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知財投資・活用戦略の有効な開示及びガバナンスに関する検討会 第26回

2025-12-16一次資料(出典)

議事録・配布資料の全文(政府公表資料より。要約でなく原文に基づく参照用)。

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議事録

知財投資・活用戦略の有効な開示及びガバナンスに関する検討会 第26回 議事要旨 〇日時 : 2025年12月16日(火) 14:00-16:00 〇場所 : WEB開催 〇出席者 : 加賀谷座長、荒木委員、和泉委員、江良委員、菊地委員、三瓶委員、 杉光委員、武井委員、立本委員、中村委員、林委員、松原委員、森委員 1.議論 ① コーポレートガバナンス・コード(以下、 CGCとする)改訂時のメッセージ発信 ・前回の知財・無形資産ガバナンスガイドライン(以下、GGL とする)作成時からの環境 の違いとして、デフレ時代からインフレ時代に移行しており、コスト削減だけでは生き 残れない。差別化が必須であり、その源泉は知財である。企業価値向上には知財経営力 が不可欠。 ・方針案1については、CGC 改訂にかなり近視眼的に寄りすぎているのではないかと思 う。改訂に合わせて原則を取りまとめて公表するというのは、別の原則を作るという話 なのか、どういう位置づけなのか整理する必要がある。一方で、CGC 改訂の機会に明確 にメッセージを出しておく意味はあると思う。無形資産が大事であるということをしっ かり言っていくことは重要。 ・人的資本の可視化・開示が進んでいるが、関連する会議体も準備されている。人的資本 の「表出化」の1つとして知財があるという形で、人的資本と連動する形での発信は非 常に効果的だと思う。 ・知財・無形資産の可視化について、これまでも述べている通り、知財は無形資産の中の 知財であるということを明確にすべき。大きな話をするときは無形資産として語り、そ の中で具体的に知財における課題や方策を説明するほうが論理的で分かりやすい。 ・無形資産への投資という言い方は不正確で、無形資産そのものに投資できるわけではな い。無形資産を形成する対象を特定して投資すべきであり、意図的・戦略的に無形資産 を最終的に形成することが重要である。 ・今回の参考資料の中で、CGC の原則への格上げや、CEO 自らのアジェンダ化を求める 声があった点を、非常に重要だと考えている。単なる整理ではなく、強化が必要である と感じている。CEO アジェンダ化について掘り下げると、経営トップのコミットメント の意味は、知財投資を専門部署に任せきりにせず、CEO 自らが人的資本や知財が将来キ ャッシュフローや企業価値にどう貢献するかを語ることで、経営戦略と知財戦略の一体 化が担保される点にある。 ・投資家は誰が語るかを重視するため、CEO が直接説明することは企業の本気度と信頼性 を高める。また、CEO がアジェンダ化することで、取締役会レベルで知財投資のリスク テイクや事業ポートフォリオの組み替えが議論されやすくなる。さらに、トップの発信 により社内での浸透が進み、知財部門だけでなく、事業部や R&D も知財は経営の柱で 1 あるという認識を共有するようになる。特に、グローバル投資家から評価されるために、 CEO や CFO が無形資産・知財の戦略を直接語ることが必要だと思う。 そのためにも CEO アジェンダ化は不可欠であり、ぜひ進めてほしい。実務的には、それをどう落とし 込むのか、GGL 等で導いていく必要がある。 ・無形資産なのか知財なのかという点だが、私も IP という言葉を使い慣れているのでつ い IP と言ってしまったが、概念としては無形資産(Intangible Assets)として説明した つもりである。ただ IA と言っても浸透するまで時間がかかりそうと感じている。おそ らく多くの方々も無形資産だと思っていても、言葉としては IP に慣れているという状 況なのだと思う。このあたり、そろそろ用語を決めないと前に進まないのではないかと 感じている。IA=無形資産であり、それが知財を含むという認識をそろえるところまで 持っていく必要がある。こういう場で決めることも必要だと感じている。 ・CGC 改訂のタイミングでは、価値創造ストーリーの構築への関心が高まるはずである。 価値創造ストーリーをいかに作成するのかについて関心が高まるのだから、 その受け皿 として、この検討会で何らかの成果物を、長くなくてもよいが、わかりやすい成果物を、 CGC 改訂と同時期に出しておくべき。CGC ができてから一年経ってから長大な成果物 を発信するのでは遅い。 ・CGC 改訂に合わせて何らかの発信をすることに対しては、多くの委員が賛同していると 思っている。ただ、そのレベル感をどうするかについてはさまざまな意見があると感じ ている。原則や強化に向かうべきという意見もあれば、今つくっている方向性は間違っ ていないので、補完的な発信でよいのではという意見もある。また、制度的な位置づけ として CEO アジェンダに知財を入れるべきという意見もあった一方、まず成功例から 理解を広げ、経営トップの理解を促し、それをもとに浸透させるべきという意見もあっ た。このあたりは意見が分かれた部分もあるが、大きな方向感は一致していた。 ② 価値創造ストーリーの構築 ・価値創造ストーリーの構築については、林委員のプレゼンテーションにもあったように、 現状をよく把握したうえで将来像をどう描き、どう価値創造していくかを 、より具体的 に示していくことが必要である。さらに、責任分担、例えば経営者自身が担う会社もあ れば、事業責任者や CTO が担う場合もあるため、その役割分担を明確にしていくこと が重要である。その際、GGL2.0 に盛り込んだ「企図する因果パス」、つまり知財・無 形資産が開発・創造の中にビルトインされ、競争力や成長力にどう貢献するのかという 活動・役割を可視化し、数値化していく取り組みを具体的に示していく必要がある。 ・1つの提案であるが、企業側だけでなく、投資家の側も知財・無形資産を中心に企業価 値を創造している会社に成長期待を寄せる流れがあるため、その視点を組み込むと、企 業の努力と投資家評価が一体として考えられるようになり良いのではないか 。 ・どうしても、ストーリーという言葉には違和感がある。ストーリーとは、説明すべき重 要な要素をロジカルにつなぎ全体構造を明らかにすることであり、単なる語り や、ふわ 2 っとした wishful thinking(希望的観測)の羅列になってはいけない。したがって、スト ーリーは非常に論理的に考えなければならないことを強調したい。 ・大前提として、日本、特に日本企業、製造業をめぐる国際環境はどう考えても非常に厳 しい。隣国との競争など要因はいろいろあるが、先進国の製造業として 無形資産経営が 行われていることが重要。実際、OECD の統計から見ても、日本製造業の R&D intensity (研究開発強度)は強めのポジションにあり、そのことが、企業価値に織り込まれるよ うにすべきである。企業価値へと、織り込まれることでリスクマネーが入り、投資資金 が入り、企業の経営基盤を強くする。それを促進する活動は絶対に必要であり、その前 提のもと、本検討会がある。 ・価値創造ストーリーをこれから企業はちゃんと作っていかなければいけない。 CGC は 種々改訂されるが、CGC 改訂の本質論は、企業が成長投資をするということ。成長投資 をするためには、価値創造ストーリーがなければ、 適切な成長投資にならない。価値創 造ストーリーというのは、経済産業省が今年 4 月に公表した『「稼ぐ力」を強化する取 締役会5原則』にも明示されているとおりその定義上、競争優位性を伴っているもので あり、競争優位性の文脈で必ず無形資産・知財へのリンクが生じる。 したがって価値創 造ストーリーを作っていく中で、無形資産・知財がどう組み込まれていくべきかという 点に関して、多くの企業にとって重要なイシューとなる。本検討会にて紹介された良い 企業の事例はいくつかあるが、日本企業全体として、上場会社全体として、そういった 思考を持ってほしい。 ③ リスクテイクを伴う果断な経営判断 ・方針案2にある「リスクテイクを伴う果断な経営判断」については、これは事業単位の 話ではなく、より大きな経営として捉えたときに、各事業のポートフォリオ評価へ知財・ 無形資産の視点を加え、撤退や売却、M&A、新規投資といった経営判断に役立てること だと考えている。経営判断に役立てるためには、各事業において有効な知財・無形資産 がどのように存在し、どう活用するのか意識すべきである。また逆に Google が Motorola を買収したときのように、会社より も保有特許を目的として買収する場合もあるため、 その評価を適切に行うことが重要。 ・新規事業開発や、事業ポートフォリオ評価という言葉はあるが、ここで言う事業という のが、事業部がもともと持っているコア事業なのか、それとも顧客を獲得するためのソ リューション事業なのかという点が重要である。知財の機能、技術自体への投資判断の あり方、人的資本につなげるために M&A をするのかどうかなど、取り得る経営判断が 大きく違ってくる分岐点だと思う。そのため、この事業をコア事業と顧客獲得(ソリュ ーション)事業に分けて整理 および議論し、知財の定義も併せて整理する必要がある。 ④ 知財・無形資産の創出につながる人的資本への投資の推進 ・人材育成は、非常に重要。発明やコンテンツを創造する創造人材の育成と、それを事業 につなげ、会社の財産として価値化するマネジメント・コーディネーション人材の育成 3 の両方が必要。特に日本では前者への補償が少ないと言われているため、発明者や創作 者が夢を持って取り組める環境をつくることが必要。後者については早期に養成し、価 値創造の中核となる体制を構築するべきで、そのために経営戦略・事業戦略・知財戦略 などの役割を理解し、考え、提案し、実行できる人材をどう育てるかが非常に重要。 ・首相官邸が人的資本の重要性を述べる際、付加価値の源泉は人であり、それは工夫や新 しいアイデアを生み出すからであるというロジックを使っている。では、その工夫や新 しいアイデアとは何か。それは言い換えれば、知財や無形資産のことであると考えてい る。 ・今、人的投資や人的資本の議論で何が問題になっているかという点について、ぜひ次回、 関係者からの話を聞いていただきたい。従業員に「何百時間勉強させた」とか、 e ラー ニングで「何時間学習した」といったインプット情報が開示されているが、 それが企業 の付加価値にどうつながったのかが全く見えない。つまり、人材投資はインプットであ り、最終的に付加価値につながるプロセスに知的財産が存在するはずであり、知財・無 形資産の創出につながる人的資本という観点は重要。 ・人材投資が注目されており、人的資本開示に対して投資家がどのような意見を持ってい るかというのは非常に参考になる。 ⑤ 可視化、言語の共通化等コミュニケーションの方法論 ・価値創造ストーリーを構築する際に、ボードメンバーが討議する全体俯瞰図 を共有し、 かつ、執行側の各事業の部門を横断して、共通言語として策定・統合していく ことが不 可欠である。参考資料5(p.9~p.11)のようなツールを活用することで、VUCA の時代 だからこそ、経営幹部のみならず、従業員全員が創発的に新たなアイデアを発現させる と、技術的な新規性に止まらず、企業価値を持続的に向上させるための組織文化の変革 を巻き起こしていくことが可能となり、わかりやすく経営者にも理解され、ギアチェン ジしながら、稼ぐ力アップのスピードアップにも資するのではないか。 また、事業部門 ごとのどの事業の無形資産に誰がどう関わり、更に獲得強化すべき無形資産が何かが可 視化される俯瞰図ができるので、新たな価値創出につながる人的資本への投資の推進に も活用できる。 ・現場では、共通言語の整備が不十分だと感じている。経営層・投資家に伝わりやすい指 標化・共通言語が必要だと強く感じる。また、オープンクローズの議論にもあるように、 何で稼ぐかを明確にする必要があり、そのためには知財 ・無形資産を軸とした価値創造 ストーリーがベースになる。成功例を経営者が腹落ちする形で示すことが重要。経営者 の腹落ちを支援するための GGL や施策が進むと非常に良い。 ・無形資産に裏付けられた企業価値をどう伝えるかという話が、方針案 3 などに関わると 思うが、似た議論として、アメリカの人的資本開示の制度改正の際の離職率(ターンオ ーバーレート)の研究が参考になる。離職率の開示は近年強制化されたが、実証研究で は、離職率が翌期の ROA を予測することが統計的に明らかだったにもかかわらず、開 示がされていなかったために市場は企業価値に反映できていなかったことが示されて 4 いる。これは無形資産にも同じことが言える。①無形資産は競争力に資するものだとい うロジックの明確化(ストーリー)、②横並びで比較できる開示の両方が足りていない。 ESG でも人的資本でも同じだったが、どちらも丁寧に行わないと浸透しない。ロジック (ストーリー)と定量比較(開示)の両方が必要である。 ・論点に書かれている事項については、基本的に違和感はなく、議論のないところである。 一方で、これをどう具体化していくかが重要である。どのように実際のアクションにつ なげ、どのように使っていくのかという視点を強めるべき。その意味で、方針案 3 にあ るコミュニケーションの方法論が実務においては最も重要になる。提案があった事例集 のようなものかもしれないが、各企業における取り組みをもっと多く発掘できると、参 考になる。 ・参考資料 5 の無形資産可視化ツールは大変興味深いが、その別添「事例集」に掲載され ている 7 社全てが非上場企業であった。上場企業版があればよい と思う。その一方で、 参考資料5の p.11 にある俯瞰ツールに重要な要素である「組織文化」が抜けていると感 じた。組織文化は見えないが重要な無形資産であり、文化を共有していない人が大量に 入ると崩れる可能性がある。これを捉えることは重要である。実際に、ツールを GGL に 組み込む場合、チェックシートではなくもっとナラティブで論理的な構成が示されてい る方が使いやすい。 ・知財・無形資産ガバナンスが普及していない状況があるという話があったが、2022 年 11 月第 16 回の検討会資料 4 の p.8 を使って、改めて強調したい。ESG 投資は ESG スコア 出現後に普及浸透が加速した。そして今出てきている人的投資も、ISO 30414 出現後に 普及が加速した。どちらも定性的、入手困難だといわれた情報が、見える化・可視化さ れたことで一気に普及した。 ・価値創造ストーリーが重要であるというのはその通りだが、例えば A があったら If A then B、If B then C というような、ロジカルな話になるのが価値創造ストーリーである。 そのときに、A が本当に A なのか、B が本当に B なのか、を確認するためには、やはり 定量的な KPI が必要になる。本日、多くの委員から指標化・KPI の話が出ており、非常 に良い方向に進んでいると期待している。 ・KPI が重要という意見が本日多くあった。三年前にも KPI の議論はあったものの、「知 財・無形資産は企業によって違いすぎるので、KPI を作ってもむしろ指標に引っ張られ るだけになるのでは」という意見もあり、まず「KPI を促す」取組として、コミュニケ ーションガイドラインや GGL2.0 を出した。とはいえ、現状十分に浸透したとは言えず、 現状の整理と、動きを加速させるために何が必要か、さらに議論が必要である。 ・コミュニケーションの課題に関しては既存ガイドラインを統合して活用すべき。 ⑥ GGL 改訂・普及(実例の活用、役割の明確化、統合、海外への発信) ・経営層は、CGC に記載されることで実施する部分もあるが、実際に経営層に効くのはう まくいった実例の提供や出遅れの危機感である。そのため、知財経営を実際にやって知 5 財・無形資産を活用した成功例を作る必要がある。大規模でなくてよく、小さな PDCA・ 小さな成功でよいので、やってみた例を共有できる方向を作っていくことが 重要。 ・知財の可視化・価値化に関しては、単体で価値化しても投資家は興味を持たない。 特許 権などの売買の時以外においては、知財は事業が生む提供価値の中で初めて評価される ので、そこを明確にすべきである。知財・無形資産があるのに資本市場で評価されてい ないという表現も同意できない。市場は超過収益として結果が出ているかどうかで判断 している。結果が出ていなければ、顧客にとって超過収益に値する提供価値がないと判 断されているのと同じであり、知財があるという思い込みで終わってしまう。欧米では 必ずしも定量化・指標化だけではなく、論理的な可視化(再現可能なアート)の扱いも 多い。日本ではなんでも数量化しがちだが、そうとは限らない。統合報告書を見ている と、今年(2025 年版)はかなり良い記載が出てきている。3 年 TSR 製造業トップ 5 社 (フジクラ、アドバンテスト、三菱重工、日本電気、IHI)では、知財・無形資産ガバナ ンスが数ページにわたって非常に丁寧に書かれている。株価上昇の理由を、単なる投資 家にとっての流行りテーマ(生成 AI、防衛など)と見る向きもあったが、事実は大きく 異なる。これらの企業の株価上昇についていけなかったことから、実はアクティブ投資 家にとっては、耳障りな企業となっている。各企業は、数年前から事業撤退等を含む構 造改革を行い、自分たちが残すべき本当の強みは何なのか、強みとなる知財・無形資産 は何なのかを見定め、これは違うと思ったものを止め、これは残すべきと思ったものは 残し、強化した。その結果収益構造が変わり、色々な追い風が吹いたときにものすごく 儲かる企業となった。そういうところを投資家は見落としていた。このような企業が、 どのような変革を成し遂げてきたか、そういう事例をもっと広め、アピールすることが 重要。投資家にとって耳障りな事例だからこそ、投資家に響く。 ・GGL 改訂においては、知財・無形資産を所掌する担当役員の役割を明確化すべきである。 経営者トップに期待しすぎるのは難しく、経営の中で誰が何をし、何を達成すれば「で きている」と言えるのかを GGL に明示することが有益。 ・日本の投資家だけでなく海外投資家も視野に入れるべきであり、OECD や ICGN に接続 する形で国際的視野を取り込むと良い。 2.プレゼンテーション(林力一委員) ・本プレゼンテーションの目的は、経営戦略と知財のトランスフォーメーションを通じて、 知財を従来の権利中心から収益モデルへ再定義し、経営戦略を変革する転換モデルを提示 することである。知財は特許権などの権利取得が中心であったが、今後はビジネスモデル を考える際に無形資産を含めて再定義し、収益モデルに変えていく必要がある。本モデル の本質は、技術やブランドをビジネスの機能まで含めて扱い、知財部門だけでなく経営企 画と連携し、全社的なアジェンダとして主導する点にある。現状では、事業ポートフォリ オ評価や事業開発・技術戦略の策定などの経営戦略において知財機能が盛り込まれている 企業は少ない。知財経営(特にオープン知財戦略)を策定する主体は、マーケティング、 R&D テーマ選定、自社又は提携で開発するかを含む投資判断、事業戦略など経営戦略その 6 ものを行う必要があるため、経営企画部門(コーポレート部門)が知財部門と連携して行 う必要がある。知財経営(オープン&クローズ戦略)が日本企業で実装しようとしてしき れていないのは必要なケイパビリティと役割の乖離による。 したがって、まずは経営企画 部門に知財経営グループを設置し、その意義を社内外に発信していくことが、日本企業に おける知財経営の実装を加速させる近道となると考える。並行して、知財経営を推進する ための具体的なケイパビリティについては、人材教育も必要になるので、後追いで整備し ていく形が望ましいと考える。投資家は技術の詳細よりもビジネスのスケール・拡張性を 重視しているため、知財機能を収益獲得だけでなく顧客獲得の機能に再定義し、顧客獲得 数や収益に転換する転換率(コンバージョンレート)を KPI として提示することで、投資 家とのコミュニケーションを発展させる必要がある。さらに、CTO や CSO と連携し、マ ーケティング機能を一体化して知財の価値を企業価値に転化する具体的なアクションプラ ンへとつなげることが重要である。 ・背景として「失われた 30 年」がある。電気機械業界は 2000 年前後に、IBM が大きな転 換点を迎え、かつての長いライフサイクルを前提とした事業構造は崩れ、コモディティ化 が超高速に進行した。さらに、知財をオープンにする破壊的な力が市場構造を変えた。 次 に自動車業界にこの波が押し寄せるとされている。具体的には、テスラは Full-Self-Driving (FSD)を Over-the-air(OTA)で更新し、サブスクの課金で収益を上げる事業を立ち上 げている。自動車は販売中心の収益から、別の収益事業が成立する構造へと変化し つつあ る。テスラが市場で優位を築いた段階で、収益事業として見ていた車の販売を顧客獲得の ために利益度外視へ切り替えることで、単独販売で 収益を上げていた企業の市場を一気に 奪う事業破壊を起こすことが可能である。すなわち、クローズで収益を上げていた事業・ 知財を利益度外視するオープンの事業・知財へ切り替えることで、市場シェアを一気に奪 うことができて、相手の収益モデルを根底から崩す構造が取れる。差別化が不十分な場合、 高い価格は維持できず、市場を失う。この数年、化学業界においても、2000 年前後に電機 機械業界で起きた新興企業台頭によって、短期にコモディティ化が進み、収益悪化が顕著 となっている。モノ単独で収益維持が難しくなったため、ソリューションや顧客獲得事業 を組み合わせて、コモディティ化への対抗、顧客価値提供を高めるため、モノの強みに加 えて利益度外視で顧客を取りに行くビジネスへと転換する必要がある。 モノの提供だけで は獲得できていない顧客の数・シェアをベンチマークしながら、未獲得の顧客が無視でき なくなるタイミングでロイヤルカスタマーとは別の顧客に対する マーケティングで顧客獲 得を進め、ソリューションを組み合わせる(ケイレツ外の)エコシステムの構築の発想が 不可欠である。 ・モデルの転換は「モノからコトへ」ではなく「モノに加えてコトへ」である。スライド p.2 において、オープン/クローズ、プロフィット/マーケティングのマトリクスで見る と、右上が収益獲得事業(モノ中心)であり、左下が顧客獲得事業(モノとコト)である。 ソリューションのみで顧客を獲得しても、自社の収益に転換できなければ意味はない。そ こで、知財を 4 つの機能に再定義する。第一に、収益獲得 IP である。第二に、顧客獲得 IP である。第三に、転換 IP であり、顧客獲得から収益獲得へつなぐ機能である。第四に、秘 7 伝のたれ IP であり、提供はするが技術の詳細は秘匿し、持続的な差別化を維持するための 知財である。これら4領域で知財を設計し、収益が上がるモデルとしてビジネスを仕掛け ることが求められる。 ・オープン/クローズは以前から議論されてきたが、実務・経営に十分に入りきっていな い最大の理由は、クローズ側では知財部が権利化やクリアランスの強いケイパビリティを 持ち盤石である一方、オープン側は知財機能でありながら戦略立案に必要なケイパビリテ ィが経営そのものだからである。新しい顧客にマーケティングでアプローチし、ニーズを 把握して、収益事業とは別にソリューション事業をつくる必要がある。このソリューショ ン事業は利益を取らなくてよい「ビークル」であり、KPI は利益ではなく顧客獲得数であ る。こうしたガバナンスの切り替えがなければ、オープン戦略は社内で成立しない。実際、 IBM は 90 年代後半の劣勢から経営モデルを切り替え、顧客獲得知財の指標を 1994 年か ら開示している。彼らにとって顧客獲得事業はコンサルティング事業であり、利益を獲得 しにいく事業ではなく、将来の収益事業(ソフトウェアやインフラ)へ顧客を運ぶための 事業として位置づけている。収益事業の売上の 80%がコンサルティングからつながってい ると開示しており、これは将来の収益への転換率(コンバージョンレート)の開示である。 キーエンスは技術営業・コンサルティングを通じて顧客接点を強化し、確実に機器の売り 上げに繋げており、モノだけでは実現できない顧客価値の提供と 差別化を維持している。 ネスレのネスプレッソは機械を顧客獲得のために用い、カプセルで収益に転換している。 日産化学はソリューション側の事業を本社側で管理し、CFO と CTO の連携で事業部と切 り離した投資判断を行う体制を整備しており、ソリューションビジネスは事業部門に投資 判断を委ねると、イノベーションジレンマに陥るので、 これらコア事業の利益とソリュー ション事業の顧客獲得の KPI を分離して、両利き経営を実現するためのガバナンス体制を 取ることの重要性を示す事例である。 ・イノベーションジレンマの解消が重要である。スライド p.9 におけるタイプ 1 はラディ カルな技術革新による単独事業の置き換えであり、ガラケーからスマホ、真空管からトラ ンジスタへの転換が典型である。今回の議論はタイプ 2 に該当する。バリューチェーン上 で二つの事業が相互に破壊し合うパターンである。タイプ 2 に対しては別会社化の解決は 成り立たず、社内で KPI を分離し、ガバナンスを効かせることが解決策である。ソリュー ション事業は利益度外視の顧客獲得を担い、収益事業へ誘導する役割を明確化することで、 両利き経営を実現できる。 ・標準必須特許(SEP)戦略の再考も必要である。顧客獲得の知財事業における SEP は有 効であるが、収益獲得の事業 IP を SEP 化すると、差別化の根源を自ら破壊することにつ ながる。したがって、SEP は顧客獲得側で活用し、収益獲得側ではクローズを維持するの が望ましい。 ・開示と投資判断においては、顧客獲得事業の IP を将来の収益につながる成長性の指標 として開示する。顧客獲得事業の IP の KPI は顧客獲得数やコンサルティング売上などが 指標となる。獲得した顧客は、収益へ転換しているかどうか、すなわち、収益への転換率 (コンバージョンレート)の開示が投資家へのアピールとなる。4つの IP 機能を底上げす 8 る知財としてブランドを育成し、秘伝のたれは、顧客獲得のためにオープン化が必要とな る IP を顧客が利用できるが技術格差を維持することで収益の持続性を得るための IP 戦略 の中核として定性的に説明する。価値創造のプロセスでは、 4つ(+ブランド)の知財機 能にしっかり投資し、顧客獲得 IP としてソリューション IP 等を未開拓の顧客に提供して 製品販売前に顧客ロックインをつくることが重要である。NVIDIA の CUDA は、GPU を 自社事業に使う環境設定のソリューションとして提供され、顧客の切り替えを困難にして いる好例である。投資判断では ROIC を短期的利益の道具とせず、ソリューションの長期 視点での顧客獲得機能と将来収益への接続を重視し、ガバナンスを効かせて投資と開示を 行うべきである(IPX 経営戦略モデルは ROIC の弱点も解消できる)。 ・実装に際しては、イノベーションジレンマそのものに対抗しなければ、オープン &クロ ーズ戦略や知財ベースの経営モデルは実現できない。トップが戦略体制を築き、従来と異 なる経営判断を必要とする部分に目を配り、成功事例を作りながら回していくことが求め られる。事業ポートフォリオ評価では、各事業が収益獲得のど真ん中か、顧客獲得側かを 段階で明確に見ていく経営スタイルが前提となる。このモデルを実装すれば、モノだけよ りもソリューションを組み合わせることで利益率は上がる。半導体 や電池などでは、ソリ ューション事業(顧客獲得 IP)側と収益事業(収益獲得 IP:コア IP)側の投資を競合等 の動きを特によく見てバランスよく配分しないと勝てない。中小企業は下請けからパート ナーへと進化でき、日本全体では、電気機械業界・化学業界でのソリューション転換の遅 れを克服し、次に来る自動車業界への波に備える必要がある。モノの強みにコト(ソリュ ーションビジネス)の強みを加えることで、モノ単独の事業よりも競争力を明らかに高め ることができる。 ・イノベーションジレンマを解消しなければ知財を経営に融合することはできない。ベス トプラクティスの共有、イノベーションジレンマ解消への投資や補助金・政策の活用が有 効である。知財ガバナンスの開示指針を整備し、個社の経営戦略に関するものであるため、 いきなりすべてを開示するのではなく、まずはサンドボックス的に経営層と知財機能の連 携を試行しながら導入することが望ましい。 以上 9

