産業ごとの人手不足感と賃金上昇率の関係を分析し、市場メカニズムだけでは賃金が伸びない構造的制約の可能性を指摘している。
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(2)賃金水準と伸び率の関係 (2019年から2024年の賃金の伸び率(産業計との差)、%ポイント) 10 8 宿泊業、飲食サービス業 製造業 6 4 運輸業、郵便業 2 0 不動産業・ -2 物品賃貸業 金融業、保険業 -4 医療・福祉 学術研究、専門・技術サービス業 -6 -8 教育・学習支援業 情報通信業 -10 -8 -6 -4 -2 0 2 4 6 8 10 12 (2019年の賃金水準(産業計との差)、万円) (備考)1.厚生労働省「賃金構造基本統計調査」により作成。賃金水準は、学歴・男女計、フルタイムの所定内給与。 2.2019年は「令和2年調査と同じ推計方法による集計」を用いる。 賃金は、市場メカニズムの下では本来、労働市場における需要と供給が均衡する水準に決定され、労働需要が労働供給を超過している場合は上昇、逆に下回っている場合は低下する。また、需要が一定の下では、労働者がより賃金水準が高い産業での就業を希望すれば、賃金水準が高い産業では労働供給が相対的に増加して賃金が低下し、逆に賃金水準が低い産業では労働供給が減少して賃金が上昇し、産業ごとのばらつきは縮小することになる。一方、産業ごとに生産性水準や成長性が異なるほか、労働者に求められるスキルの違い等により、産業によって労働市場が分かれているとも考えられる。異なる労働市場では労働需給の状況も異なることから、必ずしも異なる産業の賃金が同水準に収束するとは限らないとも言える。ただし、少なくとも、人手不足感の強い産業では賃金をより引き上げて必要な労働者を惹きつけようとするが、人手不足感の弱い産業ではさほど賃上げに積極的にならない、といった構造は、通常の労働市場のメカニズムからも想定されると言える。 そこで、産業ごとの賃金水準に影響を与えると思われる産業ごとの人手不足感と、その産業の賃金上昇率との関係をみると(第2-2-8図)、人手不足感が相対的に高い(低い)が、賃金上昇率が相対的に低い(高い)という、労働市場の一般的なメカニズムと異なる動きをしている産業が散見される。例えば、人手不足感が高いが賃金が伸びていない産業としては、先述の産業間のばらつきの拡大に寄与していた医療・福祉に加え、建設業、情報通信業がある。このように人手不足が高いにもかかわらず、賃金が十分に伸びていない産業では、賃金引上げに当たっての制度的あるいは必要なスキルのミスマッチなど市場メカニズムだけでは解決が難しい何らかの制約に直面している可能性があると考えられる。 216