資料1
資料 52-1-1
(公印・契印省略)
諮 問 第
2 9 号
令和7年2月3日
情報通信審議会
会長 遠藤 信博
殿
総務大臣
諮
問
書
下記について、別紙により諮問する。
記
地域社会 DX の推進に向けた情報通信政策の在り方
村上
誠一郎
別紙
諮問第 29 号
地域社会 DX の推進に向けた情報通信政策の在り方
1 諮問理由
日本の地域社会・経済は、少子高齢化と人口減少による働き手不足や市場規模の縮
小、頻発する自然災害や老朽化するインフラなどの様々な課題に直面している。
こうした中、政府は「新しい地方経済・生活環境創生本部」を設置し、
「地方こそ成
長の主役」との発想に基づき、日本経済成長の起爆剤としての大規模な地方創生策の
検討を開始し、昨年 12 月には「地方創生 2.0 の「基本的な考え方」」において、デジ
タル・新技術の徹底活用を柱の一つに掲げている。
地域経済・社会を維持・発展させ、地域住民の生活を支えるためには、AI を含むデ
ジタル技術の徹底活用により、地域課題を解決(地域社会 DX)し、イノベーションに
より付加価値を創出していくことが求められる。そのためには、その中核的担い手と
なり得るデジタル技術を活用する企業が、地域のニーズに合った事業展開をできるよ
う支援することが重要である。
このため、日本の地域社会・経済を取り巻く状況、AI を含むデジタル技術の最新動
向を踏まえ、地域社会 DX の推進に向けた情報通信政策の在り方について諮問する。
2
答申を希望する事項
(1)日本の地域社会・経済を取り巻く状況、AI を含むデジタル技術の最新動向を踏
まえた、地域社会 DX の推進に向けた情報通信政策の在り方
(2)その他必要と考えられる事項
3
答申を希望する時期
令和7年夏頃目途
4
答申が得られたときの行政上の措置
今後の情報通信行政の推進に資する。
資料2
資料52-1-2
地域社会DXの推進に向けた情報通信政策の在り方について
令和7年2月3日
総
務
省
情 報 流 通 行 政 局
「地域社会DXの推進に向けた情報通信政策の在り方」に関する諮問について
1
諮問概要
⚫
日本の地域社会・経済は、少子高齢化と人口減少による働き手不足や市場規模の縮小、頻発する自然災害や
老朽化するインフラなどの様々な課題に直面している。
⚫
こうした中、政府は「新しい地方経済・生活環境創生本部」を設置し、「地方こそ成長の主役」との発想に基づき、
日本経済成長の起爆剤としての大規模な地方創生策の検討を開始し、昨年12月には「地方創生2.0の「基本的な
考え方」」において、デジタル・新技術の徹底活用を柱の一つに掲げている。
⚫
地域経済・社会を維持・発展させ、地域住民の生活を支えるためには、AIを含むデジタル技術の徹底活用により、
地域課題を解決(地域社会DX)し、イノベーションにより付加価値を創出していくことが求められる。そのためには、
その中核的担い手となりうるデジタル技術を活用する企業が、地域のニーズに合った事業展開をできるよう支援すること
が重要である。
⚫
このため、日本の地域社会・経済を取り巻く状況、AIを含むデジタル技術の最新動向を踏まえ、地域社会DXの推進
に向けた国の政策の在り方について諮問を行うものである。
【答申を希望する事項】
日本の地域社会・経済を取り巻く状況、AIを含むデジタル技術の最新動向を踏まえ、地域社会DXの推進に向けた
国の政策の在り方について検討する。
スケジュール
⚫ 2025年2月から情報通信政策部会での審議を希望。
⚫ 2025年夏頃を目途に答申を希望。
「地域社会DXの推進に向けた情報通信政策の在り方」に関する諮問について
少子高齢化の進行
地方創生2.0の基本構想の5本柱
●日本の生産年齢人口は、1995年をピークに減少。今後約30年で約
26%減少(約2,000万人の減少)との予測
●高齢化の推移と将来推計
15,000
マイナス
26.2%
65歳以上
3,602
10,000
3,888
15~64歳
(生産年齢)
7,509
5,000
5,540
14歳以下
0
2000
②東京一極集中のリスクに対応した人や企業の地方分散
③付加価値創出型の新しい地方経済の創生
(万人)
1990
①安心して働き、暮らせる地方の生活環境の創生
2010
2020
2030
2040
2050
(出典)内閣府(2023)「令和5年版高齢社会白書」より総務省作成
④デジタル・新技術の徹底活用
○ ブロックチェーン、DX・GXの面的展開などデジタル・新技術を活用
した付加価値創出など地方経済の活性化、オンライン診療、オンデ
マンド交通、ドローン配送や「情報格差ゼロ」の地方の創出など、地
方におけるデジタルライフラインやサイバーセキュリティを含むデジタル
基盤の構築を支援し、生活環境の改善につなげる
○ デジタル技術の活用や地方の課題を起点とする規制・制度改革
を大胆に進める
⑤ 「産官学金労言」の連携など、国民的な機運の向上
デジタル・新技術
自然災害リスクの高まり
●AIやドローン、自動運転等のデジタル技術が急速に進展
南海トラフ地震
主な地震の30年以内の発生確率
首都直下地震(M7程度)※:70%程度
南海トラフ地震(M8-9程度):80%程度
首都直下地震
※東京都の建物被害は約20万棟、
死者は約6千人の想定
自動運転トラクターを
活用したスマート農業
(出典)文部科学省地震調査研究推進本部(2025)「今までに公表した活断層及び海溝型地震の長期評価結果一覧」
東京都(2022)「首都直下地震等による東京の被害想定」
災害時等のドローンによる
状況把握や物流
AIサーバー
高精細映像のリアルタイム
伝送による自動運転バス
AIを活用した鉄道沿線異常
の自動検知
2
資料3
資料52ー2-1
(契 印 ・ 公 印 省 略)
諮 問 第
3 0 号
令和7年2月3日
情報通信審議会
会長 遠藤 信博
殿
総務大臣
諮
問
書
下記について、別紙により諮問する。
記
社会環境の変化に対応した電波有効利用の推進の在り方
村上
誠一郎
別紙
諮問第30号
社会環境の変化に対応した電波有効利用の推進の在り方
1
諮問理由
我が国は、他の主要先進国に先駆けて人口減少・少子高齢化に直面しており、生
産年齢人口が減少する中にあっても持続的な経済成長を実現するための生産性の
向上に取り組むことが喫緊の課題である。また、令和6年能登半島地震などの大規
模な災害が頻発する中、災害に強い強靱な社会システムを構築することも大きな課
題である。
携帯電話に代表されるように、電波を使ったシステムやサービスは、すでに国民
生活や経済活動に深く浸透しているが、自動運転やスマート農業、遠隔医療など、
電波のより一層の活用を徹底して進めることで、平時・災害時を問わず、国民生活
を便利で安全・安心なものにするとともに、地域の課題解決や新たな市場の創出を
通じた経済成長の源泉となる可能性を持っている。
他方で、電波は有限の資源であり、電波の活用の進展に伴い電波資源はひっ迫す
るため、電波の利用状況やニーズ、電波に関する最新の技術トレンドを踏まえて、
周波数の割当てや周波数の移行・再編・共用を適正かつ効率的に実施するなど、電
波法(昭和25年法律第131号)の目的である電波の公平かつ能率的な利用を確
保することがますます重大となる。
このため、社会環境の変化に迅速かつ柔軟に対応し、電波の公平かつ能率的な利
用を通じて国民生活の利便性向上、地域の課題解決及び持続的経済成長を実現する
ため、国が取り組むべき電波の有効利用の推進の在り方について包括的に検討する
ことが必要である。
2 答申を希望する事項
(1)電波有効利用の推進に関する基本的方向性
(2)無線局の免許制度等の在り方
(3)周波数割当の在り方
(4)無線を利用したビジネス促進の在り方
(5)電波の利用環境の在り方
(6)その他必要と考えられる事項
3
答申を希望する時期
令和7年夏頃目途
4
答申が得られたときの行政上の措置
今後の情報通信行政の推進に資する。
資料4
資料52ー2-2
「社会環境の変化に対応した電波有効利用の
推進の在り方」 に関する諮問について
令和7年2月3日
総
務
省
総合通信基盤局
「社会環境の変化に対応した電波有効利用の推進の在り方」 に関する諮問について
1
1 概要
我が国では、人口減少・少子高齢化に直面しており、持続的な経済成長を実現するための生産性向上等が課題
である。電波は、自動運転やスマート農業、遠隔医療など、より一層の活用を徹底して進めることで、平時・災害
時を問わず、国民生活を便利で安全・安心なものにするとともに、地域課題の解決や新たな市場の創出を通じた
経済成長の源泉となる可能性を持っている。
他方、電波は有限の資源であることから、電波の利用状況やニーズ、電波に関する最新の技術トレンドを踏まえて、
周波数の割当てや周波数の移行・再編・共用を適正かつ効率的に実施するなど、電波の公平かつ能率的な利用
の確保がますます重要となる。
社会環境の変化に迅速かつ柔軟に対応し、電波の公平かつ能率的な利用を通じて国民生活の利便性向上、地
域の課題解決及び持続的経済成長を実現するため、情報通信審議会に対し、「社会環境の変化に対応した電
波有効利用の推進の在り方」 について諮問する。
2 検討事項
(1)電波有効利用の推進に関する基本的方向性
(2)無線局の免許制度等の在り方
(3)周波数割当の在り方
(4)無線を利用したビジネス促進の在り方
(5)電波の利用環境の在り方
(6)その他必要と考えられる事項
3 スケジュール
2月3日に情報通信審議会に諮問。情報通信技術分科会での審議を希望。
本年夏頃を目途に一部答申を希望。
主な検討事項
(1)電波有効利用の推進に関する基本的方向性
これまでの議論の蓄積も踏まえつつ、電波の利用状況やニーズ、電波に関する最新の技術トレンドを勘案して、2030年代を見
据えた中長期的な方向性を検討する。
(2)免許制度等
無線技術の進展等を踏まえ、混信が生じないような仕組みを担保しつつ、簡素で柔軟かつ迅速な免
許制度、無線従事者資格制度、技術基準適合証明制度の在り方について検討する。
(3)周波数割当
ひっ迫する電波の利用状況等を踏まえた周波数割当の基本的方向性について検討するとともに、共
用技術の進展等を踏まえた新たな周波数割当の手法など、これからの社会における電波利用ニーズに
的確に対応した周波数割当方策の在り方について検討する。
(4)無線利用
ビジネス
ワイヤレスインフラの効果的・効率的な整備や、高い周波数帯を含めた産業利用の促進など、無線を
利用したビジネスの社会展開を円滑に進めるための方策の在り方について検討する。
(5)利用環境
電波の利用状況の変化等を踏まえ、意図せず発射される混信等の増加に対応するための電波監視
の在り方や、人体に対する電波の安全性に関する研究の方向性など、無線システムが安心して利用で
きる環境を確保するための方策の在り方について検討する。
(6)その他
電波の公平かつ能率的な利用を確保するために必要な財政需要を充たすための電波利用料制度の
在り方等について検討する。
2
3
(参考)WX推進戦略アクションプラン(令和6年8月30日総務省公表)
少子高齢化・人口減少
情報通信産業の停滞
地震・水害などの脅威
Well-being、多様性
経済安全保障
リスキリング・リカレント
電波の利用者にとって有益で
(Useful)電波ビジネスの
提供者にとって付加価値のある
(Valuable)社会へ変革
電波利用の普及
スマート物流
無線活用分野の拡大
無線技術の多様化
(多様なプレイヤーと先進的なサービス
で世界の市場を席巻)
Life Diversity
(地方や都市で真に豊かで
ワクワクする暮らし)
WX
電波利用の拡大
ワイヤレス新時代へ
Business Innovation
自動運転システム
Trusted Connectivity
空飛ぶクルマ
(不確実な出来事においても
産業や暮らしが継続)
HAPS
ワイヤレストランスフォーメーション
スマート農場
「RADIOイニシアティブ」を踏まえて、WXを推進するための総務省の取組内容を具体化
陸・海・空・宇宙など
あらゆる空間における電波利用の急拡大への対応
<どこでも使えるように>
5Gインフラ整備の推進
• 「5Gならでは」の通信を実感してもらう
ための5Gの新しい整備目標を設定
NTN等の実現に向けた制度整備
R apid expansion
<手軽に使えるように>
電波利用拡大に向けた免許制度
• 混信防止を担保しつつ、ローカル5G
等の手続が簡素化等された新たな免
許制度を速やかに検討・整備
• より簡易な手続で取得可能な資格創
設を速やかに検討
• 技術基準への適合性担保のための
仕組みの簡素化等を速やかに検討
• 2024年内を目途に、携帯電話と衛星
の直接通信の技術基準等を整備
• HAPS(上空の基地局)の2026年導入に
向け、2025年度内に制度整備
• ローカル5G等の上空・海上利用のため 社会実装も見据えた研究開発等の推進
の制度整備を2024年度から順次実施
• 手続が簡素化された新たな実験試験
局のための制度改正を2025年度内を
電波産業の活性化
目途に実施
• 電波を宇宙空間で積極的に受信する場
合など、IoTの宇宙利用における制度的
デジタル技術活用による手続効率化
な課題の把握を速やかに実施
• 地域の多様なユースケースに対応するため • 電子申請等の段階的な義務化とと
もに、電子免許状等を導入するため
の地域BWA・ローカル5G等の活性化
の制度整備を速やかに実施
方策について速やかに検討、順次実施
周波数ひっ迫の中で需要が急増する
電波の柔軟な利用のための移行・再編・共用
<スピーディーに使えるように>
周波数移行・再編の加速
re- A llocation
周波数共用・調整の促進
• 国が主体となる周波数移行・再編の • 運用調整機関の活用による干渉調整を
新たなスキームを2025年内に導入
実施しやすくする方策を速やかに検討
• 高周波数帯における条件付オーク
• AFC(周波数調整の自動化)の検討を進め、
ションの導入を目指し、関連法案を
無線LANの周波数拡張に向けた技術
早期に国会に提出
的条件を2025年度中を目途にとりまとめ
インフラとしてのワイヤレスネットワークを
安全・安心に、安定して利用できる環境の整備
<いつでも使えるように>
自然災害への対応
• 携帯電話基地局の耐災害性強化
策を速やかに検討
• 災害対策用移動通信機器の更な
る整備及びその貸出し体制の拡充
に向けた検討を2024年度内に開始
デジタルビジネス拡大の源泉となる電波の適正な利用を確保するための電波利用料制度
• 電波利用料の料額や電波利用共益事務の見直しに関する法案を早期に国会に提出
D ependable/
Reliable
電波の適正利用の推進
• 意図せず発射される混信等の増加に対
応するため、2025年度にかけて移動監
視の在り方に関する調査検討を実施
• 水上の構造物等による重要無線通信
の遮断を防ぐための制度整備を2024
年度内に検討し、速やかに実施
spectrum user fee
I ncome/ O utlay
資料5
資料52-3-1
令和5年8月28日付け諮問第28号
市場環境の変化に対応した通信政策の在り方
最終答申(案)の概要
令和7年2月3日
情報通信審議会 電気通信事業政策部会
基本的考え方等
1
➊ 2020年のNTT法等改正法の施行後3年見直し規定に基づき、時代に即した制度の見直しを行うため、2023
年8月、「市場環境の変化に対応した通信政策の在り方」を諮問。以下の4点の確保等を基本として議論。
・ 通信サービスが「全国に届く」
・「低廉で多様」なサービスが利用できる
・「国際競争力」を確保する
・「経済安全保障」を確保する
❷ 第一次答申(2024.2)は、国際競争力の強化を進める上で早期に結論が得られた事項を「速やかに実施すべき事
項」、それ以外の事項を「今後更に検討を深めていくべき事項」として整理。最終答申(案)は後者に関するもの。
第1ステップ
速やかに
実施すべき事項
第2ステップ
今後更に検討を
深めていくべき事項
・ 研究開発に関する責務の廃止
・ 外国人役員規制の緩和
・ 役員選解任認可の緩和 等
1.ユニバーサルサービスの確保
2.公正競争の確保
3.国際競争力の確保
4.経済安全保障の確保
5.NTTに関する規律の担保措置等
第一次答申を踏まえ、
改正NTT法で措置
2024年4月成立(同月施行)
ワーキンググループでの議論等を踏まえ、
最終答申(案)
を取りまとめ
最終答申(案)の構成
1.ユニバーサルサービス
の確保の在り方
2
2.公正競争
の確保の在り方
誰もが取り残されずに「ブロードバンド」が
利用できる環境を整備
技術の進展等を踏まえてNTT東西の
経営の自由度を向上(業務範囲)
メタル回線の縮退を見据えて「電話」が全国
であまねく利用できる環境を効率的に確保
我が国の通信全体を支えるNTTの通信
インフラの適切な設置・維持を確保等
3.国際競争力
の強化の在り方
グローバル市場の獲得に向けた
官民による戦略的・総合的な取組
4.経済安全保障
の確保の在り方
外資総量規制と個別投資審査
の両輪によるNTTの経営から
外国の影響力を排除
5.NTTに関する
担保措置等の在り方
NTTの業務・責務の
適切な履行を担保
1.ユニバーサルサービスの確保の在り方①
3
-誰もが取り残されずに「ブロードバンド」が利用できる環境を整備-
● ブロードバンドは、デジタル社会の基幹インフラ。誰もが利用できる環境を確保するため、「未整備地域(約5万世帯)の
解消」と「公設光ファイバ(504市町村・約150万世帯以上)の民設移行の促進」が課題。
● この解決には、「整備費」への予算補助、「維持費」へのユニバーサルサービス交付金(関係事業者が負担金を拠出)の補
塡等はあるが、電話と異なり、提供者がいない地域でブロードバンドを提供する責務を担う者がいない状況。
● また、不採算地域の効率的なカバーには、有線(光ファイバ)だけでなく、無線(モバイル網)の積極的な活用が必要。
取組の方向性
● 固定ブロードバンドが、全国あまねく利用できる環境を整備するため、以下の取組を行うことが適当。
① 各地域で複数事業者がサービス提供している状況等を踏まえ、ブロードバンドを提供する責務として、最終保障
提供責務(他事業者が提供していない地域において利用希望者に対し提供する責務)を新設する(※)。
※ 当該責務の履行に係る費用を補塡するため、ユニバーサルサービス交付金制度の見直しを行う。
② 最終保障提供責務の担い手は、適格事業者(申請により指定を受けて交付金を受ける者)がいる地域では適格事業
者とし、適格事業者がいない地域ではNTT東西とする。
③ 責務の担い手が、設備の貸出し等の協力を求めた場合は、近隣の事業者には、その協議に応じる義務を課す。
④ 無線による効率的なカバーを可能とするため、(混雑による品質低下の懸念が少ない)不採算地域等に限り、モバイル
網による固定ブロードバンド(ワイヤレス固定ブロードバンド(共用型))をユニバーサルサービスに追加する。
⑤ 料金の低廉性確保のため、都市部以外では、都市部を上回る料金の設定を原則禁止する。
1.ユニバーサルサービスの確保の在り方②
4
-メタル回線の縮退も見据えて「電話」が全国あまねく利用できる環境を効率的に確保-
● NTT東西のメタル回線設備は2035年頃に維持限界の見込み。メタル回線による固定電話(メタル固定電話)の契約数
は減少傾向にあるが、当面は相当数残存(2030年:約730万)するため、既存利用者を保護しつつ、円滑な移行促進が必要。
● 計画的移行は当面しないため、利用者減で収入は減少する一方、設備費は大きく変わらず、今後、NTT東西の赤字
は拡大見込み。交付金肥大化による国民負担の増加を回避するため、無線の活用等による効率的な提供も必要。
● また、利用実態等を踏まえ、居住地域での携帯電話をユニバーサルサービスに位置付けるかどうかも論点。
取組の方向性
● 固定電話全体の契約数は5千万件超。引き続き固定電話のあまねく提供を効率的に確保するとともに、メタル固
定電話の利用者の移行先を拡大し、メタル回線設備の円滑な縮退を図る観点から、以下の取組を行うことが適当。
① 無線による効率的な提供と既存利用者の移行先を確保するため、モバイル網固定電話(モバイル網による固定電
話)をユニバーサルサービスに追加する。
② ①により、固定電話の提供者に携帯電話事業者も加わり、複数事業者が連携した効率的なエリアカバーが可
能となるため、電話のあまねく提供責務(他事業者の提供地域でも提供責務を負う)は、最終保障提供責務に見直す。
③ 責務の担い手、近隣事業者の協議応諾義務、料金規制はブロードバンドの場合(P3②③⑤)と同様とする。な
お、利用者保護のため、メタル固定電話の利用者の残存区域では、NTT東西の業務区域の縮小は制限する。
④ NTTは、メタル回線設備の移行計画を早急に策定し、総務省は、関係者の意見等を聴きながら検証する。
● 携帯電話をユニバーサルサービスとすることは、各社が自主的に整備を進める中でその経営状況に鑑みると交付
金での補塡に理解が得られにくく、技術的課題もあること等から、今後の技術の進展等を踏まえ、継続検討が適当。
2.公正競争の確保の在り方①
5
-技術の進展等を踏まえてNTT東西の経営自由度を向上(業務範囲)-
● NTT東西の営業収益は、メタル固定電話が減少しFTTHも成熟する中で、20年前の約2/3に減少(約4.4兆→約2.8兆)。
● メタル固定電話では、長距離通信と地域通信など距離別に市場があったこと等を踏まえ、NTT東西の本来業務は、県
内通信(地域通信)に限定(県域業務規制)。しかし、ブロードバンドやIP電話は、距離に依存しないIP網で提供さ
れ、メタル固定電話も2025年1月までにIP網に移行し、距離別の料金・サービスはなくなる状況。
● また、NTT東西の本来業務以外の業務(活用業務)は、その実施に事前届出が必要(本来業務や公正競争への支障を確認)。
NTTは、地域の課題に(子会社等によることなく)ワンストップでソリューションを提供できるように、活用業務の柔軟な実施を要望。
取組の方向性
● 技術の進展等を踏まえ、経営自由度の向上を図る観点から、NTT東西の業務範囲規律について以下の緩和を
行うことが適当。
① NTT東西の県域業務規制を撤廃する(東西分離は維持し、東日本/西日本内の通信を扱う業務を本来業務とする)。
② 活用業務については、その機動的な実施を可能とするため、事前届出を見直し、事後検証とする。
③ また、NTT東西の合併等の認可は、(本来業務や公正競争への影響が少ない)小規模な非電気通信事業者を対象
外とし、他の会社との合併等による機動的な事業の開始や拡大を可能とする。
④ なお、携帯電話業務やインターネット接続業務等は、引き続き禁止し、その点を法令上明確化する。
● 上記規制緩和に伴うセーフガード措置として、電気事業法の例を参考に、NTT再編時等における累次の公正競
争条件(在籍出向の禁止、グループ内外での不公平な取引条件の禁止等)のうち必要なものを法定化することが適当。
2.公正競争の確保の在り方②
6
-我が国の通信全体を支えるNTTの通信インフラの適切な設置・維持を確保等-
● NTT東西は、電電公社から承継した全国規模の線路敷設基盤(電柱・管路等)を保有し、その上の電気通信設備は、
携帯サービスの提供にも不可欠であるなど、NTT東西の通信インフラは、我が国の通信全体を支える基幹的なインフラ。
NTT東西の電気通信設備については、重要な設備の譲渡等の認可と自己設置要件(本来業務は自己設備での実施が必
要)により適切な設置・維持を確保する一方、線路敷設基盤には、適切な設置・維持を確保するための規律がない。
● グループ内優遇等を禁止する禁止行為規制では、市場支配的事業者(※)がグループ内会社と合併等をして規制を潜脱
することが懸念。また、「接続」関連情報と異なり、利用が拡大する「卸役務」の関連情報が目的外利用等の禁止対象外。
● 不採算地域の効率的なカバーには、基地局用鉄塔等の共有が有効。鉄塔等を貸し出すインフラシェアリング事業者
は、電気通信事業者でなく、公益事業特権(土地の使用等に係る権利)を受けられず、円滑な鉄塔等の設置に支障。
取組の方向性
※ 市場支配的事業者:固定通信市場では「NTT東西」、移動通信市場では「NTTドコモ」
● NTT東西の通信インフラの重要性等に鑑み、NTT東西の「線路敷設基盤」の譲渡等に認可制を導入するとともに、
自己設置要件は、一定の例外(今回本来業務に追加する県間業務等)を追加した上で維持することが適当。
● 市場支配的事業者による目的外利用等の禁止対象に、卸役務の関連情報を追加した上で、市場支配的事業
者による大規模なグループ内会社との合併等は、登録の更新制(合併等審査)の対象に追加することが適当。
● 鉄塔等の貸出しを行うインフラシェアリング事業者が認定を受けた場合は、その鉄塔等の適正・公平な利用等を
確保した上で、公益事業特権(土地の使用等に係る権利)を付与することが適当。
● 電子メールの普及等に伴う利用の減少等を踏まえ、国内電報・国際電報は、類似サービスと同様、電気通信事
業法(例:料金はコストベースでの設定義務)でなく、信書便法(例:800円超であればよい)で規律することが適当。
3.国際競争力の強化の在り方
7
-グローバル市場の獲得に向けた官民による戦略的・総合的な取組-
我が国のICT分野のデジタル収支の赤字額は、5.4兆円(2023年)で過去10年で2倍以上に拡大。
我が国企業の研究開発や新サービスの創出等が伸び悩むと、海外依存が高まり、経済安全保障や競争上も問題。
グローバル市場では、オール光ネットワーク、オープンRAN、海底ケーブル、データセンター等のAI社会を支えるデジタ
ルインフラの需要が増大。旺盛な海外需要を取り込むため、国際競争力強化に官民が戦略的に取り組むことが重要。
取組の方向性
(出口を見据えた総合的な取組)
・ 「技術で勝てても商売で勝てない」という問題意識の下、2024年6月の情報通信審議会答申も踏まえ、研究
開発、国際標準化、社会実装・海外展開等を有機的に連携させ、総合的に取り組むことが必要。
・ NTTは、2024年のNTT法改正(研究開発責務の廃止等)を踏まえ、IOWN構想に基づく製品・サービスの国
内外への普及等を通じたビジネスとしての成功という出口を見据えた上で、一層の取組の加速化が強く期待。
(研究開発及び国際標準化に関する取組)
・ 総務省は、研究開発及び国際標準化について、先進的技術の社会実装や海外展開を見据えて覚悟を持って
取り組む民間事業者の後押しをしていくことが必要。
・ NICTの基礎的・基盤的な研究機能や外部への資金供給機能等に加え、今後はNICTの産学官の取組の中
核としての役割がより一層求められることを踏まえ、その機能強化策等について戦略的に検討を深めていくべき。
(社会実装及び海外展開に関する取組)
・ 海外市場の獲得に向けて、事業者のニーズに対応して、従来よりも大規模なプロジェクト支援を行い得る環境
の整備が必要。また、引き続き、関係省庁・関係機関との連携やJICT(株式会社海外通信・放送・郵便事業支
援機構)によるリスクマネー供給を強化しつつ、官民を挙げて海外展開に関する取組を推進することが重要。
4.経済安全保障の確保の在り方
8
-外資総量規制と個別投資審査の両輪によりNTTの経営から外国の影響力を排除-
● 通信事業者には、外為法の個別投資審査(外国投資家による1%以上の株式取得等を事前届出により個別審査(※))が課され(外
為法のコア業種)、更にNTTには、NTT法の外資総量規制(外国人議決権等割合が1/3以上を禁止)が課されている。
※ コア業種の10%未満の株式取得は、免除基準(役員に就任しない等)の遵守を前提に、事後報告で実施可(事前届出の免除制度)
● NTTから、外資総量規制について、「世界的に撤廃するのが潮流」、「受け入れるべき投資も制限」、「データやモバイル
の設備情報も重要でNTTのみ規制する合理性は失われている」等から廃止し、個別投資審査を強化すべきとの意見。
● 財務省は、外為法の個別投資審査について、例えば、投資家属性に照らして経済安全保障上のリスクが類型的
に低いと認められない外国投資家が事前届出の免除制度を利用できないようにする等、制度見直しを検討中。
取組の方向性
● NTT法の外資総量規制は、以下の点から、維持することが適当。また、規制の実効性確保のため、遵守状況等を
定期的に確認する制度を導入することが適当。
・ 経済安全保障上のリスクが高まる中で、NTTの通信インフラが我が国の通信全体を支える公共的な役割に鑑み
れば、NTTのみに課す必要性はあること
・ 外国人等議決権割合が1/3以上になっても配当は制限されないため、配当目的の取得には支障が生じないこと
・ 外為法の個別投資審査は日本居住の外国人による投資は対象外で、国籍要件を採用するNTT法の外資総
量規制の代替は困難であること
● 個別投資審査の強化は、経済安全保障上のリスクに対し有効な措置である一方、審査終了まで株式取得が認
められず、投資家への影響など検討が必要。この点、外為法の制度見直しの検討は、両者のバランスに配慮したも
のであり、国際約束との整合性が認められるのであれば望ましい。その対応状況等を踏まえつつ、継続検討が適当。
5.NTTに関する規律の担保措置等の在り方
9
-NTTの業務・責務の適切な履行を担保-
2024年のNTT法改正では、国際競争力の強化を図る観点から、NTTの研究開発に関する責務を廃止するととも
に、担保措置について、外国人役員規制の緩和、役員選解任認可の緩和、剰余金処分の認可の撤廃を実施。
現在、NTTの業務・責務の適切な履行を担保するため、NTT法では、外資総量規制や外国人役員規制のほか、
・ 政府の株式保有義務(NTTの1/3以上の株式の保有)
・ 定款変更、合併等や事業計画の認可制、財務諸表の提出義務等が設けられている。
取組の方向性
(担保措置)
・ 今回、NTT持株・東西の目的・業務に基本的に変更はないため、担保措置の必要性も基本的に変わりはない。
・ NTTの通信インフラの我が国の通信全体を支える公共的な役割に鑑み、NTTの経営の安定と適正な事業運
営を確保するため、政府の株式保有義務は、維持することが適当。
・ 定款変更、合併等、事業計画等の認可は、組織・運営や事業遂行に関する重要事項であり、維持が適当。
・ ただし、NTT東西の合併等認可は、前述のとおり、「小規模な非電気通信事業者」との合併等は対象外と
し、財務諸表の提出義務は、公表資料が入手可能であるため、撤廃することが適当。
(法形式)
・ 「引き続きNTT法に規定する案」と「電気通信事業法に規定し、結果としてNTT法を廃止する案」の主に二
つが考えられるが、総務省において、それぞれの特徴等を踏まえ、我が国の法体系との整合性など法技術的
な面にも留意した上で、必要な規律を適切かつ確実に担保できる形式を検討することが適当。
(参考)総務省において実施すべき事項
10
● 時代に即した見直しを迅速に行うため、総務省においては、下記の29項目について、速やかに制度整備を行うことが適当。
1.ユニバーサルサービスの確保に関する事項
① 電話のユニバーサルサービスについて、NTT東西のワイヤレス固定電話の地域限定を
緩和するとともに、モバイル網固定電話を追加する。
② ブロードバンドのユニバーサルサービスについて、未整備地域等に限定して、ワイヤレス
固定ブロードバンド(共用型)を追加する。
③ 電話のあまねく普及責務は、最終保障提供責務に見直す。この際、メタル固定電
話の利用者の残存区域では、NTT東西の業務区域の縮小は制限する。
※ メタル回線設備については、NTTが移行計画を策定し、総務省で検証
④ ブロードバンドについて、最終保障提供責務を新設する。
⑤ 第一種適格電気通信事業者(電話)と第二種適格電気通信事業者(ブロード
バンド)の義務は、最終保障提供責務に見直す。
⑥ 最終保障提供責務を担う者は、適格電気通信事業者がいる地域では適格電気
通信事業者とし、適格電気通信事業者がいない地域ではNTTとする。
⑦ 最終保障提供責務を担う者が、他事業者の業務区域や役務提供義務の有無等
を確認できる仕組みを設ける。
⑧ 最終保障提供責務を担う者が、他事業者に、責務の履行に必要な協力(設備の
貸出し等)を求めた場合は、当該他事業者に協議に応じる義務を課す。併せて、協
議開始命令など、当該協議の実効性を確保する制度を設ける。
⑨ ユニバーサルサービスの提供者が、業務区域を縮小する場合は、利用者への事前周
知や事前届出を義務付ける。
⑩ 電話のユニバーサルサービス交付金制度については、当分の間は、内部相互補助を
前提とする現行制度を基本的に維持した上で、最終保障提供責務への見直し等に
伴い必要な補正を行う。
⑪ ブロードバンドのユニバーサルサービス交付金制度については、支援区域外での最終
保障提供責務の履行費用を補塡する措置を講ずるとともに、ワイヤレス固定ブロード
バンド(共用型)は、「一者以下提供要件」の「一者」とは扱わないこととする。
⑫ ユニバーサルサービスの提供者には、都市部以外の地域で、都市部を上回る料金
の設定を原則認めないこととする。
⑬ ①・②・⑧に関し、NTT東西が他者設備を利用する場合は、設備の自己設置要
件の例外に追加する。
⑭ NTT東西の線路敷設基盤の譲渡等について、規制コスト等を踏まえ対象範囲を検
討した上で、認可制を導入する。また、重要な電気通信設備の譲渡等の認可を含め
て、認可対象となる行為には「処分」を含めることとする。
2.公正競争の確保に関する事項
① NTT東西の本来業務について、県域業務規制を撤廃し、「東日本地域又は西
日本地域における通信」を媒介するサービスを提供する業務を基本とする。
② NTT東西の活用業務(電気通信業務以外の業務を含む。)について、事前届出
制を見直し、NTT東西が活用業務の実施基準の作成・届出を行った上で、総務省に
おいて実施基準の遵守状況を事後検証する。
③ NTT東西の目的達成業務や目的業務区域外の地域電気通信業務は、事前届
出制から事後届出制に緩和する。
④ NTT東西が、移動通信業務やISP業務など、公正競争の確保に支障が生じるおそ
れがある業務は実施できない旨を法律上明確化する。
⑤ ①の県域業務規制の撤廃に伴い、NTT東西が県間設備について他者設備を利用
する場合は、設備の自己設置要件の例外に追加する。
⑥ NTT東西の線路敷設基盤の譲渡等について、規制コスト等を踏まえ対象範囲を検
討した上で、認可制を導入する。また、重要な電気通信設備の譲渡等の認可を含め
て、認可対象となる行為には「処分」を含めることとする。【1⑭の再掲】
⑦ NTTの累次の公正競争条件(在籍出向の禁止等)について、時代に即して現行
化を行った上で、電気事業法の例を参考に、必要なものを法定化する。
⑧ 市場支配的事業者(一種指定事業者と、二種指定事業者のうち一定の収益シェ
アを有する者)について、登録の更新制の対象に、公正競争に影響を及ぼすおそれ
が大きいグループ内会社との合併等を追加する。
⑨ 市場支配的事業者について、目的外利用・提供が禁止される情報に、卸役務に関
する情報を追加する。
⑩ 鉄塔等の貸出しを行うインフラシェアリング事業者について、認定を受けた場合は、適
正・公平な利用等を担保した上で、公益事業特権(土地等の使用に係る権利)を
付与する。
⑪ 国内電報・国際電報の事業について、電気通信事業法に基づく特別な規律を廃止
し、信書便法に基づく規律を課すこととする。
⑫ NTT東西のメタル固定電話や公衆電話は、プライスキャップ規制の対象外とする。
【関連:1⑫】
⑬ 公正競争の確保に関し、検証を通じた規制のPDCAサイクルを法定化する。
3.経済安全保障の確保に関する事項
① NTTの外資総量規制について、電波法や放送法の例に倣い、その遵守状況等
を定期的に確認する制度を導入する。
4.NTTに関する規律の担保措置に関する事項
① NTT東西の合併等の認可について、小規模な非電気通信事業者との合併等は
対象外とする。
② NTTの財務諸表の提出義務は、撤廃する。
<参考>NTTの通信インフラの公共性・重要性
11
NTTが電電公社から承継した全国津々浦々の線路敷設基盤(電柱、管路・とう道等)やその上に設置された通信回線
(光ファイバや銅線(メタル回線))は、固定通信・移動通信サービスの双方において重要な公共的役割を果たしている。
固定通信サービス
約1,190万本
電柱
電柱
電柱
管路:約60万km
とう道:約650km
約7,000ビル
NTT東西の局舎
管路・とう道
銅線(メタル回線)
移動通信サービス
携帯事業者の基地局 電柱
約100万km
回線数シェア約
93%
電柱
電柱
管路・とう道
回線数シェア約
約110万km
光ファイバ
73%
<参考>モバイル網固定電話について
12
モバイル網固定電話とは、モバイル網(携帯電話網)により提供される固定電話であり、 現在、
NTTドコモ、KDDI、ソフトバンクによって、NTT東西の固定電話より低廉な料金で提供されている。
ネットワーク構成の例
固定電話機
モバイル網固定電話
専用機器
モバイル網固定電話
固定電話網
携帯電話網
携帯電話
回線利用
のための
ICチップ
携帯電話
携帯電話
固定電話
固定電話
資料6
資料 52-3-2
市場環境の変化に対応した通信政策の在り方
最終答申(案)
令和5年8月28日付け 諮問第28号
2025年2月3日
情報通信審議会 電気通信事業政策部会
Ⅰ.基本的考え方 ....................................................................................................................................... 1
第1章 はじめに(検討の経緯) ....................................................................................................... 2
第2章 情報通信産業を取り巻く諸課題 ..................................................................................... 3
第3章 検討の基本的考え方 ........................................................................................................... 8
Ⅱ.ユニバーサルサービスの確保の在り方 ................................................................................... 9
第1章 情報通信インフラの整備・維持の基本的考え方 ................................................... 10
第2章 ユニバーサルサービスに位置付ける役務 ............................................................... 19
第3章 ユニバーサルサービス責務の内容............................................................................. 29
第4章 ユニバーサルサービス責務の担い手 ........................................................................ 36
第5章 ユニバーサルサービス交付金制度............................................................................. 43
第6章 ユニバーサルサービスの料金の低廉性の確保等............................................... 48
Ⅲ.公正競争の確保の在り方 ............................................................................................................. 54
第1章 電気通信事業分野における公正競争の確保に関する基本的な考え方 ... 55
第2章 NTT 東西の通信インフラの在り方 ............................................................................... 57
第3章 NTT 東西等の業務の在り方 .......................................................................................... 65
第4章 NTT グループに関する公正競争の確保の在り方 ............................................... 73
第5章 ネットワークの開放の促進等の在り方 ...................................................................... 78
第6章 線路敷設基盤の開放の促進等の在り方.................................................................. 87
第7章 市場環境の変化を踏まえた電気通信事業に関する制度の在り方 .............. 91
Ⅳ.我が国の情報通信産業の国際競争力強化の在り方 ...................................................... 96
第1章 第一次答申に基づく対応 ................................................................................................. 97
第2章 研究開発・国際標準化・社会実装・海外展開の総合的な推進等 ................. 98
第3章 外国法人等が電気通信事業を営む場合の法執行の実効性強化等 ....... 102
Ⅴ.経済安全保障の確保の在り方 ................................................................................................ 104
第1章 外資等規制の現状と課題 ............................................................................................ 105
第2章 外資総量規制の在り方.................................................................................................. 109
第3章 個別投資審査の在り方.................................................................................................. 115
第4章 外国人役員規制の在り方............................................................................................. 117
Ⅵ.NTT に関する規律の担保措置等の在り方 ....................................................................... 119
今後総務省において実施すべき事項 .......................................................................................... 123
■ 本答申における主要な事業者及び法律についての表記は以下のとおり。
NTT持株
日本電信電話株式会社
NTT東西
