月面開発および地球低軌道開発における現状と課題を整理し、2040年に向けた市場獲得目標と戦略的方針を提示している。
タグ: 宇宙開発, 月面探査, 低軌道技術, 経済成長, 国際競争
1. 現状認識と目指す姿【目標】 航空・宇宙 月面探査・低軌道技術 (1)現状 ① 現状 【月面開発の現状】 ・将来の月面居住、火星探査を見据えた拠点構築、水資源や鉱物資源の探査、フュージョンエネルギーの燃料となるヘリウム3などの獲得による人類の活動領域拡大を目指し、米中始め世界各国で月面開発競争が激化。米国は、現地時間3月24日に月面基地に注力することを公表。3月の高市総理訪米時の米側ファクトシートでも月面基地への日本の協力を求める内容が記載されるなど、国際パートナーとしての日本への期待が大きい。 ・我が国は米国主導の月及び将来の火星探査を見据えた国際宇宙探査計画(アルテミス計画)に参画し、月面開発を推進してきた。この中で、高精度な月面輸送技術、居住空間を備えた世界初の有人月面探査車(有人与圧ローバ)の開発に向けた技術等を保有。将来的な月面活動を見据え、月面輸送ビジネスのような宇宙産業に加え、通信や水資源など地上産業の民間企業も宇宙分野に参入しつつある。 【地球低軌道開発(宇宙ステーション)の現状】 ・宇宙ステーションは民間主体への移行(2030年頃〜)が予定されており、米国では、官民連携の下、民間企業が新たに宇宙ステーションを打上げ・運営し、低軌道ビジネスを目指す(半導体製造、ライフサイエンス(創薬等)、宇宙観光等)。中国・ロシア・インドも独自に建設を進める。 ・我が国は、宇宙ステーションへの物資補給機(HTV-X)や実験施設(きぼう)、宇宙デブリ除去など、世界有数の低軌道技術を保有するが、民間宇宙ステーションでの民間企業同士のビジネスが創出される中、民間企業が宇宙ステーションを活用したビジネスのグローバルな競争下に晒されることとなる。 ② 取り巻く環境と構造変化 ・「官から民へ」の動きが加速(民間活力でスピード・コスト競争力の確保等を目標) ・経済上や安全保障上の重要性が高まり、米中の競争が激化、技術を自立的に保有する動き。(米国からも日本は国際パートナー・商業パートナーとしての参画が期待され、日米宇宙協力は日米協力の重要な1つとなっている) ③ 経済的・戦略的な重要性 我が国は月面・低軌道の活動に関する重要技術を有する数少ない国。(例えば、月面輸送技術は日米露中のみ保有、低軌道輸送技術は日米露中のみ保有) ・経済的重要性:月面・地球低軌道分野の世界市場の規模が2040年で各2.5兆円、3.3兆円と予測される中、長年にわたり積み上げてきた当該分野の知見を次世代につなげ、宇宙産業や宇宙関連産業の成長を我が国の更なる経済成長に取り込むことが重要。 ・戦略的重要性:安全保障分野含め、我が国の自律的で自在性を持った宇宙空間へのアクセスの確保が重要。 (2) 目標 ① 国内外で獲得を目指す市場 ・月面での拠点構築・居住から経済活動が発展し、2040年の世界の月面市場は年間約2.5兆円規模と予測。我が国としては、2040年に、国内外で約8,000億円/年の市場獲得を目指す。(PwC (2021,2026)を基に文部科学省試算) ・宇宙ステーションは民間主体に移行(2030年頃〜)し、2040年の世界の地球低軌道市場は年間約3兆円規模と予測(Citi, 2022)。我が国としては、2040年に、国内外で約3,300億円/年の市場獲得を目指す。(Citi (2022)を基に文部科学省試算) ② 達成すべき戦略的な目標 ・日本の強みを生かし、技術の開発・商業化を通じて、我が国の月面・地球低軌道活動の確保や、これを通じた経済成長を目指す。 ・将来の月面活動を支える着陸機、モビリティ、通信、水資源活用といった月面インフラ構築に向けて、我が国の官民の月面利用・技術実証の実績を積み重ねるとともに、継続的な月面アクセス基盤を確保する。 120