資料1

資料1 「知財投資・活用戦略の有効な開示及び ガバナンスに関する検討会」 (第26回) 令和7年12月16日(火) 14:00~16:00 (Web開催) <議事次第> 1.開会 2.事務局説明 (内閣府知的財産戦略推進事務局) 3.プレゼンテーション (林力一委員) 4.質疑応答・議論 5.閉会 <配布資料> 資料1 議事次第 資料2 委員名簿 資料3 事務局説明資料 資料4 プレゼンテーション資料 (林力一委員) 参考1 「コーポレートガバナンス・コードの改訂に関する有識者会議」 (令和7年度第1回) 資料4 参考2 「コーポレートガバナンス・コードの改訂に関する有識者会議」 (令和7年度第1回) 議事録 参考3 構想委員会(第1回会合 令和7年11月21日)議事次第 参考4 構想委員会 参考5 無形資産可視化ツール 参考6 一般社団法人 電子情報技術産業協会(JEITA)意見書 参考7 一般社団法人 日本知的財産協会(JIPA)意見書 参考8 一般社団法人 無形資産経営推進協会 意見書 参考9 一般社団法人 知財・無形資産ガバナンス協会 意見書 参考10 弁護士有志 構成員名簿 意見書 活用マニュアル(概要版) Ver 1.0

資料2

資料2 「知財投資・活用戦略の有効な開示及びガバナンスに関する検討会」 委員名簿 (五十音順、敬称略) (委員)◎座長 荒木 充 株式会社ブリヂストン 知的財産部門 和泉 恭子 富士通株式会社 ビジネス法務・知財本部 知財グローバルヘッドオフィス長 江良 明嗣 ブランズウイック・グループ 小野塚 恵美 エミネントグループ株式会社 ◎加賀谷 哲之 一橋大学商学部 部門長 パートナー 代表取締役社長 CEO 教授 菊地 修 一般社団法人知財・無形資産ガバナンス協会 三瓶 裕喜 アストナリング・アドバイザー合同会社 杉光 一成 金沢工業大学大学院イノベーションマネジメント研究科 武井 一浩 西村あさひ法律事務所・外国法共同事業 立本 博文 筑波大学ビジネスサイエンス系 中村 栄 一般財団法人 知的財産研究教育財団 知的財産教育協会 IP ランドスケープ推進協議会 シニアアドバイザー 林 力一 株式会社野村総合研究所 理事長 代表 教授 パートナー 教授 客員研究員 コンサルティング事業本部 シニアプリンシパル 松島 憲之 Alphaterra Advisory 株式会社 シニア・エグゼクティブ・アドバイザー 三菱 UFJ リサーチ&コンサルティング株式会社 委嘱アドバイザー 松原 稔 りそなアセットマネジメント株式会社 常務執行役員 責任投資部担当 俊彦 一般社団法人日本金融人材育成協会 森 会長 (オブザーバー) 金融庁企画市場局企業開示課、特許庁総務部企画調査課、株式会社東京証券取引所 (事務局) 内閣府知的財産戦略推進事務局、経済産業省経済産業政策局産業創造課、 経済産業省経済産業政策局知的財産政策室

資料3

資料3 事務局説明資料 2025年12月16日 内閣府 知的財産戦略推進事務局 コーポレートガバナンス・コード改革の実質化 ○2021年6月のコーポレートガバナンス・コード改訂により、上場企業は、知財・無形資産 の投資・活用に関する経営資源の配分や、事業ポートフォリオに関する戦略の実行、それ らの実効的な監督が求められることとなった。 〇現在、コーポレートガバナンス改革の実質化や、コードのスリム化/プリンシプル化を念 頭に、コード改訂に向けた議論が進められている。 出典:金融庁 「コーポレートガバナンス・コードの改訂に関する有識者会議」 2 第25回検討会及び構想委員会における「経営と知財関係者とのコミュニケーション」に関するご意見 第25回検討会でのご意見 構想委員会でのご意見 ■価値創造ストーリー ・投資家は読む時間が限られているため、短い時間で納得させるストー リーが求められる。 ・顧客価値創造による市場拡大・事業スケールを含んだ価値創造ス トーリーを作るべき。 ・可視化ができていない理由は、技術の説明に終始している企業側の 問題と、投資家と企業の価値観のギャップが大きいことにある。 ・中小企業のみならず、大企業に関しても、「無形資産の時価総額割合 を高めていく」というものを、経営トップのアジェンダとして認識してもらい、 各社に手を打ってもらうことが重要。 ■数値化・評価 ・知財・無形資産に興味がない投資家が、時間がない中で何を見るか といえば数字しかない。プロ野球における打率のように数値化すること で議論が生まれる。 ・アカデミアと連携し、定量化を繰り返しブラッシュアップすることが必要。 ・収益を上げる事業と顧客獲得する事業に分けて、事業支援する知 財活動は、異なった概念で評価すべき。 ■具体的な対応案 ・経営者への経営目線での翻訳を推進すべき。 ・開示の標準化や効果的な見せ方の整備が必要。 ・経営者や投資家に重要性が伝わる事例集が必要である。数を追う のではなく、質の高い事例を1つか2つでも広く伝えることが重要。 ・企業と投資家の対話活性化のための言語化や整理が必要。 ・知財・無形資産の見える化の具体的手法を提示することが必要。 ・バラバラに存在している事例集やガイドラインの統合や企業と投資家 との対話のまとめ集を作るべき。 ・見える化と統合化の両輪でバージョン3.0を目指すべき。 (令和7年10月29日開催) ・知財戦略支援の不足に対し、CIPOやCLOなど専門人材をしっかり配 置すること、知財を含む非財務資本の価値を明確にしていくことが重要。 これらを包括支援パッケージとして、知的財産経営の理解・実践、人材 育成、専門家人材の流動性向上、デザイン資本の価値評価の実践 など、今期も継続してしっかり議論していただきたい。 ・知財の重要性について経営層が理解できる言葉で説明できていない。 その根底には、共通言語の不足がある。経営者や投資家にとって、知 財の価値を測る物差しが存在しないため、どの知財が競争力や事業に どう貢献しているかが伝わっていない。 ・知財の価値を客観的に可視化する、知財の事業貢献度を測る指標が 必要。例えば、企業の利益への貢献や、競合との差別化への寄与など を表現できる指標が必要。このような指標により、知財の価値を可視 化・定量化でき、知財の重要性が伝わり、投資家にも理解される。 ・知財の価値はM&Aの買収価格やのれんにも影響するが、企業活動の 中で明確にされていないことが多い。知財の価値を明確にし、企業が価 値を実感できるようにすることが有効。 ・日本企業の中で、数値化・情報発信に成功しているモデルケースをみ つけ、広く産業界に浸透させていくことが望ましい。 ・技術的な質や市場性などから絶対的な価値を測る指標もあるが、企 業内部で知財がどれだけ役立っているか、事業貢献度を測る相対的な 指標が望まれる。 (令和7年11月21日開催) 3 (参考)構想委員会の位置づけ(2025年11月~2026年6月) 知的財産戦略本部 Webサイトリンク https://www.kantei.go.jp/jp /singi/titeki2/tyousakai/kous ou/index.html 構想委員会 コンテンツ戦略WG クリエイトジャパンWG 国際標準戦略部会  知財計画のうちコンテンツ戦略に係るパート について審議  知財計画のうちクールジャパン戦略に係る パートについて審議  我が国における国際標準の戦略的な活 用に関する施策について審議 コンテンツ産業官民協議会 映画戦略企画委員会 海賊版対策官民実務者級連絡会議 ロケ撮影の環境改善に関する 実務者懇談会 デジタルアーカイブ戦略懇談会 デジタルアーカイブ推進に関する検討会 AI時代の知的財産権検討会 知財投資・活用戦略の有効な開示 及びガバナンスに関する検討会 ※経産省と共同事務局 4 本日ご議論いただきたいこと 〇現在コーポレートガバナンス・コード改訂の議論が進んでおり、改訂後には、知財・ 無形資産ガバナンスガイドラインも合わせて改訂する必要がある。 〇知財・無形資産ガバナンスガイドラインVer. 2.0の公開後、価値創造ストーリーの構 築、経営陣による適切なリスクテイク、中長期目線の経営などの経営戦略上の課題の 重要性が増している。 〇本検討会では、知財・無形資産がこうした経営課題を解決するエンジンになるとの考 えの下、以下の方針で、議論を進めてはどうか。 方針案: 1.コーポレートガバナンス・コード改訂にあわせ、価値創造ストーリーの構築に資す る原則をとりまとめて公表する。また、知財・無形資産ガバナンスガイドラインの内 容を、改訂後のコードの内容を踏まえたものとする。 2.ガイドライン改訂にあたっては、価値創造ストーリーの構築を中心に据え、より成 長性の高い新規事業への投資や既存事業からの撤退・売却を含む事業ポート フォリオの組替えなど、リスクテイクを伴う果断な経営判断に焦点を当てて、わかり やすく、経営者にも理解されるよう整理する。 3.中長期目線の経営を支援する知財・無形資産の可視化、経営と知財関係 者との言語の共通化等、コミュニケーションの方法論及び、知財・無形資産の創 出につながる人的資本への投資の推進も上記の課題に含める。 5