東日本電信電話株式会社及び西日本電信電話株式会社
NTT
NTT持株及びNTT東西
NTT法
日本電信電話株式会社等に関する法律(昭和59年法律第85号)
外為法
外国為替及び外国貿易法(昭和24年法律第228号)
経 済 安 全 保 障 経済施策を一体的に講ずることによる安全保障の確保の推進に
推進法
関する法律(令和4年法律第43号)
Ⅰ.基本的考え方
1
第1章 はじめに(検討の経緯)
我が国は、少子高齢化の進展、景気の長期低迷による経済的地位の低下 1、自
然災害リスクに加え、厳しさを増す安全保障環境など、様々な課題を抱えている。
情報通信インフラは、AI・ロボット市場の拡大等により社会全体のデジタル化の更な
る進展が見込まれる中で、あらゆる社会経済活動を支える基盤かつ経済成長のけ
ん引役としてその果たすべき役割が飛躍的に高まっている。
情報通信インフラは、全国あまねく整備・維持された上で、競争による料金の低
廉化やサービスの多様化・高度化を図ることが必要となるところ、ネットワークレイヤ
ーではブロードバンド化やモバイル化等が進展し、さらに他レイヤー(端末・プラット
フォーム)の市場支配的事業者がネットワークレイヤーに進出しつつあるなど、市場
構造は大きく変化しており、時代に即した取組を進めることが必要となっている。
また、情報通信産業が経済成長を牽引するためには、国内市場の競争環境の整
備にとどまらず、旺盛な需要が見込まれる海外市場も見据えた戦略的な取組が求
められ、さらに情報通信インフラの社会的重要性の高まりに対応し、大規模災害等
の自然災害リスクへの対策、サイバーセキュリティ対策、サプライチェーンリスク等に
対応した経済安全保障の確保等に支障を生じさせないことは当然の前提となる。
このような状況等を踏まえ、電気通信事業法及び日本電信電話株式会社等に関
する法律の一部を改正する法律(令和2年法律第30号)附則第5条(施行3年後の
検討規定)に基づき、2023年8月28日に、総務大臣から情報通信審議会に対し、
「市場環境の変化に対応した通信政策の在り方」が諮問されたところである。
本件諮問の具体的な検討は、電気通信事業政策部会の下に通信政策特別委員
会(委員会)を設置して進めることとされ、2024年1月31日までに、事業者、団体、自
治体等のヒアリングを行いながら、委員会を計13回開催し、2024年2月9日に第一次
答申 2を取りまとめたところである。
第一次答申では、喫緊の課題である国際競争力強化の観点から「速やかに実施
すべき事項」を提言するとともに、それ以外の論点は、多岐にわたり、国民・利用者や
電気通信事業者等に重大な影響が生じ得るものであるため、「今後更に検討を深め
ていくべき事項」として整理し、当該事項については、主に委員会の下で開催した
「ユニバーサルサービスワーキンググループ」(ユニバWG)、「公正競争ワーキンググ
ループ」(公正競争WG)、「経済安全保障ワーキンググループ」(経済安保WG)にお
いて、事業者等のヒアリングを行いながら、検討を重ねてきたところである。
1
日本の競争力は1990年に世界で1位だったところ、2023年には過去最低の35位となった(出典:IMD(1990,2023)
「World Competitiveness Yearbook」)。
2
情報通信審議会答申 「市場環境の変化に対応した通信政策の在り方 第一次答申」(2024年2月9日)。
2
第2章 情報通信産業を取り巻く諸課題
第1節 2030年頃に目指すべき情報通信インフラの将来像
1.我が国の情報通信インフラの現状
情報通信インフラは、我が国の国民生活・経済活動を支える基盤であり、経済
成長のけん引役として果たすべき役割が飛躍的に高まっているところ、情報イン
フラについて主要な設備の設置場所や有線・無線の別で分類すると、「地上系ネ
ットワーク」と「非地上系ネットワーク(NTN:Non-Terrestrial Network)」に大別され、
さらに「地上系ネットワーク」は、「固定網」と「モバイル網」に分けられるところである。
「地上系ネットワーク」のうち「固定網」は、光ファイバやメタル回線等をアクセス
回線として構築される有線網であり、光ファイバについては、2023年度末時点で世
帯カバー率99.84%(未整備世帯約10万世帯)に達し、固定ブロードバンドに占め
る光ファイバの割合は、韓国(88.8%)に次いで世界第2位となる 3など、その整備
が着実に進む一方、電話時代の中心的な設備であったメタル回線設備は、老朽
化が進展し、NTTから2035年頃を目途に縮退することが表明されている。
また 、「 モバ イ ル 網」は 、有限希少な電波の 割当てを 受けた MNO (Mobile
Network Operator)が構築する無線網であり、4Gでは、エリア外の居住人口が
2022年度末時点で約0.6万人 4まで減少し、また、5Gでは、人口カバー率が2023年
度末時点で98.1%に達するほか、モバイルブロードバンドの普及率は、エストニア
(204.1/100人)に次いで世界第2位となるなど、その整備が着実に進んでいる。
表Ⅰ-2-1-1 情報通信インフラ(地上系)の普及
3
4
出典:OECD(2022)「Broadband Portal」
2020年国勢調査人口を基礎とし、2022年度末時点で自治体に対して実施したサービスエリア外地域の現状調査の結果。
3
次に、「非地上系ネットワーク(NTN)」については、多数の非静止衛星を一体的
に運用する「衛星コンステレーション」による通信サービスの提供が欧米企業を中
心に活発化しており、我が国の事業者は、これらの企業との業務提携等によって
国内でサービスを提供している。具体的には、2022年10月にKDDIが、2023年に
はNTTドコモ、ソフトバンク等が、それぞれSpaceX社と提携して、一部の地域にお
いて法人向けサービスの提供を開始し、ブロードバンドサービスのほか、携帯電
話基地局のバックホールへの導入等が行われている。
また、空飛ぶ基地局ともいえる「HAPS 5」による通信サービスは、現時点ではサ
ービス開始に向けて無線設備や機体の技術開発を進める段階にあり、NTTドコ
モは2026年、ソフトバンクは2027年の商用化を目指して取組を進めている。
(出典)総務省(2023) 「デジタルビジネス拡大に向けた電波政策懇談会」(第1回配付資料)
図Ⅰ-2-1-2 上空・宇宙における多層的な空間利用の拡大
5
High Altitude Platform Station(高高度プラットフォーム)の略。高高度(高度20km程度の成層圏)の飛行機等に
携帯電話基地局等の機能を搭載して広範囲の通信エリアを構築するもの。
4
2.情報通信インフラの将来像
第一次答申で述べたとおり、各情報通信インフラについては、下表の特性を踏
まえると、2030年頃には、各インフラが以下①~③のように展開されることに加え、
Beyond 5G(6G)の運用が開始され、各種情報通信インフラの相互補完により、
陸・海・空・宇宙をシームレスにつなぎ、通信カバレッジの拡張と先進的なソリュー
ションの実装が進むことが考えられる。
① 光ファイバが伝送の安定性から情報通信の主たる基盤となる。
② 5G等は光ファイバの基盤の上で展開が進められる。
③ NTNは、専用の端末・アンテナを用いるブロードバンドサービスに加えて、
スマートフォン等からの直接の利用は、テキストベースのやりとりに次いで、
音声通話やデータ通信を可能とするサービスの提供も予定されており、地
上系ネットワークの補完的役割を果たすことが期待される。
光ファイバ
安定的な伝送が可能。現時点で世帯カバー率が高い。
離島や山間部等における整備・維持は、コストが極めて高くなる。
モバイル
現時点で4Gの人口カバー率は高く、5Gについても今後更なる展
開が期待される。
一時的な利用者の集中等により、トラヒックが集中した場合、通信
速度が低下するほか、安定性を欠くことがある。基地局まで光ファ
イバで接続されるのが一般的である一方、離島や山間部等の整
備では衛星回線を活用する場合があるが、通信品質の制約が生
じる場合がある。
災害時に基地局が停波するリスクがある。
NTN
離島、海上、山間部等の効率的なカバーや非常時等のネットワー
クの冗長性確保に有用。
衛星コンステレーションによる通信サービスについて、現時点で
は、専用のアンテナ・端末に係る導入コストや、利用者が増えた場
合の速度や安定性の観点で、光ファイバと比較して課題があると
考えられる。
表Ⅰ-2-1-3 各情報通信インフラの特性
なお、各情報通信インフラの整備・維持の在り方は、「Ⅱ.ユニバーサルサービ
スの確保の在り方」と最も関係が深いため、当該項目で後述することとする。
5
第2節 電気通信市場の環境変化
1985年の通信自由化以降、電気通信市場においては、メタル回線をアクセス
回線とし、回線交換網(PSTN:Public Switched Telephone Network)を中継網とす
る固定電話がサービスの中心であったため、固定電話について、全国あまねく提
供を確保するとともに、競争を通じて低廉で多様なサービスの提供を確保するこ
とが通信政策の主眼とされてきたところである。
その後、技術の進展により、固定ブロードバンドやモバイルサービスが普及し、
更にNTNも今後普及が期待されるなど、サービスの多様化・高度化が進展する一
方、メタル回線による固定電話は、契約数は約20年前の4分の1に減少し、メタル
回線は2035年頃に縮退する見込みであるなど、ネットワークレイヤーの構造は大
きく変化し、今後も大きく変化することが見込まれるところである。
さらに、近年では、仮想化・クラウド化が進展する中で、端末レイヤーやプラット
フォームレイヤーの市場支配的事業者がネットワークレイヤーに進出しつつあり、
ネットワークレイヤーの構造変化にととまらず、レイヤー横断的な形で市場構造が
変化している状況にあるため、このような変化に対応し、時代に即した通信サービ
スの適切な提供を図る観点からの取組が重要となっている。
また、人口減少が進む我が国では、今後、国内市場が大幅に拡大することは
期待しにくい一方、国際市場では、AI・ロボット市場の拡大やDX 6・GX 7投資の増
加により情報通信インフラへの需要が急増していること等を踏まえると、国内市場
に焦点を当てた取組に加えて、旺盛な海外需要を取り込む、国際競争力の強化
を図る観点からの取組も重要性を増している。
例えば、NTT持株においては、2030年頃の実現を目指すIOWN構想 8を通じて
世界に先駆けたオール光ネットワーク技術を確立し、新たな情報通信インフラを
構築することを提唱しており、グローバルにゲームチェンジ 9を図ることで我が国の
国際競争力の向上に貢献することが期待されている。
6
Digital Transformation
Green Transformation
8
IOWN (Innovative Optical and Wireless Network)構想とは、革新的な技術によりこれまでのインフラの限界を超え、
あらゆる情報を基に個と全体との最適化を図り、多様性を受容できる豊かな社会を創るため、光を中心とした革新
的技術を活用した高速大容量通信、膨大な計算リソース等を提供可能な、端末を含むネットワーク・情報処理基
盤の構想のこと。2024年の仕様確定、2030年の実現をめざして、研究開発を始めている(出典:NTT R&D
Website)。
9
光技術をベースとしたネットワーク・情報処理基盤(端末を含む。)の大容量、低遅延、低消費電力を実現する
IOWNを活用し、世界に先駆けて爆発的な情報量への対応と電力効率の向上の両立を可能とする新たな技術を
導入・転換することで、我が国の情報通信産業をはじめとしたあらゆる産業の国際競争力の強化を図ること。
7
6
さらに、情報通信インフラは、デジタル社会の基幹インフラであり、その重要性
が増大することに伴い、その安全・信頼性を確保する重要性も増す中で、国際情
勢が緊迫化している状況等に鑑みると、通信サービスの安定的な提供を確保す
るためには、電気通信事業者の経営から外国の影響力を排除するなど、経済安
全保障を確保する観点からの取組の重要性も増しているところである。
図Ⅰ-2-2-1 電気通信市場の環境変化
7
第3章 検討の基本的考え方
第一次答申では、「2030年頃に目指すべき情報通信インフラの将来像」を整理し
た上で、電気通信市場の環境変化を踏まえて、その実現のために検討すべき論点
を整理したが、論点ごとにNTT法の在り方を含めた政策の方向性を検討する際には、
以下の3つを確保することを基本とすることとしたところである。
1.通信政策として確保すべき事項
(1)通信サービスが「全国に届く」(不採算地域を含むサービス提供)
(2)「低廉で多様」なサービスが利用できる(事業者間の公正競争の確保)
(3)「国際競争力」を確保する(国全体の基礎研究の推進)
(4)「経済安全保障」を確保する(漏れのないセーフガード措置)
2.NTTの経営面で確保すべき事項
NTTは、日本電信電話公社(電電公社)から全国津々浦々の線路敷設基盤
を受け継ぎ、公共的な役割を果たすことが期待されることに鑑み、上記1を確
保する上で重要な役割が求められる一方、NTTが民間企業であることに鑑み
れば、上記1の確保に支障のない範囲内で時代に即した自由な経営を確保し、
グローバルな競争環境等において効率的かつ機動的な対応を可能とする必
要がある。
3.制度改正の際に確保すべき事項
制度の廃止と新設を同時に行わないと制度的な空白を生み、国民・事業者
に不利益を与え得ることを踏まえて、「早期」の改正と「円滑」な改正の両立を
図る必要がある。
本答申は、上記基本的考え方に基づき、第一次答申で「更に検討を深めていく
べき事項」とされた以下の項目について、検討の結果を取りまとめたものである。
Ⅱ.ユニバーサルサービスの確保の在り方
Ⅲ.公正競争の確保の在り方
Ⅳ.我が国の情報通信産業の国際競争力強化の在り方
Ⅴ.経済安全保障の確保の在り方
Ⅵ.NTTに関する規律の担保措置等の在り方
8
Ⅱ.ユニバーサルサービスの確保の在り方
9
第1章 情報通信インフラの整備・維持の基本的考え方
第1節 基本的考え方
1.検討の時間軸
情報通信分野では、技術革新が急速に進展し、モバイル網の更なる高度化や
非地上系ネットワーク(NTN)の更なる普及などが見込まれる一方、電話時代のレ
ガシー設備であるNTT東西のメタル回線設備は2035年頃に維持限界を迎える見
込みであり、検討の前提となる市場環境は、静的なものでなく、今後もダイナミック
に変化することが想定されている。
本件の検討では、このような将来の動向を視野に入れつつ行うことが重要であ
るが、10年先(2035年頃のメタル回線設備の縮退後)の動向を見極めることは困
難であるため、具体的な制度設計の検討は、本件諮問の対象である2030年頃ま
でを射程に行った上で、今後の環境変化に応じて適時・柔軟に見直すこととする
ことが適当である。
2.今後の情報通信インフラの在り方
情報通信インフラは、地理的制約を超えて、「ヒト」や「モノ」が情報を瞬時にや
りとりすることを可能とするものであり、音声による通話を実現する「電話」とデータ
通信を高速度で実現する「ブロードバンド」の提供によって、平時には国民生活
や経済活動を支え、非常時には安心・安全を確保する重要な役割を担っている。
今後の情報通信インフラについては、このような役割を引き続き果たす観点か
ら、整備・維持を図ることが必要となるところ、
・ 通信サービスの利用形態には、「固定地点での世帯/法人利用(固定利用)」
と「移動範囲での個人利用(移動利用)」の二つがあること
・ 現在は、主として、固定利用は固定網(光ファイバ等)、移動利用はモバイル
網(4G等)により実現しているが、これらの未整備地域も存在すること
・ 不採算地域では整備費・維持費が増大することから、技術の進展等を踏ま
えつつ、効率的な整備・維持を図ることも必要となること
等に鑑みると、今後の情報通信インフラには、無線技術の進展や2035年頃のメタ
10
ル回線設備の縮退等も視野に、NTNを補完的に 10活用しつつ、固定網とモバイ
ル網の双方によって、全国・どこでも、電話とブロードバンドが利用できる環境を
実現することが求められる。
3.政策手段
情報通信インフラの整備・維持は、事業者の自主的な取組が基本であるが、そ
れだけでは実現困難な場合は、一定の政策手段を講ずることが必要となる。
この政策手段について、ユニバーサルサービス制度に限定して考えると、維持
費を支援する交付金制度に限定されてしまうが、一般的には、予算・税制上の支
援措置や規制措置等が考えられ、ユニバーサルサービス交付金制度のみが政
策手段でない点を踏まえて検討することが必要である。
特に、ユニバーサルサービス交付金は、関係事業者の負担金が原資であり、
当該負担金は、ユニバーサルサービス料として利用者に転嫁されているため、当
該交付金の活用は、国民負担を増加させるおそれがある点に留意が必要である。
以上から、情報通信インフラの整備・維持については、予算・税制上の支援措
置、規制措置やユニバーサルサービス交付金制度など多様な選択肢が考えられ
ることを前提に、支援対象となる情報通信インフラの種類やその設置者の経営状
況、市場の動向等に応じて判断し、国民負担が大幅に増加するような手段はでき
る限り避けつつ、各政策手段を適切に組み合わせて実現することが適当である。
10
2030年頃までを射程とする本検討では、少なくとも地上系ネットワークと比較して回線容量が少ないと
いう点から、NTNを補完的なものと位置付けているが、宇宙基本計画(2023年6月閣議決定)では、今
後20年を見据えた将来像として「通信衛星コンステレーションを含む宇宙ネットワークが、地上ネットワ
ークに並ぶ基幹インフラとなる」とされている。
11
第2節 各情報通信インフラの整備・維持の在り方
1.固定網の整備・維持
固定網では、主に、メタル回線と光ファイバで二重のアクセス網が構築されて
おり、その整備・維持に当たっては、下記のとおり、メタル回線設備の円滑な縮退
を図りつつ、光ファイバの世帯カバー率の拡大等を図ることが基本と考えられる。
まず、メタル回線設備については、NTTは、老朽化に伴い、2035年頃を目途に
縮退することを表明しているが、メタル固定電話の利用者は、2030年頃で約730
万程度、2035年頃で約500万程度残存する見込み 11であり、円滑な縮退を図るた
めには、既存利用者の代替サービスへの移行を促進することが必要となる。
このため、メタル回線設備については、円滑な縮退を図る観点から、PSTN(回
線交換網)のIP網への移行の場合と同様に、NTTにおいて具体的な移行計画を
策定し、総務省において移行計画の進捗を検証する等の取組を進めることが適
当である。
次に、光ファイバについては、伝送の安定性が高く、モバイル網で基地局用の
回線としても利用される基幹的な情報通信インフラであり、総務省のデジタル田
園都市国家インフラ整備計画(2023年4月改訂)では、2027年度末までに世帯カ
バー率99.9%(2023年3月末時点:99.84%)とすることが目標とされているため、
この実現に向けて着実に取組を進めることが適当である。
上記の実現に加えて、残り0.1%の世帯(約5万世帯)にも超高速ブロードバン
ドを利用できる環境の整備が必要となるところ、これら全世帯に光ファイバを整
備・維持することには多大な費用を要することが想定されるため、無線を積極的
に活用し、光ファイバと無線を組み合わせた効率的な整備・維持を図ることが適
当である。
その際、光ファイバの整備・維持では、未整備エリアの解消に加え、公設光ファ
イバの民設移行が大きな課題となり、その解決に当たっては、線路敷設基盤の維
持を含めて無線よりも維持コストが高い点の解消が必要となることから、引き続き、
離島等の条件不利地域では、予算措置 12による整備費の支援を行うとともに、ユ
ニバーサルサービス交付金制度による維持費の支援を行うことが適当である。
11
12
ユニバWG第2回会合(2024年2月22日)NTT持株提出資料。
高度無線環境整備推進事業。
12
2.モバイル網の整備・維持
モバイル網は、時間と場所等により通信速度が変化するため、固定網に比べ
伝送の安定性は劣るものの、効率的に面的カバーが可能であり、現在、4Gに加
え、5Gの普及が進んでいる。携帯電話の契約数は2億件を超え 13、モバイル端末
のみを有する世帯も増加する 14中で、モバイル網は、固定網とともに、重要な社会
インフラとして、その着実な整備・維持を図ることが重要となる。
この際、4Gと5Gでは整備の状況やその特性も異なることに留意しつつ、非居
住地域を含めて、利用者の移動範囲全てをカバーすることには多大の費用を要
することを踏まえ、モバイル網の整備・維持の在り方は、居住地域と非居住地域ご
とに考えることが適当である。
まず、居住地域については、5G展開の基礎となる4Gの人口カバー率は99%を
超え、また、5Gの人口カバー率は、デジタル田園都市国家インフラ整備計画に
おいて、2030年度末に99%(全国・各都道府県)を目標としているところ、引き続
き、4Gではエリア外居住人口 15の解消、5Gでは当該目標の実現に向けて着実に
取り組むことが適当である。
次に、非居住地域については、デジタル田園都市国家インフラ整備計画にお
いて、4Gに加え、5GやNTNの活用を含め、2030年度末の道路カバー率(高速道
路及び国道)99%を目標としているところ、今後、自動運転等の普及に対応し、ま
た、国民の利便性向上や安全・安心を確保する観点から、この目標の実現等に
向けて着実に取り組むことが適当である。
これらの実現を図る際には、モバイル網の整備・維持は、有限希少な電波の割
当てを受けたMNOのみが実施可能であることに鑑みると、電波の有効利用を図
る観点から、MNOにはエリアカバーの拡大を主体的に行うことが求められ、競争
的な整備が進みにくい不採算地域等では、整備・維持コストを削減する観点から、
さらにインフラシェアリングの積極的な活用も求められる。
また、電波の有効利用を図る観点から、電波法に基づきエリアカバーを図るた
めの措置を講じることが可能であり、現に一定の措置が講じられていること、また、
13
総務省「電気通信サービスの契約数及びシェアに関する四半期データ(令和5年度第4四半期(3月
末))」によると、2億2,186万件(2024年3月末時点)。
14
ユニバWG第6回会合(2024年4月23日)NTT持株提出資料によると、モバイル端末のみを有する世
帯数は約36%(2022年8月末時点)。
15
総務省「携帯電話を利用できない不感地域の状況について(令和4年度末現在)」によると、約0.6万
人(2023年3月末時点)。
13
MNOの経営状況も併せ鑑みれば、継続的に負担が生じる維持費に対し、国民
負担に繋がり得るユニバーサルサービス交付金制度等で支援することはできる限
り避ける必要がある。
以上から、モバイル網の整備・維持は、MNO間の設備競争(P55参照)による整
備・維持を基本としつつ、電波法等に基づく制度的措置 16、予算措置(携帯電話等
エリア整備事業)や税制措置による整備費の支援を行うことにより、MNOによる競争
的な整備・維持と、インフラシェアリングや非常時における事業者間ローミングの
推進等を含む協調的な整備・維持を両輪として促進することが適当である。
3.非地上系ネットワーク(NTN)の整備・維持
NTNについては、平時では、離島、海上、山間部等の効率的なカバーに、非
常時では、ネットワークの冗長性確保に有用であり、近年、多数の非静止衛星を
一体的に運用する「衛星コンステレーションによるサービス」等が開始され、また、
「HAPSによるサービス」の実用化に向けた官民の取組も進められている。
しかし、上記のNTNは、未だサービスの導入期・揺籃期にあると考えられ、地上
系ネットワークと比較すると、利用者が増えた場合の安定性・性能が見極められな
い面等があるため、現時点では地上系ネットワークの代替ではなく、補完としての
役割を期待されている。
まず、衛星コンステレーションによるサービスは、その提供が欧米企業を中心
に活発化し、我が国事業者は、これら企業との業務提携等によってサービスを提
供するほか、携帯電話基地局のバックホールへの導入や関連する研究開発を行
っている。今後、携帯電話と衛星との直接通信が実現し、その内容もテキストベー
スから音声通話・データ通信への拡大が計画されており 17、地上系ネットワークの
カバーしにくい非居住地域をはじめとして、エリアカバーに一定の役割を果たせ
るように、必要な制度整備の検討が必要である。
次に、HAPSによるサービスは、高度20km程度の成層圏から、携帯電話との直
接通信によるサービス提供を行うものであり、NTTドコモ 18は2026年、ソフトバンク
は2027年の商用化を目指している。これに鑑みれば、まずはスポット的なカバー
16
特定基地局の開設計画の認定、認定開設者による特定基地局の開設の責務や電波監理審議会に
よる電波の有効利用の程度の評価など。
17
KDDIは、SpaceX社と提携して2024年内を目途に携帯電話と衛星の直接通信を実現し、テキストベー
スのやりとりか ら 開始し 、その後、音声通話・ データ通信の提供も予定。楽天モ バイ ルは、 AST
SpaceMobile社と提携し、2026年内に携帯電話と衛星の直接通信により、テキストベースのやり取りだ
けでなく、音声通話、ビデオ通話等の提供を計画。
18
Space Compass社等と提携。
14
や災害時の応急復旧への活用が想定されるため、これに対応した制度整備を進
めることが適当であり、さらに将来的には広範囲での高速・大容量のサービス提
供が期待され、HAPSシステムの高度化に向けた研究開発が進められているため、
今後の技術レベルの向上に合わせて必要な制度の見直しに取り組んでいくこと
が適当である。
15
第3節 ユニバーサルサービスとして保障する利用形態
1.現状と課題
ユニバーサルサービスとして保障する利用形態には、「固定地点での世帯/法
人利用(固定利用)」と「移動範囲での個人利用(移動利用)」が考えられるところ、
現行のユニバーサルサービス制度は、固定電話又は固定ブロードバンドを対象
としており、固定利用の形態を保障するものとなっている。
移動利用の形態である携帯電話は、1990年代後半以降、急激に普及が進み、
国民生活や経済活動における重要性が高まったため、情報通信審議会等では、
携帯電話をユニバーサルサービスに位置付けることに関する議論が行われてき
たが、当初は、普及状況や利用実態を踏まえて国民生活における不可欠性が欠
如していたことや利用者料金の低廉性が確保されていないこと、普及が進んだ近
年は、事業者間競争を通じてエリアカバーが拡大している途上であること等を理
由に、携帯電話はユニバーサルサービスに位置付けないことと整理された。
このような中、NTTから、今後のユニバーサルサービスは、モバイルを軸とした
制度とし、利用者の利用実態や利便性向上等を踏まえ、固定利用に加え、居住
地域については移動利用を保障すべきであるとの意見が示されたところである。
2.取組の方向性
携帯電話サービスについては、現在の普及状況や利用実態等を踏まえれば、
国民生活における不可欠性が欠如しているとはいえず、利用者料金も、事業者
間の活発な競争により、現行のユニバーサルサービスの対象サービスと比べて高
額ではない水準が実現している。
しかしながら、以下の点を踏まえると、ユニバーサルサービスとして移動利用を
保障対象とする必要性は高いとはいえないため、ユニバーサルサービスの保障
対象は、現時点では、引き続き固定利用とすることが適当である。
① モバイル網のエリアカバーは、電波法等に基づく制度的措置や予算・税制
措置等を踏まえ、MNOが競争的及び協調的な整備・維持を進めている状況
であり、現時点では、各社のカバーエリアについて、人口急減や超高齢化の
進行に伴う縮小や撤退の傾向は認められないこと
② このような中で、携帯電話サービスをユニバーサルサービスに位置付けて、
新たな国民負担を継続的に生じさせてまで保障する必要性は認められず、
また、現在のMNOの経営状況に鑑みると、そのような負担に対する国民の
16
理解が得られにくいと考えられること
③ また、屋内やビル陰など、技術的にカバーすることが困難な地点について
の課題は、依然として解消されていないこと
④ さらに、IP電話を含めた固定電話の利用者数は、未だ5,000万を超えてお
り、地理的識別性を有する0ABJ番号へのニーズも一定数あると考えられるた
め、携帯電話サービスをユニバーサルサービスとして固定電話の代替とする
ことは、必ずしも利用者のニーズを踏まえたものとはいえないこと
ただし、従前の情報通信審議会の答申等や、ユニバWGでもユニバーサルサ
ービスの対象が将来的にモバイルサービスに移行することに異論がないとの意見
が多数示されたこと等に鑑みると、移動利用の形態である携帯電話サービス等を
ユニバーサルサービスとして位置付けることについては、今後の技術の進展や利
用の実態等を踏まえ、引き続き検討を行うことが適当である。
【参考】これまでの情報通信審議会等での議論の概要
❶ 2005年の情報通信審議会答申「ユニバーサルサービス基金制度の在り方」
移動電話については、全国民の76%に普及しているものの、通話時間では固
定電話が移動電話の約2倍利用されている等の状況もあり、移動電話は固定電
話に代替して用いられるのではなく、固定電話と併存しつつ「国民生活における
不可欠性が高いサービス」と位置付けられていた。
一方で、費用面の課題や、技術中立性・競争中立性への考慮から、「近い将
来、ユニバーサルサービスと位置づけられる可能性も生じているが、現時点で基
金による補填の対象とすることには慎重であるべき」とされ、「当面は、基金制度
以外の手法を用いることによって、移動電話の更なる普及を促進することが適当」
と結論付けられた。
❷ 2008年の情報通信審議会答申「ユニバーサルサービス制度の在り方」
「携帯電話の加入数は1億台を超えており、加入電話を大きく上回っている状
況にあるが、加入電話と比較すると高料金低普及率であり、また利用実態につい
ても世代間・地域間でばらつきが見られることから、2010年代初頭までの期間に
おいて、携帯電話をユニバーサルサービスの範囲と整理することは適当ではない」
とされた。
他方、2010年代初頭以降において、「不感地域の解消が進むとともに、料金の
多様化・低廉化が進展し、世代・地域における利用実態にも変化が生じると考え
17
られる」ことも踏まえ、携帯電話をはじめとしたモビリティのあるサービスを、ユニバ
ーサルサービスの範囲に含めることの要否について、引き続き検討していくことが
必要であるとされた。
なお、同答申において参照されている総務省の「ユニバーサルサービス制度
の将来像に関する研究会」報告書において、モビリティを有するサービスをユニ
バーサルサービスとする場合、最低限の通信として確保する対象を世帯単位から
活動範囲における個人にまで拡大するのか、一定の業務区域における「あまねく
提供」の範囲を、居住地区を包含するより広域のサービス提供可能エリアとするの
かといった点についても検討が必要との指摘があったことにも留意が必要である。
❸ 2010年の情報通信審議会答申「ブロードバンドサービスが全国に普及するま
での移行期におけるユニバーサルサービス制度の在り方」
2008年答申における上記の整理を踏襲しつつ、確保すべき「最低限の通信」の
考え方について、現行のユニバーサルサービスとの関係性の観点からの整理も必
要である旨が示された。すなわち、携帯電話をユニバーサルサービスとして位置
付ける場合、加入電話に加えて対象(加入+携帯)とするのか、加入電話といずれ
かとして対象(加入又は携帯)とするのかについても検討が必要であるとされた。
❹ 2014年の情報通信審議会答申「2020年代に向けた情報通信政策の在り方」
携帯電話やブロードバンドについては、国民生活や経済・社会活動の基盤とし
ての重要性がさらに増す可能性が高いものの、人口急減・超高齢化の進行により、
民間事業者の競争に委ねるのみで条件不利地域等におけるサービス提供が確
保されるかは不透明であるため、未整備地域の解消やサービスの提供状況等を
踏まえて見直しの検討を行うことが適当であるとされた。
❺ 2019年の情報通信審議会答申「電気通信事業分野における競争ルール等
の包括的検証」
携帯電話サービスについては、ブロードバンドに比して地方での基盤整備が
進展しているとともに、料金等の提供条件を適正化するための競争促進に向けた
取組が着実に進められていることや、5G以降のネットワーク構成を見据えると、固
定通信と移動通信の関係等、サービスの位置付けが大きく変化することが想定さ
れることから、ユニバーサルサービスに含めることは不適当とされた。
18
第2章 ユニバーサルサービスに位置付ける役務
第1節 電話のユニバーサルサービスに位置付ける役務
1.現状と課題
(1) 電話のユニバーサルサービスに位置付けられている役務
ユニバーサルサービスは、電気通信事業法上、基礎的電気通信役務として、
「国民生活に不可欠であるためあまねく日本全国における提供が確保されるべ
き電気通信役務」と規定されており、電話に係るものは第一号基礎的電気通信
役務、ブロードバンドに係るものは第二号基礎的電気通信役務として、いずれ
もその具体的内容は総務省令で定めることとされている。
第一号基礎的電気通信役務としては、「①メタル固定電話」、「②公衆電話」、
「③緊急通報」のほか、「④メタル固定電話相当の光IP電話(光回線電話)やワ
イヤレス固定電話」が定められているが、④については、メタル回線設備の老
朽化の進展等を踏まえ、メタル固定電話の代替として追加されたものである。
(2) 固定電話サービスの動向
固定電話の契約数は、現在約5,000万件である。このうち、メタル固定電話
は、1998年の約6,300万件をピークに減少傾向にあり、現在、約1,300万件であ
るのに対し、IP電話は、増加傾向にあり、現在、約3,600万件となっている。
電話のユニバーサルサービス制度は、メタル固定電話を前提に、電話サー
ビスの単体利用を保障する制度として創設されたが、IP電話は、ブロードバンド
の利用を前提に、その付加サービスとして提供されることが一般的であるため、
ブロードバンドのユニバーサルサービスが保障されれば、実質的にはIP電話の
提供も保障されること(IP電話単体利用の保障は不要)になる。
NTT東西は、2035年頃を目途としたメタル回線設備の縮退を表明しており、
今後、IP電話等への更なる移行が想定されるため、電話サービスの単体利用
を保障する必要性は低下することが見込まれる一方、メタル固定電話の利用者
は、当面は相当数残存する見通し(2030年:約730万、2035年:約500万)である
ため、NTT東西のメタル固定電話の収支が悪化する中で、既存利用者の適切
な利用を効率的に確保しつつ、円滑な移行を図ることが必要となっている。
19
(3) NTT東西のワイヤレス固定電話
NTT東西のワイヤレス固定電話は、モバイル網(他者設備)を利用した固定
電話(0ABJ番号)であり、電話のユニバーサルサービスの効率的な提供を可
能とする観点から、2020年のNTT法改正により、自己設置要件(NTT東西の本
来業務は、自己設備により行うことが必要)の例外として、不採算地域に限定し
て認められたものである。
また、ワイヤレス固定電話の提供に係る技術基準では、メタル固定電話の代
替であること等を踏まえ、緊急通報やFAXの機能、音声品質等について、可能
な限りメタル固定電話と同水準とすることが定められている。
2024年4月から、NTT東西のワイヤレス固定電話は提供が開始され、その回
線数は、数年後で1万回線に満たない程度、10年後は10万回線前後と見込ま
れている 19が、NTTは、FAXの送受信に必要な通信品質の確保等がコストに占
める割合が高く、技術基準が緩和された場合は、赤字額の縮小が期待されると
している 20。
(4) MNOのモバイル網固定電話
モバイル網を利用した固定電話(0ABJ番号)としては、NTT東西のワイヤレス
固定電話のほかに、MNOが提供するモバイル網固定電話がある。
モバイル網固定電話は、基本的に全国で、NTT東西のメタル固定電話より
低廉な料金 21 で利用可能である一方、ユニバーサルサービスとしての技術基
準が課されておらず、モバイル網を通じて提供される転送サービスという特性
から、ワイヤレス固定電話とは、緊急通報やFAXの疎通に影響する通信品質
等に差異がある。
2.取組の方向性
(1) 基本的考え方
固定電話については、ブロードバンドの利用者が付加サービスとしてIP電話
19
ユニバーサルサービス政策委員会 第26回会合(2022年3月17日)NTT東西提出資料。
ユニバWG第9回会合(2024年2月22日)参考資料9-2 第7回会合の事後質問等への回答「FAX
や緊急通報時の番号変換の機能等はコスト単価の○○(非開示)を占めており、技術要件が緩和され
た場合、赤字額も縮小することが期待されますが、現在の方式から新たな方式に切り替える必要があり、
新たな機能開発や設備構築を要するため、そのコストが追加で発生すると想定しています。」。
21
NTTドコモ「homeでんわライト」:980円、KDDI「ホームプラス電話」:1,530円、ソフトバンク「おうちので
んわ」:980円(いずれも税抜料金)。
20
20
を利用する形態が今後も増加することが見込まれるものの、NTT東西のメタル
固定電話は、2030年頃でも未だ約730万の利用者の残存が見込まれるため、
既存利用者の保護を図る観点から、当面は、メタル固定電話を中心とした固定
電話の単体利用をユニバーサルサービスとして保障することが適当である。
この際、メタル固定電話は、利用者が残存する区域では、利用者が減少して
も設備の維持が必要となり、その場合、料金収入は減少する一方、設備コスト
は大きく変わらず、NTT東西の赤字額は更に拡大が見込まれることから、NTT
東西の電話のユニバーサルサービスの効率的な提供を確保するとともに、電
話単体利用を希望する者の移行先の選択肢を拡大し、メタル回線設備の円滑
な縮退を図る観点から、モバイル網の活用を更に進めることが必要である。
(2) NTT東西のワイヤレス固定電話の地域限定の緩和
NTT東西のワイヤレス固定電話は、現行制度上、サービスの安定的な提供
等を確保する観点から不採算地域に限定されているが、現時点で、MNOのカ
バーエリアに縮小の傾向は見られず、提供地域を拡大してもサービス提供に
必要なモバイル網の利用が不安定になるとは考えにくいこと、利用者を増やす
ことでコスト削減が可能であり、メタル回線設備の縮退の促進にも資すること等
から、提供地域を不採算地域に限定する規律は見直すことが適当である。
また、ワイヤレス固定電話は、メタル固定電話と同等の技術基準(FAXの疎
通に影響する通信品質や緊急通報等に係る基準)に従って提供すると、赤字
が生じる状況となっているところ、FAXの利用者が減少していること 22等を踏ま
え、ワイヤレス固定電話の技術基準を一定程度緩和し、NTT東西による固定電
話の効率的な提供を可能とすることについて検討が必要である。
(3) モバイル網固定電話のユニバーサルサービスへの追加
現在MNO各社が提供するモバイル網固定電話は、住所情報が通知されず、
緊急通報をした場所が特定できない場合があること、品質がFAXの提供に適さ
ないサービスがあること、メタル固定電話と比較して品質が劣るサービスがある
こと等の課題はあるが、以下の点等に鑑みると、電話のユニバーサルサービス
に位置付けることが適当である。
22
総務省「令和5年通信利用動向調査報告書」によると、FAXの世帯保有状況は2009年の57.1%をピ
ークに、2023年には26.9%に低下している。
21
① モバイル網固定電話は、基本的に全国で、NTT東西のメタル固定電話
より低廉な料金で利用可能であり、電話のユニバーサルサービスの効率
的な提供と、電話単体利用を希望するメタル固定電話の利用者の移行先
を併せ確保する観点から有効なサービスと考えられること
② メタル固定電話やFAXの利用者が減少していること等を勘案すると、電
話のユニバーサルサービスの要件として、メタル固定電話と同水準の技術
基準 23を課す必要性は低下しつつあるため、モバイル網固定電話固有の
技術基準として、通常の利用に支障を来さない一定の安定性や通話品質、
緊急通報等が確保できる水準を検討(現に提供されているサービスである
ことも考慮した上で現行のIP電話や携帯電話などの技術基準を参照しな
がら検討)し、それを課せば足りると考えられること
この点、モバイル網固定電話については、緊急通報受理機関から、「緊急通
報時に、住所情報、通報者が使用する固定電話番号(0ABJ番号)及び氏名が
通知される機能」の実装が非常に重要であることが指摘されている 24ところ、
・
その本格的な普及は、メタル回線設備の縮退に伴う利用者の計画的移
行の開始以降であると考えられること
・
当該機能の実装には相応の準備期間・コストを要すること
に鑑みると、総務省において、その普及状況を見極めつつ、有識者や関係事
業者、緊急通報受理機関等の意見も聴きながら、その普及段階において確実
に当該機能の実装が実現されるよう、検討を進めることが適当である。
23
現在の電話のユニバーサルサービスの大宗を占めるメタル固定電話の技術基準は、その策定時に
主な通信手段であったNTT東西のメタル固定電話のサービスを念頭に置いていたことから、他のサー
ビスと比較して高い水準の通話品質やFAXを疎通させ得る通信品質等が設定されている。
24
ユニバWG第10回会合(2024年7月2日)において、緊急通報受理機関からは、「GPS情報ではマンシ
ョンの部屋番号などの救援に必要な情報が不足することから、住所情報が非常に重要であることを御
理解いただきたい」とし、通報を受けた救援の際に遅れが生じないようにするため、同機能の実装が非
常に重要であると指摘されている。
22
第2節 メタル回線設備の円滑な縮退
1.現状と課題
(1) メタル回線設備の円滑な縮退
NTTは、メタル回線設備について維持限界を迎える2035年頃を目途に縮退
する考えを示しているが、現状のまま推移すれば、その時点でメタル固定電話
の契約数は500万程度残存し、赤字は約900億円に上る見込みである。
約500万の利用者が残存する状態でサービスを終了する場合、社会的な混
乱が生じるおそれがあることから、既存利用者の円滑な移行を促進する必要が
あるところ、NTTからは、メタル回線設備の縮退を進めるに当たっては、既存利
用者に不便をかけないよう、移転等の申込を契機とした移行勧奨から、段階的
にエリア単位での移行実施を検討している旨が示されている。
なお、PSTNからIP網への移行は、2010年頃から検討が開始されたが、NTT
から、2025年頃を目標年度として移行に係るスケジュールが示され、情報通信
審議会電話網移行円滑化委員会で、円滑な移行に向けて個別課題に関する
具体的な方向性を整理し、その進捗を検証することとしたところである。
(2) メタル回線設備の縮退を見据えた公衆電話の扱い
第一種公衆電話 25は、社会生活上の安全及び戸外における最低限の通信
手段を確保する観点から、災害時優先電話であることも考慮し、電話のユニバ
ーサルサービスに位置付けられているところ、2022年に、
① 第一種公衆電話については、その提供に用いられるメタル回線設備の
コスト効率が悪化し、携帯電話が普及している状況にあること等を踏まえ、
その提供の効率化を図るため、設置基準が緩和され 26、
② 災害時用公衆電話については、常設公衆電話の利用が大幅に減少し
ている中で、災害時を中心に、第一種公衆電話が果たしている社会的役
割を代替するものとしての位置付けを高めていたことから、新たにユニバ
ーサルサービスに位置付けられた。
25
社会生活上の安全及び戸外での最低限の通信手段を確保する観点から、公道上、公道に面した場
所その他の常時利用することができる場所又は公衆が容易に出入りすることができる施設内の往来す
