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産業構造審議会 知的財産分科会 意匠制度小委員会 第19回

2025-05-22一次資料(出典)

議事録・配布資料の全文(政府公表資料より。要約でなく原文に基づく参照用)。

産業構造審議会 知的財産分科会 意匠制度小委員会 第19回 資料産業構造審議会 知的財産分科会 意匠制度小委員会 第19回 資料産業構造審議会 知的財産分科会 意匠制度小委員会 第19回 資料産業構造審議会 知的財産分科会 意匠制度小委員会 第19回 資料産業構造審議会 知的財産分科会 意匠制度小委員会 第19回 資料産業構造審議会 知的財産分科会 意匠制度小委員会 第19回 資料産業構造審議会 知的財産分科会 意匠制度小委員会 第19回 資料産業構造審議会 知的財産分科会 意匠制度小委員会 第19回 資料

議事要旨

。 第19回意匠制度小委員会 議事要旨 1. 日時・場所 日時:令和7年5月22日(木曜日) 14時00分~16時00分 場所:特許庁特別会議室(特許庁庁舎16階)+ Web会議室 2. 出席者 相澤委員、青木委員、小川委員、長田委員、影広委員、加藤委員、黒田委員、せきぐち委員、田村委員長、野田委員、バヒスバラン委員、松本委員 3. 議題 (1)仮想空間におけるデザインに関する意匠制度の在り方について (2)生成AI技術の発達を踏まえた意匠制度上の適切な対応について 4. 議事内容 事務局より、資料1に沿って、説明が行われた。 議題について、自由討議が行われた。 以上 [更新日 2025年5月28日] お問い合わせ 特許庁総務部総務課制度審議室 TEL:03-3581-1101 内線2118 このページの先頭へ 知的財産権関連リンク集 サイトマップ プライバシーポリシー このサイトについて 住所:〒100-8915 東京都千代田区霞が関3丁目4番3号 電話番号:03-3581-1101(代表) Copyright © Japan Patent office. All Rights Reserved.

資料1

産業構造審議会知的財産分科会 第19回意匠制度小委員会 議事次第・配布資料一覧 日 時:令和7年5月22日(木)14時00分開会 会 場:特許庁庁舎16階特別会議室+Web会議室 (議事次第) 1.開会 2.仮想空間におけるデザインに関する意匠制度の在り方について 3.生成AI技術の発達を踏まえた意匠制度上の適切な対応について 4.閉会 (配布資料) 議事次第・配布資料一覧 委員名簿 資料1 意匠制度に関する検討課題について

資料2

令和7年5月 2 2 日 第 19 回意匠制度小委員会 産業構造審議会 知的財産分科会 意匠制度小委員会 委員名簿 相澤 清晴 東京大学情報基盤センター 特任教授 青木 大也 大阪大学大学院法学研究科 准教授 小川 亮 公益社団法人日本パッケージデザイン協会 専務理事/ 株式会社プラグ 代表取締役 長田 新子 一般社団法人 Metaverse Japan 代表理事 影広 達彦 一般社団法人日本デジタル空間経済連盟 株式会社日立製作所研究開発グループ R&D 先端 AI イノベーションセンタ 加藤 正敏 日本商工会議所 黒田 薫 阿部・井窪・片山法律事務所 せきぐち 委員長 あいみ 主管研究長 パートナー弁護士 VR アーティスト 善之 東京大学大学院法学政治学研究科 野田 一隆 日本知的財産協会意匠委員会 教授 委員長/ 日本たばこ産業株式会社知的財産部 松本 直子 薫 Digital Innovation 理事・産業政策第一部長 田村 バヒスバラン 理事/ シティユーワ法律事務所 日本弁理士会 課長代理 意匠委員会 弁護士 委員/弁理士 (敬称略、五十音順)

資料3

資料1 意匠制度に関する検討課題について 産業構造審議会知的財産分科会 第19回意匠制度小委員会 令和7年5月22日 1.仮想空間におけるデザインに関する意匠制度の在り方 1 前回の内容を踏まえた今回の本小委員会の予定 <前回の本小委員会の内容> ➢ 前回の本小委員会においては、(1)意匠制度見直しの必要性及び(2)意匠制度見直しを行う 場合に制度的措置の方向性③(画像の意匠において、操作画像及び表示画像に加え、物品等の形 状等を表した画像を保護対象とする方向性)で検討を進めることについて、各委員から御意見を いただいたところ、それぞれおおむね御承認いただいた。 ➢ また、制度的措置の方向性③については、他人の意匠権のクリアランス調査の負担軽減のための 対応について、保護され得る画像の限定、実施行為(侵害となる行為)の限定、用途及び機能に 基づく類否判断、効率的な調査環境の整備等の対応策を念頭に、引き続き検討を行うこととなっ た。 <今回の本小委員会の予定> ➢ クリアランス調査の負担軽減のための対応に関連する検討課題として、今回の本小委員会では、 以下の2点について事務局から御報告・御提案。 1. 保護対象(保護され得る画像及び意匠の認定)の基本的な考え方 2. 意匠の類否判断の基本的な考え方 ➢ その上で、事務局からの御報告・御提案について御議論いただきたい。 ➢ なお、実施行為(侵害となる行為)等については、次回以降の本委員会において検討予定。 2 制度的措置の方向性③の具体的内容に関する論点 ➢ 制度的措置の方向性③の具体的内容に関して、下記1~4の論点について検討し、明確にすること は、制度ユーザーにとって、権利の実効性や安定性、予見性の観点から重要である。 ➢ 加えて、仮想空間のデザインの創作等を行う第三者にとっても、他人の意匠権のクリアランス調 査を含む、自身に課される注意義務の在り方に大きく影響するため重要といえる。 制度的措置の方向性③の具体的内容に関する論点 1.保護対象(保護され得る画像及び意匠の認定) 創作したデザインが意匠法上の意匠であるか否か 2.意匠の類否判断 新規性の有無はどのように判断するか/意匠権の効力はどの範囲に及ぶか 3.実施行為/侵害行為 どのような行為が、意匠の実施行為/意匠権の侵害行為に該当するか否か 4.効率的な調査環境の整備(日本意匠分類の整備) 他人の意匠権をどのように調査するのか ➢ よって、上記1~4の論点について、我が国の意匠制度との整合性や、権利の実効性とクリアラン ス調査の負担とのバランスに配慮しつつ、仮想空間における創作実態や技術の進展を踏まえた適切 な対応を検討する必要がある。 3 保護対象(保護され得る画像及び意匠の認定) 制度的措置の方向性③の概要 ➢ 意匠制度見直しによって保護を図るべきターゲットは、仮想空間で用いられる(※)物品等(以下 「仮想物品等」という。)の形状等である。 ➢ 仮想物品等の形状等を保護する方法として、仮想物品等の形状等を直接の保護対象とする方法もあ り得るが、制度的措置の方向性③は、「仮想物品等の形状等を表した画像」を保護対象とすること で、実質的には、仮想物品等の形状等の保護を図る考え方。 ➢ (制度的措置の方向性③にいう)画像として表される仮想物品等の形状等は、一の立体的形状を有 し、任意の視点から見ることが可能なものを想定している。 (※)「仮想空間で用いられる」とは、現に仮想空間で用いられていることを要さず、仮想空間で用いられ得るものも含む。 4 保護対象(保護され得る画像及び意匠の認定) 「仮想物品等の形状等を表した画像」 ➢ 制度的措置の方向性③によって新たに保護対象となる「仮想物品等の形状等を表した画像」とは、 仮想物品等の形状等を任意の視点から見た場合に現れる無数の画像から構成されるものである。 ➢ 現実空間にいる人間は、仮想物品等の形状等について、仮想物品等の形状等を任意の視点から見た 場合に現れる無数の画像を通じて捉える。 ➢ この点を踏まえると、仮想物品等の形状等それ自体を直接保護せずとも、仮想物品等の形状等を任 意の視点から見た場合に現れる無数の画像を一の意匠として保護することで、実質的には、仮想物 品等の形状等を保護することは可能と考えられる。 「仮想物品等の形状等を表した画像」 仮想物品等( ラ)の形状等 を 視した場合に現れる画像 ( 仮想物品等 ラ)の形状等を 視した場合に 仮想物品等( ラ)の形状等 を 視した場合に現れる画像 現れる画像 ( 仮想物品等 ラ)の形状等を 視した場合に 仮想物品等( ラ)の形状等 を 視した場合に現れる画像 現れる画像 仮想物品等( ラ)の形状等 を 視した場合に現れる画像 5 保護対象(保護され得る画像及び意匠の認定) 制度的措置の方向性③で保護対象となる画像を特定するための方法 ➢ 制度的措置の方向性③で保護対象となる画像を特定するための方法としては、まずは、現行意匠制度における画像意匠と 同様、(1)「仮想物品等の形状等を表した画像」それ自体から特定する方法が考えられる。 ➢ また、「仮想物品等の形状等」と「仮想物品等の形状等を表した画像」は、前者を特定することにより後者を構成する全 ての画像の形状等についても自ずと特定されるという関係にあることから、(2)「仮想物品等の形状等」から特定する 方法も考えられる。 (1)「仮想物品等の形状等を表した画像」は、仮想物品等の形状等を任意の視点から見た場合に現れる無数の画像か ら構成されるものであるところ、願書・図面に「仮想物品等の形状等を表した画像」を構成する全ての画像の形状 等を網羅的に記載することは出願人にとって酷である。そのため、実務上は、仮想物品等の形状等を任意の視点か ら見た場合に現れる無数の画像の一部のみを図 (画像図)に表して出願することも想定されるが、その場合、図 に表されていない画像は明らかでないため、出願意匠の範囲が不明確になるリスクがある。 (2)保護対象の画像それ自体を表してはいないものの、上記のとおり、「仮想物品等の形状等」の特定をもって「仮 想物品等の形状等を表した画像」を自ずと特定することが可能である。また、制度的措置の方向性③において実質 的に保護を図るものである「仮想物品等の形状等」を表した方が、第三者にとっても何が保護されているのか分か りやすいという利点もある。なお、仮想物品等とは、現実空間で用いられる物品等と同様に一の立体的形状を有し ているものを想定していることから、具体的な出願方法としては、仮想物品等の形状等の全体が特定されたものと して理解するために必要な図(例えば、六面図等)を提出する方法が考えられる。 ➢ したがって、(2)「仮想物品等の形状等」から特定する方法を許容すべきである。 仮想物品等の形状等の全体が特定されたものとして理解する ために必要な図(例えば、六面図等)を提出する。 6 保護対象(保護され得る画像及び意匠の認定) 現行の意匠制度における意匠の認定の対象 <意匠の認定> ➢ 現行の意匠制度上、意匠審査において、審査官は出願された意匠が新規性、創作非容易性等の登録要件 を満たしているか否かを判断する前提として、意匠の内容を把握し、理解する必要がある。これを意匠 の認定という。 ➢ 意匠の認定は、意匠登録出願の際に提出すべき書類に係る規定(意匠法第6条)及び登録意匠の範囲に 係る規定(意匠法第24条)に照らし、願書の記載及び願書に添付した図面等を総合的に判断して行う。 ➢ 意匠の認定は、審査段階のみならず、一般に、無効審判や侵害訴訟の場面においても行われている。 <現行の意匠制度における意匠の認定の対象> ➢ 意匠の認定の対象となる「意匠」は、物品、建築物の形状等、及び画像(操作画像・表示画像)である。 ➢ 意匠が「物品」の意匠であれば、「物品」としての用途及び機能、形状等を認定し、「画像」の意匠であ れば、「画像」としての用途及び機能、形状等を認定する。 (意匠登録出願) 第六条 意匠登録を受けようとする者は、次に掲げる事項を記載した願書に意匠登録を受けようとする意匠を記載した図面を添付して特許庁長官に提出しなけれ ばならない。 一 意匠登録出願人の氏名又は名称及び住所又は居所 二 意匠の創作をした者の氏名及び住所又は居所 三 意匠に係る物品又は意匠に係る建築物若しくは画像の用途 2~7 (略) (登録意匠の範囲等) 第二十四条 登録意匠の範囲は、願書の記載及び願書に添附した図面に記載され又は願書に添附した写真、ひな形若しくは見本により現わされた意匠に基いて定 めなければならない。 2 登録意匠とそれ以外の意匠が類似であるか否かの判断は、需要者の視覚を通じて起こさせる美感に基づいて行うものとする。 7 保護対象(保護され得る画像及び意匠の認定) 制度的措置の方向性③における意匠の認定の対象 <制度的措置の方向性③における意匠の認定の対象> ➢ 制度的措置の方向性③は、「仮想物品等の形状等を表した画像」を保護の対象とするものである以上、意 匠の認定においても「画像」の用途及び機能、形状等が認定の対象となる。 ➢ もっとも、制度的措置の方向性③において実質的に保護を図るものは仮想物品等の形状等であるため、制 度的措置の方向性③の意匠の認定においては、基本的には、仮想物品等の用途及び機能、形状等の認定を もって、「仮想物品等の形状等を表した画像」の用途及び機能、形状等の認定とする。 現行の意匠制度上の意匠  物品の形状等 用途及び機能  建築物の形状等 用途及び機能  画像 機器の操作の用に供される画像 用途及び機能、形状等 機器がその機能を発揮した結果として表示される画像 用途及び機能、形状等 制度的措置の方向性③の意匠  仮想物品等の形状等を表した画像 用途及び機能 8 保護対象(保護され得る画像及び意匠の認定) 制度的措置の方向性③における出願意匠の認定 ➢ 制度的措置の方向性③における出願意匠の認定は、現行意匠制度上の意匠の認定と同様に、願書の 記載及び願書に添付した図面等を総合的に判断することにより行う。 ➢ 制度的措置の方向性③における出願意匠の用途及び機能に関する具体的な認定の手法については、 以下のとおり。 ✓ 仮想物品等は、「意匠に係る物品」の欄に記載の「○○の形状を表した画像」の「○○」(物品の名称)で判断 する。 ✓ 出願意匠の用途及び機能は、主に仮想物品等から社会通念上導き出される用途及び機能であると判断する。 →<事例1> ✓ 「意匠に係る物品の説明」の欄に、社会通念上導き出される用途及び機能以外の用途及び機能をも備えているこ とが記載されていれば、社会通念上導き出される用途及び機能に加え、当該記載に係る用途及び機能をも備える ものと判断する。 →<事例2> 制度的措置の方向性③の意匠登録出願(例) 願書 願書添付図 (イ ージ) 意匠に係る物品 〇〇の形状を表した画像 事例1 事例2 (a)意匠に係る物品 指輪の形状を表した 画像 指輪の形状を表した 画像 (b)意匠に係る物品 の説明 記載なし 画像に表された指輪は、 アバターの指に着けて装 飾する機能に加えて、仮 想空間内で扉にかざすこ とで解錠する機能を有し ている。 意匠に係る物品の説明 ・・・ (※)本事例は、制度的措置の方向性③における出願意匠の認定のみを説明 するためのものであり、新規性、創作非容易性その他の登録要件の適否は判 断していない。 (a)及び(b)の記載 から認定される 用途及び機能 装身機能 装身機能 解錠機能 9 保護対象(保護され得る画像及び意匠の認定) <参考>現行意匠制度上の意匠における出願意匠の認定[意匠審査基準] 意匠審査基準 第Ⅱ部 意匠の認定・意匠ごとの認定 第1章 意匠登録出願に係る意匠の認定 2.概要 ➢ 出願された意匠の認定は、願書の記載及び願書に添付した図 等を総合的に判断して、どのような機能及び用途 を有する物品等に対し、どのような形状、模様若しくは色彩又はこれらの結合…の創作がなされたか、というこ とをその意匠の属する分野における通常の知識に基づいて行う。 ➢ これは、意匠登録を受けようとする者が意匠登録出願をする際には、願書に必要な事項を記載し、意匠登録を受 けようとする意匠を願書に添付した図 等により表して特許庁長官に提出しなければならない(意匠法第6条) とされており、また、登録意匠の範囲を定める際は、願書の記載及び願書に添付した図 等により表された意匠 に基づいて行われなければならない(意匠法第24条)とされているからである。 ➢ したがって、どのような意匠について意匠登録を受けようとするのかは、願書の記載及び願書に添付した図 等 の内容から定められるものであって、開示されていない範囲の形状等(他の図と同一又は対称の説明記載により 図示省略された形状等を除く。)については、意匠登録を受けようとする部分の形状等として取り扱わない。 (意匠登録出願) 第六条 意匠登録を受けようとする者は、次に掲げる事項を記載した願書に意匠登録を受けようとする意匠を記載した図面を添付して特許庁長官に提出しなけれ ばならない。 一 意匠登録出願人の氏名又は名称及び住所又は居所 二 意匠の創作をした者の氏名及び住所又は居所 三 意匠に係る物品又は意匠に係る建築物若しくは画像の用途 2~7 (略) (登録意匠の範囲等) 第二十四条 登録意匠の範囲は、願書の記載及び願書に添附した図面に記載され又は願書に添附した写真、ひな形若しくは見本により現わされた意匠に基いて定 めなければならない。 2 登録意匠とそれ以外の意匠が類似であるか否かの判断は、需要者の視覚を通じて起こさせる美感に基づいて行うものとする。 10 保護対象(保護され得る画像及び意匠の認定) 制度的措置の方向性③における公知意匠の認定 ③ 物度 仮 制 品的 想 物 に関 品す 措 等る 置 や の 表 方 そ 示 の 向用 や 性 説 途 明 及に が び お な 機 け く 能 、に る 仮 公つ 想 知 い 空 意 て 間 匠 は、 で の 物 用 認品 い 定 ら に は れ 関 、 る す 現 「 る 行 も表 の 意 」 示 匠 の や 形 制 説 状 度 明 等 に 、 お や 画 け 使 像 る 用 公 と 状 し 知 て 況 意 表 等 匠 さ か の れ ら 認 る 総 仮 定 合 想 と 的 同 物 に 様 品 判 と 等 断 す の し る 形 て 。 も 状な 等 お や 、 使 何用 らか 状 の 況 用 等 途 か 及 ら総 び機 合能 的を に 有 判す 断 る し 「 、 物 認 品 定 」 す とし る て 。認識できず「 物品」 が明らかでない場合は、「 意匠」 には該当しない。 • 制度的措置の方向性③における公知意匠の認定は、現行意匠制度における公知意匠の認定と同 様とする。 ➢ 仮想物品等やその用途及び機能については、物品に関する表示や説明、画像として表される仮想 物品等の形状等や使用状況等から総合的に判断し、認定する。 ✓ 物品に関する表示や説明がなく、仮想空間で用いられる「もの」の形状等や使用状況等から総合的に判断 してもなお、何らかの用途及び機能を有する「物品」として認識できず「物品」が明らかでない場合は、 「意匠」には該当しない。 現行意匠制度における公知意匠の認定 ➢ 公知意匠とは、「意匠登録出願前に日本国内又は外国において公然知られた意匠」(意匠法第3条第1項第1号) 又は「意匠登録出願前に日本国内又は外国において、頒布された刊行物に記載された意匠又は電気通信回線を通 じて公衆に利用可能となった意匠」(同項第2号)をいう。 ➢ ①「刊行物に記載された意匠」及び②「電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった意匠」の認定の手法は、 以下のとおり。 ① ② 「刊行物に記載された意匠」 不特定の者が見える状態に置かれた刊行物に記載されている事項、及び刊行物に記載されている事項から本願の出願時の その意匠の属する分野の通常の知識に基づいて当業者が導き出せる事項から、刊行物に記載された意匠について認定する。 「電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった意匠」 電気通信回線を通じて不特定の者が見得るような状態に置かれたウェブページ等に掲載されている事項、及びウェブペー ジ等に掲載されている事項から本願の出願時のその意匠の属する分野の通常の知識に基づいて当業者が導き出せる事項か ら、電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった意匠について認定する。 11 意匠の類否判断 <参考>意匠登録の要件である「新規性」と意匠の類似について ➢ 意匠制度は、意匠の創作を奨励し、産業の発達に寄与することを目的とするものであることから、意匠登録の対 象となる意匠は、新しい創作がなされたものでなければならないとしている。 ➢ そこで、意匠登録の要件の一つである新規性について、意匠法第3条第1項は、意匠登録出願前に日本国内又は 外国において、公然知られた意匠(第1号)や、頒布された刊行物に記載された意匠又は電気通信回線を通じて 公衆に利用可能となった意匠(第2号)に加え、これらの公知意匠に類似する意匠(第3号)についても、意匠 登録を受けることができない旨を規定している。 ➢ したがって、出願された意匠が新規性を有しているか否かを判断するに当たり、審査官は、出願された意匠と公 知意匠とを対比し、その結果、両意匠が同一であると認められる場合は、出願された意匠が新規性を有していな いと判断する。加えて、両意匠の間に差異点がある場合であっても、両意匠が類似すると認められる場合は、出 願された意匠が新規性を有していないと判断する。 出願意匠 公知意匠 類 似 公知意匠と類似するため、新規性を有していないと判断 (意匠法第3条第1項第3号) (※)説明の都合上、その他の図は省略した。また、本事例は、類否判断の概要を図示するためのものであり、創作非容易性やその他の登録要件につい て説明をするためのものではない。なお、(審査時の新規性の判断に係る)類否判断の手法や類否判断の観点等の基本的な考え方は、意匠審査基準にお いてまとめられている。 12 意匠の類否判断 <参考>意匠権の効力範囲と意匠の類似について ➢ 意匠権の効力について、意匠法第23条は、「意匠権者は、業として登録意匠及びこれに類似する 意匠の実施をする権利を専有する。」と定めており、意匠権の効力は、登録意匠と同一の意匠の みならず類似する意匠にまで及ぶ。 関連規定 (意匠権の効力) 第二十三条 意匠権者は、業として登録意匠及びこれに類似する意匠の実施をする権利を専有する。ただし、その 意匠権について専用実施権を設定したときは、専用実施権者がその登録意匠及びこれに類似する意匠の実施をする 権利を専有する範囲については、この限りでない。 (登録意匠の範囲等) 第二十四条 登録意匠の範囲は、願書の記載及び願書に添附した図 に記載され又は願書に添附した写真、ひな形 若しくは見本により現わされた意匠に基いて定めなければならない。 2 登録意匠とそれ以外の意匠が類似であるか否かの判断は、需要者の視覚を通じて起こさせる美感に基づいて行 うものとする。 (参考)意匠権の効力範囲の考え方を示した図 類似範囲=意匠権の効力範囲 登録意匠 13 意匠の類否判断 制度的措置の方向性③における意匠の類否判断の対象 ➢ 制度的措置の方向性③は、「仮想物品等の形状等を表した画像」を保護の対象とするものである 以上、意匠の類否判断においても「画像」が類否判断の対象となる。 ➢ もっとも、制度的措置の方向性③において実質的に保護を図るものは仮想物品等の形状等である ため、制度的措置の方向性③における意匠の類否判断においては、基本的には、仮想物品等を対 象とする類否判断をもって、「画像」を対象とする類否判断とする。 制度的措置の方向性③で保護される画像 • 現行の意匠制度で保護される画像(操作画像・表示画像) 仮想物品等の形状等を表した画像:仮想物品等の形状等を任意 の視点から見た場合に現れる無数の画像から構成されるもの • • 操作画像:対象の機器が機能にしたがって働く状態にするため の指示を与える画像 表示画像:何らかの機器の機能と関わりのある表示を行う画像 類否判断 仮想空間 仮想空間 現実空間 仮想物品等 仮想物品等 動画再生機能 文字入力機能 文字入力用画像 (操作画像) 類否 判断 音声出力機能 … 類否判断 仮想物品等の形状等を表した画像 … ※1:ここでいう機器は、電化製品の3D オブジェクトなどの仮想的なものではな く、現実空間にあって何らかの用途及び 機能を有するものを指す。 ※2:出願に際して機器が特定されてい る必要はない。 … 機器 機器の機能 文字入力用画像 (操作画像) 14 意匠の類否判断 現行の意匠制度における意匠の類否判断の基本的な考え方 ➢ 現行の意匠制度上、意匠の類似は、(対比する両意匠の形状等が同一又は類似であることに加 え)対比する両意匠の用途及び機能が同一又は類似であることを前提としている。 物品の意匠 審査官は、対比する両意匠が以下の全てに該当する場合に限り、両意匠は類似すると判断する。 (1)両意匠の意匠に係る物品等の用途及び機能が同一又は類似であること (2)両意匠の形状等が同一又は類似であること 画像の意匠(操作画像・表示画像) 審査官は、対比する両意匠が以下の全てに該当する場合に限り、両意匠は類似すると判断する。 (1)両意匠の画像の用途及び機能が同一又は類似であること (2)両意匠の形状等が同一又は類似であること (参考)物品の意匠の同一・類似・非類似の関係性を示した図 物品の用途及び機能 形状等 同一 類似 非類似 同一 同一 類似 非類似 類似 類似 類似 非類似 非類似 非類似 非類似 非類似 15 意匠の類否判断 <参考>物品・画像の意匠の用途及び機能の類否判断の基本的な考え方 物品の意匠における用途及び機能の類否判断 ⚫ 対比する両意匠の意匠に係る物品の使用の目的、使用の状態等に基づき、意匠に係る物品等の用途及び機能を認 定し、当該認定に基づき、用途及び機能の類否を判断する。 ⚫ 意匠に係る物品等の用途及び機能が同一又は類似であることの判断は、物品等の詳細な用途及び機能を比較した 上でその類否を決するまでの必要はなく、具体的な物品等に表された形状等の価値を評価する範囲において、用 途(使用目的、使用状態等)及び機能に共通性があれば物品等の用途及び機能に類似性があると判断するに十分 である。 ⚫ 意匠に係る物品等の用途(使用目的、使用状態等)及び機能に共通性がない場合には、意匠は類似しない。 画像の意匠(操作画像・表示画像)における用途及び機能の類否判断 ⚫ 対比する両画像の使用の目的、使用の状態等に基づいて、両意匠の用途及び機能を認定し、当該認定に基づき、 用途及び機能の類否を判断する。 ⚫ その際、画像の意匠の類似は、対比する画像同士の用途及び機能が同一又は類似であることを前提とするが、そ れらの詳細な用途及び機能を比較した上でその類否を決する必要はないことから、具体的な画像に表された形状 等の価値を評価する範囲において、用途(使用目的、使用状態等)及び機能に共通性があれば、両画像の意匠の 用途及び機能が類似すると判断する。 