議事録
知財投資・活用戦略の有効な開示及びガバナンスに関する検討会
第28回 議事要旨
〇日時
: 2026年3月6日(金) 10:00-12:00
〇場所
: WEB開催
〇出席者
: 加賀谷座長、荒木委員、和泉委員、江良委員、小野塚委員、菊地委員、三瓶委員、
杉光委員、武井委員、中村委員、林委員、森委員
1.議論
(1)価値創造ストーリーの構築に資する原則(案)
・原則1から4については、ばらばらではなく統合された情報発信といった観点が重要。各原則に
おいて、企業がどう可視化するのか、どう因果パスを開示するのかといった観点を軸とした整理
をすべき。
・トップメッセージの中に、知財戦略を入れる考え方は非常に重要。一方、開示のための開示にな
ることには引き続き懸念がある。開示することで組織の横連携が活性化する、会話が始まるきっ
かけになるのであれば好ましいことであり、その点を、投資家等の外部にきちんと理解してもら
うべき。この委員会に限らず多くの方の話を聞く中で、コーポレートガバナンス・コード(CGC)
に基づく開示が、宿題のような「やらされ感」となる印象がある。本来そうした趣旨ではないこ
とは当然だが、改めて強調すべき。企業経営においては知財・無形資産を軸に企業価値を高める
ことが最も重要であり、開示がその改善につながるのであれば賛成だが、開示そのものを目的と
した議論には慎重であるべき。
・開示のための開示は避けるべきという点に賛同する。本日の発表でも、開示として評価されても
必ずしも時価総額に結びついていないという指摘があり、時価総額を直接の目標に開示を行うこ
とにはやや無理がある。むしろ、開示によってどのような行動を促し、それが中長期的にどのよ
うに価値につながるのかを説明する視点で開示を考えるべき。
・社内で行うことと、開示することは明確に分けるべき。結果として開示がガバナンスの向上につ
ながり、透明性や実効性が高まることは理解できるが、やはり秘匿して行うべき領域は重要であ
る。特に知財分野においては、開示のみを目的とした取組ではないという点を明確にし、開示と
切り離して、社内で安心して実行することの重要性を示すべき。
・知財・無形資産ガバナンスガイドライン(GGL)ver.1.0 から 3.0 までを示したマトリックス図につ
いて、理解が十分でない点がある。基本的には縦軸が事業と経営となっているが、経営がどの立
場を指すのか、CEO なのか、C-suite や CxO なのか、あるいは執行役なのかといった役割の違
いも整理するべき。
・GGL ver.2.0 では、投資家との対話の充実を目的として、課題設定や進め方を示してきた経緯が
ある。経営の中でも CEO が強い意思を持って推進する役割、取締役会が指導・監督・支援する
役割、対話を通じてこれを支える投資家の役割、実行を担う執行役や知財部門など、それぞれの
1
役割が存在する。こうした役割の尺度を明確にしなければ、ver.3.0 が誰に対して何を伝えようと
しているのかが図から分かりにくくなるのではないか。誰を対象に何を訴求し、どのような行動
を促すためのガイドラインなのかを示すことで、より分かりやすくなる。
・経営者、CEO と CxO を含めた C-suite といった経営陣がバトルコミュニケーションしながら、
今ある課題を解決すべく議論し、成長ストーリーをきちんと構築する原則であれば、大賛成であ
る。
・知財・無形資産が会社の成長の源泉であることを、CGC に記載することが最優先である。
・「価値創造ストーリーの構築に資する原則」というタイトルについて、実際には、知財・無形資
産が中心の内容である一方、価値創造ストーリー自体はより広い概念であり、不整合な点を懸念
している。「原則」という表現についても、CGC では、今回コンプライ・オア・エクスプレイン
の項目が大きく減り、原則主義に立ち返って自由度を高める方向にある中で、別途新たに「原
則」を掲げることが妥当なのか、改めて検討すべき。
・経営層が直面するボトルネックと対応づけて解消のポイントを示すという視点は、原則案を抽象
的理念にとどめず、各社が実践的な行動に移すためのものとする点で価値が高い。
・開示の観点で整理を進める点については、開示に重点を置き過ぎると、開示のための開示になる
懸念がある。投資家との対話という側面において切り出された要素が開示として位置付けられて
いるということであれば、その点がより伝わりやすく整理されるとよい。
・CGC の改訂について、知財に関する記載は原則ではなく解釈指針に位置づけられる案が現案と
なっているが、開示が求められるものという整理は維持されているので、原則か解釈指針かにか
かわらず、知財・無形資産に関する今後のアウトプットや企業の取組の重要性は変わらないと考
えている。
・見える化に関連して、最初から完成度の高い状態を求め過ぎないほうがよい。「因果パス」とい
う言葉についても、時価総額の向上に直結するような厳密な因果関係を求めるのは現実的ではな
い。因果パスという言葉から、論理的に整った硬直的な構造を想定してしまうという誤解が生じ
る。実際には各社が多様な形で考えればよいが、あまりに厳格な定義を求めると、どのようなス
トーリーを描けばよいのか分からなくなる。
・原則案についての懸念は、GGL との関係である。
「含めるべき要素を先取りしたもの」とされて
おり、その整理自体は理解できるが、両者の役割分担をより明確にすべき。整理が不十分な場
合、企業側にとって基準が二重化し、混乱を招くおそれがある。
(2)知財・無形資産投資の対象の明確化とサイロ化を生じない範囲での責任者の明確化
・重要なのは、担う責任の中身を明確にすることである。責任者を置いただけで終わる形は避ける
べき。責任者に求められる要素は三つある。一つ目はメカニズムである。知財がどのように事業
価値へ転換されるのかを理解する。業界や事業に精通し、メカニズムの仮説を持ち、ビジョンと
道筋を示せる力が要る。二つ目は体制である。どのような組織で推進するのかを設計しなければ
ならない。維持にとどまらず変革まで見据えた体制構築が求められる。三つ目は最も難しい点で
2
あるが、責任者の役割はサイロを生まないことではなく、サイロを壊すことである。知財が価値
に変わる仕組みや、自社にとって重要な知財とは何かを全社に浸透させるには、サイロの存在は
大きな障害となる。最終的にはバリューチェーン全体でベクトル合わせをしなければ価値創出に
は至らず、それを実行できる人物が責任者である。まずは直近で確度の高い分野に投資すること
が重要であるが、自社の強みや潜在力を踏まえて将来投資を行うには勇気が必要であり、その妥
当性を検証しながら確度を高め、先導できる人物こそが責任者である。
・経営戦略は全員一体となって検討すべき課題であり、その中で各自が果たす役割を明確にするこ
とは重要である。その一方で、最終的な責任は CEO をはじめとする経営トップに帰属するもの
である。その前提に立って役割と責任を整理すると、理解がしやすい。
・知財・無形資産投資の対象及び責任の明確化と、共通言語と指標の整備とは、表裏一体で進める
べき最重要課題である。責任者の設定以前に、対象と責任を担う役割の明確化が前提として必要
である。CxO の配置は企業や事業モデルによって異なるため、責任者ありきではなく、何をなす
べきかを明らかにすることが重要である。
・責任者を置くだけでなく、戦略を横断的に議論・統合する仕組みが不可欠であり、取締役会の役
割も関わってくる。知財部門と事業部門の連携が難しいという課題に対しても、トップダウンで
責任主体や権限が明確になれば、全社的な動きが取りやすくなる。
(3)知財・無形資産の形式知ベースによる意図的・戦略的な形成
・「意図的・戦略的な形成」と聞いて想起したのは、経営デザインシートである。全体像を先に設
計し、実行に移す、という考え方である。当社の反省として、まず As-Is の把握が難しい。真の
強みとは、優れた知財そのものだけでなく、それを生み出す体質や土壌といった知的資産まで含
めて捉える必要があり、そこまで踏み込んだ分析が足りていない。To-Be の設定はさらに難し
く、将来性のある筋を見極める力が要る。ただし勘に頼るだけでは不十分であり、検証を行う必
要がある。そのためには、経営層による厳しい議論や率直なコミュニケーションを行える体質が
不可欠。有望に見えても自社の強みが生かせなければ意味はなく、差別化や事業化が可能かどう
かの検証も必要である。そのため、To-Be の妥当性を判断することは非常に難しく、相応の経験
を要する。次に移行戦略であるが、道筋やビジョンが描けたとしても、一度で成功することはな
く、数多くの課題に直面する。それらを乗り越える力があるかどうかも含めて検討する必要があ
る。
「意図的・戦略的」とは、自社の真の強みは何か、それが事業として成り立つのかといった
厳しい問いに向き合い、困難な議論を重ねることを意味する。これらは反省点であると同時に、
今後共有し、提案していくべき重要な論点である。
・責任者は、様々な具体化が必要となるが、全体として責任を一人が持てるのか、それを担えるの
は CEO だけなのか、整理する必要がある。
・経営者に加え、CGC の改訂後においても取締役会の関与は引き続き重要な視点である。経営側
が戦略として掲げた以上、それをやり切らせるために取締役会がどのように関与するかが問われ
る。とりわけ、やり切る力やコーポレートカルチャーも含め、取締役会として実行を担保するた
3
めの施策や PDCA が必要。そのため、別の視点として、監督側の役割についても議論に加えて
はどうか。
・「知財・無形資産の形式知ベースによる意図的・戦略的な形成」という表現は、やや理解しにく
い。これまで、価値創造ストーリーやプロセス、企図する因果パスといった言葉を用い、As-Is
の把握や To-Be の明確化、成長ストーリーの設定を通じて、知財・無形資産による競争力強化を
提唱してきた。その上で、「形式知ベースによる意図的・戦略的」という考え方が、どこに新た
に反映されるのかを、より噛み砕いて説明すべき。これまでの延長線上の話なのか、あるいは従
来の説明が実効性に乏しいために見直すのか、整理し、説明する必要がある。
・強みの形式知化については、現状を客観的に棚卸しし可視化することが重要である。さらに、AI
活用と連動させることで、企業が十分にできていない無形資産の可視化を加速できる強力な手段
になる。
(4)販管費に含まれる成長投資の開示
・販管費の扱いについて、無形資産や知財への投資が費用として処理され、結果として投資家の財
務評価を下げてしまう点は重要な課題。無形資産投資をどのように資産計上や評価に結びつけて
いくかは、改善すべき大きなポイント。その対応策として、金融庁の指摘にもあるように、有価
証券報告書における説明の工夫が考えられる。実際、ナブテスコなどでは、有価証券報告書にお
ける記載の充実を進めてきている 1。義務的開示である有価証券報告書においても、何を目指
し、何に投資しているのかという根拠を明確に示すことは、有効な手法の一つである。
・S&P500 組み入れ企業の3つの指標について分析をした結果を、資料 8 を用いて紹介する。S&P
組み入れ企業全体を企業群①、そのなかでも自己創設無形資産を自ら意図的・戦略的に形成して
いると推定される企業を企業群②、企業群②のなかでも ROIC の高い価値創造を 10 年にわたり
安定的に継続できている企業を企業群③とした。営業利益率をみると、企業群②及び企業群③
は、無形資産形成のために販管費を多く使うので、営業利益率は、企業群①に比べて低く、販管
費率は、企業群②及び企業群③は、企業群①対比高い。一方、価値創造の代替指標ともいえる
CFROI(キャッシュフロー利益率)は、企業群③>企業群②>企業群①の順となっており、意図
的・戦略的に無形資産形成に投資することで価値創造に成功することを、裏付ける結果となる。
・外国企業は、バランスシート経営の考え方に基づいて、価値創造の源泉を強化する目的で意図
的・戦略的に無形資産を形成する投資の重要性を理解し推進している。国際会計基準や米国会計
基準では、そのような意図的・戦略的な無形資産投資をより捕捉できるように基準を見直そうと
いう動きもある。
・一方、日本企業の位置づけを確認すべく、TOPIX500 と比較すると、営業利益率は、S&P より
はるかに低く、販管費率は S&P より少し高いが、企業群②や企業群③に比べると低く、価値創
1
Annual-Security-Report-FY2024.pdf
4
造の代替指標ともいえる CFROI もはるかに低い。この点について、相当な意識改革の必要があ
ると感じている。各企業は、どういった投資をし、どういった無形資産をつくっているのか社内
で形式知化し、意図的・戦略的な形成を進めなければならない。
・無形資産投資の対象の明確化、形式知化、販管費における開示を合わせて考えると、支出項目の
洗い出しを行うことが有効。無形資産投資の対象を網羅的に整理し、その支出元を確認すると、
多くが販管費であることが明らかになる。そのうえで、何を目的としてその支出を行っているの
かを 5W1H の観点とともに整理すれば、目的や背景が明確になる。これは、意図的・戦略的な
形式知化ができているかを確認する作業でもある。
・真の強みを定義することが難しいという指摘があったが、真の強みの定義と、実際の資金使途と
は結び付く側面があると考える。棚卸しを通じて、自社の現在および将来の強みを明確にし、そ
れに対応する支出項目を整理することは重要ではないか。
・形式知に関する分析に関連した過去の研究があり、海外では販管費を無形資産と捉える議論が多
く、研究蓄積も存在する。日本において同様に販管費を将来投資として検証したところ、実態と
しては多くがコストに近い結果となった。こうした仕分けを行うことで、将来や現在の強みを形
成するために、どこに資金を投じているのかがより明確になる。
(5)経営層と知財部門の共通言語の整備、自社の強みを客観的に把握できる指標の整備
・可視化という論点にはさまざまな議論があるが、厳密性以前に、可視化がなければ前に進まな
い。可視化がなければ議論は広がらず、注目も集まらないまま終わってしまう。知財・無形資産
の議論が盛り上がらない一方で人的資本が先行したのは、可視化が進んだからである。現在は人
的資本について可視化の妥当性が議論されているが、それも可視化されたからこそ起きている現
象である。開示のための開示は望ましくないが、そもそも開示自体が十分に行われていないとい
う認識である。本日の二つの発表はいずれも重要であり、ガバナンスガイドラインにおいても、
KPI や数値化の意義をさらに整理することが、この分野を活性化させる契機になると考える。
・価値創造ストーリーの重要性には全面的に賛同するが、ストーリーだけでは企業間比較や全体像
の把握は難しい。ストーリーの中に根拠となる KPI や数値を組み込み、数値とナラティブを結び
付けることが重要である。
・KPI は目標を前提に可視化する点に本質がある。目標のない数値化には意味がなく、ストーリー
と数値を併せて示すことで KPI となる。
・因果パスは、KPI の議論とも密接に関わるが、価値創造ストーリーの中で意味のある形で開示さ
れる必要があり、単なる開示のための開示になってはならない点が重要である。一方で、本日の
冒頭のプレゼンにあったとおり、対応状況が二極化している現状を今後どう導くかによって、取
るべきアプローチは変わる。先進的な企業をさらに高度化させるのか、それとも対応が進んでい
ない企業をまず底上げするのか、それぞれ示すべき道筋は異なる。この点を KPI の議論に当ては
めると、知財分野では依然として特許出願件数などの開示と、事業や経営の言語に基づく開示と
の間に大きな隔たりがあると感じる。最低限の開示水準から、これまで理想とされてきた推奨水
5
準へ、どのように段階的につなげるかを示すモデルが必要である。そうでなければ、理解が進ま
ない企業は立ち止まったままとなる。一方で、最初から完全な形を求めるべきではないが、目指
すべき理想像は事例として示す必要がある。好事例については、何をどのようなプロセスで実現
してきたのかをより具体的に示すことが、有効である。
(6)人的資本経営の浸透や生成 AI の活用などの最近急速に発展している取組の知財・無形資産
経営への取込み
・やり切る力や組織の土壌、カルチャー、人の力が最も重要であると考えている。どれほど優れた
プレゼンテーションや知財があっても、それを結果や事業の付加価値につなげられるかどうか
は、結局は人とカルチャーに依存する。この点は最も重要な要素。投資家時代を振り返ると、外
からは分かりにくいが強い執念や熱量を持つ企業を重視してきた。そのような強さがなければ成
果は出ないと考えており、感覚的な表現ではあるが、そうした強みを開示も含めて示すことがで
きれば、投資家の関心を引くことができる。
・人材の重要性について述べる。将来のビジョンを持ち、それを実行すると本気で考える人材がい
るかどうかという点こそが、人的資本の本質である。例えばフジクラでは、光ファイバーケーブ
ル事業を 20 年前から手がけてきたが、これは将来必ず成功すると信じる人がいたからこそ継続
された。仮に当時、明確な因果パスを求めていれば、事業継続は困難であったはずである。収益
性を論理的に説明できるかどうかではなく、強くコミットする人の存在自体が一種の因果パスと
いえる面がある。
・生成 AI は業務効率化や既存ノウハウの高度化において有効である。一方で、生成 AI が創造的役
割を担う時代が到来しつつあり、新たな知財・無形資産の投資や創造において AI が果たす役割
は重要性を増している。その際には人的資本との関係も不可欠であり、創造力や全体をプロデュ
ースする能力を持つ人材が今後求められる。事務作業や機械化可能な業務は徐々に置き換えられ
る可能性がある中で、今後の知財・無形資産経営の在り方や、その投資・活用が投資家にどのよ
うに評価されるかは極めて重要なテーマである。急速な技術発展の中で将来に向けた指針を示す
必要があり、本件は検討すべき重要課題である。
・生成 AI は、探索を得意とするが、人間のようなひらめきはなく、ゼロから一を生む創造には依
然として限界がある。しかし、形式知や組織知として整理された無形資産を増幅する点では、大
きな効果を発揮する。そのため、生成 AI の時代においては、自社の無形資産を明確に把握し、
強化することは AI で可能であるが、形式知化されていなければ活用できない。形式知化ができ
ていなければ大きく出遅れるため、形式知化は一層重要となる。形式知化を進めた上で AI を活
用し、競争力を高めていくというメッセージを示せるとよい。その意味では、原則ではなく、
「AI 時代の無形資産による企業価値創造ガイダンス」といった表現のほうが適切ではないか。メ
インメッセージを、企業内での意識改革とし、その取り組みを開示し、市場から評価を得ること
を目的とすべき。
6
(7)経営とのバトルコミュニケーション
・ボトルネックのなかでも、CEO とのバトルコミュニケーションの不足とその理由の解明が最優
先である。知財・無形資産の強みを軸にした事業モデルの可視化や、資本コストを意識した
ROIC 向上の因果パスを、さらに明確に示すことが重要。その延長として開示につながる。これ
こそが CEO が最も重視している点である。因果パスを逆 ROIC も含めて可視化することで、
CTO、CFO、CHRO など各部門の専門家と議論する際の、バトルコミュニケーションの共通言
語となる。バトルコミュニケーションこそが最大のボトルネックであり、その解消には因果パス
の可視化が重要である。
・可視化あるいは因果経路の特定については GGL ver.2.0 でも強調したが、現時点で必ずしも十分
にできていないのはなぜか、では何からスタートするのかと優先順位をつけるのは重要。
(8)知財・無形資産を起点とした価値創造ストーリーの明示
・CGC のキーメッセージは成長投資の促進である。成長投資を成功させるには、価値創造ストー
リーが明確であることが前提となり、その結果、成長投資の確度が高まる。CGC ではこれを
「成長の道筋」と表現しており、これを示すよう求めることが最大のメッセージである。
・何が成長の道筋、すなわち価値創造ストーリーであるかは CGC 自体には具体的に記されていな
いが、その内容は今後さまざまな形で展開される。例えば、昨年 4 月の経済産業省の 5 原則に示
されている競争優位性や事業ポートフォリオの検討などに表れている。
・価値創造ストーリーについては、取締役会の関与が明確に求められている。CGC にもその旨が
記載されており、事業戦略の根幹として CEO や CFO が関与することは当然である。これは競
争優位性を含む議論であり、知財・無形資産が重要となる。さらに、政府方針として、企業の長
期的成長に資する事項への成長投資が求められており、その中には人的資本を含む無形資産への
投資が含まれる。したがって、価値創造ストーリーの中で、知財・無形資産をどう位置づけるか
に企業の関心は一層向かう。この流れを踏まえ、CGC の策定時期に合わせて、本検討会として
も分かりやすい形で成果を示すことが極めて重要である。
・知財・無形資産を担う分野における取組として、資料 5 で示された KPI の考え方は非常に分かり
やすく、とりわけ、資料 5 の 10 ページに示された 4 つの視点は妥当であり、十分に開示可能な
内容であると感じた。社長がどのように関与するか整理することは好ましい。
・資料 4 に示された好事例について、資料 5 の KPI の視点と合わせて、なぜ評価されるストーリ
ーなのかをより深掘りすべき。YK 値が高いという説明だけでは、特許を持たない企業や非製造
業には当てはまらないのではないかという疑問も生じる。何が本質的によいのかを分解して示さ
なければ、何を開示すればよいのかが伝わりにくい。実例を丁寧に分析し、そこから成功するス
トーリーの共通要素を導き出すほうが理解しやすい。
・抽象論ではわかりにくいところがあって、具体的事例を、何のために分析しているのかの目的意
識をもって分析して、外に整理して示すことが重要である。たとえば事例として最近話題となっ
ているフジクラの事例についても、長期にわたる取組によって将来の競争優位を確保している点
7
や、ソリューションビジネスへの展開、事業ポートフォリオ観点などの成功要因、成長の道筋が
存在している。またたとえば、
「因果パス」という言葉にしても、何か立証に近いものなどとや
や硬く読む人たちもいる多義的な概念となっている。他の委員からもご指摘があったように、ボ
ディーブロー的なものでもよいのではないかとか、シリコンバレーで成功している礎である当人
たちの強い信念とかコミットメントとか、そういう人の覚悟の面も因果パスの構成要素になりえ
るのだろう。具体的事例を分析していく作業で、いろいろな抽象的概念が何を意味するのか、直
感的に理解しやすくしていくことが重要である。
・知財開示に関わる業務を行い、海外企業を含めて開示の在り方をベンチマークしているが、海外
企業は、知財の価値創造ストーリーを含めた開示のレベルが高いと感じる。一方で、日本企業に
感じる実務上の大きな課題は、開示の必要性から、後づけで当初は考えていなかった知財と事業
の価値創造を結びつけようとする点にある。
・特に、因果パスの整理は難易度が高く、経営との関係を無理に結びつけているケースが多い。実
際には、社内に経営戦略や事業改革を担う人材がいるにもかかわらず、そうした部門との連携が
十分でないことに課題がある。この連携がうまく機能していれば、無理に開示用のストーリーを
作る必要はなくなるが、現状ではそこに課題がある。
・GGL ver.3.0 に盛り込む内容としては、知財・無形資産から事業価値を生み出すストーリーの構
築方法を示す必要がある。多くの企業では、その考え方自体が十分に整理されていない。
・特許件数についても、どの事業に対して、どの領域に知財を配置しているのかが重要である。現
在は新興企業の台頭によるコモディティ化や、経済安全保障の影響によるサプライチェーンの分
断が進んでおり、コア事業だけでは顧客に十分にアプローチできない。そのため、バリューチェ
ーン全体の価値として、ソリューション・プラットフォーム(以下 Sol-PF)事業への投資が求め
られている。知財についても、コア事業への投資とあわせて、Sol-PF 事業にどう投資するかを具
体的なストーリーとして示すことが重要。
・Sol-PF 事業に知財投資を行う意義は、コモディティ化やサプライチェーン分断の中で、コア事業
だけでは収益を確保できない点にある。どの顧客に対し、どのようなソリューションを提供し、
知財をどう活用するのかを示し、コア事業への知財の投資に加えて、Sol-PF 事業での知財のオー
プン化も含めて収益化の構造を説明する必要がある。その内容を具体的な KPI として示す必要が
ある。KPI は特許件数ではなく、コア事業の知財の開発・活用の成果は ROIC や ROE で計測す
るとよいが、Sol-PF 事業では、ソリューション契約数、売上、顧客獲得数など、収益源であるコ
ア事業への顧客の繋がりの程度が中心となる。こうした KPI と価値創造ストーリーを結びつける
考え方を十分に理解させるため、GGL に明確に示すべき。
