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経済財政諮問会議 2026年6月30日

2026-06-30一次資料(出典)

議事録・配布資料の全文(政府公表資料より。要約でなく原文に基づく参照用)。

資料1

経済財政諮問会議(令和8年第10回)議事次第 令和8年6月30日(火) 18時00分~18時30分 総理大臣官邸4階大会議室 1. 開 会 2. 議 事 経済財政運営と改革の基本方針(骨太方針)に向けて 3. 閉 会 (資料) 資料1 経済財政運営と改革の基本方針 2026 原案

資料2

資料 1 経済財政運営と改革の基本方針 2026 (原案) 令和8年6月 30 日 経済財政運営と改革の基本方針 2026 (目次) 第1章 マクロ経済運営の基本的考え方 ―――――――――――――1 1. 「強い経済」の実現に向けて 2.将来世代への責任を果たす持続可能な経済社会の構築 第2章 日本の成長力強化と安全・安心の確保 ―――――――――― 4 1.「強い経済」の実現 (1)「日本成長戦略」の推進 (2)成長基盤の強化 (3)強い地域経済の構築 (4)人材力の強化・人材総活躍 2.強い外交・安全保障の確立 (1) 外交力・安全保障・情報力の強化 (2) 経済安全保障の強化 3.国民の安全・安心の確保 (1) 防災・減災・国土強靱化の推進 (2) 東日本大震災・能登半島地震への対応 (3) 治安・安全の確保 第3章 責任ある積極財政に基づく「中長期経済財政計画」 ――――22 1. 「強い経済」の構築と「財政の持続可能性」の実現 2.全世代型社会保障の構築 (1) 社会保障と税の一体改革の推進 (2) 成長型経済に合わせた持続可能な社会保障制度 3.主要分野ごとの重要課題と取組方針 (1)少子化対策と日本の未来を担うこども・若者のための政策の推進 (2)公教育の再生、研究活動の活性化 (3)戦略的な社会資本整備の推進 (4)持続可能な地方行財政基盤の強化 4.計画推進のための取組の強化 第4章 当面の経済財政運営と令和9年度予算編成に向けた考え方 ― 34 1.現下の経済情勢と当面の経済財政運営について 2.新たな予算編成の在り方と令和9年度の基本方針 第1章 マクロ経済運営の基本的考え方 1. 「強い経済」の実現に向けて 日本と日本人の底力を活かし、総合的な国力を徹底的に強くしていく。これが高市内閣 の使命である。その中核にあるのが、「強い経済」の実現であり、従来の延長線上ではな い、新たな経済財政運営への抜本的な転換を図る。 我が国は今、人口減少、安全保障環境の変化、エネルギー制約、自然災害リスクの増大、 AIを始めとする技術革新、国家間の産業・技術競争の激化など、歴史的な構造変化の中 にある。こうした時代において、経済社会を発展させて国民生活を守っていくためには、 従来の発想のままでは限界がある。 また、景気回復の力をもっと強く、そして、地方や中小・小規模事業者、中・低所得者 の皆様に広げ、日本全国で「景気が良くなってきた」と実感していただけるよう、景気の 体感温度を高めていかなければならない。 しかし、我が国の潜在成長率は、長年にわたる「未来への投資不足」により、主要先進 国と比べて低迷している。その低迷は、単なる生産能力の不足にとどまらず、科学技術力、 産業競争力、 人材力といった成長の質的基盤の弱体化を伴っている。 長年のデフレにより、 企業や家計には固定的な物価・賃金観が定着し、国内投資やイノベーションが抑制されて きた。第二次安倍内閣以降のポリシーミックスにより、経済は「デフレではない状況」へ 移行したものの、新たな成長型経済への本格的な移行は道半ばである。 なお、主要先進国では、市場に委ねるだけでは解決できない課題に対応するため、官民 が連携して大規模かつ長期的な財政支出を伴う産業政策が大きな潮流となっている。これ は、経済財政運営の在り方そのものに関するコペルニクス的転回であり、我が国において も、こうした時代の変化を踏まえた国家運営が求められている。 高市内閣は、投資不足の流れを断ち切るとともに、世界的な産業政策の大競争時代に対 応していくため、「責任ある積極財政」の考え方の下、政府が一歩前に出て、官民手を携 え、戦略分野への投資を進める。様々なリスクを最小化する「危機管理投資」や先端技術 を花開かせる「成長投資」を大胆かつ戦略的に進めるとともに、我が国を世界有数の知的 創造・イノベーションの拠点とするべく、スタートアップの振興などによって、中長期的 な成長力強化につなげていく。あわせて、民間投資を引き出すために政府予算の予見可能 性を確保する観点から、 財政単年度主義の弊害を是正し、 予算の作り方を根本から改める。 こうした危機管理投資・成長投資を通じた技術革新や資本の質の向上等による生産性向 上の取組に加え、教育・人材育成等を通じ、経済力の基盤となる人材力を強化する。また、 絶え間ない規制・制度改革により、企業が将来にわたって挑戦できる環境を整備し、我が 国の供給構造を強化する。 政府全体に求められるのは、 新たな財政運営方針の下、 財政単年度主義の弊害を是正し、 これまでの慣行や前例を躊躇なく見直して、国力強化と国民生活の向上に真に必要な施策 を構想し、具体化し、果断に実行していくことである。国民の力、ピープルズパワーを日 本の成長の原動力に変えていくという姿勢が求められている。 1 「強い経済」の実現に向けては、適切な金融政策運営が行われることも非常に重要であ る。政府は、引き続き、日本銀行と緊密に連携し、デフレに後戻りすることのない物価安 定の下での持続的な経済成長の実現に向け、 一体となって取り組んでいく。 日本銀行には、 1 内外の経済情勢等を十分に注視しつつ、日本銀行法 、政府・日本銀行の共同声明2の趣旨に 沿って政府と緊密に連携し、経済・物価・金融情勢に応じて適切な金融政策運営を行うこ とにより、賃金と物価の好循環を確認しつつ、2%の物価安定目標を持続的・安定的に実 現することを期待する。 2.将来世代への責任を果たす持続可能な経済社会の構築 「強い経済」の構築と「財政の持続可能性」をバランスよく同時に実現することにより、 今を生きている国民と未来を生きる国民への責任を果たしていく。 こうした「責任ある積極財政」の考え方の下で、財政運営の目標としては、債務残高対 GDP比の安定的低下を中核と位置付けるとともに、市場の信認確保に向けて各種の経済 指標・財政指標を活用した多角的な分析、不確実性を踏まえた分析等を強化する。また、 経済の成長力強化と名目の経済規模の拡大にふさわしい予算編成への転換、 危機管理投資・ 成長投資のための『「強く豊かな日本」投資枠』、補正予算依存からの脱却など、予算編 成の抜本的な見直しの方向性を定める。 このような予算編成の抜本見直しを反映した初めての予算として、令和9年度予算を編 成し、令和9年度(2027年度)を「責任ある積極財政元年」と位置付ける。本基本方針の 第3章を、責任ある積極財政に基づく「中長期経済財政計画」として策定し、計画期間を 2027~2040年度とする。同計画については、経済財政諮問会議において、 「日本成長戦略」 3 4 、「地域未来戦略」 、全世代型社会保障、その他の分野別の点検を踏まえ、計画全体の実 施状況を点検する。 強い経済、持続可能な財政と、質の高い全世代型社会保障とを同時に実現する社会保障改 革を強化する。現役世代の保険料率の上昇を止め、引き下げていくとの方針の下、給付と 負担の見直しの検討、安心して必要なサービスを受けることのできる医療・介護提供体制 の構築、DXやAI・ロボティクスの活用を通じたサービスの質の向上、攻めの予防医療 等に取り組む。 「日本列島を、強く豊かに」していくため、地域における人口減少、インフラ老朽化、 担い手不足といった課題を克服し、強い地域経済、持続可能な地域社会を構築する。この ため、地域のレジリエンスと「稼ぐ力」を高める危機管理投資・成長投資への予算の重点 配分、インフラ整備と産業クラスターの有機的連携を図る。また、デジタル技術の徹底活 用、地方公共団体間の連携の加速、人材育成等を通じて、地域を支えるインフラ、行政サ ービス、医療・介護等のエッセンシャルサービスの維持・効率化、質の向上に取り組む。 また、「AIを前提」として社会や産業、教育の在り方を再構築する時代に入っている 1 日本銀行法(平成9年法律第89 号) 。 「デフレ脱却と持続的な経済成長の実現のための政府・日本銀行の政策連携について(共同声明) 」 (平成25 年1月22 日 内閣府・財務省・日本銀行) 。 3 令和8年●月●日閣議決定。以下「成長戦略」という。 4 令和8年●月●日閣議決定。 2 2 中、一人ひとりが意欲と能力に応じて最大限に活躍できるよう、AI活用と人材育成・確 保・流動化、人材総活躍を一体で進める。 人口減少下においても我が国の成長力と国民の安心が確保されるよう、少子化傾向の反 転と人口減少に対応した社会経済の再構築の両面にわたる対策を推進する。省庁間の縦割 りを排し、少子化傾向の反転、人材希少社会における社会経済の活力維持、全世代型社会 保障の構築、持続可能な地域社会の構築に取り組む。このため、有識者会議を含め人口戦 略本部における推進体制を強化し、2026年末を目途に一貫した総合的な戦略(「人口総合 戦略(仮称)」)を策定すべく検討を進める。その際、併せて将来必要となる労働力人口 の規模についても検討する。 本基本方針を含む内閣の重要政策の実現には、 戦略的かつ効果的な広報が不可欠である。 AIの利活用を含めたネット動向の適時の把握、国民に広く訴求できる多彩な動画発信、 テレビや新聞等を通じたあまねく情報を発信する取組強化、訴求対象に応じた多様な広報 手段の開拓等、あらゆる手段を尽くして内外への効果的で戦略的な政策発信・コミュニケ ーションを抜本強化する。 3 第2章 日本の成長力強化と安全・安心の確保 「強い経済」の実現に向けて、国内投資を拡大し、供給力を強化し、潜在成長率を引き 上げる。そのため、危機管理投資・成長投資を「成長戦略」の中核に位置付け、大胆な措 置を講ずるとともに、エネルギーや資源安全保障、科学技術・イノベーションを始めとす る成長基盤の強化、地域の稼ぐ力、人材力の強化、強い外交・安全保障の確立及び国民の 安全・安心の確保を一体的に推進する。個別施策については、官民投資ロードマップや関 連する政策パッケージにおいて具体化し、本基本方針においては高市内閣の政策の方向性 と重点化の考え方を示す。 1. 「強い経済」の実現 我が国は、生産年齢人口の急速な減少、国際秩序の動揺と地政学リスクの高まり、サプ ライチェーンの脆弱化、AIを始めとする破壊的な技術革新の急速な進展といった構造的 かつ複合的な環境変化に直面している。こうした中で、日本経済の生産性を向上させ、付 加価値創造力と供給力を高め、潜在成長率を引き上げるためには、これまで圧倒的に不足 してきた国内投資を徹底的にてこ入れすることが急務である。経済界における「投資牽引 型経済」へのマインドセットの転換の機運醸成を踏まえ、官民連携を徹底的に強化してい く。 17の戦略分野5を中心として、危機管理投資や成長投資を官民が一体となって大胆かつ戦 略的に進め、日本経済の成長力と国民の安全と安心を確保し、所得を増やし、消費マイン ドを改善し、事業収益を上げ、税収が自然増に向かう「強い経済」の好循環の実現を目指 す。また、我が国を世界有数の知的創造・イノベーションの拠点とするべく、スタートア ップの振興などによって、中長期的な成長力強化を図るとともに、人材力の強化、絶え間 ない規制・制度改革による企業の挑戦を促す環境整備等を通じ、中長期の成長力を引き上 げる。 このため、「成長戦略」を強力に推進し、供給力の強化を目的に、先端技術の社会実装 の実現を重視しながら、政府も一歩前に出て、事業者の予見可能性を高めるための複数年 度にわたる大胆な措置を講じ、具体的な官民投資の実現と投資環境整備の具体化を進めて いく。また、強い地域経済を構築するための「地域未来戦略」、科学技術力の刷新に向け た第7期「科学技術・イノベーション基本計画」6、規制改革の行程を示した「規制改革実 施計画」7等を始め、関連する政府横断的な政策パッケージを相互に密接に連携させ、官民 の総力を挙げた取組や必要となる政策対応を集中的に実施する。 5 AI・半導体、デジタル・サイバーセキュリティ、情報通信、量子、防衛産業、航空・宇宙、海洋、造船、マテリアル (重要鉱物・部素材)、合成生物学・バイオ、創薬・先端医療、資源・エネルギー安全保障・GX、フュージョンエネルギ ー、防災・国土強靱化、港湾ロジスティクス、フードテック、コンテンツの17 分野。 6 令和8年3月27日閣議決定。 7 令和8年●月●日閣議決定。 4 (1) 「日本成長戦略」の推進 「成長戦略」を強力に推進する。同戦略に盛り込まれた全ての具体的施策を着実に実行 に移し、大胆な官民投資を実現する。 (戦略分野への官民投資の実現) 様々なリスクの最小化と社会課題の解決に資する製品・技術等を強化し、「自律性」を 確保するとともに、これを国内外に供給することにより「不可欠性」の確保や成長につな げる危機管理投資。国内における早期の先端技術の社会実装と海外市場への展開を実現し、 イノベーション主導の持続的な成長を牽引する成長投資。これら2つを進めつつ、両者を 貫く成長の加速装置として、豊富な現場データやものづくり基盤等の我が国の強みを最大 限にいかしたフィジカルAIの構築を軸とする「AIトランスフォーメーション(AX)」 を全産業で加速し、人口減少下においても高付加価値を生み出す経済構造への転換を図る。 17の戦略分野における62の主要な製品・技術等8の官民投資ロードマップに盛り込んだ施 策パッケージを着実に実行する。