資料1
資料51-1-1
「Beyond 5Gに向けた情報通信技術戦略の在り方」
最終答申(案) 概要
2024年6月18日
情報通信審議会
Beyond 5Gの推進戦略等に係る検討経緯
第1章 Beyond 5Gを取り巻く状況
2020年1月~
Beyond 5G推進戦略懇談会
2020年6月
Beyond 5Gのビジョン・推進の基本方針・ロードマップ等
「Beyond 5G推進戦略」
2021年1月
NICT法改正法案成立(時限基金の造成)
2022年6月
• オール光ネットワーク技術等を重点技術分野として整理
• 研究開発基金の創設 等を提言
情報通信審議会 中間答申
2022年12月
NICT法及び電波法改正法案成立(恒久基金の造成)
2023年3月
Beyond 5G研究開発基金の運用開始
2023年11月~
情報通信審議会の審議再開
2024年5月29日
国内外の動向やこれまでの取組状況等を踏まえ、
研究開発、国際標準化、社会実装・海外展開を
より効果的・実効的に推進していくための
新たな戦略の在り方を提言
技術戦略委員会報告書取りまとめ
2024年6月6日
情報通信技術分科会において
「Beyond 5Gに向けた情報通信技術戦略の在り方」最終答申(案)
取りまとめ
1
「Beyond 5Gに向けた情報通信技術戦略」 中間答申(令和4年6月30日) 第1章 Beyond 5Gを取り巻く状況
<5G基地局の市場シェア>
①熾烈な国際競争
<ICT関連消費電力の予測>
②情報通信の消費電力
⚫5Gの国際的な通信インフラ市場
で日本ベンダは後塵
⚫コロナ禍により通信ネットワークの
トラヒックと消費電力が増大
⚫諸外国は6Gでの主導権を狙って
研究開発投資を積極拡大
⚫このままではカーボンニュートラル
(国際公約)の達成が困難
⚫誰もが活躍でき、
誰一人取り残さない
デジタル化を目指す
(岸田内閣の国家戦略)
社会実装戦略
研究開発戦略
●世界市場のゲームチェンジを目指した
「ネットワークの姿」を明確化
●強みのある技術を絞り込み(重点分野)
集中投資による開発の加速化が必要
●2030年を待たず、2025年以降順次、
国内ネットワークへの実装・市場投入
①オール光ネットワーク技術
<Beyond 5Gへの移行シナリオ>
・2024年度~ 公的機関など先進ユーザ・エリアでの技術検証
・2025年度~ 大阪・関西万博でグローバル発信
通信インフラの超高速化と省電力化を実現
光の処理
電気の処理
(光ネットワーク技術)
(光電融合技術)
②非地上系ネットワーク技術
陸海空をシームレスにつなぐ通信カバレッジ拡張を実現
一
体
で
推
進
・2026年度~ エリア拡大、全国・グローバルへの展開
知財・標準化戦略
●有志国と連携して国際標準化を主導しつつ、
コア技術は権利化・秘匿化して囲い込む
オール光
ネットワーク
海外展開戦略
③セキュアな仮想化・統合ネットワーク技術
利用者の安全かつ高信頼な通信環境を実現
⇒ 予算の多年度化を可能とする枠組みの創設が望ましい
標準必須特許10%、国際市場30%を確保し
世界市場をリード
③国家戦略としての
デジタル化
●主要なグローバルベンダと連携しつつ、
海外通信キャリアへの導入を促進
通信ネットワーク全体の電力使用効率を2倍
再生可能エネルギー
利用拡大とあわせて
2040年情報通信分野のカーボンニュートラル実現
陸海空含め国土100%をカバーする
デジタル田園都市国家インフラを実現 2
Beyond 5Gに係る取組の進展等
第1章 Beyond 5Gを取り巻く状況
(進展①)研究開発基金の運用本格化
⚫ 2021年3月にNICTに設置された時限的な基金(旧基金)等により要素技術の
確立に向けた初期段階の研究開発を推進。
⚫ その後、2023年3月より、新たに設置された恒久的な基金(新基金)を活用して、
社会実装や海外展開を強く意識した戦略的なプロジェクト等への支援を開始し、
2023年度に主な新規プロジェクト17件を採択。
(進展②)通信事業者等の取組
(進展③)社会実装・海外展開に向けた取組
⚫ 携帯事業者各社は5Gのエリア展開に注力しつつ、5Gの真価
を発揮できるSAサービスの一般提供を2022年以降開始。
⚫ 東急不動産による新たなまちづくりにおける
オール光ネットワークの活用をはじめ、官民
においてBeyond 5Gの社会実装に向けた
IOWN 1.0が導入された
取組が進展。
Shibuya Sakura Stage
⚫ オール光ネットワークについて、NTT東西が、2023年3月より
「IOWN 1.0」の商用サービスを提供開始。また、KDDI、
ソフトバンクは、オール光ネットワークを自社コア網に導入した
ことを発表。
⚫ NTTが、Intel、ソニーとともに
2020年に設立したIOWN
Global Forumは、
国内外の参加者が拡大し、
2023年3月にKDDIも参加。
⚫ 携帯事業者各社は、非地上系
ネットワーク(NTN)との連携
や自社ネットワークへのAIの適
用等に取り組み。
NTT東西によるIOWN 1.0の提供開始
低軌道衛星
HAPS(高高度プラットフォーム)
①働く場
高画質
ミーテ
るリア
⚫ Beyond 5G推進コンソーシアム(現XGモバイル推進フォーラム)
等が、Beyond 5Gに係る国際的なビジョンづくりに貢献し、
ITU-R フレームワーク勧告に反映。WRC-23では、
HAPS等のNTNを含めたBeyond 5Gの実現に向けた議
題で周波数等が確保。
⚫ Open RAN、光伝送装置等の海外展開が進展。
NTTがオール光ネットワークによるデータセンター間接続
実証を米国及び英国において実施。
⚫ 2023年「G7デジタル・技術閣僚
宣言」で「Beyond 5G/6G時
代の将来のネットワークに関する
G7ビジョン」を承認。
Shibuya Sakura Stage
(外観イメージ)
2023年G7デジタル・技術閣僚会合
ビジョンづくりや要素技術開発等の初期フェーズから、より社会実装・海外展開を意識するフェーズへと移行
3
(参考)Beyond 5Gの研究開発に関する基金の運用状況等 第1章 Beyond 5Gを取り巻く状況
【Beyond 5G(6G)基金事業で実施するプログラム】
プログラム名
研究開発対象
助成・委託の別
1件あたりの
支援規模(国費分)
①社会実装・海外展開
志向型戦略的
プログラム
助成を基本
我が国が強みを有する技術分野を中心として、
実施期間全体の
社会実装・海外展開に向け、一定期間内にTRLを
事業総額のうち
一定の水準に到達させる※ことを目指す研究開発
最大1/2を助成
~数十億円
程度/年
②要素技術・シーズ
創出型プログラム
プロジェクトの開始時点でTRL1~3に該当する
技術であって、社会実装まで一定の期間を要し、
中長期的視点で取り組む要素技術の確立や技術
シーズの創出のための研究開発
委託
~1億円
程度/年
③電波有効利用
研究開発プログラム
電波法第103条の2第4項第3号に規定する
電波の有効利用に資する技術の研究開発
委託
開発規模に応じ、
①/②と同程度
※ 4年以内にTRLが概ね6、5年以内にTRLが概ね7など。
【Beyond 5G(6G)基金事業で2023年度に採択決定した
主な新規プロジェクト】
技術分野
採択件数
主な事業者
ネットワーク制御、
オール光ネット
DSP、
ワーク関連技術 小型基地局 等
7件
衛星通信
社会実装・海外展開を見据えた
市場や経営・ビジネスの観点など
の事業面からの評価・モニタリング
を実施。
<事業面からの評価項目>
① 市場機会の認識
「Where」(誰に対して)
「When」(いつ)
② 事業内容、競争優位性
「What」(何を)
「Why」(なぜ)
③ 経営コミットメント・事業計画・
推進体制
「Who」(誰が)
「How」(どうやって)
【2023年度における基金の執行状況】
2023年度
基金造成額:812億円
(R4補正:662億円、
R5当初:150億円) (注1)
9月末時点
12月末時点
3月末時点
NTT、NTTイノベーティブ
デバイス、富士通、NEC
交付決定・
契約ベース
執行額
(執行率)
278億円
(34%)
494億円
(61%)
604億円
(74%)
3件
ソニーグループ、シャープ、
ソフトバンク
(参考)
支出ベース
執行額
(執行率)
32億円
(4%)
53億円
(6%)
-(注2)
HAPS
2件
ソフトバンク、
Space Compass
セキュアな仮想化・統合ネット
ワーク関連技術
5件
NEC、楽天モバイル、
BBSakura Networks
非地上系ネット
ワーク関連技術
(注1)別途、R5年度補正予算に基づき、2024年3月22日に拡充が行われている。
(注2)支出ベースの執行額については、NICTのR5年度決算(2024年7月頃見込み)に
おいて確定。
4
新たに考慮すべき環境変化と課題
第2章 新たな戦略の基本的方向性
(環境変化①)ネットワークの自律性や技術覇権を巡る国際的な動向
⚫ 能登半島地震、ロシアのウクライナ侵攻等を通じ、災害時・有事を含め、ネットワークの自律性を確保する重要性が改めて認識。
⚫ 情報通信ネットワークは、基幹インフラの自律性の確保と、国際的な技術覇権競争の結節点として位置付けられ、各国政府が
政策的関与を強化。利害関係の多極化、システム全体の大規模化、技術以外の力学等を背景に、コンセンサスづくりが困難に。
(環境変化②)通信業界を巡る構造変化
⚫ 4Gまでは、主にヒトによる利用を念頭に、「技術開発・標準化」、「インフラ整備」、
「利用者の利便向上」、「通信事業者の収益増」が好循環。(ワイヤレスの産業化)
⚫ 5G以降は、モノ(IoT機器)を繋ぎ、各産業分野において付加価値を創出する
「産業のワイヤレス化」が期待されているが、4Gまでの好循環が生まれるのはこれ
からであり、世界的にも5Gの収益化が大きな課題に。
⚫ また、通信業界では、大手テック企業や宇宙分野の新興事業者が存在感を増して
きており、ネットワーク構造とそれを巡るエコシステムやプレイヤーの影響力が急激に
変化。
(環境変化③)AIの爆発的普及
⚫ これまで、Beyond 5GにおけるAIの位置付けは、ネットワークの運用
効率化のためのツール(AI for Network)や、実空間から吸い上
げたビッグデータをサイバー空間上で分析するためのツール(AI for
CPS)としての活用が想定。
⚫ 今後、AIが隅々まで利用される社会において、ネットワークは、分散
化したAI群を支え、連携させる基盤(Network for AIs)としての
役割が求められる。また、デジタルインフラの消費電力の増大に対応した、
ネットワーク自体の低消費電力化や、ネットワークを活用したデータセン
ター等の電力需要の分散化が社会的要請に。
サービスプロバイダ
サービス
レイヤ
影響力行使
プラット
フォーム
レイヤ
競合
大手テック企業
連携しつつ進出
仮想化・クラウド化
ネットワーク
レイヤ
端末レイヤ
非地上系
(NTN)
事業者
通信事業者
国内メーカー
OS・
共通ID等
による連携
影響力行使
グローバル・メーカー
分散化したAI群を支え、
連携させる基盤としての
情報通信ネットワーク
ネットワークの
運用効率化
(AI for Network)
(Network for AIs)
情報通信ネットワーク
サ
イ
バ
ー
空
間
解析・反映
AI
AI
AI
AI
AI
橋
シティ
AI
ドローン
AI
AI
手術マシン
研究開発
拠点
車
人々
ロボット
実
空
間
5
Beyond 5Gの全体像(環境変化等を踏まえた見直し) 第2章 新たな戦略の基本的方向性
各レイヤの進化の方向性
サービス
サービス
プラット
フォーム
デジタル
インフラ
ネットワークインフラ
層から再整理
マ(
ルネ
ッ
チト
ネワ
ッー
トク
ワリ
ーソ
ー
クス
オの
ー最
ケ適
ス化
ト制
レ御
機
ー能
タ)
…
AI
AI
課題10
サービス・アプリケーション
技術
AI
事業者A
課題9
E2E仮想化技術
事業者C
事業者D
事業者B
コンピューティングリソース
新たに全体像に位置付け
AI
AI
AI
衛星
新たに全体像に位置付け
オール光ネットワーク
課題6
NTN(HAPS・
衛星ネットワーク) 技術
一体的運用
課題7
量子ネットワーク技術
AI
AI
課題3
情報通信装置
・デバイス技術
HAPS
課題1
オール光ネットワーク技術
AI
AI
AI
AI
課題4
ネットワーク
オーケストレーション技術
無線ネットワーク
課題5
無線ネットワーク技術
課題2
オープンネットワーク技術
課題8
端末・センサー技術
AI
AI
端末
AI
AI
AI
AI
AI
スマートフォン・センサー・自動車・ドローン・ロボット・・・
「AI for Network」の明確化に加え
「Network for AIs」を全体像に反映
⚫ 有線・無線・NTNといったネットワーク
の種別をユーザに意識させずに、ユーザ
毎にスライシング等を通じて最適な品質
のサービスを提供
⚫ オール光ネットワーク等と一体的に運用
される分散コンピューティングリソース
が、様々な分野で利用される多数のAIを
駆動
AI
AI
⚫ 様々な分野で利用される多数のAI同士を
Beyond 5Gで繋ぎ、自律的に協調させ
ることで、AIの省電力化や更に複雑な社
会的課題の解決に貢献
⚫ 有線(オール光ネットワーク等)、無線、
NTN(衛星・HAPS等)等からなる複層
的なネットワークにより、どこでも繋が
る環境を実現
⚫ オール光ネットワークは、AI時代に増大
が予想される大量のトラヒックを超低消
費電力で処理
⚫ 無線ネットワークは、基地局でのAI最適
化処理等により、ユーザエクスペリエン
スの向上、周波数の効率的な利用、低消
費電力化を実現
⚫ ヒトよりも、モノや、ヒトを取り巻く環
境を把握するセンサー等が主たる端末
⚫ 端末に搭載されたAIがネットワークを通
じて他のAIと協調し、より複雑で高度な
処理を実行
6
新たな戦略の基本的方向性
第2章 新たな戦略の基本的方向性
第3章 具体的な取組の方向性
戦略目標
⚫ 強靭で活力ある社会の実現に不可欠な基盤となるBeyond 5Gの早期かつ円滑な導入
⚫ Beyond 5Gにおける国際競争力の強化・経済安全保障の確保
相互に相乗的な
戦略目標
2030年代半ば~後半頃に、オープン化が十分に進展し、我が国が強みを持つ製品・サービス市場
において、我が国企業がパートナー企業とともに、市場シェア上位数者に入ることを目指す
新たな戦略において重視すべき4つの視点
1
業界構造等の変化の的確な
把握とゲームチェンジ
• 業界構造等が流動的となる現況を
的確に把握、ゲームチェンジの好機と
捉え、戦略的に取り組む必要。
• ビッグ・テック等新たなプレイヤーを意識。
2
グローバルなエコシステムの形成・拡大
• グローバル第一で大きな生態系を。
• 開発・標準化・生態系作りを同時に。
• 市場全体の中で一定の存在感を発揮
できる立ち位置を確保。
3
4
オープン化の推進
社会的要請に対する意識強化
• 5Gの現在の状況等を踏まえつつ、
社会的要請の見極めが重要。
• 現時点で明らかな要請としては、コスト、
環境負荷低減、信頼性・強靭性、
接続性、セキュリティ・プライバシー。
• ネットワークの自律性、市場競争環境、
円滑なマイグレーションを確保する観点
からオープン化(相互運用性の確保
等)を推進。
各種取組を進めるに当たっての基本的な考え方
⚫ Beyond 5Gの社会実装や海外展開の担い手は民間事業者。特に、Beyond 5G(6G)基金事業の社会実装・海外展開志向型
戦略的プログラム※で採択された、各企業が一定の覚悟をもって取り組むプロジェクトを、ゲームチェンジを実現するための我が国
の「戦略商品」として位置付け、国が全力で支援。
(※)重点技術分野である、オール光ネットワーク関連技術、非地上系ネットワーク関連技術、セキュアな仮想化・統合ネットワーク関連技術に関するプロジェクトを採択
⚫ 官民それぞれにおいて、縦割り構造を打破し、「戦略商品」を軸に、研究開発、国際標準化、社会実装・海外展開等の各種取組
を有機的に連携させつつ、総合的に取り組む姿勢が不可欠。
✓
✓
民間企業においては、経営層のコミットメントや、部門を跨って指揮・調整を図る司令
塔的な機能の下、市場状況や顧客ニーズを適時適切に把握し、事業化への道筋を
明確にした上で、研究開発や国際標準化等の取り組みを進めていくことが必要。
総務省においては、政府全体の戦略や他省庁の施策と連携しつつ、各種の政策
ツールを総動員して、総合的かつ連動した形で支援。
社会実装・
海外展開
研究開発
国際標準化
7
主な具体的施策の方向性と今後の取組
⚫ 民間企業による戦略的な標準化活動に対する支援
✓ 総務省による国際標準化活動支援も活用し、民間企業において
標準化に係る量的・質的な推進力を強化
⚫ 標準化に携わる人的資源の確保
✓ Beyond 5G新経営戦略センターによる、企業・組織の枠を超えた
次世代人材育成を推進
✓ 標準化に携わる人材のスキルセットや教育プログラムを業界全体で共有
⚫ 情報収集・分析力の強化
✓ 主要国政府の標準化担当者や海外専門家とも連携し、標準化
動向を多角的に分析
第3章 具体的な取組の方向性
第4章 今後の取組
⚫ インフラ整備とエコシステム拡大に向けた各種取組
✓ 「デジタル田園都市国家インフラ整備計画」に基づきBeyond 5Gの
導入に繋がるデジタル基盤の整備を着実に推進
✓ 多様な主体が参画するフィールドトライアル型の研究開発を可能と
するテストベッド環境を整備
⚫ 海外市場の開拓・獲得に向けた各種政策支援
✓ 将来的な市場獲得に向け、Beyond 5Gにも繋がる既に商用化された
製品(OpenRAN関連製品、光伝送装置等)を今から海外展開して
日本企業のフットプリントを拡大
✓ JICT等の官民ファンド、JBIC、JICA、JETRO等との連携や、官民連携
協議会を活用した情報共有を強化
⚫ 国内の関連制度の整備
✓ 国際動向等を踏まえ国内の周波数割当可能性や技術基準等を検討
国際標準化関係
国際標準化関係
社会実装・海外展開関係
一体的に 社会実装・海外展開関係
推進
研究開発関係
研究開発関係
⚫ 民間企業による戦略的な開発に対する継続的な支援
⚫ エコシステムの拡大に必要となる共通的な領域における技術開発の推進
✓ 2028年頃を目途に、オール光ネットワークの事業者間連携のための共通基盤技術を確立(※)
✓ 経済産業省による光電融合デバイスに関する技術開発と相互に連携
⚫ 基礎的・基盤的な研究力の確保
✓ NICTの第6期中長期計画(2026年4月~)に向けて具体的な検討を今後開始
✓ ICT分野の高度研究人材の育成支援で文部科学省・JSTと連携強化するとともに、スタートアップ
に対する支援の輪を拡大
(※)2024年5月、技術戦略委員会オール光ネットワーク共通基盤技術WGにおいて、開発の方向性及び普及方策を取りまとめ。
取りまとめでは、「オール光ネットワーク」を、「多地点と柔軟に接続可能なネットワークであって、光の特性を最大限に活用することで、
低遅延や品質保証、低消費電力の実現を目指そうとするもの」と定義し、ネットワーク内での電気信号による処理を一切排除する
ことまで求める趣旨ではないとしている。
今後、総務省として具体的な戦略・行動計画を策定・公表するとともに、
さらに、関係事業者と我が国の「戦略商品」ごとの計画をクローズドな形で作成・共有して取組を推進するべき。
8
【参考】Beyond 5G推進に関する情報通信審議会の検討経緯
⚫ 情報通信審議会中間答申(令和4年6月)以降の国内外の様々な動向を踏まえ、Beyond 5Gの研究開発・国際標準化、
社会実装、海外展開の取組について、有機的に連携しつつ、より効果的・実効的に推進していくための新たな戦略の策定に向け、
情報通信審議会技術分科会の下の技術戦略委員会(主査:相田 東京大学名誉教授)において、昨年11月より検討再開。
⚫ 通信事業者に加え、有識者・国際標準化関係者・ユーザ企業/省庁等の様々なステークホルダーからヒアリングを実施。
意見募集(4/13~5/13)等を経て、本年6月頃に情報通信審議会答申を予定。
技術戦略委員会 構成員
主査 相田 仁
東京大学 特命教授
主査
森川 博之
代理
東京大学 大学院 工学系研究科 教授
増田 悦子
九州工業大学 社会実装本部 未来思考実証センター
特任教授
(公社)全国消費生活相談員協会 理事長
秋山 美紀
慶應義塾大学 環境情報学部 教授
飯塚 留美
(一社)マルチメディア振興センター調査研究部 研究主幹
今井 哲朗
東京電機大学 工学部 情報通信工学科 教授
上條 由紀子
大柴 小枝子 京都工芸繊維大学 電気電子工学系 教授
長内 厚
国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構
第一宇宙技術部門 地球観測研究センター センター長
早稲田大学 大学院 経営管理研究科 教授
川添 雄彦
日本電信電話株式会社 代表取締役副社長
沖 理子
児玉 俊介
令和5年(2023年)
11月
12月
2月
3月
4月
5月
6月~
技術分科会
6/6
技術戦略委員会
11/7
12/7
12/20
検討再開
新田 隆夫
国立研究開発法人情報通信研究機構 理事
・NTT
・KDDI
・ソフトバンク ・楽天
平田 貞代
芝浦工業大学 大学院理工学研究科 准教授
東北大学大学院工学研究科技術社会システム専攻特任准教授
ヒアリング(国際展開等)
宮崎 早苗
(株)NTTデータ公共・社会基盤事業推進部シニア・スペシャリスト
宮田 修次
富士通(株)先端技術開発本部 エグゼクティブディレクター
山田 昭雄
日本電気(株)Corporate SVP 兼 研究開発部門長
ヒアリング(通信事業者)
・事務局(国際展開課)
・筑波大 立本教授 ・NICT
答申
答申案
報告書案
とりまとめ 5/29
1/19 1/30 2/8
論点整理
寺田 健二
(令和6年4月1日現在)
1月
総会
(一社)電波産業会 専務理事
(株)KDDI総合研究所 取締役執行役員副所長、
先端技術研究所長
日本放送協会 理事・技師長
小西 聡
令和6年(2024年)
意見募集
ヒアリング(関連する取組) (4/13~5/13)
報告書
とりまとめ
・(株)企 クロサカ氏 ・経産省
・文科省 ・角川アスキー
ヒアリング(利用者側)
・ソニー ・日本マイクロソフト
・東急不動産 ・MUFG
・防衛省 ・デジタル庁
ヒアリング(諸外国動向・国際標準化)
・FMMC 飯塚氏 ・事務局(通信規格課等)
・ITU-R SG5 前副議長 新氏
・情報通信技術委員会 吉野氏 等
9
資料2
資料51-1-2
情報通信審議会 最終答申(案)
Beyond 5G に向けた情報通信技術戦略の在り方
令和6年6月 18 日
目次
目次 ....................................................................................................................................................................... 1
第1章
Beyond 5G を取り巻く状況........................................................................................................ 3
1.1
検討の経緯 ........................................................................................................................................... 3
1.2
政府全体の政策動向......................................................................................................................... 7
1.3
1.4
1.5
1.2.1
政府戦略における Beyond 5G の位置付け .................................................................. 7
1.2.2
Beyond 5G の研究開発に関する基金の運用状況等 ................................................. 9
国際的な動向 ................................................................................................................................... 14
1.3.1
各国・各地域における動向............................................................................................ 14
1.3.2
多国間枠組の動向.............................................................................................................. 19
国際標準化動向 ............................................................................................................................... 22
1.4.1
我が国のビジョンの発信 ................................................................................................ 22
1.4.2
無線関係に関する動向..................................................................................................... 22
1.4.3
我が国の目指すネットワーク全体像に関する動向 .............................................. 24
Beyond 5G に係る取組の進展等 ............................................................................................... 25
1.5.1
通信事業者等による取組 ................................................................................................ 25
1.5.2
社会実装に向けた取組..................................................................................................... 27
1.5.3
海外展開に向けた取組..................................................................................................... 28
第2章
新たな戦略の基本的方向性 ..................................................................................................... 30
2.1
戦略目標の再確認及び新たな戦略の位置付け.................................................................... 30
2.2
新たに考慮すべき環境変化と課題等 ...................................................................................... 32
2.3
第3章
2.2.1
情報通信ネットワークの自律性や技術覇権を巡る国際的な動向 ................... 32
2.2.2
通信業界を巡る構造変化 ................................................................................................ 33
2.2.3
AI の爆発的普及 ................................................................................................................. 35
2.2.4
環境変化等を踏まえた Beyond 5G ネットワークの全体像 ............................... 37
新たな戦略において重視すべき視点 ...................................................................................... 39
2.3.1
業界構造等の変化の的確な把握とゲームチェンジ .............................................. 39
2.3.2
グローバルなエコシステムの形成・拡大 ................................................................ 40
2.3.3
オープン化の推進.............................................................................................................. 41
2.3.4
社会的要請に対する意識の強化 .................................................................................. 43
