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情報通信審議会 総会 第53回

2025-07-15一次資料(出典)

議事録・配布資料の全文(政府公表資料より。要約でなく原文に基づく参照用)。

情報通信審議会 総会 第53回 資料情報通信審議会 総会 第53回 資料情報通信審議会 総会 第53回 資料情報通信審議会 総会 第53回 資料情報通信審議会 総会 第53回 資料情報通信審議会 総会 第53回 資料情報通信審議会 総会 第53回 資料情報通信審議会 総会 第53回 資料

資料1

資料53-1-1 諮問第22号「新たな情報通信技術戦略の在り方」 第5次中間答申案 概要 令和7年7月15日 情報通信審議会 第5次中間答申案 概要 1 次期中長期(令和8~12年度)においてNICTに期待する役割(ミッション) (1)国際競争力の強化や経済安全保障の確保等をはじめとした我が国の重要政策の実現への貢献 (2)民間投資や人材育成を活性化するための触媒となる産学官連携の中核・連結点としての役割 (3)民間企業等におけるイノベーションを支援する機能の充実・強化 (4)機構法に基づく社会経済活動を根底から支えている重要業務の継続的かつ安定的な実施 研究開発等を通じて貢献すべき目標(貢献目標) 2030年代に目指すべき社会像 • • • • 激甚化する自然災害に対応した強靭な社会 誰もがICTの恩恵を享受でき、安心して技術を活用できる デジタル安全社会 クリーンエネルギーとデジタルインフラによる持続可能で 活力のある社会 労力の最小化と利益の最大化を可能にする人間中心のAI社会 災害に強く、 強靭な社会インフラの構築 安全で、信頼できる 情報通信環境の整備 GX・DXを支える 持続可能なICT基盤の構築 DXを通じた効率化・合理化、 新たな価値の創造 社会実装機能・外部連携機能等 我が国発の技術の社会実装を促進する ためのイノベーションハブ機能の強化 NICTの研究資金配分機関 としての機能の強化 NICTにおける研究開発成果の 社会実装推進体制の強化 NICTにおける人材の育成・確保 戦略的な標準化活動の推進 スタートアップ支援の推進 戦略領域 我が国の重要政策の実現に不可欠な技術であり、産学官一体となり、横断的かつ戦略的な取組を強力に推進すべきもの AI・コミュニ ケーション 重点分野 量子情報通信 Beyond 5G サイバー セキュリティ 我が国社会を支える情報通信分野の基礎的・基盤的な技術であり、中長期的な視点に立って研究開発等に取り組むべきもの 電磁波先進技術 革新的 ネットワーク サイバー セキュリティ ユニバーサル コミュニケーション フロンティア サイエンス 答申案の構成 2 第1章 検討の背景 第4章 NICTの社会実装機能・外部連携機能等 1.1 社会の変化と近年の技術動向等 1.1.1 第4次中間答申以降の社会情勢の変化と今後の見通し 1.1.2 戦略領域の近年の技術動向 1.3 国立研究開発法人情報通信研究機構のこれまでの取組 4.1 我が国発の技術の社会実装を促進するためのイノベーションハブ 機能の強化 4.1.1 “使いたいテストベッド”の整備 4.1.2 NICTが有する施設・設備や蓄積された知見等のより一層の有 効活用 4.1.3 GPAI東京専門家支援センターの運営 1.4 検討事項 4.2 NICTの研究資金配分機関としての機能の強化 第2章 次期中長期においてNICTに期待する役割(ミッション) 4.3 NICTにおける研究開発成果の社会実装推進体制の強化 4.3.1 NICTの技術シーズと外部のニーズの橋渡し機能の強化 4.3.2 大学・企業等外部機関との連携の推進 第3章 戦略的に推進すべき技術領域と重点的に推進すべき基礎的・ 基盤的研究開発分野等 4.4 NICTにおける人材の育成・確保 4.4.1 新技術に対応した研究人材の育成・確保 4.4.2 技術移転等に関する専門人材の確保・活用 1.2 情報通信技術の研究開発の取組 3.1 戦略的に推進すべき技術領域 3.1.1 我が国が強みを有する技術領域 3.1.2 戦略的に推進すべき技術領域(戦略4領域) 3.2 重点的に推進すべき基礎的・基盤的研究開発分野等 3.2.1 2030年代に目指すべき社会像及び研究開発等を通じて貢献 すべき目標 3.2.2 重点的に推進すべき基礎的・基盤的研究開発分野及び重点 的に取り組むべき研究開発課題 3.2.3 イノベーションの基盤となる研究開発課題 4.5 戦略的な標準化活動の推進 4.6 スタートアップ支援の推進 4.6.1 NICTの研究開発成果を活用するスタートアップの支援 4.6.2 地域発ICTスタートアップの支援 3 第1章 検討の背景 1.1 第4次中間答申以降の社会情勢の変化と今後の見通し 4 ⚫ 第4次中間答申から4年が経過し、社会情勢に変化が見られる。次期中長期目標の検討に当たっては、このような 社会情勢の変化を踏まえ、2030年代の社会を構想することが必要。 人手不足 の進展 ・一次産業、建設業及び製造業では就業者数が減少し続けており、人手不足は一層深刻化。 ・我が国の労働力人口は、成長実現・労働参加進展シナリオにおいても2030年をピークに減少し始める見通し。 ・我が国の持続的発展のためにはDXによる効率化・合理化が必要不可欠であり、生成AI等先進技術の活用をより一 層推進していくことが求められる。 インバウンド の拡大 ・2023年の訪日外国人旅行者数は2022年の3.8倍に増加、2023年のインバウンド消費は過去最高額を更新。 ・一部の地域ではオーバーツーリズムが社会問題化しており、住民生活に支障。 ・持続可能な観光立国を実現するためにはオーバーツーリズム問題の早期改善が重要。そのためには、高度な翻訳 ツールの活用など、DXを通じた観光地・観光産業における業務の効率化・合理化が必要。 エネルギー 消費の増大 ・我が国のエネルギー消費量は2005年をピークに減少傾向。 ・他方で、懸念されるのはデータ流通の進展とそれに伴うインターネットトラヒックの大幅な増加。とりわけ、生 成AIの学習や推論を行う際には大量の電力を消費すると試算されており、消費電力量が爆発的に増加する懸念。 ・デジタルインフラの省電力化は喫緊の課題であり、オール光ネットワーク等の低消費電力を実現する通信技術は、 ネットワーク自体の省電力化に加え、データセンターの分散立地を促進する観点からも重要。 自然災害 の激甚化 ・気候変動による災害リスクや大規模地震の切迫性が高まっており、近年、我が国では自然災害が激甚化・頻発化。 ・地球温暖化の進行に伴って、この傾向は今後も続くことが見込まれているほか、今後発生が想定されている首都 直下型地震や南海トラフ地震等の大規模地震への備えも重要。 ・自然災害発生時に必要なライフラインを確保するための非地上系ネットワークの導入や、被害状況等を早期に把 握するためのリモートセンシング技術の高度化も重要。 サイバー空間 上のリスクの 増大 ・近年、インターネット上の偽・誤情報拡散の問題が拡大。特に、生成AIの普及に伴い、真実か偽・誤情報かを見 分けるのが困難な“ディープフェイク”が流通・拡散。 ・近年、サイバー空間への依存度が増大する一方、Living off the land手法やゼロデイ脆弱性の悪用による国家を背 景とした高度なサイバー攻撃、社会経済活動への深刻な被害を引き起こすサプライチェーン攻撃や大規模なDDoS 攻撃、ランサムウェア攻撃等が立て続けに発生。一組織のセキュリティ対策でこれらに対応することは限界に。 ・生成AI等の先進技術をディープフェイクの判定やサイバー攻撃の検知・防御等に活用することで、サイバー空間 上のリスク低減を図っていくことが重要。 1.2 戦略領域の近年の技術動向 5 ⚫ 第5期中長期目標における戦略4領域の近年の技術動向を見てみると、 ✓ 「AI」、「サイバーセキュリティ」は、社会的重要性がますます増大している ✓ 「Beyond 5G」「量子情報通信」は、社会実装に向けての重要な局面にある ことが分かる。 AI ・2022年にChatGPTが登場。現在、世界中で活発な開発競争が行われている。 ・外国製の生成AIが普及している中、外国製の生成AIに過度に依存することなく、日本の利用者の視点に立った的 確で正確な回答を出力するAI開発の必要性が高まっている。また、AIエージェントの社会実装が進むことで、コ ミュニケーションの在り方そのものが変わる可能性も指摘されている。 ・生成AIの課題として、ハルシネーションや、生成AIを活用した偽・誤情報のリスク等も指摘されている。 Beyond 5G ・ビジョンづくりや要素技術開発等の初期フェーズから、より社会実装・海外展開を意識するフェーズへと移行。 ・オール光ネットワークの社会実装が進展しているほか、NTNの存在感が急速に高まっている。 ・生成AIの爆発的普及はBeyond 5G推進戦略にも大きく影響。今後の情報通信ネットワークにはAIが隅々まで利用 された社会を支える基盤(Network for AIs)として小型・分散化された多数のAIを連携して機能させる役割が求 められるようになっている。 量子情報通信 サイバー セキュリティ ・量子コンピュータの大規模化に伴い、その計算力による既存の暗号方式の危殆化が懸念されている。また、実用 的で大規模な量子コンピュータの実現を見越して、既に通信の盗聴・保存も始められているとの見方もある。 ・その対策のため、世界各国で量子暗号通信の導入に向けた取組みが加速(例:中国では1万km以上の量子暗号通 信網を整備、EUでは欧州全域に量子暗号通信インフラの整備を開始)。 ・NICTは量子技術イノベーション戦略における「量子セキュリティ拠点」として、量子暗号通信のテストベッド ネットワークを構築し、実利用を想定した実証実験を推進。その成果として、我が国の量子暗号通信装置は、世界 トップレベルの性能を有するに至っている。 ・サイバーセキュリティ上の脅威は増大を続けている。大規模サイバー攻撃観測網(NICTER)のダークネット観測 で確認された2024年の1IPアドレス当たり観測パケット(約243万パケット)は過去最高の観測数を記録。 ・ランサムウェア等のマルウェアによるサイバー攻撃被害も引き続き多数報告。このような状況を受け、サイバー 攻撃情報の収集・分析等を通じてサイバー攻撃対処能力の向上が図られている。 ・生成AIをはじめとするAIを起因とした新たなリスクも指摘されており、我が国におけるAIガバナンスの統一的な 指針として『AI事業者ガイドライン(第1.0版)』(令和6年4月19日総務省、経済産業省)が公表されている。 2. 情報通信技術の研究開発の取組 総合科学技術・ イノベーション 会議(CSTI) 科学技術・ イノベーション 基本計画 統合イノベーション 戦略 SIP BRIDGE (1)ICT重点技術の研究開発プロジェクト 実用化に向け、あらかじめ研究課題、目標等 を設定した上で、研究を委託等 (2)基金による重点技術の研究開発の支援 6 委託等 AI 量子通信 サイバー セキュリティ (Beyond 5G基金、宇宙戦略基金) 委託/助成 複数年度にわたって柔軟に研究開発を実施 Beyond 5G 宇宙 統合イノベーション 戦略推進会議 関係本部 (デジタル、知財、健康・医療、 宇宙、海洋、地理空間情報) サイバーセキュリ ティ戦略本部 (3)ICTスタートアップの支援 総務省が示す中長期目標に基づく基礎的・基 盤的な研究開発を、運営費交付金により実施 企業・ 大学等 (NICTを含む) スタート アップ 助成 芽出しの研究開発から事業化までを一気 通貫で支援 (4)国立研究開発法人情報通信研究機構 (NICT)による研究開発 等 共同研究、 連携 等 運営費 交付金 3. 国立研究開発法人情報通信研究機構のこれまでの取組 重点研究開発分野 分野横断的な研究開発その他の業務  Beyond 5Gの推進 ◆ 先端的な研究開発を自主研究として実施 ◆ 情報通信研究開発基金を活用した研究開発・標準化の支 援・実施 等  オープンイノベーション創出に向けた取組の強化 ◆ 社会実装体制の強化 ◆ 社会課題・地域課題解決に向けた産学官連携強化 ◆ 研究開発ハブ形成によるオープンイノベーション推進 ◆ 戦略的な標準化活動の推進 ◆ 戦略的なICT人材の育成 等  研究支援・事業振興業務 ◆ 海外研究者の招へい ◆ 情報通信ベンチャー企業の事業化支援 等 機構法に基づく業務  標準電波の発射、標準時の通報  宇宙天気予報  無線設備の機器の試験及び較正 その他業務運営に関する事項 安全安心なSociety 5.0の実現に資する 「戦略4領域」と「重点5分野」 + オープンイノベーション  機動的・弾力的な資源配分  若手人材を含む多様で優秀な人材の確保  報道メディアに対する情報発信力の強化等 7 4. 検討事項 8 1 検討の目的 「第6期科学技術・イノベーション基本計画」や国立研究開発法人情報通信研究機構(NICT)の次期中長期目標等を見据え、 近年の社会情勢の変化、技術の進展及び市場の動向等を踏まえつつ、ICT分野で国、NICT等が取り組むべき重点研究開発分野・ 課題及び研究開発、成果展開等の推進方策について検討を行う。 第6期科学技術・イノベーション基本計画 第7期科学技術・イノベーション基本計画 第5期中長期目標・計画 第6期中長期目標・計画 2 主な検討項目・論点 (1)我が国が戦略的に推進すべき研究開発分野とNICTが重点的に研究開発等に取り組むべき技術領域 ○ 2030年代を見据えた未来の社会像とその実現のためのキーテクノロジー ○ 諸外国との競争において我が国が強みを有する技術領域 ○ 我が国として戦略的に推進すべき研究開発分野 ○ 国・国研・大学・民間等の役割分担の下、NICTが重点的に取り組むべき技術領域 等 (2)NICTの社会実装機能・外部連携機能等 ○ NICTにおける研究開発成果の社会実装機能の在り方 ○ NICTの研究資金配分機関としての在り方 ○ NICTにおける新技術に対応した研究人材の育成・確保の在り方 ○ 我が国発の技術の社会実装を促進するためにNICTが果たすべき役割 等 9 第2章 次期中長期においてNICTに期待する役割(ミッション) 次期中長期においてNICTに期待する役割(ミッション) 10 ⚫ 民間企業等から示されたNICTへの期待や、社会情勢の変化等に伴う国立研究開発法人の役割の変化等を踏まえ、 次期中長期においては、特に次の点に期待する。 (1)国際競争力の強化や経済安全保障の確保等をはじめとした我が国の重要政策の 実現への貢献 ⇒ ICTを専門とする我が国唯一の国立研究開発法人として蓄積された技術力や知見・経験等をさらに 生かすことで、「科学技術・イノベーション基本計画」をはじめとした各種政府戦略で示された国家 的重要課題に対して、情報通信の観点から積極的に貢献すること。 (2)民間投資や人材育成を活性化するための触媒となる産学官連携の中核・連結点 としての役割 ⇒ 中長期的なビジョンを構想し、産学官で共有しながら、基礎的・基盤的研究開発から社会実装まで 連携して取り組んでいく産学官連携の中核・連結点としての役割を強化していくこと。 (3)民間企業等におけるイノベーションを支援する機能の充実・強化 ⇒ NICTが有する施設・設備や蓄積された知見等のさらなる有効活用を図りながら、イノベーションハブ 機能(テストベッド、GPAI東京専門家センター等)、研究資金配分機関としての機能(Beyond 5G (6G)基金事業)、スタートアップ支援等の充実・強化を図ること。 (4)機構法に基づく社会経済活動を根底から支えている重要業務の継続的かつ安定的 な実施 ⇒ 機構法に基づく標準時通報、宇宙天気予報及び無線機器の較正の業務は、社会経済活動を根底から支え ている重要な業務であり、引き続き、継続的かつ安定的に実施されること。 11 第3章 戦略的に推進すべき技術領域と 重点的に推進すべき基礎的・基盤的研究開発分野等 1.戦略的に推進すべき技術領域(戦略4領域)(1/3) 12 ⚫ 社会情勢の今後の見通しや近年の技術動向に鑑みると、国際競争力の強化や経済安全保障の確保をはじめとした 我が国の重要政策の実現に当たって不可欠な技術として、「AI・コミュニケーション」「Beyond 5G」「量子情報通信」 「サイバーセキュリティ」の4つの技術領域について、戦略的な取組を推進していくことが適当。 ⚫ これら戦略的に推進すべき技術領域においては、NICTが民間投資や人材育成を活性化するための触媒となるべく、 中長期的なビジョンを構想し、産学官で共有しながら、基礎的・基盤的な研究開発から社会実装まで連携して取り 組んでいく産学官連携の中核・連結点としての役割を果たすべき。 我が国の安全保障の確保と国際競争力の強化 戦略領域 我が国の重要政策の実現に不可欠な技術であり、産学官一体となり、横断的かつ戦略的な取組を 強力に推進すべきもの AI・コミュニ ケーション Beyond 5G 量子情報通信 サイバー セキュリティ ➢ NICTが民間投資や人材育成を活性化するための触媒に。 ➢ 中長期的なビジョンを構想し、産学官で共有しながら、基礎的・基盤的な 研究開発から社会実装まで連携して推進。 1.戦略的に推進すべき技術領域(戦略4領域)(2/3) 13 取組の方向性(1/2) ・高品質な日本語データをNICTで継続的に蓄積し、国内企業によるLLM開発に提供す るとともに、その開発を支援することにより、我が国における信頼性あるAI開発力 を強化する。 AI・コミュニ ケーション ・LLMの出力の信頼性・バイアス等について、国内公的機関や安全保障等のニーズを 踏まえ、広く用いられている単なる質問リストではない、LLM同士の議論や関連情報 確認技術を応用した能動的評価基盤を構築する。 ・次世代のAI・コミュニケーション技術(例:分野特化型AIの連携、諸外国の文化等 を考慮した翻訳技術、同時通訳を含む高精度な翻訳等)の研究開発を産学官で推進す る。 ・社会実装に向けた産学官連携の中核・連結点としての役割を強化するとともに、我 が国として戦略的に研究開発を推進するため、目利き人材の確保・活用やNICTの自 主研究で培った成果・知見・ノウハウとの連携等によって研究資金配分機関としての 機能を強化し、ユーザ価値を起点としたユースケース/サービスの創出を促進する。 Beyond 5G ・Beyond 5Gのネットワークからサービスまでを総合的に検証できるようテストベッ ドの機能を拡張し、イノベーションハブとして民間企業等に提供する。 ・宇宙通信分野において、民間企業による積極的な投資が進められていることも踏ま え、国立研究開発法人として取り組むべき課題を十分に見極めた上で、ユーザニーズ に沿った形での研究開発を実施する。 1.戦略的に推進すべき技術領域(戦略4領域)(3/3) 14 取組の方向性(2/2) ・様々な分野の潜在的なユーザを巻き込んで多様なユースケースを検証し、社会実装 に向けた取組を加速化させるため、複数の企業間を結ぶ量子暗号ネットワークテスト ベッド「東京QKDネットワーク」について、長期間の安全なデータ保管や遠距離拠 点からの接続等が可能となるよう高度化・拡充する。 量子情報通信 ・日本の技術優位性を引き続き確保するため、量子鍵の生成速度の高速化技術や量子 状態のまま中継伝送する技術、量子セキュアクラウドを実現する技術等の研究開発・ 国際標準化を推進する。併せて、衛星量子暗号通信について、JAXAや関係事業者と 連携し、小型低軌道衛星に搭載可能な量子暗号装置の開発や当該装置を用いた衛星と 可搬型地上局間の実証実験などに取り組む。 ・中長期的視点から、量子中継技術等の次世代の量子情報通信技術を実現するための 研究開発や量子人材の育成に取り組む。 サイバー セキュリティ ・技術開発やサービス開発の源泉となるサイバーセキュリティに関する一次データ収 集能力を強化する。また、ステークホルダーとの調整やコンプライアンスの遵守、技 術移転モデルの確立などを進める能力を有する人材も含めた体制の整備も併せて推進 する。 ・収集した一次データの分析能力を強化するため、AI分析基盤を構築し、AI for Securityを推進する。また、AIシステムへの攻撃可能性の検証といったAIのセキュ リティ検証技術等(Security for AI)の検討も推進する。 ・高度化・複雑化するサイバー分野の脅威・攻撃に対応できる現場人材を育成するた め、NICTが有する最新のデータを活用したサイバーセキュリティ演習を推進する。 2.重点的に推進すべき基礎的・基盤的研究開発分野等(1/2) 15 ⚫ NICTが、ICTを専門とする我が国唯一の国立研究開発法人として蓄積された技術力や知見・経験等を最大限活 用する観点から、第5期中長期目標から引き続き、下記の5分野を重点的に推進すべき基礎的・基盤的研究開 発分野に位置付けることが適当。 ⚫ NICTは、重点分野の研究開発等を通じて、2030年代に目指すべき社会像の実現に貢献すべき。 2030年代に目指すべき社会像 研究開発等を通じて貢献すべき目標(貢献目標) • 激甚化する自然災害に対応した強靭な社会 • 誰もがICTの恩恵を享受でき、安心して技術を活用できる デジタル安全社会 • クリーンエネルギーとデジタルインフラによる持続可能で 活力のある社会 • 労力の最小化と利益の最大化を可能にする人間中心のAI社会 重点分野 災害に強く、 強靭な社会インフラの構築 安全で、信頼できる 情報通信環境の整備 GX・DXを支える 持続可能なICT基盤の構築 DXを通じた効率化・合理化、 新たな価値の創造 我が国社会を支える情報通信分野の基礎的・基盤的な技術であり、中長期的な視点に立って研究 開発等に取り組むべきもの 電磁波先進技術 革新的 ネットワーク サイバー セキュリティ ユニバーサル コミュニケーション フロンティア サイエンス ➢ ICTを専門とする我が国唯一の国立研究開発法人として蓄積された技術力 や知見・経験等を最大限活用。 ➢ 2030年代に目指すべき社会像の実現に研究開発等を通じて貢献。 2.重点的に推進すべき基礎的・基盤的研究開発分野等(2/2) 重点課題 重点分野 貢献目標に資する技術として、特に重点的に取り組むべきもの 電磁波先進技術 リモート センシング技術 宇宙環境技術 電磁環境技術 時空標準技術 デジタル光学 基盤技術 革新的 ネットワーク ネットワーク アーキテクチャ 技術 フォトニック ネットワーク 基盤技術 光・電波融合 アクセス基盤技術 次世代ワイヤレス 技術 宇宙通信基盤技術 レジリエントICT 基盤技術 サイバー セキュリティ ヒューマン・セン タード・サイバー セキュリティ技術 AI×サイバー セキュリティ技術 次世代暗号・ プライバシー 保護技術 サイバーセキュリ ティ産学官連携 拠点形成 サイバー セキュリティに 関する演習 IoT機器のサイ バーセキュリティ 対策の促進 ユニバーサル コミュニケー ション AI複合体技術 マルチモーダル AIコミュニケー ション技術 フロンティア サイエンス 先端ICT基盤技術 フロンティア ICT技術 バイオインクルー シブICT基盤技術 脳情報通信 基盤技術 16 17 第4章 NICTの社会実装機能・外部連携機能等 (参考) NICTの主な社会実装機能・外部連携機能等(現状) 産学官連携の中核としての役割に対する期待の高まり 知的財産の 取得・活用 委託研究 テストベッド サイバーセキュリティ GPAI東京専門家 産学官連携拠点 支援センター 研究開発成果 /技術シーズ 出資 国際標準化 (NICT成果活用型等) 情報通信 研究開発基金 共同研究 スタートアップ 支援 出資先 企業 NICT 主な外部連携機能 主な社会実装機能 橋 渡 し 連 携 民間企業・大学等 学習用 大規模データ 18 1.我が国発の技術の社会実装を促進するためのイノベーションハブ機能の強化 1.1 “使いたいテストベッド”の整備 ○ 外部に供用するテストベッドを、NICTが“使ってほしいテストベッド”ではなく、ユーザが“使いたいテストベッド”へと 改善していくことが必要。そのため、外部機関の利用ニーズ等を調査・分析し、機能や提供方法等の見直しを行う べき。その際には、有償提供について検討するとともに、費用対効果等を勘案し、必要に応じて整理・重点化する ことも検討すべき。 ○ 特に、Beyond 5Gの社会実装の加速に資するテストベッドについては、企業等の実ニーズを踏まえ、ネットワーク (下位レイヤー)だけではなくサービス(上位レイヤー)までを含むBeyond 5Gアーキテクチャを総合的に検証で きるものとすべき。その際、NICTの研究部門が検証環境の全てを用意・運用するのではなく、大学・企業等外部 機関との連携を推進し、NICTのテストベッドと外部機関のテストベッドの相互接続を可能とするなど、柔軟かつ拡 張性の高い検証環境を志向すべき。 ○ テストベッドを活用した研究開発の成果を次のテストベッドへと取り込んでいくことで、テストベッド自体の高度化も 図っていくべき。また、テストベッドを適切に管理・運用できる人材の育成・確保等にも努めるべき。 1.2 NICTが有する施設・設備や蓄積された知見等のより一層の有効活用 ○ テストベッドをはじめとした施設・設備や、研究開発成果に係る特許やプログラム、生成AIの学習用言語データ をはじめとした科学的データセットなど、有形・無形の様々な資産を適切な形で外部機関にも提供することで、我 が国企業のイノベーションを促進すべき。 ○ このため、施設・設備の貸与方法やSaaS型での成果展開を含め、保有資産の有効活用策について検討を深 めるべき。 1.3 GPAI東京専門家支援センターの運営 ○ GPAIにおける国際的な専門家活動への支援を通じ、AIに関する技術的な知見に加え、AIの安全性を含む倫 理的・法的・社会的課題(ELSI)に関する知見を深め、その知見をNICTの研究開発及び国内の関係コミュニ ティに還元していく役割を積極的に担うべき。 19 2.NICTの研究資金配分機関としての機能の強化 NICTの研究資金配分機関としての機能の強化 ○ 社会実装・海外展開を目指した戦略的投資を推進するプロモーターとなり、目利き人材の確保・活用とともに、 NICTの自主研究で培った成果・知見・ノウハウとの連携も含め、研究者や企業等との対話を通じて、市場や技術 の動向、社会ニーズを踏まえた課題・テーマ設定を行うことで、長期的ビジョンの下でNICTと企業等とが連携して、 社会実装に向けた研究開発を推進すべき。 ○ 革新的な情報通信技術の創出と革新的な構想力を有した研究人材育成を目指すJST CRONOSの基礎研 究等の成果を、社会実装・海外展開を目指した研究開発の支援を目的とするBeyond 5G (6G)基金へと円滑 に繋げるため、所管省庁を跨いだ国立研究法人間の連携にも取り組むべき。 ○ 国際共同研究プロジェクトの一層の充実を図り、海外展開を見据えた戦略的投資を推進すべき。また、共同研 究等を意義ある取組とするため、連携先相手国の科学技術政策等の動向を多角的に理解し、相手国との信頼 関係を醸成することや、地政学的な状況を踏まえつつ連携先相手国を精査することが重要。 20 3.NICTにおける研究開発成果の社会実装推進体制の強化 3.1 NICTの技術シーズと外部のニーズの橋渡し機能の強化 ○ 研究開発成果の社会実装に当たっては、市場のニーズを的確に汲み取り、保有する技術シーズとの橋渡しを円 滑に実施することが不可欠であることを踏まえ、マーケティングや製品化・事業化支援、知的財産の管理・活用な どについて、成果活用等支援法人といった体制も含め最適な体制の在り方を検討し、NICTの技術シーズと外部 のニーズの橋渡し機能を強化すべき。 ○ 社会情勢の変化や技術の進展のスピードに的確に対応するため、研究開発の新規開始・継続・方向転換等の 方針決定に当たっては、適時・適切な橋渡しによって着実に製品化・事業化に結び付けていくことができるよう、ベ ンチマークの柔軟な見直しを含め、経営視点を適切に取り入れるべき。 3.2 大学・企業等外部機関との連携の推進 ○ 研究開発を推進するに当たっては、成果の社会実装を見据えて、大学・企業等の外部機関と初期段階から連 携し、市場のニーズを的確に汲み取るとともに、適時適切に技術移転することで、製品化等に結びつけていくことが 重要。また、外部機関との連携に当たっては、組みやすいパートナーとのみコンソーシアムを形成するのではなく、組 むべきパートナーを見極めた上でコンソーシアムを形成していくことが重要。 ○ 特に社会実装まで相応の期間を有する基礎研究については、基礎研究→応用研究→実証→社会実装と段 階を踏んで社会実装に繋げる従来型のリニアモデルではなく、初期段階から外部と連携して研究開発を進めること により、部分的な社会実装の早期実現を図るべき。 21 4.NICTにおける人材の育成・確保 22 4.1 新技術に対応した研究人材の育成・確保 ○ 急速な進化・普及を見せるAIやサイバーセキュリティをはじめ、変化の速いICT分野においては、今後重要性が 増す研究分野をあらかじめ予見することは難しく、研究分野だけを基準とした研究人材の育成・確保には限界が あることを踏まえ、研究分野だけではなく、技術や個人にも着目した柔軟な評価やインセンティブ付与の仕組みを 検討すべき。 ○ 共同研究や製品化・事業化等の社会実装に向けた大学・企業等外部機関との連携・人材交流に取り組むと ともに、その取組を促進する観点から、研究者が研究開発成果を当該研究分野以外の者にも理解できるように 分かりやすく対外発信するためのスキルを身に着けられるよう、必要な研修機会の確保やアウトリーチ活動の実践 等に取り組むべき。また、海外の大学・企業等とのグローバルな人材交流に取り組むことも重要。なお、その際には、 知的財産の適切な管理や研究セキュリティ・インテグリティの確保に留意することが必要。 4.2 技術移転等に関する専門人材の確保・活用 ○ 研究開発成果の社会実装は研究者のみで成しえるものではなく、研究成果の活用や社会実装を支援できる 人材や研究開発活動の企画・マネジメントができる人材が不可欠なことを踏まえ、マーケティングや製品化・事業 化、知的財産の管理・活用等を専門とする人材の充実を図るべき。併せて、適切な権限の付与など、これらの人 材が活躍できる環境整備にも取り組むことが必要。 ○ 研究開発成果の対外発信に当たっては、外部専門家やコンサルタント(サイエンス・コミュニケータ)の有効活 用を図ることも検討すべき。 5.戦略的な標準化活動の推進 23 戦略的な標準化活動の推進 ○ NICTでは、毎年度「標準化アクションプラン」を策定し、研究開発成果に関する国際標準化活動を推進。国 際標準化活動と研究開発の連携を図るため、NICTは、国際標準化の動向を踏まえ、研究開発に取り組むこと が重要。 ○ 国際標準化活動が本格化していくBeyond 5G関連技術を含め、NICTが産学官連携の結節点となり、コミュ ニティの形成・運営等を通じて我が国の標準化活動を後押ししていくべき。その際には、標準化それ自体を目的化 することなく、その後のビジネス化・収益化も意識した戦略を検討することが必要。 ○ NICTが有する知的財産や国際標準化に係る知見・経験・人材等のリソースを有効活用し、産学官連携の中 核として、民間企業に対する成果展開やビジネス化への支援のほか、標準化スキルアップ研修制度の充実など今 後の情報通信分野の国際標準化活動を担う人材育成の支援にも積極的に取り組むべき。 注:ここでの「国際標準化活動」とは、国際的な標準化機関・団体が作成する標準(デジュール標準、フォーラム標準)及び 特定の製品・サービスが世界中に普及することで生まれる事実上の標準(デファクト標準)に関する活動を指す。 6.スタートアップ支援の推進 6.1 NICTの研究開発成果を活用するスタートアップの支援 ○ 「成果活用型出資制度」について、関連する他の取組との連携も含め、効果的なリスクマネーの供給となるよう 検討すべき。 ○ NICTの研究者が起業する「NICT発ベンチャー」について、NICTにおける研究開発成果の社会実装の担い手 を増やす観点から、例えば、研究者がNICTに籍を残したまま起業しやすくしたり、経営人材とのマッチングを図った りするなど、研究者が利用しやすいスタートアップ支援制度となるよう見直しを行うべき。なお、見直しに当たっては、 NICT発ベンチャーの実態を調査・分析し、裏付けを持って取り組むことが重要。 6.2 地域発ICTスタートアップの支援 ○ 有望な起業家・起業家の卵の発掘(発掘フェーズ)から、ビジネスプランのブラッシュアップ(育成フェーズ)、 「起業家甲子園」・「起業家万博」におけるビジネスプランの披露(事業化支援・拡大フェーズ)までを一気通貫 で支援する「全国アクセラレータ・プログラム」について、プログラムを運用する中で明らかになった課題を踏まえ、取 組の改善を図るべき。 ○ 具体的には、①研究者、特にグローバルで勝負できるディープテック領域の研究者とその起業を支える起業家人 材・サポート人材とのブリッジの強化、②プログラム卒業生によるコミュニティの形成と支援案件のフォローアップ、③ 地域課題・社会課題の解決を目指すソーシャルインパクト型ビジネスへの支援の強化、④地域中核企業・地域 金融機関をはじめとする産学官金を巻き込んだ地域ICTイノベーション・エコシステムの構築が考えられる。 24

