議事録
産業構造審議会知的財産分科会
第27回不正競争防止小委員会議事録
日時:令和7年1月21日(火) 13:30~15:00
場所:経済産業省9階東1-1会議室(WEB会議室併用)
○中山室長
定刻になりましたので、ただいまより、産業構造審議会知的財産分科会不
正競争防止小委員会、第27回会合を開催いたします。
事務局を担当しております知的財産政策室長の中山でございます。どうぞよろしくお願
いいたします。
本日は御多忙の中、御出席をいただきまして、誠にありがとうございます。
本日は経済産業省会議室で対面にて開催しつつ、オンラインを併用して一部の委員の方
がTeamsで参加する形となってございます。
また議事の公開につきましては、本小委員会では一般傍聴者及びプレスの方は、Teams
での傍聴に限って可能としてございます。
また配付資料、議事要旨及び議事録も原則として公開という扱いとさせていただいてお
りますので、どうぞよろしくお願いいたします。
またオンラインで参加の皆様におかれましては、カメラを常時オンに設定いただきまし
て、マイクは御発言される際を除きオフでお願いいたします。
なお、御発言を希望される際は、Teamsの挙手ボタンを押してください。こちらから指
名いたしますので、マイクをオンにしていただきまして、発言が終了した際にはマイクを
オフにして、手を下ろしていただきますようお願いいたします。会場の方はネームプレー
トを立てていただければと思いますので、よろしくお願いいたします。
なお、本日は水野委員が御欠席となってございます。
またオブザーバーとしては、内閣府知的財産戦略推進事務局、警察庁生活安全局に御出
席をいただいております。
それでは、これより先の議事進行については、岡村委員長にお願いしたいと存じます。
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どうぞよろしくお願いいたします。
○岡村委員長
岡村でございます。もう1月21日ではありますが本年の第1回というこ
とで、明けましておめでとうございますということになろうかと存じます。本年もよろし
くお願いいたします。
それでは、事務局から本日の資料について確認をお願いいたします。
○中山室長
会場の皆様におかれましてはお手元のiPadに入れてございます。資料1
「議事次第」、資料2「委員名簿」、資料3-1「営業秘密管理指針の主な改訂内容一
覧」、資料3-2「営業秘密管理指針(案)」の4種類御用意してございます。もし見ら
れない等不具合がございましたら事務局のほうまでお声がけください。
○岡村委員長
ありがとうございました。
それでは、初めに、事務局から本日の議題につきまして御説明をお願いいたします。
○中山室長
資料1に基づきまして、本日の議題は営業秘密の管理指針の改訂について、
皆様に御意見をいただければと思いますので、どうぞよろしくお願いいたします。
○岡村委員長
ありがとうございました。
それでは、議題に入っていきたいと思います。まず、事務局から資料3-1についての
御説明をお願いいたします。
○中山室長
お手元の資料3-1に基づきまして、御説明させていただければと思いま
す。「営業秘密管理指針」の主な改訂内容一覧です。
前回の第26回の会合において方向性について皆様に御議論いただいたところでございま
すけれども、今般は、より具体的な案について御紹介、御意見をいただければと思います。
スライド2ページ目ですが、「営業秘密管理指針」改訂の背景・方向性で、こちらは前
回、第26回小委員会の資料を一部参照しています。
まず1点目は、営業秘密を取り巻く環境の変化ということで、働く環境の変化としてテ
レワークの普及など、雇用流動化を踏まえた記載内容の整理・拡充をしています。例えば
対従業員管理、対取引先管理の明記も一例です。また、2点目として、情報管理の変化と
して、クラウドの利用普及に関する記載内容の整理・拡充をしています。3点目は技術動
向を踏まえた営業秘密管理に関する記載の整理・追加ということで、生成AIとの関係や、
リバースエンジニアリング、ダークウェブなどの記載を新たに追加しています。
加えて、関連する法制度の見直しということで、昨今裁判の動向なども蓄積がたまって
きたところですので、そちらを踏まえた修正も併せて行っています。
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具体的には、前回改訂は6年前ということでして、前回改訂以降の不正競争防止法の改
正の動向ということで、例えば平成30年の限定提供データ制度の導入や令和5年で法改正
をさせていただいた、限定提供データと営業秘密の関係の整理について追記しています。
また、営業秘密に関連する裁判の動向を踏まえた記載を整理、拡充する形での修正を加え
ています。また、今までも概念的には含まれていたと思いますけれども、大学や研究機関
も営業秘密の保有者になることの明示についても、改めて今回追記しています。
3ページ目でございまして、冒頭でも申し上げたとおり環境の変化についてのもう少し
詳細に御説明します。例えばテレワークに関しては、総務省の統計によると、左上のテレ
ワークの導入状況に関し平成30年で約2割程度導入している企業がございましたが、今般、
令和5年度においては約半数が導入しているように確実に増えていますし、テレワークの
導入形態としても、在宅勤務以外の導入が増加しているといった環境変化があります。
4ページ目でございますが、今般クラウドでの管理が増えているといったところについ
ても、こちらも総務省の統計によると、クラウドの利用状況も令和5年、直近でございま
すが約50%の企業が利用している、一部の事業所で導入している方を含めると約8割の企
業がクラウドサービスを導入しています。
右上のクラウドサービス利用の用途でございますが、ファイルの保管・データ共有をメ
インに利用されている方が多く、その割合も令和4年と5年を見ても徐々に上がってきて
います。
クラウドサービスを利用する理由は、場所や機器を選ばずに利用できるところもござい
ますが、それ以外にも安定運用、可用性が高くなること、既存のシステムよりコストが安
いといったところの理由も含めて、導入の理由については様々です。いずれにせよ、いろ
いろな観点からクラウドサービスを利用している者が増えています。
その上で非常に効果があった、ある程度効果があったと考えられている企業の皆様も約
9割いらっしゃいます。
5ページ目のスライドになりますけれども、今回改訂する「営業秘密管理指針」の位置
づけについて改めて確認したいと思います。営業秘密に関しては、我々も「営業秘密管理
指針」や、「知っておきたい営業秘密」、「秘密情報の保護ハンドブック」等、様々な啓
発資料を出させていただいておりますが、本管理指針は営業秘密として法的保護を受ける
ために必要となる最低限の水準の対策を示すことに特化したガイドラインであることを、
改めてここでも皆様と御確認させていただきたいと思っています。
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6ページ目のところに、「秘密情報の保護ハンドブック」ついての記載がございますが、
「営業秘密管理指針」との関係性についても改めて確認したいと思います。「営業秘密管
理指針」は先ほど申し上げたとおり法的保護を受けるための最低限の水準を示すものとい
うことで、一番底辺にあります。
その上で「秘密情報の保護ハンドブック」に関しては、営業秘密に限らず企業が保有す
る各種の秘密情報について、法的保護のレベルを超えて情報漏えい対策として有効と考え
られる対策や、推奨される対策について包括的、網羅的に御紹介するものです。今回は
「営業秘密管理指針」を改訂するということを御認識いただければと思います。
ここまでが前提の部分でして、次に「営業秘密管理指針」の改訂内容についてです。
まず、はじめにの冒頭の部分になりますけれども、主な改訂内容といたしまして、平成
30年に不正競争防止法改正で導入しました「限定提供データ」の保護と営業秘密の関係性
について、令和5年の法改正で改めて整理されましたが、記載を整理するとともに、近年
の企業における営業秘密の管理実態を踏まえまして、今般の「営業秘密管理指針」の改訂
の背景を記載しています。テレワークの増加や企業の施設外で働く機会が増えていること
も踏まえ、クラウド技術によって管理することが増えてきていることなどを書いています。
次の8ページ目になりますけれども、いろいろなパンフレットがあって、何を見たらい
いだろうという御意見をいただくところもありますが、「営業秘密管理指針」の位置づけ
は、法的保護を受けるために必要となる最低限の水準を示すものであることを改めて整理
させていただくべく、記載の追記をさせていただいおります。その中で「秘密情報の保護
のハンドブック」との関係や、昨年2月に改訂させていただいた「限定提供データに関す
る指針」についても併せて記載を整理しています。
次が9ページ目になりますが、総説の部分です。ここは営業秘密の民事上の措置と刑事
罰との関係性について、昨今の裁判例等を踏まえて民事上の措置・刑事罰との関係の明確
化、営業秘密以外の情報の保護に関して、限定提供データに関する関係性も含めて改めて
整理しています。
次が10ページ目になりますけれども、昨今の裁判例等を踏まえまして、本指針の対象と
なる者の範囲についてより明確化しています。
今までも概念上、大学とか研究機関も本指針の対象であったという認識ですが十分に伝
わっていなかった部分もありましたので、今般改めて記載を追加し、その旨を明らかにし
ました。
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ここに関しては昨今、特に2ポツ目、3ポツ目のところにもありますとおり、研究開発
の成果に関しても、大学・研究機関にとって民間企業におけるものと同様として秘密に扱
われる価値を有しているということで、営業秘密に該当し得るということです。このよう
な背景を踏まえ、大学・研究機関においても、今後営業秘密管理の推進を一層やっていた
だくという観点からも今回追記しています。
次の11ページ目ですが、営業秘密の3要件のうち、まず秘密管理性について、主な改訂
内容を御紹介します。
総則については、今まで大学とか研究機関を踏まえて事業者という形で改めて定義した
ことを踏まえ、企業を事業者という形で、より広く読めるようにしました。
また、秘密管理措置の対象は、昨今の裁判例を踏まえて、認識可能性の記載を追記して
います。具体的には従業員全体の認識可能性も含めて客観的な観点から定められるべきも
のであるとのことでして、個々の従業員がどのような認識であったか否かに影響されるも
のではないと明確化しました。
次は12ページ目になりますけれども、情報管理がクラウドのサービスなどに移行するこ
とにより、クラウドサービスによっては、自分たちで管理したくてもできないといったサ
ービス上の問題も出てきている状況なので、企業における管理実態を踏まえまして、今ま
で合理的区分と書いていたところを、13ページ以降の「秘密管理措置の程度」の中に考え
方を入れ込む形で修正させていただいております。
また過去の裁判例を踏まえて追加するとともに、秘密管理措置の程度も対従業員、対取
引先という形で、より対象者を明確化する形で整理しています。
具体的には13ページ目にございますが、まず合理的区分を削除した上で、秘密管理措置
の程度に関しては、ア「従業員及び役員に向けたもの」で、社内を念頭に置いた秘密管理
措置の程度を記載し、その中で合理的区分のエッセンスであります営業秘密と他の情報と
の分別管理、昨今の裁判例の中でも引用されることが多くなっております就業規則、従業
員への研修・啓発も、営業秘密管理措置を判断する観点から列挙して入れております。
また13ページ目の右下の(略)以降では、情報セキュリティと営業秘密の関係性につい
て改めて明記しています。
情報セキュリティをしっかり確保していただくのが重要である点我々もそのとおりだと
認識していますが、営業秘密としての法的保護を受ける最低限の水準という観点からは、
情報セキュリティで求められる措置の程度と秘密管理措置の程度とが必ずしも一致してい
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なくても、秘密管理措置は認められ得るということを今般記載しています。
次が14ページ目でございまして、左側は裁判例を追記しています。右側は(イ)取引先
に向けた秘密管理の程度であり、基本的に従業員に向けた秘密管理措置の内容に加えまし
て、当該取引相手先との秘密保持契約を締結した上での秘密情報を提供したかどうかがポ
イントになることを、併せて追加しています。
次が15ページ目になりますけれども、秘密管理性の典型的な管理方法ということで、ま
ずは紙媒体について、合理的区分のところを踏まえて、関連する平仄をそろえています。
また電子媒体は、昨今の企業における管理の実態を踏まえて外部クラウド利用による秘
密管理措置について、今までもクラウドの利用に関しては2の(3)、②で記載していまし
たが、改めてどこまで管理するという観点からIDとかパスワードなどが設定されている
程度の技術的管理措置や、それに加えて就業規則や誓約書などで当該情報の漏えいを禁止
している規範的な管理措置で足りる場合もあるという形で、明確化しました。
加えて、16ページ目では、生成AIの昨今の利活用の状況も踏まえて注書きを追記して
います。
前提としまして、特に社内の複数箇所で同じ情報を保有しているケースということで、
今までも記載していましたけれども、今般「単位」という現在の記載が分かりにくいとい
う御指摘もありましたので、A、B、Cといった単位とは何かわかるように「管理単位」
という記載に変更させていただくとともに、生成AIに関しては、例えば学習用データと
して情報αを利用した場合、管理単位Cにおいて当該情報αが生成・出力されることがあ
ったとしても、当該情報αを管理単位Cにおいて秘密管理されているのであれば、当該情
報αが生成・出力されたことの一事をもって秘密管理性が否定されることはないという点
を追記いたしました。
また、他の部署である管理単位Dにおいて当該情報αが生成・出力されたケースにおい
ても、もともと持っている管理単位Cにおいて当該情報αが秘密管理されているというこ
とであれば、管理単位Dにおいて当該情報αが生成・出力されたことの一事をもって管理
単位Cにおける秘密管理性が否定されることはないとも記載しています。なお、ここは文
字だけでは分かりにくいかもしれませんので、あくまでも参考例ということで、図を併せ
て記載しています。
次の17ページ目からは有用性に関する考え方です。昨今の裁判例を踏まえて、当該情報
を取得した者の認識にかかわらず営業秘密を保有している事業者の事業活動に利用されて
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いるのであれば、有用性の要件は充足されると考えられる旨を追記しています。右側、左
側とも裁判例を引いて明確化しています。
最後に18ページ目です。非公知性の考え方の整理に関しては、昨今の裁判例を踏まえま
してダークウェブや、AI学習用データを想定した公知情報の組合せ、リバースエンジニ
アリングなどについての情報を追記しています。
まずは、ダークウェブに秘密情報が公表される事案も昨今の技術進歩を踏まえると想定
され得ますが、第三者からハッキングされて秘密情報がダークウェブに公表された場合、
その一事をもって直ちに非公知性が喪失されるわけではない点、追記しています。
また非公知性の公知情報の組合せに関しては、特に公知情報を組み合わせた、AI学習
用データを作成する場合などが想定されますが、例えば公知情報の組み合わせであっても、
その組合せが知られていなかったり、容易に知り得ないために財産的価値が失われていな