具体的な取組の方向性 .............................................................................................................. 46
3.1 各種取組を進めるに当たっての基本的な考え方 ................................................................. 46
1
3.2
3.3
3.4
第4章
3.1.1
現状の認識 ........................................................................................................................... 46
3.1.2
官民の役割整理 .................................................................................................................. 46
3.1.3
総合的な取組(各種取組の有機的な連携)の必要性.......................................... 47
研究開発に関する取組 ................................................................................................................. 48
3.2.1
民間企業による戦略的な開発に対する継続的な支援.......................................... 48
3.2.2
エコシステムの拡大に必要となる共通的な領域における技術開発の推進 . 49
3.2.3
基礎的・基盤的な研究力の確保 .................................................................................. 50
国際標準化に関する取組............................................................................................................. 53
3.3.1
民間企業による戦略的な標準化活動に対する支援 .............................................. 53
3.3.2
標準化に携わる人的資源の確保 .................................................................................. 55
3.3.3
情報収集・分析力の強化 ................................................................................................ 56
社会実装・海外展開に関する取組 .......................................................................................... 58
3.4.1
インフラ整備とエコシステム拡大に向けた各種取組.......................................... 58
3.4.2
海外市場の開拓・獲得に向けた各種政策支援 ....................................................... 59
3.4.3
国内の関連制度の整備..................................................................................................... 60
今後の取組..................................................................................................................................... 62
資料編 ................................................................................................................................................................ 64
2
第1章 Beyond 5G を取り巻く状況
1.1
検討の経緯
(1)中間答申における提言の概要
Beyond 5G は、5G の次世代の情報通信インフラとして、2030 年代のあらゆる産業や社
会活動の基盤となることが期待されていることを踏まえ、総務省は、2020 年1月から
「Beyond 5G 推進戦略懇談会」を開催して導入時に見込まれるニーズや技術進歩等を踏ま
えた総合戦略の策定に向けた検討を行い、同年6月、「Beyond 5G 推進戦略 -6G へのロー
ドマップ-」を公表した。
同戦略の策定以降、Beyond 5G を巡る国際的な開発競争は激化し、また、我が国の国際
競争力の強化や経済安全保障の確保、環境・エネルギー分野等の社会課題が顕在化してき
ており、Beyond 5G に向けて、研究開発や知財・国際標準化等の戦略の具体化と、産学官
による一体的な取組の必要性が高まってきていたことから、総務省は、2021 年9月 30 日
に「Beyond 5G に向けた情報通信技術戦略の在り方」について情報通信審議会に諮問し
た。
諮問を受け、情報通信技術分科会技術戦略委員会(以下「技術戦略委員会」という。)に
おいて、「Beyond 5G 推進コンソーシアム」等、産学官の活動、主要な企業、大学、国立研
究開発法人等、様々な関係者の取組や知見を共有しながら、研究開発や知財・標準化等の
技術戦略について審議を重ね、2022 年6月 30 日に「Beyond 5G に向けた情報通信技術戦
略の在り方」中間答申(以下「中間答申」という。)を取りまとめた。中間答申では、「研
究開発戦略」、「社会実装戦略」、「知財・標準化戦略」、「海外展開戦略」の4つの戦略を示
している。
①
研究開発戦略
中間答申では、「Beyond 5G 推進戦略」の研究開発戦略等を大幅にアップデートし、我
が国が、先端技術開発等を主導し、グローバルな通信インフラ市場でゲームチェンジャ
ーとなり、勝ち残るための戦略的な取組が必要であるとしており、図表1のとおり産学
官で取り組むべき Beyond 5G 研究開発の 10 課題を整理した上で、「日本の強み1」「技術
的難易度」「自律性確保」「国家戦略上の位置付け」「先行投資を踏まえた加速化の必要
性」の観点から、我が国が注力すべき Beyond 5G の3つの重点技術分野(オール光ネッ
1
中間答申では、Beyond 5G 関連の研究開発のうち、特にオール光ネットワーク、量子暗号通信、完全仮想化ネット
ワーク、オープンネットワーク(Open RAN)及び HAPS 活用において、我が国の産学官による研究開発が先行して
いるとしている。
3
トワーク関連技術、NTN 関連技術、仮想化ネットワーク関連技術)を特定した上で、研
究開発の加速化、予算の多年度化を可能とする枠組の創設を一体で取り組むこと等を提
言した。
図表 1
課題1
オール光ネットワーク技術
産学官で取り組むべき Beyond 5G 研究開発の 10 課題
課題2
オープンネットワーク技術
課題3
情報通信装置
・デバイス技術
課題4
ネットワーク
オーケストレーション技術
課題5
無線ネットワーク技術
◼ 情報通信装置・デバイス ◼ ユーザニーズに応じて
◼ 有線ネットワークをオー ◼ ベンダーロックイン
柔軟にネットワーク
レベルで光技術を導入し、
ル光化し、超高速大容量、 リスクから脱却し、公正
リソースを割当て、
超低遅延かつ超低消費電
なBeyond 5G市場の競
超低遅延なサービスを超
サービスを提供
力な通信インフラを実装
争環境を実現
低費消費電力で提供
◼ 基地局から端末への
超高速大容量な高周波
無線通信を効率的かつ
確実に接続
超低消費電力
超高速・大容量・超低遅延
超高速・大容量・超低遅延
自律性
超安全・信頼性
超低消費電力
超高速・大容量・超低遅延
自律性
超多数接続
超低消費電力
光の処理
電気の処理
課題6
NTN(HAPS・
衛星ネットワーク)技術
課題7
量子ネットワーク技術
課題8
端末・センサー技術
課題9
E2E仮想化技術
課題10
Beyond 5Gサービス
・アプリケーション技術
◼ ミリ波、テラヘルツ波を ◼ 端末を含むネットワーク ◼ Beyond 5Gの能力を
◼ 量子の性質を利用した
◼ 日本国土のカバー率
の仮想化により、エンド
最大限に発揮し、様々な
暗号通信、ネットワーク
超高速大容量なモバイル
100%、陸海空・宇宙の
ツーエンドでサービス
社会課題の解決や人々の
により絶対安全な通信を
通信用途に活用
エリア化を実現
品質を保証
豊かな生活を実現
実現
◼ 災害時のインフラ冗長化
超高速・大容量・超低遅延
◼ 継続進化可能なソフト
拡張性
ウェア化
超安全・信頼性
拡張性
超安全・信頼性
超多数接続
②
自律性
超安全・信頼性
知財・標準化戦略
重点技術分野を中心に、オープン&クローズ戦略により国際標準化と知財取得を推進
していくとし、オープン(協調)領域については、多様なビジネス創出につながるオー
プンアーキテクチャの促進を基本として、ネットワークアーキテクチャとキーテクノロ
ジーの国際標準化を有志国とも連携して推進する一方、クローズ(競争)領域について
は、コア技術の権利化・秘匿化等を図り、我が国の競争力の源泉としていくことを提言
した。
③
社会実装戦略
社会実装戦略として、上記の重点技術分野の成果を 2025 年以降順次、国内ネットワ
ークに実装し市場投入していくとともに、大阪・関西万博等も含め成果を産学官一体で
グローバルに発信していくことを提言した。
④
海外展開戦略
重点技術分野の成果について早期に国内社会実装を進め、技術の有用性をいち早く世
界に発信してグローバルデファクト化を推進するとともに、主要なグローバルベンダー
4
とも戦略的に連携していくことにより、世界の通信キャリアへの導入も促していくこと
を提言した。
中間答申では、この4つの戦略を一体で進めることで、Beyond 5G に向けた研究開発や
社会実装を強力に加速化していくことを提言した(図表2)。
図表 2
「Beyond 5G に向けた情報通信技術戦略」中間答申の概要
(2)検討再開の経緯
2022 年6月の中間答申取りまとめ以降、本章 1.2 以降で後述するとおり、同答申等を踏
まえた政府や民間事業者の取組が進展してきている。
例えば、同答申において提言した、研究開発を加速化するための予算の多年度化を可能
とする枠組として、国立研究開発法人情報通信研究機構(以下「NICT」という。)に新た
に恒久的な基金を設置するため、国立研究開発法人情報通信研究機構法及び電波法の一部
を改正する法律(令和4年法律第 93 号)が同年 12 月に成立し、これを受けて、2023 年3
月に NICT に設置された研究開発基金の運用が本格化してきている。また、民間では、日
本電信電話株式会社(以下「NTT」という。)が提唱する IOWN(Innovative Optical and
Wireless Network)構想について、2019 年に、NTT、インテル、ソニーが設立した同構想
に関する業界フォーラム「IOWN Global Forum」の国内外の参加団体数が順調に増加し、
5
日本の通信業界としても、楽天モバイルに加え、2023 年3月には KDDI が参加する等、オ
ールジャパンとしての取組になりつつある。
また、国際的には、2023 年4月に開催された G7 群馬高崎デジタル・技術大臣会合にお
いて「Beyond 5G/6G 時代における将来ネットワークビジョン」が合意される等、Beyond
5G がグローバルに検討すべき政策課題の一つとして位置付けられるようになった。
その一方で、Beyond 5G を巡り、市場獲得を目指した研究開発及び国際標準化における
様々な取組が拡大しており、我が国の国際競争力を確保する必要性がますます高まってき
ていることや、第2章で後述するとおり、情報通信ネットワークの自律性や技術覇権を巡
る国際的な動向、通信業界を巡る構造変化、AI の爆発的普及といった新たな環境変化や課
題等が生じているところであり、これらを踏まえ、次世代の情報通信インフラとしての
Beyond 5G の実現に向けた取組の方向性を今一度問い直す必要に迫られている。
こうした国内外の様々な動向を踏まえ、技術戦略委員会では、Beyond 5G の研究開発・
国際標準化、社会実装、海外展開の取組について、有機的に連携しつつ、より効果的・実
効的に推進していくための新たな戦略の策定に向けて 2023 年 11 月より検討を再開した。
6
1.2
1.2.1
政府全体の政策動向
政府戦略における Beyond 5G の位置付け
(1)経済政策における Beyond 5G の位置付け
現在、政府では、「新しい資本主義」の旗印の下、我が国が直面する社会課題に正面から
取り組むとともに、その取組自体を成長のエンジンに変える成長戦略を進めてきた。足元
では、賃金と物価が好循環する「新たなステージ」への光が差しつつあるという現状認識
の下、このチャンスを活かし、脱炭素やデジタル等攻めの投資の拡大によって消費と投資
の力強い循環に繋げていくとしている。この点、DX は、新しい付加価値を生み出す源泉で
あり社会的課題を解決する鍵でもあるため、DX 分野の国内投資の拡大は、持続的な経済成
長を実現する観点からも重要である。
Beyond 5G は、このような DX を支える次世代の情報通信インフラとして、「経済財政運
営と改革の基本方針」(「骨太方針」)、「総合経済対策」、「新しい資本主義のグランドデザイ
ン及び実行計画」といった政府の経済政策にも位置付けられており、これまで本審議会で
検討を進めてきた Beyond 5G の早期実現に向けた新たな情報通信技術戦略の策定及びこれ
に基づく研究開発・国際標準化や社会実装・海外展開の加速化等の取組を国家戦略として
強力に進めていく方針が示されている。
(2)「デジタル田園都市国家構想」における Beyond 5G の位置付け
我が国では、世界に類を見ない急速なペースで人口減少・少子高齢化が進行しており、
生産年齢人口の減少による経済成長の制約や、地方の過疎化・地方産業の衰退等が大きな
課題となっている。さらに、新型コロナウイルス感染症の拡大による観光業への打撃や地
域コミュニティの弱体化等、地方の経済・社会は大きな影響を受けている。他方、感染症
の拡大により、デジタル・オンラインの活用が進み、テレワーク等が普及したことで、多
地域居住・多地域就労が現実のものになり、経済社会の分極化の重要性を再認識させるこ
ととなった。
このような中、デジタル実装を通じて地方が抱える課題を解決し、誰一人取り残されず
全ての人がデジタル化のメリットを享受できる心豊かな暮らしを実現するデジタル田園都
市国家構想の実現に向けて不可欠な、光ファイバ、5G、データセンター/海底ケーブル等
のデジタル基盤の整備に取り組むため、総務省は、2022 年3月 29 日に「デジタル田園都
市国家インフラ整備計画」を策定、さらに、2023 年4月 25 日には、計画策定後の取組の
進捗及び社会情勢の変化を踏まえ、「デジタル田園都市国家インフラ整備計画(改訂版)」
を策定した。
その中で、総務省は、①固定ブロードバンド(光ファイバ等)やワイヤレス・IoT イン
フラ(5G 等)の整備促進等、②データセンターの分散立地や我が国の国際的なデータ流通
7
のハブ機能強化に向けた国際海底ケーブルの多ルート化の促進、国際海底ケーブルや陸揚
局の安全対策の強化等、③HAPS や衛星通信等の非地上系ネットワーク(NTN)の社会実
装の推進、④Beyond 5G に関する社会実装・海外展開を見据えた研究開発の重点的な支援
に取り組むこととしている。
また、「デジタル田園都市国家構想」の推進等のための政府全体のデジタル政策について
は、デジタル田園都市国家構想実現会議、デジタル社会推進会議において、関係府省によ
る連携・協力のもとで検討・具体化が進められ、2022 年6月7日に「デジタル田園都市国
家構想基本方針」が閣議決定され、さらに当該基本方針を踏まえ、デジタル田園国家構想
が目指すべき中長期的な方向について、達成すべき重要業績評価指標(KPI)を併せて示す
とともに、構想の実現に必要な施策の内容やロードマップ等を示すため、「デジタル田園国
家構想総合戦略」が 2022 年 12 月 23 日に閣議決定された。また、我が国がデジタル化を
強力に進めていく際に政府が迅速かつ重点的に実施すべき施策を明記した「デジタル社会
の実現に向けた重点計画」が 2023 年6月9日に閣議決定されている。
(3)科学技術政策における Beyond 5G の位置付け
2021 年3月 26 日に閣議決定された「第6期科学技術・イノベーション基本計画」にお
いては、サイバー空間とフィジカル空間を高度に融合させたシステムにより、経済発展と
社会的課題の解決を両立する人間中心の社会である Society 5.0 の実現に向け、「国民の安
全と安心を確保する持続可能で強靭な社会」や「一人ひとりの多様な幸せ(well-being)
が実現できる社会」の実現を目指すこととしており、サイバー空間とフィジカル空間の融
合による持続可能で強靱な社会への変革を進めるための科学技術・イノベーション政策と
して、Beyond 5G、宇宙システム、量子技術、半導体等の次世代インフラ・技術の整備・
開発やカーボンニュートラルに向けた研究開発を推進するとともに、AI、量子、宇宙、環
境エネルギー等に係る国家戦略の見直し・策定等を進めていく方向性が示されている。
当該基本計画に基づき、2023 年における実行計画として位置付けられる「統合イノベー
ション戦略 2023」が 2023 年6月9日に閣議決定されており、Beyond 5G については「研
究開発を推進し、今後5年程度で関連技術を確立するとともに、2025 年以降順次の社会実
装・海外展開を目指す」こととされている。
(4)「半導体・デジタル産業戦略」における Beyond 5G の位置付け
経済産業省は、2021 年6月に発表、2023 年6月に改定した「半導体・デジタル産業戦
略」において、2030 年の Beyond 5G のオール光時代を見据えた光エレクトロニクス・デ
バイス、光電融合プロセッサの開発を進めるとしている。
これに基づき、2024 年1月、国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構
(NEDO)が実施しているポスト 5G 情報通信システム基盤強化研究開発事業において、ポ
8
スト 5G において必要となる先端半導体製造技術の開発に係る3件の開発テーマについ
て、合計約 450 億円を上限として支援を行うことを決定した。
1.2.2
Beyond 5G の研究開発に関する基金の運用状況等
(1)基金設置の経緯等
総務省が「Beyond 5G 推進戦略」を策定した 2020 年当時、Beyond 5G については、諸
外国において研究開発等の取組が活発化してきており、我が国においても、Beyond 5G の
早期かつ円滑な導入や国際競争力強化が必要とされていた。これを踏まえ、2021 年1月、
NICT に公募型研究開発のための時限的な基金(革新的情報通信技術研究開発推進基金。以
下「旧基金」という。)を創設する国立研究開発法人情報通信研究機構法の一部を改正する
法律(令和3年法律第1号)が国会で成立し、同年3月以降、総務省では、旧基金等2によ
り実施する Beyond 5G 研究開発促進事業(以下「旧基金等事業」という。)を通じて、
Beyond 5G の主に基盤的な要素技術の確立を目的とした研究開発を推進してきた。
図表 3
基金事業の目的・概要
その後、国際的な開発競争の一層の激化等を踏まえ、情報通信審議会において、研究開
発と社会実装の加速化を図る観点から、研究開発予算の多年度化を可能とする枠組の創設
等を含めた中間答申を示し、2022 年 10 月 28 日に閣議決定された「物価高克服・経済再生
実現のための総合経済対策」において、Beyond 5G(6G)をはじめとする革新的な情報通
信技術の研究開発推進のための恒久的な基金を造成することが決定された。さらに、2022
2
旧基金(令和2年度第3次補正予算:研究開発期間は 2022 年度末まで)及び単年度予算措置(令和3年度補正予
算、令和4年度当初予算(電波利用料財源)
)
。
9
年 12 月には国立研究開発法人情報通信研究機構法及び電波法の一部を改正する法律(令和
4年法律第 93 号)が成立し、2023 年3月、NICT に恒久的な基金(情報通信研究開発基
金)が設置された(図表3)。
(2)Beyond 5G 研究開発促進事業について
旧基金等事業は、Beyond 5G の実現に必要な要素技術について、民間企業や大学等への
研究開発を実施し、事業化を目的とした要素技術の確立や国際標準への反映等を通じて、
Beyond 5G における我が国の国際競争力強化等を図ることを目指してきた。本事業では、
合計 78 課題・81 件の研究開発に取り組んでおり3、これらの成果について、国内外への特
許出願、外部発表、標準化提案等を行っている。
NICT は、2024 年3月、国立研究開発法人情報通信研究機構法(平成 11 年法律第 162
号)附則第 14 条第3項に基づき、2020 年度から 2022 年度までにおける旧基金に係る業
務の成果に関する報告書を作成し、概要を公表しており、旧基金により、国際的な研究開
発動向に沿った研究開発が幅広く推進されている4とともに、早期の実用化や標準化等への
期待度及び革新性や先進性等の高い研究開発が着実に進んだ5ものと評価している。
(3)革新的情報通信技術(Beyond 5G(6G))基金事業の実施に係る検討
革新的情報通信技術(Beyond 5G(6G))基金事業(以下「新基金事業」という。)で
は、Beyond 5G について、国際競争力の強化や経済安全保障の確保を図るため、研究開発
自体を目的化する発想や国内市場中心の発想から脱却して、グローバルな視点に立って世
界で活用されること(いわゆる「グローバル・ファースト」。2.3.2 で後述)を念頭に置
3
旧基金(令和2年度第3次補正予算)により、テラヘルツ波、宇宙ネットワーク関連技術を中心に計 47 課題・49 件
(基幹課題:6課題・8 件、一般課題:20 課題・件、国際共同研究型:3課題・件、シーズ創出型:18 課題・件)の
研究開発を実施。研究開発補助金(令和3年度補正予算)により、オール光ネットワーク、光電融合技術を中心に計
20 課題・件(基幹課題:4課題・件、一般課題:6課題・件、国際共同研究型:2課題・件、シーズ創出型:8課
題・件)の研究開発を実施。研究開発補助金(令和4年度当初予算(電波利用料財源)
)により、Open RAN 無線通信
技術を中心に、計 11 課題・12 件(基幹課題:4課題・5 件、一般課題:3課題・件、シーズ創出型:4課題・件)
の研究開発を実施。
4
ITU-R 報告書における分類をベースに、主要な国・地域の Beyond 5G/6G 関連組織が公表している白書等に基づき整
理した国際的なトレンド(技術 26 項目等)及び主要なトレンド(多くの国・地域で着目されていると考えられる技
術 12 項目等)について分析した結果、旧基金による研究開発により、国際的なトレンドにおける技術項目の約7割
(19/26 項目)
、主要なトレンドにおける技術項目の約9割(11/12 項目)をカバーしており、基金による研究開発が
国際的な研究開発動向と概ね合致していることが確認されている。また、旧基金以外による研究開発を含めると、国
際的なトレンド及び主要なトレンドにおける技術項目を全てカバーしていることが確認されている。
5
令和4年度末までに外部評価が行われた計 46 件の研究開発プロジェクトのうち 43 件が高い評価(S 又は A 評価)を
得たことに加え、複数プロジェクトが早期の実用化や標準化等への期待度や研究内容の革新性や先進性等の観点から
特に高い評価を受けた。
10
き、我が国発の技術を確立し、社会実装・海外展開を志向した戦略的なプロジェクトを重
点的に支援することを主たる目的としている6。
その推進にあたっては、研究開発に係る技術面評価に加え、社会実装・海外展開を見据
えた市場や経営・ビジネスの観点等、事業面から見た評価及び進捗確認・助言等(モニタ
リング)を適切に行うため、技術戦略委員会の下に経営やビジネス等の知見を有する外部
有識者により構成される「革新的情報通信技術プロジェクト事業面評価等ワーキンググル
ープ」(以下「事業面 WG」という。)を設置し7、事業面からの適切な評価やモニタリング
の在り方等について検討を行い、2023 年3月に「革新的情報通信技術(Beyond 5G
(6G))基金事業に係る事業面からの適切な評価の在り方等について」(以下「事業面 WG
事業面評価に関する取りまとめ」という。)を取りまとめた(図表4)。
さらには、令和5年度補正予算により、新たにオール光ネットワークの事業者間連携の
ための共通基盤技術の開発及び国際標準化活動に対する支援等のために、基金が拡充され
たことを踏まえ、オール光ネットワークの業界横断的な共通基盤技術の研究開発につい
て、同委員会に光ネットワーク技術等の知見を有する外部有識者により構成される「オー
ル光ネットワーク共通基盤技術ワーキンググループ」(以下「共通基盤技術 WG」とい
う。)を設置し、オール光ネットワーク共通基盤技術のプロジェクトに係る成果の幅広い活
用や普及を図るための研究開発の方向性等の検討を行い、2024 年5月に取りまとめた。
また、戦略的なプロジェクトと一体で取り組むべき国際標準化活動への支援について、
その支援対象の決定等に係るプロセスや審査の要件、支援対象決定後のモニタリングの在
り方等について事業面 WG で検討を行い、2024 年3月に「革新的情報通信技術 Beyond 5G
(6G))基金事業による国際標準化活動に対する支援の在り方について」(以下「事業面
WG 国際標準化活動支援に関する取りまとめ」という。)を取りまとめた。
6
電波利用料財源による研究開発については、電波法(昭和 25 年法律第 131 号)に規定する電波の有効利用に資する
技術の確立を目指すこととされている。
7
2024 年2月、
「革新的情報通信技術プロジェクト WG」より名称変更。WG の取りまとめ内容は、情報通信審議会の
情報通信技術分科会技術戦略委員会に報告。
11
図表 4
事業面 WG 事業面評価に関する取りまとめの概要
<事業面からの評価項目>総務省及びNICTにおいては、下表に沿って方針等を策定することが適当(「5W1H」の明確化)
評価項目
①市場機会の認識
「Where」(どこで(=誰に対して))
「When」 (いつ(頃))
②事業内容、競争優位性
「What」(何を)
「Why」 (なぜ)
③経営コミットメント・
事業計画・推進体制
「Who」(誰が)
「How」(どうやって)
※今後実施する予定の取組や構想段階の
内容を含む。
主なポイント
⚫ グローバルでのターゲット市場の予測・分析を行い、市場機会を適切に認識できているか。
⚫ 想定する市場の規模、成長性は十分に見込まれるか。その時期は妥当か。
⚫ 社会、市場、顧客(ニーズ)が存在するか。特にそのニーズを満たすことで資金の流れを通じた事業化や価値獲得に繋が
ることが具体的に想定できるか。具体的な想定顧客は誰か。
⚫ 事業の海外展開可能性、収益性は十分にあるか。
⚫ 研究開発段階から、事業化・ビジネス・海外展開を前提とした研究開発の計画・内容となっているか。
⚫ 提供する製品・サービスは既存の製品・サービスに比して十分な便益を提供できるか。
⚫ 提供する製品・サービスは競争力・優位性を有しているか、又は有すると期待されるか。
それには持続性があるか。競争優位性を持つための仲間作りができているか。競合他社の分析ができているか。
⚫ 知的財産の活用や標準化等の方策は有効・合理的なものになっているか。
⚫ 経営者自身の関与、経営戦略上の位置づけがあり、十分な経営資源を投入・配置しているか。
⚫ 研究開発から事業化までを円滑に進め、運用するための社内体制(各部門の連携)及び協業先を構築できているか。
⚫ 事業フィージビリティを確認するための調査検討を実施するとともに、その後の周辺環境の変化に対して、柔軟に事業計画の
見直しを行う体制が整っているか。営業活動への計画・投資があるか。
⚫ 事業化時のための商流やサプライチェーンの確保等、市場獲得に向けたビジネスモデルを構築できているか。
⚫ 研究開発成果の事業化後の競争性の維持、事業拡大に至るまでの資金計画、投資・投資回収の計画や想定が妥当か。
<モニタリングに当たっての留意点(視点)>
採択時の評価のみならず、採択後においてもモニタリングを実施し、事業・計画の見直し等を行うことが極めて重要。次のような視点に基づき、進捗確認・助言を行うことが適当。
・ 海外展開における不確実性も考慮した、柔軟性をもった進捗管理
・ 研究開発のステージ(可能性を追求する前半か、予見性が高い後半か等)を意識してサポートの仕方を変える重要性
・ 社会・市場の環境変化に対応した柔軟な軌道修正等が可能な仕組みの構築 等
(4)革新的情報通信技術(Beyond 5G(6G))基金事業の実施
新基金事業は、総務省が 2023 年3月に策定した「革新的情報通信技術(Beyond 5G
(6G))基金事業 基金運用方針」(以下「基金運用方針」という。)に基づき、NICT にお
いて3つのプログラムを実施しており(図表5)、2024 年 3 月末までに、重点支援対象で