・事業ポートフォリオ評価や事業撤退の判断においても、Sol-PF 事業を含めた知財機能の整理が不
可欠である。コア事業単独では収益性が低い場合でも、Sol-PF 事業を組み合わせることで未開拓
の顧客を獲得して収益性を高めることができる可能性が生まれるケースがある。過去にインテル
やクアルコムがオープン・クローズ戦略へと発展した背景も、事業環境の悪化の中で意図的では
なく偶発的に収益機会を求め、Sol-PF 事業を組み込んだ結果である。これを参考に、現在の経
8
営・事業ポートフォリオ評価・マネジメントにおいて、コア事業だけでは収益性が芳しくない場
合は特に意図的にオープン・クローズの仕組みを設計し、顧客獲得につなげるストーリーを描
き、KPI を設定し、その成果を経営者と議論しながら示していく必要がある。
2.プレゼンテーション
(1)プレゼンテーション1(一般社団法人 知財・無形資産ガバナンス協会)
・2021 年 6 月の CGC 改訂に対応した企業の知財・無形資産に関する開示およびガバナンスの実践
状況について、最新の調査結果を報告。コーポレートガバナンス報告書の記載内容を対象とする
ミニマム・スタンダード調査、統合報告書や有価証券報告書などの任意開示を含むプラス・アク
ション調査、そしてそれらを踏まえた好事例調査の三層構造で継続的に実施している。
・コーポレートガバナンス報告書における補充原則 3-1③の記載状況は、過去数年で一定の改善
が見られたものの、直近年度では評価の分布に大きな変化がなく、記載が充実した企業とそうで
ない企業が固定化しつつある。
・統合報告書等を含めた総合的な開示評価では、十分な水準に達していると評価された企業は全体
の 3 分の 1 強にとどまり、依然として約 3 分の 2 の企業では知財・無形資産の投資・活用に関す
る開示が不十分であることが明らかになった。
・時価総額別に見ると、時価総額の上位層では高評価の比率が高い。業種別では、製造業全般が非
製造業に比べて知財情報開示に積極的であり、情報・通信業など一部の業種では評価の向上が顕
著である一方、銀行業は引き続き低評価にとどまっている。
・統合報告書に記載された知財・無形資産関連 KPI の分析では、80 社から 132 指標が確認され、
特許出願数や研究開発費といった特許・研究開発関連の指標が中心であることが分かった。
・KPI の多くは、企業が比較的コントロールしやすい指標となっており、研究受賞数のような第三
者評価に依存する指標は少数。KPI について、数値を開示する企業が増加し、項目名を列挙する
だけの開示は減少傾向にある。
・一方で、個々の KPI が経営指標や企業価値創造とどのようにつながるのかという因果関係の説明
については、十分に整理されていない事例が半数程度となっている。
・知財情報開示の状況と時価総額の推移を過去 3 年間で比較した分析では、補充原則の遵守状況が
エクスプレインの企業では、時価総額の伸びが低迷する傾向が見られた。業種別に見ると、知財
開示評価が高い業種と時価総額の伸びが大きい業種は必ずしも一致せず、短期的な市場評価と知
財開示の充実度は直線的に結び付くものではない。
・好事例調査では、コーポレートガバナンス報告書、統合報告書、有価証券報告書、企業ウェブサ
イトにおける開示や、工藤一郎国際特許事務所様が開発した YK 値などを総合的に考慮して好事
例企業を選定した。
・全体のまとめとして、補充原則自体はほぼ全社が形式的には遵守しているものの、実質的な内容
の充実という点では依然として課題が大きい。知財・無形資産への投資は短期的な増収増益や株
価上昇に直結するものではないが、企業価値の源泉が無形資産にある以上、無形資産への投資な
9
くして企業価値の創造はない。企業には、無形資産への投資を有形固定資産と同等、あるいはそ
れ以上に重要な経営課題として捉え、経営に知財・無形資産ガバナンスを明確に取り入れること
が求められる。
(2)プレゼンテーション2(一般社団法人 日本知的財産協会)
・日本知的財産協会マネジメント第 2 小委員会は、2024 年度の研究テーマとして、知財 KPI とビ
ジネスストーリーの関係性、それらを通じた企業の魅力発信について検討を行った。
・知財 KPI の必要性自体は広く認識されていたが、事業やビジネスモデルごとに適切な KPI をど
のようなプロセスで設定し、特に投資家に向けてどう発信すべきか課題意識があった。この点に
対し、企業実務の視点から明らかにすることを目的に進めてきたものが今回の発表である。
・本研究では、デスクトップ調査、委員会メンバー(約 70 社)へのアンケート、有識者や先進企
業へのヒアリングを通し、現状把握と知見収集を行い、小委員会内議論を経て結論を導いた。
・デスクトップ調査の結果、知財情報の開示は進んでいる一方で、KPI まで踏み込んだ開示を行っ
ている企業は依然として少ない実態が確認された。
・委員会内アンケートでは、知財 KPI を社外に発信している企業は約 4 割あり、主な媒体は統合報
告書であり、開示内容は特許件数や出願件数など量的指標が中心であった。一方で、
「重点分野
における」出願件数といった枕詞を付した KPI 開示を行う企業もみられ、こうした KPI 開示
を、より踏み込んだ発信として注目した。
・一方、社内向け発信においては約 9 割の企業が知財 KPI を活用しており、経営層向け、知財部門
内、研究・事業部門向けの報告に用いられていた。社内 KPI も出願件数が中心であったが、発明
件数や権利の質を示すスコアなど、開発力の源泉に関連づけた指標を用いている事例もあった。
・別途実施した、どのような課題意識があるのかに関する情報収集の結果、KPI 開示の発信効果が
実感しにくいこと、達成できなかった場合のリスク、KPI と実際の事業成果との関係性の説明の
難しさ、社内用と社外用 KPI の使い分けが整理できていない点が挙げられた。
・こうした実態のなか、有識者ヒアリングを実施。財務指標と厳密な因果関係を求めすぎると KPI
が複雑化して使えなくなる、知財は短期業績より中長期的に企業価値へ貢献するものという点に
は投資家からも理解があり、短期的な成果との直接的な因果ではなく、企業の将来性や成長性を
測る観点からの知財 KPI が望ましいという考え方に至った。
・さらに、先進的取組をする企業へのヒアリングも踏まえた結果、将来性を示す「魅力的な知財
KPI」の観点として、事業戦略との整合性、投資効率の高さ、継続的成長可能性、知財と人的資
本の連携という 4 つの切り口を提示した。事業戦略との整合性については、単なる出願件数でも
重点分野や主要市場といった文脈を付与することで意味のある指標になり得る。投資効率の観点
では、複数事業に活用可能なコア知財や研究開発費に対する実施状況などが有効な指標例とされ
た。継続的成長可能性としては、発明者数や新規発明者数など、発明活動の新陳代謝や将来の発
明創出力を示す指標が重要である。人的資本との連携については、知財人材や発明活動と人材戦
略を結び付けた指標が投資家への訴求に有効であると考えた。
・KPI 設定プロセスとしては、価値創造ストーリーを事業セグメント単位まで具体化し、知財活動
10
が企業価値や収益にどう貢献するかをナラティブに描き、重要な知財活動に対応する KPI を設定
する三段階の考え方を示す。この際、厳密な因果関係ではなく、三段論法程度の説明可能なスト
ーリー性を重視し、事業にとって特に重要なポイントに KPI を埋め込むことが現実的である。
・社外発信においては、統合報告書のトップメッセージに知財戦略を反映し、事業戦略や R&D 戦
略と一貫した形で KPI を示すことが理想であり、社内活用においては、競合情報など外部に出せ
ない情報も含めた詳細な KPI を設定し、経営層や事業部門との実践的なコミュニケーション手段
として活用できる。投資家に読まれる開示のためにはトップメッセージで知財への本気度を示す
ことが重要であるとの気づきを得た。
以上
11
資料1
資料1
「知財投資・活用戦略の有効な開示及び
ガバナンスに関する検討会」
(第28回)
令和8年3月6日(金)
10:00~12:00
(Web開催)
<議事次第>
1.開会
2.事務局説明
(内閣府知的財産戦略推進事務局)
3.プレゼンテーション(1)
(一般社団法人 知財・無形資産ガバナンス協会)
4.プレゼンテーション(2)
(一般社団法人 日本知的財産協会)
5.質疑応答・議論
6.閉会
<配布資料>
資料1
議事次第
資料2
委員名簿
資料3
事務局説明資料
資料4
プレゼンテーション資料
(一般社団法人
知財・無形資産ガバナンス協会)
資料5
プレゼンテーション資料
(一般社団法人
日本知的財産協会)
資料6
林委員提出資料
参考1 「コーポレートガバナンス・コードの改訂に関する有識者会議」
(令和7年度第2回)
資料1
参考2 「コーポレートガバナンス・コードの改訂に関する有識者会議」
(令和7年度第2回)
資料3-2
資料2
資料2
「知財投資・活用戦略の有効な開示及びガバナンスに関する検討会」
委員名簿
(五十音順、敬称略)
(委員)◎座長
荒木
充
株式会社ブリヂストン
知的財産部門
和泉
恭子
富士通株式会社 ビジネス法務・知財本部
知財グローバルヘッドオフィス長
江良
明嗣
ブランズウイック・グループ
小野塚
恵美
エミネントグループ株式会社
◎加賀谷
哲之
一橋大学商学部
部門長
パートナー
代表取締役社長 CEO
教授
菊地
修
一般社団法人知財・無形資産ガバナンス協会
三瓶
裕喜
アストナリング・アドバイザー合同会社
杉光
一成
金沢工業大学大学院イノベーションマネジメント研究科
武井
一浩
西村あさひ法律事務所・外国法共同事業
立本
博文
筑波大学ビジネスサイエンス系
中村
栄
一般財団法人 知的財産研究教育財団 知的財産教育協会
IP ランドスケープ推進協議会 シニアアドバイザー
林
力一
株式会社野村総合研究所
理事長
代表
教授
パートナー
教授
客員研究員
コンサルティング事業本部 シニアプリンシパル
松島
憲之
Alphaterra Advisory 株式会社 シニア・エグゼクティブ・アドバイザー
三菱 UFJ リサーチ&コンサルティング株式会社 委嘱アドバイザー
松原
稔
りそなアセットマネジメント株式会社
常務執行役員 責任投資部担当
俊彦
一般社団法人日本金融人材育成協会
森
会長
(オブザーバー)
金融庁企画市場局企業開示課、特許庁総務部企画調査課、株式会社東京証券取引所
(事務局)
内閣府知的財産戦略推進事務局、経済産業省経済産業政策局産業創造課、
経済産業省経済産業政策局知的財産政策室
資料3
資料3
事務局説明資料
2026年3月6日
内閣府 知的財産戦略推進事務局
第27回検討会でのご意見(ボトルネックに関するもの)
(1)経営者の関与による企業固有の強みの形成
• 経営者の意思決定とエンジン/文化の接続が不十分
• 経営者と現場との「バトル・コミュニケーション」が不足
• 経営者の関与がなくとも現場に強みを持っているが、経営
者がその強みを把握できず投資家にも伝わらない
• 経営者に「知財=特許管理」という伝統的理解が残存
(2)経営者の知財・無形資産に対する注目度の向上
• 経営者の言語(事業の勝ち筋、成長投資、リスクテイク)
と知財部の言語(特許権利化、分析)とのギャップ
• 短期・中期・長期で取り組むべき項目の未整理
• 経営者と知財部が、事業環境の変化を前提に議論できて
いない
(3)具体的なアクションに対するハードルの低下
• プレイブックやテンプレート等のツールの不足
• 事業部長、企画部長、CFOなど役割別のマニュアルや対
話ガイドの欠如
(4)政策・ガイドラインの整理・整備
• 知財の経済的利益について国のPRが不足
• 投資家による知財評価が不足
• 経営者が自社の収益源・強みを客観的に把握できる指標
の未整備
• 経営者が各種コンソーシアムと連携する環境の未整備
• 統合的なアプローチでのガイドライン設計が必要
• 有報の記載事項に知財・無形資産を明示的に含めるべき
(5)知財・無形資産への投資の具体化、成長投資による
費用増の正当化
• 知財・無形資産への成長投資の具体例(研究開発投資、
ブランド価値向上のための市場開拓、DXを活用した生産
性向上、創造人材・プロデューサー人材の育成等)が言
語化できていない
• 不確実性を含む成長投資の投資家への説明が困難
• 経営者は短期的な利益悪化を避けたいという心理が強く、
長期投資としての販管費増加を受け入れにくい
(6)知財・無形資産を活用できる人材の育成
• 知財・無形資産を活用できる人材(プロデューサ人材、マ
ネジメント人材)の育成が課題
• 経営戦略、知財戦略財務、IRを総合的に理解し、協働
できる人材が必要
• 人材育成の具体的なキャリアパス、研修体系、評価制度
などの詳細設計や人材像が企業全体をどのように動かすか
のイメージの共有が必要
• ステップを踏んだ促しの仕組みの欠如
• 社内で行うことと外部専門家と連携することとを定義する実
務指針の欠如
• 社内の各部門が何を担うべきの整理不足
2
第27回検討会でのご意見(その他)
(1)経営者の関与による企業固有の強みの形成
• 日本企業の強みは「こだわり」、「つながり」、「すり合わせ」
などの文化・暗黙知に基づく連鎖構造にある
• 日本企業の強みが現場に残るのに経営者が把握してい
ない状況は重要な示唆をもつ
• 強みの形成には「暗黙知による自然発生」と「形式知によ
る戦略的形成」の2種類があるが、日本企業は前者に
依存し、経営者や投資家に伝わらず企業価値に反映さ
れにくい
• 「こだわり/つながり」が日本企業の強みだが、暗黙知の
まま可視化されず光が当たらない構造がある
• 日本は人口減・資源制約国であり、知財・人的資本が
競争力の源泉
• GGLの設計思想は「可視化」であるべき
(2)経営者の知財・無形資産に対する注目度の向上
• 原則案は普遍的であるがゆえに記憶に残らず、リスク・機
会の要素を強めるなど記憶に残る工夫を施す余地がある
• 事業環境変化を前提とし、顧客の困りごと解決となるソ
リューション事業・プラットフォーム事業実装を議論すべき
• 無形資産の管理は各社においても発展途上であるため、
解決へ導く示唆があれば経営者の目が向きやすくなる
• 知財戦略は機能別戦略と誤解されている一方、IPLは
経営戦略・事業戦略そのものの議論に資するという点で、
経営者に「自分ごと化」を促す強力な概念となっている
• 経営者に届くために意識すべきは、成長の道筋をしっかり
と示すこと、そして、成長投資をきちんと行うことである。
(3)具体的なアクションに対するハードルの低下
• 知財部が担うべき役割である契約やデータ管理など既存
の役割を足場にして経営へ入っていくことが有効
(4)政策・ガイドラインの整理・整備
• 経営者自らが強みを見極め、必要な資産を主体的に価
値へつなげていくべき
(5)知財・無形資産への投資の具体化、成長投資によ
る費用増の正当化
• 無形資産投資は販管費に潜み、営業利益率低下に結
びつきやすいため、粗利率を十分に確保するための戦略
的な無形資産形成が重要
(6)知財・無形資産を活用できる人材の育成
• 技術・市場・財務の統合的理解力、データを整理構造
化できる力、事業全体を俯瞰したうえで提案する戦略思
考力、組織を巻き込む力などのスキルセットの明示が必
要
(7)好事例の重要性
• 経営者が知財・無形資産を自ら語りたいと思うインセン
ティブが不可欠であり、好事例はその大きな動機付けとな
る
• メガバンク系PEファンドにより、無形資産を含むデューデリ
ジェンスがなされており、好事例分析のヒアリング先として
望ましい
3
価値創造ストーリーの構築に資する原則(案)の位置づけ(イメージ)
視点
知財・無形資産
ガバナンスガイドライン ver3.0
経営
コーポレート
ガバナンス・コード
知財・無形資産
ガバナンスガイドライン ver2.0
・原則1:無形資産・知財戦略を構築し、
CEOが自ら語る
・原則3:無形資産・知財を価値ドライ
バーとして、事業ポートフォリオの設
計・組替えをする
・原則4:無形資産・知財を価値ドライ
バーに発展させる人材を育成する
価値創造
ストーリー
の構築に
資する原
則(案)
知財・無形資産
ガバナンスガイドライン ver1.0
・原則2:自社固有の強みを活かしたロ
ジカルな価値創造ストーリーを説
明する
事業
抽象的
具体的
抽象度
4
(参考)CTO Survey 2025
出典:一般社団法人 日本能率協会
「CTO Survey 2025」 日本企業の研究・開発の取り組みに関する調査
5
(参考)CTO Survey 2025
出典:一般社団法人 日本能率協会
「CTO Survey 2025」 日本企業の研究・開発の取り組みに関する調査
6
(参考)CTO Survey 2025
出典:一般社団法人 日本能率協会
「CTO Survey 2025」 日本企業の研究・開発の取り組みに関する調査
7
(参考)CTO Survey 2025
出典:一般社団法人 日本能率協会
「CTO Survey 2025」 日本企業の研究・開発の取り組みに関する調査
8
本日ご議論いただきたいこと
1.価値創造ストーリーの構築に資する原則(案)を、以下のとおり位置付けてはどうか。
(1)知財・無形資産ガバナンスガイドラインver3.0に含めるべき要素を先取りしたもの
(2)経営層が直面する様々なボトルネック20~30種程度を、5種程度にグルーピングしたもの
を原則と対応付け、その解消に資するポイントを開示の観点で整理して提示したもの
(3)改訂後のコーポレートガバナンス・コードに記載された知財・無形資産に関する原則を補
完し、その実施を支援するもの
2.日本企業が以下の取組を進める上でのボトルネック及び改善策は何か。
(1)知財・無形資産投資の対象の明確化とサイロ化を生じない範囲での責任者の明確化
(例:研究開発投資(CTO)、非財務投資の評価(CFO)、ブランド価値向上のための市場開拓(CBO)、
DXを活用した生産性向上(CDO) 、創造人材・プロデューサ人材の育成(CHRO) )
(2)知財・無形資産の形式知ベースによる意図的・戦略的な形成
(例:As-Isの正確な把握とTo-Beの定義)
(3)販管費に含まれる成長投資の開示
(改善策の例:市場を意識した強みの明示、コーポレートベンチャーキャピタルや社内スタートアッ
プの活用、大学との連携やジョイントベンチャー、中小企業の買収)
(4)経営層と知財部門の共通言語の整備、自社の強みを客観的に把握できる指標の整備
(例:事業戦略との整合性を示す指標、投資効率の高さを示す指標、継続的な成長可能性を示す指標、
知的財産と人的資本の連携を示す指標)
(5)人的資本経営の浸透や生成AIの活用などの最近急速に発展している取組の知財・無形資産
経営への取込み
9
資料4
プライム700社調査
知財投資・活⽤戦略の有効な開⽰及びガバナンスに関する検討会
資料4
プライム市場時価総額上位700社に対する
知財・無形資産ガバナンスの実践状況調査報告(2025年度)
2026年3⽉6⽇
⼀般社団法⼈ 知財・無形資産ガバナンス協会
知財ガバナンス研究会/知財コンサル等分科会
⼯藤⼀郎、⾼野誠司、松本浩⼀郎(五⼗⾳順)
2026年3⽉6⽇
Copyright © ⼀般社団法⼈ 知財・無形資産ガバナンス協会 2026 All rights reserved.
1
⽬次
1. プライム市場時価総額上位700社に対する
知財・無形資産ガバナンスの実践状況調査報告(2025年度)
3
2. 本調査に基づく好事例企業の紹介
19
3. まとめ・考察
28
4. 本調査協⼒者の紹介
30
5. ⼀般社団法⼈
32
2026年3⽉6⽇
知財・無形資産ガバナンス協会について
Copyright © ⼀般社団法⼈ 知財・無形資産ガバナンス協会 2026 All rights reserved.
2
1.
プライム市場時価総額上位700社に対する
知財・無形資産ガバナンスの実践状況調査報告
2026年3⽉6⽇
Copyright © ⼀般社団法⼈ 知財・無形資産ガバナンス協会 2026 All rights reserved.
3
調査概要
はじめに
コーポレートガバナンス・コード(2021年6⽉改訂)および知財・無形資産ガバナンスガイドライン Ver2.0(2023年3⽉)を踏まえ、知財
ガバナンス研究会では、⽇本企業における知財・無形資産ガバナンスの実施状況に関する調査を⾏ってきている。
2022年6⽉にJPX⽇経インデックス400選定銘柄、2023年3⽉に東証プライム上場企業の時価総額上位950社、2024年3⽉に同960社、2025
年3⽉に同990社を対象とした調査結果をそれぞれ公表した。
今年度は、引き続き時系列での推移を確認するため、これまでの調査要領を踏襲し、東証プライム上場企業の時価総額上位700社を対象に、
知財・無形資産の投資・活⽤戦略に関する情報開⽰状況について調査・分析・考察を⾏った。
調査概要
項⽬
内容
期間
2025年10⽉から12⽉
対象企業
東証プライム上場企業の時価総額上位700社(2025年9⽉末)
対象範囲
ミニマム・スタンダード調査:コーポレートガバナンス報告書(1次リンク先を含む)
プラス・アクション調査:統合報告書および有価証券報告書を中⼼とした任意開⽰全般
好事例候補調査:上記両調査における⾼評価企業
対象項⽬
ミニマム・スタンダード調査:補充原則3-1③および同4-2②に関する記載内容
プラス・アクション調査:
1.
中⻑期ビジョン実現に必要な知財・無形資産(ビジョン)
2. 成⻑ストーリー(価値創造プロセス)を伴う知財・無形資産投資活⽤戦略(ストーリー)
3. ビジョン実現に必要な知財・無形資産の把握(知財把握)
4. 知財・無形資産投資等のガバナンス体制(ガバナンス)
5. 知財・無形資産戦略の活動内容(戦略)
6. 知財・無形資産投資等に関するKPI(定量的指標)の⽬標値(KPI)
7. 上記6項⽬の評価を踏まえた総合評価
2026年3⽉6⽇
Copyright © ⼀般社団法⼈ 知財・無形資産ガバナンス協会 2026 All rights reserved.
4
ミニマム・スタンダード調査︓評価基準
補充原則3-1 ③
補充原則4-2 ②
評価
評価
◎
○
△
×
2026年3⽉6⽇
評価基準
知財・無形資産の投資・活⽤戦略等に対す
る実体的な取り組みが、経営戦略や経営課
題との整合性を踏まえ、具体的に記載され
ている。
評価基準
◎
現在既に、取締役会で、知財・無形資産の
投資等に関して監督していることが記載さ
れている。
知財・無形資産に対する取り組み(特許出
願等の権利化やリスク管理など)が、具体
的に記載されている。
○
今後、取締役会で、知財・無形資産の投資
等に関して監督していく予定であることが
記載されている。
知財・無形資産に関する記載はあるが、具
体的な取り組み内容に関する記載はなされ
ていない(今後の活動表明等に留まってい
る場合を含む)。
△
取締役会ではなくても、執⾏部⾨において、
知財戦略会議の設置等、知財活動に関する
推進体制の記載がある。
×
知財・無形資産に関する監督・推進・活動
体制等の記載はない。
知財・無形資産に関する記載はない(単に、
知財・無形資産等の⾔葉をタイトル等で使
⽤している場合を含む)。
Copyright © ⼀般社団法⼈ 知財・無形資産ガバナンス協会 2026 All rights reserved.
5
補充原則遵守状況
補充原則3-1 ③
(社)
•
2026年3⽉6⽇
補充原則4-2 ②
(社)
COMPLY
686
690
EXPLAIN
14
10
合計
700
700
調査対象700社のうち、補充原則3-1 ③では686社(構成⽐98%)、同4-2 ②では690社
(同99%)が “COMPLY”としており、ほぼ全ての企業が遵守を宣⾔している状況
Copyright © ⼀般社団法⼈ 知財・無形資産ガバナンス協会 2026 All rights reserved.
6
補充原則遵守状況︓経年推移
“COMPLY” とした企業の割合(%)
100
80
3-1 ③
4-2 ②
60
40
20
0
2022
•
•
2026年3⽉6⽇
2023
2024
2025
いずれの補充原則についても、年々 ”COMPLY”の割合が上昇
2025年度では、ほぼすべての企業が “COMPLY” となっている状況
Copyright © ⼀般社団法⼈ 知財・無形資産ガバナンス協会 2026 All rights reserved.
7
補充原則記載内容の評価
•
•
•
2026年3⽉6⽇
評価
補充原則3-1 ③
(社)
割合
(%)
補充原則4-2 ②
(社)
割合
(%)
◎
95
14
45
6
○
229
33
28
4
△
141
20
35
5
×
235
33
592
85
合計
700
100
700
100
前述のとおりほぼ全ての企業が “COMPLY” を宣⾔していながら、肝⼼の記載内容は不⼗
分な状況
補充原則3-1③は、義務的開⽰が求められているにもかかわらず、33%が記載なし(”×”
評価)、20%が不⼗分な記載(”△”評価)で、合わせて半数以上が不合格
補充原則4-2②は、記載のない(”×”評価)企業が⼤宗であり、任意開⽰企業は限定的
Copyright © ⼀般社団法⼈ 知財・無形資産ガバナンス協会 2026 All rights reserved.
