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AI時代の知的財産権検討会 第13回

2026-08-18一次資料(出典)

議事録・配布資料の全文(政府公表資料より。要約でなく原文に基づく参照用)。

資料1

資料1 生成AIの適切な利活用等に向けた知的財産の保護及び透明性に関する プリンシプル・コード(仮称)(案) 1.総論 (1)基本的な考え方(目的) この文書は、「人工知能関連技術の研究開発及び活用の推進に関する法律」 (令和七年法律第五 十三号)の趣旨を踏まえつつ、コーポレートガバナンスの分野におけるスチュワードシップ・コ ード等の取組(コンプライ・オア・エクスプレイン)等を参考に、生成AI事業者が行うべき透 明性の確保及び知的財産権保護のための措置の原則を定め、もって生成AI技術の進歩の促進と 知的財産権の適切な保護の両立に向け、権利者や利用者にとって安全・安心な利用環境を確保す ることを目的とする。 (2)この文書の適用を受ける対象 ア 定義 この文書は、生成AIに関連する当事者間において任意かつ主体的に調整を行うことが妨げら れるものではない旨に配慮しつつ、 「生成AI開発者」及び「生成AI提供者」(以下これらを総 称して「生成AI事業者」という。 )に適用されるものとする。 ○ 「生成AI」とは、文章、画像、プログラム等を生成できるAIモデルに基づくAIの総称 をいう。 ○ 「生成AI開発者」とは、生成AIシステムを構築する役割を担う者であって、その開発に 係る生成AIシステムを公衆(不特定の者又は特定多数の者をいう。以下同じ。 )に実質的に 提供した者(その目的、法人・個人の別を問わない。)をいう。  次の者は「生成AI開発者」に原則として含まれないものとする。ただし、実質的に、 生成AIシステムを公衆に提供したと評価できる場合には、この限りでない。  生成AI開発者から委託等を受けて、生成AIモデル・アルゴリズムの開発、デー タ収集(購入を含む)、前処理、生成AIモデル学習及び検証等の生成AIシステム 構築過程の一部のみを引き受け、これを生成AI開発者に納入し又は役務を提供す る役割を担うにすぎない者(その目的、法人・個人の別を問わない。 ) ○ 「生成AI提供者」とは、生成AIシステムをアプリケーション、製品、既存のシステム、 ビジネスプロセス等に組み込んだサービス(以下「生成AIサービス」という。)を公衆に提 供した者をいう。  次の者は「生成AI提供者」に原則として含まれないものとする。ただし、実質的に、 生成AIサービスを公衆に提供したと評価できる場合には、この限りでない。 1  生成AI事業者から委託等を受けて、生成AIシステム検証、生成AIシステムの 他システムとの連携の実装、生成AIシステム又は生成AIサービスの提供、正常 稼働のための生成AIシステムにおける利用者側の運用サポートの一部のみを引 き受け、これを生成AI事業者に納入し又は役務を提供する役割を担うにすぎない 者(その目的、法人・個人の別を問わない。) ○ 公衆への提供を行っておらず、研究・開発を行っているにすぎない者は、生成AI事業者に 該当しない。 イ データ提供者又はその指定する限られた範囲の者のみが使用する生成AIシステム又は 生成AIサービスを開発又は提供している場合 ○ 明確化を期すため付言すれば、一の法人又は個人が保有するデータのみを用いて特化させた 生成AIシステムを、当該データ提供者又はその指定する限られた範囲の者のみに提供する 者は、この文書の「生成AI開発者」には含まれない。また、特定の企業グループ又は団体 が保有するデータであって、当該企業グループ又は団体に属する法人又は個人から提供を受 けたデータのみを用いて、当該企業グループ若しくは団体又はその指定する限られた範囲の 者のみが使用する生成AIシステムを提供する者は、この文書の「生成AI開発者」には含 まれない(データを提供した当該企業グループ又は団体に属する法人又は個人が、当該デー タの利用を許諾している場合に限る。) 。 ○ また、一の法人又は個人が保有するデータのみを用いて特化させた生成AIシステムを搭載 した生成AIサービスを、当該データ提供者又はその指定する限られた範囲の者のみに提供 する者は、この文書の「生成AI提供者」には含まれない。また、特定の企業グループ又は 団体が保有するデータであって、当該企業グループ又は団体に属する法人又は個人から提供 を受けたデータのみを用いて特化させた生成AIシステムを搭載した生成AIサービスを、 当該企業グループ若しくは団体又はその指定する限られた範囲の者のみに提供する者は、こ の文書の「生成AI提供者」には含まれない(データを提供した当該企業グループ又は団体 に属する法人又は個人が、当該データの利用を許諾している場合に限る。)。 【具体例】 例えば、次の場合は、この文書における「生成AI開発者」又は「生成AI提供者」に該当 しない典型例である。 ① 汎用的な生成AIシステム又は生成AIサービスを公衆に提供している法人Aからライ センスを受けた法人Bが、法人Cから法人Cの保有する法人Cに関するデータの提供を 受けて、当該汎用的な生成AIシステム又は生成AIサービスを基にして法人Cから提 供を受けたデータを用いて法人Cの社内業務のみに特化させた生成AIシステム又は生 成AIサービスを開発し、これを法人Cに提供している場合における「法人B」 (当該生 2 成AIシステム又は生成AIサービスが法人Cから提供を受けたデータのみに基づき生 成を行うよう構築されている場合に限る。) ② 上記①の場合における法人Cが、当該生成AIシステム又は生成AIサービス(例:チ ャットボット)を、法人Cの顧客のみに提供している場合における「法人C」 ウ 特定の業界に特化した生成AIシステム又は生成AIサービスを開発又は提供している 場合 ○ 上記イ(データ提供者又はその指定する限られた範囲の者のみが使用する生成AIシステム 又は生成AIサービスを開発又は提供している場合)に該当しない限り、特定の業界(同じ 産業に携わる者により構成される社会をいう。以下同じ。 )に特化した生成AIシステム又 は生成AIサービスを開発又は提供している者も生成AI事業者に該当し得る。 【具体例】 ○ 汎用的な生成AIシステム又は生成AIサービスを公衆に提供している法人Dから ライセンスを受けた法人Eが、当該汎用的な生成AIシステム又は生成AIサービス を基にして特定の業界Xに特化した生成AIシステム又は生成AIサービスを開発 し、これを業界Xに属する法人F、法人G及び法人Hに提供している場合、 「法人E」 は生成AI事業者に該当する。 ○ もっとも、上記の場合において生成AI事業者として各原則について対応が求められ るのは、法人Eが汎用的な生成AIシステム又は生成AIサービスに付加した部分に 限定される。汎用的な生成AIシステム又は生成AIサービスについては、法人Dが 各原則を遵守することで知的財産の保護及び透明性が図られることを想定している。 ○ ただし、第三者の権利を侵害する生成物が生成されるおそれが著しく低い生成AIシステム 又は生成AIサービスを開発又は提供している場合には、この文書における「生成AI事業 者」に該当しない。 【具体例】 ○ 次の生成物が極めて高い頻度で生成される生成AIシステム又は生成AIサービス を開発又は提供する者は「生成AI事業者」に該当しない。 ・ 既存の著作物の創作的表現を直接感得することができない生成物 ・ 意思決定に資する統計的データ、推論結果等にとどまる生成物 ○ 特定の業界Xに属する法人I、法人J、法人K及び法人Lから提供を受けたデータ のみを用いて、業界Xに特化した生成AIシステム又は生成AIサービスを開発 し、これを法人I〜Lに提供している場合には、「生成AI事業者」に該当しない (当該生成AIシステム又は生成AIサービスが法人I〜Lから提供を受けたデー タのみに基づき生成を行うように構築されている場合に限る。 )。 3 エ 日本国内に本店又は主たる事務所を有しない者への適用について ○ 日本国内に本店又は主たる事務所を有しない生成AI事業者であっても、生成AIシステム や生成AIサービスが日本に向けて提供されている場合(日本国民が利用できる場合を含む がこれに限られない。)には、この文書の適用を受けるものとする。 (3)この文書が採用する手法 この文書は、生成AI事業者、生成AI利用者及び権利者が置かれた状況、それぞれの意向等 も踏まえて策定されたものであり、生成AI事業者に対して、生成AI事業者に帰属する機微な 情報(営業秘密及び安全性・セキュリティに関するものをいう。)の強制的な開示を求めるもので はなく、法的拘束力を有する規範ではない。この文書の趣旨を理解し、これを受け入れた生成A I事業者に対して、この文書の趣旨を踏まえた対応が図られることを期待するものである。 その上で、この文書は、以下に示す原則についてコンプライ・オア・エクスプレインの手法に より対応を求めるものである。 「コンプライ・オア・エクスプレイン」の手法とは、原則を実施するか、実施しない場合には、 その理由を説明するよう求める手法である。すなわち、以下に示す原則の中に、自らの個別事情 に照らして実施することが適切でないと考える原則があれば、それを「実施しない理由」を十分 に説明することにより、一部の原則を実施しないことも想定している。ただし、当然のことなが ら、生成AI事業者は、当該説明を行う際には、実施しない原則に係る自らの対応について、生 成AI利用者や権利者の理解が十分に得られるよう工夫すべきである。 なお、原則を実施しつつ、併せて自らの具体的な取組について積極的に説明を行うことも、生 成AI利用者や権利者から十分な理解を得る観点からは有益であると考えられる。 (4)この文書の受入れ状況の可視化 この文書の受入れ状況を可視化するため、以下に示す原則を受け入れる生成AI事業者に対し て、次の事項を期待する。  自らの管理又は運用するコーポレートサイト(生成AI事業者の概要、事業内容、製品情 報等の公式情報を発信するウェブサイトをいう。 )その他これと同等の機能を有するウェブ サイト(以下これらを総称して「コーポレートサイト等」という。)で次の事項を公表する とともに、内閣府知的財産戦略推進事務局所定の様式に基づきこれを届け出ること。  この文書に定める各原則を受け入れる旨(受入れ表明)  この文書に定める各原則に関する以下の事項  各原則の実施事項  実施しない原則がある場合には、その理由の説明 4  各事項について原則として毎年、見直し・更新を行うこと(更新を行った場合には、その 旨も公表すること)。 内閣府知的財産戦略推進事務局は、この文書にのっとったコンプライ・オア・エクスプレイン に係る参考様式を作成し、届出のあった生成AI事業者の一覧及び当該事業者が公表したコーポ レートサイト等のリンク等を公表するとともに、関係省庁や関係団体の協力の下、積極的な届出 を各業界に対して促すものとする。ただし、内閣府知的財産戦略推進事務局は当該届出の内容に ついて審査を行うものではなく、第三者からの照会等についても回答しない。 5 2.この文書が示す原則及び例外 (1)この文書の対象となるすべての生成AI事業者が遵守すべき原則 【原則1】 生成AI事業者は、自らの管理又は運用するコーポレートサイト(生成AI事業者の概要、 事業内容、製品情報等の公式情報を発信するウェブサイトであって、全ての者が閲覧可能なも のをいう。)その他これと同等の機能を有するウェブサイトにおいて、次の(1)及び(2)に 定める各事項の概要(以下これらを総称して「概要開示対象事項」という。)を開示し、権利者 及び利用者を含む全ての者が閲覧可能な状態にする。なお、概要開示対象事項の一部について 開示をすることができない場合には、その理由を示すことによりエクスプレインを行うものと する。また、1(3)に示したとおり、生成AI事業者に対して、生成AI事業者に帰属する 機微な情報(営業秘密及び安全性・セキュリティに関するものをいう。)の強制的な開示を求め るものではない。 (1) 透明性確保のための措置 次の各事項を開示するものとする。 ア 使用モデル関係  名称(識別子、バージョン  公開日を含む来歴(過去のバージョンや修正履歴 等)  アーキテクチャ・設計仕様(モデル開発において第三者と契約するライセンスの 等) 状況、使用に必要なハードウェア・ソフトウェアやライセンス 等)  利用規定(想定する用途や、制限・禁止されている用途の明確化  モデルのトレーニングプロセスの内容(トレーニングの方法 等) 等) イ 学習データ関係  学習及び検証等に用いられたデータに関連する事項(データの種類(RAG(検索拡 張生成)において用いるものを含む) 、ウェブクロールや第三者から取得した非公 開のデータセットに関連する事項、公開データセットに関連する事項、その他の 手段で収集されたデータに関連する事項、合成データの利用有無及び目的 等)  クローラ(目的、データ収集期間、名称・識別子、第三者クローラの利用の有無 及びその名称・識別子 等) ウ アカウンタビリティ関係  生成AIシステム又は生成AIサービスの開発・提供・利用中に行われた意思決 定等について、技術的に可能かつ合理的な範囲で追跡・遡及が可能な状態の内容 (トレーサビリティの向上や、責任者の明示、関係者の責任の分配、ステークホ ルダーへの具体的対応、文書化 等) 6 (2)知的財産権保護のための措置 次の各事項への対応状況を開示するものとする。  