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経済財政諮問会議
2025年11月12日
経済財政諮問会議 2025年11月12日
2025-11-12
一次資料(出典)
議事録・配布資料の全文(政府公表資料より。要約でなく原文に基づく参照用)。
議事録
令和7年第 12 回経済財政諮問会議 議事要旨 ――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――― (開催要領) 1.開催日時:令和7年 11 月 12 日(水)18:15~19:01 2.場 所:総理大臣官邸4階大会議室 3.出席議員: 議長 高 市 早 苗 内閣総理大臣 議員 木 原 稔 内閣官房長官 同 城 内 実 内閣府特命担当大臣(経済財政政策) 同 林 芳 正 総務大臣 同 赤 澤 亮 正 経済産業大臣 同 片 山 さつき 財務大臣 同 植 田 和 男 日本銀行総裁 同 筒 井 義 信 日本生命保険相互会社 特別顧問 同 永 濱 利 廣 株式会社第一生命経済研究所 首席エコノミスト 同 南 場 智 子 株式会社ディー・エヌ・エー 代表取締役会長 同 若田部 昌 澄 早稲田大学政治経済学術院教授 (議事次第) 1.開 会 2.議 事 (1) 経済対策 (2) マクロ経済運営(金融政策、物価等に関する集中審議) 3.閉 会 (資料) 資料1 資料2 資料3 資料4 資料5 資料6 資料7 総合経済対策の策定について(内閣総理大臣指示) (令和7年 10 月 21 日(火)) 総合経済対策に盛り込むべき重点施策(日本成長戦略会議) 植田議員提出資料 筒井議員提出資料 永濱議員提出資料 南場議員提出資料 若田部議員提出資料 1 令和 7 年第 12 回経済財政諮問会議 (概要) (城内議員) それでは、ただ今から高市内閣発足後最初の「経済財政諮問会議」を開催 する。 経済財政政策担当大臣の城内実である。本会議の議事進行を務めさせていただくので、 よろしくお願い申し上げる。 まず、議題に入る前に、新たに経済財政諮問会議の議員となられた、永濱議員、南場議 員、若田部議員をご紹介する。 また、筒井議員におかれては、継続して議員を務めていただく。 それでは、各議員から、一言ずつご挨拶をお願いする。 (筒井議員) 引き続き、本職を拝命した。よろしくお願いする。高市内閣の経済・財政 運営の方針策定に向け、経済界の実情をよく踏まえつつ、一つは中長期の視点、もう一つ は日本全体の視点を重視した意見発信に努めてまいる。 足下、潜在成長力が0.6%程度にとどまっている。これを引き上げて、科学技術立国、 貿易投資立国による持続的な経済成長を実現し、2040年にGDP1,000兆円を目指すと経 団連は打ち出している。この考えは、高市総理の掲げる官民連携の下で、様々な社会課題 やリスクに対して、供給力の抜本的強化、新技術立国等の推進を通じて、強い経済を実現 し、我が国の未来を切り開いていく、そういう方針と軌を一にするものと考えている。 この強い経済の実現とともに、将来世代の責任を果たすという観点から、人口減少、少 子高齢化を乗り切っていく、公正・公平で持続可能な全世代型社会保障の構築が喫緊の重 要課題である。この点、高市総理から、社会保障の給付と負担の在り方に関して、超党派 かつ有識者も交えた国民会議を設置する、そして、税と社会保障の一体改革を議論する意 向を表明された。このことを非常に心強く、高く評価している。経団連としても積極的に 関与してまいりたい。 (永濱議員) 第一生命経済研究所の永濱である。出身は栃木県足利市、茂木外務大臣と 同郷だ。主な経歴としては、1998年からエコノミストをやらせていただいており、特に得 意分野といえば、データ解析に基づいたマクロ経済分析というところかと考えている。 経済財政諮問会議では、岸田政権のときに特別セッションというのがあり、そこで8人 の有識者の1人ということで一時的に参加をさせていただいた。非常に光栄なことであり、 これまでの経験を遺憾なく発揮して貢献できればと考えているので、これからよろしくお 願いしたい。 (南場議員) ディー・エヌ・エーの南場である。まだ社業が大変で、このような大役を お受けするべきか迷ったが、高市さんが総理に就任され、周囲にフレッシュな風が吹いて いると感じる。私の周りも、何だか張り切っている人が増えており、長く停滞していた日 本経済に新しい変化を起こすチャンスなのではないかなと思い、就任させていただいた。 