8
補充原則3-1③記載内容の評価︓経年推移
3-1 ③ 評価推移(%)
100%
80%
3
29
9
32
43
34
31
60%
36
48
33
31
25
20
32
26
27
33
2022
2023
2024
2025
40%
20%
14
17
47
0%
×
•
•
2026年3⽉6⽇
△
○
◎
補充原則3-1③の記載内容の評価は、2022年度から2024年度にかけては “◎” と “○” の割
合の合計が増えていて改善傾向にあったが、2025年度は前期⽐ほぼ横ばい
CGCが要請している義務的開⽰でありながら、しっかり書く企業とそうでない企業が固定
化している可能性があり、開⽰不⼗分な企業に対しては改善を促すことが必要
Copyright © ⼀般社団法⼈ 知財・無形資産ガバナンス協会 2026 All rights reserved.
9
補充原則4-2②記載内容の評価︓経年推移
4-2 ② 評価推移(%)
100%
0
3
6
2
3
3
1
3
4
6
4
5
91
92
92
85
2022
2023
2024
2025
80%
60%
40%
20%
0%
×
•
•
2026年3⽉6⽇
△
○
◎
補充原則4-2②の記載内容の評価は、義務的開⽰ではないため、⼤部分の企業が記載なし
(”×”評価)であり、2025年度もその状況は継続
ただし、2025年度は “◎” と “○” の合計が10%に増加し、少なくない数の企業が4-2②
(知財・無形資産投資に関する取締役会の監督)について記載していることは好ましい
Copyright © ⼀般社団法⼈ 知財・無形資産ガバナンス協会 2026 All rights reserved.
10
プラス・アクション調査︓評価基準
評価項⽬
CG報告書・統合報告書・有価証券報告書等の評価基準
1. ビジョン
中⻑期ビジョン実現に必要な知財・無形資産の説明について、○:知財の具体的な記載あり。△:知財の記載は
あるが不⼗分。✕:知財・無形資産の説明なし。
成⻑ストーリー(価値創造プロセス)を伴う知財・無形資産投資活⽤戦略の説明について、○:知財の具体的な
記載あり。△:知財の記載はあるが不⼗分。✕:知財・無形資産の説明なし。
ビジョン実現に必要な知財・無形資産の把握(成⻑の源泉となるAsIsとToBeの考察)について、○:知財の具体
的な記載あり。△:知財の記載はあるが不⼗分。✕:知財・無形資産の説明なし。
知財・無形資産投資等のガバナンス体制の説明について、○:知財の具体的な記載あり。△:知財の記載はある
が不⼗分。✕:知財・無形資産の説明なし。
知財・無形資産戦略の活動内容(知財・無形資産の創造・保護・活⽤、リスク管理他)について、○:知財の具
体的な記載がある。△:知財の記載はあるが不⼗分。✕:知財・無形資産の説明なし。
○:知財・無形資産投資等に関するKPI、または定量的指標の⽬標値(10年後までのコンテンツ制作数等)記載
あり。
△:知財・無形資産投資等に関するKPIの記載なし、これまでの活動成果の実績値(過去の出願件数等)のみ開
⽰あり。
✕:知財・無形資産投資等に関するKPIや指標の記載なし。
2. ストーリー
3. 知財把握
4. 監督体制
5. 戦略活動
6. KPI
7. 総合評価
2026年3⽉6⽇
◎:上記①‐⑥までの活動で○が5個以上の場合や、少なくとも○が4個以上で、その中に優れた活動がある場合
○:上記①‐⑥までの活動で○が4個以上の場合や、少なくとも○が3個以上で、その中に優れた活動がある場合
△:上記①‐⑥までの活動で○が2個以上の場合や、少なくとも○が1個以上で、その活動が優れている場合
✕:上記①‐⑥までの活動で○が1個以下の場合
以上を⽬安とする。
Copyright © ⼀般社団法⼈ 知財・無形資産ガバナンス協会 2026 All rights reserved.
11
プラス・アクション調査︓項⽬別の評価
•
•
•
2026年3⽉6⽇
評価
ビジョン
(社)
ストーリ
ー(社)
知財把握
(社)
監督体制
(社)
戦略活動
(社)
KPI
(社)
○
299
302
230
109
321
125
△
225
220
203
254
180
173
×
176
178
267
337
199
402
合計
700
700
700
700
700
700
6項⽬の中では、戦略活動(”○”評価:321社)とストーリー(”○”評価:302社)につい
ての記載内容が⽐較的良好
他⽅、監督体制(”○”評価:109社)やKPI (”○”評価:125社)については相対的に低い
評価
特にKPIは “×” 評価が402社となっており、知財・無形資産に関するKPIの設定は難航し
ている状況
Copyright © ⼀般社団法⼈ 知財・無形資産ガバナンス協会 2026 All rights reserved.
12
プラス・アクション調査︓総合評価
•
•
•
2026年3⽉6⽇
評価
総合評価(社)
構成⽐(%)
◎
57
8
○
196
28
△
174
25
×
273
39
合計
700
100
総合評価では、57社(構成⽐8%)が “◎” 評価、196社(同28%)が “○” 評価となってお
り、全体の約36%の企業が合格⽔準を達成
他⽅、 273社(同39%)が “×” 評価となっており、総合的に⾒て、知財・無形資産の投
資・活⽤状況に関する開⽰がほとんど⾏われていない
“×” 評価に “△” も加えると、全体の約64%の企業の開⽰状況は不⼗分であり、今後更な
る開⽰促進策が必要
Copyright © ⼀般社団法⼈ 知財・無形資産ガバナンス協会 2026 All rights reserved.
13
時価総額別総合評価
下図左は、調査対象企業の時価総額の分布である。下図右は、統合報告書等について時価総額別の総合評価を⽰したものである。
考察
・時価総額が⾼い企業で評価が⾼い傾向にある。特に、⾼評価(◎+○)割合は、時価総額が⾼くなるほど⾼い傾向が鮮明で
ある。
・時価総額が⾼い企業の⽅が、情報開⽰に積極的であることは明らかである。時価総額を上げるためには、時価総額の⾼い企業
に倣うことが近道であると考える。そのため、CGCおよび知財・無形資産ガバナンスガイドラインに従い、知財・無形資産投資等に
積極的に取り組むとともに、その情報開⽰をしっかり⾏うのがよいと考える。
2026年3⽉6⽇
Copyright © ⼀般社団法⼈ 知財・無形資産ガバナンス協会 2026 All rights reserved.
14
業種別総合評価
右図は、統合報告書等について東証33業種分類別に総合
評価の分布を⽰したものである。
今回調査対象となっている企業について、東証33業種のうち
標本数が⼀定数あり、有効な結果が得られると考える業種を
いくつか確認した。
製造業では⾷料品と輸送⽤機器を、⾮製造業では銀⾏業
とサービス業を、加えて情報・通信業をサンプルとして取り上げた。
考察
・今回取り上げていない他の業種も含め、概ね製造業が知財
情報開⽰に積極的であり、⾮製造業は消極的である。
・⾷料品は、⾼評価(◎+○)が半数以上を占め、特に、◎の割合が他の業種と⽐較して⾼い(19%)。
・輸送⽤機器は、製造業であるが、全体平均と似た評価分布である。
・情報・通信業は、⾼評価(◎+○)が半数以上を占め、前年と⽐較して⾼評価の割合が増加している(28%→55%)。
・銀⾏業は、⾼評価の割合が僅かであり(◎はなく、○が2%)、知財情報開⽰に極めて消極的である。
・サービス業は、⾮製造業であるが、全体平均と近い評価分布である。
2026年3⽉6⽇
Copyright © ⼀般社団法⼈ 知財・無形資産ガバナンス協会 2026 All rights reserved.
15
知財・無形資産KPI⼀覧(証券コード順)
2025年に発⾏された統合報告書に記載された知財・無形資産KPIを⾼野誠司特許事務所で厳選(単なるエビデンスの類や⼈的資本に関する指標を除く、80社132指標、次⾴に分析)
知財・無形資産KPI統計結果・分析(サマリー)
知財KPIは「特許出願数」が最も多い
(左図は⼤分類、右図は特許関連の細分類)
⾃社でコントロール可能な知財KPI
が多い
知財KPIの数値⽬標開⽰
は進んでいる
建設業、化学、電気機器の業種で知財KPIの記載が多い
他社と⽐較可能な知財KPI
が多い
経営指標と直結する知財KPI
は少ない
知財・無形資産KPIの傾向、前年⽐較など分析の詳細については、⾼野誠司特許事務所ホームページに掲載(https://takano-pat.com/struct/wp-content/uploads/20260120_IP_KPIsV1.0a.pdf)
2026年3⽉6⽇
Copyright © ⼀般社団法⼈ 知財・無形資産ガバナンス協会 2026 All rights reserved.
17
知財情報開⽰と株価の関係
プライム上場企業660社の3年間の推移を調査
エクスプレイン企業の時価総額上昇率は低い
2022年度にプライム上場
企業の時価総額上位950社
を対象に調査を⾏った。
2025年度も同様の調査を時
価総額上位700社を対象に
⾏った。両調査対象になっ
た企業660社について3年間
の推移を調査・分析した
(左図参照)。
左図は、補充原則3-1③の遵守表明の
推移を4パターンに分け、各パターンに
該当する企業の3年間(2022年9⽉末から
2025年9⽉末)の時価総額上昇率の平均値
を⽰したものである。時価総額上昇率の
平均値の計算は単純平均を採⽤している。
エクスプレイン(⾮遵守理由説明)の
企業の⽅が時価総額上昇率が低い結果と
なった。
時価総額が⼤きく上昇した業種ほど総合評価が⾼いわけではない
右図は、業種別の3年間時価総額平均倍率(橙⾊グラフ参照)と
直近の統合報告書等の総合評価を⽰した(緑⾊グラフ参照)もので
ある。
3年間で時価総額が4倍以上になった⾮鉄⾦属の総合評価は、平均
をやや上回っているが、時価総額が2番⽬に⾼く上昇した銀⾏業の
総合評価は極めて低い。
⼀⽅、総合評価が最も⾼い海運業の時価総額の3年間倍率(1.80)は、
全体平均(1.75)と同程度である。なお、⽇経平均株価の3年間倍
率は1.75で、今回の調査対象企業660社の全体平均と同⽔準である。
3年間の業種別の分析では、時価総額(株価)の上昇と総合評価
との間に明確な相関関係は確認できなかった。今後も調査を継続し、
データを蓄積して、⻑期的な視点から知財活動や情報開⽰と株価の
関係などについて分析を⾏っていきたい。
2026年3⽉6⽇
Copyright © ⼀般社団法⼈ 知財・無形資産ガバナンス協会 2026 All rights reserved.
18
2.
本調査に基づく好事例企業の紹介
2026年3⽉6⽇
Copyright © ⼀般社団法⼈ 知財・無形資産ガバナンス協会 2026 All rights reserved.
19
好事例企業の選定基準
コーポレート・ガバナンス報告書における補充原則3-1③および補充原則4-2②に関する記載の内容、統合報告書における
知財・無形資産の投資・監督に関する記載の内容、有価証券報告書における知財・無形資産の投資・監督に関する記載の
内容ならびにYK値(⼯藤⼀郎国際特許事務所が、特許出願等のコストに基づき算定した特許の経済価値を⽰す指標)によ
る特許⼒の評価をベースに、以下の選定基準に基づき、⾼い評価を得た企業を「好事例企業」として選定
1. 知財・無形資産の投資・活⽤について、⾃社の経営戦略や経営課題との整合性が確保(意識)されているか?
2. ⾃社の現状のビジネスモデルとそれを⽀える知財・無形資産の把握・分析ができているか?(AsIs)
3. 知財・無形資産の投資・活⽤について、⾃社の持続的な成⻑に資するように、経営資源(ヒト、モノ、カネ)の配分が⾏われ
ているか?
4. 知財・無形資産投資が、⾃社の価値創造プロセスのなかで、どのように成果へと結びつくと想定しているかを説明できている
か?(企図する因果パス)
5. ⾃社の将来の姿(ビジネスモデル、事業ポートフォリオなど)から経営課題を認識し、それを実現するための知財・無形資産
戦略が構築できているか?(ToBe、成⻑ストーリー)
6. 知財・無形資産を創造する⼈財を育成しその⼈財や創造成果を評価し、事業活⽤する仕組みが構築されているか?
7. 知財・無形資産の権利侵害、喪失による事業競争⼒低下や事業継続不能、損害賠償⾦⽀払い等に対するリスクマネジメントが
適切に実⾏されているか?
8. 知財・無形資産の投資・活⽤に対するガバナンス体制(執⾏部⾨の執⾏と取締役会での監督)が構築されているか?
9. 知財・無形資産の投資・活⽤について、分かりやすく具体的に情報の開⽰が⾏われているか?
10. 知財・無形資産投資について、現在および将来の⾃社の経営指標(ROIC等)と結びつけて、投資家等へ説明できているか?
2026年3⽉6⽇
Copyright © ⼀般社団法⼈ 知財・無形資産ガバナンス協会 2026 All rights reserved.
20
好事例選定企業⼀覧(証券コード順)
⽇清オイリオグループ株式会社(2602)
味の素株式会社(2802)
三井⾦属株式会社(5706)
株式会社デンソー(6902)
東京エレクトロン(8035)
住友商事株式会社(8053)
2026年3⽉6⽇
Copyright © ⼀般社団法⼈ 知財・無形資産ガバナンス協会 2026 All rights reserved.
21
好事例1︓⽇清オイリオグループ(2602)
1. 補充原則3-1③での記載
油脂技術を核とする知的財産を重要な経営資源と位置づけ、マーケット情報と組み合わせた分析により事業・研究開発の
意思決定に活⽤する旨の記載あり。
2.統合報告書での記載
「知的財産の戦略的な活⽤による競争優位性の確保」(p51)をタイトルとし、「例えば、揚げものの吸油量を抑える
「ヘルシーオフ製法」では、家庭⽤・業務⽤の両市場で特許網を構築し、⾼い参⼊障壁を確⽴しています。この技術によ
って、揚げものの吸油量を抑制する新たな市場を創出し、技術や製品を保護しています。さらに、フライ油を⻑持ちさせ
る「UL(ウルトラロング)製法」との組み合わせでは、新たな価値提案につながる業務⽤商品を開発しました。」と具体
的に⾼い参⼊障壁と将来キャッシュフローイメージ(新たな市場を創出)を開⽰し、さらに、研究開発費の伸びと保有特許
件数の伸びを具体的な数値で明⽰(p50)。
3.その他
調味料の分野で当社の技術競争⼒指標(YK値)を調査すると、他の競合メーカーと⽐較して第1位のポジションを占めて
おり、さらに第2位の2倍以上のYK値を有することから当社が知的財産である特許においてその構築戦略が⾮常に成功し
ている。
2026年3⽉6⽇
Copyright © ⼀般社団法⼈ 知財・無形資産ガバナンス協会 2026 All rights reserved.
22
好事例2︓味の素(2802)
1. 補充原則3-1③での記載
「アミノサイエンス®の強みを活かして、開発から、⽣産そして事業まで、社会価値と経済価値を創造し続けるために、
「知的財産」は⽋かすことのできない無形資産です。」との記載あり
2.統合報告書での記載
知的財産活動は研究開発(R&D)および事業と連動する「三位⼀体」の活動として位置づけられている。具体的には、
「知財・事業・R&D 三位⼀体の活動」と明⽰され( 60‒61⾴)、知財が単独機能ではなく、事業創出・拡⼤の推進装置
として活⽤されることが⽰されている(60‒61⾴)。さらに、具体的事例として、半導体基板⽤層間絶縁材料「味の素ビ
ルドアップフィルム®(ABF)」の事例では、従来の「技術完成後に知財を検討する」スタイルから転換し「開発初期か
ら知財部⾨が参画」する体制へ変更したことが説明されている(60‒61⾴)。その結果、「知財ポートフォリオの構築が
スピード感を持ってかつスムーズに⾏われ、事業の競争優位につながった」と記載されている(60‒61⾴)。この点は、
当社の知財開⽰における重要な特徴であり、研究開発の初期段階からの知財統合型経営を明⽰している。さらに、成⻑戦
略との関係では、「電⼦材料とバイオ医薬の事例」において戦略的ポートフォリオ構築を説明しており(p61)、こちら
でも具体性がある。
3.その他
具体的事例として挙げられた半導体基板関連の技術競争⼒指標(YK値)を調査すると、競業企業との⽐較でプリント基板
分野で1位となっており、他の電⼦部品メーカーをしのぐ勢いがあることがわかる。またこの分野の第2位の企業とのYK
値の差も⼤きく、アミノサイエンス®を起点として獲得した⾷品以外の知的財産の構築に成功していることがわかる。
2026年3⽉6⽇
Copyright © ⼀般社団法⼈ 知財・無形資産ガバナンス協会 2026 All rights reserved.
23
好事例3︓三井⾦属(5706)
1. 補充原則3-1③での記載
「新規事業推進のための研究開発を当社グループの持続的成⻑および競争優位の源泉と位置づけ、研究開発に戦略的な
投資を⾏うとともに、ステージゲート管理を実施しております。市場ニーズ(社会課題)や事業化ポテンシャルという視
点からテーマを絞り込み、研究から開発、事業化検討、市場投⼊に向け着実に実⾏できるものに注⼒し、⼈材などの研究
リソースを分配することで、新規事業創出の可能性を⾼めております。 このようにして創出された研究開発の成果につき
まして、国内外での知的財産権の取得や営業秘密としての管理を確実に実⾏することにより、その適切な保護に取り組ん
でおります。」と記載され、当社の志向する知的財産創出のプロセスが明⽰。
2.統合報告書の記載
事業戦略との連動が具体的に説明されている。事業創造本部では「戦略的な知的財産確保とリスクマネジメントにより、
新規事業の将来価値最⼤化を⽬指す」との⽅針が⽰され(p37)、全固体電池向け固体電解質(A-SOLiD®)、焼結型銅ペ
ースト、次世代半導体パッケージ向け特殊キャリア(HRDP®)など具体的テーマと結び付けて知財活動を説明している
(p37)。
3.その他
当社の技術競争⼒を技術競争⼒指標(YK値)で調査したところ、2014年から段階的に値が⼤きくなっており、競合企
業が伸び悩んでいることと対照的に知的財産戦略が功を奏していることがわかる。
2026年3⽉6⽇
Copyright © ⼀般社団法⼈ 知財・無形資産ガバナンス協会 2026 All rights reserved.
24
好事例4︓デンソー(6902)
1. 補充原則3-1③での記載
「当社は、75年の製品開発の歴史において、メカからエレクトロニクス、そしてソフトウェアへと、社会のニーズを的
確に捉え、研究開発領域を拡⼤し事業成⻑を牽引してきました。「環境・安⼼」の理念を軸に、未来を⾒据えた技術企画
や研究開発を重ねて積み上げた知的資本は、デンソーの競争⼒の源泉です。 事業戦略と⼀体化した知財経営で、⻑期視
点で社会環境や技術トレンドの変化を⾒据え、量産開発のみならず、半導体、マテリアル、AI、⼈間⼯学などの先端技術
を活⽤した研究開発を推進し、複雑化する社会課題に対し、時代に先駆けた価値を提供します。」と記載。
2.統合報告書の記載
知財の重点領域を三つに整理している。「クルマの価値の拡張」「モビリティの拡張」「社会システムとの融合」とし
て⽬標を明⽰している。特にp56において、技術・知財における価値創造パス(抜粋)が⼀覧表で記載されており、具体
的に、技術分野を⽰し、その中で注⼒する技術を明⽰し、その技術のアウトプット(結果)とアウトカム(提供価値)を
具体的に明⽰している。例えば技術分野の電動化では注⼒技術として⾛⾏中給電システムが明⽰され、アウトプットとし
てモビリティの電動化、アウトカムとして循環型経済、脱炭素を通じたサステナブルな地球環境が記載されている。
3.その他
当社の技術競争⼒を技術競争⼒指標(YK値)で観察したところ、⾛⾏制御の技術分野では同分野の競合企業よりも⾼い
値を有しており、この分野での知的財産の構築が成功していることがわかる。
2026年3⽉6⽇
Copyright © ⼀般社団法⼈ 知財・無形資産ガバナンス協会 2026 All rights reserved.
25
好事例5︓東京エレクトロン(8035)
1. 補充原則3-1③での記載
「2025年3⽉期から5年間で累計1.5兆円以上の研究開発投資を計画していること、国内外のお客さまやコンソーシア
ム、アカデミアとの積極的な協業を推進しており、それを通じて得た多様な知⾒や技術を⾃社の研究開発に取り込むこと
で⾰新的で付加価値の⾼い独⾃技術を⽣み出しています。」と研究開発投資と、その⼿法を具体的に開⽰している。
2.統合報告書の記載
p14において、⽣命線である次世代装置のタイムリーかつ継続的な創出と、特許ポートフォリオの戦略的構築を⾏って
いる旨が記載され、半導体製造装置メーカーでNo.1の特許ポートフォリオを有していることを宣⾔。競合⽐較で宣⾔す
ることで特許ポートフォリオの強⼒さが鮮明に理解可能となっている。さらに具体的に同ページの左側には、特許ポート
フォリオが⽀える事業の強みが具体的にシェア%や市場シェア順位で⽰されており、特許ポートフォリオから将来キャッ
シュフローの⼤きさを感じさせる記載となっている。
3.その他
当社の技術競争⼒を技術競争⼒指標で観察したところ、ウエハ検査装置、基板処理システム、プラズマ処理装置、関連
に多数の有⼒特許を有することがわかる。各特許の技術競争⼒指標の値は中堅メーカー1社分程度の値であり、有⼒特許
ポートフォリオが確かに確⽴されていることがわかる。
2026年3⽉6⽇
Copyright © ⼀般社団法⼈ 知財・無形資産ガバナンス協会 2026 All rights reserved.
26
好事例6︓住友商事(8053)
1. 補充原則3-1③での記載
「当社は、様々な事業分野において、⾰新的な技術によるビジネスモデルの転換や、新たなプロダクトデザインの提供
などによる付加価値に着⽬して、事業投資を実⾏しています。また、技術⾰新や、創造性のあるデザイン、コンテンツの
もたらす競争優位性のみならず、当社の多様な⼈財、これまで培ってきた多彩なビジネスノウハウ、顧客・取引先とのグ
ローバルなネットワーク・信頼関係、市場における当社ブランドの価値、といった資本(無形資産)からなる経営基盤と
営業部⾨の多様な事業機能を融合・複合化することで、新規事業を創出するとともに、事業の成⻑⼒を⼀段と⾼める戦略
をとっています。」と記載され、知的財産の意義を幅広くとらえるとともに、事業における重要性を正しく認識している
ことがわかる。
2.統合報告書の記載
経営資本(p15)では、住友商事グループの経営資本として、「グローバルリレーション資本」「⾃然資本」「知的資
本」「財務資本」「⼈的資本」と把握し、それぞれの企業価値との関係を明⽰するとともに、強化策を記載し、さらに、
それぞれの資本について関連する指標を数値で明⽰している。知的財産は多彩なビジネスノウハウとして「知的資本」と
して企業価値創造の源泉の⼀つに組み込まれ他の資本と組み合わされることで事業競争⼒を形成するものとして整理され
ている。
2026年3⽉6⽇
Copyright © ⼀般社団法⼈ 知財・無形資産ガバナンス協会 2026 All rights reserved.
27
3.
まとめ・考察
2026年3⽉6⽇
Copyright © ⼀般社団法⼈ 知財・無形資産ガバナンス協会 2026 All rights reserved.
28
まとめ・考察
知財・無形資産ガバナンスの実施状況に関する調査は、今回の調査で5回⽬となり、プライム市場上場企業の半数以上を
カバーした⼤規模な調査としては4回⽬になる。
好事例の紹介についても、引き続き参考にすべき好事例を知りたいといった声が聞かれることから、今回も前回に引き続
きこのニーズに応えるべくCGCおよび知財・無形資産ガバナンスガイドラインに沿った情報開⽰を⾏い、かつ、投資家が
注視する観点において評価が⾼かった企業の情報開⽰好事例について紹介した。
次回のCGC改訂に関する検討が進められる中、前回改訂から約5年が経過し、知財に関する補充原則の遵守状況
(Comply/Explain)だけを⾒るとほぼ全社が “Comply” としているものの、肝⼼の情報開⽰の状況はなお不⼗分な企業
が過半数を占めている状況が続いている。
知的財産の投資・活⽤に関する開⽰の改善は、短期的に売上⾼の増加や株価の上昇につながるものではないが、企業価値
創造の源泉が知財・無形資産にあることは疑いのない事実であり、継続的な知財・無形資産への投資なくして、将来の企
業価値創造はありえない。
⽇本企業が、従来型の設備投資だけではなく、知財・無形資産への戦略的な投資が将来の競争⼒につながることを認識し、
経営課題の⼀つとして知財・無形資産ガバナンスに取り組むことが望まれる。また、⽇本政府としても、コーポレートガ
バナンス・コードの改訂や知財・無形資産ガバナンスガイドラインのバージョンアップを含め、更に企業が知財・無形資
産の投資・活⽤を積極的に⾏い、その開⽰を進めるように啓発されることを期待する。
2026年3⽉6⽇
Copyright © ⼀般社団法⼈ 知財・無形資産ガバナンス協会 2026 All rights reserved.
