為替変動が輸出入金額および数量に与える影響を分析し、価格弾力性の観点から各産業の競争力や消費行動の変化を考察している。
タグ: 為替変動, 輸出入, 価格弾力性, 経済分析, サービス貿易
替レートの10%の減価に対し、輸入数量が10%減少すれば(価格弾力性が1)、輸入金額は変化せず、輸入数量が全く減少しないのであれば(価格弾力性が0)、輸入金額も10%増加することになる。 日本からの輸出について、輸入相手国の通貨が10%減価した場合をみると、財とサービス全体は共に係数が正に有意となっており、輸入国通貨建てでみた日本からの輸出金額は、財は6%程度、サービスは5%程度増加している(コラム3-2-1図(1))。つまり、輸出する日本側からみれば、10%の為替増価(円高)となったとしても、輸出数量の減少は4~5%程度にとどまることから、日本は、輸入国側にとって必要性が高く、価格弾力性が低い財やサービスを相応に輸出していると言える。ただし、サービスの内訳をみると、正に有意となっているのは、輸送と旅行のみであり、その他のサービスは全て統計的に有意ではない。円が増価する場合、訪日外国人消費等の減少は限定的である一方で、輸送と旅行以外のサービスについては、価格弾力性が高く、輸出が大きく減少する可能性がある。つまり、円高になった場合、輸送と旅行以外のサービスは、競争力を保ちづらいということを示唆している29。 日本の輸入についてみると、サービス全体、輸送、IT、その他業務は正に有意となっている(コラム3-2-1図(2))。特に、輸送とIT、その他業務の係数は高く、円安になったとしても輸入数量の減少が限定的、つまり、日本にとっては、価格が上昇したとしても輸入し続けなければならない品目であると言える。他方、旅行は、輸出と対照的に、有意な結果とはなっておらず、円安に直面した際、日本の消費者は海外旅行を控えやすいことが示唆されている。コロナ禍前と比較して、為替が円安水準で推移する中、我が国からの海外旅行者数はコロナ禍前の水準に回復しておらず、この結果と整合的である。 29 輸出数量の変化による影響に加えて、仮に日本企業が現地通貨ベースでの価格付けを重視し、為替の変動(円高)による損失を日本企業側が負担するという価格戦略を取っている場合、円高が進行した場合においても、輸入国通貨建てでみた価格は据え置かれるため、輸出数量と輸入国通貨建てでみた輸出額が変動しないという可能性も考えられる。 325