複数年度での予算措置の活用、政府調達や規制改革を通 じた初期需要の創出、研究開発から社会実装に至る一気通貫の支援、人材・データ・計算 資源等の事業基盤の整備、税制・金融面からの大胆な後押し、国際標準化や同志国・グロ ーバル・サウスとの連携強化等を組み合わせて一体的に進め、自律性・不可欠性の確保と 海外市場の獲得を同時に追求する。 なお、これらの官民投資は、足下の収益源の維持、次の稼ぎ頭となる事業の育成、未来 に向けた成長の芽の育成という、異なる時間軸を有することを踏まえ、戦略分野全体をポ ートフォリオとして捉え戦略的に管理し、状況の変化に応じて支援策を調整するなど複線 的なアプローチにより、短期・中長期にわたる持続的な成長の実現を図る。 (分野横断的課題への一体的取組) 17の戦略分野における官民投資を真に実効性あるものとし、その成果を日本全国・全産 業へと広く波及させていくため、官民双方の行動変容による国内投資の推進に資する基盤 整備を総合的・一体的に推進する。 そのため、「成長戦略」に記載した8つの分野横断的課題9へ対応するための施策パッケ 8 フィジカルAI(特にAIロボット) 、フィジカル・インテリジェント・システムの中核を担う半導体、バーティカルA I(領域特化型AI) 、データプラットフォーム、セキュリティの確保された政府・地方公共団体のAX/DX基盤、AI時 代に対応した先進的サイバーセキュリティ製品・サービス、クラウド・データセンター、蓄電池、クラウドネイティブに最 適化された医療DX基盤、自動運転技術、オール光ネットワーク(APN:All-Photonics Network) 、海底ケーブル、次 世代ワイヤレス(非地上系ネットワーク、5G/Beyond 5G(6G)等) 、量子コンピューティング、量子通信・ネットワ ーク、量子センシング、小型無人航空機、艦艇、デュアルユース技術、民間航空機(次期単通路機・次世代航空機) 、無人 航空機、空飛ぶクルマ、ロケット・射場、人工衛星・サービス、月面探査・低軌道技術、海洋無人機(海洋ドローン) 、海 洋状況把握(MDA) 、革新的海底開発技術・システム、次世代船舶、船舶修繕、LNG運搬船、永久磁石、グリーン鉄、 革新的金属部素材、低炭素金属部素材(鉄鋼以外) 、一次原料(鉱石等)及び二次原料(リサイクル材等の循環資源)から の製錬・分離精製、解体選別技術、AI等を活用した複合新素材、バイオものづくり、バイオ医薬品・再生医療等製品等、 ファーストインクラス製品・ベストインクラス製品(医薬品、再生医療等製品) 、感染症対応製品、革新的デバイス(A I、ロボティクス等)を活用した先端医療、ライフログデータ等を活用したヘルスケア関連サービス、次世代型太陽電池 (ペロブスカイト太陽電池等) 、水素等、次世代型地熱、洋上風力、次世代革新炉、GXケミカル、フュージョンエネルギ ー、防災技術、港湾荷役機械、サイバーポート(港湾物流DX) 、次世代型倉庫、植物工場、陸上養殖、食品機械、新規食 品、ゲーム、アニメ、マンガ、音楽、実写の62 個。 9 新技術立国・競争力強化、スタートアップ、金融を通じた潜在力の解放、人材育成、労働市場改革、家事等の負担軽減、 賃上げ環境整備、サイバーセキュリティの8つ。 5 ージ10を着実に実行していく。具体的には、①官民双方の行動変容による国内投資推進のた めの基盤の整備、②サプライチェーン強靱化と国際連携、③グローバル産業の競争力強化 とローカル産業の生産性向上、④スタートアップの技術力も取り込んだイノベーション力 の強化、⑤成長投資を支えるリスクマネーの供給強化と金融機能の高度化、⑥現場・専門 人材の確保・育成、労働市場改革、家事等の負担軽減を通じた多様な人材の活躍環境の整 備、⑦投資と賃上げの好循環を創出する賃上げ環境整備、⑧安全なサイバー空間の確保の ためのサイバーセキュリティ強化、といった課題への対応を着実に進めていく。 (官民投資ロードマップを踏まえた予算・財政運営の接続) 日本成長戦略会議で具体化された17の戦略分野における官民投資ロードマップ、8つの 分野横断的課題への対応策及び投資額、GDP、債務残高対GDP比等の試算を踏まえ、 危機管理投資・成長投資を政府全体の予算編成及び財政運営に明確に接続する。 そのための措置として、危機管理投資・成長投資の『「強く豊かな日本」投資枠』を創 設するとともに、複数年度で予見可能な投資支援策を活用し、各府省庁が、予算の単年度 主義や補正依存に縛られることなく、日本の将来を切り拓く大型投資、研究開発、規制・ 制度改革を中長期視点から構想、提案、実行できるよう促す。 (着実なフォローアップとアップデート) 「成長戦略」の実行に当たっては、必要な政策資源を機動的に投入するとともに、誰が、 何を、いつまでにといった5W1Hを念頭に置いた上で、今後の概算要求段階を含めた予 算編成過程等において、複数年にわたる施策の具体化と施策の実行状況や技術の開発動向 等を踏まえたブラッシュアップや見直しを行う「PDCAメカニズム」を、日本成長戦略 会議の下で定期的に繰り返していく。 あわせて、規制改革・行政改革を一体的に進めることにより、官民の投資を阻害する制 約要因の解消を図るとともに、政策効果の見える化と優良事例の横展開を進める。 (2)成長基盤の強化 ( 「技術で勝ってビジネスでも勝つ」新技術立国) 科学技術・イノベーションを国家戦略の中核に据え、官民連携の大胆な投資により、 「新 11 技術立国」の実現を目指す。まずは、改正産業技術力強化法 を事業者の予見性に配慮し、 積極的な活用を促すなど円滑に施行する。 17 の戦略分野での研究開発・社会実装を中心に、世界の学術フロンティアを先導する取 組などを推進し、日本に強みのある技術や人材育成の継続的な支援を行う。基礎研究や若 手研究者の挑戦的研究の支援、日本人研究者の海外派遣や国際共同研究を通じた先端研究 の推進、高度専門人材等の科学技術人材の育成を進めるとともに、産学共創の拠点の形成 10 例えば、 「スタートアップ総力創出パッケージ」 、 「成長投資を促進するための金融戦略」 、 『労働供給制約社会における中 堅・中小企業の「稼ぐ力」強化戦略』など。 11 産業技術力強化法の一部を改正する法律(令和8年法律第41 号) 。 6 など、それらを支える研究インフラ構築を行う。新たな研究大学群に係る制度新設や産学 連携した学位プログラムの支援、国立研究開発法人 12の機能強化によって、先端科学環境 と産業競争力強化を実現する。さらに、スタートアップ・ファイナンス整備や、防衛調達 を始めとする官公庁による調達、規制・規格の導入による新たな需要創出・拡大にも取り 組む。 加えて、大阪・関西万博において展示された多数の新しい技術・サービス等について、 「万博レガシー」として新たな産業の核となるよう社会実装の実現に取り組む。 (スタートアップ) 「スタートアップ育成5か年計画」13を抜本強化した「スタートアップ総力創出パッケー ジ」14に基づき、スタートアップの研究開発から事業化・社会実装までを一気通貫で支援す る。政府調達におけるスタートアップ比率3%目標の早期達成のための改善計画の策定や、 政府がアンカーテナンシー型15で本格調達することを促進するためSBIR制度16を抜本 強化するとともに、海外トップベンチャーキャピタル(VC)などの海外投資家の戦略的 な呼び込み、M&A市場の活性化など国内外の資金・人材・技術が好循環するグローバル なエコシステムを構築することで、ディープテックを始めとする我が国発のスタートアッ プの成長を促進し、「強い経済」の実現につなげる。 (AX/DXの推進、フロンティアの開拓) 「信頼できるAI」で社会全体を駆動するAXに国を挙げて取り組む。 このため、デジタル行財政改革会議を改組し、人工知能戦略本部、規制改革推進会議等 と一丸となって、AIの開発・利活用に係る法制度やガイドライン等について能動的かつ 抜本的な見直しを行うなど、省庁横断でAX/DXを実行する。改定「人工知能基本計画」 17 等を踏まえ、リスクの適正な管理の下、AI開発・利活用を強化し、開かれたAI主権を 確立しながらAI・データ基盤を整備する。AIに係る法制度、技術や国際連携も含めた 対応を強力に推進するための体制の抜本拡充に取り組む。 「デジタル社会の実現に向けた重点計画」18に基づき、技術革新に対応した自動運転社会 の早期実現に向けた環境整備、信頼性あるデータの利活用に関する環境整備、政府のデジ タル基盤の強靱化・自律性向上やデジタル行財政改革を進める。 地理空間(G空間)情報の充実や利活用に向け、第5期「基本計画」19を2026年度内に策 定し、AI技術の活用など「新たな共通基盤」構築に向けた重点戦略を策定・推進する。 こうしたG空間情報を活用して、宇宙・海洋分野の取組を推進する。宇宙分野では、「宇 12 以下「国研」という。第7期「科学技術・イノベーション基本計画」においては、国立健康危機管理研究機構を含む。 令和4年11月28日新しい資本主義実現会議決定。 14 令和8年5月20日に、内閣官房が策定・公表。 15 政府が民間企業の製品やサービスを安定的な大口顧客として長期契約で購入•利用することを約束することで、売上計上 を可能とし、民間投資を呼び込み、産業を育成する手法。 16 Small/Startup Business Innovation Research。 17 令和8年●月●日閣議決定。 18 令和8年●月●日閣議決定。 19 地理空間情報活用推進基本計画。 13 7 宙基本計画」20及び「宇宙技術戦略」21に基づき、宇宙戦略基金、準天頂衛星、JAXAの 施設設備整備を推進する。また、宇宙輸送の推進や、関連法令の制度検討・審査体制の整 備に取り組むとともに、司令塔機能を担う宇宙開発戦略本部の下で事務局の組織体制の充 実を図り、宇宙基本計画の改定に着手する。海洋分野では、第4期「海洋基本計画」22及び 「海洋開発等重点戦略」23に基づき、低潮線保全等の取組を推進するとともに、「我が国の 北極政策」24の改定に着手する。また、司令塔機能を担う総合海洋政策本部の下で事務局の 組織体制の充実を図る。改正有人国境離島法25に基づき、有人国境離島の保全及び地域社会 維持のための施策を更に充実し、推進する。 (規制・制度改革の徹底) 「規制改革実施計画」を強力に推進する。同計画に盛り込まれた全ての規制改革事項を 着実かつスピード感を持って実行することで、民間投資と技術革新を促進し、企業等が将 来にわたって挑戦できる環境を整備する。 AI時代に対応する規制・制度改革の在り方として、府省庁横断の連携体制を強化しな がら、情報収集・分析の効率化、調査・実証の早期化、各規制改革関連制度の積極活用、 検討期限の事前設定などによる制度改正の迅速化に取り組む。 規制改革推進会議において、 成長戦略に資する新たな議論を行いながら、時代や環境の変化、テクノロジーの進化に合 わせた利用者目線の規制・制度改革を徹底する。AIやドローンなどの新しい技術の社会 実装、医療等データの利活用、ローカルルールの見直しなどを推進するとともに、全国の 移動の足不足の解消に向けて、自動運転やライドシェアについて、安全・安心の確保や適 切な労働環境の確保を前提に、諸外国の事例及び各地域のニーズを踏まえ、必要な取組を 進める。 (企業の経営力向上) コーポレートガバナンスを成長志向型へと転換し、企業と機関投資家の双方が中長期的 な企業価値向上を意識し、必要な成長投資や事業ポートフォリオの見直しが促されるよう、 改訂「コーポレートガバナンス・コード」と「成長投資ガイダンス」の普及・実装を促す。 諸外国とのイコールフッティングを図るとともに、企業の果敢な経営判断を後押しする制 度環境整備を進める観点から、株主総会の在り方等会社法制の見直しの検討を行う。 「知的財産推進計画2026」26に基づき、知的財産・無形資産の活用・保護・標準化の国家 戦略や経営における活用を促進するとともに、コンテンツと連携した日本の魅力の発信、 J-Beauty27など一体的なブランディングによる価値創出等による新たなクールジャパン戦 略を推進する。 20 令和5年6月13 日閣議決定。 宇宙技術戦略(令和7年度改訂) (令和8年2月24 日宇宙政策委員会) 。 22 令和5年4月28 日閣議決定。 23 令和6年4月26 日総合海洋政策本部決定。 24 平成27 年10 月16 日総合海洋政策本部決定。 25 有人国境離島地域の保全及び特定有人国境離島地域に係る地域社会の維持に関する特別措置法の一部を改正する法律(令 和8年法律第●号) 。 26 令和8年6月12日知的財産戦略本部決定。 27 我が国における化粧品、美容家電、美容機器、美容商材、ヘア、ネイル、エステ等の商材・サービス。 21 8 (成長を支える資金供給の促進) 「資産運用立国」の取組を更に発展させ、17の戦略分野等への成長投資や日本企業の事 業再編・再構築を金融面で支えるため、「成長投資を促進するための金融戦略」28を策定す る。金融機関の資金供給・成長支援機能の強化や、厚みのある金融市場の実現、地域金融 力の強化を図る。また、アセットオーナーの機能向上や、家計の安定的な資産形成促進、 オンチェーン金融29の推進を図る。個人向け国債の魅力向上による国内投資家層の拡大を 図る。 (資源・エネルギー安全保障・GXの強化) エネルギーは、国民生活及び国内産業の基盤であり、立地競争力強化のためにも、量と 価格の両面で安定的な供給が不可欠である。中東情勢も踏まえ、資源・エネルギーの対外 依存度の高さや調達先の集中から生じる脆弱性を克服してエネルギー需給構造の強靱化を 図る。 省エネを徹底的に推進しつつ、 我が国の石油等の上流権益の確保や供給源の多角化、 安定的な輸送・流通体制の確保を図る。 