資料4

資料4 知財投資・活用戦略の有効な開示及びガバナンスに関する検討会 報告資料 「IPX経営戦略モデル」による、 持続的収益構造への転換 知財を無形資産まで含め“経営・ビジネス機能"として再定義し、 DATE 2025-12-16 持続的収益性を実現する経営変革のフレームワーク 株式会社野村総合研究所 コンサルティング事業本部 シニアプリンシパル・弁理士 【Appendix】【全編】「IPX経営戦略モデル」による、持続的収益構造への転換 林 力一(はやし りきかず) E-mail:r4-hayashi@nri.co.jp Copyright(C) Nomura Research Institute, Ltd. All rights reserved. 0 はじめに:投資家・経営者との「共通言語」としてのIPX経営戦略モデル IPX経営戦略モデルは、技術・コンテンツを「価値創造ストーリー」へ転換し、投資家や経営者との共通言語にするフレームワーク。 知財機能の収益貢献を数値化し、経営企画と連携した全社的な取り組みとして事業創出を実現する。 「技術説明」から「価値創造ストーリー」への転換 IPX経営戦略モデルの本質 投資家は技術詳細ではなくビジネスの拡張性(スケール)を見ている。 IPXモデルは知財を「収益獲得」「顧客獲得」という機能で再定義し、競争優位性と成長シナリオを論理的に接続する。 多業界事業・技術戦略策定の実務を通じて抽象化した、 確実に収益を生み出す事業創出」を実現するための実践的 経営戦略フレームワーク。 対話を活性化させる「共通言語」と「数値化」 戦略策定実績のある主要な業界: 半導体 電池 医薬CDMO 化学 食品 エネルギ 電機・機械 自動車 「どの知財がどうキャッシュを生むか」を可視化。 プロ野球の打率のように議論可能なKPIとして、知財機能による「顧客獲得数(n数)」や「転換率(Conversion Rate)」を提示し、投資家とのギャップを埋める。 ※コンテンツIPその他の業界での 適用有効性検討はAppendix参照 部門横断的な「全社的アジェンダ」への昇華 「技術・ブランド」を「ビジネス機能」へ。 知財部門だけでなく、経営企画と連携して主導すべき全 社的アジェンダ。 知財部門単独ではなく、経営企画部門(CTO、CSO等)との連携で、マーケティング機能が一体となる。 「無形資産の時価総額割合を高める」ための具体的かつ戦略的なアクションプランを提供する。 (ほとんどの企業で現状できていない、事業ポートフォーリオ評価、事業開 発・技術戦略策定などの経営戦略で知財機能の盛り込みを行う) 「知財投資・活用戦略の有効な開示及びガバナンスに関する検討会」(第25回)資料等公開情報基づき作成 Copyright(C) Nomura Research Institute, Ltd. All rights reserved. 1 モノに加えてコトへのパラダイムシフト(モノ“から”コトへの転換ではなく、“加えて”) 超高速コモディティ化とオープン知財戦略による市場破壊が進み(電機機械業界は2000年前後、化学業界は最近、自動車業界は今後直近)、モノ単独事業での収 益性維持が困難に。モノを起点にしてマーケティングによるコトビジネスを加えてエコシステム化が持続的成長の必須条件となっている。 コモディティ化の超高速化 新興国の台頭(補助金利用して過剰供給も影響)とモ ジュラー化により、製造ノウハウが汎用化。 機能的差別化の寿命が極端に短縮し、コスト競争が激 化し、モノ以外の顧客価値提供がないとコモディティ 化に耐えれない。 オープン知財の破壊力(知財と経営の融合) 競合やビックテック等の「オープン知財戦略」は、技 術や特許を無料・安価に開放・提供し参入障壁を破壊 することで市場を急速にコモディティ化させる戦略的 効果がある。 単独事業では差別化が困難となり激しい価格競争が発 生し、既存企業は短期間で市場シェアと収益モデルを 失う致命的な脅威である。 例:テスラのFSD 「知財投資・活用戦略の有効な開示及びガバナンスに関する検討会」(第25回)資料等公開情報基づき作成 モノ事業単独の限界 「売り切り型」モデルの崩壊。 製品を梃子にソリューションを組み合わせ、顧客獲得 機会を広げて事業拡大とロックインを図るモデルへの 転換が必要となっている。 国内市場やケイレツだけでは収益確保が困難なため、 顧客接点を新規・ケイレツ外をも巻き込むエコシステ ム構築が不可欠となっている。 例:NVIDIAのCUDA Copyright(C) Nomura Research Institute, Ltd. All rights reserved. 2 IPXモデル概要:4つのIP機能マップ IP機能をビジネス目的(顧客・収益)と知財戦略(オープン&クローズ)の2軸で整理。 一手段で複数機能を具備することもあるが、持続的成長には、ビジネスモデル内に各機能が漏れなく備わっているかの確認が重要である。 PROFIT (収益獲 得・利益) 超高速コモディティ化と知財オープ ン化による市場破壊モデルが登場て いる今、 モノだけでは持続的な収益確保が難 しくなり、モノを起点に、マーケティン グでコトを加えて顧客を高めることが、 持続的成長の必須条件となっている。 ① 収益獲得IP (モノ中心) コア事業全般 CORE / CLOSE 高収益を生み出すコア事業(製品・サービス)を守り、利益率を維持するための知 財群。意匠やコンテンツIPも含む。 ③ 転換IP Nestlé事例 実務:徹底的な権利化、他社排除 BRIDGE 獲得した顧客を「収益獲得IP」へ誘導・定着させ るための仕掛け。スイッチングコストの源泉。 KEY PERFORMANCE INDICATOR KEY PERFORMANCE INDICATOR ロイヤルティ免除額(奨励)。差止訴訟等独占が確定時に経済効果 営業利益率、市場シェア維持率 転換率 (CVR) ② 顧客獲得IP (モノ+コト) ENTRY / OPEN ソリューションビジネス全般 顧客の課題解決やデータ基盤を提供し、将来の収益源となる顧客数(n数)を最大 化する。 ④ 秘伝のたれIP 装置リース/SDK/EaaS事例 (p.63,64等参照) DEFENSE / HIDDEN コア技術・知財(収益獲得IP)に加えて、顧客獲得IP(ソリューションIP含む)に対し て、技術の流出を防ぎ、他社への乗り換え防止と市場のコモディティ化抑制を担う 実務:マーケティング、R&D戦略策定、他社連携判断、標準化、オープン化、価格戦略 実務:ブラックボックス化、ノウハウ管理 KEY PERFORMANCE INDICATOR KEY PERFORMANCE INDICATOR マーケティング (顧客獲得・N数) 獲得顧客数 (n数)、CPA(顧客獲得単価) ※短期的な利益で評価しない OPEN STRATEGY(提供・標準化) 「知財投資・活用戦略の有効な開示及びガバナンスに関する検討会」(第25回)資料等公開情報基づき作成 LTV、解約率、スイッチングコスト(コモディティ化回避、ロックイン) CLOSED STRATEGY(独占・秘匿) Copyright(C) Nomura Research Institute, Ltd. All rights reserved. 3 機能別戦略と役割分担の対比 「収益獲得IP」と「顧客獲得IP」は、目的・戦略・評価指標が根本的に異なるため、経営企画との連携による明確な役割分担と専門性の統合が必要となる。 知財経営の実現されていない主要な要因は、経営・マーケティングと知財機能が融合できていないからで、企業内で経営企画との連携が重要である。 収益獲得事業(コア事業;モノ中心) 位置づけ 目的 知財戦略 活用の狙い 評価指標 戦略を扱うのに 必要な知見 ・支援者 バックエンド(本丸) 顧客獲得事業(ソリューション;コト) フロントエンド(入口) 獲得した顧客を離さず、高収益を上げる。 市場へのアクセスを容易にし、面を広げる。 収益獲得 (Profit) 顧客獲得 (Marketing) キャッシュカウ・利益の源泉。 呼び水・認知拡大・KBFの掌握。 【クローズ戦略】(独占・秘匿) 特許網やノウハウ秘匿で守り、模倣を防ぐ。 従来の知財戦略に 無形資産の扱いを取り込む 【オープン戦略】(提供・秘匿) 独占せず、標準化や無償提供等で利用促進。 排除 (MOATの堅持) 仲間作り (エコシステム形成) 他社の侵入を防ぐ排他権として機能。 提携・連携により、自社陣営を増やす。 営業利益率、シェア維持率 獲得顧客数(n数)、CPA ※短期的な収益性を厳しく評価。 ※利益ではなく「送客数」や「コスト」で評価。 法的・技術的専門性(権利化・クリアランスが中心) 経営・マーケティングの視点と、ガバナンス体制構築 大企業知財経験者、弁理士 経営企画経験者、戦略コンサル、中小企業診断士 「知財投資・活用戦略の有効な開示及びガバナンスに関する検討会」(第25回)資料等公開情報基づき作成 Copyright(C) Nomura Research Institute, Ltd. All rights reserved. 4 4つのIP機能の詳細定義とKPI 知財機能を従来モノ中心事業では一つであった「収益獲得IP」と「顧客獲得IP」を分離し、「顧客獲得IP」の定義に伴い必要な「転換」「秘伝のたれ」を加えて分類化。 各役割とKPIを再定義し、収益維持や顧客最大化を図るための具体的指標となる。 ① 収益獲得IP (Profit IP) ③ 転換IP (Conversion IP) クローズ戦略 ブリッジ機能 役割 役割 高収益を生み出すコア事業(製品・サービス)を守り、利益率を維持する。 「顧客獲得IP」で集めた顧客を、確実に「収益獲得IP」へと誘導・定着させるための仕掛け。 実務 徹底的な権利化と独占排他。(他社の参入障壁構築) 実務 ビジネスモデルごとに「転換の鍵(スイッチングコストの源泉)」を見極め知財で押さえる。 評価指標 (KPI) 保守主義の下では、市場参入した際の対抗できる状況でロイヤルティ免除額の 経済効果を示す(奨励)。差止訴訟等独占が確定時にその経済効果を示す。 営業利益率、市場シェア維持率 評価指標 (KPI) 転換率(Conversion Rate) ② 顧客獲得IP (Marketing IP) ④ 秘伝のたれIP (Black Box IP) オープン戦略 秘匿化戦略 役割 役割 顧客の課題解決やデータ基盤を提供し、将来の収益源となる顧客数(n数)を最大化する。 コア技術の流出を防ぎ、他社への乗り換え防止(ロックイン)とコモディティ化抑制を担う。 実務 実務 あえて利益を求めず、オープン化や安価提供を行う。 ソフトウェアのアルゴリズムや製造ノウハウなど、要点部分をブラックボックス化する。 評価指標 (KPI) 獲得顧客数(n数)、リード獲得コスト(CPA) ※短期的な利益で評価しない 「知財投資・活用戦略の有効な開示及びガバナンスに関する検討会」(第25回)資料等公開情報基づき作成 評価指標 (KPI) LTV、解約率、スイッチングコスト(コモディティ化回避、ロックイン) Copyright(C) Nomura Research Institute, Ltd. All rights reserved. 5 IPX経営戦略モデルを体現する好事例(1/2) 「イノベーションのジレンマ」を克服し、顧客獲得IPから収益獲得IPへの転換を実現している代表的企業。 IBM 顧客獲得 収益獲得 KEYENCE 顧客獲得 収益獲得 戦略の要点 戦略の要点 コンサル部門は「稼ぐ」ためではなく、 「顧客を獲得する」ためのIP と再定義 営業担当者の「コンサル能力」を 組織知化されたIPとして徹底活用 コンサルティングや受託開発を単独事業と捉えず、コアである「ソフトウェア・インフ ラ事業」への送客装置として活用。 個人のスキルに依存せず、顧客の潜在課題を発見・解決するノウハウをデータ化 し、全社的な「顧客獲得IP」へ昇華。 社内KPIを「利益」ではなく「Custom Development Income(顧客開発収入:技術営 業・コンサルティング売上)」に設定し、部門間の利害対立を解消。 圧倒的な「課題解決提案」により、顧客を自社の高収益製品(FA機器)へと確実に 誘導。 成果と指標 成果と指標 Keyword コア事業売上の約80%が顧客獲得事業経由 Conversion Rate 「知財投資・活用戦略の有効な開示及びガバナンスに関する検討会」(第25回)資料等公開情報基づき作成 製造業として異次元の 高収益体質を実現 Keyword Data-Driven Sales Copyright(C) Nomura Research Institute, Ltd. All rights reserved. 6 IPX経営戦略モデルを体現する好事例(2/2) ビジネスモデルへの「転換機能」の実装と、ジレンマを防ぐ「ガバナンス」改革の実践例。 Nestlé 転換IPの活用 Lock-in 日産化学 ガバナンス改革 投資実行 戦略の要点 戦略の要点 カプセルの「専用形状」を知財で保護し、 顧客を収益事業へ転換・ 定着させる 顧客獲得IPへの投資判断を本社へ移管し、 短期PLのジレンマを構 造的に回避 コーヒーマシンを安価に提供して「顧客を獲得」し、消耗品である専用カプセルで 長期的に「収益化」するモデルを構築。 事業部門は短期利益を優先し、将来のためのソリューション投資を躊躇しがちであ るという課題を認識。 特許・意匠権により他社製カプセルの参入を防ぎ、獲得した顧客が安価な代替品 へ流出するのを阻止。 本社(コーポレート)主導で投資判断を行う体制を構築し、目先の利益に縛られず 「将来の顧客獲得」を実行。 成果と指標 成果と指標 高収益事業への 顧客定着率を最大化 Keyword High Conversion & LTV 「知財投資・活用戦略の有効な開示及びガバナンスに関する検討会」(第25回)資料等公開情報基づき作成 中長期視点での 戦略的事業開発の加速 Keyword Governance for IPX Copyright(C) Nomura Research Institute, Ltd. All rights reserved. 7 イノベーションのジレンマとその解決 ソリューション事業単体の赤字を許容し、顧客数が達成している限り、全社視点で貢献を評価・経営判断するガバナンス改革が求められる。 日本企業が陥る「ソリューション事業に単体黒字を求め早期撤退する」失敗に陥ることがあることに対し、KPIを利益から顧客獲得数へ転換する必要がある。 日本企業の失敗パターン IPX経営戦略モデルによる解決策とガバナンス ① 誤ったKPI設定 KPIの根本的転換 ソリューション(顧客獲得)事業にも「単体黒字」を厳しく要求 顧客獲得事業(ソリューション)の評価軸を「利益」から変更する。 短期的な営業利益 獲得顧客数(n数) / 収益事業への送客数 ② 撤退判断 利益が出ないため撤退・縮小。 再び「モノ売り(単独事業)」へ回帰。 ガバナンス体制の改革 「ソリューション部門は赤字でも、全社収益に貢献していれば評価される」仕組みを 構築し、イノベーションのジレンマを解消する。 ③ 競争力の喪失 欧米企業にシェアを奪われる。 ※欧米は利益度外視でシェアを取りに来るため、価格でも 勝てない悪循環。 「知財投資・活用戦略の有効な開示及びガバナンスに関する検討会」(第25回)資料等公開情報基づき作成 本社(コーポレート)機能の役割: 事業部ごとの縦割りPLではなく、IPポートフォリオ全体のROIを横断的に評価・監督する。 Copyright(C) Nomura Research Institute, Ltd. All rights reserved. 8 イノベーションの類型と日本企業が直面するジレンマの正体 イノベーションを「事業破壊を招く事業改革」と定義した場合、その類型によって企業が直面する「ジレンマ」の質と、その解消策は大きく異なる。 日本企業が苦しんでいるのは、特に「バリューチェーン上のイノベーション(タイプ2)」におけるガバナンス不全である。 1 イノベーションの2つの類型 類型 定義・特徴 タイプ1: ラディカルな技術革新 単一事業間での置換。 技術の非連続な進化により、既存製品が不要になる破壊的変化。 タイプ2: バリューチェーン上の構造改革 ※ 注 事例 同じバリューチェーン上での事業構造の変化。 単一事業であったものが「分離」または「結合」し、新たな付加価値を生む。 発生頻度 ガラケー → スマホ フィルム → デジタル 2-1 結合型(モノ+コト):モノにソリューションを付加。 2-2 分離型(アンバンドル): 設計と製造の分離、製造のアウトソーシング。 低い 高い 90年代後半の敗北:欧米企業は「タイプ2-2(分離型)」を実行し、製造をアジアへアウトソーシングして事業効率化を図った。一方、垂直統合に固執した日本企業は、この構造改 革により一気に市場を奪われた。 2 ジレンマ解消施策の違い 類型 ジレンマ解消のアプローチ 備考 タイプ1 (ラディカル) 「出島」「別会社化」 事業間の繋がりを断ち切る方が良いため、組織的分離が比較的容易。 タイプ2 (バリューチェーン型) 既存事業と物理的に切り離し、カニバリゼーションを恐れず破壊を実行させる。 「社内でのKPI分離・高度なガバナンス」 別会社化(完全分離)は困難。同一企業内で、異なるKPIを持つ事業を共存させる必要があ る。 「知財投資・活用戦略の有効な開示及びガバナンスに関する検討会」(第25回)資料等公開情報基づき作成 日本企業の最大の弱点 「顧客獲得IP(投資)」と「収益獲得IP(利益)」が繋がっているため、両方に短期利益を求めてしまう。 Copyright(C) Nomura Research Institute, Ltd. All rights reserved. 9 標準必須特許(SEP)への対応戦略 IPX経営戦略モデルの視点から、顧客獲得IPとしてのSEPは良いが、収益獲得IPのSEP化は持続的収益性を失うリスクがあるので、基本的には避けるべき。 顧客獲得IPとしてのSEP 顧客獲得や市場拡大を目的とする場合、SEPは強力なツールとなる。 収益獲得IPのSEP化リスク 高収益を維持すべきコア事業のIPがSEPとなると、収益性が損なわれる恐れがある。 積極的に標準化を行い、オープンに活用する。 エコシステムを形成し、自社技術の普及を加速させる。 FRAND条件により、独占的な高収益の享受が困難になる。 「排他権」としての機能が弱まり、競合の参入を許す。 ダイキンのインバータ事例はリスクがある 対応策:分離設計と組織連携 収益獲得IPの「分離と設計」 収益の柱となるコア技術については、標準化の対象とならないよう慎重に知財開発を行う。 標準化活動と知財開発の「連携」 R&D部門(標準化活動)と知財部門が高度に連携し、「どの技術をオープンにし、どこをクローズ にするか」を初期段階で合意形成する。 標準化される場合でも、競争力の要点部分(秘伝のたれIP)はSEPに含まれないよう、ブラックボ ックス化等の対策を講じる。 「知財投資・活用戦略の有効な開示及びガバナンスに関する検討会」(第25回)資料等公開情報基づき作成 Copyright(C) Nomura Research Institute, Ltd. All rights reserved. 10 戦略的KPI開示と価値創造ストーリー 将来の収益事業での収益性へ転換される知財の機能とそのKPIを開示することで、投資家は、企業の価値創造の源泉とそのストーリを理解することができる。 IPX経営戦略モデルと開示方針 価値創造プロセス(IIRCフレームワーク) A. 資本インプット・B. 資本転換プロセス(ビジネスモデル) 投資家へのメッセージ: 「未来の成長性(顧客獲得IP)」×「現在の収益持続性(収益獲得IP)」を 「顧客への繋がり効率・論理性(転換IP)」と「信頼性(ブランドIP)」で補強説明し、 「秘伝のたれIP」は語らず守る(競争優位の源泉として戦略的に秘匿) 内容(例) 知的資本 社会・関係資本 財務資本 Intellectual Capital IPX5機能への戦略的投資。 収益獲得IP・顧客獲得IPの 開発に財務資本を投下 Social & Relationship 顧客獲得IPによる顧客基盤構 築。n数・CAC・シェアで 測定される顧客母集団 Financial Capital 転換IPを通じた収益化。 収益獲得事業による キャッシュフロー創出 カテゴリ IP定義 将来の収益事 業の成長性 顧客獲得IP (Open IP) 獲得顧客数(n数)、リード獲得コスト(CPA) 未来の収益獲得事業への顧客獲得 A. 必須開示 持続的収益性 (オープンIPに 耐えれるか) 収益獲得IP (Closed IP) ロイヤルティ免除額(奨励)。差止訴訟等独占が 確定時に経済効果 営業利益率、市場シェア維持率 A. 必須開示 「収益事業」の短期的な赤字は「失敗」ではなく、将来の価値創造のための「戦略 的社内投資」 収益への 転換論理性 収益転換IP 転換率(Conversion Rate) B. 推奨開示 B. ガバナンス(プロセスの監督) 信頼性 ブランドIP 顧客からの信頼、企業ブランド B. 推奨開示 競争優位 維持性 秘伝のたれIP LTV、解約率、スイッチングコスト (コモディティ化回避、ロックイン) C. 原則非開示 但し定性的開示 開示レベル 「知財投資・活用戦略の有効な開示及びガバナンスに関する検討会」(第25回)資料等公開情報基づき作成 重要な位置づけ: 取締役会の役割: 「価値創造ストーリー(IPX経営戦略モデル)」の論理性を深く理解し、その実行を監督 戦略の分離: 「顧客獲得事業(IPオープン化等)」と「収益獲得事業(IP囲い込み等)」等、相反する経営判断 を分離・管理 Copyright(C) Nomura Research Institute, Ltd. All rights reserved. 11 従来の課題とROIC経営の落とし穴 短期的なROICや単独黒字の追求は成長投資を阻害する課題がある。IPX経営戦略モデルでは解決策として、ソリューション事業を収益事業への「送客手段」と位置 づけ、顧客数が達成している限り、単独黒字を求めず先行投資として正当化する。 ROIC経営における「リスクテイク」の視点 「オープン&クローズ戦略」の限界と進化 落とし穴:短期的な資本効率の追求 限界:戦略の分断と単独黒字化の罠 短期的なROIC向上を目指すあまり、リターンが見えにくい「将来の成長投資(リスク テイク)」が抑制される。 特に、顧客獲得のためのソリューション事業への投資が「非効率」として切り捨てられ がち。欧米先進企業はソリューションビジネスに利益を求めず、顧客を収益事業に連 れてくるVehicleとしての機能に期待。 IPX経営戦略モデルによる解決 顧客獲得(ソリューション含む)事業を、将来の莫大なリターン(収益獲得事業)への「 不可欠な先行投資」として位置づける。 オープン領域(標準化・普及)とクローズ領域(独占)が切り離して議論されがち。 その結果、オープン領域であるはずのソリューション事業単体で無理に収益を上げよ うとして失敗する。 IPX経営戦略モデルによる進化 分断を解消し、両者を一体として設計する。 オープン領域(顧客獲得)は、クローズ領 域(収益獲得)へ「顧客を運ぶための手段(Vehicle)」と定義し直す。 アクション: 事業機能ごとに異なるKPIを設定し、投資を正当化するロジックを構築。 アクション: ソリューション事業に単独黒字を求めず、「送客機能」として評価する。 「知財投資・活用戦略の有効な開示及びガバナンスに関する検討会」(第25回)資料等公開情報基づき作成 Copyright(C) Nomura Research Institute, Ltd. All rights reserved. 12 企業経営での実行ロードマップとガバナンス体制構築 知財の役割として、防衛(Close IPのみ)から、顧客ニーズを起点としたSolution含むコト事業(+Open IP)起点の知財トランスフォーメーションによる経営戦略モデル の実装を行う。 全社変革の展開プロセス Step 1:【戦略のインストール】 Step 2:【モデル事業の実行】 経営企画・知財主導による「全社OS」の定義 本社主導の「特区」チームによる先行実証 経営トップの決断:「顧客獲得事業(IP)」に対する戦略的社内投資源と定義 モデル事業選定:ターゲット市場向け戦略を第1号に指定 経営企画のアラインメント:「IPX経営戦略」モデルを全社フレームワーク化 「特区」チーム組成:経営トップ直轄、選抜メンバー構成 知財部門の役割変革: 防衛(Closeのみ)→顧客ニーズ(Solution含むコト事業)起点の知財による企業価値創造へ 非対称KPI適用:短期PL除外、「顧客獲得IP」のKPIのみで評 価 全社変革の肝 Step 3:【成功の「型」化】 CoE(Center of Excellence)の設立 Step 4:【全社への横展開】 CoEによる「事業部支援」プロセス 実行プロセスの「型(プレイブック)」化:知財経営プレイブック体系化 CoEによる伴走支援:社内コンサルタントとして機能 「知財経営CoE」設立:事業改革推進室として恒久的に機能 変革プロセス実行:プレイブックを活用して(1)収益獲得IPの再確認、(2)顧客獲得IPの設計、(3) 秘伝のたれIPの構築 全社展開のハブ機能を担う 本社の戦略的社内投資枠から予算提供 「知財投資・活用戦略の有効な開示及びガバナンスに関する検討会」(第25回)資料等公開情報基づき作成 Copyright(C) Nomura Research Institute, Ltd. All rights reserved. 13 経済効果見積:本モデル導入によるインパクト 営業利益率「5%の壁」突破とPBR改善、下請けからの脱却、日本全体として産業競争力復権とデジタル赤字解消することができる確実性の高い戦略的施策 大企業への効果: 「5%の壁」突破とPBR改善 営業利益率: 5% → 15%超 中小・スタートアップへの効果: 下請けからの脱却 ポジション: 「下請け」 →「パートナー」 日本全体への効果: 産業競争力復権とデジタル赤字解消 デジタル赤字: 年間5兆円 ↓縮小・解消 収益性改善のメカニズム: 「顧客獲得IP」による顧客獲得 「転換IP」によるロックイン 「秘伝のたれIP」と、IPの組み合わせ による差別化維持 主要なアプローチ: パラダイムシフト: 「秘伝のたれIP」と、IPの組み合わせ による差別化維持 価格交渉力向上 「モノづくり」 に加えて「価値づくり」 二桁利益率の確保 期待される効果: PBR改善: 1倍割れ→ 2-3倍 ベンチマーク企業: デジタルサービス、専門・経営コンサルティン グサービスなどデジタル収支の黒字化 Exit バリュエーション向上: キーエンス 50%超 顧客獲得の仕組み(顧客獲得IP)の可視化 「失われた30年」からの脱却 信越化学 30%超 東京エレクトロン 20%超 収益化ロジック(転換IP)の再現性評価 産業競争力の完全復権 「知財投資・活用戦略の有効な開示及びガバナンスに関する検討会」(第25回)資料等公開情報基づき作成 Copyright(C) Nomura Research Institute, Ltd. All rights reserved. 14 政策提言 IPX経営戦略の普及に向け、成功事例の標準化、戦略的赤字を支援する税制措置、非財務情報の開示推奨、既存評価によらず試行可能なサンドボックス制度設 立の4項目を政策提言します。 1. ベストプラクティス化 IPX経営戦略モデルとKPI管理手法を、産業界に広く普及・啓発 成功企業の事例を体系化し、標準的なフレームワークとして提供 2. イノベーションジレンマ解消の後押し 企業が「顧客獲得IP」事業(コト事業)に短期利益を求めず、戦略的社内投資(赤字容認)を行えるよう 例:「顧客獲得」事業の戦略的損失を法人税の損金算入で優遇する時限的な税制措置を検討 3. 知財ガバナンス・開示の指針改訂 「コーポレートガバナンス・コード」や「知財・無形資産のガバナンスガイドライン」において 「顧客獲得事業(IP)」のKPI(非財務情報)と「収益獲得事業(IP)」(財務情報)への貢献ロジック(価値創造ストーリー)を開示することを強く推奨 4. 戦略的IP経営サンドボックスの設立 IPX経営戦略モデル、KPI管理及び戦略的開示を、既存の会計基準や市場の評価を一時的に気にせずに試行できる「サンドボックス(規制の砂場)」制度を設立 参加企業は、投資家と対話しながら「顧客獲得IP」への戦略的社内投資を実践し、その成果を検証する場とする 「知財投資・活用戦略の有効な開示及びガバナンスに関する検討会」(第25回)資料等公開情報基づき作成 Copyright(C) Nomura Research Institute, Ltd. All rights reserved. 15 Q&A Copyright(C) Nomura Research Institute, Ltd. All rights reserved. 16 Q&A:価値創造ストーリーはどう変わる? Q IPX経営戦略モデルを導入することで、 投資家への「価値創造ストーリー」の説明はどう変わりますか? 技術的な優位性だけでは、将来の成長シナリオ(スケール)が伝わりにくいという課題がある。 A 「技術説明」から「持続的収益システム」への転換 IPの機能を再定義して、IPの排他権効力以外のIP(無形資産まで拡張)の機能を含めて、どのように顧客関係の構築するのか、どのように差別化を維持するのか、どのように収益性に繋がっているのか の価値創造ストーリーを提示する必要がある。 IPX経営戦略モデルのストーリー ビジネスモデル循環型 「技術力の高さ」ではなく、「どうやってキャッシュを生み続けるか」という仕組みを提示する。 顧客獲得IPの投資の結果、顧客獲得数(KPI)を示し、将来の収益源に対して繋げっている顧客の率(変換率)を示す。 収益事業については強固な特許網により、少なくとも、市場参入した際の対抗できている状況(ロイヤルティ免除額の経済効果) であることを示す(保守主義)。 顧客獲得IP 転換IP 収益獲得IP 顧客基盤・n数の最大化 収益事業への誘導 高収益化・利益率維持 短時間で納得感のある「成長の好循環」を可視化 「知財投資・活用戦略の有効な開示及びガバナンスに関する検討会」(第25回)資料等公開情報基づき作成 Copyright(C) Nomura Research Institute, Ltd. All rights reserved. 17 Q&A:撤退判断と撤退時の知財活用は? Q 事業撤退の判断基準と、その際の知財はどう扱うべきですか? 従来のPL(損益計算書)基準では、赤字事業は「お荷物」として撤退対象になりがち。 A 「送客能力」で再評価し、撤退時も資産価値を回収する オープン&クローズ戦略の多くは、意図的ではなく、創発的なものが多く、知財の流動化のタイミングはモノに加えてコトビジネスへ転換する契機となっていることが多い。 撤退判断のパラダイムシフト 従来のPL視点 撤退が決まった場合の知財活用 (事業撤退判断する前に知財の流動化でビジネス変革できないか検討する) 事業撤退=知財放棄ではない。以下の戦略的アクションで資産価値を回収・維持する。 「赤字」なら撤退 単体での利益創出のみを評価 ライセンス・売却(カーブアウト) 自社で事業継続不可でも、他社には価値がある場合、知財を切り出して収益化する。 IPX経営戦略モデル視点 「送客数」があれば継続 赤字は「必要なマーケティング費用」として解釈。 他事業への貢献(n数・データ)で評価する 。 「知財投資・活用戦略の有効な開示及びガバナンスに関する検討会」(第25回)資料等公開情報基づき作成 選択的オープン化 市場のエコシステムを開拓・維持するために、安価で技術・知財を提供・流動化。 自社の他事業(プラットフォーム等)への悪影響を防ぐ。 Copyright(C) Nomura Research Institute, Ltd. All rights reserved. 18 Q&A:ガバナンスはどう変える? Q IPX経営戦略モデルを導入する場合、 社内のガバナンス体制や評価制度をどのように変更すべきですか? ソリューション事業(顧客獲得)とコア事業(収益獲得)が別部門の場合、縦割り評価の弊害(イノベーションのジレンマ)が生じやすいため。 A 「事業部ごとの縦割りPL評価」からの脱却と権限委譲 顧客獲得を目的とした事業・IPを収益獲得を目的とした事業・IPと切り離して、それぞれ目的に合ったKPIを設定して、経営半名dんすることが、イノベーションジレンマ解消の本質的な対応となる。 IPX経営戦略モデルのガバナンス 本社主導のポートフォリオ評価 本社(コーポレート)がIPポートフォリオ全体のROIを評価・監督 投資判断権限を本社に集約し、事業部の短期的PL制約を解除 ソリューション事業 コア事業(収益) KPI: 送客数・n数 KPI: 利益率・シェア 利益は問わない 徹底的に稼ぐ 変革のポイント ソリューション部門の評価指標を「利益」から「将来の顧客獲得数(n数)」へ変更し、赤字でも全社貢献度が高ければ評価され る仕組みを構築する(事例:日産化学)。 「知財投資・活用戦略の有効な開示及びガバナンスに関する検討会」(第25回)資料等公開情報基づき作成 Copyright(C) Nomura Research Institute, Ltd. All rights reserved. 19 Q&A:知財の定義は拡張すべき? Q 経営戦略や投資家との対話において、 知財の定義は「特許などの法的権利」以外の無形資産まで拡張すべきでしょうか? 広義の無形資産まで含めると、管理の範囲が曖昧になる懸念がある。 A 「競争力の源泉となる無形資産全般」へ拡張すべき モノ事業(単独事業)に加えて、コトビジネス(ソリューション事業含む)を加えて、顧客提供価値を高めて、コモディティ化に対抗するため、IPの概念を拡張する必要がある。 IPX経営戦略モデルの定義(広義) ビジネスをスケールさせる「無形資産(Intangible Assets)」 IPX経営戦略モデルで扱う、以下の要素を統合管理してこそ競争優位が築ける。通称はIA(Intangible Assets)よりも、IPを維持し た方が認知されやすいと考える。 資産 1 資産 2 顧客獲得IP、転換IP(顧客との関係性) ブランド・信用 資産 3 資産 4 秘伝のたれIP(ノウハウ・暗黙知) 顧客データ・ログ これらはM&Aにおける「のれん」の構成要素 「知財投資・活用戦略の有効な開示及びガバナンスに関する検討会」(第25回)資料等公開情報基づき作成 経営企画・DX部門と連携 Copyright(C) Nomura Research Institute, Ltd. All rights reserved. 20 Q&A:企業内での役割と動き方は? Q 知財部だけではない活動だと思うが、 知財部門は企業内でどのような役割でどのように動くのがよいか? 経営企画や事業部との連携が不可欠であり、従来の「待ちの姿勢」では機能しない懸念がある。 A 「権利化の専門家」から「ビジネスモデル設計の参謀」へ 顧客獲得IPは、新規顧客のマーケティングしたうえで、顧客の課題を解決するコト(ソリューションを含む)に対して、技術・知財の開発と自社他社連携の判断等が鍵となる。 IPX時代の役割 ビジネスモデル設計の参謀 (アーキテクト) 経営企画・事業開発と一体となり、知財・無形資産の観点から「勝てる仕組み」を実装する。 1 事業開発プロジェクトへの参画 構想段階から「どこで稼ぎ(収益IP)、どこで 集めるか(顧客獲得IP)」という知財ミックスを 提案・設計する。 「知財投資・活用戦略の有効な開示及びガバナンスに関する検討会」(第25回)資料等公開情報基づき作成 2 3 経営企画部門内に 知財戦略機能を設置 無形資産の可視化・ 経営戦略への融合 営業(ニーズ)、R&D(シーズ)、経営企画 (投資)の間に入り、各活動をIPX経営戦略 モデルという共通言語で翻訳・接続する。 自社の見えない資産(データ・ノウハウ等) を棚卸しし、オープン知財の活用を事業・ 技術戦略に盛り込み、統合報告書等での 開示ストーリー作成を主導する。 Copyright(C) Nomura Research Institute, Ltd. All rights reserved. 21 Q&A:IPを明確に分けて実務対応できる? Q 一つの技術が複数の機能を持つこともあり、 IPを明確に分類して実務対応することは可能ですか? 「これは顧客獲得用、これは収益用」と1対1で完全に切り分けるのが難しいケースがあるのではないか。 A 完全分類は不要。「IPの機能ごとの活用意図(WILL)」の明確化が鍵 一手段で2、3つの機能を具備することもあるが、持続的収益性の高いビジネスモデルはそれぞれの機能を備えているかどうかの確認をしてビジネスへの影響を評価しておくことが重要となる。 IPXの実務対応 「戦略的意志」による決定プロセス 分類すること自体が重要ではなく、各IPの機能が事業ポートフォーリオとして機能を具備しているかの確認と、各IPの機能を意識し ての事業・技術戦略を策定して、各IPの機能を意識して、KPI管理、その機能を満たすIP活用を行うべきである。 ① IPの機能の確認 ② 方針決定 ③ 成果 「この事業技術で 稼ぐのか?顧客を集めるのか?」 