議事要旨
。
第13回意匠制度小委員会 議事要旨
1. 日時・場所
日時:令和4年9月9日(金曜日) 16時00分~18時00分
場所:特許庁庁議室(特許庁庁舎9階)+Web会議室
2. 出席者
青木委員、淺見委員、黒田委員、笹野委員、田村委員長、平林委員
3. 議題
(1)当面の検討課題について
(2)意匠の新規性喪失の例外適用手続について
4. 議事内容
事務局より、資料1に沿って、説明が行われた。
議題について、自由討議が行われた。
事務局より、資料2に沿って、説明が行われた。
議題について、自由討議が行われた。
以上
[更新日 2022年9月14日]
お問い合わせ
特許庁総務部総務課制度審議室
TEL:03-3581-1101 内線2118
FAX:03-3501-0624
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資料1
産業構造審議会知的財産分科会
第13回意匠制度小委員会
議事次第・配布資料一覧
日
時:令和4年9月9日(金)16時00分開会
会
場:特許庁庁舎9階庁議室+Teams会議室
(議事次第)
1.開会
2.当面の検討課題について
3.意匠の新規性喪失の例外適用手続について
4.閉会
(配布資料)
議事次第・配布資料一覧
委員名簿
資料1 当面の検討課題
資料2 意匠の新規性喪失の例外適用手続について
資料2
令 和 4 年 9 月 9 日
第13回意匠制度小委員会
産業構造審議会
知的財産分科会
意匠制度小委員会
委員名簿
委員長
青木
大也
大阪大学大学院法学研究科
淺見
節子
明治大学専門職大学院法務研究科
黒田
薫
阿部・井窪・片山法律事務所
笹野
拓馬
日本弁理士会
田村
善之
東京大学大学院法学政治学研究科
林
平林
千晶
篤哉
准教授
客員教授
弁護士・弁理士
執行理事/笹野国際特許事務所
株式会社ロフトワーク
弁理士
教授
共同創業者
日本知的財産協会意匠委員会
委員長/
セイコーエプソン株式会社IP企画渉外部意匠G
課長
(敬称略、五十音順)
資料3
資料1
当面の検討課題
産業構造審議会知的財産分科会 第13回意匠制度小委員会
令和4年9月9日
特許庁政策推進懇談会について
問題意識
• 近年の様々な技術革新は、デジタルとリアルが融合した新領域でのビジネス創出の可能
性を広げている。他方で、デジタル化・グローバル化の進展により、日本企業は厳しい
競争環境にさらされており、一層厳しい状況となっている。
• 大企業に加え、中小企業・スタートアップ、大学等の知財活用の更なる促進が喫緊の政
策課題である。イノベーションの促進、日本企業の競争力強化に向けて、これらの環境
の変化や新たな課題に対応した知的財産制度に改善するとともに、支援の在り方につい
ても検討し、中小企業・スタートアップ・大学を含むユーザーの利便性を一層高める必
要がある。
• あわせて、特許庁自身も一層のデジタル化による効率的な業務に取り組んでいく必要が
ある。
⇒
令和4年4月に有識者からなる特許庁政策推進懇談会を立ち上げ、5回開催。
同年6月30日に、報告書をとりまとめ。
特許庁政策推進懇談会で示された、知的財産政策に関する今後の検討の
方向性等も踏まえつつ、各論点について、産業構造審議会知的財産分科
会の各小委員会において、ご議論いただく。
1
当面の検討課題
意匠制度小委員会
(参考)特許制度小委員会
• 新規性喪失の例外適用手続
(参考)商標制度小委員会
等
• 一事不再理
• 手続関係(オンライン送達、公示送達、優先権証明書
オンライン化、書面手続デジタル化)
• 他人の氏名を含む商標
• 「実施」の定義
• コンセント制度
• 裁定における営業秘密等関係書類の閲覧制限
• e-filing納付
等
• ライセンス促進策
等
※書面手続デジタル化等、意匠・商標に関わる論点については、意匠制度小委員会及び商標制度小委員会において
も報告予定
※SaaSサービスに対応した特許の「実施」の定義に関しては、訴訟係属中の事件に係る論点であることを踏まえ、
今年度は調査研究を実施予定
当面の進め方
• 月1回程度の開催(予定)
• 議論が深まった論点については、適時に方向性をとりまとめる
2
資料4
資料2
意匠の新規性喪失の例外適用手続について
産業構造審議会知的財産分科会 第13回意匠制度小委員会
令和4年9月9日
