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産業構造審議会 知的財産分科会 不正競争防止小委員会 第28回

2025-03-25一次資料(出典)

議事録・配布資料の全文(政府公表資料より。要約でなく原文に基づく参照用)。

産業構造審議会 知的財産分科会 不正競争防止小委員会 第28回 資料産業構造審議会 知的財産分科会 不正競争防止小委員会 第28回 資料産業構造審議会 知的財産分科会 不正競争防止小委員会 第28回 資料産業構造審議会 知的財産分科会 不正競争防止小委員会 第28回 資料産業構造審議会 知的財産分科会 不正競争防止小委員会 第28回 資料産業構造審議会 知的財産分科会 不正競争防止小委員会 第28回 資料産業構造審議会 知的財産分科会 不正競争防止小委員会 第28回 資料産業構造審議会 知的財産分科会 不正競争防止小委員会 第28回 資料

議事録

産業構造審議会知的財産分科会 第28回不正競争防止小委員会議事録 日時:令和7年3月25日(火) 13:30~15:15 場所:経済産業省9階東1-1会議室(WEB会議室併用) ○中山室長 定刻となりましたので、ただいまより、産業構造審議会 知的財産分科会 「不正競争防止小委員会」第28回会合を開催いたします。事務局を担当しております知 的財産政策室長の中山でございます。よろしくお願いいたします。本日は、ご多忙の中、 御出席いただきまして誠にありがとうございます。議事の公開につきましては、本小委員 会では、一般傍聴者及びプレスの方はTeamsでの傍聴に限って可能とさせていただいてお ります。 また、配付資料、議事要旨及び議事録も原則として公開という扱いにさせていただきた いと思ってございますので、よろしくお願いいたします。 また、オンラインで御参加の皆様におかれましては、カメラをオンに設定いただきまし て、マイクは御発言をされる場合を除きオフ設定をお願いいたします。 なお、御発言を希望される場合は、Teamsの挙手ボタンを押していただきまして、こち らから指名をいたしますので、マイクをオンにしていただいて、発言が終了いたしました らマイクをオフにして、挙手ボタンを下ろしていただきますよう御協力をお願いいたしま す。 また、オブザーバーとして、本日、内閣府知的財産戦略推進事務局、警察庁生活安全局 の皆様にも御出席をいただいているところでございます。 それでは、この先の議事は岡村委員長にお願いしたいと思います。よろしくお願いいた します。 ○岡村委員長 岡村でございます。本日もよろしくお願いいたします。 最初にちょっと申し上げておきますが、私は実は花粉症が非常にきつい状態でして、お まけに今日はPM2.5なるものも同時に飛んでいるというような報道にも接しまして戦々 - 1 - 恐々としております。つきましては、多少しゃべり声が聞こえづらいところがあるかもし れませんが、お許しいただけましたらということで、よろしくお願いいたします。 それでは、事務局から本日の資料につきまして御確認をお願いします。 ○中山室長 そうしましたら、事前に皆様に送付いたしました資料を確認させていただ きます。資料1が本日の議事次第、資料2が委員名簿、資料3-1がパブリックコメント における主な御意見及びそれに対する考え方、資料3-2が「営業秘密管理指針(案)」 (パブリックコメント後)、資料4が前回までにいただいた御指摘事項等に係る対応につ いてでございます。配付物に不足等ございましたらお申し出下さい。 ○岡村委員長 ありがとうございました。不足等はございませんか。はい。 それでは、初めに、事務局から本日の議題につきまして御説明をお願いいたします。 ○中山室長 議事次第の資料1を御覧いただければと思います。本日は「営業秘密管理 指針」の改訂に向けたパブリックコメントの結果ということで、前回御議論いただいた案 についてパブリックコメントの募集を実施いたしましたので、そちらの回答と、それを踏 まえた修正について、委員の皆様方に御議論いただきたいと思います。 2点目は、12月、1月に本小委員会を開催させていただきましたが、その中でいただい た事項等について、事務局としての方向性を御紹介させていただきたいと思ってございま すので、こちらについても御意見を頂戴できればと考えております。よろしくお願いいた します。 ○岡村委員長 ありがとうございました。 それでは、最初の議題に入りたいと思います。まず、事務局から資料3-1につきまし て御説明願います。 ○中山室長 そうしましたら、資料3-1に基づきまして「営業秘密管理指針」の改訂 案に対するパブリックコメントにおける主な御意見及びそれに対する考え方ということで 御紹介をさせていただきたいと思います。 まず御意見についてですけれども、4名の方から5件の御意見をいただいております。 パブリックコメントについては1か月程度、2月上旬から3月上旬まで実施をしてござい ます。 まず1番目の御意見でございますが、「営業秘密管理指針」全般ということでございま して、基本的にこの「営業秘密管理指針」改訂案の内容に賛成するという御意見です。そ の上で、今後、生成AIの発展に伴い、現状想定していない営業秘密の漏えい事例が生じ - 2 - る可能性があるのではないかということでございまして、生成AIと営業秘密の関係につ きましては、「秘密情報の保護ハンドブック」を昨年の2月に改訂し、生成AIと秘密情 報の管理・利用の在り方について紹介いただいたところであるが、今後も、生成AI関連 の新たな漏えい事案が生じた場合は、同ハンドブックを改訂いただき、新たな漏えい対策 について紹介をしていただけるようお願いしたいということでございます。 こちらの御意見に関しましては、まさに御指摘のとおりということでございまして、今 後の事案の蓄積などを踏まえまして、「秘密情報の保護ハンドブック」の内容については 引き続き検討し、改訂も含めて考えていきたいと思います。 2点目でございます。今回の改訂指針の11ページに、「IDやパスワードといった程度 の技術的な管理措置」という記載があるが、秘密管理措置の対象が明示されておらず、趣 旨が不明瞭ということでございまして、具体的な修正案を御提案いただいております。 こちらについても、明確化の観点から、御指摘の内容を踏まえまして、分量等も勘案し まして修正をしたいと考えています。具体的には、「会社のパソコン等へログインするた めのIDやパスワードなどにより秘密情報へのアクセスが制限されているといった程度の 技術的な管理措置」という形で修正を行いたいと考えています。 次に資料3-1の2ページ目です。今回の改訂指針の13ページ目に記載している「取引 相手先に向けたもの」についての御意見です。こちらについては、この引用にもあるよう に、「取引相手先と秘密保持契約を締結した上で秘密情報を提供したかどうかがポイント となる」という形で、秘密保持契約の締結を前提としたような書きぶりになっていますが、 秘密管理性の判断において秘密保持契約は必須ではないのではないかということで、修文 案含めて御意見いただきました。 こちらは、御意見を踏まえまして、かつ、引用されている文献が若干古いということも 踏まえ、現状の実態に合わせた上で、注書きのところで追記をするということを考えてご ざいます。具体的には、「相手方との秘密保持契約の締結がなければ、常に、秘密管理が 不適切となるわけではなく、秘密保持契約をあらかじめ締結せずに営業秘密を相手方に開 示したとしても直ちに秘密管理措置を欠くことにはならないと考えられる」という内容を 追記をしたいと考えています。 次は資料3-1の3ページ目の御意見でございます。これは今回の改訂指針の19ページ 目の学習用データを想定した形での生成AIの活用ということで事例を挙げさせていただ いたところですが、「 『学習用データ』と記載してしまうと、開発段階のみを対象としてい - 3 - るように読めてしまう。すなわち、プロンプトとして入力する場合が対象にならないよう に読めてしまうと思われるので、プロンプトを入力する場合も含まれるのであれば、それ に即した修正をすべき」という御意見をいただいております。 こちらの御意見については、「学習用データ」の記載を削除した上で、明確化の観点か ら表の右側のような修正をさせていただきたいと思っているところでございます。 次の御意見でございます。管理単位内で生成 AI を使用する場合であっても、自社で開 発した AI のみならず、様々なケースがあるのではないかという御指摘をいただいていま す。 こちらの御意見に関しましては、AIに関する今後の技術趨勢及び議論を注視していき たいと考えてございますので、今回すぐに事案として入れるというよりは、次回の改訂で の参考にさせていただきたいと考えています。 パブリックコメントにおける主な御意見と改訂の方針については以上となります。 そうしましたら資料3-2に移っていただきまして、具体的な指針の改訂案についても 改めて確認をいただきたいと思います。 資料3-2では、こちらは今回パブリックコメントで御意見いただいた点や、誤字脱字 などの体裁の面でも気づきの点を、内容を変えないという前提で修正をしていますので、 そちらも併せて御紹介をします。 まず2ページ目の2ポツ目の「前提」のところに関しては、文章の流れとしては同じこ とを二度書いているところもありまして、青字の部分のとおり、修正をさせていただきた いと考えています。 具体的には、 「企業における従業員の担い手についても、」の記載は削除し、兼業・副業 の動きに関しましても、実態として増えている実感はあるものの、具体的なファクトが確 認できない部分もありますので、「生じている」という書きぶりに変更させていただきた いと考えています。 次、11ページ目になります。こちらについては、先ほどパブリックコメントで御意見を いただきましたとおり、「会社のパソコン等へログインするための」という記載や、「秘密 情報へのアクセスが制限されている」という記載を追記し、いただいた御意見を反映して います。 次の2ポツ目は、本指針において、「従業員」という文言を使用していますが、「従業 者」という文言が残っていたので、誤記として修正しています。 - 4 - 13ページ目、本文のところの青字の修正に関しましては、これは10ページ目に記載され ている項目のタイトルと平仄を合わせる観点から修正をしています。パブリックコメント で御意見をいただいた秘密保持契約に関する点に関しましては、本文中ではなく、脚注に 追記という形で修正を加えています。 19ページ目、これは生成AIにおいて営業秘密を使う観点からの具体例を述べさせてい ただいている箇所ですが、先ほどの御指摘にもありましたとおり、「学習用データ」とい うと開発段階に限定されるという趣旨でしたので、ここは、「生成AIにおける学習用デ ータとして」を削除しています。 また、情報αの扱いが分かりにくい部分もございましたので、どこの管理単位かを明確 化する観点から、修正を加えています。 資料3に関しまして、事務局からの説明は以上となります。 ○岡村委員長 ありがとうございました。 ただいま事務局から説明がありましたパブリックコメントを踏まえての考え方、「営業 秘密管理指針」の改訂案につきまして、委員の皆様から御意見、御質問がございましたら 御発言をお願いできればと思いますが、いかがでしょうか。どんな点からでも結構でござ います。賛成のコメントを含めて、できれば、一言ずつでもいただけたらありがたく存じ ます。では、杉村純子委員。 ○杉村(純)委員 弁理士の杉村でございます。パブリックコメントも踏まえて、取り まとめ、誠にありがとうございました。 私といたしましては現時点の「営業秘密管理指針(案)」に賛成でございます。 ○岡村委員長 ありがとうございます。他の委員の先生方いかがでしょうか。どんな細 かい点でも結構かと存じます。では、林委員、お願いします。 ○林委員 御説明ありがとうございました。もともとの記載でも趣旨としては十分分か る部分かなという面もございますが、御指摘があったことを受けて、さらに誤解がないよ うに趣旨を明確化する文言を加えられたということで、修正についても賛同いたします。 ○岡村委員長 ありがとうございます。ほかに御意見、御質問などはございますでしょ うか。 ○小松委員 小松ですけれども、よろしいですか。 ○岡村委員長 小松委員、よろしくお願いします。 - 5 - ○小松委員 取りまとめ、ありがとうございました。AIについては急速に進展もして おりますし、動向も変わるという環境でありますので、今回御対応いただいたのですが、 今後もぜひフォローをよろしくお願いします。 それから、セキュリティーについては、いつも事前対策のセキュリティーが大切と私か ら言わせていただいたのですけれども、今回、2ページのほうにしっかりセキュリティー が大切ですということも書いていただいておりまして、これは大変ありがたかったと思い ます。今後も、法律での保護やハンドブックとともに、このようなセキュリティー対策に ついても読者に伝わっていけばいいなと期待しております。ありがとうございました。 賛成しております。ありがとうございました。 ○岡村委員長 ありがとうございました。今の小松委員の見解に関係して、今回は生成 AIという形で主な作業を進められていたわけですけれども、今後は、生成だけではなく てジェネリックなAIへ急速に広がっていくと考えられますので、次の改訂の機会には、 そうしたジェネリックなAIへの動きということも視野に入れつつ、生成AIにとどまら ず検討する必要があるのかどうかということについて議論をしていただけますようにお願 いいたします。 ほかの委員の先生方、いかがでしょうか。田村委員、難しい顔を……。何かおっしゃり たい気がしまして。 ○田村委員 ○岡村委員長 いえいえ、特にございません。 ほかにいかがでしょうか。では、ネット続きで、水野委員、何かもしあ りましたら。 ○水野委員 知財高裁・水野でございます。本日は、すみません、オンラインで参加さ せていただいています。 私も今回の改訂案及びそれに対するパブリックコメントを踏まえた修正案、いずれも賛 成させていただきます。取りまとめ御苦労さまでした。ありがとうございました。 今ほど他の委員の方からもそれぞれありましたとおり、日々刻々と情勢は変化しており、 AIの話もその一例ですが、少し前には想定していなかったようなことが起こる状況にな っております。その時々で生じた問題を踏まえて、引き続き検討を重ねていくことが求め られるものと思っているところです。全体的に賛成ということで回答させていただきます。 ありがとうございました。 ○岡村委員長 ありがとうございます。そうしたら、まだ意見をおっしゃっておられな - 6 - い委員の先生方からということで河野委員、お願いいたします。 ○河野委員 承知いたしました。私もパブリックコメントを踏まえた今回の御提案、修 正案に異論ございません。賛成をいたします。 お話に出ていましたけれども、AIなど新しい技術の進展がありましたし、コロナ禍が ありましたので、働き方が大きく変わった。そのような社会の変化に着目して、時宜を得 た改訂ができたのではないか、有意義だったと思っております。 以上です。 ○岡村委員長 おっしゃるとおりですね。リモートワーク、働き方は相当変わってきた ことを踏まえてということであります。大変大切な御指摘だと思います。ありがとうござ います。 では、末吉委員、お願いします。 ○末吉委員 ありがとうございます。私もこの変化に、特に営業秘密の場合はどう対応 していくのかがすごく大事なことだと思うので、AIの点を含めて定期的に情報をお集め いただいて、また適宜な見直しをぜひやっていただきたいと思うとともに、原案には全面 的に賛成でございますので、よろしくお願いしたいと思います。 ○岡村委員長 先ほど杉村純子委員から一言頂戴しましたので、お隣の畠山委員お願い いたします。 ○畠山委員 私も今回の取りまとめについては賛成でございます。これまでの意見も集 約していただいて、大変ありがとうございます。 いつも申し上げていることですけれども、中小企業の立場からということになると、こ ういったものができて、これをどう皆様方に認知してもらうかという点が非常に重要だと 思っています。そのときに、これまでも御指摘があった世の中の動きに、ついていくとい うのももちろんなのですけれども、関連する動きも含めてどう全体像をお知らせしていく か、営業秘密の指針のところだけでお伝えすると、なかなか中小企業に伝わらないところ もあるので、政府内での連携をお願いしたいと思います。 今サイバーセキュリティの議論なども、法案の提出に伴って周辺の中小企業をめぐる状 況につき政府部内でも議論されてきていると思いますので、そういう動きなども取り入れ ながら、どう伝えていくかというのを引き続き御検討いただければと思います。日商とし てもできるだけサポートできればと思っておりますので、よろしくお願いいたします。 ○岡村委員長 ありがとうございます。あと、すみません、ネット出席の冨田委員、一 - 7 - 言お願いできますでしょうか。 ○冨田委員 ありがとうございます。連合の冨田でございます。 私も今回の「営業秘密管理指針」の改訂案については賛成の立場でございます。 お願いが2点ございまして、1点目は、いろんな先生方が、時宜を捉え変更いただきた いという御発言ございましたが、私もそのとおりでありまして、特に今後、生成AIなど については事象の変更などに応じたタイムリーな検証・変更などの検討を引き続きお願い したいと存じます。 2点目は、今回の改定内容の周知でありますが、実際に現場で運用するのは労働者にな りますので、企業への周知はもちろんのこと、企業内での従業員への周知についても政府 のほうから働きかけていただきますようお願いをしたいと存じます。 以上でございます。 ○岡村委員長 ありがとうございます。今の点につきまして、事務局から何かコメント ありますでしょうか。 ○中山室長 ありがとうございます。大きく2点御指摘いただいたかと思います。生成 AIに関して、今後、技術の趨勢によって様々な種類のAIも出てくるでしょうし、様々 な使い方もされると思われますので、タイムリーに、「営業秘密管理指針」や秘密情報の 保護ハンドブックの改訂について、どちらに記載するのがよいのかということも含めて不 断に努力して検討していきたいと考えているところでございます。 周知の在り方はまさに従前よりも課題と認識しています。関係する従業員の方などにど うやって伝えていくのかに関しては、先ほど畠山委員や冨田委員からもお話がございまし たので、引き続き御相談をさせていただきながら、我々としても効果的な周知の在り方に ついて検討していきたいと思っていますので、よろしくお願いいたします。 ○岡村委員長 ありがとうございます。では、長谷川委員、お願いいたします。 ○長谷川委員 ありがとうございます。このたびいただいたパブリックコメントの御意 見はいずれもごもっともで、それを踏まえた御修正によってより分かりやすく、適切な内 容になったなと思っております。ありがとうございました。 最新の状況を反映させ、営業秘密に触れる可能性のあるすべてのステークホルダーにと って有益な内容になったと評価をしております。また、先生方おっしゃっておられますよ うに、これから益々技術の発達、社会の変化等ございますので、そういった状況の変化を 捉え、管理指針もさることながら、法的保護を得るための最低限度の備えを超え、またよ - 8 - りきめ細かな情報提供のために、保護ハンドブックの改訂も適切なタイミングを見て御検 討いただけると大変ありがたいと思っております。 以上です。 ○岡村委員長 ○中山室長 ありがとうございます。事務局から何かございますか。 ありがとうございます。こちらはそれぞれ、企業の形態によって実態も異 なるでしょうし、大学や研究機関など、様々なステークホルダーの方がいらっしゃるので、 どのような実態があるのかを含めて検討しつつ、ニーズに合わせた周知の在り方も検討し ていきたいと思いますので、よろしくお願いいたします。 ○岡村委員長 では、この議題の最後に、杉村多恵委員、お願いします。 ○杉村(多)委員 ありがとうございます。ほかの委員の先生方と全く同じ意見で、今 回の改訂に関しては賛成でございます。委員長及び事務局の皆様方の御尽力に感謝申し上 げます。 先日、中山室長から個別に事前説明をいただいた際に少し意見交換させていただいたと ころでございますけれども、今回、注釈で書いてくださった秘密保持契約を締結していな くても秘密管理措置が認められるということを追記いただいて、趣旨よく分かるなという ところで。 加えまして、今後の展開に当たっては、その部分は過度に記載がかかるというところ、 もしその辺りの関与といいますか、記載いただく上で御見解いただけるとありがたいかな といったところが1つ。 もう一つ、弊協会としましては、肖像・声に関する辺りも、情報収集というか、関心を 持っているところでございます。中山室長もこの辺り重視していかれるとお伺いしました ので、その辺りの情報がまたどこかのタイミングで弊協会のほうにも提供いただけるとあ りがたいなと思っております。 すみません、雑多な話になりましたけれども、以上でございます。 ○岡村委員長 ○中山室長 今の点については何かございますか。 ありがとうございます。秘密保持契約のところについては、契約の形態は 各社様ごとに異なると思いますので、我々としてもここは丁寧に見ていくことは引き続き 実施していきたいと思います。 声と肖像の話については、この後、資料4で御説明をさせていただきますので、その際 に併せてコメントさせていただければと思います。 - 9 - ○岡本委員長 ありがとうございました。おおむね御異論はないものと理解いたしまし た。つきましては、こちらの内容を溶け込ませた上で事務局から正式にパブリックコメン トの結果を公表する形とさせていただきたいと思いますが、この形で御了承いただけます でしょうか。 (「異議なし」の声あり) ありがとうございます。そうしましたら、最後のフィックスに向けた作業は私や事務局 と協議して改めさせていただくという形で御了承いただけますでしょうか。 (「異議なし」の声あり) ありがとうございます。 では、次の議題に入りたいと思います。まずは事務局から資料4につきまして説明をお 願いいたします。 ○中山室長 ありがとうございます。今回、「営業秘密管理指針」を取りまとめるとい うことで今年度は、本日含め計3回の不正競争防止小委員会をやらせていただきましたが、 先ほどの御指摘と重複する部分もありますが、前回、前々回の議論の中で、皆様から御指 摘いただいた内容について今後どうしていくべきかを御紹介させていただきたいと思いま す。是非皆様の御意見をいただければと思います。 まず、2ページ目に前回までいただいた御意見をまとめさせていただいております。 1つは、営業秘密に関する周知についてです。先ほどいただいたコメントとも重複する 部分もございますが、1点目としては、地方企業における営業秘密管理について、地方の 様々なステークホルダーの方々、弁護士知財ネット様であったり、弁理士会様、経産省の 地方局もございますので、そういったところとも連携して進めて欲しいとの御意見です。 2点目は、大学や、従業員など様々なステークホルダーの方がいらっしゃるということ で、そこに併せてしっかりと周知を行ってほしいという御意見です。 3点目は、中小企業に対しては、ニーズの把握や、現状を踏まえた営業秘密管理の強化 に向けた取組の推進も実施してほしいという御意見です 4点目は、情報セキュリティや経済安全保障など、昨今、営業秘密をめぐる状況は、不 正競争防止法に限らず幅広い政策を政府としても実施していくものであり関係者とも連携 しながら、分かりやすい周知活動に努めてほしいといった御意見です。 5点目は、生成AIについて、営業秘密管理のところに関して今後様々な事案が出てく ると思いますので、「営業秘密管理指針」であったり、「秘密情報の保護ハンドブック」を - 10 - 適宜改訂していくべきではないかという御意見です。 