資料1
経済財政諮問会議(令和8年第8回)
日本成長戦略会議(第5回)
議 事 次 第
令和8年6月24日(水)
18時00分~18時50分
総理大臣官邸2階大ホール
1.開 会
2.議 事
(1)戦略 17 分野の「主要な製品・技術等」における官民投資額について
(2)日本成長戦略の下での中長期的な経済・財政の姿に関する試算について
(3)地域未来戦略の政策パッケージについて
3.閉 会
資料1
資料2
資料3
資料4
資料5
資料6
資料7
資料8-1
資料8-2
資料8-3
資料8-4
資料8-5
資料8-6
資料8-7
資料8-8
資料8-9
戦略 17 分野の「主要な製品・技術等」における官民投資額
戦略 17 分野における「主要な製品・技術等」
戦略 17 分野における「主要な製品・技術等」の官民投資ロードマップ(案)
8つの分野横断的課題への対応(主要な施策)(案)
日本成長戦略の下での中長期的な経済・財政の姿に関する試算
(参考資料)成長戦略によるTFP上昇率の押上げ
地域未来戦略の政策パッケージ
会田委員提出資料
遠藤委員提出資料
片岡委員提出資料
小林委員提出資料
鈴木委員提出資料
竹内委員提出資料
橋本委員提出資料
芳野委員提出資料
経済財政諮問会議有識者議員提出資料
資料2
戦略17分野の「主要な製品・技術等」における官民投資額
資料1
〇戦略17分野における62の「主要な製品・技術等」毎の官民投資ロードマップにおいて、主として2040年度までの官民合計投資額
の現時点での想定規模を記載(数字が現時点で明確でないものも含め、今後さらに精緻化していく)。
〇全体を合計(「主要な製品・技術等」間での重複を排除)した官民投資額は、現時点で2040年度までの累計で370兆円超(注)を
想定。
注:2040年度200兆円という昨年1月に掲げた国内投資目標は、研究開発投資・設備投資といった民間国内投資全体の2040年度時点での年
間フローの数字であるが、ここでは62の「主要な製品・技術等」に関して、2040年度までの15年間における、主として国内での官民による投
資の年間フローの現時点での想定額を合計(累計額)している。官民投資額が2040年度まで記載されていない「主要な製品・技術等」につい
てはその部分は加算されていないことなども見込んで370兆円超と記載。また、「主要な製品・技術等」が今後追加されればその官民投資額
も加算される。
〇官民投資額の算出方法
• 当該分野に見識のある学者、シンクタンク、企業関係者などにより構成される戦略17分野の各WGでの議論を踏まえ、「主要な
製品・技術等」毎に、ボトルネックの解消と更なる投資を促すアクセラレーターを念頭に「勝ち筋」を特定し、国内投資支援、需
要・市場の創出、立地競争力強化、国際連携などを含めた政策パッケージからなる官民投資ロードマップ案を作成。
• その上で官民投資ロードマップ案を前提として、原則、政府担当部局が主要企業や団体に対してヒアリングを実施し、今後の
投資の予定・見通しを聴取したものを積み上げ。
• 主要企業以外のプレイヤーが多い場合や、投資予定が明確にならない将来などについては、上記ヒアリング内容などを基に、
当該製品・技術の市場や投資の伸び率、傾向などを用いて算出。その際、官の投資については、「主要な製品・技術等」毎に、
研究開発、実証、本格商品化、量産化といった発展ステージが、今後どの程度の時間軸で上がっていくかのシナリオによって、
その関与度合いについて一定の機械的な前提を想定。
• 当該官民投資額は、官民投資ロードマップ策定後も、1)予算編成の過程を通じて、新たな発想や視点に基づく真に効果のあ
る政策を作り込んでいくため、上記前提を含めて精査するとともに、2)PDCAサイクルを不断に回す中での精緻化を行い、適
切なタイミングで、講ずる施策などを含めて改定を行っていく。
1
分野
主要な製品・技術等
①フィジカルAI(特にAIロボット)
AI・半導体
②フィジカル・インテリジェント・システムの
中核を担う半導体
③バーティカルAI(領域特化型AI)
①データプラットフォーム
デジタル・
サイバー
セキュリティ
情報通信
量子
②セキュリティの確保された
政府・地方公共団体のAX/DX基盤
③AI時代に対応した先進的セキュリティ製品・
サービス
海洋
造船
2040年度までで10.5兆円
2040年度までで68.0兆円
2040年度までで23.1兆円
分野
主要な製品・技術等
①バイオものづくり
合成生物学・
②バイオ医薬品・再生医療等製品等
バイオ
(創薬・先端医療③と同じ)
2035年度までで0.9兆円
2035年度までで7.4兆円
2035年度までで1.0兆円
創薬・
先端医療
官民投資額(想定)
2040年度までで12.8兆円
2040年度までで20.8兆円
①ファーストインクラス製品・ベストインクラス
製品(医薬品、再生医療等製品)
2040年度までで23.4兆円
②感染症対応製品
2040年度までで7.2兆円
③バイオ医薬品・再生医療等製品等
(合成生物学・バイオ②と同じ)
2040年度までで20.8兆円
④クラウド・データセンター、蓄電池
2035年度までで32.7兆円
⑤クラウドネイティブに最適化された医療DX基盤
2040年度までで5.2兆円
⑥自動運転技術
2040年度までで8.2兆円
2040年度までで11.6兆円
①オール光ネットワーク
(APN:All-Photonics Network)
④革新的デバイス(AI、ロボティクス等)を
活用した先端医療
2040年度までで5.9兆円
2040年度までで1.1兆円
②海底ケーブル
2040年度までで2.4兆円
⑤ライフログデータ等を活用した
ヘルスケア関連サービス
③次世代ワイヤレス
(非地上系ネットワーク、5G/Beyond5G(6G)等)
2040年度までで20.5兆円
①次世代型太陽電池
(ペロブスカイト太陽電池等)
2040年度までで4.1兆円
①量子コンピューティング
2040年度までで10.3兆円
②水素等
2040年度までで6.2兆円
②量子通信・ネットワーク
2040年度までで1.5兆円
③量子センシング
2040年度までで1.4兆円
①小型無人航空機
2040年度までで0.4兆円。
加えて、戦略三文書の改定に伴う投資額も今
後見込まれる。
②艦艇
艦艇分野への防衛調達を含む投資は約3,400
億円(2026年度予算)。加えて、戦略三文書
の改定に伴う投資額も今後見込まれる。
③デュアルユース技術
2040年度までで4.3兆円
防衛産業
航空・宇宙
官民投資額(想定)
①民間航空機(次期単通路機・次世代航空機)
2040年度までで3.5兆円
②無人航空機
2040年度までで0.3兆円
③空飛ぶクルマ
2040年度までで0.4兆円
④ロケット・射場
2040年度までで2.3兆円
⑤人工衛星・サービス
2040年度までで6.4兆円
⑥月面探査・低軌道技術
2040年度までで5.6兆円
①海洋無人機(海洋ドローン)
2040年度までで1.2兆円
②海洋状況把握(MDA)
2040年度までで1.2兆円
③革新的海底開発技術
2040年度までで0.9兆円
①次世代船舶
2034年度までで1.0兆円
②船舶修繕
2035年度までで0.1兆円
③LNG運搬船
関係者間での検討を引き続き進めつつ、
今後精査
①永久磁石
2040年度までで0.2兆円
②グリーン鉄
(資源・エネルギー安全保障・GX③と同じ)
マテリアル ③革新的金属部素材
(重要鉱物・ ④低炭素金属部素材
部素材)
⑤一次原料(鉱石等)及び二次原料(リサイクル材等
の循環資源)からの製錬・分離精製、解体選別技術
⑥AI等を活用した複合新素材
③グリーン鉄
資源・
(マテリアル(重要鉱物・部素材)②と同じ)
エネルギー
安全保障・GX ④次世代型地熱
2040年度までで4.2兆円
2040年度までで1.0兆円
⑤洋上風力
2040年度までで5.1兆円
⑥次世代革新炉
2040年度までで5.0兆円
⑦GXケミカル
2040年度までで3.2兆円
2040年度までで3.1兆円
フュージョン
①フュージョンエネルギー
エネルギー
防災・
国土強靭化
①防災技術
①港湾荷役機械
港湾
ロジスティク ②サイバーポート(港湾物流DX)
ス
③次世代型倉庫
※フュージョン発電実証プラントが一つであると仮
定した試算。2030年代の発電実証以降は、研究
フェーズの進展に伴う産業界の予見性の高まりに応
じて、投資額の増加が見込まれる。
2030年度までで2.6兆円。加えて、第1次国土
強靱化実施中期計画に基づき2030年度までに
官民合わせて概ね20兆円強程度の内数を投資
額として想定。
2040年度までで0.4兆円
2040年度までで0.2兆円
2040年度までで0.6兆円
①植物工場
2040年度までで4.6兆円
②陸上養殖
2040年度までで2.9兆円
③食品機械
2040年度までで1.2兆円
2040年度までで4.2兆円
④新規食品
2040年度までで1.0兆円
2040年度までで0.3兆円
①ゲーム
2033年度までで24.5兆円
2040年度までで0.7兆円
②アニメ
2033年度までで3.3兆円
③マンガ
2033年度までで1.6兆円
④音楽
2033年度までで3.0兆円
⑤実写
2033年度までで1.3兆円
2040年度までで6.3兆円
※海外での鉱山開発や製錬事業への投資を含む
2040年度までで5.2兆円
フード
テック
コンテンツ
2
資料3
戦略17分野における「主要な製品・技術等」
•
•
資料2
各戦略分野において、①国内の経済安全保障等の様々なリスク低減の必要性、②海外市場の獲得可能性、③関係技術の革新性等の観点から、官民投資を優先的に支援すること
が必要と考えられる主要な製品・技術等を戦略的に選定(62項目:今回、造船分野で「LNG運搬船」を追加)し、官民投資ロードマップを策定。
今夏策定の日本成長戦略を改訂していく中で、主要な製品・技術等の追加を随時行っていく。
戦略分野
選定の考え方
方向性
AIにおけるフィジカル分野の重要性が高まる中、AIをロボットに実装するAIロボティク
ス等の多用途ロボットを中心に市場が拡大(2040年に約60兆円)。構造的人手不足
解消を通じて供給ボトルネック解消に貢献。産業競争力や経済安全保障に係るデー
タを他国に依存せず活用できる国内生産・技術基盤の確保が急務。
製造業等の豊富なデータや産業ロボット等の技術基盤を活かし、ロボット・主要部品・AIモデル
の開発を進めるとともに、注力産業を特定して潜在需要を顕在化させることで国内市場を創出
し、国内生産・技術基盤の構築につなげる。
フィジカルAIの実装に伴い、AIに必要な先端・次世代半導体に加え、センサーやマイ
コン等のアナログ・レガシー半導体の重要性も増大。需要ニーズが多様化する中で、
実装に必要なチップ機能を逆算して各種半導体を設計し、システム全体を最適統合
する能力の確保が急務であり、経済安全保障上も重要。
制御技術やアナログ・レガシー半導体の設計開発基盤の強みを活かし、各種半導体や電子部
品の生産・技術基盤を、実装先の需要産業における半導体設計・開発能力と一体的に強化す
る。
③バーティカルAI
(領域特化型AI)
2030年のバーティカルAIの国内市場は約3兆円。現場データが豊富な日本こそ独自
の価値創出が可能。自律行動型AI(Agentic AI)の浸透やAIを軸とした経営改革により、
更なる付加価値創出も期待。バーティカルAIの現場活用はフィジカルAIの開発利用
につながる。他国依存は、データの海外流出・デジタル赤字拡大に直結する観点か
らも、自律性確保が急務。
重点領域を設定し、人材やデータを含めたAI基盤への集中投資と、政府調達や制度改革によ
る初期需要創出を一体的に推進。各領域でのAX(AIトランスフォーメーション)の推進や、産業
や行政とAIの融合、AI導入と開発の好循環を進め、世界有数のバーティカルAIの中核拠点と
なる。
①データプラットフォー
ム
AIの普及に伴い、データをAIで利用可能な状態にするデータ精製等のデータプラット
フォームの重要性が増大。産業競争力や経済安全保障に係るデータを他国のプラッ
トフォームに依存せず安心して処理できる国内サービスの確保が急務。
製造業等で豊富なデータを有する強みを活かし、フィジカルAIも見据え、データ精製技術や組
織を超えたデータ連携技術の開発等を通じ、国内プラットフォームサービスの育成につなげる。
②セキュリティの確保
された政府・地方公
共団体のAX/DX基
盤
端末やネットワーク、クラウドやAIの基盤、基幹情報システム、認証基盤等の政府・
地方公共団体のAX/DX基盤は、行政運営や国民生活に不可欠。サイバー攻撃や大
規模災害時にも機能等を維持するため、強靱性の確保が必要。公共分野での率先
導入により、民間の技術力向上の機会をつくることが、官民のデジタル化推進の起
爆剤となる。
国産クラウド、SaaSへの初期需要の提供、生成AI・AIエージェントの徹底活用や、政府共通の
業務実施環境(GSS)のユーザー拡大、新たなセキュリティ技術の導入・運用等を通じ、高度な
サービスを安全に提供できる公共分野のAX/DX基盤の構築とともに、地方におけるAX/DX推
進エコシステムの確立、人材育成の推進を図る。
AIによるサイバー攻撃増加により、サイバーセキュリティ対策強化が喫緊の課題とな
る中、年間10%程度の国内市場拡大が継続して見込まれる成長分野。海外製品・
技術への過度な依存を防ぐ観点から、国内での自律的な産業・技術基盤の構築・強
化が急務。
官民の関係機関等から得られる一次情報を活用した国産セキュリティ製品・サービス開発を推
進するとともに、我が国が強みを発揮できそうな分野等(OT(制御系)システムセキュリティ、我
が国固有の攻撃への対応等)における先進的・有望な製品・サービスの信頼性・認知度を拡大
させる。同時にそうした製品・サービスの導入を促進して市場を拡大することにより、我が国に
おいて先進的な製品・サービス開発が進むエコシステムを構築する。
④クラウド・データセン
ター、蓄電池
データ・AI利活用を支える基盤であり、国内で足元4兆円規模・年20%超で拡大を続
ける成長市場。AIの普及により計算需要が爆発的に増加する中、信頼性のある基
盤の国内供給は、経済成長・経済安全保障の双方の観点から重要。
蓄電池は、デジタル・電化社会で国民生活・経済活動が依拠する重要物資であり、
近年サプライチェーンリスクが顕在化。大規模に量産可能な国が限られる中で、日
本及び同志国の自律性・不可欠性の確保・向上が課題。
電力・通信インフラ整備を通じた国内データセンター構築を推進するとともに、高信頼クラウド
基盤の構築、クラウド移行に向けた標準化を通じ、クラウド利用を前提にした産業構造への転
換を目指す。
また、AIデータセンター用をはじめとする多角的な競争力に優れ高度な電気制御を可能にする
蓄電池・電源システムの技術開発・製造基盤を確立するとともに、サプライチェーンリスク低減
に資する技術開発・製造基盤整備を加速。
⑤クラウドネイティブに
最適化された医療D
X基盤
大量のデータを必要とする創薬・医療機器の研究開発の基盤であるとともに、国内
で50兆円規模に及ぶ医療提供体制全体の効率化・質向上の観点からも重要。サイ
バー攻撃や災害時にも医療提供体制を維持する観点からも強靱性確保が不可欠。
オンプレミス型(院内サーバーでシステム管理する方式)が主流の医療機関情報システムをク
ラウドネイティブ型に刷新することにより、サイバーセキュリティ対策が強化された安全な医療
の提供や、データ連携を通じた創薬・医療機器の研究開発を目指し、医療高度化の基盤を確
立する。
⑥自動運転技術
現在の自動車市場以上の市場規模が見込まれる成長産業であり、かつ、自動運転
は交通事故削減、地域の足の確保、物流の輸送力不足解消等、「課題解決先進国」
として世界をリードする戦略的投資領域として重要。情報漏洩や海外からの遠隔操
作といったリスク軽減の観点から自律性確保が不可欠。
世界自動車販売シェア約25%、多様な走行環境、車両製造技術等を活かし、E2E(認識から経
路判断まで単一AIで処理し多様な環境でも走行可能な手法)等搭載車両のデータ収集・開発
の好循環、ソフト・ハードの互換性が高い国産自動運転システム搭載車両開発・販売、事業モ
デル構築、車両とインフラの連携、通信基盤やソフトウェアプラットフォームの整備等を同時並
行で進め世界自動運転販売シェア確保を目指す。
1
主要な製品・技術等
①フィジカルAI
(特にAIロボット)
②フィジカル・インテリ
ジェント・システムの
中核を担う半導体
内閣府(科技)、
経産省
AI・半導体
デジタル・サ
イバーセキュ
リティ
デジタル庁、
経産省
③AI時代に対応した先
進的サイバーセキュ
リティ製品・サービス
戦略分野
選定の考え方
方向性
AIの普及に伴うデータ量の急増により、世界的に需要が拡大(光通信関連市場は2030
年に約53兆円予測)。AI社会を支える基幹インフラであり、安全保障上も重要。国内でも
海外企業からの調達が拡大する中、自律性確保が急務。
光通信や光デバイス等の技術力の強みを活かし、急速な技術革新や市場ニーズに
即応した研究開発や国内での実装・ユースケース創出を進め、北米市場でのシェア
拡大を梃子として国際市場の獲得につなげる。
我が国の国際通信の99%を担う基幹的インフラであるとともに、AI需要増加に伴い、世
界市場は現時点の5,000億円程度から2030年には7,500億円規模に成長する見込み。
重要データの流通を支えるセキュアなインフラとして自律性の確保が急務。
強みの大容量光通信(マルチコア)技術を活かし、供給力向上に向けた生産施設拡
充、敷設・保守船確保に向けた官民投資促進、ケーブルの多ルート化・堅牢化等を
通じ、北米-アジア間のハブ機能維持・拡大を目指す。
③次世代ワイヤレス
(非地上系ネットワーク、
5G/Beyond 5G(6G) 等)
我が国の産業や社会のDXを進めるためには、あらゆるものが「いつでも・どこでも」ネッ
トワークを通じAIやクラウドにつながることを可能とする通信基盤である、次世代ワイヤ
レス(非地上系ネットワーク(NTN)、5G/Beyond5G(6G)、フィジカルAI・IoT通信基盤)が
必要不可欠。我が国では、規模の経済を背景にした海外事業者にサプライチェーンや
衛星インフラを依存。経済安全保障の観点から自律性の確保が急務。
NTN等のインフラ整備・需要創出を通じ、次世代ワイヤレス通信インフラの自律性を
確保する。また、通信機器・関連産業について、研究開発投資、人材育成等によって
衛星光通信、vRAN、AI RAN等の技術の優位性を維持しつつ、併せて海外市場開拓
を進めることにより、一定の世界シェア確保を背景とした強靱なサプライチェーン構築
を目指す。
①量子コンピューティング
将来の技術覇権を左右する計算基盤。近く実用化が期待され、2040年頃には14兆円以
上の市場に。通信・金融・医療等の多分野で活用が見込まれ、安全保障上も重要。
純国産量子コンピュータ開発の実績やチョークポイントとなる部素材技術、基礎研究
等の強みを生かし、具体的分野でのユースケース実証を通じた初期需要創出により、
自律的に発展可能な国内技術基盤を確立する。
②量子通信・ネットワーク
年成長率20%以上で急拡大を続け、2040年に世界で最大約5兆円規模になることが見
込まれる成長市場。安全保障、医療・創薬など秘匿性の高い情報を扱うことができる量
子通信・ネットワーク技術は、量子コンピュータによる暗号解読リスクへの対策や次世代
通信基盤の実現に必要不可欠である中、自律性確保が急務。
我が国が強みを持つ量子暗号通信(QKD)やオール光ネットワーク(APN)における技
術面・性能面・運用面の国際競争力を活かしつつ、テストベッドの整備・拡張、公共・
準公共分野への導入を通じた国内需要創出、ユースケースの実証とサービスの提供
による国内外への展開により、世界市場の確保を目指すと同時に、要素技術の研究
開発の加速等を通じ、2040年頃に世界に先駆けたオール光・量子ネットワーク
(APQN)の実現を目指す。
従来より大幅に高感度・高精度で計測・測位が可能となり、2035年の世界市場は最大
1.5兆円に拡大する見込み。医療や半導体、自動車等の産業に加え、安全保障・防災分
野での活用も期待されており、自律性確保が重要。
材料技術や部素材といった基盤やトップレベルの基礎研究等(特許数世界2位)の強
みを活かし、産学官が連携した研究開発基盤構築や、ユースケースの実証等による
需要創出等を通じ、世界市場の確保を目指す。
①小型無人航空機
「新しい戦い方」を支える装備品として重要性が増大。重要な構成品の供給を国外に依
存しているものがあり、自律性確保が急務。デュアルユース技術として、防民一体での
生産・技術基盤の構築が不可欠。「防衛と経済の好循環」も実現できる。
スタートアップ等の先端技術の迅速な取り込みを図りつつ、研究開発投資や防衛調
達、安定供給確保基金などを通じ、デュアルユースを含む国内の生産・技術基盤を
構築する。これを活用し、同盟国・同志国とのサプライチェーン協力等を推進するとと
もに、国内の民生市場だけでなく、海外民生市場を獲得。
②艦艇
四面環海の我が国の安全保障上、艦艇は極めて重要であり、生産・サプライチェーンの
脆弱化への対応が必要。USV(無人水上航走体)/UUV(無人水中航走体)に活用され
る無人化・自律化・群制御等のソフトウェア技術は海運等の民生分野にも裨益。
我が国の防衛や、同盟国等との防衛協力を支えることができる生産・技術基盤を構
築する。また、USV/UUV等に活用される新技術の早期導入による民生分野への横
展開の促進等を通じ、民生分野の競争力の強化にも寄与する。
既存の民生用の生産・技術基盤を全面活用した「新しい戦い方」への移行が進む中、
デュアルユース技術の産業基盤を強化し、積極的に防衛分野で活用することは、迅速
な装備品量産に資するものであり、安全保障上極めて重要。加えて、航空・宇宙、AI・半
導体(蓄電池、ロボット等)、マテリアル(素形材含む)、バイオ・医療などの分野における
産業基盤強化にも繋がるものであり、経済成長にも貢献。
防衛力強化に貢献する生産・技術基盤の投資を官民一体で促進し、国内外の民生
市場における競争力を強化するとともに、国内外の民生市場の獲得により強化され
た生産・技術基盤を防衛装備品の質と量の向上に繋げる「防衛と経済の好循環」を
実現する。
主要な製品・技術等
①オール光ネットワーク
(APN:All-Photonics
Network)
情報通信
②海底ケーブル
総務省
量子
内閣府(科技)
③量子センシング
防衛産業
経産省、
防衛省
③デュアルユース技術
2
戦略分野
航空・宇宙
主要な製品・技術等
選定の考え方
方向性
①民間航空機
(次期単通路機・次世代
航空機)
航空旅客需要は今後20年間で約2倍の成長が見込まれ、民間航空機市場は拡大
(航空機の高頻度運航により、単通路機の需要は大きく拡大。環境新技術(水素、
電動化、軽量化等)を搭載した次世代航空機の需要も拡大見込み)。民間航空機
開発のサプライチェーンや人材等は防衛産業とのシナジー効果も高く、安全保障
上も重要であり、生産・技術基盤の自律性確保が急務。
双通路機の実績や製造技術、品質保証等の強みを活かし、インテグレーション能力を獲得
すべく、次期単通路機では仕様設計・認証等への参画に向けた技術実証や開発・量産体
制構築を行うとともに、次世代航空機では開発・国際標準化を主導する。こうした海外OEM
との国際共同開発のための投資や認証取得能力の向上等により、サプライチェーンの強
靱化や人材の育成と併せて、自律的に発展可能な国内技術基盤を確立する。
②無人航空機
インフラ点検や物流等の民生の効率化・無人化需要に加え、防衛需要も拡大
(デュアルユース)。2030年には世界の機体市場は1.5兆円に。海外製に大きく依存
しており、自律性確保が急務。
民防の需要に向けた国内量産体制の構築や、認証取得能力の向上、AIなどソフトウェアの
開発を進め、国内のサイバーセキュリティが重視される分野や、単独国への集中的な依存
の低減を図る同盟国・同志国の市場獲得を目指す。また、目視外飛行での新たなビジネス
モデルによる事業化を図る。
③空飛ぶクルマ
未だ技術開発段階だが、2040年には世界の市場(機体・サービス等含む)は約200
兆円に。要素技術開発やサプライヤー育成は、安全保障上も重要な航空機産業
の発展にも貢献するなど、生産・技術基盤の自律性確保が重要。
国内機体の小型・軽量等の強みを活かしたビジネスモデルを構築し、産業基盤構築に向け
た投資、認証取得能力の向上等により、国内外において短距離路線へのニーズが高い市
場の獲得を目指す。
通信・観測・測位・安全保障等で宇宙利用が進み、2030年代には約150兆円の市
場が見込まれるが、宇宙利用のためにはロケット打上げ能力が不可欠。国内衛星
の多くは海外から打ち上げられており、米・中・欧・印が打上げ能力を強化する中、
我が国も自立的な宇宙空間へのアクセス確保・拡大が急務。
基幹ロケット等の信頼性を向上させながら、打上げ実績を早期に蓄積し、高頻度打上げに
対応できるロケットの国内製造能力と射場整備につなげ、輸送コストや即応性等の強みを
活かして、国内やアジア等の衛星の打上げ需要を獲得する。
⑤人工衛星・サービス
人工衛星(通信・観測・測位)とデータ利活用サービスは、防災・国土強靱化・安全
保障等に直結する社会基盤であり、民間利用拡大を背景に、2030年代半ばに全
世界で1兆ドル超の市場拡大が見込まれる。グローバル規模での展開が前提とな
る衛星サービスのインフラに組み込まれる一部の重要部品・中核技術は海外が先
行するとともに、我が国も依存しており、米欧中のグローバルプレーヤーが世界を
席巻しつつある中で、我が国の自律性を確保するとともに不可欠性の確保が急務。
我が国の官民の技術の強みを活かし、高精度観測、衛星光通信、燃料補給等の軌道上
サービス、高精度測位衛星で国内外の需要を獲得するため、アンカーテナンシーを通じて
ビジネスへの予見性を持たせつつ、国内外の需要獲得を支える技術や地上局・設備等の
開発・整備・サービス実装を促し、国際競争力を有する国家インフラ構築を目指す。
⑥月面探査・低軌道技術
米中はじめ世界各国で開発競争が激化する中で、我が国も自律的な月面・低軌道
へのアクセス確保が急務。特に、ロケットや月面着陸機に加え、宇宙ステーション
も2030年頃に民間移行を目指すなど、低軌道含め官から民への動きが加速し、
2040年に世界の月面市場は年2.5兆円、低軌道市場は年3兆円程度の見込みであ
るなど、市場拡大が期待。
我が国が強みを有する月面輸送技術を活用して、月面開発に挑戦する企業の月面インフ
ラ整備を支援する。加えて、半導体や創薬をはじめとする幅広い産業に対して、低軌道アク
セスや実験環境を提供する新型宇宙ステーション補給機(HTV-X)の高度化・商業化を進
め、月面・低軌道ビジネスの振興を目指す。
①海洋無人機
(海洋ドローン)
資源開発、海洋インフラ、海面養殖等の広範な分野で活用が拡大し、2030年頃に
は1.5兆円を超える市場に。無人アセットの重要性が増大する中、デュアルユース
技術として、海洋国家における安全保障上も重要。
造船技術や深海探査等の強みを持つ技術力を活かし、スタートアップも活用して海洋デー
タ利活用や運用サービスも含めたパッケージで高付加価値化を図る。防衛や資源・エネル
ギー分野での初期需要創出により、国内生産基盤の構築につなげる。
多様な海洋関連情報の集約・共有により、海洋状況の効果的・効率的な把握を目
指すものであり、海洋インフラ保守、防災・減災、環境保全など幅広い分野で付加
価値を創出し、2033年には世界で224億ドル規模の市場に。海洋安全保障の基盤
であり、自律性確保が重要。
海洋状況表示システム「海しる」の高度化を行い、安全保障分野での利用高度化や、民間
利用可能な情報流通を促し、海洋ビジネスの基盤とするとともに、ODA(政府開発援助)・
OSA(政府安全保障能力強化支援)も活用して関係国への国際展開を推進し、海外での新
規需要創出を図る。
マンガン団塊・レアアース泥等の国産海底資源開発は資源自給率向上にとって極
めて重要であり、開発技術が世界的に未確立の中で、我が国が資源開発を実現
することは、不可欠性確立の観点からも重要。
マンガン団塊・レアアース泥等について、資源量調査から探鉱、精製、環境影響調査に至
るまでの海底開発技術・システム開発を進め、海洋由来重要鉱物の供給源の確立を目指
す。
内閣府
(経済安保)
④ロケット・射場
海洋
②海洋状況把握(MDA)
内閣府(海洋)
③革新的海底開発技術
・システム
3
戦略分野
選定の考え方
方向性
海上輸送に不可欠な船舶を安定的に供給し、国民生活や経済活動のみなら
ず、安全保障も支える産業である造船業は、厳しい国際競争で建造能力が
減少する中、自律性及び優位性の確保が急務。2035年に建造需要の6割程
度に拡大すると見込まれるゼロエミッション船等の次世代船舶は、我が国造
船業が成長産業として大きく飛躍できるゲームチェンジの機会。
造船業再生基金を通じた建造能力向上により、造船業の自律性を確保する。ゼロエミッション船等の
技術開発・生産体制整備・国際ルールの策定主導等を通じて先行者利益を確保するとともに、強み
である省エネ技術や、DX・AI・ロボット等による生産性の更なる向上により、競争力を高める。
我が国の海上警備や防衛を担う船舶も含め、定期的な船舶の修繕は、安全
性維持のほか、安全保障・情報セキュリティ等の観点から必須の役務。内航
船は国内でほぼ修繕されているものの、外航船は特定国への依存傾向にあ
る。
修繕能力の減退が我が国海上輸送の停滞とならないよう、国内の造船・修繕ドックに係る実態(人的
キャパシティを含む)を踏まえ、海事産業群内でのデータの共有化や国内で修繕需要が見込まれる
外航船・官公庁船・内航船の修繕能力の向上(ドック、クレーン等の機能拡充・高度化や、AI・ロボット
等による自動化・省人化等)、総合的な人材確保・育成を進めるとともに、日本の外航船の主要航路
を踏まえた同志国における修繕所の活用、新たな修繕拠点の確保を多角的に図る。
③LNG運搬船
国内外で今後もLNG海上輸送の需要が拡大していく中、我が国としてLNG運
搬船の建造技術を獲得・保持することは、自律性の確保という経済安全保障
の観点から重要。また、LNG運搬船の建造に不可欠な防熱技術・低温技術
は、液化水素等の新たな輸送技術にも応用可能。
発注者である荷主(電力・ガス事業者等)や海運事業者による国内造船所への継続的かつ安定的な
発注を確保するとともに、中長期的な需要サイド・供給サイドの協働に関する合意が得られるよう働き
かけ、得られた同合意に基づき、国内造船所における供給体制及び我が国の省エネ技術や防熱技
術を活用した次世代LNG運搬船を開発する能力の構築を図る。
①永久磁石
自動車や産業機械等の基幹産業の生産活動に不可欠。我が国は高性能磁
石の製造技術で優位性を持つ一方、重レアアース等の原材料供給は特定国
に大きく依存。EV普及等に伴い、ネオジム磁石の世界需要は0.6万トン(2017
年)から16.1万トン(2040年)に増加が見込まれ、生産能力確保が課題。特定
国の輸出管理強化で供給が不安定となる中、自律性・不可欠性の確保が急
務。
特定国以外で高性能磁石の供給能力を有するのは我が国のみ。原料調達先の多角化に加え、省レ
アアース/レアアースフリー磁石やレアアースリサイクルの基盤を確立し、永久磁石の生産能力増強
を進めることで、国内外の電動車等向けの高性能磁石市場獲得につなげる。
鉄鋼は様々な製品や社会インフラに使用される重要な基礎素材。我が国の
鉄鋼業は、高強度・高加工性などユーザーの求める機能を実現する高級鋼
材を中心に競争力を有しており、製造業の国際競争力強化に貢献。グリーン
鉄の市場は2050年に約5億トンまで拡大するポテンシャルがあり、欧州を中
心に素材製造プロセスの脱炭素化要請が高まる中で、世界に先駆けたグ
リーン鉄の国内生産・技術基盤の構築が急務。
大型革新電炉の設備投資や水素還元製鉄の技術開発支援、グリーン鉄のGX価値の見える化や公
共工事を含めた需要創出による市場環境整備等を通じ、国際ルール形成に向けた主導権を握る。リ
サイクル施設への設備投資支援等を通じ、高品位鉄スクラップを増産する。また、脱炭素電力・水素・
CCSインフラの整備等を進める。これらにより、高品質なグリーン鉄を世界に先駆けて国内外で獲得
し、競争優位性の確立につなげる。
③革新的金属部素材
半導体回路や航空機エンジン等で活用される高機能・高付加価値な革新的
金属部素材は、他国での製造が困難である一方、AIの登場により新しいアプ
ローチでの部素材開発が活発化しており、日本の競争優位性が失われる恐
れ。開発競争力を強化し、不可欠性を確保することが重要。
我が国金属部素材メーカー等の高い技術開発能力を活かし、革新的金属部素材の素材探索に加え
て、量産・加工技術確立に向けた技術開発や設備投資等を進め、国内外の市場獲得につなげる。
④低炭素金属部素材
(鉄鋼以外)
アルミニウムやレアメタルを中心に、欧州をはじめとし需要サイドでも素材製
造プロセスの脱炭素化要請が高まる中、製造工程の脱炭素化やリサイクル
システム構築は製造業の国際競争力維持・強化の観点から急務。加えて、
各国が原料・スクラップの確保に向けた動きを進める中、国内で供給能力を
確保することは自律性確保の観点から重要。
我が国が有する高強度・高加工性などの強みを活かし、生産基盤構築に向け技術開発・設備投資支
援や、リサイクル施設への技術開発・設備投資支援、国・自治体による優先的調達・購入といった初
期需要創出に向けた取組を通じ、高品質な低炭素金属部素材市場を世界に先駆けて商業化し、競
争優位性の確立につなげる。
蓄電池・モーター・半導体等の生産に不可欠なレアアース等の重要鉱物は、
鉱山が地理的に偏在し、製錬・分離精製工程が特定国へ集中している状況。
輸出国の貿易管理措置により重要鉱物の国内への輸入が減少・不安定化し
ていることも踏まえると、自律性の確保が不可欠。
鉱山開発から製錬、加工に至るまでの一連のサプライチェーンを国内・同志国で確保するとともに、
供給途絶を回避するための国家備蓄の強化に取り組み、強靭なサプライチェーンを構築する。従来
品からの価格上昇に対し、供給源を多角化するための国際的な枠組みを検討するとともに、中下流
企業の行動変容等を促すことで、新たな供給源立ち上げを行える環境を構築する。高品質な金属地
金供給、国内製錬ネットワークを活用した鉱石等の副産物であるレアメタル回収、使用済製品のリサ
イクルによる資源循環等の重要な機能を担っている国内製錬所の維持・強化も含めた、国際的な資
源循環ネットワークを構築する。
複合新素材は、高機能素材等を組み合わせることで多性能を同時に満たす
材料であり、幅広い産業で活用。我が国は、複合新素材を含めた高機能素
材分野において高い国際競争力を有しているが、他国も競争力を高めつつ
あり、我が国の不可欠性の維持・強化に向けたAI等の活用が急務。
我が国が蓄積してきたデータやノウハウと最先端のAI技術等を掛け合わせ、材料探索・材料設計・プ
ロセス設計・信頼性評価まで一気通貫のAI駆動素材開発を推進する。秘匿計算技術を活用し、同業
の素材企業や下流のユーザー企業にもまたがる複数者で協調して複合新素材を開発する。アカデミ
アを含めた基盤的研究開発能力の維持・強化や原料となる基礎部素材の安定供給確保等も進める。
4
これらにより、新素材開発速度を従来比10倍に加速させるエコシステムを構築する。
主要な製品・技術等
①次世代船舶
造船
国交省、
内閣府
(経済安保)
②船舶修繕
②グリーン鉄
※資源・エネルギー安全保障・
GX③と同じ
マテリアル
(重要鉱物
・部素材)
経産省
⑤一次原料(鉱石等)
及び二次原料(リサ
イクル材等の循環資
源)からの製錬・分
離精製、解体選別技
術
⑥AI等を活用した複合
新素材
戦略分野
選定の考え方
方向性
素材・食品・エネルギー等の新たな製法として、2030-40年には約165兆円の経
済効果。バイオマスや廃棄物等の国内資源を活用でき、サプライチェーンの特
定国・地域への依存低減に貢献。
発酵産業の蓄積等で強みがある実験・製造工程に加え、AI・データ活用や革新的な
基盤技術開発により設計・解析工程を強化し、高効率な製造技術を確立する。経済
安全保障や脱炭素の観点で重要な製品の初期需要創出の取組等を促進することに
より、国内生産基盤の構築につなげる。
※創薬・先端医療③と同じ
拡大する医薬品市場(2022年に約200兆円)で、バイオ医薬品・再生・細胞・遺
伝子治療等の比率は約4割。国民の健康や生命に直結し、健康医療安全保障
上、供給途絶リスクを低減する自律性確保が急務。
iPS細胞や抗体薬物複合体等の技術基盤の強みを活かし、開発・製造受託の実績を
積み上げることなどを通じ、国内生産基盤を維持・構築し、国内の医療ニーズに応え
るとともに、創薬ベンチャーのグローバル展開を促進し、海外市場の獲得につなげる。
①ファーストインクラス※1製
品・ベストインクラス※2製
品(医薬品、再生医療等
製品)
世界の医薬品市場は2022年時点で約200兆円に達し、ファーストインクラス製
品・ベストインクラス製品を含む特許品の世界市場(日本を除くG7)は、年平均
9.6%で拡大。また、ファーストインクラス・ベストインクラス製品の供給確保を通
じて、治療法が未確立の疾病にも対処することは、国民の健康の維持、健康医
療安全保障の実現に直結。
基礎研究力や高品質な治験の強みを活かし、実用化を担う人材の育成・流動性向上
や、リスクマネーの呼び込み等によるスタートアップや国際共同治験における資金
面・制度面の課題解消を図る。これにより、新たな創薬シーズの創出から実用化まで
一気通貫で進める環境を整備し、需要が拡大する海外市場の獲得につなげる「世界
直行型」の開発を実現する。
ワクチン、治療薬等は、供給が途絶すれば国民の生命に直結するものであり、
健康医療安全保障上、供給途絶リスクを低減する自律性確保が急務。平時と
有事の需給変動が大きいため、生産体制の安定的な維持が難しい。抗菌薬は
原材料・原薬の調達が特定国に極度に依存する品目があり、免疫グロブリンは
原材料や製造能力不足により平時から国内自給できていない。一部の海外メ
ガファーマが撤退している抗菌薬等の新薬や我が国が強みを有する診断薬等
の感染症対応医薬品の海外展開により、一定の世界シェア獲得が見込まれる。
我が国は、供給計画遵守力の高さや生産技術、測定技術等の強みを有している。感
染症対応医薬品の研究開発や製造施設の整備、ワクチン・抗菌薬等の買上げ・備蓄、
安定供給に資する措置の推進、原料血漿確保体制の強化を通じて、需要創出ととも
に生産体制を安定化させることで国内に供給するとともに、技術力を活かした高品質
な製品を輸出する。
拡大する医薬品市場(2022年に約200兆円)で、バイオ医薬品・再生・細胞・遺
伝子治療等の比率は約4割。国民の健康や生命に直結し、健康医療安全保障
上、供給途絶リスクを低減する自律性確保が急務。
iPS細胞や抗体薬物複合体等の技術基盤の強みを活かし、開発・製造受託の実績を
積み上げることなどを通じ、国内生産基盤を維持・構築し、国内の医療ニーズに応え
るとともに、創薬ベンチャーのグローバル展開を促進し、海外市場の獲得につなげる。
医療機器産業は、世界市場約80兆円、成長率6%超の有望市場である一方、
0.7兆円の輸入超過。また、国民の生命に直結するデバイス(例:心臓、肺、腎
臓等の機能を代替する機器)等について、サプライチェーン含めて安定提供を
確保することは、健康医療安全保障上、極めて重要。日本企業が技術的優位
性を有する医療機器の開発は、戦略的不可欠性の確保にも寄与。
診断機器分野では、画像技術を中心に高い競争力を持つが、AI技術の進展を迅速
に取り込むため、産学官連携のオープンイノベーションコア拠点を強化し、世界市場
に展開する。治療機器分野では、高い操作性等の技術力が評価されるが、資金調達
の課題等により実用化が進んでいないため、AIによる技術革新を好機と捉え、イノ
ベーションエコシステムや資金調達環境を構築し、世界市場の獲得を目指す。
ウェアラブルデバイス等を用いたデジタルヘルスサービスの世界市場規模は
現在約70兆円であり、2034年には350兆円規模と見込まれる。健康医療安全保
障の観点から、「攻めの予防医療」により国民が生涯にわたり元気に活躍でき
る社会を実現し、社会保障制度を含めた社会の支え手を確保することが必要
(健康課題による経済損失の軽減にもつながる)。個人の健康データの情報保
護の観点から、セキュリティの確保が必要。
優れた医療データや緻密なデータの収集実績、光学センサや画像技術等の技術の
強みを活かしつつ、ヘルスケアサービスの予防・健康づくりの効果に係るエビデンス
を構築し、企業・保険者がサービスを選びやすい環境を整備する。併せて、ヘルスケ
アサービス活用のインセンティブを強化することで、質の高いヘルスケアサービスの
社会実装を進め、国内市場を拡大し、中長期的には海外市場に展開する。
主要な製品・技術等
①バイオものづくり
合成生物学・バイオ
経産省
②バイオ医薬品・再生医療
等製品等
※1 全く新しい作用で世界で初めて承
認されるもの
※2 同じ作用の製品の中で有用性が
最も優れるもの
②感染症対応製品
創薬・先端医療
内閣府(健康医療)、
デジタル庁
(健康医療)、
デジタル庁
③バイオ医薬品・再生医療
等製品等
※合成生物学・バイオ②と同じ
④革新的デバイス(AI、ロボ
ティクス等)を活用した先
端医療
⑤ライフログデータ等を活用
したヘルスケア関連サー
ビス
5
戦略分野
主要な製品・技術等
選定の考え方
方向性
①次世代型太陽電池
(ペロブスカイト太陽電池等)
シリコン太陽電池相当の発電コストを前提に、フィルム型では約25GWの
国内需要が見込まれる他、海外には約500GWの導入ポテンシャルが存
在。太陽電池は、現状で特定国が約8割のシェアを占めるが、国産エネ
ルギー源として経済安全保障・エネルギー安全保障の両面から自律性
確保が重要。特にペロブスカイト太陽電池は、主原料のヨウ素の世界
シェアの約3割を日本が占め、自律性・不可欠性に寄与。
フィルム型では、コスト低減に向けた技術開発等を通じた量産体制の早期構築に加
え、軽量・柔軟等の特徴から、軽量な屋根や壁面等への導入が可能であるという強
みを活かし、従来型との差別化を図る。加えて、国内では官公需を活用しつつ、国外
でも実証支援等を通じ、初期需要の創出に取り組むことで、国内外の市場拡大につ
なげる。
②水素等
水素・アンモニア関連市場は堅調に拡大しており、2050年には30~40兆
円規模となる見込み。今後の経済安全保障の観点からも、サプライ
チェーンの早期立ち上げを通じ、我が国技術・製品の不可欠性を高めつ
つ、GX市場で“買わされる”側に回らないための自律性確保が重要。多
様な製造手法や、電力の安定供給に当面不可欠な調整力維持を通じ、
エネルギー安全保障にも貢献。
重点地域を中心としたモビリティ起点の社会実装を他産業に波及させるとともに、技
術開発や価格差支援によるサプライチェーン構築を通じ、需要創出と価格低減を実
現する。国際競争力を持つ製品(ガスタービン、水電解装置、液化水素・船舶関連機
器、燃料電池)について、国内での商用実績の蓄積や需要国連携による国際標準化
等を通じ、海外市場の獲得につなげる。
鉄鋼は様々な製品や社会インフラに使用される重要な基礎素材。我が
国の鉄鋼業は、高強度・高加工性などユーザーの求める機能を実現す
る高級鋼材を中心に競争力を有しており、製造業の国際競争力強化に
貢献。グリーン鉄の市場は2050年に約5億トンまで拡大するポテンシャ
ルがあり、欧州をはじめとし需要サイドでも素材製造プロセスの脱炭素
化要請が高まる中で、世界に先駆けたグリーン鉄の国内生産・技術基盤
の構築が急務。
大型革新電炉の設備投資や水素還元製鉄の技術開発支援、グリーン鉄のGX価値
の見える化や公共工事を含めた需要創出による市場環境整備等を通じ、国際ルー
ル形成に向けた主導権を握る。リサイクル施設への設備投資支援等を通じ、高品位
鉄スクラップを増産する。また、脱炭素電力・水素・CCSインフラの整備等を進める。
これらにより、高品質なグリーン鉄市場を世界に先駆けて国内外で獲得し、競争優位
性の確立につなげる。
④次世代型地熱
天候に左右されず、持続的に発電可能な脱炭素電源として、エネルギー
安全保障上重要であるとともに、2040年頃に世界で年間2,000億ドル近く
に到達するなど継続的な成長が見込まれる。従来型より開発エリアの拡
大や関連規制の最適化、高温・高圧の熱源を活用した大規模発電が期
待されており、我が国の自律性向上に大きく寄与。
国内実証事業を通じたプレイヤーの育成・創出や、温泉法等の関連規制の整理を踏
まえた事業環境整備により、2030年代早期の実用化を目指しつつ、強みの鋼管・発
電用タービン技術を活かし、関連技術の海外展開による世界市場の獲得を目指す。
⑤洋上風力
2040年にはアジア・欧州の重点市場が約200GWまで拡大する試算もあり、
経済波及効果も期待される重要な脱炭素電源。特に日本と気象・海象が
類似するアジア太平洋地域では、浮体式も含め、今後の導入拡大が見
込まれており、国内の風車・浮体製造サプライチェーン構築は、自律性
確保に大きく寄与するとともに、アジア太平洋地域への展開可能性から、
不可欠性も有する。
我が国には風車の核となる部品製造の技術力は残っており、今後、設備投資支援や
海外風車メーカーとの連携を通じ、国内に風車製造拠点を創出することで、国内部
品メーカーの再興を図る。また、浮体式の技術開発を進め、国内技術を活かした風
車・浮体のサプライチェーンを構築する。AZEC(アジア・ゼロエミッション共同体)の枠
組み等を活用した海外展開支援により、アジア太平洋地域等への展開も進める。
2050年に非従来型炉の世界市場が年間1000億ドル規模になることが見
込まれる成長市場。国内においても、2040年代以降に原子力の供給力
が大幅に減少することが見込まれており、次世代革新炉への建て替えを
進めていくことが、我が国のエネルギー安全保障や安定・脱炭素電源の
確保に寄与。
サプライチェーン強靭化や原子力人材育成、事業環境・投資環境の整備、国内の研
究開発基盤・資金供給機能の強化を通じた次世代革新炉開発を行い、国際競争力
強化・国際市場獲得を目指す。また、次世代革新炉の設置を念頭に置いた規制基準
の基盤となる技術的検討、予見性のある規制基準等の設定や審査・検査等の実施
のための規制体制の充実・強化を行う。更に、核燃料サイクルや最終処分等の取組、
避難道路の整備を含む立地地域との共生を進める。
GXケミカルとは、自動車や電池、半導体等のGXに資する川下製品の製
造に不可欠な部素材である機能性化学品及び、その原料となる基礎化
学品において、低炭素化/脱炭素化を実現したもの。そのうちGX機能性
化学品は成長性が高く、我が国企業の競争力も高いが、国際競争が激
化しており、他国に負けないスピードでの投資拡大が不可欠。また、その
原料となる基礎化学品についても、川下産業の脱炭素要請に対応した
GX基礎化学品への転換による競争力強化と安定供給の実現が必要不
可欠。
GX機能性化学品について成長投資を加速し、国際競争力を強化するとともに、ここ
で稼いだ原資を用いて、基礎化学品について、脱炭素化・低炭素化及び安定供給の
実現のための投資を進め、持続可能な供給基盤を構築する。併せてGX価値の見え
る化等の需要創出のための取組を行う。
③グリーン鉄
※マテリアル(重要鉱物・部素材)②
と同じ
資源・エネルギー
安全保障・GX
経産省
※GXにおける「分野別投
資戦略」に基づき、総合
的に取組を進めつつ、特
に右記の分野において
ロードマップを策定する。
⑥次世代革新炉
⑦GXケミカル
6
戦略分野
フュージョン
エネルギー
選定の考え方
方向性
未だ研究開発段階だが、発電時にCO2を発生しない、燃料は海水中に豊富に存在す
るなどの特性を有し、エネルギー問題と地球環境問題を同時に解決する次世代のエ
ネルギーとして期待。各国で開発競争が進む中、エネルギー安全保障上、自律性確
保が重要。
ITER計画等での長年にわたる研究開発やチョークポイントとなりうるプラズマ対向機器や
加熱装置等の強みを生かしつつ、スタートアップの革新的技術も取り込み、フュージョン
エネルギーを世界に先駆けて実現するとともに、自律的に発展可能な国内技術基盤を
確立する。
国土強靱化は、国民の生命・財産・暮らしを守り、強い経済を下支えする重要な危機
管理投資。防災技術は、巨大地震や激甚化・頻発化する気象災害、インフラ老朽化、
担い手不足といった国内の課題解決のみならず、国際的にも、気候変動に伴う災害リ
スク増大等により、需要が拡大。
国土強靱化基本計画ならびに第1次国土強靱化実施中期計画を推進するとともに、防
災・国土強靱化の取組を加速化させるため、自動施工・遠隔施工やインフラ老朽化対策、
災害リスク関連技術、防災資機材関連技術等の防災技術について、現場での実装を一
気通貫で支援する。技術開発から商品化、実装・需要の創出、更なる技術開発につなが
る好循環を創出し、防災産業を振興するとともに、災害大国である我が国で蓄積された
データ・ノウハウ等を梃子に、官民一体となった推進体制の下で海外展開を図る。
①港湾荷役機械
我が国港湾の国際競争力を維持・強化するためには、自動化・遠隔操作化等により労
働環境の改善や生産性の向上につながる港湾荷役機械が重要。世界のコンテナ取
扱量が増加する中、特定国の港湾荷役機械が圧倒的な世界シェアを有しており(我が
国はシェア1割程度)、経済安全保障の観点からも生産機能の維持・強化が急務。
生産機能の強化を図り、国内港湾の自動化・遠隔操作化等に向けて導入を進めるととも
に、信頼性、耐震性等の強みを活かし、特定国への依存低減を図る同盟国・同志国の市
場獲得につなげる。
②サイバーポート (港湾
物流DX)
港湾関連情報を一元的に管理するデータプラットフォームとして、貿易・経済活動を支
える不可欠な存在であり、サイバー攻撃による機能停止を防ぐべきシステムとして経
済安全保障上も重要。
サイバーセキュリティを確保しつつ、サイバーポートの機能強化、デジタル標準化に向け
たルール構築、民間プラットフォーム・システム連携促進により、港湾の利便性向上を図
り、結果として我が国港湾をソフト面からも「選ばれる港湾」とする。
③次世代型倉庫
庫内作業が自動化された倉庫の整備を促進し、我が国港湾の取扱貨物増加を図るこ
とが重要。国内倉庫での受入れ可能貨物量を増やすことで、我が国港湾で保管しき
れない貨物の外国での一時保管を回避していくことが経済安全保障上も重要。また、
災害発生時の我が国サプライチェーンの強靱化の観点からも重要。
老朽化した複数の倉庫を集約・再編して、輸出入貨物の受入スペースを拡大するととも
に、倉庫の自動化・機械化支援の推進、港湾周辺部の物流の効率化やコールドチェーン
物流サービス規格の海外展開を促進することにより、国際競争力の強化及び災害発生
時を含むサプライチェーンの強靱化を図る。
気候変動の影響に左右されず、定時・定量・定価格・定品質で生産可能な植物工場シ
ステムを活用したニーズに応じた農産物の安定供給のほか、栽培期間が短縮される
特長を生かした高温耐性品種等の開発加速化等とその成果の農業現場への展開を
通じて、気候変動下でも収量・品質を向上し、食料安全保障をめぐる世界的な課題解
決に貢献(2040年55兆円(2025年1.5兆円)の見込み)。
世界初のモジュール型の植物工場開発を始めとした技術面での強みを活かし、種苗等
の生産資材や運営ノウハウ等もパッケージにした植物工場システムについて、国内への
導入や、輸出による海外市場の獲得を図る。
②陸上養殖
海洋環境の変化に左右されずに、水産物の安定供給が可能。先端技術を活用した生
産性の高い日本産の種苗・飼料を開発・生産しつつ、国内外のマーケットが求める水
産物を安定供給できる我が国発の陸上養殖システムを開発・展開することにより、世
界の水産物サプライチェーンの構築・強靭化に貢献(市場規模は2040年31兆円(2025
年0.35兆円)の見込み)。
水処理・浄化技術や、ゲノム関連技術を用いた品種開発等の技術面での強みを活かし、
運営ノウハウ等もパッケージにした陸上養殖システムについて、国内への導入による水
産物の安定供給のみならず、海外展開による世界市場の獲得を図る。
各国の規制や認証取得への対応を強化しつつ、現地での保守・サービス対応等も含め
たビジネスモデルにより、海外での展開先を拡大。
③食品機械
ハード・ソフト両面に強みのある食品加工機械や、長時間・長距離の食品輸送を可能
とし需要拡大が見込まれる鮮度保持技術の国内外への展開により、獲得できる市場
が拡大(世界全体の市場規模は2040年33兆円(2025年16兆円)の見込み)。食品産業
の人手不足解消、生産性向上、食品廃棄物の発生抑制等により、国内外の食料安全
保障の確保に貢献。
④新規食品
国内外でたんぱく質需要の大幅な拡大が見込まれるほか、健康課題が顕在化する中
で、多様な農林水産物等を活用した非動物由来たんぱく食品や機能性・栄養食品の
国内外での提供により、獲得できる市場が拡大(世界全体の市場規模は2040年29兆
円(2025年4.4兆円)の見込み)。たんぱく質の供給不足等への対応により、食料安全
保障の確保や国内外の健康課題の解決にも貢献。
我が国の食文化の中で培われた発酵技術等の日本の強みを生かし、国内市場の獲得・
拡大を図る。加えて、堅調な需要拡大が見込まれる海外市場について、各国の食品規
制や認証取得への対応の強化等により、まずは、健康課題や地球環境の持続可能性に
関心の高い欧米等に、その後、大きな市場成長が見込まれるアジア等に、市場を拡大。
主要な製品・技術等
①フュージョンエネル
ギー
内閣府(科技)
防災・国土強靱
化
①防災技術
内閣官房(国土
強靱化推進室)
港湾ロジスティ
クス
国交省
①植物工場
フードテック
農水省
7
戦略分野
選定の考え方
方向性
日本発コンテンツの海外売上の約6割(3.4兆円)を占める。家庭用ゲーム機市場(6兆円)の
シェアは半分程度に達し競争力が高い。一方で、モバイルゲーム市場(18兆円)やPCゲーム
市場(7兆円)でのシェアは数%に満たないため、市場拡大の余地が大きい。ゲームは、アニ
メや実写など他分野への波及効果も大きい。加えて、我が国のソフトパワー拡大に貢献。
世界的に強みを持つ既存IPのゲームの収益力向上を図りながら、その収入で新規
IPのゲームを開発し、世界的なヒット作品を生み出していく。併せて、国際的なグッズ
流通機能の拡大や開発基盤の整備、AI・XR等の先端技術を活用した新しいゲーム
開発にも投資していく。
日本発コンテンツの海外売上の約3割強(2.1兆円)を占め、年平均成長率15%の高成長分
野。コンテンツ分野の中でも特に海外での認知が高い一方、海外市場からの利益回収率が
低く、海賊版被害も大きい。正規版流通を通じた更なる市場拡大のポテンシャルが存在。特
に外国人への認知に役立っており、我が国の国際的な存在感強化にも貢献。
世界的な認知度の高さを背景に、海外売上の更なる拡大に向けて大規模作品製作
を推進し、他のコンテンツ分野と連携した日系配信プラットフォームのシェア拡大を
通じて国際的な流通網を整備する。また、製作・制作会社の成果報酬率向上を高め
る構造改革を通じた再投資原資の確保を推進し、新規IP開発に邁進できる素地を固
める。
③マンガ
ゲーム・アニメ・実写分野への原作供給を通じ、日本発コンテンツ全体の競争力を支えるIPの
源泉。我が国の文化的・価値的な影響力の拡大に貢献。海賊版による被害額が世界で2.6兆
円にも及ぶ中、正規版のローカライズにより海外市場の更なる拡大が見込まれる。
海賊版流通を抑制するため、削除要請・訴訟等の海賊版対策を推進する。併せて、
AIも活用したローカライズや翻訳人材の育成によって供給制約を解消しながら、紙・
電子書籍やマンガ版権グッズの正規流通を促すことでIP収入の多角化を進め、収益
力を高める。
④音楽
ゲーム・アニメ・実写分野の熱狂創出・魅力向上に大きく貢献。我が国の発信力向上に寄与
しており、日本アーティストのライブを目的とした高付加価値なインバウンド需要の創出にも
資するなど、他産業への波及効果も大きい。
既に海外で認知度の高いアニメソングを起点に、国内外でのライブや大規模イベン
トを通じて各アーティストの熱狂的な海外ファンダム(ファン集団)を拡大し、アニメソ
ング以外の楽曲も含め、音楽配信・グッズ販売収入や、レコード演奏・伝達権の着実
な導入による収入の増加へとつなげる。
日本発コンテンツを原作として海外スタジオが製作した実写作品や、海外の配信事業者が巨
額な資金を拠出して日本の制作会社が制作した実写作品が世界的にヒットしており、国内事
業展開が中心である中において、海外売上の更なる拡大が見込まれるとともに、我が国の文
化・価値観の浸透にも寄与。
競争力のあるIPを原作とし、VFX(視覚効果)等の活用やこれに対応した高度なスタ
ジオの整備、海外スタジオの大作のロケ誘致を通じたノウハウ取得、多様かつ自律
的な資金調達により、大規模作品の製作を推進し、海外収益を高める。併せて、出
資・制作印税の比率向上を通じて成果報酬率を高める構造改革と一体的に推進す
る。
主要な製品・技術等
①ゲーム
②アニメ
コンテンツ
内閣府(知財)
⑤実写
8
資料4
資料3
戦略17分野における「主要な製品・技術等」の官民投資ロードマップ(案)
(AI・半導体分野)
(航空宇宙分野)
①フィジカルAI(特にAIロボット)
・・・p.4
①民間航空機(次期単通路機・次世代航空機)
・・・p.94
②フィジカル・インテリジェント・システムの中核を担う半導体
・・・p.9
②無人航空機
・・・p.99
③バーティカルAI(領域特化型AI)
・・・p.14
③空飛ぶクルマ
・・・p.104
④ロケット・射場
・・・p.109
(デジタル・サイバーセキュリティ分野)
①データプラットフォーム
・・・p.19
⑤人工衛星・サービス
・・・p.114
②セキュリティの確保された政府・地方公共団体のAX/DX基盤
・・・p.24
⑥月面探査・低軌道技術
・・・p.119
③AI時代に対応した先進的サイバーセキュリティ製品・サービス
・・・p.29
④クラウド・データセンター、蓄電池
・・・p.34
①海洋無人機(海洋ドローン)
・・・p.124
⑤クラウドネイティブに最適化された医療DX基盤
・・・p.39
②海洋状況把握(MDA)
・・・p.129
⑥自動運転技術
・・・p.44
③革新的海底開発技術・システム
・・・p.134
(情報通信分野)
(海洋分野)
(造船分野)
①オール光ネットワーク (APN : All-Photonics Network)
・・・p.49
①次世代船舶
・・・p.139
②海底ケーブル
・・・p.54
②船舶修繕
・・・p.144
③次世代ワイヤレス
(非地上系ネットワーク、5G/Beyond 5G(6G) 等)
・・・p.59
③LNG運搬船
・・・p.149
(マテリアル(重要鉱物・部素材)分野)
(量子分野)
①量子コンピューティング
・・・p.64
②量子通信・ネットワーク
・・・p.69
③量子センシング
・・・p.74
(防衛産業分野)
①小型無人航空機
・・・p.79
②艦艇
・・・p.84
③デュアルユース技術
・・・p.89
①永久磁石
・・・p.154
②グリーン鉄
・・・p.159
③革新的金属部素材
・・・p.164
④低炭素金属部素材(鉄鋼以外)
・・・p.169
⑤一次原料(鉱石等)及び二次原料(リサイクル材等の
循環資源)からの製錬・分離精製、解体選別技術
・・・p.174
⑥AI等を活用した複合新素材
・・・p.179 1
1
※ 資源・エネルギー安全保障・GX分野③と同じ
(防災・国土強靱化分野)
(合成生物学・バイオ分野)
①バイオものづくり
・・・p.184
②バイオ医薬品・再生医療等製品等
・・・p.189
※ 創薬・先端医療分野③と同じ
(創薬・先端医療分野)
①防災技術
・・・p.259
(港湾ロジスティクス分野)
①港湾荷役機械
・・・p.264
②サイバーポート (港湾物流DX)
・・・p.269
③次世代型倉庫
・・・p.274
①ファーストインクラス製品・ベストインクラス製品
(医薬品、再生医療等製品)
・・・p.194
②感染症対応製品
・・・p.199
③バイオ医薬品・再生医療等製品等
・・・p.204
①植物工場
・・・p.279
・・・p.209
・・・p.284
④革新的デバイス(AI、ロボティクス等)を活用した先端医療
②陸上養殖
・・・p.214
・・・p.289
⑤ライフログデータ等を活用したヘルスケア関連サービス
③食品機械
④新規食品
・・・p.294
※ 合成生物学・バイオ分野②と同じ
(資源・エネルギー安全保障・GX分野)
①次世代型太陽電池(ペロブスカイト太陽電池等)
・・・p.219
②水素等
・・・p.224
③グリーン鉄
・・・p.229
④次世代型地熱
・・・p.234
⑤洋上風力
・・・p.239
⑥次世代革新炉
・・・p.244
⑦GXケミカル
・・・p.249
※ マテリアル(重要鉱物・部素材)分野②と同じ
(フードテック分野)
(コンテンツ分野)
①ゲーム
・・・p.299
②アニメ
・・・p.304
③マンガ
・・・p.309
④音楽
・・・p.314
⑤実写
・・・p.319
(フュージョンエネルギー分野)
①フュージョンエネルギー
・・・p.254
2
戦略17分野における主要な製品・技術等の官民投資ロードマップ(計62項目)の構成
1.現状認識と目指す姿【目標】
(1)現状
(2)目標
①現状、②取り巻く環境と構造変化、③経済的・戦略的な重要性
①国内外で獲得を目指す市場、②達成すべき戦略的な目標
2.勝ち筋の特定と官民投資の具体像【道筋】
(1)基本戦略
(2)官民投資の具体像
①勝ち筋、②我が国として構築すべき機能
①投資内容、②投資額(注1)、③定量的インパクト:投資による経済波及効果(注2)
3.官民投資促進に向けた課題と政策パッケージ【政策手段】
(1)投資促進に向けた課題
(2)講じるべき政策パッケージ
方向性
(注1)官民投資額については、当該分野に見識のある学者、シンクタンク、企業関係者などにより構成される戦略17分野の各WGでの議論を踏まえ、「主要な製品・技術
等」毎に、ボトルネックの解消と更なる投資を促すアクセラレーターを念頭に「勝ち筋」を特定し、国内投資支援、需要・市場の創出、立地競争力強化、国際連
携などを含めた政策パッケージからなる官民投資ロードマップ案を作成。その上で官民投資ロードマップ案を前提として、原則、政府担当部局が主要企業や団体
に対してヒアリングを実施し、今後の投資の予定・見通しを聴取したものを積み上げ。主要企業以外のプレイヤーが多い場合や、投資予定が明確にならない将来
などについては、上記ヒアリング内容などを基に、当該製品・技術の市場や投資の伸び率、傾向などを用いて算出。その際、官の投資については、「主要な製
品・技術等」毎に、研究開発、実証、本格商品化、量産化といった発展ステージが、今後どの程度の時間軸で上がっていくかのシナリオによって、その関与度合
いについて一定の機械的な前提を想定。当該官民投資額は、官民投資ロードマップ策定後も、1)予算編成の過程を通じて、新たな発想や視点に基づく真に効果
のある政策を作り込んでいくため、上記前提を含めて精査するとともに、2)PDCAサイクルを不断に回す中での精緻化を行い、適切なタイミングで、講ずる施策
などを含めて改定を行っていく。
(注2)経済波及効果については、各「主要な製品・技術等」の官民投資額及び当該官民投資による生産増加額をインプットとして、産業連関分析を実施して算出。具体
的には、産業連関表を用いて、(1)当該製品・技術等に係る最終需要額(投資額・生産額)の増加が、生産工程の川上産業(部品、部素材、原料といった関連
産業)に波及する効果(一次波及効果)、(2)波及先の生産増が、家計所得・消費や企業投資を増加させることを通じ、更なる生産増に波及する効果(二次波
及効果)を計算して合算することで算出。なお、「主要な製品・技術等」間で経済波及効果に重複があり、項目ごとの数字の合算はできない。
3
AI・半導体
①フィジカルAI(特にAIロボット)
4
1.現状認識と目指す姿【目標】
AI・半導体
フィジカルAI(特にAIロボット)
(1)現状
(2) 目標
① 現状
・フィジカルAIは、画像・音声・動画・各種センサーを統合し、現実世界を理解して行
動を生成することで、物理的タスクを遂行するAIである。このため、フィジカルAI
は、現実世界で作用するあらゆる機械に実装されるポテンシャルがあり、2050年の
市場規模として50兆ドルが見込まれるとの見方(NVIDIA社)もある。
・本ロードマップは、フィジカルAIの実装先として特に有望視され、市場見通しが多く
存在するAIロボットを中心に策定する。AIロボット市場は、2030年頃を境に急拡大
し、2040年に約60兆円規模へ成長すると見込まれる。
・現状、我が国は、ロボット分野のうち、産業用ロボット市場(約0.8兆円)で世界
シェア約7割を有し、モーター、減速機等の主要コンポーネントでも高い競争力を持
つ。一方、サービスロボット市場(約2.8兆円)での世界シェアは1割強にとどまる。
① 国内外で獲得を目指す市場
・「AIロボティクス戦略」を踏まえ、特にAIロボットにおいては、
世界市場の急拡大に対応し、我が国の供給能力を強化。米中に
並ぶ第三極として世界シェア3割超の獲得を通じて、2040年に
20兆円の市場獲得を目指す。
・ また、AIロボットに限らず、フィジカルAIは現実世界で作用す
るあらゆる機械に実装されるポテンシャルがあるため、自動運
転車、自律ドローン、FA等の市場獲得も同時に目指す。
② 取り巻く環境と構造変化
・フィジカルAIの登場により、AI開発競争はWeb上のデータと計算資源をレバレッジ
とした「規模」中心の競争から、現場データを取り込みつつ、AIとロボティクスを
最適統合(AIロボティクス)し、信頼性と安全性を担保しながら現場実装と改善を
継続する「統合力・運用力」の競争に重心が移りつつある。
・バリューチェーンでは、AIを中心とするソフトの比重が高まり、ソフトとハードを一
体的に作りこむ「密結合型」から、各用途やニーズに応じて最適なモジュールを組み
合わせる「疎結合型」へと産業構造の転換が見込まれる。
・自律性と汎用性を高めたAIロボットの実現により、これまでロボットの導入が十分に
進んでこなかった多様な現場への社会実装が期待されるため、米中を中心に開発・
量産・実装競争が激化している。
③ 経済的・戦略的な重要性
・経済的重要性:フィジカルAI導入を通じたサプライチェーン全体のDX・GXを実現。
人手不足の解消・生産性向上により、産業競争力の強化。
・戦略的重要性:フィジカルAI導入による省力化を通じ構造的人手不足の解決に貢献。
また、フィジカルAIのサプライチェーンを国内で確保することは経済安全保障上の
観点からも重要。
② 達成すべき戦略的な目標
・AIロボット市場の成長を取り込むべく、供給能力(設計・量産
能力、品質・安全性、コスト競争力、サービス提供体制等)を
強化し、我が国AIロボティクス産業を世界に伍して戦える中核
産業へと飛躍させる。
・フィジカルAIの実装に不可欠となるAIロボティクスの実現に向
けて、AIモデルだけでなく、「身体」の中核機能を担うコン
ピューティング(ロジック半導体等)、制御系(マイコン等)、
駆動系(アクチュエータ)、知覚系(各種センサー)を統合し
た“フィジカル・インテリジェント・システム”及び蓄電池等の
電源・通信システム等の設計・開発・製造面での競争力を確立
する。
・構造的な人手不足を背景とする潜在的な導入需要を顕在化させ、
世界に先駆けてAIロボティクスの社会実装を官民双方で実現し、
産業競争力の強化と社会課題の解決を同時に実現する。
5
2.勝ち筋の特定と官民投資の具体像【道筋】
(1)基本戦略
AI・半導体
フィジカルAI(特にAIロボット)
(2)官民投資の具体像
① 勝ち筋
① 投資内容
・ハードとソフトの統合力に加えて、導入後の運用力が競争力を左
(供給サイド)
右するフィジカルAIは、工場等の現場データやノウハウ、高い品
・AIロボットの研究開発・設備投資。
質・信頼性等の我が国の産業活動の蓄積が強みとして顕在化。
・減速機やモーター、センサー、蓄電池等の重要コンポーネントサプライ
・こうした我が国の強みを最大限に活用し、供給側(開発・量産・
ヤーの研究開発・設備投資。
サプライチェーン)と需要側(導入・運用・制度・現場環境)に
・ロボット基盤モデル開発への活用を念頭においた、フィジカルAIモデル
一体的に取り組む戦略を策定・実行することで、フィジカルAIの
の研究開発投資。
中でも先行してAIロボットの社会実装を世界に先駆けて実現する。
・AIロボットに搭載されるフィジカルAIモデルとして、ロボット基盤モデ
・供給サイドでは、製造業等の現場データを活用した国産フィジカ
ルの研究開発投資。
ルAIモデルを開発し、ロボット基盤モデルの開発能力を強化。
(需要サイド)
・フィジカルAIを起点とする疎結合型への産業構造転換を捉え、
・災害対応、建設・土木や防衛等の官需領域における公共調達を通じた先
汎用性・拡張性の高いAIロボットのサプライチェーンを構築。
行需要創出。
・産業用ロボット等における我が国サプライチェーンの強みを活用
・各産業ドメインにおけるAIロボット 導入投資。
し、重要なコンポーネントの開発・製造能力やOEM機能を強化。
・需要サイドでは、AIロボットの潜在需要を顕在化させることを起
点に国内市場を創出し、需要の予見可能性を高めることで供給側
の投資を喚起。
・市場規模、導入ニーズ、技術的な導入容易性等を踏まえ、重点的
に導入を進める産業・タスクを特定する。その上で、導入ボトル
ネック(現場環境、運用体制、制度・規格等)を踏まえ、短期・
中長期の時間軸で導入支援策を整理したロードマップを策定。
② 我が国として構築すべき機能
・AIロボットのOEMや重要コンポーネントの開発・製造機能。
・導入を通じて現場データを獲得し、モデルを改善することで、
性能向上とコスト低減を実現し、更なる導入と横展開を促す
ロボット基盤モデルの開発・実装エコシステム機能。
② 投資額
2040年度までで10.5兆円と想定
※データセンター等のいわゆるAIインフラへの投資については、「クラウ
ド・データセンター、蓄電池」の投資額に含まれている。
③ 定量的インパクト:投資による経済波及効果
2040年度までで144.4兆円と想定
6
3.官民投資促進に向けた課題と政策パッケージ【政策手段】
AI・半導体
フィジカルAI(特にAIロボット)
(1)投資促進に向けた課題
(2)講じるべき政策パッケージ
①リソース制約
・人材:AIとロボット双方の
知見を有する開発・利活用
人材の不足
①国内投資支援
・「AIロボティクス戦略」を踏まえ、産業用ロボットや自動車産業など、日本の競争力あるサプライチェーンと連携し、
スタートアップからの発展を念頭に、多用途ロボットOEMの育成を推進。また、重要コンポーネント(アクチュエーター、
モーター、減速機、蓄電池等)について、設計・製造能力の強化に取り組む。
・また、ロボット基盤モデル開発を念頭に、国産マルチモーダル基盤モデル開発を推進。開発エコシステムの構築と連動する
形で、学習・検証環境を整備した上で、ロボットを活用したデータを収集・加工して構築した高品質なデータセット整備を
通じ、国産ロボット基盤モデルの開発を推進。
・研究開発環境:ティーチン
グカスタマー、OEM、ユー
ザーを結び付け、PoCを超
えてユースケースを作りこ
むエコシステムの不在
②不確実性の要因
・事業・技術開発:技術開発
進展への不確実性や競争環
境の熾烈化を背景に、供給
側が十分な需要が見込めず
量産投資に踏み切れない。
・導入:技術的不確実性と量
産投資不足による導入コス
トの高止まりにより、需要
が立ち上がらない。
②需要創出・市場確保・社会実装支援
・供給側の予見可能性を確保しつつ導入を着実に進めていく観点から、重点的に導入に取り組む産業やタスクにおいて、導入
ボトルネック(現場環境、運用体制、制度・規格等)を考慮して、各産業・領域ごとに多用途ロボットの定量的な導入目標、
短期と中長期の時間軸での導入支援策を整理した「AIロボティクス実装ロードマップ」を改訂。
・実証フェーズでは、データ収集・評価・モデル開発を念頭に導入支援を実施。本格導入フェーズでは、供給側の予見可能性
を確保する観点から、需要家側が一定規模の継続的調達をコミットできる形での支援策を検討すると同時に、防災等の官需
における調達・実装を活用し、アンカーテナンシーとして需要を確保。
・ティーチングカスタマーやOEM等と協働し、工場、物流、小売、防災、介護、家庭、廃炉等への導入を念頭にモックアップ
環境で基盤モデルを実装したロボットも運用することで、高品質な実機データを収集・加工し、データセット整備、評価・
検証、モデル改善の一連のプロセスを高速で回し、現場実装とモデル高度化を一体的に進めるエコシステムを構築。
・プライバシー、セーフティ、セキュリティ確保やロボットと人の協働を両立するため、必要な技術要件・基準の整備、安全
性認証制度や安全規制の在り方をAISIと連携しながら検討。※AISI:AIの安全性に関する評価手法や基準の検討・推進を行うための機関
③立地競争力強化
・ハード・ソフトの専門家や各産業のティーチングカスタマー、SIer等が参画し、導入現場に近いモックアップ環境で開発・
検証・試験設備を活用しながら、ロボットを導入してデータ収集、検証、標準化、人材育成を同時に進める社会実装のハブ
となる環境を構築することで、世界から優秀な人材が集まるAIロボティクスのCenter of Excellenceやテストベットを創設。
・産学官が連携したハッカソンやコンペティション等の人材育成の取組を検討。
・スタートアップの成長段階に応じた資金調達手段の組み合わせを検討。特に、量産や運用・保守体制整備等に伴う大規模
資金需要における資金調達を円滑化すべく、アーリーからレイターまで切れ目なく資金調達が可能となる環境を整備。
④国際連携
・マルチモーダル基盤モデル開発や、CoE創設の取組と連動して、海外トップ研究機関や企業等との連携も図りつつ、グロー
バル水準の研究開発、設備投資、ビジネスモデル等の構築に取り組む。
7
AI・半導体
フィジカルAI(特にAIロボット)
方向性
現状認識、日本の強み
現実世界を理解して物理的行動を生成するフィジカルAIの登場により、自律性と汎用性を高めたAIロボットの実現が有望視さ
れている。今後、AIロボットは多様な現場へ実装されることが期待され、市場規模は2040年に約60兆円規模へ成長すると見込
まれる。
現状、我が国は、産業用ロボット市場で世界シェア約7割を有し、モーター、減速機、センサー、蓄電池等の主要部品でも高い
競争力を持つ。
AIとロボティクスを最適統合(AIロボティクス)するハードとソフトの統合力と、信頼性と安全性を担保しながら現場実装と
改善を継続する導入後の運用力が競争力を左右するフィジカルAIは、工場等の現場データやノウハウ、高い品質・信頼性等の
我が国の産業活動の蓄積が強みとして顕在化する戦略分野である。
我が国の勝ち筋
主な課題
(ボトルネック)
講じるべき施策
・供給側と需要側を一体として設計し、社会実装を先行実現。
・導入コストを低下させる
技術開発・量産投資不足。
・供給側の予見性を確保す
る初期需要の創出。
・供給サイド:国産フィジカルAIモデルを開発し、ロボット
基盤モデルの開発能力を強化。ロボットOEMの育成や、
モーター、減速機、センサー、蓄電池等の重要部品の設計・
製造能力を強化。
・需要サイド:市場規模、導入ニーズ、技術的な導入容易性等
を踏まえ、重点市場を選定し、短期・中長期の時間軸で導入
目標と導入支援策を整理したロードマップを改訂。
目指すべき姿
・2040年に米中に並ぶ第三極と
して、世界シェア3割超の獲得
を通じ、20兆円の市場を獲得。
・世界に先駆けてAIロボティク
スの社会実装を官民で実現し、
産業競争力強化と、構造的人
手不足への対応等の社会課題
解決に貢献。
8
AI・半導体
②フィジカル・インテリジェント・システムの
中核を担う半導体
9
1.現状認識と目指す姿【目標】
AI・半導体
フィジカル・インテリジェント・システム
の中核を担う半導体
(1)現状
(2) 目標
① 現状
・かつて我が国半導体産業は世界シェアの約50%を誇ったが、日米貿易摩擦、日の丸
自前主義、産業構造の転換、デジタル化低迷等を背景に凋落し、現在は10%未満。
・半導体設計は米国、製造は台湾、製造装置は日本・米国・欧州、部素材は日本に強
みが存在。足下、AIの発展に伴い、先端・次世代ロジック・メモリ半導体の設計・
製造を中心に市場成長が加速する中で、日本はこの成長を十分に取り込めていない。
① 国内外で獲得を目指す市場
・半導体の市場規模はAIの実装拡大に伴って、少なくと
も2030年までに約140兆円を超え、2035年には約190兆
円規模へと加速度的に成長する見込み。
・今後、データセンターを中心とするAIインフラ市場全体
で2040年までに累計で今後約3000兆円の投資需要が生
じると見込まれ、また、AIロボット市場も2040年に
約60兆円規模にまで加速度的に拡大していく。
② 取り巻く環境と構造変化
・半導体は、スマートフォン、自動車、AI等の経済社会インフラに必要不可欠な、
経済安全保障上極めて重要な物資。各国政府は積極的に大規模な政策支援を展開。
・今後は、フィジカルAIの発展に伴って、フィジカルAIの機能をエッジ側で実現する
“フィジカル・インテリジェント・システム”を、多様なアプリケーション(ロボッ
ト、自動車、ドローン、FA等)において、実現していくことが求められる。
・その結果として、コンピューティング(ロジック半導体等)、制御(マイコン等)、
知覚(各種センサー)のフィジカル・インテリジェント・システムの各機能の中核
を担う半導体も、必然的に実装先アプリケーションが一層多様化していく。
・こうした各アプリケーション(需要側)で求められる機能要件から逆算して、
ロジック・メモリ、センサー、マイコン等の各種半導体を各々設計・製造して作り
こみ、システムとして最適統合する “System to Silicon”の重要性が増大。
③ 経済的・戦略的な重要性
・経済的重要性:半導体の市場規模は2035年に190兆円規模に成長する見込み。ま
た、TSMCが進出した熊本県やラピダスが立地した北海道では関連投資誘発により
様々な経済効果が表れており、地方創生にも貢献。
・戦略的重要性:半導体はスマホ、自動車、医療機器など生活に欠かせない製品の
基幹部品であるとともに、フィジカルAIなど今後産業を支える技術にとっても
不可欠であり、経済安全保障上極めて重要な物資。
・こうした半導体の需要側市場の規模拡大を取り込んで、
自動車産業などの我が国産業に不可欠な半導体や、今後
加速度的な成長が見込まれるデータセンター、AIロボティ
クスなど将来の産業競争力強化に不可欠な半導体などを中
心に、2030年に国内で生産される半導体の売上高15兆円、
2040年に40兆円を目指す。
② 達成すべき戦略的な目標
・AI時代に必要不可欠となる先端・次世代半導体の国内に
おける開発・製造能力を確保する。
・フィジカルAI政策と連動して、ロボット、自動車、FA
等のエッジ側の機能要件から逆算したロジック・メモリ、
センサー等のチップ機能を逆算して各種半導体を各々作
りこみ、システムとして最適統合する設計・製造能力
(“System to Silicon”)を強化し、“フィジカル・インテ
リジェント・システム”の基盤を確立する。
10
2.勝ち筋の特定と官民投資の具体像【道筋】
AI・半導体
フィジカル・インテリジェント・システム
の中核を担う半導体
(1)基本戦略
(2)官民投資の具体像
① 勝ち筋
・我が国半導体産業復活に向け、(1)足下必要な半導体製造基盤の
構築、(2)次世代に必要な半導体の量産技術開発、(3)将来の
革新技術の開発、という3ステップで政策を展開。
・特に、これまでは、生成AIの発展に伴ってクラウド(データセン
ター)側で必要性が高まる先端ロジック・メモリ半導体の製造能力確
保に向けた取組を重点的に実施。
① 投資内容
・データセンター、AIロボティクスなど、将来の産業競争力強化に向
けて、関連する半導体・電子部品等の製造基盤強化に向けた研究開
発・設備投資。
・また、自動車産業など、我が国産業にとって不可欠な半導体・電子
部品について、製造基盤強化に向けた研究開発・設備投資。
・こうした各種半導体・電子部品等の設計開発能力強化に向けた、製
造・設計拠点の整備促進。
・加えて、規模拡大や産業集積に向けて必要となるインフラや人材育
成に対する投資の実施。
・今後は、フィジカルAIの発展によりエッジ側でのリアルタイムかつ高
速な情報処理需要が増大する中で、半導体の実装先アプリケーション
(ロボット、自動車、FA等)において、“フィジカル・インテリジェ
ント・システム”を実現していくことが求められる。
・そのため、アプリケーション(需要)側に必要とされるチップ機能を
逆算して各種半導体を作りこみ、システムとして最適統合する
”System to Silicon” が我が国半導体産業の競争力強化に必要不可欠。
・加えて、”System to Silicon”の実現は、ハード側の制御・センサー技
術とアナログ・レガシー領域の設計開発基盤を有する我が国の強みが
顕在化する好機。
・こうした観点から、先端・次世代半導体、アナログ・レガシー、電子
部品等の技術開発・製造基盤の整備について、需要側の設計開発能力
と一体的に強化していく。
※投資主体としては、民間企業に加えて、将来技術の開発においては
国研や大学との連携も想定。
② 投資額
2040年度までで68.0兆円と想定
③ 定量的インパクト:投資による経済波及効果
2040年度までで443.3兆円と想定
② 我が国として構築すべき機能
・自律性と不可欠性の観点から我が国に必要な半導体製造能力と、競争
力確保に向けた次世代技術の研究開発能力
・半導体需要側産業における半導体設計開発能力
11
3.官民投資促進に向けた課題と政策パッケージ【政策手段】
(1)投資促進に向けた課題
AI・半導体
フィジカル・インテリジェント・システム
の中核を担う半導体
(2)講じるべき政策パッケージ
①国内投資支援
①リソース制約
・我が国に真に必要となる先端・次世代半導体の研究開発力の強化や、製造能力確保に向けた支援を引き続
・人材:研究開発人材・現場
き実施。
人材等。特に、半導体設計
・“フィジカル・インテリジェント・システム”実現の観点から、各アプリケーションに最適化された先端・次
に関する人材の不足は喫緊
世代半導体やアナログ半導体(センサー・マイコン等)及び電子部品等の製造装置・部素材まで含めた技
の課題。
術・製造基盤を設計開発能力と一体的に強化するべく、技術開発・設備投資を重点的に支援。
・インフラ:産業用地、電力、
②需要創出・市場確保・社会実装支援
水、物流・交通
・フィジカルAIなど、最先端半導体を活用したデジタル・AIサービスの創出等を通じ、最先端半導体の国内
需要創出に繋げる。
・先端・次世代半導体を中心に、需要創出に向けて、半導体設計開発支援を継続・拡大する。加えて、
②不確実性の要因
”System to Silicon”を加速させる観点から、最先端の半導体研究開発・設計拠点を整備していく。
・事業・技術:需要側産業の
・地政学動向等を踏まえて、非先端領域の半導体や電子部品については、サプライチェーンの強化・最適化
低迷、最先端技術領域にお
や必要な産業再編に向け取り組む。
ける企業の競争力低下
・市場:中国企業の競争力向
③立地競争力強化
上に伴う中国向け市場の縮
・地域未来戦略と連携しながら、一定の規模の投資を伴う半導体工場の新設・拡張に必要となる、広大な土
小
地、大量の水・電力に加えて、 物流や渋滞などの交通等も含めたインフラ面に関する取組も検討。
・財務:半導体関連産業にお
・グローバルに活躍できる高度人材の育成の観点から、国内外企業や大学等との産学官連携の下、最先端環
ける投資額高騰に伴う資金
境を有するオープンな研究開発・設計拠点などを整備。
調達の困難性
・産官学連携で創設した各地域のコンソーシアムを通じて、現場人材も含めた人材育成を強化するとともに
半導体分野におけるキャリアパスやロールモデルの提示により、女性も含めた半導体人材の活躍促進を図
・国際環境・政策:各国によ
る。
る大規模な産業政策、米中
対立に伴う地政学リスク
④国際連携
・次世代半導体領域における国際共同研究を引き続き推進。
・同志国等と連携したサプライチェーンの構築・強靱化を推進。
12
方向性
AI・半導体
フィジカル・インテリジェント・システム
の中核を担う半導体
現状認識、日本の強み
かつて我が国半導体産業は世界シェア約50%を誇ったが、日米貿易摩擦や国内のデジタル化低迷等を背景に凋落し、現在は10%
未満。足下、AIの発展に伴い、先端半導体の設計・製造を中心に市場成長が加速する中で、この成長を取り込むことが必要。
今後は、フィジカルAIの発展に伴って、AIモデルだけでなく、ハードウェアの中核機能を担うコンピューティング(ロジック半
導体等)、制御系(マイコン等)、駆動系(アクチュエータ)、知覚系(各種センサー)を統合した“フィジカル・インテリジェ
ント・システム”を、多様なアプリケーション(ロボット、自動車、ドローン、FA等)で構築していくことが求められる。
各実装先(需要側)で必要となる機能から逆算して、各種半導体を設計・製造して作りこみ、システムとして最適統合する
“System to Silicon”の重要性が増大。センサー技術とアナログ・レガシー半導体の設計開発基盤を有する我が国の強みが顕在化。
主な課題
(ボトルネック)
・半導体需要側産業の低迷。
・最先端領域における
競争力低下。
・各国による大規模な産業
政策と米中対立を中心と
する地政学リスク。
・研究開発人材・現場人材
等の不足。特に、半導体
設計に関する人材不足は
喫緊の課題。
我が国の勝ち筋
講じるべき施策
・先端・次世代半導体の研究開発・製造能力確保に向けた支援
を引き続き実施。
・フィジカルAIなど、最先端半導体を活用したデジタル・AI
サービスの創出等を通じ、最先端半導体の国内需要を創出。
・最先端の半導体研究開発・設計拠点の整備等を通じ、半導体
設計開発支援を強化するとともに設計人材を育成。
・地政学動向等を踏まえ、非先端領域の半導体や電子部品等に
ついて、サプライチェーンの強化・最適化に向け取り組む。
目指すべき姿
・AI時代に必要不可欠となる
先端・次世代半導体の国内
開発・製造能力を確保し、
2030年に国内で生産される
半導体の売上高15兆円、
2040年に40兆円を目指す。
・実装先から求められるチップ
をシステムとして最適統合す
る設計開発能力を強化
(“System to Silicon”)。
13
AI・半導体
③バーティカルAI(領域特化型AI)
14
AI・半導体
バーティカルAI(領域特化型AI)
1.現状認識と目指す姿【目標】
(1)現状
① 現状
・バーティカルAIとは、データ、 AIモデル、アプリを垂直統合した領域特化型シス
テム。高い正確性と専門性から「現場で使えるAI」。
・近年、自律行動型AI(Agentic AI)の発展もあり、産業や行政でのAI利活用の機運
が高まり、 AI投資で出遅れている我が国でもようやく市場の急成長が期待されて
いる。
・2024年の国内バーティカルAI市場は約1兆円で、2030年には約3兆円になる見通
し。フィジカルAIに先行して市場が発現。
② 取り巻く環境と構造変化
・2030年までにバーティカルAIの企業での利用が汎用的AIを上回る見込み。バー
ティカルAIは、暗黙知を含めた各現場の経験や知識をデータとして集積し、AIに
活用できる日本での開発・活用との相性が良い。我が国独自の価値創出が可能。
・足元の自律行動型AIの急速な発展・浸透により、バーティカルAIは単なる業務支
援から自律的な業務完結が可能に。ユーザー産業の革新の原動力として、これま
での想定以上に付加価値を生み出す。
・日本のバーティカルAIが、国内のみならず世界各国の現場の課題解決にも有効な
ものとして輸出も期待。「信頼できるAI」創りで世界を主導。
③経済的・戦略的な重要性
・経済的重要性:バーティカルAIそのものへの直接投資に加え、計算基盤やネット
ワーク、人材等への誘発効果、更にユーザー産業において、省人化のみならず、
生産性の向上や新事業創出、GDPの押上げに寄与。
・戦略的重要性:日本の強みとなるデータを活かした革新的な産業の国内創出で、
戦略的不可欠性を実現。一方で、自律行動型AIを含めて、過度な海外サービス依
存はデータの海外流出、デジタル赤字拡大の恐れがあり、国内市場を日本のAI企
業が獲得し、自律性の向上が不可欠。
(2) 目標
① 国内外で獲得を目指す市場
・人手不足に直面する我が国の供給力を維持し、力強い成長
につなげるために、中小企業を含めて、あらゆる産業や行
政の現場でのバーティカルAIの導入を促進。
・特に暗黙知の多い現場への適用(製造業で言えば素材、造
船等)で、競争力あるAIシステムを創出、輸出を推進。
・防衛等の戦略性の高い分野を中心に官需主導での開発・活
用を積極的に進め、日本のAI企業の市場獲得を促進。
・2030年に世界のバーティカルAI市場33兆円として、内外で
少なくとも5兆円の獲得を目指す。
② 達成すべき戦略的な目標
・バーティカルAI導入で、業務効率化にとどまらず、 AIを軸
とした経営改革(AX:AIトランスフォーメーション)を促
進。現場固有のデータを活用、暗黙知の形式知化を推進。
・産業や行政の現場とAIの双方を理解してAXを推進できるAI
実装人材を大規模に育成。
・日本国内で、計算資源、データインフラ、基盤モデルの開
発能力を確保。自律行動型AIを含めてバーティカルAIの開
発や社会実装を担う日本企業群を創造。
・領域別に、①データ創出・利用の促進と、必要に応じた
データ構造の標準化や、②自律行動型AIに即したルール・
制度の整備を推進。領域間の連携で成果を積極的に横展開。
・AIエコシステム全体を通じてAI主権を戦略的に確保。
15
2.勝ち筋の特定と官民投資の具体像【道筋】
AI・半導体
バーティカルAI(領域特化型AI)
(1)基本戦略
(2)官民投資の具体像
① 勝ち筋
・各領域でのAX推進、産業や行政とAIの融合、 AI導入と開発の好循環が進み、日本が
世界有数のバーティカルAIの中核拠点へ。バーティカルAIの現場活用がフィジカルAI
の開発利用につながる。
・暗黙知を含めた各現場の経験や知識をデータとして集積しAIに活用でき、市場性、公
共性、戦略性の観点からバーティカルAIの適用による産業や行政の革新が期待される、
以下の重点領域について領域別戦略を策定し、官民で集中投資。
- 市場性:製造、物流・交通、情報通信、金融、創薬
- 公共性:医療・介護・福祉、農林水産、建設、教育、行政、エネルギー
- 戦略性:防衛、警察、防災、消防、サイバー、海洋、宇宙、
科学研究
・政府調達や制度改革により初期需要を積極的に喚起し、開発投資支援で事業拡大を加
速。特に戦略性を持つ分野では官需で開発事業者を育成。高い市場性を有する分野を
中心に、知財・標準戦略等を推進し、海外展開も促進。
・領域別の取組が、横連携によって高度化・大規模化。バーティカルAI主導で、日本の
AI基盤(データ、人材、クラウド、データセンター、計算資源)も強化。17の戦略分
野全体の成長も牽引。
① 投資内容
(需要サイド)
・重点領域を中心とした、産業や行政におけるバー
ティカルAI導入、データや人材を含めたAI基盤投資
・新事業投資、産業の革新・再編投資
(供給サイド)
・重点領域を中心とした研究開発※やそれに必要なAI
基盤の整備への投資
② 我が国として構築すべき機能
・重点領域に関する領域別戦略を策定し、我が国でのデータ基盤、研究開発・実装の推
進体制の構築。
・規制緩和、中小企業補助金、AI実装人材創出等による導入促進の円滑化。企業等のAX
に係る取組状況の可視化。
・自律行動型AI を含めた、政府によるバーティカルAIの率先導入、所要の制度改革や技
術標準・認証の整備を一体的に推進。
・先端研究開発の担い手となる多様な開発人材の育成・確保。
・AISI等を通じたAIの安全性・セキュリティ評価機能、産学官連携による国内外の最先
端の知見の集約。
※先端人材、モデルやエージェント、オープンウェイトモデ
ルのファインチューニング、アプリケーション
・AIの安全性・セキュリティ評価に関する投資
② 投資額
2040年度までで23.1兆円と想定
※データセンター等のいわゆるAIインフラへの投資に
ついては、「クラウド・データセンター、蓄電池」の
投資額に含まれている。
③ 定量的インパクト:投資による経済波及効果
2040年度までで222.0兆円と想定
16
3.官民投資促進に向けた課題と政策パッケージ【政策手段】
(1)投資促進に向けた課題
①リソース制約
・人材:先端研究を担う人材
や産業や行政の現場とAIの
双方を理解してAXを推進で
きる実装人材、中小企業へ
の伴走支援の不足
・データ:現場固有データの
活用、暗黙知の形式知化の
不足
・計算資源:国内での計算資
源供給の不足
②不確実性の要因
・AI導入やAXへの理解不足:
AIによる業務効率化、新事
業創出を含めた効果と手法
に対する認識不足
・AIのリスクへの懸念:
AIの有する技術的リスクへ
の懸念、個人情報や機微
データの扱いに係る責任、
自律行動型AI 活用による責
任の所在
AI・半導体
バーティカルAI(領域特化型AI)
(2)講じるべき政策パッケージ
①国内投資支援
・バーティカルAIの導入・開発利用に必要なAI基盤の整備及び充実。
・重点領域を中心とした研究開発・実証の促進。それらを支えるAI for Scienceの産業界を含めた波及・振興。
・政府や公的機関の保有情報の提供や先端大型研究施設等を活用した領域データの創出の推進。
②需要創出・市場確保・社会実装
・バーティカルAIの導入を中小企業も含めて支援。地方の伸び代を成長につなげるため地域AXを推進。
・重点領域における規制緩和等による需要創出。防衛等の戦略性の高い分野を中心に官需主導で初期需要創出を推進。
・自律行動型AI 等の技術進展への対応、社会実装の推進の観点からの制度や規制の見直しを先導(弁護士業務や医師
による画像読影等におけるAI活用の促進、AI活用医療機器の評価に必要な手法の検討・体制強化など)。
・AIのリスクへの包括的対応(AISI※の機能強化、サイバー攻撃対応を含めたAI安全性・セキュリティや信頼性に係
る評価手法・基盤の開発・提供、サイバー関連データの集約、セキュアなAI利用環境の検討・具体化、偽・誤情報
対策、AIガバナンスや安全性認証制度の整備、意思決定に係るAIのルール形成)。※AISI:AIの安全性に関する評価手
法や基準の検討・推進を行うための機関
③立地競争力強化
・産業や行政の現場とAIの双方を理解してAXを推進できるAI実装人材の育成を強化。中小企業への伴走支援も強化。
・モデル・アプリやデータプラットフォームサービスの開発・提供を含めた国内でのAI研究開発人材の育成・確保。
・スタートアップ含む先端研究開発の担い手の育成・確保、世界から女性を含む多様かつ優秀な「知」が集まる機能
(重点領域を中心としたデータ収集、研究開発・実証、安全性・信頼性評価、標準化、人材育成)の創出。産学官
連携による国内外の最先端の知見の集約。
・制度の不断の見直し、ガバナンス人材の育成をはじめ、責任あるアジャイルガバナンスの推進。
・オール光ネットワーク等の情報通信インフラ、クラウド、データセンター、計算資源等のAIインフラの整備・強化。
④国際連携
・信頼できるAIエコシステムの構築に向けた同志国・グローバルサウスとの協働。
ODAや在外公館等も活用しつつ、グローバルサウスにおける高度人材の育成・交流、現地企業と日本企業とのマッ
チング、共同研究開発、日本企業による海外展開向け開発、知財・標準化戦略等を推進。
・世界トップレベルの研究機関とのAI for Scienceに係るネットワークの構築や共同研究の推進、成果創出。
17
・AIサミットの早期開催、G7、G20、国連等での議論や広島AIプロセス推進による国際市場環境の整備。
AI・半導体
バーティカルAI(領域特化型AI)
方向性
現状認識、日本の強み
バーティカルAIはデータ、モデル、アプリを垂直統合した領域特化型システム。高い正確性と専門性から「現場で使えるAI」。
注:2024年の国内バーティカルAI市場は約1兆円、2030年には約3兆円と見通し。
自律行動型AI(Agentic AI)の社会実装やAIを軸とした経営改革(AX)の進展により、想定以上の付加価値の創出が期待されている。
フィジカルAIに先行して進むバーティカルAIの現場での活用がフィジカルAIの開発活用につながる。
各現場の経験や知識をデータとして集積し、AIに活用できる日本こそ、バーティカルAIで独自の価値創出も可能。
日本のバーティカルAIが国内のみならず世界の課題解決に貢献。「信頼できるAI」を創り世界をリード。
我が国の勝ち筋
主な課題
(ボトルネック)
・AI研究開発人材、現場
とAIの双方を理解して、
AXを推進できる実装人
材や中小企業伴走支援の
不足
・現場固有データの活用や
計算資源の不足
・AXへの理解不足、AIリ
スクへの懸念
講じるべき施策
・重点領域(※)を設定し、領域別戦略を策定。人材、データを含めた
AI基盤への官民投資を促進。領域間の連携も促進
・研究開発の担い手の育成・確保、世界から優秀な「知」が集まる機能の
創設
・中小企業を含めた産業や行政でのAXの促進
・政府による率先導入と制度改革による初期需要創出
・AIリスクへの包括的対応(AISIの機能強化や偽・誤情報対策等)・責
任あるアジャイルガバナンス
・知財・標準戦略等の推進、同志国・グローバルサウスとの協働をはじめ
国際連携
※ 市場性:製造、物流・交通、情報通信、金融、創薬
公共性:医療・介護・福祉、農林水産、建設、教育、行政、エネルギー
戦略性:防衛、警察、防災、消防、サイバー、海洋、宇宙、科学研究
目指すべき姿
・AIの導入で人手不足を解消。
業務効率化、日本社会全体で
のAXを実現。
・2030年に世界のバーティカ
ル市場は33兆円、内外で少な
くとも5兆円の市場を獲得。
国内外の現場課題の解決へ。
・エコシステム全体で、AI主権
を戦略的に確保。
18
デジタル・サイバーセキュリティ
①データプラットフォーム
19
1.現状認識と目指す姿【目標】
デジタル・サイバーセキュリティ
データプラットフォーム
(1)現状
(2) 目標
① 現状
・AI時代の到来に対し、AI学習・利用やデータ連携等が容易な形式にデータを精製する技術
(AI-Ready化)や、分散管理されたデータ資源を、信頼ある形で、柔軟かつスケーラブ
ルに活用するためのデータ連携技術(データスペース)に関する検討が国際的に進展。
・一方で、AI-Ready化等のデータ精製、組織間でのデータ連携については手法論が確立し
ておらず、現時点で取組が進んでいる企業は限定的。
① 国内外で獲得を目指す市場
• グローバルでのデータプラットフォーム関
連市場は、2035年に約50兆円規模へと急
成長する見込み。
国内のデータプラットフォーム関連市場に
ついて、2035年までに市場規模5兆円を
目指す。※2025年時点では0.73兆円程度
(IDC調査)
② 取り巻く環境と構造変化
・これまでインターネット上の大量のテキストデータを学習し、性能を向上させてきた生成
AIも、昨今では 目前に迫っている「学習データの枯渇」が大きな問題に。
・今後は、全世界で流通するデータの6割を占める企業内データ(≒エンタープライズデー
タ)の利活用が産業戦略上の焦点に。特に、製造業等の産業分野の豊富なデータを有する
我が国にとってデータ活用のポテンシャルは非常に高く、昨今登場した「フィジカルAI」
も見据えてそうしたデータをAIで利活用しやすい状態(AI-Ready化)に整備することが
不可欠。
・データの質に加え、量を担保していくことも重要。その際は、単一組織にとどまらず、分
散したデータ資源を信頼ある形で、連携させ、スケーラブルに利活用していく技術(デー
タスペース)が有効に。
② 達成すべき戦略的な目標
• 製造業等の国内データホルダーにとって、
産業競争力や経済安全保障に係るデータを
安心して処理できる、データ精製等の国内
サービス提供を確保する。
③ 経済的・戦略的な重要性
・経済的重要性:AIの普及・高度化と併せて今後データプラットフォーム市場も大きく拡大
していく見込みであり、重要。
・戦略的重要性:製造業等の国内データホルダーにとって、産業競争力や 経済安全保障に
係るデータを安心して処理できる国内サービス提供の確保が必要。
20
デジタル・サイバーセキュリティ
データプラットフォーム
2.勝ち筋の特定と官民投資の具体像【道筋】
(1)基本戦略
(2)官民投資の具体像
① 勝ち筋
• 製造業の現場データ・ノウハウ等は我が国の産業競争力の基盤。
こうした貴重な我が国産業のデータ資源を、データホルダーに
とって安心・安全な形で、AI-Ready化(精製)し、データ連携
を通じてスケーラブルに活用していく。
• フィジカルAIを見据え、データ精製技術(AI-Ready化)、組織
を超えたスケーラブルなデータ活用を可能とするデータ連携技
術について、手法論を確立・横展開することで、我が国のデー
タ資源のAI等による最大限の活用を促進し、産業全体のDXを推
し進めていく。
① 投資内容
• AI学習・利用、データ連携等のために不可欠なデータのAI-Ready化に関
するミドルウェアや、データ連携のためのデータスペース技術(Open
Data Spaces等)について、手法論の確立や標準化に係る研究開発・実証
の支援
• データ精製・データ連携を中核的に担う国内プラットフォームサービスの
育成
• 産業界における実ニーズに即したユースケース創出
• 中小企業・小規模事業者等へのデジタル化ツール・AI導入促進
• 各業界等におけるデータセットの構築・データエコシステムの構築等の促
進(AI・半導体WGと連携)
• 地理空間(G空間)情報のAI-Ready化や、データ連携・流通基盤として
のG空間データスペースの整備
②我が国として構築すべき機能
• AI-Ready化や、組織を超えたデータ連携技術により、企業内
データの質とスケーラビリティの両方を確保することで、デー
タのAI等での利活用を推進するデータプラットフォーム。
② 投資額
2035年度までで0.9兆円と想定
③ 定量的インパクト:投資による経済波及効果
2035年度までで2.2兆円と想定
21
3.官民投資促進に向けた課題と政策パッケージ【政策手段】
(1)投資促進に向けた課題
①リソース制約
・サービス:データ精製等に関す
るサービスの多くは高価な海外
製であり、産業競争力や経済安
全保障に係るデータを安心して
処理できる国内サービスが限定
的
・人材:各企業の現場でAI時代に
即したデータマネジメントを実
践できる人材の不足
②不確実性の要因
・市場(データ連携):ビジネス
モデルとして成立するユース
ケースが未成熟であり、事業者
が投資に踏み切りにくい。
・事業・技術(データ精製):
データのAI-Ready化に関する
技術やサービスは現在勃興段階
にあり、今後有望な技術・サー
ビスの見極めが難しい。
デジタル・サイバーセキュリティ
データプラットフォーム
(2)講じるべき政策パッケージ
①国内投資支援
• AI学習・利用、データ連携等のために不可欠なデータ精製(AI-Ready化)に関するミドルウェアや、デー
タ連携のためのデータスペース技術(Open Data Spaces等)について、手法論の確立や標準化に係る研究開
発・実証を支援する。
• データ精製・データ連携を中核的に担う国内プラットフォームサービスを育成する。
②需要創出・市場確保・社会実装支援
• データのAI-Ready化に関する標準的な手法等を各産業へ横展開し、データ精製を面的に推進する。
• 産業界の実ニーズに基づいたデータ連携のユースケース創出を推進する。
• 中小企業・小規模事業者等へのデジタル化ツール・AI導入を強力に支援する。
• 各業界等におけるデータセットの構築・データエコシステムの構築等を支援する。(AI・半導体WGとの連
携)
• 官民連携で、G空間情報についてAI-Ready化を進めるとともに、G空間データスペースの形成等を通じて、
防災、都市や国土等の多様な分野に係る社会課題をジオAI(G空間情報×AI)で解決するユースケースを創
出する。
③立地競争力強化
• データのAI-Ready化などAI時代のデータマネジメントスキルを評価するための新たな試験を設けるなど、
データ・AI利活用のスキル習得を促す。AI時代に必要なデータマネジメント等のスキル情報を蓄積・可視化
したデジタル人材スキルプラットフォームによりデータマネジメント人材の活躍を推進する。
• DX銘柄について、企業のDX・AIトランスフォーメーション(AX)の状況を可視化・評価するように制度の
見直しを検討。
• 民間企業等による国等が保有するデータの活用を促すような制度の整備など、官民でデータが利活用しやす
い環境の整備を進める。
• 国内のデータ連携のためのトラストサービスを体系化するとともに、国が整備する法人トラスト認証の仕組
みを活用して、データの信頼性を高め、他国との関係でも相互認証されるよう検討を進める。
④国際連携
• データ連携技術(データスペース)に関する国際標準化や国際的な相互運用性の確保等を進めるとともに、
これらと連動する形でDFFTの具体化を進める。
• フィジカルAI等の国際展開と連携することで、国内のデータプラットフォームサービスの海外展開を進める。
22
デジタル・サイバーセキュリティ
データプラットフォーム
方向性
現状認識、日本の強み
これまでインターネット上の大量のテキストデータを学習し、性能を向上させてきた生成AIも、昨今では、目前に迫っている「学習データの枯渇」
が大きな問題に。今後は、企業内データの利活用が産業戦略上の焦点となりつつある。
特に、製造業等の産業分野の豊富なデータ資源を有する我が国のデータ利活用のポテンシャルは非常に高い。
「フィジカルAI」も見据えて、データをAIで利活用しやすい状態に精製する技術(AI-Ready化)や、組織を超えたデータ連携技術(デー
タスペース)により、我が国が有する貴重な産業データ資源のAI利活用等を推進する”データプラットフォーム”の重要性が高まっている。
課題(ボトルネック)
・データ精製等に関するサービスの多
くは高価な海外製。
我が国の勝ち筋
講じるべき施策
・データ精製(AI-Ready化)等は
黎明期であり、有望な技術・サー
ビスの見極めが困難。
• AI利活用等に不可欠なデータの精製(AI-Ready
化)・連携(データスペース)に関するミドルウェアの研究
開発・実証を通じ、これらを中核的に担う国内プラットフォー
ムサービスを育成。各産業に横展開。
・ユースケースが未成熟で事業者が
投資に踏み切りにくい。
• 産業界の実ニーズに基づいたデータ連携のユースケース創
出を支援。
目指すべき姿
・国内のデータプラットフォーム関連市
場について、2035年までに市場規
模5兆円を目指す。
・製造業等の国内データホルダーにとっ
て、産業競争力や経済安全保障
に係るデータを安心して処理でき
る、データ精製等の国内サービス
提供を確保。
23
デジタル・サイバーセキュリティ
②セキュリティの確保された政府・地方公共団体のAX/DX基盤
24
1.現状認識と目指す姿【目標】
デジタル・サイバーセキュリティ
セキュリティの確保された政府・地方
公共団体のAX/DX基盤
(1)現状
(2) 目標
① 現状
・人口減少と経済・社会のデジタル化が進展する中で、政府や地方公共団体(公共分野)の
AX/DX基盤(端末やネットワーク、クラウドやAIの基盤、基幹的な情報システム、データ
連携や認証の基盤等)は、行政運営や国民生活に不可欠。
① 国内外で獲得を目指す市場
・危機管理投資によって公共分野のAX/DX基
盤の高度化・強靭化(セキュリティ、耐災
害性等)を図るとともに、デジタル・サイ
バーセキュリティ分野の市場拡大に貢献す
る。
② 取り巻く環境と構造変化
・クラウド・データセンターについては、オンプレミス型からクラウド、個別開発から標準
システムの活用へ市場と産業がシフト。また、レガシーシステムは今後保守が難しくなる
ため、モダン化された効率的なシステムへと移行が必要。効率的なデータ連携、クラウド
で稼働する最先端の生成AIやAIエージェントを効果的に活用するためにも、クラウド移行
が必要。また、クラウドの自律性向上も課題。
・データプラットフォームについては、安全な認証基盤、データ連携・システム間連携によ
り、より便利で効率的な行政サービスの実現が求められている。
・サイバーセキュリティについては、地政学的リスクの高まりや高度化・巧妙化するサイ
バー攻撃への対応、大規模災害に対する強靱性の確保が求められている。
・AIやクラウドなどデジタル財・サービスは、実際に使われ、フィードバックを回すことで
急速に高度化していく。技術力を高めるためにも、積極的に使っていくことが重要。