2050年カーボンニュートラル目標の実現に向け、「成長戦略」及び「分野別投資戦略」 を踏まえ、危機管理投資の観点から大胆なGX投資を進め、脱炭素電源の最大限活用や燃 料転換30を進める。再エネについては、地域の理解や環境への配慮を前提に、サプライチェ ーンを強靱化し、導入を拡大する。 安全性の確保や地域の理解を大前提に、原子炉の再稼働加速や次世代革新炉の開発・設 置に取り組む。避難道路の整備を含め、地域の実情に応じた原子力防災体制の充実を図る とともに、最終処分に係る調査地域の拡大等に取り組む。また、安全規制の見直しや、再 処理施設稼働を見据え、独立行政法人の設置等保障措置枠組みの強化を検討し、次期通常 国会への法案提出を目指す。 アジア・ゼロエミッション共同体(AZEC)を通じ、アジアにおける脱炭素化に貢献 するとともに、アジアの成長力を取り込んでいく。「アジア・エネルギー・資源供給力強 靱化パートナーシップ(パワー・アジア)」により、アジア各国との協力等を通じ、経済・ エネルギー強靱化を進化させていく。 重要鉱物の供給源の多角化を支援し、南鳥島周辺の海底レアアース資源など、海洋資源 の確保に向けた取組を加速する。また、「循環経済行動計画」31に基づくメタルリサイクル 推進戦略等を通じ、再生資源に係る供給サプライチェーンの強靱化等に取り組む。 28 令和8年●月●日に、内閣官房が策定・公表。 ブロックチェーン上で、トークン化預金、ステーブルコイン等による資金決済が、商流・物流等のデータ管理ともプログ ラムによって連動・一体化される金融。例えば、製造業における受発注や納品に関するデータ管理、貿易実務における書類 管理、金融分野における証券決済等において活用が見込まれる。 30 合成メタンへの燃料転換を含む。 31 令和8年4月21 日循環経済に関する関係閣僚会議決定。 29 9 (3)強い地域経済の構築 ( 「地域未来戦略」の推進等) 47都道府県のどこに住んでいても、安全に生活することができ、必要な医療・福祉や質 の高い教育を受けることができ、働く場所がある社会を目指す。これが、高市内閣が目指 す日本の姿である。 そのために何より重要なことは、 強い地域経済を構築することである。 そのため、これまでの地方創生の取組に加え、強い地域経済の構築に重点を置いた新たな 取組として「地域未来戦略」を強力に推進する。同戦略に基づく投資については、『「強 く豊かな日本」投資枠』も活用し、国が一歩前に出て、大胆な投資促進策とインフラ整備 を一体的に講ずる。地方が持つ伸び代をいかし、新たな産業基盤を作るため、各地に産業 クラスターを戦略的に形成する。あわせて、豊かな生活環境や、若者や女性に選ばれる地 方を実現することにより強い地域経済を下支えしていく。 強い地域経済の構築に向けて、「地域未来戦略」に基づき、積極的な支援を行う。 「戦略産業クラスター計画」においては、官民投資ロードマップに記載された都道府県 を超えた地域ブロック単位で行う、危機管理投資及び成長投資を起爆剤として、それを支 えるインフラ整備や、造船ドック、ロケット射場のような民間クラスター拠点の整備、ク ラスターを構成するサプライチェーン上の関連企業への投資支援を大胆に進める。 また、地域発のアイデアに基づく「地域産業クラスター計画」や「地場産業成長プラン」 を強力に推進するため、「地域未来交付金」を拡充し、成長資金の供給、企業支援、イン フラ整備、特区制度32等を活用した規制・制度改革、産業人材の育成を一体的に進める。さ らに、販路拡大支援や経営力向上に向けたソフト支援を進めるとともに、国の中堅・中小 企業向け設備投資補助金や人材育成支援策を積極的に活用し、地域企業の成長投資、事業 拡大、付加価値向上を支援する。人口減少下においても、成長分野へのリソース配分が可 能となるよう、地域基盤の再構築に取り組む。 地域の中堅・中核企業におけるAI導入を進め、地域AXを推進する。さらに、地方大 学・産業創生法33の施行状況を踏まえ、 地域における若者の修学及び就業の促進を支援する。 47都道府県全体で投資が着実に進んでいるかを確認し、必要な対策を講じていくため、 各地域で投資がどの程度進んだかをきめ細かく把握し、公表する「国内投資マップ」を定 期的に改定し、示していく。その際、個別計画において数値目標の達成に向けて5W1H (施策の意義・中身・期限・担当部署・検討の場・進め方等)を明確化した上でPDCA サイクルを徹底する。また、地方機関も含めた政府を挙げて、地方公共団体のニーズに即 した助言をする体制を構築する。 各地域の特色を踏まえ、日本経済の成長のエネルギーにすべく、「対日直接投資促進プ ログラム(2026)」34に基づく取組を強化し、特区制度や「地域未来交付金」も活用する。 海外のスタートアップやベンチャーキャピタル(VC)の投資誘致を進める。 32 国家戦略特区(スーパーシティ、デジタル田園健康特区、連携“絆”特区等) 、構造改革特区及び総合特区をいう。 地域における大学の振興及び若者の雇用機会の創出による若者の修学及び就業の促進に関する法律(平成30 年法律第37 号) 。 34 令和8年●月●日対日直接投資推進会議決定。 33 10 横浜グリーンエクスポ35の成功に万全を期すとともに、グリーン技術の産業見本市とす る。その開催を契機とし、自然と共生し、持続可能な社会の日本モデルを提示する。 (賃上げ環境整備) 2029年度までの間で、日本経済全体で、実質賃金で年1%程度の上昇、すなわち、持続 的・安定的な物価上昇の下で、物価上昇を年1%程度上回る賃金上昇を賃上げのノルム(社 会通念)として我が国に定着させる。 最低賃金については、2020年代に全国平均1,500円という高い目標(骨太方針202536)の 達成に向け、官民でたゆまぬ努力を継続し、労働生産性の継続的な向上を図ることで、遅 くとも2030年代前半できる限り早期に全国平均1,500円を達成する。 労働供給制約社会においては、賃上げは単なる分配ではなく、人材を惹き付け、消費の 拡大を通じた生産性向上投資を促し、企業の行動変容を促進する「供給力強化」そのもの であり、成長戦略の起点である。「強い経済」の実現には、 「強い中堅・中小企業」が主役 となって地域経済を牽引する必要がある。このため、『労働供給制約社会における中堅・ 中小企業の「稼ぐ力」強化戦略』37に基づき、100億企業や中堅企業から売上高1~10億円 の企業と小規模事業者、ローカル・ゼブラ企業に至るまで、変革に挑む企業に対し、積極 的かつ幅広い支援を行う。また、各種補助金・助成金や、業種横断的なサポート体制の充 実及び活用促進により、 「省力化投資促進プラン」38を着実に実行するとともに、更なる充 実・拡充を図り、 「稼ぐ力」の強化と賃上げの好循環を実現する。 地域経済に与える影響が大きい官公需において、 「官公需における価格転嫁・取引適正化 39 加速化プラン」 により、2027年度末までに、実勢価格を踏まえた予定価格の作成や低入札 価格調査制度又は最低制限価格制度の導入・適用等を100%実施する。また、価格基準の見 直し、進捗状況の見える化や地方公共団体への伴走支援等も実施することで、価格転嫁・ 取引適正化を強力に推進する。 また、交付金等を活用した都道府県・市町村による中小企業の生産性向上支援の取組を 十分に後押しする。 毎年の最低賃金の引上げ額については、こうした政府の取組も踏まえつつ、法定3要素 のデータに基づき、公労使三者構成の中央最低賃金審議会及び地方最低賃金審議会におい て、実態を踏まえた審議決定となるよう、議論いただく。地域別最低賃金の最高額に対す る最低額の比率を引き上げる等、地域間格差の是正を図る。 こうした取組については、骨太方針2025の記載も踏まえて対応する。 (個性を活かした地域づくり) 強い沖縄経済の実現を目指し、沖縄科学技術大学院大学による産学官連携等の産業振興、 「GW2050 PROJECTS」40の早期実現、北部・離島地域振興、こどもの貧困対策やWell-being 35 2027 年国際園芸博覧会(GREEN×EXPO 2027) 。 「経済財政運営と改革の基本方針2025」 (令和7年6月13 日閣議決定) 。 37 令和8年6月24日に、中小企業庁が策定・公表。 38 「新しい資本主義のグランドデザイン及び実行計画2025年改訂版」(令和7年6月13日閣議決定)。 39 令和8年4月6日、賃上げに向けた中小企業等の活力向上に関するワーキンググループ。 40 沖縄の経済界や地元自治体による将来の基地返還跡地と那覇空港との一体的な利用を目指す構想。 36 11 実現に向けた取組等、沖縄振興を国家戦略として総合的に推進する。 「地域未来戦略」の推進に向けて重要な役割を担う北海道開発を推進する。食・観光・ ゼロカーボン北海道を担う生産空間の維持・発展、GXやAI・DX産業の集積促進、北 方領土隣接地域一体での安定振興を進める。ウポポイの充実などアイヌの人々の誇りが尊 重される社会を実現する。 過疎地域、離島、奄美、小笠原、半島、豪雪地帯等の条件不利地域対策に取り組む。 (持続可能で活力ある国土の形成と「交通空白」の解消) 持続可能で活力ある日本列島を実現するため、二地域居住も活用した地域生活圏と新た な広域圏の形成や、令和の都市(まち)リノベーションによる稼ぐ力と防災力の強化や都 市の広域連携等を通じ、コンパクト・プラス・ネットワークの深化・発展等を図る41。 総合的なインフラマネジメントを推進する。メンテナンスは予防保全型へと転換し、見 える化を進める。老朽化対策とまちづくりを連携させ、優先度を踏まえた対策や集約・再 編を推進する。インフラマネジメントを支える主体間の広域的・分野横断的な連携・協働 を進める。まちづくりの高度化に向け、建築・都市のDXやジオAIの取組を進展させる。 防災等に資する空き家対策と所有者不明土地等対策42を一体的・総合的に推進する。優良 な不動産ストックの形成・流通・利活用、住宅ストック価値の最大化と住生活を支える基 盤の再構築に取り組む。住宅ローンの金利リスクの普及啓発を含め総合的に取り組む。健 全な水循環の維持・回復や流域の水資源の有効利用を進める。流域総合水管理を推進し、 流域治水の加速化・深化、渇水対策、発電等の水利用、流域環境の保全・創出に取り組む。 地域の成長を阻む移動制約の打破に向け、 地域輸送資源の最大活用等による 「交通空白」 解消の取組の深化・加速化や、地域交通DX、規制改革等を通じて、自動運転社会の早期 実現と移動の足不足の解消に取り組む43。 成長投資を支える基盤として、高規格道路、整備新幹線、リニア中央新幹線、都市鉄道、 港湾、空港等の物流・人流ネットワークの早期整備・活用、モーダルコネクトの強化、航 空・海運ネットワークの維持・活性化44を推進し、担い手の確保・育成に取り組む。あわせ て、成田空港の機能強化、道路・鉄道アクセス整備、周辺の産業集積、農林水産物輸出拠 点化を進めるとともに、その他国際空港アクセス鉄道、在来線の高速化、基本計画路線の ケーススタディ、ローカル鉄道の再構築、鉄道ネットワークの財源確保、良好な自転車利 用環境の整備・活用を進める。陸・海・空の新モーダルシフト、中継輸送、自動物流道路 の推進等の物流効率化、脱炭素化等を加速化する45。 (持続可能な観光立国の実現) 2030年訪日客数6,000万人・消費額15兆円等の目標達成に向け、インバウンドの戦略的な 41 都市再生特別措置法等の一部を改正する法律(令和8年法律第23号)。 地籍調査・法務局地図作成を含む「所有者不明土地等対策の推進に関する基本方針」(令和8年6月5日所有者不明土地 等対策の推進のための関係閣僚会議決定)に基づく取組。 43 地域公共交通の活性化及び再生に関する法律の一部を改正する法律(令和8年法律第35号)及び「「交通空白」解消に向 けた取組方針2026」(令和8年6月10日国土交通省「交通空白」解消本部決定)。 44 「国内航空のあり方に関する有識者会議報告書」(令和8年5月29日)も踏まえる。 45 「総合物流施策大綱(2026年度~2030年度)」(令和8年3月31日閣議決定)。 42 12 誘客、国内交流・アウトバウンドの拡大、観光地・観光産業の強靱化に取り組む。同時に、 オーバーツーリズム対策を強化し、住民生活の質の確保との両立を図る46。 (農林水産業の構造転換による持続可能な成長及び食料安全保障) 我が国経済は国民生活の安定があってこそ成り立つものであり、生産者の急減が見込ま れる中で、国民がいかなるときにも安全で栄養面でも良質な食料を確保できるよう、食料 安全保障の強化と、その基盤となる農林水産業の振興に取り組む。 国内外の需要拡大と供給力の強化を図るため、農林水産業分野への投資を促進する。成 長戦略に基づく投資、スマート技術や新品種の開発・実装、輸出産地の育成等を促進する とともに、政府一体となった海外の商流開拓体制の強化等により、米やノングルテン米粉 を含めた国産農林水産物・食品の国内外の需要創出・拡大に取り組む。 農業構造転換集中対策期間(令和7~11年度)において、機動的・弾力的な対応により 別枠での必要・十分な予算を確保し、施策の充実強化・見直しを行うとともに、地方を含 む施策の推進体制を確保した上で、 農地の大区画化や中山間地域におけるきめ細かな整備、 共同利用施設の再編集約・合理化等を集中的・計画的に進め、生産性の向上を図る。また、 「食料・農業・農村基本計画」47に基づき、令和9年度から新たな水田政策を創設し、水田・ 畑に関わらず、収量に応じた単価での支援により生産性向上を進めるとともに、中山間地 域等直接支払の対象農地の拡大やプッシュ型の取組により、地域の営農や共同活動の継続 を図る等の見直しを行う。これらと地域計画の見直しや農地バンクの機能発揮を併せ、担 い手の確保と田畑のフル活用を進める。 