い場合は、非公知と言い得るとの記載を追加しています。
さらに19ページ目では、昨今の裁判例をもとに特許法の進歩性との関係について、不競
法と特許法とでは明確に違うものであることを、改めて記載しています。
最後に、リバースエンジニアリングについても、従来は裁判例を載せていただいており
ましたが、今般改めて考え方について記載しています。具体的には、簡単にリバースエン
ジニアリングできてしまう場合は非公知性を喪失すると考えられますが、例えば特殊な技
術を使って、また相当な期間も必要であるということで誰でも容易に当該営業秘密を知る
ことができない場合は、それが市販されたことをもって非公知性を喪失することにはなら
ないという考え方の整理を入れています。
資料3-2ですが、今資料3-1で御紹介させていただいた内容に加えて、細かい体裁
面、修辞上の整理など修正しています。
○岡村委員長
ありがとうございました。
ただいま事務局から説明がありました「営業秘密管理指針」の主な改訂内容につきまし
て、委員の皆様から御意見、御質問がございましたら御発言をお願いできればと存じます。
いかがでしょうか。――杉村多恵委員。
○杉村(多)委員
知的財産協会の杉村と申します。委員長、御指名いただき、ありが
とうございます。
このたびは、先ほど中山室長から御説明があったように資料3-1の冒頭部分ですか、
時流に即した改訂を御検討いただいたということで、本当にありがとうございます。私か
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らは企業実務の立場から、現場での運営実態みたいなことを踏まえながら少し気になると
いいますか、発言をさせていただければと思っております。
まずもって、今の「営業秘密管理指針」が非常に企業の中で浸透しているという実態が
ございます。というのも秘密情報は我々知的財産部門だけではなくて営業とか、技術とか、
いろいろな部門で保管したり、利用したりしている実態がありまして、知的財産部門とし
ては秘密情報を管理するに当たっての規定を整備したりだとか、あるいはほかの部門に対
してこういう管理をと指導したりだとか、そういったことをしているのですけれども、そ
の際に最低限の水準を示している「営業秘密管理指針」を根拠にして策定だとか、指導だ
とかをしているものですから結構社内でも、これよく知っているという状況にただいまご
ざいます。
本当にいろいろと考えていただいてありがたいと思っているのですけれども、特に資料
3-2の10ページの辺りで企業の実務担当者としてはよく参照させていただく内容になっ
ているのですけれども、こういった記述が今般削除されるということで、ひょっとしたら、
あっ削除されたということでちょっと戸惑いを覚えるとか、あるいは秘密か否かという管
理の区分自体が不要になったのかなと、誤解をしてしまうことがあり得るのではないかと
いうような心配も少しございます。改訂によってこれまでの管理方法を変更しないといけ
ないとか、あるいはひょっとしてもっとやらないといけないとか、そのように考えてしま
う人が発生しないように、そういうことではないのだということを、ちょっと考えていか
ないといけないのかなと感じましたところです。
これが主な発言内容なのですけれども、あと今回裁判例だとか見直していただいて……
○岡村委員長
そこから、まず切っていただいて議論していきましょうか。
○杉村(多)委員
○岡村委員長
その他の御質問は後ほどまた。
○杉村(多)委員
○中山室長
分かりました。
承知いたしました。
御指摘いただきまして、ありがとうございます。
我々としては、社内で本指針を参考にしていただいている点は大変ありがたく考えてい
るところでございます。杉村委員の御指摘もあるように認識していますけれども、一方で
今回背景事情でも述べさせていただいたように、特にクラウドの中でファイル管理を行う
際に、どうしても自分たちの利用するクラウドサービスのサービス事業者の提供範囲にも
よるので、クラウド利用者側の努力によってもできないこともあることも踏まえ、そうい
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ったところも総合的に考えてさせていただいて合理的区分のところは削除した上で、まと
めて記載という形にさせていただいたところでございます。
ただ、御指摘のとおり企業内での情報の管理についてもっとやらなければいけないのか
とか、大幅に何か変えなければいけないのかといった誤解を招かないように、あくまでも
法的保護を受ける上での最低限の水準を示すようなところですので、この点を改訂した後
に我々も周知活動をしっかりやっていく中でも、まずきちんと趣旨を伝えさせていただく
ことと、管理の実態を大きく変えていただくようなものではないといったところは、併せ
てしっかり周知のところでも工夫をした方が良いと思っているところでございます。
○杉村(多)委員
○岡村委員長
○畠山委員
ありがとうございます。
畠山委員、今の点についての御意見でしょうか。
今の点ではないです。別途の意見をさせていただければと思って手を挙げ
ました。
○岡村委員長
○畠山委員
では、後ほどお願いするということでよろしいですか。
はい、結構です。
○岡村委員長
では、杉村多恵委員、今の事務局からのお答えに対して何かございます
でしょうか。
○杉村(多)委員
いえ、こちらの意図を酌んでいただきまして、ありがとうございま
す。周知のところも含めて、そういった誤解が生じないように引き続き御検討いただける
ということですので、ぜひよろしくお願いいたします。
○岡村委員長
では、御発言が途中になっていましたので、続きをお願いいたします。
○杉村(多)委員
もう一つは、すみません、本当に不勉強なだけなのですけれども、
今回裁判例も見直していただいたところで評価が定着しているものが挙げられていること
であればいいなと思ったと、ただそれだけでございます。
以上でございます。
○岡村委員長
ありがとうございました。
それでは、畠山委員、お願いできますでしょうか。
○畠山委員
よろしくお願いいたします。おまとめいただきまして、ありがとうござい
ます。
幾つかお願いというか、資料3-2の指針(案)のほうですけれども、まずは6ページ
目です。一番上の部分に「さらに」以下で「当該情報が営業秘密や限定提供データに該当
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せず、また当該情報の取扱いについて私人間の契約において別途の規律を設けなかった場
合であっても、不法行為に該当し、損害賠償を請求することができる可能性もある」とい
うフレーズがあるのですけれども、ここが中小企業にとってみるとすごく分かりにくいな
という感じがしております。指針の性質上、ここに書くのが適切であるかは分からないで
すが、こういうフレーズを入れるにあたり、より具体的な事例や、判例、可能性について
何か念頭に置いているものがあれば、少し説明を付け加えていただいたほうがありがたい
と思いました。
○岡村委員長
今の点につきまして、ほかの委員の先生方から御意見ありますでしょう
か。――田村委員、お願いいたします。
○田村委員
今の点は私も気になるといえば気になる点でございまして、もう御案内の
とおりですけれども北朝鮮著作物最判事件というのがあって、一般的に個別の知的財産法
で保護されないものについて不法行為に該当するというのは、極めて例外的な場合だとい
うことになっております。純粋な知的財産の利用行為のタイプで、2011年ぐらいに北朝鮮
著作物最判が出た後で不法行為を具体的に認めたのは、大変有名な最近のバンドスコアの
模倣行為に関する知財高裁の逆転判決が目立つくらいです。ですので一般的にこの書き方
だと、かなりの感じ認められるのかなという印象を漂わせるような気がします。
今まで営業秘密該当性とか、限定提供データ該当性が否定されて、なお不法行為を認め
たという例はあまりないのではないでしょうか。ここは誤解を生むかなとおもいますので、
この4行はなくてもよいのではないかという気はします。下手に頼られても困るのではな
いかと思っております。
○岡村委員長
ありがとうございます。少しだけ補足しておきますと、田村委員がおっ
しゃった北朝鮮映画上告審というのは著作権の判例でありまして、未承認国家の著作物に
ついて、我が国で著作権による保護を及ぼすか、及ぼさないかというのは国の政策によっ
て、別にどちらでもあり得るのだと。ただ、保護されない場合、一般不法行為によって保
護されるのかどうかということについて、それこそ他の法制度などで保護されているよう
な、特段の事由がある場合を除いては保護されませんよといった趣旨のことであったと記
憶しております。
ここで不法行為と書いてあるのが一般不法行為を指すことになると、先ほどの最高裁判
決の立場と少し微妙な位置関係になるのではないかということが田村委員がおっしゃった
趣旨という理解でよろしいですね。
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○田村委員
○岡村委員長
結構でございます。ありがとうございます。
そうすると、4行消してしまうのも1つの方法ではないかというのが田
村委員のお考えですね。
○田村委員
はい、そのとおりでございます。むしろ残すならかなり詳しく書いてある
ほうがいいかもしれません。でも消したほうがいいような気がします。
○岡村委員長
ほかの委員の先生方からは、今の点について何か御意見がございますで
しょうか。――では、事務局。
○中山室長
御指摘いただきまして、ありがとうございます。誤解を招くという観点か
らは落としてもいいかなと思っています。
今先生方の御意見もあるように誤解を招く話もありますし、具体的に書くにしても書き
にくい部分もございますので、よろしければ、ここはもう削除する形で後ほど文案修正で
きたらなと思います。
○岡村委員長
ありがとうございます。ほかの先生方は、消す方向で検討するというこ
とで特に御異論ございませんでしょうか。――では、そういう方向での検討をお願いした
いと存じます。
○中山室長
○岡村委員長
承知しました。
そうしましたら畠山委員、続きをお願いできますでしょうか。お待たせ
しました。
○畠山委員
ありがとうございます。今の点は何か保護されるような部分があるのであ
れば、明記することもあるのかなと思いましたけれども、今のお話だと実際にはかなり限
定されているということで、そういうケースは少なくて誤解を与えるということであれば、
削除する方向で私はいいかと思っております。
もう一点は、今回必ずしも修正されている部分ではないですけれども、資料3-2の19
ページで「複数の法人間で同一の情報を保有しているケース」のところについての解説が
あって、気になったのは比較的中小企業側からの視点がないということです。
まず一番下のポツの「別法人の不正な使用に対する差止請求等」というものがあって、
「子会社等の別法人が不正な利用を行っている場合に」ということがあって、比較的親子
関係の子のほうに対する、親の営業秘密を子がということを想定しているかと思います。
別法人という議論からすると、例えば中小企業等の、受注者側が営業秘密を持っていて大
企業側が侵害するような場合もあり得ると思っていて、ここにどう書くかはありますけれ
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ども、比較的中小企業目線で大企業側にも注意してほしいところを何らか書いていただけ
ればと思います。
同じ視点で言うと20ページの一番上のポツですけれども、「営業秘密を特定したNDA
の締結により自社の秘密管理意思を明らかにする場合が典型的であるが、取引先との力関
係上それが困難な場合には」という書き方です。困難な場合を前提とした書き方になって
いるのですけれども、むしろそういうことが起こらないように中小企業側とか大企業側は
NDAの措置をしっかりとやっていくような、その選択肢についても記載いただくのがい
いのかなと思いました。
私からは以上です。
○岡村委員長
ありがとうございました。ただいまの点につきまして、ほかの委員の先
生方から何か御意見ございますでしょうか。――ないようですね。
では、事務局、お願いしてよろしいでしょうか。
○中山室長
御示唆いただきまして、ありがとうございます。修正の要否を含めて記載
ぶりについて検討させていただければと思います。
一旦、以上でございます。
○岡村委員長
畠山委員、そういう形で再検討するということでありますので、よろし
いでしょうか。
○畠山委員
はい、ありがとうございます。
○岡村委員長
ありがとうございました。
では、ほかの委員の先生方、ほかの箇所も含めて何か御意見ございますでしょうか。―
―長谷川委員、お願いできますでしょうか。
○長谷川委員
御指名いただき、ありがとうございます。経団連から参りました長谷川
です。
まず初めに、事務局の皆様には昨今の変化を捉えて「営業秘密管理指針」を改訂いただ
きまして、誠にありがとうございます。この指針の位置づけについて1点、申し上げたい
ことがございます。
資料3-1の6ページ目、本指針と「秘密情報の保護ハンドブック」の位置づけとして、
この指針は「不競法により『営業秘密』として法的保護を受けるために必要となる『最低
限の水準の対策』を示す」とあり、まさにそのとおりだと思います。私ども実際に企業で
情報の管理をしている立場からすれば、法的保護を訴えなければいけないというのは、い
- 12 -
ざとなったときの駆け込み寺のようなものですので、本指針の読者の方には、あらかじめ
より高いレベルでの管理をすることで漏えい防止策を講じておく意識も持っていただく必
要があろうと思っております。
そうしたときに、資料3-2の改訂案の記載ぶりを拝見すると2ページ目「○(指針で
示す管理水準等)」に「本指針は、企業等が保有する多様な情報のうち、不正競争防止法
によって営業秘密として差止め等の法的保護を受けるために必要となる最低限の水準の対
策を示すものである」とあり、この部分はそのとおりに記載されています。
ただ、次の文は「営業秘密以外に」という表現で始まっているため、「秘密情報の保護
ハンドブック」が営業秘密以外の種類の違う情報を対象としているかのように誤解される
可能性はないでしょうか。「企業や大学等の研究機関が保有する情報全般についての漏え
い防止ないし漏えい時に推奨される」とも記載いただいていますが、本指針とガイドブッ
クの関係については資料3-1の6ページで示していただいたような2段階構成の立てつ
けはすごく分かりやすいと思うのです。そこがうまく記載ぶりとして反映されているだろ
うか、と疑問に思いました。
法的保護を受けるために必要な水準は、この指針に書いてあるとおりではありますが、
加えて望むべくは、日頃から漏えい防止という観点で「秘密情報の保護ハンドブック」に
記載されているような、より高度な管理措置を講じることも問題を未然に防ぐ方法として
有効であるといったことを明確に書いておいていただくと、まずこの指針を読んだ方が、
あたかもこの指針の内容だけやっておけばいいのかという誤解をしないで済むので望まし
いと思った次第です。
以上てす。
○岡村委員長
ありがとうございます。今の長谷川委員がおっしゃった点につきまして、
ほかの先生方から何か関連する御意見はございますでしょうか。――冨田委員、お願いい
たします。
○冨田委員
ありがとうございます。連合の冨田でございます。
今長谷川委員がおっしゃった意見に全く賛同の立場で、私の意見、実は同じ箇所の次の
ページで、本当に瑣末のお願いなのですが御検討いただけたらということがございます。
今回法的保護を受けるために最低限の措置を講ずる観点から見たときに、限定提供デー
タとの相互補完的な役割が重要だということに触れていただいているのですけれども、
「限定提供データに関する指針」の参照先が実はこのページには記載がございません。2
