議事録
知財投資・活用戦略の有効な開示及びガバナンスに関する検討会
第29回 議事要旨
〇日時
:2026年4月20日(月) 10:00-12:00
〇場所
:WEB開催
〇出席者
:加賀谷座長、荒木委員、和泉委員、江良委員、小野塚委員、菊地委員、三瓶委員、
杉光委員、武井委員、立本委員、林委員、松島委員、松原委員、森委員
1.議論
(1)販管費に含まれる成長投資の開示
・販管費に含まれる成長投資の開示については、各社が独自の形式で行っている現状がある。中
長期的な視点を持つ投資家にとって分かりやすい開示方法や、投資判断への活用方法につい
て、投資家の目線から深掘りしていくことが重要。各社がばらばらに開示するのではなく、標
準的な開示モデルを示すことで、開示の浸透とその意義の理解促進につながる。今後、投資家
の意見も取り入れながら、この点についてさらに検討を深めていくべき。
・成長投資はあくまでもインプットに過ぎず、特に知財に関する成長投資に焦点を絞り過ぎるの
ではなく、バランスシート経営の視点から広く捉えることが重要。成長投資の開示において
は、投資額そのものだけでなく、その投資が目指す成果を達成しているかどうかを合わせて開
示することが有効。
(2)知財・無形資産に関する情報開示のあり方
・実効的な開示において、可視化と同様に社内でのバトルコミュニケーションの題材となるべ
き。知財が価値を生む構造は複雑であり、構造やキーサクセスファクターの階層に基づく複合
的な反応が実態としてある。そのため、経営デザインシート等での静的な開示だけでなく、状
況の変化を踏まえた動的な視点が必要である。また、自社の強みを活かして本当に収益を上げ
られるかという観点から仮説検証を行い、数値化されていないキーサクセスファクターや KPI
を仮説に組み込むことが重要。
・信頼性や継続的改善への真摯な取り組みという日本企業の強みを積極的に発信していくべき。
自動車の信頼性や鉄道システムに代表されるような高品質なコア事業があってこそ、ソリュー
ション事業が成り立つという原点を踏まえ、これまでアピールが不十分であった信頼性やこだ
わりへのリソース投入を可視化していくべき。新技術や新事業モデルの訴求も重要であるが、
日本型の強みである地道な取り組みをしっかりと開示していくべき。
・開示の実効性を高めるためには、言葉による説明だけでなく、小さな PDCA サイクルを迅速
に回し、実績を示すことで信頼を獲得していくことが重要な課題。
・知財・無形資産の見える化において、財務との連携は重要であるが、インプット段階の見える
化が不十分である。優秀な人材確保のためには、給与水準の開示や職場環境の整備が重要であ
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り、野村総研の統合報告書における平均給与水準や離職率の開示、イトーキの疲れにくく快適
なオフィス環境の構築、日本ビジネスシステムズの日本一の社員食堂といった事例は、人材確
保への取り組みを具体的に示す好例である。アウトプット・アウトカムを売上・利益との連動
だけで捉えるのではなく、まずはインプットの見える化に取り組むことが重要な第一歩。
・統合報告書だけでなく、決算説明会資料がより詳細な情報を提供している場合がある。これら
の説明会資料や映像をホームページ上で公開することで、企業内容の理解促進につながる。ま
た、工場・研究所・販売現場の見学は企業の競争優位性を示す上で非常に有効であり、その内
容を映像等でホームページ上や YouTube などに公開することで、より広く情報を届けることが
できる。こうした見える化の取り組みがいかに企業価値を生んでいるかを、財務とも連携して
説明できる企業の参考事例を積極的に評価・発信していくことが重要。
・人的資本については可視化指針の整備と有価証券報告書への開示義務化が進んでいる一方、人
材投資と業績をつなぐ因果パスの中間に位置する知財・無形資産については、可視化指針の整
備と有価証券報告書への開示義務化が未整備である。人的資本と同様に、知財・無形資産につ
いても可視化指針を策定し、KPI を活用した有価証券報告書への開示義務化を進めることが重
要な課題である。
・成長投資の成果達成状況を開示することが有効であり、その浸透にはフジクラの事例のよう
に、経営トップから、従業員一人一人、新入社員まで平易な問いを通じて全社的に考えさせる
取り組みが参考になる。開示において最も重要なのは、知財・無形資産がビジネスモデルの強
化にどのように活用されているかを説明することである。こうした開示により、投資家が関心
を持ち、進捗状況をモニタリングし、最終的に企業価値の評価に反映するという好循環が生ま
れる。
(3)人的資本経営の浸透の知財・無形資産への取り込み
・人的資本経営の成功の鍵は、経営課題として位置づけ推進した点にある。経営戦略における
KPI の設定と進捗管理を通じて、企業の価値創造ストーリーとして開示していくことが重要。
また、こうした KPI の設定・管理はコモディティ化やサプライチェーンの断絶といった経営課
題への対応策にもなり得る。これら経営層が抱える課題を明確に示し、KPI の設定・管理と結
びつけていくことで、これらの不確実性へのレジリエンス強化に繋がることから、知財・無形
資産経営の実践につながる。
・人的資本と知財・無形資産は相互に強化し合う循環的な関係にある。人的資本なくして知財・
無形資産は生まれず、知財・無形資産の可視化・管理・活用なくして財務アウトカムにはつな
がらない。また、強力なブランドやサプライチェーン、組織文化といった知財・無形資産が形
成されることで、優れた人材が集まり、人的資本がさらに強化される。この循環的な関係を企
業の競争優位性を持続的に構築するループとして捉え、KPI を含めた数値化とともに当検討会
から積極的に情報発信していくことが有効。
・人的資本と知財・無形資産の関係について、首相官邸が示す「モノからコトへと進む時代、付
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加価値の源泉は、創意工夫や新しいアイデアを生み出す『人的資本』、『人』です」という考え
方は、人が創意工夫や新しいアイデアを生み出す、すなわち無形資産を創出するという点が重
要であると言い換えることができる。すなわち、人材投資というインプットと、業績や付加価
値というアウトカムの間に、知財が媒介項として存在する構造として捉えることが最もシンプ
ルな理解である。
・ビジネスモデルと知財・無形資産の関係を「依存」と「影響」という切り口で捉えることで、
人的資本可視化指針との視点・軸が統一され、人的資本経営との関連性が分かりやすく整理で
きる。
(4)知財・無形資産経営ガイダンス(案)
ア. ガイダンス(案)全体
・コーポレートガバナンス・コード(CGC)の改訂において、知的財産等の無形資産への投資が
明記されたことを受け、当検討会がこれまで使用してきた「知財・無形資産」という名称との
整合性が取れるようになった。この名称はすでに浸透しており、変更による混乱を避ける観点
からも、ガイダンスの名称を知財・無形資産のガイダンスとすることが望ましい。また、資料
7に記載のとおり、知的財産権・知的財産・知財無形資産という区分けを整理し、これらが企
業の価値創造の源泉であるという説明をしたうえで、知財・無形資産という呼称が適切であ
る。
・優れた企業の事例紹介だけでなく、知財・無形資産経営がまだ十分に実践できていない企業が
目標に到達するためのロードマップを示すことが重要である。今後、手引書の具体化を通じ
て、そうした企業への実践的な道筋を示していくべき。
・委員からの意見に共通しているのは、知財・無形資産を経営の中核に据えるために経営者の積
極的な関与が重要であるという点である。その関与を得るためには、見える化の推進ととも
に、バトルコミュニケーションを通じて得られた結果でなければ、投資家や外部ステークホル
ダー、社員への理解共有も難しいという認識がある。現状では様々な構成要素が未整備の状況
にあるが、ガイダンスの策定に当たっては、こうした連携も含めて整理した上で発信していく
姿勢が重要である。また、そのために必要なインフラについても検討会の中で積極的に議論
し、まとめていく必要がある。
イ. 経営者の積極的な関与
・改訂が議論された CGC の原則4―1において、知的財産等の無形資産への投資は取締役会が
中心となって行うことが明確化された。取締役会が大きなビジョンや方針を示し、その執行を
経営陣が担うという役割分担が想定されるが、取締役会の中心的な役割を明確に規定していく
必要がある。経営者という表現では、取締役会なのか CxO を中心とした経営陣なのかが不明
確になる恐れがあるため、取締役会と執行部それぞれの役割を明確に区別した上で、取締役会
が主体的に担うべき事項を明示するべき。
・知財・無形資産経営を推進する上で、経営トップの認識が重要である。人的資本の取り組みが
3
進展した背景には、経営者によるコンソーシアムの早期発足による、経営者同士の切磋琢磨、
政府のリーダーシップが大きく寄与していた。人的資本への投資による成果を知財・無形資産
として獲得し、事業収益につなげていくためにも、経営者同士の対話・交流の場を設けるとと
もに、政府の成長戦略と連携したロードマップを策定するコンソーシアムの設立について、内
閣府が主導して検討を進めることが望ましい。経営トップの認識、現場の感覚、政府の方向性
が一体となって推進できる体制の構築が求められる。
・技術投資は知財投資と密接に関連しており、その最終責任者は CTO・CIO・CSO など企業に
よって異なる。こうした投資判断を行う委員会を設置し、CEO はインナーブランディング・
アウターブランディングの観点から投資戦略のストーリーを社内外に発信する役割を担うこと
が多い。スタートアップや中小企業では CEO が全てを担う場合もあるが、多くの企業におい
ては、委員会と取締役会の役割分担および連携を前提とした投資判断・監督の仕組みを構築す
ることが、ガバナンスの観点から重要。加えて、実務の観点では、これら技術・知財投資委員
会(例:CTO/CIO 主導の委員会)と取締役会との関係性を明確化することが重要である。具
体的には、①取締役会:投資方針・リスク許容度・ポートフォリオ全体の監督、②技術・知財
投資委員会:個別案件の評価・優先順位付け・実行判断といった役割分担を行い、委員会での
議論内容が取締役会に適切にエスカレーションされるガバナンスループの構築が求められる。
・可視化だけでなく、それを活用したバトルコミュニケーションが重要であることを、プラズマ
テレビと液晶テレビの事例が示している。特許出願数の分析により、1997 年に液晶技術のブレ
ークスルー特許が登場した時点で潮目の変化は検知可能であったにもかかわらず、プラズマへ
の投資はその後もピークを迎えるまで継続された。これは、変化の兆候を捉えても、それを戦
略転換につなげるコミュニケーションが不十分であった事例といえる。一方、液晶側も特許出
願数が過剰となり、特許の数が逆 KPI として機能してしまった反省例でもある。技術を守るこ
とが事業の破壊につながりかねないという教訓として、知財戦略のあり方を改めて考える必要
がある。
・知財・無形資産に関するバトルコミュニケーションは、価値創造を加速する最も効果があるボ
トルネックは何か、の観点からすると、経営戦略が報告・決議されていく取締役会において行
われることが重要である。もちろん、取締役会に上がる前の段階の執行部の経営会議で、しっ
かりバトルコミュニケーションが行われることも不可欠である。基本方針において CEO 主導
とされている点については、経営の監督と業務執行の分離が進む中、特に海外投資家の視点か
らも取締役会議長を CEO 以外が務めるケースが増えていることを踏まえると、CEO 主導での
バトルコミュニケーションではなく、取締役会でのバトルコミュニケーションというフレーズ
に修正することが適切である。
・知財・無形資産投資戦略を全社的に推進するためには、経営者の積極的な関与における責任体
制やガバナンス構造の曖昧さを解消することが不可欠である。また、組織横断的な連携やサイ
ロ化の解消も重要な課題である。これらの課題が解決されることで、統合的な知財・無形資産
投資戦略における全社ガバナンスの確立につながる。
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・KPI と経営成果との関係を明確に説明できないことが、バトルコミュニケーションを行う上で
の大きな課題となっている。
・経営者の理解と関与を促進することが最優先課題であり、これを広く普及させ、当たり前の取
り組みとして定着させることが重要。
・バトルコミュニケーションを実効的に行うためには、定量的な数字、すなわち KPI が不可欠
である。数値的根拠のない議論は空中戦になってしまい、バトルコミュニケーションとして成
立しない。試験の成績もない学生が優れた勉強法を主張しても説得力がないように、数字の裏
付けなくして有意義なバトルコミュニケーションは成立しない。知財・無形資産を可視化し、
KPI を示した上でバトルコミュニケーションを行うという流れを確立することが、現在の最重
要課題であり、これが欠如していることが現状のボトルネックとなっている。
・ボトルネック解消において最も重要なのは、経営者(執行)だけではなく取締役会の積極的な
関与である。その実現手段として、CGC の原則4-15に定める取締役の研鑽プログラムに知
財・無形資産・人的資本経営に関する内容を組み込むことが有効である。社外取締役が執行側
に取り組み状況を問うことで、執行側が自らの取り組みを見直す契機となり、知財・無形資産
経営が経営マターとして定着することが期待される。
・取締役会がガバナンスレベルで知財・無形資産経営を推進することは重要であるが、そのため
のインフラが不足している。取締役会での実質的な議論を実現するには、知財・無形資産をア
ジェンダとして設定できる機能が必要であり、近年必要性が高まっているコーポレートセクレ
タリー等の専門職も含め、こうしたアジェンダ化機能の整備をガイダンスに盛り込んでいくべ
きである。
ウ. 成長の道筋を示す価値創造ストーリーの具体化
・企業価値ストーリー、投資戦略、KPI の設計・進捗管理を別々に行っている企業が多いが、こ
れらは本来一体のものである。KPI を設定し進捗を管理することで経営戦略が収益に与える影
響を可視化し、その内容を投資家に開示していくことが重要である。ストーリーの構築、KPI
の設定・管理、投資家へのコミュニケーションを統合的に捉え、一体的に推進していく必要が
ある。特に、KPI は単なる管理指標にとどまらず、コア事業とソリューション/プラットフォー
ム事業(以下、Sol/PF 事業)の双方における知財・無形資産の活用状況を示す指標として設
計することが 2 面市場を持つビジネスモデルの強さから重要であり、投資家との対話において
もその整合性が問われる。知財戦略として経営に意義のあると言われてきたオープン&クロー
ズ戦略は、経営戦略の視点ではコア事業(モノ)がクローズ戦略で、Sol/PF 事業(コト)が
オープン戦略に対応しており表裏一体であることを前提に開示をすると言語を繋げることがで
きる。
エ. 投資戦略の構築
・何に投資するのかというインプットだけでなく、知財・無形資産への投資は、企業価値や株
価・経営指標の向上を目標とすることを明確にすべきである。中期ビジョンにおいても、株価
や事業収益を意識した価値創造の観点から、知財・無形資産投資および人的資本との連携を推
5
進していく必要がある。京セラが統合報告書において KPI として事業貢献金額を設定し、知財
活用による売上増加を指標の一つとしている事例は、今後の参考となる。
・投資判断に有効な開示項目として、短期的な利益(ROE)と中長期的な市場期待(PER)を
つなぐストーリーを示すことが重要である。具体的には、コア事業および Sol/PF 事業におけ
る知財・無形資産への投資に対して KPI を設定し、その進捗を管理・開示することで、最終的
に収益や ROE・PER の向上につながるストーリーを描くことができる。この手法は IBM 等の
欧米企業でも実践されている。また、知財戦略においては、コア事業におけるクローズ戦略と
Sol/PF 事業におけるオープン戦略を表裏一体のものとして捉え、経営企画と連携しながら知
財部門が戦略立案に主体的に関与していくことが求められる。モノ(コア事業):知財・無形
資産をクローズに活用(競争優位の確保)に加えて、コト(Sol/PF 事業)
:知財・無形資産を
オープンに活用(エコシステム形成)の両輪での戦略構築が必要である。この両輪構造は、経
営戦略的には、①新興企業の台頭によるコモディティ化への対応では、クローズ戦略により差
別化技術の囲い込みと、オープン戦略により標準化・ネットワーク効果の確保が可能となる。
また、②サプライチェーン断絶リスクへの対応では、クローズ戦略により代替技術・コア部材
の内製化と、オープン戦略により外部パートナーとの柔軟な連携・冗長性確保が可能となる。
このように、単なる知財活用にとどまらず、経営戦略上のレジリエンス確保・事業ポートフォ
リオ転換の手段として経営視点での重要な意義を持つ点を開示で示していく必要がある。
オ. 共創を促進する組織と人材育成計画の構築
・企業内の縦割り構造により、知財や人材を含めた価値創造を担う人材が不足している。CEO
や CxO が主導し、イノベーションを推進できるプロデューサー人材と、発明・デザイン・コ
ンテンツ等を生み出す創造人材の両輪で人材育成を進めていく必要がある。その実現に向け
て、実践的な教育のあり方について検討すべき。
・教育面においては、委員会での戦略立案・投資判断を担う CxO や経営企画、ビジネスアーキ
テクトといった人材が必要である。また、事業部門と知財部門それぞれの役割を明確にした上
で、必要な人材育成を推進していくべき。特に、オープン戦略を担う人材として、アライアン
ス設計・標準化戦略・データマネジメント、プラットフォーム戦略(オープン&クローズ戦
略)の設計に精通した人材の育成が重要となる。
カ. 中長期目線を踏まえた市場への積極的発信
・投資家の中には、知財・無形資産を特許出願のようなものとして捉え、価値創造との関連性を
十分に認識していない場合もある。そのため、投資家に対する啓発活動を積極的に推進してい
くことが重要。
・知財・無形資産経営は、人的資本・技術投資・ガバナンス・市場との対話を統合する経営テー
マであり、特に「モノ×コト」
「クローズ×オープン」の両輪での戦略設計が、コモディティ
化と不確実性が高まる事業環境において不可欠となっている。また、サステナビリティ経営の
文脈で知財・無形資産を捉える動きが進んでいる一方、近年はサステナビリティ投資自体に対
する市場の評価がやや慎重化(短期収益重視への揺り戻し)している点に留意が必要である。
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そのため、単に ESG 的意義を訴求するのではなく、関連する技術・知財の投資と収益・企業
価値(ROE/PER)との関係と、知財・無形資産を通じた競争優位・成長機会との結びつきを
明確に説明することが求められる。
2.プレゼンテーション
(1)プレゼンテーション1(HRガバナンス・リーダーズ株式会社)
・資料に基づき、内ヶ﨑氏より説明があった後、下記の質疑応答が行われた。
・質問1(委員)
経営・取締役・従業員を分けて考える視点が有益だと感じた。エグゼクティブの監督におけるア
カウンタビリティ(説明責任)を、開示の観点からどのように担保するか。
・回答1(内ヶ﨑氏)
アカウンタビリティとは単なる説明責任にとどまらず、正しい経営を「証明」する責任でもあ
る。取締役会が人的資本投資の方針を定め、経営陣に権限委譲し、経営チームは人的資本投資を
価値創造ナラティブにつむぐ。方針に基づき執行を監督し、資本市場とエンゲージメントするこ
とで、資本市場と取締役会と経営チームの中での信頼関係を醸成することがアカウンタビリティ
といえる。監督機能を強化するには、経営チームの役割・人材力を可視化したうえでの権限移譲
と、基本方針の明確化が前提となる。人的資本経営の執行と監督を、社会に開示・対話して磨き
上げていくことが重要。
・質問2(委員)
人的資本への投資が財務指標に結びつくまでには時間軸が必要だが、その時間軸をどのように捉
えるべきか。好事例があれば教えてほしい。
・回答2(内ヶ﨑氏)
味の素は、10 年後を見据えたバックキャストで人的資本投資の価値創造ストーリーを開示・実
践している好例。CEO が価値創造ストーリーを語り市場の期待を醸成し、CFO が ROIC 等を通
じてファイナンス面から、CHRO が人的資本の ROI を通じて、CTO がテクノロジー・知財・無
形資産面から知的資本の ROI を通じて、統合的に価値創造ストーリーの実現可能性をロジック
化することが重要。
また、経営者報酬の短期インセンティブ KPI として、従業員エンゲージメント向上を活用する企
業が増えているが、それが人的資本 ROI(生産性向上)→ROIC→企業価値向上へとつながるロ
ジックを明確に説明することが求められる。
・質問3(委員)
人事部門と知財部門が縦割りになっている企業が多い中、全社的な無形資産戦略を推進するため
にはどのようなガバナンス体制が望ましいか。
・回答3(内ヶ﨑氏)
取締役会レベルでは戦略・テクノロジー委員会を設け、CHRO・CTO・CFO が統合的に投資戦
略を議論する体制が理想。さらに経営レベルだけでなく、現場レベルでも、FP&A・HRBP・知
7
財担当マネジャーが連携して動くことで、事業・人材・知財のポートフォリオが統合的に機能
し、価値創造サイクルが回る。
・質問4(委員)
人的資本開示の領域整理(公開版資料 p.11)を知財に置き換えた場合、どのようなイメージにな
るか。
・回答4(内ヶ﨑氏)
エグゼクティブ投資は CTO・CIPO のサクセッションや人材育成に対応。ポートフォリオ部分
は事業・人材・知財・サステナ・内部統制を統合的に構築することが必要。イノベーション環境
整備としては、自社技術の競争優位性を基礎として、スタートアップ・M&A・アライアンスを
通じて、どのようにビジネスモデルを強化するかを KPI 化することが重要。
・質問5(委員)
国際標準化戦略やオープン戦略の重要性を、今後のガイドラインに盛り込む考えはあるか。
・回答5(知財事務局)
国際標準については官民ハイレベルフォーラムで研究開発初期段階からの戦略立案を議論中であ
り、知財もそのアジェンダに含まれている。本検討会でも委員からオープン&クローズ戦略への
言及があることを踏まえ、ガイドラインにその関係性を盛り込む方向で議論を進めたい。
(2)プレゼンテーション2(一般社団法人知財・無形資産ガバナンス推進協会)
・資料に基づき、渋谷氏より説明があった後、下記の質疑応答が行われた。
・質問1(委員)
事務局で選別した他薦企業が、最終的に応募に至らなかった理由は何か。
・回答1(渋谷氏)
他薦企業については、製造業においては前向きな反応が多く見られ、多くの企業が応募に至っ
た。一方、非製造業では決算期前の多忙さや経営トップの理解を得る難しさ等から、応募に至る
事例は限定的であった。今後は本検討会とも連携し、知財・無形資産は製造業における知財戦略
にとどまらず、非製造業やサービス業における無形資産戦略の中核であることを広く周知してい
く必要がある。また、日本取締役協会やデザイン協会等、非製造業の関係団体を通じ、本表彰制
度の認知向上を図っていく。
・質問2(委員)
渋谷氏の視点からみた総合的な観点から、本表彰において高い評価を受ける企業には、どのよう
な定性的特性が認められるか。
・回答2(渋谷氏)
経営トップ(会長・社長)が知財への理解を持ち、執行役員レベルでも知財・無形資産を意識し
た組織やガバナンス体制を構築している企業が高く評価されている。企業の規模や上場有無に関
係なく、経営層から経営企画、知財、法務、人事までが横断的に連携する体制が重要なポイント
となっている。
8
・質問3(委員)
製造業では中長期視点が重要だが、すぐに成果が数字として表れにくいという課題がある。その
ため、短期の成果と中長期の取り組みのバランスに悩みがある。短期で数字が出ていなくても将
来的に成果につながる取り組みをどう評価するか。言い換えると、
「良い方向に進んでいる」と
判断する基準は何かあるか。
・回答3(渋谷氏)
ROIC(中長期指標)と ROE(短期指標)
、さらに WACC(資本コスト)のバランスを見ながら
経営することが重要である。研究開発投資のような長期視点の取り組みを続けつつ、短期の収益
指標も高める必要がある。こうした短期・中長期の指標を両立させ、知財・無形資産を財務成果
につなげるには、最終的にトップや経営陣の意識が大きく影響している。
・質問4(委員)
経営トップの知財や無形資産への理解は、本人の経験や背景によるものか。それとも、もともと
問題意識を持つ人がトップになっているのか。また、トップのタイプによって関心の度合いが異
なる可能性があり、どのような属性や特性のトップがこうした分野に関心を持つのか。
・回答4(渋谷氏)
アシックスのように、トップが中長期目線での投資活動を行っていた経験があることや、貝印の
ように、トップが係争を通じて知財の重要性を理解していることに加え、知財やブランドに詳し
い専門人材が側近として支える体制が重要である。特に、トップ自身の経験や問題意識と、それ
を補完する専門人材の連携という組み合わせが、望ましい経営スタイルといえる。
以上
9
資料1
資料1
「知財投資・活用戦略の有効な開示及び
ガバナンスに関する検討会」
(第29回)
令和8年4月20日(月)
10:00~12:00
(Web開催)
<議事次第>
1.開会
2.事務局説明
(内閣府知的財産戦略推進事務局)
3.プレゼンテーション(1)
(HRガバナンス・リーダーズ株式会社)
4.プレゼンテーション(2)
(一般社団法人知財・無形資産ガバナンス推進協会)