ある「社会実装・海外展開志向型戦略的プログラム」で実施するプロジェクト等を 17 件採
択8する等(図表6)、604 億円の研究開発投資を行っている(図表7)。
「社会実装・海外展開志向型戦略的プログラム」では、我が国が強みを有する技術分野
を中心として、社会実装・海外展開に向けた戦略とコミットメントをもったプロジェクト
を重点的に支援することとしており、事業面 WG 事業面評価に関する取りまとめを踏ま
え、NICT において外部専門家による評価部会を設け社会実装・海外展開を見据えた市場や
経営・ビジネスの観点等、事業面から見た評価を行うほか、プロジェクトの実施期間中は
事業面 WG においても事業面からのモニタリングを毎年度行い、プロジェクト終了後も必
要に応じて事業面からのモニタリングを行うこととしている。
8
社会実装・海外展開志向型戦略的プログラムで 15 件、電波有効利用研究開発プログラムで2件の計 17 件を採択。そ
の他、要素技術・シーズ創出型プログラムでは 12 件を採択。
12
図表 5
図表 6
新基金事業で実施するプログラムの概要
新基金事業で 2023 年度に採択を決定した主な新規プロジェクト
図表 7
2023 年度における新基金の執行状況
13
1.3
1.3.1
国際的な動向
各国・各地域における動向
Beyond 5G(6G)については、世界的に共通する明確な定義等はいまだ定まっていない
ものの、2018 年にフィンランドで立ち上げられた 6G Flagship プログラムを皮切りに、各
国各地域において 6G の実現に向けた様々な団体・プロジェクトが立ち上げられ、ビジョ
ン、ユースケース、研究開発課題等をまとめたホワイトペーパーが発表されている。(図表
8)
図表 8
各国・地域における 6G に関するホワイトペーパーの主な焦点
こうした中、各国・各地域において、国際競争力の強化等に向けて次々と戦略的な研究
開発計画の具体化や研究開発投資の実施が表明されている。公的研究開発投資の規模で見
ると、例えば米国では 3,780 億円、欧州連合(EU)では 1,440 億円、韓国では 732 億円と
いった大規模な投資が表明されている。さらに、必ずしも有力なベンダーを国内に抱えて
いない国や新興国を含めた各国政府においても、6G を国家戦略に位置付け、研究開発投資
を行う動きが活発化しており、このような 6G 市場での主導権確保を目指す各国の取組は
今後も拡大・進展していくことが見込まれる。(図表9)
諸外国における Beyond 5G に係る主な推進団体、取組、動向等を以下に示す。
14
図表 9
各国・地域における 6G に関する公的研究開発投資
(1)米国
民間の 6G 推進団体「Next G Alliance」が中心となって 6G の研究開発を推進する一方
で、全米国立科学財団(NSF)も積極的に支援を行っている。また、米国政府において
は、2021 年4月の日米首脳会談で次世代移動体通信網等へ 25 億ドル(約 3,780 億円)の
投資を表明するとともに、2022 年8月に成立した「CHIPS 及び科学法(CHIPS and Science
Act)」に基づき、5G 及び次世代無線の開発支援のために 15 億ドル(約 2,270 億円)のイ
ノベーション基金の設立や、国立標準技術研究所(NIST)に 30 億ドル(約 4,530 億円)の
資金提供を行っている。
①
Next G Alliance
2020 年 10 月、北米の通信業界団体である電気通信産業ソリューション連合(ATIS)
が中心となって立ち上げた 6G 推進団体であり、2022 年2月、北米が 6G 研究開発にお
いて世界的な主導権を確保するための産学官連携等に係る目標を盛り込んだ「Roadmap
to 6G」を発表している。
②
PAWR(Platforms for Advanced Wireless Research)
2017 年3月、NSF が発表した4都市で構築する高度無線通信研究開発プラットフォー
ムであり、NSF 及び参加した約 30 企業は、7年間で計1億ドル(約 151 億円)を資金
提供している。
③
RINGS(Resilient and Intelligent NextG Systems)
2021 年4月、NSF が立ち上げた 6G 研究開発プロジェクトであり、NIST、国防総省
(DOD)及び9企業が参画している。2022 年4月、NSF は、研究テーマ 37 件に総額
4,350 万ドル(約 66 億円)を資金提供することを発表した。
15
(2)EU
欧州委員会(EC)による研究開発支援枠組「Horizon Europe」の中で、民間の 6G 推進
団体である 6G-IA(6G Industry Association)と EC が共同事業として SNS JU(Smart
Networks and Services Joint Undertaking)を設立し、6G 研究開発について、2021 年から
2027 年までの間に9億ユーロ(約 1,440 億円)を投資することを決定した。さらに民間資
金を加え、官民で計 20 億ユーロ(約 3,200 億円)の資金を確保している。
①
6G-IA
2021 年6月、欧州の次世代ネットワークとサービスに関する産学界が中心となって立
ち上げた 6G 推進団体であり、技術的・社会的・政策的及びビジネス的な観点から、6G
研究に関連する主要な分野を説明する「European Vision for the 6G Network
Ecosystem」を発表した。
②
SNS JU
5G 及び 6G における欧州の産業的リーダーシップを確保することを目的に、欧州理事
会規則 2021/2085 によって 2021 年 11 月に設立された。SNS JU は、グリーン及びデジ
タル移行を強化するための 10 の「欧州パートナーシップ」の一部として、法的に認めら
れた資金調達機関として機能し、2021 年から 2027 年まで9億ユーロの EU 予算が拠出
される。SNS JU の主要な使命は、6G における欧州の技術主権の促進及び欧州における
5G 展開の強化とされている。
③
Hexa-X-II プロジェクト
2022 年 10 月、民間が主導する 6G 研究開発推進フラグシッププロジェクト(2023 年
~2025 年)として設立され、ビジョン・ユースケース・基礎技術開発に焦点を当てた
「Hexa-X」の流れを引き継ぐとともに、延べ 44 組織が参加し、システム化や標準化も
視野に入れて 6G 研究開発を推進している。
(3)フランス
フランス政府は、5か年の研究開発プロジェクト「フランス 2030」の枠組の中で、6G
研究開発に対して 2.3 億ユーロ(約 368 億円)の投資を表明しており、民間資金を加えて
官民で計 4.1 億ユーロ(約 656 億円)の投資を計画している。また、公的学術機関である
IMT(Institut Mines-Télécom)を、特に標準化の協力を促進する「France 6G プラットフォ
ーム」を構築する機関に選定し、6G に取り組む産業界と学術界を結びつけている。
16
(4)ドイツ
ドイツ政府は、6G 研究開発に対して 2021 年から 2025 年までの間に最大7億ユーロ
(約 1,120 億円)を投資することを表明している。
①
6G 研究ハブ
2021 年6月、ドイツ政府は、決定している最大7億ユーロの投資のうち、2.5 億ユー
ロ(約 400 億円)により、国内4か所に 6G 研究ハブを構築したことを発表した。研究
ハブは、6G 技術の科学的・技術的基盤等の研究拠点として、フラウンホーファー通信研
究所をはじめとする大学や研究機関が調整機関として活動している。
②
6G-ANNA(6G-Access, Network of Networks, Automation & Simplification)
2022 年7月、ドイツ政府が立ち上げ、民間が主導する 6G 産業プロジェクトの一つで
あり、企業及び研究機関の計 29 組織が参画し、6G モバイル通信の開発・規格化・実装
を推進している。
(5)フィンランド
フィンランドでは、世界に先駆けて 6G に関する研究開発プロジェクト「6G Flagship」
を大学主導で立ち上げ、6G 研究開発に対して8年間(2019 年~2026 年)で 2.5 億ユーロ
(約 400 億円)の投資を予定している。加えて、持続可能な産業・社会に資する 6G 技術
等の新たな価値を提供する「6G Bridge」を開始し、6G 研究イノベーションに対して4年
間(2023 年~2026 年)で 1.3 億ユーロ(約 208 億円)の投資を計画している。
①
6G Flagship
2018 年5月、政府系の研究開発投資機関であるフィンランドアカデミーが立ち上げ、
主管組織に選定されたオウル大学が主導する 6G 研究開発プロジェクトであり、50 以上
の国籍で 400 名以上の研究者が従事している。また、2019 年9月、世界初の 6G 白書
「Key Drivers and Research Challenges for 6G Ubiquitous Wireless Intelligence」を発表
し、加えて、2022 年6月、要素技術やユースケース等、全 12 分野の白書を公表した。
②
6G Bridge
2023 年2月、政府系イノベーション投資機関であるビジネスフィンランドが立ち上げ
た主に企業等を対象に助成を行うプロジェクトであり、6G の研究イノベーションにおけ
るエコシステムを主導するため、異なるプレイヤー間の協力拡大等を目的としている。
③
6G Finland
フィンランド国内の 6G 専門知識を有する研究開発機関、ビジネスフィンランド及び
フィンランドアカデミーが連携し、国内外の 6G 議論へ積極的に参加するための窓口と
17
して組織された。フィンランドの 6G ノウハウを世界に提示するとともに、新たな国際
的なパートナーシップの構築を推進するネットワークとして機能している。
(6)英国
2023 年4月、英国政府は「無線インフラ戦略」を発表し、英国が 6G で最先端に位置付
けられるために、6G 研究開発に対して最大1億ポンド(約 184 億円)の投資を表明した。
加えて、2023 年 10 月、英国政府は、国内の次世代通信技術の開発を支援するため、
「UKRI Technology Missions Fund」へ 7,000 万ポンド(約 129 億円)を投資することを発
表した。本投資の決定は、電気通信に関するグローバル連合(GCOT:Global Coalition on
Telecommunications)(1.3.2 で後述)への英国の参加と同時に発表されており、本投資の
一部は英国による GCOT への貢献にも活用される。
①
6GIC(6G Innovation Centre)
6GIC は、2020 年 11 月、サリー大学により設立され、物理世界と仮想世界を統合する
高度な電気通信工学に焦点を当てた研究を実施し、70 以上の組織が参加している。
②
UKTIN(UK Telecoms Innovation Network)
2022 年 10 月、英国政府は、ベンダー多様化戦略を推進するための予算である「Open
Network R&D Fund」から 1,000 万ポンド(約 184 億円)を拠出し、国内の 6G 通信イノ
ベーションエコシステムを整備するため、産学にとって情報やアイディアのハブとなる
団体として UKTIN を設立した。
③
UKTL(UK Telecoms Lab)
2022 年 12 月、英国政府が 8,000 万ポンド(約 147 億円)を投じ、5G/6G 機器の研究
開発及び試験のための施設「UKTL(UK Telecoms Lab)」を設立することを発表し、英国
国立物理学研究所(NPL)が運用している。
(7)中国
2022 年1月、中国政府は、「第 14 次五か年計画」の一環として、「6G 技術の研究開発へ
の支援を強化し、6G 国際標準化の推進に積極的に参加する」ことが明記された「デジタル
経済計画」を発表する等、積極的に 6G 研究開発に取り組んでいるが、具体的な投資額は
公開されていない。
①
IMT-2030(6G)推進グループ
2019 年6月、中国政府が 6G 技術研究開発推進作業部会として設立し、次世代通信の
研究開発を進めることを表明している。2021 年6月には、欧州や韓国の企業とも連携
18
し、他国各組織の白書を包括する「6G Vision and Candidate Technology」白書を公表し
た。
(8)韓国
韓国政府は、他国・組織の計画よりも2年程度早い 2028 年に 6G ネットワークの商業化
を目指すことを表明している。2020 年8月には、研究開発資金と標準特許確保戦略をパッ
ケージで支援する韓国政府全体の「6G R&D 推進戦略」を発表した。2021 年6月には、本
戦略に基づく「6G 研究開発実行計画」を発表し、2025 年までに 2,200 億ウォン(約 244
億円)を投資するとしている。また、2023 年8月、「6G 産業技術開発事業」(2024 年~
2028 年)を立ち上げ、本格的に 6G ネットワークの商用化技術等を開発する計画として、
4,400 億ウォン(約 488 億円)の予算を計上している。
①
6G フォーラム
2023 年5月、発足から 10 周年を迎えた官民学共同の 5G フォーラムが 6G フォーラム
として再発足したものであり、次世代通信技術開発の主導的勢力となって韓国国内の
ICT 産業の育成を通じて経済成長に貢献することを目指している。
(9)インド
2023 年3月、インド政府は、「Bharat 6G ビジョン」を発表し、1,000 億ルピー(約
1,820 億円)の研究開発資金を準備予定とする等、急速に存在感を増している。
①
Bharat 6G Alliance
2023 年7月、インド政府は、6G のニーズを捉え、研究開発を推進するための産学官
の合同組織として「Bharat 6G Alliance」の立ち上げを発表した。発足発表に先立ち、同
年6月に開催された米印首脳会談において、5G/6G や Open RAN 等の次世代通信技術研
究開発のための合同タスクフォースを Next G Alliance と協力して主導することが発表さ
れた。
1.3.2
多国間枠組の動向
近年、通信分野の経済安全保障上の重要性に鑑み、Beyond 5G を含む情報通信インフラ
自体が多国間枠組における外交課題として取り上げられている。
例えば、5G については、2022 年5月の日米豪印(クアッド)首脳会合の機会に署名さ
れた「5G サプライヤ多様化及び Open RAN に関する協力覚書」等を踏まえて、米国をは
じめとした同志国と連携しながら、グローバルなデジタルインフラの安全性・信頼性確保
に向けた取組を進めているところである。
19
こうした動きは、グローバルサウスの台頭や米中対立、ウクライナ情勢等、急激に変化
する国際的な社会経済情勢の下、今後ますます進展・拡大する可能性があり、我が国とし
ても、我が国の技術やサービスが広く国際的に受け入れられる環境整備の必要性に留意し
ながら対応していくことが求められている。
Beyond 5G に関する主な多国間枠組の動向を以下に示す。
(1)G7 デジタル・技術大臣会合
社会経済活動のグローバル化・デジタル化により国境を越えた情報流通やビジネス・サ
ービスが進展する中で、我が国が議長国を務めた 2016 年4月の G7 香川・高松情報通信大
臣会合が発端となり、G7 の枠組でもデジタル経済の発展に向けた政策等について活発な議
論が行われている。
2023 年には我が国が G7 の議長国を務め、同年4月の G7 群馬高崎・デジタル技術大臣
会合においては、①「越境データ流通及び信頼性あるデータの自由な流通の促進」、②「安
全で強靭なデジタルインフラ構築」、③「自由でオープンなインターネットの維持・推
進」、④「経済社会のイノベーションと新興技術の推進」、⑤「責任ある AI と AI ガバナン
スの推進」、⑥「デジタル市場における競争政策」の6テーマに関して議論を行い、5つの
附属書を含む「G7 群馬高崎デジタル・技術閣僚宣言」が採択される等、デジタル経済に関
するルールづくりに向けた国際的議論に積極的に貢献している。
図表 10
G7 デジタル技術・大臣会合閣僚宣言
「安全で強靭なデジタルインフラ構築」に関する附属書(要約)
20
Beyond 5G については、上記②「安全で強靭なデジタルインフラ構築」等において議論
を行い、同閣僚宣言において、我が国が目指す Beyond 5G(6G)のビジョンを踏まえた形
で無線のみならず有線も含めた次世代ネットワークの将来ビジョンを策定し、安全で強靭
なデジタルインフラの構築に向けた G7 アクションプランの合意を得た(図表 10)。
その後、イタリアが議長国となった 2024 年3月の G7 産業・技術・デジタル大臣会合で
は、2023 年の G7 ビジョンを踏まえて衛星等の非地上系ネットワーク(NTN)に関する議
論が深められ、これらが安全で強靱な ICT エコシステムの重要な要素であるとの認識が同
閣僚宣言において示された。
(2)6G に関する原則を支持する共同声明
2024 年2月、総務省は、米国、オーストラリア、カナダ、チェコ、フィンランド、フラ
ンス、韓国、スウェーデン及び英国の各国政府とともに、「6G に関する原則を支持する共
同声明:セキュア・オープン・レジリエント・バイ・デザイン」を発出した。
同声明は、6G の開発に関係する喫緊の課題解決のためには連携と一体性が重要であり、
その研究開発と標準化を進める際に 6G ネットワークが満たすべき原則について同志国間
で一致し、共働することで、オープンで相互運用可能で強靱かつ安全な連結性をサポート
することを宣言している。
同声明においては、「信頼できる技術及び国家安全保障の保護」、「安全性、強靱性、プラ
イバシー保護」、「グローバルな産業主導かつ包摂的な標準化及び国際連携」、「オープンで
相互運用可能なイノベーションを可能にする協力」、「手頃な価格、持続可能性及びグロー
バル連結性」、
「周波数及び製造」の6項目について、声明に参加する各国が政策の採択や
研究開発、標準化を行うにあたって留意すべき原則を示している。
(3)電気通信に関するグローバル連合(GCOT:Global Coalition on Telecommunications)
2023 年 10 月、総務省は、英国、オーストラリア、カナダ及び米国の関係政府機関とと
もに、電気通信における多様なサプライチェーン、安全で相互運用可能な標準、6G 等の将
来の電気通信技術の開発を含むイノベーションを促進するための協力が必要となる中、電
気通信に関する多国間協力枠組として電気通信に関するグローバル連合(GCOT)を立ち上
げた。
GCOT は、1)GCOT 参加国間の協力・調整の強化、2)電気通信政策の主要分野に関す
るより広範な国際的なコンセンサスの構築、3)産官学の対話を可能にすること、4)産
業界におけるイノベーション及び成長機会の促進を目的としている。それら目的達成のた
めの主な追求事項として、情報共有、研究開発への参画、資金調達の優先順位の調整、ビ
ジョン設定と標準化の支援、国際的なアウトリーチ及び協力が挙げられている。
21
1.4
国際標準化動向
1.4.1
我が国のビジョンの発信
我が国では、2020 年6月に総務省が策定した「Beyond 5G 推進戦略」も踏まえ、ITU-R
において検討されていた「2030 年に向けた及びそれ以降の IMT に関する技術トレンドレポ
ート」に対して、NICT が自身の Beyond 5G 関連技術を中心とした技術動向を入力するこ
とで同レポートの作成にいち早く寄与を行ったほか、産学官の推進体制として 2020 年 12
月に設立された「Beyond 5G 推進コンソーシアム」も、自身が策定した「Beyond 5G ホワ
イトペーパー」の内容を中心に、同レポートやそれを踏まえた ITU-R における IMT の将来
構想に関する勧告(1.4.2 で後述する、後のフレームワーク勧告)の検討に積極的な入力を
行う等、早い段階から、Beyond 5G に係る国際的なビジョンづくりに貢献してきたところ
である。
1.4.2
無線関係に関する動向
ITU-R では、2023 年 11 月、6G を念頭に置いた「IMT-2030」について、前述の我が国の
提案も反映される形で、能力やユースケース等を含む全体像を示すフレームワーク勧告
(図表 11)が承認され、現在、具体的な無線インターフェースに関する ITU-R 勧告を
2030 年に策定するべく、SG5(Study Group 5:第5研究委員会)の下に設置されている
WP 5D(Working Party 5D:5D 作業部会)において検討が進められている。
さらに、2023 年世界無線通信会議(WRC-23)では、HAPS 等の非地上系ネットワーク
(NTN)を含めた Beyond 5G の実現に向けた議題において周波数等が確保された(図表
12)。
図表 11
IMT-2030 フレームワーク勧告の概要
IMT-2030のユースケース
IMT-2030の能力
Capabilities of IMT-2030
NOTE: The range of values given for capabilities are
estimated targets for research and investigation of
IMT-2030.
Sensing-related
capabilities
Applicable
AI-related Sustainability
capabilities
Interoperability
Positioning
(1 - 10 cm)
Coverage
Security and
resilience
Peak data rate
1-10-5
Reliability
(1-10-5 - 1-10-7)
User experienced
data rate
1
500
106
Latency
(0.1 – 1 ms)
Spectrum
efficiency
Mobility
Connection Area traffic
(500 – 1,000
density
capacity
km/h)
(106 - 108
devices/km2)
ITU-R IMT-2030
フレームワーク勧告より抜粋
22
図表 12
WRC-23 結果概要(我が国関心議題)
また、3GPP では、2023 年 12 月、6G の仕様標準化に着手することを発表しており、
2028 年頃までに初版仕様(Rel-21)を作成の上、完成した仕様を「IMT-2030」提案として
ITU-R へ提出することが見込まれている(図表 13)。
23
図表 13
2024年
3GPP における 6G に向けた検討スケジュール(予定)
2025年
2026年
2027年
2028年
Rel-19 5G-Advanced
Stage-1 (SA1): use case and requirement
3GPP SA/CT
6G
Stage-2 (SA2): architecture
Stage-3 (SA/CT): protocol specification
6G RAN/SA/CT workshop
3GPP RAN
1.4.3
6G RAN requirement
6G RAN technical study (Rel-20) and specification (Rel-21)
我が国の目指すネットワーク全体像に関する動向
他方、これらの ITU-R や 3GPP における動きは、従来の移動通信システム(無線技術)
の延長線上にある、いわゆる「6G」として検討が進められているものである。このため、
中間答申で示した、我が国が「Beyond 5G」と位置付ける、有線・無線、光・電波、陸・
海・空・宇宙等を包含し、データセンター、ICT デバイス、端末等も含めたネットワーク
全体を統合的に捉えた概念全体は、ITU-R や 3GPP における検討では必ずしもカバーされて
いない点に留意が必要である。
こうした考えの下、我が国が議長国を務めた 2023 年4月の G7 群馬高崎デジタル・技術
大臣会合において、中間答申に基づく我が国が目指す、無線のみならず有線も含めた次世
代ネットワークの将来ビジョンについて提案し、各国の理解・賛同を得て承認された。
実際、光通信分野については、これまで、ITU-R や 3GPP において世代ごとに標準化が進
められる無線分野とは別個に順次標準化が進められてきたところであり、今後、オール光
ネットワーク等の実現に向けて、Open ROADM、Telecom Infra Project、OIF 等や、我が国
が主体となって立ち上げた IOWN Global Forum 等のフォーラム標準団体において、関連仕
様の検討や標準化の活動が本格化していく見込みである(図表 14)。
図表 14
オール光ネットワーク分野の主要な標準化団体(主な例)
24
1.5
1.5.1
Beyond 5G に係る取組の進展等
通信事業者等による取組
(1)5G の整備・利用状況
5G については、我が国では 2019 年4月にはじめて 5G 用の周波数割当てを行い、2020
年 3 月に NTT ドコモ、KDDI 及びソフトバンクが、同年 9 月には楽天モバイルがそれぞれ
5G の商用サービスを開始した。5G 用の周波数としては、高速通信を実現可能な広帯域を
確保するため、Sub6 帯(3.7/4.5GHz 帯)やミリ波帯(28GHz 帯)等の割当てを行ってき
ており、今後も、4.9GHz 帯をはじめとした追加割当てが想定されている(図表 15)。
図表 15
5G の基地局数及び人口カバー率
また、2020 年8月には、当初 4G 用に割り当てられた周波数について 5G に利用(以下
「転用」という。)できるよう制度整備を行い、Sub6 やミリ波と比べてエリア拡大に適し
た低周波数帯を中心に転用が行われている。
2023 年4月 25 日に公表された「デジタル田園都市国家インフラ整備計画(改訂版)」に
おいては、5G の全国人口カバー率について、2023 年度末までに 95%、2025 年度末までに
97%、2030 年度末までに 99%を達成することを目標としており、携帯電話事業者は 5G の
カバーエリア拡大に取り組んでいる。
また、携帯電話事業者は、Stand Alone(SA)構成の 5G サービスを開始している。さら
に、一部事業者は、産業利用等も視野に Multi-access Edge Computing(MEC)サービスや
企業・自治体ごとに個別に構築される 5G ネットワーク(いわゆる「プライベート 5G」)
サービスを提供するほか、ネットワークスライシングの提供を開始している。
25
(2)Beyond 5G に向けた通信事業者各社の取組
Beyond 5G に実現に向け、通信事業者各社も積極的に取組を進めている。
NTT は、2020 年、インテル及びソニーとともに IOWN Global Forum を設立し、2024 年
4月時点で、アジア、米州及び欧州から 142 組織・団体が参画している。我が国からは、
楽天モバイルのほか、2023 年3月に KDDI が参画し、さらにソフトバンクも参画を検討し
ている。
さらに NTT では、持株会社の中に、研究開発成果の社会実装を意識した研究開発マーケ
ティング本部を新設するとともに、IOWN を徹底的にグローバルに推進していくための部
隊として IOWN 推進室を設置している。また、2023 年3月、NTT 東西が、超低遅延を実
現するオール光ネットワーク「IOWN 1.0」の商用サービスを開始したほか、リスクが高い
領域である光電融合デバイスについて、2023 年6月、NTT イノベーティブデバイス社を設
立し、自社開発を目指している。
KDDI は、2023 年8月、SpaceX 社と業務提携し、衛星と携帯端末の直接通信サービスを
2024 年内に提供する予定であることを発表したほか、オール光ネットワークの実現に向け
て研究開発を推進するとともに、2023 年 10 月、IP レイヤーと光伝送レイヤーを融合した
メトロネットワークの商用化を発表した。また、同社は、2024 年1月、自社モバイルコア
ネットワーク上において AI を活用した障害検知システムの運用を開始し、ネットワーク品
質の向上を進めている。
ソフトバンクは、あらゆる通信技術を1つに統合し、ユースケースに合わせて陸・海・
空どこでも通信を提供するユビキタスネットワーク構想の実現に向けて、低軌道衛星とと
もに、「HAPS アライアンス9」等を通じ HAPS の活用を推進しているほか、光電変換不要に
よる消費電力の削減や、ディスアグリゲーション型のオープンなアーキテクチャ等、
IOWN と共通したコンセプトを持つ ALL Optical Network の全国展開を 2023 年 10 月に完
了した。また同社は、2024 年2月、AI による RAN 機能等の向上だけでなく、AI 向けと
RAN 向けのコンピューティングリソースの共有やネットワークエッジから直接 AI サービ
スをエンドユーザに提供することを目指す AI-RAN 技術の実用化に向け、「AI-RAN アライ
アンス」を NVIDIA、Arm、Amazon Web Service 等 10 者とともに設立した。
楽天モバイルは、2024 年2月、AST SpaceMobile 社との衛星と携帯端末の直接通信によ
る国内サービスを 2026 年内に提供を目指す計画を発表しているほか、RAN だけではな
く、オール光ネットワークでも伝送装置のオープン化に取り組んでいる。
9
2020 年2月、HAPS に係る国際標準化活動やエコシステム構築等の推進を目的として、各国の通信事業者や航空関
連事業者等 12 者により発足。2023 年 12 月時点で世界 21 カ国から 79 者が参加。
26
1.5.2
社会実装に向けた取組
(1)民間事業者等における取組
Beyond 5G の実現に向け、様々な民間事業者で社会実装に向けた取組を進めている。