私は、自分が創業したディー・エヌ・エーの経営に加え、ベンチャーキャピタルを運営 し、日本のスタートアップやVCを間近に見ている。また、二、三か月に1回、米国西海 岸に滞在し、そこでは現地起業家たちとシェアハウスで一緒に生活をし、米国のベンチャ ーキャピタリストとも親交を重ねている。また、ここに筒井さんがいらっしゃるが、経団 連でも役割をいただき、日本の大企業と共に活動もした。そういった活動の中で、日本経 済についての問題意識も膨らんでいる。そこに関して、民間の立場として議論に参加して いきたいと思う。 私は、民間企業は、民間としてのプライドを大事にするべきで、政府に頼る姿勢は好ま 2 令和 7 年第 12 回経済財政諮問会議 ないが、何だかフレッシュで前向きな空気が流れているこの機を逃さず、日本経済が再度 輝くために微力を尽くしたいと思う。どうぞよろしくお願いする。 (若田部議員) 若田部である。早稲田大学で教授をしている。経済財政諮問会議は、実 は、日本銀行副総裁をしたときに一度だけ参加したことがある。このような大命をいただ き、誠にありがたく思う。 日本経済は今、歴史的な転換点にあると思う。一つは、やはり世界情勢が非常に厳しい ということで、世界大乱の時代という予感をさせるところである。もう一つは、日本経済 そのもので、いよいよもってデフレ脱却というのが完全に見えてきたのかなという気がす る。なので、今起きている良い流れを止めないというのが、我々に課された非常に大きな 使命ではないかと思う。 基本的には、どういうものが望ましい経済かということは、恐らく2%近傍のマイルド なインフレがあって、そして高い成長率があるというような世界だと思うが、そういった 世界を目指すべく、高市総理の下に国民の力と知恵を結集したいということで馳せ参じた。 期待が非常に高まっているけれども、その期待をいかに実現するかというのが、この会議 の役割ではないかというふうに考えている。よろしくお願いする。 (城内議員) なお、専門調査会である「経済・財政一体改革推進委員会」には、今回新 たに議員になられた3名の議員の方々にもご参加いただく体制として、会長には若田部議 員にお願いすることとする。 〇「経済対策」 〇「マクロ経済運営(金融政策、物価等に関する集中審議)」 (城内議員) 本日は、議題1と議題2をまとめてご議論いただく。 初めに、議題1「経済対策」についてである。 資料1のとおり、高市総理からご指示をいただいているので、経済対策の取りまとめを 担当する私としては、このご指示に沿って、物価高対策をはじめ、官民が連携した危機管 理投資・成長投資による強い経済の実現に向け、総合経済対策の策定に取り組んでまいる。 また、私が担当する日本成長戦略会議では、先日10日だが、初回の会合を開催し、資料 2のとおり、経済対策に盛り込むべき重点施策を取りまとめている。経済対策については、 そちらもご参照いただきながら、ご議論いただく。 次に、議題2について、日本銀行の植田総裁から、日本銀行の今後の経済・物価見通し 等について、ご説明をお願いする。 (植田議員) それでは、資料3の1ページ目をご覧いただきたい。 日本銀行は、先月末の金融政策決定会合で、経済・物価の見通しを公表した。我が国経 済については、各国の通商政策等の影響から、海外経済が減速する下で、成長ペースは伸 び悩むと考えられるが、その後は、海外経済が緩やかな成長経路に復していく下で、1ペ ージの左下のとおり、2027年度にかけて成長率を高めていくと見込んでいる。 物価については、生鮮食品を除いた消費者物価の前年比は、足下3%程度となっている が、米などの食料品価格上昇の影響が減衰していく下で、右下にあるように、来年度前半 にかけて、2%を下回る水準までプラス幅を縮小していくと考えている。その後は、成長 率が高まる下で人手不足感が強まり、消費者物価の基調的な上昇率と、生鮮食品を除いた 消費者物価の上昇率はともに徐々に高まっていき、日本銀行の展望レポートの見通し期間 後半には、2%の「物価安定の目標」とおおむね整合的な水準で推移すると考えている。 3 令和 7 年第 12 回経済財政諮問会議 2ページ、先行きの金融政策運営については、今申し上げた経済・物価の中心的な見通 しが実現していくとすれば、経済・物価情勢の改善に応じて、引き続き政策金利を引き上 げ、金融緩和度合いを調整していくことになると考えている。 これまでのところ、そうした見通しが実現する確度は少しずつ高まってきていると見て いるが、今後とも、内外の経済・物価情勢や金融市場動向を丁寧に確認していく方針であ る。 