5.質疑応答・議論
6.閉会
<配布資料>
資料1
議事次第
資料2
委員名簿
資料3
事務局説明資料
資料4
プレゼンテーション資料
(HRガバナンス・リーダーズ株式会社)
資料5
プレゼンテーション資料
(一般社団法人知財・無形資産ガバナンス推進協会)
資料6
荒木委員提出資料
資料7
菊地委員提出資料
資料8
三瓶委員提出資料
資料9
立本委員提出資料
資料10
林委員提出資料
資料11
森委員提出資料
参考1
コーポレートガバナンス・コード改訂案(クリーン版 令和8年4月10日公開)
資料2
資料2
「知財投資・活用戦略の有効な開示及びガバナンスに関する検討会」
委員名簿
(五十音順、敬称略)
(委員)◎座長
荒木
充
和泉
恭子
江良
明嗣
株式会社ブリヂストン
富士通株式会社
知的財産部門
部門長
ビジネス法務・知財本部
知財グローバルヘッドオフィス長
ブランズウイック・グループ
パートナー
代表取締役社長 CEO
小野塚
恵美
エミネントグループ株式会社
◎加賀谷
哲之
一橋大学商学部
教授
菊地
修
一般社団法人知財・無形資産ガバナンス協会
三瓶
裕喜
アストナリング・アドバイザー合同会社 代表
杉光
一成
金沢工業大学大学院イノベーションマネジメント研究科
武井
一浩
西村あさひ法律事務所・外国法共同事業
立本
博文
筑波大学ビジネスサイエンス系
林
力一
株式会社野村総合研究所
理事長
教授
パートナー
教授
コンサルティング事業本部 シニアプリンシパル
松島
憲之
Alphaterra Advisory 株式会社 シニア・エグゼクティブ・アドバイザー
三菱 UFJ リサーチ&コンサルティング株式会社 委嘱アドバイザー
松原
稔
りそなアセットマネジメント株式会社
チーフ・サステナビリティ・オフィサー 常務執行役員 責任投資部担当
森
俊彦
一般社団法人日本金融人材育成協会
会長
(オブザーバー)
金融庁企画市場局企業開示課、株式会社東京証券取引所
(事務局)
内閣府知的財産戦略推進事務局、経済産業省経済産業政策局産業創造課、
経済産業省経済産業政策局知的財産政策室、特許庁総務部企画調査課
資料3
資料3
事務局説明資料
2026年4月20日
内閣府 知的財産戦略推進事務局
第28回検討会でのご意見①
(1)価値創造ストーリーの構築に資する原則(案)
• 企業開示がその改善につながるのであれば賛成だが、開示そのものを目的とした議論には
慎重であるべき。
• 知財・無形資産ガバナンスガイドラインver3.0が誰に対して何を伝えようとしているの
か、役割の尺度を明確にする必要がある。
• 因果パスについて、あまりに厳格な定義を求めると、どのようなストーリーを描けばよい
のか分からなくなる。
(2)知財・無形資産投資の対象の明確化とサイロ化を生じない範囲での責任者の明確化
• 重要なのは、担う責任の中身を明確にすることである。責任者を置いただけで終わる形は
避けるべき。
• 戦略を横断的に議論・統合する仕組みが不可欠。トップダウンで責任主体や権限が明確に
なれば、全社的な動きが取りやすくなる。
(3)知財・無形資産の形式知ベースによる意図的・戦略的な形成
• 優れた知財を生み出す体質や土壌まで含めて捉える必要があり、将来性のある筋を見極め
る力が要る。さらに、直面した課題を乗り越える力があるかも重要。
• やり切る力やコーポレートカルチャーも含め、取締役会として実行を担保するための施策
やPDCAが必要。
2
第28回検討会でのご意見②
(4)販管費に含まれる成長投資の開示
• 販管費の扱いについて、無形資産や知財への投資が費用として処理され、結果として投資
家の財務評価を下げてしまう点は重要な課題。
• 義務的開示である有価証券報告書においても、何を目指し、何に投資しているのかという
根拠を明確に示す等の有価証券報告書における説明の工夫が有効。
• 各企業は、どういった投資をし、どういった無形資産をつくっているのか形式知化し、意
図的戦略的な形成を進めなければならない。
• 無形資産投資の対象の明確化、形式知化、販管費における開示を合わせて考えると、支出
項目の洗い出しを行うことが有効。
• 真の強みの定義と、実際の資金使途とは結び付く側面がある。
(5)経営層と知財部門の共通言語の整備、自社の強みを客観的に把握できる指標の整備
• 可視化の厳密性以前に、可視化がなければ前に進まない。可視化がなければ議論は広がら
ず、注目も集まらないまま終わってしまう。
• 価値創造ストーリーの中に根拠となるKPIや数値を組み込み、数値とナラティブを結び付
けることが重要。
• 最低限の開示水準から、これまで理想とされてきた推奨水準へ、どのように段階的につな
げるかを示すモデルが必要。
• 好事例については、何をどのようなプロセスで実現してきたのかをより具体的に示すこと
が、有効。
3
第28回検討会でのご意見③
(6)人的資本経営の浸透や生成AIの活用などの取組の知財・無形資産経営への取込み
• やり切る力や組織の土壌、カルチャー、人の力が最も重要。そうした強みを開示も含めて
示すことができれば、投資家の関心を引くことができる。
• 急速な技術発展の中で、今後の知財・無形資産経営における生成AIの在り方や、その投
資・活用が投資家にどのように評価されるかは重要なテーマである。
• 無形資産の形式知化を進めた上でAIを活用し、競争力を高めていくというメッセージを示
せるとよい。
(7)経営とのバトルコミュニケーション
• CEOとのバトルコミュニケーションの不足とその理由の解明が重要。資本コストを意識し
たROIC向上の因果パス等を示し、バトルコミュニケーションの共通言語とすべき。
(8)知財・無形資産を起点とした価値創造ストーリーの明示
• 成長投資を成功させるには、価値創造ストーリーが明確であることが前提。
• なぜ評価されるストーリーなのかをより深掘りすべき。何が本質的によいのかを分解して
示すべき。
• 日本企業に感じる実務上の大きな課題は、開示の必要性から後づけで、当初は考えていな
かった知財と事業の価値創造を結びつけようとする点にある。
• 実際には社内に経営戦略や事業改革を担う人材がいるにもかかわらず、そうした部門との
連携が十分でないことに課題がある。
• 知財についても、コア事業への投資とあわせて、Sol-PF事業にどう投資するかを具体的な
ストーリーとして示すことが重要。
4
(参考)キャッシュ・アロケーション 開示好事例
経営資源配分の方針として、
成長投資とその内訳を明示
出典:「記述情報の開示の好事例集 2024 11-9」(金融庁)を加工
5
(参考)販管費に関する開示例(1)
販管費増に含まれる先行投資や
人件費増の開示
出典:「2024年3月期 通期 決算説明会資料」(横河電機)を加工
6
(参考)販管費に関する開示例(2)
販管費増に含まれる人件費や
DX・RD投資の開示
出典:「2025年3月期 通期 決算説明会資料」
(オルガノ株式会社)を加工
7
(参考)人的資本開示に関する考え方(1)
出典:「戦略に焦点をあてた人的資本開示~投資家の期待に応えるための考え方の整理」(内閣官房 金融庁 経済産業省)令和8年3月23日を加工
8
(参考)人的資本開示に関する考え方(2)
出典:「戦略に焦点をあてた人的資本開示~投資家の期待に応えるための考え方の整理」(内閣官房 金融庁 経済産業省)令和8年3月23日を加工
9
(参考)人的資本開示に関する考え方(3)
出典:「戦略に焦点をあてた人的資本開示~投資家の期待に応えるための考え方の整理」(内閣官房 金融庁 経済産業省)令和8年3月23日
を加工
10
(参考)バランスシートにあらわれない無形資産の形成・維持・強化の検証
出典:「「資本コストや株価を意識した経営」に関する4年目の取組み」(株式会社東京証券取引所)2026年4月7日を加工
11
価値創造を加速する知財・無形資産経営ガイダンス(案)①
1.経営者の積極的な関与
基本方針:取締役会は、CEO主導でのバトルコミュニケーションを通じて
経営戦略への知財・無形資産の強みを取込むとともに、
CxOの役割を整理
成果
:知財・無形資産の活用に関する一貫したメッセージの社内外への発信
対応するボトルネック
CEOアジェンダ化と経営トップのコミットメント不足
• 知財・無形資産がCEOの主要アジェンダになっていない
• 知財・無形資産が将来キャッシュフローや企業価値にどう貢献するか、CEO
が語っていない
• 経営者の関与を深めるための段階的なプロセスが描けていない
取締役会・ガバナンスレベルでの知財・無形資産に関する議論の不在
• 取締役会で知財・無形資産を起点とした議論が定常化していない
• 撤退・M&A・事業再構築など果断な経営判断と知財・無形資産が結びつ
いていない
責任体制・ガバナンス構造の曖昧さ
• CxO(CFO・CTO・CHRO等)間の役割分担や意思決定責任が整理さ
れていない
バトルコミュニケーションの不足と強みの活用機会の不足
• 強みをさらに活かす議論、バトルコミュニケーションがなされていない
• 妥協のない率直な議論を尊重する枠組みや文化的土壌がない
12
ガイダンス案①ボトルネック(知財・無形資産がCEOの主要アジェンダになっていない)に対応した事例 株式会社フジクラ
出典:「危機を乗り越え、技術で世界を切り拓く!
フジクラの再生の軌跡と未来戦略」(社長名鑑)
を加工
13
価値創造を加速する知財・無形資産経営ガイダンス(案)②
2.成長の道筋を示す価値創造ストーリーの具体化
基本方針:モノ・コト両面で創出する価値と顧客像を明確化し、希望的観測に
依らないロジカルな因果パスを開示
成果
:知財・無形資産の強みが活用されたビジネスモデルに基づく
具体的な成果イメージの開示
対応するボトルネック
ストーリーの論理構造の欠如(Wishful Thinkingからの脱却)
• 競争力や成長力にどう貢献するのかという価値創造ストーリーが抽象論で
止まっている
• 「因果パス」がWishful thinking(願望)になっている
財務・資本効率との接続の欠如
• 無形資産投資とROIC・資本効率との関連について、時間軸を含めた体系
的な整理がなされていない
オープン&クローズ戦略と顧客獲得目線の欠如
• オープン&クローズ戦略の視点をもった、ソリューション事業等の顧客獲得目
線での戦略が描かれていない
潜在的ニーズ発見力の欠如と外部連携の不足
• 見通しが立ちづらい事業領域において、潜在的ニーズが発見できない
14
価値創造を加速する知財・無形資産経営ガイダンス(案)③
3.投資戦略の構築
基本方針:知財・無形資産の強みを体系的に棚卸しし、KPI等により、
投資と強み形成との因果関係を可視化
成果
:投資目的の知財・無形資産の観点での明確化
対応するボトルネック
自社の強みの把握・棚卸しができていない
• 自社の無形資産が棚卸しされていない。自分たちが残すべき本当の強みは
何なのか見定められていない
• 暗黙知を形式知に転換る仕組みが整備されていない
• 事業部門ごとのどの事業の無形資産に誰がどう関わり、さらに獲得・強化す
べき無形資産が何か整理した全体俯瞰図がない
知財・無形資産投資の対象と費用の関係が整理されていない
• 知財・無形資産投資の対象が特定されていない
• 経営戦略と連動した知財・無形資産の投資が整理されていない
• 費用(販管費)と無形資産形成の関係が整理されていない
• 無形資産の意図的・戦略的形成がなされていない
KPIと経営成果との関係が説明できていない
• 単なる出願件数等の開示であり、件数が示す意味に十分な説明がない
• 成果の真因をとらえたKPIと、現場の実行管理のKPIの使い分けの議論が
不足
15
ガイダンス案③ボトルネック(KPIと経営成果との関係が説明できていない)に対応した事例 株式会社荏原製作所
出典:「統合報告書2025」(株式会社荏原製作所 )
を加工
16
価値創造を加速する知財・無形資産経営ガイダンス(案)④
4.共創を促進する組織と人材育成計画の構築
基本方針:部門横断の対話が継続する仕組みを整備
知財・無形資産を経営戦略・事業戦略へ実装できる人材を育成
成果
:知財・無形資産を考慮しない部門の消滅
対応するボトルネック
組織横断の連携とサイロ解消ができていない
• 知財部門と事業部門・R&Dと知財・無形資産の議論が不十分
• サイロ化した組織構造が横断戦略を阻害している
知財・無形資産を中核に置いた企業経営を実行できる人材が不足
• 知財・無形資産を創造する人材に対して、正当な評価と報酬が必ずしも与
えられていない
• 経営戦略に、知財・無形資産を組み入れることができる人材が不足してい
る
• 人的資本と知財・無形資産との関係づけがなされていない
長期投資を支える組織力が弱く、組織文化が言語化できていない
• 長期投資を支える組織的「やり切る力」が弱い
• 知財・無形資産を生み出す土壌や文化が言語化できていない
17
ガイダンス案④ボトルネック(組織横断の連携とサイロ解消ができていない)に対応した事例 株式会社アシックス
出典:「2024年統合報告書」(株式会社アシックス)
を加工
18
価値創造を加速する知財・無形資産経営ガイダンス(案)⑤
5.中長期目線を踏まえた市場への積極的発信
基本方針:投資家との建設的な共創を前提として、
開示の目的・意義を明確化し、実効的な情報発信を実施
成果
:企業と投資家のエンゲージメントが発生
対応するボトルネック
開示の目的・姿勢に関するボトルネック
• 開示が、「やらされ感」によって形骸化している
• 社内活用と社外開示の使い分けの概念が整理されていない
投資家との対話・評価連動に関するボトルネック
• 知財情報が、投資家の関心を惹く言語に翻訳されていない
• 好事例が抽象的で、投資家が活用できるかたちになっていない
• 投資家との対話が、経営改善に還流していない
• 知財・無形資産による価値創造に期待を寄せる投資家を意識できていない
投資判断・進捗管理の可視化に関するボトルネック
• 短期市場評価を恐れ、無形資産投資が萎縮している
• どれだけ取組が進んだかを示す基準と、その進捗を可視化するフレームワークが
整備できていない
• 成果が顕在化していない成長投資に対して、投資判断の正当性についての説
得力ある説明ができていない
19
ガイダンス案⑤ボトルネック(知財・無形資産による価値創造に期待を寄せる投資家を意識できていない)に対応した事例
旭化成株式会社
出典:「無形資産戦略説明会の開催ご案内」(旭化成株式会社)
を加工
20
本日ご議論いただきたいこと
1.日本企業が取組むべき課題の具体化
(1)販管費に含まれる成長投資の開示
・販管費に含まれる成長投資を開示する企業の取組はどの程度有効か
・成長投資に関する開示を促進するためには、どのような取組が有効か
(2)知財・無形資産に関する情報開示のあり方
・ 投資家の投資判断における有用性の観点から、何を開示対象とすることが効果的か
・ 統合報告書や有価証券報告書等を通じた開示による具体的な効果は何か
・ 企業の規模・業態の多様性に配慮しつつ、実効的な開示とするためには何が必要か
・ 人的資本に関する開示の進展を、知財・無形資産にどのように取り込めるか
(3)人的資本経営の浸透の知財・無形資産経営への取込み
・ 投資家への開示の他、経営者の関与、役割・責任の明示、取組の可視化等に関して、
何をどのように知財・無形資産経営に取り込むことができるか
2.価値創造を加速する知財・無形資産経営ガイダンス(案)
・どのボトルネックを掘り下げることが、解像度を高める上で有効か
・経営層のどのようなニーズに焦点を当てるべきか
例)「中長期の利益が見込まれるユニークな領域への投資が、投資家に評価されない」
「自社の株価・PBRを中長期的に向上させたい」
「成長投資によって、自社の強みを最大化したい」
「コモディティ化・価格競争に巻き込まれ、利益率が上がらない」
21
資料4
知財投資・活用戦略の有効な開示
及びガバナンスに関する検討会
稼ぐ力の強化に向けた
「人的資本ガバナンス」の実践
2026年4月20日
HRガバナンス・リーダーズ株式会社
代表取締役社長CEO 内ヶ﨑 茂
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資料4
価値創造ストーリーとコーポレートガバナンス
•
•
1
2025年4月30日に経済産業省が公表した「『稼ぐ力』のCGガイダンス」では、 “価値創造ストーリーの構築” と
“その実現に向けた業務執行” 、それらの “評価・検証” が実効的に機能するCGの構築が重要とされている
強靭なビジネスモデルの構築に向けた、人材・研究開発・知財等無形資産への成長投資を強調
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出所:経済産業省 「『稼ぐ力』の強化に向けたコーポレートガバナンスガイダンス(「稼ぐ力」のCGガイダンス)」より抜粋
エグゼクティブへの人的資本投資の重要性
• 人的資本経営とは「人的資本に投資して価値を最大化することで、中長期的な企業価値向上につなげる経営」(経済産業省)
• 人的資本を「エグゼクティブ」「従業員」の両面で捉え、それらの価値を最大化させる人財戦略を検討し投資を行う
採用
事業戦略と
人財戦略の統合
育成
従業員の
人的資本最大化
パーパス、エンゲージメント
従業員総活躍
ウェルビーイング
ダイバーシティ(従業員)
人的資本経営
監督
(取締役会)
エグゼクティブの
人的資本最大化
(TMチーム)
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指名・報酬委員会
後継者計画(サクセッション)
ダイバーシティ(エグゼクティブ)
執行
2
配置
インセンティブ設計と評価
ミッション・CxO制度
人的資本経営の執行・監督体制
マテリアリティ(未来の懸け橋)をもとに、取締役会・CEO+経営チームで取り組むべきミッションを定め
た後に、各種委員会にブレークダウンして検討
パーパスの再定義
( 「予測」した社会における
自社の存在意義)
「過去の成功体験が
通用しない
ニューノーマルな世界」
A 【経営の監督】
“骨太の投資方針(ポリシー)”を定義。
中長期でのビジネスモデルにつながる変革を、サステナビリティ
ポリシーに基づき人的・知的資本、事業ポートフォリオの観点
から大胆に推進
マテリアリティ(未来への懸け橋)
A
現在・短期・中長期での見通しを骨太の投資方針
(ポリシー)に照らしてモニタリング
B
取締役会
CEO+経営チーム
マテリアリティ解決のため、成長ストーリーやビジネスシナリオを
共有するファン株主と一緒に舵取りをする
指
名
委
員
会
コ
ー
ポ
レ
委ー
員ト
会ガ
バ
ナ
ン
ス
エグゼクティブの
人的資本を最大化
3
人
財
開
発
委
員
会
人
事
委
員
会
従業員の
人的資本を最大化
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B
【経営の執行】
CEOを中心とした“ミッションステートメント”
価値創造ストーリーをリードする経営チームづくり
執行への大胆な権限委譲によるリスクテイクの促進
変革を推進する組織・文化形成をCEOがリード
外部環境を踏まえ、取締役会が決めたビジネスシナリオの幅
の中で、CEOが決断を下し、アジャイルに変えていく
強靭な経営チーム(TMT)構築サイクル
•
•
不確実性の深まる環境下、全時間軸・全方位での隙のない経営が求められる中、CEOを中心とした多様性のある強靭な経営
チーム(TMT)構築の重要性は高まっている
価値創造ストーリーの実現に向け、経営の意思決定の質とスピードを高め、中長期的な「稼ぐ力」を強化するためのTMT強靭化
サイクルを構築
強靭な経営チーム(TMT)構築サイクル
• CEOはパーパスを実現するための価値創
造ストーリーを描く
• 部門積上型中計を排し、目指すべき経
営からバックキャストでのロードマップを描く
• ステークホルダー・エンゲージメントを通じ
て、価値創造ストーリーを磨く
価値創造
ストーリー
• CEOは人・組織・カルチャー変革をリード。
多様性のある議論やダイナミックケイパビリ
ティの獲得を推進
経営チーム(TMT)
• CxO・SBU長は管掌役割に加え、
CEOと共に会社の未来を議論。強靭な
経営チームで価値創造ストーリーを実践
評価・報酬/
ガバナンス
• CEOは経営陣への人的資本投資・アセ
スメント・コーチングを通じて、評価・報酬
を決定
• CEOを中心に評価・登用・選解任、イン
センティブ強化に貢献する指名・報酬ガバ
ナンスを設計。指名委員会にて人財評
価、報酬委員会にてパフォーマンス評価
を行い、強靭な経営チーム組成に貢献
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意思決定力
強化
CEO
子会社社長
CxO
役割・責任・
人財要件
SBU長
• 経営陣のミッションステートメント
(MS)を設定し、役割・責任、人財力
を明確化
• グレーディング等タレントマネジメント・シス
テムの構築
• CⅹOの最大ミッションは後継者育成
選抜・育成
4
• CEOは迅速果断な意思決定(リスクテイ
ク・成長投資等)を行う仕組みを構築
• タフアサインメントによる強化(子会社
社長や他社社外取締役の経験を通じて
大局的な視座獲得)
(参考)人財・知財の統合経営と価値創造ストーリーの仮説
•
HRGL他共同研究では、「人的資本経営」が進んでいる企業とは、「強靭な取締役会によりサステナブルな経営戦略が
議論され、事業環境の変化に柔軟に対応できる舵取りを行い、人財ポートフォリオをスムーズに理想形へと近づけてい
る企業である」と定義した。そして、「人的資本経営」が進んでいる企業は、「経営陣が経営戦略を推進する力を持ち、同
時にそれらを支える従業員総活躍の社内環境整備が進捗している。さらに、その動きを取締役会がモニタリングするこ
とにより、結果として、人財面から理想のビジネスモデル(強靭なビジネスモデル)が実現されている」と考えた。すなわ
ち、「人的資本経営」においては、「従業員」だけでなく、取締役会および経営陣を含む「エグゼクティブ」のいずれの人的
資本も最大限にする必要があるとの考えに基づいて本研究を進めた
•
「経営陣および従業員に対する人的資本経営が進んでいる企業は、経営戦略に合わせた人財ポートフォリオを構築しや
すくなり、その結果として、強靭なビジネスモデルが実現され、好業績(ROE、ROIC)、高いPBR・時価総額の向上な
ど、企業価値向上につながる」という仮説を立てた
知財権利数
取締役会の構成メンバー
サクセッションへの取組み
ダイバーシティ
インセンティブ比率
従業員の採用・配置、
ウェルビーイング等
人財開発企業※
スコア
強靭なビジネスモデル
顧客満足度ランキング
(知的資本:知財・無形資産)
ブランドランキング
DJSI等
(人的資本:経営陣および従業
員の人的資本)
※分析対象は日経225採用
銘柄(金融除く)、2015年~
2023年
売上高成長率
財務パフォーマンス
・企業価値
ROE・ROIC
PER・PBR
TSR等
5
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(参考)人的資本価値HRGL他共同研究 分析結果サマリー
•
研究の結果、当初の仮説どおり、人的資本経営(人的資本価値を最大化)を推進している企業は、強靭なビジネスモデ
ルを形成しており、財務パフォーマンス・企業価値にも正の相関を確認できた
分析
6
結果
人財開発企業スコアと
強靭なビジネスモデル
概ね正の相関が見られた
⇒人的資本経営(人的資本価値を最大化)を推進している企業は、強靭な
ビジネスモデル(創造性、顧客満足、コーポレートブランド等)を有する
人財開発企業スコアと
財務パフォーマンス・企業価値
概ね正の相関が見られた
⇒人的資本経営(人的資本価値を最大化)を推進している企業は、財務パ
フォーマンス・企業価値にも好影響を与える
人財開発企業スコアと
グローバル企業
(海外売上高比率・外国人持株比率)
概ね正の相関が見られた
⇒人的資本経営(人的資本価値を最大化)を推進している企業は、海外売
上高比率や外国人持株比率とスコアに正の相関がみられる、特に外国人持
株比率の方がより相関が強い
人財開発企業スコア(4象限分析:
高&高、高&低、低&高、低&低)
「高&高」グループが良好な結果を出す指標が多い
⇒ESG・顧客満足度・ブランド・資本政策・創造性・投資家エンゲージメント
⇒PBRやPER、トービンのq、TSRの将来変化率
人的資本施策と
財務パフォーマンス・企業価値
エグゼクティブスコアが高い企業は、人的資本施策が財務パフォーマンスに
有意な正の相関が見られた
⇒各種人的資本施策が売上高、営業利益、経常利益に正の相関がみられる
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(参考)人財開発企業スコア 分析指標
•
人財開発企業スコア(インプット)が、ビジネスモデル(アウトプット)と財務・企業価値(アウトカム)に影響を与えるか研究
人財開発企業スコア
カテゴリ
財務・企業価値
指標
指標
指標
①スキルダイバーシティ
①知財権利数(特許・商標・意匠の各登録数の合計)
①ROA
②社外取締役の経営・海外スキル保有有無
②総資産回転率
②ROE
③指名委員会回数
③営業利益のボラティリティ(過去5年分のデータに
より算出)
③税引後ROIC
④指名委員会の独立性
エグゼク
⑤役員女性比率
ティブ
従業員
強靭なビジネスモデル
④離職率
⑥CEOの有無
⑤勤続年数
⑦CFOの有無
⑥顧客満足度ランキング
⑧変動報酬割合
⑦DJIS
⑨業績連動株式報酬の有無
⑧ブランドランキング
①新卒採用率
⑨売上高当期純利益率
②中途採用率
⑩財務レバレッジ
③FA制度の有無
⑪研究開発費
④副業兼業制度の有無
⑫設備投資
④PBR
⑤PER
⑥トービンのq
⑦TSR
⑤従業員株式報酬制度の有無
⑥サテライトオフィスの有無
⑦有給休暇取得率
⑧管理職女性比率
⑨従業員ダイバーシティ
7
ⓒ HR Governance Leaders. All rights reserved.