不競法の制度の在り方については、特許のみならず、周辺の営業秘密に関わるノウハウ といったところの知財全体の活用が重要となってくる中で、AIの進展など様々な状況が 変化していく中で不競法の重要性は高まっていくであろうという点も踏まえた中長期的な 制度の在り方について検討していったらどうかという御意見です。 それぞれいただいた点に関し、今、我々が考えていることを御紹介させていただきたい と思います。 3ページ目、営業秘密の周知の在り方に関しては、様々なステークホルダーがいる中で、 それぞれに適した営業秘密の周知を実施してほしいとの御意見いただいておりまして、経 産省の地方局とも連携しながら、試行的に営業秘密に関する御説明などもし始めていると ころです。地方によって産業構造や企業の実態も異なるので、引き続き現場の声を聞きな がら、必要とされるニーズを踏まえて周知活動をしていきたいと思います。 また、中小企業をはじめとした営業秘密管理の実態把握・ニーズ把握については、我々 自身も引き続き調査なども踏まえてやっていくということでございますけれども、IPA でも情報漏えいに関するデータなども幅広く取っておられるという状況と聞いているので、 そういった情報も活用しながら効果的な支援策を検討していきたいと考えています。 次に、生成AIに関する取組に関しては大きく2点ございまして、1点目は、今般改訂 した「営業秘密管理指針」のみならず、「秘密情報の保護ハンドブック」も、昨年改訂を しているところでございますが、こちらも引き続き事案の状況を見ながら、適時なタイミ ングで更なる改訂も含め検討を進めていきたいと思っています。 昨年の「秘密情報の保護ハンドブック」の改訂や今回の「営業秘密管理指針」の改訂内 容における生成AIの記載については5ページから8ページで追記していますので、参考 までに御覧をいただければと思います。 最後に、AIに関して、制度という観点で申しますと、先ほど杉村委員からも御指摘あ りましたとおり、声と肖像とAIという点に関して、知的財産推進計画2024の中でも 現行の不正競争防止法との関係を整理すべきというような御議論もございました。我々と しても現時点の考え方について今回整理をさせていただきました。 9ページ目に、生成AIと肖像・声に関して、現行不競法における考え方について、海 外事例等も参考にしつつ、有識者の皆様方に御意見をお伺いしながら事務局としてまとめ ました。 - 11 - まず、不正競争防止法に関しては様々な不正競争を2条1項に規定しているところです が、俳優、声優さんの声や肖像と生成AIの関係に関しては、個別事案によりますけれど も、1号の周知表示混同惹起行為、2号の著名表示冒用行為、20号の誤認惹起行為、21号 の信用毀損行為の4つの不正競争行為が、該当し得るのではないかと考えているところで ございます。 ただ、繰り返しになりますけれども、肖像や声という観点から申しますと、実態として 肖像や声の周知の程度であったり、肖像や声がどのように使われているのか等により、個 別に判断していく必要があると考えています。 9ページ目の下では、「商品等表示」や「商品等表示を使用」という要件に関しても御 説明しています。 次は10ページ目になりますけれども、ここは条文を抜粋していますので、後ほど参照い ただければと思います。 その上で、例えばどういうケースがあり得るのかということで、我々も、昨今出てきて いるような事例を用い、こういう事案であれば不正競争防止法においても対応し得るので はないかという事例を幾つか御提示します。 肖像と声は、性質上分けてお示しをさせていただきたいと思います。いずれも、前提と して、本人の許諾を得ていない場合ということでございます。まず肖像に関しては、例え ば、事例①のように、生成AIを用いて、ある人物の肖像を使用した写真を作成し、それ を販売するようなケースが想定され得ると思います。こちらについては当該人物が周知な 人物でありましたら、1号によって対処し得ると考えられます。 次に、事例②のようには、これは広告の使い方を想定したものでございますが、生成A Iを用いて、ある人物の肖像を使った広告を作成し、それを広告として使用するといった ような場合、この人物が広告対象の商品や役務と関連する分野において信用のある人物で あれば、20号や21号といった現行の不正競争防止法において対処し得ると考えています。 次に、声に先ほどと同様に、本人の許諾を得ていない場合を想定してございますが、事 例③のように、ある人物と同一の声を出力することができる生成AIを使って、当該人物 の持ち歌ではない曲を歌わせ、それを動画投稿プラットフォームなどに投稿する場合です ね。この場合ですと、当該人物の声が周知ということであれば、1号によって対処し得る と考えられます。ただ、1号はあくまでも混同の要件ありますので、仮に「これは生成A Iを使って歌わせています」というような、打ち消し表示が付されているような場合には、 - 12 - 1号で対処することが難しく、その場合、理論上は、その声に著名性が認められるという ことであれば、2号において対処し得ると考えています。 事例④は、ある人物と同一の声を出力することができる生成AIを使って、当該人物の 声を使用した目覚まし時計を作って、それを販売するようなケースです。こちらについて も、この人物の声が周知であるかどうかというところでありますが、周知であれば、これ は1号によって対処し得るということになるかと思います。 また、例えば、声だけではなくて、声と特徴的な台詞とがセットになって使用されるよ うな場合は、より広く1号において対処し得るということかと考えているところでござい ます。 参考で、13ページ目では今回、現行の不正競争防止法と生成AI含めた関係を整理させ ていただいているところではあるものの、これは他の知的財産法もしかりですが、不正競 争防止法自体は肖像・声そのものを規制するものではありません。不正競争防止法以外で も、パブリシティ権も判例上認められているところでございますし、昨年の5月に取りま とめられました「AI時代の知的財産権検討会」の中においても、個別の課題という観点 でパブリシティ権による保護の検討がなされているといった点も併せて御紹介をします。 14ページ目、15ページ目は、AIと不正競争防止法という観点で、知財事務局の資料を、 参考という形でつけさせていただいているところでございます。 事務局からの説明は以上となります。 ○岡村委員長 ありがとうございました。ただいまの事務局から説明がありました、前 回までにいただいた御指摘事項などに係る対応についての御意見、御質問の時間は比較的 長い時間用意しています。つきましては、大きく2つの問題に分かれるかと思いますので、 まず周知活動、いわゆる啓発の件につきまして、皆様方、何か御意見、御質問ございます でしょうか。ページでいうと3ページですね。 ○末吉委員 ○岡村委員長 ○末吉委員 よろしいですか。 はい、お願いします。 平成2年ぐらいからですかね、35年ぐらい営業秘密というのが不正競争防 止法でだんだん整備されて、民事だけだったのに、刑事が入ってきたり、構成要件が豊富 になってきたり、そういう流れの中で今の周知の御指摘を伺っていると、著作権に似てき たのかなという感じがいたします。 どういうことかというと、著作権の啓発活動って、あらゆる人を相手にするというか、 - 13 - 小学校で教えてもいいし、町内会で教えてもいいし。実際に著作法の啓発活動って私の経 験でいうと、いろんなところに招かれて、すごく難しい質問をされたりするのですね。こ れってどうなのでしょうかとか。興味をもっていろんな方が著作権法について思ってくだ さるというのはすごくいいことで、実際そういうニーズがあるじゃないですか。もはや営 業秘密というのも、前はプロの、プロスペックだった感じがするのですけれども、知らな い人はたくさんいるし。だけど、今、秘密の保護とか、秘密は実は財産なのではないかと いう考え方が、もしかすると著作権にかなり近いぐらい浸透してきていて。だからこそ、 この周知をもっと広めてもらいたいという声が皆さんから出るのかなと。 もともと、経産省におかれては周知は徹底しているじゃないですか。地方の皆さんも活 用なさって。でも、恐らく何か物足りないのかなというのは、やり方がどうのこうのとい うより、裾野のがすごく広がっているので、そういう観点からの目線というか、学校に行 って教えなくてはいけないとまではなかなかならないかもしれませんけれども、今後の課 題としては、母体というか、分母が増えているので、そういうところに気配りをしながら、 もちろん、相手によりけりなので、高度差とか違うと思うのですけれども、そういうこと も少し御検討なさるといいのかなと、お話を伺っていて思いました。 以上です。 ○岡村委員長 ありがとうございます。確かに、今、末吉委員おっしゃいましたように、 平成2年頃だと新薬スパイ事件とか、非常に限られた業界に産業スパイが出てきたので、 技術ノウハウの保護を中心に議論をされて、取りあえず結実したと記憶しております。随 分時代がたった中、今は誰もが営業秘密を扱い、あるいは、一つ間違うと結果としてでも 侵害に該当してしまう、そのような時代になったということかと存じます。深く同意いた します。 冨田委員、お願いします。 ○冨田委員 冨田でございます。ありがとうございます。 周知の在り方について、先ほどからお願いばかりなのですが、もう一点お願いをさせて いただければと思います。本日の資料の後半のほうで、俳優や声優などの肖像や声の利用 をめぐっての考え方をお示しいただいています。自身の肖像や声を無断で商売に利用され たり、そうした広告を信じて投資したりしたという現状は看過できませんので、こうした 整理をお示しいただくことは非常に妥当だと考えています。 ただ、事前にお伺いをしましたところ、この重要なメッセージの発信方法は、今日の小 - 14 - 委員会の資料に掲載することで周知を図ると伺っておりまして、仮にそれだけにとどまっ てしまいますと、被害を受けている方にも問題行為をしている側にも十分伝わらないので ないかと懸念をしてございます。政府として不正競争防止法以外の法律との関係も考慮し つつ、総合的に対応する必要があるということは理解をいたしますが、今回お示しいただ いた整理だけでも広く周知をすれば、問題事案の発生抑止に効果があると思われますので、 ぜひこの点の周知についても引き続き御検討いただけるとありがたいと思います。 以上でございます。 ○岡村委員長 ○中山室長 何か事務局からコメントありますでしょうか。 ありがとうございます。末吉委員のまさにおっしゃられたこと、我々も今 すごく悩みながらというところでございますけれども、確かに裾野が広がっているという ことでありますと、今までのやり方、伝え方、メッセージの在り方、今後、媒体なども、 使い分けも含めてどう考えていくべきか、そこは重要な論点だと思いますので、御指摘を いただいた著作権の事例なども踏まえてしっかり考えていきたいと考えています。 冨田委員からいただいた肖像や声の話ですが、周知の話も、非常に重要な論点だという 点は評価いただき、ありがたいですので、今回は考え方のまとめをまず書かせていただい たところではありますが、我々もどういった形の周知の仕方があり得るのか、現時点とし てどういったところに伝えていくべきなのか、そこは宿題として承って検討していきたい と考えているところでございます。 以上です。 ○岡村委員長 杉村純子委員、弁理士会の取組の関係で何か御存じのことがあれば、お 教えいただければありがたいですが。 ○杉村(純)委員 ありがとうございます。「営業秘密管理指針」が最終的に決定いた しましたら日本弁理士会の中でも周知をしていきたいとは考えております。本日、4月か ら日本弁理士会の次期研修所長の太田弁理士が随行しております。また、弁理士に周知を していくための研修、Eラーニング等についてまた御相談させていただくことになればと 思います。特に地方の活性化という点におきましては、地方の中小企業に地方の弁理士が 中心となって接しておりますし、また大学関連のスタートアップについても弁理士が積極 的に活動しておりますので、地方・大学関係者にも周知できるように日本弁理士会の弁理 士も協力をしていく所存でおります。 以上です。 - 15 - ○岡村委員長 ○林委員 林委員、日弁連のほうでは、何か動きありますでしょうか。 ありがとうございます。林です。 末吉先生からお話があったとおり、30年ぐらいになるのでしょうか、不正競争防止法に 営業秘密の民事的な保護制度が入ったとき、また刑事的保護を入れるとき、それでも告訴 がないという中で、秘密を守ったままで刑事的な救済ができるようにという制度をつくる とき、その都度、日弁連に御相談いただいて法文の策定のところから御相談させていただ いておりました。相談体制のほうも、弁護士知財ネットを2005年に創立した最初のときか ら相談体制を組んでおりまして、ウェブサイトでも営業秘密のブログをずっと掲載したり しているところでございます。 今後もその活動を続けていきたいと思っているのですが、こんなに普及啓発活動をして もラストワンマイルがつながらないという状況は、実は30年たっても変わらず、そこをど うするかというところが問題かなというところではあります。 特に今回の「営業秘密管理指針」の改訂のポイントとしては、大学・研究機関など企業 以外の組織における情報管理との関係という1項目を設けていただいて、脚注8において も「大学・研究機関が生み出し、保有している研究・実験データなども不正競争防止法が 対象とする『営業秘密』に該当する情報となる」ということも明記していただいています。 今後、ラストワンマイルでつながっていないところの1つとして大学・研究機関があるか なと思っております。もちろん、文科省と経産省で共同でこれまでも大学・研究機関に対 して営業秘密管理の重要性についての様々な活動をしているわけなのですが、ちょうど今 日も内閣府知財戦略本部事務局から「大学等研究者の転退職時の知財取扱い指針」が公表 されております。昨今、国外の大学と日本との間、または国内でも人材交流が昔よりも頻 繁になっている中で、どのように研究や実験データなどの営業秘密を管理していくかとい うことがまさに喫緊の課題になっております。各方面で打ち出しているツールと、こちら の経産省の管理指針等の普及啓発活動を、それぞれがというよりは、連携してやっていた だくとより効果があるのではないかなと思っております。私ども弁護士、日弁連や弁護士 知財ネットも引き続き最前線の相談のところで御協力していきたいと思っております。 ○岡村委員長 ありがとうございます。今、科学技術系の話が出ましたけれども、確か に、もう一つの問題は政府がこれまで打ち出してきたオープンデータ、オープンサイエン スとの関係で、どこをどう切り分けていくのかとか、ある大学でポリシーのような形のも のをおつくりになっていますけれども、そういうオープンとクローズの面をちゃんと使い - 16 - 分けるだけの提案というのは我々も含めてしていかなければ、理系の先生方から分かりに くいとお叱りを受けるのではないかという次第でありますが。田村委員にお聞きするのが いいのですかね。 ○田村委員 先ほど、ほかの知的財産権との比較などの話もありましたが、不正競争防 止法の重要な特徴としては、特に著作権と比べますと、認識しないままに何か違反してし まうというようなことは少ないのではないかということです。一般的に誰もがこういうこ とは違法にならないだろうと思われるような行為まで違法にできるような権利ではないと 思います。むしろ周知にする必要性というのは、知らず知らずのうちに権利を侵害してし まう行為を防ぐというような観点よりは、うまくいけばちゃんと保護できるのに、その保 護を逃してしまうというような認識不足による問題を防ぐというのが、おそらく相対的に は他の知的財産権よりも重要になってくる、そういう法律ではないかと思うのです。 様々な不正競争行為があるのですけれども、とりわけ秘密管理とか電磁的管理というも のが要件にされていて、その保護を求めるためには、相応の努力が必要である営業秘密の 保護、あるいは限定提供データの保護というところが特に重要だと思うのですね。その点 で、かねてよりこちらの委員会でもオーソライズをしながら管理指針がどちらにも出てい るということは、この不正競争防止法の特徴をよく捉えた取組みのように思っております。 ○岡村委員長 ○田村委員 特に大学特有のものというのは何かございますか。 これは難しい問題で、大学の中では、特許等に比べますとあまり皆さん議 論をしていないのは確かですね。それ以上は、特に私のほうで定見があるわけではありま せん。役に立たず申し訳ありません。 ○岡村委員長 恐れ入ります。 あと、先ほど啓発の中でサイバーセキュリティーなどとクロスオーバーになっているよ うな状態の時代が来たのではなかろうかと感じたのですけれども、例えば、サイバーセキ ュリティーをされておられる方々が、不正競争防止法の、こうした法制度が支えとしてあ るのだと。そのようなことについては、小松委員、何か啓発というか、周知されているの かどうかが気になるのですけれども、いかがでしょうか。 ○小松委員 周知されているかと言われると、多分それほど周知はされていないと思い ます。IPAとこれまでも連携をされていて、IPAの通知、もしくは不競法の通知の中 にそれぞれの情報をリンクしてはいるのですけれども、それをわざわざ見てくれればいい のですけれども、なかなかそうはいかないだろうなと思っています。 - 17 - ただ、大企業についてはそれなりにセキュリティーの意識も高いですし、営業秘密の意 識も高いと理解しているのですけれども、中小企業については、この間IPAが調査をし たのですけれども、7割の企業は組織的なセキュリティー体制が整備されてないというよ うな結果も出ていまして、これは多分セキュリティーだけではなくて、営業秘密に関して も同じような状況なのではないかなと思っています。ですので、セキュリティーから見て も、営業秘密から見ても、しっかり普及の活動を考えていかなければいけないところなの だろうなと思っています。 すみません、余り答えにはなってないのですけれども。 大学の話をしますと、科学技術系の大学は、一部の業種についてはかなりクローズな対 策というか、営業秘密にしてかなり厳しい対策をしていますので、大学と共同研究をする ときにはしっかりしているのですけれども、そうでないようなところは、基本、大学の先 生はオープンに技術を出すというポリシーでやっていますので、先ほど特許は議論するけ れどもという話がありましたが、営業秘密についてそれほど議論するということはなかっ たと理解しています。 以上です。 ○岡村委員長 ありがとうございます。今ちょっと気になる話が出たのは、大企業は頑 張ってサイバーセキュリティー、営業秘密をやっているのだけれども、“大企業は”とい うことは、中小企業はどうなのかということになるかと思うのです。その関連で、畠山委 員、ございますでしょうか。 ○畠山委員 ありがとうございます。おっしゃるとおりで、中小企業になると、ある意 味限られた人だけが非常に積極的に認知をしているという状態だと思います。 中小企業全般について言えば、事業をやるために数少ない人数でやらなければいけない ことがたくさんあるという状況の中で、先ほどから少し申し上げているとおり、提供され る情報が自分のところに降りかかってくる事象とどう結びついているかという情報提供の され方がなされないと、なかなか間口のところから入ってくるのは難しいのかなという印 象を持っています。具体的な企業、そういったことに余り十分な認識がないような企業さ んに、むしろヒアリングなどをしながら、どういう説明の仕方をすれば自らも対応すべき こととして理解できるのかというところは、情報発信の在り方として工夫いただければな と、我々もぜひ協力させていただければと思いましたので、よろしくお願いいたします。 ○岡村委員長 商工会議所でこの座を設けて、誰か講師として行くというような形なの - 18 - でしょうか。 ○畠山委員 それもありますけれども、その手前の問題として、提供される情報そのも のをどういう形で提供したらいいのかという議論は、少し細かい話になりますけれども、 具体的な企業さんにヒアリングをしながら、こっちではこういうことを伝えたいのだけれ ども、企業さんから見るとどういうもので発信されるとそれが伝わるのかというのを、少 し細かく議論したほうがいいのかなという印象を持っております。 ○岡村委員長 ありがとうございます。いずれにせよ、中小企業の問題というのは、大 企業からすれば、大企業から下でサプライチェーンの一翼を担う問題でもありますから大 変興味があるところであることは間違いなかろうかと私個人的には思っています。 ほかに、この啓発・周知について御意見ございますでしょうか。では、林委員。 ○林委員 林です。繰り返しで恐縮なのですが、分かりやすい資料という意味では、例 えば、1回目のときに私が御紹介した経産省の知財室で出されている資料でも、やっては いけないこと、1、2、3と3つぐらいにまとめて、これ以上分かりやすくできるのだろ うかというくらい分かりやすく事例を入れてお示しされていますし、また、中小企業庁の ほうでも、公正取引委員会の行ったヒアリングを基に、昨年令和6年の10月に知財取引ガ イドラインの改訂版を出されている。その中で、まずは秘密保持契約を結びましょうとか、 ひな形とか、解説編とか、事例を基に、こんな事例がありましたというのから始めて、秘 密保持契約とか、まずは開発委託契約をしましょうとか、その上で製造委託契約にしまし ょうと、物すごく丁寧、懇切に出しているのです。 ところが、別の会議で、例えば、スタートアップ向けの知財の保護みたいな会議に行く と、スタートアップの方たちという切り口でいると、スタートアップの方は中小企業向け のそういう情報に触れていらっしゃらないようで、御紹介すると、そんなのがあるの、知 らなかったということなのですね。また、もう20年以上前から、特許庁が知財総合支援窓 口をつくる前から東京都が知財総合センターというのをつくっていて、そこが全国のモデ ルになっていると思うのですけれども、ずっと中小企業向けの知財のサービスの中で、営 業秘密も、こういう「お困りごと」として何十とリストアップして、どういうときに漏れ ていくのかという留意するポイントを紹介しています。しかも、スモールグループをつく って勉強会を年間通してやったり、派遣型の相談員を送ったり、月例相談をやったりと、 もう手を尽くして何十年もやっている。それなのに届いていないという現状があります。 今どきなのでインターネットを通じた普及活動もなさっています。 - 19 - そういう意味では、どこをどうすればこの状況をワンステップ向上させられるのか。私 もこれ以上何をしたらいいのだろうなというところで思ったのが、いろいろなところで行 われている活動を、連絡協議会みたいな形ではなく、実際に今どきの企業がされているよ うなツールを使って、タイムリーに情報共有しながら、双方向的にアクセスできるような 形でやっていくのがいいのかなと思ったりしています。 ○岡村委員長 ○林委員 その双方向的というのは? 例えば、企業内では、みんなが情報を上げていって、そこで情報共有しなが ら、次どうする、というのをやっていらっしゃると思ういます。連絡協議会みたいに形式 的に全国の方を集めてみたいな、ものでは、皆さんの時間と手間が負担になるだけで、実 質は何も変わらないので、そうではなくて、各自が実際に使えるツールを考えたらどうか なと。 ○畠山委員 今の点について。先ほど少し申し上げたのですが、恐らく仰っているツー ルにたどり着いていない方がたくさんいらっしゃる。つまり、必要ないと思っている企業 にどうリーチするのか、そもそもどこまでリーチしなければいけないのかという議論もあ ります。