16 意匠の類否判断 制度的措置の方向性③における意匠の類否判断の基本的な考え方の検討 ➢ 制度的措置の方向性③における意匠の類否判断においては、現行意匠制度における意匠の類否判 断の考え方に照らし、仮想物品等の需要者の視点から、仮想物品等の用途及び機能の類否判断を 行うことが考えられる。 ➢ 他方で、仮想物品等は、現実空間で用いられる物品等と異なり、用途及び機能と形状等の関連性 が希薄であり、何らかの機能の追加や削除をすることも可能であって機能に可変性があること、 加えて、仮想空間においては物理法則の制約が及ばないため、現実空間にはない物品等の機能を 持たせることができること等の実態を踏まえ、仮想物品等の用途及び機能については類否判断を 行わないという考え方(形状等のみを基に類否判断を行うこと)もあり得る。 ➢ 上記を踏まえると、制度的措置の方向性③における意匠の類否判断の基本的な考え方としては、 以下の(A案)又は(B案)が考えられる。 制度的措置の方向性③における意匠の類否判断の基本的な考え方 (A案)仮想物品等の用途及び機能の類否判断を行う (B案)仮想物品等の用途及び機能の類否判断を行わない(形状等のみを基に類否判断を行う) 17 意匠の類否判断 制度的措置の方向性③における意匠の類否判断の基本的な考え方(A案) (A案)仮想物品等の用途及び機能の類否判断を行う <審査時の類否判断の観点> ➢ 対比する両意匠について、以下の(ア)から(エ)の観点から判断を行う。 (ア)仮想物品等の認定及び対比する両仮想物品等の用途及び機能の類否判断 (イ)仮想物品等の形状等の認定及び対比する両仮想物品等の形状等の共通点及び差異点の認定 (ウ)仮想物品等の形状等の共通点及び差異点の個別評価 (エ)総合的な類否判断 ➢ 類否判断の判断主体は、仮想物品等の需要者とする。 ➢ (ウ)における形状等の共通点及び差異点の個別評価においては、仮想物品等の特性に基づいた評価(仮想物品 等の特性に基づき観察されやすい部分か否かの評価等)を行う。 <権利の効力範囲> ➢ 仮想物品等の需要者を判断主体として、形状等が同一又は類似である場合において、用途及び機能が同一又は類 似の意匠に対してのみ権利が及ぶと考えられる。 <クリアランス調査の範囲> ➢ 仮想物品等の用途及び機能、形状等に基づいて調査範囲が画されると考えられる。 18 意匠の類否判断 制度的措置の方向性③における意匠の類否判断の基本的な考え方(B案) (B案)仮想物品等の用途及び機能の類否判断を行わない(形状等のみを基に類否判断を行う) <審査時の類否判断の観点> ➢ 対比する両意匠について、以下の(ア)から(エ)の観点から判断を行う。 (ア)仮想物品等の認定 (イ)仮想物品等の形状等の認定及び対比する両仮想物品等の形状等の共通点及び差異点の認定 (ウ)仮想物品等の形状等の共通点及び差異点の個別評価 (エ)総合的な類否判断 ➢ 仮想物品等の用途及び機能の類否判断は行わない。 ➢ 類否判断の判断主体は、仮想物品等の需要者とする。 ➢ (ウ)における形状等の共通点及び差異点の個別評価においては、仮想物品等の特性に基づいた評価(仮想物品 等の特性に基づき観察されやすい部分か否かの評価等)を行う。 <権利の効力範囲> ➢ 仮想物品等の需要者を判断主体として、形状等が同一又は類似である場合において、用途及び機能が同一又は類 似の意匠であるか否かに関わらず権利が及ぶと考えられる。 <クリアランス調査の範囲> ➢ 仮想物品等の形状等に基づいて調査範囲が画されると考えられる。 19 意匠の類否判断 <参考>現行の意匠制度における意匠の類否判断の観点[意匠審査基準] [意匠審査基準] 意匠審査基準 第Ⅲ部 意匠登録の要件 第2章 新規性・創作非容易性 第1節 新規性 2.新規性の判断 2.2.類否判断 2.2.2.6 対比する両意匠の形状等の共通点及び差異点の個別評価 両意匠の各共通点及び差異点における形状等に関し、審査官は以下の(1)その形状等を対比観察した場合に注意を引く 部分か否かの認定及びその注意を引く程度の評価と、(2)先行意匠群との対比に基づく注意を引く程度の評価を行う。 各共通点及び差異点における形状等が(1)及び(2)の観点からみてどの程度注意を引くものなのかを検討することに より、各共通点及び差異点が意匠全体の美感に与える影響の大きさを判断する。 (1)対比観察した場合に注意を引く部分か否かの認定及び評価 両意匠の各共通点及び差異点における形状等が、対比観察した場合に注意を引く部分か否か及びその注意を引く程度は、 ①その部分が意匠全体の中で占める割合の大小、及び②その部分が意匠に係る物品等の特性からみて視覚的印象に大きな 影響を及ぼす部分かにより、認定及び評価を行う。 なお、具体的な評価方法及び評価結果は個別の意匠ごとに異なるが、一般的には以下のとおり。 (a)意匠全体に占める割合についての評価 出願された意匠と公知意匠の共通点あるいは差異点に係る部分について、その大きさが意匠に係る物品等全体に占める割 合が大きい場合には、小さい場合と比較して、その部分が注意を引く程度は大きい。 意匠に係る物品等の全体の形状等(基本的構成態様)は、意匠の骨格ともいえるものなので、視覚的印象に与える影響は、 通常最も大きい。 (b)物品の大きさの違いについての評価 両意匠の意匠に係る物品等自体の大きさ(説明の記載がない場合に認定する通常の大きさの範囲を含む。)が異なってい たとしても、それが物品等の用途及び機能の認定に影響を及ぼさない限り、その違いは、強く注意を引くものとはならな い。 20 意匠の類否判断 <参考>現行の意匠制度における意匠の類否判断の観点[意匠審査基準] (c) 物品の特性に基づき観察されやすい部分か否かの評価 意匠には、視覚観察を行う場合に観察されやすい部分、観察されにくい部分が存在する。両意匠の共通点及び差異点にお ける形状等が観察されやすい部分の形状等であれば、注意を引きやすいといえる。 観察されやすい部分は、意匠に係る物品等の用途(使用目的、使用状態等)及び機能、その大きさ等に基づいて、(1) 意匠に係る物品等が選択・購入される際に見えやすい部位か否か、(2)需要者(取引者を含む)が関心を持って観察す る部位か否かを認定することにより抽出する。 ただし、このようにして抽出される部分であったとしても、その形状等が機能的必然性のみに基づくものであった場合に は、意匠的特徴としては考慮しない。 (d) 物品等の内部の形状等の評価 意匠は、意匠に係る物品等を観察する際に目に付きやすい部位の形状等を中心に比較されるべきであるから、類否判断に おいては、通常の使用状態において目にすることのない内部の形状等は、意匠の特徴として考慮しない。他方、通常の使 用状態において内部の形状等を観察するものについては、使用時に目に付きやすい形状等が注意を引きやすい部分となる。 例えば、冷蔵庫の意匠の場合、扉を開けた状態も使用時の形状等である一方、冷蔵庫の用途及び機能は、扉を閉めた状態 で内部に食品等を冷却保管するものであるから、通常は、扉を閉めた状態で視覚観察されるものであるといえる。よって、 このような場合は扉を閉じた状態の外観が注意を引く程度は内部の形状等のそれよりも大きい。一方、人が内部に入って 使用する浴室の意匠等の場合には、内部の形状等が注意を引く部分となる。 (e) 流通時にのみ視覚観察される形状等の評価 使用時・設置時にはその一部が目に触れないような物品等(例えば、一部が土に埋まるフェンスや、壁や天井に一部が埋 め込まれる照明器具等)の場合、流通時にのみ視覚観察される部位が注意を引く程度は、原則として、その他の部位より も小さい。 ただし、その他の部位における形状等が、ありふれた形状等であるなど意匠全体の美感に与える影響が小さいような場合 には、相対的に、流通時にのみ視覚観察される部位の意匠全体の中での重要度が上がり、意匠全体での最終的な判断の際 に類否を する場合もある。 21 意匠の類否判断 制度的措置の方向性③における意匠の類否判断の基本的な考え方(比較表) ➢ 制度的措置の方向性③における意匠の類否判断の基本的な考え方について、A案及びB案を比較す ると、以下の表のとおり。 A案 類否判断の判断主体 B案 仮想物品等の需要者 類否判断の考え方 仮想物品等の用途及び機能の類否判断を 行う。 仮想物品等の用途及び機能の類否判断を 行わず、形状等のみを基に類否判断を行 う。 権利の効力範囲 (形状等が同一又は類似 である場合) 仮想物品等の用途及び機能が同一又は類 似の意匠に対してのみ、権利が及ぶと考 えられる。 仮想物品等の用途及び機能が同一又は類 似の意匠であるか否かにかかわらず、権 利が及ぶと考えられる。 クリアランス調査の範囲 仮想物品等の用途及び機能、形状等に基 づいて、調査範囲が画されると考えられ る。 仮想物品等の形状等に基づいて、調査範 囲が画されると考えられる。 22 意匠の類否判断 制度的措置の方向性③における意匠の類否判断の基本的な考え方(想定事例) <仮想物品等の形状等は同一であるが、仮想物品等の用途及び機能に共通性がない場合> 意匠1[出願意匠又は登録意匠] 意匠2[公知意匠又は被疑侵害意匠] 【意匠に係る物品】 浮き輪の形状を表した画像 ※いずれの例においても、形状等が同一という前提である。説明の都合上、その他の図は省略した。 ※本事例は、A案及びB案の類否判断の考え方のみを検討するためのものであり、創作非容易性やその他の登録要件等について検討や説明をするためのものではない。 A案における考え方の例 ※ 以下の類否判断の判断主体は、仮想物品等の需要者である。 (ア)仮想物品等の認定及び対比する両仮想物品等の用途及び機能の類否判断 【仮想物品等の認定】 意匠1:仮想物品は「浮き輪」であり、仮想空間において水 に浮かぶために使用する浮き具と しての用途及び機能を有するものと認められる。 意匠2:物品名に関する表示、画像に表された仮想物品の使用状況から、「イヤリング」の仮想 物品であって、仮想空間において耳を装飾する用途及び機能を有するものと認められる。 【両仮想物品等の用途及び機能の類否判断】 両仮想物品の用途及び機能には共通性がなく、非類似と判断され得る。 (イ)仮想物品等の形状等の認定及び対比する両仮想物品等の形状等の共通点及び差異点の認定 (省略) (ウ)仮想物品等の形状等の共通点及び差異点の個別評価(省略) (エ)総合的な類否判断 意匠1と意匠2は、仮想物品の形状等は同一であるが、仮想物品の用途及び機能が非類似である ため、両意匠は非類似と判断され得る。 B案における考え方の例 ※ 以下の類否判断の判断主体は、仮想物品等の需要者である。 (ア)仮想物品等の認定(省略) (イ)仮想物品等の形状等の認定及び対比する両仮想物品等の 形状等の共通点及び差異点の認定(省略) (ウ)仮想物品等の形状等の共通点及び差異点の個別評価(省 略) (エ)総合的な類否判断 意匠1と意匠2は、仮想物品の形状等が同一であるため、両意 匠は同一と判断され得る。 23 意匠の類否判断 制度的措置の方向性③における意匠の類否判断の基本的な考え方(まとめ) ➢ 以上を踏まえた、A案及びB案に対する相対的な評価は以下のとおり。 ➢ A案は、まずもって我が国の意匠制度と整合する考え方であり、制度的措置の検討に当たり考慮すべき懸念(ク リアランス調査の負担・萎縮効果)や権利の実効性にも配慮したものである点で、B案との比較においてバラン スが取れた案であり、適切ではないか。 A案 意匠制度との整合性 クリアランス調査の負担 権利の実効性 ○ 〇 △ クリエイターの創作活動や 仮想空間市場に対する 萎縮効果への配慮 ○ B案 相対的な評価 × B案における用途及び機能の類否判断を行わない考え方は、我が国の意匠法における基本 的な考え方を大きく変更するものであるため、我が国の意匠制度と整合しない。 他方で、A案は、用途及び機能の類否判断を行うため、我が国の意匠制度と整合する。 × B案は、仮想物品等の用途及び機能の類否判断を行わないため、クリアランス調査の範囲 が非常に広範になる可能性があり、調査の負担は大きい。 他方で、A案は、仮想物品等の用途及び機能の類否判断を行うため、クリアランス調査の 範囲を限定することが可能であり、調査の負担はB案に比して小さい。 なお、クリアランス調査等において調査対象を絞り込む際に利用される現行の日本意匠分 類(※)は、主として物品の用途の概念に基づいて分類を整備しており、国際意匠分類におい ても、物品観点で分類が整備されている。 ○ A案及びB案は、仮想物品等の実態を踏まえた権利の実効性が期待されるところ、B案は、 用途及び機能が類似しない意匠に対しても権利が及ぶことが想定されるため、権利の実効 性がより期待される。 △ A案は、権利の実効性を担保しつつも、クリアランス調査の負担がB案に比して小さいため、 萎縮効果に対して配慮したものである。 他方で、B案は、権利の実効性が期待されるが、クリアランス調査の負担がA案に比して大 きいため、萎縮効果に対する配慮は十分でない。 (※)日本意匠分類は、有効な検索ツールを提供することを主たる目的とし、物品の用途の概念を主として用い、必要に応じて機能、形態等の概念を用いている。 制度的措置の方向性③における意匠の類否判断の基本的な考え方 (A案)仮想物品等の用途及び機能の類否判断を行う (B案)仮想物品等の用途及び機能の類否判断を行わない(形状等のみを基に類否判断を行う) 24 仮想空間におけるデザインに関する意匠制度の在り方 御議論いただきたい事項 ➢ 制度的措置の方向性③の具体的内容に関する論点のうち、保護対象(保護され得る画像及び意匠 の認定)と意匠の類否判断については、我が国の意匠制度との整合性や、権利の実効性とクリア ランス調査の負担とのバランスに配慮しつつ、仮想空間における創作実態や技術の進展を踏まえ、 以下の対応案が適切ではないか。 