③ 経済的・戦略的な重要性
・戦略的重要性:人口の減少、人員の制約(行政、ベンダー)に直面する中でも、効率的で
高度な行政サービスを持続可能な形で提供していくことが必要。また、セキュリティや耐
災害性を強化し、行政機能の持続性を確保することが不可欠。その際、我が国が強みを発
揮できる技術を見極めながら、自律性を高めていくことが必要。
・経済的重要性:デジタル財・サービスは、実際に使われ、フィードバックを回すことで高度化する一方、市
場は実績を重視。こうした中で、官による率先導入は、活用を通じて民間の技術力を向上させ、
国内市場の需要を創出し、国内の製品・サービスの供給、人材の育成を促す観点から重要。
‐セキュアな業務基盤であるガバメントソリューションサービス
(GSS)のユーザー拡大(2031年度までに28万ユーザーに拡
大し、その後更に拡大見込)
‐ガバメントクラウドの利用拡大(利用システム数を2030年度
末までに2倍に)
-地方自治体基幹20業務の情報システム(約3.4万)の標準準拠
(特定移行支援システムは30年度末までに)と運用の最適化
-政府機関におけるPQCへの移行(原則として、2035年度まで。
工程表を26年度に策定。)
② 達成すべき戦略的な目標
・人口減少下でも効率的な高度な行政サービ
スを安全に提供するため、生成AIやAIエー
ジェントの徹底活用を進めるとともに、公
共分野のAX/DX基盤と、官民のデジタル化
を支える国内エコシステムを構築する。
・クラウド、AI、SaaS等の国産品を育成し自
律性を向上するため、公共分野での初期需
要を提供することで、民間の技術力向上の
機会を作り、民間投資や市場の拡大につな
がる好循環の実現を目指す。
25
デジタル・サイバーセキュリティ
セキュリティの確保された政府・地方
公共団体のAX/DX基盤
2.勝ち筋の特定と官民投資の具体像【道筋】
(1)基本戦略
(2)官民投資の具体像
① 勝ち筋
・クラウド・データセンター:公共分野のAX/DXやデータ利活用を支え
る共通基盤であるクラウド・データセンターについては、高いセキュ
リティ、耐災害性、十分な自律性を備えた国内のクラウド基盤を構築
し、利用を拡大する中で、投資の増大と民の技術力向上を図る。具体
的には、公共分野のシステムのモダン化、クラウド前提のデータ設計、
AI活用を促進し、運用の効率化と機能の高度化を図っていく。人口減
少下でも、効率的で持続可能な行政サービスを提供できるよう、地方
公共団体におけるシステムの標準化、SaaS利用等を進めていく。
・データプラットフォーム:安全な認証基盤、データ連携により、より
便利で効率的な行政サービスを実現していく。
・サイバーセキュリティ:危機管理投資として、セキュリティや耐災害
性を高めた公共分野の業務基盤の整備を計画的に進める。また、官が
率先して新たなセキュリティ技術(例 PQC、高度なAI活用)を導入・
運用し、技術力向上につなげ、民間市場に波及させる。
① 投資内容
・需要面では、国・地方公共団体において、
‐ クラウド・生成AI・SaaSの導入拡大や国産の初期需要創出等の成
長投資
- 業務基盤や高度なAIも活用したシステムのセキュリティ強化、耐
災害性の向上等の危機管理投資
・供給面では、民間企業において、データセンター、モダン化され
たシステム、製品・サービス、これらを開発・運用するデジタル
人材に対する投資。
② 我が国として構築すべき機能
② 投資額
2035年度までで7.4兆円と想定
③ 定量的インパクト:投資による経済波及効果
2035年度までで10.9兆円と想定
・高度なセキュリティ、大規模災害時に対する事業継続性、業務の性質
に応じて十分な自律性が確保された国内の複数のクラウド基盤や公共
分野の業務基盤。
・地方公共団体にとって必要となる標準化されたシステムや優れたSaaS
型のシステム。
・中小企業・スタートアップ、新規参入者向けのシステムの開発、人材
育成、技術力向上のための環境やエコシステム。
・国産も含む新たなセキュリティ技術の導入・運用・評価環境。高度な
サイバー攻撃に対応可能なセキュリティ人材の育成環境。
26
3.官民投資促進に向けた課題と政策パッケージ【政策手段】
デジタル・サイバーセキュリティ
セキュリティの確保された政府・地方
公共団体のAX/DX基盤
(1)投資促進に向けた課題
(2)講じるべき政策パッケージ
①リソース制約
・人材:技術が変化・高度化す
る中で、これに対応できるデ
ジタル・セキュリティ人材の
確保やリスキリングが必要。
・ノウハウ:ベンダー、特に地
域の中小ベンダーが公共分野
に参入するための知見やシス
テム開発力、技術ノウハウが
必要。
②不確実性の要因
• 財務:クラウド移行やシステ
ムのモダン化等には複数年か
かる一方で、多額の単年度の
補正予算による整備が、官民
双方にとって見通し困難で不
確実性・非効率性の要因に。
①公共分野のAX/DX基盤への成長投資・危機管理投資、民の技術力の向上機会の付与
• 基本戦略を踏まえた重点領域を定め、複数年度に渡る計画的な成長投資・危機管理投資を行い、
-我が国の自律性強化の観点から、国産のクラウド、SaaS、生成AI等の初期需要を提供し、事業者の技
術力向上の機会を創出する。また、データ、計算基盤、モデル、運用の各層における、自律性・代替
性・耐遮断性の確保を図りながら生成AI・AIエージェントの徹底活用に向けた環境を整備する。
ー強靭性(サイバー攻撃、災害)を高め、いかなる事態でも行政の継続性を確保する。
1)国内の公的クラウド(ガバメントクラウド等)、ガバメントAI等
-日本企業の提供するクラウド(国産クラウド)、SaaS、生成AI等の公共分野での初期需要創出
-国産クラウドの利用環境の充実(暗号鍵の生成機能の開発・提供)
‐公共分野でのSaaS開発の促進(効率的なSaaS開発環境サービスの提供)
-行政分野でのクラウドの利用の拡大、国内クラウドの整備・国内データセンターの立地促進
‐生成AI・AIエージェント: ①国内外の優れたモデルを組み合わせて柔軟に利用するハイブリッド設
計の推進、②国産AIモデルの積極活用、③グローバルサウス諸国との共創・協力、④AI駆動開発の推
進
2)公共分野の業務基盤(ガバメントソリューションサービス、ネットワーク等)
GSSユーザー拡大とセキュリティ・耐災害性の強化(セキュリティ対策へのAI導入、災害時などの衛
星通信の利用環境の整備、データのバックアップ及び代替システムの整備・拡充)
3)技術変革に対応するための国産を含む新たなセキュリティ技術(例 PQC、高度なAI活用)の導入
4)出入国管理や在留管理を始めとするその他個別行政分野のDX基盤投資
• 技術・市場:クラウドやAIは
実際に使われ、フィードバッ
クを回すことで高度化する。
一方、信頼性等の観点から実
績を重視する市場慣行があり、
新規参入が困難となる要因に。
②地方におけるAX/DX推進エコシステムの確立、人材の育成
• 小規模な地方公共団体も含めて、標準化・ガバメントクラウド移行を基礎に、円滑に地方全体のAX/DX
を推進できるようなエコシステムを官民連携して確立する。
1)セキュリティ・耐災害性の強化、国の制度改正等への迅速な対応の基盤となる基幹20業務システムの
標準化・ガバメントクラウド移行完遂と運用最適化のための取組の強化(運用経費の可視化、分析を
通じた透明性や競争環境の向上等)
2)ベンダーが公共SaaSを複数の自治体に提供しやすい開発環境の提供、複数自治体での共同調達など広
域連携の推進等
3)AI利活用も見据えたデジタル人材のスキルや学習歴の可視化の基盤構築
27
デジタル・サイバーセキュリティ
セキュリティの確保された政府・地方
公共団体のAX/DX基盤
方向性
国・地方のAX/DX基盤(GSS、ネットワーク、クラウドやAIの基盤、データ連携基盤・認証基盤、外国人政策のDX基盤等)は行政運営や
国民生活に不可欠であり、成長投資・危機管理投資によって高度化・強靱化(セキュリティ、自律性の向上等)していく。
その際、国産の製品・技術(クラウド、SaaS、生成AI等)の初期需要を提供し、事業者の技術力向上の機会を創出する。
目指すべき姿
公共AX/DX基盤投資
課題・
ボトルネック
デジタル・セキュリティ人材
や中小ベンダーのノウハウ
不足
信頼性等の観点から実績
を重視する市場における、
新規参入者のサービスの
導入・利用のハードル
予算制度による予見性の
低さ
対民間
講じるべき施策
〇複数年度に渡る計画的な成長投資・危機管理投資
・十分な自律性を備えセキュリティが確保された政府クラ
ウドの整備、行政機関等の利用拡大、政府クラウドにお
ける国産クラウドの初期需要創出
・生成AI・AIエージェントの徹底活用
・国産を含むセキュリティ製品・サービスの率先導入
相乗効果
地方におけるAX/DX推進エコシステム、人材育成
講じるべき施策
・基幹20業務システムの標準化・ガバメントクラウド移行
完遂と運用の最適化の取組の強化
・公共SaaSの開発環境の提供、デジタル人材のスキルや学
習歴の可視化の基盤構築等
〇民の技術力向上・我が国の民間市場全体の拡
大、海外の市場獲得
<拡大すべき民間市場>
・国内立地データセンター
・国産のAI、クラウド等
・国産も含めたセキュリティ製品・サービス
「クラウド・DCの国内市場規模30兆円(2035
年)」等の目標達成に貢献。
対政府・自治体
〇高いセキュリティ、耐災害性、十分な自
律性を備えた公共分野のAX/DX基盤構築
GSSのユーザー拡大及びセキュリティ・耐災害性の強
化
全ての地方公共団体における基幹20業務の情報シス
テムの標準準拠と運用の最適化
28
デジタル・サイバーセキュリティ
③AI時代に対応した先進的サイバーセキュリティ製品
・サービス
29
1.現状認識と目指す姿【目標】
デジタル・サイバーセキュリティ
AI時代に対応した先進的サイバー
セキュリティ製品・サービス
(1)現状
(1)現状
(2)
(2) 目標
目標
① 現状
・クラウドへの移行、リモート接続、サプライチェーンの高度化・複雑化、AI・IoT製品
(フィジカルAIやエージェントAIを含む。)の普及といった環境変化に伴い、サイバーセ
キュリティ対策の必要性が一層増加。潜在的な需要が顕在化してくる可能性。
・利用実績が豊富な海外製のセキュリティ製品・サービスへの依存度が高い中、今後増大す
る需要を見越して、国内での一次データ収集力を強化しながら我が国のサイバーセキュリ
ティ産業・技術基盤を強化することが急務。
① 国内外で獲得を目指す市場
・2035年までに国内サイバーセキュリティ企
業の売上高を足下から3倍増を目指す
(約0.9兆円⇒約3兆円超)
② 取り巻く環境と構造変化
・デジタル化の進展に伴い、サイバー攻撃の起点が増加し、取引先事業への影響や物理面に
も波及するリスクが増加している。OT(制御系)システムセキュリティの重要性も増加。
・地政学リスクの高まりに伴い、国家背景の脅威が増加。一方で、今後サイバー安全保障対
応能力の向上が期待される。
・サイバー攻撃の深刻化・巧妙化の中で、AI等を利用する攻撃が増加。一方で、AI等を防御
でも活用することでも期待される。
③ 経済的・戦略的な重要性
・経済的重要性:サイバーリスクの高まりに伴い今後も継続して成長が見込まれるサイバー
セキュリティ市場において国内での製品・サービス供給力を拡大させることは、我が国の
経済成長に資する。
・戦略的重要性:国内での製品・サービス供給力を拡大させることは、①我が国へのサイ
バー攻撃の特異性が存在する場合もある中で、国内で必要な脅威情報等の蓄積・分析をし
つつ、国内の状況に沿った製品・サービスを提供することを可能とするほか、②機微性の
高い我が国の重要なサイバー関連データ(製品・サービスを通じた不審な通信の検知情
報・攻撃被害情報等)が過度に海外に流出することを防止でき、③国際情勢等に左右され
ることなくサイバーセキュリティ製品・サービスを国内で安定的に供給できるという自律
性の確保につながるものであることから、我が国の安全保障の確保に資する。
② 達成すべき戦略的な目標
・2030年までに「サプライチェーン強化に向
けたセキュリティ対策評価制度(SCS評価制
度)」活用企業1万社超
30
2.勝ち筋の特定と官民投資の具体像【道筋】
デジタル・サイバーセキュリティ
AI時代に対応した先進的サイバー
セキュリティ製品・サービス
(1)基本戦略
(2)官民投資の具体像
① 勝ち筋
・まず、官民の関係機関等から得られる一次情報を活用した国産セキュリティ製品・サービス
開発等を推進するとともに、研究開発や人材確保支援策等も充実化させ、国内における技
術・製品等の開発力を強化する。
・その上で、技術革新が見込める分野・強みを発揮できそうな分野(例、AI×セキュリティ、
OT(制御系)システムセキュリティ、国内産業の事業実態や我が国固有の攻撃*1への対応、
第二線としての付加的な活用*2等)における先進的・有望なセキュリティ製品・サービスの
社会的露出を増やし、市場における信頼性・認知度を拡大させることで、それら製品等が民
間市場においても評価・調達されるようにする。
① 投資内容
・政府機関等による先進的・有望なセキュリ
ティ製品等に対する調達/経済安全保障重要技
術育成プログラムを通じた国産技術開発支援
等
・民間企業によるサイバーセキュリティに関す
る研究開発等投資
・サプライチェーンに連なる中小企業を含めた
産業界によるサイバーセキュリティ対策投資
*1我が国の組織を標的とした、海外では一般的に用いられていない独特の手法等を用いたサイ
バー攻撃(日本語に特化した標的型攻撃)など。
*2 第一線として既に利用されている(乗換え困難な)主要な外国製品等、第一線を補完する第
二線として我が国発の製品等が新規に調達されるといった棲み分けを想定。
・さらに、国際社会の信頼性・地政学的立ち位置や現場発の高品質などの長所を活かしつつ、
我が国の製品・サービスに対するニーズの強いASEAN等を中心に、政策の展開と一体的に有
望製品・サービスを展開して海外市場も獲得する。
・同時に、これまで大企業等が中心であったサイバーセキュリティ対策投資需要について、中
小企業も含めサプライチェーンに属する幅広い企業等に拡大させることで、上記の先進的・
有望な製品等が獲得できる新たな需要(市場)を創出する。
・これらの取組により、国内サイバーセキュリティ企業の売上高について、 2035年までに3
兆円超を達成する。
② 我が国として構築すべき機能
・我が国の重要なサイバー関連データや我が国に特異な脅威情報等を蓄積・分析する機能(AIReadyな国内データの確保)
・国内の状況に沿った製品等を開発・評価する機能(自律性の確保)
・政府機関等が先進的・有望セキュリティ製品・サービスを積極的に活用し、検証できる機能
② 投資額
2035年度までで1.0兆円と想定
③ 定量的インパクト:投資による経済波及効果
2035年度までで3.3兆円と想定
31
3.官民投資促進に向けた課題と政策パッケージ【政策手段】
デジタル・サイバーセキュリティ
AI時代に対応した先進的サイバー
セキュリティ製品・サービス
(1)投資促進に向けた課題
(2)講じるべき政策パッケージ
①リソース制約
・人材:需要・供給両面でサイ
バー人材が不足している。
・インフラ等:製品開発等に必要
なデータ・計算資源への十分な
アクセスが困難。
①国内投資支援
・官民の関係機関等によるデータセット等の提供・開放、計算環境の整備、研究開発プロジェクト支援等を
通じたAIを活用した製品・サービス等の創出支援
・先進的サイバー防御機能・分析能力強化等に係る研究開発支援の拡張、大学での研究開発支援
・スタートアップ育成促進(懸賞金事業、マッチング支援等)
②不確実性の要因
・事業・技術:サイバー攻撃・防
御両面で急速な技術進展への対
応(AI、量子計算機等)が求め
られる状況。
・市場:実績重視の商慣習等によ
り外国製品への依存度が高く、
それに伴い、国内での一次デー
タ収集力・分析力が不足。製品
等の選択肢や需要側の知見も不
十分。
・国際環境・政策:地政学リスク
の動的変化により、サイバー脅
威も動的に変化し、拡大してい
る。
・社会:サイバーセキュリティ対
策に対する必要性の認識が十分
でない。
・政府機関等における先進的・有望なセキュリティ製品・サービスの積極的な活用及び検証環境の構築
・海外市場開拓支援(ASEANをはじめとするインド太平洋地域における我が国政策の普及展開と一体となっ
た現地化支援実証、出展支援等)
・企業のセキュリティ対策状況を「共通のものさし」で評価する制度(SCS評価制度)の2026年度末頃の
開始及び利用促進に向けた環境整備(業界連携、中小企業支援、人材育成等)
・中小企業等への攻撃を迅速かつ面的に検知するためのプラットフォーム構築
・JC-STAR*1の活用促進(国・自治体・重要インフラ等での活用等、流通しているIoT製品の更新・ネット
ワーク側での対応促進等)
②需要創出・市場確保・社会実装支援
*1 一定のセキュリティ基準に適合するIoT製品を認証する制度
・サイバーセキュリティ・サービス事業者の信頼性強化に向けた制度構築
・ソフトウェア領域が広がる自動車(SDV)等のサイバーセキュリティリスク評価等の実施
③立地競争力強化
・高度サイバーセキュリティ人材の育成・確保(OTやAI等の先端技術に対応した人材の育成、集中訓練・
演習機会提供、若手発掘・起業促進、キャリア魅力化等)
④国際連携
・有志国間での②に関連する制度の調和(相互運用性の確保)
・我が国ガイドライン等の発信、共同署名化
※このほか、「サイバーセキュリティ戦略」に基づく施策のうち、本ロードマップの目標達成に資する施策
32
デジタル・サイバーセキュリティ
AI時代に対応した先進的サイバー
セキュリティ製品・サービス
方向性
現状認識、日本の強み
クラウドへの移行、リモート接続、サプライチェーンの高度化・複雑化、AI・IoT製品の普及といった環境変化に伴い、
サイバーセキュリティ対策の必要性が一層増加しており、今後潜在的な需要が顕在化してくる可能性。
利用実績が豊富な海外製のセキュリティ技術・製品への依存度が高い中、今後増大する需要を見越して、国内での一
次データ収集力を強化しながら我が国のサイバーセキュリティ産業・技術基盤を強化することが急務となっている。
多くの製造現場を有する我が国の特性を活かしたOT(制御系)システムセキュリティや、国内産業の事業実態等に
沿ったセキュリティ製品・サービス、我が国への「信頼」を活かした海外展開等に勝機がある。
我が国の勝ち筋
課題(ボトルネック)
実績重視の商慣習等による、
外国製品への依存度の高さ、
それに伴う国内での一次
データ収集力・分析力の不
足
需要が顕在化していない
(サイバーセキュリティ対
策の必要性に対する認識不
足)
サイバー攻撃・防御両面で
の急速な技術進展への対応
(AI、量子計算機等)
講じるべき施策
<国産セキュリティ製品・サービスの開発加速>
広く導入を進める国産検知ソフトが収集したデータや中小企業
への攻撃情報を国産セキュリティ製品・サービスの開発に活用
AIの活用を含めた先進的なサイバーセキュリティ技術の創出に
向けた大規模な研究開発支援をさらに拡張
<市場参入支援・需要創出>
先進的・有望なセキュリティ製品・サービスを政府機関等が率
先して導入して「実績」を創出
我が国が強みを持つOT(制御系)セキュリティの実装を促進
するとともに、ASEAN等の海外市場への進出を支援
需要が顕在化していない中小企業等によるセキュリティ製品・
サービスの導入を促進することにより市場を拡大
<高度セキュリティ人材の育成>
OTやAIにも対応できる高度セキュリティ人材の育成を強化
目指すべき姿
2035年までに国内サイ
バーセキュリティ企業の
売上高を足下から3倍増
を目指す(約0.9兆円⇒
約3兆円超)
我が国の自律性を確保し
ながら、国内で必要なサ
イバーセキュリティ製
品・サービスを供給でき
る基盤が確立する。
33
デジタル・サイバーセキュリティ
④クラウド・データセンター、蓄電池
34
1.現状認識と目指す姿【目標】
(1)現状
デジタル・サイバーセキュリティ
クラウド・データセンター、蓄電池
(2) 目標
① 現状
①国内外で獲得を目指す市場
・クラウドは、AIトランスフォーメーション(AX)の基盤として、企業・行政におけるデータ利活用、 (ここでは拡大を目指す国内市場とする)
・あらゆる産業においてAIを活用した生産性向上・
AI活用、業務高度化を支えるインフラとして不可欠な存在。あらゆる産業におけるAXを支え、成長
成長投資が今後必須となる。こうしたAXを支える
産業の投資を促進する基盤となる。国内クラウド市場は、官民のデジタル関連需要を背景に足元で
デジタル基盤の整備が、成長産業の投資等の下支
一層拡大中。国内で4兆円規模・年20%超で拡大を続ける成長市場。
えとなる。
・他方、いまだ多くの企業等において、データ利活用を円滑に行えるシステムのモダン化が進められ
・クラウドは、今後AI・データ利活用拡大により、
ていない状況であり、製造業等が蓄積してきた豊富な産業データ利活用のポテンシャルは大きい。
グローバル市場規模は拡大する見込み。こうした
・また、クラウド市場の増加に伴い、それを構成する計算資源(GPU等)、電力、通信などのインフ
グローバルの市場拡大に国内も追随して、2035年
ラ基盤としてデータセンターやそれを支える蓄電池・電源システムの需要も拡大。
までに30兆円の国内市場規模を目指す。
② 取り巻く環境と構造変化
・蓄電池は、2025年から2035年にグローバル市場
・特にAIの普及により、データ量・計算需要が爆発的に増加。クラウドは単なるIT基盤から、AI・
規模が2倍に成長する見通し。日本が強みを有す
データ・業務・サプライチェーンを横断的につなぐ中枢基盤へと進化。
る出力性能等に優れる蓄電池・電源システムを中
・社会インフラ分野におけるデータ管理を中心に、クラウドの「信頼性・可用性・主権性」を重視す
心に、車載用や定置用を含む全体で、日本企業の
る潮流が強まっており、その結果として、一極集中モデルと分散・信頼重視モデルの併存へと市場
蓄電池関連売上高※を2035年に3倍に成長させる
構造が変化しつつある。
ことを目指す。
・また、クラウドを支える基盤であるデータセンターについて、立地ニーズに迅速に対応するための、
※セル・パック・モジュール・蓄電システム等
電力・通信インフラの整備が課題に。加えて、将来の電力需要増加への対応や、安定稼働を支える
② 達成すべき戦略的な目標
ための蓄電池等の電源・通信システムの高度化も課題。
・電力・通信インフラの効果的な整備等(ワット・
・蓄電池は、足元で車載用(BEV等)・定置用(系統等)の投資計画が進行する一方、グローバル市
ビット連携)を通じ、データセンターの立地環境
場での過剰供給構造やサプライチェーンリスクが顕在化。蓄電池を大規模に量産可能な国が限られ
を確保する。
る中、日本及び同志国の自律性・不可欠性の確保・向上が益々重要になっている。こうした中で、
・先端技術(光電融合、低遅延通信等)による電
企業がサプライチェーン一体となって経済安全保障に資する投資を行うとともに、今後の成長分野
源・通信システムの高度化を通じた、データセン
で求められる高度な電気制御に対応可能な多角的な競争力を強化し、電源システムも含めた蓄電ソ
ター基盤を確保する。
リューション全体で競争力を向上させて、必要な製造基盤を確立することが喫緊の課題。
・デジタル・電化社会で国民生活・経済活動が依拠
③ 経済的・戦略的な重要性
する重要物資である蓄電池について、同志国を含
・経済的重要性:クラウドは、全産業のAXを下支えする基盤投資であり、製造、金融、流通、医療、
む戦略的自律性・不可欠性を確保・向上。
公共などあらゆる産業における生産性向上・付加価値創出の波及効果が大きい。更に深層の基盤を
・重要インフラなど経済安全保障上重要な領域にお
構成する蓄電池・電源システムの多角的な競争力がアプリケーションで提供可能な品質を規定。
いては国内事業者の運用による高い信頼性・可用
・戦略的重要性:少子高齢化下での生産性向上、AI活用による社会課題解決の前提条件として戦略的
性・主権性を備えたクラウドを確保する。
・要求に応じて適切な情報処理機能を使える環境を
意義が高い。蓄電池のサプライチェーンリスクが顕在化し、蓄電池を大規模に量産可能な国が限ら
確保する。
35
れる中、日本及び同志国の戦略的自律性・不可欠性を確保できる能力の獲得・向上が重要に。
2.勝ち筋の特定と官民投資の具体像【道筋】
デジタル・サイバーセキュリティ
クラウド・データセンター、蓄電池
(1)基本戦略
(2)官民投資の具体像
① 勝ち筋
・生産年齢人口の減少下において、我が国産業が勝ち筋をたどるためには、生産性向上が必須。
生産性向上の実現のためには、デジタル技術の利活用・AXの推進が鍵となる。公共分野に
おいても同様に、その生産性向上のためにはAXの推進が必須。
・そのため、まずは、クラウドの下支えとなるデータセンターの効果的な整備を確実に行うと
ともに、データセンターを支える先端技術の研究開発・生産基盤整備を推進していく。
・また、クラウド移行を加速させる環境を作るとともに、国内の自律的なクラウド構築・運用
能力の確保により、公共・産業における機能や信頼性・安全性のニーズに応じてクラウドの
選択・組合せを行えることを目指す。
・また、企業のAXの状況評価・可視化やクラウド等のデジタル技術の実装を担う人材を育成
することによるクラウドの需要創出を図る。
・蓄電池は、2026年6月に改訂した「蓄電池・電源産業戦略」に基づき、戦略的自律性・不可
欠性の確保・向上を目指す。
・そのためには、車載用・定置用で重視されるエネルギー密度(容量)に加えて、日本企業が
優位性を有するパワー密度(出力)をはじめ、多角的な競争力を強化し互いに組み合わせる
ことで、高度なアプリケーションに対応していくことが必要。多角的な競争力を兼ね備えた
蓄電池・電源システムへの成長投資・危機管理投資を集中的に加速させることで、その製造
基盤(マザー工場)を確立し、高付加価値なグローバル市場の獲得を目指す。
・あわせて、サプライチェーンリスク低減のため、供給源の多角化に向けたサプライチェーン
立上げ・切替等の促進や、資源調達リスク低減に資する蓄電池・電源システムの技術開発・
早期の実用化を進める。また、製造基盤確立に向けた供給面の対応とともに、安全性や信頼
性・サプライチェーン強靱性に優れる蓄電池・電源システムが評価される市場整備等、需要
面からの対応も行っていく。
① 投資内容
・国内データセンターの立地促進。
・公共分野におけるデジタル関連の率先調達。
・データセンターを支える先端技術の研究開発・生産
基盤整備。
・戦略的自律性・不可欠性の確保・向上に資する多角
的な競争力を備えた蓄電池・電源システムの技術開
発・製造基盤確立の推進。
・サプライチェーンリスク低減に資する蓄電池・電源
システムの技術開発・実用化・製造基盤整備を加速。
・高い信頼性・可用性・主権性を備えたクラウド関連
の開発投資。
・経営層のデジタル投資の必要性に係る普及啓発を含
めたデジタル人材育成関連の投資促進などを通じた
クラウド利活用の促進。
② 我が国として構築すべき機能
・AIやデータ活用を支える計算資源や低遅延通信等を備えたクラウドを安全・安心に利用でき
る環境、及びそれを支えるデータセンターのワット・ビット連携による効果的な整備。
・データセンターを支える先端技術(光電融合、低遅延通信等)を実現する研究開発力・生産
基盤の確保。
・多角的な競争力を兼ね備えた蓄電池・電源システムの技術・製造基盤の確立及び同志国を含
む戦略的自律性・不可欠性の確保・向上。
・企業や行政における、クラウドを前提としたシステムの設計・運用やデータ活用を推進でき
る人材、組織としての能力の整備。
② 投資額
2035年度までで32.7兆円と想定
③ 定量的インパクト:投資による経済波及効果
2035年度までで107.1兆円と想定
36
3.官民投資促進に向けた課題と政策パッケージ【政策手段】
デジタル・サイバーセキュリティ
クラウド・データセンター、蓄電池
(1)投資促進に向けた課題
(2)講じるべき政策パッケージ
①リソース制約
・インフラ等:データセンターの大
都市への立地集中やデータセン
ターに必要な電力・通信インフラ
の効率的な整備が課題
・サービス:クラウドはハイパース
ケーラーを中心とした海外製が大
半であり、産業競争力や経済安全
保障に係るデータを信頼性・安全
性を確保しながら処理できる国内
サービスが限定的
・人材:クラウド・データセンター
需要に繋がりうるAX推進を担う
人材不足・経営層のデジタル理解
不足、蓄電池・電源システムの製
造基盤、技術開発を担う人材の育
成・確保
・部素材・製造装置等:蓄電池は過
剰供給構造の顕在化や特定国への
過度な依存の中、部素材・製造装
置をはじめサプライチェーンが脆
弱化し供給制約が発生するおそれ
②不確実性の要因
・事業・技術:クラウド活用等の効
果や導入方法に係る知見の少なさ
・財務:研究開発・生産基盤整備の
大きな初期投資に伴う財務リスク。
特に蓄電池は稼働開始までのリー
ドタイムの長さ
・市場:各国の政策変更や投資動向
等による成長分野に求められる蓄
電池の競争力の多角化
①国内投資支援
• 脱炭素電源を活用するデータセンターの整備支援や「GX戦略地域制度」においてデータセンターの集積地を選定し、電力インフラ
については一般送配電事業者等の資金調達を円滑化するための制度改正と連携しつつ、先行的・計画的に系統を整備。通信インフラ
についても海底ケーブルの陸揚げ拠点等の整備支援やオール光ネットワークの実証に係る支援も実施。また、用地確保や工業用水の
供給、脱炭素電源の整備など、その他インフラ整備も促進。
• データセンターを支える先端技術(光電融合、低遅延通信等)を実現する研究開発力・生産基盤の確保を支援。
• 大胆な投資促進税制の活用によるクラウド・データセンター整備の拡大。
• 省エネ等の観点で計算資源の高度化・電力利用の最適化に資する機能への投資を推進。
• 出力性能をはじめ多角的な競争力に優れ高度な電気制御を可能にする技術開発・製造基盤整備を支援するとともに、従来支援の対象
でない種類の蓄電池も含め、企業がサプライチェーン一体となって行う経済安全保障に資する蓄電池・電源システム投資を後押し。
• サプライチェーンリスク低減に資する蓄電池・電源システムの技術開発・実用化促進・製造基盤整備を加速。
• 我が国が蓄電池の技術リーダーの地位を維持・確保できるよう、設備・人材・インフラ等の基盤研究拠点機能を抜本強化する。
②需要創出・市場確保・社会実装支援
• 重要インフラなど経済安全保障上重要な領域に対応した高い信頼性・可用性・主権性を備えたクラウド基盤を確保。先端プラット
フォーム関連技術を担えるトップ人材の育成を進める。
• 中小企業におけるAI・クラウドの利用拡大に向けた導入を支援。政府システムについて、セキュリティや耐災害性が確保されたガバ
メントクラウドへの移行を加速する。また、公共SaaS等公共情報システム開発事業者向けの開発環境を提供する。
• レガシーなシステム群から、クラウドを前提とした柔軟・安全・データ活用可能なIT基盤への転換を促進。要求に応じて適切なクラ
ウドを使う前提でのITシステム移行を官民一体で加速させる。こうした中で、移行プロセス、アーキテクチャ、セキュリティ・運用
要件の整理・標準化活動を通じた指針・テンプレートの整備を行い、クラウド事業者やSIベンダーへの協力要請・知見の集約を進め
る。
• 蓄電池については、データセンターをはじめとする高い安全性や信頼性が求められる分野において、安全性や信頼性・サプライ
チェーン強靱性に優れる蓄電池・電源システムが評価される市場の整備を目指して、製品評価技術基盤機構作成の「公共調達・重要
インフラ向け蓄電池システムの安全ガイドライン」の普及や試験・認証の推奨といった活用促進等に取り組む。
• デジタル人材230万人育成の次となる新たな政府目標及びKPIの設定に向けた議論を進める。クラウド活用が前提となるAI時代に
対応する形で、人材育成の指針となる「デジタルスキル標準」及び「情報処理技術者試験」を変革。また、個人のデジタルスキル情
報の蓄積・可視化により、デジタル技術の継続的な学びを実現。あわせて、デジタル需要創出をけん引するトップ人材育成を強化。
加えて、女性トップデジタル人材の育成に向けた広報等の取組も強化。蓄電池は、これまで関西蓄電池人材育成等コンソーシアムに
よる高校・高専等での教育プログラムにおいて企画・推進してきたモデルケースを他地域・大学に展開するとともに、多様な蓄電
池・電源システム等ニーズに応じた対応を検討・推進する。
• 企業のAXの状況評価可視化を進めるため、既存の表彰制度を見直しAXの取組を高く評価する。
③立地競争力強化
• 「GX戦略地域制度」において選定したデータセンター集積地に対して、電力・通信インフラの先行整備等を行う。
④国際連携強化
• 蓄電池は、カナダやEUとの覚書等に基づく協力を更に深化させる等、同志国との更なる連携拡大・強化を推進。特に、安全性や信
37
頼性・サプライチェーン強靱性に優れる蓄電池・電源システムが評価される市場の拡大に向けて同志国と連携を目指す。
デジタル・サイバーセキュリティ
クラウド・データセンター、蓄電池
方向性
現状認識、日本の強み
<クラウド・データセンター>
あらゆる産業においてAIを活用した生産性向上・成長投資が今後必須となる。こうしたAXを支えるデジタル・電源基盤の整備が、成長産業の投資の下
支えとなる。クラウドはAXを支える不可欠な基盤であり、国内市場も官民のデジタル関連需要を背景に足元で一層拡大中。
他方、レガシーシステムに依存している企業も多く、製造業等が蓄積してきた豊富な産業データ利活用のポテンシャルは大きい。
また、社会インフラ分野におけるデータ管理を中心に、信頼性・安全性を確保する観点の技術のニーズも出てきている。
<蓄電池>
デジタル・電化社会で国民生活・経済活動が依拠する重要物資。サプライチェーンリスクが顕在化し、戦略的自律性・不可欠性の確保・向上が課題。
足元で投資計画が進行する車載用(BEV等)・定置用(系統等)に加えて、大きな成長が見込まれるAIデータセンターの安定運用に不可欠なパ
ワー密度(出力)をはじめ、多角的な競争力に優れ高度な電気制御を可能にする蓄電池・電源システムの技術開発・製造基盤整備が必要。
課題(ボトルネック)
•データセンター整備に必要な電
力・通信インフラ確保に係る制約。
•高い信頼性・可用性・主権性を
備えたクラウドの確保が十分でな
いこと。
•経営層のデジタル利活用に係る意
識改革。AX推進の担い手となる
人材の不足。
•サプライチェーンリスクへの対応、
高い成長が見込まれる蓄電池・電
源システムの競争力強化。
我が国の勝ち筋
講じるべき施策
<クラウド・データセンターの整備の加速>
• 電力・通信インフラ整備を通じてAI時代に対応したデータセンターの整備を促
進。また、データセンターを支える先端技術の研究開発・生産基盤整備を推進。
• 大胆な投資促進税制の活用によるクラウド・データセンター整備の拡大。
<高信頼クラウドの開発>
• 高信頼クラウド機能の確保に向けた研究開発支援の強化及び利用拡大。
• 先端プラットフォーム関連技術を担えるトップ人材の育成。
<クラウド・データセンターの利用拡大>
• 中小企業におけるAI・クラウドの利用拡大に向けた導入支援。
• AI時代に対応した「デジタルスキル標準」や「情報処理技術者試験」の見直し
等により、クラウド等のデジタル技術の実装を担う人材を育成。
• 企業のAXの状況の評価・可視化を推進。
<蓄電池・電源システムの技術開発・製造基盤確立の推進>
• 投資計画が進行する車載用・定置用に加えて、AIデータセンター用をはじめ、多
角的な競争力に優れ高度な電気制御を可能にする蓄電池・電源システムの技
術開発、製造基盤(マザー工場)の確立を推進。
• サプライチェーンリスク低減に資する技術開発・製造基盤整備を加速。
目指すべき姿
•国内のクラウド市場について、
2035年までに市場規模30
兆円を目指す。
•全産業のAXを支えるクラウド
利用を拡大しつつ、高い信頼
性を備えた基盤やデータセン
ターの立地環境が確保され
た状態を目指す。
• 蓄電池・電源システムの戦略
的自律性・不可欠性を確保・
向上させるとともに、国内マ
ザー工場をベースに高付加価
値市場を獲得し蓄電池関連売
上高を2035年に3倍に成長
させることを目指す。
38
デジタル・サイバーセキュリティ
⑤クラウドネイティブに最適化された医療DX基盤
39
1.現状認識と目指す姿【目標】
(1)現状
① 現状
・これまでの医療機関の情報システムは、多様な仕様のオンプレミス型※が主流。
※オンプレミス型:院内に設置したサーバーでシステムを管理・運用する方式
<課題:データ連携・サイバーセキュリティ等>
・現行のオンプレミス型の医療機関の情報システムは、仕様が多様である上に、外部接続を前提
としておらず、現地の改修費用や人的リソース面で高コストとなりやすく、クラウド上の
政府医療DXサービス(電子カルテ情報共有サービス等)とのデータ連携に課題。
・大病院の情報システムは、医療機器(オンプレミス型)が多くシステム・ネットワーク構成も
複雑。クラウド製品がない中で、サイバーセキュリティ対策に大きな負担。
・多くのベンダーが仕様の異なる多様なシステムを提供。電子カルテと部門システムの連携が個別イ
ンターフェイスで行われており、また、それぞれの医療機関のカスタマイズにより、高コストにな
りやすい。
② 取り巻く環境と構造変化
・医療機関向けに、クラウドネイティブ型製品を提供する電子カルテベンダーが登場。
⇒ クラウドネイティブ型は、政府が進める医療DXサービス(電子カルテ情報共有サー
ビス等)と接続しやすく、更なるデータ連携・利活用の推進が期待。
⇒ ネットワークを適正化した上で、クラウド化すれば、サイバーセキュリティ強化も可能。
・更に、生産年齢人口が減少する中での医療従事者確保等のため、医療提供体制のDX化が進展。
特に、病院ではAI等を活用した業務効率化支援ツールの導入等の事例が増加。
③ 経済的・戦略的な重要性
・経済的重要性:国民の公的負担がある医療費50兆円の医療提供体制全体の効率化につながる。
また、データ連携により創薬、医療機器をはじめとしたヘルスケア市場の活性化にも影響。
・戦略的重要性:医療機関の情報システムのサイバーセキュリティ強化は、医療提供体制の維
持に不可欠であり、国民の生命・健康の確保、健康医療安全保障の実現に直結。
デジタル・サイバーセキュリティ
クラウドネイティブに最適化された医療DX基盤
(2) 目標
① 国内外で獲得を目指す市場
・クラウドやAI等の「医療の質や効率化に貢
献するデジタルサービス」の拡大を目指し、
ベンチャー等を含むエコシステムが形成
された医療情報システム市場への転換を図る。
こうしたデジタルサービスについて、競争力
の高い診断・検査機器等とともに、標準化・
クラウド化を進め、海外市場展開を目指す。
② 達成すべき戦略的な目標
・2030年までに、以下を達成
⇒必要な患者の医療情報の共有が可能な電子
カルテの普及率約100%の達成。
⇒地域の拠点となる病院のサイバーセキュリ
ティ対策を100%実施。
⇒大病院向けのクラウドネイティブ型製品
(電子カルテ・部門システム)が開発・
提供される環境を整備。
・クラウドの医療情報システムは、創薬や最新
の医療機器の開発等に必要となるデータ基盤。
この整備により「革新的デバイス(AI・ロボ
ティクス等)を活用した先端医療」等の各種
ロードマップの目標達成※につなげる。
※例:日本の医療機器メーカーのグローバルでの獲
得市場規模、2024年時点:10兆円を2040年
時点:28兆円とする(目標)。
40
2.勝ち筋の特定と官民投資の具体像【道筋】
デジタル・サイバーセキュリティ
クラウドネイティブに最適化された医療DX基盤
(1)基本戦略
(2)官民投資の具体像
① 勝ち筋
・安全な全国データ連携基盤を構築し、質の高い効率的な医療の提供を実現。更に、この連携基盤の高
品質のデータを活かし、AI等の医療デジタルサービスの拡大や創薬や医療機器の開発等が成長の勝
ち筋。
・しかし、そもそも、医療機関のデータが連携、活用可能な形になっていない。その主な要因は、病
院の情報システム(電子カルテ、部門システム)がオンプレミス型でデータが標準化されていな
いこと。
① 投資内容
・クラウドネイティブ型の電子カルテの
普及支援
【ベンダー、医療機関】
・クラウドネイティブ型への刷新のボトルネックは、次のとおり。
- 開発規模が大きいことに加え、病院の情報システムを構成する多数のシステムの同時開発が必要と
なること
- その開発の前提となるシステム間の標準インターフェイスがないこと
- 病院のクラウド移行に伴い業務見直しやデータ移行が必要なこと
・成長の実現に不可欠なクラウドの医療データの連携基盤の構築に向け、医療機関の情報システムのク
ラウドネイティブ型への刷新を集中的に進める。
⇒ 官民連携した集中的な投資(ベンダーの開発支援)
⇒ 標準的なインターフェイスの構築・管理
⇒ 医療機関におけるクラウドネイティブ型の導入支援
② 我が国として構築すべき機能
<クラウドネイティブ型の情報システムへの転換>
・大病院向けのクラウドネイティブ型情報システムの開発・普及支援 等
<サイバーセキュリティ対策の強化>
・早急に対応すべき医療機関のサイバーセキュリティ対策の強化
<全国的なデータ連携基盤整備>
・クラウド間連携基盤を含む政府医療DXサービスの利用環境の整備 等
・大病院向けクラウドネイティブ型情報シス
テム製品(電子カルテ・部門システム)
の開発・普及支援
【ベンダー、医療機関】
・サイバーセキュリティ対策強化、医療
情報の連携の推進 等
【ベンダー、医療機関】
② 投資額
2040年度までで5.2兆円と想定
③ 定量的インパクト:投資による経済波
及効果
2040年度までで15.2兆円と想定
41
3.官民投資促進に向けた課題と政策パッケージ【政策手段】
(1)投資促進に向けた課題
デジタル・サイバーセキュリティ
クラウドネイティブに最適化された医療DX基盤
(2)講じるべき政策パッケージ
①クラウドネイティブ型の情報システム(電子カルテ・部門システム)への転換
①不確実性の要因
<クラウドネイティブ型電子カルテの普及>
・大病院のシステム開発コスト:
・電子カルテの標準仕様の策定、標準仕様準拠製品の認証制度の構築(2026年度中に認証)
大病院の電子カルテは、業務処
理が多く、ネットワークも複雑。 ・認証された電子カルテ製品に対する普及支援/認証製品の導入のための地域提供ベンダーの連携体制の構築/
開発規模が大きく、刷新の開発
認証製品へのデータ移行支援
投資にはリスクが大きい。
<大病院向けのクラウドネイティブ型製品(電子カルテ・部門システム)の開発・普及支援>
・大病院の情報システムの複雑性:
・ 電子カルテ、部門システムにおけるクラウドネイティブ型製品の一体的・集中的な開発・普及支援
電子カルテと独自インター
・ クラウドネイティブ型製品の開発の前提となる電子カルテと部門システムの標準インターフェイスの構築(恒
フェースで接続するオンプレミ
久的管理体制の整備)、標準仕様としての規定
ス型の部門システムが多数。
・ 特定機能病院等の高機能な病院等におけるクラウドネイティブ型の情報システムの導入支援
電子カルテのみをクラウド化し
<病院DXの推進>
ても、メリットを享受できない
・AI等を活用した業務効率化支援ツール等の導入支援による病院DXの推進
(部門システムも一体で開発に
踏み切る必要あり)。また、開
②サイバーセキュリティ対策の強化
発に必要な標準インターフェー
<早急に対応すべき地域の拠点となる病院のサイバーセキュリティ対策の強化>
スがない。
・ネットワークの外部接続点の監視等による適正化の推進、サーバ等の管理強化(多要素認証等の導入)
②リソース制約
③全国的なデータ連携基盤整備
・ベンダー規模:
<政府の医療DXサービスに対応する電子カルテの普及(クラウドネイティブ型製品が普及するまでの対応)>
特に部門システムでは、小規模
・政府の医療DXサービスへの対応に特化した診療所向けの「標準型電子カルテ・導入版」を国が開発し、普及
ベンダーが多く、クラウドネイ
・病院等における電子カルテ情報共有サービス等への接続支援の強化(簡便な接続アプリの提供)
ティブ型の開発体力がない。
・政府の医療DXサービスへの接続機能を標準として備えた「パッケージ版・電子カルテ製品」の普及支援
・導入作業:
オンプレミス型からの移行に
<政府の医療DXサービスの機能拡充>
は、個々の医療機関ごとにBPR
・研究者や企業等による一層の利活用につながる医療等データ利活用基盤の構築の加速化
やデータ移行などの導入支援
・全国医療情報プラットフォーム(オンライン資格確認、電子処方箋、クラウド間連携基盤の構築等)の各種の政
が必要。リソースが足りない。
府の医療DXサービスについて、機能拡充、利用促進等を図るとともに、医療提供体制のDX化を推進
42
デジタル・サイバーセキュリティ
クラウドネイティブに最適化された医療DX基盤
方向性
●日本の医療機関は、多様な仕様のオンプレミス型の情報システムが主流のため、データ連携が困難であり、カスタマイズによるコストも高い。
※オンプレミス型:院内に設置したサーバーでシステムを管理・運用する方式
●医療の高品質なデータの連携や利活用で、質の高い効率的な医療の提供を実現し、創薬や医療機器の開発等にもつなげることが成長の勝ち筋。
その基盤となるクラウドの医療データの連携基盤の構築に向け、医療機関の情報システムのクラウドネイティブ型への刷新を集中的に実施。
ボトルネック
講じるべき施策
市場リスク(医療機関)
官民一体の集中的な投資による取組
• オンプレミス型システムからの移行には、個々の
医療機関ごとに、システムに合わせた業務フローの
見直しやデータ移行等の支援が必要。リソースが不足。
事業リスク(ベンダー)
• 大病院の情報システムは、業務処理が多く、
ネットワークも複雑。クラウド製品の開発規模
が大きく、リスクが高い。
• 電子カルテと独自インターフェースで接続するオン
プレミス型の部門システムが多数存在。電子カルテ
のみをクラウド化しても、メリットを享受できない
(部門システムも一体で開発に踏み切る必要)。ま
た、開発に必要な標準インターフェース※が未整備
※システム連携に必要なコードや仕様等の共通ルール。
• 特に部門システムは、小規模ベンダーが多く、開発
体力が不足。
セキュリティリスク
• サイバーセキュリティの脅威の高まり。
他方、クラウド製品がない中で、サイバーセキュリ
ティ対策には大きな負担。
①クラウドネイティブ型の情報システムへの刷新
認証されたクラウドネイティブ型電子カルテ製品
の普及支援/地域提供ベンダーの連携体制の構築
/認証製品へのデータ移行支援
大病院向けのクラウドネイティブ型製品(電子
カルテ、部門システム)の一体的・集中的な開
発・普及支援
クラウドネイティブ型製品の開発の前提となる
電子カルテと部門システムの標準インターフェ
イスの構築、標準仕様として規定 等
目指すべき姿
医療機関の情報システムのクラウドネイ
ティブ型への刷新を通じて、高品質な
データの全国的な連携・利活用を実現
効率的で質の高い医療提供の確保
診療のAI活用、IT投資活性化
創薬や医療機器の研究開発の充実
サイバーセキュリティ対策の強化
国産の電子カルテベンダーの強化
②サイバーセキュリティ強化
ネットワークの外部接続点の監視等による適正化
の推進 等
特に、地域の拠点となる病院には早急にサイバー
セキュリティ対策を強化。
③全国的なデータ連携基盤の整備
全国医療情報プラットフォームの機能拡充、等
国の医療DX政策による安全なデータ
連携基盤が、民間の関連市場を成長さ
せ、医療の更なる発展へ
43
デジタル・サイバーセキュリティ
⑥自動運転技術
44
1.現状認識と目指す姿【目標】
デジタル・サイバーセキュリティ
自動運転技術
(1)現状
(2) 目標
① 現状
・海外では自動運転関連の巨額投資が進み、米国Waymo社等、多数のプレイヤーがモジュール型
AI(*1)を実装し、L4(*2)の無人自動運転タクシーサービス等を開始。一方、我が国の自動運転の多く
は実証のフェーズで、L4の無人自動運転タクシーサービスの事業化に至っていない。また、自動運
転バス等での1:Nでの遠隔監視モデルの構築は実現できていない。
① 国内外で獲得を目指す市場
・自動運転に対応した車両は既存車両より高付加価
値であり、市場規模は、現在の自動車の市場規模
以上となる可能性がある。車両等のハードウェア
やAI等のソフトウェアを一体として捉え、現在の
世界の自動車販売台数における我が国企業のシェ
アと同様に、2030年代におけるグローバルでの
自動運転車両販売台数のシェア約25%を確保し、
日本の自動車関連産業、国内の貨物・旅客輸送を
守り、発展させる。
② 取り巻く環境と構造変化
・米国Tesla社、英国Wayve社、中国Momenta社ではE2E(*3)開発が加速。また、AIの判断ロジック
の言語化の取組が開始。 Tesla社の日本での販売台数は増加傾向で、日産自動車がWayve社のE2E
を搭載した車両の販売を発表する等、E2Eの実装は着実に進みつつある。
・同様に海外では、自動車産業を取り巻く地政学リスクはこれまで以上に高まっており、国家安全保
障上の懸念から、重要鉱物や半導体に関するサプライチェーンリスクのみならず、懸念国製のコネ
クテッドカーを対象に、ハードウェア及びソフトウェア、それらを搭載した車両の輸入・販売を禁
止する等の措置が取られている。
・さらに海外では、車両のバッテリーや電源の制御システムへの遠隔アクセスにより、車両の停止や
動作不能を起こすことが可能であることが報告されたことから、国家レベルで自動車のサイバーセ
キュリティ確保の重要性が増大している。
② 達成すべき戦略的な目標
・情報漏洩、外国による遠隔操作、物流・人流網の
途絶、デジタル赤字等のリスクを低減させる経済安
全保障の観点から、自動運転に対応した車両及び
ソフトウェアのサイバーセキュリティを確保し、一気
通貫での国産化を目指す。
③ 経済的・戦略的な重要性
・1:Nの遠隔監視や運賃収受等サービスモデルを構築し、
・経済的重要性:我が国の自動車関連産業の製造品出荷額等は約72兆円(*4) 、世界の自動車販売台数
車内無人の自動運転サービスを早期に実現。
における我が国企業のシェアは約25%(*5)、日本の輸出額の約16 %(*5)(*6) 、日本の全就労人口の約
・2030年度までに専ら自動運転サービスの運行の
8%(*7)。また、自動運転技術を海外企業に握られることは、サイバーセキュリティ、経済安全保障、
用に供する車両(以下「自動運転サービス車両」
デジタル収支(*8)悪化等の観点で大きなリスク。
という。)を国内に1万台導入。
・戦略的重要性:運転手不足が深刻化する中、国内旅客輸送の約2割(*9)、国内貨物輸送の約9割(*10)
・経路が一定のバスやトラック等においては、
を自動車が担う。また、免許人口10万人当たりの交通死亡事故件数は年齢層が高くなるとともに多
モジュール型AIも活用し社会実装を促進。
くなり、交通死亡事故の約96%に車両等の運転者の法令違反がある。自動運転は、持続可能な物流
・オーナーカー等ではL2++(*11)(*12)車両を早期に普及。
や地域の足の確保、交通事故削減などを解決し得るものであり、日本が「課題解決先進国」として
世界をリードするためにも重要。
(*1)認識や経路判断を別々のAIで処理する手法、(*2)L4:システムが周辺監視をし、一定の条件下で自動運転をする機能を有し、条件外でも車両が安全確保をするもの、(*3)End to End AI。認識から経路判断までを全て単一
のAIで処理し多様な走行環境でも走行可能な革新的な手法、(*4)2023年時点、(*5)2025年時点、(*6)約17.6兆円、(*7) 2024年時点、(*8)デジタル関連サービスの収支、(*9)人ベース、(*10)重量ベース、(*11)L2:運転
者が周辺監視をし、縦・横方向の運転支援機能を有するもの、(*12)L2++:AIを活用し一般道を含め自律走行が可能な高度な運転自動化システム等を搭載したL2車両
45
2.勝ち筋の特定と官民投資の具体像【道筋】
デジタル・サイバーセキュリティ
自動運転技術
(1)基本戦略
(2)官民投資の具体像
① 勝ち筋
・E2Eは莫大なコストが必要となる高精度三次元地図が不要で、様々な走行環境でも走
行可能な革新的アプローチ。経路が一定のバスやトラックにおいてはモジュール型AI
も有効だが、E2Eが今後の自動運転のコアになる見込み。日本の
- 世界の自動車販売台数の約25%のシェア、
- 既存の強力な販売網、
- 多様な走行環境、
- ソフトを含む安全性・信頼性の高い日本の車両製造技術
といった強みを活かし、E2E搭載のL2++車両の販売を進め、大量のデータを収集し、
さらに優れたE2E搭載車両の開発を加速させる好循環を創出。さらに、データエコシ
ステムの構築等により、ソフト・ハードの互換性が高く安全安心な国産E2E搭載車両
(*1)をソフト・ハードで連携し開発・販売。
・また、海外市場にも迅速に展開できる1:N遠隔監視や運賃収受等のサービスモデルの
確立、CS(*2)の確保、車両の遠隔監視や安全円滑な運行を支える通信インフラ機能や
駐車場など公道以外のマップの整備、物流拠点の環境整備等の自動運転導入環境整備
を国内で同時並行で実施し、複合的な課題を一挙に解決。人手不足による「交通空
白」、物流の輸送力不足が喫緊の課題であり、自動運転導入の切迫性が諸外国より強
い日本において導入を一気に加速させる。まず同志国とも連携し、最終的に国産E2E
搭載車両の量産化を実現、国際基準・国際標準策定を主導する等し、既存の販売網を
活かしながら市場ニーズを捉えたマーケティング戦略のもと、グローバルで自動運転
車両販売台数の約25%のシェアを獲得。
① 投資内容
・自動運転に対応した車両の製造設備投資
・E2Eの開発投資(計算資源等)
・モジュール型AIの自動運転ソフトウェア開発投資
・通信基地局・ネットワークの整備投資等
② 投資額
2040年度までで8.2兆円と想定
③ 定量的インパクト:投資による経済波及効果
2040年度までで187.3兆円と想定
② 我が国として構築すべき機能
・自動運転に対応した車両の製造設備(製造ライン等)
・E2Eの基盤モデル構築
・AIの学習に必要なデータパイプライン
・車両の遠隔監視や安全円滑な運行を支える通信インフラ機能
・自動運転関連サービス(*3)
(*1)特定のソフト(E2E・AI)と特定のハード(車両や半導体)を過度に一体化させず、特定のベンダーに依存しにくい構成の車両、(*2) サイバーセキュリティ、(*3)サービス契約、予
約配車、オペレーション、メンテナンス、駆け付け、保険等
46
3.官民投資促進に向けた課題と政策パッケージ【政策手段】
(1)投資促進に向けた課題
デジタル・サイバーセキュリティ
自動運転技術
(2)講じるべき政策パッケージ
①開発環境の整備への支援
・E2EのAI開発投資を支援
・E2Eの開発を効率化するためのデータエコシステムの構築
・自動運転車のサイバーセキュリティ確保に向けて必要な取組を検討した上で、関連する投資を促進
・E2EによるL4自動運転の実装に向けた大きな課題である安全性評価手法を確立
・同志国のモジュール型AIを活用しモジュール型AI搭載の自動運転に対応した車両の社会実装を早め、同志国のE2E
搭載の国産のL2車両で走行実績データを蓄積。E2E搭載の自動運転の研究開発を促進
②導入環境の整備への支援
事業
・無人自動運転実現に向け1:Nの遠隔監視や運賃収受等サービスモデルを確立
②導入環境の整備
・L2++等、高度な運転自動化システム等の円滑な浸透を図るための仕組を構築するとともに、「交通空白」解消や運
・事業:地方の「交通空白」解消に
送事業者の自動運転技術の導入を促進するために必要な施策を実施
寄与し、海外市場に迅速に展開で
・L2++車両の需要を生み出すとともに運転手不足等の社会課題を解決するため、公共ライドシェア等二種免許がなく
きる事業モデルの構築(*4)、供給
とも運行可能な交通形態における利用も促進
側・需要側の中長期的な投資判断
やインフラ整備等の関連投資判断 ・再発防止や被害軽減のため、自動運転車両が事故を起こした際の原因究明を国内で行う体制を構築
のための自動運転の用途ごとの社 ・供給側の責任分担への不安感を払拭するため、責任体制について再点検を実施
会実装時期・水準の見通しの提示、 車両
・AIの活用など高度な運転自動化システム等を搭載したL4及びL2++の自動運転技術を活用したバス・タクシー・ト
自動運転需要の創出、原因究明体
ラックの社会実装に向けた取組について、優良事例として横展開できる事業をより強力に支援
制の構築、供給側の責任分担への
・高齢運転者による交通事故の削減や地域の足の確保をはじめとする課題解決に向け、E2E等のAI搭載のL2++車両の
不安感
社会受容性向上のための優良認定制度創設と認定車両の普及促進策を講じる
・車両:交通安全の確保、E2E (*5)
・自動運転の国際基準・標準策定等を主導。国産の自動運転に対応した車両やE2E等の海外展開を後押し
の安全性評価手法の確立、国際基
インフラ
準・国際標準の策定
・自動運転の遠隔監視等に必要な携帯電話網や安全・円滑な自動運行を支援するための、ITS通信インフラ及びそれら
を支える情報通信基盤の整備・拡充・高度化の支援、通信システムの信頼性確保等に関する実証・実装等に必要な
・インフラ:自動運転社会で安全・
費用を支援
円滑な移動を実現するためのイン
・自動運転社会において、安全で円滑な移動を実現するため、効果的なデータ利用等によるインフラからの支援や道
フラ支援
路空間の適切な利活用に向けた取組を推進
下記課題が相互に関係し自動運転の
社会実装が進まないことが課題
①開発環境の整備
・データ等:E2Eの開発に必要な計
算基盤・データの不足、国産の技
術開発(*1)加速
・経済安全保障:SC(*2)の自律性、
CS(*3)の確保
(*1)自動運転ソフト、車両等の技術開発、(*2)サプライチェーン、(*3)サイバーセキュリティ、(*4)グローバル市場における支配力の獲得と早期の投資回収、中小運送事業者が大きなリスクなく導入でき
る仕組づくりを含む、(*5) 現在E2Eは出力がブラックボックス化していることが課題
47
デジタル・サイバーセキュリティ
自動運転技術
方向性
現状
日本の自動車産業は、製造品出荷額等は約72兆円で、輸出額の約16%、就労人口の約8%を占める日本経済の柱。販売台数の世界シェアは約25%。
米中では自動運転が事業化する一方、日本は実証段階が中心。
高精度三次元地図が不要で多様な走行環境に対応できるE2E(*1)型の自動運転技術は、将来の自動運転の中核となる見込み。
日本の自動車メーカーもE2Eを搭載したL2++車両(*2)の販売を発表するなど、実装に向けた機運は高まり。
強み
グローバルでの高い販売シェア(約25%)
販売網
主な課題(ボトルネック)
開発環境の整備
【目標】
安全・安心かつ高い互換性が確保さ
れたソフト(E2E)とハード(L2++車
両・L4車両(*3) )を連携して開発する
ための体制構築
サイバーセキュリティを確保し、
一気通貫で国産化
• E2E開発に必要な計算基盤・データ
の不足
• サプライチェーンの自律性の確保
(AI等)
• サイバーセキュリティ確保
多様な走行環境
ソフトを含む安全性・信頼性の高い車両製造技術
講じるべき施策
• E2EのAI開発投資支援
• E2Eの開発を効率化するためのデータ
エコシステムの構築
• サイバーセキュリティ確保
• AIの安全性評価手法確立
E2E搭載のL2++車両販売を進め、データを収集し、さらに優れたE2E搭載車両の開発を加速させる好循環を創出。さらに、データ
エコシステムの構築等により、ソフト・ハードの互換性が高く安全安心な国産E2E搭載車両をソフト・ハードで連携し開発・販売
開発環境の整備・導入環境の整備を同時並行で実施することで複合的な課題を一挙に解決
導入環境の整備
【目標】
2030年度までに自動運転サービス
車両(*4)を国内に1万台導入
経路が一定のバスやトラック等に
おいては、モジュール型AI(*5)も
活用し、社会実装を促進
オーナーカー等ではL2++車両を
早期に普及
• 「交通空白」解消に寄与し、
海外市場に迅速に展開できる
事業モデルの構築
• 安全性の確保
• 事業化に対応した通信環境の確保
• 1:N遠隔監視等、事業モデルの構築
• バス・タクシー・トラック:
L4・L2++車両の社会実装の支援、
オーナーカー等:
L2++車両の優良認定制度の創設等
• インフラからの支援や
道路空間の適切な利活用に向けた取組の推進
• 携帯電話網・ITS等、通信インフラの整備 等
目指すべき姿
国産E2Eを搭載した
日本企業の車両の量産
2030年代における
グローバルでの
自動運転車両販売台数の
シェア約25%を確保
左記に加え、
・自動運転の国際基準・標準策定の主導
・国内事故究明体制構築
・運送事業者の導入促進に向けた取組
等を行い、上記目標を確実に達成
(*1)E2E:End to End AI。認識から経路判断までを全て単一のAIで処理し多様な走行環境でも走行可能な革新的な手法、(*2)L2++車両:運転者が周辺監視をし、縦・横方向の運転支援機能を有する車両(L2車両)のうち、AIを活用し一般道を含め自律走行が可能な高度な運転自動化システム等を搭載したもの、
(*3)L4車両:システムが周辺監視をし、一定の条件下で自動運転をする機能を有し、条件外でも車両が安全確保をするもの、(*4)自動運転サービス車両:専ら自動運転サービスの運行の用に供する車両、(*5) モジュール型AI:認識や経路判断を別々のAIで処理する手法
48
情報通信
①オール光ネットワーク
(APN : All-Photonics Network)
49
1.現状認識と目指す姿【目標】
(1)現状
情報通信
オール光ネットワーク(APN)
(2) 目標
① 現状
① 国内外で獲得を目指す市場
・情報通信インフラは他の16分野の発展を支える基盤で、それらへの投資を意味あるものとする
・ハイパースケーラー等によるAPN対応の
「インフラの中のインフラ」である。
ハイエンド機器の需要が顕在化している
・通信ネットワークの需要が拡大していく中でインフラとしての供給に制約があるため、情報通
北米をはじめとして市場シェアを獲得し、
信インフラそのものを高度化・再構築するための中長期的な視点で投資が回る環境整備が必要。
2030年までに光伝送装置市場における
・とりわけオール光ネットワーク(APN)は、大容量・低遅延・低消費電力での接続という特長を
グローバルシェア10%(現状約5%)を確
有し、AI活用によるトラヒックの爆発的な増加に対応するAI社会を支える基幹的なインフラ技
保
術としての役割が期待。
・AIサービスの普及に伴う、国内各地域に
・APN分野での我が国の特許出願数は世界2位で技術的優位性を有しているほか、サプライ
おけるオール光ネットワークやDCから
チェーン上流の素材や部品の領域においては市場シェア上位で市場競争力も有しているものの、
なる先進的なAIインフラ市場の獲得
サプライチェーン下流の光通信機器の国内ベンダーはそれらに見合ったグローバルシェアを獲
※上記目標の達成により、海底ケーブルや
得できていない。
量子、宇宙、高度なDC制御・運用サー
・APNは分散データセンター(DC)の展開、量子通信ネットワーク等の実現を推進する上でも極め
ビスなどの様々な分野とAPNを連携させ、
て重要な技術。
信頼性や利便性を高めることにより更な
る市場の拡大が可能
② 取り巻く環境と構造変化
・ハイパースケーラーをはじめとするAI向けのDC事業者からの需要急増
② 達成すべき戦略的な目標
・情報通信分野ではグローバルな市場環境の急激な変化に伴う国内企業の開発投資割合の減少、
・光電融合技術等の技術的優位性の確保を
国際競争力低下が起きつつある中、APNはこの構造を変えるゲームチェンジャーとして期待
通じた戦略的不可欠性の獲得
・信頼性の高いネットワーク基盤の早期構築が急務である一方、民間資金のみに依存したインフ
・部材からシステムまでの全域の主要技術
ラ整備では限界
を国内企業で押さえることによるサプラ
・関東圏等に集中するDCの電力需要への対策として、APNを活用したワット・ビット連携による
イチェーンの強靱化
分散DCの展開が急務
・AIサービス実現のための先進的情報通信
③ 経済的・戦略的な重要性
インフラの全国構築
・経済的重要性:光通信関連市場は2024年約19兆円から2030年約53兆円に急拡大すると予測
・APNの特性を活かした社会課題解決に資
・戦略的重要性:AI社会を支える基幹的なインフラに関する戦略的不可欠性の獲得
する新たなサービスを全国各地で創出
国外ベンダーへの過度な依存の解消を通じた経済安全保障の確保
50
国内重要データの流通管理・活用を支えるセキュアなインフラの国内企業による確立
2.勝ち筋の特定と官民投資の具体像【道筋】
(1)基本戦略
情報通信
オール光ネットワーク(APN)
(2)官民投資の具体像
① 勝ち筋
① 投資内容
・APNはAI社会を支える基幹インフラであり、経済的・戦略的に重要なことか
・官民(民間企業や研究機関(NICT)、大学を含む)の適切な
ら、コストと捉えずに成⾧投資の視点を持つことが必要。
役割分担の下、研究開発・国際標準化・社会実装・海外展開
・急激な市場ニーズ変化に即応した研究開発成果の社会実装・国内外展開と、
の一体的な推進に向けた戦略的投資
次なる市場ニーズを見据えた先行研究開発の重層的推進による、全フェーズ
・APNの活用促進や新たな市場創出・獲得に向けた実証環境整
を網羅した継続的な官民投資の実施。
備への戦略的投資
・ハイパースケーラー等による需要が顕在化している北米市場におけるシェア
・北米をはじめとしたグローバル市場開拓に向けた海外展開支
を拡大し、それを梃子としてグローバル市場におけるシェア拡大を図る。
援等の戦略的投資
・民間企業や研究機関(NICT)、大学が連携した積極的な研究開発や国際共同研
・信頼性が高く広域な情報通信インフラの早期構築のための戦
究の推進、早期の海外展開推進等を通じた技術的優位性・先行優位性の確保。
略的投資(量子通信、AI評価基盤)
・標準化・知財などオープン&クローズ戦略の推進により、グローバルエコシ
・社会課題解決に直結するAPNを活用したサービス創出のため
ステムの形成を図り、ITU等における国際的議論を主導。
の戦略的投資
・早期の社会実装・ユースケース創出による全国各地での産業を振興。
・ワット・ビット連携による分散DCの整備等、先進的なAIイ
・APNとDCの分散立地を掛け合わせた柔軟性と効率性に優れたAIインフラの
ンフラ市場での民間投資につながる政府による先行的な投資
構築。
・AIインフラにより日本各地におけるAIサービスの実装を地方発で目指す官民
② 投資額
連携基盤(「APN×ワット・ビット×AI 戦略(仮称)」)の戦略的推進。
2040年度までで5.9兆円と想定
・国内事業者の地方投資による国内市場の確保。
② 我が国として構築すべき機能
・他国を牽引する高付加価値な技術を開発する研究開発力
・標準化・グローバルエコシステム形成等に向けた国際連携、国際共同研究の
推進
・多産業への技術適応支援・社会実装によるユースケース創出促進
・スタートアップ等の民間企業と研究機関や大学が連携して、技術や研究成果
を社会実装に結びつけやすい環境
・グローバル市場における営業・技術サポート体制の強化による実績拡大
・多くの産業を支える広域かつ信頼性の高いAIインフラの提供
・地域において実装された技術・サービスを自律的に継続・発展させていくた
めの人材や体制整備
③ 定量的インパクト:投資による経済波及効果
2040年度までで36.2兆円と想定
51
3.官民投資促進に向けた課題と政策パッケージ【政策手段】
(1)投資促進に向けた課題
情報通信
オール光ネットワーク(APN)
(2)講じるべき政策パッケージ
①リソース制約
①国内投資支援
・人材:APN分野の研究開発人材・
・特にハイパースケーラー等のAI・DC事業者の要求仕様を先読みした、民間企業や研究機関(NICT)、
標準化人材等の不足、グローバル
大学の連携によるAPN関連技術への研究開発支援・国際標準化支援
市場における足がかりとなる拠点
・北米市場をはじめとした海外市場獲得のための海外展開支援
の少なさ、営業・技術サポート体
・APN分野の人材育成支援や社会実装を強力に支援するための体制の整備
制の不足、地方において特に顕著
・多くの産業を支える一貫した広域な情報通信インフラ構築に必要となる研究開発支援等
な革新的な技術の実装を担う人材
②需要創出・市場確保・社会実装支援
の圧倒的不足
・スタートアップ等、様々な主体によるAPN関連ビジネスの立ち上げのための、実証環境整備やユース
・インフラ等:経済合理性の高い東
ケース創出等の社会実装支援
京圏・大阪圏へのDC投資の集中、
・ネットワークを介した高度な協調動作等に必要な技術検証のための大規模実証環境の整備
APNの基盤となる光ファイバの整
・グローバル市場の開拓に向けた戦略的投資を加速させる呼び水として、北米をはじめとする海外にお
備限界・未整備地域の存在
ける実証・技術検証環境整備、ハイパースケーラー等との関係構築、営業・サポート体制の構築、
②不確実性の要因
ユースケース創出等を支援
・事業・技術:多岐にわたる要素技
・欧州・アジア・中南米等をはじめとする中期的拡大が見込まれるグローバル市場の新規市場開拓支援
術等の急速な進展による不確実性
・将来にわたって信頼できるAIインフラの実現に向けた、APN上で実装される広域量子暗号通信網・量
の高さ、ハイパースケーラーをは
子通信ネットワークのためのテストベッド整備、AIの信頼性確保のための能動的評価基盤技術に関す
じめとする市場ニーズの短期変化
る研究開発等の国内事業者によるAI開発支援
に起因する技術開発投資や事業投
・APNで接続された分散DCの促進のための全国特定地域における実証支援(「APN×ワット・ビット
資への不確実性
×AI 戦略(仮称)」)
・市場:北米以外の地域における市
③立地競争力強化
場の立ち上がり時期の不確実性、
・基金等を活用した官による中長期的・安定的な研究開発費補助、情報通信分野の優れた研究開発を重
グローバルベンダーとの競争環境
点的に支援する税制措置によるファイナンス環境整備
の激化
・APNの基盤となる光ファイバの未整備地域への整備支援
・財務:グローバル市場シェアが足
・人口減少に起因する地域の社会課題を解決するためのAPNを活用したソリューションの地域実証やデ
りないことによる国内ベンダーの
ジタル人材・体制の確保支援
キャッシュフローの不安定性、国
④国際連携
内ベンダーの大きな初期投資に伴
う財務リスク
・APNに関する国際共同研究、国際標準化の推進
・サプライチェーンの強靱化、第三国展開等についての同志国等との連携強化
52
情報通信
オール光ネットワーク(APN)
方向性
現状認識
AI社会において、ネットワークのトラヒック及び電力需要の爆発的増加が予測され、大容量・低遅延・低消費電力で
の接続という特徴を有するオール光ネットワーク(APN)は、多くの産業を支える基幹的なインフラ技術として期待。
経済安全保障の観点からも、信頼性の高いネットワーク基盤の早期構築やサプライチェーンの強靭化等が急務。
勝ち筋
ボトルネック
グローバル市場における足がかりとなる拠点
の少なさ、営業サポート体制の不足
大きな初期投資に伴う市場リスクとグローバ
ルベンダーとの競争激化
要素技術等の急速な進展による市場ニーズの
短期変化
経済合理性の高い東京圏・大阪圏への投資の
集中
強み
APNの特許出願数(世界2位)
講じるべき施策
目標
ハイパースケーラー等のAI・DC事業者の要
求仕様の先読みによる研究開発・標準化や北
米をはじめとする営業・サポート体制の構築
海外市場獲得のための新規市場開拓・展開支
援
国内外での実証・社会実装によるユースケー
ス創出の加速化
APNで接続された分散データセンターや光
ファイバ網等のインフラ整備
等
技術的優位性の確保を通じた光伝
送装置市場におけるグローバル
シェアの確保
(2030年までにグローバルシェ
ア10%)
AIサービス実現のための信頼性の
高い情報通信インフラの全国構築
及びユースケース創出による社会
課題解決
素材や部品の領域(世界シェア上位)
53
情報通信
②海底ケーブル
54
1.現状認識と目指す姿【目標】
情報通信
海底ケーブル
(1)現状
(2) 目標
① 現状
・情報通信インフラは他の16分野の発展を支え、それらへの投資を意味あるものとする「インフラの中のインフ
ラ」であるため、情報通信インフラそのものを高度化し、再構築するための中長期的かつ継続的な投資が必要。
・とりわけ海底ケーブルについては、我が国の国際通信の99%を占め、海外との大容量・低遅延な接続の基盤とい
う特徴を有しており、その地理的な位置づけから、我が国のみならずアジア地域のAI社会を支える基幹的なイン
フラの役割を果たす一方、国内ケーブルは本州ー離島や離島間通信をつなぐ重要な社会基盤としての機能も有し
ている。
・世界三大海底ケーブルサプライヤーの一つである我が国企業はマルチコア光ファイバー技術*において技術的優
位性を有しているものの、敷設工事の能力差等から苦戦。
① 国内外で獲得を目指す市場
・2026~2030 年に世界で敷設される海底
ケーブルについて、日本企業による総延
長シェアの拡大(2030年までにグローバ
ルシェア35%程度(現状20%))。その
後も同水準のシェアを維持。
・東アジアにおける海底ケーブルの「ハ
ブ」機能を拡大し、我が国におけるデー
タセンターやクラウドサービスなどの整
備を誘発、AIの発展やDXの推進に寄与。
*マルチコア光ファイバー技術:1本の光ファイバに複数の光の通り道(コア)を配置することで、海底ケーブルの構造はそのままで伝送容量を拡大する技術
② 取り巻く環境と構造変化
・AI・データセンターなどの伸長に連動してハイパースケーラーが自社回線の整備を加速しており、ケーブル需要
は急増。他方、敷設船を含む供給能力が追いついておらず、また、敷設船の老朽化による更なる需給逼迫も想定
される中、いかにして旺盛な需要を獲得するかが課題。
・海底ケーブルサプライヤーの競合他社である米仏企業は、国有化や政府調達等を通じた各国政府の支援の下で競
争力を強化。また、中国からの新規参入も発現。他方、我が国事業者は、純民間による脆弱なグローバル営業・
サポート体制に起因した海外での案件形成能力の欠如等の課題。
・漁業権等の既存権益との調整や各国における許認可取得に時間を要するなど、敷設に関する予見可能性が十分と
は言えず、大規模な初期投資に伴う財務リスク及び長期的な市場の展望が不透明。
・海底ケーブルの損壊も増加傾向にある中、我が国近海の海底ケーブルを含めた切断や陸揚局*のサービス停止を
防ぐための防護体制、海底ケーブルの敷設・保守船の逼迫、作業にあたっての許認可取得の遅れ等に起因する
ケーブル修理の遅延事案への対応体制確保、ケーブルの冗長化が喫緊の課題。
*陸揚局:海底ケーブルからの通信を陸上のネットワークに接続するための施設
・我が国の人口減少が進む中、離島などを結ぶ通信インフラについて、民間資金のみに依存した整備では限界。
③ 経済的・戦略的な重要性
・経済的重要性:海底ケーブル分野は2030年に7,500億円以上の市場規模、また、海底ケーブルの整備・安定運用
を通じて誘発される国内の経済効果は約12~23兆円と見込まれるため、供給能力や地域の「ハブ」機能等につ
いて国際競争力強化が重要。
・戦略的重要性:AI社会を支える基幹的なインフラであり、我が国の海底ケーブルサプライヤーの供給体制の強化
を通じた自律性の確保、高度な海底ケーブル技術による不可欠性の獲得が重要。国内重要データの流通管理・活
用を支えるセキュアなインフラを国内企業により確立。日本国内のインフラ強靱化。
② 達成すべき戦略的な目標
・主要技術・役務を国内企業で押さえるこ
とによるサプライチェーンの盤石化。
・マルチコア光ファイバー技術等の技術的
な優位性の確保を通じた戦略的不可欠性
の獲得。
・現在陸揚げが集中している特定の地域以
外への海底ケーブルの多ルート化や地方
分散を通じてAI社会を支えるインフラの
高度化・強靱化を推進。
・データセンターを含め、安定したデジタ
ルインフラを国内に有することを強みと
して、北米とアジアを結ぶ海底ケーブル
の「ハブ」機能を維持・強化するともに、
多ルート化・分散化と連携した新たな地
方「ハブ」拠点の形成・拡大を促進。
55
2.勝ち筋の特定と官民投資の具体像【道筋】
情報通信
海底ケーブル
(1)基本戦略
(2)官民投資の具体像
① 勝ち筋
・技術開発で先行するマルチコア光ファイバー技術等による超大容量通信システムの構築等を
通じて競争優位性を確保。更なる大容量化・暗号化技術・監視技術等の研究開発を推進し、
その成果の社会実装・国内外展開を加速させることにより、継続的な技術的優位性の確保を
図る。
・深海等これまでの高難度海域の施工実績とリスク対処力を最大活用し、工事定時性や運用安
定性の顧客便益を訴求。
・上記に加えて、生産基盤や敷設・保守能力の強化を図ることで更に競争力を高め、ハイパー
スケーラー等による旺盛な需要を安定的に確保。
・海底ケーブルの多ルート化や陸揚局の地方分散・堅牢化を通じて耐災害性や強靱性・冗長性
が確保された環境を整備し、国内投資を誘引。また、我が国企業は、インド・太平洋地域を
中心に海底ケーブル網の整備を牽引し、グローバルな通信需要を獲得。
① 投資内容
・民間企業等による海底ケーブルシステムの研
究開発・社会実装・海外展開の一体的な推進
に向けた戦略的投資
・供給能力向上に向けた生産施設の拡充や最新
技術に対応した生産設備の高度化、敷設・保
守船の確保のための官民投資
・官民による新規海底ケーブルプロジェクトへ
の投資
・官民による海底ケーブルの多ルート化や陸揚
局の分散化・堅牢化の促進
・官民による離島等の条件不利地域を中心とし
た海底ケーブルインフラ整備
・官民によるセンシング技術やドローン技術等
の海底ケーブル防護、強靱化のための危機管
理投資
・官民による、敷設や保守等の海底ケーブル人
材の育成に向けた投資
② 我が国として構築すべき機能
・高付加価値な技術を持続的に開発する研究開発力
・生産施設の拡充や最新技術に対応した生産設備の高度化、敷設・保守船の増強による敷設能
力の向上等による、顧客ニーズに即したタイムリーな供給体制の構築。
・標準化・グローバルエコシステム形成等に向けた国際連携、国際共同研究
・グローバル市場における我が国の海底ケーブルサプライヤーの採用に向けた営業・技術サ
ポート体制の強化や案件組成支援機能
・我が国企業が関与する海底ケーブル事業拡大に向けたリスクマネー供給
・海底ケーブルシステムの強靱性・冗長性の確保、陸揚局の堅牢性
・離島などを結ぶ海底ケーブル整備に対する支援
・海底ケーブル損壊に対するリアルタイムな監視、原因特定機能
・海底ケーブルシステムに係る技術やノウハウを自律的に継続・発展させていくための人材や
体制
② 投資額
2040年度までで2.4兆円と想定
③ 定量的インパクト:投資による経済波及効果
2040年度までで16.2兆円と想定
56
3.官民投資促進に向けた課題と政策パッケージ【政策手段】
(1)投資促進に向けた課題
情報通信
海底ケーブル
(2)講じるべき政策パッケージ
①リソース制約
①国内投資支援
・インフラ等:海底ケーブルの敷設は、1事業当
・ハイパースケーラー等の導入先の要求仕様の先読みや、研究機関との連携による海底ケーブル関連
たりの費用が膨大であり、インフラ敷設に投資
技術(大容量化、センシング技術等による監視技術等)の研究開発や実用化支援、人材育成支援
可能な事業者が限定。経済合理性の高い東京
・海底ケーブルシステムの生産能力の向上に向けた設備投資支援や、最新技術に対応した生産設備の
圏・大阪圏につながる海底ケーブル向け投資の
高度化、敷設・保守船確保のための支援
集中。離島その他地域における事業採算性の問
・海底ケーブルの多ルート化や陸揚局の地方分散・堅牢化等、海底ケーブルシステムの強靱性・冗長
題。造船能力の逼迫や資材価格高騰等に伴う敷
性確保に向けた投資支援
設船不足。
・人材:敷設や保守等に高度な専門性が求められ、 ②市場確保支援
需要の増大に人材の育成・確保が追いつかない
・我が国企業による海外市場獲得のための大規模な実証実験、JICT・JBIC等による出融資やODAを
状況。
活用した海外市場獲得や政府・ハイパースケーラー向けのセールスなどの案件形成支援
②不確実性の要因
・AI需要を背景に拡大する海底ケーブル需要を獲得し、国際通信における優位性を確保するため、官
・市場:AIやデータセンター市場の影響を受けや
民による新規海底ケーブルプロジェクトへの投資を推進
すく、長期的に不透明な市場動向。競合の海底
・センシング技術等を活用した監視技術等の新技術活用・実用化に向けた我が国企業による取組の社
ケーブルサプライヤーとの競争環境の激化。
会実装支援
・事業:漁業権等の既存権益との調整や各国にお
・我が国に陸揚げされる海底ケーブル事業の誘引のための「ワット・ビット連携」*の更なる推進
ける許認可取得に時間を要するなど、敷設にお
*ワット・ビット連携:新たなデータセンターの需要とそれに伴う電力需要の増加に対応して、電力系統と通信
ける予見可能性が必ずしも十分でないことに起
基盤の一体的な整備 を図っていくこと
因するサプライヤーの敷設コストやケーブル
オーナーの事業投資への不確実性。
③立地競争力強化
・地理:また、日本近海における海底ケーブルの
・海底ケーブルの切断等による通信途絶リスク低減のためのリスク分析や切断事案等の把握に向けた
損壊リスクの高さに伴う保守コストや冗長回線
制度・体制整備
の敷設コストの増加
・財務:受注状況次第で供給量の変動が大きいた
・国境離島等の離島への海底ケーブル整備支援
め、財務状況が不安定。また、工場の稼働率の
④国際連携
見通しが困難。需給逼迫等に伴う敷設・保守船
・海底ケーブルシステムに係る国際標準化、サプライチェーンの強靱化、第三国への海底ケーブル整
の傭船価格高騰、造船能力の逼迫や資材価格高
備支援等について、同志国等との連携強化
騰等に伴う新造価格の高騰。不透明な市場の中
で大規模な設備投資に対する民間投資資金の呼
び込みが進みにくい等の財務リスク。
57
情報通信
海底ケーブル
方向性
現状認識
我が国の国際通信の99%を担う基幹的インフラである海底ケーブルは、 AI需要の爆発的増加に伴い市場が拡大。
日本企業はマルチコア光ファイバー技術で優位性を有するも、競合企業(米・仏)への政府支援・中国の新規参入で苦戦。海底ケーブル
の生産施設や敷設・保守船の不足により供給能力が需要に追いつかず、経済安全保障上の観点から自律性確保が急務。
北米とアジアを結ぶ海底ケーブルの「ハブ」機能を維持しAI発展などの環境確保の観点から、防護・保守体制や多ルート化などの海底
ケーブル強靭化が重要。
勝ち筋
ボトルネック
講じるべき施策
目標
海底ケーブルの生産施設や、敷設・保守船の
不足による供給能力逼迫と修理遅延リスク
供給能力向上に向けた生産施設の拡充や敷
設・保守船確保のための官民投資
政府支援を背景とした競合企業(米・仏)と
の競争激化、中国による新規参入
ハイパースケーラー等ケーブルオーナーの要
求仕様を先読みした研究開発・実用化支援
グローバル営業・サポート体制の欠如に起因
する案件形成力不足
大規模な実証支援、JICT・JBIC等による出
融資やODAを活用した海外市場獲得・案件
形成支援、同志国連携の推進
大規模初期投資に伴う財務リスク及び長期市
場の不透明性
強み
世界で初めて実装したマルチコア光ファイバー技術
高難度海域での施工実績(世界屈指)
既存の海底ケーブルネットワークの維持整備
に加え、海底ケーブルの多ルート化や陸揚局
の地方分散・堅牢化等海底ケーブルの強靭
性・冗長性確保に向けた投資支援
マルチコア光ファイバー技術等の
技術的優位性の確保を通じた海底
ケーブルのグローバルシェア35%
程度を確保
北米とアジアを結ぶ海底ケーブル
の「ハブ」機能の維持・拡大に向
けた多ルート化・陸揚局の分散と
も連携した新たな地方拠点の拡大
を図り、AI社会を支えるインフラ
の高度化・強靭化を実現
等
58
情報通信
③次世代ワイヤレス
(非地上系ネットワーク、5G/Beyond 5G(6G) 等)
59
1.当該分野の現状認識と目指す姿【目標】
(1)現状
情報通信
次世代ワイヤレス(非地上系ネットワーク、
5G/Beyond 5G(6G) 等)
(2)目標
① 現状
① 国内外で獲得を目指す市場
・我が国の産業や社会のDXを進めるためには、あらゆるものが「いつでも・どこ
・自律性確保を前提とした全国をカバーする次世代ワイヤレス通信イ
でも」ネットワークを通じAIやクラウドにつながることを可能とする通信基盤
ンフラの構築・展開及びその需要創出(2035年までに国内市場規
である、次世代ワイヤレス(非地上系ネットワーク(衛星光通信等) ※ 1 、
模を10兆円拡大)
5G/Beyond5G(6G)※2、フィジカルAI・IoT通信基盤※3)が必要不可欠。
・NTN(衛星光通信等)における、世界に先駆けた市場の立ち上げ、
・ワイヤレスインフラについては経済安全保障の観点から自律性の確保が求められ
獲得。特に、衛星光通信について、光地上局サービスの早期の市場
るところ、我が国では、強みを発揮する一部の部品・デバイス分野を除き、規
創出・開拓と、端末市場における10%以上のグローバルシェアの
模の経済を背景にした海外事業者にサプライチェーンや衛星インフラを依存。
獲得。
② 取り巻く環境と構造変化
・モバイル通信(オープンRAN(vRAN、AI RAN))市場において、
・国内携帯電話事業者のモバイル関連設備投資額は、2021年の1兆6416億円から
日本企業による自律的な供給能力の維持に必要なグローバルシェア
2024年の1兆3761億円へと17%減少。
の獲得。
・2024年の能登半島地震においては、被災した通信サービスの応急復旧として低
・自動運転車の通信基盤など、フィジカルAI・IoT通信基盤の国内市
軌道衛星通信サービスが利用されるなど、衛星通信等のNTN市場が大幅に拡大。
場の立ち上げ、獲得、グローバルで一定程度のシェアの獲得
他方、低軌道衛星通信においてサービス面で海外勢が市場を席捲。特に、通信
・ミリ波 ※6 等機器・サービスの市場における日本企業の高い世界
基盤については、国内企業の機器供給体制は低水準。
シェアの獲得。我が国のサイバーセキュリティ市場における日本企
・通信基盤整備には莫大な投資が求められるが、新技術に関する市場の立ち上がり
業の地位獲得
時期の不透明性により、自動運転やドローン、ロボット等に必要なフィジカル
② 達成すべき戦略的な目標
AI・IoT通信基盤を含め、インフラ投資が十分に行えていない状況。
・上記インフラの主たる需要を賄うに足る、一定の世界シェアの確保
・我が国ベンダの5G基地局の世界シェアは1.7%(2024年)と低迷。一方、我が
を背景とした通信機器等の強靱なサプライチェーンの構築
国はミリ波通信装置用の部品・デバイスでは強みを有しており、ミリ波で用い
られるフィルタ、発振子、通信モジュール等では、日本企業は大きな世界シェ ※1 非地上系ネットワーク(Non-Terrestrial Network:NTN):衛星通信等、宇宙・上空を用いる通信
アを確保。衛星通信の中核技術として期待される衛星光通信や、モバイル通信
ネットワーク。衛星間、衛星‐地上間をレーザー光で通信を行う「衛星光通信」は、大容量・セキュア
な通信が可能となる次世代の中核技術であり、我が国は世界最高速の実証に成功するなど、技術面で
※4
※5
分野ではオープンRAN(vRAN 、AI RAN )といった新技術によるゲーム
の強みを有する。
チェンジが期待。
※2 5Gは、現在広く使用されているモバイル通信システムであり、高速大容量、多数同時接続、超低遅延
性が特徴。Beyond 5G(6G)は、5Gの次の世代として、研究開発・標準化が進められている。
③ 経済的・戦略的な重要性
※3 フィジカルAI:現実世界の情報を統合し、理解して行動を生成することで、物理的タスクを遂行する
AI。あらゆるモノがネットワークに接続され価値を生むIoT(Internet of Things)も含めて、ネット
・経済的重要性:国内のワイヤレス関連産業規模は、2035年時点で110兆円規模
ワークへの接続性確保のためワイヤレスの活用が不可欠。自動運転、ロボット、ドローンなどのフィ
を予測。また、ワイヤレス活用の進展により、同年の我が国実質GDPを約53兆
ジカルAIの社会実装には通信基盤の整備が重要。
円の押し上げ効果を予測。
※4 vRAN(Virtual Radio Access Network):汎用サーバ上でソフトウェアにより基地局機能を実現す
る技術。機能追加、高度化がソフトウェアの変更により容易に可能となる。
・戦略的重要性:5Gサービスは経済安全保障推進法(令和4年法律第43号)にお ※5 AI RAN(AI Radio Access Network):vRANが主流になると計算基盤(サーバ)が基地局におかれ
ることにより、その計算基盤をAIにも活用するAI RANの展開が期待されている。ユーザに近い側での
いて基幹インフラ役務に指定されているなど、通信サービスは経済安全保障上
AI活用が可能となり、低遅延な処理の実現等が可能。vRAN、AI RANは、モバイル通信において、従
極めて重要。我が国企業のクラウドサービス利用率は80.6%、生成AI利用率は
来技術からのゲームチェンジが期待される技術であり、我が国は技術開発で先行。
55.2%であり、今後DXの更なる進展が見込まれることから、国民生活の安全・ ※6 ミリ波は、波長が数mmで30GHzを超える高い周波数の電波。伝送距離が短い一方、大容量化が可能。
低い周波数のひっ迫に伴い、ミリ波等の高い周波数帯の更なる利用が見込まれる。
安心や経済活動の前提となる次世代ワイヤレスは必要不可欠。
60
2.勝ち筋の特定と官民投資の具体像【道筋】
情報通信
次世代ワイヤレス(非地上系ネットワーク、
5G/Beyond 5G(6G) 等)
(1)基本戦略
(2)官民投資の具体像
① 勝ち筋
・携帯電話網等のワイヤレス通信インフラのサプライチェーンや低軌道衛星通信インフラを
海外事業者に依存している現状を打破し、我が国の産業や社会のDXに不可欠な次世代ワイ
ヤレスの自律性を確保するためには、需要創出を含めたインフラ整備とサプライチェーン
の強靱化を同時並行で進める必要がある。
・インフラについては、我が国が技術面で強みを有する衛星光通信を中心にNTNの技術開発
やインフラ整備を進めるほか、自動運転車の運行を支える通信技術の社会実装・通信イン
フラ整備を図ること、地域でのワイヤレスソリューションの実証等により、自律性の確保
と成長分野での需要創出に両面から取り組む。
・日本が強みを有し、ゲームチェンジャーと目される衛星光通信技術、vRAN、AI RAN、ミ
リ波等の高周波数帯活用技術等について、技術優位性を引き続き確保するため、研究開発
支援、国際標準化、技術人材の育成等に取り組む。
・技術検証負荷の軽減や海外営業・サポート体制の強化等を進め、海外でも一定のシェアを
確保することにより、国内のサプライチェーンの強靱化に取り組む。
① 投資内容
・我が国の自律性確保に向けたインフラ整備
・ワイヤレスソリューションの実証等による上
記インフラの需要創出
・ゲームチェンジャーと目される技術における
技術優位性確保等に向けた研究開発支援・技
術人材育成
・海外での一定シェア確保に向けた国際標準化、
市場開拓支援
② 我が国として構築すべき機能
・次世代ワイヤレス通信に係るインフラの自律性を確保するに足る通信事業者の継続的なイ
ンフラ投資体制及び当該インフラを継続的に維持・高度化するに足る通信需要
・上記インフラの主たる需要を質量ともに賄うに足る通信機器、部品・デバイス、ソフト
ウェア(セキュリティ等)の産業(技術・生産)基盤
・通信インフラ、機器等産業基盤を支えるワイヤレス、セキュリティ技術人材の育成機能
・国際標準化及び海外展開支援の体制
② 投資額
2040年度までで20.5兆円と想定
③ 定量的インパクト:投資による経済波及効果
2040年度までで223.5兆円と想定
61
3.官民投資促進に向けた課題と政策パッケージ【政策手段】
(1)投資促進に向けた課題
①リソース制約
インフラ等:
・新たな通信サービス市場の需要や立ち上が
り時期の不透明性に起因し、通信事業者に
よるインフラ投資判断が遅れ、スピード感
で海外に劣後
・技術・サービス開発の基盤となるデータの
不足
人材:
・ワイヤレス人材やセキュリティ人材の確保
の困難
(2)講じるべき政策パッケージ
情報通信
次世代ワイヤレス(非地上系ネットワーク、
5G/Beyond 5G(6G) 等)
①我が国の自律性確保に向けたインフラ整備とその需要創出への支援
・光地上局インフラ整備支援等の社会実装支援
・自動運転の遠隔監視等に必要な携帯電話網や安全・円滑な自動運行を支援するための、ITS通信イン
フラ及びそれらを支える情報通信基盤の整備・拡充・高度化の支援、通信システムの信頼性確保等
に関する実証・実装等の支援
・デジタル人材/体制の確保支援を含めたワイヤレスを活用したソリューションの地域実証
・5Gを始めとするモバイル通信等の、ネットワークの強靱化支援、インフラシェアリングの活用も含
む条件不利地域へのインフラ整備支援
・世界に先駆けたエッジAIや高精度な時刻同期技術の実現など、新たなビジネス創出に向けた実証環
境整備とユースケース等のモデル実証の支援
・電波利用規制(ワイヤレス電力伝送システム(WPT※)関連)の見直しに向けた審議会での検討、
審議結果を踏まえた必要な措置の実施
②不確実性の要因
②日本が強みを有し、ゲームチェンジャーと目される技術領域を中心とした研究開発支援、国際標準
事業・技術:
化、技術人材育成
・急速な技術の進展に対応し、国際競争力を
・衛星光通信技術、vRAN、AI RAN、ミリ波等の高周波数帯活用技術等の研究開発支援
確保するための持続的な開発投資、技術検
・国際共同研究等による同志国等との連携強化、国際標準化の推進・普及
証の不足
・ミリ波等の高い周波数帯や上空での円滑な電波利用の推進等のための電波法関係法令に係る制度整
・NTN、モバイル通信、ミリ波等のゲーム
備
チェンジャーと目される技術領域において、 ・次世代ワイヤレスに必要な周波数の割当てに向けた、周波数の共用・移行・再編の検討
我が国は技術面で強みを有する一方、市場
・産学が連携したワイヤレス人材育成のプラットフォーム形成支援
ニーズに応じた製品化への取組が不十分
・偽・誤情報対策に関する技術開発支援・人材育成を通じた情報流通空間等の利用環境の整備
市場:
③通信機器市場及び関連市場の世界シェア確保に向けた市場開拓支援
・海外市場における営業・サポート体制の不
・オープンRANやWPT等の新しいワイヤレス技術に関する国内外の市場開拓に向けた実証や技術検証
足
環境整備に対する支援、海外営業・サポート体制の構築支援、JICT・JBIC等による出融資を活用し
財務:
た海外市場獲得への支援等
・ワイヤレス分野は多様な需要主体と多層的
・セキュアな通信機器の普及促進、サイバー攻撃に悪用される不正なネットワーク機器の抑止や、そ
な供給構造が絡み合っており、需給バラン
の実証等に必要な費用の支援、サイバーセキュリティに係るエコシステムの形成支援、サイバーセ
スが崩れた場合には、キャッシュフローの
※ WPT(Wireless Power Transfer/Transmission):無線により電力供給するシステムであり、
キュリティ人材の育成支援
不安定性など企業の経営を圧迫
電源ケーブルの配線が不要となることから、レイアウトの自由化など、IoT社会の推進にも期待。62
情報通信
次世代ワイヤレス(非地上系ネットワーク、
5G/Beyond 5G(6G) 等)
方向性
現状認識
勝ち筋
我が国の産業や社会のDXを進めるためには、あらゆるものが「いつでも・どこでも」ネットワークを通じAIやクラウドにつながることを可能とする通信基盤
である、次世代ワイヤレス(非地上系ネットワーク(衛星光通信等)※1、5G/Beyond5G(6G)※2、フィジカルAI・IoT通信基盤※3)が必要不可欠。
ワイヤレスインフラについては経済安全保障の観点から自律性の確保が求められるところ、我が国では、強みを発揮する一部の部品・デバイス分野を除き、
規模の経済を背景にした海外事業者にサプライチェーンや衛星インフラを依存。
ボトルネック
新たな通信サービス市場の需要や立ち上がり時期
の不透明性に起因し、通信事業者によるインフラ
投資判断が遅れ、スピード感で海外に劣後。
ミリ波※4等の高周波数帯の活用を含めた技術競
争力を確保するための持続的な研究開発投資の
不足、セキュリティ技術の海外依存。
機器のグローバル市場におけるシェアが低い中、新
サービスの接続性・信頼性を確保するための技
術検証負担の重さ、営業・サポート体制の弱さ。
強み
部品・デバイス分野の高い世界シェア
ゲームチェンジャーと目される一部技術
の開発で先行
講じるべき施策
我が国の自律性確保に向けたインフラ整備と
その需要創出への支援
・衛星光通信の地上局インフラ構築支援
・自動運転車用通信インフラ整備
・地域でのワイヤレスソリューション実証 等
日本が強みを有し、ゲームチェンジャーと目
される以下の技術領域を中心とした研究開発
支援、国際標準化、技術人材育成
目標
①
自律性確保を前提とした次世代ワイ
ヤレス通信インフラの構築・展開及
びその需要創出(2035年までに国
内市場規模を10兆円拡大)
②
一定の世界シェアの確保を背景とし
た通信機器等の強靭なサプライ
チェーンの構築
・衛星光通信技術
・vRAN ※5、AI RAN ※6
・ミリ波等の高周波数帯活用技術 等
国内に持続可能なサプライチェーンを維持す
るに足る通信機器市場及び関連市場(部品・デ
バイス、セキュリティ等)の世界シェア確保に向
けた市場開拓支援
・海外での技術検証環境整備
・海外の営業・サポート体制の構築支援 等
(※1) 非地上系ネットワーク(Non-Terrestrial Network:NTN):衛星通信等、宇宙・上空を用いる通信ネットワーク。衛星間、衛星‐地上間をレーザー光で通信を行う「衛星光通信」は、大容量・セ
キュアな通信が可能となる次世代の中核技術であり、我が国は世界最高速の実証に成功するなど、技術面での強みを有する。
(※2) 5Gは、現在広く使用されているモバイル通信システムであり、高速大容量、多数同時接続、超低遅延性が特徴。Beyond 5G(6G)は、5Gの次の世代として、研究開発・標準化が進められている。
(※3) フィジカルAI:現実世界の情報を統合し、理解して行動を生成することで、物理的タスクを遂行するAI。あらゆるモノがネットワークに接続され価値を生むIoT(Internet of Things)も含めて、
ネットワークへの接続性確保のためワイヤレスの活用が不可欠。自動運転、ロボット、ドローンなどのフィジカルAIの社会実装には通信基盤の整備が重要。
(※4) ミリ波は、波長が数mmで30GHzを超える高い周波数の電波。伝送距離が短い一方、大容量化が可能。低い周波数のひっ迫に伴い、ミリ波等の高い周波数帯の更なる利用が見込まれる。
(※5) vRAN(Virtual Radio Access Network):汎用サーバ上でソフトウェアにより基地局機能を実現する技術。機能追加、高度化がソフトウェアの変更により容易に可能となる。
(※6) AI RAN(AI Radio Access Network):vRANが主流になると計算基盤(サーバ)が基地局におかれることにより、その計算基盤をAIにも活用するAI RANの展開が期待されている。ユーザに近い
63
側でのAI活用が可能となり、低遅延な処理の実現等が可能。vRAN、AI RANは、モバイル通信において、従来技術からのゲームチェンジが期待される技術であり、我が国は技術開発で先行。
量子
①量子コンピューティング
64
1.現状認識と目指す姿【目標】
量子
量子コンピューティング
(1)現状
(2) 目標
① 現状
• 量子コンピューティングは、従来技術と異なる原理で極めて高速かつ複雑な計算が可能。産業や社会
にインパクトを与える汎用技術で、今後、基盤産業のゲームチェンジャーとなり得る。
• 国家安全保障とも直結することから、世界中で開発競争が激化。近年、我が国も年1000億円規模の
大型政府投資を実施したものの、中国や欧米の官民投資とは、依然として数倍程度の差がある状況。
• 我が国は、戦略的不可欠性と言える装置・部素材の開発・生産企業の存在を含め、量子コンピュータ
のハードウェアを作り上げる力を持つ数少ない国。ユーザーとなる多様な産業群、アルゴリズム・量
子ビット制御等の基礎研究にも強みがある。足元では、大企業での事業化やスタートアップの隆盛な
ど産業化が始まっている一方、民間投資やスタートアップの資金調達は伸びていない。
① 国内外で獲得を目指す市場
• 量子コンピュータの世界市場は、
2030年以降2.3~4.5兆円から
2040年以降14~26兆円へと拡大。
関連産業での予想されるユースケー
スを含めると、2040年以降68~
128兆円との試算※。
• 国内では、ソフトウェアやアルゴリ
ズムを含めた国産量子コンピュータ
システムを確立するとともに、装
置・部素材を含む研究・実証から
ユーザーまでを一体的につなぐ量子
関連産業エコシステムの形成を目指
す。
• 海外では、欧米諸国に加え、
ASEANやインド等のグローバルサ
ウスでの国産量子コンピュータの導
入を目指す。
② 取り巻く環境と構造変化
• AIの急速な発展で、計算能力が国力を左右。「信頼できる計算基盤」の構築と幅広いユーザーに使わ
れる商用サービスの展開が国際的にも求められている。古典計算と量子計算の得意領域を組み合わせ
たハイブリッド計算の活用も進展している。
• AIと量子の間で相互補完的に技術発展が進捗(例:量子の誤り低減でのAI活用等)。量子・高性能
計算基盤(スーパーコンピュータ等)・AI・データセンター等の統合的計算環境の整備や担い手の形
成が進みつつある。
• 研究・実証から産業化への進展で、垂直統合型のエコシステムに、水平分業の導入が始まる。大企業
によるスタートアップへの投資や協業、M&Aが進展。装置・部素材産業の重要性が高まっている。
③ 経済的・戦略的な重要性
• 経済的重要性:産業化の芽が出始めたばかりであるが、今後の進展により大きな市場形成の可能性。
関連産業への波及効果も大きく、デジタル赤字是正にも貢献。
• 戦略的重要性:装置・部素材等で競争力を持つ事業者が国内に存在、経済安全保障上の自律性の確保
に加え、不可欠性の強化に寄与。材料・医療・エネルギー・金融・通信等の基盤産業での活用が期待
され、防衛等安全保障上も重要。
※ 出典:BCG「What Happens When ‘If’ Turns to ‘When’ in Quantum Computing?」(2021)1ドル150円で換算
② 達成すべき戦略的な目標
• 2030 年:小規模又は部分的な誤り
耐性を持つ量子コンピュータや1万
物理量子ビット超の超伝導型量子コ
ンピュータの実現
• 2040年:実用的かつ安全性の高い
国産量子古典ハイブリッド計算基盤
の実現
65
量子
量子コンピューティング
2.勝ち筋の特定と官民投資の具体像【道筋】
(2)官民投資の具体像
(1)基本戦略
① 勝ち筋
• 需要面では、官民連携で、素材、電力、交通・物流、気象・防災、創薬、防衛等の分野に
おけるユースケースを創出するとともにそれらを実現するサービスを早期に提供。ビジネ
ス予見性を高め、公的需要も創出。
• 供給面では、他国に過度に依存しない自律的に発展可能な量子計算基盤を確立する。第一
に、国産量子コンピュータを開発。国内に開発主体が存在し、強みを有する方式の研究開
発に対して官民で重点投資を実施。
• また、量子コンピュータのハード形式に依らない汎用的な統合ミドルウェアの研究開発を
戦略的に進める。アプリケーションのためのソフトウェアやハードウェアの制御システム
等の開発も促進。国際標準の整備と併せて、スケールできる市場を構築。
• さらに、チップ設計、誤り低減等でのAIの積極的活用により開発を加速。量子と高性能計
算基盤とAIを組み合わせたハイブリッド型での開発・実証環境を整備。
• 並行して、サプライチェーンの国際分業の中でかけがえのない存在となる。具体的には量
子コンピュータに不可欠なケーブル、コネクタ、希釈冷凍機などの極限環境で活用可能な
部素材・装置の開発を加速。量子半導体をはじめ、量子技術全般に必要な部素材・装置に
ついて、センシング・通信での先行実装と併せて、開発を推進。レアメタル等サプライ
チェーン上の脆弱性を点検し、技術開発等で強みに転換する。
① 投資内容
• 民間による、2030年頃の実用化・産業化を目指した大
型の研究開発投資。
• 政府による、グローバル拠点の整備への投資。
• 官民による、ハードウェア等の供給面から、ユーザー
側の需要面に至るまでの一気通貫型の研究開発投資。
② 投資額
2040年度までで10.3兆円と想定
③ 定量的インパクト:投資による経済波及効果
2040年度までで127.5兆円と想定
② 我が国として構築すべき機能
• 大学や産総研G-QuAT等の国研のテストベッドとなるグローバル拠点の整備及び拠点連携
を通じて、民間企業等の開発コスト低減と企業間および産学の連携を促進するとともに、
大学と国研が相互の技術・設備・人的資源を連携し、総力として研究開発や人材育成を行
う環境を整備。
66
3.官民投資促進に向けた課題と政策パッケージ【政策手段】
量子
量子コンピューティング
(1)投資促進に向けた課題
(2)講じるべき政策パッケージ
①リソース制約
• 人材:基礎研究から研究開発ま
でを行う研究人材やエンジニア
リング人材、技術からビジネス
を生むための経営やマーケティ
ング、投資などに知見のあるビ
ジネス人材が不足。
• インフラ等:計算資源や関連装
置が高額かつ限られていること
から、研究・実証・利用に必要
なテストベッド環境へのアクセ
スが限定的。
①国内投資支援
• 国産量子コンピュータシステム実現に向けた国内プレイヤーに対する研究開発支援および技術評価
• 研究開発税制等の税制措置を活用した研究開発を積極的に行う企業に対するインセンティブ措置
• 産総研G-QuATを、産業化に向けた量子コンピュータの量子チップ等の製造や評価、実装、標準化等の一連の
プロセスにおける国家戦略上の重要生産基盤として位置付け、国際的競争力を持つ環境を整備
• 世界最高峰の人材や技術、設備が集うグローバル拠点を構築し、民間企業等の開発コスト低減とプレイヤー
間の連携を促進するテストベット環境を整備。
②不確実性の要因
• 事業・技術:技術進展の不確実
性、製品化・事業化に至るまで
の時間的見通しの不確実性
• 市場:市場立ち上がり時期の不
確実性、国際的な競争環境の激
化
• 財務:大規模かつ長期に及ぶ投
資に伴う資金調達の困難性、
キャッシュフローの不安定性
• 国際環境・政策:地政学リスク、
各国の規制・制度の変更による
影響
②需要創出・市場確保・社会実装支援
• 政府調達ニーズや社会課題に基づく研究開発支援制度(SBIR等)を活用し、国研・大学等における実証・導入
を政府が後押し。併せて、標準化(ルール形成)と研究開発税制等のインセンティブで民需の立ち上がりを加速。
• 国際標準としてオープンにすべき部分と、競争力の源泉として戦略的に保持すべき部分を切り分けた知財
化・標準化を推進。
• 創薬や物流、素材開発など具体的な分野における事業用途での利用を見据えた量子コンピュータのユース
ケースの実証や研究開発・サービス開発を支援。初期需要を創出し、社会実装の早期化を図る。
③立地競争力強化
• 国が主導する大型研究開発プロジェクトを通じた、大学・国研の研究・人材基盤の強化。
• 優秀・多様な人材を確保・定着させるための競争力ある待遇の実現や大学院生への経済的支援などのインセ
ンティブ付与、量子技術を学ぶ環境の整備・充実、初等中等教育から社会人リスキリングまでの教育環境・
機会の提供などによる国内人材の育成・供給機能の強化。
④国際連携
• 産官学間における多国間会話やMOU等の枠組を活用し、ASEANやグローバルサウス等の海外市場における技
術連携や国際共同研究の推進を図り、国際的な量子エコシステムを共同形成。
• 在外公館やJETRO・NEDO・AIST等の海外事務所、学会等の幅広いネットワークを活用した技術インテリ
ジェンス機能の強化
67
量子
量子コンピューティング
方向性
純国産量子コンピュータ開発の実績や戦略的に不可欠な部品・材料、基礎研究等の強みを生かし、