る公衆の目につきやすい場所に設置される公衆電話機であって、一定の基準で設置されるもの。
26
2022年の電気通信事業法施行規則の改正により、市街地ではおおむね1km(従来500m)四方に一
台、それ以外の地域ではおおむね2km(従来1km)四方に一台に緩和された。
23
以上を踏まえ、NTTは、約11万台の第一種公衆電話を2031年度までに約3
万台まで削減する予定であるが、2035年頃には、公衆電話に用いられているメ
タル回線設備は維持限界を迎えるため縮退する考えを示しており、メタル回線
設備の縮退を見据えた公衆電話の扱いが今後の課題となる。
なお、諸外国のユニバーサルサービスにおける公衆電話の扱いは、アメリカで
は「当初から対象外」であり、EU主要加盟国(フランス、ドイツ、イタリア、スペイン)では
「対象外に見直し」を行い、イギリス、韓国、オーストラリアでは「対象」となっている。
2.取組の方向性
(1) メタル回線設備の縮退に関する移行計画の策定と検証
現状のまま推移すると、メタル固定電話の利用者は、メタル回線設備が維持
限界を迎える2035年頃に約500万残存することから、メタル回線設備の円滑な
縮退を図るためには、まずはNTTにおいて、メタル回線設備の縮退と既存利用
者の移行に関する具体的な計画(移行計画)を早急に策定することが必要である。
その際、移行計画については、メタル回線設備の縮退が、NTT東西のメタル
固定電話の利用者だけでなく、競争事業者を含めて多様な関係者に影響を与
える可能性があること等を踏まえて策定するとともに、総務省において、有識者
や関係事業者等の意見を聴きながら、これを検証することが適当である。
この点、NTTは、具体的な移行の考え方として、一定の時期からエリア単位
での移行を検討している旨を表明しているところ、エリア単位の移行は、メタル
回線設備の縮退を進める上で効果的である一方、利用者や事業者への影響
が大きいため、NTTにおいては、移行の時期・方法や移行先サービスの案内
等について十分な時間的余裕をもって検討・調整・周知することが求められる。
なお、撤去されたメタル回線設備(銅線)の売却益については、移行に要す
る費用への充当等も含め、メタル固定電話の事業収支に与える影響等につい
て、関係者間で議論を進めるべきとの意見があったことに留意する必要がある。
(2) メタル回線設備の縮退を見据えた公衆電話の扱いの検討
公衆電話については、戸外での通信手段が携帯電話に移行し、その利用
は大幅に減少しているが、災害時を中心に、携帯電話を利用できない場合に
事前契約なく利用できる社会生活上の安全及び戸外における最低限の通信
手段として、国民のニーズは未だ存在すると考えられる。このため、第一種公
衆電話は、引き続きユニバーサルサービスに位置付けることが適当である。
24
ただし、公衆電話に用いられるメタル回線設備は、2035年頃を目途に縮退
が見込まれているため、今後の第一種公衆電話の扱いについては、以下の点
等を踏まえ、戸外や災害時の通信手段を確保する観点から、早急に検討を行
うことが適当である。
① 公衆電話は慢性的な赤字事業であり、ユニバーサルサービス交付金の
約60%(補塡額(2022年度赤字分)約67億円のうち約40億円)は第一種公
衆電話の維持費に充てられていること
② 携帯電話については、5Gを含め更に普及が進展し、NTNについては、
今後、携帯電話と衛星との直接通信の実現・拡大が計画されていること
③ 災害時の通信手段としては、特設公衆電話もあり、ユニバーサルサービ
スに位置付けられていること
④ 諸外国では、公衆電話をユニバーサルサービスの対象外とする国(アメ
リカ、フランス、ドイツ、イタリア、スペイン)や、引き続き対象としている国(イ
ギリス、韓国、オーストラリア)があること
また、災害時用の特設公衆電話を含む上記検討の際には、メタル回線設備
の縮退後、光ファイバで提供可能とするための追加コスト(バッテリー設置や課
金機能の開発・実装等)が必要となること等を踏まえ、無線や衛星等の活用を
含め、その効率的な提供の在り方について、検討することも必要である。
図Ⅱ-2-2-1 2035年頃に向けたメタル固定電話の円滑な移行
(第8回ユニバWG 事務局資料(資料8-3))
25
第3節 ブロードバンドのユニバーサルサービスに位置付ける役務
1.現状と課題
(1) ブロードバンドのユニバーサルサービスに位置付けられている役務
第1節1.(1)で既述のとおり、電気通信事業法上、ブロードバンドのユニバ
ーサルサービスは、第二号基礎的電気通信役務とされ、その具体的内容は総
務省令において、「①FTTH」、「②CATV(HFC方式)」、「③ワイヤレス固定ブロ
ードバンド(専用型)」が定められている。
「③ワイヤレス固定ブロードバンド(専用型)」は、専用の無線回線(地域BWA
やローカル5G)による固定ブロードバンドであるところ、今後、人口減少等により、
FTTH等の有線の固定ブロードバンドの提供が困難となる地域も想定される中
で、効率的なサービス提供が必要となることや、固定ブロードバンド専用のネット
ワークであり利用者が集中して通信の安定性が損なわれる懸念が少ないこと等
から、ユニバーサルサービスに位置付けられたものである。
(2) ブロードバンドサービスの動向
超高速ブロードバンドサービスの契約数(2024年3月末)は4,925万件で、このう
ちFTTHが4,035万件、CATV(同軸・HFC)が452万件であるところ、FTTH(光ファ
イバ)の世帯カバー率は99.84%(2023年3月末)に達し、「2027年度末までに世
帯カバー率99.9%」の目標実現に向けて着実に取組が進められている。
また、モバイル網については、4Gでは、人口カバー率が99%を超えている
中でエリア外居住人口の解消に取り組むことや、5Gでは、2030年度末に人口
カバー率99%(全国・各都道府県)を目標に取り組むことが期待されており、今
後、エリアカバーの更なる拡大が見込まれているところである。
(3) ワイヤレス固定ブロードバンド(共用型)
無線を利用した固定ブロードバンドとしては、上記の地域BWAやローカル
5Gを利用する「ワイヤレス固定ブロードバンド(専用型)」のほか、モバイル網を
利用する「ワイヤレス固定ブロードバンド(共用型 27)」がある。
27
固定通信サービスと移動通信サービス共用の無線回線(携帯電話網)を用いて提供する固定ブロー
ドバンド。
26
「ワイヤレス固定ブロードバンド(共用型)」については、2023年5月の情報通
信審議会答申 28で「一つの基地局で携帯電話の不特定の利用者もカバーする
ことになり、多数の端末が接続される場合、通信の品質が安定しないことが課
題として想定されるため、技術基準との関係等について整理が必要となる。」と
され、ユニバーサルサービスに位置付けることについては、引き続き検討する
こととされたところである。
(4) 非地上系ネットワーク(NTN)
NTNについては、多数の非静止衛星を一体に運用する「衛星コンステレー
ションによるサービス」が開始されるとともに、高度20km程度の成層圏から携帯
電話との直接通信を行う「HAPSによるサービス」が実用化に向けて取組が進め
られている。
具体的には、衛星コンステレーションによる通信サービスについては、欧米
企業との業務提携等により法人サービスを中心にサービスが提供され、ブロー
ドバンドの提供のほか、携帯電話基地局のバックホールへの導入等が行われ
ており、HAPSによるサービスについては、NTTドコモは2026年、ソフトバンクは
2027年の商用化を目指して取組を進めている。
2.取組の方向性
(1) 基本的考え方
光ファイバ(FTTH)は、伝送の安定性が高く、モバイル網で基地局用の回線
としても利用される基幹的な情報通信インフラであることから、「2027年度末ま
でに世帯カバー率99.9%」の目標実現に向けて着実に取組を進めるとともに、
既整備世帯については、公設光ファイバの維持費や更改費等に起因して再び
未整備世帯とならないように、民設移行を円滑に進めること等が必要である。
また、残り0.1%の未整備世帯については、整備・維持に多大な費用を要す
ることが想定されるため、モバイル網では、4G・5Gともに今後もエリアカバーの
更なる拡大が見込まれていること等を踏まえ、無線を積極的に活用し、光ファイ
バと無線を組み合わせた効率的な整備・維持を図ることが適当である。
28
情報通信審議会答申「ブロードバンドサービスに係る基礎的電気通信役務制度の在り方」(2023年2
月7日)。
27
(2) ワイヤレス固定ブロードバンド(共用型)のユニバーサルサービスへの追加
ワイヤレス固定ブロードバンド(共用型)は、基本的に全国で、FTTHよりも低
廉な料金で、FTTHと同様にデータ通信容量が原則無制限で利用できることか
ら、無線の積極的な活用により、ブロードバンドの効率的な提供を確保する観
点からは、ユニバーサルサービスに位置付けることが考えられるところである。
他方、一の基地局で不特定の利用者をカバーし、また、屋内やビル陰など
技術的にカバー困難な地点が生じるモバイル網を利用する特性上、ワイヤレス
固定ブロードバンド(共用型)は、時間と場所により通信の品質が安定しない場
合があり、ユニバーサルサービスに位置付ける場合でも、品質面で利用者に
不利益が生じないように混雑が生じにくい地域に限定すべきである。
以上を踏まえ、ワイヤレス固定ブロードバンド(共用型)は、混雑が生じにくく、
かつ、効率的な提供を確保する必要性が高い地域である未整備地域等に限
定して、ユニバーサルサービスに位置付けることが適当である。
(3) 非地上系ネットワーク(NTN)の扱いの検討
NTNは、平時では、離島、海上、山間部等の効率的なカバーに、非常時で
は、ネットワークの冗長性確保に有用であるが、未だサービスの導入期・揺籃
期にあると考えられ、以下の点等を踏まえると、現時点でユニバーサルサービ
スに位置付けることは時期尚早であり、今後の技術の進展や利用の実態等を
踏まえ、その位置付けは引き続き検討することが適当である。
① 衛星コンステレーションによるサービスについては、現時点では、例えば、
居住エリア外等でのサービスの選択肢としては考えられるものの、海外の事
業者に依存している 29ことに加え、地上系ネットワークと比較すると、利用者
が増えた場合の安定性・性能が見極められない面があること
② HAPSによるサービスについては、NTTドコモは2026年、ソフトバンクは
2027年の商用化を目指して取組を進めている状況にあり、現時点ではサ
ービスが未提供であること
29
デジタル田園都市国家インフラ整備計画において、「将来の我が国独自の通信衛星コンステレーシ
ョンの構築に向け、宇宙安全保障構想や宇宙基本計画など政府全体の方針を踏まえ、今後展開が見
込まれるサービスコンセプト及びそれを支えるための通信技術について調査・検討を行い、それらに基
づき、構築に向けた事業を計画する民間の取組への支援の検討を進める」こととされており、我が国独
自の衛星コンステレーションの構築に向け、取り組んでいくこととしている。
28
第3章 ユニバーサルサービス責務の内容
第1節 ユニバーサルサービスの確保に関する義務・責務
電気通信事業法上、ユニバーサルサービスは、基礎的電気通信役務として、
「国民生活に不可欠であるためあまねく日本全国における提供が確保されるべき
電気通信役務」と規定されるところ、あまねく日本全国における提供を確保する観
点から、電気通信事業法(①・②)及びNTT法(③)において、以下の3種類の義
務・責務が規定されている。
① ユニバーサルサービスの提供者の役務提供義務
② 適格電気通信事業者のエリアカバー義務
※ 適格電気通信事業者とは、ユニバーサルサービスの提供者のうち、申請により
指定を受けてユニバーサルサービス交付金の交付を受ける者をいう。
③ NTTのユニバーサルサービス責務
① ユニバーサルサービスの提供者の役務提供義務
ユニバーサルサービスの提供者は、電気通信事業法上、その業務区域では、
正当な理由がない限り、届出をした契約約款に基づき、サービスを提供する義
務(役務提供義務)が課される。
ただし、著しく不経済となるエリアでのサービス提供など、その実施に係る経
済的負担が大きい場合は、正当な理由に該当し、役務提供義務は負わないこ
ととされている。また、役務提供義務は、業務区域内でのみ課されるところ、業
務区域については、拡大の場合は変更登録を受け、又は事前届出を行い、縮
小の場合は事後届出をすることにより、ユニバーサルサービスの提供者がその
経営判断により変更可能である。
② 適格電気通信事業者のエリアカバー義務
適格電気通信事業者は、電気通信事業法上、電話では第一種適格電気通
信事業者、ブロードバンドでは第二種適格電気通信事業者と規定され、それ
ぞれエリアカバー義務が課されるところ、その内容は異なるものとなっている。
まず、電話の場合は、第一種適格電気通信事業者には、業務区域が含まれ
る都道府県の世帯カバー率を100%とする義務が課される。このため、都道府
県内の一部の市町村のみを業務区域としている者が第一種適格電気通信事
29
業者となる場合は、その市町村が含まれる都道府県全域に業務区域を拡大す
ることが必要となる。
ただし、第一種適格電気通信事業者も、正当な理由がある場合は、その義
務を負わないこととされており、この正当な理由は、ユニバーサルサービスの提
供者の役務提供義務における正当な理由と同一の内容とされている。
次に、ブロードバンドの場合、全国約23万町字のうち、「一般支援区域(赤字
区域)」又は「特別支援区域(大幅な赤字区域等)」とされた区域 30について、申
請により第二種適格電気通信事業者の指定を受けるところ、第二種適格電気
通信事業者は、その指定に係る区域について、一般支援区域では50%超、特
別支援区域では10%超の世帯カバー率とすることが義務付けられる。
③ ユニバーサルサービス責務
ユニバーサルサービス責務とは、やむを得ざる場合を除き、提供を求める者に
対してサービスを提供する義務のことであり、以下の二種類が存在するところ、電
話については、NTT法に基づき、NTTに「あまねく提供責務」が課されている一
方、ブロードバンドについては、ユニバーサルサービス責務が設けられていない。
1) あまねく提供責務
あまねく提供責務では、他事業者がサービス提供をしていない地域だけ
でなく、他事業者がサービス提供をしている地域においても、サービスの提
供義務を負う。
このようにあまねく提供責務では、他事業者が提供している地域でも責
務が生じ、その場合、その地域でサービス提供に必要な設備を設置するこ
とが一般的と考えられるため、他事業者が撤退した場合等でも、サービス
提供の空白期間を大きく生じさせることなく、責務を担う者によるサービス提
供が可能となる点で、利用者の保護が図られる面がある。
2) 最終保障提供責務
最終保障提供責務では、他事業者がサービス提供をしていない地域に
限り、サービスの提供責務を負う。このため、他事業者がサービス提供をし
ている地域では、サービスの提供義務を負わないこととなる。
30
2024年8月は、29,288町字を支援区域として指定。その内訳は、一般支援区域が15,831町字、特別
支援区域が13,457町字である。
30
複数の事業者が各地で競争的に提供しているサービスの場合は、各事
業者が連携してエリアカバーを行うことが可能となり、最終保障提供責務と
した方が、責務を担う者が、他事業者のカバーする地域では重複してサー
ビス提供をする必要はなくなるため、全国におけるサービス提供を効率的
に確保できるようになる面がある。
このように、ユニバーサルサービスの確保に関する義務・責務は、以下の図
のとおり、電話については、三階建て(「①ユニバーサルサービスの提供者の役務提
供義務」、「②適格電気通信事業者のエリアカバー義務」、「③NTTのあまねく提供責務」)
となっている一方、ブロードバンドについては、「③ユニバーサルサービス責務」
がなく、二階建て(「①ユニバーサルサービスの提供者の役務提供義務」、「②適格電気
通信事業者のエリアカバー義務」)となっている。
図Ⅱ-3-1-2 ユニバーサルサービス事業者に課される規律の構造
(第7回ユニバWG 事務局資料(資料7-5))
31
第2節 電話のユニバーサルサービス責務
1.現状と課題
電話のユニバーサルサービスについては、NTT法に基づき、NTT持株・NTT東
西にあまねく提供責務が課されている。これは、NTT東西は、全国津々浦々に電
電公社から承継した電柱・管路等の線路敷設基盤を保有していること、NTT持株
は、株主権の行使等を通じてNTT東西のサービスの適切かつ安定的な提供を確
保することを目的として設立されたこと等に鑑み、全国におけるサービスの適切、
公平かつ安定的な提供を確保するために課されたものである。
これまで電話のユニバーサルサービスでは、メタル固定電話はNTT東西がメタ
ル回線設備を独占的に保有して提供し、また、光回線電話やワイヤレス固定電
話はメタル固定電話と同水準の料金が求められ、NTT東西以外の提供者が基本
的に想定されないことから、最終保障提供責務に見直し、複数事業者が連携して
エリアカバーする制度とする必要性が生じなかったところである。
しかし、今回、電話のユニバーサルサービスに、モバイル網固定電話を追加す
ることとし、MNOを含む複数事業者によるサービス提供が想定されるようになり、
NTT東西の赤字額の更なる拡大が見込まれる状況等も併せ鑑みると、ユニバー
サルサービスの効率的な提供を確保する観点から、電話のあまねく提供責務を
最終保障提供責務に見直すことについて検討することが必要となっている。
2.取組の方向性
メタル回線設備が維持限界を迎える2035年頃までの間は、既存のメタル固定
電話の利用者の円滑な移行を図ることが必要となる一方、その移行が進展し利
用者が減少するほど、料金収入の減少等によりNTT東西のメタル固定電話の収支
の悪化が見込まれるため、国民負担の増加を回避する観点から、電話のユニバー
サルサービスの効率的な提供を図る必要性がこれまで以上に高まることになる。
このような状況に対応し、既存利用者の移行先とサービスの効率的な提供を確
保するため、今回、モバイル網固定電話をユニバーサルサービスに追加するとこ
ろ、これにより、電話のユニバーサルサービスの提供者には、MNOも加わり、複数
事業者が連携したエリアカバーが実現可能となるため、サービスの効率的な提供
を可能とし、NTT東西の負担等を軽減する観点から、電話のあまねく提供責務は、
最終保障提供責務に見直すことが適当である。
ただし、最終保障提供責務に見直した場合、NTT東西は、他事業者の提供地
32
域であれば撤退が可能となるところ、メタル固定電話の利用者の円滑な移行が進
んでいない地域からNTT東西が撤退し業務区域を縮小する場合、他事業者がサ
ービスを提供していたとしても、既存利用者の利益が大きく阻害されるおそれが
あるため、既存利用者保護の観点から、メタル固定電話の利用者が残存する区
域では、NTT東西の業務区域の縮小を制限する規律を課すことが適当である。
この際、規律対象となる業務区域の地理的単位が小さいほど、その地理的単
位における既存利用者の数は少なくなり、移行は相対的に容易となるため、NTT
東西の業務区域の縮小が認められやすくなる。このため、移行促進のインセンテ
ィブを付与する観点からも、規律対象となる業務区域の地理的単位は、制度の運
用コスト等に留意しつつ、現行の都道府県単位よりも小さくすることが適当である。
33
第3節 ブロードバンドのユニバーサルサービス責務
1.現状と課題
ブロードバンドのユニバーサルサービス制度は、2022年の電気通信事業法の
改正により創設され、ブロードバンドの提供者に関する規律に加えて、不採算地
域の維持費を支援するための交付金に関する制度は設けられたが、電話の場合
と異なり、ユニバーサルサービスの責務規定は設けられなかった。
今後、ブロードバンドでは、2027年度末までに光ファイバの世帯カバー率を
99.9%にする目標の実現に取り組むとともに、残り0.1%の未整備世帯を光ファイ
バと無線を組み合わせて効率的な整備・維持を図っていくことになるが、これらの
対象地域は、特に整備費や維持費が多額になることが想定されるため、交付金
制度のみでは整備・維持が十分に図られない事態が懸念される。
デジタル社会の基幹インフラであるブロードバンドについて、全国あまねく利用
できる環境の実現は喫緊の課題であることに鑑みると、ブロードバンドのユニバー
サルサービス制度においても、ユニバーサルサービス責務の在り方を検討するこ
とが必要となっている。
2.取組の方向性
ブロードバンドについては、NTT東西だけでなく、多様な設備設置事業者が競
争的にサービスを提供しており、西日本を中心に電力系事業者やケーブルテレ
ビ事業者のみが提供する地域も存在している。回線シェアで見ても、NTT東西は、
メタル固定電話の提供に必要なメタル回線設備は約93%と大宗を保有している
のに対し、FTTHの提供に必要な光回線は約73%の保有となっている。
このように、多様な設備設置事業者が競争的にサービス提供している状況を踏
まえ、全国におけるサービスの効率的な提供を確保する観点からは、ブロードバ
ンドのユニバーサルサービス責務は、複数の事業者が連携してエリアカバーする
ことを前提とする最終保障提供責務とすることが適当である。
34
第4節 最終保障提供責務の確認の仕組み
1.現状と課題
前述のとおり、電話及びブロードバンドのユニバーサルサービス責務は、最終
保障提供責務とすることが適当であるところ、最終保障提供責務は、他事業者が
サービス提供をしていない地域に限り、サービスの提供義務を負うものである。
このため、最終保障提供責務を担う者が、責務履行の要否を判断するために
は、責務の履行を求められる地域を他事業者が業務区域としている(サービスを
提供している)か否かや、業務区域としている場合でも役務提供義務を負うか否
か等について確認できることが必要となるが、他事業者の業務区域(サービス提供
地域)は必ずしも具体的に公表されているとは限らず、役務提供義務の有無等を
含めて、責務を担う者に回答する義務が他事業者に課されていない状況にある。
2.取組の方向性
最終保障提供責務を担う者が、その責務の履行の要否を確認できるようにする
ため、他事業者の協力を得ながら、他事業者の業務区域や役務提供義務の有
無等を確認できる仕組みを設けることが適当である。
この際、この確認に時間を要すると、責務の履行を求める利用者に対するサー
ビス提供の遅れに繋がる一方、確認に要する時間を短縮するために複雑な仕組
みを設けると、関係事業者の規制コストが多大となるおそれがあるため、最終保
障提供責務の履行の要否を確認する仕組みは、利用者保護と規制コスト等のバ
ランスに留意した上で整備することが必要である。
35
第4章 ユニバーサルサービス責務の担い手
第1節 適格電気通信事業者の義務
1.現状と課題
(1) 第一種適格電気通信事業者(電話)のエリアカバー義務
電話のユニバーサルサービス制度では、第一種適格電気通信事業者には、
ユニバーサルサービス交付金の交付を受ける対価として、「正当な理由」があ
る場合を除き、その業務区域が含まれる都道府県の世帯カバー率を100%とす
る義務が課されることになる。
ただし、この「正当な理由」の範囲は、交付金を受ける「第一種適格電気通
信事業者」のエリアカバー義務と交付金を受けない「ユニバーサルサービスの
提供者」の役務提供義務とで同一となっており、第一種適格電気通信事業者
であっても、不採算地域でのサービス提供など、経済的負担が大きい場合等
には、正当な理由に該当するとして、エリアカバー義務を負わないとされている。
電話の場合は、この第一種適格電気通信事業のエリアカバー義務に加えて、
NTTのあまねく提供責務により、全国でのサービス提供を確保しているところ、
今回、NTTのあまねく提供責務を最終保障提供責務に見直すこととするため、
これに伴い、最終保障提供責務と第一種適格電気通信事業者のエリアカバー
義務との関係を整理することが必要となる。
(2) 第二種適格電気通信事業者(ブロードバンド)のエリアカバー義務
ブロードバンドのユニバーサルサービス制度では、第二種適格電気通信事
業者には、ユニバーサルサービス交付金を受ける対価として、その指定に係る
区域が、一般支援区域(赤字区域)の場合は50%超、特別支援区域(大幅な
赤字区域等)の場合は10%超の世帯カバーが義務付けられるが、第一種適格
電気通信事業者の場合と異なり、世帯カバー100%は義務付けられていない。
これは、現行のブロードバンドのユニバーサルサービス制度では、ユニバー
サルサービス責務を担う者がいないため、交付金の活用により未整備地域の
解消等を図ることが重要となるところ、交付金の対価として全世帯カバーを義
務付けると、自ら申請して第二種適格電気通信事業者となる者が現れず、未
整備地域の解消等が進まないことが懸念されたためである。
今回、ブロードバンドでも、ユニバーサルサービス責務として最終保障提供
36
責務を創設し、未整備地域の解消等に最終的な責任を負う者を設けることとす
るため、これに伴い、最終保障提供責務と交付金を受ける第二種適格電気通
信事業者のエリアカバー義務との関係を整理することが必要となる。
2.取組の方向性
(1) 第一種適格電気通信事業者(電話)の義務の最終保障提供責務への見直し
今回、NTTのあまねく提供責務を最終保障提供責務に見直し、他事業者の
提供地域では責務を負わないこととするところ、この見直しは、複数事業者の
連携によってサービス提供を効率的に確保することを目的に行うものである。
これとの整合性に鑑みれば、第一種適格電気通信事業者に対して、他事業
者の提供地域を含めて100%の世帯カバー義務を課す必要はないため、当該
100%の世帯カバー義務は、最終保障提供責務に見直すことが適当である。
この際、最終保障提供責務の履行が免除される場合の扱いも整理が必要と
なるところ、ユニバーサルサービス交付金の制度は、事業者の自主的な取組
だけではサービス提供が期待困難な不採算地域があることを前提に、交付金
を交付することによって、そのような不採算地域のサービス提供を確保するた
めのものである。
そのような趣旨に鑑みれば、交付金を受ける第一種適格電気通信事業者は、
交付金を受けない者と異なり、単に経済的負担が大きいこと等を理由に「正当
な理由」を認め、最終保障提供責務を免除することは適当でなく、免除を認める
場合であっても、やむを得ないと認められる場合に限定することが適当である。
(2) 第二種適格電気通信事業者(ブロードバンド)の義務の最終保障提供責務
への見直し
現在、第二種適格電気通信事業者のエリアカバー義務は、一般支援区域
では世帯カバー50%超、特別支援区域では世帯カバー10%超とされていると
ころ、以下の点等を踏まえ、その指定に係る支援区域の全世帯を対象とした最
終保障提供責務に見直すことが適当である。
① ブロードバンドについても、複数事業者の連携によってサービス提供を
効率的に確保することを目的として、今回、最終保障提供責務を新たに
設けることとしており、第二種適格電気通信事業者のエリアカバー義務も
最終保障提供責務に見直すことが整合的であること
37
② その際、交付金を受ける以上は、その対象となる支援区域では、取り残
される者を作ることなく、全世帯を対象に最終保障提供責務を担うことが
適当であり、これは、電話における第一種適格電気通信事業者が、業務
区域のある都道府県の全世帯を対象に最終保障提供責務を担うことと整
合的であること
③ また、現行のブロードバンドのユニバーサルサービス制度では、ユニバー
サルサービス責務を担う者がいないため、全世帯カバーの義務付けにより
自ら申請して第二種適格電気通信事業者になる者の確保が進まないと、
未整備地域の解消等が進まない懸念があったところ、最終保障提供責務
の新設により、この責務を担う者により未整備地域の解消が実現されること
になるため、上記の懸念を考慮する必要性は低下したと考えられること
④ さらに、今回、ブロードバンドのユニバーサルサービスに、ワイヤレス固
定ブロードバンド(共用型)を追加することによって、最終保障提供責務の
効率的な履行を可能とすること
なお、最終保障提供責務の履行の免除を認める場合についても、電話の場
合と同様に、やむを得ないと認められる場合に限定することが適当であり、電
話とブロードバンドの両制度で整合的になるように検討することが適当である。
38
第2節 最終保障提供責務の担い手
1.現状と課題
今回、ユニバーサルサービス責務については、ブロードバンドでは、新たに最
終保障提供責務を設け、電話では、NTTのあまねく提供責務を最終保障提供責
務に見直すこととしているところ、最終保障提供責務の担い手については、NTT
は、従来、あまねく提供責務を担ってきた電話を含めて、各地域で最も適した方
法で最も適した者を行政が指名する仕組みとすべきとの意見を示している。
最終保障提供責務の担い手は、その選定基準や選定方法、担い手となる者に
よっては、交付金の肥大化による国民負担の増加や規制コストの増加、利用希望
者へのサービス提供の遅れ等が懸念されることから、適切な担い手を検討するこ
とが必要となる。
2.取組の方向性
(1) ブロードバンドの最終保障提供責務の担い手
最終保障提供責務の担い手について、各地域で最も適した方法で最も適し
た者を行政が指名する仕組みは、交付金の肥大化による国民負担の増加を抑
制する観点からは有効であるが、以下の点等を踏まえると、適当ではない。
① 各地域で提供事業者、既存インフラの状況、地理的条件等が様々であ
ることから、最も適した者を選定する基準や選定方法を適切に定めること
は容易でないと考えられること
② 責務の担い手を確定するプロセスが複雑化する場合、関係事業者の規
制コストが多大となるだけでなく、サービス提供の遅れに繋がり、利用者利
便を大きく阻害するおそれがあること
③ 地域の小規模事業者が責務の担い手に指名された場合、経済的負担
の増大等により事業継続が困難となり、設備競争の減退等を招くおそれ
があること
④ 特殊会社でない民間会社に最終保障提供責務を課し、未提供地域を
含めてサービスの提供を義務付けることには、憲法上の営業の自由を制
限するための正当化理由が必要となること
以上を踏まえ、NTTは、電電公社から承継した全国規模の線路敷設基盤を
保有しているため不採算地域へのサービス展開が相対的に容易であること、ま
39
た、電話のあまねく提供責務を担う特殊会社として、不採算地域をカバーして
きた実績があること等に鑑みると、NTTが、ブロードバンドの最終保障提供責務
を担うことが適当である。
(2) 電話の最終保障提供責務の担い手
電話の最終保障提供責務は、ブロードバンドの場合と異なり、NTTがこれま
で担ってきたあまねく提供責務を緩和する形で導入するものであり、当該見直
しは、固定電話の効率的な提供の確保に加えて、NTTのメタル固定電話の既
存利用者の保護とその円滑な移行を併せ実現するために、NTTのメタル固定
電話の業務区域の縮小を制限する規律とセットで行うものである。
このように、あまねく提供責務から最終保障提供責務への見直しは、責務の
担い手がNTTであることを前提として行うものであるため、電話の最終保障提
供責務は、NTTが担うことが適当である。
以上のように、電話・ブロードバンドともに、最終保障提供責務は、適格電気通
信事業者とNTTが担うことになるが、両者の関係を整理すると、最終保障提供責
務は、「①適格電気通信事業者がいる地域では、適格電気通信事業者」が担い、
「②適格電気通信事業者がいない地域では、NTT」が担うこととなる。
40
第3節 最終保障提供責務の担い手以外の者が果たすべき役割
1.現状と課題
(1) 事業者間の連携による最終保障提供責務の迅速かつ円滑な履行
最終保障提供責務は、誰からもサービス提供を受けられない者に対して履
行するものであり、そのために新たに設備の設置等が必要となるところ、その際、
全ての設備を自ら設置等するよりも、近隣で事業を行う者がいる場合は、その
者から、光回線や無線設備、コロケーションスペースの提供等を受けた方が、最
終保障提供責務を迅速かつ円滑に履行可能になると考えられるところである。
このような中、NTTは、光サービスが提供されていないエリアにサービス拡大
する際、他事業者の設備が技術的に活用可能で一定の空きがある場合は、設
備の貸出し義務を設定することを求める意見を示しており、最終保障提供責務
の迅速かつ円滑な履行を図る観点から、最終保障提供責務を担う者とその近
隣で事業を行う者との連携の在り方について検討することが必要となる。
(2) 既存事業者の撤退によるサービス提供の空白期間
電話やブロードバンドのユニバーサルサービスの提供者が、一部地域から
撤退し業務区域を縮小する場合、
① その縮小が都道府県単位であれば、電気通信業務の一部の休廃止に該
当し、1年前までの利用者周知と、当該周知の30日前までの届出が必要(ブ
ロードバンドのユニバーサルサービスにあっては、第二種適格電気通信事
業者が提供するものと契約数30万超のものに限る。)となる一方、
② その縮小が都道府県よりも小さな単位であれば、電気通信業務の一部
の休廃止に該当しないため、事後届出により可能で、利用者への事前周
知も不要となるところである。
既存事業者が撤退する場合、利用者への不測の損害を回避し、サービス提
供の空白期間をできる限り少なくするためには、既存事業者が事前にその旨を
明らかにし、撤退前にできる限り、最終保障提供責務を担う者がサービス提供
の準備ができるようにすること等が必要であるため、上記現行制度等を踏まえ、
ユニバーサルサービスの提供者の退出規制について検討することが必要となる。
41
2.取組の方向性
(1) 最終保障提供責務を履行する者からの協議に応じる義務
最終保障提供責務は、複数事業者が連携して全国におけるユニバーサル
サービスの提供を効率的に確保することを趣旨とするところ、責務の履行に当
たって、設備等を自ら設置するよりも、他事業者の光回線や無線設備、コロケ
ーションスペースの提供等を受けた方が迅速かつ円滑にサービス提供が可能
な場合は、その方が、サービス提供を希望する者の利便に資するだけでなく、
交付金の肥大化による国民負担の増加を抑制することにも繫がることになる。
このため、最終保障提供責務を担う者が、近隣の他事業者に対して、光回
線や無線設備、コロケーションスペースの提供など、責務の迅速かつ円滑な履
行に必要な協力を求めた場合は、当該他事業者に対して、その協議に応じる
義務を課すことが適当である。
この際、事業者間の協議に委ねるだけでは、相手方が協議に応じず、また、
協議に応じても不調に終わること等も想定されるため、協議開始命令など、当
該協議を促進し実効性を確保する制度を併せて設けることが適当である。
(2) ユニバーサルサービスの提供者に対する退出規制の見直し
既存事業者が撤退することによって、サービス提供の空白期間を生じさせな
いようにするためには、業務区域の縮小を認可制とするなど、厳格な退出規制
を設けることも考えられるところ、厳格な退出規制は、事業者のエリア拡大のイ
ンセンティブだけでなく、効率的なサービス提供のための設備投資や研究開
発のインセンティブ等を阻害することも懸念されるため、適当ではない。
このため、現行の退出規制を基本としつつ、既存事業者の撤退による空白
期間ができる限り生じないようにする観点から、
① 現行制度では、都道府県よりも小さな単位での業務区域の縮小は、電気
通信業務の一部の休廃止に該当せず、事後届出で可能となっているため、
例えば、市町村単位の業務区域の縮小も、電気通信業務の一部の休廃止
に該当することとし、利用者への事前周知や事前届出を必要とすること
② また、ブロードバンドのユニバーサルサービスの提供者のうち、契約数30
万以下の者についても、他のユニバーサルサービスの提供者と同様に、30
日前までではなく、1年前までに利用者への事前周知等を必要とすること
などの見直しを行うことが考えられるため、既存事業者に過度の負担を与え
ないように留意しつつ、必要な見直しに取り組むことが適当である。
42
第5章 ユニバーサルサービス交付金制度
第1節 電話のユニバーサルサービス交付金制度
1.現状と課題
電話のユニバーサルサービス制度では、第一種適格電気通信事業者は、その
業務区域のある都道府県において不採算地域を含めて100%の世帯カバーが義
務付けられる一方、それに伴い生じる赤字額を補塡するために交付金を受けるこ
とができる。この電話の交付金に関する制度を第一種交付金制度という。
第一種交付金制度は、不採算地域の赤字は、採算地域の黒字でカバーする内
部相互補助の考え方をベースに、それでもなお生じる赤字額を補塡するために設
けられたものであり、具体的には、全国の加入者回線を長期増分費用(LRIC)方
式 31で仮想的に設置した上で、モデル上の高コスト地域(4.9%)に属する回線原
価と一定基準の原価(ベンチマーク)の差額を交付金で補塡することとしている 32。
このように、第一種交付金制度は、交付金の肥大化による国民負担の増加等
を考慮し、赤字の全額ではなく一部を補塡するものとなっており、第一種適格電
気通信事業者であるNTT東西への交付金の額も、その電話のユニバーサルサー
ビスの赤字額588億円(2022年度分)のうち、67億円となっている。
今回、NTTのあまねく提供責務を最終保障提供責務に見直すことに伴い、第
一種適格電気通信事業者の100%の世帯カバー義務も最終保障提供責務に見
直すこととしているところ、これにより、第一種適格電気通信事業者は、他事業者
の提供地域では特別な提供義務を負わなくなることから、この見直しに伴う第一
種交付金制度の見直しの要否等について整理することが必要となる。
2.取組の方向性
第一種適格電気通信事業者の交付金は、他の事業者とは異なる特別な提供
義務を負うことの対価として交付されるものであることに鑑みると、交付金の補塡
対象は、特別な提供義務の履行に係る費用をベースとすることが適当となる。
この点、今回、第一種適格電気通信事業者に課される特別な提供義務につい
て、100%の世帯カバー義務から最終保障提供責務に見直すこととするため、第
31
需要に応じた電気通信役務の提供に係るネットワークの費用を、現時点で利用可能な最も低廉で最
も効率的な設備と技術を利用する前提で算定する方式。
32
加入電話の基本料部分。
43
一種交付金による補塡も、内部相互補助をベースに全世帯カバーに係る赤字を
一部補塡する考え方から、例えば、内部相互補助をベースとせず、電話のユニ
バーサルサービスの収支が黒字であっても、最終保障提供責務の履行に係る赤
字を一部補塡又は原則全額補塡する考え方に見直すことも考えられる。
しかし、2035年頃までのメタル回線設備の縮退期間においては、
① 電話のあまねく提供責務を最終保障提供責務に見直すこととする一方、こ
れに伴う経過措置として、メタル固定電話の既存利用者を保護する観点か
ら、既存利用者が残存する地域では、NTT東西の業務区域の縮小を制限
する規律を課すこととすること
② メタル固定電話の既存利用者については、NTTは、一定の段階でエリア
単位での移行実施を考えているが、当初は移転等の申込みを契機とした移
行勧奨により移行を図る考えであるため、直ちに業務区域の縮小が相当な
規模で生じるとは想定しにくいこと
③ そのため、当分の間は、NTT東西は、現在の業務区域に相当する区域で
メタル固定電話の提供を継続することが想定されることから、NTT東西には、
最終保障提供責務に係る費用に加えて、縮小を制限された業務区域に係
る費用が全国規模で生じることが想定されること
④ そのような中、NTT東西のメタル固定電話の赤字は今後更に拡大が見込
まれているが、赤字額は既存利用者の移行をできる限り早期に実現すること
で縮減することを基本とすべきであり、2035年頃に向けて縮退するメタル固
定電話について、交付金の補塡水準を現行よりも高めることで国民負担を
増加させることには、国民の理解が得られるとは考えにくいこと
等に鑑みると、当分の間は、内部相互補助をベースとして赤字額の一部を補塡
する現行制度を基本的に維持した上で、最終保障提供責務への見直し等に伴
い必要な補正があれば行うこととすること 33が適当である。
33
提供回線数をベースとした算定を基本とし、回線の種類に応じて必要な補正を行うことなどが考えら
れる。
44
第2節 ブロードバンドのユニバーサルサービス交付金制度
1.現状と課題
(1) NTTの最終保障提供責務の履行に必要な費用に対する補塡
ブロードバンドのユニバーサルサービス制度では、第二種適格電気通信事業
者は、その指定に係る区域が、一般支援区域(赤字区域)の場合は50%超、特別
支援区域(大幅な赤字区域等)の場合は10%超の世帯カバーが義務付けられる
一方、サービス提供に伴い生じる赤字額を補塡するために交付金を受けることが
できる。このブロードバンドの交付金に関する制度を第二種交付金制度という。
第二種交付金制度においては、一般支援区域と特別支援区域の間で、補
塡の仕組みが異なっており、現在、詳細な制度設計を行っているところ、
① 一般支援区域については、内部相互補助の考え方をベースとして、ブロ
ードバンドの収支全体が赤字の場合に、当該赤字の範囲内で、当該区域
に係る赤字の一部を補塡する一方、
② 特別支援区域については、原則内部相互補助の考え方を採用せず、ブ
ロードバンドの収支全体が黒字の場合でも、当該区域に係る赤字につい
て、効率性等を考慮した上で原則全額補塡することとされている 34。
今回、第二種適格電気通信事業者がいない地域では、NTTが最終保障提
供責務を担うこととするため、責務の履行に必要な費用に対し適切な水準の補
塡が必要となるところ、NTTは、特別支援区域だけでなく、一般支援区域や支
援区域外の区域でも最終保障提供責務の履行が必要となる事態が想定される。
この際、現行制度を前提とすると、一般支援区域ではブロードバンドの全体
収支が赤字でないと交付金を受けられず、また、支援区域外の区域ではそも
そも交付金を受けられないこと等から、NTTの最終保障提供責務の履行に必
要な費用と第二種交付金制度との関係について整理することが必要となる。
(2) 「一者以下提供要件」におけるワイヤレス固定ブロードバンド(共用型)の扱い
第二種交付金は、支援区域に係る赤字を補塡対象とするものであるところ、
支援区域の指定要件として、以下の理由から、「ブロードバンドのユニバーサ
ルサービスを電気通信回線設備を設置して提供する者(回線設置事業者)が
34
電気通信事業法第107条第2号では、第二種適格電気通信事業者の担当支援区域(一般支援区域
及び特別支援区域)において見込まれる赤字額の一部に対して交付金を交付することとされている。
45
一者以下であること」とされている。
① 回線設置事業者が複数いる区域において、特定の回線設置事業者の
みを交付金で支援することは、競争中立性を阻害するおそれがあること
② 支援区域は、赤字の地域等であることも指定要件とされるが、その赤字
額はモデルにより推計するため、回線設置事業者が複数いる地域は採算
性が見込まれる地域として赤字区域に該当しないとの推定を併せ用いる
ことで、モデルによる赤字地域の特定を補完することが適当であること
今回、ワイヤレス固定ブロードバンド(共用型)をブロードバンドのユニバーサ
ルサービスに追加することとするため、例えば、これまで一者提供地域であっ
た地域のうちMNOがワイヤレス固定ブロードバンド(共用型)を提供している地
域は一者提供地域に該当しなくなるところ、ワイヤレス固定ブロードバンド(共
用型)は、全国規模でエリアカバーするモバイル網により提供されていることに
鑑みると、支援区域に該当する地域が大幅に狭まることが想定される。
2.取組の方向性
(1) NTTの最終保障提供責務の履行に係る費用に対する特別支援区域と同等
の補塡
NTTによる最終保障提供責務の履行が必要な地域は、他事業者のサービ