資料2

資料 53-1-2 新たな情報通信技術戦略の在り方 <平成 26 年 12 月 18 日付け諮問第 22 号> 第5次中間答申案 令和7年7月15日 情報通信審議会 目次 はじめに 第1章 検討の背景 ...................................................1 1.1 社会の変化と近年の技術動向等 ....................................1 1.1.1 第4次中間答申以降の社会情勢の変化と今後の見通し 1.1.2 戦略領域の近年の技術動向 1.2 総務省における情報通信技術の研究開発の取組 .....................12 1.2.1 ICT 重点技術の研究開発プロジェクト 1.2.2 基金による重点技術の研究開発の支援 1.2.3 ICT スタートアップの支援 1.3 国立研究開発法人情報通信研究機構のこれまでの取組 ...............22 1.4 検討事項 .......................................................35 第2章 次期中長期において NICT に期待する役割(ミッション) .........36 第3章 戦略的に推進すべき技術領域と重点的に推進すべき基礎的・基盤的研 究開発分野等 ..................................................39 3.1 戦略的に推進すべき技術領域 .....................................39 3.1.1 我が国が強みを有する技術領域 3.1.2 戦略的に推進すべき技術領域(戦略4領域) 3.2 重点的に推進すべき基礎的・基盤的研究開発分野等 .................53 3.2.1 2030 年代に目指すべき社会像及び研究開発等を通じて貢献すべき目標 . 3.2.2 重点的に推進すべき基礎的・基盤的研究開発分野及び重点的に取り組む べき研究開発課題 3.2.3 イノベーションの基盤となる研究開発課題 第4章 NICT の社会実装機能・外部連携機能等 ..........................64 4.1 我が国発の技術の社会実装を促進するためのイノベーションハブ機能の強 化 ...............................................................65 4.1.1 “使いたいテストベッド”の整備 4.1.2 NICT が有する施設・設備や蓄積された知見等のより一層の有効活用 4.1.3 GPAI 東京専門家支援センターの運営 4.2 NICT の研究資金配分機関としての機能の強化 .......................67 4.3 NICT における研究開発成果の社会実装推進体制の強化 ...............68 4.3.1 NICT の技術シーズと外部のニーズの橋渡し機能の強化 4.3.2 大学・企業等外部機関との連携の推進 4.4 NICT における人材の育成・確保 ...................................69 4.4.1 新技術に対応した研究人材の育成・確保 4.4.2 技術移転等に関する専門人材の確保・活用 4.5 戦略的な標準化活動の推進 .......................................70 4.6 スタートアップ支援の推進 .......................................71 4.6.1 NICT の研究開発成果を活用するスタートアップの支援 4.6.2 地域発 ICT スタートアップの支援 参考資料 諮問書..............................................................2 情報通信審議会 情報通信技術分科会 技術戦略委員会 構成員名簿 .........4 情報通信審議会 情報通信技術分科会 技術戦略委員会 社会実装加速化ワーキンググループ 構成員名簿 .....................5 開催経緯 ...........................................................6 はじめに 国立研究開発法人情報通信研究機構(以下「NICT」という。)では、現行の『第 5期中長期目標』が終期を迎えつつあり、令和8年度からは新たな中長期目標の 期間が開始される。次期中長期目標を見据えて、近年の社会情勢の変化、技術の 進展及び市場の動向等を踏まえつつ、情報通信分野で国、NICT 等が取り組むべ き重点研究開発分野・課題並びに研究開発及び成果展開等の推進方策について 検討を行うことを目的に、令和6年 10 月から情報通信技術分科会技術戦略委員 会の検討を再開し、議論を進めてきたところである。 同委員会では、検討項目を「我が国が戦略的に推進すべき研究開発分野と NICT が重点的に研究開発等に取り組むべき技術領域」と「NICT の社会実装機能・外 部連携機能等」に分け、後者については別途「社会実装加速化ワーキンググルー プ」を設置し、検討の深掘りを行った。これは、近年、研究開発及びその成果の 社会実装のみならず、サイバーセキュリティ産学官連携拠点 CYNEX の構築、恒 久的な基金(情報通信研究開発基金)の造成、GPAI 東京専門家支援センターの 設置など、NICT の業務の中で民間企業等におけるイノベーションを支援する「外 部連携機能」の比重が高まってきているためである。 本中間答申では、次期中長期において NICT に特に期待する役割(ミッション) を提示した上で、我が国の重要政策の実現に不可欠な技術領域という観点から 「戦略的に推進すべき技術領域(戦略領域)」を、我が国社会を支える情報通信 分野の基礎的・基盤的な技術という観点から「重点的に推進すべき基礎的・基盤 的研究開発分野(重点分野)」を特定するとともに、NICT の社会実装機能・外部 連携機能等の強化の方向性を取りまとめている。総務省及び NICT においては、 本中間答申を踏まえてさらに検討を深め、次期中長期目標及び中長期計画へと 適切に反映するとともに、その着実な実行を通じて我が国の安全保障の確保と 国際競争力の強化に貢献することを期待する。 第1章 検討の背景 1.1 社会の変化と近年の技術動向等 1.1.1 第4次中間答申以降の社会情勢の変化と今後の見通し (1)人手不足の進展 高齢者や女性等の労働参加により労働力人口は微増傾向にある一方、一次 産業、建設業及び製造業では就業者数が減少し続けており、人手不足は一層 深刻さを増している。また、諸外国が労働生産性を向上させているのに対し て、我が国の労働生産性は横ばいの状況が続いている。この背景としては、 デジタル・トランスフォーメーション(DX)の遅れが一因にあるものと考え られる。 我が国の労働力人口は、成長実現・労働参加進展シナリオにおいても 2030 年をピークに減少し始める見通しであり、2040 年には 2020 年比で約 13%減 少するとする試算もある。このような状況を踏まえると、我が国の持続的発 展のためには DX による効率化・合理化が必要不可欠であり、生成 AI 等先進 技術の活用をより一層推進していくことが求められる。 【出典】厚生労働省「令和 5 年版 労働経済の分析」を基に作成 図表 1 主要先進国の名目労働生産性の変化 1 【出典】労働政策研究・研修機構「2023 年度版 労働力需給の推計」を基に作成 図表 2 労働力人口の予測 (2)インバウンドの拡大 新型コロナウイルスの世界的流行によって停滞していたインバウンドが 急速に回復し始めており、2023 年の訪日外国人旅行者数は 2022 年の 3.8 倍 に増加、2023 年のインバウンド消費は過去最高額を更新した。特に、三大都 市圏では宿泊者数が大幅に増加しており、旅行者の都市集中傾向が顕著とな っている。その結果、一部の地域ではオーバーツーリズムが社会問題化して おり、住民生活に支障が生じているほか、旅行者の満足度低下も懸念される。 『経済財政運営と改革の基本方針 2024』(令和6年6月 21 日閣議決定) で掲げられている「2030 年に訪日外国人旅行者数 6,000 万人・消費額 15 兆 円」に向けてインバウンドは順調に回復しているものの、持続可能な観光立 国を実現するためにはオーバーツーリズム問題の早期改善が重要であり、そ のためには、キャッシュレス決済の導入や高度な翻訳ツールの活用など、DX を通じた観光地・観光産業における業務の効率化・合理化が必要である。 2 【出典】政府観光局「訪日外国客統計」を基に作成 図表 3 訪日観光客数等の推移 (3)エネルギー消費の増大 我が国のエネルギー消費量は 2005 年をピークに減少傾向に転じており、 グリーン・トランスフォーメーション(GX)関連の直近(2022 年度)の指標 を見ても、 『経済財政運営と改革の基本方針 2024』で掲げられている「2050 年カーボンニュートラルの実現、2030 年度の温室効果ガス 46%削減(2013 年度比)」に向けた着実な進展が見て取れる。他方で、懸念されるのはデー タ流通の進展とそれに伴うインターネットトラヒックの大幅な増加である。 我が国のインターネットトラヒックは 2019 年 11 月から 2024 年 11 月まで の5年間で約3倍に増加しており、その中で ICT 関連機器などの電力消費量 も増加傾向にある。仮にトラヒックの増加に比例して消費電力が増大すると 仮定した場合には、2030 年には ICT 関連機器だけで現在の年間使用電力量 の倍近い電力を消費するとの予測もある。とりわけ、生成 AI の学習や推論 を行う際には大量の電力を消費すると試算されており、消費電力量の爆発的 増加に拍車をかけることが懸念される。 このような中、デジタルインフラの省電力化は喫緊の課題であり、オール 光ネットワーク等の低消費電力を実現する通信技術は、ネットワーク自体の 省電力化に加え、データセンターの分散立地を促進し、データセンターによ る電力消費の分散化・地産地消を図る観点からも重要である。 3 【出典】総務省「我が国のインターネットにおけるトラヒックの集計」を基に作成 図表 4 我が国の固定系ブロードバンドサービス契約者のトラヒック(推計値) 【出典】国立研究開発法人科学技術振興機構低炭素社会戦略センター(2019) 「情報化社会の進展がエネルギー消費に与える影響(Vol.1)―IT 機器の消費電力の現状と将来予測―」 図表 5 IT 関連の消費電力予測 (4)自然災害の激甚化 気候変動による災害リスクや大規模地震の切迫性が高まっており、近年、 我が国では自然災害が激甚化・頻発化している。例えば、全国的に大雨や短 時間強雨の発生頻度が増加しているほか、暴風、豪雨、洪水、土砂災害、高 潮等の気象災害が毎年のように発生している。地球温暖化の進行に伴って、 この傾向は今後も続くことが見込まれているほか、今後発生が想定されてい る首都直下型地震や南海トラフ地震等の大規模地震への備えも重要となる。 このような状況を踏まえ、前述のデータセンターの分散立地のほか、自然 災害発生時に必要なライフラインを確保できるよう、衛星通信や成層圏プラ ットフォーム(HAPS:High Altitude Platform Station)等の非地上系ネッ トワーク(NTN:Non-Terrestrial Network)の導入を図ることに加え、被害 状況等を早期に把握するためのリモートセンシング技術の高度化も重要と 4 なる。 【出典】内閣府防災情報のページ「最近の主な自然災害について」及び各種報道を基に作成 図表 6 近年の自然災害の状況 (5)サイバー空間上のリスクの増大 近年、インターネット上の偽・誤情報拡散の問題が拡大している。いわゆ る“フェイクニュース”が SNS によって拡散され、利用者の正確な情報に基 づく適切な判断を困難にしている。特に、生成 AI の普及に伴い、真実か偽・ 誤情報かを見分けるのが困難な“ディープフェイク”が流通・拡散されるよ うになり、ディープフェイクによる情報操作や犯罪利用が増加している状況 にある。さらに、サイバー攻撃の洗練化・巧妙化も続いており、民間企業の ほか医療機関や地方公共団体がランサムウェア等によって深刻な被害を受 けた事例も報告されている。 また、サイバー空間への依存度が増大する一方、Living off the land 手 法やゼロデイ脆弱性の悪用による国家を背景とした高度なサイバー攻撃、社 会経済活動への深刻な被害を引き起こすサプライチェーン攻撃や大規模な DDoS 攻撃、ランサムウェア攻撃等が立て続けに発生しており、一組織のセキ ュリティ対策でこれらに対応することは限界になりつつある。 このような傾向は今後も継続すると見込まれるところ、生成 AI 等の先進 技術をディープフェイクの判定やサイバー攻撃の検知・防御等に活用するこ とで、サイバー空間上のリスク低減を図っていくことが重要である。 5 【出典】BBC News Japan(2024)等を基に作成 図表 7 生成 AI を利用したディープフェイクによる情報操作の事例 6 1.1.2 戦略領域の近年の技術動向 (1)AI 2022 年の ChatGPT の登場以降、生成 AI が爆発的な普及を見せており、既 に一部の企業等で導入が始まっている。生成 AI には、情報アクセシビリテ ィの向上、労働力不足の解消及び労働生産性の向上など、社会課題解決への 貢献に大きな期待が寄せられている。従来の AI が定型化された作業の自動 化やデータの整理・分類を主な目的としているのに対し、生成 AI はデータ のパターンや関係を学習して新しいコンテンツを創出できることが特徴で ある。ChatGPT に代表されるような自然言語処理を行う生成 AI の開発競争 が世界中で活発に行われている中、外国製の生成 AI の普及が進んでいるが、 外国製の生成 AI は外国語を中心に学習されており、日本の歴史、文化、慣 習などに関する質問に対して的確・正確に回答できない場合がある。このた め、外国製の生成 AI に過度に依存することなく、日本の利用者の視点に立 った的確で正確な回答を出力する AI 開発の必要性が高まっている。さらに、 今後、ユーザが設定した目標を達成するためのアクションを自律的に選択す る AI エージェントの社会実装が進むことで、コミュニケーションの在り方 そのものが変わる可能性もある。なお、生成 AI の基盤となる大規模言語モ デル(LLM)の性能を示すパラメータ数を増やすためには大量の言語データ を用いた深層学習(ディープラーニング)が必要であるが、その学習には高 速演算処理が可能な GPU が用いられるため、世界中で GPU の供給不足が起こ っている。そのような中で、モデルや学習方法の工夫によって、生成 AI の 高性能化や低コスト化の実現を目指す動きもある。 そのほかにも生成 AI の課題は複数指摘されており、そのひとつにハルシ ネーション(幻覚)がある。ハルシネーションとは、生成 AI が事実に基づ かない誤った情報をもっともらしく生成することを指すが、完全に抑制する ことは困難なため、生成 AI を活用する際にはハルシネーションが起こる可 能性を常に念頭に置く必要がある。また、生成 AI で用いられている機械学 習モデルは内部動作が理解しにくいという課題もある。さらに、生成 AI の 利用において、個人情報や機密情報がプロンプトとして入力され、その AI からの出力等を通じて当該情報が流出してしまうリスクや、ディープフェイ クによる偽・誤情報を鵜呑みにしてしまい、情報操作や世論工作に使われる といったリスク、著作物等が生成 AI の開発・学習等に無断で利用され、そ の AI による生成物がクリエイターや実演家等の著作権を侵害するリスク等 も指摘されている。こうした現状を踏まえつつ、AI のイノベーションの促進 とリスクへの対応を両立させることが求められている。 7 (2)Beyond 5G Beyond 5G については、ビジョンづくりや要素技術開発等の初期フェーズ から、より社会実装・海外展開を意識するフェーズへと移行しつつある。詳 細は『AI 社会を支える次世代情報通信基盤の実現に向けた戦略-Beyond 5G 推進戦略 2.0-』 (令和6年8月 30 日総務省)に譲るが、ポイントは以下の とおりである。 オール光ネットワークについては、NTT 東西が「IOWN 1.0」の商用サービ スの提供を 2023 年3月より開始したほか、KDDI 及びソフトバンクも自社コ ア網にオール光ネットワークを導入したことを発表した。IOWN 1.0 が東急 不動産の手掛ける新たなまちづくりで導入されるなど、社会実装に向けた取 組が進展している。非地上系/無線アクセスネットワークについては、携帯 事業者各社が 5G の真価を発揮できる Stand Alone(SA)構成の 5G サービス の一般提供を 2021 年以降開始したほか、我が国通信機器ベンダーが欧米諸 国をはじめとした諸外国における Open RAN の展開に取り組んでいる。また、 地上系の移動通信システムを補完するシステムとして NTN の存在感が急速 に高まっており、特に HAPS については、複数の事業者によって研究開発や 国際的な仲間作り・ルール作りに向けた取組、実装に向けた準備が着実に進 められている。 とりわけ生成 AI の爆発的普及は Beyond 5G 推進戦略にも大きな影響を及 ぼしており、これまでの Beyond 5G における AI の位置付けはネットワーク の運用効率化のためのツール(AI for Network)や実空間から吸い上げたビ ッグデータをサイバー空間上で分析するためのツール(AI for CPS (Cyber Physical System))であったのに対し、今後の情報通信ネットワークには、 AI が隅々まで利用された社会を支える基盤(Network for AIs)として小型・ 分散化された多数の AI を連携して機能させる役割が求められるようになっ ている。 8 【出典】総務省「AI 社会を支える次世代情報通信基盤の実現に向けた戦略 - Beyond 5G 推進戦略 2.0 -」(令和6年8月 30 日) 図表 8 Beyond 5G の全体像 (3)量子情報通信 我が国の量子技術の研究開発は、「量子技術イノベーション拠点」を中心 に関係機関の連携・役割分担の下で進められている。この枠組みの下、例え ば、量子コンピュータについては、2023 年3月から、国立研究開発法人理化 学研究所、同産業技術総合研究所、NICT、大阪大学、富士通及び NTT の共同 研究グループが、超電導方式による国産量子コンピュータ初号機を整備し、 インターネットを介して外部利用が可能なクラウドサービスを開始してい る。このように、量子技術の社会実装に向けて、着実に各研究開発が進展を 見せている。 量子コンピュータの大規模化に伴い、その計算力による既存の暗号方式の 危殆化が懸念されている。また、実用的で大規模な量子コンピュータの実現 を見越して、既に通信の盗聴・保存(HNDL(Harvest Now, Decrypt Later)攻 撃)も始められているとの見方もある。現在、インターネット上の通信暗号 化や電子署名等で広く用いられる RSA 暗号は、巨大な素数の素因数分解に莫 大な時間がかかることを利用したものであるが、実用的で大規模な量子コン ピュータを使うことで解読に要する時間を大幅に短くすることが可能とな る。 9 こうしたことから喫緊の対策が必要となっており、世界各国で量子暗号通 信の導入に向けた取組が加速している。量子暗号通信は、観察されると量子 状態が変化するという量子力学の原理を利用することで、盗聴を確実に検知 することができ、量子コンピュータを含め絶対に解読できないことが証明さ れているワンタイムパッド(共通鍵暗号)を量子暗号通信で送ることにより、 情報理論的安全性を確保することが可能である。 例えば、中国では1万 km 以上の量子暗号通信網が整備されているほか、 EU では欧州全域での量子暗号通信インフラの整備が開始された。我が国で は、NICT が量子技術イノベーション戦略における「量子セキュリティ拠点」 として量子暗号通信のテストベッドネットワークである“東京 QKD ネットワ ーク”を構築しており、量子暗号通信技術の検証のほか、政府や金融等複数 機関によって実利用を想定した実証実験が進められている。その成果として、 我が国の量子暗号通信装置は、世界トップレベルの性能を有するに至ってい る。 (4)サイバーセキュリティ クラウド、IoT、AI 技術の活用やテレワークをはじめとする柔軟な働き方 の浸透等によってサイバー空間の利便性が増す一方、こうした環境変化によ ってサイバー空間を取り巻くリスクも変化しており、サイバー攻撃の目的の 変化や攻撃手法・対象の拡大など、サイバーセキュリティ上の脅威は増大を 続けている。NICT が運用している大規模サイバー攻撃観測網(NICTER)のダ ークネット観測で確認された 2024 年の1IP アドレス当たり観測パケット (約 243 万パケット)は過去最高の観測数を記録しており、2015 年の約 10 倍となっている。また、ランサムウェア等のマルウェアによるサイバー攻撃 被害も引き続き多数報告されており、2022 年2月に、メールアカウントやメ ールデータなどの情報窃取に加え、他のウイルスへの二次感染のために悪用 されるマルウェア「Emotet(エモテット)」の攻撃活動が急増し、IPA や JPCERT/CC が注意喚起を行ったが、それ以降も Emotet による攻撃活動は断 続的に観測されている。 このような状況を受け、サイバー攻撃情報の収集・分析やサイバーセキュ リティ人材の育成等を通じてサイバー攻撃対処能力の向上が図られている ところであるが、詳細は後述する。 また、生成 AI をはじめとする AI を起因とした新たなリスクも指摘されて いる。