具体分野でのユースケース実証と官需を含む初期需要創出を通じて、量子・スパコン・AIを統合した、
今後の国力を支える「信頼できる計算基盤」を構築することが必要。
主な課題
(ボトルネック)
・技術の不確実性
・計算資源・テストベッド
へのアクセス不足
・市場形成の不確実性
・人材不足(研究・エンジ
ニアリング・ビジネス)
等
富士通/理研が開発した
超伝導型量子コンピュータ
目指すべき姿
講じるべき施策
・ソフトウェア・アルゴリズムを含め
・国産量子コンピュータシステム実現に向けた国内プレイヤー
(国研・民間企業)に対する研究開発支援および技術評価
た国産量子コンピュータシステムを確
立(2030年:小規模又は部分的な誤り耐性
・産総研G-QuATを、産業化に向けた量子コンピュータの量子
チップ等の製造や評価、実装、標準化等の一連のプロセスにお
ける国家戦略上の重要生産基盤として位置付け、国際的競争力
を持つ環境を整備
・量子×スパコン×AIの統合計算環境で、
・具体分野における量子コンピュータのユースケースの実証や
研究開発を支援し、官需を含む初期需要を創出
(2040年:実用的かつ安全性の高い国産量
子古典ハイブリッド計算基盤の実現)
を持つ量子コンピュータや1万物理量子
ビット超の超電導量子コンピュータの実
現)
開発・実証から社会実装まで回る状態
・世界最高峰の人材や技術、設備が集うグローバル拠点を構築
し、民間企業等の開発コスト低減と民間ユーザーとの連携を促
進(人材確保・定着を含む)
・装置・部素材に加え、研究・実証か
・ASEANやグローバルサウス等の海外市場における技術連携や
国際共同研究の推進を図り、国際的な量子エコシステムを共同
形成
・人材・プレイヤーが集積し、自律的
らユーザーまで量子関連産業の広範な
拡大
に発展できるエコシステムを形成
68
量子
②量子通信・ネットワーク
69
1.現状認識と目指す姿【目標】
(1)現状
① 現状
• 量子コンピューティングの実用化で従来の暗号が解読される危険が迫っている中、量子技術を活用し
理論的に解読不可能な量子暗号通信(QKD)や耐量子計算機暗号(PQC)により、機微情報を安全に伝送・
共有するための量子通信・ネットワークの構築が急務。量子通信・ネットワークの世界市場は2035年
まで年率20%以上の成長が見込まれている。また、量子通信・ネットワークは、量子コンピューティ
ング及び量子センシングを融合し相乗効果を生み出す新たな社会基盤ともなり得る。
• 我が国は、長年の通信分野での技術優位性を基に、QKD装置の開発・生産や光ネットワーク技術にお
いて世界的な競争力を有する本邦企業が存在。国産QKD装置は、世界で唯一欧州での商用サービスに
導入されている。社会実装でも、東京QKDネットワークを長期運用しており、現在、東名阪のより広
域なテストベッドの構築を起点にユースケース創出に向けた取組が始まっている。
② 取り巻く環境と構造変化
• 量子コンピューティングの技術進歩が加速し、早期の社会実装の必要性が高まっている。また、
AIの発展・浸透で、光ネットワーク技術と量子通信を統合する将来像であるオール光・量子ネッ
トワーク(APQN)への関心も高まっている。
• 中国・欧州では、衛星量子通信※1を含めたQKDネットワークの整備が始まっており、金融、安
全保障等の機微情報を取扱う分野での導入による初期市場が形成されつつある。また、テスト
ベッドやハブ拠点の整備を含めて、より統合的な取組が各国で始まりつつある。
• 我が国として、国内でのユースケース創出を含めて国内外での市場形成に初期段階から積極的に
参画するとともに、QKDネットワークの加速度的整備、将来像を見据えた統合的な産業エコシス
テムの構築が求められている。
③ 経済的・戦略的な重要性
• 経済的重要性:量子通信・ネットワークは、装置・サービス・運用等関連産業の裾野が広く、投
資の波及効果が大きい。様々な産業の成長の基盤となる通信インフラとして、マクロ経済上の効
果も大きい。
• 戦略的重要性:衛星量子通信を含めた全国規模での次世代通信基盤構築は安全保障に直結。運
用・保守・鍵管理等を含むサービスに加え、競争力を持つ装置・部素材等の国内事業者を梃子に、
不可欠性を確保。
※1 衛星量子通信: 人工衛星を介した量子暗号通信および量子通信
量子
量子通信・ネットワーク
(2) 目標
① 国内外で獲得を目指す市場
• 量子通信・ネットワークの世界市場は、
2030年以降5,500~7,200億円から
2040年以降3.7兆~5.4兆円へと拡大※2。
20カ国以上で展開し、2035年に世界シェ
ア30%を目指す。
※2 McKinsey Digital, “Quantum Technology Monitor”,
June 2025。1ドル156円で換算。
② 達成すべき戦略的な目標
• QKD装置・関連サービスを中核に、公的需
要を含めた国内初期市場の形成、海外での
実証・実装の積極展開と、国内外一体で市
場を開拓。衛星通信等の既存通信とのハイ
ブリットを含めた量子通信市場を形成。研
究・実証から装置・部素材、ユーザーまで
を一体的につなぐ産業エコシステムの形成
を目指す。
• 2030年:医療・創薬、金融、電力、宇宙、
安全保障等のユースケースを中核として、
QKDの東名阪を中心に国内での社会実装を
実現。
• 2040年:APQNが実現し、量子コンピュー
ティングや量子センシングと接続された統
合的通信基盤を実現。
70
2.勝ち筋の特定と官民投資の具体像【道筋】
量子
量子通信・ネットワーク
(1)基本戦略
(2)官民投資の具体像
① 当該分野における勝ち筋
• 需要面では、まず安全保障など公共分野及び医療・金融・電力等向けのサービス
を段階的に提供。ガイドライン整備や導入支援により、多様な分野への展開を促
進。
• 供給面では、現状世界トップレベルの性能を有する国産QKD装置を継続的に性能
向上させ技術優位性を確保。運用・保守を含めたサービスを提供する主体を通じ
て国内外へ一体的に展開。
• まず2026年度から官主導で東名阪三大都市圏を結ぶ広域QKDネットワークの構築
を進め、2027年度以降民間でのユースケースが拡大。その後、我が国に強みのあ
るオール光ネットワーク(APN)と連携した形で東名阪以外の主要幹線へ延伸。衛
星を介したさらなる拡張を行い、全国規模のQKDネットワークを構築。情報の機
微性に応じてPQCを併用したハイブリッド型の効率的な通信基盤を確立。
• 2040年までには、量子ネットワークに係る要素技術の研究開発の加速や、量子コ
ンピューティングや量子センシング等を融合した量子技術全体の先進的・包括的
な技術・応用例の開発・実証により、世界に先駆けたオール光・量子ネットワー
ク(APQN)を実現。
① 投資内容
• 政府による、2026年度からの広域QKDテストベッド整
備、段階的拡張。国内のスタートアップや事業者等に
実証機会を提供するためのグローバル拠点整備への投
資。
• 2027年度以降のユーザー産業による活用のための実
装・導入に向けた投資
• 官民による、ハードウェア等の供給面から、ユーザー
側の需要面に至るまでの一気通貫型の研究開発投資。
② 我が国として構築すべき機能
• 多様な関係者が参画・活用できる実証環境としての東名阪QKDネットワーク整備。
その後、全国規模のQKDネットワークの構築(APNとの連携、衛星利用、ハイブ
リッド活用)。
• 大学や国研等のテストベッドとなるグローバル拠点の整備及び拠点連携を通じて、
民間企業等の開発コスト低減と企業間および産学の連携を促進するとともに、大
学と国研が相互の技術・設備・人的資源を連携し、総力として研究開発や人材育
成を行う環境を整備。
② 投資額・時期
2040年度までで1.5兆円と想定
③ 定量的インパクト:投資による経済波及効果
2040年度までで8.5兆円と想定
71
3.官民投資促進に向けた課題と政策パッケージ【政策手段】
(1)投資促進に向けた課題
①リソース制約
• 人材:基礎研究から技術開発ま
でを行う研究人材やエンジニア
リング人材、技術からビジネス
を生むための経営やマーケティ
ング、投資などに知見のあるビ
ジネス人材が不足。
• インフラ等:要素技術、ユース
ケース、ビジネスモデル検証の
ための、多様な関係者が参加可
能な相互接続を前提としたテス
トベッド環境が不十分。
②不確実性の要因
• 事業・技術:技術進展の不確実
性、製品化・事業化に至るまで
の時間的見通しの不確実性
• 市場:導入の必要性認知が途上
等市場立ち上がり時期の不確実
性、国際的な競争環境の激化。
ネットワーク特有の相互接続に
向けた関係主体の合意形成の不
確実性。
• 財務:大規模かつ長期に及ぶ投
資に伴う資金調達の困難性、
キャッシュフローの不安定性。
• 国際環境・政策:地政学リスク、
各国の規制・制度変更の影響
量子
量子通信・ネットワーク
(2)講じるべき政策パッケージ
①国内投資支援
• 経済安全保障上重要な国産QKD装置の継続的性能向上や量子ネットワークの実現に向けた、コア部品・装
置・量子メモリ・量子中継器などの要素技術の研究開発支援。
• 運用・保守等を含むサービスの創出に向けた研究開発・実証支援。
• 多様な関係者が参画したユースケース具体化やビジネスモデル確立のための実証環境の整備への投資。
• 量子データセンターや量子セキュアクラウドなど、量子ネットワークを通じて、量子コンピューティング
や量子センシング等を融合した量子技術全体の先進的・包括的な技術・応用例の開発・実証の支援。
• 研究開発税制等の租税措置を活用した研究開発を積極的に行う企業に対するインセンティブ措置。
②需要創出・市場確保・社会実装支援
• 政府調達ニーズや社会課題に基づく研究開発支援制度(SBIR等)を通じて国内の初期需要を創出。導入・運
用指針等のガイドライン整備や導入支援と研究開発税制等のインセンティブで民需の立ち上がりを加速し、
早期の社会実装を実現。
• 国際標準としてオープンにすべき部分と、競争力の源泉として戦略的に保持すべき部分を切り分けた知財
化・標準化を推進。
• ユースケースとサービス提供を強みとした国内外一体的な展開を支援。
③立地競争力強化
• 情報通信研究機構(NICT)をはじめとするテストベッド環境や利用体制を構築することによって、世界最高
峰の人材や技術、設備が集うグローバルハブを構築し、民間企業等の開発コスト低減とプレイヤー間の連
携を促進。
• 国が主導する大型研究開発プロジェクトを通じた大学・国研の研究・人材基盤の強化。
• 優秀・多様な人材を確保・定着させるための競争力ある待遇の実現や大学院生への経済的支援などのイン
センティブ付与、量子技術を学ぶ環境の整備・充実、初等中等教育から社会人リスキリングまでの教育環
境・機会の提供などによる国内人材の育成・供給機能の強化。
④国際連携
• 産学官における多国間対話やMOU等の枠組を活用した有志国との技術連携や国際共同研究の推進。
• 在外公館や日本貿易振興機構(JETRO)、新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)、産業技術総合研
究所(AIST)、情報通信研究機構(NICT)等の海外事務所、学会等の幅広いネットワークを活用した技術イ
ンテリジェンス機能の強化。
72
量子
量子通信・ネットワーク
方向性
世界有数の装置やネットワークに関する技術、運用経験を活かして、量子暗号通信(QKD) ※1 で、機微情報を
安全に伝送・共有できる量子通信インフラを早期に構築。日本の技術で国内外の量子通信市場を早期に開拓、
産業競争力を磨き続けることで、2040年、世界に先駆けてオール光・量子ネットワーク(APQN)※2を実現。
※1. 量子暗号通信(QKD):理論的に解読できないことが証明されている通信技術
※2. オール光・量子ネットワーク(APQN):光電融合技術を活用したオール光ネットワークに量子通信技術を融合することで、量子コンピューティングや量子センシング等の
量子技術を相互に接続・統合可能なネットワーク技術
主な課題(ボトルネック)
・技術進展の不確実性
・市場形成の不確実性
(インフラとして、ステーク
ホルダ―との調整が必要)
・テストベッドが不十分
(要素技術、ユースケース、
ビジネスモデルの検証が
必要)
・人材不足(研究・エンジニ
アリング・ビジネス)
等
目指すべき姿
講じるべき施策
・QKD装置・関連サービスの競争力強化に向け
た、要素技術を含めた研究開発・実証支援
・実証環境としての東名阪QKDネットワークの
整備加速、ユーザーの利活用円滑化
QKDネットワークの全国への拡充(オール光
ネットワークとの連携、衛星利用等)
・2030年に東名阪でのQKDの社会実装
東名阪から全国に量子通信網が順次拡大、
オール光ネットワークの発達と相俟って、
2040年APQNの社会実装を実現し、量
子コンピューティングや量子センシング
と接続された統合的通信基盤を実現する
・日本において研究・実証、装置・部素材、
ユーザーまで産業エコシステムが形成
・安全保障等公共調達等による需要創出。ガイ
ドライン整備や導入支援による民需の立上がり ・国内外で本邦企業が市場を開拓、量子暗
号通信装置・関連サービスを20カ国で展
加速
開、2035年に世界シェアの3割を確保
・国研等のテストベッド環境、研究プロジェク
トや研究教育環境の充実を通じた研究・人材基
盤の強化
73
量子
③量子センシング
74
1.現状認識と目指す姿【目標】
量子
量子センシング
(1)現状
(2) 目標
① 現状
• 量子センシングは、従来技術と異なる原理で極めて高い精度での計測や微小な変化を測定可能。
疾病の早期発見、半導体の微細化に伴う検査工程の高度化、GPSが使えない環境下での安全な
航行ナビゲーション(例えば、PNT(Positioning, Navigation, and Timing (測位、航法、タ
イミング) ))など、幅広い領域での商用化、産業化が見え始めている。
• 我が国は、量子センシング関連の特許数で世界2位(史上最も正確な時計である光格子時計は
我が国発)で、基礎研究中心に技術力に強みを持ち、一部技術についてはプロトタイプができ
ている状況。今までにない高感度等が達成できる固体量子センサや光量子センサでも世界有数。
• 現在、MRIや原子時計はじめ一部技術の商用化は進んでいるが、我が国では、量子ジャイロで
のナビゲーション、量子重力計での資源探査等の顕在化ニーズに応じての技術開発やシステム
化、社会実装は総じて途上にある。
② 取り巻く環境と構造変化
• 海外での半導体チップ検査システム生産に向けた大型資金調達の実現をはじめ、製造、交通、
医療・ライフサイエンス、資源開発、防衛、防災といった幅広いニーズに向けた、技術のシス
テム化やその実装が進みはじめている。
• 特に防衛等の事由から量子センシングの実用化が急速に進みつつあり、日本でも早期の実装が
求められている。
• 我が国が国際競争力を有する量子技術向けの材料に対する市場形成の観点からも、社会実装が
先行する量子センシングにおける早期の産業化、内外での市場形成が期待されている。産官学
連携を強化し、スタートアップを含めた広範な主体の参画による量子センシングの早期の産業
エコシステムの構築が期待されている。
③ 経済的・戦略的な重要性
• 経済的重要性:装置・システムのみならず、材料からサービスまで、経済的波及効果が大きい。
計測の基盤技術として経済社会構造へのインパクト大。
• 戦略的重要性:国内プレイヤーが要素技術に加え、材料や部素材等で強みを有しており、サプ
ライチェーン上の戦略的不可欠性を構築できる。また、光格子時計をはじめ国際的な計量基準
となり得、戦略的不可欠性につながる。
① 国内外で獲得を目指す市場
• 量子センシングの世界市場は、2030年以降
3,000億円から2040年以降3.7兆円へと拡大。※
(2035年に約1兆円~1.5兆円へと拡大する)。
世界シェア20%を目指す。
② 達成すべき戦略的な目標
• 防衛・防災等の公的需要を中心に国内初期市場を
形成。海外での実証・実装の積極展開も追求し、
国内外一体で市場を開拓。本邦量子技術向け材料
技術の先行市場としての機能も。半導体、モビリ
ティ、化学等の産業分野での利活用も促進しシス
テム、計測サービスを含めた市場を獲得。
• 2030年:量子ジャイロなどのPNT領域、次世代
MRI等の医療領域を中心に自国技術を確立。量
子技術向け材料やその他の要素技術を含めて、国
内外で市場形成が進む。
• 2040年:要素技術・材料に加え、システム・
サービス分野で国際的に競争力のある供給・ポジ
ションを確立。量子ネットワーク等との連携によ
るセンシングの更なる高度化も目指す。
※出典:McKinsey「The Year of Quantum: From concept to
reality in 2025」 (2025)1ドル150円で換算
75
2.勝ち筋の特定と官民投資の具体像【道筋】
量子
量子センシング
(1)基本戦略
(2)官民投資の具体像
① 勝ち筋
• 需要面では、基礎研究面で優れる我が国の量子センシング技術が国内外で実証・実装機
会を得て商用化、2030年以前にいち早く初期市場を形成。特にPNT等の防衛・防災関連
では、量子センシング及び材料技術が公共調達における開発実証機会を得て早期に実装
化。量子センシングを通じて得られるデータの医療等の出口分野における利活用も推進。
• 供給面では、高性能化・小型化・低コスト化等の研究開発を実現。防衛・防災用途を含
めた顕在化ニーズに対して、スタートアップ等の多様な主体が実証・実装に参画するこ
とで、早期に技術のシステム化を推進。
• 量子センシング技術がいち早く産業化して、海外市場を含めて市場規模を獲得。我が国
が強みを持つ量子技術向け材料の産業化、国際展開を先導する。
• 我が国の量子センシング技術が世界で実装されるに伴い、計量基準・時間標準等の国際
標準への活用も進む。
① 投資内容
• 政府による、国内のスタートアップや事業者
等に実証機会を提供するためのテストベッド
整備・拡張、グローバル拠点の整備への投資。
特に安全保障事由での官民実証・実装投資。
• 官民による、ハードウェア等の供給面から、
ユーザー側の需要面に至るまでの一気通貫型
の研究開発投資。
② 我が国として構築すべき機能
• 初期市場の形成に向けた国の積極的関与。2030年までの商用化に向けた、我が国公共調
達による開発実証機会の提供、海外政府との戦略的協力による実証・実装機会開拓。潜
在的なユーザー企業等とのマッチング機会の創出。
• 大学や国研等のテストベッドとなるグローバル拠点の整備(防衛・防災上重要な技術に
係るセキュアな研究環境の整備を含む)及び拠点間連携を通じて、民間企業等の開発コ
スト低減と企業間および産学の連携を促進するとともに、大学と国研が相互の技術・設
備・人的資源を連携し、総力として研究開発や人材育成を行う環境を整備。
② 投資額
2040年度までで1.4兆円と想定
③ 定量的インパクト:投資による経済波及効果
2040年度までで12.5兆円と想定
76
3.官民投資促進に向けた課題と政策パッケージ【政策手段】
(1)投資促進に向けた課題
①リソース制約
• 人材:基礎研究から技術開発ま
でを行う研究人材やエンジニア
リング人材、技術からビジネス
を生むための経営やマーケティ
ング、投資などに知見のあるビ
ジネス人材が不足。
• インフラ等:要素技術、ユース
ケース、ビジネスモデル検証の
ためのテストベッド環境が不十
分(安全保障上で重要な技術に
係る研究のためのセキュアな研
究環境の整備を含む)。
②不確実性の要因
• 事業・技術:技術進展の不確実
性、製品化・事業化に至るまで
の時間的見通しの不確実性
• 市場:市場立ち上がり時期の不
確実性。特に、量子センシング
は用途ごとにシーズとニーズの
マッチングの困難性を有し、事
業化の見通しにばらつきが生じ
やすい。
• 財務:大規模かつ長期に及ぶ投
資に伴う資金調達の困難性、
キャッシュフローの不安定性
• 国際環境・政策:地政学リスク、
各国の規制・制度変更の影響
量子
量子センシング
(2)講じるべき政策パッケージ
①国内投資支援
• 国産量子センシング技術やそれを支える材料、部素材に関する技術の性能向上や実装に向けた研究開発支援。
• 要素技術、ユースケース、ビジネスモデルの検証のためのテストベッド環境整備への投資(経済安全保障及
び安全保障上重要な技術に係る研究のためのセキュアな研究環境の整備を含む)。
• 研究開発税制等の税制措置を活用した研究開発を積極的に行う企業に対するインセンティブ措置
②需要創出・市場確保・社会実装支援
• 政府調達ニーズや社会課題に基づく研究開発支援制度(SBIR等)を通じて国内の初期需要を創出。特にPNT等
の防衛・防災分野について、ニーズとシーズのマッチング機能を構築するとともに、政府からの継続的な研
究開発支援の強化や調達による開発実証機会の提供を含めて需要を創出し、社会実装を加速する。
• 国際標準としてオープンにすべき部分と、競争力の源泉として戦略的に保持すべき部分を切り分けた知財
化・標準化を推進。
• ユースケースの実証やシステム化を含めた研究開発を支援し、ユーザー企業等の需要の見通しを明らかにす
ることを通じて事業化を促進する。
③立地競争力強化
• 量子科学技術研究開発機構等の国研や大学を中心としたテストベッド環境の拡充や利用体制の構築。世界最高
峰の人材や技術、設備が集うグローバルハブを構築し、民間企業等の開発コスト低減とプレイヤー間の連携を
促進。
• 国が主導する研究開発プロジェクトを通じた大学・国研の研究・人材基盤の強化。
• 優秀・多様な人材を確保・定着させるための競争力ある待遇の実現や大学院生への経済的支援などのインセン
ティブ付与、量子技術開発の基盤となる研究教育環境の整備・充実、初等中等教育から社会人リスキリング
までの教育環境・機会の提供などによる国内人材の育成・供給機能の強化。
④国際連携
• 産官学間における多国間対話やMOU等の枠組を活用した有志国との技術連携や国際共同研究の推進
• 在外公館や日本貿易振興機構(JETRO)、新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)、産業技術総合研究所
(AIST)等の海外事務所、学会等の幅広いネットワークを活用した技術インテリジェンス機能の強化
77
量子
量子センシング
方向性
基礎研究や部素材の強みを活かし、従来技術では実現不可能な高感度計測等による疾病の早期診断や半導体検
査工程の高度化※1や防衛・防災分野等で、官民での開発実証を含めて顕在化するニーズを積極的に開拓。技術
の2030年までの国内外での商用化・実装化を進め、我が国量子産業の初期的市場開拓を牽引。
主な課題
(ボトルネック)
市場形成の不確実性
(特に基礎研究から実装
への橋渡しが不十分)
• テストベッドやセキュア
な研究環境の不足
(ユースケースやビジネス
モデルの検証が必要
安全保障用途の開発実証
を行う環境が必要)
• 技術進展の不確実性
(高性能化・小型化・低
コスト化等)
• 人材不足
(研究・エンジニアリン
グ・ビジネス)
等
•
目指すべき姿
講じるべき施策
•
製造分野等での用途の拡大に向けた、ユースケースや
技術のシステム化を含めた研究開発、実証支援
•
防衛・防災分野を中心に、2030年までの商用化に向け
た公共調達による開発実証機会の提供を通じて社会実
装を加速(スタートアップを含めた多様な主体の参画
を得る)
•
我が国発の技術を中心とした国際標準の戦略的構築
•
量子技術向け材料や部素材の性能向上や実装に向けた
研究開発支援
•
国研や大学等を中心としたテストベッドやセキュアな
研究環境の拡充、研究プロジェクトや研究教育環境の
充実を通じた研究・人材基盤の強化
•
医療、半導体、化学、宇宙、
安全保障といった幅広い領
域で我が国製品が世界の
20%の市場を獲得
•
2030年までに防衛・防災分
野で重要なPNT※2領域や医
療領域での自国技術の確立
•
我が国が強みを有する量子
技術向け材料の産業化を先
導
※1 例えば、細胞の温度変化等の検出による病気の早期発見や、材料中の歪みの計測による半導体検査工程の高度化が可能になる。
※2 PNTとは、Positioning(測位)、Navigation(航法)、Timing(タイミング)の頭文字を取った略称で、位置や時刻等のデータやこれらを取得する機能等の総称。
例えば、深海等のGPS・通信遮断下での物体や周辺環境の把握や、地殻のわずかな沈降・隆起検知による津波・地震・噴火の兆候検知ができるようになる。
78
防衛産業
①小型無人航空機
79
1.現状認識と目指す姿【目標】
防衛産業
小型無人航空機
(1)現状
(2) 目標
① 現状
・国産の小型無人航空機は、これまで官民ともに需要を獲得できておらず、構成品やソフト
ウェアを含め、本格的な量産体制が整っていない。また、単価も高額な傾向。
・市場シェア上位国は優れた生産・技術を有しており、性能・価格面で大きな優位性。
・我が国では、関連企業の規模が小さい上、優秀な人材・技術者が複数の企業に分散。
① 国内外で獲得を目指す市場
・我が国防衛に必要な小型無人航空機を安定的
に開発、製造、維持整備できる基盤を構築し、
将来にわたって防衛省に供給。
・同盟国・同志国への完成品、構成品の装備移
転、サプライチェーン協力を推進。
・防衛調達を民生市場における競争力の強化等
につなげつつ、民生分野において、2030年
時点で8万台の機体・重要部品の供給を確保
し、この基盤を防衛分野においても活用する。
② 取り巻く環境と構造変化
・小型無人航空機は「新しい戦い方」を支える存在であり、各国の需要は急増。消耗品とし
ての性質が強いことから、防衛ニーズに応じて、増産やアップデートを円滑かつ迅速に実
施できることが重要であり、この観点から、無人航空機の国内生産基盤の構築が急務。
・製造に必要な重要構成品の多くを特定国からの供給に依存。サプライチェーンリスクも顕
在化する中、各国ではサプライチェーンの国内回帰や同盟国・同志国間の協力を追求する
動き。
・重要部品のサプライチェーンや要素技術はデュアルユース性を有することを踏まえ、成長
市場である民生分野(※)のスケールメリットも活用しつつ、防民一体の取組による産業基
盤の構築が重要。(※民生分野では、無人航空機の機体の世界市場は、2024年の約1兆円
から2030年には約1.5兆円、日本市場は同約1100億円から約2700億円への伸びが予測)
・機体の自律性や群制御、飛行管制等のためのAIやソフトウェアの開発で各国が競争。我が
国はソフトウェアの開発力が不十分。
③ 経済的・戦略的な重要性
・経済的重要性:防衛・民生双方で、国内外の需要が大きく拡大。部素材、AI等のソフト
ウェア技術のイノベーション創出等を通じた経済効果が期待。
・戦略的重要性:我が国防衛力の抜本的強化に必要な基盤の構築、装備移転、サプライ
チェーン協力を通じた望ましい安全保障環境の構築に貢献。
② 達成すべき戦略的な目標
・AI技術の研究開発やデータの蓄積整備を推進
し、自律的な航空戦闘任務遂行を実現。
・我が国防衛に必要な小型無人航空機を、タイ
ムリーに十分な量を開発、生産、維持整備で
きる生産・技術基盤の構築。
・国際的に競争力のある関連ソフトウェアの人
材、開発基盤の国内保有、構成品の国産化等
を通じた強靭なサプライチェーンの構築。
・国際的な需要増を捉え、国内に加え、同盟
国・同志国の民生市場の獲得。
・防衛調達を民生市場における競争力強化等に
つなげつつ、民生市場のスケールメリットに
より強化した生産・技術基盤を防衛に活用す
ること等による、防衛と経済の好循環の実現。
80
2.勝ち筋の特定と官民投資の具体像【道筋】
防衛産業
小型無人航空機
(1)基本戦略
(2)官民投資の具体像
① 勝ち筋
・我が国の防衛力の抜本的強化を実現する観点から、構成品を含む国内生産基盤構築を
強化するとともに、先端技術の取り込みを推進するためスタートアップの活用やアカ
デミアとの連携を推進。
・防衛分野でも活用しうる、民生市場のスケールメリットも活用した防民一体の産業基
盤を構築する。その際、防衛調達を民生市場における競争力強化等につなげつつ、民
生市場においては、国産機体へのニーズが大きいサイバーセキュリティが重視される
分野での市場拡大を目指し、量産能力を強化。また、ソフトウェアについても、中長
期的に競争力の源泉となるAI等の分野において、経産省・防衛省が連携し研究開発事
業を促進し、技術基盤を強化する。
・官民で連携し、防民の海外市場を開拓。
① 投資内容
・国内外で増加する需要に対応可能な生産基盤強
化への投資
・デュアルユースの優れた技術への投資
・装備移転協力を包括的に支援する体制整備のた
めの投資
・投資主体としては、防衛省、経産省、防衛企業、
スタートアップ、非防衛企業等。
② 我が国として構築すべき機能
・我が国防衛力の抜本的強化を実現でき、また、国内外で防民問わず拡大する需要に対
応できる生産基盤及び技術基盤の構築
・特定国に依存しない、サイバーセキュリティの確保されたサプライチェーンの構築
・スタートアップやアカデミア等と連携し、自律性や群制御に不可欠なAI等のソフト
ウェアをはじめとしたデュアルユースの優れた技術を開発し、迅速に実装する体制
・国内生産基盤の強化、防衛イノベーションの促進、装備移転を一体的に推進するため、
法人の設置を検討
② 投資額
2040年度までで0.4兆円と想定。
※加えて、戦略三文書の改定に伴う投資額も今後
見込まれる。
③ 定量的インパクト:投資による経済波及効果
2040年度までで5.6兆円と想定
81
3.官民投資促進に向けた課題と政策パッケージ【政策手段】
防衛産業
小型無人航空機
(1)投資促進に向けた課題
(2)講じるべき政策パッケージ
①リソース制約
• 特定国が世界市場シェアの
7割以上を占めており、国
内企業による市場の獲得が
進んでおらず、企業の新規
参入、設備投資等の投資が
進まない。
• 関連企業の規模が小さい上、
開発・生産リソースが分散
しており、投資の余力が小
さい。生産ノウハウに優れ
た伝統的防衛産業との連携
は希薄。
• 自律飛行や群制御等の面で
ソフトウェアが極めて重要
であるが、国内のソフト
ウェア開発は人材・基盤の
面で不十分。
• 先端技術を有するスタート
アップが防衛調達に参画す
るハードルが高い。
①生産基盤の強化
・防衛省が、国内生産基盤の構築に配慮し、事業者に対して国産部品の活用を促しつつ、小型無人航空機を
大量に取得することにより、企業の予見可能性を一定程度確保し、新規参入や研究開発、生産設備の導入
等の投資を促進。
・経済安保法に基づく機体・重要部品の量産体制構築に向けた設備投資への支援により、デュアルユースの
生産基盤・技術基盤の強化を支援。
・国の関与の拡大を含め、防衛生産基盤のさらなる強化策の検討。
・開発・生産リソースのより一体的・効率的活用のため、企業間の協業を促す取組や、伝統的防衛産業によ
るメンター支援を促す制度を導入。
②イノベーションの創出
・スタートアップ企業等の技術の迅速な導入のため、柔軟な契約制度の活用を促す「ファストパス調達」※
を推進。
・スタートアップの特性を踏まえた柔軟な研究開発事業や、スタートアップの財政基盤を踏まえた調達、ア
カデミアと連携した研究基盤の構築等を、経産省・防衛省が連携して実施。
・特にAI・ソフトウェアを中心に中長期的に競争力の源泉となる研究開発を支援(自律・群制御技術、AI活用
※ファストパス調達は柔軟な契約制度の活用等により、従来よりも遙かに
による自動化、重要部品の技術革新など)。
スピーディーに研究開発・装備化を実現する調達様式。
③需要の拡大・市場の獲得
・防衛省が、国内生産基盤の構築に配慮しつつ、小型無人航空機を大量に取得(令和8年度予算で1001億円
(SHIELD早期構築の総額:必ずしも国産の機体を調達するものでは無い点に留意)、令和9年度以降は戦略
三文書改定の議論を踏まえて検討)。
・国産機体へのニーズが大きいサイバーセキュリティが重視される分野での市場拡大に向けた、調達時に参
照できるサイバーセキュリティのガイドラインの整備・普及。
・DICAS(日米防衛産業協力・取得・維持整備定期協議)、PIPIR(インド太平洋における産業基盤強靭化パートナーシップ) 、OSA(政府安
全保障能力強化支援)等の枠組みを活用し、同盟国・同志国とのサプライチェーン協力・装備移転を推進。
・国内生産基盤強化、防衛イノベーションの促進、装備移転を一体的に推進するため、法人の設置を検討。
・産業界による、海外民生市場獲得に向けた取組を促進するための支援。
・主要市場となる国の無人航空機に関する規制や制度の情報収集と横展開。
②不確実性の要因
• 国産機体へのニーズが大き
いサイバーセキュリティが
重視される分野での市場拡
大が未成熟。
82
防衛産業
小型無人航空機
方向性
ロシアによるウクライナ侵攻でも双方が、消耗品として、安価なドローンを数百万機規模で使用するなど、小型無人航空機
は「新しい戦い方」を支える重要な装備品。防衛力の変革の観点から、早期に大量生産可能な国内生産基盤の構築が重要。
小型無人航空機は、民生分野でも、人手不足が深刻化する分野を中心に活用が進展。要素技術やサプライチェーンにおける
デュアルユース性が強く、①防衛調達を民生市場における競争力の強化につなげつつ、②民生市場のスケールメリットを活
用して強化した生産・技術基盤を防衛に転用することは、「防衛力の強化」と「経済成長」の双方に貢献。
課題・ボトルネック
製造に必要な重要構成品の多くを特定国からの供給に依存。供給停滞リスクが増大。
防衛・経済安全保障双方の観点から、国内生産基盤が必須も、量産体制を確立できるだけの需要が不足。
基盤強化のイメージ
①、②、③を一体的に実
施し、企業の投資を促進
するとともに需要を創出
し、生産・技術基盤を構
築。
防衛需要
★
+
防衛需要
民生需要
(注)
民生需要
量産投資
開始
注: 目標
海外需要
量産初期
2030
④を通じ、国内外の民生需要
のさらなる獲得、基盤の一層
の強化。
強化された基盤を防衛にも活
用し、「防衛と経済の好循
環」を実現する。
※需要のサイズはイメージ
政策的な打ち手
①国内民生市場の拡大を見据え、安定供給確保支援基金を活用し、
機体・重要部品の量産設備投資を支援。
②スタートアップ企業等の技術の迅速な導入のため、柔軟な契約制
度の活用を促す「ファストパス調達」 ※を推進。防衛省・経産省
が連携し研究開発事業を促進。
③SHIELD早期構築をはじめとした防衛調達(国産部品の活用の促
進を含む)、サイバーセキュリティが重視される分野での市場
拡大、同盟国・同志国とのサプライチェーン協力を通じて、国産
品の需要を拡大。
④そうした市場獲得を通じて得た原資を活用し、増産ニーズへの対
応体制や、AI・ソフトウェア等中長期的に競争力の源泉となる先
端技術への投資をさらに強化。
2030年時点で8万台の機体・重要部品の供給を確保し、この基盤を防衛分野においても活用する。
※ファストパス調達は柔軟な契約制度の活用等により、従来よりも遙かに
スピーディーに研究開発・装備化を実現する調達様式。
83
防衛産業
②艦艇
84
1.現状認識と目指す姿【目標】
防衛産業
艦艇
(1)現状
(2) 目標
① 現状
・四面環海の我が国において、平素の警戒監視を含め、自衛隊が防衛の任務を全うするために
は、水上艦等の艦艇の開発・製造・維持整備を国内で万全に行える体制が必要。
・自衛隊艦艇は基本的に全て国内造船所で建造・修繕を行っており、サプライヤーを含め、国
内には優れた能力・技術を有する企業が存在している。
・他方で、これらの企業において設備の老朽化が進行するとともに、少子高齢化等により労働
力の確保が難しくなってきている。
① 国内外で獲得を目指す市場
・我が国防衛に必要な艦艇を安定的に開発、
製造、維持整備できる基盤の構築。
② 取り巻く環境と構造変化
・ロシアによるウクライナ侵略等を教訓に、各国が、無人機の大量運用を含む「新しい戦い
方」や長期戦への備えを急いでいる。艦艇の分野も含め、我が国においても、こうした課題
に対応できる生産・技術基盤が必要。
・人的損耗の低減や分散・機動的な運用等の観点から、防衛分野で無人水上航走体(USV)/
無人水中航走体(UUV)等の水上・水中アセットの役割が大きくなる見込み。防衛分野の
USV/UUVの無人化・自律化・群制御等のソフトウェア技術は海運・海洋観測・探査等の民
生分野にも展開しうる。
・昨年12月に造船業再生ロードマップが策定され、商船の分野を中心に、船舶建造体制の強
靭化、造船人材の確保・育成、同志国・グローバルサウスとの連携等についての取組を推進
することとなっている。艦艇の建造・修繕に使用される造船所、艦艇のサプライチェーン
(部材・機器)、人材は商船とも共通する部分がある。
・「もがみ」型護衛艦の能力向上型の豪州移転に象徴されるように、我が国の艦艇は同盟国・
同志国からも関心を寄せられている。装備移転の推進は、国内生産・技術基盤の強化、継戦
能力の確保に加え、地域の抑止力向上にも資する。
③ 経済的・戦略的な重要性
・経済的重要性:商船・官公庁船との共通基盤の強化やUSV/UUVのイノベーション創出等を
通じて、民生部門への波及効果が期待。
・戦略的重要性:我が国防衛力の抜本的強化に必要な基盤の構築、継戦能力強化や地域の抑止
力向上に貢献。
・同盟国・同志国への装備移転、サプライ
チェーン協力を推進。
※なお、造船分野では、我が国において1800万総ト
ン(市場規模約5兆円)を目指す(2035年)
※なお、海洋無人機分野では、世界市場で3割のシェ
ア獲得を目指す(10年後、40億-50億ドル程度
(一定の仮定の下での試算値))
② 達成すべき戦略的な目標
・我が国防衛に必要な艦艇(無人船舶を含
む)を安定的に開発・製造・維持整備でき
る生産・技術基盤を構築し、将来にわたっ
て防衛省に供給することで、抑止力・対処
力の強化を支える。
・同盟国・同志国への艦艇や構成品の装備移
転、サプライチェーン協力を推進し、艦艇
の生産・技術基盤と継戦能力を強化。販路
拡大を通じた、防衛産業の成長性の確保に
も寄与。
・艦艇の生産・技術基盤の強化の取組を民生
分野(商船や無人船舶)の競争力強化にも
つなげる。同時に、民生分野の造船能力強
化の取組により強化された基盤を艦艇の分
野にも活用することで好循環を創出。
85
2.勝ち筋の特定と官民投資の具体像【道筋】
防衛産業
艦艇
(1)基本戦略
(2)官民投資の具体像
① 勝ち筋
(技術基盤の強化)
・新しい戦い方への対応等の観点から、複雑な任務を自律的に実行可能な中型USVや、UUV
の研究開発を推進し、その成果を民生分野に還元。
・民生分野の先端無人化技術を用いた船舶、探査用UUV等を早期導入し、技術進展を促進。
防衛省が初期需要の一部を下支えし、当該分野の民生市場での競争力の強化にも寄与。
・スタートアップ企業の活用を推進し、デュアルユースを含む技術革新を追求。
(生産基盤の強化)
・艦艇のサプライチェーンをさらに強化するため、サプライチェーンリスクを把握し、脆弱
な部分を手当て。商船分野の取組と連携することで相乗効果を発揮し、双方の生産基盤を
強化。
・我が国防衛及び同盟国等との防衛協力を支えることができる生産基盤を構築する観点から
も、製造工程効率化等の取組を強化。
(同盟国・同志国との防衛協力)
・同盟国・同志国との間で、装備移転、サプライチェーン協力、修繕協力等を強化し、継戦
能力を強化。同時に、販路拡大を通じた、防衛産業の成長性の確保にも寄与。
① 投資内容
・デュアルユースの優れた技術への投資
・国内外で増加する需要に対応可能な生産基盤強
化への投資
・装備移転協力を包括的に支援する体制整備のた
めの投資
・投資主体としては、防衛省、経産省、防衛企業、
スタートアップ、国研・大学等、非防衛企業等。
② 我が国として構築すべき機能
・我が国防衛力の抜本的強化を実現でき、また、国内外で防民問わず拡大する需要に対応で
きる、防民一体の生産・技術基盤の構築。
・スタートアップや国立研究開発法人(国研)・大学等と連携し、無人化・自律化・群制御
等の優れたソフトウェア技術を開発し、迅速に実装する体制
・国内生産基盤の強化、防衛イノベーションの促進、装備移転を一体的に推進するため、法
人の設置を検討
② 投資額
艦艇分野への防衛調達を含む投資は約3,400億
円(2026年度予算)。
※加えて、戦略三文書の改定に伴う投資額も今
後見込まれる。
③ 定量的インパクト:投資による経済波及効果
戦略三文書の改定の議論を踏まえて検討。
86
3.官民投資促進に向けた課題と政策パッケージ【政策手段】
防衛産業
艦艇
(1)投資促進に向けた課題
(2)講じるべき政策パッケージ
①リソース制約
・無人化・自律化・群制御やシ
ステム・インテグレーション
の観点でソフトウェアが極め
て重要であるが、国内のソフ
トウェア開発は人材・基盤の
面で不十分。
・先端技術を有する有望なス
タートアップが防衛調達に参
画することや必要な量産基盤
を整えるハードルが高い。
・艦艇の建造は限られた造船事
業者・サプライヤーに集中す
るとともに、事業撤退や人手
不足等によりサプライチェー
ンの基盤の脆弱化が進行。装
備移転も含めた需要増加に際
して、サプライチェーンも含
めた生産能力に制約。
・官民共に、装備移転等の推進
のための体制が不十分
①技術基盤の強化
・スタートアップ等の技術の迅速な導入のため、柔軟な契約制度の活用を促す「ファストパス調達」※を推
※ファストパス調達は柔軟な契約制度の活用等により、従来よりも遙かにスピーディーに研究開発・装備化を実現する調達様式。
進。
・スタートアップの特性を踏まえた柔軟な研究開発事業や、スタートアップの財政基盤を踏まえた調達、国
研・大学等との連携等を推進。
・特に複雑な任務を自律的に実行可能な中型のUSVや、UUVの研究開発を推進。また、USV/UUVの競争力
の源泉となる無人化・自律化・群制御等のソフトウェア技術について、研究開発を推進するとともに、部
隊ニーズを踏まえた研究開発や実証・フィードバック、調達を通じて、社会実装を後押し。海運・海洋観
測・探査等の民生分野への展開を目指す。さらに、民生分野の先端無人化技術を用いた船舶、探査用UUV
等を早期導入し、技術進展を促進。こうした取組を通じて、ソフトウェア人材育成にも寄与。
②不確実性の要因
・装備移転や海外修繕需要等、
海外需要の取り込みは見通し
が不確実。
②生産基盤の強化
・我が国防衛及び同盟国等との防衛協力を支えるとともに、人手不足の中でも効率的な生産基盤を構築する
観点からも、防衛生産基盤強化法に基づく措置等を活用し、製造工程効率化等の取組を推進。その際、商
船分野との生産基盤の共通性を考慮して、商船の建造能力強化の取組とも連携。自動化、省力化の技術、
AI、ロボット等の先端技術を艦艇の製造工程に積極的に導入支援を実施。
・サプライチェーンへの新規参入を促進するため、中堅・中小企業支援策を活用。
・防衛への忌避感を軽減する政策方針の発出。
・開発・生産リソースのより一体的・効率的活用のため、企業間の協業を促す取組を推進。
・USV/UUV等の海外民需獲得に向け、JETROなどの既存の関係機関との取組を強化。
③同盟国・同志国との防衛協力
・DICAS (日米防衛産業協力・取得・維持整備定期協議)等の枠組みも活用し、外国艦艇の修繕需要の取
込、同盟国・同志国とのサプライチェーン協力、装備移転を推進。
・国内生産基盤強化、防衛イノベーションの促進、装備移転を一体的に推進するため、法人の設置を検討。
・防衛装備移転の推進にあたって、防衛装備移転円滑化基金を活用。
87
防衛産業
艦艇
方向性
四面環海の我が国において、平素の警戒監視を含め、自衛隊が防衛の任務を全うするためには、開発・製造・維持整備を国内で万全に行える
体制の確保が不可欠。商船・官公庁船との共通基盤の強化や無人水上航走体(USV)/無人水中航走体(UUV)のイノベーション創出等を通じて、
民生部門にも裨益。
課題・ボトルネック
無人化・自律化等の観点でソフトウェアが極めて重要であるが、国内の開発基盤は不十分。また、有望なスタートアップが参入するハードル
が高い。
艦艇建造は限られた造船事業者・サプライヤーに集中。事業撤退等のサプライチェーンの脆弱化が進行。装備移転も含めた需要増加に対し生
産能力に制約。
装備移転や海外修繕需要等、海外需要の取り込みは見通しが不確実。また、官民共に体制が不十分。
技術基盤の強化
「ファストパス調達」 ※を通じ、スタートアップ等
・(商船とも共通の)生産基盤の強化
からの先端技術の迅速な導入を推進。
AI・ソフトウェアを搭載し、複雑・高度な任務を ・USV/UUV等のイノベーション、早期
自律的に実行可能なUSV/UUVの研究開発を推進。 導入による社会実装の促進
民生分野の先端無人化技術を用いた船舶、探査用
UUV等を早期導入し、技術進展を促進。
スタートアップに対して研究開発を重点的に支援。
同盟国同志国との装備協力・防衛産業協力
防衛分野
民生分野
生産基盤の強化
防衛生産基盤強化法の措置等を活用し生
産基盤を強化。その際、商船分野との共
通性を考慮し、民間の先端製造技術の艦
艇建造工程への導入を積極的に支援。
開発・生産リソースのより一体的・効率
的活用のため、企業間の協業を促す取組
を推進。
DICAS(日米防衛産業協力・取得・維持整備定期協議)等の枠組みも活
用し、外国艦艇の修繕需要の取込、同盟国・同志国
とのサプライチェーン協力、装備移転を推進。
国内生産基盤強化、防衛イノベーションの促進、装 ・(艦船とも共通の)生産基盤、人材等の活用
備移転を一体的に推進するため、法人の設置を検討。・民生分野のイノベーション(先端製造技術
海外民生需要の獲得に向けJETRO等関係機関との取 等)の活用
組強化。
※ファストパス調達は柔軟な契約制度の活用等に
より、従来よりも遙かにスピーディーに研究開
発・装備化を実現する調達様式。
88
防衛産業
③デュアルユース技術
89
1.現状認識と目指す姿【目標】
防衛産業
デュアルユース技術
(1)現状
(2) 目標
① 現状
・我が国が戦後最も厳しく複雑な安全保障環境に直面している中で、民生用の生産・技術基盤
と安全保障用のそれとの垣根が曖昧となっていることを踏まえ、伝統的防衛企業のみならず、
スタートアップ、国立研究開発法人(国研)・大学等、非防衛企業などが有する潜在性を我
が国で活用することの必要性が高まっている。
① 国内外で獲得を目指す市場
・我が国にとって有望と考えられるデュアル
ユース市場は、2035年には全世界で約130
兆円、国内では約13兆円規模に成長の見込
み。
・AI・半導体、航空・宇宙、最先端素材等の
国内における関連産業において広範な市場
獲得を目指すとともに、有志国市場への進
出を目指す。
・例えばAIロボットでは、米中に並ぶ第三極
として世界シェア 3割超の獲得を目指す。
② 取り巻く環境と構造変化
・ロシアによるウクライナ侵略では、無人機、AI等の既存の民生技術を全面的に活用し、「新
しい戦い方」への迅速な対応のための戦い方のアップデートが行われている。また、民生用
の産業基盤を積極的に転用することで、迅速な装備品の量産基盤を整備している事例が存在。
・近年、各国で策定が進む「防衛産業戦略」においても、デュアルユース技術・生産基盤への
投資と防衛分野での実装が、防衛力の強化と経済成長の双方につながるものとして取組を強
化する方針が示されており、投資促進と社会実装に向けた政策的競争が激化していく見込み。
③ 経済的・戦略的な重要性
・経済的重要性:デュアルユース生産・技術基盤は、航空・宇宙、AI・半導体(蓄電池、ロ
ボット等)、マテリアル(素形材含む)、バイオ・医療などの多様な分野に広がっており、
こうした分野における競争力が強化されることは、我が国の経済成長に貢献。
・戦略的重要性:デュアルユース技術・生産基盤を強化し、防衛分野で活用できる態勢の整備
は、防衛力の強化の観点から重要。
② 達成すべき戦略的な目標
・防衛力強化に資する生産・技術基盤の投資を
官民一体で促進し、国内外の民生市場におけ
る競争力を強化。
・同時に、国内外の民生市場の獲得により強化
された生産・技術基盤を防衛装備品の質と量
の向上につなげる。
・この取組を通じて「防衛と経済の好循環」を
実現。
90
2.勝ち筋の特定と官民投資の具体像【道筋】
(1)基本戦略
① 勝ち筋
・我が国は、優れた製造業の基盤と優秀な人材を擁しており、デュアルユース技術を活用し
た生産・技術基盤の更なる強化に向けた潜在性を有している。
・防衛需要は、AI・ロボティクス等の将来有望な技術を社会実装につなげる重要なドライ
バーでもあり、日本の産業が有する潜在性を最大限活かし、防民一体となってデュアル
ユースの生産・技術基盤を強化すべく、下記の通り取組を進める。
(1)伝統的防衛企業に加え、スタートアップ、国研・大学等、非防衛企業などの有望な技
術等を防衛イノベーション科学技術研究所等を通じ、防衛分野にも活用する(スピンオ
ン)とともに、防衛発のイノベーションを推進、およびその成果の民間用途への展開
(スピンオフ)。防衛用途にも活用可能な先端民生技術の開発を促進する。
(2)防衛省の運用ニーズを踏まえた研究開発や自衛隊によるフィードバック・サイクルを
迅速に回すアジャイル調達等の活用を通じ、先端技術の導入・実装を促進。同時に、民
生分野の需要開拓、海外需要の獲得とあわせた需要を喚起。これにより、デュアルユー
スの生産・技術基盤の強化につなげる。
(3)日本成長戦略における他の戦略分野の取組とも連携し、航空・宇宙、AI・半導体(蓄
電池、ロボット等)、マテリアル(素形材含む)、バイオ・医療などのデュアルユース
の分野において従来のように民生ニーズのみならず、防衛省の運用ニーズを踏まえた戦
略的投資を官民一体で実行。
② 我が国として構築すべき機能
防衛産業
デュアルユース技術
(2)官民投資の具体像
① 投資内容
・官民投資を促進する領域:
日本成長戦略における他の戦略分野でも取組
を進めている、航空・宇宙、AI・半導体(蓄
電池、ロボット等)、マテリアル(素形材含
む)、バイオ・医療といった防衛分野でも重
要となりうる技術分野
・投資を行う主体(企業大学・国研、国・自治
体や複数主体の共同等):伝統的防衛企業に
加え、スタートアップ、国研・大学等、非防
衛企業といった有望な技術等を有する多様な
民間プレイヤー、経産省・防衛省、地方自治
体など
② 投資額
2040年度までで4.3兆円と想定
③ 定量的インパクト:投資による経済波及効果
2040年度までで117.7兆円と想定
・防衛と経済の好循環に資する、デュアルユース生産・技術基盤の投資促進に向けた枠組みの構
築。
・先端技術を防衛分野において迅速に実装しながら、本格的な調達につなげる体制の整備。
・国内生産基盤の強化、防衛イノベーションの促進、装備移転を一体的に推進するため、法人の設
置を検討。
91
3.官民投資促進に向けた課題と政策パッケージ【政策手段】
(1)投資促進に向けた課題
①リソース制約
・生産・技術基盤の民生用
と安全保障用の区別が曖
昧となっており、その実
情に合わせた政策的対応
が必要。
・増加する防衛ニーズへの
対応のためには、非防衛
企業の生産・技術基盤を
活用することが重要だが、
新規参入は不足。防衛ア
レルギーなどの課題も存
在。
・防衛装備品の移転では、
防衛産業特有の契約形態
への対応等が必要だが、
実績が少なくノウハウに
乏しい。
②不確実性の要因
・新規参入事業者にとって、
防衛分野のニーズが明ら
かでない。
・防衛需要も含めたデュア
ルユース技術の中長期的
な需要の見通しが不透明。
・地政学的不確実性が増し
ており、サプライチェー
ン断絶リスクが存在。
(2)講じるべき政策パッケージ
防衛産業
デュアルユース技術
①研究開発の推進
・頻繁なピッチイベントの開催を通じた防衛ニーズの明確化によるスタートアップの関心喚起、国研・大学等や非防衛企業への積極的
な働き掛けを通じ、シーズを発掘
・調達ニーズ元である自衛隊による関与を確保し、量産の可能性を高めること等を特徴とする防衛省版SBIR制度を新たに導入し、新た
な戦い方の実現に寄与できる有望なスタートアップを積極的に育成・絞り込み(落選者にも積極的に防衛プライム※とのマッチング
を実施)
※防衛プライム:防衛省から直接、研究開発や
・公共調達参画に向けた防衛プライム※とのマッチングなど、スタートアップへの伴走支援の提供
製造を請け負う企業
・ベンチャーキャピタル等の民間資金を呼び込むため、有望なスタートアップへの出融資
・新たな戦い方の実現を可能とする将来の防衛力整備上のニーズに基づく挑戦的な目標の下、幅広い基礎研究から技術実証までを体系
的に進めるプロジェクトを新設
・AI・ロボティクスなど特に防衛上重要な分野において国研・大学等と連携した研究基盤を構築することで、民生分野でも有用な技術
を開発・展開
・防衛プライムとの連携により、民生用途に加えて防衛用途への活用も視野に入れた要素技術・製造技術の研究を、導入に向けた実証
を含め、基礎研究から実用化まで、体系的に支援
②需要創出
・防衛省において、有望なスタートアップの迅速な活用に向けて、自衛隊によるフィードバック・サイクルを迅速に回すアジャイル調
達等の活用を通じ、先端技術の導入・実装を促進するとともに、その成果を本格的な調達につなげる仕組みを構築
・防衛用途にも活用可能な先端民生技術・製品への民間投資を後押しすべく、民生分野における国産品需要を喚起する、サイバーセ
キュリティ基準等のガイドライン発出等を実施
・国内生産基盤強化、防衛イノベーションの促進、装備移転を一体的に推進するため、法人の設置を検討。海外需要の獲得に向けて、
JETRO・在外公館等の活用を含め取組を強化。進展しつつある移転の現実を踏まえ、輸出管理制度のさらなる合理化を推進
・米英欧等の同盟国・同志国とのデュアルユースを含む先端技術に関する対話の推進やサプライチェーン協力の枠組みを活用
・中長期的な防衛需要の予見可能性の向上に向けた方策を検討
③量産基盤の構築
・日本成長戦略における他の戦略分野の取組とも連携し、航空・宇宙、AI・半導体(蓄電池、ロボット等)、マテリアル(素形材含
む)、バイオ・医療などの分野において、防衛用途向けの増産が必要になった場合に対応できるよう、平時からデュアルユースの強
固な生産基盤を構築。具体的には、民防両用の生産基盤構築を支援し、需給逼迫時には、必要な用途への集中的な供給を求めること
も検討
・政府の戦略文書等で防衛関連投資を促すメッセージを発出するとともに、民間企業や政府系金融機関等による投資の促進に向け、関
係省庁において連携を進める。また、中堅・中小企業政策と連携するとともに、防衛プライム企業・地方自治体と協力し、有望な技
術等を有する多様な企業の防衛産業への参入を促進することにより、サプライチェーンの裾野を拡大
・重要な原材料等の安定的な調達に向けて、調達先の多様化、代替品の開発、備蓄、同盟国・同志国との協力等の取組を強化するとと
92
もに、防衛調達における特約条項の設定を通じて安定供給源への速やかな切替えの実行
防衛産業
デュアルユース技術
方向性
課題・ボトルネック
技術・設備・構成品の民生用と防衛用の垣根が曖昧になる中、力強く持続可能な防衛産業の構築には、デュアルユースの技術・生産基盤を取り込むことが必要。
しかし、研究開発、需要創出、量産基盤構築のいずれの段階でも、民需と防需の両方を見据えた政策支援が不十分であり、民防双方における需要獲得を狙った民
間投資が起こりにくい。
研究開発の推進
スタートアップ、国研・大学等、非防衛企業など、これまで防衛分野に参入してこなかったプレイヤーの有望なデュ
アルユース技術を、防衛イノベーション科学技術研究所等を通じ、防衛分野にも活用(スピンオン)
頻繁なピッチイベントの開催を通じた防衛ニーズの明確化によるスタートアップの関心喚起、国研・大学等や非
防衛企業への積極的な働き掛けを通じ、シーズを発掘
調達ニーズ元である自衛隊による関与を確保し、量産の可能性を高めること等を特徴とする防衛省版SBIR制度を
新たに導入し、新たな戦い方の実現に寄与できる有望なスタートアップを積極的に育成・絞り込み(落選者にも
※防衛プライム:防衛省から直接、研究開発や製造を請け負う企業
積極的に防衛プライム※とのマッチングを実施)
公共調達参画に向けた防衛プライム※とのマッチングなど、スタートアップへの伴走支援の提供
ベンチャーキャピタル等の民間資金を呼び込むため、有望なスタートアップへの出融資
防衛発のイノベーションの推進、およびその成果の民間用途への展開(スピンオフ)
新たな戦い方の実現を可能とする将来の防衛力整備上のニーズに基づく挑戦的な目標の下、幅広い基礎研究から
技術実証までを体系的に進めるプロジェクトを新設するとともに、AI・ロボティクスなど特に防衛上重要な分野
において国研・大学等と連携した研究基盤を構築することで、民生分野でも有用な技術を開発・展開
防衛用途にも活用可能な先端民生技術の開発を促進
防衛プライム※との連携により、民生用途に加えて防衛用途への活用も視野に入れた要素技術・製造技術の研究を、
導入に向けた実証を含め、基礎研究から実用化まで体系的に支援
量産基盤の構築
需要の創出
デュアルユースの市場を創出し、生
産・技術基盤に対する投資を促進
防衛省において、有望なスタート
アップの迅速な活用に向け、自衛隊
によるフィードバック・サイクルを
迅速に回すアジャイル調達等の活用
を通じ、先端技術の導入・実装を促
進
防衛用途にも活用可能な先端民生
技術・製品への民間投資を後押し
すべく、民生分野における国産品
需要を喚起する、サイバーセキュ
リティ基準等のガイドライン発出
等を実施
海外需要の獲得に向けて、
JETRO・在外公館等の活用を含め
取組を強化
日本成長戦略における他の戦略分野の取組とも連携し、航空・宇宙、AI・半導体(蓄電池、ロボット等)、マテリアル(素形材含む)、バイオ・医療な
どの分野において、防衛用途向けの増産が必要になった場合に対応できるよう、平時からデュアルユースの強固な生産基盤を構築
民防両用の生産基盤構築を支援し、需給逼迫時には、必要な用途への集中的な供給を求めることも検討
政府の戦略文書等で防衛関連投資を促すメッセージを発出するとともに、民間企業や政府系金融機関等による投資の促進に向け、関係省庁において連携を進める。
こうした取組を通じ、国内投資を促進し、デュアルユースの技術・生産基盤を強化。
国内生産基盤強化、防衛イノベーションの促進、装備移転を一体的に推進するため、法人の設置を検討。
93
航空・宇宙
①民間航空機(次期単通路機・次世代航空機)
94
1.現状認識と目指す姿【目標】
(1)現状
① 現状
・我が国の航空機産業は、海外OEMとの機体、エンジンの国際共同開発を主
軸に着実に成長を続け、新型コロナウイルスの感染拡大前である2019年
時点では、年間売上高ベースで2兆円規模にまで発展。
・ボーイング社の双通路機の開発を中心にサプライヤーの地位を確立し成長
してきた一方で、今後拡大することが予想される単通路機市場への参画は
限定的。
・我が国は主要構造体開発を長年担ってきた実績と品質信頼を背景に、単な
るコスト競争に陥らない地位を維持。地政学的リスクの低さや輸出管理上
の信頼性等から、今後航空需要増が見込まれるアジア諸国の中で高い信頼
を獲得。
② 取り巻く環境と構造変化
・新興国の成長を背景としたアジア地域内での旅客需要の増加、格安航空会
社(LCC)等の利用の更なる拡大、航空機の性能向上に伴う適用可能航路
の拡大等により、小型の航空機の運航の高頻度化等が見込まれることから、
単通路機の需要が双通路機の需要と比較して今後大きく拡大が想定。
・航空分野における脱炭素化の実現に当たっては、航空機への環境新技術
(水素、電動化等)の導入が必要不可欠。
③ 経済的・戦略的な重要性
・経済的重要性:航空旅客需要は今後20年間で約2倍に成長が見込まれ、積
極投資により成長が期待できる産業。
・戦略的重要性:民間航空機開発において必要な設備やサプライチェーン、
人材等は防衛産業と共通部分も多くシナジー効果が高く安全保障上も重要。
民間航空機産業への投資は、防衛分野への技術裨益を生むとともに、日米
間の航空・防衛協力を支える戦略的基盤として不可欠。
航空・宇宙
民間航空機(次期単通路機・次世代航空機)
(2) 目標
① 国内外で獲得を目指す市場
・ 産業の自律的な成長を可能とすべく、航空機産業戦略で掲げる、
海外OEMと伍する立場として国際連携による完成機事業の創出を
目指し、以下、2つのアプローチでの能力獲得や事業基盤の飛躍的
な向上を目指し、2050年に約6兆円/年規模以上の市場獲得を狙う。
(1)今後成長が見込まれる単通路機市場“ボリューム市場”で、 海外
主要OEMと連携の中で上流工程のプログラム参画を追求し、事業
基盤を含めたインテグレーション能力獲得を見据えた市場参画を
目指す。
【機体】
次期単通路機開発について、上流工程からの参画と2050年までに
約8,000機製造を目指す。
【エンジン】
次期単通路機搭載エンジン開発について、上流工程からの参画と
世界シェア約40%の獲得を目指す。
(2)小型機の脱炭素化やAAM (Advanced Air Mobility)等環境新技
術適用を見込む次世代航空機市場“CN等の新たな市場”で、他産業
も含めた技術的強みをテコに主導的な立場で開発・ 事業を実施し、
全機/主要系統等のインテグレーション能力を獲得。
・ 更に、それらを支える航空機産業の成長の原動力を生む基盤(部
素材、DX・AI、人材、インフラ、アフターマーケット等)の強化。
② 達成すべき戦略的な目標
・ 航空機の製造に重要な民間・防衛に共通するものを含めた設備
投資や、部素材に関するサプライチェーンについて、今後の更な
る需要獲得に対応し、国内における安定的な供給確保、更に認証
取得に不可欠な設計人材育成を進めることで、競争力強化のレバ
レッジとすることを目指す。
95
2.勝ち筋の特定と官民投資の具体像【道筋】
航空・宇宙
民間航空機(次期単通路機・次世代航空機)
(1)基本戦略
(2)官民投資の具体像
① 勝ち筋
・ 我が国が有する強み(環境新技術、製造技術と品質保証、高精
度生産と高品質保証を支えるDX技術、強靱なサプライチェー
ン)を起点として、次期単通路機では、これまで我が国が参画
できていない仕様設計や認証等の工程に参画することで、シス
テムインテグレーション能力の獲得を目指す。
・ 環境新技術を搭載する次世代航空機(小型)の開発を主導する
ことにより、システムインテグレーションのみならず、ビジネ
スインテグレーション能力の獲得を目指す。
・ 以上を通じて完成機事業創出に必要な能力をステップバイス
テップで獲得し、自律的に付加価値を獲得できる産業構造へと
変化を目指す。
① 投資内容
・ “ボリュームゾーン市場”である次期単通路機市場において、2050年
カーボンニュートラルが求められる中で、排出削減に資する機体、エン
ジンの開発に向け、上流工程から参画することでインテグレーション能
力獲得を目指した技術実証への支援を実施。今後はそれに加え、機体、
エンジン、装備品等の国際共同開発の中での更なる技術レベル向上を目
指した技術実証や、国際共同開発/量産に向けた設備投資を新たに実施。
・ “CN等の新たな市場”において我が国の環境新技術(水素、電動化等)
が次世代航空機に搭載されることを目指し、インテグレーション領域か
ら要素レベルの研究開発を実施。今後はそれに加え、社会実装に向けた
技術実証や国際共同開発に向けた設備投資を新たに実施。更に、環境新
技術における国際標準化を目指した戦略的な取組も継続的に実施。
・ 国内の航空機産業成長基盤(部素材等のサプライチェーン、DX・AI、
試験・実証インフラ、アフターマーケット等)の構築/強化に向けた投
資に加え、完成機事業創出を目指した飛行実証機の開発といった完成機
を目指した実証プロジェクトのプラットフォーム立上げに向けた投資。
・ 投資主体は、民間企業・大学・研究機関・国等
② 我が国として構築すべき機能
・ “ボリュームゾーン市場”、“CN等の新たな市場”の各航空機開発
プロジェクトに上流工程から参画し、完成機事業創出に必要な
能力を獲得する上で必要となる設備等の基盤構築。
・ 我が国が有する強みを更に磨くため、開発製造を支える部素材
等のサプライチェーンや設計/製造/認証プロセスのDX化、航空
機開発に必要な試験・実証のためのインフラに加え、修理/整備
等アフターマーケット市場獲得に向けた設備等を含めた、“航空
機産業成長基盤”の構築。
② 投資額
2040年度までで3.5兆円と想定
③ 定量的インパクト:投資による経済波及効果
2040年度までで16.1兆円と想定
96
3.官民投資促進に向けた課題と政策パッケージ【政策手段】
(1)投資促進に向けた課題
①リソース制約
・資金:先行技術開発投資が大きく、投資回収
までに時間がかかる。
・人材:高い技術力や厳格な安全認証、高レー
ト生産ヘの対応が不可欠である一方、専門的
かつ国際的な専門人材が不足。工程の現代
化・認証取得や試験・実証に知見を有する人
材育成が不可欠。
・基盤強化:研究機関(JAXA等)の試験・実証イ
ンフラ基盤の不足や老朽化等により、必要な
試験等の実施が限定的となる懸念。また、
MROを行う事業が存在感を増しつつある中、
我が国の整備キャパシティが不足。
②不確実性の要因
・市場:巨額の先行投資と長期的な開発期間を
要するにもかかわらず、投資回収には更に数
年を必要とするため、デジタル技術を用いた
開発製造のプロセス革新の取組が不可欠。国
内に完成機を製造するOEMがおらず、海外
OEMの開発動向に左右される。国際規格が海
外主導で標準化。完成機事業の経験を有する
海外OEMとの踏み込んだ国際的な体制構築が
不可欠。
・サプライチェーン:航空機向けの高品質な部
素材のサプライチェーンは、欧米の一部事業
者により寡占化。世界的に供給力がひっ迫。
・環境負荷:2050年CNに向け、代替燃料ヘの
展開のみならず、環境新技術の導入等と組み
合わせなければ目標達成は困難。
(2)講じるべき政策パッケージ
航空・宇宙
民間航空機(次期単通路機・
次世代航空機)
①国内投資支援
・ボリュームゾーン市場(次期単通路機)については、上流工程から参画するために必要な技術実証や、国際共同開発
フェーズにおける開発、更には、最終組立て含めた量産体制構築に向け、設備投資等を支援。足下では、国際共同開発で、
次期単通路機搭載を目指した次世代エンジンの実機レベルの製造/技術実証を支援。
・CN等の新たな市場(次世代航空機)については、現在国内で要素技術開発を実施している環境新技術(水素、電動化等)
について、今後小型機の脱炭素化やAAM(Advanced Air Mobility)等の新たな市場での社会実装に向け、海外OEMとの国
際共同開発を実施する際に必要となる開発投資において、設備投資等を支援。我が国が技術的な強みを有する、高効率/
高出力の実現が可能となる超電導システム等の社会実装に向けた実証を支援。
・国内の「航空機産業基盤」強化に向け、開発製造を支えるDXやAIの活用促進、試験実証インフラの整備、国内での戦略的
な鋳鍛造品を含む部素材の研究開発及びサプライチェーンの構築・強靱化や経済安全保障に資する技術基盤強化、修理/整
備等基盤構築の投資を支援。足下では次期単通路機搭載エンジン開発の高温・高圧部へ参入するため、軽量・高強度のセ
ラミック複合材や、世界的に供給能力が不足している粉末冶金等、サプライチェーン強靱化に向けた量産能力獲得に向け
た投資を支援。
②需要創出・市場確保・社会実装支援
・ 日本企業が持つ優れた環境新技術(水素、電動化等)の技術開発動向を踏まえ、社会実装及びプレゼンス向上に向け、戦
略的に国際標準化を進める取組の支援。併せてSAFの製造プロジェクトについて、国際競争力のある価格で安定的にSAF
を供給できる体制の構築を支援。
・ 有人機と無人機の認証経験のシナジーを見据えた認証に係る官民のノウハウの共有・蓄積のための取組や、機体設計/運
航管理/ソフトウェア開発などの実務人材の育成を支援。
・ 実験機プロジェクトをJAXA等を中心に展開し、人材育成、試験・認証能力開発を支援。
・ 日本企業の競争力強化に向けた、ASEAN航空機製造市場におけるシェア獲得の取組を支援。
・ 経済安全保障上の重要性が高く、民間航空機市場とのシナジー効果も高い防衛市場の需要の取り込みにもつながる技術開
発・技術実証等の取組や生産基盤への投資を支援。
③立地競争力強化
・ 国際的な安定供給に向けた戦略的なサプライチェーン強靱化を支援。
・ 開発製造を支える環境(DX・AI、試験・実証インフラ、飛行実証環境等)のJAXA・民間事業者等による戦略的な整備を
支援。
・ アフターマーケット市場において、外需獲得に向け、地域未来戦略と連携しながら、成田国際空港周辺における産業集積/立地等に資
する取組を支援。
④国際連携
・ 国際連携の中で完成機事業の創出に必要な能力を獲得し、自律的な産業規模の拡大を可能とする産業構造の構築に向け、
完成機事業の経験を有する海外OEMと踏み込んだ国際的な体制の構築を実施。
・ 国際連携の中で設計の上流過程に参画し、認証取得に不可欠となる「設計人材」の育成を実施。
97
航空・宇宙
民間航空機(次期単通路機・
次世代航空機)
方向性
〇現状認識・強み
双通路機の実績や製造技術、品質保証等の強みを活かし、インテグレーション能力を獲得すべく、次期単通路機については仕様設計・認証等への
参画に向けた技術実証や開発・量産体制構築を行うとともに、次世代航空機については開発・国際標準化を主導する。こうした、海外OEMとの国
際共同開発のための投資や認証取得能力の向上等により、サプライチェーンの強靱化や人材の育成とあわせて、自律的に発展可能な国内技術基盤
を確立する。
我が国の勝ち筋
【主な課題(ボトルネック)】
•
国内に完成機OEMがおらず、海外
OEMの開発動向に左右
•
環境新技術を含む先行技術開発や
生産能力増強に向けた投資額が大き
く、投資回収までに時間がかかる/安
全認証に対応する専門人材不足
•
【目指すべき姿】
【講じるべき施策】
•
次期単通路機については、技術実証や、国際共同開発フェー
ズにおける開発、さらには、最終組み立て含めた量産体制構築
に向け、設備投資等を支援。
•
CN等の新たな市場(次世代航空機)については、現在国内
で要素技術開発を実施している環境新技術(水素、電動化
等)について、設備投資や、戦略的に国際標準化を進める取
組等を支援。
試験設備の不足や老朽化/部素材
サプライチェーン・アフターマーケットの
キャパシティ不足
•
国内の「航空機産業基盤」強化に向け、民間・防衛に共通する
ものを含め、開発製造を支えるDX、試験実証インフラの整備、
部素材の国内での戦略的なサプライチェーンの構築・強靱化、
並びに修理/整備等基盤構築の投資や認証取得に不可欠な
人材育成を支援。
国際連携による完成機事業の創出
を目指し、約6兆円/年規模以上
の市場獲得を狙う。
(1)次期単通路機:
事業基盤を含めた、インテグレーショ
ン能力獲得。
機体:2050年までに約8,000機製造
エンジン:世界シェア約40%の獲得
(2)次世代航空機:
全機/主要系統等のインテグレー
ション能力を獲得。
98
航空・宇宙
②無人航空機
99
1.現状認識と目指す姿【目標】
航空・宇宙
無人航空機
(1)現状
(2) 目標
① 現状
・無人航空機は、既に多数の機体が航空法上の登録を行い、人手不足が深刻化する産業の中
で、無人航空機が効率化・無人化に寄与する用途において、重要なインフラ機能を果たし
ている。
・無人航空機の世界市場シェアは単独の国が7割以上を占め、バッテリなどの重要部品につ
いても当該国が大きなシェアを持つ。一方我が国では、スタートアップを中心に技術開発
は進むものの、本格的な量産体制は整っていない。
・試験設備の能力不足により、機体開発において地上試験(風洞試験等)で実施可能な内容
が限定的で、実際に飛行させての試験への依存度が高い状況。一方で飛行試験ができる環
境は不足しており、技術開発や認証のボトルネックになり得る。
① 国内外で獲得を目指す市場
・安定供給及びサイバーセキュリティの確保
が特に求められる国内の点検・物流・防犯
用途に対して、安定的に機体・重要部品を
供給するため、2030年時点で8万台の機
体・重要部品の供給確保を目指す。
② 取り巻く環境と構造変化
・国際的緊張の高まりから、機体・部品の供給停滞リスクへの対応の重要性が増している。
・今後の市場拡大には、操縦者の目の届く範囲での飛行だけでなく、ラストワンマイル配送
や長距離・広域の自律巡回など目視外飛行(レベル3・4飛行)での新たなビジネスモデ
ルを実現させる必要がある。
・防衛分野では、消耗品としての性質が強いことから、防衛ニーズに応じて、増産やアップ
デートを円滑かつ迅速に実施できることが重要であり、この観点から、無人航空機の国内
生産基盤の構築が急務。
② 達成すべき戦略的な目標
・国内での機体・重要部品の量産体制を構築
することで、無人航空機の海外製への依存
度低減を目指す。
・目視外飛行での事業を持続的に行える機体、
運航管理システム、飛行オペレーション、
地域受容性の実現を目指す。
・我が国防衛に必要な小型無人航空機を、タ
イムリーに十分な量を開発、生産、維持整
備できる生産・技術基盤の構築。
③ 経済的・戦略的な重要性
・経済的重要性:無人航空機は、民生・防衛の双方で国内外の需要が大きく拡大しており、
目視外飛行による新市場開拓への期待も高いことから、世界市場で24年約1兆円から30年
約1.5兆円、日本市場は同約1100億円から約2700億円への伸びが予測される。
・戦略的重要性:点検、農業、土木建築などで効率化・無人化のために不可欠な機器であり、
防衛強化の観点でも重要な装備品であることから、安全保障上重要。
100
2.勝ち筋の特定と官民投資の具体像【道筋】
航空・宇宙
無人航空機
(1)基本戦略
(2)官民投資の具体像
① 勝ち筋
・機体・重要部品の安定供給を確保するため、量産体制を構築する。
・ユーザーニーズに沿って海外機体と差別化していくため、国産機体へのニーズが大き
いサイバーセキュリティが重視される分野での市場拡大を目指す。防衛調達を民生市
場における競争力強化等につなげつつ、重要部品サプライチェーンの国内構築による
安定供給性も強みとして打ち出していく。
・安全保障協力関係の強化の観点も含め、国際的な協力枠組みの中で無人航空機に係る
同盟国・同志国での市場獲得を目指す。
・我が国では、目視外飛行が有効な対策となる災害対応、インフラ老朽化、物流人手不
足などの社会課題が多数発生し、世界でも突出したこれらの需要が開発を牽引してい
る。目視外飛行での新たなビジネスモデルによる事業化に向け、自動・自律機能など
技術開発と実証・制度整備・国際標準化を進める。
・中長期的に要求されるAIを活用した自律化などを見据え、競争力の源泉となる要素技
術開発を進める。
・大型の風洞試験等の評価設備を整備することで、大型サイズの無人航空機にも対応し
た飛行試験を模擬することが可能となり、開発期間・費用の大幅な低減につながる。
① 投資内容
・機体・重要部品の量産体制構築(企業、国)
・目視外飛行の事業化など市場獲得に向けた機体・
AI・ソフトウェアに関する技術開発・実証(企業、
大学、国研、 国)
・実機を用いて飛行試験の大部分を模擬できる風洞
試験設備の整備(JAXA)
② 投資額
2040年度までで0.3兆円と想定
③ 定量的インパクト:投資による経済波及効果
2040年度までで5.6兆円と想定
② 我が国として構築すべき機能
・安定供給とサイバーセキュリティの確保された製造機能(重要部品製造、最終製品組
立)
・技術開発・実証機能
・経済安全保障の観点も踏まえた国内産業基盤・技術基盤
・海外の技術や設備では取得できない、認証に有利な試験機能
・専門人材 ・ 産学官を糾合するプラットフォーム
101
3.官民投資促進に向けた課題と政策パッケージ【政策手段】
航空・宇宙
無人航空機
(1)投資促進に向けた課題
(2)講じるべき政策パッケージ
①リソース制約
・人材:認証取得、試験・実証の
知見を有する人材が不足
①国内投資支援
・安定供給確保のための、機体・重要部品の量産体制構築に向けた設備投資支援。
・目視外飛行事業化の鍵となる多数機同時運航の実現に向けた、自動化・自律化に向けたソフトウェア、機体・重要部品、
運航管理システムなどの技術開発、地域と連携した実証、技術進歩等に対応した制度整備の推進。
・特にAI・ソフトウェアを中心に中長期的に競争力の源泉となるスタートアップ等への研究開発への支援(自律・群制御技
術、メッシュネットワーク構築技術(※)、指揮統制ソフトウェア、シミュレーション等を用いた設計など)
②不確実性の要因
・技術・事業:目視外飛行に関す
る技術・ビジネスモデルの経済
合理性に関する不確実性
・市場:国産機体の市場形成の不
確実性、海外機体との競争
・財務:制度整備と並行したス
タートアップ中心での機体開発
に伴う資金調達の困難性、
キャッシュフローの不安定性
・国際環境:重要部品の供給停滞
・国際的な政策:目視外飛行に関
する国際的な統一基準がなく、
諸外国でも制度整備が進行中で
あり、国内外で対応が異なるこ
とによる事業者のコスト増大、
認証に使用する国際規格が海外
主導。また、無人航空機の技術
や調達の大部分を輸入に頼り、
外部からの影響を受けやすい。
・社会:無人航空機の飛行に対す
る地域受容性
※複数のネットワーク機器が相互に接続され、網目状の構造を形成することで、障害が発生しても他の経路を通じて通信を維持できる技術。
・防衛省が、国内生産基盤の構築に配慮し、事業者に対して国産部品の活用を促進しつつ、小型無人航空機を大量に取得す
ることにより、企業の予見可能性を一定程度確保し、新規参入や研究開発、生産設備の導入等の投資を促進。
②需要創出・市場確保・社会実装支援
・調達時に参照できるサイバーセキュリティガイドラインの整備・普及。
・主要国の規制や制度の情報収集と横展開。各国のサイバーセキュリティ水準等への適合に向けた改良支援。
・目視外飛行の事業化促進を図るべく、ⅰ) 自動・自律機能の活用も含めた多数機同時運航の機数拡大、ⅱ) 運航管理シス
テムによる多様な機体の運航支援、ⅲ) VTOL(垂直離着陸)型無人航空機の社会実装の促進、ⅳ) 円滑な電波利用の推
進、等のための制度整備を検討又は実施(ⅲ及びⅳは27年3月までに省令改正等の結論を得次第速やかに措置)。
・有人機と無人機の認証経験のシナジーを見据えた認証に係る官民のノウハウの共有・蓄積のための取組や、機体設計/運
航管理/ソフトウェア開発などの実務人材の育成を支援。
・無人航空機の認証取得を促進するため、認証に使用する規格の国際標準化を推進。
・安全かつ効率的な目視外飛行を促進するため、ドローン航路に係る取組を推進。
・新たな企業の航空産業への参入や国内企業の国際競争力強化促進のため、実機環境を模擬できる低速風洞等をJAXAに整
備。また、試験技術を維持向上し企業に提供するための専門人材をJAXAに継続的に確保
・実験機プロジェクトをJAXA等を中心に展開し、人材育成、試験・認証能力開発を支援。
③立地競争力強化
・開発製造を支える環境(DX・AI、試験・実証インフラ、飛行実証環境等)のJAXA等による戦略的な整備を支援。
・福島ロボットテストフィールドを中心とした飛行実証環境の充実。
④国際連携
・PIPIR、OSAなどの枠組みにおける同盟国・同志国との機体供給やサプライチェーン協力に向けた議論の推進。
102
航空・宇宙
無人航空機
方向性
〇現状認識・強み
•
無人航空機は、既に多数の機体が航空法上の登録を行い、人手不足が深刻化する産業の中で、無人航空機が効率化・無人化に寄与する用途にお
いて、重要なインフラ機能を果たしている。防衛調達を民生市場における競争力強化につなげつつ、国内のサイバーセキュリティが重視される
分野や、単独国への集中的な依存の低減を図る同盟国・同志国の市場獲得を目指す。
•
我が国では、災害対応、インフラ老朽化、物流人手不足など、高精度での目視外飛行が有効となる環境が身近にあることから、目視外飛行での
新たなビジネスモデルによる事業化に向け、自動・自律機能など技術開発と実証・制度整備・国際標準化を進める。
我が国の勝ち筋
【主な課題(ボトルネック)】
海外製への依存、重要部品
の供給停滞リスク、海外機
体との競争の中での国産機
体の市場形成
目視外飛行の事業化に向け
た技術・ビジネスモデルの
不確実性
目視外飛行に関する国際的
な統一基準がなく、諸外国
でも制度整備が進行中
【目指すべき姿】
【講じるべき施策】
•
•
•
•
•
民生・防衛需要に向けた機体・重要部品の
設備投資支援
認証取得を促進するため、認証ノウハウの
蓄積や認証に使用する規格の国際標準化
目視外飛行の事業化促進に向けた技術開
発・実証と制度整備
自動化・自律化に向けたAIなどソフトウェ
ア開発
サイバーセキュリティガイドラインの整
備・普及
•
•
安定供給及びサイバーセキュリ
ティの確保が特に求められる国
内の点検・物流・防犯用途に対
して、 2030年時点で8万台の
機体・重要部品の供給確保を目
指す。
目視外飛行での新たなビジネス
モデルによる事業化を図る。
103
航空・宇宙
③空飛ぶクルマ
104
1.現状認識と目指す姿【目標】
航空・宇宙
空飛ぶクルマ
(1)現状
(2) 目標
① 現状
・空飛ぶクルマは、世界的に技術開発段階にあり、機体・サービス市場は未成立。
・各国において、スタートアップや既存の航空機製造業を中心に、空飛ぶクルマによって空
の移動やライフスタイルに変革が起き、人々のニーズに応じた多様なサービス市場が創出
され、それに応じて機体市場も飛躍的に拡大することを見越し、積極的に開発競争が展開。
・我が国でも、国内のスタートアップを中心に安価かつコンパクトな機体や、ハイブリッド
機体を開発中。
・試験設備の能力不足により、機体開発において地上試験(風洞試験等)で実施可能な内容
が限定的で、実際に飛行させての試験への依存度が高い状況。また、飛行試験ができる環
境は不足しており、技術開発や認証のボトルネックになり得る。
① 国内外で獲得を目指す市場
・スタートアップが開発を行っている国内機体
について、欧米製機体と差別化が可能な路線
(都市内運航、観光などの短距離路線)を中
心に、国内外市場の獲得を目指す(2040年
頃:約1500億円)。
・国内サプライヤーでは、国内外の部品・
MRO市場(特に付加価値の高い分野)にお
いて、主たる地位とシェアの獲得を目指す。
② 取り巻く環境と構造変化
・開発状況では、欧米メーカーが一歩先を歩んでおり、欧米航空当局への機体認証取得に向
けた動きも進んでいると見られている。
・国内では、空飛ぶクルマの社会実装を目指し、官民協議会のもとで制度整備・環境整備を
進めており、国内での商用運航の開始時期を2027年・2028年と明確化したところ。また、
いくつかの地域では、地域の特長を活かした取組を地元企業や関連事業者と連携し、社会
実装に向けた取組を実施中。
③ 経済的・戦略的な重要性
・経済的重要性:空飛ぶクルマは、革新的な移動手段として人・物の移動や地域経済を活性
化させるとともに、機体・サービス・インフラなど新たな産業や需要を創出、2040年時点
での世界市場規模は約1.5兆ドルと予測。開発で先行する欧米メーカーが世界シェアを先行取
得する可能性があり、国産機体の早期参入には、OEMや裾野産業における要素技術開発や設備
投資が重要。
・戦略的重要性:機体開発において必要な設備やサプライチェーン、人材等は防衛産業と共
通部分も多くシナジー効果が高く安全保障上も重要。
② 達成すべき戦略的な目標
・他産業からの新規参入や既存の航空機部品産
業からの事業拡大など、空飛ぶクルマ向け部
品の開発・提供などにより、航空産業の新た
なサプライチェーンを構築し、自律性の確保
を目指す。
105
2.勝ち筋の特定と官民投資の具体像【道筋】
航空・宇宙
空飛ぶクルマ
(1)基本戦略
(2)官民投資の具体像
① 勝ち筋
・開発支援を行っている国内機体(マルチコプター型)は、都市内運航や観光などの短
距離路線で強みを持ち、これらのニーズがある都市及び観光地において価格競争力を
活かしながらビジネスモデルを構築し、市場展開する。
・並行して、公共交通が未発達かつ人口が集中する東南アジア等の都市では、都心部の
約十km圏内で長時間にわたる交通渋滞が日常的に発生。こうした短距離移動での混
雑を回避したいニーズが高い海外市場も獲得していく。
・自動・自律飛行の実現により、パイロット費用削減・乗客数増により、運航コストが
低減する。また、ハイブリッド化により航続距離が延長され、運航路線を拡大させて
いく。
・我が国が培ってきた航空機部品・自動車産業といったノウハウを活用することで他産
業からの新規参入や既存の航空機部品産業の事業拡大に繋げていく。
・海外では実機サイズを試験できる風洞試験等の評価施設が存在しており、大型の風洞
試験等の評価設備を整備することで、実機サイズに対応した飛行試験を模擬すること
が可能となり、開発期間・費用の大幅な低減につながる。
① 投資内容
・機体開発及び要素技術開発(スタートアップ含
む企業、国)
・生産設備や離着陸場(バーティーポート)等の
整備(スタートアップ含む企業、国)
・実機を用いて飛行試験の大部分を模擬できる風
洞試験設備等の整備(JAXA)
② 我が国として構築すべき機能
・社会実装・認証支援
・技術開発・実証機能
・海外の技術や設備では取得できない認証に有利な試験機能
・専門人材 ・ 産学官を糾合するプラットフォーム
・上記の構築を通じた産業集積の形成
② 投資額
2040年度までで0.4兆円と想定
③ 定量的インパクト:投資による経済波及効果
2040年度までで1.9兆円と想定
106
3.官民投資促進に向けた課題と政策パッケージ【政策手段】
(1)投資促進に向けた課題
①リソース制約
・人材:認証取得、試験・実
証の知見を有する人材が不
足
・インフラ:離着陸場(バー
ティーポート)等のインフ
ラ整備不足
②不確実性の要因
・技術・事業:市場が未成立
である空飛ぶクルマに関す
る技術・ビジネスモデルの
経済合理性に関する不確実
性
・市場:国産機体の市場形成
の不確実性
・財務:認証取得に向けた長
期の航空機開発に伴うキャッ
シュフローの不安定性
・政策:認証に使用する国際
規格が海外主導で標準化、
機体開発と並行した制度整
備が国際的に進行中
・社会:空飛ぶクルマの飛行
に対する社会的受容性の構
築
航空・宇宙
空飛ぶクルマ
(2)講じるべき政策パッケージ
①国内投資支援
・スタートアップをはじめとした革新的技術の社会実装を後押しするため、バッテリ性能向上、機体軽量化、動力ハイブリッ
ド化、遠隔・自動・自律飛行、シミュレーション等を用いた設計など、経済安全保障の視点やデュアルユースも想定した研
究開発支援
・国内外の空飛ぶクルマメーカーのサプライチェーンへ参入に向けた部品開発や生産設備の導入支援
②需要創出・市場確保・社会実装支援
・空飛ぶクルマのコスト、利便性、安全性の実証を含めたビジネスモデル検証を行うことによるサービス市場確立と機体の需
要創出
・空飛ぶクルマの海外市場開拓に向けて、日本企業のイノベーション創出やビジネス展開を支援
・認証取得を促進するため、認証に使用する規格の国際標準化を推進
・有人機と無人機の認証経験のシナジーを見据えた認証に係る官民のノウハウの共有・蓄積のための取組や、機体設計/運航
管理/ソフトウェア開発などの実務人材の育成を支援
・27・28年頃の商用運航開始および30年代以降に向けた多様な機体や高度な運航(30年代前半の空飛ぶクルマ用空域ルート
等の交通管理による高密度運航・遠隔操縦、30年代後半の自動・自律飛行等)に対応した制度整備による社会実装支援
・身近な移動手段となるための十分な数の乗降場所を確保するために、離着陸場(バーティポート)の整備・普及を促進
・空の利用拡大の進展段階に応じた電波利用政策の方向性をとりまとめ、必要な環境整備を推進することで、航空分野の電波
利用を円滑に拡大
・新たな企業の航空産業への参入や国内企業の国際競争力強化促進のため、実機環境を模擬できる低速風洞等をJAXAに整備。
また、試験技術を維持向上し企業に提供するための専門人材をJAXAに継続的に確保
・実験機プロジェクトをJAXA等を中心に展開し、人材育成、試験・認証能力開発を支援
③立地競争力強化
・大阪・関西万博における実証成果を踏まえ、空飛ぶクルマの早期市場形成を目指す関西では、身近な移動手段となるための
十分な数の離着陸場(バーティポート)を確保し、地域未来戦略と連携しながら、実証・実装機能を拡充させる。また、
MRO拠点の整備を主軸に置いた新産業の創出を目指す。
・ 開発製造を支える環境(DX・AI、試験・実証インフラ、飛行実証環境等)のJAXA等による戦略的な整備を支援。
④国際連携
・空飛ぶクルマの開発・運航を計画している各国の航空当局との連携
・展示会・見本市等を通じた機体メーカーとサプライヤーのビジネスマッチングの機会提供
107
航空・宇宙
空飛ぶクルマ
方向性
〇現状認識・強み
•
空飛ぶクルマは、世界的に技術開発段階にあり、機体・サービス市場は未成立。各国において、人々のニーズに応じた多様な
サービス市場が創出され、それに応じて機体市場も飛躍的に拡大することを見越し、積極的に開発競争が展開。
•
開発支援を行っている国内機体(マルチコプター型)は、都市内運航や観光などの短距離路線で強みを持ち、これらのニーズ
がある都市及び観光地において価格競争力を活かしながらビジネスモデルを構築し、市場展開する。
我が国の勝ち筋
【主な課題(ボトルネック)】
•
市場が未成立な中での空飛
ぶクルマのビジネスモデル
の不確実性
【目指すべき姿】
•
欧米製機体と差別化が可能な路
線(都市内運航、観光などの短
距離路線)を中心に、2040年
頃:約1500億円の国内外市場の
獲得を目指す
•
国内外の部品・MRO市場におい
て、主たる地位とシェアの獲得
を目指す。
【講じるべき施策】
運航や離着陸場におけるオペレーションを
通じたビジネスモデルの検証や、社会実装
に向けた制度整備を行うことによりサービ
ス市場の確立と機体の需要創出
•
欧米メーカーの開発先行に
よる国産機体の市場形成の
不確実性
•
•
認証に関する国際的な統一
基準がなく、諸外国でも制
度整備が進行中
•
自動・自律飛行や航続距離延長に向けた要
素技術研究開発、サプライヤー生産設備投
資
•
認証取得を促進するため、認証ノウハウ
の蓄積とともに、認証に使用する規格の国
際標準化を推進
108
航空・宇宙
④ロケット・射場
109
1.現状認識と目指す姿【目標】
航空・宇宙
ロケット・射場
(1)現状
(2) 目標
• 通信、観測、測位、安全保障などで宇宙空間の利用が進み、2030年代における世界の市場規模は
150兆円ともいわれる。人工衛星を打ち上げるロケット・射場は、経済・社会・安全保障に不可欠
なインフラ。
• 米国、中国、欧州、インドはロケット打上げ増。高頻度打上げに向け国主導によるロケット開
発・射場整備を進め打ち上げ能力を向上。
• 米国スペースXはロケット打上げ年160回超(2025年、世界需要の半分)を複数の射場・射点か
らの打上げで実現。中国は官・民ロケットで米国を猛追。欧州・インドでも打上げ能力強化に取
り組む。
• 我が国は、宇宙戦略基金により技術開発を支援。他方、打上げの高頻度化に向けた製造能力・サ
プライチェーン強化や射場設備等のインフラ整備は基幹ロケットや、スタートアップ等による開
発が進む新規参入ロケットともに道半ば。
① 国内外で獲得を目指す市場
• 国内衛星(特に民間衛星)の国内打上げ需
要は2030年頃には少なくとも年30回以上に
なると想定。今後、基幹ロケット・新規参
入ロケットの打上げ高頻度化により、国内
衛星の国内打上げ比率を60~80%(2030
~2040年)以上に引き上げることを目標に
打上げ費用の海外流出を縮小させる。
• 加えて、国内ロケット市場の更なる拡大に
向け、欧米の通信コンステレーション需要
や、アジア・中東地域を始めとした新規の
衛星の打上げ需要を獲得することにより、
2040年には最大年3,000億円規模の打上げ
サービス需要獲得を目指す。
① 現状
② 取り巻く環境と構造変化
• 多数の衛星を軌道上に配置する衛星コンステレーション構築計画が多数発表され、米中を中心に
打上げ回数急増。(2025年:米国(SpaceX含む)192回、中国91回、日本3回)※軌道投入ロ
ケットの打上げ成功数
• 欧印等でも打上げ回数増加に向けた射場整備等の政府支援拡大(欧州・ロケットの打上げ支援実施。
印・年間50機打上げを目指した射場整備発表)
• 他方、我が国では国内打上げの選択肢が少なく国内衛星の多く(政府衛星除く)は海外から打上げ
(国内衛星の国内打上げ:50%(2015-2024年累計))
③ 経済的・戦略的な重要性
② 達成すべき戦略的な目標
• ロケット開発・製造の自律性を向上させる
ため、国内ロケット製造サプライチェーン
を強靱化。
• ロケット打上げの高頻度化を実現するため、
射場・試験設備等の基盤整備を加速。
• 経済的重要性:宇宙分野の世界市場の規模が2030年代で約150兆円と予測される中、宇宙産業や
宇宙関連産業の成長を我が国の更なる経済成長に取り込むことが重要。
• 戦略的重要性:安全保障分野含め、我が国に不可欠な社会インフラとして、我が国の自立的で自
在性を持った宇宙空間へのアクセス手段の確保が重要。
110
2.勝ち筋の特定と官民投資の具体像【道筋】
(1)基本戦略
航空・宇宙
ロケット・射場
(2)官民投資の具体像
① 投資内容
① 勝ち筋
• まずは、基幹ロケット、新規参入ロケットの打上げ能力・信頼性を向上させながら早
【継続】
期の打上げ実績を蓄積し、官民で年10機程度の打上げを確実にする。
• 官民ロケット技術開発支援
• その上で、民間事業者の持つ技術力を最大限活用し、民間主導の取組を促す観点から、
• 打上実証支援(成功実績の積み重ね)
2030年頃までに高頻度打上げに対応できる製造能力向上・射場等インフラ整備への
• JAXA技術基盤
投資を進め、中長期的には、
【新規】
a) 基幹ロケットで10~22機/年
• 製造能力向上・射場等インフラ整備
b) 新規参入ロケットで 20~30機/年
• 設備投資に係る予見性向上等に資するアンカー
の高頻度打上げを目指す。多様な打上げ能力を有するロケット(小型~大型)により、
テナンシー構築(打上げサービスの計画的調達
海外流出している国内打上げ需要を獲得することに加え、アジア地域からの輸送コス
等)
ト、ロケット打上げ需要に対する即応性等の優位性も活かして、アジア・中東・欧州
地域を始めとした海外衛星の打上げ需要を獲得する。
② 投資額
2040年度までで2.3兆円と想定
② 我が国として構築すべき機能
• 打上実証機会の確保、部品等のロケット製造能力の強化、打上げ回数増を見据えた射
③ 定量的インパクト:投資による経済波及効果
点等の施設・設備の整備及び数の増加、それらを支えるサプライチェーンの構築/産
業の集積、試験設備の整備、関連する各種規制への対応
2040年度までで5.5兆円と想定
a) 【基幹ロケット】安全保障を中心とする政府のミッションを達成するため、国内に保持し、宇宙シ
ステムの自立性を確保する上で不可欠な輸送システム
b) 【新規参入ロケット】基幹ロケット以外の近年の技術革新等を通じてスタートアップ等が開発して
いる輸送システム
111
3.官民投資促進に向けた課題と政策パッケージ【政策手段】
(1)投資促進に向けた課題
航空・宇宙
ロケット・射場
(2)講じるべき政策パッケージ
①国内投資支援
①リソース制約
• ロケットの更なる高度化、高頻度打上げ、信頼性向上に向けた技術開発・実証、打上げ実績蓄積に向けた支援。
• 人材:人材不足、経験人材の流
(文部科学省SBIRフェーズ3、宇宙戦略基金、JAXA技術基盤・人的資源強化等)。
動性の低さ等
• ロケット部品等の安定供給に向けた経済安保推進法に基づく特定重要物資支援(ロケット部品等)
• インフラ等:ロケット製造能力、
• 民間事業者の持つ技術力を最大限活用し、国内外の需要に対応するためのロケットの高頻度打ち上げを可能とす
射場・試験設備等射点、ロケッ
る射場・試験設備等の整備に向けた支援策(JAXA大型試験設備の整備・共用等を含む)。
ト・衛星組立棟、燃焼試験場、
• ロケット開発・製造等への投資インセンティブを強化するための研究開発税制・戦略技術領域(宇宙)/大胆な
燃料製造保管設備、追跡管制設
投資促進税制。
備等の不足・老朽化
②不確実性の要因
• 事業・技術:打上げ失敗リスク
が事業継続に直結し、開発期間
や打上げ再開までの期間が長期
化(失敗時の原因究明及び対策
等)
• 市場:米国中心とした打上げ供
給の急拡大による価格競争
(SpaceX, Rocket Lab等)
• 財務:大規模な先行投資が必要、
回収までの期間が長い、官需依
存性が高い
• 国際環境・政策:安全保障上の
理由等で顧客が制限される可能
性
• 社会:失敗・リスク許容による
打上促進の更なる醸成(実証累
積に向けた失敗への寛容)
②需要創出・市場確保・社会実装支援
• 国内外の打上げ需要獲得支援(宇宙戦略基金における国内打上げ原則、海外市場開拓支援等)。
• 民間主導の投資を促す観点から設備投資に係る予見性向上等に資するアンカーテナンシー構築(打上げサービス
の計画的調達等)。
• 宇宙分野においてロケット開発・製造等に係る多様な人材を確保するための宇宙スキル標準の活用の推進。
• 宇宙輸送技術の規格化・標準化の推進(新規射場のインターフェース規格化支援等) 。
• 宇宙活動法改正含め高頻度打上げや多様な宇宙輸送形態に関連する各種制度及び体制の整備・改善。
• JAXAに蓄積されている知見の民間活用(H3ロケットにおける民間事業者役割の拡大、技術移転等) 。
③立地競争力強化
• 宇宙分野においてロケット開発・製造等に係る多様な人材を確保するための宇宙スキル標準等の整備による人材
獲得・人材流動性の向上。
• 地域未来戦略と連携しながら、ロケットの高頻度打上げを可能とする射場整備、特区制度の活用による規制改革
等の推進。
(※分野横断的な課題でもあるため、成長戦略会議における分野横断的課題の担当大臣と連携を図る)
④国際連携
• 宇宙戦略基金における、各国宇宙機関の協調による「Co-funded事業推進枠組み」を使用した技術開発。
• ロケットの更なる高度化等に向けた国際協力による新技術等の獲得(CALLISTOプロジェクト(再使用)等) 。
112
航空・宇宙
ロケット・射場
方向性
現状認識、日本の強み
ロケットの信頼性を向上させながら、打上げ実績を早期に蓄積し、高頻度打上げに対応できるロケットの国内製造能力
と射場整備等につなげ、多様なロケット(小型~大型) ※により、海外流出している需要を獲得することに加え、輸送コ
ストや即応性等の強みを活かして、国内やアジア等の衛星の打上げ需要を獲得する。
※基幹ロケットや新規参入ロケット
我が国の勝ち筋
主な課題
(ボトルネック)
・ロケット製造能力の不足
・射場や試験設備等の不足
・大規模な先行投資が必要
にも関わらず投資回収ま
での期間が長い
・海外との受注競争
等
目指すべき姿
講じるべき施策
・技術開発・実証に加え、民間事業者の持つ技術力を最大限
活用し、民間主導の取組を促す観点から、ロケットの国内製造
能力向上、射場や試験設備等の整備、民間企業の投資予見
性を高める取り組み等が必要である。
技術開発
+
技術実証
ロケット
射場設備等
試験設備等
製造能力向上
アンカーテナンシー等
投資予見性を高める取組
・打上げ費用の海外流出を縮小
国内衛星の国内打上げ比率を60~
80%(2030~2040年)以上(2030年
頃に年30回以上の打上げを想定)
・アジア・中東・欧州等の新規
の衛星の打上げ需要を獲得
※2040年には最大年3,000億円規模の
打上げサービス需要獲得
113
航空・宇宙
⑤人工衛星・サービス
114
1.現状認識と目指す姿【目標】
(1)現状
① 現状
・人工衛星(地球観測、衛星通信、測位)及びそのデータを活用したサービスは、
防災、国土強靱化、食料安全保障等にも貢献する投資分野。
航空・宇宙
人工衛星・サービス
(2)目標
① 国内外で獲得を目指す市場
・衛星について、2030年代早期に、国内の民間企業等による衛
星システムを5件以上構築するとともに、主要な通信・衛星
・世界の宇宙市場は、衛星通信・測位・地球観測などの民間利用拡大を背景に、2030年代半ばにかけて
データ利用サービスを国内外で新たに30件以上社会実装する
1兆ドル超と推定(世界経済フォーラム等)。
ことを目標(宇宙戦略基金・基本方針)。
・衛星は多数の高精度部品から構成され、そのサプライチェーンのすそ野は広い。
一部の重要部品・中核技術は海外が先行し、我が国も同志国を中心とする海外に
依存。
・衛星用太陽光発電セル、小型光通信端末等を海外から購入しているが、海外の衛星需要の増大に
よって日本への提供が滞るという供給リスクも存在。
・JAXAや宇宙戦略基金等で衛星関連技術の開発を進めてきており、官民で先進的
技術・知見を保有。他方、衛星通信や衛星データの利活用サービスについては
実装・拡大の途上。また、製造や試験等を行う設備不足も課題。
② 取り巻く環境と構造変化
・衛星サービスはグローバル前提のビジネスであるが、通信衛星コンステレー
ションを始めとして米欧中のグローバルプレーヤーが世界を席巻しつつあり、
安全保障やサプライチェーンのリスクが増大。
・人工衛星等の打上数、米国: 3,718機、中国:371 機、欧州: 147機、日本: 33機 (2025年)
・また、光通信サービス、高付加価値な観測サービスや高精度
測位サービスの提供による海外需要の取り込みや通信・データ
利活用の国内外需要を拡大・開拓し、衛星製造・運用と衛星通
信・データ利活用で2040年に約12兆円規模の日本企業の国内
外での需要獲得を目指す。
② 達成すべき戦略的な目標
・民需とともに、防災・国土強靱化・安全保障・食料安全保障等に
おける政府・自治体の継続的なサービス調達や衛星開発を通じ
て、我が国として自律的に衛星システムを維持・運用できる能
力を確保するとともに、衛星通信・地球観測・測位データを利
活用したサービス産業の国内確立を加速する。
・また、海外展開・需要取込みも図りつつ、同分野を成長産業
として定着させるとともに、今後の世界の衛星通信・観測・測
位インフラにおける中核技術の確立・サービス展開を通じて、
③ 経済的・戦略的な重要性
宇宙分野において不可欠な存在として確固たる国際的地位を
・経済的重要性: 衛星製造産業に加え、市場規模の大きい通信・地球観測・測位デー
築いていく。
タの利活用(スマート農業等)を通じ、各産業への影響大。
・あわせて、衛星搭載部品の国産率向上を含むサプライチェー
・戦略的重要性: 中核技術の確立・実装支援等によって国際競争力のある国家イン
ンの強化を推進する。
フラを構築することは、我が国の自律性を確保するとともに、他国における不
可欠性の確保にも繋がる。
115
・製造、運用ならびにデータ通信等に関する技術開発が進展し、新たな利活用の
可能性が拡大するも、サービス展開のための初期投資が不足。
2.勝ち筋の特定と官民投資の具体像【道筋】
航空・宇宙
人工衛星・サービス
(1)基本戦略
(2)官民投資の具体像
① 勝ち筋
・通信・測位・観測衛星データ利活用等
の需要側について政府によるアンカー
テナンシーを通じて予見性をもたせつ
つ(需要側)、リアルタイム・高精度・
複合観測・光通信・燃料補給等軌道上
サービス・測位等の中核技術の開発や国
内外の需要獲得を支えるサービス実現
に向けた地上局等の設備整備等の産業
基盤強化を促す(供給側) 。 これら
により、国際競争力を有するスケール
の国産システムによる国家インフラの
構築による自律性を確保するとともに、
国外(他国)における不可欠性の確保
も目指す。
① 投資内容
【継続】
・測位・観測等の官民衛星、衛星光通信、燃料補給等軌道上サービス、データ利用システム等の
技術開発
・民間サービス拡大・競争力強化のためのJAXAによる技術の橋渡し・設備整備及び民間共用
・G空間情報の基盤となるみちびき7機体制の早期構築、11機体制に向けた開発加速
・情報収集衛星の10機体制が目指す情報収集能力の早期達成
・安全保障ニーズを踏まえた高度技術(RPO(※)、デジタルツイン、オンボードAI処理等)の獲得
② 我が国として構築すべき機能
・国内を中心とした技術開発・生産基盤の
強化・試験施設等の整備、地上局を含む
グローバル規模の衛星システムの構築、
ユーザー官庁によるアンカーテナン
シーの一層の促進。
※接近・近傍活動(Rendezvous and Proximity Operations)。宇宙空間において衛星やデブリなどの対象物
に対して、接近・近傍での操作を行う技術であり、宇宙領域把握や衛星防護のみならず、燃料補給やデブリ除
去等のサービスでも活用が期待。
【新規】
・防災・インフラ点検・農林水産分野等の国土強靱化・社会課題解決、安全保障に資する我が国
の衛星システムのアンカーテナンシーの強化
・我が国の宇宙分野における不可欠な存在としての国際的地位の獲得や持続的な国家インフラの
構築に向けて、グローバルにサービス展開が可能な規模の衛星システムの中核技術(リアルタ
イム・高精度・複合観測、光通信・燃料補給サービス等)の獲得、サービスの開発、衛星配備、
地上局等の設備投資等の社会実装加速化
② 投資額
2040年度までで6.4兆円と想定
③ 定量的インパクト:投資による経済波及効果
2040年度までで30.6兆円と想定
116
3.官民投資促進に向けた課題と政策パッケージ【政策手段】
航空・宇宙
人工衛星・サービス
(1)投資促進に向けた課題
(2)講じるべき政策パッケージ
①リソース制約
・人材不足(設計・開発~製造・運用)
・インフラの不足・未整備(製造施設(生
産量・工場用地・生産速度等)、衛星試
験設備、地上局等)
・軌道上実証機会の不足(※ロケット・射
場分野とも連動)
①国内投資支援
・中核技術(官民衛星(測位、リアルタイム・高精度・複合観測等)、衛星光通信、燃料補給等軌道上サー
ビス等)の開発支援、長期的な開発計画のコミットによる予見性の向上
・JAXA試験・実証設備の増強とその民間共用
・安全保障ニーズを踏まえた高度技術(RPO、デジタルツイン、オンボードAI処理等)の獲得
②不確実性の要因
・事業・技術:搭載部品(海外調達品)の
調達遅延、新技術社会実装(衛星光通
信等)、開発期間長期化、試験設備不
足による実証遅延、打上げ/実証機会
の逸失
・市場:通信衛星コンステレーションを
始めとした国際競争激化(ハード・ソ
フト)、市場への参入遅延、システム
の展開や衛星投入の将来計画・見通し
が未共有(高コスト化)
・財務:一定程度の規模に到達するまで
売上が立たない。一部衛星メーカーで
は官需依存率高、利益率等による自主
投資への忌避(国費依存傾向)
・国際環境・政策:周波数調整、スペー
スデブリへの対応
・社会:衛星データの社会受容可否
②需要創出・市場確保・社会実装支援
・防災・インフラ点検・農林水産分野、安全保障関連の調達を始めとする国や自治体等による調達強化
(アンカーテナンシーの強化)及びそれを通じた民間資金の呼び込み
・海外市場開拓に対する支援(政府系金融機関等による支援等)
・スタートアップの育成(初期需要創出のための実証事業等)
・民間サービス拡大・競争力強化のためのJAXAによる技術の橋渡し
・今後の衛星通信、観測、測位インフラにおける中核技術及びサービスの開発・設備投資・グローバル
市場獲得のためのサービス実装に向けた地上局整備等の産業基盤強化等
・衛星コンステレーションに係る許可制度の簡素化・迅速化等による事業化の加速支援
・ロケット・射場の整備(当該ロードマップ参照)
③立地競争力強化
・投資促進に際しての課題等を踏まえ、例えば、以下のような制約要因の解消等の立地競争力強化を
図る
- 宇宙スキル標準等による人材獲得・人材流動性の向上
- 研究開発税制・戦略技術領域(宇宙)/大胆な投資促進税制
④国際連携
・自律したサプライチェーンの強化を前提とした同志国等との関係構築
・ODAやOSA、国際機関との協力を呼び水としたグローバル・サウスでの潜在的需要の確保
・宇宙戦略基金における、各国宇宙機関の協調による「Co-funded事業推進枠組み」を使用した技術
開発
117
航空・宇宙
人工衛星・サービス
方向性
現
状
認
識
● 我が国は、JAXAをはじめ、官民で先進的技術・知見を保有しているのが強み。一方、一部の重要部品・中核技術は海外が先行し、依存している状況。
また、衛星通信や衛星データ利活用の分野では、サービス展開・拡大において途上。地上試験設備の脆弱性(老朽化、限定された設備)も開発スピードの足かせに。
米欧中のグローバルプレーヤーが世界を席巻しつつあり、安全保障やサプライチェーンのリスクが増大。
●衛星サービスはグローバル前提のビジネスであり、アンカーテナンシーを通じて予見性を持たせつつ(需要側)、中核技術(リアルタイム・高精度・複合観測・光通
