80,000 1,200 1,032 1,000 800 60,000 120 40,000 600 400 110 20,000 0 100 2017 2018 2019 2020 2021 (年) ※特許行政年次報告書2022年版を元に特許庁作成 200 0 日本 韓国 米国 欧州 5 審査期間(FA・TP期間) ➢ 近年の出願増の影響等により、一次審査通知までの期間及び権利化までの期間は長期化。 ➢ 2022年度末に一次審査までの期間を6.5か月、権利化までの期間を8か月とする政府目標の達 成に向けて、審査期間は徐々に短縮。 ➢ 政府目標の達成に向けて、IN対策(拒絶理由のかからない出願促進)及びOUT対策(審査処 理増大)を実施し、審査期間の短縮及び出願件数と審査処理件数の均衡を保つ。 商標審査の平均FA・TP期間の推移 (月)12.0 10.9 7.7 8.0 9.6 9.9 【審査期間短縮に向けた政府方針】 ◼ 成長戦略【2019年6月21日閣議決定】 「2022年度末までに、商標の権利化までの期間を、国 際的に遜色ないスピードである8月とする」(令和元年 度革新的事業活動に関する実行計画 KPI) 8 10 6.8 5.8 7.9 6.0 6.3 4.0 4.3 2.0 11.2 9.3 10.0 【2022年度の実施庁目標】 一次審査通知までの平均期間(FA期間):6~8か月 権利化までの平均期間(TP期間):7~9か月 4.9 8 6.5 知的財産推進計画2019 【2019年6月21日 知的財 産戦略本部決定】 「近年、商標出願件数の大幅な増加により審査期間が 長期化傾向にあることを踏まえ、2022年度末までに、一 次審査通知までの期間を6.5か月とすることにより、権利 化までの期間を国際的に遜色ないスピードである8か月 とできるよう商標審査体制を強化する。」(本文) ◼ FA期間 TP期間 0.0 2015 2016 2017 2018 2019 2020 2021 2022 (年度) ※2021年度までは年度平均の実績値、2022年度は年度末の目標値(政府目標) ※特許行政年次報告書2019年版、20年版、21年版及び22年版を元に特許庁作成 6 【参考】その他の取組・直近の法改正等 7 商標ファストトラック審査 ➢ 商標の早期権利化ニーズに応えるとともに、審査負担の少ない出願増加による審査全体の 処理促進を図ることを目的とした審査運用。 ➢ 対象案件について、出願から約6か月で最初の審査結果通知を行う。 ➢ 要件に該当するかは特許庁で自動的に判定するため、申請手続や手数料は不要。 対象となるのは、次の全てを満たす出願 ・出願時に、「類似商品・役務審査基準」「商品・サービス国際分類表(ニース分類)」 「商標法施行規則(別表)」に掲載の商品・役務のみを指定している出願 ・審査着手時までに指定商品・指定役務の補正を行っていない出願 審査期間イメージ 出願 1 2 3 通常の審査 5 6 7 平均約9か月* 約6か月 ファストトラック審査 早期審査 4 平均約2か月** FA 8 9か月 FA FA * 2022.3時点 ** 出願と同時に早期審査の申請をした 場合 8 ファストトラック審査サポートツールの提供 ➢ 2022年3月10日から、ファストトラック審査の利用を検討している出願人に向けに、 「ファストトラック審査サポートツール」を提供。 ➢ 同ツールにより、出願人の以下作業を大幅に簡素化。 (1)ファストトラック審査の対象となる商品・役務の検索 (2)入力した商品・役務がファストトラック審査の対象となるものかの確認 9 任期付職員(商標審査官補)新規採用 ➢ 2020年度より任期付商標審査官補の採用を開始。 ➢ 民間企業、特許事務所等で法務一般に関する業務経験を有する者を募集し、弁理士資格や出 願・権利化に係る実務経験を有する者を採用。 ➢ 審査官増による迅速かつ的確な審査体制の構築に資すると共に、ユーザー側の実務経験・視点 が商標審査部署内部で共有されることを通じて、更なる業務効率化やサービス向上に寄与。 商標審査官定員の推移 (人) 任期付審査官補採用開始 180 150 120 90 60 136 136 140 2017 2018 2019 161 168 2020 2021 (年度) 30 0 出典:特許行政年次報告書2022年版 10 商標の拒絶理由横断調査事業 ➢ 商標登録出願が増加傾向にある中、限られた人員での効率的な審査実施施策の一つとして、審 査関連業務の更なる外注を推進中。 ➢ 「商標における民間調査者の活用可能性実証事業」(2019年度から2021年度)で確立された事 業実施体制・調査手法等をベースに、拒絶理由の該当性(商標法第3条、4条等)に関する高度な 調査を外注化。 事業イメージ 「商標の拒絶理由横断調査事業」(2022年4月から実施) 効率化効果 調査報告書による審査効率化 調査報告書 結果を審査に活用 ↓ 審査効率化 審査官 改善点の指摘 拒絶理由該当性に 関する高度な調査 目的 調査者 フィードバック ✓ 審査官の調査時間の削減 ✓ 新たな案件を審査する時間を創 出 調査の質の向上 効率的な審査体制の整備 審査処理増大 11 審査業務効率化策の検討・推進 ➢ ➢ 特許庁内に商標の審査業務効率化のためのプロジェクトを立ち上げ、「審査の見える化」に基づく各審査 プロセスのうち、法解釈やユーザー対応に関連する論点を中心に、外部有識者・ユーザーの声を踏まえて 審査業務の効率化策について検討。 庁内の業務改善として実施可能な効率化策については、並行して検討・推進。 「審査の見える化」 ・ ・ 外部有識者・ユーザーの声を踏まえた効率化策の検討 特許庁内の業務改善として実施可能な効率化策の検討 実施済 ■商標審査便覧改訂(2021年3月、2022年4月実施) • 第6条審査の緩和(区分を考慮すればその範囲が特定できる 指定商品・役務表示の第6条適用廃止) • 優先権主張の効果に関する審査の効率化 • 第3条第1項柱書に関する審査運用の明確化(国家資格等の確 認方法及び証明書類の提出の省略) ■方式審査便覧改訂(2022年1月実施) • 意見書提出後の期間延長請求書を却下とする運用変更により、 拒絶査定の早期起案が可能に ■出願支援ガイド(2021年8月作成、2022年4月第2版発行) • 出願の7割近くを占める個人・中小企業向けに拒絶理由のか からない出願を促進するためのガイドを作成 ■各国の審査効率化に関する調査研究(2021年度) • 各国における指定商品・役務に関する料金施策・ユーザー支 援ツールについて調査 引き続き ○審査基準の要点提示(拒絶理由がかかる原因 及び事前回避策の周知) ○業務運用の標準化・電子化による効率化策の 実施 ○テレワークや更なる審査効率化のため審査 ツールの開発・提供 12 (参考)出願支援ガイド ✓ 特許庁は2021年8月、商標審査官が教える 出願支援ガイド「商標出願ってどうやるの?」を発行。 ✓ 初めて商標出願するユーザー向けに、拒絶されない 商標出願をするためのポイントを分かりやすく解説。 ✓ INPIT・普及支援課等と連携し、各種セミナー等で 積極的に周知。 ✓ 2022年4月、料金改定、納付方法、ファストトラック 審査サポートツール等、最新情報を反映した第2版 を発行。 出願支援ガイド「商標出願ってどうやるの?」 https://www.jpo.go.jp/resources/report/sonotainfo/document/panhu/shutugan_shien.pdf 13 コロナ禍を踏まえた業務見直し テレワークの本格導入を踏まえた業務の見直し オンライン面接 ➢ オンライン面接の導入(「面接ガイドライン」改訂) ➢ 電子メールの活用(FAXを介さず補正案を接受) ・所属審査室ごとの電子メールアドレスでメールを受付 ・電子メールアドレスは、拒絶理由通知書内に記載 ・2020年8月導入以降、メール利用件数は徐々に増加している。 審査官 出願人 代理 ➢ 押印や自署の見直し(審査官に提出する書類の押印・自署の廃止) ・第3条第1項柱書の商標の使用の意思に関する書類 ・第4条第1項第8号に関する承諾書 ・第4条第1項第11号の出願人と引用商標権者の支配関係に関する書類 等 ➢ テレワーク推進 ・審査官向けのテレワーク支援ツールの開発推進 ・2021年4月から、テレワーク中の審査官と電話連絡できる手段を整備 14 AI技術の活用による商標審査の効率化 ➢ ➢ ➢ ➢ ➢ 商標関係では、2017年度及び2018年度に、「先行図形商標の調査」及び「指定商品・役務調査」について、AI 技術の活用可能性の実証研究を実施 成果物は、現在、アジャイル型開発手法により、試行的に審査支援ツールとして導入し、効果を検証中 2021年度には、「先行図形商標の調査」の検索精度向上に向けた取組として、AIコンペティションを実施 一部の入賞者の予測モデルを、試行導入している審査支援ツールに搭載 商標審査において活用することで、審査の品質向上を図る 先行図形商標の調査 願書 指定商品・役務調査 図形商標 願書・補正書 ・コード付与の 手数が多い 今までの調査手法 今までの調査手法 ・人によるターム付与 ・タームによる検索 ・検索対象商標が多い ・検索結果が類似度順に表示されない ① ②・・・ 150 ・・・ ・指定商品 ・指定役務 商品・役務の 過去採択例DB ・類似群コードを人手で 1件ずつ照合・コード付与 類似群コード 01B01 胃腸薬 テーブル無し* ? 顆粒状の風邪薬 テーブル無し ? ビタミン含有の目薬 テーブル無し ? 韓国製かぜ薬 350 ・・・ *DBとの照合ができなかった商品・役務 AIによる業務サポート ・類似度順に検索結果を表示 ・見過ごし防止等による審査品質向上に貢献 ① AIによる業務サポート ・類似群の候補をAIツールが提示 ・コード付与の効率化・品質向上に貢献 ② ・・・ ・・・ ・・・ テーブル無し テーブル無し テーブル無し 類似群コード 01B01 胃腸薬 ? 顆粒状の風邪薬 ? ビタミン含有の目薬 ? 韓国製かぜ薬 候補 01B01 01B01 01B01 風邪薬 目薬 風邪薬 15 AIコンペティション(AIコンペ) ➢ ➢ ➢ AIを利用したイメージサーチツールの精度向上のため、特許庁初の機械学習コンペティション(※) 「AI×商標:イメージサーチコンペティション」を開催(2021年11月26日~2022年1月31日) 入賞者のAIモデルを実装することにより、現行ツールの2倍程度の精度向上が期待 審査支援ツールのAIモデル検討におけるコンペ方式の有効性を確認 AIコンペ概念図 AIコンペ参加者・投稿者数 ◼ 参加者数:637名 ◼ 投稿件数:1,453件 入賞者とスコア ※機械学習コンペティションとは 特定の課題及び関連データを公開し、その課題解決のた めのモデル開発を広く一般から募り、優秀なものを採用 する開発手法。 優れた技術やアイデアを有する人材を新たに発掘し、シ ステム開発に参画する機会を創出することで、効率的な システム開発及びイノベーションの促進も期待。 実装まで含めたコンペ開催は極めて珍しい取組。 順位 氏名/名称 投稿回数 スコア* 1 ヤフー(株)チーム 101 0.734 2 穴井 晃太氏 85 0.685 3 NRIデジタル(株)チーム 162 0.667 *スコア0.7=課題に対する正解率が約7割 16 新しいタイプの商標 ➢ 平成27年(2015年)4月から、音や色彩といった新しいタイプの商標も登録可能に。 言語を超えたブランドメッセージを保護し、企業の多様なブランド戦略を支援することが目的。 新しいタイプの商標の 出願・登録状況 *マドプロ出願を除く (2022年8月1日時点特許庁調べ) 合計 タイプ別内訳 音 色彩 位置 動き ホログラム 出願件数 2,080 718 558 554 229 21 登録件数 647 340 9 116 167 15 音商標 音楽、音声、自然音等からなる商標であり、聴覚で認識される商標 (例:CMなどに使われるサウンドロゴやパソコンの起動音など) 色彩のみからなる商標 単色又は複数の色彩の組合せのみからなる商標 (例:商品の包装紙や広告用の看板に使用される色彩など) *これまでの図形等と色彩が結合したものではない商標 位置商標 文字や図形等の標章を商品等に付す位置が特定される商標 動き商標 文字や図形等が時間の経過に伴って変化する商標 (例:テレビやコンピューター画面等に映し出される変化する文字 や図形など) ホログラム商標 文字や図形等がホログラフィーその他の方法により変化する商標 (例:見る角度によって変化して見える文字や図形など) 登録第5804299号 久光製薬㈱ 登録第5930334 (株)トンボ鉛筆 登録第5933289号 (株)セブン-イレブンジャパン 登録第6034112号 日清食品ホールディングス(株) 登録第5804316号 (株)ワコール 登録第5804315号 三井住友カード(株) 17 最近登録となった新しいタイプの商標等 登録第6419263号 登録日:2021/07/21 権利者:株式会社明治 立体商標 ※きのこの山の立体的形状も登録済み (登録第6031305号) 登録第6534071号 登録日:2022/03/25 権利者:日清食品ホールディングス株式会社 色彩のみからなる 商標 (「チキンラーメン」出典:https://www.nissin.com/jp/products/items/9057) 18 地域団体商標 地域団体商標 = 「地域名 + 商品(役務)名」 ➢ 地域ブランドの保護による地域経済の活性化を目的に、2006年に導入 ➢ 地域ブランドとして用いられることが多い、地域の名称及び商品(役務)の名称等からなる文字商標について、 一定範囲の地域で有名である等の要件を満たせば登録可能とする制度。登録:735件(2022年7月末時点、出典:特許庁HP) ➢ 登録できる主体は、組合、商工会、商工会議所及びNPO法人に限られる ※2017年7月からは、地域未来投資促進法による商標法の特例措置により、一定の条件の下、一般社団法人まで主体を拡充 主な登録要件 主体要件 商標の構成 地域と商品役務の関連性 周知性 事業協同組合等の組合、商工会、商工 会議所及び特定非営利活動法人(設立 根拠法において組合員の加入自由を規 定) 「地域の名称」と「商品(役 務)名」等の組み合わせから なる文字商標であること 商標中の「地域の名称」が商品(役 務)と密接な関連性(商品の生産地で ある等)を有すること 出願人又はその構成員の使用に より、これらの者の商標として 知られていること 農業協同組合 事業協同組合 商工会議所 NPO法人 「小豆島オリーブオイル」 「十勝川西長いも」 「北海道味噌」 「中津からあげ」 (帯広市川西農業協同組合) 商標登録第5002095号 (北海道味噌醤油工業協同組合) 商標登録第5470951号 (大分県 中津商工会議所) 商標登録第5817143号 (香川県 NPO法人小豆島オリーブ協会) 商標登録第5800807号 19 制度見直し:海外からの模倣品流入への規制強化(施行日:2022年10月1日) ➢ 産業財産権の権利侵害となるのは、事業性のある場合に限られる。 ➢ 税関では、産業財産権を侵害する物品を「輸入してはならない貨物」として、没収等の対象と しているが、侵害物品に当たらない場合(例:個人使用目的で輸入される模倣品)は没収等さ れない。 ➢ 近年、電子商取引の発展や、国際貨物に係る配送料金の低下等を背景に、「海外の事業者」が 「国内の個人」に直接販売・送付した模倣品について、個人使用目的であるとして、税関での 没収等がされない事案が急増している。 ➢ このため、従来侵害の成否が明らかでなかった海外の事業者の行為について、郵便等を利用し て模倣品を日本国内に持ち込む行為が商標法及び意匠法において権利侵害行為となることを明 ※なお、本改正後も、事業者でない個人は、引き続き罰則の 対象外。 確化し、模倣品流入に対する規制を強化するための改正を行った。 ※なお、本改正後も、事業者でない個人は、引き続き罰則の対象外。 法改正のイメージ 海外 事業者 日本 輸入 郵送等で 持込み 郵送等で 持込み 譲渡等 事業者 個人 ※ 個人(個人事業主を除く。) は罰則の対象外 個人 改正により権利侵害行為となることを明確化する行為 改正前から権利侵害とされていた行為 20 制度見直し:国際商標登録出願に係る手数料の二段階納付の廃止及び 登録査定の謄本の送達方法の見直し (施行日:2023年4月1日) ➢ 「マドリッド協定議定書」に基づく国際商標出願・登録に係る手数料について、世界的には出願時に 全額を納付させる「一括納付方式」が主流であるのに対し、日本は、出願時(一段階目)と商標権の 設定登録時(二段階目)に納付させる「二段階納付方式」を採用していることから、二段階目の納付 忘れにより海外出願人が商標登録の機会を逸する事例が生じている。 ➢ このため、手数料の納付を「一括納付方式」に変更することにより、海外出願人にとっての利便性を 向上させるための改正を行った。 ➢ さらに、新型コロナウイルスの感染拡大に伴い、国際郵便の引受が停止され、登録査定の謄本の送達 が滞ったことから、登録査定の謄本の送達をWIPO経由で電子的に通知する「保護認容声明」に一本 化できる旨の規定を設けた。 【改正前】 海 外 出 願 人 願書 一段階目の 手数料納付 ( 海本 外国 知官 財庁 庁 ) 【改正後】 海 外 出 願 人 願書 願書 国W 際 事I P 務 局O 指定 通報 手数料の 一括納付 ( 海本 外国 知官 財庁 庁 ) 願書 国 際W 事I 務P 局O 指定 通報 特指 許定 庁国 )官 で庁 の( 審日 査本 国 特指 許定 庁国 )官 で庁 の( 審日 査本 国 二段階目の 手数料納付 ①登録査定謄本(国際郵便) ②保護認容声明 (電子データ) ①登録査定謄本 (電子データ) WIPO 国際事務局 国W 際I 事P 務O 局 WIPOを通じた 電子的通知に一本化 WIPO 国際事務局 ②保護認容声明 (電子データ) 海 外 出 願 人 ( 納付の記 日 録の通報 本 指 定 国国 特官 許庁 庁 ) 海 外 出 願 人 21 制度見直し:特許料等の料金体系見直し ➢ 特許法等の一部を改正する法律(令和3年法律第42号)が2021年5月14日に可決・成立。同法律において、特許料 等の料金体系の見直しが実施され、商標の登録料及び更新料(分納含む。)についても商標法で規定する登録料の 法定上限を引き上げた上で、同範囲を超えない範囲内で政令で定める額とされた。 ➢ 同法律改正を受け、実際の登録料等を定める「特許法等の一部を改正する法律の施行に伴う関係政令の整備に関す る政令」が2021年12月24日に公布され、新料金は、2022年4月1日から施行。 ➢ 商標については、登録料及び更新料を見直し(出願料は変更なし)。 ➢ 2022年4月1日以降に登録料等を納付する出願に対して、新料金が適用される。 ※出願日基準ではなく、登録料等の納付日基準。 商標登録出願に係る登録料及び更新料の見直し 改定前 改定後(現行) 登録料 区分数×28,200円 区分数×32,900円 登録料(分納) 区分数×16,400円 区分数×17,200円 更新料 区分数×38,800円 区分数×43,600円 更新料(分納) 区分数×22,600円 区分数×22,800円 ※詳細は以下参照。 「令和3年特許法等改正に伴う料金改定のお知らせ(2022年4月1日施行)」 https://www.jpo.go.jp/system/process/tesuryo/kaisei/2022_ryokinkaitei.html 22 不使用商標・不登録出願の削減 ➢ 商標の使用に疑義のある出願に対する拒絶理由通知による審査段階での不使用商 標対策を講じているが、登録商標の不使用による取消審判の請求成立率は8割程度 で推移。 ➢ 登録商標の中には、過去に使用していた商標、使用予定がない商標、指定商品の 一部のみ使用している商標など、不使用の状態が継続しているものが一定数存在。 ➢ 登録査定を受けるも登録料未納で却下となる出願(未登録)が相当程度存在。 登録商標の不使用による取消審判の請求・成立件数 請求件数 登録査定後の未登録件数 請求成立 登録査定件数 登録件数 未登録件数 (登録査定件数ー登録件数) 2015 973 834 2015 100,244 98,085 2,159 2016 958 771 2016 113,025 105,207 7,818 2017 1,001 771 2017 115,754 111,180 4,574 2018 1,045 858 2018 119,610 116,547 3,063 2019 996 747 2019 117,186 109,859 7,327 2020 1,011 769 2020 146,708 135,313 11,395 2021 1,128 889 2021 185,415 174,098 11,317 出典:特許行政年次報告書2022年版 出典:特許行政年次報告書2022年版 23