リーチする必要があるが、興味を示さない企業については何で興味がないのかを、 その企業に聞かないと、なかなか理由が分からないと思います。これだけツールがあるの に、なぜこういうことに御関心がないのか、という点を聞いてみないといけないと思いま した。単純に、自分と関係ないと思っているということではないかと思います。関係ある と思ってもらうには、入り口としてどういう材料を提供するのか、わかりやすいツールの 手前にどうして知ってもらう必要があるかを発信することが、必要であるという印象を持 ちました。 ○岡村委員長 それは、先ほどおっしゃったアンケートなどによるリサーチということ でしょうか。 ○畠山委員 そうですね。むしろ関心がない人に聞きに行かないといけないと思います。 わかりやすいツールはいろいろあるのに、どうしてアプローチしているのかということを 聞きに行かなければいけないのではないかという印象を持ちました。 ○岡村委員長 ○中山室長 今の点、事務局いかがですか。 ありがとうございます。まさに、畠山委員おっしゃられているように、関 心がない人たちに、むしろどういうことがあれば意識するのか、我々も周知活動を中小企 業様向けにもやらせていただいているところではあるので、そういったところがよく分か - 20 - らないところは現在もありますし、先ほど林委員がおっしゃられたように、今までも様々 な手段でやられてきたという認識もあるので、今までやってきたものの積み上げ上にどう いった形で関心のないところにリーチしていくのか。ここは我々もまさに皆さんと御相談 させていただきながらやっていかないといけない部分だとは思いますので、引き続き御知 見賜れればと思います。 ○岡村委員長 それと、先ほど林委員からお話がありました中小企業庁がつくっておら れるツールというのは、例えば、経産省の不正競争防止法のページ、あるいは営業秘密の ページからリンクを張るなどして、ダウンロードしやすいような形になってますでしょう か。 ○中山室長 そういう観点から申しますと、今、不正競争防止法のホームページござい ますけれども、基本的に指針とパンフレットを並べさせていただいているという、見栄え も一生懸命頑張ってはいるのですけれども、できていない部分もあると思うので、この機 会に関連するようなホームページのほうもどうやったら皆様に伝わりやすいのかといった ところはしっかり考えていきたいと思います。 ○岡村委員長 ○河野委員 ほかにこの啓発・周知について御意見なければ……あっ、どうぞ。 不勉強で恐縮なのですけれども、教えていただければと思います。 先ほどスタートアップのお話がありましたけれども、現在、スタートアップの方々が本 件に関して認知できそうな場というのは具体的にどのようなのがあるのでしょうか。 ○中山室長 スタートアップのところに関しては、確かに我々自身も直接的に説明会と かをスタートアップ向けに重点的にやっているという状況ではないというのが実態ではご ざいますけれども、ただ、スタートアップ政策の中でこういった営業秘密をしっかり位置 づけていただいて、その中で併せて周知いただくというような形もあると思いますので、 その点も含めしっかり認知していきたいと思います。 ○井上審議官 スタートアップに業界団体がないので、経産省のほうでJ-Startupとい うことで、コンソーシアムみたいな形でお仲間づくりというか、スタートアップの横の連 携を図るような取組をやっていて、これはイノベーション局のところにスタートアップの 推進課がありますので、そのような取組をやっています。ただ、新しいテック系のスター トアップもあるので、知的財産などを意識されていらっしゃる企業もあると思いますが、 意識が弱い企業もあると思うので、省内の中での連携はすごく大事かなと思っていまして。 - 21 - 私、別の課で投資促進課を担当しているのですけれども、そこで研究会をやっておりま す。海外の資本、M&Aなどを活用して中小企業で国際展開を図るのに、自社だけのリソ ースだけでは限界があるけれども海外の展開をしたいという場合、外資に一部出資をして もらって、海外展開を図っていくためのガイドブックを作っていこうということで今研究 会をやっているのです。そのときに論点の1つに、いかに営業秘密というか、秘密を守る かというのが出てきます。だから、ガイドブックでの例示は「特許など」となっています。 私のほうで、営業秘密もあるはずなので、知財室に連携を取って、ガイドブックのとこ ろに「秘密情報の保護ハンドブック」の話とかをコラムに載せてもらうことができないか、 ということを投資促進課のほうにお願いをしたので、投資促進課から早速知財室に連携し たと思うのですけれども。恥ずかしながら経産省の原課の中でも、特許とかはすごく有名 なのですけれども、営業秘密に対する意識が必ずしも十分ではないという感じがしており ますので、省内での連携というところも含めて、まさに林委員が横の連携とおっしゃって いましたけれども、それを経産省内でもやっていくし、日本全国の様々なリソースの中で どう連携を図っていくかは一つのポイントかなと思っています。 ○岡村委員長 ○杉村(純)委員 では、杉村純子委員。 スタートアップに関しましては、日本弁理士会で各地方、例えば博 多とか仙台、そういう地方でスタートアップの方々を対象にした知的財産に関するセミナ ー等を開催しております。今回も、この「営業秘密管理指針」の最終フィックスができま したら、日本弁理士会内の知財経営センターが中心となって各地域でスタートアップの方 々対象にセミナーをしているセミナーにおいて、営業秘密についてもセミナーに含めて開 催いただきたいと伝えたいと思います。 それと、営業秘密に関しましては、例えば、社会人大学院生を対象にセミナーをしたと しても、学生は毎年替わっていきますので、そうすると2年後には、その時の大学院生は、 何も営業秘密の最新情報を知らないというような状態になっていると思います。。したが って、どのように継続して営業秘密について認識してもらうかが大事なのではないかと考 えております。 例えば、セミナーを開催すると実際にその場で質問もできますし、有効な面もあります が、今、営業秘密についてどうなっているのか知りたいといったときには、そのセミナー は開催されておらず情報が得られないというようなことがありますので、アクセスのしや すさ、先ほど室長がおっしゃってように、ホームページを見やすくしていたく等、もう少 - 22 - し工夫していただき、情報のアクセスを容易にしていただけるとよいのではないかと思い ます。 ○岡村委員長 役所でもPPCのように動画を作って啓発活動をして、従業員向けに見 させることはできるような工夫をしているところもありますかね。 ○中山室長 そうですね、そういったところもあると思いますし。これだけ動画も気軽 に作れるような時代にはなってきてはいるので、うまく皆様がアクセスしやすいような形 での周知の在り方というのは改めて考えて行きたいと思います。ありがとうございます。 ○岡村委員長 弁理士会はそういうツールは作られていないのですか。ダウンロードで きる。 ○杉村(純)委員 ○岡村委員長 ○中山室長 一般の方向けですか。 そうです。 一般向けには、経産省というより、例えばINPITのほうでも営業秘密 についての動画をアップして周知していただいているのですけれども、特許も含めて様々 な動画がある中で埋もれてしまっているようなところもあるかと思いますので、いろいろ なものも確認しながら、改めて見てみたいなと思います。 ○杉村(純)委員 弁理士会も必要に応じて、寸劇をしたり、動画を作成いたしまして、 それをオープンにしたりとかしていますので、また営業秘密等についても相談していきた いと思っております。 ○岡村委員長 仕事柄、私もスタートアップのスタッフをたくさん知っているつもりで すけれども、やはりアイデアが命であるだけに奪われたくないのです。それをよそにまね されると困ってしまいますので。ただ、スタートアップはスタートアップですので、人材 が限られているのです。最近は、昔と比べれば採用はしやすくなったことは事実ですけれ ども、なかなかそこは難しいというか。 先ほど杉村純子委員がおっしゃっていたような形でマニュアル化、最低限これだけは知 っておきたいとか、これだけはやっておきたいという形のもので、外部のツールで賄える ような形があるのであれば。スタートアップの場合は開発・営業のほうに先に走って、管 理部分については、やる気はあるが、体力がそこまで回せないところがありますので、そ こは彼らを諭す意味でも大変重要なことだと思います。 ほかございませんでしたら、次の議題に移らせていただきたいと思います。 では、AIと不正競争防止法に関する部分について、皆さん何か御意見ございますでし - 23 - ょうか。どんなところからでも結構でございます。どんな切り口からでも結構でございま す。例えば、ここに書いてあることで、細かいところが、ここが抜けているのではないの かとかという点でも結構でございますし、ちょっとこの書き方は誤解を招くのではなかろ うかなど含めて御意見、御質問いただけたらと存じます。生成AIというか、AI自体ま だ発展途上のものですので、なかなかしゃべりにくい部分もあろうかと思いますけれども。 では、林先生ですね。 ○林委員 資料4の4ページのところに知的財産推進計画2024が掲載されており、 そこに「生成AIにおける俳優や声優等の肖像や声等の利用・生成に関し、不正競争防止 法との関係について、考え方の整理を行い、必要に応じ、見直しの検討を行う。また、他 人の肖像や声等の利用・生成に関し、その他の関連法についても、法的考え方の整理を行 う。 」ということで、先ほど中山室長から資料4で御紹介いただいた9ページのところで、 「肖像と声のパブリシティ価値に係る現行不競法における考え方の整理」、考え方の整理 を今回示していただいたと承知しておりますが、先ほどの知財推進計画では「必要に応じ、 見直しの検討」という点については、見直しの検討を行う必要はないということになった のか、必要があるかどうかの検討をこれからするのか、その辺はどうなのでしょうか。 ○中山室長 その点に関しましては、今回、現行の考え方について整理をさせていただ いたという理解でございます。先ほど委員長からもありましたとおり、本件まだ発展途上 ということもありまして、我々自身がまずは現行法の考え方の整理を世の中にお示しをし た上で、それで具体的な事案が出てくればと思いますし、ほかにもこういう事案があるの ではないかという声も出てくると思いますので、そういったものを踏まえて不正競争防止 法の見直しの検討が必要なのかどうかも含めて、今般の現行法の制度の整理、世の中のい ろんな事案の反応を見ながら見直しの検討が必要かどうか改めて考えていくということか と思います。 ○林委員 ありがとうございます。他国でもこの生成AI絡み、またパブリシティの関 係についていろいろな事例が積み上がっていますし、そういったものを参考にしながら、 引き続き、発展が早いということでちょっとお休みするのではなく、継続して検討をして いただきたいなという気もします。 ○中山室長 まさ、諸外国の動きもそれなりに出てくる分野かと思いますので、そうい ったところの動きをしっかり我々としても引き続き追っていく、現行における見直しの必 要があるかも考えていくというところだと思います。現時点で何かというわけではないで - 24 - すけれども、そこは引き続き検討していきたいと思っています。 ○岡村委員長 その点について、先ほど林委員がおっしゃった諸外国が積み上がってい るという点では、EUのAI法のように、どちらかというとリスクベース・アプローチで、 そういう意味では比較的厳格な規制を加えるいうところもあれば、アメリカのように、ど ちらかというと自主規制に委ねるという考え方のところと、日本はどうなのだというと、 今回出てきた法案を見ますと、結局のところ、政府の戦略本部において戦略計画を練るの だというような形で、どちらかというと体制づくりのほうに重点を置いて、中身はそこで 議論していくというような形ですね。NHKさんの報道では、ちょうどEUとアメリカの 中を行くものだというような、かなり言い得て妙な表現を取っていましたけれども。その ような状態でありますので、今後、そういう政府の関連機関とも協議しつつ、さらなる必 要に応じた検討を私からもお願いしたいと思います。 ほかに、このAIとの関係で御意見ございますでしょうか。田村委員、いかがですか。 今回示した解釈論に関して。 ○田村委員 全ての文章に上手に、「し得る」という感じでまとめておられます。これ 以上に細かく条件を書くと、すごく長くなったり、かえって分かりにくくなったりするの で、この長さでの文章のおまとめとしてはよろしいのではないかと思いました。 以上です。 ○岡村委員長 ○田村委員 ありがとうございました。 それから、先ほどからの話でAIに関する考え方ですけれども、現在は、 皆さんがおっしゃるように過渡期ですよね。それで、創作文化、AIの使い方の文化もど んどん変わっていっているので、いっときの新しいものが動いてくることに対する、既得 権益のある方の反発心みたいなものが一番激しい時期が今だと思うのです。そのような状 況が固定化されるものとして、今、拙速に何かを規制する法律をつくるということには、 私は反対です。先ほど中庸の道を行ったとおっしゃっていましたけれども、現在の方針が よろしいのではないかと思っております。 ○岡村委員長 ありがとうございます。ほかの委員の先生方、何か御意見ございません でしょうか。先ほど杉村多恵委員、声とかについての御意見をおっしゃろうとしていたよ うに記憶しているのですけれども、もしありましたら。 ○杉村(多)委員 ありがとうございます。特段、個別の何かに関しまして課題認識を 持っているということまでは至っておりません。こういったいろんな事案が出てきている - 25 - 中で、協会としても関心が高く、検討しなければいけないのではないかというような意識 を持っている、というレベルに今の時点ではなっているのが正直なところでして。その点、 今回整理をしていただいた中で、今後も新たな潮流を捉えた把握及び整理を経産省さんの ほうで進められているとお聞きしましたので、適宜、情報提供いただくことで、より我々 も関心高く検討は進められるのかなと思っている次第でございます、というレベルのこと でございました。 ○岡村委員長 ほかの、公益団体か何かでいろいろ検討作業は進んでいるのでしょうか。 ○杉村(多)委員 どうでしょうか。余り具体的な進展というのは聞いてないような気 もいたします。すみません、不勉強ですので。ほかの先生方、もし情報をお持ちでしたら と思いますが。新しい世界ということで繰り返し先生方からもお話があったかと思います ので、今、様子見というか、そういったシーンが多いのかなと、個人的な事情でございま すけれども。 ○岡村委員長 事業者団体なども含めて様子見でしょう? ○杉村(多)委員 個別の企業さん、事業者さんにおかれましては、個別に関してかな り突っ込んだ御検討をされていることはあろうかと思います。すみません、想像の範囲で 申し訳ないです。 ○岡村委員長 ほかに御意見ございますでしょうか。はい、どうぞ。 ○杉村(純)委員 私は不勉強で、違うことを言ったら逆に教えていただきたいと思っ ていますが、9ページで周知表示混同惹起行為の問題となる要件のところで、「広告の場 合は出所を識別するとはいえないので」と記載がありますが、不正競争防止法の逐条解説 の70ページを見ますと、全てのことが出所を識別しないとはいえない場合もあるのではな いかと思いましたので、このように言い切ったほうがよいのかがよいのか、表現を少し柔 らかくしたほうがよいのか、どちらがよいのかについて考えておりました。 それと、不正競争防止法に関して、声、それから肖像等を例に挙げて、このように整理 していただいたということについては感謝申し上げたいと思います。ただ、先ほど林委員 からも御発言がございましたように、声・肖像等については、一定の条件の下でも現行の 不正競争防止法での適用事例ということで記載していただいていると思いますが、国際的 に見ますと、各国でパブリシティの価値についてどのようにしていくかということも検討 を始めているのではないかと思いますので、日本も後手後手にならないように、パブリシ ティの価値を保護するためのパブリシティ権というものについて御検討を引き続きお願い - 26 - したいと思っているところでございます。 以上です。 ○岡村委員長 ○中山室長 今の点について何かございますか。 御意見いただきありがとうございます。まさに難しい点でございまして、 それこそ、知財推進計画の中にも書いてあるとおり、ここは不正競争防止法もそうでござ いますけれども、その他関連法の方向的な考え方の整理というところもあろうかと思いま すので、そういった状況を見つつ、政府全体の議論かと思いますので、我々もしっかり見 ていきたいと思います。 ○岡村委員長 もともと肖像権に根拠するものですから、肖像権というのは人格権、人 格権でプライバシーとイコールにされていたような時期がありましたけれども、もともと のプライバシーというのは非公知、そういう意味で営業秘密とよく似ていますけれども。 ところが、肖像というのは、顔は出して歩けますので、道でも電車でもですね、ちょっと 違うのではないのというような法学者の方もいらっしゃる。いずれにせよ、裁判所含めて 人格権であるとおっしゃっている。人格権であるにもかかわらず、パブリシティ権という 名前がつくと、今度、財産の問題になってくる。 では、人格権とどこで異質なのかというと、結局のところ、侵害されるのは人格権なの だけれども、これについての要件論というよりは法化論という、損害論として財産的損害 という形で非常にややこしゅうございます。人格権に根拠するものは、特許とかの絶対権 でそこは不競法のような行為規制とは少し違う、文献的性格とのかみ合わせをどうするか というようなこともありますので、まだまだ議論していかなければいけない問題もあると いうことであります。 田村委員がおっしゃったように、今この段階ではこういう形にとどめざるを得ないし、 そのような幅を残さないと、今後急な動き、大きな動きに自縄自縛になるようなことでも 困るということがありますね。こういう形しか現時点ではやむを得ないのかなと思ったり するわけです。取りあえず伝統的な議論との関係でもそんなに片がついているわけでもあ りませんし、知財であれ、人格権があるというのはもともと無理がありますので。 ○杉村(純)委員 はい。ご教示、ありがとうございます。生成AI、AIの発展は極 めて速く進展しているものですので、先ほど申し上げましたように、生成AIを使った声 や肖像について、難しい点はあるかと思いますが、議論・検討をいただけるとAIの発展と の関係でよいのではないかという趣旨で申し上げました。どうもありがとうございます。 - 27 - ○岡村委員長 林先生、知財戦略本部の不競法でも検討しなさい、ほかでも検討しなさ いという、多方面での検討という御趣旨ですよね。 ○林委員 この計画を読む限りそうなっているのですが、計画中で、この点の検討の名 宛て人になっているところの中の「経産省」というのは不競法については知財室だと思っ ております。 ○岡村委員長 ○林委員 だから、それに対する答えはしなければならないです。 AIについて今検討されている戦略本部が知財観点なのかどうかというと、 知財についてはこちらの知財戦略本部でという、よく分からない線引きがあるような気が いたします。すみません、背景はよく分かりません。 ○岡村委員長 それもまたAIの戦略本部ができたら、それとのかみ合わせはどうなる のかということも今後のあれになるのですかね。 ○林委員 知財というくくりでは、AIについて今検討されている部隊は、知財観点な のかどうかというと、知財についてはこちらの知財戦略本部でという、よく分からない線 引きがあるような気がいたします。すみません、背景はよく分かりません。 ○岡村委員長 そういう余白を残しつつ、進めていかなければならないのは、仕方がな いことだと思います。 ほかに御意見ございませんでしょうか。――ございませんようでしたら、少し時間は早 いですけれども、大変有意義な議論を頂戴いたしました。ありがとうございます。いただ きました御意見は今後の検討の参考にさせていただきたく存じます。 ということで、若干早めではありますが、これにて本日予定しておりました議事を終了 とさせていただきたいと思います。 特に何か、皆さん今日の会議で言い忘れたというような、これを言っておかなければい けないというようなことはございますでしょうか。――ございませんね。 では、最後に今後のスケジュールにつきまして事務局から連絡をお願いいたします。 ○中山室長 委員の皆様、本日はありがとうございました。まず、昨年12月から集中的 に討議いただきまして、無事、本日の議論を経まして「営業秘密管理指針」の改訂作業の めどがつきましたので、引き続き、公表できるよう我々として作業をしっかりしていきた いと思います。こちらについては、先ほど委員長からもありましたとおり、修正したもの を委員長の御了解を得た後に公表させていただきたいと思います。 - 28 - ○岡村委員長 そうしますと、今日で「営業秘密管理指針」の改訂作業は一段落いたし ました。 そういうことでもありますが、審議官より一言ございましたらお願いできますでしょう か。 ○井上審議官 では、事務局を代表いたしまして、一言締めくくりの御挨拶をさせてい ただければと思います。 昨年12月から3回にわたりまして「営業秘密管理指針」につきまして活発な御議論を賜 りまして、誠にありがとうございました。また、この場をお借りして、パブリックコメン トを寄せていただきました皆様にも、御意見を踏まえて修正させていただいた部分もござ いまして、改めて御礼を申し上げたいと思います。 「営業秘密管理指針」でございますけれども、今日も委員の皆様に御指摘いただいたと おり、これから周知をどういう形でやっていくかというところについては改めて知財室の ほうで検討させていただいて、また各委員の皆様、関係機関の皆様に御相談させていただ くことになるかなと思っておりまして、よろしくお願い申し上げます。 それと、不正競争防止法と生成AIによる声と肖像の関係につきまして、現行法の商品 等表示など法律の規定の運用の関係と、あと、声・肖像を使った不適切ではないかと思わ れるような事案との関係について、これは法学者の先生方などに御相談をさせていただい て、今回このような形で示させていただいたところでございますけれども、引き続きこの ことにつきましては諸外国の状況も我々は勉強中というところで、しかも刻々と変わって いるようでございますので、よく考慮していきたいと思います。 政府全体でも、先ほど委員長もお話があったような、AIの規制に関する議論もいろい ろなされているところでございまして、そういったところも踏まえつつ、また、もともと パブリシティ権につきましては裁判例でも確立している考え方だということではあります ので、ただ、それがどこまでの、どういう運用になるかは裁判にならないと分からないと いうところで、裁判の状況なども引き続き私どもとしてはウオッチをしつつ、さらに知見 をですね、この問題は引き続き議論になっていくと思いますので、まず私ども、今回お示 しさせていただいたものの周知に取り組んでいきたいと思っております。引き続きこの問 題については私どもとしてもよく勉強していきたいと思っておりますので、委員の皆様に も引き続き御協力を賜ればと思っております。誠にありがとうございます。引き続きどう ぞよろしくお願いします。 - 29 - ○岡村委員長 ありがとうございました。 それでは、これをもちまして第28回不正競争防止小委員会を閉会といたします。 本日は皆様、本当にありがとうございました。 ――了―― - 30 -