さらに、土地改良の推進、食文化産業の振興、食育の推進、家畜疾病対策、気候変動適 応策、種子生産対策、鳥獣被害対策、農山漁村と地域企業等との共創の促進に取り組む。 「森林・林業基本計画」48の下、森の国・木の街を目指し、森林集約、スマート林業、多 様な経営体育成、 サプライチェーン強靱化や国産材転換・木材利用拡大を集中的に進める。 海洋環境の激変を踏まえ、資源調査・評価の改善、新操業形態への転換、経営体・人の 確保、漁港漁場整備、加工流通や海業の振興、養殖業の成長産業化を進める。 (文化芸術・スポーツの振興) 文化・スポーツが持つ力を、経済活性化の強力な原動力とする。文化資源を活用した地 域活性化や次世代継承に向け、文化財の保存・修理・高付加価値化、伝統行事・芸能、食 文化等の生活文化の振興とともに、首都圏の劇場不足対応を含む舞台芸術の振興、博物館・ 劇場等の機能強化等の文化芸術政策を推進する。現在のコンテンツの源流である、明治・ 大正・昭和時代を含むマンガ、映画を含む実写、レコードを含む音楽等を消滅・散逸させ ず、後世に残すべく、デジタルアーカイブ化49を進めていく。こどもや障害者の鑑賞・体験 機会を充実する。 46 「観光立国推進基本計画」(令和8年3月27日閣議決定)。 令和7年4月11 日閣議決定。 48 令和8年6月5日閣議決定。 49 例えば、出版物、SPレコード等については国立国会図書館が、映画については国立映画アーカイブがデジタルアーカイ ブ化を行っている。 47 13 官民連携によるメディア芸術ナショナルセンター(仮称)の機能を有する拠点整備、2033 年度再開場に向けた国の責任による国立劇場再整備を行う。国立公文書館の新館開館に向 け取り組む。 クリエイターの製作・発信の過程を通した育成や関連人材育成を推進し、海賊版対策を 抜本的に強化する。 運動・スポーツを活用した健康インフラ構築に向け、従業員の健康維持に取り組む企業 の支援や、身近な運動の場の確保に取り組む。 スポーツの成長産業化や武道・スポーツツーリズム振興に向け、スポーツコンプレック ス、eスポーツの活用を含むDX等を推進する。大規模国際大会の招致・開催への各般の 支援、国際競技力向上とインテグリティ確保、パラスポーツ振興、国際交流に取り組む。 (4)人材力の強化・人材総活躍 全世代の国民一人ひとりが活き活きと活躍することで、日本人の底力を解き放つ。誰も が、年齢や性別、障害や疾病の有無、生まれた年代や住んでいる地域、家族の状況などに よって、誰一人取り残されない、不公平がなく活躍できる社会を目指していく。 (人材の育成・能力発揮) 17の戦略分野やエッセンシャル分野を始めとする幅広い人材の育成・確保のため、国・ 地域における取組を推進する。教育政策、産業政策と雇用政策を始めとする関係政策を連 携させ、人材育成を一気通貫で推進する。人づくりの礎である教育の質を向上させる。ま た、産学官が連携し、必要なスキルや処遇の明確化、プログラム開発、費用負担の軽減や 情報提供の充実等を通じて、リ・スキリング機会を拡充する。アドバンスト・エッセンシ ャルワーカー50の育成に取り組む。 こうしたスキルアップや技能尊重の機運醸成に向けた国民運動を展開するとともに、 2028年技能五輪国際大会の日本開催の準備を進め、技能士・業界団体等の連携による人材 育成の取組を推進する。 労働力供給制約下での雇用保険制度における対応の在り方について、2026年内を目途に 結論が得られるよう検討する。心身の健康維持と従業者の選択を前提に、柔軟で多様な働 き方を実現するため、労働時間法制等に係る政策対応について、夏以降の労働政策審議会 において議論を行う51。 50 デジタル技術等も活用して、現在よりも高い賃金を得るエッセンシャルワーカー。 「日本成長戦略」(令和8年●月●日閣議決定)より抜粋。 裁量労働制については、現場の実態や労使双方の立場を十分に踏まえて、健康確保、長時間労働防止、適切な処遇確保な どの濫用防止措置を前提に裁量労働制の対象の在り方について、見直しの検討を行う。また、変形労働時間制については、 他律的な要因に十分対応できていない現場の実態や、労働者の生活時間や予見可能性の確保にも留意しつつ検討を進める。 また、連続勤務規制や勤務間インターバル制度の法的位置付け、「つながらない権利」の在り方、副業・兼業に当たっての 健康確保、テレワークの活用促進などについて、現場の実態や労使双方の立場を十分に踏まえて、検討を進める。 また、労働時間制度の運用については、時間外労働の実態を踏まえた、36協定の締結や柔軟な労働時間制度の活用につい て、よろず支援拠点等との連携を強化しつつ、「働き方改革推進支援センター」や労働基準監督署による相談支援の充実を 速やかに実施するとともに、必要な体制整備については2027年度以降も着実に実施を図る。併せて、労働基準監督署におい て、重大・悪質な事案に対しては厳正に対応しつつ、労働時間や労働者の健康確保措置に関する労使の合意に則った指導が 行われるよう速やかに見直す。 これらの施策について、実施後の政策効果を検証し確認できるよう、予めモニタリングとデータ収集を行うためのフォー マットを作成し、厚生労働省と地方支分部局において確実にフォローアップを行う。 51 14 国家公務員が持てる能力を遺憾なく発揮し、国民生活と国益を支える役割を果たせるよ う、採用活動を強化するとともに、民間企業等に伍する職場環境の整備、人材マネジメン トの強化、人事管理機能の高度化、処遇改善を進め、公務を選ばれる仕事とする。 (人材総活躍) 若者や女性を含めた労働者の「働きがい」と「働きやすさ」の向上に向けて、男女間賃 金差異の是正等に向けた職場の雇用管理上の問題への対応、 「成長戦略」分野における女性 活躍、仕事と育児・介護等との両立支援、性差に基づく健康問題への対応、女性の活躍を 阻む固定的な性別役割分担意識等の解消等について、関連する基本計画等52に基づく取 組を進める。 「地域働き方・職場改革」等を通じて地方公共団体の関連する取組も後押し する。さらに、就職氷河期世代等の就業・処遇改善や社会参画を促すため「新たな支援プ ログラム」53の実施に取り組む。 孤独・孤立対策として、 「重点計画」に沿って「予防」の観点を重視した居場所・つなが りづくり等の対策に取り組むNPO等を支援する54。また、身寄りのない高齢者等の支援、 生活困窮者自立支援制度や自殺対策55など地域共生社会の推進、障害者の自立及び社会参 加等のための施策56に取り組む。旧優生保護法補償金等57の支給を着実に進める。 社会課題の解決に向けて、休眠預金等活用制度等を通じたNPO法人の支援、公益法 人・信託による公益活動の促進、PFS58の普及に取り組む。 2.強い外交・安全保障の確立 (P) (1)外交力・安全保障・情報力の強化 (P) (外交力の強化) 外交と防衛を車の両輪として、法の支配に基づく自由で開かれた国際秩序の維持・強化 を図り、分断と対立の進む世界を開放と協調へ導くため、 「平和と繁栄を創る『責任ある日 52 「第6次男女共同参画基本計画」 (令和8年3月13 日閣議決定) 、 「女性活躍・男女共同参画の重点方針2026」 (令和8年 6月25 日すべての女性が輝く社会づくり本部・男女共同参画推進本部決定) 、 「地域未来戦略」 (令和8年●月●日閣議決 定) 、 「高齢社会対策大綱」 (令和6年9月13 日閣議決定) 、 「 「地域働き方・職場改革」の今後の方向性について」 (令和8年 6月4日地域働き方・職場改革等推進会議) 。 53 「新たな就職氷河期世代等支援プログラム」 (令和8年4月10 日就職氷河期世代等支援に関する関係閣僚会議決定) 。 54 「孤独・孤立対策に関する施策の推進を図るための重点計画」 (令和6年6月11 日孤独・孤立対策推進本部決定、令和8 年●月●日一部改定)に基づき、悩みや困りごとが深刻化・複雑化する前に対応する、いわゆる孤独・孤立状態を予防する 観点からの取組を実施。 55 「自殺総合対策大綱~誰も自殺に追い込まれることのない社会の実現を目指して~」 (令和4年10 月14 日閣議決定)に 基づく取組。 56 「障害者に対する偏見や差別のない共生社会の実現に向けた行動計画」 (令和6年12 月27 日障害者に対する偏見や差別 のない共生社会の実現に向けた対策推進本部決定) 、 「障害者基本計画(第5次) 」 (令和5年3月14 日閣議決定。計画期間 は令和5~9年度) 。 57 旧優生保護法に基づく優生手術等を受けた者等に対する補償金等の支給等に関する法律(令和6年法律第70 号) 。 58 成果連動型民間委託契約方式。 15 本外交』 」を展開59し、外交力を抜本的に強化する。日米同盟を基軸に、G7、ASEAN、 豪、印、韓、EU、NATOを含む同志国・機関、また、グローバル・サウスとの連携を 強化する。あわせて、進化した「自由で開かれたインド太平洋(FOIP) 」の取組を推進 する。政府安全保障能力強化支援(OSA)及び安全保障・経済安全保障に資するODA の規模を拡大し、地域の平和と安定に貢献する。 経済外交では、ルールに基づく自由貿易体制の維持・拡大60に取り組むとともに、 「信頼 できる経済圏」を構築する。CPTPPの国内対策を進めつつ、締約国の拡大及び協定改 定、価値を共有する域外パートナーとの連携強化、体制・機能強化を進める。グローバル・ サウスを始めとする地域に、インフラシステム61を含め、企業の海外展開支援を進める。日 米間の合意の一環として、日米の戦略的投資イニシアティブを着実に実施するため、国際 協力銀行・日本貿易保険に必要な措置を講ずる。 ウクライナ支援及び対露制裁を継続する。国際協力については、JICA海外協力隊の 活用、人道危機と復興ニーズへの対応、地球規模課題の解決に向け、様々な形でODAを 拡充する。また、 「核兵器のない世界」に向けた取組、安保理改革・邦人職員増等の国連 機能強化等に取り組む。日朝平壌宣言に基づき、拉致、核、ミサイルといった諸懸案を包 括的に解決し、不幸な過去を清算して、国交正常化を実現する。外交・領事実施体制の抜 本的強化のため、合理化・効率化を図りつつ人的体制の強化、在外公館の強靱化等に取り 組む。 (安全保障の強化) 高度に自律的で強靱な能力の発揮のため、装備・体制の両面で5年以内に防衛力を変革 する。データとAIの活用、無人アセット導入、反撃能力にも活用し得るスタンド・オフ 防衛能力の強化等により、 「新しい戦い方」に適応する。激化する人材獲得競争も見据え、 給与体系の改定を始め、自衛官の処遇改善や長期活用等を推進する。 持続的な対応能力の確保に向けた取組を強化し、それを支えるため、防衛生産基盤強化 法62の見直しも視野に、安定供給が困難な重要装備品のGOCO63等による国の関与、平素 における民生品や装備移転での活用を前提とした増産能力強化等の検討を行う。装備移転 において、官が正面に立つ移転64、融資、伴走支援等の検討や関係機関との連携を進める。 スタートアップの更なる活用を進めるとともに、国研・大学等への防衛研究基盤整備等を 通じ、防衛力を支える研究開発を促進することで、最先端技術を迅速に取り込む。これら を一体的に推進するため、国の関与を担保した法人の設置の検討を進める。 日米同盟の抑止力と対処力を高めるとともに、実効性の高い形で同志国等との連携を強 化する。 在日米軍再編及び基地対策等を推進し、 地域社会の理解等を得る施策を推進する。 あわせて、海上保安庁の巡視船等の増強更新、運航費の確保、情報通信機能強化、無人 59 令和7年10 月28 日の日米首脳会談において、両首脳は、 「自由で開かれたインド太平洋」を力強く推進するために、緊 密に連携していくことを確認。中国をめぐる諸課題について意見交換を行い、力又は威圧による一方的な現状変更の試みに 反対し、日米で緊密に連携していくことを確認し、台湾海峡の平和と安定の重要性を改めて確認。 60 EPAやWTO改革の推進を含む。 61 「インフラシステム海外展開戦略2030」 (令和6年12 月24 日経協インフラ戦略会議決定) 。 62 防衛省が調達する装備品等の開発及び生産のための基盤の強化に関する法律(令和5年法律第54 号) 。 63 Government-Owned, Contractor-Operated(国有施設民間操業)の略称。 64 移転時における独自収入の確保を行うことを含む。 16 機・無人船等の新技術の活用推進、国内外機関との連携、人材確保や処遇向上等を進める。 「シェルター方針」65に基づき様々なシェルターの確保を図るほか、先島諸島の住民避難 に係る国民保護訓練を実施し受入れ基本要領を作成する等、国民保護の体制を強化する。 宇宙安全保障の強化に向け、衛星コンステレーションの構築等に取り組む。 サイバー対処能力強化法等66を着実に実施するための体制整備67を行うとともに、国家安 全保障の観点からサイバー空間での情報収集や対処の在り方を検討する。AI性能の高度 化を踏まえ、政府内の情報セキュリティ体制を強化する。自律的な運営・管理を確保した 上で、機密性の高い情報を扱うために必要な情報保全・秘密保全措置を講じたクラウドの 導入を進める。そのため、2026年中に最適な調達方法等について一定の結論を得る。国家 安全保障戦略の改定に係る議論を踏まえ、所要の措置を検討する。 (情報力の強化) 戦後最も厳しく複雑な安全保障環境の中、健全な民主主義の維持、政府の円滑な意思決 定、対外発信を支えるインテリジェンス機能を抜本的に強化する。 国家情報会議・国家情報局の設置に伴う情報収集・分析能力の強化のため、人的情報収 集等を行う対外情報収集機能の充実強化、AI等を活用した情報通信基盤の整備、人材育 成等を推進するとともに、 これら活動を支える関係省庁の体制を可及的速やかに強化する。 