実質賃金向上のための高付加価値化と交易条件改善の必要性を説き、コストカット型から成長型経済への転換と国内投資拡大の重要性を論じている。
タグ: 実質賃金, 高付加価値化, 交易条件, 国内投資, 価格転嫁, 成長型経済
加えて、自由で公正なルールに基づく国際経済秩序の維持・強化に取り組みつつ、米国の関税措置に関し、一連の関税措置の見直しを強く申し入れるなど米国との協議を進めていくとともに、相談窓口の設置や資金繰り支援等に取り組むことが重要となる。(これまで中長期で実質賃金が低迷した主要因である交易条件の改善) ● こうした喫緊の問題に対処する中、同時に、中長期的に実質賃金を継続的に上昇させていくためには、高付加価値化によって交易条件を改善させなければならないが、道半ばにある状況。 ● 過去30年間の実質賃金の停滞を要因分解すると、日本は労働生産性の上昇は主要先進国並みだったものの、資源を高く輸入する一方、製品・サービスの輸出価格を十分に上げられなかったという交易条件が悪化ことによる影響が、社会保障負担の増加や労働分配率よりも寄与度が大きかった。海外との貿易面で、日本全体で価格転嫁が不十分だったとも言える。23 ● 一般に、企業経営は、デフレではコストカットに努力しやすくなり、反対にインフレでは高付加価値化に努力しやすくなるとの指摘がある24。過去20年の日本はデフレだったため、高付加価値なもの・新しいものを提供しようとしても、高い値段がつけられないため、企業の生き残りを図るために、コストカット型の経営に陥りやすいマクロ環境であったとも考えられる。しかしながら、足下で期待インフレ率も上昇するなど高付加価値化に取り組みやすいマクロ環境が整いつつあるにも関わらず25、未だ交易条件は改善には至っていない26。 ● 「賃上げと投資が牽引する成長型経済」への転換に向けては、輸出物価上昇を通じた日本全体の価格転嫁ができるよう、成長投資による高付加価値化等が必要となる。 3. 新機軸全体から見た第4次中間整理の位置づけ ● 今こそ、こうした課題を乗り越え、30年続いたコストカット型の縮み思考から、賃上げと投資が牽引する成長思考に転換しなければならない。そのためには、人口減少等を理由とした日本国内の根強い将来悲観を払拭する必要がある。 ● とりわけ日本の国民性は長期性を重視し、不確実性を回避しようとする傾向が強く27、合理的に実現可能な明るい将来見通しを共通認識とし、企業・国民・政府にとっての予見可能性を高めることが、官民で国内投資拡大28と賃上げを定着させていく上では重要である。 ● 例えば、国内投資については、2022年12月の第1回「国内投資拡大に向けた官民連携フォーラム(以降、国内投資フォーラム)」29において、日本経済団体連合会(以降、経団連)・十倉会長が、民間設備投資額「2027年度100兆円」という国内投資の「見通し」を表明した30。さらに、「令和5年度の経済見通しと経済財政運営の基本的態度(以降、政府経済見通し)」(2023年1月23日閣議決定)において、2023年度103.5兆円という見通しが示されたことを受けて、2023年4月の第2回「国内投資フォーラム」において、経団連・十倉会長が民間設備投資額「2027年度115兆円」という国内投資目標を 23 参考資料 P55「実質賃金向上には、労働生産性の上昇だけでなく交易条件の改善(日本全体の価格転嫁)が必要」参照 24 参考資料 P9「マクロ経済と企業経営(デフレ経済に関するグリーンスパンの見解)」参照 25 参考資料 P32「物価上昇予想は定着しつつあり、高付加価値化経済への移行に向けた転換点」参照 26 参考資料 P55「実質賃金向上には、労働生産性の上昇だけでなく交易条件の改善(日本全体の価格転嫁)が必要」参照 27 参考資料 P29「日本は長期志向が強く、不確実性を回避する傾向」参照 28 参考資料 P30「政策の不確実性が投資判断に大きく影響する」参照 29 内閣官房 HP「国内投資拡大のための官民連携フォーラム」(https://www.cas.go.jp/jp/seisaku/kokunai_toushikakudai_forum/index.html) 参照 30 参考資料 P46「「国内投資拡大に向けた官民連携フォーラム」(2022年12月8日)」参照 6