資料4

資料2 当面の検討課題 産業構造審議会知的財産分科会 第9回商標制度小委員会 令和4年9月29日 特許庁政策推進懇談会について 問題意識 • 近年の様々な技術革新は、デジタルとリアルが融合した新領域でのビジネス創出の可能 性を広げている。他方で、デジタル化・グローバル化の進展により、日本企業は厳しい 競争環境にさらされており、一層厳しい状況となっている。 • 大企業に加え、中小企業・スタートアップ、大学等の知財活用の更なる促進が喫緊の政 策課題である。イノベーションの促進、日本企業の競争力強化に向けて、これらの環境 の変化や新たな課題に対応した知的財産制度に改善するとともに、支援の在り方につい ても検討し、中小企業・スタートアップ・大学を含むユーザーの利便性を一層高める必 要がある。 • あわせて、特許庁自身も一層のデジタル化による効率的な業務に取り組んでいく必要が ある。 ⇒ 令和4年4月に有識者からなる特許庁政策推進懇談会を立ち上げ、5回開催。 同年6月30日に、報告書をとりまとめ。 特許庁政策推進懇談会で示された、知的財産政策に関する今後の検討の 方向性等も踏まえつつ、各論点について、産業構造審議会知的財産分科 会の各小委員会において、ご議論いただく。 1 当面の検討課題 商標制度小委員会 (参考)特許制度小委員会 • 他人の氏名を含む商標 • 一事不再理 • コンセント制度 • 手続関係(オンライン送達、公示送達、優先権証明書 • e-Filing納付 オンライン化、書面手続デジタル化) 等 • 「実施」の定義 • 裁定における営業秘密等関係書類の閲覧制限 (参考)意匠制度小委員会 • 新規性喪失の例外適用手続 等 • ライセンス促進策 等 ※書面手続デジタル化等、意匠・商標に関わる論点については、意匠制度小委員会及び商標制度小委員会において も報告予定 ※SaaSサービスに対応した特許の「実施」の定義に関しては、訴訟係属中の事件に係る論点であることを踏まえ、 今年度は調査研究を実施予定 当面の進め方 • 月1回程度の開催(予定) • 議論が深まった論点については、適時に方向性をとりまとめる 2

資料5

資料3 他人の氏名を含む商標の登録要件緩和 産業構造審議会知的財産分科会 第9回商標制度小委員会 令和4年9月29日 • 【参考】特許庁政策推進懇談会での議論 • 他人の氏名を含む商標をめぐる状況(現行制度の概要) • 問題の所在 【参考】本規定の氏名に関する拒絶事例 • 調査研究の結果概要 • 問題の所在と対応の方向性 • 本規定の趣旨及び人格権(氏名権)との関係について • 対応の方向性と検討事項 • 検討事項 1.「一定の知名度」に係る要件について 【参考】商標法における、周知性・著名性に関する条文 【参考】 「一定の知名度」を有しない氏名の人格権(氏名権)について 2.改正案から生じ得る課題について 3.関連する規定について 4.審査運用の見直しについて 1 【参考】特許庁政策推進懇談会での議論 ➢ 本年4月に設置された特許庁政策推進懇談会において議論された、他人の氏名を含む商標の登録要件緩和について、 懇談会メンバーからの意見及び同懇談会報告書における方向性は以下のとおり。 ■主な意見 ➢ 現在の解釈が厳格すぎるというのは賛同。方向性として他人に一定の知名度を求めることが良いかと思うが、無関係な者による出願に 留意の必要があると考える。 ➢ 法改正若しくは審査基準を見直してほしい。条文を厳格に適用するあまりに氏名ブランドが保護されていない状況が続いている。日本 において基礎となる登録商標を持てないために、国際登録の制度も活用できない。世界的に展開するデザイナーズブランドも日本だけ 登録できないこともあり、国際調和の観点からも見直してほしい。マツモトキヨシの音商標について、知財高裁の裁判例があって、特 許庁においても調査研究を進められてきたところ、厳格すぎる運用の見直し等について迅速に進めてほしい。 ➢ これが拒絶されるのか、というケースが目立ってきた。最近はデザイナーやアーティストで著名な方の名前が商標的に使われ、定着し ていることが多い中で、変えないといけない。判断のばらつきは現在も当然生じると思われるが、事後的に他人が知名度を獲得した場 合の取扱いが最も面倒である。 ➢ 商標法第4条第1項第8号の「氏名」に著名性要件を付すことに賛成。(特定の他人の氏名と)1対1対応にならないローマ字、カタ カナについても登録を認めない裁判例が広がっていることが問題と理解している。知名度をどの程度要求するかについては、同法第4 条第1項第10号、第15号と同程度、同じ要件とすべき。 ■以上の意見を踏まえた、検討の方向性 ➢ ユーザーニーズ、他人の人格的利益と出願人の商標登録を受ける利益とのバランス、諸外国との制度調和等の観点から、本規定におけ る他人の「氏名」に一定の知名度の要件を課す法改正が適当ではないか。 ➢ 上記改正案から生じる課題の1つとして、商標に含まれる氏名と無関係な者による出願について、先取り出願を許容すべきでない場合 には、現行の商標法における、使用について疑義がある旨の拒絶理由(商標法第3条第1項柱書)、公序良俗違反を理由に登録できな いとする拒絶理由(同法第4条第1項第7号)等の活用可能性を検討していく必要がある。 ➢ 法改正の具体的内容について検討を深めるとともに、求める知名度の程度、事後的に他人が知名度を獲得した場合の取扱い等、上記改 正案に関連するその他の論点・課題についても、併せて検討を行う必要がある。 ※2022年6月30日 特許庁政策推進懇談会「知財活用促進に向けた知的財産制度の在り方~とりまとめ~」より抜粋 2 他人の氏名を含む商標をめぐる状況(現行制度の概要) ➢ 構成中に他人の氏名を含む商標は、当該他人の承諾がない限り登録することができない(商標法第 4条第1項第8号(以下「本規定」という。))。 本規定の趣旨は、他人の人格的利益の保護にあるとされている(※)。 商標法(抜粋) 第四条 次に掲げる商標については、前条の規定にかかわらず、商標登録を受けることができない。 (中略) 八 他人の肖像又は他人の氏名若しくは名称若しくは著名な雅号、芸名若しくは筆名若しくはこれらの著名な略称を含む商標(その他人の承諾を得ているものを除く。) ➢ このような商標については、氏名を表す文字種(漢字、欧文字等)や「他人の氏名」の周知性・著 名性、出願商標の周知性・著名性の有無等にかかわらず 、当該他人の承諾がない限り、本規定に 該当する。 ➢ 審査においては、出願商標に含まれる氏名について、一般的な検索サイト、新聞記事検索等により、 当該氏名の使用状況を調査した上で、当該氏名が他人の氏名を表すものと認められ、かつ、当該他 人が現存することが推認できる場合(審査時において、当該他人への連絡先が一般に公開されてい る場合)は、本規定に該当する旨の拒絶理由を通知している。 ※工業所有権法(産業財産権法)逐条解説〔第21版〕1509頁 【参考】本規定の審査フロー 出願商標の確認 インターネット調査等 •氏名とおぼしき文字からなる商標 •検索サイト 又は当該文字を含む商標か確認 •新聞記事検索 拒絶理由通知の起案 •起案の際には、他人の連絡先の情 報(一般に公開されているもの) を掲載 3 問題の所在 ➢ 構成中に氏名を含む商標に関しては、ファッション業界等を中心に、創業者やデザイナーの氏名を ブランド名として採用する傾向があるところ、近年の本規定の厳格な解釈(次頁参照)により、新 興のブランドのみならず、広く一般に知られたブランドまで、同名の他人が存在すれば一律に出願 を拒絶せざるを得ず(次頁参照)、このような状況は、氏名からなるブランドの商標としての保護 に欠けるといった指摘がある。 ➢ また、商標構成中の文字が意図せず他人の氏名を表すものとなった場合にも本規定を適用せざるを 得ない場合がある。 例:商標「南実のかぼちゃ」(商願2012-31579、不服2013-5362) 出願人は「南の大地で豊かに実る」を意図した造語と主張したが、審査・審判では「南 実」(ミナミ ミノル)を氏名とする他人の存在を確認したため、 本規定により拒絶。 氏名を含む商標を用いたブランド戦略についての産業界のニーズ等を踏まえると、制度の見直しの検討が必要。 検討の基礎資料とするため、令和3年度に調査研究を実施。 (参考資料1「他人の氏名等を含む商標に関する調査研究」報告書要約版) ※令和3年度 産業財産権制度各国比較調査研究等事業「他人の氏名等を含む商標に関する調査研究報告書」(令和4年3月 一般社団法人 日本国際知的財産保護協会) また、氏名を含む商標が採用されることの多いファッションブランド(デザイナーズブランド)の多くはいわゆる中 小企業であり、そのような中小企業、さらにはスタートアップ企業のブランド保護の観点からも、今回の制度見直し は有用なものとなるのではないか。 4 【参考】本規定の氏名に関する拒絶事例 ■近年の裁判例(いずれも拒絶査定維持) 事件名/事件番号/訴訟に係る商標 説示要旨 1 LEONARD KAMHOUT事件 最高裁2004年6月8日判決(平成15(行ヒ)第265号) 争われた商標:商願平10-90342号 「LEONARD KAMHOUT」 (商標法第4条第1項第8号は)括弧書以外の部分に列挙された他人の肖像又は他人の氏名、 名称、その著名な略称等を含む商標は、括弧書にいう当該他人の承諾を得ているものを除き、 商標登録をできないとする規定である。その趣旨は、肖像、氏名等に関する他人の人格的利益 を保護することにあると解される。 2 山岸一雄大勝軒事件 知財高裁2016年8月10日判決(平成28(行ケ)第10065号) 争われた商標:商願2013-90519号「山岸一雄大勝軒」 山岸一雄事件 知財高裁2016年8月10日判決(平成28(行ケ)第10066号) 争われた商標:商願2013-90418号「山岸一雄」 商標法第4条第1項第8号の趣旨やその規定ぶりからすると、同号にいう「他人の氏名」が、 著名又は周知なものに限られるとは解し難く、また、同号の適用が、他人の氏名を含む商標の 登録により、当該他人の人格的利益が侵害され、又はそのおそれがあるとすべき具体的事情の 証明があったことを要件とするものであるとも解し難い。 また、同号の趣旨は、上記のとおり、人の氏名に対する人格的利益の保護にあるところ、この 人格的利益の保護の要否を、顧客吸引力の有無(周知性や著名性の有無)により分けるという のも、同号が商品又は役務の出所の混同のおそれを要件としていないことに照らし、相当でな い。 3 4 KEN KIKUCHI事件 知財高裁2019年8月7日判決(平成31(行ケ)第10037号) 争われた商標:商願2017-69467号 The Soloist.事件 知財高裁2020年7月29日判決(令和2(行ケ)第10006号) 争われた商標:商願2017-126259号 「TAKAHIROMIYASHITATheSoloist.」 商標法第4条第1項第8号の趣旨やその規定ぶりからすると、同号の「他人の氏名」が、著名 性・希少性を有するものに限られるとは解し難く、また、「他人の氏名」を含む商標である以 上、当該商標がブランドとして一定の周知性を有するといったことは、考慮する必要がないと いうべきである。 「雅号」、「芸名」、「筆名」及び「略称」については、「著名な」という限定が付されてい る一方で、「他人の氏名」及び「名称」についてはそのような限定が付されていない。同号は、 氏名及び名称については著名でなくとも当然にその主体である他人を指すと認識されることか ら、当該他人の氏名や名称の著名性や希少性等を要件とすることなく、当該他人の人格的利益 を保護したものと解される。 ■本規定の解釈の厳格化が顕著になって以降、審査で拒絶した事例 近年の拒絶事例 1 (商願2018-146014 2020年拒絶査定) 2 「ヨウジヤマモト」(商願2019-23948 2020年拒絶査定) 3 「ジュン アシダ」(商願2020-160280 2021年拒絶査定) 【参考】同一出願人の過去登録例 (登録第4293672号 1999年登録査定)等 (登録第5178088号 2008年登録査定)等 (登録第4258861号 1999年登録査定) (登録第4581301号 2002年登録査定)等 5 調査研究の結果概要 調査研究において、 ➢ 氏名権等に関する学識経験者からは、他人の氏名の無断使用それ自体が当然に氏名権の侵害となる可 能性は低いという見解や、本規定は、過度に他人の人格的利益を保護している印象があるとの見解が 示された。 ➢ ユーザーへのヒアリングでは、現行法の解釈・運用の厳格化が実務上障害となる場合が多いとの意見 や、デザイナー・クリエイター名等の氏名を含む商標を登録するニーズが高く、特にファッション業 界については、ブランド戦略上、氏名商標は必要不可欠である等、その重要性が確認された。 ➢ 調査を実施した6か国・地域においては、我が国同様、他人の氏名を含む商標について拒絶理由等の 規定が存在しているところ、いずれの国・地域においても、求められる知名度の高低は様々であるも のの、拒絶理由等の対象となる「他人の氏名」に一定の知名度の要件が課されていることが確認され た。 ■各国における制度比較(調査研究報告書から抜粋・一部改変) 商標法上、他人 の氏名を含む商 標に関する規定 はあるか。 米国 欧州 ドイツ フランス 中国 韓国 日本 拒絶理由 ○ 該当なし ※1 該当なし ※1 該当なし ※1 ○ ○ ○ 異議 ・ 無効理由 ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ 該当なし ※1 該当なし ※1 該当なし ※1 ○ ○ × ○ ※2 ○ ○ ○ ○ × 上記規定におい 拒絶理由 て、他人の氏名 異議 に一定の知名度 ・ は要求されるか。 無効理由 ※1 欧州では、商標に識別力があるかどうか等(絶対的拒絶理由)のみ審査され、先行登録商標や同名の他人の有無等(相対的拒絶理由)は審査されない。 ※2 規定はあるが、要件等は、各加盟国の法律による。 6 問題の所在と対応の方向性 ➢ 現行制度に係る問題は、出願人の商標登録を受ける利益より他人の氏名に係る人格的利益が過度に優先され た結果、生じているものと考えられるのではないか。 • 本規定の趣旨が他人の人格的利益の保護にあることは、 2004年6月8日付最高裁判決(前掲p5.1.「LEONARD KAMHOUT」事 件 )において確認されているところ、2021年8月30日付知財高裁判決(「マツモトキヨシ音商標」事件(後掲p16 ))において、 本規定は「出願人の商標登録を受ける利益と他人の氏名、名称等に係る人格的利益の調整を図る趣旨の規定」である旨判示されてい る。 • 有識者からは、当該高裁判決は前述の最高裁判決を踏まえ一歩進んだ解釈を示したものであり、両者は矛盾するものではないという 見解が示されているところ(下記【参考】参照)、本規定の趣旨が他人の人格的利益の保護にあることに変わりはないが、出願人の 商標登録を受ける利益と調整を図ることは許容されているといえる。 ➢ 現行制度の問題を解決するに当たっては、本規定の趣旨を変えることなく、出願人の商標登録を受ける利益 と他人の氏名に係る人格的利益との調整方法を見直すことが妥当ではないか。 • 具体的な調整の在り方としては、出願人側の事情を考慮する方法、他人の「氏名」側に何らかの要件を課す方法、両者の利益を衡量 する方法等が考えられる。 ➢ 新興ブランドや中小企業・スタートアップ企業の氏名ブランドの保護、各国の氏名を含む商標の保護状況等 を踏まえれば、他人の「氏名」側に何らかの要件を課す方向で検討すべきではないか。 【参考】最高裁判決(「LEONARD KAMHOUT」事件)と「マツモトキヨシ音商標」事件高裁判決との整合について有識者へのヒアリング結果(主な意見) • 最高裁の判決と矛盾するものではないと思っている。人格的利益保護のための調整を図ると言っているので、上記最高裁の判決から一歩進んだ解 釈を示したものといえるのではないか。 • 人格的利益の保護といってもどんな場面でも保護するわけではなく、例えば、商標が登録された後に生まれた人の氏名が登録商標に含まれる氏名 と同じであったとしても、その商標は無効になることはない。どのような規定であっても、一方の利益だけが考慮され、他方の利益が全く無視さ れるということはなく、調整を図ることは必要になるから、抽象論として「調整」ということは問題ないと思う。 7 本規定の趣旨及び人格権(氏名権)との関係について ➢ 他人側の要件を検討するに当たっては、前述のユーザーニーズや国際的な制度調和を踏まえ、商標の使用が人格権(氏 名権)侵害となる蓋然性の高いものを対象とし、かつ、審査の予見可能性の観点も鑑みれば、その判断要素として他人 側の知名度を考慮する方向で検討すべきところ、その前提となる、本規定で保護すべき人格権(氏名権)について整理 しておくべきではないか。 ➢ 本規定の趣旨が人格権保護とされていることや、氏名権等に知見を有する学識経験者へのヒアリングや調査研究の結果 等を踏まえれば、これを「出願に係る指定商品・役務と氏名とを結びつけられることによる弊害又は不利益を受けない 権利」と整理できるのではないか。 ➢ 上記の前提において、例えば、他人の氏名の知名度が高ければ、特定の商品・役務と氏名とを結びつけられることによ る弊害又は不利益が大きくなるのではないか。すなわち、人格権(氏名権)侵害の蓋然性が高くなるのではないか。一 方で、知名度が低ければ、その弊害又は不利益は小さく、人格権(氏名権)侵害の蓋然性は低いといえるのではないか。 ➢ なお、知名度に関する要件が採用された場合でも、登録された商標の使用に氏名権等の侵害があれば(※)、改正前と 同様に、民法上、行為が規制され得るため、法的な救済が可能ではないか。 ※例えば、知名度を有しない者であっても、登録商標が使用された結果、自己の氏名と特定の商品・役務とが結びつけ られることにより精神的苦痛を受けた場合や、自己の評判が下がり損害が実際に発生した場合に、民法に基づく請求が 妨げられるものではない。 (後掲「【参考】「一定の知名度」を有しない氏名の人格権(氏名権)について」参照) 【参考】氏名権等に関する学識経験者へのヒアリング結果(主な意見) • (氏名権について)日本においては明文の規定が存在しないうえ、裁判例が少なく、学説においても十分な議論がない状況であるところ、他人の氏名の無断使用が必ずしも 氏名権の侵害とはならず、本規定は、過度に他人の人格的利益を保護している印象がある。 • (氏名権について)対抗利益も含めた総合考慮の中で侵害判断をするのであれば、その総合判断の考慮要素の一つとして、周知・著名性や経済的利益を得る見込みという事 情を違法の評価に傾く事情として考慮することはあり得る。 • (氏名権の侵害について)他人に周知・著名性が無くとも侵害が成立する可能性はあるが、周知・著名性があった方が、侵害が認められ易いという関係性があると言えるの は確かである。 • 「他人の氏名等を含む商標に関する調査研究」の報告書にある、他人の氏名に一定の知名度を求める法改正案について、憲法学的見地からの違和感はない。 8 対応の方向性と検討事項 ➢ ユーザーニーズ、国際制度調和を踏まえ、本規定の趣旨等を鑑みれば、出願人の商標登録 を受ける利益と他人の氏名に係る人格的利益とのバランスを調整し、本規定における他人 の「氏名」に一定の知名度の要件を課す方向での法改正(以下「改正案」という。)を検討 すべきではないか。 ■検討に当たっては、次の1~4に留意する必要がある。 1.「一定の知名度」に係る要件について 2.改正案から生じ得る課題について 3.関連する規定について 4.審査運用の見直しについて 9 検討事項1.「一定の知名度」に係る要件について ➢ 本規定の「他人」について知名度の要件を設けるに当たり、下記の観点に留意し、具体的な条文等について 検討を進めてはどうか。 ■求める知名度の程度について • 商標法における、知名度に関する他の条文(次頁参照)との関係、特に、本規定における「雅号」等に係る「著名」と の区別の要否、そして、本規定の趣旨である人格権保護の観点を踏まえ、恣意的に選択できる「雅号」等と選択の幅が 少ない「氏名」の性質を考慮しつつ、氏名権が侵害される蓋然性が高いケースに該当する「知名度」についての検討を していきたい。 • 例えば、求める知名度の程度を、本規定の「雅号」等と同様の「著名」又は一般にはそれよりも一段階求めるレベルが 低いとされる「需要者の間に広く認識されている」(商標法第4条第1項第10号等に規定する、いわゆる「周知」) とするのはどうか。 ■知名度の判断基準となる需要者の範囲について • 他人の氏名に一定の知名度の要件を設けることは、商標出願に係る指定商品・役務と氏名とを結びつけられることによ る弊害又は不利益を保護するものと考えられるところ、その判断基準となる需要者の範囲は、指定商品・役務の需要者 に厳密に限定せず、指定商品・役務を中心として、ある程度幅をもった需要者を対象としてはどうか。 【参考】調査研究において設置した委員会において委員から得た意見 • 「一定の知名度」に係る要件については、本規定の雅号、芸名等に係る「著名」の文言及びその解釈、商標法の他の規定における「著名」(第4条第 1項第6号)や「需要者の間に広く認識されている」等の文言(第4条第1項第10号等)及びその解釈、更には解釈上、周知・著名性が要件とされる 条文(第4条第1項第15号)を参照し、知名度の内容や程度、条文の規定の在り方を検討する必要がある。本規定の雅号、芸名等に係る「著名」との 関係ついては、氏名が自由に選択・変更できないという点で違いがあることに留意すべきではないか。 • 「一定の知名度」については、出願商標の指定商品・役務と結びつけられる危険性のある他人が存在するか否かという観点から判断することが適切で はないか。氏名が商品・役務と結びつけられる危険性に着目することから、判断基準となる需要者は、指定商品・役務を中心として、ある程度幅を もった需要者を対象とすべきであり、指定商品・役務の需要者に厳密に限定されるものではないと考えられる。 10 【参考】商標法における、周知性・著名性に関する条文例 条文 条文の文言 3条2項 「需要者が何人かの業務に係る 商品又は役務であることを認識 することができるもの」 「需要者が何人かの業務に係る商品又は役務であることを認識することができるもの」とは、何人かの出所表示として、その商品又は 役務の需要者の間で全国的に認識されているものをいう。(商標審査基準第2、2(1)) 4条1項 3号イ 「需要者の間に広く認識されて いる」 需要者の範囲は、最終需要者まで広く認識されている場合のみならず、取引者の間に広く認識されている場合を含む。「需要者の間 に広く認識されている」か否かの判断における考慮事由及び証拠方法は、この基準第2(第3条第2項)の2.(2)及び(3)を準用する。 (商標審査基準第3、三、3.(2)(ア)(イ)) 同6号 「著名」 「著名」の程度については、国等の権威、信用の尊重や国等との出所の混同を防いで需要者の利益を保護するという公益保護の趣旨に 鑑み、必ずしも全国的な需要者の間に認識されていることを要しない。 (商標審査基準第3、五、5.) 同8号 「著名」 他人の「著名な」雅号、芸名、筆名又はこれら及び他人の氏名、名称の「著名な」略称に該当するか否かの判断にあたっては、人格権保 護の見地から、必ずしも、当該商標の指定商品又は指定役務の需要者のみを基準とすることは要しない。(商標審査基準第3、七、 3.) 「需要者の間に広く認識されて いる」 「需要者の間に広く認識されている商標」には、最終消費者まで広く認識されている商標のみならず、取引者の間に広く認識されてい る商標を含み、また、全国的に認識されている商標のみならず、ある一地方で広く認識されている商標をも含む。(商標審査基準第 3、九、1.(1)) 「需要者の間に広く認識されている」か否かの判断に当たっては、この基準第2 (第3条第2項)の2.(2)及び(3)を準用する。(商標 審査基準第3、九、1.(2)) 同15号 ー 本号に該当するか否かは、例えば、次のような事実を総合勘案して判断する。 (略) ②その他人の標章の周知度 (略) なお、②の周知度の判断に当たっては、この基準第2(第3条第2項)の2.(2)及び(3)を準用し、また、必ずしも全国的に認識され ていることを要しない。(商標審査基準第3、一三、1.(2)) 同19号 「需要者の間に広く認識されて いる」 需要者の間に広く認識されているか否かの判断については、この基準第3の九(第4条第1項第10号)の1.を準用する。(商標審査 基準第3、一七、1.(1)) 7条の2 第1項 「需要者の間に広く認識されて いる」 商品又は役務の種類、需要者層、取引の実情等の個別事情によるが、全国的な需要者の間に認識されるには至っていなくとも、例え ば、商品又は役務の種類及び流通経路等に応じた次の(ア)から(エ)の類型における一定範囲の需要者に認識されている場合を含 むものとする。(商標審査基準第7、一、6.) 同10号 32条 解釈 「需要者の間に広く認識されて ここに「広く認識された」範囲は、4条1項10号の範囲と同様であると考えられるが、これを要件としたのは、相当程度周知でなければ保護に値 いる」 する財産権的価値が生じないものとみられるからである。(工業所有権法(産業財産権法)逐条解説〔第21版〕1624頁) 11 【参考】「一定の知名度」を有しない氏名の人格権(氏名権)について ➢ 今回の改正案では、他人の氏名に「一定の知名度」の要件を課すことを想定しているところ、仮 にこの案に沿った法改正が行われた場合、一定の知名度を有しない他人の氏名を含む商標がこれ までよりも登録されやすくなることについて、他人の側から見て懸念を生じさせないか。 • 現行制度では、必ずしも人格権(氏名権)の侵害とならないようなケースにおいても出願を拒絶せざるを得 ないが、今回の改正案は、本規定に基づく拒絶の対象を、一般に氏名権の侵害が起きる蓋然性が高い、一定 の知名度を有する他人に限定するもの。 • また、一定の知名度を有しない他人の氏名を含む商標出願についても、何らかの拒絶理由を有するもの(そ の出願経緯に不正の目的があると推認されるものや、具体的な使用の予定のないもの)については、他の条 文に基づき拒絶する可能性がある。 • 仮にそのような氏名が第三者によって商標登録された場合であっても、当該他人が自己の氏名として使用す ることが禁止されるものではない。また、登録された商標の使用に氏名権等の侵害があれば(※)、改正前 と同様に、民法上、行為が規制され得る。 ※例えば、一定の知名度を有しない者であっても、登録商標が使用された結果、自己の氏名と特定の商品・ 役務が結びつけられることにより精神的苦痛を受けた場合や、自己の評判が下がり実際に損害が発生した場 合に、民法に基づく請求が妨げられるものではない。 • 加えて、氏名を含む商標(本規定との関係で登録が困難なもの)を現在使用している者の利益が、改正法施 行により不当に害されない措置等の要否も検討する。 12 【参考】「一定の知名度」を有しない氏名の人格権(氏名権)について 現状(見直し前) 現行の第4条第1項第8号(他人の氏名)の対象範囲 あまり知られていない ・著名な氏名ブランドと同名の個人が存在した場合にも適用せざるを得ない。 ・ほとんどが氏名権侵害の蓋然性が低いケースだが一律で適用せざるを得ない。 →氏名権の過剰な保護 需要者の間に 広く認識 されている 全国的に 知られている 本規定で保護すべき人格権(氏名権): 「出願に係る指定商品・役務と氏名とを結びつけられることによる弊害又は不利益を受けない権利」と整理 低 見直し後 氏名の知名度の度合い(=自己の氏名と特定の商品・役務との結びつきの強さ) 登録商標が使用された結果、自己の氏名と特定の商品・役務が結びつけられることにより、 精神的苦痛を受けたり、自己の評判が下がり損害が発生したりする度合い 出願人側の商標登録を受ける権利を保護 ≒ 氏名権侵害の蓋然性 高 改正案の第4条第1項第8号(他人の氏名)の対象範囲(※) ※本規定の趣旨から保護すべき範囲(具体的な範囲は検討課題) あまり知られていない ・登録されても、自己の氏名を不正競争の目的なく普通に用いられる方法で表示して使用する限り、 その氏名の知名度にかかわらず商標権の効力は及ばない(第26条第1項第1号・同条第2項)。 ・改正法施行前から不正目的なく商標として使用していた者は継続的に使用可能(経過措置を検討) ・仮に、精神的苦痛・損害が発生した場合にあって、民法に基づく請求は妨げられない。 需要者の間に 広く認識 されている 全国的に 知られている 例えば、使用意思が不明 or 不正の目的が認められる場合には 第4条第1項第8号以外の拒絶理由が適用される 本規定における商標登録を受ける利益と人格的利益のバランス点(国際調和にも整合) 13 検討事項2.改正案から生じ得る課題について ➢ 改正案が採用された場合、以下の①~⑤の課題が生じ得るところ、それぞれ下記の点に留意して、検討を 進めてはどうか。 ①商標に含まれる氏名と無関係な者による出願(悪意の出願等)について 商標法第3条第1項柱書、第4条第1項第7号、第10号、第15号、第19号に基づく拒絶理由、商標法施行規則第19条に基づ く情報提供等、現行の商標制度においてどの程度対応可能か。 ②先取り出願について 商標の先取り自体は先願主義により許容されているところ、先取りを許容すべきでない場合については、商標法第3条第1項 柱書等の現行の拒絶理由を活用し対応することが可能か。 ③事後的に他人が知名度を獲得した場合について 事後的に他人が知名度を獲得することについては、他人の氏名を含む商標に限らず、商標一般について、現行法下でも問題と なり得るところ、商標の登録後に著名性を獲得した他人について、氏名権等に基づく権利の行使の可能性があるのか、商標権 者から後発的に著名になった者に対する権利行使について権利濫用の抗弁が認められるか等。 ④判断のばらつきについて 現行法においても複数存在する知名度に係る要件を含む規定を考慮し、これらを参考とした審査基準の策定が可能ではないか。 ⑤その他の措置について 現在、氏名を含む商標(本規定との関係で登録が困難なもの)を使用している者の利益が不当に害されないよう、継続的使用 権等の措置も設ける必要があるか。 14 検討事項3.関連する規定について ➢ 本規定中の別規定及び関連する規定について、改正案に伴う見直しの要否については、下記の考えの下、検討 を進めてはどうか。 ➢ 本規定において「氏名」と同列に規定されている「肖像」及び「名称」の見直しの要否について • 肖像については、個人との結びつきの強さ(氏名のような偶然の一致が考えにくいこと)から、氏名と同様の緩和の必要性は低いといえる。 • 名称については、その選択の幅があることといった氏名との性質の違いから、自然人の氏名と同様の保護を認める必要性は低いといえる。 ➢ 商標法第26条第1項第1号及び同第2項の見直しの要否について 【参考】第二十六条 商標権の効力は、次に掲げる商標(他の商標の一部となつているものを含む。)には、及ばない。 一 自己の肖像又は自己の氏名若しくは名称若しくは著名な雅号、芸名若しくは筆名若しくはこれらの著名な略称を普通に用いられる方法で表示する商標 2 前項第一号の規定は、商標権の設定の登録があつた後、不正競争の目的で、自己の肖像又は自己の氏名若しくは名称若しくは著名な雅号、芸名若しくは筆名 若しくはこれらの著名な略称を用いた場合は、適用しない。 • 上記規定の趣旨が後発的な事情等を考慮して商標権の効力を制限すること1 であるところ、自己の氏名を、不正競争の目的なく普通に用いられる方法で表 示して使用する場合は、その氏名の知名度にかかわらず商標権の効力を及ぼすべきでないことから、上記規定の改正が必要とはいえない。 ➢ 商標法第47条の見直しの要否について 【参考】第四十七条 商標登録が第三条、第四条第一項第八号若しくは第十一号から第十四号まで若しくは第八条第一項、第二項若しくは第五項の規定に違反してされたとき、 商標登録が第四条第一項第十号若しくは第十七号の規定に違反してされたとき(不正競争の目的で商標登録を受けた場合を除く。)、商標登録が同項第十五号の規定 に違反してされたとき(不正の目的で商標登録を受けた場合を除く。)又は商標登録が第四十六条第一項第四号に該当するときは、その商標登録についての同項の審 判は、商標権の設定の登録の日から五年を経過した後は、請求することができない。 • 上記規定が第4条第1項第8号に違反してされた商標登録を対象としている趣旨は、過誤登録から一定期間経過により瑕疵が治癒したものとして既存の 法律状態を維持することであるところ2 、改正案が採用された場合でも、その過誤登録について公益的な見地から既存の法律状態を覆してまでも無効とす べきものとはいえず、同規定の趣旨を変更すべきではない。また、自己氏名の使用については、別途過誤登録後の救済規定が存在していることからも (上記、商標法第26条第1項第1号参照。)、上記規定の改正が必要とはいえない。 1 工業所有権法(産業財産権法)逐条解説〔第21版〕1604頁 2 工業所有権法(産業財産権法)逐条解説〔第21版〕1692頁 15 検討事項4.審査運用の見直しについて ➢ マツモトキヨシ音商標事件判決(下記参考)を踏まえた審査運用の見直しを行うべきか。 • マツモトキヨシ音商標事件では、現行法を前提に本規定を「出願人の商標登録を受ける利益と他人の氏名、名称等に係る人格的利益の調 整を図る趣旨の規定」とし、一定の場合に本規定を非該当とする考え方が示された。 • 現行制度下で、出願商標の構成・態様、取引の実情を考慮して、一般に「他人の氏名」と認識することができないと判断される場合には 本規定を適用しないとの審査運用見直しを法改正の検討と併せて検討する余地はあるか。 ➢ 審査運用の見直しについては、法改正による検討を前提としながら、そのタイミング及び要否について慎重 に検討を進めてはどうか。 【参考】調査研究において設置した委員会において委員から得た意見 • 現行法の下で本規定に関する審査運用を見直すとした場合、「マツモトキヨシ音商標事件」の判旨なども参考に、出願商標の構成・態様、周知・著名性 等を考慮して、一般に「他人の氏名」と認識することができないと判断される場合には本規定を適用しないとの運用見直しについても、上記の制度見直 しと併せて検討する余地があると考えられるが、このような運用見直しにより新たに商標登録が認められるケースは、かなり限定的な範囲にとどまるの ではないか。 【参考】マツモトキヨシ音商標事件判決(知財高判2021年8月30日(令和2年(行ケ)第10126号)) 【裁判所の判断】 「商標法4条1項8号が、他人の肖像又は他人の氏名、名称、著名な略称等を含む商標は、その承諾を得ているものを除き、商標登録を受けることができ ないと規定した趣旨は、人は、自らの承諾なしに、その氏名、名称等を商標に使われることがないという人格的利益を保護することにあるものと解される( 最高裁平成15年(行ヒ)第265号同16年6月8日第三小法廷判決・裁判集民事214号373頁、最高裁平成16年(行ヒ)第343号同17年7月 22日第二小法廷判決・裁判集民事217号595頁参照)。 このような同号の趣旨に照らせば、音商標を構成する音が、一般に人の氏名を指し示すものとして認識される場合には、当該音商標は、『他人の氏名』を 含む商標として、その承諾を得ているものを除き、同号により商標登録を受けることができないと解される。 また、同号は、出願人の商標登録を受ける利益と他人の氏名、名称等に係る人格的利益の調整を図る趣旨の規定であり、音商標を構成する音と同一の称呼 の氏名の者が存在するとしても、当該音が一般に人の氏名を指し示すものとして認識されない場合にまで、他人の氏名に係る人格的利益を常に優先させるこ とを規定したものと解することはできない。 そうすると、音商標を構成する音と同一の称呼の氏名の者が存在するとしても、取引の実情に照らし、商標登録出願時において、音商標に接した者が、普 通は、音商標を構成する音から人の氏名を連想、想起するものと認められないときは、当該音は一般に人の氏名を指し示すものとして認識されるものといえ ないから、当該音商標は、同号の『他人の氏名』を含む商標に当たるものと認めることはできないというべきである。 ・・・『マツモトキヨシ』の表示は、本願商標の出願当時、ドラッグストア『マツモトキヨシ』の店名や・・・を示すものとして全国的に著名であり、『マツモ トキヨシ』という言語的要素を含む本願商標と同一又は類似の音は、テレビコマーシャル及び・・・において使用された結果、ドラッグストア『マツモトキヨ シ』の広告宣伝(CMソングのフレーズ)として広く知られていたという取引の実情を踏まえると、本願商標に接した者が、本願商標の構成中の『マツモト キヨシ』という言語的要素からなる音から、通常、容易に連想、想起するのは、ドラッグストアの店名としての『マツモトキヨシ』・・・であって、普通は、 『マツモトキヨシ』と読まれる『松本清』・・・等の人の氏名を連想、想起するものと認められない。」(第4条第1項第8号非該当) 16

