日本の労働市場におけるミスマッチを推計するため、職種・地域別のデータを用いてマッチング関数を構築し、効率的な求職者配分と実際の雇用状況を比較分析した。
タグ: 労働市場, ミスマッチ, マッチング関数, 雇用政策, 職業紹介
付注2-7 市場の異質性を考慮した我が国の労働市場におけるミスマッチの推計について 1. 概要 川田(2019)のアプローチを用いて、日本の職種別・地域別職業紹介データに基づき労働市場のマッチング関数を推計し、新規雇用が最大となるように求職者を再分配する、効率的マッチングと実際の雇用の状況の比較を行った。推計期間は2012年度から2022年度である。 2. モデル及びデータ 今回の分析では、川田(2019)に倣い、t期の市場sにおける新規雇用の数を表すマッチング関数mst(ust, vst)を考える。ただし、ustは求職者、vstは求人数を表す。ここで、毎期の新規雇用を最大にするように、求職者を各市場で再分配することを考えると、以下のように定式化される。 max Σs Σt mst(ust, vst) subject to ut = Σst ust ここで、マッチング関数が微分可能であると仮定することで、効率的なマッチングが実現するときの一次条件は、 ∂m(ust, vst) / ∂ust = ∂m(us't, vs't) / ∂us't となる。つまり、求職者の限界的な増加に対する新規雇用の増加が、各市場で同数であることが必要となる。 これらの議論に基づき、今回は、公的職業紹介業務を行う職種安定紹介所のデータを用いたマッチング関数の推定を行った。具体的には、各職種(職種大分類)・地域(都道府県)別の求人数、求職者数、新規就職件数のデータを使用し、マッチング関数の関数形はコブ・ダグラス型を仮定した。関数形は以下の通りとなる。 ms,t(us,t, vs,t) = μst vs,t^η vs,t^1-η ただし、η及びμstはそれぞれパラメーターであり、特に後者はマッチングの効率性とする。また、マッチングの効率性は、職種、都道府県、時点の3つに分解可能であるとする。これらのパラメーターを推計し、上記の制約付き最適化問題を解くことで時点ごとの各市場における最適な求職者配分が求まる。本稿ではこのようにして得られた最適配分の下で達成される新規雇用を、効率的なマッチングにおける就職件数としている。 363