適切な権利遵守運用を実現するため、知的財産権保護のための原則を策定し、責 任体制を明確化するとともに、年1回以上これを見直し、その要旨を外部に公表 すること。  生成AIの開発・学習等も含めたデータの活用に関しては、他者の知的財産権を 侵害しないこと。  ペイウォール等のアクセス制限や robots.txt 等の機械可読な指示に従うクロー ラの採用等に取り組むこと。権利者による適切な措置のため、ユーザーエージェ ントごとに上記の措置を公開し、変更時には通知すること。  学習したログを一定期間保持していること1。  いわゆる海賊版サイト等へのクロール回避に取り組むこと。  知的財産権を侵害する生成物の生成を防止する技術的措置を可能な限り講ずる こと。  電子透かし、C2PAその他のコンテンツの出所及び来歴を証明するような技術 的措置を可能な限り講ずること。  生成AI利用者に対して、生成物が他者の知的財産権を侵害するものと考えられ る場合には、これを利用すべきでない旨を周知すること。  権利者の適時適切な救済を確保するため、既存の体制を活用することも含め、適 切な窓口を整備し、申出要件を可能な限り明確化するとともに、その対応記録を 保存すること。 (細則) ○ 原則1における各生成AI事業者の取組の蓄積により開示される情報が標準化される とともに、生成AI事業者、生成AI利用者及び権利者の間の相互理解を深化させ、関係 者の適切な理解と自主的な判断の支えとなり、信頼できる生成AIの構築に寄与するもの となることが期待される。このため、原則1に基づく情報の概要開示に当たっては、 「1. 総論」の趣旨を踏まえた上で、各概要開示対象事項に該当する情報の有無や範囲を特定す るとともに、他の法令等に抵触することのないよう留意した上で手続を進めることが肝要 である。また、生成AI事業者が自ら進んで概要開示対象事項に係る詳細を明らかにして おくことを妨げるものではない。 ○ 各概要開示対象事項について開示すべき記載の程度については、内閣府知的財産戦略推 進事務局が別途公表する概要開示対象事項の具体例を参照されたい。 1 ログの保存については、総務省・経済産業省「AI事業者ガイドライン(第1.2版) 」19頁において、 「① 検 証可能性の確保」として「AIの判断にかかわる検証可能性を確保するため、データ量又はデータ内容に照らし合 理的な範囲で、AIシステム・サービスの開発過程、利用時の入出力等、AIの学習プロセス、推論過程、判断根 拠等のログを記録・保存する」 、 「ログの記録・保存にあたっては、利用する技術の特性及び用途に照らして、事故 等の原因究明、再発防止策の検討、損害賠償責任要件の立証上の重要性等を踏まえて、記録方法、頻度、保存期間 等について検討する」と記載されているところである。 7 ○ AI技術の進歩と知的財産権の適切な保護が両立するエコシステムの実現に向けて、権利 者や利用者と生成AI事業者との間において、秩序のある対話や相互理解が図られるよう、 すべての者が努めるべきであって、概要開示対象事項の一部について開示をしないという 一事のみをもって、当該生成AI事業者を直ちに批判することは慎むべきである。 ○ 原則1については、当面本措置を実施するものとしつつ、同様の目的を達成するため、今 後国際的な動向も視野に入れ、学習データに関する透明性の確保という観点において国際 的な整合性に配慮した取組がステークホルダーにおいて進展していくことが期待される。 8 【原則2】 映画、音楽、演劇、文芸、写真、漫画、アニメーション、コンピュータゲームその他の文字、 図形、色彩、音声、動作若しくは映像若しくはこれらを組み合わせたもの又はこれらに係る情 報を電子計算機を介して提供するためのプログラム(電子計算機に対する指令であって、一の 結果を得ることができるように組み合わせたものをいう。 )について自らの権利又は法律上保護 される利益の実現のために訴訟提起、調停申立て、ADR(裁判外紛争解決手続)その他の法 的手続を現に行い、若しくは準備をしている者又はその者から委任を受けた弁護士及び法令に より裁判上の行為をすることができる代理人(以下「原則2開示要求者」という。 )から、以下 の【開示要求可能事項】について開示の求めがあった場合において、当該開示の求めが以下の 【開示の求めが満たすべき事項】にある各事項の全てを満たすときは、生成AI事業者は、当 該開示の求めに対する回答を行う。1(3)に示したとおり、生成AI事業者に対して、生成 AI事業者に帰属する機微な情報(営業秘密及び安全性・セキュリティに関するものをいう。) の強制的な開示を求めるものではない。 【開示要求可能事項】  学習及び検証等に用いられたデータ(ウェブクロールや第三者から取得した非公開のデ ータセット、公開データセット、合成データを含むデータセットその他の手段で収集さ れたデータをいうがこれに限られない。)に、自らが照会を行うURL等の情報(生成 AI事業者において容易にアクセス及び確認可能なものに限る2。以下「原則2対照情 報」という。 )が含まれているか否か  開示の求めを受けた者が生成AI提供者である場合において、当該生成AI提供者にお いて回答できないときは、生成AIサービスに搭載された生成AIモデルを開発した者 の名称 【開示の求めが満たすべき事項】 ① 原則2開示要求者に該当する者であることを示す理由が示されていること ② 開示の求めに係る回答の利用目的が明示されており、かつ、原則2開示要求者が当該 目的以外の目的で利用しない旨を誓約していること ③ 原則2対照情報を示しており、かつ、当該原則2対照情報との関係で生成AI事業者 に対して開示を求める理由となる事由が特定されていること 2 細則の典型例に記載のとおり、自ら作品を創作してウェブサイトに掲載している者が、当該作品と同一又は類 似の生成AI生成物を発見した場合に、当該作品自体がクロール対象に含まれているか否かを照会することを想 定しているものではない。 