特許庁政策推進懇談会での議論
➢ 特許庁政策推進懇談会では、意匠の新規性喪失の例外適用手続に関する現状と課題を共有し、
メンバーに検討の方向性についてご議論いただいた。
➢ 検討の方向性として、「意匠特有の問題に対応すべく、出願人の負担軽減と第三者の不利益
のバランスを考慮しつつ、意匠の新規性喪失の例外適用手続を緩和する方向で法改正の具体
的内容について検討を深める必要がある。」と提言された。
【提示された御意見の例】
• 意匠の特殊性を勘案すべきである。消費者にどのようなデザインが受け入れられるかよく分からない中、多様なデザインを用意した上で、販売や
試作品製造を通じ、消費者の反応を見つつ、その中からデザインを決定する。大量にデザインを作る中で、どの意匠が登録に値するのかが事前に
は把握できない。グレースピリオドはこのような意匠戦略に非常に有意であるため、出願人の意図に反する公知のみに限定することは反対。
• クラウドファンディングやSNSによる広報が繰り返し行われている現状で、そのすべてについて証明するのは不可能。米国や欧州では1年のグ
レースピリオドがあり手続も不要、韓国も出願時の証明は不要なのに対して、日本は手続要件も時期的要件も厳格。証明負担のために出願を断念
するという場合もあるので、積極的に検討してほしい。
• ユーザーからは、デザインの公開手段が多様化している中で、更なる緩和を希望する声がある。意匠制度以外も緩和してほしいという声や、登録
されるまで公開されないことも踏まえれば、第三者の利益というのは考慮する必要ないという声、例外適用書面の提出時期を半年程度に延ばして
ほしいという声などがある。
• 特に中小・ベンチャー企業が利用することの多い新規性喪失の例外適用制度は、使いやすく簡素化してほしいという声もあった。事後的に適用申
請を可能とするような制度も検討していただきたい。
• ある製品のデザインが決まったのち、その発表前に早期に出願をするべきという考え方もあるが、発表前に公報発行されることを避けるために、
出願をあえて遅らせるなど、出願のタイミングを緻密にコントロールという実務もある。
• 製品の開発は、自社だけでなく部品メーカー等他メーカー等との関係もあり、発表前にデザインを第三者に見せる機会は避けられない。意図しな
い形でデザインが公開されてしまうことはゼロではない。
• 意匠特有の問題があることもご指摘のとおりで、デザイン公開前の意匠出願が難しいという声や、新規性喪失の例外適用を受けようとしても網羅
的に証明ができないといった事例、証明そのものが負担だから意匠出願をしないという事例も聞く。知財政策全体の中で、意匠をうまく使ってい
こう、意匠出願を増やしていこうという流れになっている中で、意匠権を取りたい人が取れないというのはもったいない。
• 現行制度下においても、意匠登録出願者が新規性喪失の例外の証明を成功させれば意匠登録がされることについては第三者も覚悟済みである点に
鑑みると、第三者とのバランスも既に担保されており、そこまで気にする必要はないのではと考える。
※特許庁政策推進懇談会報告書『知財活用促進に向けた知的財産制度の在り方~とりまとめ~』から引用
1
意匠の新規性喪失について(現行制度)
➢ 意匠法では、意匠の登録要件として、新規性(同法第3条第1項各号)及び創作非容易性
(同第2項)がある。
➢ 出願前に公開された意匠は、たとえ自ら公開した自己の意匠であっても、新規性を喪失した
意匠として、新規性及び創作非容易性の拒絶理由の根拠となる。
➢ 意匠では、出願に係る意匠と同一の意匠だけでなく、出願に係る意匠と類似する意匠が出願
前に公開された場合にも、新規性を喪失してしまう。
出願前の自己の公開意匠
出願に係る意匠
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<例>雑誌・カタログによる公開
<例>インターネットによる公開
拒絶理由
2
意匠の新規性喪失の例外適用手続(現行制度)
➢ 意匠の新規性喪失の例外として、一定の要件を満たす意匠について、新規性等が喪失し
なかったものとする「意匠の新規性喪失の例外」が定められている(同法第4条)。
➢ 自らの行為に基づいて新規性を喪失した意匠について、意匠の新規性喪失の例外の規定
の適用を受けるためには、
① 出願と同時に、その旨を記載した書面(例外適用書面。願書記載により省略可)