(出典元)東洋経済新報社のCSR企業総監 (雇用・人材活用編) 、日本経済
新聞の日経NEEDS、日立社会情報サービスのShareresearch、各社コー
ポレート・ガバナンスに関する報告書や有価証券報告書、公表情報 等
機関投資家が抱く人的資本経営への課題感
HRGLは人的資本の取組み・開示について、機関投資家に対して集中的にヒアリングを実施。その結果、下記の課題
感を機関投資家が抱いていることがわかった
機関投資家から聞こえてきた課題感
1
実績・施策の羅列
ストーリーと繋がる指標・KPI
不足
◼ 自社の人財戦略が企業価値や経営戦略につながっていると、ストーリー立てて説
明できていない企業が多い
◼ 適切なストーリーとともに人財戦略・施策の目標・KPIを設定できている企業が
少なく、唐突な実績や目標が表現されている企業も存在
人的資本投資の実績・効果の
表示の不足・
◼ 人的資本投資について、どのような事柄にどの程度の金額を投じたか、
それがどの程度効果を出しているかを説明できている企業が少ない
2 不完全な人的資本ストーリー/
3
4
8
◼ 取組んでいる人事施策をやみくもに並べたような開示がまだ多い
◼ 施策のアピールなどが並ぶものの、それらの施策が翌年以降に
どうなったか(効果が出たか)振り返りがなされるケースが少ない
人財戦略・施策の振返りの不足
◼ 人的資本経営を適切に振り返るための体制があるかどうか、見えてこない
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機関投資家の視点と人的価値創造ストーリーの策定
短中期の事業戦略実現に資する人財ポートフォリオ充足と、長期のサステナビリティ戦略における人財マテリアリティ
解決のための施策を区別してアプローチ
事業戦略の実現確度を高める戦略
短中期あああああ
事業戦略
事業
ポートフォリオ
中期経営計画
人財
ポートフォリオ
充足施策
人財の質・量の定義と調達の時間軸の議論
選択と集中の議論
統合
CEO
長期
ビジョン
事業部
CxO
人事
持続的な企業価値向上の土台となる戦略
長期あああああ
サステナビリティ
人財
マテリアリティ
選択と集中の議論
取締役会
9
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CEO・CHRO
人財戦略
指標設定
人財戦略への落とし込みとKGI設定
CHRO
CxO
人事施策
機関投資家が期待する人的資本開示領域
・企業独自の価値創造ストーリーの説明力を高めるためには、市場からの期待と開示事項の整合をとることが必要
・ESG評価機関スコアを上げる人的資本開示と、自社を支える機関投資家を獲得する人的資本エンゲージメントを
IR/SR戦略の観点から戦略的に取組む(エンゲージメント・AGENDA設定が重要)
独自性
(自社成長)
人財
ポート
フォリオ
サクセッション
流動性
運用の目線
✓ 「価値向上」の観点
✓ 資本市場からの期待
✓ CHRO主導で取組む
育成
D&I
比較
可能性
(社会的
要請)
エンゲージ
メント
パッシブ
運用の目線
健康・安全
労働慣行
短中期
10
アクティブ
ⓒ HR Governance Leaders. All rights reserved.
長期
✓ リスクマネジメント、
サステナビリティの観点
✓ 人事部・HRBP主導で推進
点検ポイント① 企業価値向上につながるロジック・ストーリーの作成
見直し・再構築
再投資
企業価値向上につながる
ロジック・ストーリー作成
目標となる指標・KPIの
設定、対内外周知
目標と現実のギャップを
特定、埋める施策を実行
経営戦略・事業戦略の
実現、企業価値の創出
レベル別点検ポイント
レベル1
✓ 人材戦略のストーリー(何を行い、どのような結果を目指すのか)が整理されておらず、開示上も抽象的
な表現(人事部長による一般的なコメント等)にとどまっている
レベル2
✓ 人材戦略・施策と経営戦略(中計戦略など)との対応関係がロジックツリー等で示されている
(求められる
レベル)
レベル3
(非常に高い
レベル)
11
✓ 経営戦略にはどのような人材がどの程度必要かについてある程度特定され、開示がされている
(例)「デジタル戦略を推進するために、デジタル人材を増加させる」ことが明示されている
✓ 「個別の人材戦略・施策」が、「どの部門・本部/どの事業戦略・中計戦略」に影響するか、細かく対応関係が
示されている
✓ それぞれの部門・領域において、必要となる人材の質・量がはっきりと定義されている
ⓒ HR Governance Leaders. All rights reserved.
点検ポイント② 目標となる指標・KPIの設定、対内外周知
見直し・再構築
再投資
企業価値向上につながる
ロジック・ストーリー作成
目標となる指標・KPIの
設定、対内外周知
目標と現実のギャップを
特定、埋める施策を実行
経営戦略・事業戦略の
実現、企業価値の創出
レベル別点検ポイント
✓ 人材戦略・各人事施策の目標指標・KPIが設定されていない
レベル1
✓ 目標指標やKPIは設定されているが、目標の設定ロジックを自ら説明することができない
✓ 目標指標やKPIは設定されているが、社内に留まっている
レベル2
(求められる
レベル)
レベル3
(非常に高い
レベル)
12
✓ 人材戦略・各人事施策の目標指標・KPIが設定され、可能な限り開示されている
✓ 目標指標・KPIの設定について、経営戦略・事業戦略とのつながりが説明でき、それが開示されている
(目標指標・KPIを達成することが、経営戦略・事業戦略にどのように貢献するか伝えることができる)
✓ 人材戦略・各人事施策の目標施策・KPIが設定され、開示されている
✓ 人材戦略・各人事施策の目標指標・KPIが可能な限り財務指標(売上/利益など)と関連して設定されてい
る(例:人的資本ROIなど)
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点検ポイント③ 目標と現実のギャップを特定、埋める施策を実行
見直し・再構築
再投資
企業価値向上につながる
ロジック・ストーリー作成
目標となる指標・KPIの
設定、対内外周知
目標と現実のギャップを
特定、埋める施策を実行
経営戦略・事業戦略の
実現、企業価値の創出
レベル別点検ポイント
レベル1
レベル2
(求められる
レベル)
レベル3
(非常に高い
レベル)
13
✓ 人事施策について「目標指標・KPI」と「現状」のいずれかが特定・開示されておらず、結果としてギャップ
が見えていない
✓ 「目標指標・KPI」と「現状」が定性的な表現も一部活用されながら特定・開示され、それらのギャップの状
況、施策の対応状況が企業により説明されている
✓ 「目標指標・KPI」と「現状」が可能な限り定量的に特定・開示され、それらのギャップの状況、施策の対応
状況が企業により説明されている
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点検ポイント④ 人的(再)投資、見直し・再構築
見直し・再構築
再投資
企業価値向上につながる
ロジック・ストーリー作成
目標となる指標・KPIの
設定、対内外周知
目標と現実のギャップを
特定、埋める施策を実行
経営戦略・事業戦略の
実現、企業価値の創出
レベル別点検ポイント
レベル1
レベル2
✓ これまでの人事施策や経営戦略の結果を振り返り、人材戦略のロジック・ストーリー、目標指標・KPIの再
設定を議論していない(または、その過程を外部に開示していない)
✓ 人的資本への大まかな投資方針・金額等を開示し、説明されている
(求められる
レベル)
✓ 人材戦略について経営戦略の結果と関連付けて、人事部門が主導的に振り返り、人材戦略のロジック・ス
トーリー、目標指標・KPIの再設定につなげている(それらの過程を外部に開示している)
レベル3
✓ 人的資本に対して投資した金額、それらが企業価値(利益等)に与えた関係性を可能な限り定量的に説明
している
(非常に高い
レベル)
14
✓ 企業が生んだ利益のうち、どの程度が人的資本に投資されているか(≒人的資本投資の金額)が説明さ
れていない
✓ 人材戦略について経営戦略の結果と関連付けて振り返り、それらが執行(社長等)や取締役会のレベルで
十分に議論され、見直しに繋がっている
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人的資本可視化指針(2026年改訂版)の全体像
人材戦略を経営戦略と整合させ、かつ独自性を持たせるための思考のフレームとして「人的資本の依存・影響度」と
「リスク・機会」が提示されている
経営戦略・ビジネスモデル
経営戦略に関する指標
①人的資本への
依存・影響
✓ 将来のあるべき組織・人材の姿
✓ 上記の達成のために必要となる
人的資本投資
②人的資本関連の
リスク・機会
✓ ①の検討を通じたリスク及び機
会の抽出
行間を埋める
考え方の提示
人材戦略
POINT
この部分の解像度を
上げ、具体化できな
ければ紋切り型の開
示になってしまう
財務諸表に与える影響
を定量/定性的に説明
人的資本に関する指標
モニタリング
開示
15
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ガバナンス
戦略
リスク管理
指標及び目標
出所:内閣官房「人的資本可視化指針(改訂版)(2026年3月23日) 」よりHRGL作成
有価証券報告書で求められる人的資本開示(2026年3月期以降)
従来の「サステナビリティ開示」の枠組み(体制や方針)の継続に加え、今後は経営戦略・人材戦略・給与決定方
針を連動させた「一貫したストーリー」と「実態(処遇)」の開示が新たに求められる
分類
新たに
拡充
継続
16
概要
主な評価ポイント
記載箇所
経営戦略との連動
連結ベースの企業戦略と関連付け 経営戦略との整合、財務アウトカムへの因
従業員の状況等
た人材戦略
果関係等
従業員給与等の決定方
針
企業戦略と関連付けた人材戦略
企業戦略・人材戦略との一貫性、戦略上
を踏まえた従業員給与等の決定方
従業員の状況等
の重点領域への配分等
針
平均給与の対前年比増
減率
提出会社の従業員の平均給与の 企業戦略・人材戦略と整合した増減理由、
従業員の状況等
対前年比増減率
利益増減との関連性等
ガバナンス・リスク管理
人的資本関連のリスク及び機会を
リスク及び機会の具体的な抽出と対応方
識別・評価し、監視・管理するため
針、経営層を含めた横断的な会議体等
の過程、統制及び手続
サステナビリティに関する
考え方及び取組
戦略
人材の多様性の確保を含む人材
の育成に関する方針及び社内環
境整備に関する方針
サステナビリティに関する
考え方及び取組
指標及び目標
戦略で記載した方針に関する指標
生産性指標の開示と活用、人材ポート
の内容並びに当該指標を用いた目
フォリオの具体性、指標に対する考え等
標及び実績
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(経営戦略との連動を参照)
サステナビリティに関する
考え方及び取組
出所:「企業内容等の開示に関する内閣府令等改正(2026年2月20日)」よりHRGL作成
人的資本への依存・影響~リスク・機会
主要な経営戦略が、どのような専門性や経験を持つ人材の有無に依存しているのかを特定することを足掛かりに、
人材ポートフォリオをできるだけ鮮明に描くことが求められる
依存
(経営戦略達成に必要な労働力)
リスク・機会の抽出
①あるべき組織・人材の
策定
②必要となる
人的資本投資の整理
③優先順位と時間軸に
基づく人材戦略の検討
人材ポートフォリオ
• 経営戦略における重要度の高い
項目は何か?
• そのうち人材確保の重要性が高
い部分はどこか?
• どのようなスキルの人材がどの程
度求められるか?
• 自社のあるべき組織・人材の姿と、
自社の現在の組織・人材の姿を
比較
• その上で、ギャップを埋めるために
求められるアクションや人事施策
等を検討・整理
• ②で整理した施策やアクションが
実践された場合に得られる効果
=機会
• 同実践されなかった場合に生じる
効果=リスク
• 経営戦略に与える影響度×蓋然
性で優先度づけ
• 人的資本関連リスク・機会の評
価をもとにした、人的資本投資の
優先順位づけ
組織・人材の活性化
• これらの人材の持つ能力をどのよ
うにして最大限発揮させるか?
人事基盤・環境
• これらを支える組織基盤はどうあ
るべきか
17
影響
(人的資本への投資)
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• 企業の将来見通しに対する「影響度」と「蓋然性」を考慮してリスク・機会
を評価するプロセスそのものが、人事施策の羅列ではない経営戦略と連動
したストーリー性をもった開示につながる
出所:内閣官房「人的資本可視化指針(改訂版) (2026年3月23日) 」よりHRGL作成
経営戦略と人材戦略の連動のイメージ
企業毎の歴史や置かれた状況等によって戦略は異なる。また、事業セグメント毎に異なる人材戦略が導出されること
もあり得る。なお、欧米では競争戦略事項はむしろ開示すべきではないとの議論もある。
A社
(事業ポートフォリオ変革)
B社
(既存事業収益力強化)
C社
(組織統合推進)
経営戦略・ビジネスモデル
AIを活用した新領域へのポー
トフォリオ変革による非連続な
成長
低成長、高利益率の成熟市
場セグメントにおける持続的な
利益創出
M&Aによるスケールメリット獲
得
人的資本への依存・影響
AI分野の高度専門スキルを
持った人材
ベテラン社員の豊富な知見
流動性の高い非正規雇用の
従業員
人的資本関連リスク・機会
当該人材を継続的に確保でき
るか否か
インフレ等のコスト上昇を上回
る生産性を保持できるか
離職率の高まりと人手不足に
よるコスト上昇
競争力のある報酬水準の設定
ノウハウの可視化、形式知化
による若手の生産性の向上
M&Aの効果最大化のためのエ
ンゲージメント向上
グローバルベンチマークにおける
報酬水準の乖離率、採用数
ナレッジ共有イントラの閲覧数、 ビジョン研修の受講率、離職
労働生産性
率
人材戦略
指標及び目標
⇒事業の内容が多岐にわたる企業の場合には、一企業において新規事業ではA社パターン、
既存事業ではB社パターンなど、あるべき組織・人材の姿が複数導出されることもあり得る。
どこまでを人材戦略として実施・開示するかを判断するためには優先度の検討が必要
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(事例)Walmartー事業戦略と連動した経営陣評価
• Walmartは “people-led, tech-powered omnichannel retailer” を目指し、オムニチャネル化を支える
人財、テクノロジー、サプライチェーン自動化に戦略投資をすることを掲げている
• これらの投資が、顧客体験の向上を通じて売上高の長期的な成長を牽引し、売上高の伸び率を上回るペースで
営業利益を拡大させることでROI向上を目指す
• 経営陣は上記の戦略に基づき、報酬・経営陣開発委員会によって評価される
事業戦略の概要
戦略的投資
•
•
•
人財(従業員報酬、研修等)
テクノロジー(AIを用いた顧客理解
の高度化、在庫可視化等)
サプライチェーン自動化
顧客体験の向上
•
•
利便性向上
パーソナライズされた体験
財務パフォーマンス向上
•
•
•
オムニチャネル化を通じた売上成長
営業レバレッジを高め、
営業利益率を向上
ROI向上
経営メンバーと主な役割
報酬・経営陣開発委員会による評価内容(2025年)
CEO Doug McMillon
グローバルの事業運営及び戦略の最終責任者
人材・テクノロジーを中心とした将来への戦略的投資を継続(賃金・福利厚生、スキル開発、顧客・
従業員向けプラットフォーム構築)。売上高が5.5%増、営業利益は売上を上回る成長を達成。
CTO, CDO Suresh Kumar
IT・テクノロジー戦略技術開発全般を統括
サプライチェーン自動化およびプラットフォームへの投資を継続。広告などの新規事業を支える技術基盤
を展開し、オムニチャネル変革を推進。技術者向けの新たな業務支援ツールを開発・導入。
Sam’s Club CEO Chris Nicholas
Sam’s Club事業の経営を統括
売上高が6.2%増。会員数およびPlus会員比率の拡大により、会費・その他収入が13.3%増。AIを
活用した退出管理技術やエクスプレス配送など、デジタル施策を導入し会員体験を向上。
※ 上記は一部経営メンバーのみ掲載している
19
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出典:“Walmart Notice of 2025 Annual Shareholders’ Meeting”よりHRGL作成
(事例)Walmartー事業戦略を実行するための「エグゼクティブ投資」
• Walmartの報酬制度では、経営陣の意思決定と行動によって直接的に影響を及ぼし得る財務指標を業績連動
報酬のKPIに設定している
• 上位管理職において業績連動報酬比率を高めることで、リーダーシップに対する説明責任を促進している
CEO及びその他エグゼクティブの報酬制度
基本的な考え方
報酬構成
•
•
•
•
優秀な人材を惹きつけ、維持するための競争力ある報酬水準を提供
上位管理職においては報酬に占める業績連動部分の比率を高め、リーダーシップに対する説明責任を促進
業績連動報酬には長期戦略および財務・事業計画に沿った業績目標を設定
株式による長期インセンティブと厳格な株式保有ガイドラインにより経営陣と株主の長期的な利益を一致させる
CEO
その他エグゼクティブ
基本報酬
6.0%
8.0%
STI 年次現金賞与
14.3%
15.6%
→ KPI:売上50%、営業利益50%
LTI① 業績連動型株式(PS)
67.7%
56.8%
→ KPI:売上50%、ROI50%
LTI② 譲渡制限付株式(RS)
12.0%
19.0%
報酬決定方法
• 報酬額決定に際しては、会社全体および担当事業・責任領域の業績、エグゼクティブの職責・専門性・過去の報酬水準・
経験年数/レベル、サクセッションプラン全体との整合性、当該エグゼクティブの重要性および将来より大きな役割を担う可能
性等を勘定する
• STIの決定に際しては、戦略、人的資本管理、倫理・コンプライアンス等に関連する個人評価が考慮される
報酬・経営陣開発
委員会による
KPI選定理由
• 全社戦略と整合していることに加え、経営陣の意思決定・行動によって直接的に影響を及ぼし得る指標である
• 株価やTSR、EPSなどと異なり、自社株買いの影響を受けにくい指標を用いることで、経営の実行力を適切に評価できる
• 成長指標と収益・効率指標を組み合わせることで、短期的な一指標偏重によるリスクを抑制し、持続的成長を促進
(例えば、売上拡大を優先し収益性を損なう場合には、営業利益やROIの評価を通じて報酬が調整される設計)
20
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出典:“Walmart Notice of 2025 Annual Shareholders’ Meeting”よりHRGL作成
知財・無形資産ガバナンス強化に向けたCTO・CIPOの役割例
• 知財・無形資産を活用した企業価値向上に向けて、取締役会と経営陣の連携強化が肝要
• 人財と知財を統合した「インタンジブルズ・ガバナンス」強化の観点から、CTO・CIPOは以下の役割を担うことが期待される
✓ 取締役会に対するIPランドスケープ/技術トレンドを踏まえたシナリオ分析と注力領域の選定
• 取締役会における、中長期の技術・市場動向(IPランドスケープ等)に基づく価値創造ストーリーの議論をリード
• 複数シナリオ分析により、当社ステークホルダーへの影響を検討し、産業全体のベストオーナーシップ視点で、獲得・
強化すべき中核技術や知財(無形資産)の注力領域の選定
✓ 知財・無形資産戦略に関する取締役会と経営陣との連携を強化
• 取締役会で策定して無形資産投資方針をもとに、知財・R&D投資を加速し、ROI等のKPIを開示して、進捗・成
果を取締役会に適時連携し、資本市場との対話によりビジネスモデルを磨き上げる
• グループ無形資産経営の強化のために経営チームに参画し、知的資本ROI等を戦略リスク委員会でROIC・人的
資本ROIと統合的に監督する(無形資産経営の監督(独立取締役)人財を獲得)
✓ 事業競争力の強化に資する知財・イノベーション戦略の策定
• 無形資産投資方針をもとに、事業に統合されたR&D・人財・知財の「三位一体」となる成長戦略の策定、それに対
応した取組みの推進(CTOレポート、イノベーション委員会)
• 新規事業・M&A・スタートアップ・アライアンス等投資における知財リスクと機会の可視化、それを踏まえた経営の意
思決定や投資判断への反映
✓ 無形資産価値創造経営によるビジネスモデルの強靭化(競争優位の構築)
• 事業・人財・知財・内部統制ポートフォリオの最適化や無形資産の活用(オープン&クローズ戦略、標準化等)に
よる業績向上への貢献と進捗の牽引(取締役会での監督機能発揮)
• 人財・技術投資(株式報酬・研究開発等)が生産性向上(人的・知的資本ROI等)につながり、強靭な無形
資産経営(ブランドやビジネスモデル)がサステナブルな企業価値向上につながるナラティブ(文化)をリードする
(HCR・知財レポートを統合したインタンジブルズ・レポート等)
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HRガバナンス・リーダーズ株式会社
代表取締役社長 CEO
内ヶ﨑 茂
shigeru_uchigasaki@hrgl.jp
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資料5
第29回 知財投資・活用戦略の有効な開示及びガバナンスに関する検討会
2026/4/20
【2025年度】知財・無形資産ガバナンス表彰の概要
~24年度との違い、26年度に向けた取り組み~
2026年4月20日(木)10:00~12:00
内閣府知的財産戦略推進事務局 知財投資検討会:
オンライン
一般社団法人 知財・無形資産ガバナンス推進協会
資料5
1
本日の論点
— 表彰制度は企業行動を変えたか?