オープン化 (集める) 権利化 (稼ぐ) 秘匿化 (守る) 各IPの機能をKPIで確認 投資対効果の最大化 実務では複数の機能を持つ場合も、「主たる戦略目的」を定義して扱う 「知財投資・活用戦略の有効な開示及びガバナンスに関する検討会」(第25回)資料等公開情報基づき作成 Copyright(C) Nomura Research Institute, Ltd. All rights reserved. 22 Q&A:オープン&クローズの課題対応は? Q 「オープン&クローズ戦略」において、オープン活動自体が目的化し、 収益に繋がらないという課題にどう対応しますか? ソリューション事業への単体黒字要求や、SEPの件数競争に陥り、全体戦略が機能不全になるケースが多く見られる。 A オープン領域は「送客装置(Vehicle)」と定義し直す 「オープン活動の出口」を常に「クローズ事業(収益IP)の収益」に接続することで、手段の目的化を防ぐ。但し、収益獲得IPがSEPの対象領域にならざるを得ないと想定される場合は競合等と差別化が 維持できる秘伝のたれIPが残存・維持できるかの確認をして、コモディティ化への影響を評価しておく必要がある。 従来の課題:手段の目的化 IPX経営戦略モデルの回答:出口管理の徹底 オープン領域とクローズ領域が分断され、それぞれで局所 最適化を図ってしまう。 オープン領域は、クローズ領域へ顧客を運ぶための「手段」 ソリューション事業 「単独で黒字化せよ」と要求 → 縮小・撤退・モノ売り回帰 オープン領域 SEP(標準必須特許) (ソリューション /SEP) 「件数を増やせ」と号令 → コスト増大・収益貢献不明 KPI: 送客数 (n数) 顧客・データを輸送 転換 (Conversion) KPI: 利益率・ LTV ソリューション対応 SEP対応 単体赤字でも「送客貢献度」が高ければ、必要なマーケティ ング投資として評価。 「知財投資・活用戦略の有効な開示及びガバナンスに関する検討会」(第25回)資料等公開情報基づき作成 クローズ領域 (コア製品/サービス) 件数ではなく、市場エコシステムの拡大と自社事業への「波 及効果」で評価。 Copyright(C) Nomura Research Institute, Ltd. All rights reserved. 23 Appendix 【全編】「IPトランスフォーメーション経営戦略(IPX経営戦略)モデル」 知財を無形資産まで含め“経営・ビジネス機能"として再定義し、 持続的収益性を実現する経営変革のフレームワーク Copyright(C) Nomura Research Institute, Ltd. All rights reserved. 24 はじめに:本報告の目的 コモディティ化からの脱却とIPの役割変化に対して、知財をイノベーションの源泉と捉える 対象 企業の 経営層 、 経営企画 、 事業企画 、 R&D企画、知財企画 目的 現代の主要産業の 勝者が実践する経営モデル を 「 IPトランスフォーメーション経営戦略(IPX経営戦略)モデル 」として解明 企業が 持続的収益性を生み出す「知財を活かした経営戦略」 を実現する上で必要なポイントを明確にする 背景:コモディティ化からの脱却とIPの役割変化 電機・機械・化学業界 をはじめとする多くの製造業で、 途上企業の台頭 により 「 モノ事業(単独事業) 」の コモディティ化 『シュンペーターは、イノベーションを促進するためには、 ある程度の“競争制限”/“非合理性”が必要不可欠。 独占禁止法に抵触するような極端なものである必要はなく、 戦略的な価格設定や事業提携、ブランド構築、特許取得 などが競争制限として機能する。また、イノベーション政策 の重要性を提示。』 が急速に進展 この環境下で 持続的収益を確保 するには、 従来の「 モノ売り 」に加えた「 コトビジネス(ソリューション提供含む) 」への転換が 不可欠 しかし、従来の知財戦略は「 排他的独占権による収益確保(Closed IP) 」に偏重しており、 収益性に優れ、競合他社等の事業を破壊に導く可能性を秘めた新たなビジネスモデル*に 対応できていない *他社を否応なくコモディティ化へと追い込む強力なビジネスモデル 「知財投資・活用戦略の有効な開示及びガバナンスに関する検討会」(第25回)資料等公開情報基づき作成 Copyright(C) Nomura Research Institute, Ltd. All rights reserved. 25 はじめに:投資家・経営者との「共通言語」としてのIPX経営戦略モデル コモディティ化からの脱却とIPの役割変化に対して、知財をイノベーションの源泉と捉える。 IPX経営戦略モデルは、技術・コンテンツを「価値創造ストーリー」へ転換し、投資家や経営者との共通言語にするフレームワーク。 知財機能の収益貢献を数値化し、経営企画と連携した全社的な取り組みとして事業創出を実現する。 「技術説明」から「価値創造ストーリー」への転換 IPX経営戦略モデルの本質 投資家は技術詳細ではなくビジネスの拡張性(スケール)を見ている。 IPXモデルは知財を「収益獲得」「顧客獲得」という機能で再定義し、競争優位性と成長シナリオを論理的に接続する。 多業界事業・技術戦略策定の実務を通じて抽象化した、 確実に収益を生み出す事業創出」を実現するための実践的 経営戦略フレームワーク。 対話を活性化させる「共通言語」と「数値化」 戦略策定実績のある主要な業界: 半導体 電池 医薬CDMO 化学 食品 エネルギ 電機・機械 自動車 「どの知財がどうキャッシュを生むか」を可視化。 プロ野球の打率のように議論可能なKPIとして、知財機能による「顧客獲得数(n数)」や「転換率(Conversion Rate)」を提示し、投資家とのギャップを埋める。 ※コンテンツIPその他の業界での 適用有効性検討はAppendix参照 部門横断的な「全社的アジェンダ」への昇華 「技術・ブランド」を「ビジネス機能」へ。 知財部門だけでなく、経営企画と連携して主導すべき全 社的アジェンダ。 知財部門単独ではなく、経営企画部門(CTO、CSO窓)との連携で、マーケティング機能が一体となる。 「無形資産の時価総額割合を高める」ための具体的かつ戦略的なアクションプランを提供する。 (ほとんどの企業で現状できていない、事業ポートフォーリオ評価、事業開 発・技術戦略策定などの経営戦略で知財機能の盛り込みを行う) 「知財投資・活用戦略の有効な開示及びガバナンスに関する検討会」(第25回)資料等公開情報基づき作成 Copyright(C) Nomura Research Institute, Ltd. All rights reserved. 26 モノに加えてコトへのパラダイムシフト(モノ“から”コトへの転換ではなく、“加えて”) 高速コモディティ化と知財開放による市場破壊が進む今、持続的成長には、モノを起点にコトを融合させ、エコシステム型モデルへのパラダイムシフトが不可欠である。 超高速コモディティ化とオープン知財戦略による市場破壊が進み(電機機械業界は2000年前後、化学業界は最近、自動車業界は今後直近)、モノ単独事業での収 益性維持が困難に。モノを起点にしてマーケティングによるコトビジネスを加えてエコシステム化が持続的成長の必須条件となっている。 コモディティ化の超高速化 新興国の台頭(補助金利用して過剰供給も影響)とモ ジュラー化により、製造ノウハウが汎用化。 機能的差別化の寿命が極端に短縮し、コスト競争が激 化し、モノ以外の顧客価値提供がないとコモディティ 化に耐えれない。 オープン知財の破壊力(知財と経営の融合) 競合やビックテック等の「オープン知財戦略」は、技 術や特許を無料・安価に開放・提供し参入障壁を破壊 することで市場を急速にコモディティ化させる戦略的 効果がある。 単独事業では差別化が困難となり激しい価格競争が発 生し、既存企業は短期間で市場シェアと収益モデルを 失う致命的な脅威である。 例:テスラのFSD 「知財投資・活用戦略の有効な開示及びガバナンスに関する検討会」(第25回)資料等公開情報基づき作成 モノ事業単独の限界 「売り切り型」モデルの崩壊。 製品を梃子にソリューションを組み合わせ、顧客獲得 機会を広げて事業拡大とロックインを図るモデルへの 転換が必要となっている。 国内市場やケイレツだけでは収益確保が困難なため、 顧客接点を新規・ケイレツ外をも巻き込むエコシステ ム構築が不可欠となっている。 例:NVIDIAのCUDA Copyright(C) Nomura Research Institute, Ltd. All rights reserved. 27 知財の目的化からの脱却: 過去と現状の課題 知財の定義を「顧客獲得機能」や「収益転換機能」など、より広く無形資産まで含む「ビジネス機能」として捉え直す。 過去: 出願件数主義 かつての日本企業は、モノ事業の強みから排他的効力の完全を期する視点から、「特 許出願件数」を偏重して競う傾向があった。モノ事業に集中した知財を創ること自体 が目的化していた。 過去: 件数主義 現状: 活用の出口が既存防衛に偏重 現状: 防衛偏重 現在は「経営への活用」へ意識はシフトしているが、知財の活用の出口が「自社 のモノ(コア製品)を守る」こと、排他権としての知財の活用に終始している。 知財が狭義の知財、特許権等の知財権だけに閉じた意味で理解されることが多 い。 現在: ビジネス機能としての知財 未来: 機能的再定義 知財の定義を「顧客獲得機能」や「収益への転換機能」など、無形資産まで含む 「ビジネス機能」として捉え直すことが、経営戦略や持続的収益性を高める上で 極めて重要となっている。 「知財投資・活用戦略の有効な開示及びガバナンスに関する検討会」(第25回)資料等公開情報基づき作成 Copyright(C) Nomura Research Institute, Ltd. All rights reserved. 28 IPトランスフォーメーション(IPX)経営戦略モデルの採用 モノ単独(単独事業)では利益率を守れない。価値の源泉となる知財を再設計すべきである。 技術差の収束 購買判断の変化 知財機能の変化 途上企業の技術キャッチア ップにより、製品の差別化 要因が薄れ、価格下落と利 益圧縮が進行 顧客の購買判断が製品ス ペックから、体験価値・総 所有コスト・スイッチングコ ストへ移行 コモディティ化の進展で、 顧客購買判断が製品自 身ではない顧客の課題解 決や体験価値など知財か ら創出され多様な価値へ シフト ① 知財の機能的再定義 顧客獲得IP ② 経営・事業・知財の三位一体設計 収益への転換IP(Vehicle) 収益獲得IP ③ KPI連動で投資判断を透明化 秘伝のたれIP(ブラックボックス) ブランドIP(信頼) 「知財投資・活用戦略の有効な開示及びガバナンスに関する検討会」(第25回)資料等公開情報基づき作成 Copyright(C) Nomura Research Institute, Ltd. All rights reserved. 29 IPX経営戦略モデル導入の効果 知財を「ビジネス機能」として再定義し、顧客獲得から収益化までのバリューチェーン全体を統合設計することが競争優位の鍵となる。 IPXの基本フロー 顧客獲得IP → 収益への 転換IP (Vehicle) → 収益獲得IP 顧客獲得IP: 無料・廉価で顧客のn数を最大化 収益への転換IP(Vehicle): 顧客を収益事業へスムーズに誘導 収益獲得IP: 高マージンのコア事業で収益を確保 秘伝のたれIP模倣・流出 防止で持続性を確保 ブランドIP世界観統一で 信頼を強化 持続性を支える機能 秘伝のたれIP: 模倣・流出防止で技術格差を維持 ブランドIP: 世界観統一で信頼と選好を強化 「知財投資・活用戦略の有効な開示及びガバナンスに関する検討会」(第25回)資料等公開情報基づき作成 投資配分とガバナンスの一元管理 Copyright(C) Nomura Research Institute, Ltd. All rights reserved. 30 IPX経営戦略モデルの全体像 「収益獲得IP」と「顧客獲得IP」を分離し、事業を複合化することで、非対称的優位性(事業破壊力)を生み出す。 収益獲得IP 差別化 コア事業の 収益源 ブランドIP 全IPの基盤 企業の 信頼力 収益獲得:中核事業の収益源 顧客獲得:顧客接点を創出 秘伝のたれ:コア技術を防衛 収益への転換:顧客を収益化へ導く(Vehicle) 秘伝のたれIP 収益持続力 コア技術の 秘匿 収益転換IP 顧客獲得効率 顧客を収益へ 誘導 顧客獲得IP 市場シェア獲得力 顧客接点の 創出 『 IPX経営戦略モデルは、 自社で採用しなければ事業破壊を起こされ、 他社に仕掛ければ市場席巻できる 』 ブランド:信頼力で全体を加速(基盤) 「知財投資・活用戦略の有効な開示及びガバナンスに関する検討会」(第25回)資料等公開情報基づき作成 Copyright(C) Nomura Research Institute, Ltd. All rights reserved. 31 IPXモデル概要:4つのIP機能マップ 市場破壊が進む今、IP機能を「収益獲得」と「顧客獲得」に分け、オープン・クローズ戦略を使い分ける必要がある。モノとコトを融合し、各機能が連携して顧客をロックインするビ ジネスモデルへの転換が持続的成長の鍵となる。 IP機能をビジネス目的(顧客・収益)と知財戦略(オープン&クローズ)の2軸で整理。 一手段で複数機能を具備することもあるが、持続的成長には、ビジネスモデル内に各機能が漏れなく備わっているかの確認が重要である。 PROFIT (収益獲 得・利益) 超高速コモディティ化と知財オープ ン化による市場破壊モデルが登場て いる今、 モノだけでは持続的な収益確保が難 しくなり、モノを起点に、マーケティン グでコトを加えて顧客を高めること が、 持続的成長の必須条件となってい る。 ① 収益獲得IP (モノ中心) コア事業全般 CORE / CLOSE 高収益を生み出すコア事業(製品・サービス)を守り、利益率を維持するための知 財群。意匠やコンテンツIPも含む。 ③ 転換IP Nestlé事例 実務:徹底的な権利化、他社排除 BRIDGE 獲得した顧客を「収益獲得IP」へ誘導・定着させ るための仕掛け。スイッチングコストの源泉。 KEY PERFORMANCE INDICATOR KEY PERFORMANCE INDICATOR ロイヤルティ免除額(奨励)。差止訴訟等独占が確定時に経済効果 営業利益率、市場シェア維持率 転換率 (CVR) ② 顧客獲得IP (モノ+コト) ENTRY / OPEN ソリューションビジネス全般 顧客の課題解決やデータ基盤を提供し、将来の収益源となる顧客数(n数)を最大 化する。 ④ 秘伝のたれIP 装置リース/SDK/EaaS事例 (p. 63,64等参照) DEFENSE / HIDDEN コア技術・知財(収益獲得IP)に加えて、顧客獲得IP(ソリューションIP含む)に対し て、技術の流出を防ぎ、他社への乗り換え防止と市場のコモディティ化抑制を担う 実務:マーケティング、R&D戦略策定、他社連携判断、標準化、オープン化、価格戦略 実務:ブラックボックス化、ノウハウ管理 KEY PERFORMANCE INDICATOR KEY PERFORMANCE INDICATOR マーケティング (顧客獲得・N数) 獲得顧客数 (n数)、CPA(顧客獲得単価) ※短期的な利益で評価しない OPEN STRATEGY(提供・標準化) 「知財投資・活用戦略の有効な開示及びガバナンスに関する検討会」(第25回)資料等公開情報基づき作成 LTV、解約率、スイッチングコスト(コモディティ化回避、ロックイン) CLOSED STRATEGY(独占・秘匿) Copyright(C) Nomura Research Institute, Ltd. All rights reserved. 32 機能別戦略と役割分担の対比 知財を「収益獲得」と「顧客獲得」の機能別に分け、目的とKPIを明確に区別して運用すべきだ。オープン戦略で市場を広げ、クローズ戦略で利益を守る。 この両輪を経営企画と連携し統合管理する体制構築が重要となる。 「収益獲得IP」と「顧客獲得IP」は、目的・戦略・評価指標が根本的に異なるため、経営企画との連携による明確な役割分担と専門性の統合が必要となる。 知財経営の実現されていない主要な要因は、経営・マーケティングと知財機能が融合できていないからで、企業内で経営企画との連携が重要である。 収益獲得事業(コア事業;モノ中心) 位置づけ 目的 知財戦略 活用の狙い 評価指標 戦略を扱うのに 必要な知見 ・支援者 バックエンド(本丸) 顧客獲得事業(ソリューション;コト) フロントエンド(入口) 獲得した顧客を離さず、高収益を上げる。 市場へのアクセスを容易にし、面を広げる。 収益獲得 (Profit) 顧客獲得 (Marketing) キャッシュカウ・利益の源泉。 呼び水・認知拡大・KBFの掌握。 【クローズ戦略】(独占・秘匿) 特許網やノウハウ秘匿で守り、模倣を防ぐ。 従来の知財戦略に 無形資産の扱いを取り込む 【オープン戦略】(提供・秘匿) 独占せず、標準化や無償提供等で利用促進。 排除 (MOATの堅持) 仲間作り (エコシステム形成) 他社の侵入を防ぐ排他権として機能。 提携・連携により、自社陣営を増やす。 営業利益率、シェア維持率 獲得顧客数(n数)、CPA ※短期的な収益性を厳しく評価。 ※利益ではなく「送客数」や「コスト」で評価。 法的・技術的専門性(権利化・クリアランスが中心) 経営・マーケティングの視点と、ガバナンス体制構築 大企業知財経験者、弁理士 経営企画経験者、戦略コンサル、中小企業診断士 「知財投資・活用戦略の有効な開示及びガバナンスに関する検討会」(第25回)資料等公開情報基づき作成 Copyright(C) Nomura Research Institute, Ltd. All rights reserved. 33 IP機能分類と価値創造ストーリー(IIRC) 「収益獲得IP」と「顧客獲得IP」を分離し、事業を複合化させて、顧客獲得を“意図的に利益度外視”し、収益への転換で回収する非対称モデルが事業で勝つ。 IP分類 定義・機能 代表的KPI 価値創造ストーリー(IIRC) における位置づけ 売上高、営業利益、 ロイヤルティ免除額(中長期)、 知財収支(短期) 【知的資本 →財務資本(アウトカム)】 最終的な成果物。次なる投資の原資 顧客獲得数、市場シェア 【知的資本 →社会・関係資本(インプット/活動)】財務資本を投下し構築する顧客基盤 Closed コア事業の収益源。 排他権によりキャッシュフローを生み出す中核製品・サービス Open 顧客接点の創出。 利益度外視で提供し、顧客を引き寄せるフロントエンド コンサル収入、技術営業収入 Defense コア技術の秘匿。 模倣を防ぎ、競争優位を持続させるブラックボックス(原則非開示) 秘匿期間、 競合等に対する技術優位性維持年数 【知的資本】 競争力の源泉。他社との差別化を担保 収益への転換IP Vehicle 顧客を「顧客獲得事業」から「収益獲得事業」へと誘導・定着させる仕組み LTV、クロスセル率、転換率 【知的資本 →収益への転換(メカニズム)】 ブランドIP Trust 企業の信用力。 全ての活動(集客・収益化)の効率を高める増幅器 認知度、 価格プレミアム率 【知的資本(全体基盤)】 SEP 標準 業界標準規格。 ビジネスモデルにより「収益獲得」にも「顧客獲得」にもなり得る ライセンス収入、エコシステム規模 戦略に応じて「財務資本の獲得」または「社会・関係資本の構築」に機能 収益獲得IP 顧客獲得IP *1 秘伝のたれIP *2 更に、社会・関係資本を財務資本へ変換 ステークホルダーからの信頼という基盤資産 *1:IBMは、‘94年(コトビジネスに転換するタイミング)以降、顧客獲得IPのKPIを開示。 *2:収益事業(ソフト等)の収益の80%は顧客獲得IPから起因すると転換率を開示している。 「知財投資・活用戦略の有効な開示及びガバナンスに関する検討会」(第25回)資料等公開情報基づき作成 Copyright(C) Nomura Research Institute, Ltd. All rights reserved. 34 各IP機能の詳細①:収益獲得IP(Closed) IPX経営戦略モデルの稼ぐ力であるため、他社の利益度外視した事業(顧客獲得事業)で仕掛けられても、顧客がその他社を選択しないほどの圧倒的な差別化ができている。 概念 企業の キャッシュフロー(利益) を直接生み出す、 中核的な事業・製品・サービス 本モデルにおける「 稼ぐ力 」の源泉 厳密な成立条件 市場参入他者(競合だけではない)が「 顧客獲得IP 」として利益度外視のソリューションを仕掛けてきた場合でも、 顧客がその他社を 選択しない ほどの、 圧倒的なコア技術による差別化 や 顧客ロックイン が実現できていること 具体例 信越化学:先端シリコンウェハ 武田薬品:エンティビオ キーエンス :高マージンセンサー 主要KPI 売上高、 営業利益率 自己支払ロイヤルティ免除額 (保守主義の下、最小限の経済効果を試算) 知財収支(実現主義:実際に発生した確定額のみ) 独占による経済価値 (医薬品や差止請求が認められた場合のみ開示) 「知財投資・活用戦略の有効な開示及びガバナンスに関する検討会」(第25回)資料等公開情報基づき作成 Copyright(C) Nomura Research Institute, Ltd. All rights reserved. 35 各IP機能の詳細②:顧客獲得IP(Open) モノ事業(収益事業)以外に顧客のニーズを捉えた知財を開発して利益度外視して提供することで、効率的に顧客関係性・エコシステムを構築する。 概念 利益度外視(あるいは赤字)であっても、 顧客との接点を創出 し、 将来の「 収益獲得事業 」に繋げるための「 フロントエンド 」 ソリューションIPだけでなく、 広く、顧客の困りごとを解消する知財 を含む 好条件 顧客(相手企業)の組織的ケイパビリティ その顧客獲得IP(ソリューションIP含む)が、 と 大きなギャップ(技術格差) を持っており、 顧客が自社開発できず M&A等他社連携に頼らざるを得ないレベル であること 具体例 ネスレ :「 ネスカフェマシン(安価提供) 」 メルク :「Athinia(データ基盤) 」 キーエンス :「 コンサルティング 」 コンビニ :「 ATM 」 主要KPI 顧客獲得数 市場シェア拡大率 Custom Development Income 「知財投資・活用戦略の有効な開示及びガバナンスに関する検討会」(第25回)資料等公開情報基づき作成 Copyright(C) Nomura Research Institute, Ltd. All rights reserved. 36 各IP機能の詳細③:秘伝のたれIP(Defense) 競合・顧客との技術格差を維持することにより、収益を確保できる期間の持続性を確保する。 概念 他社に模倣されると競争優位を失う、本質的なノウハウや技術 知財権による法的な排他権に加えて、公開せず、ブラックボックス化(秘匿化)によって守る戦略的IP 関係他社(例:装置メーカー)からの流出防止策も含む 類型A:収益獲得IPを守る秘伝のたれ 類型B:顧客獲得IPを守る秘伝のたれ 製品自体の差別化要因を隠す ソリューションの裏側を隠す 例:ダイキンのインバーター制御技術、コカ・コーラの原液レシピ 特にEaaSやリースのように所有権を移転しない形態が有効 例:航空機エンジンの予知保全アルゴリズム、EaaS提供機器の制御ロジック 主要KPI LTV(顧客生涯価値):顧客から得られる総収益 競合等に対する技術優位性維持年数 顧客定着率:継続利用の維持率 コア技術の秘匿期間 (※原則非開示。但し定性的開示のみ) Copyright(C) Nomura Research Institute, Ltd. All rights reserved. 37 各IP機能の詳細④:収益への転換IP(Vehicle) 「顧客獲得IP」で獲得した顧客を、効率的かつ確実に「収益獲得IP」の購入・利用に繋げるための「導線」。 概念 「顧客獲得IP」で顧客を確保するだけでは収益に繋がらないので、効率的かつ確実に「収益獲得IP」の購入・利用に繋げるための「導線」としての仕組 みやノウハウが必要となる。顧客を収益獲得事業へ繋ぐVehicle機能と呼ばれることがある。 成功例:ネスレ 失敗例:低利益率企業の多く マシン(顧客獲得IP)安価提供だが、 ソリューション(顧客獲得IP)を提供するが、 専用カプセルしか入らない技術的ロックイン(秘伝のたれIP)を併用 「なぜ自社製品(収益獲得IP)を買わなければならないか」という 定期便によるビジネス導線(転換IP)を確立 必然性(転換IP)が設計されていない 結果:高収益化を実現 結果:感謝されるが利益は他社に流出し、収益期間縮小、事業撤退に 主要KPI リード転換率 クロスセル率・アップセル率:追加購入の促進効率 「知財投資・活用戦略の有効な開示及びガバナンスに関する検討会」(第25回)資料等公開情報基づき作成 Copyright(C) Nomura Research Institute, Ltd. All rights reserved. 38 各IP機能の詳細⑤:ブランドIP / SEP ブランドは5つのIP機能の底上げ力として機能する。また、SEPは、顧客獲得IP(事業)の標準化として機能させるべきであり、秘伝のたれIPの組み込みが必須である。 ブランドIP 概念:企業の信頼・品質・世界観を示す無形資産 全ての活動(集客・収益化)の効率を高める増幅器 SEP(Standard Essential Patent) A)「収益獲得IP」としてのSEP ライセンス収入モデル、または防衛機能(対抗カード) 秘伝のたれIPの組み合わせが必要となる B)「顧客獲得IP」としてのSEP エコシステム構築のためにオープン化。他社SEPライセンス支払コストは、将来の「収益獲得IP」 のための「戦略的社内投資」として管理 秘伝のたれIPの組み合わせが必要となる C) 戦略的ピボット ロイヤルティ免除法による試算で支払いが過大となる場合、別の技術領域へ事業戦略を転換し、 自社が主導権を持てる新たなエコシステムを創出 主要KPI 主要KPI ブランド認知度、価格プレミアム率 ライセンス収入、クロスライセンスによるロイヤルティ支払免除額 「知財投資・活用戦略の有効な開示及びガバナンスに関する検討会」(第25回)資料等公開情報基づき作成 Copyright(C) Nomura Research Institute, Ltd. All rights reserved. 39 戦略的KPI開示と価値創造ストーリー 将来の収益事業での収益性へ転換される知財の機能とそのKPIを開示することで、投資家は、企業の価値創造の源泉とそのストーリを理解することができる。 IPX経営戦略モデルと開示方針 価値創造プロセス(IIRCフレームワーク) A. 資本インプット・B. 資本転換プロセス(ビジネスモデル) 投資家へのメッセージ: 「未来の成長性(顧客獲得IP)」×「現在の収益持続性(収益獲得IP)」を 「顧客への繋がり効率・論理性(転換IP)」と「信頼性(ブランドIP)」で補強説明し、 「秘伝のたれIP」は語らず守る(競争優位の源泉として戦略的に秘匿) 社会・関係資本 財務資本 Social & Relationship Financial Capital IPX5機能への戦略的投資。 収益獲得IP・顧客獲得IPの 開発に財務資本を投下 顧客獲得IPによる顧客基盤構 築。n数・CAC・シェアで測定 される顧客母集団 転換IPを通じた収益化。 収益獲得事業によるキャッ シュフロー創出 カテゴリ IP定義 将来の収 益事業の 成長性 顧客獲得IP (Open IP) 獲得顧客数(n数)、リード獲得コスト(CPA) 未来の収益獲得事業への顧客獲得 持続的収益性 収益獲得IP (Closed IP) ロイヤルティ免除額(奨励)。差止訴訟等独占が 確定時に経済効果 営業利益率、市場シェア維持率 A. 必須開示 「収益事業」の短期的な赤字は「失敗」ではなく、将来の価値創造のための「戦略 的社内投資」 収益へ の転換 論理性 収益転換IP 転換率(Conversion Rate) B. 推奨開示 B. ガバナンス(プロセスの監督) 信頼性 ブランドIP 顧客からの信頼、企業ブランド B. 推奨開示 秘伝のたれIP LTV、解約率、スイッチングコスト (コモディティ化回避、ロックイン) C. 原則非開示 但し定性的開示 競争優位 維持性 内容(例) 知的資本 Intellectual Capital 開示レベル A. 必須開示 「知財投資・活用戦略の有効な開示及びガバナンスに関する検討会」(第25回)資料等公開情報基づき作成 重要な位置づけ: 取締役会の役割: 「価値創造ストーリー(IPX経営戦略モデル)」の論理性を深く理解し、その実行を監督 戦略の分離: 「顧客獲得事業(IPオープン化等)」と「収益獲得事業(IP囲い込み等)」等、相反する経営判断 を分離・管理 Copyright(C) Nomura Research Institute, Ltd. All rights reserved. 40 好事例:① IBM — IPXモデルの原点 ソリューションビジネスに転換する契機の1994年タイミングから、顧客獲得IP,収益転換IP、収益獲得IPの機能とKPIを開示している企業例。 顧客獲得IP 顧客獲得IP:コンサルティング/CDI • 顧客の課題を解決するコンサルティングや受託開発を、単なる収益事業ではなく 「顧客を獲得するためのIP」として明確に定義 収益連動:約80%がコンサル経由 • コア事業(ソフトウェア/インフラ)の売上の約80%は、顧客獲得事業(コンサル ↓ ティング)経由で生まれている • 転換率(Conversion Rate)を投資家向けに公開し、戦略の正当性を証明 戦術とKPI • 競合と比較して意図的に低マージンを設定し、n数(顧客獲得数)を最大化 • 社内KPIを「利益」ではなく「CDI(コンサル売上)」に設定し、イノベーションのジレ 約80% 収益獲得IP 転換率をKPIとして投資家に開示 ンマを解消 「知財投資・活用戦略の有効な開示及びガバナンスに関する検討会」(第25回)資料等公開情報基づき作成 Copyright(C) Nomura Research Institute, Ltd. All rights reserved. 41 好事例:② キーエンス — コンサルティング営業 経営に顧客獲得IPと転換IPを活用することで、世界最高水準の営業利益率を実現している企業例。 STEP 1 技術営業(コンサルティング) 顧客獲得IP: 技術営業のコンサル力顧客の潜在的な課題を発見・解決 する営業担当者の能力を、データベース化し組織の知財として蓄積・活 用 ↓ STEP 2 データ化・組織知化 効果: 確実な製品導入誘導潜在課題の可視化により、顧客を自社製品 (収益獲得事業)へと確実に導く高度な転換メカニズム ↓ KPI設計訪問→案件化率、案件→受注率、粗利率を厳密に管理し、 コンサルティング営業の効果を定量化 STEP 3 製品導入(収益獲得) 結果: 世界最高水準の営業利益率顧客獲得IPと収益獲得IPの戦略的 連動により、持続的な高収益を実現 「知財投資・活用戦略の有効な開示及びガバナンスに関する検討会」(第25回)資料等公開情報基づき作成 Copyright(C) Nomura Research Institute, Ltd. All rights reserved. 42 好事例: ③ネスレ/④日産化学 ネスレは顧客獲得IPで獲得した顧客を収益へ転換するIPを活かした企業例。日産化学は顧客獲得IPのKPI管理(イノベーションのジレンマの対応)をうまく行っている企業例。 ネスレ 特徴 日産化学 特徴 マシン普及で顧客獲得 本社が顧客獲得投資を統括 専用カプセルで収益へ転換 事業部P/Lの短期制約を解除 特許/意匠で互換品を阻止 中長期KPIで投資判断 主要KPI 主要KPI • アクティブマシン台数 • 将来顧客KPI(n数、CAC) • カプセル継続購入率 • ROIC(既存事業効率) • 互換品参入阻止率 • 二階建て運用で両立 「知財投資・活用戦略の有効な開示及びガバナンスに関する検討会」(第25回)資料等公開情報基づき作成 Copyright(C) Nomura Research Institute, Ltd. All rights reserved. 43 戦略的優位性:モノ事業 vs モノ+コト(分離) IPX経営戦略モデルは、企業価値向上と競合等の模倣困難性と、競合等から一気に市場シェアを奪う事業破壊力、更に逆に創造的事業破壊の耐性も備えるこtができる。 モノ(単独) コモディティ化の波に晒され価格競争へ 製造業では途上企業の台頭により、技術差別化が薄れ、価格主導の競争に陥る 差別化持続が困難 価格競争に参加せざるを得ず、利益率を維持できない構造 モノ+コト(分離) ① 脱価格競争 顧客獲得IPという独自の付加価値を組み合わせることで、価格以外の価値で競 争可能 ②模倣困難性 収益獲得IPは模倣され技術格差を知締められても、その裏にある秘伝のたれIPや 転換IPで技術格差を維持できれば、顧客ロックインが維持される 例:NVIDIA ③ 事業破壊力(強制的にコモディティ化を強いられる) 競合が利益を出さなければならない市場で、自社が利益度外視の顧客獲得IPを 投入することで、圧倒的な競争優位を確立 競合分析の観点 競合にない収益獲得事業・IPを持っている場合、競合の収益獲得事業と競合す る事業を顧客獲得IP化させることで、市場シェアを一気に奪える(事業破壊を仕 掛けられる) 逆のリスクも要チェック:競合が自社の収益事業と競合する事業に加えて別の収 益獲得事業を持つ場合、前者を顧客獲得IP化されることで、市場が一気に奪わ れる(事業破壊される)可能性がないか要チェックすべきである 「知財投資・活用戦略の有効な開示及びガバナンスに関する検討会」(第25回)資料等公開情報基づき作成 Copyright(C) Nomura Research Institute, Ltd. All rights reserved. 44 構造的課題:日本企業のイノベーションのジレンマ 日本企業は顧客獲得事業(ソリューションビジネス含む)のKPIとして利益を求め、利益度外視して顧客獲得事業(IP)を提供してくる欧米勢に対抗できず、顧客を奪われている。 顧客獲得事業(IP)に対して利益を求めて経営投資判断を行ってしまい、顧客獲得事業(IP)の立ち上げ、持続的収益性を確保するビジネスモデルに転換できていない。 問題:モノ事業の成功体験がジャマをする(強い事業の慣性) 「 モノ事業 」の 成功体験 (過去の慣性)により、 「 顧客獲得IP(ソリューション事業等)」に対しても 「 事業単体での短期的な黒字化 」を要求してしまう 結果:利益度外視して顧客獲得事業(IP)を提供してくる欧米勢に対抗できず、顧客を奪われ る 顧客獲得IPを割り切って展開してくる欧米企業に対して 中途半端な価格設定 となり、 勝てず 敗北のサイクル:コト事業試行儲からずモノ事業へ戻るを繰り返す 1.顧客獲得IPに期待するが、 2.短期的黒字化を要求(欧米企業は利益度外視) 3.顧客獲得できず(収益事業へ収益転換もできず) 4.事業失敗 として 撤退 → 5.また、モノ事業(単独事業)に戻る → → 「知財投資・活用戦略の有効な開示及びガバナンスに関する検討会」(第25回)資料等公開情報基づき作成 Copyright(C) Nomura Research Institute, Ltd. All rights reserved. 45 イノベーションの類型と日本企業が直面するジレンマの正体 イノベーションを「事業破壊を招く事業改革」と定義した場合、その類型によって企業が直面する「ジレンマ」の質と、その解消策は大きく異なる。 日本企業が苦しんでいるのは、特に「バリューチェーン上のイノベーション(タイプ2)」におけるガバナンス不全である。 1 イノベーションの2つの類型 類型 定義・特徴 タイプ1: ラディカルな技術革新 単一事業間での置換。 技術の非連続な進化により、既存製品が不要になる破壊的変化。 タイプ2: バリューチェーン上の構造改革 ※ 注 事例 同じバリューチェーン上での事業構造の変化。 単一事業であったものが「分離」または「結合」し、新たな付加価値を生む。 発生頻度 ガラケー → スマホ フィルム → デジタル 2-1 結合型(モノ+コト):モノにソリューションを付加。 2-2 分離型(アンバンドル): 設計と製造の分離、製造のアウトソーシング。 低い 高い 90年代後半の敗北:欧米企業は「タイプ2-2(分離型)」を実行し、製造をアジアへアウトソーシングして事業効率化を図った。一方、垂直統合に固執した日本企業は、この構造改 革により一気に市場を奪われた。 2 ジレンマ解消施策の違い 類型 ジレンマ解消のアプローチ 備考 タイプ1 (ラディカル) 「出島」「別会社化」 事業間の繋がりを断ち切る方が良いため、組織的分離が比較的容易。 タイプ2 (バリューチェーン型) 既存事業と物理的に切り離し、カニバリゼーションを恐れず破壊を実行させる。 「社内でのKPI分離・高度なガバナンス」 別会社化(完全分離)は困難。