29
4.
本調査協⼒者の紹介
2026年3⽉6⽇
Copyright © ⼀般社団法⼈ 知財・無形資産ガバナンス協会 2026 All rights reserved.
30
本調査協⼒者⼀覧(順不同、敬称略)
2026年3⽉6⽇
組織名
⽒名
知財・無形資産ガバナンス協会
菊地
修
⼯藤⼀郎国際特許事務所
⼯藤
⼀郎
TMI総合法律事務所
⼤貫
敏史
よろず知財戦略コンサルティング
萬
株式会社ユーザベース
伊藤
⻯⼀
⾼野誠司特許事務所
⾼野
誠司
AUTHENSE弁理⼠法⼈
外⼭
雅暁
IP Valuation 特許事務所
松本
浩⼀郎
秀憲
Copyright © ⼀般社団法⼈ 知財・無形資産ガバナンス協会 2026 All rights reserved.
31
5.
⼀般社団法⼈ 知財・無形資産ガバナンス協会について
2026年3⽉6⽇
Copyright © ⼀般社団法⼈ 知財・無形資産ガバナンス協会 2026 All rights reserved.
32
⼀般社団法⼈ 知財・無形資産ガバナンス協会について
⼀般社団法⼈ 知財・無形資産ガバナンス協会
1. ⽬的
当法⼈は、⽇本の企業及び⼤学等が、知的財産を含む無形資産(以下「知財・無形資
産」という。)を積極的に投資及び活⽤をする経営及びガバナンスを実践するとともに、その
内容を投資家及び⾦融機関等広く⼀般に開⽰し対話を⾏うこと(以下「知財・無形資産
ガバナンス」という。)によって、持続的な成⻑及び企業及び⼤学等の価値の向上を実現する
ことを促進し、もって⽇本経済を活性化し、「知財で⽇本を元気に」することを⽬的としています。
2. 運営
⽇本は、第2次世界⼤戦後から1980年代まで、世界でも類を⾒ない⾼い経済成⻑を遂げ、奇
跡の復興を実現しました。この原動⼒は、勤勉な国⺠の努⼒と、その結果⽣み出された技術やノウ
ハウなどの「知財・無形資産」です。
ただその後は、これら「知財・無形資産」を経営資源として戦略的に活⽤することができず、「失わ
れた30年」と⾔われる⻑期の経済低迷に陥っております。
その⼀⽅で、⽶国や欧州はもちろん、中国や韓国、台湾などの新興国でも、「知財・無形資産」に
投資し活⽤した新しいビジネスモデルや画期的な製品を創造し、めざましい発展を遂げています。
そして現在、地政学リスクや物価の⾼騰が進む中、グローバルな経済環境も⼤きく変貌し、⽣成
AIによるDXや、地球環境を守るSXなど、新たな技術⾰新の潮流が押し寄せています。
このような社会や市場が激変する中、今後の⽇本企業にとって、「知財・無形資産」を経営の中
核とした価値創造を実践していくことが、最も重要な経営戦略であり、投資家が期待するガバナンス
の対象となってきています。
そこで私たちは、この「知財・無形資産」の⼒で、⽇本の企業や⼤学などがイノベーションを創発し、
持続的に成⻑し続けることで、「知財で⽇本を元気に」するビジョンを実現していくために、当協会を
設⽴致しました。
つきましては、このビジョンを、多くの⽅々とご⼀緒に実現して参りたく存じますので、ご協⼒賜れます
と幸いです。よろしくお願い申し上げます。
⼀般社団法⼈ 知財・無形資産ガバナンス協会 理事⻑ 菊地 修
2026年3⽉6⽇
当協会では、企業や⼤学等の知財・無形資産ガバナンスの実践者に加え、弁護⼠、弁理⼠、
コンサルタントなどの知財専⾨家や、知財投資を担う投資家の⽅々がスクラムを組んで、知財・
無形資産ガバナンスに関する調査・研究や、⼈財育成、論⽂や動画等の情報発信などの事
業を展開します。
また、この企業や⼤学の持続的成⻑を⽀えるために、当協会では、幅広い分野における全世
代の⼈財が積極的に参画し、組織の活性化と持続的な取り組みを⾏うことができるように組織
運営を実践して参ります。
3. 事業
当法⼈は、前条の⽬的を達成するために、次の各号に掲げる事業を⾏います。
(1) 知財・無形資産の投資・活⽤戦略やその執⾏・ガバナンス体制に関する調査・研究
(2) 知財・無形資産ガバナンスの実⾏状況の調査・分析、好事例の探索、公表、表彰
(3) 知財・無形資産ガバナンスに関する研修及び講演等の実施
(4) 知財・無形資産ガバナンスに関する動向調査、情報発信、事業の協業・受託
(5) 知財・無形資産ガバナンスに関する⼈財・団体との交流及び相互啓発
(6) 知財・無形資産ガバナンスに関する公的機関への協⼒、意⾒具申
(7) 前各号に掲げるもののほか、当法⼈の⽬的を達成するために必要な事業
Copyright © ⼀般社団法⼈ 知財・無形資産ガバナンス協会 2026 All rights reserved.
33
⼀般社団法⼈ 知財・無形資産ガバナンス協会について
4. 組織体制
6.⼊会案内
⼀般社団法⼈ 知財・無形資産ガバナンス協会に⼊会を
希望される⽅は、当法⼈の定款、概要、規程をお読みの上、
以下の⼊会申し込みサイトよりお申し込みください。
正会員
賛助会員
年会費
A会員
1万円
10万円
B会員
1万円
7万円
個⼈会員
無料
2万円
⼊会フォームは
こちら
⼊会フォームは
こちら
⼊会メリット
5. 理事・監事
● 理事⻑
菊地 修
知財・無形資産ガバナンス協会
● 副理事⻑
川名 弘志
引地 進
KDDI株式会社
⽇清オイリオグループ株式会社
● 理事
荒⽊ 充
株式会社ブリヂストン
⼤久保 典雄 古河電気⼯業株式会社
奥⽥ 武夫 オムロン株式会社
押⾕ 昌宗 弁理⼠法⼈ IPX
柿⼭ 喬
栗⽥⼯業株式会社
⿑藤 浩⼆ 株式会社フレアフードファクトリー
2026年3⽉6⽇
⼊会⾦
佐々⽊ 健⼀ 関⻄医科⼤学
⽵本 如洋 弁理⼠法⼈瑛彩知的財産事務所
平賀 智
三井住友海上⽕災保険株式会社
本郷 いづみ 株式会社フジシールインターナショナル
松岡 和
NTTコミュニケーションズ株式会社
三菱UFJリサーチ&コンサルティング
松島 憲之
株式会社
松本 浩⼀郎 IP Valuation特許事務所
● 監事
井上 博之
村尾 治亮
ナブテスコ株式会社
東啓綜合法律事務所
企業や⼤学等の知財・無形資産ガバナンス実践者に加え、弁護⼠・
弁理⼠、コンサルタントなどの専⾨家が、実践事例や
⽅法を調査・研究し、相互研鑽や交流を図ると共に、
この実践者を育成する研修を実施することによって、皆さまの
企業や⼤学等の持続的成⻑と価値創造を実現することができます。
7.連絡先
所在地︓ 〒100-0005 東京都千代⽥区丸の内⼀丁⽬6番5号
丸の内北⼝ビル ⼤野総合法律事務所内
メールアドレス︓ info@ipiaga.org
URL︓ https://ipiaga.org/
Copyright © ⼀般社団法⼈ 知財・無形資産ガバナンス協会 2026 All rights reserved.
34
⼀般社団法⼈ 知財・無形資産ガバナンス協会の「ブランドアイデンティティ」に込めた想い
2026年3⽉6⽇
Copyright © ⼀般社団法⼈ 知財・無形資産ガバナンス協会 2026 All rights reserved.
35
•
本資料は信頼できると思われる各種データに基づいて作成されておりますが、当協会や作成者はその正確性、完全性を
保証するものではありません。ここに⽰したすべての内容は、現時点での判断を⽰しているに過ぎません。
•
また、本資料に関連して⽣じた⼀切の損害について、当協会や作成者は、⼀切責任を負いません。
•
本資料は、当協会や作成者、引⽤元・出典元の著作物であり、著作権法により保護されております。
事前の承諾なく、本資料の全部もしくは⼀部を、複製、翻案、転送、公衆送信等の利⽤をすることは、 著作権法によ
り禁じられております。
•
本資料や説明の内容における意⾒等については、当協会または作成者の個⼈的な⾒解であり、当協会または作成者が所
属している団体や会社等の⾒解ではございません。
本資料に関する問い合わせ先
知財・無形資産ガバナンス協会
info@ipiaga.org
2026年3⽉6⽇
事務局
Copyright © ⼀般社団法⼈ 知財・無形資産ガバナンス協会 2026 All rights reserved.
36
2026年3⽉6⽇
Copyright © ⼀般社団法⼈ 知財・無形資産ガバナンス協会 2026 All rights reserved.
37
資料5
2024年度 JIPAマネジメント委員会
資料5
M2-2
自社の魅力最大発信!
~知財KPIとビジネスの繋がりから企業価値を考える~
知財KPI
繋がり
明確化
ビジネス
ストーリー
自社魅力
発信強化
全体の構成
自社の魅力最大発信!~知財KPIとビジネスの繋がりから企業価値を考える~
結果および考察
課題・
問題意識
研究
アプローチ
現状把握
有識者
ヒアリング
何を
知財KPIの
設定方法
知財KPIの
活用方法
どう設定して
どう伝えるか
まとめ
2/13
課題・問題意識
<背景>
2021.6のコーポレートガバナンス・コード(以下、CGC)改訂で知的財産への投資等について事業戦略との整合性や実
効性等の開示が実質義務化されたことに伴い、知財活動を定量化した知財KPIの策定・開示が課題となっている。
<課題意識>
2022.1に公表された「CGC改訂に伴う知的財産に関するKPI等の設定(中間報告)」において、CSFと知財KPIの例が提
示された。その際、知財KPIは事業セグメント単位で用いるのがよいこと、ビジネスモデルが本質的に異なる企業間で横
並びにKPIの数字を比較する意味はないこと等が示された。逆に言えば、各社個別の事業セグメントやビジネスモデル毎
に、知財KPIでそれぞれのビジネスストーリーを評価することができると考えられる。
とはいうものの、どのような知財KPIを用いてどうビジネスストーリーを語ればよいかは手探りの状態にある。これを
検討する過程で知財KPIとビジネスストーリーの因果関係を明らかにし、開示情報に資するとともにこれまで気づかな
かった自社の強みを認識する機会の創出に繋げたい。
場合分け ⇒
事業セグメント
ビジネスモデル
各種知財KPI
×
知財KPIを用いた
ビジネスストーリーの評価
→ 知財KPIとビジネスストーリー →
自社の企業価値=魅力の
認識、社内外への発信
の因果関係の説明
3/13
研究アプローチ
デスクトップ調査
委員会メンバーへの
アンケート
ヒアリング
CGC改訂後の企業の情報開
示状況や先行研究を調査
↓
↓
知財KPIの活用状況を把握
所属委員に対して知財KPIの
活用状況に関するアンケート
を実施
↓
企業での実態や課題を把握
有識者:投資家、アカデミア
情報開示先行企業:受賞企業、
有識者からの推薦企業
↓
魅力的な知財KPI・発信方法
のヒントを得る
魅力的な知財KPIの「考え方」「設定方法」「発信方法」について考察・検討した
4/13
知財KPIの現状
デスクトップ調査
①デスクトップ調査
2022.10時点において、日経225構成企業のうち
・知財権の出願・保有件数を開示しているのは102社
・指標として(KPI的に)開示しているのは20社(1割未満)
※出典:知財管理、vol.74、No.1、p91(2024)
知財KPIへの活用状況と評価
• 先行研究:知財管理誌等
• 首相官邸:知財・無形資産
ガバナンスガイドライン等
内閣府による統合報告書調査(2021年vs2022年発行)の結果、
“研究開発費や特許の取得件数のみに留まらない定量情報
の開示” に該当する企業の比率は
ガイドライン公表前後で12%→24%にとどまっている
※出典:知財・無形資産ガバナンスガイドラインV2.0 p10
知財KPIを伴った開示が求められている一方で、企業の動きはなお低調
5/13
知財KPIの現状
委員会メンバーへの
アンケート
社外
②委員会内アンケート
発信媒体
回答数
発信している内容
回答数
統合報告書
20
保有権利数
8
サステナビリティ報告書
2
主要国での保有権利数
(1)
知的財産報告書
1
重点分野における保有権利数
(1)
IR資料
1
統合報告書を中心に、
媒体を活用した情報発信が主流
新規出願件数
5
海外での出願件数
(1)
重点分野における出願件数
(1)
パテントスコア
3
重点分野におけるパテントスコア (2)
4割が社外発信の
実績あり
基本データの開示が主流だが、
重点分野に絞った開示や、重点分野に
絞ってさらに踏み込んだ発信をしている
事例も見られた
6/13
知財KPIの現状
委員会メンバーへの
アンケート
社内
②委員会内アンケート
発信手段
活用先
回答数
回答数
活用している項目
回答数
統合報告書
知財部内管理
20
16
新規出願件数
39
経営層向け報告
サステナビリティ報告書
41
2
出願件数目標
(4)
研究・事業部向け報告
知的財産報告書
13
1
出願件数の増加比率
(1)
研究・事業部内管理
IR資料
51
発明件数
9
その他(個人管理など)
3
発明・出願・保有権利の質
5
登録件数
4
実施率/活用度合
3
ライセンス収入/利益
2
知財部内の業務管理はもちろん、
経営層や関連部署向けの報告、
開発部署での業務管理への活用例
も見られた
9割が何らかの
KPIを運用中
新規出願件数はどの活用先に対しても
知財KPIとして用いられていた
その他、開発力の源泉となる発明件数や
質(価値評価)、結果系の登録件数も複
数企業から回答があった
7/13
知財KPIの現状
②委員会内アンケート
(回答の一例)
委員会メンバーへの
アンケート
知財KPIによるご利益(発信効果)を実感できる良い
事例があればもっと活用していきたいのですが…
感じている課題
(フリーコメント)
目標(例えば出願件数)を達成したからと言って技
術や事業で勝てるのか?と聞かれると答えに窮する
課題感
回答数
発信効果があるのかどうか
29
発信することによる弊害
6
社外向けと社内向けの使い分け
3
投資家向けの知財KPIが社内の活動をドライブするも
のと一致するのか分からない…
8/13
魅力的な知財KPIとは
2021.6
CGC改訂
↓
有識者ヒアリング
2021.10
ガイドラインv1.0
↓
2022.1
中間報告
↓
2023.3
ガイドラインv2.0
↓
直近の動向について、
投資家を含む有識者へのヒアリングを実施した
知財ガバナンス研究会
アドバイザー
“2022中間報告”以降、知財KPIの捉え方は変わった
「知財投資・活用戦略の有効な開示及び
ガバナンスに関する検討会」委員
当初は財務指標に紐づけるという課題意識があったが、
その後の議論で投資家にとって「あればよい」レベルに
:●●氏
厳密な因果を追いすぎるあまり複雑になっては本末転倒
無理に財務指標に結び付けようとするとドツボにはまる
:●●氏
高野誠司氏
杉光一成氏
松島憲之氏
松原稔氏
(高野誠司特許事務所) (KIT虎ノ門大学院) (SESSAパートナーズ) (りそなアセットマネジメント)
投資家は知財を含めた非財務指標が必ずしも短期的な業
績に繋がるものではなく、中長期的にボディーブローの
ように効いてくることを認識しているので、
当該企業の将来性を計る知財KPIが好ましい
9/13
魅力的な知財KPIとは
ズバリ
有識者ヒアリング
企業の将来性を計る、魅力的な知財KPIの考え方
1.事業戦略との整合性を示す指標
例)・重点分野における出願(発明)件数・比率、
保有権利数、パテントスコア…など
・主要事業国における 〃
→いずれも事業戦略との合致度を示す知財KPIとなる
2.投資効率の高さを示す指標
先行企業へのヒアリング
例)・事業領域を超えて活用できるコア知財権の件数、比率
・出願件数/研究開発費
・実施率
→いずれも投資効率(コスパ)の高さを示す知財KPIとなる
・複数の製品・分野に活用可能な権利数
→レバレッジ効果を示す知財KPIとなる
・アンケ回答企業(自薦)
・アンケ推薦企業(他薦)
・M2-2独自調査抽出企業
3.継続的な成長可能性を示す指標
考察
例)・発明者数・全社員数or全R&D社員数に占める比率
・新規発明者数・発明者数に占める比率
→組織の健全な新陳代謝を示す知財KPIとなる
4.知的財産と人的資本の連携を示す指標
例)・社内教育の結果としての新規発明者数(前述)の増加
10/13
知財KPIの設定プロセス
事業戦略の束=企業全体の経営戦略
Step1
事業セグメント単位で
事業戦略を確認する
合致
知財KPIの設定
合致
技術
開発
技術開発におけるCSFの設定
知財による
収益貢献
への「示唆」
製品
開発
事業
開発
知財活動
スタート地点
知財活動
知財KPI
スタート地点
知財活動
知財KPIの設定
事業B
合致
製品開発におけるCSFの設定
知財KPI
…
事業X
ゴール地点
Step2
知財貢献ストーリーを描く
Step3
2.に知財KPIを埋め込む
VCごとに検討していくとよい
事業開発におけるCSFの設定
網羅的に知財KPIを設定する必要はなく、
・より重要な/効果的なポイント
・より注力する事業セグメント
スタート地点
知財KPI
事業A
合致
知財KPIの設定
時間
を厳選して知財KPIを埋め込んでいく
11/13
知財KPIの効果的な使い方
社外発信のあるべき姿…統合報告書を例に
社内活用…各部との連携深化、知財活動の加速へ
トップメッセージをCSF+知財KPIで補強していく
※定量情報のみにこだわる必要はなく、具体事例などといった
定性情報との組合せが効果的(有識者ヒアリング)
社内向け知財KPIは
・非公開の社内情報も取り扱うことができる
・競合企業との比較を(遠慮なく)示すことができる
→より具体的かつ深いコミュニケーションツールになり得る
“重点領域の知財活動、競合より投資効率高く
進められていますよ”
KPI:当該領域における売上利益/特許件数
知財
経営層
“新規事業向けの知財活動が充実しています”
“さらにどのレベルまでやりましょうか”
KPI:当該領域における特許出願件数/全出願件数
事業部門
知財
“新規発明者が減っていますが教育プログラム
の拡充が必要でしょうか”
適切かつ効果的なものを
発信情報として活用
KPI:新規発明者数/全発明者数
“新規コア技術のためのテーマ創出活動をしま
研究開発部門 しょう”
KPI:新規IPC付与件数/全出願件数
知財
12/13
まとめ
有識者ヒアリングを通じて、魅力的な知財KPIの考え方を明らかにした
【企業の将来性を計る4つの指標】
1.事業戦略との整合性を示す指標
2.投資効率の高さを示す指標
3.継続的な成長可能性を示す指標
4.知的財産と人的資本の連携を示す指標
ビジネスストーリーに沿った知財KPIの設定プロセスを示した
得られた知見を基に、効果的な知財KPIの社外発信・社内活用方法を示した
13/13
以上
本日ご説明した当小委員会の研究成果は、
日本知的財産協会(JIPA)が発行する機関誌である
知財管理 2026年3月号 に論説として掲載予定です
END
資料6
資料6
知財投資・活用戦略の有効な開示及びガバナンス
に関する検討会(第28回)
-アジェンダに対する回答-
林力一
野村総合研究所 コンサルティング事業本部
シニアプリンシパル/弁理士
E-mail:r4-hayashi@nri.co.jp
2026年3月6日
背景:GGL ver2.0の実装課題
現状のガイドラインでは、知財経営でのCxOの役割、知財投資・活用判断会議体の設置、
KPIの整備が不十分であるため、具体的な知財経営実装の手順を提示する必要がある。
課題の本質:知財経営実務レベルでの「具体性」と「接続」の欠如
知財経営でのCxOの役割曖昧
誰が(CEO/CDO/CTO/CFO/CBO/CHRO)、何を、意思決定
し、責任を負うかが不明瞭。
知財・無形資産との関係で経営的KPIの整備が不十分
知財・無形資産機能による顧客獲得数(n数)・転換率(CVR)等
の経営直結KPIが欠落し、共通言語がない。
経営会議体へ知財投資・活用判断が盛込めていない
投資判断を行う「ゲート」や、「経営投資・活用判断会議体」の設
計不足。
知財経営実装手順が不明
ソリューション・プラットフォーム事業や顧客データ統合、AIガバ
ナンスに関する契約・データ・標準化から制度開示(IR)までの
具体的な実務導線が曖昧。
知財経営実装における対応方針(IPX経営戦略モデル)
知財を従来の権利管理から「収益獲得/顧客獲得」機能として再定義し、CxO別に責任を明確化。
KPIの分離と投資ゲートの二段構えにより、短期利益偏重によるイノベーションのジレンマを構造的に回避する。
Copyright(C) Nomura Research Institute, Ltd. All rights reserved.
1
Executive Summary 1/3:前提と論点(5項目)
知財投資はCxO責任と投資ゲートを明確化し、KPI(獲得数/CVR)で効果を可視化し、
経営へ開示し、共通言語で経営会議と投資家へ中長期の価値創造すべきである。
前提:GGL ver2.0が経営で実装されにくい構造的要因
構造的欠陥:CxO機能(誰が)、意思決定(何を)、KPI(どう測るか)、会議体(どこで)の実務定義が不足。
言語の断絶:経営言語(勝ち筋、成長投資)と現場言語(権利化、件数)の間に深いギャップが存在。
結果として、知財情報が経営判断に資する情報として接続されず、意思決定に繋がっていないことが多い。
知財経営実装上での設計思想(IPX経営戦略モデル)
知財・無形資産を「権利管理」から「収益獲得・顧客獲得機能」へ再定義し、KPI(顧客獲得数/CVR)で共通言語化する。
• 知財を従来の「権利管理」から、経営への効果である「収益獲得機能(利益率維持)」及び「顧客獲得機能(n数拡大)」をKPIとする
• モノ/単独事業に加えて、コト/Sol-PFによる顧客価値を提供することで、企業の成長性・企業価値向上を図る。
• これらKPIの成果を共通言語化(数値化)されたKPI(顧客獲得数、転換率等)として提示し、経営と現場を接続する。
本資料の論点構成(アジェンダ2の5項目)
2(1) 投資と責任
2(2) 形式知形成
投資対象明確化
形式知化3層モデル
責任者(CxO)定義
As-Is把握
部門間での連携不能回避
To-Be定義
2(3) 成長投資開示
Growth SG&A可視化
制度開示(IR)活用
市場意識の強み
2(4) 共通言語・指標
2(5) 新潮流取込み
戦略整合性指標
生成AI・AI活用
投資効率・成長性
人的資本経営浸透
知財×人的資本連携
戦略策定自動化
Copyright(C) Nomura Research Institute, Ltd. All rights reserved.