1
2
3
前年度表彰制度との違い
表彰制度の進化ポイント
応募企業の質的変化
2025年度 受賞企業のポイント
CEO関与 / 財務連動 / 人的資本関連の取組
審査委員の評価と企業の気づき
次年度表彰制度の狙い
次に超えるべき壁
制度設計への示唆
知財・無形資産ガバナンス推進協会©
2
1. 前年度の表彰制度との違い
違い
2025年度
2024年度
➀自薦企業の募集(一般からの
表彰候補公募)
実施(8月~10月、主催団体HPで掲示。 未実施、他薦企業の評価のみ(事務局
応募企業はGoogleフォームへの回答また
が上場会社約3800社を財務データ、知
は応募フォームをダウンロードして応募)※ 財情報などから定量評価し、表彰候補企
日本知的財産協会、日本取締役協会の 業17社に絞り込み。審査委員会が当表
協力を得て両協会会員向けなどにも告知
彰制度の「定量評価基準10項目」に基づ
き受賞企業5社を選定
➁受賞企業数
6社(最優秀賞1社、優秀賞2社、特別
賞3社)
5社(最優秀賞1社、優秀賞1社、特別
賞3社)
➂非上場会社の応募・受賞
あり・1社(貝印株式会社・特別賞)
なし
➃後援組織の増加
5者(内閣府、経済産業省、金融庁、特
許庁、日本取引所グループ)
2者(金融庁、日本取引所グループ)
知財・無形資産ガバナンス推進協会©
3
<一般公募のための応募フォーム(記入例)>
1. 前年度の表彰制度との違い
<2025年度 一般公募のための案内(当協会HP)>
知財・無形資産ガバナンス推進協会©
4
(ご参考)2025年度審査スケジュール
日程
2025年
イベント
4月
キックオフ会議(4/17)
5月
第1回「表彰制度の在り方検討会」(5/30)
6月
第2回「表彰制度の在り方検討会」(6/20)
7月
第1回表彰審査委員会(7/10)
スポンサー企業、後援・協賛機関等への報告・周知
8月上旬
第1回評価基準検討委員会
2025年度知財・無形資産ガバナンス表彰(2025年度)の公表・募集開始
応募開始(8/12~10/7)
9月
応募期間(8/12~10/7) ※必要に応じて第2回基準検討委員会
10月
第2回表彰審査委員会(10月24日):応募企業、他薦企業の審査方法・賞の種類についてなどを確定する
10月27日~11月5日 事務局にて審査対象企業情報サマリー作成(昨年同様の評価対象シート作成)
11月6日~16日に審査委員の方による審査+審査委員推薦企業があれば推薦1社
11月17日、18日事務局で審査結果とりまとめ(11月19日の第3回表彰審査委員会にて受賞候補企業の絞りこみ)
11月
第3回表彰審査委員会(11月19日):各審査委員からの審査結果発表および受賞候補企業の絞り込みを実施
受賞可能性の高い企業へのヒアリングインタビュー実施(11月20日~1月9日)
25年度から新規実施
1月9日~1月15日まで事務局にてインタビュー結果とりまとめ→1月16日審査委員への共有
2026年
1月
第4回表彰審査委員会(1月20日):インタビューワーによるインタビュー結果報告+最終審査+委員長による受賞企業最終確定
2月
公示
3月
表彰式(3/12)
24
年度もほぼ同日程
8月
知財・無形資産ガバナンス推進協会©
5
(ご参考)2025年度 審査対象企業および応募(選定)プロセス
審査対象企業(14社)
応募(選定)プロセス
自薦企業5社
・
8月12日~10月7日の応募期間に自主的に応募
・ 情報サービス業(上場)
・ 株式会社イトーキ
・ 貝印株式会社(非上場)
・ 日本電気株式会社(NEC)
・ 大手電機メーカー(上場)
・
第2回表彰委員会(10月24日)にて企業名を公表、応募フォー
マットを各審査委員に共有
他薦企業9社(事務局情報供)
・ 第2回表彰委員会(10月24日)において、前年度を踏襲した定量基
準で選別した企業を、審査対象候補企業(事務局情報提供)とするこ
とで合意
・ 大手製薬会社(上場)
・ 大手ITベンダー(上場)
・ 重工業メーカー(上場)
・ 株式会社アシックス
・ 半導体材料メーカー(上場)
・ 株式会社荏原製作所
・ 電機メーカー(上場)
・ 株式会社SCREENホールディングス
・ 大手システムインテグレーター(上場)
他薦企業0社(審査委員推薦)
・ なし
・
10月27日より審査開始
・ 10月31日に審査対象候補企業27社を審査委員に共有、事務局で応
募フォーマットを準備の上で、11月5日より候補企業にコンタクトを開始
・ 11月14日を期限として、審査対象候補企業に応募フォーマットの提出を
依頼(審査受諾の企業のみ)、審査対象9社を最終決定(11月17
日)
表彰審査委員による推薦(最大2社)
・ 企業より提出された応募フォーマットを主たる判断基
準として、各表彰審査委員が審査
・ 各表彰審査委員より、5社中1社を推薦(推薦なし
でも可)
・ 企業より提出された応募フォーマットを主たる判断基
準として、各表彰審査委員が審査
新
規
・ 各表彰審査委員より、9社中1社を推薦(前年度と
同様に必ず1社を推薦)
・ 10月24日~10月31日に表彰審査委員に、推薦候補企業を募集(推
薦がある場合に1社のみ)
・ 表彰審査委員からの推薦はなし
知財・無形資産ガバナンス推進協会©
6
(ご参考)2025年度他薦企業(事務局から審査委員への情報提供企業)の選出
1)母集団:代表性やセクター均一性を考慮
・ 日経平均株価(日経225)あるいはMSCIオールカントリーワールド指数に採用されている日本企業(重複企業を調整して263社)
・ 第1回表彰企業(今後は過去受賞歴のある企業)
2)情報提供企業としての選別の条件:知財・無形資産を活用して企業価値を高めている企業
・ 直近のROICが正
・ 過去5年間のROIC変化率が正
・ 無形資産/時価総額比率が0.5倍以上
・ 直近5年間の無形資産比率の変化率が正
10月31日時点で同条件に当てはまる27社を審査対象候補企業として選別、事務局より、選別条件の財務データ、統合報告書、有価証券報
告書等のリンクを表彰審査委員に共有
事務局で生成AIを活用して、27社分の応募フォーマット原案を作成(10月31日~11月5日)。審査の参考情報として、11月7日に情報を集
約したファイルを表彰審査委員に共有
11月6日より、審査対象候補企業に、①表彰エントリーの意思、②(照会があった場合)応募フォーマットの送付・作成依頼、を開始
11月14日に応募エントリーを締め切り。最終的には、応募フォーマットの提出のあった9社を審査対象企業に選別
知財・無形資産ガバナンス推進協会©
7
2. 2025年度 受賞企業のポイント
最優秀賞
•
•
•
•
NEC
•
•
貝印
•
•
イトーキ
知財機能を経営企画直下に配置。ソニーからCCDを招聘し新ブランド創出
エンゲージメント82.5%達成。Office3.0特許比率 4%→24%に急拡大
特別賞
4代目社長が知財を社長直下に配置
従来から「知財はサービス業」「事業と知財の一体化」を普通のことと認識
年間107回のクロスミーティング(多部署)
荏原製作所
CTO・CFO・CHROが一体で「Governance to Value」を実践
「知財ROIC」等の独自指標でROIC-WACCスプレッド最大化を推進
特別賞
CxO別のガバナンス分担を確立。CFO主導で財務・非財務を統合
PBR 1倍→3倍、無形資産比率80%達成
R&D投資 売上の約4%
特別賞
•
•
•
優秀賞
社長直下の知財戦略委員会(第6期)に執行役員ほぼ全員が参加
CAO Officeを新設し、非財務投資→企業価値の因果関係の定量化に着手
優秀賞
•
•
•
アシックス
SCREENホールディングス
CEOを委員長とする知財戦略委員会を設置。経営企画・人事・財務も参画
ROE 25.1%、営業利益率21.7%。Clarivate Top 100を4年連続受賞
知財・無形資産ガバナンス推進協会©
8
CEO・CXO等経営層の関与
知財戦略は「知財部門の取り組み」ではなく「経営戦略そのもの」として位置づけ
アシックス
• 社長直下の知財戦略委員会(第6期)
• 執行役員ほぼ全員参加
イトーキ
• 知財機能を経営企画部門直下に配置
• 外部からCCD (Chief Creative
Director) をスカウト、新ブランド創出
荏原製作所
• CTO・CFO・CHROが一体で実践
• CTOが知財部門を「誇らしい」と公言
貝印
• 4代目社長が知財を社長直下に配置
• 外部から知財担当の取締役を招聘
NEC
• CxO別のガバナンス分担
• CEO・CFOが自らの言葉で社内外に発信
SCREEN HD
• CEOを委員長とする知財戦略委員会
• 経営企画・人事・財務も参画、経営レベ
ル議論
知財・無形資産ガバナンス推進協会©
9
知財成果と財務指標の因果関係
各受賞企業の知財・無形資産への取組が、どのように財務成果に結びついているか
企業
知財・無形資産の取組
因果パス
財務成果
アシックス
知財戦略委員会で全社IP戦略を策定
ROAツリーで資本効率を全社浸透
IP戦略→ブランド価値向上
→グローバル売上拡大
IR面談1,651回/年
CAO Officeで
因果の定量化に着手
荏原製作所
知財プロアクティブ活動で提言書
→事業部門トップに直接提案
知財ROIC・生産革新ROIC
→ROIC-WACCスプレッド
ROIC 10%以上目標
ROE 15%以上
売上1兆円規模(E-Vision)
NEC
R&D投資 売上の約4%を継続
CFOがロジックツリーで統合開示
無形資産比率80%達成
→将来CF最大化モデル
PBR 1倍→3倍
株価2020年比約4倍
人的資本投資 年100億円
イトーキ
Office3.0特許比率 4%→24%
空間デザイナー180名・意匠登録1位
知財ポートフォリオ変化
→事業ポートフォリオ転換
営業利益100億円
ROE 13.8%
PBR 1.7倍
貝印
DUPS³で知財を全社行動規範化
知財部8倍増・費用6倍増
知財費用=ブランド投資
→商品の「勝ちパターン」確立
知財費用の売上比率管理
創業家=長期投資家が
利益実感できる構造
他社牽制力のある特許を効率的出願
特許ランキング3位(売上対比で効率的)
牽制力→シェア拡大
→増益の因果パス
ROE 25.1%
営業利益率21.7%
研究開発投資317億円
SCREEN HD
審査委員:「取り組みが素晴らしくても財務指標につながっていないと評価しづらい」
知財・無形資産ガバナンス推進協会©
10
人的資本に関連した取組
「人が知財を生み出し、知財が人を活かす」好循環の構築
アシックス
荏原製作所
ボストンにCreation Center設立
Digital Knowledge Runで全社ITリテラシー
向上
特許出願1,600件超(5年で2.3倍)
「キャリア・オーナーシップ」推進
技術元素表で技術×人材×特許を統合管理
人的資本指標とROICの相関分析
イトーキ
貝印
SCREEN HD
DUPS3(デザイン・ユニーク・特許・安全やサステナ
ビリティ)を全社の行動規範に定義。年間107回の
クロスミーティングにより、営業含むほぼ全社員が知
財を説明可能
知財報償制度、博士人材獲得
知財部門に技術・事業・法務3領域の専門性
Clarivate Top 100を4年連続受賞
エンゲージメント82.5%達成
INVENTION AWARDで発明者表彰
Office3.0特許 4%→24%に急拡大
NEC
ジョブ型人材マネジメント導入
エンゲージメント30%台→42%改善
職種別育成委員会をSVP役員が主導
知財・無形資産ガバナンス推進協会©
1111
受賞企業についての審査委員からの評価
アシックス
荏原製作所
IP戦略が経営に埋め込まれ結果も出ている。IRレベルの開示が非常に強
い。社内浸透がトップダウン・ボトムアップの両面から機能している。
取り組みが財務指標にしっかりつながっている。知財プロアクティブ活動の提
言書を事業部門トップに直接届ける仕組みを構築。
NEC
イトーキ
CFO主導で財務・非財務を統合し、将来CF最大化を目指すアプローチ
が明確。PBR 1倍→3倍で無形資産戦略の成果が可視化。
安く売ることから価値に見合った収益性重視への転換が印象的。知財→
事業→収益のストーリーを投資家に見せてほしい。
貝印
SCREEN HD
知財無形資産が普及するずっと以前からDUPS³を掲げてきた歴史。知
財はサービス業という姿勢が新鮮。ここまでの再現はなかなかない。
知財の件数だけでなく企業価値として顕在化。因果関係が明確で統合
報告書が読みやすい。現場力のガバナンスが特筆。
共通する評価軸:「取り組み」ではなく「財務成果への接続」と「経営としての言語化」
知財・無形資産ガバナンス推進協会©
12
受賞企業自身が気づいていなかった評価ポイント
審査委員の視点が企業に新たな気づきをもたらした事例
アシックス
荏原製作所
NEC
IP戦略と経営の一体化は評価されつつも、「非
財務投資→企業価値の因果関係の定量化」
が次の課題として浮上。CAO Office新設はそ
の挑戦への一手
CTOが知財部門を「誇らしい」と語る姿勢が審
査委員に響いた。CTO自身が知財と事業の「
橋渡し役」を担う構造が、他社にない強みとして
評価
ブランド・デザイン戦略を「知財ガバナンス」と自
覚していなかったが、CFO直下のCDsO設置や
BlueStellar発信が無形資産ガバナンスそのも
のとして評価された
イトーキ
貝印
SCREEN HD
「知財→事業→収益の変化ストーリーを投資
家に見せてほしい」「役員報酬とKPI連動を明
言すべき」との具体的な開示改善の助言があっ
た。開示の不足を認識していなかった
従来から「知財はサービス業」「事業と知財の一
体化」を普通のことと認識してやってきた。審査
委員から「再現はなかなかできない事例」と絶賛
され、外部視点で初めて自らの独自性を認識
新プロジェクトに知財部門が最初から参加する現
場力が特筆すべき評価点となった。自社にとって
は当然の業務フローが「現場レベルのガバナンス
浸透」と映った
表彰制度が「外部の目」を企業に届け、自己認識の更新を促す機能を果たしている
知財・無形資産ガバナンス推進協会©
1313
3. 次年度の表彰制度の狙い
次年度
2025年度
➀自薦企業の募集強化
自薦企業の応募数増加のための各
種取組を実施(例:日本取締役協
会、一般社団法人無形資産経営推
進協会、知財学会、JIPA、経営デザ
イン協会などを通じたプロモーション活
動など)
実施(主催団体HPで掲示。応募企業
はGoogleフォームへの回答または応募
フォームをダウンロードして応募)※日本
知的財産協会、日本取締役協会の協
力を得て両協会会員向けなどにも告知
➁非上場会社の知財・無形資産活
用の好事例を発掘
中堅・中小企業・地方企業を対象と
した表彰制度を創設(次ページ参
照)。仮称「隠れた小さな巨人賞」な
ど複数社を表彰予定
あり・1社のみ(貝印株式会社・特別
賞)。基本的に上場会社が対象
企画・狙い
知財・無形資産ガバナンス推進協会©
1414
中堅・中小・地方企業を対象とした表彰制度を創設
(隠れた小さな巨人賞、他)
審査委員会
(委員長)橋本久義様 政策研究大学院大学 名誉教授
(顧問)長谷川裕一氏
㈱はせがわ(仏壇・仏具) 相談役
(委員)井川幸広氏
クリーク・アンド・リバー社 代表取締役会長CEO
田子みどり氏
㈱コスモピア 特別顧問
山尾百合子氏 ㈱メイン 創設者
吉栖康浩 氏 一般社団法人知的資産活用センター 主幹研究員
三菱UFJリサーチ&コンサルティング
窓口機能評価事業統括担当者
強瀬理一 氏 ㈱きらぼしコンサルティング エグゼクティブ・アドバイザー
山口省蔵 氏 元日本銀行、金融経営研究所 所長
特定非営利活動法人金融IT協会理事長
國谷真
氏 元りそな銀行、中小企業診断士
藤間秋男 氏 TOMAコンサルタンツグループ 代表取締役会長
知財・無形資産ガバナンス推進協会©
15
日本企業の「希望の星」を発掘する
知財・無形資産ガバナンス表彰
引き続き、よろしくお願い申し上げます。
資料6
資料6
可視化しただけでは意味がない
バトルコミュニケーションできてはじめてIPLになる
【構造】 知財が価値を生む構造を洞察する
経営デザインシート1枚で書けるような単純なものではない
構造/KSFに階層があって複合反応がおきている現場
v
【動的視点】 現状の静止画だけで判断しない
メカニズム仮説から動向オプション立てる (死角は必ずある)
【仮説検証】 自社の強み活かせるか マジ勝てるか
非言語・非定量KSF/弱点まで仮説に入れてないと間違う
ハナシだけじゃなく 小さく はやい PDCA で検証したい
日本型:モノづくり伝統の強みモデル
日本ブランド: 信頼性・継続改善のまじめさ
動き続ける装置系(クルマ耐久性、鉄道システム)など特に強い
システム・ソリューションBizはモノがしっかりしてないと破綻する
日本産業界の強み/文化を意識した
欧米型とは違う日本型の開示があるのでは?
1/2
信頼性こだわりへのリソース投入が見えにくく
低生産性で知財がないように見えちゃってる (反省)
新技術や新事業モデル投資を
かっこよく見せるのとは違うかも (笑)
ハナシだけでなく小さいPDCA回した実績を開示
自社の秘伝タレが活きた競争力を示したい
ブリヂストン 荒木
可視化しただけでは意味がない
バトルコミュニケーションできてはじめてIPLになる
‘97年以降の液晶大型化
ブレークスルー特許群
液晶で大型化を
可能にする特許
900
潮目 変わる
800
700
プラズマ
液晶
液晶
600
市場要求レベルを超えてる?