② 出願から30日以内に、同規定の適用を受けることができることを証明する書面(例
外適用証明書)を特許庁長官に提出しなければならない。
1年以内
自己の行為に
起因する公開
(1回目)
出願
自己の行為に
起因する公開
(2回目)
原則すべて
証明必要
願書
30日以内
例外適用書面
例外適用証明書
30日以内
同時
※1:証明書を提出する者がその責めに
帰することができない理由により
30日以内に証明書を提出すること
ができないときは、第4条第3項の
規定にかかわらず、その理由がな
くなった日から14日(在外者に
あっては、2月)以内でその期間の
経過後6月以内にその証明書を特許
庁長官に提出することができると
する救済措置が規定されている
(意匠法第4条第4項)。
※2:日本を指定するジュネーブ改正協
定の出願の場合、例外適用書面、
例外適用証明書のいずれも、①国
際出願と同時又は②国際公表され
た日から30日以内に提出すること
ができる(意匠法第60条の7、意
匠法施行規則第1条の2)。
3
新規性喪失の例外適用の対象の意匠(現行制度)
➢ 新規性喪失の例外規定は、出願前一年以内に自らの行為に起因して新規性を喪失した意匠で
あれば、出願された意匠と同一、類似又は非類似を問わず適用される。
➢ 例外規定が適用された意匠は、出願された意匠の新規性(意匠法第3条第1項)及び創作非容
易性(意匠法第3条第2項)の審査において、公知の意匠に該当しないものとみなされる。
同一・類似の意匠は新規性の拒絶理由を回避す
るため、証明書を提出する。
非類似の意匠であっても模様部分が創作非
容易性の拒絶理由を回避するため、証明書
を提出する。
出願に係る意匠
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※出願意匠と無関係な意
匠も、審査に影響を与
えることはないが、証
明書は提出できる。
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4
例外適用証明書の記載例
➢ 書類の様式に制限はない
➢ ガイドラインでは、公開の事実として、
①意匠の新規性を喪失するに至った日
②意匠の新規性を喪失した場所等
③意匠の新規性を喪失させた者
④新規性を喪失した意匠
これに加え、意匠登録を受ける権利を有する
者(創作者)と意匠登録出願人が異なる場合は、
⑤意匠登録を受ける権利の承継
⑥行為時の公開者と意匠登録を受ける権利を
有する者との関係
について記載することを示している
5
意匠分野における現状
➢ 近年、意匠の新規性喪失の例外規定の申請件数・割合は増加傾向。
➢ デザイン開発においては、一つのデザインコンセプトから多くのデザインバリエーションに係る意匠が同
時期に創作されるため、様々なバリエーションの意匠が同時期に多数公開されやすく、それら全ての公開
意匠の証明が必要になる。
➢ カタログの頒布や展示会出品等の従前のマーケティングにおける公開のみならず、複数のSNSを活用し
た製品PRが活発化したり、複数のECサイトで販売される等、販売の仕方を含め一の出願に関係する意
匠の公開態様が多様化し、複雑化している状況。
➢ 特に中小企業において、クラウドファンディングのように意匠を公開して投資を募ってから製品化を決定
したり、製造委託や共同開発において、外部の協力企業や消費者と協働して製品を完成させる等、開発過
程における公開の機会も増えている。
➢ 意匠は物品等の見た目であるため、中小・ベンチャー企業を中心に、限られた期間内にすべての公開事実
を網羅的に証明することは非常に困難との声がある。
【参考1】意匠登録出願における新規性喪失例外規定適用申請件数
及び全意匠出願件数における割合の推移
件数
割合(%)
3000
10
8
2000
6
【参考2】2020年の特許/意匠出願における新規喪失の例外証
明書提出件数及び全特許/意匠出願件数に占める割合
➢ 特許:4,128件(約1.3%)
➢ 意匠:2,594件(約8.2%)
4
1000
2
0
0
2014
2015
2016
2017
新規性喪失例外規定適用申請件数
2018
2019
2020
全出願件数に占める割合(%)
※製品開発においてデザイン決定は製品発表の直前が多く、