2
Executive Summary 3/2:要点整理2(1)・2(2)
知財投資はCxO別の責任とKPI(顧客獲得数/CVR/ROI)で効果を測定し、投資ゲート
と開示で中長期の価値創造を示し、経営会議合意の共通言語で投資家に説明すべき。
2(1) 投資対象×責任者(CxO)の明確化とKPI分離
投資目的
責任者
(事業部門と投資判断を切り離すことでジレンマを解消してBX促進)
(企業に寄る)
コア技術・知財
差別化・収益維持(新用途・市場への展開)
CTO
営業利益率
Sol-PF技術・知財
モノ単独では未開拓顧客開拓(コモディティ化・サプライチェーン断絶の影響)
CTO/CDO
顧客獲得数/CPA
企業価値最適化(コア事業とSol-PF事業投資バランス)
CFO
ROI/PBR
ブランド
顧客獲得効率向上
CBO/CEO
指名検索数
人材
事業化力強化
CHRO
新規テーマ数
区分
非財務投資総合効果
主要KPI
Gate 1: 顧客獲得
Gate 2: 収益転換
Result: コア事業での収益
n数 / CPA / 採用社数
転換率(CVR) / 継続率
粗利率 / 営業利益率
2(2) 形式知の戦略的形成 (As-Is把握とTo-Be定義:知財・無形資産による事業価値創造ストーリ作り)
1. 保護層
(コア技術開発)
差別化技術・ノウハウ
→ 知財クローズ化(排他的効力)
2. 標準化層
(Sol-PF技術開発)
ソリューション・プラットフォーム(Sol-PF)技術マーケティング・バリューチェーン全体での価値創造
→ Sol-PF開発(R&Dロードマップ)
3. エコシステム層
(顧客獲得)
Sol-PF提供(知財オープン化:実施許諾)
→ 装置/SDK等事業支援による(コア技術だけでは獲得できない)顧客獲得
事業提携 (Business)
目的:顧客獲得・市場アクセス
成果:シェア拡大
技術提携 (Tech)
目的:汎用性確保・スケール
成果:特定社専用化回避
Copyright(C) Nomura Research Institute, Ltd. All rights reserved.
3
Executive Summary 3/3:要点整理2(3)・2(4)・2(5)
知財投資はKPI(顧客獲得数・CVR・ROI)で効果可視化し、CxO責任と投資ゲートで開示
とガバナンスを確立し、中長期価値と事業指標を示して投資家からの信頼を得る。
2(3) 成長投資の制度開示(IR): Growth SG&Aの可視化
• R&D(コア技術の投資に加えてコア技術では獲得できない顧客獲得のためSol-PF技術への投資)
• コア技術/ Sol-PF 技術の開発のための技術投資(採用、提携、DX投資)と、顧客を獲得するために事業への投資(提携等投資)
強み(コア技術開発)
Sol-PF開発・提供
顧客獲得(n数)
コア収益への転換(CVR)
コア収益
2(4) 共通言語・指標整備(IPXモデルKPIと整合)
① 事業戦略整合性
② 投資効率
③ 成長可能性
④ 知財×人的資本
• Sol-PF採用社数
• 技術ロードマップ連動テーマ数
• 事業PF評価反映数
• n数/投資額
• 転換率(CVR)
• 全社横断ROI
• LTV、解約率
• Sol-PF顧客提供数
• 開発顧客パイプライン
• • Sol-PF部門立上げ数
知財経営企画G設置数
• 統合会議開催数
※部門間での連携不能回避のため、上位IPX投資委員会での横断評価が必須。
2(5) 人的資本経営・生成AI活用の取込み
A. 生成AI・AIエージェント活用
自動化: 競合・特許・顧客ニーズ収集、市場・KBF分析
特許DB連携: 出願リスト分析+ネット情報統合で精度向上
提携: 技術保有企業・大学・スタートアップのマッチング
B. 人的資本経営との統合
組織: 経営企画内に知財経営G設置、ビジネスアーキテクト
人材: Sol-PF推進人材(マーケ×技術×契約)の育成
連携: 部門横断チーム常設、外部専門家・AIベンダー活用
※AIは情報収集・分析を担当、最終的な戦略判断は人間(CxO)が行う。
Copyright(C) Nomura Research Institute, Ltd. All rights reserved.
4
2(1)-1 投資対象5区分と目的・責任者(例)
知財・無形資産の機能別に投資対象を整理し、CxOの責任とKPI評価方法を明確化する
ことで、知財・無形資産の投資により提供可能な中長期価値を投資家に提示する。
投資対象
目的(経営言語)
責任CxO
KPI(例)
Core(1) コア技術評価
差別化技術
収益源の維持・強化
CTO
営業利益率、シェア維持率
Core h(2) Sol-PF技術評価
顧客事業支援IF技術
未開拓顧客の獲得
(市場アクセス)
CTO / CDO
n数、CPA、採用社数、
転換率(CVR)
Core (3) 非財務投資総合評価
知財・無形資産
コア事業による直接収支に加えて、
Sol-PL知財による顧客獲得、コア事業
の収益性へ繋げる
CFO
知財ROI、回収期間、投資リスク
Growth(4) ブランド
市場開拓
獲得効率の向上、信頼醸成
CBO / CEO
リード獲得、指名検索、
CVR、LTV
Growth(5) 人材
創造・プロデューサ
事業化力の獲得
CHRO
新規テーマ創出数、事業化率
Operation DX生産性
粗利改善、供給能力強化
CDO / COO
原価率、工数削減、LT短縮
原価・供給
実装上のポイント:部門間での連携不能の回避と優先順位
現在の経営課題は特に(1)コアR&Dと(2)Sol-PFの連携による(3) 非財務投資総合評価が重要。
部門間での連携不能回避策:各CxOが個別最適に走らぬよう、上位IPX投資委員会で横断的に評価する(後述)。
Copyright(C) Nomura Research Institute, Ltd. All rights reserved.
5
2(1)-2 KPI分離と投資ゲート(二段階)
イノベーションのジレンマを回避するために、顧客獲得と収益転換のKPIを分離し、
統合ROIとして投資をゲート監視、将来の収益源確保を優先すべきである。
STEP 1
STEP 2
Gate 1:顧客獲得(Sol-PF)
Gate 2:収益転換(コア)
主要KPI(面の拡大)
獲得顧客数(n数)
主要KPI(収益化効率)
接続
転換率(CVR)
顧客獲得単価(CPA)
粗利率 / 利益率
Sol-PF採用社数
顧客生涯価値(LTV)
評価方針:
単体黒字を求めず、市場浸透(面の拡大)を最優先
評価。
評価方針:
Sol-PFからの送客効率と、最終的な収益貢献で評価
。
全社評価:全社横断ROIでのモニタリング
Gate 1(投資)とGate 2(回収)を接続し、ポートフォリオ
全体でROIを判断
統合ROI = (コア収益 + Sol-PFによる顧客獲得価値) / 総投資額
ジレンマ回避の要諦:ROIC経営の課題を解消するため、顧客獲得事業(Sol-PF)に短期黒字を求めず、将来の収益源確保を優先する。
Copyright(C) Nomura Research Institute, Ltd. All rights reserved.
6
2(1)-3 会議体の二階建て構造
知財投資は各分科会KPIを統合しROIを監視、投資ゲートと透明開示で全社戦略とガバ
ナンスを確立し価値創造を実現する。
上位:知財・無形資産投資委員会
議長/ 構成メンバー
議長:CTO/CDO(企業特性による) 構成メンバー CFO / CBO / CHRO / 経営企画 / 知財経営グループ
役割・機能
全社投資原則の策定と資源配分の決定
投資Gate承認(顧客獲得フェーズ → 収益転換フェーズ)
全社横断ROIの監督とモニタリング
各分科会からの上程事項の統合的な意思決定
標準化・Sol-PF投資判断
技術・知財の提供(オープン化)範囲の審議、分離設計(コア領域とSol-PF領域の境界)の決定 ※知財部門参画
部門間での連携不能回避の鍵:各分科会の活動を「上位委員会」で統合評価し、全社戦略として同期させる
Copyright(C) Nomura Research Institute, Ltd. All rights reserved.
7
2(1)-4 事業撤退判断の新基準(Sol-PF統合前提)
コア事業の収益性低下時は即撤退せず、ソリューション事業追加による市場規模・ROI試
算を基に事業再生可能性を評価する。
コア単独の
市場獲得評価
Sol-PF統合後の
改善余地評価
市場シェア・成長率既存市場で
未開拓顧客層モノだけではリーチ
のポジション確認
不可な層
競合との差別化機能的優位性の
新規獲得可能性Sol-PF提供によ
投資回収期間Sol-PF投資の回収
技術転用・ピボットSol-PF技術の
持続性
る接点拡大
予測
他領域適用
CVR改善余地送客効率向上のポ
期待ROI全社視点での投資対効果
エコシステム拡大パートナー連携
単独収益性モノ単体での利益率
推移
テンシャル
市場性・ROI
の試算
市場規模分析TAM/SAM/SOMの
再定義
撤退前の
収益性改善検討
事業PF再構成「コア+顧客獲得」
で再評価
による収益機会
重要:実務的知見
ロイヤルティ偏重の知財流動化は相手にとって「コスト」となり交渉が難航しやすい。
実務上は、Sol-PF技術・知財の提供(オープン化)で顧客を獲得し、コア事業の収益性を高めるアプローチが有効である(過去のインテルやク
アルコムの創発的オープン&クローズ戦略参考)。
Copyright(C) Nomura Research Institute, Ltd. All rights reserved.
8
2(2)-1 形式知化の3層モデル
知財投資は目的と活用法を明確化し、収益確保と顧客拡大を両立するための知財経営
戦略の開示とガバナンスを実行する必要がある。
形式知化の前提:As-Is(現状)の正確な把握とTo-Be(目指す姿)の定義
As-Is把握(現状):
・既存の技術・ノウハウ・暗黙知の棚卸し
・現場の強みと競合差別化要因の特定
層
第1層
保護層
(コア技術開発)
第2層
標準化層
(Sol-PF技術開発)
第3層
エコシステム構築
対象
差別化技術・ノウハウ
自社の競争優位の源泉
Sol-PF技術開発
顧客事業支援・社会課題解決のマーケティング
顧客へ知財提供
Sol-PF技術の提供(オープン:実施許諾)
To-Be定義(目指す姿):
・目指す事業ポートフォリオとSol-PF戦略
・ターゲット市場と顧客獲得目標の明確化
形式知化手法
特許権利化
営業ノウハウ秘密化
戦略的活用
事業スケールへの影響
他社排除(MOAT)
競争優位性の堅持
コア事業の収益性確保
高収益の維持
顧客獲得戦略
標準規格化
戦略的知財オープン化 新興顧客層への浸透
モノ・単独事業では獲得でき
ない未開拓顧客へリーチ
ターンキーソリューション エコシステム形成
装置/SDK/ツール提供 顧客ロックイン
収益最大化
面的拡大による貢献
SEP(標準必須特許)戦略の注意点
顧客獲得IP(第2層)のSEP化は有効だが、収益獲得IP(第1層)のSEP化は高収益性を損なうため、分離設計が不可欠である。
Copyright(C) Nomura Research Institute, Ltd. All rights reserved.
9
2(2)-2 提携戦略の2類型(事業提携/技術提携)
提携により開発する知財を、複数の事業会社へ提供(オープン化)可能なように、事業・
技術提携の目的の違いからそれぞれの投資対効果・KPIを明確化する必要がある。
事業提携
提携相手
事業会社(顧客候補、販売パートナー)
技術提携
提携相手(事業を持たない主体)
スタートアップ、大学・研究機関、ファブレス企業等
目的・狙い
目的・狙い
既存の市場・顧客基盤へのアクセス
成果を特定社専用にせず汎用化(PF化)する
製品・サービスの導入拡大(販売チャネル活用)
主要KPI
新規顧客獲得数、市場浸透率(シェア)
事業スケールの制約要因(ロックイン)を回避
主要KPI
適用可能顧客数(潜在市場)、PF採用社数
戦略的根拠
リスク管理
特定顧客への過度な依存を回避し、自社の独立性と価格
決定権を維持する。
特定事業会社との共同開発は、成果が「その企業専用」と
なり他社展開が制限されるリスクがある。
Copyright(C) Nomura Research Institute, Ltd. All rights reserved.
10
2(2)-3 分離設計とSEP戦略(実務要件)
知財・無形資産の機能として収益獲得と顧客獲得の目的で分離し、その境界設計と機能
連携で、通常相反する競争優位と顧客獲得性の両者を確保する。
基本原則:目的別の分離運用
収益獲得IP(コア)
SEP化を避け、ブラックボックス化等により競争優位と高収益性を保
持。
顧客獲得IP(Sol-PF)
標準化・SEP化を積極活用し、市場へのリーチ拡大とエコシステム
形成を図る。
実装要件(アクションプラン)
R&D部門(標準化)× 知財部門の高度連携
開発初期から「開示」と「秘匿」の境界を合意形成するプロセス確立。
競争力の要点の設計
標準化対象外となるよう、コア技術を慎重に切り出しブラックボックス化。
オープン/クローズ領域の明確な境界設定
顧客獲得インターフェース(オープン)と収益源泉(クローズ)を明確に区分。
重要:コア技術の不用意なSEP化は、FRAND条件により独占的高収益と排他機能を損なうリスクがある。
Copyright(C) Nomura Research Institute, Ltd. All rights reserved.
11
2(3)-1 成長投資(販管費内)の制度開示(IR)フレームワーク
知財投資は目的別KPIを設定しCxO責任と投資ゲートを明確化、透明性の高い開示とガ
バナンスで中長期価値を投資家に提示する。
Growth SG&Aとして別建て表示
投資項目
内訳・戦略的意図
R&D投資
①コア技術:差別化・競争優位
②Sol-PF:顧客獲得・市場開拓
提携・M&A
CxO
ゲート
主要KPI
CTO
収益
獲得
営業利益率獲得数(n)特許価値
①事業提携:顧客獲得(事業会社)
②技術提携:PF化(CVC・大学・SU等)
CTO/CDO
獲得
転換
PF採用社数新規顧客数
ブランド
①認知獲得・初期導入: Sol-PF投入
②インナー・アウターブランディング
CBO/CEO
獲得
獲得数(n)獲得単価(CPA)
DX・生産性
①原価改善:自動化・効率化
②供給強化:スループット向上
CDO/COO
収益
原価率改善工数削減LT短縮
人的資本
①創造人材:新規事業創出力
②Pj人材:構想・推進力
CHRO
転換
新規テーマ数事業化率
ポイント:販管費を一括りのコストとせず、将来の「獲得」「転換」「収益」を生む戦略的投資(Growth SG&A)として目的別に開示し、各フェー
ズKPIで評価・対話する。
Copyright(C) Nomura Research Institute, Ltd. All rights reserved.
12
2(3)-2 制度開示(IR)の順序とKPI(共通言語化)
知財投資は、コア技術とソリューション技術による提供価値仮説起点のKPI達成までの
企業価値創造ストーリー性を明確化し、中長期の競争優位と収益性を投資家に提示する。
1
2
3
4
5
市場を意識した強み
(価値仮説)
未開拓顧客の
マーケティングでの
Sol-PFの開発・提供
(オープン化)
モノ単独では獲得
できない顧客獲得
(エコシステム構築)
コア事業への
収益転換
(コンバージョン)
持続的事業成長
(サステナビリティ)
価値仮説・コア技術の
競争優位性を明示
技術・知財の提供範囲と
顧客利用状況
獲得顧客数(n数) / CPA
転換率(CVR) / コア売上
顧客生涯価値(LTV)
解約率 / 参加社数
強みがないとコスト増に見える
採用企業数・導入事例
Sol-PF採用社数実績
粗利率・利益率向上
知財・無形資産による経営指標値としての共通言語KPI管理(ビジネスのスケール・拡張性を示す)
獲得顧客数
獲得単価
PF採用
転換率
n数
CPA
社数
CVR
生涯価値
顧客維持
エコシステム
将来性
LTV
解約率
参加数
開発数
これらは投資家・経営者が理解できる共通言語であり、技術詳細ではなく「ビジネスのスケール・拡張性」を示す指標となる。
Copyright(C) Nomura Research Institute, Ltd. All rights reserved.
13
2(4) 経営層と知財部門の共通言語・指標整備
知財投資は経営戦略・事業改革と整合性のあるKPI(n数、CVR等)を共通言語として、上
位「知財・無形資産投資委員会」での全社横断でのモニタリングを行うべきである。
① 事業戦略との整合性
② 投資効率の高さ
Sol-PF採用社数(提供企業数)
n数/投資額(顧客獲得効率)
未開拓顧客マーケティングによるロードマップ反映数
転換率(CVR)(Sol-PF→コアへの送客効率)
顧客獲得単価(CPA)、全社横断ROI
ポートフォリオ評価への反映数(新規・改善)
③ 継続的な成長可能性
④ 知財×人的資本連携
LTV(顧客生涯価値)、解約率、リーチ率
ビジネスアーキテクト・専門部署の設置数
Sol-PF事業の顧客提供数、標準化採用数
Sol-PF事業部門の立ち上げ数・雇用採用数
新規Sol-PF開発パイプライン数
スタートアップ・大学等との技術提携数
経営企画×知財×CTO/CDO統合会議数
Copyright(C) Nomura Research Institute, Ltd. All rights reserved.
14
2(5) 人的資本経営の浸透や生成AIの活用などの取組
AIエージェントにより、競合情報を収集・分析、マーケティングと競合優位性、提携候補リ
ストなどを抽出して、IPランドスケープの高度化が図れる。
A. 生成AI・AIエージェントの戦略的活用
課題・ボトルネック
情報収集・分析の属人化と手動作業による非効率
改善策:AIエージェントによる自動化
DBからDLリストをAI解析、技術・企業分析
ネット情報(ニュース・IR等)と特許の統合分析
B. 人的資本経営との統合
課題・ボトルネック
推進に必要な人材・組織体制が未整備
改善策:人的資本×知財経営の統合
①体制整備:経営企画内に知財経営G設置
②Sol-PF人材:技術×契約・データの統合スキル
①顧客ニーズ(KBF)抽出:SNS等から困りごと特定。有識者インタビュも組合わせる。
②競合情報の自動更新:技術・特許・製品を継続収集
差別化要素(KSF) との現状保有技術とのギャップを抽出
③横断チーム:経営企画×知財×CTO/CDO定例会
④外部連携:戦略コンサル・AI・特許分析家と協働
③技術/事業提携候補抽出:情報分析と有識者インタビューから有望企業を抽出
④市場性分析:総市場規模(TAM)/到達可能市場(SAM)/実際獲得可能市場
(SOM)試算、成長率予測
⑤開示連動:統合報告書で推進人材育成を開示
効果:戦略策定高速化(月次→週次)、精度向上
効果:部門間での連携不能解消、実効性担保
注記:AIは情報収集・分析を担い、最終判断は人間が行う。特許×ネット情報の統合で、技術・市場動向を把握し、高精度なKBF/KSF分析と
戦略策定が可能になる。
Copyright(C) Nomura Research Institute, Ltd. All rights reserved.