同一企業内で、異なるKPIを持つ事業を共存させる必要があ る。 「知財投資・活用戦略の有効な開示及びガバナンスに関する検討会」(第25回)資料等公開情報基づき作成 日本企業の最大の弱点 「顧客獲得IP(投資)」と「収益獲得IP(利益)」が繋がっているため、両方に短期利益を求めてしまう。 Copyright(C) Nomura Research Institute, Ltd. All rights reserved. 46 経済効果見積:本モデル導入によるインパクト 営業利益率「5%の壁」突破とPBR改善、下請けからの脱却、日本全体として産業競争力復権とデジタル赤字解消することができる確実性の高い戦略的施策である。 大企業への効果: 「5%の壁」突破とPBR改善 営業利益率: 5% → 15%超 中小・スタートアップへの効果: 下請けからの脱却 ポジション: 「下請け」 →「パートナー」 日本全体への効果: 産業競争力復権とデジタル赤字解消 デジタル赤字: 年間5兆円 ↓縮小・解消 収益性改善のメカニズム: 「顧客獲得IP」による顧客獲得 「転換IP」によるロックイン 「秘伝のたれIP」と、IPの組み合わせ による差別化維持 主要なアプローチ: パラダイムシフト: 「秘伝のたれIP」と、IPの組み合わせ による差別化維持 価格交渉力向上 「モノづくり」 に加えて「価値づくり」 二桁利益率の確保 期待される効果: PBR改善: 1倍割れ→ 2-3倍 ベンチマーク企業: デジタルサービス、専門・経営コンサルティン グサービスなどデジタル収支の黒字化 Exit バリュエーション向上: キーエンス 50%超 顧客獲得の仕組み(顧客獲得IP)の可視化 「失われた30年」からの脱却 信越化学 30%超 東京エレクトロン 20%超 収益化ロジック(転換IP)の再現性評価 産業競争力の完全復権 「知財投資・活用戦略の有効な開示及びガバナンスに関する検討会」(第25回)資料等公開情報基づき作成 Copyright(C) Nomura Research Institute, Ltd. All rights reserved. 47 企業経営への提言:実行ロードマップとガバナンス体制構築 知財の役割として、防衛(Close IPのみ)から、顧客ニーズを起点としたSolution含むコト事業(+Open IP)起点のIPXによる経営戦略モデルの実装を行う。 全社変革の展開プロセス Step 1:【戦略のインストール】 Step 2:【モデル事業の実行】 経営企画・知財主導による「全社OS」の定義 本社主導の「特区」チームによる先行実証 経営トップの決断:「顧客獲得事業(IP)」に対する戦略的社内投資源と定義 モデル事業選定:ターゲット市場向け戦略を第1号に指定 経営企画のアラインメント:「IPX経営戦略」モデルを全社フレームワーク化 「特区」チーム組成:経営トップ直轄、選抜メンバー構成 知財部門の役割変革: 防衛(Closeのみ)→顧客ニーズ(Solution含むコト事業)起点の知財による企業価値創造へ 非対称KPI適用:短期PL除外、「顧客獲得IP」のKPIのみで評 価 全社変革の肝 Step 3:【成功の「型」化】 CoE(Center of Excellence)の設立 Step 4:【全社への横展開】 CoEによる「事業部支援」プロセス 実行プロセスの「型(プレイブック)」化:知財経営プレイブック体系化 CoEによる伴走支援:社内コンサルタントとして機能 「知財経営CoE」設立:事業改革推進室として恒久的に機能 変革プロセス実行:プレイブックを活用して(1)収益獲得IPの再確認、(2)顧客獲得IPの設計、(3) 秘伝のたれIPの構築 全社展開のハブ機能を担う 本社の戦略的社内投資枠から予算提供 「知財投資・活用戦略の有効な開示及びガバナンスに関する検討会」(第25回)資料等公開情報基づき作成 Copyright(C) Nomura Research Institute, Ltd. All rights reserved. 48 企業経営への提言:実現の3ステップ① ガバナンス改革 顧客獲得IPと収益獲得IPで異なる評価軸を設定し、取締役会が単年度P/Lだけでなく、非財務資本から財務資本への転換プロセスを監督する体制を構築する。 ① ガバナンス体制・構造 KPI・意思決定の分離 資本転換プロセスでの監督 顧客獲得IPと収益獲得IPで異なる評価軸を設定 取締役会が単年度P/Lだけでなく、 非財務資本から財務資本への転換プロセスを監督 顧客獲得IP 顧客獲得数・市場シェアを重視 収益獲得IP 監督観点 非財務資本(顧客基盤) →財務資本(収益)への変換効率(Vehicle) 売上高・営業利益を重視 「知財投資・活用戦略の有効な開示及びガバナンスに関する検討会」(第25回)資料等公開情報基づき作成 Copyright(C) Nomura Research Institute, Ltd. All rights reserved. 49 企業経営への提言:実現の3ステップ②ジレンマ克服 顧客獲得IPを社長直轄化し、既存事業のP/L圧力から解放させて、評価制度改革を行うことで、将来の収益獲得の為の「戦略的社内投資枠」として管理することが持続的収 益性を確保する上で重要である。 1 2 3 組織的分離 評価制度改革 顧客獲得事業(IP)を 顧客獲得得事業(IP)担当者の評価から 短期利益指標を除外 社長直轄化し、 既存事業のP/L圧力から解放 長期視点の投資を容認 転換IPと秘伝のたれIPの期待 効果の見極め 予算管理の分離 顧客獲得事業(IP)の赤字は、 事業単体の損失ではなく 長期視点の投資を容認 転換IPと秘伝のたれIPの 期待効果による将来の収益獲得の為 「戦略的社内投資枠」として管理 実装例:日産化学 CFO/CTO機能をコーポレートに再設置し、 事業部のP/L判断とは別軸で 中長期的・戦略的な投資判断を行える体制を構築 「知財投資・活用戦略の有効な開示及びガバナンスに関する検討会」(第25回)資料等公開情報基づき作成 Copyright(C) Nomura Research Institute, Ltd. All rights reserved. 50 企業経営への提言:実現の3ステップ③事業ポートフォーリオ変革 事業ポートフォリオ変革に向けた3ステップとして、①知財の棚卸しと評価を経て、②収益獲得と顧客獲得の役割に基づく戦略を設計を行い、③最終的にKPI設定やガバナン ス構築を行うことで、顧客起点の価値提供モデルを実現する。 目的・狙い 事業改革具体化・加速のため、知財の再定義と事業ポートフォーリオの評価が不可欠。 特に顧客ニーズ起点の知財創造とターンキーソリューション型提供モデルの実現が重要となる。 フェーズ1:事業ポートフォリオの戦略的評価(知財評価も含む) 主要事業/技術・知財の棚卸し・再定義 競合やバリューチェーン上での市場シェア大企業のIP機能ベンチマーク 収益への転換IP相互関係分析(横断シナジー特定) 各IPの不足分析、ギャップ/機会の特定 自社技術開発 vs 技術開発提携オプションの検討 フェーズ2:「収益獲得事業と顧客獲得事業」に基づく全社戦略設計 具体的なIP組み合わせ設計 顧客ニーズ起点の知財創造プロセス設計 /ターンキーソリューション(秘伝のたれIP) Vehicleメカニズム(転換IP)の構築 IP機能を実現するための技術・知財戦略構築 非対称KPIとPL責任の設計 パートナー選定基準・契約モデル構築 フェーズ3:実行ロードマップとガバナンス構築 アクションプラン・タイムラインの策定 取締役会向けKPIダッシュボードの構築 投資家向けIRストーリーの策定 「知財投資・活用戦略の有効な開示及びガバナンスに関する検討会」(第25回)資料等公開情報基づき作成 Copyright(C) Nomura Research Institute, Ltd. All rights reserved. 51 IPX経営戦略フレームワーク:具体的なアプローチ IPX(IPトランスフォーメーション)による事業構造変革のための全体アプローチを示す。 1 2 3 事業ポートフォリオの戦略的評価 全社戦略設計 実行ロードマップとガバナンス 目的 自社/競合/バリューチェーン上のプレイヤーを「5つのIP機 能」で分解・評価 目的 目的 「収益獲得IP」と「顧客獲得IP」の全社戦略的配置評価 戦略を実行に移すためのロードマップ策定 評価結果に基づく最適なビジネス・IPモデル選定 進捗モニタリングとガバナンス体制の構築 現状のギャップとリスクを客観的に特定 主要アプローチ 主要アプローチ 主要アプローチ 5つのIP機能による事業/知財の棚卸し・再定義 顧客ニーズ起点の知財創造プロセス設計 アクションプラン・タイムラインの策定 収益への転換相互関係分析 ビジネスモデル・アーキタイプの選定 取締役会向けKPIダッシュボード構築 顧客獲得IP化リスク評価 収益への転換IPのロジック設計 投資家向けIRストーリーの策定 ターンキーモデル実現可能性評価 IP機能の戦略的割当て(収益獲得事業(IP)と顧客獲得 事業(IP)のマッピング) 主要アウトプット 主要アウトプット 主要アウトプット IPポートフォリオマップ 全社事業に対するIP機能のマッピング(全社戦略) 短期/中期/長期実行計画 収益漏れポイント分析 各ビジネスモデル設計書(→各戦略具体化へ) 資本転換プロセスKPI体系 競合リスク一覧 知財創出計画・知財ロードマップ 価値創造ストーリー資料 「知財投資・活用戦略の有効な開示及びガバナンスに関する検討会」(第25回)資料等公開情報基づき作成 Copyright(C) Nomura Research Institute, Ltd. All rights reserved. 52 フェーズ1:事業ポートフォリオの戦略的評価(IPXベンチマーク) 自社だけでなく、競合他社やバリューチェーン上の主要プレイヤーを「5つのIP機能」で分解・ベンチマークし、ギャップとリスクを特定する。 主要事業/技術・知財の棚卸し・再定義 全事業・全保有知財を「5つの機能(収益獲得・顧客獲得・秘伝・転換・ブランド)」に 分類・再定義する。 収益への転換相互関係分析(横断シナジー特定) どの「顧客獲得IP」がどの「収益獲得IP」に繋がっているか(導線:Vehicle機能)を分 析する。導線が切れている場合、そこが収益漏れの要因である。 評価ポイント: 現在の収益源(収益獲得事業)は何か? 顧客獲得IP→収益獲得IP導線の可視化 それを守る技術(秘伝のたれIP)は強固か? 集客エンジン(顧客獲得事業(IP))は機能しているか? 顧客獲得IP化リスクの評価(破壊的攻撃の予兆検知) 収益漏れ対策: バンドル/価格戦略/オンボーディング改善 顧客ニーズ把握とターンキー提供モデルの実現可能性評価 競合が「自社の収益獲得事業」と同じ領域を、「利益度外視の顧客獲得事業」として 仕掛けてくる可能性を評価する。 顧客が複雑な設定なしにすぐに利用開始できる「ターンキー(鍵を回すだけ)」な 状態でソリューションを提供できているか評価する。 競合が別の強力な収益源を持っている場合、この攻撃は致命的となる。対抗措置の 検討が必要となる。 自前主義からの脱却(Make or Buy): 同質化: 競合と同じ水準のサービスを提供 顧客獲得機能が弱い場合、自社開発にこだわらず 土俵変更: 差別化要素を変える M&Aや提携で外部から調達するオプションを検討 囲い込み: スイッチングコストを高める 顧客ユースケースに即した導入の容易さを重視 「知財投資・活用戦略の有効な開示及びガバナンスに関する検討会」(第25回)資料等公開情報基づき作成 Copyright(C) Nomura Research Institute, Ltd. All rights reserved. 53 フェーズ1: 事業・IPポートフォリオ設計 事業ポートフォーリオ評価結果と同時に、 IPX経営戦略モデルの視点で知財ポートフォーリオの評価を行い、不足するIP機能を補う。 高 戦略方針 創出 強化 高重要・低収益 高重要・高収益 Make or Buy判断 オープン/クローズ戦略 特許/秘匿/標準の選択 戦 略 重 要 度 新規顧客獲得IP開発 投資集中 パートナー連携 特許防衛強化 標準化推進 秘伝のたれIP保護 ロックイン設計 技術的ロックイン 契約的ロックイン 撤退 維持 低重要・低収益 低重要・高収益 段階的縮小 効率的運用 リソース再配分 最小投資継続 売却・提携検討 キャッシュカウ活用 データロックイン UXロックイン 評価基準 技術格差の持続性 市場シェア獲得可能性 低 低 高 投資回収期間 収益性 「知財投資・活用戦略の有効な開示及びガバナンスに関する検討会」(第25回)資料等公開情報基づき作成 Copyright(C) Nomura Research Institute, Ltd. All rights reserved. 54 フェーズ2:「IPX経営戦略」に基づく全社戦略設計 評価結果に基づき、具体的なビジネスモデル(アーキタイプ)を選定し、知財戦略を設計する。 「収益への転換IP」のロジック設計 顧客ニーズ起点の知財創造プロセス設計 R&D部門だけでなくマーケティング部門を巻き込み、顧客の「Pain(苦痛)」や「Gain( 利益)」から逆算して、それを解決する「ソリューション知財(顧客獲得IP)」を創出する プロセスを構築する。 マーケティングとR&Dの共創体制の構築 顧客問題仮説→検証→設計→出願のサイクル確立 選定した型に基づき、顧客を逃がさない「導線」を設計する。 • 技術的ロックイン: 専用規格・データ提供等による事業支援環境構築による切り替え コスト・時間構築、特許・意匠による互換品排除 • 心理的ロックイン: UI/UXの使いやすさ、ブランドへの愛着、ポイント制度 KPI例: 問題仮説数→PoC成功率→出願件数→採用率 • 契約的ロックイン: 長期保守契約、サブスクリプション契約、ボリュームコミット 顧客接点部門からの知財創出アイデア報奨制度 業種・商材特性に応じて、最適なロックイン手法を選択・組み合わせる。 IP機能の戦略的割り当て(マッピング) ビジネスモデル・アーキタイプ(型)の選定 自社の産業特性と顧客ニーズに合わせて、最適なビジネスモデルの「型」を選定。 アーキタイプ 特徴 採用すべきケース A. Digital EaaS ハード所有権は顧客に残し、「成果(最適化・予 ・顧客が所有を重視 知保全)」をサービスとして提供 ・ハードはコモディティ化 B. 物理的 EaaS ハード所有権も移転せず、機能利用料を徴収 ・秘伝IPのブラックボックス化 ・利用・資産オフバランス化重視 どの事業を「稼ぐ収益獲得事業」とし、どの事業を「攻める顧客獲得事業」とするか を明確にする。 戦略パターン: 例: 既存のハードウェア事業を「収益獲得事業(IP)」、新規のデータ分析サービ スを「顧客獲得事業(IP)」とする。 ・メンテ/廃棄の手間削減 C. フリーミアム 基本機能無料(顧客獲得IP)、上位機能で課金 ・限界費用が低い製品 ・ユーザー数の爆発的増加が必要 D. レーザーブレード 本体安価提供、専用消耗品で稼ぐ ・消耗品に技術的ロックイン可能 ・特許・意匠による秘伝化 「知財投資・活用戦略の有効な開示及びガバナンスに関する検討会」(第25回)資料等公開情報基づき作成 例(逆パターン): ハードウェアを「顧客獲得事業(IP):安価提供)」とし、消耗品・保守 を「収益獲得事業(IP)」とする。 収益獲得事業(IP)と顧客獲得事業(IP)の明確な役割定義が収益構造を規定する Copyright(C) Nomura Research Institute, Ltd. All rights reserved. 55 フェーズ3:実行ロードマップとガバナンス構築 設計した戦略を実行に移し、モニタリングする体制を構築する。 アクションプラン・タイムライン 短期(1年) 顧客獲得IP試験導入 パイロット顧客獲得 データ基盤整備 PMO/ガバナンス設計 中期(3年) 長期(5年〜) 転換IP確立 収益獲得IPへの貢献可視化 販売・運用スケール 地域/業界拡大 取締役会向けKPIダッシュボード 単なるP/Lではなく、「資本転換プロセス(顧客獲得数→転換率→収益)」を可視化 し、取締役会が中長期視点で監督できるダッシュボードを構築する。 エコシステムの確立 参入障壁強化 国際展開 M&Aで補強 投資家向けIRストーリー 「顧客獲得IP」への先行投資(赤字)が、将来どのようなロジックで収益に繋がるのか という「価値創造ストーリー」を言語化し、開示資料に落とし込む。 資本転換プロセス: 顧客獲得数→転換率→ARPU/GRR→収益 先行投資(赤字)→将来収益への因果ロジックを言語化 LTV/CAC、チャーン率、ロックイン度(技術/契約/心理) 開示: コホート別転換/ARPU、ユニットエコノミクス、特許ポートフォリオ IP資産価値スコア(独自性、競争優位性、収益寄与度) リスクと対策: 顧客獲得IP化攻撃/規制/代替技術 意思決定: フェーズゲート、投資アロケーション、リスクヒートマップ 対応策: 同質化/土俵変更/囲い込み/標準化戦略 「知財投資・活用戦略の有効な開示及びガバナンスに関する検討会」(第25回)資料等公開情報基づき作成 Copyright(C) Nomura Research Institute, Ltd. All rights reserved. 56 フェーズ3:KPI設計とダッシュボード IPX経営戦略モデルの視点で知財ポートフォーリオの評価を継続的に行い、不足するIP機能を補うように社内活動を進める。 顧客獲得IP 顧客獲得数(n数) 収益への転換IP CVR(転換率) 必須開示 収益獲得IP 売上高・営業利益率 推奨開示 必須開示 将来顧客母集団の規模を示す指標。市場浸透率と合 わせて管理 顧客獲得から収益事業への誘導効率。導線設計の有 効性指標 コア事業の収益規模と収益性。持続的キャッシュフロー 創出力 CAC(顧客獲得コスト) LTV(顧客生涯価値) 粗利率 必須開示 推奨開示 必須開示 1顧客獲得に要する投資額。LTVとの比率で投資効率 を評価 1顧客から得られる総収益。CAC比率で投資判断の根 拠 差別化と価格プレミアムの維持度。競争優位性の財務 指標 市場シェア拡大率 定着率・継続率 知財収支・免除額 必須開示 対象市場での顧客基盤拡大ペース。競合との相対的 地位 開示区分: 必須開示 収益獲得IP・顧客獲得IPのコアKPI 推奨開示 顧客の継続利用率。Churn率と合わせて管理し長期収 益を確保 推奨開示 転換IP・ブランドIPの補完指標 「知財投資・活用戦略の有効な開示及びガバナンスに関する検討会」(第25回)資料等公開情報基づき作成 非開示 必須開示 自己支払ロイヤルティ免除額。知財の経済的価値を保 守的に試算 秘伝のたれIPは定性開示のみ Copyright(C) Nomura Research Institute, Ltd. All rights reserved. 57 フェーズ3:取締役会の役割と監督機能 IPX経営戦略モデルの視点で取締役会の役割と監督機能を行う体制を構築する。 取締役会の役割 監督機能 価値創造ストーリーの監督 KPIレビュー IPX経営戦略モデルに基づく価値創造ストーリーの論理性を深く理解し、その実行を監督 。顧客獲得IP・転換IP・収益獲得IPの戦略的整合性を確認 顧客獲得トラック(n数、CAC、市場シェア)と収益トラック(粗利率、LTV、知財収支)の進捗 を定期的にレビュー。ゲート基準の達成状況を確認 相反戦略の分離承認 秘伝IP守秘ガバナンス 「顧客獲得事業(IPオープン化)」と「収益獲得事業(IP囲い込み)」など、相反する経営判断 を分離・承認。非対称KPI管理の妥当性を評価 ブラックボックス化すべき技術・ノウハウの特定と管理体制を監督。装置メーカーや協力企 業からの流出防止策の実効性を評価 リスク・開示方針のガイド IRメッセージ整合 秘伝のたれIPの守秘リスク、投資家向け開示の適切性、競合への情報流出防止策につい て、経営層へガイダンスを提供 投資家向けストーリーと実際の戦略実行の整合性を確認。開示KPI(必須/推奨/非開示)の 区分が適切に運用されているかを監督 「知財投資・活用戦略の有効な開示及びガバナンスに関する検討会」(第25回)資料等公開情報基づき作成 Copyright(C) Nomura Research Institute, Ltd. All rights reserved. 58 IPX経営戦略モデル導入の効果 「顧客ニーズ起点の知財創造」と「ターンキーソリューション型提供による技術格差維持」という二つの戦略的視点が、事業改革(事業スケール化)実現の鍵となる。 プロジェクトでは、これを全社で実行する「仕組み」を構築できる。 1.戦略・価値(知財価値含む)の可視化 • • • • • 事業改革の具体的ビジネスモデル化: 壮大なビジョンが、全社員が理解し実行できる具体的な事業戦略・知財戦略へと翻訳される。 顧客ニーズ起点の知財創造体制の確立: 市場調査・顧客対話を通じて、顧客の事業課題を解決するソリューション知財を戦略的に創造する組織能力が構築される。 ターンキーソリューション型提供による技術格差維持エコシステム構築: 顧客とは技術格差を維持しながらエコシステムを拡大し、持続的な競争優位を確保する。 戦略的KPIの導入: オープン&クローズ戦略の連動性を測るKPIダッシュボードにより、ビジネスモデル変革の進捗を客観的に測定・管理できるようになる。 投資家への価値創造ストーリーの明確化: 事業改革がいかにして持続的なキャッシュフローを生み出すのか、そのメカニズムを説得力をもって説明できるようになり、企業 価値の向上に直結する。 2.全社変革OSの構築 • 経営企画・知財部門が主導する「IP経営推進室(CoE)」が設立され、成功モデルを他事業へ横展開するための「知財経営プレイブック」が完成する。 • 事業部の「イノベーションのジレンマ」を打破し、全社最適の事業改革を実行する仕組み(戦略的社内投資枠、非対称KPI)が導入される。 • 具体的な高収益モデルの事業計画が策定され、実行体制(「特区」チーム)を設置。 「知財投資・活用戦略の有効な開示及びガバナンスに関する検討会」(第25回)資料等公開情報基づき作成 Copyright(C) Nomura Research Institute, Ltd. All rights reserved. 59 実装体制論:誰が主導すべきか? 「新機能「顧客獲得IP開発」「収益への転換IP設計」「秘伝のたれIP管理」を経営企画との連携で推進する体制を構築する。 推奨体制:IP経営推進室(CoE) 経営企画主導 全社的な視点で知財経営戦略を統括し、事業部門を超えた調整を実施 大企業の留意点 クローズIP戦略(守り)は得意だが、 オープンIP戦略(攻め:顧客獲得IP・転換IP・秘伝のたれIP)の開発に課題 ・戦略コンサル等の外部支援で、組織論も含めた事業戦略機能を強化すべき。 権限と専門性の統合 予算権限(CFO/CTO)とIP・マーケティング専門性を兼ね備えた クロスファンクショナルチーム 3つの新機能 ・顧客獲得IP開発(マーケティング戦略・内外部環境調査) ・収益への転換IP設計(事業・技術戦略策定) ・秘伝のたれIP管理(ブラックボックス化) 「知財投資・活用戦略の有効な開示及びガバナンスに関する検討会」(第25回)資料等公開情報基づき作成 中小・スタートアップの留意点 まずは クローズIP(守り)の基盤構築 が最優先。 弁理士・知財コンサルの支援が必須。 その上で、IPO等に向けた成長ストーリー構築のため、外部コンサル等支援を活用。 但し、大企業のような事業部の慣性は大きくないので、戦略フレーム中心の支援となる。 Copyright(C) Nomura Research Institute, Ltd. All rights reserved. 60 現時点の好事例の取り組みでの改善すべき点 好事例(荏原製作所)の取り組みは、従来の「守りの知財」から脱却し、知財を「経営資源(投資対象)」として再定義した上で、その投資対効果を可視化しようとする先進的な 試みであり、高く評価されている。 守りの知財 → 攻めの投資へ知財を「防衛」から「価値創造」の経営資源とし て再定義 知財ROICの可視化投資対効果を定量化し、経営判断の透明性を向上 投資家対話の質向上無形資産の貢献をBS/PLと結びつけ、エンゲージメント を強化 守りの知財 → 攻めの投資 転換 知財部を価値創造センターへ管理部門から事業収益性向上のドライバーとし て変革 「知財投資・活用戦略の有効な開示及びガバナンスに関する検討会」(第25回)資料等公開情報基づき作成 Copyright(C) Nomura Research Institute, Ltd. All rights reserved. 61 ROIC経営の課題 一方で、ROICは「効率性」の指標であり、短期的な効率化と将来の成長投資のバランスをどう評価に組み込むかが更なる課題となる。 IPX経営戦略モデルは、ROIC経営の課題を解消する施策となり得る。 1 ROICの本質的な特性 ROICは効率指標のため、将来の顧客を獲得するための戦略的投資は短期的に ROICを下げる可能性がある 2 評価に組み込むべきKPI 既存事業 の効率化 CAC(顧客獲得コスト)、LTV(顧客生涯価値)、CVR(転換率)、n数(顧客母集団)な ど、将来の収益性を示す先行指標 将来顧客 獲得投資 評価に組み込むべきKPI例 3 ポートフォリオ管理 既存事業の短期的収益性・効率性向上と、将来の成長のための投資のバランス をどう管理していくかが鍵(特に、コモディティ化が進む環境下では、単独事業(モ ノ事業)では顧客提供価値に限界) 4 CAC (顧客獲得コスト) CVR (転換率) LTV (顧客生涯価値) n数 (顧客母集団) リード獲得数 投資家への説明 継続率 ROICツリーに将来の収益事業の顧客を獲得する顧客獲得IP/転換IPのKPIを明 示し、中長期的な価値創造ストーリーを提示する必要性がある 「知財投資・活用戦略の有効な開示及びガバナンスに関する検討会」(第25回)資料等公開情報基づき作成 Copyright(C) Nomura Research Institute, Ltd. All rights reserved. 62 要塞(ファウンドリ)モデルの成立条件 要塞モデル(ファウンドリ)の成否は、設計価値と製造プロセスの「分離可能性」で決まる。半導体等では有効だが、プロセス自体が競争力の源泉である電池や素材産業では 成立しにくく、産業特性に応じた戦略適否の見極めが不可欠である。 成立産業 成立条件 IPの価値(設計)と製造プロセスが 半導体 医薬(CDMO) 設計と製造の分離が明確。 ファウンドリ成熟。 開発と製造が制度上明確に 分離。 分離可能 であること 成立を左右する要因 不成立産業 • 標準化度:高いほど成立しやすい • 規制・品質トレーサビリティ:厳格ほど成立しにくい • 顧客切替コスト:高いほどロックイン効果 電池 鉄鋼・セメント・食品 製造プロセスがIPそのもの。 設計と製造不可分。 プロセスが価値の源泉。分 離すると競争力低下。 • IP防衛:隔離/バイパス/無力化の成熟度 「知財投資・活用戦略の有効な開示及びガバナンスに関する検討会」(第25回)資料等公開情報基づき作成 Copyright(C) Nomura Research Institute, Ltd. All rights reserved. 63 EaaS(Equipment as a Service)モデルの成立条件 EaaSの本質は「所有」から「利用成果」への価値転換にある。成果の可視化技術や契約設計が鍵となり、食品等の成果重視型産業では有効だが、安定供給を絶対視する産 業では成立しにくく、適合性の見極めが重要である。 成立産業 成立条件 顧客が「所有(安定供給)」よりも 「利用(成果)」 を重視すること 食品(ネスレ) コンビニ(7-11) マシンを安価に提供し、消耗 品で収益化 店舗機能をサービス化、運 営ノウハウを提供 コンテンツIP 純粋なSaaSモデル、利用課 金で収益化 成立を左右する要因 • 成果指標の可観測性:遠隔監視・センシング技術 • 契約設計:成果連動型/可用性SLA • 資本効率:ベンダーのバランスシート許容度 • リスク転移:メンテナンス・稼働率保証 「知財投資・活用戦略の有効な開示及びガバナンスに関する検討会」(第25回)資料等公開情報基づき作成 不成立産業 電池(LiB) 安定供給を絶対視。所有権 移転が不可。 Copyright(C) Nomura Research Institute, Ltd. All rights reserved. 64 ファウンドリ/EaaSの横断示唆 ファウンドリやEaaSは、製造・保有がコストとなる産業でこそ有効に機能する。プロセス自体が競争力の産業では限界があるため、産業ごとの適合性を定量評価し、戦略的な適 用可否を見極めることが実装への近道である。 1 2 3 設計⇔製造の分離が収益性の鍵 所有⇔利用の価値転換 ファウンドリ EaaS 成立はIPの設計価値と製造プロセスの分離 可能性に依存 成立は顧客が所有より利用を重視する価 値観変革に依存 電池・鉄鋼・セメントなど 分離可能な産業は 高付加価値設計 成果重視の利用モデルは 資本効率 と プロセスそのものが競争力 の産業では を維持しながら、製造の最適化が可能 顧客価値 の両立を実現 ファウンドリ 不成立 、EaaSも 限定的 4 5 ! 循環モデルの継続が高収益化 産業毎の定量評価が実装の近道 最重要示唆 顧客獲得 → 転換 → 収益獲得の 各産業で 『成立/不成立/部分成立』 を 製造・保有 がコスト/リスクとなる産業で 循環を継続 させながら KPIで 定量化・可視化 最も有効 に機能 秘伝/ブランドIPで 防衛・増幅 することで、 戦略的な意思決定が可能に 所有自体が価値/義務の領域は 適用外ま たは修正適用が必要 製造プロセスがIP源泉の産業は限界 する企業が高収益を維持 「知財投資・活用戦略の有効な開示及びガバナンスに関する検討会」(第25回)資料等公開情報基づき作成 Copyright(C) Nomura Research Institute, Ltd. All rights reserved. 65 A:「技術・コンテンツ」がコアの場合の実装タイミング 技術(Tech)やコンテンツ(Content)をコアIPとする企業において、デザインはそれらの価値を顧客に届ける「翻訳機」として機能する。 対象企業 メーカー、IT企業、エンターテイメント企業 など 1 従来の開発フロー(誤) 2 IPX戦略に基づく開発フロー(正) 3 効果 検討タイミング 誤: 技術開発・製品仕様が固まった後の「最終工程(見た目を整える段階)」 正: 「事業構想・要件定義」の最上流フェーズ IPXモデルからの理由 顧客獲得IPの設計: 技術が優れていても、最初に触れる「UI/UX」が難解 であれば顧客獲得できない。技術をどう「直感的な魅力」に変換するかは 初期段階で決定的。 秘伝のたれIPの設計: 要点技術をブラックボックス化するための「分解さ れにくい筐体設計」や「中身を見せずに操作できるUI設計」が必要。 「知財投資・活用戦略の有効な開示及びガバナンスに関する検討会」(第25回)資料等公開情報基づき作成 Copyright(C) Nomura Research Institute, Ltd. All rights reserved. 66 B:「デザイン・意匠」自体がコアの場合の事業類型 技術スペックではなく、「意味」や「体験」の革新をコアとする企業では、デザインそのものが最強のIPとなる。既存製品に新しい「ライフスタイル」や「感性的価値」を提案し、その 象徴としてのプロダクトを提供する。 意味のイノベーション(Meaning Innovation)型 収益獲得IP 特徴: 既存製品に新しい「ライフスタイル」や「感性的価値」を提案し、その 象徴としてのプロダクトを提供 IPXモデルへの当てはめ デザイン・意匠 収益獲得IP: 「デザインそのもの」が製品価値となり、機能スペックで の比較を無効化し、感性価値で高価格を実現 顧客獲得IP: 「世界観(Worldview)」やストーリーが顧客を惹きつけ、 展示会、ウェブサイト等で提示される圧倒的な美意識が集客力となる 顧客獲得IP 秘伝のたれIP 秘伝のたれIP : 「意匠権」と「ブランド哲学」の組み合わせで模倣を防 止。形状は法的に、空気感やブランド文脈は組織文化として防御 「知財投資・活用戦略の有効な開示及びガバナンスに関する検討会」(第25回)資料等公開情報基づき作成 Copyright(C) Nomura Research Institute, Ltd. All rights reserved. 67 デザイン起点ビジネスの具体事例 「意味のイノベーション」を実現し、デザイン・意匠を中核IPとして高収益を実現している3つの先進事例。 BALMUDA バルミューダ Dyson ダイソン Snow Peak スノーピーク 特徴 特徴 特徴 IP戦略 IP戦略 • IP戦略 • • • • • 「知財投資・活用戦略の有効な開示及びガバナンスに関する検討会」(第25回)資料等公開情報基づき作成 Copyright(C) Nomura Research Institute, Ltd. All rights reserved. 68 「事業部が強い企業」で考慮すべき点:現実的アプローチ 事業部が強い企業の壁を突破するには、社長直轄の特区や外部人材を活用しつつ、顧客獲得のための「戦略的赤字」を事業部のP/L責任とせず、全社的な戦略投資として 正当化するガバナンス変革が必要である。 1 2 3 バーチャル・タスクフォース(特区) 外部リソース(ビジネスアーキテクト)活用 「戦略的赤字」の承認機能の回復 社長/CSO直轄の経営企画・知財・事業開発のキ ーマンによるチーム組成 「つなげる機能」が不足している場合、戦略コンサ ルタントを「期間限定の参謀」として活用 顧客獲得IPの赤字を、事業部の責任にせず、全 社の戦略投資として承認 既存事業のP/L責任を負わせず、「顧客獲得IPの 設計と検証」に集中させる特権を付与 事業部と本社の間に入って「共通言語」で翻訳・ 調整する役割を担わせる KPI例:リード創出数、商談化率、クロスセル率、主 力受注貢献 次のアクション(90日) 現状棚卸 既存の顧客獲得IP・主力IPの関係性と 問題点の特定 仮説設計 小規模PoC 全社承認ゲート 効果的なバンドル戦略とKPI設定 1事業部での試行と効果検証 経営会議での承認と本格展開 「知財投資・活用戦略の有効な開示及びガバナンスに関する検討会」(第25回)資料等公開情報基づき作成 Copyright(C) Nomura Research Institute, Ltd. All rights reserved. 69 政策提言 日本企業が陥る短期利益偏重からの脱却に向け、IPX経営モデルの標準化、戦略的赤字を許容する税制優遇、価値創造ストーリーの開示推奨、既存評価を離れて挑戦でき るサンドボックス制度の設立を提言する。 1. ベストプラクティス化 IPX経営戦略モデルとKPI管理手法を、産業界に広く普及・啓発 成功企業の事例を体系化し、標準的なフレームワークとして提供 2. イノベーションジレンマ解消の後押し 企業が「顧客獲得IP」事業(コト事業)に短期利益を求めず、戦略的社内投資(赤字容認)を行えるよう 例:「顧客獲得」事業の戦略的損失を法人税の損金算入で優遇する時限的な税制措置を検討 3. 知財ガバナンス・開示の指針改訂 「コーポレートガバナンス・コード」や「知財・無形資産のガバナンスガイドライン」において 「顧客獲得事業(IP)」のKPI(非財務情報)と「収益獲得事業(IP)」(財務情報)への貢献ロジック(価値創造ストーリー)を開示することを強く推奨 4. 戦略的IP経営サンドボックスの設立 IPX経営戦略モデル、KPI管理及び戦略的開示を、既存の会計基準や市場の評価を一時的に気にせずに試行できる「サンドボックス(規制の砂場)」制度を設立 参加企業は、投資家と対話しながら「顧客獲得IP」への戦略的社内投資を実践し、その成果を検証する場とする 「知財投資・活用戦略の有効な開示及びガバナンスに関する検討会」(第25回)資料等公開情報基づき作成 Copyright(C) Nomura Research Institute, Ltd. All rights reserved. 70 纏め 持続的成長の鍵は、知財を「顧客獲得」と「収益獲得」の役割に分け、組織や評価を明確に分離する必要がある。 この「非対称KPI」運用によりイノベーションのジレンマを克服し、模倣困難な事業破壊力を生み出すことができる。 鍵:明確な分離と非対称KPI運用 顧客獲得IPと収益獲得IP を 組織・評価・予算で明確に分離し 非対称のKPIで運用すること 効果1 イノベーションのジレンマを 克服 効果2 効果3 事業を複合化することで、 非対称的優位性(事業破壊力)を生み出す。 持続的な 収益性と成長を実現 次の一歩 自社のIP機能マップ化 → KPI設計 → 転換導線の実装 → 開示ストーリーの構築 今すぐ、IPトランスフォーメーション経営戦略をスタートさせましょう 「知財投資・活用戦略の有効な開示及びガバナンスに関する検討会」(第25回)資料等公開情報基づき作成 Copyright(C) Nomura Research Institute, Ltd. All rights reserved. 71