例えば、生成 AI の脆弱性を狙ったサイバー攻撃として、悪意のある プロンプト注入による LLM の不正操作(プロンプト・インジェクション) が挙げられるほか、生成 AI の悪用によるフィッシングの増加・高度化やマ 10 ルウェア生成の容易化等が指摘されている。 このような AI に起因するセキュリティリスクに対しては、我が国におけ る AI ガバナンスの統一的な指針として『AI 事業者ガイドライン(第 1.0 版)』 (令和6年4月 19 日総務省、経済産業省)が公表されている。 【出典】NICT「NICTER 観測レポート 2024」 図表 9 1 IP アドレス当たりの年間総観測パケット数(過去 10 年間) 11 1.2 総務省における情報通信技術の研究開発の取組 総務省では、 『第6期科学技術・イノベーション基本計画』(令和3年3月 26 日閣議決定)に基づき、総合科学技術・イノベーション会議、サイバーセキュリ ティ戦略本部その他関係本部等と連携し、情報通信技術の研究開発を推進して いる。その取組は、実用化に向け、あらかじめ研究課題及び目標等を設定した上 で、企業・大学等(NICT を含む)に研究の委託等を行う「ICT 重点技術の研究開 発プロジェクト」、複数年度にわたって柔軟に研究開発を実施する「基金による 重点技術の研究開発の支援」、芽出しの研究開発から事業化までを一気通貫で支 援する「ICT スタートアップの支援」及び総務省が示す中長期目標に基づく基礎 的・基盤的な研究開発を運営費交付金により実施する「NICT による研究開発」 の大きく4つに分類することができる。本節では、各研究開発支援の主な成果に ついて、その概要を述べる。 (なお、運営費交付金を用いた「NICT による研究開 発」の主な成果については、次節で述べることとする。) 図表 10 情報通信技術の研究開発の推進スキーム 12 1.2.1 ICT 重点技術の研究開発プロジェクト (1)AI ①多言語翻訳技術 世界の「言葉の壁」の解消を目的として、2014 年に『グローバルコミュニ ケーション計画』を策定して以降、総務省では多言語翻訳技術の研究開発を 推進している。2025 年に向けて AI による「同時通訳」の実現を目指すなど、 多言語翻訳技術の更なる高度化等を推進すべく、2020 年には『グローバルコ ミュニケーション計画 2025』が策定された。多言語翻訳技術の研究開発は、 同計画に基づき、NICT を中心に進められており、2024 年度末時点で 31 言語 に対応し、特に訪日・在留外国人対応等を想定した 18 言語は、重点対応言 語として実用レベルの翻訳精度を実現している。開発した翻訳エンジンはラ イセンス契約により民間企業に開放しており、その結果、同翻訳エンジンを 活用したサービスが 30 以上展開され、防災・交通・医療等の分野において、 多くの官公庁・地方公共団体に採用されている。 図表 11 NICT が開発した翻訳エンジンを活用したサービスの例 ②大規模言語モデル(LLM)学習用日本語データ 2023 年度から、大規模言語モデル(Large Language Models、LLM)の学習 用言語データとして、日本語データの整備を開始した。整備した学習用言語 データは、共同研究契約に基づき 2024 年7月から KDDI への提供が開始され るなど、民間企業等に活用されている。 13 図表 12 大規模言語モデル(LLM)学習用日本語データの整備の状況 (2)量子情報通信 ①量子暗号通信 量子暗号通信技術の高度化に向けた研究開発を推進し、量子暗号通信の長 距離化・高速化やネットワーク制御管理技術等の確立に向けて取り組んでい る。また、“東京 QKD ネットワーク”を通じて、我が国企業による量子暗号 通信装置の商用化を支援している。現在、我が国企業の量子暗号通信装置は 世界トップレベルの性能を有しており、世界各国の量子暗号通信テストベッ ドに導入されている。 図表 13 量子暗号技術の研究開発の成果 14 ②衛星量子暗号通信 2023 年度までに、1回の上空通過で 100 万ビット以上の安全な秘密鍵共 有が可能なシステムを開発し、2024 年3月、国際宇宙ステーションと地上と の間で、物理レイヤ暗号による安全な鍵の共有と、その鍵を用いての高秘匿 通信に成功した。 図表 14 衛星量子暗号通信の研究開発の成果 (3)サイバーセキュリティ ①研究開発・人材育成の産学官連携拠点(CYNEX) サイバーセキュリティ情報を国内で収集・蓄積・分析・提供するとともに、 社会全体でサイバーセキュリティ人材を育成するための共通基盤として、 2021 年度に CYbersecurity NEXus(CYNEX)を構築した。2025 年1月末時点 で、産学官から 92 組織が参画している。 CYNEX を通じて、約 280 名の解析者によるコミュニティを構築し、年間 450 件以上の攻撃者挙動を解析しており、その結果は適宜関係者に共有されてい る。また、研修等によって 65 名の高度セキュリティ解析者(Security Operation Center 人材)の育成(育成中を含む)に寄与するとともに、テス ト環境を提供することで、6社8製品の国産セキュリティ製品・サービスの 精度検証や長期運用検証を実施している。さらに、83 種類の演習教材を開発 し、参画機関に演習環境とともに提供している。 15 図表 15 研究開発・人材育成の産学官連携拠点(CYNEX)の概要 16 1.2.2 基金による重点技術の研究開発の支援 (1)Beyond 5G ①Beyond 5G 研究開発促進事業 2020 年度から 2022 年度までの3年間を研究開発期間とする「革新的情報 通信技術研究開発推進基金」等を活用し、Beyond 5G の要素技術の早期確立 を目的とした研究開発を推進してきた。3年間の事業を通じて、648 件の特 許出願(うち、328 件は外国出願)、1821 件の外部発表(研究論文、小論文、 収録論文及び一般口頭発表等の件数)及び公的国際標準化機関やフォーラム 等に対する 149 件の標準化提案(うち、36 件が採択)が行われた。 また、研究開発の成果として、様々な用途に対応できるカスタマイズ性の 高い IoT 端末向け SoC(System on a Chip)が試作されたほか、国内トップ レベルの光電変換効率を有する光半導体素子を組み込んだ小型・可搬型トラ ンシーバが開発された。 図表 16 Beyond 5G 研究開発促進事業の実績 ②革新的情報通信技術基金事業 2023 年度からは、 「情報通信研究開発基金」 (2023 年 3 月造成)を活用し、 「オール光ネットワーク関連技術」、 「非地上系ネットワーク関連技術」及び 「セキュアな仮想化・統合ネットワーク関連技術」を中心に、Beyond 5G の 17 社会実装・海外展開を目指した研究開発・国際標準化に対する支援を実施し ている。 オール光ネットワーク関連技術としては、光ネットワークコントローラや 光波長・信号フォーマットの変換技術、事業者間接続などの関連技術につい て、非地上系ネットワーク関連技術としては、次世代大容量小型宇宙光通信 システムや超広域・大容量モバイルネットワークを実現する HAPS 通信技術 などについて、仮想化ネットワーク関連技術としては、端末を含むネットワ ークの仮想化によるエンドツーエンドでのサービス品質の保証や継続進化 可能なソフトウェア化について、研究開発を進めている。 図表 17 革新的情報通信技術基金事業(R5 年度~)の実績 (2)宇宙 ①宇宙戦略基金 「宇宙関連市場の拡大」、 「宇宙を利用した地球規模・社会課題解決への貢 献」及び「宇宙における知の探究活動の深化・基盤技術力の強化」を図るた め、2024 年3月に内閣府、文部科学省、経済産業省及び総務省の共管で宇宙 戦略基金が創設され、国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構(JAXA)に設 置された。 総務省では同基金において、衛星関係として「衛星量子暗号通信技術の開 発・実証」及び「衛星コンステレーション構築に必要な通信技術(光ルータ) の実装支援」を、探査関係として「月面の水資源探査技術(センシング技術) の開発・実証」及び「月-地球間通信システム開発・実証(FS)」を実施テー 18 マに定めている。 図表 18 宇宙戦略基金 技術開発テーマ(総務省分) 19 1.2.3 ICT スタートアップの支援 ①異能(Inno) vation 2014 年度から 2023 年度までの 10 年間、破壊的なイノベーションに挑戦 する社会的な雰囲気の醸成を目的とし、奇想天外なアイデアや人材を発掘し て支援するプログラム「異能 vation」を実施した。同プログラムを通じて、 120 人の異能β(卒業生)を輩出し、2024 年4月現在、異能βは起業率3割 以上、資金調達総額 161 億円以上を達成している。 図表 19 異能 (Inno) vation の成果 ②スタートアップ創出型萌芽的研究開発支援事業 2023 年度からは、異能 vation の成果を受け継ぐ後継施策として、よりス タートアップに力点を置いた「スタートアップ創出型萌芽的研究開発支援事 業」を開始した。2024 年度までに計 62 件の ICT 分野のスタートアップを採 択しており、芽出しの研究開発から事業化までを一気通貫で伴走支援してい る。併せて、民間の有志企業等の協力を得て、官民一体の支援の取組として 「ICT スタートアップリーグ」を推進している。 20 図表 20 スタートアップ創出型萌芽的研究開発支援事業の概要 21 1.3 国立研究開発法人情報通信研究機構のこれまでの取組 NICT は、我が国唯一の情報通信(ICT)分野を専門とする公的研究機関であり、 国際動向を踏まえつつ、国の情報通信政策との密接な連携の下、大学や民間企業 では実施できないような長期間にわたり組織的に推進すべき情報の電磁的流通 及び電波の利用に関する技術の研究及び開発、標準時の通報、通信・放送事業分 野に属する事業の振興等を総合的に行う国立研究開発法人である。国立研究開 発法人は、独立行政法人通則法(平成十一年法律第百三号)に基づき、達成すべ き業務運営に関する目標(以下『中長期目標』という。)を定めることとされて おり、現在、NICT の中長期目標は、その第5期(以下『第5期中長期目標』と いう。)にあたる。NICT では、『第5期中長期目標』を達成するための計画であ る『第5期中長期計画』に基づき、研究開発等の業務に取り組んでいる。 『第5 期中長期目標』では、 「電磁波先進技術」 「革新的ネットワーク」 「サイバーセキ ュリティ」 「ユニバーサルコミュニケーション」 「フロンティアサイエンス」を重 点研究開発分野(重点5分野)に、また、政府戦略を踏まえ、Society 5.0 の早 期実現に向けた次世代 ICT 基盤に必要不可欠な先端技術として、「Beyond 5G」 「AI」 「量子情報通信」 「サイバーセキュリティ」を戦略的に推進すべき研究領域 (戦略4領域)に位置付け、研究開発等に取り組んできた。併せて、NICT の研 究開発成果の社会実装に向けて、オープンイノベーション創出に向けた分野横 断的な研究開発等に取り組むとともに、研究支援・事業振興業務として、地域発 ICT スタートアップの支援等にも取り組んできたところである。本節では、戦略 4領域の研究開発及びオープンイノベーションの取組を中心に、その主な成果 を述べる。 図表 21 『第5期中長期目標』における主な業務 22 (1)Beyond 5G ①NICT Beyond 5G ホワイトペーパー Beyond 5G/6G 世界の実現に向けて、2030 年以降の社会生活をイメージす ることで、Beyond 5G のアーキテクチャを定義し、必要な機能やインターフ ェイスを具体化した『Beyond 5G/6G White Paper』の初版を 2021 年に作成・ 公表し、随時更新を行っている。また、本ホワイトペーパーを基軸として、 海外連携等によるコミュニティ形成に取り組むとともに、要素技術の研究開 発を推進している。 【出典】NICT Beyond 5G ホワイトペーパー(2023 年 3 月第 3 版) 図表 22 Beyond 5G が実現する 2030 年以降の未来社会 ②三次元ネットワーク経路制御技術 NTN では、通信を中継する衛星自体の移動による頻繁なハンドオーバや、 天候による通信品質の大幅な劣化など、地上系ネットワークとは異なる特徴 がある。地上のみ(二次元)ではなく地上-空・宇宙-海上・水中(三次元) にまたがる Beyond 5G ネットワークを統合的に制御・調整するネットワーク 統合制御技術として、リソース制御、QoS 制御、最適経路形成等の技術の研 究開発を進め、制御コストの 20~50%削減を実現した。 23 図表 23 三次元ネットワーク経路制御技術 ③テラヘルツ波×ミリ波ハイブリッド無線通信システム ミリ波(60GHz)の既存規格である IEEE802.15.3e に準拠した SoC(System on a Chip)とテラヘルツ波(300GHz)の Si-CMOS 送信・受信機とを組み合 わせ、IEEE802.15.3-2023 に準拠した世界初のハイブリッド通信システムを 構築した。 図表 24 テラヘルツ波×ミリ波ハイブリッド無線通信システム 24 ④大容量光通信基盤技術 Beyond 5G ネットワークの「超高速・大容量」 「拡張性」に資するべく、あ らゆる移動体プラットフォームに搭載可能な小型光通信端末や、光通信端末 との通信を可能とする固定/可搬型光地上局に関する研究開発を推進し、シ ンプルトランスポンダやフルトランシーバーを試作した。 図表 25 NTN プラットフォームに向けた超小型高速光通信機器開発 ⑤革新的情報通信技術(Beyond 5G(6G))基金事業 上記 1.2.2 のとおり、2023 年3月に、Beyond 5G を始めとする革新的な情 報通信技術の研究開発を推進するため、NICT に恒久的な基金(情報通信研究 開発基金)が造成された。NICT がファンディング・エージェンシー(FA)と なり、2023 年度から、同基金を活用して、日本が強みを有する又は先行して いる技術であって、かつ世界をリードしていける技術として、「オール光ネ ットワーク関連技術」 「非地上系ネットワーク関連技術」 「セキュアな仮想化・ 統合ネットワーク関連技術」に重点を置き、主に社会実装・海外展開を目指 した研究開発を支援している。 図表 26 革新的情報通信技術(Beyond 5G(6G) )基金事業のスキーム 25 ⑥Beyond 5G に向けたテストベッド Beyond 5G の社会的・技術ニーズを検証可能な実証環境として、 「高信頼・ 高可塑 B5G/IoT テストベッド」のサービスを開始した。同テストベッドでは、 モバイル実証環境、耐障害機能等の評価・検証環境、実システム接続を可能 としたエミュレーション環境等を提供している。 図表 27 Beyond 5G に向けたテストベッド 26 (2)AI ①自然言語処理 NICT では、『グローバルコミュニケ-ション計画 2025』(令和2年3月総 務省)に基づき、多言語翻訳技術の高度化等に取り組んでいる。この取組を 通じて、2023 年度には、日本語、英語、中国語、韓国語、ベトナム語及びイ ンドネシア語の6言語で、音声による同時通訳を実現した。さらに、AI を活 用して英語から日本語、中国語及び韓国語に同時通訳するシステムのプロト タイプを開発しており、同システムは 2025 年の大阪・関西万博会場での利 用が決定している。 また、2020 年に NICT が構築した4億パラメータを有する高精度な識別系 大規模言語モデル(BERT)を活用し、大規模 Web 情報分析システム「WISDOM X」深層学習版の一般公開が 2021 年3月末から開始されたほか、2022 年度 には高齢者介護支援用対話システム「MICSUS」を開発し、共同開発企業にお いて商用化に向けた開発を継続している。 ②大規模言語モデル(LLM)学習用日本語データ 上記 1.2.1(1)②のとおり、Web 上から収集したデータを基にクレンジ ング作業を行うことにより AI 学習に適した高品質な日本語データを整備し、 民間企業やアカデミア等への提供を開始した。日本語データの収集は継続的 に行われている。 図表 28 NICT における自然言語処理及び大規模言語モデルに関する研究開発 27 ③GPAI 東京専門家支援センターの設置及び AI 安全性検討への貢献 生成 AI の安全性を保証するための実践的なアプローチを支援する場とし て、2024 年7月、GPAI 東京専門家支援センターが NICT 内に設置された(詳 細は後述)。また、AI の安全性の確保に向けた方策を検討する AISI(AI Safety Institute)の活動を効果的に推進するための協力体制(AISI パートナーシ ップ)に発足時(2024 年8月)から参画し、競争力強化と安全性確保の相互 補完に資する情報共有等に取り組むこととしている。 28 (3)量子情報通信 ①量子セキュリティ拠点 『量子技術イノベーション戦略』 (令和2年1月 21 日統合イノベーション 戦略推進会議決定)、 『量子未来社会ビジョン』 (令和4年4月 22 日同)、 『量 子未来産業創出戦略』(令和5年4月 14 日同)に基づき、国内に 11 の量子 技術研究拠点が整備された。この中で、NICT は「量子セキュリティ」の拠点 を担い、基礎研究から社会実装、人材育成まで一気通貫で取り組んでいる。 また、“東京 QKD ネットワーク”を構築して、開発された量子暗号通信技術 の検証・標準化を推進し、我が国企業による量子暗号通信装置の高性能化・ 安全性の向上に寄与し、製品化を下支えしている。現在、我が国企業の量子 暗号通信装置は世界トップレベルの性能を有しており、世界各国の量子暗号 通信テストベッドに導入されている。 【出典】量子技術イノベーション拠点ウェブサイト 図表 29 量子技術イノベーション拠点の概要 ②グローバル化を目指した衛星量子鍵配送 量子鍵配送システムの衛星搭載に先立ち、物理レイヤ暗号を用いた安全な 鍵共有に向けた研究開発を行なった。上記 1.2.1(2)②のとおり、2023 年 度までに、1回の上空通過で 100 万ビット以上の安全な秘密鍵共有が可能な システムを開発し、2024 年3月、国際宇宙ステーションと地上との間で、物 理レイヤ暗号による安全な鍵の共有と、その鍵を用いての高秘匿通信に成功 した。 29 (4)サイバーセキュリティ ①研究開発・人材育成の産学官連携拠点(CYNEX) 上記 1.2.1(3)①のとおり、サイバーセキュリティ情報を国内で収集・ 蓄積・分析・提供するとともに、社会全体でサイバーセキュリティ人材を育 成するための共通基盤として、2021 年度に CYbersecurity NEXus(CYNEX) を構築した。同拠点では、サイバー攻撃誘引基盤 STARDUST を核とした共同 解析と解析者コミュニティ形成を目的とした「Co-Nexus A」、高度な解析者 の育成と CYNEX 独自の脅威情報の生成・発信を目的とした「Co-Nexus S」、 国産セキュリティ製品のテスト環境提供による実用化支援を目的とした 「Co-Nexus E」、演習基盤開放による国内セキュリティ人材育成事業の活性 化を目的とした「Co-Nexus C」の4つのサブプロジェクトが進行している(そ の成果は前述のとおり)。 ②IoT 機器のサイバーセキュリティ対策の促進(NOTICE) IoT 機器のセキュリティ対策向上を推進し、サイバー攻撃の発生やその被 害を未然に防ぐプロジェクト「NOTICE」を 2019 年2月から実施している。 このプロジェクトを通じて、2023 年度は、パスワード設定に不備のある IoT 機器のべ 124,067 件を注意喚起対象として Internet Service Provider (ISP)に通知した。当初は注意喚起を行うプロジェクトであったが、2023 年 の NICT 法改正を受け、2024 年度からは、「サイバーセキュリティ対策助言 等業務」として、ファームウェアに脆弱性がある IoT 機器の調査や既にマル ウェアに感染している IoT 機器の情報提供等にも取り組んでいる。 図表 30 IoT 機器のサイバーセキュリティ対策 30 (5)オープンイノベーション ①無線時刻比較技術(Wi-Wi)のデータセンターでの導入 NICT では、サーバ間の高精度な時刻同期を無線で実現する技術「Wi-Wi」 (wireless two-way interferometry)を開発した。また、米メタ社を中心 とする Open Compute Project(OCP)に NICT も参画し、同社が開発した Time Card(OCP 内においてオープンソース環境で開発されているサーバ向けの時 刻同期ボード)に実装可能な Wi-Wi のモジュールを開発した。さらに、同社 と共同で学会発表するなど、分散化されたデータセンターへの導入に向けた 検討を進めている。 図表 31 タイムカード用 Wi-Wi モジュール ②フォトニックネットワーク関連技術 NICT は、フォトニックネットワーク関連技術の研究開発において、オール ジャパンの取組を牽引してきた。マルチコアファイバーの研究開発において は、NICT が主導してコンソーシアムを形成し、産学官連携で研究戦略を策定 したほか、基礎・基盤研究、実現可能性検証研究・開発、社会実装に向けた 研究・開発に分担して取り組んできた。その結果、2コアマルチコアファイ バーケーブルが海底ケーブルシステムに採用され、社会実装に繋がっている。 また、デジタルコヒーレント光伝送技術の研究開発においては、民間企業の 研究開発に NICT のテストベッドが活用されており、その成果として、1波 長あたり 1.2Tbps の DSP-LSI が製品化されている。 