15
資料8
自己創設無形資産による価値創造力①
資料8
出所:UBS HOLT Lensのデータ(2026年2月13日現在)より筆者作成、直近年度実績(LFY)を含む過去11年度の実績(①496社、②321社、③133社)
注:CFROI(Cashflow Return on Investment)は、ROICと同様に資本生産性を測る指標だが、分母分子共にキャッシュベース、投資回収期間を考慮したIRR(内部収益率)で算出
1
2026年3月6日 参考資料
無断転載禁止/Astonering Advisor LLC
自己創設無形資産による価値創造力②
出所:UBS HOLT Lensのデータ(2026年2月13日現在)より筆者作成、直近年度実績(LFY)を含む過去11年度の実績(①496社、②321社、③133社、TOPIX 500: 500社)
注:CFROI(Cashflow Return on Investment)は、ROICと同様に資本生産性を測る指標だが、分母分子共にキャッシュベース、投資回収期間を考慮したIRR(内部収益率)で算出
2
2026年3月6日 参考資料
無断転載禁止/Astonering Advisor LLC
資料9
第2回 コーポレートガバナンス・コードの改訂に関する有識者会議(令和7年度)
参考1
事務局説明資料
2026年2月26日
金融庁
Financial Services Agency, the Japanese Government
第1回有識者会議での主な意見
スリム化・
プリンシプ
ル化
方向性に賛成。(多数)
コード全体を再構成することで実質化を図るべき。
株主との対話の重要性が低下しないような改訂とすべき。
過度なスリム化、性急な規定の削除や再分類には慎重を期すべき。重要な項目が削除されて、政策的な重要
性もなくなったというように捉えられないように考慮すべき。
コードの記載から外れると「対応不要となった」と誤解されかねないため、可能な限り「考え方」に残すべきであ
り、削除する原則について企業・投資家の認識のずれが生じないようコミュニケーションを工夫する必要がある。
コンプライ・オア・エクスプレインの対象である「原則」と対象外の「考え方」の関係性の整理が必要不可欠。プリ
ンシプルベースに立ち返り、まさにプリンシプルとすべきものを原則に格上げするという基準で判断すべき。
「負担」軽減という点に関して、統合報告書に力を入れている会社が多いことからすると、工数や費用だけを
「負担」と捉えるのは誤り。どのように対応すべきかがわからないこと、エクスプレインがどのような評価をされ
るのかわからないことへの不安が「負担」なのだとすると、スリム化・プリンシプル化により会社が自らの頭で考
えなくてはならなくなること自体が新たな「負担」となりかねない。
現行コードにはハウツー的な内容があるが、コードは本来骨太の方針を示すべきもの。企業や投資家の類型
によって対応が変わり得る点や、細目的な項目は、ガイドライン・アドバイス・好事例・ギャップ事例集でカバー
する方針とすべき。
-1-
第1回有識者会議での主な意見
同一テー
マの統合・
整理
同一テーマを整理・統合するとの方向性について特段の反対なし。
サステナビリティ関連の規定は統合するべき。第2章の原則の多くは第4章に統合可能。
サステナビリティ、株主との対話に加え、多様性に関する項目も重要性があるが分散している。英国コードに
倣って、多様性をどのように満たすかは会社が考えるべき事項として規定すべき。特に指名委員会の重要性
やグループガバナンスを含めたリスクマネジメント(守りのガバナンス)についても、統合・整理して記載すべき。
企業が価値創造ストーリーを「上の句」として読んだうえで、「下の句」として株主との対話を行うことが重要。原
則3-1(i)、補充原則3-1③・4-1②・4-2②、原則5-2に分散しているため、これらを統合してその精神を示すべき。
序文
序文を追加することに賛成。(多数)
コンプライ及びエクスプレインの実施は投資家が納得できる内容とすべき旨も明記すべき。エクスプレインのク
オリティが重要。
形式的なコンプライも多い中、各企業の実態に応じて最適な手段を選択する機会とすることが重要であり、適
切なエクスプレインが重要であることの周知が必要。
場合によっては「コンプライ・アンド・エクスプレイン」の考え方についても説明することは重要かつ有意義。
プリンシプルベース・アプローチの趣旨や精神を明記することが適切。
多様なステークホルダーへの付加価値の分配、全てのステークホルダーにとってポジティブな成果を得ること
を目的とする旨についても盛り込んではどうか。
序文は、経営者に読んでもらい、意思決定を行う際の拠り所ともすべきもので、コード内で最も重要。
コードを一読しかしない経営者もいるため、経営者が読むべきと思える内容とすべき。
ガバナンス改革は成長投資を促すことに主眼がある。原案の序文のように、コードの趣旨を序文に記載するこ
とは非常に重要。
ショートターミズムが強くなっている中で、企業は、ペイシャント・キャピタルを投下する投資家に向き合い、中
長期的な成長に向けた観点から投資等を行うことが重要であり、企業が価値創造ストーリーを構築・説明する
必要がある。
-2-
第1回有識者会議での主な意見
経営資源
の適切な
配分
資本効率を高め、目指すべきB/Sを踏まえてどのように資金を用いるかという計画や、計画と実績に乖離が生
じた場合の対応方法についても説明すべき。
投資家は株主還元のみではなく、資本構成が最適かを重視している。
キャピタルアロケーションについては、重要なガバナンスの責任であり、特に、資本効率とROEの継続的な向
上を求める。
経営資源の配分は企業の自律的な判断に委ねられるべき。「経営資源の適切な配分を通じた投資促進」を
コードで規律することについては、極めて慎重な議論が求められる。株主還元圧力が一段と強まるおそれ。
キャピタルアロケーションの開示・説明や投資の有効性の検証、次のアクションへの反映というPDCAが、経営
者にとって非常に重要。
現預金のみを取り上げて検証・説明責任の対象とすることには違和感がある。投資の中には中長期で語る必
要があるもの、リスクを語る必要があるものもある。投資が中長期的な成長に寄与することの説明が重要であ
り、特定の事項について一律に良くないものとするのは抵抗がある。
短期目線の投資家と中長期目線の投資家で利害が異なる水平的エージェンシー問題があることから、一時点
ではなく、特に中長期な時間軸も踏まえて、多様なステークホルダーへの分配を考えるべき。
現預金額が相当大きくなっている一方で、投資額の低下、とりわけ労働分配率が低迷しているため、この点を
十分認識して議論していくことが重要。
適切な成長投資のために企業の経営資源の配分の検討を促す方向性は基本的に望ましい。
有価証券
報告書の
定時株主
総会前の
開示
有価証券報告書は経営陣との対話の前提となるコアの情報が記載される書類。投資家による十分な検討期
間、企業と対話する時間を確保するため、定時株主総会開催日前の十分な期間/数日よりも更に前の開示
がなされるべき。 3週間前の開示をコードに明記すべき。
非財務情報の開示等、企業の開示負担は増加。実現可能性も踏まえた制度となるよう、一本化・一体開示を
含めた環境整備の検討が必要。
-3-
第1回有識者会議での主な意見
取締役会
事務局の
機能強化
取締役会事務局が期待される役割や「カンパニー・セクレタリー」の語をコードに明記すべき。
独立社外取締役の割合が高い会社や独立社外取締役が議長を務める会社では特に取締役会事務局の役割
が重要であり、経営人材の育成の観点からも有意義な機会となる。
(社外)取
締役の質・
量・独立性
独立社外取締役の機能不全が課題。数は格段に充実したが、質には懸念がある。取締役会が果たすべき監
督の本質を理解し、企業価値向上策やガバナンスの在り方について投資家と対等に議論できる人材を登用す
べき。平時からの質の向上も必要。社外取締役の使命・必要な覚悟・素質・行動規範等に関する独立した章を
設けるべき。
独立社外取締役の独立性・多様性・スキル向上は改善の余地があり、コードにおいても強調されるべき。
独立社外取締役を過半数選任すること、議長の独立性を含む独立取締役のリーダーシップ、取締役トレーニ
ングの促進を規定すべき。
原則4-8(独立社外取締役の有効な活用)は、人数要件を満たすという形式的な遵守にとどまっている。
社外取締役は、独立した客観的な立場から、平時においては、経営陣に執行を委ねつつ取締役会における大
局的な議論や意思決定に貢献すべき。他方、企業買収等の場面においては、特別委員会において企業価値
向上の観点から中心的な役割を果たすことが求められる。質の改善に向けて、社外取締役の機能強化、役割
の明確化、指名プロセスの透明性向上、スキル・マトリックスの改善、実効性評価の実効化による社外取締役
の質の確保の重要性も強調することが考えられる。
まずは社外取締役の見解、権限、活動状況、報酬等、実質化されているかが分かる情報の開示を進め、その
上で実質化を図っていくという順序とすべき。
保有する政策保有株式の発行会社から派遣されている取締役に独立性が認められることは問題。
価値創造ストーリーをマネジメントできるようにするため、ボードの実質化が重要であり、ボードの役割を明確
化すべき。
取締役会における適切なアジェンダ設定のためには、議長が機能することが必要。
-4-
第1回有識者会議での主な意見
その他
企業におけるリスク管理の重要性が増している中、政策保有株式の保有は、リスク回避の手段にはならない。
政策保有株式を一定期間内に売却した企業に対する優遇措置も含めて検討してもよい。
株主価値への貢献と連動した報酬体系の構築や、ガバナンスの取組状況の開示、取締役選任プロセスでの
候補者の得票数の開示、良質な取締役会実効性評価なども、さらなるガバナンス実務の改善に資する。
政策保有株式はゼロにすべき。政策保有株式を持ち続ける正当性と解消に向けたタイムラインに関する、より
明確な開示が期待される。
議決権行使助言会社の透明性や説明責任を強化する規制の検討が必要。
企業の開示負担は増加しており、成長戦略の策定や投資家との対話に経営資源を振り向けられない要因の
一つとなっている。開示の在り方を抜本的に見直し、制度横断的に再整理することが必要。
「取締役会」、「経営陣」、「社外取締役」の役割分担を明確に書き分けてほしい。
別途ガイドラインが策定されている知的財産等、コードが様々な政策の出口とされていることには疑問。
外国人や中途採用の人材登用は重要ではあるものの、取締役会ではなく執行サイドの責務ではないか。
「考え方」という名称には重みがないため、「補充原則」等重みを感じられる名称を維持すべき。
価値創造ストーリーは社内横断的に作成する必要があるため、社内部門のコラボについても規定すべき。
-5-
コーポレートガバナンス・コードのプリンシプル化・スリム化
第1回有識者会議において、以下の方向性で再整理を行うことについて、概ね賛同が得られた。
再整理の方向性(案)
① 現行実務等に照らし、引き続き、重要性が認められ、かつ、コンプライ・オア・エクスプレインの規律に付す
る必要性が認められる補充原則は原則に格上げする
② 現行実務等に照らし、コンプライ・オア・エクスプレインの規律の対象とするよりも、他の原則等の補助的
な位置づけとしつつ、より実質的な対応を促進することが適切と考えられる箇所については、原則の「考
え方」を新設した上で記載する
③ その他、実務への浸透が進む等によりコードに記載する必要性が低下した箇所、コード策定以降にルー
ル化され重複が生じている箇所等は削除する
〔第1回有識者会議におけるご意見等を踏まえた補充原則の再整理のイメージ(第1回有識者会議の事務局説明資料から修正して再掲)〕
現行
改訂案
基本原則(5個)
基本原則
考え方
解釈指針(注)
原則(31個)
① 重要かつコンプライ・オア・
エクスプレインの対象とする必要あり
補充原則(47個)
② コンプライ・オア・エクスプレインの対象ではなく、
他の原則等の補助的な位置付けとすることが適切
③ 必要性が低下、重複等
: コンプライ・オア・エクスプレインの対象
(注)第1回有識者会議の事務局説明資料においては「考え方」としていたもの。
原則
解釈指針(注)
(新設)
削除
: コンプライ・オア・エクスプレインの対象外
-6-
改訂案の概要(1/2)
テーマごとに以下の方向性でコード改訂を行うことが考えられるか。
テーマ
コード改訂の方向性(案)
•
コーポレートガバナンス・コード原案(序文)を参考に、以下の内容を含む序文を新設。
本コードの目的
プリンシプルベース・アプローチ(原則主義)及びコンプライ・オア・エクスプレインの説明
企業の置かれた状況によっては、エクスプレインすべき場合があること
コンプライする理由について説明することも建設的な対話に資する取組みとして望ましいこと
「解釈指針」の位置付け
プリンシプル化・スリム化の趣旨
•
建設的な対話に向けて取り組むことが引き続き重要。株主に関する第1章(株主の権利・平等性の確保)と
第5章(株主との対話)を統合し、重要性に鑑みコードの冒頭に規定。
•
取締役会の機能強化に向けた取組みが引き続き重要であることから、取締役会の中核的な責務は
原則に格上げしつつ、具体的な記述や例示部分は「解釈指針」に移管。
全社的リスク管理体制の整備が適切に行われるよう、4-3(経営陣・取締役に対する実効的な監督)の「解釈
指針」にサイバーセキュリティリスク、サプライチェーン途絶リスク、情報流出リスク等への対応も考慮
事項に含まれ得る旨を規定。
社外取締役の実効性向上に向け、社外取締役に求められる役割・責務、質・量の確保、独立性確保
に関し趣旨を明確化(4-7、4-8、4-9)。
取締役会事務局(コーポレートセクレタリー等)の役割・機能を4-12(取締役会における審議の活性化)・4
-13(情報入手と支援体制)の「解釈指針」に追加し両原則を統合。
序文
株主との対話
(同一テーマの統合・整理の対象)
•
取締役会
(同一テーマの統合・整理の対象)
•
•
※ 基本原則・原則・補充原則の番号は、特段の断りのない限り、いずれも現行コードにおけるもの。
-7-
改訂案の概要(2/2)
テーマ
コード改訂の方向性(案)
•
経営資源の配分
(同一テーマの統合・整理の対象)
•
•
•
•
サステナビリティ
(同一テーマの統合・整理の対象)
政策保有株式
有価証券報告書の
定時株主総会前の開示
•
4-2②後段(経営資源の配分・事業ポートフォリオに関する戦略の実行の監督)・5-2(経営戦略や経営計画の策定・公
表)・5-2①(経営戦略等における事業ポートフォリオの基本的方針・見直し状況)を、4-1(企業戦略等の大きな方向付
け)・4-2(適切なリスクテイクを支える環境整備)及びそれらの「解釈指針」に統合・整理。
取締役会は、会社の目指すところに向けた成長の道筋を構築・提示する役割・責務を負う旨を規定
(4-1)。
取締役会は、成長の道筋を踏まえた成長投資や事業ポートフォリオの見直し等の経営資源の配分
に関して具体的に何を実行するのかについて説明すべき旨を規定(4-1)。
様々な投資機会を認識しつつ適切に資源配分を行うべきであり、現預金を投資等に有効活用できて
いるかを含め、現状の配分が適切かについて、取締役会は不断に検証すべき旨を規定(4-2)。
2-3(社会・環境問題をはじめとするサステナビリティを巡る課題)・2-3①(サステナビリティ課題への取組み)・4-2②
前段(サステナビリティを巡る取組みの基本的方針)を、新設する4-4(サステナビリティを巡る取組み)及びその「解釈
指針」に取締役会の役割・責務として統合・整理。
多様性確保は引き続き重要であるため、2-4①(中核人材の登用等における多様性確保、人材育成方針と社内
環境整備方針)を原則に格上げ。
•
縮減は進んでいるものの、引き続き重要であるため、1-4①(取引の縮減を示唆することなどにより株式の売
却を妨げること)・1-4②(政策保有株主との取引)を原則に格上げ。
•
有価証券報告書には投資家の意思決定に有用かつ信頼性の高い情報が豊富に含まれていること
ため、株主総会における権利行使に係る適切な環境整備を促進する観点から、原則1-2(株主総会
における権利行使)に新たに規定。
※ 基本原則・原則・補充原則の番号は、特段の断りのない限り、いずれも現行コードにおけるもの。
-8-
原則に格上げする補充原則(案)
テーマごとの改訂の方向性(スライド7・8)も踏まえ、以下の補充原則については、引き続き、コードに記載
する重要性があり、かつ、コンプライ・オア・エクスプレインの規律に付すことにより実質的な対応を推進する
必要性があるため、原則に格上げすることが適切と考えられる。
補充原則
概要
1-1①
相当数の反対票が投じられた会社提案議案の分析・対応
1-2①、③、④後段
株主総会における情報提供、日程の適切な設定、議決権電子行使プラットフォームの利用
1-4①、②
政策保有株式の「売らせない圧力」の禁止、経済合理性の検証
2-4①前段、後段
多様性確保の考え方・測定可能な目標、方針・実施状況の開示
3-1②前段
4-1③
4-3①、②、③
英文開示
CEO等の後継者計画
経営陣幹部・CEOの選解任
4-8①、②
独立社外取締役による情報交換・認識共有、経営陣・監査役(会)との連携
4-8③前段
支配株主を有する上場会社の独立社外取締役3分の1以上(プライム上場会社は過半数)
4-10①後段
プライム上場会社の任意の委員会の独立性に関する開示
4-11①前段、後段
4-11③
4-14①前段、②
5-1①
取締役会のバランス・多様性・規模の考え方、取締役の選任方針・手続の開示
取締役会の実効性評価
取締役・監査役による会社の事業・財務・組織等に関する知識の習得、トレーニングの方針の開示
株主との対話の対応者
※ 基本原則・原則・補充原則の番号は、特段の断りのない限り、いずれも現行コードにおけるもの。
※ 下線を付した補充原則は、当該規定の一部を原則に格上げする。
-9-
「解釈指針」に移管する原則等(案) (1/2)
テーマごとの改訂の方向性案(スライド7・8)も踏まえ、以下の原則等については、引き続きコードに記載す
る重要性を有するものの、これらの原則等自体をコンプライ・オア・エクスプレインの対象とするよりも、原則
の「解釈指針」(コンプライ・オア・エクスプレインの対象外)に記載することにより他の原則等の補助的な位
置づけとしつつ、より実質的な対応を促進することが適切と考えられる。
原則・補充原則
1-1③
1-2②、④前段、⑤
1-3
概要
株主の権利・平等性の確保(基本原則1)のための少数株主権への配慮
株主総会における権利行使(1-2)のための、招集通知の記載情報の早期公表、議決権電子行使の環境
整備、実質株主による議決権行使のための検討
株主の権利・平等性の確保(基本原則1)のための資本政策の基本的な方針の説明
2-3①
取締役会・経営陣による企業文化・風土の醸成(基本原則2)のための行動準則の策定・実践、実質的な定
期レビュー
サステナビリティ課題への対応(2-3)の具体的な方策
2-4
社内の多様性確保(2-4)を行う目的
2-2、2-2①
2-4①前段、後段
2-5、2-5①
3-1
多様性(2-4)の例示、人材育成・環境整備の方針・実施状況の開示(2-4①後段)の理由
内部通報体制整備(2-5)の観点・例示
適切・正確かつ有用性が高い情報開示(基本原則3)の観点
3-1③前段
経営戦略等の策定・公表(4-1)に当たっての留意点
3-2①、②
適切な監査の確保のための適切な対応(3-2)の例示
4-1②
4-2、4-2①
会社の目指すところの確立・戦略的な方向付け(4-1)のための例示を含む
適切なリスクテイクを支える環境整備(4-2)に関する取締役会の姿勢、取締役報酬のインセンティブ付け
(4-2)の観点・具体策
※ 基本原則・原則・補充原則の番号は、特段の断りのない限り、いずれも現行コードにおけるもの。
※ 下線を付した原則・補充原則は、当該規定の一部を「解釈指針」に移管する。
- 10 -
「解釈指針」に移管する原則等(案) (2/2)
テーマごとの改訂の方向性案(スライド7・8)も踏まえ、以下の原則等については、引き続きコードに記載す
る重要性を有するものの、これらの原則等自体をコンプライ・オア・エクスプレインの対象とするよりも、原則
の「解釈指針」(コンプライ・オア・エクスプレインの対象外)に記載することにより他の原則等の補助的な位
置づけとしつつ、より実質的な対応を促進することが適切と考えられる。
原則・補充原則
4-3、4-3④
4-4、4-4①後段
概要
経営陣・取締役の監督(4-3)の観点、内部統制・リスク管理体制の整備(4-3)の具体策
監査役の役割・責務(4-4)の例示、社外取締役との連携
4-5
取締役・監査役等の受託者責任
4-6
経営の監督(4-3)の実効性確保のための監督と執行の分離の具体例
4-8①、②
独立社外取締役の機能発揮(新設する4-11)の例示
4-8③後段
独立社外取締役3分の1以上の選任(4-8③前段)に代わる特別委員会の設置
4-10①前段
任意の仕組みの活用(4-10)の具体的場面
4-12①
取締役の選任に関する方針・手続の開示、取締役会・監査役会の実効性確保のための前提条件(4-
11)の例示、実効性評価の具体的方法
取締役会の審議活性化(4-12)のための具体的方法
4-13③
取締役・監査役による情報入手(4-13)のための具体的方法
4-11①前段、②前段、③
基本原則5後段
株主との建設的な対話(基本原則5前段)の目的・姿勢
5-1②
株主との建設的な対話を促進するための方針(5-1)の具体的内容
5-2①
経営戦略・経営計画の策定・公表にあたっての説明(5-2)の具体的内容
※ 基本原則・原則・補充原則の番号は、特段の断りのない限り、いずれも現行コードにおけるもの。
※ 下線を付した原則・補充原則は、当該規定の一部を「解釈指針」に移管する。
- 11 -
コードから削除する原則等(案) (1/2)
コードの策定から約10年が経過し、コーポレートガバナンス体制が形式的には整いつつあるなど、コーポ
レートガバナンス改革は一定進展。これに伴い、各機関の機能・役割・責務・権限など、企業のコーポレート
ガバナンスに関する認識・理解も高まったと評価できる。
以下の原則等については、実務上浸透したと考えられることから、引き続きコードに規定しておく必要性が
低いため、削除することが適切と考えられる。
削除理由
実務上浸透した
と考えられる
1-1②
取締役会への授権を株主総会に提案する際の考慮事項
コンプライ率
(参考)
99.9 %
基本原則4後段
取締役会の役割・責務は機関設計を問わず果たされるべき
100.0 %
3種類の機関設計の解説
対象外
取締役会から経営陣への委任の範囲の開示
99.8 %
4-4①前段
監査役会の機能(独立性と情報収集力の有機的組合せ)
99.9 %
5-1③前段
自社の株主構造の把握
99.8 %
原則等
基本原則4「考え方」(一部)
4-1①
概要
※ 基本原則・原則・補充原則の番号は、特段の断りのない限り、いずれも現行コードにおけるもの。
※ 「コンプライ率」は、プライム市場、スタンダード市場に株式を上場している全ての内国会社が提出したCG報告書(2024年7月12日時点)より分析。
(出典)東京証券取引所「コーポレートガバナンス白書2025」
- 12 -
コードから削除する原則等(案) (2/2)
以下の原則等については、コード内での重複又は他の法令等との重複があり、引き続きコードに規定して
おく必要性が低いため、削除することが適切と考えられる。
削除
理由
コード内
での
重複が
ある
原則等
コード内の重複箇所・
重複する法令等
コンプライ率
(参考)
1-1
株主の権利の確保
基本原則1
100.0 %
1-7
関連当事者間の取引
4-3
99.8 %
3-1①
ひな型的・具体性を欠く開示を避けるべき
基本原則3及び同「考え方」
99.8 %
4-3
適時・正確な情報開示の監督
基本原則3、3-1
99.5 %
4-13①
取締役・監査役による追加の情報入手
4-13
100.0 %
4-13②
会社負担での外部専門家の助言の取得
4-13
100.0 %
取締役・監査役就任後の研鑽
4-14
98.7 %
上場規程(適時開示)
99.4 %
金商法、上場規程(適時開示)
99.9 %
上場規程(適時開示)
100.0 %
上場規程
96.6 %
金商法(有価証券報告書)
85.8 %
金商法(有価証券報告書)
会社法(事業報告・総会参考書類)、
金商法(有価証券報告書)
スチュワードシップ・コード(実質株主透明性)
97.2 %
4-14①後段
法令等
との
重複が
ある
概要
1-5
買収防衛策
1-5①
TOBに付された場合の取締役会の考え方等
1-6
増資、MBO等の資本政策
3-1②後段
プライム上場企業の英文開示
3-1③後段
プライム上場企業のTCFD同等の開示
4-9前段
独立社外取締役の独立性判断基準の開示
4-11②後段
取締役・監査役の兼任状況の開示
5-1③後段
株主構造の把握への株主の協力
99.9 %
99.8 %
※ 基本原則・原則・補充原則の番号は、特段の断りのない限り、いずれも現行コードにおけるもの。 ※ 下線を付した原則は、当該規定の一部を削除する。
※ 「コンプライ率」は、プライム市場、スタンダード市場に株式を上場している全ての内国会社が提出したCG報告書(2024年7月12日時点)より分析。下線を付した補充原則は、
プライム市場のみを対象とするもの。
- 13 (出典)東京証券取引所「コーポレートガバナンス白書2025」
ご議論いただきたい事項
【全体】
資料3-1、3-2で示されたコーポレートガバナンス・コードの改訂案について、
(1)
コーポレートガバナンス改革の実質化につながるよう、法令等との重複がある箇所等を削除しつつ、企
業が重要な項目に注力できるよう後押ししうるものとなっているか。
(2)
原則等の再整理の方針案(スライド7~13)は適切か。特に、①原則に格上げする補充原則、②「解釈
指針」に移管する原則等、③コードから削除する原則等に適切に分類されているか。
【個別】
(3)
序文は、コーポレートガバナンス・コードの趣旨・精神を的確かつ簡潔に表現したものとなっているか。
(4)
以下の事項の改訂を含む改訂案原則及びこれらの解釈指針について、どう考えるか。
経営資源の適切な配分(改訂案原則4-1、4-2)
有価証券報告書の定時株主総会前の開示(改訂案原則1-2)
取締役会事務局の役割(改訂案原則4-13)
独立社外取締役に求められる役割・責務、独立社外取締役の質・員数・独立性の確保について整
理し、趣旨を明確化(改訂案原則4-7~4-10)
- 14 -
資料10
第2回コーポレートガバナンス・コードの改訂に関する有識者会議(令和7年度)
参考2
1
コーポレートガバナンス・コード
~会社の持続的な成長と中長期的な企業価値の向上のために~
(改訂案)
コーポレートガバナンス・コードについて
本コードにおいて、
「コーポレートガバナンス」とは、会社が、株主をはじめ顧客・従
業員・地域社会等の立場を踏まえた上で、透明・公正かつ迅速・果断な意思決定を行うた
5
めの仕組みを意味する。
本コードは、実効的なコーポレートガバナンスの実現に資する主要な原則を取りまと
めたものであり、これらが適切に実践されることは、それぞれの会社において持続的な
成長と中長期的な企業価値の向上のための自律的な対応が図られることを通じて、会社、
投資家、ひいては経済全体の発展にも寄与することとなるものと考えられる。
10
本コードの目的
1.会社は、株主から経営を付託された者としての責任(受託者責任)をはじめ、様々な
ステークホルダーに対する責務を負っていることを認識して運営されることが重要で
ある。本コードは、こうした責務に関する説明責任を果たすことを含め会社の意思決
定の透明性・公正性を担保しつつ、これを前提とした会社の迅速・果断な意思決定を促
15
すことを通じて、「守りのガバナンス」にとどまらない、いわば「攻めのガバナンス」
の実現を目指すため、実効的なコーポレートガバナンスの実現に資すると考えられる
主要な原則を盛り込んだものである。
本コードは、会社に対してガバナンスに関する適切な規律を求めることにより、健
全な企業家精神を発揮しつつ経営手腕を振るえるような環境を整えることで、会社の
20
持続的な成長と中長期的な企業価値の向上を図ることを狙いとしている。本コードが
定める各原則(基本原則・原則)は、経営陣にとっての制約と捉えることは適切ではな
く、むしろ果断な意思決定やリスクテイクを伴う事業活動を後押しするものである。
2.本コードは、市場における中長期の投資を促す効果をもたらすことをも期待してい
る。市場においてコーポレートガバナンスの改善を最も強く期待しているのは、通常、
25
コーポレートガバナンスの改善が実を結ぶまで待つことができる中長期保有の株主で
あり、こうした株主は、短期主義的な投資行動の強まりが懸念される昨今においても、
会社にとって引き続き重要なパートナーとなり得る存在である。本コードは、会社が、
各原則の趣旨・精神を踏まえ、自らのガバナンス上の課題の有無を検討し、自律的に対
応することを求めるものであるが、このような会社の取組みは、会社が自社の中長期
30
的な成長の道筋を自ら語ることを前提として、株主(機関投資家)と会社との間の建設
的な「目的を持った対話」によって更なる充実を図ることが可能である。その意味にお
いて、本コードと「『責任ある機関投資家』の諸原則《日本版スチュワードシップ・コ
ード》
」とは、いわば「車の両輪」であり、両者が適切に相まって実効的なコーポレー
トガバナンスが実現されることが期待される。
35
3.本コードはこのような目的で策定されたものであり、経営者がその取組みを検討・実
行する際に、その一助として活用することが期待される。経営者が本コードの理念を
十分に踏まえ、自社の在るべき企業統治の実現に向けた改善を能動的に進めることが、
- 1 -
多様なステークホルダーにとっても有益である。
「プリンシプルベース・アプローチ」及び「コンプライ・オア・エクスプレイン」
4.本コードは、会社が取るべき行動について詳細に規定する「ルールベース・アプロー
チ」
(細則主義)ではなく、いわゆる「プリンシプルベース・アプローチ」
(原則主義)
5
を採用している。そのため、会社は、一見抽象的で大掴みな原則(プリンシプル)につ
いて、その形式的な記載・文言に囚われることなく、その趣旨・精神に照らして、自ら
の活動が当該原則に即しているか否かを判断することが求められる。株主等のステー
クホルダーが会社との間で対話を行うに当たっても、このプリンシプルベース・アプ
ローチの意義を十分に踏まえることが望まれる。
10
5.本コードは、いわゆる「コンプライ・オア・エクスプレイン」(原則を実施するか、
実施しない理由を説明する)の手法を採用している。すなわち、本コードの各原則は法
的拘束力を有する規範ではなく、会社の個別事情に照らして実施することが適切でな
いと考えるものがあれば、当該原則を「実施しない理由」を十分に説明することによ
り、一部の原則を実施しないことが考えられる。更に言えば、その置かれた状況によっ
15
ては、各原則を形式的にコンプライするのではなく、むしろエクスプレインを積極的
に選択すべき場合があることをも意味する。会社は、かかるコンプライ・オア・エクス
プレインの趣旨を十分に認識し、各原則の趣旨・精神に照らしてコンプライまたはエ
クスプレインを選択することが望まれる。
また、会社は、エクスプレインを選択した場合には、実施しない原則に係る自らの対
20
応について、株主等のステークホルダーの理解が十分に得られるよう当該原則の趣旨・
精神に照らして工夫し丁寧に説明すべきであり、
「ひな型」的な表現により表層的な説
明に終始することはコンプライ・オア・エクスプレインの趣旨に反することを十分に
認識する必要がある。このように、会社は「丁寧なエクスプレイン」を行うことが求め
られる。
25
6.また、ある原則について単にコンプライとするのではなく、株主をはじめとするステ
ークホルダーに対して十分な情報提供を行う観点から、具体的な取組みの内容及び当
該取組みにより原則を実施していると評価できる合理的理由を示すことなどにより、
コンプライとする理由について説明を行うことも建設的な対話に資する取組みとして
望ましい。
30
7.他方、株主等のステークホルダーの側においても、コンプライ・オア・エクスプレイ
ンの手法の趣旨を理解し、会社の個別の状況を十分に尊重することが求められる。特
に、本コードの各原則の文言・記載を表面的に捉え、その一部を実施していないことの
みをもって、実効的なコーポレートガバナンスが実現されていない、と機械的に評価
することは適切ではなく、会社によるエクスプレインを歓迎すべきである。
35
本コードの適用
8.本コードにおいて示される規範は基本原則と原則から構成されているが、それらを
- 2 -
実施すべきか否か、また、実施すべきとしてどのように実施するかは、会社の業種、規
模、事業特性、機関設計、会社を取り巻く環境等によって異なり得る。そのため、本コ
ードの各原則は、それぞれの会社が自らの置かれた状況に応じて実効的なコーポレー
トガバナンスの実現に繋がるよう工夫して適用すべきものである。
5
9.本コードの全ての基本原則及び一部の原則には「解釈指針」が示されている。これら
の「解釈指針」は、コンプライ・オア・エクスプレインの対象ではないが、各原則につ
いての実質的な対応を支援する役割を担うものであり、当該原則の背景となる考え方、
目的のほか、当該原則を履行するための最良の手法(いわゆるベストプラクティス)や
優れた手法(いわゆるグッドプラクティス)の一つと考えられる方策も含まれる。解釈
10
指針はこのような意味で原則と一体であり、本コードの一部をなすものである。本コ
ードの各原則への対応を行う際には、
「解釈指針」において示されたこれらの内容も参
照することが考えられるが、各原則の趣旨・精神に沿った対応がなされる限りにおい
て、その具体的な実現手法は各企業に委ねられる。
10.本コードの一部の原則は特定の機関設計を想定した記載ぶりとなっているが、こう
15
した原則についても、他の機関設計を選択する上場会社は、自らの機関設計に応じて
所要の読替えを行った上で適用することが想定される。
企業の実質的な対応を促すための「プリンシプル化」・「スリム化」
11.2015 年の本コードの適用開始以降、我が国のコーポレートガバナンス改革には一定
の進捗が見られた。もっとも、持続的な成長と中長期的な企業価値の向上を真の意味
20
で実現するためには、形式的な対応にとどまることなく、企業と投資家の双方の取組
みによるコーポレートガバナンス改革の実質化が重要である。このような問題意識の
もと、●年●月改訂においては、プリンシプルベース・アプローチ及びコンプライ・オ
ア・エクスプレインの手法を採用する本コードの趣旨に立ち返り、本コード自体の実
質化を図る観点から、
「プリンシプル化」・
「スリム化」が行われた。
25
具体的には、会社が特に注力すべき点が明確になるよう、従前の補充原則を再整理
し、ガバナンスの中核となる箇所を原則に格上げする一方、コード内の他の箇所また
は法令等との重複がある箇所等を削除することにより、本コードが、経営者が中長期
的な企業価値の向上に向けた取組みを検討・実行する際の一助とすることをも目的と
した文書であることも踏まえ、可能な限り要点を簡潔に記載し、メリハリをつけた文
30
書とされた。
12.プリンシプル化・スリム化はこのような目的で行われたものであり、会社の対応コス
ト・開示負担の軽減のみを意図しているわけではない。当該改訂においてコンプライ・
オア・エクスプレインの対象から外れ「解釈指針」に移管された記載や本コードから削
除された記載について、当該改訂後にはその重要性が失われたと考えることは適切で
35
はなく、会社は、このようなプリンシプル化・スリム化の趣旨を十分に理解した上で、
本コードの各原則への対応の実質化に取り組むことが期待される。
- 3 -
基本原則
【株主の権利・平等性の確保、株主との対話】
1.