500
400
300
大型・画質はプラズマ優位
200
100
プラズマ
プラズマ技術が先行
(液晶では大型化できない)
プラズマ撤退
0
×
× ×
××
◆プラズマ:持続的イノベーション線上で斬新技術が台頭
● 潮目変化を検知して伝えるチカラと覚悟
F社21型 F社,Pa社42型
F社 H社 Pi社 Pa社
サムスン・LG
プラズマ
Pi社50型
撤退
撤退 撤退
撤退 撤退
↑かなりのバトルコミュニケーションが要る
◆液晶:膨大な出願で新興勢力に技術開示
〇
液晶
破壊的イノベーションに切替わる
2/2
〇
〇
S社
10型
〇
〇
S社
〇
〇
〇
×
● 莫大な出願で技術を守って事業を破壊
業績悪化
S社
S社
S社
S社
20型 30型 45型 65型
ブリヂストン 荒木
資料7
知財投資・活用戦略の有効な開示及びガバナンスに関する検討会(第29回)
資料7
「価値創造を加速する無形資産・知財経営ガイダンス(案)」
に対する意見について
2026年4月20日(月)10:00-12:00
一般社団法人
知財・無形資産ガバナンス協会
理事長
菊地 修
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1
1.ガイダンスの名称:改訂CGCに則して、「知的財産等の無形資産」(知財・無形資産)を使用すべき
知財・無形資産のスコープ(IPIAGA 菊地作成)
【原則4-1.取締役会の役割・責務Ⅰ:企業戦略等
の大きな方向付け】
無形資産
知的財産権
取締役会は、会社の目指すところ(経営理念等)を確立
し、それに向けた成長の道筋を構築するなど、戦略的な方
向付けを行うことを主要な役割・責務の一つと捉え、 具体
的な経営戦略や経営計画等について建設的な議論を行う
べきである。
また、取締役会は、経営戦略や経営計画の策定・公表に
当たっては、成長の実現を 目指し、自社の資本コストを踏
まえて収益計画や資本政策の基本的な方針を示すとともに
、収益力・資本効率等に関する目標を提示し、その実現の
ために、成長投資(設備・研究開発・人的資本・知的財
産等の無形資産への投資等)や事業ポートフォリオ の見
直し等の経営資源の配分等に関し具体的に何を実行する
のかについて説明を行うべきである。
特許権、実用新案権
意匠権、商標権、
著作権、育成者権 他
【解釈指針】
知的財産等の無形資産への投資については、競争力や企
業価値向上の源泉であることを踏まえ、その創出・取得・強
化・保護・収益化に戦略的に取り組むべきである。
人財、スキル・経験、組織・文化、借地権他
顧客ネットワーク、サプライチェーン、ブランド
デザイン、コンテンツ、ソフト、技術、データ 他
知
財
・
無
形
資
産
CGC 新原則4-1(取締役会の役割・責務)
知的財産
発明、考案、意匠、商標・著作物、
植物の新品種、営業秘密、情報 他
(知的財産基本法第2条)
知財・無形資産ガバナンスガイドラインv2.0では、「知財を始めとする無形資産」を「知財・無形資産」と定義
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2
2.ガイダンス(案)①:経営者の積極的な関与:経営者の中核は、「取締役会」と明記すべき
新CGCの原則4-1では、取締役会が、会社の目指すところ(経営理念等)を確立し、それに向けた成長の道筋を構築す
るなど、戦略的な方向付けを行うことを主要な役割・責務の一つと捉え、具体的な経営戦略や経営計画等について建設
的な議論を行うべきで、その策定・公表に当たって、知的財産等の無形資産への投資に対する経営資源の配分等に関し
て、具体的に何を実行するかを具体的に説明すべきと規定されている。
この解釈指針では、知的財産等の無形資産への投資について、競争力や企業価値向上の源泉であることを踏まえ、その
創出・取得・強化・保護・収益化に戦略的に取り組むべきと規定している。
→よって、経営者等の中核は、取締役会であって、その成長の道筋や戦略的な方向付けに基づき、「経営戦略や経
営計画等」を策定する際に、知的財産等の無形資産への投資が具体的に議論されるべきと明記すべきと考える。
【新原則4-1】
取締役会は、会社の目指すところ(経営理念等)を確立し、それに向けた成長の道筋を構築するなど、戦略的な方向付
けを行うことを主要な役割・責務の一つと捉え、具体的な経営戦略や経営計画等について建設的な議論を行うべきである。
また、取締役会は、経営戦略や経営計画の策定・公表に当たっては、成長の実現を 目指し、自社の資本コストを踏まえて
収益計画や資本政策の基本的な方針を示すとともに、収益力・資本効率等に関する目標を提示し、その実現のために、
成長投資(設備・研究開発・人的資本・知的財産等の無形資産への投資等)や事業ポートフォリオ の見直し等の経営
資源の配分等に関し具体的に何を実行するのかについて説明を行うべきである。
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3.ガイダンス(案)③:投資戦略の構築:経営者等の成長の道筋として「知財・無形資産の投資」目標設定
「知財・無形資産の投資」の目標(KPI)は、企業価値(株価)や経営指標(収益)の向上と明確化すべき。
2025
出
典:
京セラ
統合報告書
出典:京セラ統合報告書2025
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4.ガイダンス(案)④:人材育成計画の構築:知財創造人財と、プロデュース人財の育成が急務
会社のイノベーションを創発するために、その稼ぐ力である無形資産(人財・知財)を、創出、活用する人財が
必須で、これらの育成を投資と考え、経営者等がリーダとなって、現場教育や実践研修などを推進すべき。
また、知財・無形資産の投資・活用が企業価値創造につながることを投資家に理解してもらう研修も必要。
事業創造における知財・無形資産戦略の役割
CEO
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5
5.ガイダンス(案)④:共創を促進する組織:政府主導で知財・無形資産経営コンソーシアムを設立
CGC改訂から4年以上経過し、「人的資本経営」は、経営者のコンソーシアムを発足し、浸透が進んでいる一
方で、知財・無形資産を活かした「知財経営」は、未だ経営者への浸透が不十分。(CG報告書開示でも5割)
そこで、政府の成長戦略、経済安全保障の実現に向け、日本企業を持続的に成長させ、日本経済を発展さ
せるため、企業経営者・投資家が知財・無形資産経営を実践する場として、政府が主導して「知財・無形資産
経営コンソーシアム(仮)」の設立し、官民協働で、共に成長していく体制を構築し、活動すべきと考える。
持続的な企業価値の向上を実現する知財・無形資産経営
経営者等が経営戦略として
「知財・無形資産の投資・活用戦略」実践
知財・無形資産情報の開示
投資家との対話の活性化
取締役会による実効的な監督
リスクテイクした成長戦略の実行
日本政府の成長戦略の執行を加速させる。
株価・企業価値の倍増させる。
企業の投資促進と適正な経営を
(仮称)知財・無形資産経営コンソーシアムを発足
政府が主導し、企業、投資家が協力して、日本の知財・無形資産経営の実践、協働、普及を推進
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6
「知財で、日本列島を強く豊かに」するために、日本企業がスクラムを組んで、一緒に活動しようについて
日本政府の成長戦略において、「知財・無形資産」を投資・活用する経営戦略を浸透させ、
日本企業の持続的成長力を増強し、日本の株式市場における企業価値を高めよう。
(一社)知財・無形資産ガバナンス協会
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7
8
•
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•
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体としての見解を表明するものではございません。
本資料に関する問い合わせ先
知財・無形資産ガバナンス協会
菊地 修
mailto:osamu.kikuchi@ipiaga.org
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®
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資料8
資料8
第29回検討会 追加コメント
委員
三瓶 裕喜
2026年4月20日
成長投資はINPUTに過ぎないので、これだけ開示しても有効性は高くない。P.11東証
資料にあるように、バランスシート経営の視点で、なぜ持つべき資産なのか、その資
産を形成する成長投資が目指す成果は何か、成果を達成しているのか、を開示する
のなら有効。
P.13フジクラの例は、「平易な問い」で経営層から若手社員まで幅広く、価格競争に
巻き込まれないビジネスの視点と技術の視点を同時に浸透させている。「技術で勝っ
て、ビジネスで負ける」ことへの反省でもある。
「知財・無形資産でビジネスモデルをどう強化しているのか」を開示対象とすることが
効果的
投資家の注目を引く→投資家から質問がくる・関心を持たせる→投資家が進捗チェ
ック(まだ懐疑的)→投資家が成果達成へ確信を持つ→企業評価に反映する
P.10 ビジネスモデルと知財・無形資産の関係を「依存」と「影響」で捉えることで、人
的資本経営と視点・軸が揃い、人的資本経営の理解・浸透と並行して知財・無形資
産経営の理解・浸透が進むと期待できる。
「1.経営者の積極的な関与」が最も重要。「CGコード原則4-15取締役・監査役の研
鑽」において、知財・無形資産経営ガイダンスが研鑽プログラムに組み込まれるよう
研鑽プログラム提供者等に働きかけることが考えられる。取締役会で執行側に知財
・無形資産経営に関する質問がされることにより、執行側は説明責任を果たすため、
取組みを確認したり見直しをすることになり、積極的に関与することになる。
➢ 投資家と経営者の間にズレ(認識ギャップ)がある
➢ 経営者の本音ではないだろう
➢ 最も重要(焦点を当てるべき)。ビジネスモデル、(定量化や因果パスの見える化
の前に)ロジックの言語化が重要、そしてトラックレコード作りにより、積極的な成
長投資の後押しを得られる。
➢ P.13 フジクラの例参照
原則からガイダンスに修正したが、「基本方針」は原則
の名残のよう。「目的」の方がガイダンスに相応しいの
ではないか。
健全な「バトル」は重要だが、強すぎないか。代わりに「
課題を解決する建設的」に置き換えてはどうか。または
、「バトルコミュニケーション(課題を解決する建設的且
つ積極的なコミュニケーション)」など説明を加えること
が考えられる。
「メッセージの社内外への発信」が本当に成果なのか。
成果は、「技術(サービスや製品の品質を含む)で勝っ
てビジネスで負ける問題の解消」などではないか。
起点とした→含むビジネスモデルの
役割分担や意思決定責任が整理→全社最適思考の軸
、整合性が確認
原則からガイダンスに修正したが、「基本方針」は原則
の名残のよう。「目的」の方がガイダンスに相応しいの
ではないか。
成長イメージの開示→成長の実現
「因果パス」→説明
(因果パスが開示されている例は少ない)
効率→リターン、・→など、効率→リターン
(分母を削るのではなく、リターン(分子)を増加させるこ
とが重要)
体系的な→(体系的な)
(理想的だが要求が高過ぎて取組み難い)
原則からガイダンスに修正したが、「基本方針」は原則
の名残のよう。「目的」の方がガイダンスに相応しいの
ではないか。
を体系的に棚卸し→の有無、発揮の可能性を検討
可視化→言語化
(無理やり可視化するより、言語化(論理的に説明)して
みることにより改めて因果関係について考えるきっかけ
になる。)
原則からガイダンスに修正したが、「基本方針」は原則
の名残のよう。「目的」の方がガイダンスに相応しいの
ではないか。
知財・無形資産を考慮しない部門の消滅→人材魅了、
人材養成、人材成長・活躍企業への変革
原則からガイダンスに修正したが、「基本方針」は原則
の名残のよう。「目的」の方がガイダンスに相応しいの
ではないか。
企業と投資家のエンゲージメントが発生→企業と投資
家の建設的エンゲージメントによる成長投資への成功
期待の醸成
資料9
資料9
立本委員提出資料
令和 8 年 4 月 20 日(月)
【1】武井委員のご質問(CEO・TMT 特性と R&D 投資の関係)について
この点は私の専門領域であり、学術的に豊富な実証エビデンスがございます。
R&D を増やす方向に作用する CEO 特性:
(1)若年 CEO(キャリアホライズンの長さ)
(2)理系学位・ジェネラリスト経歴
(3)Output 職能(マーケ・R&D・製品開発)出身
(4)過信傾向・ナルシシズム・Promotion focus・Openness
(5)Vega 偏重報酬・長期インセンティブ
(Vega=ストックオプションの価値が株価のボラティリティ(変動性)の変化に対してどれだけ敏感かを示す
指標)
R&D を抑制する方向:
高齢、長期在任後期の硬直化、Throughput 職能出身(営業販売など出力型職能の意味)、短期市
場圧力(transient 型機関投資家)、Prevention、focus(悪い結果を起こさないこと自体が目標になる気
質)
これらは Upper Echelons Theory(Hambrick & Mason,1984)以降約 40 年の研究蓄積に基づき、メタ
分析でも頑健に確認されています。知財ガバナンスの文脈では、CEO 選任やインセンティブ設計が知的資産形
成に構造的影響を持つという含意があります。
【2】無形資産の取締役会アジェンダ化(三瓶委員・小野塚委員のご意見)
私も賛成です。機関投資家は取締役会に長期的視点での議論を期待していますが、現状では、無形資産に
関するアジェンダ設定は非常に難しい状況です。明確なルール・ガイドラインがないために、取締役会が今期の財
務数字など短期指標の検討に偏るリスクが高まっていると考えます。人的資本・知的資産の状況を定期的に取
締役会で検討する仕組みの導入を、働きかけていくべきと思います。
以上、ご参考まで。
よろしくお願い申し上げます。
筑波大学 立本 拝
資料10
第29回 知財投資活用戦略の有効な開示及びガバナンスに関する検討会
資料10
本日の議題に対する提言・見解(整理)
1.日本企業が取組むべき課題の具体化
(1)販管費に含まれる成長投資の開示
→結果として今まで/本日、開示で議論している成長投資の部分の内容(数字)を戦略的
な問題がない限り、開示していくべき。
(2)知財・無形資産に関する情報開示のあり方→本書後述
(3)人的資本経営の浸透の知財・無形資産経営への取込み→本書後述
2.価値創造を加速する無形資産・知財経営ガイダンス(案) →本書後述(先に説明)
林力一
野村総合研究所
コンサルティング事業本部
2026年4月20日
1.日本企業が取組むべき課題の具体化
日本企業が取組むべき課題の具体化:(2)知財・無形資産に関する情報開示のあり方(1/2)
Core事業のROEとSol/PF事業の顧客獲得・転換率をKPIとして開示することで、
“モノ”と“コト”をつなぐ知財・無形資産による価値創造ストーリーを示すことができる。
1) 投資判断に有用な開示項目は何か
特許の「件数」ではなく、コア事業における知財による競争優位と、ソリューション/プラットフォーム事業において知財・無形資産が担う
顧客獲得力およびコア事業への顧客転換への貢献を明示することが重要である。コア事業では排他的効力を重視したクローズ戦略によ
り競争力を確立し、Sol/PF事業では知財の提供・実施許諾を通じたオープン戦略によりエコシステムを構築する。両事業の知財戦略の
因果関係を整理し、競争力強化や顧客転換といった成果をKPIと紐付けて開示すべきである。
2) 統合報告書等での開示の具体的効果は何か
統合報告書等で両事業の知財戦略とKPIを開示することで、特許件数に依存しない価値創出メカニズムを明確化できる。コア事業では
競争優位の持続性、Sol/PF事業では顧客獲得と転換の実効性を示すことで、知財・無形資産が収益成長に与える因果関係を可視化
し、投資家・市場からの戦略理解と評価の向上につながる。価値創造ストーリーの共有により投資家対話が深まり、競合との比較でコア
事業とSol/PF事業への資源配分への納得感が醸成される。結果として、資本市場での評価(PER向上等)の改善に直結する。
産業構造の進化と開示の重点
競争環境の変化:
コモディティ化の進展・サプライチェーン断絶から、
Core単独では勝ちにくい状況になっている。
CoreとSol/PFの投資配分は業界・競争状況で変わる。
3) 企業特性を踏まえた実効的な開示をどう実現するか
企業特性を踏まえた実効的な開示を実現するには、産業構造の変化を前提に事業戦略・技術戦略・知財戦略を一体で見直し、その変
化が価値創出にどう結び付くかを示すことが重要である。自社の競争源泉が製品、データ、サービス、エコシステムのいずれにあるかを
踏まえ、戦略転換の背景と成果をKPIとともに開示することで、企業固有のストーリーが明確になる。
4) 人的資本開示との接続をどう図るか
人的資本開示との接続では、事業・技術・知財戦略の転換を支える人材マネジメントを明示することが重要である。新領域への人材採用、
他社連携やM&Aで獲得した人材の統合・活用を通じ、どの能力が価値創出に結び付いたかを示す。戦略転換と人材投資・配置・定着の
関係を一体で開示することで、人的資本の実効性が可視化される。
Core事業 (現在の収益性)
ROE
ROIC
資本効率
電機業界の先行事例
化学業界の変革期
Sol/PF事業 (将来の成長性)
利益率
未獲得顧客数
Core転換率
利用事業者数
データ蓄積
市場浸透
自動車業界の最前線 (SDV)
Copyright(C) Nomura Research Institute, Ltd. All rights reserved.
1
1.日本企業が取組むべき課題の具体化
日本企業が取組むべき課題の具体化:(2)知財・無形資産に関する情報開示のあり方(2/2)
Core事業で現在の収益性(ROE)を高め、Sol/PF事業で将来の成長期待(PER)を
創出し、企業価値(PBR)を向上させる(知財・無形資産によるPBR=ROE×PERへの効果を示す)。
PBR分解図
PBR
コア事業
(モノ)
=
ROE
自己資本利益率
コア事業の収益性
×
Sol/PF事業
(コト)
×
PER
株価収益率
期待成長率
Profitability × Growth
→
将来の
成長期待
未獲得顧客
Now(現在)
+12.5%
ROEの源泉(今の稼ぐ力)
PERの源泉(将来の伸びる力)
コア事業の資本効率を高める(ROIC向上)
未獲得顧客の新規獲得と蓄積
高収益な事業構造への転換
新規顧客をコア事業へ転換する力
資本の最適配分(不採算事業からの撤退)
知財・無形資産を活用した成長ストーリー
「資本コスト以上の利益を出せているか」
Next(将来)
+20%
80%
「市場から将来の成長を期待されているか」
注意:ROE<資本コストの状態で成長率だけを上げても価値毀損。まず"稼ぐ力の確立"が先決。
Tell(開示)
Q4
価値創造は"資本コストを超える成長"で初めて実現する
コア事業のROEとソリューション事業のPER相当KPIを組み合わせ、PBR向上の両輪とする。
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2
1.日本企業が取組むべき課題の具体化
日本企業が取組むべき課題の具体化:(3)人的資本経営の浸透を知財・無形資産経営にどう取り込むか
人的資本経営の成功要因は人材を経営課題として引き上げた点にあり、知的資本
でも、経営への効果を示す知財・無形資産KPIを設計し進捗管理することが重要。
人的資本経営で進んだ要素
1
知財・無形資産経営への取込み方
4つの成功要素
1
経営課題として位置づける
2
【役割・責任の明示】
各部門の役割(実行責任、説明責任、相談先、報告先)を明確に定義し、縦割りを解
消する。特に、CTO、CSO、CIOが、事業戦略・技術戦略を踏まえて、事業・領域への
技術・知財への投資判断を行うことが多い。
3
【投資家への開示】
方針とKPIを示す
人材育成の方針を明確にし、進捗を測るKPIを設定して開示する
3
経営者関与を明示する
知財の保有件数だけでなく、事業・領域への知財の投資が企業価値にどうつながる
か、KPIの設計の考え方、進捗状況による経営への効果程度まで開示する
CEOが人材戦略に直接関与していることを明示し、コミットメントを示す
4
4
対話の対象にする
【経営者の関与】
CEOは、知財経営のビジョン、変革テーマ、投資の方向性を明示する役割を担う
人材を単なるコストではなく、経営上の重要課題として位置づけ、投資・評価・開示を統
合する
2
4つの実装方法
【取組の可視化】
委員会、事業別KPI(ROE,顧客獲得数・転換率など)の知財投資の効果状況を示す
投資家との対話において、人材戦略を重要なテーマとして議論する
重要ポイント
方針→取組→指標→経営上の意味
人的資本と知財の連携
事業特性ごとの柔軟な運用
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3
2.価値創造を加速する無形資産・知財経営ガイダンス(案)
価値創造を加速する無形資産・知財経営ガイダンス(案):経営層のニーズと掘り下げるべきボトルネック
経営層は、PER改善、コモディティ化、サプライチェーン断絶の経営課題
に対して、無形資産・知財の投資・活用の効果を期待している。
① 株価・PBR改善の悩み
優先度高
② 成長投資判断の悩み
経営層の悩み
焦点を当てるべきニーズ
経営層の悩み
焦点を当てるべきニーズ
何が企業価値につながる無形資産か
見えない
知財の保有件数ではなく、知財・無形
資産が競争優位、顧客獲得、資本効率
にどうつながるかを示す必要がある
新規事業・ソリューション/PF事業への
投資判断基準がない
新規事業をコア事業と同じ短期指標で
評価してしまい、戦略的な意義や投資
回収の時間軸の違いを整理できていな
い
掘り下げるべきボトルネック
価値創造ストーリー、投資戦略、KPI、
開示の一体化が不足
提言
価値創造ストーリーと投資戦略を一体
設計し、KPIで検証
掘り下げるべきボトルネック
事業を分けた投資判断・KPI・ガバナン
スが必要
提言
事業特性に応じた投資判断・評価軸を
明確化
③ コモディティ化・価格競争の悩み
要対応
経営層の悩み
焦点を当てるべきニーズ
技術・知財で差別化の筋道が見えない
自社のコア技術を十分に棚卸しできて
おらず、新たな用途市場への展開や、
外部連携・オープン化の戦略設計が不
足している
掘り下げるべきボトルネック
外部連携・オープン化の設計不足
提言
強みの再定義、用途市場の再探索、
O&C戦略の再設計
④ サプライチェーンの断絶
経営層の悩み
焦点を当てるべきニーズ
供給網の分断や地政学リスク、調達先
の偏在などに対し、自社の技術・知財戦
略でどこまで備えられるのか見えない
供給リスクを事業戦略・技術戦略・知財
戦略と一体で見ておらず、代替技術、代
替調達先、提携先の確保、重要技術の
内製・外製判断が整理されていない
掘り下げるべきボトルネック
供給リスクと知財・技術確保の方針の整
理不足。重要技術・重要部材ごとの戦
略設計が不足
提言
重要技術・重要部材ごとに、供給リスクと
知財・技術確保の方針を整理し、必要
に応じて、主要市場ごとの技術提携や
事業提携も含めて備える
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4
2.価値創造を加速する無形資産・知財経営ガイダンス(案)
価値創造を加速する無形資産・知財経営ガイダンス(案):総合的見解
知財経営の実装では、「価値創造ストーリー」と「投資戦略」を分離せず一体
で設計することが重要であり、これにより市場との実質的な対話が可能となる。
問題意識
• 知財を「権利管理」から「価値創造の中核」へ。
• コト化・SDV等の変革局面に適合する実装(ガバナンス・投資・人材・開示)が不足。
• 特に「価値創造ストーリー」と「投資戦略」は不可分であり、別々に論じるのではなく一体で設計・開示して初めて市場対話が実効化される。
① 変革対応ガバナンス
② 価値創造×③投資の一体化
1
技術・知財投資委員会の設置:変革局面に対応した判断の重心を明確化
1
ストーリー×投資×KPIの一体設計:検証可能性を担保
2
RACIの徹底:Responsible/Accountable/Consulted/Informedを明確化
2
コア事業とソリューション/PF事業の接続:シナジー創出
3
CEOの役割:MVVと知財経営の方向性を社内外へ発信
3
財務接続:ROIC/ROEと中長期成長期待のバランス
④ 共創組織・人材
⑤市場との対話
1
横断機能の常設:知財×事業×技術の連携体制
1
開示の高度化:投資判断枠組み・KPI・事業間接続の可視化
2
人材育成:共通言語形成の横断研修
2
語り口の改善:件数ではなく「価値への寄与」で説明
3
評価制度:共創・新規顧客創出を評価項目に組込み
3
時間軸の明確化:短期・中期・長期の評価指標
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5
① 変革対応ガバナンス
2.価値創造を加速する無形資産・知財経営ガイダンス(案)
価値創造を加速する無形資産・知財経営ガイダンス(案):提言1_経営者の積極的な関与(ガバナンス設計)
委員会は、既存事業を前提とした投資判断では対応できない状況を踏まえ、各業界の産
業構造変化に有効な投資判断とガバナンス体制を構築するために設置する必要がある。
RACIの明確化
変革局面におけるガバナンス設計
1
2
3
技術・知財投資委員会の設置:モノからコトへの転換や、自動車業界のSDV化のような産業構造の変
革局面では、技術・知財投資を判断する委員会を立ち上げて、変革に対応する知財投資・活用に関
するガバナンス体制を取る必要性がある。
判断範囲の明確化:委員会は、内製・外製・提携の判断、技術提携における知財ポリシー、契約ひな
形等ガイドラインから判断がずれる例外案件について、技術・知財の投資・活用に関する判断を行う。
CEOの役割:CEOの主な役割は、知財経営のMission/Vision/Valuesと変革テーマを明示し、社内外
に方向性を発信することにある。技術・知財投資の個別判断については、必要に応じてCEOが関与
することもあるが、スタートアップや中小企業を除けば、通常はCTO、CSO、CDO(CIO)等が中心とな