31 図表 32 マルチコアファイバーの研究開発における産学官連携 ③プライバシー保護連合学習システム(DeepProtect) AI を活用したサービス等が高いパフォーマンスを発揮するためには、高 い精度を持った学習モデルを作成することが必要だが、そのための十分な学 習用データを単一の企業や組織で集めることは難しい。他方、複数の組織が 共同でデータを集めて学習モデルを作成する場合には、個人情報保護法令や ガイドラインの遵守を含め、データの適切な保護が課題となる。このため、 NICT では、個人情報など機密性の高いデータを開示することなく、複数組織 共同でのデータ解析を可能とするプライバシー保護連合学習システム 「DeepProtect」を開発した。同技術は 2021 年度に民間企業に技術移転され ており、今後のビジネス化が期待されている。 32 図表 33 プライバシー保護連合学習システム DeepProtect ④多言語翻訳技術 1.2.1(1)①のとおり、2017 年度から、開発した翻訳エンジンをライセ ンス契約により民間企業に開放しており、その結果、同翻訳エンジンを活用 したサービスが 30 以上展開され、防災・交通・医療等の分野において、多 くの官公庁・地方公共団体が採用している。 図表 34 多言語音声翻訳技術の社会展開例 33 ⑤その他 民間企業や他の研究機関等との共同研究については、2021 年度 464 件、 2022 年度 514 件、2023 年度 570 件の契約件数で推移している。また、NICT と大学の共同研究を支援するマッチング研究支援事業については、東北大学、 早稲田大学及び九州工業大学との間で 2024 年度はそれぞれ 14 課題、3課 題、4課題を採択しており、農学分野や教育分野など、情報通信分野にとら われない分野との連携も進展している。 知的財産(技術移転)収入については、2021 年度約 110 百万円、2022 年 度約 118 百万円、2023 年度約 124 百万円と微増傾向にあり、2023 年度を例 にとるとその内訳は約 86%が多言語翻訳関連、約 10%がサイバーセキュリ ティ関連となっている。 NICT の研究開発成果を活用するスタートアップに対して出資することが できる成果活用型出資については、2023 年度にインターステラテクノロジ ズへの出資が初めて行われた。同社では、超超小型衛星によるフォーメーシ ョンフライトを実現するため、隣接装置の状況を把握し動的なルーティング 処理を可能とする NICT の技術を利用することとしている。 図表 35 共同研究の状況 図表 36 知的財産の状況 34 1.4 検討事項 上記を踏まえ、 「第6期科学技術・イノベーション基本計画」や NICT の次期中 長期目標等を見据え、近年の社会情勢の変化、技術の進展及び市場の動向等を踏 まえつつ、ICT 分野で国、NICT 等が取り組むべき重点研究開発分野・課題及び研 究開発、成果展開等の推進方策について検討を行った。 主な検討項目・論点は以下のとおりである。各項目の検討結果については、次 章以降で述べる。 (1)我が国が戦略的に推進すべき研究開発分野と NICT が重点的に研究開発等 に取り組むべき技術領域 ○ 2030 年代を見据えた未来の社会像とその実現のためのキーテクノロジー ○ 諸外国との競争において我が国が強みを有する技術領域 ○ 我が国として戦略的に推進すべき研究開発分野 ○ 国・国研・大学・民間等の役割分担の下、 NICT が重点的に取り組むべ き技術領域 等 (2)NICT の社会実装機能・外部連携機能等 ○ NICT における研究開発成果の社会実装機能の在り方 ○ NICT の研究資金配分機関としての在り方 ○ NICT における新技術に対応した研究人材の育成・確保の在り方 ○ 我が国発の技術の社会実装を促進するために NICT が果たすべき役割 等 35 第2章 次期中長期において NICT に期待する役割(ミッション) 民間企業等から示された NICT への期待や、社会情勢の変化等に伴う国立研究 開発法人の役割の変化等を踏まえ、次期中長期においては、特に次の点を NICT に期待する。 (1)国際競争力の強化や経済安全保障の確保等をはじめとした我が国の重要 政策の実現への貢献 NICT は情報通信分野を専門とする我が国唯一の公的研究機関であり、従 前より、中長期的視点に立った基礎的・基盤的な研究開発に取り組んでいる。 情報通信に係る重点研究開発分野の研究開発は、引き続き NICT の重要な役 割であるが、 『国立研究開発法人の機能強化に向けた取組について』 (令和6 年3月 29 日関係省庁申合せ)で指摘されているように、 「我が国を取り巻く 国際環境が厳しさを増し、先端技術が著しく進展をみせる中で、科学技術・ イノベーションを要として国家的重要課題に戦略的に対応し、国際社会で存 在感と貢献度を拡大していくことが重要となっている」中で、「特に、資金 配分機関を含む国立研究開発法人は、産学官連携の中核を担うと同時に、科 学技術・イノベーション政策を根幹から支える機関であることを踏まえ、社 会情勢等に応じた英知の機動的な結集を可能とし、国家的重要課題に戦略的 に対応するため、(中略)その機能を強化することが求められている」こと を踏まえれば、我が国の重要政策の実現により強くコミットしていくことが 望まれる。 以上を踏まえ、NICT に蓄積された技術力や知見・経験等をさらに生かすこ とで、『科学技術・イノベーション基本計画』などの各種政府戦略で示され た国家的重要課題に対して情報通信の観点から積極的に貢献し、国際競争力 の強化や経済安全保障の確保等をはじめとした我が国の重要政策の実現に 寄与することを期待する。 (2)民間投資や人材育成を活性化するための触媒となる産学官連携の中核・連 結点としての役割 NICT は、フォトニックネットワーク、量子情報通信及びサイバーセキュリ ティ等の分野において、中長期ビジョンを構想し、民間企業等と連携しなが ら研究開発を推進することで、研究開発成果の製品化・事業化等を実現して きた実績がある。このような活動を通じて蓄積された知見・経験を他の領域 にも活用することで、NICT が民間投資や人材育成を活性化するための触媒 となることが望まれる。 このため、我が国全体として目指すべき中長期的ビジョンを構想し、産学 36 官で共有しながら、基礎的・基盤的研究開発から社会実装まで連携して取り 組んでいく産学官連携の中核・連結点としての役割を強化していくことを期 待する。 なお、その中において、国立研究開発法人という信頼できる公的機関であ ることを生かし、CYNEX で実施しているような、データを収集・蓄積し、NICT の知見を付加した上で社会に還元する取組について、他の分野に拡大するこ とにも取り組むべきである。 (3)民間企業等におけるイノベーションを支援する機能の充実・強化 これまでも、NICT では、オープンイノベーション創出に向けた産学官連携 の強化等に取り組んできたところであるが、その中心はあくまでも NICT に おける研究開発成果の社会実装であった。引き続き、NICT における研究開発 成果を社会に還元していくため、体制整備等を通じて「社会実装機能」の強 化に取り組んでいくことは重要な課題である。 他方近年では、サイバーセキュリティ産学官連携拠点(CYNEX)の構築、 Beyond 5G をはじめとする革新的な情報通信技術の研究開発を推進するため の恒久的な基金(情報通信研究開発基金)の造成、生成 AI に関するインパ クトのあるプロジェクト等の開発を支援する GPAI 東京専門家支援センター の設置など、民間企業等におけるイノベーションを支援する「外部連携機能」 の比重が高まってきている。国立研究開発法人協議会「新会長からのメッセ ージ」 (令和4年9月)においても、 「国立研究開発法人が、 (中略)、組織や 分野の枠を超えた連携、産業界・大学等との連携、出口に向かって基礎から 実用化まで繋ぐ連携のハブとなり、我が国全体の研究開発成果の最大化を牽 引するフラッグシップとしての役割を果たす」と述べられており、今後も外 部連携機能の充実・強化は NICT の重要な課題になるものと考えられる。 以上を踏まえ、NICT が有する施設・設備や蓄積された知見等のさらなる有 効活用を図りながら、イノベーションハブ機能(テストベッド、GPAI 東京専 門家支援センター等)、研究資金配分機関としての機能(Beyond 5G(6G)基金 事業)、スタートアップ支援等の充実・強化を図り、民間企業等におけるイ ノベーションを支援することを期待する。 (4)機構法に基づく社会経済活動を根底から支えている重要業務の継続的か つ安定的な実施 NICT では、国立研究開発法人情報通信研究機構法(平成 11 年法律第 162 号)第 14 条第1項第3号、第4号及び第5号に基づき、標準時通報、宇宙 天気予報及び無線機器の較正の業務を実施している。これらの業務は、社会 37 経済活動を根底から支えている重要な業務であり、引き続き、継続的かつ安 定的に実施されることを期待する。 38 第3章 戦略的に推進すべき技術領域と重点的に推進すべき基礎的・基盤的研 究開発分野等 3.1 戦略的に推進すべき技術領域 3.1.1 我が国が強みを有する技術領域 (1)AI・コミュニケーション 世界の AI 市場は急速な成長を続けており、2023 年の 1,560 億ドルから、 2030 年には 11,839 億ドルまで拡大するという試算もある。現在は機械学習が AI 市場の中で最も大きな割合(37%)を占めているが、生成 AI 市場は今後 50%以上の成長率が見込まれており、特に製造業での活用を中心に大きく拡大 することが予想される。このような中、世界で AI 関連投資が活発化している が、世界の AI 企業の国別分布を見てみると、生成 AI の領域では米国企業が全 体の半数以上を占めている状況にある。世界の AI 開発動向に目を転じると、 欧米企業を中心に、数十億~数兆のパラメータ数を有する大規模言語モデル (LLM)の開発競争が進められている一方、特定の産業や業務に特化した小型 言語モデル(SLM)も登場し始めている。 このような中、我が国においては、「日本語」に強みを有する LLM の開発が 進められており、日本語生成能力において GPT-4 を上回る性能を有するモデ ルも登場している。 【出典】Statista 図表 37 AI 市場の推移予測 39 【出典】JEITA(2023) 「生成 AI 市場の世界需要額見通し」 図表 38 生成 AI 市場規模の予測 【出典】Statista 図表 39 AI 市場の事業者シェア(2023) 40 (2)Beyond 5G 今後、生成 AI やメタバース等の普及に伴い、我が国の通信トラヒックは 2040 年に 2020 年の 348 倍に増加するとの試算もある。特に AI の爆発的普及は、通 信トラヒックの増加とそれに伴う消費電力の増大に拍車をかけることが想定 される。このような中、Beyond 5G は我が国のデジタル・トランスフォーメー ション(DX)を支える次世代の情報通信インフラとして、『経済財政運営と改 革の基本方針』 (『骨太方針』)等において、その早期の実現が掲げられている。 こうした背景の下、総務省では『AI 社会を支える次世代情報通信基盤の実現 に向けた戦略 -Beyond 5G 推進戦略 2.0-』(令和6年8月 30 日)を策定し、 Beyond 5G の社会実装に向けた取組を推進している。 Beyond 5G の構成要素の中でも、特にオール光ネットワークと NTN は、我が 国が強みを有する技術領域であると考えられる。 オール光ネットワークは研究開発から社会実装フェーズへと移行しつつあ り、2023 年3月には NTT 東西が「IOWN 1.0」の商用サービスを開始したほか、 KDDI、ソフトバンクも順次基幹網等へのオール光ネットワークの導入を開始し ている。また、NTT がインテル及びソニーと共に「IOWN Global Forum」を設 立し、アジア、米州及び欧州から 155 組織・団体(2025 年2月時点)の参画を 得て、IOWN 構想の実現と普及に向けた検討をリードしている。 NTN については、将来的に地上通信網に並ぶ基幹インフラとなることも期待 されており、国内外の事業者による取組が活発化している。HAPS においては、 ソフトバンクや Space Compass による取組が研究開発と国際標準化をリード しており、また、衛星通信においては、JAXA が光データ中継衛星と低軌道観 測衛星「だいち4号」 (ALOS-4)との間で世界最速の通信速度(1.8Gbps)での 光衛星通信に成功するなど、我が国事業者が有する技術は最先端の水準にある。 41 【出典】総務省(2023)「我が国のインターネットにおけるトラヒックの集計・試算(2023 年 11 月) 」 図表 40 我が国のインターネットトラヒックの推移 【出典】三菱総合研究所(2023) 「ICT インフラの三重苦を回避する」 図表 41 インターネットトラヒックの増加予測 42 【出典】NTT 提供資料 図表 42 IOWN ロードマップ 【出典】JAXA(2024)「光衛星間通信システム (LUCAS)について」 図表 43 光衛星間通信システム「LUCAS」 43 (3)量子情報通信 世界の量子技術市場(量子コンピュータ、量子通信、量子センシング等)は、 2050 年には 4592 億ドルまで拡大すると見込まれている。その中でも、医療、 金融、政府機関などセンシティブな情報をやりとりする分野では、量子暗号通 信への期待が大きい。 特に我が国が強みを有するのは量子暗号通信装置であり、世界トップレベル の性能を誇り、世界各国の量子暗号通信テストベッドに導入・活用されている。 また、衛星量子暗号通信においても、2024 年3月に NICT が国際宇宙ステーシ ョンと地上間での秘密鍵共有と高秘匿通信に成功している。 【出典】矢野経済研究所(2022) 「量子技術関連技術・サービス 7 分野の世界市場規模予測」を基に MRI 作成 図表 44 世界の量子技術市場予測 44 図表 45 衛星量子鍵配送 (4)サイバーセキュリティ サイバーセキュリティ市場は 2023 年時点で 1670 億ドルの市場規模があり、 今後も年平均 8.4%で成長していくと見込まれている。その背景にはサイバー 攻撃の複雑化・巧妙化があり、サイバー攻撃リスクの増大に伴い、市場規模の 拡大傾向は今後も継続するものと考えられる。他方で、サイバーセキュリティ 市場のシェアを見てみると、米国企業が半分を占めており、我が国企業の存在 感は低いと言わざるをえない。また、我が国はサイバーセキュリティ人材も不 足しており、我が国全体でサイバーセキュリティ人材が 11 万人不足している とする調査結果もある。 その一方で、我が国が強みとすべき AI や Beyond 5G の安全・安心な利用に 当たって、サイバーセキュリティの確保は不可欠な要素であり、我が国として サイバー攻撃への自律的な対処能力を向上させることが重要となる。 45 (10 億ドル) 【出典】Statista 図表 46 サイバーセキュリティ市場の推移 (%) 【出典】Statista 図表 47 サイバーセキュリティ市場の事業者シェア(2023) 46 【出典】ISC2(2023)「ISC2 サイバーセキュリティ人材調査」 図表 48 各国のサイバーセキュリティ人材数と不足数 47 3.1.2 戦略的に推進すべき技術領域(戦略4領域) 次期中長期において NICT に期待する役割(ミッション)である「国際競争力 の強化や経済安全保障の確保等をはじめとした我が国の重要政策の実現への貢 献」及び「民間投資や人材育成を活性化するための触媒となる産学官連携の中 核・連結点としての役割」を果たすため、我が国の重要政策の実現に不可欠な技 術であり、産学官一体となり、横断的かつ戦略的な取組を強力に推進すべきもの を「戦略領域」と位置付けることとする。 社会情勢の今後の見通しや近年の技術動向に鑑みると、我が国の重要政策の 実現に当たって不可欠な技術として、「AI・コミュニケーション」「Beyond 5G」 「量子情報通信」 「サイバーセキュリティ」の4つの技術領域を戦略領域とする ことが適当である。 これら戦略領域において、NICT が民間投資や人材育成を活性化するための触 媒となるべく、中長期的なビジョンを構想し、産学官で共有しながら、基礎的・ 基盤的な研究開発から社会実装までを連携して取り組んでいく産学官連携の中 核・連結点としての役割を果たすべきである。 戦略4領域における取組の方向性を以下に述べる。 図表 49 戦略的に推進すべき技術領域(戦略4領域) (1)AI・コミュニケーション1 『AI に関する暫定的な論点整理』 (令和5年5月 26 日 AI 戦略会議)でも言 及されているとおり、生成 AI は、産業革命やインターネット革命と同様に、 1 ここで言う「AI・コミュニケーション」とは、NICT が強みを有する自然言語処理などのコミュニケーション技術と AI 技術の連携を強化するとともに、双方の高度化を図っていくことを意図しており、コミュニケーションに関する AI 技術 に限定するものではない。 48 歴史の画期となる可能性を含んでいる。労働人口が急減する我が国においては、 社会全体で AI を利用することで生産性向上を図ることが不可欠であり、また、 AI は安全保障、災害対策、温暖化対策等の地球規模の課題においても重要な ツールである。 他方、生成 AI 市場のシェア上位を占める海外製 LLM は、外国語を中心とし た言語データによって学習がされており、日本の歴史、文化、慣習などに関す る質問に対して的確・正確に回答できない場合がある。このため、生成 AI の 日本社会への実装を促進するためには、日本語データによって学習がされ、日 本固有の文化や慣習、歴史解釈等を適切に考慮できる LLM を活用することが 重要となる。 これまで NICT では、自然言語処理技術の研究開発に取り組み、その成果を 社会実装に繋げることにより、コミュニケーションの高度化に貢献してきた。 NICT が培ってきた自然言語処理に代表されるコミュニケーション技術と AI 技 術とを結びつけることで、生成 AI との円滑なコミュニケーションが可能とな り、生成 AI の社会実装を促進することが期待される。そして、そのためには、 コミュニケーション技術と AI 技術との連携を強化するとともに、双方の高度 化を図っていくことが重要である。 以上の認識の下、次期中長期においては、特に以下の事項を戦略的に推進す べきである。 ・高品質な日本語データを NICT で継続的に蓄積し、国内企業による LLM 開発 に提供するとともに、その開発を支援することにより、我が国における信頼 性のある AI 開発力を強化する。 ・LLM の出力の信頼性・バイアス等について、国内公的機関や安全保障等のニ ーズを踏まえ、広く用いられている単なる質問リストではない、LLM 同士の 議論や関連情報確認技術を応用した能動的評価基盤を構築する。 ・次世代の AI・コミュニケーション技術(例:分野特化型 AI の連携、諸外国 の文化等を考慮した翻訳技術、同時通訳を含む高精度な翻訳等)の研究開発 を産学官で推進する。 (2)Beyond 5G NICT は、これまでもフォトニックネットワーク関連技術等において、産学 官連携の中核・連結点としての役割を果たし、我が国発の技術の社会実装を実 現してきた実績がある。これから社会実装フェーズを迎える Beyond 5G にお いても同様に、情報通信分野を専門とする我が国唯一の国立研究開発法人とし て、中長期的なビジョンの下で産学官連携の中核・連結点としての役割を果た していくべきである。 49 社会実装に向けての特に重要なポイントは、如何にしてユーザが魅力を感じ るユースケース/サービスを創出していけるかという点である。これは研究者 やインフラ事業者のみでは困難であるため、社会実装に向けた研究開発に当た っては、ユーザ価値を起点として、素材・部品メーカーからアプリケーション・ システムベンダーまで広くステークホルダーを巻き込みながら、NICT が“イ ノベーションハブ”となって共創連携を築いていく必要がある。 以上の認識の下、次期中長期においては、特に以下の事項を戦略的に推進す べきである。 ・社会実装に向けた産学官連携の中核・連結点としての役割を強化するととも に、我が国として戦略的に研究開発を推進するため、目利き人材の確保・活 用や NICT の自主研究で培った成果・知見・ノウハウとの連携等によって研 究資金配分機関としての機能を強化し、ユーザ価値を起点としたユースケー ス/サービスの創出を促進する。 ・Beyond 5G のネットワークからサービスまでを総合的に検証できるようテス トベッドの機能を拡張し、イノベーションハブとして民間企業等に提供する。 ・宇宙通信分野において、民間企業による積極的な投資が進められていること も踏まえ、国立研究開発法人として取り組むべき課題を十分に見極めた上で、 ユーザニーズに沿った形での研究開発に取り組む。 (3)量子情報通信 我が国では、 『量子技術イノベーション戦略』、 『量子未来社会ビジョン』、 『量 子未来産業創出戦略』及び『量子産業の創出・発展に向けた推進方策』(令和 6年4月9日量子技術イノベーション会議)を踏まえ、量子情報通信に関する 基礎研究や応用研究に着実に取り組んできたところであるが、先端分野である 量子技術の進展は著しく、世界各国で国家戦略が策定されるなど、国を挙げて 研究開発や人材育成等に取り組む動きが活発化していることは前述のとおり である。 このような中、NICT が研究開発等に取り組んできた量子暗号技術は社会実 装フェーズを迎えつつあり、我が国の強みを最大限活かしつつ、ユースケース 創出に向けた取組を加速化させる必要がある。また、世界トップレベルの技術 力を維持するため、量子情報通信のさらなる高度化に向けた研究開発に取り組 む必要がある。 