日本銀行は、2%の「物価安定の目標」の下で、その持続的・安定的な実現という観点 から、適切に金融政策を運営してまいる。 (城内議員) それでは、民間議員からご意見をいただく。 (筒井議員) 資料4、初めに、経済対策について。これは、高市内閣の掲げる強い経済 の実現に向けた重要な第一歩であると認識している。足下、食料品中心の物価上昇、米国 関税措置の影響等で先行き不透明感もあり、景気の下押しリスクが懸念される。この観点 から、まずは物価高対応を最優先に、経済対策を講じる必要があると考える。同時に、強 い経済の実現、そして好循環を確固たるものとするため、官民連携による戦略分野への積 極的な投資に着手をすること、これを通じて、高付加価値を生み出す経済・産業構造への 変革に取り組むことも重要である。 次に、来年度予算編成に向けて二点申し上げる。 第一は、官民連携によるダイナミックな経済財政運営の観点である。政府は、予算の単 年度主義の弊害を是正して、補正よりも本予算で重点分野での中長期の計画に基づいた戦 略的かつ効果的な投資を実行すべきである。これが民間企業の予見可能性を高めて、官民 連携による国内での成長投資の拡大の呼び水になると思う。例えば、科研費倍増等による 科学技術・イノベーション力の抜本強化、経済成長と脱炭素を両立するグリーントランス フォーメーションの推進等が重要である。 これに連携して、私ども民間企業は、経営者自らのマインドセットを変えること。そし て、設備投資、研究開発投資、人的投資を拡充する必要がある。経団連としても、賃金引 上げのさらなる定着に向けて議論を深めるとともに、各種投資の拡大を一層強く呼びかけ て、先導する役割を果たしてまいる。 第二に、繰り返すが、社会保障制度改革の着実な実行である。人口減少、少子高齢化が 進む中でも、国民の安心を確保すべく、公正・公平で持続可能な全世代型社会保障の構築 が不可欠である。現役世代の保険料負担増の抑制を図りながら、応能負担の徹底、効率的 で質の高い医療・介護提供体制の実現が求められる。具体的には、医療・介護保険制度改 革、医療・介護分野でのDX推進、次期診療報酬改定でのメリハリづけの実行等が課題で ある。 最後に、責任ある積極財政に向けて申し上げる。今後、成長投資を行う中で、財政の持 続可能性を確保し、市場の信認を維持し続けることが最も重要である。債務残高対GDP 比を安定的に引き下げて、成長投資の実行に即した複数年度でのバランスの確保を主とし つつ、複眼的な視点を持って、中長期的な財政健全化を目指すべきである。また、PDC Aに基づくワイズスペンディングの徹底も不可欠である。 高市総理には、政策実行に格段のリーダーシップを発揮いただくようお願いを申し上げ る。 (永濱議員) 私は、資料5である。 まず一つ目、マクロ経済政策の運営についてだが、検討を深めていくべきテーマは、何 4 令和 7 年第 12 回経済財政諮問会議 といっても財政健全化目標の再検討だと考えている。まさにこれをすることによって、責 任ある積極財政の象徴的なポイントになってくると考えている。 具体的には、そもそものプライマリーバランスという目標は、デフレ下で名目成長率が 長期金利を下回る状況でも債務残高対GDP比を下げるということで目標となったもの であるが、足下のようにインフレ下で名目成長率が金利を上回る局面では、プライマリー バランス黒字化しなくとも、債務残高GDP比は下がるということで、こういった状況で むしろプライマリーバランス黒字化を保持してしまうと、必要なところに財政が出ないと いう弊害が出ていると考えている。 そうなってくると、どういったところに重点とすべきポイントがあるかというと、一言 で言えば、インフレ局面に応じた国際基準の視点ということである。こちらは私のほうで、 いろいろな格付機関の財政を見る指標を調べてみたところ、実はプライマリーバランスを 直接見ているところはなく、何が重視されているかというと、やはりストックの指標、政 府債務残高のGDP比を見ている格付会社もあれば、純債務残高GDP比を重視している 格付会社もあって、これをどういった形で目標にしていくかというところが非常に重要な ポイントかと思う。 そうなってくると、仮に純債務のGDP比を目標にするとなると、政府の中長期試算、 政府試算の見通しがないので、新たに作成する必要が出てくるということかと思う。 