資料5

第1回 コーポレートガバナンス・コードの改訂に関する有識者会議(令和7年度) 参考1 事務局説明資料 2025年10月21日 金融庁 Financial Services Agency, the Japanese Government コーポレートガバナンス改革の深化に向けたこれまでの取組み  「スチュワードシップ・コード」(2014年2月策定・2017年5月改訂・2020年3月再改訂・2025年6月第三次改訂) ⇒ 機関投資家(年金基金やその委託を受けた運用機関等)に対して、企業との対話を行い、中長期的視点から投資先企業の持続的 成長を促すことを求める行動原則。  「コーポレートガバナンス・コード」(2015年6月適用開始・2018年6月改訂、2021年6月再改訂) ⇒ 上場企業に対して、幅広いステークホルダー(株主、従業員、顧客、取引先、地域社会等)と適切に協働しつつ、実効的な経営戦 略の下、中長期的な収益力の改善を図ることを求める行動原則。  「アクション・プログラム」(2023年4月・2024年6月・2025年6月公表) ⇒ 実質的な対応をより一層進展させるため、形式的な体制の整備ではなく、企業と投資家の建設的な対話の促進や、企業と投資家 の自律的な意識改革の促進を主眼とした施策を実施。具体的な取組みの検証や共有を通じた「実践」の徹底。 ※ 「アセットオーナー・プリンシプル」(2024年8月策定) ⇒ アセットオーナーに求められる、受益者等の最善の利益を勘案して、その資産を運用する責任(フィデューシャリー・デューティー) を実現する上で必要と考えられる共通の原則。原則5にスチュワードシップ活動の促進について規定。 スチュワードシップ・コード (機関投資家の行動原則) 投資 投資 最終 受益者 コーポレートガバナンス・コード (企業の行動原則) 投資家と企業の対話ガイドライン (両コードの附属文書) 機関投資家 (株主) リターン 中長期的な視点に立った 建設的な対話 上場企業 様々な ステークホルダー (従業員、顧客、 取引先、地域社会) リターン 中長期的な 企業価値の向上 中長期的な リターンの向上 日 本 経 済 全 体 の 好 循 環 を 実 現 -1- コーポレートガバナンス・コードの概要 2015年 6月 1日適用開始 2018年 6月 1日改訂 2021年 6月11日再改訂 上場企業が、幅広いステークホルダー(株主、従業員、顧客、取引先、地域社会等)と適切に協働しつつ、実効的な 経営戦略の下、中長期的な収益力の改善を図るための行動原則 枠組み • 東京証券取引所が定める有価証券上場規程の一部であり、コードの規定にコンプライするか、しない場合 のエクスプレインを上場会社に義務付けている。 • プリンシプルベース・アプローチ及びコンプライ・オア・エクスプレインの手法を採用。 概要 1.上場会社は、株主の権利・平等性を確保すべき。 • 政策保有株式の保有目的や保有に伴う便益・リスクの検証と政策保有に関する方針の明確化 等 2.上場会社は、従業員、顧客、取引先、地域社会などのステークホルダーとの適切な協働に努めるべき。 3.上場会社は、利用者にとって有用性の高い情報の提供に取り組むべき。 4.取締役会は、会社の持続的成長を促すため、企業戦略等の大きな方向性を示すことや、実効性の高い 監督を行うことなどの役割・責務を果たすべき。 • 持続的成長に資するような独立社外取締役の活用 等 (建設的な議論に貢献できる人物をプライム市場上場会社は3分の1以上(必要に応じて過半数)の 独立社外取締役を設置すべき(その他の市場の上場会社は2名) 5.上場会社は、持続的な成長と中長期的な企業価値向上に資するよう、株主と建設的な対話を行うべき。 -2- 各国のコーポレートガバナンス・コードの策定・改訂の状況 2008 1998 英国・策定 (1998年) 欧 州 2010年 名称変更 ● ※ 概ね2、3年ごとに改訂 フランス・策定 (2003年) ※ 概ね1、2年ごとに改訂 日本・策定 (2015年) ア ジ ア 2003年 改訂 ● そ の 他 英国・改訂 (2018年) 英国・改訂 (2024年) フランス・改 訂(2020年) ドイツ・改訂 (2019年) 日本・改訂 (2018年) 策定(2001年) 2007年 改訂 ● 2007年 オーストラリア・ 改訂 ● 策定(2003年) 2012年 改訂 ● 2012年 改訂 ● 日本・改訂 (2021年6月) 韓国・改訂 (2022年) 2018年 改訂 ● マレーシア・ 改訂(2017年) 2014年 改訂 ● フランス・改 訂(2022年) ドイツ・改訂 (2022年) 韓国・改訂 (2016年) 2005年 シンガポール・ 改訂 ● マレーシア・ 策定(2000年) 2025 ※ 概ね2、3年ごとに改訂 ドイツ・策定 (2002年) 韓国・策定 (1999年) 2018 シンガポール・ 改訂(2023年) マレーシア・ 改訂(2021年) オーストラリア・ 改訂(2019年) -3- 英国コーポレートガバナンス・コード改訂(2024年)  英国FRCは、2024年1月に改訂コーポレートガバナンス・コードを最終化。2025年1月以降に開始する事業年 度から適用開始(内部統制関連は2026年1月以降に開始する事業年度から適用開始)。  市中協議では幅広い事項(18項目)に亘る改訂案が示されたが、その後、英国政府の方針・利害関係者か らの意見を踏まえ、企業の報告負担を最小限に抑えつつガバナンスの質を向上させることを意図して、的を 絞ったアプローチを採用。  上記も踏まえた検討の結果、内部統制に関する改訂が優先され、他の項目(ESGに関する監査委員会の役 割強化・ダイバーシティ推進・取締役の兼任制限等)の改訂は見送られた。 主要な改訂項目 1.内部統制に関する改訂(Provision 29) ➢ 取締役会は、財務、業務、報告、コンプライアンスを含む全ての経営上の重要な事項について、企業のリスク管理と内部 統制フレームワークを監視し、少なくとも年に一度その有効性を審査する(年次報告書に一定の事項を記載)。 2.多様性(diversity)の具体例の削除(Principle J) ➢ 取締役候補者の決定や後継者計画についての考慮事項の一つとしての多様性(diversity)が規定されたが、多様性の 例示として挙げられていた、性別(gender)、社会的・民族的背景(social and ethnic backgrounds)が削除された。 3.役員報酬の返還(マルス条項・クローバック条項)に関する改訂(Provision 37,38) ➢ 役員報酬に関して、報酬確定又は支給後に報酬額が過剰であることが判明した場合、報酬の返還を求めること(マルス 条項・クローバック条項)を役員任用契約に含めるべき(年次報告書に一定の事項を記載)。 4.コーポレートカルチャーに関する改訂(Provision 2) ➢ 取締役会は望ましいコーポレート・カルチャーがどのように組み込まれているか評価・モニタリングすべき旨を追記。 -4- 「G20/OECDコーポレートガバナンス原則」改訂(2023年) 背景等  気候変動やCOVID-19ショック等に伴う経済・社会環境の変化を踏まえ、OECDコーポレートガバナンス委員会は、 「G20/OECDコーポレートガバナンス原則」の見直し作業を開始。2021年10月、G20ローマ・サミットにおいて原則見直し作業 の着手が承認。2022年11月、G20バリ・サミットにおいて作業の進捗が歓迎。市中協議(2022年9-10月)及びコーポレートガ バナンス委員会での採択を経て、2023年6月、OECD閣僚理事会にて原則改訂案を採択。2023年7月にG20財相・中銀総裁 会合、2023年9月にG20ニューデリー・サミットにて承認。  同原則は、G20首脳に承認された企業統治分野における唯一の国際基準であり、G20メンバー国やOECD加盟国を含む世 界中の先進国・新興国53カ国が準拠。金融安定理事会や世界銀行も金融分野の重要な基準として各国の企業統治の規 制枠組みを評価する際に利用。 改訂の目的 ✓ 企業による株式市場へのアクセスの改善 株式市場は企業の資金調達や資本の効率的配分に不可欠。近年上場企業数が減少する中、投資家保護を促進しつつ、企 業の資本へのアクセスの改善や家計に対する投資機会の提供に資する各法域の努力を支援。 ✓ 企業の持続可能性と強じん性の向上に資するコーポレートガバナンス COVID-19ショックを踏まえ、変化する環境に事業戦略を柔軟に適合させ、事業価値を長期的に向上させるという課題に企業 が対応するためのコーポレートガバナンスの枠組みを提供。 改訂の主な内容 ✓ サステナビリティ サステナビリティに関する国際的な開示基準が策定されつつある中、改訂された原則では新章として第6章「Sustainability and resilience」を追加。情報開示やコーポレートガバナンスの枠組みに関する新たな原則を追加。 ✓ 機関投資家のスチュワードシップ活動 機関投資家の資産運用額は増加を続け、多数の国で上場会社の最大株主となっている。特に大手機関投資家によるインデッ クス型投資が増加しているが、この投資戦略はエンゲージメントを行うインセンティブが相対的に低い。機関投資家による説明 責任や企業へのエンゲージメントについて原則の内容を改訂。ESG評価・データ提供機関についても文言を追加。 -5- コーポレートガバナンス改革の実質化に向けたアクション・プログラム2025 概要  企業の持続的な成長と中長期的な企業価値向上に向け、 2023年4月、2024年6月に策定した「アクション・プログラム」を 踏まえて実質化・実践に向けた取組みを実施。  企業と投資家の自律的な意識改革に基づくコーポレートガバナンス改革の実質化を引き続き促しつつ、企業の持続 的な成長と中長期的な企業価値向上に真に寄与する 「緊張感ある信頼関係」に基づく対話の促進に向け 、コーポ レートガバナンス・コード見直し(第三次改訂)を行う他、必要な環境整備を推進する。 課題 これまでの取組み 今後の主な方向性 ✓ 経営資源の適切な配分を通じた投資の促進(現預金を含め、現状の資 源配分が適切かの検証等) 稼ぐ力の向上 ✓ 東証の要請を踏まえ、多くの企業が企業価値向上 に取組み 情報開示の充実・ 投資家との対話 促進 ✓ 協働エンゲージメントの促進、実質株主の透明性向 上、コードのスリム化/プリンシプル化に向けスチュ ワードシップ・コードを改訂 ✓ 有価証券報告書の株主総会前の開示に向けた環 境整備の検討・実務上の課題の洗い出し ✓ 有価証券報告書の株主総会前の開示に関し、対応状況をフォローアッ プするとともに、更なる環境整備等を検討 ✓ 総会資料の書面交付の不要化を含めた総会に係る法制面の整理等の 推進策について、関係省庁(法務省・経済産業省)と連携 ✓ 有価証券報告書の記載事項を整理(スリム化含む) 取締役会等の 機能強化 ✓ 取組みの実践を促進するため、社外取締役と投資 家の対話や、実質的な議論を促すための取締役 会事務局による取組み等、具体的な好事例を共有 ✓ 社外取締役や取締役会事務局(コーポレートセクレタリー)の機能強化 について、共有する好事例を更に充実させるべく、企業の実務担当者 や様々な関係者の議論の場としてコンソーシアムを立上げ ✓ 政策保有株式について、有価証券報告書におけ る保有目的変更に係る開示規制を強化 ✓ 「共同保有者」の定義を明確化(協働エンゲージメ ントの促進、複数の投資家による潜脱的な行為へ の対応) ✓ 国際的な比較可能性を確保したサステナビリティ開 示・保証制度のあり方を検討 ✓ 取締役会・役員におけるジェンダーを含めた多様 性確保、コーポレート・カルチャーを意識した経営 や対話等、具体的な好事例を共有 ✓ 政策保有株式の開示に関する課題や開示例等を公表 市場環境上の 課題の解決 サステナビリティを 意識した経営 ✓ 有価証券報告書において、企業戦略と関連付けた人材戦略や従業員 給与・報酬の決定に関する方針、従業員給与の平均額の前年比増減率 等の開示事項を拡充 ✓ 大量保有報告制度違反の課徴金引上げを検討 ✓ 東証において、親子上場、グループ経営等に関する検討・開示を推進し、 少数株主保護の観点から必要な上場制度整備を検討 ✓ サステナビリティ開示・保証制度について更に議論を深め、特に有価証 券報告書における非財務情報の虚偽記載等の責任のあり方を検討 (セーフハーバー・ルールの整備) ✓ 人的資本に関する国際的な基準開発への意見発信 -6- コーポレートガバナンス改革の実質化に向けたアクション・プログラム2025 コーポレートガバナンス・コード改訂関連の記載(抜粋)(1/2) Ⅰ.はじめに 引き続き、以下を踏まえ、企業と投資家の自律的な意識改革に基づくコーポレートガバナンス改革の実質化を促しつ つ、企業の持続的な成長と中長期的な企業価値向上に真に寄与する「緊張感ある信頼関係」に基づく対話の促進に向 け、コーポレートガバナンス・コードの見直しを行う等、必要な環境整備を推進していく。 なお、コード見直しの際には、上場企業の対応コスト・開示負担に配慮し、策定・改訂時から一定期間が経過し実務へ の浸透が進んだ箇所等を削除・統合・簡略化し、前回コード改訂時(2021年)以降に法制化された内容との重複排除に 努めるなど、コードのスリム化/プリンシプル化も同時に検討する。あわせて、コードがプリンシプルベースかつコンプラ イ・オア・エクスプレインのアプローチを採っている趣旨の再周知に努める。 Ⅱ.フォローアップと今後の方向性 1.稼ぐ力の向上 〔今後の方向性〕 ⚫ 持続的な成長の実現に向けた経営資源の最適な配分の実現のため、自社の経営戦略・経営課題との整合 性を意識した取締役会の実効的な監督や更なる開示が促進されるよう、以下の点にも留意しつつ、コーポレー トガバナンス・コードの見直し等を検討する。 ① 経営資源の配分先には、設備投資・研究開発投資・地方拠点の整備等・スタートアップ等を含む成長投資、 人的資本や知的財産への投資等、様々な投資先が考えられ、これらの多様な投資機会があることを認識 することが重要である。 (略) ② 投資等のための経営資源の配分(上記①)に関し、現状の資源配分が適切かを不断に検証しているか、例 えば現預金を投資等に有効活用できているかの検証・説明責任の明確化を検討する(cash hoarding問題)。 -7- コーポレートガバナンス改革の実質化に向けたアクション・プログラム2025 コーポレートガバナンス・コード改訂関連の記載(抜粋)(2/2) Ⅱ.フォローアップと今後の方向性 2.情報開示の充実・投資家との対話促進 〔今後の方向性〕 ⚫ 上場企業の総会前開示の取組を更に促すべく、総会前開示に係る要請を受けた企業の対応状況を有価証券 報告書レビューによりフォローアップしつつ、コーポレートガバナンス・コードの見直し等を検討するとともに、環境 整備に向け制度横断的な検討を進める。 3.取締役会等の機能強化 取締役会が上記の役割を果たすためには、取締役会の議論が実効的なものとなるよう、議題設定や運営の工夫 が必要であり、執行側のみにおもねることなく自律的に機能し、議長や独立社外取締役を含む取締役をサポートす る取締役会事務局が重要な役割を果たす。取締役会の機能がモニタリングに特化すれば、事務局の機能は監督と 執行をつなぐ結節点として一層重要となるとの指摘や、有事においては事務局機能の重要性が更に増すとの指摘 がある。 -8- アクション・プログラム2025が示唆する検討の方向性 【全体】  コードのスリム化/プリンシプル化 【個別】  多様な投資機会があることを認識することの重要性、現状の資源配分が適切かを不断に検証して いるか、例えば現預金を投資等に有効活用できているかの検証・説明責任の明確化  有価証券報告書の定時株主総会前の開示  取締役会事務局の機能強化 -9- コーポレートガバナンス・コードのスリム化/プリンシプル化(1/2) 現状の課題に関する指摘  形式的なコンプライにとどまっている場合もあり、各主体の間で取組みの質に大きな差がある。  プリンシプルベースかつコンプライ・オア・エクスプレインのアプローチを採っている趣旨に立ち返り、すべて の企業・投資家において、共通して必要となる対応に加え、各主体の規模や置かれた状況に応じ、きめ細か く必要な取組みを検討することが必要。  コードを形式的に遵守することより、むしろ丁寧にエクスプレインすることも重要。 企業・投資家の声 ✓ 企業からは、他の開示書類との重複もあり開示負担が大きいとの声。 ✓ 投資家からは、企業の対応が実質化され、必要な情報が適切に開示されることが重要であるとの声。 諸外国の状況 ✓ 諸外国では、コンプライ・オア・エクスプレインの対象とせずに、企業に対するアドバイスや各原則への対応 方法の具体例等を示している例(英、独等)があり、これにより、企業の開示負担を軽減しつつ、コードへの 対応の実質化が図られている。 ✓ 英国のコーポレートガバナンス・コード改訂(2024年)においても、企業の報告負担を最小限に抑えつつガ バナンスの質を向上させることを意図して、的を絞ったアプローチを採用。 - 10 - コーポレートガバナンス・コードのスリム化/プリンシプル化(2/2)  以上を踏まえ、プリンシプルベースを超えて具体的な規定ぶりとなっている項目も多い補充原則を中心に、 以下のとおり再整理を行うことが考えられる。 再整理の方向性(案) ① 現行実務等に照らし、引き続き、重要性が認められ、かつ、コンプライ・オア・エクスプレインの規律に付す る必要性が認められる補充原則は原則に格上げする ② 現行実務等に照らし、コンプライ・オア・エクスプレインの規律の対象とするよりも、他の原則等の補助的 な位置づけとしつつ、より実質的な対応を促進することが適切と考えられる箇所については、原則の「考 え方」を新設した上で記載する ③ その他、実務への浸透が進む等によりコードに記載する必要性が低下した箇所、コード策定以降にルー ル化され重複が生じている箇所等は削除する (補充原則の再整理のイメージ) - 11 - (参考)「コーポレートガバナンス・コード原案」序文(1/2) コーポレートガバナンス・コードの策定に関する有識者会議 2015年3月5日 本コード(原案)の目的 (前略) 7. 会社は、株主から経営を付託された者としての責任(受託者責任)をはじめ、様々なステークホルダーに対す る責務を負っていることを認識して運営されることが重要である。本コード(原案)は、こうした責務に関する説明 責任を果たすことを含め会社の意思決定の透明性・公正性を担保しつつ、これを前提とした会社の迅速・果断 な意思決定を促すことを通じて、いわば「攻めのガバナンス」の実現を目指すものである。本コード(原案)では、 会社におけるリスクの回避・抑制や不祥事の防止といった側面を過度に強調するのではなく、むしろ健全な企 業家精神の発揮を促し、会社の持続的な成長と中長期的な企業価値の向上を図ることに主眼を置いている。 本コード(原案)には、株主に対する受託者責任やステークホルダーに対する責務を踏まえ、一定の規律を求 める記載が含まれているが、これらを会社の事業活動に対する制約と捉えることは適切ではない。むしろ、仮に、 会社においてガバナンスに関する機能が十分に働かないような状況が生じれば、経営の意思決定過程の合理 性が確保されなくなり、経営陣が、結果責任を問われることを懸念して、自ずとリスク回避的な方向に偏るおそ れもある。こうした状況の発生こそが会社としての果断な意思決定や事業活動に対する阻害要因となるもので あり、本コード(原案)では、会社に対してガバナンスに関する適切な規律を求めることにより、経営陣をこうした 制約から解放し、健全な企業家精神を発揮しつつ経営手腕を振るえるような環境を整えることを狙いとしている。 8. 本コード(原案)は、市場における短期主義的な投資行動の強まりを懸念する声が聞かれる中、中長期の投資 を促す効果をもたらすことをも期待している。市場においてコーポレートガバナンスの改善を最も強く期待してい るのは、通常、ガバナンスの改善が実を結ぶまで待つことができる中長期保有の株主であり、こうした株主は、 市場の短期主義化が懸念される昨今においても、会社にとって重要なパートナーとなり得る存在である。本コー ド(原案)は、会社が、各原則の趣旨・精神を踏まえ、自らのガバナンス上の課題の有無を検討し、自律的に対 応することを求めるものであるが、このような会社の取組みは、スチュワードシップ・コードに基づくこうした株主 (機関投資家)と会社との間の建設的な「目的を持った対話」によって、更なる充実を図ることが可能である。そ の意味において、本コード(原案)とスチュワードシップ・コードとは、いわば「車の両輪」であり、両者が適切に相 まって実効的なコーポレートガバナンスが実現されることが期待される。 - 12 - (参考)「コーポレートガバナンス・コード原案」序文(2/2) コーポレートガバナンス・コードの策定に関する有識者会議 2015年3月5日 「プリンシプルベース・アプローチ」及び「コンプライ・オア・エクスプレイン」 9. 本コード(原案)において示される規範は、基本原則、原則、補充原則から構成されているが、それらの履行の 態様は、例えば、会社の業種、規模、事業特性、機関設計、会社を取り巻く環境等によって様々に異なり得る。 本コード(原案)に定める各原則の適用の仕方は、それぞれの会社が自らの置かれた状況に応じて工夫すべき ものである。 10. こうした点に鑑み、本コード(原案)は、会社が取るべき行動について詳細に規定する「ルールベース・アプ ローチ」(細則主義)ではなく、会社が各々の置かれた状況に応じて、実効的なコーポレートガバナンスを実現す ることができるよう、いわゆる「プリンシプルベース・アプローチ」(原則主義)を採用している。 「プリンシプルベース・アプローチ」は、スチュワードシップ・コードにおいて既に採用されているものであるが、そ の意義は、一見、抽象的で大掴みな原則(プリンシプル)について、関係者がその趣旨・精神を確認し、互いに 共有した上で、各自、自らの活動が、形式的な文言・記載ではなく、その趣旨・精神に照らして真に適切か否か を判断することにある。このため、本コード(原案)で使用されている用語についても、法令のように厳格な定義 を置くのではなく、まずは株主等のステークホルダーに対する説明責任等を負うそれぞれの会社が、本コード (原案)の趣旨・精神に照らして、適切に解釈することが想定されている。 株主等のステークホルダーが、会社との間で対話を行うに当たっても、この「プリンシプルベース・アプローチ」 の意義を十分に踏まえることが望まれる。 11. また、本コード(原案)は、法令とは異なり法的拘束力を有する規範ではなく、その実施に当たっては、いわゆ る「コンプライ・オア・エクスプレイン」(原則を実施するか、実施しない場合には、その理由を説明するか)の手法 を採用している。すなわち、本コード(原案)の各原則(基本原則・原則・補充原則)の中に、自らの個別事情に照 らして実施することが適切でないと考える原則があれば、それを「実施しない理由」を十分に説明することにより、 一部の原則を実施しないことも想定している。 (後略) - 13 - ご議論いただきたい事項 【総論】 (1) 企業の持続的な成長と中長期的な企業価値向上というコーポレートガバナンス改革の趣旨に照らして、 コーポレートガバナンス・コードが果たしている役割と、コーポレートガバナンス改革の実質化に向けた 今後の課題をどう考えるか。そうした課題を踏まえ、アクション・プログラム2025で示唆された検討の方 向性(スライド9)について、どう考えるか。 (2) コーポレートガバナンス・コードの中で、形式的な遵守にとどまっていることにより、ガバナンス改革の実 質化の妨げとなっている原則はあるか。 【コーポレートガバナンス・コードのスリム化/プリンシプル化】 (3) 補充原則を中心に再整理を行うこと(スライド11の方向性)について、どう考えるか。 (4) 上記に加えて、スリム化の観点から、複数箇所に記載されている同一のテーマの事項を統合すること について、どう考えるか。 (例) 株主に関する記載(第1章(株主の権利・平等性の確保)・第5章(株主との対話))、 サステナビリティ課題への対応、経営戦略等の策定・実行等と経営資源の配分 【プリンシプルベース、コンプライ・オア・エクスプレインの趣旨の再周知】 (5) プリンシプルベース、コンプライ・オア・エクスプレインの趣旨を再周知する観点から序文を設けることに ついて、どう考えるか。 - 14 -