以上の認識の下、次期中長期においては、特に以下の事項を戦略的に推進す べきである。 ・様々な分野の潜在的なユーザを巻き込んで多様なユースケースを検証し、社 会実装に向けた取組を加速化させるため、複数の企業間を結ぶ量子暗号ネッ 50 トワークテストベッド「東京 QKD ネットワーク」について、長期間の安全な データ保管や遠距離拠点からの接続等が可能となるよう高度化・拡充する。 ・日本の技術優位性を引き続き確保するため、量子鍵の生成速度の高速化技術 や量子状態のまま中継伝送する技術、量子セキュアクラウドを実現する技術 等の研究開発・国際標準化を推進する。併せて、衛星量子暗号通信について、 JAXA や関係事業者と連携し、小型低軌道衛星に搭載可能な量子暗号装置の 開発や当該装置を用いた衛星と可搬型地上局間の実証実験などに取り組む。 ・中長期的視点から、量子中継技術等の次世代の量子情報通信技術を実現する ための研究開発や量子人材の育成に取り組む。 (4)サイバーセキュリティ 深刻化・増大・加速するサイバーリスクへの対応は喫緊の課題であり、サイ バー攻撃対処能力の向上は必要不可欠である。特に、サイバーセキュリティ製 品・サービスや一次データ(マルウェア、脆弱性、管理ログ等)の収集・分析 は海外依存度が高く、我が国の安全・安心を支えるサイバーセキュリティの確 保に当たって、国産化を進めていく必要がある。 また、サイバー攻撃の複雑化・巧妙化への対処として AI を活用していくこ とも重要であり、いわゆる“AI for Security”によって情報収集・分析能力 をさらに高度化させるとともに、 “Security for AI”の検討も推進すべきであ る。 その他 DDoS 攻撃対策等も含め、これらの取組を進めるに当たっては、NICT が信頼できる公的機関としてデータを収集・蓄積し、NICT の知見を付加して フィードバックするなど、産学官連携の中核・連結点としての役割を果たすべ きである。 加えて、我が国の安全保障の観点から長期的・継続的に維持することが求め られる暗号研究にも、継続的に取り組んでいくべきである。 以上の認識の下、次期中長期においては、特に以下の事項を戦略的に推進す べきである。 ・技術開発やサービス開発の源泉となるサイバーセキュリティに関する一次 データ収集能力を強化する。また、ステークホルダーとの調整やコンプライ アンスの遵守、技術移転モデルの確立などを進める能力を有する人材も含め た体制の整備も併せて推進する。 ・収集した一次データの分析能力を強化するため、AI 分析基盤を構築し、AI for Security を推進する。また、AI システムへの攻撃可能性の検証といっ た AI のセキュリティ検証技術等(Security for AI)の検討も推進する。 ・高度化・複雑化するサイバー分野の脅威・攻撃に対応できる現場人材を育成 51 するため、NICT が有する最新のデータを活用したサイバーセキュリティ演 習を推進する。 52 3.2 重点的に推進すべき基礎的・基盤的研究開発分野等 3.2.1 2030 年代に目指すべき社会像及び研究開発等を通じて貢献すべき目標 (1)2030 年代に目指すべき社会像 上記 1.1.1 で見てきたとおり、2030 年代には「人手不足の進展」 「インバウ ンドの拡大」「エネルギー消費の増大」「自然災害の激甚化」「サイバー空間上 のリスクの増大」といった課題の顕在化が想定される。このような社会情勢の 変化と見通しを踏まえ、我が国の安全保障の確保と国際競争力の強化の観点か ら 2030 年代に目指すべき社会像を以下のとおり設定することとする。 ○ 激甚化する自然災害に対応した強靭な社会 ○ 誰もが ICT の恩恵を享受でき、安心して技術を利用できるデジタル安全社 会 ○ クリーンエネルギーとデジタルインフラによる持続可能で活力のある社会 ○ 労力の最小化と利益の最大化を可能にする人間中心の AI 社会 (2)研究開発等を通じて貢献すべき目標(貢献目標) 2030 年代に目指すべき社会像を踏まえ、NICT が研究開発等を通じて貢献す べき目標(貢献目標)を以下のとおり設定することとする。 ○ 災害に強く、強靭な社会インフラの構築 ○ 安全で、信頼できる情報通信環境の整備 ○ GX・DX を支える持続可能な ICT 基盤の構築 ○ DX を通じた効率化・合理化、新たな価値の創造 53 3.2.2 重点的に推進すべき基礎的・基盤的研究開発分野及び重点的に取り組む べき研究開発課題 次期中長期において NICT に期待する役割(ミッション)である「国際競争力 の強化や経済安全保障の確保等をはじめとした我が国の重要政策の実現への貢 献」及び「機構法に基づく社会経済活動を根底から支えている重要業務の継続的 かつ安定的な実施」を果たすため、我が国社会を支える情報通信分野の基礎的・ 基盤的な技術であり、中長期的な視点に立って研究開発等に取り組むべきもの を「重点分野」と位置付けることとする。なお、 「重点分野」は、言わば NICT の コア・コンピタンスとなるべき研究開発分野であり、中長期的な視点から、継続 的に研究開発等に取り組むことを想定している。一方、 「戦略領域」は、当該中 長期期間において、我が国の重要政策の実現に不可欠な技術として特に注力す べき技術領域であり、 「重点分野」の中でも当該技術領域の研究開発等に集中的 に取り組むとともに、NICT が産学官連携の中核となり、社会実装に向けた横断 的かつ戦略的な取組を強力に推進していくことを想定している。 NICT が、ICT を専門とする我が国唯一の国立研究開発法人として蓄積された 技術力や知見・経験等を最大限活用する観点から、 『第5期中長期目標』から引 き続き、 「電磁波先進技術」 「革新的ネットワーク」 「サイバーセキュリティ」 「ユ ニバーサルコミュニケーション」 「フロンティアサイエンス」の5分野を重点分 野に位置付けることが適当である。 そして、これら重点分野の研究開発等を通じて、2030 年代に目指すべき社会 像の実現に貢献すべきである。 貢献目標に資する技術として、特に重点的に取り組むべきものを「重点課題」 と位置付け、重点5分野における取組の方向性を以下に述べる。 図表 50 重点的に推進すべき基礎的・基盤的研究開発分野 54 図表 51 「戦略領域」「重点分野」 「重点課題」の関係(イメージ) (1)電磁波先進技術 ①リモートセンシング技術 防災・減災をはじめとする社会的課題の解決に向けて、様々な周波数帯の 電磁波を用いて平常時・非常時を問わず大気中の水蒸気・風・雲・降水等の 分布や動き、地表面の起伏・状態等を高精度に観測・分析・把握する、新た なリモートセンシング技術の研究開発を行う。フィジカル空間でのセンシン グとサイバー空間での解析・意味付けを融合させるセンシング技術の研究開 発を行う。 ②宇宙環境技術 大規模太陽フレア等による宇宙環境の変動が地上及び地球近傍宇宙にお ける通信・放送・測位・航空・人工衛星運用等の重要社会インフラの安全性 に与える影響を軽減するために、地上や宇宙からの電離圏・磁気圏・太陽観 測データに基づく宇宙環境監視技術と、AI・シミュレーション・データ同化 モデル等による高精度な宇宙環境予測技術により宇宙天気予報を高度化し、 社会的ニーズを踏まえた宇宙天気予報・警報等の情報を配信する。 ③電磁環境技術 多種多様な機器がネットワークに接続する Beyond 5G 時代の複雑な電波 環境において、実環境の EMC(電磁環境)問題に対して安全・安心な電波環 境の構築を目指し、実環境の電波モニタリングデータの収集・蓄積・解析、 55 通信機器及び電気電子機器の評価法、テラヘルツ帯を含む電波の計測・制御 及び機器の較正、人体に関する電波ばく露評価技術の研究開発を行い、国際 標準化活動や技術基準策定等に寄与する。 ④時空標準技術 常時生成する標準周波数及び日本標準時において、その周波数域を拡張す ると共に精度・信頼性を向上させ、同時にその精度向上に適した基準周波数 の比較・伝送方法の研究開発を行う。また、サイバー空間とフィジカル空間 の時空間同期に不可欠な原子時計の小型化技術、ネットワーク上に原子時計 を分散配置する技術、高精度な標準時を供給する技術の研究開発を行う。 ⑤デジタル光学基盤技術 非地上系ネットワーク(NTN)光リンクに代表される空間光通信、モビリ ティ、ディスプレイ等の多様な分野においての応用が期待される、軽量・安 価かつ高機能なプリント型光学素子の高度化を目指し、設計・実装・補償・ プリント技術等を含むデジタル光学基盤技術の研究開発を行う。 (2)革新的ネットワーク ①ネットワークアーキテクチャ技術 情報流通の大容量化、広域化、高信頼化等を支えるネットワーク基盤技術 の繋がりを俯瞰し融合を促進するアーキテクチャを示す。また、低消費電力 化やカバレッジ拡張に不可欠なネットワーク基盤におけるテレメトリー技 術、管理・制御 AI を含む高度 ICT 基盤管理制御技術、および、AI を用いた 推論処理・分散リソース最適化、データセキュリティ等の機能を包含した高 信頼ネットワーク内コンピューティング技術の研究開発を行う。 ②フォトニックネットワーク基盤技術 増大する通信トラフィックを支えるために、光ネットワークにおける高密 度空間多重と波長多重の超並列化等による大容量光ファイバ通信技術を確 立する。光ネットワークの安定運用や資源有効利用を目指して、高機能光伝 送・光モニタリング・光ネットワーク利活用技術の研究開発を行う。また、 低軌道衛星間ネットワークの大容量化に向けて、自由空間光ネットワーク技 術の研究開発を行う。 ③光・電波融合アクセス基盤技術 ユーザ(人・モノ)近傍のネットワークを大容量・低遅延・低消費電力に 56 するため、高度に集積された新たな超高速・空間多重集積 ICT ハードウェア 技術を確立する。さらに、光・電波を融合した多様な伝送メディア間を周波 数によらず効率的にかつシームレスに接続する技術と、これに計測・計算機 能を高度に統合する技術の研究開発を行う。 ④次世代ワイヤレス技術 無線ネットワークの大容量化に不可欠な周波数資源の利用効率向上を目 指し、ミリ波帯・テラヘルツ帯を含む周波数や適用エリアが異なる無線シス テムを利活用するマルチスケールネットワーク統合技術の研究開発を行う。 また、無線システムの評価基盤であるワイヤレスエミュレータを拡張し、干 渉制御、無線エリアの知的制御等を評価する技術を確立する。 ⑤宇宙通信基盤技術 地上から衛星・深宇宙をシームレスにつなぐための基盤技術の確立を目指 し、地上系/非地上系(TN-NTN)統合ネットワークの研究開発を行う。 また、 深宇宙通信技術等の研究開発を通じて、実用化のための基盤技術を確立する。 さらに、衛星制御技術やオールバンドアンテナ共用技術、超小型光端末技術、 補償光学技術、Ka/Q/V 帯電波伝搬特性評価・解析技術に基づくユニバーサル NTN プラットフォームの研究開発を行う。 ⑥レジリエント ICT 基盤技術 災害や障害等の様々な事象が情報通信ネットワークに与える影響を最大 限に抑制し、迅速に正常化することを目指した、 障害抑制技術の研究開発 を行う。また、災害(津波、火山噴火等)を迅速かつ正確に検知・通報する ための広域・高感度センサとセンサデータ収集・処理及び解析・通知技術等 の研究開発を行う。 (3)サイバーセキュリティ ①ヒューマン・センタード・サイバーセキュリティ技術 人間の社会活動の基盤となるインターネット上の脅威に適切に対処する ため、我が国独自のサイバー脅威インテリジェンス基盤技術の確立を目指す。 そのために、多種多様なサイバー攻撃の観測・分析技術、様々な機関等から 発信される脅威情報の大規模収集・分析技術及び脅威インテリジェンス生成 技術等の研究開発を行う。また、新たな脅威に対処するため、Beyond 5G 実 現に向けたセキュリティ検証技術やローレイヤ・セキュリティ技術、人間に 関するセキュリティを扱うユーザブル・セキュリティ技術や脳情報通信融合 57 セキュリティ技術の研究開発を行う。 ②AI×サイバーセキュリティ技術 AI 技術を活用し、セキュリティ対策に有用な情報をリアルタイムに導出 する「AI for Security(AI を用いたセキュリティ)」技術の研究開発を行 う。また、AI モデルや AI 搭載システムへの攻撃に対する安全性を検証・評 価し、信頼性の高い AI 技術を構築する「Security for AI(AI のためのセキ ュリティ)」技術の研究開発にも取り組む。さらに、当該研究分野の国際競 争力強化のため、積極的に国際連携を推進する。 ③次世代暗号・プライバシー保護技術 量子コンピュータ時代に安全に利用できる暗号基盤技術の確立を目指し、 現代暗号に加え、耐量子計算機暗号を含む次世代暗号技術の研究開発及び安 全なデータ利活用を促進するプライバシー保護技術等の研究開発を行う。ま た、安心・安全な国民生活に貢献するために、我が国の電子政府推奨暗号リ ストの維持・管理を行う。 ④サイバーセキュリティ産学官連携拠点形成 我が国のサイバー攻撃対処能力とセキュリティ自給率の向上に貢献する ため、サイバーセキュリティ分野の産学官連携拠点を形成し、サイバー攻撃 情報等の大規模な収集・分析・共有やサイバー攻撃観測技術・ノウハウ等の 共有を行い、国内の解析者コミュニティを醸成する。また、高度な SOC(セ キュリティオペレーションセンター)人材の育成、国産セキュリティ製品の 評価と開発元へのフィードバックの提供、国内組織向けのより高度なサイバ ー演習環境・教材の開発・提供等の活動を行う。さらに、我が国の政府機関 等に安全性と透明性の検証が可能なセンサーを導入し、得られたマルウェア 情報等の集約・分析・情報提供を行う。なお、当該拠点の形成に必要となる 研究開発、解析能力の確保、情報発信、国内外の組織との連携等についても 実施する。 ⑤サイバーセキュリティに関する演習 国の機関や地方公共団体等のサイバー攻撃対処能力の向上に貢献するた め、最新のサイバー攻撃に関する知見を踏まえた実践的なサイバー演習を実 施する。その際、オンライン形式の演習の実施や、演習基盤を通じて得られ た各種データ等の分析を通じて、演習の効率化や受講効果の向上を図ること とする。また、機構におけるサイバーセキュリティ研究と演習業務で得られ 58 た知見等を活用し、若手セキュリティ人材の育成を行う。そのほか、人材育 成の遂行に必要となる研究開発や普及啓発等についても実施する。 ⑥IoT 機器のサイバーセキュリティ対策の促進 IoT 機器のサイバーセキュリティ対策に貢献するため、ID/パスワード設 定の脆弱性の調査(特定アクセス調査)、ソフトウェアの脆弱性を有する機 器の調査、マルウェア感染機器の調査を実施し、サイバーセキュリティの確 保のための措置を十分に講じていないと認められる IoT 機器について、当 該機器の管理者その他の関係者に対して必要な助言及び情報提供に関する 業務を実施する。その際、本業務の重要性等を踏まえ、情報の安全管理に留 意しつつ、関係機関と連携を促進するものとする。なお、当該業務の遂行に 必要となる研究開発や普及啓発等についても実施する。 (4)ユニバーサルコミュニケーション ①AI 複合体技術 高度な能力を持つ日本語特化型・多言語型の大規模言語モデル(LLM)を 開発すると同時に、多様な AI を連携させるプラットフォームも開発するこ とで、AI の創造性、多様性、信頼性を強化し、人間と AI の安全安心で高効 率な共同作業を可能にする技術を開発する。また、LLM 用の学習データの整 備・外部への提供を行うとともに、多種多様な LLM をタイムリーに深く評価 し、安全性の担保、弱点の克服に資する能動的評価基盤の開発も行うほか、 AI の自己認識、自己進化技術等の研究開発を行う。 ②マルチモーダル AI コミュニケーション技術 日本企業の更なるグローバル展開及び我が国が競争力を有するコンテン ツ関連の市場拡大等に貢献するため、言葉の壁のみならず文化の壁、リアル・ バーチャルの壁も超えて相互理解を促進させることを目指し、AI を活用し てマルチモーダルデータやコンテキストを扱うことができるコミュニケー ション技術を確立する。グローバル展開においては、我が国において重要性 が増しているグローバルサウスの言語も対象に含めたデータ基盤の構築・拡 大や、高精度な多言語処理技術の研究開発を行う。 (5)フロンティアサイエンス ①先端 ICT 基盤技術 新たなサイバーフィジカルシステムの創出や省エネルギー・低環境負荷社 会の実現に向けて、超高速・大容量無線通信技術、超高周波デバイスの高度 59 化・集積化技術、小型軽量・低消費電力な光周波数分割等によるテラヘルツ 無線・計測・材料評価技術、高効率 ICT パワーデバイス・極限環境デバイス 技術等、先端的なデバイスとその集積技術に関する研究開発を行う。量子鍵 配送ネットワークの安全性の向上や高度化に資する量子インターネット実 現に向けた要素技術・量子状態を用いた情報処理技術の確立を目指し、量子 ノード内処理の高度化に向けた基盤技術の研究開発を行う。 ②フロンティア ICT 技術 通信・センシング技術等における周波数限界の拡大や超高速化、超高感度 化、処理能力の高度化と、省エネルギー・低環境負荷社会の実現等の次世代 の抜本的ブレークスルーにつながる先鋭基盤技術の創出に向けて、新奇機能 材料の開発やそれらを用いた超高速時空間光変調・超広帯域光無線融合デバ イス技術、超伝導デバイスによる極限的な光子検出技術や量子ビット技術、 超高効率短波長光デバイス技術等、先駆的な ICT デバイス機能の実現やその 集積及び高度化等に資する技術に係る研究開発を行う。 ③バイオインクルーシブ ICT 基盤技術 生物が生得的に備えている情報処理システムとのシームレスな情報通信 を通じた生態環境や健康等の見守りを実現するため、生物の様々な階層にお ける情報伝達ネットワークの計測・制御・情報読み出しに関するインターフ ェース技術の研究開発を行う。また、得られた情報の利活用技術として、情 報処理アルゴリズムの開発を進めるとともに、ソフトマテリアルを活用した ロボットシステム等の実現に向けた基盤技術の研究開発を行う。 ④脳情報通信基盤技術 究極のコミュニケーションを目指して、脳情報通信に関わる複数分野の融 合・高度化を通じて、人間の脳機能の理解を深めるとともに、「こころ」を 持って人に寄り添う次世代型脳情報インターフェース技術の実現に向け、多 感覚のダイナミックな情報によって変化する人の活動に関する脳機能デー タ等の取得を進め、包括的に解析できる基盤モデルの構築を目指す。また、 その成果を ICT に活用して、人間の Well-being の向上を支援する技術に係 る研究開発を実施し、普及を目指すものとする。 60 図表 52 重点分野及び重点課題 61 3.2.3 イノベーションの基盤となる研究開発課題 次期中長期において NICT に期待する役割(ミッション)のいずれにも寄与す るものとして、上記重点5分野に加え、我が国のイノベーションの基盤となる技 術の研究開発に取り組むべきである。 当該研究開発は特定の分野に該当するものではなく、NICT 内外の連携等を通 じて情報通信技術そのもののアップデートに資するものであり、中長期的な視 点から研究開発等に取り組むべきものである。 イノベーションの基盤となる研究開発課題及びその取組の方向性を以下に示 す。 ①次世代サイバーフィジカルシステム(xCPS) Society 5.0 の礎となるフィジカル空間とサイバー空間が高度に融合され た次世代サイバーフィジカルシステム(xCPS)の実現を目指し、異業種間のデ ータや異技術間をシームレスに連携・統合するデジタルツイン自己最適化、 デジタルツイン間連携・融合、オーケストレーション技術、複数の技術やデ ータを時空間同期の上で CPS サービスの要求に適用するためのマルチモー ダル適用技術、サイバー空間とフィジカル空間を繋ぐネットワーク環境の大 きな変動や計算機能力が偏在する特異な環境(宇宙・体内・洋上等)でも高 信頼なアクチュエーションを可能とする CPS 構成技術の研究開発を行う。 ②テラヘルツ波 ICT プラットフォーム技術 超高速・大容量無線通信が可能なテラヘルツ帯の電波利用の促進に寄与す るため、電力精密計測基盤技術及び周波数精密計測基盤技術の研究開発を行 う。 ③グローバル量子セキュアネットワーク技術 現代暗号の安全性の破綻が懸念されている量子コンピュータ時代におい て、盗聴を確実に検知可能で、あらゆる計算機でも解読不可能な、極めて安 全な通信及びデータ保管基盤の提供を目指し、量子鍵配送ネットワーク技術 及び超長期データ分散保管技術やデータの安全な二次利用を可能とする技 術(量子セキュアクラウド)等の研究開発を行う。さらに、グローバル規模 での展開を目指し、古典ネットワーク符号化技術との融合や衛星等を介した 長距離量子鍵配送技術の高度化を実現する。 ④Beyond 5G/6G 時代のテストベッド 我が国の Beyond 5G 分野の国際競争力強化のために、6G 時代のシステム・ 62 サービス検証に必要なテストベッドを構築する。サイバーフィジカルシステ ム(CPS)アプリケーション開発環境、デジタルツイン環境及び共用・協調 型の通信・計算処理統合評価環境等のシステム構築技術並びに仮想データ・ 仮想端末、ネットワークエミュレーション、外部リソースとの連携及びクラ ウド上でのエミュレーション高信頼化等に必要な技術の研究開発を行う。 ⑤先端 ICT デバイスラボ オープンイノベーション拠点として、異なる材料系・異なる素子仕様に対 応したデバイス加工や計測などを可能とするクリーンルームの安全かつ効 率的な運用を通じて、デバイス加工や計測などに関する高度なノウハウを蓄 積し、そのノウハウをクリーンルームの機能強化に生かしていくことで、先 端 ICT デバイスに係る研究開発サイクルの高速化に寄与し、効率的な研究開 発成果の創出を支援する。 