信・燃料補給等の軌道上サービス・測位等)の開発や国内外の需要獲得を支えるサービス実装に向けた地上局等の設備整備等の産業基盤の強化を促す(供給側)。こ
れらにより国際競争力を有するインフラ構築による我が国の自律性を確保するとともに、他国における不可欠性の確保も目指す。
我が国の勝ち筋
‣‣‣‣‣‣‣‣
主要な課題
(ボトルネック)
講じるべき施策
・商用衛星光通信端末を始め、一部
の重要部品・中核技術は他国が先行
・生産体制(含;サプライチェーン)や
インフラとなる試験設備・地上局
等が脆弱・未整備
・軌道上における実証機会の圧倒的な
不足
・政府アンカーテナンシーの不足
製
造
地上試験
実
証
(軌道上)
実
装
運
用
・国内外の需要獲得のための高精度観測衛星、高速・
大容量通信のための衛星光通信、燃料補給等の軌道上
サービス、高精度測位等の中核技術の開発支援・サービ
スの社会実装支援と長期的な予見性向上
・グローバル市場獲得のためのサービス実装に向けた地上
局整備等の産業基盤強化
・ JAXA試験設備の強化と民間共用
・ 安全保障・防災・インフラ点検・農林水産分野等の政府アン
カーテナンシーの強化とそれによる民間資金の呼び込み
・民間サービス拡大のためのJAXAによる技術の橋渡し
データ
データ
解析/加工
利活用
・海外市場開拓に対する支援
・ロケット・射場の整備(当該ロードマップ参照)
目指す姿(目標)
・2030年代早期に国内民間企業等による衛星
システムを5件以上構築。主要な通信・衛星
データ利用サービスを国内外で新たに30件
以上社会実装
・衛星製造・運用と衛星通信・データ利活用で
2040年に約12兆円規模の市場獲得を目指す
・我が国として自律的に衛星システムを維持・
運用できる能力を確保するとともに、衛星
通信・地球観測・測位データを利活用した
サービス産業の国内確立を加速
・世界の衛星通信・観測インフラにおける中核
技術の確立・サービス展開を通じた宇宙分野に
おいて世界の中で不可欠な存在へ
・衛星搭載部品の国産率向上含むサプライチェー
ンの強化
118
航空・宇宙
⑥月面探査・低軌道技術
119
1.現状認識と目指す姿【目標】
航空・宇宙
月面探査・低軌道技術
(1)現状
① 現状
【月面開発の現状】
・将来の月面居住、火星探査を見据えた拠点構築、水資源や鉱物資源の探査、フュージョンエネルギーの燃料と
なるヘリウム3などの獲得による人類の活動領域拡大を目指し、米中始め世界各国で月面開発競争が激化。米
国は、現地時間3月24日に月面基地に注力することを公表。3月の高市総理訪米時の米側ファクトシートでも
月面基地への日本の協力を求める内容が記載されるなど、国際パートナーとしての日本への期待が大きい。
・我が国は米国主導の月及び将来の火星探査を見据えた国際宇宙探査計画(アルテミス計画)に参画し、月面開
発を推進してきた。この中で、高精度な月面輸送技術、居住空間を備えた世界初の有人月面探査車(有人与圧
ローバ)の開発に向けた技術等を保有。将来的の月面活動を見据え、月面輸送ビジネスのような宇宙産業に加
え、通信や水資源など地上産業の民間企業も宇宙分野に参入しつつある。
【地球低軌道開発(宇宙ステーション)の現状】
・宇宙ステーションは民間主体への移行(2030年頃~)が予定されており、米国では、官民連携の下、民間企
業が新たに宇宙ステーションを打上げ・運営し、低軌道ビジネスを目指す(半導体製造、ライフサイエンス
(創薬等)、宇宙観光等)。中国・ロシア・インドも独自に建設を進める。
・我が国は、宇宙ステーションへの物資補給機(HTV-X)や実験施設(きぼう)、宇宙デブリ除去など、世界有
数の低軌道技術を保有するが、民間宇宙ステーションでの民間企業同士のビジネスが創出される中、民間企業
が宇宙ステーションを活用したビジネスのグローバルな競争下に晒されることとなる。
② 取り巻く環境と構造変化
・「官から民へ」の動きが加速(民間活力でスピード・コスト競争力の確保等を目指す)
・経済上や安全保障上の重要性が高まり、米中の競争が激化、技術を自立的に保有する動き。
(米国からも日本は国際パートナー・商業パートナーとしての参画が期待され、日米宇宙協力は日米協力の重
要な協力の1つとなっている)
③ 経済的・戦略的な重要性
我が国は月面・低軌道の活動に関する重要技術を有する数少ない国。
(例えば、月面輸送技術は日米露中印、低軌道輸送技術は日米露中のみが保有)
• 経済的重要性:月面・地球低軌道分野の世界市場の規模が2040年で各2.5兆円、3.3兆円と予測される中、長
年にわたり積み上げてきた当該分野の知見を次世代につなげ、宇宙産業や宇宙関連産業の成長を我が国の更
なる経済成長に取り込むことが重要。
• 戦略的重要性:安全保障分野含め、我が国の自律的で自在性を持った宇宙空間へのアクセスの確保が重要。
(2) 目標
① 国内外で獲得を目指す市場
・月面での拠点構築・居住から経済活動が
発展し、 2040年の世界の月面市場は年間
約2.5兆円規模と予測。我が国としては、
2040年に、国内外で約8,000億円/年の市
場獲得を目指す。(PwC (2021,2026)を基に
文部科学省試算)
・宇宙ステーションは民間主体に移行
(2030年頃~)し、2040年の世界の地
球低軌道市場は年間約3兆円規模と予測
(Citi, 2022)。我が国としては、2040年
に、国内外で約3,300億円/年の市場獲得
を目指す。(Citi (2022)を基に文部科学省試
算)
② 達成すべき戦略的な目標
・日本の強みを生かし、技術の開発・商業
化を通じて、我が国の月面・地球低軌道
活動の確保や、これを通じた経済成長を
目指す。
・将来の月面活動を支える着陸機、モビリ
ティ、通信、水資源活用といった月面イ
ンフラ構築に向けて、我が国の官民の月
面利用・技術実証の実績を積み重ねると
ともに、継続的な月面アクセス基盤を確
保する。
120
2.勝ち筋の特定と官民投資の具体像【道筋】
航空・宇宙
月面探査・低軌道技術
(1)基本戦略
(2)官民投資の具体像
① 勝ち筋
・持続的な月面有人活動のためには、まずは月面活動を支える基本インフラが必要(通信・測
位、発電・蓄電、建設・土木、居住施設、資源開発、食料生産、モビリティ)。
・非宇宙を含む幅広い企業に対して、通信・測
位、発電・蓄電、建設・土木、居住施設、モ
ビリティを含む月面インフラ整備に必要とな
る月面機器開発支援や月面利用実証の場の提
供を行い、インフラ整備を進めるとともに、
継続的な月面アクセス基盤も確保する。
・我が国が強みを有する月面移動(有人与圧
ローバ等)、宇宙ステーション輸送(HTV-X
等)、宇宙デブリ除去等の基盤技術の高度
化・商業化も進める。
① 投資内容
【継続】
・月面輸送・着陸機・探査機の開発・製造
・有人与圧ローバの研究開発・製造
・宇宙ステーション輸送機の開発・製造
・将来的な通信・測位、発電・蓄電、建設・
土木、居住施設、モビリティなどのインフラ
整備に必要となる機器の開発等
【新規】
・将来月面活動のための月面機器開発・実証支援
※「月面活動に関するアーキテクチャの検討について」(内閣府)等
・インフラ整備のためには、非宇宙分野も含む多くの企業の参画が必要となるが、現時点では、
月面向けの機器開発や実証のための月面アクセスは、コスト・技術面で参入障壁が高い。
・このため、通信・水資源を始めとする地球上のビジネスの強みを生かして月インフラの整備
が可能な非宇宙を含む企業に対して、月面機器開発支援や月面利用実証の場の提供を行い、
全体感(月面アーキテクチャ)に基づいた効率的な月面インフラ整備を進めるとともに、継
続的な月面アクセス基盤も確保する
・これにより、我が国として、国際協力の下、将来の火星探査を見据えつつ、月面居住を含む
持続的な月面活動拠点の構築や、外需を含む月面市場の獲得を目指す。
・地球低軌道については、官主導から官民協働へと潮流が変化する中で、我が国企業が激しい
競争を勝ち抜き、微小重力実験環境を活用した高付加価値市場の獲得に向けて、輸送技術や
デブリ除去技術等の開発・商業化。
② 我が国として構築すべき機能
・月面機器開発支援・月面利用実証の場の提供、継続的な月面アクセス基盤の確保
・月面移動(有人与圧ローバ等)、宇宙ステーション輸送(HTV-X等)、宇宙デブリ除去等の基盤技
術の高度化・商業化
② 投資額
2040年度までで5.6兆円と想定
③ 定量的インパクト:投資による経済波及効果
2040年度までで24.1兆円と想定
121
3.官民投資促進に向けた課題と政策パッケージ【政策手段】
航空・宇宙
月面探査・低軌道技術
(1)投資促進に向けた課題
(2)講じるべき政策パッケージ
• 月面インフラ整備には、非宇宙を含む多くの
企業(通信、モビリティ、資源、建設等)の
参画が重要だが、月面アクセスの高いハード
ル、高度な月面機器の開発が必要。
• 宇宙ステーションは2030年頃に民間主体で打
上げ・運営する予定だが、民間企業間の激し
いグローバルな競争に晒されることが想定。
強大な資金力を有す米国企業と比べ、我が国
の民間企業の参入が困難。
①国内投資支援
【直接投資】
・通信・測位、発電・蓄電、 建設・土木、居住施設、モビリティを含むインフラ整備に必要
となる月面機器開発支援・月面利用実証の場の提供、継続的な月面アクセス基盤の確保
・有人月面探査車(有人与圧ローバ)、宇宙ステーションへの物資輸送(HTV-X等)、デブ
リ除去等の基盤技術の開発・商業化
・月面移動(有人与圧ローバ等)、宇宙ステーション輸送(HTV-X等)、宇宙デブリ除去等
の基盤技術の高度化・商業化
【間接投資】
・月面・地球低軌道産業の政府によるサービス利用
具体的には、
①リソース制約
・技術:重量・安全性能など極限環境の技術制
約
・資金:巨額の資金及び長期の研究開発
・人材:1回の開発が長期化し技術継承が困難
・インフラ等:製造施設、試験設備
②不確実性の要因
・事業・技術:月面も低軌道も新規市場であり、
市場の獲得が研究開発成果に依存
・市場:市場形成の不確実性、競争環境の激化
・財務:不確実性やリスクにより資金調達が困
難
・国際環境・政策:米中競争に伴う地政学リス
ク、海外政策変更リスク
・社会:打上げ時等の環境への負荷
②需要創出・市場確保・社会実装支援
・現在取り組んでいる、月測位技術、月面インフラ構築技術、測量地盤調査技術、水等の探
査装置開発などを通じて、非宇宙産業を含む企業の参画の下で、将来の月面活動を支える
月面インフラのシステム開発を行い、将来の月面利用産業(需要サイド)を拡大
・月面・地球低軌道産業の政府によるサービス利用をきっかけとした、需要創出や社会実装
支援
③立地競争力強化
・月面・地球低軌道上の我が国の産業活動や国際競争力を支える国内産業の育成
・国産ロケット活用も含む、日本としての技術の自立性や安定したサプライチェーンの確保、
これによる国際競争力強化
④国際連携
・米国の宇宙ステーション運営事業者(CLD企業)と関連日本企業との日米の企業間の連携
促進
・米国・欧州等の同志国との連携によるグローバル市場獲得や安定したサプライチェーンの
確保
・宇宙デブリ低減に向けた国際ルールメイキングへの貢献
122
航空・宇宙
月面探査・低軌道技術
方向性
強み:
・我が国は月面・低軌道の活動に関する重要技術を有する数少ない国。米中の競争が激化する中で米からの日本への期待は大きい。
・米国主導の月及び将来的に火星を目指す国際宇宙探査計画「アルテミス計画」に参画し、持続的な月面有人活動におけるインフラ構築に必
要な、高精度な月面輸送技術、居住空間を備えた世界初の有人月面探査車(有人与圧ローバ)の構築技術、通信・水資源等の月面で
も必要となる高度な地上技術を保有。
・宇宙ステーションへの物資補給機(HTV-X)や実験施設(きぼう)、宇宙デブリ除去など、数か国のみが保有する宇宙ステーション技術を保有
主な課題
(ボトルネック)
•
•
月面インフラ整備には、非宇宙
を含む多くの企業(通信・測位、
発電・蓄電、建設・土木、居住
施設、資源開発、燃料製造、
食料生産、モビリティ等)の参
画が重要だが、月面アクセスの
高いハードル(約2億円/kg)、
高度な月面機器の開発が必要。
宇宙ステーションは2030年頃に
民間主体で打上げ・運営する予
定。民間企業間の激しいグロー
バルな競争に晒されることが想
定。強大な資金力を有す米国
企業と比べ、我が国の民間企
業の参入が困難。
目指すべき姿
勝ち筋
・我が国が強みを有する月面輸送技術等を活用して、月面アーキテ
クチャに基づき戦略的に、地球上での既存ビジネスの強みを生かしな
がら月面開発に挑戦する企業の月面インフラ整備を支援
(月面アクセスのための輸送枠の提供+月面機器開発支援)
・米中露日のみが技術を保有する輸送機(我が国におけるHTVX)の高度化・商業化を通じて、官民協働に移行する新宇宙ステー
ションにおいても貢献を維持することで、日本の民間企業の地球低軌
道へのアクセスを確保
施策
・日本の着陸機で月面に降り、有人与圧
ローバで移動し、探査結果を通信し、水を
循環させ、電力を確保し、拠点を構築し居
住する、月面インフラビジネスの獲得。
(2040年に世界全体で年間約2.5兆円の市場
のうち、日本が約8,000億円の確保を想定)
・半導体や創薬など、微小重力を活かした
実験環境の成果を地球上で実践し、将
来市場を獲得。民間ステーションでも日
本企業が実験できる環境を実現。
(2040年に世界全体で年間約3兆円の市場の
輸送・モビリティ分野への投資
うち、日本が約3,300億円の確保を想定)
・月面着陸機の開発・製造
・有人与圧ローバの研究開発・製造
・宇宙ステーション輸送機の開発・製造
・将来的な通信/測位、発電・蓄電、建設・土木、居住施設、モビリティなどのインフラ整備に必要となる機器の開発等
新たな市場構築に向けた初期実証
・将来月面活動のための月面機器開発・実証支援
※低軌道(地球低軌道)は、高度2,000km以内の地球周回軌道を指し、本資料では主に高度約400kmを飛行する宇宙ステーションを指す。
123
海洋
①海洋無人機(海洋ドローン)
124
1.現状認識と目指す姿【目標】
海洋
海洋無人機(海洋ドローン)
(1)現状
(2) 目標
① 現状
・海洋無人機(海洋ドローン)は、欧米を中心に、石油・ガス開発、安全保障等の分野で、
豊富な資金力を背景に産業化が先行。世界のAUV、USV等の海洋無人機の市場は40-50億
ドル※1。
・日本は、造船技術等を背景に、科学調査・技術開発等の分野を中心に技術基盤を発展させ、
特に深海探査等の分野で強みを生かし世界をリードする取組を展開。
① 国内外で獲得を目指す市場
・海洋無人機の市場は、2030年頃には100億
ドルを超える※1と見込まれる。
・安全保障や石油・ガス開発のみならず、洋
上風力や海面養殖、洋上設備の保守管理、
環境保全など、利用範囲は海洋に関わる広
範な分野に広がっており、新たな産業とし
て大きな成長が期待されるところ、世界市
場で3割※2のシェア獲得を目指す。
注
AUV: Autonomous Underwater Vehicle(自律型無人探査機)、USV: Unmanned Surface Vehicle(無人水上機)
② 取り巻く環境と構造変化
・人口減少等の社会構造変化に対応するため、海洋分野における省人化や生産性向上等が不
可欠な中、AI・センシング・情報処理技術の劇的な進化に伴い、海洋無人機の無人化・高
性能化技術が大きく発展。また、衛星との連携や水中無線通信技術の進展により機体単体
ではなく、複数の機体・機種を「群」として一体的に制御する新たな運用技術等が出現し、
活用可能性が飛躍的に拡大。加えて、共通基盤であるG空間(地理空間)情報の活用や衛
星測位等宇宙との連携に関する議論も進展。安全保障や石油・ガス開発等の既存産業のみ
ならず、洋上風力など新たな産業の出現も含め、適用の機運が高まっている。
・近年、安全保障分野での無人アセットの重要性は格段に増大し、その強化が喫緊の課題。
安全保障上の必要性とそれを実現する需要の拡大のためには、防衛利用と産業化が不可分
なデュアルユース技術としての重要性が格段に上昇。
・加えて、新たな技術の進展に伴い、スタートアップの新規参入等の機運が高まっており、
こうした動向と連動した発展の好機。
③ 経済的・戦略的な重要性
・海洋国家として、安全保障の観点から海を守り、また、成長の基盤として海を活かしてい
くことが重要であり、海洋無人機はその不可欠な要素。
・世界の海洋無人機の市場は年平均8-15%の成長※1が見込まれている一方、産業化は途上で
覇権国は存在しないことから、高付加価値サービスにより国際競争力の獲得が可能。
・無人化・省人化のニーズが急速に高まる中、海洋における作業の多くを代替する可能性の
ある海洋無人機は、海洋産業全般におけるブレークスルーとなり得る。
・G空間情報の収集に向けた戦略においても海洋無人機の重要性が高まっている。
※1:出典:一般社団法人海洋産業研究・振興協会
※2 10年後、40-50億ドル程度(一定の仮定の下で
の試算値)
② 達成すべき戦略的な目標
・海洋国家として、安全保障上の重要性、ま
た、成長基盤としての不可欠性に鑑み、海
洋無人機での国際優位性を確保。
・海洋無人機の製造・販売に加え、それらに
より取得されるデータ・情報等を加味し、
高付加価値モデルとして海外に展開。
125
2.勝ち筋の特定と官民投資の具体像【道筋】
海洋
海洋無人機(海洋ドローン)
(1)基本戦略
(2)官民投資の具体像
① 勝ち筋
・短期から長期までの時間軸の中で、官と民の需要構造、出口としての複数の業形
態、事業性確保までの期間・リスク構造等を考慮し、戦略的な投資の下で、競争
力を獲得する。
・機体単体(ハード)の省人化や高性能化等の技術開発を継続するとともに、複数
の機体・機種の「群」としての利用や周辺技術と併せ、一体的に連動させる運用
サービスや取得する海洋データの利活用の方法(ソフト)も含めたパッケージ全
体で高付加価値モデルを展開する。
・需要の増加が見込まれる機体(AUV、USV等)は、我が国の強みである重工業・
造船業との連携や革新的技術を有するスタートアップへの支援等により高品質か
つ安定的な供給を実現する。
・安全保障や石油・ガス開発、洋上風力など、将来展開の“見える化”を図り、技術
革新→実装→需要の拡大→次の技術革新への投資、という好循環を創出する。
・デュアルユース技術として、戦略的な技術開発や取得データ、情報の高付加価値
化等を狙った高効率な投資戦略の下、国際優位性を確立する。
① 投資内容
・海洋無人アセットの獲得・強化及びこれらを有効活
用するためのシステム・技術(水中充電、水中通信
等)
・利用用途の拡張性、波及効果、国際競争力等の点か
ら高収益性が期待される領域への重点投資
・不確実性を低減させるための先行投資
・新規開拓・裾野拡大への寄与が期待されるリーディ
ングプレイヤー・取組への重点投資
・実証フィールドなど、実証環境・海域の確保
② 我が国として構築すべき機能
③ 定量的インパクト:投資による経済波及効果
2040年度までで9.4兆円と想定
・機体単体の技術開発、関連機器・センサ類の技術開発、「群」制御や周辺技術と
の一体的な運用、海洋データの利活用までをつなぐ海洋無人機関連産業のバ
リューチェーン及び分野横断的(造船・宇宙等)な連携体制の構築。
・利用用途の拡張性、他への波及効果、国際競争力等を考慮した、開発・事業展開
等の工程について、官民で共有し、動向等に応じて適時に更新する体制の構築。
② 投資額
2040年度までで1.2兆円と想定
126
3.官民投資促進に向けた課題と政策パッケージ【政策手段】
海洋
海洋無人機(海洋ドローン)
(1)投資促進に向けた課題
(2)講じるべき政策パッケージ
①リソース制約
・石油・ガス開発、安全保障利用を
背景に先行している欧米企業に比
して、活動の規模が極めて限定的
・勃興期にある中、ヒト・モノ・カ
ネをはじめとする全方位の資源制
約(開発・運用等の専門人材、欧
米の関連企業群との厚みの相違
等)
・先行的取組を実施する実証環境・
海域確保の難しさ
②不確実性の要因
・政府調達の規模・時期など、大規
模需要の見通しの乏しさ
・新たな事業形態であるため、水産
業、海運、港湾等の既存の海洋関
連産業における導入効果等の認知
の低さ
・導入段階での期待と効果への
ギャップに起因する初期ハードル
の高さ
・市場規模、拡大のスピード感等の
不透明性
・新規産業であることに起因する保
険負担の高止まり
・収益性等の事業モデルの成立性の
見通しの乏しさ
・規制上の扱い等の制度面での見通
しの乏しさ
①国内投資支援
・官民協調による、ビジョン、利用用途・利用規模等の見える化を図る。
・官が主導して工程の共有を図り、関連動向等に応じて適時に更新する。
・民間投資を促す、戦略的なプロトタイプ投資を実現する。
・取得データ、情報の高付加価値化等を狙った、戦略的な技術開発に対する支援を充実する。
・デュアルユース技術としての戦略的な方針の下、サプライチェーンの強靭化を図りつつ、国力を増強する。
・複数の機体・機種の「群」としての利用を促進する実証環境を構築する。
・先端的な施設・設備等を有する国立研究機関の機能強化等を通じた産官学の取組を強化する。
②需要創出・市場確保・社会実装支援
・社会実装に向けた実証的取組の実施、実証フィールドの確保を進める。
・SBIR等を活用したスタートアップ支援を充実する。
・国際市場開拓に対する支援を強化する。
・公共調達との連動、府省横断的な取組を進める。特に、複数年度の視点を以て公共調達による初期需要確保
(アンカーテナンシー)を通じた市場形成・拡大に向けた取組を推進する制度の創設に取り組む。その際、DX
や経済成長を生み出す共通基盤であるG空間情報の利用・環境整備における取組や宇宙といった分野との連携
を図る。
・規制上の運用の明確化、複数回手続の一括申請など環境整備を進める。
・不確実性の低減に向けた、導入効果等の向上のための積極的な情報発信、成果の普及を進める。
・極域などの極限環境や特殊条件下で作動するものの開発や他分野への展開を図る。
・社会実装に向けた利活用促進のための普及・啓発等を行う。
③国際連携
・我が国が強みを有する技術基盤を生かした、関係国との協調によるバリューチェーンの形成
・同志国・グローバルサウス等への市場展開を視野に入れた、運用サービスや取得する海洋データの利活用の方
法(ソフト)も含めたパッケージ全体としての展開等による協力関係の構築
・オープン・クローズ戦略(他者と共有可能な技術とそれができず、開発した社で独占的に運用する必要のある
技術とを使い分けることで、市場獲得等を目指す戦略)の下での標準化の推進
④人材
・海洋科学技術に携わる人材の質と層の向上が重要であることから、初等~高等各段階で教育を実施し、裾野を広げ、
意義を発信。
・国立研究開発法人の機能強化等を通じて、海洋科学技術に関する人材の育成と確保を推進し、海洋の研究・開発・
利用を牽引。また産官学公が参画・連携し、海洋における現場体験など単独では実施困難なプログラムを実施。
・国際的に遜色のない水準の達成を目指して女性活躍を推進するとともに、産業界での十分な処遇やキャリアパス、
通信環境整備等の魅力ある労働条件及び労働環境の整備を促す。
127
海洋
海洋無人機(海洋ドローン)
方向性
人口減少等に対応するため、
省人化や生産性向上等が不可欠
高付加価値モデル
スタートアップの活用、
海洋データの利活用・運用サービス
も含めたパッケージ
無人アセットの重要性が増大する中、
デュアルユース技術として
安全保障上も重要
【目標】
✓ 世界市場で3割※のシェア獲得
※10年後、40-50億ドル程度(一定の仮定の下での試算値)
✓ 安全保障上の重要性、成長基盤としての不可欠性
に鑑み、国際優位性を確保
✓ 高付加価値モデルとして海外展開
・周辺技術との統合
・海洋データ等を含む
パッケージ化
・新たな用途展開を見据えた
技術開発へのフィードバック
・効果検証
・利用実証
技術力
国内生産基盤の構築
スタートアップの活用
分野横断的連携
造船技術や深海探査等の強み
【制約・不確実性】
✓ 初期ハードルの高さ
✓ 活動機会が限定的
✓ 市場規模等の不透明性
海底探査技術の国際競技大会で活躍
初期需要創出による橋渡し
✓ 官民協調による利用規模等の見える化
✓ 公共調達(デュアルユースを含む)との連動
✓ 戦略的なプロトタイプ投資
海底資源調査を支える無人の海上中継ハブ
注)AUV: Autonomous Underwater Vehicle
(自律型無人探査機)(例:写真上)
USV: Unmanned Surface Vehicle
(無人水上機)(例:写真下)
複数年度の視点を以て公共調達による初期需要確保(アンカーテナンシー)を通じた市場形成・拡大に向けた取組を推進する制度の創設に取り組む。
✓ 実証的取組の実施
その際、DXや経済成長を生み出す共通基盤であるG空間情報の利用・環境整備における取組や宇宙といった分野との連携を図る。
128
海洋
②海洋状況把握(MDA)
129
1.現状認識と目指す姿【目標】
海洋
海洋状況把握(MDA)
(1)現状
(2) 目標
① 現状
・海洋状況把握(MDA)とは、海洋に関連する多様な情報を集約・共有することにより、海洋の状況の効果的かつ
効率的な把握を目指す取り組み(具体例:「海しる」から提供される海流・潮流データ等に基づく安全かつ効率
的な航路設定や、海底地形データ・海底堆積物・地質情報等に基づく海底資源探査の実施)であり、海洋におけ
る安全保障、自然災害等の諸課題への対応のためには必要不可欠であると同時に、海洋産業振興や科学技術の発
展の基盤ともなる。
・我が国におけるMDAは、高度なMDAの維持のため、常続的に隙間なく情報を収集する体制の構築に取り組んでお
り、海洋安全保障のために一部の政府機関のみで共有する情報のほか、海洋産業振興などの広範な目的で使用さ
れるデータも含め、海上保安庁が運用する「海しる」を中心的なプラットフォームとして情報を集約している。
・また、地球全体の海洋変動をリアルタイムで捉えることを目指した国際プロジェクトにも参画し、高品質なデータ
の収集及び発信を行い、国際的にも高い評価を受けている。
・世界のMDA関連の市場規模は224億ドル程度(成長率8.1%)とレポート※1されている。
② 取り巻く環境と構造変化
・「海しる」は一定のレベルを確立しているが、我が国周辺を含めた安全保障環境の変化を背景に、我が国にとって
重要なシーレーンや領海等の情報収集をより一層常続的に隙間なく実施する必要が生じており、安全保障により
貢献するため「情報を収集」する能力の一層の強化が必要となっている。
・また我が国フロンティアとしての海洋の利用開発の推進や海洋科学技術の発展に向けては、収集した情報を多角的
に分析・解析し、情報に付加価値を付けた上で「情報を利用」する能力を発揮する環境を整えることが、競争力
獲得において必要となっている。
・MDAの基盤ともいえる「情報を収集」し「情報を利用」する能力に関しては、G空間情報の収集に向けた戦略にお
いても重要な無人航空機や衛星データ、海洋無人機の活用、AIを用いた情報分析技術などの新たな技術開発・競
争がグローバルに加速している。
③ 経済的・戦略的な重要性
・MDAは海洋における安全保障分野及び産業振興両方の情報基盤。
・MDAの基盤となる「情報を収集」し「情報を利用」する能力の確保と高度化は、安全保障上の自律性確保や経済
安全保障上も重要であり、官民各関係者の積極的な取組が必要。その取組を促進するためにも需要の確立が必要
であり、その際、国内での需要創出に加え、ODA(政府開発援助)やOSA(政府安全保障能力強化支援)を通じ
た我が国MDAサービスの国際展開も視野に入れることが必要。
・海洋無人機、衛星等により取得される海洋データ・情報は、安全保障、海賊・海上犯罪対策、防災・減災、環境保
全、海洋インフラ保守、海洋開発など多分野における付加価値創出に必要不可欠。
① 国内外で獲得を目指す
市場
・特にインド太平洋地域
やシーレーン沿岸国に
おいて、我が国MDA
サービスや同サービス
に含まれる海洋データ
の利用を高め、我が国
MDAサービスを2030
年代前半までに8か国程
度に展開する。
※1:出典:Dataintelo Consulting Pvt Ltd.社レポート “Maritime Domain Awareness Market Research Report 2033”
② 達成すべき戦略的な目
標
・「海しる」について常
続的に隙間なく実施す
る体制を高度化すると
ともに、情報利用の環
境を確立する。
・インド太平洋地域や
シーレーン沿岸国の
MDA能力向上を含む協
力を強化して、我が国
にとって望ましい安全
保障環境を創出する。
130
2.勝ち筋の特定と官民投資の具体像【道筋】
海洋
海洋状況把握(MDA)
(1)基本戦略
(2)官民投資の具体像
① 勝ち筋
(情報収集手段の高度化)
・「海しる」に含むべき情報の充実のため、船舶、海洋無人機や航空機等のアセットを通
じた方法による情報収集体制を確立するとともに、民間による無操縦者航空機や衛星等
の情報収集能力を強化することで、観測機器や観測プラットフォームを高度化。
(「海しる」の機能強化)
・「海しる」の情報の充実化及び機能強化を図り、セキュリティレベルに応じた適切な情
報共有体制を構築し、安全保障分野及び海洋産業分野等で利用可能な情報を拡充させる。
(民間による情報利用の拡大)
・民間による情報利用の拡大に向けて、民間が利用可能な情報を明確にし、その流通を促
すことにより、「海しる」を海洋ビジネスの基盤とする。
(国際連携)
・同盟国・同志国等と更なる連携を強化し、海外での新規需要創出につなげる。特に、イ
ンド太平洋地域や我が国のシーレーンの沿岸国においては、各国が強化すべき分野を官
側が明らかにした上で、官民協力してMDAの国際展開を図るとともに、民間企業による
具体的な海外展開ニーズの実現をODA・OSA案件などを通じて後押しし、MDAに含まれ
る情報の利用拡大を図る。
① 投資内容
・海洋無人機、船舶、観測フロート、衛星、情報
処理技術、海底ケーブル観測システム、海中に
おけるデータ収集技術など、情報観測技術の高
度化に向けた投資とそれに向けた需要の確立
・基盤となる「海しる」の情報の充実化及び機能
強化
・「海しる」において収集した情報を分析し、利
用可能な情報にまで高めるための投資と需要開
拓
② 投資額
2040年度までで1.2兆円と想定
③ 定量的インパクト:投資による経済波及効果
2040年度までで8.7兆円と想定
② 我が国として構築すべき機能
・海洋無人機、衛星、船舶、観測フロート、海底ケーブル観測システム、情報処理技術等
を連携させ、広域かつ高精度な海洋状況把握を実現
・「海しる」において収集した情報を分析し、利用可能な情報にまで高める機能
・観測データを活用した海洋デジタルツインの構築
131
3.官民投資促進に向けた課題と政策パッケージ【政策手段】
海洋
海洋状況把握(MDA)
(1)投資促進に向けた課題
(2)講じるべき政策パッケージ
①リソース制約
・広大な範囲の情報収集を適
切に行うに足るだけの機器
等の技術力の向上が必要で
あり、またそれを行う人的
リソースが不足している。
①情報収集手段の高度化
・G空間情報の収集に向けた戦略においても重要な無操縦者航空機、海洋無人機や衛星等を活用した情報収集能力の向上や、観
測機器、観測プラットフォームの技術進展に応じた最新技術の活用の促進
・SBIR等を活用したスタートアップ支援の充実
・安全保障や環境保全などにおける官需の見通しを高めるための対話の実施
・先端的な施設・設備等を有する国立研究機関の機能強化等を通じた産学官の取組を強化
・国立研究開発法人と自治体や企業との共同研究の推進
・日本を含む全球への影響把握や将来予測の精度の向上などに向けた取組の促進
・複数年度の視点を以て公共調達による初期需要確保(アンカーテナンシー)を通じた市場形成・拡大に向けた取組を推進す
る制度の創設に取り組む。その際、DXや経済成長を生み出す共通基盤であるG空間情報の利用・環境整備における取組や宇
宙といった分野との連携を図る。
②「海しる」の機能強化
・上記①で挙げた多様な収集手段による「海しる」内の情報の充実化
・民間事業者に共有可能な情報の整理・明確化
③民間による情報利用の拡大
・「海しる」を情報基盤とし、AI分析等により付加価値を付けた「情報の利用」の促進のための普及・啓発
・新たな情報ビジネス創出等、海洋産業振興のための官民交えた対話の実施
・AI分析等の国産化技術の開発と導入にあたって留意すべきデータ規格などの標準化の動向等の情報提供
④国際連携
・国際市場開拓に対する支援
・同盟国・同志国等と更なる連携を強化するとともに、特にインド太平洋地域や我が国シーレーン沿岸国においては、各国が
強化すべき能力、官側が強化のニーズを明らかにした上で、官民連携によりMDAサービスの国際展開を図るとともに、民間
企業による具体的な海外展開ニーズの実現をODA・OSA案件などを通じて後押しし、海外での新規需要創出に繋げる。
・国際アルゴ計画を含むGOOS(全球海洋観測システム)、SAON(持続可能な北極観測ネットワーク)等の国際的観測枠組み
に引き続き参画し、それら枠組みで得られた科学的研究や技術的知見の提供を通して我が国のプレゼンスの向上に貢献する。
・観測データ空白域の観測研究を担う「みらいⅡ」を国際研究プラットフォームとして活用するとともに、国際共同研究等に
よる国際連携を推進する。また、「しらせ」後継船による今後の南極地域観測に係る輸送体制の構築を進める。
⑤人材
・海洋科学技術に携わる人材の質と層の向上が重要であることから、初等~高等各段階で教育を実施し、裾野を広げ、意義を
発信。
・国立研究開発法人の機能強化等を通じて、海洋科学技術に関する人材の育成と確保を推進し、海洋の研究・開発・利用を牽
引。また産官学公が参画・連携し、海洋における現場体験など単独では実施困難なプログラムを実施。
・国際的に遜色のない水準の達成を目指して女性活躍を推進するとともに、産業界での十分な処遇やキャリアパス、通信環境
整備等の魅力ある労働条件及び労働環境の整備を促す。
②不確実性の要因
・情報収集する民間事業者に
とって「海しる」に入れる
情報をどの程度充実させる
べきかの見通しが不透明。
・民間による「海しる」に含
まれる情報の利用に係る需
要の見通しも不透明。
・MDAサービスの国際展開に
際しては、官における関係
構築が必要であり、国際情
勢にも影響を受けやすい。
132
海洋
海洋状況把握(MDA)
方向性
現状認識、日本の強み
•
•
•
•
海洋状況把握(MDA)とは、海洋に関連する多様な情報を集約・共有することにより、全球の海洋の状況の効果的かつ効率的な把握
を目指す取組であり、安全保障や海洋ビジネス等の基盤となるもので、経済安全保障上も重要(具体例:「海しる」から提供される海
流・潮流データ等に基づく安全かつ効率的な航路設定や、海底地形データ、海底堆積物・地質情報等に基づく海底資源探査の実施)
我が国では現在、「海しる」を中心的プラットフォームとして情報収集・利用システムを確立するとともに、国際プロジェクトに参画
し高品質なデータを収集及び発信しており、世界的にも評価されている。
安全保障環境の変化を背景に、我が国にとって重要なシーレーンや領海等の情報収集をより一層常続的に隙間なく実施する必要が生じ
ているため、無人航空機や衛星、海洋無人機の活用などにより「情報を収集」する能力の更なる強化が必要。
また海洋の利用開発の推進や海洋科学技術の発展に向けて、収集した情報を多角的に分析・解析し、情報に付加価値を付けて「情報を
利用」する環境を整えることが、競争力獲得において必要。
我が国の勝ち筋
主な課題
(ボトルネック)
•
•
•
•
広大な範囲の情報収集を適切に行う
に足るだけの技術力とそれを担う人
的リソースの不足。
情報収集する民間事業者にとって
「海しる」に入れる情報をどの程度
充実させるべきかの見通しが不透明。
「海しる」に含まれる情報の利用に
係る需要見通しも不透明。
海外展開にあたり、国際情勢等の影
響を受けやすい。
目指すべき姿
講じるべき施策
•
•
•
•
•
•
情報観測手段(無人航空機や衛星、海洋無人機等)の高度化に向けた投資と最新
技術の利用の促進。
「海しる」内の情報の充実化や民間事業者に共有可能な情報の整理・明確化。
「海しる」において収集した情報を分析し、利用可能な情報にまで高めるための
投資のための普及・啓発。
複数年度の視点を以て公共調達による初期需要確保(アンカーテナンシー)を通
じた市場形成・拡大に向けた取組を推進する制度の創設に取り組む。その際、DX
や経済成長を生み出す共通基盤であるG空間情報の利用・環境整備における取組
や宇宙といった分野との連携を図る。
ODA(政府開発援助)やOSA(政府安全保障能力強化支援)等による国際展開を
含む需要開拓。
「みらいⅡ」による国際連携、「しらせ」後継船による南極輸送体制構築を図る。
•
海洋状況把握について常続的に
隙間なく実施する体制を高度化
するとともに、情報利用の環境
を確立する。
•
特にインド太平洋地域や我が国
シーレーン沿岸国において、我
が国MDAサービスや海洋データ
の利用を高め、我が国MDAサー
ビスを2030年代前半までに8か
国程度に展開。
133
海洋
③革新的海底開発技術・システム
134
1.現状認識と目指す姿【目標】
海洋
革新的海底開発技術・システム
(1)現状
(2) 目標
① 現状
・資源の大宗を輸入に頼っており、地政学リスクがあるため、安定供給確保は大きな課題。その中で、
資源の自給率向上に資する国産資源の開発は極めて重要。
・我が国周辺海域等には資源(メタンハイドレート、石油・天然ガス、海底熱水鉱床、コバルトリッ
チクラスト、マンガン団塊及びレアアース泥)の賦存が確認されている。
・深海底における資源開発技術・システムは、石油・ガス分野で欧米企業が先行しているが、鉱物分
野では世界的にまだ確立されておらず(=商業化されていない)、国際海底機構(ISA)において
は開発規則が未策定という状況。
・そのような中、本年2月には内閣府の大型研究プロジェクト(SIP)により、6,000m級の深海底
からのレアアース泥の試掘に成功。
・我が国における深海探査技術は、精密計測や長期安定運用、環境への負荷が低いなどの点で強みを
有している。
② 取り巻く環境と構造変化
・特定国によるレアアースの戦略物資化など、資源・エネルギー政策を取り巻く環境は常に変化して
おり、国際情勢などに左右されない安定的な国産資源開発の商業化は喫緊の課題。
・無人化・データ駆動型の技術開発や宇宙分野との連携の可能性が進展しており、深海探査に利用可
能な技術の範囲が拡大。
・海底資源の探査・採取に必要となる研究船や探査機の老朽化が進行しており、更なる老朽化により
深海底の探査・採取能力が減衰しないよう、研究船等の更新だけでなく、超深海探査母船の建造を
含む新たな深海の探査・採取プラットフォームの構築も必要。
③ 経済的・戦略的な重要性
・国産資源の開発体制の確立は経済安全保障面からも極めて重要。海底資源探査・採取の高付加価値
モデルを実現することにより、関連産業全体の発展と好循環創出につながる。
・海洋無人機を利用するなどして、環境とも調和した海底資源の開発方法を確立し、国際的にも受容
される開発を我が国から広げることが重要。
・深海底などの極限環境下で作動する技術は、海洋状況把握など他分野への転用可能性が高い戦略的
技術として重要。
① 国内外で獲得を目指す市場
・海洋における、環境に配慮した海底
資源の開発技術・システムの確立。
・マンガン団塊については、 2030年
代前半の商業生産開始を目標とし、
海洋由来の重要鉱物の国内安定供給
を目指す。
・レアアース泥については、第3期SIP
を通じた開発技術の確立及び総合評
価を加速し、その状況を踏まえつつ、
経済安全保障の観点から、開発に必
要な体制を整備して産業規模での開
発の実証を継続し、併せて採算性向
上に向けた研究を実施。その上で、
将来的に商業レベルの生産を目指す。
② 達成すべき戦略的な目標
・世界に伍する新たな大深度(フルデ
プス)対応無人探査機の開発・実装
・探査機の複数・他機種同時運用技
術・体制の確立
・海底資源の資源量調査から、採鉱か
ら揚鉱、精製、環境影響調査に至る
までの開発技術・システムの海外展
開を図る。
135
海洋
革新的海底開発技術・システム
2.勝ち筋の特定と官民投資の具体像【道筋】
(1)基本戦略
(2)官民投資の具体像
① 勝ち筋
・我が国の長年の深海探査実績や環境低負荷技術等を活かし、我が国
周辺海域等に賦存する海洋鉱物資源の開発に向けて、海洋資源の開
発技術・システムの確立を図る。
・資源開発体制確立のための基礎研究体制を確実なものとし、深海探
査能力の維持・向上を図る。
・締結済みの協定等に基づく同志国等との協力により開発成功を早期
に実現。
・深海探査や開発における国際的なルールも検討段階であり、今後、
環境影響評価※1や長期モニタリング等の制度化に向け、我が国が議
論を主導。
① 投資内容
・海洋エネルギー・鉱物資源(メタンハイドレート、石油・天然ガス、
海底熱水鉱床、コバルトリッチクラスト、マンガン団塊、レアアース
泥)の商業化・経済安全保障を踏まえた資源の探鉱・技術開発を進め
る。
・開発に必要となる実証実験を実施する等科学技術力の着実な進展にも
注力しつつ、商業化に向けた取組を行う。
・国立研究開発法人や大学における研究開発を支援するとともに、その
基盤となる施設・設備の老朽化対策や高度化を実施する。
② 我が国として構築すべき機能
・国内の資源確保も含めた安定供給源の確保に資する海底資源開発の
技術・システムを構築。
・海洋鉱物資源に関して資源量調査から、採鉱、揚鉱、精製に至るま
での各技術や環境影響評価※1手法を確立。
※1:ISAが示す”Environmental Impact Assessments”を指す。
② 投資額
2040年度までで0.9兆円と想定
③ 定量的インパクト:投資による経済波及効果
2040年度までで2.2兆円と想定
136
3.官民投資促進に向けた課題と政策パッケージ【政策手段】
(1)投資促進に向けた課題
○不確実性の要因
・海洋鉱物資源やメタンハイ
ドレートについては、世界
的に商業化に成功した例は
なく、商業化に必要な技術
が確立されるか、経済的に
採掘可能であるかは現時点
では不透明。
・広大な海洋において、海底
資源の賦存量の確度を高め
ることの難しさ。
・極限環境下における環境影
響に配慮した開発手法の確
立の難しさ。
海洋
革新的海底開発技術・システム
(2)講じるべき政策パッケージ
①海底開発技術・システムの確立支援
・採鉱、揚鉱、精製等の海洋資源開発技術の確立に向けた政府による実証及び経済性の評価。
・EEZ及び公海上での海底資源の賦存量調査の実施。
・環境に配慮した開発手法の確立及び開発環境の整備。
・超深海探査母船の建造を含む新たな深海の探査・採取プラットフォームの構築。
・探査機の複数・他機種同時運用技術・体制の確立。
・資源、防災、環境分野等を含む海底に係る研究開発など基礎研究の充実とその基盤の維持・充実。
(具体的な海底資源開発プロジェクト)
●マンガン団塊
・資源量調査・鉱量評価、環境調査・環境影響評価を実施。
・採鉱・揚鉱・精製の技術的課題をクリアしつつ、2029年度に商業規模での実証試験を実施。
・実証試験の後、商業機等の製作を行い、ISAとの開発契約締結後の2030年代前半に商業生産開始。
●レアアース泥
・SIPによる令和8年2月の採泥を踏まえた分析
・令和9年2月に予定されている南鳥島を拠点とした実証試験
・第3期SIPとしての、取得した情報を踏まえた総合評価の加速
・経済安全保障の観点から、開発に必要な体制を整備して産業規模での開発の実証を継続し、併せて採算性向上に
向けた研究を実施
②国際連携
・ISAや関係国との適切な連携を通じた、環境影響に配慮した海底開発に対する国際的な理解の確保も含む、国際
ルール策定・標準化への強い関与。
・技術的に先行する欧米企業との連携。
③人材
・海洋科学技術に携わる人材の質と層の向上が重要であることから、初等~高等各段階で教育を実施し、裾野を広げ、
意義を発信。
・国立研究開発法人の機能強化等を通じて、海洋科学技術に関する人材の育成と確保を推進し、海洋の研究・開発・利
用を牽引。また産官学公が参画・連携し、海洋における現場体験など単独では実施困難なプログラムを実施。
・国際的に遜色のない水準の達成を目指して女性活躍を推進するとともに、産業界での十分な処遇やキャリアパス、通
信環境整備等の魅力ある労働条件及び労働環境の整備を促す。
137
海洋
革新的海底開発技術・システム
方向性
現状認識、日本の強み
資源の大宗を輸入に頼る我が国にとってその安定供給確保は大きな課題であり、資源の自給率向上に資する国産資源の開発
は極めて重要。
我が国周辺海域等における資源(メタンハイドレート、石油・天然ガス、海底熱水鉱床、コバルトリッチクラスト、マンガ
ン団塊及びレアアース泥)の賦存が確認されている。
深海底における資源開発技術・システムは、石油・ガス分野で欧米企業が先行しているが、鉱物分野では世界的にまだ確立
されていない(=商業化されていない)状況。
海底資源の開発体制の構築は経済安全保障上も重要であり、精密計測や長期安定利用、環境への負荷が低いなどの点で強み
を有する我が国の深海探査技術を用いて資源開発を実現させる高付加価値モデルを創造することにより、関連産業全体の発
展と好循環創出につなげる。
•
•
•
•
我が国の勝ち筋
主な課題
(ボトルネック)
•
広大な海洋において、海底資源
の賦存量の確度を高めることの
難しさ。
•
海洋資源開発システムの確立と
経済性の確保の難しさ。
•
極限環境下における環境影響に
配慮した開発手法の確立の難し
さ。
目指すべき姿
講じるべき施策
•
•
•
•
•
海底資源の賦存量の確認を進めるとともに、マンガ
ン団塊、レアアース泥等について、資源の探鉱及び
採鉱等技術・システムの開発を進める。
•
海底資源の開発体制の基盤となる基礎研究体制を確
実なものとし、深海探査能力の維持・向上を図る。
国際ルールの策定・標準化への関与を含む、国際海
底機構(ISA)等との適切な連携を通じた、環境影
響に配慮した海底開発に対する国際的な理解の確保。
海洋における、環境に配慮した海底資源の
開発技術・システムの確立。
マンガン団塊については、 2030年代前半
の商業生産開始を目標とし、海洋由来の重
要鉱物の国内安定供給を目指す。
レアアース泥については、第3期SIPを通じ
た開発技術の確立及び総合評価を加速し、
その状況を踏まえつつ、経済安全保障の観
点から、開発に必要な体制を整備して産業
規模での開発の実証を継続し、併せて採算
性向上に向けた研究を実施。その上で、将
来的に商業レベルの生産を目指す。
138
造船
①次世代船舶
139
1.現状認識と目指す姿【目標】
(1)現状
造船
次世代船舶
(2) 目標
① 現状
① 国内外で獲得を目指す市場
・近年、我が国造船業の建造量は減少傾向が継続(2019年1,600万総トン→2024年900万総トン)。 ・アンモニア燃料船を始めとしたゼロ
足下では、我が国船主の1年間の造船需要を下回り、海外の造船所に頼らざるを得ない状況。
エミッション船等の次世代船舶建造
・我が国造船業は、韓国・中国と比較して、船舶建造の生産性が高く、ゼロエミッション船、自動運
技術で世界を主導する。
航船等の次世代船舶(以下単に「次世代船舶」という。)や省エネに係る技術など品質・性質面で
・次世代船舶に係る技術をてこに、我
の優位性が認められる一方で、以下のような課題がある。
が国において1,800万総トン(市場
(1)人数・敷地面積・生産量ともに事業所の規模が小さい
規模約5兆円)を建造する(2035
(2)鋼材・資材の高騰を背景に船価が高く、中国・韓国造船業との厳しい競争の中で建造能力
年)。
を縮小
・国際社会における我が国造船業の役
(3)設計や現場において人材不足が深刻化(造船業就労者;2019年約9万人→2024年約7万人)
割を確立する。
② 取り巻く環境と構造変化
・我が国造船業の建造量の減少傾向が引き続き継続した場合、海上貿易に不可欠な船舶の建造を極度
に他国へ依存せざるを得なくなるおそれ。
・今後、中長期的に、海上輸送量の増加による建造需要が拡大。
・その中で、ゼロエミッション船等の建造需要は増大し、2035年には建造需要の6割程度に達する
と見込まれており、造船市場におけるゲームチェンジの機会になる。
③ 経済的・戦略的な重要性
・四面を海に囲まれエネルギーや食料等の物資を海外に頼る我が国にとって海上輸送は必要不可欠。
造船業は海上輸送に使用する船舶を安定的に供給し、国民生活や経済活動を支える極めて重要な役
割を担っている。
・商船を建造する造船業は、我が国の海上警備や防衛を担う船舶を建造しており、安全保障の観点か
らも必要な産業。
・国内生産比率が約8割、地域生産比率9割以上であることに加え、ほぼ全ての部品を国内調達して
おり、地域の経済・雇用を支えている。
② 達成すべき戦略的な目標
・中国・韓国の造船業に負けない国際
競争力を確保。
・我が国の安全保障を支える体制(日
本の船は日本で造る)を実現。
・国際社会の中で不可欠な役割を担い、
世界を牽引する確たる地位を確保。
・日本の海事産業群の中核となり地域
の経済・雇用を支える。
140
造船
次世代船舶
2.勝ち筋の特定と官民投資の具体像【道筋】
(1)基本戦略
(2)官民投資の具体像
① 勝ち筋
・将来、船舶の大半がLNG、メタノール、アンモニア、水素等の新燃料に移行
するとともに自動運航船の本格的な商用運航が実現するとの想定の下、次世
代船舶の技術開発・生産体制整備・国際ルール・国際標準の策定の主導・導
入支援策を通じた初期需要の創出等により、中国や韓国に対する優位性を確
立し、先行者利益とシェアを獲得する。
・加えて、新燃料への移行に伴うエネルギーコストの高騰が見込まれる中、日
本が優位性を持つ省エネ技術の開発を継続し、ライフサイクルでのコスト
(船価+燃料費)での優位性を維持する。
・日本の造船業の強みである高い生産性について、DX、AI、ロボット等の導
入によって更なる向上を図り、競争優位性を確固たるものにする。また、需
要変動やロット発注等に対して柔軟な体制を構築するとともに、連続建造等
による生産性向上・低コスト化を図る。
① 投資内容
・非価格競争力向上のためのグリーン投資(造船所、国)
・次世代船舶の建造を含む造船能力の抜本的向上のための
投資(造船所、設備メーカー(スタートアップを含む)
、国)
② 投資額
2034年度までで1.0兆円と想定
③ 定量的インパクト:投資による経済波及効果
2034年度までで9.7兆円と想定
② 我が国として構築すべき機能
・次世代船舶や省エネ技術における優位性を獲得・維持するため、これらの船
舶や技術の開発・実証を進めるとともに建造体制を整備し、市場形成を行い
早期に建造実績を積み重ねる。
・生産性向上の実現に向けて、自動化・省力化の技術やDX・AIヒューマノイ
ドロボット等に関する他分野と連携した技術開発の体制を整備する。
141
3.官民投資促進に向けた課題と政策パッケージ【政策手段】
(1)投資促進に向けた課題
造船
次世代船舶
(2)講じるべき政策パッケージ
①船舶建造体制の強靱化
・ゼロエミッション船等の国内生産体制を整備するため、生産設備の整備を支援する。
・大学等の研究機関、AI・ロボット企業(スタートアップを含む)等によるAIを活用した次世代型
造船ロボットの研究開発を支援する。
・造船所の建造能力を向上する生産設備の整備を支援する。
・統合シミュレーションシステムの構築による設計リソースの集結、ブロック製造の連携・協業等、
造船・舶用サプライチェーンを含めた生産能力向上に係る整備の支援を検討する。
・地域未来戦略と連携しながら、瀬戸内や九州を中心とした造船関連産業の集積地域における船舶
建造能力の強靱化に必要な取組について検討する。
②造船人材の確保・育成に向けた教育研究体制等の整備
・造船人材(技術者及び技能者)の確保に向けて、女性も含めた働きやすい職場環境の整備、魅力
ある職場づくりの在り方の検討、造船業の魅力発信を行う。
・造船人材の育成のため、造船業に関係する工学系(造船・機械・電気等)の人材を育成する大学
等における次世代船舶の建造に貢献する教育研究体制の強化や教育基盤の整備を進め、地域にお
②不確実性の要因
ける教育研究体制の充実や大学・高校・企業間の連携・ネットワーク強化の在り方を検討する。
・船舶の受注と竣工の期間が長い(近年は3~4年)。 ・関係省庁及び業界団体等と連携して、造船に必要な溶接、曲げ加工等のスキルの標準化・可視化
を進めるとともに、講座の開発、提供等を通じたリ・スキリングの促進を図る。
・船価の約7割を材料費(鋼材、舶用機器等)が占
・地域未来戦略と連携しながら、瀬戸内や九州を中心とした造船関連産業の集積地域における、造
め、船舶受注後(船価確定後)に材料を調達する
船人材の確保・育成等について検討する。
ため、物価の上昇局面で利益が圧迫される傾向。
③脱炭素化等を通じたゲームチェンジ
・造船業は世界単一市場で厳しい国際競争(日中韓
・国際海事機関(IMO)における国際ルールの策定等を主導する。
で9割以上)があり、次世代船舶についても、コ
・GI基金を通じて、ゼロエミッション船関連の技術開発・実証を支援する。
スト面での国際競争が厳しい。
④安定的な需要の確保
・造船市場は、世界経済の発展に伴って拡大する海
・GX経済移行債や海運税制等を通じたゼロエミッション船等の導入支援や、ゼロエミッション船等
上輸送量・船腹量に連動し、長期的には拡大して
の需要創出に向けた環境整備を実施することで、早期に建造実績を積み重ねる。
きた一方、変動の大きい海運市況の影響を受け、
⑤同志国・グローバルサウスとの連携
短期的には大きく変動。
・国内投資及び国内建造による我が国造船業の自律を第一義的な目標として国内建造量の増大のための措
・ゼロエミッション化による大幅なコスト上昇が起き
置を講ずる。併せて、これを補強すべく、我が国の経済安全保障に資する海外建造について、民間事業
る見込みであることを踏まえ、早急な需要の創出が
者による取組ごとの課題(リスク軽減、資金調達等)に応じ必要な措置を講ずる。
必要。
・ ODA等を通じて、日本建造船舶の導入・更新需要の創出や人材確保・育成を推進する。
142
①リソース制約
・韓国・中国の造船所と比べ、事業所当たりの人
数・敷地面積・生産量などの規模が小さい。
・鋼材・資材の高騰を背景に船価が高く、中国・韓
国造船業との厳しい競争の中で建造能力を縮小。
・ドック、クレーンを始めとした大規模な施設・設
備やAI・ロボティクスを活用した自動化設備が必
要。建造能力拡大には長期間・多額の設備投資が
必要。
・設計や現場において人材不足が深刻化。特に、次
世代船舶は、従来の船舶より複雑で工数が多いた
め、技術力が高い設計者や技能者が必要となる。
造船
次世代船舶
方向性
ゼロエミッション船
次世代型造船ロボットのイメージ
厳しい国際競争の中、我が国造船業の建造
量は減少傾向
中長期的に、海上輸送量の増加に伴い建造
需要は拡大
ゼロエミッション船等の次世代船舶の建造
需要が増大、ゲームチェンジの機会に
アンモニア燃料アンモニア輸送船
出典:日本郵船株式会社
主な課題
(ボトルネック)
• ゼロエミッション化による大幅
なコスト上昇
• 次世代船舶は、従来の船舶より
複雑で工数が多い
• 技術力の高い設計者や技能者が
求められる
• 建造能力拡大には長期間・多額
の設備投資(ドック、クレーン、
自動化設備等)が必要
自律移動溶接ロボット
我が国の勝ち筋
目指すべき姿
講じるべき施策
• ゼロエミッション船等の生産体制の整備を支援
• 国際海事機関(IMO)における国際ルールの策定等を主導
• ゼロエミッション船関連の技術開発・実証を支援
• ゼロエミッション船等の導入を支援
• AIを活用した次世代型造船ロボットの研究開発を支援
• アンモニア燃料船を始めとした
ゼロエミッション船等の次世代
船舶建造技術で世界を主導
• 次世代船舶に係る技術をてこに、
我が国において1,800万総トン※
(市場規模約5兆円)を建造
(2035年)
• 国際社会における我が国造船業
の役割を確立
※2024年比倍増
143
造船
②船舶修繕
144
1.現状認識と目指す姿【目標】
造船
船舶修繕
(1)現状
(2) 目標
① 現状
・我が国修繕事業所における修繕実績は大部分を内航船が占めている。艦船や巡視船を含む内航船の
ほぼ全てが国内で修繕を実施。(2024年の修繕隻数実績 内航船:82.6%、艦船:4.7%、巡視船
4.8%、外航船:7.8%)
・外航船は、航路上の立地、修繕コスト、ドックの受入可否等により修繕事業所を決定しており、我
が国船主が保有する外航船舶の修繕については、海外の特定国へ依存度が高い。
・我が国は海事産業集積地であることから機器類の調達面で一定の優位性が認められる一方で、以下
のような課題が存在。
(1)現場人材の不足
(2)官公庁船の修繕需要が平準化されていない
(3)修繕設備の老朽化
① 国内外で獲得を目指す市場
・国内の造船・修繕ドックに係る実態
(人的キャパシティを含む)を踏まえ、
国内修繕リソースを柔軟に活用すると
ともに、我が国で修繕需要が見込まれ
る外航船や官公庁船、内航船に対応す
るための修繕能力を向上することによ
り、これらの修繕需要の拡大に対応で
きる体制を構築。
② 取り巻く環境と構造変化
・中長期的な海上輸送量の増加や艦船、巡視船等の官公庁船の隻数増加による修繕需要の拡大。
・ゼロエミッション船や次世代船舶等の複雑な構造を持つ船舶の増加。
・造船分野へのAI・ロボティクス技術の進展。
・地政学リスク、特定国への依存による経済的威圧や役務提供途絶のおそれ。
③ 経済的・戦略的な重要性
・四面を海に囲まれ、エネルギーや食料等の物資を海外に頼る我が国にとって海上輸送は必要不可欠。
船舶の修繕は海上輸送で使用されている船舶の安全性の維持のために必須の役務であり、造船業と
同様、国民生活や経済活動を支える極めて重要な役割を担っている。
・船舶の修繕は、我が国の海上警備や防衛を担う船舶にも必須であり、安全保障の観点からも必要な
役務。こうした船舶の修繕は情報セキュリティ等の観点から国内で行う必要がある。
・LNG運搬船や自動車運搬船は、我が国のエネルギー安全保障や主要産業を担っており、日本発着
(修繕の機会)が多く修繕ニーズがある。
・修繕拠点は地域に集積しており、地域の経済・雇用を支えている。また、離島航路の旅客船等、内
航船の修繕を実施することによって、国民生活を支えている。
・同志国との連携による、我が国船主の
外航船の修繕需要に持続的に対応でき
る体制を構築。
② 達成すべき戦略的な目標
・我が国船主の修繕需要を着実に取り込
みつつ、特定国への依存の解消を目指
す。
145
2.勝ち筋の特定と官民投資の具体像【道筋】
造船
船舶修繕
(1)基本戦略
(2)官民投資の具体像
① 勝ち筋
今後、新造能力の拡大を進めていく中において、国内の造船・修繕ドックの用地や人的
キャパシティを考えると、全ての修繕需要を国内で賄うことは現実的でない中、ゼロエ
ミッション船等への対応を含め、修繕能力の減退が我が国海上輸送の停滞とならないよう、
出来る限り早急に国内外での以下の取組等を実施し、修繕キャパシティを増加させていく。
・海事産業群内でのデータの共有化等により技術力・生産性を向上し、修繕工期の短縮を
図る。
・内航船や、増加・複雑化する官公庁船の修繕需要に確実に対応できるよう、官公庁船の
修繕時期の平準化を図る。
・国内で修繕需要が見込まれる外航船や官公庁船、内航船の修繕能力の向上(ドック、ク
レーン、塗装・洗浄設備等の機能拡充・高度化や、AI・ロボット等の活用による自動
化・省人化等)
・国際情勢の変動リスクが高まる中で、日本の外航船の主要航路を踏まえた同志国におけ
る修繕所の活用や新たな修繕拠点の確保を多角的に図る。
① 投資内容
・国内での修繕需要が見込まれる外航船や官公庁
船、内航船に対応するための修繕能力の向上
・日本の外航船の主要航路を踏まえた同志国にお
ける修繕所の活用や新たな修繕拠点の確保
② 投資額
2035年度までで0.1兆円と想定
③ 定量的インパクト:投資による経済波及効果
2035年度までで0.3兆円と想定
② 我が国として構築すべき機能
・国内修繕能力の強化や同志国との連携による、我が国船主の外航船の修繕需要に持続的
に対応できる体制の構築。
・国内の修繕リソースを柔軟に活用し、内航船や官公庁船の修繕需要に確実に対応できる
体制の構築。
146
3.官民投資促進に向けた課題と政策パッケージ【政策手段】
造船
船舶修繕
(1)投資促進に向けた課題
(2)講じるべき政策パッケージ
①リソース制約
・今後、新造能力の拡大を進めていく中、
国内の造船・修繕ドックの用地や人的
キャパシティを考えると、全ての修繕需
要を国内のみで吸収できる余力はない。
・現場において人材不足が深刻化。特に、
ゼロエミッション船や次世代船舶は、従
来の船舶より複雑で工数が多くなるため、
より高い技術が必要となる。
・修繕能力拡大のためには、ドック、ク
レーンを始めとした大規模な施設・設備
の増強が必要だが、長期間にわたり多額
の資金が必要。
①船舶修繕体制の強靱化
・国内修繕事業者の実態を把握した上で、そのリソースを柔軟に活用するとともに、我が国で修繕が
見込まれる外航船 、内航船、官公庁船の修繕能力を向上するための取組を出来る限り早急に推進
する。
・海事産業群内でのデータの共有化等により技術力・生産性を向上し、修繕工期の短縮・維持を図る。
・修繕事業者が持つリソースの有効活用のため、官公庁船の修繕時期の平準化に向けた取組を進める。
・我が国で修繕需要が見込まれる外航船や官公庁船、内航船に対応するための修繕能力の向上(ドッ
ク、クレーン、塗装・洗浄設備等の機能拡充・高度化や、AI・ロボット等の活用による自動化・
省人化等)や先行する我が国のゼロエミッション船等に係る修繕技術の活用等を通じて、生産性の
向上を促進する。
・地域未来戦略と連携しながら、瀬戸内や九州を中心とした造船関連産業の集積地域における船舶修
繕能力の強靱化に必要な取組について検討する。
②人材の確保・育成に向けた教育体制等の整備
・修繕人材の確保に向けて、新造船分野における人材確保・育成の取組と一体的に、女性も含めた働
きやすい職場環境の整備、魅力ある職場づくりの在り方の検討、修繕業の魅力発信を行う。
②不確実性の要因
・関係省庁及び業界団体等と連携して、修繕に必要な塗装、機関整備等のスキルの標準化・可視化を
進めるとともに、講座の開発、提供等を通じたリ・スキリングの促進を図る。
・外航船の修繕業は、国際情勢の影響を強
く受ける海運業を顧客とする産業であり、 ・教育訓練体制の強化や地域連携、同志国との人材交流等を組み合わせた総合的な人材確保・育成の
在り方を検討する。
また外航船の修繕場所は航路や荷積み/
・地域未来戦略と連携しながら、瀬戸内や九州を中心とした造船関連産業の集積地域における、人材
荷卸し港の影響を受けるため、需要の変
の確保・育成等について検討する。
動が大きい。
③同志国・グローバルサウスとの連携
・官公庁船の修繕需要が平準化されない場
・国際情勢の変動リスクが高まる中で、日本の外航船の主要航路を踏まえた同志国における修繕所の
合には、過剰投資になる可能性から修繕
活用や新たな修繕拠点の確保を多角的に図っていくため、フィージビリティ調査の実施等を通じ、
事業者はピーク需要に合わせた投資を行
民間事業者による取組ごとの課題(リスク軽減、資金調達、人材確保等)に応じた必要な措置を講
いにくい他、当該時期に修繕を希望する
ずる。当該措置の実施にあたっては、ODAも戦略的に活用する。
内航船に影響が生じるおそれ。
147
造船
船舶修繕
方向性
船舶の修繕
我が国の修繕リソースは大部分を艦艇や巡視船
等の官公庁船を含む内航船の修繕に充当。
外航船については、国内修繕ドックで我が国船
主の修繕需要の全てを吸収できる余力がなく、
特定国への依存度が高い。
今後、中長期的な海上輸送量の増加や次世代船
舶の増加に伴って修繕需要は拡大する可能性。
浮ドック
軸抜き
プロペラの整備
出典:向島ドックHP
我が国の勝ち筋
主な課題
(ボトルネック)
・国内修繕ドックをよ
り効率的に稼働させ
る余地有り
・修繕事業所の設備性
能・受注力の劣後
・造船・修繕に係る人
材の不足
・海外における外航船
の修繕拠点の多角的
な確保
目指すべき姿
講じるべき施策
修繕能力の減退が我が国海上輸送の停滞とならないよう、以下の取組を早急に実施する。
• 修繕ドックに係る実態を把握
• 海事産業群内でのデータの共有化等により技術力・生産性を向上し、修繕工期の短縮
を図る
• 官公庁船の修繕時期の平準化
• 国内で修繕需要が見込まれる外航船や官公庁船、内航船の修繕能力の向上(ドック、
クレーン、塗装・洗浄設備等の機能拡充・高度化や、AI・ロボット等の活用による自
動化・省人化等)
• 教育訓練体制の強化や地域連携、同志国との人材交流等を組み合わせた総合的な人材
確保・育成
• 日本の外航船の主要航路を踏まえた同志国における修繕ドックの活用・確保
• 我が国船主の修繕需要を着実
に取り込みつつ、特定国への
依存の解消を図る
• 国内の造船・修繕ドックに係
る実態(人的キャパシティを
含む)を踏まえ、国内の修繕
リソースを柔軟にフル活用で
きる形での内航船、官公庁船
等の修繕キャパシティの増加
• 国内修繕能力の強化や同志国
との連携による、我が国船主
の外航船の修繕需要に持続的
に対応できる体制の構築
148
造船
③LNG運搬船
149
1.現状認識と目指す姿【目標】
造船
LNG運搬船
(1)現状
(2) 目標
① 現状
・我が国では、2019年以降LNG運搬船の建造が途絶えている状況である。一方、韓国・中国造船所
は継続的にLNG運搬船の建造実績を積み重ねている。
・2025年末時点で、日本の船社、需要家(商社、ガス会社、電力会社)のLNG船隊は約200隻。
・日本の造船業は省エネ技術や信頼性など品質面で優位性を有している一方で、LNG運搬船の建造
については以下の課題がある。
(1)近年主流となっている貨物タンク(メンブレン型)のLNG運搬船については、設計・建造
ノウハウを有しておらず、建造に必要な設備も整備されていない
(2)サプライチェーンが一度途絶したため、設備等の初期投資コストを船価に転嫁せざるを得
ないため、船価が高くなる
(3)設計・建造双方で、専門的な作業を必要とするため、そのための人材育成が1,000人規模で
必要
① 国内外で獲得を目指す市場
・今後拡大が見込まれる国内外のLNG
の海上輸送市場を獲得。
・2035年以降に年3-5隻建造の安定的
供給体制構築。
② 取り巻く環境と構造変化
・近年の国際情勢の不安定化や電力需要増加を背景に、第7次エネルギー基本計画においてLNGは
「カーボンニュートラル実現後も重要なエネルギー源」と位置付けられた。
・加えて、米国・カタール等からのLNG輸送需要の増大により、国内外のLNG運搬船の建造需要は
今後更に拡大見込み。
② 達成すべき戦略的な目標
・国内外で今後もLNG海上輸送の需要
が拡大していく中、自律性の確保と
いう経済安全保障の観点から、我が
国としてLNG運搬船の建造技術を獲
得・保持。
・LNG運搬船の建造技術を基に、液化
水素等といった次世代エネルギー輸
送の競争力を強化。
③ 経済的・戦略的な重要性
・国内外で今後もLNG海上輸送の需要が拡大していく中、我が国としてLNG運搬船の建造技術を獲
得・保持することは、自律性の確保という経済安全保障の観点から重要。
・LNG運搬船の建造に不可欠な防熱技術・低温技術は、液化水素等の新たな輸送技術にも応用可能
であり、造船業を含む海事産業群振興のための成長投資としての意義がある。
150
2.勝ち筋の特定と官民投資の具体像【道筋】
造船
LNG運搬船
(1)基本戦略
(2)官民投資の具体像
① 勝ち筋
・発注者である荷主(電力・ガス事業者等)や海運事業者による国内造船所へ
の継続的かつ安定的な発注を確保するとともに中長期的な需要サイド・供給
サイドの協働に関する合意を得て、同合意に基づき、国内造船所における供
給体制の構築を図る。
・加えて、LNG運搬船の建造に必要な防熱技術・低温貨物の輸送技術を基に、
液化水素等の次世代エネルギーの輸送技術の競争力強化につなげる。
① 投資内容
需要サイドと供給サイドの協働に関する合意を前提として、
・需要サイドによる長期安定発注
・供給サイドによる技術獲得、技能者育成、設備投資等
② 我が国として構築すべき機能
・中長期的な需要サイド・供給サイドの協働に関する事業者等の合意に基づき、
LNG運搬船の供給体制を構築する。
・我が国の省エネ技術や防熱技術を活用した次世代LNG運搬船を開発する能力
を構築。
② 投資額
関係者間での検討を引き続き進めつつ、今後精査
③ 定量的インパクト:投資による経済波及効果
関係者間での検討を引き続き進めつつ、今後精査
151
3.官民投資促進に向けた課題と政策パッケージ【政策手段】
造船
LNG運搬船
(1)投資促進に向けた課題
(2)講じるべき政策パッケージ
①リソース制約
・2019年以降LNG運搬船の建造を行っていないため、建
造ノウハウ等が不足。
・その上で、新たな体制を構築するためには、初期投資
が大きく、初期投資コストを回収して競争力を確保す
るまでには相当の期間を要し、事業性確保フェーズへ
の到達が困難。
・既存の船種の建造量を増加させることに比べ、人材育
成・確保を含めコストが大きいため、新造船建造量の
1,800万総トン目標や造船人材不足とのバランスを考慮
する必要。LNGタンクの防熱加工に関する人材を含め、
設計・建造の専門人材が1000人規模で不足。
・サプライチェーンの途絶。
①LNG運搬船供給体制の構築
・発注者である荷主(電力・ガス事業者等)や海運事業者による国内造船所へ
の継続的かつ安定的な発注を確保するとともに、中長期的な需要サイド・供
給サイドの協働が図られるよう働きかける。
・上記協働に関する合意を得て、同合意に基づき、国内造船所における供給体
制の構築を図る。
・地域未来戦略と連携しながら、瀬戸内や九州を中心とした造船関連産業の集
積地域における船舶建造能力の強靱化に必要な取組について検討する。
②不確実性の要因
・中長期的には国内外におけるLNGの需要増加及びそれ
に伴うLNG運搬船の建造需要増加が見込まれるものの、
LNG運搬船の建造コストが大きいため、船価が高くな
る。
・短期的にはLNG価格の市況の影響を大きく受けるため、
LNG運搬船の建造需要が一時的に途絶えるリスクがあ
ることから、供給サイドによるLNG運搬船の供給体制
の構築の前提として、安定的な発注の確保が必要。
・船舶の受注と竣工の期間が一般商船よりも長い(近年
は3~4年)。
③LNG運搬船の設計・建造に必要な人材の確保・育成に向けた教育研究体制等の整備
・関係省庁及び業界団体等と連携して、LNG運搬船の設計・建造に必要なタン
クの溶接等のスキルの標準化・可視化を進めるとともに、講座の開発、提供
等を通じたリ・スキリングの促進を図る。
・地域未来戦略と連携しながら、瀬戸内や九州を中心とした造船関連産業の集
積地域における、大規模な造船人材の確保・育成等について検討する。
②同志国との連携
・我が国が有する大規模なLNG需要を基盤に、同志国が有する建造ノウハウ等
を戦略的に組み合わせることで、国際市場で一定の地位を確保するLNG運搬
船の供給体制を構築する。
152
造船
LNG運搬船
方向性
LNG運搬船
日本の造船所においては2019年竣工が最後の建造実績。また、
建造実績の乏しいメンブレン型が主流に
遠隔地からの輸入増により、必要船腹量は今後拡大する見込
LNGの輸入を海上輸送に頼る我が国にとって、LNG運搬船の
建造技術を獲得・保持することは、経済安全保障上の観点から
重要
防熱技術・低温技術は液化水素等の新エネルギー運搬船におい
ても必要な技術
主な課題
(ボトルネック)
• 需要側からの長期安定発注が見
通せない
• 建造ノウハウ・体制(設備等)
の欠如、建造コストの上昇
• 設計・現場双方での人材の確保
出典:Samsung Heavy Industries Co., Ltd.
カーゴタンク内部
出典:Bureau Veritas S.A.
我が国の勝ち筋
目指すべき姿
講じるべき施策
• 需要サイドと供給サイドの協働を通じたLNG運搬船供給
体制の構築
• 同志国が有する建造ノウハウ等の戦略的な組み合わせに
よるLNG船供給体制の確保
• LNG運搬船の設計・建造に必要な人材の確保・育成に向
けた教育研究体制等の整備
• 2035 年 以 降 に 年 3-5 隻 建 造 の
安定的供給体制構築
• 国内外で今後もLNG海上輸送の
需要が拡大していく中、自律性
の確保という経済安全保障の観
点から、我が国としてLNG運搬
船の建造技術を獲得・保持。
153
マテリアル(重要鉱物・部素材)
①永久磁石
154
1.現状認識と目指す姿【目標】
マテリアル(重要鉱物・部素材)
永久磁石
(1)現状
(2) 目標
① 現状
・永久磁石は、EV駆動モーターや風力発電、産業機械など、幅広い産業に活用。今後、EVの普及等に
伴い、世界需要は増加することが見込まれる中、日本磁石メーカの自律性・不可欠性確保を図るために
は、重レアアース等の原材料の安定的な確保、需要増に対する磁石生産能力の確保などが課題。
① 国内外で獲得を目指す市場
・国内外の電動車(EVの駆動用モーター等)や
風力発電、産業機械等向けの高性能磁石市場
におけるシェア拡大を目指す。
② 取り巻く環境と構造変化
・世界的なEVシフト、再エネ拡大により、今後、高性能磁石の需要が急増する見込み。加え
て、地政学リスクの高まりにより、レアアースの安定確保が国家戦略上の課題となってい
る状況。欧米においては、磁石の安定供給確保に向けた国内生産支援等を行うとともに、
一部の下流企業は日本製磁石からの調達も検討中。
・国内では省レアアース/レアアースフリー磁石(重レアアースフリーネオジム磁石や完全レ
アアースフリー磁石等)の技術開発を並行的に実施中であり、早いものでは2028年度頃を
目標に開発終了予定。
③ 経済的・戦略的な重要性
・永久磁石は、自動車・産業機械等の基幹産業における生産活動に必須。足下で、特定国以外で高性
能磁石の供給能力を有するのは事実上我が国のみであるなど、我が国磁石企業の不可欠性の向上を
図る絶好の機会。
・省レアアース/レアアースフリー磁石の技術開発・量産化や、レアアースの国内自給率向上に向けた、工程
くずや使用済最終製品からの磁石の回収スキーム/技術の確立、レアアース分離精製技術開発/設備増
強等の取組を通じ、安定供給を図ることが重要。
② 達成すべき戦略的な目標
・2030年時点の需要量に対して生産能力確保
(日系自動車産業等に必要な磁石の確保)
・2030年までに省レアアース/レアアースフリー磁石
の量産技術の確立
・2030年時点で、永久磁石(ネオジム磁石)に
ついて、国内供給される永久磁石の原材料の約
3割をリサイクルによって賄う
※レアアースの供給源多様化については、「重要鉱物
等の一次原料(鉱石等)及び二次原料(リサイ
クル材等の循環資源)からの精錬・分離精製、解
体選別技術」の官民投資ロードマップにおいて検討。
155
マテリアル(重要鉱物・部素材)
永久磁石
2.勝ち筋の特定と官民投資の具体像【道筋】
(1)基本戦略
(2)官民投資の具体像
① 勝ち筋
・サプライチェーンの強靱化を各国の製造業が図っていく中で、原材
料の調達源を複線化した我が国メーカーによる高性能磁石を安定的
に供給し、国内外市場を獲得する。
・省レアアース/レアアースフリー磁石の技術開発を進め、レアアー
ス使用量削減による高性能磁石の低コスト化を図る。
・レアアースリサイクル率の向上及び低コスト化・ 高効率化等の設
備投資促進により、原材料となるレアアースの国内自給率を高めて
いく。
① 投資内容
・省レアアース/レアアースフリー磁石の技術開発(重レアアースフ
リーネオジム磁石、完全レアアースフリー磁石等)
・リサイクル設備(回収、選別、取出、分離・精製)の低コスト化・
高効率化等の技術開発、設備投資
・省レアアース/レアアースフリー磁石を含む国内磁石生産ラインの増
強・自動化
② 我が国として構築すべき機能
・産官学連携による安価な省レアアース/レアアースフリー磁石の量
産技術の確立
・産官学連携による使用済み磁石の回収、選別、取出、分離・精製の
スキーム整備及び低コスト化・高効率化等の技術の確立
・同志国からの使用済み最終製品から回収した磁石/レアアースの輸
入
② 投資額
2040年度までで0.2兆円と想定
③ 定量的インパクト:投資による経済波及効果
2040年度までで3.2兆円と想定
156
3.官民投資促進に向けた課題と政策パッケージ【政策手段】
マテリアル(重要鉱物・部素材)
永久磁石
(1)投資促進に向けた課題
(2)講じるべき政策パッケージ
①リソース制約
・市中からのリサイクル網が
未整備であり、磁石/レア
アース回収の品質・量・コ
ストが課題
①国内投資支援
・省レアアース/レアアースフリー磁石の技術開発支援
・リサイクル(回収、選別、取出、分離・精製)の低コスト化・高効率化等の技術開発、設備投資への支援、
環境配慮設計(解体・素材分離の効率生向上)に関する技術開発
・省レアアース/レアアースフリー磁石を含む国内磁石生産ラインの増強・自動化にかかる設備投資補助金
②不確実性の要因
・永久磁石の原価は原材料費
が大半を占める中、レア
アース原料価格の変動に
よって、量産用設備やリサ
イクル設備の投資リスクが
発生
・省レアアース/レアアースフ
リー磁石の技術確立の不確
実性
・著しく低い価格付けがなさ
れたレアアース磁石の流通
リスク
②需要創出・市場確保
・国内製造業(自動車や産業機械等)における国産磁石への切替え支援
③立地競争力強化
・我が国が強みとする技術が海外に流出しないよう官民による技術管理を徹底
・使用済み磁石の回収、選別、取出、分離・精製のスキーム整備
④国際連携
・同志国との国際的な磁石リサイクルネットワーク構築
157
マテリアル(重要鉱物・部素材)
永久磁石
方向性
•
•
永久磁石はレアアースを用いた代表的な製品であり、EV駆動モーターなど幅広い産業に活用。特定国以外で高性能磁石の供給能力を有
するのは事実上日本のみ。今後、EVの普及等に伴い、世界需要は増加することが見込まれる中、日本磁石メーカーの自律性・不可欠性
確保を図るためには、(1)原材料(レアアース)の安定調達確保、(2)需要増に対する磁石生産能力の確保などが課題。
この状況に鑑み、①原材料の調達先の多角化に加え、②廃棄された磁石のリサイクルに係る技術開発及びスキーム確立、③省レアアー
ス/レアアースフリー磁石等の開発や④永久磁石の製造能力増強を進める。
永久磁石の安定供給確保策の全体像
【対応策】
①原材料の調達先の多角化
【課題】
(1)原材料の
安定調達確保
②リサイクル
(技術開発・スキーム確立)
③省レアアース/レアアースフリー化
(2)磁石製造能力増強
永久磁石(レアアース磁石)
④技術開発・設備増強
代表的な電気モータの構造
【目標】
・2030年時点の国内需要量に対して生産
能力の確保
・国内外の電動車等向けの高性能磁石市場
の獲得
・2030年時点で、永久磁石(ネオジム磁
石)について、国内供給される永久磁石の
原材料の約3割をリサイクルによって賄う
永久磁石の最終用途(自動車の例)
※禁転載
(出典)2021年7月 第3回 産業構造審議会 グリーンイノベーションプロジェクト部会 産業構造転換分野ワーキンググループ
※禁転載
158
マテリアル(重要鉱物・部素材)
②グリーン鉄
※ 資源・エネルギー安全保障・GX③と同じ
159
1.現状認識と目指す姿【目標】
マテリアル(重要鉱物・部素材)
グリーン鉄
(1)現状
(2) 目標
・高品質な素材は、主に高炉で生産されており、我が国の高炉比率は約7割を占め、欧米諸国
等と比較し高くなっている。高炉法は、コークスを用いた還元反応の際に多くのCO2を排
出し、鉄鋼業は産業部門の中で最もCO2排出量の多い産業(約4割)であるため、CO2排
出量削減に向け、大型革新電炉への転換や水素還元製鉄の技術開発等の取組を進めている。
① 国内外で獲得を目指す市場
・2030年代前半に、自動車、建築、公共工事、
造船、産業機械等向けの年約300万t以上の
規模の高品質なグリーン鉄市場を国内外で
獲得する。
① 現状
② 取り巻く環境と構造変化
・欧州では、製造時のCO2排出量が多い製品の市場参入規制を導入する動きが見られるほか、
日本でも、27年3月期から、時価総額が一定規模以上の東証プライム市場上場企業に対し、
サステナビリティ開示基準に従い、Scope3も含め温室効果ガスの排出量等の情報開示を義
務付ける方向で議論が進められている。斯かる環境規制が導入される中で、需要サイドで
も高機能性に加えて低炭素な鋼材を求めるように嗜好が変わる動きが見られる。
・また欧州や中国等各国の鉄鋼メーカーは、政府の支援も得つつ、高炉から高品質電炉への
転換等による低炭素化に向けた技術開発や投資を推進。
③ 経済的・戦略的な重要性
・各国も脱炭素化に向けた技術開発や投資を推進している中、日本でもグリーン鉄の供給体
制を構築することは、鉄鋼業の競争力維持・強化のために必要不可欠な危機管理投資。
・グリーン鉄の市場は2050年に約5億トンまで拡大するポテンシャルがあり、将来的な需要
サイドのGX製品へのニーズ増加が見込まれる中、投資支援やグリーン鉄市場拡大等を通じ
て、官民で連携し、日本の技術力やノウハウを活かし、段階的に高品位かつ低炭素な鋼材
の供給能力を高めておく必要がある。
・ 主原料である高品位スクラップはグリーン鉄製造や鋳物等既存のユーザーにとって重要な
物資であり、安定的に確保することが必要であるが、各国が確保に動くことが予想される
中、国内でのサプライチェーンを構築し供給能力を高めることで、国産資源確保につなげ
る。
② 達成すべき戦略的な目標
・海外メーカーでは製造することができない
高品質かつGX価値をもった鋼材を、スク
ラップや還元鉄を主原材料とし、いち早く
製造することにより、不可欠性を獲得する。
・スクラップについて、大型革新電炉や鋳物
等製造業向けの安定的な供給を確保するた
め、2030年時点で、鉄スクラップを高品位
化する処理能力約200万トン/年を目安とし、
追加的に国内で確保する。
160
2.勝ち筋の特定と官民投資の具体像【道筋】
マテリアル(重要鉱物・部素材)
グリーン鉄
(2)官民投資の具体像
(1)基本戦略
① 勝ち筋
・グリーン鉄の生産基盤構築及び高品位スクラップ確保に向けた技術開発・設備
投資を進めることで、高品位かつGX価値を有した鋼材の供給体制を確立すると
ともに、GX価値の見える化及び国際標準への反映、公共調達におけるグリーン
鉄の優先調達、大口需要家(自動車・建材等)に対する需要喚起策や制度の導
入・検討等を進め、国内においてグリーン鉄市場を創出する。
・国際的な理解の促進及びルールメイクを進めていくことにより海外のグリーン
鉄市場を獲得していく。
② 我が国として構築すべき機能
・グリーン鉄生産基盤
・高品位スクラップ生産基盤の増強(約200万t/年目安増)
・安価・安定な脱炭素電力・水素の供給基盤
・CCS事業実施基盤の構築
・供給拡大に繋がるグリーン鉄市場の創出
・GX価値の情報伝達スキーム
・国際標準化の策定向けた有志国との連携体制
① 投資内容
・鉄鋼メーカーによる、大型革新電炉の建設、水素還元製
鉄の技術開発等供給サイドのプロセス転換。
・鉄鋼メーカーやスクラップ事業者による、AI等を活用し
たスクラップ高度選別設備や大型シュレッダー等リサイ
クル施設。
② 投資額
2040年度までで4.2兆円と想定
③ 定量的インパクト:投資による経済波及効果
2040年度までで10.4兆円と想定
161
3.官民投資促進に向けた課題と政策パッケージ【政策手段】
マテリアル(重要鉱物・部素材)
グリーン鉄
(1)投資促進に向けた課題
(2)講じるべき政策パッケージ
• 初期コスト:大型革新電炉等
への初期投資負担が大きい。
• 原材料:世界的に高品位スク
ラップへの需要が高まる中で、
安定的な高品位スクラップの
調達が必要。還元鉄は少なく
とも当初は高価格が見込まれ
る。
• インフラ:安価・安定な脱炭
素電力・水素の確保、CCSの
実施環境について不透明。
• 需要:従来よりも高価格とな
るグリーン鉄への需要が短期
的に創出されるか現時点にお
いて不透明。また、グリーン
鉄のGX価値の見える化及び国
際標準への反映は道半ば。
①国内投資支援
・大型革新電炉等への設備投資補助金
・水素還元製鉄技術開発への支援
・AI等を用いたスクラップ選別効率化等技術開発への支援
・大型革新電炉で利用可能及び、鋳物等製造業でも部分的に活用が見込める様々なスクラップを生産する
ためのスクラップ高度選別設備や大型シュレッダー等リサイクル施設への設備投資支援
・循環資源の海外流出抑制策の検討
②需要創出・市場確保・社会実装支援
・グリーン鉄の国内初期需要創出に向けた取組
・グリーン購入法を踏まえた、国・自治体による優先的調達・購入の推進
・公共工事における試行工事の実施・順次対象の拡大及び検討方針の明確化、国及び地方公共団体におけ
る本格活用
・大口需要家(自動車・建材等)に対する需要喚起策や制度の導入・検討
③立地競争力強化
・自動車・家電等の高度リサイクル促進
・国内高品位スクラップの確保
・脱炭素電力・水素・CCSインフラの整備
④国際連携
・グリーン鉄のGX価値の国際標準への反映
162
マテリアル(重要鉱物・部素材)
グリーン鉄
方向性
現状認識、日本の強み
鉄鋼は様々な製品や社会インフラに使用される重要な基礎素材。我が国の鉄鋼業は高強度、高加工性など、高級鋼材を中心
に競争力を有し、製造業の国際競争力強化に貢献。
他方、欧州を中心に素材製造プロセスの脱炭素化を求める動きがあり、鋼材に対する需要家の嗜好が変化する動きが見られ
る。グリーン鉄の市場規模についても、2050年に世界全体で5億トンにまで拡大するポテンシャルがあり、海外の競合企業
においてもグリーン鉄の生産に向けた技術開発や投資を進める動きがある中、他国に先駆けてグリーン鉄の国内生産・技術
基盤の構築が急務。
我が国の勝ち筋
主な課題
(ボトルネック)
・大型革新電炉等への初期投資負
担
・安定的な高品位スクラップ鉄の
確保
・グリーン鉄への短期的な需要が
不透明
・グリーン鉄のGX価値の見える化
及び国際標準への反映が道半ば
目指すべき姿
講じるべき施策
・大型革新電炉の設備投資や水素還元製鉄の
技術開発支援
・高品位スクラップ鉄増産に向けたリサイク
ル施設への設備投資支援
・グリーン鉄の国内初期需要創出(公共工事
におけるグリーン鉄の調達等)
・ 2030年代前半に、年約300万t
以上の規模の高品質なグリーン
鉄市場を国内外で獲得
・ 2030年時点で、鉄スクラップ
を高品位化する処理能力約200
万トン/年を目安とし、追加的
に国内で確保する。
・グリーン鉄のGX価値の国際標準への反映
・脱炭素電力・水素・CCSインフラの整備
163
マテリアル(重要鉱物・部素材)
③革新的金属部素材
164
1.現状認識と目指す姿【目標】
マテリアル(重要鉱物・部素材)
革新的金属部素材
(1)現状
(2) 目標
① 現状
・日本の金属産業は、他国では製造が困難な高機能な革新的金属部素材を開発・供給することにより、世界のも
のづくり産業を支えている。(例:航空機向けスポンジチタン、半導体向けターゲット材、基板向け銅箔)
・また、航空機エンジン向け耐熱合金など革新的金属部素材の研究開発力に強みを持つ。
① 国内外で獲得を目指す市場
・世界の半導体、データセン
ター、航空宇宙、エネル
ギー、医療介護分野等向け
の革新的金属部素材市場及
びそれを加工した部品・製
品市場(例えば、2030年に
航空機エンジン向け高機能
金属世界シェア5割、半導
体回路向け高機能金属世界
シェア8割)。
② 取り巻く環境と構造変化
・半導体、データセンター、航空、宇宙、エネルギー、医療介護分野等を中心に、エネルギー効率向上、省電力
化、CO₂排出削減が強く求められており、製造プロセスや設計の工夫だけでは実現できないブレークスルーを
もたらす革新的金属部素材への期待が高まっている(高電導金属、軽量金属、熱伝導に優れた金属部素材な
ど)。
・AIの登場や粉末冶金や異なる金属種の貼り合わせといった新しいアプローチでの金属部素材開発が活発化し、
従来日本が得意としてきた加工プロセスとの擦り合わせといった形での競争優位が失われる恐れがある。
・また、革新的な金属部素材自体は市場規模が限定的で大量生産を行うようなものでもないことから民間単独で
は取組が進んでいない。
・また、特定国が重要鉱物の輸出管理を強化したこと等を背景として、革新的金属部素材の製造に必要な原料の
供給が不安定化しており、重要鉱物の安定確保が、国家戦略上の重要な課題。
③ 経済的・戦略的な重要性
・革新的金属部素材が航空、宇宙、防衛等を始めとした様々な成長産業において使用される部素材であることに
着目し、革新的金属部素材の開発競争が世界で行われている中で、金属部素材開発で優位に立てなければ、同
志国で製造される最終製品においても競争力が劣後する可能性がある。
・日本でしか製造できない革新的金属部素材の技術開発や設備投資を一層進めることは、日本の金属産業の不可
欠性の向上を図る絶好の機会。
・更に、革新的金属部素材を生産する鍵は、原材料である希少原材料を安定的に確保することであるが、足下で
は特定国による輸出管理強化等の影響で供給が不安定化している中で、希少原材料を使用する革新的金属部素
材を生産・使用する際に発生する廃材等から速やかにリサイクルし、国内でのサプライチェーンを構築可能と
することは、革新的金属部素材の競争力強化に繋がる。
② 達成すべき戦略的な目標
・海外メーカーでは製造する
ことができない高機能な革
新的金属部素材を製造する
ことにより、不可欠性を獲
得する。
165
2.勝ち筋の特定と官民投資の具体像【道筋】
マテリアル(重要鉱物・部素材)
革新的金属部素材
(1)基本戦略
(2)官民投資の具体像
① 勝ち筋
・世界の半導体、データセンター、航空宇宙、エネルギー、医療介護分野等向けの革
新的金属部素材の開発及び生産能力の増強
・ユーザー企業における革新的金属部素材の情報収集、革新的金属部素材の特性を活
かした製品の開発力の向上
・希少原材料を使用する革新的金属部素材を生産・使用する際に発生する廃材等のリ
サイクルによる原材料の安定供給確保
① 投資内容
・金属部素材メーカーによる革新的金属部素材の量
産・加工に向けた技術開発
・我が国のみで製造可能な金属部素材を増産する際
の生産設備の導入
・廃液等から原材料を抽出するためのリサイクル技
術開発及びシステム構築
② 我が国として構築すべき機能
・革新的金属部素材技術開発・生産基盤
・ユーザー企業が革新的金属部素材を製品に取り入れやすいネットワークの構築
・量産化を見据えた品質保証体制の構築
・生産・使用時に発生する廃材等を速やかにリサイクルし、原材料調達に活かすサプ
ライチェーンの構築
② 投資額
2040年度までで0.3兆円と想定
③ 定量的インパクト:投資による経済波及効果
2040年度までで3.3兆円と想定
166
3.官民投資促進に向けた課題と政策パッケージ【政策手段】
(1)投資促進に向けた課題
①リソース制約
・国際競争が激化する中、有望な
金属部素材の量産・加工技術確
立に向けたスピード感ある技術
開発基盤が未整備であること、
技術が確立した後の生産基盤が
未整備であるなど、投資リスク
が大きいことが課題
・革新的金属部素材に使用する希
少原材料の安定調達やコストが
課題
②不確実性の要因
・新たに開発された金属部素材を
量産する際の技術的難易度が高
く、大量生産を行うようなもの
でもないことから民間単独では
取組が進まないことが課題
マテリアル(重要鉱物・部素材)
革新的金属部素材
(2)講じるべき政策パッケージ
①国内投資支援
・革新的金属部素材の素材探索に加えて、量産・加工技術確立に向けた投資も含む、技術開発及び設備投資
支援(例:航空機エンジン向け高機能金属、生体マグネシウム技術開発、マグネシウムフリーアルミニウ
ム合金など)
・革新的金属部素材に必要な希少原材料の確保に資するリサイクル技術開発、設備投資及びサプライチェー
ン構築に関する支援
②需要創出・市場確保・社会実装支援
・航空、宇宙、防衛等の分野において、新たに開発された革新的金属部素材の実証事業、政府調達
・スタートアップ企業による革新的金属部素材開発向けAI等のDX技術の社会実装支援(例:SBIR事業等
の活用)
・革新的金属部素材に必要な希少原材料の確保に資するサプライチェーン構築に係るシステム構築実証・
支援
③立地競争力強化
・技術の海外流出防止に向けた官民による技術管理の実施
④国際連携
・新たに開発された革新的金属部素材の国際標準化
・革新的金属部素材に必要な希少原材料の安定的な確保に向けたサプライチェーン構築
167
マテリアル(重要鉱物・部素材)
革新的金属部素材
方向性
•
•
•
半導体、データセンター、航空、宇宙、エネルギー、医療介護分野等を中心に、高機能化(エネルギー効率向上等)が金属部素材に求め
られる中、AI等を活用した金属部素材開発が行われつつあり、従来我が国が得意としてきた加工プロセスとの擦り合わせといった形での競
争優位が失われる恐れがあること、また革新的な金属部素材自体は市場規模が限定的である一方、量産技術開発が難しく大量生産を
行うようなものでもないことから民間単独では取組が進まないこと等が課題。
上記課題がある一方、革新的金属部素材が上記の様々な成長産業において使用される部素材であることに着目し、世界で開発競争が
行われているところ、我が国ものづくり企業の技術力の高さを活かし、金属部素材開発の競争力を強化し、不可欠性を確保することは重要。
上記に鑑み、革新的金属部素材の素材探索に加えて、量産・加工技術確立に向けた技術開発や設備投資等を進め、国内外の革新的
金属部素材市場獲得につなげる。
主な課題
(ボトルネック)
・革新的な金属部素材開発は、市
場規模が限定的である一方、量産
技術開発が難しく大量生産を行う
ようなものでもないことから民間単
独では取組が進まないことが課題
・希少原材料を使用するため、
安定調達やコストが課題
我が国の勝ち筋
講じるべき施策
・革新的金属部素材の素材探索に加えて、量産・加工技術確立
に向けた技術開発及び設備投資支援
(例:航空機エンジン向け高機能金属など)
・スタートアップ企業による革新的金属部素材開発向けAI等の
DX技術の社会実装支援(例:SBIR事業等の活用)
・革新的金属部素材に必要な希少原材料の確保に資するリサイ
クル技術開発、設備投資及びサプライチェーン構築に関する
支援
目指すべき姿
・国内外の半導体、航空、宇宙分野等
向けの革新的金属部素材市場及びそれ
を加工した部品・製品市場(例えば、
2030年に航空機エンジン向け高機能金
属世界シェア5割、半導体回路向け高
機能金属世界シェア8割)。
・海外メーカーでは製造することができな
い高機能な革新的金属部素材を製造
することにより、不可欠性を獲得。
168
マテリアル(重要鉱物・部素材)
④低炭素金属部素材(鉄鋼以外)
169
1.現状認識と目指す姿【目標】
マテリアル(重要鉱物・部素材)
低炭素金属部素材(鉄鋼以外)
(1)現状
(2) 目標
① 現状
【アルミニウム】
・アルミニウム製品の製造工程において、新地金製造までの工程で、排出量全体の90%を占
める。CO₂排出量削減に向け、①新地金の代わりにスクラップの使用量を増やす技術開発・
設備投資、②新地金生産時の電力源を再生エネルギー由来としたグリーンアルミ地金の調達
等の取組を進めている。
【レアメタル】
・ニッケル、コバルト、リチウム等のレアメタルのリサイクルは採掘と比べてCO₂排出量を
80%削減可能。また、日本はリチウムイオン蓄電池の製造工程で、原材料の調達を特定国
に過度に依存しており、国内で発生するブラックマス*も二次資源として有効活用する必要。
① 国内外で獲得を目指す市場
【アルミニウム】
・2030年代前半に、年約90万トン以上規模の高品
質な低炭素アルミ市場を国内外で獲得する。
【レアメタル】
・国内蓄電池製造基盤150GWh/年の確立に向け、
2030年から2030年代半ばに、リチウム年約10
万トン、ニッケル年約9万トン、コバルト年約
2万トン等を2次資源含め国内外で獲得する。
② 達成すべき戦略的な目標
【アルミニウム】
② 取り巻く環境と構造変化
・海外メーカーでは製造することができない高品
・欧州をはじめとし、製造時のCO₂排出量が多い製品の市場参入規制が導入される動きが見ら
質かつGX価値をもったアルミ素材を、いち早く
れる中で、需要サイドでも高機能性に加えて低炭素金属部素材を求めるように嗜好が変わる
製造することにより、不可欠性を獲得する。
動きが見られる。その中で、欧州や中国等のアルミメーカーは、政府の支援も受けつつ、低
・2030年時点で、再生アルミ原料の使用が一般に
炭素化に向けた技術開発・投資やスクラップの確保を推進している。
難しいとされるアルミ展伸材について、国内生
・リチウムイオン蓄電池では、中国等によりリサイクル促進のための政府支援が積極的に行わ
産量の約4割を目安とし、再生アルミ原料由来
れており、また、欧州バッテリー規則では、2031年より再生材の使用が義務付けられる。
とする。
③ 経済的・戦略的な重要性
【レアメタル】
・各国も脱炭素化に向けた技術開発や投資を進める中、日本でも低炭素金属部素材の供給体制
・蓄電池材料として利用可能な品質かつ競争力の
を構築することは、金属事業者の競争力維持・強化のために必要不可欠な危機管理投資。
あるコストでリチウム等を回収可能なリサイク
・将来的なGX製品へのニーズ増加が見込まれる中、投資支援や市場拡大等を通じて、官民で
ル技術を開発・実装する。
連携し、日本の技術力やノウハウを活かし、段階的に高品位かつ低炭素な金属部素材の供給
・2030年までの国内のリサイクルシステム確立を
能力を高めておく必要がある。
目指し、必要な取組を通じて、リサイクル基盤
・低炭素金属部素材の生産において、スクラップやブラックマスの安定的確保が必要であるが、
を構築する。
各国が確保に動くことが予想される中、国内でのサプライチェーンを構築し供給能力を高め
170
ることで、国産資源確保につなげる。
* 使用済みリチウムイオン蓄電池を破砕・粉砕して得られる、金属を豊富に含む黒色粉末
2.勝ち筋の特定と官民投資の具体像【道筋】
マテリアル(重要鉱物・部素材)
低炭素金属部素材(鉄鋼以外)
(1)基本戦略
(2)官民投資の具体像
① 勝ち筋
・低炭素金属部素材の生産基盤構築、スクラップ確保に向けた技術開発・設
備投資、グリーンな原材料の確保、リサイクルへの支援を進めることで、
高品位かつGX価値を有した金属部素材の供給体制を確立する。
・また、GX価値の見える化及び国際標準への反映、公共調達における低炭素
金属部素材の優先調達、大口需要家(自動車・建材等)に対する需要喚起
策や制度の導入・検討等を進め、国内において低炭素金属部素材市場(需
要)を創出するとともに、国際的な理解の促進及びルールメイクを進め、
国内外の低炭素金属部素材市場を獲得していく。
① 投資内容
・アルミメーカーによる、供給サイドのプロセス転換
・アルミメーカーやスクラップ事業者による、 AI等を活用した
スクラップ利活用促進技術開発、リサイクル設備
・グリーンアルミ地金権益確保
・蓄電池リサイクルのためのプロセス転換やリサイクル技術や
施設
② 我が国として構築すべき機能
・低炭素金属部素材の生産基盤
・スクラップ生産基盤の増強
・グリーンアルミ地金の権益
・蓄電池リサイクルシステムの構築
・低炭素金属部素材市場の創出
・GX価値の情報伝達スキーム
・有志国との連携を通じたGX価値の国際標準化
② 投資額
2040年度までで0.7兆円と想定
③ 定量的インパクト:投資による経済波及効果
2040年度までで6.7兆円と想定
171
3.官民投資促進に向けた課題と政策パッケージ【政策手段】
(1)投資促進に向けた課題
・初期コスト:低炭素金属部素
材の生産基盤構築に向けた初
期投資負担が大きい。
・原材料:世界的にスクラッ
プ・ブラックマスやグリーン
な原材料への需要が高まる中
で、安定的な調達が必要。
・インフラ:安価・安定な脱炭
素電力の確保について不透明。
・需要:従来よりも高価格とな
る低炭素金属部素材への需要
が創出されるか現時点におい
て不透明。また、低炭素金属
部素材のGX価値の見える化
及び国際標準への反映は道半
ば。
マテリアル(重要鉱物・部素材)
低炭素金属部素材(鉄鋼以外)
(2)講じるべき政策パッケージ
①国内投資支援
・国内での循環資源の回収拡大や不適正な国外流出抑制等により、基幹産業(アルミニウム関連産業、
蓄電池関連産業)に再生材を質・量・コストの面で安定的に供給し、それを活用するサプライチェー
ンの強靱化を図る。
- アルミスクラップ溶解設備等への技術開発・設備投資支援
- AI等を用いたスクラップ利活用促進技術開発支援
- スクラップ高度選別設備やシュレッダー等リサイクル施設への設備投資支援
- 蓄電池リサイクルの技術開発・設備投資支援や精錬加工コストの低減
- 環境配慮設計(解体・素材分離の効率性向上)に関する技術開発
- 不適正スクラップヤード対策の導入および輸出確認の厳格運用
②需要創出・市場確保・社会実装支援
・低炭素金属部素材の国内初期需要創出に向けた取組
- グリーン購入法等を踏まえた、国・自治体による優先的調達・購入の推進・検討
- 大口需要家(自動車・建材・蓄電池等)に対する需要喚起策や制度の導入・検討
③立地競争力強化
・自動車・蓄電池・家電等の高度リサイクル促進
・国内スクラップの確保(例:自動車メーカーや鋳造事業者から発生するアルミくずの回収強化など)
④国際連携
・低炭素金属部素材のGX価値の国際標準への反映
・グリーンアルミ地金の権益確保
・ブラックマスの調達に向けた諸外国との協力・キャパシティビルディング
172
マテリアル(重要鉱物・部素材)
低炭素金属部素材(鉄鋼以外)
方向性
•
アルミニウム、レアメタルは様々な製品や社会インフラに使用される重要な基礎素材。我が国の金属産業は、高強度・高加工性などユーザー
の求める機能を実現する高品質な素材を中心に競争力を有しており、製造業の国際競争力強化に貢献。
•
他方、欧州を中心に素材製造プロセスの脱炭素化を求める動きがあり、高機能性に加えて低炭素な部素材を求めるように需要家の嗜好
が変化する動きが見られる。世界に先駆けた低炭素金属部素材に向け、国内生産・技術基盤の構築やリサイクル基盤の構築が急務。
主な課題
(ボトルネック)
・低炭素金属部素材の生産基盤構築
に向けた初期投資負担大
・安定的なスクラップやブラックマ
ス(レアメタル)の確保が困難
・低炭素金属部素材への短期的な需
要が不透明
・低炭素金属部素材のGX価値の見
える化及び国際標準への反映は道
半ば
我が国の勝ち筋
目指すべき姿
・2030年代前半に、年約90万t以上
規模の高品質な低炭素アルミ市場を
講じるべき施策
国内外で獲得
・アルミスクラップ溶解設備等、低炭素金属部素材生産基盤構築に向けた、 ・2030年時点で、再生アルミ原料
の使用が一般に難しいとされるア
技術開発及び設備投資支援
ルミ展伸材について、国内生産量
・高品位スクラップ増産に向けた、リサイクル施設への技術開発・設備投資
の約4割を目安とし、再生アルミ
支援
原料由来とする。
・レアメタルリサイクルの技術開発・設備投資や精錬加工コストの低減
・ 国内蓄電池製造基盤150GWh/
・低炭素金属部素材の国内初期需要創出(グリーン購入法等を踏まえ
年の確立に向け、 2030年から
た、国・自治体による優先的調達・購入の推進・検討等)
2030年代半ばに、リチウム年約10万
トン、ニッケル年約9万トン、コバルト
・低炭素金属部素材のGX価値の国際標準への反映
年約2万トン等を2次資源含め国内
外で獲得
173
マテリアル(重要鉱物・部素材)
⑤一次原料(鉱石等)及び二次原料(リサイクル材等の
循環資源)からの製錬・分離精製、解体選別技術
174
1.現状認識と目指す姿【目標】
マテリアル(重要鉱物・部素材)
一次原料(鉱石等)及び二次原料(リサイクル材等の
循環資源)からの製錬・分離精製、解体選別技術
(1)現状
(2) 目標
① 現状
・レアアース等の鉱物資源は、あらゆる工業製品の原材料として、国民生活及び経済活動を支え
る重要な資源であり、DXやGXの進展や、それに伴い見込まれる電力需要増加への対応に必要
不可欠。
・また、エネルギーの有効利用の鍵となり、今後、製品としても日本企業の競争力を左右する蓄
電池、モーター、半導体等の製造にあたっては、銅やレアアース等の重要鉱物の安定的な供給
確保が欠かせない。
・他方、重要鉱物は、鉱種ごとに埋蔵・生産地の偏在性、中流工程の寡占度、価格安定性等の状
況が異なり、上流の鉱山開発から下流の最終製品化までに多様な供給リスクが存在。
① 国内外で獲得を目指す市場
・国内外の鉱山開発・製錬(分離精製)事業
等の上流開発及びリサイクルによる資源循
環を行うことで、国内製造業の自立性の確
保に向け必要な資源量を確保するとともに、
同志国等の製造業で必要となる資源量を確
保し、日本企業の不可欠性を確保する。
② 取り巻く環境と構造変化
・今後、蓄電池、モーター、半導体等の生産拡大に伴って重要鉱物の需要も急拡大する見込み。
・一方で、資源国・輸出国は、輸出管理措置等を強化し、重要鉱物の供給が大きく不安定化。
・この輸出国の重要鉱物に係る貿易管理措置等を踏まえ、欧米諸国は代替供給源形成支援のため
の基金や資金提供を用意。
③ 経済的・戦略的な重要性
・重要鉱物は、日本のみならず、先進国が特定の国に供給の多くを依存する状況。
・自動車・産業機械等の基幹産業における生産活動に必須。また、サプライチェーンの中でも、
例えば永久磁石については、足下で、特定国以外で高性能磁石の供給能力を有するのは事実上
日本のみであるなど、その不可欠性の観点でも重要性は極めて高い。
・こうした中、国内非鉄製錬所は、重要鉱物のサプライチェーンの要として、高品質な金属地金
供給、国内製錬ネットワークを活用した鉱石等の副産物であるレアメタル回収、使用済製品の
リサイクルによる資源循環等の重要な機能を担っている。
② 達成すべき戦略的な目標
・2030年時点の需要量に対して必要な上流
開発による資源量を確保する(バッテリー
メタル計38万t、レアアース計1.4万t)。
・2030年までにベースメタル(銅、亜鉛、
スズ、鉛)の自給率を80%以上とする。
・2030年までに、その他重要鉱物の特定国
依存脱却のために必要な資源量を確保する。
・国内で生産される銅(電解銅)の約3割を、
再生資源由来とする。
175
2.勝ち筋の特定と官民投資の具体像【道筋】
マテリアル(重要鉱物・部素材)
一次原料(鉱石等)及び二次原料(リサイクル材等の
循環資源)からの製錬・分離精製、解体選別技術
(1)基本戦略
(2)官民投資の具体像
① 勝ち筋
・特定国に依存する重要鉱物について、鉱山開発から製錬、加工に至るまでの
一連のサプライチェーンを国内及び同志国と確保するとともに、供給途絶を
回避するための国家備蓄の強化に取り組み、強靱なサプライチェーンを構築
する。
・従来品からの価格上昇に対し、同志国とも連携し、供給源を多角化するため
の枠組みを検討するとともに、中下流企業の行動変容等を促すことで、新た
な供給源立ち上げを行える環境を構築する。
・高品質な金属地金供給、国内製錬ネットワークを活用した鉱石等の副産物で
あるレアメタル回収、使用済製品のリサイクルによる資源循環等の重要な機
能を担っている国内製錬所の維持・強化も含めた、国際的な資源循環ネット
ワークを構築する。
① 投資内容
・鉱山開発
・製錬事業開発
・リサイクル設備(回収、選別、取出、分離精製)の低
コスト化・高効率化等の技術開発、設備投資
② 我が国として構築すべき機能
・我が国製造業において、必要な鉱物資源の安定供給を確保するため、鉱山開
発や製錬事業への出資を行うことで権益等を獲得し、安定的に供給を行うこ
とができるサプライチェーンを確保する。
・国内サプライチェーンへの原料供給途絶回避のため、国家備蓄を確保する
・国際的な資源獲得競争で優位に立つために、国内の再生材の質・量の確保と
利用拡大を推進し、日本をハブとする国際的な資源循環ネットワークを確保
する。
② 投資額
2040年度までで6.3兆円と想定
※海外での鉱山開発や製錬事業への投資を含む
③ 定量的インパクト:投資による経済波及効果
2040年度までで1.1兆円と想定
※海外での鉱山開発や製錬事業への投資は経済波及
効果に含まれない
176
3.官民投資促進に向けた課題と政策パッケージ【政策手段】
(1)投資促進に向けた課題
マテリアル(重要鉱物・部素材)
一次原料(鉱石等)及び二次原料(リサイクル材等の
循環資源)からの、製錬・分離精製、解体選別技術
(2)講じるべき政策パッケージ