9 (細則) ○ 原則2が示す開示の求めの典型例は次のとおりである。  自ら作品を創作してウェブサイトAに掲載している者が、当該作品と同一又は 類似の生成AI生成物を発見したため、生成AI事業者に対して、当該ウェブサ イトAの作品掲載ページのURLを示して、当該ドメインがクローラによるク ロール対象に含まれているか、第三者から提供を受けた学習データの取得源に 含まれているか等について開示を求める場合 ○ 【開示の求めが満たすべき事項】①に定める「原則2開示要求者に該当する者であること を示す理由」の程度については、要求を受けた生成AI事業者において「自らの権利又は 法律上保護される利益の実現のために訴訟提起、調停申立て、ADR(裁判外紛争解決手 続)その他の法的手続を現に行い、若しくは準備をしている者又はその者から委任を受け た弁護士及び法令により裁判上の行為をすることができる代理人」に該当すると信じるに 足りる理由を示すことが求められる。 ○ 原則2開示要求者の権利又は法律上保護される利益の実現に支障を来すことのないよう、 生成AI事業者において可能な限り詳細かつ分かりやすい開示を行うための努力を払う ことが求められる。また、開示の求めに係る各事項が営業秘密に該当すると考えられる場 合等においても、まずは真摯に検討、協議することが期待される。 ○ 生成AI事業者において、技術的課題やコスト、利用目的や法的手続の内容等を踏まえ、 合理的な判断の下、過大な負担を回避するべく、原則2開示要求者による開示の求めに対 する対応方針を自ら明確化して公表することが望ましい(なお、自らが法的手続の相手方 となる場合の対応については、当該法的手続の対応戦略等とも関係し得ることを踏まえ、 生成AI事業者において適宜検討されたい。) 。 このような多様なコンプライ・オア・エクスプレインの蓄積により、優れた取組を行っ ている事業者に対し、市場原理に基づく評価が適切になされることが期待されるほか、生 成AI事業者・生成AI利用者及び権利者の間の相互理解が深まることが期待される。 ○ 原則2の実施に際しては、一定の手数料や相当期間内につき相当回数までの制限を設ける 等の濫用的な要求を防止する措置を講ずることが考えられる。ただし、開示の求めを萎縮 させ、困難にし、または諦めさせるような手数料や回数制限を設ける等の措置をとらない よう留意が必要である。 ○ 回答する時期について特定のルールを定めるものではないが、原則2開示要求者の権利又 は法律上保護される利益の実現に支障を来すことのないよう、合理的期間内に速やかな開 示を行うための努力を払うことが期待される。 ○ 生成AIシステム又は生成AIサービスを公衆に提供する者としての説明責任を果たす 観点から、原則2を実施する体制構築ができていないことを述べるだけでは「エクスプレ イン」として不十分とし、事業者としての事業規模等を勘案しつつ、当該体制構築が完了 する時期を適切に説明するものとする。 10 ○ 本原則については、現時点のものは完全なものではなく、各事業者が展開するサービスや その他の事情により対応が不可能な事柄があり得ることを前提としつつ、より意義のある 形で生成AI技術の進歩の促進と知的財産権の適切な保護の両立に向けたバランスをと ることを追求していくものとする。 ○ なお、生成AI事業者において、この原則に基づく開示を行うことが技術的に不可能であ る旨を必要な根拠を示して述べた場合には、「エクスプレイン」を行ったものとする。 ○ 原則2に基づく開示の求め以外の手法による情報の収集方法として、当事者照会(民事訴 訟法163条)、文書提出命令の申立て(同221条)等がある。 11 【原則3】 生成AI事業者の提供する生成AIシステム又は生成AIサービスを用いて、映画、音楽、演 劇、文芸、写真、漫画、アニメーション、コンピュータゲームその他の文字、図形、色彩、音 声、動作若しくは映像若しくはこれらを組み合わせたもの又はこれらに係る情報を電子計算機 を介して提供するためのプログラム(電子計算機に対する指令であって、一の結果を得ること ができるように組み合わせたものをいう。)を生成した者(以下「原則3開示要求者」という。) から、以下の【開示要求可能事項】記載の事項について開示の求めがあった場合において、当 該開示の求めが以下の【開示の求めが満たすべき事項】にある各事項の全てを満たすときは、 生成AI事業者は、当該開示の求めに対する回答を行う。また、1(3)に示したとおり、生 成AI事業者に対して、生成AI事業者に帰属する機微な情報(営業秘密や安全性・セキュリ ティに関するものをいう。 )の強制的な開示を求めるものではない。 【開示要求可能事項】  学習及び検証等に用いられたデータ(ウェブクロールや第三者から取得した非公開のデ ータセット、公開データセット、合成データを含むデータセットその他の手段で収集さ れたデータをいうがこれに限られない。)に、原則3開示要求者の生成に係る生成物と同 一又は類似するコンテンツ(コンテンツの創造、保護及び活用の促進に関する法律第2 条1項に定める「コンテンツ」をいう。以下同じ。)が掲載されたURL等の情報(生成 AI事業者において容易にアクセス及び確認可能なものに限る3。以下「原則3対照情報」 という。)が含まれているか否か  開示の求めを受けた者が生成AI提供者である場合において、当該生成AI提供者にお いて回答できないときは、生成AIサービスに搭載された生成AIモデルを開発した者 の名称 【開示の求めが満たすべき事項】 ① 原則3開示要求者に該当する者であることを示す理由として、開示を求める者の生成に 係る生成物及び当該生成物を生成する際に用いたプロンプトが示されていること ② 開示の求めに係る回答の利用目的が明示されており、かつ、原則3開示要求者が当該目 的以外の目的又は訴訟提起、調停申立て、ADR(裁判外紛争解決手続)の申立てに用 いる目的で利用しない旨を誓約していること ③ 原則3対照情報を示しており、かつ、当該原則3対照情報との関係で生成AI事業者に 対して開示を求める理由となる事由が特定されていること 3 細則の典型例に記載のとおり、原則3開示要求者が生成した生成物と同一又は類似のコンテンツ自体がクロー ル対象に含まれているか否かを照会することを想定しているものではない。 12 (細則) ○ 原則3が示す開示の求めの典型例は次のとおりである。  