資料1

資 料 1 産業構造審議会 知的財産分科会 第28回 不正競争防止小委員会 議事次第 日 時:令和7年3月25日(火) 13:30~15:30 場 所:経済産業省 本館9階(東1-1)会議室 (オンライン併用) (議題) 1. 開会 2. 「営業秘密管理指針」の改訂に向けたパブリックコメントの結果について 3. 前回までにいただいた御指摘事項等に係る対応について 4. 閉会 (配付資料) 資料1 議事次第 資料2 委員名簿 資料3-1 パブリックコメントにおける主な御意見及びそれに対する考え方 資料3-2 営業秘密管理指針(案)(パブリックコメント後) 資料4 前回までにいただいた御指摘事項等に係る対応について

資料2

資 料 2 産業構造審議会 知的財産分科会 不正競争防止小委員会 委員 ◎岡村 久道 国立情報学研究所 客員教授 京都大学大学院 医学研究科 講師、弁護士 河野 智子 ソニーグループ株式会社 知的財産・技術標準化部門 スタンダード&パート ナーシップ部 著作権政策室 国内渉外担当 小松 文子 ノートルダム清心女子大学 情報デザイン学部情報デザイン学科 教授 末吉 亙 KTS法律事務所 弁護士 杉村 純子 プロメテ国際特許事務所 代表弁理士 杉村 多恵 一般社団法人日本知的財産協会 常務理事 トヨタ自動車株式会社 知的財産部 知財企画室長 田村 善之 東京大学大学院 法学政治学研究科 教授 冨田 珠代 日本労働組合総連合会 総合政策推進局 総合局長 長谷川 正憲 一般社団法人日本経済団体連合会 知的財産委員会・企画部会 委員 キヤノン株式会社 知的財産法務本部 知的財産渉外第三部 部長 畠山 一成 日本商工会議所 常務理事 林 桜坂法律事務所 弁護士 いづみ 水野 正則 知的財産高等裁判所 判事 敬称略(50音順・12名) ◎:委員長

資料3

資料3-1 「営業秘密管理指針(改訂案) 」に対する主な御意見及びそれに対する考え方 令和 7 年 3 月 〇「営業秘密管理指針(改訂案)」について 該当箇所 「営業秘密管理指針 御意見 ⚫ (改訂案) 」全般 御意見に対する考え方 「営業秘密管理指針(改訂案)」の内容に賛成する。なお、指針 ⚫ 「営業秘密管理指針(改訂案)」の内容 (改正案)に対する直接の意見ではないが、生成 AI の発展に伴 に賛同する御意見として理解させてい い、現状想定していない営業秘密の漏洩事例が生じる可能性が ただきます。また、御意見を踏まえ、 あるのではと考える。生成 AI と営業秘密の関係については、 「秘密情報の保護ハンドブック」の内 「秘密情報の保護ハンドブック」を 2024 年 2 月に改訂し、生成 容について、検討を継続してまいりま AI の利用と秘密情報の管理・利用の在り方等について紹介頂 す。 いたところではあるが、今後も、生成 AI 関連の新たな漏洩事例 が生じた際は、同ハンドブックを改訂頂き、新たな漏洩対策に ついて紹介して頂けるようお願いしたい。 ⚫ P.11 ⚫ 意見内容: 御指摘の点を踏まえ、明確性の観点か 2.秘密管理性について 「ID やパスワードなどといった程度の技術的な管理措置や、」 ら御指摘の記載を以下のとおり修正い (2)必要な秘密管理措置 の記載について、秘密管理措置の対象が明示されておらず、趣 たしました。 の程度 ○(秘密管理措置の程度) ア 旨が不明瞭であるため、例えば、次のとおりに記載することを 提案する。 「会社のパソコン等へログインするた 従業員及び役員に向 けたもの めの ID やパスワードなどにより秘密 「ID やパスワードなどにより電子ファイルが保存されている 情報へのアクセスが制限されていると システム(外部クラウドサービスを含む)へのアクセスが制限 いった程度の技術的な管理措置や、 」 されているといった程度の技術的な管理措置や、」就業規則や誓 約書において当該情報の漏えいを禁止しているといった規範的 な管理措置で足りる場合もある。 1 これは 15 ページにある類似の追記部分(※)を参考にしたも の。 ※類似の追記部分(15 ページ): なお、情報の内容・性質等からいって、当該営業秘密保有者に とって重要な情報であることが明らかな場合には、外部クラウ ドにアクセスするためにID・パスワードなどが設定されてい るといった程度の技術的な管理措置や、就業規則や誓約書にお いて当該情報の漏えいを禁止しているといった規範的な管理措 置で足りる場合もある 。 理由: 該当箇所の趣旨が不明瞭であるため ⚫ 「取引相手先に秘密情報を提供している場合には、従業員に向 ⚫ 御指摘を踏まえ、御指摘の箇所に脚注 2.秘密管理性について けた秘密管理措置に加えて、当該取引相手先と秘密保持契約を を設け、以下のとおり追記いたしまし (2)必要な秘密管理措置 締結した上で秘密情報を提供したかどうかがポイントとなる。」 た。 P.13 の程度 ○(秘密管理措置の程度) イ との記載があるが、秘密管理性の判断において、秘密保持契約 は必須ではないと思われる。 「ただし、相手方との秘密保持契約の 取引相手先に向けた もの 締結がなければ、常に、秘密管理が不 上述の記載については、通産省知財室監修「営業秘密ガイドラ 適切となるわけではなく、秘密保持契 イン」 (51頁)において既に示されている以下の記載とした方 約をあらかじめ締結せずに営業秘密を が良いと思われる。 相手方に開示したとしても直ちに秘密 管理措置を欠くことにはならないと考 2 ・ライセンス契約等の契約当事者間での秘密管理について、相手 えられる。 」 方との秘密保持契約の締結がなければ、常に、秘密管理が不適 切となるわけではなく、その他の一般的な秘密管理が適切にな され、かつ、当該状況において当事者間に信義則上の義務が認 められるような場合には、秘密保持契約をあらかじめ締結せず に営業秘密を相手方に開示したとしても営業秘密の要件を欠 くことにはならないと考えられる。 ⚫ 「学習用データ」と記載してしまうと、開発段階のみを対象と ⚫ いただいた御意見については、AI に関 2.秘密管理性について しているように読めてしまう、すなわち、プロンプトとして入 する今後の技術趨勢及び議論を注視し (4)営業秘密を企業内外 力する場合が対象にならないように読めてしまうように思われ ながら、次回改訂時の参考にさせてい で共有する場合の る。仮にプロンプトとして入力する場合も含まれるのであれば、 ただきつつ、明確化の観点から、一部 秘密管理性の考え 「管理単位 C で秘密管理されている情報αを生成 AI において の御指摘を踏まえ、注2を以下のとお 方 利用していた場合」等と修正すべきと思われる。 り修正いたしました。 情報を保有しているケ ⚫ 意見内容: 「管理単位 C で秘密管理されている情 ース 管理単位内で生成 AI を使用する場合であっても、自社で開発 報αを生成 AI に利用していた場合で ※注2 した AI のみならず、生成 AI サービスプロバイダー(第三者) あって、その後、管理単位 C で当該生 から AI サービスの提供を受け、ファインチューニングや転移 成 AI から当該情報αが AI 生成物とし 学習等に自社の学習用データを利用するケースが増えることが て生成・出力されることがあったとし 想定される。 ても、当該情報αが管理単位 C で秘密 P.19 ①社内の複数箇所で同じ 管理されているのであれば、管理単位 そのようなケースであっても、「①生成 AI サービスプロバイ C で当該情報αが生成・出力されたこ ダーが管理単位 C により入力された当該情報αに監視目的で との一事をもって、管理単位 C におけ の限定されたアクセスしかしない、あるいは一切アクセス・保 る秘密管理性が否定されることはない 3 存しない場合(管理単位 C がオプトアウトを選択した場合を と考えられる。また、管理単位 D で当 含む)において、②管理単位 C が秘密管理意思を持って生成 該生成 AI から当該情報αが AI 生成物 AI に当該情報αを入力して分析・生成する行為」については秘 として生成・出力されることがあった 密管理性が肯定される等を明記することを希望する。 としても、当該情報αが管理単位 C で 秘密管理されているのであれば、管理 理由: 単位 D で当該情報αが生成・出力され 自社の営業秘密であるデータを生成 AI に学習させる機会は今 たことの一事をもって、管理単位 C に 後増加することが想定される。本指針に想定ケースを追加する おける秘密管理性が否定されることは ことは、営業秘密として法的保護を受けるために必要となる最 ないと考えられる。」 低限の水準の対策となり得ると考えるため。 (参考資料) 日本ディープラーニング協会「生成 AI の利用ガイドライン」 https://www.jdla.org/document/ 4