①上流開発の加速化
・カントリーリスクや価格ボラティ
リティーが高いという事業リスク
があり、プレイヤーも非常に限ら
れる環境であり、民間企業による
案件組成が課題。
①上流開発の加速化
・鉱山開発・製錬事業等による供給源の多角化を実現するため、安定供給確保支援基金、JOGMEC出資金による支
援によりプロジェクトの組成を図るとともに、供給途絶を回避するための国家備蓄の強化に取り組む。
・国による主体的な取組を含む上流開発の促進に向け、既存の出資制度の枠組みの見直しを進めることで、民間企
業が投資判断が難しいプロジェクトの組成を図る。
②リサイクルの加速化
・国内での循環資源の回収拡大や不適正な国外流出抑制等により、金属スクラップ等の国内資源循環を促進すると
②リサイクルの加速化
ともに、経済的支援スキームの構築(制度的措置を含む)等により再資源化拠点等の構築・ネットワーク形成を
進め、基幹産業に再生材を質・量・コストの面で安定的に供給するサプライチェーンの強靱化を図る。
・質・量の確保とコスト低減が課題。
・再生材の利用拡大に向けて、製造事業者等による自主的な利用目標の設定や取組を促進していくとともに、品
・また、海外事業への参画について
質・由来等のトレーサビリティ確保を推進する。
は、(1)原料の安定確保の難しさ、
・既存の出資制度の枠組みの見直しを進めることで、海外におけるリサイクル事業への民間企業の投資判断を促し、
(2)技術的ハードルの高さ、(3)経
プロジェクトの組成を図る。
済性の不確実性の大きさ等の事業
③需要サイドの調達源多角化
リスクが課題。
・従来品からの価格上昇に対し、中下流企業のコミットメントが代替供給源プロジェクトへの民間企業の投資決定
③需要サイドの調達源多角化
には必要となるが、そのためには企業自身の意識付けのための企業ガバナンス構築が重要であり、経営層のコ
・代替供給源からの物資は従来品に
ミットメントや自社サプライチェーン強靱化などに向けた取組の促進を図る。
- サプライチェーンを意識した企業ガバナンスを強化するため、経営層向けのガイドライン等においてサプライ
比して価格が高く、各企業におい
チェーンのリスク分析やその強靱化の重要性を位置づける。また、企業がサプライチェーン上のリスクを的確
て材料切替のコストも発生。
に把握し、調達源の多角化に向けて行動変容できるよう、必要な情報提供を行い、企業間の対話を促進する。
・価格のみを調達基準とすると、中
- その上で、企業のみで対応が困難な場合は、具体的なボトルネックを特定して、代替供給源の多角化に向けて
下流企業の調達先多角化は進まな
必要となるサプライチェーン立上げ・切替等に係る支援策を講じる。
い。
④国際連携による取組
④国際連携による取組
・G7や資源国等の同志国と連携し、貿易政策・メカニズムについて関係国と共に協議を行うなど、供給源を多角化
・代替供給源の確保や国内の製錬
するための枠組みを検討し、新たな供給源立ち上げを促す。
ネットワーク維持等のため、国際
・日本の精錬技術等の優位性やASEAN等での資源回収の促進に寄与する我が国の強みを生かし、資源循環産業への
連携による取組が課題。
投資を推進し、日本をハブとする国際的な資源循環ネットワークの構築を目指す。
177
マテリアル(重要鉱物・部素材)
一次原料(鉱石等)及び二次原料(リサイクル材等の
循環資源)からの、製錬・分離精製、解体選別技術
方向性
○蓄電池・モーター・半導体等の生産に不可欠なレアアース等の重要鉱物は、鉱山が地理的に偏在し、製錬・分離精製工程が特定国へ集中している状況。
○鉱山開発から製錬、加工に至るまでの一連のサプライチェーンを国内及び同志国と確保するとともに、供給途絶を回避するための国家備蓄の強化に取り組み、強
靱なサプライチェーンを構築。
○従来品からの価格上昇に対し、供給源を多角化するための国際的な枠組みを検討するとともに、中下流企業の行動変容等を促すことで、新たな供給源立ち上げを
行える環境を構築。
○リサイクルによる資源循環等の重要な機能を担っている国内製錬所の維持・強化も含めた、国際的な資源循環ネットワークを構築。
重要鉱物サプライチェーン
鉱山
製錬
加工(製品)
資源循環
現状の
課題
鉱山は地理的な偏在があり、特定国
に供給を依存
カントリーリスクや価格ボラティリ
ティーが高いという事業リスクがあ
り、プレイヤーも非常に限られる
鉱山の地理的な偏在に加え、多くの
重要鉱物で、製錬工程を特定国に依
存。
代替供給源からの物資は従来品に比
して価格が高く、各企業において材
料切替のコストも発生
質・量の確保とコスト低減が課題。
海外事業への参画については、
①原料の安定確保の難しさ、②技術
的ハードルの高さ、③経済性の不確
実性の大きさ等の事業リスクが課題
経営層のコミットメントや自社サプ
ライチェーン強靱化などに向けた取
組、情報提供、企業間の対話の促進
供給源多角化に向けて必要となるサ
プライチェーン立上げ・切替等に係
る支援
再資源化拠点等の構築・ネットワーク形成
国内での循環資源の回収拡大や不適正な国外
流出抑制
再生材需要の創出・拡大を起点とした市場形
成
海外での二次原料製錬等事業のリスク低減策
対応策
安定供給確保支援基金(重要鉱物) 、JOGMEC※出資金による支援によりプロ
ジェクトの組成(既存の出資制度の枠組みの見直しを含む)
供給途絶を回避するための国家備蓄の強化 ※独立行政法人 エネルギー・金属鉱物資源機構
目指す
べき姿
〇国内製造業の必要な資源量を確保するとともに、同志国等で必要となる資源量を確保する。
〇2030年時点の需要量に対して必要な上流開発による資源量を確保する(バッテリーメタル計38万t、レアアース計1.4万t)。
〇2030年までにベースメタル(銅、亜鉛、スズ、鉛)の自給率を80%以上とする。
〇2030年までにその他重要鉱物の特定国依存脱却のために必要な資源量を確保する。
〇国内で生産される銅(電解銅)の約3割を、再生資源由来とする。
178
マテリアル(重要鉱物・部素材)
⑥AI等を活用した複合新素材
179
1.現状認識と目指す姿【目標】
マテリアル(重要鉱物・部素材)
AI等を活用した複合新素材
(1)現状
(2) 目標
① 現状
・複合素材をはじめ、炭素繊維や半導体材料などの高機能素材については、日本が高い競争力を有している。
競争力の源泉は、民間事業者・アカデミアによる技術・データ・ノウハウの長年の蓄積や、原料となる基
礎部素材の安定供給が確保されている点などが挙げられる。
・一方、アジア勢は、高機能素材市場の汎用領域でシェアを拡大するとともに、新素材開発を加速し、ハイ
エンド領域でも競争力を高めている。
① 国内外で獲得を目指す市場
・高機能ポリマー、高機能フィ
ルム・繊維、高純度微粒子、
高機能セラミックスなどの高
機能素材、さらに、これらを
複合化した新素材による市場
獲得を進め、成長する高機能
素材市場において、我が国素
材産業のシェアを引き続き確
保・拡大する。
② 取り巻く環境と構造変化
・昨今の環境規制や経済安全保障上の課題等を背景に、市場や社会要請の変化が加速度的に進む中で、研究
開発に求められるスピードが高まっており、技術の優位性が短期間で失われるおそれがある。
・素材開発におけるAI技術の活用は、ビッグテック、スタートアップなども参入し飛躍的に進展するととも
に、開発速度を更に加速すべく、自動自律実験(スマートラボ)も導入され始めている。
・その上で、更なる新素材の開発に向けて、競合企業やオフテイカーとの間で情報共有をし、協調的な素材
開発を可能とする秘匿計算技術を用いた機密保護型データ連携に対する期待が高まっている。
③ 経済的・戦略的な重要性
・素材産業は、半導体等の電子部品や自動車を始め幅広い製造業を支えており、産業規模では我が国製造業
の約2割を占める。高機能素材やその原料となる基礎部素材も含め、素材産業は我が国の基盤産業であり、
安定供給を確保することが重要。
・また、高分子ポリマーやファインセラミックス等の高機能素材は高い国際競争力を有しており、これらの
部素材を複合化するプロセス等の高度な製造技術に加え、アカデミアを含めた過去の研究データの蓄積や
研究開発能力、精密な分析・計測技術や装置基盤、熟練技術者が蓄積してきたノウハウなど、世界に先行
した強みにより、我が国の不可欠性を発揮できる領域。
・高機能素材分野での競争力を強化し、我が国素材産業の不可欠性を維持・強化すべく、我が国素材産業が
蓄積してきたデータやノウハウと最先端AI技術等を掛け合わせ、新素材開発速度を加速させるエコシステ
ムを構築することが重要。
② 達成すべき戦略的な目標
・新素材開発速度を従来比10倍
に加速させるエコシステムを
構築する。産学官の知のバ
リューチェーン形成や基礎部
素材の安定供給確保を含め、
我が国素材産業の競争力を強
化し、不可欠性を維持する。
180
2.勝ち筋の特定と官民投資の具体像【道筋】
マテリアル(重要鉱物・部素材)
AI等を活用した複合新素材
(1)基本戦略
(2)官民投資の具体像
① 勝ち筋
・日本の素材産業が強みを有する分子・表面構造のナノレベルでの制御など、蓄
積してきた技術・データ・ノウハウ、最先端AI技術等を掛け合わせ、マテリア
ルインフォマティクス(MI)、プロセスインフォマティクス(PI)の革新を
図り、材料探索、材料設計・プロセス設計・信頼性評価まで一気通貫で行える、
AI駆動素材開発を推進する。
・その際、秘匿計算技術を活用し、同業の素材企業や下流のユーザー企業にもま
たがり、複数者が協調して、国際競争力を有する複合新素材を開発する。
・AI駆動素材開発の普及に向け、データ整備や人材育成など、必要となる周辺環
境を整備する。
・さらに、新素材が早期に社会実装することが可能となる環境を整備し、成長す
る高機能素材市場に、早期に新素材を導入しシェアを確保・拡大する。
① 投資内容
・国際競争力を有するAI駆動素材開発能力の向上
- 基礎原理を学習させた素材開発向け基盤モデル・AI
エージェントの開発
- データセットの整備
- 秘匿計算基盤の整備 等
・AI駆動素材開発に必要な研究開発設備の導入
・複合新素材を含めた高機能素材の実証・量産設備の増強
・基礎部素材の安定供給確保に向けた取組
② 我が国として構築すべき機能
③ 定量的インパクト:投資による経済波及効果
2040年度までで14.4兆円と想定
・最先端素材開発AI技術や秘匿計算技術等を開発・活用して、複数者で協調して
素材開発することができるAI駆動素材開発能力
・複合新素材を含めた高機能素材の実証・量産設備
・複合新素材を含めた高機能素材を支える基礎部素材の安定的な供給
② 投資額
2040年度までで5.2兆円と想定
181
3.官民投資促進に向けた課題と政策パッケージ【政策手段】
(1)投資促進に向けた課題
(2)講じるべき政策パッケージ
①複合新素材の研究開発力強化に
向けたAI活用
民間事業者
・先端情報の共有に対する忌避感
から、研究開発の加速に必要な、
競合やオフテイカーとのデータ
連携ができていない
・データのAI-Ready化
①国内投資支援
アカデミア
・基盤的研究開発能力の相対的な
国際競争力の低下
・川下産業のニーズと連携した研究開発体制の構築支援
②複合新素材の競争力を支える周
辺環境の維持・確保
・新素材の社会実装に向けた実
証・量産の場の不足、国際連携
の不足
・複合新素材を含めた高機能素材
を支える、基礎部素材の安定供
給の持続性
マテリアル(重要鉱物・部素材)
AI等を活用した複合新素材
・秘匿計算技術等を用いたAI駆動素材開発プロジェクトの推進
・AI駆動素材開発の導入に向けた研究開発設備の転換支援
・複合新素材を含めた高機能素材の量産設備の強化支援
②需要創出・市場確保・社会実装支援
・素材開発向け基盤モデル・AIエージェントや規格統一されたデータセットの構築、人材の育成など、
AI駆動素材開発に向けた周辺環境の整備
・新素材の早期実装に向けた実証機能の強化支援
・秘匿データ連携の評価手順・相互運用規格、複合素材の機能・安全評価の国際標準の主導
③立地競争力強化
・アカデミアも含めた複合素材開発や代替素材開発等に係る基盤的研究開発能力の維持・強化
・高機能部素材の原料安定供給確保・サプライチェーン強靱化支援
④国際連携
・ルール形成に向けた同志国と連携した研究開発プロジェクトの推進
182
マテリアル(重要鉱物・部素材)
AI等を活用した複合新素材
方向性
現状認識、日本の強み
• 素材産業は、半導体等の電子部品や自動車を始め幅広い製造業を支えており、産業規模では我が国製造業の約2割を占める。高機
能素材やその原料となる基礎部素材も含め、素材産業は我が国の基盤産業であり、安定供給を確保することが重要。
• また、複合素材をはじめ、炭素繊維や半導体材料等の高機能素材は高い国際競争力を有しており、これらの部素材を複合化するプ
ロセス等の高度な製造技術に加え、アカデミアを含めた過去の研究データの蓄積や研究開発能力、精密な分析・計測技術や装置基
盤、熟練技術者が蓄積してきたノウハウなど、世界に先行した強みにより、我が国の不可欠性を発揮できる領域。
• 高機能素材分野での競争力を強化し、我が国素材産業の不可欠性を維持・強化すべく、我が国素材産業が蓄積してきたデータやノ
ウハウと最先端AI技術等を掛け合わせ、新素材開発速度を加速させるエコシステムを構築することが重要。
主な課題
(ボトルネック)
○複合新素材の研究開発力
強化に向けたAI活用
民間事業者
• 先端情報の共有に対する忌避
感から、研究開発の加速に必
要な、競合やオフテイカーと
のデータ連携ができていない
• データのAI-Ready化ができて
いない
アカデミア等
• 基盤的研究開発能力の相対的
な国際競争力の低下
○原料となる基礎部素材の
安定供給の持続性
我が国の勝ち筋
目指すべき姿
講じるべき施策
○同業の素材企業や下流のユーザー企業にもまたがり、複数者
で協調して複合新素材を開発するため、
・秘匿計算技術等を用いたAI駆動素材開発プロジェクトの推進
・AI駆動素材開発の導入に向けた研究開発設備の転換支援
・研究開発能力の維持・強化に向けたデータセット構築や人材
育成等の周辺環境整備
○高機能部素材の原料安定供給確保・サプライチェーン強靱化
支援
• 複合新素材を含め成長する高機
能素材市場において、我が国素
材産業のシェアを引き続き確
保・拡大する。
• 新素材開発速度を従来比10倍
に加速させるエコシステムを構
築する。産学官の知のバリュー
チェーン形成や基礎部素材の安
定供給確保を含め、我が国素材
産業の競争力を強化し、不可欠
性を維持する。
183
合成生物学・バイオ
①バイオものづくり
184
1.現状認識と目指す姿【目標】
合成生物学・バイオ
バイオものづくり
(1)現状
(2) 目標
① 現状
・バイオ製造技術の急速な発展を背景に、先行するバイオ医薬品等にとどまらない、幅広い
分野への適用の可能性が拡大。新産業の創出・技術優位性獲得に向けた各国の競争が激化。
① 国内外で獲得を目指す市場
・基盤となるバイオ製造技術の優位性の確保
及び高付加価値領域(高機能成分・素材
等)を中心とするグローバルでの市場獲得
を目指す。
・併せて、経済安全保障確保、脱炭素等の観
点から国内生産が肝要となる製品領域につ
いて、輸入製品に代わりバイオものづくり
による国内生産品の市場拡大を目指す。
・2040年の我が国企業の売上(合計)目標は、
11.9兆円(グローバルシェア10%)。
② 取り巻く環境と構造変化
・バイオものづくりの社会実装には、原料から技術・生産インフラ、市場ルールまで大きな
転換が必要。米・欧・中など諸外国が研究開発や生産基盤の構築への投資を進めている。
また、新技術に合わせた規制の更新や承認の迅速化に向けた新組織の設置及び大胆な制度
改正も並行して実施されている。
・安価な糖原料と労働力にアクセス可能な地域において、一部商用化が先行(米:トウモロ
コシ、南米:サトウキビ、中:大規模生産能力)。一方、バイオ製造技術の高度化により、
更なる高付加価値領域も含め、広い市場ポテンシャルが示されており、米国や中国では技
術開発を一元的に担うプラットフォームが台頭し、競争が熾烈化している。
③ 経済的・戦略的な重要性
・経済的重要性:バイオ産業がもたらす経済効果は約165兆円(2030~2040年)と見込ま
れるなど、成長が期待されている。
(出典) 2020 McKinsey Global Institute Analysisの数値を元に1ドル150円で経済産業省が計算。ホワイトバイオ分野のみ
・戦略的重要性:バイオものづくりは国内資源(再生可能なバイオマス資源、廃棄物などの
未利用資源)を有効活用し、我が国技術により国内で生産・高付加価値化させることが可
能。輸入資源依存、製造業の空洞化、地球温暖化といった課題を乗り越えながら経済安全
保障を実現するとともにグローバルの成長を取り込む鍵となる。なお米中をはじめとする
技術開発競争の中で、主導権を他国に握られた場合、国内で産業化・事業化する余地は急
速に失われるおそれがある。
② 達成すべき戦略的な目標
・技術開発基盤の拡充と生産インフラの整備
及び人材・ノウハウ・データの結集・高度
化による、バイオ製造技術の高効率化。
・国内資源の活用拡大及び国内バイオ製造設
備の増加。
185
2.勝ち筋の特定と官民投資の具体像【道筋】
合成生物学・バイオ
バイオものづくり
(1)基本戦略
(2)官民投資の具体像
① 勝ち筋
・バイオ製造技術の優位性獲得をめぐる各国間競争においては、特に「ウェット」領域
の成熟度が競争力の律速要因となっている。我が国は、発酵産業の蓄積やエンジニア
リング・機器分野における強みを背景に、「ウェット」領域において優位性を発揮し
得る可能性。 CO2等の未利用資源を原料としたバイオものづくり技術では他国をリー
ド(水素酸化細菌等)。 AI・データの活用により「ドライ」領域をさらに強化し、
これを「ウェット」の強みと融合させることで、バイオ製造技術の高効率化を推進し、
国際競争力の獲得を目指す。
① 投資内容
・バイオ製造技術の開発・高度化のための投資
・生産拠点整備(パイロット・デモ規模、商用規
模)のための投資
・バイオ人材の獲得・育成
・投資主体は、国、事業会社、金融機関(銀行・VC
等)
・経済安全保障や脱炭素の観点から国内生産基盤の構築が肝要となる領域(バイオエタ
ノール等)における需要創出及び供給能力拡充を進め、中長期的な外部依存リスクの
低減と経済の自律性確保を図る。
② 投資額
2040年度までで12.8兆円と想定
② 我が国として構築すべき機能
③ 定量的インパクト:投資による経済波及効果
2040年度までで66.7兆円と想定
・AI・データの活用や「ウェット」領域の技術の結集等による高効率なバイオ製造技術
・人材・知見が循環し適材適所で活用されるエコシステム、地域未来戦略を踏まえた産
学官の連携による産業クラスター
・技術・生産プロセス開発段階における過大な設備投資リスクを分散・低減させる仕組
み
・既存製品との価値の差別化や事業者の予見性確保に資する市場環境、責任あるイノ
ベーション
※「ウェット」領域:バイオ製造技術において、設計・解析・シミュレーションなどの「ドライ」領
域に対し、実際の実験・製造現場を担う領域を指す。微生物や細胞を培養・発酵させ、条件調整や
装置運転を通じて、目的物質を安定的・大量に生産するための知見や技能を含む。
186
3.官民投資促進に向けた課題と政策パッケージ【政策手段】
(1)投資促進に向けた課題
合成生物学・バイオ
バイオものづくり
(2)講じるべき政策パッケージ
①リソース制約
・人材:ウェット技術(特
に育種改良培養)、ス
ケールアップによる産業
化、AI・デジタル技術へ
の素養、経営管理といっ
たバイオものづくり産業
を牽引するために必要な
能力を持った人材の不足
・インフラ:スケールに応
じた機器設備および大規
模生産設備への投資が行
いにくい
①国内投資支援
・バイオ製造技術プラットフォームの高度化(例:AI・デジタル技術活用、革新的な基盤技術の創出に向け
た研究開発)
・バイオ製造にかかる設備投資リスク低減(例:CAPEX・OPEX支援、公的な受託ファウンドリ設置)
・新たな価値提供が可能な製品開発支援(例:人工ゴム・綿の生産)
②不確実性の要因
・事業・技術:需要不十分、
コスト増、生産効率の低
さ(技術・ノウハウ・
データの分散等)
・市場:規制・ルール、既
存製品との価格差、消費
者受容性が不安定
・財務:他分野投資による
資金調達難
・国際環境・政策:脱炭素
トランジションの遅滞
・原料の安定調達・コスト低減(例:糖価調整制度における工業原料糖の除外、森林資源の循環利用の促進、
未利用資源・廃棄物の循環促進、水素調達の支援、アルコール事業の手続き明確化、工場や農地での原料
栽培促進)
・バイオものづくり人材エコシステムの確立(例:産官学人材交流・人材流動、産業からバックキャストし
た大学・高専教育)
②需要創出・市場確保・社会実装支援
・消費者の認知拡大・文化創造に向けた環境整備(例:消費者・学校教育、マーケティング・広報)
・初期需要喚起(例:国産SAF等の官公需調達、製造・販売・購入規制)
・国産バイオ製造関連技術・製品の展開促進(例:機器設備の海外展開、標準化・ルール形成の推進、知財
活用)
・社会実装を見据えた支援(例:実証事業)
③立地競争力強化
④国際連携
・戦略的なルールの形成・活用(例:国際認証制度との連携強化、LCAガイドライン策定、標準化の推進、
知財活用)
・国際エコシステムとの連携(例:研究開発・人材育成・サプライチェーン協力の推進)
・バイオセーフティ・セキュリティの確保
187
合成生物学・バイオ
バイオものづくり
方向性
現状認識、日本の強み
バイオ製造技術の急速な発展を背景に、先行するバイオ医薬品等にとどまらない、幅広い分野への適用の可能性が拡大。米・
欧・中など諸外国による、研究開発や生産基盤構築を通じた、新産業の創出・技術優位性獲得に向けた競争が激化。
バイオものづくりの競争力の源泉はバイオ製造技術そのものであり、特に「ウェット」領域の成熟度が国際競争力を決定。我
が国は、発酵産業の蓄積やエンジニアリング・機器分野における強みを有しており、この分野において優位性を確立し得る潜
在力を有する。AI・データの活用により「ドライ」領域を高度化し、これを「ウェット」の強みと融合させることで、高効率
かつ高付加価値なバイオ製造基盤を確立し、国際市場における主導権の獲得を目指す。
併せて、経済安全保障や脱炭素の観点から国内生産基盤の構築が求められる領域(バイオエタノール等)については、需要創
出策と供給能力拡充を着実に進め、中長期的な外部依存リスクの低減と経済の自律性の確保を図る。
※「ウェット」領域:バイオ製造技術において、設計・解析・シミュレーションなどの「ドライ」領域に対し、実際の実験・製造現場を担う領域を指す。微生物や細胞を培養・発酵させ、条件調整や装置運転
を通じて、目的物質を安定的・大量に生産するための知見や技能を含む。
主な課題
(ボトルネック)
・技術・ノウハウ・データが分
散しており生産効率が低い
・既存製品との厳しい価格競争
にさらされる中、安定した需
要の見通しが不十分
・技術・サプライチェーンが発
展途上であり、既存製品と比
べて生産コストが高い
我が国の勝ち筋
講じるべき施策
・AI・デジタル技術との連携強化や革新的基盤技術等の開
発加速によるバイオ製造技術プラットフォームの高度化
・公共調達等による初期需要創出
・原料調達や製造設備などのサプライチェーン構築促進
・人材育成など自立的な産業エコシステムの構築
目指すべき姿
・高効率・高性能なバイオ製造
基盤の確立による、国内製造
業の高付加価値化と国際競争
力の強化
・我が国の資源特性を最大限に
活用した持続可能な国内生産
基盤の構築
・2040年の我が国企業の売上目
標は、11.9兆円
188
合成生物学・バイオ
②バイオ医薬品・再生医療等製品等
※ 創薬・先端医療③と同じ
189
1.現状認識と目指す姿【目標】
合成生物学・バイオ
バイオ医薬品・再生医療等製品等
(1)現状
(2) 目標
① 現状
・我が国の医薬品の自給率は低く、製造工程や周辺産業を含め他国依存度が高く
なっている。
・世界の医薬品市場は拡大を続けており、2022年で約200兆円規模と推計され、
バイオ医薬品、再生・細胞医療・遺伝子治療等の比率は4割を占めている。
・こうした中、世界トップシェアのバイオ医薬品や、ノーベル生理学・医学賞に
つながった基盤技術などが、日本発で生まれている。
① 国内外で獲得を目指す市場
・海外で製造されている国内向けバイオ医薬品・再生医
療等製品等について、国内製造拠点や国産部素材によ
る製造を目指す。
・創薬分野については、国内市場にとどまらず、世界最
大の市場である米国をはじめとしたグローバル市場の
獲得を目指す。
・世界のバイオ医薬品・再生医療等製品等のCDMO市場
のシェア獲得を目指す。
・2040年の我が国企業の売上(合計)目標は、33.4兆
円(グローバルシェア10%)。
② 取り巻く環境と構造変化
・経済安全保障上のリスクに対し、米国、中国、欧州などの主要国では、様々な
アプローチによって重要医薬品の国産化が進められている。
・また、米国の最恵国待遇(MFN)価格政策の動きがある中で、米国で医薬品を
販売する製薬企業各社のグローバルでの上市戦略が不透明になっている。
・製造体制強化において先行するアジア諸外国は、バイオ医薬品を国家戦略上の
重要な分野に位置づけ、イノベーション、生産、輸出などに焦点を当てて、急
速に体制を強化している。
・米国等では個別化遺伝子治療や、遺伝子編集技術を用いた動物の臓器を人に移
植する技術が臨床段階に突入するなど、新領域における医療技術も急速に進展
している。
③ 経済的・戦略的な重要性
・経済的重要性:世界の医薬品市場は今後も高い成長率が見込まれる中、輸入超
過・他国依存の構造を転換し、経済成長を牽引する産業とする必要がある。
・戦略的重要性:ワクチンを含むバイオ医薬品・再生医療等製品等は、国民の健
康や命に直結する、医療・経済安全保障上、極めて重要な分野。他国依存の現
状を脱却し、感染症危機や海外情勢に左右されることなく、国内供給できる体
制を構築する危機管理投資が必要。
② 達成すべき戦略的な目標
・バイオ医薬品・再生医療等製品・部素材の自国創製・
国内製造による他国依存度(供給途絶リスク)を低減
する。
・VCや製薬企業をはじめとするグローバルステークホ
ルダーとの連携を強化し、資金やノウハウを呼び込み、
創薬分野における国際競争力を高める。
・新領域における医療技術に関して、国内でのシーズ創
出・研究・開発・製造体制を確立する。
・バイオ医薬品・再生医療等製品等におけるCDMO市場
のグローバルシェアを拡大する。
・これらにより、産業エコシステムを構築する。
190
2.勝ち筋の特定と官民投資の具体像【道筋】
合成生物学・バイオ
バイオ医薬品・再生医療等製品等
(1)基本戦略
(2)官民投資の具体像
① 勝ち筋
・海外で製造されているバイオ医薬品・再生医療等製品等を国内製造へ切
替えることで製造能力を強化し、国内に安定的に供給できる体制を整え
る危機管理投資により、医療・経済安全保障上のリスクを低減する。
・iPS細胞、バイスペシフィック抗体や抗体薬物複合体(ADC)など優れ
た技術基盤を有する分野において開発・製造受託の実績を積み上げるこ
とで国際競争力を強化するとともに、技術力を実用化に繋げる創薬ベン
チャーのグローバル開発を推進し、製薬企業とのM&Aを実現すること
で、資金と人材の好循環を創出する。
・承認済みの再生医療等製品を対象とした医療インバウンド・アウトバウ
ンドの促進により資金・人材・情報の好循環を創出する。
・日本が有する高度な技術を、異種移植のような新領域にも応用できる国
産技術の確立や製造体制を整備し、早期実用化を図る。
① 投資内容
・官民投資を促進する領域:
1.バイオ医薬品・再生医療等製品等の国内製造および先端機
器を含む周辺産業の強化
2.優れた創薬シーズ・技術基盤の創出・実用化
3.バイオ人材の獲得・育成
・投資主体としては、国、製薬企業、VC、CRO、CDMO、部素
材・周辺機器メーカー等
② 我が国として構築すべき機能
② 投資額
2040年度までで20.8兆円と想定
③ 定量的インパクト:投資による経済波及効果
2040年度までで174.9兆円と想定
・大学等のシーズ創出、ベンチャー等の創薬力強化、周辺産業含めた国内
研究開発・製造体制、グローバル展開、責任あるイノベーション、これ
らによって生み出される収益を再投資する産業エコシステム、地域未来
戦略を踏まえた産学官の連携による産業クラスター
・感染症危機や海外情勢に左右されることなく、国内供給できる体制
191
3.官民投資促進に向けた課題と政策パッケージ【政策手段】
合成生物学・バイオ
バイオ医薬品・再生医療等製品等
(1)投資促進に向けた課題
(2)講じるべき政策パッケージ
①リソース制約
・人材:バイオ人材、実用化への橋渡し
人材、海外VCなどステークホルダー
が不足
・資金:創薬ベンチャーによる開発に必
要なリスクマネー供給が不足
・インフラ:大規模製造拠点の維持コス
トが膨大。随時利用可能なバイオリ
ソース供給体制の不足
①国内投資支援
・バイオ医薬品・再生医療等製品等の製造に向けた革新的な基盤技術開発、AI・ロボティクスの活用
等を含む国内製造・供給体制整備支援(部素材を含む)
・国内製造拠点における製造受託実績獲得に向けた支援
②不確実性の要因
・事業・技術:新規製造拠点(CDMO
等)の製造実績未確立による受注不確
実性、海外への訴求力、創薬ベン
チャーと製薬企業との連携(M&A
等)
・市場:感染症危機の備えと平時稼働率
とのギャップ、希少疾病治療薬市場の
限定性
・財務:開発後期を含むベンチャーの資
金不足、長期・高リスクな投資回収構
造、物価高や資材高騰によるコスト増
・国際環境・政策:米国市況(関税、米
中対立、MFN価格政策)、各国施策
(承認等の規制、薬価、国内支援)
②需要創出・市場確保・社会実装支援
・バイオ医薬品の国内製造品使用奨励の検討
・再生医療等製品等の海外展開促進に向けた基盤技術の強化(標準化の推進や品質評価手法の確立
等)
・再生医療等製品等の海外への訴求(インバウンド・アウトバウンドの促進)
・医薬品市場の魅力度向上による患者アクセスの改善に向けた、革新的新薬のイノベーションの更な
る評価の検討
・再生医療などのモダリティ(治療手法)ライフサイクルに配慮した薬事制度の柔軟な運用、先進医
療制度を活用した新技術社会実装の加速化
・革新的医薬品の創出に向けた創薬ベンチャー支援の強化・新薬候補を生むプラットフォーム技術の
開発支援(医療上・技術上のニーズに沿った研究課題の設定、プロジェクトマネージャー配置、多
段階選抜方式の導入、製薬企業とのM&A推進や医療・経済安全保障の観点も踏まえた社会実装支
援の強化)
③立地競争力強化
・バイオ生産プロセスの基礎習得講座やスキル標準の整備、リ・スキリング講座等の開発等による継
続的なバイオ人材育成
・大規模製造拠点での安定生産に向けた製造自動化及び国内サプライチェーンの強化
・インバウンド・アウトバウンドの促進による日本の再生医療等製品等の知名度向上
・グローバルステークホルダーを呼び込んだ事業開発拠点強化
④国際連携
・海外エコシステム、ベンチャー企業・規制当局等との連携
・再生医療等に対する信頼の確保
・バイオセーフティ・セキュリティの確保
192
方向性
合成生物学・バイオ
バイオ医薬品・再生医療等製品等
現状認識、日本の強み
ワクチンを含むバイオ医薬品・再生医療等製品等は、国民の健康や命に直結する、医療・経済安全保障上、極めて重要な分野。
他国依存の現状を脱却し、感染症危機や海外情勢に左右されることなく、国内供給できる体制を構築する危機管理投資が必要。
世界の医薬品市場は、2022年で約200兆円規模と推計されており、今後も高い成長率が見込まれている。輸入超過・他国
依存の構造を転換し、経済成長を牽引する産業とする必要がある。
iPS細胞製品や抗体薬物複合体等の技術基盤や、製造技術などの我が国の強みを活かし 、国内外のバイオ医薬品・再生医療等製
品等の創薬・製造市場獲得、 “医療・経済安全保障” の実現を目指す。
我が国の勝ち筋
主な課題
(ボトルネック)
・創薬ベンチャーの開発・
製薬企業とのM&A等に
必要な資金・人材の不足
・長期・高リスクな投資回
収構造
・製造の海外依存による輸
入超過、人材不足
・大規模製造拠点の維持コ
スト・平時稼働率との
ギャップ
講じるべき施策
目指すべき姿
・革新的医薬品の創出に向けた創薬ベンチャー支援の強化・新薬
候補を生むプラットフォーム技術開発支援(医療上・技術上の
ニーズに沿った研究課題の設定、プロジェクトマネージャー配
置、多段階選抜方式の導入、製薬企業とのM&A推進や医療・経
済安全保障の観点も踏まえた社会実装支援の強化)
・医薬品市場の魅力度向上による患者アクセスの改善に向けた、
革新的新薬のイノベーションの更なる評価の検討
・多様なモダリティのライフサイクルに配慮した薬事制度の柔軟
な運用、先進医療制度を活用した新技術社会実装の加速化
・国内製造拠点整備、受託実績獲得に向けた支援
・感染症危機や海外情勢に左右
されることなく、国内供給で
きる体制の構築
・ベンチャー等の創薬力強化、
周辺産業含めた国内製造体制
構築、グローバル展開、収益
を再投資する産業エコシステ
ムの構築
・2040年の我が国企業の売上
目標は、33.4兆円
193
創薬・先端医療
①ファーストインクラス製品・ベストインクラス製品
194
1.現状認識と目指す姿【目標】
(1)現状
① 現状
・ノーベル賞受賞数が世界2位(2001年以降、自然科学分野)である等、基礎研究力が極め
て高い。国民皆保険をベースとした医療機関の水準の高さによる良質な治験体制も強み。
・こうした環境の下、我が国の医薬品産業は、世界有数の新薬創出国の地位を維持してきて
おり、自動車関連産業、素材産業に次ぐ販売金額第3位の基幹産業となっている。
・製薬企業は、開発した医薬品の特許期間中の収益を研究開発に再投資する収益構造となっ
ていることから、医薬品開発を継続する必要がある。その際、我が国で医薬品開発を行う
には、投資回収の可能性、研究基盤、治験環境、規制など様々な要因が影響する。
・米国等では、ファーストインクラス※1製品・ベストインクラス※2製品の開発に当たり、開
発の効率化やリスク分散などの観点から、製品開発・販売で強みを持つ製薬企業が、技術
シーズを有するスタートアップと連携するモデルが主流。
※1 全く新しい作用で世界で初めて承認されるもの / ※2 同じ作用の製品の中で有用性が最も優れるもの
② 取り巻く環境と構造変化
・米国の最恵国待遇(MFN)価格政策の動きがある中で、米国で医薬品を販売する製薬企業
各社のグローバルでの上市戦略が不透明になっている。仮に、製薬会社が我が国への新薬
導入に慎重になった場合、我が国で治験が実施されないリスクがある。
・他分野と同様に、AIを活用した創薬プロセスの高度化・効率化が進展している。
③ 経済的・戦略的な重要性
・経済的重要性:世界の医薬品市場は2022年時点で約200兆円に達しており、我が国企業の
売上は約11.6兆円(シェア6.9%)を占めており、ファーストインクラス製品・ベストイ
ンクラス製品を含む特許品の世界市場(日本を除くG7)は、年平均9.6%で拡大している。
・戦略的重要性:ファーストインクラス製品・ベストインクラス製品の供給確保を通じて、
治療法が未確立の疾病にも対処することは、国民の健康維持、健康医療安全保障の実現に
直結する。
創薬・先端医療
ファーストインクラス製品・ベス
トインクラス製品
(2) 目標
① 国内外で獲得を目指す市場
・世界の医薬品市場の約6割が集中する日米欧を
対象に、ファーストインクラス製品・ベストイ
ンクラス製品の同時承認の獲得を目指す。
・人々の健康を支え、我が国の経済成長に貢献す
る観点から、内外からの投資を我が国に呼び込
むとともに、患者アクセスの改善に向けて、我
が国の医薬品市場の魅力度向上を目指す。この
ため、海外市場と遜色のない国内市場となるよ
う、我が国の特許品の市場規模について、特許
品の世界の成長に比肩する成長を目指す。
・ファーストインクラス製品・ベストインクラス
製品創出により、我が国の製薬企業が国内外で
獲得する特許品の市場規模について、世界市場
と同水準の成長を実現することを目標とする。
② 達成すべき戦略的な目標
・ファーストインクラス製品・ベストインクラス
製品の開発・供給体制を確保することを通じて、
未だ満たされていない医療ニーズに応える製品
(アンメットメディカルニーズ製品)を生み出
し、健康医療安全保障を実現する。
195
2.勝ち筋の特定と官民投資の具体像【道筋】
創薬・先端医療
ファーストインクラス製品・ベストインクラス製品
(1)基本戦略
(2)官民投資の具体像
① 勝ち筋
・基礎研究力や高品質な治験の強み、長年積み上げてきた創薬ノウハウを活かし、実用
化を担う人材の育成・流動性向上・知見共有化や、リスクマネーの呼び込み等による
スタートアップや国際共同治験における資金面・制度面の課題解消を図り、創薬エコ
システムを発展させる。
・その上で、AIの戦略的活用や医療データの利活用推進も含めて、新たな創薬シーズの
創出から実用化までを一気通貫で進める環境を整備し、国際共同治験実施により国内
外市場の獲得につなげる「世界直行型」の開発を実現する。
・製薬企業で培われた創薬シーズをカーブアウト※させ、新たな挑戦の場へとつなぐとと
もに、優れたシーズを起点に国内外から投資を呼び込み、その資金と環境を次の研究
開発につなげる好循環を生み出す。
① 投資内容
・ POC取得(有効性・実現可能性の臨床初期段階
での確認)までの研究開発投資・設備投資
【スタートアップ】
・同上 【製薬企業等】
・我が国での国際共同治験
【スタートアップ・製薬企業等】(治験実施基
盤の整備及び希少疾患など民間投資が行き届き
にくい領域については国も実施)
・製造等の設備投資【製薬企業等】
※製薬企業等の創薬シーズを切り分け、外部資本の導入等により新会社等で実用化する取組。
② 我が国として構築すべき機能
・実用化を担う人材層の育成・流動化、創薬ノウハウの循環・共有の促進
・海外からの投資誘致やリスクマネー供給強化による資金基盤の確保
・実用化につながる創薬シーズを継続的に生み出すための基礎研究力の更なる強化によ
る持続的な創薬基盤の確立、研究開発におけるアカデミアと産業界の近接化
・治験の世界最高水準の品質を維持しつつ、運用効率の向上による世界最速級の治験実
施スピードの実現
・質の高いデータが次の創薬につながる好循環を生むAIの戦略的活用や医療データの利
活用の推進による研究開発プロセスの高度化・効率化
② 投資額
2040年度までで23.4兆円と想定
③ 定量的インパクト:投資による経済波及効果
2040年度までで162.1兆円と想定
196
3.官民投資促進に向けた課題と政策パッケージ【政策手段】
創薬・先端医療
ファーストインクラス製品・ベストイン
クラス製品
(1)投資促進に向けた課題
(2)講じるべき政策パッケージ
①リソース制約
・人材:創薬研究、規制薬
事、臨床、AI・データ、
サプライチェーンなど、
実用化に必要な各分野で、
人材の量・質ともに不足
①実用化人材・インフラの確保
・製薬企業等の兼業・副業を活用した人材流動化の向上、大学等での創薬人材育成・確保の支援
・「創薬力向上のための官民協議会」(以下「官民協議会」)を通じた海外人材の呼び込み
・継続的に革新的新薬を生み出すための創薬クラスターの整備・機能強化(地域未来戦略と連携した産業クラスター整
備の活用を含む)
②資金基盤・データ利用基盤の確保、医薬品アクセスの改善
・医薬品市場の魅力度向上による患者アクセスの改善に向けた、革新的新薬のイノベーションの更なる評価の検討
・カーブアウトシーズの活用推進、革新的医薬品等実用化支援基金等による海外からも投資を呼び込める魅力あるシー
ズの創出や製造開発を含む実用化推進
・スタートアップに対するリスクマネーの供給(政府系金融機関等の機能強化の検討を含む)、製薬企業とのM&A支
援等スタートアップ支援の強化
・官民協議会を通じた海外投資の呼び込み、研究開発税制の戦略技術領域型・大胆な投資促進税制の活用
・AIを活用した研究開発の推進、医療データ利活用に向けた仕組み・環境整備、バイオバンク活用推進
・超希少疾患に対する治療法の研究開発の実施に加え、治療提供を継続可能とする社会実装モデルの構築の検討
③基礎研究力・治験体制の更なる強化
・次世代の創薬シーズ創出に向けた免疫・再生医療等の強みとなる基礎研究の更なる充実、AMEDの大学等と製薬企業
との橋渡し等による実用化の推進、国内CRO(開発業務受託機関)・CDMO(開発製造受託機関)の活用の推進
・先端医療や臨床試験を実施する大学病院等の研究開発力の向上に向けた環境整備の推進
・国際水準の治験実施体制整備(多施設共同治験での単一の治験審査委員会での審査の原則化、難易度が高い最初の人
への投与(FIH)試験実施施設の整備、国際共同治験支援ワンストップ窓口活用推進、円滑な治験運営のための適切
かつ柔軟性のある規制ガイダンス(GCP)の実装、治験の国際拠点・ネットワークの整備)、治験実施体制の効率化
(分散型治験(DCT)を活用した治験実施推進)
・難病、希少疾患領域のレイターフェーズを含めた臨床試験・治験支援
・臨床開発に対する患者・医療従事者を含む理解促進
④国際展開
・創薬分野の薬事規制の国際調和(国際標準化)・リライアンス※ の推進。PMDAアジア医薬品・医療機器トレーニン
グセンター・海外事務所の活用
・インフラ等:治験実施基
盤、AI活用のためのデー
タ環境や医療データの利
活用環境が不十分
②不確実性の要因
・財務:スタートアップの
資金不足、国際共同治験
の高コスト化による資金
繰りの逼迫
・国際環境・政策:各国の
治験誘致競争の激化、米
国MFN価格政策による日
本上市への影響
・社会:医療データ利活用
や治験参加に対する社会
的受容性の不足
※WHOはリライアンス(他国の審査結果の活用)を推進しており、アジアなどで日米欧の承認情報を参照して迅速審査を行う国が増加。
197
創薬・先端医療
ファーストインクラス製品・ベスト
インクラス製品
方向性
•
•
基礎研究力や高品質な治験の強みを活かし、実用化を担う人材の育成・流動性向上や、リスクマネーの呼び込み等によるス
タートアップや国際共同治験における資金面・制度面の課題解消を図る。
これにより、新たな創薬シーズの創出から実用化まで一気通貫で進める環境を整備し、需要が拡大する国内外市場(※1)の獲
得につなげる「世界直行型」の開発を実現するとともに、人々の健康を支え、我が国の経済成長に貢献する。
我が国の強みである
優れた基礎研究力への
官民による長期的な先行投資
投資回収を通じ新たな研究開発に繋げる
【目指すべき姿】
日本発の創薬シーズの
継続的な創出
一気通貫で社会実装化
【講じるべき施策】
【課題】
・実用化を担う人手
不足
・スタートアップ・
国際共同治験の資
金不足
・実用化を担う人材の育成・流動化
・カーブアウト(※2)活用推進・スタートアップ等への投資呼込、
製薬企業とのM&A支援等スタートアップ支援の強化
・基礎研究力・治験実施体制の更なる強化
・AMEDの大学等と製薬企業との橋渡し等による実用化の推進
・AI・データ利活用による研究開発プロセスの高度化・効率化
・革新的新薬のイノベーションの更なる評価の検討
※2 カーブアウト:製薬企業等の創薬シーズを切り分け、外部資本の導入等により新会社等で実用化する取組。
※1 2020-2024年の特許品の世界市場(日本を除くG7)年平均成長率:9.6%
「世界直行型」の開発
→国内外市場の獲得
【目標】
・日米欧での同時承認
・我が国の医薬品市場の魅
力度向上に向け、特許品
の国内市場規模について、
世界の成長に比肩する成
長を目指す
・我が国製薬企業が国内外
で獲得する特許品市場規
模について、世界市場と
同水準の成長の実現
198
創薬・先端医療
②感染症対応製品
199
1.現状認識と目指す姿【目標】
創薬・先端医療
感染症対応製品
(1)現状
(2) 目標
① 現状
・気候変動などの影響で動物由来の感染症が増え、大規模な流行やパンデミックの発生間隔
は短くなっており、感染症リスクは確実に高まっている。
・製薬企業は国内外の製造所と連携して安定供給を担っており、我が国の製造現場は品質管
理や供給の確実性が国際的に見ても高い水準にある。
① 国内外で獲得を目指す市場
・抗菌薬等をはじめとする治療薬や診断薬の
分野において、平素から国際的な薬事承認
を踏まえ、25か国以上への国際展開を行う。
② 取り巻く環境と構造変化
・感染症対応医薬品(ワクチン、治療薬、診断薬)は流行で需要が急変(感染症有事には、
その感染拡大に応じて数兆円規模の需要が生じる)し、平素から安定供給体制の維持が極
めて難しい。
・その上、抗菌薬は、原材料・原薬の調達が特定国に極端に依存する品目があり、国際分業
の深化によりサプライチェーンは複雑化している。国際情勢次第で供給が途絶するリスク
がある。
・免疫グロブリンは、原材料や製造能力不足により平時から国内自給できておらず、有事に
は大幅に不足する。
・感染症対応医薬品は、新型コロナ対応等を踏まえ、生産基盤を立て直し、国産化・サプラ
イチェーン強化、有事に対応できる体制づくりが同時に進む移行期フェーズにある。
・重症感染症等に用いられる免疫グロブリン
について、血液法の基本理念を踏まえ国内
自給率100%を目指すとともに、成長が続
く海外市場を見据え必要に応じて海外供給
(輸出)も可能とする。
② 達成すべき戦略的な目標
・次なる感染症危機において、全国民分(約
1.2億人分)のパンデミックワクチン等を
確保する。
・国内で重要な抗菌薬の海外からの供給途絶
リスクに備え、製薬企業における原薬・原
材料の備蓄を6か月分確保する。
③ 戦略的・経済的な重要性
・戦略的重要性:供給が途絶すれば国民の生命に直結。原材料等を特定国に極度に依存する
抗菌薬もあり、健康医療安全保障上、供給途絶リスクを低減する自律性確保が急務。
・経済的重要性:一部の海外メガファーマが撤退している抗菌薬等の新薬や我が国が強みを
有する診断薬等の感染症対応医薬品を海外展開することで、一定の世界シェアを占めるこ
とが見込まれる。
200
2.勝ち筋の特定と官民投資の具体像【道筋】
創薬・先端医療
感染症対応製品
(1)基本戦略
(2)官民投資の具体像
① 勝ち筋
・感染症対応医薬品は、平時は需要が小さい一方で、有事には需要が
急増するため、生産体制を安定的に維持することが難しい。原材
料・原薬の特定国依存や、製造能力不足が見られる医薬品もある。
・我が国は、供給計画遵守力の高さや生産技術、高精度・非破壊で工
程管理を可能とする測定技術といった強みを有している。
・感染症対応医薬品の研究開発や製造施設の整備、ワクチン・抗菌薬
等の買上げ・備蓄、安定供給に資する措置の推進、原料血漿確保体
制の強化を持続可能な形で図ることを通じて、需要創出とともに生
産体制を安定化させることで国内に供給するとともに、技術力を活
かした高品質な製品を輸出する。
① 投資内容
・感染症対応医薬品(原材料・原薬を含む)の研究開発支援や国内製
造施設整備・国内生産体制確保
・製薬企業における抗菌薬の原薬・原材料備蓄の支援
・免疫グロブリンの原料血漿確保体制の強化
② 投資額
2040年度までで7.2兆円と想定
③ 定量的インパクト:投資による経済波及効果
2040年度までで29.2兆円と想定
② 我が国として構築すべき機能
・需要急増に耐える十分な供給キャパシティと、それを支える適切な
品質・工程・供給管理に基づく高い供給計画遵守力の堅持(平素か
らの安定した製造オペレーション)
・抗菌薬の原薬・原材料の備蓄を確保
・次なる感染症危機に備え、製薬企業における感染症対応医薬品の安
定的な国内生産・供給能力を確保するための研究開発・生産体制の
構築及び、需要が限られる平素から民間企業が安定的に投資を行え
る構造の確立
・免疫グロブリンの原料血漿確保体制の強化
201
3.官民投資促進に向けた課題と政策パッケージ【政策手段】
創薬・先端医療
感染症対応製品
(1)投資促進に向けた課題
(2)講じるべき政策パッケージ
①リソース制約
・人材:製造・品質管理、サプ
ライチェーン管理に携わる人
材の確保
①国内投資支援
・自動化やフロー合成・連続生産などによる生産効率向上、我が国の技術力を生かせるPAT分析(ラマン
分光法※)等による製造・品質管理に係る新技術の活用を推進する。
②不確実性の要因
・市場:感染症の流行・収束に
よる需要の上下変動により安
定収益モデルの構築が困難
・財務:物価高騰に伴う建設
費・機器費の増加
・国際環境・政策:原材料調達
の特定国偏在
※低出力の光で非破壊かつリアルタイムに工程を監視できる技術
・新型コロナワクチンを始めとした健康危機管理上必要な感染症対応医薬品等生産体制を構築・維持する。
・献血の啓発や献血ルームの整備などの原料血漿確保体制の強化と併せ、免疫グロブリンの製造施設の更
なる整備促進を図る。
・最新の医療環境やサプライチェーンの状況、国内製造状況等も踏まえ、抗菌薬等の感染症対応医薬品に
ついて、経済安保法の特定重要物資への追加の検討を行う。
・原材料及び原薬供給ルートの多角化を図る製品について、安定供給に資する更なる措置を検討する。
②需要創出・市場確保・社会実装支援
・感染症有事の発生に備えるため、感染症危機対応医薬品等(ワクチン、治療薬、診断薬等)開発・生産
体制強化戦略の策定により、研究開発から、事業予見性の確保につながる買上げ・備蓄等の一連の取組
を推進する。さらに、その他有事に備えた医薬品備蓄を推進する。
※感染症危機対応医薬品等とは、感染症対応医薬品のうち、特に公衆衛生危機管理において、救命、流行の抑制、社会活動の維持等、
危機への医療的な対抗手段となる重要性の高い医薬品等
・製薬企業による国産抗菌薬の原薬・原材料の6か月分の備蓄を支援する。
・新技術の導入に関し、規制要件を整理するとともに、査察当局の協力枠組みであるPIC/Sや医薬品規制
調和国際会議(ICH)等の活動を通じた国際規制調和を進める。
・アジアへの規制理解を進めるPMDAアジア医薬品・医療機器トレーニングセンターにより国際規制調和
の成果の普及を図る。
③競争力強化
・実生産設備を利用した実践的な研修プログラムなどを通じて、製造人材を育成し確保する。
・安定供給確保のため後発医薬品の品目統合による業界再編を促進する。
202
創薬・先端医療
感染症対応製品
方向性
•
•
我が国は、供給計画遵守力の高さや生産技術、測定技術等の強みを有している。
感染症対応医薬品の研究開発や製造施設の整備、ワクチン・抗菌薬等の買上げ・備蓄、安定供給に資する措置の推進、
原料血漿確保体制の強化を通じて、安定的に需給を確保することで国内に供給するとともに、技術力を活かした高品質
な製品を輸出する。
【目指すべき姿】
【強み】
優れた生産技術・測定技術
高い供給計画遵守力
【課題】
・ワクチン等の感染症対応製
品は、平時と有事の需給変
動が大きい
・抗菌薬は、原材料等を特定
国に極度に依存
・免疫グロブリンは原材料・
製造能力不足により平時か
ら国内自給できていない
安定的な需給の確保
【講じるべき施策】
・買上げ・備蓄支援(製薬企業における国産抗菌
薬の原薬・原材料の備蓄支援等)
・免疫グロブリンの原料血漿確保体制の強化等
・国内に安定的に供給
・技術力を活かした高品
質な製品を輸出
【目標】
・抗菌薬等の25か国以
上への国際展開
・免疫グロブリン国内自
給率100%
・感染症対応医薬品の研究開発や製造施設の整備
203
創薬・先端医療
③バイオ医薬品・再生医療等製品等
※ 合成生物学・バイオ②と同じ
204
1.現状認識と目指す姿【目標】
創薬・先端医療
バイオ医薬品・再生医療等製品等
(1)現状
(2) 目標
① 現状
・我が国の医薬品の自給率は低く、製造工程や周辺産業を含め他国依存度が高く
なっている。
・世界の医薬品市場は拡大を続けており、2022年で約200兆円規模と推計され、
バイオ医薬品、再生・細胞医療・遺伝子治療等の比率は4割を占めている。
・こうした中、世界トップシェアのバイオ医薬品や、ノーベル生理学・医学賞に
つながった基盤技術などが、日本発で生まれている。
① 国内外で獲得を目指す市場
・海外で製造されている国内向けバイオ医薬品・再生医
療等製品等について、国内製造拠点や国産部素材によ
る製造を目指す。
・創薬分野については、国内市場にとどまらず、世界最
大の市場である米国をはじめとしたグローバル市場の
獲得を目指す。
・世界のバイオ医薬品・再生医療等製品等のCDMO市場
のシェア獲得を目指す。
・2040年の我が国企業の売上(合計)目標は、33.4兆
円(グローバルシェア10%)。
② 取り巻く環境と構造変化
・経済安全保障上のリスクに対し、米国、中国、欧州などの主要国では、様々な
アプローチによって重要医薬品の国産化が進められている。
・また、米国の最恵国待遇(MFN)価格政策の動きがある中で、米国で医薬品を
販売する製薬企業各社のグローバルでの上市戦略が不透明になっている。
・製造体制強化において先行するアジア諸外国は、バイオ医薬品を国家戦略上の
重要な分野に位置づけ、イノベーション、生産、輸出などに焦点を当てて、急
速に体制を強化している。
・米国等では個別化遺伝子治療や、遺伝子編集技術を用いた動物の臓器を人に移
植する技術が臨床段階に突入するなど、新領域における医療技術も急速に進展
している。
③ 経済的・戦略的な重要性
・経済的重要性:世界の医薬品市場は今後も高い成長率が見込まれる中、輸入超
過・他国依存の構造を転換し、経済成長を牽引する産業とする必要がある。
・戦略的重要性:ワクチンを含むバイオ医薬品・再生医療等製品等は、国民の健
康や命に直結する、医療・経済安全保障上、極めて重要な分野。他国依存の現
状を脱却し、感染症危機や海外情勢に左右されることなく、国内供給できる体
制を構築する危機管理投資が必要。
② 達成すべき戦略的な目標
・バイオ医薬品・再生医療等製品・部素材の自国創製・
国内製造による他国依存度(供給途絶リスク)を低減
する。
・VCや製薬企業をはじめとするグローバルステークホ
ルダーとの連携を強化し、資金やノウハウを呼び込み、
創薬分野における国際競争力を高める。
・新領域における医療技術に関して、国内でのシーズ創
出・研究・開発・製造体制を確立する。
・バイオ医薬品・再生医療等製品等におけるCDMO市場
のグローバルシェアを拡大する。
・これらにより、産業エコシステムを構築する。
205
2.勝ち筋の特定と官民投資の具体像【道筋】
創薬・先端医療
バイオ医薬品・再生医療等製品等
(1)基本戦略
(2)官民投資の具体像
① 勝ち筋
・海外で製造されているバイオ医薬品・再生医療等製品等を国内製造へ切
替えることで製造能力を強化し、国内に安定的に供給できる体制を整え
る危機管理投資により、医療・経済安全保障上のリスクを低減する。
・iPS細胞、バイスペシフィック抗体や抗体薬物複合体(ADC)など優れ
た技術基盤を有する分野において開発・製造受託の実績を積み上げるこ
とで国際競争力を強化するとともに、技術力を実用化に繋げる創薬ベン
チャーのグローバル開発を推進し、製薬企業とのM&Aを実現すること
で、資金と人材の好循環を創出する。
・承認済みの再生医療等製品を対象とした医療インバウンド・アウトバウ
ンドの促進により資金・人材・情報の好循環を創出する。
・日本が有する高度な技術を、異種移植のような新領域にも応用できる国
産技術の確立や製造体制を整備し、早期実用化を図る。
① 投資内容
・官民投資を促進する領域:
1.バイオ医薬品・再生医療等製品等の国内製造および先端機
器を含む周辺産業の強化
2.優れた創薬シーズ・技術基盤の創出・実用化
3.バイオ人材の獲得・育成
・投資主体としては、国、製薬企業、VC、CRO、CDMO、部素
材・周辺機器メーカー等
② 我が国として構築すべき機能
② 投資額
2040年度までで20.8兆円と想定
③ 定量的インパクト:投資による経済波及効果
2040年度までで174.9兆円と想定
・大学等のシーズ創出、ベンチャー等の創薬力強化、周辺産業含めた国内
研究開発・製造体制、グローバル展開、責任あるイノベーション、これ
らによって生み出される収益を再投資する産業エコシステム、地域未来
戦略を踏まえた産学官の連携による産業クラスター
・感染症危機や海外情勢に左右されることなく、国内供給できる体制
206
3.官民投資促進に向けた課題と政策パッケージ【政策手段】
創薬・先端医療
バイオ医薬品・再生医療等製品等
(1)投資促進に向けた課題
(2)講じるべき政策パッケージ
①リソース制約
・人材:バイオ人材、実用化への橋渡し
人材、海外VCなどステークホルダー
が不足
・資金:創薬ベンチャーによる開発に必
要なリスクマネー供給が不足
・インフラ:大規模製造拠点の維持コス
トが膨大。随時利用可能なバイオリ
ソース供給体制の不足
①国内投資支援
・バイオ医薬品・再生医療等製品等の製造に向けた革新的な基盤技術開発、AI・ロボティクスの活用
等を含む国内製造・供給体制整備支援(部素材を含む)
・国内製造拠点における製造受託実績獲得に向けた支援
②不確実性の要因
・事業・技術:新規製造拠点(CDMO
等)の製造実績未確立による受注不確
実性、海外への訴求力、創薬ベン
チャーと製薬企業との連携(M&A
等)
・市場:感染症危機の備えと平時稼働率
とのギャップ、希少疾病治療薬市場の
限定性
・財務:開発後期を含むベンチャーの資
金不足、長期・高リスクな投資回収構
造、物価高や資材高騰によるコスト増
・国際環境・政策:米国市況(関税、米
中対立、MFN価格政策)、各国施策
(承認等の規制、薬価、国内支援)
②需要創出・市場確保・社会実装支援
・バイオ医薬品の国内製造品使用奨励の検討
・再生医療等製品等の海外展開促進に向けた基盤技術の強化(標準化の推進や品質評価手法の確立
等)
・再生医療等製品等の海外への訴求(インバウンド・アウトバウンドの促進)
・医薬品市場の魅力度向上による患者アクセスの改善に向けた、革新的新薬のイノベーションの更な
る評価の検討
・再生医療などのモダリティ(治療手法)ライフサイクルに配慮した薬事制度の柔軟な運用、先進医
療制度を活用した新技術社会実装の加速化
・革新的医薬品の創出に向けた創薬ベンチャー支援の強化・新薬候補を生むプラットフォーム技術の
開発支援(医療上・技術上のニーズに沿った研究課題の設定、プロジェクトマネージャー配置、多
段階選抜方式の導入、製薬企業とのM&A推進や医療・経済安全保障の観点も踏まえた社会実装支
援の強化)
③立地競争力強化
・バイオ生産プロセスの基礎習得講座やスキル標準の整備、リ・スキリング講座等の開発等による継
続的なバイオ人材育成
・大規模製造拠点での安定生産に向けた製造自動化及び国内サプライチェーンの強化
・インバウンド・アウトバウンドの促進による日本の再生医療等製品等の知名度向上
・グローバルステークホルダーを呼び込んだ事業開発拠点強化
④国際連携
・海外エコシステム、ベンチャー企業・規制当局等との連携
・再生医療等に対する信頼の確保
・バイオセーフティ・セキュリティの確保
207
方向性
創薬・先端医療
バイオ医薬品・再生医療等製品等
現状認識、日本の強み
ワクチンを含むバイオ医薬品・再生医療等製品等は、国民の健康や命に直結する、医療・経済安全保障上、極めて重要な分野。
他国依存の現状を脱却し、感染症危機や海外情勢に左右されることなく、国内供給できる体制を構築する危機管理投資が必要。
世界の医薬品市場は、2022年で約200兆円規模と推計されており、今後も高い成長率が見込まれている。輸入超過・他国
依存の構造を転換し、経済成長を牽引する産業とする必要がある。
iPS細胞製品や抗体薬物複合体等の技術基盤や、製造技術などの我が国の強みを活かし 、国内外のバイオ医薬品・再生医療等製
品等の創薬・製造市場獲得、 “医療・経済安全保障” の実現を目指す。
我が国の勝ち筋
主な課題
(ボトルネック)
・創薬ベンチャーの開発・
製薬企業とのM&A等に
必要な資金・人材の不足
・長期・高リスクな投資回
収構造
・製造の海外依存による輸
入超過、人材不足
・大規模製造拠点の維持コ
スト・平時稼働率との
ギャップ
講じるべき施策
目指すべき姿
・革新的医薬品の創出に向けた創薬ベンチャー支援の強化・新薬
候補を生むプラットフォーム技術開発支援(医療上・技術上の
ニーズに沿った研究課題の設定、プロジェクトマネージャー配
置、多段階選抜方式の導入、製薬企業とのM&A推進や医療・経
済安全保障の観点も踏まえた社会実装支援の強化)
・医薬品市場の魅力度向上による患者アクセスの改善に向けた、
革新的新薬のイノベーションの更なる評価の検討
・多様なモダリティのライフサイクルに配慮した薬事制度の柔軟
な運用、先進医療制度を活用した新技術社会実装の加速化
・国内製造拠点整備、受託実績獲得に向けた支援
・感染症危機や海外情勢に左右
されることなく、国内供給で
きる体制の構築
・ベンチャー等の創薬力強化、
周辺産業含めた国内製造体制
構築、グローバル展開、収益
を再投資する産業エコシステ
ムの構築
・2040年の我が国企業の売上
目標は、33.4兆円
208
創薬・先端医療
④革新的デバイス(AI、ロボティクス等)を活用した先端医療
209
1.現状認識と目指す姿【目標】
創薬・先端医療
革新的デバイス(AI、ロボティクス等)を
活用した先端医療
(1)現状
(2) 目標
① 現状
・医療機器は世界市場約80兆円、成長率6%超の有望市場。革新的なデバイスを生み出し、輸出して
いくことで、市場の成長を産業の成長として取り込むことが重要である。
・具体的には、診断機器(内視鏡、CT、MRI等)は、従来から日本企業が画像の高精細化等で強みを
有している領域であり、我が国が高シェアを有する機器もあるが、引き続き競争力を維持していく必
要がある。
・治療機器は、我が国のロボット技術に代表されるような、高い操作性や堅牢性が評価される一方で、
治験に要する長期間・多額の資金を調達しにくい環境や、日本企業の内製化傾向による開発スピード
の遅れなど、オープンイノベーションを起こし、育てる仕組みが整っていないために内外の市場が獲
得できず、大幅な輸入超過となっている。こうした治療機器の輸入に依存する構造は、国民の生命に
直結する製品の安定提供の観点からも懸念がある。
① 国内外で獲得を目指す市場
・医療機器の研究開発エコシステム
(ヒト・モノ・カネ・制度対応)
の確立を通じて、第3期医療機器
基本計画(予定)で定める国内発
の「優れた医療機器」の件数を、
2025年時点で4件/年であるとこ
ろ、2040年時点において8件/年
を目標とする。
② 取り巻く環境と構造変化
・AI等の急速な進展により、付加価値の源泉がAIやデータに左右されるようになっている。
・プログラム医療機器(SaMD)はもちろんのこと、手術支援ロボット等のハードウェアも、AI×手技
データの蓄積等により、手術の質を底上げするプラットフォームになり得る。
・粒子線治療や集束超音波等、体内の標的部位のみを治療する機器のように、AIによる精密な機器制御
で、これまで治療法がなかった疾患を治療できるデバイスが開発されつつある。
・世界的に、開発をスタートアップが担い、大企業が市場に実装していく産業構造にシフト。
③ 経済的・戦略的な重要性
・経済的重要性:医療機器産業は、世界市場約80兆円、成長率6%超の有望市場である。
・戦略的重要性:国民の生命に直結するデバイス等(例:心臓、肺、腎臓等の機能を代替する機器・オ
ルガノイド※)について、サプライチェーン含めて安定提供を確保することは、健康医療安全保障上
極めて重要。日本企業が技術的優位性を有する医療機器の開発は、戦略的不可欠性の確保にも寄与。
・日本の医療機器メーカーのグロー
バルでの獲得市場規模を、2024年
時点において10兆円であるところ、
2040年時点で28兆円を目標とする。
② 達成すべき戦略的な目標
・安定確保すべき医療機器を特定し
つつ、サプライチェーン含めて安
定提供体制を確立する。
※細胞を立体的に配置・増殖させる三次元培養技術を用い、生体内に近い構造や機能を持つ組織や臓器を再現したもの。
210
2.勝ち筋の特定と官民投資の具体像【道筋】
創薬・先端医療
革新的デバイス(AI・ロボティクス等)
を活用した先端医療
(1)基本戦略
(2)官民投資の具体像
① 勝ち筋
・我が国には、質の高い医療データや地場企業を含む各企業が有する高度なも
のづくり技術など、AI・ロボティクス分野で強みを発揮できる基盤がある。
・診断機器分野では、画像技術を中心に高い競争力を有し、先進国を中心に内
外で一定程度のシェアを獲得しているが、近年のAI技術等の進展に迅速に対
応し、AI技術を取り込んだ革新的デバイスを創出することで更に競争力を高
めるため、産学官連携によるオープンイノベーションコア拠点を強化し、新
興国を含む世界市場に戦略的に展開する。
・治療機器分野では、高い操作性や堅牢性といった技術力を活かしながら、近
年のAIによる医療機器技術のパラダイムシフトを好機と捉えつつ、日本企業
の内製化傾向によるオープンイノベーションの不足や、長期間・多額の資金
調達の難しさを解消し、世界市場の獲得を目指す。
① 投資内容
・新たな医療機器の研究開発等【民】
・我が国の医療機器産業に対する研究開発の支援、製造拠点
整備等【官】
② 投資額
2040年度までで11.6兆円と想定
③ 定量的インパクト:投資による経済波及効果
2040年度までで105.8兆円と想定
② 我が国として構築すべき機能
ⅰ)医療現場のニーズ、スタートアップやアカデミアのシーズ・人材、大企
業や専門家の販路・ノウハウ、試作環境、医療データの利活用等の支援策を
総動員した、世界に通用する機器開発の拠点機能
ⅱ)長期間かつ巨額のリスクマネーをスタートアップが調達できる資金調達環
境
ⅲ)国民の生命に直結するデバイスの安定提供体制
ⅳ)革新的な先端医療実現のための医療に関するバーティカルAIの実装
(AI・半導体WGと連携)
211
3.官民投資促進に向けた課題と政策パッケージ【政策手段】
創薬・先端医療
革新的デバイス(AI・ロボティクス等)を
活用した先端医療
(1)投資促進に向けた課題
(2)講じるべき政策パッケージ
①リソース制約
・インフラ等:スタート
アップ(SU)による迅
速に設計・試作・検証の
反復を行う常設の環境の
不足、医療データの利活
用環境が不十分
・人材:臨床現場のニーズ
を踏まえ、研究開発、製
造、薬事対応、事業戦略
まで一貫して伴走できる
人材の不足、海外展開に
ネットワーク等を有する
人材の不足
①イノベーション創出の環境整備
・ラピッドプロトタイピング環境(SU等が迅速に試作品開発を行い製品を洗練させていける環境)の構築(●)
・産学官の叡智を結集したイノベーションコア拠点の強化(戦略領域における特に有望な製品の絞込及び研究開発・事業化・品質管
理等まで一貫した伴走支援等の強化) (●)
・地域未来戦略との連携等による医療機器関連産業の集積地域におけるクラスターの形成
・医療データの利活用に向けた仕組み(データ収集時に同意を取得する「入口規制」からデータ利活用時に利活用の適切性の審査等
を行う「出口規制」への転換等)の検討
・医療の省力化・均てん化に繋がる医療機器のエビデンス構築支援とその評価の検討(●)
・薬事審査体制及び保険相談体制の強化(特にデジタル領域(例:SaMD※・AI)、小児・希少疾病領域)等(●)
※Software as a Medical Device
・医療機器イノベーションにつながる大学等における基礎研究と橋渡し等による実用化の促進
②資金基盤・人材の確保
・創薬スタートアップ支援に準ずる規模での医療機器の開発後期に向けた投資資金の確保※(米国FDA(Food and Drug
Administration)承認にむけた研究開発等の支援と、それによる米国VC等のネットワークの取り込み) (●)
※医療上のニーズに沿った研究開発課題の設定、実装までのM&Aを含む支援、多段階選抜方式の導入、プロジェクトマネー
ジャーの配置等を組み合わせることによって、効果を最大化
・医療機器の有するイノベーションの評価の検討
・医療機器創出に携わる企業や医療従事者(特に小児・希少疾病領域)などを対象に、女性活躍を促進しつつ、人材の育成・リスキ
リングを実施する人材育成拠点の強化
③セキュリティ・安定提供の確保
・諸外国の制度も踏まえ、医療機器のサイバーセキュリティ対応の妥当性を行政当局が確認する仕組みを構築
・国民の生命に直結する医療機器等の安定的な国内提供体制の確保に向けた必要な支援の検討(安定確保すべき医療機器の特定等)
④国際展開
・日本の強いデバイスを含むサービスやシステムで新興国の市場や国際機関における調達等を獲得するアウトバウンド支援拠点等の
機能強化
・医療機器等の評価手法を策定し、ISOをはじめとする国際規格へ反映するための活動の支援
・PMDAアジア医薬品・医療機器トレーニングセンター・海外事務所の活用
②不確実性の要因
・財務:SU等の開発・治
験等に要する長期間・多
額の資金調達が困難
・事業・技術:AI医療機器
等が進展する中、サイ
バーセキュリティへの対
応が重要
・国際環境・政策:部素材
調達を含めた特定国依存
リスクや各国の自給強化
の動きに注視が必要
(●)の施策については、エコシステムの構築に向けてSU企業の大型M&A・IPOを加速化する政策パッケージ(加速化パッケー
ジ:「GEAP(ジープ):Golden Egg Acceleration Package」)を策定し、一体的に推進する
212
創薬・先端医療
革新的デバイス(AI・ロボティクス等)を
活用した先端医療
方向性
我が国には、質の高い医療データや高度なものづくり技術など、AI・ロボティクス分野で強みを発揮できる基盤がある。
診断機器分野では、画像技術を中心に高い競争力を有し、先進国を中心に内外で一定程度のシェアを獲得しているが、近年のAI技術等の
進展に迅速に対応し、AI技術を取り込んだ革新的デバイスを創出することで更に競争力を高めるため、産学官連携によるオープンイノ
ベーションコア拠点を強化し、新興国を含む世界市場に戦略的に展開する。
治療機器分野では、ロボット技術に代表されるような、高い操作性や堅牢性が評価される一方で、日本企業の内製化傾向によるオープン
イノベーションの不足や、長期間・多額の資金調達の難しさにより実用化が進まず、大幅な輸入超過となっている。近年のAIによる医療
機器技術のパラダイムシフトを好機と捉え、イノベーションエコシステムや資金調達環境を構築し、世界市場の獲得を目指す。
主な課題
(ボトルネック)
・日本企業の内製化傾向、AI実装
の主力となるスタートアップに
よる迅速に設計・試作・検証の
反復を行う常設の環境の不足
・AI医療機器等の進展に伴うサイ
バーセキュリティへの対応が急
務
・研究開発、製造、薬事対応、事
業戦略まで伴走できる人材の不
足
・スタートアップ等の開発・治験
等に要する長期間・多額の資金
調達が困難
・部素材調達を含めた特定国依存
リスクや各国の自給強化の動き
講じるべき施策
・イノベーションコア拠点の強化・ラピッドプロトタイピング環境
(※)の構築
※スタートアップ等が迅速に試作品開発を行い製品を洗練させていける環境
・諸外国の制度も踏まえ、サイバーセキュリティに関するAI機器等の
安全性を担保する仕組みを構築
・医療機器創出に携わる企業などの人材の育成・リスキリングを実施す
る人材育成拠点の強化
・創薬スタートアップ支援に準ずる規模での医療機器の開発後期に向け
た投資資金の確保(※)と海外VC等のネットワークの取り込み
※医療上のニーズに沿った研究開発課題の設定、実装までのM&Aを含む支援、多
段階選抜方式の導入、プロジェクトマネージャーの配置等を組み合わせることに
よって、効果を最大化
・国民の生命に直結する医療機器等の安定的な国内供給体制の確保に向
けた必要な支援の検討
目指すべき姿
・日本の医療機器メーカーのグ
ローバルでの獲得市場規模を、
2024年時点において10兆円
であるところ、2040年時点
で28兆円を目標とする。
・医療機器の研究開発エコシス
テム(ヒト・モノ・カネ・制
度対応)を国内に確立する。
・安定確保すべき医療機器を特
定しつつ、サプライチェーン
含めて安定提供体制を確立す
る。
213
創薬・先端医療
⑤ライフログデータ等を活用したヘルスケア関連サービス
214
1.現状認識と目指す姿【目標】
(1)現状
創薬・先端医療
ライフログデータ等を活用した
ヘルスケア関連サービス
(2) 目標
① 現状
①国内外で獲得を目指す市場
・少子高齢化・人口減少により労働力不足が深刻化する中、性差に基づく健康課題等による欠勤・離職や業務効率
の低下等により経済損失が生じている。国民の健康増進を通じて、生涯にわたり元気に活躍できる社会を実現し、 ・デジタルヘルスサービスの
国内市場を拡大するため、
社会保障制度を含めた社会の支え手となっていただく環境整備が求められており、予防に努め、疾病を早期に発
企業・保険者による健康投
見し、適切な機関等につなげる「攻めの予防医療」の重要性が高まっている。
資額を2025年の約1兆円か
・「攻めの予防医療」の核となる「ライフログデータ等を活用したヘルスケア関連サービス」は、血圧や食事・運
ら2040年までに約2倍に拡
動・睡眠等の日常的なライフログデータを、デバイスやアプリを通じて取得・活用し、助言等により行動変容を
大する。
促すサービスである。体調変化やリスクの兆候を早期に捉え、重症化前に生活習慣の改善に繋げることで、健康
に活躍し続けられる社会の実現が期待される。労働力確保や業務効率維持に課題を抱える企業・保険者にはヘル
スケアサービスを導入する潜在的なニーズが見込まれる一方、日本企業が提供するヘルスケアサービスは品質の
ばらつきが大きく、企業・保険者がサービスの効果を的確に評価した上で適切なサービスを選択することが難し ②達成すべき戦略的な目標
い状況にあり、十分な国内市場拡大に至っていない。
・社会保障制度を含めた社会
・また、アジア諸国でも少子高齢化・人口減少は課題となっており、雇用主が従業員の健康に投資する仕組みとと
の支え手を増やし、健康医
もに、我が国の強みであるセンシング関連技術も活かしつつ、日本製のヘルスケアサービスの海外展開を進める
療安全保障に貢献する。
ことが期待されている。
・セキュリティ対策や個人情
② 取り巻く環境と構造変化
報の適切な取扱いの徹底に
・我が国では、個人の健康・医療データであるPHR(Personal Health Record)の利活用推進に向けた事業環境整
より、国民が安心してサー
備が進められている。特に健診・医療データは、世界に類を見ない規模でライフロングに存在しており、デジタ
ビスを利用できる環境を確
ル庁に利用承諾された事業者は、マイナポータルに接続することで「ライフコースデータ」を活用してヘルスケ
保する。
アサービスを開発することが可能となっている。
③ 経済的・戦略的な重要性
・経済的重要性:予防・健康づくり領域のデジタルヘルスサービスの市場規模は世界で約70兆円。2034年には350
兆円規模になると見込まれている。また、ヘルスケアサービスは、健康課題による経済損失(性差に基づく健康
課題:女性3.4兆円、男性1.2兆円、メンタル不調:7.6兆円等と試算されている)の軽減にもつながる。
・戦略的重要性:健康医療安全保障の観点から、「攻めの予防医療」により国民が生涯にわたり元気に活躍できる
社会を実現し、社会保障制度を含めた社会の支え手を確保することが必要。また、個人の健康データの情報保護
の観点から、セキュリティの確保が求められる。
215
2.勝ち筋の特定と官民投資の具体像【道筋】
創薬・先端医療
ライフログデータ等を活用した
ヘルスケア関連サービス
(1)基本戦略
(2)官民投資の具体像
① 勝ち筋
・我が国は国民皆保険の下、質・量の両面で優れた医療データを有するとともに、緻密
なデータ収集経験が蓄積されている点が強みである。マイナポータルに接続すること
で、デジタル庁に利用承諾された事業者は、こうしたデータをヘルスケアサービスの
開発に活用することが可能となっている。また、センシング技術に強みを有する計測
機器とサービスをパッケージで展開することで、競争優位性を確立することができる。
① 投資内容
・ヘルスケアアプリ、ウェアラブル端末や計測機
器等のハードデバイスの開発(企業)
・質の高いヘルスケアサービスを創出するための
エビデンス構築(企業、国)
・新興国・途上国におけるヘル スケア事業の展
開や市場創出等に向けた実証調査(企業、国)
・こうしたデータの利活用基盤や測定機器の技術的強みを活かしつつ、需給両面で対策
に取り組む。ヘルスケアサービスの予防・健康づくりの効果に係るエビデンスを構築
し、企業・保険者がサービスを選びやすい環境を整備する。あわせて、企業・保険者
によるヘルスケアサービス活用のインセンティブを強化することで、質の高いヘルス
ケアサービスの社会実装を進め、まずは国内市場の拡大につなげるとともに、中長期
的に海外市場への展開を進める。
② 投資額
2040年度までで1.1兆円と想定
※ 例えば、画像技術や光学センサを搭載した計測機器により、健診(検診)データや睡眠等のライフログデー
タを高い精度で取得することが可能である。
③ 定量的インパクト:投資による経済波及効果
2040年度までで17.3兆円と想定
② 我が国として構築すべき機能
・十分なエビデンスを有する質の高いヘルスケアサービスの創出及び社会実装
・データやAIを活用したサービスの高度化と医療等との連携
・企業・保険者のヘルスケアサービス利用促進機能
216
3.官民投資促進に向けた課題と政策パッケージ【政策手段】
(1)投資促進に向けた課題
①エビデンス構築・データ利活用
環境
・予防・健康づくりに対する効果
のエビデンスが十分に蓄積され
ていないことにより、企業・保
険者による適切なサービスの選
択が困難
・ヘルスケアスタートアップの実
証の場が不足
・医療機関等との連携によるデー
タ利活用が限定的
②企業・保険者のヘルスケアサー
ビス利用促進
・企業・保険者によるヘルスケア
サービス利用のインセンティブ
を強化する余地がある
③国際展開
・健康経営の国際標準化は完了し
ている一方で、アジア諸国等に
おける潜在需要を十分に喚起で
きていない
創薬・先端医療
ライフログデータ等を活用した
ヘルスケア関連サービス
(2)講じるべき政策パッケージ
①質の高いヘルスケアサービスの創出、データやAIを活用したサービスの高度化と医療等との連携促進
・AMED事業を通じ、アカデミアを中心とした予防・健康づくりに対する効果のエビデンス構築のための研
究を支援するとともに、エビデンスに基づくサービス開発を行う事業者の支援を実施する。
・経済損失の大きい性差に基づく健康課題等に対し、一定の質を担保したヘルスケアサービスのリストを創
出する。
・実証フィールドへ繋ぐ地域拠点の整備や、海外アクセラレーターとの連携によるプログラム提供等のヘル
スケアスタートアップへの支援を実施する。
・臨床での活用を目指し、ヘルスケアサービス事業者と医療機関・介護施設等が連携した食事・運動・睡眠
等のライフログデータ活用を通じた重症化予防等にかかるユースケース創出を支援する。
・健康増進型保険を展開する民間保険会社の取組を拡大するため、ヘルスケアサービスを活用した民間保険
会社によるサービス提供モデルの創出を支援する。
②ヘルスケアサービスの開発・高度化に向けた予防・健康づくりに関するデータ等の利用基盤整備
・女性の健康総合センターを中心に、心身の不調を抱える女性が、自らの情報を活用し、円滑な受診につな
がるためのツールの開発等を推進する。
・全国がん登録データやがんゲノムに関する予防の観点も含めたデータの利用・提供、自治体検診のDX化、
がん検診・歯科健診データの集約、循環器病の診療情報の集約・活用支援等を推進する。
③健康経営の普及強化等による企業・保険者のヘルスケアサービス利用促進
・投資家向けの健康投資に関する情報開示指針の策定、中小企業向けの経営支援機関等との連携強化や健康
経営における女性の健康サポートデスクを通じた支援強化等による健康経営の普及促進を行う。
・健康経営銘柄に継続選定されている企業を層別化する新たな枠組みの創設、サプライチェーン等を含めた
グループ全体での健康経営の取組評価など、健康経営優良法人制度の評価手法を含めた在り方を検討する。
・保険者のデータヘルス推進のための調査分析等により効率的・効果的な保健事業の実施を促進するととも
に、データに基づく予防・健康づくりの高度化及び成果創出に向けた保険者へのインセンティブの在り方
を検討する。
④ヘルスケアサービスの国際展開
・健康経営等の仕組みと組み合わせたヘルスケアサービスの新興国への海外展開及びインバウンドの推進に
向け 、グローバルサウス補助金等による企業事業実証支援や、各国との産官学医のネットワーキング機会
の創出支援(MExx事業)の拡充を進める。予防医療分野を含む医療技術等の国際展開を推進する。
217
創薬・先端医療
ライフログデータ等を活用した
ヘルスケア関連サービス
方向性
•
•
•
少子高齢化・人口減少により労働力不足が深刻化する中、健康課題に起因する欠勤や業務効率低下により経済損失が生じている。国民が生涯
にわたり元気に活躍できる社会を実現するため、「攻めの予防医療」の一環として、食事・運動・睡眠等のライフログデータを活用して行動
変容を促すヘルスケアサービスの重要性が高まっている。
我が国の優れた医療データや緻密なデータ収集経験、光学センサや画像技術等の技術の強みを活かしつつ、ヘルスケアサービスの予防・健康
づくりの効果に係るエビデンスを構築することで、労働力確保等に課題を抱える企業・保険者が、サービスを選びやすい環境を整備する。
あわせて、ヘルスケアサービス活用のインセンティブを強化することで、質の高いヘルスケアサービスの社会実装を進め、国内市場を拡大し、
中長期的には、我が国と同様に少子高齢化・人口減少が課題となっているアジア諸国を中心に、海外市場に展開する。
主な課題(ボトルネック)
・予防・健康づくりに対する効果の
エビデンスが十分に蓄積されていな
いことにより、企業・保険者による
適切なサービスの選択が困難
・ヘルスケアスタートアップの実証
の場が不足
・医療機関等との連携によるデータ
利活用が限定的
・企業・保険者のインセンティブを
強化する余地がある
・アジア諸国等における潜在需要を
十分に喚起できていない
日本の強み
・質・量ともに優れた医療データや緻密なデータ収集経験が蓄積
・センシング技術などに強みがある計測機器とパッケージでサービス
を展開することが可能
講じるべき施策
・サービス効果のエビデンス構築のための研究支援
・ヘルスケアスタートアップへの支援(実証フィールドへ繋ぐ地域拠
点の整備、海外アクセラレーターと連携したプログラム提供等)
・臨床での活用を目指し、ヘルスケアサービス事業者と医療機関等が
連携したライフログデータ活用を通じたユースケース創出を支援
・健康経営の普及促進、健康経営優良法人制度の評価手法等の検討、
保険者へのインセンティブの在り方の検討
・新興国への展開に向けた企業への事業実証支援、産官学医のネット
ワーキング機会の創出支援(MExx事業)の拡充
目指すべき姿
・デジタルヘルスサービ
スの国内市場を拡大す
るため、企業・保険者
による健康投資額を
2025年の約1兆円か
ら2040年までに約2
倍に拡大
・「攻めの予防医療」に
より社会保障制度を含
めた社会の支え手の確
保を図り、健康医療安
全保障を実現
218
資源・エネルギー安全保障・GX
①次世代型太陽電池(ペロブスカイト太陽電池等)
219
1.現状認識と目指す姿【目標】
資源・エネルギー安全保障・GX
次世代型太陽電池(ペロブスカイト太陽電池等)
(1)現状
(2) 目標
・シリコン太陽電池は、中国が世界のシェアの8割程度を占め、圧倒的な競争力を持ち、ペロ
ブスカイト太陽電池においてはガラス型、タンデム型の研究開発や商業化を盛んに展開。
・ペロブスカイト太陽電池の競争力は、製造プロセス等のノウハウ(製造装置に化体しない
複雑な材料加工や成形、温度・湿度の管理など)による部分が大きく、我が国が特に競争
力・強みを有しうる技術は以下の2つ。
(1)フィルム型ペロブスカイト太陽電池(軽量・柔軟性を活かし、新たな設置場所へ展開)
:発電層を外気から保護する封止技術、実用化で鍵となる耐久性向上や大型化の製造技術
(2)タンデム型ペロブスカイト太陽電池(高効率性を活かし、面積あたりの発電量の増加)
:ボトムセルであるシリコンの表面加工技術や成膜技術
① 国内外で獲得を目指す市場
・2030年を待たずにGW級の量産体制の構築
・2040年までに約20GWの導入目標
・その上で、国内での導入によるデータの蓄
積や価格低減、設置・施工方法の確立によ
る海外需要の拡大も踏まえ、 GI基金等を活
用した海外実証を実施しつつ、海外展開に
ついても、国内需要以上の導入を野心的に
目指していく。
② 取り巻く環境と構造変化
② 達成すべき戦略的な目標
• ペロブスカイト太陽電池の導入拡大によ
る特定国への依存低減
① 現状
・太陽光発電は、世界的に需要が拡大し、今後も更なる導入が見込まれる巨大市場。太陽光
発電の大量導入が進む中で、系統接続や蓄電池の導入が間に合わないケースが発生してお
り、再エネの地産地消のニーズが先進国を中心に高まっている。
③ 経済的・戦略的な重要性
・経済的重要性:シリコン太陽電池相当の発電コスト(14円/kWh)で、フィルム型では約
25GWの国内需要が見込まれる他、海外には約500GWの導入ポテンシャルが存在。タンデ
ム型では、少なくとも国内での既導入量約77GW(2025年3月時点)の将来的なリプレー
ス市場が見込まれる。この市場が獲得できれば国内経済に大きな波及効果がある。
・戦略的重要性:自律性については、太陽電池の国内生産能力獲得は国産エネルギーの確保
に直結すること、主原料であるヨウ素は我が国が世界シェアの約30%を占めていること、
から大きく寄与。また、世界中が必要とする脱炭素エネルギー技術の供給源として不可欠
性の寄与にもつながる。
220
2.勝ち筋の特定と官民投資の具体像【道筋】
(1)基本戦略
① 勝ち筋
・我が国は、フィルム型については封止技術や、耐久性向上や大型化の製造技術、タンデ
ム型については、ボトムセルであるシリコンの表面加工技術や成膜技術で強みを持つ。
・フィルム型については、早期に施工費込みの発電コストを低減することが鍵。
・タンデム型については、耐久性・高効率の付加価値が高く評価される住宅用を初期市場
として、国内リプレース需要の取り込みや中国依存を懸案とする国への展開を視野に入
れる。
・需要創出については、野置きのメガソーラーとは異なる、建物の屋根や壁面等への導入
が可能であるという強みを生かし、国内では官公需を活用しつつ、国外でも実証支援な
どを通じ、初期需要の創出に取り組むことで、国内外での導入を加速させる。
・シリコンを使用しないペロブスカイト・カルコパイライトのタンデム型太陽電池の開発
も進める。
資源・エネルギー安全保障・GX
次世代型太陽電池(ペロブスカイト太陽電池等)
(2)官民投資の具体像
① 投資内容
• 完成品および重要な周辺部素材・製造装置につ
いて、民間企業を中心に積極的な投資を実施。
• 産業全体に関わる研究開発について、産総研・
民間企業の連携により知見の共有を図る。
② 投資額
2040年度までで4.1兆円と想定
③ 定量的インパクト:投資による経済波及効果
2040年度までで22.9兆円と想定
② 我が国として構築すべき機能
・フィルム型:①技術開発の加速、②生産投資と需要創出を通じた量産コストの低減、③
設置・施工方法の確立、等を同時に進め2030年度までに14円/kWh以下の技術確立を
目標に、早期にGW級の量産体制を構築する。また、国際標準化の策定・海外展開に向
けた有志国との連携体制を構築する。
・タンデム型:2030年にシリコン以下となる12円/kWh以下の野心的な技術確立等を目
標とした研究開発支援と並行して、量産体制整備を早急に進める。
221
資源・エネルギー安全保障・GX
3.官民投資促進に向けた課題と政策パッケージ【政策手段】 次世代型太陽電池(ペロブスカイト太陽電池等)
(1)投資促進に向けた課題
①リソース制約
・人材:研究開発・設置
施工に関わる人材不足
②不確実性の要因
・事業・技術:量産技術、
設置・施工技術の開発
遅延、技術や人材の流
出
・市場:海外企業の事業
化動向、国内外需要を
満たす量産体制の立ち
上がりの遅延
・財務:サプライチェー
ン上の中小企業の
キャッシュフローの不
安定性
・国際環境・政策:我が
国に不利益となる標準
化、特定国と分断され
たマーケットでの市場
の確立
・社会:環境影響:多様
な設置形態に対する過
剰規制
(2)講じるべき政策パッケージ
①国内投資支援
・GI基金による事業者や大学等への研究開発支援を令和3年度より実施。
・GXサプライチェーン構築支援事業による事業者の量産のための設備投資支援を実施。
・需要家向けの導入支援を令和7年度より実施。
②需要創出・市場確保・社会実装支援
(国内展開)
・初期は、自治体・企業への導入を促進すべく、需要家向けの導入補助を令和7年度より実施。令和8年度は、耐荷重性
調査などを含めた建物単位での導入計画の作成に対して補助を拡大、令和9年度には省エネ法の定期報告書において、
屋根面積や積載荷重等の報告を求め、量産後にスムーズに導入が進む「ペロブスカイトReady」な社会を目指す。また、
公共施設やインフラ空間での実証実装を強化するとともに、公共調達等を最大限活用しつつ、自治体を含めた公共施
設・インフラ空間等に対して2035年までに5GWの導入を目指して、関係省庁が連携の上で積極的な導入を進め、大
規模な需要喚起を行う。さらに令和8年度より3年間、GI基金の採択事業者の生産品に対する固定資産税の課税特例を
重点化。さらに地方公共団体が国庫補助を活用して公共施設等にペロブスカイト太陽電池を導入する事業について、新
たに地方財政措置を実施予定。
・中長期的には、国民負担の抑制と適切な自家消費を促す観点から、発電コストが電気料金水準未満になる時点を目安に、
FIT/ FIP制度の新区分による支援を開始する方向で検討を継続。
・安全性を考慮した設計・施工ガイドラインを令和7年度中に公表、随時アップデートを予定。
・フィルム型ペロブスカイト太陽電池の各種工場等への設置に必要な安全対策の明確化。
(海外展開)
・GI基金等を活用した海外実証(米国等)。
・性能や耐久性が正当に評価されるように、有志国と連携し公正な競争を確保する国際標準を策定。
・タンデム型は、海外での旺盛な需要の取り込みが必須。マーケットを見定めつつ、量産が始まり次第、海外での試験販
売の実施を検討。
③立地競争力強化
・官民金融機関と連携したリスクマネー供給、ファイナンスや保険業界への情報提供。
④国際連携
・国際標準化の策定に向けた、高度研究機関を有する同志国との連携。
・非価格価値の具体化、特定国の影響を受けにくいマーケットの構築。
・タンデム型の量産に向けた同志国とのサプライチェーン連携。
222
資源・エネルギー安全保障・GX
次世代型太陽電池(ペロブスカイト太陽電池等)
方向性
現状認識、日本の強み
太陽電池は、化石燃料に依存しない国産の再生可能エネルギー源であること、また従来型のシリコン太陽電池は特定国が世
界シェアの8割を占めることから、経済安全保障・エネルギー安全保障の観点で重要。
ペロブスカイト太陽電池については、シリコン太陽電池相当の発電コストを前提に、フィルム型では、野置きのメガソー
ラーとは異なる建物の屋根や壁面等への導入が可能であるため、約25GWの国内需要が見込まれる他、海外には約500GW
の導入ポテンシャルが存在。
タンデム型についても、リプレース市場を含め巨大な市場規模が見込まれ、市場獲得できれば大きな経済波及効果。
ペロブスカイトの主原料であるヨウ素は日本が世界シェアの約3割を占めており、また封止技術等、製造プロセス等のノウ
ハウでも我が国が競争力を持ちうる。
我が国の勝ち筋
主な課題
(ボトルネック)
・発電コストの低減に資する
技術開発の加速
・量産コストの低減に資する
量産規模の確保
・民間投資の予見性を確保す
る初期需要の創出
目指すべき姿
講じるべき施策
・研究開発支援・設備投資支援による量産体制の確保
・政府調達等を最大限活用しつつ、自治体を含めた公共施
設・インフラ空間等(空港、道路等 )に対し、2035年ま
でに5GWを目指した積極的な導入による需要喚起
・海外での導入実証支援(アジア等の工業団地等での実証)
・国際標準の策定に向けた同志国との連携
・2030年度までに14円
/kWh以下の技術確立
・2040年までに国内約
20GWの導入
223
資源・エネルギー安全保障・GX
②水素等
224
1.現状認識と目指す姿【目標】
(1)現状
①現状
• 水素・アンモニアは、脱炭素に加えて、国産エネルギーの活用手段として、エネルギー安全保障の観点から
も関心が拡大。市場・産業全体の成長は、一時の高水準の予測からは減速しつつも、堅調に推移。
• 政府支援と組み合わせて、(脱炭素電源コストが相対的に安い)中国・欧州・インド等を中心に着実に底堅
い投資が進行している状況。
• 我が国は、諸外国に先駆けて水素関連技術開発の開発・実証を推進。ⅰ)水素アンモニア混焼/専焼タービン、
ⅱ)水電解装置、ⅲ)液化水素関連機器、ⅳ)燃料電池をはじめ、サプライチェーン全体を通じて技術優位を有
する技術・製品を保持。
②取り巻く環境と構造変化
・水素サプライチェーンがグローバルに拡大していく中、先行して関連機器の市場を握り、「不可欠性」を確
保しておくことが「技術で勝って、ビジネスでも勝つ」ための鍵。特に、GAFAMのような先進的なグローバ
ル企業では、脱炭素に向けた動きは依然として変わっておらず、こうしたグローバル企業のサプライチェー
ンから排除されてしまうリスク管理の観点からも、水素サプライチェーン市場への積極的な参入は重要。加
えて、発電や多排出産業における水素等の活用は、引き続き、脱炭素化に向けた有力な選択肢。
③経済的・戦略的重要性
・経済的重要性:2050年には世界で約30~40兆円規模に拡大すると見られる水素・アンモニア関連市場にお
いて、そのサプライチェーンを構成する製品・サービスの輸出により、新設・更新・メンテナンス需要も取
り込むことで、収益獲得が期待される。これらの製品・技術は高度な国内サプライチェーンに支えられてお
り、国内産業の強化にも寄与する。
・戦略的重要性:水素技術を自前で確保することは、グローバルに進展するGX市場で、“買わされる側”に回ら
ないために重要な自律性の確保につながる。また、水素等を活用した国内火力の脱炭素化は、安定供給に当
面不可欠な調整力を維持しつつ、火力の活用余地を広げ、エネルギー安定供給/安全保障に貢献する。さら
に、水素等は、再エネや脱炭素技術を活用したブルー/グリーン水素・アンモニアや、将来的な価格低減の
潜在性をもつ高温ガス炉や天然水素等、製造手法の多様性から、従来の化石燃料よりも、供給国が多角化す
る可能性。特に、中東依存9割の石油代替燃料として、供給国の多様化を通じた安定供給に貢献。
資源・エネルギー安全保障・GX
水素等
(2) 目標
①国内外で獲得を目指す市場:
・ 2030年に最大300万t/年、
2040年に1,200万t/年、
2050年に2,000万t/年程度
の水素等の導入を目指す。
・2050年30~40兆円規模への
拡大が見込まれる水素サプラ
イチェーン全体で「技術で
勝って、ビジネスでも勝つ」
ことを目指し、ガスタービン、
水電解装置、船舶・液化水素
関連機器、燃料電池等、サプ
ライチェーンを構成する製
品・サービスを輸出し、
2050年時点で10兆円程度
(年間)の獲得を目指す。
②達成すべき戦略的な目標:
・水素等の活用を通じて、我が
国の自律性/不可欠性の向上、
エネルギー安定供給/安全保
障の確保を図る。
225
2.勝ち筋の特定と官民投資の具体像【道筋】
資源・エネルギー安全保障・GX
水素等
①勝ち筋
・需要創出と価格低減に向け、国際情勢の変化等も踏まえ、産業界のコミットの下、官民一体となって水素・アンモニア
の社会実装を進める“水素大動脈構想” の実現を核とする重点取組を推進。鍵となる以下4製品を中心に、サプライ
チェーン構築を進めつつ、将来の海外市場シェア獲得を官民連携で目指す。
(ⅰ. 水素アンモニア混焼/専焼タービン)
・我が国の水素・アンモニア(ready)ガスタービンは、産業用途向けの小規模から発電向けの大規模まで、世界に先行
して商用化。市場シェアの約4割を占める我が国のポジションを最大限活用しつつ、新設需要にとどまらず、タービン
交換等による転用・更新市場も視野に入れつつ、堅調に伸びる天然ガスタービン市場におけるシェア獲得からの展開を
目指す。
( ⅱ. 水電解装置)
・耐久性や長期的な実証経験、アルカリ型・PEM型・SOEC等の多様な方式での実証・商用化の取組等の我が国の強みを
生かし、欧州はじめ世界の市場で多様化するニーズを幅広く獲得する。
・生産設備の量産投資支援により、技術力の高さを活かしつつコストダウンを進め、部素材も含めて、立ち上がり段階に
ある水電解市場でのシェア拡大を目指す。また、経済安全保障の観点での日欧間の制度連携により、特定国に過度に依
存せず、国際標準における耐久性に関する評価項目を整備し、差別化・競争力を活かしてシェアを拡大する。
( ⅲ. 船舶・液化水素関連機器)
・我が国は、世界初の液化水素運搬船の開発・製造成功等、世界で唯一サプライチェーン全体で液化水素関連設備の製造
が可能。貯蔵タンクやローディングアーム、液化機・圧縮機等の周辺機器にも競争力を有し、GI基金事業により、いち
早く商用実装を推し進める。
・日独間の協力関係を通じ、上流から需要開拓まで液化水素サプライチェーンを共同構築し、市場拡大。類似のエネル
ギー課題を有する東欧市場に向け、官民連携を通し、圧縮機等既存周辺機器の市場拡大を目指す。同時に、液化水素の
ローディングアームや液化水素受入基地等の周辺機器の国際標準化で先行する。
( ⅳ. 燃料電池)
・我が国は、燃料電池のコア技術であるセル性能の高さ、高耐久性・長寿命、量産技術に強み。さらに、小型かつ高い汎
用性を持ち、様々な車両・製品への展開が見込まれ、欧州・米国・中国において市場シェア拡大を目指す。
① 投資内容
(1)基本戦略
②我が国として構築すべき機能
・黎明期市場での先行的な大規模サプライチェーン構築を通じ、日本技術を活かした製品群の最初の商用ケースを構築。
・国際的な競争力強化に資する国際標準策定、対供給国の交渉力強化や差別化に資する規格・制度面での需要国連携。
・製品供給能力を維持する体制構築。
(2)官民投資の具体像
・GI基金による技術確立の研究
開発・実証支援を通じた民間
投資を誘起
・水素社会推進法に基づく支援
措置、量産投資支援(GXサ
プライチェーン補助金)等を
呼び水とした民間投資
・脱炭素電源オークション制度
を呼び水とした、サプライ
チェーン構築に係る民間投資
② 投資額
2040年度までで6.2兆円と
想定
③ 定量的インパクト:投資によ
る経済波及効果
2040年度までで85.3兆円と
想定
226
3.官民投資促進に向けた課題と政策パッケージ【政策手段】
資源・エネルギー安全保障・GX
水素等
(1)投資促進に向けた課題
(2)講じるべき政策パッケージ
サプライチェーン全体を通じた社会実
装に向けた最大の課題は、需要創出と
価格低減。各技術・製品の課題は下記。
関連製品・サービス市場獲得に向け、需要創出と価格の低減を図るべく、水素大動脈構想の実現を核とする重点取
組として水素社会推進法に基づく価格差支援・拠点整備支援・長期脱炭素電源オークション等を通じた社会実装や、
高温ガス炉や天然水素、合成メタン等を含む研究開発・環境整備、需要国連携・供給源多様化等を推進。
ⅰ)水素アンモニア混焼/専焼タービン
①国内投資支援
・投資判断可能な水準まで技術を確立するためのGI基金の活用、サプライチェーン強靱化に向けた設備投資支援等
②需要創出・市場確保・社会実装支援
・水素・アンモニア火力を段階的に導入して需要を喚起するため、水素社会推進法に基づく価格差に着目した支援
や長期脱炭素電源オークション活用
ⅰ)水素アンモニア混焼/専焼タービン
・供給側は、安定した需要が見込めず
能増投資に踏み込めない
・需要側は、大規模な水素の輸送技術
の未確立や燃料価格高騰の影響もあ
り、投資判断に遅れが生じている
ⅱ)水電解装置
・装置の大型化・モジュール化や要素
技術の開発・実証、量産体制構築が
道半ば。コスト低減が必要
・海外を含む市場参入に向け、商用規
模のプロジェクト実績蓄積が必要
ⅲ)船舶・液化水素関連機器
・運搬技術に加え、受入インフラ(貯
蔵やバンカリング)の整備が必要
・世界に前例のない取組であり、商用
実績が乏しいことから、事業投資判
断まで至らない
ⅳ)燃料電池
・①水素インフラ不足/運営費の高さ、
②車両価格の高さ、③水素価格の高
さの3つ巴の課題から、社会実装で、
急伸する中国に遅れ
・量産投資による中国製の価格低減
ⅱ)水電解装置
①国内投資支援
・GI基金を活用した、大型化・モジュール化や要素技術開発
・コストダウン・シェア拡大のため、GXサプライチェーン構築支援事業を通じた量産体制確立に向けた投資促進
②国際連携・需要創出
・水素等の需要国との連携枠組みを効果的に活用した、経済安全保障の観点からの制度設計や、対供給国との交渉
力強化・市場拡大のための規格作り等の推進
ⅲ)船舶・液化水素関連機器
①国内投資支援
・液化水素運搬船、貯蔵タンク、液化機・圧縮機等において、GI基金等により投資判断可能な水準まで技術を確立
②国際連携・需要創出
・液化水素のローディングアームや液化水素受入基地等の周辺機器の国際標準化
・水素等の需要国との連携枠組みを効果的に活用した、経済安全保障の観点からの実証・制度設計や、対供給国と
の交渉力強化、市場拡大のための規格作り等の推進
ⅳ)燃料電池
①国内投資支援
・コストダウン・シェア拡大のため、GXサプライチェーン構築支援による、量産体制確立に向けた投資の促進
②需要創出・市場確保・社会実装支援
・大規模な商用FCVの需要を創出し、水素ステーションの自立化を促すため、「燃料電池商用車を集中的に導入す
る重点地域」の指定(燃料費を含む集中支援によるインフラ・車両・荷主の3者の状況を踏まえた需要喚起)227
資源・エネルギー安全保障・GX
水素等
方向性
現状認識、日本の強み
水素等の関連市場は堅調に拡大しており、2050年には30~40兆円規模になるとみられる。また、多様な製造手法や、電力
の安定供給に当面不可欠な調整力維持を通じ、エネルギー安全保障にも寄与。
日本は水素サプライチェーンの上流から下流まで全体で製品(ガスタービン、水電解装置、船舶・液化水素関連機器、燃料
電池 等)に有する技術優位を、商用化段階での勝機につなげることが重要。
経済安全保障の観点からも、グローバルに拡大するGX市場において、先行して関連機器市場を握ることにより我が国の技
術・製品の不可欠性を高めるとともに、“買わされる”側に回らないための自律性を確保することが重要。
我が国の勝ち筋
主な課題
(ボトルネック)
・サプライチェーン
全体を通じた社会
実装に向けた需要
創出と価格低減
・我が国が強みを持
つ製品について、
国内サプライ
チェーンの構築
講じるべき施策
・水素大動脈構想の実現に向けた取組推進(水素社会推進法に基
づく価格差支援・拠点整備支援・脱炭素電源オークション等を
通じた需要創出・価格低減、サプライチェーン構成製品供給力
強化、重点地域へのFC商用車集中導入・インフラ整備等)
・高温ガス炉・天然水素・合成メタン等を含む研究開発・環境整
備
・技術優位を活かす国際標準化、需要国連携による経済安保強化、
供給源多様化によるエネルギー安全保障強化
目指すべき姿
・2030年に最大300万t/年、
2040年に1,200万t/年、2050年に
2,000万t/年程度の水素等の導入
・ガスタービン、水電解装置、船
舶・液化水素関連機器、燃料電池
等、サプライチェーンを構成する
製品・サービスを輸出し、2050
年時点で10兆円程度(年間)の獲
得を 目指す
228
資源・エネルギー安全保障・GX
③グリーン鉄
※ マテリアル(重要鉱物・部素材)②と同じ
229
1.現状認識と目指す姿【目標】
資源・エネルギー安全保障・GX
グリーン鉄
(1)現状
(2) 目標
・高品質な素材は、主に高炉で生産されており、我が国の高炉比率は約7割を占め、欧米諸国
等と比較し高くなっている。高炉法は、コークスを用いた還元反応の際に多くのCO2を排
出し、鉄鋼業は産業部門の中で最もCO2排出量の多い産業(約4割)であるため、CO2排
出量削減に向け、大型革新電炉への転換や水素還元製鉄の技術開発等の取組を進めている。
① 国内外で獲得を目指す市場
・2030年代前半に、自動車、建築、公共工事、
造船、産業機械等向けの年約300万t以上の
規模の高品質なグリーン鉄市場を国内外で
獲得する。
① 現状
② 取り巻く環境と構造変化
・欧州では、製造時のCO2排出量が多い製品の市場参入規制を導入する動きが見られるほか、
日本でも、27年3月期から、時価総額が一定規模以上の東証プライム市場上場企業に対し、
サステナビリティ開示基準に従い、Scope3も含め温室効果ガスの排出量等の情報開示を義
務付ける方向で議論が進められている。斯かる環境規制が導入される中で、需要サイドで
も高機能性に加えて低炭素な鋼材を求めるように嗜好が変わる動きが見られる。
・また欧州や中国等各国の鉄鋼メーカーは、政府の支援も得つつ、高炉から高品質電炉への
転換等による低炭素化に向けた技術開発や投資を推進。
③ 経済的・戦略的な重要性
・各国も脱炭素化に向けた技術開発や投資を推進している中、日本でもグリーン鉄の供給体
制を構築することは、鉄鋼業の競争力維持・強化のために必要不可欠な危機管理投資。
・グリーン鉄の市場は2050年に約5億トンまで拡大するポテンシャルがあり、将来的な需要
サイドのGX製品へのニーズ増加が見込まれる中、投資支援やグリーン鉄市場拡大等を通じ
て、官民で連携し、日本の技術力やノウハウを活かし、段階的に高品位かつ低炭素な鋼材
の供給能力を高めておく必要がある。
・ 主原料である高品位スクラップはグリーン鉄製造や鋳物等既存のユーザーにとって重要な
物資であり、安定的に確保することが必要であるが、各国が確保に動くことが予想される
中、国内でのサプライチェーンを構築し供給能力を高めることで、国産資源確保につなげ
る。
② 達成すべき戦略的な目標
・海外メーカーでは製造することができない
高品質かつGX価値をもった鋼材を、スク
ラップや還元鉄を主原材料とし、いち早く
製造することにより、不可欠性を獲得する。
・スクラップについて、大型革新電炉や鋳物
等製造業向けの安定的な供給を確保するた
め、2030年時点で、鉄スクラップを高品位
化する処理能力約200万トン/年を目安とし、
追加的に国内で確保する。
230
2.勝ち筋の特定と官民投資の具体像【道筋】
資源・エネルギー安全保障・GX
グリーン鉄
(2)官民投資の具体像
(1)基本戦略
① 勝ち筋
・グリーン鉄の生産基盤構築及び高品位スクラップ確保に向けた技術開発・設備
投資を進めることで、高品位かつGX価値を有した鋼材の供給体制を確立すると
ともに、GX価値の見える化及び国際標準への反映、公共調達におけるグリーン
鉄の優先調達、大口需要家(自動車・建材等)に対する需要喚起策や制度の導
入・検討等を進め、国内においてグリーン鉄市場を創出する。
・国際的な理解の促進及びルールメイクを進めていくことにより海外のグリーン
鉄市場を獲得していく。
② 我が国として構築すべき機能
・グリーン鉄生産基盤
・高品位スクラップ生産基盤の増強(約200万t/年目安増)
・安価・安定な脱炭素電力・水素の供給基盤
・CCS事業実施基盤の構築
・供給拡大に繋がるグリーン鉄市場の創出
・GX価値の情報伝達スキーム
・国際標準化の策定向けた有志国との連携体制
① 投資内容
・鉄鋼メーカーによる、大型革新電炉の建設、水素還元製
鉄の技術開発等供給サイドのプロセス転換。
・鉄鋼メーカーやスクラップ事業者による、AI等を活用し
たスクラップ高度選別設備や大型シュレッダー等リサイ
クル施設。
② 投資額
2040年度までで4.2兆円と想定
③ 定量的インパクト:投資による経済波及効果
2040年度までで10.4兆円と想定
231
3.官民投資促進に向けた課題と政策パッケージ【政策手段】
資源・エネルギー安全保障・GX
グリーン鉄
(1)投資促進に向けた課題
(2)講じるべき政策パッケージ
• 初期コスト:大型革新電炉等
への初期投資負担が大きい。
• 原材料:世界的に高品位スク
ラップへの需要が高まる中で、
安定的な高品位スクラップの
調達が必要。還元鉄は少なく
とも当初は高価格が見込まれ
る。
• インフラ:安価・安定な脱炭
素電力・水素の確保、CCSの
実施環境について不透明。
• 需要:従来よりも高価格とな
るグリーン鉄への需要が短期