63 第4章 NICT の社会実装機能・外部連携機能等 次期中長期において NICT に期待する役割(ミッション)である「民間企業等 におけるイノベーションを支援する機能の充実・強化」等を果たすため、NICT が 有する施設・設備や蓄積された知見等のさらなる有効活用を図りながら、イノベ ーションハブ機能(テストベッド、GPAI 東京専門家支援センター)、研究資金配 分機関としての機能(Beyond 5G(6G)基金事業)、スタートアップ支援等の充実・ 強化を図るべきである。 なお、委託研究、知的財産の取得・活用、国際標準化及び出資(NICT 成果活 用型等)など、NICT の研究開発成果を民間企業や大学等に橋渡しするための機 能を「社会実装機能」、テストベッド、サイバーセキュリティ産学官連携拠点、 GPAI 東京専門家支援センター、情報通信研究開発基金、共同研究、スタートア ップ支援及び学習用大規模データなど、NICT が有する施設・設備や蓄積された 知見等を活用して民間企業等のイノベーションを促進するための機能を「外部 連携機能」と整理した。 NICT の社会実装機能・外部連携機能等の充実・強化の方向性を以下に述べる。 図表 53 NICT の主な社会実装機能・外部連携機能等(現状) 64 4.1 我が国発の技術の社会実装を促進するためのイノベーションハブ機能の強 化 4.1.1 “使いたいテストベッド”の整備 NICT では、ICT 分野の技術検証と社会実証の一体的な推進を可能とする検証 プラットフォームとして、様々なテストベッドを整備してきた。NICT が整備す るテストベッドは大きく「自主研究の成果検証のためのテストベッド(例:学習 用言語データの整備等に用いる計算機基盤)」「補助事業の実施に必要なテスト ベッド(例:実践的サイバー防御演習で用いる仮想環境)」 「外部に供用するテス トベッド(例:高信頼・高可塑 B5G/IoT テストベッド)」の3種類に分類するこ とができる。今後、NICT が我が国発の技術の社会実装を促進するためのイノベ ーションハブとなり、産学官連携の中核・連結点としての役割を果たしていくに 当たっては、 「外部に供用するテストベッド」を、NICT が“使ってほしいテスト ベッド”ではなく、ユーザが“使いたいテストベッド”へと改善していく必要が ある。 このため、 「外部に供用するテストベッド」について、外部機関の利用ニーズ 等を調査・分析し、機能や提供方法等の見直しを行うべきである。その際には、 有償提供について検討するとともに、費用対効果等を勘案し、必要に応じて整 理・重点化することも検討すべきである。 特に、戦略領域でもある Beyond 5G の社会実装の加速に資するテストベッド については、企業等の実ニーズを踏まえ、ネットワーク(下位レイヤー)だけで はなくサービス(上位レイヤー)までを含む Beyond 5G アーキテクチャを総合 的に検証できるものとすべきである。その際、NICT が検証環境の全てを用意・ 運用するのではなく、大学・企業等外部機関との連携を推進し、NICT のテスト ベッドと外部機関のテストベッドの相互接続を可能とするなど、柔軟かつ拡張 性の高い検証環境を志向すべきである。 さらに、テストベッドを活用した研究開発の成果を次のテストベッドへと取 り込んでいくことで、テストベッド自体の高度化も図っていくべきである。また、 テストベッドを適切に管理・運用できる人材の育成・確保等にも努めるべきであ る。 4.1.2 NICT が有する施設・設備や蓄積された知見等のより一層の有効活用 NICT は、テストベッドをはじめとした施設・設備や、研究開発成果に係る特 許やプログラム、生成 AI の学習用言語データをはじめとした科学的データセッ トなど、有形・無形の様々な資産を有している。これらの資産を積極的に外部機 関にも提供することで、我が国企業のイノベーションを促進すべきである。 このため、施設・設備の貸与方法や SaaS 型での成果展開を含め、保有資産の 65 有効活用策について検討を深めるべきである。 4.1.3 GPAI 東京専門家支援センターの運営 人間中心の AI 開発と利用促進のためのイニシアティブである GPAI(The Global Partnership on Artificial Intelligence)には、実証的な知見に根差 したプロジェクト活動の推進が期待されており、生成 AI の安全性を確保するた めの実践的なアプローチを支援する場として、2024 年7月、GPAI 東京専門家支 援センターが NICT 内に設置された。 NICT において GPAI 東京専門家支援センターの業務を担う意義は大きく2つ あると考えられる。1つ目は、NICT の専門的見地からの GPAI への貢献である。 AIの研究開発に取り組む NICT が専門家支援業務を行うことで、技術的・専門 的知見を GPAI に提供することが可能となり、各国専門家の知見と融合すること で、GPAI においてより高いレベルの専門的活動が可能となる。2つ目は、GPAI の活動を通じた NICT の研究開発・社会実装への貢献である。グローバルに活動 する各国専門家の知見や GPAI の国際動向が NICT に共有されることで、AI を取 り巻く国際動向と整合性の取れた研究開発の推進が期待できる。さらに、GPAI の 活動が NICT を通じて我が国の AI 開発コミュニティにも発信されることで、我 が国全体の AI の研究開発・社会実装への貢献も期待される。 これらの意義を踏まえ、NICT は、GPAI の国際的な専門家活動への支援を通じ、 AI に関する技術的な知見に加え、AI の安全性を含む倫理的・法的・社会的課題 (ELSI)に関する知見を深め、その知見を NICT の研究開発及び国内の関係コミ ュニティに還元していく役割を積極的に担うべきである。 66 4.2 NICT の研究資金配分機関としての機能の強化 2023 年度に、Beyond 5G を始めとする革新的な情報通信技術の研究開発を推 進するため、NICT に恒久的な基金(情報通信研究開発基金)が造成され、NICT が研究資金配分機関、いわゆる「ファンディング・エージェンシー」としての機 能を有することになった。しかし、NICT はまだ研究資金配分機関としてのノウ ハウを蓄積している段階にあり、継続的に機能強化に取り組んでいく必要があ る。 例えば、海外では、競争的研究費の注力領域の設定において、研究者からの情 報提供を採用する方式を導入している例もあり、研究者の考える重要な技術が 競争的研究費のスコープから漏れないようにし、提案者と競争的研究費提供側 の相互理解を深めることが行われている。社会実装・海外展開を目指した戦略的 投資を推進するため、このような事例も参考に、研究者や企業等との対話を通じ て、社会ニーズを踏まえた課題・テーマ設定を行うことが必要である。また、革 新的な技術の開発やその社会実装・海外展開においては国際連携が必要不可欠 であり、国際共同研究やアカデミアと産業界の国際連携を一層充実させるため、 国際連携を見据えた重点投資にも取り組む必要がある。さらに、人材育成・供給 と産業振興との連携を円滑に進めるため、文部科学省が所管する国立研究開発 法人科学技術振興機構(JST)など、所管省庁を跨いだ国立研究開発法人間の連 携にも取り組むべきである。 これらの観点も踏まえ、NICT が社会実装・海外展開を目指した戦略的投資を 推進するプロモーターとなり、目利き人材の確保・活用とともに、NICT の自主 研究で培った成果・知見・ノウハウとの連携を含め、研究者や企業等との対話を 通じて、市場や技術の動向、社会ニーズを踏まえた課題・テーマ設定を行うこと で、長期的ビジョンの下で企業等と連携して、社会実装に向けた研究開発を推進 すべきである。 また、革新的な情報通信技術の創出と革新的な構想力を有した研究人材育成 を目指す JST CRONOS の基礎研究等の成果を、社会実装・海外展開を目指した研 究開発の支援を目的とする Beyond 5G(6G)基金へと円滑に繋げるため、所管省庁 を跨いだ国立研究開発法人間の連携にも取り組むべきである。 加えて、国際共同研究プロジェクトの一層の充実を図り、海外展開を見据えた 戦略的投資を推進すべきである。また、共同研究等を意義ある取組とするため、 連携先相手国の科学技術政策等の動向を多角的に理解し、相手国との信頼関係 を醸成することや、地政学的な状況を踏まえつつ連携先相手国を精査すること が重要である。 67 4.3 NICT における研究開発成果の社会実装推進体制の強化 4.3.1 NICT の技術シーズと外部のニーズの橋渡し機能の強化 NICT における研究開発成果の社会実装事例としては、マルチコア光ファイバ や多言語音声翻訳、サイバー攻撃統合分析プラットフォーム“NIRVANA 改”など が挙げられる。これらの事例から、NICT における研究開発成果を社会実装に結 び付けていくためには、産学官連携体制の構築のほか、ワークショップ等を通じ たユーザニーズの的確な汲み取りや知的財産のライセンスをはじめとした NICT と外部機関との橋渡し機能の重要性が改めて浮き彫りになった。 研究開発成果の社会実装に当たっては、市場のニーズを的確に汲み取り、保有 する技術シーズとの橋渡しを円滑に実施するための体制が不可欠である。この ため、マーケティングや製品化・事業化支援、知的財産の管理・活用などについ て、成果活用等支援法人といった体制も含め最適な体制の在り方を検討し、NICT の技術シーズと外部機関のニーズの橋渡しを担う体制を整備すべきである。 また、社会情勢の変化や技術の進展のスピードに的確に対応するため、研究開 発の新規開始・継続・方向転換等の方針決定に当たっては、適時・適切な橋渡し によって着実に製品化・事業化に結び付けていくことができるよう、ベンチマー クの柔軟な見直しを含め、経営視点を適切に取り入れるべきである。 4.3.2 大学・企業等外部機関との連携の推進 研究開発を推進するに当たっては、成果の社会実装を見据えて、大学・企業等 の外部機関と初期段階から連携し、市場のニーズを的確に汲み取るとともに、適 時適切に技術移転することで、製品化等に結びつけていくことが重要である。ま た、外部機関との連携に当たっては、組みやすいパートナーとのみコンソーシア ムを形成するのではなく、組むべきパートナーを見極めた上でコンソーシアム を形成していくことが重要である。 特に社会実装まで相応の期間を有する基礎研究については、基礎研究→応用 研究→社会実装と段階を踏んで社会実装に繋げる従来型のリニアモデルではな く、初期段階から外部と連携して研究開発を進めることにより、部分的な社会実 装の早期実現を図るべきである。 68 4.4 NICT における人材の育成・確保 4.4.1 新技術に対応した研究人材の育成・確保 急速な進化・普及を見せる AI やサイバーセキュリティをはじめ、変化の速い ICT 分野においては、今後重要性が増す研究分野をあらかじめ予見することは難 しく、研究分野だけを基準とした研究人材の育成・確保には限界がある。このた め、研究分野だけではなく、技術や個人にも着目した柔軟な評価やインセンティ ブ付与の仕組みを検討すべきである。 また、共同研究や製品化・事業化等の社会実装に向けた大学・企業等外部機関 との連携・人材交流に取り組むとともに、その取組を促進する観点から、研究者 が研究開発成果を当該研究分野以外の者にも理解できるように分かりやすく対 外発信するためのスキルを身に着けられるよう、必要な研修機会等を設けるべ きである。加えて、海外の大学・企業等とのグローバルな人材交流に取り組むこ とも重要である。なお、その際には、知的財産の適切な管理や研究セキュリティ・ インテグリティの確保に留意することが必要である。 4.4.2 技術移転等に関する専門人材の確保・活用 研究開発成果の社会実装は研究者のみで成しえるものではなく、研究成果の 活用や社会実装を支援できる人材や研究開発活動の企画・マネジメントをでき る人材が不可欠なことを踏まえ、マーケティングや製品化・事業化、知的財産の 管理・活用等を専門とする人材の充実を図るべきである。併せて、適切な権限の 付与など、これらの人材が活躍できる環境整備にも取り組む必要がある。 また、研究開発成果の対外発信に当たっては、外部専門家やコンサルタント (サイエンス・コミュニケータ)の有効活用を図ることも検討すべきである。 69 4.5 戦略的な標準化活動の推進 NICT では、毎年度「標準化アクションプラン」を策定し、研究開発成果に関 する国際標準化活動を推進している。その成果として、例えば、量子暗号通信の 国際標準化においては、関係事業者と共に ITU-T における検討を主導し、量子 鍵配送ネットワークの要求条件やアーキテクチャ等を規定する勧告に、我が国 の技術仕様を盛り込むことに成功している。国際標準化活動と研究開発の連携 を図るため、NICT は、国際標準化の動向を踏まえ、研究開発に取り組むことが 重要である。 また、今後、国際標準化活動が本格化していく Beyond 5G 関連技術を含め、 NICT が産学官連携の結節点となり、コミュニティの形成・運営等を通じて我が 国の標準化活動を後押ししていくべきである。その際には、標準化それ自体が目 的化することなく、その後のビジネス化・収益化も意識した戦略を検討する必要 がある。 さらに、NICT が有する知的財産や国際標準化に係る知見・経験・人材等のリ ソースを有効活用し、産学官連携の中核として、民間企業に対する成果展開やビ ジネス化への支援のほか、標準化スキルアップ研修制度の充実など今後の情報 通信分野の国際標準化活動を担う人材育成の支援にも積極的に取り組むべきで ある。 70 4.6 スタートアップ支援の推進 4.6.1 NICT の研究開発成果を活用するスタートアップの支援 「科学技術・イノベーション創出の活性化に関する法律」(平成 20 年法律第 63 号)に基づく「成果活用型出資制度」により、第1号出資案件として、2023 年度にインターステラテクノロジズへの出資が行われた。同制度は、公的機関で ある NICT による出資が民間投資の「呼び水」となることを企図したものであり、 関連する他の取組との連携も含め、効果的なリスクマネーの供給となるよう検 討すべきである。 また、NICT の研究者が起業する「NICT 発ベンチャー」についても、NICT にお ける研究開発成果の社会実装の担い手を増やす観点から、例えば、研究者が NICT に籍を残したまま起業しやすくしたり、経営人材とのマッチングを図ったりす るなど、研究者が利用しやすいスタートアップ支援制度となるよう見直しを行 うべきである。なお、見直しに当たっては、NICT 発ベンチャーの実態を調査・ 分析し、裏付けを持って取り組むことが重要である。 4.6.2 地域発 ICT スタートアップの支援 ベンチャー・キャピタリストや起業家等で組織された ICT メンターの協力を 得ながら、有望な起業家・起業家の卵の発掘(発掘フェーズ)から、ビジネスプ ランのブラシュアップ(育成フェーズ)、 「起業家甲子園」 ・ 「起業家万博」でのビ ジネスプランの披露(事業化支援・拡大フェーズ)までを一気通貫で支援する「全 国アクセラレータ・プログラム」について、プログラムを運用する中で明らかに なった課題を踏まえ、取組の改善を図るべきである。 具体的には、①研究者、特にグローバルで勝負できるディープテック領域の研 究者とその起業を支える起業家人材・サポート人材とのブリッジの強化、②プロ グラム卒業生によるコミュニティの形成と支援案件のフォローアップ、③地域 課題・社会課題の解決を目指すソーシャルインパクト型ビジネスへの支援の強 化、④地域中核企業・地域金融機関をはじめとする産学官金を巻き込んだ地域 ICT イノベーション・エコシステムの構築が考えられる。 71 参考資料 1.諮問書 2.情報通信審議会 情報通信技術分科会 技術戦略委員会 構成員名簿 3.情報通信審議会 情報通信技術分科会 技術戦略委員会 社会実装加速化ワーキンググループ 構成員名簿 4.開催経緯 1 1.諮問書 2 3 2.情報通信審議会 情報通信技術分科会 技術戦略委員会 構成員名簿 (敬称略 氏 主 査 名 令和7年1月30日現在) 主 要 現 職 田 仁 森 川 博 之 大柴 小枝子 〃 増 田 悦 子 公益社団法人全国消費生活相談員協会 理事長 専 門 委 員 秋 山 美 紀 慶應義塾大学 環境情報学部 教授 〃 飯 塚 留 美 一般財団法人マルチメディア振興センター 調査研究部 研究主幹 〃 今 井 哲 朗 東京電機大学 工学部 情報通信工学科 教授 〃 沖 理 専 門 委 員 主 査 代 理 専 門 委 員 委 員 相 五十音順 子 東京大学 特命教授 東京大学 大学院 工学系研究科 教授 京都工芸繊維大学 大学院 工芸科学研究科 教授 国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構 第一宇宙技術部門 地球観測研究センター センター長 〃 長 内 厚 早稲田大学 大学院 経営管理研究科 教授 〃 上條 由紀子 九州工業大学 社会実装本部 未来思考実証センター 特任教授 〃 川 添 雄 彦 日本電信電話株式会社 代表取締役副社長 副社長執行役員 〃 児 玉 俊 介 一般社団法人電波産業会 専務理事 〃 寺 田 健 二 日本放送協会 理事・技師長 〃 新 田 隆 夫 国立研究開発法人情報通信研究機構 理事 〃 平 田 貞 代 〃 宮 崎 早 苗 株式会社 NTT データ 公共・社会基盤事業推進部 シニア・スペシャリスト 〃 宮 地 悟 史 KDDI 株式会社 先端技術統括本部 先端技術研究本部 本部長 〃 宮 田 修 次 富士通株式会社 先端技術開発本部 エグゼクティブディレクター 〃 望 月 康 則 日本電気株式会社 NEC Fellow 芝浦工業大学 大学院理工学研究科 准教授 東北大学 大学院工学研究科 技術社会システム専攻 特任准教授 4 3.社会実装加速化ワーキンググループ 構成員名簿 (敬称略 氏 主任 名 平田 主 貞代 要 五十音順 現 職 芝浦工業大学 准教授 東北大学 特任准教授 上原 哲太郎 立命館大学 情報理工学部 教授 榮 藤 稔 大阪大学 先導的学際研究機構 教授 岡 﨑 直 観 東京科学大学 情報理工学院 教授 尾辻 泰一 東北大学 教授 立本 博文 筑波大学 ビジネスサイエンス系 教授 富田 章久 北海道大学大学院 情報科学研究院 教授 盛合 志帆 国立研究開発法人情報通信研究機構 執行役 経営企画部長 5 令和6年 11 月 26 日現在) 4.開催経緯 平成26年12月18日 平成27年 1月21日 第33回総会にて諮問 第106回情報通信技術分科会にて技術戦略委員会を設置 ■技術戦略委員会 令和6年10月25日 第50回 (1)「新たな情報通信技術戦略の在り方」の検討再開について (2)情報通信技術の研究開発の取組について (3)国立研究開発法人情報通信研究機構のこれまでの取組について (4)社会の変化と近年の技術動向等について (5)自由討議 令和6年11月11日 第51回 (1)我が国が強みを有する技術領域について (2)戦略的に推進すべき技術領域に関する事業者ヒアリング ・SB Intuitions 株式会社 代表取締役社長兼 CEO 丹波 廣寅様 ・マインドワード株式会社 代表取締役 CEO 菅谷 史昭様 ・株式会社東芝 上席常務執行役員 CDO 岡田 俊輔様 (3)自由討議 令和6年12月13日 第52回 (1)戦略的に推進すべき技術領域に関する事業者ヒアリング ・慶應義塾大学大学院 システムデザイン・マネジメント研究科 教授 神武 直彦様 A.T.カーニー株式会社 竹井 潔様 ・NICT 未来 ICT 研究所 所長 和田 尚也様 NICT Beyond5G 研究開発推進ユニット ユニット長 寳迫 巌様 株式会社日本触媒 エレクトロニクス&環境ソリューション事業部 高田 亮介様 ・情報セキュリティ大学院大学 学長 後藤 厚宏様 (2)自由討議 令和7年1月30日 第53回 (1)NICT が果たすべき役割について (2)重点的に推進すべき基礎的・基盤的研究開発分野について (3)自由討議 令和7年2月27日 第54回 (1)社会実装加速化 WG における検討状況について (2)第 5 次中間報告書 骨子(案)について (3)自由討議 令和7年3月28日 第55回 (1)第 5 次中間報告書(案)について (2)自由討議 6 ■技術戦略委員会 社会実装加速化WG 令和6年11月26日 第1回 (1)社会実装加速化ワーキンググループの設置について (2)主な検討項目・論点について (3)社会実装・外部連携等に関する NICT の取組について ・革新的情報通信技術(Beyond 5G(6G))基金事業 ・GPAI 東京専門家支援センター (4)関係者ヒアリング ・東京大学大学院教授 中尾 彰宏様 ・GPAI 東京専門家支援センター長 原山 優子様 (5)自由討議 令和6年12月16日 第2回 (1)社会実装・外部連携等に関する NICT の取組みについて (2)関係者ヒアリング ・KDDI 株式会社 先端技術統括本部 先端技術研究本部 本部長 宮地 悟史様 アンリツ株式会社 通信計測カンパニー モバイルソリューション事業部 ソリューションマーケティング部 課長 引野 望様 ・フォーアイディールジャパン株式会社 代表取締役社長 杉原 美智子様 及び Coalis ジェネラルパートナー 上原 仁様 (3)自由討議 令和7年1月20日 第3回 (1)社会実装・外部連携等に関する NICT の取組みについて ・サイバーセキュリティ(産学官連携) ・国際標準化 ・社会実装推進体制 (2)関係者ヒアリング ・株式会社レインフォレスト 代表取締役社長 岡田 晃市郎 様 ・内田・鮫島法律事務所 弁護士 鮫島 正洋 様 ・株式会社三菱総合研究所 (3)自由討議 令和7年2月18日 第4回 (1)論点整理(案)について (2)自由討議 令和7年3月12日 第5回 (1)第 54 回技術戦略委員会における主なご意見と対応方針について (2)報告書(案)について (3)自由討議 7