- 13 -
ページ目のところで初めて出てくるので、脚注の3のところには参照先があるのですけれ
ども、多分順番の関係でここには参照先がありませんので、可能であればなのですが、一
番最後の行のところ、「限定提供データに関する指針」の後ろに参照先のURLなどを記
載していただいて、両方きちんと補完して見ていかなければいけないのだということを読
者に意識づけるような、そうした対応も併せて御検討いただけたらと思いますので、よろ
しくお願いしたいと思います。
以上です。
○岡本委員長
ありがとうございます。今の件は形式面での件ですので、特に御異論な
いと思います。
○中山室長
○岡本委員長
承知しました。
もう一つは、さっき長谷川委員のおっしゃったことですが、事務局とし
てはいかがでしょうか。
○中山室長
御指摘いただきまして、ありがとうございます。確かに管理水準に今回追
記させていただいたのは、「秘密情報保護のハンドブック」の前段のところに営業秘密以
外の、ほかの情報も含めた管理のことを扱うとの記載を引っ張ってきたので、若干混乱す
るような記載ぶりになってしまっているかと思います。「営業秘密管理指針」を読んでい
ただく方がシンプルに、もうちょっと高度に何かをするときに参照するべきものとして
「秘密情報保護のハンドブック」があることが分かるように、相互補完性という観点から
シンプルに伝わりやすくなるように記載ぶりを検討したいと思います。
○岡村委員長
ありがとうございます。その点にちょっと付け加えて申し上げますと、
長谷川委員が御指摘になった、いわゆる機微情報や個人情報等の関係法令。例えば個人情
報保護法であれば個人情報というベースとなる概念があって、その中に機微情報というの
が、いわゆるセンシティブデータというのが含まれますので、機微情報と個人情報を並列
するというと包含関係にありますから、ここもまた事務局と書き方を一緒に検討させてい
ただけたらというように申し上げておきたいと思います。
○中山室長
記載の適正化の観点からどのような書き方が良いのか、一旦検討させてい
ただきたいと存じます。
○岡村委員長
それでは、ほかの部分でももちろん結構ですので、本日自由討議時間を
80分取ってありますので、こんな細かいことはどうかとかお考えにならずに御発言願えれ
ばと存じます。いかがでございましょうか。――冨田委員、お願いします。
- 14 -
○冨田委員
連合の冨田でございます。ありがとうございます。
私から質問と要望を申し上げたいのですけれども、資料3-1の16ページ、右側の注2、
生成AIで学習用データとして情報を利用していた場合の秘密管理性の該当性について、
下のほうに参考例の図を入れていただきながら補足していただいているところなのですけ
れども、お尋ねしたいのは参考例の情報αなのです。
例えば、左下のところの管理単位Cというのがあって、どちらも情報αと書いてあるの
ですけれども、AIが学習するのに使用する営業秘密として管理している情報αを学習デ
ータ用のパラメータに入れて、結果として学習済みのモデルができ、そこから生成された
生成物も情報αという形で、そのことを基軸に注2は書かれているのです。パラメータや
プロンプトの入力があるので、生成AIが情報αで学習し、そこから出てきたものが全く
同じ情報αでやるというのがちょっと想像できないのですけれども、ここは全く同じ情報
が出てくることを前提に参考例がつくられているのかということについてお尋ねしたいと
思います。
○岡村委員長
○中山室長
これは文化庁の図ですよね。
文化庁の資料の図も参考にしつつこちらの図を作成させていただきました
が、冨田委員が御指摘のとおり情報αというものを学習用データに入れますと、同じもの
が出てくる場合と違うものが出てくる場合が想定されると考えてございます。
今回問題にしているのは、生成AIから結果として同じものが出てきた場合のことをこ
こでは書かせていただいておりまして、その理由といたしましては、仮に同じようなもの
が出てきた場合に、AIを通してしまったことによって秘密管理性が失われるのではない
かといった懸念に対して、今回書かせていただいているという趣旨でございます。
○岡村委員長
○冨田委員
冨田委員、いかがでしょうか。
ありがとうございます。ちょっと誤解をされるのではないかと思って、A
Iを通しても同じ情報が出てきますよという説明文がないので、学習データを通しても同
じものが出てくるとはちょっと想定しにくかったので、例えばαがα´(アルファダッシ
ュ)になって出てくるといったように、類似のものに出てきたとしても、もともとαとし
て使った情報についての秘密性が失われることはないという形の参考例にしたほうが読者
は理解しやすいのかなと思ったので、ちょっとお尋ねさせていただいた次第です。その辺
はいかがでしょうか。
○岡村委員長
事務局、いかがでしょう。
- 15 -
○中山室長
確かに少し分かりにくい部分もあるかと思うので、一旦は引き取らせてい
ただいてもよろしいでしょうか。
○冨田委員
はい、分かりました。委員長、その上でこの件について要望があるのです
が、続けてもよろしいでしょうか。
○岡村委員長
同じ生成AIの件ですね。
○冨田委員
そうです。
○岡村委員長
どうぞ。
○冨田委員
注2の文章が非常に難解で、参考例を見ながらであると、ああ、そういう
ことかと理解が進むのですが、恐らく文章だけを読んでいると迷子になってしまうかなと
思います。可能であればこちらのイメージ図を御検討いただいた上で、資料3-2の管理
指針の中に記載いただくことができないのか、御検討いただきたいと思っております。
その際に、この参考例なのですけれども、どこからスタートしているのかちょっと始点
が分からないのですが、恐らくは管理単位Cの左端にある情報α(営業秘密)のところが
1番なのかと思います。矢印に1番、2番、3番みたいな、行ったり来たりの番号が分か
るようにしていただけると、さらに注2の文章との関連性が明らかになるのかなと思いま
したので、可能な範囲で結構ですので御検討いただけるとありがたいと思います。
以上です。
○岡村委員長
ありがとうございます。今の点に関連して、ほかの委員の先生方から何
か御意見ございませんでしょうか。――田村委員、お願いいたします。
○田村委員
今の点は、なかなか難しい点だと思いまして、類似のα´と書いてしまう
と、結局αとα´が同じでなくて違うのだから問題ないというように理解されてしまうか
もしれませんよね。他方で単純なαだったりすると、例えば企業内でこれから発売を検討
している企画段階の商品の外形デザインなどを生成AIに入れておいたとして、ほかにも
似たようなモデルを幾つか検討していたので、かなりの数、10個、20個と入っていたりす
ると、パラメータ変換されていても結局、プロンプト主体ではかなり似てしまうというか、
ほぼ同じようなものが出てくることもあり得るのではないかと思うのですよね。
あるいは、もともと文字的な情報だったりすると、そのもの自体の情報が出てくること
もAIを使ってあり得ると思うので、必ずαが出てくる書き方はちょっとおかしいのかも
しれませんが、α´とするのはちょっと危険かなと。仮にα´とするとしても、それは類似
と書かずに同一のというところを押さえておいたほうがいいのかなという気もします。で
- 16 -
も、あまり具体的にこうとなかなか言えないです。ただ、α´と書くのには少し問題を感
じました。
○岡村委員長
ありがとうございます。田村委員は同一の容器、デザインなどであれば
意匠法の問題との関連で、意匠についてまだ営業秘密段階のものであればという意味でお
っしゃっていると思いまして、非常に言い得て妙だなと思います。
また、表現でなくてアイデアそのものが営業秘密のコアに、技術ノウハウとしてあり得
ると思いますので、それも含めて同じαというのではなく何かいい書き方がないかどうか
ということを、必要であればまた委員の先生方のお知恵をお借りしつつ、もう少し違う方
向性がないかどうかを検討してみたいと思いますので、どうか私からもよろしくお願いい
はたします。――よろしいでしょうか。
○中山室長
ありがとうございます。
○岡村委員長
井上審議官、お願いします。
○井上審議官
1点だけ、経産省の井上でございます。
全く「同一」ということまで必要かどうか、はあると思います。そこで、もし「類似」
とすると、今度は広過ぎるので、例えば「実質的に同一」とか、ないし「実質的に同等」
という文言も考えられるところではあります。他方で、「実質的に同等」などと書くと、
その範囲はどこまでなのか、という話にもなってくると思うので、事務局の方で一旦、持
ち帰って検討させていただく、ということですかね。
○岡村委員長
○杉村(純)委員
よろしくお願いします。――どうぞ、杉村純子委員。
ありがとうございます。今の点に関連してです。弁理士会の中でも
今の点について質問といいますか、検討していただきたいという声が上がっておりました
ので、その点について御紹介をさせていただきたいと思います。
この参考例に関しましては、管理単位Cが営業秘密の情報αを学習用データとしてアッ
プしたということですが、仮に学習データにアップされていないとしても、たまたま実質
的に同一の情報が他の管理団体にアウトプットとして出てきてしまうこともあると思うの
です。
その場合についての秘密管理性について、ここに記載されているように、そのことだけ
をもって秘密管理性が否定されることはないと理解をしていいのかどうか。また公知性と
の関係についてもどうなのかということについて、生成AIを多くの事業者が利用してい
る現状がありますので、これらの疑問がありました。今回は具体的な事例がまだ定時され
- 17 -
てないと思いますが、今後の状況を注視いただいて、そのような問題が起こってきた場合
には、必要に応じて追記していただくか、または現時点で何らか最低限の指針を示してい
ただけるとありがたいと思っております。
○岡村委員長
今おっしゃったのは非常に多義的な問題を含んでいると思いまして、例
えば著作権法で言うところの依拠性のようなものは要るのかどうかという問題とも関連す
れば、全く違う、要はクラウドのようなパブリックな生成AIに安易に営業秘密的なもの
を放り込むことになると、他者に盗まれてしまうようなことがあるので、入力することで
リスクを伴うことについて十分注意しなければならないという面の問題であるとか様々な
面を、生成AIにも一企業にクローズドにしているスタイルで箱だけ買ってきて中の学習
用データは追加学習させる場合と、それからパブリックな生成AIの場合がありますから、
なかなかちょっと……。
○杉村(純)委員
すごくたくさんな場合分けが必要になってしまうのではないかと考
えておりますが、これから生成AIを利用していくに当たって様々な問題が出てくると思
いますので、それに併せて改訂等の見直しを行っていただきたいということで、この点に
ついて少し述べさせていただきました。
○岡村委員長
杉村純子委員、その上で、取りあえず今回の改訂ではどういう方向性を
具体的に考えたらよろしいでしょうか。もし御意見ございましたらお願いできますか。
○杉村(純)委員
基本的には産業界の方々からも、また田村委員からもいろいろ御指
摘ありましたような点についての改訂等は賛成ですし、それ以外の点については、現時点
での方向性について賛成です。今後生成AIを利用していくに当たってはいろいろな問題
が出てくると思いますので、それに応じてタイムリーに改訂をおこなっていただくことを
期待します。
○岡村委員長
では、さっきの同一性の問題であるとか、αという言葉を使うかどうか
はともかく別途検討するとして、それ以外に関しては今後の課題ということでよろしいで
しょうか。
○杉村(純)委員
具体的な事例というものがまだ出てきていないような状態ですので、
今後の課題ということでお願いしたいと思っております。
○岡村委員長
分かりました。ありがとうございます。
ほかの委員の先生方、今日はこれがほぼメインテーマという形ですので一言ずつでも御
質問をいただければと思うのですけれども、例えば林委員、後のほうがよろしいですか。
- 18 -
順番は後にしますか。
○林委員
お願いします。
○岡村委員長
両杉村委員はお話しされましたが、どうぞ。
○杉村(純)委員
もう一つだけ、よろしいでしょうか。今回このように改訂を検討い
ただいて感謝を申し上げます。「営業秘密管理指針」は知財関係者だけではなく多くの方
に注目をされております。ただ、私どものような知的財産実務者や専門家にとっては分か
りやすい指針ですが、例えば中小企業や大学・公的機関の方には文言だけではなかなか理
解するのが難しいと思いますので、先ほどの資料3-1のような簡単な概要版も作成いた
だいて周知をしていただきたいと思います。
大学で知的財産マネジメントのクラスを持たせていただいておりますが、知的財産者で
はない30代の企業人の受講生の一番の関心時が営業秘密です。従来の営業秘密管理指針に
ついて分かりにくいとか、文字ばかりで読みにくいという声がありましたので、概要版は
ぜひ作成いただき、広く大学・公的機関も含めて周知していただければと思いますので、
よろしくお願いします。
○岡村委員長
出来上がった暁には、内容に関しての説明会などすることは検討される
予定なのでしょうか。
○中山室長
どういう形がよろしいかは皆様方とも御相談かと思いますが、どこまで法
的保護を受けられるか、企業の皆様にとって重要な話なので、しっかり周知をしていきた
いと考えています。
○岡村委員長
私からも、弁理士会も頑張っていただいて、また、弁護士会も日弁連も
頑張っていただいて、あと経団連、日商にも周知を御協力願えればというようにお願いし
ておきたいところでございます。
それでは、末吉委員、お願いします。
○末吉委員
ありがとうございます。私は今回の改訂、全体的に賛成なのですけれども、
いろいろな御意見を伺ってくると、ちょうど資料3-1の6ページで参考としてお示しに
なっている「営業秘密管理指針」と「秘密情報の保護ハンドブック」の関係のところに出
てくるのです。
一番指針が生きてくるという言い方がいいかどうか分かりませんけれども、我々弁護士
からすると警察なのです。たまに林委員とお話しすることがあるのですけれども、特に告
訴をする。被害者側の代理人をやると警察当局は平成27年指針より前かどうかというのを
- 19 -
昔は必ず確認されて、平成27年指針が大変評価されている。警察当局は非常に勉強されて
いて、もう立件するかどうか。特に秘密管理性のところは大きな分水嶺を引いておられて、
規範として生きているのを我々は感じています。刑事事件で考えると裁判所もその流れを
酌んでおられて、私、非常にいいことではないかと。これは知財室の大変なご努力の下に
あると私も理解しているのですが、言わばこの指針をどのように周知徹底するかというの
は、警察当局、あるいは刑事裁判等でも非常に重視されている。
ただ、今お話をいろいろ伺ってくると、この指針が分かりづらいというのは確かにある
のかもしれないですが、私としてはまさに6ページにあるとおりで、指針は指針として法
的保護レベルの分水嶺だというところは今後も徹底したほうがいいのではないかなと。何
をおそれるかというと、ちょっと言葉はよくないかもしれませんが分かりやすさを優先す
るが余り、法的保護レベルが曖昧になるほうがむしろ危ないのではないかと思うのです。
そういうことがあるのかどうかちょっと分かりませんが、例えばAIの話を余り持ち込
むと、特にAIがまだ法的保護レベルで、直ちに指針を使ってやるように多分なっていな
いのではないかと思うのです。大変申し訳ないけれども、むしろ「秘密情報の保護ハンド
ブック」レベルというように少し割り切ったほうがいいのかなと。私は反対でないですが、
もし分かりにくいところがあるのだとすると、そういう方向での見直しということを今回
無理であれば将来考えていただいて、一番大事なのは法的保護レベルとしての指針の価値。
今非常に重要なものがあると私は認識していますので、重要の意味を今後とも大事にしつ