資料6

参考資料1 令和3年度 産業財産権制度各国比較調査研究等事業 他人の氏名等を含む商標に関する調査研究 報告書(要約版) 令和4年3月 令和3年度 産業財産権制度各国比較調査研究等事業「他人の氏名等を含む商標に関する調査研究」 1.本調査研究の目的・背景・概要 1.1 調査研究の目的・背景 商標法第4条第1項第8号(以下「本規定」という。)においては、構成中に他人の氏名等を含む商標は、人格権(人格的利益)の保護の観点 から当該他人の承諾がなければ商標登録できないとされている。近時の審査・審判・裁判においては、本規定が厳格に解され、氏名商標の出願 が拒絶される傾向にあるところ、氏名を含むブランド名の保護に欠けるとの指摘がある。そこで、国内外における他人の氏名を含む商標に関す る制度及び氏名等に係る人格権について調査し、我が国における他人の氏名を含む商標に関する制度の見直しの要否検討の基礎資料とする。 1.2 調査研究の概要 【公開情報調査】 ・他人の氏名を含む商標に関する法令・審査基準・裁判例その他の有用な情報を、書籍、論文、審査例・審決例、判例・裁判例、調査研究報 告書、審議会報告書、データベース情報及びインターネット情報等を利用して調査。 ・国内は、本規定の立法の沿革、第26条第1項第1号及び同条第2項を踏まえ、自己の氏名を使用できる範囲、故人の氏名を含む商標の取扱 いを含め調査。また、氏名権等に関する主要な学説、判例・裁判例を調査。 ・海外は、米国、欧州、ドイツ、フランス、中国及び韓国について調査。 【国内ヒアリング調査】 ・商標に関する学識経験者又は弁護士・弁理士への調査(4者) ・氏名権等に関する学識経験者への調査(3者) ・ 企 業等 (フ ァ ッシ ョン 、 化粧 品及 び 洋菓 子の 分 野) への 調査 (4者) 【海外ヒアリング調査】 ・米国、欧州、ドイツ、フランス、中国及び韓国において、氏名商 標の実務に豊富な知見・経験を有する弁護士・弁理士が所属して いる法律事務所への調査。 【委員会による検討】 ・学識経験者、弁護士、弁理士の計5名(うち1名は委員長)で構成される調査研究委員会を設置(全3回開催)。 ・調査結果を分析、課題を整理し、我が国における他人の氏名を含む商標の制度の在り方を検討。 【まとめ】 ・近年、我が国では、ブランド戦略に活用できる商標法を目指して制度の改正が行われてきており、他人の氏名等を含む商標に関する制度に ついても、見直しの検討が必要となる段階に来ている。 ・制度見直しの方向性としては、本規定に係る人格的利益と商標登録を受ける利益との調整、商標法の法目的、本規定の課題の解決、審査の 実現可能性、諸外国との制度調和等を考慮し、本規定における「他人の氏名」に一定の知名度に係る要件を設けることが適当ではないか。 1 令和3年度 産業財産権制度各国比較調査研究等事業「他人の氏名等を含む商標に関する調査研究」 2.日本における他人の氏名等を含む商標に関する制度及び氏名等に係る人格権 2.1 商標制度 2.1.1 第4条第1項第8号の制定経緯、審査実態、学説 (1)制定経緯 「他人の氏名」について、本規定に相当する条文が商標法に初めて規定されたのは、明治42年商標法とされる。当時の条文の趣旨は「不正 手段を防遮するため」と説明されていたが、現行法においては、人格権保護の規定と解釈されている。 (2)審査実態 現在、特許庁では、構成中に他人の氏名を含む商標が確認された場合、氏名を表す文字の種類(漢字、欧文字等)、「他人」の知名度、出願 商標の知名度の有無等に関わらず、当該他人の承諾がない限り、本規定により拒絶するという審査を行っている。 (3)学説 学説では、本規定で保護される人格権について議論があり、例えば、第三者に排他的に自己の氏名を使用されることによる嫌悪、羞恥、不快 等の精神的な苦痛を問題としていると理解する見解が確認された。また、本規定の「他人」の範囲については、「他人」に限定を付す立場、付 さない立場が存在する。 (4)審査例・審判例・裁判例 (ⅰ)審査例・審判例 「氏名」等を含む商標に係る審査例及び審決例を調査し、出願人、指定商品・役務、文字の種類、構成・態様等の観点で分析した。 「氏名」を含む商標 「肖像」を含む商標 「名称」を含む商標 出願人 株式会社等の法人である場合がほとんどで あった。 スポーツ選手のマネジメントを行う株式会 本調査の対象事例においては、いずれも法 社等、法人である場合がほとんどであった。 人(株式会社)であった。 指定商品・役務 ファッション関係、玩具関係、広告・小売 関係、教育・サービス関係が比較的多い。 洋服や靴類、広告・小売等関係、娯楽・ス ポーツ関係が比較的多い。 特段の傾向を見いだせなかった。 欧文字表記のみからなる商標、又は欧文字 表記を含む商標が比較的多く確認された。 対象については、芸能人やスポーツ選手と いった著名な者が比較的多い。態様につい ては、写真、イラスト又はシルエットから なるものが確認された。 欧文字のみからなるものと比較し、漢字、 カタカナを用いるものが比較的多い。 肖像のみからなるもののほか、肖像を有す る者の氏名や関連する文字、数字等を含む ものが複数確認された。 名称以外の要素を含む商標は、氏名を含む 商標の場合と比較して少ない。 構成・態様 氏名の表記における姓と名の区切りについ ては、区切りのあるものの方が多く確認さ れた。近年は、区切りの有無に関わらず、 本規定の該当性を認め、拒絶される事例が 多いものと考えられる。また、氏名以外の 要素の有無については、これらの要素がな いものの方が多く確認された。 その他の考慮要素/拒絶理由の内容 近年の審査例・審決例では、「他人」の周 知・著名性、出願商標の周知・著名性、出 願人と他人との間の競業事業の有無といっ た条文にない要件を考慮することなく、本 規定の該当性を認め、拒絶される事例が多 いものと考えられる。 氏名のように、一つの対象(肖像)につき 複数人の「他人」が拒絶理由において示さ れる例は確認できなかった。この点で、氏 名を含む商標と比較すると、承諾書を得て 登録を得ることが容易である場合が多いも のと考えられる。 名称の認定に関して、文字の種類や商標の 構成・態様が争点となるものは確認できず、 この点は氏名を含む商標と異なっていた。 名称を含む商標において比較的多く見られ た争点は、商標に含まれる名称の「略称」 の著名性であった。 文字の種類/肖像の対象 2 令和3年度 産業財産権制度各国比較調査研究等事業「他人の氏名等を含む商標に関する調査研究」 2.日本における他人の氏名等を含む商標に関する制度及び氏名等に係る人格権(続き) (ⅱ)裁判例 「氏名」等を含む商標に係る裁判例を調査し、傾向を分析した。 最高裁の判決 ・本規定の趣旨は、氏名等に関する他人の人格的利益を保護することであると確認されている(最判平成16年6月8日(平成15年(行 ヒ)第265号)〔LEONARD KAMHOUT事件〕、最判平成17年7月22日(平成16(行ヒ)第343号)〔国際自由学園事件〕)。 ・他人の人格的利益の内容について、「人は、自らの承諾なしにその氏名、名称等を商標に使われることがない利益を保護されているので ある」と判示されている(最判平成17年7月22日(平成16年(行ヒ)第343号)〔国際自由学園事件〕)。 ・本規定の趣旨は「他人の人格的利益の保護」であることが繰り返し確認されている(知財高判平成28年8月10日(平成28年(行ケ)第 10065号)〔山岸一雄大勝軒事件〕等)。 ・「氏名」の認定については、商標の外観や我が国における一般的な氏名の表記方法等により、人の氏名と客観的に把握されるものである か否かを基準として行われることが一般的である(知財高判令和元年8月7日(平成31年(行ケ)第10037号)〔KEN KIKUCHI事件〕 等)。 高等裁判所の判決 ・「他人」については、ハローページやウェブページ等を根拠として、本願商標に含まれる氏名と同一氏名を有する他人の有無が認定され ており、当該他人(複数存在する場合にはその全員)の承諾を得ない限り、登録を認めないという立場が採用されている(知財高判令和 2年7月29日(令和2年(行ケ)第10006号)〔The Soloist.事件〕等)。 ・考慮要素については、本規定を文言どおりに解釈し、「他人の氏名」の知名度、出願商標の知名度、出願人と他人との競業関係の有無等 は通常考慮されない(上記〔山岸一雄大勝軒事件〕、〔KEN KIKUCHI事件〕等)。 ・知財高判令和3年8月30日(令和2年(行ケ)第10126号)〔マツモトキヨシ音商標事件〕は、本規定が「出願人の商標登録を受ける 利益と他人の氏名、名称等に係る人格的利益の調整を図る趣旨の規定」であるとし、「取引の実情に照らし、…音商標に接した者が、普 通は、音商標を構成する音から人の氏名を連想、想起するものと認められないとき」は、当該音商標は本規定に該当しないと判示した。 2.1.2 第26条第1項及び第2項の法律及び制定趣旨、裁判例 (1)制定趣旨 第26条は、過誤登録に対する第三者の救済等を趣旨として、商標権の効力が制限される場合を規定している。他人の氏名等を含む商標が過誤登録 された場合でも、業務を行う者が自己の氏名を普通に用いられる方法によって表示する商標には商標権の効力が及ばない(第26条第1項第1号)。 ただし、「不正競争の目的」がある場合はこの限りでない(同条第2項)。 (2)裁判例 構成中に氏名等を含む商標に係る裁判例を調査し、傾向を分析した。 最高裁の判決 高等裁判所の判決 ・略称が問題となった事案において、略称を示す文字が「図形標章と一体的に組み合わせて」用いられる場合は「普通に用い られる方法で表示するもの」に該当しないと判断されている(最判平成9年3月11日(平成6年(オ)第1102号)〔小僧寿 し事件〕)。 ・名称が問題となった事案において、ビール瓶の正面に貼られたラベルの下部に小さな活字一行で記載された文字は「普通に 用いられる方法で表示するもの」に該当すると判断された事例が一件存在する(東京地判平成14年10月15日(平成12年 (ワ)第7930号)〔Budweiser事件第一審〕)。 ・他方で、需要者の注意を引くような字体による場合や、装飾が施された場合は、「普通に用いられる方法で表示するもの」 に該当しないと判断されている(平成25年11月21日(平成24年(ワ)第25470号)〔スターデンタル事件〕等)。 3 令和3年度 産業財産権制度各国比較調査研究等事業「他人の氏名等を含む商標に関する調査研究」 2.日本における他人の氏名等を含む商標に関する制度及び氏名等に係る人格権(続き) 2.1.3 知財の有識者及びユーザーヒアリング結果 (1)知財の有識者へのヒアリング結果 商標に関する学識経験者又は弁護士・弁理士への調査4者へヒアリングを実施した。 ・近年の本規定の解釈・運用の厳格化により、本規定が実務上障害となる場合が多い等、本規定の解釈・運用について緩和方向での見直しに肯定的な意見があった。 1. 本規定に係る現行法 の解釈・運用 2. 本規定に係る人格的 利益の内容 ・承諾なく氏名を商標として使用等されることに伴う精神的な苦痛を意味するとのことで、概ね意見が一致していた。 3. 現行法における「他 人」の範囲の解釈 ・「他人」の範囲は限定されない(全ての「他人」が含まれる)との意見が多かった。また、国際調和の観点から、社会通念上、特定できる「他人」に限定してもよいのではないか、 という意見もあった。 4. 〔マツモトキヨシ音 商標事件〕の評価 ・一方で、立法の在り方として不合理とはいえず、問題はない等、緩和方向での見直しに否定的な意見もあったが、現行法の解釈・運用について他人の人格的利益をやや保護し過ぎて いるという面が指摘でき、改正するという意見も理解はできるともの指摘もあった。 ・マツモトキヨシ音商標事件が本規定を出願人の商標登録を受ける利益と他人の氏名等に係る人格的利益の「調整を図る趣旨の規定であ」るとしたことについて、本規定の趣旨を氏名 等に関する「人格的利益を保護することにあると解される」とした最高裁判決(〔LEONARD KAMHOUT事件〕、〔国際自由学園事件〕)とは矛盾していないとの意見が複数あった。 ・マツモトキヨシ音商標事件の考え方が適用できるのは音商標に限定されるとの意見がある一方で、それに限定されないという意見も複数あった。 (他人の承諾がなくとも商標登録を認める案として、①出願商標に含まれる氏名が出願人の「自己氏名」である場合を本規定の拒絶理由から除外する案、②出願商標が出願人の業務に 係る商品・役務の出所を示すものとして周知である場合を本規定の拒絶理由から除外する案、③「他人」が周知・著名である場合に限り本規定の拒絶理由とする案を例示。) 5. 本規定の登録要件緩 和の在り方 ・①は、自己氏名であれば本規定が適用されない合理的な理由が説明できない等の理由から、反対の意見が多かった。 ・②は、譲渡の禁止等の手当を行うことを前提として賛成する意見があった。また、不正競争防止法との整合性から事後的な取消制度が必要との意見があった。 ・③は、「他人」が無名でも、出願人に当該氏名を使うべき正当な理由がなければ、「他人」の利益を優先することはある等の理由から反対する意見がある一方、他人が周知・著名で あれば、人格的利益の侵害が起こる蓋然性が高く、審査の観点を踏まえた簡便な方法として賛成する意見もあった。 6. 故人の取扱い ・「他人」に故人を含める必要はないとのことで、意見が一致していた。 7. 肖像、名称に関する 要件緩和の必要性 ・「肖像」、「名称」いずれも、現時点では「氏名」と同様の要件緩和を行う必要はないという意見が多かった。 (2)ユーザーへのヒアリング結果 ファッション業界(2者)、化粧品業界(1者)、洋菓子業界(1者)の企業又は団体、4者に対してヒアリングを行った。 1. 氏名を含む商標を登録す るニーズ ・デザイナー・クリエイター等の氏名商標を登録するニーズについては、これを肯定する意見が大半であった。 2. 登録を希望する商標の構 成・態様等 ・氏名のみからなる文字商標の登録を基本として、これに加えて図形等を付した文字商標の登録を希望する意見が多かった。 3. 氏名を含む商標出願の経 験等 ・商標出願を担当する弁理士からは、中小企業や個人事業者がある程度ビジネスが進んだ後で氏名商標を取得する場合の困難性や、第三者から承諾書を得ることの難しさが指摘さ れた。 4. 本規定の登録要件緩和の 在り方 ・企業の商標担当者からは、出願人の著名性、あるいはブランドの認知度、周知性によって氏名商標の登録を認めるべきという意見が多かった。 ・商標出願を担当する弁理士からは、ブランドの知名度を考慮して本規定の適用がなされるべきとの意見もあったが、この意見に対しては出願人がまだ周知・著名でない段階でブ ランドとして自己の氏名を出願する場合に対応できないのが問題であるとの指摘もあった。「他人」が周知・著名な場合に限り本規定の該当事由とする考え方については、他人 に一定の限定が付され本規定の引用対象が縮小することになりよいという意見、第三者はデザイナー等の氏名が著名であるという前提で冒認出願をするので、そこに対しては登 録を認めないということであれば理解ができ、また、新興デザイナーの氏名商標についても登録が認められる可能性がある点はよいとの意見があった。 4 令和3年度 産業財産権制度各国比較調査研究等事業「他人の氏名等を含む商標に関する調査研究」 2.日本における他人の氏名等を含む商標に関する制度及び氏名等に係る人格権(続き) 2.2 氏名等に係る人格権 2.2.1 学説及び裁判例 (1)学説 ・我が国において、氏名権は、法律に明文の規定はないものの、人格権の一内容を構成するものとして、学説・判例によって認められている。 氏名権の内容については、複数の学説において、氏名を他人に冒用されない権利(氏名専用権)、氏名を正確に呼称される権利・利益(氏名呼称 権)が挙げられている。また、氏名に係るパブリシティ権を挙げる学説も複数見られるが、その法的性質については議論がある。 ・保護対象については、戸籍上の氏名が含まれることは争いがないと考えられるが、その他にどのような氏名や名称が保護の対象となるかについて は議論がある。 ・侵害が成立する要件については、通説的見解はないものと考えられるが、氏名権のうち、氏名専用権の侵害については、氏名の使用のみでは足り ず、権利者の利益を害することを必要とする見解がある。 ・肖像権についても、明文の規定はないが、学説・判例上、承認されているものと考えられる。肖像権の保護の根拠、法的権利性等については、議 論がある。 ・法人や団体の名称が人格権による保護の対象となるかについては、学説上、議論がある。人格権としての氏名権とは別の問題として考察すべきと する見解や、性質上自然人しか享有し得ない生命、身体に係る利益は別として、法人・団体にも人格権の保護は及ぶと解する見解がある。 (2)裁判例 氏名権、肖像権、名称権に関する裁判例を調査し、傾向を分析した。 最高裁判所 の判決 氏名権 ・最高裁が氏名権について初めて判断したのは、最判昭和63年2月16日(昭和58年(オ)第1311号)〔NHK日本語読み訴訟事件〕であり、この判 決は、氏名に関する権利・利益が人格権の一内容を構成するものであることを明らかにした。もっとも、直接的には「氏名を正確に呼称される利 益」が問題となった事案であり、氏名専用権について内容・対象、侵害の成立要件について明らかにするものではない。 ・氏名、肖像等に係るパブリシティ権について、最高裁として初めて判断したのは、最判平成24年2月2日(平成21年(受)第2056号)〔ピン ク・レディー事件〕であり、氏名、肖像等の顧客吸引力を排他的に利用する権利をパブリシティ権とし、人格権に由来する権利と位置付けた。 肖像権 ・最高裁として、初めて肖像に関連する判断をしたのは、刑事事件の最判昭和44年12月24日(昭和40年(あ)第1187号)〔京都府学連事件〕であ り、実質的に肖像権を肯定した判決と評価されている。最高裁の民事事件として、初めて肖像に関連する判断をしたのは、最判平成17年11年10 日(平成15年(受)第281号)〔和歌山毒入りカレー事件〕であり、人が肖像の撮影・公表に関する人格的利益を有することを明らかにした。 名称権 ・最高裁として、初めて団体(宗教法人)の名称権について判断をしたのは、最判平成18年1月20日(平成17年(受)第575号)〔天理教豊文教会 事件〕であり、「宗教法人の名称を他の宗教法人等に冒用されない権利」を認めている。 氏名権 ・訴訟上問題となった行為は、氏名の冒用行為、戸籍上の氏名(氏)の使用を求めた行為、ネームプレートの着用を義務づけた行為、無断で氏名を 広告等に利用した行為が挙げられる。 ・氏名の冒用行為は、いずれも冒用者が被冒用者の存在を知っていた事案であり、使用される氏名と第三者の氏名の偶然の一致が問題となった事案 は見当たらなかった。 ・問題となった行為が不法行為法上違法となるか否かの判断においては、例えば、氏名の冒用行為との関係では、承諾の有無、冒用者による氏名の 態様、氏名の使用された文書の性質等が考慮されていた。 