情報収集衛星の機数増を着実に実施することで、更なる機能の拡充・強化を図る。 選挙の公正や自由な報道といった民主主義の根幹を脅かす、偽情報の拡散を含む外国か らの影響工作に関する情報収集・分析能力を強化する。 認知戦対応のためにも、多言語による正確な発信や国内外の有識者・有力シンクタンク 等と連携した効果的で戦略的な発信を抜本的に強化する。歴史認識や領土・主権の調査研 究・内外発信を強化する。 (2)経済安全保障の強化 経済安全保障は、危機管理投資・成長投資と表裏一体である。「成長戦略」を大胆に推 進し、経済安全保障を確保する。こうしたことに加え、国家及び国民の安全を経済面から 確保すべく、我が国経済社会の自律性の向上、優位性・不可欠性の確保、国際秩序の維持・ 強化を図る。これらのため、国家安全保障局を司令塔とする政府全体の推進体制を強化す る。 経済安全保障上の面から懸念されるあらゆる事態を念頭に、エネルギー・食料・医薬品・医 療機器・生活必需品等の国民生活・産業活動の維持に必要な物資、海上輸送等の物流も含 めた社会インフラ基盤についてリスクの総点検を包括的なアプローチで行い、その結果明 らかとなる脆弱性を解消するための措置を講ずる。我が国のサプライチェーン・製造基盤を 強靱化するため、汎用品も含む重要な基盤的物資や、将来更に重要性が高まる物資を支える部 65 「緊急事態を想定した避難施設(シェルター)の確保に関する基本方針」 (令和8年3月31 日閣議決定) 。 重要電子計算機に対する不正な行為による被害の防止に関する法律(令和7年法律第42 号)及び重要電子計算機に対す る不正な行為による被害の防止に関する法律の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律(令和7年法律第43 号) 。 67 内閣官房・内閣府、警察、防衛省・自衛隊が三位一体となって中核的な機能を担う体制整備を行う。 66 17 素材、資源循環等へ支援対象を拡大するとともに、包括的な取組を進める。経済合理性に委ねる と安定供給確保が困難な領域については、国による更なる支援の方策について検討する。 改正経済安全保障推進法及び国際協力銀行法68に基づき、重要な物資の供給に不可欠な 役務への支援を含めた重要物資の安定供給確保、JBICの財務基盤・体制強化を含む経 済安全保障上重要な海外事業への支援(OESA69)に取り組む。人材確保及び環境整備を 進め、2026年度中の総合的な経済安全保障シンクタンク機能の構築を目指す。特定重要技 術70の研究開発を促進すべく「経済安全保障重要技術育成プログラム」の強化に向けた制度 設計を進めるとともに、国際共同研究を推進する。 安全保障上重要な個人機微データの防護に関する法案の早期提出を目指すとともに、デ ータセンター・クラウドの安全性等を確保するために必要な措置を講ずる。AI性能の高 度化を踏まえ、重要インフラ事業者等のサイバーセキュリティを強化するとともに、ベン ダによるソフトウェアの脆弱性に対する早期発見・対応能力を向上させる。 機微技術流出等の経済安全保障上のリスクへの対応を強化するため、対日外国投資委員 会を通じた省庁横断的な審査体制の抜本的強化を始め、改正外為法71に基づく投資審査の 高度化に取り組む。経済安全保障の観点から重要な技術の管理を強化すべく、制度的措置 を講ずる。研究セキュリティ・インテグリティの確保、留学生・外国人研究者の受入審査 を強化する。経済的威圧や各種制裁への対応を強化する。輸出管理の強化に取り組むとと もに、貿易救済措置の実効性向上のため、迂回防止や手続迅速化等の不当廉売関税制度の 高度化、調査体制の強化等を図る。 3.国民の安全・安心の確保 (1)防災・減災・国土強靱化の推進 (令和の国土強靱化対策、防災対策の推進) 激甚化・頻発化する自然災害やインフラ老朽化等の危機から、現在と未来の国民の生命・ 財産を守り抜き、強い経済を下支えするため、令和の国土強靱化対策を断行する。 「国土強靱化基本計画」72が示す基本的方針等を踏まえ、「国土強靱化実施中期計画」73 及び「国土強靱化年次計画2026」74に基づく施策を推進し、テクノロジーを駆使してハード・ ソフト両面の対策を強化する。 防災庁を設置し、徹底的な事前防災の推進及び発災時から復旧・復興まで一貫した政府 全体の司令塔機能を強化する。併せて設置する地方機関の防災局により、地域の防災力向 68 経済施策を一体的に講ずることによる安全保障の確保の推進に関する法律及び株式会社国際協力銀行法の一部を改正する 法律(令和8年法律第38 号) 。 69 Overseas Economic Security Arrangement 70 将来の国民生活・経済活動の維持にとって重要なものとなり得る先端的な技術のうち、その技術が外部に不当に利用され た場合等において国家・国民の安全を損なう事態を生ずるおそれがあるもの(経済施策を一体的に講ずることによる安全保 障の確保の推進に関する法律第61 条) 。 71 外国為替及び外国貿易法の一部を改正する法律(令和8年法律第30 号) 。 72 令和5年7月28日閣議決定。 73 「第1次国土強靱化実施中期計画」(令和7年6月6日閣議決定)。 74 令和8年●月●日国土強靱化推進本部決定。令和8年度与党税制改正大綱では、道路関連インフラ保全の重要性等にも留 意しつつ、いわゆるガソリン暫定税率廃止の財源確保について令和9年度税制改正において結論を得るとされていることも 踏まえる。 18 上を支援する。また、シミュレーションを通じた災害リスク評価を活用するなど、企業や 地域の防災力を強化する。 迅速な初動体制の確保に資する緊急参集職員の処遇改善を含む防災分野の人材確保・育 成に関する検討、危機管理用宿舎の整備を始め、国の災害支援体制・機能の充実・強化を 進める。船舶活用医療の提供体制の整備を推進する。災害廃棄物処理体制を充実させる。 千島海溝地震、日本海溝地震、首都直下地震及び南海トラフ地震の対策を推進するとと もに、富士山噴火等の火山災害への対策・調査研究・人材確保・育成に取り組む。 衛星・AI技術による消防・防災DX、防災気象情報の高度化を推進する。林野火災対 応を始め消防防災力の充実・強化を進める。危機管理投資・成長投資を活用し、防災技術 の研究開発及び防災産業の育成・海外展開を促進する。 被災者支援体制を強化し、避難生活環境を抜本的に改善する。官民連携による担い手確 保や物資・資機材の整備・運用体制確保を進める。被災者の心のケア、避難所等の耐災害 性の強化や有事の際の機能発揮にも取り組む。 防災・減災には、災害教訓の伝承による行動変容が重要である。防災教育を推進し、実 践的な普及啓発を推進する。 首都直下地震を始めとした大規模災害時においても政府が必要な意思決定機能を維持し、 経済安全保障上のリスクを始め災害時の諸課題に適切に対応するため、政府の代替拠点及 び首都中枢における防災性能を強化するための環境整備を進める。その際、新たな財政負 担が生じないよう、官民連携・規制緩和により民間資金・民間活力を最大限活用する。 (副首都等の整備) 国家社会機能の継続性の確保及び多極分散型経済圏を形成する観点から、法案75が成立 することを前提に、首都中枢機能代替地域及び副首都の整備のための取組を進める。副首 都を活用した先進的な規制改革の実装を進める。 (2)東日本大震災・能登半島地震への対応 (東日本大震災・東京電力福島第一原子力発電所の事故からの復興・再生) 福島の復興なくして東北の復興なし、東北の復興なくして日本の再生なし。「復興の基 本方針」76に基づき、まずは今後5年間77で何としても解決していくとの強い決意で、様々 な課題に取り組む。原発事故の収束に向けて、AI・ロボット技術の開発・実証も行い、 廃炉を安全かつ着実に進める。同時に、輸入規制撤廃や水産業支援等に取り組む。除去土 壌等について、理解醸成を通じた復興再生土の利用を促進するとともに、県外最終処分に 向けた2030年以降の道筋を具体化する。住民の帰還・移住に向けて、特定帰還居住区域の 除染・インフラ整備、帰還困難区域内の森林整備の再開や活動の自由化の検討を進め、営 農再開等による生活や生業の再建に取り組む。福島イノベーション・コースト構想や福島 国際研究教育機構(F-REI)の取組を、「地域未来戦略」等と連携して進め、産業発展 75 76 77 国家社会機能継続性確保施策及び副首都の整備に係る施策の推進に関する法律案。 「「第2期復興・創生期間」以降における東日本大震災からの復興の基本方針」(令和7年6月20日閣議決定)。 令和8年度から令和12年度までの「第3期復興・創生期間」。 19 を促進する。地震・津波被災地域の心のケア等の課題に政府全体の施策も活用して対応す る。 (能登半島地震からの復旧・復興) 令和6年能登半島地震及び豪雨災害からの創造的復興を遂げなければならない。インフ ラの復旧・整備、災害公営住宅の整備、復興まちづくり、被災者の生活や生業の再建、地 場産業・伝統産業の復活・振興、地籍調査・法務局地図作成の加速を推進する。 (3)治安・安全の確保 (犯罪対策、被害者支援) 良好な治安を確保するため、新技術を悪用した犯罪やCBRNEテロ78等の抑止・対処、 トクリュウ79撲滅に向けた「国民を詐欺から守るための総合対策2.0」80の推進、ストーカ ー対策、不正薬物対策、金密輸・キャッシュクーリエ81対策、警察・税関・地方厚生局麻薬 取締部の体制整備、防犯カメラの増設に向けた働き掛けを強化する。マネロン対策や経済 安全保障等への対応に向け、法人の実質的支配者情報の登録等の立法化を早急に進める82。 安全・安心な社会の実現に向け、保護司支援を含む再犯防止、司法アクセスの充実、再 審制度の適切な運用、犯罪被害者等支援、交通安全対策に取り組む。 (安全・安心な暮らしの確保) 悪質商法対策や食品安全の確保、デジタル取引の拡大等の社会変化に合わせた対応を進 める。地方消費者行政を継続的に強化するほか、食品ロス削減や消費者教育を推進する。 健康で安心な暮らしを守るため、次なる感染症危機への対応に万全を期すとともに、危 機管理投資・成長投資も活用し、医薬品・医療機器の研究開発・確保、新型コロナウイル ス感染症のり患後症状やワクチン副反応の研究、ワンヘルス83による人獣共通感染症対策 等を推進する。さらに、クマ被害、外来生物、花粉症、熱中症、PFAS84、土壌汚染等、 生活環境・自然環境に係るリスクへの対応を進める。 (外国人政策の推進) 「外国人の受入れ・秩序ある共生のための総合的対応策」85に基づき、一部の外国人によ る違法行為やルールからの逸脱など問題のある行為に毅然と対応し、国民の不安や不公平 感への対処に向けた取組を一層進める。在留許可手数料の見直しや電子渡航認証制度(J ESTA)導入による手数料収入により確保した財源を最大限活用しながら、出入国在留 78 C(Chemical:化学)B(Biological:生物)R(Radiological:放射性)N(Nuclear:核)E(Explosive:爆発性) 物質を使用したテロの総称。 79 匿名・流動型犯罪グループの略称。 80 令和7年4月22 日犯罪対策閣僚会議決定。 81 犯罪収益の疑いのある現金等の携帯による国外への持出し及び国内への持込み。 82 令和10 年夏のFATF(金融活動作業部会、Financial Action Task Force)第5次対日相互審査を見据えた対応。 83 人間及び動物の健康並びに環境に関する分野横断的な課題に対し、関係者が連携してその解決に向けて取り組む考え方。 84 ペルフルオロアルキル化合物及びポリフルオロアルキル化合物の総称。 85 令和8年1月23 日外国人の受入れ・秩序ある共生社会実現に関する関係閣僚会議決定。 20 管理庁の人的・物的体制を抜本的に強化し、JESTAの 2028 年度中の導入に向けた準備 作業やDXの推進による審査の迅速化・高度化を進めるほか、「不法滞在者ゼロプラン」86 を強力に推進するなど出入国在留管理の一層の適正化を図る。 育成就労制度の円滑な施行・ 不法就労対策のために必要な体制を整備する。 各種民泊について、 適切な運営確保を図る。 外国人が日本社会の一員として責任ある行動をとれるよう、日本語及び我が国の制度・ ルール等の教育を強化し、「日本語・生活学習プログラム(仮称)」の創設に向けた取組 や、プレスクール等の全国展開に向けた取組等、地方公共団体等とも連携して必要に応じ た施策の充実を図る。 外国人の受入れの基本的な在り方について有識者会議での議論を開始し、2026 年度中に、 基本方針を取りまとめる。 安全保障等の観点から、外国人の土地取得等のルールの骨格を 2026 年夏に取りまとめ るとともに、土地等の調査・利用規制等を図る重要土地等調査法 87の執行体制を強化する。 地下水の適正な保全・利用を確保する仕組みや、土地の取得・利用に関する情報把握強化 と監督のための制度を整備する。 86 87 「不法滞在者ゼロプラン~強力推進パッケージ~」 (令和8年5月22 日公表) 。 重要施設周辺及び国境離島等における土地等の利用状況の調査及び利用の規制等に関する法律(令和3年法律第84 号) 。 21 第3章 責任ある積極財政に基づく「中長期経済財政計画」 1. 「強い経済」の構築と「財政の持続可能性」の実現 (「成長戦略」による投資拡大等によって目指す経済・財政の姿) 低迷する潜在成長率を引き上げていくためには、長年続いてきた過度な緊縮志向、未来 への投資不足の流れを断ち切る必要がある。民間投資の拡大による供給力の強化を、経済 規模の拡大、税収基盤の強化につなげ、「強い経済」と「財政の持続可能性」を一体的に 実現する。 