つ発展させる。あるいは分かりやすさを追求する。この2つのツール。「営業秘密管理指
針」と「秘密情報の保護ハンドブック」をうまく使いながら、やっていったらいいのでは
ないかなと思いました。
以上です。
○岡村委員長
今の末吉委員の御意見に私も大賛成でございます。
河野委員、何かもっとこの点というのがありましたら、どうぞ。
○河野委員
先ほどの生成AIのところのお話を聞いていて思ったのですけれども、こ
の部分は議論のあるところかと思います。
先ほど杉村委員からもあったように、いまの記述を読むと、ここに書いていない場合は
どうなるのだろうという疑問が湧く一方で、場合分けをして書こうとすると多岐にわたり、
技術の進歩も速くてなかなか難しい。
あと先ほど田村委員から御指摘があった、同一とするのか、類似とするのかという論点
- 20 -
については、私も田村委員と同じような印象を持ちました。また、委員長のほうからあっ
た依拠性との関係性。たまたま同じものが出てきたことを同一と評価してよいのか、ある
いは類似の範囲をどう考えるのかなど。本当に書きぶりが難しいだろうなと思いながら、
どこまで指針に書いてあるとよいのだろうかと、今の末吉委員の御意見も参考にしながら
もう少し考えてみたいと思ったところです。結論がなくて恐縮ですけれども、そのような
感想を持ちました。
○岡村委員長
ありがとうございます。田村委員がおっしゃったのは意匠の例でしたけ
れども、先ほど申し上げましたように、この図にあるような生成AIイコール著作権の問
題というよりは、もっと重要なのは技術的なアイデアの面で入れたが最後、みんなのパブ
リックドメインになってしまうことになると非常に困りますので、同一性というのも、む
しろ技術のアイデアのノウハウとしての同一性ということになるとまた全然著作権法とは
違った考え方になりますから、さらに検討が進んでいないところなのだろうなと私も思い
ます。
林委員、お待たせしました。
○林委員
ありがとうございます。私も社会情勢の変化に応じて、事務局でこのように
「営業秘密管理指針」の改訂をしてくださったことに感謝いたします。改訂で取り上げて
くださったところについても賛同しております。その上で、本当に細かいところをどうし
てもということであれば2点申し上げます。
まず、資料3-2の19ページの注2、先ほどの生成AIの書きぶりについてですが、こ
こは、秘密管理性の要件のうち、「(4)営業秘密を企業内外で共有する場合の秘密管理性
の考え方」についての記載として、18ページの下のほうのポツ、「すなわち」以下に書か
れていますが、管理単位ごとに「当該企業の秘密管理意思に対する認識可能性があればよ
い」ということを説明する文脈で、この注2を書いてくださっているものだと思います。
そういう意味で注2で強調したかったのは、注2の中の、当該情報αがC単位において
秘密管理されているのであれば、ほかで出力されたからといってC単位における秘密管理
性が否定されることはない、ということをおっしゃりたい例の部分なのだろうなと思いま
す。
企業において生成AIの利用については、日本の場合の利用率は低く、海外に比べてか
なり慎重に使われているようです。無料サービスであると自分の入れたデータが学習デー
タに使われてしまうから、あえて有料サービスを使う。そのためだけに有料サービスを選
- 21 -
ぶという形で、企業の中で試行的に使い始める場合も、そういった使用ルールを社内で決
めた上で使っていらっしゃるところがほとんどでないかなと思うのです。
そういう意味で注2に生成AIについての記載を入れるとしたら、管理単位で秘密管理
する上で生成AIを使うときには、それが学習データに使われないことの確認。パブリッ
クにならないことを確認した上で使うようにせよ等、そういうことを書いていただくと、
この文脈にはフィットするのかなと思いました。その上でこの場合はどうだ、ああだとい
うのは、もう少し生成AIの利用事案が集積してから「秘密情報の保護ハンドブック」の
ほうで書いていただくのがよろしいかなというのが1点です。もう一点なのですが……
○岡村委員長
○中山室長
まず、今の点について事務局からお願いします。
ありがとうございます。先ほど来議論があるように実質同一なのかとか、
田村委員からいただいた意匠の例なども踏まえて、どこまで書けるのかといった懸念もあ
るかと思います。
注2のところだけ見ると、結構細かくこういうケースはどうなのか?ということになっ
てしまうかもしれませんけれども、(4)の全体の流れを見ながら最適な記載ぶりについて
は考えていきたいなと思います。また、AIに関する事案はこれから蓄積されていくこと
もありますので、うまく「秘密情報の保護ハンドブック」との使い分けも含めて考えてい
ければよろしいかなと思っているところでございます。
○岡村委員長
○林委員
では林委員、続きをお願いします。
2点目は、資料3-2の6ページに「本指針の対象となる『事業者』の範囲」
とある点です。ここで文章として書かれていることには全く異論がなく、このとおりだと
思います。御趣旨としては、事業者に大学・研究機関を含むということを述べているのだ
と思います。
ただ、ここで書かれている営業秘密自体は、条文の2条6項としては営業秘密の定義に
「事業者は」という言葉はないですよね。不正競争防止法の1条に「事業者間の公正な競
争」とあって、「事業者」という文言がありますし、有用性のところでは「事業活動に」
という文言があるので「事業者」が出てくるのは分かるのですが、この指針の中で出てく
る用語としては「企業」と書かれていたり、「企業等」だったりしますし、一番広い書き
方としては「営業秘密保有者」と書かれています。そういう意味では、この冒頭で、いき
なり「本指針の対象となる『事業者』の範囲」と書かれていると、事業者しか対象でない
のかと、引っかかる人はいないのかなというのがちょっと気になります。
- 22 -
例えば後ろの20ページでは「営業秘密保有者E」、「E企業」、「自社E」、「法人」
などといろいろな言い方をしています。本当に修辞的な話で恐縮なのですけれども、一番
広い「営業秘密保有者」もたくさん使われておりますので、どこかで最初に定義して、整
理して使ってもいいのかなと思いました。
○岡村委員長
○林委員
○岡村委員長
要するに営業秘密保有者として保護を受ける者の範囲というお話ですね。
はい、ここは範囲の話をされているのだろうなと思います。
これまで企業中心で考えていたけれども、大学なども同様に保護を受け
る対象になるよという話ですね。
○林委員
そうですね。説明の分かりやすさから「企業が」という文章が例示として挙
がっていても、「企業」と書いてあっても、そこはそれぞれ「営業秘密保有者」に読み替
えてもらっていいですよということが分かればいいのではないかなと。
○岡村委員長
企業と、それから大学とかを含めて「以下、企業等という」という感じ
でもいいわけですね。
○林委員
○岡村委員長
○中山室長
○岡村委員長
○林委員
○岡村委員長
○小松委員
はい、そう私は思います。
そういうスタイルで整理を。
ありがとうございます。
大変重要な御指摘だと思います。――林委員、よろしいでしょうか。
以上です。ありがとうございます。
小松委員、どうぞ。
ありがとうございます。私は以前からずっと言っている不競法の法的保護
と情報セキュリティ対策の未然防止というのが、うまく違いと重複しているところが分か
るようになるといいなと思っております。今回の内容については、セキュリティ対策をし
なくてもいいと思われないように、書きぶりを変えていただけるとよろしいかと思っては
いたのですけれども、なかなかそうもいかないのかなと。私自身で、いろいろ悩んでいた
ところです。
先ほど皆さんからも御意見があったAIのところなのですけれども、資料3-1の16ペ
ージだと思います。私自身が分からないというか、ちょっと不思議だと思ったのは、絵の
中で管理単位Cの情報αが営業秘密だということを理解していながらAIのほうに学習用
データとして入力してしまっているところが、こんなことをしたら使っているところが、
この場合だと管理単位Dですけれども、Dがひょっとしたら情報αを習得してしまうこと
- 23 -
が想像できること自体をやっていることが、私はこれでいいだろうかと思いました。
基本的には企業の中なので、企業外からは出ないということで管理単位Cのところで営
業秘密として管理していると言っているのかもしれないですけれども、管理単位Dのとこ
ろでは営業秘密かどうか分からないので、もしかしたらここから外に出てしまうかもしれ
ないだろうなと思うと、管理単位Cのところで情報αを学習データに入れることについて、
どういうことなのかをきちんと理解して利用してほしいということが分かるように、どこ
に書くか私にもよく分かりませんけれども、「秘密情報の保護ハンドブック」なのかもし
れませんが入れていただきたいなと思いました。もちろん先ほど委員長がおっしゃったよ
うにパブリックな学習モデルである場合には、もうそういう学習データとして入力するこ
とはないと思ったりしています。
以上です。
○岡村委員長
ありがとうございます。大変重要な御指摘だと思います。例えば研究部
門が安易に大切なデータであるとか、あるいはアイデア、研究成果を入れてしまうことで、
営業部が取り出したらとんでもないことになってしまったような、自爆行為を誘発しかね
ないという御趣旨の御意見と理解した次第です。
○小松委員
ありがとうございます。
○岡村委員長
○中山室長
それも含めて、もう少し事務局での御検討をよろしくお願いいたします。
承知しました。ありがとうございます。
○岡村委員長
ほかには、特に御意見、補足点を含めて大丈夫でしょうか。リアル出席
の皆様も、特に補足はございませんでしょうか。――では、今の点を踏まえまして、これ
からの修正作業につきましては私が委員長として行うことに御一任いただき、その後パブ
リックコメントにかける案につきまして、委員の皆様に御報告する形とさせていただきた
いと思います。その際に必要に応じて皆様からお知恵を拝借することがあるかもしれませ
んので、そのときにはよろしくお願いします。以上の形で御了承いただけますでしょうか。
(「異議なし」の声あり)
ありがとうございました。そうしましたら、ここからの修正は私が委員長としてまとめ
させていただくことといたします。
それでは、少し予定より時間は早いですけれども、本日予定しておりました議事は終了
となります。
最後に、今後のスケジュールにつきまして事務局から御連絡をお願いいたします。
- 24 -
○中山室長
委員の皆様、今日は活発な御議論をいただきまして、どうもありがとうご
ざいました。
最後に、今後の予定等について事務局より御連絡をいたします。「営業秘密管理指針
(案)」については、本日いただいた御意見を取り込んで岡村委員長に御相談させていた
だいた上で、委員の皆様方に御連絡をさせていただければと思います。パブリックコメン
トも準備させていただければと思いますけれども、今日生成AIのところもいろいろ御議
論ありましたので、そちらの調整も済み次第、進められるようにしていきたいと考えてい
るところでございます。
また、次回の不正競争防止小委員会でございますけれども、パブリックコメント終了後
に開催をと考えているところでございます。開催日時については、また追って御連絡をさ
せていただければと思います。3月の次回はパブリックコメントの結果の報告などをした
いと思っているところでございますので、引き続きよろしくお願いいたします。
以上でございます。
○岡村委員長
それでは、これをもちまして第27回不正競争防止小委員会を閉会といた
します。本日は皆様、ありがとうございました。
――了――
- 25 -
資料1
資 料 1
産業構造審議会 知的財産分科会
第27回 不正競争防止小委員会
議事次第
日 時:令和7年1月21日(火) 13:30~15:30
場 所:経済産業省 本館9階(東1-1)会議室 (オンライン併用)
(議題)
1. 開会
2. 「営業秘密管理指針」の改訂について
3. 閉会
(配付資料)
資料1
議事次第
資料2
委員名簿
資料3-1 「営業秘密管理指針」の主な改訂内容一覧
資料3-2 営業秘密管理指針(案)
資料2
資 料 2
産業構造審議会 知的財産分科会
不正競争防止小委員会 委員
◎岡村 久道
国立情報学研究所 客員教授
京都大学大学院 医学研究科 講師、弁護士
河野 智子
ソニーグループ株式会社 知的財産・技術標準化部門 スタンダード&パート
ナーシップ部 著作権政策室 国内渉外担当
小松 文子
ノートルダム清心女子大学 情報デザイン学部情報デザイン学科 教授
末吉 亙
KTS法律事務所 弁護士
杉村 純子
プロメテ国際特許事務所 代表弁理士
杉村 多恵
一般社団法人日本知的財産協会 常務理事
トヨタ自動車株式会社 知的財産部 知財企画室長
田村 善之
東京大学大学院 法学政治学研究科 教授
冨田 珠代
日本労働組合総連合会 総合政策推進局 総合局長
長谷川 正憲
一般社団法人日本経済団体連合会 知的財産委員会・企画部会 委員
キヤノン株式会社 知的財産法務本部 知的財産渉外第三部 部長
畠山 一成
日本商工会議所 常務理事
林
桜坂法律事務所 弁護士
いづみ
水野 正則
知的財産高等裁判所 判事
敬称略(50音順・12名)
◎:委員長
資料3
資料3-1
「営業秘密管理指針」の
主な改訂内容一覧
令和7年1月
経済産業省知的財産政策室
1
「営業秘密管理指針」改訂の背景・方向性
⚫ 「営業秘密管理指針」の最終改訂が平成31年1月であり、近時の管理実態や平成31年・令和
元年以降の裁判例の蓄積を踏まえ、さらなる明確化を図る必要性が生じている。
営業秘密をととりまく「環境の変化」に伴う修正 (第26回不競防止小委員会資料5参照)
⚫ 働く環境の変化(テレワークの普及、雇用の流動化)を踏まえた記載内容の整理・拡充(対従
業員管理・対取引先管理の明記など)。
⚫ 情報管理方法の変化(クラウド利用の普及)に伴う記載内容の整理・拡充。
⚫ 技術動向を踏まえた営業秘密管理に関する記載の整理・追加(生成AIとの関係、リバースエン
ジニアリング、ダークウェブ)。
関連する法制度の見直し、裁判の動向を踏まえた修正
⚫ 前回改訂以降の不正競争防止法改正の動向(平成30年の限定提供データ制度の導入、令和5年
改正での営業秘密との関係の整理)、営業秘密に関連する裁判の動向を踏まえた記載の整理・
拡充。
⚫ 大学・研究機関も営業秘密の保有者になることの明示。
2
(参考)テレワークの導入状況等
3
総務省「令和5年通信利用動向調査ポイント」より抜粋 https://www.soumu.go.jp/main_content/000950621.pdf
(参考)クラウドサービスの利用状況
4
総務省「令和5年通信利用動向調査ポイント」より抜粋 https://www.soumu.go.jp/main_content/000950621.pdf
(参考)「営業秘密管理指針」について
(https://www.meti.go.jp/policy/economy/chizai/chiteki/guideline/h31ts.pdf)
• 「営業秘密管理指針」とは、不正競争防止法により営業秘密として法的保護を受けるために
必要となる「最低限の水準の対策」を示すことに特化したガイドライン。
<法的保護レベル>
営業秘密保有企業の秘密管理意思(※1)が秘密管理措置によって従業員等に対して明確に示され、当該秘密管
理意思に対する従業員等の認識可能性(※2)が確保される必要。(営業秘密管理指針p.5)
※1)特定の情報を秘密として管理しようとする意思。※2)情報にアクセスした者が秘密であると認識できること。
⇒情報に接することができる従業員等にとって、< 秘密だと分かる程度の措置の例>
秘密だと分かる程度の措置
• 紙、電子記録媒体への「マル秘 表示」
• 化体物(金型など)のリスト化
秘密!