上場会社は、株主の権利が実質的に確保されるよう適切な対応を行うとともに、
株主がその権利を適切に行使することができる環境の整備を行うべきである。
5
また、上場会社は、株主の実質的な平等性を確保すべきである。
特に、少数株主や外国人株主については、株主の権利の実質的な確保、権利行使
に係る環境や実質的な平等性の確保に課題や懸念が生じやすい面があることから、
十分に配慮を行うべきである。
上場会社は、その持続的な成長と中長期的な企業価値の向上に資するため、株主
10
総会の場以外においても、株主との間で建設的な対話を行うべきである。
【株主以外のステークホルダーとの適切な協働】
2.
上場会社は、会社の持続的な成長と中長期的な企業価値の創出は、従業員、顧客、
取引先、債権者、地域社会をはじめとする様々なステークホルダーによるリソース
15
の提供や貢献の結果であることを十分に認識し、これらのステークホルダーとの適
切な協働に努めるべきである。
取締役会・経営陣は、これらのステークホルダーの権利・立場や健全な事業活動
倫理を尊重する企業文化・風土の醸成に向けてリーダーシップを発揮すべきである。
20
【適切な情報開示と透明性の確保】
3.
上場会社は、会社の財政状態・経営成績等の財務情報や、経営戦略・経営課題、リ
スクやガバナンスに係る情報等の非財務情報について、法令に基づく開示を適切に
行うとともに、法令に基づく開示以外の情報提供にも主体的に取り組むべきである。
その際、取締役会は、開示・提供される情報が株主との間で建設的な対話を行う
25
上での基盤となることも踏まえ、そうした情報(とりわけ非財務情報)が、正確で利
用者にとって分かりやすく、情報として有用性の高いものとなるようにすべきであ
る。
【取締役会等の責務】
30
4.
上場会社の取締役会は、株主に対する受託者責任・説明責任を踏まえ、会社の持
続的成長と中長期的な企業価値の向上を促し、収益力・資本効率等の改善を図るべ
く、
(1)企業戦略等の大きな方向性を示すこと
(2)経営陣による適切なリスクテイクを支える環境整備を行うこと
35
(3)独立した客観的な立場から、経営陣(執行役及びいわゆる執行役員を含む)・
取締役に対する実効性の高い監督を行うこと
をはじめとする役割・責務を適切に果たすべきである。
- 4 -
第1章
5
株主の権利・平等性の確保、株主との対話
【基本原則1】
上場会社は、株主の権利が実質的に確保されるよう適切な対応を行うとともに、株
主がその権利を適切に行使することができる環境の整備を行うべきである。
また、上場会社は、株主の実質的な平等性を確保すべきである。
10
特に、少数株主や外国人株主については、株主の権利の実質的な確保、権利行使に
係る環境や実質的な平等性の確保に課題や懸念が生じやすい面があることから、十分
に配慮を行うべきである。
上場会社は、その持続的な成長と中長期的な企業価値の向上に資するため、株主総
会の場以外においても、株主との間で建設的な対話を行うべきである。
15
解釈指針
上場会社には、株主を含む多様なステークホルダーが存在しており、こうしたステ
20
ークホルダーとの適切な協働を欠いては、その持続的な成長を実現することは困難で
ある。その際、資本提供者は重要な要であり、株主はコーポレートガバナンスの規律に
おける主要な起点でもある。上場会社には、株主が有する様々な権利が実質的に確保
されるよう、その円滑な行使に配慮することにより、株主との適切な協働を確保し、持
続的な成長に向けた取組みに邁進することが求められる。
25
また、上場会社は、自らの株主を、その有する株式の内容及び数に応じて平等に取り
扱う会社法上の義務を負っているところ、この点を実質的にも確保していることにつ
いて広く株主から信認を得ることは、資本提供者からの支持の基盤を強化することに
も資するものである。
上場会社は、株主の権利の重要性を踏まえ、その権利行使を事実上妨げることのな
30
いよう配慮すべきである。とりわけ、少数株主にも認められている上場会社及びその
役員に対する特別な権利(違法行為の差止めや代表訴訟提起に係る権利等)について
は、その権利行使の確保に課題や懸念が生じやすい面があることから、十分に配慮を
行うべきである。
また、上場会社は、資本政策の動向が株主の利益に重要な影響を与え得ることを踏
35
まえ、株主の権利を実質的に確保するための重要な前提として、資本政策の基本的な
方針について説明を行うべきである。
「
『責任ある機関投資家』の諸原則《日本版スチュワードシップ・コード》
」において、
- 5 -
機関投資家には、投資先企業やその事業環境等に関する深い理解に基づく建設的な「目
的を持った対話」
(エンゲージメント)を行うことが求められている。上場会社にとっ
ても、株主と平素から対話を行い、具体的な経営戦略や経営計画などに対する理解を
得るとともに懸念があれば適切に対応を講じることは、経営の正統性の基盤を強化し、
5
持続的な成長に向けた取組みに邁進する上で極めて有益である。経営陣・取締役が、株
主との対話を通じてその声に耳を傾け、その関心・懸念に正当な関心を払うとともに、
自らの経営方針を株主に分かりやすい形で明確に説明しその理解を得る努力を行い、
株主を含むステークホルダーの立場に関するバランスのとれた理解と、そうした理解
を踏まえた適切な対応に努めるべきである。経営陣・取締役が、株主との対話を通じて
10
その声に耳を傾けることは、資本提供者の目線からの経営分析や意見を吸収し、持続
的な成長に向けた健全な企業家精神を喚起する機会を得る、ということも意味する。
- 6 -
【原則1-1.株主との建設的な対話】
上場会社は、株主からの対話の申込みに対しては、会社の持続的な成長と中長期的
な企業価値の向上に資するよう、合理的な範囲で前向きに対応すべきである。取締役
会は、株主との建設的な対話を促進するための体制整備・取組みに関する方針を検討・
5
承認し、開示すべきである。
株主との対話には、株主の希望と面談の主な議題も踏まえた上で、合理的な範囲で、
経営陣、社外取締役を含む取締役または監査役が臨むことを基本とすべきである。
上場会社は、株主と行った対話の内容を踏まえ、必要に応じて社内で情報共有や検
討を行うなど、適切に対応すべきである。
10
解釈指針
株主との建設的な対話を促進するための方針には、少なくとも、
(ⅰ)株主との対話
全般について、下記(ⅱ)~(ⅴ)に記載する事項の検討・実行を含めその統括を行い、
15
建設的な対話が実現するように目配りを行う経営陣または取締役の指定、
(ⅱ)対話を
補助するIR担当、経営企画、総務、人事、財務、経理、法務部門等の社内部門による
有機的な連携のための方策、
(ⅲ)個別面談以外の対話の手段(例えば、投資家説明会
やIR活動)の充実に関する取組み、
(ⅳ)対話において把握された株主の意見・懸念
の経営陣や取締役会に対する適切かつ効果的なフィードバックのための方策、
(ⅴ)対
20
話に際してのインサイダー情報やいわゆるフェア・ディスクロージャー・ルールが適
用される重要情報の管理に関する方策を記載すべきである。
上場会社は、面談の主な議題によっては社外取締役が対話の対応者となるべき場面
があることを認識した上で、株主との対話を建設的なものとする観点から、株主の希
望と対話の主な議題を踏まえ、対話ごとに適切な対応者を選定すべきである。
25
【原則1-2.株主総会における権利行使】
上場会社は、株主総会が株主との建設的な対話の場であることを踏まえ、株主の視
点に立って、有価証券報告書を株主総会開催日前に提出するなど株主総会において株
30
主が適切な判断を行うことに資すると考えられる情報を必要に応じ適確に提供する、
株主総会開催日や議決権行使に係る基準日をはじめとする株主総会関連の日程を適
切に設定する、プライム市場上場会社は、少なくとも機関投資家向けに議決権電子行
使プラットフォームを利用可能とするなど、株主総会における権利行使に係る適切な
環境整備を行うべきである。
35
解釈指針
株主総会は株主にとって議決権行使等を通じて上場会社に対して直接意見を発信す
- 7 -
ることができる数少ない機会であり、株主との建設的な対話を行うことができる場の
一つであることを踏まえ、上場会社は、株主総会において株主が適切な判断を行うこ
とができるよう、株主の視点に立って適切な環境整備を行うべきである。
具体的には、有価証券報告書を株主総会開催日前に提出する上場会社は増加傾向に
5
あるものの、有価証券報告書には役員報酬や政策保有株式等のガバナンス情報等、投
資家がその意思を決定するに当たって有用かつ信頼性の高い情報が豊富に含まれてい
ることから、本来、株主総会開催日の3週間以上前に提出されることが最も望ましい
と考えられるため、上場会社においては、株主総会開催日や議決権行使に係る基準日
を従前の慣行に基づく時期から後ろ倒しすることも含めて検討し、株主による適切な
10
権利行使に資するよう更なる環境整備を進めるべきである。
また、上場会社は、株主が総会議案の十分な検討期間を確保することができるよう、
招集通知に記載する情報を、株主総会の招集に係る取締役会決議から招集通知を発送
するまでの間に、TDnet や自社のウェブサイトにおいて電子的に公表すべきである。
以上のほか、上場会社は、自社の株主における機関投資家や海外投資家の比率等も
15
踏まえ、議決権の電子行使を可能とするための環境作り(議決権電子行使プラットフ
ォームの利用等)や招集通知の英訳を進めるべきである。
信託銀行等の名義で株式を保有する機関投資家等が、株主総会において、信託銀行
等に代わって自ら議決権の行使等を行うことをあらかじめ希望する場合に対応するた
め、上場会社は、信託銀行等と協議しつつ検討を行うべきである。
20
【原則1-3.株主総会で相当数の反対があった会社提案議案】
取締役会は、株主総会において可決には至ったものの相当数の反対票が投じられた
会社提案議案があったと認めるときは、反対の理由や反対票が多くなった原因の分析
25
を行い、株主の権利の確保に資するよう適切に対応すべきである。
解釈指針
例えば、株主に対して、反対の理由や反対票が多くなった原因の分析結果や、当該分
30
析を踏まえた上場会社の対応状況等の説明を行うことが考えられる。
【原則1-4.政策保有株式】
上場会社が政策保有株式として上場株式を保有する場合には、政策保有株式の縮減
35
に関する方針・考え方など、政策保有に関する方針を開示すべきである。また、毎年、
取締役会で、個別の政策保有株式について、保有目的が適切か、保有に伴う便益やリ
スクが資本コストに見合っているか等を具体的に精査し、保有の適否を検証するとと
もに、そうした検証の内容について開示すべきである。
上場会社は、政策保有株式に係る議決権の行使について、適切な対応を確保するた
- 8 -
めの具体的な基準を策定・開示し、その基準に沿った対応を行うべきである。
上場会社は、自社の株式を政策保有株式として保有している会社(政策保有株主)
からその株式の売却等の意向が示された場合には、取引の縮減を示唆することなどに
より、売却等を妨げるべきではない。
5
上場会社は、政策保有株主との間で、取引の経済合理性を十分に検証しないまま取
引を継続するなど、会社や株主共同の利益を害するような取引を行うべきではない。
- 9 -
第2章
5
株主以外のステークホルダーとの適切な協働
【基本原則2】
上場会社は、会社の持続的な成長と中長期的な企業価値の創出は、従業員、顧客、
取引先、債権者、地域社会をはじめとする様々なステークホルダーによるリソースの
提供や貢献の結果であることを十分に認識し、これらのステークホルダーとの適切な
10
協働に努めるべきである。
取締役会・経営陣は、これらのステークホルダーの権利・立場や健全な事業活動倫
理を尊重する企業文化・風土の醸成に向けてリーダーシップを発揮すべきである。
15
解釈指針
上場会社には、株主以外にも重要なステークホルダーが数多く存在する。これらの
ステークホルダーには、従業員をはじめとする社内の関係者や、顧客・取引先・債権者
等の社外の関係者、更には、地域社会のように会社の存続・活動の基盤をなす主体が含
20
まれる。上場会社は、人的資本への投資等や適切な分配を行う、取引先と公正・適正な
取引を行うなど、これらのステークホルダーと適切に協働することにより初めて、自
らの持続的な成長と中長期的な企業価値の創出を達成することができることを十分に
認識すべきである。
上場会社が、こうした認識を踏まえて適切な対応を行うことは、社会・経済全体に利
25
益を及ぼすとともに、その結果として、会社自身にも更に利益がもたらされる、という
好循環の実現に資するものである。
そのような認識の下、上場会社は、ステークホルダーとの適切な協働やその利益の
尊重、健全な事業活動倫理などについて、会社としての価値観を示しその構成員が従
うべき行動準則を定め、実践すべきである。取締役会は、行動準則の策定・改訂の責務
30
を担い、これが国内外の事業活動の第一線にまで広く浸透し、遵守されるようにすべ
きである。
- 10 -
【原則2-1.中長期的な企業価値向上の基礎となる経営理念の策定】
上場会社は、自らが担う社会的な責任についての考え方を踏まえ、様々なステーク
ホルダーへの価値創造に配慮した経営を行いつつ中長期的な企業価値向上を図るべ
きであり、こうした活動の基礎となる経営理念を策定すべきである。
5
【原則2-2.女性の活躍促進を含む社内の多様性の確保】
上場会社は、社内における女性・外国人・中途採用者の中核人材への登用等におけ
る多様性の確保についての考え方と自主的かつ測定可能な目標を決定するとともに、
10
その状況を開示すべきである。
また、多様性の確保に向けた人材育成方針と社内環境整備方針をその実施状況と併
せて開示すべきである。
解釈指針
15
社内に異なる経験・技能・属性を反映した多様な視点や価値観が存在することは、イ
ノベーションや新しい価値創造の源泉であり、会社の変革や持続的な成長を確保する
上での強みとなり得る。上場会社は、持続的な成長に向けた人材戦略の重要性に鑑み、
性別・経歴・年齢・国籍・文化的背景やこれらに限られない観点から、各上場会社が置
20
かれた状況に応じた多様性を確保するための考え方と自主的かつ測定可能な目標を決
定すべきである。
【原則2-3.企業年金のアセットオーナーとしての機能発揮】
25
上場会社は、企業年金の積立金の運用が、従業員の安定的な資産形成に加えて自ら
の財政状態にも影響を与えることを踏まえ、企業年金が運用(運用機関に対するモニ
タリングなどのスチュワードシップ活動を含む)の専門性を高めてアセットオーナー
として期待される機能を発揮できるよう、運用に当たる適切な資質を持った人材の計
画的な登用・配置などの人事面や運営面における取組みを行うとともに、そうした取
30
組みの内容を開示すべきである。その際、上場会社は、企業年金の受益者と会社との
間に生じ得る利益相反が適切に管理されるようにすべきである。
- 11 -
第3章
5
適切な情報開示と透明性の確保
【基本原則3】
上場会社は、会社の財政状態・経営成績等の財務情報や、経営戦略・経営課題、リ
スクやガバナンスに係る情報等の非財務情報について、法令に基づく開示を適切に行
うとともに、法令に基づく開示以外の情報提供にも主体的に取り組むべきである。
10
その際、取締役会は、開示・提供される情報が株主との間で建設的な対話を行う上
での基盤となることも踏まえ、そうした情報(とりわけ非財務情報)が、正確で利用
者にとって分かりやすく、情報として有用性の高いものとなるようにすべきである。
15
解釈指針
上場会社には、様々な情報を開示することが求められている。これらの情報が法令
に基づき適時適切に開示されることは、投資家保護や資本市場の信頼性確保の観点か
ら不可欠の要請であり、取締役会・監査役・監査役会・外部会計監査人は、この点に関
20
し財務情報に係る内部統制体制の適切な整備をはじめとする重要な責務を負っている。
また、上場会社は、会社の意思決定の透明性・公正性を確保し、実効的なコーポレー
トガバナンスを実現するとの観点から、法令及び本コードの各原則において開示する
ことが求められる事項のほか、それら以外の項目の情報提供にも主体的に取り組むべ
きである。
25
更に、我が国の上場会社による情報開示は、計表等については、様式・作成要領など
が詳細に定められており比較可能性に優れている一方で、会社の財政状態、経営戦略、
リスク、ガバナンスや社会・環境問題に関する事項(ESG要素)などについて説明等
を行ういわゆる非財務情報を巡っては、ひな型的な記述や具体性を欠く記述となって
おり付加価値に乏しい場合が少なくない、との指摘もある。取締役会は、こうした情報
30
を含め、開示・提供される情報が可能な限り利用者にとって有益な記載となるよう積
極的に関与を行う必要がある。
法令に基づく開示であれそれ以外の場合であれ、適切な情報の開示・提供は、上場会
社の外側にいて情報の非対称性の下におかれている株主等のステークホルダーと認識
を共有し、その理解を得るための有力な手段となり得るものであり、「『責任ある機関
35
投資家』の諸原則《日本版スチュワードシップ・コード》」を踏まえた建設的な対話に
も資するものである。
- 12 -
【原則3-1.情報開示の充実】
上場会社は、法令に基づく開示を適切に行うことに加え、以下の事項について開示
し、主体的な情報発信を行うべきである。
(1)会社の目指すところ(経営理念等)や経営戦略、経営計画
5
(2)本コードのそれぞれの原則を踏まえた、コーポレートガバナンスに関する
基本的な考え方と基本方針
(3)取締役会が経営陣・取締役の報酬を決定するに当たっての方針と手続
(4)取締役会が経営陣の選解任と取締役・監査役候補の指名を行うに当たって
の方針と手続
10
(5)取締役会が上記(4)を踏まえて経営陣の選解任と取締役・監査役候補の
指名を行う際の、個々の選解任・指名についての説明
【原則3-2.英文開示】
15
上場会社は、自社の株主における海外投資家等の比率も踏まえ、合理的な範囲にお
いて、英語での情報の開示・提供を進めるべきである。
【原則3-3.外部会計監査人】
20
外部会計監査人及び上場会社は、外部会計監査人が株主・投資家に対して責務を負
っていることを認識し、適正な監査の確保に向けて適切な対応を行うべきである。
解釈指針
25
監査役会は、少なくとも、
(ⅰ)外部会計監査人候補を適切に選定し外部会計監査人
を適切に評価するための基準の策定、
(ⅱ)外部会計監査人に求められる独立性と専門
性を有しているか否かについての確認を行うべきである。取締役会及び監査役会は、
少なくとも、
(ⅲ)高品質な監査を可能とする十分な監査時間の確保、
(ⅳ)外部会計監
査人からCEO・CFO等へのアクセス(面談等)の確保、
(ⅴ)外部会計監査人と監
30
査役(監査役会への出席を含む)、内部監査部門や社外取締役との十分な連携の確保、
(ⅵ)外部会計監査人が不正を発見し適切な対応を求めた場合や、不備・問題点を指摘
した場合の会社側の対応体制の確立を行うべきである。
- 13 -
第4章
5
取締役会等の責務
【基本原則4】
上場会社の取締役会は、株主に対する受託者責任・説明責任を踏まえ、会社の持続
的成長と中長期的な企業価値の向上を促し、収益力・資本効率等の改善を図るべく、
(1)企業戦略等の大きな方向性を示すこと
10
(2)経営陣による適切なリスクテイクを支える環境整備を行うこと
(3)独立した客観的な立場から、経営陣(執行役及びいわゆる執行役員を含
む)・取締役に対する実効性の高い監督を行うこと
をはじめとする役割・責務を適切に果たすべきである。
15
解釈指針
取締役・監査役は、株主によって選任され、株主に対して受託者責任を負うことを認
識し、株主以外のステークホルダーとの適切な協働を確保しつつ、会社や株主共同の
20
利益のために行動すべきである。
取締役会の在るべき姿は、自らが構築した成長の道筋や会社を取り巻く状況によっ
て変動するものであり、取締役会と経営陣の役割分担の在り方も各社の実情によって
異なり得る。取締役会は、このような観点を踏まえ、取締役会の在り方について不断に
検討を行うべきである。
25
上場会社は、通常、会社法が規定する機関設計のうち主要な3種類(監査役会設置会
社、指名委員会等設置会社、監査等委員会設置会社)のいずれかを選択することとされ
ているが、いずれの機関設計を採用する場合でも、重要なことは、創意工夫を施すこと
によりそれぞれの機関の機能を実質的かつ十分に発揮させることである。
また、上場会社の意思決定のうちには、外部環境の変化その他の事情により、結果と
30
して会社に損害を生じさせることとなるものが無いとは言い切れない。その場合、経
営陣・取締役が損害賠償責任を負うか否かの判断に際しては、一般的に、その意思決定
の時点における意思決定過程の合理性が重要な考慮要素の一つとなるものと考えられ
るが、本コードには、ここでいう意思決定過程の合理性を担保することに寄与すると
考えられる内容が含まれており、これにより、上場会社の透明・公正かつ迅速・果断な
35
意思決定を促す効果を持つこととなるものと期待される。
そして、支配株主は、会社及び株主共同の利益を尊重し、少数株主を不公正に取り扱
ってはならないのであって、支配株主を有する上場会社には、少数株主の利益を保護
するためのガバナンス体制の整備が求められる。
- 14 -
【原則4-1.取締役会の役割・責務(1):企業戦略等の大きな方向付け】
取締役会は、会社の目指すところ(経営理念等)を確立し、それに向けた成長の道
筋を構築するなど、戦略的な方向付けを行うことを主要な役割・責務の一つと捉え、
具体的な経営戦略や経営計画等について建設的な議論を行うべきである。
5
また、取締役会は、経営戦略や経営計画の策定・公表に当たっては、成長の実現を
目指し、自社の資本コストを踏まえて収益計画や資本政策の基本的な方針を示すとと
もに、収益力・資本効率等に関する目標を提示し、その実現のために、成長投資や事
業ポートフォリオの見直し等の経営資源の配分等に関し具体的に何を実行するのか
について説明を行うべきである。
10
解釈指針
上場会社は、競争優位性を含む自社の強みや多様なステークホルダーについての考
慮を踏まえ、会社の目指すところ(経営理念等)に向けた成長の道筋を定め、その道筋
15
に沿った事業活動を行うべきであり、取締役会は、かかる成長の道筋を構築し、提示す
る役割・責務を負う。
取締役会は、その道筋を踏まえ、自社の資本コストを的確に把握した上で経営戦略
や経営計画の策定・公表を行うべきである。また、それらにおいて提示した収益計画や
資本政策の基本的な方針及び収益力・資本効率等に関する目標を実現するため、成長
20
投資や事業ポートフォリオの見直し等を行うなど、資本その他の経営資源を適切に配
分すべきである。
取締役会は、中長期的に企業価値を向上させる観点から、自社の収益性・資本効率・