IOWN Global Forum では、IOWN 構想の実現と普及に向け、2030 年頃の将来を見据えた
ユースケースだけでなく、2025 年頃の実用化・事業化を目標としたユースケースを各業界
と連携して検討しており、2025 年頃の初期導入事例として、金融業界向けデータセンター
接続、放送業界向け遠隔・クラウドメディア制作等を挙げている。今後、商用化に向けて
仕様策定や実証を進めていくとしている。
また、東急不動産では、2023 年6月に NTT 各社と IOWN 構想に関連した技術・サービ
ス等を活用した新たなまちづくりに向けた協業に合意し、最初の取組として、2023 年 12
月に「Shibuya Sakura Stage」へ IOWN 1.0 を導入した(図表 16)。
図表 16
街づくりにおける活用事例(Shibuya Sakura Stage)
①働く場所に縛られない次世代オフィステナント
高画質・大画面による対面のようなオンライン
ミーティングや、AI等の大容量データ活用によ
るリアルタイムでの自動翻訳。
Shibuya Sakura Stage
(外観イメージ)
②最新技術の粋をこらした次世代商業フロア
様々なロボット・デバイスを配置し、自動翻訳
付きリモートコンシェルジュやリアル着せ替え
カメラなど次世代の商業施設を体験。
③次世代サービスが身近になった暮らし
拠点間を大きなスクリーンで繋いだスマート
ジムなど、生活を便利で充実したものにする
次世代サービス。
NTT資料等より作成
(2)関係省庁における取組
民間事業者だけでなく、関係省庁においても取組が進められている。
防衛省では、2023 年、事務次官を長とする次世代情報通信技術導入推進委員会を設置
し、民間事業者とも連携して調査分析を進め、次世代情報通信技術等を取り込んだ将来の
防衛力の構想、運用体制等について検討している。現在商用展開されている高速大容量・
低遅延の通信サービスを自衛隊でも実証し、必要であれば防衛装備品等への早期装備化を
進めていく考えであるとしている。
27
また、デジタル庁でも、2023 年9月より、国・地方ネットワークの将来像及び実現シナ
リオについて検討会を開始し、オール光ネットワーク等、Beyond 5G 等の次世代技術動向
も踏まえつつ、議論を進めている。
1.5.3
海外展開に向けた取組
Open RAN については、2022 年 12 月、通信事業者4社と横須賀リサーチパーク
(YRP)が Open RAN の認証施設「Japan OTIC」を設立した。複数の通信事業者が Open
RAN の認証施設を共同で設立・運営する体制は世界でも初の取組である。
NTT ドコモは、Open RAN アーキテクチャをグローバル展開するためのブランドとして
OREX を発足し、2024 年2月、これを海外通信事業者の要望に応じて提供するための合弁
会社「OREX SAI」を日本電気(NEC)とともに設立することを発表した。また、楽天モバ
イルは、 Open RAN の推進と発展・普及を目指し、Open RAN 技術の展示や要望に応じた
柔軟な技術検証環境の施設を国内外に開設している。これらの取組を背景に、北米、欧州
の主要通信事業者においても、我が国企業による Open RAN 関連商品の採用が進展してい
る(図表 17)。
図表 17
海外通信事業者への Open RAN の展開状況
28
Beyond 5G に向けては、NTT 各社は、IOWN Global Promotion Office を設立する等して
グローバル展開に取り組んでおり、NTT 及び NTT データグループが米国及び英国において
オール光ネットワークによるデータセンター間接続の実証を実施しているほか、2023 年
10 月、NTT と台湾・中華電信との間で、IOWN による国際ネットワーク接続の実現に向け
た基本合意書を締結した。これに加え、富士通も、2024 年2月、中華電信との間で、台湾
における IOWN 構想に基づくオール光ネットワークの構築に向け、共同検討することを発
表している。また、光分野においては、我が国企業が特に北米を中心とする世界市場にお
いて主要な伝送装置のシェアを伸ばしている(図表 18)。
図表 18
光伝送装置に関する市場における日本企業シェア
2022年
2020年
2.2%
2.2%
0.8%
1.3%
2.0%
2.7%
3.6%
3.6%
3.7%
全世界
企業別シェア
31.6%
5.4%
全世界
149.64
億ドル
6.7%
11.8%
12.3%
17.1%
Huawei(中)
Ciena(米)
ZTE(中)
Nokia(欧)
Infinera(米)
Fiberhome(中)
Cisco(米)
Fujitsu(日)
Adtran(米)
NEC(日)
Ribbon(米)
Other
Ciena(米)
Nokia(欧)
4.3%
30.6%
全世界
149.52
億ドル
5.9%
5.9%
富士通:3.6% → 5.9%
Huawei(中)
3.8%
4.2%
8.3%
Fiberhome(中)
Adtran(米)
15.8%
NEC(日)
12.1%
(2社計:5.8% → 7.2%)
Ribbon(米)
Other
0.4%
Ciena(米)
2.7%
Ciena(米)
3.9%
Infinera(米)
Infinera(米)
8.7%
6.2%
Fujitsu(日)
Cisco(米)
9.2%
北米
32.78
億ドル
10.5%
Fujitsu(日)
Adtran(米)
14.8%
10.3%
Nokia(欧)
51.4%
Infinera(米)
Fujitsu(日)
4.2%
北米
企業別シェア
ZTE(中)
Cisco(米)
NEC:2.2% → 1.3%
9.7%
3.5%
0.2%
0.9%
1.3%
3.2%
富士通:6.2% → 15.5%
Ribbon(米)
北米
40.42
億ドル
15.5%
Cisco(米)
Nokia(欧)
Adtran(米)
17.8%
Other
40.6%
Ribbon(米)
Other
出典:サイバー創研作成、Omdia提供
29
第2章 新たな戦略の基本的方向性
2.1
戦略目標の再確認及び新たな戦略の位置付け
(1)戦略目標の再確認
情報通信ネットワークは、従来から国民生活や社会経済活動における情報の流通(通
信)を支える基盤として重要な社会インフラと位置付けられており、さらにその機能の高
度化が進展する中で、その基盤としての重要性はますます高まってきている。
具体的に、従来からの通信機能の基本となる「人と人」の間の通信の高速・大容量化等
が進むとともに、IoT の普及による「モノと人」あるいは「モノとモノ」の間の通信が発
展し、今後、Society 5.0 の具体化ともいうべき CPS(Cyber Physical System)の実現、さ
らには、次節で整理するとおり、将来的には、自動運転を行う車やドローン、AI を搭載し
たアバターやロボット等、従来の IoT 機器とは比較にならない高度な処理機能を実装した
機器や端末等が情報通信ネットワークを介して通信を行いつつ動作する AI 社会の到来が想
定される。このように、社会基盤としての情報通信ネットワークの重要性は高まる一方で
ある。
総務省が 2020 年6月に発表した「Beyond 5G 推進戦略」においては、2030 年代に強靭
で活力ある社会10を実現するため、その実現に不可欠な基盤となる Beyond 5G を早期かつ
円滑に導入すること、また、当該基盤が将来にわたり信頼され、安全かつ安定的に活用さ
れるため、あわせて、Beyond 5G における国際競争力の強化を図る必要がある、と整理し
ている。
Beyond 5G の実現に向けた各種の取組を進めるに当たっては、上記戦略の策定時の考え
方を基本的に維持し、次の2点に集約することが適当である。
①
強靭で活力のある社会の実現に不可欠な基盤となる Beyond 5G を早期かつ円滑に導
入すること
②
10
Beyond 5G における国際競争力の強化・経済安全保障の確保を図ること
「Beyond 5G 推進戦略」
(2020 年6月)においては、その具体的イメージとして以下の3つが挙げられている。
⚫ 「誰もが活躍できる社会(Inclusive)
」
、すなわち、都市部と地方、国境等の地理的な障壁に加え、年齢、
障碍の有無といった様々な差異も取り除かれることで、誰もが活躍できる社会
⚫ 「持続的に成長する社会(Sustainable)
」
、すなわち、現実世界を再現したサイバー空間で最適化を行い、
現実世界へフィードバックすることで、社会的にロスのない、便利で持続的に成長できる社会
⚫ 「安心して活動できる社会(Dependable)
」
、すなわち、社会基盤である通信網の安全性と安定性が自律的に確保
されることにより、誰もが安心して活動できるという、信頼の絆が揺るがない人間中心の社会
30
ここで、①を確保するためにも②が必要になってくると同時に、①を実現することによ
り、得られた知見等を継続的に技術・サービス開発等に反映させ、さらには Beyond 5G を
基盤とした魅力ある事業環境を提供することで国外の人材や投資を呼び込む等により②を
確保するといったように、①と②は相互に相乗的な関係にあることに留意が必要である。
また、総務省による上記戦略の策定後、中間答申において、従来の無線の延長に止まら
ない Beyond 5G ネットワークのビジョンを示したところであり(本章 2.2.4 において中間
答申以降の環境変化等を踏まえた更新を提示。)、上記2点の目標については、無線部分の
みならず、同ビジョンに基づくネットワーク全体を念頭においた目標として考えるべきで
ある。
(2)新たな戦略の位置付け
その上で、第1章で述べたとおり、官民の関係者において、Beyond 5G の実現に向けた
積極的・戦略的な取組が着実に進展してきている。また、国内外において、特に無線規格
としての「6G」については、ビジョンやユースケースの整理・提案や要素技術の開発等と
いった言わば「初期フェーズ」は終わりつつあり、今後は、実証や標準化等、より社会実
装・海外展開を意識するフェーズへと移行してきている。
他方で、中間答申において整理した課題に加えて、中間答申以降、次節で述べるよう
な、情報通信ネットワークの自律性や技術覇権を巡る国際的な動向、通信業界を巡る構造
変化、AI の爆発的普及等、Beyond 5G の在り方そのものや我が国の取組に対して影響を与
えうる、新たな環境変化やそれに伴う課題等が生じているところである。
こうした状況を踏まえ、今般の検討では、これまでの取組の進展状況や新たな環境変化
等を踏まえて、2030 年頃を念頭においた Beyond 5G の実現に向けて必要と考えられる取
組やその進め方について、官民が果たすべき役割を改めて整理しつつ、より効果的・実効
的に推進していくための新たな戦略の方向性を示す。
具体的には、
①
まず、新たに考慮すべき環境変化や課題等を整理し(2.2)、
②
本節(1)で再確認した戦略目標に向け、①で整理した環境変化や課題等に基づ
き、新たな戦略において重視すべき視点を明確化した上で(2.3)、
③
研究開発、国際標準化、社会実装・海外展開といった各種取組を進めるに当たって
の基本的な考え方(3.1)と、具体的な取組の方向性(3.2 以降)について検討する。
31
2.2
2.2.1
新たに考慮すべき環境変化と課題等
情報通信ネットワークの自律性や技術覇権を巡る国際的な動向
2024 年1月に発生した令和6年能登半島地震の発災後、主に電源の喪失や伝送路の損壊
等により、携帯電話等の通信が利用できない状況が発生し、被災地における被害情報の収
集や被災者との情報のやり取りに一定の制約を及ぼすことになった。通信事業者各社にお
いては、車載型基地局に加えて、船上通信局、衛星インターネット、ドローンを活用した
臨時的な基地局等あらゆる手段を用いて、サービスの復旧に取り組んだ。また、総務省
は、関係政府機関との連携の下、道路啓開や機材等の搬送を進め、通信事業者の復旧活動
を支援するとともに、避難所等への衛星携帯電話等の貸出しにより、被災地における通信
の確保に取り組んだ。
また、ロシアのウクライナ侵攻では、ゼレンスキー大統領によるウクライナ国民あるい
は国際社会に対するメッセージから、廃墟からの一般市民による動画配信に至るまでが、
同国の携帯電話網やインターネット網から発信され、有事における情報通信ネットワーク
の重要性を世界に知らしめた。ウクライナ政府の要請を受けて提供された SpaceX 社の
Starlink 端末も、同国での通信確保に貢献したが、同時に、同社 CEO を務めるイーロン・
マスク氏が「重大な戦争行為」への加担回避を理由にウクライナ政府の要請を拒否したこ
とが報道された。
2.1 において情報通信ネットワークの重要性について言及したが、こうした最近の事例を
見ても、情報通信は、平素からの国民生活や社会経済活動のみならず、災害発生時や有事
における情勢把握や情報発信、意思決定を行う際の基礎となる情報の流通の基盤となるも
のであり、いわば「通信主権」とも言うべき情報通信ネットワークにおける自律性を維
持・確保することは、主権国家として死活的に重要であることが分かる。
こうした中、特に 5G インフラ市場において、少数のグローバルベンダーによって基地
局機器シェアが寡占的に占有されるとともに、これらベンダーがロックインを図ろうとす
る状況11にあったことから、米中間の国家的な競争にも端を発し、通信機器の安全性・信
頼性の確保の重要性に関する認識が急速に高まり、国際的にも広がりを見せている。
また、米中間のデカップリング(分断)が進む中、ロシアのウクライナ侵攻とも相まっ
て、冷戦終結以降の自由貿易体制の下で大きく発展してきたグローバルなサプライチェー
ンの信頼性が大きく損なわれ、各国とも、経済安全保障を確保するための取組が急速に進
みつつある。さらに、AI を始めとする新興技術について、軍民両用(デュアルユース)を
11
世界の 5G 基地局のシェア(出荷額ベース)は、2022 年で、Huawei が 29.8%、Ericsson が 25.1%、Nokia が
15.3%、ZTE が 15.6%、Samsung が 7.7%、その他が 6.4%(うち日本企業は合計で 3.2%)となっている。
(Omdia 調
べ)
32
目指す中国の動きに刺激される形で、米中を中心とする主要国における技術覇権競争が激
化している。
我が国においては、経済安全保障の観点から、自律性の向上と技術の優位性の確保に取
り組んでいる。2022 年に経済安全保障推進法を制定し、基幹インフラとして電気通信事業
を含む 14 分野を規定し、その役務の安定的な提供を確保するために、重要設備の導入や維
持管理等の委託に関する事前審査や勧告・命令等の制度を設けている。また、携帯キャリ
アや国内ベンダーを中心に、携帯電話ネットワークを構成する機能・機器等のブラックボ
ックス化やベンダーロックインを防ぎ、競争的な環境を整備するための Open RAN の取組
が推進され、政府としても、2023 年の日米豪印首脳会議で「Open RAN セキュリティ報告
書」を公表する等、米国等同志国とともに Open RAN の国際的な普及を図っている。
以上を踏まえれば、情報通信ネットワークは、「基幹インフラの自律性」の確保と、「新
興技術を巡る覇権競争」の結節点として位置づけられ、上記のような国際動静の中、
Beyond 5G に向けては、我が国のみならず、米国・欧州(グローバルベンダーを有するフ
ィンランドやスウェーデンにとどまらず、独英仏等の主要国を含む。)、中国・韓国、さら
にはグローバルサウスの盟主を自認するインド等の政府において、通信主管庁を中心とし
つつ、国家レベルでの戦略を定める等、政策的関与を強めているところである。こうした
中、1.3.2 で述べたように、米国、日本を含む 10 カ国の政府が 2024 年2月に「6G に関す
る原則を支持する共同声明」を発出する等、6G の開発・標準化・実装に向けての政策的な
メッセージも発せられているところである。
こうした背景の下、5G までの国際標準化が、比較的産業界中心に進められ、政府の関与
としては周波数管理当局の関与が中心だった一方で、Beyond 5G に向けては、関心の深い
関係者が広がり、利害関係が多極化するとともに、必ずしも技術的な関心だけでは止まら
ない力学も働くようになってきており、議論されるシステム全体の大規模化・複雑化とい
った技術的背景や、次節で述べる通信業界を巡る動向も相まって、従来と比較してコンセ
ンサスを得ることが難しくなりつつある。
2.2.2
通信業界を巡る構造変化
4G までの移動通信システムは、主にヒト(人間)による利用を念頭に、接続性(通信可
能エリアと通信速度・容量)を向上させる形で発展してきた。こうした発展の方向性は、
並行して進んだ端末の高度化・多機能化・魅力化と相まって、一般利用者に広く受け入れ
られ、利用者数は大きく増加し、携帯電話事業は大きく発展してきた(ワイヤレスの産業
化)。この過程では、「技術開発・標準化」と、その成果を受けた「インフラ整備」、「利用
者の利便向上」、「通信事業者の収益増」が好循環を生み出していた。
33
他方で、5G 以降の移動通信システムは、ヒトよりも、モノ(IoT 機器)や、ヒトを取り
巻く環境を把握するための各種センサー等を主たる利用者(利用物)として念頭に置いて
設計されている。ここでは、一般利用者よりもむしろ、モビリティ、スマートシティ、コ
マース、ヘルスケアといった各産業分野において、5G の無線機能を最大限に活用すること
で各産業分野でのビジネスに付加価値を創出し、それを起点にして好循環が回ることが想
定されている(産業のワイヤレス化)。
現在では 5G のインフラ整備・サービス提供が各国で進捗しつつあるところであるが、
導入コストの問題や、5G の真の価値が発揮できる SA 機能がようやく広がりつつあるとい
う状況にあるため、世界的にも 5G の収益化が大きな課題となっており、4G までと同様の
好循環が生まれるのはこれからという状況である。
また、4G までの通信業界は、伝統的な通信事業者が技術開発や標準化、インフラ整備、
サービス提供を主導し、彼らを中心としたエコシステムが形成されていた。しかしながら
近年、大手テック企業が従来のインフラ利用者の立場から、クラウドサービスの提供を通
じて通信事業者のコアネットワークを担うといった協業者の立場、さらには、プライベー
ト 5G を直接提供するといった競争相手としての立場や、海底ケーブルを自ら敷設する
等、伝統的な通信事業者を超越して自ら通信事業者の立場に立ちつつある等、情報通信ネ
ットワーク全体を俯瞰した際に、大手テック企業の存在感が増す一方となっている。
さらに宇宙においては、SpaceX 社をはじめとする新興事業者の手により、かつてないス
ピードで衛星ネットワークの構築が進むとともに、携帯電話事業者との協業により、衛星携帯電話端末の直接通信サービスが提供されつつある等、当初の予想を上回る形で地上
系・非地上系ネットワークの統合に向けた動きが加速している。
図表 19
サービス
レイヤ
通信業界を巡る構造変化
サービスプロバイダ
影響力行使
競合
プラット
フォーム
レイヤ
大手テック企業
連携しつつ進出
仮想化・クラウド化
ネット
ワーク
レイヤ
端末
レイヤ
通信事業者
国内メーカー
非地上系
(NTN)
事業者
影響力行使
グローバル・メーカー
34
OS・
共通ID等
による連携
以上のように、4G から 5G へと無線ネットワークの設計思想が大きく変わる中で、無線
以外も含めた情報通信ネットワークとそれを巡るエコシステムや関係プレイヤーの影響力
は急激に変化しつつあり、2.2.1 で述べた国際的な動向と合わせて、通信業界全体が大きな
変革の時代を迎えつつある(図表 19)。
2.2.3
AI の爆発的普及
2022 年の ChatGPT の登場以降、世界各国で生成 AI の開発競争が激化するとともに、
様々な分野での活用が急速に普及しつつある。AI は、積極的に活用することにより、国民
の利便性や社会経済活動の効率性を高め、社会が抱える諸課題を解決し、国際的な競争力
を高めることが期待される。他方で、AI がもたらす社会的課題も指摘されており、G7 の
広島 AI プロセスにおいて議論がなされた他、各国において、AI の積極的な活用・開発と、
AI によりもたらされる課題への対応について政策的な議論が展開されている。我が国で
は、2023 年5月、AI 戦略会議が「AI に関する暫定的な論点整理」を取りまとめ、これに
基づき、前述の広島 AI プロセスを主導した他、リスクへの対応、AI 利用の加速、AI 開発
力の強化等の各種取組が極めて速いスピードで進められている。
Beyond 5G における AI の位置づけとして、これまでは、仮想化技術等の活用による情報
通信ネットワークの運用効率化のためのツール(AI for Network)として、あるいは、
Beyond 5G により実現される CPS(Cyber Physical System)において、実空間から吸い上
げた膨大なデータをサイバー空間において高速・効率的に解析するためのツール(AI for
CPS)として活用されることが想定されていた。
こうした活用形態に加え、既に生成 AI は、一般の利用者とのインターフェースの一部と
して情報通信ネットワークの端末側に埋め込まれつつある。前述した「AI に関する暫定的
な論点整理」にあるとおり、我が国が AI に係る様々な方面からのリスクに対応し、また、
企業や研究者が存分に活動できるためのインフラを整備する等の施策を適切に実現してい
くことによって、今後は、人間の利用者のみならず、生成 AI を搭載したアバターや我が国
が強みを持つロボット等も広く社会で利用され、情報通信ネットワークを通じて相互に通
信を行う形態が急速に広がっていくことが想定される。こうした社会においては、AI は、
情報通信ネットワークの運用効率化や CPS 運用の機能として活用されるにとどまらず、情
報通信ネットワークが、AI が隅々まで利用された社会、いわば「AI 社会」を支える基盤
(Network for AIs)としての機能を果たしていくことが想定される(図表 20)。
35
図表 20
「AI 社会」を支える基盤としての情報通信ネットワーク
こうした AI の爆発的普及は、情報通信ネットワークに対して従来とは異なる機能要件を
求める可能性がある。すなわち、処理や判断に一定の時間が必要な人間や、蓄積された少
量のデータの定期的な収集のための IoT 機器等とは異なり、瞬時での処理や判断等が求め
られる、いわゆるミッションクリティカルなロボットや機器等を、情報通信ネットワーク
を介して繋ごうという需要が高まれば、情報通信ネットワークに求められる低遅延性や信
頼性・強靭性等の要求が高まることが想定される。また、小規模な AI を分散させ連携させ
ることにより機能させる「AI コンステレーション」といったアイディアも出されてきてお
り12、そうした機能を実現する上でもネットワーク機能の高度化が求められる可能性があ
るほか、データセンターやエッジコンピューティング等の計算資源とネットワークの連携
や一体的運用が更に進むことが想定される。
また、社会の様々な現場において AI が学習・高度化するために必要となるデータ等が発
生・流通し、これが通信トラヒックの増加とそれに伴う消費電力の増大に拍車をかける可
能性が考えられる13。現在は、生成 AI 等の開発自体に大規模な計算資源が必要とされてお
り、その膨大な消費電力の削減を図るため、低消費電力半導体の開発等の取組が経済産業
省を中心に進められているが、カーボンニュートラルの達成に向けて、デジタルインフラ
全体の消費電力削減に向けた努力を重ねていく観点からは、その一部を構成する情報通信
12
第 41 回技術戦略委員会(2023 年 12 月7日) 川添構成員提出資料
13
三菱総合研究所は、生成 AI 等の普及でデータ利活用が加速し、2040 年の国内のトラヒックが 2020 年の 348 倍に達
する可能性があると試算。
(三菱総合研究所「情報爆発を支える新たな情報通信基盤の確立策を提言」
(2023 年 9 月
28 日)
)
36
ネットワークについても低消費電力化の要請が高まることが想定される。また、情報通信
ネットワーク等も活用してデータセンターの分散立地を促進することにより、エネルギー
需要の分散や再生可能エネルギーの効率的な利用に繋げていくことが想定される。
さらに、今後、AI、デジタルツイン、メタバース等が広く社会において利用されることに
より、生活やビジネスの様式が変容し、移動エネルギーの削減等、カーボンニュートラル
の実現に貢献する可能性が考えられる。
2.2.4
環境変化等を踏まえた Beyond 5G ネットワークの全体像
中間答申において整理した Beyond 5G ネットワークの全体像及びこれを踏まえて産学官
で取り組むべき Beyond 5G 研究開発 10 課題を基本としつつ、以上に述べた新たな環境変
化のうち、特に AI が爆発的に普及するとの見込みやコンピューティングとネットワークの
一体的運用の進展、NTN 提供事業者の存在感の増大等を踏まえれば、Beyond 5G ネットワ
ークの全体像としては図表 21 のようになると考えられる。
中間答申においては、Beyond 5G ネットワークの全体像を「サービス」、「ネットワーク
プラットフォーム」、「ネットワークインフラ」、「デバイス・装置・端末」の各レイヤーに
整理して検討したところ、今回の検討では、「ネットワークインフラ」層について、コンピ
ューティングも含めて「デジタルインフラ」層と整理し、また、「デバイス・装置・端末」
層については、光電融合デバイスやコンピューティングデバイスを「デジタルインフラ」
層に移した上で、単に「端末」層と整理している。
「端末」層においては、2.2.2 で述べた「産業のワイヤレス化」に端的に表わされるよう
に、IoT 機器、自動車、ドローン、ロボット等のモノや、ヒトを取り巻く環境を把握する
センサー等が主たる端末として想定される。これら端末に搭載された AI(エッジ AI)がネ
ットワークを通じて他の AI と協調・連携することで、より複雑で高度な処理が可能となる
と考えられる。
「デジタルインフラ」層では、有線ネットワーク(オール光ネットワーク等)、無線ネッ
トワーク、NTN(衛星・HAPS 等)等からなる複層的なネットワークにより、どこでも繋
がる環境の実現が期待される。このうち、オール光ネットワークは、AI 時代に増大が予想
される大量のトラヒックを超低消費電力で処理することが期待されている。また、無線ネ
ットワークについては、WRC での議論の動向等を踏まえれば、当面はマイクロ波帯及びミ
リ波帯を中心とした利用が想定され、基地局での AI 最適化処理等により、ユーザエクスペ
リエンスの向上と、周波数の効率的な利用や低消費電力化等が期待される。
さらに「デジタルインフラ」層では、これらのネットワーク上に分散配置されたコンピ
ューティングリソースが、ネットワークと一体的に運用されることにより連携し、様々な
分野で利用される多数の AI を駆動すると想定される。
37
「サービスプラットフォーム」層においては、有線・無線・NTN といったネットワーク
の種別をユーザに意識させずに、ユーザ毎にスライシング等を通じて最適な品質のサービ
スが提供されると想定される。
「サービス」層においては、様々な分野において、ネットワーク/コンピューティング
インフラに支えられた AI を活用したサービスが利用されることが見込まれ、更にこれら多
数の AI 同士が Beyond 5G によって接続され、自律的に協調することにより、いわゆる大
規模言語モデル(LLM)と比して低消費電力化を図りつつ更に複雑な社会的課題の解決に
貢献できる可能性があると考えられる。
図表 21
Beyond 5G の全体像(環境変化等を踏まえた見直し)
38
2.3
新たな戦略において重視すべき視点
2.2 で整理した「新たに考慮すべき環境変化と課題等」を踏まえ、今後、Beyond 5G 実
現に向けた各種取組を進める上で重視すべき視点として、次の4点が考えられる。
(1)業界構造等の変化の的確な把握とゲームチェンジ
(2)グローバルなエコシステムの形成・拡大
(3)オープン化の推進
(4)社会的要請に対する意識の強化
2.3.1
業界構造等の変化の的確な把握とゲームチェンジ
2.2 で述べたとおり、通信業界を巡っては、伝統的な通信事業者が情報通信ネットワーク
において中心的役割を占めていた状況から、クラウドネイティブ化、NTN と地上系ネット
ワークの連携といったネットワーク構造の変化とともに、大手テック企業、クラウド事業
者、AI 提供事業者、NTN 提供事業者等が存在感を増す等、ネットワーク構造と市場構造の
双方において多様化や複雑化が進んでいる。
また、4G や初期の 5G までの情報通信ネットワークのビジネスモデルである、高速・大
容量化による価値提供が機能しなくなりつつあるものの、その後に続く有効なビジネスモ
デルが世界的に模索されている状況にある。
このように業界構造やビジネスモデルが大きく変化して流動的となる中、既存のルー
ル・メイキングの秩序が必ずしもこれまでと同様の重要性を持たない、あるいは同様に通
用しなくなる可能性がある。これはまさにゲームチェンジが起こりつつあるタイミングで
あり、こうした状況を的確に把握し、自らの立ち位置や戦略的に取り組むべき分野につい
て、従来からの秩序だけに囚われることなく、柔軟かつ白地から再考し続けることが必要
となる。
逆に言えば、ゲームチェンジを図る上での好機として捉えることが出来る訳であり、機
を逃さず戦略の展開を目指していくべきである。例えば、NTT の IOWN 構想や、ソフトバ
ンクや Space Compass による HAPS 等の取組は、これまでのルールに捉われずにゲームチ
ェンジを起こそうとするものとして、その心意気は評価されるべきである。
その際、伝統的な通信事業者だけでなく、各国の通信事業者を大きく凌駕する規模で設
備投資を行い、自らネットワークを整備・運用しはじめ、グローバルなプラットフォーム
を形成している大手テック企業を始めとし、NTN 事業者、データセンター事業者、無線タ