肖像権 ・訴訟上問題となった行為は、無断で写真撮影により肖像を作成した行為、無断で図画により肖像を作成した行為、無断で作成した肖像を第三者に 提供した行為、無断で作成した肖像を公表した行為、無断で顔写真を利用してインターネット上の掲示板において第三者に対する中傷等を行った 行為、無断で肖像を広告等に利用した行為が挙げられる。 名称権 ・訴訟上問題となった行為は、著名な宗教法人と同一の名称を冒用した行為が挙げられる。 下級審 の判決 5 令和3年度 産業財産権制度各国比較調査研究等事業「他人の氏名等を含む商標に関する調査研究」 2.日本における他人の氏名等を含む商標に関する制度及び氏名等に係る人格権(続き) 2.2.2 人格権の有識者へのヒアリング結果 (1)人格権の有識者へのヒアリング結果 氏名権等に関する学識経験者(大学教授等)3者へヒアリングを実施した。 1. 氏名権の内容、保護対 象、侵害成立要件 ・氏名権の内容については、学説上、一つではなくいくつかに分類されるという意見が複数あった(他人にその氏名を冒用されない権利・利益、氏名を正 確に呼称される利益、氏名に係るパブリシティ権等)。本規定に係る人格的利益と関連性が認められるのは、「他人にその氏名を冒用されない権利・利 益」ではないかとの指摘があった。 ・保護対象については、戸籍上の氏名が保護されることについて争いはないが、通称も本名同様に保護を受けるとされており、戸籍名、通称以外の保護対 象としては、家元の名称や法人の名称等も問題になり得ると理解されているとの指摘があった。 ・侵害の成立要件については、「具体的な線引きは明らかではないが、氏名を勝手に用いた場合の一部に限られると考えられている」といった意見があっ た。また、他人にその氏名を冒用されない権利・利益について、冒用といえるかどうかで判断されているという意見、絶対権の侵害あるいは非絶対権の 侵害どちらに該当するのかによって違法性の判断が異なるという意見があった。 2. 氏名を有する者の周知・ 著名性等と氏名権の保護 対象該当性、侵害の成否 との関係 ・氏名を有する者が、(a) 周知・著名性を有すること、(b) 経済的利益を得る見込みがあることは、いずれも氏名権の保護対象該当性に影響を与え ないという意見があった。 ・「他人にその氏名を冒用されない権利・利益」との関係では、(a)、(b)いずれも氏名権の侵害の成否に影響を与える可能性があるという意見、影 響を与えないという意見があった。 3. 氏名の無断使用は当然に 氏名権の侵害となるか ・氏名の承諾のない使用が、(c)冒用ではなく偶然「他人の氏名」を含む場合、(d)他人の氏名を含む商標が自己の氏名を含む商標でもある場合につ いて、いずれも氏名権の侵害行為とならないか又は侵害行為があったとしても違法性が阻却されて最終的には侵害としては扱われなくなる可能性が高い との意見があった。 ・他方で、民法上、侵害の有無については(c)、(d)は影響を与えないが、故意・過失の要件との関係では(c)が、差止めの要件等との関係では (c)、(d)が考慮される可能性があることを指摘する意見もあった。 4. 民法上の氏名権と本規定 に係る人格的利益との関 係 ・日本における氏名権の整理において、本規定に係る人格的利益の位置付けは、氏名権のうち、少なくとも「他人にその氏名を冒用されない権利・利益」 が含まれていると見るべきとの意見があった。 ・他方で、本規定に係る人格的利益と民法上の氏名権との関係は明らかでないとした上で、本規定は民法の氏名権の権利行使可能な範囲を超えて他人の人 格的利益を保護している可能性があること、他人の氏名を使われない利益を保護し過ぎの印象があることを指摘する意見もあった。 5. 民法上の氏名権と他の権 利との調整の在り方 ・民法上の氏名権と他の権利との調整の在り方について、学説・判例上調整が必要であると理解されてはいるが、具体的にどう調整するかは全く議論がな い状態である。 ・他方で、調整の対象となる「他の権利」として、表現の自由、雇用関係にある被用者を識別するために戸籍上の氏名のみを用いるというようなルールを 挙げる意見もあった。 6. 本規定の登録要件緩和 の在り方 (他人の承諾がなくとも商標登録を認める案として、①出願商標に含まれる氏名が出願人の「自己氏名」である場合を本規定の拒絶理由から除外する案、 ②出願商標が出願人の業務に係る商品・役務の出所を示すものとして周知である場合を本規定の拒絶理由から除外する案、③「他人」が周知・著名であ る場合に限り本規定の拒絶理由とする案を例示。) ・①は、他人側の事情が考慮されていないので難しい等の意見があった。 ・②は、マツモトキヨシ音商標事件の判断に近く、他人のアイデンティティに係る権利は侵害されない余地があるという意見があった。 ・③は、周知・著名でない他人の権利・利益が考慮されなくなる点を懸念する指摘があったが、③に加えて、出願商標の使用予定等を考慮する運用を行う 場合は、出願人の利用態様を考慮する点で、③のみの場合より良いとの意見があった。 7. 故人の取扱い ・本規定の「他人」について故人を含む必要はないが、故人を含むとしても問題はないとする意見が複数みられた。 8. 肖像、名称に関する要件 緩和の必要性 ・肖像については、個人の特定性が高く、氏名と同じ課題が生じるケースはほとんどないと考えられることから、要件を緩和する必要がないという意見で 一致した。 ・名称については、自然人の氏名と同様の保護を認めるべきか民法上も議論があるところ、自然人より保護の範囲を限定することも正当化されるという意 見があった。 6 令和3年度 産業財産権制度各国比較調査研究等事業「他人の氏名等を含む商標に関する調査研究」 3.調査対象国・地域における他人の氏名等を含む商標に関する制度及び氏名等に係る人格権 米国、欧州、ドイツ、フランス、中国及び韓国の現地法律事務所の弁護士・弁理士に対してヒアリングを実施した。 米国 1. 2. 他人の氏名に関する拒 絶理由 異議・無効理由 ・商標の構成中に生存中の特定の個人を示す名称(以下「個人名」とい う。)を含むことは、当該他人の承諾を得ている場合を除き、商標法 第2条(c)により拒絶理由となり得る。 ・個人の生存の有無を問わず、ある者の名誉を毀損する又はその者との 関連性を虚偽的に想起させる商標は、商標法第2条(a)により拒絶 される。 ・異議申立て及び取消請求については、それぞれ商標法第13条(a) 及び第14条(3)に規定されている。 ・商標法第2条(a)及び第2条(c)のいずれもが、商標出願の異議 理由又は無効理由となり得る。 欧州 ・審査においては、識別力等に関する、いわゆる「絶対的拒絶理由」 についてのみ審査されるほか、他人の商標等の権利者から異議申立 てがあった場合に考慮される、いわゆる「相対的拒絶理由」に関し ても、他人の氏名に関する規定は設けられていない。 ・欧州連合EU商標に関する2017年6月14日の欧州議会及び理事会の 規則(EUTMR)では、「その使用が他の先行権利の保護を規制す る欧州連合立法又は国内法に従って禁止することができる場合」に 無効理由となり得る。先行権利の一つとして、個人名に係る氏名権 を含む名称についての権利(a right to a name)が挙げられてい る(EUTMR第60条(2)(a))。 ・商標法第2条(c)では、個人名について特定性の要件を付しており、 他人の承諾が必要となるのは、同一の個人名を有する全ての者では なく、特定性の要件を満たす者(一定の知名度を有する者)に限ら れる。 3. 他人の知名度の要件 ・特定性の要件が満たすのは、(1)著名であり、その者と商品又は役 務との関連性を公衆が合理的に想起するものと考えられる場合又は (2)その個人が商標の使用対象である業務と公然の関係性を有し ている場合である(TMEP§1206.02)。 ・EUTMR上は、他人の知名度に関する特定の法的枠組みは存在しな い。他人の知名度が考慮されるか否かは、加盟国の国内法による。 ・商標法第2条(c)の知名度の判断に当たっては、一部の商品又は役 務に限り周知性を獲得している場合と、米国の公衆を対象に広く周 知性を獲得している場合のいずれの場合も対象となり得る。 4. 自己氏名の出願である 場合「他人」の承諾 ・特定性の要件を満たす者(一定の知名度を有する者)が存在する場合 には、その者の承諾が必要となる ・他人の氏名に関する拒絶理由を受けることがないことから、他人の 承諾は不要である。 5. 出願人側の事情 ・出願人側の事情(出願商標の著名性、出願人が氏名商標を使用する必 要性等)は考慮されない。 ・出願人側の事情(出願商標の著名性、出願人が氏名商標を使用する 必要性等)が考慮されるかは、加盟国の国内法による。 6. 「他人」による自己氏 名の使用の制限 ・登録された氏名商標と同一の氏名を有する他人が、氏名を個人的用途 で使用することは可能である。ただし、登録商標と混同を生じさせる ような方法で使用することは、制限される可能性がある。 ・EUTMR第14条には、登録された氏名商標と同一の氏名を有する 「他人」が自然人である場合、当該他人は自己の名称を業として使 用することができるものの、「産業又は商業的事項における誠実な 慣行」に反して使用することはできない旨が規定されている。 7. 民法上の氏名権 ・氏名権については、各州が独立して人格権に関する法律を有しており、 ・氏名権の保護の有無、保護対象、要件等は各加盟国の法律よって異 氏名権が保護されるか否か、及び知名度を有しない者の氏名権が保護 なり、欧州の統一的な法律等は存在しない。 されるか否かについては、いずれも各州の法律によることとなる。 7 令和3年度 産業財産権制度各国比較調査研究等事業「他人の氏名等を含む商標に関する調査研究」 3.調査対象国・地域における他人の氏名等を含む商標に関する制度及び氏名等に係る人格権(続き) 1. 2. 3. 他人の氏名に関する拒 絶理由 異議・無効理由 他人の知名度の要件 ドイツ フランス ・審査においては、相対的拒絶理由は審査されない。また、構成中に氏 名を含むことのみをもって拒絶理由となる規定もない。 ・審査においては、相対的拒絶理由は審査されない。また、構成中に 氏名を含むことのみをもって拒絶理由となる規定もない。 ・個人名に係る氏名権を含む名称権は「ドイツ連邦共和国の全領域にお いて当該登録商標の使用を差し止める権原を有する」場合に、無効理 由となり得る(商標法第13条) ・他人の人格権を侵害することが無効理由となり得る。ここでの人格 権には氏名権が含まれると解されている(知的財産法第L711条3 (I)(8)、L714条3)。 ・この場合に保護される個人名は、フルネーム及び姓である。 ・商標法第13条の「ドイツ連邦共和国の全領域において当該登録商標 の使用を差し止める権原を有するとき」とは、その者が周知である場 合(ドイツ全域で氏名が認知されている場合)又は個人名が商業的環 境で使用されている場合に限定されるのが一般的とされている。 ・知的財産法第L711条3(I)(8)の条文上は、他人の知名度に関し て何ら規定されていないが、人格権侵害は、混同のおそれ等が要件 とされており、実務上、この規定の影響を受けるのは周知な氏名又 は珍しい氏名に限定されると考えられている。 ・氏名については、通常、ドイツ全域で認知されていることが必要とな るが、その氏名が商業的環境で使用されている場合には、その氏名は 原則ドイツ全域で効力を有すると認められる (Ströbele/Hacker/Thiering, Markengesetz, § 5 Rn. 68参照)。 もっとも、個人名で行われるビジネスが地域内にとどまっており、拡 大を意図していないことが明白である場合には例外的に無効理由にな らないと解されている。 ・知名度の判断は、指定商品・役務の需要者に限定されず、商品・役 務の需要者に当該氏名が知られているかどうかという観点で判断さ れ、極めて著名な氏名であれば、あらゆる分野において無効が認め られる可能性がある。 ・知名度の判断は、指定商品・役務とは無関係に広く知られている必要 があると解されている。ただし、需要者に認知されている場合は、通 常、企業名権(商標法第5条、民法第12条)を有することになるた め、この場合は、商標法第12条に基づき当該権利が無効理由となる。 4. 自己氏名の出願である 場合「他人」の承諾 5. 出願人側の事情 6. 「他人」による自己氏 名の使用の制限 7. 民法上の氏名権 ・他人の氏名に関する拒絶理由を受けることがないことから、他人の承 諾は不要である。 ・他人の氏名に関する拒絶理由を受けることがないことから、他人の 承諾は不要である。 ・出願人側の事情(出願商標の著名性、出願人が氏名商標を使用する必 要性等)は考慮されない。 ・出願人側の事情(出願商標の著名性、出願人が氏名商標を使用する 必要性等)は考慮されない。 ・登録された氏名商標と同一の氏名を有する「他人」は、自己の氏名を 取引上使用することができるものの、誠実な取引又は商業慣行に反し て使用することはできない(商標法第23条)。 ・登録された氏名商標と同一の氏名を有する「他人」が自然人である 場合、当該他人の「氏名」については、業として使用することがで きない。また、当該他人は、自己の「姓」又は「宛先」については、 業として使用することができるものの「公正な取引慣行」に反して 使用することはできない(知的財産法第L713条6(1))。 ・個人の氏名は、民法第12条に基づき保護される。また、知名度を有 しない者であっても当該規定の保護対象となる。 ・個人の氏名は、民法第9条に基づき保護される。また、知名度を有 しない者であっても当該規定の保護対象となる。 8 令和3年度 産業財産権制度各国比較調査研究等事業「他人の氏名等を含む商標に関する調査研究」 3.調査対象国・地域における他人の氏名等を含む商標に関する制度及び氏名等に係る人格権(続き) 1. 2. 中国 韓国 ・商標の構成中に著名な芸能人・政治家等の氏名を含むことは、拒絶理 由となり得る(商標法第10条第1項第7号、第8号、商標審査審理 指南 下編 第3章第3部分3.7及び3.8)。 ・商標の構成中に著名な他人の氏名を含むことは、当該他人の承諾を 得た場合を除き、拒絶理由となり得る(商標法第34条第1項第6 号)。 ・「著名な」の文言は、1974年の改正により導入されたものであり、 それ以前は単に「他人の氏名」であった。 他人の氏名に関する拒 絶理由 異議・無効理由 3. 他人の知名度の要件 4. 自己氏名の出願である 場合「他人」の承諾 5. 出願人側の事情 6. 「他人」による自己氏 名の使用の制限 7. 民法上の氏名権 ・著名な故人との関係を虚偽に表示するおそれがある商標等は、商標 法第34条第1項第2号に基づく拒絶理由となり得、さらに、公序 良俗等に反する商標等についても、商標法第34条第1項第4号に 基づく拒絶理由となり得る。 ・商標法第10条第1項第7号及び第8号の違反は異議理由(商標法第 33条)及び無効理由(商標法第44条)となり得る。加えて、先行す る他人の権利を侵害してはならない旨規定する商標法第32条は、異 議申立や無効審判の根拠とされるのが一般的である。 ・拒絶理由の違反は、異議理由・無効理由にもなり得る(商標法第 60条、第117条)。 ・商標法第10条第1項においては基本的に他人の氏名に著名性が要求 され、この著名性は指定商品等の需要者にとどまらず広く一般需要者 を基準に判断される。これに対して、商標法第32条において求めら れる知名度は、関連公衆(当該人物が有名となる領域の一般の需要 者)を基準に判断される(最高裁判所による商標の権利付与・権利確 定に係わる行政事件の審理における若干問題に関する規定第20条、 商標審査審理指南 下編 第14章第3部分3.4)。 ・上記各規定の他人の氏名について、商標法第34条第1項第2号及 び第6号については条文上、第4号については解釈上、著名性が求 められる。 ・商標法第10条第1号第7号に規定される著名な他人が存在する場合 には、承諾が必要となる。8号の場合には、たとえ本人からの承諾が あっても登録できない。 ・要件を満たす者(著名な他人)が存在する場合には、承諾が必要と なる。 ・出願人側の事情(出願商標の著名性、出願人が氏名商標を使用する必 要性等)は考慮されない。 ・出願人側の事情(出願商標の著名性、出願人が氏名商標を使用する 必要性等)は、考慮されない。 ・民法典を根拠にして、他人は自己の氏名を引き続き使用することがで きるが、商標法により、業として使用することはできないとされてい る。 ・氏名商標が登録された場合、当該氏名と同一の氏名を有する「他 人」は、自己の氏名を商取引慣行に反して使用することができな い(商標法第90条第1項第1号、第99条第2項)。 ・商標法第34条第1項第6号において求められる著名性は、社会通 念上、国内の一般需要者又は関連取引業界において、一般的に広く 認知され得る程度である(審査基準第5部第6章1.1.1)。第2号、 第4号についても、同様に一般需要者又は指定商品の需要者であり (商標審査基準第5部第2章1.1.3)、一般に広く認知されている 者及び需要者を基準に認知されている者は、いずれも保護の対象と なる。 ・商標法第90条は、従前、「普通に用いられる方法」で使用するこ とを要件としていたが、これを悪用して警告を送り、和解金を取る 事例が多く出てきたため、2016年に「商取引の慣行により使用す る」に変更する改正が行われた。 ・民法典には、氏名権に関する規定があり(第1012条、第1014条)、 知名度を有しない者であっても当該規定の保護対象となる。 ・氏名権は民法に明文の規定はないが、判例によって認められており、 知名度を有しない者であっても当該規定の保護対象となる。 9 令和3年度 産業財産権制度各国比較調査研究等事業「他人の氏名等を含む商標に関する調査研究」 4.他人の氏名等を含む商標に関する制度の在り方についての委員会での検討結果 4.1 現行制度の問題点 他人の氏名を含む商標の権利取得に関して、国内企業及び有識者に対してヒアリングを実施したところ、ファッション分 野のデザイナー等は、自分の氏名をブランド名として使用するケースが多いため、近年、本規定との関係で新規の商標登録 ができず、既登録商標を有しない新興のデザイナーのビジネスに支障が生じていること、既登録商標を有する有名なデザイ ナーについても、過去に登録できていた自己の氏名を含む商標について新規の商標登録を受けることができず、ビジネスに 支障が生じていることが確認された。 このような状況においては、商標の保護により商標の使用をする者の業務上の信用の維持を図ることや、商標権の保護に より需要者の利益を保護することに支障が生じ、商標法第1条に記載された法の目的を達することができないことが懸念さ れる。 4.2 調査研究委員会の設置 調査結果及び本調査研究の課題について専門的な視点からの検討、分析、助言を得るため、学識経験者、弁護士及び弁理 士の計5名で構成される調査研究委員会を設置し、全3回にわたり議論を行った。 