資料4

資料3-2 営業秘密管理指針(案) 平成15年1月30日 (最終改訂:平成31令和●年●1月●23 日) 経済産業省 (改訂履歴) 平成17年10月12日改訂 平成22年 4月 9日改訂 平成23年12月 1日改訂 平成25年 8月16日改訂 平成27年 1月28日改訂 平成31年 1月23日改訂 令和7年●月●日改訂 目 次 はじめに(本指針の性格)....................................................... 1 1.総説 ................................................................. 4 2.秘密管理性について ................................................... 7 (1) 秘密管理性要件の趣旨............................................... 7 (2) 必要な秘密管理措置の程度 ........................................... 8 (3) 秘密管理措置の具体例.............................................. 14 紙媒体の場合...................................................... 14 電子媒体の場合.................................................... 15 物件に営業秘密が化体している場合 .................................. 16 媒体が利用されない場合.......................................... 1617 複数の媒体で同一の営業秘密を管理する場合 .......................... 18 (4) 営業秘密を企業内外で共有する場合の秘密管理性の考え方 .............. 18 社内の複数箇所で同じ情報を保有しているケース ...................... 18 複数の法人間で同一の情報を保有しているケース ...................... 19 3.有用性の考え方 ...................................................... 22 4.非公知性の考え方 .................................................... 24 おわりに ..................................................................... 27 はじめに(本指針の性格) ○(本指針の位置づけ)  本指針は、経済産業省が、不正競争防止法を所管し、また、TRIPS 協定 (知的所有権の貿易関連側面に関する協定)など通商協定を所掌する行政 の立場から、企業実務において課題となってきた営業秘密の定義等(不正 競争防止法による保護を受けるための要件など)について、イノベーショ ンの推進、勤務・労働形態の変化、海外の動向や国内外の裁判例(日本に おける最高裁判所の判例は改訂時点で存在しない)等を踏まえて、一つの 考え方を示すものであり、法的拘束力を持つものではない。  したがって、当然のことながら、不正競争防止法に関する個別事案の解決 は、最終的には、裁判所において、個別の具体的状況に応じ、他の考慮事 項とともに総合的に判断されるものである。 ○(改訂の経緯)  本指針は、「企業が営業秘密に関する管理強化のための戦略的なプログラ ムを策定できるよう、参考となるべき指針」として平成15年1月に策定 された「営業秘密管理指針」1を平成27年に全面的に改訂したものである。  平成27年の全面改訂に当たっては、「知的財産推進計画 20142014」 (平成26年7月知的財産戦略本部決定)で、「一部の裁判例等において 秘密管理性の認定が厳しいとの指摘や認定の予見可能性を高めるべきと の指摘があることも視野に入れつつ、営業秘密管理指針において、法的に 営業秘密として認められるための管理方法について、事業者にとってより 分かりやすい記載とするよう改める」と記載されたことを踏まえ、産業構 造審議会知的財産分科会営業秘密の保護・活用に関する小委員会(以下、 「営業秘密小委」という。)において議論いただいた。 ・ その後、ビッグデータ、AI の活用が推進する第四次産業革命を背景として 情報活用形態が多様化する状況を踏まえて、営業秘密小委において議論が 行われ、営業秘密の管理の実態に即した「営業秘密管理指針」の見直しの 方向性が示された(平成29年5月公表「第四次産業革命を視野に入れた 不正競争防止法に関する検討 中間とりまとめ」2」)ことを踏まえ、。これ を受け、平成310年1月に本指針の一部が改訂された。 1 平成27年1月まで、裁判例の蓄積や不正競争防止法の改正等に対応した改訂を4回実 施。 2 http://www.meti.go.jp/report/whitepaper/data/20170509001.html 1 ・ 加えて、令和元年7月には、限定提供データの保護に係る平成30年に改 正された不正競争防止法が施行されるとともに、令和6年4月には、限定 提供データの保護対象について営業秘密を除外するとする令和5年に改正 された不正競争防止法が施行されている。改正法の施行に先立ち、 「限定提 供データに関する指針」を令和6年2月に改訂している3。 ・ さらに、従来、労働の場は企業の施設内に限られることが多かったものの、 昨今の情勢を反映して、多くの企業でテレワーク勤務が実施されるに至る など、企業の施設外における労働の機会が増えており、これに伴い、自宅 等において営業秘密に触れる機会が増えている。また、企業における労働 の担い手についても、企業内の従業員だけでなく、企業と派遣元との契約 に基づいて派遣されてくる派遣労働者が、営業秘密に接する機会も増えて きている。さらに、労働形態の多様化の流れの中で兼業・副業の動きも見 られ、兼業先・副業先の営業秘密に接する機会が更に増し生じている。一 方で、情報管理の手法については、クラウド技術・環境を前提とした管理 が進むなど、企業における情報管理のあり方も変化している。 これらの動きを踏まえ、修辞上の修正とともに、令和●年●月に本指針の 一部が改訂された。 ○(指針で示す管理水準等)  本指針は、企業等が保有する多様な情報のうち、営業秘密が不正取得され た場合の後などに事後的救済として不正競争防止法によって差止め等の 法的保護を受けるために必要となる最低限の水準の対策を示すものであ る。  企業や、大学・研究機関が保有する情報について、法的保護を受ける前提 として適切な管理が必要とされているものの管理の要否が保有者の判断 に委ねられている営業秘密や、法律により保有者に一定の管理が必要とさ れている情報等4、秘密として管理する必要がある様々な秘密情報全般に ついて、本指針で示す対策を越えた漏えいの未然防止ないし又は漏えい時 に推奨される(高度なものを含めた)包括的対策・セキュリティ対策につ いても、本指針で示す対策とともに講じるのが好ましい。こうしたセキュ リティ対策等については、「秘密情報の保護ハンドブック(平成28年2 3 「限定提供データに関する指針」は以下に掲載。 https://www.meti.go.jp/policy/economy/chizai/chiteki/guideline/h31pd.pdf 4 個人情報保護法の対象となる個人情報、外為法の対象となるような重要な技術の情報 等。 2 月)」に掲載されている5。  また、不正競争防止法においては、平成30年改正により限定提供データ の保護を導入しており、営業秘密と相互補完的に企業等が保有する情報・ データの保護を図っているところ、限定提供データとしての保護について は 、 「 限 定 提 供 デ ー タ に 関 す る 指 針 」 (https://www.meti.go.jp/policy/economy/chizai/chiteki/guideline/h31pd .pdf)に掲載されているので、あわせて参照されたい。 5 「秘密情報の保護ハンドブック」は以下に掲載。 http://www.meti.go.jp/policy/economy/chizai/chiteki/pdf/handbook/full.pdf さらに同ハンドブックの簡易版として策定した「秘密情報の保護ハンドブックのてびき」 は以下に掲載。 http://www.meti.go.jp/policy/economy/chizai/chiteki/pdf/170607_hbtebiki.pdf この他、企業等において業務に従事し、実際に営業秘密に接する立場にある従業員等が、 不正競争防止法の観点から留意すべきポイントを示した従業員向けの啓発資料である「知 っておきたい営業秘密」については、以下に掲載。 https://www.meti.go.jp/policy/economy/chizai/chiteki/pdf/shitteokitai_eigyohimitsu.pdf 3 1.総説 ○(不正競争防止法の位置付け)  不正競争防止法は、他人の技術開発、商品開発等の成果を冒用する行為等 を不正競争として禁止している。具体的には、ブランド表示の盗用、形態 模倣商品の提供等とともに、営業秘密の不正取得・使用・開示行為等を差 止め等の対象としており、不法行為法の特則として位置づけられるもので ある。 ○(不正競争防止法における営業秘密の定義)  不正競争防止法(以下、「法」という。)第2条第6項は、営業秘密を ①秘密として管理されている[秘密管理性] ②生産方法、販売方法その他の事業活動に有用な技術上又は営業上の 情報[有用性]であって、 ③公然と知られていないもの[非公知性] と定義しており、この三要件全てを満たすことが法に基づく保護を受ける ために必要となる。  また、本三要件を含めた法における営業秘密の保護規定は、WTO(世界 貿易機関)の加盟国間での知的財産の最低限の保護水準を定めた「知的所 有権の貿易関連の側面に関する協定」 (TRIPS協定。昭和621987 年 から行われた交渉を踏まえ、我が国は平成71995 年に加入。)を担保する 性格を持つものであり、法の解釈に当たっては、最低限の保護水準を示す 同協定の存在・内容に留意する必要がある。なお、本三要件と実質的に同 趣旨の要件が、諸外国においても営業秘密保護の条件とされている(ただ し、運用には幅がある。)。 (参考)TRIPS 協定条文(抄) 第七節 開示されていない情報の保護 第三十九条 1967 年のパリ条約第十条の二に規定する不正競争からの有効な保護を確保するため に、加盟国は、開示されていない情報を 2 の規定に従って保護し、及び政府又は政府 機関に提出されるデータを 3 の規定に従って保護する。 2.自然人又は法人は、合法的に自己の管理する情報が次の(a)から(c)までの規定に該当 する場合には、公正な商慣習に反する方法により自己の承諾を得ないで他の者が当該 情報を開示し、取得し又は使用することを防止することができるものとする。 (a) 当該情報が一体として又はその構成要素の正確な配列及び組立てとして、当該 4 情報に類する情報を通常扱う集団に属する者に一般的に知られておらず又は容 易に知ることができないという意味において秘密であること。 (b) 秘密であることにより商業的価値があること。 (c) 当該情報を合法的に管理する者により、当該情報を秘密として保持するための、 状況に応じた合理的な措置がとられていること。 ○(営業秘密と民事上の措置・刑事罰上の措置との関係)  営業秘密に該当すれば、法に基づく、差止めをはじめとする民事上の救済 上措置や、刑事罰上の措置の対象になりうることとなる。  秘密管理性等の三要件の解釈については、民事上の要件と刑事上の要件と は同じものと考えられる6。  もっとも、秘密管理性等の三要件が認められ、営業秘密に該当したとして も、差止め等の民事上の措置や刑事罰措置の対象となるためには、法に定 められている「不正競争」や「営業秘密侵害罪」としての要件をすべて充 足しなければならない(法第2条第1項第4号~第10号、法第21条第 1項各号等)ことに留意する必要がある。 ○(契約による営業秘密以外での情報の保護)  営業秘密に該当しない情報については、営業秘密としては法による保護を 受けることはできないものの、同じ不正競争防止法に基づく限定提供デー タ(法第2条第7項)による保護や民法その他の法令による法的保護を一 切受けることができないわけではない可能性もある。  例えばすなわち、当該情報が営業秘密に該当しない場合であって限定提供 データに該当するときは、限定提供データに基づく差止め等を請求するこ とが可能な場合もある7。  また、当該情報の取扱いについて私人間の契約において別途の規律を設け た場合には、当該契約に基づく差止め等の措置を請求することが可能な場 合もであるがり、その際、法における営業秘密に該当するか否かは基本的 には関係がないと考えられることに留意する必要がある。 6 「刑事上の措置においても、営業秘密該当性の要件は、不正競争防止法の平成15年改 正の経緯等に照らしても、民事上の要件と同じものと解される」名古屋地判令和 4 年 3 月 18 日 平成 29 年(わ)427 号) 7 営業秘密と同様に、限定提供データに該当したとしても、差止め等の民事上の措置の対 象となるためには、法に定められている「不正競争」の要件をすべて充足しなければなら ない(法第2条第1項第11号~第16号)ことに留意する必要がある。 5 ○(大学・研究機関など企業以外の組織における情報管理との関係)  本指針では、「企業」、「従業員」などといった民間企業を念頭に置いた記 載となっているが、その内容は大学・研究機関における営業秘密の管理・ 保護においても十分にあてはまるものである。  貴重な研究成果は、大学・研究機関にとって民間企業におけるものと同様 に秘密として管理することで価値を有するものもあり、不正競争防止法が 対象とする「営業秘密」に該当する情報となる8。このため、大学・研究機 関が「営業秘密」を保有することは十分にあり得る。  実際、不正競争防止法において、「事業者」として大学が対象に含まれる ことを前提とした裁判例も存在しており9、また、研究機関に勤務する研究 員による営業秘密に該当するとされる情報の持ち出し(外部への漏えい) が、不正競争防止法違反として問題となった事例も起きている。よって、 本指針における対象者の範囲として、大学・研究機関についても該当し得 ると考えられる。 大学・研究機関が保有する情報のうち、例えば共同研究の相手先の民間企業から提供を 受けた外部の秘密情報だけでなく、大学・研究機関が生み出し、保有している研究・実験 .. データなども不正競争防止法が対象とする「営業秘密」に該当する情報となる。 9 東京地判平成 13 年 7 月 19 日判時 1815 号 148 頁 8 6 2.秘密管理性について (1) 秘密管理性要件の趣旨 秘密管理性要件の趣旨は、企業が秘密として管理しようとする対象(情報 の範囲)が従業員10や役員、取引相手先など(以下、 「従業員等」という。)従 業員等に対して明確化されることによって、従業員等の予見可能性、ひいて は、経済活動の安定性を確保することにある。 ○(営業秘密の情報としての特性)  営業秘密は、そもそも情報自体が無形で、その保有・管理形態も様々であ ること、また、特許権等のように公示を前提とできないことから、営業秘 密たる情報の取得、使用又は開示を行おうとする従業員や取引相手先(以 下、 「従業員等」という。)にとって、当該情報が法により保護される営業 秘密であることを容易に知り得ない状況が想定される。 ○(秘密管理性要件の趣旨)  秘密管理性要件の趣旨は、このような営業秘密の性質を踏まえ、企業が秘 密として管理しようとする対象が明確化されることによって、当該営業秘 密に接した者が事後に不測の嫌疑を受けることを防止し、従業員等の予見 可能性、ひいては経済活動の安定性を確保することにある11。 ○(留意事項)  秘密管理性要件については、企業が、ある情報について、相当高度な秘密 管理を網羅的に行った場合にはじめて法的保護が与えられるべきもので あると考えることは、次の理由により、適切ではない12。 10 ここでは、派遣先の指揮命令を受けて労働に従事するという観点から、「労働者派遣事 業の適正な運営の確保及び派遣労働者の保護等に関する法律」(いわゆる労働者派遣法) に基づく派遣労働者が含まれる。 11 秘密管理性要件の趣旨として、適切に管理がなされていない情報は、早晩他社に知ら れてしまい、競争優位性が失われることとなるとの前提に立ち、そのような情報に法的保 護を与えたとしても研究・開発のインセンティブが図られないことから、企業が特定の情 報を秘密として管理しようとする合理的な自助努力に対して法的保護を与えようとしたも のとの考え方も成り立ちうる(例えば、田村善之「営業秘密の秘密管理性要件に関する裁 判例の変遷とその当否-主観的認識 vs.「客観的」管理-」知財管理 64 巻 5 号~6 号) 。 この点、本指針は、あくまで従業員等の予見可能性の確保を中心に説明することから、同 見解とは若干異なる面がある。 12 別の政策論としては、秘密管理措置の有無にかかわらず、従業員が、事業者企業にとっ て秘密である(秘密としたい)ことを知って取得した情報については、当該従業員にとっ ては営業秘密性を認め、民事上の措置・刑事罰上の措置の対象とするべきとする考え方も ある。しかし、現行法の「秘密として管理されている」という文言と必ずしもそぐわない 7 ➢ 現実の経済活動において、営業秘密は、多くの場合、それを保有する 企業の内外で組織的に共有され活用されることによってその効用を 発揮する。企業によっては国内外の各地で子会社、関連会社、委託先、 又は、産学連携によって大学などの研究機関等と営業秘密を共有する 必要があるため、リスクの高低、対策費用の大小も踏まえた効果的か つ効率的な秘密管理の必要があること。 ➢ 営業秘密が競争力の源泉となる企業、特に中小企業が増加しているが、 これらの企業に対して、 「鉄壁の」秘密管理を求めることは現実的では ない。仮にそれを求めることになれば、結局のところ、法による保護 対象から外れてしまうことが想定され、イノベーションを阻害しかね ないこと。 ➢ 下請企業についての情報や個人情報などの営業秘密が漏えいした場 合、その被害者は営業秘密保有企業だけであるとは限らないこと。 (2) 必要な秘密管理措置の程度 秘密管理性要件が満たされるためには、営業秘密保有企業者の秘密管理意 思が秘密管理措置によって従業員等に対して明確に示され、当該秘密管理意 思に対する従業員等の認識可能性が確保される必要がある。 具体的に必要な秘密管理措置の内容・程度は、企業の規模、業態、従業員 等の職務、情報の性質その他の事情の如何によって異なるものであり、企業 における営業秘密の管理単位(本指針14頁参照)における従業員等がそれ を一般的に、かつ容易に認識できる程度のものである必要がある。 ○(総説)  秘密管理性要件が満たされるためには、営業秘密保有企業者が当該情報 を秘密であると単に主観的に認識しているだけでは不十分である。 すなわち、営業秘密保有企業者の秘密管理意思(特定の情報を秘密と して管理しようとする意思)が、具体的状況に応じた経済合理的な秘密 管理措置13によって、従業員に明確に示され、結果として、従業員が当該 上、このような考え方を採用した場合、従業員の主観という事後的に検証が困難な事実に 依存することになるため、予見可能性が乏しく、経済活動の安定性や円滑な転職を害する おそれがあるものと考えられる。 