画像を生成できる生成AIサービスAを利用して生成AI生成物を生成した者 が、当該生成AI生成物と同一又は類似する画像がウェブサイトBに掲載され ていることを発見した場合に、生成AIサービスAを提供する生成AI提供者 に対して、当該生成AI生成物、当該生成AI生成物を生成する際に用いたプロ ンプト、当該生成AI生成物の利用目的及びウェブサイトBのURLを示して、 当該URLのドメイン部分が生成AIサービスAに搭載された生成AIシステ ムを開発する際の学習データのクロール対象に含まれているか、第三者から提 供を受けた学習データの取得源に含まれているか、仮に生成AI提供者におい て回答できない場合には、生成AIサービスに搭載された生成AIモデルを開 発した者の名称について開示を求める場合 ○ 開示を求める者の生成AI生成物の利活用に支障を来すことのないよう、生成AI事業者 において可能な限り詳細かつ分かりやすい開示を行うための努力を払うことが求められ る。また、開示の求めに係る事項が営業秘密に該当すると考えられる場合等においても、 まずは真摯に検討、協議することが期待される。 ○ 生成AI事業者において、技術的課題やコスト、利用目的等を踏まえ、合理的な判断の下、 過大な負担を回避するべく、原則3開示要求者による開示の求めに対する対応方針を自ら 明確化して公表することが望ましい。 ○ このような多様なコンプライ・オア・エクスプレインの蓄積により、優れた取組を行って いる事業者に対し、市場原理に基づく評価が適切になされることが期待されるほか、生成 AI事業者・生成AI利用者及び権利者の間の相互理解が深まることが期待される。原則 3の実施に際しては、一定の手数料や相当期間内につき相当回数までの回数制限を設ける 等の濫用的な要求を防止する措置を講ずることが考えられる。ただし、開示の求めを萎縮 させ、困難にし、または諦めさせるような手数料や回数制限を設ける等の措置をとらない よう留意が必要である。 ○ 開示する時期については特定のルールを定めるものではないが、合理的期間内にすみやか な開示を行うための努力を払うことが期待される。 ○ 生成AIシステム又は生成AIサービスを公衆に提供する者としての説明責任を果たす 観点から、本原則を実施する体制構築ができていないことを述べるだけでは「エクスプレ イン」として不十分とし、事業者としての事業規模等を勘案しつつ、当該体制構築が完了 する時期を適切に説明するものとする。 ○ 本原則については、現時点のものが完全なものではなく、各事業者が展開するサービスや その他の事情により対応が不可能な事柄があり得ることを前提としつつ、より意義のある 形で生成AI技術の進歩の促進と知的財産権の適切な保護の両立に向けたバランスをと ることを追求していくものとする。 13 ○ なお、生成AI事業者において、この原則に基づく開示を行うことが技術的に不可能であ る旨を必要な根拠を示して述べた場合には、「エクスプレイン」を行ったものとする。 ○ 原則3に基づく開示の求め以外の手法による情報の収集方法として、当事者照会(民事訴 訟法163条)、文書提出命令の申立て(同221条)等がある。 オープンソースソフトウェアに関する例外の記載削除 (2)「エクスプレイン」を選択した場合に関する留意事項 この文書における各原則については、当該原則が技術的な現実に見合わない等の理由により、 生成AI事業者が各原則の全部又は一部について実施せず、その理由を「エクスプレイン」する ものを妨げるものではない。この場合においても、生成AI技術の進歩の促進と知的財産権の適 切な保護の両立に向け、利用者にとって安全・安心な利用環境を確保するというこの文書の目的 に鑑み、実施しない原則に係る自らの対応について、権利者や利用者の理解が十分に得られるよ う工夫すべきである。 なお、この文書の定める各原則を実施することを表明していた場合(すなわち、受入れ表明を していた場合)であっても、利用規約等の規定に基づき開示対象を限定する等、実質的にこの文 書の定める各原則を実施していないと評価できる場合には、別途「エクスプレイン」を要する。 明確化を期すため付言すれば、契約又は利用規約においてこの文書の示す原則の適用を撤廃又は 制限する規定(オーバーライド条項)が存在しているということを示すだけでは「エクスプレイ ン」としては不十分であり、なぜ当該規定を設けて撤廃又は制限をしているのかということを説 明することを要する。 (3)その他の事項 この文書は、別途法令による手続が行われる可能性を何ら制限するものではない。例えば、S NS上で権利侵害情報が流出した場合、情報流通プラットフォーム対処法に基づく発信者情報開 示請求により、当該SNSを提供する事業者等から開示された発信者情報を受け、当該発信者に 対して当該開示請求者の損害賠償請求権を行使することは、生成AIの適切な利活用等に向けた 知的財産の保護にも資するものである。 生成AI事業者による対応の状況、運用上の実効性、国際的な取組の動向等を勘案し、生成A I技術の進歩の促進と知的財産権の適切な保護の両立に向け、必要があると認めるときは、その 状況に基づき、この文書の改定を含めた適切な対応を行うものとする。 以上 14

資料2

参考資料1 生成AIの適切な利活用等に向けた知的財産の保護及び透明性に関する プリンシプル・コード(仮称)(案) 概要開示対象事項 具体例 ※本具体例は、本コードに基づく事業者の開示例をご参考までに供するものです。 ※なお、開示対象事項について「エクスプレイン」を選択した場合の一例として、事務局において、 一部の事項に<エクスプレインをする場合の例>を参考として示しています。 分類 項目 名称(識別子、バージョン 等) 具体例 ○○ Ver2.1 公開日を含む来歴(過去 のバージョンや修正履歴 〇年〇月〇日リリース、△年△月△日△△機能を修正 等) 【アーキテクチャ・設計仕様】 Transformer アーキテクチャ 【モデル開発において第三者と契約するライセンスの状況】 ○○社と契約を締結 <エクスプレインする場合の例> アーキテクチャ・設計仕様 使用モデル (モデル開発において第三 関係 者と契約するライセンスの状 況、使用に必要なハードウェ ア・ソフトウェアやライセンス 等) モデル開発において、第三者との間で使用モデルのライセンス に関する契約を締結しているが、当該契約上の秘密保持義 務のため、及びビジネスの根幹にかかわることから、当該第三 者の名称等を開示することはできない。 