• アクセス制限
• 秘密保持契約等による対象の特定
※企業、大学や研究機関の実態・規模等に
応じた合理的手段でよい
秘密情報の
漏えい対策
営業秘密
管理指針
上記はあくまで例示であり、
認識可能性がポイント。
秘密保持契約書
-------------------- 秘密情報とは
次のものをいう
①---------------②------------印
-----------------------------
☞営業秘密管理指針で示されている「秘密管理性」の考え方は、
秘密情報の漏えい対策にも共通。
漏えい対策をしつつ、法的保護レベルの対策を確保することが
大切。
5
(参考)「営業秘密管理指針」の位置づけ・
「秘密情報の保護ハンドブック」との関係
• 「営業秘密管理指針」は、不正競争防止法により「営業秘密」として法的保護を受けるため
に必要となる「最低限の水準の対策」を示すもの。 (平成15年1月策定、27年1月全面改定、31年1月最終改訂)
• 「秘密情報の保護ハンドブック」は、企業が保有する「秘密情報」について、法的保護レベ
ルを超えて、情報漏えい対策として有効と考えられる対策や推奨される対策等を包括的・
網羅的に紹介するもの。
(平成28年2月策定、令和6年2月最終改訂)
営業秘密管理指針について
秘密情報の保護ハンドブックについて
• 法的保護を受けるために必要となる最低限の水準の対策
を示すものとして平成27年1月に策定。
• その後、第四次産業革命を背景とした情報活用形態の
多様化を踏まえて平成31年1月に改訂。
• 法的保護レベルを超えて、情報漏えい対策と
して有効と考えられる対策や、漏えい時に
推奨される対策等をできる限り収集して
包括的に紹介するものとして平成28年に作成。
• より良い漏えい対策を講じたい企業の方々に、
企業の実情に応じて対策を取捨選択したり、
参考としていただけるよう、様々な対策を
網羅的に掲載。
• 簡 易 版「秘 密 情 報 の 保 護 ハ ン ド ブ ッ ク の
てびき」も公表。
秘密情報の保護ハンドブック
(漏えい防止レベル)
営 業 秘 密 管 理 指 針
(法的保護レベル)
6
主な改訂内容:はじめに
• 平成30年不正競争防止法改正により導入された限定提供データの保護と営業秘密との関係を
整理。
• 企業における営業秘密の管理実態等を踏まえ、今般の営業秘密管理指針の改訂の背景を記載。
改訂の経緯について
【はじめに】
(改訂の経緯)
7
主な改訂内容:はじめに
• 本指針は「営業秘密として法的保護を受けるために必要となる最低限の水準」を示すもので
ある点、他関連指針・ハンドブック等の関係性も含めて改めて整理。
指針で示す管理水準等について
【はじめに】
(指針で示す管理水準等)
8
主な改訂内容:1.総説
• 裁判例等を踏まえ、民事上の措置・刑事罰との関係を明確化。
• 営業秘密以外の情報の保護について、限定提供データに関する関係性も含めて整理。
営業秘密と民事措置・刑事罰との関係について
営業秘密以外での情報の保護について
【1.総説】
【 1.総説】
(営業秘密と民事措置・刑事罰との関係)
(営業秘密以外での情報の保護)
9
主な改訂内容:1.総説
• 裁判例等を踏まえ、「事業者」の範囲について明確化。
本指針の対象となる「事業者」の範囲について
【1.総説】
(本指針の対象となる「事業者」の範囲)
※新設
10
主な改訂内容:2.秘密管理性について
• 総則における事業者の範囲の明確化を受けた修正や従業員等の定義を明確化。加えて、秘密
管理措置の対象者の考え方を明確化。
秘密管理性要件の趣旨
秘密管理措置の対象者について
【2.秘密管理性について】
【2.秘密管理性について】
(1)秘密管理性要件の趣旨
(2) 必要な秘密管理措置の程度
(秘密管理措置の対象者)
11
主な改訂内容:2.秘密管理性について
• 企業における管理実態を踏まえ、「秘密管理措置の程度」の中に、合理的区分を含めた考え
方を入れ込むとともに、参考裁判例の追加を含め、対象事業者毎に注意すべき項目を整理。
合理的区分について
【2.秘密管理性について】
(2) 必要な秘密管理措置の程度
(合理的区分)
※管理対象の整理(対従業員・対取引先)に伴い、記載位置・内容を整理
12
主な改訂内容:2.秘密管理性について
秘密管理措置の程度について
【2.秘密管理性について】
(2) 必要な秘密管理措置の程度
(秘密管理措置の程度)
(略)
13
主な改訂内容:2.秘密管理性について
秘密管理措置の程度について(続き)
【2.秘密管理性について】
(2) 必要な秘密管理措置の程度
(秘密管理措置の程度)
(略)
14
主な改訂内容:2.秘密管理性について
• 企業における管理実態を踏まえ、外部クラウド利用による秘密管理措置、生成AIの利活用に
関する具体例を追記。
典型的な管理方法について
【2.秘密管理性について】
【2.秘密管理性について】
(3) 秘密管理措置の具体例
①紙媒体の場合
(3) 秘密管理措置の具体例
④媒体が利用されない場合
【2.秘密管理性について】
(3) 秘密管理措置の具体例
②電子媒体の場合
15
主な改訂内容:2.秘密管理性について
生成AIとの関係における秘密管理性の考え方
【2.秘密管理性について】
(4) 営業秘密を企業内外で共有する場合の秘密管理性の考え方
①社内の複数箇所で同じ情報を保有しているケース
【参考例】
文化庁「AIと著作権Ⅱ」https://www.bunka.go.jp/seisaku/chosakuken/pdf/94097701_02.pdf
を参考に経済産業省で作成
16
主な改訂内容:3.有用性の考え方
• 昨今の裁判例を踏まえ、当該情報を取得した者の認識に関わらず、事業者の事業活動に利用
されているのであれば、有用性の要件が充足されるものであると考えられる旨等を追記。
有用性要件の充足について
有用性要件の判断について
【3.有用性の考え方】
【3.有用性の考え方】
(2)
(3)
17
主な改訂内容:4.非公知性の考え方
• 昨今の裁判例等を踏まえ、ダークウェブ、AI学習用データを想定した公知情報の組み合わせ、
進歩性の議論、リバースエンジニアリング等について追記。
ダークウェブに公表された場合について
公知情報の組み合わせについて
【 4.非公知の考え方】
【 4.非公知の考え方】
(ダークウェブに公表された場合)
※新設
(公知情報の組み合わせ)
18
主な改訂内容:4.非公知性の考え方
特許法の進歩性との関係について
リバースエンジニアリングについて
【 4.非公知の考え方】
【4.非公知の考え方】
(進歩性(特許法第29条第2項)との関係)
※新設
(リバースエンジニアリング)
※新設
19
資料4
資料3-2
営業秘密管理指針(案)
平成15年1月30日
(最終改訂:平成31令和●年●1月●23
日)
経済産業省
(改訂履歴)
平成17年10月12日改訂
平成22年 4月 9日改訂
平成23年12月 1日改訂
平成25年 8月16日改訂
平成27年 1月28日改訂
平成31年 1月23日改訂
令和7年●月●日改訂
目
次
はじめに(本指針の性格)....................................................... 1
1.総説 ................................................................. 4
2.秘密管理性について ................................................... 7
(1) 秘密管理性要件の趣旨............................................... 7
(2) 必要な秘密管理措置の程度 ........................................... 8
(3) 秘密管理措置の具体例.............................................. 13
紙媒体の場合...................................................... 14
電子媒体の場合.................................................... 14
物件に営業秘密が化体している場合 .................................. 16
媒体が利用されない場合............................................ 16
複数の媒体で同一の営業秘密を管理する場合 .......................... 17
(4) 営業秘密を企業内外で共有する場合の秘密管理性の考え方 .............. 18
社内の複数箇所で同じ情報を保有しているケース ...................... 18
複数の法人間で同一の情報を保有しているケース ...................... 19
3.有用性の考え方 ...................................................... 21
4.非公知性の考え方 .................................................... 23
おわりに ..................................................................... 26
はじめに(本指針の性格)
○(本指針の位置づけ)
本指針は、経済産業省が、不正競争防止法を所管し、また、TRIPS 協定
(知的所有権の貿易関連側面に関する協定)など通商協定を所掌する行政
の立場から、企業実務において課題となってきた営業秘密の定義等(不正
競争防止法による保護を受けるための要件など)について、イノベーショ
ンの推進、勤務・労働形態の変化、海外の動向や国内外の裁判例(日本に
おける最高裁判所の判例は改訂時点で存在しない)等を踏まえて、一つの
考え方を示すものであり、法的拘束力を持つものではない。
したがって、当然のことながら、不正競争防止法に関する個別事案の解決
は、最終的には、裁判所において、個別の具体的状況に応じ、他の考慮事
項とともに総合的に判断されるものである。
○(改訂の経緯)
本指針は、「企業が営業秘密に関する管理強化のための戦略的なプログラ
ムを策定できるよう、参考となるべき指針」として平成15年1月に策定
された「営業秘密管理指針」1を平成27年に全面的に改訂したものである。
平成27年の全面改訂に当たっては、「知的財産推進計画 20142014」
(平成26年7月知的財産戦略本部決定)で、「一部の裁判例等において
秘密管理性の認定が厳しいとの指摘や認定の予見可能性を高めるべきと
の指摘があることも視野に入れつつ、営業秘密管理指針において、法的に
営業秘密として認められるための管理方法について、事業者にとってより
分かりやすい記載とするよう改める」と記載されたことを踏まえ、産業構
造審議会知的財産分科会営業秘密の保護・活用に関する小委員会(以下、
「営業秘密小委」という。)において議論いただいた。
・
その後、ビッグデータ、AI の活用が推進する第四次産業革命を背景として
情報活用形態が多様化する状況を踏まえて、営業秘密小委において議論が
行われ、営業秘密の管理の実態に即した「営業秘密管理指針」の見直しの
方向性が示された(平成29年5月公表「第四次産業革命を視野に入れた
不正競争防止法に関する検討 中間とりまとめ」2」)ことを踏まえ、。これ
を受け、平成310年1月に本指針の一部が改訂された。
1
平成27年1月まで、裁判例の蓄積や不正競争防止法の改正等に対応した改訂を4回実
施。
2 http://www.meti.go.jp/report/whitepaper/data/20170509001.html
1
・
加えて、令和元年7月には、限定提供データの保護に係る平成30年に改
正された不正競争防止法が施行されるとともに、令和6年4月には、限定
提供データの保護対象について営業秘密を除外するとする令和5年に改正
された不正競争防止法が施行されている。改正法の施行に先立ち、
「限定提
供データに関する指針」を令和6年2月に改訂している3。
・
さらに、従来、労働の場は企業の施設内に限られることが多かったものの、
昨今の情勢を反映して、多くの企業でテレワーク勤務が実施されるに至る
など、企業の施設外における労働の機会が増えており、これに伴い、自宅
等において営業秘密に触れる機会が増えている。また、企業における労働
の担い手についても、企業内の従業員だけでなく、企業と派遣元との契約
に基づいて派遣されてくる派遣労働者が、営業秘密に接する機会も増えて
きている。さらに、労働形態の多様化の流れの中で兼業・副業の動きも見
られ、兼業先・副業先の営業秘密に接する機会が更に増している。一方で、
情報管理の手法については、クラウド技術・環境を前提とした管理が進む
など、企業における情報管理のあり方も変化している。
これらの動きを踏まえ、修辞上の修正とともに、令和●年●月に本指針の
一部が改訂された。
○(指針で示す管理水準等)
本指針は、企業等が保有する多様な情報のうち、不正競争防止法によって
営業秘密として差止め等の法的保護を受けるために必要となる最低限の
水準の対策を示すものである。営業秘密以外に、いわゆる機微情報や個人
情報等の関係法令により情報保有者において適正な管理が必要とされる
情報を含めて、企業や大学等の研究機関が保有する情報全般についての漏
えい防止ないし漏えい時に推奨される(高度なものを含めた)包括的対策
については、
「秘密情報の保護ハンドブック(平成28年2月)」に掲載さ
4
れている 。
3
「限定提供データに関する指針」は以下に掲載。
https://www.meti.go.jp/policy/economy/chizai/chiteki/guideline/h31pd.pdf
4 「秘密情報の保護ハンドブック」は以下に掲載。
http://www.meti.go.jp/policy/economy/chizai/chiteki/pdf/handbook/full.pdf
さらに同ハンドブックの簡易版として策定した「秘密情報の保護ハンドブックのてびき」
は以下に掲載。
http://www.meti.go.jp/policy/economy/chizai/chiteki/pdf/170607_hbtebiki.pdf
この他、企業等において業務に従事し、実際に営業秘密に接する立場にある従業員等が、
不正競争防止法の観点から留意すべきポイントを示した従業員向けの啓発資料である「知
っておきたい営業秘密」については、以下に掲載。
https://www.meti.go.jp/policy/economy/chizai/chiteki/pdf/shitteokitai_eigyohimitsu.pdf
2
また、不正競争防止法においては、平成30年改正により限定提供データ
の保護を導入しており、営業秘密と相互補完的に企業等が保有する情報・
データの保護を図っているところ、限定提供データとしての保護について
は、「限定提供データに関する指針」に掲載されているので、あわせて参
照されたい。
3
1.総説
○(不正競争防止法の位置付け)
不正競争防止法は、他人の技術開発、商品開発等の成果を冒用する行為等
を不正競争として禁止している。具体的には、ブランド表示の盗用、形態
模倣商品の提供等とともに、営業秘密の不正取得・使用・開示行為等を差
止め等の対象としており、不法行為法の特則として位置づけられるもので
ある。
○(不正競争防止法における営業秘密の定義)
不正競争防止法(以下、「法」という。)第2条第6項は、営業秘密を
①秘密として管理されている[秘密管理性]
②生産方法、販売方法その他の事業活動に有用な技術上又は営業上の
情報[有用性]であって、
③公然と知られていないもの[非公知性]
と定義しており、この三要件全てを満たすことが法に基づく保護を受ける
ために必要となる。
また、本三要件を含めた法における営業秘密の保護規定は、WTO(世界
貿易機関)の加盟国間での知的財産の最低限の保護水準を定めた「知的所
有権の貿易関連の側面に関する協定」
(TRIPS協定。昭和621987 年
から行われた交渉を踏まえ、我が国は平成71995 年に加入。)を担保する
性格を持つものであり、法の解釈に当たっては、最低限の保護水準を示す
同協定の存在・内容に留意する必要がある。なお、本三要件と実質的に同
趣旨の要件が、諸外国においても営業秘密保護の条件とされている(ただ
し、運用には幅がある。)。
(参考)TRIPS協定条文(抄)
第七節 開示されていない情報の保護
第三十九条
1967 年のパリ条約第十条の二に規定する不正競争からの有効な保護を確保するため
に、加盟国は、開示されていない情報を 2 の規定に従って保護し、及び政府又は政府
機関に提出されるデータを 3 の規定に従って保護する。
2.自然人又は法人は、合法的に自己の管理する情報が次の(a)から(c)までの規定に該当
する場合には、公正な商慣習に反する方法により自己の承諾を得ないで他の者が当該
情報を開示し、取得し又は使用することを防止することができるものとする。
(a) 当該情報が一体として又はその構成要素の正確な配列及び組立てとして、当該
4
情報に類する情報を通常扱う集団に属する者に一般的に知られておらず又は容
易に知ることができないという意味において秘密であること。
(b) 秘密であることにより商業的価値があること。
(c) 当該情報を合法的に管理する者により、当該情報を秘密として保持するための、
状況に応じた合理的な措置がとられていること。
○営業秘密と民事上の措置・刑事罰上の措置との関係
営業秘密に該当すれば、法に基づく、差止めをはじめとする民事上の救済
上措置や、刑事罰上の措置の対象になりうることとなる。
秘密管理性等の三要件の解釈については、民事上の要件と刑事上の要件と
は同じものと考えられる5。
もっとも、秘密管理性等の三要件が認められ、営業秘密に該当したとして
も、差止め等の民事上の措置や刑事罰措置の対象となるためには、法に定
められている「不正競争」や「営業秘密侵害罪」としての要件をすべて充
足しなければならない(法第2条第1項第4号~第10号、法第21条第
1項各号等)ことに留意する必要がある。
○契約による営業秘密以外での情報の保護
営業秘密に該当しない情報については、営業秘密としては法による保護を
受けることはできないものの、同じ不正競争防止法に基づく限定提供デー
タ(法第2条第7項)による保護や民法その他による法的保護を一切受け
ることができないわけではない可能性もある。
例えばすなわち、当該情報が営業秘密に該当しない場合であって限定提供
データに該当するときは、限定提供データに基づく差止め等を請求するこ
とが可能な場合もある6。
また、当該情報の取扱いについて私人間の契約において別途の規律を設け
た場合には、当該契約に基づく差止め等の措置を請求することが可能な場
合もであるがり、その際、法における営業秘密に該当するか否かは基本的
には関係がないと考えられることに留意する必要がある。
5
「刑事上の措置においても、営業秘密該当性の要件は、不正競争防止法の平成15年改
正の経緯等に照らしても、民事上の要件と同じものと解される」名古屋地判令和 4 年 3 月
18 日 平成 29 年(わ)427 号)
6 営業秘密と同様に、限定提供データに該当したとしても、差止め等の民事上の措置の対
象となるためには、法に定められている「不正競争」の要件をすべて充足しなければなら
ない(法第2条第1項第11号~第16号)ことに留意する必要がある。
5
さらに、当該情報が営業秘密や限定提供データに該当せず、また当該情報
の取扱いについて私人間の契約において別途の規律を設けなかった場合
であっても、不法行為に該当し、損害賠償を請求することができる可能性
もある。
○本指針の対象となる「事業者」の範囲
本指針では、「企業」、「従業員」などといった民間企業を念頭に置いた記
載となっているが、その内容は大学・研究機関における営業秘密の管理・
保護においても十分にあてはまるものである。
貴重な研究成果は、大学・研究機関にとって民間企業におけるものと同様
に秘密として価値を有しており、不正競争防止法が対象とする「営業秘密」
に該当する情報となる7。このため、大学や研究機関が「営業秘密」を保有
することは十分にあり得る。
実際、不正競争防止法において、「事業者」として大学が対象に含まれる
ことを前提とした裁判例も存在しており8、また、研究機関に勤務する研究
員による営業秘密にあてはまるとされる情報の持ち出し(外部への漏えい)
が、不正競争防止法違反として問題となった事例も起きている。よって、
本指針における「事業者」の範囲として、大学・研究機関についても該当
し得ると考えられる。
7
大学や研究機関が保有する情報のうち、例えば共同研究の相手先の民間企業から提供を
受けた外部の秘密情報だけでなく、大学や研究機関が生み出し、保有している研究・実験
..