ワー事業者等の新たなプレイヤーについても、今後の Beyond 5G 関連市場の一角を占める
重要なプレイヤーとなってくることを認識し、その投資動向等に十分に意識しつつ、以降
で述べる重視すべき3つの視点も含め、広い視野を持って戦略的に取り組んでいくことが
必要となる。
39
2.3.2
グローバルなエコシステムの形成・拡大
我が国の目指す Beyond 5G は、非常に幅広い技術要素からなる総合的なシステムとして
実現されることが想定され、もはや個社や我が国だけで全ての技術・製品・サービスを賄
うことは現実的ではない。また、世界全体において我が国の市場が占める割合が低下する
中、我が国市場だけを想定した事業戦略を採用しても、マーケット拡大の限界に直面する
ことにより規模の経済が働かず、例えば、機器製品のコストの高止まりによって国内市場
においてすら競争力を維持できなくなること等が想定される。
このため、Beyond 5G の実現に向けた各種取組を推進するに当たって、社会実装・海外
展開を持続可能な形で実現するためには、従来の「まず国内を固め、その後に海外へ」と
いう発想から脱却し、最初から世界で活用されることを前提とした取組を行うと同時に、
我が国を Beyond 5G の実証等の魅力的な拠点とし世界中から人材や投資を呼び込むといっ
た双方向性のある「グローバル・ファースト」の視点を持ちつつ、より大きなエコシステ
ムの形成を意識して取り組むことが不可欠である。
具体的には、異なる事業領域を有する多様な企業同士が、オープンで自律的な相互関係
の下、様々なレイヤーのレベルで結びつき、それぞれの強みを持ち寄ることにより、
Beyond 5G を基盤とした絶え間ないイノベーションの創出による新陳代謝を可能とするよ
うなビジネス構造を構築するとともに、こうした相互関係を、先進国だけでなく、グロー
バルサウスとして存在感を高める新興国をも包含することにより、関連市場を拡大してい
くことが必要となる。
図表 22
価値提供モデルの推移
提供型 価値
適応型 価値
共創型 価値
• 大量生産の画一的な製品/サービス
を提供
• 安価に利用者の物欲/消費欲を満たす
• 個々の多様な利用者のニーズに対応
• 利用者の一部が提供者になり利用者
のニーズを実現
• まだ、利用者がニーズを分かっていな
い/流動的な新しいモノを提供
標準品の大量生産
多品種少量生産
/カスタマイズ
リーンスタートアップ
/DevOps
情報
情報
協力
提供者
• 利用者の個性を取込む
利用者
製品/サービス
情報
連携
適応
環境
前提条件として、
提供者は提供すべきモノ(=利用者は利用したいモノ)を分かっている
大きな
ギャップ
提供すべきモノが
分からない/不明瞭
「5G」や「AI」など
出典:第45回技術戦略委員会
40
クロサカ・タツヤオブザーバ提出資料
また、こうした取組においては、ユーザ側を意識的に取り込み、提供側とユーザ側が共
にビジネスモデルを創っていくことにより、ユーザ側のニーズをビジネスモデルに的確に
反映するとともに、提供側だけでなくユーザ側からもイノベーションを誘発する等、エコ
システムの拡大が自走するまでのプロセスを強く意識することが必要となる(図表 22)。
さらに、エコシステムの形成は、従来、「技術開発」→「標準化活動」→「エコシステム
の形成」と、順を追って段階的に行われてきがちであったものの、Beyond 5G について
は、次世代の社会基盤として、国民生活や他の産業への影響や波及効果が極めて高いこと
から、ビジョンや社会的要請からバックキャストする形で、当初より、技術開発、標準化
活動、エコシステム形成を同時並行的に進める必要がある(3.1「総合的な取組(各種取組
の有機的な連携)の必要性」でも後述。)(図表 23)。
図表 23
標準化活動とエコシステムづくりの重要性
エコシステムづくり
(他社と共創)
アプリケーション
ビジョン(社会的な目的)
○○× 通信
例)まちづくり、自動運転、エンタメ
標準化活動
(国際標準化)
デファクト/デジュリ/
コンソーシアム標準化支援
3GPP,IETF
各種フォーラム
・・・
技術開発・
製品/サービス
出典:第42回技術戦略委員会 立本オブザーバ提出資料
こうしたエコシステムの形成・拡大の取組を進めつつ、我が国企業が、戦略的なオープ
ン&クローズ戦略の下、Beyond 5G ネットワーク市場全体の中で、自身が持つ強みに基づ
く製品・サービスを軸に、国際市場において一定の存在感を発揮できるような立ち位置を
確保し、可能であればチョークポイントとなる領域を獲得することを目指すべきである。
2.3.3
オープン化の推進
5G 市場においては、基地局(RAN)機能のオープン化を目指す動きが、国際的に大きな
トレンドとなっている。この背景には、5G 基地局について、グローバルベンダーが RU、
CU、DU 等の複数機能を統合した形で提供することが一般的であり、これによってベンダ
ーによる動作保証等、確実なネットワーク構築が期待される反面、機器構成の硬直化やベ
ンダーロックインによる価格競争の鈍化といった課題が指摘されてきた。このため、我が
41
国としても、同志国とも連携しながら、国内外での基地局仕様のオープン化を促進する取
組を進めているところである。
Beyond 5G の実現に当たっても、現在のグローバルな競争環境も考慮し、以下で述べる
①情報通信ネットワークにおける自律性の確保、②市場競争環境の確保、③情報通信ネッ
トワークの円滑なマイグレーションの確保の3つの観点から、オープン化の推進(相互運
用性の確保等)を重視すべきである。
①
情報通信ネットワークにおける自律性の確保
2000 年代以降、かつて「ファミリー」を形成していた国内の通信事業者と通信機器ベ
ンダーの関係性は、通信機器のコモディティ化や通信産業全体の市場のグローバル化と
いった環境変化を受けて弱まると同時に、通信機器ベンダーの事業規模や領域そのもの
が縮小してきている。この結果、国内の通信事業者が使用する通信機器は、国内外を問
わないものとなってきており、グローバルなサプライチェーンリスクが我が国の情報通
信ネットワークに対して及ぼす影響が極めて大きくなってきている。
Beyond 5G 時代に向けて情報通信ネットワークの社会基盤性が更に強まることが想定
される中、情報通信ネットワークやサービスについて、有事においても、信頼でき、か
つ、安定的な提供を確保していくためには、情報通信ネットワークにおけるオープン性
を確保することにより、我が国が自律的にデリスキング(リスク回避)可能な環境の整
備が期待される。
②
市場競争環境の確保
情報通信ネットワークにおいて、特定のベンダーの実装仕様に依拠した製品を採用し
た場合、将来的にも同一ベンダーの製品を使い続けざるを得なくなることにより、市場
の競争によるコストの低減等のメリットを受けにくくなる、いわゆるベンダーロックイ
ンが生じる。
Beyond 5G が利用者に対して高品質かつ低廉なサービスを提供するためには、オープ
ン性を確保することにより、ベンダーや、通信機能を実現し提供する者が、市場におい
て活発な競争を促進するための環境の整備が必要である。また、こうした競争がグロー
バルに進むことで、これまで海外のグローバルベンダーが占めていた市場に我が国企業
が参入する機会が創出されることが期待される。
③
情報通信ネットワークの円滑なマイグレーションの確保
無線ネットワークは世代交代が 10 年間隔で行われることで高度化が進んできたのに対
し、有線ネットワークは、無線ネットワークの世代交代と連動することなく、順次、業
界標準化・デジュール標準化が進められている。
42
1.4.3 で述べたとおり、Beyond 5G を、現行の移動通信システム(無線技術)の延長線
上だけで捉えるのではなく、有線・無線を含めたネットワークアーキテクチャ全体で捉
えた場合、有線ネットワークについてもオープン性を確保し、徐々にマイグレーション
を行えるようにすることで、事業者の設備投資等の負担を緩和しつつ、継続的にイノベ
ーションを取り込んでいくことが可能となる。
2.3.4
社会的要請に対する意識の強化
5G や Beyond 5G は、4G までのように、ヒトに利用される通信を念頭に、接続性(通信
可能エリアと通信速度・容量)を向上し続ける、といった連続的な変化の延長ではなく、
人に加えてモノや人の周囲にある環境を繋ぎ、社会全体の最適化や効率化を図るという非
連続的な変革を目指すものである。
こうした中、5G において、必ずしも標準化された全ての仕様が商用サービスとして活用
されていないことや、2.2.2 で指摘したように、5G のエコシステムについて、現時点では
必ずしも十分に好循環が始まっていない事を教訓とし、Beyond 5G の実現に向けては、技
術開発・供給側の視点のみに立脚するのではなく、社会的要請を十分に踏まえ、より社会
や市場が求めている機能を見極めるという視点が重要である。
現時点で明らかな社会的要請としては、①コスト効率性、②環境負荷低減、③信頼性・
強靭性、④接続性、⑤セキュリティ・プライバシーが挙げられる。ただし、こうした社会
的要請は、社会情勢の変化や時間の経過とともに変化する可能性があることにも留意し、
アンテナを高く張り、市場・社会における要請を常に意識しながら、社会実装・市場獲得
に繋がるような研究・技術開発や製品開発、市場展開に重点を置いて進めることが重要で
ある。
①
コスト効率性(Cost Effectiveness & Affordability)
5G や Beyond 5G が、一般の利用者よりも、むしろ産業界における活用を念頭におい
ていることを踏まえれば、そこで提供される新たな付加価値がどのようなものであるに
せよ、これまで以上に「コスト効率性」の要素が最も重視される項目の一つになってく
る、という点を忘れてはならない。
「どれほど優れた技術・機能を実現したところで、高いものは買ってもらえない」、
「顧客は機能とコストのバランスを考えて購入・投資行動を決定する」という当たり前
の事実から目を背けず、開発を進める姿勢が重要である。
こうした視点は、新たな戦略が目指す「Beyond 5G の早期かつ円滑な導入」という目
標にとっても重要である。
43
②
環境負荷低減(Green)
グローバルな安全保障環境の変化、気候変動、災害の多発等、世界が著しく不透明さ
を増している中、Beyond 5G は、あらゆる産業や社会活動の持続的な基盤として機能し
続けるよう、大幅な「環境負荷低減」を実現することが不可欠である。
「環境負荷低減」については、Beyond 5G により、情報通信ネットワーク自身の電力
効率化に加え、社会全体の効率化の観点から実現することが重要である。
具体的には、情報通信ネットワーク自身について、通信トラヒックの増加とともに消
費電力が増加し続けていることを踏まえ、オール光ネットワーク技術の導入、再生可能
エネルギーの利用、分散データ処理や基地局等の低消費電力化をはじめとするソフトウ
ェアやハードウェアの様々な領域における総合的な電力効率化等を進めることに加え、
社会全体についても、Beyond 5G を基盤として、大量のセンシングデータ等を基にデジ
タル空間に実世界を再現するとともに実世界の高信頼・リアルタイムな価値を実現する
「デジタルツインコンピューティング」を活用した、エネルギーを含む全体最適化や効
率化を図っていくことが期待される。
③
信頼性・強靭性(Reliability & Resiliency)
Beyond 5G は、あらゆる産業分野の基盤として、分野ごとに異なる多様なサービス品
質要求に対応することが期待される。
特に、医療、交通、金融といったミッションクリティカルな分野における活用を進め
るためには、サービス品質の高さそのものではなく、それぞれの分野のニーズに合致し
た合理的なサービス品質を確定的に保証する高い信頼性を、エンド・トゥ・エンドで実
現することが期待される。
また、直近 2024 年1月に発生した令和6年能登半島地震や類似の災害において、情
報通信ネットワークが文字通り命を守るライフラインとして機能したことを踏まえ、
Beyond 5G は、NTN 等を含む様々な通信技術を組み合わせた重層的なネットワーク構成
による冗長化や AI による障害からの迅速な復旧等、技術進展をフルに活用した強靭なネ
ットワークとなることが期待される。
④
接続性(Connectivity)
接続性については、4G までにおいても向上が図られてきた機能ではあるが、いまや、
個人間、組織間の社会的なつながりが情報通信ネットワークによる接続と等価になりつ
つある中で、今後は、「接続性を向上すれば利用者拡大に繋がる」というモデルから、
「繋がるのが当たり前」となっていき、Beyond 5G は、個人・組織を問わずあらゆる主
体や場所を含む社会全体の「接続性」を実現することが重要である。
44
具体的には、地上系ネットワークと、衛星ネットワークや HAPS 等の NTN を統合的に
運用し、あらゆる陸上のみならず、海上・上空・宇宙を含めた3次元的なカバレッジを
実現することで、場所を問わず、また、災害においても接続を確保できることが期待さ
れる。
このような Beyond 5G が、グローバルサウス等にも展開されることにより、あらゆる
主体が、電気・ガス・水道等と同じく不可欠な存在としての情報通信ネットワークに繋
がることができることが期待される。
⑤
セキュリティ・プライバシー(Security & Privacy)
Beyond 5G は、あらゆる産業や社会活動の基盤となるだけでなく、国家安全保障上も
重要な存在となる。これは同時に、Beyond 5G の機能が毀損した場合の影響が甚大とな
ることも意味している。サイバー攻撃が巧妙化・多様化し、サイバーセキュリティ上の
脅威が増大するとともに、2030 年代に向けて大規模量子コンピュータの実用化による現
行暗号の危殆化リスクが高まる中、Beyond 5G において、耐量子計算機安全性等のより
高度なセキュリティを確保することが重要となる。
これに加え、Beyond 5G は、非常に幅広い技術要素からなる総合的なシステムとして
想定されており、システムの複雑化・大規模化や、AI の利用やクラウドネイティブ化等
に伴う、セキュリティやプライバシーに関連した新たなリスクが出現する可能性が考え
られること等も踏まえ、その実現に当たっては、常にセキュリティ/プライバシー・バ
イ・デザインが求められる。
45
第3章 具体的な取組の方向性
3.1 各種取組を進めるに当たっての基本的な考え方
第2章で整理した基本的方向性に沿って、各種取組を進めるに当たっては、次のような
考え方の整理が必要となる。
3.1.1
現状の認識
Beyond 5G を早期に実現し、我が国の国際競争力・経済安全保障を確保するためには、
研究開発、国際標準化、社会実装・海外展開等の各種取組が必要になる。ここで、2.1 で明
確化したとおり、我々の取組の出口は、Beyond 5G に関連するビジネスを事業として成立
させ、社会実装を進めるとともに、海外にも展開していくことであり、研究開発や国際標
準化は、この出口に至るまでの道筋に過ぎず、「研究開発のための研究開発」、「国際標準化
のための国際標準化」では意味がないことを肝に銘じる必要がある。
これまで、旧基金等事業により要素技術の確立に向けた初期段階の研究開発を推進する
とともに、中間答申で提言した研究課題等を踏まえ、2023 年度には新基金事業により各企
業の戦略的な研究開発プロジェクトの採択が進む等、研究開発に関する取組は一定程度進
んでいるところである。今後は、これら戦略的な研究開発プロジェクトの着実な実施を前
提としつつ、社会実装・海外展開及びこれらに必要な国際標準化等を進めるための具体的
な取組がより重要になってきている段階にあると考えるべきである。
3.1.2
官民の役割整理
最終的な目標である Beyond 5G の社会実装や海外展開の担い手は民間事業者である。こ
のため、とりわけ国際的な競争が激化する中、民間事業者が事業化に向けて本気になって
取り組まなければ成功は覚束ない。逆に言えば、民間事業者が社会実装・海外展開までの
道筋を立てて本気で取り組むプロジェクトこそが、戦略目標である国際競争力・経済安全
保障確保に向けた「期待の星」であると考えられる。
こうした考えの下、政府においては、特に新基金事業の社会実装・海外展開志向型戦略
的プログラムにおいて採択された、各企業が一定の覚悟をもって取り組むプロジェクト
を、ゲームチェンジを実現していく上での我が国の「戦略商品」として位置づけ、その進
捗状況を適切にモニタリングしつつ、研究開発や国際標準化活動に対する支援を始めとし
て、次節以降に掲げるような各種の政策ツールを総動員して、その社会実装・海外展開に
向けた支援に取り組むべきである。逆に、事業化等の出口を見通せない、例えば、研究者
が自身の研究を維持するためだけに行う研究等に対する支援は抑制することにより、全体
として緊張感・メリハリのある政策体系の下、政策を推進すべきである。
46
他方で、事業化、特に海外展開においては不確実性が伴うとの認識を関係者間で共有
し、企業が本気で取り組むプロジェクトであっても、成功が見通せなくなった場合には、
取組を断念する柔軟性を持つことも必要であり、むしろ、そうした失敗の経験から次に向
けた学びを得るという姿勢が重要である。
こうした戦略的な取組に加え、将来的な技術力の源泉となる基礎的・基盤的な研究や、
若手も含めた標準化に携わる人材の育成、スタートアップの支援等、我が国の中長期的な
競争力強化のために必要な取組についても、国が一定の役割を果たすべきである。
3.1.3
総合的な取組(各種取組の有機的な連携)の必要性
前述のとおり、Beyond 5G の実現に向けては、研究開発、国際標準化、社会実装・海外
展開等の各種取組が必要になるが、総務省や民間企業(特に大企業)においては、これら
の各種取組が分担管理されているためにややもすると縦割り構造となるおそれがあり、こ
れまでも「技術で勝てても商売で勝てない」という問題が指摘されてきたところである。
この点、既に、1.2 で述べたとおり、 新基金事業においては、社会実装・海外展開に向
けた戦略とコミットメントをもったプロジェクトを重点的に支援することとしており、こ
の事業採択評価のプロセスにおいては、評価委員と民間企業の間で対話が行われること
で、民間企業側の事業計画等の改善や強化が図られているとの報告もあった14。実際、民
間企業においては、研究企画部門と市場・顧客との距離を縮めるための組織改正等の取組
が取られる等の動きも出てきている。
このように、官民それぞれにおいて、前述した「戦略商品」を軸に、研究開発、国際標
準化、社会実装・海外展開等に関する各種取組を有機的に連携させつつ、総合的に取り組
む姿勢が不可欠である。
具体的に、民間企業においては、経営層のコミットメントや部門を跨って指揮・調整を
図ることのできる司令塔的な機能の下、市場状況や顧客ニーズを適時適切に把握し、事業
化への道筋を明確にした上で、研究開発や国際標準化等の取組を進めていくことが必要で
ある。その際、研究開発成果については、各々の企業の事業戦略も踏まえつつ、完成時期
や 2030 年を待つことなく、できるものから早期に製品化・市場投入、ネットワークへの
実装・国際展開を進めることにより、社会実装の前倒し・早期の市場開拓を通じて市場か
らの早期フィードバックを得るという姿勢が重要になる。
総務省においても、こうした民間の取組に対する各種の政策支援ツールを独立して用い
るのではなく、「戦略商品」を支援対象の軸と位置づけ、政府全体の戦略や他省庁の施策と
連携しつつ、各種取組を組み合わせ、総合的かつ連動した形で支援をすることが必要であ
る。
14
第 42 回技術戦略委員会(2023 年 12 月 20 日) 立本オブザーバー提出資料
47
3.2
研究開発に関する取組
研究開発については、以下本節で述べるとおり、当面は、重点技術分野を中心に民間企
業による戦略的な開発に対し継続的な支援を実施しつつ、エコシステムを拡大するために
必要となる共通的な領域における技術開発を推進するとともに、中長期的な視点に基づ
き、基礎的・基盤的な研究力の確保に取り組むべきである。
3.2.1
民間企業による戦略的な開発に対する継続的な支援
(1)現状
新基金事業では、2023 年3月の運用開始以降、中間答申で特定された3つの重点技術分
野(オール光ネットワーク関連技術、NTN 関連技術、仮想化ネットワーク関連技術)につ
いて、一定期間内に技術成熟度(TRL: Technology Readiness Level)を一定の水準に到達さ
せ、社会実装・海外展開に向けた戦略とコミットメントをもつ、いわば各企業の戦略商材
のための研究開発プロジェクトを重点的に支援してきている(1.2.2 を参照。)。
(2)今後の方向性
社会実装・海外展開志向型戦略的プログラムで採択された研究開発プロジェクトについ
て、事業面 WG による進捗確認・助言等の下で、研究開発成果の社会実装・海外展開に向
けた継続的な支援を行っていくことが必要である。
また、今後も総務省・NICT においては、民間企業が、2.2 で述べた新たな環境変化や 2.3
で述べた視点等を踏まえて戦略的に取り組もうとするプロジェクトについて、事業面評価
等を適切に実施した上で積極的に採択・支援していくべきである。電波有効利用研究開発
プログラム等で採択された研究開発プロジェクトについても、適切にステージゲート評価
を実施した上で、継続的な支援を行っていくべきである。
さらに、研究開発基金の運用主体である NICT については、2021 年 3 月に旧基金の運用
を開始して以降、2023 年 3 月の恒久的な新基金の造成を経て、資金配分機関としてのノウ
ハウを蓄積してきていることを踏まえ、引き続き民間の研究開発を強力に支援し、成果の
最大化に向けた取組を実施していくことが求められる。
このため、これまでの基金の運用や研究開発プロジェクトのマネジメント等で得られた
知見等を踏まえた必要な運用改善や機能強化、また、こうした基金運用に関する取組と、
ICT 分野における唯一の国立研究開発法人として、基礎的・基盤的な研究及びその成果の
普及等について NICT が蓄積している知見との間の連携を強化することにより、NICT の
Beyond 5G 実現に向けたハブとしての機能発揮が求められる。
48
3.2.2
エコシステムの拡大に必要となる共通的な領域における技術開発の推進
(1)現状
中間答申において重点技術分野と整理されたオール光ネットワークは、2.3.4 で述べた
Beyond 5G に対する社会的要請のうち、特に②環境負荷低減や③信頼性・強靱性を実現す
る上での鍵となる技術であり、また、AI 時代において分散化された計算資源(コンピュー
ティングリソース)を連携して利用可能とするゲームチェンジャーとしても期待される。
1.5 で述べたとおり、我が国では、NTT に加え、KDDI、ソフトバンクが順次オール光ネ
ットワークの導入を開始するとともに、ユーザ側でも官民関係者が利用を検討している。
こうした中、IOWN Global Forum の活動も進展しており、2023 年3月には、KDDI が参画
する等、オール光ネットワークに係る取組が進展しているほか、旧基金等事業や新基金事
業を通じ、ネットワークを構成する個別技術の研究開発が開始・進捗しているところであ
る。
こうした我が国の関係者における取組の状況も踏まえ、令和5年度補正予算において、
単独事業者の事業利益に繋がらない開発領域として、オール光ネットワークの事業者間連
携のための共通基盤技術の開発について予算措置がなされた。この開発を推進するに当た
っては、特定の事業者が推進するのではなく、中立的な体制の下で業界関係者の意見等も
踏まえながら、広く普及が進むよう技術開発の方向性や成果の普及方策等を検討するた
め、2024 年2月に本委員会の下に共通基盤技術 WG を設置した。
同 WG においては、同年5月に取りまとめを行い、開発した技術が早期に利用でき、か
つ実際に広く活用されることを実現することを重視する観点から、通信事業者以外を含む
多くの利用者が使いやすい技術開発を行うことや、並行して行うべき普及方策等を「開発
の基本的な考え方」として整理した。また、技術開発の具体的な内容として、全体的なア
ーキテクチャの策定や業界共通的に取り組むべき課題15を解決するために必要な技術開
発、更には、普及方策として、多くの利用者が開発成果を確認・検証できるテストベッド
整備に向けた早期の検討、国際標準化及び国内外でのプロモーション活動に取り組むべき
としている。
15
同WGの取りまとめにおいては、業界共通的に取り組むべき課題として以下の3つの課題が挙げられている。
課題①:通信利用者が、異なる通信事業者を含めた多様な主体のオール光ネットワークを意識せずシームレスに利
用できる仕組みが存在しない
課題②:通信利用者が増加する場合にそれぞれの通信品質を確保するためのコストが過大
課題③:多様な主体がオール光ネットワークを実装することを想定した光パス制御装置が存在しない
49
(2)今後の方向性
オール光ネットワークの事業者間連携のための共通基盤技術については、上記 WG にお
ける取りまとめを踏まえ、研究開発に早期に着手することとし、2028 年頃を目途に技術を
確立するとともに、2030 年頃の社会実装・海外展開を目指すべきである。また、研究開発
が適切に実施されるよう、同 WG によるプロジェクトの進捗確認や助言等を定期的に行う
べきである。
民間事業者においては、上記の共通基盤技術の研究開発を進めながら、普及方策とし
て、例えば、研究開発成果を早期に商品展開やネットワーク実装に繋げるとともに、海外
事業者との連携を図る等により、並行して国内外のエコシステムの拡大を目指していくべ
きである。その際、総務省においては、3.4 で後述する、国内実装に必要となる制度整備や
テストベッド整備といった各種支援、海外展開に向けての相手国政府への働きかけ等、必
要な支援を積極的に行うべきである。
なお、オール光ネットワークについては、その中核技術の一つである光電融合技術につ
いて、経済産業省が、ポスト 5G 情報通信システム基盤強化研究開発事業においてコンピ
ューティングの観点からデバイス製造技術の開発に取り組んでいることを踏まえ、総務省
は、経済産業省と相互に情報共有・連携を図ることにより、オール光ネットワークにおけ
る我が国企業の立ち位置を確保していくことが重要である。また、こうした取組により、
経済産業省が進める半導体・デジタル産業戦略との相乗効果が期待できる。
上記のオール光ネットワークに関する取組に加え、今後、Beyond 5G のエコシステムの
形成・拡大を目指すに当たり、共通的な領域として開発が求められる技術が必要となるこ
とも想定されることから、総務省は、国際的な開発トレンドや市場環境について情報収
集・分析を継続・強化し、Beyond 5G のエコシステムの形成・拡大に必要となる共通的な
領域について、特に民間のみでは取組が進まないもの等があれば、積極的に支援を検討し
ていくことが重要である。
3.2.3
基礎的・基盤的な研究力の確保
(1)現状
基礎的・基盤的な研究は、経済・社会の変革につながる非連続的なイノベーションの源
泉となるものであり、ICT 分野において我が国の国際競争力を強化するに当たって不可欠
な取組である。現在、ICT 分野における基礎的・基盤的な研究については、我が国では、
主に、大学等の学術研究機関、大手民間企業及び我が国唯一の ICT 分野を専門とする国立
研究開発法人である NICT が担ってきているところである。
この領域における研究力を支えていくためには引き続き一定の資源を確保していく必要
があり、特に、人材については、裾野の拡大等を通じた量・質の確保が不可欠であるが、
50
電子情報通信学会の会員数の減少16や、関連分野の被引用論文数の伸び悩み17等の課題が顕
在化している。
(2)今後の方向性
今後、基礎的・基盤的な研究力を中長期に渡って確保するため、民間では困難な長期に
わたる基礎・基盤的研究力の維持・確保を使命の一つとする国立研究開発法人、知的資本
の最大の要素である個々の人材、基礎的・基盤的な技術シーズに基づくイノベーションの
主要な担い手であるスタートアップの3者を念頭に置き、以下の政策的対応を進めるべき
である。
①
NICT における基礎的・基盤的な研究力の在り方の検討
NICT については、我が国唯一の ICT 分野を専門とする国立研究開発法人として、引き
続き、我が国の ICT 分野の研究開発における基礎的・基盤的な役割を果たしていくこと
が重要であり、NICT の第6期中長期計画(2026 年4月~)開始に向け、次期科学技
術・イノベーション基本計画(2026 年4月~)の策定に向けた科学技術・イノベーショ
ン政策全体の検討の動向、2.2 で述べた ICT 分野を巡る環境変化や 2.3 で述べた視点、本
報告書で整理した Beyond 5G に係る政策の方向性に加え、国立研究開発法人の機能強化
や研究インテグリティに向けた検討等も踏まえ、具体的な検討を深めるべきである。
②
ICT 分野における高度研究人材の育成支援
上記に述べた高度研究人材の量・質の確保等の課題を背景に、文部科学省及び国立研
究開発法人科学技術振興機構(JST)において、大学等を対象として、ICT 分野における
研究開発や高度研究人材の育成を支援する事業「情報通信科学・イノベーション基盤創
出(CRONOS)」を 2024 年度より開始した。
総務省及び NICT は、文部科学省及び JST による上記事業の実施に当たり、支援すべき
基礎研究のテーマの検討等について、新基金事業やその他の ICT 分野に係る研究開発等
の取組を通じて得られた知見に基づき、助言・協力等を行うとともに、JST の事業によ
る優れた成果について新基金事業に適宜橋渡しできるよう留意すべきである。
③
ICT 分野のスタートアップ支援
いわゆる研究開発型スタートアップは、研究開発やその成果の社会実装を、スピード
感を持って機動的に行うことで、技術シーズを早期に事業に結び付け社会実装に繋げ
16
17
第 45 回技術戦略委員会(2024 年2月8日) 嶋崎オブザーバー提出資料