あともう一つ、格付会社が見る上での非常に重要な指標として、利払い費のGDP比等 も注目をされていて、実はこれは、アメリカ・バイデン政権のときに、アメリカのほうも 財政規律の柔軟化ということをやっており、こうした財政規律の柔軟化というのはアメリ カにとどまらず、今年、ドイツでも憲法改正、いわゆる債務ブレーキの調整という形で世 界的に財政規律の柔軟化が進んでいるので、やはり日本でもこのタイミングで必要なので はないかというところである。 これを進めるに当たって、もし可能であれば、安倍政権のときの経済財政諮問会議でも あったように、それこそ海外の代表的な主流派の経済学者の先生などを、リモートでも良 いと思うので、ご意見を聴く機会であったりとか、さらには日本国債の格付担当者の方の 意見を聴いたりすることによって、最も日本にとって望ましい財政の目標というのを検討 する必要があると考えている。 二点目が、経済対策について留意すべきポイントというところで、エコノミストの視点 からご指摘をさせていただくと、経済対策は毎回効果がGDPの押し上げ効果で出てくる わけだが、一般国民からすると全く実感がない。であれば、私は、いかにこの政策がどう いったパスを通じて実質賃金の押し上げにつながるかと、そういったところを定性でも良 いので明示する必要があるかと思う。 実際、こちらは実質賃金の要因分解で式があるのだが、こちらにあるとおり、実質賃金 というのは、実質労働生産性とか労働分配率、交易条件、労働時間というふうに分けられ、 一応、ご参考までに私が作ってみたのだが、色々な政策がどういうパスを通じて実質賃金 の押し上げにつながるのかというところを明示すると、国民にも分かりやすくなるのかと 思う。 あと、規模の正当化ということなのだが、今の日本経済に非常に危機感を抱いている。 来週月曜日に公表される7-9月のGDP、大幅マイナス成長が予想されている。さらに、 景気動向指数、この前9月分が出たのだが、10月分の出方によっては基調判断が悪化と、 これはいつ以来かというと、2020年7月以来ということであり、非常に綱渡りの状況にな 5 令和 7 年第 12 回経済財政諮問会議 っているので、やはりそういった局面では、補正予算はそれなりの規模が必要なのではな いかと。 一般会計の歳出、昨年13.9兆円だったと思うのだが、表面上の数字がこれを上回ってこ ないと、なかなか積極財政への期待が低下してしまう可能性があるかと。ただ一方で、当 然、「責任ある」なので、財政規律も担保しなければいけない。 これはどのようにするかというと、一方で、国債以外にももろもろ、税収上振れや、税 外収入や、予算の復活分等そのようなところを踏まえたことを考えると、前回も国債発行 は一般会計の予算の半分ぐらいなので、ここの国債発行額を、政府債務残高のGDP比の 低下が維持される範囲内で収めるということが担保につながるのではないかと考えてい る。 あとは細かい話なのだが、この8月に発表された内閣府の中長期試算から、プライマリ ーバランスの修正の要因分解が出され、そこで「基調的な税収増の想定」で、1.6兆円と いうことで新たに出ており、これはある意味、恒久的な税収の上振れであるから、こうい ったところはいわゆる恒久的な財源として使える可能性があるのではないかと、このよう なところも検討の必要があるのではないかと考えている。 (南場議員) 資料6に沿ってお話しする。 過去30年間、日本経済が世界の中で競争力を失いつつあるのは、イノベーションが起き ていないからだ。人口減少が避けられない経済が世界の中で輝くためには、イノベーショ ンを起こして、知的生産拠点として競争力を維持・強化する必要があるが、イノベーショ ンを力ずくで起こすということではなく、持続的に起こり続ける土壌を作ることが大切だ。 土壌がないと重点分野に資金を投入しても一周回って終わりになる。 では、イノベーションが持続的に起こり続ける土壌とは何かというと、この前提はダイ ナミズムだ。企業の参入と退出、雇用の創出と破壊など、絶え間なく動いている、エネル ギーが高い状態が不可欠だ。個人に対するセーフティネットは提供しつつ、守り過ぎない という視点も必要だと考える。 そういったダイナミズムが、日本は実は得意ではなかったのだが、ただ、国内でもスタ ートアップは人、カネ、事業が激しく流動している。そして、次々と変化への挑戦が行わ れている。ただ、スタートアップが日本経済全体に及ぼす影響度はそれほど大きくなって いないので、ここを太らせるということが一つ大きなポイントになる。スタートアップの エコシステムを強化していくということに関して、日本政府も既に「スタートアップ育成 5か年計画」を実施しているが、その進捗を総点検し、モメンタムを再度強化する必要が ある。 