【委員会検討スケジュール】 【第1回】2021(令和3)年9月15日(水) 調査方針の確認、公開情報調査の結果報告、国内外の法制度及び運用の整理、ヒアリング先及びヒアリング調査項目の決定、 現行制度・運用に関する課題の確認 【第2回】2021(令和3)年11月26日(金) ヒアリング調査の結果報告、現行制度・運用に関する課題の整理及び分析・検討、他人の氏名を含む商標の制度の在り方を検討 【第3回】2022(令和4)年2月8日(火) 他人の氏名を含む商標の制度の在り方を検討、報告書(案)の提示及び検討 【委員会構成メンバー】 氏名 所属 学識者 実務家 石井 美緒 日本大学商学部 准教授、弁護士 金子 敏哉 明治大学法学部 教授 (委員長)小塚 荘一郎 学習院大学法学部 教授 大西 育子 オリナス特許事務所 弁理士 中川 隆太郎 シティライツ法律事務所 弁護士 10 令和3年度 産業財産権制度各国比較調査研究等事業「他人の氏名等を含む商標に関する調査研究」 4.他人の氏名等を含む商標に関する制度の在り方についての委員会での検討結果(続き) 4.3 問題解決の選択肢 本規定に係る問題を解決するためには、出願人の商標登録を受ける利益と他人の氏名等に係る人格的利益のバランスのとり方を見直すこと が必要と考えられる。その調整の在り方について、過去に有識者が論文等に記載した見直し案等も参考にしながら、以下のとおり複数の選択 肢を設け、それぞれ具体的な検討を行った。 【運用変更案】 【法改正案】 案1 案6 【審査における拒絶理由としない運用】 案7 審査において本規定の拒絶理由を通知しないことにより、他人の氏名を含む 商標について商標登録を可能とする運用である。なお、他人は、登録異議の申 立てをするか、商標登録を無効にすることについて審判を請求することができ る。 【他人の氏名が一定の知名度を有する場合のみ拒絶理由とする運用】 案2 案4 【文字種まで完全一致である場合のみ拒絶理由とする運用】 10 案 審査において利益衡量を行い、出願人において氏名を商標として使用する必 要性の程度が高い場合、かつ、出願商標の態様、指定商品・役務に鑑みて、他 人の利益を侵害する可能性が低い場合は、本規定を適用しないとする運用であ る。 案 【利益衡量を行う運用】 法 改 正 案9 出願商標が氏名を含むものであっても、出願商標が出願人(又はこれに準ず る者)の出所表示として周知又は著名である場合は、本規定を適用しないとす る運用である。 案8 【出願商標が周知又は著名である場合は本規定を適用しないとする運用】 案3 運 用 変 更 審査において、一定の知名度を有する他人が発見された場合のみ本規定の拒 絶理由を通知することにより、一定の知名度を有する他人が存在する場合を除 き、他人の氏名を含む商標について商標登録を可能とする運用である。 案1の法改正版。本規定のうち「他人の氏名」を拒絶理由の対象から除外し つつ、他人による登録異議の申立てや無効審判の請求については可能とする法 改正である。 【他人の氏名に一定の知名度に係る要件を付す法改正】 本規定の「他人の氏名」に、一定の知名度の要件を付す法改正である。審査 に関しては案2の法改正版であるが、一定の知名度を有しない他人は、商標登 録を取消す又は商標権を無効にすることができなくなる点で、案2と相違する。 【出願商標が周知又は著名である場合は本規定を適用しないとする法改正】 案3の法改正版。出願商標が出願人(又はこれに準ずる者)の出所表示とし て周知・著名である場合は、本規定を適用しないという規定を新たに設ける法 改正である。 【利益衡量の規定を設ける法改正】 案4の法改正版。出願人において氏名を商標として使用する必要性の程度が 高い場合、かつ、出願商標の態様、指定商品・役務に鑑みて、他人の利益を侵 害する可能性が低い場合は本規定を適用しないという規定を新たに設ける法改 正である。 【自己氏名を含む商標の場合は本規定を適用しないとする法改正】 出願商標が出願人の自己氏名を含む商標である場合には、本規定を適用しな いという規定を新たに設ける法改正である。 【案7と案10を組み合わせた法改正】 11 案7と案10を組み合わせた法改正であり、具体的には、出願商標が出願人の自己氏 名を含む商標であって、一定の知名度を有する他人が存在しない場合には、本規定 を適用しないという規定を新たに設ける法改正である。 案 案5 出願商標に含まれる氏名と「他人の氏名」が文字種まで完全に一致する場合 のみ、審査の拒絶理由とする運用である。 【本規定から「他人の氏名」を削除する法改正】 【「含む」を「普通に用いられる方法で表示する」等に変える法改正】 12 本規定の「含む」を「普通に用いられる方法で表示する」等に変更する法改正であ る。これによって、「普通に用いられる方法で表示する」ものでない商標は、本規 定に該当しないものとなる。 11 令和3年度 産業財産権制度各国比較調査研究等事業「他人の氏名等を含む商標に関する調査研究」 4.他人の氏名等を含む商標に関する制度の在り方についての委員会での検討結果(続き) 4.4 各選択肢の評価 選択肢について検討し、①本規定の趣旨との関係、②法目的・本規定の課題との関係、③その他の懸念点、④他国の制度との比較の観 点から整理すると、以下のとおりとなった。 【運用変更案】 対策案 1 審査における拒絶理由としない。 (異議申立/無効審判請求を待って判断) 法目的や本規定の課題(ニーズ)との関係 本規定の趣旨との関係 (他人の氏名に係る人格 的利益の保護) 商標登録を受ける利益 需要者の利益 × △ × 他人の氏名に係る人格的利 益は考慮されない。 容易に登録は得られるが、 法的安定性に欠ける。 氏名商標が自由に登録でき てしまうことから、取引秩 序を乱すおそれが高い。 △ ○ △ • 2 「他人の氏名」が一定の知名度を有する場合の 「他人」が一定の知名度を み審査の拒絶理由とする。 有する場合を除き、考慮さ れない。 • 審 査 の 運 用 見 直 し △ 出願商標が出願人(又はこれに準じる者)の出 3 所表示として周知・著名である場合には、本規 出願商標が周知・著名であ 定を適用しない。 る場合、考慮されない。 • • △ • 一定の知名度を有する他人 との関係で登録を認めない ことにより、取引秩序の維 持に資する。 他国の制度との比較 × - • 商標法第4条の不登録事由 としての位置づけに反する。 • 「他人」の監視等の負担が 大きい。 • 知財高裁判決(「なお」書 で、上記の二点に言及した ものあり)に整合しない。 × • 「他人の氏名」に条文にな い要件(一定の知名度)を 付加している。 • 知財高裁判決(複数あり) に整合しない。 ○ 法的安定性に欠ける (マツモトキヨシ音商 標事件の評価による)。 商標の出所表示機能に着目 した要件であり、取引秩序 新興デザイナーの氏名 の維持に資する。 商標等、周知・著名で ないものは保護対象外。 △ • 出願人と「他人」との利益 衡量を図るという点は理想 的。 法的安定性に欠ける。 △ ◎ 4 運用見直しとして、利益衡量を行う。 一定の知名度を有する 「他人」が存在しない 限り登録可能。新興デ ザイナーの氏名商標も 保護。 その他の懸念点 △ 権利移転の場合、事後的に周知 性が失われた場合の取扱いの問 題。 ○ × 法的安定性に欠ける (マツモトキヨシ音商 出願人の商標を使用する必 標事件の評価による)。 要性や他人の知名度の衡量 が適切になされる場合には、 審査が困難。 個別具体的に判断され 案2・3に準じ、取引秩序 るため予見可能性を欠 の維持に資する。 く。 △ △ から、取引秩序を乱すおそ れあり。 • - 該当なし。 (米国・韓国・中国 に類似の制度はある が、基本的には条文 上の根拠あり。) - 該当なし。 - 該当なし。 × アルファベット等の表記に • 出願商標に含まれる氏名と「他人の氏名」が文 5 字種まで完全に一致する場合のみ、審査の拒絶 文字種の一致しない商標に 容易に登録は得られるが、 より、氏名商標を比較的容 易に登録できてしまうこと 理由とする。 ついては、考慮されない。 法的安定性に欠ける。 該当なし。 「他人の氏名」に条文にな い要件(文字種の一致)を 付加している。 知財高裁判決(複数あり) に整合しない。 - 該当なし。 12 令和3年度 産業財産権制度各国比較調査研究等事業「他人の氏名等を含む商標に関する調査研究」 4.他人の氏名等を含む商標に関する制度の在り方についての委員会での検討結果(続き) 【法改正案】 4.4 各選択肢の評価(続き) 対策案 本規定の趣旨との関係 (他人の氏名に係る人格的 利益の保護) 商標登録を受ける利益 需要者の利益 × △ × 法目的や本規定の課題(ニーズ)との関係 • 6 本規定から「他人の氏名」を削除する。 氏名商標が自由に登録できて 他人の氏名に係る人格的利益 容易に登録は得られるが、 (異議申立事由/無効事由追加) しまうことから、取引秩序を • は考慮されない。 法的安定性に欠ける。 △ ○ • 7 本規定の「他人の氏名」に一定の知名度 「他人」が一定の知名度を有 に係る要件を付す。 する場合を除き、考慮されな い。 • 8 法 改 正 9 一定の知名度を有する 「他人」が存在しない 限り登録可能。新興デ ザイナーの氏名商標も 保護。 予見可能性に資する。 乱すおそれが高い。 • 他国の制度との比較 × △ 異議・無効で「他人」の 審査主義を原則とする日本の制度 一定の知名度を要件とす る場合、ドイツ・フラン と整合しない。 ス(※)に類似の制度が 「他人」の監視等の負担が大きい。 あり、大きな問題なく、 氏名と関連性を有しない者による 運用されている。 商標先取りの懸念。 ※審査段階では、絶対的 拒絶理由のみ審査 ○ 一定の知名度を有する他人と • の関係で登録を認めないこと により、取引秩序の維持に寄 • 与。 ◎ △ 氏名と関連性を有しない者による 米国 ・ 韓 国・ 中 国 にお い 商標先取りの懸念。 て、 類 似 の制 度 が 採用 さ 事後的に他人の氏名が知名度を獲 れ、 大 き な問 題 な く、 運 用されている。 得した場合の取扱いの問題。 △ △ ○ △ - ◎ △ ○ × - 出願商標が出願人(又はこれに準じる 者)の出所表示として周知・著名である 新興デザイナーの氏名商標 商標の出所表示機能に着目し 場合には、本規定を適用しないと規定す 出願商標が周知・著名である 等、周知・著名でないもの た要件であり、取引秩序の維 権利移転の場合、事後的に周知性が失 該当なし。 場合、考慮されない。 われた場合の取扱いの問題。 る。 は保護対象外。 持に寄与。 利益衡量の規定を置く。 出願人の商標を使用する必要 性や他人の知名度の衡量が適 出願人と「他人」との利益衡 個別具体的に判断されるた 切 に な さ れ る 場 合 に は 、 案 審査が困難。 量を図るという点は理想的。 め予見可能性を欠く。 7・8に準じ、取引秩序の維 持に寄与。 △ △ △ • 出願商標が出願人の自己氏名を含む商標 自己氏名であれば、容易に氏 • 10 である場合には、本規定を適用しないと 出願商標が自己氏名を含む商 「自己氏名」の解釈によっ 名商標を登録できてしまうこ • ては、ニーズを満たせない 規定する。 標である場合、考慮されない。 とから、取引秩序を乱すおそ 可能性。 れあり。 11 7と10との組合せ 12 その他の懸念点 該当なし。 △ - 先取りの問題。 権利移転の場合の取扱いの問題。 自己氏名を含む場合、「他人」の 該当なし。 人格権を考慮しなくていいことに ついて、合理的説明が困難な可能 性。 △ △ ○ △ - (上記7・10参照) (上記7・10参照) (上記7・10参照) (上記7・10参照) - △ ○ △ × - デザイン化等することで容易 • 氏名を「含む」の文言を「普通に用いら 「普通に用いられる方法で表 デザイン化等することで容 に氏名商標を登録できてしま れる方法で表示する」等に変更する。 示」されていない商標につい ては、考慮されない。 易に登録を得られる。 うことから、取引秩序を乱す • おそれあり。 商標法第4条の法体系に整合しな い。 氏名と関連性を有しない者による 商標先取りの懸念。 該当なし。 13 令和3年度 産業財産権制度各国比較調査研究等事業「他人の氏名等を含む商標に関する調査研究」 4.他人の氏名等を含む商標に関する制度の在り方についての委員会での検討結果(続き) 4.5 制度見直しの方向性 ・運用変更に関する案1から案5までについて見ると、これらの案ではユーザーニーズを十分には満たすことが出来ず、また、案3以外に ついては、審査が困難、法律や裁判例に整合しない等の懸念が存在することが指摘できる。 ・法改正に関する案6から案12までについて見ると、案7及び案8以外は、審査が困難、我が国の法制度・体系と合致しない、ビジネス上 の使い勝手が悪い等の大きな懸念が存在することが指摘でき、更に案7の方がユーザーニーズを満たすことができる案と考えられる。 ・委員会においても、案7に賛同する意見が多く挙がった。 4.6 主要な課題の検討 ヒアリング結果等を踏まえると、案7に対しては、以下の課題が指摘できる。 1. 一定の知名度を有しない他人の氏名を含む商標を当該他人と無関係な者(赤の他人)が出願する行為は問題とならないか(「他人の氏 名」の先物買い的な商標出願)。 2. (前記1と関連して)出願の時点で一定の知名度を有しない他人の氏名であっても、赤の他人に商標登録されることで人格権(人格的利 益)が侵害されるケースは存在しないか。存在する場合、商標法上の他の条文で手当ての余地はあるか(特に第4条第1項第7号)。 3. 構成中に氏名を有する商標の登録が先取りとなることに問題はないか。 4. 商標登録後に、その構成中に含まれる他人の氏名が一定の知名度を得た場合にはどのような扱いとすべきか。 5. 一定の知名度の判断について、審査官によってばらつきが生じるおそれはないか。 6. 自身の氏名を含む商標が他人に商標登録されたことで不快感を抱く者が、事後的に商標登録を取り消す仕組みを導入する必要はあるか。 これらの課題について、委員からの指摘も踏まえ、以下のような整理が可能と考えられる。 ・(1、2に関連して)いわゆる悪意の出願については、現行の商標制度に基づきある程度の対応が可能であると考えられる。 ・(3に関連して)我が国商標法では先願主義を採用しており、商標の先取りそれ自体は法が予定しているところであるが、もし、これを許 容すべきでない場合には、同法第3条第1項柱書を根拠として出願人による商標の使用の意思等を確認することが可能である。 ・(4に関連して)事後的に他人が知名度を獲得した場合については、氏名商標のみならず商標一般について現行法下でも問題となり得るも のであり、現状、商標法において特段の救済は予定されていない。 この点については、諸外国でも考え方が異なるところ、我が国においても、商標登録後に著名性を獲得した他人について、氏名権等に基 づく権利の行使の可能性があるのか、商標権者から後発的に著名になった者に対する権利行使について権利濫用の抗弁が認められるか等、 検討の余地がある。 ・(5に関連して)知名度に係る要件を含む規定は現行法においても複数存在しているが、審査の基準を策定・公表により、審査運用の明確 性・画一性が図られているところ、これらの審査基準を参考にすることで、判断のばらつきが生じないような基準の策定が可能であると考 えられる。 ・(6に関連して)我が国における民事上の氏名権は、明文の規定が存在しないうえ、判例・裁判例が少なく、学説においても十分な議論が ない状況であるところ、知名度を有しない他人の氏名を含む商標が登録されたることが直ちに当該他人の氏名権の侵害に当たるか否かは明 らかでない。本件で商標法の改正が行われるとしても、人格権、氏名権等の侵害の成否について基準を変更するものではなく、登録された 商標の使用に氏名権等の侵害があれば、民事法上、行為を規制できる可能性がある。 14 令和3年度 産業財産権制度各国比較調査研究等事業「他人の氏名等を含む商標に関する調査研究」 4.他人の氏名等を含む商標に関する制度の在り方についての委員会での検討結果(続き) 4.7 その他の留意事項 ・案7を採用する場合には、登録商標と同一の氏名を有する者が自己氏名を使用する際の制限(商標法第26条の見直しの要否)や、本規定 に氏名と並んで規定されている肖像・名称の取扱い、故人の氏名の取扱いなどについても検討が行われたが、いずれも現時点において見 直しをすべきとの意見は見られなかった。 4.8 まとめ 全3回の委員会における議論を通じて委員から得た意見は、おおむね以下のとおりにまとめられる。 (1)ブランド戦略を促進していく上での氏名商標に係る現行制度への認識 近年、我が国では、ブランド戦略に活用できる商標法を目指して制度の改正が行われてきており、他人の氏名等を含む商標に関する商標制度 についても、見直しの検討が必要となる段階に来ている。 (2)見直しの方向性について ・制度見直しの方向性としては、本規定に係る人格的利益と商標登録を受ける利益との調整、商標法の法目的、本規定の課題の解決、審査の実 現可能性、諸外国との制度調和等を考慮し、本規定における「他人の氏名」に一定の知名度に係る要件を設けることが適当ではないか。 ・「一定の知名度」に係る要件については、商標法の他の規定を参照し、知名度の内容や程度、条文の規定の在り方を検討する必要がある。 ・日本における民事法上の氏名権は、明文の規定が存在しないうえ、判例・裁判例が少なく、学説においても十分な議論がない状況であるとこ ろ、氏名権と本規定に係る人格的利益との関係は、明らかとはいえない。もっとも、ある人の氏名と同一の氏名を使用することのみで直ちに 違法性を問われることはないとも考えられるのではないか。 ・本規定によって保護される人格的利益についても、氏名を含む商標の登録や使用のみで直ちに違法となるものではなく、本規定は、商標出願 に係る指定商品・役務と氏名とを結びつけられることによる弊害又は不利益を保護しようとしていると理解することができるのではないか。 ・この場合「一定の知名度」については、出願商標の指定商品・役務と結びつけられる危険性のある他人が存在するか否かという観点から判断 することが適切ではないか。判断基準となる需要者は、指定商品・役務を中心として、ある程度幅をもった需要者を対象とすべきであり、指 定商品・役務の需要者に厳密に限定されるものではないと考えられる。 (3)制度の見直しに伴い想定される課題について ・上記の見直しに当たっては、商標に含まれる氏名と無関係な者による出願、無関係とまではいえない者による出願、氏名商標の冒認出願、氏 名商標の先取り(早い者勝ち)等の課題があり、慎重な検討が必要であることが確認された。これらの課題に対する対応案として、委員会で は、上記4.6(主要な課題の検討)のような考えが示された。 (4)現行法下における運用の見直しによる対応について ・現行法の下で本規定に関する審査運用を見直すとした場合、「マツモトキヨシ音商標事件」の判旨なども参考に、出願商標の構成・態様、周 知・著名性等を考慮して、一般に「他人の氏名」と認識することができないと判断される場合には本規定を適用しないとの運用見直しについ ても、上記の制度見直しと併せて検討する余地があると考えられるが、このような運用見直しにより新たに商標登録が認められるケースは、 かなり限定的な範囲にとどまるのではないか。 15 禁無断転載 令和3年度 産業財産権制度各国比較調査研究等事業 他人の氏名等を含む商標に関する調査研究報告書 (要約版) 令和4年3月 請負先 一般社団法人 日本国際知的財産保護協会 〒105-0001 東京都港区虎ノ門1-14-1 郵政福祉琴平ビル4階