出願を待たずに公開される割合は特許と比較して意匠の
方が多い。
※いずれも2022年8月12日時点特許庁調べ
6
意匠分野において現在生じている課題
➢ 審査で新規性喪失を理由に拒絶された出願のうちの約2割弱が、自己の1年以内の公開意匠
(内外公報除く)により拒絶理由が通知され、そのうちの約3分の1は、出願の際に例外適用書
面及び例外適用証明書を提出していたにもかかわらず、証明が網羅的にできていなかったもの
となる。
➢ 年間約30,000件の意匠登録出願において、
2021年に新規性欠如(意匠法3条1項各号)の拒絶理由が通知※されたものは:2,621件
うち、自己の1年以内の公開意匠(内外公報除く)により拒絶理由が通知されたもの:437件(約16.7%)
うち、新規性喪失の例外適用手続を行っていたもの:158件(約36.2%)
※国際意匠登録出願に対する拒絶通報は除く
2021年に新規性の要件を満たさないとす
る拒絶理由が通知された意匠登録出願数
(国際意匠登録出願を除く)
年間437件
年間2,621件
約16.7%
自己の1年以内の公開
意匠により拒絶理由が
通知されたもの
新規性喪失の例外適用手続を出
約36.2%
(年間158件) 願時に行っていたもの
※意匠登録出願全体(約3万件)の0.5%程度
※ 2022年8月23日時点特許庁調べ
7
意匠の新規性喪失の特徴
➢ 近年、試作品をユーザーに実際試してもらい、その意見を踏まえ製品化する、先に製品を販
売した上で改良を加えていくなど、オープンな意匠の創作手法が活発化し、意匠の創作の完
了が販売や公開の直前又は公開後となることも少なくない。
➢ 意匠では、出願に係る意匠と同一の意匠だけでなく、出願に係る意匠と類似する意匠が出願
前に公開された場合にも、新規性を喪失してしまう。※
➢ 意匠は、創作の内容を知らない人でも、製品等の外観を公開することで新規性を喪失させる
ことができることから、様々な状況で新規性を喪失することとなり、情報の管理が難しい。
※
意匠法第三条 工業上利用することができる意匠の創作をした者は、次に掲げる意匠を除き、その意匠について意匠登録を受けることができる。
一 意匠登録出願前に日本国内又は外国において公然知られた意匠
二 意匠登録出願前に日本国内又は外国において、頒布された刊行物に記載された意匠又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となつた意匠
三 前二号に掲げる意匠に類似する意匠
新規性喪失の例外の適用を受けるための証明が網羅的にできていなかった例
事例(1)
①出願の約6月前の自社HPでの公開、②出願の約6月前のECサイトAでの公開、③出願の約6月前のECサイトBでの公開、④出願の約6月前のSNS
サイトCでの記事、⑤出願の約6月前のSNSサイトDでの記事、⑥出願の約6月前のSNSサイトEでの記事、⑦出願の約7月前のECサイトFでの公開、
⑧出願の約5月前の自社HPでの公開、⑨出願の約5月前のECサイトAでの公開、⑩出願の約6月前のECサイトBでの公開、⑪出願の約7月前のECサ
イトFでの公開、⑫出願の約5月前の動画共有サイトGでの公開、⑬出願の約5月前の動画共有サイトGでの公開について、例外証明書を提出した。
しかし、出願の約1月前の、(現実の)店舗Hで販売された出願人の製品を紹介する記事に記載された、出願人自身の意匠で拒絶理由が通知された。
事例(2)
①出願の約3月前の動画共有サイトでの紹介動画、②出願の約2月前のクラウドファンディングでの募集ページに記載したことについて、例外適用
証明書を提出した。しかし、出願の約3月前の社員のSNSの記事に記載された意匠で拒絶理由が通知された。
8
例外適用証明書記載の意匠の同一性
➢ 証明書記載の意匠との同一性は、社会通念上、意匠の表現として同一の範囲とされ、形態が変化するとし
ても、物品の性質や機能から理解できれば実質的同一の範囲とされる。証明書記載の意匠と実質的に同一
の意匠については別個の証明書は不要と判示した裁判例があるが、証明書記載の意匠とは実質的にも同一
ではない類似の意匠については、別個に証明書を作成する必要がある。
●証明書記載の意匠の同一性に関する裁判例
・意匠の「同一」と「類似」とが別個の概念であることを前提としても、意匠法第4条における、形態上の「同一」とは、法律上の概念として、