供給力強化に向けて、危機管理投資・成長投資を中核とする「成長戦略」を強力に推進 し、政府も一歩前に出て、官民投資の実現と投資環境整備の具体化を進める。また、強い 地域経済の構築に向けた「地域未来戦略」を実行し、地方が持つ伸び代をいかし、新たな 産業基盤を構築するなど、様々な政策パッケージを相互に密接に連携させて実行する。 「挑戦しない国に未来はない」 という考え方の下、 従来の政策の延長や制約を乗り越え、 民間を含めた新たな発想や視点に基づく、真に効果のある政策が引き出せるよう、政府の 予算の作り方を根本から改めていく。官民投資ロードマップに基づき、危機管理投資・成 長投資を推進することで、62の主要な製品・技術等において2040年度までの累計で370兆円 を超える官民投資が想定される。こうした官民投資に加えて、研究開発投資や生産資源配 分の効率化等、「成長戦略」の効果が十分に発現した場合には、2040年度には、国内民間 設備投資額は年間230兆円、GDPは1,100兆円に迫る経済成長が実現できること、また、 一定の追加的な財政支出の下で、 債務残高対GDP比が、 概ね安定的に低下する姿となり、 「経済成長」と「財政の持続可能性」の双方が実現できるとの見通しが示された88。こうし た経済・財政の姿の実現を目指すこととし、2%の物価安定目標の実現の下で、できるだ け早期に、実質で1%を上回る、名目で3%を上回る経済成長を定着させ、更に引き上げ ていく。 このため、「経済・財政新生計画」を刷新し、本章を、責任ある積極財政に基づく「中 長期経済財政計画」として定め、目指す経済・財政の姿の実現に向けて取り組む。本計画 は、2027年度~2040年度を計画期間とし、財政運営目標の設定、経済の成長力強化と名目 の経済規模の拡大にふさわしい予算編成への転換、『「強く豊かな日本」投資枠』の創設、 補正予算依存からの脱却、基金や複数年度にわたる予算措置の見直しといった予算編成の 在り方、分析・検証の強化等による市場の信認確保といった、新たな財政運営の仕組みを 一体で示す。 (財政運営目標の設定) 本計画における財政運営の目標については、「責任ある積極財政」の考え方に立脚した ものとし、「強い経済」の実現と「財政の持続可能性」を両立する観点から、国・地方の 総債務残高対GDP比の安定的低下を中核に位置付ける。これは、政府が負う債務と、そ 88 内閣府「日本成長戦略の下での中長期的な経済・財政の姿に関する試算」 (令和8年6月) 。財政支出については、予算の 上限といった意味ではなく一つの試算として、経済成長に必要な財政支出が、財源を確保した上で別枠管理する予算の他 に、毎年度実質10 兆円、追加的に支出した場合を想定。 22 の返済の原資となる税収を生み出す元となる国の経済規模との関係を示す指標であり、P Bに純利払い費を加味した財政収支を踏まえて、財政運営を評価するものである。 PBについては、債務残高対GDP比の低下に向けて確認する指標とし、その安定的低 下と整合するよう複数年で管理する。単年度の黒字化時期を機械的に追うのではなく、経 済・金利環境、歳入歳出の動向を踏まえ、景気変動や危機管理投資・成長投資の必要性に 応じて一時的な悪化も許容し得るものとしつつ、債務残高対GDP比の安定的な低下に向 けて、改善・管理していく。 また、PB、GDP、純利払い費、財政収支等が債務残高対GDP比に与える寄与を分 析し、財政の持続可能性の確保に取り組む。 その上で、今後の予算編成に当たっては、税収動向等を見極めつつ、歳出・歳入両面の 見直しを進めることとあわせて、債務残高対GDP比を安定的に引き下げていく中でも可 能となる財政規模を精査し、市場の信認確保に配意しつつ、通年の国債発行額などを具体 化する89。 (経済の成長力強化と名目の経済規模の拡大にふさわしい予算編成への転換) 「責任ある積極財政」の下、デフレ・低成長時代の一律抑制型の予算編成から、物価・ 賃金上昇を的確に反映し、経済の成長力強化と名目の経済規模の拡大にふさわしい予算編 成へ転換する。このため、令和8年度当初予算90から実現した経済・物価動向等の的確な反 映を更に進めるなど、必要な財政需要に確実に対応する。 その際、官公需における適切な価格転嫁を徹底するとともに、医療・介護・保育・福祉 等の公定価格について、現場の人材確保、経営の安定、サービスの質の確保に必要な対応 を進める。あわせて、予算・税制における各種基準額や閾値について、物価・賃金上昇や 経済社会の変化を踏まえ、必要な点検・見直しを進める。 歳出規模の総額は、物価・賃金、名目経済規模、歳入見通し、政策効果、財政目標との 整合性を踏まえ、経済の成長力強化と名目の経済規模の拡大にふさわしいものとする。そ の上で、歳出の目安については、一律抑制型の上限としてではなく、予算全般において歳 出改革努力を継続する中で、伸ばすべき歳出と見直すべき歳出を峻別する、規律ある資源 配分を実現する枠組みとする。 このため、 租税特別措置や補助金等の点検・見直し91を進め、 施策の優先順位を洗い直し、 大胆に重点化する。危機管理投資・成長投資を強化するとともに、予算編成プロセスにお いて、成長への寄与、民間投資の誘発効果等を精査し、我が国の予算を成長力強化に資す るものに変革していく。 社会保障関係費については、「現役世代の保険料率の上昇を止め、引き下げていく」と の方針の下、国費だけではなく、給付費全体、公費・保険料負担、現役世代の可処分所得 などを踏まえ、給付と負担の改革を継続していく。非社会保障関係費については、物価・ 89 財政規模については、中期的な債務経路と整合的な形で柔軟に管理する。令和9年度の通年の国債発行額は、市場の信認 確保に配意しつつ、 「日本成長戦略の下での中長期的な経済・財政の姿に関する試算」などを踏まえ、経済動向や税収動向 等を見極めながら、予算編成過程で検討する。 90 令和8年度地方財政計画を含む。 91 見直しに当たっては、各省庁は自己点検を反映して概算要求を行うとともに、見直し内容を予算編成プロセスにおいて精 査した上で、具体化する。 23 賃金上昇を適切に反映しつつ、上記の方針を踏まえ、PDCA・EBPMに基づき、既存 事業の見直しと政策効果の高い分野への重点化を徹底する。 (『「強く豊かな日本」投資枠』の創設) 危機管理投資・成長投資を始め、国内投資を通じた潜在成長率の引上げにつながる施策 を、予見可能性を持って実施できるよう、通常歳出とは別に、『「強く豊かな日本」投資 枠』を創設する。「成長戦略」や「地域未来戦略」などを踏まえ、官民投資ロードマップ や分野横断的な課題に対応していく取組の形で示されたような、国内民間設備投資や潜在 成長率を大きく引き上げる効果の高い措置を対象とする。予見可能性を高め、継続的な取 組を後押しするため、複数年度の計画に基づくものを基本とする。 前年度の予算措置額に関わらず真に効果的な投資支援策を取り込めるよう、 要求上限 (い わゆるシーリング)を設けず、事項要求も含めて必要な額を適切に要求できるようにし、 予算編成過程で実効的な予算措置につなげる仕組みを整備する。 これにより、官民投資ロードマップの着実な実行に必要な規模と期間を確保し、民間投 資を引き出し、供給力と税収基盤の強化につなげる。あわせて、戦略分野全体をポートフ ォリオとして捉え、状況変化に応じて効果的に予算を活用する。 『「強く豊かな日本」投資枠』の規模については、財政の持続可能性を実現しながら必 要十分な規模を確保する92。このうち、経済安全保障上特に重要な分野などについては、複 数年度で財源を確保した上で、償還財源の裏付けのある「つなぎ国債」の発行により、特 別会計において別枠管理する93。 (補正予算依存からの脱却、基金や複数年度にわたる予算措置の見直し) 従来続いていた、大規模経済対策に基づく補正予算に依存した財政運営から脱却し、補 正予算については緊要性の高いものに限定し、恒常的な施策については当初予算で措置す る。補正予算と当初予算の区分の考え方を検討し、2026年内に改定する予算編成の基本方 針に反映する。なお、今般の補正予算は、中東情勢が不透明である中で、経済活動や国民 生活に支障が生じないよう必要な額を措置するとともに、市中への国債発行額にも配慮し つつ対応したものである。今秋以降に補正予算が必要となる場合であっても、真に緊要性 の高い施策に限定する。 基金や複数年度にわたる予算措置については、長期投資に必要な予見可能性と、柔軟で 効率的な資金管理を両立させる観点から見直す。基金については、補正予算に依存した財 政運営からの脱却と相まって国内投資を通じた潜在成長率の引上げにつながる施策を予見 可能性を持って実施できるようにする。事業の進捗や政策効果の発現の状況を一定の期間 で確認するなど、成果管理を徹底するとともに、資金効率の向上、資金管理の透明化・適 正化等を通じてガバナンスを強化し、投資としての成果を最大限、効果的・効率的なもの 92 財源は、上記の(財政運営目標の設定)における債務残高対GDP比を安定的に引き下げていく中でも可能となる財政規 模の精査に沿って対応。 93 GXやAI・半導体に続き、複数年度で財源を確保した上で、特別会計において別枠で管理する。追加的な税外収入を中 心として複数年度の財源を確保した場合には、償還財源の裏付けのある「つなぎ国債」を発行可能とすることにより、必要 な資金を前倒しで調達可能とする。こうした「つなぎ国債」については債務残高対GDP比やPB等の指標において、経費 及び財源の金額を除いて別枠で管理する。 24 とすることを前提に、 一律・機械的な期間設定にとらわれない予算措置が可能となるよう、 「予算措置は原則3年以内」とする現行ルールの不適用を含め、令和9年度予算編成に向 けて、基金ルールの抜本的な見直しを具体化する。 国家戦略上重要な長期投資等について、複数年度にわたり安定的に支援するにあたり基 金、国庫債務負担行為による複数年度契約、財政投融資、出資等の手法について、ガバナ ンスを強化しつつ、投資の性質に応じて適切な手段を活用する。これにより、企業、大学、 研究機関、地方公共団体による中長期の投資、研究開発、人材育成を促進する。 (市場の信認確保と分析・検証の強化) コミュニケーションの強化を通じ、市場の信認を確保していくため、国民や国内外の市 場関係者に、上記の見直しを含め、財政運営について透明性高く、一貫した説明を行う。 また、財政運営に当たっての前提となる、将来の経済・財政の姿、想定するリスク、必要 な政策対応等を示していく。 市場の信認確保については、経済成長、金利、部門別収支等の経済動向と、債務残高対 GDP比、PB、財政収支、利払い費、公債依存度、国債発行額、税収等の財政指標を多 角的に分析・検証する。 将来の経済・財政の姿を推計する際には、外部有識者の知見を活用するとともに、経済・ 物価・金利動向や政策効果をめぐる不確実性に備え、 幅広い可能性を踏まえた分析を行い、 経済財政運営の点検に活用する。 2.全世代型社会保障の構築 (1)社会保障と税の一体改革の推進 (税制改革) 「強い経済」を実現するため、財政の持続可能性に十分配慮しつつ、「責任ある積極財 政」の下、少子高齢化、グローバル化等の経済社会の構造変化に対応したあるべき税制の 具体化に向け、包括的な検討を進める。 デジタル社会にふさわしい税制の構築及び納税環境の整備と適正・公平な課税を実現す る観点から、制度及び執行体制の両面からの取組を強化するほか、新たな国際課税ルール への対応を進める。 (P) (2)成長型経済に合わせた持続可能な社会保障制度 「強い経済」では、経済成長によって、物価と賃金が上昇していく。我が国の社会保障 制度も、成長型経済に合わせて、物価・賃金上昇を適切に反映する中で、必要な医療・介 25 護等の提供体制を確保しながら、給付と負担の改革努力を継続し、持続可能な設計に変え なければならない。 国民皆保険・皆年金を堅持し、年齢にかかわらず能力に応じて公平に負担し合い、必要 な方に必要なサービスが適切に提供される全世代型社会保障を構築することによって、国 民の命と健康、生活を守り、安心して働き、活躍し、挑戦できる基盤を整備する。働き方 の多様化や女性・高齢者の就労増加に対応し、 働くことが報われる社会保障制度を目指す。 給付と負担の全体像を含む全世代型社会保障の将来的な姿を若者も含め国民に分かりやす く情報提供する。 現役世代の保険料率の上昇を止め、引き下げていくとの方針を実現するため、マクロ的 な社会保障負担率の目標について検討を進め、社会保障改革について、2026年度中に改革 の具体化と工程の明確化を図り、順次実施する。 (P) (医療・介護等) 医療・介護・障害福祉の分野の技術の発展と普及を支援し、DX/AX等による生産性 の向上と職員配置の柔軟化に向けた一層の取組を図るとともに、経営情報の見える化を進 め、経営実態を把握した上で、物価と賃金の変動に適切に対応し、経営の安定、処遇改善 を図りつつ、社会保障制度改革を着実に実行する94。その際、経済・物価の動向が2026年度 診療報酬改定時の見通しから大きく変動し、医療機関等の経営状況に支障が生じた場合に は、令和9年度予算編成過程で診療報酬上の加減算を含む更なる必要な調整を行う。次期 介護報酬・障害福祉サービス等報酬改定では、介護・障害福祉分野の賃上げの状況や介護・ 障害福祉サービス等事業者の経営状況等を把握した上で、物価の変動に適切に対応すると ともに、他職種と遜色のない処遇改善の実現を図る。障害福祉サービス等の費用の急伸へ の対応を含め、サービスの質の確保・向上と制度の持続可能性の確保のための報酬や制度 の在り方を検討する。 