制度的措置の方向性③の具体的内容に関する論点の対応案 <保護対象(保護され得る画像及び意匠の認定)の基本的な考え方> ⚫ 「仮想物品等の形状等を表した画像」を保護対象とすることで、実質的には、仮想物品等の形状等の保護を図る。 ⚫ 画像として表される仮想物品等の形状等は、一の立体的形状を有し、任意の視点から見ることが可能なものとし、 仮想物品等を任意の視点から見た場合に現れる無数の画像を一の意匠として保護する。 ⚫ 「仮想物品等の形状等を表した画像」に係る意匠の認定は、現行意匠制度上の意匠の認定と同様に行う。 <意匠の類否判断の基本的な考え方> ⚫ 意匠の類否判断においては、現行意匠制度における意匠の類否判断の考え方に照らし、(A案)仮想物品等の需 要者の視点から、仮想物品等の用途及び機能の類否判断を行う。 ⚫ A案は、B案(仮想物品等の用途及び機能の類否判断を行わない(形状等のみを基に類否判断を行う))との比 較において、まずもって我が国の意匠制度と整合する考え方であり、制度的措置の検討に当たり考慮すべき懸念 (クリアランス調査の負担・萎縮効果)や権利の実効性にも配慮したものであるため、適切であると考えられる。 以上の対応案について、御意見をいただきたい。 25 2.生成AI技術の発達を踏まえた意匠制度上の適切な対応 26 第16回本小委員会以降の動向と今回の本小委員会の予定 <令和6年度調査研究> ➢ 令和6年度に「生成AIを利用したデザイン創作の意匠法上の保護の在り方に関する調査研究」を実施。 <特許制度小委員会> ➢ 特許制度小委員会では、第50回、第52回及び第53回において、AI技術の発達を踏まえた特許制度上の適切な対 応について御議論いただいた。 ➢ 第53回特許制度小委員会においては、法的論点と具体的な検討事項を整理した上で、今後の検討の方向性とし て、特に①発明該当性、②発明者及び③引用発明適格性の論点について、相対的に早期に考え方を整理していく 方針が確認された。 <人工知能関連技術の研究開発及び活用の推進に関する法律案> ➢ 人工知能関連技術の研究開発及び活用の推進に関する法律案が第217回通常国会に提出され、令和7年4月24 日、衆議院で可決。 <ダバス事件> ➢ 特許法に関するダバス事件(知的財産高等裁判所令和6年(行コ)第10006号)について、令和7年1月30日 に控訴審判決が言い渡された。 ➢ 控訴審判決は、特許を受けることができる「発明」は、自然人が発明者となるものに限られると解するのが相当 として、原判決を維持した。また、AI発明に特許権を付与するか否かは、AI発明が社会に及ぼす様々な影響に ついての広汎かつ慎重な議論を踏まえた、立法化のための議論が必要な問題と言及した。 今回の本小委員会の予定 ⚫ 本小委員会においては、上記の動向を踏まえ、事務局にて行った法的論点の整理と分析の結果に 基づく今後の検討の方向性について、御議論いただきたい。 27 <参考>ダバス事件の概要 事案の概要 • 原告は、国際出願をした上、発明者の氏名の欄に「ダバス、本発明を自律的に発明した 人工知能」と記載した国内書 を提出した。 • これに対し、特許庁は、発明者の氏名として自然人の氏名を記載するよう補 を命じた が、原告が補 をしなかったため、発明者は自然人に限るとして出願却下処分をした。 • 原告は、出願却下処分が違法であると主張して、同処分の取消しを求めて提訴。 第1審判決 東京地判令和6年5月16日(令和5年(行ウ)第5001号):請求棄却→原告が控訴 • 特許法に規定する「発明者」は、自然人に限られるものと解するのが相当であると判示。 • 「特許法にいう「発明者」が自然人に限られる旨の前記判断は、上記実務上の懸念まで をも直ちに否定するものではなく、原告の主張内容及び弁論の全趣旨に鑑みると、まず は我が国で立法論としてAI発明に関する検討を行って可及的速やかにその結論を得る ことが、AI発明に関する産業政策上の重要性に鑑み、特に期待されているものである ことを、最後に改めて付言する。」との付言がなされた。 控訴審判決 知財高判令和7年1月30日(令和6年(行コ)第10006号):控訴棄却(原判決維持) • 特許法に基づき特許を受けることができる「発明」は、自然人が発明者となるものに限 られると解するのが相当であると判示。 • 「AI発明(※)に特許権を付与するか否かは、AI発明が社会に及ぼす様々な影響につい ての広汎かつ慎重な議論を踏まえた、立法化のための議論が必要な問題」と言及。 (※)控訴審判決は、「AI発明」につき、「「AI発明」の略語の定義は、便宜上、原告の主張に基づいて定めるが、本件において、特許出願に係 る発明を人工知能(AI)が自律的にした事実の有無は、争点となっていない。また、「AI発明」の略語は、人工知能(AI)の成果物が特許法の定 める「発明」に当たり得ることをあらかじめ前提とするものではない(この点は、後記のとおり、本件の争点の一つである。)。」とした上で、 「人工知能(AI)が自律的にした発明」と定義している。 28 調査研究(概要・背景) 令和6年度調査研究の概要・背景 ➢ 企業のデザイン開発において今後より一層の利用が進むと予想される生成AIと、創作されたデザ インの意匠法上の保護の在り方を検討する基礎資料とすることを目的とし、以下の内容について、 令和6年度調査研究を実施した。 (1)生成AIを利用したデザイン創作に関する国内意識・現状の調査 (2)生成AIを利用したデザイン創作の知財保護に関する有識者ヒアリング調査 (3)デザインの創作活動に資する生成AI技術の提供に関する国内動向の調査・整理 <令和6年度「生成AIを利用したデザイン創作の意匠法上の保護の在り方に関する調査研究」の概要> (1)生成AIを利用したデザイン創作に関する国内意識・現状の調査 生成AIを利用したデザイン創作に関し、国内企業・デザイン事務所に対してアンケー ト及びヒアリングを実施。 (2)生成AIを利用したデザイン創作の知財保護に関する有識者ヒアリング調査 海外のデザイン創作の知財保護に関する有識者に対し、ヒアリングを実施。 (3)デザインの創作活動に資する生成AI技術の提供に関する国内動向の調査・整理 アドバイザリーグループ 小川 亮 株式会社プラグ代表取締役社長 杉光 一成 金沢工業大学大学院教授 嶋 竜太 青山学院大学法学部教授 藤井 将之 株式会社藤井環境デザイン代表 • デザイン創作に資する生成AI技術を提供している企業・団体について、公開情報調査 を実施。 • 国内企業・団体に対しアンケート及びヒアリングを実施。 • 各社が提供するデザイン創作に関する生成AI技術を整理。 29 調査研究(1)国内意識・現状の調査 (1)生成AIを利用したデザイン創作に関する国内意識・現状の調査 ➢ 生成AIを利用したデザイン創作について、生成AIの利用の状況、法制度・意匠登録出願実務上の課題等 に関する個別事例を収集し、国内意識・現状を把握するため、次の基準により幅広く選定した101者の 国内企業、デザイン事務所に対してアンケート調査を実施し、38者から回答を得た。アンケート調査の 結果をもとに、国内企業6者及び業界団体1者に対してヒアリング調査を実施。 ✓ デザインの創作における生成AIの活用経験がある国内企業、デザイン事務所及び当該デザイン事務所への依頼実績 のある国内企業61者 ✓ 2022年度意匠登録件数上位40者(上記で選定された国内企業等を除く) ➢ 上記調査のうち、生成AIの利用状況等に関する主な結果は、以下のとおり。 <回答者の業種> • 14の業種から回答があり、電気機械器具製造業と輸送用機械製造業が16%(6者)と最も多く、その他の製造 業が13%(5者)となった。なお、デザイン業の11%(4者)はデザイン事務所からの回答であった。 <回答者のデザイン創作分野> • 回答者のデザイン創作分野については、プロダ クトデザイン分野が82%(31者)と最も多く、 パッケージデザイン分野が21%(8者)と続く ほか、様々な分野が含まれている。 貴社のデザイン創作の分野は主に何ですか(複数 回答可)。(回答者数38) 0 10 1. プロダクト 4. ジュエリー 5. 空間 6. インテリア 30 40 31(82%) 2. パッケージ 3. ファッション 20 8(21%) 3(8%) 0(0%) 4(11%) 2(5%) 7. 建築 3(8%) 8. その他 3(8%) 30 調査研究(1)国内意識・現状の調査 デザインを創作する場合の生成AIの利用状況 ➢ デザインを創作する場合の生成AIの利用状況について、アンケート調査では、「利用している」 との回答が45%(17者)と多かった。 ➢ 一方で、「利用するかは未定だが、検討はしている」(21%(8 者))、「利用しておらず、利 用する予定もない」(29%(11 者))も相当数を占めた。 ※次頁から36頁で紹介する調査結果は、デザイン創作をする場合に生成AIを「利用している」と回答した者に対する質問・回答に基づくものである。 貴社でデザインを創作する場合、生成AI を利用(※)していますか。(回答者数 38) (※)デザインの創作を他者に依頼し、 当該他者が創作において生成AIを利用し ている場合及びデザインの創作を他者か ら依頼され、自らが創作において生成AI を利用している場合を含む。 4. 利用しておらず、 利用する予定もない 11(29%) 1. 利用している (一部の創作におい てのみ利用している 場合も含む。) 17(45%) 3. 利用するかは未定だ が、検討はしている 8(21%) 2. 利用していないが、利用す る予定がある 2(5%) 31 調査研究(1)国内意識・現状の調査 デザイン創作に利用している生成AI ➢ デザインの創作に利用している生成AIについて、アンケート調査では、「市販のアプリケーショ ン」との回答が47%(8者)、「その他」との回答が12%(2者)であった。これらの回答をし た者からは、Adobe Firefly、Midjourney、Chat GPT、Stable Diffusion等の回答があり、市販 又はオープンソースの生成AIを利用している者が比較的多いことが窺える。また、「自ら開発し たもの」との回答も18%(3者)あった。 ➢ 利用する生成AIの選択について、ヒアリング調査では、「著作権に関して非常に安全性が高いこ とをうたっている製品を利用している」、「ロー ルで使えて自社の情報が外に流れる懸念がな いアプリケーションを利用している」、「自社の機密情報の流出防止の観点と、著作権問題のあ る学習モデルは使わない観点から、自社開発のAIを利用している」といったように、著作権や情 報管理の観点から利用する生成AIを選択している旨の回答があった。 ➢ 加えて、ヒアリング調査では、「自社のデザイナーのワークフローに組み込んで使用している製 品の提供元企業であって、自社との契約関係もある企業が提供している点で導入しやすい生成AI を利用している」、「生成AIをトライアルで使っている現状では、市販のものを使った方が目的 に合う」との回答もあった。 利用している生成AIは、以下のいずれに 該当しますか。(回答者数17) 5. その他 1. 自ら開発したもの 2(12%) 3(18%) 2. 他社と共同開発したもの 1(6%) 4. 市販のアプリケーション 8(47%) 3. 他社から貴社向けに提供された もの 3(18%) 32 調査研究(1)国内意識・現状の調査 生成AIを主に利用している段階 ➢ 生成AIを主に利用している段階について、アンケート調査(複数回答可)では、「デザイン案出 し」が87%(13者)、「アイデア出し・コンセプト作り」が80%(12者)と上位を占めたが、 それ以外にも、「情報収集」、「課題設定」、「プロトタイプ(試作)」、「仕様検討」、「顧 客に対する企画・デザインの方針確認」、「周辺業務」といった回答も一定数あった。 生成AIについては、主にどの段階(プロ セス)で利用していますか(複数回答 可)。(回答者数15) 33 調査研究(1)国内意識・現状の調査 生成AIの技術水準/生成AIによる自律的な創作 ➢ 現在の生成AIの技術水準がデザイン創作に十分と感じるかについて、アンケート調査では、「十分でな い」と回答した者(81%(13者))が多かった。 ➢ 生成AIが利用されるデザイン創作の工程は多岐にわたるところ、現在の生成AIの技術水準がデザイン創 作において十分でないと考える者が、どの工程における生成AIの利用を念頭においているのかは定かで はない。もっとも、ヒアリング調査において「十分でない」と考える点について聴取したところ、「実 際に製造して物理的なプロダクトにするところまで、生成AIで自動化して精度、品質、製造物責任等も 含めた形まで対応できる技術水準には至っていない」との回答や、「現在の画像生成AIでは設計のこと まで考慮したデザインが作成できない」との回答があった。 ➢ なお、「十分である」と回答した者(19%(3者))においても、デザインの創作過程全体を通じて人 間が実質的に関与せず、生成AIに自律的に創作を行わせたことはないとの回答であった。 1. 十分である 3(19%) 現在の生成AIの技術水準は、デザインを 創作するために十分であると感じますか。 (回答者数16) 2. 十分でない 13(81%) 上記質問において「1. 十分である」を選 択した場合、デザインの創作過程全体を 通じて人間が実質的に関与せず、生成AI に自律的に創作を行わせたことはありま すか。(回答者数3) 0 1. ある 2. ない 1 2 3 4 0(0%) 3(100%) 34 調査研究(1)国内意識・現状の調査 生成AI利用の効果・メリット/問題点・デメリット ➢ 生成AIを利用することで生じた効果・ リットについて、アンケート調査(複数回答可)では、 「創作作業の効率化」が最多の73%(11者)で、「金銭的コストの削減」が27%(4者)、「創 作水準の向上」が20%(3者)となり、実際に生成AIを利用した場合の効果・ リットとして、 「創作作業の効率化」が「創作水準の向上」を大きく上回る結果となった。 ➢ 生成AIを利用することで生じた問題点・デ リットについて、アンケート調査(複数回答可)で は、「その他」が最多の53%(8者)を占め、「デザイナーに比べて質が悪い」が33%(5者)、 「操作の習得に手間がかかる」が27%(4者)であった。なお、「その他」を選択した場合の回 答として、知的財産権の問題を挙げる回答が4者あった。 35 調査研究(1)国内意識・現状の調査 生成AIの利用を今後さらに進めるに当たっての課題及び懸念 ➢ 生成AIの利用を今後さらに進めるに当たっての課題及び懸念について、アンケート調査(複数回 答可)では、「予期せず他社の権利を侵害してしまう可能性がある」が87%(13者)、「情報漏 洩のリスクがある」が53%(8者)、「学習データの内容が不明確」が47%(7者)と続いた。 ➢ なお、権利侵害や情報管理の観点のリスクに対する対応策について、ヒアリング調査では、「著 作権や意匠権等についてのリーガルの知識と、ソフトウェアの新技術をキャッチアップするシス テムの知識と、実務で生成AIを使うデザインの知識を総動員した対応が必要」、「法律が決まっ ていないので対応が困難」、「他者の権利侵害をしないように、デザインの他社比較を行ってリ スクを回避している」、「情報漏洩のリスクや懸念があるために社内規制をしている」といった 回答があった。 デザイン創作における生成AIの利用を今 後さらに進めるに当たり、課題や懸念は ありますか(複数回答可)。(回答者数 15) 36 調査研究(2)海外有識者ヒアリング調査 (2)生成AIを利用したデザイン創作の知財保護に関する有識者ヒアリング調査 ➢ 海外でのデザインの創作における生成AIの利用状況、法制度・意匠登録出願実務上の課題等に関 する事情を調査し、海外における生成AIを利用したデザイン創作の知財保護に関する意識・現状 を把握するため、各国・地域の有識者(米国2者、欧州1者、中国1者、韓国1者の計5者)に対し てヒアリング調査を実施した(※)。 主な質問項目 • • • • • • • 意匠の創作における、生成AIの利用状況や利用を巡る議論の状況等 他者の創作した既存の意匠を、生成AIに学習させること 他者の創作した既存意匠に基づく、生成AIを利用した意匠の大量創作・公開 生成AIが創作した意匠によって、出願意匠が拒絶又は無効とされること 生成AIの利活用の拡大等が、創作非容易性/非自明性(米)/独自性(欧)の考え方に与える影響 生成AIを利用したデザインに対する意匠権による保護及び創作者 各国個別の事情 (※)調査結果については、今後の検討において関連する情報を適宜紹介する。 37 調査研究(3)国内動向の調査・整理 (3)デザインの創作活動に資する生成AI技術の提供に関する国内動向の調査・整理 ➢ デザインの創作に資する生成AI技術の提供に関する国内動向を把握するために、35者の国内企業、 デザイン事務所に対してアンケート調査を実施し、12者から回答を得た。アンケート調査の結果 をもとに、国内企業等5者に対してヒアリング調査を実施した。 <回答者の業種> • 回答者の業種については、6の業種から回答があり、情報通信業が33%(4者)と最も多く、電気機械器具製造 業、サービス業(デザイン業及び映像・音声・文字情報制作業を除く)とその他の非製造業が17%(2者)と なった。なお、デザイン業の8%(1者)はデザイン事務所からの回答であった。 0 1 3 2. 食品製造業 0(0%) 3. 繊維・パルプ・紙製造業 0(0%) 4. 医薬品製造業 0(0%) 5. 化学工業 0(0%) 6. 石油石炭・プラスチック・ゴム・窯業 0(0%) 7. 鉄鋼・非鉄金属製造業 0(0%) 8. 金属製品製造業 0(0%) 9. 機械製造業 0(0%) 10. 電子部品・デバイス・電子回路製造業 0(0%) 12. 情報通信機械器具製造業 0(0%) 13. 輸送用機械製造業 0(0%) 14. その他の製造業 0(0%) 4(33%) 15. 情報通信業 0(0%) 2(17%) 17. サービス業(デザイン業及び映像・音声・文字情報制作業を除く) 1(8%) 18. デザイン業 19. 映像・音声・文字情報制作業 0(0%) 2(17%) 20. その他の非製造業 21. 公務 5 2(17%) 11. 電気機械器具製造業 16. 卸売業・小売業 4 1(8%) 1. 建設業 貴社の業種は、以下のいずれに該当 しますか。(回答者数12) 2 0(0%) 38 調査研究(3)国内動向の調査・整理 現在の生成AIの技術水準 <現在の生成AIの技術水準> • アンケート調査では、①テキストを入力して二次元デザインを生成する場合、②テキストを入力 して三次元デザインを生成する場合、③二次元データを入力して二次元デザインを生成する場合、 ④二次元データを入力して三次元デザインを生成する場合、⑤三次元データを入力して三次元デ ザインを生成する場合のそれぞれにおいて、現在の生成AIの技術水準はデザインを創作するため に十分であるかについて、①と③のテキスト又は二次元データを入力して二次元デザインを生成 する場合については、「はい」(十分であると感じる)との回答が7者と、「いいえ」(十分であ ると感じない)との回答4者を上回ったが、それ以外は、「はい」と「いいえ」がほぼ同数であっ た。 0 2 4 6 8 ①テキストを入力し、 7(64%) 4(36%) 二次元のデザインを生成する場合 ②テキストを入力し、 下記の場合(①~⑤)について、 現在の生成AIの技術水準はデザイ ンを創作するために十分であると 感じますか。(回答者数11) 5(45%) 6(55%) 三次元のデザインを生成する場合 ③二次元のデータを入力し、 7(64%) 4(36%) 二次元のデザインを生成する場合 ④二次元のデータを入力し、 5(45%) 6(55%) 三次元のデザインを生成する場合 ⑤三次元のデータを入力し、 5(45%) 6(55%) 三次元のデザインを生成する場合 はい いいえ 39 調査研究(3)国内動向の調査・整理 生成AIによる自律的な創作の可能性/生成AIを利用した創作の判別可能性 <生成AIによる自律的な創作の可能性> • デザインの創作過程全体を通じて人間が実質的に 関与せず、生成AIが自律的に創作を行う可能性に ついて、アンケート調査では、「場合によっては 可能」が82%(9者)、「不可能」が18%(2 者)、「可能」が0%であった。 デザインの創作過程全体を 通じて人間が実質的に関与 せず、生成AIが自律的に創 作を行うことは現時点にお いて可能ですか。(回答者 数11) <生成AIを利用した創作の判別可能性> • 現在の生成AIの技術水準において、あるデザイン が生成AIを利用して創作されたものか、事後的に 判別することは可能かについて、アンケート調査 では、「場合によっては可能」が64%(7者)、 「不可能」が36%(4者)であったが、「可能」 との回答は0%であった。 • ヒアリング調査においては、上記事後的な判別に関して、電子透かし(ウォーターマーク)や「generated by ○○」といったタグが付いていれば鑑別できるとの回答があったが、これらが付いていない場合にも判別を可 能となる技術に関しては、どの生成AIが出力したかを推定するAIはできるかもしれないとの回答や、生成AI の利用有無を推定するAIができたとしても、生成AI技術の進歩とのいたちごっこであるとの回答があったほか、 根本的に判別可能とする技術を挙げた回答は無かった。また、この判別について、そもそも生成AIの利用有無 の定義(生成AIの利用方法はさまざまであるところ、何をもって利用したと定義するのか)が判然としないと 指摘する回答や、上記電子透かしについて、各社独自の電子透かしをつけても、解読が困難(全社の解読機に 通すのは現実的でない)であるし、規格化しては意味がない(偽造が簡単などの理由がある)し、生成AIを使 用していることが単にわかっただけで何になるのか疑問といった点を指摘する回答があった。 現在の生成AIの技術水準に おいて、あるデザインが生 成AIを利用して創作された ものか、事後的に判別する ことは可能ですか。(回答 者数11) 40 調査研究(3)国内動向の調査・整理 <参考>学習データの特定可能性/デザイン生成手法の特定可能性 <学習データの特定可能性> • 現在の生成AIの技術水準において、生成AI がどのようなデータを学習したか、事後的 に特定することは可能かについて、アン ケート調査では、「場合によっては可能」 が55%(6者)、「不可能」が45%(5 者)であったが、「可能」との回答は0%で あった。 1. 可能 あるデザインが生成AI を利用して創作された ものである場合、現在 の生成AIの技術水準に おいて、どのような データを学習したかに ついて、事後的に特定 することは可能ですか。 (回答者数11) 0(0%) 3. 不可能 5(45%) 2. 場合に よっては 可能 6(55%) <デザイン生成手法の特定可能性> • 現在の生成AIの技術水準において、学習し たデータを用いてどのような手法でデザイ ンを生成したかを事後的に特定することは 可能かについて、アンケート調査では、 「場合によっては可能」が55%(6者)、 「不可能」が36%(4者)、「可能」が 9%(1者)であった。 あるデザインが生成AI を利用して創作された ものである場合、現在 の生成AIの技術水準に おいて、学習したデー タを用いてどのような 手法(例:複数の画像 データ同士を組み合わ せて生成、一の画像 データの一部を別の画 像データの一部と置 換)でデザインを生成 したかについて、事後 的に特定することは可 能ですか。(回答者数 11) 1. 可能 1(9%) 3. 不可能 4(36%) 2. 場合に よっては 可能 6(55%) 41 法的論点と具体的な検討事項の整理 ➢ 第16回の本小委員会で頂いた御意見、調査研究の結果、特許制度小委員会における議論状況等を踏まえると、 生成AI技術の発達を踏まえた意匠制度上の適切な対応として考えられる法的論点と具体的な検討事項は、次の とおり整理できる。 論点 ① 意匠該当性 具体的な検討事項 【➀ー1】生成AIを利用して作成したデザインは、「意匠」に該当するか。 【➀ー2】創作過程において人の実質的な関与がなく、生成AIが自律的に作成したデザインは、「意匠」に該当するか。 【➁-1】生成AIを利用して作成したデザインの創作者の認定は、従前と同様の考え方(裁判例上、創作者とは、 意匠の創作に実質的に関与した者をいうとされる)に基づき行うとすることでよいか。 ② 創作者 【➁-2】人の関与はあるが、従前と同様の考え方では創作者が存在しない事態が生じ得る場合、当該デザインは 意匠法で保護され得るか。また、保護され得る場合、その権利の帰属主体は誰か。 【➁-3】創作過程において人の実質的な関与がなく、生成AIが自律的に作成したデザインが「意匠」に該当す るとした場合、生成AIを創作者として認めるべきか。 【➁-4】②-3において、生成AIを創作者として認めない場合、出願時に創作者を偽り得るところ(いわゆる 「僭称問題」)、どのように対応すべきか。 ③ 引用意匠適格性 【③-1】意匠登録出願前に生成AIを利用して作成・公開されたデザインは、新規性や創作非容易性の登録要件 に係る拒絶理由の根拠として引用する「意匠」や「形状又は画像」となるか。 ④ 新規性喪失の例外 【④-1】意匠登録出願前に出願人の既存デザインに基づき第三者が生成AIを利用するなどして作成・公開した デザインは、新規性や創作非容易性の登録要件に係る拒絶理由の根拠から例外的に除外すべきか。 【⑤-1】生成AI技術の進展により、創作非容易性の判断は影響を受けるか。 ⑤ 創作非容易性 【⑤-2】デザインの創作過程における生成AIの利活用の拡大に伴い、創作非容易性の考え方(例えば、当業者 の定義や論理付け等)を変更すべきか。 【⑤-3】生成AIを利用して作成したデザインの創作非容易性の考え方は、生成AIを利用せずに作成したデザイ ンと異なるべきか。 ⑥ 記載要件 【⑥-1】デザインの創作過程において生成AIを利用した場合、意匠登録出願時に、生成AIの利用の有無を明示 するよう義務付けるべきか。 42 法的論点の検討を進めるに当たっての分析とその観点 ➢ 生成AI技術は、デザイン創作のいずれの過程においても関連するため、法的論点の検討を進める に当たっては、次のⅠ~Ⅲの観点を踏まえた分析が必要。 <法的論点の分析に関する観点> Ⅰ.デザイン創作の実態や技術の発展状況を踏まえ、検討の必要性が高い論点か。 