資料3

資料 53-1-3 情 通 審 第 ※ 号 令 和 7 年 7 月 1 5日 総 務 大 臣 村 上 誠 一 郎 殿 情報通信審議会 会 長 答 申 遠 藤 信 博 書 平成26年12月18日付け諮問第22号「新たな情報通信技術戦略の在 り方」について、審議の結果、別添のとおり答申する。

資料4

資料 53-2 情報通信技術分科会・各部会の活動状況 (第 52 回総会[R7.2.3]以降) 情報通信技術分科会 開催回数 第 185 回 (R7.2.13) 種別 答申 審議事項 「放送法第 20 条の 3 第 1 項に規定する配信用設備に係る技術的条件のうち、必 要的配信業務に用いる配信用設備の技術的条件」について 諮問 【令和 6 年 7 月 2 日付け諮問第 2047 号 】 「社会環境の変化に対応した電波有効利用の推進の在り方」について 【令和 7 年 2 月 3 日付け諮問第 30 号 】 議決 「情報通信技術分科会決定の一部改正」について 報告 「CISRP 会議の審議結果」について 【昭和 63 年 9 月 26 日付け電気通信技術審議会諮問第 3 号】 第 186 回 (R7.5.29) 第 187 回 (R7.6.4) 答申 「新世代モバイル通信システムの技術的条件」のうち、「第 5 世代移動通信システム (26GHz 帯/40GHz 帯)」に関する技術的条件について 議決 【平成 28 年 10 月 12 日付け諮問第 2038 号 】 「新たな情報通信技術戦略の在り方」に対する第 5 次中間報告書について 【平成 26 年 12 月 18 日付け諮問第 22 号】 報告 「端末機器の技術基準等への適合性に係るセキュリティ基準の見直し」の検討開始に ついて 【平成 17 年 10 月 31 日付け諮問第 2020 号】 情報通信政策部会 開催回数 第 63 回 (R7.2.13) 種別 諮問 審議事項 「地域社会 DX の推進に向けた情報通信政策の在り方」について 【令和 7 年 2 月 3 日付け諮問第 29 号】 第 64 回 (R7.3.28) 「地域社会 DX の推進に向けた情報通信政策の在り方」について 第 65 回 (R7.4.17) 「地域社会 DX の推進に向けた情報通信政策の在り方」について 【令和 7 年 2 月 3 日付け諮問第 29 号】 【令和 7 年 2 月 3 日付け諮問第 29 号】 第 66 回 (R7.5.22) 第 67 回 (R7.6.10) 「地域社会 DX の推進に向けた情報通信政策の在り方」について 議決 【令和 7 年 2 月 3 日付け諮問第 29 号】 「地域社会 DX の推進に向けた情報通信政策の在り方」について 【令和 7 年 2 月 3 日付け諮問第 29 号】 報告 「DX・イノベーション加速化プラン 2030」について 電気通信事業政策部会 開催回数 第 79 回 (R7.2.13) 種別 議決 審議事項 ① 「令和 6 年度第 4 四半期の電話のユニバーサルサービス交付金の算定方法の在 り方」について 【令和 6 年 12 月 2 日付け諮問第 1240 号】 第 80 回 (R7.4.2) 答申 ② 「電気通信事業政策部会における委員会の設置」の一部改正について 「令和 6 年度第 4 四半期の電話のユニバーサルサービス交付金の算定方法の在り 方」について 【令和 6 年 12 月 2 日付け諮問第 1240 号】 第 81 回 (R7.6.17) 諮問 「電話番号の犯罪利用対策等に係る電気通信番号制度の在り方」について 第 82 回 (R7.7.4) 諮問 「最終保障提供責務の導入等に伴う基礎的電気通信役務制度の在り方」について 種別 議決 審議事項 郵政政策部会 開催回数 第 39 回 (R7.6.5) 「郵便事業を取り巻く経営環境等の変化を踏まえた郵便料金に係る制度の在り方」 について 【令和 6 年 6 月 24 日付け諮問第 1239 号】

資料5

情報通信審議会 総会(第 53 回)議事概要 1 日時 令和7年7月 15 日(火)14:00~14:33 2 場所 第1特別会議室(Web会議併用) 3 出席者 (1)委員(敬称略) 遠藤 信博(会長)、浅川 秀之、荒牧 知子、石井 夏生利、伊丹 誠、 市毛 由美子、井上 由里子、内山 隆、大柴 小枝子、大橋 弘、 加藤 寧、閑歳 孝子、桑津 浩太郎、國領 二郎、小島 隆洋、 高橋 利枝、竹内 健蔵、丹 康雄、東條 吉純、長谷山 美紀、 藤井 威生、増田 悦子、横田 純子(以上 23 名) (2)総務省 川﨑 ひでと(総務大臣政務官)、竹村 晃一(総務審議官)、 今川 拓郎(総務審議官)、大村 真一(官房総括審議官)、 藤田 清太郎(官房総括審議官) (国際戦略局) 布施田 英生(国際戦略局長)、柴山 佳徳(官房審議官)、 松井 正幸(技術政策課長)、内田 雄一郎(技術政策課 企画官) (情報流通行政局) 豊嶋 基暢(情報流通行政局長)、荒井 牛山 智弘(郵政行政部長) 陽一(官房審議官)、 (総合通信基盤局) 湯本 博信(総合通信基盤局長)、吉田 翁長 久(電波部長) 恭子(電気通信事業部長)、 (サイバーセキュリティ統括官) 三田 一博(サイバーセキュリティ統括官) (3)事務局 中村 裕治(情報通信政策課長) 4 議 題 (1)答申案件 「新たな情報通信技術戦略の在り方」に対する第5次中間答申(案)につ いて 【平成 26 年 12 月 18 日付け諮問第 22 号】 【内容】 本件は、「新たな情報通信技術戦略の在り方」に対する第5次中間答申 (案)について、近年の社会情勢の変化、技術の進展及び市場の動向等を 踏まえつつ、国立研究開発法人情報通信研究機構(NICT)が新たな中長期 目標の期間において取り組むべき、重点研究開発分野・課題や成果展開の 推進方策等について審議を行ったもの。審議の結果、情報通信技術分科会 から提案があったとおり、中間答申(案)を了承し、中間答申とすること とした。 (2)報告案件 情報通信技術分科会及び各部会の活動状況について 【内容】 情報通信技術分科会及び各部会の活動状況について、事務局より報告が あったもの。 本会議にて配付された資料を御覧になりたい方は、総務省HPにおいて公開 しておりますので御覧下さい。 また、総務省において、閲覧に供し及び貸し出しておりますので、以下まで 御連絡をお願いいたします。 担 当:総務省 情報通信審議会事務局 高橋補佐、岡本補佐、東出係長、斉藤官 電 話:03-5253-5432 メール johotsushin-shingikai/●/soumu.go.jp 迷惑メール防止対策のため、送信時は/●/を@に置き換えてください。