【使用に必要なハードウェア・ソフトウェア】 ○○GB 以上の容量を持つ GPU・△△Ver.3.1 以上 【ユーザーに対するライセンスポリシー】 モデルを公開して共有した上で、一定の条件の下、プロバイ ダーがモデルまたはその修正版に自由にアクセス、使用、変 更、再配布できる、無料のオープンソースライセンスへの同意 を求める ※ライセンスポリシー(参照ページの URL) 利用規定(想定する用途 や、制限・禁止されている用 途の明確化 等) 禁止用途:法律や規制等に違反する方法での利用 ※参照ページの URL 1 勾配降下法に基づき、事前学習段階で最適化。モデルは モデルのトレーニングプロセス の内容(トレーニングの方法 等) 自己回帰型言語モデルを採用し、数兆トークン規模の大規 模なコーパスを用いて次に出現する単語を予測するよう学 習。その後、人間の好みを反映したデータセットを用いた強 化学習(RLHF)などの事後トレーニングを行い、人間の価 値観や意図に沿った応答ができるよう調整。 2 分類 項目 学習及び検証等に用いられ 具体例 【データの種類】 たデータに関連する事項(デ テキスト、画像、音声、動画 学習データ 関係 ータの種類(RAG(検索 【ウェブクロール】 拡張生成)において用いる 実施 ものを含む)、ウェブクロール 【非公開データセットに関連する事項】 や第三者から取得した非公 ライセンス契約により取得 開のデータセットに関連する 【公開データセットに関連する事項】 事項、公開データセットに関 ○○構造化データセットを使用 連する事項、その他の手段 【その他手段で収集されたデータに関連する事項】 で収集されたデータに関連す データ提供業者△△より取得 る事項、合成データの利用 【合成データの利用有無/目的】 有無及び目的 等) 合成データ利用/安全性強化 【目的】 モデル改善用データ収集 クローラ(目的、データ収集 【名称・識別子:データ収集期間】 期間、名称・識別子、第三 ○○bot:〇年〇月〇日より継続的に収集 者クローラの利用の有無及 △△bot:△年△月△日より継続的に収集 びその名称・識別子 等) 【第三者クローラの名称・識別子:データ収集期間】 ●●bot:●年●月●日より継続的に収集 ▲▲bot:▲年▲月▲日より継続的に収集 【トレーサビリティ】 生成AIシステム又は生成 モデル評価ログの記録を継続的に行い、〇〇社〇〇規則に AIサービスの開発・提供・ 定める期間保存 利用中に行われた意思決定 【責任者の明示】 アカウンタビリ ティ関係 等について、技術的に可能 〇〇社 CAIO が責任者となり、同社〇〇チームの業務につ かつ合理的な範囲で追跡・ いて責任を有する 遡求が可能な状態の確保 【関係者の責任の分配】 (トレーサビリティの向上や、 上記契約に沿って、権利者・利用者等との間の責任分配に 責任者の明示、関係者の責 ついて整理し、相手方との合意を確認 任の分配、ステークホルダー 【ステークホルダーへの具体的対応】 への具体的対応、文書化 〇〇社〇〇規則により対応 等) 【文書化】 〇〇社〇〇規則により文書化 3 分類 項目 具体例 適切な権利遵守運用を実 現するため、知的財産権保 ・知的財産権保護に関する○○原則を策定済 護のための原則を策定し、 ※○○原則の概要(参照ページの URL) 責任体制を明確化するとと ・○○原則を遵守すべく○○部門を設置し、年に一回見直 もに、年1回以上これを見 しを行い、その内容を自社 HP 上で公開(参照ページの 直し、その要旨を外部に公 URL) 表すること。 ・開発・学習においては、他社の知的財産権を侵害していな 生成AIの開発・学習等も いことを確認する○○プロセスを設置 含めたデータの活用に関して ※○○プロセスの概要(参照ページの URL) は、他者の知的財産権を侵 ・利用に関しては、利用規約にて権利侵害防止に関する条 害しないこと。 項を記載 ※参照ページの URL ペイウォール等のアクセス制 知的財産権 保護のため の措置 限や robots.txt 等の機械可 読な指示に従うクローラの採 用等に取り組むこと。権利者 による適切な措置のため、ユ ーザーエージェントごとに上記 ペイウォールの遵守、robots.txt に従うクローラを採用 上記を含むポリシーを自社 HP 上で公開(参照ページの URL) の措置を公開し、変更時に は通知すること。 学習したログを一定期間保 持していること。 使用期間中ログを保持 ・海賊版サイトを学習データの収集対象から除外すべく、海 いわゆる海賊版サイト等への クロール回避に取り組むこと。 賊版に関する情報の提供が公的機関等よりあった際には、 内容を確認の上、除外等の対応を実施 ・権利者団体等との情報交換を実施し、海賊版サイトの把 握に努める 知的財産権を侵害する生 成物の生成を防止する技術 知的財産権を侵害する生成物の出力を防止するフィルタリ 的措置を可能な限り講ずる ング機能を搭載 こと。 4 電子透かし、C2PAその 他のコンテンツの出所及び来 歴を証明するような技術的 C2PA 対応、電子透かし技術導入済 措置を可能な限り講ずるこ と。 生成AI利用者に対して、 生成物が他者の知的財産 知的財産権 権を侵害するものと考えられ 保護のため る場合には、これを利用すべ の措置 きでない旨を周知すること。 利用規約において知的財産権侵害を防止する条項を記載 権利者の適時適切な救済 を確保するため、既存の体 制を活用することも含め、適 切な窓口を整備し、申出要 著作権窓口設置(参照ページの URL)、対応記録保持 件を可能な限り明確化する とともに、その対応記録を保 存すること。 5

資料3