って判断する体制が望ましい。CEOは投資の方向性を示し、重要案件については最終承認を行う。
役割
責任
対象
R Responsible
実行責任者
CTO/CSO/CDO
*業界・企業によって異なる
A Accountable
説明責任者
CEO
C Consulted
相談先
経営企画/事業部門
I Informed
報告先
取締役会
委員会の判断範囲と機能
CEOの役割
1 投資判断:技術・知財投資の意思決定、投資配分の最適化
4 契約管理:契約ひな形、標準条項の策定・改訂
1 インナーブランディング:社内への方向性発信
2 例外処理:標準ガイドラインから逸脱する案件の判断
5 リスク管理:知財リスクの評価・対策立案
2 アウターブランディング:社外への戦略発信
3 外部連携:技術提携、共同開発の知財ポリシー決定
6 定期レビュー:年次レビュー、投資効果の評価
3 MVV発信:知財経営の意義を明確化
※役割分担の補足説明
スタートアップ・中小企業では、CEOが技術・知財投資の判断を直接行うことが一般的。一方、大企業では、CTO、CSO、CDO(CIO)等が責任を担い、技術・知財投資委員会で判断を行う体制が望ましい。
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6
② 価値創造×③投資
2.価値創造を加速する無形資産・知財経営ガイダンス(案)
価値創造を加速する無形資産・知財経営ガイダンス(案):提言2_価値創造ストーリーと投資戦略の統合
価値創造ストーリーと投資戦略・KPI設計を一体的に行い、各事業への
投資配分と、競合等外部環境を踏まえて各事業への効果を検証する。
価値創造ストーリーと投資戦略の不可分性
投資戦略のポイント
1
一体設計の重要性:価値創造ストーリーは、無形資産・知財を強化するための投資配分とKPI管
理と一体で設計し、進捗管理を行うことで、因果パスの願望的説明を避ける。
2
因果パスの願望的説明を避ける:ストーリーだけを先に語ると抽象論に陥りやすい。投資配賦、
KPI管理と一体で示すことで論理構造を補強し、因果説明の明確性を高める。
3
市場対話の円滑化:価値創造ストーリーと投資戦略・KPI設計を一体としてとらえることで、「5.市
場との対話の円滑化」も図られ、投資家との対話がより具体的かつ建設的なものになる。
コア事業
ソリューション/PF
ROIC/ROE中心
コア事業で未開拓顧客獲得で中期成長期待
投資配分
評価指標
競合等のコア事業とSol/PF事業の投資配分
考慮
短期利益(ROE)と将来期待収益(顧客獲得
数・転換率)を評価
価値創造ストーリーと投資戦略の統合の効果
設計要素のフロー
一体運用:ストーリー・投資・KPIを一体で管理するkとおで経
営効果に直結
2 可視化:投資判断・進捗管理の可視化
1
事業・技術
戦略策定
無形資産棚卸
不足補填検討
投資戦略
策定
KPI
設計・管理
進捗管理・
開示
3
開示:投資家との会話を円滑化
事業・技術戦略と表裏一体にあるオープン&クローズ戦略の
策定:どの技術・知財をクローズに保ち、どの技術・知財を
オープンにして外部連携や市場形成に活用するかという観
点をコア事業とソリューション/プラットフォーム事業の設計と
一体で説明する。
無形資産棚卸・潜在ニーズ発見:コア事業の既存顧客と、ソ
リューション/プラットフォーム事業の潜在顧客は一致しない
ため、マーケティングや顧客探索の方法を分けて設計する必
要がある。
無形資産不足補填検討・外部連携:ソリューション/プラット
フォーム事業での技術開発力を補完するため、外部との連携
や共同開発を積極的に推進する。
投資戦略・KPI設計:コア事業は資本効率指標(ROIC/ROE)
と直接結びつくが、ソリューション/プラットフォーム事業は中
長期的な成長期待や将来収益への接続として評価する必要
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がある。
7
③投資
2.価値創造を加速する無形資産・知財経営ガイダンス(案)
価値創造を加速する無形資産・知財経営ガイダンス(案):提言3_コア事業×Sol/PF事業の戦略設計
オープン&クローズ戦略は事業・技術戦略と表裏一体で策定されること
で、経営に知財・無形資産を繋げて価値創造へ結び付けることができる。
コア事業(既存事業)
評価軸
資本効率
内容
ROIC、ROE、営業CF重視
ソリューション/プラットフォーム事業
知財戦略
評価軸
内容
知財戦略
成長性
顧客獲得・エコシステム構築
知財オープン化(プラットフォーム化)
クローズ化(差別化源泉)
マーケティング
マーケティング
既存顧客深耕
自社コア技術・知財を活かした深化
技術開発
自社内で開発を主導
排他的効力重視
技術開発
潜在顧客探索、新用途開拓
(コア事業では獲得しきれない顧客)
外部連携・共同開発
ニーズ起点で外部連携・共同開発で補完
複数社提供可能性を視野に
※プラットフォーム事業の定義:デジタル基盤型(アプリ・API等)に加え、顧客の事業プロセス・
製造・研究開発・調達・品質管理などを継続支援するソリューション基盤型(化学メーカーの用
途開発支援等)も含まれる。
コア事業とソリューション/PF事業を分けて考える4つの統合ポイント
1 ガバナンス(投資判断を分ける)
2 評価指標(顧客獲得のKPIを分ける)
3 技術開発(外部連携で補完)
4 知財活用(プラットフォーム化)
ソリューション/PF事業は、既存のコア事業とは分
けて投資判断する。短期収益ではなく、将来の顧
客獲得やコア事業への接続を重視する
Sol/PF事業は短期利益ではなく、将来の顧客獲
得数やコア事業への顧客転換率を主要KPIとして
設定する
自社にない技術・知財は、外部との技術提携(ス
タートアップ、エンジニアリング会社等)で補いな
がら開発する。
複数事業者へ提供(オープン化)できる提携条件
とする。 複数企業に提供できる形で技術・知財を
設計する。
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8
③投資
2.価値創造を加速する無形資産・知財経営ガイダンス(案)
価値創造を加速する無形資産・知財経営ガイダンス(案):提言4_KPI設計と投資判断の可視化
コア事業とSol/PF事業のKPIと投資判断の基準をそれぞれ設計・管理す
ることで、価値創造と資本効率を両立する仕組みが構築できる。
コア事業のKPI設計
ソリューション/PF事業のKPI設計
資本効率指標
成長性指標
顧客獲得指標
契約指標
ROIC、ROE
CF、投資資源
新規顧客数
契約獲得額
資本効率重視、短期利益最大化
既存顧客深耕、Sol/PF事業への投資
コア事業の未開拓・潜在顧客の探索と獲得
新規契約の金額・件数
顧客指標
技術指標
転換指標
エコシステム指標
顧客満足度、継続率
特許質スコア(競合優位性)
コア事業への顧客転換率
連携先企業数
差別化源泉の保護度合い
ソリューション→コア事業(vehicle)
外部事業者との連携の広がり
既存顧客のロイヤルティ向上
投資判断の枠組みと可視化
投資判断
原則・例外
KPI設定
目標値・閾値
進捗管理
可視化
1
投資判断の明確化:案件類型別の閾値(閾値ROIC/顧客獲得コスト上限/LTV予測)
3
可視化:ダッシュボード(KPI・里標・資本配賦比率)
2
段階ゲート:投資判断の基準と止める判断の基準を明確化
4
開示:例外案件の説明、教訓のフィードバック
組織役割の明確化
経営企画:
コア事業では開拓しきれていない顧客層を調査し、ソリューション/PF事業
を構想。技術・知財戦略を策定し、投資判断材料を準備
事業部門:
知財部門:
コア事業のマーケティング・技術戦略を担当。既存顧客深耕に注力
権利化・契約に加え、O&C戦略の設計を経営企画と連携して実施
開示・
市場対話
外部提携の整理
技術提携:
不足する技術を補完。特にソリューション/PF技術は、スタートアップ等と
共同開発し、複数事業者への提供を見据えたプラットフォーム化を設計
事業提携:
コア事業のスケール化のため、ソリューション/PF技術・知財を外部提供。
イノベーションジレンマを避けるため、経営企画が担当
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9
④ 共創組織・人材
2.価値創造を加速する無形資産・知財経営ガイダンス(案)
価値創造を加速する無形資産・知財経営ガイダンス(案):提言5_共創を促進する組織と人材育成計画
知財経営実践へ向けて、組織横断連携と専門人材育成を強化し、価値
創造を加速する人財・組織基盤を構築する。
CxO
経営企画(ビジネスアーキテクト)
事業部門
知財部門
CxOは、知財を単なる権利管理ではなく経営資
源として位置づけ、投資配分、事業ポートフォリ
オ設計、投資家への開示を統括する。
経営企画は、コア事業とソリューション/PF事業
の全体設計を担うビジネスアーキテクトとして位
置付る。コア事業では未開拓な顧客層を調査
し、潜在市場を探索する役割を果たす。
事業部門は、コア事業に対して、顧客への提供
価値、外部との連携、知財の活用までを一体で
設計し、事業を構想する。
投資判断 ポートフォリオ
戦略設計 KPI管理 開示
顧客獲得 外部連携 知財活用
開示
組織構造:横断的連携体制
知財部門は、特許出願や契約実務に加え、
オープン知財戦略での外部連携の設計・契約
スキーム構築や経営企画への支援まで踏み込
む
権利化 契約
支援
人材育成プログラム
技術・知財投資委員会
新規事業×IP×法務
技術開発
外部連携
意思決定・監視
専門ユニット設置
R&D
パートナー
共通言語形成研修
事業構想・O&C戦略・ファイナンス
ローテーション制度
部門間異動・プロジェクト参加
経営企画部
事業部門
知財管理
戦略設計
顧客・市場
権利化
IR・開示
経営(MBA)・知財管理・法務・会計
評価制度の見直し
✓ 共創・新規顧客創出
専門資格取得支援
育成目標(例)
✓ 知財活用・事業貢献
✓ 外部連携・アライアンス
✓ 短期業績偏重是正
85% 横断連携率
12人 専門人材
90% 研修完了率
15件 外部連携
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10
⑤市場との対話
2.価値創造を加速する無形資産・知財経営ガイダンス(案)
価値創造を加速する無形資産・知財経営ガイダンス(案):提言6_市場との対話の円滑化
Core事業とSol/PF事業に対するKPI・投資判断の考え方と、戦略による
産業構造変化に対応した価値創造の道筋を共通認識化させる。
開示の要点
1 投資判断枠組みの開示:どのような考え方で技術・知財へ
の投資を判断しているか、原則と例外処理のルールを開
示する
2 コアとPFのKPI体系:コア事業とソリューション/PF事業で、
評価するKPIが異なることを明示し、その違いの理由を説
明する
時間軸の明確化
4 O&C戦略:どの技術を開き、何を守るかの考え方を明確化
し、外部連携方針を示す
短期
中期
長期
資本効率
(ROIC/ROE)
評価が中心
顧客獲得
エコシステム
形成を重視
収益化
事業間
シナジーを目指す
5 外部連携方針:共同開発、技術提携の知財ポリシーを明
確に開示する
6 リスク管理:知財リスクの評価・対策立案の考え方を説明す
る
3 事業間の相互接続:ソリューション/PF事業で獲得した顧
客が、将来どのようにコア事業の顧客に転換し、収益につ
ながるかの設計を説明する
語り口の工夫
1 件数ではなく「価値への寄与」で説明:知財の保有件数を羅列するのではなく、それがどの
ように事業価値に寄与しているかを説明する
2 経営者の言葉で戦略の意図を伝える:経営者のMVV(Mission/Vision/Values)を明確化し
、投資家との対話を円滑化
開示による効果
1 投資家理解の醸成:企業価値の透明性向上
2 資本コストの低減:資本市場からの信頼獲得
3 戦略の継続性確保:長期視点での評価
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11
資料11
資料11
検討会委員 森俊彦
2026 年 4 月 20 日
時間の関係で端折って発言しました。検討会のみなさんにお伝えしたいと考えていたことは以下のとおりです。
1.無形資産の代表の一つである人的資本については、人的資本可視化指針(改訂版)に、「まず有価
証券報告書において、経営戦略と連動した人材戦略・人的資本投資に関する情報開示を充実させる」、
「出来る限り定量的な指標及び目標を設定・モニタリング・修正する」などが、明記されましたので、プライム
市場に上場している取締役会では、一つの事例になりますが、CHRO の説明に対してバトルコミュニケーシ
ョンが行われたところです。
特に、今回の資料4の 16 ページの「改訂版全体像」の「財務諸表に与える影響を定量/定性的に説
明」、17 ページの最初の「経営戦略との連動」の「経営戦略との整合、財務アウトカムへの因果関係」につ
いては、当検討会においても、人的可視化指針(改訂版)を丸受けするでないにしても、知財・無形資
産の可視化/開示/エンゲージメントの重要な参考情報になると考えます。
2.「本日ご議論いただきたいこと」の「2.価値創造 加速 ガイダンス」の「・どのボトルネックを掘り下げるこ
とが、解像度を高める上で有効か」については、「価値創造を加速する」ために、「最も効果があるボトルネッ
クは何か」の観点からしますと、やはり、事務局資料 12 ページの「経営者の積極的な関与」のボトルネック
について、「なぜなのか?の解像度を高める掘り下げ」が、重要と考えます。
取締役会では、経営戦略が報告・決議されていきますので、ここのボトルネック解消が最重要と考えます。
そして、「その解像度を高めるために、何を掘り下げるべきか」の視座をもって、14 ページ以降のボトルネック
も掘り下げていく。 取締役会での討議で、例えば、14 ページの「無形資産投資と ROIC・資本効率との
関連について、時間軸を含めた体系的な整理が、なされていない。これが、「解消すべきボトルネックだ」と、
洗い出されると、執行部門の CFO、CHRO、CTO などの「共同しての共創」が強化される、という流れでは
ないか、と考えます。
なお、12 ページの「基本方針」の「CEO 主導でのバトルコミュニケーション」のところですが、プライム市場・
上場企業を中心に、「経営の監督」と「業務の執行」の分離に関する海外投資家の目線も厳しいため、取
締役会議長は、CEO ではないケースが増えてきていますので、「取締役会でのバトルコミュニケーションを通
じて」が、良いのではないか、と思います。
次の「・経営層のどのようなニーズに焦点を当てるべきか」についても、「コーポレートガバナンス・コード改定
について」の「原則 4-1 取締役会の役割・責務」に、知財・無形資産が明記されますので、今述べましたよ
うな「取締役会でのバトルコミュニケーション」によって、「解消するべきボトルネック」が洗い出され、次なる価
値向上への執行部門の共創が促されていく、と考えます。
もちろん、取締役会に上がる前の段階の「執行部門の経営会議」で、「しっかりバトルコミュニケーションが
行われる」ことも不可欠であると、考えます。
3.「1.課題の具体化」について、
(1)販管費については、協和キリン様などの事例が参考になりました。 「販管費増のどの項目が人件
費増や DX・RD 投資であるかを示しながら、中長期的な企業価値向上を目指していることを、できれば時
間軸を含め開示する」と、「投資家により評価される」ので、良いと考えます。
(2)情報開示については、「何を開示対象とすることが効果的か」について、経営戦略として重要なオー
プンクローズ戦略との関係も、整理して開示すると、良いと考えます。
(3)人的資本については、優れた人的資本がなければ、知財・無形資産は生まれませんし、知財・無
形資産を可視化し、適切に管理・活用しなければ、将来収益に結びつきません。そして、強力なブランドや
サプライチェーン、組織文化などの知財・無形資産があれば、さらに優れた人材が集まり、人的資本が、さら
に強化されます。したがいまして、「人的資本と知財・無形資産は、企業の競争優位性を持続的に構築す
るループ」という発想と、開示、エンゲージメントが重要と考えます。
以上
資料12
参考1
コーポレートガバナンス・コード
~会社の持続的な成長と中長期的な企業価値の向上のために~
(改訂案)
コーポレートガバナンス・コードについて
本コードにおいて、
「コーポレートガバナンス」とは、上場会社が、株主をはじめ顧客・
従業員・地域社会等の立場を踏まえた上で、透明・公正かつ迅速・果断な意思決定を行う
ための仕組みを意味する。
5
本コードは、実効的なコーポレートガバナンスの実現に資する主要な原則を取りまと
めたものであり、これらが適切に実践されることは、それぞれの上場会社において持続
的な成長と中長期的な企業価値の向上のための自律的な対応が図られることを通じて、
上場会社、投資家、ひいては経済全体の発展にも寄与することとなるものと考えられる。
本コードの目的
10
1.上場会社は、株主から経営を付託された者としての責任(受託者責任)をはじめ、
様々なステークホルダーに対する責務を負っていることを認識して運営されることが
重要である。本コードは、こうした責務に関する説明責任を果たすことを含め会社の
意思決定の透明性・公正性を担保しつつ、これを前提とした会社の迅速・果断な意思決
定を促すことを通じて、
「守りのガバナンス」にとどまらない、いわば「攻めのガバナ
15
ンス」の実現を目指すため、実効的なコーポレートガバナンスの実現に資すると考え
られる主要な原則を盛り込んだものである。
本コードは、上場会社に対してガバナンスに関する適切な規律を求めることにより、
健全な企業家精神を発揮しつつ経営手腕を振るえるような環境を整えることで、会社
の持続的な成長と中長期的な企業価値の向上を図ることを狙いとしている。本コード
20
が定める各原則(基本原則・原則)は、経営陣にとっての制約と捉えることは適切では
なく、むしろ果断な意思決定やリスクテイクを伴う事業活動を後押しするものである。
2.本コードは、市場における中長期の投資を促す効果をもたらすことをも期待してい
る。市場においてコーポレートガバナンスの改善を最も強く期待しているのは、通常、
コーポレートガバナンスの改善が実を結ぶまで待つことができる中長期保有の株主で
25
あり、こうした株主は、短期主義的な投資行動の強まりが懸念される昨今においても、
上場会社にとって引き続き重要なパートナーとなり得る存在である。本コードは、上
場会社が、各原則の趣旨・精神を踏まえ、自らのガバナンス上の課題の有無を検討し、
自律的に対応することを求めるものであるが、このような会社の取組みは、会社が自
社の中長期的な成長の道筋を自ら語ることを前提として、株主(機関投資家)と会社と
30
の間の建設的な「目的を持った対話」によって更なる充実を図ることが可能である。そ
の意味において、本コードと「『責任ある機関投資家』の諸原則《日本版スチュワード
シップ・コード》」とは、いわば「車の両輪」であり、両者が適切に相まって実効的な
コーポレートガバナンスが実現されることが期待される。
3.本コードはこのような目的で策定されたものであり、経営者がその取組みを検討・実
35
行する際に、その一助として活用することが期待される。経営者が本コードの理念を
十分に踏まえ、自社の在るべき企業統治の実現に向けた改善を能動的に進めることが、
多様なステークホルダーにとっても有益である。
- 1 -
「プリンシプルベース・アプローチ」及び「コンプライ・オア・エクスプレイン」
4.本コードは、上場会社が取るべき行動について詳細に規定する「ルールベース・アプ
ローチ」
(細則主義)ではなく、いわゆる「プリンシプルベース・アプローチ」
(原則主
義)を採用している。そのため、上場会社は、一見抽象的で大掴みな原則(プリンシプ
5
ル)について、その形式的な記載・文言に囚われることなく、その趣旨・精神に照らし
て、自らの活動が当該原則に即しているか否かを判断することが求められる。株主等
のステークホルダーが会社との間で対話を行うに当たっても、このプリンシプルベー
ス・アプローチの意義を十分に踏まえることが望まれる。
5.本コードは、いわゆる「コンプライ・オア・エクスプレイン」(原則を実施するか、
10
実施しない理由を説明する)の手法を採用している。すなわち、本コードの各原則は法
的拘束力を有する規範ではなく、会社の個別事情に照らして実施することが適切でな
いと考えるものがあれば、当該原則を「実施しない理由」を十分に説明することによ
り、一部の原則を実施しないことが考えられる。更に言えば、その置かれた状況によっ
ては、各原則を形式的にコンプライするのではなく、むしろエクスプレインを積極的
15
に選択すべき場合があることをも意味する。上場会社は、かかるコンプライ・オア・エ
クスプレインの趣旨を十分に認識し、各原則の趣旨・精神に照らしてコンプライまた
はエクスプレインを選択することが望まれる。
また、上場会社は、エクスプレインを選択した場合には、実施しない原則に係る自ら
の対応について、株主等のステークホルダーの理解が十分に得られるよう当該原則の
20
趣旨・精神に照らして工夫し丁寧に説明すべきであり、
「ひな型」的な表現により表層
的な説明に終始することはコンプライ・オア・エクスプレインの趣旨に反することを
十分に認識する必要がある。このように、上場会社は「丁寧なエクスプレイン」を行う
ことが求められる。
6.また、ある原則について単にコンプライとするのではなく、株主をはじめとするステ
25
ークホルダーに対して十分な情報提供を行う観点から、具体的な取組みの内容及び当
該取組みにより原則を実施していると評価できる合理的理由を示すことなどにより、
コンプライとする理由について説明を行うことも建設的な対話に資する取組みとして
望ましい。
7.他方、株主等のステークホルダーの側においても、コンプライ・オア・エクスプレイ
30
ンの手法の趣旨を理解し、会社の個別の状況を十分に尊重することが求められる。特
に、本コードの各原則の文言・記載を表面的に捉え、その一部を実施していないことの
みをもって、実効的なコーポレートガバナンスが実現されていない、と機械的に評価
することは適切ではなく、上場会社による「丁寧なエクスプレイン」を歓迎すべきであ
る。
35
- 2 -
本コードの適用
8.本コードにおいて示される規範は基本原則と原則から構成されているが、それらを
実施すべきか否か、また、実施すべきとしてどのように実施するかは、会社の業種、規
模、事業特性、機関設計、会社を取り巻く環境等によって異なり得る。そのため、本コ
5
ードの各原則は、それぞれの上場会社が自らの置かれた状況に応じて実効的なコーポ
レートガバナンスの実現に繋がるよう工夫して適用すべきものである。
9.本コードの全ての基本原則及び一部の原則には「解釈指針」が示されている。これら
の「解釈指針」は、コンプライ・オア・エクスプレインの対象ではないが、各原則につ
いての実質的な対応を支援する役割を担うものであり、当該原則の背景となる考え方、
10
目的のほか、当該原則を履行するための最良の手法(いわゆるベストプラクティス)や
優れた手法(いわゆるグッドプラクティス)の一つと考えられる方策も含まれる。上場
会社は「解釈指針」において示されたこれらの内容を参照しつつ対応することが期待
されるが、各原則の趣旨・精神に沿った対応がなされる限りにおいて、その具体的な実
現手法は各企業に委ねられる。
15
10.本コードの一部の原則は特定の機関設計を想定した記載ぶりとなっているが、こう
した原則についても、他の機関設計を選択する上場会社は、自らの機関設計に応じて
所要の読替えを行った上で適用することが想定される。
企業の実質的な対応を促すための「プリンシプル化」・
「スリム化」
11.2015 年の本コードの適用開始以降、我が国のコーポレートガバナンス改革には一定
20
の進捗が見られた。もっとも、持続的な成長と中長期的な企業価値の向上を真の意味
で実現するためには、形式的な対応にとどまることなく、企業と投資家の双方の取組
みによるコーポレートガバナンス改革の実質化が重要である。このような問題意識の
下、●年改訂においては、プリンシプルベース・アプローチ及びコンプライ・オア・エ
クスプレインの手法を採用する本コードの趣旨に立ち返り、本コード自体の実質化を
25
図る観点から、
「プリンシプル化」
・
「スリム化」が行われた。
具体的には、上場会社が特に注力すべき点が明確になるよう、従前の補充原則を再
整理し、ガバナンスの中核となる箇所を原則に格上げする一方、コード内の他の箇所
または法令等との重複がある箇所等を削除することにより、本コードが、経営者が中
長期的な企業価値の向上に向けた取組みを検討・実行する際の一助とすることをも目
30
的とした文書であることも踏まえ、可能な限り要点を簡潔に記載し、メリハリをつけ
た文書とされた。
12.プリンシプル化・スリム化はこのような目的で行われたものであり、上場会社の対応
コスト・開示負担の軽減のみを意図しているわけではない。当該改訂においてコンプ
ライ・オア・エクスプレインの対象から外れ「解釈指針」に移管された記載や本コード
35
から削除された記載について、当該改訂後にはその重要性が失われたと考えることは
適切ではなく、上場会社は、このようなプリンシプル化・スリム化の趣旨を十分に理解
した上で、本コードの各原則への対応の実質化に取り組むことが期待される。
- 3 -
●年改訂を踏まえた当面の留意事項
13.●年改訂にともない、改訂の趣旨等を記載した「成長投資の促進に向けたコーポレー
トガバナンス・コードの改訂について」が公表されている。上場会社や株主その他のス
テークホルダーにおいては、当該文書を参照することが期待される。
5
14.有価証券報告書には投資家の意思決定に有用かつ信頼性の高い情報が豊富に含まれ
ているため、●年改訂において、有価証券報告書を株主総会前に提出することを、株主
総会における権利行使に係る適切な環境整備の重要な例として原則1-2に記載した。
その際、有価証券報告書は株主総会開催日の3週間以上前に提出されることが最も
望ましく、選択肢として株主総会の開催時期の後ろ倒しも含めて検討することが考え
10
られる旨も同原則の解釈指針で補足している。金融庁は、企業負担も考慮し、現行法制
下で一般化している実務運用からすると株主総会開催日の3週間以上前の開示は必ず
しも容易ではないとの認識の下、法務省とも連携しつつ、法制審議会において議論さ
れている有価証券報告書と事業報告等の一本化・会社法上の監査と金融商品取引法上
の監査の一元化や、有価証券報告書の記載事項の整理といった制度的な検討も並行し
15
て進める。
- 4 -
基本原則
【株主の権利・平等性の確保、株主との対話】
1.