的に創出されるか現時点にお
いて不透明。また、グリーン
鉄のGX価値の見える化及び国
際標準への反映は道半ば。
①国内投資支援
・大型革新電炉等への設備投資補助金
・水素還元製鉄技術開発への支援
・AI等を用いたスクラップ選別効率化等技術開発への支援
・大型革新電炉で利用可能及び、鋳物等製造業でも部分的に活用が見込める様々なスクラップを生産する
ためのスクラップ高度選別設備や大型シュレッダー等リサイクル施設への設備投資支援
・循環資源の海外流出抑制策の検討
②需要創出・市場確保・社会実装支援
・グリーン鉄の国内初期需要創出に向けた取組
・グリーン購入法を踏まえた、国・自治体による優先的調達・購入の推進
・公共工事における試行工事の実施・順次対象の拡大及び検討方針の明確化、国及び地方公共団体におけ
る本格活用
・大口需要家(自動車・建材等)に対する需要喚起策や制度の導入・検討
③立地競争力強化
・自動車・家電等の高度リサイクル促進
・国内高品位スクラップの確保
・脱炭素電力・水素・CCSインフラの整備
④国際連携
・グリーン鉄のGX価値の国際標準への反映
232
資源・エネルギー安全保障・GX
グリーン鉄
方向性
現状認識、日本の強み
鉄鋼は様々な製品や社会インフラに使用される重要な基礎素材。我が国の鉄鋼業は高強度、高加工性など、高級鋼材を中心
に競争力を有し、製造業の国際競争力強化に貢献。
他方、欧州を中心に素材製造プロセスの脱炭素化を求める動きがあり、鋼材に対する需要家の嗜好が変化する動きが見られ
る。グリーン鉄の市場規模についても、2050年に世界全体で5億トンにまで拡大するポテンシャルがあり、海外の競合企業
においてもグリーン鉄の生産に向けた技術開発や投資を進める動きがある中、他国に先駆けてグリーン鉄の国内生産・技術
基盤の構築が急務。
我が国の勝ち筋
主な課題
(ボトルネック)
・大型革新電炉等への初期投資負
担
・安定的な高品位スクラップ鉄の
確保
・グリーン鉄への短期的な需要が
不透明
・グリーン鉄のGX価値の見える化
及び国際標準への反映が道半ば
目指すべき姿
講じるべき施策
・大型革新電炉の設備投資や水素還元製鉄の
技術開発支援
・高品位スクラップ鉄増産に向けたリサイク
ル施設への設備投資支援
・グリーン鉄の国内初期需要創出(公共工事
におけるグリーン鉄の調達等)
・ 2030年代前半に、年約300万t
以上の規模の高品質なグリーン
鉄市場を国内外で獲得
・ 2030年時点で、鉄スクラップ
を高品位化する処理能力約200
万トン/年を目安とし、追加的
に国内で確保する。
・グリーン鉄のGX価値の国際標準への反映
・脱炭素電力・水素・CCSインフラの整備
233
資源・エネルギー安全保障・GX
④次世代型地熱
234
1.現状認識と目指す姿【目標】
資源・エネルギー安全保障・GX
次世代型地熱
(1)現状
(2) 目標
① 現状
・地熱発電は、再生可能エネルギーの中でも安定的にエネルギーが確保できるため、データセ
ンター等への活用にも期待が集まり、Google等のIT企業も注目しているところ。
・日本は世界有数の地熱資源ポテンシャル(約23.5GW)を有すが、従来型地熱においては、
開発エリアの制限や発電規模等の課題により、現状、導入量は約0.6GWにとどまる。
・次世代型地熱(超臨界地熱※1、クローズドループ※2、EGS ※3 )については、自然由
来の熱水を使用しない開発方式による開発エリアの拡大や関連規制の最適化、深部掘削によ
る高温・高圧の熱源を活用した開発方式による大規模発電などが期待され、今後の地熱導入
推進に必要不可欠な技術。
② 取り巻く環境と構造変化
・北米や欧州を中心に、次世代型地熱の商業ベースの実用化に向けた取組が進む。また、国内
でも過去の研究・実証の実績を通じて、一部では先行的に実用化も進められている。日本と
しても、従来型の地熱発電用タービンで世界シェアの約7割を占めるなど、これまで世界市
場をリードしてきた技術力を生かしつつ、国内での実証及び海外実証への参画を通じ、次世
代型地熱のノウハウ獲得や市場拡大を目指す。
③ 経済的・戦略的な重要性
・経済的重要性:IEAは、次世代型地熱の世界市場は、コスト低下が進めば2040年頃に年間
2000億ドル、2050年までに累積2.5兆ドルに達するポテンシャルがあると試算。日本にお
いて次世代型地熱のノウハウや技術を蓄積し、日本が強みを持つ地熱発電設備や、オペレー
ションでの世界市場の獲得を目指す。また、国内導入も進めることで、化石燃料の使用によ
る国富流出を軽減し、国内の発電所立地地域の経済振興に貢献するとともに、安定した脱炭
素電源を必要とするデータセンター等の関連産業への国内投資を呼び込む。
・戦略的重要性:地熱発電は純国産・分散型電源の特徴を活かした脱炭素電源であるとともに、
建設・運転開始に至る一連の開発において高い国内調達率を誇ることから、日本の自律性の
向上とエネルギー安全保障に大きく貢献する。
① 国内外で獲得を目指す市場
・国内での実証事業等を通じて、2030年代早
期の次世代型地熱の実用化を目指す。
※1 超臨界地熱:マグマ上部の高温高圧の流体(超臨界熱水)から蒸気を生産し発電するもの。
※2 クローズドループ:亀裂のない高温の地熱層に坑井掘削し、流体を循環させ発電するもの。
※3 EGS(Enhanced Geothermal Systems):地熱貯留層を人工造成し、水 を圧入・蒸気を生産し発電するもの。
・2040年の発電容量について、約1.4GWを目
指す。更に、革新的な技術により更なるコス
ト低減等を図り、 2050年には約7.7GWの
導入を目指す。
・継続したコスト低減に向けた技術開発を進め
ることでノウハウや技術を蓄積し、これまで
世界シェア約7割の地熱タービンや日本が強
みをもつ鋼管(ケーシング材や断熱ドリルパ
イプ等)、地域と共生した地熱開発オペレー
ションでの世界市場の獲得を目指す。
② 達成すべき戦略的な目標
・国産再エネである次世代型地熱の国内導入拡
大により、日本の再生可能エネルギーにおけ
る自律性を向上させる。
・世界の次世代型地熱市場の伸びが見込まれる
中で、日本が強みを持つ鋼管やタービン等の
関連設備をいち早く開発し、不可欠性を獲得
する。
235
2.勝ち筋の特定と官民投資の具体像【道筋】
資源・エネルギー安全保障・GX
次世代型地熱
(1)基本戦略
(2)官民投資の具体像
① 勝ち筋
・2050年にかけて次世代型地熱の世界市場の立ち上がりが見込まれる中、従
来型地熱で培った地熱発電関連設備の技術力(例:タービンの世界シェアは
約7割)や素材開発力を活かし、官民で戦略的に取組を進める。
・足下で、 2030年度までに国内で次世代型地熱技術の確立、2030年代早期
に次世代型地熱発電の運転開始を目指して、国内複数地点での実証を2026
年内速やかに開始し、国内において、①地点開発・オペレーションのプレイ
ヤー・体制の構築、②ノウハウの蓄積、③関連技術の開発を一体的に進める
場の創出を行う。
・並行して、実用化後の早期の社会実装に向けて、継続したコスト低減に向け
た技術開発、掘削等に係る関連規制等の最適化、地熱資源の把握による国内
の開発候補地点の特定、電力価値の評価、地域の理解醸成等の環境整備を先
行的に進めることで、国内投資の予見性を確保する。また、世界市場の獲得
に向け、海外実証にも参画する。
・その後の本格的な市場立ち上がりのタイミングに先立って、国内で積極的に
導入を拡大するとともに、特に、日本の強みが活きる耐腐食性・耐高温性等
を備えた鋼管(ケーシングやドリルパイプ等)や耐腐食性タービン等の次世
代型地熱発電設備のほか、発電所のオペレーションも含め、世界市場の獲得
を目指す。
① 投資内容
・国の支援を受けつつ、地熱事業者や電力会社が、2030年
にかけて次世代型地熱技術の確立に向けた国内実証を実施。
・実証結果を踏まえ、2030年代早期に次世代型地熱発電の
運転を開始するとともに、官民で普及拡大に向けたコスト
低減等の技術開発に取り組む。
・その上で、地熱事業者や電力会社を中心に関連事業者が、
商業ベースで導入拡大。
② 投資額
2040年度までで1.0兆円と想定
③ 定量的インパクト:投資による経済波及効果
2040年度までで2.8兆円と想定
② 我が国として構築すべき機能
・国内実証やその後の実用化に向けて、必要な支援を躊躇なく実行できる産官
学が一体となった体制
・石油・ガスの掘削等の実績を有する有志国との掘削技術等に関する連携
236
3.官民投資促進に向けた課題と政策パッケージ【政策手段】
資源・エネルギー安全保障・GX
次世代型地熱
(1)投資促進に向けた課題
(2)講じるべき政策パッケージ
①リソース制約
・人材:全体管理を行うオペレー
ターの不在、調査・開発に関わ
る人材不足
・インフラ等:林道・敷地造成の
必要性、系統不足
①国内投資支援
・GI基金による支援を通じて、2026年度より新たに、複数箇所の候補地点において国内初の実証事業
を開始。実証を通じて、オペレーターの創出、実績・ノウハウの獲得を図ると共に、地熱井等に用い
る鋼材(ケーシングパイプ等)や蒸気タービン、地熱発電EPC(設計・調達・建設)等に係る技術開
発の必要性が確認された場合、当該技術についての開発もGI基金での支援を検討していく。
・実証事業からその後の導入促進の時期の中で、掘進率の向上等に向けた掘削技術や発電量向上に向け
た適切な発電設備の仕様策定など、コスト低減等に向けた技術開発にも継続して取り組む。
②不確実性の要因
・事業・技術:技術の確立、低コ
スト化
・市場:次世代型地熱が評価され
る国内市場の創出、海外市場の
動向
・財務:次世代地熱における資源
リスクを踏まえた資金調達の困
難さ
・国際環境・政策:関連規制によ
る事業遅延
・社会:次世代型地熱への理解醸
成
②需要創出・市場確保・社会実装支援
・温泉法等の現行規制上の扱い(掘削許可等の取扱い等)や理解醸成のために必要な技術的な検討を行
うため(地下への影響、環境影響等の技術的特徴の整理を含む)、本年夏頃を目途に検討会を立ち上
げ、議論を進めていく。
・安全保障・脱炭素・ベースロード電源価値などの付加価値がある地熱電力価格について、 FIT/FIP制
度に加えて、 GX産業立地政策や長期脱炭素電源オークションを活用しながら、地熱価値の創出とそ
れによる投資促進を目指し、年内に議論を開始する。
・国内開発へのリスクマネー供給強化のために、次世代型地熱を対象とした探査出資や開発債務保証の
制度設計に向けた調整を年内に開始する。
③立地競争力強化
・国による資源量調査を継続し、国内の開発候補地点を拡大及び特定し、事業者への適切な情報提供を
進める。
・次世代型地熱の開発・発電開始に向けて事業者が行う探査・掘削・開発に関する設備投資等への支援
体制の整備を目指す。
・開発地点の地元自治体、温泉事業者、住民等に対して、政府方針を踏まえた理解醸成を促す。
・インフラ整備:円滑な調査・開発に向けて、必要な系統整備、林道・敷地造成を官民一体となって進
める。
④国際連携
・海外の次世代型プロジェクトへの参画等を通じたノウハウや技術の獲得及び市場拡大に向けて、次世
代型地熱を対象とした支援制度の整備を通じて事業者支援を強化する。
237
資源・エネルギー安全保障・GX
次世代型地熱
方向性
現状認識、日本の強み
地熱は、化石燃料に依存しない国産の再生可能エネルギー源であり、また安定的に発電が可能なベースロード電源。
Google等のIT企業もデータセンター等の電源として注目しており、特に次世代型地熱(超臨界地熱※1、クローズドループ
※2、EGS ※3)の世界市場は、2040年頃には年間2,000億ドル近くに到達するポテンシャルがあるとの見込みも。
次世代型地熱については、開発エリアの拡大や関連規制の最適化、大規模発電などが期待され、今後の地熱導入推進に必要
不可欠な技術。我が国として、従来型の地熱発電用タービンで世界シェアの約7割を占めるなど、これまで世界市場をリー
ドしてきた技術力を生かし、2030年代早期の実用化を目指した国内実証を行いつつ、関連技術の海外展開による世界市場
の獲得を目指す。
主な課題
(ボトルネック)
・全体管理を行うオペレーター
の不在
・技術が未確立、技術の低コス
ト化が必要
・海外展開に向けた市場動向等
の見極め
・関連規制による事業遅延
我が国の勝ち筋
講じるべき施策
・GI基金による次世代型地熱に係る国内初の実証を通
じたオペレーターの創出、実績・ノウハウの獲得
・国内導入拡大に向けた設備投資等への支援の整備
・ノウハウや技術の獲得及び市場拡大に向けた海外事
業への参画支援
・次世代型地熱に係る温泉法等の現行規制上の扱い
(掘削許可等の取扱い等)や理解醸成のために必要
な技術的な検討
※1 超臨界地熱:マグマ上部の高温高圧の流体(超臨界熱水)から蒸気を生産し発電するもの。
※2 クローズドループ:亀裂のない高温の地熱層に坑井掘削し、流体を循環させ発電するもの。
※3 EGS(Enhanced Geothermal Systems):地熱貯留層を人工造成し、水 を圧入・蒸気を生産し発電するもの。
目指すべき姿
・2030年代早期の実用化
・2050年までに国内7.7GWの導入
・地熱タービンや鋼管(ケーシング
材や断熱ドリルパイプ等)、地熱
開発オペレーションでの世界市場
の獲得
238
資源・エネルギー安全保障・GX
⑤洋上風力
239
1.現状認識と目指す姿【目標】
資源・エネルギー安全保障・GX
洋上風力
(1)現状
(2) 目標
① 現状
• 再エネは国産脱炭素エネルギーとしてエネルギー安定供給・安全保障の鍵を握る「危機管理投資」。その中で、洋上
風力は、世界市場の拡大、経済波及効果が期待され、再エネの主力電源化に向けた重要な電源。英国など欧州も、エ
ネルギー安全保障の観点から、洋上風力に再注力。
• 市場は、欧州が先行、中国も急拡大。昨今は世界的なインフレで事業環境が悪化しているが、今後も世界市場は拡大
し、2040年には300GW超(アジア・欧州の重点市場で約200GW)のポテンシャルがあるとする試算も。特に日本
と気象・海象が類似するアジア太平洋地域では浮体式も含め拡大見込み。
① 国内外で獲得を目指す市場
・AZEC(アジア・ゼロエミッ
ション共同体)の枠組を活用
した風車・浮体のグローバル
展開
・2040年までに30GWの海外
案件に関与
・浮体式の技術力強化・国際標
準化、また、海外展開のため
の欧州・アジア太平洋等10ヵ
国・地域との連携
② 取り巻く環境と構造変化
• 付加価値の高い風車は、国内メーカーが過去存在し関連部品も国内で製造されていたが、現状は欧米メーカーからの
輸入に依存。それに伴い、関連部品も製造拠点を有する海外へ大半を依存する構造。
• 他方で、国内にも風車の中核として発電機能を担うナセル(※1)内の部品製造の技術力(電機設備、増速機、磁石、
ベアリング等)は残っており、国内ナセル製造拠点が創出されれば、関連部品等でも我が国技術を活かせる可能性。
その際、長期安定稼働を要する風車技術は実績・信頼性が不可欠なため、風車の製造拠点創出・サプライチェーン構
築に向けては、海外風車メーカーの技術を取り込むことが必須。こうした中、技術と市場ポテンシャルから、海外風
車メーカーはナセル製造拠点の国内立地に協力意向。
② 達成すべき戦略的な目標
・海外技術・投資の呼び込みを
通じた、国内風車製造拠点の
創出と国内部品メーカーの再
※1 ナセル:ブレードの回転を発電に変える風車の中核部品。
興
• 浮体式は、英国、韓国等で最速2030年に運転開始予定のプロジェクトがあるが、世界的に実証フェーズ。我が国の
・国内技術の強みを活かした浮
造船・鉄鋼技術の強みが存在感を増すゲームチェンジのタイミング。
• 当該分野で我が国が競争力を獲得する道筋は、我が国技術を活かせる、風車製造、浮体製造のサプライチェーン構築。 体製造サプライチェーンの構
築
③ 経済的・戦略的な重要性
・2040年までに国内調達比率
• 経済的重要性:我が国と気象・海象が類似するアジア太平洋は、浮体式を含めるとポテンシャルが大きく、欧州から
65% (産業界目標)
中長期的には市場がシフト。風車製造、浮体製造で、アジア太平洋市場の獲得が出来れば、将来的なコスト低減に加
え、地域はじめ経済波及・雇用創出効果大。
• 戦略的重要性:我が国は、風車の核となるナセル内の部品製造技術力、浮体では造船・鉄鋼技術に強み。海外技術・
投資の呼び込みを通じた風車製造拠点創出と国内部品メーカーの再興、浮体製造サプライチェーンの構築が出来れば
自律性確保に大きく寄与するとともに、アジア太平洋地域に展開出来る可能性があり、グローバルに不可欠性を持ち
240
得る。
2.勝ち筋の特定と官民投資の具体像【道筋】
資源・エネルギー安全保障・GX
洋上風力
(1)基本戦略
(2)官民投資の具体像
① 勝ち筋
• 風車製造については、海外風車メーカーの技術・投資の呼び込みを通じ、
今後の市場拡大が見込まれるアジア太平洋向け風車製造拠点創出が鍵。
• 海外風車メーカーとの官民枠組を昨年創設し、投資要件や道筋を議論。本
年3月にはベスタス社が、一定条件の下、2029年度までにナセル最終製造
拠点の国内設立へ協力。この具体化のためには、設備投資等の誘致支援、
市場のボリューム・継続性が肝であり、早期実現に向け、強力な設備投資
支援策、技術開発やAZECの枠組を活用したアジア太平洋市場への展開策、
事業環境整備策を講じる。
• 浮体製造については、技術と量産体制の確立、浮体式市場への早期参入に
よるデファクトスタンダードの獲得が鍵。さらに、ポテンシャルの大きい
アジア太平洋市場の獲得が重要。
• 我が国の造船・鉄鋼等技術を活かし、FLOWRA(浮体式洋上風力技術研究
組合)などの業界協調の取組を含めた技術開発、設備投資支援を通じて、
低コストに量産化する能力を進展させてきている。今後、新市場向け実証
やFLOWRAを核に技術力強化・標準化に向けた欧州連携の深化、AZECの
枠組も活用したアジア太平洋市場への展開策を講じる。
① 投資内容
• アジア太平洋向け風車製造拠点創出に向けた、海外風車
メーカーの技術・投資の呼び込み、関連部品メーカーの
設備投資
• 浮体のサプライチェーン構築に向けた、研究開発・量産
投資
② 投資額
2040年度までで5.1兆円と想定
③ 定量的インパクト:投資による経済波及効果
2040年度までで17.3兆円と想定
② 我が国として構築すべき機能
• 大胆な投資計画へ必要な支援を躊躇無く実行できる体制
• 研究開発・実証、海外連携による技術力強化・標準化・海外展開
241
3.官民投資促進に向けた課題と政策パッケージ【政策手段】
資源・エネルギー安全保障・GX
洋上風力
(1)投資促進に向けた課題
(2)講じるべき政策パッケージ
①リソース制約
・人材:研究開発、製造・施工
に関する人材等
・インフラ等:港湾、試験設備、
系統等
①国内投資支援
・GI基金を活用した風車・浮体の技術開発・実証支援
・欧州風車メーカーとの協業や、 GXサプライチェーン構築支援事業を通じた、アジア太平洋向け風車
国内製造拠点の創出及び国内風車部品メーカーのグローバルサプライヤー創出、浮体製造サプライ
チェーンの構築
②需要創出・市場確保・社会実装支援
○海外展開
・GI基金等を活用し、技術的優位性確保のためのアジア太平洋地域に向けた風車技術開発や浮体式実証
・AZECの枠組み等を活用し官民で各国状況の把握と欧州との連携を通じた国際標準化の推進、ステップに
応じたFS・実証・人材育成、ファイナンス等の支援策の検討
②不確実性の要因
・事業・技術:インフレ等によ
るコスト上昇、世界市場の急
拡大による製造・施工能力の
逼迫、量産化・施工技術の不
確実性と他国との競争環境の
激化、適地の偏在
・市場:案件形成の不確実性
・財務:金利上昇、浮体式等導
入初期の資金調達の困難性、
キャッシュフローの不安定性
等
・国際環境・政策:輸入品の地
政学リスク、海外市場の政策
転換等
・社会:地元理解の必要性、規
制対応
○国内展開
・浮体式の低コスト化に向け、FLOWRAを核に産学官連携による共通基盤開発を通じた最適設計・規格化
の推進、施工・運用・保守に必要な港湾等の基盤整備及び実施体制の確保
・適切な供給価格での入札がされるための価格点の設計など、公募制度の見直しを含む継続的な事業環境整
備策を講じ、国民負担の抑制と導入バランスを踏まえつつ産業基盤構築に向けた着実な案件形成
・北海道・本州間海底直流送電等地域間・地内系統の計画的整備、再エネ導入に資する系統用蓄電池の導入
③立地競争力強化
・ファイナンス、産業インフラ環境の整備(税制優遇、用地確保等)
・人材育成(教育カリキュラムやトレーニング施設等拠点の整備)
・地域未来戦略と連携しながら、既存の関連産業集積または需要地への近接性を踏まえた港湾整備、風
車・浮体の実証・認証迅速化のための技術検証環境整備、系統整備、船舶確保
④国際連携
・FLOWRAを核に、浮体の技術力強化や標準化・ルールメイキングに関する欧州各国産業界との連携
・AZECの枠組み等を活用しアジア太平洋諸国と連携し、サプライチェーン協力や非価格価値の検討な
ど特定国に過度に依存しないマーケットの構築
242
資源・エネルギー安全保障・GX
洋上風力
方向性
現状認識、日本の強み
再エネは国産脱炭素エネルギーとしてエネルギー安定供給・安全保障の鍵を握る「危機管理投資」。その中で、洋上風力は、世界市場の拡大、
経済波及効果が期待され、再エネの主力電源化に向けた重要な電源。今後導入量は、2040年に300GW超(アジア・欧州の重点市場で
約200GW)となる試算もあり、特に日本と気象・海象が類似するアジア太平洋地域では浮体式も含めて拡大が見込まれる。
過去国内風車メーカーは撤退したものの、風車の核となるナセル※1内の部品製造の技術力は残っており、今後、国内にナセル製造拠点が創出
されれば、関連部品等で我が国技術を活かせる可能性。また、浮体式における造船・鉄鋼技術の強みを持つ。
海外風車メーカーの技術・投資を呼び込み、国内に風車サプライチェーンを確保すると同時に、浮体式の技術開発を進め、風車及び浮体の
アジア太平洋地域等へのグローバル展開を進めていく。
我が国の勝ち筋
主な課題
(ボトルネック)
・風車を海外からの輸入
に依存し、関連部品も
製造拠点を有する海外
へ大半を依存する構造
・インフレ等による事業
環境悪化や適地の偏在
講じるべき施策
・海外技術・投資の呼び込みに向けた海外風車メーカーとの
協業※2や設備投資支援による、風車及び浮体のサプライ
チェーン構築
・風車及び浮体の技術的優位性確保のための研究開発支援
・AZECの枠組み等を活用した海外との連携・制度検討、海
外展開支援、浮体の技術力強化・標準化に向けた海外連携
・適切な供給価格での入札がされるための価格点の設計など、
公募制度の見直しを含む継続的な事業環境整備
・北海道・本州間海底直流送電等地域間・地内系統の計画的
整備、再エネ導入に資する系統用蓄電池の導入
目指すべき姿
・国内風車製造拠点の創出と国内
部品メーカーの再興、国内技術
の強みを活かした浮体製造サプ
ライチェーンの構築
・これらを通じ、2040年までに
国内調達比率65%(産業界目標)
・2040年までに30GWの海外案
件に関与
※1 ナセル:ブレードの回転を発電に変える風車の中核部品。
※2 海外風車メーカーとの間で、主に日系企業のサプライヤー参入促進や、中長期的な国内製造拠点の形成を視野に入れたサプライチェーン構築について協議。
243
資源・エネルギー安全保障・GX
⑥次世代革新炉
244
1.現状認識と目指す姿【目標】
(1)現状
① 現状
・次世代革新炉は、原子力の安全性向上を目指し、新たな安全メカニズムを組み込んだ、革新軽水炉※1、SMR ※2、
高速炉※3 、高温ガス炉※4を指し、既に事業化されている軽水炉産業も基盤として、実用化に向けた研究開発等
が実施されているところ。
・既存の軽水炉は国内でこれまで60基建設されており、電力事業者、プラントメーカー等による高い国産率を実現
している他、国外建設においても、他国メーカーと協力したプロジェクト参画や、技術的に強みのある部素材等
の輸出により、国際的な競争力を維持・強化している。
・次世代革新炉については、世界においては2030年代に運転開始を目指すものもあり、中・露は先行して革新炉の
開発を推進している。欧米でも、国内で大規模支援を実施しつつ、国際協力を推進している状況にある。我が国
も、約70年以上にわたる原子力平和利用の経験やそれを支える原子力産業・人材・研究基盤を有するなど、国際
競争力のある原子力サプライチェーンを形成。東日本大震災を踏まえ更に強化された安全対策の知見や、これま
での研究開発、実機の運転経験等の強みを生かし、国、JAEA、メーカー等が実証に向けた検討を進めている。
② 取り巻く環境と構造変化
・デジタル需要の急増など需給トレンドの大きな転換が進み、また、昨今の中東情勢なども踏まえれば、エネル
ギーの供給能力を十分かつ自律的に確保できるかどうかが大きな課題となりつつある。
・原子力の重要性は国際的にも高まっており、欧米各国では国として明確な開発目標を掲げるとともに、GAFAM等
の個別企業もデータセンター向けの電力供給のために自ら原子力発電を活用するなど動きが活発化。
・国内では、市場からの短期収益圧力、資金調達コストの増加など原子力事業を巡る経営・市場環境が大きく変化
する中で、大規模投資・長期回収が必要な原子力事業への投資余力が低下。
③ 経済的・戦略的な重要性
・経済的重要性:原子力産業の国内市場は年間2兆円規模であり、 国際的には、2050年には年間約60兆円の市場
規模にまで成長、そのうち次世代炉が市場の1/4を占めるとの予測もあり、各国で建設プロジェクトが進行中。
また、原子力産業への投資は様々な分野に跨る製造・建設企業に広く裨益し、メンテナンス・廃炉も含めると将
来的にも安定した雇用を生み出す。
資源・エネルギー安全保障・GX
次世代革新炉
(2) 目標
① 国内外で獲得を目指す市場
・2040年のエネルギー需給見通しにおい
て電源構成の2割程度を占めることが見
通されている国内の原子力について、
国内産業による建設・運転・保全を目
指す。
・また、海外プロジェクトへの参画等を
通じて、海外市場の獲得を目指す。
② 達成すべき戦略的な目標
・エネルギー安全保障の観点から、特定
国・特定主体への依存度低減を図りつ
つ、将来にわたり必要な設計・建設・
保全能力及びサプライチェーンの維
持・強化を行う。
・特に、将来の国内の建替えを効率的・
迅速に実現できる持続可能な産業構造
の構築を目指す。
・戦略的重要性:脱炭素電源としての重要性に加え、燃料の備蓄性が高いことなどから、エネルギー安全保障にも
大きく寄与する。更に、米仏をはじめ他国の原子力発電所、他のエネルギーや半導体等の分野においても、日本
の原子力関連企業の部素材が採用されており、不可欠性も有している。
※1 次世代革新炉:本官民投資ロードマップでは、原子力の安全性向上を目指し、新たな安全メカニズムを組み込んだ、革新軽水炉※2、SMR ※3、高速炉※4、高温ガス炉※5を指す。
※2 革新軽水炉:既設の原子炉の設計をベースに、東電福島第一原子力発電所事故の教訓を踏まえ強化した 安全対策を設計段階から組み込み、より高い安全性を追求した軽水炉。
※3 SMR(Small Modular Reactor):電気出力が概ね30万㎾以下の軽水炉。
※4 高速炉:高速中性子により、核分裂連鎖反応が維持される原子炉。高レベル放射性廃棄物の減容化・有害度低減や資源の有効利用を通じて、核燃料サイクルの効果をより高めることが期待される。
※5 高温ガス炉:減速材に黒鉛、冷却材にヘリウムガスを用いて、900℃近くの熱を利用できる原子炉。高温熱やそれにより製造される水素により、製鉄や化学などの素材産業の脱炭素化への貢献が期待される。
245
2.勝ち筋の特定と官民投資の具体像【道筋】
資源・エネルギー安全保障・GX
次世代革新炉
(1)基本戦略
(2)官民投資の具体像
① 勝ち筋
海外市場を獲得することで原子力産業基盤を維持・強化しつつ、国内の革新炉の導
入加速に向けて取組を行う。
① 投資内容
・次世代革新炉の基本設計・実証等の研究開発
・海外プロジェクトへの参画支援を含めた次世代革
新炉の開発・建設に不可欠な技術開発、サプライ
チェーン構築・人材育成
・北米、欧州等の海外プロジェクトへ積極的に参画する。
・次世代革新炉への建替えに向けたサプライチェーンの維持・強化、人材育成強化
のための司令塔機能の強化を行う。また、次世代革新炉の設置などを念頭に、米
国等の事例も踏まえつつグレーデッドアプローチに基づき、かつ予見性のある規
制基準、審査プロセスの設定、審査や検査等の実施を機動的・継続的に行えるよ
う、規制体制の充実・強化を図る
・更に、炉型ごとの用途や開発段階の相違、社会のニーズ等の要素も考慮し、必要
な技術開発(実証炉の設計、技術開発等)と、必要な取組強化を官民で進める。
・長期脱炭素電源オークションの枠組みの活用・改善など事業環境の整備、投資環
境の変化を踏まえた安定供給と国民負担抑制の両立のための国のリスクテイクの
あり方を含めた検討・取組、コーポレートPPAの推進などを図る。
・また、原子力発電の見通しの提示や各炉型のロードマップの具体化等を通じ、事
業予見性の確保を行う。
② 投資額
2040年度までで5.0兆円と想定
③ 定量的インパクト:投資による経済波及効果
2040年度までで11.1兆円と想定
② 我が国として構築すべき機能
・安定供給を確実に行うためのエンジニアリング、製造、運転、保守、燃料製造等
を担う中核機能を国内で維持する。
246
3.官民投資促進に向けた課題と政策パッケージ【政策手段】
(1)投資促進に向けた課題
【産業基盤の劣化】
・サプライチェーン:国内外の需
要に対応する製造能力の不足、
原子力産業からの撤退
・人材:研究開発、エンジニアリ
ング人材、現場の建設・運転・
保守人材等の減少
【投資環境・事業の予見性向上】
・事業:超長期の事業の投資判断
の困難性、大規模投資、収入の
不安定性 等
・財務:資金調達の困難性、運転
開始までの長期にわたるキャッ
シュフローの不安定性 等
・政策:次世代革新炉に関する規
制の予見性向上
・社会:電源の特性やバックエン
ド等に対する理解
【研究開発基盤の劣化】
・技術:革新技術の開発
・研究基盤: 国内の研究開発基
盤(施設・組織・資金供給機
能)の維持・強化
(2)講じるべき政策パッケージ
資源・エネルギー安全保障・GX
次世代革新炉
①国内投資支援
• サプライチェーン:日本が強みを有し、他のエネルギーや半導体等の分野にも裨益するサプライチェーンの国際競争力強化に向けた生
産能力拡充等への設備投資支援を行う。
• 人材:原子力人材育成のための産官学による司令塔機能及びロードマップの整備、産学連携等による人材育成や技術保全等への支援を
行う。次世代革新炉の設置などを念頭に、米国等の事例も踏まえたグレーデッドアプローチ※1に基づき、かつ予見性のある規制基準・
審査プロセスの設定、審査や検査等の機動的・継続的な実施のため、規制体制の充実・強化を図る。
• 投資環境整備:長期脱炭素電源オークションの活用・改善を通じた投資回収の予見性向上や資金調達に係る電力広域的運営推進機関に
よる脱炭素電源に対する融資制度創設などの事業環境の整備、電源の投資予見性の確保や需要家の脱炭素ニーズ充足に繋がるコーポ
レートPPA※2の促進を行うとともに、昨今の投資環境を踏まえて安定供給と国民負担抑制の両立に向けて国のリスクテイクのあり方な
ど必要な検討・取組を進めていく。
• 研究開発:次世代革新炉(SMR等)の開発・設置に向けた革新技術等の技術開発を行うとともに、原子力研究開発・利用・安全を支え
る総合的基盤の強化を図る。
(例:次世代革新炉の社会実装加速に向けたJAEAの技術基盤や人的資源の強化、関連研究施設等の整備・高度化、安全性の向上等につながる研究開発の推進や次世代革新
炉の規制基準の基盤となる技術的検討、様々な主体が行う原子力の研究開発に対する、NEDOを念頭に置いた政府による資金供給機能の強化)
②需要創出・市場確保・社会実装支援
<事業の予見性確保・需要創出>
・投資予見性を確保するため、原子力発電の見通しや将来像を提示する。また、次世代革新炉のそれぞれの炉型の技術や開発の進展、実
装に向けた課題なども考慮した開発の道筋の具体化を行う。将来の水素社会を見据えて、高温ガス炉等に関心を持つユーザーの裾野拡
大を行う。併せて、運転サイクルの長期化や定期検査の効率的な実施などの既設炉の運用高度化に向けた取組も進める。
<バックエンドプロセスの加速化等>
・六ヶ所再処理工場・MOX燃料工場の竣工及び操業環境整備の加速(独立行政法人の設置を含む官民の保障措置体制の強化等)、プル
サーマルの推進強化、使用済燃料対策の推進(中間貯蔵施設等の建設・活用の促進等)等の核燃料サイクルに係る取組を着実に進める
とともに、円滑かつ着実な廃炉を推進する。高レベル放射性廃棄物の最終処分について更なる文献調査地域の拡大など国が前面に立っ
た取組の強化を行う。
③立地競争力強化
・原子力発電所等の立地地域との共生を図るため、避難道路の整備を含む原子力防災体制の充実、原子力発電を活用した新産業誘致の推
進、電源整備の必要性・官民の地域貢献の強化に関する国の説明責任の強化など地域の持続的な発展に向けた取組を不断に検討する。
④国際連携
・海外プロジェクトへの日系サプライヤ団の派遣、海外規格対応支援等の日本企業参画支援等・海外政府と協力した事業・投資環境整備
を進める。次世代革新炉の海外との共同開発を進める。
※1 規制や管理の厳しさを原子力・放射線安全上の重要度に応じたものとする手法。 ※2 需要家と発電事業者が電力購入契約を結ぶ電力調達形態。
247
資源・エネルギー安全保障・GX
次世代革新炉
方向性
現状認識、日本の強み
昨今のエネルギー安全保障の重要性の高まり、生成AI・DCの増加に伴う電力需要の急増などを受け、原子力の重要性は国際的にも再認識されており、各
国で活用に向けた動きが急速に進んでいる。IEA等によれば原子力の世界市場は2050年には最大で年間約60兆円程度まで拡大し、そのうち次世代炉が4分
の1を占めるとの予測。
また、国内においても、短期的には原子力の再稼働の加速や稼働炉の最大限活用を進めるとともに、2040年代以降に原子力の供給力が大幅に減少するこ
とを踏まえ次世代革新炉※1への建て替えを進めていくことが、エネルギー安全保障や安定・脱炭素電源の確保の観点から不可欠。
我が国は、約70年以上にわたる原子力平和利用の経験やそれを支える原子力産業・人材・研究基盤を有するなど、国際競争力のある原子力サプライチェー
ンを形成。東日本大震災後の建設空白期間により毀損しつつある原子力産業、人材、研究基盤等に積極的に投資を行うことで、国内外の需要を獲得し、日
本のエネルギー安全保障を強固なものとするとともに、国民の生活や経済基盤を支えていく。
我が国の勝ち筋
主な課題
(ボトルネック)
・国内外の需要に対応する
製造能力の不足、原子力
産業からの撤退、原子力
人材の減少
・国内の建て替えを進める
上での投資環境の変化
・次世代革新炉にかかる研
究開発基盤の劣化
・次世代革新炉に関する規
制の予見性向上
目指すべき姿
講じるべき施策
・サプライチェーンの製造能力強化支援、産官学による原子力人材育成の司令塔整備
・長期脱炭素電源オークションの枠組みの活用・改善など事業環境の整備、国のリスクテイクのあり方
含めた検討・取組、コーポレートPPA※6の促進
・NEDOを念頭に置いた資金供給機能の強化、 JAEAの研究基盤強化を通じた次世代革新炉開発及び規
制基準の基盤となる技術的検討、グレーデッドアプローチ※7に基づいた予見性のある規制基準・審査
プロセスの設定、審査や検査等の機動的な実施のための規制体制の充実・強化
・再処理・MOX工場の竣工及び操業環境整備(独法の設置を含む保障措置体制の強化等)、プルサーマ
ルの推進、使用済燃料対策の推進(中間貯蔵施設等の建設・活用等)、避難道路の整備を含む原子力防
災体制の充実、脱炭素電源地域の発展を念頭に置いた取組の強化、着実かつ効率的な廃炉の推進、最終
処分の実現に向けた更なる文献調査地域の拡大
※1 次世代革新炉:本官民投資ロードマップでは、原子力の安全性向上を目指し、新たな安全メカニズムを組み込んだ、革新軽水炉※2、SMR ※3、高速炉※4、高温ガス炉※5を指す。
※2 革新軽水炉:既設の原子炉の設計をベースに、東電福島第一原子力発電所事故の教訓を踏まえ強化した 安全対策を設計段階から組み込み、より高い安全性を追求した軽水炉。
※3 SMR(Small Modular Reactor):電気出力が概ね30万㎾以下の軽水炉。
※4 高速炉:高速中性子により、核分裂連鎖反応が維持される原子炉。高レベル放射性廃棄物の減容化・有害度低減や資源の有効利用を通じて、核燃料サイクルの効果をより高めることが期待される。
※5 高温ガス炉:減速材に黒鉛、冷却材にヘリウムガスを用いて、900℃近くの熱を利用できる原子炉。高温熱やそれにより製造される水素により、製鉄や化学などの素材産業の脱炭素化への貢献が期待される。
※6 コーポレートPPA:需要家と発電事業者が電力購入契約を結ぶ電力調達形態。 ※7 グレーデッドアプローチ:規制や管理の厳しさを原子力・放射線安全上の重要度に応じたものとする手法。
・足元で進む海外の原
子力建設プロジェク
トへの我が国企業の
参画
・2040年代以降に不
可欠となる国内の建
て替えを迅速かつ効
率的に実現
・上記を実現していく
ための国内原子力産
業・原子力人材・研
究基盤の構築
248
資源・エネルギー安全保障・GX
⑦GXケミカル
249
1.現状認識と目指す姿【目標】
資源・エネルギー安全保障・GX
GXケミカル
(1)現状
(2) 目標
① 現状
• 化学産業は、特定機能が要求される機能性化学品と、その原料である基礎化学品によって構成。機能性化
学品は成長性が高く、我が国企業の競争力も高いが、基礎化学品なしには生産不可能。基礎化学品は、
安定供給価値を提供しつつ、国際競争の中での収益性低下・脱炭素要請への対応も必要。
• その中で、勝ち筋として注目するのが、今後市場の拡大が期待される「自動車/半導体等で不可欠なGX部
素材(=GX機能性化学品)」。また、ユーザーニーズやサプライチェーン強靱化の重要性を踏まえると、「脱
炭素化/低炭素化を実現した基礎化学品(=GX基礎化学品)」の市場拡大も重要。これらのGXケミカル
の市場獲得が大きな課題に。
※GXケミカル =
GX機能性化学品(=自動車/半導体等の川下のGX製品で利用される部素材)
+ GX基礎化学品(=生産工程でのCO2排出が少ない脱炭素化/低炭素化を実現した基礎化学品)
① 国内外で獲得を目指す市場
・2040年に世界で8兆円規模になると見込まれ
るGX機能性化学品分野(現時点4.6兆
円)において、グローバルシェア4割(3.2兆
円規模)の獲得を目指す。
② 取り巻く環境と構造変化
• 自動車や半導体等の川下市場の成長に合わせて、GX機能性化学品の市場も拡大し、国際競争が激化。
これまで研究開発力と顧客密着型対応により高い競争力を保持してきたが、国際競争力の維持・強化のた
め、他国に負けないスピードで投資拡大をすることが求められている。
• 他方で基礎化学品は内需縮小に加え、中国・中東の大量生産による供給過剰で収益性が低下。その中で、
川下産業の脱炭素要請や各国における排出量取引制度の導入等を踏まえて、材料となる基礎化学品の低
炭素化が今後競争力の源泉に。中国を中心に他国でもグリーン化の取り組みが進行。基礎化学品工程にお
ける脱炭素化/低炭素化(GX基礎化学品への転換)及び安定供給の実現が求められている。
③ 経済的・戦略的な重要性
• 今般の中東情勢を踏まえると、化学製品の国内サプライチェーン維持は、国民生活・産業活動に必要不可欠。
国際競争が激化する中で、競争力があり市場の拡大が見込まれるGXケミカルの市場獲得に向けた投資を加
速することで、化学産業全体のサプライチェーンを強靭化していくことが、我が国の危機管理投資であり成長投
資。
② 達成すべき戦略的な目標
【持続可能な基礎化学品の産業基盤の構築】
・エチレン製造設備を国内12基→8基体制に統
合し、サプライチェーン強靱化・稼働率の向上を
図り、収益性を確保。
・国際的な競争力を有する機能性化学品の原
料である基礎化学品の製造設備を危機管理
のために維持・強化しつつ、脱炭素化/低炭素
化を実現することによって、持続可能な産業基
盤を構築する。
250
2.勝ち筋の特定と官民投資の具体像【道筋】
資源・エネルギー安全保障・GX
GXケミカル
(1)基本戦略
(2)官民投資の具体像
① 勝ち筋
【総論】
• 国民生活の基礎である化学産業の競争力強化を実現するため、収益性の高いGX機能
性化学品の競争力強化を維持・強化しつつ、そこでの収益を原資としながら、原料
となる基礎化学品の脱炭素化/低炭素化及び安定供給の実現による、持続可能な供給
基盤の構築(GX基礎化学品への転換)を同時に進める。
【GX機能性化学品における成長投資の加速】
• 半導体、自動車等に不可欠なGX機能性化学品の分野は、今後の市場成長が期待され、
我が国が国際競争力を持つ。一方で世界の投資競争は激化。
• その中で、GX機能性化学品分野で稼ぎ続けるためには、川下産業の成長速度に合わ
せ、世界に負けないスピードでの投資拡大、供給基盤強化が不可欠。これによって、
稼ぐ力を向上させ、基礎化学品におけるGX投資等、競争力維持・強化に向けた投資
の原資を確保。
【GX基礎化学品の供給基盤の構築】
• 化学産業の根幹である基礎化学品の供給体制の維持に向け、エチレン製造設備等の
サプライチェーン強靱化を進めているが、グローバルな競争環境や需要家の脱炭素
要請等も踏まえると、GX基礎化学品の供給拡大を進めることが重要。
• 同時に、国内外に脱炭素価値を訴求できる仕組みを構築することで、GX基礎化学品
の収益性の改善を目指す。
① 投資内容
・高収益・高成長なGX機能性化学品の生産体制
強化に向けた成長投資
・基礎化学品分野における脱炭素化/低炭素化(燃料
転換やバイオ原料・再生材・CCU等の製造プロセス転
換への投資、設備更新投資等)及び安定供給の実
現に向けた投資
・サプライチェーン強靱化に向けた再編投資
② 投資額
2040年度までで3.2兆円と想定
③ 定量的インパクト:投資による経済波及効果
2040年度までで75.5兆円と想定
② 我が国として構築すべき機能
• 国民生活・産業活動に不可欠な化学製品の国内供給体制の確保、そのために必要と
なるGXケミカルの供給体制
• 不可欠性の高いGX機能性化学品の研究開発拠点/体制構築(AI・機械学習の活用、
現場データ整備等)
251
3.官民投資促進に向けた課題と政策パッケージ【政策手段】
(1)投資促進に向けた課題
【初期投資】
• 化学産業は装置産業ゆえに、巨額
の初期投資が必要。
【脱炭素電源の確保に向けた見通し
が不透明】
• GXに向けた安価・安定な脱炭素電
源確保の見通しが不透明。
【需要の不確実性】
• GX製品市場の立ち上がりが不十
分(特に汎用品においてGX投資
のコスト増を適正価格で販売するこ
とが困難)。
• 機能性化学品の競争力を維持・強
化するためには、川下市場の成長に
合わせて、他国に負けないスピード
での投資拡大が不可欠。その一方、
成長市場であっても、多種多様な
個別製品ごとに需要変動が大きく、
その需要の見極めが困難であり、民
間投資だけでは最適な水準での投
資拡大が困難。国内の供給力が不
足した場合他国競合に市場を奪わ
れる可能性あり。
資源・エネルギー安全保障・GX
GXケミカル
(2)講じるべき政策パッケージ
①国内投資支援
• GX機能性製品の成長投資支援
• 基礎化学品の脱炭素化/低炭素化及び(GX基礎化学品)及び安定供給実現のための投資支援
• GXケミカル生産技術(CCU等)を確立するためのスタートアップも含めた研究開発支援や、開発加速化に必要な
実証基盤整備
②需要創出・市場確保・社会実装支援
<GX価値の見える化>
• GXケミカルの価値の定義及び評価方法の策定を通じた見える化の促進
• 策定した評価手法の国内外への発信・普及
<民間企業の調達促進>
• GX率先実行宣言、排出量取引制度等の制度によるGXケミカルの需要創出
③立地競争力強化
• コンビナートや脱炭素電源等を有効活用した新事業の創出及び集積に向けたフィールドの提供(GX戦略地域制度
等)
• 独禁法運用における予見性の向上(独禁法グリーンガイドラインや経済安全保障と独占禁止法に関する事例集の
活用)
④国際連携
• 同志国とのサプライチェーン連携(過剰依存防止のため代替市場を構築)
252
資源・エネルギー安全保障・GX
GXケミカル
方向性
現状認識、日本の強み
化学産業は、特定機能が要求される機能性化学品とその原料である基礎化学品によって構成。その中でも、自動車や電池、半導体等の、
GXに資する川下製品の製造に不可欠な部素材である機能性化学品及び、その原料となる基礎化学品において、低炭素化/脱炭素化を
実現したものを一体に、GXケミカルと定義。
GX機能性化学品において、日本企業は高い競争力を保持しており、特に半導体材料など世界シェアの高い製品群を持つ。今後拡大が見
込まれる(2040年に国内外で8兆円規模)この市場において、国際競争が激化する中、GX機能性化学品については成長投資を加速し、
国際競争力を強化すると共に、川下産業からの脱炭素要請やサプライチェーン強靱化の重要性等を踏まえ、基礎化学品について、持続可能
な供給基盤を構築するため、脱炭素化/低炭素化(GX基礎化学品)及び安定供給の実現のための投資を進めることが重要。
我が国の勝ち筋
主な課題
(ボトルネック)
・成長市場であっても、多種多様な個別
製品ごとに需要変動が大きく、その需要
の見極めが困難であり、民間投資だけで
は最適な水準での投資拡大が困難。国
内の供給力が不足した場合他国競合に
市場を奪われる可能性あり。
・化学産業は装置産業ゆえに巨額の初期
投資が必要
・GX製品市場の立ち上がりが不十分
講じるべき施策
・GX機能性化学品への成長投資支援
・基礎化学品の脱炭素化/低炭素化(GX基礎化学
品)及び安定供給体制の構築を後押しする大規模
な設備投資支援
・GX価値・製品(GXケミカル)についての定義及び
評価方法の策定・普及や需要創出に必要な取組
・GX戦略地域制度等を活用した立地競争力強化
・GXケミカル生産技術(CCU等)を確立するための
スタートアップも含めた研究開発支援
目指すべき姿
・2040年に、国内外で3.2兆円の
GXケミカル市場(グローバルシェ
ア4割)の獲得
・ 基礎化学品の脱炭素化/低炭素
化及び安定供給の実現による、
GX基礎化学品の供給基盤構築・
市場拡大
253
フュージョンエネルギー
①フュージョンエネルギー
254
1.現状認識と目指す姿【目標】
フュージョンエネルギー
フュージョンエネルギー
(1)現状
(2) 目標
① 現状
・フュージョンエネルギーは、①カーボンニュートラル(発電の過程で二酸化炭素を発生しない)、②豊富な
燃料(燃料(重水素)は海水中に豊富に存在し、ほぼ無尽蔵に生成可能な上、少量の燃料から膨大なエネル
ギーを発生可能)、③安全性(燃料供給や電源停止により反応が停止)、④環境保全性(発生する放射性廃
棄物は低レベルのみで従来技術による処分が可能)の特徴を有し、エネルギー問題と地球環境問題を同時に
解決し得る次世代のエネルギーであるが、世界的にも未だ発電は実現されておらず、研究開発段階(科学
的・技術的実現性の確認段階)。
・米国では、多くのスタートアップが設立され、一部は多額の投資を集め、実証プラントの建設を行うなど、
民間主導で様々な取組を進めているが、技術的実現性は今後判断される。これらの中には、超伝導線材など
日本製の製品が多数使われている。
・英国は、政府主導で発電実証に向けた取組(「STEP」プログラム)を進めているが、未だ設計段階。
・中国は、政府主導で実証プラント(他国の実験炉と同様の規模とされる「BEST」)を2027年完成を目指
して建設中。
・我が国は、ITERやJT-60SAなど国立研究機関や大学において長年にわたり研究開発を進め、プラズマ対向
機器や加熱装置などを含めて、重要なコンポーネントの多くを自国で開発・製造する能力を有するなど、世
界的にトップレベルの技術力を有している。
① 国内外で獲得を目指す市場
・中長期的には、全世界のフュー
ジョンエネルギー市場の約3割。
(日本企業が海外においても
フュージョン発電所を受注:
シェア約3割)
・主要コンポーネントのいくつ
か:シェア100%
考えられる例:超伝導コイル、
加熱装置、ダイバータ
② 達成すべき戦略的な目標
・世界に先駆けた2030年代の発電
実証の実現
② 取り巻く環境と構造変化
・2020年頃から、米国を中心に、多くの民間資金を集めてフュージョン発電の実用化を目指す民間企業が出
現。中国など各国が研究開発を加速している。
・我が国でも、大学等における研究開発成果をベースに、複数のスタートアップが設立されるなど、民間ベー
スの取組が拡大しつつある。
③ 経済的・戦略的な重要性
・戦略的重要性:将来的に主要なエネルギー源の一つとして広く活用されると予想され、技術的な自立性の確
保が必要。エネルギー安全保障の観点からも重要。また、フュージョンエネルギーの研究開発成果は、マテ
リアル、宇宙、防衛など他の分野へも波及。
・経済的重要性:IAEAの試算では、フュージョンエネルギーによる全世界のGDP押し上げ効果が、長期的に
は最大約700兆円超に上る。
255
フュージョンエネルギー
フュージョンエネルギー
2.勝ち筋の特定と官民投資の具体像【道筋】
(1)基本戦略
(2)官民投資の具体像
① 勝ち筋
・現状、我が国は、プラズマ対向機器(超高温下でも耐えられるダイバータ
等)や、高出力・高信頼性の加熱装置などを含め、重要なコンポーネントの
多くを自国で開発・製造する能力を有し、それを支えるサプライチェーンが
存在するなど、世界的にトップレベルの技術力を有している。
・こうした技術力をベースに、今後さらに技術開発・実証を加速することによ
り、残された技術課題を世界に先駆けて克服し、競争力のある(低コスト
な)フュージョン発電システムを世界に先駆けて確立する。
・これにより、新たなエネルギー源として環境問題の解決や、エネルギー安全
保障の強化を実現するとともに、システム輸出及び主要コンポーネント輸出
を通じて海外市場を獲得する。
① 投資内容
・フュージョンエネルギーの実現に向けた研究開発及び実証
② 我が国として構築すべき機能
・競争力のあるフュージョン発電所を設計・建設・運用できる企業と、それを
支える、コンポーネントや材料等の強固なサプライチェーンを、我が国に構
築する。サプライチェーンの構築に向けては、経済安全保障上の観点も考慮
して研究開発等を推進。
・さらに、確実な安全確保とスピーディな開発を両立するため、科学的に合理
的で国際整合性を確保した安全規制を、技術の不確実性も考慮しつつ、開発
状況に応じて段階的に検討・整備。
② 投資額
2040年度までで3.1兆円と想定
※フュージョン発電実証プラントが一つであると仮定した
試算。2030年代の発電実証以降は、研究フェーズの進展
に伴う産業界の予見性の高まりに応じて、投資額の増加が
見込まれる。
③ 定量的インパクト:投資による経済波及効果
2040年度までで9.4兆円と想定
256
3.官民投資促進に向けた課題と政策パッケージ【政策手段】
(1)投資促進に向けた課題
<必要な要素技術の確立に向けた研究開
発フェーズ(今後5年間程度)>
〇不確実性の要因
・技術開発の不確実性が最大の課題
(プラズマ制御、炉材料、燃料サイ
クル、信頼性・保守性など、必要な
要素技術の多くが未確立)
・多額の研究開発費を要する上に、現
時点ではリターンの見通しを得るこ
とは困難
・トリチウムの扱いなど、民間企業で
は研究開発が困難な課題も存在
<発電実証フェーズ(2030年代)>
①リソース制約
・多額の費用、多くの人材が必要
・用地、燃料物質の確保
②不確実性の要因
・技術開発の不確実性
・多額の費用を要する上に、リターン
が予測困難
・社会受容性・地域の理解
・安全対策や放射化物の処理に関する
技術や費用の不確実性
フュージョンエネルギー
フュージョンエネルギー
(2)講じるべき政策パッケージ
<必要な要素技術の確立に向けた研究開発フェーズ(今後5年間程度)>
・フュージョンエネルギー実現に必要な要素技術の研究開発を国が中心となって強力に推進するとともに、
実現可能性があると考えられるフュージョン発電システムの技術開発を広く支援(QSTが中心となって進
める実績のある方法で実現を目指す技術開発、スタートアップ等が進める様々な野心的な発電システムの
実現に向けた技術開発、共通的に必要な要素技術の開発(※)・確立・基盤整備)
※要素技術の開発については、フュージョンエネルギーの実現に必要だがどの国も解決できていない技術課題を我が国が先行して
解決し、技術の不確実性を低減するとともに、優位性を確保。また、SBIR制度を念頭に、フュージョンエネルギーの実現に重要と
なるコンポーネントや材料等の実用化を目指すスタートアップの技術実証等を支援する制度への拡充を検討。
・数年後を目途に、各取組の技術開発の進捗、民間を含めた組織・体制整備の状況及び海外の動向を踏まえ、
勝ち筋として、早期の発電実証に向けて国が支援するフュージョン発電システムを決定し、そのシステム
の実現に向けた研究開発を集中的に推進。なお、その他のシステムの技術開発も引き続き支援し、その中
からさらに勝ち筋として期待されるものが出てきた場合には、それも発電実証に向けて支援。
・こうした取組を推進するため、NEDOを念頭に資金供給機能の強化を検討。
・並行して、科学的に合理的で国際整合性を確保した安全規制を、技術の不確実性も考慮しつつ、開発状況
に応じて段階的に検討・整備し、随時更新。確実な安全確保とスピーディな開発を両立。
・あわせて、研究開発プロジェクトやITER計画への戦略的参画を通じ、その後の発電実証や商用化を担う人
材を長期的な視点から育成(関係企業・国研・大学等における女性活躍の推進を含む人材育成や大学等に
おける社会人のための教育プログラムの開発等を通じたリ・スキリングを支援するとともに、ITERへの邦
人増加等を支援)。
・さらに、将来の市場獲得をにらみ国際標準化等を主導する。
<発電実証フェーズ(2030年代)>
・早期の発電実証に向けて国が支援するフュージョン発電システムについて、官民連携で発電実証プロジェ
クトを推進。具体的には、官民の連携により人材・資金を集中的に投下することにより、競争力のある
フュージョン発電システムの発電実証を2030年代に実現。
・その際、地域企業を巻き込んで地域の経済発展にも寄与するよう、国は自治体とも連携して、人材育成等
を含めて支援。
・並行して、商用化に向けた技術開発を推進し、発電実証の成果を競争力のある発電システムの実現に速や
かにつなげる(信頼性・保守性等の向上に向けた技術開発など)。
257
フュージョンエネルギー
フュージョンエネルギー
方向性
• ITER計画等での長年にわたる研究開発で培った世界トップレベルの技術力をいかして、必要な要素技術を全て速やかに開発・確立し、競争
力のあるフュージョン発電システムを世界に先駆けて確立することにより、新たなエネルギー源として環境問題の解決・エネルギー安全保障
の強化を実現。また、システム輸出及び主要コンポーネント輸出を通じて海外市場を獲得。
• 当面は、国による実績ある方法で実現を目指す技術開発及びスタートアップ等による野心的な発電システムの実現に向けた技術開発等を推進
する。数年後をめどに、各取組の技術開発の進捗状況や海外の動向等を踏まえ、勝ち筋として、早期の発電実証に向けて国が支援するフュー
ジョン発電システムを決定し、そのシステムの実現に向けた研究開発を集中的に推進して、 2030年代の発電実証を実現する。
©ITER
Organization
プラズマ対向機器
ダイバータ
加熱装置
中性粒子入
射加熱装置
より競争力のあるシ
ステムの実現を目
指すスタートアップ
等による野心的な
技術開発
高周波加熱
装置
マイルストーン/
チェック&レビュー
我が国が強みを持つ技術の例
実績ある方法で
実現を目指す技
術開発(ITER・
BA・原型炉開発
等)
早期の発電実証に向け
て支援するフュージョ
ン発電システムの決定
国際熱核融合実験炉ITER
環境問題の解決・エネルギー安全保障の強化
システム輸出及び主要コンポーネントの輸出
(世界シェア約3割)
実施主体の設立等
※発電実証10年前を目途
に
発電実証プロジェクト
(フュージョン発電実証プラント
の建設等)
2030年代
発電実証
の実現
商用化に必要な研究開発
発電実証プロジェクト
発電実証プロジェクト
商用化
前発電
実証
発電実
証
の実現
競争力のあるフュージョン発電
システムを世界に先駆けて確立
社会
実装
社会
実装
商用化前
発電実証
発電実証
の実現
商用化前
発電実証
共通的に必要な要素技術の開発・確立・基盤整備
官民投資
官民投資
258
防災・国土強靱化
①防災技術
259
防災・国土強靱化
防災技術
1.現状認識と目指す姿【目標】
(1)現状
(2) 目標
① 現状
・切迫する巨大地震や、激甚化・頻発化する気象災害など大規模自然災害への対策や、高度経済成長期に整備されたインフラ
の老朽化対策などの事前投資の取組が急務。
・世界的にも、気候変動、都市化により災害が激甚化・頻発化。
・危機管理投資として、国土強靱
化基本法に基づき、国土強靱化
基本計画ならびに第1次国土強
靱化実施中期計画に基づく取組
を推進。
② 取り巻く環境と構造変化
・人口減少・少子高齢化の中、防災・国土強靱化の担い手が将来的に不足。例えば建設業については、処遇改善、働き方改革
などの取組が必要。併せて、どの分野においても、限られた人材で最大限の対応が可能となるよう、デジタル等新技術の
活用による生産性向上が必要。
・世界的にも災害が頻発化・激甚化する中で、災害大国である日本が蓄積してきた防災技術・製品について、国連防災機関
(UNDRR)からも高い期待。また、日本は国際的な防災の取組指針である「仙台防災枠組」の策定を主導。
③ 経済的・戦略的な重要性
・巨大災害が発生した際には、甚大な人的被害、資産被害、経済被害が見込まれる。一人でも多くの人命を守り、国民生活や
社会経済活動・維持・早期復旧を図るため、防災庁設置に伴う環境整備、防災・国土強靱化の取組の推進が必要。
〇大規模地震による被害想定(推計)
・千島海溝地震、日本海溝地震:人的被害(死者)最大約19.9万人、資産等の直接被害約25.3兆円、生産・サービス低下による被害を含めた場合約31.3兆円
・首都直下地震:人的被害(死者)最大約1.8万人、資産等の直接被害約45.1兆円、生産・サービス低下による被害を含めた場合約82.6兆円
・南海トラフ巨大地震:人的被害(死者)最大約29.8万人、資産等の直接被害約224.9兆円、生産・サービス低下による被害を含めた場合約270.3兆円
<出典>「日本海溝・千島海溝沿いの巨大地震の対策について 報告書」 、「首都直下地震対策検討ワーキンググループ
告書)」 ※ 生産・サービス低下による被害については、発災後、1年間を対象に推計している。
報告書」、「南海トラフ巨大地震対策について(報
・今後の防災産業の市場については、世界の自然災害管理システムで、2024年の9.6兆円から2030年までに約19.4兆円(150円/米ドル換
算)に拡大するとの民間予測もあり、海外から稼ぐ成長産業となるポテンシャルを有するとともに、国際協力における重要なコンテンツとな
りうる。
・世界において、災害対応関連資金(保険・財政)の96%が発災後の緊急対応・復旧に投入されているのが現状。リスクを低減させるための
事前投資への抜本的な資金シフトが不可欠な状況。
・G20南アフリカサミット:首脳宣言における「災害強靱性・対応の強化」では、以下が盛り込まれている。
✓持続可能な強靱性の構築への投資、予防の優先及び先行的行動の重要性を強調する
✓事前の防災と備えを強化するため、負担可能で、包摂的で、アクセス可能な事前取決型資金調達メカニズムの拡大と更なる活用を含み得る
・防災・国土強靱化の取組を着実
に進めるとともに、日本の強み
である自動・遠隔施工やインフ
ラ老朽化対策、災害リスク関連
技術、防災資機材等の防災技術
について、技術開発から商品化、
実装・需要の創出や、更なる技
術開発につながる好循環を創出
し、防災産業を振興する。
こうしたことにより、災害大国
である我が国で蓄積されたデー
タ・ノウハウ等を梃子に海外市
場の獲得にもつなげる。
・海外展開に当たっては、日本の
強みである防災技術について、
海外で「稼ぐ」という視点を重
視しつつ官民が一体となった取
組により、海外展開を促進し、
日本企業の防災分野の海外売上
総額を2024年の約1兆円から、
2030年に約2兆円にすること
を目標とする。
260
防災・国土強靱化
防災技術
2.勝ち筋の特定と官民投資の具体像【道筋】
(1)基本戦略
① 勝ち筋
・危機管理投資として、国土強靱化基本計画ならびに第1次国土強靱化実施中期計画に基づく取組を集中的
に推進。
・成長投資として、国内に限らず海外でも普及、活用・進展が進んでいる我が国の強みのあるデジタル等新
技術を活用した防災技術について、事前防災、災害対応、復旧復興の各フェーズに実装し、我が国の強靱
化、災害対応力の強化を推進することが必要。
・こうした防災技術の現場への実装を進めるため、現場のニーズや防災に活用できる技術のシーズを分野横
断的に整理した上で、開発・実装を優先して推進すべき研究テーマ設定、公募、審査・評価を行いつつ、
技術開発や実証、新たな技術のセットアップの支援により商品化・サービス提供を促進する。
・現場での活用の推進に当たっては、カタログ化・マッチングなどによる技術の導入推進とともに、設備投
資を促進し、公共調達も活用しつつ官民の需要を創出することにより現場での実装まで一気通貫でスピー
ド感をもって支援する。また、現場での活用を踏まえたニーズを技術開発・商品化に反映して好循環を生
み出し、防災産業を振興する。
・好循環を生み出す上では、スタートアップ支援やフェーズフリー、デュアルユース等、他分野との連携の
観点も重視する。
・また、災害大国である日本が蓄積してきた知見・ノウハウ等を活用して防災技術の海外展開も積極的に推
進し、経済成長にもつなげていく。海外展開にあたっては、日本企業の比較優位性の高い防災技術やター
ゲット国等を明確化し、官民一体となった取組を進める。
○デジタル等新技術を活用した防災技術の例
インフラ老朽化対策技術、災害リスク関連技術、自動施工・遠隔施工等の施工効率化技術、防災資機材関連技
術、消防技術 など
○海外でも導入が見込まれる有望な防災技術の例
地震・水害等の観測・早期警戒システム、衛星・AI等を活用した被災状況の把握、事前防災対策(インフラ整
備)、遠隔施工技術、インフラの点検技術 など
② 我が国として構築すべき機能
・事前投資による防災・国土強靱化の推進。
・産官学民金の連携により、衛星等を活用した観測・早期警戒システム、建設現場の自動化や広域・多分野
のインフラの効率的なマネジメントに資する技術など、ニーズの高い防災技術に関する研究開発を推進し、
多様な主体が参画するプラットフォームの構築など、実装につなげる体制を強化する。
・海外展開を図るための官民一体となった推進体制を構築する。
(2)官民投資の具体像
① 投資内容
・危機管理投資として、国土強靱化基本計画ならび
に第1次国土強靱化実施中期計画 (令和7年6月
6日閣議決定)に基づき、官のみならず、電力・
通信・交通・医療の強靱化など民間部門の取組を
進める。
・成長投資として、新たな防災技術の開発、製品化、
実装等の取組や、その基盤となる環境整備を進め
る。
・取組主体は、産官学民金
② 投資額
2030年度までで2.6兆円と想定。
※加えて、第1次国土強靱化実施中期計画に
基づき、2030年度までに官民合わせて概
ね20兆円強程度の内数を投資額として想定
③ 定量的インパクト:投資による経済波及効果
2030年度までで14.5兆円と想定
261
3.官民投資促進に向けた課題と政策パッケージ【政策手段】
防災・国土強靱化
防災技術
(1)投資促進に向けた課題
(2)講じるべき政策パッケージ
<人材確保・育成>
・建設技能者数における他産業以上の高齢化、
将来的な生産年齢人口の減少
・2040年に建設業界全体で約64万人不足見込み
(関連業従事者等を含む)
防災技術の現場での活用を促進するため、研究開発に加え、商品化から実装につなげるための取組、需要の創出を強
化する。さらに、現場のニーズや技術の実装状況を踏まえ、更なる技術開発や商品化につなげる。この好循環を生み出
すため、防災庁設置に伴う環境整備と併せて、多角的に政策を講じ、防災産業を発展させていく。
以下の「体制」、「人材育成」、「投資等」を整え、好循環を生み出す基盤とする。
<取組の体制、人材育成、投資等>
○体制 産官学民金の連携
○投資等
データ等のプラットフォーム構築
・国土強靱化実施中期計画
・防災DX官民共創協議会
・税制優遇、規制緩和、研究開発等
・インフラメンテナンス国民会議
・PPP/PFI
・気象ビジネス推進コンソーシアム
・金融投資の活性化等
等
・データのプラットフォーム構築
等
(※第30回 産業構造審議会 経済産業政策新機軸部会
参考資料2より)
・建設業界は中小・零細事業者が多く、防災技
術を活用できる技術人材の育成が課題
<好循環の構築>
①防災技術開発
・分野横断的なニーズが整理されていない。
○人材確保・育成
・新たな防災技術を生み出す研究開発に投資が
・アドバイザー制度、専門家派遣、講習会の実施、改正建設業法等に基づく処遇改善や働き方改革、
必要。
教育機関との連携による魅力発信、教育訓練等による生産性向上への支援、官民連携で、女性をはじめ全て
②商品化/サービス提供
の人が働きやすい、ハード・ソフトの両面での環境整備の推進 等
・現場で求められる機能要求水準が明らかでな
<好循環の構築>
い。
・防災に活用可能な他分野の技術、防災技術の
①防災技術開発 国の計画等への位置付け、効果検証・事後評価制度等、
他分野への活用可能性が明らかでない。
ニーズ・シーズ調査に基づく優先的な研究テーマ設定、研究開発への支援、公募による技術開発
③実装
②商品化/サービス提供 実用化への支援、ニーズを反映した機能要求水準の提供、データ連携の促進
・有望な製品・技術やその品質・実績がユー
③実装
製品のカタログ化、登録・認証制度・規格化、マッチング推進、中小企業支援(施工重機、BCP強化等)、
ザーに知られていない。
実証事業、広報(イベント、事例集、表彰制度)、補助や公共調達による需要創出
・市場が小さく、民間の自発的な投資が難しい
分野がある。
④海外展開 ターゲット国等の明確化、アジア太平洋防災閣僚級会合等を活用した官民一体のPR活動、
・中小企業における防災技術の導入資金の確保
日本の防災技術のブランド化、ODA活用(オファー型協力含む)、
が課題。
日本企業の実証事業等に対する支援、国際機関・ドナーとの連携、知的財産の保護対策、
・全国で具備されるべき技術等が徹底されてい
防災概念・防災情報・事前防災対策を誘導するリスクファイナンス等の国際標準化による市場拡大
ない。
<好循環を生み出す上で必要な観点>
④海外展開
フェーズフリー/デュアルユースの取組、スタートアップ支援(SBIR制度含む) 、防災利用のための技術の補填、
・官民一体となった海外展開の取組が不十分。
他の成長分野との技術の共創・連携・活用(AI、衛星、その他 シーズ)、グリーンインフラ、女性活躍、自立分散、民
・世界において、災害対応関連資金(保険・財
262
政)の96%が発災後の緊急対応・復旧に投入。 間事業者間の連携、防災教育・訓練、防災立国の推進に向けた基本方針
防災・国土強靱化
防災技術
方向性
<危機管理投資> ・国土強靱化基本計画ならびに第1次国土強靱化実施中期計画に基づく取組を推進。
・官のみならず、電力・通信・交通・医療の強靱化など民間部門の取組を進める。
<成長投資>
・将来的な担い手不足等の課題にも適切に対応するためには、デジタル等新技術の一層の活用が不可欠。
・民間の優れた防災技術の現場での実装を一気通貫で支援。
・世界的にも災害が頻発化・激甚化する中で、災害大国の日本が強みをもつ防災技術について、世界共通の
課題解決への貢献と海外で「稼ぐ」という視点を重視しつつ官民が一体となった取組により、海外展開を促進。
デジタル等新技術を活用した防災技術の例
「赤外サウンダ」 による
大気の3次元観測
次期静止気象衛星・スーパー
コンピュータによる気象予測
気象予測技術
災害リスク関連技術
建設機械の遠隔施工
人工衛星データを用いた漏水検知
インフラ老朽化対策技術
水処理技術
防災資機材関連技術
自動施工・遠隔施工
海外でも導入が見込まれる有望な防災技術として
地震・水害等の観測・早期警戒システム、衛星・AI等
を活用した被災状況の把握、事前防災対策(インフラ整
備)、遠隔施工技術、インフラの点検技術 などがある。
データ等のPF構築
産官学民金の連携
・国土強靱化実施中期計画
投 資 等 ・税制優遇、規制緩和、
・研究開発等
体
制
人
・処遇改善、教育訓練
材 ・女性活躍
・アドバイザー制度
• 効果検証
• ニーズ・シーズ
を踏まえた必要
性の高い研究
テーマの設定
防災技術に関する
好循環の創出
<好循環を生み出す上で必要な観点>
フェーズフリー/デュアルユースの取組 、スタートアップ支援
(SBIR制度含む)、 他の成長分野との技術の共創・連携・活用
(AI、衛星、その他シーズ) 、防災立国の推進に向けた基本方針等
• 公募による技術開発
• 民間への機能要求水準の提示
• 第三者機関による審査・評価
<具体的な取組>
民間の優れた防災技術の
現場での実装を一気通貫で支援
技術テーマの設定
海外展開
• ターゲットの明確化
• 官民一体となったPR
• 実証事業等への支援
• ODA活用
• ブランド化
• 国際標準化
• カタログ化、登録認証制度
• 中小企業支援
• 実証事業
• 公共調達
• マッチング推進
公
募
審査・評価
(技術開発・実証を含め支援)
カタログ化
公共調達・導入推進
国・地方公共団体
における活用
防災産業を振興するとともに、官民一体となった推進体制の下で海外展開を図る。
263
港湾ロジスティクス
①港湾荷役機械
264
1.現状認識と目指す姿【目標】
港湾ロジスティクス
港湾荷役機械
(1)現状
(2) 目標
① 現状
・世界的にコンテナ取扱量が年々増加する中、海外では、多数の港湾荷役機械が導入されるとともに、港湾
荷役機械の自動化・遠隔操作化等も進展。生産能力や価格面で競争力を有する海外企業が圧倒的な世界
シェア。我が国企業の2024年の世界の設置基数のシェアは、STSクレーンは約1割、ヤードクレーン
(RTG)で約1割強であり、その大部分は特定の1社による供給。
・我が国のコンテナ取扱量はほぼ横ばいであり、将来の貨物量の増加が見通せない状況。更新時期を迎える
港湾荷役機械も多く存在するにも関わらず、大規模な更新や自動化・遠隔操作化等に踏み切りづらい環境。
海外主要港と比較して、港湾荷役機械の自動化・遠隔操作化等が進んでいない。
・他方、日本製のSTSクレーンは軽量でエネルギー効率が高く、故障率も低いことに加え、耐震性能・免震
性能など、地震多発国ゆえの独自の強みを有している。
・海外港湾における新規需要や国内港湾における更新需要などにより、国内外において、我が国企業の生産
能力を上回る需要がある一方、生産能力不足により、製造に通常の約1.5倍程度の期間を要しており、受
注控えなどの機会損失も生じている。
① 国内外で獲得を目指す市場
・港湾荷役機械の国内市場を引き続き維
持しつつ、米国やアジア太平洋地域を
視野に国外市場の拡大(約200~300億
円/年)を目指す。これにより、2040
年頃を目途に、米国市場の3割程度の
シェア獲得を狙う。
② 取り巻く環境と構造変化
・米国では、海外製のSTSクレーンへの依存度が極めてと高く、サイバーリスクへの懸念から、港湾のサイ
バーセキュリティ対策強化と、STS クレーンの国内製造基盤の復活に向けた政策を推進。
・ISOにおいて、自動化コンテナターミナルの標準化を含む港湾分野の国際標準化を図る動きがあり、同盟
国・同志国との連携や日本発の技術を標準化するような変化が期待。
③ 経済的・戦略的な重要性
・日本製の港湾荷役機械は、世界に通じる技術力を有しており、その競争力強化は、国産技術による我が国
の港湾ロジスティクスの強化への貢献のみならず、同盟国・同志国における特定国依存の状況を解消し、
我が国を含む経済安全保障を実現する上で重要。
・加えて、港湾の労働者不足が懸念され、我が国港湾の競争力が相対的に低下する中、将来にわたって我が
国のサプライチェーンを維持するためには、我が国港湾における港湾荷役機械の自動化・遠隔操作化等が
重要。
② 達成すべき戦略的な目標
・国内生産機能の強化により、供給体制
の強化・低コスト化を図る。
・ISOにおける自動化コンテナターミナ
ルの国際標準化に向けた動向に対して、
同盟国・同志国との連携を図りつつ、
日本企業の強みを活かした標準化を図
る。
・我が国港湾における自動化・遠隔操作
化等荷役機械の導入を推進することで、
労働環境の改善や生産性の向上を行い、
将来的にわたって強靱かつ持続的なサ
プライチェーンの維持を図る。
265
港湾ロジスティクス
港湾荷役機械
2.勝ち筋の特定と官民投資の具体像【道筋】
(1)基本戦略
(2)官民投資の具体像
① 勝ち筋
① 投資内容
・我が国の港湾は、貿易量の99.6%を扱うとともに、その背後に人
・日本企業による港湾荷役機械の生産機能強化(製造ライン、出荷岸
口や産業が集中する重要な地域となっており、港湾が国民生活及び
壁や製品運搬船等)
経済活動を支える重要な役割を果たしている。また、港湾は、海上
・港湾運送事業者等(民間企業)による国内コンテナターミナルへの
輸送と陸上輸送の結節点、積替拠点であり、原材料の調達から輸送、
港湾荷役機械の投資(更新含む)及び自動化・遠隔操作化等の導入
生産、保管、流通に至るまでのロジスティクスやサプライチェーン
・国・自治体によるコンテナターミナルの整備
の一連の流れを支える基幹インフラである。
・港湾荷役機械は、港湾ロジスティクスに必要不可欠な製品であり、
② 投資額
港湾労働者不足による物流サービス低下・機能停止のリスクへの対
応として、港湾荷役機械の更新を機に、自動化・遠隔操作化等の導
2040年度までで0.4兆円と想定
入や港湾荷役機械の生産性向上を図る。
・また、特定国依存によるサイバーリスクや物流機能停止リスクへの
③ 定量的インパクト:投資による経済波及効果
対応として、同盟国・同志国を含む国内外の市場に信頼性の高い港
2040年度までで1.0兆円と想定
湾荷役機械を供給する。
・さらに、日本企業の生産能力・供給体制を強化するとともに、ISO
における自動化コンテナターミナルの国際標準化の議論を優位に進
めることで、日本製港湾荷役機械の優位性、不可欠性を高め、国際
競争力を強化する。
② 我が国として構築すべき機能
・国内外の需要に対応した港湾荷役機械の生産機能
・港湾荷役機械の国内外の市場を確保する機能
我が国港湾への国産の遠隔操作化等荷役機械の導入
同盟国・同志国との連携強化 等
266
3.官民投資促進に向けた課題と政策パッケージ【政策手段】
港湾ロジスティクス
港湾荷役機械
(1)投資促進に向けた課題
(2)講じるべき政策パッケージ
①リソース制約
・生産基盤インフラ等:港湾荷役機械
の生産機能(製造ライン、出荷岸壁
や製品運搬船等)
②不確実性の要因
・事業・技術:生産能力不足による生
産の遅れ、受注機会の損失
・市場:自動化・遠隔操作化等に対す
る国内市場形成の不確実性、他国企
業との競争環境の激化
・財務:生産機能強化に必要な資金調
達の困難性
・国際環境・政策:日本のコンテナ取
扱量はほぼ横ばいであり、大規模な
投資(更新含む)や自動化・遠隔操
作化等に踏み切りづらい環境。日本
の港湾では海外主要港と比較して港
湾荷役機械の自動化・遠隔操作化等
に遅れ。ISOにおいて、自動化コン
テナターミナルの標準化を含む港湾
分野の国際標準化を図る動き。
①国内投資支援
・港湾荷役機械の生産機能の強化に必要な設備投資への支援(港湾技術開発制度による研究開発支
援、生産ライン、出荷岸壁や製品運搬船等の設備投資支援)
②需要創出・市場確保・社会実装支援
・港湾荷役機械の自動化・遠隔操作化等に関する需要見通しの提示
・港湾荷役機械の導入支援(自動化・遠隔操作化等荷役機械の導入補助、自動化・遠隔操作化等荷
役機械の安全確保のためのモデル運用規程の整備、港湾荷役機械への投資に対する無利子資金の
貸付制度等)
・女性や高齢者も含む港湾運送事業の担い手確保・育成、取引適正化
③立地競争力強化
・国際コンテナ戦略港湾の機能強化を通じた需要の創出(国際コンテナ戦略港湾政策(集貨・創
貨・競争力強化)の一層の推進)
・コンテナターミナルの利便性向上(コンテナターミナルの自動化・遠隔操作化等(併せて港湾運
送事業の労働環境改善と生産性向上実現)、ターミナル運営の一体化や港湾運営会社の役割拡大、
港湾背後のロジスティクス機能の高度化)
・大規模コンテナターミナル等の早期整備、自動化・遠隔操作化等荷役機械の積極的導入
④国際連携
・港湾荷役機械の海外展開への支援(ODA等)
・日本企業の強みを活かした標準化の推進(ISOにおいて検討されている自動化コンテナターミナ
ル等の国際標準化に向けた動向に対して、同志国や日本企業等との連携を図りながら対応)
267
港湾ロジスティクス
港湾荷役機械
方向性
港湾荷役機械
【我が国の強み】信頼性・耐震性等
国内外港湾
への実装
●自動化・遠隔操作化
●脱炭素化
●海外港湾への展開
●国内港湾の高度化
※写真はSTSクレーン(ガントリークレーン)
技術開発の促進、
市場競争力の強化
<制約要因・不確実性>
・生産能力の不足
・他国との競争環境の激化
・自動化・遠隔操作化等の遅れ
・自動化コンテナターミナルの
国際標準化の動き
<目標>
◎国内生産機能の強化により、
国内市場を引き続き維持しつつ、米国や
アジア太平洋地域を視野に国外市場の
拡大(約200~300億円/年)を目指す。
これにより2040年頃を目途に米国市場の
3割程度のシェア獲得を狙う。
◎我が国や同盟国・同志国における
経済安全保障リスクを低減する。
需要増に伴う
投資促進
●生産機能の強化
◎生産機能の強化に必要な設備投資等への支援
◎自動化・遠隔操作化等
港湾荷役機械の導入支援
◎国際コンテナ戦略港湾の機能強化
◎国際標準化への対応、海外展開支援
◎港湾の労働環境改善と生産性向上による
強靱かつ持続的なサプライチェーンの
維持を図る。
STSクレーン(ガントリークレーン)の遠隔操作イメージ
※写真は技術開発中のもの
268
港湾ロジスティクス
②サイバーポート(港湾物流DX)
269
1.現状認識と目指す姿【目標】
港湾ロジスティクス
サイバーポート(港湾物流DX)
(1)現状
(2) 目標
① 現状
・世界の主要港湾は「選ばれる港湾」となるよう、ハード(岸壁・港湾荷役機械の整備等)とソフト(港
湾物流DX)の両面を環境整備。
・我が国港湾はデジタル化が進んでいないことから、利用者の利便性向上のため、データ・プラット
フォーム(PF) である「サイバーポート」(※1)及び「NACCS」(※2)を軸に、民間事業者独自
の貿易PFやシステムと連携し、港湾物流DXを推進(※3)。
・他方、サイバーポートが対象とする、民間事業者間の港湾手続(例.コンテナの船積手続)はアナロ
グ・デジタルいずれでも手続が可能であるため、そのデジタル化は道半ば。また、各貿易PFは仕様・
データ項目が不統一であり、各PF間の連携が進んでいない。
① 国内外で獲得を目指す市場
・サイバーポートの利用登録状況
は、2026年3月1日時点で約
1,100社。2035年度末に、約
11,000社(※2022年度時点で
NACCSを利用する全ての会社
数)との連携を目指す。
(※1)サイバーポート:国土交通省港湾局が運用し、我が国港湾を利用する上で必要な手続を一括して電子的に行うためのデータ
プラットフォームとして2021年に供用開始。港湾手続・統計・施設情報等のデジタル化を推進。
(※2)NACCS:輸出入貨物の通関手続全般、食品衛生・動植物検疫手続等を行う唯一のシングルウィンドウ(総合物流情報プラッ
トフォーム)。年間2億件超(利用率99.9%超)の輸出入申告を取り扱う。
(※3)サイバーポートとNACCSはシステム連携済。民間事業者はサイバーポート上でNACCSの一部機能が利用可能であり、これ
により通関手続と港湾手続のワンストップ化が可能。
② 取り巻く環境と構造変化
・例えばシンガポール、韓国などにおいては、通関手続と港湾手続のワンストップ化がすでに実現。
・2023年7月、名古屋港においてサイバー攻撃が発生し物流機能が停止。経済安全保障推進法の観点か
ら「一般港湾運送事業」を基幹インフラ事業に位置づけ、セキュリティ対策強化に関する措置を講じて
いるが、近年、大手のメーカーやEC事業者に対してもサイバー攻撃が増加。港湾物流DXを進める上で
さらなるサイバーセキュリティ対策が課題。
③ 経済的・戦略的な重要性
・ソフト面の整備の遅れによる我が国の港湾オペレーションの非効率化を防ぐ観点から、サイバーポート
と民間独自の貿易PF・システムとのさらなる連携の促進が必要。
・また、我が国港湾を介した国際・国内物流を1日たりとも停止しないことを確保するためにも、サイ
バーポート及びNACCSのさらなるサイバーセキュリティ対策が重要。
② 達成すべき戦略的な目標
・我が国港湾を利用するユーザー
すべてがサイバーポートを介し
て港湾手続を電子的に行う「デ
ジタル標準化」を進める。
・サイバーポートが港湾利用者の
「共通インフラ」となることで、
コンテナ搬入時のゲート前待ち
時間が現状10~30分であると
ころ0分を目指すなど、物流コ
ストの削減等を図る。
・24時間365日、サイバーポート
やNACCS等が安定稼働できる
よう、サイバーセキュリティを
確保する。
270
港湾ロジスティクス
サイバーポート(港湾物流DX)
2.勝ち筋の特定と官民投資の具体像【道筋】
(1)基本戦略
(2)官民投資の具体像
① 勝ち筋
以下の措置を講じることにより、民間事業者が我が国港湾を経由す
るモノの流れを一覧できる環境を整備するとともに、サイバーポート
に蓄積された情報が事業者間で共有・活用されることで物流効率化に
よるコスト削減やビジネスの拡大につなげ、結果として我が国港湾を
ソフト面からも「選ばれる港湾」とする。
・デジタル標準化に向けた共通ルールの構築
・スタートアップを含めた民間独自の貿易PFとサイバーポートの連携
促進
・1日たりとも国際物流を止めないよう、サイバーポート及びNACCS
のさらなるサイバーセキュリティ対策の措置
① 投資内容
・民間事業者独自の貿易PF・システムとサイバーポートとの接続・連
携。
・NACCSにおけるセキュリティリスクの全体の把握、生体認証等のサ
イバーセキュリティ対策実施のための投資。
・サイバーポートや貿易PFの機能強化によるデジタル環境整備。
② 我が国として構築すべき機能
② 投資額
2040年度までで0.2兆円と想定
③ 定量的インパクト:投資による経済波及効果
2040年度までで0.4兆円と想定
・サイバーポートにおいて港湾手続から貿易手続まで24時間365日電
子的に申請でき、かつ、港湾を介した輸出入貨物の流れを一覧でき
る機能
・サイバーポートとNACCSや他の民間独自の貿易PF・システムとの連
携を促すためのデータフォーマット・項目の標準化
・サイバーポート等における高度なサイバーセキュリティ機能
271
3.官民投資促進に向けた課題と政策パッケージ【政策手段】
(1)投資促進に向けた課題
①リソース制約
・人材:デジタル化に必要な人
材が不足
②不確実性の要因
・事業・技術:港湾を利用する
際に必要となる手続や情報が
必ずしも全てサイバーポート
内に含まれていない。
各者の独自の貿易PF・システ
ムのデータ仕様が異なり未統
一。
・財務:自社システムと貿易PF
との連携にコストがかかる。
・国際環境・政策:世界共通仕
様のデータを共有するルー
ル・仕組みが欠如。
・社会:荷主・船会社毎に利用
する貿易PF・システムが異な
るなど、民間企業単独での取
組が困難。国際情勢の不安定
化によりサイバー攻撃が激化
し、リスクが増加。
港湾ロジスティクス
サイバーポート(港湾物流DX)
(2)講じるべき政策パッケージ
①システム連携・データ利用基盤の確保
・サイバーポートの機能強化(具体例:コンテナの船積手続等の電子化、モノの流れの一覧機能拡充、操作
性向上)
・NACCSの利便性向上とサイバーポートとのさらなる連携推進
・スタートアップ企業を含む民間独自の貿易PF・システムとサイバーポートのさらなる連携推進
・民間自社システムとサイバーポートとの連携に係る投資支援
②デジタル標準化に向けた共通ルールの構築
・港湾手続のデジタル標準化に係るデータ取引のルール作り(関係者間の協議体制の構築、データ仕様の統
一)
・我が国のデータ仕様が世界共通ルールとなるための国際標準化の支援
③民間事業者によるビジネスの拡大
・サイバーポートに蓄積されたデータの民間利用拡大による、貿易・物流に係る民間サービス市場の拡大支
援の検討
④セキュリティ対策強化
・NACCSセンター株式会社が民間専門家を活用してNACCSのセキュリティリスクの評価をした上で、その
全体を把握し、生体認証等のNACCSのサイバーセキュリティ対策の実施を推進
・上記対策を担保するため関係法令の整備を含めた必要な措置の実施
・サイバーポートのサイバーセキュリティ対策を引き続き推進するとともに、説明会等で自社情報の漏洩に
関する事業者の懸念を払拭
⑤実用化人材の確保・育成
・荷主や物流事業者に対するサイバーポートの研修実施等を通じた、港湾手続デジタル化のために必要な人
材の確保・育成
⑥海外港湾システムとの連携
・「日本シンガポール間グリーン・デジタル海運回廊形成の協力覚書」に基づく海外港湾システムとサイ
バーポートとの連携にかかる検討
272
港湾ロジスティクス
サイバーポート(港湾物流DX)
方向性
【サイバーポートとは】港湾手続、港湾調査・統計、港湾インフラのあらゆる港湾関係情報
をデジタル化するデータ・プラットフォーム
サイバーポート(物流)の概要
(※1)
利用者数の増加、
連携システムの拡大
●デジタル標準化
●データ利活用
●民間PFとサイバーポート、
NACCSとの連携
港湾手続の電子化
<制約要因・不確実性>
・港湾を利用する際に必要と
なる手続や情報が必ずしも
全てサイバーポート内に含
まれていない
・各貿易プラットフォームの
仕様・項目の不統一
・サイバーリスクの増大
・デジタル化に必要な人材
の不足
データ利活用による
業務へのフィードバック
●デジタル人材の育成
●業務のシステム化・効率化
<目標>
◎サイバーポートの利用登録状況は、2026年3
月1日時点で約1,100社。2035年度末に、約
11,000社(※2022年度時点でNACCS(※2)を
利用する全ての会社数)との連携を目指す。
◎港湾関係者、物流事業者、船社等の手続をサ
イバーポート経由で完結できるようにし、デ
ジタル標準化を実現する。
◎サイバーポートが港湾利用者の「共通インフ
ラ」となることで、コンテナ搬入時のゲート
前待ち時間が現状10~30分であるところ0分
を目指すなど、物流コストの削減等を図る。
◎24時間365日、サイバーポートやNACCS等
が安定稼働できるよう、サイバーセキュリ
ティを確保する。
◎サイバーポートの機能強化
◎デジタル標準化に係るルールづくり
◎サイバーポートとのシステム連携に係る投資支援
◎サイバーセキュリティ対策の推進、事業者の不安
払拭
◎荷主や物流事業者に対する研修
サイバーポートを中心とした連携イメージ
商流・金流分野
2022年4月商用版リリース
民間
貿易プラットフォーム
輸出入手続+民間業務
1991年10月稼働開始
(Sea-NACCS)
海外
貿易プラットフォーム
船社システム
TOS
(ターミナルオペレーションシステム)
CTの生産性向上(混雑緩和)
2021年4月本格運用開始
(横浜港南本牧)
神戸港・大阪港・横浜港・東京
港の他ターミナルへの横展開
に向けた取組を推進
民間事業者間の港湾手続
2021年4月サービス開始
国土交通省港湾局運営
物流事業者
自社システム
パッケージ
ソフト
コンテナ物流情報の共有
2010年4月運用開始
アクセス数:約3.5万回/日
船舶動静状況、CY搬出可否、
混雑状況カメラ画像等
(※1)NVOCC(Non-Vessel Operating Common Carrier):自社で船舶を持たず、船会社を利用して輸送サービスを提供する物流業者のこと。
(※2)NACCS(Nippon Automated Cargo and Port Consolidated System):輸出入・港湾関連情報処理システム。輸出入貨物の通関手続全般、食品衛生・動植物検疫手続等を行う唯一のシングルウィンドウ(総合物流情報プラットフォーム)。
273
港湾ロジスティクス
③次世代型倉庫
274
1.現状認識と目指す姿【目標】
(1)現状
① 現状
・倉庫は、輸出入貨物の保管・流通加工・荷さばき・通関業務等を行う上で必要不可欠な物流拠点であ
り、我が国港湾が「選ばれる港湾」となるためには、我が国港湾で取扱う貨物を滞りなく保管する
とともに、港湾背後の多様な物流ニーズに対応した倉庫を確保することが必要不可欠。
・近年、モーダルシフト等に伴う我が国港湾における貨物需要の増大に伴い、倉庫のさらなるキャパシ
ティ確保が求められているが、港湾周辺は土地が不足しており、倉庫そのものを増やすことは難し
く、また人口減少・少子高齢化に伴う構造的な担い手不足により、倉庫業務を取扱う人手の確保も
厳しさを増している。
・このため、AI・IoT等を活用し、庫内作業の自動化・機械化、自動運転車両の乗り入れへの対応等に
より、既存型倉庫を保管機能等が高度化された次世代型倉庫に転換しつつ、人手不足にも対応する
必要があるが、倉庫の老朽化・陳腐化も進行しているため、その集約・再編を抜本的に進め、次世
代型倉庫への建替えを迅速に進めていく必要がある。
② 取り巻く環境と構造変化
・シンガポールなど諸外国の港湾部における倉庫では、AI等を使ったDXや大規模化が進んでいる。
・倉庫の集約・再編のための建設費の高騰に加え、金利等も上昇傾向にあり、倉庫の新設・運営コスト
は上昇傾向。
・近年、災害が激甚化・頻発化しており、倉庫の老朽化対策はBCPの観点からも必要。
③ 経済的・戦略的な重要性
・我が国港湾が荷主や船社等の利用者から「選ばれる港湾」となるためには、次世代型倉庫の整備を促
進することによって、保管容量の増加や多様な物流ニーズへの対応を図り、使い勝手の良い臨海部
物流拠点とすることが必要。それにより、国内保管できない荷物を海外港湾の倉庫で一時保管する
ような状況を防ぐとともに、我が国港湾での取扱貨物量の一層の増加に対応することも可能。
・また倉庫業務のAI等による自動化・機械化を図るとともに、災害発生時に電力供給が途絶した場合
でも、迅速に物資を被災地等に輸送できる基盤を予め構築しておくことが、国民生活のセーフティ
ネットやBCPを確保するうえで重要。
港湾ロジスティクス
次世代型倉庫
(2) 目標
① 国内外で獲得を目指す市場
・貨物の取扱が多く、海上輸送と陸上輸
送の結節点となる港湾の周辺において、
自動化・機械化や自動運転等への対応
が図られた次世代型倉庫を2030年代ま
でに普通倉庫200万m2、冷蔵倉庫40万
設備トンを整備する。
※普通倉庫については重量があり様々な荷姿が
ある貨物を取り扱うため、積み上げを前提とし
ておらず一般的に「面積(m2)」で示される
※設備トン…冷蔵倉庫の収容能力をあらわす単
位で、1立方メートル=0.4設備トンで換算
② 達成すべき戦略的な目標
・輸出入品の保管容量拡大により、輸出
入貨物の取扱能力を強化する。
・港湾背後における流通加工や再混載等
の多様な物流ニーズに対応し、新たな
貨物需要を創出する。
・庫内の自動化等により、人手不足を解
消するとともに、自動運転車両への対
応を通じ、ドライバー不足へも対処。
・加えて、庫内の自動化等により、荷待
ち時間のさらなる短縮を実現。
275
港湾ロジスティクス
次世代型倉庫
2.勝ち筋の特定と官民投資の具体像【道筋】
(2)官民投資の具体像
(1)基本戦略
① 勝ち筋
① 投資内容
以下の取組を通じて、人手不足に対応しつつ、我が国港湾を介した
輸出入貨物の増大に着実に対応することで、我が国港湾を「選ばれる
港湾」とするとともに、災害発生時における不足物資供給拠点とする
ため、AI等による倉庫の自動化・機械化によって保管機能等が高度化
された次世代型倉庫の整備を促進する。
・倉庫内の自動化・機械化による保管効率の向上及び老朽化・陳腐化
した倉庫の集約・再編による保管容量の拡大を進め、我が国港湾に
おいて保管可能な貨物量を増加
・流通加工や再混載等の複合機能も備えた次世代型倉庫の立地促進に
より、新たな貨物需要を創出
・併せて次世代型倉庫に荷物を搬入する自動運転車両が乗り入れ可能
なランプウェイ等や、次世代型倉庫の高層化、その整備用地の捻出
など次世代型倉庫を支えるインフラ整備を推進
・非常用電源設備等の設置による、災害等発生時におけるロジスティ
クス機能継続性確保
・次世代型倉庫への転換を図るべく、AI・IoT等を活用した庫内の運
搬・保管工程の自動化等の取組を行う。
・輸送ネットワーク全体の効率化及び拠点としての機能強化に資するよ
う、老朽化した小規模倉庫を集約して大型化する等、物流拠点の集
約・再編を行う。
・地方公共団体とも連携しながら、災害等の有事のサプライチェーンを
維持するため、倉庫における非常用電源設備等の設置を進める。
② 投資額
2040年度までで0.6兆円と想定
③ 定量的インパクト:投資による経済波及効果
2040年度までで1.4兆円と想定
② 我が国として構築すべき機能
・庫内作業の自動化・機械化に対応した保管機能
・増大する我が国港湾を介した輸出入貨物の受入に必要な倉庫の保管
容量の確保
・地方公共団体と連携して救援物資の常備保管や不足物資等の積替・
集積拠点として活用できる倉庫のレジリエンス機能
276
3.官民投資促進に向けた課題と政策パッケージ【政策手段】
(1)投資促進に向けた課題
①リソース制約
【用地不足】
・港湾周辺における新設・建替に必要な
土地の不足
【基盤不足】
・物流拠点の集約・再編に伴うさらなる
インフラ充足の必要性(アクセス通
路の整備等)
②不確実性の要因
・財務
- 建設費等のイニシャルコストの高騰
- 電気代等のランニングコストの高騰
・事業・技術
- トラック輸送形態の変容
・社会
- 地域社会の理解(渋滞、騒音等)
- コストに対する寄託者の理解(低水
準で停滞する保管料)
・国際環境・政策
- 我が国の国際コールドチェーン物流
サービス規格の浸透不足
- 海外市場におけるプレゼンスの低下
港湾ロジスティクス
次世代型倉庫
(2)講じるべき政策パッケージ
①次世代型倉庫の整備支援
・港湾管理者や地方公共団体等と連携し、次世代型倉庫の高層化や整備用地の捻出によるその新設
を念頭に、既存型倉庫の集約・再編を推進
※ 地方公共団体が必要と判断する場合には、一定の敷地で公共公益施設の整備等を通じた容積率緩和制度を活用可能。
・物流拠点の集約・再編のための財政投融資を活用した低利融資や、公共性の高い新たな基幹物流
拠点に対する課税の特例による支援
・国際コンテナ戦略港湾において、流通加工機能も備えた上屋又は倉庫を整備する民間事業者に対
する無利子貸付
②周辺環境整備
・次世代型倉庫に荷物を搬入する自動運転車両が乗り入れ可能なランプウェイ等のインフラ整備
・次世代型倉庫の運営費用に対して適正な保管料を収受するための寄託者の理解の促進(標準寄託
約款の改正等)
・積替拠点としてのSea&Air等を通じた外貨の取り込みに向け、税関関連事務の簡素化等の制度環
境の整備
③レジリエンス対応
・地方公共団体とも連携しながら災害時等のサプライチェーンを維持するための物流拠点への非常
用電源設備等の設置に対する支援
・港湾における防災機能の向上を図るため、港湾に立地する老朽化・陳腐化した物流施設を集約・
再編する民間事業者に対する支援
・津波等からの退避機能を備えた施設を整備する民間事業者に対する支援
④海外展開
・我が国の高品質なコールドチェーン物流サービスの海外展開に向けた国際標準化推進及び相手国
への働きかけ
277
港湾ロジスティクス
次世代型倉庫
方向性
用地や人材が不足する中で、AI・IoT等を活用し、庫内作業の自動化・機械化、自動運転車両の乗り入れへの対応等を通じて保管機能等が高度
化された次世代型倉庫を、既存倉庫を集約・再編して整備する。それにより保管容量の拡大等を図り、輸出入貨物の取扱能力を強化し、港湾か
らのシームレスな物流を実現する。
次世代型倉庫のイメージ
(倉庫の集約による大型化、自動化)
●輸出入貨物の取扱増
保管効率・
保管能力増加
<制約要因・不確実性>
・倉庫の老朽化・陳腐化を解
消するため、その集約・再
編に必要となる港湾周辺の
土地が不足
・建設費等の高騰
・我が国の国際コールド
チェーン物流サービス規格
の浸透不足 等
さらなる高度化等
の必要性高まり
●倉庫機能の自動化・機械化
●倉庫の容量確保
●レジリエンスの強化
◎立地自治体等との連携による次世代型倉庫を支え
るインフラ整備
◎低利融資や税制特例による倉庫の集約・再編支援
◎食品加工・流通、創薬等に資する倉庫を含む高品
質なコールドチェーン物流サービス規格の海外展
開の促進 等
<目標>
◎貨物の取扱いが多く、海上輸送と
陸上輸送の結節点となる港湾の周
辺において、次世代型倉庫の整備
により、保管効率向上・保管容量
拡大を図る(2030年代までに普通
倉庫200万m2、冷蔵倉庫40万設備
トンを整備)。
◎倉庫での受入可能貨物量を増やす
ことで、我が国港湾で保管しきれ
ない貨物の外国での一時保管を回
避するとともに、災害時等のサプ
ライチェーンの維持に寄与する。
◎高品質なコールドチェーン物流の
構築により、国際競争力の強化を
実現する。
278
フードテック
①植物工場
279
1.現状認識と目指す姿【目標】
フードテック
植物工場
(1)現状
(2) 目標
① 現状
• 光熱費の増大等に伴う収益性の悪化により、欧米では大規模事業者が相次ぎ倒産。日本でも6割が赤字。
• 商業栽培品目(事業化フェーズ)は葉菜類に限定され、果菜類は研究開発フェーズ。
• 日本は、大規模植物工場の商業運営を続け、ビジネスとして成り立たせてきた実績があり、世界的に競争
優位のある研究・事業実績と良質データを有し、生産性が飛躍的に向上した世界初のモジュールタイプの
完全閉鎖型植物工場をスタートアップが開発する等、世界で優位に立てるポテンシャルのある技術を保有。
※ 植物工場システム(生産物込)の世界市場規模(予測):1.5兆円(2025年)、4.9兆円(2030年)、55兆円(2040年)
Precedence Researchの「Vertical Farming Market Size, Share, and Trends 2026 to 2035」をもと
に計算
② 取り巻く環境と構造変化
• 世界人口の増加や経済発展により食料需要は増加するが、供給面では、気候変動、労働力、土地等の制約
等で食料生産の不安定化が社会課題。
• 高度な環境制御や技術の活用により気候変動の影響を低減し、省資源・低環境負荷で計画的な生産や限ら
れた空間での高効率な安定生産が可能な植物工場に対する期待が高まる一方、人工光型植物工場は施設整
備費等の初期コストや光熱費等のランニングコストの高さ、栽培品目の限定といった課題がボトルネック。
• 高品質かつ高効率の生産技術を集約した植物工場システムと専門人材への投資拡大により、世界の植物工
場市場をリードできる可能性。
③ 経済的・戦略的な重要性
• 経済的重要性:定時・定量・定価格・定品質(4定)での農産物の提供が可能。機能性成分や医薬品原料
成分を含む農産物の生産による健康・医療など幅広い産業への貢献の期待。生産技術等の知財を適切に保
護できる国・地域へのシステム輸出によるロイヤルティ収入の向上。
• 戦略的重要性:輸入依存が高く高付加価値の農産物の安定供給のほか、植物工場において開発された高温
に強い品種等や得られたデータ(作物ごとの最適な栽培条件)の農業現場への展開により、国内外の食料
安全保障に貢献。水・生産資材(肥料・農薬等)の使用量低減による、持続可能性に配慮した食料生産
(ESG)にも貢献。AI等の最適活用、データの蓄積・管理、栽培技術等の知財の適切な保護を通じ、将来に
わたり我が国技術の不可欠性を確保。
① 国内外で獲得を目指す市場
・2030年にかけて、市場ニー
ズに応じた商業栽培品目を
拡充するとともに、海外市
場展開を拡大。日本品質の
農産物及び植物工場プラン
トと運営ノウハウを併せた
植物工場システムをパッ
ケージ展開し、2040年にか
けて国内外市場のシェア3
割を目指す。
② 達成すべき戦略的な目標
・国内外の食料安全保障の確保
への貢献
280
2.勝ち筋の特定と官民投資の具体像【道筋】
(1)基本戦略
フードテック
植物工場
(2)官民投資の具体像
①勝ち筋
① 投資内容
• 施設園芸及び工業(空調、照明等)の優れた技術や大規模植物工場をビジネスとして継
・AI等を活用した次世代型の植物工場・栽培技
続させてきたノウハウ等の強みを活かし、栽培データ利用を含めパッケージ化した植物
術・品種開発等の基盤研究、既存産業の強みを
工場システムを確立し、展開。顧客・市場に応じたパッケージにより、日本品質の農産
生かす量産体制の構築に向けた研究開発・実
物+植物工場システムの販売で収益化する。
証・イノベーションハブの整備(設備の調達を
1.植物工場システムの販売で稼ぐ
含む)、データプラットフォームの整備等
• 海外向けには、水不足、日照不足で生鮮野菜が不足する島しょ国、砂漠地域、高緯度地
・植物工場システムの投資主体は、企業(プラン
域、機能性成分を多く含む食品の摂取等日常の食生活改善で健康維持する動きがみられ
ト・設備・機械メーカー等)、大学、国研、国、
る欧米等(例:米国東海岸の大手小売、外食等)の国に社会課題のソリューションとし
自治体等
て植物工場システムを販売。生産資機材や栽培技術の提供により継続して海外から稼ぐ。 ・植物工場で生産する農産物の投資主体は、農業
• 国内向けには、現状は異常気象等により農産物価格が乱高下しているが、農業法人、食
法人、企業(小売・外食事業者、医薬品メー
品メーカー、外食チェーン等が植物工場を運営、原料生産することで4定を実現。小売
カー等)、大学、国研、国、自治体等
店の物流拠点や食品工場、外食店舗に隣接設置し輸送費を削減。
2.植物工場で生産する農産物で稼ぐ
② 投資額
• レタス等の葉菜類以外の農産物(果菜類等)についても、省力化・効率化の技術や品種
2040年度までで4.6兆円と想定
を開発し、生産拡大。また、輸入依存が高い高付加価値な農産物(漢方原料等)を生産
し、輸入品シェア奪還・国内供給拡大。
• 栽培環境を適切に制御することで、有用物質(花粉症等を和らげる薬、サイトカイン
③ 定量的インパクト:投資による経済波及効果
等)を多く含む農産物(稲等)の品種開発と大量・効率的な生産が可能。
2040年度までで36.8兆円と想定
② 我が国として構築すべき機能
• 国内で構築すべき機能:製造機能(既存産業の強みを生かす量産体制)、産官学が連携
する植物工場に係る研究開発のイノベーションハブ機能(品種・栽培技術を開発する研
究拠点)及びデータプラットフォーム機能(AIによる栽培等のビッグデータ集約・解
析・活用)、地域未来戦略に基づく産業クラスター
• 有志国等と連携して構築すべき機能:海外の市場開拓機能、現地での部品等調達機能、
生鮮野菜の供給拠点機能
281
3.官民投資促進に向けた課題と政策パッケージ【政策手段】
フードテック
植物工場
(1)投資促進に向けた課題
(2)講じるべき政策パッケージ
①リソース制約
・人材:研究と事業の両方を理解でき
る人材(人材にはチームを含む。以
下同じ)、蓄積した栽培データ等の
分析や新たな栽培技術の開発に不可
欠な人材、工場のマネジメントに不
可欠な農業と工業の両方の知見を有
する人材、国際ビジネス人材、専門
人材だけでなく、パートも含む幅広
い人材層における労働力の不足
・インフラ:電力・水の確保、集約的
に大量生産された作物のサプライ
チェーンの構築
①国内投資支援
・省エネ・自動化等に向けた複数年の実証支援、フィージビリティスタディ、マーケット調査、事
業性の評価、AI等を活用した次世代型の植物工場・品種・栽培技術の研究開発/生産拠点の整備・
機能向上、データプラットフォームの整備、特定生産物向上設備等投資促進税制、研究開発税制、
各種補助金・制度資金・保証保険等によるファイナンス支援、企業・研究機関による専門人材育
成に係る環境整備(人材養成プログラムの支援等)、省力化に向けた環境整備
②不確実性の要因
・事業・技術:新たな品目の効率生産
技術、安定生産技術の向上(デジタ
ル化、自動化、品種開発等)、海外
販路開拓の負荷
・市場:植物工場で生産された農産物
の需要の停滞(新鮮野菜、健康・高
栄養食、環境低負荷型農産物等)
・財務:資機材やエネルギーのコスト
上昇によるC/Fの不安定化、固定費
先行で投資回収期間が長いことによ
る各フェーズにおける資金調達の困
難性
②需要創出・市場確保・社会実装支援
・初期需要の創出:公共調達(研究インフラとして公的研究機関で調達)、オフテイク購買※等の促
進 ※ 供給者が提供する予定の商品・サービスの全部又は一部を事前の取り決めに従い購入すること
・スタートアップの育成:大規模実証の支援、スタートアップと企業の事業連携コーディネーター
確保、自治体や大学等との連携を通じた地域の経済社会を担うスタートアップの創出、重要分野
の最先端技術の事業化支援
・海外市場開拓に対する支援(販路開拓・金融支援等):ビジネスマッチングの促進、事業会社の
基盤強化に向けた出融資、設備投資の税制優遇、リスク軽減のための債務保証等、海外展開拠点
の設置促進(人材確保、テストプラント等の設置・運営)、現地キープレーヤーへの接続支援、
海外での市場調査、展示実証、展示会出展等でのプロモーション、植物工場システムの評価項目
や算定方法等の標準化と国際標準等の獲得に向けた検討促進
・企業間連携等の促進:産官学が連携したプラットフォームの活用
③立地競争力強化
・用地の確保と利用調整 等
④国際連携
・食料輸入依存度の高い国・地域への二国間協力の枠組みを基礎とした案件形成の推進
・海外展開に当たっての調査・実証支援(国際共同研究を含む)
・相手先国で植物工場を運営・管理できる人材の育成
・日本食や日系小売・外食企業と連携したサプライチェーンの構築
282
フードテック
植物工場
方向性
植物工場は気候変動の影響に左右されず、定時・定量・定価格・定品質な農産物の生産が可能
日本の強みを活かした基本的な方向性
植物工場をビジネスとして
運営・継続させてきた実績
空調、照明等の先端技術
世界初のモジュール型の
完全閉鎖型植物工場の開発
施設園芸と工業の両分野の高い技術と実績
•
•
•
•
•
•
主な課題
食料の安定供給や環境負荷(農薬等の使用や輸送時CO2)低減など
社会課題のソリューションとして国内外に展開
(顧客・市場に応じたパッケージで展開)
技術開発
ビジネス展開
の推進
商業栽培品目は、葉菜類等に限定
イニシャルコスト、ランニングコストの高さ
固定費先行で投資回収期間が長いことによる各フェーズにおける資金
調達の困難性
日本品質の農産物
×
植物工場プラントや生産資材、栽培データ、
運営ノウハウ等(植物工場システム)
農産物とシステムで収益化
勝ち筋
•
•
講ずべき施策
AI等を活用した次世代型の植物工場や品種等の研究開発/生産拠点の整備 •
省エネ、自動化等に向けた複数年の実証支援、大規模実証の支援
•
公的研究機関での調達やオフテイク購買等促進による初期需要の創出
海外販路開拓の負荷
植物工場を管理・運営できる人材の不足
等
海外市場開拓に対する支援(販路開拓・金融支援等)
植物工場を管理・運営できる人材の育成に係る環境整備
(人材養成プログラムの支援等) 等
目指すべき姿
植物工場システムを国内外に販売し、市場ニーズに応じた農産物の安定供給
→ 国内外(特に海外)で稼ぐ(経済成長に貢献)
栽培期間が短縮される特長を生かし、品種開発の加速化や得られたデータ
(作物ごとの最適な栽培条件)の農業現場への展開 等
→ 収量・品質を向上し、食料安全保障をめぐる世界的な課題解決に貢献
国内外で獲得を目指す市場*
2040年にかけて国内外市場
のシェア3割を目指す。
*農産物+植物工場システムによる市場。
283
フードテック
②陸上養殖
284
1.現状認識と目指す姿【目標】
フードテック
陸上養殖
(1)現状
(2) 目標
① 現状