資本コストや成長可能性及びそれらを踏まえた自社の成長フェーズ、機会コスト(あ
る選択を行った場合に失われる他の選択肢から得られる利益)等を十分に考慮した上
25
で、経営戦略や経営計画、それを踏まえた資本政策を実現するために具体的に何を実
行するのかについて、株主に分かりやすい言葉・論理で明確に説明を行うべきである。
投資先を検討するに当たっては、例えば、
(ⅰ)投資対象を自社の内部に求めるのか(既
存の設備・研究開発・人的資本・知的財産等の無形資産等への投資等)
、外部に求める
のか(M&A・業務提携・スタートアップ出資等への投資等)といった成長手法の観
30
点、
(ⅱ)短期・中長期といった時間軸の観点、
(ⅲ)国内投資(地方への人的投資・地
方拠点の整備等)
、国外投資といった地理的分類の観点等の多様な投資機会があること
を十分に認識すべきである。
また、経営戦略や経営計画の策定・公表に当たっては、取締役会において決定された
事業ポートフォリオに関する基本的な方針や事業ポートフォリオの見直しの状況につ
35
いて分かりやすく示すべきであり、人的資本や知的財産への投資等についても、自社
の経営戦略や経営計画との整合性を意識しつつ、分かりやすく具体的に情報を開示・
提供すべきである。
加えて、取締役会・経営陣は、中期経営計画も株主に対するコミットメントの一つで
あるとの認識に立ち、その実現に向けて最善の努力を行うべきである。仮に、中期経営
- 15 -
計画が目標未達に終わった場合には、その原因や自社が行った対応の内容を十分に分
析し、株主に説明を行うとともに、その分析を次期以降の計画に反映させるべきであ
る。
5
【原則4-2.取締役会の役割・責務(2)
:適切なリスクテイクを支える環境整備】
取締役会は、経営陣による適切なリスクテイクを支える環境整備を行うべきであ
る。
取締役会は、自社の経営資源の配分が、成長の実現を目指して策定・公表した経営
10
戦略や経営計画に照らし適切なものとなっているかについて不断に検証を行うべき
である。
また、経営陣の報酬については、中長期的な企業価値の向上につながるよう適切な
インセンティブ付けを行うべきである。
15
解釈指針
取締役会は、経営陣による適切なリスクテイクを支える環境整備を行うことを主要
な役割・責務の一つと捉え、経営陣からの健全な企業家精神に基づく提案を歓迎しつ
つ、説明責任の確保に向けて、そうした提案について独立した客観的な立場において
20
多角的かつ十分な検討を行うとともに、承認した提案が実行される際には、経営陣の
迅速・果断な意思決定を支援すべきである。
取締役会は、自社の経営戦略や経営計画を踏まえ、持続的成長と中長期的な企業価
値の向上に繋げるために適切なリスクテイクとなる経営資源の配分が実現されるよう、
現預金を投資等に有効活用できているかを含め、不断に検証を行うべきである。また、
25
これらをはじめとする経営資源の配分や、事業ポートフォリオに関する戦略の実行が、
企業の持続的な成長に資するよう、実効的に監督を行うべきである。
また、取締役会は、客観性・透明性ある手続に従い、報酬制度を設計し、具体的な報
酬額を決定すべきである。その際、中長期的な会社の業績や潜在的リスクを反映させ、
健全な企業家精神の発揮に資するよう、中長期的な業績と連動する報酬の割合や、現
30
金報酬と自社株報酬との割合を適切に設定すべきである。
【原則4-3.取締役会の役割・責務(3)
:経営陣・取締役に対する実効的な監督】
(1) 取締役会は、独立した客観的な立場から、適切に会社の業績等の評価を行い、
35
その評価を踏まえ、客観性・適時性・透明性ある手続に従い選解任を実行する
ことを含め、経営陣の人事に適切に反映すべきである。
特に、最高経営責任者(CEO)の選解任については、取締役会は、会社の
目指すところ(経営理念等)や具体的な経営戦略を踏まえ、CEOの後継者計
- 16 -
画(サクセッションプラン)の策定・運用に主体的に関与するとともに、後継
者候補の育成及び資質を備えたCEOの選任が十分な時間と資源をかけて計
画的に行われていくよう、適切に監督を行うべきである。また、会社の業績等
の適切な評価を踏まえ、CEOがその機能を十分発揮していないと認められる
5
場合にCEOを解任するための客観性・適時性・透明性ある手続を確立すべき
である。
(2)
取締役会は、内部統制や全社的リスク管理体制を適切に整備すべきである。
また、取締役会は、内部通報に係る適切な体制整備を実現する責務を負うとと
もに、その運用状況を監督すべきである。
10
(3) 取締役会は、経営陣・支配株主等の関連当事者と会社との間に生じ得る利益
相反を適切に管理すべきであり、あらかじめ、上場会社が関連当事者との間で
行う取引について、取引の重要性やその性質に応じた適切な手続を定めてその
枠組みを開示するとともに、その手続を踏まえた監視(取引の承認を含む)を
行うべきである。
15
解釈指針
取締役会は、独立した客観的な立場から、経営陣の人事、内部統制体制・リスク管理
体制の整備、関連当事者取引等の管理といった経営陣・取締役に対する実効性の高い
20
監督を行うことを主要な役割・責務の一つとする。
経営の中心的役割を担う経営陣の人事はガバナンスを実効的に機能させるための根
幹であり、特にCEOの選解任は、会社における最も重要な戦略的意思決定の一つで
ある。このことを踏まえ、取締役会は、適切な人材がCEOをはじめとする経営陣に選
任されるよう、客観性・適時性・透明性ある手続を定めるとともに、当該手続に従った
25
選解任が行われるよう監督を行うべきである。
また、内部統制や先を見越した全社的リスク管理体制の整備は、適切なコンプライ
アンスの確保により持続的に信頼を維持し、リスクを最小化するために重要であるの
みならず、経営陣が果断にリスクテイクを行うための裏付けとなり得るものであるか
ら、取締役会は、グループ全体を含めたこれらの体制を適切に構築するとともに、内部
30
監査部門を活用しつつ、その運用状況を監督すべきである。サイバーセキュリティリ
スク、国際的な経済安全保障を巡る環境変化等の地政学的要因によるサプライチェー
ン途絶リスク及び技術等の情報流出リスクへの対応等も、収益機会にもつながり得る
ものとして、リスク管理体制を整備する際の考慮事項に含まれ得るとともに、そうし
たリスクへの対応等が適切に行われるべきである。
35
上場会社は、その従業員等が、不利益を被る危険を懸念することなく、違法または不
適切な行為・情報開示に関する情報や真摯な疑念を伝えることができるよう、また、伝
えられた情報や疑念が客観的に検証され適切に活用されるよう、内部通報に係る体制
整備の一環として、経営陣から独立した窓口の設置(例えば、社外取締役と監査役によ
る合議体を窓口とする等)を行うべきであり、また、情報提供者の秘匿と不利益取扱の
- 17 -
禁止に関する規律を整備すべきである。
また、上場会社は、取締役会による独立かつ客観的な経営の監督の実効性を確保す
べく、業務の執行には携わらない、業務の執行と一定の距離を置く取締役(いわゆる非
業務執行取締役)の活用について検討すべきである。
5
【原則4-4.取締役会の役割・責務(4):サステナビリティを巡る取組み】
取締役会は、中長期的な企業価値の向上の観点から、サステナビリティを巡る課題
に積極的・能動的に取り組むべきであり、自社のサステナビリティを巡る取組みにつ
10
いて基本的な方針を策定するほか、適切な対応を行うべきである。
解釈指針
近年サステナビリティ(ESG要素を含む中長期的な持続可能性)は重要な経営課
15
題であると認識されている。加えて、中長期的な企業価値を判断する上でサステナビ
リティ情報の重要性が世界的に高まる中、国際サステナビリティ基準審議会(ISS
B)により国際的な開示基準(ISSB基準)が策定され、各国においてサステナビリ
ティ開示基準の適用に向けた動きが進展している。こうした中、我が国企業において
は、サステナビリティ課題への積極的・能動的な対応を進めていくことが重要である。
20
取締役会は、気候変動などの地球環境問題への配慮、人権の尊重、従業員の健康・労
働環境への配慮や公正・適切な処遇、自然災害等への危機管理、多様性などのサステナ
ビリティに関する課題への対応はリスクの減少のみならず収益機会にもつながる重要
な経営課題であると認識し、会社の持続的成長と中長期的な企業価値の向上の観点か
ら、これらの課題について適切な対応を行うべきである。
25
【原則4-5.監査役及び監査役会の役割・責務】
監査役及び監査役会は、その役割・責務を果たすに当たって、株主に対する受託者
責任を踏まえ、独立した客観的な立場において適切な判断を行い、能動的・積極的に
30
権限を行使し、取締役会においてあるいは経営陣に対して適切に意見を述べるべきで
ある。
解釈指針
35
監査役及び監査役会に期待される重要な役割・責務には、業務監査・会計監査をはじ
めとするいわば「守りの機能」があるが、こうした機能を含め、その役割・責務を十分
に果たすためには、自らの守備範囲を過度に狭く捉えることは適切でない。
監査役または監査役会は、社外取締役が、その独立性に影響を受けることなく情報
- 18 -
収集力の強化を図ることができるよう、社外取締役との連携を確保すべきである。
【原則4-6.任意の仕組みの活用】
5
上場会社は、会社法が定める会社の機関設計のうち会社の特性に応じて最も適切な
形態を採用するに当たり、必要に応じて任意の仕組みを活用することにより、統治機
能の更なる充実を図るべきである。
プライム市場上場会社は、指名委員会・報酬委員会の構成員の過半数を独立社外取
締役とすることを基本とし、その委員会構成の独立性に関する考え方・権限・役割等
10
を開示すべきである。
解釈指針
上場会社が監査役会設置会社または監査等委員会設置会社であって、独立社外取締
15
役が取締役会の過半数に達していない場合には、経営陣・取締役の指名(後継者計画を
含む)・報酬などに係る取締役会の機能の独立性・客観性と説明責任を強化するため、
取締役会の下に独立社外取締役を主要な構成員とする独立した指名委員会・報酬委員
会を設置することにより、指名や報酬などの特に重要な事項に関する検討に当たり、
ジェンダー等の多様性やスキルの観点を含め、これらの委員会の適切な関与・助言を
20
得るべきである。
【原則4-7.独立社外取締役の役割・責務】
上場会社は、独立社外取締役には、特に以下の役割・責務を果たすことが期待され
25
ることに留意しつつ、その有効な活用を図るべきである。
(1)経営陣の選解任その他の取締役会の重要な意思決定を通じ、経営の監督を
行うこと
(2)会社と経営陣・支配株主等との間の利益相反を監督すること
(3)経営陣・支配株主から独立した立場で、少数株主をはじめとするステーク
30
ホルダーの意見を取締役会に適切に反映させること
(4)経営の方針や経営改善について、自らの知見に基づき、会社の持続的な成
長を促し中長期的な企業価値の向上を図る、との観点からの助言を行うこ
と
35
解釈指針
独立社外取締役は、経営陣・支配株主から独立した客観的な立場で、本原則(1)~
(4)に挙げられる事項を中心に重要な役割・責務を主導的に果たすことが期待され
- 19 -
る。
例えば、独立社外取締役は、必要に応じ自身が株主との対話を行うこと等を通じて、
少数株主等のステークホルダーの意見を取締役会に反映させるよう努めることが求め
られる。また、経営陣との間で緊張感のある信頼関係を構築した上で、平時には経営陣
5
に執行を委ねつつ、監督や助言を通して取締役会における大局的な議論や意思決定を
行うことが求められる。経営陣による説明が是認できないものである場合には、反対
意見を述べることも自らの役割・責務を適切に果たす上で必要となる。さらに、独立社
外取締役は、CEOをはじめとする経営陣の選解任(後継者計画を含む)
・報酬につい
て、客観性・適時性・透明性ある手続に従い、適切な内容となるよう、役割・責務を果
10
たすことが求められる。支配株主を有する上場会社においては、経営陣・支配株主と少
数株主との間に構造的な利益相反関係があるため、その役割・責務が特に重要となる。
他方、業績悪化・不祥事対応・企業買収などの有事の際には、経営陣から独立した立
場にあることを活用し、特に経営陣が利害関係を有する場合には意思決定の主体とし
て適切な判断を行い、説明責任を果たすなど、株主共同の利益を守り中長期的な企業
15
価値の向上に資するよう活動することが求められる。
【原則4-8.独立社外取締役の質の確保】
取締役会は、取締役会における率直・活発で建設的な検討への貢献が期待できるな
20
ど、会社の持続的な成長と中長期的な企業価値の向上に寄与するように役割・責務を
果たすことができる資質を十分に備えた人物を独立社外取締役の候補者として選定
すべきである。
解釈指針
25
独立社外取締役がその役割・責務を適切かつ実効的に果たすためには、これらの役
割・責務を果たすことができる資質を備えた人物が一定数選任されることが必要であ
り、当該人物が客観的な独立性を有することがその役割・責務の信頼・公正性を担保す
る。本原則は、このうち個々の独立社外取締役の「質」に関する原則であり、取締役会
30
が適切にその役割・責務を果たすための前提となるものである。
取締役会は、どのような人物が会社の持続的な成長と中長期的な企業価値の向上に
寄与する形で役割・責務を果たすことができるかについて、会社の目指すところ(経営
理念等)や具体的な経営戦略を踏まえて検討を行い、適切な人物を独立社外取締役と
して選定するために必要な識見・能力等の資質に関する基準を策定することも考えら
35
れる。
- 20 -
【原則4-9.独立社外取締役の員数の確保】
上場会社は、会社の持続的な成長と中長期的な企業価値の向上に寄与するように役
割・責務を果たすことができる資質を十分に備えた独立社外取締役を選任すべきであ
り、プライム市場上場会社はそのような資質を十分に備えた独立社外取締役を少なく
5
とも3分の1(その他の市場の上場会社においては2名)以上選任すべきである。
支配株主を有する上場会社は、取締役会において支配株主からの独立性を有する独
立社外取締役を少なくとも3分の1以上(プライム市場上場会社においては過半数)
選任すべきである。
また、上記にかかわらず、業種・規模・事業特性・機関設計・会社をとりまく環境
10
等を総合的に勘案して、過半数の独立社外取締役を選任することが必要と考えるプラ
イム市場上場会社(その他の市場の上場会社においては少なくとも3分の1以上の独
立社外取締役を選任することが必要と考える上場会社)は、十分な人数の独立社外取
締役を選任すべきである。
15
解釈指針
本原則は、独立社外取締役がその役割・責務を適切かつ実効的に果たすために必要
な要素のうち、
「員数」に関する原則である。本原則は、上場会社に対して、一定の割
合・数以上の独立社外取締役の選任を求めるものであるが、独立社外取締役の員数が
20
確保されることのみをもって直ちに独立社外取締役の役割・責務が果たされることに
はならず、必要な資質を備えた人物であることが前提となる点には留意が必要である。
支配株主を有する上場会社においては、適切と考える場合には、独立性を有する独立
社外取締役を少なくとも3分の1以上(プライム市場上場会社においては過半数)選
任することに代えて、支配株主と少数株主との利益が相反する重要な取引・行為につ
25
いて審議・検討を行う、独立社外取締役を含む独立性を有する者で構成された特別委
員会を設置することも考えられる。
また、支配株主には該当しないものの実質的な支配力を持つ株主を有する上場会社
においても、本原則の趣旨に沿った対応を採ることが望ましいと考えられる。
30
【原則4-10.独立社外取締役の独立性の確保】
取締役会は、金融商品取引所が定める独立性基準を踏まえ、独立社外取締役となる
者の独立性をその実質面において担保することに主眼を置いた独立性判断基準を策
定すべきである。
35
解釈指針
独立社外取締役の質及び員数が確保されることを前提として、独立社外取締役の「独
立性」が確保されることが独立社外取締役の役割・責務の信頼・公正性を担保する。
- 21 -
取締役会は、客観的に独立性を有する独立社外取締役を選定するため、所属組織の
影響を受けるおそれがないなど、当該独立社外取締役が一般株主と利益相反が生じる
おそれがないと実質的に評価するための客観的な独立性判断基準を策定し、これを開
示すべきである。
5
【原則4-11.独立社外取締役の機能発揮】
独立社外取締役は、他の独立社外取締役との間で、独立した客観的な立場に基づく
情報交換・認識共有を図るべきである。
10
独立社外取締役は、経営陣との連絡・調整や監査役または監査役会との連携に係る
体制整備を図るべきである。
解釈指針
15
独立社外取締役は、独立した客観的な立場に基づく情報交換・認識共有を図り、取締
役会における議論に積極的に貢献するため、例えば、独立社外者のみを構成員とする
会合を定期的に開催することなどが考えられる。また、経営陣との連絡・調整や監査役
または監査役会との連携に当たっては、例えば、互選により、第一次的にこれらの連
絡・調整・連携を担当する者(
「筆頭独立社外取締役」等)を決定することなどが考え
20
られる。
【原則4-12.取締役会・監査役会の実効性確保のための前提条件】
(1) 取締役会は、その役割・責務を実効的に果たすための知識・経験・能力を全
25
体としてバランス良く備え、ジェンダーや国際性、職歴、年齢の面を含む多様
性と適正規模を両立させる形で構成されるべきであり、経営戦略に照らして自
らが備えるべきスキル等を特定すべきである。その上で、経営環境や事業特性
等に応じた適切な形で取締役の有するスキル等の組み合わせを取締役の選任
に関する方針・手続と併せて開示すべきである。
30
(2) 監査役には、適切な経験・能力及び必要な財務・会計・法務に関する知識を
有する者が選任されるべきであり、特に、財務・会計に関する十分な知見を有
している者が1名以上選任されるべきである。独立社外取締役には、他社での
経営経験を有する者を含めるべきである。
(3) 取締役会は、毎年、取締役会全体の実効性について分析・評価を行い、その
35
結果の概要を開示すべきである。
- 22 -
解釈指針
取締役会は、その役割・責務を果たし、経営戦略や経営計画を実行・実現するため、
自らが備えるべきスキル等を特定した上で、取締役会の全体としての知識・経験・能力
5
のバランス、多様性及び規模に関する考え方を定めるべきである。その上で、例えば、
各取締役の知識・経験・能力等を一覧化したいわゆるスキル・マトリックスを開示する
など、本原則の趣旨を踏まえた開示を行うべきである。
また、社外取締役・社外監査役をはじめ、取締役・監査役は、その役割・責務を適切
に果たすために必要となる時間・労力を取締役・監査役の業務に振り向けるべきであ
10
る。取締役・監査役が他の上場会社の役員を兼任する場合には、その数は合理的な範囲
にとどめるべきである。
なお、取締役会の実効性評価を実施するに際しては、自らの役割・責務を果たすため
に、取締役会としてどのような機能を発揮すべきかを踏まえた評価を行うことが効果
的である。評価の手法についても様々な方法が考えられるが、例えば、まずは各取締役
15
が自ら及び取締役会全体についての評価を行うことが考えられる。
【原則4-13.取締役会における審議の活性化等】
(1) 取締役会は、社外取締役による問題提起を含め自由闊達で建設的な議論・意
20
見交換を尊ぶ気風の醸成に努めるべきである。
(2) 取締役・監査役は、その役割・責務を実効的に果たすために、能動的に情報
を入手すべきであり、必要に応じ、会社に対して追加の情報提供を求めるべき
である。また、取締役会・監査役会は、各取締役・監査役が求める情報の円滑
な提供が確保されているかどうかを確認すべきである。
25
(3) 上場会社は、取締役会を支える部署等の人員面を含む取締役・監査役の支援
体制を整えるべきである。
解釈指針
30
取締役会がその役割・責務を十分に果たすためには、取締役会において実質的な審
議が十分に行われることが肝要であり、取締役会は、主体的に審議の実質化・活性化を
図るための取組みを行うことが期待される。
そのような取組みとして、例えば、
(ⅰ)取締役会の資料が、会日に十分に先立って
共有されるようにすること、
(ⅱ)取締役会の資料以外にも、必要に応じ、会社から取
35
締役に対して十分な情報が(適切な場合には、要点を把握しやすいように整理・分析さ
れた形で)提供されるようにすること、
(ⅲ)年間の取締役会開催スケジュールや予想
される審議事項について決定しておくこと、
(ⅳ)審議項目数や開催頻度を適切に設定
すること、
(ⅴ)審議時間を十分に確保することなどを確保しつつ、その審議の活性化
を図るべきである。
- 23 -
また、取締役・監査役がその役割・責務を実効的に果たすためには、取締役・監査役
からの情報入手の要請に応えることを含め、会社側からの適切な支援が必要不可欠で
ある。
上場会社は、取締役会及び監査役会の機能発揮に向け、内部監査部門がこれらに対
5
しても適切に直接報告を行う仕組みを構築すること等により、内部監査部門と取締役・
監査役との連携を確保すべきである。
取締役会の審議の活性化を図り、また、社外を含めた取締役・監査役への情報提供を
含めた支援を適確に行うためには、取締役会を支える部署であるいわゆる取締役会事
務局(コーポレートセクレタリー等)の機能強化等の取組みを推進することも重要で
10
ある。取締役会事務局は、上記(ⅰ)~(ⅴ)を含む会議運営を行う単なる取締役会の
事務方としての役割のみならず、取締役会やその傘下の各委員会の会議体が実効性あ
る議論の場となるよう、当該会議体の果たすべき役割・責務に照らし適切な審議事項
を定めるなど、それらの運営を能動的に行うことが望ましい。また、必要に応じて、社
外取締役・社外監査役の指示を受けて会社の情報を適確に提供できるよう社内との連
15
絡・調整にあたる役割を担うことも期待される。
なお、独立社外取締役が議長を務める場合や、取締役会における社外取締役が占め
る割合が高い場合には、取締役会事務局が果たす機能が特に大きくなると考えられる。
20
【原則4-14.取締役・監査役のトレーニング】
取締役・監査役は、上場会社の重要な統治機関の一翼を担う者として期待される役
割・責務を適切に果たすため、その役割・責務に係る理解を深めるとともに、会社の
事業・財務・組織等に関する必要な知識の習得や適切な更新等の研鑽に努めるべきで
ある。このため、上場会社は、個々の取締役・監査役に適合したトレーニングの機会
25
の提供・斡旋やその費用の支援を行い、トレーニングの方針について開示を行うべき
であり、取締役会は、こうした対応が適切にとられているか否かを確認すべきである。
- 24 -