データなども不正競争防止法が対象とする「営業秘密」に該当する情報となる。
8 東京地判平成 13 年 7 月 19 日判時 1815 号 148 頁
6
2.秘密管理性について
(1) 秘密管理性要件の趣旨
秘密管理性要件の趣旨は、企業事業者が秘密として管理しようとする対象
(情報の範囲)が従業員9や役員、取引相手先など(以下、「従業員等」とい
う。)従業員等に対して明確化されることによって、従業員等の予見可能性、
ひいては、経済活動の安定性を確保することにある。
○(営業秘密の情報としての特性)
営業秘密は、そもそも情報自体が無形で、その保有・管理形態も様々であ
ること、また、特許権等のように公示を前提とできないことから、営業秘
密たる情報の取得、使用又は開示を行おうとする従業員や取引相手先(以
下、
「従業員等」という。)にとって、当該情報が法により保護される営業
秘密であることを容易に知り得ない状況が想定される。
○(秘密管理性要件の趣旨)
秘密管理性要件の趣旨は、このような営業秘密の性質を踏まえ、事業者企
業が秘密として管理しようとする対象が明確化されることによって、当該
営業秘密に接した者が事後に不測の嫌疑を受けることを防止し、従業員等
の予見可能性、ひいては経済活動の安定性を確保することにある10。
○(留意事項)
秘密管理性要件については、事業者企業が、ある情報について、相当高度
な秘密管理を網羅的に行った場合にはじめて法的保護が与えられるべき
ものであると考えることは、次の理由により、適切ではない11。
9
ここでは、派遣先の指揮命令を受けて労働に従事するという観点から、「労働者派遣事業
の適正な運営の確保及び派遣労働者の保護等に関する法律」
(いわゆる労働者派遣法)に
基づく派遣労働者が含まれる。
10
秘密管理性要件の趣旨として、適切に管理がなされていない情報は、早晩他社に知ら
れてしまい、競争優位性が失われることとなるとの前提に立ち、そのような情報に法的保
護を与えたとしても研究・開発のインセンティブが図られないことから、企業が特定の情
報を秘密として管理しようとする合理的な自助努力に対して法的保護を与えようとしたも
のとの考え方も成り立ちうる(例えば、田村善之「営業秘密の秘密管理性要件に関する裁
判例の変遷とその当否-主観的認識 vs.「客観的」管理-」知財管理 64 巻 5 号~6 号)
。
この点、本指針は、あくまで従業員等の予見可能性の確保を中心に説明することから、同
見解とは若干異なる面がある。
11 別の政策論としては、秘密管理措置の有無にかかわらず、従業員が、事業者企業にとっ
て秘密である(秘密としたい)ことを知って取得した情報については、当該従業員にとっ
ては営業秘密性を認め、民事上の措置・刑事罰上の措置の対象とするべきとする考え方も
ある。しかし、現行法の「秘密として管理されている」という文言と必ずしもそぐわない
7
➢ 現実の経済活動において、営業秘密は、多くの場合、それを保有する
事業者企業の内外で組織的に共有され活用されることによってその
効用を発揮する。事業者企業によっては国内外の各地で子会社、関連
会社、委託先、又は、産学連携によって大学などの研究機関等と営業
秘密を共有する必要があるため、リスクの高低、対策費用の大小も踏
まえた効果的かつ効率的な秘密管理の必要があること。
➢ 営業秘密が競争力の源泉となる事業者企業、特に中小企業が増加して
いるが、これらの事業者企業に対して、
「鉄壁の」秘密管理を求めるこ
とは現実的ではない。仮にそれを求めることになれば、結局のところ、
法による保護対象から外れてしまうことが想定され、イノベーション
を阻害しかねないこと。
➢ 下請企業についての情報や個人情報などの営業秘密が漏えいした場
合、その被害者は営業秘密保有企業だけであるとは限らないこと。
(2) 必要な秘密管理措置の程度
秘密管理性要件が満たされるためには、営業秘密保有企業者の秘密管理意
思が秘密管理措置によって従業員等に対して明確に示され、当該秘密管理意
思に対する従業員等の認識可能性が確保される必要がある。
具体的に必要な秘密管理措置の内容・程度は、事業者企業の規模、業態、
従業員等の職務、情報の性質その他の事情の如何によって異なるものであり、
企業事業者における営業秘密の管理単位(本指針14頁参照)における従業
員等がそれを一般的に、かつ容易に認識できる程度のものである必要がある。
○(総説)
秘密管理性要件が満たされるためには、営業秘密保有企業者が当該情報
を秘密であると単に主観的に認識しているだけでは不十分である。
すなわち、営業秘密保有企業者の秘密管理意思(特定の情報を秘密と
して管理しようとする意思)が、具体的状況に応じた経済合理的な秘密
管理措置12によって、従業員に明確に示され、結果として、従業員が当該
上、このような考え方を採用した場合、従業員の主観という事後的に検証が困難な事実に
依存することになるため、予見可能性が乏しく、経済活動の安定性や円滑な転職を害する
おそれがあるものと考えられる。
12 秘密管理性要件は、従来、①情報にアクセスできる者が制限されていること(アクセス
制限)
、②情報にアクセスした者に当該情報が営業秘密であることが認識できるようにさ
れていること(認識可能性)の 2 つが判断の要素になると説明されてきた。しかしなが
8
秘密管理意思を容易に認識できる(換言すれば、認識可能性が確保され
る)必要がある。
取引相手先に対する秘密管理意思の明示についても、基本的には、対
従業員と同様に考えることができる。
○(秘密管理措置の対象者)
秘密管理措置の対象者は、当該情報に合法的に、かつ、現実に接すること
ができる従業員等である。
職務上、営業秘密たる情報に接することができる者が基本となるが、職
務の範囲内か否かが明確ではなくとも当該情報に合法的に接することが
できる者(例えば、部署間で情報の配達を行う従業員、いわゆる大部屋勤
務において無施錠の書庫を閲覧できる場合における他部署の従業員など)
も含まれる。
なお、秘密管理性は、従業員全体の認識可能性も含めて客観的観点から
定めるべきものであり、従業員個々が実際にどのような認識であったか否
かに影響されるものではない13。
従業員に対する秘密管理措置があれば、侵入者等(住居侵入罪にあたる行
為により情報に接触する者など法第2条第1項第4号及び第21条第1
項第1号にいう詐欺等行為又は管理侵害行為等によって営業秘密を取得
しようとする者)に対しても秘密管理性は確保されるのであって、営業秘
密保有企業者の秘密管理意思が従業員に対するものとは別に侵入者等に
示される(別の秘密管理措置が行われる)必要はない。
※注 侵入者に対する刑事罰については、故意及び図利加害目的の要件を
追加的に満たす必要がある。
ら、両者は秘密管理性の有無を判断する重要なファクターであるが、それぞれ別個独立し
た要件ではなく、
「アクセス制限」は、「認識可能性」を担保する一つの手段であると考え
られる。したがって、情報にアクセスした者が秘密であると認識できる(
「認識可能性」
を満たす)場合に、十分なアクセス制限がないことを根拠に秘密管理性が否定されること
はない(東京高判平成 29 年 3 月 21 日判タ 1143 号 80 頁参照)
。
もっとも、従業員等がある情報について秘密情報であると現実に認識していれば、営業
秘密保有企業による秘密管理措置が全く必要ではないということではない。法の条文上
「秘密として管理されている」と規定されていることを踏まえれば(法第2条第6項)、
何らの秘密管理措置がなされていない場合には秘密管理性要件は満たさないと考えられ
る。
なお、
「アクセス制限」の用語は権限のない者が情報にアクセスすることができないよ
うな措置を講じることという語義で使用されることが多いが、秘密として管理する措置に
は、
「秘密としての表示」や「秘密保持契約等の契約上の措置」も含めて広く考えること
が適当である。それを明確化するため、本指針においては「アクセス制限」ではなく、
「秘密管理措置」という用語で説明する。
13 知財高判令和 3 年 6 月 24 日 令和 2 年(ネ)10066 号参照
9
○(合理的区分)
秘密管理措置は、対象情報(営業秘密)の一般情報(営業秘密ではない情
報)からの合理的区分と当該対象情報について営業秘密であることを明ら
かにする措置とで構成される。
合理的区分とは、企業の秘密管理意思の対象(従業員にとっての認識の対
象)を従業員に対して相当程度明確にする観点から、営業秘密が、情報の
性質、選択された媒体、機密性の高低、情報量等に応じて、一般情報と合
理的に区分されることをいう。
※注 営業秘密保有企業が営業秘密たる情報のみを保有し、営業秘密たる
情報以外の情報を保有しないことは考えにくいため、秘密管理措置の
一環として、合理的区分が必要となることが通常である。
この合理的区分とは、情報が化体した媒体について、例えば、紙の1枚1
枚、電子ファイルの1ファイル毎に営業秘密であるか一般情報であるかの
表示等を求めるものではなく、企業における、その規模、業態等に即した
媒体の通常の管理方法に即して、営業秘密である情報を含む(一般情報と
混在することもありうる。)のか、一般情報のみで構成されるものである
か否かを従業員が判別できればよい(※)。
※注 紙であればファイル、電子媒体であれば社内LAN上のフォルダな
どアクセス権の同一性に着目した管理がなされることが典型的であ
るが、業態によっては、書庫に社外秘文書(アクセス権は文書によっ
て異なる)が一括して保存されるケースも存在し、そのような管理も
合理的区分として許容される14。ただし、「職務上知り得た情報全て」
「事務所内の資料全て」といった形で秘密表示等を行っているにもか
かわらず、情報の内容から当然に一般情報であると従業員が認識する
情報が著しく多く含まれる場合には、下記留意事項に記載した「秘密
管理措置の形骸化」と評価されることもありうる。
○(その他の秘密管理措置の程度)
ア 従業員及び役員に向けたもの
合理的区分に加えて必要となる秘密管理措置としては、主として、媒体
の選択や当該媒体への表示、当該媒体に接触する者の限定、営業秘密と
他の情報との分別管理ないし、営業秘密たる情報の種類・類型のリスト
化、就業規則や秘密保持契約(あるいは誓約書)などの規程等において
14
このほか、特許出願を行う部署などの一部署を入室制限付きの執務室とし、当該執務室
の情報は全てが営業秘密であるとの取扱いが考えられる。
10
守秘義務を明らかにする、従業員への研修・啓発15等が想定される。要す
るに、秘密管理措置の対象者たる従業員において当該情報が秘密であっ
て、一般情報とは取扱いが異なるべきという規範意識が生じる程度の取
組(管理措置)であることがポイントとなる。
秘密管理措置の具体的な内容・程度は、当該営業秘密に接する従業員の多
寡、業態、従業員の職務、情報の性質(重要性)、執務室の状況その他の事
情によって当然に異なる。
➢
例えば、情報の性質に関して、当該営業秘密保有者にとって重要な情
報であり、当然に秘密として管理しなければならないことが従業員に
とって明らかな場合には、そうした従業員の認識を活用した管理が許
されて然るべきであり16、ID やパスワードなどといった程度の技術的
な管理措置や、就業規則や誓約書において当該情報の漏えいを禁止し
ているといった規範的な管理措置で足りる場合もある17。
➢
当該媒体に接触する者の限定に関して、従業者ごとに厳密に業務の必
要性を考慮した上で限定することまでは求められるものではなく、業
務上の必要性等から特定の部署で広くアクセス権限が付与されてい
たとしても、特定の従業員に限定されていたことに変わりはないと考
えられる18。
➢
ものであり、例えば、営業秘密に合法的かつ現実的に接しうる従業員
が少数である場合において、状況によっては当該従業員間で口頭によ
り「秘密情報であること」の確認をしている等の措置で足りる場合も
あり得る。
○留意事項
情報に対する秘密管理措置がその実効性を失い「形骸化」したともいいう
る状況で、従業員が事業者企業の秘密管理意思を認識できない場合は、適
切な秘密管理措置とはいえない。
15
従業員への意識啓発の方法として、労使の対話の場、情報管理ルール等に係る研修、eラーニング等の教育プログラムなど様々な機会を捉まえて、営業秘密とは何か、自社の扱
う営業秘密の重要性、許される共有の範囲、営業秘密として秘密にしなければならない期
間、状況に応じた具体的な管理方法等について、従業員に対する周知等が考えられる。
16 知財高裁平成 23 年 9 月 27 日 平成 22 年(ネ)10039 号、東京地判令和 4 年 12 月 9
日 令和 3(特わ)129 号等参照
17 大阪地判平成 30 年 3 月 5 日 平成 28 年(ワ)648 号参照
18 福岡高判令和 6 年 7 月 3 日
令和 6 年(う)20 号参照
11
※注
一時的ないしまたは偶発的な管理不徹底に過ぎず、当該事業者企業
の秘密管理意思に対する従業員の認識可能性に重大な影響を与えな
い場合まで「形骸化」と評価することは適切ではない。
個人情報保護法で保護される個人情報については、同法で漏えい対策を含
む安全管理義務が保有企業に対して義務づけられており、それが従業員に
とっても明らかであり、かつ、一般情報との区別も外見上明確であること
から、その他の情報に比べて、秘密管理性が認められる可能性が高いもの
と考えられる。
なお、秘密管理性とは別に、企業が社会的責任として講じることが期待さ
れる情報漏えい防止対策には、その内容は事業者企業の自主的な判断によ
るものの、漏えいリスクの大小等に応じて、従業員の行動に対する各種の
意識啓発19、牽制や漏えいの検知等を行って漏えいリスクを減少する方策、
又は、被害拡大を防止するための方策が含まれることが通例であり、秘密
管理措置とは必ずしも一致しないため留意が必要である。
また、情報セキュリティについては、企業が被る不利益を減らす観点から
企業が置かれている状況毎に必要な措置を行うことが重要ではあるが、情
報セキュリティで求められる措置の程度と秘密管理措置の程度は異なっ
てもよく、情報セキュリティで求められる措置の程度に達していなくとも、
秘密管理措置を認められ得る。
〈参考裁判例〉
企業の規模を考慮した例
パスワード等によるアクセス制限、秘密であることの表示等がなかったにもかか
わらず、全従業員数が 10 名であり、性質上情報への日常的なアクセスを制限でき
ないことも考慮し、秘密管理性を肯定(大阪地判平成 15 年 2 月 27 日 平成 13 年
(ワ)10308 号)
。
営業上の必要性を理由に緩やかな管理を許容した例
顧客情報の写しが上司等に配布されたり、自宅に持ち帰られたり、手帳等で管理
19
従業員への意識啓発の方法として、労使の対話の場、情報管理ルール等に係る研修、
e-ラーニング等の教育プログラムなど様々な機会を捉まえて、営業秘密とは何か、自社の