単に物理的に形態が完全に一致するものだけではなく、形態において微差があっても、意匠の新規性喪失の例外規定の立法趣旨に適した限度に
おいて、社会通念上、意匠の表現として同一の範囲と理解されるものをいうと解するのが相当とした裁判例がある。(東京高判平成8年2月28日
(平成7(行ケ)159号)「端子盤事件」)
・変化の態様が、例外適用証明書において説明ないし図示されていなかったとしても、物品の性質や機能に照らして十分理解することができる範
囲内のものであると認められれば、なお、引用意匠は公開意匠と実質的にみて同一であると評価する余地があるが、引用意匠が証明書に記載さ
れている公開意匠と実質的に同一の意匠であるとは認められず、引用意匠については、そもそも、意匠法4条3項所定の証明書が提出されてい
ないことに帰するから,引用意匠について同条2項の適用を受ける余地はないとした裁判例がある。(知財高判平成30年7月19日(平成29年
(行ケ)10234号)「ファー付コート事件」)
(左)証明書に記載されていた公開意匠
(下)引用意匠(公開意匠とは変化の態様が異なる限定品の意匠)
※いずれも知財高判平成30年7月19日
(平成29年(行ケ)10234号)判決文から引用
9
出願前に複数回意匠を公開した場合
➢ 証明書の提出期限は厳格に判断され、証明書を追加で提出することはできない。
➢ 出願前に複数回公開された場合は、原則すべての公開に対し手続が必要になる旨判示した裁判例が複数存
在する。
➢ 先の公開に基づいて複数回に亘って同じ意匠を事後公開した場合には、その先に公開された意匠について
例外規定の適用を受けていれば、その先の公開に基づく第2回以降の公開にも例外規定が適用されるが、
適用を受けた公開事実に基づかない別の公開については、適用が認められない可能性がある。
●例外適用証明書の提出期間に関する裁判例
・意匠の新規性喪失の例外に関し、提出期限の翌日に提出された新規性喪失の例外適用証明書について特許庁長官がした手続却下の処
分について、適法とした裁判例がある(知財高裁平成23年1月11日(平成22(行コ)10004号))。
●出願前に複数回公開した場合に関する裁判例
・特許の新規性喪失の例外に関し、権利者の行為に起因して公開された発明が複数存在するような場合には、本来、それぞれにつき同
項の適用を受ける手続を行う必要があるが、手続を行った発明の公開行為と実質的に同一とみることができるような密接に関連する
公開行為によって公開された場合については、別個の手続を要することなく同項の適用を受けることができるものと解するのが相当
とした裁判例がある(大阪地判平成29年4月20日(平成28(ワ)298号等))。
※なお、同裁判において、いずれも日本生活協同組合連合会の傘下にある、Q1生活協同組合での販売行為(証明書記載)とQ2コープ
連合での販売行為について、別個の法人格を有し、販売地域が異なっているばかりでなく、ぞれぞれが異なる商品を取り扱っている
ことが認められるとして、実質的に同一の販売行為とみることができるような密接に関連するものであるということはできないとし
た。
10
検討における留意事項
➢
新規性喪失の例外は、先願主義の目指す権利の安定性を保ちつつ、一定の要件の下「例外」を認めたも
のであり、また、出願人にとっては第三者が出願前に公開した意匠があれば拒絶されることとなること
から、安易に利用される事態が生じないよう注意が必要ではないか。
➢
意匠権の設定登録後の新規性喪失の例外の手続を認めることは、権利の有効性が第三者にとって不明確
となり、第三者への不利益が生じるのではないか。
➢
審査終了後も証明書の追加を認めると、手続の形骸化を生じさせないか。
➢
出願人等にとって、短期間に公開事実を網羅的に調査する負担が大きい一方、主要な公開等の事実は把
握しているのではないか。
➢
課題への対応には、法改正のみによらず、公開前の出願の推奨、複数回公開時にはそれぞれ証明が必要
であることの周知を徹底することも引き続き重要ではないか。
参考:特許庁HPの初心者向けページにおいて、出願前に複数回公開し
た場合に関する意匠の新規性喪失の例外適用手続に関する注意
喚起を行っている。
https://www.jpo.go.jp/system/basic/design/index.html#pre04
11