ス提供が受けられない地域であることに鑑みると、サービス提供に際して大幅
な赤字が見込まれる地域として、特別支援区域と同等と捉えることができる、
このため、最終保障提供責務の履行に係る費用については、その履行地域
が一般支援区域や支援区域外の区域にある場合でも、第二種交付金により、
特別支援区域と同等の補塡をすることが適当である。
なお、一般支援区域の第二種適格電気通信事業者が最終保障提供責務を
履行する場合も同様に、特別支援区域と同等の補塡をすることも考えられるが、
一般支援区域は、大幅な赤字区域等である特別支援区域に比べて、相対的
には採算性が見込まれること等を考慮して内部相互補助をベースとした補塡
の考え方を採用しており、また、第二種適格電気通信事業者は申請により指定
されること等を考慮すると、現在の補塡の考え方を維持することが適当である。
(2) 「一者以下提供要件」におけるワイヤレス固定ブロードバンド(共用型)の扱い
今回、ワイヤレス固定ブロードバンド(共用型)を未整備地域等に限定してユ
46
ニバーサルサービスに追加するとともに、第二種適格電気通信事業者のエリア
カバー義務について、その指定に係る支援区域の全世帯を対象とした最終保
障提供責務に見直すこととしている。
一者以下提供要件が必要な理由の一つは、第二種適格電気通信事業者で
あっても、全世帯カバーを義務付けられず、クリームスキミングが可能な中で、
交付金により特定の事業者のみを支援することは競争中立性を阻害し適当で
はないためであった。しかし、今回、第二種適格電気通信事業者には、全世帯
を対象とした最終保障提供責務が課される一方、その地域の他事業者はその
ような責務を負わないため、責務に伴う負担の差異に鑑みると、交付金による
支援をしても、必ずしも競争中立性を阻害することにはならないと考えられる。
また、一者以下提供要件が必要なもう一つの理由は、その地域の採算性の
推定に複数の回線設置事業者の存否が利用可能と考えたためであるところ、モ
バイル網の整備は、ワイヤレス固定ブロードバンド(共用型)ではなく、基本的に、
モバイルサービスの採算性を考慮して行われるものであること等に鑑みると、ワ
イヤレス固定ブロードバンド(共用型)の提供者が存在することをもって、その地
域の固定ブロードバンドの採算性を推定することは適切でないと考えられる。
以上を踏まえると、今回、第二種適格電気通信事業者の義務を全世帯を対
象とした最終保障提供責務に見直すこととするため、一者以下提供要件の維
持は、競争中立性との関係では必須とは考えられないが、その地域の採算性
の推定に利用する必要性や、一者以下提供要件を前提にブロードバンドのユ
ニバーサルサービス制度の稼働に向けた取組が進められていること等を踏ま
え、今後の一者以下提供要件の扱いについて検討することが適当である。
その検討結果にかかわらず、ワイヤレス固定ブロードバンド(共用型)の提供
者は、以下の点等から、支援区域の指定要件である一者以下提供要件との関
係では、「一者」として扱わないことが適当である。
① 上記のように、ワイヤレス固定ブロードバンド(共用型)の提供者がいるこ
とは、その地域の採算性を推定する手段としては有効でないこと
② それにもかかわらず、一者以下提供要件を維持して支援区域が大幅に
狭まる場合は、未整備地域の解消等に支障が生じるおそれがあること
③ その場合には、ワイヤレス固定ブロードバンド(共用型)をユニバーサル
サービスに追加して、未整備地域等を含めてブロードバンドの効率的な
提供を確保しようとした趣旨が損なわれること
47
第6章 ユニバーサルサービスの料金の低廉性の確保等
第1節 ユニバーサルサービスの料金の低廉性の確保
1.現状と課題
(1) ユニバーサルサービス制度における料金規制
電気通信事業法上、ユニバーサルサービスの適切かつ公平な提供を確保
する観点から、電話やブロードバンドのユニバーサルサービスの提供者には、
料金その他の提供条件について契約約款の作成・届出義務が課されている。
届出がされた契約約款について、「料金の額の算出方法が適正かつ明確に
定められていないとき」等は、総務大臣は変更を命じることができるが、料金水
準は明確に規制されておらず、ユニバーサルサービス制度では、料金の低廉
性を確保する仕組みが設けられていない状況にある。
(2) プライスキャップ規制による特定電気通信役務の料金規制
電気通信事業法では、基礎的電気通信役務(ユニバーサルサービス)のほ
か、第一種指定電気通信設備(固定アクセス回線シェア50%超の者(NTT東西)の固
定アクセス回線及びこれと一体として設置される設備)を用いて提供する以下のサー
ビスの提供者には、契約約款の作成・届出義務が課される。
① 指定電気通信役務(第一種指定電気通信設備を用いて提供する電気通信役
務であって、他事業者による代替的なサービスが十分に提供されないもの)
② 特定電気通信役務(指定電気通信役務のうち、利用者の利益に及ぼす影響が
大きいもの)
NTT東西のメタル固定電話や公衆電話(ユニバーサルサービス)は、特定電
気通信役務に該当し、特定電気通信役務については、料金の低廉化を図る観
点から、プライスキャップ規制(上限価格方式)により料金水準の上限が規制さ
れるため、この規制が実質的に電話のユニバーサルサービスの料金の低廉性
を確保する役割を果たしてきた。
しかし、プライスキャップ規制は、2000年の制度導入以降、2009年に専用役務を
対象外とした以外に大きな見直しは行われておらず、総務省の「上限価格方式の
運用に関する研究会」の報告書(2024年3月)では、環境変化を踏まえ、対象サービ
スについて制度の在り方も含めて根本的な見直しを行う必要があるとされている。
48
また、ブロードバンドのユニバーサルサービスについては、特定電気通信役
務に該当せず、プライスキャップ規制の対象外であるため、料金の低廉性を確
保する仕組みが実質的にも設けられていない。
2.取組の方向性
(1) プライスキャップ規制の対象の見直し
プライスキャップ規制の対象となる特定電気通信役務は、利用者の利益に
及ぼす影響が大きいサービスであるところ、NTT東西のメタル固定電話の契約
数は、6,285万(1998年)をピークに1,235万(2023年度末)まで減少し、今後、メ
タル回線設備が2035年頃に縮退見込みの中で、契約数は更なる減少が見込ま
れることから、利用者利益への影響も更に低下していくことが見込まれている。
また、実際の料金は、プライスキャップ規制による料金水準の上限を大きく下
回る状況が相当期間継続し、当該規制が料金低廉化に実質的に機能してい
るとはいえない状況にあり、また、メタル固定電話等の需要が減少する中で、
料金水準の上限設定に用いる生産性向上見込率の算定は限界にあるため、
現行の仕組みでの制度維持は困難になりつつあるとの指摘もされている。
以上を踏まえると、NTT東西のメタル固定電話や公衆電話は、特定電気通
信役務の指定対象から除外することで、プライスキャップ規制による料金規制
の対象外とすることが適当である。
(2) ユニバーサルサービスの料金の低廉性の確保
NTT東西のメタル固定電話や公衆電話について、プライスキャップ規制の対
象外とする場合、ブロードバンドだけでなく、電話のユニバーサルサービスに
ついても、料金の低廉性を確保する仕組みが存在しないことになる。
しかし、電話やブロードバンドのユニバーサルサービスは、国民生活や経済
活動にとって不可欠な社会インフラであり、その料金の変動が利用者に及ぼす
影響に鑑みると、適切な利用を確保する観点から、プライスキャップ規制とは別
に、料金の低廉性を確保する仕組みを設けることが必要である。
この際、多様な事業者が競争的にサービス提供を行っている状況にあること
に鑑みると、事業者間で共通の全国均一料金を課すこと等は適当ではなく、料
金の低廉化は、事業者間の競争を通じて確保することを基本としつつ、
① 都市部では競争を通じた料金の低廉化が期待できる一方、都市部以外
49
の地域ではそのような競争も期待しにくく、加えて整備費・維持費が高いこ
とから、都市部に比べて高い料金が設定されるおそれがあること
② 諸外国では、ブロードバンドの料金について、都市部と同等の料金を求
める規律を課す例がある 35こと
等を踏まえ、ユニバーサルサービスの提供者に対して、都市部以外の地域で
は、都市部の料金を上回る料金の設定を原則として認めない規律を課すこと
が適当である。
35
アメリカ・カナダなど。
50
第2節 NTTの自己設置要件・線路敷設基盤の在り方
1.現状と課題
NTT東西は、電電公社から承継した全国規模の線路敷設基盤(電柱・管路等)
を保有し、その上に電気通信設備を自ら設置・運用しており、これによって、他者
の経営判断にかかわらず、サービスの安定的な提供の確保が可能となっている。
すなわち、「全国規模の線路敷設基盤の保有・運用」と当該基盤上での「自己
設備の設置・運用」が相まって、ユニバーサルサービスを含む全国規模でのサー
ビスの安定的提供を実現している状況にある。
(1) 設備の自己設置要件
NTT東西は、NTT法に基づき、地域電気通信業務(本来業務)について、原
則として、自己設備での実施が義務付けられて(自己設置要件)おり、これによ
って、全国津々浦々の線路敷設基盤を死蔵させずに有効活用を図ることや、ユ
ニバーサルサービスの安定的な提供を確保すること等が担保されている。
この自己設置要件について、NTTは、特に不採算地域では、設備の効率的
な整備・運用が必要となる中で、シェアリングや他者設備の利用、オフバランス
化等を図ることも一つの有効な手段として考えられること等から、これらを可能
とするための見直しを求める意見を示している。
また、今回、効率的なサービス提供を確保する観点から、ユニバーサルサービ
スに位置付けるサービス等について、以下の見直しを行うこととするところ、①の
サービス(現在、自己設置要件の例外として不採算地域に限定して容認)の拡大や②~
④のサービスの提供は、NTT東西には、他者設備(モバイル網等)の利用が必要
となるため、現行制度では、自己設置要件に抵触して実施できない状況にある。
① NTT東西の「ワイヤレス固定電話」の地域限定を緩和
② 「モバイル網固定電話」を電話のユニバーサルサービスに追加
③ 未整備地域等に限定して、「ワイヤレス固定ブロードバンド(共用型)」を
ブロードバンドのユニバーサルサービスに追加
④ 最終保障提供責務を履行する場合において、他事業者の光回線設備
等を利用したユニバーサルサービスの提供
51
(2) 線路敷設基盤の譲渡等に関する規律
NTT東西の重要な電気通信設備(同一の都道府県の区域内における通信を媒介
することのできる局間の中継線路等)が譲渡され、又は担保に供された場合、地域
電気通信業務の安定的な提供に重大な影響を及ぼすことになるため、NTT法
上、その譲渡又は担保には、総務大臣の認可が必要とされている。
他方、NTT東西の線路敷設基盤は、電気通信設備ではなく工作物等に該
当し、その譲渡又は担保は、重要な電気通信設備の譲渡等の認可の対象外と
なるため、現在、線路敷設基盤の譲渡等には規制がない状況にある。
2.取組の方向性
(1) 設備の自己設置要件の緩和
設備の自己設置要件は、電電公社から承継した全国規模の線路敷設基盤
を死蔵せずに有効活用し、また、ユニバーサルサービスの安定的提供を確保
する上での重要性等に鑑みれば、引き続き維持することが適当である。
他方、NTT東西は、今回、電話及びブロードバンドのユニバーサルサービス
の提供に関し最終保障提供責務を担うこととなり、その効率的な履行を可能と
することも必要であることから、NTT東西に対し、自己設置要件の例外として、
以下の事項を認めることが適当である。
① 電話のユニバーサルサービスについては、「ワイヤレス固定電話」の不
採算地域以外での提供及び「モバイル網固定電話」の提供
② ブロードバンドのユニバーサルサービスについては、未整備地域等に限
定して、「ワイヤレス固定ブロードバンド(共用型)」の提供
③ 最終保障提供責務を履行する場合において、他事業者の光回線設備
等を利用したユニバーサルサービスの提供
なお、設備の自己設置要件の在り方は、今後の技術の進展や市場環境の
変化等を踏まえつつ、設備の効率的な整備・維持とサービスの安定的な提供
を併せ図る観点から、引き続き検討することが適当である。
(2) 線路敷設基盤の譲渡等の認可制の導入等
電気通信設備の設置には、電柱・管路等の線路敷設基盤が必要であるとこ
ろ、その貸出しを受けることが可能となるのは、余剰設備や余剰の添架ポイント
52
がある場合に限られること等を考えると、自己設備によって安定的にサービスを
提供するためには、自ら線路敷設基盤を保有することが重要となる。
NTT東西が電電公社から承継して保有する全国規模の線路敷設基盤は、
他事業者による構築は事実上不可能であること等に鑑みると、最終保障提供
責務を担うNTT東西が線路敷設基盤を保有し続けることが、サービスの安定的
な提供を確保する上での意義は極めて大きいものがある。
このため、線路敷設基盤の譲渡又は担保等については、規制コスト等を踏
まえてその対象範囲を検討した上で、認可の対象とすることが適当である。
また、重要な電気通信設備に係る認可は、現在、譲渡又は担保を対象とし
ているところ、それ以外の処分をする場合も、ユニバーサルサービスの安定的
な提供への支障が懸念される点は同じであるため、線路敷設基盤を含めて、
認可対象となる行為には、譲渡や担保以外の処分を含めることが適当である。
なお、NTT東西のメタル回線設備は2035年頃を目途に縮退する見込みである
など、今後もネットワークを取り巻く環境の変化や技術の進展等が想定されるた
め、線路敷設基盤の譲渡等に関する規律の在り方については、これらの環境変
化を踏まえつつ、電気通信設備や線路敷設基盤の効率的な保有・運用とサービ
スの安定的な提供を併せ確保する観点から、引き続き検討することが適当である。
53
Ⅲ.公正競争の確保の在り方
54
第1章 電気通信事業分野における公正競争の確保に関する基本的な考え方
1.「構造規制」と「行為規制」による「サービス競争」と「設備競争」の促進
通信サービスは、国民生活や経済活動の基幹インフラであり、社会全体のデ
ジタル化の更なる進展が見込まれる中で、利用者のニーズに応じて「サービスの
多様化・高度化、低廉化」を図るとともに、技術の進展に応じて「ネットワークの高
度化」を図ることは、通信政策の果たすべき大きな役割の一つである。
1985年の電気通信市場の自由化後、「サービスの多様化・高度化、低廉化」や
「ネットワークの高度化」は、市場原理に基づき、多様な事業者間の競争を通じて
図ることを基本としている。具体的には、
・ 「ネットワークの高度化」は、設備競争(電気通信回線設備(回線設備)を自
ら設置する事業者(回線設置事業者)間の競争)を通じて図ることを基本とし、
その確保には、線路敷設基盤(電柱・管路等)を保有しない者でも回線設備
が設置できるように線路敷設基盤が開放されていること等が重要となる。
・ また、「サービスの多様化・高度化、低廉化」は、サービス競争(回線設置事
業者に加えて、回線設置事業者から回線設備を借りてサービス提供を行う
事業者(回線非設置事業者)も含めた競争)を通じて図ることを基本とし、そ
の確保には、回線非設置事業者でも回線設備を利用したサービスが提供で
きるようにネットワークが開放されていること等が重要となる。
しかし、電気通信事業は、その実施に多額の設備投資が必要であり、規模の
経済性やネットワーク外部性によって独占に向かいやすい構造にある中で、現に、
NTTが、全国津々浦々に電電公社から承継した線路敷設基盤を保有し、その上
に設置した回線設備で独占的なシェア(メタル回線:約93%、光ファイバ:約73%
(2023年度末))を有している状況等に鑑みると、市場原理に全て委ねた場合は、
サービス競争や設備競争の確保が困難となることが懸念される。
このため、これまでも電気通信事業法とNTT法が両輪となって、市場を補完す
る機能を担ってきたところであり、具体的には、
・ 電気通信事業法では、独占的事業者の回線設備のボトルネック性等に着
目して、ネットワークの開放義務や不当な優遇禁止等の「行為規制」を定め、
・ NTT法では、NTTの公益性や、巨大性・独占性に着目して、NTT持株や
NTT東西の業務範囲等を制限する「構造規制」を定める
ことによって、公正競争の確保を図ってきたところである。
55
電気通信市場の自由化後約40年が経過し、通信サービスの中心は、固定電
話からIP電話、ブロードバンドやモバイルに大きく変化し、市場では、多様な事業
者が活発に事業展開を行っているが、これらの事業者のサービスが、NTTが全国
津々浦々に保有する線路敷設基盤とその上に設置された光ファイバ等の回線設
備に大きく依存する状況に変わりはないところである。
このため、引き続き、市場原理のみに委ねていたのでは公正競争(「競争条件
の公正」と「競争行為の公正」)の確保が困難な場合は、「構造規制」と「行為規制」
を両輪として必要な措置を講じ、「サービス競争」と「設備競争」の双方を促進する
ことによって、「サービスの多様化・高度化、低廉化」と「ネットワークの高度化」の
実現を図ることが適当である。
2.「検証」を通じた規制のPDCAサイクルの確保
電気通信事業分野は、技術革新が著しく市場環境の変化も激しいことから、公
正競争を確保するためには、透明性をもって規制の遵守状況や競争環境を検証
し、必要に応じて、規制の内容はもとより、事前規制・事後規制といった手法を含
む規制の在り方について不断に見直していくことが不可欠である。
このためには、「電気通信市場やその隣接市場としての非電気通信市場を
含めた市場の画定(Plan)」、「制度の運用(Do)」、「市場評価や規制の遵守
状況・実効性の検証(Check)」、「その結果を踏まえ、必要に応じた制度の見直し
(Action)」というPDCAサイクルを適切に回し、透明性や実効性が確保された
形で、時代に即した規制の見直しを図る体制を構築することが重要となる。
以上を踏まえ、そのような体制を構築する観点から、検証を通じた規制の
PDCAサイクルについては、現在、総務省の電気通信市場検証会議で行ってい
る検証の枠組み等を参考にしつつ、法的に位置付けることが適当である。
56
第2章 NTT東西の通信インフラの在り方
第1節 NTTが果たすべき役割とその線路敷設基盤や電気通信設備の在り方
1.現状と課題
(1) NTT東西の通信インフラの役割
通信サービスの提供には、利用者と繫がった「電気通信設備」が必要となり、
電気通信設備の設置には、電柱・管路等の「線路敷設基盤」が必要となるとこ
ろ、NTT東西の「線路敷設基盤」と「電気通信設備」は、以下のとおり、我が国
の通信インフラ全体を支える公共的な役割を担っているところである。
①
NTT東西の「線路敷設基盤」は、電電公社から承継した全国規模の基
盤であり、他事業者による同規模の基盤の構築は事実上不可能なこと等
に鑑みると、全国津々浦々の利用者との間に「電気通信設備」を設置する
上で特別な役割を担っていること
② NTT東西の「電気通信設備」は、メタル回線で約93%、光ファイバで約
73%の回線シェアとなっており、多額の設備投資を行い電気通信設備を
設置できる者が限られる中で、他事業者によるFTTHの提供や、携帯電話
のエントランス回線(局舎と基地局との間の回線)にも利用されるなど、固
定通信・移動通信双方のサービスの提供を支える基盤となっていること
(2) NTT東西の線路敷設基盤や電気通信設備の維持等
NTT東西の線路敷設基盤や電気通信設備は、これらの開放によって、設備競
争やサービス競争を促進することも重要であるが、我が国の通信インフラ全体を
支える公共的な役割に鑑みれば、その適切な設置・維持を図ることも重要となる
ため、NTT東西の「電気通信設備」については、NTT法上、NTT東西に対し、
① 地域電気通信業務(本来業務)は、原則として自ら設置した電気通信設
備を用いて行うこと(自己設置要件)
② サービス提供の基礎となる重要な電気通信設備(電気通信幹線路及び
これに準ずる重要な電気通信設備)の譲渡等について、総務大臣の認可
を受けること
を義務付けているのに対し、NTT東西の「線路敷設基盤」については、電気通
信設備ではなく工作物等に該当し、その譲渡又は担保は、重要な電気通信設
57
備の譲渡等の認可の対象外となるため、現在、線路敷設基盤の譲渡等には規
制がない状況にある。
このような状況の中、NTTからは、設備シェアリングやオフバランス化、無線
設備の活用による効率化を図ることができないため、上記①・②の規律の見直
しを求める意見が示されており、NTT東西の「線路敷設基盤」や「電気通信設
備」が今後果たすべき役割等を踏まえ、これらに関する規律の在り方を検討す
ることが必要となっている。
2.取組の方向性
(1) NTTが果たすべき役割
NTT東西の線路敷設基盤とその上に設置された電気通信設備は、我が国
の固定通信と移動通信のサービスを支える重要な基盤であり、社会全体のデ
ジタル化が進展し、あらゆる「ヒト」や「モノ」が通信ネットワークを通じて繋がる社
会が到来する中で、その重要性は更に高まることが見込まれるところである。
今後も、他事業者による同規模の線路敷設基盤の構築は事実上不可能で
あること、また、線路敷設基盤の開放ルールはあるものの、多額の設備投資が
必要であり、他事業者による同規模の電気通信設備の設置も困難(回線設置
事業者の事業展開も地域限定的)であること等に鑑みると、NTT東西の線路敷
設基盤と電気通信設備には、我が国の通信インフラ全体を支え、また、高度化
を通じて設備競争を補完する公共的な役割を果たすことが求められる。
そして、このような公共的な役割を安定的に確保することが、我が国の国民
生活や経済活動の維持・発展に重要であること等に鑑みると、NTTは、その線
路敷設基盤等に関し、以下のような役割を果たすべきと考えられる。
① 我が国の通信インフラ全体を支える観点から、その線路敷設基盤を適切
に維持するとともに、その上に電気通信設備を適切に設置・維持すること
② 設備競争を補完する観点から、電気通信設備の高度化を図り、もって電
気通信サービスの多様化・高度化に寄与すること
(2) NTT東西の線路敷設基盤の譲渡等に関する認可制の導入等
NTT東西の線路敷設基盤は、他事業者による同規模の基盤構築が事実上
不可能である中で、我が国の通信インフラ全体を支え、通信サービスの安定的
な提供等を確保する上で重要な役割を有すること等に鑑みると、その適切な維
58
持を図る観点から、その譲渡等については、規制コスト等を踏まえて対象範囲
を検討した上で、認可の対象とすることが適当である。
また、現在、重要な電気通信設備の認可は、譲渡又は担保を対象としていると
ころ、譲渡又は担保だけでなく、処分する場合も、通信サービスの安定的な提
供への支障が懸念される点は同じであるため、線路敷設基盤の譲渡等の認可を
含めて、認可の対象となる行為には、譲渡又は担保だけでなく、処分を含めるこ
とが適当である。
なお、NTT東西のメタル回線設備は2035年頃を目途に縮退する見込みである
など、今後もネットワークを取り巻く環境の変化や技術の進展等が想定されるた
め、線路敷設基盤の譲渡等に関する規律の在り方については、これらの環境変
化を踏まえつつ、電気通信設備や線路敷設基盤の効率的な保有・運用とサービ
スの安定的な提供を併せ確保する観点から、引き続き検討することが適当である。
【同旨:Ⅱ.ユニバーサルサービスの確保の在り方 第6章第2節2(2) 線路敷設
基盤の譲渡等の認可制の導入等(P52~53)】
(3) NTT東西の電気通信設備の自己設置要件の例外追加
NTT東西の自己設置要件は、その線路敷設基盤を死蔵せずに有効活用し、
電気通信設備の適切な設置・維持を確保することによって、我が国の通信サ
ービスの安定的な提供を確保するとともに、自己設置する電気通信設備の高
度化を通じて設備競争の補完を図る役割を有するものであり、その重要性に
鑑みれば、引き続き維持することが適当である。
ただし、後述のとおり、今回、NTT東西の本来業務について県域業務規制
を撤廃し、県間業務を本来業務とするため、県間業務も自己設置要件の対象
になり得るところ、県間業務は、これまで他者設備により実施しても特段の問題
が生じておらず、新たに自己設置要件を課す必要性が高いとはいえないこと
等から、自己設置要件の例外として扱うことが適当である。
なお、上記以外の自己設置要件の例外については、「Ⅱ.ユニバーサルサ
ービスの確保の在り方 第6章第2節2(1) 設備の自己設置要件の緩和(P52)」
で整理したところである。
59
第2節 NTT東西のアクセス部門の運営主体の在り方
1.現状と課題
NTT東西の線路敷設基盤や電気通信設備は、NTT東西だけでなく他事業者
のサービス提供上も不可欠であることから、設備競争やサービス競争を促進する
ためには、これらを単に開放するだけでなく、事業者間で利用の同等性・公平性
が確保される形で開放することが重要である。
このような観点から、利用の手続や条件に関して、線路敷設基盤については総
務省において「公益事業者の電柱・管路等使用に関するガイドライン」(2001年策
定)を定め、電気通信設備については電気通信事業法において第一種指定電
気通信設備(NTT東西のアクセス回線等)に関する接続ルール等を定めることに
より、NTT東西の線路敷設基盤等の適切な開放を図っているところである。
これに加えて、線路敷設基盤等を「設置・管理する部門(設備部門)」と「利用
する部門(利用部門)」が同一の会社に属する場合は、利用の同等性・公平性の
確保が徹底されないおそれがあるため、特に不可欠性が高い第一種指定電気
通信設備については、設備部門と他部門との間でファイアウォールを強化するた
めの体制整備(機能分離)が義務付けられている。
機能分離の場合も、設備部門と利用部門が同一の社内に属する点に変わりは
ないところ、今回、NTTに対する構造規制が緩和されるのであれば、利用の同等
性・公平性の確保を更に徹底する観点から、NTT東西のアクセス部門の資本分
離(NTTグループ外で別会社化)が必要との意見が示されたこと等を踏まえ、
NTT東西のアクセス部門の運営主体の在り方を検討することが必要となっている。
2.取組の方向性
(1) NTT東西のアクセス部門の運営主体として考えられる案
今回検討するNTT東西の「アクセス部門」とは、NTT東西のアクセス回線と中
継回線のうち、アクセス回線とこれを設置するための線路敷設基盤を設置・管
理する部門のことである。
NTT東西のアクセス部門の運営主体の在り方については、アクセス部門と利
用部門(アクセス部門が設置・管理するアクセス回線等を利用する部門)を「同
一の会社」や「同一のグループ」に属させるか否かに応じて分類し、アクセス部
門を同一のグループに属させない場合は、更にアクセス部門が属する会社の
株主の属性に応じて分類した場合、以下の4案が考えられる。
60
① NTT東西が引き続きアクセス部門を運営
② NTTグループ内でアクセス部門を別会社化(構造分離)
③ 資本分離(アクセス部門をNTTグループ外で別会社化)して国有化
④ 資本分離して民営化
(2) NTT東西のアクセス部門の扱い
NTT東西のアクセス部門の在り方については、利用の同等性・公平性の確
保を中心に公正競争の観点からの検討は当然必要であるが、NTT東西の線
路敷設基盤や電気通信設備は、我が国の通信インフラを支える公共的な役割
を担っていることや、その在り方はNTTの経営に与える影響が大きいこと等に
鑑みると、公正競争以外の通信政策との関係や実現可能性の観点から多角的
に検討を行うことが適当である。
このため、今回、上記4案について、通信政策との関係からは、第一次答申
で整理した「通信政策として確保すべき事項」である「1)ユニバーサルサービス
の確保」、「2)公正競争の確保」、「3)国際競争力の確保」、「4)経済安全保障
の確保」の観点から検討し、実現可能性の観点からは、「5)分離に伴うコスト」、
「6)既存株主への影響」について検討したところである。
これらの観点を総合的に勘案すると、以下の点等から、直ちにアクセス部門
の分離を行うのではなく、まずは、総務省において、ネットワークの開放ルール
等の見直しや、本答申で提言する公正競争の確保のための措置(累次の公正
競争条件の法定化等)を着実に講じ、その効果を見極めることが適当である。
① アクセス部門の分離は、現時点では、以下の点等に鑑みれば、費用対
効果の観点からは最善のものとは言い切れないこと
・ アクセス部門の分離を行った場合、利用の同等性・公平性の確保が一
層徹底されサービス競争に資すると考えられる一方、設備の高度化や
コスト効率化が確保されず設備競争が後退する懸念があること
・ 分離に伴い相当のコストを要することや既存株主への影響を考慮する
必要があること
② ①の点に鑑みると、まずは、アクセス部門の分離の趣旨である利用の同
等性・公平性の確保について、ネットワークの開放ルール等の見直しを含
む他の手段による措置の要否を含め、検討することが適当であること
61
その上で、本答申等に基づく措置の効果が十分に得られず、NTT東西と他
事業者との間で利用の同等性・公平性が確保されていないと認められる状況
等が生じた場合には、利用の同等性・公平性の確保を徹底する観点から、アク
セス部門の分離を含む措置について改めて検討することが適当である。
[詳細] NTT東西のアクセス部門の在り方に関する検討
1)ユニバーサルサービスの確保
アクセス部門の分離により設備投資やコスト効率化が停滞する懸念がある一方、
アクセス部門が保有する資産の利用の同等性・公平性の確保が徹底され、ユニバ
ーサルサービスの確保に好影響を与える可能性もあると考えられるが、いずれの形
態においても、ユニバーサルサービスの制度設計次第であり、アクセス部門の運営
主体とは中立的と考えられる。
2)公正競争(設備競争・サービス競争)の確保
アクセス部門が分離された場合は、投資インセンティブが働かなくなり、設備の高
度化やコスト効率化が確保されない懸念があるほか、アクセス部門の分離後も設備
シェアが高く、さらに独占性が高まれば、他の回線設置事業者が淘汰され、設備競
争が後退する懸念があると考えられる。
他方で、現在の第一種指定電気通信設備に関する接続ルール等が維持された
上でアクセス部門が分離されれば、利用の同等性・公平性の確保が一層徹底され
ることになるため、サービス競争の促進に資すると考えられる。
3)国際競争力の確保
アクセス部門の分離とは別に海外事業の展開は可能であるため、国際競争力の
確保については、アクセス部門の運営主体とは中立的であると考えられる。
4)経済安全保障の確保
アクセス部門を資本分離して国有化することが経済安全保障に最も資する面が
あるものの、経営形態にかかわらず、外資規制等、経済安全保障を確保するための
規律を課すことが重要と考えられる。
5)分離に伴うコスト
分離に伴うコストについては、イニシャルコストとして別会社化に伴う改装、周知
広報等の費用を要するほか、ランニングコストは総務・企画等のオーバーヘッド組
織の重複等により増大すると考えられる。また、分離に要する期間については、分離
のための法案成立時点から2年程度が必要である等、相当の期間を要すると考えら
れる。
6)既存株主への影響
アクセス部門の分離によるメリットや対価がなければ、株式価値を毀損して株主
利益に大きな影響を与えることから、既存株主への配慮が必要である。また、NTT
の財源確保に関する制約や株価に与える影響等を踏まえた検討を行う必要があ
り、株主や株式市場への影響を十分かつ慎重に考慮する必要があると考えられる。
62
第3節 NTT東西の分離の在り方
1.現状と課題
NTT東日本とNTT西日本は、NTT法上、それぞれ東日本地域又は西日本地域
で地域電気通信事業を経営することを目的とする株式会社とされ、本来業務も、こ
の目的を達成するため、それぞれの業務区域で地域電気通信業務を営むこととさ
れている。現在、これらの規定により、NTT東西の分離が図られているところである。
NTT東西の分離は、NTT再編時(1999年)に、競争事業者として期待されるケ
ーブルテレビ事業者等が、短期間でNTTの地域通信網に代替する可能性は極
めて低く、地域通信市場で設備競争が進展していない状況等を踏まえ、
① NTT東西間でコスト構造や収益構造の比較・検証等を可能とすることによ
って非効率性の排除(比較競争)を図るとともに、
② NTT東西が相手方の業務区域に相互に参入し得る市場構造にすることに
よって各地域における独占の弊害の抑止(直接競争)を図る観点から行われ
たものである。
NTT東西の分離後、NTT東西間の直接競争はこれまで行われておらず、また、
IP化等の進展により、競争上、距離や地理的単位による区分の重要性が希薄化
する中で、NTTから、更なる事業成長や抜本的なコスト改革のためにNTT東西の
統合が経営の選択肢となるよう見直すべきとの意見があったこと等を踏まえ、NTT
東西の分離の在り方について検討するものである。
2.取組の方向性
NTT東西の分離の趣旨は、NTT東西間の「比較競争」による非効率の排除と
「直接競争」による独占の弊害の抑止であるところ、NTT東西が分離されているこ
とによって、接続料や卸料金等について、NTT東西間の料金の差異やコスト構造
の比較等を踏まえて効率化の検証が可能となっていることに鑑みると、「比較競
争」による非効率性の排除には、引き続き一定の意義があるものと考えられる。
他方、NTT東西間の「直接競争」は、競争事業者との設備競争が進展していな
い状況等を踏まえ、設備競争を補完する観点から、NTT東西間の設備競争を図
るものであるところ、これまで「直接競争」の実績はないことに鑑みると、「直接競争」
に、NTT東西を分離する積極的な意義があるとまではいえないと考えられる。
しかし、未だ競争事業者との設備競争は西日本を中心に限定的であり、そのよ
63
うな中でNTT東西が統合された場合、規模の経済性がより働きやすくなること等
によって、地域の回線設置事業者が淘汰され、設備競争が困難となる事態が懸
念されるため、NTT東西の分離を維持することは、各地域で設備競争を行うこと
ができる環境を下支えする効果を有することになる。
また、NTTは、NTT東西の更なる事業成長や抜本的なコスト改革の必要性から
NTT東西の統合を要望しているところ、NTT東西の分離には、上記のような公正
競争上の意義があることに鑑みると、NTTは、引き続き現状で可能なコスト削減策
を講ずるなど、他に採り得る手段を検討・実施すべきと考えられる。
以上の点から、NTT東西の分離は、引き続き維持することが適当である。
ただし、NTT東西については、メタル固定電話は赤字傾向が続き、FTTHやIP
電話は契約数の伸びが鈍化する中で、2035年頃に維持限界を迎えるメタル回線
設備の円滑な縮退を図ることが必要となるなど、その経営環境は厳しさを増してい
る状況にあることから、NTT東西の分離の在り方については、NTT東西の経営状
況等を注視しつつ、NTT東西の統合が公正競争に与える影響、事業成長やコスト
改革のために他に採り得る手段等を踏まえ、引き続き検討することが適当である。
64
第3章 NTT東西等の業務の在り方
第1節 NTT東西の本来業務の在り方
1.現状と課題
(1) NTT東西の本来業務(地域電気通信業務)
NTTは、1985年の設立当初は、国内電気通信事業を営む会社として、全国
を対象に長距離通信を含めてサービス提供をしていたところ、1999年に、持株
会社の下に、長距離通信を行う会社(NTTコミュニケーションズ)と地域通信(県
内通信)を行う二の会社(NTT東西)を置く形に再編された。
長距離通信の会社と地域通信の会社に分割されたのは、当時競争の中心で
あったメタル固定電話には、県内通話や県外通話など、距離に応じたサービス
区分があり、長距離通信市場が地域通信市場とは別に存在する中で、アクセス
回線を独占的に保有する地域通信市場の支配的事業者が長距離通信も併せ
て行う場合、長距離通信市場の競争が機能しないことが懸念されたためである。
このため、NTT東西の本来業務は、それぞれ東日本地域又は西日本地域
において県内通信を扱う業務(地域電気通信業務)とされ、長距離通信(県間
通信・国際通信)の実施は、本来業務以外の業務としても認められなかった。
(2) 活用業務としての県間業務の実施
NTT再編後、インターネット等の普及に対応し、NTT東西の経営自由度を高
める観点から、2001年のNTT法改正により、地域電気通信業務を営むために
保有する設備・技術・職員を活用して行う業務(活用業務)が一定の要件の下
で認められ、NTT東西は、活用業務として県間業務を実施できるようになった。
中継網には、PSTN(回線交換網)とIP網の二種類があるところ、距離に応じ
たサービス区分(県内通話・県外通話等)が、PSTNを用いたサービスには通常
存在し、IP網を用いたサービスには通常存在しないことから、IP網を用いたサ
ービスの方が、活用業務としてNTT東西に県間業務を認めても、長距離通信
市場が存在しない分だけ、公正競争上の影響が相対的に少ないと考えられる
ところである。
このような点も踏まえ、現在、活用業務としての県間業務は、IP網を用いて提
供されるFTTHやIP電話等には認められている一方、PSTNを用いて提供され
るメタル固定電話には認められていない状況にある。
65
しかし、2025年1月までにPSTNがIP網に移行した後は、メタル固定電話もIP
網で提供されるようになり、PSTNを用いたサービスが存在しなくなるため、県間
業務に関し、「本来業務で禁止しつつ、一定の場合に活用業務として認める」
枠組みを維持することの要否について検討が必要となっている。
なお、現在、NTT東西が本来業務として移動通信業務やインターネット接続
業務(ISP業務)等を実施できないのは、これらの業務が県間業務を通常含み、
本来業務を県内業務に限定するNTT法の規定に抵触すると考えられることも理
由であるため、県間業務の扱いを検討する際は、移動通信業務等との関係にも
留意することが必要である。
2.取組の方向性
(1) 県域業務規制の撤廃
NTT東西の本来業務を県内通信に限定する「県域業務規制」は、以下のと
おり、県内業務と県間業務を区別する競争政策上の意義が希薄化していること
等に鑑み、撤廃することが適当である。
① 県域業務規制は、地域通信市場と長距離通信市場が分かれていること
を前提に、地域通信市場の支配的事業者であるNTT東西が長距離通信
市場に参入することを禁止することにより、長距離通信市場の公正競争を
確保することを主たる目的とするものであるところ、
② ブロードバンドやIP電話については、以下の点等から、県間業務を活用
業務とし、本来業務(県内業務)とは区別して公正競争を図る必要性は乏
しいと考えられること
・ ブロードバンドやIP電話は、距離に依存しないIP網を用いて提供され、
距離別の料金・サービスはないため、県域業務規制が前提とする市場
構造と異なり、地域通信市場と長距離通信市場が分かれていないこと
・ NTT東西は、活用業務である県間業務部分を含めて、20年以上の長期
にわたりブロードバンドやIP電話を提供しており、これらの県間業務を本
来業務としても、公正競争上大きな影響が生じるとは考えにくいこと
③ また、メタル固定電話も、2025年1月までにPSTNがIP網に移行した後は、
距離別の料金・サービスはなくなり、長距離通信市場もなくなること、また、
事業者網の相互接続点が東京と大阪の2か所に集約され、県内通話も東
京又は大阪を経由することに鑑みると、県内業務と県間業務の区分自体
が不明確なものとなること
66
(2) 県域業務規制の撤廃後の本来業務
現在、NTT東西の本来業務は、東日本地域又は西日本地域に属する都道
府県において、「同一の都道府県の区域内における通信(県内通信)」を媒介
するサービスを提供する業務とされているところ、今回、県域業務規制を撤廃
する場合、媒介の対象は県内通信に限定されないことになる。
この場合、以下の点等から、NTT東西の本来業務は、「東日本地域又は西
日本地域内における通信」を媒介するサービスを提供する業務を基本とし、移
動通信業務やISP業務など、公正競争の確保に支障が生じるおそれのある業
務については、その実施を認めないことを明確化することが適当である。
① NTT東西の本来業務は、以下の点等から、固定アクセス回線を用いて提
供する通信サービスを基本とすべきであり、その上で、公正競争の確保に
支障が生じるおそれがあり禁止する業務は明確化することが適当であること
・ NTT東西の線路敷設基盤は、我が国の通信インフラを支える公共的な役
割を担っており、NTT東西には、設備競争を補完する観点から、その有効
活用により、「固定」アクセス回線の設置・高度化を図るとともに、その回線
を用いた「固定」通信サービスの多様化・高度化等が期待されていること
・ NTT東西は、固定アクセス回線で独占的なシェアを有し、移動通信業
務やISP業務等を認めた場合、公正競争の確保に支障が生じることが
懸念されているため、これらを解禁する必要性は認められず、規制の透
明性を確保する観点からは、その点を明確化すべきであること
② NTT東西の分離を維持する場合、NTT東西の本来業務の業務区域は、
引き続き東日本地域又は西日本地域を基本とすることが適当であり、媒
介の対象も、これと整合的に「東日本地域又は西日本地域内における通
信」とすることが適当であること
67
第2節 NTT東西の本来業務以外の業務の在り方
1.現状と課題
NTT東西は、現在、本来業務以外の業務として、一定の要件の下で、「①活用
業務」のほか、「②目的達成業務」、「③目的業務区域 36外の地域電気通信業務」
を行うことができることとされている。
(1) 活用業務の実施要件とその確認方法
NTT東西の活用業務は、本来業務(地域電気通信業務)を営むために保有
する設備・技術・職員を活用して行う業務であるところ、NTT東西の目的とは直
接関係のない業務であるため、「本来業務や電気通信事業の公正競争の確保
に支障がないこと」を要件として、「事前届出」により実施可能とされている。
また、活用業務の実施要件(本来業務や電気通信事業の公正競争の確保
に支障がないこと)の確認については、総務省において、「NTT東西の活用業
務に係る公正競争ガイドライン」(2011年策定)に基づき行っているところ、この
確認方法が詳細な項目にわたっているとの指摘もなされているところである。
このような中、NTTは、地域の課題にワンストップでソリューションを提供する
ため電気通信業務以外の業務が柔軟に可能となるように見直すべきとの意見
を示していること等を踏まえ、活用業務の実施要件やその確認方法の在り方に
ついて検討を行うものである。
(2) 目的達成業務、目的業務区域外の地域電気通信業務
目的達成業務は、NTT東西の本来業務(目的業務区域内の地域電気通信業
務)の実施のために必要な業務であり、事前届出により実施可能である。具体的
には、他社料金の回収代行や情報機器関連商品の販売・保守等を行っている。
また、目的業務区域外の地域電気通信業務(NTT東日本であれば、西日本
地域で行う地域電気通信業務)は、NTT東西間の直接競争を促進する観点か
ら認められる業務であり、事前届出により実施可能であるが、これまでこの業務
の実績はないところである。
36
NTT東日本であれば東日本地域、NTT西日本であれば西日本地域。
68
2.取組の方向性
(1) 活用業務の実施要件の確認に係る事後検証スキームの導入
活用業務の実施要件(本来業務や電気通信事業の公正競争に支障がないこと)につ
いては、これを緩和した場合、活用業務で過大な事業リスクを抱えることにより通
信サービスの適切かつ安定的な提供の確保に支障が生じる懸念や、NTT東西が
独占的シェアを有する固定通信市場から競争市場に内部相互補助を行うこと等
によって電気通信事業の公正競争の確保に支障が生じる懸念があることから、引
き続き維持することが適当である。
他方、活用業務は、2001年の制度創設以来20年以上が経過し一定の類型