Ⅱ.デザイン創作に関わるステークホルダーの意見を踏まえ、検討の必要性が高い論点か。 Ⅲ.国内外における諸情勢を踏まえ、検討の必要性が高い論点か。 ⚫ 以下では、前頁記載の法的論点について、具体的な検討事項と現行制度を整理した上で、調査研 究の結果等をもとにⅠ~Ⅲの観点を踏まえた分析を行った。 43 ①意匠該当性(現行制度と具体的な検討事項) 具体的な 検討事項 次の点が具体的な検討事項として挙げられる。 【①-1】人が生成AIを利用して作成したデザインは、「意匠」に該当するか。 【①-2】創作過程において人の実質的な関与がなく、生成AIが自律的に作成したデザイ ンは、「意匠」に該当するか。 現行制度 • 意匠法第2条第1項は、「意匠」を、「物品…の…形状等…、建築物…の形状等又は画 像…であつて、視覚を通じて美感を起こさせるもの」と定義している。 ①-1/ ①ー2 このデザイン をベースに、●●●を修 正した水色のマグカップ を作成して。 ○○○の仕様を満 たすマグカップを 作成して。 生成AIを利用して作成したデザイン 生成 生成 入力 指示 人 意匠法第2条第1項の定義する「意匠」に該当するか? 仕上げ 物品 建築物 画像 物品 建築物 画像 生成AI ( 学習済モデル) 生成AI ( 学習済モデル) 生成AIが自律的に作成 44 ①意匠該当性(分析) <Ⅰ.デザイン創作の実態や技術の発展状況> • デザインを創作する場合の生成AIの利用状況について、アンケート調査では「利用している」との回答が約半 数を占めており、生成AIの利用が一定程度普及しているといえる(31頁)。また、生成AIの具体的な利用段階 (プロセス)としても、「デザイン案出し」や「アイデア出し・コンセプト作り」を中心に、様々な段階で利用 されている(33頁)。 • デザインの創作過程全体を通じて人間が実質的に関与せず、生成AIに自律的に創作を行わせたことについて、 アンケート調査では、「ある」との回答はなかった(34頁)。また、デザインの創作過程全体を通じて人間が 実質的に関与せず、生成AIが自律的に創作を行う可能性について、アンケート調査では「可能」との回答はな かったが、「不可能」との回答よりも「場合によっては可能」との回答の方が多かった(40頁)。 分析 ➢ デザインの創作過程において、人が生成AIを利用することは既に現実に行われており、また、生成 AIが自律的に創作を行う可能性も場合によっては可能とされていることを踏まえると、本論点は、検 討の必要性が高いといえる。 45 ①意匠該当性(分析) <Ⅱ.デザイン創作に関わるステークホルダーの意見> • 生成AIを利用して創作したデザイン(創作過程にお いて人間の実質的な関与がなく、生成AIが自律的に 創作したものを除く)について、アンケート調査で は、意匠権による保護を受けることを望むとの回答 が優勢であった。また、生成AIを利用して創作した デザインが一律に意匠法による保護の対象外となる ことについて、ヒアリング調査では、望ましくない といった回答があった。 • 生成AIを利用して創作したデザインのうち、創作過 程において人間の実質的な関与がなく、生成AIが自 律的に創作したデザインについて、アンケート調査 では、意匠法で保護すべきではないとの回答が優勢 であった。また、ヒアリング調査では、生成AIを道 具として人間が利用した場合に限って保護を認める べきといった回答があった。 分析 生成AIを利用して創作 したデザイン(創作過 程において人間の実質 的な関与がなく、生成 AIが自律的に創作した ものを除く)について、 意匠権による保護を受 けることを望みますか。 (回答者数38) 生成AIを利用して創作 したデザインのうち、 創作過程において人間 の実質的な関与がなく、 生成AIが自律的に創作 したものについても、 意匠権で保護すべきと 考えますか。(回答者 数26) ➢ 生成AIを利用して創作したデザインを意匠権で保護すべきか否かについては、創作過程において人間 の実質的な関与がなく生成AIが自律的に創作したデザインか否かによって、ユーザーの意見の傾向に 相違がみられた。「意匠」は、他の論点を議論する前提となる基本概念であって重要性が高いことも 踏まえると、本論点は、検討の必要性が高いといえる。 46 ①意匠該当性(分析) <Ⅲ.国内外の諸情勢> • ダバス事件控訴審判決では、(本論点と特許法上対応する)発明該当性に関連して、「特許法に基づき特許を受 けることができる「発明」は、自然人が発明者となるものに限られると解するのが相当である」、「AI発明 (人工知能(AI)が自律的にした発明)に特許権を付与するか否かは、発明者が自然人であることを前提とす る現在の特許権と同内容の権利とすべきかを含め、AI発明が社会に及ぼす様々な影響についての広汎かつ慎重 な議論を踏まえた、立法化のための議論が必要な問題である」旨判示された。 • 第53回特許制度小委員会では、発明該当性について、相対的に早期に考え方を整理していくことが適切とされ た。 • 諸外国のうち、例えば、米国について、USPTOが2024年2月に発行した「AIの支援を受けた発明の発明者適 格に関するガイダンス」では、「発明者および共同発明者は、自然人でなければならない。」とした上で、「自 然人が発明の創作にAIを使用したからといって、発明者としての寄与が否定されるわけではない。」としてい る(※1)。また、海外有識者のヒアリング調査(米国)では、意匠特許の発明者性には、特許の発明者性と同じ 基準が適用されるとされた事例(※2)の紹介や、米国の法律では人間が発明者であることが必要であり、生成AI が自律的に創作したデザインは保護されないとの回答があった。 分析 ➢ 本論点と特許法上対応する発明該当性に関連して、国内では、既に訴訟事件が生じて裁判所の判断が 示されており、特許制度小委員会でも相対的に早期に考え方を整理することが適切とされたこと、国 外では、例えば、米国においてガイダンス発行等の活発な動きが見られることといった国内外の諸情 勢を踏まえると、意匠法においても、本論点は、検討の必要性が高いといえる。 (※1)JETRO NY「USPTO、AIの支援を受けた発明の発明者適格性に関するガイダンスを発行(2024年2月13日)」 https://www.jetro.go.jp/ext_images/_Ipnews/us/2024/20240213.pdf (※2)In re Rousso, 22 F.2d 729, 731 (CCPA 1955) 47 ②創作者(現行制度と具体的な検討事項) 具体的な 検討事項 次の点が具体的な検討事項として挙げられる。 【②-1】生成AIを利用して作成したデザインの創作者の認定は、従前と同様の考え方(裁 判例上、創作者とは、意匠の創作に実質的に関与した者をいうとされる)に基づき行うとす ることでよいか。 【②-2】人の関与はあるが、従前と同様の考え方では創作者が存在しない事態が生じ得る 場合、当該デザインは意匠法で保護され得るか。また、保護され得る場合、その権利の帰属 主体は誰か。 • 意匠法第3条第1項柱書は、「意匠の創作をした者」(創作者)がその意匠について意 匠登録を受けることができる旨定めているが、創作者の定義に関する明文規定はない。 裁判例上、創作者とは、意匠の創作に実質的に関与した者をいうとされる(大阪高判 成6年5月27日( 成5年(ネ)2339号)、東京地判令和3年9月1日( 成30年 (ワ)第38585号・ 成31年(ワ)第10171号))。 現行制度 • 具体的な 検討事項 次の点が具体的な検討事項として挙げられる。 【②-3】創作過程において人の実質的な関与がなく、生成AIが自律的に作成したデザイン が「意匠」に該当するとした場合、生成AIを創作者として認めるべきか。 【②-4】②-3において、生成AIを創作者として認めない場合、出願時に創作者を偽り得 るところ(いわゆる「僭称問題」)、どのように対応すべきか。 • 現行制度 特許法に関するダバス事件控訴審判決の射程が意匠法にも及ぶと考えた場合、意匠法で は、権利能力のない存在を創作者とする意匠について意匠権を付与するための手続は定 められておらず、そのため、「意匠」の概念自体は自然人を創作者とする場合に限られ ないと解したとしても、権利能力のない存在を創作者とする「意匠」について、意匠法 に基づく手続により意匠権を付与する余地はない、と解することが考えられる。 48 ②創作者(分析) <Ⅰ.デザイン創作の実態や技術の発展状況> • デザインを創作する場合の生成AIの利用状況について、アンケート調査では「利用している」との回答が約半 数を占めており、生成AIの利用が一定程度普及しているといえる(31頁)。また、生成AIの具体的な利用段階 (プロセス)としても、「デザイン案出し」や「アイデア出し・コンセプト作り」を中心に、様々な段階で利用 されている(33頁)。 • デザインの創作過程全体を通じて人間が実質的に関与せず、生成AIに自律的に創作を行わせたことについて、 アンケート調査では、「ある」との回答はなかった(34頁)。また、デザインの創作過程全体を通じて人間が 実質的に関与せず、生成AIが自律的に創作を行う可能性について、アンケート調査では「可能」との回答はな かったが、「不可能」との回答よりも「場合によっては可能」との回答の方が多かった(40頁)。 分析 ➢ デザインの創作過程において、人が生成AIを利用することは既に現実に行われており、また、生成 AIが自律的に創作を行う可能性も場合によっては可能とされていることを踏まえると、本論点は、検 討の必要性が高いといえる。 49 ②創作者(分析) <Ⅱ.デザイン創作に関わるステークホルダーの意見> • 生成AIを利用して創作したデザイン(創作過程にお 生成AIを利用したデザイン(創作過程において人間の実質的な関与がなく、 生成AIが自律的に創作したものを除く)の創作について、誰を創作者とす いて人間の実質的な関与がなく、生成AIが自律的に べきと考えますか(複数回答可)。(回答者数27) 作成したものを除く)を意匠権で保護する場合に誰 を創作者とすべきかについて、アンケート調査では、 「最終調整・仕上げを行った者」や「生成AIへ創作 を指示した者」とする回答が多かった。ヒアリング 調査では、デザインのベースとなる創作に携わった 者、デザインの要部に係るプロンプトを入力した者、 意匠の創作性として評価される要素次第(ケースバ イケース)といった回答もあった。 • 生成AIを利用して創作したデザインのうち、創作過 程において人間の実質的な関与がなく、生成AIが自 律的に作成したデザインを意匠権で保護する場合の 創作者や、生成AIを意匠権の主体として認めること に対するメリット・デメリット、生成AIを意匠権の 主体として認めることについての要望に関して、ア ンケート調査及びヒアリング調査では、様々な回答 があった。 分析 ➢ 生成AIを利用して創作したデザインを意匠権で保護する場合の創作者については、ユーザーからは 様々な意見があった。創作者は、他の論点を議論する前提となる基本概念であって重要性が高いこと も踏まえると、本論点は、検討の必要性が高いといえる。 50 ②創作者(分析) <Ⅲ.国内外の諸情勢> • • • ダバス事件控訴審判決では、(本論点と特許法上対応する)発明者該当性に関連して、「特許法に基づき特許を 受けることができる「発明」は、自然人が発明者となるものに限られると解するのが相当である」、「AI発明 (人工知能(AI)が自律的にした発明)に特許権を付与するか否かは、発明者が自然人であることを前提とす る現在の特許権と同内容の権利とすべきかを含め、AI発明が社会に及ぼす様々な影響についての広汎かつ慎重 な議論を踏まえた、立法化のための議論が必要な問題である」、「(控訴人が主張した、AI発明の出願におい て発明者の氏名を必要的記載事項とした場合、発明者でない自然人を発明者として記載した出願の増加を招く問 題点について)AI発明の存在を前提としていない現行法の問題点の一つといえる」旨、判示した。 第53回特許制度小委員会では、発明者該当性について、相対的に早期に考え方を整理していくことが適切とさ れた。 諸外国のうち、例えば、米国について、USPTOが2024年2月に発行した「AIの支援を受けた発明の発明者適 格に関するガイダンス」では、「発明者および共同発明者は、自然人でなければならない。」とした上で、「自 然人が発明の創作にAIを使用したからといって、発明者としての寄与が否定されるわけではない。」、「AI に 問題を提起しただけの自然人は、AI の出力から特定される発明の適切な発明者ではない可能性がある。しかし、 AI から特定の解決策を引き出す方法が顕著な貢献となる可能性はある。」としている(※1)。また、海外有識者 のヒアリング調査(米国)では、意匠特許の発明者性には、特許の発明者性と同じ基準が適用されるとされた事 例(※2)の紹介や、米国の法律では人間が発明者であることが必要であり、生成AIが自律的に創作したデザイン は保護されないとの回答があった。 分析 ➢ 本論点と特許法上対応する発明者該当性に関連して、国内では、訴訟事件に対する裁判所の判断が示 されており、特許制度小委員会でも相対的に早期に考え方を整理することが適切とされたこと、国外 では、例えば、米国においてガイダンス発行等の活発な動きが見られることといった国内外の諸情勢 を踏まえると、意匠法においても、本論点は、検討の必要性が高いといえる。 (※1)JETRO NY「USPTO、AIの支援を受けた発明の発明者適格性に関するガイダンスを発行(2024年2月13日)」 https://www.jetro.go.jp/ext_images/_Ipnews/us/2024/20240213.pdf (※2)In re Rousso, 22 F.2d 729, 731 (CCPA 1955) 51 ③引用意匠適格性(具体的な検討事項と現行制度) 次の点が具体的な検討事項として挙げられる。 【③-1】意匠登録出願前に生成AIを利用して作成・公開されたデザインは、新規性や創作非容 易性の登録要件に係る拒絶理由の根拠として引用する「意匠」や「形状又は画像」となるか。 ※意匠法第3条第1項で用いられる「意匠」は、第2条第1項においてその定義が定められてい るため、第2条第1項の「意匠」の解釈も併せて考慮する必要がある。 具体的な 検討事項 • 現行制度 • 入力・指示 生成AI (学習済モデル) 意匠登録出願された意匠について、その出願前に、公然知られた意匠や頒布された刊行物に記 載された意匠又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった意匠と同一又は類似である場 合、登録要件である新規性を満たさず、意匠登録を受けることはできない(意匠法第3条第1 項)。 意匠登録出願された意匠について、その出願前に、公然知られ、頒布された刊行物に記載され、 又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった形状等又は画像に基づいて容易にその意匠 の創作をすることができた場合、登録要件である創作非容易性を満たさず、意匠登録を受ける ことはできない(意匠法第3条第2項)。 第三者 意匠登録出願前に生成AIを利用して 作成・公開された公知のデザイン 生成AIを利用した デザインの作成 ③-1 新規性や創作非容易性の登録要件に 係る拒絶理由の根拠として引用する 「意匠」や「形状又は画像」となるか? 公開 審査官 デザインの 創作者 意匠登録出願 デザインの創作 新デザインを創作 (未公開意匠) ? 新規性 創作非容易性 審査 特許庁 52 ③引用意匠適格性(分析) <Ⅰ.デザイン創作の実態や技術の発展状況> • 他者の創作した既存の意匠に基づく意匠を生成AIを利用して多数作成・公開した事例を経験又は見聞きしたこ とについて、アンケート調査では「ある」との回答があった。具体的には、Web上の生成AI画像について会社 名、製品名などで検索すると多数の類似画像がヒットする事例、プロダクトデザインの一部や全てを変更した画 像がSNSやAI生成画像アップロードサイト等にアップロードされている事例が挙げられた。 • 他者の創作した既存の意匠を生成AIに学習させて問題となった事例を経験又は見聞きしたことについて、アン ケート調査では「ある」との回答があった。具体的には、既存製品のグレード違いやマイナーチェンジ版の予想 CGといった、将来の意匠出願時に公知資料として参酌されうるものがWeb上で多数公開されている事例等が挙 げられた。 • ヒアリング調査において、第三者が生成AIを利用して意匠を多数作成し公開する目的や事例等について意見を 聴取したところ、「次のモデルの動向が一般ユーザーにも注目される製品で、デザインも注目される製品は、次 のモデルのデザイン予想がWeb や SNS で公開されている」、「Web で依頼してデザインやグラフィックを 作るサービスのサイトを確認すると、模倣品が出ていたりする実態がある」、「AI 生成画像のアップロードサ イトに自社製品に似た画像がたくさんアップロードされている」といった声があった。 分析 ➢ 生成AIを利用してデザインを多数作成・公開した事例等が既に確認されており、今後も、そのような デザインの作成・公開は増加する可能性がある。そのため、意匠登録出願前に生成AIを利用して作 成・公開されたデザインを新規性や創作非容易性の登録要件に係る拒絶理由の根拠とすべきか、考え 方を整理しておくべきであり、本論点は、検討の必要性は高いといえる。 53 ③引用意匠適格性(分析) <Ⅱ.デザイン創作に関わるステークホルダーの意見> • アンケート調査では、「自身の創作した既存の意匠に基づく意匠を、第三者が生成AIを利用して多数作成し公 開する行為についての意匠登録出願との関係における懸念」として、自身の創作した既存の意匠に基づき第三者 が生成AIを用いて作成・公開した意匠が拒絶理由の根拠となって、意匠登録出願が拒絶される懸念を挙げた回 答が多くみられた。 分析 ➢ 生成AIの普及に伴い、第三者が生成AIを利用して作成・公開したデザインが、新規性・創作非容易性 の拒絶理由の根拠となって、意匠登録出願が拒絶されることに対する懸念を示す者が一定割合存在す ることを踏まえると、その懸念の前提となる本論点は、検討の必要性が高いといえる。 <Ⅲ.国内外の諸情勢> • 第53回特許制度小委員会では、(本論点と特許法上対応する)引用発明適格性について、相対的に早期に考え 方を整理していくことが適切とされた。 • 諸外国のうち、例えば、米国について、USPTOは、2024年4月、米国特許法102条(新規性要件)は先行技 術文献が自然人によるものであることを求めているか、AI生成物とそれ以外とを区別して評価する必要がある か等の観点で、AIの利用拡大による影響について意見募集を実施した(※)。また、海外有識者のヒアリング調 査(米国)では、生成AIを使って大量に生成した意匠の開示が意匠特許制度に与える影響は、特許制度の場合 よりも大きい可能性がある旨の回答があった。 分析 ➢ 本論点と特許法上対応する引用発明適格性について、国内では、特許制度小委員会でも相対的に早期 に考え方を整理することが適切とされたこと、国外では、例えば、米国において意見募集等の活発な 動きが見られることといった国内外の諸情勢を踏まえると、意匠法においても、本論点は、検討の必 要性が高いといえる。 (※)JETRO NY「USPTO、AIの利用拡大が及ぼす特許性判断への影響について意見募集を開始(2024年5月6日)」 https://www.jetro.go.jp/ext_images/_Ipnews/us/2024/20240506_1.pdf 54 ④新規性喪失の例外(具体的な検討事項と現行制度) 具体的な 検討事項 昨今、第三者が近年普及した生成AIを利用し、既存(オリジナル)デザインに基づき大 量のデザインを短時間に低コストで生成し、公開することが可能となった結果、既存デザ インの創作者が新たに創作したデザインを権利化するにあたり、第三者の公開した上記大 量のデザインにより新規性が喪失し、その権利化が阻害される可能性が高まるとの懸念が あることを踏まえ、次の点が具体的な検討事項として挙げられる。 【④-1】意匠登録出願前に出願人の既存デザインに基づき第三者が生成AIを利用するな どして作成・公開したデザインは、新規性や創作非容易性の登録要件に係る拒絶理由の根 拠から例外的に除外すべきか。 • 現行制度 意匠法第4条は、意匠登録を受ける権利を有する者の意に反して公知意匠となった場合 や、意匠登録を受ける権利を有する者の行為に起因して公知意匠となった場合、一定の 要件のもと、新規性喪失の例外として、新規性・創作非容易性の判断の根拠から例外的 に除外する旨規定している。 意匠登録出願前に出願人の既存のデザイン に基づき第三者が生成AIを利用する などして作成・公開したデザイン 第三者 入力・指示 学習用 プログラム 新規性や創作非容易性の登録要件に係る 拒絶理由の根拠から例外的に除外すべきか? 機械 学習 学習用 データセット ④-1 生成AIを利用した デザインの作成 公開 生成AI (学習済モデル) 既存デザインの 創作者 審査官 デザイン創作 編集・加工 意匠登録出願 (既存デザインのモデルチェンジ) 既存デザイン 新デザインを創作 (未公開意匠) ? 新規性 創作非容易性 審査 特許庁 55 ④新規性喪失の例外(分析) <Ⅰ.デザイン創作の実態や技術の発展状況> • 他者の創作した既存の意匠に基づく意匠を生成AIを利用して多数作成・公開した事例を経験又は見聞きしたこ とについて、アンケート調査では「ある」との回答があった。具体的には、Web上の生成AI画像について会社 名、製品名などで検索すると多数の類似画像がヒットする事例、プロダクトデザインの一部や全てを変更した画 像がSNSやAI生成画像アップロードサイト等にアップロードされている事例が挙げられた。 • 他者の創作した既存の意匠を生成AIに学習させて問題となった事例を経験又は見聞きしたことについて、アン ケート調査では「ある」との回答があった。具体的には、既存製品のグレード違いやマイナーチェンジ版の予想 CGといった、将来の意匠出願時に公知資料として参酌されうるものがWeb上で多数公開されている事例等が挙 げられた。 • ヒアリング調査において、第三者が生成AIを利用して意匠を多数作成し公開する目的や事例等について意見を 聴取したところ、「次のモデルの動向が一般ユーザーにも注目される製品で、デザインも注目される製品は、次 のモデルのデザイン予想がWeb や SNS で公開されている」、「Web で依頼してデザインやグラフィックを 作るサービスのサイトを確認すると、模倣品が出ていたりする実態がある」、「AI 生成画像のアップロードサ イトに自社製品に似た画像がたくさんアップロードされている」といった声があった。 分析 ➢ 第三者が生成AIを利用して既存デザインに基づくデザインを多数作成・公開した事例等が既に確認 されており、今後、そのような事例が特定の意匠分野に限らず、広く起こり得る可能性がある。その ため、既存デザインの創作者が新たに創作したデザインを権利化するにあたり、第三者が生成AIを 利用するなどして既存デザインに基づき作成・公開したデザインにより、(既存デザインの創作者が 新たに創作したデザインの)新規性が喪失し、その権利化が阻害される可能性が高まると考えられる ことから、本論点は、検討の必要性が高いといえる。 56 ④新規性喪失の例外(分析) <Ⅱ.デザイン創作に関わるステークホルダーの意見> • アンケート調査では、自身の創作した既存の意匠に基づき第三者が作成・公開した意匠が、新規性・創作非容易性の拒 絶理由の根拠となって、意匠登録出願が拒絶されたことがある者は僅かに留まり、その際の引用意匠も、生成AI以外の 方法によって作成されたものであったものの、かかる懸念を有する者は半数以上を占めた。また、「自身の創作した既 存の意匠に基づく意匠を、第三者が生成AIを利用して多数作成し公開する行為についての意匠登録出願との関係におけ る懸念」として、自身の創作した既存の意匠に基づき第三者が生成AIを用いて作成・公開した意匠が拒絶理由の根拠と なって、意匠登録出願が拒絶される懸念を挙げた回答が多くみられた(54頁)。 • アンケート調査では、自身の創作した既存の意匠に基づき第三者が作成・公開した意匠が、新規性・創作非容易性の拒 絶理由の根拠となって、自身の意匠登録出願が拒絶され得ることについて、「非常に問題があると感じる」との回答が 半数以上を占めた。また、関連意匠制度を活用した意匠登録出願が同様に拒絶され得ることをどう感じるかについても、 「非常に懸念がある」との回答が約半数を占めた。 貴社の創作した既存の意匠 に基づき第三者が作成・公 開した意匠が、新規性・創 作非容易性の拒絶理由の根 拠となって、貴社の意匠登 録出願が拒絶され得ること について、どのように感じ ますか。(回答者数21) 分析 関連意匠制度を活用して新 たな意匠登録出願をする際 に、貴社の創作した既存の 意匠に基づき、第三者が生 成AI等を利用して作成・公 開した意匠が、新規性・創 作非容易性の拒絶理由の根 拠資料となり、貴社の意匠 登録出願が拒絶され得るこ とに対して、どのように感 じますか。(回答者数21) ➢ 生成AIの普及に伴い、自身の創作した既存の意匠に基づき第三者が生成AIを用いて作成・公開した意匠が、 新規性・創作非容易性の拒絶理由の根拠となって、意匠登録出願が拒絶されたことがある者は確認されな かったものの、そのような拒絶がされ得ることに対する懸念を示す者が一定割合存在する。そして、これら の者の約半数が、(関連意匠制度を活用した意匠登録出願を含め)拒絶され得ること自体を非常に問題があ る又は非常に懸念があると考えていることから、本論点は、検討の必要性が高いといえる。 57 ④新規性喪失の例外(分析) <Ⅲ.国内外の諸情勢> • 第53回特許制度小委員会では、(本論点と特許法上関連する)引用発明適格性について、相対的に早期に考え 方を整理していくことが適切とされた。 • 諸外国のうち、例えば、米国について、USPTOは、2024年4月、米国特許法102条(新規性要件)は先行技術 文献が自然人によるものであることを求めているか、AI生成物とそれ以外とを区別して評価する必要があるか 等の観点で、AIの利用拡大による影響について意見募集を実施した(※)。また、海外有識者のヒアリング調査 (米国)では、生成AIを使って多数の意匠を創作することは、既に比較的容易にできるようになっているとの 回答、他者が創作した既存の意匠に基づいて、第三者が生成AIを用いて作成・公開した意匠が、グレースピリ オドの措置を受ける障害になるかに関して、公開時期や出願意匠との類似の度合いによっては、AIによって生 成されたデザインがグレースピリオドの障害となる可能性を懸念するとの回答があった。 