2040年に向けて、病床数の適正化を着実に実施した上で、2027年度以降の地域医療構想 を踏まえた医療機関の連携・再編・集約化を促進するとともに、地域包括ケアシステムの 深化を図り、地域の実情に応じた質の高い効率的な医療・介護サービス提供体制を構築す る。妊娠・出産の経済的負担軽減と安心・安全な小児・周産期医療提供体制の両立、救急 医療体制の確保、ドクターヘリの安全で持続可能な運航の確保、精神医療に関する地域医 療構想を踏まえた取組、中山間・人口減少地域での柔軟な介護・障害福祉サービスの提供 を推進する。かかりつけ医機能の発揮や医師の地域・診療科偏在の更なる是正策を含めた 総合的な医師偏在対策、地域の実情を考慮した2028年度以降の医学部定員の削減に取り組 む。歯科専門職の偏在対策等の歯科医療提供体制の構築を図る。医療人材の実効的な養成・ 確保の方策について検討するとともに、看護職員の質の向上や潜在人材の活用等を推進す る。介護・福祉分野の人材の養成・確保・定着に取り組み95、業務効率化や勤務環境改善、 94 具体的には、社会保障関係費については、給付と負担の改革努力を継続しつつ、高齢化による増加分に相当する伸びに経 済・物価動向等を踏まえた対応に相当する増加分を加算する。また、2027 年度の社会保障負担率が2025 年度と比較して上 昇しないよう取り組む。 95 社会福祉施設職員等退職手当共済制度の在り方の検討を含む。 26 経営の協働化・大規模化を支援する。医療分野においては、新たな地域医療構想の下、将 来需要を踏まえ、老朽化・災害対策を含む地域に不可欠な施設・設備の計画的な整備への 必要な支援の在り方を検討する。介護・福祉分野においても、老朽化・災害対策を含む施 設・設備の計画的な整備を支援する。 【(P)医療保険制度では、高齢者の受診行動や所得状況等を踏まえた窓口負担の見直 しについて令和9年度予算編成過程で結論を得る。】介護保険制度では、2割負担の判断 基準の見直しについて2026年度中に結論を得る。さらに、医療・介護保険における金融所 得・資産の扱い、OTC類似薬の保険給付の見直しの施行とその状況等を踏まえた2027年 度以降の対象範囲の拡大に向けた検討など、「改革工程」96等に基づく取組を進める。先行 バイオ医薬品について、バイオ後続品の普及促進に向けた環境整備の状況を踏まえ、保険 給付の在り方の見直しを検討する。長期処方やリフィル処方箋の活用、地域フォーミュラ リの全国展開、休薬・減薬などの効果的・効率的な治療の促進等により、給付の効率化や 適正化を図りつつ、質の高いサービスを提供する。セルフメディケーション推進の観点か らの更なる医薬品・検査薬のスイッチOTC化に向けた実効的な方策の検討を行う。 医療情報化推進方針を策定し、医療機関の情報システムの刷新、サイバーセキュリティ 対策を進め、電子カルテ・電子処方箋の普及と情報連携、医薬品等のデータベースの構築、 公費負担医療や予防接種のデジタル化等、医療・介護に関する情報の連携と二次利用を含 む利活用の基盤を構築し、切れ目なく最適なサービスを効率的に提供する。 長期的に賃金上昇率を上回ることを目標に年金積立金を運用し、将来の年金給付水準を 確保する。生活保護における医療扶助の適正化97や就労支援の推進を図る。次期生活扶助基 準の見直しでは、定期検証の結果に基づく一般低所得世帯の消費実態や社会経済情勢など を総合的に勘案して改定を行う。 (創薬・先端医療イノベーション) 創薬・先端医療への官民投資を拡大し、健康医療安全保障を実現する。「健康・医療戦 略」98等を踏まえ、革新的な医薬品・医療機器等の創出、諸外国の医薬品をめぐる政策の動 きがある中でも必要な医薬品等が確実に上市される環境整備、特定重要物資の国産化等に よる安定供給、先端技術の実用化を目指す。産業構造改革の推進による後発医薬品等の安 定供給を図る。 創薬・先端医療を成長経済の牽引役として、研究開発力や製造・供給・流通体制の強化、 スタートアップ支援、人材育成、先進医療の対象拡大、国際展開を総合的に推進する。全 ゲノム解析やiPS細胞等を活用した再生・細胞医療・遺伝子治療、免疫治療、小児・希 少疾病用や感染症対応の医薬品等の研究開発・生産等99とともに、創薬・医療機器開発への AI利活用を推進する。国際水準の治験・臨床試験体制を整備し、国際共同治験の倍増を 目指す。 創薬イノベーション、医薬品の安定供給と国民負担の軽減の観点から、2027年度薬価改 96 「全世代型社会保障構築を目指す改革の道筋(改革工程) 」 (令和5年12 月22 日閣議決定) 。 都道府県のガバナンス強化の検討を含む。 98 令和7年2月18 日閣議決定。 99 「感染症危機対応医薬品等(ワクチン、治療薬、診断薬等)開発・生産体制強化戦略」 (令和8年3月24 日閣議決定)を 踏まえた必要な法制度等の在り方の検討。 97 27 定を実施する。その際、費用対効果評価制度について、客観的な検証も踏まえ、制度の発 展に向けた更なる見直しについて具体的な検討を進め、一定の結論を出す。我が国の医薬 品市場の魅力を高める観点から、医薬品の画期性に対する初収載時における適切な評価や 特許期間中の薬価の在り方100を含め、革新的新薬のイノベーションの更なる評価について 検討を進める。 (攻めの予防医療と疾病対策) 国民のWell-beingの向上と健康寿命の延伸を図り、誰もが社会の担い手として活躍でき る日本を実現する。「攻めの予防医療」を推進し、健康増進、疾病予防、早期発見及び早 期介入に関係機関が連携して取り組む。栄養・食生活を含む健康リテラシーの向上、予防 接種、HIV予防や下水サーベイランス等の感染症対策、がん検診や精密検査の受診率向 上、生活習慣病等の予防、いわゆる国民皆歯科健診の具体化(歯周病検診や就労世代の歯 科健診の更なる推進)、口腔と全身の健康の関係に基づく歯科疾患対策、認知症の早期診 断・早期対応、予防・医療・介護を通じた切れ目のないリハビリテーション、PHRの利 活用と情報連携を推進する。更年期世代の女性への医療の推進や女性の健康総合センター の機能強化、「プレコンセプションケア推進5か年計画」101の工程表の策定と実行、企業と 保険者のコラボヘルス、睡眠対策を含む健康経営の推進、予防・健康づくりを支えるヘル スケア産業の育成を図る102。 がん、循環器病、慢性腎臓病、慢性閉塞性肺疾患、慢性疼痛、難病、アレルギー、依存 症、難聴、睡眠障害等の疾病対策や移植医療対策を推進する。 (国際保健の推進) ユニバーサル・ヘルス・カバレッジ(UHC)の実現、国際的な感染症対策や保健シス テムの強化に取り組む。健康・予防・医療・介護関連の国際展開を推進する。 3.主要分野ごとの重要課題と取組方針 (1)少子化対策と日本の未来を担うこども・若者のための政策の推進 少子化対策とこども・若者・子育て支援は、相互に関連するため、「こども未来戦略」 等 に基づき、一体的かつ総合的に、力強く推進する。こども家庭センターにおける相談 支援の一元的な対応や、 産後ケアや不妊症等への支援を含む母子保健政策を進める。 また、 保育士、幼稚園教諭等の処遇改善や地域区分を含む公定価格の見直し、幼児教育・保育に 係る要領等の共通化、こども政策DXを進める。仕事と家庭の両立支援のため、質の高い 103 100 市場拡大再算定及び持続可能性特例価格調整等。 令和7年5月22 日プレコンセプションケアの提供のあり方に関する検討会決定。性別を問わず、適切な時期に、性や健 康に関する正しい知識を持ち、妊娠・出産を含めたライフデザイン(将来設計)や将来の健康を考えて健康管理を行う概念 であるプレコンセプションケアについて、5か年計画を決定。 102 「性差に由来する健康課題等への対応を推進するための論点整理」 (令和8年5月25 日攻めの予防医療に向けた性差に 由来するヘルスケアに関する副大臣等会議とりまとめ)を踏まえて取組を推進する。 103 令和5年12 月22 日閣議決定。なお、あわせて、 「こどもまんなか実行計画2026」 (令和8年6月9日こども政策推進会 議決定)に盛り込まれた各種施策を推進する。 101 28 ベビーシッター・家事支援サービスの利用促進、企業等の活力も活かした放課後の居場所 や病児保育などの充実、子育て世帯向けの住宅供給の促進など、子育てしやすい社会・居 住環境の整備を行う。企業の支援と成長の好循環を創出するため、「こどもとともに成長 する企業構想」104を推進する。 こどもの命と安全を守り抜くため、地方公共団体に対して抜本的な支援体制の強化を要 請するなど、こどもの自殺対策のギアを一段上げる。また、こどもを性暴力から守る措置 を着実に講ずる。多様なリスクからこどもを守るため、G7の合意等も踏まえ、関係省庁 が連携し、青少年インターネット環境整備法105改正案の次期通常国会への提出等を目指す。 若者が希望を持ち選択できる環境の整備のため、大規模調査を踏まえた若者政策の基本 設計を行い、地域での包括的なモデル事業の創設や全てのこどもの豊かな体験機会の充実 に取り組む。「強い経済」の実現により子育て世代の所得を増やす。審議会委員への登用 等、若者が参画した政策実施を推し進める。 逆境からこどもを守り抜くための支援を強化する。潜在的に支援が必要なこども等の情 報を早期に把握できるようにするとともに、 居場所づくりを進め、 こどものいる貧困世帯、 ひとり親家庭や離婚前後の家庭、ヤングケアラー、困難な状況にある妊産婦の支援、児童 虐待防止対策、社会的養護、発達障害児・医療的ケア児等の障害児支援やインクルージョ ン、多様な背景の児童への取組、こどもの死亡検証を推進する。 国と地方の連携、財政力の低い地方公共団体への支援を強化する。研究機能を強化し、 予算執行を「全部見える化」し、国民の理解を得ながら政策を進めるよう努める。 (2)公教育の再生、研究活動の活性化 人づくりをおろそかにして良い社会は招来しない。高市内閣は人づくりの礎である公教 育を再生し、教育の質を抜本的に高める。 AIの社会実装が目前に迫る中、児童生徒の発達段階に応じたAI活用の指導を後押し し、不確実で変化の速い社会を生き抜ける人材を育てる。学校向けAI指針を速やかに改 定する。国策としてGIGAスクール構想を推進し、安全かつ主体的なAI活用に向けた 環境整備や実証研究等を進め、先進事例の創出・横展開を図る。 高校から大学・大学院等までの人材育成システムを一体的に改革し、産業構造の変化に 対応した人材基盤を強化する。2030年までを第1期とし、大学等の機能強化と規模適正化 を総合的に推進し、 高等教育の分野・地域のリバランスや18歳中心主義からの脱却を図る。 理工・デジタル人材育成を含む大学・大学院等の機能強化のため、成長分野への学部再編、 17の戦略分野の高度人材育成や実需に応じたリ・スキリング、高専の新設・機能強化、文 理分断の傾向が強い大都市圏の大学を始めとする成長分野の重視や人社系のダウンサイジ ング及び理数分野併修を通じた質の向上、大学生・高校生での海外留学の一層の推進など 多様性の中で価値を創造する人材育成を進める。 教育成果や質に係る情報提供を強化する。 規模適正化と地域を支える人材育成のため、大学の経営体力ある段階での撤退を進めつつ、 104 民間企業が「こども若者まんなか」という社会的価値と企業価値の向上に一体的に取り組めるよう支援と環境整備を行 う構想。 105 青少年が安全に安心してインターネットを利用できる環境の整備等に関する法律(平成20 年法律第79 号) 。 29 各地域の医療・介護・福祉、産業、インフラの維持に不可欠な質の高い人材養成、専門高 校・短大等の一貫課程編成、専修学校教育の高度化を進める。高等学校教育改革促進基金 による支援のほか、安定財源を確保した上で、交付金等の新たな財政支援の仕組みの構築 を通じ、社会の変化に応じた高校教育改革を推進する。 教師の働き方改革、処遇改善、指導・運営体制の充実、教員免許改革等の育成支援を一 体的に進め、喫緊の教師不足対応を含め、教師のなり手を確保する。2029年度までの時間 外在校等時間の月30時間程度への縮減を目標とし、教師・学校の業務の適正化や校務DX 等を進める。教職調整額を2030年度までに10%に引き上げる。定数改善計画を着実に推進 するとともに、働き方改革に資する外部人材を拡充する。奨学金返還支援の学部段階を含 む更なる検討を行う。学校と地域の連携・協働、部活動の地域展開等を全国的に進める。 多様性の包摂、情報活用能力の抜本的向上や興味・関心を踏まえた質の高い探究等、次 期学習指導要領等が目指す学びの環境を整備106する。幼児教育・保育の質向上を図る。い じめ・不登校等の対策や特別支援教育の充実、学校安全の取組を進め、安心して通える学 校づくりを進める。学校の教育環境向上と老朽化対策を地方公共団体等が一体的・計画的 に進められるよう着実に支援し、創造的な学習環境を整える。体験活動や読書活動、栄養 教諭を中核とした食育を推進する。在外教育施設の機能強化を図る。 物価上昇下においても修学支援新制度、授業料後払い制度を着実に実施する。 新たに策定された「科学技術・イノベーション基本計画」107を着実に推進するとともに、 科学技術政策のEBPMを強化する。大学改革を進めるとともに、大学における研究活動 を安定的、継続的に支える国立大学法人運営費交付金や科研費の大幅な拡充を図ることや、 施設の計画的整備への着実な支援、私学助成の成長分野や地域を支える人材育成等への重 点化・充実など108、基礎研究を含めた科学技術研究の基盤を強化し、また、日本を国際頭脳 循環の主要なハブとし、 イノベーションを通じた経済成長や国際的地位の確保を達成する。 あわせて、運営費交付金の拡充等により国研の研究開発基盤の強化を図る。また、ムーン ショット型研究開発(より大胆な発想に基づく挑戦的な研究開発)の推進による重要技術 領域への支援の充実を図る。 