化が進む中で、実施要件の確認方法が詳細な項目にわたっているとの指摘等
を踏まえると、電気通信業務以外の業務を含め、より迅速かつ柔軟な活用業
務の実施を可能とし、経営自由度の向上を図る観点から、実施要件の確認方
法は、簡素化・効率化を図ることが適当である。
具体的には、NTT東西が、活用業務として行う業務の実施要件を遵守して
業務を営むための基準(実施基準)の作成・届出を行った上で、実施基準に則
って活用業務を行う限り、従来のような個別業務ごとの届出を不要とし、実施基
準の遵守状況を総務省において事後検証すること等が考えられる。
そして、このような事後検証の枠組みに変更する場合、検証の透明性の確保
や、検証及びその結果を踏まえた措置の実効性等を確保することが重要となる
ため、検証のプロセスについては、法律上の位置付けを与えることが適当である。
なお、活用業務についても、本来業務の場合と同様に、移動通信業務やISP
業務など、NTT東西が行った場合に公正競争の確保に支障が生じるおそれが
ある業務はその実施を認めないことが適当であり、規制の透明性を確保する観
点からは、その点を明確化することが適当である。
(2) 目的達成業務等の在り方
目的達成業務は、他社料金の回収代行業務など一定の実績があること、目
的業務区域外の地域電気通信業務は、これまで実績はないものの、NTT東西
間の直接競争の余地をあえて否定する必要はないこと等から、いずれもNTT
東西が実施可能な業務として維持することが適当である。
これらの業務は、その実施に事前届出が必要であるところ、今回、活用業務
の実施要件の確認方法を事前届出から事後検証に見直すこととのバランス等
69
を踏まえ、事後届出制に緩和することが適当である。
なお、活用業務や目的達成業務等については、上記のように、経営自由度の向
上を図る観点からは一定の規制緩和が適当である一方、後述のように、当該規制
緩和による公正競争上の弊害を抑止する観点からはセーフガード措置(累次の公
正競争条件の法定化等)を講ずることも適当としているところであり、これらの業務の
在り方については、今回の見直し後の状況等を踏まえ、経営自由度の向上と公正
競争の確保等を併せ確保する観点から、引き続き検討することが適当である。
70
第3節 NTT持株による事業の実施の在り方
1.現状と課題
NTT持株は、NTT東西が発行する株式の総数を保有しNTT東西による適切か
つ安定的な電気通信役務の提供の確保を図ることと、電気通信の基盤となる電
気通信技術に関する研究(基盤的技術の研究)を行うことを目的とする株式会社
として設立された。
この目的を達成するため、NTT持株は、以下の業務が本来業務とされており、
これに加えて、事前届出により目的達成業務は実施可能であるものの、本来業
務・目的達成業務以外の業務を行うことは認められていない。
① NTT東西が発行する株式の総数を保有し、適切かつ安定的な電気通信役
務の提供の確保を図ること
② NTT東西に対し、必要な助言、あつせんその他の援助を行うこと
③ 基盤的技術の研究を行うこと
このような中、NTTは、基盤的技術の研究とその成果の事業化との間のいわゆる
「死の谷」と呼ばれる障壁を乗り越えるため、NTT持株が、基盤的技術の研究だけ
でなく、電気通信事業以外の分野に限り、その成果の事業化も実施できるようにす
べきとの意見を示していること等を踏まえ、その適否について検討するものである。
2.取組の方向性
NTTは、電電公社から承継した技術力や人材をベースとして優れた研究開発
基盤を有しており、我が国の情報通信分野における研究開発の先導的・中核的
な役割が期待されるため、その目的や本来業務として、基盤的技術の研究を行う
ことが位置付けられているところである。
NTT持株の基盤的技術の研究成果は、広く社会課題の解決に向けて社会実
装されることが期待されるところ、基盤的技術の実用化はリスクが大きく、その成
果を死蔵させずに「死の谷」を乗り越えるためには、基盤的技術の研究を行いそ
の内容を熟知するNTT持株自身においてその成果の実用化に取り組むことが必
要かつ効果的である場合も考えられるところである。
他方、NTT持株が、基盤的技術の研究成果の実用化業務を実施する場合、新
たに事業リスクを抱えることで本来業務の円滑な遂行に支障が生じることや、電気
通信事業自体は行わないとしても、電気通信事業に関連する事業の実施を通じて
71
公正競争の確保に支障が生じること、研究成果の事業化と事業拡大の境界領域
が曖昧でNTT持株が巨大な事業会社になること等が懸念されるところである。
そのような場合、更に事業持株会社ではないNTT持株の目的や本来業務との関
係も問題となり、これらの懸念・問題を勘案した事前・事後のチェックの仕組みが必
要となるところ、現時点では、NTTから、研究成果の実用化業務の具体的ニーズが
示されていないこと等に鑑みると、研究成果の実用化業務については、NTT持株が
行うIOWN等の研究開発の動向、実用化業務の具体的ニーズ等を踏まえつつ、
NTT持株の在り方や公正競争との関係を含め、引き続き検討することが適当である。
72
第4章 NTTグループに関する公正競争の確保の在り方
第1節 NTTに対する累次の公正競争条件の在り方
1.現状と課題
NTTについては、1985年の設立後、その巨大性・独占性や市場構造の特性等
に鑑み、各種事業のグループ内分離や会社の再編成の措置が講じられてきたと
ころであり、具体的には、1988年にデータ通信事業の分離、1992年に移動通信
事業の分離、1997年にソフトウェア関連業務の事業化・分離、1999年にNTT持株
の下に長距離会社と地域会社への再編成が行われてきたところである。
この際、NTTの巨大性・独占性の弊害等を排除し、分離されるグループ内事業
者と他事業者との間の公平性等を確保する観点から、NTT持株とNTT東西(1999
年の再編前は旧NTT)は、大別すると、主に以下の7つの条件に基づき業務を行
うとされたところであり、これらは、「累次の公正競争条件」と称されている。
① ネットワークの公平な提供 (NTT東西)
② 各種取引条件等の公平性の確保 (NTT持株・NTT東西)
③ 在籍出向及び役員兼任の禁止 (NTT持株・NTT東西)
④ 独立した営業部門の設置 (NTT東西)
⑤ 顧客情報その他の情報の公平な提供 (NTT東西)
⑥ 共同資材調達の扱い (NTT持株・NTT東西)
⑦ 研究開発成果の公平な開示等 (NTT持株・NTT東西)
NTT再編後、NTT持株によるNTTドコモの完全子会社化(2020年12月)、NTTド
コモによるNTTコミュニケーションズとNTTコムウェアの子会社化(2022年1月)等が
行われ、電気通信事業法等の規制も競争環境等の変化に対応し見直される中で、
累次の公正競争条件が前提とするNTTグループ会社間の関係や事業内容、規制
環境等は大きく変化している。このような中、累次の公正競争条件については、
・ NTTは、電気通信事業法の規制で対応できる条件や電気通信事業を営まな
いNTT持株に係る一部の条件について見直しを求める意見を示していること
・ 形式としては、NTT法や電気通信事業法上の規律として設けられたもので
はないため、法的安定性や実効性に課題があるとの指摘があること
・ そのような中で、今回、活用業務を事後検証とし個別に事前チェックを行わ
73
ないこととする場合は、公正競争が阻害される事態が生じないように、累次
の公正競争条件の法定化を求める意見が示されていること
等を踏まえ、その在り方を検討することが必要となっている。
2.取組の方向性
(1) 累次の公正競争条件の現行化
NTTの巨大性・独占性の弊害等を排除する観点から、NTT持株とNTT東西
に対して、「累次の公正競争条件」を現在構成する条件を課すことは、以下の
点等から、基本的に必要であると考えられる。
・ NTT東西は、全国規模の線路敷設基盤の上に設置した固定アクセス回
線について独占的なシェアを有している点はNTT再編時と変わりはない
ため、その巨大性・独占性等を排除する必要性も変わりはないこと
・ NTT持株は、NTT東西の全株式を保有し、NTT東西に必要な助言、あっ
せん等の援助を行うことを本来業務としており、NTT東西の経営状況の把
握や経営への影響力行使等が可能な立場にあること
ただし、累次の公正競争条件は、メタル固定電話が中心の時代に作られた
ものであり、その後、市場環境や競争環境が変化し、NTTグループ内の組織
再編によりグループ内の会社間の関係や事業内容等も変化していること等に
鑑みると、時代に即して現行化が必要な条件があると想定されることから、個別
の条件ごとにその要否・適否を検討し、必要な見直しを行うことが適当である。
例えば、電気通信事業法において接続ルールが1997年に導入され、NTT法
において研究成果の普及責務が2024年に廃止されたこと等を踏まえ、「①ネットワ
ークの公平な提供」や「⑦研究開発成果の公平な開示等」を廃止することや、NTT
ドコモによるNTTコミュニケーションズの子会社化の際にネットワークや事業の移管
が行われたこと等を踏まえ、規制対象者を見直すこと等が考えられるところである。
(2) 累次の公正競争条件の法定化と遵守状況の検証
今回、NTT東西の活用業務について事前届出から事後検証に見直すなど、
経営自由度の向上を図る措置を講ずることとするところ、これによる公正競争
上の弊害が懸念されていること等に鑑みると、今回見直しを行った結果、必要
とされる累次の公正競争条件については、経営自由度の向上に伴うセーフガ
ード措置として法定化し、法的安定性や実効性を高めることが適当である。
74
例えば、電気事業法では、一般送配電事業者について、その送配電網の公
平な利用を確保する観点から、グループ内事業者との間のファイアウォール措置
として、「②各種取引条件等の公平性の確保」や「③在籍出向及び役員兼任の禁
止」が法律上規定されていること等に鑑みると、累次の公正競争条件についても、
これら②・③の条件のうち必要なものを法律上明確化することが考えられる。
また、累次の公正競争条件の遵守状況は、総務省において引き続き検証を
行うことが適当である。この際、電気通信市場やその隣接市場としての非電気
通信市場を含めて市場を画定した上で、市場の評価や規制の遵守状況・実効
性について有識者の意見を聴きながら検証を行い、その結果を公表すること
等が考えられるところ、このような検証プロセスも、透明性や実効性を確保する
観点から、法律上の位置付けを与えることが適当である。
なお、累次の公正競争条件の在り方については、NTTグループ会社間の関係
や事業内容、規制環境等の変化を踏まえ、引き続き検討することが適当である。
75
第2節 電気通信事業者のグループに対する公正競争条件の在り方
1.現状と課題
(1) 市場支配的事業者に対する禁止行為規制
市場支配力の濫用防止を図るためには、グループ内外の会社の公平な取
扱い等が重要であることに鑑み、電気通信事業法では、以下の市場支配的事
業者について、特定の電気通信事業者(②の者:グループ内の指定された電
気通信事業者に限る。)に対する不当な優遇や、グループ内の指定された電
気通信事業者との間の役員兼任(①の者のみ)等を禁止している。
① 固定通信市場:第一種指定電気通信設備(一種指定設備)を設置する
事業者(固定アクセス回線シェア50%超の者)である「NTT東西」
② 移動通信市場:第二種指定電気通信設備(二種指定設備)を設置する
事業者(移動端末設備シェア10%超の者:NTTドコモ、KDDI、ソフトバンク
等)のうち一定の収益シェアを有する者である「NTTドコモ」
(2) 電気通信事業の登録の更新制(グループ化審査)
一種指定設備を設置する事業者(一種指定事業者)又は二種指定設備を
設置する事業者(二種指定事業者)は、回線シェアや端末シェアが高く交渉上
の優位性を有し、更に大規模な回線設置事業者をグループ化した場合の公正
競争に与える影響が大きいことから、合併、分割、事業譲渡や株式取得により、
以下の大規模な回線設置事業者を子会社化する場合等は、電気通信事業法
に基づき、電気通信事業の登録の更新を受けることが必要とされている。
① 一種指定事業者又は二種指定事業者
② 固定アクセス回線シェアが10%超50%以下の者(オプテージ、近鉄ケーブ
ルネットワーク等)又は移動端末設備シェアが3%超10%以下の者(なし)
(3) NTTグループの組織再編
上記の禁止行為規制(2001年)や登録の更新制(2015年)の導入後、NTTグ
ループでは、NTT持株によるNTTドコモの完全子会社化(2020年)、NTTドコモ
によるNTTコミュニケーションズとNTTコムウェアの子会社化(2022年)等の組織
再編が行われており、これらは、市場環境の変化等に対応し、国内・国際事業
の競争力強化等を図る観点から必要な経営判断と捉えることができる。
76
他方、NTT東西やNTTドコモが、グループ内の別会社と合併し、又は分割に
より事業譲渡等を受けても、グループ化を審査する登録の更新制や独占禁止
法の企業結合審査の対象外であり、公正競争を図る観点から審査する仕組み
が存在しないため、禁止行為規制でグループ内会社の不当な優遇等を禁止し
ても、グループ内会社との合併等を通じて潜脱されること等が懸念されている。
2.取組の方向性
電気通信市場は、技術革新のスピードが速く、事業者間競争も活発に行われ
る中で、市場環境の変化等に対応し競争力の強化等を図ることが重要な経営課
題であるため、その一環として、電気通信事業者が、その経営判断により、グル
ープ内会社の組織再編を行うことは、基本的に妨げるべきでないと考えられる。
他方、電気通信事業法においては、市場支配力が濫用された場合の弊害が
大きいことから、市場支配的事業者には、グループ内会社の不当な優遇等を禁
止していること等に鑑みると、競争政策の観点からは、禁止行為規制が、グルー
プ内会社との合併等を通じて潜脱されることを防止することも必要となる。
加えて、現在、グループ内会社との合併等は、独占禁止法の企業結合審査の
対象外であること等を踏まえると、禁止行為規制の潜脱による弊害が懸念される
場合には、公正競争の確保に必要な条件を付すこと等ができるように、市場支配
的事業者については、登録の更新制の対象を見直し、グループ内会社との合併
等を審査できるようにすることが適当である。
この際、できる限り規制コストを最小化し、自由な経営判断に基づく組織再編を
阻害しない観点から、合併等の審査の対象は、公正競争に重大な影響を及ぼす
おそれのあるものに限定することが適当である。
77
第5章 ネットワークの開放の促進等の在り方
[現行制度の概要]
1.ネットワークの開放ルール
「サービスの多様化・高度化、低廉化」は、サービス競争を通じて図ることが基
本であり、その確保には、回線非設置事業者でも回線設備を利用したサービスが
提供できるようにネットワークが開放されていることが重要であることから、電気通
信事業法では、主に「接続」と「卸電気通信役務(卸役務)」の二つの方式に関し
て、ネットワークの開放ルールが定められている。
「接続」については、接続条件の公平性・透明性や接続の迅速性等を確保す
る観点から、一種指定事業者又は二種指定事業者に対し、接続約款の認可制
又は届出制、コストベースの接続料の設定義務、接続会計の整理義務など、卸
役務に比べると、厳格な規制を課している。
他方、「卸役務」については、柔軟かつ多様な卸役務の提供を図る観点から、
一種指定事業者又は二種指定事業者にも、約款規制は課さずに、卸役務の料
金や条件を相対契約で定めることを認めた上で、適正な競争環境に及ぼす影響
が少なくない卸役務(特定卸役務)については、卸料金の算定方法の提示義務
等を課すことによって事業者間協議の円滑化等を図ることとしている。
「接続」と「卸役務」のいずれを利用するかは、利用希望者の判断で自由に選
択できるところ、近年は、一種指定設備・二種指定設備ともに、卸役務の利用が
拡大しているところである。
2.禁止行為規制
市場支配的事業者(以下の①・②)については、市場支配力を濫用した場合の
弊害が大きいことから、その濫用を防止する観点から、接続関連情報の目的外利
用・提供の禁止や、他事業者への不当な優遇の禁止など、他事業者との間に不
当な競争を引き起こすおそれのある行為を類型化してあらかじめ禁止する「禁止
行為規制」が課されている。
① 固定通信市場:一種指定事業者である「NTT東西」
② 移動通信市場:二種指定事業者のうち一定の収益シェアを有する者である
「NTTドコモ」
78
第1節 メタル固定電話の接続ルールの在り方
1.現状と課題
固定通信市場(一種指定設備)の接続ルール(一種指定制度)は1997年の電
気通信事業法改正により、移動通信市場(二種指定設備)の接続ルール(二種
指定制度)は2001年の同法改正により設けられたところ、以下の点等において、
一種指定制度の方が、二種指定制度よりも厳格な規制内容となっている。
・ 接続約款について、一種指定制度では認可制であるのに対し、二種指定
制度では届出制であること
・ 一種指定制度のうちメタル固定電話(PSTN)の接続料は、最も厳格な算定
方法であるLRIC方式による算定が必要であること
これは、制度創設時は、メタル固定電話が競争の中心で、その提供に必要なメ
タル回線はNTTが独占的なシェアを有していたため、その適切な開放を図ること
が競争政策上特に重要であったこと等に起因している。
しかし、その後の技術革新等により、競争の中心はメタル固定電話からブロード
バンドやモバイル等に移行し、メタル固定電話の設備は、中継網(PSTN)が2025
年1月までにIP網に移行予定、残りの設備も2035年頃に縮退見込みであるなど、
接続ルールの創設時とは競争環境やネットワーク環境等が大きく変化している。
このような中、NTTは、LRIC方式による接続料算定など、電話時代の規制・ル
ールは廃止すべきとの意見を示していること等を踏まえ、メタル固定電話の接続
ルールの在り方を検討するものである。
2.取組の方向性
メタル固定電話の接続料は、2021年の情報通信審議会答申で、同じIP網を利
用するひかり電話の接続料と同一の接続料として算定し、メタル固定電話のみが
利用する設備(メタル収容装置等)に係る接続料原価は、NTTから非効率性排除
の明確な見通しが示されなかったこと等を踏まえ、LRIC方式で算定することが適
当とされた。この答申等に基づき、IP網移行後の2025年1月からの3年間は、メタ
ル固定電話固有の設備は、LRIC方式で接続料原価が算定される予定である。
本件諮問の議論の過程で、NTTからは、2035年頃を目途にメタル回線設備は
縮退する見込みであることが示されたが、既存利用者の移行に関し、当面は移転
等の申込みを契機とした移行勧奨を想定しており、上記2021年答申の検討の前
79
提と大きな変化はないと考えられること、また、NTTから今後の移行計画が具体的
に示されていないこと等を踏まえると、2025年1月からの3年間の接続料算定の考
え方を変更する必要はないと考えられる。
しかし、NTTは、既存利用者の移行に関し、一定の時期から段階的にエリア単
位での移行実施を検討している旨を示しており、今後、メタル固定電話を取り巻く
環境は大きく変化することが想定されるため、総務省では、NTTによる策定が見
込まれる具体的な移行計画等を踏まえ、以下の点等を考慮しつつ、メタル固定
電話の接続ルールの在り方について適時適切に検討することが適当である。
① LRIC方式は、電気通信事業法上、「高度で新しい技術の導入によつて、
その機能に係るサービス提供の効率化が相当程度図られると認められる機
能」の接続料算定に用いることとされていること
② メタル回線設備は、非効率性の排除は必要である一方、老朽化が進展し
2035年頃に縮退見込みであり、①の前提とは乖離しつつあること
③ 他方、接続ルールの見直しは、接続料負担の増加等により、関係事業者
の事業運営に大きな影響を与える可能性があること
④ また、接続ルールは、以下の点など、ユニバーサルサービス制度との関係
に留意が必要であること
・ ユニバーサルサービス交付金の算定方法の見直しにより、接続料原価に、
メタル固定電話の基本料で本来回収すべき費用(本来ユニバーサルサー
ビス交付金による補塡対象となる費用)が算入されていること
・ 今回、電話のユニバーサルサービスにモバイル網固定電話が追加され、
NTT東西がモバイル網固定電話を提供する場合、接続料算定に関しても、
この影響を考慮する必要が生じること
80
第2節 利用拡大に対応した卸役務に関するルールの在り方
1.現状と課題
「卸役務」は、NTT東西による光回線の卸売サービスやMNOによるMVNO
(Mobile Virtual Network Operator)への卸提供等により、その利用が拡大してい
るところ、卸役務は、一種指定設備や二種指定設備を用いるものでも、柔軟かつ
多様な提供を図る観点から相対契約が認められており、料金や条件の適正性・
公平性等の確保は、制度上、接続ルールの約款規制に比べると強くは担保され
ていない状況にある。
一種指定設備や二種指定設備を利用する場合に接続の方式が利用可能であれ
ば、接続約款の認可等を通じて適正かつ公平な接続料や接続条件が実現している
ため、それを前提に卸役務の利用の際も適正な契約交渉を期待し得るが、接続によ
る代替が実質的に困難な卸役務については、一種指定事業者や二種指定事業者の
交渉上の優位性等に鑑みると、適正な契約交渉が十分に期待できないおそれがある。
このため、一種指定事業者や二種指定事業者には、特定卸役務の料金の算
定方法の提示義務等を課し協議の円滑化を図るとともに、総務省において、以下
の検証を毎年度行うことで卸役務の適正性等を確保することとしている。
① 公正競争上の弊害が生じるおそれが高いと判断した卸役務について、「指
定設備卸役務の卸料金の検証の運用に関するガイドライン」(卸検証ガイド
ライン)(2020年策定)に基づき、接続による代替性を評価し、それが不十分
である場合に卸料金の適正性を検証する。
② NTT東西の光回線の卸売サービスについて、「NTT東西のFTTHアクセス
サービス等の卸電気通信役務に係る電気通信事業法の適用に関するガイド
ライン」(2015年策定)に基づき、料金や条件の適正性・公平性を検証する。
今後、メタル回線設備の縮退、5GのSA(Stand Alone)化、ネットワークの仮想
化・クラウド化など、ネットワーク環境の変化が見込まれる中で、他者設備の利用
における卸役務の重要性は高まることが想定されるところである。
2.取組の方向性
一種指定設備や二種指定設備の卸役務は、近年、利用が拡大する中で、料金
や条件の適正性・公平性等を確保する必要性も高まっているが、現時点では、上
記検証において大きな問題が確認されていない中で、利用者のニーズに応じて
柔軟かつ多様な提供を認めることが事業者間競争の活性化に資すること等に鑑
みると、引き続き、約款規制は課さずに、相対契約を基本とすることが適当である。
81
しかし、一種指定事業者や二種指定事業者の交渉力の優位性等に鑑みると、
卸役務の適正性等の確保は厳格に検証することが必要であるため、総務省にお
いて、引き続き事業者間協議の状況を注視しつつ、以下の検証等を行った上で、
卸役務の適正性等に課題が生じていると認められる場合は、卸役務に関するルー
ルの在り方を適時適切に検討することが適当である。
① 卸検証ガイドラインに基づくNTT東西の光回線の卸料金やMNO3社(NTT
ドコモ、KDDI、ソフトバンク)のモバイル音声卸の検証
② 事業者間協議の円滑化に資する事項(卸料金の算定方法等)の提示義務
など、特定卸役務の制度に関連する事項の検証
また、中長期的には、ネットワークの仮想化・クラウド化等の進展により、物理的
な接続点が存在しない形での他者設備の利用が拡大することも想定されるところ、
この場合には、物理的な接続点の存在を前提とする「接続」は利用できず、「卸役
務」しか利用できないことになるため、総務省において、今後のネットワークの利用
環境の変化等を注視しつつ、接続と卸役務の二つの区分を設けることの妥当性を
含め、ネットワークの開放ルールの在り方を適時適切に検討することが適当である。
82
第3節 5Gにおけるネットワーク開放の在り方
1.現状と課題
5Gは、4Gを発展させた「超高速」だけでなく、遠隔からもロボットの操作等をス
ムーズにできる「超低遅延」、多数の機器を同時にネットワークに繋げる「同時多
数接続」といった特徴を有し、あらゆる「ヒト」や「モノ」が繫がるデジタル社会を支
える基幹的なインフラとしての役割が期待されている。
特に5G(SA方式)は、5G専用のコア網により5Gの基地局を動作させる方式で
あり、上記3つの特徴全てに対応可能であるほか、サービスに応じて仮想的にネ
ットワークを分割するネットワークスライシング等の導入によって、自動運転やロボ
ットの遠隔操作等に必要なネットワークの柔軟な提供を可能とするものである。
5G(SA方式)は、2022年2月までにMNO3社(NTTドコモ、KDDI、ソフトバンク)
がサービス提供を開始しており、MVNOも同時期に同等の形で提供できるようにす
ることが公正競争上必要なところ、現在事業者間で、5G(SA方式)の主な開放形態
である以下の4種類について協議が行われており、その状況は、総務省の「接続料
の算定等に関する研究会」で定期的に確認しているところである。
① L3接続相当(サービス卸)
② L2接続相当
③ ライトVMNO 37(スライス卸/API開放)
④ フルVMNO(RANシェアリング。コアネットワーク構築による機能開放)
①は開放済で、③・④は5G(SA方式)の特徴を活かしたサービス提供を可能と
する利用形態であるが、MVNOの多くは「②L2接続相当」の機能開放を希望して
おり、②は技術条件等について国際標準化が未完了であること等から、MNOとの
具体的な検討・協議が停滞している状況にある。
2.取組の方向性
5G(SA方式)の機能開放に当たっては、MNO側の技術的な対応可能性と
MVNO側のサービスニーズ等を踏まえつつ、技術的発展性があり、柔軟なサービ
スが提供できるようにすること、また、MVNOがMNOと同時期に同等のサービスが
提供できるようにすること等を確保することが重要である。
37
Virtual Mobile Network Operator。なお、「③ライトVMNO」及び「④フルVMNO」については、ITU(国際電気通信
連合) のITU-T(電気通信標準化部門)の技術報告書「 MVNOを考慮した5G関連政策( 5G related policy
considering MVNOs)」(2024年7月)において言及されている。https://www.itu.int/pub/T-TUT-IMT-2024-1
83
まず、「③ライトVMNO」や「④フルVMNO」は、4Gにはなかった形態であり、ま
た、スライシング等により5G(SA方式)ならではのサービスの実現を可能とするも
のであること等に鑑みると、MNOにおいては、MVNOの具体的な要望を踏まえて
技術的条件等の実現可能性の検討を行うことが適当である。
この際、スライシング技術に関する国際標準化の動向やAPI開発の状況を勘案
しながらMVNO側の検討期間を考慮した情報提供を行うなど、MNOからMVNOへ
の情報提供を充実させるとともに、MVNOが実現したいサービス提供イメージを具
体化できるよう、事業者間で基本的な意識合わせを進めることが適当である。
次に、「②L2接続相当」は、これと同等の仕組みである国際ローミングの標準化
が未完了であること等から具体的な検討・協議が停滞しているところ、2024年6月
に国際標準化が確定した 38ことから、MNOにおいては、速やかに協議を進展させ
ることが適当である。
以上のとおり、今後も事業者間で精力的に協議を行うことが適当であるが、そ
の際、MVNOにおいては、5G(SA方式)の機能開放により実現したいサービスの
明確化を行い、MNO・MVNO双方で相互理解を深めるように努めるとともに、
MNOにおいて料金等の提供条件に関して必要な情報提供を適切に行うことにより、
MNOとMVNOが同時期にサービス提供を開始できるようにすることが適当である。
総務省においては、「接続料の算定等に関する研究会」の場などで、事業者間
協議が適切に行われているか否か等について、引き続き注視し、必要に応じて
適切な対応を検討することが適当である。
38
3GPP Release 18(2024年6月)
84
第4節 禁止行為規制の在り方
1.現状と課題
市場支配的事業者(以下の①・②)は、その市場支配力を濫用した場合の弊
害が大きいことから、他事業者との間に不当な競争を引き起こすおそれのある行
為を類型化してあらかじめ禁止する「禁止行為規制」が課されており、その一つが、
接続関連情報の目的外利用・提供の禁止である。
① 固定通信市場:一種指定事業者である「NTT東西」
② 移動通信市場:二種指定事業者のうち一定の収益シェアを有する者であ
る「NTTドコモ」
この規制は、市場支配的事業者は、多くの事業者から接続を求められ、接続
の業務を通じて他事業者の営業上重要な情報を多く知り得る立場にあるため、情
報の目的外利用・提供を行いやすいこと、そしてひとたびそれが行われた場合、
他事業者に対抗したサービスの提供や他事業者の利用者の奪取等、不当な競
争が引き起こされる蓋然性が高いことを理由に設けられたものである。
近年、ネットワークの利用形態として、接続に加えて卸役務の利用が拡大して
いるところ、禁止行為規制として、市場支配的事業者に目的外利用・提供が禁止
される情報には、卸役務に関する情報は含まれていないところである。
また、移動通信市場の禁止行為規制は、上記のとおり、NTTドコモのみが規制
対象となっているところ、MNOはMVNOへの競争優位性が高いこと、NTTドコモ
のシェアが低下し大手3社間では差異がなくなっていること等から、NTTドコモに
加えて、KDDI、ソフトバンク等も対象とすべきとの意見も示されているところである。
2.取組の方向性
(1) 目的外利用等の禁止対象への卸役務に関する情報の追加
近年、卸役務は、NTT東西による光回線の卸売サービスやMNOによる
MVNOへの卸提供等により、その利用が拡大しているところ、市場支配的事業
者は、多くの事業者から卸役務の提供を求められ、卸役務の提供の業務を通
じて他事業者の営業上の重要な情報を多く知り得る立場にあるのは、接続の
場合と同様である。
そして、市場支配的事業者が卸役務に関する情報を目的外利用・提供をした
場合に他事業者との間で不当な競争が引き起こされる蓋然性が高い点も接続関
85
連情報の場合と何ら変わりはないことから、市場支配的事業者による目的外利
用・提供を禁止する情報に、卸役務に関する情報を追加することが適当である。
(2) 移動通信分野における禁止行為規制の対象事業者
移動通信分野における禁止行為規制の対象事業者の指定は、収益シェアが
25%超の者について、収益シェアの推移や順位、競争事業者との収益シェアの
格差及びこれらの変化の程度等を勘案して行われることとされており、例えば、
一定期間継続して40%を超える高い収益シェアを有する者は、市場支配力が
推定されることから、特段の事情がない限り、指定されることになっている 39。
NTTドコモについては、収益シェア(1位)が一定期間継続して40%を超えて
いること、収益シェアが2位以下の者との間で一定の格差があること、また、モ
バイル市場の競争では、NTT東西による光回線の卸売サービスを利用した
FTTHとのセット販売が重要となる中で、NTTドコモはNTT東西と同一グループ
に属していること等に鑑みると、禁止行為規制の対象として、NTTドコモのみが
指定されていることには合理性があると考えられる。
ただし、大手3社間のシェアの差異は以前に比べると少なくなっていること、
MVNOとの関係では、有限希少な電波の割当てを受けたMNOの競争優位性
は高いこと等に鑑みると、NTTドコモ以外のMNOが適正な競争関係を阻害す
る行為を行った場合の競争上の弊害は大きいと考えられるため、移動通信分
野における禁止行為規制の対象事業者については、今後のMNOの収益シェ
アの推移、モバイル市場の競争状況等を注視しつつ、引き続き検討を行うこと
が適当である。
39
「電気通信事業法第30条第1項及び第3項第2号の規定による電気通信事業者の指定に当たっての基本的考
え方」(2023年改定)
86
第6章 線路敷設基盤の開放の促進等の在り方
第1節 線路敷設基盤の開放の促進の在り方
1.現状と課題
電柱・管路等の線路敷設基盤は、電気通信設備の設置に不可欠であることか
ら、回線設置事業者の参入や事業の円滑化により設備競争を促進し、「ネットワ
ークの高度化」や「サービスの多様化・高度化、低廉化」を図るためには、線路敷
設基盤の開放を図り、その公平な利用を確保することが重要となる。
このため、「公益事業者の電柱・管路等使用に関するガイドライン」では、公益
事業特権(他人の土地等の使用権について簡易な手続で設定を受ける権利等)
が付与された認定電気通信事業者(次節参照)が、他者の線路敷設基盤を使用
する場合の使用手続、使用拒否事由、使用期間や使用の対価等に関する事項
を定めることによって、線路敷設基盤の開放を図っているところである 40。
しかし、NTT東西の電柱等について、NTT東西の自己利用と他者利用との間
でリードタイムに差があるなど、利用の同等性確保に懸念を示す意見があったこ
と等を踏まえ、線路敷設基盤の開放の在り方について検討するものである。
2.取組の方向性
「公益事業者の電柱・管路等使用に関するガイドライン」では、自己の事業等に
支障がない限り、公平かつ公正な条件で提供する「公平性の原則」や資本関係等
により差別的取扱いをしない「無差別の原則」が規定されているが、これらは、線路
敷設基盤の保有者に対し、他者利用間での公平性の確保は求めていても、自己
利用と他者利用との間の同等性の確保まで求めているかは必ずしも明確ではない。
NTT東西以外の電気通信事業者は、全国規模の線路敷設基盤を有しておら
ず、NTT東西の線路敷設基盤の利用が不可欠である中で、利用の同等性が確
保されない場合は公正競争に支障が生じるおそれがあり、また、現にNTT東西の
自己利用と他者利用との間でリードタイムに差があるとの意見が示されていること
等に鑑みると、総務省において、以下の対応を行うことが適当である。
① NTT東西の線路敷設基盤について、自己利用と他者利用との間で同等性
40
「公益事業者の電柱・管路等使用に関するガイドライン」は、電気通信事業法第128条第1項に規定
する認定電気通信事業者の公益事業特権の設定に関する協議の認可・裁定の運用基準として機能
するものである。
87
が確保されていないと考えられる事例の実態(当該事例の有無や内容等)を
検証すること
② その検証の結果、必要と認められる場合は、「公益事業者の電柱・管路等
使用に関するガイドライン」の見直しを含めて、必要な措置を講ずること
88
第2節 インフラシェアリング事業の促進の在り方
1.現状と課題
利用者宅までの光ファイバ等の敷設が必要なブロードバンドや、多数の基地局の
設置が必要な移動通信サービスなど、回線設置事業は、事業の特性上、長大な線
路や多数の鉄塔等の設置が必要不可欠であり、これらが迅速に設置できなければ、
その上に回線設備も迅速に設置できず、サービス提供の遅れに繋がることになる。
このため、回線設置事業を営み、又は営もうとする者のうち総務大臣の認定を
受けた者(認定電気通信事業者)は、土地収用法の手続よりも簡易な手続で、他
人の土地等の使用権の設定等を受ける権利(公益事業特権)の付与を受けること
ができることとされているが、この公益事業特権は、鉄塔等を自社の回線設置事
業用に設置する場合を前提に設けられているところである。
近年、不採算地域等の効率的なカバーを図るため、MNOが、自社で鉄塔等を
設置するのではなく、他者の鉄塔等の利用・共用を行うインフラシェアリングが拡
大しており、インフラシェアリング事業を行うJTOWERが、2022年から2023年にか
けて、NTTドコモから約7,600本の鉄塔を取得するなど、MNOでない者がMNO向
けに行うインフラシェアリング事業が活発化している。
このような中、インフラシェアリング事業を行う者から、鉄塔等を他者の回線設置事
業用に設置する場合には、公益事業特権の付与を受けられず、そのような場合にも、
公益事業特権の付与が受けられるようにすることを求める意見が示されていること等
を踏まえ、インフラシェアリング事業の促進の在り方について検討するものである。
2.取組の方向性
携帯電話等の移動通信サービスでは、広大な地域に相当多数の基地局の設
置が必要であり、特に5G導入の際には基地局の小セル化や多セル化が必要とな
ることから、不採算地域を含めて効率的に基地局を設置しエリアカバーを図るた
めには、他者保有の鉄塔等のインフラシェアリングを促進することが重要となる。
そのためには、他者用の鉄塔等の設置を円滑化することが重要となり、その際、
土地等の所有者の私権の制限との関係に留意する必要はあるものの、以下の点
等に鑑みると、他者用鉄塔等のインフラシェアリング事業者(鉄塔等を設置し他者
の回線設置事業の用に供する事業を行う者)にも、認定電気通信事業者と同様
の公益事業特権を付与することが適当である。
・ 認定電気通信事業者の公益事業特権は、回線設置事業に公益性(事業の
89
公益性)があり、かつ、事業の特性上、線路敷設基盤の敷設等に関し他人
の土地等の使用を制限する必要があること(特権の必要性)等に鑑み付与さ
れるものであること
・ この点、他者用鉄塔等のインフラシェアリング事業であっても、その鉄塔等が
回線設置事業に利用されるのであれば、事業の公益性や特権の必要性は
同等と考えられること
ただし、他者用鉄塔等のインフラシェアリングについては、鉄塔等の設置者と
利用者が異なり、設置者はその鉄塔等を用いて回線設置事業を行わないこと、
土地等に係る私権の制限は回線設置事業に使用される場合に限り許容されるこ
と等に鑑みると、他者用鉄塔等のインフラシェアリング事業者に公益事業特権を
付与する場合は、以下の要件等を課すことが適当である。
① 当該他者用鉄塔等が、回線設置事業に利用されることを担保すること
② 回線設置事業者が、当該他者用鉄塔等を利用する場合の適正性や公平
性、安定性等を担保すること
また、他者用鉄塔等のインフラシェアリング事業は、線路敷設基盤のみを提供
する事業であるため電気通信事業には該当しないところ、線路敷設基盤は通信サ
ービスの安定的な提供に重要な役割を果たすこと等に鑑みると、当該事業に関す
る制度の在り方については、総務省において、今後のインフラシェアリングの進展
状況や諸外国の動向等を踏まえつつ、適時適切に検討することが適当である。
90
第7章 市場環境の変化を踏まえた電気通信事業に関する制度の在り方
第1節 電報事業の規律の在り方
1.現状と課題
国内電報及び国際電報は、電子メール等が普及し、電報の利用目的が一般
利用(緊急連絡)(1963年86%)から慶弔利用中心(2020年92%)に変化する中で、
大幅に利用が減少し、収支が悪化しており、
・ 国内電報については、利用通数がピーク時(1963年)の9,461万通から96%
減の377万通(2022年)となり、収支も2020年度に赤字に転落している。
・ また、国際電報については、その発着は1日1通程度(2023年度307通)で、
市場が縮小傾向(直近25年で1/350の通数に減少)にあるため、収支も悪化
傾向(直近12年間赤字が継続)にあり、現在、国際電報を提供していない国
も存在するなど、国際的にも縮小傾向にある。
電気通信事業法では、その制定時、電報事業が国民生活における最低限の
通信手段として全国あまねく確保されるべきものであったこと等を踏まえ、当分の
間、特例的に電報事業を電気通信事業とみなすこととし、現在も、NTT東西(国
内電報)とKDDI(国際電報)に対し、事業の休廃止に係る許可、業務区域の変更
許可、料金について契約約款の変更認可(総括原価制)等の規律を課している。
他方、現在は、複数の者が電報に類似したサービスを提供しており、この電報
類似サービスは、信書の送達が含まれるため、民間事業者による信書の送達に
関する法律(平成14年法律第99号)に基づき、特定信書便事業として、特定信書
便事業の許可、信書便約款の認可等が課されているところ、事業の休廃止は届
出制、料金は信書便約款の認可対象外であるなど、電気通信事業法の電報事業
の規律よりも緩和されたものとなっている。
近年、電報事業は、上述のように大幅に利用が減少し収支が悪化している中
で、NTT東西やKDDIから規律の見直しを求める要望が示されたこと等を踏まえ、
電報事業の規律の在り方について検討するものである。
2.取組の方向性
国内電報・国際電報は、利用が大幅に減少し、電子メールや電報類似サービ
スなど代替手段も普及している状況等に鑑みると、国民生活における最低限の
通信手段として全国あまねく確保する必要性は低下しているため、その観点から
91
設けられている電気通信事業法に基づく特別な規律(事業の休廃止や業務区域
の変更の許可、総括原価制に基づく料金認可等)を課す必要性も低下している。
このため、電報事業については、市場環境の変化に対応し、より柔軟な事業運
営を可能とする観点から、電気通信事業法に基づく特別な規律ではなく、他の電
報類似サービスと同様に、信書便法に基づく特定信書便事業の規律を課すこと
を基本とすることが適当である。
なお、電気通信事業法に基づく特別な規律を廃止した場合であっても、電報
事業は長年提供されてきたサービスであること等に鑑みると、NTT東西やKDDIに
おいては、電報事業に係る業務区域や料金・提供条件の変更等を行う場合は、
十分な期間を設けて利用者への事前周知を丁寧に行うなど、既存利用者の保護
を図るための措置を適切に講ずることが必要である。
92
第2節 メタル固定電話の料金規制の在り方
1.現状と課題
電気通信市場は、市場原理の下、事業者間競争を通じて料金の低廉化を図る
ことを基本としているが、電気通信事業法では、例外的に、一種指定設備を用い
るサービスのうち、代替的サービスが十分に提供されず、かつ、利用者利益に及
ぼす影響が大きいものは「特定電気通信役務」として、プライスキャップ規制(上限
価格方式)により料金水準の上限を規制することにより利用者保護を図っている。
NTT東西のメタル固定電話は、特定電気通信役務に該当し、プライスキャップ
規制が課されているところ、プライスキャップ規制は、2000年の制度導入以降、
2009年に専用役務を対象外とした以外に大きな見直しは行われておらず、総務
省の「上限価格方式の運用に関する研究会」の報告書(2024年3月)では、環境
変化を踏まえ、対象サービスについて制度の在り方も含めて根本的な見直しを行
う必要があるとされている。
2.取組の方向性
プライスキャップ規制の対象となる特定電気通信役務は、利用者の利益に及
ぼす影響が大きいサービスであるところ、NTT東西のメタル固定電話の契約数は、
6,285万(1998年)をピークに1,353万(2023年度末)まで減少し、今後、メタル回線
設備が2035年頃に縮退する見込みである中で、契約数は更なる減少が見込まれ
ることから、利用者利益への影響も更に低下していくことが見込まれている。
また、実際の料金は、プライスキャップ規制による料金水準の上限を大きく下回
る状況が相当期間継続し、当該規制が料金低廉化に実質的に機能しているとは
いえない状況にあり、また、メタル固定電話等の需要が減少する中で、料金水準
の上限設定に用いる生産性向上見込率の算定は限界にあるため、現行の仕組
みでの制度維持は困難になりつつあるとの指摘もされている。
以上を踏まえると、NTT東西のメタル固定電話は、特定電気通信役務の指定
対象から除外することで、プライスキャップ規制の対象外とすることが適当である。
なお、プライスキャップ規制は、ユニバーサルサービスとしてのメタル固定電話
の料金低廉性を確保する役割も果たしているため、上記見直しに合わせ、「Ⅱ.
