防衛省・自衛隊による多国間能力構築支援の現状と、女性・平和・安全保障(WPS)推進に向けたわが国の取組について解説している。
タグ: 安全保障協力, 能力構築支援, WPS, ジェンダー主流化, 国際平和
第1節 多角的・多層的な安全保障協力の戦略的な推進 3 関係各国との連携 防衛省・自衛隊は、米国やオーストラリアなどと共に第三国に対する能力構築支援を行っている。 具体的な協力として、日米豪およびニュージーランドの4か国間で、東ティモールにおける豪軍主催の能力構築支援「ハリィ・ハムトゥック」に自衛隊と米軍などが共に参加し、東ティモール軍後方支援隊に対し施設分野や重機整備の技術指導を行っている。 2024年5月には、海自IPD24部隊が、海上保安庁MCT35 (Mobile Cooperation Team) と連携して、マーシャル諸島共和国海上警察と親善訓練を行い、同国の海上法執行能力の強化に寄与した。 このように、関係各国と緊密に連携し、相互に補完しつつ、効果的・効率的に能力構築支援に取り組んでいくことが重要である。 5 女性・平和・安全保障 (WPS) 推進に向けた取組 1 女性・平和・安全保障 (WPS) とは 女性・平和・安全保障 (Women, Peace and Security)、いわゆるWPSは、紛争、災害などの発生時に、より脆弱な立場に置かれる女性、女児などを、特に保護すべき対象であるとして、女性、女児などの保護・救済に取り組むつつ、女性が指導的・主体的に、紛争の予防、復興および平和構築、ならびに防災、災害対応や復興のあらゆる段階に参加することで、より持続的な平和に資することができるという考え方をいう。 1990年代、旧ユーゴスラビアやルワンダ内戦における大規模な性的暴力が世界的な注目を浴びた。さらに、1995年には、北京において第4回世界女性会議が開催され、北京宣言を踏まえた行動綱領の中で、紛争解決の意思決定レベルへの女性の参加を増大し、武力またはその他の紛争下に暮らす女性を保護することが戦略目標として明記された。また、1998年に採択された国際刑事裁判所に関するローマ規程において、紛争下の性的暴力は戦争犯罪と明記された。 こうした国際的な潮流を背景に、2000年、紛争下の女性をめぐる課題に焦点が当たった初めての安保理決議である女性・平和・安全保障 (WPS) に関する決議第1325号が全会一致で採択された。同決議は、「参画」、「予防」、「保護」、「救援と復興」を4つの柱として明記し、全ての取組にジェンダー主流化36が要請されている。以降、同決議を補完する観点から、WPSに関連する安保理決議が順次9本採択され、これら10本の決議に記載された取組を総称して「WPSアジェンダ」と呼んでいる。 近年、国際情勢が不透明さを増す中、WPSの考え方は益々重要になっている。 2 わが国の取組 わが国は、WPSに関する安保理決議の履行のため、2015年に第1次行動計画を策定した。本行動計画はその後改定され、現在は2023年に策定された第3次行動計画に沿って、WPSに関する取組を進めている。 わが国の行動計画は、紛争のみならず、災害の項目も含めている点に特徴がある。これは、わが国が2011年の東日本大震災をはじめとする多数の大規模自然災害に見舞われ、それらを乗り越えてきた経験から、ジェンダーの視点を防災、災害対応、気候変動、復興のあらゆる段階に取り入れることが重要と認識したことによるものである。また、行動計画は、国際的な取組だけでなく、国内の取組も規定しており、防衛省を含む各省庁において、外交・安全保障、防災や災害対応にかかわる政策意思決定の場への KEY WORD 「ジェンダー」 「社会的・文化的に形成された性別」のこと。人間には生まれついての生物学的性別 (セックス/sex) がある。一方、社会通念や慣習の中には、社会によって作り上げられた「男性像」、「女性像」があり、このような男性、女性の別を「社会的・文化的に形成された性別」(ジェンダー/gender) という。「社会的・文化的に形成された性別」はそれ自体に良い、悪いの価値を含むものではなく、国際的にも使われている。 第3章 同志国などとの連携 35 2017年に海上保安庁に編成された、海上保安庁の外国海上保安機関に対する能力向上支援の専従部門。当初は7名体制であり、主にわが国のシーレーン沿岸国を対象として支援を実施していたが、2024年4月現在18名体制となり、太平洋島嶼国を含むインド太平洋地域へ支援を拡大しつつある。 36 あらゆる分野でのジェンダー平等を目指すため、全ての政策、施策および事業にジェンダーの視点を取り込むこと。 405 令和7年版 防衛白書