13 秘密管理性要件は、従来、①情報にアクセスできる者が制限されていること(アクセス 制限) 、②情報にアクセスした者に当該情報が営業秘密であることが認識できるようにさ 8 秘密管理意思を容易に認識できる(換言すれば、認識可能性が確保され る)必要がある。 取引相手先に対する秘密管理意思の明示についても、基本的には、対 従業員と同様に考えることができる。 ○(秘密管理措置の対象者)  秘密管理措置の対象者は、当該情報に合法的に、かつ、現実に接すること ができる従業員等である。 職務上、営業秘密たる情報に接することができる者が基本となるが、職 務の範囲内か否かが明確ではなくとも当該情報に合法的に接することが できる者(例えば、部署間で情報の配達を行う従業員、いわゆる大部屋勤 務において無施錠の書庫を閲覧できる場合における他部署の従業員など) も含まれる。 なお、秘密管理性は、従業員全体の認識可能性も含めて客観的観点から 定めるべきものであり、従業員個々が実際にどのような認識であったか否 かに影響されるものではない14。  従業員に対する秘密管理措置があれば、侵入者等(住居侵入罪にあたる行 為により情報に接触する者など法第2条第1項第4号及び第21条第1 項第1号にいう詐欺等行為又は管理侵害行為等によって営業秘密を取得 しようとする者)に対しても秘密管理性は確保されるのであって、営業秘 密保有企業者の秘密管理意思が従業員に対するものとは別に侵入者等に 示される(別の秘密管理措置が行われる)必要はない。 ※注 侵入者に対する刑事罰については、故意及び図利加害目的の要件を 追加的に満たす必要がある。 れていること(認識可能性)の 2 つが判断の要素になると説明されてきた。しかしなが ら、両者は秘密管理性の有無を判断する重要なファクターであるが、それぞれ別個独立し た要件ではなく、 「アクセス制限」は、「認識可能性」を担保する一つの手段であると考え られる。したがって、情報にアクセスした者が秘密であると認識できる( 「認識可能性」 を満たす)場合に、十分なアクセス制限がないことを根拠に秘密管理性が否定されること はない(東京高判平成 29 年 3 月 21 日判タ 1143 号 80 頁参照) 。 もっとも、従業員等がある情報について秘密情報であると現実に認識していれば、営業 秘密保有企業による秘密管理措置が全く必要ではないということではない。法の条文上 「秘密として管理されている」と規定されていることを踏まえれば(法第2条第6項)、 何らの秘密管理措置がなされていない場合には秘密管理性要件は満たさないと考えられ る。 なお、 「アクセス制限」の用語は権限のない者が情報にアクセスすることができないよ うな措置を講じることという語義で使用されることが多いが、秘密として管理する措置に は、 「秘密としての表示」や「秘密保持契約等の契約上の措置」も含めて広く考えること が適当である。それを明確化するため、本指針においては「アクセス制限」ではなく、 「秘密管理措置」という用語で説明する。 14 知財高判令和 3 年 6 月 24 日 令和 2 年(ネ)10066 号参照 9 ○(合理的区分)  秘密管理措置は、対象情報(営業秘密)の一般情報(営業秘密ではない情 報)からの合理的区分と当該対象情報について営業秘密であることを明ら かにする措置とで構成される。  合理的区分とは、企業の秘密管理意思の対象(従業員にとっての認識の対 象)を従業員に対して相当程度明確にする観点から、営業秘密が、情報の 性質、選択された媒体、機密性の高低、情報量等に応じて、一般情報と合 理的に区分されることをいう。 ※注 営業秘密保有企業が営業秘密たる情報のみを保有し、営業秘密たる 情報以外の情報を保有しないことは考えにくいため、秘密管理措置の 一環として、合理的区分が必要となることが通常である。  この合理的区分とは、情報が化体した媒体について、例えば、紙の1枚1 枚、電子ファイルの1ファイル毎に営業秘密であるか一般情報であるかの 表示等を求めるものではなく、企業における、その規模、業態等に即した 媒体の通常の管理方法に即して、営業秘密である情報を含む(一般情報と 混在することもありうる。)のか、一般情報のみで構成されるものである か否かを従業員が判別できればよい(※)。 ※注 紙であればファイル、電子媒体であれば社内LAN上のフォルダな どアクセス権の同一性に着目した管理がなされることが典型的であ るが、業態によっては、書庫に社外秘文書(アクセス権は文書によっ て異なる)が一括して保存されるケースも存在し、そのような管理も 合理的区分として許容される15。ただし、「職務上知り得た情報全て」 「事務所内の資料全て」といった形で秘密表示等を行っているにもか かわらず、情報の内容から当然に一般情報であると従業員が認識する 情報が著しく多く含まれる場合には、下記留意事項に記載した「秘密 管理措置の形骸化」と評価されることもありうる。 ○(その他の秘密管理措置の程度) ア 従業員及び役員に向けたもの  合理的区分に加えて必要となる秘密管理措置としては、主として、媒体 の選択や当該媒体への表示、当該媒体に接触する者の限定、営業秘密と 他の情報との分別管理16ないし、営業秘密たる情報の種類・類型のリスト 15 このほか、特許出願を行う部署などの一部署を入室制限付きの執務室とし、当該執務室 の情報は全てが営業秘密であるとの取扱いが考えられる。 16 営業秘密と他の情報との分別管理については、脚注 5 で紹介した「秘密情報の保護ハン ドブック」 (令和 6 年 2 月改訂版 45 頁以下。 「分離保管による情報へのアクセス制限」 ) 10 化、就業規則や秘密保持契約(あるいは誓約書)などの規程等において 守秘義務を明らかにする、従業員への研修・啓発等が想定される。要す るに、秘密管理措置の対象者たる従業員において当該情報が秘密であっ て、一般情報とは取扱いが異なるべきという規範意識が生じる程度の取 組(管理措置)であることがポイントとなる。  秘密管理措置の具体的な内容・程度は、当該営業秘密に接する従業員の多 寡、業態、従業員の職務、情報の性質(重要性)、執務室の状況その他の事 情によって当然に異なる。 ➢ 例えば、情報の性質に関して、当該営業秘密保有者にとって重要な情 報であり、当然に秘密として管理しなければならないことが従業員に とって明らかな場合には、そうした従業員の認識を活用した管理が許 されて然るべきであり17、会社のパソコン等へログインするための ID やパスワードなどにより秘密情報へのアクセスが制限されていると いった程度の技術的な管理措置や、就業規則や誓約書において当該情 報の漏えいを禁止しているといった規範的な管理措置で足りる場合 もある18。 ➢ 当該媒体に接触する者の限定に関して、従業員者ごとに厳密に業務の 必要性を考慮した上で限定することまでは求められるものではなく、 業務上の必要性等から特定の部署で広くアクセス権限が付与されて いたとしても、特定の従業員に限定されていたことに変わりはないと 考えられる19。 ➢ ものであり、例えば、営業秘密に合法的かつ現実的に接しうる従業員 が少数である場合において、状況によっては当該従業員間で口頭によ り「秘密情報であること」の確認をしている等の措置で足りる場合も あり得る。 ○(留意事項)  情報に対する秘密管理措置がその実効性を失い「形骸化」したともいいう る状況で、従業員が企業の秘密管理意思を認識できない場合は、適切な秘 に、情報漏えい対策の一例ではあるが具体的な管理方法の記載があるので、参照された い。 17 知財高裁平成 23 年 9 月 27 日 平成 22 年(ネ)10039 号、東京地判令和 4 年 12 月 9 日 令和 3(特わ)129 号等参照 18 大阪地判平成 30 年 3 月 5 日 平成 28 年(ワ)648 号参照 19 福岡高判令和 6 年 7 月 3 日 令和 6 年(う)20 号参照 11 密管理措置とはいえない20。 ※注 一時的ないし又は偶発的な管理不徹底に過ぎず、当該企業の秘密管 理意思に対する従業員の認識可能性に重大な影響を与えない場合ま で「形骸化」と評価することは適切ではない。  個人情報保護法で保護される個人情報については、同法で漏えい対策を含 む安全管理義務が保有企業に対して義務づけられており、それが従業員に とっても明らかであり、かつ、一般情報との区別も外見上明確であること から、その他の情報に比べて、秘密管理性が認められる可能性が高いもの と考えられる。  なお、秘密管理性とは別に、企業が社会的責任として講じることが期待さ れる情報漏えい防止対策には、その内容は企業の自主的な判断によるもの の、漏えいリスクの大小等に応じて、従業員の行動に対する各種の意識啓 発21、牽制や漏えいの検知等を行って漏えいリスクを減少する方策、又は、 被害拡大を防止するための方策が含まれることが通例であり、秘密管理措 置とは必ずしも一致しないため留意が必要である。  また、情報セキュリティについては、企業が被る不利益を減らす観点から 企業が置かれている状況毎に必要な措置を行うことが重要ではあるが、情 報セキュリティで求められる措置の程度と秘密管理措置の程度は異なっ てもよく、情報セキュリティで求められる措置の程度に達していなくとも、 秘密管理措置が認められ得る。 〈参考裁判例〉  企業の規模を考慮した例 パスワード等によるアクセス制限、秘密であることの表示等がなかったにもかか わらず、全従業員数が 10 名であり、性質上情報への日常的なアクセスを制限でき ないことも考慮し、秘密管理性を肯定(大阪地判平成 15 年 2 月 27 日 平成 13 年 (ワ)10308 号) 。 20 「職務上知り得た情報全て」 「事務所内の資料全て」といった形で秘密表示等を行って いるにもかかわらず、情報の内容から当然に一般情報であると従業員が認識する情報が著 しく多く含まれることによって、「秘密管理措置の形骸化」と評価されないように注意す る必要がある。 21 従業員への意識啓発の方法として、労使の対話の場、情報管理ルール等に係る研修、 e-ラーニング等の教育プログラムなど様々な機会を捉まえて、営業秘密とは何か、自社の 扱う営業秘密の重要性、許される共有の範囲、営業秘密として秘密にしなければならない 期間等について、従業員に対する周知を図ることが望ましい。 12  営業上の必要性を理由に緩やかな管理を許容した例 顧客情報の写しが上司等に配布されたり、自宅に持ち帰られたり、手帳等で管理 されて成約後も破棄されなかったりしていたとしても、これらは営業上の必要性 に基づくものであり、従業員が本件顧客情報を秘密であると容易に認識し得るよ うにしていたとして、秘密管理性を肯定(知財高判平成 24 年 7 月 4 日 平成 23 年(ネ)10084 号) 。  情報の性質から従業員等が認識可能であると認定した例 PC樹脂の製造技術に関する情報は世界的に希有な情報であって、製造に関係す る従業員は当該製造技術が秘密であると認識していたといえるとして秘密管理性 を肯定(知財高裁平成 23 年 9 月 27 日 平成 22 年(ネ)10039 号) 。  規範的な管理がなされていることに加え、情報の重要性に鑑みて従業員等が認識 可能であると認定した例 アクセス制限の程度が明らかでなく、また物理的な管理が徹底されていたとはい いがたい事情があるとしても、顧客情報を一元化してデータ管理しており、就業 規則において顧客情報の開示等を禁止することや、退職従業員に対しても、顧客 情報を漏えいしないことを誓約させるなど、規範的な管理がなされていたことに 加え、配置販売事業者にとっての顧客情報の重要性に鑑みて、従業員らにとって も、それが秘密管理の対象とされるべきものであることは容易に理解し得るとし て秘密管理性を肯定(大阪地判平成 30 年 3 月 5 日 平成 28 年(ワ)648 号)。  物理的な管理体制を問題にすることなく秘密管理性を肯定した例 安価で販売して継続的取引を得るなどの極めて効果的な営業活動を可能ならしめ るものという情報の重要性と、情報を開示されていたのが従業員11名に過ぎな かったことに加えて、被告が退職する直前に秘密保持の誓約書を提出させていた こと等の事情を斟酌して、秘密管理性を肯定(大阪高判平成 20 年 7 月 18 日 平 成 20 年(ネ)245 号) 。 イ 取引相手先に向けたもの  取引相手先に秘密情報を提供している場合には、従業員及び役員に向けた 秘密管理措置に加えて、当該取引相手先と秘密保持契約を締結した上で秘 密情報を提供したかどうかがポイントとなる22。 22 ただし、相手方との秘密保持契約の締結がなければ、常に、秘密管理が不適切となるわ けではなく、秘密保持契約をあらかじめ締結せずに営業秘密を相手方に開示したとしても 直ちに秘密管理措置を欠くことにはならないと考えられる。 13 (3) 秘密管理措置の具体例 秘密管理措置は、前述(2)のとおり、具体的状況に応じて多様である が、ここでは、一例として媒体に対する典型的な秘密管理措置を紹介する。 ※注 秘密管理方法としては、媒体に対するもの以外に、媒体を利用せず 無形の情報として管理したり、情報に合法的かつ現実的に接触する者 を限定する方法などが想定されることは前述。 紙媒体の場合 ○典型的な管理方法  前述のとおり、ファイルの利用等により一般情報からの合理的な区分を行 ったうえで、基本的に例えばは、秘密情報が記載された当該文書に「マル 秘」など秘密であることを表示することにより、秘密管理意思に対する従 業員の認識可能性は確保されると考えられる。  個別の文書やファイルに秘密表示をする代わりにその他にも、施錠可能な キャビネットや金庫等に保管する方法も、認識可能性を確保する手段とし て考えられる。  なお、情報の漏えい事案が社内で多発しているなど不正取得のリスクが顕 在化している場合に、紙媒体のコピーやスキャン・撮影の禁止、コピー部 数の管理(余部のシュレッダーによる廃棄)、配布コピーの回収、キャビ ネットの施錠、自宅持ち帰りの禁止といった追加的な措置によって、秘密 管理意思の明示がより確固としたものになることは想定される。しかしな がら、通常の状況においては、これらの措置は、情報漏えい対策上有効で あるとしても、秘密管理性を充足するための必須のものではない。(前述 (2)のとおり、秘密管理性とは別に、企業の自主的な漏えいリスク低減 のための情報漏えい対策という観点からは更に高度な対策を取るという 判断がありうる。) 〈参考裁判例〉  人材派遣業を営む会社の従業員が派遣労働者の雇用契約に関する情報等を持ち 出した事例において、当該情報は、施錠棚への保管やコピーの制限・回収、秘密 表示がなされていなかったが、従業員との秘密保持契約、当該情報の管理に係る 一般的な注意喚起等の事情を斟酌し、秘密管理性を肯定(東京地判平成 14 年 12 月 26 日 平成 12 年(ワ)22457 号)。 14 電子媒体の場合 ○典型的な管理方法  データなどの電子媒体で保管している場合も基本的には紙媒体と同様であ るが、電子情報の場合は、通常、次のような方法のいずれかによって、秘 密管理性の観点から充分な秘密管理措置となり得るものと考えられる。 -記録媒体へのマル秘表示の貼付 -電子ファイル名・フォルダ名へのマル秘の付記 -営業秘密たる電子ファイルを開いた場合に端末画面上にマル秘であ る旨が表示されるように、当該電子ファイルの電子データ上にマル秘 を付記(ドキュメントファイルのヘッダーにマル秘を付記等) -営業秘密たる電子ファイルそのもの又は当該電子ファイルを含むフ ォルダの閲覧に要するパスワードの設定 -記録媒体そのものに表示を付すことができない場合には、記録媒体を 保管するケース(CDケース等)や箱(部品等の収納ダンボール箱) に、マル秘表示の貼付  また、外部のクラウドを利用して営業秘密を保管・管理する場合も、秘密 として管理されていれば、秘密管理性が失われるわけではない。例えば、 階層制限に基づくアクセス制御などの措置が考えられる。なお、情報の内 容・性質等からいって、当該営業秘密保有者にとって重要な情報であるこ とが明らかな場合には、外部のクラウドにアクセスするためにID・パス ワードなどが設定されているといった程度の技術的な管理措置や、就業規 則や誓約書において当該情報の漏えいを禁止しているといった規範的な管 理措置で足りる場合もある 。  なお、不正利用・不正取得のリスクが顕在化している場合には、追加的に、 人事異動・退職毎のパスワード変更、メーラーの設定変更による私用メー ルへの転送制限、物理的に USB やスマートフォンを接続できないように すること等によって、秘密管理意思の明示がより確固としたものになるこ とが想定される。しかし、通常の状況においては、これらの措置は、情報 漏えい対策上有効であるとしても、秘密管理性を充足するための必須のも のではない。 (前述(2)のとおり、秘密管理性とは別に、漏えいリスク低 15 減のための情報漏えい対策という観点からは更に高度な対策を取るという 判断がありうる。) 〈参考裁判例〉 ・情報の入ったパソコンのIDとパスワードを複数の従業員で共有しており、さら にIDとパスワードを付箋に書いて貼ってあり、退職者が出てもIDとパスワー ドが変更されることはなかったという事案において、IDやパスワードの趣旨が 有名無実化していたというような事情があればともかく、そのような事情が認め られない限り、なお秘密管理性を認めるに妨げないとして秘密管理性を肯定(大 阪地判平成 20 年 6 月 12 日 平成 18 年(ワ)5172 号) 。 ・パスワードが変更されたことはなく、パソコンにパスワードを記載した付せんを 貼っている者がおり、プライスリストを印刷したものに「社外秘」等の押印をす る取決めはなかった事案において、プライスリストに機械製造業者にとって一般 的に重要であることが明らかな仕入原価等の情報が記載されていること等を参酌 し、プライスリストの外部への提示や持ち出しが許されていたという事情は認め られないとして秘密管理性を肯定(名古屋地判平成 20 年 3 月 13 日 平成 17 年 (ワ)3846 号) 。  物件に営業秘密が化体している場合 製造機械や金型、高機能微生物、新製品の試作品など、物件に営業秘密情 報が化体しており、物理的にマル秘表示の貼付や金庫等への保管に適さな いものについては、例えば、次のような方法のいずれかを講じることによ って、秘密管理性の観点から秘密管理措置となりうるものと考えられる。 -扉に「関係者以外立入禁止」の張り紙を貼る -警備員を置いたり、入館 ID カードが必要なゲートを設置したりして、 工場内への部外者の立ち入りを制限する -写真撮影禁止の貼り紙をする -営業秘密に該当する物件を営業秘密リストとして列挙し、当該リスト を営業秘密物件に接触しうる従業員内で閲覧・共有化する  媒体が利用されない場合 例えば、技能・設計に関するものなど従業員が体得した無形のノウハウや 16 従業員が職務として記憶した顧客情報等については、従業員の予見可能性 を確保し、職業選択の自由にも配慮する観点(※1)から、原則として、 下記のような形で、その内容を紙その他の媒体に可視化することが必要と なる。(媒体としての管理は①から③に前述) -営業秘密のカテゴリーをリストにすること(※2) -営業秘密を具体的に文書等に記載すること ※注1 これらの情報は、多くの場合、一般情報との区別が困難であるた め、当該体得情報を可視化することなくその情報の使用を禁じてし まうと、従業員にとってはいかなる情報の開示・持ち出しが禁じら れているのかが明確でなく、転職自体が困難となりかねない。 ※注2 最先端の技術開発現場が典型的であるが、日々高度の営業秘密が 創出・更新され、内容の整理分類が常時なされていない状況におい ては、カテゴリーのリスト化や秘密保持契約(あるいは誓約書)等 による範囲の特定が有効であると考えられる。  