ユニバーサルサービスの確保の在り方 第6章第1節2(2) ユニバーサルサービス
の料金の低廉性の確保(P49~50)」では、ユニバーサルサービスの料金の低廉性
確保に関し新たな規律を課すことが適当と整理したところである。
93
第3節 ネットワークの仮想化・クラウド化等の進展を踏まえた規律の在り方
1.現状と課題
電気通信事業法は、その規制対象となる電気通信事業について、「回線設備
の設置」の有無と「媒介(他人・他人間の通信を取り扱うこと)/用供(自己・他人間
の通信を取り扱うこと)」の別に応じて分類した上で、「回線設置・媒介」の電気通
信事業を中心とした規律の体系を構築している。
これは、電気通信事業法の制定時に主であったメタル固定電話が、「回線設置」
者の間で設備を相互接続し通信を「媒介」する形態で提供されるサービスであっ
たこと、また、固定電話以外に多様なサービスが提供されておらず、サービスに
着目した規律体系とする必要がなかったこと等に起因していると考えられる。
近年、回線設置事業は、その中心がメタル固定電話からブロードバンドやモバ
イル等に移行しサービスの多様化が進展するとともに、回線非設置事業は、これ
に多くが該当するネット関連サービスが急速に発展し国民生活や経済活動にお
ける重要性を高める中で、「回線設置・媒介」を中心とした規律の体系が引き続き
適切であるかについて検討することが必要となってきている。
また、電気通信事業法は、「設備」と「機能」の一致(その設備が提供する機能
はその設備が内蔵)を前提に、「自己設置」した設備が物理的に相互接続される
形態を中心に規律の体系が構築されており、例えば、接続ルールも、設備間の
「物理的」な接続を前提に構築され、技術基準等の設備規律も「自己設置」型を
中心に構築されている。
近年、接続や卸役務の利用拡大、インフラシェアリングの進展等により、他者
設備の利用が増加するとともに、仮想化した機能のクラウド化によって「設備」と
「機能」の分離が進展し、物理的接続点が存在しない形態での他者設備の利用
も増加が想定される中で、「設備」と「機能」の一致を前提に「自己設置」の形態を
中心とした規律の体系についても、引き続き適切であるかについて検討が必要と
なってきているところである。
2.取組の方向性
電気通信事業法の目的は、「電気通信事業の公共性に鑑み、その運営を適正
かつ合理的なものとするとともに、その公正な競争を促進することにより、電気通
信役務の円滑な提供を確保するとともにその利用者等の利益を保護し、もつて電
気通信の健全な発達及び国民の利便の確保を図り、公共の福祉を増進すること」
94
と規定されている。
現在の「回線設置/非設置」や「媒介/用供」などの電気通信事業を分類する概
念は、サービスやネットワーク等の実態に応じ、上記法目的を適切に達成するた
めに規制の対象や内容を定めるための手段であること等に鑑みると、電気通信
事業法の規律の体系を見直し、その対象となる電気通信事業や規制内容等の在
り方を検討する場合は、「公正競争の促進」だけでなく、
・ 本件諮問の対象であるユニバーサルサービスや経済安全保障
・ 料金・提供条件の適正性・公平性の確保や、契約締結過程(勧誘~契約締
結・解約)の適正性の確保等による利用者保護
・ 多様化・複雑化する通信事故や大規模災害等のリスクに対応したサービス
の安定的な提供の確保
など、法目的を構成する多岐にわたる観点から、時代に即した規律の体系の在り
方を検討することが必要になると考えられる。
ただし、規律の体系の見直しは、関係事業者や利用者に大きな影響を与える
こと、現時点では現行の体系が深刻な問題を顕在化させている状況にはないこと
等から、総務省においては、まずは今後のネットワーク環境や利用形態等の変化
を注視することが適当であるが、電気通信市場は技術革新のスピードが速く、そ
れを規律する電気通信事業法の果たすべき役割の重要性に鑑みると、必要な場
合には、時機を逸することなく、時代に即した規律の体系の在り方について慎重
かつ丁寧な検討を行うことが適当である。
なお、これまでも、例えば、SNSや検索サービスの国民生活や経済活動におけ
る重要性の高まり等を踏まえ、2022年の電気通信事業法改正により、非規制の
「回線非設置・用供」の類型に属していたこれらのサービスを電気通信事業法の
規制対象にするなど、時代に即した見直しが行われてきたところであり、総務省
においては、上記規律の体系の在り方の検討とは別に、時代に即して必要な見
直しが求められる事項については、適時適切に取り組むことが適当である。
95
Ⅳ.我が国の情報通信産業の国際競争力
強化の在り方
96
第1章 第一次答申に基づく対応
[第一次答申における「速やかに実施すべき事項」]
第一次答申では、我が国の国際競争力強化が喫緊の課題となっている状況を
踏まえ、特にNTT持株で研究開発を行うIOWN構想による「ゲームチェンジ」が実
現すれば、我が国の情報通信産業全体が国際競争力を飛躍的に高める契機に
なると期待されるため、その実現に向けた研究開発や機動的な事業運営等によ
るイノベーション促進を法制度面からも支援する観点から、
① NTTの研究の推進責務及び研究成果の普及責務の撤廃
② NTTの外国人役員規制の緩和
③ NTTの役員選解任の認可の緩和
④ NTTの剰余金処分の認可の撤廃
⑤ NTTの社名変更の可能化
について、「速やかに実施すべき事項」として提言したところであり、これらの事項
に関しては、2024年4月に成立・施行した改正NTT法により、必要な制度整備が行
われたところである。
総務省においては、第一次答申で示したとおり、研究の推進責務の撤廃後に
おけるNTTの基礎・基盤的研究の取組状況を継続的に検証していくことが適当で
あり、その結果、我が国の情報通信産業の研究開発力の確保に重大な支障が生
じるおそれがあると認められる場合には、必要な対応の検討が求められる。
[第一次答申における「今後更に検討を深めていくべき事項」]
第一次答申においては、我が国の情報通信産業の国際競争力強化を図る観
点から「今後更に検討を深めていくべき事項」として、「研究開発の推進」や「国際
展開の推進」を整理したところであり、以下第2章及び第3章において、これらの事
項等について、第一次答申後の議論を踏まえ、取組の方向性を整理する。
97
第2章 研究開発・国際標準化・社会実装・海外展開の総合的な推進等
1.現状と課題
世界のICT市場は、スマートフォンやクラウドサービスの普及などにより、2016年
以降拡大傾向で推移しており、2024年は支出額ベースで702.1兆円まで拡大 41す
るなど、引き続き成長が予測されている。
他方で、ICT分野の輸出入に着目した場合、我が国のデジタル収支の赤字額
は、2014年には2.1兆円であったのが、2023年には5.4兆円となり、過去10年間で2
倍以上に拡大している 42。これは、2023年の貿易収支における鉄鉱石等の原料品
(5.6兆円)と同程度であり、日本経済にとってもはや無視できない規模となってき
ている。デジタル収支の赤字は、クラウドサービスの利用拡大、ウェブサイト広告ビ
ジネス、OS等のライセンス料等に主に起因しており、コロナ禍を経て、今後、国内
のデジタルサービスの利用が進展するに従い、一層拡大することが懸念される。
また、世界的に技術革新が急速に進展する中で、競争力の源泉となる研究開
発については、以下のような課題が指摘されている。
・ 我が国企業の研究開発投資は、過去20年間の伸びが2倍程度と、主要国と
比べて伸び悩んでおり、研究開発投資効率も低迷していること
・ 情報通信分野においては、GAFAM 43 等の海外大手事業者と比較して、事
業構造の差異などはあるものの、国内大手通信事業者の研究開発費は、金
額及び対売上高比率の双方において大幅に低い状況にあること
今後、我が国企業による研究開発や、それに基づく新たな事業やサービスの
創出が低迷すれば、以上のような「国富の流出」の拡大が常態化するだけでなく、
我が国の経済・社会活動が、海外事業者が提供するサービス等に大きく依存す
ることとなり、経済安全保障上や競争上の問題も生じ得る。こうした事態を解消す
るためのICT分野における国際競争力の強化は、我が国にとっての喫緊の課題
であり、短期・中長期のそれぞれの視点に立ち、官民が戦略的に取り組んでいく
ことが求められる。
特にNTTについては、NTT持株で研究開発を行うIOWNの技術・サービスの展
開、世界第3位のデータセンター基盤の更なる拡張、スマートシティをはじめとし
41
総務省令和6年情報通信白書。
国際収支統計(日本銀行「時系列統計データ 検索サイト」)のサービス収支のうち、「コンピュータサービス」、
「著作権等使用料」及び「専門・経営コンサルティングサービス」の合計。
43
Google、Amazon、Facebook、Apple、Microsoft
42
98
たトータルソリューションサービスの展開等を中心に国際展開を積極的に進めて
いくとしている。
中でも、IOWN構想による「ゲームチェンジ」が実現すれば、我が国の情報通信産
業全体が国際競争力を飛躍的に高める契機になると期待されており、第1章で述べ
た制度整備の趣旨を踏まえ、その実現に向けた同社の事業戦略が注視されている。
また、近年のAIの爆発的な普及等に伴い、グローバル市場では、オール光ネッ
トワーク、オープンRAN、海底ケーブル、データセンター等のAI社会を支えるデジ
タルインフラの需要が増大している。諸外国では、官民一体となり、スケールメリット
を背景とする価格的競争力やファイナンス等を武器にして、情報通信分野におけ
る海外展開を急速に推進している国も存在する中、我が国も官民を挙げて海外展
開に取り組み、経済安全保障や次世代市場獲得の観点から重要な分野を中心に、
グローバルサウスを含む海外の旺盛な需要を取り込んでいく必要がある。
2.取組の方向性
(1) 出口を見据えた総合的な取組
上記1.で述べたとおり、我が国の情報通信産業全体の国際競争力強化に
おいて、NTTが担う役割は大きく、特に、IOWN構想では、光技術をベースとし
たネットワーク・情報処理基盤(端末を含む。)の大容量、低遅延、低消費電力
を実現するIOWNを活用し、世界に先駆けて爆発的な情報量への対応と電力
効率の向上の両立を可能とする新たな技術を導入・転換することで、「ゲーム
チェンジ」を図ることが目指されている。
情報通信審議会では、IOWN構想の中核である光技術をベースとしたネット
ワーク(オール光ネットワーク)を含む次世代情報通信基盤Beyond 5Gの実現
に向けた新たな戦略の在り方を2024年6月に取りまとめている(「Beyond 5Gに
向けた情報通信技術戦略の在り方」(2024年6月18日最終答申))。
同最終答申で述べたとおり、我が国の情報通信産業が、これまで「技術で勝
てても商売で勝てない」という状況にあるという問題意識の下、研究開発、国際
標準化、社会実装・海外展開等に関する各種取組を有機的に連携させつつ、
総合的に取り組む姿勢が不可欠である。具体的には、民間企業においては、
経営層のコミットメントや部門を跨がって指揮・調整を図ることのできる司令塔
的な機能の下、市場状況や顧客ニーズを適時適切に把握し、事業化への道
筋を明確にした上で、取組を進めていくことが必要である。
さらに、NTTにおいては、2024年4月に成立・施行された、同社の研究の推
99
進責務等の撤廃や外国人役員規制の緩和等を含む改正NTT法を踏まえ、い
かに、IOWN構想に基づく製品やサービスを国内外に普及・定着させ、同社を
含む関連事業者がビジネスとして成功させていくかといった出口を見据えた上
で、取組を一層加速していくことが強く期待される。
また、同最終答申のとおり、政府の役割としては、こうした民間企業による本
気の取組を、我が国の国際競争力強化・経済安全保障の確保に向けた「期待
の星」として位置付け、その研究開発、国際標準化、社会実装・海外展開に向
けて、政府全体の戦略や他省庁の施策と連携しつつ、総合的かつ連動した形
で支援に取り組むべきである。
(2) 研究開発及び国際標準化に関する取組
研究開発及び国際標準化については、総務省においては、既に、革新的
情報通信技術(Beyond 5G(6G))基金事業 44を通じて、民間事業者に対して積
極的に支援してきているところであり、引き続き、我が国の国際競争力強化・経
済安全保障の確保に向け、こうした先進的技術について、社会実装・海外展
開を見据えて覚悟を持って取り組む民間事業者の後押しをしていくとともに、
中長期的・継続的にイノベーションを創出していくために不可欠な基礎的・基
盤的な研究力の維持・強化を図っていくことが必要である。
この点、情報通信研究機構(NICT)は、我が国唯一の情報通信分野を専門
とする国立研究開発法人として、NTTと相互に補完し合いつつ、基礎的・基盤
的な研究や産学官連携の中核を担っているところである。また、こうしたNICT
の研究機能等に加え、革新的情報通信技術(Beyond 5G(6G))基金事業に代
表されるように、民間事業者や大学等、外部への資金供給機能も整えられてき
たところである。改正NTT法によりNTTの研究の推進責務等が撤廃されたこと
を踏まえれば、今後、NICTが、情報通信分野における産学官の取組の中核と
しての役割を一層果たしていくことが期待されることから、NICTの第6期中長期
目標(2026年4月~)の策定に向けて、重点的に研究開発に取り組むべき技術
領域や社会実装機能・外部連携機能の強化策等について、戦略的に検討を
深めていくべきである。
(3) 社会実装及び海外展開に関する取組
(2)で述べた研究開発の成果をビジネスとして成立させ、社会実装・海外展
44
2024年度当初予算までの予算額(合計)は、1161.4億円(2022年度補正:662億円、2023年度当初予算:150億
円、2023年度補正予算:190億円、2024年度当初予算:159.4億円)
100
開を進めるためには、民間事業者においては、潜在的なユーザを発掘し、これ
らとともにユーザ価値を起点とした実証等を行うことで、新たなビジネスモデル
を提供側とユーザ側が共に創りあげていく取組を強化することが求められる。
総務省においては、こうした民間事業者の取組を後押しすべく、オール光ネ
ットワークについて、開発成果の確認・検証、相互接続性の検証、ユースケー
ス開発等を実施することのできる実証基盤環境の整備に着手したところであり、
引き続き整備を着実に進めるとともに、順次運用を開始及び機能を拡張しつつ、
国内の通信事業者や大手通信機器ベンダーに加えて、ベンチャーやスタート
アップ、アカデミア、海外事業者等、多様な関係者に対して積極的に参画を呼
びかけていくことが重要である。
また、データセンターや海底ケーブル等のデジタルインフラの整備に当たっ
ては、強靭化、電力の安定供給・脱炭素化の実現及び地方創生のため、東京
圏・大阪圏への集中から、地域分散を進めるとともに、我が国の国際的なデー
タ流通のハブとしての機能強化に向けた取組を促進する必要がある。オール
光ネットワークは、その低遅延性等により、デジタルインフラ立地制約(通信遅
延に由来する需要地からの距離)の緩和を可能とするため、デジタルインフラ
整備の一環として、データセンターや海底ケーブル等とともに、官民の連携・協
調により、必要な政策的支援を通じて整備を推進することが重要である。
海外展開については、海外市場の獲得に向けた中長期的な戦略を共有し
ながら、官民が緊密に連携して取り組むことが必要である。当面は、既に商用
化された製品・システムの展開を通じて、将来的なオール光ネットワーク等の
Beyond 5G関連製品・システムの展開に向けた我が国事業者にとって海外市
場獲得の足掛かりとなるような実績をあげることが重要であり、総務省において
も、事業者のニーズに対応して、従来よりも大規模なプロジェクト支援を行い得
る環境を整備することが必要である。
また、株式会社海外通信・放送・郵便事業支援機構(JICT)においても、適
切なリスク管理を図り、財務の健全性や一定の収益性を確保しつつ、上記のよ
うな支援とも連携して、経済安全保障や次世代市場の獲得等の観点から重要
なデジタルインフラの海外展開に対して、積極的に支援していくことが必要で
ある。
さらに、情報通信分野における技術革新に伴う環境の変化や他分野との融
合の進展等を踏まえると、引き続き、関係省庁・関係機関との連携を強化しつ
つ、官民を挙げて海外展開に関する取組を推進することが重要である。
101
第3章 外国法人等が電気通信事業を営む場合の法執行の実効性強化等
1.現状と課題
外国法人等が提供するプラットフォームサービス等の利用が拡大する中、外国
法人等に対する電気通信事業法の執行の実効性を確保し、利用者保護を図る
観点から、2020年に電気通信事業法を改正し、外国法人等に対し、電気通信事
業の登録・届出の際に国内における代表者又は代理人(国内代表者等)を指定す
る義務を課すとともに、同法に違反した場合の公表制度を整備したところである。
これらの制度の施行に当たり、電気通信事業法の外国法人等への適用に関す
る判断基準を示した考え方 45 を公表したほか、「電気通信事業参入マニュアル」
等の拡充・更新により制度の周知に努めるとともに、個別事業者への制度の説明
を行うこと等により、外国法人等への同法の適切な執行に努めてきたところである。
その結果、2024年6月末時点では、プラットフォームサービス等を提供する主
な外国法人等 46は届出等を行い、国内代表者等を指定しており 47、これらの国内
代表者等は、電気通信事業の変更届出、利用者情報の漏えいや電気通信事故
の報告等の電気通信事業法の手続について、総務省との間のコンタクトポイント
としての役割を果たしている。
なお、電気通信事業の登録及び届出に関し、電気通信事業法に違反した場
合の公表は、これまで行われたことがない(2024年6月末)。
以上を踏まえると、2020年の電気通信事業法の改正により導入した、外国法人
等に対する電気通信事業法の執行の実効性を確保するための措置は有効に機
能していると捉え得るが、運用面では以下の課題があると考えられる。
① 通信分野は技術革新のスピードが速く、新しい事業者やサービスが次々と
生じるため、それへの対応が迅速に図られないと、法執行が適切に確保でき
なくなるおそれがあること
② 電気通信事業法に違反した場合の公表制度は、対象者のレピュテーション
リスク(ネガティブな評判が拡散されることにより、企業経営にダメージが及ぶリ
45
「外国法人等が電気通信事業を営む場合における電気通信事業法の適用に関する考え方」(2021年2月)。
利用規約等において、日本の関連子会社が日本国内向けの全てのサービスを提供する場合、関連する日本法
人が届出等を行っている。
47
これには、サービスを展開する外国法人本体が届出を行う場合及びユーザとの利用規約等において日本国内
向けには日本の関連子会社が全ての電気通信役務を提供していると整理した上で日本の関連子会社が届出を
行う場合が含まれている。外国法人等が届出を行う場合に必要となる国内代表者等は、多くの場合、日本の関連
子会社及びその関係者が指定されているほか、弁護士が指定されている場合もある。
46
102
スク)に働きかけるものであり、一種の制裁としての性質を有することが否定で
きないところ、公表を行う基準となるガイドライン等がないこと
③ 電気通信事業法を執行する際、国内代表者等が指定されていても、国内に
拠点等が存在しない場合は、当該外国法人等からの情報提供が十分でなく、
モニタリングに支障が出る可能性があること
2.取組の方向性
技術革新等により新たな事業者が参入し新たなサービスが提供されることは利
用者利便の向上等の観点から望ましいが、他方、電気通信事業法が、執行される
べき事業者やサービスに執行されない場合、利用者情報の漏えいや電気通信事
故など利用者保護が損なわれる事態が懸念されるとともに、電気通信事業者間で
規制の適用に差異が生じ、イコールフッティングが図られなくなる事態も懸念される
ところである。
このため、総務省においては、電気通信市場の状況を引き続き注視し、必要な
事業者やサービスに対しては電気通信事業法の迅速な執行を図るとともに、「電
気通信事業参入マニュアル」等の継続的な拡充・更新等を行った上で、電気通
信事業を営み、又営もうとする外国法人等に対し、より分かりやすい制度の周知
を行うなど、電気通信事業法の遵守を図るための取組を行うことが適当である。
また、電気通信事業法に違反した場合の公表制度については、執行の透明性
向上を図る観点から、電気通信事業の登録又は届出を行うべき者が必要な手続
を行わない場合だけでなく、通信の秘密の侵害、利用者情報の漏えいや電気通
信事故の報告懈怠の場合など、事案ごとの性質を考慮して執行方法を検討する
ことが適当である。この点、今後、事案ごとに、本公表制度を適用する個別事例
が蓄積された際は、本公表制度の適用基準等を明らかにしたガイドラインの整備
に取り組むこと等が考えられる。
外国法人等のモニタリングについては、現時点では、外国法人等の国内代表
者等が、総務省と当該外国法人等との間のコンタクトポイントの機能を果たし、法
執行に関する適切な情報提供に寄与しているため、法執行上の大きな問題が生
じている状況にはないが、外国法人等との連携やモニタリングに関する課題は電
気通信事業法だけでなく、国内外の様々な法制度の執行において同様と考えられ
るため、外国法人等の適切なモニタリングを継続的に行う観点から、国内外の関係
省庁や関係者との意見交換等を含めて連携を密に行うこと等が重要と考えられる。
103
Ⅴ.経済安全保障の確保の在り方
104
第1章 外資等規制の現状と課題
1.外資等規制等の現状
(1) 外資等規制の現状
外資等規制は、対象者の経営から外国の影響力を排除する観点から設けら
れ、大別すると、株主総会の決議等での影響力に着目した「外資規制」と取締
役会の決議等での影響力に着目した「外国人役員規制」に分かれるところ、
「外資規制」は、更に「外資総量規制」と「個別投資審査」の二種類に分けられる。
「外資総量規制」は、他者の累積投資を含め、投資先会社の外国人議決権等
が一定割合に達する場合は、議決権取得を認めない形で機能し、「個別投資審
査」は、他者の投資とは無関係に、個々の投資の適否を審査するものである。
電気通信市場の外資等規制には、現在、NTT法の外資総量規制と外国人
役員規制、外為法の個別投資審査が存在している。
① 外資規制(NTT法の外資総量規制と外為法の個別投資審査)
NTT法の「外資総量規制」は、NTTの我が国を代表する基幹的電気通信
事業者としての役割、特に我が国の安全の確保に対する役割に鑑み、外国
の影響力に対する経営の自主性を確保するため、外国人等の議決権保有
割合が「3分の1以上」となることを禁止するものである。
これに対し、外為法の「個別投資審査」は、対外取引の正常な発展並びに我
が国又は国際社会の平和及び安全の維持を期すため、国の安全を損なうおそ
れ等のある「1%以上」の個々の株式取得等について事前届出により審査等を
行うものであり、電気通信事業は、外為法の規制対象業種の一つとなっている。
事業者で分類すると、NTT持株には、NTT法の「外資総量規制」と外為法
の「個別投資審査」の双方が課される一方、NTT持株以外の事業者には、
外為法の「個別投資審査」のみが課されている。
② 外国人役員規制
NTT持株とNTT東西には、NTT法により、外国人役員規制が課されており、
従来は、外国人役員が一切認められていなかったが、第一次答申を踏まえ、
2024年4月のNTT法改正により、「代表取締役への就任」と「役員の3分の1
以上を占めること」を禁止する規制に緩和された。
105
③ 電気通信事業法の外資等規制の撤廃と国際約束
電気通信事業法の制定時(1984年)は、旧第一種電気通信事業者(電気
通信回線設備を設置する電気通信事業者)には、外資規制(外国人等議決
権が「3分の1以上を占めること」を禁止)と外国人役員規制(外国人等が「代表取
締役への就任」と「役員の3分の1以上を占めること」を禁止)が課されていた。
その後、1994年に国際衛星通信事業者の外資等規制が廃止され、それ以
外の外資等規制も、1997年のWTO自由化約束を経て、1998年に廃止された
ため、現在、電気通信事業法の外資等規制は全廃されている状況にある。
これ以降も、我が国は、経済連携協定(EPA)や投資協定を締結し、これら国
際約束によって電気通信サービス貿易や電気通信サービスへの投資の自由
化を約束してきている。したがって、仮に電気通信事業者の外資等規制を復
活させる場合は、これら国際約束との関係が問題となり得る。なお、NTTの外
資等規制については、WTOのサービスの貿易に関する一般協定(GATS)の
約束表に我が国が留保する制限として記載され、その他の国際約束でも同旨
の留保を行っている。
④ 諸外国の外資等規制の状況
諸外国における通信事業に対する外資等規制は、通信関係法(特殊会
社法・通信法)による規制の有無など、国により様々であるが、例えば、オー
ストラリア、アメリカ、韓国、カナダでは、通信関係法の外資総量規制や外国
人役員規制(オーストラリア・カナダのみ)が存在する一方、イギリス、フランス、
ドイツでは、通信関係法の外資等規制は存在しない。
また、各国とも、我が国の外為法の個別投資審査に相当する規律は存在
し、近年、アメリカ、カナダ、イギリス、フランス、ドイツにおいて、審査対象の
拡大などの見直しを検討する動きがある。
(2) 外資等規制以外の関係制度の現状
通信分野の外資等規制は、通信サービスの国民生活や経済活動における
重要性等に鑑み、外国人等の株式取得や役員就任に関して一定の規律を設
け、対象会社の経営への外国の影響力を排除することにより、通信サービスの
安定的な提供の確保を図ろうとするものである。
しかし、通信サービスの安定的な提供の確保に懸念が生じるのは、外国人
等の株式取得や役員就任の場合に限られるものではないため、外資等規制に
106
加えて、そのような懸念が生じる個別の事態・行為に着目して必要な制度を整
備することが、通信サービスの安定的な提供を確保する観点から重要となる。
このような観点から、近年、経済安全保障推進法の制定や電気通信事業法
の改正など、外資等規制以外の制度の整備が行われているところである。
① 経済安全保障推進法による通信サービスの安定的な提供の確保
近年、サイバー攻撃等の脅威が増大し、通信サービスの安定的な提供を
確保するためには、電気通信設備が我が国の外部から行われる通信サービ
スの安定的な提供を妨害する行為の手段として利用されることを防止すること
が重要となっているところである。
同様の課題は、他の基幹インフラ事業者にも存在するため、2022年5月、
経済安全保障推進法が成立し、特定社会基盤事業とされる14の基幹インフ
ラ事業を行う特定社会基盤事業者が、重要設備の導入や重要な維持管理等
の委託をしようとする場合は、事前届出により審査を受ける制度が設けられた。
現在、経済安全保障推進法に基づき、NTT東西、NTTコミュニケーション
ズ、NTTドコモ、NTTリミテッド・ジャパン、KDDI、沖縄セルラー、ソフトバンク、
楽天モバイル、LINEヤフーの10社が特定社会基盤事業者に指定され、
2024年5月から、これらの者の重要設備の導入等について審査が開始され
たところである。
② 電気通信事業法による利用者情報の適正な取扱いの確保
電気通信事業は、隔地間で行う意思疎通の媒介等を行うという事業の特
性上、通信内容を含めて多くの利用者情報を取り扱うことになるところ、その
適正な取扱いを確保することは、利用者が安心して利用できる環境を実現し、
通信サービスの安定的な提供を確保するために重要となる。
このため、2022年の電気通信事業法の改正により、大規模な電気通信事
業者には、特定利用者情報(利用者を識別できる情報等)について情報取
扱方針の策定・公表義務を課し、外国に設置する設備に特定利用者情報を
保存する場合には、その国名やガバメントアクセス制度の有無等を記載させ
るなど、利用者情報の適正な取扱いの更なる確保を図ったところである。
2.外資等規制の課題
今後、AI・ロボット市場の拡大等により社会全体のデジタル化の更なる進展等
107
が見込まれる中で、通信サービスは、国民生活や経済活動を支える基盤かつ経
済成長のけん引役として果たすべき役割が飛躍的に高まっており、我が国の戦
略基盤産業に位置付けられるものである。
このように通信サービスの重要性が高まっている中で、外資等規制により外国
の影響力を経営から排除し通信サービスの安定的な提供を図る重要性も高まっ
ていること、また、国際情勢の複雑化等により、近年、国家・国民の安全を経済面
から確保するための取組を強化・推進することが重要となっていること等に鑑みる
と、外資等規制について、時代に即した在り方を検討することが必要となっている。
この際、外資規制は、会社による柔軟な資金調達や株主権、対日直接投資の
促進等に影響を与え、また、外国人役員規制は、人材確保面で経営に影響を与
えるおそれがあるなど、外資等規制には、事業活動や投資の自由等を制約する
面があること、そして、外資等規制を強化する場合は、国際約束との整合性を図
ることが必要となる点に留意することが必要である。
また、通信サービスの安定的な提供は、外国人等の株式取得や役員就任に着
目する外資等規制に加えて、設備の導入・維持管理に着目する経済安全保障推
進法の制定や利用者情報の取扱いに着目する電気通信事業法の改正など、関
連する制度の整備により多面的に確保を図っている状況にあり、これら制度との
関係を踏まえて検討することも必要となる。
経済安保WGは、上記のような認識の下、外資等規制の在り方について、以下
の項目に分けて検討を行ったところである。
① 外資総量規制の在り方
② 個別投資審査の在り方
③ 外国人役員規制の在り方
108
第2章 外資総量規制の在り方
第1節 NTTの外資総量規制
1.現状と課題
NTT持株には、外国人等の議決権保有割合が「3分の1以上」となることを禁止
する「外資総量規制」が課されている。これは、NTTの我が国を代表する基幹的
電気通信事業者としての役割、特に我が国の安全の確保に対する役割に鑑み、
外国の影響力に対して経営の自主性を確保することによって、通信サービスの安
定的な提供を確保しようとするものである。
NTT持株の外資総量規制は、2001年のNTT法改正(外国人等の保有を禁止す
る議決権割合を「5分の1以上」から「3分の1以上」に緩和)以来見直されていない
ところ、その後の市場環境の変化等を踏まえ、NTTは、以下の点等から、NTT持株
の外資総量規制を廃止し、個別投資審査を強化すべきとの意見を示している。
・ 電気通信事業の外資総量規制は、GATS(WTO協定)の趣旨も踏まえて世界
的に廃止するのが原則であり、個別投資審査を強化するのが潮流であること
・ 固定電話独占からモバイルやインターネット中心にシフトし、安全保障上、
線路敷設基盤だけでなく、データやモバイルの設備情報も重要な対象物と
なっており、NTTのみを特別に規制する合理性は失われていること
・ 外資総量規制は、日本として積極的に受け入れるべき投資も含めて制限して
しまう仕組みであり、NTTに対するマーケットから見た魅力が毀損されること
国際環境が複雑化し経済安全保障上のリスクが高まる中で、市場環境の変化等
に対応し、時代に即した外資総量規制の在り方を検討することが必要となっている
ところ、その際、モバイルを含めた通信サービスの重要性の高まり、その中でNTT
が果たすべき公共的役割、投資や事業活動の自由との関係など、多岐にわたる観
点からの検討が必要となるため、今回、NTT持株に対する外資総量規制について、
① NTT持株のみに課す必要性
② 事業活動や投資の自由とのバランスから見た妥当性
③ 個別投資審査による代替可能性
の3つの観点に分けてその在り方の検討を行うものである。
109
2.取組の方向性
(1) NTTに対する外資総量規制の必要性
現行の外資総量規制への見直しから約25年が経過し、その間、通信サービ
スの中心は、固定電話からブロードバンドやモバイル等に変化しているが、以
下のとおり、NTT東西の「線路敷設基盤」と「電気通信設備」は、これらのサービ
スを含めて、我が国の通信インフラ全体を支える公共的な役割を担っている点
に変わりはないところである。
① NTT東西の「線路敷設基盤」は、電電公社から承継した全国規模の基盤
であり、他事業者による同規模の基盤の構築は事実上不可能なこと等に
鑑みると、全国津々浦々の利用者との間に「電気通信設備」を設置する上
で特別な役割を担っていること
② NTT東西の「電気通信設備」は、メタル回線で約93%、光ファイバで約
73%の回線シェアとなっており、多額の設備投資を行い電気通信設備を
設置できる者が限られる中で、他事業者によるFTTHの提供や、携帯電話
のエントランス回線(局舎と基地局との間の回線)にも利用されるなど、固
定通信・移動通信双方のサービスの提供を支える基盤となっていること
そして、通信インフラは、DX・GX化等により社会全体のデジタル化が進展す
る中で、国民生活や経済活動の神経網として重要性が更に高まっていること、
また、経済安全保障上のリスクの高まりに対応した取組の強化・推進が重要と
なっていること等を踏まえると、これまで以上に通信サービスの安定的な提供を
確保する重要性も高まっているところである。
このような中、NTT東西の線路敷設基盤や電気通信設備は、我が国の通信
インフラ全体を支える公共的な役割を担い、NTTの経営から外国の影響力を
排除することは、NTTだけでなく我が国の通信事業者全体の通信サービスの
安定的な提供を確保する上で重要であること等に鑑みれば、NTT持株に対し
て外資総量規制を引き続き課す必要性があると認められる。
なお、世界的に経済安全保障の重要性が高まる近年において、諸外国で、
自由化の例外として留保した外資総量規制について、廃止の動きは見られず、
引き続き維持されているところである。
(2) 事業活動・投資の自由とのバランスからみた外資総量規制の妥当性
上記のようにNTT持株に対する外資総量規制に必要性が認められる場合で
110
あっても、外資総量規制は、NTT持株の柔軟な資金調達や株主権等に影響を
与えるほか、「2030年に対日直接投資残高100兆円」を目標とする対日直接投
資促進政策に影響を与える可能性があることから、これらとのバランスを考慮し
た妥当性を有する制度であることも必要となる。
この点、NTT持株は、新株発行よりもむしろ自社株買いによる資本効率の向
上に取り組んでおり、また、以下の点等から、外資総量規制により積極的に受け
入れるべき投資が制限されているとまではいえないこと等から、事業活動や投
資の自由、対日直接投資促進政策とのバランスにおいて問題が生じているとは
認められず、外資総量規制を引き続き課す妥当性があると認められる。
・ NTT持株の外国人等の議決権割合は、近年は20%台前半で推移し外資
総量規制の閾値(3分の1)を大きく下回っている状況にあるため、外国人
等による株式取得に支障が生じていると認められないこと
・ 仮に外国人等の議決権割合が閾値に達した場合でも、外国人等による株
式取得は可能であり、その場合は株主名簿に記載されず議決権は制限さ
れるものの、利益配当は制限されないため、リターンを目的とする株式取
得には支障が生じないこと
・ 投資家から、外資総量規制を撤廃すべきとの特段の要望はないこと
(3) 個別投資審査の強化による外資総量規制の代替性
NTT持株については、これまでNTT法の外資総量規制と外為法の個別投資
審査が相まって外国の影響力の排除を図ってきたところ、外資総量規制は、閾
値を超える場合は投資の適・不適を問わず例外なく制限することから、対日直
接投資を促進しつつ不適切な投資のみを防止するためには、外資総量規制を
廃止し、個別投資審査の強化で代替することも考えられるところである。
しかし、NTT法の外資総量規制は、国籍要件を採用し、居住地が国外か否
かを問わず外国人による投資は全て対象とするところ、外為法の個別投資審
査は、居住要件を採用し、日本に居住する外国人による投資は対象外となる
ため、両法の規制対象は異なり、外為法の個別投資審査により、NTT法の外
資総量規制を代替することは困難と考えられる。
加えて、以下のとおり、外為法とNTT法は、目的と手段に差異がある中で、こ
れまで両法が相まって有効に機能してきたこと、近年、経済安全保障上のリス
クが高まる中で、通信サービスの安定的提供を損なうおそれがある見直しはで
きる限り避けるべきであること等から、引き続き外為法の個別投資審査とNTT法
111
の外資総量規制が相まって、外国の影響力排除を図ることが適当である。
・ 外為法は、国の安全を損なうおそれ等のある投資を個別審査するため、
NTT法の外資総量規制の閾値(3分の1)に達していない場合でも、不適
切な投資を個別に防止することができること
・ NTT法は、通信サービスの安定的な提供を確保するために、外国人等に
よる閾値以上の議決権取得を例外なく禁止するものであり、これによって、
株主総会の特別決議を否決可能な影響力の行使を確実に防止すること
ができること
(4) まとめ
以上のように、NTT持株に対する外資総量規制は、その必要性や妥当性が
認められること、外為法の個別投資審査による代替も困難であること等に鑑み
れば、維持することが適当である。なお、その在り方については、個別投資審
査制度や外資等規制以外の制度の対応状況、今後の国際的な規制動向や安
全保障に係る状況等を踏まえつつ、不断の検討が必要である。
また、NTT持株の外資総量規制については、経済安全保障の重要性が高ま
る中でその実効性を確保することが重要となるため、電波法や放送法の外資
総量規制の例に倣い、その遵守状況等を定期的に確認する制度を導入するこ
とが適当である。
112
第2節 NTT以外の主要通信事業者に対する外資総量規制
1.現状と課題
電気通信事業法の制定時は、同法に基づき、旧第一種電気通信事業者(電
気通信回線設備を設置する電気通信事業者)に外資総量規制が課されていた
が、1997年のWTO自由化約束等を経て、1998年に同法の規制は全廃され、現
在、外資総量規制は、NTT法に基づきNTT持株のみに課されている状況にある。
1998年当時と比べて、通信サービスの中心は、固定電話からブロードバンドや
モバイル等に移行し、近年、経済安全保障上のリスクも高まる中で、NTTから、外
資規制の検討は、「①通信の安定的提供の確保」と「②通信事業者が保有・管理
する様々な情報の安全性確保」の両面を考慮すべきであり、以下の点等から、モ
バイル事業者にもNTTと同等の規制が必要との意見が示されている。
・ ①については、モバイル事業者のコアネットワークや基地局はモバイル事業
者自身が構築・保有しており、これら設備も安定的提供の確保が必要であること
・ ②については、約2.1億のモバイルユーザの顧客情報等の安全性確保が必
要であり、今後、IoT(Internet of Things)が更に進展することで、モバイルが
取り扱う重要データが更に増大すること
固定通信分野ではブロードバンドがユニバーサルサービス化され、モバイル分
野では、5Gがあらゆる「ヒト」や「モノ」を繫げるデジタル社会の基幹的なインフラと
しての役割が期待されるなど、安定的な提供を確保すべき通信サービスは多様
化しているため、外資総量規制のメリット・デメリット等を踏まえて、主要通信事業
者に対する外資総量規制の在り方について検討することが必要となっている。
2.取組の方向性
外資総量規制は、外国の影響力を経営から排除することにより通信サービスの
安定的な提供の確保を図るものであり、社会インフラとして通信サービスの重要
性が高まる一方、経済安全保障上のリスクも高まる現状等に鑑みれば、モバイル
事業等を行う主要通信事業者を外資総量規制の対象とすることも考えられる。
しかし、主要通信事業者のモバイルやブロードバンド等は、その提供をNTTの
線路敷設基盤と電気通信設備に大きく依存している状況にあり、NTTの線路敷
設基盤等は、我が国の通信インフラ全体を支える公共的な役割を担っていること
等に鑑みれば、NTTとそれ以外の主要通信事業者の間では外資総量規制の必
要性に差異があるところである。
113
また、主要通信事業者を外資総量規制の対象とすることについては、資金調達
面での経営への影響や株主権の侵害、対日直接投資促進政策の阻害が懸念さ
れるほか、新たな規制の導入となるため、他国で同様の規制の導入を招来し我が
国の通信事業者の海外展開を阻害する可能性があることに加え、以下の点から、
規制導入が実質的には困難となるおそれがある点に留意が必要である。
・ 既に我が国が約束している自由化の後退となるため、GATS等国際約束との
整合性の問題が生ずる可能性が高いこと
・ 仮に国際約束に新たな留保を付すには、他の締約国との必要な補償的調
整を含めて交渉を行う必要があるなどハードルが高いこと
さらに、近年、経済安全保障推進法の制定により、MNO4社を含む10の電気
通信事業者について重要設備の導入等を審査対象とし、サービスの安定的な提
供の確保を図るとともに、電気通信事業法の改正により、大規模事業者について
情報取扱方針の策定・公表制度等を設け、利用者情報の適正な取扱いを図るな
ど、外資総量規制以外の制度の整備が行われている点も踏まえる必要がある。
このように主要通信事業者に対する外資総量規制については、NTT持株とは必
要性に差異があり、導入に伴う様々な課題もあること、そのような中で経済安全保
障推進法など外資総量規制以外の制度の整備も行われていること等に鑑みれば、
その在り方は、それらの制度による対応状況や今後の国際的な規制動向等を踏ま
えつつ、慎重に検討することが適当である。
114
第3章 個別投資審査の在り方
1.現状と課題
現在、外為法に基づき、外国投資家が、電気通信事業を営む上場会社(子会