・閉鎖循環式陸上養殖(RAS)は、国際的に様々な技術開発が進行しているが、安定生産が実現しておらず総じて実証
フェーズ。
・我が国では、水処理・浄化技術等の強みを有する技術や、最先端のゲノム関連技術を用いた品種開発、人工種苗の生産
技術やこれを含めた完全養殖技術等の実証・商業化に向けた事業がスタートアップを中心に展開中。また、豊富な水資
源やIT活用等により、魚種や立地特性に合わせた多様な陸上養殖が展開。
※ 陸上養殖システム(生産物込)の世界市場規模(予測):0.35兆円(2025年)、2.4兆円(2030年)、31兆円(2040年)
① 国内外で獲得を目指す市場
・2030年にかけて、日本なら
ではの多様な魚種での用途
に応じた陸上養殖を国内展
開。こうした国内展開を進
めつつ、海外市場に対しモ
ジュール化したシステムを
展開することで日本ならで
はの魚種での海外での新た
な水産物市場を創出し、
2040年にかけて世界市場の
シェア3割を目指す。
② 取り巻く環境と構造変化
・世界の人口増加、経済発展により、水産物(特にサーモン)の需要が拡大中。更なる需要拡大が見込まれる一方、養殖
適地が限られ、気候変動リスク等もあり、海面養殖生産の拡大に足かせ。我が国では、海洋環境の変化により漁獲量や
養殖生産量が減少傾向。海域が接する国等との水産資源利用の競合も顕在化。養殖に不可欠な種苗や飼料の多くが天然
資源や輸入に依存。
・陸上養殖技術を集約したモジュール化や先端技術を活用した種苗・飼料、専門人材への投資拡大により、海洋環境や他
国等に左右されずに水産物の安定生産を実現でき、水産物供給及び陸上養殖投資で世界市場をリードできる可能性。
③ 経済的・戦略的な重要性
•経済的重要性:
・国内外のマーケットが求めるmade in/by Japanの水産物の安定供給による市場シェアの拡大
・過去25年にわたり下がり続けてきた水産物のたんぱく質供給シェアの回復による水産業の復権
・既存の加工・流通施設の利用や新たな水産物サプライチェーンの構築による地域(「浜」)の経済活性化、雇用創出
・生産技術等の知的財産を適切に保護できる国・地域への展開によるロイヤルティ収入の向上
•戦略的重要性:
・気候変動や国際情勢の変化の影響を緩和した状況下での安定的な生産による輸入依存度の低減と海面養殖業との共存を
通じた自立度の高い我が国の食料安全保障への貢献
・海洋環境や海洋資源の保全など持続可能性に配慮した食料生産(ESG)への貢献
・食料自給率の低い国への事業展開によるグローバルな食料安全保障に貢献
・データの蓄積と技術の改善を進めることで、将来にわたって我が国技術の不可欠性を確保
・地球環境に優しい養殖生産物・技術としての価値の確立による継続した投資の呼び込み
・先端技術を活用した生産性の高い日本産の品種や飼料の開発と供給で日本の陸上養殖技術をチョークポイント化
② 達成すべき戦略的な目標
• 国内外の食料安全保障の確
保への貢献
285
フードテック
陸上養殖
2.勝ち筋の特定と官民投資の具体像【道筋】
(1)基本戦略
(2)官民投資の具体像
① 勝ち筋
• 日本には、スタートアップの技術をはじめとした、水処理・浄化技術、複数
魚種の種苗生産技術、最先端ゲノム関連技術による育種、藻類発酵技術等で
の魚の必須栄養素の培養技術、魚を安定成長させる養殖技術やノウハウ、魚
を美味しくする加工技術など様々な強み。
• 漁業・養殖生産量減少や輸入依存等の国内課題への対応を通じ、こうした強
みを組み合わせ、多様な魚種の種苗や飼料の内製化を進めながら、実証
フェーズを乗り越え、用途や規模に応じた安定生産可能なモジュールを作り
出し、システムとして商品化し、国内に展開。
• 国内の成功を踏まえ、安定生産できるモジュールと品種改良した種苗や飼料
を、たんぱく質の安定供給や持続可能性に配慮した食料生産など世界各地の
社会課題解決のソリューションとして売り込み、国外に展開。日本食や加工
技術といった強みも生かして、陸上養殖で生産された水産物を商品として販
売・提供する企業間で連携し、世界の水産物市場を獲得。
① 投資内容
・モジュールの研究開発
・種苗や飼料の開発
・種苗や飼料の生産拠点整備
・専門人材の育成のための研修及び技術発展のための交流
・地下水や用地などのインフラ調査費用と整備
・モジュールの大規模実証
・データプラットフォーム構築
・国内外での需要拡大・販路開拓
・事業化に向けた地域、加工流通等サプライチェーン関係
者とのマッチング
(投資主体は、企業(食品メー カー、外食チェーン、小
売、商社、データ会社)、漁協等、国、自治体等)
② 我が国として構築すべき機能
・国内で構築すべき機能:モジュールの研究開発機能(水温維持に係るコスト削
減技術、養殖魚の成長率・歩留り向上等の養殖技術、データ分析に基づく施
設・設備の制御技術等)、モジュールの再現性の確認機能(用途や規模、立地
に応じたモジュールの安定生産の検証)、種苗や飼料の研究開発・生産・供給
機能、専門人材の育成機能(安定生産のオペレーション構築)、データプラッ
トフォーム機能(AIによる陸上養殖技術に関わるビッグデータ集約・解析・
活用)、地域未来戦略に基づく産業クラスター
・有志国等と連携して構築すべき機能:海外の市場開拓機能、現地での部品等調
達機能、陸上養殖技術データの集積・フィードバック機能、水産物サプライ
チェーン構築機能
② 投資額
2040年度までで2.9兆円と想定
③ 定量的インパクト:投資による経済波及効果
2040年度までで47.1兆円と想定
286
3.官民投資促進に向けた課題と政策パッケージ【政策手段】
(1)投資促進に向けた課題
(2)講じるべき政策パッケージ
フードテック
陸上養殖
①国内投資支援
①リソース制約
・人材:生産技術の開発に不可欠な人材、 ・モジュール化に向けた複数年の実証支援、フィージビリティスタディ、マーケット調査、事業性の評価、
種苗・飼料の研究開発/生産拠点の整備、飼料価格高騰時のセーフティネット、特定生産性向上設備等投
システムのマネジメント・オペレーショ
資促進税制、研究開発税制、各種補助金・制度資金・保証・損害保険等によるファイナンス支援を通じ
ンに不可欠な水質管理と魚の生理・生態
た民間リスクマネーの供給機能強化、企業・研究機関による専門人材等(研究開発人材やシステムのオ
等の知見を有する人材、国際ビジネス人
ペレーション(水質管理など設備保全、魚の生理・生態、データ分析、データ集計など)に関する専門
材、専門人材だけでなく、パートも含む
人材等)の育成・確保に係る環境整備(人材養成プログラムの支援等)
幅広い人材層における労働力の不足
・インフラ:水・種苗・飼料・電力の確保、 ②需要創出・市場確保・社会実装支援
加工流通等サプライチェーンの確保
・サプライチェーンの構築支援:水産物を最終商品として販売・提供する企業と連携(加工・流通・小
売・外食等との継続取引・パートナーシップ、オフテイク購買 ※の促進)、公共調達の促進
②不確実性の要因
※ 供給者が提供する予定の商品・サービスの全部又は一部を事前の取り決めに従い購入すること
・事業・技術:安定生産技術の未確立、へ
い死の発生、事業化の遅延、遺伝的多様 ・スタートアップの育成:大規模実証の支援、スタートアップと企業の事業連携コーディネーター確保、
自治体や大学等との連携を通じた地域の経済社会を担うスタートアップの創出、重要分野の最先端技術
性の減少による種苗の健全性の低下(デ
の事業化支援
ジタル化、自動化、品種開発等により改
善)。魚の生育特性上、収益化(出荷) ・データプラットフォームの構築支援:プラットフォーム構築能力のあるITベンダーとの連携(設備管理、
飼育管理等の省人化・自動化、再現性の向上)
までに長時間を要する。企業単独での海
・海外市場開拓に対する支援(販路開拓・金融支援等):ビジネスマッチングの促進、事業会社の基盤強
外販路開拓の困難性
化に向けた出融資、設備投資の税制優遇、リスク軽減のための債務保証等、海外での市場調査、展示実
・市場:陸上養殖で生産された水産物の市
証、展示会出展等でのプロモーション、現地キープレーヤーへの接続支援、国際標準等の獲得に向けた
場形成の不確実性、輸入水産物との価格
検討促進、加工や食品輸出等他事業と連携した海外での商流構築の促進
競争激化
・財務:養殖資材やエネルギーのコスト上 ・企業間連携等の促進:産官学が連携したプラットフォームの活用
昇によるC/Fの不安定化、固定費先行で ③立地競争力強化
投資回収期間が長いことによる各フェー ・漁港施設の有効活用も含めた用地の確保と利用調整等、事業再編の促進等の制度改革による事業環境整
備等
ズにおける資金調達の困難性
・国際環境・政策:飼料原料の多くを特定 ④国際連携
国からの輸入に依存
・水産物を海外に依存している国・地域へのパッケージ展開支援、経済連携協定と国際案件形成の連動に
よる途上国へのモジュール展開の支援、相手先国で陸上養殖を運営・管理できる人材の育成、日本食や
287
日系小売・外食企業と連携したサプライチェーンの構築
フードテック
陸上養殖
方向性
陸上養殖は海洋環境の変化に左右されず、水産物の安定供給が可能となる技術
日本の強みを活かした基本的な方向性
食料の安定供給や持続可能性に配慮した食料生産など
社会課題へのソリューションとして国内外に展開
(顧客・市場に応じたモジュールで展開)
陸上養殖システムを順次確立
水処理・浄化技術等を活かした
陸上養殖システムの
国内展開
サーモンの大規模陸上養殖
ブリ
トラフグ
日本ならではの多様な魚種
ハタ類
ウナギ
での用途に応じた陸上養殖
最先端ゲノム関連技術や藻類発酵技術等を活用して
生産性の高い種苗や飼料を内製化
主な課題
・種苗や飼料の多くが
天然資源や輸入に依存
水産物を安定供給し、
我が国の
食料安全保障に貢献
日本食や
魚の加工技術
とセットで展開
海外のマーケットが求める水産物
市場を獲得し、日本に富を呼び込む
日本産の種苗や飼料、安定生産技術
の販売・ライセンスで稼ぐ
勝ち筋
・施設整備から出荷(収益化)までに
長い期間
・各フェーズにおける資金調達の困難性
講ずべき施策
・陸上養殖に適した種苗・飼料の ・事業特性を踏まえた資金調達の支援
(長期取引契約・オフテイク購買等含む)
研究開発・生産拠点の整備
・モジュール化に向けた
複数年の実証支援、大規模実証の支援
目指すべき姿
陸上養殖システムの
海外展開
・国内外の食料安全保障の確保への貢献に加え、持続可能性に配慮した食料
生産(ESG)への貢献といった社会課題の解決にも貢献。
・水質管理、魚の生理・生態等の
専門人材が不足
・海外展開時の企業単独での
販路開拓の困難性
・サプライチェーンの構築支援
・専門人材の育成・確保の支援
(人材養成プログラムの支援等) (水産物を最終商品として
販売・提供する企業と連携)
・海外市場開拓に対する支援
(販路開拓・金融支援等)
世界で獲得を目指す市場*
2040年にかけて世界市場のシェア3割を目指す。
*水産物+陸上養殖システムによる市場
288
フードテック
③食品機械
289
1.現状認識と目指す姿【目標】
(1)現状
フードテック
食品機械
(2) 目標
① 現状
① 国内外で獲得を目指す市場
・世界的に食料需要が増加・多様化する一方で、食品産業では人手不足が深刻化。こうした中、省力化を実現しつつ、食品を
・2030年にかけて、食品加工
安定的にロスなく供給するためのシステムの構築・高度化が必要。
機械の国内外市場での販売
・食品は、原材料生産・製造・流通・小売などの段階を経て消費者に届く。このうち、製造工程においては、人手不足の解消
及び総合サービスの提供、
等の観点から、前処理、加工、充填、包装、検査、保存など、更に細かい工程ごとに様々な種類の機械が存在し、AI・ロ
農林水産物・食品の輸出等
ボット技術等を活用した高性能化が世界的に進展。
を支える鮮度保持技術の提
・日本の食品加工機械は、導入コストが高い一方で、数十年の高い耐久性、製造停止後の部品供給を含むアフターフォロー、
供により、市場を拡大。
顧客となる食品事業者のニーズに細やかに応えるオーダーメイドなど、ハード・ソフト両面に強みがあり、国内外での需要
・新たな食品機械を継続的に
拡大が見込まれる。
開発。
・また、後ろの流通工程につながる包装や保存の工程においては、鮮度にこだわる食文化を背景として冷凍技術に強みを有し、
・食品機械の多様な商品展開、
さらにはそのノウハウ等を活用し、低温高湿度で生鮮品を鮮度保持する技術(鮮度保持技術)が進展。現段階では実証
国際標準化の取組と合わせ
フェーズにとどまるが、この社会実装は、長時間・長距離の食品輸送を可能とし、日本の食品や生鮮品を世界各地に大きく
て、海外市場展開を更に拡
展開させていくための起爆剤となり得る。
大し、2040年にかけて国内
※食品機械(食品加工機械と鮮度保持技術を用いたサービス)の世界市場規模(予測):16兆円(2025年)、21兆円(2030年)、33兆円(2040年)
外市場の売上3兆円を目指
② 取り巻く環境と構造変化
す。
・加工食品や外食・中食の市場が世界的に拡大傾向にある一方で、食品製造等の現場では人手の確保が課題となっており、食
品加工機械の需要は今後も高まっていく。また、食品産業は生産性向上のために工場の稼働率を重視しており、機械メー
② 達成すべき戦略的な目標
カーは、機械の販売だけでなく、保守・運用・データ活用によるソリューションを含む総合サービス化が求められている。
・国内外の食料安全保障の確
・また、サプライチェーン上での食品廃棄物の発生抑制や、輸送回数の低減による人手不足解消といった観点からも、鮮度保
保への貢献
持技術の需要は高まっていくと見込まれる。
・このように、需要拡大が見込まれる中、食品加工機械の保守運用や鮮度保持技術に強みを有する我が国にとって、好機と言
える状況。
③ 経済的・戦略的な重要性
・経済的重要性:食品加工機械は、国内外での販売と総合サービスの提供による食品産業の生産性向上を通じ、国内外で事業
を展開する食品産業の発展に貢献。鮮度保持技術は、我が国農林水産物・食品の輸出増大、これらを食材として利用する外
食の海外展開に貢献。
・戦略的重要性:食品産業の人手不足解消・生産性向上や、鮮度保持期間の長期化による食品廃棄物の発生抑制や輸送回数の
低減を通じた食料システムの持続性向上、さらに国内外の食料安全保障の確保に貢献。
290
フードテック
食品機械
2.勝ち筋の特定と官民投資の具体像【道筋】
(1)基本戦略
(2)官民投資の具体像
① 勝ち筋
・食品加工技術・鮮度保持技術を活用した機械について、スタートアップを含
む企業が、我が国の食品事業者と連携し、独自性を有し、国際競争力のある
機械の開発・実用化を進める。我が国の強みを活かしつつ、食品産業の生産
性の向上や食品廃棄物の削減を実現するソリューションとして国内外で展開。
・その際、まずは世界の中で日本の食品加工や鮮度保持の技術を活用して供給
される食品や生鮮品のニーズがある地域を特定し、関連する食品事業者と連
携して、機械を輸出・展開。現地で保守・サービス体制を整備し、現地デ
ファクトスタンダードの獲得を目指す。さらに、展開先を拡大しつつ、国際
標準の策定も目指す。
・あわせて、鮮度保持技術については、流通事業者による技術の活用を通じて、
我が国の高品質な農林水産物・食品の世界各地への輸出拡大を実現。
① 投資内容
・食品加工技術・鮮度保持技術の研究開発(最適なブランチン
グ技術の開発等)
・食品加工機械の開発・実証
・スケール実証
・保守・サービス体制の整備
・海外展開における現地パートナーとのマッチング
・性能評価や食品機械に合わせた食品の取扱方法の標準化
・各国の規制への対応
・投資主体は、企業(食品機械メーカー、食品流通事業者、食
品製造事業者、農林水産業者等)、大学、国、自治体等
② 我が国として構築すべき機能
・国内で構築すべき機能:食品機械の開発・製造能力、食品事業者と食品機
械メーカーとの連携による国際競争力のある機械の開発・実用化を促進す
るイノベーション・ハブ、性能等の評価指標、専門人材の育成、日本の食
文化の保護継承発信、地域未来戦略に基づく産業クラスター
・海外の市場開拓で構築すべき機能:現地パートナー開拓、海外メンテナン
ス等サービス(メンテナンス人材のネットワーク構築・人材育成)、知的
財産の保護、各国の規制への対応や認証取得
② 投資額
2040年度までで1.2兆円と想定
③ 定量的インパクト:投資による経済波及効果
2040年度までで18.8兆円と想定
291
3.官民投資促進に向けた課題と政策パッケージ【政策手段】
フードテック
食品機械
(1)投資促進に向けた課題
(2)講じるべき政策パッケージ
①リソース制約
・人材:製造、設備導入、運用
保守、データ活用をパッケー
ジで提案できる人材、現地メ
ンテナンス人材が不足
①国内投資支援
・実用化に向けた複数年の実証支援、フィージビリティスタディ、マーケット調査、事業性の評価、特定生
産性向上設備等投資促進税制、研究開発税制、各種補助金・制度資金等によるファイナンス支援、企業等
による専門人材育成に係る環境整備、ソリューション型事業への転換支援(設備・技術・人材投資)
②需要創出・市場確保・社会実装支援
②不確実性の要因
・各国の規制への対応や認証取得のための支援
・日本主導の衛生設計・品質管理等の国際標準の策定
・事業・技術:開発・製造コス
・海外市場開拓に対する支援(販路開拓・金融支援等):事業会社の基盤強化に向けた出融資、設備投資の
トの高騰、形状や硬さが様々
税制優遇、リスク軽減のための債務保証等、海外での市場調査、展示実証、展示会出展等でのプロモー
である食品原材料を、最適化
ション、共同実証の支援、相手先国でメンテナンス対応できる人材の育成
された一定の動作で、一定の
・スタートアップの育成:機械の開発・改良に向けた実証の支援、スタートアップと企業の事業連携コー
品質を満たす食品に加工する
ディネーター確保、自治体や大学等との連携を通じた地域の経済社会を担うスタートアップの創出、重要
ことの困難性、海外における
分野の最先端技術の事業化支援
機械稼働の再現性(気候等の
違いによる稼働条件の変化や、 ・企業間連携等の促進:官民が連携したプラットフォームの活用促進(食品機械製造業者と食品事業者との
他国の機械とのライン構築に
連携等)
より生じる予測困難性等)、
海外製の廉価品との競合、海
外販路開拓の困難性
・財務:初号機開発や保守網整
備の負担による回収期間の長
期化による資金調達の困難性
・国際環境・政策:各国の規制
への対応や認証取得の負荷
292
フードテック
食品機械
方向性
現状認識、日本の強み
●食品の製造工程においては、人手不足の解消等の観点から、前処理、加工、充填、包装、検査、保存など、工程ごとに様々な種類の機械が存在し、AI・ロボット
技術等を活用した高性能化が世界的に進展。
●日本の食品加工機械は、導入コストが高い一方で、高い耐久性、丁寧なアフターフォロー、顧客ニーズに細やかに応えるオーダーメイドなど、ハード・ソフト両
面に強みがあり、国内外での需要拡大が見込まれる。
●また、後ろの流通工程につながる包装や保存の工程においては、鮮度にこだわる食文化を背景として冷凍技術に強みを有し、さらにはそのノウハウ等を活用し、
低温高湿度で生鮮品を鮮度保持する技術(鮮度保持技術)が進展。現段階では実証フェーズにとどまるが、この社会実装は、長時間・長距離の食品輸送を可能と
し、日本の食品や生鮮品を世界各地に大きく展開させていくための起爆剤となり得る。
主な課題
勝ち筋
・ 海外への機械輸出に際しての各国規制対応の負荷(規則変更や機械のカスタマイズの都度対応が必要)、海外機械に対する優位性が見えにくい
・ 企業が単独で海外進出し、現地パートナーとのマッチングや販路開拓を一から行うことの困難性
・ 形状や硬さが様々である食品原材料を、最適化された一定の動作で、一定の品質を満たす食品に加工することの困難性
・ 製造・設備導入・運用保守・データ活用をパッケージで提案できる人材・ノウハウの不足、現地メンテナンス人材の不足
等
講ずべき施策
・ 各国の規制への対応や認証取得のための支援、日本主導による国際標準の策定
・ 海外市場開拓に対する支援(販路開拓・金融支援等)
・ AI等を活用した食品加工機械・鮮度保持機械の開発・改良に向けた実証の支援
・ 企業等による専門人材育成に係る環境整備、官民連携プラットフォームの活用促進(食品機械製造業者と食品事業者との連携等) 等
目指すべき姿
現地での保守・サービス対応等も含めたビジネスモデルにより海外での展開先を拡大
食品産業の労働力不足解消・生産性向上、食品廃棄物の発生抑制や輸送回数の低減を通じた食料システムの持
続性向上、我が国の農林水産物・食品の世界各地への輸出拡大等により、国内外の食料安全保障の確保に貢献
国内外で獲得を目指す市場
2040年にかけて国内外市場
の売上額3兆円を目指す。
293
フードテック
④新規食品
294
1.現状認識と目指す姿【目標】
フードテック
新規食品
(1)現状
(2) 目標
① 現状
・食料、環境、栄養等をめぐる社会課題に対応するため、非動物由来たんぱく食品や機能性・栄養食品※等
の様々な新規食品の開発が世界各地で進行。一方、コストや美味しさとの両立等の技術的な課題が存在。
① 国内外で獲得を目指す市場
・我が国の独自性があり国内外
で堅調な需要拡大が見込まれ
る新規食品(非動物由来たん
ぱく食品と機能性・栄養食
品)について、2030年にかけ
て、国内市場のみならず、健
康課題への関心が高い、ある
いは持続可能性を重視する欧
米市場を中心に、輸出や海外
展開する外食産業でのメ
ニュー提供により、市場を拡
大。
・新規食品の継続的開発による
商品の多様化や国際標準化の
取組と合わせて、大きな市場
成長が見込まれるアジア等海
外市場展開を更に進め、2040
年にかけて国内外市場の売上
3兆円を目指す。
※健康に対する機能性を有する食品や、たんぱく質、脂質、炭水化物、ビタミン、ミネラル(五大栄養素)等をバランス
よく含む食品。
・我が国では、だし等の豊かな食文化を背景として、麹を用いた発酵技術、美味しさと栄養バランスを両立
する調味技術、多様で高品質な農林水産物等を活用し、特長ある製品や、ノングルテン等の特徴のある米
粉製品等の様々な新規食品が開発され、事業化が進められている。
※新規食品(非動物由来たんぱく食品と機能性・栄養食品)の世界市場規模(予測):4.4兆円(2025年)、8.1兆円(2030年)、
29兆円(2040年)
② 取り巻く環境と構造変化
・気候変動等による食料生産の不安定化が進む一方、世界人口の増加や経済発展により世界の食料需要は増
加傾向。特にたんぱく質需要の大幅な拡大に現行の食料システムで対処できない「プロテインクライシ
ス」が危惧。海外ではハラル等の需要も増加傾向(国内では同様にインバウンド需要も増加)。
・栄養面においては、国内では塩分過剰、先進国では過体重・肥満や慢性疾患、途上国では低栄養等の課題
が顕在化。健康寿命延伸・医療費抑制等のため、これらの栄養課題は各国の関心が高い領域。
・たんぱく質摂取や栄養改善に資する新規食品の需要が世界的に増加する一方、供給面では味・コスト・量
産化等の課題のため事業拡大フェーズに至らないケースも多く、海外では同分野への投資が大幅に減少。
・このように、新規食品、特に非動物由来たんぱく食品と機能性・栄養食品については、国内外で堅調な需
要拡大が見込まれ、我が国にとっては好機と言える状況。
③ 経済的・戦略的な重要性
・経済的重要性:各国の食習慣や栄養課題に合わせた非動物由来たんぱく食品や機能性・栄養食品の国内
外での販売や、外食産業によるこれらを活用したメニューの国内外での提供により、国産農林水産物等
の需要拡大や健康・医療等の幅広い産業への貢献が期待。
・戦略的重要性:非動物由来たんぱく質は、飼料穀物の需給や家畜疾病の影響を受けず、水や土地利用の
点で生産における資源効率が高いなど、食料安全保障に貢献。機能性・栄養食品は、高栄養で調理が簡
便・不要であり、災害時など不測時の対応強化に貢献。
② 達成すべき戦略的な目標
・国内外の食料安全保障の確保
への貢献
295
2.勝ち筋の特定と官民投資の具体像【道筋】
フードテック
新規食品
(1)基本戦略
(2)官民投資の具体像
① 勝ち筋
・我が国の食文化の中で培われた発酵技術や、美味しさと栄養を両立させる調味技術、
多様で高品質な農林水産物等、安全・高品質・トレーサビリティなどの信頼性が我が
国の強み。世界的に堅調な需要拡大が見込まれる非動物由来たんぱく食品や機能性・
栄養食品について、こうした我が国の強みを発揮しつつ、国内外の市場を獲得。
・まずは、美味しさとともに機能性・栄養を訴求した高付加価値食品として、特に健康
課題への関心が高い、あるいは持続可能性を重視する欧米市場を中心に展開するため、
新商品開発・試験生産・実用化に向けた実証支援、海外市場開拓に関する支援、各国
の食品規制への対応のための支援等を実施。その後、現地カスタマイズに向けた実証
支援やスタートアップ等と大手食品企業との連携による価格低廉化・多様化を図ると
ともに、日本主導による国際標準の策定を目指しつつ、大きな市場成長が見込まれる
アジア等にも展開。
・さらに、日系小売・外食企業との連携による外食メニューとしての提供等、健康・医
療分野とも連携したサービス提供に加え、現地商流にも乗せることにより、市場獲
得・拡大を目指す。加えて、例えば発酵用機械など、展開する新規食品の製造に必要
な設備・機械を併せて輸出することにより、市場の一層の拡大を目指す。
① 投資内容
・新規食品の開発研究・実証(我が国の発酵技
術・製品と美味しさの関係性の解明等を含む)
・商品開発・試作・スケールアップ実証
・海外展開における現地パートナーとのマッチ
ング
・各国の食品規制への対応
・新規食品の品質に関する標準化
・投資主体は、企業(食品メー カー、外食、
小売、商社等)、国、自治体等)
② 我が国として構築すべき機能
・国内で構築すべき機能:スタートアップによる新商品開発能力、BtoC製品のテスト
マーケティング、日本の食文化の保護継承発信、発酵技術に関する研究・専門人材の
育成、地域未来戦略に基づく産業クラスター
・海外の市場開拓で構築すべき機能:各国の規制への対応、現地パートナー開拓
② 投資額
2040年度までで1.0兆円と想定
③ 定量的インパクト:投資による経済波及効果
2040年度までで18.8兆円と想定
296
3.官民投資促進に向けた課題と政策パッケージ【政策手段】
(1)投資促進に向けた課題
フードテック
新規食品
(2)講じるべき政策パッケージ
①リソース制約
・人材:商品開発・製造プロセス
を含む製造管理・標準化を担う
専門人材の不足
①国内投資支援
②不確実性の要因
・事業・技術:原料差による再現
性、スケールアップ時の歩留ま
り変動、海外企業による類似商
品、海外販路の開拓
・市場:食トレンドの変化による
陳腐化
・財務:初期投資・運転資金の大
きさ、回収期間の長期化、設備
更新リスクによる資金調達の困
難性
・国際環境・政策:輸入原料の安
定確保、各国の規制への対応や
認証取得の負荷、国際標準化対
応の負荷
・社会:新技術に対する国内外で
の消費者受容性
②需要創出・市場確保・社会実装支援
・スタートアップの育成:新商品開発・試験生産・実用化に向けた実証支援、スタートアップと企業の事業
連携コーディネーター確保、自治体や大学等との連携を通じた地域の経済社会を担うスタートアップの創
出、重要分野の最先端技術の事業化支援
・新規食品に対する消費者理解の醸成
・各国の食品規制への対応や認証取得のための支援
・海外市場開拓に対する支援(販路開拓・金融支援等):事業会社の基盤強化に向けた出融資、設備投資の
税制優遇、リスク軽減のための債務保証等、海外での市場調査、展示実証、展示会出展等でのプロモー
ションのための支援
・日本主導による国際標準の策定
・企業間連携等の促進:官民が連携したプラットフォームの活用促進(スタートアップ等と大手食品企業と
のマッチングによる生産体制確保等)、日系小売・外食企業との連携促進
・公共調達の推進に向けた検討
・新商品開発・試験生産・実用化に向けた実証支援、フィージビリティスタディ、マーケット調査、事業性
の評価、特定生産性向上設備等投資促進税制、研究開発税制、各種補助金・制度資金等によるファイナン
ス支援、企業・研究機関による専門人材育成に係る環境整備、評価基準・品質規格等の整備
297
フードテック
新規食品
方向性
現状認識、日本の強み
●日本では、だし等の豊かな食文化を背景としつつ、麹を用いた発酵技術や、美味しさと栄養バランスを両立する調味技術、
高品質な農林水産物、安全性や高品質に対する信頼性等が強み。これらを活用した特長ある様々な新規食品が開発され、
事業化が進められている。
※
●食料、環境、栄養等をめぐる社会課題に対応するため、非動物由来たんぱく食品や、機能性・栄養食品 等の
様々な新規食品の開発が世界各地で進行。国内外で堅調な需要拡大が見込まれ、我が国にとっては好機と言える状況。
<非動物由来たんぱく食品の例>
①植物由来だし
②米由来たんぱく質等
<機能性・栄養食品の例>
※健康に対する機能性を有する食品や、たんぱく質、脂質、炭水化物、ビタミン、ミネラル(五大栄養素)等をバランスよく含む食品。
●一方で、既存食品と比較した場合のコスト課題や、特に非動物由来たんぱく食品における味とコストとの両立のための
技術的な課題等が存在。
美味しさに加え、栄養バランスも高度に調整したかつ丼
主な課題
・研究開発フェーズの困難性、既存の食品と比較して高コスト・高価格
・消費者受容の不確実性
・各国における食品衛生等規制への対応の負荷
講ずべき施策
・新商品開発・試験生産・実用化に向けた実証支援
・消費者理解の醸成
・各国の食品規制への対応のための支援
勝ち筋
・海外展開時の企業単独での現地向けの商品開発や
カスタマイズ、販路開拓等の困難性
・海外模倣品との差別化
等
・企業マッチング、日系小売・外食企業との連携、
海外市場開拓に対する支援(販路開拓・金融支援等)
・日本主導による国際標準の策定
等
目指すべき姿
非動物由来たんぱく食品や機能性・栄養食品について、まずは欧米市場を中心に展開し、その後、商品の多様化
や価格低廉化等によりアジア等へ市場を拡大
日本の強みを活かした新規食品の国内外への展開を通じて、国産農林水産物等の需要拡大、食品産業の事業基盤
の維持・強化を図り、食料安全保障の確保に貢献。加えて、健康課題、地球環境の持続可能性の維持といった
社会課題の解決にも貢献
国内外で獲得を目指す市場
2040年にかけて国内外市場
の売上額3兆円を目指す。
298
コンテンツ
①ゲーム
299
1.現状認識と目指す姿【目標】
コンテンツ
ゲーム
(1)現状
(2) 目標
① 現状
・日本のゲーム産業は、コンテンツ分野の海外展開において約6割を占める中核的な存在であり、ア
ニメや実写など他分野への波及効果も大きい。一方で、近年は開発費が高騰、収益性を高めるこ
とで、大胆な投資の原資を確保することが必要である。
・日本発ゲームは海外市場シェアの12%。市場別にみると、家庭用ゲーム機市場(世界市場6兆
円)では、日本発ゲームが約半分を占めるなど高い競争力を維持。しかし、モバイルゲーム(世
界市場18兆円)やPCゲーム(世界市場7兆円)では、日本発ゲームのシェアは数%に満たない。
・ゲーム産業では、約8万人の雇用を抱え、賃金・就労環境においてコンテンツ他産業と比べて高
水準を維持しているが、競合するコンサルやSIerよりは低い。
・ゲームの開発基盤(ゲームエンジン)は、米国製のシェアが63%を占め、自社エンジンは17%に
留まり、開発面で海外に依存している。
・家庭用ゲーム機の供給では日本企業が世界の約8割を担う一方、モバイルやPCのプラットフォー
ムは米国企業が支配しており、ゲームの流通面で海外に依存している。
・日本発ゲームの音声翻訳人口カバー率は40%と、世界的ヒット作の58%に比べて低く、大型タ
イトルでは翻訳費用が億円単位に達するなど、コスト負担が大きい。
① 国内外で獲得を目指す市場
・2033年にゲーム分野では海外売上12
兆円を目指す。
② 達成すべき戦略的な目標
・日本のソフト・パワーの強化
・日本文化に好印象を持つ層の増大
・訪日外国人のコンテンツ関連消費額の
拡大
② 取り巻く環境と構造変化
・ゲームエンジンの一般開放により安価かつ容易に開発可能となった一方、デバイスの高度化に伴
いハイエンドのゲームの開発費・広告宣伝費は高騰。また、AIやXR技術の発達により、新たな開
発プラットフォームやゲーム体験が生まれつつあり、産業構造そのものが変容し始めている。
・諸外国と比べて海外消費者へのアウトリーチが不十分。また、世界第2位の中国市場では、政府の
総量規制により、日本発ゲームの供給が制限。
③ 経済的・戦略的な重要性
・経済的重要性:ゲームを含むコンテンツ産業では、国内投資を倍増させることで、2040年には貿
易・サービス収支の黒字の半分に相当する4.8兆円を稼ぎ出す産業に成長する可能性。
・戦略的重要性:コンテンツ産業は、ソフト・パワー指数で世界4位に位置するなど、国際的な文
化発信力の源泉。また、コンテンツを目的とした訪日外国人の増加に寄与。
300
コンテンツ
ゲーム
2.勝ち筋の特定と官民投資の具体像【道筋】
(1)基本戦略
(2)官民投資の具体像
① 勝ち筋
・ゲーム開発は不確実性が高く、民間だけでは過少投資に陥るため、政府の支援を通じ、
民間投資を喚起し、収益力向上を図る。
・2033年海外売上20兆円のうち12兆円を目指し、海外市場の獲得に向け日本のゲーム
産業の強みである家庭用ゲーム機市場に加えて、モバイル・PCゲームの新市場進出や
新しいゲーム性への挑戦による産業構造変革の推進や収益力強化を図る。短期的な効
果発現に向けて、既存IPのゲームの世界的な収益力向上を図りながら、これらの収入
で新規IPのゲームに投資し、次の世界的な大ヒット作品を生み出す好循環を作る。
① 投資内容
・製作機能への投資
・流通機能への投資
・海賊版対策機能への投資
・人材獲得・育成への投資
(同時に以下の事柄にも取り組む)
・既存IPのゲームの収益力向上や大ヒットゲームの創出に資するよう、高度な開発・ビジ
ネス人材を確保・育成する。
・中期的な効果発現に向けて、グッズの世界展開による収益力向上を図りながら、AIや
XR等の先端技術を活用した新しいゲームの開発に取り組む。
・長期的な効果発現に向けて、新しい技術に対応した流通・開発プラットフォームを開
発・整備することで、その国産率の向上を図り、ゲームへの再投資原資を確保する。
・eスポーツ支援を通じて、ゲームのファンを拡大するとともに、ローカライズを通じて
多言語で展開し、売り上げを拡大する。
③ 定量的インパクト:投資による経済波及効果
2033年度までで191.4兆円と想定
② 投資額
2033年度までで24.5兆円と想定
② 我が国として構築すべき機能
・世界的な大ヒット作品を継続的に生み出す製作機能
・世界中のファンに作品やグッズを広く届ける流通機能
・海賊版の流通を抑制する海賊版対策機能
※前提として、クリエイターは政府から作品の中身に口を出されることなく創意工夫によ
り自由に創作を行う。また適切に対価が還元され次なる創作活動に邁進できるような好
循環を実現する。
301
3.官民投資促進に向けた課題と政策パッケージ【政策手段】
(1)投資促進に向けた課題
①リソース制約
・高度な開発・ビジネス人材
の不足
・開発プラットフォームやモ
バイル・PCゲームの流通プ
ラットフォームの欠如
・ゲーム投資に充てるグッズ
等の収益源の不足
・海外の文化や規制、市場、
取引先等に関する専門情報
の散逸
②不確実性の要因
・開発費・広告宣伝費の高騰
・外国市場の総量規制
・AIやXRの発達
・国別のレイティング(対象
年齢に関する規制)への対
応
・海外資本の開発プラット
フォームや流通プラット
フォームへの依存に伴う、
手数料や規制等の変更に対
する脆弱性
コンテンツ
ゲーム
(2)講じるべき政策パッケージ
①製作支援
・大規模作品製作支援(新市場への進出や新しいゲーム性の実装等の新規性を有する大ヒット作品の創出支援の拡充を通じたモバイルゲーム市場攻
略やPC・オンラインゲーム市場攻略の促進)
・過去のゲームの活用支援(未管理著作物裁定制度の活用等を通じた、過去のゲームの再利用)
・新規IP企画支援(プリプロダクション支援の拡充・利用促進)
・開発プラットフォーム構築支援(AIも活用したゲームエンジンや翻訳・監修システム/XR開発基盤/サーバー基盤等により開発期間・費用の削減
や開発品質を向上)
②海外展開・流通支援
・海外展開支援(eスポーツの国際大会における日本企業のゲームの種目化を促進/eスポーツ選手の国際大会への参加・情報発信を推進/同業種・異
業種の複数のIPのまとまった海外展開/プロモーション/ゲームのローカライズ支援を拡充)
・流通プラットフォーム拡大支援(ゲームIPのグッズ等のEC・小売・アミューズメント施設での国際流通を促進)
・海賊版対策(検索非表示、削除要請や訴訟、現地機関との国際連携・執行等、AIによる権利侵害への対応等を支援)(ODAの活用 )
③人材支援
・高度人材供給エコシステムの構築(独創的な若手クリエイターの発掘・育成、海外での発表支援/インディーゲーム開発に取り組むスタート
アップ支援を拡充/グローバルビジネス人材の育成)
・産業界のニーズを踏まえた人材育成(官民人材育成プランの策定/高等教育機関における実践/初等中等教育との連携)
④全般的・横断的な取組
・複数年の支援も含む大規模・長期・戦略的な官民投資(※単なる収支改善に留まらず、大規模化/新規市場開拓等につながるような追加
投資を伴う事業/事業者を重点的に支援する。その際、スキームの簡素化や間接費用の削減を通じて、制作現場への裨益を最大化する。予算配分の全体
最適化や予算執行の一元化、官民の叡智の結集に向けて一気通貫の新たな支援体制を構築する。)
・大胆な投資促進税制・研究開発税制の活用促進
・海外拠点の機能増強(JETROの海外拠点数強化・コンテンツ専門情報DB構築・NW体制整備)、在外公館・国際交流基金・ジャパン・
ハウスの活用
・スマホ法の運用等を通じた、公正かつ自由な競争環境の整備
・収集・保存、リサーチ、展示・活用の機能を有するメディア芸術ナショナルセンター構想の官民連携による実現
302
コンテンツ
ゲーム
方向性
現状認識
日本のゲーム産業は、コンテンツ分野の海外展開において約6割を占める中核的な存在であり、アニメや実写など他分野への波及効果も大
きい。一方で、近年は開発費が高騰しており、収益性を高めることで大胆な投資の原資を確保する必要がある。
勝ち筋
ゲーム開発は不確実性が高く、民間だけでは過少投資に陥るため、政府の支援を通じ、民間投資を喚起し、収益力向上を図る。
海外市場の獲得に向け日本ゲーム産業の強みである家庭用ゲーム機市場に加えて、モバイル・PCゲームの新市場進出や新しいゲーム性へ
の挑戦による産業構造変革の推進や収益力強化を図る。
短期的な効果発現に向けて、既存IPのゲームの世界的な収益力向上を図りながら、これらの収入で新規IPのゲームに投資し、次の世界的
な大ヒット作品を生み出す好循環を作る。
打破すべき現状
開発費が高騰し、投資リスク上昇
大作の続編に傾注し、新市場・新
規性への挑戦に躊躇
講ずるべき施策
新市場への進出や新しいゲーム性の実装等の新規性を有する海外
向け大型作品の製作、新規IP開発を支援
研究開発税制を通じて、新市場への進出や新しいゲーム性の実装
等の新規性を有するゲームの開発・普及を促進
目標
2033年に
海外売上12兆円
AIやXR、ブロックチェーンといった高度な技術も活用した開発
プラットフォームを整備
海外でのグッズの流通促進や、安価な取引手数料の流通プラット
フォームの普及を通じて、再投資原資の確保を促進
303
コンテンツ
②アニメ
304
コンテンツ
アニメ
1.現状認識と目指す姿【目標】
(1)現状
(2) 目標
① 現状
・日本のアニメ産業は急成長を続けておりコンテンツ分野の海外売上の3割強を占め、日本発
コンテンツの認知度の向上に寄与している。
・アニメは主に配信プラットフォームを通じて海外展開されているが、配信権を固定報酬で許
諾し、作品がヒットした場合であっても追加的な収益を十分に取り込めない事態が生じてい
る。加えて、多くの作品は製作委員会方式*で製作されており、制作会社の出資機会・比率
や制作印税が限定的であることから、成果に応じた収益還元は必ずしも十分とは言えない。
この結果、制作会社においては、海外展開を見据えた大型の新規IP開発や人材育成、制作設
備への投資に必要な原資の確保が困難となっている。
・教育機関の教育内容と産業界が求めるスキルとの間にギャップが生じている。多くの制作会
社には十分な育成余力がなく、高い専門性や技術を持ち制作を担う人材が不足しているため、
制作能力の向上に制約が生じている。また、一部工程については、制作コスト削減等を目的
として海外への外注が行われており、技術継承や地政学的リスクの問題が懸念される。
・海賊版が国際的に流布しており、海賊版被害額は映像分野で年間2.3兆円に達する。
・配信事業者への納品又はライセンス時の支払が長期の分割払いとなることがあり、製作・制
作会社の資金繰りに影響が生じている。
① 国内外で獲得を目指す市場
・2033年にアニメ分野では海外売上6兆円を
目指す。
② 達成すべき戦略的な目標
・日本のソフト・パワーの強化
・日本文化に好印象を持つ層の増大
・訪日外国人のコンテンツ関連消費額の拡大
② 取り巻く環境と構造変化
・アニメの映像品質への要求水準の上昇や正社員化の進展、賃金の上昇、ソフトウェア費・
サーバー費、円安による外注費増加などにより、制作費は高騰している。
・生成AIにより、日本のキャラクター等に類似した生成物が広く拡散されている。
③ 経済的・戦略的な重要性
・経済的重要性:アニメを含むコンテンツ産業では、国内投資を倍増させることで、2040年
には貿易・サービス収支の黒字の半分に相当する4.8兆円を稼ぎ出す産業に成長する可能性。
・戦略的重要性:コンテンツ産業は、ソフト・パワー指数で世界4位に位置するなど、国際的
な文化発信力の源泉。また、コンテンツを目的とした訪日外国人の増加に寄与。
*製作委員会方式:映像製作事業のため1社単独出資ではなく
複数社が出資する資金調達方法のこと
305
コンテンツ
アニメ
2.勝ち筋の特定と官民投資の具体像【道筋】
(1)基本戦略
(2)官民投資の具体像
① 勝ち筋
・海外での興行・配信・MD*収入の拡大に繋げるため、競争力のあるIPを原作として、従来の制作
手法も活かしながら、AIも活用した高度な開発プラットフォームを活用し、大規模な資金を確保
してブロックバスター作品に投資・製作する。その際には、産業全体としての製作能力の強化が
必要なため、日本の国際的な流通プラットフォームのシェアを高めて回収率の向上を図りながら、
出資・制作印税の比率といった成果報酬率を高める構造改革を一体的に進める。
・加えて、アニメからマンガまで、各分野で成長中のオンライン・オフラインの国際流通プラット
フォームが連携して「群れ」となることで、多様性という武器を活かし、海外需要を開拓する。
これにより、日本の国際的な流通網を確保し、世界展開する日本発コンテンツが収益をあげて再
投資できる好循環を生み出せる環境を整備する。
① 投資内容
・製作機能への投資
・流通機能への投資
・海賊版対策機能への投資
・人材獲得・育成への投資
(同時に以下の事柄にも取り組む)
・新市場開拓や新規IP創出に向けてスタートアップによる製作やIP企画立案を促進しながら、高度
な制作・企画人材の確保・育成も進めるなど、すそ野の広い創作基盤を構築する。これにより、
大規模作品の製作/制作へのステップアップを試みる挑戦や、中小規模の作品を含む多様な規
模・形態のコンテンツの確保を推進する。
・海賊版対策の強化、生成AIによる類似生成物への権利行使支援、ローカライズの推進、融資を活
用した資金調達手法の整備に加え、クリエイターが活躍しやすい就業・取引環境を整備すること
で、安定した収益基盤と持続的な制作体制を確立する。
・日本作品への評価を高め、ファンダムを拡大するため、海外見本市や国際芸術祭への参加支援、
海外向けイベントへの出展・開催、テーマパークの整備、プロモーション、国際的な顕彰を推進
する。
③ 定量的インパクト:投資による経済波及効果
2033年度までで93.5兆円と想定
② 投資額
2033年度までで3.3兆円と想定
② 我が国として構築すべき機能
・世界的な大ヒット作品を継続的に生み出す製作機能
・世界中のファンに作品やグッズを広く届ける流通機能
・海賊版の流通を抑制する海賊版対策機能
※前提として、クリエイターは政府から作品の中身に口を出されることなく創意工夫により自由
に創作を行う。また適切に対価が還元され次なる創作活動に邁進できるような好循環を実現する。
*MD(マーチャンダイジング):
コンテンツIPの価値を、商品化・ライセンス・関連購買等を
通じて拡張し、本体収入に加えて二次的・周辺的な収益を生
み出す取組
*製作委員会方式:映像製作事業のため1社単独出資ではなく
複数社が出資する資金調達方法のこと
306
3.官民投資促進に向けた課題と政策パッケージ【政策手段】
(1)投資促進に向けた課題
コンテンツ
アニメ
(2)講じるべき政策パッケージ
①製作支援
・大規模作品製作支援(事業構造改革と一体となった大規模作品製作の支援)
・新規IP企画支援(コンテンツの初期段階の製作・開発に取り組む事業の支援)
・開発プラットフォーム構築支援(コンテンツ製作のための開発プラットフォームの構築を支援)
・資金調達環境整備(価値評価や完成保証等を通じた多様かつ自律的な資金調達を可能とする環境の整備)
・取引環境整備(支払期日の短縮等を通じた資金繰り改善、製作委員会・配信プラットフォーム等の間の取引条件の明確化、取引
条件の設定等に関する取引適正化指針(制作委託の場合の視聴回数等情報の開示を含む)の策定)
②海外展開・流通支援
・流通プラットフォーム拡大支援(日本の国際的な流通プラットフォームの拡大を支援)
・海外展開支援(同業種・異業種の複数のIPのまとまった海外展開や国際見本市や国際映画祭、国際的な顕彰を通じた情報発信を
含むプロモーションやローカライズの支援)(政府関連機関によるイベントを通じた情報発信の推進)
・海賊版対策(検索非表示、削除要請や訴訟、現地機関との国際連携・執行等、AIによる権利侵害への対応等を支援)(ODAの活用)
②不確実性の要因
・AIへの対応(プリンシプル・コード(仮称)の制定等を通じた適切な知的財産の保護と利活用につながる透明性の確保)
・外国市場の総量規制の動向
③人材支援
・生成AIの発達
・外国の配信プラットフォー ・高度人材供給エコシステムの構築(スタートアップ支援/独創的な若手クリエイターの発掘・育成、海外での発表支援(国際共同
製作の推進を含む)/他分野連携も担うグローバルビジネス人材の育成)
ムの拡大
・産業界のニーズを踏まえた人材育成(官民人材育成プランの策定/制作に係る職能に応じたスキルやキャリアパスの明確化/企業・
企業間で連携した、アニメーター、スタジオ育成担当者等を対象とした研修支援/新技術を含めた制作実務を担う人材の育成(人
材育成を行う教育機関の整備))
・就労環境整備(アニ適(仮称)の具体化/処遇改善を通じた人材定着/柔軟な労働時間制度を含む現行制度の周知・相談支援等/育
児支援等を通じた働きやすい環境整備)
④全般的・横断的な取組
・複数年の支援も含む大規模・長期・戦略的な官民投資(※ 単なる収支改善に留まらず、大規模化/新規市場開拓等に加え、すそ
野の拡大や人材基盤強化につながるような追加投資を伴う事業/事業者を重点的に支援する。その際、スキームの簡素化や間接費
用の削減を通じて、制作現場への裨益を最大化する。予算配分の全体最適化や予算執行の一元化、官民の叡智の結集に向けて一
気通貫の新たな支援体制を構築する。)
・大胆な投資促進税制・研究開発税制等の活用促進(開発ツール、スタジオ等)
・海外拠点の機能増強(JETROの海外拠点数強化・コンテンツ専門情報DB構築・NW体制整備)、在外公館・国際交流基金・ジャ
パン・ハウスの活用
・収集・保存、リサーチ、展示・活用の機能を有するメディア芸術ナショナルセンター構想の官民連携による実現
①リソース制約
・低い成果報酬率等を要因と
した製作資金の不足
・国際的な流通網の不足
・海賊版対策力の不足
・高度な制作・企画・翻訳人
材の不足
・ローカライズに必要な海外
の文化や規制、市場等に関
する専門情報の不足
307
コンテンツ
アニメ
方向性
現状認識
日本のアニメ産業は急成長を続けておりコンテンツ分野の海外売上の3割強を占め、日本発コンテンツの認知度の向上に寄与している。
アニメは主に配信プラットフォームを通じて海外展開されているが、配信権を固定報酬で許諾し、作品がヒットした場合であっても追加的な収益を十分に
取り込めない事態が生じている。加えて、多くの作品は製作委員会方式で製作されており、制作会社の出資比率や制作印税が限定的であることから、成果
に応じた収益還元は必ずしも十分とは言えない。
教育機関の教育内容と産業界が求めるスキルとの間にギャップが生じている。多くの制作会社には十分な育成余力がなく、高い専門性や技術を持ち制作を
担う人材が不足しているため、制作能力の向上に制約が生じている。
海賊版が国際的に流布しており、海賊版被害額は映像分野で年間2.3兆円に達する。
勝ち筋
海外での興行・配信・MD収入の拡大に繋げるため、競争力のあるIPを原作として、従来の制作手法も活かしながら、AIも活用した高度な開発プラット
フォームを活用し、大規模な資金を確保してブロックバスター作品に投資・製作する。その際には、産業全体としての製作能力の強化が必要であるところ、
日本の国際的な流通プラットフォームのシェアを高めて回収率の向上を図りながら、出資・制作印税の比率といった成果報酬率を高める構造改革を一体的
に進める。
加えて、アニメからマンガまで、各分野で成長中のオンライン・オフラインの国際流通プラットフォームが連携して「群れ」となることで、多様性という
武器を活かし、海外需要を開拓する。これにより、日本の国際的な流通網を確保し、世界展開する日本発コンテンツが収益をあげて再投資できる好循環を
生み出せる環境を整備する。
講ずるべき施策
打破すべき現状
成果報酬率が低く、再投資原資が不足
上記も背景に、大規模作品が製作困難
高度な開発プラットフォームが不足
海外売上拡大につながる流通網が不足
人材育成に課題
製作/制作会社が受け取る成果報酬率の向上に向けた構造改革
上記と一体となった海外向けの大型作品製作の支援・新規IP開発の支援、
価値評価や完成保証等を通じた自律的な資金調達を可能とする環境の整備
開発プラットフォームの支援
日系配信プラットフォームの支援や、二次利用収入拡大につながるグッズ等の流通
網の整備
高度制作・企画人材、制作実務を担う人材等の確保・育成、就業・取引環境の整備
すそ野の広い創作基盤を整備することで、中小規模の作品を含む多様な規模・形態
のコンテンツの支援
*製作委員会方式:映像製作事業のため1社単独出資ではなく複数社が出資する資金調達方法のこと
*MD(マーチャンダイジング):コンテンツIPの価値を、商品化・ライセンス・関連購買等を通じて拡張し、本体収入に加えて二次的・周辺的な収益を生み出す取組
目標
2033年に
海外売上6兆円
308
コンテンツ
③マンガ
309
コンテンツ
マンガ
1.現状認識と目指す姿【目標】
(1)現状
(2) 目標
① 現状
・日本のマンガ産業は、コンテンツ分野の海外売上の約5%を占め、ゲーム・アニメ・実写分
野に原作を供給する日本発コンテンツ全体の競争力を支えるIPの源泉である。
・正規版のローカライズが十分に行われない結果、正規版より先行して配信される海賊版や正
規版の翻訳が存在しない海賊版が世界的に流布しているため、年間2.6兆円の海賊版被害が
発生し、有料で電子マンガを読むという文化が定着していない。
・そのため、出版社等にとって正規版をローカライズする動機が減退している。
・他方で、海賊版の流布は海外に読者が存在することの証左であり、正規版流通でさらなる海
外売上の拡大を見込める。
① 国内外で獲得を目指す市場
・2033年にマンガ分野では海外売上1兆円を
目指す。
② 達成すべき戦略的な目標
・日本のソフト・パワーの強化
・日本文化に好印象を持つ層の増大
・訪日外国人のコンテンツ関連消費額の拡大
② 取り巻く環境と構造変化
・コミックというカテゴリーでは、日本独自のマンガというフォーマットの競争力は高いが、
スマートフォンの形状に合わせて縦にスクロールして読む韓国発のウェブトゥーンという
フォーマットも市場成長を続けている。
・EUではアクセシビリティ対応義務が強化され、音声読み上げ等への対応が必要である。
・生成AIの進展により、従来とは異なるマンガの作り方が生まれつつある。
③ 経済的・戦略的な重要性
・経済的重要性:マンガを含むコンテンツ産業では、国内投資を倍増させることで、2040年
には貿易・サービス収支の黒字の半分に相当する4.8兆円を稼ぎ出す産業に成長する可能性。
・戦略的重要性:コンテンツ産業は、ソフト・パワー指数で世界4位に位置するなど、国際的
な文化発信力の源泉。また、コンテンツを目的とした訪日外国人の増加に寄与。
310
コンテンツ
マンガ
2.勝ち筋の特定と官民投資の具体像【道筋】
(1)基本戦略
① 勝ち筋
・2.6兆円と被害が大きい海賊版流通を抑制しながら、紙・電子書籍やマンガ版権グッズ
の正規流通を促す。具体的には、海賊版削除や海賊版サイト閉鎖に繋がる海賊版対策に
加えて、AIも活用したローカライズや翻訳人材の育成による供給制約の解消によるサイ
マル配信や配信量の拡大、プロモーションによるマンガの海外ファンの拡大を進める。
それらにより、海外で流通割合の高い紙書籍とともに電子書籍の流通を拡大して、収益
力を高める。
・加えて、アニメからマンガまで、各分野で成長中のオンライン・オフラインの国際流通
が連携して「群れ」となることで、多様性という武器を活かし、海外需要を開拓する。
これにより、日本の国際的な流通網を確保し、世界展開する日本発コンテンツが収益を
あげて再投資できる好循環を生み出せる環境を整備する。
(同時に以下の事柄にも取り組む)
・高度な制作・企画人材の育成や、開発プラットフォームの整備、ローカライズの促進、
アクセシビリティ対応の体制整備、生成AIによる類似生成物への権利行使を通じて供給
力と海外展開力を強化する。
・海外向けイベントの開催・出展やプロモーション、国際的な顕彰を通じてファンダムを
拡大して、収益基盤を強化する。
・官民コンソーシアムを通じてマンガ文化の海外発信を進める。
② 我が国として構築すべき機能
・世界的な大ヒット作品を継続的に生み出す製作機能
・世界中のファンに作品やグッズを広く届ける流通機能
・海賊版の流通を抑制する海賊版対策機能
※前提として、クリエイターは政府から作品の中身に口を出されることなく創意工夫に
より自由に創作を行う。また適切に対価が還元され次なる創作活動に邁進できるような
好循環を実現する。
(2)官民投資の具体像
① 投資内容
・製作機能への投資
・流通機能への投資
・海賊版対策機能への投資
・人材獲得・育成への投資
② 投資額
2033年度までで1.6兆円と想定
③ 定量的インパクト:投資による経済波及効果
2033年度までで17.2兆円と想定
*サイマル配信:
作品を複数言語で同タイミングで世界に届ける仕組み
311
3.官民投資促進に向けた課題と政策パッケージ【政策手段】
コンテンツ
マンガ
(1)投資促進に向けた課題
(2)講じるべき政策パッケージ
①リソース制約
・海賊版対策力の不足
・翻訳人材や高度な制作、
企画人材の不足
・国際的な流通網の不足
・ローカライズに必要な海
外の文化や規制、市場等
に関する専門情報の不足
①海外展開・流通支援
・海賊版対策(検索非表示、削除要請や訴訟、現地機関との国際連携・執行等、AIによる権利侵害への対応等を支援)
(ODAの活用 )
・AIへの対応 (プリンシプル・コード(仮称)の制定等を通じた、適切な知的財産の保護と利活用につながる透明性の
確保)
・流通プラットフォーム拡大支援(日本の国際的な配信の拡大を支援)
・海外展開支援(同業種・異業種の複数のIPのまとまった海外展開や、ブックフェア、国際的な顕彰を通じた情報発信
を含むプロモーション、ローカライズの支援)(政府関連機関によるイベントを通じた情報発信の推進)
・文化発信(次世代のデジタル配信プラットフォームの構築に向けたコンソーシアム創出等)
②不確実性の要因
・マンガを読む文化の未定
着
・既存の表現が現地の文化
では問題となるリスク
・生成AIの発達
②人材支援
・高度人材供給エコシステムの構築 (独創的な若手クリエイターの発掘・育成、海外での発表支援/グローバルビジネス
人材の育成)
・産業界のニーズを踏まえた人材育成 (官民人材育成プランの策定/翻訳など制作実務を担う人材の育成)
③製作支援
・開発プラットフォーム構築支援(コンテンツ製作のための開発プラットフォームの構築を支援)
④全般的・横断的な取組
・複数年の支援も含む大規模・長期・戦略的な官民投資(※単なる収支改善に留まらず、大規模化/新規市場開拓等につ
ながるような追加投資を伴う事業/事業者を重点的に支援する。その際、スキームの簡素化や間接費用の削減を通じて、
制作現場への裨益を最大化する。予算配分の全体最適化や予算執行の一元化、官民の叡智の結集に向けて一気通貫の
新たな支援体制を構築する。)
・海外拠点の機能増強(JETROの海外拠点数強化・コンテンツ専門情報DB構築・NW体制整備)、在外公館・国際交流
基金・ジャパン・ハウスの活用
・収集・保存、リサーチ、展示・活用の機能を有するメディア芸術ナショナルセンター構想の官民連携による実現
312
コンテンツ
マンガ
方向性
現状認識
日本のマンガ産業は、コンテンツ分野の海外売上の約5%を占め、ゲーム・アニメ・実写分野に原作を供給する日本発コンテンツ全体の競争力を支え
るIPの源泉である。
正規版のローカライズが十分に行われない結果、正規版より先行して配信される海賊版や正規版の翻訳が存在しない海賊版が世界的に流布しているた
め、年間2.6兆円の海賊版被害が発生し、有料で電子マンガを読むという文化が定着していない。
そのため、出版社等にとって正規版をローカライズする動機が減退している。
他方で、海賊版の流布は海外に読者が存在することの証左であり、正規版流通でさらなる海外売上の拡大を見込める。
勝ち筋
2.6兆円と被害が大きい海賊版流通を抑制しながら、紙・電子書籍やマンガ版権グッズの正規流通を促す。具体的には、海賊版削除や海賊版サイト閉鎖
に繋がる海賊版対策に加えて、AIも活用したローカライズや翻訳人材の育成を通じた供給制約の解消によるサイマル配信や配信量の拡大、プロモーショ
ンによるマンガの海外ファンの拡大を進める。それらにより、海外で流通割合の高い紙書籍とともに電子書籍の流通プラットフォームを拡大して、収益力
を高める。
加えて、アニメからマンガまで、各分野で成長中のオンライン・オフラインの国際流通プラットフォームが連携して「群れ」となることで、多様性とい
う武器を活かし、海外需要を開拓する。これにより、日本の国際的な流通網を確保し、世界展開する日本発コンテンツが収益をあげて再投資できる好循
環を生み出せる環境を整備する。
打破すべき現状
講ずるべき施策
目標
海賊版の蔓延
削除要請や訴訟等を通じて、海賊版対策を推進
2033年に
正規版流通網の供給不足
翻訳人材・AIも活用したローカライズによる供給制約の解消
電子書籍に加えて紙書籍も含めて流通プラットフォームを拡大
日系コンテンツ配信プラットフォーム間の広告・コラボレー
ション促進、国際的な流通網の整備によるグッズ等のIP収入の
多角化
海外売上1兆円
流通プラットフォームの欠如
プロモーションの不足
官民コンソーシアムを通じたマンガ文化の海外発信
313
コンテンツ
④音楽
314
コンテンツ
音楽
1.現状認識と目指す姿【目標】
(1)現状
(2) 目標
① 現状
・日本の音楽産業は、コンテンツ分野の海外売上の約2%ではあるものの、ゲーム・アニメ・
実写分野の熱狂を創出する役割を担っている。
・音楽は、配信プラットフォーム等での日常的な視聴体験だけではなく、ライブを通じた非日
常的体験がファンの熱狂を創り出し、配信・グッズ等の収入を高めるが、海外でのライブや
大規模イベントはコストが大きく、十分な供給が行われていない。
・アニメの普及に伴い、アニメソングの認知度は高まっているが、その他の楽曲の認知度は伸
びしろが大きい。
① 国内外で獲得を目指す市場
・2033年に音楽分野では海外売上0.7兆円を
目指す。
② 達成すべき戦略的な目標
・日本のソフト・パワーの強化
・日本文化に好印象を持つ層の増大
・訪日外国人のコンテンツ関連消費額の拡大
② 取り巻く環境と構造変化
・外国企業が提供する国際的な配信プラットフォームが普及し、アーティストは簡単に音楽を
世界に発信できるようになった。
・楽曲制作やボーカル生成においてAI技術活用の兆しがある一方で、既存アーティストの声や
楽曲が模倣されるといった権利侵害のおそれが新たな脅威となっている。
・日本にはレコード演奏・伝達権がこれまでなかったため、海外で日本の楽曲がBGM等とし
て利用されても、相互主義によりアーティスト等が海外からの対価を得られていない。
③ 経済的・戦略的な重要性
・経済的重要性:音楽を含むコンテンツ産業では、国内投資を倍増させることで、2040年に
は貿易・サービス収支の黒字の半分に相当する4.8兆円を稼ぎ出す産業に成長する可能性。
・戦略的重要性:コンテンツ産業は、ソフト・パワー指数で世界4位に位置するなど、国際的
な文化発信力の源泉。また、コンテンツを目的とした訪日外国人の増加に寄与。
315
コンテンツ
音楽
2.勝ち筋の特定と官民投資の具体像【道筋】
(1)基本戦略
(2)官民投資の具体像
① 勝ち筋
・日本のアーティスト・楽曲に対する認知を拡大するため、既に海外で認知度の高いアニ
メソングを起点に国内外でのライブや大規模イベントを展開して熱狂的な海外ファンダ
ムを形成・拡大する。そのファンダムを入口としてアーティストの楽曲全体や日本の音
楽全体への関心・消費を喚起することで、音楽の配信収入やグッズ販売の増加につなげ
る。
・特に世界的なヒットが期待されるアーティストの海外ライブやミュージックビデオと
いった映像コンテンツの海外展開を強化することで、日本の音楽の国際的な認知度向上
と海外市場での需要拡大を図る。
① 投資内容
・製作機能への投資
・流通機能への投資
・海賊版対策機能への投資
・人材獲得・育成への投資
(同時に以下の事柄にも取り組む)
・アーティストを育成する人材や海外展開を企画できる人材の確保・育成に加え、新規IP
創出やスタートアップによる製作の促進、開発プラットフォームの整備を通じて、国際
的に活躍できるアーティストを輩出する力を強化する。
・流通プラットフォームの整備を通じたMD収入の拡大や、レコード演奏・伝達権の着実
な導入によるイコールフッティングの確立、国際標準を踏まえたメタデータの整備、海
賊版対策によって収益基盤を強化する。
・音楽分野をゲーム、アニメ、マンガ、実写、「みる」スポーツ等と組み合わせた展開を
促し、海外市場への浸透を図る。
③ 定量的インパクト:投資による経済波及効果
2033年度までで15.0兆円と想定
② 我が国として構築すべき機能
・世界的な大ヒット作品を継続的に生み出す製作機能
・世界中のファンに作品やグッズを広く届ける流通機能
・海賊版の流通を抑制する海賊版対策機能
※前提として、クリエイターは政府から作品の中身に口を出されることなく創意工夫に
より自由に創作を行う。また適切に対価が還元され次なる創作活動に邁進できるような
好循環を実現する。
② 投資額
2033年度までで3.0兆円と想定
*MD(マーチャンダイジング):
コンテンツIPの価値を、商品化・ライセンス・関連購買等を通じて拡張し、
本体収入に加えて二次的・周辺的な収益を生み出す取組
316
3.官民投資促進に向けた課題と政策パッケージ【政策手段】
コンテンツ
音楽
(1)投資促進に向けた課題
(2)講じるべき政策パッケージ
①リソース制約
・海外ファンダムを形成
する能力の不足
・国際的な流通網の不足
・海賊版対策力の不足
・高度な制作・企画人材
の不足
・海外の文化や規制、市
場等に関する専門情報
の不足
①海外展開・流通支援
・海外展開支援(同業種・異業種の複数のIPのまとまった海外展開やライブを含むプロモーションの支援/ローカライズ
支援)
・イコールフッティングの確保(レコード演奏・伝達権の着実な導入)
・流通プラットフォーム拡大支援(日本の国際的な流通プラットフォームの拡大を支援)(政府関連機関によるイベン
トを通じた情報発信の推進)
・海賊版対策(検索非表示、削除要請や訴訟、現地機関との国際連携・執行等、AIによる権利侵害への対応等を支援)
(ODAの活用)
②不確実性の要因
・現地事情に鑑みライブ
が中止になることがあ
る
・外国の配信プラット
フォームへの依存
・生成AIの発達
②製作支援
・新規IP企画支援(新規事業としてのライブや映像コンテンツの製作に取り組む事業の支援)
・開発プラットフォーム構築支援(コンテンツ製作のための開発プラットフォームの構築を支援)
③人材支援
・高度人材供給エコシステムの構築(スタートアップ支援/独創的な若手作曲家や演奏家の発掘・育成、海外での発表支
援)
・産業界のニーズを踏まえた人材育成(官民人材育成プランの策定/海外ビジネス人材の育成)
④全般的・横断的な取組
・複数年の支援も含む大規模・長期・戦略的な官民投資(※単なる収支改善に留まらず、大規模化/新規市場開拓等につ
ながるような追加投資を伴う事業/事業者を重点的に支援する。その際、スキームの簡素化や間接費用の削減を通じて、
制作現場への裨益を最大化する。予算配分の全体最適化や予算執行の一元化、官民の叡智の結集に向けて一気通貫の
新たな支援体制を構築する。)
・海外拠点の機能増強(JETROの海外拠点数強化・コンテンツ専門情報DB構築・NW体制整備)、在外公館・国際交流
基金・ジャパン・ハウスの活用
317
コンテンツ
音楽
方向性
現状認識
日本の音楽産業は、コンテンツ分野の海外売上の約2%ではあるものの、ゲーム・アニメ・実写分野の熱狂を創出する役割を担っている。
音楽は、配信プラットフォーム等での日常的な視聴体験だけではなく、ライブを通じた非日常的体験がファンの熱狂を創り出し、配信・グッ
ズ等の収入を高めるが、海外でのライブや大規模イベントはコストが大きく、十分な供給が行われていない。
アニメの普及に伴い、アニメソングの認知度は高まっているが、その他の楽曲の認知度は伸びしろが大きい。
勝ち筋
日本のアーティスト・楽曲に対する認知を拡大するため、既に海外で認知度の高いアニメソングを起点に国内外でのライブや大規模イベント
を展開して熱狂的な海外ファンダムを形成・拡大する。そのファンダムを入口としてアーティストの楽曲全体や日本の音楽全体への関心・消
費を喚起することで、音楽の配信収入やグッズ販売の増加につなげる。
特に世界的なヒットが期待されるアーティストの海外ライブやミュージックビデオといった映像コンテンツの海外展開を強化することで、日
本の音楽の国際的な認知度向上と海外市場での需要拡大を図る。
打破すべき現状
高い海外ライブコストによりラ
イブの供給が不足
流通プラットフォームの不足
海外展開のための人材が不足
イコールフッティングが確立さ
れていない
講ずるべき施策
新規性を有する海外向けライブ・イベントを中心とした開催支援
楽曲やライブの配信、グッズ流通等を担う日系のプラットフォー
ムの整備
目標
2033年に
海外売上0.7兆円
グローバル展開に向け、アーティストの育成人材やライブ等の海
外展開を企画できる人材を確保、育成
レコード演奏・伝達権の着実な導入
318
コンテンツ
⑤実写
319
コンテンツ
実写
1.現状認識と目指す姿【目標】
(1)現状
(2) 目標
① 現状
・日本の実写産業は、コンテンツ分野の海外売上の約2%。原作や、制作力に強みを有してお
り、例えば日本発コンテンツを原作として海外スタジオが製作した実写作品や、海外の配信
事業者が大規模な資金を拠出して日本の制作会社が創った実写作品の一部が世界的にヒット
している。
・他方で、国内事業に注力し、海外展開が不十分だった結果、配信やモバイルという新しい
フォーマットに最適化したコンテンツの提供に出遅れたため、成長する海外市場や配信・モ
バイル市場の利益を十分に取り込めていない。
・製作面では、成果報酬率の低さや、海外市場向けの製作ノウハウ不足、世界に通用するコン
テンツの製作に必要なVFX等の先進的な設備とそれを使いこなせる人材の不足が課題。
・また、長時間労働などの就業環境や、スタッフへの対価還元及び人材育成や、価格転嫁など
の取引環境に課題がある。
① 国内外で獲得を目指す市場
・2033年に実写分野では海外売上0.5兆円を
目指す。
② 達成すべき戦略的な目標
・日本のソフト・パワーの強化
・日本文化に好印象を持つ層の増大
・訪日外国人のコンテンツ関連消費額の拡大
② 取り巻く環境と構造変化
・海外の配信プラットフォームの台頭や視聴環境の変化により、実写の映画・テレビ産業をめ
ぐる環境は変化。国内で多数存在する日系配信プラットフォームの海外展開は限定的であり、
十分な収益源を確保できておらず、国際競争を戦えるだけの資本力を持っていない。
・スマートフォンの普及により縦型フォーマットやショートといった新たなフォーマットの実
写が普及。
・AIの発達により権利侵害のおそれが生じている一方で、新しい創作の可能性が生まれている。
③ 経済的・戦略的な重要性
・経済的重要性:実写を含むコンテンツ産業では、国内投資を倍増させることで、2040年に
は貿易・サービス収支の黒字の半分に相当する4.8兆円を稼ぎ出す産業に成長する可能性。
・戦略的重要性:コンテンツ産業は、ソフト・パワー指数で世界4位に位置するなど、国際的
な文化発信力の源泉。また、コンテンツを目的とした訪日外国人の増加に寄与。
320
コンテンツ
実写
2.勝ち筋の特定と官民投資の具体像【道筋】
(1)基本戦略
① 勝ち筋
・海外での興行収入や配信収入の拡大のため、日本だけではなく世界に配信して大ヒットを狙う
ことを前提とするモデルへの転換を図る。具体的には競争力のあるIPを原作として、VFX等の
活用やこれに対応した高度な撮影スタジオを活用し、融資やPPL(プロダクトプレイスメン
ト)も活用しながら大規模な資金を確保してブロックバスター作品に投資・製作する。
・その際には、産業全体としての制作・製作能力の強化が必要なため、海外スタジオの大作をロ
ケ誘致してノウハウを吸収するとともに、出資・制作印税の比率向上を通じた成果報酬率を高
める構造改革を一体的に進めることで、企業の再投資原資を確保する。
(同時に以下の事柄にも取り組む)
・新市場開拓や新規IP創出に向けてスタートアップ支援やIP企画立案を促進しながら、高度な制
作・企画人材の育成も進めるなど、すそ野の広い創作基盤の構築につなげる。これにより、大
規模作品の製作/制作へのステップアップを試みる挑戦や、中小規模の作品を含む多様な規
模・形態のコンテンツの確保を推進する。
・MD収入の拡大、海賊版対策の強化、ローカライズの推進、融資を活用した資金調達手法の整
備に加え、クリエイターが活躍しやすい就業・取引環境を整備することで、安定した収益基盤
と持続的な制作体制を確立する。
・ファンダム拡大のため、海外見本市や国際芸術祭などへの出展・開催、プロモーションを推進
し、日本企業が参画する配信プラットフォームの海外展開を支援することにより国際展開を加
速させる。
・J-Beauty産業の海外展開との好循環を図りながら、コンテンツ産業の海外売上拡大のため、
PPLを通じたコンテンツの資金調達の多様化、プロモーション連動等を行う。
② 我が国として構築すべき機能
・世界的な大ヒット作品を継続的に生み出す製作機能
・世界中のファンに作品やグッズを広く届ける流通機能
・海賊版の流通を抑制する海賊版対策機能
※前提として、クリエイターは政府から作品の中身に口を出されることなく創意工夫により自由
に創作を行う。また適切に対価が還元され次なる創作活動に邁進できるような好循環を実現す
る。
(2)官民投資の具体像
① 投資内容
・製作機能への投資
・流通機能への投資
・海賊版対策機能への投資
・人材獲得・育成への投資
② 投資額
2033年度までで1.3兆円と想定
③ 定量的インパクト:投資による経済波及効果
2033年度までで8.9兆円と想定
*VFX(Visual Effects):
実写映像にCG等を合成・加工し、表現を拡張する視覚効果技術
*PPL(プロダクトプレイスメント) :
作品内に化粧品といった商品を自然に登場させ、対価を得て宣伝する手法
*MD(マーチャンダイジング):
コンテンツIPの価値を、商品化・ライセンス・関連購買等を通じて拡張し、
本体収入に加えて二次的・周辺的な収益を生み出す取組
* J-Beauty産業:
化粧品、美容家電、美容機器、美容商材、ヘア、ネイル、エステ等の商材・
サービスを提供する産業。J-Beauty産業の具体的な取組については、産業
を構成する主体による民間主導のコンソーシアムにおいて、官学の協力も得
321
ながら議論を行う。
3.官民投資促進に向けた課題と政策パッケージ【政策手段】
コンテンツ
実写
(1)投資促進に向けた課題
(2)講じるべき政策パッケージ
①リソース制約
・低い成果報酬率等を要因
とした製作資金の不足
・国際的な流通網の不足
・海賊版対策力の不足
・高度な制作・企画・翻訳
人材の不足
・ローカライズに必要な海
外の文化や規制、市場等
に関する専門情報の不足
①製作支援
・大規模作品制作支援(事業構造改革と一体となった大規模作品製作の支援)(VFX等に対応した高度なスタジオの活用や、配信
をはじめとした海外展開も当初から目指す実写コンテンツの製作の支援)
・新規IP企画支援(コンテンツの初期段階の製作・開発に取り組む事業の支援)(政府関連機関によるイベントを通じた情報発信
の推進)
・資金調達環境整備(価値評価や完成保証等を通じた多様かつ自律的な資金調達を可能とする環境の整備)
・開発プラットフォーム構築支援(コンテンツ製作のための開発プラットフォームの構築を支援)
②人材育成
・高度人材供給エコシステムの構築(スタートアップ支援/独創的な若手クリエイターの発掘・育成、海外での発表支援(国際共同
製作の推進を含む)/グローバルビジネス人材の育成/NHK還元目的積立金を活用した人材の育成)
・産業界のニーズを踏まえた人材育成(官民人材育成プランの策定/制作に係る職能に応じたスキルの明確化/新技術を含めた制作
実務を担う人材(撮影スタッフやフィルムコミッション人材、VFX技術等の映像技術者を含む)の育成)
・ロケ誘致支援(海外スタジオのノウハウ取得に資する大規模なロケ撮影の誘致を支援)
・就労環境整備(映適の推進/処遇改善を通じた人材定着/柔軟な労働時間制度を含む現行制度の周知・相談支援等/育児支援等を通
じた働きやすい環境整備)
③海外展開・流通支援
・流通プラットフォーム拡大支援(日本の国際的な流通プラットフォームの拡大を支援)
・マッチング支援(国際共同製作の開発段階での日本事業者と海外事業者のマッチングの促進)
・海外展開支援(異業種の複数のIPのまとまった海外展開や国際見本市や国際映画祭通じた情報発信を含むプロモーション、ロー
カライズの支援)
・海賊版対策(検索非表示、削除要請や訴訟、現地機関との国際連携・執行等、AIによる権利侵害への対応等を支援)(ODAの活用)
④全般的・横断的な取組
・複数年の支援も含む大規模・長期・戦略的な官民投資(※単なる収支改善に留まらず、大規模化/新規市場開拓等に加え、すそ野
の拡大や人材基盤強化につながるような追加投資を伴う事業/事業者を重点的に支援する。その際、スキームの簡素化や間接費
用の削減を通じて、制作現場への裨益を最大化する。予算配分の全体最適化や予算執行の一元化、官民の叡智の結集に向けて一
気通貫の新たな支援体制を構築する。)
・大胆な投資促進税制・研究開発税制の活用促進
・海外拠点の機能増強(JETROの海外拠点数強化・コンテンツ専門情報DB構築・NW体制整備)、在外公館・国際交流基金・
ジャパン・ハウスの活用
・国立映画アーカイブの機能強化
322
②不確実性の要因
・外国市場の総量規制の動
向
・生成AIの発達
・外国の配信プラット
フォームへの依存
コンテンツ
実写
方向性
現状認識
日本の実写産業は、コンテンツ分野の海外売上の約2%。
原作や、制作力に強みを有しており、例えば日本発コンテンツを原作として海外スタジオが製作した実写作品や、海外の配信事業者が大規模
な資金を拠出して日本の制作会社が創った実写作品の一部が世界的にヒットしている。
勝ち筋
海外での興行収入や配信収入の拡大のため、日本だけではなく世界に配信して大ヒットを狙うことを前提とするモデルへの転換を図る。具
体的には、競争力のあるIPを原作として、VFX等の活用やこれに対応した高度な撮影スタジオを活用し、融資やPPL(プロダクトプレイスメント)
も活用しながら大規模な資金を確保してブロックバスター作品に投資・製作する。
その際には、産業全体としての制作・製作能力の強化が必要であるところ、海外スタジオの大作をロケ誘致してノウハウを吸収するととも
に、出資・制作印税の比率向上を通じた成果報酬率を高める構造改革を一体的に進めることで、企業の再投資原資を確保する。また、人材
の育成や日本企業が参画する配信プラットフォームの強化を進める。
打破すべき現状
成果報酬率が低く、再投
資原資が不足
既存国内市場への依存
先進的設備の不足
海外市場向けの製作のノ
ウハウが不足
取引・就業環境、人材育
成の課題
講ずるべき施策
成果報酬率を高めることで企業の再投資原資の確保や、日系配信プラットフォーム
の海外展開を強化
上記と一体となった海外向け大型作品の製作支援、新規IP開発支援、価値評価や完
成保証等を通じた自律的な資金調達環境整備
目標
2033年に
海外売上
0.5兆円
VFX等に対応した高度なスタジオの活用
海外スタジオの大規模作品をロケ誘致して、海外の製作/制作ノウハウの取得
供給力強化や海外展開に向け高度な制作・企画人材を確保・育成、クリエイター等
の関連人材が活躍しやすい就業・取引環境を整備
すそ野の広い創作基盤を整備することで、中小規模の作品を含む多様な規模・形態
のコンテンツの支援
*VFX(Visual Effects):実写映像にCG等を合成・加工し、表現を拡張する視覚効果技術
*PPL(プロダクトプレイスメント):作品内に化粧品といった商品を自然に登場させ、対価を得て宣伝する手法
323
資料5
8つの分野横断的課題への対応(主要な施策)(案)①
戦略17分野の国内投
資を進める上での課題
新
競技
争
術
力立
強
国
化・
資料4
課題の解決のために講じる主な施策(例)
•「危機管理投資」・「成長投資」の推進
「危機管理投資」・「成長投資」について、通常の歳出とは別に、予見可能性を持って実施できるよう「新たな投資枠」を創設。このうち、経
済安全保障上、特に重要な分野の投資などについては、複数年度で財源を確保した上で、別枠で管理(※)する政策スキームを検討。
持続的な成長に向けて、
※償還財源の裏付けのある「つなぎ国債」の発行によって先行的な資金調達を可能としたものについては、債務残高対GDP比やPB等の指標において、
投資収益に対する企業
経費及び財源の金額を除いて別枠で管理。
の予見可能性を高め、
国内投資を引き出してい •産業競争力強化に貢献する高い研究力を有する中核大学群への支援
く
戦略17分野を中心とする我が国の産業競争力強化に貢献する、「新技術立国の核」となる大学群の形成に向け、特定分野で特に高い
研究力を有し高度な経営を行う大学を認定し、その研究開発と社会実装を中長期的に支援する新たな制度を創設。
・スタートアップのシーズ段階から出口まで伴走可能なリードインベスターの育成・呼び込みやスタートアップからの調達加速。
ス
アタ
ッ
ー
プト
戦略17分野における成
長投資・イノベーションの
牽引役となるスタートアッ
プの創出・育成
・「スタートアップ総力創出パッケージ」の実行
ー成長資金の供給を強化するため、政府系金融機関等からの更なる資金供給強化の方策を検討。
-ディープテックの初期需要を創出するため、政府がアンカーテナンシー型で本格調達することを促進し、技術開発支援 (補助等)にとど
まっていたSBIR制度を抜本強化。スタートアップを研究開発段階から一貫して支援し、売上計上が可能な委託契約の形で実環境におけ
る試験導入・運用まで行う新たな枠組みとして「戦略製品・技術等政府実装加速化プログラム」を創設する。
-防衛分野における政府調達を加速するため、防衛省版SBIR制度の活用等により、技術開発から調達まで一貫して支援。
・「成長投資を促進するための金融戦略」の策定・実行
ー金融機関の資金供給・成長支援機能の強化(「官民戦略投資連携フォーラム(仮称)」の設置、銀行等が政府系金融機関等と共同出資を行う際
の所要自己資本の軽減等、官民連携による成長資金の供給拡大を図るための方策を検討、大口信用供与等規制(※1)の特例の明確化等を実施)。
潜金
在融
力を
の通
解じ
放た
人
材
育
成
リスクマネーの供給を強化
し、成長投資や事業再
編を促すため、金融機
関・市場の機能を強化
※1 銀行による同一グループへの融資等を自己資本の25%以下に制限する規制
ー厚みのある金融市場の実現(小口・低格付社債の発行を促すための規制の見直し (※2)等)。※2発行会社の社債管理者設置義務を免除する特例を創設
ー地域金融力の強化(中小企業支援の課題等を可視化した「地域未来金融アクションプラン(仮称)」の策定・運用等)。
・成長志向型コーポレートガバナンスへの転換
企業の経営資源配分を成長投資や人材投資に向かわせるよう、適切な経営資源配分について取締役会に説明を求めるコーポレートガバナンス・コード
の改訂に合わせ中長期的企業価値向上のための実務指針となる「成長投資ガイダンス」を策定する。また、機関設計の見直し等の株式会社の選択肢拡
大や株主提案権の要件見直しなど迅速果敢な企業経営に資する会社法の改正を検討する。
•基盤的経費と多様な競争的研究費の充実・強化
先端技術領域での競争力を強化するため、国立大学法人運営費交付金や科研費の大幅拡充など基盤的経費・競争的研究費の充実・
強化を図る。
戦略17分野をはじめ各
産業を支える理工・デジ
タル系人材や現場人材、
イノベーション人材の育 •大学等における理系人材育成強化
産業構造変化に伴い人材需要の大きな変化が見込まれる中、理系が少ない現在の構造のままでは、将来の人材需要とミスマッチが生じる
成
懸念がある。このため、大学の理系分野への学部再編を支援すること等により、成長分野を支える人材の育成を加速していく。
1
8つの分野横断的課題への対応(主要な施策)(案)②
戦略17分野の国内投資を
進める上での課題
労
改働
革市
場
負家
担事
軽等
減の
課題の解決のために講じる主な施策(例)
•柔軟で多様な働き方の実現に向けた労働時間法制の見直し
心身の健康維持と従業者の選択を前提に、柔軟で多様な働き方を実現するため、労働時間法制等に係る政策対応について、
夏以降の労働政策審議会において議論を行う。
戦略17分野の投資のボトルネックと
なる人手不足に対応するため、労働
生産性の向上、雇用者の希望に応 •リ・スキリング支援の強化
戦略17分野やそれを支える社会インフラ関連分野(建設業等)における人材の育成・確保に向け、各分野の業所管省庁と厚労省・経
じた形での労働移動の円滑化、労
産省・文科省が連携して、分野ごとのスキル標準の策定から教育訓練プログラムの開発・提供まで、一気通貫でリ・スキリング支援を行う。
働参加の促進
人材開発支援助成金も含め、効果的にプログラムの開発が進むような支援の充実や、業所管省庁が開発されたプログラムを大臣認
定する制度を創設した場合、その適切性を精査した上で、専門実践・特定一般教育訓練給付金の対象とすること等を検討。
育児や介護による離職を防止し、女
• 家事支援サービス及びベビーシッター等の利用への支援策
性を含め多様な人材が労働参加でき
家事支援サービスの品質・信頼性向上のため、国家資格(技能検定)の創設(来秋目途に第1回試験実施)を目指すとと
るよう、家事支援・ベビーシッターサービ
もに、家事支援・ベビーシッター等の利用に対する税制措置を含む支援策の検討を行う。
スの利用を促進
• 「労働供給制約社会における中堅・中小企業の「稼ぐ力」強化戦略」の実行
中堅・中小企業の経営者が予見可能性を確保し、賃上げと投資の好循環を実現できるよう、以下を柱とする「稼ぐ力」強化戦
略を実行するとともに、必要な予算を確保し、従来よりも力強い支援を安定的かつ切れ目なく行っていく。
ー補助金について、足下の賃上げ状況も審査・評価する仕組みに見直すことで、早期の賃上げを促すとともに、積極的に賃上
げを行う中小企業を重点支援するため税制も含めた効果的な措置を検討する。
ー官公需(特に地方・独法等)での価格転嫁を強力に推進する「官公需における価格転嫁・取引適正化加速化プラン」を
策定・実行していく(低入札価格調査制度等の主要な措置について2027年度末までに100%実施を目指す)。
-100億企業創出メカニズムの強化のための成長投資支援の強化等を行うとともに、成長志向の中小企業の裾野を広げる
新たなメカニズム(売上1~10億円、小規模事業者)の構築に取り組む。
-併せて、労働供給制約の中で、中小企業のM&A・事業承継を促進すべく、中小M&A支援を行う者(個人)の資格制度
の創設(法制化)等を検討していく。
-12業種「省力化投資促進プラン」の着実な実行。
環
境賃
整上
げ
備
戦略17分野のサプライチェーンを支
え、地方を含む「投資と賃上げの好
循環」の原動力となる中小企業の
「稼ぐ力」を強化
セ
キサ
ュイ
リバ
テー
ィ
戦略17分野の投資成果を守り、事
業活動の持続可能性を確保するた • 「サイバーセキュリティ戦略」(昨年12月)に基づく具体的な取組を実行
-能動的なサイバー防御を実施するための体制整備(インシデント報告や官民の情報共有のためのシステム整備・拡充等)。
め、重要インフラやサプライチェーンを
含め、社会全体のセキュリティ水準
-重要インフラ(情報通信、金融、電力、ガス等)における基本的対策を徹底するための統一基準の策定・実施等。
を向上
資料6
資料5
日本成長戦略の下での中長期的な
経済・財政の姿に関する試算
2026年6月24日
内閣府
日本成長戦略の下での中長期的な経済・財政の姿に関する試算の位置づけ
•
本年5月11日の経済財政諮問会議における総理指示に基づき、同年4月13日の経済財政諮問会議で議論さ
れた『予算編成の在り方の抜本見直しに向けた基本原則』(以下「基本原則」という。)を踏まえ、国内
投資の徹底的なてこ入れを柱とする日本成長戦略等の下で、通常の歳出に加え、国が追加財政支出を毎年
度行った場合の2040年度にかけての経済・財政の姿(※1)を「経済財政モデル」を用いて試算(※2)。
•
追加財政支出には、
• 危機管理投資・成長投資のための「新たな投資枠」のうち複数年度で財源を確保した
別枠管理分(※3)以外(次頁③)、
(※4)
• 補正予算の恒常的施策の当初予算措置分(当初予算化分)(次頁④)
等を想定。
追加財政支出について、現時点において必ずしも特定できない(官民投資スケジュール、危機管理投資・
成長投資の具体的内容、別枠管理分との区分等)ため、機械的に2027年度以降、毎年度実質ベースで10兆
円と想定(※5) 。今後、年末に向けて新たな財政枠組みに基づく予算編成を進めていく過程の中で、官
民投資額やそのために必要な予算額を精査し、予算編成の結果を踏まえて、債務残高対GDP比等につい
て確認する。
•
•
具体的な歳出の内容があらかじめ定まっていないことから、公需、企業の資本コストを下げる補助金が半
分ずつの割合と想定。
•
追加財政支出以外の財政前提は、原則として中長期試算(1月)と同じ前提に基づき試算。
(※1)GDP、国内民間設備投資、債務残高対GDP比、PB・財政収支等。なお、ここでの「債務残高」の指標としては、内閣府「中長期の経済財政に関する試算」に
おける国・地方の公債等残高を用いる。中長期の債務の持続可能性を確認する観点から、公債等残高は、普通国債、地方債、交付税特会借入金で構成され、将来の
財源が確保されたつなぎ国債(復興債、GX債等)や政府短期証券等は含まれていない。
(※2)本試算に用いている「経済財政モデル(2026年度版)」は、内閣府ホームページにて公表されている。
(※3)基本原則においては、償還財源の裏付けのある「つなぎ国債」の発行によって先行的な資金調達を可能としたものについては、 債務残高対GDP比やPB等の
指標において、経費及び財源の金額を除いて別枠で管理することが提案されている。このため、本試算では、別枠管理分に係る経済への影響はGDP等の経済指標
に反映されている一方、公債等残高やPB等の財政指標は、別枠管理分に係る経費や財源を除いたベースで示している。
(※4)これらには、「中長期の経済財政に関する試算」(令和8年1月22日経済財政諮問会議提出)において想定していた2027年度以降の国土強靱化の経費(国費分 2.1
兆円)及び防衛力強化の経費(0.5兆円)が含まれると想定。また、国土強靱化の経費については、国費に伴い地方負担(1.3兆円)も発生すると想定。
(※5)追加財政支出は、2027年度に10兆円とした上で、その後は、非社会保障歳出と同じく、物価・賃金上昇率並みに増加すると想定。
本試算の結果は、種々の不確実性を伴うため相当な幅を持って理解される必要がある。特に、本試算の推計期間は2040年度ま
でとしているが、後年度ほど不確実性が大きいことに留意が必要。
1
高市総理発言(令和8年4月13日 経済財政諮問会議)
①
財政運営の目標としては、債務残高対GDP比を安定的に低下させていくというこ
とを中核と位置づけます。引き続き、成長率を高め、金利などの市場動向にも十分注
視しながら、成長率の範囲内に債務残高の伸びを抑えてまいります。プライマリーバ
ランスにつきましては、債務残高対GDP比の低下に向けて確認することとし、その
安定的低下の中で複数年で管理をしてまいります。
②
予算編成全般におきましては、物価・賃金の上昇について、予算編成に的確に反映
されるようにすると共に、かつての『デフレ・低成長時代』の編成から、『経済の成
長力の強化』と『名目の経済規模の拡大』にふさわしい編成へと見直してまいります。
③
『危機管理投資』・『成長投資』につきましては、通常の歳出とは別に、予見可能
性を持って実施できる『新たな投資枠』を創設することとします。財源については、
債務残高対GDP比を安定的に引き下げる中でも可能となる財政規模を精査し、中期
的な債務経路と整合的な形で柔軟に管理をいたします。このうち、経済安全保障上、
特に重要な分野の投資などについては、複数年度で財源を確保した上で、別枠で管理
をします。
④
補正予算は緊要性の高いものに限定をして、恒常的な施策については、原則、当初
予算で措置するということとし、『補正予算依存』からの脱却をいたしてまいります。
⑤
債務残高対GDP比などの財政指標の『持続可能性』の確認にも資するよう、成長
率や金利など、不確実性を織り込む分析・検証を強化し、併せて、市場関係者との緊
密な対話に努め、マーケットからの信認を確保していきます。
2
日本成長戦略の下での中長期的な経済・財政の姿に関する試算の位置づけ
•
経済については、成長戦略の効果の発現度合いに応じて、以下の3つを試算。
(1)成長戦略実現ケース①
• 追加財政支出による需要増加のほか、官民投資ロードマップに基づく投資の効果等に加えて、研
究開発投資や生産資源配分の効率化等の効果が十分に発現する場合。企業の資本ストックの蓄積
は、投資に係る期待収益率が、AI導入等に加え先端的イノベーションの実用化もあって、中長
期にわたって上昇する下で大きく進展し、国内民間投資が大きく誘発される。この間、TFP上
昇率は、5年程度で1.1%、その後、更に5年程度で1.4%まで上昇する。 (※1)
• 労働参加率は、女性・高齢者を中心に伸長。
• 物価上昇率は2%程度に収れん。
(2)成長戦略実現ケース②
• 追加財政支出による需要増加のほか、官民投資ロードマップに基づく投資の効果等が発現する場
合。投資に係る期待収益率が、AI導入等により中期的に上昇する下で国内民間投資も拡大する
が、技術や市場の不確実性もあり、(1)ほどは発現せず、TFP上昇率は、5年程度で1.1%ま
で上昇した後は一定。
• 労働参加率は、(1)と同様に伸長。
• 物価上昇率は2%程度に収れん。
(3)現状投影ケース
• 追加財政支出による需要増加の効果のみ発現する場合。企業の投資に係る期待収益率が高まらず、
国内民間投資は、過去のトレンド並み程度にとどまる。TFP上昇率は、従来の水準程度の0%
台半ばで推移し続ける。(※2)
• 労働参加率は、(1)・(2)よりも緩やかに上昇。
• 物価上昇率は2%程度に収れん。
(※1)TFP(全要素生産性)は、資本と労働の増加によらない付加価値の増加を表し、技術進歩の反映、労働者の能力向上、生産資源配分の効率化等が含まれる。成長
戦略によるTFP上昇率の押上げ幅については、「(参考資料)成長戦略によるTFP上昇率の押上げ」(令和8年6月24日令和8年第8回経済財政諮問会議・第
5回日本成長戦略会議合同会議資料6)を参照。
(※2)現状投影ケースのTFP上昇率は、直近の景気循環から足下まで(2012年10-12月期~2026年1-3月期)の平均0.6%程度に収れんしていくと想定。
(※3)このほか足下の2026年度までのGDP成長率等の前提については、原則として、2026年度政府経済見通し及びこれを踏まえた中長期試算(1月)と同じ前提に基づ
き試算。なお、2026年度の長期金利は、2.6%と想定(2026年5月平均の2.6%が2026年度末まで続いた場合の年度平均値)。
3
潜在成長率とその内訳
•
•
•
官民投資ロードマップに基づく投資の効果に加えて、研究開発投資や生産資源配分の効率化等の効果が十
分に発現する「成長戦略実現ケース①」では、国内投資が大きく促進されることにより資本投入量の寄与
が、成長戦略の効果が十分に発現しない「現状投影ケース」に比べて大きく上昇する(約6倍)ことに加
えて、中長期にわたるTFP上昇率の高まりにより、我が国経済の供給力である潜在成長率は、試算期間
にわたって1%台後半まで上昇していく姿。
官民投資ロードマップに基づく投資の効果が発現する「成長戦略実現ケース②」でも、国内投資促進によ
り資本投入量の寄与は、「現状投影ケース」よりも上昇(約5倍)することに加え、TFP上昇率の高ま
りにより、潜在成長率は1%台半ばで推移する姿。
成長戦略の効果が十分に発現しない「現状投影ケース」では、資本蓄積が進まないことやTFP上昇率の
停滞、労働投入量のマイナス寄与の拡大から、潜在成長率は0%台前半に低下していく姿。
潜在成長率の内訳(5年ごとの平均)
(%、%pt)
2.5
2.0
TFPの寄与度
資本投入量の寄与度
労働投入量の寄与度
潜在成長率
1.5
1.5
0.3
0.5
0.0
0.2
0.4
0.1 0.5
0.5
0.5
-0.2
-0.1
2021-2025
2026-2030
0.1
0.9
0.1
0.5
0.6
-0.2
0.6 0.3
0.3
1.1
0.9
1.4
1.2
1.1
0.7
1.8
0.5
0.5 1.4
0.5
1.0
0.6
1.6
0.7
-0.1
-0.1
2026-2030
2031-2035
-0.2
-0.4
-0.1
-0.1
2026-2030
2031-2035
-0.2
-0.5
実績
2031-2035
現状投影ケース
2036-2040
2036-2040
成長戦略実現ケース②
(備考)実績期間は、「2026年1-3月期四半期別GDP速報(2次速報値)」に基づく内閣府試算値。
2036-2040
成長戦略実現ケース①
(年度)
4
GDP成長率
•
実質GDP成長率は、「成長戦略実現ケース①」では、中長期的に1%台後半まで、「成長戦略実現ケース
②」では、中長期的に1%台半ばまで高まる。一方、「現状投影ケース」では、0%台前半で推移する姿。
なお、2040年度にかけては、少子高齢化の進展による労働投入量のマイナス寄与が拡大することから、特
に「現状投影ケース」で潜在成長率が低下する影響が表れることに留意が必要。
名目GDP成長率については、「成長戦略実現ケース①」では中長期的に3%台半ば、「成長戦略実現
ケース②」では中長期的に3%程度で推移する姿。一方、「現状投影ケース」では、中長期的に2%程度
の成長にとどまる姿。
•
実質GDP成長率
名目GDP成長率
(%)
(%)
4
4
3
3
2
2
1
1
0
0
-1
-1
-2
-2
-3
-3
-4
-4
-5
-5
2019
2020
2021
2022
2023
2024
2025
2026
2027
2028
2029
2030
2031
2032
2033
2034
2035
2036
2037
2038
2039
2040
5
2019
2020
2021
2022
2023
2024
2025
2026
2027
2028
2029
2030
2031
2032
2033
2034
2035
2036
2037
2038
2039
2040
5
(年度)
(年度)
5
国内民間設備投資額と名目GDP
•
「成長戦略実現ケース①」では、企業の資本ストックの蓄積は、企業の投資に係る期待収益率が中長期に
わたって上昇する下で大きく進展し、国内民間設備投資は現状の目標(2040年度200兆円)を大きく上回
る230兆円超まで高まり、成長戦略の効果が十分に発現しない場合に比べ、国内民間設備投資だけで累計
410兆円程度と、「官民投資ロードマップ」に基づく官民投資額(累計370兆円超)を上回る投資が誘発さ
れる。名目GDPは、設備投資が牽引する形で2040年度に1,100兆円に近付く。
「成長戦略実現ケース②」でも、国内民間設備投資は2040年度で220兆円程度まで増加し、成長戦略の効
果が十分に発現しない場合に比べ、国内民間設備投資だけで累計370兆円程度と、「官民投資ロードマッ
プ」に基づく官民投資額(累計370兆円超)が実現。名目GDPは2040年度に1,040兆円程度に増加。
「現状投影ケース」では国内民間設備投資は2040年度で170兆円程度、名目GDPは900兆円程度にとどま
る。
•
•
250
(兆円)
国内民間設備投資(名目)
1200
(兆円)
名目GDP
1100
200
1000
900
150
800
100
700
600
50
500
(年度)
400
2019
2020
2021
2022
2023
2024
2025
2026
2027
2028
2029
2030
2031
2032
2033
2034
2035
2036
2037
2038
2039
2040
2019
2020
2021
2022
2023
2024
2025
2026
2027
2028
2029
2030
2031
2032
2033
2034
2035
2036
2037
2038
2039
2040
0
(年度) 6
国・地方の公債等残高対GDP比
•
国・地方の公債等残高対GDP比は、「成長戦略実現ケース①」においては低下傾向で推移した後、2030
年代後半に低下幅が縮小していく姿。一方、「成長戦略実現ケース②」では2030年代半ば、「現状投影
ケース」では2030年度頃から上昇に転じる姿。
⇒ 追加的な財政支出を毎年10兆円(※)と想定した場合、十分な経済成長が実現すれば、債務残高対GDP比
が概ね安定的に低下する姿となる。
(※)予算編成において、新たな投資枠に充てられる支出には、複数年度で財源を確保した別枠管理分が加わる。
国・地方の公債等残高対GDP比
210
(%)
200
190
180
170
160
2019
2020
2021
2022
2023
2024
2025
2026
2027
2028
2029
2030
2031
2032
2033
2034
2035
2036
2037
2038
2039
2040
150
(年度)
7
国・地方のPB、財政収支対GDP比
財政収支対GDP比
PB対GDP比
(%)
(%)
0
2
-2
0
-4
-2
-6
-4
-8
-6
-10
-8
-12
-10
-14
(年度)
2019
2020
2021
2022
2023
2024
2025
2026
2027
2028
2029
2030
2031
2032
2033
2034
2035
2036
2037
2038
2039
2040
•
国・地方のPB対GDP比は、「成長戦略実現ケース①」、「成長戦略実現ケース②」ともに短期的に赤
字となった後、2028年度以降黒字化し、2030年代半ばまでは黒字幅が拡大した後、「成長戦略実現ケース
①」では拡大、「成長戦略実現ケース②」では横ばいで推移する姿。「現状投影ケース」では赤字幅が拡
大する姿。
国・地方の財政収支対GDP比は、「成長戦略実現ケース①」や「成長戦略実現ケース②」では、2040年
度にかけて赤字幅が緩やかに拡大していく姿。一方、「現状投影ケース」では、2040年度にかけて赤字幅
が着実に拡大していく姿。
2019
2020
2021
2022
2023
2024
2025
2026
2027
2028
2029
2030
2031
2032
2033
2034
2035
2036
2037
2038
2039
2040
•
(年度)
8
資料7
(参考資料)成長戦略によるTFP上昇率の押上げ
内閣官房・内閣府 令和8年6月24日
区分
分野
AIの導入
【新規】
設備
投資
0.2%pt
程度
試算の前提条件
0.2%pt
程度
・成長戦略により、AIの導入ペースが加速すると想定。
・OECDの研究(Filippucci et al.(2025))では、日本について、AI導入ペースが速まることに
より、TFP上昇率が0.2%pt上昇。
・成長戦略の優先課題であり、中期に効果が発現すると想定。
大規模設備投資
(資本若返り)
【新規】
0.1%pt
程度
0.1%pt
程度
・成長戦略の官民投資ロードマップに基づき、大規模投資(企業が持つ資本の20%以上の規模の
投資)割合が13.5%から欧米並みの21%に上昇し、資本年齢が2.6年若返ると想定。
・Fiori et al.(2025)では、資本年齢の1年若返りにより、TFP上昇率は0.34%pt上昇。2.6年
×0.34%pt=0.9%pt程度の上昇が、10年程度かけて発現すると想定。
・成長戦略の優先課題として、官民投資ロードマップに基づく投資は2027年度以降順次実施され
るため、中期に効果が発現すると想定。
対日直接投資
0.1%pt
程度
0.1%pt
程度
・2030年にかけ、直投残高GDP比が実績並みで推移する場合と比べ年平均0.9%pt程度上昇すると想定。
・Baltabaev(2014)では、直投残高GDP比が1%pt上昇した場合、TFP上昇率は0.17%pt程度上昇。
・直接投資企業による技術のスピルオーバーは、実装段階にある技術を中心に比較的早期に生じ
ると考えられるため、中期に効果が発現すると想定。
0.1%pt
程度
・企業による教育訓練投資(従業者一人当たりストック)が毎年3.0%程度上昇すると想定。
・Morikawa(2021)では、教育訓練投資が1%増加すると、労働生産性は0.03%程度上昇。
・教育訓練の成果は従業者の生産性上昇に比較的早期に反映されると考えられるため、中期に効
果が発現すると想定。
0.2%pt
程度
・2030年度にかけ、官民の投資により、研究開発投資GDP比が実績並みで推移する場合と比べ年
平均0.7%pt程度上昇すると想定。
・森川(2015)では、研究開発投資GDP比が1%pt上昇した場合、TFP上昇率は0.3~0.4%pt上昇。
・研究開発段階の技術が実用化・普及を経て生産性上昇に寄与するまでには時間を要すると考え
られるため、効果は長期に発現すると想定。
人への投資
(教育訓練投資)
無形
資産
投資
中期
長期
(~2031) (~2036)
資料6
科学技術・
イノベーション
(R&D投資)
0.1%pt
程度
0.0%pt
程度
生産資源配分の
効率化
【新規】
0.1%pt
程度
0.2%pt
程度
・AIの社会実装に適応した就業構造の転換、17の戦略分野に応じた将来的な産業構造の変化、ス
タートアップの広がりによる新陳代謝等を通じて、生産資源配分の効率化が進展すると想定。
・OECDの研究(Filippucci et al.(2025))では、AI導入が加速した場合でも主要先進国と日本
にはTFP上昇率0.2%ptの差があるが、成長戦略によって、その差が埋まると想定。
・構造変化には時間を要すると考えられるため、効果は中期に半分程度、長期に全てが発現する
と想定。
合計(現状投影ケース比)
0.6%pt
程度
0.9%pt
程度
・現状投影ケースのTFP上昇率0.6%に左記を加算。
・効果が重複し得ることも踏まえ、中期は1.1%程度、長期は1.4%程度と想定。
その
他
(備考)表に掲載したTFP上昇率の押上げ幅は年平均。対日直接投資、人への投資、科学技術・イノベーション、生産資源配分の効率化のうちスタートアップ推進等の考え方は、ESRI Discussion Paper Series No.395(浦沢
他(2024))に基づく。AIの導入、生産資源配分の効率化において参照したOECDの研究はOECD Artificial Intelligence Papers, No. 41.(Filippucci et al. (2025) )。大規模設備投資における日本の割合13.5%は
CREPE Dission Paper No. 159(Nirei (2024))に、欧米並みの割合21%はFEDS Notes 2025-10-15-1.(Fiori et al. (2025))における米英仏独の4か国平均に基づく数値。
資料8
資料7
地域未来戦略の政策パッケージの概要
本政策パッケージの位置付け・地域未来戦略と日本成長戦略との関係性
・日本成長戦略における17の戦略分野に関連する企業の大規模投資を起点とする「戦略産業クラスター計画」にて、
サプライチェーンを支える企業群の投資促進、関連インフラや拠点整備、人材育成などを、大胆かつ計画的に推進。
・あわせて、地域未来戦略では、「地域産業クラスター計画」や「地場産業成長プラン」における地域を牽引する産業や
地場産業の投資促進など、大胆かつ計画的に支援。
・日本成長戦略の「8つの分野横断的課題への対応」を踏まえ、地域未来戦略の政策パッケージにスタートアップ支援、
地域金融力強化、人材育成等の取組を位置づけ、地域で展開することで、日本全国に投資を拡大。
日本成長戦略
17の戦略分野
8つの分野横断的課題
分野横断的課題への対応を踏まえ、
地域未来戦略の政策パッケージにスタートアップ支援、
金融力強化、人材育成、等の取組を位置づけ、
地域で展開することで、日本全国で投資を拡大
戦略分野に関連する企業の大規模投資を
起点に、地域での「戦略産業クラスター」を
形成
地域未来戦略
A.戦略産業クラスター計画
B.地域産業クラスター計画
C.地場産業成長プラン
17分野に関連する企業の大規模
投資を起点とする産業クラスター。
都道府県が主導する産業クラスター。
戦略分野のサプライチェーンを構成
する産業などが含まれうる。
市町村が主導する地場産業を含む
地域の産業を育成。
1
地域未来戦略の目標・道筋
本政策パッケージの目指す姿【目標】
・47都道府県どこに住んでいても、安全に生活することができ、必要な医療・福祉や質の高い教育を受けることが
でき、働く場所がある姿を実現する。そのためには、強い地域経済の構築が不可欠。
・地方に大規模な投資を呼び込み、各地に産業クラスターを戦略的に形成していくとともに、
地域資源を最大限に活用し、地場産業を含む地域の産業、地域経済の持続的な成長を図っていく。
・これにより新たな人材や企業の集約が進み、良質な雇用の創出につながり、所得の増加が消費マインドの改善を
もたらし、それが更なる投資や経済発展に繋がる好循環を実現。
この強い地域経済の好循環を通じて「日本列島を、強く豊かに」していく。
基本的方向性【道筋】
17の戦略分野に対して政府主導で官民投資を促進しつつ、戦略分野に関連する産業、地域を牽引する産業、
地場産業の育成への地域主導の挑戦に対して、国が一歩前に出て積極的な支援を行う。
(インフラも含めた環境整備)
必要となるインフラ整備や地方創生の取組も含めた環境整備を一体的に行う。
(地域の産業全体を強化)
個々の企業の育成支援だけでなく、地域全体の産業を強化する施策を支援する(共同施設の整備やサプライチェーン上の機能の
補完など)。
(産業政策と人材戦略を一体的に推進)
地域の産業に必要となる人材を特定し、戦略的に育成。
(競争優位の確立)
地域外、更には海外から持続的に収益を獲得することを目指し、地域経済に真に裨益する産業を育成。