上場会社は、株主の権利が実質的に確保されるよう適切な対応を行うとともに、
株主がその権利を適切に行使することができる環境の整備を行うべきである。
5
また、上場会社は、株主の実質的な平等性を確保すべきである。
特に、少数株主や外国人株主については、株主の権利の実質的な確保、権利行使
に係る環境や実質的な平等性の確保に課題や懸念が生じやすい面があることから、
十分に配慮を行うべきである。
上場会社は、その持続的な成長と中長期的な企業価値の向上に資するため、株主
10
総会の場以外においても、株主との間で建設的な対話を行うべきである。
【株主以外のステークホルダーとの適切な協働】
2.
上場会社は、会社の持続的な成長と中長期的な企業価値の創出は、従業員、顧客、
取引先、債権者、地域社会をはじめとする様々なステークホルダーによるリソース
15
の提供や貢献の結果であることを十分に認識し、これらのステークホルダーとの適
切な協働に努めるべきである。
取締役会・経営陣は、これらのステークホルダーの権利・立場や健全な事業活動
倫理を尊重する企業文化・風土の醸成に向けてリーダーシップを発揮すべきである。
20
【適切な情報開示と透明性の確保】
3.
上場会社は、会社の財政状態・経営成績等の財務情報や、経営戦略・経営課題、リ
スクやガバナンスに係る情報等の非財務情報について、法令に基づく開示を適切に
行うとともに、法令に基づく開示以外の情報提供にも主体的に取り組むべきである。
その際、取締役会は、開示・提供される情報が株主との間で建設的な対話を行う
25
上での基盤となることも踏まえ、そうした情報(とりわけ非財務情報)が、正確で利
用者にとって分かりやすく、情報として有用性の高いものとなるようにすべきであ
る。
【取締役会等の責務】
30
4.
上場会社の取締役会は、株主に対する受託者責任・説明責任を踏まえ、会社の持
続的な成長と中長期的な企業価値の向上を促し、収益力・資本効率等の改善を図る
べく、
(1)企業戦略等の大きな方向性を示すこと
(2)経営陣による適切なリスクテイクを支える環境整備を行うこと
35
(3)独立した客観的な立場から、経営陣(執行役及びいわゆる執行役員を含む)・
取締役に対する実効性の高い監督を行うこと
をはじめとする役割・責務を適切に果たすべきである。
- 5 -
第1章
株主の権利・平等性の確保、株主との対話
【基本原則1】
5
上場会社は、株主の権利が実質的に確保されるよう適切な対応を行うとともに、株
主がその権利を適切に行使することができる環境の整備を行うべきである。
また、上場会社は、株主の実質的な平等性を確保すべきである。
特に、少数株主や外国人株主については、株主の権利の実質的な確保、権利行使に
係る環境や実質的な平等性の確保に課題や懸念が生じやすい面があることから、十分
10
に配慮を行うべきである。
上場会社は、その持続的な成長と中長期的な企業価値の向上に資するため、株主総
会の場以外においても、株主との間で建設的な対話を行うべきである。
解釈指針
15
上場会社には、株主を含む多様なステークホルダーが存在しており、こうしたステ
ークホルダーとの適切な協働を欠いては、その持続的な成長を実現することは困難で
ある。その際、資本提供者は重要な要であり、株主はコーポレートガバナンスの規律に
おける主要な起点でもある。上場会社には、株主が有する様々な権利が実質的に確保
されるよう、その円滑な行使に配慮することにより、株主との適切な協働を確保し、持
20
続的な成長に向けた取組みに邁進することが求められる。
また、上場会社は、自らの株主を、その有する株式の内容及び数に応じて平等に取り
扱う会社法上の義務を負っているところ、この点を実質的にも確保していることにつ
いて広く株主から信認を得ることは、資本提供者からの支持の基盤を強化することに
も資するものである。
25
上場会社は、株主の権利の重要性を踏まえ、その権利行使を事実上妨げることのな
いよう配慮すべきである。とりわけ、少数株主にも認められている上場会社及びその
役員に対する特別な権利(違法行為の差止めや代表訴訟提起に係る権利等)について
は、その権利行使の確保に課題や懸念が生じやすい面があることから、十分に配慮を
行うべきである。上場会社は、少数株主と経営陣・支配株主との間には構造的に利益相
30
反や情報の非対称性の問題があることから、例えば、
(ⅰ)買収への対応方針の導入・
対抗措置の発動は経営陣・取締役会の保身を目的としないか、
(ⅱ)支配権の変動や大
規模な希釈化をもたらす資本政策(増資、MBO等を含む)は既存株主を不当に害する
ものでないか、
(ⅲ)関連当事者間の取引は会社や株主共同の利益を害するものでない
か等の観点から必要性・合理性を検討するなど、適正な手続に従い、少数株主の利益に
35
配慮すべきである。また、支配株主は、会社及び株主共同の利益を尊重し、少数株主を
不公正に取り扱ってはならないのであって、支配株主を有する上場会社には、少数株
- 6 -
主の利益を保護するためのガバナンス体制の整備が求められる。
また、上場会社は、資本政策の動向が株主の利益に重要な影響を与え得ることを踏
まえ、株主の権利を実質的に確保するための重要な前提として、資本政策の基本的な
方針について説明を行うべきである。
5
「
『責任ある機関投資家』の諸原則《日本版スチュワードシップ・コード》
」において、
機関投資家には、投資先企業やその事業環境等に関する深い理解に基づく建設的な「目
的を持った対話」
(エンゲージメント)を行うことが求められている。上場会社にとっ
ても、株主と平素から対話を行い、具体的な経営戦略や経営計画などに対する理解を
得るとともに懸念があれば適切に対応を講じることは、経営の正統性の基盤を強化し、
10
持続的な成長に向けた取組みに邁進する上で極めて有益である。経営陣・取締役が、株
主との対話を通じてその声に耳を傾け、その関心・懸念に正当な関心を払うとともに、
自らの経営方針を株主に分かりやすい形で明確に説明しその理解を得る努力を行い、
株主を含むステークホルダーの立場に関するバランスのとれた理解と、そうした理解
を踏まえた適切な対応に努めるべきである。経営陣・取締役が、株主との対話を通じて
15
その声に耳を傾けることは、資本提供者の目線からの経営分析や意見を吸収し、持続
的な成長に向けた健全な企業家精神を喚起する機会を得る、ということも意味する。
- 7 -
【原則1-1.株主との建設的な対話】
(1) 上場会社は、株主からの対話の申込みに対しては、会社の持続的な成長と中
長期的な企業価値の向上に資するよう、合理的な範囲で前向きに対応すべきで
ある。取締役会は、株主との建設的な対話を促進するための体制整備・取組み
5
に関する方針を検討・承認し、開示すべきである。
(2) 株主との対話には、株主の希望と面談の主な議題も踏まえた上で、合理的な
範囲で、経営陣、社外取締役を含む取締役または監査役が臨むことを基本とす
べきである。
(3) 上場会社は、株主と行った対話の内容を踏まえ、必要に応じて社内で情報共
10
有や検討を行うなど、適切に対応すべきである。
解釈指針
株主との建設的な対話を促進するための方針には、少なくとも、
(ⅰ)株主との対話
全般について、下記(ⅱ)~(ⅴ)に記載する事項の検討・実行を含めその統括を行い、
建設的な対話が実現するように目配りを行う経営陣または取締役の指定、
(ⅱ)対話を
15
補助するIR担当、経営企画、総務、人事、財務、経理、法務部門等の社内部門による
有機的な連携のための方策、
(ⅲ)個別面談以外の対話の手段(例えば、投資家説明会
やIR活動)の充実に関する取組み、
(ⅳ)対話において把握された株主の意見・懸念
の経営陣や取締役会に対する適切かつ効果的なフィードバックのための方策、
(ⅴ)対
話に際してのインサイダー情報やいわゆるフェア・ディスクロージャー・ルールが適
20
用される重要情報の管理に関する方策を記載すべきである。
上場会社は、面談の主な議題によっては社外取締役が対話の対応者となるべき場面
があることを認識した上で、株主との対話を建設的なものとする観点から、株主の希
望と対話の主な議題を踏まえ、対話ごとに適切な対応者を選定すべきである。
25
【原則1-2.株主総会における権利行使】
上場会社は、株主総会が株主との建設的な対話の場であることを踏まえ、株主の視
点に立って、有価証券報告書を株主総会開催日前に提出するなど株主総会において株
主が適切な判断を行うことに資すると考えられる情報を必要に応じ適確に提供する、
30
株主総会開催日や議決権行使に係る基準日をはじめとする株主総会関連の日程を適
切に設定する、プライム市場上場会社は、少なくとも機関投資家向けに議決権電子行
使プラットフォームを利用可能とするなど、株主総会における権利行使に係る適切な
環境整備を行うべきである。
解釈指針
35
株主総会は株主にとって議決権行使等を通じて上場会社に対して直接意見を発信す
ることができる数少ない機会であり、株主との建設的な対話を行うことができる場の
- 8 -
一つであることを踏まえ、上場会社は、株主総会において株主が適切な判断を行うこ
とができるよう、例えば以下の点について、株主の視点に立って適切な環境整備を行
うべきである。
(ⅰ)
5
有価証券報告書には役員報酬や政策保有株式等のガバナンス情報等、投資家
がその意思を決定するに当たって有用かつ信頼性の高い情報が豊富に含まれて
いることから、本来、株主総会開催日の3週間以上前に提出されることが最も
望ましいと考えられる。そのため、株主総会開催日や議決権行使に係る基準日
を従前の慣行に基づく時期から後ろ倒しすることも含めて検討する。
(ⅱ)
10
株主が総会議案の十分な検討期間を確保することができるよう、招集通知に
記載する情報を、株主総会の招集に係る取締役会決議から招集通知を発送する
までの間に、TDnet や自社のウェブサイトにおいて電子的に公表する。
(ⅲ)
自社の株主における機関投資家や海外投資家の比率等も踏まえ、議決権の電
子行使を可能とするための環境作り(議決権電子行使プラットフォームの利用
等)や招集通知の英訳を進める。
15
(ⅳ) 信託銀行等の名義で株式を保有する機関投資家等が、株主総会において、信託
銀行等に代わって自ら議決権の行使等を行うことをあらかじめ希望する場合に
対応するため、信託銀行等と協議しつつ検討を行う。
20
【原則1-3.株主総会で相当数の反対があった会社提案議案】
取締役会は、株主総会において可決には至ったものの相当数の反対票が投じられた
会社提案議案があったと認めるときは、反対の理由や反対票が多くなった原因の分析
を行い、株主の権利の確保に資するよう適切に対応すべきである。
解釈指針
25
例えば、株主に対して、反対の理由や反対票が多くなった原因の分析結果や、当該分
析を踏まえた上場会社の対応状況等の説明を行うことが考えられる。
【原則1-4.政策保有株式】
30
上場会社が政策保有株式として上場株式を保有する場合には、政策保有株式の縮減
に関する方針・考え方など、政策保有に関する方針を開示すべきである。また、毎年、
取締役会で、個別の政策保有株式について、保有目的が適切か、保有に伴う便益やリ
スクが資本コストに見合っているか等を具体的に精査し、保有の適否を検証するとと
もに、そうした検証の内容について開示すべきである。
35
上場会社は、政策保有株式に係る議決権の行使について、適切な対応を確保するた
めの具体的な基準を策定・開示し、その基準に沿った対応を行うべきである。
上場会社は、自社の株式を政策保有株式として保有している会社(政策保有株主)
- 9 -
からその株式の売却等の意向が示された場合には、取引の縮減を示唆することなどに
より、売却等を妨げるべきではない。
上場会社は、政策保有株主との間で、取引の経済合理性を十分に検証しないまま取
引を継続するなど、会社や株主共同の利益を害するような取引を行うべきではない。
5
- 10 -
第2章
株主以外のステークホルダーとの適切な協働
【基本原則2】
5
上場会社は、会社の持続的な成長と中長期的な企業価値の創出は、従業員、顧客、
取引先、債権者、地域社会をはじめとする様々なステークホルダーによるリソースの
提供や貢献の結果であることを十分に認識し、これらのステークホルダーとの適切な
協働に努めるべきである。
取締役会・経営陣は、これらのステークホルダーの権利・立場や健全な事業活動倫
10
理を尊重する企業文化・風土の醸成に向けてリーダーシップを発揮すべきである。
解釈指針
上場会社には、株主以外にも重要なステークホルダーが数多く存在する。これらの
ステークホルダーには、従業員をはじめとする社内の関係者や、顧客・取引先・債権者
15
等の社外の関係者、更には、地域社会のように会社の存続・活動の基盤をなす主体が含
まれる。上場会社は、人的資本への投資等や適切な分配を行う、取引先と公正・適正な
取引(サプライチェーンにおける適正な価格転嫁を含む)を行うなど、これらのステー
クホルダーと適切に協働することにより初めて、自らの持続的な成長と中長期的な企
業価値の創出を達成することができることを十分に認識すべきである。
20
上場会社が、こうした認識を踏まえて適切な対応を行うことは、社会・経済全体に利
益を及ぼすとともに、その結果として、会社自身にも更に利益がもたらされる、という
好循環の実現に資するものである。なお、地域社会に資する投資を行うことも、中長期
的な企業価値の向上につながる場合には、会社の存続・活動の基盤をなす主体を活性
化するという意味において重要である。
25
そのような認識の下、上場会社は、ステークホルダーとの適切な協働やその利益の
尊重、健全な事業活動倫理などについて、会社としての価値観を示しその構成員が従
うべき行動準則を定め、実践すべきである。取締役会は、行動準則の策定・改訂の責務
を担い、これが国内外の事業活動の第一線にまで広く浸透し、遵守されるようにすべ
きである。
30
- 11 -
【原則2-1.中長期的な企業価値向上の基礎となる経営理念の策定】
上場会社は、自らが担う社会的な責任についての考え方を踏まえ、様々なステーク
ホルダーへの価値創造に配慮した経営を行いつつ中長期的な企業価値向上を図るべ
きであり、こうした活動の基礎となる経営理念を策定すべきである。
5
【原則2-2.社内の多様性の確保】
上場会社は、ジェンダーや国際性、経歴(中途採用を含む)
、年齢、文化的背景やこ
れらに限られない観点から、中核人材への登用等における多様性の確保についての考
10
え方と自主的かつ測定可能な目標を決定するとともに、その状況を開示すべきであ
る。
また、多様性の確保に向けた人材育成方針と社内環境整備方針をその実施状況と併
せて開示すべきである。
解釈指針
15
社内に異なる経験・技能・属性を反映した多様な視点や価値観が存在することは、イ
ノベーションや新しい価値創造の源泉であり、会社の変革や持続的な成長を確保する
上での強みとなり得る。上場会社は、持続的な成長に向けた人材戦略の重要性に鑑み、
ジェンダー・国際性・経歴(中途採用を含む)
・年齢・文化的背景やこれらに限られな
い観点から、上場会社が置かれた状況に応じた多様性を確保するための考え方と自主
20
的かつ測定可能な目標を決定すべきである。
【原則2-3.内部通報】
上場会社は、内部通報に係る適切な体制整備を行い、取締役会は、その運用状況を
25
監督すべきである。
解釈指針
上場会社は、その従業員等が、不利益を被る危険を懸念することなく、違法または不
適切な行為・情報開示に関する情報や真摯な疑念を伝えることができるよう、また、伝
えられた情報や疑念が客観的に検証され適切に活用されるよう、内部通報に係る体制
30
整備の一環として、経営陣から独立した窓口の設置を行うべきであり、また、情報提供
者の秘匿と不利益取扱の禁止に関する規律を整備すべきである。
【原則2-4.企業年金のアセットオーナーとしての機能発揮】
35
上場会社は、企業年金の積立金の運用が、従業員の安定的な資産形成に加えて自ら
の財政状態にも影響を与えることを踏まえ、企業年金が運用(運用機関に対するモニ
- 12 -
タリングなどのスチュワードシップ活動を含む)の専門性を高めてアセットオーナー
として期待される機能を発揮できるよう、運用に当たる適切な資質を持った人材の計
画的な登用・配置などの人事面や運営面における取組みを行うとともに、そうした取
組みの内容を開示すべきである。その際、上場会社は、企業年金の受益者と会社との
5
間に生じ得る利益相反が適切に管理されるようにすべきである。
- 13 -
第3章
適切な情報開示と透明性の確保
【基本原則3】
5
上場会社は、会社の財政状態・経営成績等の財務情報や、経営戦略・経営課題、リ
スクやガバナンスに係る情報等の非財務情報について、法令に基づく開示を適切に行
うとともに、法令に基づく開示以外の情報提供にも主体的に取り組むべきである。
その際、取締役会は、開示・提供される情報が株主との間で建設的な対話を行う上
での基盤となることも踏まえ、そうした情報(とりわけ非財務情報)が、正確で利用
10
者にとって分かりやすく、情報として有用性の高いものとなるようにすべきである。
解釈指針
上場会社には、様々な情報を開示することが求められている。これらの情報が法令
に基づき適時適切に開示されることは、投資家保護や資本市場の信頼性確保の観点か
15
ら不可欠の要請であり、取締役会・監査役・監査役会・会計監査人は、この点に関し財
務情報に係る内部統制体制の適切な整備をはじめとする重要な責務を負っている。
また、上場会社は、会社の意思決定の透明性・公正性を確保し、実効的なコーポレー
トガバナンスを実現するとの観点から、法令及び本コードの各原則において開示する
ことが求められる事項のほか、それら以外の項目の情報提供にも主体的に取り組むべ
20
きである。
更に、我が国の上場会社による情報開示は、計表等については、様式・作成要領など
が詳細に定められており比較可能性に優れている一方で、会社の財政状態、経営戦略、
リスク、ガバナンスや社会・環境問題に関する事項などについて説明等を行ういわゆ
る非財務情報を巡っては、ひな型的な記述や具体性を欠く記述となっており付加価値
25
に乏しい場合が少なくない、との指摘もある。取締役会は、こうした情報を含め、開
示・提供される情報が可能な限り利用者にとって有益な記載となるよう積極的に関与
を行う必要がある。
法令に基づく開示であれそれ以外の場合であれ、適切な情報の開示・提供は、情報の
非対称性の下におかれている株主等のステークホルダーと認識を共有し、その理解を
30
得るための有力な手段となり得るものであり、
「
『責任ある機関投資家』の諸原則《日本
版スチュワードシップ・コード》
」を踏まえた建設的な対話にも資するものである。
- 14 -
【原則3-1.情報開示の充実】
上場会社は、法令に基づく開示を適切に行うことに加え、以下の事項について開示
し、主体的な情報発信を行うべきである。
(1)会社の目指すところ(経営理念等)や経営戦略、経営計画
5
(2)本コードのそれぞれの原則を踏まえた、コーポレートガバナンスに関する
基本的な考え方と基本方針
(3)取締役会が経営陣・取締役の報酬を決定するに当たっての方針と手続
(4)取締役会が経営陣の選解任と取締役・監査役候補の指名を行うに当たって
の方針と手続
10
(5)取締役会が上記(4)を踏まえて経営陣の選解任と取締役・監査役候補の
指名を行う際の、個々の選解任・指名についての説明
【原則3-2.英文開示】
15
上場会社は、自社の株主における海外投資家等の比率も踏まえ、合理的な範囲にお
いて、英語での情報の開示・提供を進めるべきである。
【原則3-3.会計監査人】
20
会計監査人及び上場会社は、会計監査人が株主・投資家に対して責務を負っている
ことを認識し、適正な監査の確保に向けて適切な対応を行うべきである。
解釈指針
監査役会は、少なくとも、
(ⅰ)会計監査人候補を適切に選定し会計監査人を適切に
評価するための基準の策定、
(ⅱ)会計監査人に求められる独立性と専門性を有してい
25
るか否かについての確認を行うべきである。取締役会及び監査役会は、少なくとも、
(ⅲ)高品質な監査を可能とする十分な監査時間の確保、
(ⅳ)会計監査人からCEO・
CFO等へのアクセス(面談等)の確保、
(ⅴ)会計監査人と監査役(監査役会への出
席を含む)
、内部監査部門や社外取締役との十分な連携の確保、
(ⅵ)会計監査人が不正
を発見し適切な対応を求めた場合や、不備・問題点を指摘した場合の会社側の対応体
30
制の確立を行うべきである。
- 15 -
第4章
取締役会等の責務
【基本原則4】
5
上場会社の取締役会は、株主に対する受託者責任・説明責任を踏まえ、会社の持続
的な成長と中長期的な企業価値の向上を促し、収益力・資本効率等の改善を図るべく、
(1)企業戦略等の大きな方向性を示すこと
(2)経営陣による適切なリスクテイクを支える環境整備を行うこと
(3)独立した客観的な立場から、経営陣(執行役及びいわゆる執行役員を含
10
む)・取締役に対する実効性の高い監督を行うこと
をはじめとする役割・責務を適切に果たすべきである。
解釈指針
取締役・監査役は、株主によって選任され、株主に対して受託者責任を負うことを認
15
識し、株主以外のステークホルダーとの適切な協働を確保しつつ、会社や株主共同の
利益のために行動すべきである。
取締役会の在るべき姿は、自らが構築した成長の道筋や会社を取り巻く状況によっ
て変動するものであり、取締役会と経営陣の役割分担の在り方も各社の実情によって
異なり得る。取締役会は、このような観点を踏まえ、取締役会の在り方について不断に
20
検討を行うべきである。
上場会社は、通常、会社法が規定する機関設計のうち主要な3種類(監査役会設置会
社、指名委員会等設置会社、監査等委員会設置会社)のいずれかを選択することとされ
ているが、いずれの機関設計を採用する場合でも、重要なことは、創意工夫を施すこと
によりそれぞれの機関の機能を実質的かつ十分に発揮させることである。
25
また、上場会社の意思決定のうちには、外部環境の変化その他の事情により、結果と
して会社に損害を生じさせることとなるものが無いとは言い切れない。その場合、経
営陣・取締役が損害賠償責任を負うか否かの判断に際しては、一般的に、その意思決定
の時点における意思決定過程の合理性が重要な考慮要素の一つとなるものと考えられ
るが、本コードには、ここでいう意思決定過程の合理性を担保することに寄与すると
30
考えられる内容が含まれており、これにより、上場会社の透明・公正かつ迅速・果断な
意思決定を促す効果を持つこととなるものと期待される。
- 16 -
【原則4-1.取締役会の役割・責務Ⅰ:企業戦略等の大きな方向付け】
取締役会は、会社の目指すところ(経営理念等)を確立し、それに向けた成長の道
筋を構築するなど、戦略的な方向付けを行うことを主要な役割・責務の一つと捉え、
具体的な経営戦略や経営計画等について建設的な議論を行うべきである。
5
また、取締役会は、経営戦略や経営計画の策定・公表に当たっては、成長の実現を
目指し、自社の資本コストを踏まえて収益計画や資本政策の基本的な方針を示すとと
もに、収益力・資本効率等に関する目標を提示し、その実現のために、成長投資(設
備・研究開発・人的資本・知的財産等の無形資産への投資等)や事業ポートフォリオ
の見直し等の経営資源の配分等に関し具体的に何を実行するのかについて説明を行
10
うべきである。