資料6

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資料7

参考3 トップ > 会議等一覧 > 知的財産戦略本部 > 構想委員会 > 第1回構想委員会 議事次第 第1 回 構 想 委員 会 議事次第 令和7年11月21日(金) 16:00~18:00 中央合同庁舎8号館5階 共用A会議室 議事 1. 開会 2. 議事 (1)「知的財産推進計画2026」の検討について (2)意見交換 3. 閉会 配付資料 資料1 : 知的財産推進計画の検討体制とスケジュールについて(PDF/ 489KB) 資料2 : 「知的財産推進計画2026」の検討に向けた論点について(PDF/ 7.4MB) 資料3 : 竹中委員提出資料(PDF/1,038KB) 資料4 : 村松委員提出資料(PDF/443KB) 参考資料1: 構想委員会構成員名簿(PDF/224KB) 参考資料2: 構想委員会の開催について(PDF/110KB) 参考資料3: 構想委員会の運営について(PDF/184KB) 参考資料4: 知的財産推進計画2025(PDF/6.7MB) 参考資料5: 「知的財産推進計画2025」(概要)(PDF/3.4MB) 【連絡先】 内閣府知的財産戦略推進事務局 〒100-8914 東京都千代田区永田町1-6-1 内閣府本府庁舎3階[地図(PDF:48KB) ] TEL.03-3581-0324 ページトップへ戻る

資料8

参考4 構想委員会構成員名簿 いずも 出雲 みつる 株式会社ユーグレナ 代表取締役社長 ま み 日本電鍍工業株式会社 代表取締役 充 いとう 伊藤 麻美 A.T.カーニー株式会社 日本法人会長 CIC Japan 会長 うめ ざわ たか あき 梅澤 高明 えんどう のぶひろ 日本電気株式会社 株式会社エムスクエア・ラボ 代表取締役 阿部・井窪・片山法律事務所 パートナー弁護士 信博 遠藤 かとう ゆ り こ 加藤 百合子 くろだ かおる 黒田 薫 くろはし 国立情報学研究所 所長 京都大学 特定教授 さだお 黒橋 禎夫 しおの まこと 株式会社経営共創基盤 取締役CLO すぎ むら じゅ んこ 杉村 純子 プロメテ国際特許事務所 代表弁理士 誠 塩野 たけなか 竹中 俊子 としこ ワシントン大学 たつもと ひろふみ 筑波大学 た な か り 田中 里沙 学校法人先端教育機構 博文 立本 さ と う じ けい すけ 田路 圭輔 と き た たかひと なか むら い 伊知哉 は た の 波多野 ち ビジネスサイエンス系教授 富士通株式会社 中村 や むつこ 睦子 はやし 事業構想大学院大学 iU(情報経営イノベーション専門職大学) けんさく 骨董通り法律事務所 けいこ 株式会社東京大学TLO のりえ TMI総合法律事務所 ほんだ まつやま 圭子 松山 智恵 むらまつ しゅんすけ 村松 わたなべ 渡部 俊亮 としや 俊也 学長 桜坂法律事務所 パートナー弁護士 弁護士知財ネット 理事長 ふくい 本田 グループCEO 東京科学大学 理事・副学長 総合科学技術・イノベーション会議議員 いづみ 健策 代表取締役社長 学長 代表取締役社長 林 福井 マネージングディレクター ロースクール教授 株式会社エアロネクスト 隆仁 時田 ◎ 特別顧問 代表弁護士 代表取締役社長 パートナー弁護士 株式会社ソニー・ミュージックエンタテインメント 代表取締役社長 グループCEO 東京科学大学 副学長 ◎:座長 ( 2025 年 10 月時点、敬称略、五十音順 )

資料9

参考5 無形資産可視化ツール 活用マニュアル(概要版) Ver 1.0 公益財団法人 全国中小企業振興機関協会 1 無形資産可視化ツールマニュアル(概要版) 目 次 1. 無形資産を活用することの重要性 P.3 2. 無形資産可視化ツールの全体像・骨子 P.5 3. 無形資産可視化ツールの使用が想定される場面 P.7 4. 無形資産可視化ツールを活用した効果 P.8 5. ツール1 将来ビジョン実現ツリーの作成ポイント P.9 6. ツール2 業務フロー・商流表の作成ポイント P.11 7. ツール3 KPI管理表の作成ポイント P.15 8. 検討体制 P.16 9. 【付録】無形資産可視化ツールの記載例 P.18 2 無形資産可視化ツールマニュアル(概要版) 企業価値を継続的に高めていくためには無形資産の獲得・強化が重要です 無形資産を活用することの重要性 無形資産を活用した企業成長(イメージ) 日本企業が欧米企業と同様の成長を実現するためには、 無形資産の投資・活用を通じた差別化により付加価値を向 上させることが重要とされています。 無形資産とは捉えにくいものですが、企業の強みや差別 化ポイントの源泉となる経営資源のうち形のないものの総称 をいいます。 内閣府の「知財・無形資産ガバナンスガイドライン」では、「知財・無形資 産」を特許権、商標権、意匠権、著作権といった知財権に限られず、技 術、ブランド、デザイン、コンテンツ、データ、ノウハウ、顧客ネットワーク、信 頼・レピュテーション、バリューチェーン、サプライチェーン、これらを生み出す組 織能力・プロセスなど、幅広い知財・無形資産を含めています。 出所:内閣府 3 無形資産可視化ツールマニュアル(概要版) 知財・無形資産ガバナンスガイドライン Ver.2.0 バックキャスティングによって重要な無形資産やその獲得方法(打ち手)を特定することで 現状に捕らわれない飛躍的な成長が可能となります バックキャスティングとは バックキャスティングとは、未来から逆算して施策を考えるこ とを言います。 現状の製品・サービスを磨き上げたり、作業効率を高めた りすること(フォアキャスティング)は、日々の改善として重要 ですが、市場がガラリと変わるような破壊的なイノベーションが 起きた時、太刀打ちできなくなることがあります。変化の激し いVUCAの時代においては、業界・市場でどのようなポジショ ンにいるべきか、そもそもどの業界・市場を取りに行くべきかな ど、「数年先の経営方針」を描いたうえで、その姿を実現する ために必要な無形資産やその獲得方法(打ち手)を逆算 するバックキャスティングで考えることが重要です。 × 改善の積み重ねでは、急激な環境変化に対応できない 現状 + 改善の積み重ね = 延長線上の姿 ○ ありたい姿から逆算することで、本当に必要なことが明確に ありたい姿 - 現状 4 無形資産可視化ツールマニュアル(概要版) = 必要な無形資産 必要な打ち手 バックキャスティング :ありたい姿から逆算 し何をすべきか考える ありたい姿 延長線上 の姿 現状 フォアキャスティング :現状の積み重ねの 先にある延長線 ■コラム カメラ付き携帯電話の登場によってデジタルカメラ市場が破壊された ことを目の当たりにしたスティーブ・ジョブズは、自社の携帯型音楽プレー ヤーiPodも、携帯電話に音楽再生機能が付けば駆逐されるだろうと危 機意識を持ち、自らその携帯電話を作ってしまえばよい(携帯電話メー カーになる)と考え、通信技術などの無形資産獲得に注力しました。 iPhoneはこのようなバックキャスティングで誕生しました。 (出所:スティーブ・ジョブズⅡ,講談社をもとに作成) 無形資産可視化ツールを使うことでバックキャスティングによる無形資産投資施策の策定と 実践が簡単に行えます 3つの無形資産可視化ツール 無形資産可視化ツール1 将来ビジョン実現ツリー ➢ ありたい姿・経営方針を言語化し、方向性を定める ➢ 経営方針の実現に必要な無形資産と、その獲得・強化施策 (打ち手)をロジカルに整理 無形資産可視化ツール3 KPI管理表 ➢ 経営方針の実現に向けた打ち手と数値目標(KPI) を紐づけて実行管理 無形資産可視化ツール2 業務フロー・商流表 ➢ 現在有する無形資産と、経営方針の実現に必要な無形資 産を可視化 ➢ 現在と将来の差分に基づき、無形資産の獲得・強化方法 (打ち手)を整理 5 無形資産可視化ツールマニュアル(概要版) ■ポイント 内閣府が提供する「経営デザインシート」、経済産 業省が提供する「ローカルベンチマーク」、中小企業庁 が提供する「みらデジ」を合わせて活用することで、より 高解像度での分析・検証が可能となります。 無形資産可視化ツールは、より詳細にありたい姿に結び付く無形資産を特定し、無形資産 の獲得に必要なKPIを設定して経営方針の実現までスケジュール管理をすることができます 無形資産可視化ツールと経営デザインシート・ローカルベンチマークの関係性 As-Is ツール2 To-Be Gap ツール3 業務フロー・商流表 ツール1 KPI管理表 将来ビジョン実現ツリー ありたい姿 価値創造プロセス 現在の経営資源 打ち手 経営方針 必要な無形資産 打ち手 KPI 移行戦略/ ストーリー 市場適合性・ 市場分析 必要な経営資源 無形資産の獲得・ 強化に向けた打ち手 詳細化 詳細化 詳細化 詳細化 ローカルベンチマーク(非財務) 経営デザインシート 業務フローと その差別化ポイント 移行のための課題 自社の目的・特徴 資源 4つの視点 経営者・業務・環境・体制 価値 ビジネスモデル 内部資源 必要な資源 経営方針 ・ 提供してきた価値 事業ポートフォリオ 各事業の役割・相互関係等 ・ 商流における利害関係者 とその選定理由 自社の目的・特徴 経営デザインシート(全社用) ・ ・ ビジネスモデル 事業ポートフォリオ 各事業の役割・相互関係等 価値 経営方針 提供する価値 ・ 自社の強み 知財 提供先から得てきたもの 自社の強み 提供先から得るもの ・ ・ 知財 外部調達資源(誰から) ・ 自社の強み 知財の果たしてきた役割 知財 外部調達資源(誰から) ・ 全社課題(弱み) これまでの外部環境 +要素 解決策 資源 内部資源 ・ 自社の強み 知財 「これから」の姿への移行のための戦略 これからの外部環境 こ れ ま で +要素 -要素 解決策 必要な資源 ・ 移行のための課題 ・ 提供する価値 知財の果たす役割 ・ -要素 知財 ・ こ れ か ら ビジネスモデル・ 知財の役割 資源・知財 出所:内閣府 経営デザインシート https://www.kantei.go.jp/jp/singi/titeki2/keiei_design/index.html 経済産業省 ローカルベンチマーク https://www.meti.go.jp/policy/economy/keiei_innovation/sangyokinyu/locaben/ 6 無形資産可視化ツールマニュアル(概要版) 無形資産可視化ツールは、企業内外の様々な場面でコミュニケーションを円滑にするツール となります 無形資産可視化ツールの使用が想定される場面 社内 【支援者】 【金融機関】 対話 作成・対話 作成支援 経営支援 戦略議論 【社長】 対話 作成支援 【経営幹部】 経営支援 融資 【連携企業】 対話・連携 【投資家】 オープン・イノベー ション 【入社希望者】 相互理解 対話 7 無形資産可視化ツールマニュアル(概要版) 事業承継・ 権限委譲 作成・ 対話 【後継者・中核人材】 作成・ 対話 ビジョンの共有・ KPIの管理 【従業員】 対話 IR 投資 無形資産可視化ツールは、無形資産の可視化や経営方針の設定に効果的なだけでなく、 従業員との目標の共有や金融機関との信頼関係の構築に役立ちます 無形資産可視化ツールを使用した効果 • 既に取り組みを始めている成長のための活動を目指すべき姿と関連させることができ、当社の強みであ る無形資産の強化を実行できる形で可視化できた。 社長 • 支援者と対話を繰り返すことで、頭の中の漠然とした無形資産が徐々に明確になっていった。自社の 強み(無形資産)がツールに落とし込まれたことで、これまで進めてきた戦略が正しかったと確信をも つことができた。 • 従来は会社の現状を整理するようなタイミングがなかったため、改めて自社について考える機会となった が、事業展開のスピードが速いゆえに、ツールを機動的に使いこなせるようにしていきたいと思った。 自社の経営方針が明確になり、自部門 の取り組むべき課題が見える化された。ま た、社長との議論を通してKPI管理表を作 成することで、日々の業務に対して全社 的な目標を持って取り組むことができる。 支援者 従業員 金融機関 • 無形資産が可視化されることで経営 に対する安心感を感じることができた。 • 経営方針が明確になり、安心して融 資や経営支援ができる。 • 自然とバックキャストで経営方針について対話することができた。また、経営方針を分解して打ち手を示すこ とで、社長に腹落ちしていただけるツールとなっている。 • 商流・業務フローと経営資源のマトリクスで考えることで重要な無形資産を簡単にあぶりだすことができる。 • KPI管理表を作成すれば経営方針の実現に向けた打ち手を日々のタスクまで落とし込んで社長や従業員 と認識合わせができる。 8 無形資産可視化ツールマニュアル(概要版) ツール1 将来ビジョン実現ツリーの作成ポイント 手順に沿って記載することで必要項目を記載できます 手順2.ありたい姿をどう実現するかを記載 します。 移行戦略 / ストーリー 「ありたい姿」と「経営方針」を繋ぐ要素とな これまで る事項を記載します。ありたい姿と経営方 針を繋ぐ役割を果たす要素を記載すること で、「存在意義」全体の背景やストーリーが 読み取りやすくなるようにします。一方で、あ これから りたい姿と経営方針の関連性が明確であ る場合には、記載を省略してもかまいません。 手順3.経営方針を記載します。 ありたい姿を実現のための経営戦略の方向 性・基本行動指針、全社目標を記載します。 客観的に達成状況がわかる内容であること が望ましいため、財務目標を設定することを 推奨しています。 ① ありたい姿をどう実現するか ⑤ 1 優先度 高・中・低 How それはどうやって 手順1.誰にどの程度求められているか ありたい姿を記載します。 企業理念、重視する価値観、自社が解決しよう とする社会的課題、企業文化・企業風土、キャッ チフレーズ等を記載します。自社らしさを振り返り、 社会や市場へ伝えたいイメージを再考してみてくだ さい。 ビジネスとしての成立可否、ビジネス上のリス ク等について ② 【手順1~3 記載のポイント】 経営方針とありたい姿を行ったり来たりしながら繰 り返し検討していくことが肝要です。そうすることで、 経営者自らが腹落ちする「ありたい姿」や「経営方 針」が言語化できます。 経営方針 ③ ④ どうやって実現するのか 市場適合性・市場分析 ありたい姿 How 手順4. どうやって実現するのかを記載します。 どうやって実現するのか 優先度 高・中・低 どうやって実現するのか 優先度 高・中・低 「経営方針」をどうやって実現するのかという「打ち手」を記載します。 「経営方針」を実現するために必要となる要素を分解して検討します。 (例えば、営業利益の向上が目標であれば、営業強化や経費の削減などを記載します。) また、優先度を「高・中・低」のいずれかで決定します。 How 2 それはどうやって 3 それはどうやって How 4 それはどうやって 5 それはどうやって 6 それはどうやって ③ ④ ⑤:ツール3へ転記 9 無形資産可視化ツールマニュアル(概要版) 1 ~ 6 :⑤における優先順位 ツール1 将来ビジョン実現ツリーの作成ポイント 手順に沿って記載することで必要項目を記載できます 移行戦略 / ストーリー これまで ありたい姿 【手順5・7記載のポイント】 • 手順5の「市場適合性・市場分析」の整理には、将来 の「ありたい姿」の実現の観点から、市場動向・規模、競 ① 合他社との比較、現状の顧客リピート率や新規開拓率 からリスク等を検討することが肝要です。 ありたい姿をどう実現するか • 手順7の「移行戦略/ストーリ」の「これまで」の整理には、 将来の「ありたい姿」の実現の観点から、現在の企業理 ② 念、経営意欲、企業の沿革、強み・弱み、組織体制、 事業計画から、自社について振り返ってみると整理がし やすくなります。 これから 手順7. 移行戦略/ストーリーを記載します。 ③ 「これまで」のビジネスモデル等から、「これから」どのような シナリオで「経営方針」を実現していくのかを記載します。 経営幹部や従業員、外部のステークホルダーが一見して ④ 理解できるような記載となっていることが重要です。 どうやって実現するのか ⑤ 1 優先度 高・中・低 How それはどうやって それはどうやって 誰にどの程度求められているか ビジネスとしての成立可否、ビジネス上のリス ク等について 経営方針 How どうやって実現するのか How 2 市場適合性・市場分析 優先度 高・中・低 手順5.市場ニーズやリスクを整理します。 マーケットやリスクの観点から経営方針・打ち手 の実現可能性について整理します。 マーケットイン(ユーザーのニーズを基準にしてビジ ネスを検討する)の考え方で打ち手を検討して いくことが重要です。 どうやって実現するのか 優先度 高・中・低 How 3 それはどうやって 4 それはどうやって 5 それはどうやって 手順6.④の打ち手をさらに分解した打ち手を記載します。 6 それはどうやって 「④の打ち手」をどうやって実現するのかという「打ち手」を記載します。(例えば、④の打ち手が「労 働生産性の向上」であれば、「DXツールの活用」や「新規設備の導入」などが考えられます。) また、優先順位を1⃣~6⃣のいずれかで決定します。 ③ ④ ⑤:ツール3へ転記 10 無形資産可視化ツールマニュアル(概要版) 1 ~ 6 :⑤における優先順位 ツール2 業務フロー・商流表の作成ポイント 手順に沿って記載することで必要項目を記載できます □ これまでの 価値創造プロセス □ これからの 価値創造プロセス 手順1.矢羽根に自社の業務フローを記載します。 業務①~⑤に自社の業務フローを記載します。 (例:営業⇒設計⇒試作⇒製造⇒納品 など) 事業活動・業務1 社内キーパーソン ヒト 社外キーパーソン モノ カネ 知的財産権 情報 (特許・商標・意匠など) その他の無形資産 事業活動・業務2 事業活動・業務3 事業活動・業務4 事業活動・業務5 手順2.無形資産を洗い出します。 ・「現在ある無形資産」は黒字(そのうち重要な無形資産は太字) ・「獲得・強化すべき無形資産」は赤字で記入します。 他社と比較して自社の「希少性のある無形資産は何か?」「模倣が困難な無形資産は何か?」という観 点で洗い出していくと整理がしやすくなります。また、記載する無形資産は、自社にとって重要だと思うもの を選択して記載し、全ての項目を記入する必要はありません。 「ヒト」の記載例:社員の~のノウハウ、社外の~のネットワーク 「モノ」の記載例:他社では導入していない~機器・設備 「カネ」の記載例:~への投資資金 「情報 知的財産権(特許等)」の記載例:~の特許権、~の意匠権 「その他(無形資産等)」の記載例:~の技術(クローズ戦略を取っている知財等) 無形資産の 獲得・強化に向けた打ち手 KPI管理表へ転記 凡 例 11 無形資産可視化ツールマニュアル(概要版) 現在保有する無形資産 :黒字での記載 上記のうちより重要な無形資産 :太字にて表示 将来必要な無形資産 :赤字での記載 ツール2 業務フロー・商流表の作成ポイント 手順に沿って記載することで必要項目を記載できます □ これまでの 価値創造プロセス □ これからの 価値創造プロセス 手順3.無形資産獲得・強化のための取り組みを記載します。 事業活動・業務1 事業活動・業務2 事業活動・業務3 事業活動・業務4 事業活動・業務5 赤字の「獲得・強化すべき無形資産」を獲得するための取り組みを記載します。ここに記載する取り組みは「ツール1将来ビ ジョン実現ツリー」の⑤打ち手を細分化したもので、ツール3KPI管理表の打ち手(小分類)と紐づいています。 社内キーパーソン ヒト 社外キーパーソン モノ 打ち手 (小分 類) カネ 知的財産権 情報 (特許・商標・意匠など) ⑤打ち手をさらに細分化 その他の無形資産 無形資産の 獲得・強化に向けた打ち手 KPI管理表へ転記 凡 例 12 無形資産可視化ツールマニュアル(概要版) 現在保有する無形資産 :黒字での記載 上記のうちより重要な無形資産 :太字にて表示 将来必要な無形資産 :赤字での記載 ツール2 業務フロー・商流表の作成ポイント 手順に沿って記載することで必要項目を記載できます 価値創造プロセスとは、企業活動において、どのような人的資本投資等が無形資産に紐づき、その無形資産がどのように企業の資源や強みを生み出 し、どういった製品・サービスを生産し、どのような価値を提供しているのかといった因果関係を指します。 手順4.「これまでの価値創造プロセス」を記載します。 どのような人的資本投資等が無形資産に紐づき、その無形資産がどの ように企業の資源や強みを生み出し、どういった製品・サービスを生産し、 どのような価値を提供しているのかといった「価値創造プロセス」を記載し ます。 次ページの「これまでの価値創造プロセス」を参照して作成します。 13 無形資産可視化ツールマニュアル(概要版) 手順5.無形資産獲得・強化のための取り組みを記載します。 「これから(To-Be)の価値創造プロセス」を記載する際には、経営方針 の実現を念頭に置いたうえで、経営方針を実現した際に「お客様へ提供 する価値」を整理し、それを実現するために必要となるビジネスモデルとそ のビジネスモデルに必要となる資源を記載します。「これから(To-Be)」 の記載には、将来からのバックキャストでの検討プロセスが重要です。 ツール2 業務フロー・商流表の作成ポイント(これまでの価値創造プロセス) 回答欄を埋めて記載例に当てはめることで「これまでの価値創造プロセス」が作成できます 記載例(価値創造プロセス): xx社は「B」によって「A」 というxx社にしかない強みがあり、それによって、「C」という効果がもたらされている。 以上を踏まえ、「D」という製品・サービスを製造・販売しており、それによって「E」という価値を提供している。 項目 質問 ビジネスモデル 貴社の製品・サービスを生む過程は、具体的にどのような流れか。 A.資源 競合他社と比較し、貴社に特筆して存在する資源や強みとして感じるポイ ントはどこか。(ヒト・モノ・カネ・情報の観点で) B.資源 競合他社であってもマネができないような、貴社の資源や強みを生み出して いる秘訣はなにか。 C.資源 貴社に特筆して存在する資源や強みによって、どのような効果がもたらされて いるのか。 D.製品・サービス 貴社の提供している製品・サービスは何か。 E.提供価値 貴社の製品・サービスは、誰に対してどんな価値が提供されるのか。 14 無形資産可視化ツールマニュアル(概要版) 回答 ツール3 KPI管理表の作成ポイント 手順に沿って記載することで必要項目を記載できます 経営方針 将来ビジョン実現ツリー ③を転記 打ち手 (大分類) 将来ビジョン実現ツリー ④を転記 目標設定 KPI (目標値) 現在値 打ち手 (中分類) 打ち手 (小分類) 将来ビジョン実現ツリー ⑤を転記 業務フロー・商流表 の「打ち手」を転記 目標設定 KPI (目標値) 経営方針 手順1 経営方針を記 載します。 将来ビジョン実現ツリー の「経営方針」を転記し ます。 手順2 打ち手(大分類) を記載します。 将来ビジョン実現ツリーの④ 打ち手を転記します。その際、 KPIを設定し、現状値を記 載します。 「現在値」は、経営デザイン シートの「これまで」(「資源」 「ビジネスモデル」「価値」) やローカルベンチマークの非財 務面(「商流・業務フロー」 「4つの視点」)で整理して いると記載しやすくなります。 15 無形資産可視化ツールマニュアル(概要版) 手順3 打ち手(中分類) を記載します。 将来ビジョン実現ツリーの⑤ 打ち手を転記します。 手順4 打ち手(小分類)を 記載します。 打ち手(中分類)をさらに細 分化した打ち手(小分類)を 記載します。その際、KPIを設 定し、現状値を記載します。 「現在値」は、経営デザインシー トの「これまで」(「資源」「ビジ ネスモデル」「価値」)やローカ ルベンチマークの非財務面 (「商流・業務フロー」「4つの 視点」)で整理していると記載 しやすくなります。 現在値 無形資産可視化ツールの検討体制 氏名 所属 肩書 加賀谷 哲 之 一橋大学大学院 経営管理研究科経営管理専攻 教授 黒 澤 元 国 一般社団法人 埼玉県商工会議所連合会 広域指導員 西 祐喜雄 独立行政法人中小企業基盤整備機構 事業承継・再生支援部 部長 長谷部 智一郎 デロイト トーマツ ファイナンシャルアドバイザリー合同会社 シニアヴァイスプレジデント 森 一般社団法人 日本金融人材育成協会 会長 俊 彦 (氏名五十音順) 16 無形資産可視化ツールマニュアル(概要版) バージョン 1.0 公表日 令和6年1月9日 17 無形資産可視化ツールマニュアル(概要版) 改定内容 初版発行 【付録】無形資産可視化ツールの記載例 18 無形資産可視化ツールマニュアル(概要版) 無形資産可視化ツール1 移行戦略 / ストーリー ありたい姿 市場適合性・市場分析 これまで 高い試作技術、他社にはない生産技術を強み として業務に取り組んできた。業界の需要が好 調であったため、高い売上を実現することができ た。 これから 業界の需要が落ち着いてきているなか、今後も 継続的に売上向上を図るため、営業力の強化 を図る。また、限られたリソースを効率的に活用 するため労働生産性を向上させる。併せて、多 角化戦略として新商品開発・販売を実現して いく。それらの打ち手を実施することで、経営方 針の実現と更なる従業員の幸福・社会貢献を 実現する。 従業員の幸福を実現する 高付加価値製品の提供によるより大きな社 会への貢献 誰にどの程度求められているか ●●業界の市場規模は年間●●万円であ る ありたい姿をどう実現するか ビジネスとしての成立可否、ビジネス上のリス ク等について ・今期の売上は●●億円で売り上げ達成を 見込める ・新製品の利益率は●●を想定している。た だし、多角化であるため●●の場合、●●と いうリスクを想定している。 ① ② 従業員の給与向上・福利厚生に資するとと もに、幅広い業界に製品を提供する 経営方針 ③ 売上高●●億円・営業利益●●億円を達 成する How ④ どうやって実現するのか 優先度 高・中・低 どうやって実現するのか 労働生産性の向上 それはどうやって DXツールの活用 優先度 高・中・低 どうやって実現するのか 営業力の強化 2 それはどうやって 新型設備の購入 3 優先度 高・中・低 新製品の開発・販売 How How How ⑤ 1 将来ビジョン実現ツリー(全社 ) それはどうやって 新規顧客への営業強化 4 それはどうやって 営業人材の強化 5 それはどうやって 研究開発部門の立ち上 げ 6 それはどうやって 新商品プロモーションの 実施 ③ ④ ⑤:ツール3へ転記 19 無形資産可視化ツールマニュアル(概要版) 1 ~ 6 :⑤における優先順位 無形資産可視化ツール2 業務フロー・商流表(●●事業) ☑ これまでの 価値創造プロセス 高い試作技術、他社にはない生産技術や大手企業とのネットワークを活かしながら、提携工場とのアライアンスによる柔軟な生 産体制を構築し、多くの業界の大手企業に対して、他社では実現できない技術と迅速なデリバリーを提供してきた。 ☑ これからの 価値創造プロセス 上記のビジネスモデルを存続・強化しつつ、更なる売上向上を図るため、労働生産性の向上や営業力の強化を図るとともに、変 化の激しい経営環境に対応するため新商品を新市場に展開する多角化戦略に注力する。 提案・営業 設計・開発 試作 製造 検査・納品 社内キーパーソン 新規顧客への営業力 営業スキルの高い中 途人材 研究開発部門の高い 設計技術 高品質の試作技術 迅速・柔軟な生産体 制 高品質の検査能力 社外キーパーソン アライアンス企業経由 の受注 提携工場との臨時対 応体制 大手企業とのネット ワーク 営業支援DXシステム 他社にない生産設備 ヒト モノ カネ 研究開発投資資金 知的財産権 研究開発部門の知財 対応機能 (特許・商標・意匠など) 情報 特許を取得している生 産技術 大手企業の受注実績 OJT教育体制 その他の無形資産 無形資産の 獲得・強化に向けた打ち手 KPI管理表へ転記 FA/CRMシステム導入 フィールドセールス強化 中途採用の強化 営業スキルマップ作成 研究開発人材の確保 ・・・ 5Sの徹底 ・・・ 凡 20 無形資産可視化ツールマニュアル(概要版) 例 現在保有する無形資産 上記のうち重要な無形資産 将来必要な無形資産 :黒字での記載 :太字にて表示 :赤字での記載 無形資産可視化ツール3 経営方針 将来ビジョン実現ツリー ③を転記 経営方針 売上高●●億円・営 業利益●●億円を 達成する 打ち手 (大分類) 将来ビジョン実現ツリー ④を転記 労働生産性の向上 目標設定 KPI (目標値) ・・・ 現在値 KPI管理表(●●事業) 打ち手 (中分類) 打ち手 (小分類) 目標設定 将来ビジョン実現ツリー ⑤を転記 業務フロー・商流表 の「打ち手」を転記 (目標値) KPI 現在値 FA/CRMシステムの 導入 システム稼働率 ●% システム未稼 働●% フィールドセールスの強 化 テレアポ件数 ●件 テレアポ件数 ●件 中途採用の強化 中途採用人数 ●人 中途採用人 数 ●人 営業スキルマップの作 成 スキルマップ作成 率 ●●% スキルマップ作 成率 ●●% ・・・ 新規顧客への営業 強化 営業力の強化 受注件数 ●●件 受注件数 ●●件 営業人材の強化 新製品の開発・販売 21 無形資産可視化ツールマニュアル(概要版) ・・・ ・・・