一方で、例えば、未出願の発明や特定の反応温度、反応時間、微量成分、 複数の物質の混合比率が営業秘密になっている場合(化学産業などで多く 見られる)などで、その情報量、情報の性質、当該営業秘密を知りうる従 業員の多寡等を勘案して、その営業秘密の範囲が従業員にとって明らかな 場合には、必ずしも内容そのものが可視化されていなくとも、当該情報の 範囲・カテゴリーを口頭ないし書面で伝達することによって、従業員の認 識可能性を確保することができるものと考えられる。  なお、従業員が体得した情報が営業秘密に該当する場合には、転職後の使 用・開示によって、直ちに、民事上の措置上及び刑事罰上の措置の対象と なるわけではない。当該企業の利益、従業員の利益、営業秘密の内容等を 踏まえ従業員が営業秘密保有企業との関係で信義則上の義務に著しく反す るような場合、すなわち「不正の利益を得る目的」又は「保有者に損害を 加える目的」であると評価される場合にのみような形で当該営業秘密の取 得・使用・開示をした場合に限り、民事上の措置上又は刑事罰上の措置の 対象となるのであり、その判断に当たっては、当該企業と従業員との間の 信頼関係の程度、当該企業の利益、従業員の利益、営業秘密の内容等を踏 まえた総合的な考慮によるものであることに留意が必要である23。 23 従業員の転職に際して、退職従業員による新雇用主への営業秘密開示行為等が、旧雇 用主との関係で信義則上の義務に著しく反するような形でなされた場合、新雇用主は、そ 17   複数の媒体で同一の営業秘密を管理する場合 同一の情報を紙及び電子媒体で管理することが企業実務で多く見られるが、 複数の媒体で同一の営業秘密を管理する場合には、それぞれについて秘密 管理措置が講じられることが原則である。 ただし、従業員が同一の情報につき複数の媒体に接する可能性がある場合 において、いずれかの媒体への秘密管理措置(マル秘表示等)によって当 該情報についての秘密管理意思の認識可能性が認められる場合には、仮に それ以外の媒体のみでは秘密管理意思を認識しがたいと考えられる場合で あっても、秘密管理性は維持されることが通常であると考えられる。 (4) 営業秘密を企業内外で共有する場合の秘密管理性の考え方 企業内(支店、営業所等)、企業外(子会社、関連会社、取引先、業務委 託先、フランチャイジー等)と営業秘密を共有する場合においては、次のよ うに整理される。 社内の複数箇所で同じ情報を保有しているケース 秘密管理性の有無は、法人全体で判断されるわけではなく、営業秘密たる情 報を管理している独立単位(以下、「管理単位」という。)ごとに判断される。 当該管理単位内の従業員にとって、当該管理単位における秘密管理措置に対 する認識可能性があればよい。  支店など社内の複数箇所で同一の営業秘密を保有していた場合、それぞれ の箇所で状況に応じた秘密管理措置が講じられる必要がある。しかしなが ら、いずれかの箇所で秘密管理措置がなされていなければ、 (当該箇所では 秘密管理性が否定されることは当然であるが)、その他の箇所でも当該情報 の秘密管理性が否定されるわけではない。  すなわち、管理単位(規模、物理的環境、業務内容も勘案しつつ、秘密管 理措置の要否や内容の決定及びその遵守状況の監督(違反者の処分等)に 関する自律的決定権限の有無その他の事情の有無から判断して、営業秘密 の管理について一定の独立性を有すると考えられる単位。典型的には、 「支 店」、 「事業本部」など。)ごとに、当該企業の秘密管理意思に対する認識可 のような信義則上の義務に著しく反する開示であることについて悪意又は重過失で当該営 業秘密を使用等すると営業秘密侵害となる。 18 能性があればよい。 ※注1 充分な秘密管理措置が行われている管理単位 A 単位から情報が漏 えいした場合において、管理単位 B 単位における秘密管理措置の不 存在をもって、管理単位 A 単位の秘密管理性は通常、否定されない。 ただし、管理単位 B 単位における秘密管理措置の不存在の事実が、 継続的で、社内で公然の事実であるといった状況の結果、管理単位 A 単位の従業員の認識可能性が損なわれている場合には、その後、 管理単位 A 単位から情報が漏えいした場合ときに、管理単位 A 単位 における秘密管理性は否定されうる(ただし、各単位における一時 的・偶発的な管理不徹底によって秘密管理性が直ちに失われるわけ ではない)。 ※注2 生成 AI における学習用データとして、管理単位 C で秘密管理さ れている情報αを生成 AI に利用していた場合であっにおいて24、そ の後、管理単位 C で当該生成 AI から当該情報αが AI 生成物として 生成・出力されることがあったとしても、当該情報αが管理単位 C でにおいて秘密管理されているのであれば、管理単位 C で当該情報 αが生成・出力されたことの一事をもって、管理単位 C における秘 密管理性が否定されることはないと考えられる25。また、管理単位 D でにおいて当該生成 AI から当該情報αが AI 生成物として生成・出 力されることがあったとして場合でも、当該情報αが管理単位 C で において秘密管理されているのであれば、管理単位 D で当該情報α が生成・出力されたことの一事をもって、管理単位 C における秘密 管理性が否定されることはないと考えられる。 複数の法人間で同一の情報を保有しているケース 秘密管理性の有無は、法人(具体的には管理単位)ごとに判断され、別法人 内部での情報の具体的な管理状況は、自社における秘密管理性には影響しな いことが原則である。  (法人単位での判断) 子会社をはじめとして、企業外の別法人については、会社法等の法令上、 営業秘密保有企業者自体が当該別法人の内部における秘密管理措置の実施 例えば、AI の開発・学習段階において、学習用データを学習に利用して AI(学習済み モデル)を開発する場合などが想定される。 25 ただし、当該企業にとどまらず、当該情報αが当該企業以外の第三者(例えば、生成 AI 提供事業者等)に提供される場合は、秘密管理性が否定される場合もあり得る。 24 19 を直接に実施・確保することはできないこと、法も「保有者」の概念を用 いており、事業者単位での管理を想定していると考えられることを踏まえ、 別法人内部での情報の具体的な管理状況は、自社における秘密管理性には 影響しないことが原則である。  (別法人の不正な使用に対する差止請求等) 自社の営業秘密について、子会社等の別法人が不正な利用を行っている 場合に、自社が当該別法人に対して差止請求等を行うためには、当該別法 人(具体的には自社から当該営業秘密を共有した担当者)に対して、自社 従業員に対するのと同様に、自社の秘密管理意思が明確に示されている必 要がある(法第2条第1項第7号等の「営業秘密を保有者から示された」 ことが必要)。 ※注 EC社から FD社に対して営業秘密が示されたケース(FDでは当該 営業秘密を FD自身の営業秘密として管理)において、FDが営業秘密 を漏えいした FDの従業員に差止め等を求めることの可否は、FD内部 の従業員に対する認識可能性の有無の問題となる。  具体的には、営業秘密を特定した秘密保持契約(NDA)の締結により自社 の秘密管理意思を明らかにする場合が典型的であるが、それ以外にも、取 引先との力関係上それが困難な場合には、自社では営業秘密として管理さ れているという事実の口頭による伝達や開示する文書へのマル秘表示によ っても、自社の秘密管理意思を示すことは、理論上は可能である。ただし、 立証を考慮すれば、口頭での秘密管理意思の伝達ではなく、何らかの書面 (送り状への記載等)が望ましい。 ※注 営業秘密に該当する場合であっても、その使用等が直ちに民事上の 措置・刑事罰上の措置の対象となるわけではない。当事者間の信頼関 係の程度、各当事者の利益、営業秘密の内容等を踏まえ信義則に著し く反する場合、すなわちなど「不正の利益を得る目的」又は「保有者に 損害を加える目的」であると評価される場合にのみ、民事上の措置・刑 事罰上の措置の対象となることとなる。  また、複数企業で共同研究開発を実施する場合等、複数の他の企業に自社 の営業秘密たる情報を開示することが想定されるが、その場合、自社の秘 密管理意思を示すためには、開示先である共同研究開発に参加する複数企 業等を当事者とした NDA を締結することが有効であると考えられる。  逆に他方で、例えば、別法人と営業秘密を特定した NDA を締結せずに営 業秘密を別法人と共有した場合など、別法人に対して自社が秘密管理措置 を講じていないことを以もって、自社における従業員との関係での秘密管 20 理性には影響しないことが原則である。 ※注 ただし、仮に、営業秘密保有企業者 GE が別法人 HF に対して、特 段の事情が無いにも関わらず、何らの秘密管理意思の明示なく、営業 秘密を取得・共有させているような状況において、GE 企業の一部の従 業員が、 「特段事情が無いにも関わらず、何らの秘密管理意思の明示な く自社 GE の営業秘密を HF に取得・共有させた」という状況を認識 している場合においては、GE 企業の従業員の認識可能性が揺らぎ、結 果として、GE における秘密管理性が否定されることがありうることに 注意が必要である。 21 3.有用性の考え方 「有用性」が認められるためには、その情報が客観的にみて、事業活動に とって有用であることが必要である。 一方、企業の反社会的な行為などの公序良俗に反する内容の情報は、 「有用 性」が認められない。 (1) 「有用性」の要件は、公序良俗に反する内容の情報(脱税や有害物質の垂 れ流し等の反社会的な情報)など、秘密として法律上保護されることに正 当な利益が乏しい情報を営業秘密の範囲から除外した上で、広い意味で商 業的価値が認められる情報を保護することに主眼がある。 (2)したがって、当該情報が、営業秘密を保有する事業者の事業活動に使用・ 利用されているのであれば、基本的に営業秘密としての保護の必要性を肯 定でき、当該情報が公序良俗に反するなど保護の相当性を欠くような場合 でない限り有用性の要件は充足されるものと考えられる26。 秘密管理性、非公知性要件を満たす情報は、有用性が認められることが 通常であり、また加えて、必ずしも現に事業活動に使用・利用されているこ とを要するものではない。 同様に、直接ビジネスに活用されている情報に限らず、間接的な(潜在 的な)価値がある場合も含む。例えば、過去に失敗した研究データ(当該 情報を利用して研究開発費用を節約できる)や、製品の欠陥情報(欠陥製 品を検知するための精度の高い AI 技術27を利用したソフトウェアの開発 には重要な情報)等のいわゆるネガティブ・インフォメーションにも有用 性は認められる。 (3)なお、有用性の要件の判断に際しては、当該情報を不正に取得した者が それを有効に活用できるかどうかにより左右されない28。 また、当業者であれば、公知の情報を組み合わせることによって容易に 東京地判令和 4 年 12 月 9 日 令和 3 年(特わ)129 号、東京地判令和 6 年 2 月 26 日 令和 4 年(特わ)2148 号参照 27 「AI・データの利用に関する契約ガイドライン-AI編-(平成30年6月) 」 (以 下、 「AIガイドライン」という。 ) (https://www.meti.go.jp/policy/mono_info_service/connected_industries/sharing_and_u tilization/20180615001-3.pdf)と同様に、本指針における「AI 技術」は、機械学習、又 はそれに関連する一連のソフトウェア技術のいずれかを意味するものとする。なお、AI ガイドラインでは、 「機械学習」は、 「あるデータの中から一定の規則を発見し、その規則 に基づいて未知のデータに対する推測・予測等を実現する学習手法の一つである。」と説 明されている。 28 東京地判令和 4 年 12 月 9 日 令和 3 年(特わ)129 号、東京地判令和 6 年 2 月 26 日 令和 4 年(特わ)2148 号参照 26 22 当該営業秘密を作出することができる場合であっても、有用性が失われる ことはない(特許制度における「進歩性」概念とは無関係)29。 〈参考裁判例〉 ・ 「不正競争防止法が営業秘密を保護する趣旨は、不正な競争を防止し、競争秩序 を維持するため、正当に保有する情報によって占め得る競争上の有利な地位を保 護することにあり、進歩性のある特別な情報を保護することにあるとはいえない から、当該情報が有用な技術上の情報といえるためには、必ずしもそれが「予想 外の特別に優れた作用効果」を生じさせるものである必要はないというべきであ る。 」 (横浜地判令和 3 年 7 月 7 日 平成 30 年(わ)1931 号等) 。 29 横浜地判令和 3 年 7 月 7 日 平成 30 年(わ)1931 等参照 23 4.非公知性の考え方 「非公知性」が認められるためには、一般的には知られておらず、又は容 易に知ることができないことが必要である。 ○( 「公然と知られていない」状態)  (1) 「公然と知られていない」状態とは、当該営業秘密が一般的に知られ た状態になっていない状態、又は容易に知ることができない状態である30。 具体的には、当該情報が合理的な努力の範囲内で入手可能な刊行物に記載 されていない、公開情報や一般に入手可能な商品等から容易に推測・分析 されない等、営業秘密保有者の管理下以外では一般的に入手できない状態 である31。 ○( 「公然知られた発明」(特許法第29条第1項第1号)との関係)  (2)営業秘密における非公知性要件は、発明の新規性の判断における「公 然知られた発明」(特許法第29条第1項第1号)の解釈と一致するわけ ではない。特許法の解釈では、特定の者しか当該情報を知らない場合であ っても当該者に守秘義務がない場合は特許法上の公知となりうるが、営業 秘密における非公知性では、特定の者が事実上秘密を維持していれば、な お非公知と考えることができる場合がある。また、営業秘密保有者以外の 第三者が同種の営業秘密を独立に開発した場合、当該第三者が秘密にとし て管理していれば、なお非公知である。 ○(外国の刊行物に過去に記載されていたような状況)  (3)また、当該情報が実は外国の刊行物に過去に記載されていたような 状況であっても、当該情報の管理地においてその事実が知られておらず、 その取得に時間的・資金的に相当のコストを要する場合には、非公知性は なお認められうる。もちろん、そのようなコストを投じて第三者が現に当 該営業秘密を取得又は開発した上で当該情報の管理地において公開等を 行い、 「公然と知られている」状態となれば、非公知性は喪失することにな る。 ○(ダークウェブに公表された場合)  第三者からのハッキング等により営業秘密が、ダークウェブ32に公表され たとしても、その一事をもって直ちに非公知性が喪失するわけではない。 TRIPS協定 39 条 2 項(a)号も同様の要件を規定している。 一般的には知られていないが、容易に知ることができる状態は、非公知とはいえない。 32 ここでいうダークウェブとは、一般的な方法ではアクセスできず、また検索エンジンで 見つけることも不可能な Web サイトの総称を指す。 30 31 24 ○(公知情報の組み合わせ)  (4)なお、 「営業秘密」とは、様々な知見を組み合わせて一つの情報を構 成していることが通常であるが、ある情報の断片が様々な刊行物に掲載さ れており、その断片を集めてきた場合、当該営業秘密たる情報に近い情報 が再構成され得るからといって、そのことをもって直ちに非公知性が否定 されるわけではない。なぜなら、その断片に反する情報等も複数あり得る 中、どの情報をどう組み合わせるかといったこと自体に価値がある場合は、 営業秘密たり得るからである。複数の情報の総体としての情報については、 組み合わせの容易性、取得に要する時間や資金等のコスト等を考慮し、保 有者の管理下以外で一般的に入手できるかどうかによって判断すること になる33。例えば、公知情報の組み合わせであっても、その組み合わせが 知られていなかったり容易に知り得ないため、財産的価値が失われていな い場合には非公知と言いうる。また、仮に公知情報の組み合わせであって、 その組み合わせが知られていたり容易であったりしたとしても34、取得に 要する時間や資金的コストがかかるため財産的価値があるという場合に は非公知と言いうる。 ○(進歩性(特許法第29条第2項)との関係)  不正競争防止法が営業秘密を保護する趣旨は、進歩性のある特別な情報を 保護することにあるのではないから、当該情報が非公知の情報といえるた めの要件として「予想外の特別に優れた作用効果」を生じさせるものであ ることまでは要しない35。 ○(リバースエンジニアリング)  リバースエンジニアリング36によって営業秘密を抽出できる場合、抽出可 能性の難易度の差によって判断がわかれることになる。具体的には、誰で もごく簡単に製品を解析することによって営業秘密を取得できるような 場合には、当該製品を市販したことによって営業秘密自体を公開したに等 しいと考えられることから、非公知性を喪失すると考えられる。これに対 し、特殊な技術をもって相当な期間が必要であり、誰でも容易に当該営業 秘密を知ることができない場合には、当該製品を市販したことをもって非 公知性を喪失するとはならない。 名古屋地判令和 4 年 3 月 18 日 平成 29 年(わ)第 427 号参照。 公知情報を組み合わせて作成した AI 技術の開発(学習)用のデータのようなものが想 定される。 35 東京高判令和 4 年 2 月 17 日 令和 3 年(う)1407 号参照 36 ここでいうリバースエンジニアリングとは、製品を解析、評価することによって、その 構造・材質・成分・製法等その製品に化体している情報を抽出したり、抽出した情報を使 用する行為を意味する。 33 34 25 〈参考裁判例〉 (肯定例) ・市販製品の解析により本件情報を知るためには、塗料メーカーの知見を駆使し、 原料メーカーの協力を仰ぐなどする必要がある上、なお一定の期間を要するので あって、誰でも容易に知り得るわけではないことを理由に、非公知性を肯定(名 古屋高判令和 3 年 4 月 13 日 令和 2 年(う)162 号)。 ・仮に原告製品のリバース エンジニアリングによって原告の営業秘密である技術情報に近い情報を得ようと すれば、 「専門家により、多額の費用をかけ、長時間にわたって分析することが必 要である」と推認されることを理由に、非公知性を肯定(大阪地判平成 15 年 2 月 27 日 平成 13 年(ワ)10308 号)。 (否定例) ・一般的に利用可能な技術手段であって、その費用も過大ではない成分分析を用い て、市場で流通している原告製品に用いられている合金の種類や配合比率を調べ ることが容易であることを理由に、非公知性を否定(大阪地判平成 28 年 7 月 21 日 平成 26 年(ワ)第 11151 号、平成 25 年(ワ)第 13167 号) 26 おわりに 営業秘密は、我が国企業の競争力の源泉として、その重要性をますます増し ている。 一方で、その内容や管理方法は、情報の性質、ライバル企業との競争環境、 従業員の多寡、グローバル展開の度合い、業務委託の状況、情報通信技術の進 歩といった要素が複雑に影響し、企業によって極めて多様であり、絶えまない 進化が求められる側面もある。 企業においては、本指針の趣旨を基礎としつつ、企業実態に即した、実効的 な営業秘密管理に向けた創意工夫の発揮が期待される。 また、そのような創意工夫が、本指針を踏まえたものである限り、全ての関 係者において最大限尊重され、結果として、営業秘密が保護・活用され、我が 国の経済活力に寄与するようなナショナルシステムが実現することを期待し たい。 27 営業秘密管理指針 発 行 2003年 1月30日 2019●●年 1●月23●●日 最終改訂 編 著 経済産業省経済産業政策局知的財産政策室 〒100-8901 東京都千代田区霞が関1丁目3番1号 TEL:03-3501-1511 内線:2631 E-mail:bzl-chitekizaisan@meti.go.jp