(地域経済を支える基盤の再構築)
限られた財政・人的リソースを成長分野に振り向けるため、公共施設等の集約・再配置などを支援。
⇒3つの類型の計画を定め、それぞれの特性や課題に応じた支援策を講じる。
2
A.戦略産業クラスター計画
概要
策定
プロセス
主な
施策例
⚫ 成長戦略における17の戦略分野に関連する企業の大規模投資を起点として形成される産業クラスター。
⚫ 国が一歩前に出て、道路、工業用水等の関連インフラの整備や、産業人材の育成をはじめとする事業環境の整備を計画的に進
めることにより、大規模な投資を呼び込む。世界をリードする産業が当該地域に定着し産業クラスターを構成することで、地域経済
の活性化にとどまらず、我が国経済全体の成長に貢献することを目指す。
⚫ ブロックごとに各地方経済産業局が中心となり、「戦略産業クラスター有識者検討会」※において、「計画の素案」を策定。
※管内地方支分部局、都道府県、市町村、経済団体、民間企業、大学、研究機関、 金融機関等で構成
⚫ 都道府県は、候補プロジェクト案件を国に提案。
⚫ 国は、都道府県からの提案を受け付け、計画を策定。
①クラスターを構成する
企業の設備投資促進
✓ 特定半導体の生産施設の整備に対する支援
✓ 船舶や港湾荷役機械の生産能力拡大に向けた設備投資及び研究開発への支援
✓ フードテック等の社会実装に係る設備等の整備への支援 等
②成長資金への対応
✓ 政府系金融機関等による投資・融資
✓ 企業価値担保権の活用促進
③関連する
インフラ・拠点整備
✓ 関連するインフラ及び拠点整備の推進(地域未来交付金等)
✓ 空港アクセス鉄道整備等利子補給金活用
✓ 産業用地整備支援(産業用地整備に関する金融措置創設等)
✓ 産業競争力強化に貢献する新たな研究大学群の形成や共創拠点としてのキャンパス機能の強化 等
④規制・制度改革
✓ 国家戦略特区制度等を活用した規制・制度改革
⑤産業人材育成
✓ 17の戦略分野等の成長分野への学部再編等の重点分野に係る大学、大学院及び高専の体制・機能強化等
✓ リ・スキリング推進に向けた大学等における社会人のための教育プログラムの開発の推進
✓ 地域で必要な人材の育成に向けた専門学校における教育の充実への支援 等
3
B.地域産業クラスター計画
概要
策定
プロセス
主な
施策例
⚫ 都道府県知事等が主導し、都道府県等が主体となって形成を進める産業クラスター。
⚫ 当該地域において、海外輸出により外貨を獲得し得るもの、又は国内市場において上位シェアの獲得を目指し得るものとして重点
的に育成すべき産業分野を特定し投資を促進する。
⚫ 産業クラスターを構成する個別企業の投資促進に加え、施設等の共同利用・共同事業による効率化やサプライチェーン上の機能
で地域にないものを補完するための取組等を都道府県が行うことで、地域全体としての産業競争力の底上げを行う。
⚫ 都道府県等が、力を入れる産業領域を特定し、計画を策定。
①クラスターを構成する
個別企業の投資促
進等
✓ 自治体主導による産業振興施策への支援(投資促進、販路開拓等)
✓ 中堅・中小企業・スタートアップが行う工場新設や設備投資等の大規模投資の促進に向けた支援
✓ 中小企業が行う新市場・高付加価値事業での新規事業にかかる設備投資の支援 等
②成長資金への対応
✓ 政府系金融機関等による投資・融資
✓ 民間投資の誘発・創出に向けた官民金連携支援
✓ 地域未来金融アクションプランの策定 等
③クラスター全体での競
争優位性を強化する
環境整備支援
✓ 地域の事情に合わせたインフラ環境整備の推進(地域未来交付金等)
✓ 円滑な土地利用調整の推進(地域未来投資促進法)
✓ 観光地全体のサービス水準や労働生産性の向上に向けた、複数の宿泊施設等が利用する共同設備の導入支援 等
④規制・制度改革
✓ 国家戦略特区制度等を活用した規制・制度改革
⑤産業人材育成
✓ 地域の産業ニーズを踏まえた人材育成等の取組を推進
✓ 地域一体となった人材確保・育成・定着を行う取組への支援 等
4
C.地場産業成長プラン
概要
策定
プロセス
主な
施策例
⚫ 地域資源を活用し、付加価値の創出及び域外・海外需要の獲得を図ることにより、個々の規模は戦略産業クラスターや地域産
業クラスターと比較して小規模であっても、面的に地域経済を支える数多くの地場産業の更なる成長を目指す。
⚫ 市町村又は都道府県がその地域に根差す農林水産業、観光業、スポーツ産業、伝統的工芸品製造業、部品加工業等をはじ
めとする地域住民の生活を支える多様な産業の発展、地域経済の成長を促す。
⚫ 市町村又は都道府県が、地域資源を最大限活用する地場産業を含む地域の産業について、
付加価値向上や販路拡大を目指す計画を策定。
①事業の状況に応じた
事業主体へのきめ細
かな支援
✓ 自治体主導による産業振興施策への支援(投資促進、販路開拓等)
✓ 地域産品の高付加価値化・海外展開の支援
✓ 新たに輸出に取り組む事業者に対する商社マッチング 等
②成長資金への対応
✓ 政府系金融機関等による投資・融資
✓ 民間投資の誘発・創出に向けた官民金連携支援
✓ 地域未来金融アクションプランの策定、企業価値担保権の活用促進
③環境整備支援
✓ 地域未来交付金や企業版ふるさと納税等を活用した地域の事情に合わせたインフラを含めた環境整備
✓ インバウンドを含む観光需要を取り込み、地域で観光消費を拡大させるための取組等の支援
✓ 面的な歴史まちづくりや景観エリアリノベーションによる観光振興への支援 等
④規制・制度改革
✓ 国家戦略特区等を活用した規制緩和や制度改革
⑤産業人材育成
✓ 地域一体となった人材確保・育成・定着を行う取組への支援
✓ 産業界が必要とするコンテンツ分野の人材育成への支援 等
5
地域のクラスター・地場産業を支える仕組みづくり
主な
支援策
①地域基盤の再構築
✓ 地域未来交付金等による支援
✓ 自治体が行う公共施設等の適正管理の推進
✓ 公共交通軸や交通結節点の強化への支援等を通じたコンパクト・プラス・ネットワークの推進
✓ 産業クラスター・地場産業を支え、活躍する女性人材の育成・就業・起業・定着等の推進 等
②AIトランスフォーメー
ション(AX)
✓ 自治体AXや消防AX、地域AXの推進
✓ AXの実現に向けた企業経営改革支援 等
6
5W1Hを明確にしたPDCAメカニズム(A.戦略産業クラスター計画の進め方)
計画策定
主体
素案作成
プロジェクト
提案
計画策定
進捗報告
計画改訂
経済産業局
都道府県
内閣官房・
経済産業省
関係省庁・
都道府県
内閣官房・
経済産業省
(戦略産業クラスター計画有識者会議)
内容
PDCAメカニズム
1.地域の特性を
踏まえ、クラス
ター形成が望
まれる地域・
分野を特定
2. クラスター形
成に向けて必
要となる課題
や政策ニーズ
1.現状認識と目指す姿【目標】
2.勝ち筋の特定と投資の具体像、定量的
なインパクト【道筋】
3.投資促進に向けた課題と
事業環境整備の取組【政策手段】
<半年に一回程度の実施>
⚫ 5W1Hに基づいて、進捗状況の点検
1.数値を含め施策の実行状況確認
2.芳しくない場合の原因の特定
⚫ 施策の実行状況を踏まえた戦略の具体化・
高度化
1.施策のブラッシュアップ
施策実行に向けて、
5W1Hを明確化
2.新たな課題に対する施策の追加・拡充
(施策の意義・中身・期限・担当部署・検討の
場・進め方 等)
策定・改定された計画については、投資マップで可視化し、定期的に進捗を確認
7
5W1Hを明確にしたPDCAメカニズム( B.地域産業クラスター計画、C.地場産業成長プラン)
計画策定
主体
内容
PDCAメカニズム
計画案作成
事前確認
首長による公表
都道府県/
市町村
内閣官房・
経済産業省
都道府県/
市町村
進捗報告
計画改訂
都道府県/
市町村
都道府県/
市町村
1.現状認識と目指す姿【目標】
<半年に一回程度の実施>
2.勝ち筋の特定と投資の具体像、定量的なインパクト【道筋】
⚫ 5W1Hに基づいて、進捗状況の点検
3.投資促進に向けた課題と
事業環境整備の取組【政策手段】
1.数値を含め施策の実行状況確認
2.芳しくない場合の原因の特定
⚫ 施策の実行状況を踏まえた戦略の具体化・
高度化
1.施策のブラッシュアップ
施策実行に向けて、
5W1Hを明確化
2.新たな課題に対する施策の追加・拡充
(施策の意義・中身・期限・担当部署・検討の場・進め方 等)
策定・改定された計画については、投資マップで可視化し、定期的に進捗を確認
8
資料9
資料8-1
2026年6月
日本成長戦略による日本経済の目指すべき絵姿
ネットの資金需要-5%の「新たな投資枠」で
官民連携の戦略投資のリミッターを外す
会田 卓司
チーフエコノミスト
クレディ・アグリコル証券会社 東京支店
日本成長戦略のナラティブ(総合経済対策から)
• 我が国経済は依然として「デフレ・コストカット型経済」から脱し切れておらず、成長
に向けた投資拡大と生産性向上を伴う「成長型経済」への移行が道半ばにある
• 需給ギャップは0%近傍となったが、景気は十分に強くなく、地方や中小企業まで景気
回復の実感はまだ広がっていない
• 今必要なのは、将来世代への責任を果たす「責任ある積極財政」である
• 大胆かつ戦略的な「危機管理投資」と「成長投資」を進め、「暮らしの安心・安全」を
確保するとともに、雇用と所得を増やし、潜在成長率を引き上げ、「強い経済」を実現
する必要がある
• 主要国の経済政策の潮流は、市場原理に過度に依存する新自由主義的発想から、経済・
社会課題の解決を目的とする官民連携を強化し、戦略的な国内投資の拡大を通じて国力
の増大を目指す新たな時代の政策へと大きく転換している
• 企業と政府の支出する力を十分に強くし、家計に所得が回る力を強くする
• 今後の強い経済成長と物価安定の両立の実現に向けて、適切な金融政策運営が行われる
ことが非常に重要である
2
日本成長戦略の政策論
① 経済・社会課題の解決を目的に官民連携の戦略的な国内投資拡大に向けて「責任あ
る積極財政」を推進する。
② 投資需要の拡大によって、需給ギャップ0%のリミッターを外し、2%の「高圧経
済」で、地方や中小企業まで景気回復の実感を広げる。
③ 企業と政府の支出する力を十分に強くするため、ネットの資金需要(企業貯蓄率+
財政収支)0%のリミッターを外し、新たなリミットを-5%とし、家計に所得が回
る力を強くする。0%から-5%へは、年間30兆円程度の官民投資額が不足している。
④ 「デフレ・コストカット型経済」から脱し、成長に向けた投資拡大と生産性向上を
伴う「成長型経済」へ移行する。
⑤ 「暮らしの安心・安全」を確保するとともに、雇用と所得を増やし、潜在成長率を
引き上げ、「強い経済」を実現する。
年間30兆円の官民投資拡大のためにリミッターを外す政策目標
需給ギャップ2%とネットの資金需要-5%
3
需給ギャップを2%に押し上げて高圧経済に
• 日本経済再生のためには、企業貯蓄率が正常なマイナスとなり、コストカット型からの脱却が必要。投資拡大に
よって需給ギャップが+2%となるような「高圧経済」が必要で、0%を基準に政策を引き締めることは間違い。
• 日銀の推計した需給ギャップでも同じで、企業貯蓄率がマイナスとなるには、+3%が必要になる。
<企業貯蓄率と内閣府需給ギャップ>
<企業貯蓄率と日銀需給ギャップ>
-12
10
-12
12
-9
8
-9
10
強い
(投資超過)-6
6
-6
強い
(投資超過)
8
高圧
経済
-3
4
0
2
0
3
0
3
弱い
(貯蓄超過) 6
(投資不足)
-3
-2 低圧
経済
-4
12
-6
12
-8
15
Mar-80
Mar-87
Mar-94
Mar-01
Mar-08
Mar-15
Mar-22
企業貯蓄率(%GDP、軸逆転)
需給(GDP)ギャップ(4QMA、95年以前は+5、右軸)
高圧
経済
4
2
0
弱い
6
(貯蓄超過)
(投資不足) 9
9
15
6
-2 低圧
-4
経済
-6
Mar-80
Mar-87
Mar-94
Mar-01
Mar-08
Mar-15
Mar-22
-8
企業貯蓄率(%GDP、軸逆転)
日銀需給(GDP)ギャップ(4QMA、95年以前は+5、右軸)
GDPギャップ(%)=(実際のGDP-潜在GDP)/潜在GDP。
潜在GDPは、経済の過去のトレンドからみて平均的な水準で生産要素を投入した時に実現可能なGDP。
注:GDPの基準改定に伴いバブル期を含む1995年以前の需給ギャップは+5を上乗せ
出所:日銀、内閣府、クレディ・アグリコル証券
4
ネットの資金需要-5%を目安に戦略投資を拡大すべき
• ネットの資金需要(企業貯蓄率+財政収支)の十分なマイナス(投資超過)が、投資拡大による経済規模の拡大
と労働生産性の上昇で、家計に所得を回す力となる。これまでの0%のトレンドから、-5%に回復させるため
には、官民合計でGDP比5%(年間30兆円程度)の投資が不足している。
• 積極財政によって構造的経済停滞を脱却する可能性が高まり、長期国債の金利は名目GDPの平均的な成長率3%
程度まで上がってきた。財政拡大の悪影響を懸念するものではなく、日本経済の正常化を織り込むものだ。株式
市場も力強く上昇している。イールドカーブの正常化として、日銀の政策金利から遠い年限の金利から順に上昇
しているため、イールドカーブのスティープ化はその過程にすぎず、将来の急激な金利上昇を示さない。
<ネットの国内資金需要>
<名目GDPと国債金利>
15
10
予想
弱い
(貯蓄超過)
(投資不足)
拙速な財政危機宣言
70,000
4
5
3
0
2
60,000
50,000
名目0%成長
40,000
-5
1
名目3%成長
強い
(投資超過)
-10
30,000
0
20,000
-15
Jan-85
Jan-90
Jan-95
Jan-00
Jan-05
Jan-10
Jan-15
Jan-20
ネットの国内資金需要(企業貯蓄率+財政収支、4QMA)
財政収支(%GDP、4QMA)
企業貯蓄率(%GDP、4QMA)
出所:内閣府、日銀、クレディ・アグリコル証券
Jan-25
-1
Mar-19
Mar-21
国債10年金利
国債30年金利
Mar-23
Mar-25
Mar-27
10,000
Mar-29
名目GDP(%、前年比、12QMA)
日経平均株価(右軸)
5
政府の「新たな投資枠」=ネットの資金需要を-5%とする額
• 官民連携の戦略投資によって、官民合計で十分な投資超過にすべきである。
• 官民合計での投資超過は、企業貯蓄率と財政収支の合計であるネットの資金需要の
GDP比を十分なマイナスとすることである。
• 名目GDP3%台の成長に相当する-5%のネットの資金需要(=企業貯蓄率+財政収
支)を財政運営の目安にし、戦略投資のリミッターを外すべきである。
• ネットの資金需要は、債務対GDP比と同様、資金循環統計で捕捉される。
• 内閣府の中長期財政試算では、企業貯蓄率も試算されており、ネットの資金需要を望
ましい水準とする財政収支は事前に把握可能である。
• 経済成長、税収、財政収支もすべては事後的に判明する。前提条件を置き、財政支出
の計画を立てることは、ネットの資金需要を目安とすることと同義である。
• 官民合計の投資超過=十分なマイナスのネットの資金需要である。これまで、投資不
足でネットの資金需要が消滅し、経済停滞と家計の困窮の原因となってきた。
6
投資サイクルが上向く中の円安の水準は日本経済再生に追い風
• 名目GDPの拡大、円安によるコスト競争力の向上、経済安全保障の意識、官民連携の戦略投資への期待などに
よって、国内設備投資サイクル(実質設備投資のGDP比)が18%を超えた。投資サイクルの上振れは、企業の
成長期待・収益期待の向上を意味するため、株式市場の上昇を支えている。ドル・円は正常化したと言える。
• 通貨が加速的に売られる局面では、将来の供給能力の棄損が原因となる。設備投資サイクルが上向いていて、将
来の供給能力が拡大する期待があ中、現在の円安の水準は日本経済再生のためには追い風であることを示す。円
安是正のため、日銀の拙速な利上げで投資サイクルが腰折れれば、グローバルな戦略投資の競争に負けるリスク
が織り込まれ、円安が再加速するリスクとなる。投資サイクルが下向く中の円安は止めることが困難となる。
<企業貯蓄率と国内設備投資サイクル>
20
<ドル円は適正水準に回帰>
-10
250
-5
230
予想
19
18
0
17
5
強い
(投資超過)
24
23
プラザ合意
22
210
円安
21
190
バブル崩壊
16
15
弱い
(貯蓄超過)
15 (投資不足)
14
20
Jan-88
Jan-94
Jan-00
Jan-06
実質民間設備投資(%GDP)
Jan-12
Jan-18
Jan-24
企業貯蓄率(%GDP、4QMA、右軸、軸逆転)
20
170
19
150
10
強い
18
130
17
円高
110
弱い
16
90
15
オーバーシュート
70
Apr-85 Apr-90 Apr-95 Apr-00
ドル円
正常化
Apr-05
Apr-10
Apr-15
Apr-20
14
Apr-25
実質民間設備(%GDP)
出所:内閣府、日銀、Bloomberg、クレディ・アグリコル証券
7
官民連携の投資拡大には政府と日銀の連携が重要
• 日銀の政策金利のマクロ・フェアバリューは0.15%程度となり、現行の1.00%よりかなり低い。日銀は「ビハイ
ンド・ザ・カーブ」(利上げの遅れ)ではなく、逆に「アヘッド・オブ・ザ・カーブ」(拙速な利上げ)となっ
ている。三重野総裁と白川総裁の時と同じように、緩和的金融環境が十分ではないリスクがある。
• 日銀法第四条に基づいて、官民連携の戦略投資拡大のため、政府と日銀が連携することが重要である。
<日銀政策金利のマクロ・フェアバリュー推計誤差>
2.5
三重野総裁
2.0
白川総裁
1.5
アヘッド・オブ・
ザ・カーブ
1.0
植田総裁
0.5
0.0
-0.5
ビハインド・ザ・カーブ
-1.0
-1.5
Mar-88
ネットの資金需要-5%、需給ギャップ2%、米国債10年金利
4.5%で中立金利は1.6%(上限2.2%、下限1.1%)
Mar-93
Mar-98
Mar-03
Mar-08
推計誤差(%)
Mar-13
Mar-18
Mar-23
標準誤差(0.57)
日銀政策金利(%)=-0.18 -0.13 ネットの資金需要(%GDP、1Qラグ)
+ 0.30 需給ギャップ(4QMA、1Qラグ)+0.12 米国債10年金利; R2=0.84
<日銀の国債買い入れの考え方>
• 日銀は、6月の金融政策決定会合で長期国債買入れの減額計画
の中間評価を実施した。2027年4月時点で日銀の国債買入れ
額は月間2.1兆円程度となる予定であった。2027年4月以降の
月間買入れ額は2兆円程度とほぼ据え置き、年間24兆円程度と
する。年間買入れ額の必要な最低限の規模は、マクロとして重
要な成長通貨供給の概念を考慮する必要がある。成長通貨供給
とは、経済成長に伴う通貨需要の増加に対応するため、日銀が
長期国債を買入れ、市場に資金を供給する考え方だ。
• 国債買い入れの本来の目的は、量的金融緩和の手段ではなく、
成長通貨供給である。金融政策の正常化にともない、国債買入
れの目的も正常化するのであれば、名目GDPの拡大に合わせ
て日銀は成長通貨を供給する必要が生じる。政府が強い経済を
実現するための、官民連携の危機管理投資・成長投資を長期に
わたり実施するためには、長期の資金供給が必要であり、日銀
の長期国債買入れによる成長通貨供給もその一環となる。
出所:日銀、内閣府、ブルームバーグ、クレディ・アグリコル証券
8
当初予算で多年度・別枠となる「新たな投資枠」を拡大する
予算編成の抜本的見直しが必要
• 特別会計・基金とは別に、国債でファイナンスする「新たな投資枠(投資的支出)」の拡
大が、政府の戦略投資と積極財政へのコミットメントを示すことになる。
• 経常的支出=歳出-債務償還費-「新たな投資枠」
• 経常的収支=税収・税外収入(成長投資の収益を含む)-経常的支出
• 財政収支=経常的収支-「新たな投資枠」
• 財政規律として、経常的収支は均衡を目指す
• 「新たな投資枠」は、将来の成長と所得をもたらすため、その分、財政収支は赤字
• 「新たな投資枠」は、将来の財源の紐づけで選択肢が狭められることがあってはならない
• 10年超の長期の債務残高GDP比の安定と整合的な、最大限の「新たな投資枠」が必要
• 官民合計の十分な投資超過によって、リミッターを外し、国民に所得をしっかり回す
<財政収支のイメージ>
歳出
債務償還費
新たな投資枠
経常的支出
歳入
税収・税外収入(戦略投資の収益)
財政赤字(国債発行)
9
イールドカーブが早期にスティープ化した原因
① 積極財政を目指す政権の誕生によって、名目GDP3%成長が持続的である期待が高まっ
た。政策金利の影響の小さい超長期から金利が上昇。
② グローバルな経済政策の潮流が、新自由主義による効率化重視の投資不足から、官民連
携の戦略投資の競争に変化し、長期投資が拡大しつつある。投資が先行する欧米は財政
赤字が大きい。
③ 日銀当座預金残高に付利があるため、日銀の利上げ局面で金利上昇が予想される中、国
債投資が控えられる副作用がある。付利のある利上げは、付利のない利上げよりも、
イールドカーブをスティープ化させ、引き締め効果が強いリスクがある。長期投資を抑
制するリスクにもなる。
④ 日銀は国債買い入れを減額しているため、名目GDPの増加額と比較して、成長通貨の供
給が不足するのではないかとの不安がある。成長通貨の供給の必要性が日銀が減額を止
める理由に。
⑤ 年金基金の膨張は、本来民間にあるべき長期資金を政府が吸収していることを示す。民
間から吸収した長期資金の50%が海外に振り向けられてしまっているため、長期投資の
拡大が予想される中、日本で長期資金が不足する不安がある。
10
投資の拡大と株主還元は高圧経済下では矛盾しない
• 企業価値を高めることが企業にとっても最も重要であり、資本配分は、実行可能な手段のうち最も
期待リターンの高いものから優先的に行うことが合理的である。
• ネットの資金需要と需給ギャップを強くする高圧経済で、投資の期待リターンが高まり、株主還元
から投資拡大に企業行動はシフトする。
• 株主還元に課税しても、低圧経済で投資の期待リターンが弱ければ、投資は拡大しない。株主還元
に課税や規制を行うことで株価が下落してしまえば、投資拡大に逆風となる。
資本配分先の優先順位
企業価値を高めるため期待リターンが最も高いものを選択
投資の期待
リターン
強い
ネットの資金需要
需給ギャップ
株主還元の期待
リターン
現金
優先順位
株価が上昇すると自己株式取得の期待リターンが減少する
弱い
ネットの資金需要
需給ギャップ
出所:クレディ・アグリコル証券
11
日本成長戦略のマクロ推計
• 需給ギャップとネットの資金需要の拡大によって、企業の投資拡大を促し、企業を貯蓄
超過(プラスの貯蓄率)から投資超過(マイナスの貯蓄率)へ促す。
• 成長戦略の効果を大きくし、ネットの資金需要の拡大に対する、企業の貯蓄率の低下の
感応度(成長戦略効果)を強くする。
企業貯蓄率(%GDP、4QMA)=3.50 -成長戦略効果*0.43 ネットの資金需要(%GDP、4QMA)-0.84 需給ギャップ
(4QMA)+0.46 円高ダミー(1982年1-3月期-1984年4-6月期、1987年1-3月期-2022年10-12月期に1); R2=0.92
• 需給ギャップとネットの資金需要の拡大によって、名目GDP成長率を押し上げる。
名目GDP(%、前年比、4QMA)=3.23 -0.23 ネットの資金需要(%GDP、4QMA、6Qラグと直近値の平均)+0.47 需給
ギャップ(4QMA)-2.53 円高ダミー(1982年1-3月期-1984年4-6月期、1987年1-3月期-2022年10-12月期に1); R2=0.74
• 需給ギャップとネットの資金需要の拡大によって、企業と政府の支出する力を十分に強
くし、家計が十分に貯蓄できるほどのファンダメンタルズの回復につなげる。
家計貯蓄率(%GDP、4QMA)=4.10 -0.56 ネットの資金需要(%GDP、4QMA)+0.24 需給ギャップ(4QMA)-0.61 円
高ダミー(1982年1-3月期-1984年4-6月期、1987年1-3月期-2022年10-12月期に1); R2=0.90
12
緊縮志向の呪縛のケース
• 需給ギャップ0%とネットの資金需要0%の緊縮状態
• 成長戦略効果がない(1倍)
年度
債務残高
(兆円)
名目GDP
(兆円)
債務残高GDP比
(%)
名目成長率
(%)
企業貯蓄率
(%GDP)
財政収支
(%GDP)
家計貯蓄率
(%GDP)
2026
2027
2028
2029
2030
2031
2032
2033
2034
2035
2036
2037
2038
2039
2040
1302
1328
1354
1382
1410
1439
1468
1498
1528
1560
1591
1624
1657
1690
1725
692
710
728
743
757
772
787
803
819
835
851
868
885
903
920
188
187
186
186
186
186
186
187
187
187
187
187
187
187
187
3.4
2.6
2.6
2.0
2.0
2.0
2.0
2.0
2.0
2.0
2.0
2.0
2.0
2.0
2.0
3.5
3.6
3.6
3.7
3.7
3.7
3.7
3.7
3.7
3.7
3.7
3.7
3.7
3.7
3.7
-3.5
-3.6
-3.6
-3.7
-3.7
-3.7
-3.7
-3.7
-3.7
-3.7
-3.7
-3.7
-3.7
-3.7
-3.7
4.1
4.0
4.0
3.8
3.8
3.8
3.8
3.8
3.8
3.8
3.8
3.8
3.8
3.8
3.8
ネットの資金需要 需給ギャップ
(%GDP)
(%GDP)
0.00
0.00
0.00
0.00
0.00
0.00
0.00
0.00
0.00
0.00
0.00
0.00
0.00
0.00
0.00
0.0
0.0
0.0
0.0
0.0
0.0
0.0
0.0
0.0
0.0
0.0
0.0
0.0
0.0
0.0
円高ダミー
0.00
0.25
0.25
0.50
0.50
0.50
0.50
0.50
0.50
0.50
0.50
0.50
0.50
0.50
0.50
13
抑制的な積極財政のケース
• 需給ギャップ1%とネットの資金需要-2.5%の緩やかな拡張状態
• 成長戦略効果が生まれる(1.5倍)
年度
債務残高
(兆円)
名目GDP
(兆円)
債務残高GDP比
(%)
名目成長率
(%)
企業貯蓄率
(%GDP)
財政収支
(%GDP)
家計貯蓄率
(%GDP)
2026
2027
2028
2029
2030
2031
2032
2033
2034
2035
2036
2037
2038
2039
2040
1302
1328
1355
1384
1414
1444
1476
1508
1542
1576
1612
1648
1686
1725
1765
692
713
739
762
784
808
832
857
883
910
937
965
994
1024
1054
188
186
183
182
180
179
177
176
175
173
172
171
170
168
167
3.4
3.1
3.6
3.0
3.0
3.0
3.0
3.0
3.0
3.0
3.0
3.0
3.0
3.0
3.0
3.5
2.4
1.2
1.3
1.3
1.3
1.3
1.3
1.3
1.3
1.3
1.3
1.3
1.3
1.3
-3.5
-3.6
-3.7
-3.8
-3.8
-3.8
-3.8
-3.8
-3.8
-3.8
-3.8
-3.8
-3.8
-3.8
-3.8
4.1
4.8
5.6
5.4
5.4
5.4
5.4
5.4
5.4
5.4
5.4
5.4
5.4
5.4
5.4
ネットの資金需要 需給ギャップ
(%GDP)
(%GDP)
0.00
-1.25
-2.50
-2.50
-2.50
-2.50
-2.50
-2.50
-2.50
-2.50
-2.50
-2.50
-2.50
-2.50
-2.50
0.0
0.5
1.0
1.0
1.0
1.0
1.0
1.0
1.0
1.0
1.0
1.0
1.0
1.0
1.0
円高ダミー
0.00
0.25
0.25
0.50
0.50
0.50
0.50
0.50
0.50
0.50
0.50
0.50
0.50
0.50
0.50
14
緊縮志向の呪縛を乗り越えるケース
• 需給ギャップ1.5%とネットの資金需要-3.75%の拡張状態
• 成長戦略効果が強い(2倍)
年度
債務残高
(兆円)
名目GDP
(兆円)
債務残高GDP比
(%)
名目成長率
(%)
企業貯蓄率
(%GDP)
財政収支
(%GDP)
家計貯蓄率
(%GDP)
2026
2027
2028
2029
2030
2031
2032
2033
2034
2035
2036
2037
2038
2039
2040
1302
1326
1349
1372
1396
1421
1447
1473
1501
1529
1558
1589
1620
1653
1687
692
713
739
765
792
820
849
879
910
942
975
1009
1045
1082
1120
188
186
182
179
176
173
170
168
165
162
160
157
155
153
151
3.4
3.1
3.6
3.5
3.5
3.5
3.5
3.5
3.5
3.5
3.5
3.5
3.5
3.5
3.5
3.5
2.1
0.6
-0.7
-0.7
-0.7
-0.7
-0.7
-0.7
-0.7
-0.7
-0.7
-0.7
-0.7
-0.7
-3.5
-3.4
-3.1
-3.0
-3.0
-3.0
-3.0
-3.0
-3.0
-3.0
-3.0
-3.0
-3.0
-3.0
-3.0
4.1
4.8
5.6
6.2
6.2
6.2
6.2
6.2
6.2
6.2
6.2
6.2
6.2
6.2
6.2
ネットの資金需要 需給ギャップ
(%GDP)
(%GDP)
0.00
-1.25
-2.50
-3.75
-3.75
-3.75
-3.75
-3.75
-3.75
-3.75
-3.75
-3.75
-3.75
-3.75
-3.75
0.0
0.5
1.0
1.5
1.5
1.5
1.5
1.5
1.5
1.5
1.5
1.5
1.5
1.5
1.5
円高ダミー
0.00
0.25
0.25
0.50
0.50
0.50
0.50
0.50
0.50
0.50
0.50
0.50
0.50
0.50
0.50
15
フルの積極財政のケース
• 需給ギャップ2%とネットの資金需要-5%の強い拡張状態
• 成長戦略効果が極めて強い(2.5倍)
年度
債務残高
(兆円)
名目GDP
(兆円)
債務残高GDP比
(%)
名目成長率
(%)
企業貯蓄率
(%GDP)
財政収支
(%GDP)
家計貯蓄率
(%GDP)
2026
2027
2028
2029
2030
2031
2032
2033
2034
2035
2036
2037
2038
2039
2040
1302
1324
1343
1360
1374
1388
1403
1418
1434
1451
1468
1486
1505
1524
1545
692
713
739
765
796
828
862
897
933
971
1010
1050
1093
1137
1183
188
186
182
178
173
168
163
158
154
150
145
141
138
134
131
3.4
3.1
3.6
3.5
4.0
4.0
4.0
4.0
4.0
4.0
4.0
4.0
4.0
4.0
4.0
3.5
1.9
0.1
-1.5
-3.3
-3.3
-3.3
-3.3
-3.3
-3.3
-3.3
-3.3
-3.3
-3.3
-3.3
-3.5
-3.1
-2.6
-2.2
-1.7
-1.7
-1.7
-1.7
-1.7
-1.7
-1.7
-1.7
-1.7
-1.7
-1.7
4.1
4.8
5.6
6.2
7.1
7.1
7.1
7.1
7.1
7.1
7.1
7.1
7.1
7.1
7.1
ネットの資金需要 需給ギャップ
(%GDP)
(%GDP)
0.00
-1.25
-2.50
-3.75
-5.00
-5.00
-5.00
-5.00
-5.00
-5.00
-5.00
-5.00
-5.00
-5.00
-5.00
0.0
0.5
1.0
1.5
2.0
2.0
2.0
2.0
2.0
2.0
2.0
2.0
2.0
2.0
2.0
円高ダミー
0.00
0.25
0.25
0.50
0.50
0.50
0.50
0.50
0.50
0.50
0.50
0.50
0.50
0.50
0.50
16
名目GDPと政府の債務残高GDP比のケース別の推移
• 政府の戦略投資が企業の投資を強く誘発すれば、戦略投資の分だけの財政赤字が残っても、
2040年度には名目GDPは1,100兆円程度に、政府の債務残高GDP比は150%程度まで改善す
る見込み。
• 財政健全化優先で戦略投資が不足し、需給ギャップ0%とネットの資金需要0%の緊縮志向の
呪縛を乗り越えられなければ、政府の債務残高GDP比が上昇し、財政状況は悪化してしまう。
<名目GDP推計(兆円、成長戦略効果別、年度)> <政府の債務残高GDP比(%、成長戦略効果別、年度)>
1,300
200
1,200
190
1,100
180
1,000
170
900
160
800
150
700
140
600
2026 2027 2028 2029 2030 2031 2032 2033 2034 2035 2036 2037 2038 2039 2040
成長戦略効果1.0ケース
成長戦略効果2.0ケース
出所:日銀、内閣府、クレディ・アグリコル証券
成長戦略効果1.5ケース
成長戦略効果2.5ケース
130
2026 2027 2028 2029 2030 2031 2032 2033 2034 2035 2036 2037 2038 2039 2040
成長戦略効果1.0ケース
成長戦略効果2.0ケース
成長戦略効果1.5ケース
成長戦略効果2.5ケース
17
政府の戦略投資が企業の投資を誘発する
• 政府の積極的な戦略投資が企業の投資を強く誘発すれば、ネットの資金需要はしっかりとし
たマイナス、名目GDP成長率は3%台、需給ギャップ2%の高圧経済、家計のファンダメンタ
ルズの回復につながる。
• ネットの資金需要を拡大する積極的な戦略投資の方が、ドーマー条件が満たされる。
<名目GDPと貯蓄投資バランスの推計(成長戦略効果別)> <ドーマー条件(国債10年金利-名目GDP成長率>
成長戦略効果
1.0
1.5
2.0
2.5
名目GDP成長率
2.0
3.0
3.5
4.0
需給ギャップ
0.0
1.0
1.5
2.0
0.6
財政悪化
0.4
0.2
0.0
-0.2
ネットの資金需要(a+b)
0.00
-2.50
-3.75
-5.00
-0.4
-0.6
企業貯蓄(a)
3.7
1.3
-0.7
-3.3
財政収支(b)
-3.7
-3.8
-3.0
-1.7
海外
-3.8
-2.9
-2.5
-2.1
家計
3.8
5.4
6.2
7.1
-0.8
財政改善
2026 2027 2028 2029 2030 2031 2032 2033 2034 2035 2036 2037 2038 2039 2040
成長戦略効果1.0ケース
成長戦略効果2.0ケース
成長戦略効果1.5ケース
成長戦略効果2.5ケース
注-貯蓄投資バランス:家計+海外+政府+企業=0;円高ダミーは0.50と仮定
国債10年金利(%)=0.54+0.30 名目GDP(%、前年比、12QMA)+0.26 米国10年金利(%)-
0.15 ネットの資金需要(対GDP比%)-0.06 日銀長期国債買入れ額(年率換算、対GDP比)-0.63 緩
和的金融政策ダミー(2016年4-6月期から2024年10-12月期まで1、2025年1-3月期から7-9月期まで
0.75、他は0);R2=0.93
出所:日銀、内閣府、クレディ・アグリコル証券
注:米国10年金利は5%を適用
18
目指すべき絵姿としての「強い経済」のグランドデザインへ
<内閣府中長期の財政試算:「弱い経済」のグランドデザイン>
推計
%程度
貯蓄率(年度)
2024
2025
2026
2027
2028
2029
2030
2031
2032
2033
2034
2035
家計
2.0
2.2
2.3
2.2
2.2
2.1
2.1
2.1
2.1
2.0
2.0
2.0
海外 (-国際経常収支)
▲ 4.6
▲ 5.3
▲ 5.5
▲ 5.3
▲ 4.8
▲ 4.3
▲ 3.8
▲ 3.5
▲ 3.1
▲ 2.9
▲ 2.6
▲ 2.4
▲ 1.4
▲ 0.8
▲ 0.5
0.7
1.1
1.1
1.1
1.2
1.1
1.2
1.0
0.8
4.0
3.9
3.7
2.4
1.6
1.1
0.6
0.2
▲ 0.1
▲ 0.3
▲ 0.3
▲ 0.4
2.6
3.1
3.2
3.1
2.7
2.2
1.7
1.4
1.0
0.9
0.7
0.4
政府
企業
(a)
(b)
ネットの資金需要 (a+b)
注:貯蓄投資バランス:家計+海外+政府+企業=0
政府利払費は2026年度の13兆円から2035年度の32兆円へ増加するが財政黒字に
積極財政による官民連携の成長投資・危機管理投資
ダイナミックスコアリング:政府投資→企業投資誘発を最大に
<「強い経済」のグランドデザイン>
貯蓄率(①+②+③+④=0)
① 家計
上昇してファンダメンタルズの向上
② 海外 (-国際経常収支)
成長投資と危機管理投資などの新たな投資枠の支出分はマイナス
③ 財政収支 (a+b)
政府経常的収支
政府投資支出
④ 企業
安定的に推移
(a)
(b)
(c)
ネットの資金需要 (a+b+c)
出所:内閣府、クレディ・アグリコル証券
均衡へ
経常的支出に分別して多年度の新たな投資枠として管理
貯蓄超過(プラス)から投資超過(マイナス)へ
名目GDP成長率3%台と家計に所得をしっかり回すために―5%
19
政府の純債務も重視すべき
純債務については、財政運営上の指標として用いることは困難であるというのは間違い
海外格付け機関やオリヴィエ・ブランシャール氏をはじめ、グローバルには純債務を重視する流れになってきている。
グローバルな経済政策の潮流が、新自由主義の効率化から経済産業政策の官民連携の戦略投資に変化していることが理
由である。戦略投資は、債務が増加しても、資産も増加するため、純債務で判断することで政策余地がより大きくなる
ためである。将来の成長や所得を生む戦略投資を、税収の範囲内で行う制約となるプライマリーバランスの黒字化だけ
ではなく、投資による債務の増加を慎重に見る総債務の重視は、戦略投資の競争に日本が負けるリスクとなる。外貨準
備や財投債など、資産と負債が両建てとなっているものは、財政運営上の指標としての総債務から外すべきである。
政府の金融資産には年金基金があるので、純債務でみることは適切ではないというのは間違い
公的年金の財政検証が、どのシナリオをメインとしているか、明確にすべきである。メインシナリオの実質成長の前提
がマイナス、基金の想定利回りが3%程度なのであれば、現実とは乖離しているため、社会保険料は削減でき、長期の戦
略投資のための長期資金は潤沢であることを示す。総債務から差し引く金融資産に年金基金を含めても、債務に年金預
かり金を入れれば、大きく改善している結論は変わらない。年金基金の国債投資割合を増やすことは、超長期金利が上
昇した現在、想定リターンとリスクのバランスでは、ファイナンスとして合理的で、当然である。現役世代の拠出と高
齢世代の給付のバランスに基づく公的年金制度で、年金基金は余剰資金であることを正しく認識する必要がある。
為替介入による外為特会の資金は戦略投資の財源とならないというのは間違い
為替介入によって得られた円貨で、国庫短期証券を償還すれば、総債務が減少するため、債務残高GDP比が安定する中
で、戦略投資の余地は広がる。今回の介入で10兆円程度、投資の余地は拡大した。この余地を否定するのであれば、資
産と負債が両建てで減少して変化のない純債務を重視すべき。この余地の拡大の否定と、総債務重視は矛盾している。
20
日本の負債構造は強靭である
• 企業の純負債は消滅し、政府と企業の純負債の合計である経済の負債構造が強靭であることは、投資不足も示す。
経済の負債構造が強靭であれば、名目GDP成長率を大きく上回るような金利の高騰は考えにくい。
• 政府の純負債残高GDP比は急速に改善し、国債格付けAAA格の水準が目前で、戦略投資の拡大余地は大きい。
<各国の主体別純負債(対GDP比%)>
2025年
``
一般政府総負債
一般政府総金融資産
210
143
67
米国
139
35
ユーロ圏
107
52
10-12月期
日本
一般政府(A)
企業(除く株式
経済の負債構造
企業(株式等)
家計
海外
-10
155
-299
85
57
105
216
239
-389
-171
321
54
63
36
-164
11
117
<国債格付けと政府の純負債残高GDP比>
等、B)
(A+B=C)
<公的年金預かり金を負債に含めた政府の純負債残高GDP比>
150
5A
175
125
4
A+
150
A5
A+
AA3
100
大きく
改善
2025年10-12月期
67%
75
50
AA
2
1
AA+
0
AAA
(1)
25
Mar-98
Mar-02
Mar-06
Mar-10
Mar-14
政府のネットの負債残高(%GDP)
Mar-18
Mar-22
Mar-26
S&Pの日本国債格付け(右軸)
出所:日銀、内閣府、FRB、Eurostat、S&P Global、クレディ・アグリコル証券
3
AA-
125
AA
格上げ
100
2025年10-12月期
88%
75
1
AA+
AAA
(1)
50
Mar-98
格上げ
Mar-02
Mar-06
Mar-10
Mar-14
Mar-18
Mar-22
Mar-26
政府の純負債残高(%GDP、除く社会保障基金)
S&Pの日本国債格付け(右軸)
21
日本成長戦略に盛り込むべき事項
① 国際リニアコライダー(ILC)の東北誘致と先端加速器の技術開発
② 付加価値型の経済成長の牽引役であるコンテンツ産業の強化
③ バイオ医薬品・再生医療分野における危機管理投資と成長投資の拡大
④ フィジカルAIとサイバーセキュリティ―におけるグローバル・プラッ
トフォーマーの育成
⑤ 官民連携の長期投資の拡大には安定的な長期資金と高圧経済の良好な
経済環境が必要
⑥ 各都道府県は似通ったものではなく、特色ある成長戦略を生み出し、
政府の戦略投資と融合させるべき(岩手県のILCと三重県の例)
22
1:国際リニアコライダー(ILC)の東北誘致と
先端加速器の技術開発
国際リニアコライダー(ILC)の東北誘致による、先端加速器の技術開発は単なる研究設備にと
どまらず、産業競争力と国家安全保障を支える重要なインフラとなる。AI・半導体、量子、創
薬・先端医療、フュージョンエネルギー、安全保障、環境保全など、成長戦略分野を支える横断
的国家基盤技術になり得る。日本は世界最高水準の技術を持ちながらも、産業政策や国家戦略と
の連携が必ずしも十分とは言えず、技術優位性を国際的な産業競争力へ転換できていない。一方、
欧州、米国、中国では、先端加速器の技術開発を国家戦略として推進し、産業政策と安全保障政
策として一体化している。先端加速器の世界市場規模は、概ね10兆~20兆ドル(約1,500兆~
3,000兆円)規模に及ぶとみられ、超伝導、極低温、高周波、精密加工などの高付加価値産業を
強化するとともに、産業クラスター形成や高度人材育成、スタートアップ創出にも大きく寄与す
る。量子・加速器を中核とした統合国家戦略の策定および、司令塔機能を有する拠点研究機関を
創設すべきである。日本成長戦略の17分野の複数の分野に貢献し、日本経済の持続的な成長へ向
け広範囲にわたり波及効果をもたらし、日本の「稼ぐ力」を生み出す先端加速器を国家プロジェ
クトとして位置付けることを強く期待する。日本学術会議がILCについて所見を出したのは2018
年であり、当時から国家・経済安全保障の国際環境は大きく変化しているため、再検討の余地が
ある。欧州合同原子核研究機関(CERN)は、 2028年までに新型加速器「FCC-ee」の建設の最
終決定を行う見込みであり、残された時間は限られている。検討・決断を急ぐ必要がある。
23
先端加速器(ILC)実現を成長戦略と
骨太の方針に盛り込むべき理由
①ヒッグスファクトリーによる精密測定は、宇宙の謎の解明に挑む世界の素粒子物理学者の総意であ
ること
②日本の電子・陽電子衝突加速器は世界最高水準の科学技術であり、高エネルギー加速器研究機構
(KEK)はその国際実験拠点であること
③施政方針演説に掲げる「基礎研究を含めた科学技術研究の基盤を強化」を推進する中核技術は、先
端加速器(ILC)であること
④「先端加速器(ILC)」は長期投資になるが、産業の勝ち筋となる種を育てるものであること
⑤予算編成方針にも長期にわたる複数年度予算が記載されているほか、「新たな投資枠」の試金石と
しても意義があること
⑥欧州素粒子物理戦略2026において巨大円形加速器「FCC-ee」が最優先の基幹計画とされ、2028年ま
でに建設決定がなされることから、早急に日本政府から先端加速器(ILC)建設に向けた、国際協議開
始の意志表明が必要であること
出所:岩手県商工会議所連合会
24
先端加速器(ILC)の意義
アジア初の大型国際科学技術拠点となる国際リニアコライダー(ILC)は、科学技術創造立国、経済
安全保障、新たな国の創生、復興、国土強靭化、高度人材の集約、科学技術イノベーション等の多
岐に亘る壮大な計画である。
出所:岩手県商工会議所連合会
26
出所:岩手県商工会議所連合会
27
出所:岩手県商工会議所連合会
28
出所:岩手県商工会議所連合会
29
出所:岩手県商工会議所連合会
30
出所:岩手県商工会議所連合会
31
出所:岩手県商工会議所連合会
32
2:付加価値型の経済成長の牽引役であるコンテンツ産業の強化
高市政権の「責任ある積極財政」が国際的な信認を得るため、速やかに1つでも目に見える成果をあげる必
要がある。官民連携の戦略17分野のうち、コンテンツ産業が最も早く成果を挙げることのできるローハン
ギングフルーツと言える。コンテンツ産業は、海外売上が毎年15%も伸びて半導体を超える規模に達するなど、
国際競争力を有する成長産業である。結果として、法人税も過去10年で2千億円から5千億円まで増加して
いる。1億円の補助金が20億円の売上増加、4億円の税収増に繋がったという試算も存在する。コンテン
ツ産業は財政支援が税収で返ってくる魅力的な投資対象である。大規模・長期・戦略的な財政支援を通じて、
売上3倍・投資3倍を達成するべきである。政府支援は600億円まで増加して支援期間も2~3年に伸びてい
るが、競争力のある米国の半分程度の年間3千億円の財政支援を長期間コミットすれば、民間企業の大胆な投
資を引き出すことが可能と考える。その際には、包括的な政策パッケージをつくりながらも、「創る」「流
す」「叩く」に予算配分を重点化するべきである。「創る」として製作支援、開発基盤構築、スタートアッ
プ支援、「流す」として流通プラットフォーム、海外展開支援(プロモーション、ローカライズ)、海外支
援拠点(JTRO)、放送業界の海外展開支援、「叩く」として海賊版対策などが含まれる。例えば、世界的な
大ヒットを狙えるコンテンツ製作事業者や、その作品を配信やグッズといった形で海外に広く展開できるコ
ンテンツの流通事業者、10兆円の被害に対する海賊版対策を重点支援することを提案する。他にも、野球・
サッカー・バスケ・モータースポーツなどプロスポーツにおける新団体創設とリーグの拡張・育成、アニメ
テーマパークの巨大開発などによる地域活性化を積極的に推進し、聖地巡礼など、インバウンド観光などに
も経済効果を広げていくことを目指す。旅行収支=サービス収支も含めて、広義のエンタメは、実体経済を
伴う貿易・サービス収支の黒字の稼ぎ頭となる。
33
コンテンツ分野の官民投資ロードマップ(定量的な全体総括):
海外売上20兆(3倍)・投資3倍 ~求められる呼び水5年5千億円~
➢ ゲームやアニメ、マンガ、音楽、実写といったコンテンツ分野において、米国6,176億円、中国1,283億円、フランス1,233億円、韓国762
億円と大規模な財政支援を講じる諸外国と国際競争しながら、2033年に海外売上20兆円の目標達成を目指す。
➢ そのため、官民一丸となって、 「売上3倍、投資3倍」や「平均年収1,000万円」等の実現に取り組む。
➢ 産業界からは、その実現には5年間で5千億円以上の予算支援が必要との声が上がっている。
海外売上目標
民間投資目標(代理変数:関連上場企業の総計)
KPI目標
2024
2033
2024
2033
2024
2033
3.4兆円
12兆円
7.4兆円
26.3兆円
625 万円
1,000 万円
平均年収
平均年収
0.8億円/人
2億円/人
1人あたり売上
1人当たり売上
7本/年
30本/年
ホームラン数
ホームラン数
約1億人
のべ海外会員数
約3億人
のべ海外会員数
0.7兆円/年
海賊版抑制額
4兆円/年
海賊版抑制額
ゲーム
ゲーム
2.1兆円
6兆円
アニメ
1.2兆円
3.3兆円
アニメ
0.3兆円
1兆円
マンガ
開発PF構築
0.4兆円
1.2兆円
マンガ
0.1兆円
0.5-1兆円
音楽
コンテンツ製作
0.3兆円
2.3兆円
音楽
0.1兆円
0.5兆円
実写
全体
クリエイター育成
流通PF拡大
0.1兆円
0.3兆円
実写
6.1兆円
20兆円
出所:経産省『エンタメ・クリエイティブ産業戦略研究会・戦略改定骨子案』をもとに作成
全体
ユーザー開拓
9.3兆円
33.3兆円
34
「国内で稼ぐ産業」から「世界で稼ぐ産業」への変革の道筋
➢ 企業を動かすには、構造改革と一体となった、強力なインセンティブが必要。産業界が求める「5年5千億円以上の予算支援」で改革を迫る
➢ 日本のコンテンツ産業は国内市場で稼ぐことに安住。世界で稼ぐ産業を目指すに当たって、主な日本企業は国内市場では大手企業でも世界市場
では中小企業に過ぎず、国際競争力に乏しい。政府支援により大規模化を加速し、自立して世界で戦える企業に育てる。
創る
流す
叩く
国内市場中心のミドルリスク・ミドルリターンの創作活動
外国資本の流通プラットフォームに買い取られる小作人
無料の海賊版の跋扈により海外市場の採算性悪化
5億円
権利提供
作品提供
有償
無償
VS
10億円
※成功時は売上10億円。失敗時は売上数億円で赤字は限定的。
5億円
外国資本
60億円
※販売リスクを取らずに済むが、低廉な固定報酬しか得られない。
※無償コンテンツを前に有償コンテンツは購買されにくい。
海外向け大規模作品製作支援
国際的な流通プラットフォーム拡大支援
海賊版対策
民間5億円+(補助金10億円+民間投資誘発5億円)=20億円
成果報酬率50%の日本資本の流通プラットフォームが普及
委託費を7.5億円から20億円に拡大
海外市場中心のハイリスク・ハイリターンの創作活動
日本資本の流通プラットフォームで販売する地主
海賊版の抑制により海外市場の採算性向上
20億円
権利提供
作品提供
有償
無償
VS
100億円
※成功時は売上100億円。失敗時は売上数億円で大赤字。
自立してリスクテイクできる企業規模の実現
ゲームは売上1兆円、アニメ・実写は売上1千億円以上
30億円
日本資本
60億円
※成果に応じた収入を得る。流通手数料も日本作品に再投資される。
※無償コンテンツを抑制すれば有償コンテンツが購買されやすくなる。
ネットワーク効果で自立して成長できる企業規模の実現
自己資金で海賊版対策できるほどの企業成長を実現
目標は「創る」「流す」と同じ
ユーザー1億人以上(オンライン)又は1千億円(オフライン)
出所:経産省『エンタメ・クリエイティブ産業戦略研究会・戦略改定骨子案』をもとに作成
35
【参考】日本経済・財政への貢献
➢ 日本発コンテンツの海外売上高は、既に半導体の輸出額を上回り、日本の外貨獲得に貢献している。今後は、自動車産業に匹敵する水準
での外貨獲得への貢献を目指す。過去10年間でコンテンツ産業の年間法人税等は約3千億円増加しており、日本の財政に貢献している。
また、法人税の伸びは、日本全体の+5.8%/年よりもコンテンツ産業の+10.2%/年の方が大きい。
輸出額等
上場企業の法人税等
自動車 = 自動車輸出額 + 二輪自動車輸出額 + 自動車部分品輸出額
半導体 = 熱電子管輸出額 + 個別半導体輸出額 + IC輸出額
コンテンツ = ゲーム海外売上高 + アニメ海外売上高 + 出版海外売上高 + 音楽海外売上高 + 実写海外売上高
営業利益 = ゲーム営業利益+ 映像営業利益+ 出版営業利益+ 音楽営業利益
法人税等 = ゲーム法人税等+ 映像法人税等+ 出版法人税等+ 音楽法人税等
(兆円)
(兆円)
25.00
1.8
22.39兆円
20.00
CAGR3.9 %
1.2
15.00
16
17.9兆円
10.8兆円
3.91兆円
CAGR14.5%
CAGR5.0 %
1.82兆円
2016
10
CAGR5.8 %
0.7 兆円
8
0.5 兆円
CAGR10.2%
0.4
6.08兆円
2015
0.6
2018
自動車
2019
2020
コンテンツ
2021
2022
2023
2024
半導体
※自動車・半導体は、財務省「貿易統計」の値。コンテンツは、株式会社ヒューマンメディアが推計したゲーム、アニメ、
出版、実写の海外売上に経済産業省が調査した音楽分野の海外売上を加えた値。
出所:経産省『エンタメ・クリエイティブ産業戦略研究会・戦略改定骨子案』をもとに作成
6
4
0.2 兆円
0.2
2
0.0
2017
14
12
0.8
6.13兆円
20
18
1.0
10.00
0.00
CAGR10.8%
1.6
1.4
15.82兆円
5.00
1.7 兆円
0
2015
2016
2017
2018
コンテンツ産業の営業利益
2019
2020
2021
コンテンツ産業の法人税等
2022
2023
2024
日本全体の法人税
※コンテンツ産業の営業利益・法人税等は、コンテンツ分野で主たる事業を営んでいると考えられる上場企業の有
価証券報告書に基づき、積み上げた値。日本全体の法人税は、財務省「一般会計税収の推移」の値。
36
【参考】コンテンツ産業の5大構造改革~IP価値の最大化と創り手への対価還元~
➢ コンテンツ産業政策では、財政支援だけでなく制度面からの構造改革も一体として進める。これらを通じて、固定報酬や包括的権利提供、
作品の無断学習、長時間労働、低資本効率を前提とした従来の商慣行を改革し、 ①クリエイターの質・量両面での拡充や、 ②融資活用
による資金の円滑な循環、 ③AI活用に伴う権利侵害の防止及び公正な対価還元、④制作会社への成果に応じた報酬、⑤戦略的なIP権利
活用(IP360)を通じて、収益力や賃金の向上が実現する産業構造への転換を進める。
論点2.融資不足につき資金不足・低資本効率
論点1.一部職場の長時間労働・スキル向上機会不足
就業ガイドラインや
人材育成基盤を整備
離職抑制
スキル・キャリア
向上
融資活用の
促進
外国の企業
認定機関/育成機関
金融機関
安価に利用
就業環境の認定/人材育成
融資
開発プラットフォーム
AI学習対価
の未払い
制作・開発会社
製作委員会・匿名組合
包括的な
権利提供
作品の
無断学習
固定報酬
最低保証金
AI学習対価
の支払い
出資
戦略的な
権利提供
AIサービスを
安価に利用
成果報酬
成果報酬
論点3.AIによる権利侵害拡大とAI活用の停滞
AIの対価支払いに
関するルール整備
作品納品
資金不足解消
資本効率向上
適切なAI活用促進
による生産性向上
出所:経産省『エンタメ・クリエイティブ産業戦略研究会・戦略改定骨子案』をもとに作成
論点4.固定報酬に伴う受託制作会社の収益力低迷
成功報酬率の
引上げ
収益力向上
賃上げ
流通プラットフォーム
論点5.権利分散・事務コストによる限定的なIP活用
IPライセンス取引・
活用機能の強化
IP収益最大化
37
3:バイオ医薬品・再生医療分野における
危機管理投資と成長投資の拡大
2024年に日本のバイオ医薬品は1.7兆円の輸入超過に陥っており、日本国内への医薬品供給を海外
に依存している状況である。イノベーションへの投資と回収によりエコシステムの中で企業が自律
的成長していくべきところ、財政的制約もあって薬価は抑制的傾向にあるなか、米国MFN薬価制
度の導入の脅威が近づいてきており、ドラッグラグ・ドラッグロスの悪化が懸念される。このため、
MFNへの対応も勘案し、イノベーティブな革新的新薬の開発を促す新たな薬価制度を早急に検討
することが必要であり、関係業界では市場拡大再算定・費用対効果評価の廃止、特許品の薬価改定
の廃止、今後の新薬薬価を外国平均並み価格へ調整など、薬剤費ベースで5年約2.5兆円が検討さ
れている。「次世代の産業の柱」として世界各国が積極的な投資を推進している。我が国において
も、健康医療・経済・安全保障の強化やGX・循環型経済を実現しつつ、経済成長の可能な「二兎
を追える」次世代の成長産業として、支援額は、従前の10年間で約1兆円から、毎年1兆円が必要
である。昨年ノーベル賞を受賞した坂口先生のような日本の高い基礎研究力を創薬につなげ、健康
医療安全保障の観点からも日本において製造できるようになるのが望ましいと考える。このため、
革新的なバイオ医薬品・再生医療等製品の開発を行うスタートアップの開発加速や製造拠点整備を
充実をするための大胆な支援措置が必要である。また、これら拠点の製造基盤の強化や受託実績の
獲得やこれら産業における人材育成策の整備といったソフト支援の充実が必要不可欠である。この
ため、創薬スタートアップの育成を含め、民間投資の呼び水となる官による大胆な危機管理投資と
成長投資の拡大が必要と考える。
38
バイオ医薬品・再生医療分野の重要論点と対応の方向性
⚫ 細胞や微生物を用いて製造されるバイオ医薬品等は、医薬品市場の4割を占めるようになり、その割合は年々
増加傾向
⚫ 下記課題のため、バイオ医薬品等の国内開発・製造、国民への安定供給に懸念が生じている
⚫ これを健康医療安全保障上の課題と捉え、危機管理投資の観点から政府は大胆な投資を実施し、民間投資
を引き出しつつ解決を図るべき
◎バイオ医薬品・再生医療等製品は、その製造を海外に依存(約1.7兆円の輸入超過、自給率約14%)
(対応の方向性)国内製造拠点を整備するとともに、国内製造への切替え・製造トラックレコードの確立を支
援することで、実効性のある国内供給体制を確立すべき
◎日本の薬価制度(革新的新薬の適切な価値評価が不十分、特許期間中の薬価維持がなされない)や米国
の最恵国待遇(MFN)価格政策により、相対的に薬価が低い日本での医薬品開発や上市が見送られ
る懸念があり、日本への投資回避やドラッグロス拡大に繋がりかねない状況
(対応の方向性)革新的新薬のイノベーションを評価、薬価に反映し、ドラッグロスを解消・回避すべき
◎創薬スタートアップの医薬品開発や製造基盤技術開発に必要な資金が不足
(対応の方向性)創薬スタートアップの研究開発について中長期的な政府支援をコミットするとともに、新薬製
造の基盤技術開発への支援も強化すべき。健康医療安全保障上の課題という意味では、
医療機器のスタートアップ支援を通じた開発機能の強化も同様に重要。
出所:経産省資料をもとに作成
4:フィジカルAIとサイバーセキュリティ―における
グローバル・プラットフォーマーの育成
製造業が蓄積する豊富な現場データは日本固有の競争優位である。データ精製技術と組織横断的なデータ連
携基盤を構築し、産業競争力に係るデータを他国プラットフォームに依存せず処理できる国内サービスを確
保することで、経済安全保障と製造業のDX推進を同時に実現できる。フィジカルAI領域は日本の強みを最大
限活かせる差別化領域であり、国内プラットフォーマー育成が急務である。デジタル通貨の発展により、決
済インフラが新たな競争領域となっている。海外プラットフォームへの依存は金融主権の喪失と決済データ
流出のリスクを招く。国内プラットフォーマーの育成により決済の自律性を確保し、金融データを国内で管
理・活用することが、経済安全保障上不可欠である。AIによるサイバー攻撃の高度化に対し、海外製品への過
度な依存からの脱却が喫緊の課題である。官民の一次情報を活用した国産製品開発と、制御系システムなど
日本が強みを発揮できる分野への注力により、信頼性の高い製品・サービスの市場拡大を図り、先進的開発
が進むエコシステムを構築する必要がある。これら三分野の統合的育成と官民連携の投資拡大、独自技術を
有するスタートアップ企業への支援により、データ主権を確保し、グローバル・プラットフォーマーに育成
することで国際競争力を強化すべきである。グローバル・プラットフォーマーの育成によって、他の戦略分
野への投資波及効果が大きくなる。こうした官民連携の戦略投資を通じて、国内設備投資サイクルを更に大
きく押し上げ、企業を異常な貯蓄超過(投資不足)から正常な投資超過に回復させ、経済停滞から完全に脱
することを目指す。昨年の総合経済対策で示されたように「企業と政府の支出する力を十分に強くし、家計
に所得が回る力を強くする」ことが必要だ。官民合わせた支出する力であるネットの資金需要(企業貯蓄率
+財政収支)を十分なマイナスとなるまで、官民連携の戦略投資を拡大することが重要である。
40
5:官民連携の長期投資の拡大には安定的な長期資金と
高圧経済の良好な経済環境が必要
日本経済は設備投資・研究開発投資が実質横ばいで推移し、資本生産性も低迷する中、主要産業の国際競争
力が低下している。AIトランスフォーメーション(AX)を巡る国際競争において、日本は供給・需要両面で出
遅れており、企業経営から産業構造まで全レイヤーでのAX実現が喫緊の課題である。投資拡大には市場・技
術・政策等の不確実性緩和、経済安全保障の確保、産業用地等インフラ整備が不可欠であり、企業の投資予
見可能性を高める総合政策が求められる。スタートアップは25,000社に増加し対GDP比約4%の経済インパク
トを創出したが、ユニコーン数や資金調達額は目標に遠く、特にディープテック・スタートアップへの大規
模・長期資金供給の強化が課題である。賃金面では3年連続5%台の賃上げが実現したが、物価上昇を上回る実
質賃金プラスの定着が課題である。雇用の7割、付加価値の5割を占める中小企業は、地域経済と成長産業サ
プライチェーンの基盤であり、その「稼ぐ力」強化が持続的成長の鍵となる。需給ギャップ0%を適正とする
従来方針では、投資・賃上げ・消費の好循環を生み出す需要が不足する。投資を拡大した企業が収益を十分
に確保できず、スタートアップの育成には逆風となる。言い換えれば、投資需要の上振れ余地を作るため、
需給ギャップの0%からの上振れが必要である。需給ギャップ2%超の高圧経済への移行により、官民連携によ
る戦略的投資需要を拡大し、企業の投資意欲を喚起することで、企業を貯蓄超過から投資超過に転換させ、
AX実現と国際競争力回復を同時に達成できる。この実現には、年金基金による国内長期資金の大幅な増加と、
日銀の安定的な成長通貨供給が不可欠である。高圧経済は投資収益の予見可能性を高め、持続的な賃上げと
実質所得増加を実現し、日本経済の構造転換を加速させる。そのためにも、全ての設備投資の増加分に対し
て投資額の25%を法人税から差し引く税額控除など、設備投資減税の拡充が必要である。
41
6:各都道府県の特色ある成長戦略と政府の戦略投資の融合
三重モデル:国の成長戦略7分野を同時に実装する制度設計モデル
- AI・医療DX・GX・防災・地方創生を統合する全国展開型インフラ
-
Pilot自治体
AI
GX
医療DX
防災
地方創生(産業DX)
• 本プロジェクトは、国の17成長戦略分野のうち7分野に整合する「制度設計モデル」である。
• 三重県をパイロット自治体とし、国の制度形成(2027年)に先行して制度モデルを実証する。
• 国の制度化を前提とした“全国展開型インフラ”であり、三重県単独の事業ではない。
出所:小林益久(元松坂市副市長)
国の成長戦略と本プロジェクトの完全整合性
◆ 本プロジェクト(三重モデル)は、国の17成長戦略分野のうち7分野に直接整合するインフラモデルである。
◆ AI・医療DX・GX・防災・地方創生を単一エコシステムで同時に達成する。
No
成長戦略分野
本プロジェクトと国の成長戦略との整合性
1
AI・半導体
H100/H200/B200を用いた633 PFLOPSのAI基盤は、国家戦略のAI・半導体分野の中心。
2
デジタル・サイバーセキュリティ
ゼロトラスト+院内エッジAIにより、医療データを外部に出さない構造が国家戦略の核心。
3
情報通信
100G–400G Ethernet / NVLink による超低遅延ネットワークが情報通信分野と一致。
4
合成生物学・バイオ
医学・工学・生物資源の計算科学を統合するAI基盤は、バイオ×HPCの国家戦略と一致。
5
創薬・先端医療
ダビンチ解析・創薬AI・医療シミュレーションが、先端医療分野と完全一致。
6
資源・エネルギー安全保障・GX
ソーラーカーポート、ペロブスカイト、蓄電池、PPAの組み合わせはGXの中心施策。
7
防災・国土強靭
ESSによる完全無停電化は、医療インフラのBCP強化として国の最優先テーマ。
「企業版ふるさと納税」の活用や地方の国立大学の研究設備の充実なども関連するので、国が注力する地方創生と
も整合性をもつ。
出所:小林益久(元松坂市副市長)
三重県だけの課題ではなく、日本の大学・病院が抱える“構造問題”
◆ 電気量高騰、低い再エネ自給率、GPU不足、ゼロトラスト制約、ディーゼルBCPの限界などがある。
◆ これらの課題は三重県固有の問題ではなく、全国の大学・病院が抱える“国家的構造問題”である。
◆ 三重モデルは、この構造問題を一括で解決する国家モデルとなる。
日本の大学・病院の構造問題
解決策
電気料金の構造的高騰
低い再エネ自給率
研究用GPUの世界的枯渇
ゼロトラストでクラウド不可
ディーゼル発電の“数十秒の致命的停電リスク”
PPA
大学負担ゼロのGX化
OODC
ゼロトラスト対応のエッジAI
統合インフラ
(GX×医療
DX×AI×防災
を単一基盤で
統合)
H100/H200/B200
世界トップクラスのAI基盤
出所:小林益久(元松坂市副市長)
ESS
瞬断ゼロの無停電化
最小の大学負担で実現する“全国展開可能な財務モデル”
◆ 本モデルは、GX・地方創生・研究力強化・国民参加型ファイナンスを統合した“全国展開可能な財務スキーム”で
ある。
◆ 大学側の実質負担額を最小にすることが出来る。
5層の統合ファイナンス
【第1層】国費(補助金・制度設計)
【第2層】オンサイトPPA(GX)
【第3層】企業版ふるさと納税(地方創生)
【第4層】指定寄附金(研究力強化)
【第5層】クラウドファンディング(国民参加)
----------------------------------------大学の象徴的最小負担(責任の明確化)
出所:小林益久(元松坂市副市長)
全国展開
【国の政策目的】
↓
全国展開可能な財務モデル
(5層の統合ファイナンス)
↓
【全国の大学・病院へ展開】
資料10
資料8-2
日本成長戦略会議
第5回
発言案
2026 年 6 月 24 日
早稲田大学硏究院
教授
遠藤典子
官民投資と政府の役割
官民投資の総額が提示されたが、資本市場で主体的に経済活動を行う民間企業に政府が決
定した成長分野への投資を強いることはできない。政府は労働法制等、規制緩和も含めた
制度設計を行い、企業の新陳代謝を促進することでイノベーションの創発が行われやすい
環境を整備することに徹するべきである。
また、防衛生産基盤強化法や経済安全保障推進法に規定されている GOCO(GovernmentOwned, Contractor-Operated)は補助金で埋まらない投資回収のキャップを埋めるのに有
効であり、デュアルユースを視野に入れた柔軟な適応が検討されよう。
さらに、企業・産業競争力の向上には、国内市場に留まらず、グローバル市場を視野に入
れた成長投資が必要であり、経済安全保障に留意し、同志国とのサプライチェーン構築に
積極的に参画することが求められる。
防衛産業
装備品の性能を左右するのは、もはやソフトウエアである。例えば戦闘機において 1960
年代開発の F-4PhantomⅡのコストのうちソフトウエア割合は 10%に過ぎなかったが、F15Eagle では 25%、F-35 LightningⅡでは 45%まで上昇している。そのソフトウエアは頻
繁に更新され、配備後も不具合を修正し、能力を高め続ける必要がある。ソフトウエアが
オープンソースである以上、セキュリティリスクに晒され続ける。
米国国防省は装備品をブロックの組み合わせのように設計し、標準化されたインターフェ
ースでモジュールを繋ぐ MOSA(Modular Open Systems Approach)、ソフトウエア部品
表となる SBOM(Software Bill of Materials)、動作確認と運用承認を行い、リスクを管理
する RMF(Risk Management Framework)を三位一体として導入し、DevSecOps
(Development・Security・Operations)の要諦としている。
日本もこの基準に沿い、レガシー調達を革新しなければ国際共同開発、装備品移転を円滑
に行うことはできない。とりわけ MOSA においては、無人機開発から着手すべきであ
る。モジュール化と標準インターフェースがあってこそ、スタートアップの参入を容易に
し、新技術を柔軟に取り込むことができる。
なお、ソフトウエアが付加価値を決定する産業構造転換は、自動車などあらゆる製品、通
信など重要インフラにおいても進行していることは言うまでもない。
エネルギーとデータ
かねてエネルギーは熱のためにあったが、今はインテリジェンスのためにある。AI データ
センターの成否を分け、データ主権、国力を左右する重要インフラだからである。したが
って、成長戦略とエネルギー安全保障の連関性を高める必要がある。
エネルギー自給率を向上させる取り組みの最重要課題は、原子力発電および原子力産業基
盤の長期的確保である。格納容器など発電用システムのサプライチェーンは国内に完結
し、同じ脱炭素・準国産電源でも中国依存度が極めて高い太陽光・風力発電とは異なる。
安定電力、高速光通信を基盤とした分散型で秘匿性の高いソブリンデータセンターを構築
することも同時に着手されなければならない。
資料11
資料8-3
日本成長戦略についてのコメント
片岡 剛士
2026年 6月24日
PwC
1
主要17分野における官民投資について
✓ 戦略17分野中の62の「主要な製品・技術等」の官民ロードマップにつき、2040年度ま
での官民投資額の累計額が370兆円超という規模感は、日本経済の成長を考える上
で最低限必要なものだと認識している。十分ではなく、様々な形で投資余地を増やす
ことが肝要。
✓ 各分野の投資を見ていくと、AI・半導体、デジタル・サイバーセキュリティ(クラウド・
データセンター、蓄電池)、情報通信(次世代ワイヤレス)といった今後の成長を支える
であろう基幹的な製品や技術に150兆円超、合成生物学・バイオ、創薬・先端医療の
分野に70兆円程度、コンテンツ(ゲーム)で20兆円超といった形で、現状市場規模が
見通し易い分野への官民投資のウエイトが大きい印象である。
✓ 以上の分野については、今後官民投資を進める上での具体的な計画策定、計画の中
間評価、投資及び成長に対する影響評価、といった具体的なチェック機能を誰が、ど
う行うのかを検討する必要がある。併せて、分野的横断課題の改革を確りすすめるこ
とで投資効果を最大にする必要がある。
✓ そして上記で挙げていない分野の官民投資の伸びしろはもっと大きいのではないか。
むしろ、防衛、航空・宇宙、海洋、造船、マテリアル等々といった分野こそ、官起点で需
要を生み出すことができ、それを民間が引き受けて力強い成長につなげることが可能
な分野とも考えらえる。これらについては、広くアイディアを集め、「強い経済」につな
がりうる動きをもっと増やしていくことが必要。
PwC
2
日本成長戦略の下でのマクロ経済試算について
✓ 試算の中で示されている、成長戦略実現ケース①でのマクロ経済の姿は、第
3回会合で申し上げたマクロ経済のイメージ(潜在成長率2%、実質GDP成長
率2%、名目成長率3%台半ば、インフレ率(CPIベース)2%、名目長期金利
3%台半ば、名目賃金上昇率3%台半ば)に概ね沿っており、実現可能性を
担保しながらも、政府が目標として掲げていく価値のある数値である。
✓ 試算で考慮されている、追加財政支出の金額(実質10兆円)は仮定の数字で
あり、官民投資で見積もる金額が増加したり、経済動向に応じて変わりうるも
のと認識する。この点、別枠管理分として想定される歳出や通常の歳出の検
討と合わせ、日本経済の現状と比較して緊縮的な内容にならないよう、留意
をお願いしたい。
✓ 日本成長戦略の効果把握に関しては、経済財政モデル(マクロ経済モデル)
に基づく試算に加え、部門別の影響を陽表的に示す多部門モデル(一般均
衡モデル)での分析といった形で、より考察を深めることも必要。日本成長戦
略で想定する投資促進の効果を考える際には、人口構造、環境制約、地域
状況、海外環境といった制約要因についても幅広い観点に立った検討が必
要ではないか。
PwC
3
今後の日本成長戦略について
✓ 検討途上の部分もあるものの、官民でどの分野にいつまでに、どれだけを投
資すべきかというプランは作成された。今後の方向性としては、計画した投資
を確り進め、いかに成長につなげるかといった検討を日本成長戦略会議で進
めることが必要。
✓ 計画した投資を進めるという観点では、各17分野を所掌している大臣がリー
ダーシップをとって国家戦略上必要な投資案件を検討する流れを作っていく
ことが求められる。成長戦略事務局は政府全体の成長投資案件の妥当性を
整理し、個別の内容については専門家がそれぞれの目線に基づき検討を進
め、各投資計画をより実効性のあるものにしていくことが必要。
✓ 成長投資案件の検討にあたっては、政策効果検証の仕組みも新たに見直す
ことが必要である。既存の政策評価・行政事業レビュー・EBPM等の関係を
整理した上で、危機管理投資・成長投資にふさわしい政策効果検証の仕組
みを検討すべき。
✓ 政策効果検証の仕組みについては、政府内外の専門性を有する人材を積極
活用し、リアルタイムデータやAIの活用を進めるべき。経済財政モデルのリ
ニューアル、質の向上(政府の施策(財政政策)を陽表的に把握可能にする
等))についても継続的に取り組むべき。
PwC
4
資料12
資料8-4
「強い地域経済」の好循環を支える「中小企業」の戦略への位置づけの明確化を
2026 年 6 月 24 日
日本商工会議所
会頭
小林
健
1.「地域」における民間投資の喚起を
日本成長戦略は、官民略的投資で供給力強化を図り、潜在成長率の底上げを目指すもの
である。
「官民投資ロードマップ」に基づく戦略分野への集中投資と複数年度に亘る予算化、
設備投資減税等は事業者の予見可能性と成長期待を高める。商工会議所は、多様な主体と
協働で企業の成長への挑戦を伴走支援し、「地域」における民間投資の喚起を後押しする。
2.「強い地域経済」の好循環を支える「中小企業」の戦略への位置づけの明確化を
雇用の約7割(三大都市圏を除くと約9割)を担う中小企業の成長なしに日本経済全体
の成長はない。
「強い地域経済」の好循環の原動力でもある。日本成長戦略に「中小企業が
成長産業のサプライチェーンや技術、生産等を支える基盤である」ことを明確に位置付け、
そこから生まれる経済効果を日本全体へ波及・循環させる視点を明記されたい。
「地域未来
戦略」と平仄を合わせて、中小企業目線から新たな挑戦や投資喚起を促す具体的な施策や
支援等も盛り込まれたい。
現在、中小企業経営は、円安と物価高等のコスト増で価格転嫁も十分行えず、賃上げや
投資の原資確保が難しく、足元の賃上げ率も 4.01%と健闘しつつも先行きは不透明な見通
しである。約1兆円の中小企業予算と支援を駆使し、DX、生産性向上、取引適正化、知
財の創造・活用・保護の推進等、中小企業の自律的な成長と投資を促していく必要がある。
事業承継税制の恒久化等、中小企業の成長や経営基盤強化を後押しする税制の拡充、およ
び変形労働時間制の要件緩和等による柔軟な働き方の推進が不可欠である。
中東情勢は沈静化しつつあるとはいえ、エネルギー価格高騰が企業の投資を含めた事業
活動に影を落としている。供給面の停滞や目詰まり等はすぐには解消されないことも鑑み、
状況を見極め、資金繰り等の必要な対策を機動的に講じられたい。
3.市場の信認の確保を前提とした責任ある積極財政を
中長期的な経済・財政の姿に関する試算が示されたが、日本成長戦略の推進には、人口
減少社会や地域経済の疲弊、持続可能な社会保障制度等の構造的な課題克服に向け、優先
順位付けを意識したメリハリのある政策とワイズスペンディングを徹底し、市場の信認の
確保を前提とした、責任ある積極財政を推進されたい。特に、足元の過度な円安の是正に
は確固たる覚悟で取り組まれたい。地政学リスクが高まる中、インフレ加速の回避など、
急激に経済環境が変化しても腰折れしない、レジリエントな「強い経済」を官民挙げて目
指し、必要に応じ、機動的な政策変更等も行える環境整備を図られたい。
以上の観点から、8つの横断的課題を中心に、
「中小企業の賃上げと投資の好循環」を実
現するために必要な具体的な項目は以下のとおり。是非とも戦略に盛り込まれたい。
1
【別紙】日本成長戦略に盛り込むべき項目
1.「戦略17分野」関連
◆観光
〇地域経済を牽引する基幹産業としての観光
観光は、地域の多くの事業者が関係する裾野の広い産業である。2025 年の訪日外国
人旅行者数、同消費額はいずれも過去最高を更新し、主要な輸出産業である自動車産業
に次ぐ規模に成長した。観光産業は、地域や中小企業への波及効果が極めて高い成長産
業であり、官民挙げた重点投資分野として戦略 17 分野に加え、地域における投資拡大
と供給力強化を推し進めるべきである。
2.「8つの分野横断的課題」関連
◆賃上げ環境整備
〇取引適正化の取り組み加速、約1兆円の国の中小企業予算による支援推進
中小企業・小規模事業者の持続的な賃上げには、
「価格転嫁など取引適正化の徹底」、
「成長投資・生産性向上に向けた投資促進」、
「事業承継・M&A等の事業再編」などを
通じた原資の確保が不可欠。特に価格転嫁・取引適正化においては、官公需および BtoC
における取組みを加速すべきである。
中小企業庁が進めている「中堅・中小企業の『稼ぐ力』強化戦略」に基づき、中小企
業・小規模事業者の成長投資・生産性向上などへの挑戦を強力に後押しする予算・税制
について、国が責任をもって拡充する必要がある。
また、約1兆円の中小企業予算による施策を前提としつつ、地方においても、自治体
独自の事業者支援の取組みや商工会議所の経営指導員の増員等の支援機関の体制強化
等への予算措置の拡充が求められるが、国は、地方自治体のこれら予算措置についても
支援すべきである。
〇中小企業の円滑な事業承継を後押しする「事業承継税制の特例措置の恒久化」
中小企業の稼ぐ力を高め、地域経済の持続可能性を高めていくためには、経営者の事
業承継を契機とした生産性向上・付加価値拡大等を促すことが極めて重要である。
また、中小企業は、地域コミュニティやまちづくり活動への積極的な参画を通じて地域
に貢献する必要不可欠な存在であり、その事業承継の円滑化は恒久的な課題として取
り組むべきである。
ついては、地域に価値ある事業を残し、次世代経営者による経営革新を後押しするた
め、「事業承継税制の特例措置の恒久化」が必要である。
〇産業競争力の源泉となる企業の成長サイクルを強化する知財支援の強化
企業の「稼ぐ力」の強化には、イノベーションや新事業展開、無形資産活用等によ
る付加価値の創出・拡大への挑戦を支援する施策が不可欠である。産業競争力の源泉と
なる企業の成長サイクルを強化する観点から、知的財産の創造・活用・保護への支援を
強化・拡充する必要がある。
2
◆労働市場改革
〇変形労働時間の要件見直し等の制度の拡充・要件緩和
時間外労働の上限規制について、特に運輸、宿泊・飲食、建設等の特定業種におい
て事業運営に支障が生じている。深刻な人手不足の中で現場を支え、中小企業は取引先
都合等による業務しわ寄せ等の外部の影響を強く受けている。健康確保と労使合意を
大前提として、変形労働時間制の要件見直し(計画申請後の変更を認める措置、労使合
意を得る期間(30 日前)の短縮等)など、制度の拡充・要件緩和による柔軟な働き方
を可能とすべきである。
労働基準監督署の監督指導では、法制度の違反に対してのみの指導とすべき。適法な
時間外労働時間に対しても過度な指導を行うことで企業活動を委縮させるべきでない。
◆最低賃金
〇実態を踏まえた水準への見直し。中央・地方審議会での熟議による決定の重要性
現在の政府目標「2020 年代に全国加重平均 1,500 円」は、中小企業・小規模事業者
の経営実態から著しく乖離しており、設定する場合には、企業の支払い能力等の実態を
十分踏まえた水準とすべきである。
最低賃金は法定三要素のデータに基づく明確な根拠の下、公労使三者構成の中央・地
方審議会での熟議による決定を徹底すべきである。目安を超えることを前提とした支
援策(都道府県への交付金等)の提示は、法定三要素に基づく審議の原則を歪め、適切
ではない。
◆人材育成
〇地域を担う産業人材の定着・育成。労働環境整備のための投資促進支援
中堅・中小企業では、若者・女性等の人材定着に向けて投資余力が少ない中でも、
賃上げに加え、福利厚生施設(社員寮、食堂、休憩所等)や空調設備等の労働環境整備
に向けた投資にも精力的に取り組んでいる。こうした施設・設備は、生産性向上に資す
るだけでなく、地域の良質な雇用の場の創出にも寄与することから、税財政支援を図る
必要がある。
АX時代における地域の産業振興の基盤となる人材育成に向け、地域の産業界と教
育界が一体となって、初等中等から高校、大学・大学院等を通した一体的な人材育成シ
ステム改革を行う必要があり、このための支援の拡充が必要である。
◆家事等の負担軽減
〇家事等の負担軽減
人手不足の解消には、育児・家事、介護・看護等と両立できる環境整備も重要であり、
働く人の暮らしを支える保育・介護・看護分野の人材確保・育成と生産性向上、家事支
援サービスの利用促進を図る必要がある。
3
◆新技術立国・競争力強化
〇産業競争力強化に資する分野横断的な基盤技術の集積づくり
戦略 17 分野をはじめ、幅広い産業分野を横断する基盤技術(先端加速器、ロボット・
ドローン等)の確立・波及に向けて、国が主導的な役割を担い、国際研究機関の誘致等、
国内外からの投資・人材を呼び込む拠点形成を強力に推進する必要がある。
また、先端科学技術分野をリードする担い手の確保・育成に向けて、国立大学等の基
盤的経費の拡充、科学技術拠点の立地地域における高等専門学校の設置等を通じた、人
材の育成・輩出機能の強化も両輪で進める必要がある。
◆地域の成長基盤強化
〇「外国人との秩序ある共生と受入れ」の戦略的な推進
現在、多くの地域や産業は外国人の協力なしに成り立たない状況にある。法制度やル
ールを守らない者への厳格な対応とともに、将来の国力の維持・強化に向け、外国人を
単なる労働力ではなく、共に経済社会を支え合う存在として位置づけ、島国で入国管理
しやすい等の日本の強みを活かした国家戦略的な外国人政策を推進すべきである。
客観的なデータに基づき、国益を見据えた将来像の国民的な議論に加え、政策立案か
ら実行までに責任を負う司令塔の設置が急務である。国、地方自治体、企業、支援機関、
国民、外国人の役割の明確化と財政措置等の法的根拠となる基本法が必要である。
〇地域経済産業の基盤となるエッセンシャルサービスの維持・向上
地域経済社会を支える産業の担い手の確保に資するエッセンシャルサービス(食品
等の卸小売、バス・タクシー等の交通、運輸、ガソリンスタンド、教育や医療・介護等)
の維持・向上に向け、エッセンシャルサービスの持続的な供給を後押しする税財政支
援、生産性向上・広域化・多角化等を図る事業・資産の統合・承継に係る支援を強化す
べきである。
〇投資の受け皿となる産業用地の確保
政府が「日本成長戦略」とともに進める「地域未来戦略」の下、地域に投資を呼び込
み、新たな産業の立地・集積を促すため、受け皿となる産業用地の整備を促すとともに、
中堅・中小企業における拠点の新設・拡張ニーズを踏まえた、さらなる税財政支援や規
制緩和、手続きの簡素化・円滑化が必要である。
以
4
上
資料13
資料8-5
第五回日本成長戦略会議メモ
鈴木一人
まず、資料 1 に関して、官民投資の累計が 2040 年度までの 15 年間で 370 兆円超となるのは、極めて
巨額ではあるが、62 の「主要な製品・技術等」に関するものを積み上げていけば、官民でこれだけの
投資が行われることに違和感はない。ただ、こうした数字が独り歩きすることは望ましくなく、本来
の成長戦略にある、AX を推進し、日本の産業を次のフェーズに進めていくことが重要なポイントで
ある。おそらくメディアは「370 兆円超」という点にだけ注目するだろうが、数字を積み上げることは
「戦略」ではない。あくまでも AX を軸とする産業刷新と、「成長投資」「危機管理投資」を通じて、
自律性と不可欠性を高めていくことが戦略目標であり、そのための手段としての官民投資であること
を改めて確認しておきたい。
次に、資料 2 についてであるが、ここに並べられた 62 の「主要な製品・技術等」は、リストを見るだ
けでもワクワクするものが多い。全てではないが、AX に引きつけたテーマの並びになっており、2040
年度に向けてのイメージを持ったリストになっているという印象を受けている。しかし、これらが「自
律性」と「不可欠性」とどのようにつながっているのか、と言う点は必ずしも明確ではない。これら
の製品や技術によって、日本が他国への依存を減らし、より強靱な経済を築けるか、また、他国には
ないものを生み出し、他国が日本に依存する状況をどうやって作れるかを考えて行く必要がある。そ
のためにも「自律性」と「不可欠性」にどう貢献するのかを明記することが望ましい。
資料 5 について、総理発言にあるように「新たな投資枠」を設定し、恒常的な施策に関しては当初予
算の中に組み込んでいくというのは、財政民主主義の観点からしても適切な対応であると考える。ま
た「新たな投資枠」が複数年度で組まれていることで、予見可能性を高め、民間の投資を引き出すた
めの公的支出になっていると理解している。公債等残高の GDP 比、PB 対 GDP 比が現状投影ケースの
場合、現状よりも悪化することが見込まれるため、成長戦略を実現しなければならないという「背水
の陣」の構えであると理解している。成長戦略が実現しなければ、次の世代に負債を残す結果となる
だけに、成長戦略の実現に向けて継続的に努力し、PDCA を回していくことが不可欠である。
資料 7 に関して、地域未来戦略を展開するにあたり、国レベルでの戦略産業クラスターを作って行く
上でも、それは特定の地域に偏りを生む可能性がある。例えば半導体は九州と北海道に資源が集中し
ているが、これらの地域においては、都道府県が行う地域産業クラスター計画と市町村が行う地場産
業成長プランとの間での調整が必要となると思われる。また、限られた資源である人材をどのように
分配していくのか、という問題も生まれてくるだろう。とりわけ戦略産業は高度な人材が必要とされ
る中、そこに人材が集中してしまうと地域産業や地場産業が人材不足に陥る可能性がある。こうした
調整を進めるメカニズムを含めた戦略にしていくべきであろう。
(了)
資料14
資料8-6
日本成長戦略の実行段階に向けての提言
際環境経済研究所理事
東北大学特任教授(客員)
U3 イノベーションズ合同会社共同代表
竹内純子
わが国の成長を実現するには、官民の適切なリスク分担の下、大規模かつ複数年
度にまたがる投資を大胆に行っていくことが不可欠であるとの試算結果を踏まえて、
成長戦略を実現していく上での提言を下記に申し上げます。
1.
投資効果を適宜検証し“集中投資分野”を創っていくこと
✓
2.
責任主体を明確化し、効果の検証と戦略の修正を適宜実施。
事業を実現する“人”を育てること
✓ 変化・成長に前向きな人材の育成に向けた教育改革(第 2 回会議竹内提出資料参照)
✓ 柔軟な働き方を認め、スキルアップを促す働き方改革・雇用制度改革
✓
海外市場で戦える経営力・営業力を持つ人材育成・獲得
3.
投資促進と“規制改革”は車の両輪
✓ 技術の社会実装は、規制・制度が適切に整わなければ進まない。技術の進
捗に遅れることの無い(むしろリードする)規制改革を実施。
4.
最初の一歩として、“安定安価なエネルギー確保”に向けた施策を
✓ 資源・エネルギー安全保障・GX 分野の成長戦略は、次世代技術支援の議論
が主となり、かつ、政府が現在進める再生可能エネルギー導入拡大が急が
れることは当然だが、現下のエネルギー安全保障・安定供給への対策が必要。
✓
そのために、“タブー無き議論”をすべき。
石炭火力の活用に向けた予見性付与と国際協力(特にアジア諸国)体制。
*わが国の火力発電は急速に廃止が進展。数年以内に化石燃料の価格高
騰・調達危機が生じれば、電力供給が危機的な状況になりかねない。
*非効率石炭火力の稼働率制限が今年度に限り解除されたが、設備維持の
モチベーション足りえない。廃止促進策について総合的に見直すべき。
✓ 既存の原子力発電所活用に向けた原子力規制改革
*諸外国は、急速な電力需要増に対応するため廃止申請した原子力発電所
を再活用。設置変更許可申請済みの原子力発電所の審査を迅速化すると
ともに、未申請あるいは廃止申請済み発電所の活用可能性も検討すべき。
*原子力規制改革を急ぐ必要(次世代原子力技術導入に向けても必須)。
資料15
資料8-7
2026 年 6 月 24 日
日本製鉄株式会社 代表取締役会長兼CEO 橋本英二
日本成長戦略会議第 5 回提出メモ
⚫ 国内投資拡大の意思決定が増々難しくなっている中で、予見可能性を高めていく施策を明確化してい
くことが肝要である。
1) 民間としてリスクの取りにくい案件は少なくとも初期段階においては国が主体となって推進していただ
きたい。
2) 戦略分野が国際競争力を確保するためにはサプライチェーンとして産業全般の底上げが重要である。
世界全体の需要の伸びが期待できない従来型製造業にとって、国内投資を拡大していく際の最大の
課題は中国からのアンフェアな安値輸出への対抗であり、自由貿易を原則とする中でも是々非々で
の通商対策の発動が必要である。
3) 若手の研究者・技術者育成の強化策実行が急務である。一律労働時間規制は若手育成の大きな障
害であり、中間管理職への大きな負担ともなっている。早急に是正して人材力を回復することが必須
である。
4) GX 分野における新技術開発の競争はより激しくなっており、負けることは許されない。国の方針に沿
って既に大きな投資に踏み切っている産業・企業も多い。技術的課題の克服もさることながら、さけら
れないコストアップを社会全体として吸収していくグリーン市場の形成が大きな課題である。特に、電
力や素材は製品やサービスの中身が変わるわけではなく、プロセスの転換であることから、CO2 削減
を社会的価値として価格反映させていくという難しさがある。公共調達においてはグリーン素材採用
が実践的に進むよう市場形成を主導していただきたい。
⚫ また、企業統治のあり方に関する議論においては経営者の挑戦意欲を妨げないように留意していただき
たい。
以上
資料16
資料8-8
2026 年 6 月 24 日
第 5 回日本成長戦略会議で示された論点に対する意見書
日本労働組合総連合会
会長 芳野 友子
Ⅰ.戦略 17 分野の「主要な製品・技術等」における官民投資額について
1.8つの分野横断的課題への対応(主要な施策)案 について
(1)賃上げ環境整備
〇政府が検討している「労働供給制約社会における中堅中小企業の稼ぐ力強化戦略
案」では、
「暮らしの安全と安心を確保し、雇用と所得を増やし、消費マインドを
改善し、企業の事業収益が上がる『強い経済』」を構築することが必要である。
・・・
実質賃金がプラスとなることを実現し、生活者が経済成長の果実を実感できる状
況を確保すること」としている。日本成長戦略の取りまとめにあたっては、戦略
分野への投資を国民の生活水準の持続的な向上につながることを明確にすべき
であり、政府がこれまで掲げてきた「持続的・安定的な物価上昇の下で、物価上
昇を1%程度上回る賃金上昇を賃上げノルムとして我が国に定着させる」という
方針を堅持すべきである。
〇「労働供給制約社会における中堅中小企業の稼ぐ力強化戦略案」では、中小企業・
小規模事業者について、「賃上げを行うことが成長につながるという認識(成長
的賃上げ)が共有されるように、意識改革を促進することが必要である。このた
め、経営リテラシーを高め、自らの事業の収益を継続的にモニタリングし、より
収益力の高い事業に注力し、物価高の中においても、さらに高い付加価値を生み
出すことができるように見直し、持続的な賃上げを実現することが必要であり、
このため、政策を総動員する」としている。また、連合「未来づくり春闘」評価
委員会報告では、「価格転嫁に加えて中小企業経営の高度化が必須であり、その
ために『賃上げを組み込んだ経営計画の策定』の推進と支援が求められる」と提
言している。成長的賃上げを広げていくためには、労務費を含めた適切な価格転
嫁・適正取引の一層の推進とともに、中小企業などへの支援策の継続・強化が必
要不可欠である。補正予算頼みの業務改善助成金や中小企業生産性革命推進事業
に関する助成金などについて、予算フレームの見直しも含めて安定的かつ十分な
予算確保を検討すべきである。中小企業に対する賃上げ促進税制についても後退
させるべきではない。
〇「官公需における価格転嫁・取組適正化加速化プラン」は、速やかに実行すべき
である。
(2)労働時間規制
〇労働時間法制については、「夏以降労働政策審議会で議論を行う」とされている
が、「働き方改革」から約 7 年が経過した今もなお、過労死はなくなるどころか
増加の一途をたどっている。
そうした実態を踏まえれば、いま必要なことは、長時間労働を可能とする規制
緩和ではなく、
“長時間労働に依存した働き方や職場風土”からの脱却をはかり、
1
業務効率化・省力化、生産性向上を含めた真の「働き方改革」の一層の定着・促
進を進めることである。健康で豊かな生活時間を確保できる労働時間制度の確立
にむけ、「連続勤務規制」「勤務間インターバルの義務化」「『つながらない権利』
の立法化」などの検討にこそ注力すべきである。
他方で、裁量労働制の拡充、変形労働時間制の要件緩和、労働基準監督署の指
導の見直しなどは、長時間労働の常態化を招き、ひいては過労死などを増加させ
かねないため、断じて行うべきではない。
(3)人材の育成・確保
〇戦略 17 分野やそれを支える社会インフラ関連分野における人材の育成・確保に
向けたリスキリングなどの能力開発施策については、雇用保険財源のみに頼るこ
となく、各業所管省庁で必要な予算を確保すべきである。
(4)多様な人材の活躍について
〇ジェンダーをはじめとする多様な人材の確保・定着は、新たな価値創造とイノベ
ーションの基盤となり、経済成長および持続可能な社会の実現にも資するもので
ある。
現在検討されている「女性活躍・男女共同参画の重点方針 2026」の原案では、
「17 の戦略分野における女性活躍」を重点分野として掲げている。しかし、今回
示された「戦略 17 分野における主要な製品・技術等の官民投資ロードマップ(案)」
においては、女性活躍の観点への言及がなされていない分野も見受けられ、両者
の整合性が十分にはかられているとは言い難い。
総じて女性割合が低い分野においては、採用数の拡大の取り組みはもちろんの
こと、その後の就業継続を可能とする環境整備が不可欠である。
加えて、長時間労働を前提とした男性中心の職場構造、採用・配置・育成の不
透明性、男女間賃金格差、ハラスメント、固定的性別役割分担意識といった構造
的課題についても明確に認識し、是正に向けた取り組みを体系的に進める必要が
ある。
女性活躍を阻む構造的課題の解消なくして、成長戦略の実現はない。そのよう
な観点で、女性が働き続けられる環境整備に向けて積極的な投資を行い、戦略分
野における取り組みを、他産業や地域へ波及させていくことが重要である。また、
婚姻による改氏がキャリアの継続を妨げる要因となっていることを踏まえ、選択
的夫婦別氏制度の導入に向けた検討を進めるべきである。
2.戦略 17 分野における主要な製品・技術等の官民投資ロードマップ(案)
(1)デジタル・サイバーセキュリティ
①データプラットフォーム
〇デジタル技術の利活用は、産業構造変革への対応や労働力不足の解消に向けて積
極的に支援する必要があるが、国民の安心・信頼確保が大前提である。
「民間企業
等による国等が保有するデータの活用を促すような制度の整備」によって、個人
データが競争力強化のために利活用され、プライバシーをはじめとする個人の権
利利益保護が後退するようなことがあってはならない。
(2)防災・国土強靭化
①防災技術
〇東日本大震災の復興において巨額の投資で整備されたインフラの維持費が自治
体財政を圧迫している実情を踏まえ、今後の自然災害対策やインフラ老朽化対策
2
などの国土強靭化は、各地域の人口減少などの将来展望に基づいた整備・実装に
も留意すべきである。
3
Ⅱ.日本成長戦略の下での中長期的な経済・財政の姿に関する試算について
〇日本成長戦略の下、官民の重点的な投資などによって潜在成長率を引き上げてい
くことは重要である。同時に、
「強い経済」の好循環には、生産活動で生み出され
た付加価値が、適切に分配され、国民のくらしの向上へ循環することも重要であ
る。資料 5 のGDP成長率の試算では、3 つのいずれのケースでも 2027~2029 年
度の実質成長率が低迷する見通しになっている。景気を失速させることなく、経
済、物価、賃金を安定的な巡航軌道に乗せ、維持できるよう、時々の状況に対応
した適切なマクロ経済運営を期待する。
〇今回示された内閣府の「財政試算」は、2026 年 1 月時点では「債務残高対GDP
比は着実に低下する見通し」としていたものが、日本成長戦略を反映した結果、
成長実現ケースであっても国・地方の公債等残高対GDP比は前回試算よりもむ
しろ悪化する見通しとなっている。これは、経済成長のみをもって財政健全化を
実現することには限界があることを改めて示したものといえる。
現下の金利上昇により、利払い費の膨張が政策経費を圧迫しつつあることをふ
まえ、財政運営の目標は債務残高対GDP比の引き下げではなく、債務残高その
ものを削減すべく、単年度の財政収支黒字化とすべきである。また、財政に対す
る市場の信認低下は急激な金利上昇を招きかねないことから、中長期的な財政運
営を評価・監視する独立財政機関を設置し、財政規律の強化に着手すべきである。
Ⅲ.地域未来戦略の政策パッケージ
1.地域未来戦略の目標・道筋
〇「強い地域経済の構築が不可欠」とあるが、地方では進学・就業機会の不足、賃
金格差、医療・子育てや公共交通を含む生活基盤の弱さだけでなく、固定的性別
役割分担意識など複合的要因が、女性をはじめとする若者の流出につながってお
り、雇用とくらしの両面からの対応が必要である。
そうしたなか、現在検討されている「女性活躍・男女共同参画の重点方針 2026」
の原案では、地域未来戦略における産業クラスターの形成や 17 の戦略分野にお
ける女性人材の育成・就業・起業、定着、役員・管理職への登用などについて、
地方公共団体が行う取り組みを推進するとしている。
地域ごとに課題が異なるなか、地域未来戦略にもとづく都道府県、市町村にお
ける計画の策定、効果・検証、課題改善にあたっては、現場の実態に即した取り
組みとなるよう、働く者を代表する労働団体の参画はもちろん、女性活躍・男女
共同参画を推進する観点から、働く女性の参画を確保すべきである。
○どこに住んでいても必要な医療・福祉サービスを受けることができる体制を確保
するためには、サービスを担う人材の確保・定着が不可欠である。そのため、地
域未来戦略においても医療・介護・福祉人材の確保を重要な政策課題として位置
づけ、他産業と遜色のない処遇改善を進める必要がある。
また、DXの活用は重要であり積極的に推進すべきであるが、その目的は現場
の負担軽減やサービスの質の向上であるべきであり、人員削減を前提とした取組
としてはならない。
4
2.B.地域産業クラスター計画について
〇地域未来成長戦略の目指す、全国どこに住んでいても安全に生活できることや働
く場所があることの実現は重要である。地域産業クラスター計画にある「地域の
産業ニーズを踏まえた人材育成」の推進は必要である一方、その実現のために国
家戦略特区などを活用し、労働者保護を緩和するような規制・制度改革は行うべ
きではない。
以
5
上
資料17
資料8-9
強い経済を実現する成長力の強化に向けて
令和8年第7回
経済財政諮問会議
資料1
2026 年5月 22 日
筒井 義信
永濱 利廣
南場 智子
若田部昌澄
強い経済を実現するためには、生産性を向上させ、付加価値創造力と供給力を高め、潜在成長
率を引き上げることが不可欠である。我が国では、長年にわたり国内投資が十分に伸びず、供給力、
技術力、稼ぐ力の低迷につながってきた。人口減少や人手不足、地政学リスクの高まり、エネルギー
制約、AI をはじめとする技術革新が急速に進む中で、必要な投資を先送りすれば、経済安全保障上
の対応力や将来の成長力はさらに低下しかねない。
国際的にも、産業政策は、経済安全保障上の課題、脱炭素、デジタル化、重要技術の確保、サプ
ライチェーンの強靱化等に対応するための政策手段として再評価されている。その際、単に補助金
や税制支援を拡大するのではなく、明確な政策目的、民間投資の誘発、競争環境・資源配分への配
慮、規制・制度改革との一体化、進捗と効果の継続的な検証が重要とされている。
我が国においても、「責任ある積極財政」の下で危機管理投資・成長投資を実行するに当たっては、
こうした国際的な議論も踏まえつつ、十分な規模と期間を確保し、官民投資ロードマップに基づき、経
済の好循環につなげる必要がある。そのためにも、成長戦略において、イノベーション創出力の大き
い 1スタートアップに重点的に投資される枠組を整備すべき。併せて、債務残高対 GDP 比の安定的
な引き下げとの整合性を確保するとともに、PDCA や EBPM の考え方に基づき、政策効果を不断に検
証・改善する仕組みを担保することが不可欠である。
国民や企業が「今度こそ成長する」と期待できるよう、政府が強いリーダーシップを発揮し、官民投
資ロードマップを実効性ある形で具体化することで、投資主導の成長経路への転換を実現することが
重要である。
1.危機管理投資・成長投資に関する「新たな投資枠」の具体化
危機管理投資・成長投資の拡大に向けて、これまでの予算措置額にとらわれず、必要な投資額が
確保されるよう、「新たな投資枠」については、通常の歳出とは別に設けるものとする。
その際、「新たな投資枠」は、これまでの概算要求基準における単なる要望枠ではなく、官民投資
ロードマップの着実な実行に必要な事業について、予算編成過程において実効的に予算措置につ
なげる仕組みとすべきである。概算要求についても、この考え方に沿って、成長戦略の実行に必要な
予算要求が可能となるよう見直すべきである。
民間企業が投資に踏み出すためには、政府支援が一過性ではないことが示されることが重要であ
る。このため、官民投資ロードマップの着実な実行に必要な規模と期間を確保し、企業の中長期の投
資判断を後押しする枠組みとすべきである。
「新たな投資枠」の対象については、17 の戦略分野を中心とする官民投資ロードマップに基づく
取組に加え、8つの分野横断的な課題に対応していく取組のうち、スタートアップ支援、中堅・中小企
業の稼ぐ力の強化など、特に民間企業の投資を引き出す取組についても成長投資として位置付ける
など、成長戦略の実行に必要な範囲を具体化する。
1
例えば、1979 年~1999 年の米国において、VC の出資を受けた企業は、研究開発やノウハウが別の企業に
も波及する効果(スピルオーバー効果)が、既存企業の約 9 倍であることを示した研究がある(Schnitzer
and Watzinger (2017) “Measuring the Spillovers of Venture Capital”)
。
1
2.複数年度予算による投資促進策の強化
危機管理投資・成長投資は、効果の発現に時間を要するものが多く、単年度予算だけでは企業の
長期的な投資判断を十分に支えることが難しい。このため、複数年度にわたる予算措置を活用し、予
算の予見可能性を確保することで、企業が長期的な投資を行いやすくすることが重要である。
半導体、エネルギー、GX、宇宙、量子、バイオ、フュージョン、AI などの危機管理投資・成長投資
については、投資回収や成果発現までに長い時間を要する分野があることから、より長期的で柔軟な
予算措置を可能とし、民間投資の予見可能性を高める観点から、事業の成果管理を徹底しつつ、
「予算措置は原則 3 年以内」とする基金ルールについては廃止すべきである。
また、金利のある世界では、政府が長期のコミットメントを示しつつ、支出時期や事業進捗に応じた
柔軟な資金管理を行うことが重要である。このため、複数年度の投資促進策として、支援する事業の
性質に応じて基金だけでなく国庫債務負担行為を活用することも重要である。国庫債務負担行為に
より複数年にわたる契約や支援を可能とすることで、長期投資に必要な予見可能性と、事業の進捗に
応じた柔軟で効率的な予算執行を両立させることができる。あわせて、現行制度上、原則として最長 5
年とされている国庫債務負担行為の年限についても、官民投資ロードマップの実行に必要な範囲で
延長を検討すべきである。
3.状況変化に対応した効果的な予算活用
技術動向、国際情勢、サプライチェーン、エネルギー環境は急速に変化しており、危機管理投資・
成長投資についても、状況変化に応じて重点化し、政策手段を柔軟に組み替えられる仕組みが必
要である。
その運用に当たっては、技術や市場の不確実性が高いことを前提に、当初の見通し通りに進まな
い可能性も含め、状況変化に応じて支援内容を調整し、成功の可能性を高めていくとともに、個別事
業の短期的な成否にとどまらず、全体として成果を評価する視点も重要である。
このため、官民投資ロードマップに基づく進捗管理は、個別事業を短期的な成否で評価するので
はなく、戦略分野全体をポートフォリオとして捉え、全体として付加価値創造力と供給力の強化につ
ながっているかを確認するものとすべきである。
17 の戦略分野や 61 項目の製品・技術について、足下の収益源、次の稼ぎ頭、将来の成長の芽と
いった時間軸の違いを踏まえ、設備投資額、生産能力、実際の生産量、雇用、民間投資誘発額など、
事業の性格に応じた指標を用いて進捗を確認し、重点化と効率化につなげるべきである。
また、現時点で成果が限定的な取り組みについても、将来の技術変化、国際情勢、市場環境の変
化によって重要性が高まる可能性がある。こうした可能性も踏まえ、中長期的視点から、重点化すべ
き取り組み、継続的に育てるべき取り組み、選択肢として維持すべき取り組みを区分し、企業の中長
期の投資判断を支える予見可能性を確保しつつ、ポートフォリオとして戦略的に管理することで、成
長期待の向上と民間投資の拡大につなげることが重要である。
4.成長力強化に向けた総合的な施策
成長力を高めるためには、17 の戦略分野への投資拡大に加え、規制・制度改革、人材育成、研究
開発、政府調達、標準化、税制・金融措置などを総合的に組み合わせることが重要である。
特に、スタートアップエコシステムの形成、中堅・中小企業の稼ぐ力の強化、AI の社会実装、人材
育成・リスキリング、労働市場改革、企業改革は、分野別投資の効果を高める基盤である。今後急速
に進む AI の進化に応じて柔軟に資金や労働の移動が行われる国とそうでない国では、成長力に大
きな差が生じることが考えられるため、AI が産業、社会、教育、行政に広く実装されることを前提に、
制度や規制の在り方を見直し、民間が投資しやすい市場環境を整えるとともに、企業、資金、人材が
成長分野へ円滑に移動し、イノベーションが持続的に生まれる環境を整える必要がある。
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