資料7

資料4 コンセント制度の導入 産業構造審議会知的財産分科会 第9回商標制度小委員会 令和4年9月29日 • 【参考】特許庁政策推進懇談会での議論 • コンセント制度導入検討の背景 • これまでの検討の経緯 • 審査基準の取扱いの利用状況について • 【参考】商標審査基準における取扱い • 近年のユーザーの意見 • ニーズの整理及び対応の方向性 • 今後の審議予定 • 【参考】コンセント制度の類型について • 【参考】主な国・地域におけるコンセント制度について 1 【参考】特許庁政策推進懇談会での議論 ➢ コンセント制度の導入について、懇談会メンバーからの意見及び同懇談会報告書における方向性は 以下のとおり。 ■主な意見 ➢ 外内の業務を担当する弁理士から、海外ではコンセント制度がある中で、日本にはそれがないために、海外の顧客にアサインバックの説明 をする負担があり、費用も高くなるため、毎回トラブルになるので早期の対応を求める声を昔からよく聞く。前向きに進めてほしい。 ➢ 知財を活用している中小企業では、留保型のコンセント制度導入に賛成の声がほとんど。多くの国で制度が導入されており、併存登録され 安全に使用されている商標が日本で使えないことは望ましくない。国境を越えたブランド展開の増加を想定すると、国際協調の観点やユー ザーフレンドリーの観点からぜひ導入を検討してほしいという声が複数ある。実務上、別の方法(アサインバック)でしている部分もあり、 制度導入することで問題は生じず、むしろ利便性が上がるのではないか。同一・類似の判断や出所混同の考え方については、公益保護の制 度設計をお願いしたいという声もあった。審査処理遅延の懸念はそんなにない。アサインバックでは対応できない部分があるので前向きな 検討をお願いしたい。 ➢ アサインバックを普段利用しているが大きな不都合は感じていない。アサインバックには欠点もあるが、コンセント制度もメリット・デメ リットがあると思う。コンセント制度を否定するものではないが、アサインバックとコンセントの二つを、会社のネイチャーや相手方の所 属する国などで使い分けることになる。両方あることについて特に反対するものではない。 ■以上の意見を踏まえた、検討の方向性 ➢ ➢ ➢ 産業界からの制度導入のニーズ及び消費者に受け入れられる文字列・ロゴの組み合わせは無限にあるわけではない中で、一度登録された商 標権は、更新により永続的に独占可能な権利であるところ、商標の資源の枯渇といった観点も踏まえると、我が国においてもコンセント制 度の導入について更なる検討を行うべきである。その際、商標法第1条に定める目的の一つである「需要者の保護」を考慮した制度を検討 していく必要がある。 このため、当事者間の同意があれば出所混同のおそれの有無の確認を経ることなく併存登録を認める(「完全型コンセント」)のではなく、 同意があってもなお出所混同のおそれがある場合には審査官の判断で拒絶する(「留保型コンセント」)べきではないか。 また、コンセントによる併存登録後に両商標の間で出所混同が生じる場合を想定し、登録後の権利移転により混同が生じた場合の取消審判 (商標法第52条の2(※))と同様に、不正競争の目的で他の商標権者の業務に係る商品又は役務と混同を生じるものをした場合には登 録を取消し得るような事後的な手当もあわせて、法改正の具体的内容について検討を深める必要がある。 ※参考:商標法(抜粋) 第五十二条の二 商標権が移転された結果、同一の商品若しくは役務について使用をする類似の登録商標又は類似の商品若しくは役務について使用をする同一若しくは類似の登録商標に係る 商標権が異なつた商標権者に属することとなつた場合において、その一の登録商標に係る商標権者が不正競争の目的で指定商品又は指定役務についての登録商標の使用であつて他の登録商標 に係る商標権者、専用使用権者又は通常使用権者の業務に係る商品又は役務と混同を生ずるものをしたときは、何人も、その商標登録を取り消すことについて審判を請求することができる。 ※2022年6月30日 特許庁政策推進懇談会「知財活用促進に向けた知的財産制度の在り方~とりまとめ~」より抜粋 2 コンセント制度導入検討の背景 ➢ 我が国の商標制度においては、先願に係る他人の登録商標又はこれに類似する商標であって、その商標登 録に係る指定商品若しくは指定役務又はこれらに類似する商品若しくは役務について使用をするものは、 商標登録を受けることができない(商標法第4条第1項第11号(以下「本規定」という。))。 商標法(抜粋) 第四条 次に掲げる商標については、前条の規定にかかわらず、商標登録を受けることができない。 (中略) 十一 当該商標登録出願の日前の商標登録出願に係る他人の登録商標又はこれに類似する商標であつて、その商標登録に係る指定商品若しくは指定役務(第六条第一項 (第六十八条第一項において準用する場合を含む。)の規定により指定した商品又は役務をいう。以下同じ。)又はこれらに類似する商品若しくは役務について使用をす るもの ➢ 審査官から本規定に基づく拒絶理由が通知された場合、一般に出願人が採っている対応としては、主に ①引用商標(拒絶理由に引用された先願に係る他人の登録商標) と抵触する指定商品・役務の削除(手続補正書の提出) ②引用商標と出願商標とが非類似である旨の主張(意見書の提出) ③引用商標権者との譲渡交渉又はアサインバック(※) ④引用商標に対する不使用取消審判等 がある。 ※アサインバック 商標登録出願人の名義を、一時的に引用商標権者の名義に変更することで、引用商標権者と新たに出願する出願人の名義を一致させて本規定に基づく拒絶理由を解消し、 商標登録を得た上で、引用商標権者から元の商標登録出願人に再度名義変更を行う等の手法のこと。 ➢ ①引用商標と抵触する指定商品・役務の削除による対応が不可能な場合、②~④のいずれかを選択するこ ととなるが、書面の作成や権利の移転には一定の金銭的・時間的コストが掛かるところ、権利者の同意に よる本規定の適用の除外制度(以下「コンセント制度」という。)があれば、より簡便・低廉な選択肢と なり得るとして、ユーザーから導入を求められている。 3 これまでの検討の経緯 ➢ これまで、コンセント制度導入に関する議論が行われてきた際には、同一・類似商標の併存による出 所混同のおそれなどを理由に、法改正ではなく運用面での対応を行ってきた。 ➢ 直近(平成28年7月~29年8月)の検討の結果、コンセント制度に類する仕組みとして、商標審査 基準に①取引の実情(商品・役務の類否判断)や②出願人と引用商標権者との支配関係の考慮に関す る規定が導入され、その利用状況を見た上で、コンセント制度導入の必要性等を検討するのが望まし いとされている。 ■コンセント制度導入に関するこれまでの主な検討の状況 検討母体 主な検討内容、導入見送りの理由 「商標制度の在り方について(平成18年2月産業構造審議会 知的財産政策部会報告書)」を踏まえた「商標審査基準」 「類似商品・役務審査基準」の見直し(平成19年4月) 出所混同のおそれを理由に、法律改正ではなく、まずは運用面の見直しを行った。具体的には、審査に おいて「取引実情説明書」を考慮できることとするとともに、経済の実態や取引の実情に合致したもの とすべく商品又は役務の類否関係を見直した。 第2回 商標制度小委員会(平成28年7月) 出所混同のおそれ、商標法の趣旨、最高裁判決で示された考え方(類似=出所混同のおそれ有) (※1)と、「類似はするが混同しない」とするコンセント制度の考え方との整合性を理由に、法律改 正ではなく、まずは運用面での対応検討を進めることに(商標審査基準WG(※2)での検討へ)。 第21 回商標審査基準WG(平成28年11月) 「取引実情説明書」の運用の見直しを検討。商標審査基準(第13版)において、①商品又は役務の類 否判断における取引の実情の考慮、及び、②出願人と引用商標の権利者に支配関係がある場合の観点か ら見直しが行われ、平成29年4月から運用を開始。 第3回 商標制度小委員会(平成29年8月) 上記において改訂された商標審査基準における取扱いについて、ユーザーの利用状況(次頁参照)をみ た上で、改めて我が国におけるコンセント制度の導入の必要性、導入方法等について、検討を進めてい くことが望ましいとされた。 ※1 氷山印事件 「商標の類否は、対比される両商標が同一または類似の商品に使用された場合に、商品の出所につき誤認混同を生ずるおそれがあるか否かによって決すべきである (以下略)」(昭和43年2月27日 最判昭和39年3月(行ツ)第110号) ※2 産業構造審議会知的財産分科会商標制度小委員会商標審査基準ワーキンググループ 4 審査基準の取扱いの利用状況について ➢ 平成29年4月に運用が開始された審査基準の取扱いについて(詳細は次頁参照)、これまでの利用状況は、 ①取引の実情に基づいて商品・役務を非類似と判断した出願:1件 ②出願人と引用商標権者間に支配関係が認められた出願:511件 (いずれも2022年4月時点) ➢ ②については一定数の利用が認められる一方、①についてはほとんど利用されてこなかった事実が伺えるところ、 ユーザー利便性を一層上げる必要があるため、更なる検討が必要ではないか。 ■①商品又は役務の類否判断における取引の実情の考慮に関する取扱いにおいて非類似と判断された出願 出願番号 非類似と判断した指定商品・役務名(本願商標) 引用商標 非類似と判断した指定商品・役務名(引用商標) 2017-033050 第35類「 農業経営に関する指導及び診断並びに助言」 登録第5960687号 第35類「ウェブサイトの検索結果の最適化,IT(情報技術) 導入又はIT(情報技術)に関連するシステム構築に伴う経営 に関する助言又はコンサルティング」 ■ 商標審査基準における①商品又は役務の類否判断における取引の実情の考慮に関する取扱いや、②出願人と引用商標権者との支配関係の考慮に関する取扱い についてのユーザーの意見 ①商品又は役務の類否判断における取引の実情の考慮に関する取扱いについて • 本取扱いでは、どの程度の商品同士であれば非類似と判断されるか分から ないので、それであればアサインバックをしようという気持ちになる。 • 本取扱いは、引用商標権利者に非類似の主張をしてもらうという点のハー ドルが高く、加えて、陳述を取り付けられたとしても、特許庁で審査した 結果拒絶される可能性もあるため利用しにくい。どういう説明や証左があ れば非類似と認められるのか明確になれば使いやすいと思う。 • これまでに非類似と認められたのが1件ということで、通常の実務では使 いやすいものではないと思う。 • 考慮された取引の実情が後の審査を拘束するのではないかという懸念があ る。また、判例上、11号は、個別具体的な取引実情でなく、一般的な取引 実情を考慮するものであるので、本取扱いが利用できる機会があるのか疑 義がある。 ②出願人と引用商標権者との支配関係の考慮に関する取扱いについて • 同一の屋号を含むものの現在では資本関係のないグループ会社(旧財閥系 等)も本取扱いの対象にしてよいと思う。 • 国内企業と海外企業の関係だと、実際には親子関係にある企業であっても 両者の資本関係の立証が難しい場合がある。このようなケースも認められ るような要件の拡大を希望する。 • グループに複数の事業会社があるが、事業会社は審査基準の考慮要件とな る支配関係になく、結局、一事業会社の出願に対しほかの事業会社の登録 商標が引用され商標登録を断念した。出願人と権利者との間に支配関係が なくとも、グループ会社であることを示すことで足りれば使いやすい制度 になると思う。 • 利用を検討したことがあったが、一方は孫会社であり、現行の基準の要件 を満たさなかったことから断念した。親子会社に限らず孫会社やグループ 会社でも登録を認めるようにしてほしい。 5 【参考】商標審査基準における取扱い 「商標審査基準」 十、第4条第1項第11号(先願に係る他人の登録商標)【抜粋】 11.商品又は役務の類否判断について (4) 商品又は役務の類否判断における取引の実情の考慮について 13. 出願人と引用商標権者に支配関係がある場合の取扱い 本号に該当する旨の拒絶理由通知において、引用した登録商標の商標 出願人から、出願人と引用商標権者が(1)又は(2)の関係にあることの 権者(以下「引用商標権者」という。)から、引用商標の指定商品又は指定 主張に加え、(3)の証拠の提出があったときは、本号に該当しないもの 役務と出願商標の指定商品又は指定役務が類似しない旨の陳述がなされ として取り扱う。 たときは、類似商品・役務審査基準にかかわらず、出願人が主張する商 品又は役務の取引の実情(ただし、上記(1)から(3) に列挙した事情に限 (1)引用商標権者が出願人の支配下にあること る)を考慮して、商品又は役務の類否について判断することができるも (2)出願人が引用商標権者の支配下にあること のとする。(※) (3)出願に係る商標が登録を受けることについて引用商標権者が了 承している旨の証拠 なお、以下のような場合には、取引の実情を考慮することはできない。 ① 引用商標権者が、単に商標登録出願に係る商標の登録について承諾 しているにすぎない場合。 ② 類似商品・役務審査基準において類似すると推定される指定商品又 ((1)又は(2)に該当する例) (ア) 出願人が引用商標権者の議決権の過半数を有する場合。 (イ)(ア)の要件を満たさないが資本提携の関係があり、かつ、引用 商標権者の会社の事業活動が事実上出願人の支配下にある場合。 は指定役務のうち、一部についてしか類似しない旨の陳述がなされ ていない場合。 ③ 引用商標の商標権について専用使用権又は通常使用権が設定登録さ れている場合にあって、専用使用権者又は通常使用権者が類似しな い旨の陳述をしていない場合。 ※ (1)から(3)では、商品の類否、役務の類否、商品役務間の類否の判断において考慮する事情について列挙している。 6 近年のユーザーの意見 ➢ 前述のとおりの審査基準の取扱いの利用状況や本小委員会での継続課題であること等も踏まえ、 2021年7月以降、改めて、ユーザー企業・団体や有識者へのヒアリング(22者)を実施。主な 意見は以下のとおり。 コンセント制度導入について 賛成(積極的) 反対(消極的) ➢ 完全型のコンセント導入を希望。企業は混同を生じさせるような同意はし ない。アサインバックは社内決裁のハードルが高い。 ➢ 全世界的な併存協定を取り付けるときに、日本にコンセント制度がないこ とで困っている。 ➢ 留保型の導入に賛成する。完全型の場合、同一の範囲の取扱い、商標法第 25条 、ライセンシーとの関係はどうなるのかなどといった問題意識があ る。そのような観点から、完全型よりは、ある程度特許庁が審査する留保 型が良いのではないか。一方、留保型の場合、商標権者に対価を払って同 意書を提出してもらっても、審査の結果、特許庁に拒絶される可能性があ るという懸念もある。 ➢ 関係のない者同士のコンセントと、関連会社同士(必ずしも資本関係を有 する必要はない)のコンセントの認められ方は差があってもよいと思う。 ➢ コンセント制度があれば、選択肢が増えるという観点で必要と考える場面 も多いので、完全型でなくても良いと思う。完全型であればアサインバッ クでも代替できるので、留保型により、アサインバックよりも簡便な方法 があるということが、特に海外のユーザーには有用だと思う。 ➢ 類似商標が併存すると、商標調査が煩雑になる。コンセントによる登録で あることが、特許情報プラットフォーム(J-PlatPat)で公表されるとし ても、検索したときに特許庁が審査で非類似と判断したものなのかコンセ ントによるものなのか、都度調べるのが大変。 ➢ 仮にコンセント制度を導入するのであれば、商品又は役務の類否判断にお ける取引実情の考慮に関する審査基準の要件を拡充するのがよいのではな いか。明らかな類似のものをいきなりコンセント制度で併存させるのは需 要者に混乱を来すと思う。 ➢ コンセント制度のない日本ではアサインバックをせざるを得ず、追加的な 時間や費用が発生し、また、それらのコストを検討した結果、海外の出願 人が登録を断念するケースもある。 7 ニーズの整理及び対応の方向性 ➢以上の状況を踏まえると、我が国におけるコンセント制度導入に関しては、以下のように整理する ことができるのではないか。 ■コンセント制度導入のニーズについて • 多くの諸外国においてはコンセント制度が存在し、グローバルなコンセント(併存同意)契約を結ぶこともある中、日本で同様の手 続が出来ないことが、特に海外ユーザーにとって日本での商標登録の障壁となっているという声がある。 • アサインバックの手法について、権利の一時的な移転に伴うリスクがあることや、交渉手続、費用の負担が大きいことなどを理由に、 中小企業を含むユーザーからは、より簡便・低廉なコンセント制度の導入が求められている。 • 平成28年に見直された商標審査基準(第13版、平成29年4月1日適用)における①取引の実情(商品・役務の類否判断)や②出願人 と引用商標権者との支配関係の考慮に関する規定について、①、②ともにユーザーにとって利用しにくい場面があることが確認され た。 ■対応の方向性について • 近年のコンセント制度導入に関するユーザーニーズの高まり、国際的な制度調和の観点から、我が国においても何らかの措置を講じる 方向で、改めて検討すべきではないか。 • 仮に法改正によるコンセント制度導入を検討する場合には、ユーザーから消極的な意見も頂戴していることにも十分に留意しつつ、商 標法第1条に規定された法目的の一つである、需要者の利益の保護、本規定における「類似」と「出所混同のおそれ」の関係性の整理 等について検討するとともに、法改正を行う場合に手当すべき事項についても検討すべきではないか。 あわせて、現行の審査基準における取扱い見直しの余地があるかどうか検討すべきではないか。 8 今後の審議予定 ➢ 今後の対応の方向性の是非を含め、詳細は次回の商標制度小委員会で検討してはどうか ➢ (今回)第9回商標制度小委員会 ・位置付け:継続検討課題「コンセント制度の導入」頭出し(事務局からの報告) ・内容:審査基準の利用状況等について事務局から報告し、今後の対応の方向性について提案 するもの ※今後の対応の方向性の是非を含め、 詳細は第10回商標制度小委員会において審議する。 ➢ (次回)第10回商標制度小委員会(2022年11月頃を予定) ・位置付け:継続検討課題「コンセント制度の導入」制度導入の是非、詳細の審議 ・内容:コンセント制度導入の是非、コンセント制度を導入する場合の課題、制度設計等、 詳細について委員に審議いただくもの ※想定している主な論点 ・コンセント制度導入の是非について ・コンセント制度の類型(完全型・留保型) ・需要者の利益の保護について ・本規定における「類似」と「出所混同のおそれ」の関係性の整理 ・事後的な取消制度その他関連規定 等 9 【参考】コンセント制度の類型について ➢ コンセント制度には、大きく「完全型」と「留保型」の二つの類型が存在。 ➢ コンセント制度の導入・運用状況は、国・地域によって異なるが、多くは留保型を採用している。 ■コンセント制度の分類 完全型コンセント 留保型コンセント 他人の先願登録商標と類似する商標が出願された際に、当該他人(商標権 者)の同意があれば、更なる審査を経ずに登録を認めるもの。 ニュージーランドで採用。 商標権者の同意があったとしても、なお出所混同のおそれがあると判断さ れる場合には登録できない。 米国等、多くの国・地域で採用。 ■主な国・地域におけるコンセント制度の導入状況(※) 完全型か留保型か 同意書の提出時期 同一商標・同一商品に関す るコンセント 周知・著名商標に関するコ ンセント 米国 留保型 拒絶理由対応時 可 可 EU 相対的拒絶理由の審査なし (異議申立ての審理において、EUIPOが 友好的な和解を求めることができる旨の 規定) 提出不要 可 可 中国 留保型 拒絶査定不服審判時 通常難しい 可 台湾 留保型 審査係属中 不可 可 シンガポール 留保型 拒絶理由対応時 可 可 ニュージーランド 完全型 出願から12か月 可 可 ※平成27年度 特許庁産業財産権制度問題調査研究「商標制度におけるコンセント制度についての調査研究」報告書 図表1「各国のコンセント制度比較」より抜粋。 10 【参考】主な国・地域におけるコンセント制度について ■主な国・地域におけるコンセント制度の概要(※) 米国 米国では、コンセント制度が、商標審査便覧1207.01(d)(viii)において定められている。 同意書は、混同が生じるおそれについての判断の一要素であり、特許庁において拘束力を有するものではない。特許庁は、混同が生じるおそれがない旨が 詳細に明示された同意書についてはかなり重視することがあるが、「裸の(naked)」同意書( すなわち、先行する登録名義人が出願標章の登録に同意す ることのみを示す同意書、あるいは出所混同が生じるおそれがないと考えられることを述べるにすぎない陳述書)」には、ほとんど重きを置かない。 TESS(商標電子検索システム)においては、コンセントにより登録されたものかどうかは明示されない。ただし、提出された同意書は出願経過情報とし ては残るため、時間をかければコンセントによる登録を特定することは可能である。 EU EU における、欧州共同体商標(以下「CTM」という。)制度においては、相対的拒絶理由の審査が行われないため、欧州共同体商標意匠庁( 以下 「OHIM」 という。)に対して同意書を提出するという手続はない。 しかし、欧州連合共同体商標に関する理事会規則第42 条(4)において、異議申立ての審査において、OHIM が当事者間における友好的な和解を求めること ができる旨が規定されており、異議申立ての手続における、当事者間の友好的解決手段として、コンセント制度が存在する。 また、コンセントにより登録されたものかどうかは、商標検索データベース上には明記されない。 中国 中国では、コンセント制度について定めた法律や規定、又は審査基準はないが、実務上はコンセントによる登録が認められており、商標審判委員会内部の 審判ガイドラインが存在している。 同意書は特許庁の判断を拘束するものではない。指定商品が同一・類似で、かつ、商標自体も同一又は非常に類似する場合には、正常な市場秩序の保護や 混同防止の観点で、登録を認めないことがある。 なお、中国では、審査段階では拒絶理由は通知されないため、拒絶査定不服審判の段階で、同意書を提出することが一般的である。 台湾 台湾では、商標法第30 条においてコンセント制度が規定されている。 条文上は、「同一又は類似の商品又は役務について、他人が使用している登録商標、又は他人が先に出願した商標と同一又は類似のもので、関連する消費 者に混同誤認を生じさせるおそれがあるもの」「他人の著名な商標又は標章と同一又は類似のもので、関連する公衆に混同誤認を生じさせるおそれがある もの」についても、同意があれば登録が認められる旨が規定されている。 ただし、コンセントは特許庁を拘束するものではなく、需要者の混同が生じるおそれがある場合は、登録が認められない。例えば、同一商標かつ同一又は 類似の商品・役務についてのコンセントは、その商品・役務の出所を識別する機能を喪失し需要者に不利益が生じるため、許可されないと考えられる。 また、コンセントにより登録を受けたものであることは、公報に記載される。 シンガ ポール シンガポールでは、商標法第8 条(9)において、コンセント制度が規定されている。当該は、「登録官は,先の登録商標又は他の先の権利の所有者が同意を 与えれば、自己の裁量で商標を登録することができる」との裁量規定であり、公衆が混同を生ずるかについては登録官の判断がなされる。 実質的に同一の商標が、同一商品について、同じ市場で使用される場合においては、同意書のみでは相対的拒絶理由を克服できないと考えられる。 また、公報には引用商標権者の同意により商標登録出願が受理された旨が表示される。 ニュー ジーラ ンド ニュージーランドにおいては、商標法第26 条でコンセント制度が規定されている。混同する先行商標の権利者からの同意書を得ることで、先行商標と混 同が生じるとされた拒絶理由は解消し、登録が確保される。同意書に基づく拒絶理由の解消に関し、審査官の裁量はない。 混同する商標の所有者が同意を与える対象について制限はない。従って、同一の範囲であっても登録が認められ得る。混同が生じる周知商標の所有者から の同意は、それが登録されているか否かに拘らず、拒絶を克服することができる。 コンセント制度により商標が登録されたことは、商標検索データベースに掲載される。 ※平成27年度 特許庁産業財産権制度問題調査研究「商標制度におけるコンセント制度についての調査研究」報告書「3.海外公開情報調査の結果」より抜粋。 なお、欧州共同体商標意匠庁(OHIM)は、2016年3月23日に欧州連合知的財産庁(EUIPO)と改称された。 11

資料8

資料5 Madrid e-Filingにより商標の国際登録出願する際の 本国官庁手数料の納付方法の変更 産業構造審議会知的財産分科会 第9回商標制度小委員会 令和4年9月29日 現行制度の概要 ➢ マドリッド協定議定書に基づく商標の国際登録出願(以下「国際登録出願」という。)は、自己の商標出願又は 登録を基礎として、国際的に統一された願書様式を用いて、世界知的所有権機関国際事務局(以下「WIPO」と いう。)において商標の国際登録をすることにより、出願人が指定した複数の締約国(指定国)に商標出願がさ れた場合と同一の効果を得ることを可能とする制度である。 ➢ 本国官庁としての特許庁に国際登録出願をする場合、出願時に納付すべき手数料は以下のとおりであり、納付先 は特許庁とWIPOに分かれている。 ➢ WIPOに納付すべき手数料のうち、基本手数料以外の手数料は、WIPOから各指定国官庁に送金される。 特許庁に納付すべき手数料(通貨は日本円) 手数料 概要 納付方法 金額 特許印紙 本国官庁が本国認証等を行うた 現金納付(電子現金納付含む) 本国官庁手数料 めの手数料 指定立替納付(窓口納付に限る) 9,000円 根拠条文 マドリッド議定書第8条(1) 商標法第76条第1項第3号 WIPOに納付すべき手数料(通貨はスイスフラン) 手数料 概要 基本手数料 WIPOが方式審査・国際登録をす るための手数料 付加手数料 追加手数料 指定国における審査料 +10年分の登録料 個別手数料 指定国における審査料 +10年分の登録料 (個別手数料の受領を宣言した締約国を除く) (個別手数料の受領を宣言した締約国に限る) 納付方法 金額 根拠条文 ● 標章が色彩付きでない場合 653スイスフラン マドリッド議定書第8条(2)(i) ● 標章が色彩付きである場合 903スイスフラン WIPO予納口座 銀行送金 ●付加手数料 指定国ごとに 100スイスフラン ●追加手数料 マドリッド議定書第8条(2)(ii) 標章の国際分類の数が3を超えた マドリッド議定書第8条(2)(iii) 一区分ごとに 100スイスフラン 締約国ごとに定める額 マドリッド議定書第8条(7)(a) 1 問題の所在 ➢ 令和4年6月1日より、書面による出願に加え、WIPOが提供するMadrid e-Filing(以下「e-Filing」とい う。)を利用した電子出願の受付を開始した。 ➢ e-Filingは、本国官庁手数料とWIPOへ納付すべき手数料を一括してWIPOへ納付する機能を備えている。 ➢ しかしながら、商標法第76条第1項第3号において本国官庁手数料は特許庁長官に納付すべき手数料と規定され ていることにより、出願人はWIPOへの納付手続に加え、特許印紙を貼付した書面等を用いて別途特許庁に本国 官庁手数料を納付しなければならず、出願人はオンライン手続の利便性を十分に享受できていない。 WIPO予納口座 クレジットカード 銀行送金 等 Madrid e-Filingによる出願及び 納付手続とは別に、特許庁に対 する納付手続が発生する! e-Filingによる オンライン出願 基本手数料 付加手数料 追加手数料 個別手数料 WIPO国際事務局 本国官庁手数料 出願人 書面手続 特許印紙 現金納付 等 特許庁 2 対応の方向性 ➢ 本国官庁手数料について、他の手数料と一括でスイスフランによるWIPOへの支払を可能とするた め、国際登録出願をe-Filingで行う場合に限り、本国官庁手数料をWIPOに納付する改正を行う。 (なお、WIPOが徴収した本国官庁手数料は、WIPOから送金を受けることとする。) e-Filingによる一括納付 現行の手数料納付 WIPOと 特許庁に分納 出願人 特許印紙 現金納付・電子現金納付等 (日本円) 本国官庁手数料 出願人 外国送金等 (スイスフラン) 本国官庁手数料 基本手数料 基本手数料 付加手数料 追加手数料 JPO 付加手数料 追加手数料 個別手数料 個別手数料 国際事務局 (WIPO) 国際事務局 (WIPO) 付加手数料 追加手数料 指定国A 付加手数料 追加手数料 指定国B Madrid e-Filingの機能を 利用してWIPOに スイスフランで一括納付 個別手数料 指定国C 後日送金 付加手数料 追加手数料 付加手数料 追加手数料 個別手数料 指定国A 指定国B 指定国C 本国官庁手数料 JPO 3 【参考】商標の国際登録出願(マドプロ出願)の概要 自己の商標出願または商標登録を基礎に、マドプロで国際的に統一された願書様式を用いて、英語、仏語またはスペイン語 で願書を作成(日本で出願する場合には英語)し、基礎の商標出願または商標登録のある本国官庁に願書を提出する。 WIPOは国際登録し、指定国官庁に指定通報を送付する。指定通報を受けた指定国官庁は自国の法令に基づき審査する。 マドプロ出願 日本から出願 Madrid e-Filingの範囲 本国官庁(JPO) <統一様式> 英語 基礎出願/ 基礎登録 方式 審査 国際事務局に対する 拒絶/保護認容通知 WIPO (国際事務局) 基礎出願/ 登録との同 一性の審査 2ヵ月以内 e-Filingによる出願件数は99件(※1) 方式 審査 令和3年の出願件数は3196件(※2) 国際登録簿 に登録 (国際登録) 公報発行 国際公表 指定国へ 通報 A国特許庁(指定国官庁) 登録/拒絶 審査 指定 通報 A国の国内法令に従って処理、権利付与 B国特許庁(指定国官庁) 指定 通報 (※1)令和4年8月24日時点特許庁調べ (※2)出典:特許行政年次報告書2022年版 P161 登録 B国の国内法令に従って処理、権利付与 日本以外の加盟国から出願(日本を指定国とする場合) <統一様式> 英語 フランス語 スペイン語 基礎出願/ 基礎登録 WIPO (国際事務局) 本国官庁(A国特許庁) 方式 審査 基礎出願/ 登録との同 一性の審査 日本を指定国 方式 審査 国際登録簿 に登録 (国際登録) 公報発行 国際公表 指定国へ 通報 JPO(日本国指定国官庁) 指定 通報 方式 審査 審査 登録 拒絶 我が国の国内法令に従って処理、権利付与 国際事務局に対する 拒絶/保護認容通知 4 【参考】WIPO Madrid e-Filing 出願人 代理人 WIPO 国際事務局 出願人用画面 願書 願書 願書 Madrid e-Filing 特許庁 国際意匠・商標出願室 官庁用画面 不備通知・応答 1 願書 願書 願書 3 ブラウザからアクセス ・出願情報入力 ・手数料納付 認証後、願書を 国際事務局に提出 2 ブラウザからアクセス ・方式審査 ・本国認証 WIPOシステム 5 【参考】関連条文 マドリッド協定議定書 条文 第2条 第3条の3 第8条 (1) 標章について、いずれかの締約国の官庁に標章登録出願をした場合又はいずれかの締約国の官庁の登録簿に標章登録がされた場合には、当 該標章登録出願(以下「基礎出願」という。)又は当該標章登録(以下「基礎登録」という。)の名義人は、この議定書の規定に従うことを条件とし て、世界知的所有権機関(以下「機関」という。)の国際事務局(以下「国際事務局」という。)の登録簿(以下「国際登録簿」という。)への標章登 録(以下「国際登録」という。)を受けることにより、当該標章の保護をすべての締約国の領域において確保することができる。ただし、次の条件 を満たす場合に限る。 (i) 国である締約国の官庁に基礎出願をし又は基礎登録がされた場合には、当該基礎出願又は当該基礎登録の名義人が、当該国である締約国国 民であるか又は当該国である締約国に住所若しくは現実かつ真正の工業上若しくは商業上の営業所を有していること。 (ii) 締約国際機関の官庁に基礎出願をし又は基礎登録がされた場合には、当該基礎出願又は当該基礎登録の名義人が、当該締約国際機関の構成 国の国民であるか又は当該締約国際機関の領域内に住所若しくは現実かつ真正の工業上若しくは商業上の営業所を有していること。 (2) 国際登録の出願(以下「国際出願」という。)は、基礎出願を受理し又は基礎登録をした官庁(以下「本国官庁」という。)を通じ、国際事務 局に対して行う。 (3)以下略 (1) 国際出願に際しては、国際登録による標章の保護の効果が及ぶ領域としていずれの締約国を指定するかを特に記載する。 (2)以下略 (1) 本国官庁は、国際出願又は国際登録の更新について、それぞれの出願人又は名義人に対し自己の裁量により定める手数料の支払を求め、か つ、当該手数料を自己の収入として徴収することができる。 (2) 国際事務局における標章登録を受けるに当たっては、(7)(a)に規定する場合を除くほか、次の国際手数料を前払しなければならない。 (i) 基本手数料 (ii) 標章を使用する商品又はサービスの属する国際分類の類の数が3を超える場合における一類ごとについての追加手数料 (iii) 第3条の3の規定に基づく領域指定についての付加手数料 (3)~(6)略 (7)(a) 締約国は、第3条の3の規定に基づき自国を指定する国際登録及び当該国際登録の更新について、追加手数料及び付加手数料による収入 の配分を受けることに代えて個別の手数料(以下「個別手数料」という。)の支払を受けることを希望する旨を宣言することができる。個別手数料 の額については、その宣言において指定するものとし、その後の宣言において変更することができる。もっとも、個別手数料の額は、当該締約国 の官庁が自己の登録簿における10年の存続期間の標章登録をするため又は当該標章登録の存続期間を10年間更新するために当該標章登録の名義 人に支払わせることのできる額から国際手続の利用による節約分を減じた額に相当する額を上回ることができない。このような個別手数料が支払 われる場合には、次の規定が適用されるものとする。 (i) (2)(ii)に規定する追加手数料は、この(a)の規定に基づく宣言を行った締約国のみを第3条の3の規定に基づいて指定したときは、支払う必要 がない。 (ii) (2)(iii)に規定する付加手数料は、この(a)の規定に基づく宣言を行った締約国については、支払う必要がない。 (b) (a)の規定に基づく宣言は、第14条(2)に規定する批准書、受諾書、承認書又は加入書において行うことができるものとし、その効力は、当 該宣言を行った国又は政府間機関についてこの議定書が効力を生ずる日に生ずる。また、この宣言は、その後においても行うことができるものと し、この場合に当該宣言は、その効力が生ずる日以降の日を国際登録の日とする国際登録について、事務局長が当該宣言を受領した後3箇月で又 は当該宣言において指定されたそれ以降の日に効力を生ずる。 6 【参考】関連条文 商標法 条文 第68条の2 第76条 (国際登録出願) 日本国民又は日本国内に住所若しくは居所(法人にあつては、営業所)を有する外国人であつて標章の国際登録に関するマドリッド協定の千九百八十九年六月二 十七日にマドリッドで採択された議定書(以下「議定書」という。)第二条(1)に規定する国際登録(以下「国際登録」という。)を受けようとする者は、特許庁 長官に次の各号のいずれかを基礎とした議定書第二条(2)に規定する出願(以下「国際登録出願」という。)をしなければならない。この場合において、経済産 業省令で定める要件に該当するときには、二人以上が共同して国際登録出願をすることができる。 一 特許庁に係属している自己の商標登録出願又は防護標章登録出願(以下「商標登録出願等」という。) 二 自己の商標登録又は防護標章登録(以下「商標登録等」という。) 2 国際登録出願をしようとする者は、経済産業省令で定めるところにより外国語で作成した願書及び必要な書面を提出しなければならない。 3以下略 (手数料) 第七十六条 次に掲げる者は、実費を勘案して政令で定める額の手数料を納付しなければならない。 一~二 略 三 第六十八条の二の規定により特許庁長官に国際登録出願をする者 四以下略 特許法等関係手数料令 条文 (商標法関係手数料) 第四条 商標法第七十六条第一項の規定により納付すべき手数料の額は、次の表のとおりとする。 第4条 納付しなければならない者 金額 商標法第六十八条の二の規定により特許庁長官に国際登録出願をする者 一件につき九千円 一~二略 三 四以下略 商標法施行規則 条文 第2条の2 特許庁 (国際登録出願の願書等の提出) 第二条の二 商標法第六十八条の二第一項の規定による国際登録出願をしようとする者は、同条第二項の規定による願書及び必要な書面の提出に代えて、これ らの書類に記載すべき事項を電磁的方法(電子的方法、磁気的方法その他の人の知覚によつて認識することができない方法をいう。以下この条及び次条において 同じ。)であつて特許庁長官が指定する方法により提供することができる。この場合において、当該者は、これらの書類を提出したものとみなす。 2 前項の規定により行われた当該書類に記載すべき事項の提供は、国際事務局の使用に係る電子計算機に備えられたファイルへの記録がされた時に特許庁長 官に到達したものとみなす。 3 第一項の場合において、商標法第六十八条の三の規定の適用については、同条第一項中「願書及び必要な書面」とあるのは「電磁的方法により提供された 願書及び必要な書面に記載すべき事項」と、「送付」とあるのは「電磁的方法により提供」と、同条第二項中「願書の記載事項」とあるのは「電磁的方法によ り提供された願書に記載すべき事項」と、「願書に記載」とあるのは「国際事務局の使用に係る電子計算機に備えられたファイルへ記録」とし、同条第三項の 規定は、適用しない。 7