科研費の全面基金化に向けた取組を推進し、研究者の煩雑な事務負担を軽減し、研究時 間を確保する。先端研究施設・設備等の整備・共用・高度化を促進する。AIを科学研究 に適用し、新たな発見や理解を加速する「AI for Science」を推進する。 大学病院の教育・研究・診療のバランスの在り方等を明確化しつつ、教育研究機能や経 営力の強化・処遇改善に取り組む。 AI等の最先端の科学技術を学ぶ機会の継続的な提供等、女子中高生の理工系進路選択 に向けた産学官・地域一体での取組や、若手女性研究者支援等を促進する。 (3)戦略的な社会資本整備の推進 「強い経済」の実現には、危機管理投資・成長投資を支える社会資本を戦略的に整備す 106 107 108 特定分野に特異な才能のある児童生徒の資質・能力を伸ばす教育の充実を含む。 令和12 年度までの研究開発投資目標(政府:60 兆円、官民:180 兆円) 。 国立高等専門学校機構運営費交付金の着実な確保を含む。 30 ることが重要である。 社会資本の整備に不可欠な建設産業における、フィジカルAIの導入を始めとする生産 性の向上や、賃上げ等の処遇改善、多様な人材の確保・活躍環境の整備等を通じ、地域の インフラの整備力を強化する。中長期的な見通しの下、安定的・持続的な公共投資を推進 しつつ、労務費確保の必要性や近年の資材価格の高騰の影響等を考慮しながら適切な価格 転嫁が進むよう促した上で、必要な事業量を確保するとともに、効率的・重点的な取組を 進める。「PPP/PFI推進アクションプラン(令和8年改定版)」109に基づき官民連携 投資等を促進する。公共事業評価について、費用便益比等に過度に依拠せず、国家戦略、 防災・減災、国土強靱化、地域の命と暮らしを守る基盤機能等を踏まえた総合評価へ見直 すとともに、近年の金利状況等を踏まえ社会的割引率を見直す。 (4)持続可能な地方行財政基盤の強化 人材の不足や偏在、デジタル技術の進展といった社会の変化の中でも、将来にわたり持 続可能かつ最適な形で行政サービスを提供していかなければならない。地方の一般財源の 総額を確保して110、官公需の価格転嫁等のための取組を通じた強い地域経済の実現とこれ を支える地方行財政基盤の持続性を確保・強化する。都市・地方の財政力格差及び行政サ ービスの地域間格差が拡大する中、令和8年度与党税制改正大綱に沿って、偏在性の小さ い地方税体系の構築に向けた具体的な取組を講ずる。 地方制度調査会の調査審議を踏まえ、国・都道府県・市町村の役割分担の新たな考え方、 大都市地域における行政体制等について検討する。また、地方公共団体間の連携や広域リ ージョン連携を強化する。 「デジタル社会の実現に向けた重点計画」等に沿って、自治体AX/DX、地方公共団 体のサイバーセキュリティ強化、標準準拠システムへの移行・運用最適化を進める。改正 行政書士法111を踏まえ、適切な対応を図る。 地方からの提案を踏まえつつ、行政サービスの生産性を高めるための改革を進める。 4.計画推進のための取組の強化 「責任ある積極財政」を実効あるものとするためには、必要な危機管理投資・成長投資 を確保しつつ、歳出の質を高め、財政の持続可能性と市場の信認を確保することが不可欠 である。このため、これまで経済・財政一体改革推進委員会が担ってきた改革の進捗管理・ 点検機能を発展させ、 「責任ある積極財政」の下で、単年度の予算配分や形式的な進捗管理 にとどまらない、歳出改革、危機管理投資・成長投資、政策効果、財政指標を一体的に点 109 令和8年6月11日民間資金等活用事業推進会議決定。 地方の歳出水準については、国の一般歳出の取組と基調を合わせつつ、交付団体を始め地方の安定的な財政運営に必要 となる一般財源の総額について、2026年度地方財政計画の水準を下回らないよう実質的に同水準を確保する。また、国にお いて経済の成長力強化と名目の経済規模の拡大にふさわしい予算編成へ転換していくことを踏まえつつ、経済・物価動向等 を的確に反映する。 111 行政書士法の一部を改正する法律(令和7年法律第65 号)では、デジタル化を踏まえた行政書士の使命・職責規定の創 設、特定行政書士の業務範囲の拡大、業務制限規定の明確化等が行われた。 110 31 検する新たな枠組みに再編・高度化する。 この新たな枠組みにおいては、重要政策の着実な実行に向けて、本基本方針に盛り込ま れた「成長戦略」 、 「地域未来戦略」 、予算編成の抜本見直し、社会保障と税の一体改革等、 国民生活の基盤となる中長期の重要政策について、経済財政諮問会議の下で毎年度進捗を 点検する。 各分野の改革の進捗については、各推進主体が、政策の内容や進捗段階に応じて、危機 管理投資・成長投資の実行状況、民間投資誘発効果、供給力強化、制度改革の進捗、KP Iの達成状況、財政指標への影響等を継続的に点検する。本章に示した中長期の重要施策 については、歳出改革だけでなく、中長期的な成長効果、国民生活への波及等の観点から 点検を行い、各施策について、目的、対象、成果指標、実績データ、費用対効果を明確化 し、政策効果を継続的に把握する。また、 「租税特別措置・補助金・基金の見直し」の取組 112 や、ガイドライン 改正など官民ファンドの効果的な活用や収益改善に向けた取組を進め る。 中長期の経済財政試算 113については、 「責任ある積極財政」の前提、政策効果、リスクを 国民や市場に分かりやすく示す基盤として位置付け、半年ごとの試算公表時に、計画が目 指す経済・財政の姿の実現に向けた道筋を確認し、危機管理投資・成長投資等の民間投資、 潜在成長率、名目GDP、経済成長率、税収や債務残高対GDP比等の指標が、これまで の想定に沿って進捗しているか分析し、適切なマクロ経済財政運営を行う。 また、日本成長戦略会議による、 「成長戦略」の政策効果のミクロ・マクロでの実績把握、 検証等も踏まえつつ、中長期の経済財政試算において、投資、経済成長、税収等の関係の より整合的な把握など、分析手法・モデルの不断の改善を進める。 こうした点検を踏まえ、本計画全体について、経済財政諮問会議において、原則として 5年毎に包括的な検証を行うこととし、経済・物価・金利・税収動向、政策効果、財政指 標の変化等を踏まえて、必要に応じて計画を見直す。 これらの取組により、メリハリある資源配分を実現するなど、 「強い経済」と「財政の持 続可能性」を実現することで、市場の信認を確保しつつ、国民が政策効果を実感できるよ う、本計画を推進する。 以上の点検を進めるに当たり、EBPMを単なる事後評価や歳出削減の手段にとどめず、 予算編成、執行、点検、翌年度以降の予算への反映を一体として進めるツールとして活用 する。また、経済学、財政、金融、データサイエンス、産業政策等の専門性を有する政府 内外の人材を積極的に活用し、政策効果分析、費用対効果分析、データ分析を担う政府内 の能力を強化する。あわせて、リアルタイムデータや高頻度データの活用を進め、経済の 実態把握の精度を高める。こうした分析の前提や政策効果の考え方を分かりやすく示し、 経済財政諮問会議における議論や点検、検証に活用する。 防災、科学技術、重要なインフラ等の分野の点検に当たっては、費用便益分析だけでな く、国家機能の維持、供給力の維持、戦略的自律性の観点も重視するほか、国民生活の視 112 「官民ファンドの運営に係るガイドライン」 (平成25 年9月27 日官民ファンドの活用推進に関する関係閣僚会議決定、 令和4年12 月21 日一部改正) 。 113 内閣府「中長期の経済財政に関する試算」 。 32 点からは、関連する基本計画等でのKPIの設定など、日本社会に根差した Well-being 実 現に向けた取組を広げ、国際的な議論への貢献や発信 114を行う。 これらの取組により、 「責任ある積極財政」を単なる理念にとどめず、成長力の強化、国 民生活の安心、財政の持続可能性を一体で実現する政策運営として具体化する。 114 2028 年に日本で開催を予定しているOECD Well-being 世界フォーラムの場などを活用。 33 第4章 当面の経済財政運営と令和9年度予算編成に向けた考え方 1.現下の経済情勢と当面の経済財政運営について 政府は、物価高、世界経済の不確実性、地政学リスク、金融資本市場の変動、自然災害 等のリスクに機動的に対応しつつ、デフレに後戻りしない「成長型経済」への移行を確実 なものとする。 我が国経済の現状をみると、2025年度の名目GDPは4%超の増加となり、物価高に押 されながらも実質GDPは0.8%増加した。世界経済を取り巻く環境が大きく変動する中、 企業所得は堅調に推移、雇用者所得も名目・実質共に増加しており、所得の増加が消費や 投資を生み出す民間主導の循環が生まれつつある。 しかし、中東情勢を始めとして、我が国経済の先行きに大きな影響をもたらし得る海外 のリスク要因は引き続き存在し、同時に、少子化と人口減少といった国内の構造的な課題 も残っており、「成長型経済」への本格的な移行には、更なる取組強化が必要である。 当面の経済財政運営については、令和8年度予算に加え、リスクの最小化の観点から万 全の対応を図るものとして編成した令和8年度補正予算を、情勢の変化に応じて適切かつ 機動的に執行する。民需の下支えを図ると同時に、今般の中東情勢に対し、代替調達や必 要に応じた備蓄放出により我が国の原油の安定供給を図るとともに、重要物資の安定供給 の確保及び流通の円滑化等に努める。引き続き、我が国の経済・物価に与える影響を分析 し、国民生活と事業活動を守るための機動的な対応を躊躇なく十分に講ずる。 こうした当面の経済財政運営は「強い経済」の実現を目指しており、そのためにも「安 定的な物価上昇」の実現に資する適切な金融政策運営を伴うことが非常に重要である。日 本銀行には、日本銀行法第4条及び政府・日本銀行の共同声明の趣旨に沿って政府と緊密 に連携し、賃金と物価の好循環を確認しつつ、2%の物価安定目標の持続的・安定的な実 現に向けて適切な金融政策運営を行うことを期待する。 2.新たな予算編成の在り方と令和9年度の基本方針 政府は、「強い経済」を実現する「責任ある積極財政」の考え方を具体化するため、令 和9年度予算編成は、デフレ・低成長時代の一律抑制型の考え方から、物価・賃金上昇を 的確に反映し、経済の成長力強化と名目の経済規模の拡大にふさわしい予算編成へと転換 する。 概算要求では、一律抑制型の要求を見直し、行政サービスの水準を実質的に維持できる よう、物価・賃金上昇を的確に反映する。その際、公定価格や各種基準額・閾値の必要な 点検・見直し等を進める。すなわち、人件費や庁費等の行政機関等の運営に必要な経費、 補助費や委託費等の事業や政策に必要な経費、それぞれについて適切な単価改定を行う。 その上で、政策別コスト情報も活用しつつ、PDCAやEBPMに基づき、既存事業を 不断に見直すとともに、「租税特別措置・補助金・基金の見直し」の自己点検結果を概算 要求に反映し、政策効果の高い分野へ重点化する。 34 なお、社会保障関係費については、「現役世代の保険料率の上昇を止め、引き下げてい く」との方針の下、現場の人材確保、経営の安定、サービスの質の確保等の観点から、医 療、介護、保育、福祉等の公定価格等における適切な対応を図りつつ、国費だけではなく、 給付費全体、公費・保険料負担、現役世代の可処分所得などを踏まえ、給付と負担の改革 を継続する。 危機管理投資・成長投資を始め、国内投資を通じた潜在成長率の引上げにつながる施策 を予見可能性を持って実施できるよう、通常歳出とは別に、『「強く豊かな日本」投資枠』 を創設する。 前年度の予算措置額に関わらず、 真に効果的な投資支援策を取り込めるよう、 要求上限(いわゆるシーリング)を設けることなく、事項要求も含めて必要な額を適切に 要求できるようにし、予算編成過程で実効的な予算措置につなげる仕組みを整備する。そ の際、成長力の強化に資する有効な政策アイデアと必要な予算を、前例にとらわれず、諸 外国と伍して国際競争に打ち勝つことも念頭におきつつ、概算要求に盛り込む。 補正予算に依存した財政運営からの脱却は、予算の透明性と規律を高めるものとして位 置付ける。補正予算は真に緊要性の高い施策に限定し、恒常的な施策については当初予算 で措置する。その際、地方の財政運営と円滑な事業執行に支障が生じないよう適切な地方 財政措置を講ずる。 令和9年度予算編成においては、上記を踏まえ各府省庁において適切に概算要求を行う。 予算編成過程において、本基本方針に沿った歳出・歳入両面の取組の具体化、『「強く豊 かな日本」投資枠』の具体化、補正予算と当初予算の区分の考え方の明確化とともに、長 期投資に必要な予見可能性と柔軟で効率的な資金管理の観点から、投資の性質に応じて適 切な手段を活用しつつ、「予算措置は原則3年以内」とする現行ルールの不適用も含めた 基金ルールの抜本的な見直しを行う。危機管理投資・成長投資を始めとする『「強く豊か な日本」投資枠』については、「成長戦略」や「地域未来戦略」などを踏まえ、官民投資 ロードマップや分野横断的な課題に対応していく取組の形で示されたような、国内民間設 備投資や潜在成長率を大きく引き上げる効果の高い措置を対象とする。その規模について は、財政の持続可能性を実現しながら必要十分な規模を確保する。その上で、歳出規模の 総額は、物価・賃金、名目経済規模、歳入見通し、政策効果、財政目標との整合性を踏ま え、経済の成長力強化と名目の経済規模の拡大にふさわしいものとする。 経済財政諮問会議において、本節(予算編成の基本方針)を踏まえた取組について検証・ 評価を行うとともに、年後半において、令和9年度予算への反映状況や経済見通しを始め とする経済社会情勢の変化などを踏まえて、予算編成の基本方針について必要な改定を行 う。 35