扱う営業秘密の重要性、許される共有の範囲、営業秘密として秘密にしなければならない
期間等について、従業員に対する周知を図ることが望ましい。
12
されて成約後も破棄されなかったりしていたとしても、これらは営業上の必要性
に基づくものであり、従業員が本件顧客情報を秘密であると容易に認識し得るよ
うにしていたとして、秘密管理性を肯定(知財高判平成 24 年 7 月 4 日 平成 23
年(ネ)10084 号)
。
情報の性質から従業員等が認識可能であると認定した例
PC樹脂の製造技術に関する情報は世界的に希有な情報であって、製造に関係す
る従業員は当該製造技術が秘密であると認識していたといえるとして秘密管理性
を肯定(知財高裁平成 23 年 9 月 27 日 平成 22 年(ネ)10039 号)
。
規範的な管理がなされていることに加え、情報の重要性に鑑みて従業員等が認識
可能であると認定した例
アクセス制限の程度が明らかでなく、また物理的な管理が徹底されていたとはい
いがたい事情があるとしても、顧客情報を一元化してデータ管理しており、就業
規則において顧客情報の開示等を禁止することに加え、退職従業員に対しても、
顧客情報を漏えいしないことを誓約させるなど、規範的な管理がなされていたこ
とに加え、顧客情報の重要性に鑑みて、従業員らにとっても、それが秘密管理の対
象とされるべきものであることは容易に理解し得るとして秘密管理性を肯定(大
阪地判平成 30 年 3 月 5 日 平成 28 年(ワ)648 号)。
物理的な管理体制を問題にすることなく秘密管理性を肯定した例
安価で販売して継続的取引を得るなどの極めて効果的な営業活動を可能ならしめ
るものという情報の重要性と、情報を開示されていたのが従業員11名に過ぎな
かったことに加えて、被告が退職する直前に秘密保持の誓約書を提出させていた
こと等の事情を斟酌して、秘密管理性を肯定(大阪高判平成 20 年 7 月 18 日
平
成 20 年(ネ)245 号)
。
イ 取引相手先に向けたもの
取引相手先に秘密情報を提供している場合には、従業員に向けた秘密管理
措置に加えて、当該取引相手先と秘密保持契約を締結した上で秘密情報を
提供したかどうかがポイントとなる。
(3) 秘密管理措置の具体例
秘密管理措置は、前述(2)のとおり、具体的状況に応じて多様である
が、ここでは、一例として媒体に対する典型的な秘密管理措置を紹介する。
13
※注
秘密管理方法としては、媒体に対するもの以外に、媒体を利用せず
無形の情報として管理したり、情報に合法的かつ現実的に接触する者
を限定する方法などが想定されることは前述。
紙媒体の場合
○典型的な管理方法
前述のとおり、ファイルの利用等により一般情報からの合理的な区分を行
ったうえで、基本的に例えばは、秘密情報が記載された当該文書に「マル
秘」など秘密であることを表示することにより、秘密管理意思に対する従
業員の認識可能性は確保されると考えられる。
個別の文書やファイルに秘密表示をする代わりにその他にも、施錠可能な
キャビネットや金庫等に保管する方法も、認識可能性を確保する手段とし
て考えられる。
なお、情報の漏えい事案が社内で多発しているなど不正取得のリスクが顕
在化している場合に、紙媒体のコピーやスキャン・撮影の禁止、コピー部
数の管理(余部のシュレッダーによる廃棄)、配布コピーの回収、キャビ
ネットの施錠、自宅持ち帰りの禁止といった追加的な措置によって、秘密
管理意思の明示がより確固としたものになることは想定される。しかしな
がら、通常の状況においては、これらの措置は、情報漏えい対策上有効で
あるとしても、秘密管理性を充足するための必須のものではない。(前述
(2)のとおり、秘密管理性とは別に、企業の自主的な漏えいリスク低減
のための情報漏えい対策という観点からは更に高度な対策を取るという
判断がありうる。)
〈参考裁判例〉
人材派遣業を営む会社の従業員が派遣労働者の雇用契約に関する情報等を持ち
出した事例において、当該情報は、施錠棚への保管やコピーの制限・回収、秘密
表示がなされていなかったが、従業員との秘密保持契約、当該情報の管理に係る
一般的な注意喚起等の事情を斟酌し、秘密管理性を肯定(東京地判平成 14 年 12
月 26 日 平成 12 年(ワ)22457 号)。
電子媒体の場合
○典型的な管理方法
データなどの電子媒体で保管している場合も基本的には紙媒体と同様であ
るが、電子情報の場合は、通常、次のような方法のいずれかによって、秘
14
密管理性の観点から充分な秘密管理措置となり得るものと考えられる。
-記録媒体へのマル秘表示の貼付
-電子ファイル名・フォルダ名へのマル秘の付記
-営業秘密たる電子ファイルを開いた場合に端末画面上にマル秘であ
る旨が表示されるように、当該電子ファイルの電子データ上にマル秘
を付記(ドキュメントファイルのヘッダーにマル秘を付記等)
-営業秘密たる電子ファイルそのもの又は当該電子ファイルを含むフ
ォルダの閲覧に要するパスワードの設定
-記録媒体そのものに表示を付すことができない場合には、記録媒体を
保管するケース(CDケース等)や箱(部品等の収納ダンボール箱)
に、マル秘表示の貼付
また、外部のクラウドを利用して営業秘密を保管・管理する場合も、秘密
として管理されていれば、秘密管理性が失われるわけではない。例えば、
階層制限に基づくアクセス制御などの措置が考えられる。なお、情報の内
容・性質等からいって、当該営業秘密保有者にとって重要な情報であるこ
とが明らかな場合には、外部クラウドにアクセスするためにID・パスワ
ードなどが設定されているといった程度の技術的な管理措置や、就業規則
や誓約書において当該情報の漏えいを禁止しているといった規範的な管理
措置で足りる場合もある 。
なお、不正利用・不正取得のリスクが顕在化している場合には、追加的に、
人事異動・退職毎のパスワード変更、メーラーの設定変更による私用メー
ルへの転送制限、物理的に USB やスマートフォンを接続できないように
すること等によって、秘密管理意思の明示がより確固としたものになるこ
とが想定される。しかし、通常の状況においては、これらの措置は、情報
漏えい対策上有効であるとしても、秘密管理性を充足するための必須のも
のではない。
(前述(2)のとおり、秘密管理性とは別に、漏えいリスク低
減のための情報漏えい対策という観点からは更に高度な対策を取るという
判断がありうる。)
〈参考裁判例〉
・情報の入ったパソコンのIDとパスワードを複数の従業員で共有しており、さら
にIDとパスワードを付箋に書いて貼ってあり、退職者が出てもIDとパスワー
15
ドが変更されることはなかったという事案において、IDやパスワードの趣旨が
有名無実化していたというような事情があればともかく、そのような事情が認め
られない限り、なお秘密管理性を認めるに妨げないとして秘密管理性を肯定(大
阪地判平成 20 年 6 月 12 日
平成 18 年(ワ)5172 号)
。
・パスワードが変更されたことはなく、パソコンにパスワードを記載した付せんを
貼っている者がおり、プライスリストを印刷したものに「社外秘」等の押印をす
る取決めはなかった事案において、プライスリストに機械製造業者にとって一般
的に重要であることが明らかな仕入原価等の情報が記載されていること等を参酌
し、プライスリストの外部への提示や持ち出しが許されていたという事情は認め
られないとして秘密管理性を肯定(名古屋地判平成 20 年 3 月 13 日 平成 17 年
(ワ)3846 号)
。
物件に営業秘密が化体している場合
製造機械や金型、高機能微生物、新製品の試作品など、物件に営業秘密情
報が化体しており、物理的にマル秘表示の貼付や金庫等への保管に適さな
いものについては、例えば、次のような方法のいずれかを講じることによ
って、秘密管理性の観点から秘密管理措置となりうるものと考えられる。
-扉に「関係者以外立入禁止」の張り紙を貼る
-警備員を置いたり、入館 ID カードが必要なゲートを設置したりして、
工場内への部外者の立ち入りを制限する
-写真撮影禁止の貼り紙をする
-営業秘密に該当する物件を営業秘密リストとして列挙し、当該リスト
を営業秘密物件に接触しうる従業員内で閲覧・共有化する
媒体が利用されない場合
例えば、技能・設計に関するものなど従業員が体得した無形のノウハウや
従業員が職務として記憶した顧客情報等については、従業員の予見可能性
を確保し、職業選択の自由にも配慮する観点(※1)から、原則として、
下記のような形で、その内容を紙その他の媒体に可視化することが必要と
なる。(媒体としての管理は①から③に前述)
-営業秘密のカテゴリーをリストにすること(※2)
16
-営業秘密を具体的に文書等に記載すること
※注1
これらの情報は、多くの場合、一般情報との区別が困難であるた
め、当該体得情報を可視化することなくその情報の使用を禁じてし
まうと、従業員にとってはいかなる情報の開示・持ち出しが禁じら
れているのかが明確でなく、転職自体が困難となりかねない。
※注2 最先端の技術開発現場が典型的であるが、日々高度の営業秘密が
創出・更新され、内容の整理分類が常時なされていない状況におい
ては、カテゴリーのリスト化や秘密保持契約(あるいは誓約書)等
による範囲の特定が有効であると考えられる。
一方で、例えば、未出願の発明や特定の反応温度、反応時間、微量成分、
複数の物質の混合比率が営業秘密になっている場合(化学産業などで多く
見られる)などで、その情報量、情報の性質、当該営業秘密を知りうる従
業員の多寡等を勘案して、その営業秘密の範囲が従業員にとって明らかな
場合には、必ずしも内容そのものが可視化されていなくとも、当該情報の
範囲・カテゴリーを口頭ないし書面で伝達することによって、従業員の認
識可能性を確保することができるものと考えられる。
なお、従業員が体得した情報が営業秘密に該当する場合には、転職後の使
用・開示によって、直ちに、民事上の措置上及び刑事罰上の措置の対象と
なるわけではない。当該企業の利益、従業員の利益、営業秘密の内容等を
踏まえ従業員が営業秘密保有企業との関係で信義則上の義務に著しく反す
る場合、すなわち「不正の利益を得る目的」又は「保有者に損害を加える
目的」であると評価される場合にのみような形で当該営業秘密の取得・使
用・開示をした場合に限り、民事上の措置上又は刑事罰上の措置の対象と
なるのであり、その判断に当たっては、当該企業と従業員との間の信頼関
係の程度、当該企業の利益、従業員の利益、営業秘密の内容等を踏まえた
総合的な考慮によるものであることに留意が必要である20。
複数の媒体で同一の営業秘密を管理する場合
同一の情報を紙及び電子媒体で管理することが企業実務で多く見られるが、
複数の媒体で同一の営業秘密を管理する場合には、それぞれについて秘密
管理措置が講じられることが原則である。
20
従業員の転職に際して、退職従業員による新雇用主への営業秘密開示行為等が、旧雇
用主との関係で信義則上の義務に著しく反するような形でなされた場合、新雇用主は、そ
のような信義則上の義務に著しく反する開示であることについて悪意又は重過失で当該営
業秘密を使用等すると営業秘密侵害となる。
17
ただし、従業員が同一の情報につき複数の媒体に接する可能性がある場合
において、いずれかの媒体への秘密管理措置(マル秘表示等)によって当
該情報についての秘密管理意思の認識可能性が認められる場合には、仮に
それ以外の媒体のみでは秘密管理意思を認識しがたいと考えられる場合で
あっても、秘密管理性は維持されることが通常であると考えられる。
(4) 営業秘密を企業内外で共有する場合の秘密管理性の考え方
企業内(支店、営業所等)、企業外(子会社、関連会社、取引先、業務委
託先、フランチャイジー等)と営業秘密を共有する場合においては、次のよ
うに整理される。
社内の複数箇所で同じ情報を保有しているケース
秘密管理性の有無は、法人全体で判断されるわけではなく、営業秘密たる情
報を管理している独立単位(以下、「管理単位」という。)ごとに判断される。
当該管理単位内の従業員にとって、当該管理単位における秘密管理措置に対
する認識可能性があればよい。
支店など社内の複数箇所で同一の営業秘密を保有していた場合、それぞれ
の箇所で状況に応じた秘密管理措置が講じられる必要がある。しかしなが
ら、いずれかの箇所で秘密管理措置がなされていなければ、
(当該箇所では
秘密管理性が否定されることは当然であるが)、その他の箇所でも当該情報
の秘密管理性が否定されるわけではない。
すなわち、管理単位(規模、物理的環境、業務内容も勘案しつつ、秘密管
理措置の要否や内容の決定及びその遵守状況の監督(違反者の処分等)に
関する自律的決定権限の有無その他の事情の有無から判断して、営業秘密
の管理について一定の独立性を有すると考えられる単位。典型的には、
「支
店」「事業本部」など。)ごとに、当該企業の秘密管理意思に対する認識可
能性があればよい。
※注1 充分な秘密管理措置が行われている管理単位 A 単位から情報が漏
えいした場合において、管理単位 B 単位における秘密管理措置の不
存在をもって、管理単位 A 単位の秘密管理性は通常、否定されない。
ただし、管理単位 B 単位における秘密管理措置の不存在の事実が、
継続的で、社内で公然の事実であるといった状況の結果、管理単位
A 単位の従業員の認識可能性が損なわれている場合には、その後、
管理単位 A 単位から情報が漏えいした場合ときに、管理単位 A 単位
18
における秘密管理性は否定されうる(ただし、各単位における一時
的・偶発的な管理不徹底によって秘密管理性が直ちに失われるわけ
ではない)。
※注2 生成 AI における学習用データとして情報αを利用していた場合
において、その後、管理単位 C において当該情報αが生成・出力さ
れることがあったとしても、当該情報αが管理単位 C において秘密
管理されているのであれば、当該情報αが生成・出力されたことの
一事をもって、管理単位 C における秘密管理性が否定されることは
ないと考えられる21。また、管理単位 C において秘密管理していた
当該情報αが、管理単位 C ではなく管理単位 D において生成・出力
された場合でも当該情報αが管理単位 C において秘密管理されてい
るのであれば、当該情報αが生成・出力されたことの一事をもって、
管理単位 C における秘密管理性が否定されることはない。
複数の法人間で同一の情報を保有しているケース
秘密管理性の有無は、法人(具体的には管理単位)ごとに判断され、別法人
内部での情報の具体的な管理状況は、自社における秘密管理性には影響しな
いことが原則である。
(法人単位での判断)
子会社をはじめとして、企業外の別法人については、会社法等の法令上、
営業秘密保有企業者自体が当該別法人の内部における秘密管理措置の実施
を直接に実施・確保することはできないこと、法も「保有者」の概念を用