というのも、やはり5か年計画が策定された22年前後は非常に勢いがあったのだが、今 は少し停滞している感じがする。スタートアップに投下される資金は伸び悩んでいるし、 ベンチャーキャピタルの資金調達も伸び悩んでいる。そして、日本のスタートアップは、 一社当たりの調達額が非常に小さく、試合が小さい。世界有数のスタートアップエコシス テムを形成することを急ぐ必要がある。具体的施策は割愛する。 また、スタートアップ政策は単独のこりっとした取組とするのではなく、経済政策全て に横断的にスタートアップエコシステムの拡大という視点を取り入れるべきだと考える。 戦略17分野への資金がほぼ全て大企業に吸い込まれるということがないようにしなけれ ばならない。 そして、スタートアップに限らず、国の一番重要な財産である人材の流動のダイナミズ 6 令和 7 年第 12 回経済財政諮問会議 ムは経済の活性化に非常に重要だ。賃上げにももちろんつながる。賃上げは、最低賃金の 引上げという官製賃上げでは限界がある。人材が移動しやすい環境を整備し、生産性の高 い企業や産業に人材が流動することで賃金が結果として上がっていくということが望ま しい。 人材についてもうひとつ。国境を越えて活躍できる人材の育成も急務だと痛感している。 世界規模の成功企業を生み出すためにも、また、それだけではなく、国内の困難な課題を 解決するためにも世界の叡智を集める必要があり、様々な文化的背景の人々を率いて事を なすことが重要だ。ただ、これができる人材の層は非常に薄い。なのに、長期留学が減少 してきているのは大きな懸念事項だ。これを桁違いに拡大するということ。それから、世 界の優秀層を日本に呼び込んで、日本のリーダー層との協働環境を作るということを意識 的に大胆に取り組む必要がある。 最後に、マクロ経済政策全般に関して申し上げると、経済政策を貫く思想として、張り 切った人、変化に挑む企業や人が報われるという社会を目指してほしい。 また、社会保障制度の見直しに当たっては、過去30年の延長ではなく、イノベーション の視点を大胆に取り入れ、成長社会、成長経済にふさわしい制度への再設計をするべきだ と考える。社会保障改革元年として取り組むべきと考える。 (若田部議員) お手元の資料7でご説明したい。 まず最初、マクロ経済政策運営について、当面どのようなテーマで検討を深めるべきか については、新しい時代にふさわしい新しい経済財政政策の基本戦略を構築すべきだと考 える。 新しいというところで、先ほど申し上げたようなインフレが戻ってきたというだけでな く、やはり供給の側も力をつけなければならない。それで、総理がいつもおっしゃってい るように、防衛力、外交力の強化、それが経済の強化にも結びつくと。逆に、経済の強化 が両方、防衛力、外交力の強化にもつながるというような新しい時代を踏まえた戦略が必 要だと思う。 基本的な方針は高圧経済だ。現状としては、インフレは復活したが、半分以上はコスト・ プッシュで、実質GDPは停滞している。直近ではマイナス成長すら懸念されているとこ ろだ。 そこで、アベノミクスの成果と教訓と反省を踏まえた上で、時代状況に合わせてそれを 進化させるというのが課題だと思う。具体的には、総需要はマクロ経済政策で適切に支え ると、その下で総供給の強化を行う、それが総供給の強化につながるというような視点だ。 その上での基本戦略というのは、永濱議員からもお話があったが、内外の経済理論・政 策論の動向に学ぶということだ。その下で、政策をマクロだけ、あるいは財政、金融だけ を考えるというのではなく、マクロ、成長、貿易、再分配などなどの政策を統一的・統合 的に運用すべきであると考える。ちなみに、財政と金融政策に関しては、日銀法第4条の 精神に基づいて、その緊密な連携を図るべきだと考える。それと、政策策定には様々なイ ンフラが必要だ。ここは実は、予算とか人員などを増強していただきたいと考える。例え ば経済統計だが、賃上げを目標としている割には、実は正確な賃金統計がなかなかないと いうのがエコノミスト、経済学者の悩みだ。これは林総務大臣の管轄下である総務省統計 局でもお願いしたいと思う。 以上のようなことなどがあるが、モデルについては、永濱議員からもお話があった内閣 府の中長期試算の再検討も必要だと思う。 7 令和 7 年第 12 回経済財政諮問会議 そして、大事なのは、筒井議員からもお話があった、政策を正しくコミュニケーション するということだと思う。市場の信認をいかにつなぎ止めるかということに関しては、や はり正しいコミュニケーションが必要だと思う。