資料10

参考6 コーポレートガバナンス・コードにおける知的財産・無形資産に関する項目についての意見 一般社団法人電子情報技術産業協会 法務・知的財産部会 1. はじめに コーポレートガバナンス・コード(以下、 「CGC」)の改訂に向けた議論が進められる中、当協会といた しましては、企業の持続的な成長と価値創造を促す観点から、CGC における知的財産・無形資産に関す る項目を維持することを強く要望いたします。 2.その主な理由 (1) 企業の行動変容の促進とガバナンス文化の定着 CGC に知的財産・無形資産に関する項目が明記されたことは、経営層が知的財産・無形資産を専門 部署の管轄事項に留まらず、競争力の源泉であり、経営の根幹をなす重要マターであると認識する 大きなきっかけとなりました。これにより、経営層と知財部門との対話が活発化し、全社的な価値創 造に取り組む企業が増えつつあります。 しかし、こうした意識改革や行動変容は、まだ一部の企業で始まったに過ぎず、社会全体に浸透した とは到底言えない状況です。この黎明期において、CGC という企業統治の羅針盤から知的財産・無 形資産に関する記載を削除することは、この重要な変化の潮流が停滞、あるいは後退してしまうリ スクが極めて高いと考えます。 (2) 価値創造ストーリーの構築と投資家との対話の本質 企業価値向上の本質は、各社が自らの強みである知的財産・無形資産をどのように活用し、将来の収 益や持続的成長に結びつけていくかという「価値創造ストーリー」を構築し、それをステークホルダ ー、とりわけ投資家と共有することにあります。 CGC の記載は、企業に対して、この価値創造ストーリーの構築と、それに基づく情報開示や投資家 との建設的な対話を促す強力なインセンティブとして機能してきました。知的財産・無形資産は、企 業の将来性や成長性を評価する上で不可欠な要素であり、CGC がその開示と対話を促すことで、資 本市場全体の質の向上にも貢献していると考えます。 (3) 知財・無形資産活用の浸透に向けた継続的な後押しの必要性 「知財・無形資産ガバナンスガイドライン」等は、価値創造経営を目指す企業にとって重要な手引き となるものですが、その理念や具体的な実践がより多くの企業に根付き、定着するには、なお一層の 働きかけが求められる段階です。多くの企業にとって、知的財産・無形資産を経営戦略に統合する取 り組みは発展途上にあり、まさにこれから本格化しようとしています。 このような状況下で、より広範な企業に本質的な取り組みを促すためには、CGC という公式な枠組 みの中に明確な指針を残すことが不可欠です。旗印となる記載を後退させることは、我が国企業の 価値創造に向けた取り組みの基盤を揺るがすものと危惧いたします。 以上

資料11

参考7 コーポレートガバナンスコードにおける知的財産・無形資産に関する項目についての意見書 一般社団法人日本知的財産協会 1.はじめに 当協会は産業界における知財ユーザーを代表する団体として、日本の産業競争力の強化及び投資 家との建設的な対話を実現する観点から、コーポレートガバナンスコードの再整理においては知 的財産・無形資産に関する項目がコンプライ・オア・エクスプレインの対象として維持されるこ とを強く要望致します。 2.その主な理由 (1) 日本の産業競争力の源泉としての知的財産・無形資産の重要性との矛盾 現在における企業価値は、研究開発の成果としての技術力やブランド、デザイン、ノウハウ、 データ、ソフトウェアなど、様々な無形資産によって構成されている。特に日本企業におい ては、継続的なイノベーションによって生まれた知的財産(IP)などの無形資産が、グロー バル市場において持続的な競争優位を確立するためには不可欠な要素であり、更なる企業 価値の向上に大きな役割を果たしている。 しかしながら、経営層やステークホルダーにその意識が十分に浸透しているかといえば、 そうとはいいきれない側面もあった。 こうした中で、2021 年 6 月の改訂によってコーポレートガバナンスコードに盛り込まれた 知的財産・無形資産に関する規定は、経営層が知的財産・無形資産と経営戦略を一体とし て適切に把握・管理・活用し、その取り組み状況を開示するための指針となるものであり、 経営層の意識の向上にも一定の役割を果たしてきた。 万一これを新設の「考え方」へ移行または削除することになれば、規律としての実効性を 後退させるものである。また、経営戦略や事業戦略を実現させるための知財戦略という認 識が、ようやく経営層に浸透しつつあるこのタイミングでの見直しは、この 5 年で醸成さ れてきた認識を否定する動きとも捉えかねられず、その場合、企業価値向上のための実務 的指針を失うこととなり、日本の産業発展にとって悪影響となりかねない。 また、政府は知財立国の実現や無形資産を中心とした経営の推進を国家的課題として示し ており、知的財産・無形資産の創出・管理・活用を支えるガバナンスの強化は、一貫した 政策方針であると言える。 コーポレートガバナンスコードから当該記載を実質的に後退させることは、こうした政策 方針との整合性を欠き、一貫性を損なうものとなるなど、様々な影響が懸念される。 (2) グローバルな投資基準やガバナンストレンドに逆行する懸念 欧米のマーケットをはじめ、多くの主要な海外市場においては、無形資産への投資や知財 戦略に関する情報開示が、機関投資家にとって重要な投資判断の基準となっている。 こうした実態を鑑みると、日本においてコーポレートガバナンスコードから当該事項を後 退させることは、グローバルな開示基準や機関投資家の期待・要請に反するものであり、 日本のマーケットにおける透明性・信頼性に対する評価を損なう恐れがある。 (1/2) (2/2) (3) 経営における知財活動の重要性の低下懸念 コーポレートガバナンスコードに知的財産・無形資産に関する規定が盛り込まれたことに より、経営層と知財部門とのコミュニケーションの機会が増加し、経営における知財活動 の重要性に関する理解が進み、知財部門にとってもより経営に資する知財活動を進めるた めの環境が整いつつある。 たとえば経営会議や経営委員会における重要事項の判断において、知財観点での検討がな される企業が増加しており、知財部門が経営判断に直接関与する機会が広がっている。こ うした前向きな流れは、当該規定が規律としての実効性を発揮するようになってきたこと が一助となっている。 これを後退させることは、経営における知財活動の重要性に対する認識の低下を招き、ひ いては企業価値の創造に対して負の影響を及ぼしかねない。 以 上

資料12

参考8 2025 年 12 月 16 日 内閣府 知的財産戦略推進事務局 御中 一般社団法人無形資産経営推進協会 件名:コーポレートガバナンス・コードの「知的財産への投資」に関連する意見 (意見) 現状「補充」原則に位置付けられている「知的財産への投資」(以下、「知財投資」)を 「格上げ」し、新たなコーポレートガバナンス・コード(以下、CGC)の「原則」(柱)と して明確化することを要望する。 (理由) ①「知財投資」は「実務への浸透」が道半ばであり、より浸透を加速させる必要 性が高い 今回の見直しには、既に実務へ浸透したもの、常識化したもの、法制化されたもの等まで あえて CGC にいわば重複的に盛り込む必要はない、という観点が示されている。この点にお いて、「知財投資」という文言は、2021 年の CGC 改訂において当時の CGC 改訂の有識者委員 の多くの意見を受けて新たに導入されたばかりのものである。これにより、経営層レベルで の「知財戦略委員会」の開催実例が増加傾向にある。一方で、依然としてその数は限られて おり、「実務へ浸透」したものとはいえず、常識化もされていない。まして、人材投資のよ うに法制面から明確な要請がなされているわけでもない。そのため、まさに CGC においてよ り明確に「原則」に記載する必要性の高いものといえる。 ②重視すべき中長期の視点において「知財投資」は要である。 短期志向のショートターミズムが問題視される中、「知財投資」は主に中長期において効 果が表れることは国内外の実証研究の結果として蓄積されている。そのため、企業の取り組 みの中でも特に優先的に取り組むべき事項といえる。このような中長期の「価値創造ストー リー」の中核となるテーマについて、取締役会レベルでの体系的な議論とモニタリングを促 すには、補充原則としてではなく、CGC における独立した「原則」として位置付けることが 最も明快かつ有効な手段であると考える。 なお、現状議論されている「スリム化」に関し付言すれば、CGC は、会社法等のハード・ ローを補完するソフト・ローとして設計されたもののはずであり、過度のスリム化により、 こうした役割が弱まりかねない点には十分に留意すべきである。 以上

資料13

参考9 2025 年 12 月 16 日 「知財投資・活用戦略の有効な開示及びガバナンスに関する検討会」事務局 御中 一般社団法人 知財・無形資産ガバナンス協会 理事長 菊地 修 コーポレートガバナンス・コード改訂における「知的財産」規定の堅持と拡充に関する意見書 掲題に関して、以下の通り、当協会の意見を提出させて頂きますので、ご高配の程よろしくお願い申し上 げます。 【意見の概要】 現在、金融庁の「コーポレートガバナンス・コード(以下、CGC)の改訂に関する有識者会議」にて議論さ れている CGC のスリム化の方向性については、形式的な記述を削ぎ落とし、実質的なガバナンスの深 化を目指すものとして賛同いたします。 ただ一方で、補充原則 3-1③および 4-2②に規定されている「知的財産」への投資・活用に関する項目 は、スリム化の対象とすべきではないと考えます。 知的財産への戦略的投資と活用は、企業の競争力と 協創力の強化を通じて持続的な成長と企業価値の創造に資する重要な要素であり、不確実性が高まる 経済環境において、中核的な役割を担います。これこそが、国内外の投資家が日本企業に期待している アクションでもあるためです。 また、高市政権が掲げる「新技術立国」の実現や、日本企業の PBR(株価純資産倍率)の向上には多 面的な取り組みが必要ですが、その中でも知的財産の戦略的活用は不可欠な要素です。よって、当該項 目を削除や後退させるのではなく、むしろ企業経営者が明確にコミットすべき最重要アジェンダとして堅 持・拡充することを強く要請いたします。 【意見の内容】 1. 企業価値向上の鍵は「知的財産などの無形資産」にある(経済合理性) 現在、多くの日本企業は、PBR の向上に取り組んでおりますが、その重要な要因の1つには、「財務諸 表に表れにくい無形資産」の価値が市場に十分に伝達・可視化・説明・活用されていない点にあると考え ます。各種推計では、S&P500 構成企業の企業価値に占める無形資産の比率が非常に大きい(90%以 上)とされる中、日本企業がグローバル市場で再評価されるためには、有形資産中心の経営から、知的 財産などの無形資産を中心とした経営への転換が不可欠となっています。 CGC における知的財産に関する規定は、この転換を促し、成長投資の質と説明責任を高めるうえで有 効な枠組みです。2021 年の CGC 改訂により日本企業において高まってきたこの機運をスリム化を理由 に後退させることは、資本市場が求める価値創造の方向性と整合しない可能性があり、投資家の失望を 招くおそれがあります。 1 2.「人的資本」と「知的財産」は、企業価値創造メカニズムで一体不可分な関係にある CGC のスリム化議論において、「知的財産が人的資本と並列されていることへの違和感」等の見解が 示されておりますが、企業価値創造のメカニズムにおいて、この両者は密接に連関しています。 これま で官民挙げて推進してきた人的資本(ヒト)への投資は、それ自体がゴールではなく、その活動により革新 的な技術、ブランド、ノウハウ等の「知的財産(成果)」を生み出すために行われるものです。すなわち、人 的資本投資の主要な成果の一つが知的財産の創出であり、この知的財産を活用することによって、マー クアップ率の向上にもつながり、ROI(投資対効果)は大きく改善していきます。 したがって、両者への投資をセットにして取締役会で監督させ、情報を開示する現行の CGC の構成 は、企業の価値創造にとって最も合理的なものであり、これを分離や削除することは、企業の価値創造ス トーリーを分断し、経営戦略としての説得力を低下させるリスクがあります。 3.「CGC」と「知財・無形資産ガバナンスガイドライン」の役割分担 「政府による知財・無形資産ガバナンスガイドライン等が既に存在するため、CGC での規定は重複で はないか」との意見もあろうかと存じますが、両者は明確にその役割が分担されています。 ガイドライン は、CGC の原則に則して執行側が実行すべき実務的な経営指針(How)を示すことが目的である一方で CGC では、取締役会によるモニタリングや資源配分の意思決定(What/Why)などを担っています。 特に、知的財産への投資にあっては、その性質上、多くの不確実性やリスクを伴うため、取締役会がそ のリスクをテイクして経営を執行する必要があります。CGC から知的財産に関する規定を除くことは、 CGC 改訂により日本企業で大いに高まってきた知的財産を積極的に投資・活用する機運を冷やすだけ でなく、そのガバナンスに対する重要性も低下させるメッセージを市場や関係者に発信することになり、日 本企業の価値創造やイノベーションに向けた推進力を弱めてしまうリスクもはらんでいます。 【具体的な要望】 以上の観点から、当協会としては、金融庁における CGC の改訂において、以下の対応が実行されること を強く要望いたします。 1. 補充原則 3-1③および 4-2②の戦略的維持 CGC 改定では、形式的な記述の削減は進めつつも、企業価値の源泉である「知的財産への投 資・監督」については、現状の規定を残存させるか、より積極的な対応を促すこと。 2. 経営トップ(CEO)のアジェンダとしての明確化 知財投資を専門部署任せにせず、経営トップが自らの言葉で「人材や知財などの無形資産がい かに将来のキャッシュフローと企業価値(時価総額)に貢献するか」を語るべきである旨を、CGC の改訂やガイドライン等に明記すること。 3. 企業価値(時価総額)における「無形資産割合」向上の視点 知的財産をガバナンスの対象とする目的を、「事業の保護(守り)」にとどめず、「企業価値の創造 (攻め)、たとえば PBR や時価総額における無形資産の貢献度の向上」に主眼を置いた経営へ転 換することであることを積極的に提唱すること。 以 上 2

資料14

参考10 2025年(令和7年)12月16日 「知財投資・活用戦略の有効な開示及びガバナンスに関する検討会」事務局 御中 意 見 書 弁護士 有志 (順不同) 伊藤真、井奈波朋子、小野寺良文、黒田薫、小池眞一、 近藤惠嗣、相良由里子、重冨貴光、白木裕一、末吉亙、 鶴由貴、服部誠、林いづみ、平野惠稔、藤川義人、 松山智恵、室谷和彦、矢部耕三、山口裕司、山田威一郎 当職らは、 「知財投資・活用戦略の有効な開示及びガバナンスに関する検討会」にお いて、金融庁の「第1回コーポレートガバナンス・コードの改訂に関する有識者会議 (令和7年度) 」 (2025年10月21日)でのコーポレートガバナンス・コードの 改訂に関する議題が取り上げられる旨を仄聞し、議論の参考に供するため、以下のと おり意見を申し上げる。 第1 意見の趣旨 コーポレートガバナンス・コード補充原則3-1③及び4-2②の知的財産への 投資に関連する記述を、コードのスリム化の対象として削除することには慎重な対 応が求められ、むしろサステナビリティへの取組や人的資本への投資と合わせてよ り実効的な規定として充実させるように議論が行われるべきである。 第2 意見の理由 1 有識者会議で出された意見 金融庁が2025年6月30日に公表した「コーポレートガバナンス改革の実質 化に向けたアクション・プログラム2025」 (以下「アクション・プログラム」と いう。)は、「コード見直しの際には、上場企業の対応コスト・開示負担に配慮し、 策定・改訂時から一定期間が経過し実務への浸透が進んだ箇所等を削除・統合・簡 略化し、前回コード改訂時(2021年)以降に法制化された内容との重複排除に 努めるなど、コードのスリム化/プリンシプル化も同時に検討する。」ことが記載さ れている。 2025年10月21日に開催された金融庁の「第1回コーポレートガバナン 1 ス・コードの改訂に関する有識者会議(令和7年度)」 (以下「有識者会議」という。) も、アクション・プログラムを踏まえて、コーポレートガバナンス・コードの見直 しが議論され、その中で、コードのスリム化/プリンシプル化についても議論の俎 上にのったものと理解している。 有識者会議では、上田メンバーにより、 「私は、むしろ、いろいろなものがコード に詰め込まれて複雑になってないかというところを感じております。恐らくコーポ レートガバナンス・コードというのは、日本政府が行っておられる経済政策の中で 最も成功した施策の1つではないかと思います。というのが、いろいろな政府レベ ルで行われている企業関係の政策について、割と出口がコーポレートガバナンス・ コードになっていると感じるものがございます。いずれももちろん経営上重要であ るということは間違いないのですが、必ずしもコーポレートガバナンス・コードの スコープかなというと、すごく広く解釈すればそうなんですが、若干ちょっと違う かな、広過ぎるかなというものも散見できます。例えばで言いますと、知財の部分、 サステナビリティの中で人的資本と並んで入っていますけれども、若干違和感のあ る配置でありますし、しかも知財については、政府レベルにおいて知財ガバナンス のガイドラインのようなものを出されておると思います。」という意見が出されて いる。 2 当職らの意見 企業法務に携わる弁護士である当職らとしては、上記意見には賛同致しかねる。 以下、その理由を述べる。 現在のコーポレートガバナンス・コードの補充原則3-1③には、自社のサステ ナビリティについての取組みの適切な開示と並べて、 「上場会社は、」 「人的資本や知 的財産への投資等についても、自社の経営戦略・経営課題との整合性を意識しつつ 分かりやすく具体的に情報を開示・提供すべきである。」ことが規定されており、補 充原則4-2②には、自社のサステナビリティを巡る取組みについての基本的な方 針の策定と並べて、 「取締役会は、」 「人的資本・知的財産への投資等の重要性に鑑み、 これらをはじめとする経営資源の配分や、事業ポートフォリオに関する戦略の実行 が、企業の持続的な成長に資するよう、実効的に監督を行うべきである。」と規定さ れている。 人的資本と知的財産は、合わせて知的資本とも呼ばれる共通性を有し、共に企業 を成長させる源泉となるものであるから、知的財産を人的資本と並べて記載しても 何ら異質ではない。コーポレートガバナンス・コードは、ソフトローとして生成発 展してきたものであり、企業が対応すべき経営課題を柔軟に取り込んで改訂されて 2 きた。補充原則3-1③及び4-2②は、2021年の改訂により追加されたばか りであり、アクション・プログラムが想定するような「策定・改訂時から一定期間 が経過し実務への浸透が進んだ箇所等」に当たるとは言えない。また、2021年 以降に「法制化された内容」ではないから「重複排除」の対象でもない。 知的財産への投資に言及する日本のコーポレートガバナンス・コードは、比較法 的に珍しいようにも考えられるが、 「知財・無形資産の投資・活用戦略の開示及びガ バナンスに関するガイドライン」 (以下「知財・無形資産ガバナンスガイドライン」 という。 )Ver.1.0が指摘していたように、 「日本企業が、依然として有形資 産投資を重視する傾向にあり、新たな知財・無形資産に投資することによって、付 加価値の高い新たな製品やサービスに転換し、新たなマーケットを創出していこう という試みにおいて、欧米・新興国の先進的な競合相手の後塵を拝している」背景 もある。また、中国証券監督管理委員会が改訂し2026年1月1日から施行する 「上市公司治理准則(上場会社コーポレートガバナンス・コード)」1にも、企業の イノベーションについての言及が見られるなど、国の成長戦略の一環として、コー ポレートガバナンス・コードにおいて知的財産への投資に言及することの意義は大 きいのである。 知財・無形資産ガバナンスガイドラインVer.1.0及びVer.2.0は、 コーポレートガバナンス・コードの2021年改訂を受けて策定されたものである が、企業の成長力の源泉となる知的資産への投資の記述がコーポレートガバナン ス・コードから削除される対象となるとしたら、梯子を外された格好となる。この 数年、各社は知的財産への投資に関する開示や戦略の実行に努めてきたが、コーポ レートガバナンス・コードがスリム化によって、具体的な政策課題を欠いた無味乾 燥な内容になると、近年の企業の開示や戦略の実行に向けた努力に冷や水を浴びせ ることになる。企業において知的財産への投資に関する開示に積極的に取り組んで きた機運が低下することは、投資家が企業の収益性や成長性を判断する材料も減る 1 https://www.csrc.gov.cn/csrc/c101954/c7589726/content.shtml (原文中国語、執筆者 仮訳) 第3条第1項 上場企業は、イノベーション、協調、環境保護、開放、共有といっ た発展理念を実践し、優れた起業家精神を育み、積極的に社会責任を果たし、健全 なコーポレートガバナンスの実践を確立すべきである。 第65条第2項 上場企業のインセンティブメカニズムは、企業のイノベーション 能力と開発能力の向上に資するものでなければならず、上場企業の持続可能な発展 を促進し、上場企業とその株主の正当な権利と利益を損なってはならない。 3 ことになるから、 「若干違和感のある配置」という抽象的な理由で、コーポレートガ バナンス・コードから知的財産への投資の記述が削除されるならば、マイナスの影 響が大き過ぎると言わざるを得ない。 有識者会議では、金融庁提出の事務局説明資料(資料4)2において、「経営資源 の配分先には、設備投資・研究開発投資・地方拠点の整備等・スタートアップ等を 含む成長投資、人的資本や知的財産への投資等、様々な投資先が考えられ、これら の多様な投資機会があることを認識することが重要である。」と述べられているし、 弁護士である武井メンバーからも、 「各種の研究開発投資であったり、地方への投資 であったり、人への投資であったり、知財への投資。こういう事項がどうしても後 回しになっちゃう」が、 「成長投資をきちんと促す」ことを確認し、 「コードの趣旨 はショートターミズムなのではなく中長期の向上なのだということを分かるよう な形にしたほうがいい」ことが適切に述べられている。また、シッソンメンバーが、 意見書(資料7)3で、「ガバナンスの基準の向上において引き続き重要な役割を果 たしている規定を過度に簡素化したり、削除したりしないよう注意する必要がある。 大手の日本企業の間では実務が改善しているかもしれないが、市場全体では進捗状 況にばらつきがある。簡素化によって、実務がプライム市場よりも遅れていること が多い中小企業の期待を不用意に薄めるべきではない。したがって、規定を時期尚 早に削除又は再分類することについては慎重に行うよう強く求める。 (原文英語・執 筆者仮訳) 」と述べていることも傾聴に値すると考える。 有識者会議において、今後、コーポレートガバナンス・コードの改訂に向けた議 論が深められ、知財投資・活用戦略の有効な開示及びガバナンスに関する検討会に おいても、これを踏まえた議論が進められていくものと思われるが、2021年の 改訂により追加されたばかりのコーポレートガバナンス・コード補充原則3-1③ 及び4-2②の知的財産への投資に関連する記述を、コードのスリム化の対象とし て削除することには慎重な対応が求められ、むしろサステナビリティへの取組や人 的資本への投資と合わせてより実効的な規定として充実させるように議論が行わ れるべきである。 以 上 2 https://www.fsa.go.jp/singi/revision_corporategovernance/siryo/20251021/04.pdf 7頁。 3 https://www.fsa.go.jp/singi/revision_corporategovernance/siryo/20251021/07.pdf 2頁。 4