解釈指針
上場会社は、競争優位性を含む自社の強みや多様なステークホルダーについての考
慮を踏まえ、会社の目指すところ(経営理念等)に向けた成長の道筋を定め、その道筋
に沿った事業活動を行うべきであり、取締役会は、かかる成長の道筋を構築し、提示す
15
る役割・責務を負う。
取締役会は、その道筋を踏まえ、自社の資本コストを的確に把握した上で経営戦略
や経営計画の策定・公表を行うべきである。また、それらにおいて提示した収益計画や
資本政策の基本的な方針及び収益力・資本効率等に関する目標を実現するため、成長
投資や事業ポートフォリオの見直し等を行うなど、資本その他の経営資源を適切に配
20
分すべきである。
取締役会は、中長期的に企業価値を向上させる観点から、自社の収益性・資本効率・
資本コストや成長可能性及びそれらを踏まえた自社の成長フェーズ、機会コスト(あ
る選択を行った場合に失われる他の選択肢から得られる利益)等を十分に考慮した上
で、経営戦略や経営計画、それを踏まえた資本政策を実現するために具体的に何を実
25
行するのかについて、株主に分かりやすい言葉・論理で明確に説明を行うべきである。
投資先を検討するに当たっては、例えば、
(ⅰ)投資対象を自社の内部に求めるのか(設
備・研究開発・人的資本・知的財産等の無形資産への投資等)
、外部に求めるのか(M
&A・業務提携・スタートアップ出資への投資等)といった観点、
(ⅱ)短期・中長期
といった観点、
(ⅲ)国内投資(地方への人的投資・地方拠点の整備等)
、国外投資とい
30
った観点等の多様な投資機会があることを十分に認識すべきである。なお、知的財産
等の無形資産への投資については、競争力や企業価値向上の源泉であることを踏まえ、
その創出・取得・強化・保護・収益化に戦略的に取り組むべきである。
また、経営戦略や経営計画の策定・公表に当たっては、取締役会において決定された
事業ポートフォリオに関する基本的な方針や事業ポートフォリオの見直しの状況につ
35
いて分かりやすく示すべきである。
加えて、取締役会・経営陣は、中期経営計画を策定・公表した場合には、これも株主
に対するコミットメントの一つであるとの認識に立ち、その実現に向けて最善の努力
- 17 -
を行うべきである。仮に、中期経営計画が目標未達に終わった場合には、その原因や自
社が行った対応の内容を十分に分析し、株主に説明を行うとともに、その分析を次期
以降の計画に反映させるべきである。
5
【原則4-2.取締役会の役割・責務Ⅱ:適切なリスクテイクを支える環境整備】
(1) 取締役会は、経営陣による適切なリスクテイクを支える環境整備を行うべき
である。
(2) 取締役会は、自社の経営資源の配分が、成長の実現を目指して策定・公表し
10
た経営戦略や経営計画に照らし適切なものとなっているかについて不断に検
証を行うべきである。
(3) また、経営陣の報酬については、中長期的な企業価値の向上につながるよう
適切なインセンティブ付けを行うべきである。
解釈指針
15
取締役会は、経営陣による適切なリスクテイクを支える環境整備を行うことを主要
な役割・責務の一つと捉え、経営陣からの健全な企業家精神に基づく提案を歓迎しつ
つ、説明責任の確保に向けて、そうした提案について独立した客観的な立場において
多角的かつ十分な検討を行うとともに、承認した提案が実行される際には、経営陣の
迅速・果断な意思決定を支援すべきである。
20
取締役会は、自社の経営戦略や経営計画を踏まえ、持続的な成長と中長期的な企業
価値の向上に繋げるために適切なリスクテイクとなる経営資源の配分が実現されるよ
う、現預金等の金融資産や実物資産等の経営資源を成長投資等に有効活用できている
かを含め、不断に検証を行うべきである。また、これらをはじめとする経営資源の配分
や、事業ポートフォリオに関する戦略の実行が、企業の持続的な成長に資するよう、実
25
効的に監督を行うべきである。
また、取締役会は、客観性・透明性ある手続に従い、報酬制度を設計し、具体的な報
酬額を決定すべきである。その際、中長期的な会社の業績や潜在的リスクを反映させ、
健全な企業家精神の発揮に資するよう、中長期的な業績と連動する報酬の割合や、現
金報酬と自社株報酬との割合を適切に設定すべきである。
30
【原則4-3.取締役会の役割・責務Ⅲ:経営陣・取締役に対する実効的な監督①】
(1) 取締役会は、独立した客観的な立場から、適切に会社の業績等の評価を行い、
その評価を踏まえ、客観性・適時性・透明性ある手続に従い選解任を実行する
35
ことを含め、経営陣の人事に適切に反映すべきである。
特に、最高経営責任者(CEO)の選解任については、取締役会は、会社の
目指すところ(経営理念等)や具体的な経営戦略を踏まえ、CEOの後継者計
- 18 -
画(サクセッションプラン)の策定・運用に主体的に関与するとともに、後継
者候補の育成及び資質を備えたCEOの選任が十分な時間と資源をかけて計
画的に行われていくよう、適切に監督を行うべきである。また、会社の業績等
の適切な評価を踏まえ、CEOがその機能を十分発揮していないと認められる
5
場合にCEOを解任するための客観性・適時性・透明性ある手続を確立すべき
である。
(2) 取締役会は、適時かつ正確な情報開示が行われるよう監督を行うべきである。
(3) 取締役会は、経営陣・支配株主等の関連当事者と会社との間に生じ得る利益
相反を適切に管理すべきであり、あらかじめ、上場会社が関連当事者との間で
10
行う取引について、取引の重要性やその性質に応じた適切な手続を定めてその
枠組みを開示するとともに、その手続を踏まえた監視(取引の承認を含む)を
行うべきである。
解釈指針
取締役会は、独立した客観的な立場から、経営陣の人事、適時かつ正確な情報開示、
15
関連当事者取引等の管理といった経営陣・取締役に対する実効性の高い監督を行うこ
とを主要な役割・責務の一つとする。
経営の中心的役割を担う経営陣の人事はガバナンスを実効的に機能させるための根
幹であり、特にCEOの選解任は、会社における最も重要な戦略的意思決定の一つで
あることを踏まえ、取締役会は、経営陣の選解任を監督すべきである。
20
【原則4-4.取締役会の役割・責務Ⅲ:経営陣・取締役に対する実効的な監督②】
取締役会は、内部統制や全社的リスク管理体制を適切に整備すべきである。
解釈指針
25
内部統制や先を見越した全社的リスク管理は、適切なコンプライアンスの確保によ
り持続的に信頼を維持し、リスクを最小化するために重要であるのみならず、経営陣
が果断にリスクテイクを行うための裏付けとなり得るものであるから、取締役会は、
グループ全体を含めたこれらの体制を適切に構築するとともに、内部監査部門を活用
しつつ、その運用状況を監督すべきである。サイバーセキュリティリスク、国際的な経
30
済安全保障を巡る環境変化等の地政学的要因によるサプライチェーン途絶リスク及び
技術等の情報流出リスクへの対応等も、収益機会にもつながり得るものとして、リス
ク管理体制を整備する際の考慮事項に含まれ得るとともに、そうしたリスクへの対応
等が適切に行われるべきである。
35
- 19 -
【原則4-5.取締役会の役割・責務Ⅳ:サステナビリティを巡る取組み】
取締役会は、中長期的な企業価値の向上の観点から、サステナビリティを巡る課題
に積極的・能動的に取り組むべきであり、自社のサステナビリティを巡る取組みにつ
いて基本的な方針を策定するほか、適切な対応を行うべきである。
5
解釈指針
サステナビリティ(中長期的な持続可能性)は重要な経営課題であると認識されて
いる。加えて、中長期的な企業価値を判断する上でサステナビリティ情報の重要性が
世界的に高まる中、国際サステナビリティ基準審議会(ISSB)により国際的な開示
基準(ISSB基準)が策定され、各国においてサステナビリティ開示基準の適用に向
10
けた動きが進展している。こうした中、サステナビリティ課題への積極的・能動的な対
応を進めていくことが重要である。
取締役会は、気候変動などの地球環境問題への配慮、人権の尊重、従業員の健康・労
働環境への配慮や公正・適切な処遇、自然災害等への危機管理、多様性などのサステナ
ビリティに関する課題への対応はリスクの減少のみならず収益機会にもつながる重要
15
な経営課題であると認識し、会社の持続的な成長と中長期的な企業価値の向上の観点
から、これらの課題について適切な対応を行うべきである。
【原則4-6.監査役及び監査役会の役割・責務】
20
監査役及び監査役会は、その役割・責務を果たすに当たって、株主に対する受託者
責任を踏まえ、独立した客観的な立場において適切な判断を行い、能動的・積極的に
権限を行使し、取締役会においてあるいは経営陣に対して適切に意見を述べるべきで
ある。
解釈指針
25
監査役及び監査役会に期待される重要な役割・責務には、業務監査・会計監査をはじ
めとするいわば「守りの機能」があるが、こうした機能を含め、その役割・責務を十分
に果たすためには、自らの守備範囲を過度に狭く捉えることは適切でない。
監査役または監査役会は、社外取締役が、その独立性に影響を受けることなく情報
収集力の強化を図ることができるよう、社外取締役との連携を確保すべきである。
30
【原則4-7.任意の仕組みの活用】
上場会社は、会社法が定める会社の機関設計のうち会社の特性に応じて最も適切な
形態を採用するに当たり、必要に応じて任意の仕組みを活用することにより、統治機
35
能の更なる充実を図るべきである。
特に、監査役会設置会社または監査等委員会設置会社であって、独立社外取締役が
- 20 -
取締役会の過半数に達していない場合には、独立社外取締役を主要な構成員とする独
立した指名委員会・報酬委員会を設置し、適切な関与・助言を得るべきである。
プライム市場上場会社は、各委員会の構成員の過半数を独立社外取締役とすること
を基本とし、その委員会構成の独立性に関する考え方・権限・役割等を開示すべきで
5
ある。
解釈指針
最適な取締役会の在り方は各社の特性に応じて異なり得る。上場会社は、自社の状
況に応じた最適な機関設計を採用しつつ、統治機構の更なる充実を図るため、指名委
員会・報酬委員会等の任意の仕組みを有効に活用すべきである。
10
指名委員会・報酬委員会の設置は、経営陣・取締役の指名(後継者計画を含む)
・報
酬などに係る取締役会の機能の独立性・客観性と説明責任を強化する観点から重要で
ある。指名委員会・報酬委員会は、取締役会が指名や報酬などの特に重要な事項に関す
る検討を行うに当たり、ジェンダー等の多様性やスキルの観点を含め、適切な関与・助
言を行うことを責務とする。
15
【原則4-8.独立社外取締役の役割・責務】
上場会社は、独立社外取締役には、特に以下の役割・責務を果たすことが期待され
ることに留意しつつ、その有効な活用を図るべきである。
20
(1)経営陣の選解任その他の取締役会の重要な意思決定を通じ、経営の監督を
行うこと
(2)会社と経営陣・支配株主等との間の利益相反を監督すること
(3)経営陣・支配株主から独立した立場で、少数株主をはじめとするステーク
ホルダーの意見を取締役会に適切に反映させること
25
(4)経営の方針や経営改善について、自らの知見に基づき、会社の持続的な成
長を促し中長期的な企業価値の向上を図る、との観点からの助言を行うこ
と
解釈指針
独立社外取締役は、経営陣・支配株主から独立した客観的な立場で、本原則(1)~
30
(4)に挙げられる事項を中心に重要な役割・責務を主導的に果たすことが期待され
る。
例えば、独立社外取締役は、必要に応じ自身が株主との対話を行うこと等を通じて、
少数株主等のステークホルダーの意見を取締役会に反映させるよう努めることが求め
られる。また、経営陣との間で緊張感のある信頼関係を構築した上で、平時には経営陣
35
に執行を委ねつつ、監督や助言を通して取締役会における大局的な議論や意思決定を
行うことが求められる。経営陣による説明が是認できないものである場合には、反対
- 21 -
意見を述べることも自らの役割・責務を適切に果たす上で必要となる。更に、独立社外
取締役は、CEOをはじめとする経営陣の選解任(後継者計画を含む)
・報酬について、
経営陣の恣意性を排除し、中長期的な企業価値の向上の観点から適切な内容となるよ
う、指名委員会・報酬委員会において主体的に機能発揮することを含め、役割・責務を
5
果たすことが求められる。支配株主を有する上場会社においては、経営陣・支配株主と
少数株主との間に構造的な利益相反関係があるため、その役割・責務が特に重要とな
る。
他方、業績悪化・不祥事対応・企業買収などの有事の際には、経営陣から独立した立
場にあることを活用し、特に経営陣が利害関係を有する場合には意思決定の主体とし
10
て適切な判断を行い、説明責任を果たすなど、株主共同の利益を守り中長期的な企業
価値の向上に資するよう活動することが求められる。
【原則4-9.独立社外取締役の質の確保】
15
取締役会は、取締役会における率直・活発で建設的な検討への貢献が期待できるな
ど、会社の持続的な成長と中長期的な企業価値の向上に寄与するように役割・責務を
果たすことができる資質を十分に備えた人物を独立社外取締役の候補者として選定
すべきである。
解釈指針
20
独立社外取締役がその役割・責務を適切かつ実効的に果たすためには、これらの役
割・責務を果たすことができる資質を備えた人物が一定数選任されることが必要であ
り、当該人物が客観的な独立性を有することがその役割・責務の信頼・公正性を担保す
る。本原則は、このうち個々の独立社外取締役の「質」に関する原則であり、取締役会
が適切にその役割・責務を果たすための前提となるものである。
25
取締役会は、どのような人物が会社の持続的な成長と中長期的な企業価値の向上に
寄与する形で役割・責務を果たすことができるかについて、会社の目指すところ(経営
理念等)や具体的な経営戦略を踏まえて検討を行い、適切な人物を独立社外取締役と
して選定するために必要な識見・能力等の資質に関する基準を策定することも考えら
れる。
30
【原則4-10.独立社外取締役の数の確保】
上場会社は、会社の持続的な成長と中長期的な企業価値の向上に寄与するように役
割・責務を果たすことができる資質を十分に備えた独立社外取締役を選任すべきであ
35
り、プライム市場上場会社はそのような資質を十分に備えた独立社外取締役を少なく
とも3分の1(その他の市場の上場会社においては2名)以上選任すべきである。
支配株主を有するプライム市場上場会社は、取締役会において支配株主からの独立
- 22 -
性を有する独立社外取締役を少なくとも過半数(支配株主を有するその他の市場の上
場会社においては3分の1以上)選任すべきである。
また、上記にかかわらず、業種・規模・事業特性・機関設計・会社をとりまく環境
等を総合的に勘案して、過半数の独立社外取締役を選任することが必要と考えるプラ
5
イム市場上場会社(その他の市場の上場会社においては少なくとも3分の1以上の独
立社外取締役を選任することが必要と考える上場会社)は、十分な人数の独立社外取
締役を選任すべきである。
解釈指針
本原則は、独立社外取締役がその役割・責務を適切かつ実効的に果たすために必要
10
な要素のうち、
「数」に関する原則である。本原則は、上場会社に対して、一定の割合・
数以上の独立社外取締役の選任を求めるものであるが、独立社外取締役の数が確保さ
れることのみをもって直ちに独立社外取締役の役割・責務が果たされることにはなら
ず、必要な資質を備えた人物であることが前提となる。
支配株主を有するプライム市場上場会社においては、適切と考える場合には、独立
15
性を有する独立社外取締役を少なくとも過半数(支配株主を有するその他の市場の上
場会社においては3分の1以上)選任することに代えて、支配株主と少数株主との利
益が相反する重要な取引・行為について審議・検討を行う、独立社外取締役を含む独立
性を有する者で構成された特別委員会を設置することも考えられる。
また、支配株主には該当しないものの実質的な支配力を持つ株主を有する上場会社
20
においても、本原則の趣旨に沿った対応を採ることが望ましい。
【原則4-11.独立社外取締役の独立性の確保】
取締役会は、金融商品取引所が定める独立性基準を踏まえ、独立社外取締役となる
25
者の独立性をその実質面において担保することに主眼を置いた独立性判断基準を策
定すべきである。
解釈指針
独立社外取締役の質及び数が確保されることを前提として、独立社外取締役の「独
立性」が確保されることが独立社外取締役の役割・責務の信頼・公正性を担保する。
30
取締役会は、客観的に独立性を有する独立社外取締役を選定するため、例えば上場
会社と一定の資本関係・取引関係にある他の組織に所属している場合にはその組織の
影響を受けるおそれがないなど、当該独立社外取締役が一般株主と利益相反が生じる
おそれがないと実質的に評価するための客観的な独立性判断基準を策定すべきである。
35
- 23 -
【原則4-12.独立社外取締役の機能発揮】
独立社外取締役は、他の独立社外取締役との間で、独立した客観的な立場に基づく
情報交換・認識共有を図るべきである。
独立社外取締役は、経営陣との連絡・調整や監査役または監査役会との連携に係る
5
体制整備を図るべきである。
解釈指針
独立社外取締役は、独立した客観的な立場に基づく情報交換・認識共有を図り、取締
役会における議論に積極的に貢献するため、例えば、独立社外者のみを構成員とする
会合を定期的に開催することなどが考えられる。また、経営陣との連絡・調整や監査役
10
または監査役会との連携に当たっては、例えば、互選により、第一次的にこれらの連
絡・調整・連携を担当する者(
「筆頭独立社外取締役」等)を決定することなどが考え
られる。
15
【原則4-13.取締役会・監査役会の実効性確保のための前提条件】
(1) 取締役会は、その役割・責務を実効的に果たすための知識・経験・能力を全
体としてバランス良く備え、ジェンダーや国際性、経歴、年齢、文化的背景の
面を含む多様性と適正規模を両立させる形で構成されるべきであり、経営戦略
に照らして自らが備えるべきスキル等を特定すべきである。その上で、経営環
20
境や事業特性等に応じた適切な形で取締役の有するスキル等の組み合わせを
取締役の選任に関する方針・手続と併せて開示すべきである。
(2) 監査役には、適切な経験・能力及び必要な財務・会計・法務に関する知識を
有する者が選任されるべきであり、特に、財務・会計に関する十分な知見を有
している者が1名以上選任されるべきである。独立社外取締役には、他社での
25
経営経験を有する者を含めるべきである。
(3) 取締役会は、毎年、取締役会全体の実効性について分析・評価を行い、その
結果の概要を開示すべきである。
解釈指針
取締役会は、その役割・責務を果たし、経営戦略や経営計画を実行・実現するため、
30
自らが備えるべきスキル等を特定した上で、取締役会の全体としての知識・経験・能力
のバランス、多様性及び規模に関する考え方を定めるべきである。その上で、例えば、
各取締役の知識・経験・能力等を一覧化したいわゆるスキル・マトリックスを開示する
など、本原則の趣旨を踏まえた開示を行うべきである。
また、社外取締役・社外監査役をはじめ、取締役・監査役は、その役割・責務を適切
35
に果たすために必要となる時間・労力を取締役・監査役の業務に振り向けるべきであ
る。取締役・監査役が他の上場会社の役員を兼任する場合には、その数は合理的な範囲
- 24 -
にとどめるべきである。
なお、取締役会の実効性評価を実施するに際しては、自らの役割・責務を果たすため
に、取締役会としてどのような機能を発揮すべきかを踏まえた評価を行うことが効果
的である。評価の手法についても様々な方法が考えられるが、例えば、まずは各取締役
5
が自ら及び取締役会全体についての評価を行うことが考えられる。
【原則4-14.取締役会における審議の活性化等】
(1) 取締役会は、社外取締役による問題提起を含め自由闊達で建設的な議論・意
10
見交換を尊ぶ気風の醸成に努めるべきである。
(2) 取締役・監査役は、その役割・責務を実効的に果たすために、能動的に情報
を入手すべきであり、必要に応じ、会社に対して追加の情報提供を求めるべき
である。また、取締役会・監査役会は、各取締役・監査役が求める情報の円滑
な提供が確保されているかどうかを確認すべきである。
15
(3) 上場会社は、取締役会を支える部署等の人員面を含む取締役・監査役の支援
体制を整えるべきである。
解釈指針
取締役会がその役割・責務を十分に果たすためには、取締役会において実質的な審
議が十分に行われることが肝要であり、取締役会は、主体的に審議の実質化・活性化を
20
図るための取組みを行うことが期待される。
そのような取組みとして、例えば、
(ⅰ)取締役会の資料が、会日に十分に先立って
共有されるようにすること、
(ⅱ)取締役会の資料以外にも、必要に応じ、会社から取
締役に対して十分な情報が(適切な場合には、要点を把握しやすいように整理・分析さ
れた形で)提供されるようにすること、
(ⅲ)年間の取締役会開催スケジュールや予想
25
される審議事項について決定しておくこと、
(ⅳ)審議項目数や開催頻度を適切に設定
すること、
(ⅴ)審議時間を十分に確保することなどを確保しつつ、その審議の活性化
を図るべきである。
また、取締役・監査役がその役割・責務を実効的に果たすためには、取締役・監査役
からの情報入手の要請に応えることを含め、会社側からの適切な支援が必要不可欠で
30
ある。
上場会社は、取締役会及び監査役会の機能発揮に向け、内部監査部門がこれらに対
しても適切に直接報告を行う仕組みを構築すること等により、内部監査部門と取締役・
監査役との連携を確保すべきである。
取締役会の審議の活性化を図り、また、社外を含めた取締役・監査役への情報提供を
35
含めた支援を適確に行うためには、取締役会を支える部署であるいわゆる取締役会事
務局(コーポレートセクレタリー等)の機能強化等の取組みを推進することも重要で
ある。取締役会事務局は、上記(ⅰ)~(ⅴ)を含む会議運営を行う単なる取締役会の
- 25 -
事務方としての役割のみならず、取締役会やその傘下の各委員会の会議体が実効性あ
る議論の場となるよう、当該会議体の果たすべき役割・責務に照らし適切な審議事項
を定めるなど、それらの運営を能動的に行うことが望ましい。また、必要に応じて、社
外取締役・社外監査役の指示を受けて会社の情報を適確に提供できるよう社内との連
5
絡・調整にあたる役割を担うことも期待される。
なお、独立社外取締役が議長を務める場合や、取締役会における社外取締役が占め
る割合が高い場合には、取締役会事務局が果たす機能が特に大きくなると考えられる。
10
【原則4-15.取締役・監査役の研鑽】
取締役・監査役は、上場会社の重要な統治機関の一翼を担う者として期待される役
割・責務を適切に果たすため、その役割・責務に係る理解を深めるとともに、会社の
事業・財務・組織等に関する必要な知識の習得や適切な更新等の研鑽に努めるべきで
ある。このため、上場会社は、個々の取締役・監査役に適合した研鑽の機会の提供・
15
斡旋やその費用の支援を行い、研鑽の方針について開示を行うべきであり、取締役会
は、こうした対応が適切にとられているか否かを確認すべきである。
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