対応の方向性案
前記の留意事項を踏まえると、以下の方向性が適当ではないか。
➢ 意匠法第4条において、出願と同時に例外適用書面を提出し、出願から30日以内に例外
適用証明書を提出した者に限り、証明書に記載した公開事実が網羅されていなかった場合
に追加で証明書の提出ができるようにしてはどうか。(国際意匠登録出願の場合も同様)
➢ 追加で証明書の提出ができる期間は、登録査定又は拒絶査定までとすべきではないか。
➢ 本規定はあくまで例外規定であり、制度の趣旨を越えた利用を避けるべきであるので、追
加で証明書を提出できる場合として、提出が認められる理由や提出できる証明書の内容に
制限を設けるべきではないか。
12
論点・判断基準となる要素
➢ 当初の期間内に提出した証明書に網羅できなかった公開意匠について、証明書を追加提出でき
る機会を設けるか否かについては、出願人であれば主要な公開の事実は把握しているであろう
ことを踏まえ、主要な公開の事実(※)については全て所定の法定期間内に申請し、証明して
いることを前提に、対応の方向性を検討することとしてはどうか。
(※)出願の際に通常の注意を払えば把握されていることが当然である程度の意匠の公開事実を想定
(企業が主催する新製品発表会、業界内で大規模な展示会、製品の販売開始等)
■主要な公開の事実が当初の法定期間内に証明されている場合は、追加の証明書の提出を認めることとしてはどうか。
意匠の公開として想定される以下の各ケースについては、以下のように判断することとしてはどうか。
1)公開意匠が多数あるケース
→公開意匠同士の公開時期の先後関係や出願意匠と公開意匠の類否、包含関係に関わらず、主要な公開の事実が当
初の証明書に記載されていれば、網羅できなかった公開意匠についての証明書を追加で提出することを認めるべ
きではないか。
2)公開回数が多数あるケース
→公開回数が多数の場合も、その先後関係に関わらず、主要な公開の事実が当初の証明書に記載されていれば、網
羅できなかった公開意匠についての証明書を追加で提出することを認めるべきではないか。
3)公開者が複数のケース
→公開者が複数の場合も、その公開が意匠登録を受ける権利を有する者又はその承継人の行為に起因した公開であ
ることが証明でき、主要な公開の事実が当初の証明書に記載されていれば、網羅できなかった公開意匠について
の証明書を追加で提出することを認めるべきではないか。
4)具体的な公開事実が明示されていないケース
→追加の証明書の提出は認めないこととしてはどうか。
13
想定されるケース①
1)公開意匠が多数あるケース
例1:当初の証明書は出願に係る意匠と同一の意匠の公開について記載していたが、出願に係る意匠に類似
するバリエーションの意匠は網羅できていなかった。
<例1>出願に係る意匠
<例1>証明書記載の意匠
<例1>バリエーションの意匠
例2:当初の証明書はクラウドファンディングを募集する際に用いた、出願に係る意匠と同一の意匠の公開
について記載していたが、クラウドファンディングでのユーザーからの意見を受けて追加した証明書
記載の意匠と非類似のバリエーションの意匠は網羅できていなかった。
<例2>出願に係る意匠
<例2>証明書記載の意匠
<例2>(非類似の)バリエーションの意匠
14
想定されるケース②
例3:当初の証明書には出願に係る意匠を組み込んだ完成品である自転車の公開について記載していたが、部品
である自転車用サドルの公開について網羅していなかった。
<例3>出願に係る意匠
<例3>証明書記載の意匠
<例3>網羅できていなかった意匠
例4:当初の証明書には服飾に関する大規模な展示会で帽子のワッペンの公開について記載していたが、ワッペ
ンと同じ図柄を付けたTシャツの別の機会でのノベルティ配布による公開について網羅していなかった。
<例4>出願に係る意匠
<例4>証明書記載の意匠
<例4>網羅できていなかった意匠
例5:当初の証明書は出願に係る意匠に関係する主要な公開事実である新製品発表会について記載していたが、
それ以前に行われていたティザー広告(覆面広告)における公開は網羅できていなかった。
<例5>出願に係る意匠
<例5>証明書記載の意匠
<例5>先行公開されていた意匠
15
想定されるケース③
2)公開回数が多数あるケース
例6:複数のSNSプラットフォームで同時期に公開していたが、当初の証明書にはそのうちの一部のプラッ
