物価上昇下における消費者の節約志向と、それに対応した企業の価格設定行動の変化をSRI一橋指数を用いて分析した。
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コラム1-3 物価上昇が継続する下での企業の価格設定行動の変化 本章第1節の個人消費に関する議論の際にも確認したように、食料品を中心とした物価上昇が継続する中で、消費者の購買行動においては、スーパーマーケットに比べて食料品を低価格で販売するドラッグストアへのシフト、食料品の中でより安価な品目への代替(例えば、牛肉や豚肉から鶏肉へのシフト)、さらに同じ品目の中でもより安価な銘柄・商品への代替(例えば、プライベートブランド(PB)商品へのシフト等)という形で、節約志向の動きがみられる。本コラムでは、POSによるビッグデータの一つであるSRI一橋大学消費者購買指数・単価指数(以下「SRI一橋指数」という。)20を用いて、こうした消費への購買行動に対応して、企業の価格設定行動も変化してきているかについて、確認してみよう。 SRI一橋指数における単価指数は、商品価格を商品容量で割った容量単価について、容量×数量をウェイトとして加重平均した指数の前年同週からの変化率を集計したものであり、新旧商品交代や容量調整の価格への影響を受けるものである。SRI一橋指数のうち、こういった容量情報をもつ商品の売上額シェアは約65%となっている。なお、これら指数には、生鮮食品や弁当等は含まれていない。 単価指数については、継続して販売される商品の価格上昇・下落を捉えた価格変化効果、同じく継続商品の販売シェアの変化と価格の共分散をみた代替効果、新商品と継続商品の価格差及び継続商品と販売停止商品の価格差をみた商品交代効果、クロス項(交絡項)に寄与度分解ができる(Abe et al. (2015))。これに沿って、単価指数の推移をみると、2022年半ば頃から2023年秋頃にかけて、価格変化効果と商品交代効果が共に単価指数への押上げ効果を強めていたことが分かる(コラム1-3-1図)。その後、2024年夏頃にかけて、両効果共に押上げ寄与が縮小し、単価指数の上昇幅が低下したが、2024年秋頃以降には、再び単価指数の上昇幅が拡大している。もっとも、2024年秋頃以降は、価格変化効果の寄与は拡大傾向にある一方、商品交代効果の寄与は横ばい傾向となっている。これは、継続して販売される商品の値上げの効果に比べ、商品交代による値上げの効果が相対的に弱まっていることを示唆している。言い換えれば、2022年から2023年においては、継続商品の価格引上げを行いつつ、より容量単価の高い新商品を導入したり、正味内容量の変更による商品パッケージの変更を伴う実質的な価格引上げを行っていたのに対し、2024年秋以降は、企業の価格設定行動において後者の重要性が相対的に低下していると言える。背景として、過去30年にわたり、物価がほぼ動かない状況にあった中で、2022年の物価上昇局面では、価格上昇に直面する経験が限られてきた消費者の値上げに対する抵抗感が強 20 インテージ・一橋大学・全国スーパーマーケット協会共同流通・消費・経済指標開発プロジェクトにより開発されたビッグデータ。スーパーマーケット、ドラッグストア、コンビニエンスストア、食料品ディスカウントストアをカバーした日本全国約6,000店舗で販売されている食品、飲料、アルコール、日用雑貨、医薬品、化粧品などの商品につき、POSデータに基づいて作成されている。同指数の他にも、支出指数、数量指数、商品入替効果指数が作成されている。 77