分析 ➢ 本論点と特許法上関連する引用発明適格性について、国内では、特許制度小委員会でも相対的に早期 に考え方を整理することが適切とされたこと、国外では、例えば、米国において意見募集等の活発な 動きが見られることといった国内外の諸情勢を踏まえると、意匠法においても、本論点は、検討の必 要性が高いといえる。 (※)JETRO NY「USPTO、AIの利用拡大が及ぼす特許性判断への影響について意見募集を開始(2024年5月6日)」 https://www.jetro.go.jp/ext_images/_Ipnews/us/2024/20240506_1.pdf 58 ⑤創作非容易性(具体的な検討事項と現行制度) 次の点が具体的な検討事項として挙げられる。 【⑤-1】生成AI技術の進展により、創作非容易性の判断は影響を受けるか。 【⑤-2】デザインの創作過程における生成AIの利活用の拡大に伴い、創作非容易性の考 え方(例えば、当業者の定義や論理付け等)を変更すべきか。 【⑤-3】生成AIを利用して作成したデザインの創作非容易性の考え方は、生成AIを利用 せずに作成したデザインと異なるべきか。 具体的な 検討事項 • 現行制度 意匠法第3条第2項は、出願された意匠について、「その意匠の属する分野における通 常の知識を有する者」(当業者)が容易に創作をすることができる場合は、意匠登録を 受けることができない旨定めている。 生成AI技術 の進展 デザインの創作過程における 生成AIの利活用の拡大 ⑤-1 生成AI技術の進展により、創作非容易性の 判断は影響を受けるか。 入力・指示 人 出願意匠 デザインの創作過程における生成AIの利活 用の拡大に伴い、創作非容易性の考え方 (例えば、当業者の定義や論理付け等)を 変更すべきか。 生成AI を利用したデザインの作成 生成AI ( 学習済モデル) 出願意匠 人 生成AI を利用しないデザインの作成 ⑤-2 ⑤-3 生成AIを利用して作成したデザインの創作 非容易性の考え方は、生成AIを利用せずに 作成したデザインと異なるべきか。 59 ⑤創作非容易性(分析) <Ⅰ.デザイン創作の実態や技術の発展状況> • デザインを創作する場合の生成AIの利用状況について、アンケート調査では「利用している」との回答が約半 数を占めており、生成AIの利用が一定程度普及しているといえる(31頁)。また、生成AIの具体的な利用段階 (プロセス)としても、「デザイン案出し」や「アイデア出し・コンセプト作り」を中心に、様々な段階で利用 されている(33頁)。 分析 ➢ デザインの創作過程において、人が生成AIを利用することは既に現実に行われていることを踏まえる と、本論点は、検討の必要性が高いといえる。 <Ⅱ.デザイン創作に関わるステークホルダーの意見> • • アンケート調査では、生成AI技術の進展によって、意匠審査における創作非容易性要件の審査判断は影響を受 けると考える者や、デザインの創作過程における生成AIの利活用の拡大に伴い、創作非容易性の考え方(例え ば、当業者の定義や論理付け等)を変更すべきと考える者も一定割合存在した。もっとも、「創作非容易性の考 え方を変更すべきでないと考える者も同様に一定割合存在し、現時点で具体的な問題が生じていない」、「デザ インの創作過程は容易性と関係ない」、「生成AIの能力を基準として人の創作した意匠が簡単に拒絶を受ける ようになることは適切と思えない」、「生成AIから見て創作が容易か否かを判断することとなると、AIはAI自 体または学習したモデルによって全く異なるものとなっていることから審査基準が揺らいでしまう」といった回 答もあった。 また、生成AIを利用した場合とそうでない場合とで創作非容易性の考え方を変えたりすることについては、多 岐にわたる様々な回答があり、意見の一致をみるに至らなかった。 分析 ➢ 創作非容易性の考え方を変更することについては一定割合慎重な意見があり、また、生成AIを利用し た場合とそうでない場合とで創作非容易性の考え方を変えたりすることについても意見の一致をみる に至らなかったことを踏まえると、本論点は、慎重な検討が必要である。 60 ⑤創作非容易性(分析) <Ⅲ.国内外の諸情勢> • 諸外国のうち、例えば、米国について、USPTOは、2024年4月、当業者は自然人でなければならないか、ま た、AIツールの利用が当業者のレベルの評価に影響するか、AIツールの利用により、自明性に関する判断が変 化し得るか等の観点で、AIの利用拡大による影響について意見募集を実施した(※)。また、海外有識者のヒア リング調査(米国)において、今後、当業者はAIツールを使う者であるという考え方になっていくことが考え られるとの回答があった。 • 第53回特許制度小委員会では、(本論点と特許法上関連する)進歩性について、法的な変化は不要とする意見 があったこと等も踏まえ、相対的に早期に考え方を整理していくことが適切な論点には含まれていない。 分析 ➢ 本論点と特許法上関連する進歩性について、国外では、例えば、米国において意見募集等の活発な動 きが見られるが、国内では、特許制度小委員会において、相対的に早期に考え方を整理していくこと が適切な論点には含まれていないといった国内外の諸情勢を踏まえると、意匠法においても、本論点 は、慎重な検討が必要である。 (※)JETRO NY「USPTO、AIの利用拡大が及ぼす特許性判断への影響について意見募集を開始(2024年5月6日)」 https://www.jetro.go.jp/ext_images/_Ipnews/us/2024/20240506_1.pdf 61 ⑥記載要件(具体的な検討事項と現行制度) 具体的な 検討事項 次の点が具体的な検討事項として挙げられる。 【⑥-1】デザインの創作過程において生成AIを利用した場合、意匠登録出願時に、生成 AIの利用の有無を明示するよう義務付けるべきか。 現行制度 • 現行意匠法上、デザインの創作過程において生成AIを利用した場合でも、意匠登録出願 時に生成AIの利用の有無を明示するよう義務付ける規定はない。 人 入力・指示 特許庁 出願意匠 生成AIを利用したデザインの作成 意匠登録出願 生成AI ( 学習済モデル) ⑥-1 意匠登録願 ------------------------------------生成AIの利用について □ -----------□ ------------ デザインの創作過程において生成 A I を利用 した場合、意匠登録出願時に、生成 A I の利用 の有無を明示するよう義務付けるべきか。 62 ⑥記載要件(分析) <Ⅰ.デザイン創作の実態や技術の発展状況> • デザインを創作する場合の生成AIの利用状況について、アンケート調査では「利用している」との回答が約半数を占め ており、生成AIの利用が一定程度普及しているといえる(31頁)。また、生成AIの具体的な利用段階(プロセス)とし ても、「デザイン案出し」や「アイデア出し・コンセプト作り」を中心に、様々な段階で利用されている(33頁)。 分析 ➢ デザインの創作過程において、人が生成AIを利用することは既に現実に行われていることを踏まえると、本 論点は、検討の必要性が高いといえる。 <Ⅱ.デザイン創作に関わるステークホルダーの意見> • アンケート調査及びヒアリング調査では、意匠登録出願時に、意匠創作時における生成AIの利用の有無を明示するよう 義務付けること(明示義務を課すこと)に対する出願人側のメリットとして、アンケート調査の回答者33者のうち半数 以上から特にない旨の回答があった。また、「特許庁の判断バラつきが抑制される」、「審査期間も短くなり得る」、 「むやみに何でも意匠登録出願しようとする者に対して一定の抑止力になる」といった回答を含め、多岐にわたる様々 な回答もあった。 • 一方、デメリットとして、「明示に係る負担が増加する」、「イメージとして人間味を感じないと思われかねない」、 「開発者の能力が低くみられる可能性がある」、「他人に著作権侵害を疑われる可能性がある」といった回答を含め、 多岐にわたる様々な回答があった。また、「生成AIの利用有無の判別は不可能に近いため、明示義務を課すことは現実 的ではない」との回答や、「生成AIの利用の定義を決めておかないと混乱する」との回答といった、明示義務を課すこ と自体に対する回答も、多岐にわたる様々なものがあった。 分析 ➢ 明示義務を課すことについては、ユーザーからメリットに比してデメリットが指摘されている状況であり、 そもそも明示義務を課すこと自体やその現実性に疑問を呈する意見もあったことを踏まえると、本論点は、 慎重な検討が必要である。 63 ⑥記載要件(分析) <Ⅲ.国内外の諸情勢> • 諸外国のうち、例えば、米国について、USPTOは、2024年4月、AIツールの利用により、記載要件に関する 判断が変化し得るか等の観点で、AIの利用拡大による影響について意見募集を実施した(※1)。また、同月 USPTOが公表した「USPTOへの手続におけるAIの使用に関するガイダンス」では、「USPTO への手続におい て、原則として AI の使用を報告する義務はないが、AI の使用が特許性判断において重要である場合には AI の使用を報告する義務がある。」としている(※2)。 • 第53回特許制度小委員会では、(本論点と特許法上関連する)記載要件について、AI利用を出願書類に記載す ることが不利に働く場合、申請者は記載を回避するのではないかという意見や、米国のような宣誓制度は日本に 取り入れることは容易ではないとする意見等を踏まえ、相対的に早期に考え方を整理していくことが適切な論点 には含まれていない。 分析 ➢ 本論点と特許法上関連する記載要件について、国外では、例えば、米国において意見募集、ガイダン ス公表等の活発な動きが見られるが、国内では、特許制度小委員会において、相対的に早期に考え方 を整理していくことが適切な論点には含まれていないといった国内外の諸情勢を踏まえると、意匠法 においても、本論点は、検討の必要性が高いとはいえない。 (※1)JETRO NY「USPTO、AIの利用拡大が及ぼす特許性判断への影響について意見募集を開始(2024年5月6日)」 https://www.jetro.go.jp/ext_images/_Ipnews/us/2024/20240506_1.pdf (※2)JETRO NY「USPTO、庁への手続におけるAIの使用に関するガイダンスを公表(2024年4月19日)」 https://www.jetro.go.jp/ext_images/_Ipnews/us/2024/20240419.pdf 64 法的論点の検討を進めるに当たっての分析結果と今後の検討の方向性 ➢ 法的論点の検討を進めるに当たって、3つの観点(Ⅰ.デザイン創作の実態や技術の発展状況を 踏まえ、検討の必要性が高い論点か/Ⅱ.デザイン創作に関わるステークホルダーの意見を踏ま え、検討の必要性が高い論点か/Ⅲ.国内外における諸情勢を踏まえ、検討の必要性が高い論点 か)から分析を行った結果は、以下のとおり。 ①意匠該当性 ②創作者 ③引用意匠 適格性 ④新規性喪失 の例外 ⑤創作非容易性 ⑥記載要件 Ⅰ.デザイン創作の 実態や技術の発展状況 Ⅱ.ステークホルダー の意見 Ⅲ.国内外の諸情勢 今後の検討の方向性 ⚫ ①意匠該当性、②創作者、③引用意匠適格性及び④新規性喪失の例外は、Ⅰ~Ⅲのいずれの観点 からも検討の必要性が高く、相対的に早期に検討を行うことが適切と考えられる。 ⚫ その上で、①意匠該当性及び②創作者をどのように考えるかは、その他の法的論点の検討と関連 するため、必要に応じてこれら全論点の検討を深めることが必要。 65 生成AI技術の発達を踏まえた意匠制度上の適切な対応 御議論いただきたい事項 <法的論点の検討を進めるに当たっての分析とその観点> • 法的論点の検討を進めるに当たって、具体的な検討事項と現行制度を整理した上で、調査研究 の結果等をもとに、次のⅠ~Ⅲの観点を踏まえた分析を行った。 Ⅰ.デザイン創作の実態や技術の発展状況を踏まえ、検討の必要性が高い論点か。 Ⅱ.デザイン創作に関わるステークホルダーの意見を踏まえ、検討の必要性が高い論点か。 Ⅲ.国内外における諸情勢を踏まえ、検討の必要性が高い論点か。 <法的論点の検討を進めるに当たっての分析結果と今後の検討の方向性> • ①意匠該当性、②創作者、③引用意匠適格性及び④新規性喪失の例外は、Ⅰ~Ⅲのいずれの観 点からも検討の必要性が高いといえる。 • 必要に応じて、全論点の検討を深めることを前提としつつ、次回以降の本小委員会では、上記 ①~④の法的論点について相対的に早期に考え方を整理していくことが適切ではないか。 法的論点の検討を進めるに当たっての分析結果と今後の検討の方向性や、今後の検討に当たって 留意すべき点がないか、御意見をいただきたい。 66 次回の意匠制度小委員会について(予定) 67 次回の意匠制度小委員会について(予定) ➢ 開催予定時期 • 令和7年6月(予定) ➢ 御議論いただく内容 • 仮想空間におけるデザインに関する意匠制度の在り方・生成AI技術の発達を踏まえた意匠制度上 の適切な対応について、本日いただいた御指摘を踏まえて引き続き御議論いただく予定。 ※あわせて、これまでの議論を簡潔に整理する予定。 68