トフォームでの公開しか記載していなかった。
例7:当初の証明書はクラウドファンディングの募集開始による公開について記載していたが、それ以前に
行われた試作品の動画サイトでの公開は網羅できていなかった。
例8:当初の証明書では出願に係る意匠に関係する主要な公開事実である新製品発表会について記載してお
らず、その数か月後にされたカタログ配布のみ記載していた。
3)公開者が複数のケース
例9:当初の証明書では出願した企業が開催した展示会における公開が記載されていたが、創作者が創作直
後に受けたインタビュー記事による意匠の公開は網羅できていなかった。
例10:複数の小売業者に製品を卸し、各小売店で一斉に販売を開始したが、そのうちの1つの小売業者の公
開が証明書で網羅されていなかった。
4)具体的な公開事実が明示されていないケース
例11:当初の証明書には実質的に具体的な公開事実が示されず、追加の証明書で初めて具体的な公開事実を
記載してきた。
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課題として想定されるケースへの判断基準のあてはめ
➢ 想定されるケースの例1から11までについて、前記の判断基準にあてはめると以下のよう
に考えられる。
追加の可否
理由
例1
○
主要な公開を当初証明書に記載していれば、バリエーションの意匠の公開を網羅できなかった場合でも、追
加で証明書を提出できるようにすべきと考えられる。
例2
○
主要な公開を当初証明書に記載していれば、バリエーションの意匠の公開を網羅できなかった場合でも、追
加で証明書を提出できるようにすべきと考えられる。
例3
○
主要な公開を当初証明書に記載していれば、部品/完成品の包含関係に関わらず、網羅できなかった公開につ
いても追加で証明書を提出できるようにすべきと考えられる。
例4
○
主要な公開を当初証明書に記載していれば、意匠に係る物品の類否に関わらず、網羅できなかった公開につ
いても追加で証明書を提出できるようにすべきと考えられる。
例5
○
主要な公開を当初証明書に記載していれば、日付の先後や部分/全体の公開かどうかは関係無く、網羅できな
かった主要な公開に関係する公開についても追加で証明書を提出できるようにすべきと考えられる。
例6
○
同時期の複数の同種の公開を網羅しきれなかった場合、それらの公開に主従関係は認められず、網羅できな
かった公開についても追加で証明書を提出できるようにすべきと考えられる。
例7
○
主要な公開を当初証明書に記載していれば、日付の先後は関係無く、網羅できなかった主要な公開に関係す
る公開についても追加で証明書を提出できるようにすべきと考えられる。
例8
×
主要な公開を当初証明書で網羅しなかった場合、追加で主要な公開に関する証明書を提出することは認めら
れないのではないか。
例9
○
創作者による公開を網羅しきれなかった場合でも、意匠登録を受ける権利の承継前にした公開であれば、追
加で証明書を提出できるようにすべきと考えられる。
例10
○
他者の公開であっても、元をたどると自己の行為に起因したものであることが証明できれば、追加で証明書
を提出できるようにすべきと考えられる。
例11
×
当初証明書で何ら記載をしておらず、実質的には期間経過後の証明書提出機会を確保するものであり、追加
の提出は認められないのではないか。
17
<参考>意匠の新規性喪失例外制度に関する国際比較
意匠の新規性喪失の例外規定について、新規性喪失の例外の対象(自己による開示、自己から情報を得た第
三者による開示等)や、手続要件の有無、有る場合の内容は、各国独自の制度となっており、国際的に共通
といえる制度はない。
実体
審査
猶予
期間
日本
○
米国
新規性喪失の例外と認められる意匠
新規性喪失の例外規定適用のための手続要件
1年
① 自己の意に反して公開された意匠
② 自己の行為に起因して公開された意匠(ただし、
意匠等の公報に掲載されたものを除く)
②の場合、出願時に例外適用書面を提出(願書記載により
省略可)し、出願から30日以内に証明書を書面で提出。
①の場合は特になし。
○
1年
① 自己により実施・開示された意匠
② 自己から情報を得た第三者により実施・開示され
た意匠
①、②ともに特になし。