例えば、日本の財政状況だが、これがフ ローでもストックでも改善しているということは、実はあまり知られていないということ がある。なので、そういったことを正しく伝えるべきだと考える。 次に、財政政策だが、これに関しては、新しい時代状況に合わせた財政思想の転換、進 化が必要だと考える。まず、物価が上がる世界を前提とした予算編成に切り替えるべきだ と思う。ただ、それでインフレが起きたら、そのまま自動的に増やすというのでは、これ はまた歳出のほうが単純に増えてしまうので、やはりそこで、一方で使命を終えた補助金 の整理・見直しと、いわゆる政府効率化局のようなアイデアが必要ではないかと思う。 プライマリーバランス黒字化目標だが、これは永濱議員からもお話があったが、やはり デフレ時代の歴史的産物で、もはや歴史的に使命を終えたのではないかと考える。 それと、投資としての政府支出、危機管理、成長ということを考えるときには、やはり 財政を単年度で考えるという考え方からは脱却すべきではないかと考える。 その下で、では、どういう指標が例えば財政健全化の指標として望ましいのかというこ とについては、債務残高の対GDP比への着目というのが、まずは良いかと思う。総債務 か純債務かという論点はあるが、これは後ほど様々議論すれば良いと思う。片山さつき財 務大臣が記者会見で述べたように、科学的、冷静、客観的、360度の目線というのが求め られているところだと思う。 補正の話を後でするが、本来ならば、やはり本予算を充実することによって、戦略性、 予見可能性、持続可能性というのを担保すべきだと考えている。 時間の関係で、成長戦略会議との連携というのは多少省略するが、そこの会議では、や はり戦略と枠組みを議論していただきたいと思う。この有識者議員の中で筒井議員と南場 議員がおられるというのは大変象徴的で、言ってみれば、日本経済の復活ということを考 えるときに、伝統的企業かスタートアップ企業かみたいな二項対立で捉えられがちなのだ が、必要なのは、恐らくどちらもいて、そのエコシステムがうまく回ることだというよう に思う。成長の要は民間企業の活力なので、その点を強調しておきたいと思う。 それと、枠組みということで言うならば、投資促進税制、あるいは社会的割引率が今4% で計算されているというようなことを見直すべきではないかと思う。 二番目の経済対策について、留意すべきポイントとしては、現状で大幅にマイナス成長 が予想されていて、しかも、コスト・プッシュ要因のインフレが剝落するということを考 えると、それなりの規模のものを出す必要があると考えている。 内容については、三つの柱立てで良いと思うが、大事なのは、この三つが相互に関連し 合っていて、なおかつシナジーがあるということだと思う。先ほど申し上げたように、防 衛力、外交力の強化というのは経済力の強化にもつながるし、経済力の強化が防衛力、外 交力の強化にもつながると、そのためには危機管理投資・成長投資が必要であるというこ とだと思う。 規模については、やはり昨年を上回る規模というのが規模感としては適正だと思うが、 需給ギャップ、あるいはインフレへの影響をきちんと試算した上で策定すべきだと思う。 最後、先ほど申し上げたように、政策コミュニケーションは非常に重要な課題で、なぜ 対策が必要なのか、そして、それは財政状況にどのように配慮しているのかと、そこがま さに、責任ある積極財政の「責任ある」という部分になるかと思う。 8 令和 7 年第 12 回経済財政諮問会議 (城内議員) 続いて、閣僚からご発言をいただく。 (赤澤議員) 責任ある積極財政の考え方の下では、中長期の計画に基づいた複数年度の 財政支出を行うことで、企業の予見可能性を高め、民間投資を促すことが必要だ。経済安 全保障の確保に向けて、国が着実かつ計画的に取り組んでいくための予算フレームを考え ていくべきだと思う。 このような危機管理投資・成長投資の取組を通じて、日本経済の供給構造を強化し、日 本企業の稼ぐ力を高め、物価上昇を上回る賃上げ実現につなげ、高市総理のおっしゃる強 い経済を実現してまいる。 経済産業省としては、今般の経済対策において、短期的な物価上昇への対応のみならず、 AI、半導体、バイオ、GX、マテリアルなど、戦略分野における官民投資を促進するこ とを通じ、日本経済の供給構造を強化してまいる。 加えて、労働供給制約が深刻化する社会では、人も中小企業も数より質が重視される。 現状維持ではなく、稼ぐ力強化と賃上げの好循環の実現に向けて、事業再構築、生産性向 上、事業再編等に取り組む中堅・中小企業を徹底的に支援し、必要な連携と再編も含め、 強い中堅・中小企業への行動変容を促す。 