国立研究開発法人科学技術振興機構 研究開発戦略センター「研究開発の俯瞰報告書 システム・情報科学技術分
野(2023 年)
」
(2023 年3月)
51
る、技術イノベーション創出の有力な担い手の一つとして期待されている。しかしなが
ら、海外との比較において、我が国のスタートアップ市場は大きく立ち後れている。
このような状況を受け、政府は、「スタートアップ育成5か年計画」(2022 年 11 月
新しい資本主義実現会議決定)において、官民で一致協力してスタートアップの担い手
を多数育成し、その起業を加速するため、スタートアップ創出に向けた人材・ネットワ
ークの構築に取り組むこととしている。
こうした政府全体の取組の一環として、総務省は、令和5年度より「スタートアップ
創出型萌芽的研究開発支援事業」において、公募を経て選抜された、起業や事業拡大を
目指す個人またはスタートアップによる芽出しの研究開発から事業化までの一気通貫で
の支援を開始したところであり、これを契機として、スタートアップに知見のある有識
者、企業、団体等の民間が一体となって ICT 分野におけるスタートアップの起業と成長
に必要な「支援」と「競争の場」を提供する「ICT スタートアップリーグ」という官民
一体となった取組が開始されているところである。今後も、民間との連携を密にしなが
ら支援の輪を広げていくことにより、技術シーズを次世代の産業の創出に繋げることを
目指していくべきである。
さらに、新基金事業については、一部の公募において、スタートアップを優遇する等
の措置を設けており18、引き続き、Beyond 5G の研究開発に取り組むスタートアップを
支援していくべきである。
18
現在、スタートアップ向けに各府省庁横断で統一的な運用を図る公募型の研究開発支援プログラム(SBIR 制度にお
ける指定補助金等)として位置付けられている。
52
3.3
国際標準化に関する取組
国際標準化については、3.1 で述べたとおり、あくまで出口に至るまでの道筋であり総合
的な取組の一環として成果最大化を図ることが重要との考え方に基づき、以下本節で述べ
るとおり、「戦略商品」の社会実装・海外展開に向けた、民間企業による戦略的な標準化活
動に対する支援を実施するとともに、標準化に携わる人的資源の確保や、これらを支える
情報収集・分析力の強化に取り組むべきである。
3.3.1
民間企業による戦略的な標準化活動に対する支援
(1)現状
①
標準化活動に向けた我が国発の取組の進展
世界的に有力なフォーラム標準化団体では、Beyond 5G に関連する技術の仕様の検討
や標準化の活動が本格化し、また、そうした団体では先行的な市場形成を見据えたデフ
ァクト標準にも近い議論が進められる傾向にあり、これらに対する積極的な関与がカギ
になる。
日本の主要企業は、移動通信システムや光通信に係る有力なフォーラム標準化団体に
おけるボードメンバーや役職者を一定程度担い、また、各国の通信キャリア・ベンダー
等が集まる国際会議等の場でオール光ネットワークの実証環境の構築や各種ユースケー
スに応じた低遅延性等の実演デモを実施する等、標準化で主要な役割を担うための体制
構築や推進活動に積極的に取り組んでいる。
また、通信分野のデジュール標準化を扱う ITU においても、我が国が主要なポストを
担っており、特に光通信分野を所管する ITU-T では、近年、関連 SG 会合で IOWN 関連
技術のインプットが行われているほか、ITU-T 尾上局長が主催し各国の情報通信業界の
主要企業幹部が集う「CxO ラウンドテーブル会合(2023 年 12 月ドバイ)」において、
IOWN グローバルフォーラムからのインプットに基づき、6G の光ネットワークの標準化
における ITU のリーダーシップ発揮等に関する合意がなされた。
このように Beyond 5G の標準化に向け、我が国発の取組が急速に進展している状況に
あり、まさにこれからが重要局面となっている。
②
総務省における標準化支援の在り方・手段の転換
総務省における標準化推進に関する従来の施策は、比較的、研究開発を主軸に置き、
研究開発の実施者が開発した技術をどれだけ標準化活動にインプットするか(したか)
に重きが置かれ、その成果として、標準化団体への提出寄書や成立した国際標準の数等
で評価する傾向にあった。
また、企業においては、標準化活動について、単に研究開発成果としての技術や知的
財産の観点で捉え、戦略を欠きながら標準化を進める、あるいは、必ずしも社会実装・
53
海外展開やエコシステム形成までを見据えたビジネスプロセスやルール形成プロセスと
捉えず、「標準化のための標準化」になってしまう例もあることが指摘されている。
これから本格化する Beyond 5G の標準化活動に当たり、こうした従来型の標準化活動
にとどまっては、たとえ優れた技術を開発しても、その成果が国際標準(ルール形成)
に反映されない、あるいは、標準化に反映されたとしても商材の市場投入を迅速・適時
に行えなければ、市場の獲得で後れをとる可能性がある。
こうした問題意識の下、令和 5 年度より開始した新基金事業の社会実装・海外展開志
向型戦略的プログラムでは、前述のとおり、社会実装・海外展開に本気で取り組む民間
事業者の研究開発プロジェクトを重点的に支援することを基本とした運用を行ってい
る。
同プログラムにおいては、グローバルな市場獲得や経営・ビジネスの観点から、標準
化活動を含めた事業面からの評価・モニタリングを実施することで、その採択プロセス
を通じ、各企業における戦略商材の社会実装・海外展開に向けた標準化戦略を把握した
上での研究開発支援が可能となった。
さらに、総務省では、令和 5 年度補正予算により新基金事業を拡充し、国際標準化活
動に対する支援メニューを新設した。具体的には、事業面 WG 国際標準化活動支援に関
する取りまとめに基づき、2024 年3月、国際標準化活動支援の対象決定等に係るプロセ
ス等を整理した基金運用方針(改定)及び国際標準化活動支援の対象決定のための審査
の要件を整理した国際標準化活動支援要件を定め、2024 年度より、社会実装・海外展開
志向型戦略的プログラムの研究開発プロジェクト実施者に対する国際標準化活動支援を
新たに実施することとしている。
(2)今後の方向性
標準化を技術や知的財産の観点からのみに基づく単体の取組として捉えるのではなく、
エコシステムの形成や市場獲得までを見据えた企業の事業戦略に基づくその一環としての
標準化(ルール形成)活動を推進すべきである。そのためには、市場形成・拡大のための
研究開発及び知的財産のオープン戦略と、事業戦略上の優位性を確保するための研究開発
及び知的財産のクローズ戦略とを一体的に推進することが益々重要であり、国はこうした
活動を最大限支援していくべきである。
具体的には、これから世界的に本格化する Beyond 5G の標準化活動では、相当頻度・期
間の会合対応に加え、関係コミュニティも含む「仲間づくり」が重要な局面となってくる
ことから、これに的確に対応するため、我が国として注力すべき対象とする標準化団体の
重点化を図ることが重要である。
さらに、事業面 WG 国際標準化活動支援に関する取りまとめに基づき、総務省は、民間
企業による戦略的な標準化活動に必要となる出張旅費、専門人材の人件費等について支援
54
を行うとともに、民間企業は、各企業における「司令塔的機能」を主体とした戦略的な標
準化活動体制の構築や、必要に応じ総務省の支援を活用する等して、注力対象とする標準
化団体に対する派遣人材の拡充等を行うことにより、標準化に係る量的・質的な推進力を
強化していくことが重要である。
3.3.2
標準化に携わる人的資源の確保
(1)現状
我が国では、企業において限られた担当者が標準化を担っている等、標準化に携わる人
材の固定化や後継者(若手)の不足が指摘されており19、企業が、標準化会合への派遣人
数や活動量等を強化していく上での足枷になっていると考えられる。
その背景となる個別具体的な課題は、活動対象とする標準化団体(デジュール/フォーラ
ムの別や各団体毎)や活動する企業・組織等によって異なり様々であると考えられるが、
共通した本質的な課題は、企業において、標準化活動に対する経営コミットメント、事業
戦略上の位置づけ、推進体制の弱さがあり、これによって、標準化に携わる人材に対する
キャリアパスやインセンティブ設計、教育等の仕組みが十分に対応されていない状況にあ
ると考えられる20。
標準化に携わる人材に求められるスキルとしては、標準仕様を作成・提案・議論できる
技術的専門性の高さに加えて、団体・会合におけるステークホルダーとの交渉・調整、関
係コミュ二ティも含むアライアンスや仲間づくり、その中でのプレゼンスや発言力の確保
が極めて重要であり、そのためのコミュニケーション能力等も必要とされている21。後者
については、取りも直さず、「標準化活動は担当者に任せておけばよい」ということではな
く、経営層自らが標準化活動に取り組むことの重要性を示している。
これから本格化する Beyond 5G をはじめとする情報通信分野の標準化活動では、フォー
ラム標準からデジュール標準までの流れを見据えた中長期的な活動が必要と見込まれ、我
が国としてこれに的確に対応できるよう、標準化に携わる人的資源を持続可能な形で確保
していく取組や環境整備が重要となっている。
19
例えば、ITU-T の標準化会合への日本からの参加者の年齢構成を見ると、参加者では 50 代以上が 57% このうち役職
者では 50 代以上が 78%となっている。
(第 43 回技術戦略委員会 事務局資料(資料 43-3)より)
20
例えば、
(一社)情報通信技術委員会(TTC)が会員向けに実施したアンケート調査によると、事業戦略等と関連付
けられた標準化活動の評価指標・KPI の設定や標準化活動のインセンティブ・動機付けの制度がない企業が大半を占
める状況、実施した標準化活動内容・成果について経営層等への決まった報告が少ない状況等の結果となっている。
(第 43 回技術戦略委員会 TTC 提出資料(資料 43-6)より)
21
例えば、
(一社)情報通信技術委員会(TTC)が会員向けに実施したアンケート調査によると、標準化人材に特に期
待するスキル・知識等について「交渉・折衝能力」の回答が最も多く、かつ4項目以上を選択した回答が大半を占め
る等、幅広い知識・スキル等が期待される結果となっている。
(第 43 回技術戦略委員会 TTC 提出資料(資料 43-6)
より)
55
こうした点も含め、標準化に携わる人材に関する課題は、事業面 WG 国際標準化活動支
援に関する取りまとめにおいても、標準化活動の推進に当たっての中長期的に重要な視点
として、数々の指摘がなされている。
(2)今後の方向性
標準化活動については企業・組織の経営コミットメントや事業戦略との一体性が重要と
の認識の下、新基金事業による「戦略商品」の社会実装・海外展開に本気で取り組む企業
に対する標準化活動支援も活用する等して、民間企業においては、事業戦略に基づく標準
化活動やそのための戦略的体制を強化し、各企業における、経営層レベルにおけるコミッ
トメントに加え、若手も含めた標準化に携わる人材の確保・育成の強化・拡充を図ってい
くことが重要である。
また、重要な標準化活動に対して我が国として中長期的かつ持続可能な形で対応してい
くため、Beyond 5G 新経営戦略センターが主体となって、関係する企業・組織の経営層の
コンセンサスを得ながら、かつ企業・組織の枠を超えた形での次世代人材育成や、その人
材の力をフル活用した業界・分野横断の取組を推進していくことが重要である。
さらに、事業戦略に基づき標準化活動に取り組む企業における積極的な人材の育成・確
保等に資するため、業界横断的な組織が主体となって、個々の企業の取組をサポートし、
かつ、企業が有効活用できるような、標準化に携わる人材のスキルセットやこれを活用し
た教育プログラムの整理・共有等を行うことも必要である。
あわせて、各標準化団体における役職者等、主要なポストを担い、標準化活動における
主要な役割を果たせる人材育成にも取り組み、我が国のプレゼンスの向上を図っていくこ
とも重要である。
3.3.3
情報収集・分析力の強化
(1)現状
標準化活動の参加者は、標準化会合で提出された文書の分析や会合での議論等を通じて
他参加者の活動状況やその背景等を把握・分析し、自らの提案内容等に反映している。ま
た、総務省においても、会合への参加、参加者からの情報提供、関係者との意見交換等を
通じて標準化活動の動向を収集・分析し、政策の立案等に活用してきているところであ
る。
他方、標準化活動においては、かつては通信事業者やベンダーが活動の主体を担ってい
たが、現在は大手テック企業やユーザ等も標準化活動に参加する等、ステークホルダーの
増加や利害関係の多様化・複雑化が進展しており、標準化活動の実施に際して考慮が求め
られる要素が増加している。
56
また、標準化活動の動向等に関する情報について、標準化会合の報告書や結果報告会等
を通じて検討概要や検討結果がオフィシャルには共有されているが、それ以外の情報や知
見については、関係者間に体系的に共有されてはおらず、我が国の国際競争力の確保等に
向けて戦略的な活用が必ずしもできていない状況にある。
(2)今後の方向性
総務省は、自らが参加する標準化活動以外も含めて、標準化活動の動向等に関する情報
を収集・分析しているところであるが、今後、国際競争力の強化や安全性・信頼性の確保
等の観点から重要となる分野について、情報を収集する対象や収集する情報の内容等を充
実させるとともに、豊富な知識や経験を持つ有識者による分析や、国内関係者のみならず
主要国政府の標準化担当者や海外の専門家との連携を図る等、多角的な視点から分析し、
そこから得られた知見を関係企業にも共有していくべきである。
57
3.4
社会実装・海外展開に関する取組
3.1 で述べたとおり、我々の取組の出口は、Beyond 5G に関連するビジネスを事業とし
て成立させ、社会実装を進めるとともに、海外に展開していくことであり、本節で述べる
取組が、目標達成に向けた「仕上げ」として最も重要な取組となる。
他方で、社会実装や海外展開に関する取組は、市場環境の変動や経済的・地政学的な影
響を大きく受けるものであり、研究開発や国際標準化活動と比較して不確実性が高いのが
一般的であることから、最も困難であり、覚悟が必要とされる取組とも言える。
このような認識の下、社会実装や海外展開の担い手である民間企業を中心としつつ、政
府としても可能な限りの支援を行い、官民が協力する形で、以下本節で述べるような各種
事項に取り組むべきである。
3.4.1
インフラ整備とエコシステム拡大に向けた各種取組
(1)現状
Beyond 5G 推進戦略において、あらゆる者が必要なリテラシーを備え、Society 5.0 の恩
恵を十分に享受できる「Beyond 5G ready」な環境を支える 5G・光ファイバ網の社会全体
への展開を進めるとされていたところ、総務省は、2022 年3月、「デジタル田園都市国家
インフラ整備計画」を策定(2023 年4月改訂)し、同計画に沿って、光ファイバ、5G、
データセンター/海底ケーブル等のデジタル基盤の整備を着実に進めてきている。
また、1.5 で述べたとおり、IOWN Global Forum において IOWN 構想の実現と普及に向
けたユースケースの検討が進められており、今後、実証等が予定されている。また、通信
事業者と異業種のユーザ企業が連携した先導的なサービス提供や、防衛省やデジタル庁に
おいて通信事業者が参画し、将来的な Beyond 5G の活用の可能性を含めた検討が進められ
ている。
これに加え、2025 年大阪・関西万博においては、総務省・NICT・民間事業者等が連携
し、「Beyond 5G」によって社会・生活がどのように変わるかを、「Beyond 5G ready ショ
ーケース」として体験型の大規模な展示を実施することが計画されている。
(2)今後の方向性
総務省においては、引き続き「デジタル田園都市国家インフラ整備計画」(改訂版)に基
づき、事業者と協力しながら、Beyond 5G の導入に繋がるデジタル基盤の整備を着実に進
めることが適当である。
民間事業者においては、2.3 で述べた視点を強く意識しながら、2024 年4月に発足した
XG モバイル推進フォーラム(XGMF)や IOWN Global Forum をはじめとするフォーラム等
の場や、機器・デバイスベンダ及びユーザ企業が参加する業界団体等も活用しつつ、潜在
的なユーザを発掘し、これらとともに実証等を行うことで Beyond 5G 時代の新たなビジネ
58
スモデルを提供側とユーザ側が共に創りあげていく取組を、技術の成熟を待つことなく強
化し、これらの実証等から得られた知見を研究開発や国際標準化活動に反映させるサイク
ルの構築を目指すべきである。その際、一般利用者の視点も強く意識することが、新たな
ビジネスモデル創りの確実性を上げ、提供側・ユーザ側の双方の利益に繋がると考えられ
る。また、上記の取組を国内に閉じることなく、2025 年大阪・関西万博におけるショーケ
ース等も活用しつつ、並行してグローバルにも展開していく意識が重要である。
総務省においては、多様な主体が参画してフィールドトライアル型の研究開発等を行う
ことが可能なテストベッド等の環境を整備することにより、上記の民間事業者の取組を強
力に後押ししていく必要がある。
また、総務省は、安全保障を含む公共領域におけるシステムでの Beyond 5G の活用に向
けた橋渡しを図るとともに、データセンターの分散立地等を通じた再生可能エネルギー等
の効率的活用やレジリエンス強化といった社会課題の解決に繋がる Beyond 5G の活用につ
いて必要な支援策を検討し、Beyond 5G のエコシステムの形成・拡大に繋げていくべきで
ある。
3.4.2
海外市場の開拓・獲得に向けた各種政策支援
(1)現状
これまで、総務省においては、自由で開かれたインド太平洋(FOIP)、インフラシステム
海外展開戦略 2025 等の政府全体で共有された外交方針に基づき、安全性・信頼性を確保
したデジタルインフラの海外展開支援事業による実証実験等の実施、デジタル海外展開プ
ラットフォーム等の枠組を活用した官民連携の強化、官民ファンド JICT によるリスクマネ
ーの供給等の取組を通じ、積極的に日本企業の海外展開を支援してきたところである。
また、日米豪印(QUAD)戦略対話、電気通信に関するグローバル連合(GCOT)等の同
志国連携の枠組を通じて、強靭かつ安全で信頼性の高いデジタルインフラの展開に向け、
特に 5G/Open RAN や光海底ケーブルの分野において国際協力を進めており、日本企業を
含めた信頼できるベンダーの受注拡大に一定程度の寄与が見られるところである。
一方で、欧州・韓国ベンダーが Open RAN 準拠のネットワーク設備の提供を開始したこ
と等を契機に Open RAN 市場の競争関係も激化しており、同志国連携を強化すれば自ずと
受注が見込まれるような状況ではなくなってきている。Open RAN 等の現行市場における
日本企業の市場獲得支援を行うとともに、新たな戦略商品であるオール光ネットワークや
衛星・HAPS 等の非地上系ネットワーク等の将来的な Beyond 5G 市場の獲得に繋げる必要
がある。
59
(2)今後の方向性
将来的な Beyond 5G の海外市場の獲得を見据えると、Beyond 5G にも繋がる Open RAN
関連製品やオール光ネットワーク対応光伝送装置等の既に商用化された製品の海外展開を
支援することにより、現段階から、海外事業者との関係や販路の構築等を含めた日本企業
のフットプリントを拡大しておくことが極めて重要である。
上記の観点から、Open RAN 関連製品やオール光ネットワーク対応光伝送装置等の各企
業が戦略的に取り組もうとするデジタルインフラの展開に向けた大規模実証やフィールド
トライアルの実施を含め、より一層、積極的な海外展開支援を実施する必要がある。
このような支援に当たり、総務省は、相手国政府への働きかけ等、必要な外交的後押し
を積極的に行うとともに、新基金事業との連携はもちろんのこと、関係府省、JICT 等の官
民ファンド、JBIC、JICA、JETRO 等の関係機関との連携の強化や、デジタル海外展開プラ
ットフォーム等の官民連携協議会も活用した、支援候補企業の案件形成時点での情報共
有、重点技術・有望ビジネス・ターゲット国等の重点分野の共有といった連携を強化する
必要がある。
その際、海外展開支援についても、現地化、販路拡大や出資等を含めて本気で取り組む
企業やプロジェクトを重点的に支援することとし、実証までしか予定していない取組につ
いては支援を抑制する等、メリハリをつけた支援を行うべきである。
3.4.3
国内の関連制度の整備
(1)現状
Beyond 5G に係る電波関係の実証実験を加速化するため、これまで、総務省において、
高周波数帯(100GHz 超)における実証実験を迅速かつ柔軟に実施できるようにするため
の制度整備や、実験等無線局の開設・変更を円滑かつ迅速に行えるようにするための免許
手続きの見直しが行われてきた。
また、Beyond 5G に向けた国際的に調和のとれた周波数の確保に向け、これまで、我が
国として、ITU-R における議論の状況を踏まえた携帯電話用周波数の割当てに向けた検討
を行ってきた。2023 年 ITU 世界無線通信会議(WRC-23)においては、我が国が提案す
る、HAPS 等の非地上系ネットワーク(NTN)を含めた Beyond 5G の実現に向けた議題に
おいて、周波数確保等に成功した。
このほか、携帯電話事業者による基地局のオープン化を促進するため、5G 普及に係る開
設指針において、マルチベンダーによる相互接続性・相互運用性が確保されている規格に
基づく通信機器の採用等に向けた取組に関する計画を有していることを開設計画の認定の
要件に加えている。
60
(2)今後の方向性
WRC-23 において IMT 周波数帯として特定された帯域や次期(WRC-27)新議題となっ
た帯域について、引き続き、IMT と既存システムの間の共用可否も含めて、国内における
割当て可能性について検討を進めることが必要である。また、HAPS や衛星ダイレクト通
信等の NTN について、我が国において早期に利用可能となるよう、周波数利用等に係る技
術基準の検討をスピード感を持って進めていくべきである。
また、高周波数帯の開拓を含めた、電波の有効利用に資する民間の取組を更に促進する
ための制度的対応について、マネタイズやエコシステムの仕組みの構築の観点にも留意し
つつ、継続的に検討するべきである。
このほか、Beyond 5G の円滑な提供やサイバーセキュリティの確保をはじめとする必要
な対応について、技術基準等の制度的対応を含め、国がスピード感を持って検討していく
ことが必要である。
これに加え、Beyond 5G を利用したユースケースの拡大に向けても、必要となる制度整
備や規制緩和について、現行の規制のサンドボックス制度や国家戦略特区制度等の現行の
規制改革に関する制度も念頭に、関係省庁がスピード感を持って対応し、技術実証や社会
実装が遅滞なく進むようにすることが必要である。
上記に当たっては、社会実装に向けた取組の進捗等を常に注視し、実態を踏まえた検討
となるよう留意しつつも、民間事業者による社会実装の後押しとなるような適切なタイミ
ングを見極めることが重要である。
61
第4章 今後の取組
本報告書では、Beyond 5G の早期かつ円滑な導入と、Beyond 5G における国際競争力の
強化及び経済安全保障の確保に向け、これまでの取組の進展状況や新たな環境変化等に基
づき、新たな戦略において重視すべき4つの視点を明確化した上で、研究開発、国際標準
化、社会実装・海外展開といった各種取組を進めるに当たっての基本的な考え方と、具体
的な取組の方向性を示した。またその中で、AI 戦略会議における議論やスタートアップ育
成5か年計画等、政府全体の政策動向を踏まえ今後求められる対応についても一定の整理
を行った。
【戦略目標の設定】
総務省が 2020 年6月に策定・公表した Beyond 5G 推進戦略では、我が国の企業が強み
を活かしてパートナー企業とともに市場シェアの3割程度を獲得すること等を基本方針と
している。これは、Beyond 5G の実現に向けてビジョンの策定や要素技術の開発等の初期
段階において一定の高い目標を掲げることで関係者の推進力を確保しようとしたこと、ま
た、当時、5G 基地局の世界市場が少数のグローバルベンダーによる寡占的な構造にあった
中、半ばそうした市場環境を前提として、我が国企業が一定のプレゼンスを確保すること
を目指すという考え方に基づき設定されたものである。
その後、4年近くが経過し、第1章で述べたような各種取組の進展状況、加えて 2.2 で
述べたような新たに考慮すべき環境変化等が進むとともに、新基金事業に基づき各企業の
戦略的な研究開発プロジェクトが開始されており、各企業がそれぞれのターゲットとする
市場において具体的な目標を定めて取組を進めている。また、2.3.3 で述べたとおり、官民
が協力して、また、有志国との連携の下、市場のオープン化に向けた取組を進めていると
ころである。
こうした取組状況を踏まえ、今後の戦略目標については、「日本が主導する形で市場のオ
ープン化を推進し、グローバルなエコシステムを実現していく中で、日本企業が一定の存
在感を発揮する」という姿を目指すこととし、例えば、Beyond 5G が広く普及する成熟期
として、2030 年代半ば~後半頃を念頭に、「オープン化が十分に進展し、Beyond 5G のイ
ンフラを構成するハードウェア及びソフトウェアの世界市場のうち、我が国が強みを持つ
製品・サービス市場において我が国企業(複数企業の場合を含む。)がパートナー企業とと
もに市場シェア上位数者に入ることを目指す」といった形で設定することが適当である。
【戦略目標の達成に向けた中期的な目標及び取組】
その上で、2030 年頃を念頭においた中期的な目標としては、現在、新基金事業では、採
択プロジェクト毎に、市場シェアの獲得を含む野心的な目標の設定を求めるとともに、総
務省においては、新基金事業全体の成果目標(KPI)として、事業化、特に海外展開におい
62
ては不確実性が伴うことを考慮し、全プロジェクトのうち野心的な目標を達成したプロジ
ェクト数が半数以上となるよう政策目標を設定している。
1.3 で述べたとおり諸外国が政府も関与する形で戦略的な取組を進めるとともに、2.2 で
述べたとおり通信業界を巡る構造変化や AI の爆発的普及等、市場環境・競争環境が劇的な
変化を見せる中、野心的な目標を設定して採択されたプロジェクト、いわゆる「戦略商
品」についても、必ずしも思惑どおりに事が進むとは限らず、見直し・撤退を余儀なくさ
れることも想定される。そうした前提を置きつつ、戦略商品として位置付けられるプロジ
ェクトについては、より多くのプロジェクトが野心的な目標を達成できることを目指すと
いう考え方に立ち、引き続き、プロジェクトの半数以上において野心的な目標を達成する
という政策目標の下、研究開発支援、国際標準化支援、社会実装に向けた制度整備・イン
フラ整備支援、海外展開支援等、あらゆる政策ツールを有機的に組み合わせて総合的に支
援を行うことが適当である。
【戦略・行動計画の策定等】
このため、総務省においては、本報告書の趣旨を踏まえた全体的・具体的な戦略・行動
計画を速やかに策定・公表するとともに、クローズドな形で、「戦略商品」ごとに各事業者
と研究開発、国際標準化、社会実装・海外展開に関する取組についての計画・方針等を作
成・共有し、新基金事業に基づくモニタリングに加え、定期的な情勢分析・意見交換等を
通じて進捗を把握しつつ、各種の個別の政策ツールでの対応・適用を行うことで、目標達
成を図るべきである。
その際、例えば、研究開発については、NTN に関して宇宙航空研究開発機構(JAXA)の
宇宙戦略基金と分担・連携する等、政府の科学技術・イノベーション政策全体を踏まえ推
進することに加え、社会実装を図る上では、関係府省庁が所管する制度について必要な対
応を進める等、Beyond 5G の推進を政府全体の国家戦略の重要な構成要素と位置付け、政
府一体で推進する必要がある。
また、本報告書でも指摘したように、業界構造やビジネスモデルのみならず、世界情勢
が大きく変化して流動的となっていることを踏まえ、これらの動向に対するアンテナを高
く張り、新たな課題や環境変化等が生じた場合には、必要に応じて臨機かつ柔軟に見直し
等を図っていくことが適当である。
63
資料編
64
諮
問
第
2 7
号
令 和 3 年 9 月 30 日
情報通信審議会
会長
内山田
竹志
殿
総務大臣
諮
問
書
下記について、別紙により諮問する。
記
Beyond 5G に向けた情報通信技術戦略の在り方
-強靭で活力のある 2030 年代の社会を目指して-
65
武田
良太
別紙
諮問第 27 号
Beyond 5G に向けた情報通信技術戦略の在り方
-強靭で活力のある 2030 年代の社会を目指して-
1
諮問理由
コロナ禍でのデジタル化の進展等により、国民生活や経済活動における情報通信の果たす
役割やその利用に伴うセキュリティの確保が一層重要なものとなっている。特に、Society
5.0 の中核的な機能を担う次世代情報通信インフラ「Beyond 5G」については、激化する国
際競争等を背景として、先端技術開発等の取組が重要な局面を迎えている。
総務省が 2020 年6月に策定した「Beyond 5G 推進戦略」では、2030 年代の社会像として、
サイバー空間とフィジカル空間の一体化(Cyber Physical System)を進展させ、国民生活
や経済活動が円滑に維持される「強靱で活力のある社会」の実現を目指すべきとされている。
その実現に向けて、同戦略が提言する「研究開発戦略」や「知財・標準化戦略」を一層強力
に推進するための具体的な方策の検討が急務となっている。
また、2021 年4月から、
「科学技術・イノベーション基本法」が施行されるとともに、
「第
6期科学技術・イノベーション基本計画」
(2021 年3月閣議決定。5か年の計画)の計画期
