個人情報保護における権利救済手段の現状と、消費者法分野の差止請求制度を参考に、現行法における課題を整理した。
タグ: 個人情報保護法, 権利救済, 適格消費者団体, 差止請求, 消費者契約法
1 個人の権利利益のより実質的な保護の在り方 10 (4) 個人の権利利益救済手段の在り方 我が国の現状等 ● 個人情報保護法相談ダイヤル(民間部門)では、令和5年度において、22,103件の相談を受け付けた。当該相談のうち、苦情に係る受付件数は6,941件であり、そのうち開示等に係るものが1,031件あった。 ● 本人は、当該本人が識別される保有個人データについて、法の規定に違反する場合や、本人の権利又は正当な利益が害されるおそれがある場合等に、個人情報取扱事業者に対して、当該本人が識別される保有個人データの利用停止等又は第三者提供の停止を請求することができる(法第35条)。 ● 令和2年2月から3月に実施されたアンケート調査では、「保有個人データの利用停止・消去又は第三者提供の停止に関する請求を過去一年間で何件受けましたか?」との質問に対して、回答のあった事業者(全158社)のうち47%が「10件未満」と答えた。 ● この点、消費者法分野においては、消費者被害には同種の被害が拡散的に多発するという特性がある一方で、消費者個人としては、被害の認識をしていないこと、救済を求めて請求できることを知らないこと、事業者との情報の質及び量並びに交渉力に格差があること、費用・労力の負担等により、自身の被害回復のための行動を採りにくく、「泣き寝入り」となりやすいことなどを踏まえ、内閣総理大臣が認定した消費者団体が、消費者に代わって事業者に対して訴訟等をすることができる制度があり、消費者契約法には、適格消費者団体による差止請求の枠組みが規定されている。 ・ 適格消費者団体とは、消費者契約法に定める要件を満たし、差止請求を行うのに必要な適格性を有するとして、内閣総理大臣が認定した消費者団体のことであり、「不当な勧誘」、「不当な契約条項」、「不当な表示」などの事業者の不当な行為をやめるよう求めることができる。 ・ 差止請求の対象は、事業者が不特定かつ多数の消費者に対して消費者契約法、不当景品類及び不当表示防止法(景品表示法)、特定商取引に関する法律等に規定された不当な行為を行っている、又は、行うおそれがあるときとされている。 ・ 適格消費者団体は、令和6年2月現在、全国に26団体あり、適格消費者団体による差止請求は、制度の運用開始後、令和5年3月末までの間に966件行われ、うち85件の差止請求訴訟が提起されている。なお、法令上の差止請求権の行使とは別に、適格消費者団体が事業者に対し、個人情報の取扱いの改善を求めた例もある。 ● 現行法には、適格消費者団体の差止請求についての規定は設けられていない。また、差止請求を行うのに必要な適格性を有する団体を認定する制度も設けられていない。他方、委員会が行政上の対応を行った事案の中には、その取扱いが問題となった個人情報に係る本人が不特定かつ多数と評価し得るものがある。