そういう意味で、南場議員がおっしゃった、張り切った人が報われると、現状維持では なく、変化に挑む企業や人が報われる形に軸足を移すべきというのに完全に賛成で、現状 維持ではなく、強い中小企業へ行動変容を促していくという点で考えが同じであり、今般 の経済対策でも、そうした考え方で筋肉質の内容にしていきたいと思う。また、人材を流 動化させることが賃上げにつながるという南場議員のご意見にも賛成をする。 最低賃金引上げだけでは限界があるのもそのとおりなのだが、政府が最低賃金を含む賃 上げについてフォワードガイダンスすることは重要であり、最低賃金引上げの目標や実質 賃金年1%上昇、それによる人材の流動化を念頭に置いて、強い中小企業づくりに取り組 んでまいりたいと思う。 (片山議員) 本日は、議員の皆様から経済・財政運営について大変貴重なご意見をいた だき、ありがとうございます。また、若田部議員におかれては、私の記者会見から引いて いただいて、色々と債務残高についても指標があるという見方、統計があるという見方を 財務省もするようになった。科学的、冷静、客観的、360度の目線がなければならないと いうことを引いていただき、なかなか大先生に引いていただけることはないので、大変感 動して拝見をしていたが、責任ある積極財政で、経済・財政運営は全て取組なさいという ことが、私が組閣時にいただいたご指示であるので、それを本当に取り組むということで、 成長型経済への移行を実現していくために、財務省も今申し上げたような方向で日々変わ ってきているということで、査定に今もう入っているので、なかなか理解はされていない のだが、分かるところからは分かっていただけるかなと思っている。 その上で、今般、来年の骨太方針に向けて、10月の総理のご指示もあり、非常に重い宿 題をいただいているが、これは一つ、肝腎要であり、まず、分析力という意味で、経済、 物価、市場の動向を多角的に分析できる力を我々官庁も持たなければならないし、先生方 がおっしゃるように、最新の理論とか、あるいは実際にリアルにご意見をおっしゃる方々 とのリモートなどを使った意見交換とかも非常に有益だと思い、それから、物価と金利が 基本的には両方上昇していく新たな局面で財政運営に取り組んでいく、その在り方という ものも、まさに科学的に検討をしてまいりたいと思う。 今般の経済対策については、まず、足下の物価高に有効な対応がなければならないし、 9 令和 7 年第 12 回経済財政諮問会議 強い経済の構築に向けて、予算、税制、財政投融資や規制改革、制度改革といった手法は 総動員しなくてはならず、必要な施策をしっかりと積み上げてまいりたいと思っている。 (城内議員) 少し時間があるので、これまでの議論を踏まえ、追加のご発言を希望の方 がおられたら、お願いする。 (若田部議員) せっかくなので、日本銀行総裁に伺いたいのだが、日本銀行の今の基本 的な論理について伺いたいと思う。私が理解するところでは、まだ日本の物価は基調的な 物価で2%の目標を持続的・安定的に達成するという段階には至っていない。なので、金 融緩和を引き続き、続けているというわけだが、その度合いについては、それを調整する 形で金利を上げていくということを考えていらっしゃると。ただ、私が伺いたいのは、金 利を上げるというのは、基本的には経済を冷え込ませて、それでもってGDPギャップ、 需給ギャップを小さくするということ、あるいは金利を上げるというメッセージを通じて インフレ予想を冷え込ませるということなので、そのことと基調的な物価で2%を目指す ということは、どのような整合的な関係にあるのかということを伺いたい。 (植田議員) 私どもも、まだ基調的インフレ率が2%を下回っているであろうというこ とで、これはもう少し上がっていくということが望ましいと考えている。したがって、緩 和的な金融政策基調を維持している。緩和的という意味は、全てがうまくいったときに成 立するような金利の水準、中立金利と言われたりするが、それより下の段階に今、金利が あるということである。 一方で、長い目で見たときに、2%が持続的に達成されないといけないということは、 下から上がっていくということだけではなくて、2%をあまり上回り過ぎても困るという こともある。なので、持続的・安定的に2%を達成するという観点からは、緩和的な状態 があまり長く続くのもリスクがある。ちょうど上手く着地するようなところを適切に見極 めつつ、政策を行っていくべきであるという観点である。 (永濱議員) 私の説明の中では入らなかったのだが、私もやはり労働市場の流動性を高 めるという意味では、賃金を上げるために非常に重要だと考えている。そういった中で言 うと、これは実は前回の私が参加した諮問会議でも申し上げさせていただいたのだが、そ れこそ労働市場の流動性を妨げるような雇用調整助成金みたいな政策はできるだけ少な くする一方で、労働市場の流動性を高めるインセンティブを与えるようなところに予算を 再配分することが非常に重要なのではないかなと考えている。 さらに、先ほど赤澤大臣からもあったが、やはり最低賃金の引上げというのは、私は非 常に重要だと考えており、未だに最低賃金近辺で働いている労働者の割合は非常に高いわ けなので、非常に重要だと思う。ただ、そこで重要なのは、やはり年収の壁の引上げとセ ットで取り組んでいかないと効果が出にくいというところなので、こういったところが重 要かと思う。 最後に、先ほど日本銀行の物価の見通しもあったが、来年度はインフレ率が2%を下回 る状況になってくると。一方で、今、実は、足下のボーナスを除く賃金の伸び率は2%ぐ らいあるため、来年の春闘である程度いい形で妥結し、かつ経済対策がうまくいけば、私 は、来年度は実質賃金が安定的にプラスになる、そういった期待も持てるのではないかと 考えている。 (城内議員) それでは、経済対策については、本日のご議論と今後の与党との調整を踏 まえ、策定を目指してまいる。 プレスに入室いただく。 10 令和 7 年第 12 回経済財政諮問会議 (報道関係者入室) (城内議員) 総理から締めくくり発言をお願いする。 (高市議長) 高市内閣になって最初の経済財政諮問会議を開催した。新たな民間議員の 皆様にも加わっていただいている。この内閣における経済財政運営の様々な課題について、 優れたご知見を生かして、議論をリードしていただきたいと思っている。 本日の会議では、私が示した総合経済対策の指示、先日の日本成長戦略会議で示された 重点施策、そして日本銀行の経済・物価情勢に関する「展望レポート」を基に、意見交換 を行った。 この内閣では、「未来への不安を希望に変える」取組として、まずは経済対策の策定を 進めている。 特に、第一の柱である「生活の安全保障・物価高への対応」として、地域のニーズにき め細かく速やかに対応する重点支援地方交付金の「拡充」、これが鍵になる。 城内大臣におかれては、取りまとめ役として尽力願う。また、片山財務大臣も協力をお 願いする。また、交付金は地方公共団体で執行されるので、林総務大臣におかれては、迅 速で円滑な執行への支援をお願いする。 次に、第二の柱である「危機管理投資・成長投資による強い経済の実現」についても、 これは日本成長戦略会議とこの会議、連携をよろしくお願いする。 本日は、民間議員の皆様からは、経済対策は、景気回復を実感できるものにするととも に、官民連携によるダイナミックな経済財政運営により「強い経済」の実現に向けた重要 な第一歩となる政策実行とすべき。その際、経済や物価への影響試算を示すことが重要。 また、インフレ局面に応じた財政健全化目標への変更が必要。また、成長投資を行う中で、 財政の持続可能性の確保、市場の信認を維持し続けることが重要。そのためにも、政策の 正しいコミュニケーションが必要。また、人、カネ、事業を流動化させ、イノベーション が持続的に起こり続ける土壌を作ることが重要。また、成長社会・経済にふさわしい社会 保障制度への再設計が必要であり、 「社会保障改革元年」として取り組むべき。などなど、 もっとあるのだが、たくさんのご意見を賜った。城内大臣におかれては、こうした貴重な ご意見を踏まえ、今後の経済財政諮問会議でも議論を深めていくよう、お願いをする。 また、今後の「強い経済成長」と「安定的な物価上昇」の両立の実現に向けて、適切な 金融政策運営が行われることは非常に重要である。引き続き、日本銀行総裁におかれては、 この経済財政諮問会議において、定期的な報告をお願い申し上げる。 今後とも、政府・日銀が一体となって、国民経済の発展に向けて取り組んでまいる。 かなり大きなチャレンジになる、大転換になっていく、そういう時期だと思う。民間議 員の皆様におかれては、かなり今日もとんがったご意見をいただいたが、思い切って日本 経済を強くしてまいりましょう。そして、やはり将来に向けての責任を果たしてまいりま しょう。どうかこれからもよろしくお願い申し上げる。 (城内議員) プレスはご退出をお願いする。 (報道関係者退室) (城内議員) 以上をもって本日の会議を終了する。 (以 上) 11 令和 7 年第 12 回経済財政諮問会議