間に入った。同計画に基づき政府全体では、イノベーションの創出に向けた取組や分野別戦
略(「量子」、「AI」、「知財・標準化」、「宇宙」、「安全・安心」等)の策定や見直しが進めら
れ、今後、関係府省が連携した政策の具体化等が一層加速する見込みであることから、総務
省における ICT 技術政策を再整理した上で、政府戦略への対応を検討する必要がある。
以上のとおり、今後の情報通信分野の技術動向や政府全体のイノベーション政策動向等を
踏まえつつ、強靱で活力のある 2030 年代の社会を目指した Beyond 5G の推進方策等につい
ての検討・整理が必要であることから、Beyond 5G に向けた情報通信技術戦略の在り方につ
いて、諮問する。
2 答申を希望する事項
(1)2030 年代に向けた情報通信技術の展望
(2)Beyond 5G に向けた研究開発戦略及び知財・標準化戦略の在り方
(3)政府全体の政策動向等を踏まえた ICT 技術政策の在り方
(4)その他必要と考えられる事項
3
答申を希望する時期
令和4年6月目途
4
答申が得られたときの行政上の措置
今後の情報通信行政の推進に資する。
66
情報通信審議会
情報通信技術分科会
構成員名簿
(敬称略 五十音順、令和6年4月1日現在)
氏
名
分科会長
尾家
祐二
九州工業大学 名誉教授
森川
博之
東京大学 大学院
石井
夏生利
伊 丹
誠
井上
由里子
一橋大学 大学院
法学研究科
江 﨑
浩
東京大学 大学院
情報理工学系研究科 教授
上條
由紀子
國領
二郎
慶応義塾大学 総合政策学部 教授
三瓶
政一
大阪大学 名誉教授
高田
潤一
東京工業大学 環境・社会理工学院 学院長/教授
高橋
利枝
長谷山
美紀
北海道大学 副学長/大学院情報科学研究院・教授
平野
愛弓
東北大学 電気通信研究所 教授/材料科学高等研究所
増田
悦子
公益社団法人全国消費生活相談員協会 理事長
分科会長
代
理
主
要
現 職
工学系研究科 教授
中央大学国際情報学部 教授
東京理科大学先進工学部電子システム工学科
教授
教授
九州工業大学 社会実装本部 未来思考実証センター 特任教授
早稲田大学
教授/ケンブリッジ大学「知の未来」研究所
アソシエイトフェロー
67
主任研究者
情報通信審議会
情報通信技術分科会
技術戦略委員会
構成員名簿
(敬称略 五十音順、令和6年4月1日現在)
氏
名
査
相 田
仁
主査代理
森川
博之
上條
由紀子
増田
悦子
公益社団法人全国消費生活相談員協会 理事長
秋山
美紀
慶應義塾大学 環境情報学部 教授
飯塚
留美
一般財団法人マルチメディア振興センター 調査研究部 研究主幹
今井
哲朗
東京電機大学 工学部 情報通信工学科 教授
大柴
小枝子
京都工芸繊維大学
沖
理 子
国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構 第一宇宙技術部門
地球観測研究センター センター長
主
主
要
現 職
東京大学 特命教授
東京大学 大学院 工学系研究科 教授
九州工業大学 社会実装本部 未来思考実証センター 特任教授
電気電子工学系 教授
長 内
厚
川添
雄彦
日本電信電話株式会社 代表取締役副社長 副社長執行役員
児玉
俊介
一般社団法人電波産業会
小 西
聡
寺田
健二
日本放送協会 理事・技師長
新田
隆夫
国立研究開発法人情報通信研究機構 理事
平田
貞代
芝浦工業大学 大学院理工学研究科 准教授
東北大学 大学院工学研究科 技術社会システム専攻 特任准教授
宮崎
早苗
株式会社 NTT データ
スト
宮田
修次
富士通株式会社 先端技術開発本部 エグゼクティブディレクター
山 田
昭 雄
日本電気株式会社 Corporate SVP 兼 研究開発部門長
早稲田大学 大学院 経営管理研究科 教授
専務理事
KDDI 株式会社 シニアディレクター 兼 株式会社 KDDI 総合研究所
取締役執行役員副所長、先端技術研究所長
68
公共・社会基盤事業推進部 シニア・スペシャリ
情報通信技術分科会及び技術戦略委員会
会議・開催日
第 45 回情報通信審議会
総会
(2021.9.30)
第 159 回情報通信技術
分科会
(2021.10.26)
第 27 回技術戦略委員会
(2021.11.4)
開催状況
議題等
〇「Beyond 5G に向けた情報通信技術戦略の在り方」について(諮問)
【令和3年9月 30 日付け 諮問第 27 号】
〇「Beyond 5G に向けた情報通信技術戦略の在り方」について(諮問)
【令和3年9月 30 日付け 諮問第 27 号】
○Beyond 5G に向けた情報通信技術戦略の在り方に関する検討について
(事務局)
○Beyond 5G 推進コンソーシアムの活動状況等について
・中村 武宏 オブザーバー(
(株)NTT ドコモ執行役員、Beyond 5G 推進コンソー
シアム企画・戦略委員会白書分科会主査)
○Beyond 5G 新経営戦略センターの活動状況等について
・森川 博之 構成員(Beyond 5G 新経営戦略センター共同センター長、Beyond 5G
推進コンソーシアム企画・戦略委員長)
第 28 回技術戦略委員会
(2021.11.18)
○Beyond 5G の推進等に関する関係者からのプレゼンテーション
第 29 回技術戦略委員会
(2021.12.1)
○Beyond 5G の推進等に関する関係者からのプレゼンテーション
第 30 回技術戦略委員会
(2022.1.13)
○中間論点整理について(事務局)
○知財・国際標準化戦略について(Beyond 5G 新経営戦略センター戦略
検討タスクフォースの中間報告)
・中尾 彰宏 オブザーバー(東京大学大学院工学系研究科教授、Beyond 5G 推進コ
ンソーシアム国際委員長)
・徳田 英幸 オブザーバー(国立研究開発法人情報通信研究機構(NICT)理事長)
・小西 聡 構成員(KDDI(株)技術統括本部技術戦略本部副部長)
・川添 雄彦 構成員(NTT(株) 常務執行役員、IOWN Global Forum 会長)
・森田 俊彦 構成員(富士通(株) エグゼクティブフェロー)
・種谷 元隆 オブザーバー(シャープ(株) 常務執行役員、研究開発事業本部長)
・浅井 光太郎 オブザーバー(三菱電機(株) 開発本部開発業務部技術顧問)
・山田 昭雄 オブザーバー(日本電気(株) 執行役員)
・森川 博之 構成員(Beyond 5G 新経営戦略センター戦略検討タスクフォース主
査)
第 31 回技術戦略委員会
(2022.1.28)
○Beyond 5G に向けた技術戦略の具体化について(宇宙ネットワーク、
量子技術)
・宇宙ネットワークの技術戦略(総務省宇宙通信政策課)
・佐々木 雅英 オブザーバー(NICT 量子 ICT 協創センター長)
・島田 太郎 オブザーバー(量子技術による新産業創出協議会実行委員長、東芝デ
ジタルソリューションズ(株)社長)
第 32 回技術戦略委員会
(2022.2.10)
○Beyond 5G に向けた技術戦略の具体化について(ネットワークアーキ
テクチャ、グリーン ICT、国際競争力 等)
・中尾 彰宏 オブザーバー(東京大学大学院工学系研究科教授)
・鈴木 淳一 オブザーバー(
(株)NTT データ グリーンイノベーション推進室)
・桑津 浩太郎 オブザーバー(
(株)野村総合研究所 未来創発センター研究理事)
・杉浦 孝明 オブザーバー((株)三菱総合研究所営業本部)
第 33 回技術戦略委員会
(2022.2.28)
○Beyond 5G に向けた技術戦略の具体化について(Beyond 5G 推進コ
ンソーシアム白書の取りまとめ状況、通信事業者の取組 等)
・中村 武宏 オブザーバー(NTT ドコモ(株)執行役員、Beyond 5G 推進コンソー
シアム企画・戦略委員会白書分科会主査)
・小西 聡 構成員(KDDI(株)技術戦略本部副本部長、 Beyond 5G 推進コンソーシ
アム企画・戦略委員会白書分科会ビジョン作業班リーダー)
・中村 隆治 オブザーバー(富士通(株)事業戦略室、Beyond 5G 推進コンソーシ
アム企画・戦略委員会白書分科会技術作業班リーダー)
・上村 治 オブザーバー(ソフトバンク(株)渉外本部 本部長代理 電波政策統括
室長)
・朽津 光広 オブザーバー(楽天モバイル(株) 品質保証プラットフォーム本部
QA マルチアクセス部)
69
第 34 回技術戦略委員会
(2022.3.25)
○関係者からのプレゼンテーション(人材育成環境の整備)
・原田 博司 オブザーバー(京都大学大学院情報学研究科通信情報システム専攻)
○報告書骨子案について(研究開発戦略)(事務局)
○知財・国際標準化戦略について(Beyond 5G 新経営戦略センター戦略
検討タスクフォースの最終報告)
・森川 博之 構成員(Beyond 5G 新経営戦略センター戦略検討タスクフォース主
査)
第 35 回技術戦略委員会
(2022.4.12)
第 36 回技術戦略委員会
(2022.4.27 メール開催)
第 37 回技術戦略委員会
(2022.6.15)
第 164 回情報通信
技術分科会
(2022.6.21)
第 46 回情報通信審議会
総会
(2022.6.30)
会議・開催日
第 40 回技術戦略委員会
(2023.11.7)
○報告書案について
○報告書案について
報告書案についての
意見募集
(2022.5.7~2022.6.6)
○報告書案の意見募集結果等について
〇「Beyond 5G に向けた情報通信技術戦略の在り方」について
(中間答申案)【令和3年9月 30 日付け 諮問第 27 号】
〇「Beyond 5G に向けた情報通信技術戦略の在り方」について
(中間答申)
【令和3年9月 30 日付け 諮問第 27 号】
議題等
○検討再開の背景及び主な検討事項
○NICT における Beyond5G(6G)基金事業について
・萩本 和男オブザーバー(NICT Beyond 5G(6G)基金事業プログラム・ディレク
ター)
第 41 回技術戦略委員会
(2023.12.7)
○令和5年度補正予算について
○関係者ヒアリング
・川添 雄彦 構成員(NTT(株)代表取締役副社長 副社長執行役員)
・大谷 朋広 オブザーバー(KDDI(株)技術戦略本部長)
・大矢 晃之 オブザーバー(ソフトバンク(株)執行役員 モバイル&ネットワーク
本部長)
・大坂 亮二 オブザーバー(楽天モバイル(株)執行役員 先端技術開発本部長)
第 42 回技術戦略委員会
(2023.12.20)
○関係者ヒアリング・事務局説明
第 43 回技術戦略委員会
(2024.1.19)
○関係者ヒアリング・事務局説明
第 44 回技術戦略委員会
(2024.1.30)
○関係者ヒアリング・事務局説明
・石津 健太郎 オブザーバー(NICT Beyond 5G デザインイニシアティブ長)
・事務局
・立本 博文 オブザーバー(筑波大学教授)
・飯塚 留美 構成員(
(一財)マルチメディア振興センターシニア・リサーチディレ
クター)
・事務局
・上村 治 オブザーバー(ソフトバンク(株) 渉外本部副本部長)
・新 博行 オブザーバー(前 ITU-R Study Group 5 副議長(
(株)NTT ドコモ))
・吉野 絵美 オブザーバー(
(一社)情報通信技術委員会企画戦略部長)
・伊東 克俊 オブザーバー(ソニーグループ(株)テクノロジープラットフォーム
Technology Infrastructure Center 先進無線アクセス開発室 統括部長(IOWN Global
Forum ユースケース ワーキンググループ議長)
)
・田丸 健三郎 オブザーバー(日本マイクロソフト(株)業務執行役員)
・松田 康宏 オブザーバー(東急不動産(株)都市事業ユニット 渋谷開発本部
コンテンツ・エリア共創グループ グループリーダー)
・山井 康浩 オブザーバー(
(株)三菱 UFJ 銀行 産業リサーチ&プロデュース部長)
・保坂 益貴 オブザーバー(防衛省 防衛政策局 戦略企画参事官付企画官)
70
第 45 回技術戦略委員会
(2024.2.8)
○関係者ヒアリング・事務局説明
第 46 回技術戦略委員会
(2024.2.22)
○オール光ネットワーク共通基盤技術に係るワーキンググループの設置
について
○論点整理(Beyond 5G を取り巻く動向や現状認識・新たな戦略の基本
的な方向性)
○革新的情報通信技術プロジェクト事業面評価等ワーキンググループか
らの報告
第 47 回技術戦略委員会
(2024.3.22)
・クロサカ タツヤ オブザーバー(
(株)企 代表取締役)
・齋藤 尚史 オブザーバー(経済産業省 商務情報政策局 情報産業課 課長補佐)
・嶋崎 政一 オブザーバー(文部科学省研究振興局参事官(情報担当)
)
・福田 正 オブザーバー (株式会社角川アスキー総合研究所 取締役ファウンダー)及
び事務局
・森川 博之 構成員(革新的情報通信技術プロジェクト事業面評価等ワーキンググル
ープ主任)
第 48 回技術戦略委員会
(2024.4.2 メール開催)
第 49 回技術戦略委員会
(2024.5.29)
第 180 回情報通信
技術分科会
(2024.6.6)
第 51 回情報通信審議会
総会
(2024.6.18)
○報告書(案)(第1章・第2章)について
○論点整理(具体的な取組の方向性及び今後の取組)
○報告書案について
報告書案についての意見募集
(2024.4.13~2024.5.13)
○オール光ネットワーク共通基盤技術ワーキンググループからの報告
○報告書案の意見募集結果等について
〇「Beyond 5G に向けた情報通信技術戦略の在り方」について
(最終答申案)【令和3年9月 30 日付け 諮問第 27 号】
〇「Beyond 5G に向けた情報通信技術戦略の在り方」について
(最終答申)
【令和3年9月 30 日付け 諮問第 27 号】
71
資料3
資料 51-1-3
(案)
情 通 審 第
令和
総 務
松
大
本
年
号
月
日
臣
剛
明
殿
情報通信審議会
会 長
答
申
遠 藤
信 博
書
令和3年9月30日付け諮問第27号「Beyond 5Gに向けた情報通信技
術戦略の在り方」について、審議の結果、別添のとおり答申する。
(別添は、資料51-1-2とする。)
資料4
資料 51-2
情報通信技術分科会・各部会の活動状況
(第 50 回総会[R6.2.9]以降)
情報通信技術分科会
開催回数
第 177 回
(R6.2.13)
種別
答申
第 178 回
(R6.3.12)
答申
審議事項
「海上無線通信設備の技術的条件」のうち「9GHz 帯小型船舶用固体素子レーダー
の技術的条件」について
【平成 2 年 4 月 23 日付け電気通信技術審議会諮問第 50 号】
「新世代モバイル通信システムの技術的条件」のうち「4.9GHz 帯における第 5 世代
移動通信システムの技術的条件」について
【平成 28 年 10 月 12 日付け諮問第 2038 号】
第 179 回
(R6.4.9)
答申
①「電波防護指針の在り方」のうち「吸収電力密度の指針値の導入等」について
【平成 25 年 12 月 13 日付け諮問第 2035 号】
②「携帯電話端末等の電力密度による評価方法」のうち「6GHz~10GHz における
吸収電力密度の測定方法等」について
【平成 30 年 4 月 25 日付け諮問第 2042 号】
③「航空無線通信の技術的諸問題について」のうち「90GHz 帯滑走路面異物検知
レーダーに関する技術的条件」について
【昭和 60 年 4 月 23 日付け電気通信技術審議会諮問第 10 号】
第 180 回
(R6.6.6)
議決
「Beyond 5G に向けた情報通信技術戦略の在り方」について
【令和 3 年 9 月 30 日付け諮問第 27 号】
答申
「国際無線障害特別委員会(CISPR)の諸規格について」のうち「ワイヤレス電力伝
送システムに関する技術的条件」のうち「6.7 MHz 帯の周波数を用いた電界結合型
ワイヤレス電力伝送システムに関する技術的条件」について
【昭和 63 年 9 月 26 日付け電気通信技術審議会諮問第 3 号】
諮問
「V-High 帯域における公共ブロードバンド移動通信システム及び狭帯域 IoT 通信シ
ステムに関する技術的条件」について
【令和 6 年 6 月 6 日付け諮問第 2046 号】
報告
「小電力の無線システムの高度化に必要な技術的条件」のうち「5GHz 帯無線 LAN
の上空利用に係る技術的条件」の検討開始について
【平成 14 年 9 月 30 日付け諮問第 2009 号】
情報通信政策部会
開催回数
種別
審議事項
(開催なし)
電気通信事業政策部会
開催回数
第 71 回
(R6.3.28)
種別
答申
審議事項
「ブロードバンドサービスに関するユニバーサルサービス制度における交付金・負担金の
算定等の在り方」について
【令和 5 年 7 月 7 日付け諮問第 1236 号】
議決
「IP 網への移行後の音声接続料の在り方」について
【令和 5 年 10 月 2 日付け諮問第 1237 号】
第 72 回
(R6.5.2)
諮問
「IP 網への移行等に向けた電気通信番号制度の在り方」について
【令和6年5月 2 日付け諮問第 1238 号】
第 73 回
(R6.6.17)
答申
「IP 網への移行後の音声接続料の在り方」について
【令和 5 年 10 月 2 日付け諮問第 1237 号】
郵政政策部会
開催回数
第 36 回
(R6.3.26)
種別
審議事項
「デジタル社会における郵便局の地域貢献の在り方」について
【令和 4 年 10 月 14 日付け諮問第 1235 号】
第 37 回
(R6.5.1)
議決
「デジタル社会における郵便局の地域貢献の在り方」について
【令和 4 年 10 月 14 日付け諮問第 1235 号】
資料5
情報通信審議会 総会(第51回)議事概要
1 日時 令和6年6月 18 日(火)9:30~10:22
2
場所
第1特別会議室(Web会議併用)
3 出席者
(1)委員(敬称略)
遠藤 信博(会長)、尾家 祐二(会長代理)、浅川 秀之、
荒牧 知子、石井 夏生利、市毛 由美子、井上 由里子、
浦 誠治、江﨑 浩、大橋 弘、上條 由紀子、閑歳 孝子、
桑津 浩太郎、甲田 恵子、越塚 登、三瓶 政一、高田 潤一、
高橋 利枝、東條 吉純、堀 義貴、増田 悦子、横田 純子、
米山 高生(以上23名)
(2)総務省
西田 昭二(総務大臣政務官)、竹内 芳明(総務審議官)、
吉田 博史(総務審議官)、藤野 克(官房総括審議官)
(国際戦略局)
田原 康生(国際戦略局長)、豊嶋 基暢(官房審議官)、
川野 真稔(技術政策課長)、中越 一彰(通信規格課長)、
影井 敬義(通信規格課 標準化戦略室長)
(情報流通行政局)
小笠原 陽一(情報流通行政局長)、湯本 博信(官房総括審議官)、
西泉 彰雄(官房審議官)、玉田 康人(郵政行政部長)、
(総合通信基盤局)
今川 拓郎(総合通信基盤局長)、渋谷
闘志彦(総務課長)
(サイバーセキュリティ統括官)
山内 智生(サイバーセキュリティ統括官)
(3)事務局
田邊 光男(情報通信政策課長)
4
議 題
(1)答申案件
①「Beyond 5G に向けた情報通信技術戦略の在り方」について
【令和3年9月 30 日付け諮問第 27 号】
【内容】
「Beyond 5G に向けた情報通信技術戦略の在り方」について、Beyond
5G の研究開発、国際標準化、社会実装、海外展開を、より効果的かつ
実効的に推進するための新たな戦略の在り方についてとりまとめた最
終答申(案)について審議したもの。
審議の結果、情報通信技術分科会から提案があったとおり、最終答
申(案)を了承し、最終答申とすることとした。
(2)報告案件
情報通信技術分科会及び各部会の活動状況について
【内容】
情報通信技術分科会及び各部会の活動状況について、事務局より報
告があったもの。
本会議にて配付された資料を御覧になりたい方は、総務省HPにおいて
公開しておりますので御覧下さい。
また、総務省において、閲覧に供し及び貸し出しておりますので、以
下まで御連絡をお願いいたします。
担 当:総務省 情報通信審議会事務局
山下補佐、岡本補佐、
一田係長、益田官
電
話:03-5253-5432
メール johotsushin-shingikai/●/soumu.go.jp
迷惑メール防止対策のため、送信時は/●/を@に置き換えてください。
資料6
情報通信審議会 総会(第51回)議事録
1 日時 令和6年6月 18 日(火)9:30~10:22
2
場所
第1特別会議室(Web会議併用)
3 出席者
(1)委員(敬称略)
遠藤 信博(会長)、尾家 祐二(会長代理)、浅川 秀之、
荒牧 知子、石井 夏生利、市毛 由美子、井上 由里子、
浦 誠治、江﨑 浩、大橋 弘、上條 由紀子、閑歳 孝子、
桑津 浩太郎、甲田 恵子、越塚 登、三瓶 政一、高田 潤一、
高橋 利枝、東條 吉純、堀 義貴、増田 悦子、横田 純子、
米山 高生(以上23名)
(2)総務省
西田 昭二(総務大臣政務官)、竹内 芳明(総務審議官)、
吉田 博史(総務審議官)、藤野 克(官房総括審議官)
(国際戦略局)
田原 康生(国際戦略局長)、豊嶋
川野 真稔(技術政策課長)、中越
影井
敬義(通信規格課
基暢(官房審議官)、
一彰(通信規格課長)、
標準化戦略室長)
(情報流通行政局)
小笠原 陽一(情報流通行政局長)、湯本 博信(官房総括審議官)、
西泉 彰雄(官房審議官)、玉田 康人(郵政行政部長)、
(総合通信基盤局)
今川 拓郎(総合通信基盤局長)、渋谷
闘志彦(総務課長)
(サイバーセキュリティ統括官)
山内 智生(サイバーセキュリティ統括官)
(3)事務局
田邊 光男(情報通信政策課長)
4
議
題
(1)答申案件
「Beyond 5G に向けた情報通信技術戦略の在り方」について
【令和3年9月 30 日付け諮問第 27 号】
(2)報告案件
情報通信技術分科会及び各部会の活動状況について
-2-
開
○遠藤会長
会
皆様、おはようございます。
それでは、ただいまから、情報通信審議会第51回総会を開催させていただきます。
本日は、ウェブ会議とのハイブリッド形式で会議を開催させていただいてございます。
現時点で、委員30名中20名の方に御出席をいただいてございます。定足数を満た
してございますので、この会議の決議等が有効であるということを、まず皆様に御報告
いたします。
会議の傍聴につきましては、ウェブ会議システムによる音声のみでの傍聴とさせてい
ただいてございます。
また、本日は審議の終了の前に、西田総務大臣政務官から御挨拶をいただく予定にな
ってございます。
それでは、お手元の議事次第に従いまして議事を進めてまいります。
本日の議題は、答申事項1件、報告事項1件でございます。円滑な議事進行に御協力
をいただきますようお願い申し上げます。
(1)答申案件
「Beyond 5Gに向けた情報通信技術戦略の在り方」について
【令和3年9月30日付け諮問第27号】
○遠藤会長
それでは、初めに、答申案件について審議をさせていただきたいと思いま
す。諮問第27号「Beyond
5Gに向けた情報通信技術戦略の在り方」につきま
して審議をさせていただきます。
本件につきましては、情報通信技術分科会及び技術戦略委員会におきまして、精力的
に調査・審議をしていただいて、このたび答申案を取りまとめていただいたものでござ
います。
本日は、情報通信技術分科会、分科会長の尾家会長代理から御説明をお願いいたした
いと存じます。
それでは、尾家分科会長、よろしくお願いいたします。
-1-
○尾家分科会長
承知いたしました。皆様、おはようございます。
それでは、諮問第27号「Beyond
5Gに向けた情報通信技術戦略の在り方」
について、情報通信技術分科会で取りまとめました最終答申案を説明させていただきま
す。
最終答申案の内容は、今、表示されております資料51-1-2のとおりですが、本
日は、資料51-1-1の概要資料に沿って説明させていただきたいと思います。少々
長い説明になりますが、よろしくお願いいたします。
まず、今表示されております1ページは、これまでの検討の経緯を示しております。
Beyond
5Gにつきましては、我が国では総務省が2020年6月に「Beyo
nd 5G推進戦略」を策定・公表し、以降、官民による取組が進展してきたところで
す。一方で、Beyond
5Gをめぐる国際的な開発競争が激化し、研究開発や国際
標準化といった戦略の具体化の必要性が高まってきたことから、総務省の諮問を受け、
2021年9月より情報通信審議会において、Beyond
5Gに向けた情報通信技
術戦略の在り方を審議してきたところです。
次のページで紹介しますが、2022年6月の中間答申では、研究開発基金の創設な
どを提言し、これを受けたNICT法、電波法の改正を受けて、2023年3月より、
Beyond 5Gの研究開発を支援する恒久基金の運用が開始されています。
今般の技術戦略委員会における検討では、こうした取組の進展や国内外の動向を踏ま
えて、研究開発、国際標準化、社会実装・海外展開をより効果的かつ実効的に推進する
ための新たな戦略の在り方について、議論を行ったものです。
取りまとめに当たりましては、委員会を計10回にわたり開催し、外部有識者、主要
通信事業者、ユーザー企業、関係団体、国研、関係省庁など、様々な関係者のヒアリン
グを通じ、その取組や知見を反映しながら議論を進め、今月6日に開催されました情報
通信技術分科会での審議を経て、最終答申案を取りまとめております。それらの経緯は、
本資料の最終ページに記載しております。
それでは、2ページを御覧ください。この2ページは、今般の委員会の検討の出発点
となりました2022年6月の中間答申について、簡単にまとめたものです。
検討に当たっての課題としては、一番上段にあります①熾烈な国際競争、②通信ネッ
トワークのトラヒックと消費電力の増大、③国際戦略としてのデジタル化の推進を挙げ、
これを踏まえまして、下にありますような研究開発戦略、社会実装戦略、知財・標準化
-2-
戦略、海外展開戦略を提言しました。特に左下にございます研究開発戦略につきまして
は、Beyond 5Gの全体像として、無線部分のみならず、有線・無線、陸海空な
どを包含したネットワーク全体を統合的に捉えた形で整理するとともに、注力すべき重
点技術分野としてオール光ネットワーク技術などの3分野を特定し、これらの研究開発
を加速化するための予算の多年度化を可能とする枠組みの創設を提言いたしました。
3ページを御覧ください。今し方御紹介しました中間答申を踏まえまして、政府や民
間事業者の取組が進展してきております。ここでは、主に3つの進展を御紹介したいと
思います。
まず、①ですが、研究開発基金の運用の本格化についてです。もともとNICTに設
置されました時限的な基金に続き、中間答申を踏まえ、恒久的な基金がNICTに新設
され、これを活用して、社会実装や海外展開を強く意識した戦略的な研究開発プロジェ
クトなどへの支援が開始されています。2023年度には17件の主な新規プロジェク
トが採択されるなど、基金の運用が本格化しています。基金の詳しい執行状況につきま
しては、後ほど4ページを御参照ください。
続きまして、②です。通信事業者などの取組についてです。まず、足元の5Gにつき
ましては、携帯電話事業者各社が5Gの真価を発揮できる5Gスタンドアローンサービ
スの一般提供を、2022年以降開始しているところです。Beyond
5Gに向け
ては、NTT東西が昨年3月よりオール光ネットワークの商用サービスIOWN1.0
の提供を開始したほか、KDDIやソフトバンクが、オール光ネットワークを自社のコ
ア網に導入したことを発表しています。また、IOWN構想に関する業界フォーラムと
してNTTなどが設立したIOWN
Global
Forumは、国内外から142
団体が参加するなど活動が拡大しており、日本の通信業界としても、楽天モバイルに加
え、昨年3月にはKDDIが参加するなど、オールジャパンとしての取組になりつつあ
ります。このほか、携帯事業者各社はHAPS、高高度プラットフォームや衛星といっ
た非地上系ネットワーク、NTNとの連携や自社ネットワークへのAIの適用などに取
り組んでいるところです。
最後に、③の社会実装・海外展開に向けた取組についてです。社会実装につきまして
は、東急不動産が、スライドの右にありますように、昨年12月に新たに竣工した複合
ビルにおいて、全フロアにIOWN1.0を導入するといった取組を行っています。こ
のほか防衛省においても、Beyond 5Gの活用を検討しているところです。海外
-3-
展開に向けては、国際的なビジョンづくりにおいて、Beyond
5G推進コンソー
シアムなどの検討の成果がITU-Rのフレームワーク勧告に反映されました。また、
近年低迷が続いていた日本の通信ベンダーの海外展開状況にも変化があり、Open
RUNや光伝送装置といった分野で進展があります。さらに、国際的にも、昨年4月に
群馬高崎で開催されたG7デジタル・技術閣僚会議において、Beyond
るG7ビジョンが承認されるなど、我が国のBeyond
5Gに係
5Gのビジョンの浸透を図
ってきています。
以上のような進展を踏まえて、Beyond 5Gの実現に向けては、ビジョンづく
りや要素技術開発といった初期フェーズは終わりつつあり、より社会実装・海外展開を
意識するフェーズへと移行してきていると言えます。
4ページをお願いします。4ページは研究開発基金の執行状況についてですので、こ
の説明につきましては割愛させていただきます。
5ページをお願いします。先ほど御説明しました取組の進展に加え、今般の検討にお
いて新たに考慮すべき環境変化と課題を大きく3点、整理しております。
1点は、ネットワークの自律性や技術覇権をめぐる国際的な動向です。能登半島地震
やロシアのウクライナ侵攻などを通じ、近年、災害時や有事を含め、ネットワークの自
律性を確保することの重要性が、改めて認識されています。それと同時に、新興技術を
めぐる主要国の競争が激化しており、情報通信ネットワークが、基幹インフラとしての
自律性の確保、国際的な技術覇権競争の言わば結節点として位置づけられると言えます。
このため、5Gのサイトは比較にならないほど各国政府が政策的関与を強めており、利
害関係の多極化やシステム全体の大規模化、複雑化と相まって、標準化などにおけるコ