※ただし、出願に際し意匠特許の特許性にとって重要であ
ることが当該人に分かっている全ての情報を特許商標庁
に開示する情報開示義務が課せられており、いずれかの
クレームに関する「欺瞞」、「不衡平行為」又は開示義
務違反の認定は、そのすべてのクレームを特許不能又は
無効とする。
○
1年
自己の意匠(ただし、条約等により国内外で出願公開
又は登録公告されたものを除く)
•
(特許法で意匠特
許として規定)
韓国
(分野によ
り新規性等
の判断をし
ない「一部
審査」)
•
•
•
出願時に例外適用書面を提出し、出願から30日以内に
証明書を提出。
審査係属中、登録又は拒絶査定の発送前に例外適用書
面を提出し、その提出日から30日以内、かつ査定前ま
でに証明書を提出。
(一部審査の)異議申立への答弁書提出時
無効審判に対する答弁書提出時
欧州
×
1年
① 自己が提供した情報や行為の結果として、第三者
により開示された意匠
② 自己に対する濫用の結果として開示された意匠
①、②ともに特になし
※なお、欧州の場合は域内公知(共同体内で営業する当該
分野の専門業界にとって、通常の事業過程では合理的に
知ることができないものであった場合は公表に当たらな
い)
中国
△
6月
① 国際博覧会で初めて展示された意匠
② 規定の学術会議又は技術会議上で初めて発表され
た意匠
③ 他人が出願人の同意を得ずに、その内容を漏洩し
た意匠
•
(専利(特許)法
で外観設計専利と
して規定)
•
出願時にその旨を声明し、出願から2 か月以内に博覧会
等主催者発行の証明書を提出。
③について出願人が出願日以降に知った場合には、当
該事情を知った後2ヶ月以内にその旨を声明し、証明資
料を添付。
18
参照条文
○意匠法
(意匠登録の要件)
第3条 工業上利用することができる意匠の創作をした者は、次に掲げる意匠を除き、その意匠について意匠登録を受け
ることができる。
一 意匠登録出願前に日本国内又は外国において公然知られた意匠
二 意匠登録出願前に日本国内又は外国において、頒布された刊行物に記載された意匠又は電気通信回線を通じて公
衆に利用可能となつた意匠
三 前二号に掲げる意匠に類似する意匠
2 意匠登録出願前にその意匠の属する分野における通常の知識を有する者が日本国内又は外国において公然知られ、頒
布された刊行物に記載され、又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となつた形状等又は画像に基づいて容易に意
匠の創作をすることができたときは、その意匠(前項各号に掲げるものを除く。)については、同項の規定にかかわ
らず、意匠登録を受けることができない。
(意匠の新規性の喪失の例外)
第4条 意匠登録を受ける権利を有する者の意に反して第三条第一項第一号又は第二号に該当するに至つた意匠は、その
該当するに至つた日から一年以内にその者がした意匠登録出願に係る意匠についての同項及び同条第二項の規定の適
用については、同条第一項第一号又は第二号に該当するに至らなかつたものとみなす。
2 意匠登録を受ける権利を有する者の行為に起因して第三条第一項第一号又は第二号に該当するに至つた意匠(発明、
実用新案、意匠又は商標に関する公報に掲載されたことにより同項第一号又は第二号に該当するに至つたものを除
く。)も、その該当するに至つた日から一年以内にその者がした意匠登録出願に係る意匠についての同項及び同条第
二項の規定の適用については、前項と同様とする。
3 前項の規定の適用を受けようとする者は、その旨を記載した書面を意匠登録出願と同時に特許庁長官に提出し、かつ、
第三条第一項第一号又は第二号に該当するに至つた意匠が前項の規定の適用を受けることができる意匠であることを
証明する書面(次項及び第六十条の七において「証明書」という。)を意匠登録出願の日から三十日以内に特許庁長
官に提出しなければならない。
4 証明書を提出する者がその責めに帰することができない理由により前項に規定する期間内に証明書を提出することが
できないときは、同項の規定にかかわらず、その理由がなくなつた日から十四日(在外者にあつては、二月)以内で
その期間の経過後六月以内にその証明書を特許庁長官に提出することができる。
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