社が営む場合を含む。)の株式を1%以上取得する場合は、原則、事前届出が
必要とされ、国の安全を損なうおそれ等のある株式取得については、その変更又
は中止の勧告・命令等を行うことができることとされている。
外為法の事前届出には免除制度があり、いわゆる「コア業種」に該当する電気
通信事業については、10%未満の株式取得であれば、外国投資家自ら又はそ
の密接関係者が役員に就任しない等の一定の基準を遵守することを前提に、事
後報告で実施可能とされている。
このような中、NTTは、通信市場・技術の進展により、NTTのみを特別に規制す
る合理性は失われており、「通信の安定的提供の確保」と「通信事業者の保有・
管理する様々な情報の安全性の確保」の観点から、NTT以外の主要通信事業者
を含めて個別投資審査を強化すべきとした上で、以下の3案(①と②を組み合わ
せる案もあり)が考えられるのではないかとの意見を示したところである。
① 外為法において「コア of コア企業」の事前届出免除を撤廃
② 外為法の運用で外資総量が一定以上となる場合に厳しい投資スクリーニ
ングを実施
③ 電気通信事業法で外資総量が一定以上となる場合に公益審査を実施
国際情勢が複雑化し、経済安全保障上のリスクが高まる中で、2022年12月に
閣議決定された「国家安全保障戦略」では、投資審査の更なる強化について具
体的な検討を進めるとされており、特に通信サービスは、社会インフラかつ戦略
的基盤としての重要性が高まっていること等に鑑みれば、主要通信事業者を対
象とした個別投資審査の在り方について検討することが必要となっている。
2.取組の方向性
個別投資審査は、個別の投資ごとにその適否を判断するものであるため、外
資総量規制が閾値以上の投資を例外なく制限することに比べると、投資の自由
に一定程度配慮することによって対日直接投資を促進しつつ、通信サービスの
安定的な提供の確保等を図ることができる点において、その強化は、経済安全保
障のリスクの高まりに対応した有効な措置と考えられる。
115
他方、外資総量規制の場合、外国人等保有割合が閾値以上に達していても、
議決権を取得できないだけで株式取得は可能であるのに対し、個別投資審査は、
審査終了までは株式取得が認められない入口規制であり、国の安全を損なうお
それ等のある株式取得か否かの判断も裁量の余地があるため、投資家の投資判
断等に与える影響が相対的に大きく、資金調達面での経営への影響や対日直
接投資促進政策等との関係で丁寧な検討が必要と考えられる。
このような中、外為法については、例えば、投資家属性に照らして経済安全保
障上のリスクが類型的に低いとは認められない外国投資家が事前届出の免除制
度を利用できないようにする等、個別投資審査の制度見直しが検討されていると
ころ、このような取組は、純投資目的に配慮しつつ、経済安全保障上のリスクを排
除しようとするものと捉えられることから、国際約束との整合性が確保できるのであ
れば望ましいと考えられる。
このように、個別投資審査は、外資総量規制とは異なるメリットはあるものの、そ
の強化は、対日直接投資政策や国際約束との関係で課題があること等に鑑みる
と、主要通信事業者に対する個別投資審査の強化は、外為法における対応状況
や今後の国際的な規制動向等も踏まえつつ、引き続き検討することが適当である。
116
第4章 外国人役員規制の在り方
1.現状と課題
NTT持株とNTT東西には、我が国を代表する基幹的電気通信事業者としての
役割、特に我が国の安全の確保に対する役割に鑑み、外国の影響力から経営の
自主性を確保するため、NTT法において外国人役員規制が設けられている。
従来、NTT持株とNTT東西には、外国人役員(取締役・監査役)が一切認めら
れていなかったが、第一次答申において、以下の点等から規制緩和が適当とさ
れたことを踏まえ、2024年4月のNTT法改正により、「代表取締役への就任」と「役
員の3分の1以上を占めること」を禁止する規制に緩和されたところである。
・ 外国人役員を認めることは、グローバルかつ多様な観点での経営を可能とし、
国際展開の更なる強化に繫がること
・ また、一定割合までであれば、取締役会の議論を活性化させ、会社経営の
安定に資すること
他方、NTT以外の主要通信事業者については、電気通信事業法の制定当時
(1984年)は、旧第一種電気通信事業者に外国人役員規制(外国人等が「代表
取締役への就任」と「役員の3分の1以上を占めること」を禁止)が課されていたが、
1997年のWTO自由化約束を経て、1998年に全廃されている状況にある。
このような中、NTTは、外国人役員規制の緩和は機動的な経営に資するとする
一方で、外国人役員規制の在り方は、我が国の経済安全保障を確保する観点か
ら、主要通信事業者を対象に外資規制の議論を踏まえた上で検討すべきとの意
見を示しているところである。
2.取組の方向性
外国人役員規制は、取締役会の決議等での影響力に着目して経営から外国
の影響力の排除を図るものであるところ、外国人役員を一切認めないことはグロ
ーバルかつ多様な観点での経営を可能とする観点から適当ではない一方、一定
割合を超える場合は、外国の影響力排除との観点で懸念が生じるところである。
このような点を踏まえ、2024年4月のNTT法改正では、NTTの外国人役員規制
について、役員の3分の1以上を占めることは禁止するなど、外国の影響から経
営の自主性を確保するための最低限の規律に緩和したところであり、更なる規制
の見直しは、外国人役員の就任や国際展開の取組の状況など、今回の規制緩
117
和の効果・影響等を検証した上で、引き続き検討することが適当である。
また、NTT以外の主要通信事業者に外国人役員規制を導入することは、通信
サービスの安定的提供の確保に資する面はあるものの、NTTが我が国の通信イ
ンフラ全体を支える公共的な役割を担っている点等に鑑みれば、NTTと他の主
要通信事業者の間では外国人役員規制の必要性には差異があるところである。
さらに、NTT以外の主要通信事業者を外国人役員規制の対象とすることについ
ては、他国で同様の規制の導入を招来し我が国の通信事業者の海外展開を阻害
する懸念や人材確保面での経営への影響が生じる懸念があること等に加え、以下
の点から、規制導入が実質的には困難となるおそれがある点に留意が必要である。
・ 既に我が国が約束している自由化の後退となるため、GATS等国際約束との
整合性の問題が生ずる可能性が高いこと
・ 仮に国際約束に新たな留保を付すには、他の締約国との必要な補償的調
整を含めて交渉を行う必要があるなどハードルが高いこと
このようにNTT以外の主要通信事業者に対する外国人役員規制については、
NTTとは必要性に差異があり、導入に伴う様々な課題もあること、そのような中で経
済安全保障推進法など他の制度の整備も行われていること等に鑑みれば、その
在り方は、それらの制度による対応状況や今後の国際的な規制動向、更に外資規
制の検討状況等も踏まえつつ、慎重に検討することが適当である。
118
Ⅵ.NTTに関する規律の担保措置等の在り方
119
Ⅵ.NTTに関する規律の担保措置等の在り方
1.現状と課題
NTT法では、Ⅴで述べた外資総量規制や外国人役員規制に加えて、NTTの
業務や責務の適切な履行を担保するための措置(担保措置)や監督命令・罰則
を設けており、担保措置としては、
① 政府に対して、NTTの3分の1以上の株式の保有を義務付ける(政府の株
式保有義務)とともに、
② 定款変更、合併等、新株募集や事業計画等の認可制、財務諸表の提出
義務等を設けているところである。
各種担保措置は、NTTの業務や責務の適切な履行の確保に必要なものである
一方、NTTの自由な経営を制約する面もあり、その趣旨を損なわない範囲内で見
直すことは、経営の自由度を向上する観点から適当であるため、第一次答申では、
役員の選解任の認可の緩和、剰余金処分の認可の撤廃、外国人役員規制の緩
和を提言し、2024年のNTT法改正により、これらの措置が講じられたところである。
今回、ユニバーサルサービス、公正競争、国際競争力、経済安全保障の観点か
ら時代に即した通信政策の在り方を検討し、その中でNTTの業務や責務の在り方
を整理したため、その整理等を踏まえ、担保措置等の在り方を検討するものである。
2.取組の方向性
今回、NTT東西の本来業務について県域業務規制を緩和するものの、東日本・西
日本地域で地域電気通信業務を行う点は変わらず、NTT持株やNTT東西の目的・
業務には基本的に変更がないことから、NTTの業務等の適切な履行を担保する観
点で設けられている各種担保措置の必要性も基本的に変わりがないと考えられる。
各種担保措置の在り方については、以下のとおり、政府の株式保有義務と各種
認可事項等に分けて整理しているが、NTT持株や東西の業務等の在り方は、今後
の環境変化等を踏まえ引き続き検討することとしているため、各種担保措置等の
在り方についても、これらの検討に合わせて引き続き検討することが適当である。
(1) 政府の株式保有義務の在り方
政府の株式保有義務は、政府が安定株主となることで、特定の者による経営
の支配や株主権の濫用を回避し、NTTの経営の安定と適正な事業運営を確保
するためのものであり、以下の点等に鑑みれば、維持することが適当である。
120
① 前述のとおり、NTTの線路敷設基盤や電気通信設備は、我が国の通信
インフラ全体を支える公共的な役割を担っており、そのような役割を今後も
担い続けることが求められていること
② そのようなNTTの経営の安定と適正な事業運営を確保することは、NTTだ
けでなく、我が国の通信事業者全体の通信サービスの安定的な提供を確保
する上で重要であり、今回、外資総量規制を維持することとも整合的であること
③ ②の意義を上回る、政府の株式保有義務による具体的な弊害が示され
ていないこと
(2) 各種認可事項等の在り方
各種認可事項等のうち、定款変更、合併等、新株募集や事業計画等の認可
は、会社の組織・運営や事業遂行に関わる重要事項であることから、引き続き
維持することが適当である。ただし、NTT東西の合併等の認可については、以
下の点等に鑑み、小規模な非電気通信事業者との合併等を対象外とすること
が適当である。
・ 今回、NTT東西の活用業務を事後検証に見直し、より機動的な実施を可
能とするところ、合併等の認可は、他の会社との合併等により機動的に事
業の開始や拡大を図る場合の阻害要因となるおそれがあること
・ 合併等の認可は、NTT東西の本来業務や公正競争への支障を確認する
ためのものであり、小規模な非電気通信事業者との合併等であれば、公
正競争に影響せず、本来業務への支障も少ないと考えられること
また、財務諸表の提出義務は、NTTの事業が適確に行われているかを把握
するためのものであるが、財務諸表は公表資料が入手できることから、提出義務
は撤廃することが適当である。
(3) 法形式の在り方
NTTの目的・業務・責務や担保措置等は、現在NTT法に規定されているとこ
ろ、今回の見直しを踏まえて、これらを規定する法形式としては、①引き続き
NTT法に規定する案と、②電気通信事業法に規定し、結果としてNTT法を廃
止する案の2つが主に考えられる。①・②の特徴としては、
・ ①については、現在、NTT法に規定される規律が、今後も必要であれば、
121
引き続き同じNTT法で規定すべきとの考え方であり、現在のNTTに関する
規律の法体系を維持する点で自然であり、継続性・安定性があること
・ ②については、これまでのNTT法上の規律について、電気通信事業法に
移行するものであり、それが可能であれば、ユニバーサルサービスや公正
競争等に関する規律の一覧性の向上を図ることが可能であること
が挙げられること等を踏まえ、NTTに関する規律の法形式については、総務省
において、我が国の法体系との整合性など法技術的な面等にも留意した上で、
必要な規律を適切かつ確実に担保できる形式を検討することが適当である。
122
今後総務省において実施すべき事項
123
今後総務省において実施すべき事項
総務省においては、時代に即した制度の見直しを迅速に行うため、本答申で結論
が得られた下記事項について、速やかに制度整備を行うことが適当である。
1.ユニバーサルサービスの確保に関する事項
① 電話のユニバーサルサービスについて、NTT東西のワイヤレス固定電話の
地域限定を緩和するとともに、モバイル網固定電話を追加する。
② ブロードバンドのユニバーサルサービスについて、未整備地域等に限定し
て、ワイヤレス固定ブロードバンド(共用型)を追加する。
③ 電話のあまねく普及責務は、最終保障提供責務に見直す。この際、メタル固
定電話の利用者の残存区域では、NTT東西の業務区域の縮小は制限する。
※ メタル回線設備については、NTTが移行計画を策定し、総務省で検証
④ ブロードバンドについて、最終保障提供責務を新設する。
⑤ 第一種適格電気通信事業者(電話)と第二種適格電気通信事業者(ブロー
ドバンド)の義務は、最終保障提供責務に見直す。
⑥ 最終保障提供責務を担う者は、適格電気通信事業者がいる地域では適格
電気通信事業者とし、適格電気通信事業者がいない地域ではNTTとする。
⑦ 最終保障提供責務を担う者が、他事業者の業務区域や役務提供義務の有
無等を確認できる仕組みを設ける。
⑧ 最終保障提供責務を担う者が、他事業者に、責務の履行に必要な協力(設
備の貸出し等)を求めた場合は、当該他事業者に協議に応じる義務を課す。
併せて、協議開始命令など、当該協議の実効性を確保する制度を設ける。
⑨ ユニバーサルサービスの提供者が、業務区域を縮小する場合は、利用者へ
の事前周知や事前届出を義務付ける。
⑩ 電話のユニバーサルサービス交付金制度については、当分の間は、内部相
互補助を前提とする現行制度を基本的に維持した上で、最終保障提供責務
への見直し等に伴い必要な補正を行う。
⑪ ブロードバンドのユニバーサルサービス交付金制度については、支援区域
外での最終保障提供責務の履行費用を補塡する措置を講ずるとともに、ワイ
124
ヤレス固定ブロードバンド(共用型)は、「一者以下提供要件」の「一者」とは扱
わないこととする。
⑫ ユニバーサルサービスの提供者には、都市部以外の地域で、都市部を上
回る料金の設定を原則認めないこととする。
⑬ ①・②・⑧に関し、NTT東西が他者設備を利用する場合は、設備の自己設
置要件の例外に追加する。
⑭ NTT東西の線路敷設基盤の譲渡等について、規制コスト等を踏まえ対象範
囲を検討した上で、認可制を導入する。また、重要な電気通信設備の譲渡等
の認可を含めて、認可対象となる行為には「処分」を含めることとする。
2.公正競争の確保に関する事項
① NTT東西の本来業務について、県域業務規制を撤廃し、「東日本地域又は
西日本地域における通信」を媒介するサービスを提供する業務を基本とする。
② NTT東西の活用業務(電気通信業務以外の業務を含む。)について、事前
届出制を見直し、NTT東西が活用業務の実施基準の作成・届出を行った上
で、総務省において実施基準の遵守状況を事後検証する。
③ NTT東西の目的達成業務や目的業務区域外の地域電気通信業務は、事
前届出制から事後届出制に緩和する。
④ NTT東西が、移動通信業務やISP業務など、公正競争の確保に支障が生じ
るおそれがある業務は実施できない旨を法律上明確化する。
⑤ ①の県域業務規制の撤廃に伴い、NTT東西が県間設備について他者設備
を利用する場合は、設備の自己設置要件の例外に追加する。
⑥ NTT東西の線路敷設基盤の譲渡等について、規制コスト等を踏まえ対象範囲
を検討した上で、認可制を導入する。また、重要な電気通信設備の譲渡等の認
可を含めて、認可対象となる行為には「処分」を含めることとする。【1⑭の再掲】
⑦ NTTの累次の公正競争条件(在籍出向の禁止等)について、時代に即して
現行化を行った上で、電気事業法の例を参考に必要なものを法定化する。
⑧ 市場支配的事業者(一種指定事業者と、二種指定事業者のうち一定の収益
シェアを有する者)について、登録の更新制(合併等審査)の対象に、公正競
争に影響を及ぼすおそれが大きいグループ内会社との合併等を追加する。
125
⑨ 市場支配的事業者について、目的外利用・提供が禁止される情報に、卸役
務に関する情報を追加する。
⑩ 鉄塔等の貸出しを行うインフラシェアリング事業者について、認定を受けた
場合は、適正・公平な利用等を担保した上で、公益事業特権(土地等の使用
に係る権利)を付与する。
⑪ 国内電報・国際電報の事業について、電気通信事業法に基づく特別な規律
を廃止し、信書便法に基づく規律を課すこととする。
⑫ NTT東西のメタル固定電話や公衆電話は、プライスキャップ規制の対象外と
する。【関連:1⑫】
⑬ 公正競争の確保に関し、検証を通じた規制のPDCAサイクルを法定化する。
3.経済安全保障の確保に関する事項
① NTTの外資総量規制について、電波法や放送法の例に倣い、その遵守状況
等を定期的に確認する制度を導入する。
4.NTTに関する規律の担保措置に関する事項
① NTT東西の合併等の認可について、小規模な非電気通信事業者との合併等
は対象外とする。
② NTTの財務諸表の提出義務は、撤廃する。
また、上記の事項以外にも、本答申では、携帯電話サービス等のユニバーサルサー
ビスへの追加、NTT東西やNTT持株の業務等の在り方、外資規制の在り方など、引き
続き検討することとした事項があるところ、技術革新の著しい情報通信分野では、これ
らの事項以外にも検討が必要な事項が生じることも想定されるため、総務省において
は、今後の市場環境の変化を注視し、今回継続検討とした事項を含め、時代に即した
対応が必要となる事項については、適時適切に検討を行うことが適当である。
126
資料7
資料 52-3-3
(案)
情 通 審 第
令和
年
号
月
日
総 務 大 臣
村 上 誠 一 郎 殿
情報通信審議会
会 長
答
申
遠 藤 信 博
書
令和5年8月28日付け諮問第28号「市場環境の変化に対応した通
信政策の在り方」について、審議の結果、別添のとおり答申する。
(別添は、資料52-3-2とする。)
資料8
資料 52-4
情報通信技術分科会・各部会の活動状況
(第 51 回総会[R6.6.18]以降)
情報通信技術分科会
開催回数
第 181 回
(R6.7.2)
種別
答申
審議事項
「新世代モバイル通信システムの技術的条件」のうち「ローカル 5G の海上利用に係る
技術的条件等」について
【平成 28 年 10 月 12 日付け諮問第 2038 号】
諮問
「放送法第 20 条の 3 第 1 項に規定する配信用設備に係る技術的条件」について
【令和 6 年 7 月 2 日付け諮問第 2047 号】
議決
第 182 回
(R6.10.10)
答申
「情報通信技術分科会における委員会の設置(平成 13 年 1 月 17 日情報通信
審議会情報通信技術分科会決定 第 3 号)」の一部改正について
① 「国際無線障害特別委員会(CISPR)の諸規格について」のうち「CISPR 会議
対処方針」について
【昭和 63 年 9 月 26 日付け電気通信技術審議会諮問第 3 号】
② 「非静止衛星を利用する移動衛星通信システムの技術的条件」のうち「衛星コン
ステレーションによる携帯電話向け 2GHz 帯非静止衛星通信システムの技術的条
件」について
【平成 7 年 9 月 25 日付け電気通信技術審議会諮問第 82 号】
報告
① 「ネットワークの IP 化に対応した電気通信設備に係る技術的条件」のうち「非常
時における携帯電話サービスの事業者間ローミング等に関する電気通信設備に係る
技術的条件」の検討開始について
【平成 17 年 10 月 31 日付け諮問第 2020 号】
② 「新たな情報通信技術戦略の在り方」の検討再開について
【平成 26 年 12 月 18 日付け諮問第 22 号】
第 183 回
(R6.11.12)
答申
① 「小電力の無線システムの高度化に必要な技術的条件」のうち「433MHz 帯タイ
ヤ空気圧モニタ及びリモートキーレスエントリに係る技術的条件」について
【平成 14 年 9 月 30 日付け諮問第 2009 号】
② 「海上無線通信設備の技術的条件」のうち「X 帯沿岸監視用レーダーの技術的
条件」について
【平成 2 年 4 月 23 日付け電気通信技術審議会諮問第 50 号】
③ 「ネットワークの IP 化に対応した電気通信設備に係る技術的条件」のうち「大規
模災害発生時における通信サービスの維持・早期復旧のために今後取り組むべき
対応の方向性」について
【平成 17 年 10 月 31 日付け試問第 2020 号】
報告
「放送システムに関する技術的条件」のうち「マイクロ波帯を使用する放送事業用無線
局(STL/TTL/TSL)の高度化のための技術的条件」の検討開始について
【平成 18 年 9 月 28 日付け諮問第 2023 号】
第 184 回
(R6.12.17)
答申
① 「新世代モバイル通信システムの技術的条件」のうち「第 5 世代移動通信システム
(5G)の高度化(RedCap/eRedCap)に関する技術的条件等」について
【平成 28 年 10 月 12 日付け諮問第 2038 号】
② 「ネットワークの IP 化に対応した電気通信設備に係る技術的条件」のうち「非常
時における携帯電話サービスの事業者間ローミング等に関する電気通信設備に係る
技術的条件」について
【平成 17 年 10 月 31 日付け諮問第 2020 号】
③ 「小電力の無線システムの高度化に必要な技術的条件」のうち「無線 LAN システ
ムの高度化利用に係る技術的条件」のうち「5GHz 帯無線 LAN の上空利用に係
る技術的条件」について
【平成 14 年 9 月 30 日付け諮問第 2009 号】
報告
国際電気通信連合(ITU)世界電気通信標準化総会(WTSA-24)の結果につ
いて
情報通信政策部会
開催回数
(開催なし)
種別
審議事項
電気通信事業政策部会
開催回数
第 74 回
(R6.7.19)
種別
議決
審議事項
「IP 網への移行等に向けた電気通信番号制度の在り方」について
【令和 6 年 5 月 2 日付け諮問第 1238 号】
第 75 回
(R6.9.20)
答申
「IP 網への移行等に向けた電気通信番号制度の在り方」について
【令和6年5月 2 日付け諮問第 1238 号】
議決
「IP 網への移行等に向けた電気通信番号制度の在り方」について
【令和6年5月 2 日付け諮問第 1238 号】
報告
第 76 回
(R6.11.11)
答申
NTT 東日本・西日本における光回線の卸売サービスの提供状況(令和 5 年度)
について
「IP 網への移行等に向けた電気通信番号制度の在り方」について
【令和6年5月 2 日付け諮問第 1238 号】
第 77 回
(R6.12.2)
諮問
議決
令和 6 年度第 4 四半期の電話のユニバーサルサービス交付金の算定方法の在り
方
「市場環境の変化に対応した通信政策の在り方」について
【令和 5 年 8 月 28 日付け諮問第 28 号】
郵政政策部会
開催回数
第 38 回
(R6.6.24)
種別
答申
審議事項
「デジタル社会における郵便局の地域貢献の在り方」について
【令和 4 年 10 月 14 日付け諮問第 1235 号】
諮問
議決
「郵便事業を取り巻く経営環境等の変化を踏まえた郵便料金に係る制度の在り方」
について
「郵政政策部会決定の廃止・制定」について
資料9
情報通信審議会 総会(第52回)議事概要
1 日時 令和7年2月3日(月)13:00~14:14
2 場所
第1特別会議室(Web会議併用)
3 出席者
(1)委員(敬称略)
遠藤 信博(会長)、高田 潤一(会長代理)、浅川 秀之、
石井 夏生利、伊丹 誠、市毛 由美子、内山 隆、大柴 小枝子、
大橋
小島
藤井
弘、加藤 寧、閑歳 孝子、桑津 浩太郎、甲田 恵子、
隆洋、竹内 健蔵、丹 康雄、東條 吉純、長谷山 美紀、
威生、増田 悦子、横田 純子(以上21名)
(2)総務省
阿達 雅志(総務副大臣)、竹内
今川 拓郎(総務審議官)、
芳明(事務次官)、
(国際戦略局)
竹村 晃一(国際戦略局長)、山碕
良志(官房総括審議官)、
(情報流通行政局)
豊嶋 基暢(情報流通行政局長)、玉田 康人(官房総括審議官)、
下仲 宏卓(官房審議官)、内藤 新一(地域通信振興課長)、
牛山 智弘(郵政行政部長)、
(総合通信基盤局)
湯本 博信(総合通信基盤局長)、吉田 恭子(総務課長)、
大村 真一(電気通信事業部長)、
飯村 博之(電気通信事業部事業政策課長)、
荻原 直彦(電波部長)、中村 裕治(電波部電波政策課長)、
(サイバーセキュリティ統括官)
山内 智生(サイバーセキュリティ統括官)
(3)事務局
田邊 光男(情報通信政策課長)
4 議 題
(1)諮問案件
①「地域社会 DX の推進に向けた情報通信政策の在り方」について
【令和7年2月3日付け諮問第 29 号】
【内容】
日本の地域社会・経済を取り巻く状況、AI を含むデジタル技術の最
新動向を踏まえ、地域社会 DX の推進に向けた情報通信政策の在り方に
ついて諮問されたもの。
本件は、情報通信政策部会に付託し、審議を進めることとした。
②「社会環境の変化に対応した電波有効利用の推進の在り方」について
【令和7年2月3日付け諮問第 30 号】
【内容】
社会環境の変化に迅速かつ柔軟に対応し、電波の公平かつ能率的な
利用を通じて国民生活の利便性向上、地域の課題解決及び持続的経済
成長を実現するため、国が取り組むべき電波の有効利用の推進の在り
方について諮問されたもの。
本件は、情報通信技術分科会に付託し、審議を進めることとした。
(2)答申案件
①「市場環境の変化に対応した通信政策の在り方」について
【令和5年8月 28 日付け諮問第 28 号】
【内容】
「市場環境の変化に対応した通信政策の在り方」について、最終答
申(案)について審議したもの。 審議の結果、電気通信事業政策部会
から提案があったとおり、最終答申(案)を了承し、最終答申とする
こととした。
(3)報告案件
情報通信技術分科会及び各部会の活動状況について
【内容】
情報通信技術分科会及び各部会の活動状況について、事務局より報
告があったもの。
本会議にて配付された資料を御覧になりたい方は、総務省HPにおいて公開
しておりますので御覧下さい。
また、総務省において、閲覧に供し及び貸し出しておりますので、以下まで
御連絡をお願いいたします。
担 当:総務省 情報通信審議会事務局
高橋補佐、岡本補佐、東出係長、斉藤官、松谷官
電 話:03-5253-5432
メール johotsushin-shingikai/●/soumu.go.jp
迷惑メール防止対策のため、送信時は/●/を@に置き換えてください。
資料10
情報通信審議会 総会(第52回)議事録
1 日時 令和7年2月3日(月)13:00~14:14
2 場所
第1特別会議室(Web会議併用)
3 出席者
(1)委員(敬称略)
遠藤 信博(会長)、高田 潤一(会長代理)、浅川 秀之、
石井 夏生利、伊丹 誠、市毛 由美子、内山 隆、大柴 小枝子、
大橋
小島
藤井
弘、加藤 寧、閑歳 孝子、桑津 浩太郎、甲田 恵子、
隆洋、竹内 健蔵、丹 康雄、東條 吉純、長谷山 美紀、
威生、増田 悦子、横田 純子(以上21名)
(2)総務省
阿達 雅志(総務副大臣)、竹内
今川 拓郎(総務審議官)、
芳明(事務次官)、
(国際戦略局)
竹村 晃一(国際戦略局長)、山碕
良志(官房総括審議官)、
(情報流通行政局)
豊嶋 基暢(情報流通行政局長)、玉田 康人(官房総括審議官)、
下仲 宏卓(官房審議官)、内藤 新一(地域通信振興課長)、
牛山 智弘(郵政行政部長)、
(総合通信基盤局)
湯本 博信(総合通信基盤局長)、吉田 恭子(総務課長)、
大村 真一(電気通信事業部長)、
飯村 博之(電気通信事業部事業政策課長)、
荻原 直彦(電波部長)、中村 裕治(電波部電波政策課長)、
(サイバーセキュリティ統括官)
山内 智生(サイバーセキュリティ統括官)
(3)事務局
田邊 光男(情報通信政策課長)
-1-
4 議
題
(1)諮問案件
①「地域社会 DX の推進に向けた情報通信政策の在り方」について
【令和7年2月3日付け諮問第 29 号】
②「社会環境の変化に対応した電波有効利用の推進の在り方」について
【令和7年2月3日付け諮問第 30 号】
(2)答申案件
「市場環境の変化に対応した通信政策の在り方」について
【令和5年8月 28 日付け諮問第 28 号】
(3)報告案件
情報通信技術分科会及び各部会の活動状況について
-2-
開
○遠藤会長
会
皆様、こんにちは。大変お忙しい中お集まりいただき、ありがとうござい
ます。
それでは、ただいまから、情報通信審議会第52回の総会を始めさせていただきます。
本日は、ウェブ会議とのハイブリッド形式にて会議を開催してございます。
現時点で、委員30名中19名の方が御出席をいただいてございまして、定足数を満
たしてございます。
会議の傍聴につきましては、ウェブ会議システムによる傍聴とさせていただいてござ
います。
また、本日は審議の終了前に、阿達総務副大臣から御挨拶をいただく予定となってご
ざいます。
それでは、お手元の議事次第に従いまして議事を進めてまいりたいと思います。
本日の議題は、諮問事項2項、答申事項1件、そして報告事項1件でございます。円
滑な議事進行について御協力をいただけると幸いでございます。
(1)諮問案件
①「地域社会DXの推進に向けた情報通信政策の在り方」について
○遠藤会長
まず初めに、諮問第29号「地域社会 DX の推進に向けた情報通信政策の在
り方」につきまして、総務省から御説明をいただきたいと思います。よろしくお願いい
たします。
○内藤地域通信振興課長
総務省でございます。それでは、1件目の諮問事項でござい
ます「地域社会 DX の推進に向けた情報通信政策の在り方」について、資料52-1-2
に基づき説明をさせていただきます。
表紙の次のページにお進みください。諮問概要でございます。皆様も御承知のとおり、
日本の地域社会・経済は、少子高齢化と人口減少による働き手不足や市場規模の縮小、
頻発する自然災害や老朽化するインフラなどの様々な課題に直面しております。
-3-
2ページの左上にございますように、少子高齢化の進行によりまして、日本の生産年
齢人口は、2020年から2050年にかけて約26%、約2,000万人減ると推計
されてございます。これに伴いまして、働き手の減少による人手不足や、消費活動の減
少による市場の縮小という、構造的課題に直面することが予想されております。
また、左下にございますように、首都直下地震や南海トラフ地震については、今後3
0年以内にそれぞれ70%程度から80%程度の確率で発生すると予測されており、一
方で、これに対するインフラというものについては、老朽化によって、維持管理という
ものも大きな課題となっております。
こうした課題につきましては、地方においては人口減少、一般的な傾向に加えまして、
若者の都市部への流出によって過疎化がさらに進み、市場の縮小、それに伴う財政規模
の縮小といった形で、構造的な課題がさらに増幅されてしまう位置づけになっており、
既に深刻な課題となりつつある状況であります。
こうした状況下、政府におきましては、右上にございますが、新しい地方経済・生活
環境創生本部を設置いたしまして、地方こそ成長の主役との発想に基づきまして、日本
経済成長の起爆剤としての大規模な地方創生策の検討を開始し、昨年12月には、地方
創生2.0の基本的な考え方におきまして、デジタル技術の徹底活用も5本の柱の1つ
に掲げているという状況になってございます。
具体的にはデジタル・新技術を活用した付加価値創出などの地方経済の活性化、情報
格差ゼロの創出などによって、地方におけるデジタルライフラインやデジタル基盤の構
築を支援し、生活環境の改善につなげるということを掲げております。
現在でもAIやドローン、自動運転などの新技術によりまして、地域の主要産業であ
る農林水産業や、地域の生活を支える移動手段の担い手不足、災害時の孤立地帯の対応
などといった地域課題を解決すべく取組が進められているところでございますけれども、
地方の厳しい状況に鑑みれば、今後は生成AIなども含めた新しい技術の活用も視野に
入れつつ、こうした取組を一層加速していく必要がございます。
1ページに戻っていただきまして、諮問概要の3パラグラフ目を御覧いただければと
思います。こうした状況下におきまして、地域社会・経済を維持・発展させ、地域住民
の生活を支えていくためには、AIを含むデジタル技術の徹底活用により、地域課題を
解決する地域社会 DX に取り組み、さらにはイノベーションにより付加価値を創出してい
くことが求められるところでございます。
-4-
こうしたデジタル技術の担い手というものは、基本的には、スタートアップも含みま
す企業でございまして、こうした企業が地域のニーズに即した事業展開をできるよう支
援していくことが、地域社会 DX を推進していく上でも重要となると考えられます。具体
的には、例えば地域におけるスタートアップの起業支援、スタートアップを含みます企
業が有するAIを含む新技術の地域課題とのマッチングの強化、地域において成功事例
となり得るプロジェクトの社会実装や成功事例の横展開の支援によりまして、新技術の
活用による地域社会解決を面的に波及させていくことが期待されております。
このため、諮問概要の一番下にありますとおり、日本の地域社会・経済を取り巻く状
況、近年、目覚ましい進歩を果たしているAIを含むデジタル技術の最新動向を踏まえ
て、地域社会 DX の推進に向けた国の政策の在り方について諮問を行うものでございます。
スケジュールといたしましては、今月2月から御審議いただき、本年夏頃に答申をい
ただけますよう御審議をお願い申し上げたいと存じます。
本件諮問の説明は以上でございます。どうぞよろしくお願いいたします。
○遠藤会長
ありがとうございました。
それでは、ただいまの説明に関しまして、皆様のほうから御意見、御質問をいただけ
ればと思います。いかがでございましょうか。
本件はまさに御説明いただきましたけれども、人口減少という非常に大きな課題を
我々持ってございまして、資料の中にも示してございますけれども、現状15歳から6
4歳までの方が7,500万から5,500万ぐらいまで減ってしまうということでござ
いまして、そういう意味で非常に大きなインパクトがあると。そのような中で、DXが
どういうコントリビューションができるのか、また、さらには人口が減っても、GDP
含め、我々のグローバルでのリーダーシップというのが整わないといけないということ
が現状だと思います。
日本は、食料も資源もない国でございますので、グローバルコントリビューションと
いうのは非常に大きな、重要な課題であるわけですけれども、そのためにどのような価
値創造力を持つべきなのか、そのためにDXはどのような役目を果たすべきなのか、そ
して地方は、その中でどうあるべきなのかということの議論が必要だというふうに思い
ますが、皆様のほうから、何らかの議論に対する御指摘等ございますと大変幸いでござ
います。
それでは、大変貴重な機会なので、まず、内山委員からいただけますでしょうか。
-5-
○内山委員
純粋に質問としてお伺いしたいのは、恐らく両方ということにはなると思
いますけれども、どちらかといえばBtoB的な色彩を強く検討するのか、あるいはB
toC的な色彩、あるいは産業用あるいは民生用、いろんな区分けがあると思うんです
けれども、どちら側にウエイトを置いた議論をすることが望ましいでしょうかという形
で御質問させていただきたいと思います。
○遠藤会長
ありがとうございました。事務局いかがでしょう。
○内藤地域通信振興課長
現時点でBtoCかBtoBかというところはあまり焦点を
定めておりません。地域課題解決といった面では、確かに企業自体のDXに関わるもの
から、住民サービスに当たるものまでありまして、地域課題をDXによって進めている
という観点の中には、現時点においてはどちらもあり得るという形かなと思っておりま
す。
ただ、単に自治体がユーザーであるといったもの以外のものも含めて、地域課題、社
会の課題を解決する企業の取組を推進するという形で考えたいと思っております。そう
いう意味で、BtoBかBtoCかという形で切っているわけではないということで御
理解いただければと存じます。
○内山委員
ありがとうございます。
もう1点、少し角度を変えてお伺いしますけれども、ここで言うその地域課題につい
て、何か具体的にこうだというリストであったり、あるいは検討すべき具体的な事象と
いうのは、何か整理されているのでしょうか。
○内藤地域通信振興課長
こちらについては、今日の資料にはつけておりませんけれど
も、政府で、自治体に対する地域課題についてのアンケート調査などを行ったものがご
ざいます。
そういった中では、都市部と地方における地域課題の捉え方が違うんですけれども、
いずれも創業の支援であったり、人手不足、あと地方においては、農業の担い手不足対
策ということで、スマート農業というものが比較的ニーズが高いということになってお
ります。その辺も地方のニーズというものを踏まえて、今後の具体的な審議を進めてま
いりたいと存じます。ありがとうございます。
○内山委員
どうもありがとうございました。とてもイメージが湧きましたので助かり
ます。ありがとうございます。
○遠藤会長
ありがとうございました。閑歳委員はいかがでございましょうか。
-6-
○閑歳委員
私は株式会社で事業とAIの推進を担っているのですけども、去年、輪島
に実は私個人として災害の場へボランティアに行ったのですが、やはりなかなかその場
所においてはまだDXとか使われていない、本当に泥をかき出すような作業ですとかと
いうことが中心になっていて、私どもが持っているような技術的なものですとか、A
I・新技術というものがどういうふうにそこに貢献できるかということを考えておりま
した。
ここに書かれているような、自動運転ですとかいろんなこともあるとは思うのですけ
ど、自然災害のリスク、目の前で起こっているものですとか、経験が一番日本は豊富だ
と思いますので、その点をぜひ推進していければというような議論ができればなという
ふうに考えております。
以上です。
○遠藤会長
ありがとうございました。
ウェブで御参加の方から御発言の希望がございますので、まず、先に桑津委員から御
意見いただけますか。
○桑津委員
桑津でございます。どうもありがとうございます。
テーマの設定としては非常によい設定だなと。少子高齢化は10年前からやっていて、
DXも10年前ということで、ある意味1回は指摘されたことなのですけど、ここにお
書きになられているように、本当にその状況がある意味、その限界点に近いのじゃない
かと素人目には見えるぐらい厳しい状況になってきています。
そういう面で、昔検討したからというのではなくて、改めて、地域視点で見直すとい
うのは、非常にいいかなと思いました。これが1点目です。
2点目が、やはりこの赤字にも書いているのですけど、大胆な規制制度改革的なもの
まで挙がっているわけでして、ここを前回訳があってできなかったよというところをあ
えて踏み込んではいかがかなというふうに思いました。例えばですけど、高精細映像の
リアルタイム伝送による自動運転バスというのがここに書かれているわけですけれども、
いろいろな各地方の状況を見てみますと、自動運転バスというのは恐らく、非常に小さ
い車になると、台数が増えると。それによって便数が、利便性が高まりながらも、いわ
ゆる運転士の方の労働人口、労働コストがそこまで増えない。だから、利便性が上がる
のだという方向感だと思うのです。
その中で、私なんかが以前体験したところでは、車が小さくなると、バス停というの
-7-
は、駅前以外は要らないだろうと。乗っている人が好きなところを指定して降りたらい
いというような議論になるわけですが、とすると、いわゆるバスという概念がおかしく
なると、バス停で降りないとバスじゃないよみたいな話があったり、今までの枠組みと
は少し変わったところが出てくるということで、ここに書かれているとおりで、地方視
点で一度は検討したけど、訳あって見送ったというところでも、改めて大胆に制度や規
制等を絡めたところを、より分かりやすい形でお示しすることができれば非常により有
意義なものになるんじゃないかなと思いました。
以上です。
○遠藤会長
大変貴重な御指摘ありがとうございました。ぜひこの議論の中で検討をし
ていただければと思います。
もう一人、ウェブから御意見を希望されている方がいらっしゃいます。甲田委員、お
願いできますか。
○甲田委員
お世話になります。資料を拝見しました。
私どもAsMamaでは、全国でシェアリングのものとか子供の送迎とか移動とか御
近所同士で頼り合うことを、アプリを通じて実現するということをいろいろな自治体と
御一緒させていただいているので、まさにこの人口減少下において公共交通が減ってい
ったりとか、お店そのものがなくなっていったりとかという、地方の生活不便というの
を目の当たりにしながら、それをDXで改善していくという取組をしているものでござ
います。
人口が減っていくから、確実にそれが不便に直結するかというと、日本と大して面積
は変わらないフィンランドという国では550万人しかいないのに、幸福度ナンバーワ
ンというところでは、かなりITの進化だとか在宅勤務が一般的になっていたりとかと
いうところがあるので、2,000万人減ることがイコールもう即座に大変みたいなこ
とではなく、やはりしっかり対策をしていくことで生活不便を下げていかないというこ
とかなというふうに思っています。
一方で、地方に行けば当然高齢化というところが都心よりも一歩も二歩も先行してい
るというところと、自治体と連携をするときに、DXの浸透を専門にした主管部門とい
うのがないんです。なので、我々が地方創生的にまちづくりに取り組んでいくときにも、