資料6

情報通信審議会 総会(第 53 回)議事録 1 日時 令和7年7月 15 日(火)14:00~14:33 2 場所 3 出席者 第1特別会議室(Web会議併用) (1)委員(敬称略) 遠藤 信博(会長)、浅川 秀之、荒牧 知子、石井 夏生利、伊丹 誠、 市毛 由美子、井上 由里子、内山 隆、大柴 小枝子、大橋 弘、 加藤 寧、閑歳 孝子、桑津 浩太郎、國領 二郎、小島 隆洋、 高橋 利枝、竹内 健蔵、丹 康雄、東條 吉純、長谷山 美紀、 藤井 威生、増田 悦子、横田 純子(以上 23 名) (2)総務省 川崎 ひでと(総務大臣政務官)、竹村 晃一(総務審議官)、 今川 拓郎(総務審議官)、大村 真一(官房総括審議官)、 藤田 清太郎(官房総括審議官) (国際戦略局) 布施田 英生(国際戦略局長)、柴山 佳徳(官房審議官)、 松井 正幸(技術政策課長)、内田 雄一郎(技術政策課 企画官) (情報流通行政局) 豊嶋 基暢(情報流通行政局長)、荒井 牛山 智弘(郵政行政部長) 陽一(官房審議官)、 (総合通信基盤局) 湯本 博信(総合通信基盤局長)、吉田 翁長 久(電波部長) 恭子(電気通信事業部長)、 (サイバーセキュリティ統括官) 三田 一博(サイバーセキュリティ統括官) (3)事務局 中村 裕治(情報通信政策課長) 1 4 議 題 (1)答申案件 「新たな情報通信技術戦略の在り方」に対する第5次中間答申(案)につい て 【平成 26 年 12 月 18 日付け諮問第 22 号】 (2)報告案件 情報通信技術分科会及び各部会の活動状況について 2 開 会 ○遠藤会長 それでは、ただいまから情報通信審議会第 53 回総会を開かせていただきます。 本日はウェブ会議とのハイブリッド形式にて会議を開催させていただいてございまし て、現時点で、委員 30 名のうち 21 名が御出席いただいてございますので、定足数を満た してございます。 会議の傍聴につきましては、ウェブ会議システムによる音声のみでの傍聴とさせてい ただいてございます。 また、本日は審議の終了前に、川崎総務大臣政務官から御挨拶をいただくことになって ございます。 初めに、先日、総務省幹部の皆様に人事異動があったとお伺いしてございます。事務局 から御紹介いただけることになってございますので、よろしくお願いいたします。 ○中村情報通信政策課長 それでは、この会議に出席しております、異動のあった幹部職 員を御紹介させていただきます。名前を読み上げますので、一言挨拶をお願いいたします。 初めに、総務審議官の竹村です。 ○竹村総務審議官 竹村でございます。どうぞよろしくお願いいたします。 ○中村情報通信政策課長 ○大村官房総括審議官 ○中村情報通信政策課長 ○藤田官房総括審議官 ○中村情報通信政策課長 ○布施田国際戦略局長 ○中村情報通信政策課長 続きまして、官房総括審議官の大村です。 大村です。よろしくお願いいたします。 続きまして、官房総括審議官の藤田です。 藤田です。よろしくお願い申し上げます。 続きまして、国際戦略局長の布施田でございます。 布施田です。よろしくお願いいたします。 続きまして、サイバーセキュリティ統括官の三田です。 ○三田サイバーセキュリティ統括官 ○中村情報通信政策課長 三田です。よろしくお願いします。 続きまして、総合通信基盤局電気通信事業部長の吉田でござ います。 ○吉田電気通信事業部長 吉田です。よろしくお願いいたします。 ○中村情報通信政策課長 続きまして、総合通信基盤局電波部長の翁長でございます。 ○翁長電波部長 翁長でございます。よろしくお願いいたします。 ○中村情報通信政策課長 ○柴山官房審議官 柴山です。よろしくお願いします。 ○中村情報通信政策課長 ○荒井官房審議官 続きまして、官房審議官の柴山でございます。 続きまして、官房審議官の荒井です。 荒井でございます。よろしくお願いいたします。 ○中村情報通信政策課長 御紹介は以上でございます。 3 ○遠藤会長 ありがとうございました。 それでは、お手元の議事次第に従いまして、議事を進めてまいりたいと存じます。 本日の議題は、答申事項が1件、報告事項が1件でございます。円滑な議事進行に御協 力をお願いいたしたいと存じます。 (1)答申案件 「新たな情報通信技術戦略の在り方」に対する第5次中間答申(案)について 【平成26年12月18日付け諮問第22号】 ○遠藤会長 初めに、答申案件、諮問第 22 号「新たな情報通信技術戦略の在り方」に対 する第5次中間答申(案)について、審議をさせていただきたいと存じます。 本件につきましては、情報通信技術分科会及び技術戦略委員会におきまして精力的に 調査・審議をいただき、このたび答申案を取りまとめていただきました。 本日は、情報通信技術分科会の分科会長代理である長谷山委員から御説明をいただき たいと存じます。よろしくお願いいたします。 ○長谷山委員 ただいま御紹介にあずかりました長谷山でございます。本日は、分科会長 の高田先生の御都合によりまして、私、代理の長谷山から御説明申し上げます。 資料 53-1-2が答申案でございますが、大部のため、資料 53-1-1の概要資料に 基づきまして説明をさせていただきます。 本件は、平成 26 年 12 月に総務大臣により諮問を受けた諮問第 22 号「新たな情報通信 技術戦略の在り方」について、情報通信技術分科会及び技術戦略委員会において調査・審 議を重ねてきたものです。 昨年 10 月 10 日の第 182 回分科会において検討を再開いたしまして、その後、技術戦 略委員会を7回、並行して委員会の下に設置した社会実装加速化ワーキンググループを 5回開催し、事業者ヒアリング等を重ねまして議論を深めてまいりました。そして、6月 4日の第 187 回分科会において、本日の答申案を議決したところでございます。 それでは、内容の御説明に移ります。次のページをお願いいたします。 まず、1ページ目には、本報告書の全体概要を載せております。技術戦略委員会では、 令和2年8月の第4次中間答申以降の社会の変化や、近年の技術動向等について、NICT、 有識者、民間企業など9名の方からヒアリングを行いました。 その結果を踏まえ、次期中長期(令和8年から 12 年度)において NICT に期待する役割 (ミッション)を提示するとともに、研究開発等を通じて貢献すべき目標を設定いたしま した。その上で、我が国の重要政策の実現に不可欠な技術領域という観点から「戦略領域」 を、我が国社会を支える情報通信分野の基礎的、基盤的な技術という観点から「重点分野」 4 を特定するとともに、NICT の「社会実装機能・外部連携機能等」の強化の方向性を取り まとめました。特に、「社会実装機能・外部連携機能等」については、技術戦略委員会の 下に「社会実装加速化ワーキンググループ」を設置いたしまして、集中的に議論をしてい ただき、その結果を踏まえて取りまとめをしております。 報告書の構成は、2ページに記載のとおりです。 続いて4ページは、「第4次中間答申以降の社会情勢の変化と今後の見通し」です。 第4次中間答申からの4年間の変化として、1番目、人手不足の進展、2番目、インバ ウンドの拡大、3番目、エネルギー消費の増大、4番目、自然災害の激甚化、5番目、サ イバー空間上のリスクの増大、この5つを挙げております。こうした社会情勢の変化を踏 まえまして、2030 年代の社会を構想いたしました。 具体的には、1ページ目に記載のとおり、激甚化する自然災害に対応した強靱な社会、 誰もがICTの恩恵を享受でき、安心して技術を活用できるデジタル安全社会、クリーン エネルギーとデジタルインフラによる持続可能で活力のある社会、そして、労力の最小化 と利益の最大化を可能にする人間中心の AI 社会を、2030 年代に目指すべき社会像として 掲げております。 5ページです。次に、 「戦略領域の近年の技術動向」ということで、今期(第5期)の 中長期目標において「戦略領域」とされている4つの技術領域について、近年の動向を整 理しております。 「AI」、 「サイバーセキュリティ」は、社会的重要性がますます増大しておりまして、 「Beyond 5G」 、 「量子情報通信」は、社会実装に向けて重要な局面を迎えております。 10 ページ目になります。ヒアリングを通じまして、民間企業等から示された NICT への 期待や、社会情勢の変化に伴う国立研究開発法人の役割の変化等を踏まえまして、NICT に 期待するミッションを提示しております。 1つ目は、 「国際競争力の強化や経済安全保障の確保等をはじめとした我が国の重要政 策の実現への貢献」 、2つ目は、 「民間投資や人材育成を活性化するための触媒となる産学 官連携の中核・連結点としての役割」 、3つ目は、 「民間企業等におけるイノベーションを 支援する機能の充実・強化」 、そして、4つ目は、 「機構法に基づく社会経済活動を根底か ら支えている重要業務の継続的かつ安定的な実施」としております。 続いて 12 ページです。 「戦略的に推進すべき技術領域」といたしましては、1番目に、 AI・コミュニケーション、2番目に、Beyond 5G、3番目に、量子情報通信、4番目に、 サイバーセキュリティの4つを挙げております。いずれも今期から引き続きとなります が、社会情勢の今後の見通しや近年の技術動向に鑑みると、国際競争力の強化や経済安全 保障の確保をはじめとした我が国の重要政策の実現に当たって不可欠な技術であり、 NICT が民間投資や人材育成を活性化するための触媒として、産学官連携の中核・連結点 としての役割を果たすべきとしております。 5 13 ページと 14 ページでは、各戦略領域における取組の方向性を整理しております。代 表的なものだけピックアップいたしますと、 「AI・コミュニケーション」では、高品質な 日本語データを NICT で継続的に蓄積し、我が国における信頼性ある AI 開発力を強化す ること、「Beyond 5G」では、テストベッドの機能を拡張し、イノベーションハブとして 民間企業等に提供すること、 「量子情報通信」では、多様なユースケースを検証し、社会 実装に向けた取組を加速させるため、 「東京 QKD ネットワーク」を高度化・拡充すること、 最後に、「サイバーセキュリティ」では、一次データ収集能力の強化や、人材も含めた体 制整備を推進することなどを掲げております。 15 ページ目は、 「重点的に推進すべき基礎的・基盤的研究開発分野等」といたしまして、 電磁波先進技術、次に、革新的ネットワーク、3番目に、サイバーセキュリティ、4番目 に、ユニバーサルコミュニケーション、5番目に、フロンティアサイエンスの5つを挙げ ております。いずれも ICT を専門とする我が国唯一の国立研究開発法人として蓄積され た技術力や知見・経験等を最大限活用できる分野であり、中長期的な視野に立って研究開 発等に取り組むことにより、2030 年代に目指すべき社会像の実現に貢献すべきとしてお ります。 16 ページ目では、各重点分野において、貢献目標に資する技術として、特に重点的に 取り組むべき課題を整理しております。 18 ページ目になります。このたびは、NICT の研究開発成果を民間企業や大学等に橋渡 しするための機能を「社会実装機能」、NICT が有する施設・設備や、蓄積された知見等を 活用して、民間企業等におけるイノベーションを促進するための機能を「外部連携機能」 と整理し、検討を行いました。 その上で、NICT の次期中長期に向けた機能強化の方向性を6本の柱でまとめておりま す。 19 ページ目になります。1つ目の柱は、 「我が国発の技術の社会実装を促進するための イノベーションハブ機能の強化」です。 “使いたいテストベッド”の整備、NICT が有する 施設・設備や蓄積された知見等のより一層の有効活用、GPAI 東京専門家支援センターの 運営を掲げております。 20 ページ目になります。2つ目の柱は、 「NICT の研究資金配分機関としての機能の強 化」です。社会実装・海外展開を目指した戦略的投資を推進するプロモーターとなり、目 利き人材の確保・活用とともに、研究者や企業等との対話を通じて市場や技術の動向、社 会ニーズを踏まえた課題・テーマ設定を行うことで、社会実装に向けた研究開発を推進す べきなどとしております。 21 ページ目になります。3つ目の柱は、 「NICT における研究開発成果の社会実装推進体 制の強化」です。NICT の技術シーズと外部のニーズの橋渡し機能の強化、そして、大学・ 企業等外部機関との連携の推進を掲げております。 22 ページ目になります。4つ目の柱は、 「NICT における人材の育成・確保」です。新技 6 術に対応した研究人材の育成・確保、そして、技術移転等に関する専門人材の確保・活用 を掲げております。 23 ページ目になります。5つ目の柱は、 「戦略的な標準化活動の推進」です。NICT が我 が国の標準化活動を引き続き牽引していくべき、そして、標準化自体を目的化するのでは なく、ビジネス化・収益化も意識した戦略を検討することが必要としております。 24 ページ目になります。最後、6つ目の柱は、 「スタートアップ支援の推進」です。NICT の研究開発成果を活用するスタートアップの支援、そして、地域発 ICT スタートアップの 支援を掲げております。 私からの説明は以上でございます。どうぞよろしくお願い申し上げます。 ○遠藤会長 長谷川先生、大変ありがとうございました。 それでは、ただいまの御説明に関しまして、皆様方から活発な御意見または御質問をい ただければと存じます。会場内においでの方は、できれば挙手をいただいて御質問いただ ければと思います。いかがでございましょうか。 私から質問してよろしいでしょうか。フロンティアサイエンスということに言及をい ただいていて、いろいろな、やはり科学というものが、幾つか重なり合いながら価値をつ くるという形に最近なってきていて、そういう意味では、データサイエンスそのものがそ ういう可能性がございますけれども、何か今回の議論の中で、特に NICT が注力すべき領 域というようなことについては、具体的な御議論はおありになりましたでしょうか。 ○松井技術政策課長 御質問ありがとうございます。事務局の国際戦略局技術政策課よ りお答えさせていただきます。 フロンティアサイエンスのところで申し上げますと、16 ページ目にございますような 先端ICT基盤技術、フロンティアICT技術、バイオインクルーシブICT基盤技術、 脳情報通信基盤技術、こういったところでございますけれども、特に脳情報の通信、脳の 機能のところ、こういったところにつきましては、やはり将来の可能性というところをさ らに深掘りしていくようなことが期待されると思っております。ここのところはやはり、 2030 年代、さらにその先を見据えた、価値を変えていくような技術をできるような分野 ということで、さらに取組を進めていただくということを、この中でも御議論させていた だいたところでございます。 ○遠藤会長 ありがとうございました。私が興味があるのは、やはり今、ちょっと前に申 し上げたように、データを中心とした価値創造というものが、今後いろいろなところで価 値を、競争が起きる領域でもあるので、そういう意味では日本の中でデータをどういうふ うにストックしておくのか、場合によっては、DFFT と言われてございますけれども、国 家間でどのようにデータをシェアするのか、この辺がこの領域の非常に重要な領域なん じゃないかなという気がしますので、NICT さんに期待をしたいなと思っています。 ○遠藤会長 ほかはいかがでしょうか。 7 それでは、皆様から本件に関しましては御了承いただいたということであろうと思い ます。 審議はこの辺で終了させていただき、定足数も満たしてございますので、本件につきま しては資料 53-1-3のとおり中間答申とすることとしてはいかがかと思います。 御異議がある場合には、ウェブの方々はチャット機能でお申出ください。よろしいでし ょうか。 (異議の申し出なし) ○遠藤会長 それでは、御異議がないようでございますので、本案をもって中間答申とさ せていただきたいと思います。ありがとうございました。 ○長谷山委員 ○遠藤会長 ありがとうございました。 本日の答申につきまして、私から少しトータルでコメントをさせていただ ければと思います。 まずは、高田分科会長様、それから長谷山分科会長代理様をはじめ、委員の皆様におか れましては、本当に精力的に御検討いただきましたことを感謝申し上げたいと存じます。 本日の第5次の中間答申では、NICT のミッションをまず明確にしていただくとともに、 それに対しての戦略領域として、AI・コミュニケーション、Beyond 5G、それから量子情 報通信、そしてサイバーセキュリティという非常に重要な4領域を特定いただきました。 いずれも我が国の国際競争力の源泉となる重要な技術領域でございます。近年、社会的重 要性がますます高まるとともに、社会実装に向けて非常に重要な局面にあると考えてご ざいます。 NICT が、民間投資や人材育成を活性化するための触媒となる産学官連携の中核・連結 点としての役割を果たすということで、我が国全体の国際競争力、これの強化に対して大 きな貢献をしていくものと大変期待をしてございます。 また、近年、NICT には研究開発及びその成果の社会実装のみならず、NICT が有する施 設や設備、さらには、まさに重要でございますけれども、知見等のさらなる有効活用を図 りながら、民間の企業等におけるイノベーションを支援するということも期待されてい るところでございます。 本日の答申では、社会実装機能及び外部連携機能等の強化につきましても、6本柱を示 していただきましたけれども、ぜひ積極的に検討を進めていただければと存じます。 総務省におかれましては、NICT の次期中長期目標の検討に当たりまして、本日の答申 を適切に反映させていただき、NICT と密に連携・協力をいただきながら、2030 年代に目 指すべき社会像の実現に向けて、精力的に取り組んでいただければと存じます。 国研の役割としては、連携というのは非常に本当に重要だと思います。ドイツでは、フ ラウンホーファー研というのが実装の、特に中小企業の実装、さらにはイノベーションを 8 サポートしているということで、フラウンホーファーの地域の活動の主体が地域大学で す。フラウンホーファー研そのものが地域大学の中にあって、地域大学の先生方があそこ のフラウンホーファー研のトップになっていたりして、それをベースに中小企業が強い ということになっているようです。 日本の中小企業の GDP とドイツの GDP を比較すると、圧倒的にドイツの中小企業の GDP が大きいので、比率が大きくなっています。そういうことも考えると、地域のスタートア ップを含めて、国研が連携をするというのは非常に重要なのと、国研と地方大学との連携 をいかに構築するかというのは、非常に重要なファクターになるなと本当に思います。 今回いいところを御提議いただいたので、ぜひ総務省を含めてやっていただければと 思います。 それでは、答申書をお渡ししたいと思うので、川崎総務大臣政務官がお見えになるのを 少々お待ちしたいと思います。 (報道関係者入室) (川崎総務大臣政務官入室) ○遠藤会長 それでは、ただいまより答申書をお渡ししたいと思います。 ○遠藤会長 答申書、平成 26 年 12 月 18 日付け諮問第 22 号「新たな情報通信技術戦略の在り方」に つきまして、審議の結果、別添のとおり答申をさせていただきたいと存じます。よろしく お願いいたします。 (答申書手交) ○中村情報通信政策課長 それでは、遠藤会長と政務官におかれましては御着席をお願 いいたします。 ○遠藤会長 それでは、ただいまの答申に対しまして、川崎総務大臣政務官より御発言が ございますので、よろしくお願いいたします。 ○川崎総務大臣政務官 総務大臣政務官の川崎ひでとでございます。皆様には日頃より 情報通信行政に格段の御理解を賜り、厚く御礼申し上げます。 ただいま第5次中間答申をいただいた諮問第 22 号「新たな情報通信技術戦略の在り方」 については、遠藤会長をはじめ、委員の皆様の活発な御審議を経て、取りまとめをいただ きました。 このたびの中間答申では、近年の社会情勢の変化、技術の進展及び市場の動向等を踏ま えつつ、国立研究開発法人情報通信研究機構(NICT)が、令和8年度から始まる新たな中 長期目標の期間において取り組むべき重点研究開発分野、課題や成果展開の推進方策等 について提言いただきました。 近年、デジタル分野において海外依存が高まる中、安全保障の観点からもオール光ネッ トワークや量子暗号通信など、デジタルインフラの中核となる技術、システムの競争力を 9 強化し、海外展開を進めることが必要です。 総務省といたしましては、NICT が産官学連携の中核・連結点としての役割を果たし、 国際競争力の強化や、経済安全保障の確保をはじめとした我が国の重要政策の実現に貢 献すべく、本日の御提言を次期中長期目標へと適切に反映するとともに、NICT と密接に 連携・協力して、各施策を着実に推進してまいりたいと思います。 最後になりますが、委員の皆様におかれましては、引き続き情報通信行政への一層の御 指導と御協力をお願い申し上げ、私の挨拶と代えさせていただきます。本日は誠にありが とうございます。 ○中村情報通信政策課長 それでは、報道関係者の方々の取材はここまでとなりますの で、恐れ入りますが、御退室をお願いいたします。 (報道関係者退室) ○遠藤会長 川崎総務大臣政務官殿、大変ありがとうございました。 川崎総務大臣政務官は御公務のため、ここで御退席となられます。 (川崎総務大臣政務官退室) ○遠藤会長 皆様、御協力大変ありがとうございました。 (2)報告案件 情報通信技術分科会及び各部会の活動状況について ○遠藤会長 続きまして、報告案件に移らせていただきたいと存じます。情報通信技術分 科会及び各部会の活動状況につきまして、事務局から御説明をいただきたいと思います。 ○中村情報通信政策課長 情報通信技術分科会及び各部会の活動状況につきまして、資 料53-2により御説明をさせていただきます。 本件は、情報通信審議会議事規則第10条第6項及び第11条第11項に基づきまして、前回 開催されました第52回総会以降の情報通信技術分科会及び各部会の活動状況につきまし て御報告申し上げるものでございます。 まず、情報通信技術分科会でございますが、3回会合を開催いたしまして、2件の答申 をいただいているところでございます。 また、部会につきましては、情報通信政策部会のほうは5回会合を開催していただいて おります。 電気通信事業政策部会につきましては、4回会合を開催いたしまして、1件答申をいた だいているところでございます。 10 また、郵政政策部会につきましては、1回会合を開催していただいているところでござ います。 簡単でございますが、活動状況につきまして以上でございます。 ○遠藤会長 ありがとうございました。報告について何か御質問等ございましたらお受 けしたいと思いますが、いかがでございましょうか。 よろしいですか。ありがとうございます。 閉 ○遠藤会長 会 それでは、以上で本日の議題は終了をいたしました。 委員の皆様方、追加で何かございますか。 事務局から追加で何かございますか。 ○中村情報通信政策課長 ○遠藤会長 はい。特にございません。 ありがとうございます。 それでは、本日の会議を終了させていただきたいと存じます。 次回の日程につきましては、別途調整をさせていただき、事務局から御連絡を申し上げ たいと思います。 以上で本会を閉会とさせていただきます。ありがとうございました。 11
情報通信審議会 総会 第53回 議事録・配布資料全文 | PPPT