いており、事業者単位での管理を想定していると考えられることを踏まえ、
別法人内部での情報の具体的な管理状況は、自社における秘密管理性には
影響しないことが原則である。
(別法人の不正な使用に対する差止請求等)
自社の営業秘密について、子会社等の別法人が不正な利用を行っている
場合に、自社が当該別法人に対して差止請求等を行うためには、当該別法
人(具体的には自社から当該営業秘密を共有した担当者)に対して、自社
従業員に対するのと同様に、自社の秘密管理意思が明確に示されている必
要がある(法第2条第1項第7号等の「営業秘密を保有者から示された」
ことが必要)。
21
ただし、当該企業にとどまらず、当該情報αが当該企業以外の第三者に提供される場合
は、秘密管理性が否定される場合もあり得る。
19
※注 EC社から FD社に対して営業秘密が示されたケース(FDでは当該
営業秘密を FD自身の営業秘密として管理)において、FDが営業秘密
を漏えいした FDの従業員に差止め等を求めることの可否は、FD内部
の従業員に対する認識可能性の有無の問題となる。
具体的には、営業秘密を特定した秘密保持契約(NDA)の締結により自社
の秘密管理意思を明らかにする場合が典型的であるが、取引先との力関係
上それが困難な場合には、自社では営業秘密として管理されているという
事実の口頭による伝達や開示する文書へのマル秘表示によっても、自社の
秘密管理意思を示すことは、理論上は可能である。ただし、立証を考慮す
れば、口頭での秘密管理意思の伝達ではなく、何らかの書面(送り状への
記載等)が望ましい。
※注 営業秘密に該当する場合であっても、その使用等が直ちに民事上の
措置・刑事罰上の措置の対象となるわけではない。当事者間の信頼関
係の程度、各当事者の利益、営業秘密の内容等を踏まえ信義則に著し
く反する場合、すなわちなど「不正の利益を得る目的」又は「保有者に
損害を加える目的」であると評価される場合にのみ、民事上の措置・刑
事罰上の措置の対象となることとなる。
また、複数企業で共同研究開発を実施する場合等、複数の他の企業に自社
の営業秘密たる情報を開示することが想定されるが、その場合、自社の秘
密管理意思を示すためには、開示先である共同研究開発に参加する複数企
業等を当事者とした NDA を締結することが有効であると考えられる。
逆に他方で、例えば、別法人と営業秘密を特定した NDA を締結せずに営
業秘密を別法人と共有した場合など、別法人に対して自社が秘密管理措置
を講じていないことを以もって、自社における従業員との関係での秘密管
理性には影響しないことが原則である。
※注 ただし、仮に、営業秘密保有企業者 GE が別法人 HF に対して、特
段の事
情が無いにも関わらず、何らの秘密管理意思の明示
なく、営業秘密を取得・共有させているような状況において、GE 企業
の一部の従業員が、
「特段事情が無いにも関わらず、何らの秘密管理意
思の明示なく自社 GE の営業秘密を HF に取得・共有させた」という
状況を認識している場合においては、GE 企業の従業員の認識可能性が
揺らぎ、結果として、GE における秘密管理性が否定されることがあり
うることに注意が必要である。
20
3.有用性の考え方
「有用性」が認められるためには、その情報が客観的にみて、事業活動に
とって有用であることが必要である。
一方、企業の反社会的な行為などの公序良俗に反する内容の情報は、
「有用
性」が認められない。
(1)
「有用性」の要件は、公序良俗に反する内容の情報(脱税や有害物質の垂
れ流し等の反社会的な情報)など、秘密として法律上保護されることに正
当な利益が乏しい情報を営業秘密の範囲から除外した上で、広い意味で商
業的価値が認められる情報を保護することに主眼がある。
(2)したがって、当該情報が、営業秘密を保有する事業者の事業活動に使用・
利用されているのであれば、基本的に営業秘密としての保護の必要性を肯
定でき、当該情報が公序良俗に反するなど保護の相当性を欠くような場合
でない限り有用性の要件は充足されるものと考えられる22。
秘密管理性、非公知性要件を満たす情報は、有用性が認められることが
通常であり、また加えて、必ずしも現に事業活動に使用・利用されているこ
とを要するものではない。
同様に、直接ビジネスに活用されている情報に限らず、間接的な(潜在
的な)価値がある場合も含む。例えば、過去に失敗した研究データ(当該
情報を利用して研究開発費用を節約できる)や、製品の欠陥情報(欠陥製
品を検知するための精度の高い AI 技術23を利用したソフトウェアの開発
には重要な情報)等のいわゆるネガティブ・インフォメーションにも有用
性は認められる。
(3)なお、有用性の要件の判断に際しては、当該情報を取得した者がそれを
有効に活用できるかどうかにより左右されない24。
また、当業者であれば、公知の情報を組み合わせることによって容易に
東京地判令和 4 年 12 月 9 日 令和 3 年(特わ)129 号、東京地判令和 6 年 2 月 26 日
令和 4 年(特わ)2148 号参照
23 「AI・データの利用に関する契約ガイドライン-AI編-(平成30年6月)
」
(以
下、
「AIガイドライン」という。
)
(https://www.meti.go.jp/policy/mono_info_service/connected_industries/sharing_and_u
tilization/20180615001-3.pdf)と同様に、本指針における「AI 技術」は、機械学習、又
はそれに関連する一連のソフトウェア技術のいずれかを意味するものとする。なお、AI
ガイドラインでは、
「機械学習」は、
「あるデータの中から一定の規則を発見し、その規則
に基づいて未知のデータに対する推測・予測等を実現する学習手法の一つである。」と説
明されている。
24 東京地判令和 4 年 12 月 9 日 令和 3 年(特わ)129 号、東京地判令和 6 年 2 月 26 日
令和 4 年(特わ)2148 号参照
22
21
当該営業秘密を作出することができる場合であっても、有用性が失われる
ことはない(特許制度における「進歩性」概念とは無関係)25。
〈参考裁判例〉
・
「不正競争防止法が営業秘密を保護する趣旨は、不正な競争を防止し、競争秩序
を維持するため、正当に保有する情報によって占め得る競争上の有利な地位を保
護することにあり、進歩性のある特別な情報を保護することにあるとはいえない
から、当該情報が有用な技術上の情報といえるためには、必ずしもそれが「予想
外の特別に優れた作用効果」を生じさせるものである必要はないというべきであ
る。
」
(横浜地判令和 3 年 7 月 7 日 平成 30 年(わ)1931 号等)
。
25
横浜地判令和 3 年 7 月 7 日
平成 30 年(わ)1931 等参照
22
4.非公知性の考え方
「非公知性」が認められるためには、一般的には知られておらず、又は容
易に知ることができないことが必要である。
○(
「公然と知られていない」状態)
(1)
「公然と知られていない」状態とは、当該営業秘密が一般的に知られ
た状態になっていない状態、又は容易に知ることができない状態である26。
具体的には、当該情報が合理的な努力の範囲内で入手可能な刊行物に記載
されていない、公開情報や一般に入手可能な商品等から容易に推測・分析
されない等、営業秘密保有者の管理下以外では一般的に入手できない状態
である27。
○「公然知られた発明」(特許法第29条第1項第1号)との関係
(2)営業秘密における非公知性要件は、発明の新規性の判断における「公
然知られた発明」(特許法第29条第1項第1号)の解釈と一致するわけ
ではない。特許法の解釈では、特定の者しか当該情報を知らない場合であ
っても当該者に守秘義務がない場合は特許法上の公知となりうるが、営業
秘密における非公知性では、特定の者が事実上秘密を維持していれば、な
お非公知と考えることができる場合がある。また、営業秘密保有者以外の
第三者が同種の営業秘密を独立に開発した場合、当該第三者が秘密にとし
て管理していれば、なお非公知である。
○(外国の刊行物に過去に記載されていたような状況)
(3)また、当該情報が実は外国の刊行物に過去に記載されていたような
状況であっても、当該情報の管理地においてその事実が知られておらず、
その取得に時間的・資金的に相当のコストを要する場合には、非公知性は
なお認められうる。もちろん、そのようなコストを投じて第三者が現に当
該営業秘密を取得又は開発した上で当該情報の管理地において公開等を
行い、
「公然と知られている」状態となれば、非公知性は喪失することにな
る。
○(ダークウェブに公表された場合)
第三者からのハッキング等により営業秘密が、ダークウェブ28に公表され
たとしても、その一事をもって直ちに非公知性が喪失するわけではない。
TRIPS協定 39 条 2 項(a)号も同様の要件を規定している。
一般的には知られていないが、容易に知ることができる状態は、非公知とはいえない。
28 ここでいうダークウェブとは、一般的な方法ではアクセスできず、また検索エンジンで
見つけることも不可能な Web サイトの総称を指す。
26
27
23
○(公知情報の組み合わせ)
(4)なお、
「営業秘密」とは、様々な知見を組み合わせて一つの情報を構
成していることが通常であるが、ある情報の断片が様々な刊行物に掲載さ
れており、その断片を集めてきた場合、当該営業秘密たる情報に近い情報
が再構成され得るからといって、そのことをもって直ちに非公知性が否定
されるわけではない。なぜなら、その断片に反する情報等も複数あり得る
中、どの情報をどう組み合わせるかといったこと自体に価値がある場合は、
営業秘密たり得るからである。複数の情報の総体としての情報については、
組み合わせの容易性、取得に要する時間や資金等のコスト等を考慮し、保
有者の管理下以外で一般的に入手できるかどうかによって判断すること
になる29。例えば、公知情報の組み合わせであっても、その組み合わせが
知られていなかったり容易に知り得ないため、財産的価値が失われていな
い場合には非公知と言いうる。また、仮に公知情報の組み合わせであって、
その組み合わせが知られていたり容易であったりしたとしても30、取得に
要する時間や資金的コストがかかるため財産的価値があるという場合に
は非公知と言いうる。
○(進歩性(特許法第29条第2項)との関係)
不正競争防止法が営業秘密を保護する趣旨は、進歩性のある特別な情報を
保護することにあるのではないから、当該情報が非公知の情報といえるた
めの要件として「予想外の特別に優れた作用効果」を生じさせるものであ
ることまでは要しない31。
○(リバースエンジニアリング)
リバースエンジニアリング32によって営業秘密を抽出できる場合、抽出可
能性の難易度の差によって判断がわかれることになる。具体的には、誰で
もごく簡単に製品を解析することによって営業秘密を取得できるような
場合には、当該製品を市販したことによって営業秘密自体を公開したに等
しいと考えられることから、非公知性を喪失すると考えられる。これに対
し、特殊な技術をもって相当な期間が必要であり、誰でも容易に当該営業
秘密を知ることができない場合には、当該製品を市販したことをもって非
公知性を喪失するとはならない。
名古屋地判令和 4 年 3 月 18 日 平成 29 年(わ)第 427 号参照。
公知情報を組み合わせて作成した AI 技術の開発(学習)用のデータのようなものが想
定される。
31 東京高判令和 4 年 2 月 17 日 令和 3 年(う)1407 号参照
32 ここでいうリバースエンジニアリングとは、製品を解析、評価することによって、その
構造・材質・成分・製法等その製品に化体している情報を抽出したり、抽出した情報を使
用する行為を意味する。
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30
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〈参考裁判例〉
(肯定例)
・市販製品の解析により本件情報を知るためには、塗料メーカーの知見を駆使し、
原料メーカーの協力を仰ぐなどする必要がある上、なお一定の期間を要するので
あって、誰でも容易に知り得るわけではないことを理由に、非公知性を肯定(名
古屋高判令和 3 年 4 月 13 日
令和 2 年(う)162 号)。
(否定例)
・一般的に利用可能な技術手段であって、その費用も過大ではない成分分析を用い
て、市場で流通している原告製品に用いられている合金の種類や配合比率を調べ
ることが容易であることを理由に、非公知性を否定(大阪地判平成 28 年 7 月 21
日
平成 26 年(ワ)第 11151 号、平成 25 年(ワ)第 13167 号)
〈参考裁判例〉
(肯定例)
・仮に原告製品のリバースエンジニアリングによって原告の営業秘密である技術
情報に近い情報を得ようとすれば、
「専門家により、多額の費用をかけ、長時間に
わたって分析することが必要である」と推認されることを理由に、非公知性を肯
定(大阪地判平成 15 年 2 月 27 日 平成 13 年(ワ)10308 号)。
(否定例)
・一般的に利用可能な技術手段であって、その費用も過大ではない成分分析を用い
て、市場で流通している原告製品に用いられている合金の種類や配合比率を調べ
ることが容易であることを理由に、非公知性を否定(大阪地判平成 28 年 7 月 21
日
平成 26 年(ワ)第 11151 号、平成 25 年(ワ)第 13167 号)
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おわりに
営業秘密は、我が国企業の競争力の源泉として、その重要性をますます増し
ている。
一方で、その内容や管理方法は、情報の性質、ライバル企業との競争環境、
従業員の多寡、グローバル展開の度合い、業務委託の状況、情報通信技術の進
歩といった要素が複雑に影響し、企業によって極めて多様であり、絶えまない
進化が求められる側面もある。
企業においては、本指針の趣旨を基礎としつつ、企業実態に即した、実効的
な営業秘密管理に向けた創意工夫の発揮が期待される。
また、そのような創意工夫が、本指針を踏まえたものである限り、全ての関
係者において最大限尊重され、結果として、営業秘密が保護・活用され、我が
国の経済活力に寄与するようなナショナルシステムが実現することを期待し
たい。
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営業秘密管理指針
発
行
2003年 1月30日
2019●●年 1●月23●●日 最終改訂
編
著
経済産業省経済産業政策局知的財産政策室
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