参考資料 2 知的財産推進計画2026~成長戦略を支える知財戦略の推進~ (2026年6月12日、知的財産戦略本部決定)抜粋 I. 知財戦略の重点施策 1.知的財産の「創造」 (2)AI と知的財産権 (現状と課題) 世界の AI 市場規模(売上高)は、2024 年に 1,840 億ドル、2030 年には 8,267 億ドルに拡大すると予測されており、AI は世界経済を牽引する基盤分野となっ ている(図表9)。日本の AI システム市場(支出額)も、2024 年に1兆 3,412 億円(前年比 56.5%増)に達し、2029 年には4兆 1,873 億円まで拡大すると予 測されている(図表 10)。 (出典)総務省「令和 7 年版情報通信白書」 図表9:世界の AI 市場規模(売上高)の推移及び予測 (出典)総務省「令和 7 年版情報通信白書」 図表 10:国内 AI システムの市場規模(支出額)及び予測 こうした中で、AI 分野の研究費は近年、高い伸びを示しており、2023 年度に 2,734 億円であったのに対し、2024 年度には 3,235 億円と対前年度比 18.3%の 増加を示している(図表 11)。このことは、生成 AI の急速な社会実装や、AI を 中核技術と位置付けた研究開発投資が、企業・大学・公的機関において本格化し ていることを示していると考えられる。 (出典)総務省「科学技術研究調査」を基に内閣府知的財産戦略推進事務局が作成 図表 11:AI 分野の研究主体別研究費 AI の市場規模や研究費が増加している一方で、我が国企業の業務における生 成 AI の利活用は海外と比較して進んでいない。何らかの業務で生成 AI を利用 していると回答した割合は、米国、ドイツ、中国の企業は 90%を超えているの に対し、日本の企業は 55.2%(業務で使用中と回答した割合)に留まる。 (出典)総務省(2025) 「国内外における最新の情報通信技術の 研究開発及びデジタル活用の動向に関する調査研究」 図表 12:企業における業務での生成 AI 利用率(国別) そのような中、AI、とりわけ生成 AI やエージェント AI は、研究開発、創作 活動、事業活動の生産性と創造性を飛躍的に高め、知的創造サイクル全体を加速 させる基盤技術となっている。一方で、生成物に対する責任の在り方や学習デー タの取扱い、生成物と著作権・特許権・意匠権・商標権等との関係など、知財制 度との関係を巡る新たな課題が顕在化しているほか、エージェント AI の出現等 により、その深刻度が増しているとの指摘もある。 国際的には、AI の発展が知財制度に与える影響について、世界知的所有権機 関(WIPO)を中心に継続的な議論が行われている。加盟国や多様なステークホ ルダーが参加する「知的財産と先端技術に関する WIPO 対話」では、生成 AI の 学習データや生成物を巡る著作権上の課題、権利管理や透明性を支える制度・イ ンフラの在り方等、既存制度の適用可能性と限界が多角的に検討されてきた。 2026 年3月には AI 時代における知財インフラの技術的・運用的課題に焦点を 当てた AI Infrastructure Interchange(AIII)を立ち上げ、世界的な対話を促 進している。 国内においては、2025 年に AI 法が成立・施行され、AI の研究開発及び利活 用を総合的かつ計画的に推進するための法的枠組みが整備された。同法に基づ き、内閣総理大臣を本部長とする人工知能戦略本部(AI 戦略本部)が設置され、 AI 政策を横断的に推進する体制が構築されている。さらに、同法第 18 条に基 づき、2025 年末には「人工知能基本計画」 (令和7年 12 月 23 日 閣議決定) (以下「AI 基本計画」という。 )が策定され、 「信頼できる AI」を軸として、イ ノベーション促進とリスク対応の両立を図りつつ、「世界で最も AI を開発・活 用しやすい国」を目指す国家戦略が明確化された。AI 基本計画においては、適 切な知財の保護と利活用につながる透明性の確保を図るとともに、コンテンツ ホルダーへの対価還元等の推進、生成 AI による知的財産権侵害対策に関する相 談体制の整備、生成 AI と知的財産権に関する分かりやすい情報提供等の取組を 進めることが明記されている。このことは、AI 政策全体の中において、知財が イノベーション促進と社会的信頼確保の双方にとって不可欠な要素として位置 付けられたことを意味している。 他方、イノベーション全体の国際競争において、日本は依然として厳しい位置 にある。「Ⅱ.1.基本的な認識」で述べたとおり、WIPO「グローバル・イノ ベーション・インデックス 2025」において、日本は世界 12 位であり、韓国(4 位) 、中国(10 位)など、アジア主要国に後れを取っている。AI 分野で創出さ れる価値を確実に知財として保護・活用し、競争力強化につなげることが急務で ある。 特に、生成 AI については、個人情報の不適正な利用、犯罪の巧妙化・容易化、 偽情報等による混乱等と並び、著作権等の侵害リスクについて、クリエイターや 権利者から懸念の声が示されている。 こうした声を受けて、AI と著作権の関係については、文化審議会著作権分科 会法制度小委員会において検討を行い、また、知的財産権全般との関係について は、AI 時代の知的財産権検討会(事務局:内閣府知的財産戦略推進事務局)に おいて検討が行われてきている。検討結果は、 「AI と著作権に関する考え方につ いて」 (2024 年3月)及び「AI 時代の知的財産権検討会 中間とりまとめ」 (2024 年5月) (以下「中間とりまとめ」という。)として、それぞれ公表されている。 中間とりまとめでは、生成 AI と知的財産権の望ましい関係の在り方として、 「AI 技術の進歩と知的財産権の適切な保護が両立するエコシステム」の実現が 目指されている。そのためには、法、技術、契約の各手段を適切に組み合わせな がら、AI 開発者、AI 提供者、AI 利用者、権利者等の幅広い関係者が連携して 取り組むことにより、創作者にとって信頼できる開発者の下に良質なデータが 多数集積し、高度な生成 AI の開発・提供とともに、新たな創作活動につながる 好循環の実現が期待されている。 (出典)AI 時代の知的財産権検討会「中間とりまとめ」 図表 13:法・技術・契約の各手段の相互補完性 <AI 法の制定を踏まえた、生成 AI と知的財産を巡る懸念・リスクへの対応> 内閣府知的財産戦略推進事務局では、AI 法の基本理念や AI 基本計画におい て適切な知的財産の保護と利活用につながる透明性の確保を図るとされている ことを踏まえ、生成 AI 事業者が行うべき透明性の確保や知的財産権保護のため の措置の原則を定め、もって生成 AI 技術の進歩の促進と知的財産権の適切な保 護の両立に向け、権利者や利用者にとって安全・安心な利用環境を確保すること を目的として、「生成 AI の適切な利活用等に向けた知的財産の保護及び透明性 に関するプリンシプル・コード」(仮称)の策定に向けた検討を進めている。 文化庁及び経済産業省においては「AI と著作権に関する関係者ネットワーク」 を 2024 年に発足させ、当事者間において適切なコミュニケーションを図り、新 たなコンテンツの創作と文化の発展に向けた共創の関係を実現するため、権利 者と事業者が一堂に会して意見交換を行う場を運営している。 