資料5

資料4 前回までにいただいた御指摘事項等に 係る対応について 令和7年3月 経済産業政策局 知的財産政策室 1 前回までに御指摘いただいた主なコメント 1.営業秘密における周知活動について ⚫ 地方企業における営業秘密管理について、弁護士知財ネット、弁理士会、経産省、地方の経産 局も活用しつつ、進めて欲しい。 ⚫ 大学・外国籍の従業員等、多様化するステークホルダーにもしっかりと周知を行って欲しい。 ⚫ 中小企業に対しては、営業秘密管理に係るニーズ・現状を踏まえた営業秘密管理の強化に向け た取組を推進して欲しい。 ⚫ 情報セキュリティや経済安保政策など周辺政策との関わりも含めて、分かりやすい周知活動に 努めていただきたい。 ⚫ 生成AIと営業秘密管理については、現時点では事案が顕在化していないが、今後様々な問題が 出てくる可能性がある、事案の蓄積に伴い、「営業秘密管理指針」や「秘密情報の保護ハンド ブック」等を適宜改訂していくべき。 2.不競法の制度の在り方について ⚫ 特許のみならずその周辺のノウハウなどの知財利活用が今後重要になっていくこと、AIの利活 用が今後更に進んでいく等の状況変化の中で、行為規制である不競法の重要性であり、その点 も含めた制度の在り方について検討していくべきではないか。 2 1.営業秘密の周知の在り方について ⚫ 中小企業、大学、地域等多様なステークホルダーに対する営業秘密管理や不正競争防止法に 係る周知については、一部実施済の取組(※1)を更に拡大すべく、経済産業局等関連機関 とも連携しながら、周知に努めていく。 ※1 令和7年2月6日に、四国経済産業局が設置している「四国知的財産活用推進協議会」において、 不正競争防止法上の「営業秘密」としての保護を受けるためのポイントについて講演を実施。 ⚫ また、中小企業をはじめとした、営業秘密管理の実態把握・ニーズ把握については、独立行 政法人情報処理推進機構(IPA)による調査(※2)や、委託調査事業なども活用しながら、 効果的な支援策について検討していく。 ※2 https://www.ipa.go.jp/security/reports/economics/ts-kanri/index.html 3 2.生成AIに係る取組 • 生成AIの利活用に際しての考え方については、「秘密情報の保護ハンドブック」 において考え方を整理(令和6年2月)。今般、「営業秘密管理指針」においても、 生成AIの利活用を想定した記載を追記。 • 上記の取組に加え、特に、生成AIにおける俳優や声優等の肖像や声等の利用・生 成についても、今般、不競法における考え方について整理を行った。 【参考】 ◼ 知的財産推進計画2024(2024年6月4日 知的財産戦略本部) 生成AIにおける俳優や声優等の肖像や声等の利用・生成に関し、不正競争防止法との関係について、考え方の整 理を行い、必要に応じ、見直しの検討を行う。また、他人の肖像や声等の利用・生成に関し、その他の関連法に ついても、法的考え方の整理を行う。 (短期・中期)(経済産業省、文化庁、特許庁、法務省、消費者庁) 4 <参考>「秘密情報の保護ハンドブック」の改訂内容 (生成AIに関する記載抜粋) • 生成AIへの情報の不用意な入力を通じた、意図しない情報漏えいへの注意喚起 はじめに(「秘密情報の保護ハンドブック」冒頭) (略) 加えて、情報管理・利用のあり方は絶えず変化しており、AI(人工知能)を活用し た新たな情報利用・創出の場面が増えてきており、これらを活用することで業務の効率 化、新たなビジネスの創出など事業者・企業に有益なものとしてその普及・利用の拡大 が期待される。一方で、例えばAI開発におけるデータ学習時や外部の生成AIへの情 報の不用意な入力を通じて、意図しない情報漏えいにつながる懸念も皆無ではなく、情 報漏えいへの対策を講じながら新たなツールの効果的な利用を進めつつ、情報漏えいへ の対策を両立させることも重要といえます。 5 <参考>「秘密情報の保護ハンドブック」の改訂内容 (生成AIに関する記載抜粋) • 秘密情報の取扱い方法等に関するルール化についての記載 3-3 秘密情報の取扱い方法等に関するルール化(「秘密情報の保護ハンドブック」28頁) (1)ルール化の必要性とその方法 (略) ○ さらに、近年、AI技術の進展を踏まえて、外部の生成AIなどを事業・業務の中で利活用す る動きが増えていますが、利用しようとする生成AIなどの情報管理の状況、すなわち入力し た情報が社外に流出・公開等されてしまう可能性があるのかどうかを踏まえてこれらの利用の 当否を判断する、これらの利用に当たっては社外に流出されてしまったら困る情報は使用(入 力)しないといった対応を講じないと、秘密情報が社外に流出等してしまう可能性があります。 このため、生成AIなどを利用する場合には、予め許可された生成AIを用いるようにすると ともに、適切に定められた基準に基づいて予め許可された情報のみを使用(入力)するように すること等とするルールを定めることは、秘密情報の漏えい防止に効果があるため、生成AI などの利用に際して従業員が遵守すべきルールを定めることが必要です。 6 <参考>「秘密情報の保護ハンドブック」の改訂内容 (生成AIに関する記載抜粋) • 「秘密情報の保護」の視点からのAI利用に関するコラムを参考として記載 (参考)「秘密情報の保護」の視点からのAI利用(「秘密情報の保護ハンドブック」3頁) 近年の生成AIの進展に伴い、あまりAIを利用してこなかった多くの企業や組織においてもAIのビジネスへの活用がこれまで以上 に意識され、広い範囲で実際に業務への適用が始まっています。様々な業種の業務効率化を始め、利用の仕方によってはこれまでにな かった新しい事業も期待できるAIですが、大きくクローズアップされた利便性の傍ら、AIを利用する際には留意しなければならない 様々なリスクが存在します。活用するケースや環境ごとにどのようなリスクがあるのかについては、経済産業省から公開されている「A I原則実践のためのガバナンス・ガイドライン」等に、リスクを洗い出す分析に関する指針について述べられています。 そうしたリスクには、情報漏えいに直結するものもあります。機械学習に基づくAIは大量のデータを学習して入力データの分類・判 定を行いますし、生成AIは質問(プロンプト)により利用者が様々なデータを入力しながら利用します。例えば以下のようなシナリオ を考慮してみると、AIによる情報漏えいのリスクをイメージしやすくなるかもしれません。 ① 生成AI利用における組織のルール不備による情報漏えいリスク 組織における生成AI利用のルール化とその周知が遅れ、職員が個人で秘密情報保護に関する契約に不備がある生成AIを利用し、 営業秘密にあたる情報を学習させてしまった。 ② サプライチェーン(委託先)での情報漏えいリスク AIによる情報分析を委託する企業で、分析データの管理不備があり、分析を委託した営業秘密にあたる情報が漏えいした。 ③ AIの悪用による情報漏えいリスク AIの悪用によりフィッシングメールのなりすましが巧妙化して職員がだまされ、営業秘密にあたる情報が漏えいした。 AIの利活用が日々の業務により一層密接に関わってくる潮流の中、AIを利用する際は、「こうしたリスクがある」という前提に基 づき、自組織における営業秘密に関するAIの処理は何が想定されるのか、そうした処理に関するAI利用ルールやデータ管理ルールは どうなっているのか等の確認が必要です。AIを自社の業務やサービスに導入していない場合でも、個人が生成AIを利用する場合の ルールは重要です。自分のPCで営業秘密に関する質問をする、等の使い方は避けるべきでしょう。さらに、AIを直接利用しないとし ても、AIを悪用したフェイクコンテンツやなりすましによる営業秘密窃取のリスクが生じています。 AIの導入はさらに加速することが予想されますが、そのリスクについて最新の情報を収集し、組織のルールを作りながら効果的にA Iを利活用することが望まれます。 「AI原則実践のためのガバナンス・ガイドライン」 https://www.meti.go.jp/shingikai/mono_info_service/ai_shakai_jisso/pdf/20220128_1.pdf 7 <参考>今般の「営業秘密管理指針」の改訂内容案 (生成AIに関する記載抜粋) • 生成AIに関する秘密管理性の考え方について記載を追加 (4)営業秘密を企業内外で共有する場合の秘密管理性の考え方 ① 社内の複数箇所で同じ情報を保有しているケース (略) • 支店など社内の複数箇所で同一の営業秘密を保有していた場合、それぞれの箇所で状況に応じた秘密管理措置が講じられる 必要がある。しかしながら、いずれかの箇所で秘密管理措置がなされていなければ、(当該箇所では秘密管理性が否定され ることは当然であるが)、その他の箇所でも当該情報の秘密管理性が否定されるわけではない。 • すなわち、管理単位(規模、物理的環境、業務内容も勘案しつつ、秘密管理措置の要否や内容の決定及びその遵守状況の監 督(違反者の処分等)に関する自律的決定権限の有無その他の事情の有無から判断して、営業秘密の管理について一定の独 立性を有すると考えられる単位。典型的には、「支店」、「事業本部」など。)ごとに、当該企業の秘密管理意思に対する 認識可能性があればよい。 ※注1 充分な秘密管理措置が行われている管理単位Aから情報が漏えいした場合において、管理単位Bにおける秘密管理措置 の不存在をもって、管理単位Aの秘密管理性は通常、否定されない。ただし、管理単位Bにおける秘密管理措置の不存在 の事実が、継続的で、社内で公然の事実であるといった状況の結果、管理単位Aの従業員の認識可能性が損なわれている 場合には、その後、管理単位Aから情報が漏えいしたときに、管理単位Aにおける秘密管理性は否定されうる(ただし、 各単位における一時的・偶発的な管理不徹底によって秘密管理性が直ちに失われるわけではない)。 ※注2 管理単位Cで秘密管理されている情報αを生成 AI に利用していた場合であって、その後、管理単位Cで当該生成AIか ら当該情報αがAI生成物として生成・出力されることがあったとしても、当該情報αが管理単位Cで秘密管理されている のであれば、管理単位Cで当該情報αが生成・出力されたことの一事をもって、管理単位Cにおける秘密管理性が否定さ れることはないと考えられる。また、管理単位Dで当該生成AIから当該情報αがAI生成物として生成・出力されること があったとしても、当該情報αが管理単位Cで秘密管理されているのであれば、管理単位Dで当該情報αが生成・出力さ れたことの一事をもって、管理単位Cにおける秘密管理性が否定されることはないと考えられる。 8 肖像と声のパブリシティ価値に係る現行不競法に おける考え方の整理 ⚫ 現行不競法上、俳優や声優等の肖像や声等の利用に関しては、周知表示混同惹起行為(不競法第2 条第1項第1号)、著名表示冒用行為(同項第2号)、誤認惹起行為(同項第20号)、信用毀損行 為(同項第21号)において、事案によっては該当し得る。 ⚫ ただし、実態として、①肖像や声の周知の程度、②肖像や声の利用形態等の観点により、個別に 判断をしていく必要がある。 ◼ 周知表示混同惹起行為(不競法第2条第1項第1号)・著名表示冒用行為(同項第2号) ✓ 問題となる要件: 「商品等表示」 自他識別力又は出所表示機能を有するものでなければならず、表示が単に用途や内容を表示するに過ぎない 場合には商品等表示にあたらない。 ✓ 問題となる要件: 「商品等表示を使用」 商品やサービスの出所を識別する目的で使用されなければならず、例えば広告の場合は出所を識別するとは いえないので、商品等表示を使用しているといえない。 ◼ 誤認惹起行為(同項第20号) ✓ 問題となる要件:「…広告…に…誤認させるような表示をし」 「広告」:公衆に対してなされる表示のうち営業目的をもってなされたものを指す。 「営業」:単に営利を直接の目的として行われる事業に限らず、事業者間の公正な競争を 確保するという法目的からして、広く経済収支上の計算の上に立って行われる事業一般を含む。 9 <参考>不正競争防止法条文抜粋 第二条 この法律において「不正競争」とは、次に掲げるものをいう。 一 他人の商品等表示(人の業務に係る氏名、商号、商標、標章、商品の容器若しくは包装そ の他の商品又は営業を表示するものをいう。以下同じ。)として需要者の間に広く認識さ れているものと同一若しくは類似の商品等表示を使用し、又はその商品等表示を使用した 商品を譲渡し、引き渡し、譲渡若しくは引渡しのために展示し、輸出し、輸入し、若しく は電気通信回線を通じて提供して、他人の商品又は営業と混同を生じさせる行為 二 自己の商品等表示として他人の著名な商品等表示と同一若しくは類似のものを使用し、又 はその商品等表示を使用した商品を譲渡し、引き渡し、譲渡若しくは引渡しのために展示 し、輸出し、輸入し、若しくは電気通信回線を通じて提供する行為 三~十九 (略) 二十 商品若しくは役務若しくはその広告若しくは取引に用いる書類若しくは通信にその商品 の原産地、品質、内容、製造方法、用途若しくは数量若しくはその役務の質、内容、用途 若しくは数量について誤認させるような表示をし、又はその表示をした商品を譲渡し、引 き渡し、譲渡若しくは引渡しのために展示し、輸出し、輸入し、若しくは電気通信回線を 通じて提供し、若しくはその表示をして役務を提供する行為 二十一 競争関係にある他人の営業上の信用を害する虚偽の事実を告知し、又は流布する行為 10 現行不競法の考え方から想定し得る適用事例 (肖像の事例) <事例①>生成AIを用いて、ある人物の肖像を使用した写真を作成し、それを販売した場合 ➢ 当該人物が周知な人物であれば、不競法第2条第1項第1号によって対処し得る。 <事例②>生成AIを用いて、ある人物の肖像を使用した広告を作成し、それを広告として使用した 場合 ➢ 当該人物が広告対象の商品・役務と関連する分野において信用のある人物であれば、不競法第2 条第1項第20号・第21号によって対処し得る。 ※いずれも本人の許諾を得ていない場合。 11 現行不競法の考え方から想定し得る適用事例 (声の事例) <事例③>ある人物と同一の声を出力することができる生成AIを用いて、当該生成AIに当該人物 の持ち歌ではない曲を歌わせ、それを動画投稿プラットフォームに投稿した場合 ➢ 当該人物の声が周知であれば、不競法第2条第1項第1号によって対処し得る。 ※ただし、打ち消し表示(例:「AI○○に歌わせてみた」)が付されている場合には、不競法第2条第1項第1号では対処が 難しいが、理論上は、著名性が認められれば、不競法第2条第1項第2号にて対処可能。 <事例④>ある人物と同一の声を出力することができる生成AIを用いて、当該人物の声を使用した 目覚まし時計を作成し、それを販売する場合 ➢ 当該人物の声が周知であれば、不競法第2条第1項第1号によって対処し得る。 ➢ 声だけでなく、声と特徴的な台詞とがセットになって使用されている場合は、より広く不競法 第2条第1項第1号において対処し得る。 ※いずれも本人の許諾を得ていない場合。 12 <参考>肖像・声の保護とパブリシティ権 「AI時代の知的財産権検討会 中間取りまとめ」(P56)より抜粋 5.個別課題 (2)声の保護 (イ)パブリシティ権による保護の有無 現在、我が国には、パブリシティ権を明文化した法令は存在しないが、判例は、「人の氏名、肖像等……は、 個人の人格の象徴であるから、当該個人は、人格権に由来するものとして、これをみだりに利用されない権利を 有すると解される……。そして、肖像等 は、商品の販売等を促進する顧客吸引力を有する場合があり、このよう な顧客吸引力を 排他的に利用する権利(以下「パブリシティ権」という。)は、肖像等それ自体の価値に基づく ものであるから、上記の人格権に由来する権利の一内容を構成する」と述べて、パブリシティ権を認めている (※ 1)。 そして、同判決の調査官解説(※2)では、パブリシティ権の客体である「肖像等」については、本人の人物識 別情報を指し、「声」は「肖像」そのものではないとしても、「肖像等」には「声」が含まれると明示されてい る。したがって、同判例においてパブリシティ権が及ぶ場合として例示された「①肖像等それ自体を独立して鑑 賞の対象となる商品等として使用し、②商品等の差別化を図る目的で肖像等を商品等に付し、③肖像等を商品等 の広告として使用するなど、専ら肖像等の有する顧客吸引力の利用を目的とするといえる場合」に該当する場合、 すなわち、①声自体を独立して鑑賞の対象となる商品等として使用する場合、②商品等の差別化のために声を商 品等に付している場合、③声を商品等の広告として使用している場合には、「声」についてパブリシティ権に基 づく保護が可能と考えられる。 なお、同判例が示したパブリシティ権が及ぶ3つの場合は、あくまで例示にすぎず、パブリシティ権により 「声」が保護される場合が、上述した3つの場合に限定されることを示すものではないことには留意する必要が ある。パブリシティ権は、顧客吸引力を排他的に利用する権利であるため、具体的な利用態様や状況に鑑み、 「専ら肖像等の有する顧客吸引力の利用を目的とするといえる場合」であれば、「声」に対するパブリシティ権 による保護は及ぶと考えられる。 (※1)最判平成 24 年2月2日(平成 21 年(受)第 2056 号)民集 66 巻2号 89 頁〔ピンク・レディー事件〕 (※2)中島基至「判解」最判解民事篇平成 24 年度版 18 頁、41 頁 ※(出典)AI時代の知的財産権検討会 中間取りまとめ https://www.kantei.go.jp/jp/singi/titeki2/chitekizaisan2024/0528_ai.pdf 13 <参考>「AI時代の知的財産権検討会 中間取りまとめについて 【概要】」における不競法関連部分 ※(出典)AI時代の知的財産権検討会 中間取りまとめについて【概要】https://www.kantei.go.jp/jp/singi/titeki2/chitekizaisan2024/2411_gaiyou.pdf 14 <参考>「AI時代の知的財産権検討会 中間取りまとめについて 【概要】」における不競法関連箇所 ※(出典)AI時代の知的財産権検討会 中間取りまとめについて【概要】https://www.kantei.go.jp/jp/singi/titeki2/chitekizaisan2024/2411_gaiyou.pdf 15