ンセンサスづくりが困難になりつつあります。
2点目につきましては、通信業界をめぐる構造変化です。4Gまでは、主に人が利用
者となることを念頭に、通信事業者や通信ベンダーが通信可能エリアや通信速度を向上
するための技術開発や標準化を行い、通信事業者がインフラ整備を進め、その結果が利
便性の向上としてユーザーに実感され、通信事業者の収益拡大につながるという好循環
が働いていました。これを、情報通信白書では「ワイヤレスの産業化」と表現していま
す。
5G以降につきましては、モノをつなぐことで各産業分野における付加価値を創出す
る、言わば産業のワイヤレス化が期待されているものの、先ほど申し上げた4Gのよう
-4-
な好循環が生まれるのはこれからという状況であり、世界的にも5Gの収益化が大きな
課題とされています。
こうした状況に加え、通信業界では、大手テック企業がコアネットワーク機能の提供
や海底ケーブルの敷設などを通じて自ら通信事業者の立場に立ちつつあり、宇宙では、
スペースXといった新興事業者が衛星ネットワークの構築を急速に進め、携帯電話事業
者と連携してサービス提供を行うなど、伝統的な通信事業者を超えて存在感を増す一方
です。
以上のように、ネットワーク構造と、それをめぐるエコシステムやプレーヤーの影響
力が、急激に変化しています。
3点目は、AIの爆発的普及です。これまでの議論において、Beyond 5Gに
おけるAIの位置づけは、主にネットワークの運用を効率化するためのツールなど、い
わゆるAI for
Networkとしての活用が想定されていたところです。しか
しながら、ここ最近のAIの急激な普及を踏まえれば、ネットワークは今後、AIが
隅々まで利用された社会において、分散化したAI群を支え、連携させる基盤、すなわ
ちAI社会を支える基盤としての機能を果たすことが想定されます。この機能を答申案
では、従来のAI for
Networkに加え、Network for
AIs
と位置づけています。
同時に、AI開発利用がネットワークやデータセンターなどのデジタルインフラの消
費電力を増大させる可能性が指摘されており、これに対して、ネットワーク自体の低消
費電力化や、ネットワークを活用したデータセンターなどの電力需要の分散化などに対
する社会的要請が高まると考えられています。
次のページ、6ページをお願いします。こちらは、今回改めて整理しましたBeyo
nd 5Gの全体像です。今回の検討では、中間答申で一度整理した全体像について、
先ほど御説明した新たな環境変化を踏まえた見直しを行いました。
主な見直しのポイントを御説明します。
まず1点目は、図の左側にありますレイヤーの見直しです。中間答申では、ネットワ
ークインフラ層としていましたが、今回、コンピューティングも含めてデジタルインフ
ラ層と整理しました。具体的には、図の中段にあるコンピューティングリソースを新た
に全体像の中で位置づけ、これを支えるネットワークとともに一体的に運用されるとし
ています。
-5-
2点目は、先ほど御説明しましたAI
for
for
NetworkとNetwork
AIsの双方の概念をこの図にも反映し、一番下の端末からデジタルインフラ
層、サービス層まで、あらゆる層においてAIを遍在させています。
では、次、7ページをお願いします。これまで御説明しました官民の取組の進展や新
たな環境変化などを踏まえ、新たな戦略の基本的方向性をこちらのページにまとめてい
ます。
まず、戦略目標、一番上に2つ掲げていますが、1つ目はBeyond
5Gの早期
かつ円滑な導入です。そして、2つ目は、Beyond 5Gにおける国際競争力の強
化と経済安全保障の確保です。この2つの戦略目標は、2020年6月の総務省Bey
ond
5G推進戦略で掲げられたものを基本的に維持するものであり、言わば再確認
したものです。また、この2つは独立した目標ではなく、相互に相乗的なものであるこ
とに留意が必要です。
次に、新たな戦略において重視すべき視点を、大きく4つにまとめています。
1つ目は、業界構造等の変化の的確な把握とゲームチェンジです。中段の一番左にあ
ります。先ほど御説明した通信業界の構造が流動的な現状を的確に把握し、むしろこれ
をゲームチェンジの好機として捉えること、また、伝統的な通信事業者だけでなく、ビ
ッグテック、NTN事業者、データセンター事業者などの新たなプレーヤーを意識して、
戦略的に取り組むことが必要としています。
2番目です。グローバルなエコシステムの形成・拡大では、グローバル第一、グロー
バルファーストで大きなエコシステムを形成すること、開発・標準化・生態系づくりを
同時に進めること、さらに、市場全体の中で自身が一定の存在感を発揮できる立ち位置
を確保することが必要としています。
3つ目です。オープン化の推進では、ネットワークの自律性、市場競争的な環境、さ
らには、ネットワークの円滑なマイグレーションを確保するなどの観点から、相互運用
性の確保などのオープン化の推進を重視すべきとしています。
4つ目です。社会的要請に対する意識強化では、先ほど御説明した5Gの現在の状況
などを踏まえつつ、Beyond
5Gの実現に向けては、提供側の視点だけではなく
社会的要請の見極めが必要だとし、現時点で明らかな社会的要請として、コスト効率性、
環境負荷低減、信頼性・強靱性、接続性、セキュリティとプライバシーを挙げています。
以上を踏まえ、各種取組を進めるに当たっての基本的考え方をまとめています。下を
-6-
御覧ください。
まず、答申案では、官民の役割分担として、Beyond
5Gの社会実装や海外展
開の担い手が民間事業者であることを明確にしています。その上で、これら事業者が一
定の覚悟を持って取り組むプロジェクトを、ゲームチェンジを実現するための我が国の
戦略商品として位置づけ、その社会実装や海外展開を国が全力で支援すべきとしていま
す。
これに加え、答申案では総合的な取組の必要性についても提言しており、研究開発、
国際標準化、社会実装・海外展開などの各種取組について、これまで我が国では、とか
くばらばらに取り組む傾向があったところを、右の下の図に示していますように、有機
的に連携させつつ、総合的に取り組む姿勢が不可欠としています。
それでは、8ページをお願いいたします。以上の基本的方向性を踏まえた主な具体的
施策の方向性と、今後の取組を御説明します。
まず、先ほども御説明しましたけれども、中央にありますように、研究開発関係、国
際標準化関係、社会実装・海外展開関係のそれぞれの取組を一体的に推進することが重
要としています。
その上で、まず、研究開発関係につきましては、下を御覧いただければと思います。
研究開発基金を活用して現に進められている民間企業による戦略的な開発に対して、継
続的な支援を行っていくこと、次に、エコシステムの拡大に必要となる共通的な領域に
おける技術開発を推進すること、さらに、ICT分野における我が国の国際競争力を支
えるための基礎的・基盤的な研究力を確保することなどを提言しています。特に共通的
な領域における技術開発につきましては、米印(※)で記載しているとおり、技術戦略
委員会の下にワーキンググループを新設し、オール光ネットワークの事業者間連携のた
めの共通基盤技術について開発の方向性や普及方策などを検討して、本年5月に取りま
とめており、これを踏まえて早期に開発に着手すべきとしています。
次に、上の左のほうにあります国際標準化関係につきましては、まず、民間企業によ
る戦略的な標準化活動を支援し、標準化に係る質的・量的な推進力を強化すること、次
に、戦略的な標準化活動を下支えする人的資源の確保や、情報収集・分析力の強化を図
ることなどを提言しています。中でも、民間企業の標準化活動に対する支援については、
技術戦略委員会のワーキンググループにおいて、その支援の決定プロセスや審査要件、
支援対象決定後のモニタリングの在り方などを検討して、本年3月に取りまとめていま
-7-
す。総務省では、これを踏まえて、今年度より支援を開始することにしています。
最後に、上の右にあります社会実装・海外展開関係につきまして、まず、インフラ整
備とエコシステム拡大に向けた各種取組として、Beyond 5Gの導入につながる
デジタル基盤の整備や、多様な主体が参画するフィールドトライアル型の研究開発を可
能とするテストベッド環境の整備を進めること、次に、海外市場の開拓・獲得について、
既に商用化されたOpen
RAN関係製品や光伝送装置などを今から海外展開し、将
来的な市場獲得を見据えて日本企業のフットプリントを拡大すること、さらに、国際動
向などを踏まえた国内の周波数割当て可能性や技術基準の検討など、国内の関連制度の
整備を進めることなどを提言しています。
本件答申後の今後の取組としましては、答申案では、答申を受けて総務省は具体的な
戦略・行動計画を策定・公表すること、さらに、関係事業者とともに、我が国の戦略商
品ごとの計画をクローズドな形で作成・共有して取組を推進することなどを提言してお
ります。
最後に、今月6日に開催されました情報通信技術分科会での議論を簡単に御報告させ
ていただきます。
まず、日本がグローバルな流れの中で生きていくためには、なぜそのようなユースケ
ースが必要なのか、何を目指してエコシステムを構築するのかという、なぜの部分を日
本全体、特に民間企業の技術者がもっと明確に意識していくことが必要との意見があり
ました。
また、6ページの全体像について、通信とコンピューティングを一体的に描いたこと
への賛同の御意見、また、今後はエネルギーシステムとデジタルインフラの統合も視野
に入るのではないかとの御意見、さらに、通信とコンピューティングの一体的運用にお
いて、これが新たな独占につながらないように留意すべきとの御意見がありました。
次に、8ページの具体的施策の方向性にあるテストベッドの構築については、ユース
ケースをしっかり念頭に置き、民間のベンダーとプロバイダー、ユーザーが参画する民
主導のテストベッドとしていくことが非常に重要との御意見がありました。
このほか、答申案にあるオール光ネットワークという言葉遣いに対する指摘がありま
した。象徴的な意味でオールという言葉が使われているのであり、具体的には全てが光
に置き換えられるわけではないため、誤解がないように注釈などをつけるべきとの御意
見を踏まえ、資料8ページの米印において、技術戦略委員会の下に設置されたワーキン
-8-
ググループの取りまとめの整理を引用する形で、そのように記載いたしております。
私の報告は以上です。
○遠藤会長
御説明、大変ありがとうございました。
それでは、ただいまの御説明に関しまして、皆様から活発な御意見、または御質問を
いただければと存じます。よろしくお願いいたします。いかがでございましょうか。
それでは、三瓶委員、お願いします。
○三瓶委員
御説明、どうもありがとうございました。
報告内容については全面的に賛同いたします。それを踏まえた上で、この報告が出た
後の今後について、少しコメントとさせていただきたいと思いますけれども、まず、こ
の報告書が発行されたのは2024年6月であると。要するに、この報告書での現時点
というのは2024年6月の現時点であります。それに対して、今後の方向性というの
はそれ以降の話をしている。まず、現状ではそういう認識なのですが、次に何を申し上
げたいかというと、例えばこの後に、また国プロとかNICT予算での研究開発案があ
ります。現状、そういうところに出てくる提案書の現時点というのが、提案書はたくさ
ん私も読んでおりますが、本報告書を引用する形で出てくるのが圧倒的に多いです。総
務省の資料を現時点での提案書の内容で出すものが圧倒的に多いのですが、例えば2年
後に提案書として出てくるものも、現時点がこれであると。それで、既に2年たってい
るのですけれども、それに対してあなたがどう考えているんですかということは書かず
に、この総務省の報告書をそのまま引用するという提案が多い。
それから、さらに、研究がスタートして2年たった後、中間ヒアリングというのがあ
りますが、その時点では、今度は、研究計画当初の目標に対してどれだけ達成できます
かということが問われていることもあって、現時点で達成率100%ですという言い方
をします。それに対して、その中間評価の時点というのが、その研究がスタートして例
えば2年後の場合、これはこの報告書が出てからは4年後になります。この報告書が出
てから4年後ということを意識して中間報告で語っているのかというと、全く意識して
いないというのが現状で、非常にそういう状況が多いと私は感じております。特に情報
通信技術を開発しているメーカーの方で、そういう方が圧倒的に多い。研究職であって
もそういう方が多いと。
そこの認識をやっぱり変えるべきであって、なぜかというと、例えば8ページのスラ
イドで、研究開発と国際標準化と社会実装を一体的に推進すると。これは一体的に推進
-9-
する必要があるのですが、なぜ一体的に推進するのかというと、市場が動くからなんで
すね。市場動向が変わるので、これを一体的に推進して、市場を意識しながら研究開発
しないといけないですよというのが、この連携の意識の中心になければいけない。とこ
ろが、その連携の中心にあるべき意識というのが、そういう提案書とかを読む限り、あ
まり感じられない。
すなわち、やはり報告書を引用するというときには、引用は結構ですが、その引用は
あくまでも2024年6月ベースであって、そこからさらに会社のプロジェクトである
とか、あるいは研究開発は進化しているべきものなので、そういうところを意識して、
常に現状というものは、現時点での現状というものが語られなければいけないであろう
と思います。なので、そういう意識を持ちながらこういう資料を活用していくというこ
とが、私は必要なのではないかなと思います。
それともう一つは、それに必要な事項として、例えば5ページ目に大手テック企業が
プラットフォームレイヤーに入ってきているという絵があります。これは非常に重要な
事実ですが、なぜ大手テックがここに入ってきたのかということを強く意識してこのこ
とを捉えるのか、あるいは、現状がこうだから今後はどうなるんでしょうかという意識
で捉えるのか、これは大きな違いがあります。こういう社会情勢が大きく変わって技術
動向が変わるということはなぜなのかということが強く意識できないと、将来、自分た
ちがなぜこういうアクションを起こすのかというところにつながっていかない。要する
に、将来のリーダーシップが取れないということを意味しているわけです。
ですので、そのようなことを意識しながら、この資料は活用していただければなと思
いました。
以上です。
○遠藤会長
ありがとうございました。非常に貴重な御意見だと思います。いずれにし
ても、研究、開発、または実装は、各々リアルタイムで動いているので、現状と将来を
意識して次の戦略を立てるかということは重要な事と思います。特に、戦略を練るうえ
で、意識をすべき点を御指摘いただきました。ありがとうございました。
ほか、御意見はございますか。
それでは、高田委員、お願いします。
○高田委員
東工大の高田です。
御説明ありがとうございます。私も特に全体に関して、この方向性には全く異論ない
-10-
のですが、5ページの考え方で、1つ確認させていただきたいことがあります。
今、三瓶委員からも大手テック企業の話がありましたが、大手のテック企業、それか
らNTN、特に衛星系というのを考えたときに、この環境変化①の技術覇権、あるいは
国際動向、自律性と、どのような関係にしていきたいのか、より明確な意識が必要なの
ではないかという点が質問です。これらは今、別々の事情として書かれているように見
えているので、三瓶委員のお話に従えば、そこをきちんと考えろという趣旨をメーカー
に向けて言われていると思ったのですが、資料を見ていてどちらの方向へ行きたいのか
気になりました。要は①と②は若干矛盾するところもあるように感じたのです。何かお
考えがあれば伺いたく、質問させていただきます。
○遠藤会長
ありがとうございました。尾家分科会長、何か御意見ございますか。
○尾家分科会長
御質問ありがとうございます。今、御指摘いただきましたように、5
ページの①と②というふうにアイテマイズして整理されているのですが、それぞれ不可
分な部分もあると思います。今ありました大手テック、また新興事業者の件で言うと、
低軌道衛星のサービス提供が、実は有事の際、災害時に非常に有効であるという認識も
あったかと思いますが、それらについて、我々として、日本としてどのようにこれらに
取り組むのかということがあろうかと思います。ですから、不可分な部分もあるのでは
ないかと思います。
何か事務局からも付け加えることがありましたら、お願いします。
○川野技術政策課長
ありがとうございます。技術政策課長の川野でございます。
今、尾家分科会長からもございましたけれども、この3点につきましては、そういう
意味では、答申として整理いただくために3点に分けたということでございますけれど
も、高田委員御指摘のとおり、①と②も当然いろんな形で絡んできますし、逆に相反す
るところも出てくる。②は、非常にある意味、市場オリエンテッドな動きでございます
けど、①は、やはりどちらかというと安全保障とか政治・政策的な理屈というものでご
ざいまして、相反する部分もあると考えております。また、②と例えば③も、ビッグテ
ックが大きな存在感を出しているということと、AIがこれだけ普及している。これも
当然関係してくるところでございます。
特に衛星、あるいはHAPSを用いた非地上系のネットワークと地上系のネットワー
ク、これを国家としての自律性も含めてどうデザインしていくかということは、いろん
な議論があり得ると思っておりますし、総務省が単独で決めたからといって、市場がそ
-11-
う動くということもないと思っております。そういう意味では、三瓶委員からも御指摘
がありましたけれども、こういういろんな動きを常にウォッチしながら、日々試行して、
民間企業においても考えていただきたいし、我々行政としても、政策の方向をしっかり
と打っていくということをまさに柔軟にやっていく。
三瓶委員からありましたけど、今回これで決まったから、これであと4年動くんだと
いうふうに頭を固定させることなく、考えることが重要ではないかと考えております。
以上でございます。
○遠藤会長
ありがとうございました。
ウェブのほうから手が挙がっているようでございます。
井上委員、御発言いただけますか。
○井上委員
ありがとうございます。
8ページの左上に、標準化に携わる人的資源の確保が挙げられています。企業・組織
の枠を超えて連携して、人材のスキルセットを示し教育プログラムを業界共有するとの
こと、これは極めて重要な取組であると思っています。報告書には、これまで「標準化
のための標準化」になりがちであったところ、「戦略商材の社会実装・海外展開に向け
た標準化戦略」でなければならないとし、経営トップから現場までマインドセットを変
えていく必要があるといった記述がありますが、これも大変適切な指摘であろうと考え
ております。
標準化人材に関しては、これを実現していくためには、裾野を拡大し全体の、底上げ
をしていくということが必要になってくると思います。標準化は知財も関係しておりま
すので、経済産業省、特許庁、あるいは日本弁理士会、また知財関係の大学、大学院等
とも連携して、高度標準化人材の教育プログラムをつくっていく取組も検討いただきタ
イと思います。
以上です。
○遠藤会長
ありがとうございました。貴重な御意見だと思います。特に日本では、知
財をいかに生かす観点では、特許が中心になっておりまして、標準化に関しては戦略的
に必ずしも取り組んできていなかったと私も思います。現在は、内閣府、経済産業省を
中心として意識も変わり、いかに価値貢献を広げる手段として標準化を活用するかに力
を入れて頂いており、その一環として、特に企業の経営者による標準化の重要性の理解
を深める努力をして頂いています。経団連でも、企業経営者の標準化の重要性を意識し
-12-
ておりまして経営者の意識を高めるためのレクチャー等を開かせていただいているとこ
ろです。
いずれにしましても、我々日本そのものが、経済安全保障の観点、すなわち、グロー
バル市場への価値創造、価値貢献力の観点からも、標準化に関してリーダーシップを取
るということが非常に重要ですので、今いただきました御指摘を含めて、進めていける
よう努力が必要と思います。ありがとうございました。
少しお時間が迫ってございますが、あと1名程度、お話を伺えればと思いますが、い
かがでしょう。
三瓶委員、最後にお願いいたします。
○三瓶委員
すみません。先ほどの高田委員の質問に関するコメントなのですけれども、
5ページ目の①と②、これが別個なものではなくて関係しているのではないかと。それ
はそのとおりで、私の意識では、やっぱり国際的な動向が、4Gまではグローバルな市
場形成というもので国際動向が動いていたというのに対して、5G以降、政治的な要素
がかなり入ってきたというのが現状であるということから、いろんな制約条件が生まれ
るわけで、要は、環境変化②の構造変化の1つの要素として、①で書かれているような
政治的状況とかそういうものが、制約条件として入ってきているというのが1つあると
思います。
もう一つは、電波というのは、各国の電波主管庁が運用するという権限を持っていて、
グローバルなシステムであっても、各国の電波主管庁が電波利用の権限を持っている。
これが状況であります。なので、その国がどういうポリシーを持って電波を運用するか
によって、当然利便性は変わってくる、グローバルなシステムであっても衛星システム
であっても変わってくるという状況があるのに対して、現状どう動いているのかという
と、やはりそういうのを、例えば低軌道周回衛星もそういう状況を踏まえて、オペレー
ションするエリアをコントロールしているという意味がありますし、環境変化②の構造
変化の中に柔軟性という要素があって、この柔軟性というところを、テクノロジーで①
の色々な制約状況に対して対応しているというのが現状であって、そういうところもや
っぱり技術で対応しているということが重要なのではないかと私は思っております。
以上です。
○遠藤会長
ありがとうございます。御指摘のとおりだと私も思います。どのようなパ
ーパスで利用するのかということも含めて考える必要があると思います。通信の利便性
-13-
を上げるうえでは、当然各国間でのインターオペラビリティが必要で、これを実現する
うえでは標準化を含めて、積極的にリーダーシップをもってインターオペラビリティを
つくり上げていくということが必要になってまいります。一方、国家として考えると経
済安全保障、安全保障の観点を重視した目的でのシステム活用もあり、前述のインター
オペラビリティを高めたグローバルサービスを共有してより高い価値創造目的とするこ
ととを、各々パーパスを明確にしながら、Beyond 5Gの適用、応用を考えてい
くということが重要なのではないかなと思います。
我々が安全保障だけを中心に物を考えますと、インターオペラビリティの活用がおろ
そかになる可能性もございますので、今いただいた御指摘を含めて、その両方をいかに
バランスよく考え、最大限5G 技術を活用し高い価値として利用するかが重要だと思い
ます。いただいた御指摘御意見をしっかりと参考にさせて頂きたいと思います。ありが
とうございました。
それでは、ウェブのほうはよろしいでしょうか。ありがとうございます。
皆様、大変貴重な御意見をいただきまして、ありがとうございました。議論は尽きな
いところでございますけれども、この辺りで審議を一旦終了させていただいていただき
たいと存じます。
定足数も足りてございますので、本件につきましては、資料51-1-3のとおり、
最終答申とすることとさせていただきたいと存じますが、皆さん、いかがでございまし
ょう。よろしゅうございますでしょうか。
(
「異議なし」の声あり)
○遠藤会長
ありがとうございました。
チャットもございませんね。
それでは、本件、皆様の御同意をいただいたということで、進行させていただきたい
と存じます。
本日の答申につきまして、私からも最後、コメントをさせていただきたいと存じます。
尾家分科会長をはじめ、委員の皆様方におかれましては、大変精力的に御検討いただ
きましたこと、深く感謝を申し上げたいと存じます。
Beyond
5Gはあらゆる産業、それから社会活動の基盤となることが見込まれ
てございます。次世代の情報通信基盤であり、国際競争力の強化や経済安全保障の確保
の観点からも、早期の社会実装に向けた取組の推進は非常に重要であろうと考えてござ
-14-
います。これまでの審議におきましては、官民での取組の進展や、近年、生じている国
際的な動向、さらには、通信業界をめぐる構造の変化、そして、AIの非常に爆発的な
普及といった環境の変化も踏まえまして、より社会実装・海外展開を意識した、効果的
で実効的な戦略を取りまとめていただいたと考えてございます。
総務省におかれましては、本答申を踏まえまして、具体的な戦略行動計画を策定いた
だき、Beyond
5Gの実現に向けて、研究開発、国際標準化、そして、社会実
装・海外展開の取組を一体として推進いただくよう期待をしてございます。
私からは以上でございます。
それでは、答申書をお渡ししたいと存じます。
○田邊情報通信政策課長
ただいまから報道の関係の方々が入りますので、いましばら
くお待ちいただければと思います。
(報道関係者入室)
○遠藤会長
それでは、本日、取りまとめました答申書をお渡しすることとしたいと思
います。
○田邊情報通信政策課長
これより答申書の手交を行っていただきます。
遠藤会長と西田政務官は御起立ください。
なお、答申書手交時の写真を撮影いたしますので、恐縮ではございますが、答申書授
受の姿勢のまま、しばらくお待ちください。
それでは、よろしくお願いいたします。
○遠藤会長
答申書。令和3年9月30日付け諮問第27号「Beyond 5Gに向
けた情報通信技術戦略の在り方」については、審議の結果、別添のとおり答申をさせて
いただきたいと存じます。よろしくお願いいたします。
○西田総務大臣政務官
どうもありがとうございます。
(答申書手交)
○田邊情報通信政策課長
○遠藤会長
それでは、遠藤会長と西田政務官は御着席ください。
それでは、ただいまより、答申に対しまして、西田総務大臣政務官より御
発言をいただけるということでございますので、よろしくお願いを申し上げたいと思い
ます。
政務官、お願いいたします。
○西田総務大臣政務官
総務大臣政務官の西田昭二でございます。遠藤会長をはじめ、
-15-
委員の皆様方におかれましては、日頃より情報通信行政に格段の御理解を賜り、厚く御
礼を申し上げるところでございます。
ただいま最終答申をいただいた「Beyond 5Gに向けた情報通信技術戦略の在
り方」については、これまで審議会において大所高所から御審議をいただき、取りまと
めをいただきました。Beyond
5Gについては、令和4年6月にいただいた中間
答申を踏まえ、情報通信研究機構、NICTに設置した研究開発基金の運用が本格化し
ているほか、国内外での取組が活発化しているところでございます。こうした状況を踏
まえ、本最終答申では、ゲームチェンジを実現するための我が国の戦略商品を軸に、研
究開発、国際標準化、社会実装・海外展開の取組を有機的に連携させ、総合的に取り組
む姿勢が不可欠といった内容の御提言をいただいたわけでございます。
最終答申を踏まえ、総務省において、具体的な戦略、行動計画の策定、公表を早急に
進め、Beyond 5Gの早期実現に向けた各種取組を力強く推進してまいりたいと
考えております。
最後に、委員の皆様方におかれましては、引き続き情報通信行政への一層の御指導と
御協力をお願い申し上げ、私の御挨拶とさせていただきます。本当に御苦労さまでござ
いました。ありがとうございます。
○田邊情報通信政策課長
報道の皆様、ここまででございますので、退出をお願いでき
ればと思います。
(報道関係者退室)
○遠藤会長
西田総務大臣政務官、大変ありがとうございました。
西田総務大臣政務官は御公務のため、ここで退席をされます。ありがとうございまし
た。
○西田総務大臣政務官
本当にありがとうございます。引き続きよろしくお願いをいた
します。
(西田総務大臣政務官退室)
○遠藤会長
皆様、御協力、ありがとうございました。
(2)報告案件
-16-
情報通信技術分科会及び各部会の活動状況について
○遠藤会長
それでは、続きまして、報告案件に移りたいと存じます。情報通信技術分
科会及び各部会の活動状況につきまして、事務局から御説明をいただきたいと思います。
よろしくお願いいたします。
○田邊情報通信政策課長
事務局でございます。
御報告案件でございます。情報通信技術分科会及び各部会の活動状況について、資料
51-2により御説明をさせていただきます。本件は、情報通信審議会議事規則第10
条第6項及び第11条第11項に基づき、前回開催されました第50回総会以降の情報
通信技術分科会及び各部会の活動状況について御報告申し上げるものでございます。
情報通信技術分科会は、4回会合を開催いたしまして、4件の答申をいただいており
ます。
各部会につきましては、情報通信政策部会は開催実績なし、電気通信事業政策部会は
3回会合を開催し、2件の答申、郵政政策部会は2回会合を開催しております。
事務局からの説明は以上でございます。
○遠藤会長
ありがとうございました。
報告について何か御意見、御質問等ございましたらお受けしたいと思いますが、また
はチャット機能でいただければと思いますが、いかがでございましょうか。
チャットはいかがですか。よろしいですか。
閉
○遠藤会長
会
それでは、皆様からも御意見がないようでございますので、以上で本日の
議題は終了とさせていただければと思います。
委員の皆様方、何かございますか。ほかによろしゅうございますか。
事務局から何かございますでしょうか。よろしゅうございますか。
それでは、本日の会議は終了させていただきたいと存じます。
次回の日程につきましては、別途調整をさせていただき、事務局から御連絡をさせて
いただく予定でございます。
以上で閉会とさせていただきます。皆様の御協力、ありがとうございました。
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