また、令和7年度補正予算において措置された「クリエイターへの対価還元 に向けた著作物等データの流通促進に係る環境構築事業」において、文化庁は、 クリエイター等への対価還元を促進するため、著作物等データの有償提供等の 流通に必要な事項に係る調査研究・実証を複数年度にわたって複数分野で実施 し、モデル事例の創出及び横展開を図ることとしている。 肖像や声の保護に関しては、技術により声の保護を図りつつ収益化を目指す 民間の取組や著名な声優による音声 AI サービスの展開など、俳優や声優等と共 に、その肖像や声を守りながら利用する活動が複数見られるようになった。他方 で、特定の俳優や声優等の肖像や声のみを学習させ、当該俳優や声優等の肖像や 声であると一般人が認識するような出力を得ることができる生成 AI モデルやサ ービスであるにもかかわらず、当該俳優や声優等の許諾を得ずに公開され、さま ざまな形態でその出力が利用される事態も引き続き存在している。このような 俳優や声優等の肖像や声の無断利用については、経済産業省が 2025 年に公表し た「肖像と声のパブリシティ価値に係る現行の不正競争防止法における考え方 の整理について」により、不正競争防止法における考え方の整理が行われるとと もに、肖像については同省が行う「AI 利活用における民事責任の在り方に関す る研究会」でも一定の場合には AI 開発者や AI サービス提供者がパブリシティ 権侵害の責任主体となり得ることが整理されたところであるが、俳優や声優等 の肖像や声の保護の在り方については、実情を踏まえて引き続き検討すること が必要である。 <AI 技術の発達を踏まえた産業財産権上の適切な対応> 近年の AI 分野の研究開発の活発化や、2022 年末には生成 AI や対話型 AI を 用いた技術やサービスの開発が盛んになり、いわゆる第四次 AI ブームが到来し たこと等を背景に、AI 関連発明の特許出願件数も増加しており、2023 年には 11,445 件となった(図表 14)。 (出典)特許庁「令和 7 年度簡易型技術動向調査「AI 関連発明」」 図表 14:AI 関連発明の日本への特許出願件数の推移 また、生成 AI 技術の発達により、短時間かつ低コストで多数の技術情報やデ ザイン案を生成・公開することが可能となり、知的創造活動が変化している。 このような背景を踏まえ、産業構造審議会知的財産分科会の特許制度小委員 会および意匠制度小委員会において、AI 技術の発達を踏まえた産業財産権上の 適切な対応について検討が進められている。特許制度に関しては、 (ⅰ)技術的 観点も含め近い将来における顕在化が想定される問題か、 (ⅱ)特許権者又は第 三者から検討のニーズがあるか、 (ⅲ)国内外での諸情勢を踏まえ検討すべきか、 という観点を考慮し、特に、AI 利用発明における発明、発明者、引用発明適格 性等の論点について具体的な検討が進められている。また、意匠制度に関して は、 (ⅰ)デザイン創作の実態や技術の発展状況を踏まえ検討の必要性が高いか、 (ⅱ)デザイン創作に関わるステークホルダーの意見を踏まえ検討の必要性が 高いか、 (ⅲ)国内外における諸情勢を踏まえ検討の必要性が高いか、という観 点を考慮し、生成 AI を利用して創作したデザインにおける意匠、創作者、引用 意匠適格性等の論点について具体的な検討が進められている。 <KPI について> 「知的財産推進計画 2025」において「日本企業の AI の利活用率を概ね 100% まで高める」との KPI が設定されていたところ、日本企業の AI の利活用率は 2025 年度調査では 55.2%となっている。 また、同計画において「AI 利用発明の明確化を進め、AI 利用による研究開発 を促進する(AI 分野の研究費の増加) 」との KPI が設定されていたところ、AI 分野の研究費は 2024 年度には 3,235 億円となり、2023 年度と比べて 18.3%研 究費が増加している。 (施策の方向性)  AI 技術の進展による特許分野での AI の利活用の拡大を踏まえ、特許の 実務に生じる課題等について、産業構造審議会知的財産分科会特許制度小 委員会において、国際的な動向を見極めつつ、引き続き検討する。 (短期・中期) (特許庁)  AI 技術の進展による意匠分野での AI の利活用の拡大を踏まえ、意匠の 実務に生じる課題等について、産業構造審議会知的財産分科会意匠制度小 委員会において、国際的な動向を見極めつつ、引き続き検討する。 (短期・中期) (特許庁)  「中間とりまとめ」が示す考え方に基づき、法・技術・契約の各手段の 組合せにより、関係当事者が AI 技術の進歩の促進と知的財産権の適切な 保護の両立に向けて主体的に取り組むよう、知的財産法や AI ガバナンス に関連するガイドライン等の必要な更新を適時に行い、社会に分かりやす  い形で周知を行う。 (短期・中期) (内閣府(知財) 、総務省、文化庁、経済産業省) 生成 AI とこれに関わる事業者、クリエイターとの間で、ライセンスの 状況等の情報共有等を図るため、関係当事者間における適切なコミュニケ ーションを引き続き促進する。  (短期・中期) (文化庁、経済産業省) 俳優や声優等の声を模倣した音声コンテンツの無断生成・公開等が一定 の場合にはパブリシティ権等の侵害に該当し得ることを踏まえ、これらの 侵害に関する不法行為法の解釈・適用等について、現行法及び判例法理を 踏まえた法的整理の検討を行い、ガイドライン等を作成するとともに、そ の結果を周知し、より確実な権利保護に向け、ハードロー整備(不正競争 防止法改正を含む)の必要性も含め引き続き議論を継続する。 (短期・中期) (法務省、経済産業省、内閣府(知財)、消費者庁、 総務省、文化庁、特許庁) ・ 生成 AI 技術の進歩の促進と知的財産権の適切な保護の両立に向け、権 利者や利用者にとって安全・安心な利用環境を確保することを目的とする 「生成 AI の適切な利活用等に向けた知的財産の保護及び透明性に関する プリンシプル・コード」(仮称)を制定するとともに、クリエイター等へ の対価還元に向けた環境構築を促進する。 (短期・中期) (内閣府(知財) 、文化庁、経済産業省) ・ 生成 AI による要約サービスと robots.txt 等の技術的措置の関係につい て、不当な利用行為の防止につながるよう、ユーザーエージェントの開示 や robots.txt 等の遵守等の措置の在り方について課題の整理を行う。 (短期・中期) (内閣府(知財) 、公正取引委員会、文化庁)