子育て支援とか産業振興とか地域活性化ということの主管はあっても、それに付随する
アプリをしっかり自治体の中心になって広げていくんだというところの主体性が非常に
-8-
弱いというか、それはもう勝手に受託している民間さんでやってくださいよというまで
はいかなくても、何をどう広げていったらいいのか分からない。
むしろ、高齢者だからデジタルを使えないよね、使わなくていいよねといったような
姿勢さえ見られるところがあるので、そこはしっかり何か自治体のところにもこういっ
たDXを浸透させる部署を置くとか、浸透させる上でもしっかり国から予算をつけてい
くとか、何らかのそういった措置がないと、まだしばらくデジタルネイティブな人たち
がマジョリティを占めてくるまでには時間がかかるので、その部分の過渡期を乗り越え
ていくための施策というのを出していく必要があるのではないかなというふうに思って
おります。
以上です。
○遠藤会長
これも大変貴重な御意見いただきました。日本では、特にDXの発展とい
うものが非常に遅れているというのが現状だというふうに思います。
そういう意味では、まさに今非常に大きな課題を抱えている地方という視点で、この
DXというものが本当に価値をつくるものだという観点から、活発に使われることが重
要で、まさに今回の議論の中心になるべきものかなという気がいたしました。
ありがとうございました。他はよろしいでしょうか。
それでは、ただいまの御説明を了承し、本件諮問の審議を進めることとさせていただ
きたいと存じます。
本件につきましては、基本的かつ総合的な政策に関する調査審議であることから、情
報通信審議会議事規則第11条第9項の規定に基づき、情報通信政策部会に付託をして
まいりたいと思います。
情報通信政策部会の構成員の皆様方におかれましては、精力的な調査審議をいただき
たいと存じます。
②「社会環境の変化に対応した電波有効利用の推進の在り方」について
○遠藤会長
それでは、続きまして、諮問第30号「社会環境の変化に対応した電波有
効利用の推進の在り方」につきまして、総務省より御説明をいただきたいと思います。
お願いいたします。
○中村電波政策課長
それでは、諮問第30号ということで、お手元の資料52-2-
-9-
2に基づきまして、御説明をさせていただきます。総務省の電波政策課長でございます。
よろしくお願いいたします。
資料、1ページ目でございますが、申し上げるまでもなくあらゆる場所、それから分
野におきまして、この電波の利活用というものが進展をしてきている状況でございます。
具体的には、ドローンの普及ですとか、あるいは海におけますローカル5Gの実用化、
それから、宇宙で申し上げますと衛星コンステレーションの実用化発展といったような
ところが挙げられますし、また、分野ということで申し上げましても、モビリティ、農
業、医療、製造といった分野におきまして、電波は非常に重要な役割を果たしてきてい
るというところでございます。
このように、イノベーションですとかあるいは新たなマーケットの創出、それから安
全安心の確保といった点におきまして、この電波がインフラといたしまして、非常に大
事な役割を果たしてきているというところでございます。
他方、電波は有限希少な資源でございますので、電波の利用ニーズ、あるいは電波に
関します最新の技術トレンドといったようなことも踏まえまして、周波数の割当て、あ
るいは周波数の移行・再編・共用といったようなことをいかにタイムリーに、効率的に
進めていくかといったことについての検討が不可欠でございます。
こうした背景の下、本日、この審議会に対しまして、社会環境の変化に対応した電波
有効利用の推進の在り方につきまして、諮問をさせていただくものでございます。
2番目、検討事項につきましてはその次のページでまた少し詳しく御説明をさせてい
ただければと思います。
3番目、スケジュールでございますが、諮問の後、今年の夏頃から順次、一部答申の
ほうをお願いできればというふうに考えてございます。また、体制といたしましては、
電波に関します技術のトレンド、あるいは技術的条件といったようなことと一体的な審
議が必要であるというふうに考えてございますので、情報通信技術分科会での審議、こ
れを希望させていただくものでございます。
その次のページ、2ページ目、御覧をいただければと思います。想定される主な検討
事項でございます。
(1)といたしまして、まずやはり電波の利用状況、ニーズ、それから技術トレンド
を勘案いたしまして、中長期的にこの電波の有効利用の推進に関します基本的な方向性
について、御議論いただく必要があろうかと思ってございます。
-10-
また、そのほかに具体的事項といたしまして、例えば2番、免許制度等でございます
が、より簡素で柔軟かつ迅速な免許制度の在り方について、あるいは無線従事者資格制
度の在り方、こういったようなことについて御検討いただければというふうに思ってご
ざいます。
また、周波数の割当てに関してでございますが、逼迫するこの電波の利用状況、これ
を踏まえまして、いかにして比較的空いている高い周波数帯を活用していくのかといっ
たようなこと。さらには、共用技術の進展といったようなことも踏まえました、新しい
周波数割当ての手法といったようなことにつきましての御議論を頂戴できればというふ
うに思ってございます。
また、その次、無線利用ビジネスについてでございますが、例えばインフラシェアリ
ングといったようなことも含めまして、より効果的、効率的なワイヤレスインフラの整
備の在り方、さらには、宇宙ビジネスのように新たな電波利用産業をいかに支援してい
くのかといったような観点も重要かというふうに思ってございます。
また、利用の環境についてでございますが、電波の利用状況の変化といったようなこ
とも踏まえまして、IoTですとかM2Mといったようなシステムの進展、これに伴い
まして、例えば意図せず発射される電波による混信などの増加に対応するための電波監
視の在り方、あるいは人体に対します電波の安全性に関する研究の方向性といったよう
なことにつきまして、御議論を頂戴できればというふうに思ってございます。
また、その他といたしまして、電波法に規定されてございます電波利用料の使途の在
り方、こういったようなことにつきましても、引き続き重要な課題になってくるのかな
というふうに思っているところでございます。
簡単でございますが、事務局から以上でございます。よろしくお願いいたします。
○遠藤会長
ありがとうございました。
それでは、ただいまの御説明に関して皆様から御意見、御質問を賜りたいと思います。
いかがでございましょう。
小島委員、何か御意見ございますか。
○小島委員
御説明ありがとうございます。この後に参考というところでいろいろ例み
たいのが書かれているかと思いますけれども、これを見てみると、HAPSですとか空
飛ぶクルマですとか、電波だけの話ではなくてそういった周辺のものとの連携みたいな
ものも視野に入ってくるのかなと思いますが、その辺について何か現時点でお考えがあ
-11-
れば御説明いただければと思います。よろしくお願いいたします。
○中村電波政策課長
ありがとうございます。まさしく電波はインフラでございますの
で、これをいかに効率的に使っていただくのかというような点、非常に重要な御指摘な
のかなというふうに思ってございます。
そういった意味でも、例えば先ほど申し上げましたワイヤレスビジネスといったよう
な観点で、新しい市場の創出、あるいは皆様の課題の解決にいかにこの電波を役立てて
いくのかといったような視点も含めて、御議論を頂戴できればというふうに考えてござ
います。ありがとうございます。
○遠藤会長
ありがとうございました。長谷山委員、何か御意見いただけますか。
○長谷山委員
小島委員のご質問の視点とそれに対する中村課長のご回答は、大変に重
要なポイントと思います。インフラを幾ら整えてもその上に新たなサービスが展開され
なければ、国に富がもたらされないのだと私も思います。
そう考えると、資料52-2-2
3ページの(参考)に記載されている内容が大変に大
切で、少子高齢化により生産年齢人口が減少している上に、その生産年齢人口の分布が
年齢が高い層に偏っていることが既に示されています。
また、NRI 社が公開するデジタルケーパビリティインデックスでは、都市部と地方部
の格差が開いていることが数値根拠をもって示されています。そして、皆さんがおっし
ゃったように地域の人口は減り、都市部の人口が増加したとのニュースが先日出たとこ
ろです。
このような現状にあって、この戦略を見たとき、どのような社会がこの先に生み出さ
れてゆくのか、この参考の中に予見されるものが描かれているのだと思っています。そ
うでなければ、Z世代後半からα世代が社会に出たときに、新しい社会の実現のために
活躍してもらうことができません。ディープラーニング協会が、会社に、10%のデジ
タル人材をつくり出せる人がいたとしても、デジタルに理解がない社員が多ければ、そ
れが阻害要因となりDXは起こらないと述べています。
私自身も含め、ここにいる皆さんが、10年後にZ世代後半とα世代を受け入れたと
き、ここに書かれた新しい技術や社会を実現する彼らのアイデアを理解し、実現に挑戦
することができる社会構造にしておかないと、いくら高度なインフラを作ってもインフ
ラがインフラのままになるのだと思います。AIの研究者からの意見です。
以上です。
-12-
○遠藤会長
大変ありがとうございます。まさに今、日本が抱えている問題の一つであ
ろうかと思います。この第2番目の諮問に関しては、電波という観点でのインフラでご
ざいますけれども、電波とDX、これは非常に関わりが強いわけで、いずれにしまして
も、これらのプラットフォームをいかに価値に変えていくかということに関してのアク
セラレーションをするための仕組み、そういうものを含めて、今回の諮問に対する御議
論をいただければなというふうに思います。
ウェブのほうから何かございますか。
○甲田委員
AsMamaの甲田でございます。
まず、いつでもどこでもスピーディーに使えるというところが、地方に出張に行くと
あっちこっちで正直使えません。電波はそもそもないというところもそうですし、日本
の中だと、例えば厚生労働省の記者クラブでさえWi-Fiが飛んでいないみたいな、
その辺をどれぐらい総務省のほうで把握されているのかというところが1点目です。
まずは日本中どこでもきちんと電波が使える状態であると、インターネットが使える
状態であるということを即日やらなければ、これだけ人口が減ってきて、DX化を浸透
させようと言っているときに、ここ電波が飛んでいませんみたいなことって本当に多い
んです。なので、本当に喫緊の課題だとそこは思っています。
2点目が、やはり日本はすごく災害大国で、また、いつどこで災害が起こるか分から
ないと南海トラフも含めて言われている中で、毎回毎回災害が起こるたびに、電波が逼
迫していて使えません、つながりませんという状態が起こっているではないですか。こ
れをもう学びにして、次からはそうは起こらないということを実現する、早期に実現す
るために、次に、大災害が起こったときに、また、同じ状況を繰り返さないために、今
どういうことが行われていて、いつになったらそれが起こらない状態になるのかという
ところのマイルストーンがあれば教えてください。
以上です。
○遠藤会長
ありがとうございました。
そう簡単に答えられるご質問かどうか分かりませんけれども、現状を含めて御説明い
ただければと思います。
○中村電波政策課長
ありがとうございます。おっしゃるとおりまだまだ地域によって
は電波、携帯電話ですとかWi-Fiが使えないといったような状況もあろうかなとい
うふうに思ってございます。我々も正直申し上げまして、そこまで全て現状把握できて
-13-
いるわけではないというところかなというふうに思ってございます。
当然、インフラ整備の在り方、官民の役割の在り方といったようなことも含めての議
論が必要になってくるのかなというふうに思ってございます。
また、災害時におけますこの電波の利用ということにつきましても、昨年の能登の反
省といったようなことも含めまして、あるいはこれまでの災害におけます、ノウハウの
蓄積といったようなことも含めまして、引き続き、ワイヤレスインフラの強靱化、これ
に努めていく必要があろうかなというふうに思ってございます。
携帯電話につきましても、何年までに全ての自治体の庁舎において5Gが使えるよう
にしましょうといったような目標を幾つか立てているものもあるところでございます。
引き続きこういった目標の設定も含めて、御議論、御検討を頂戴できればなというふ
うに考えてございます。
○遠藤会長
ありがとうございます。貴重な御指摘ありがとうございました。
今の御指摘はまさに日本全体が価値創造する上でも、生活をより豊かにする上でも重
要なポイントでございまして、周波数のアロケーションという以上にそのカバレッジで
すよね、カバレッジを増やすための方法論というものを、御議論の中に入れていただい
て、どこかで小さいカバレッジが必要になった場合でも、それが簡単にまたは臨時的に
でも取りあえず使えるという仕組み、そういうものを含めて、用意できる形にしていく
ことが大変望ましいと思います。
今、御質問・御指摘いただいた観点含めて、その用意の方法も含めて御議論の対象と
していただけると大変ありがたいと思います。大変ありがとうございました。
それでは、皆様の御意見をいただいた中で、これらを含めて本件諮問の審議を進める
こととさせていただければと存じます。
本件につきましては、情報の電磁的流通及び電波の利用の技術に関する政策に関する
重要事項の調査審議であることから、情報通信審議会議事規則第10条第4項の規定に
基づきまして、情報通信技術分科会に付託をさせていただきたいと存じます。
情報通信技術分科会の構成員の皆様方におかれましては、ぜひ精力的に調査審議をい
ただければと存じます。よろしくお願いを申し上げます。
(2)答申案件
-14-
「市場環境の変化に対応した通信政策の在り方」について
【令和5年8月28日付け諮問第28号】
○遠藤会長
それでは、続きまして、答申案件について審議をさせていただきたいと存
じます。
諮問第28号「市場環境の変化に対応した通信政策の在り方」につきまして、審議を
させていただきたいと存じます。
本件につきましては、電気通信事業政策部会及び通信政策特別委員会におきまして精
力的に調査審議をいただき、このたび答申案を取りまとめていただいてございます。
本日は、電気通信事業政策部会部会長代理の大橋委員から御説明をいただきたいと存
じます。よろしくお願いいたします。
○大橋委員
ありがとうございます。
それでは、「市場環境変化に対応した通信政策の在り方」の最終答申(案)の概略に
ついて、ただいま御紹介いただきました電気通信事業政策部会の部会長代理である大橋
から、説明をさせていただきます。
本件は、令和5年8月28日に、総務省より情報通信審議会に諮問されたものでござ
いまして、電気通信事業政策部会に付託され、新たに設置した通信政策特別委員会にお
いて調査検討を進めてきたものでございます。
通信政策特別委員会における議論を踏まえて、昨年2月に第一次答申を取りまとめま
したが、今回最終答申(案)では、その第一次答申において、「今後更に検討を深めて
いくべき事項」として整理した事項について、委員会の下で開催した3つのワーキング
グループにおける専門的な議論や関係事業者へのヒアリングも踏まえて、昨年11月に
委員会として最終報告書を取りまとめたものでございます。
これを踏まえて、電気通信事業政策部会において意見募集を実施し、先週1月28日
の部会において最終答申(案)を取りまとめましたので、本日御報告をさせていただき
ます。
お手元資料52-3-2が最終答申(案)の本体でございます。表紙の次に目次がご
ざいますので、こちらに沿って、全体の構成について御説明をさせていただきます。
まず、「Ⅰ」では、検討の経緯や検討の基本的な考え方について触れさせていただい
ています。
-15-
「Ⅱ」では、ユニバーサルサービスの確保の在り方について、誰もが取り残されずに
通信サービスが利用できる環境を確保するという観点から、電話、ブロードバンド双方
に最終保障提供責務を新設することなどについて提言しております。
「Ⅲ」では、公正競争の確保の在り方について、NTT東西の経営の自由度向上の観
点から、業務範囲の規制緩和などについて提言をしております。
「Ⅳ」では、国際競争力の強化の在り方として、今後、研究開発や海外展開などにお
いて、官民連携を図っていくことなど、グローバル市場の獲得に向けた取組の方向性と
して提言をしています。
「Ⅴ」では、経済安全保障の確保の在り方として、NTTが保有する通信インフラの
公共的な役割に鑑み、NTTに対する外資総量規制は維持することが適当としておりま
す。
「Ⅵ」では、これらの整理等を踏まえて、NTTに関する規律の担保措置等の在り方
について提言しております。
そして最後に、今後総務省において実施すべき事項として、今回、最終答申(案)で
整理された結果などを踏まえて、総務省において速やかに制度整備を行う事項を取りま
とめたものでございます。
なお、最終答申(案)の概要については、資料52-3-1にまとめておりますので、
こちらについて事務局から御説明をお願いできればと思います。よろしくお願いします。
○飯村事業政策課長
事業政策課長の飯村でございます。
それでは、資料の52-3-1に基づきまして、最終答申(案)の概要を説明いたし
ます。
1ページ目です。本件は、先ほど大橋部会長代理の御説明のとおり、2つのステップ
に分けて検討を行ったものでございます。
まず、第1ステップでは、NTTの研究開発に関する責務の廃止など、「速やかに実
施すべき事項」が提言をされ、それらは、昨年4月の改正NTT法で措置をしたところ
でございます。
そして、今回の第2ステップでは、ユニバーサルサービスの確保など、「今後更に検
討を深めていくべき事項」とされた5つの事項について、最終答申(案)として取りま
とめたところでございます。
2ページ目、その最終答申(案)の構成ですが、5つの柱がございます。ユニバーサ
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ルサービスの関係については、ブロードバンドと電話に分けて整理をし、公正競争、国
際競争力、経済安全保障、それからNTTに関する担保措置等も、資料に記載の観点か
ら整理をしているものでございます。詳細は次のページ以降で説明をいたします。
3ページ目は、ブロードバンドのユニバーサルサービスの関係でございます。
本資料では、上段の枠囲いで現状と課題を記載し、中段以降で最終答申(案)におけ
る取組の方向性を記載しているものでございます。
ブロードバンドの課題は、未整備地域の解消と自治体が設置している公設光ファイバ
の民設移行の2点ございます。
この解決には、電話と異なって提供者がいない地域において提供責任を負う者がいな
い状況を解消することと、その不採算地域の効率的なカバーに無線を積極的に活用する
ことが必要となってございます。
このため、今回は、①最終保障提供責務として、提供者がいない地域で提供する責務
を新設いたしまして、②その担い手は申請をし、交付金を受ける事業者がいる地域にお
いてはその事業者を担い手とし、提供する事業者がいない地域ではNTT東日本・NT
T西日本が最終的に担うことが適当としてございます。
そして、無線の活用を図るため、④品質低下の懸念が少ない不採算地域等に限り、モ
バイル網を活用した固定ブロードバンド、具体的には、利用者宅までのアクセス回線と
して無線を活用して利用者端末の位置情報を確認し、固定的な利用に制限するサービス
ですが、このサービスを新たにユニバーサルサービスに追加することが適当としてござ
います。
そのほか、③責務の担い手に近隣の事業者が協力する義務や、⑤料金については、都
市部以外で、都市部を上回る料金の設定を原則禁止することが適当としてございます。
続いて、4ページ目、電話のユニバーサルサービスの関係でございます。
固定電話につきましては、10年後の2035年頃にメタル回線設備が維持限界を迎
える見込みとなってございます。ただ契約数につきましては、2030年でも730万、
2035年でも500万となる見込みで、2035年にソフトランディングさせるため
には、円滑な移行の促進が必要となってございます。
NTTでは、エリア単位の計画的な移行は当面されないとのことなので、利用者の減
少で収入は減る一方で、設備の維持コストは変わらず赤字が拡大する見込みでございま
す。この赤字は現在交付金で補填をし、一番号当たりで国民負担につながっております
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ので、その肥大化を避けるためには、無線の活用など効率的な提供を図ることも必要と
なってございます。
このため、今回は、①無線の活用を図るため、先ほどのブロードバンドと同様に、モ
バイル網による固定電話である「モバイル網固定電話」を新たにユニバーサルサービス
に追加した上で、②これにより、NTTが独占的に提供していた電話のユニバーサルサ
ービスの提供者に新たに携帯電話事業者も加わりますので、これによって複数事業者が
連携した全国カバーが可能となります。そのため、NTTの現在のあまねく提供責務、
一社が全国をカバーする責務については、複数の事業者が連携して全国をカバーする最
終保障提供責務に緩和し、ブロードバンドと同水準にすることといたします。
③責務の担い手等についても、ブロードバンドと同じにいたしますが、既存利用者保
護のためメタル固定電話の利用者が残る区域では、NTT東日本・NTT西日本の業務
範囲の縮小を制限することとしております。
メタル回線の移行計画につきましては、④NTTは早急に策定し、総務省が検証する
こととし、そのほか、携帯電話自体をユニバーサルサービスにすることについても議論
はありましたが、ビル陰に届かないなどの技術的課題もございますので、継続検討が適
当としてございます。
続いて、5ページ目、公正競争確保の関係のうち、NTT東日本・NTT西日本の経
営自由度の向上、業務範囲の関係でございます。
NTT東日本・NTT西日本の営業収益は、メタル固定電話契約数が減少する中で、
20年前の約3分の2に減少している状況にございます。
25年ほど前、1999年のNTT再編当時は、固定電話には市内・市外・長距離な
どの距離別であったため、ラストワンマイルをほぼ独占するNTT東日本・NTT西日
本には、本来業務として長距離通信は認めず県内通信に限定する「県域業務規制」が現
在も課されている状況にございます。ただ、メタル固定電話は、先月、完全にIP網に
移行しましたので、距離別の料金・サービスはなくなっている状況にございます。
また、本来業務以外の業務である「活用業務」の実施には、現在は事前届出が必要で
すが、地域の課題に対して、NTT東日本・NTT西日本が子会社をつくることなく、
ワンストップで提供できるような、柔軟な実施が要望されている状況にございます。
このような状況を踏まえまして、今回、経営自由度の向上を図る観点から、①本来業
務の県域業務規制は撤廃すること。②活用業務については、事後検証に緩和すること。
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③合併等により、事業を機動的に開始・拡大できるように、小規模な非電気通信事業者
と合併する場合には認可の対象外とすることなどが適当としてございます。
また、この規制緩和に伴う弊害防止のため、NTT再編時等に設けられた各種の条件、
例えば在籍出向の禁止等のうち必要なものは法定化することが適当としてございます。
続いて、6ページ目、インフラの関係でございます。
NTT東日本・NTT西日本の通信インフラは、光ファイバ、ルーター等の「電気通
信設備」と電柱・管路などの「線路敷設基盤」の2つに大別される状況でございます。
このうちの電気通信設備については、譲渡等が認可であり、本来業務は自己設備で行
う自己設置要件によって適切な設置・維持を図る仕組みがありますが、線路敷設基盤に
はそのような規律がない状況にございます。
このため、取組の方向性の1つ目では、NTT東日本・NTT西日本の線路敷設基盤
の譲渡については、認可制を導入することが適当としてございます。
また、上段枠囲いの2つ目ですが、市場支配的事業者であるNTT東日本・NTT西
日本とNTTドコモには、グループ内会社の優遇等は現在禁止をしておりますが、この
優遇禁止したグループ内の会社を合併等で吸収することで、この規制を潜脱することが
懸念をされている状況にございます。
このため、取組の方向性の2つ目ですが、登録の更新制の仕組みで、これまでも大規
模なグループ外の会社を合併等する場合には審査をしていましたが、今回、この審査の
対象に、大規模なグループ内の会社との合併することも追加することが適当としてござ
います。
それから、上段枠囲い3つ目でございますが、現在、鉄塔等の貸出しを行うインフラ
シェアリング事業者は電気通信事業者ではないので、鉄塔等の設置に必要となる土地の
使用等に係る権利である「公益事業特権」が受けられないという状況にございます。
このため、取組の方向性の3つ目では、インフラシェアリングの推進を図る観点から、
インフラシェアリング事業者であっても、認定を受ければ、適正・公平な利用を確保し
た上で、公益事業特権の付与が適当としてございます。
さらに、電報事業については、現在利用が大幅に減少しておりますので、コストベー
スの料金設定の義務など、電気通信事業法における特別な規律を課すのではなくて、他
の電報類似サービス同様に、信書便法で規律することが適当としてございます。
続いて、7ページ目、国際競争力強化の関係でございます。
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我が国はICT分野のデジタル赤字について、過去10年で2倍以上に拡大をしてお
ります。海外依存が高まりますと、経済安全保障とか競争上も問題となりますので、A
I社会を支えるデジタルインフラ需要が増大する中で、旺盛な海外需要を取り込むため
には、官民による戦略的な取組が重要となってございます。
このため、今回、「技術で勝てても商売で勝てない」という問題意識の下、研究開発、
国際標準化、社会実装・海外展開等を有機的に連携させた総合的な取組が必要であり、
昨年4月の改正NTT法で、NTTの研究開発責務の廃止をしたことが、NTTの研究
開発の自立性向上を図ることが趣旨だったことも踏まえまして、IOWN関係の取組の
加速化を強く期待としてございます。
また、研究開発・国際標準化に関しては、総務省は出口を見据えて、覚悟を持って取
り組む民間事業者の後押しをし、NICTの機能強化策等に関する戦略的な検討が必要
であること。そして、海外展開については、従来よりも大規模なプロジェクト支援を行
い得る環境の整備やJICTによるリスクマネーの供給強化など、官民を挙げた取組が
重要としてございます。
それから、8ページ目、経済安全保障、特に外資規制の関係でございます。
まず、現行制度から説明をいたしますと、通信分野には外資規制が2種類ございます。
1つは外為法の個別投資審査、もう一つがNTT法の外資総量規制でございます。
通信事業者は一般には外為法の個別投資審査のみが課され、1%以上の株式取得を事
前届出で審査しております。ただ、「※」にございますように、10%未満であれば一
定の基準、例えば役員に就任しないといった基準の遵守を前提に、事後報告で可能とす
る事後届出の免除制度が設けられている状況でございます。
そして、NTTには、この外為法に加えまして、NTT法で外資比率が3分の1以上
となることを禁止する外資総量規制が課されております。
NTTからは、この外資総量規制は「世界的に撤廃が潮流」、「受け入れるべき投資も
制限」等から廃止し、個別投資審査を強化すべきとの意見が示されておりますが、外為
法の個別投資審査については、財務省が経済安全保障上のリスクが低いと認められない
外国投資家について、先ほどの事前届出免除制度の利用対象外とする方向での見直しを
検討しているところでございます。
こういった状況を踏まえまして、今回は、NTT法の外資総量規制は、NTTの通信
インフラの公共的役割、3分の1の閾値を超えても配当目的の取得は可能、外為法は日
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本在住の外国人は審査対象外でありNTT法の代替は困難、この3点から維持すること
が適当とした上で、遵守状況等を定期的に確認する制度の導入が適当としてございます。
また、個別投資審査の強化については、財務省が現在検討中でございますので、それを
踏まえつつ、継続検討が適当としてございます。
最後、9ページ目、NTTに関する規律の担保措置等でございます。
担保措置の関係については、昨年4月のNTT法改正で、外国人役員規制の緩和、役
員選解任の認可の緩和などを既に行ったところでございます。現在、NTT法において
は政府の株式保有義務のほか、定款変更、合併や事業計画の認可、財務諸表の提出義務
などが設けられている状況でございますが、今回の見直し後もNTTの目的業務に基本
的に変更はないため、担保措置の必要性も基本的に変わりはないことを基本的なスタン
スとした上で、政府の株式保有義務については、NTTの経営の安定等を確保するため
維持することが適当、定款変更、合併等あるいは事業計画の認可については、組織運営
に関する重要事項であるため、維持が適当としてございます。
なお、合併等認可については、公正競争の確保の項目でも説明しましたが、一部緩和
をしており、財務諸表の提出義務は公表資料が入手可能であるため、撤廃が適当として
ございます。そして、法形式につきましては、引き続きNTT法に規定する案と、電気
通信事業法に規定をし、結果としてNTT法を廃止する案の2つが考えられますが、総
務省においてそれぞれの特徴等を踏まえ、必要な規律を適切かつ確実に担保できる形式
の検討が適当としてございます。
説明については、以上でございます。
○遠藤会長
ありがとうございました。
それでは、ただいま御説明いただきました内容につきまして、皆様から御質問、御意
見等いただければ大変ありがたいと存じます。いかがでございましょうか。
ただいま御説明いただきましたように、この観点は通信網、また通信プラットフォー
ムが人間の生活及び価値創造を含めて非常に大きなプラットフォームになってきてしま
ったという観点で考えますと、そのプラットフォームをいかに適正にオペレーションを
し、かつ発展をさせていくか、日本にとって大変重要な点についての御議論をいただい
たと理解をしてございます。
その意味で、これから我々がいろいろな観点で、先ほど申し上げた人口減少も含めて
考えたときに、より高い価値創造力を持つためには、先ほどから御指摘のAIやDXが
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必要なのですが、それを使うにしても通信ネットワークというものが大量のデータ・情
報を通し、かつ皆さんがお使いいただけるような環境をつくっておくことが非常に重要
でございまして、それに関する答申を御検討いただいたということであろうかと思いま
す。何か御意見ございましたらいただけると幸いですが、いかがでしょうか。
内山委員、一言いただけるとありがたく思います。
○内山委員
この課題は、おそらく国内の通信市場の競争ある状態を維持することと、
NTTの力強さを国際競争に向ける、NTTといえどGAFAMと競争しようとすると
相当厳しい競争は強いられると思いますので、多分その板挟みというか、その両方を成
立させるというのは非常に苦労されたのだろうなと思って拝見しております。
その上で、NTTの力強さが国際競争に向かうようにとのことで、今回の政策の肝は
一番どこにあるでしょうか、質問をさせてください。
○飯村事業政策課長
御質問ありがとうございます。
NTTの国際競争力強化の観点においては、第一次答申におきまして、研究開発責務
の廃止等に関する規制緩和を行いましたので、我々としては、そういった研究開発の自
立性を高めて、しっかりと国際競争力を高めていくための研究へとしっかりやっていた
だきたいというメッセージでもあると思っています。そういった状況を注視しながら、
必要な支援については行ってまいりたいと考えております。
○内山委員
ありがとうございます。本当に日本にとって、NTTとトヨタは本当にツ
ートップのような企業なので、ぜひそのように強い競争力を持っていただくことを期待
したいと思います。
以上でございます。
○遠藤会長
ありがとうございました。他、よろしいでしょうか。
長谷山委員、お願いいたします。
○長谷山委員
資料52-3-1
4ページですが、メタル回線設備は2035年頃に維持
限界の見込みであることを、理解します。2030年には730万と言う相当数が残存
するとありますが、利用者は減少するので、最終的に終了していくと理解して良いでし
ょうか。
私が心配しており、質問したいのは、その過渡期において、アナログ放送の終了時と
同様に維持するシステムが多様であれば、サービスを提供する者の負担が大きくなる一
方で、終了の過程においてユーザーに何らかの負担や不利益、不便などは起こるのか、
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起こるとして、それは許容の範囲内なのかということをお聞きしたいと思います。
○飯村事業政策課長
御質問ありがとうございます。
昔からのメタル回線を使った固定電話においては、例えばFAXが使えるものもあっ
たりして、そのFAXの機能についても、代替サービスにおいて利用できるようにすべ
きかどうかとの議論はありました。例えば、そのFAXについては、ある程度今後はも
ういいだろうと考え、代替サービスについて移行していただくのであれば、不利益は起
きないと思います。あるいは緊急通報においては、少し品質が変わる可能性もあり得る
サービスが、特にモバイルの関係についてございますので、今、委員からご指摘があっ
たように、移行する際に利用者の方が不便を感じたり、不利益にならないように技術基
準も含めて検討した上で、なるべく移行先のサービスを増やした形で、スムーズに移行
するということを目指したいというふうに考えている状況にございます。
○長谷山委員
○遠藤会長
ありがとうございました。
ありがとうございました。
他よろしいでしょうか、ウェブからもございませんか。
ありがとうございます。まだまだたくさんの御意見あるかと存じますが、時間もござ
いますので、この辺で審議を終了させていただきたいと存じます。
定足数も満たしてございますので、本件につきましては資料52-3-3のとおり、
最終答申とすることとしてはいかがと存じますが、よろしいでしょうか。
(異議の申出なし)
○遠藤会長
ありがとうございます。
それでは、チャットの申出もないようでございますので、本案を最終答申とすること
とさせていただきたいと存じます。
それでは、本日の答申につきまして、私からもコメントを述べさせていただきたいと
存じます。
本日の答申につきまして、まずは岡田部会長、それから大橋部会長代理をはじめ、委
員の皆様方におかれましては、大変精力的に御検討いただきましたことを心より感謝申
し上げたいと存じます。
情報通信の市場環境は急速な技術革新により大きく変化してございます。時代に即し
た通信政策の在り方につきまして、不断の見直しを行っていくということが必要である
と認識をしてございます。
-23-
本日の最終答申におきまして、昨年2月に提言した第一次答申において、「今後更に
検討を深めていくべき事項」として整理をされた事項について、主に委員会の下で開催
をされました3つのワーキンググループ等におきまして、具体的な検討を進めていただ
いた結果、各論点に対する今後の取組の方向性について、具体的な内容を示した点が大
変意義深いものと考えてございます。
特にユニバーサルサービスについては、モバイル網を活用したサービスをユニバーサ
ルサービスに追加するとともに、電話とブロードバンドの双方に最終保障提供責務を新
設することなどを提言してございます。先ほども御指摘ございましたけども、あまねく
全国で通信サービスを利用できる環境を整備することが非常に重要であると考えてござ
います。
本答申に基づき最終保障提供責務、これを担う事業者によって、今後も日本全国の利
用者が公平かつ安定的に、電話・ブロードバンドサービスの提供を受けられることを期
待したいと思います。
また、公正競争の確保の在り方につきましても、NTT東日本・NTT西日本の業務
範囲規制の緩和や線路敷設基盤の譲渡等の認可制の導入などを提言してございますが、
このような時代に即した規制の見直しがされることで、電気通信事業における公正な競
争が促進されるとともに、我が国の通信全体を支える基幹的なインフラである線路敷設
基盤等の適切な設置、さらには維持が確保されるものと期待してございます。
そのほかにも様々な提言をしてございますけれども、総務省におかれましては、本答
申の最後にまとめた、「今後総務省において実施すべき事項」を中心に速やかな制度整
備等を進めるとともに、今後の国際競争力の強化に向けた官民連携、それと経済安全保
障の確保に関する継続的な検討が進められることを大いに期待をさせていただきたいと
存じます。
私からは以上でございます。
それでは、答申書をお渡ししたいと思うので、阿達総務副大臣がお見えになるのを
少々お待ちしたいと思います。
(報道関係者入室)
(阿達総務副大臣入室)
○遠藤会長
それでは、ただいまより答申書をお渡ししたいと思います。
答申書、令和5年8月28日付け諮問第28号「市場環境の変化に対応した通信政策
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の在り方」については、審議の結果、別添のとおり答申をさせていただきます。よろし
くお願いいたします。
(答申書手交)
○田邊情報通信政策課長
○遠藤会長
それでは、遠藤会長と阿達副大臣は御着席ください。
それでは、ただいまの答申に対しまして、阿達総務副大臣より御発言がご
ざいますので、副大臣、よろしくお願いいたします。
○阿達総務副大臣
皆様には日頃より情報通信行政に格段の御理解を賜り、厚く御礼申
し上げます。
ただいま答申いただいた、諮問第28号「市場環境の変化に対応した通信政策の在り
方」については、遠藤会長をはじめ、委員の皆様の活発な御審議を経て取りまとめてい
ただきました。
本日の答申では、ユニバーサルサービス、公正競争、経済安全保障、国際競争力、N
TTに関する担保措置等の在り方といった多岐にわたる論点について、時代に即した見
直しを図る観点から、今後の取組の方向性を提言いただきました。
情報通信インフラは国民生活に欠くことができず、社会経済活動の基盤となるもので
あるため、通信政策の在り方は、技術革新や市場環境の変化を踏まえ、不断の見直しを
行っていくことが必要になっております。特にDXやAIの進展に伴い、情報通信に求
められる役割が一層高まるとともに、災害やサイバーセキュリティ等への対応も喫緊の
課題となる中、今回御提言いただいた内容を速やかに実行に移すことが重要と考えてお
り、総務省としては、今国会への関連法案の提出をはじめ、必要な対応を迅速に行って
まいりたいと考えております。
最後になりますが、委員の皆様におかれましては、引き続き情報通信行政への一層の
御指導と御協力をお願い申し上げ、私の挨拶とさせていただきます。本当にありがとう
ございます。
○田邊情報通信政策課長
報道関係者の方の取材はここまでとなりますので、御退室を
よろしくお願いいたします。
(報道関係者退室)
○遠藤会長
阿達総務副大臣、大変ありがとうございました。
阿達総務副大臣におかれましては御公務のため、ここで退席をされます。ありがとう
ございました。
-25-
○阿達総務副大臣
どうもありがとうございました。
(阿達総務副大臣退室)
○遠藤会長
皆様、御協力大変ありがとうございました。
(3)報告案件
情報通信技術分科会及び各部会の活動状況について
○遠藤会長
それでは続きまして、報告案件に移りたいと存じます。情報通信技術分科
会及び各部会の活動状況につきまして、事務局からお話をいただきたいと思います。
○田邊情報通信政策課長
情報通信技術分科会及び各部会の活動状況について、資料5
2-4に基づきまして、御説明をさせていただきます。
本件は、情報通信審議会議事規則第10条第6項及び第11条第11項に基づき、前
回開催されました第51回総会以降の情報通信技術分科会及び各部会の活動状況につい
て御報告申し上げるものでございます。
情報通信技術分科会は4回会合を開催し、9件の答申をいただいております。
部会につきましては、情報通信政策部会は開催なし。電気通信事業政策部会は4回会
合を開催し、2件の答申、郵政政策部会は1回会合を開催し、1件の答申をいただいて
おります。
説明以上でございます。
○遠藤会長
ありがとうございました。
報告について何か御意見、御質問等ございましたらお受けしたいと存じます。また、
ウェブ参加の方はチャット機能でお申込みをいただきたいと存じますが、いかがでござ
いましょうか。
よろしいですか。ありがとうございました。
閉
○遠藤会長
会
チャット等でも申込みがないようでございますので、以上で本日の議事を
終了させていただきたいと存じます。
-26-
委員の皆様方から何かございますか。事務局から何かございますか。
それでは、本日の会議を終了させていただきたいと存じます。
次回の日程につきましては、別途調整をさせていただき、事務局から御連絡をさせて
いただくこととなります。
以上で閉会とさせていただきます。ありがとうございました。
-27-