金融緩和による金利低下が住宅着工や貸家建設を促進した一方、人口減少に伴う住宅ストック調整の必要性が示唆されている。
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第1章 緩やかな回復が続く日本経済の現状 マイナスの利回りを付ける場面もあった。企業金融や個人向けの住宅ローンの金利も、こうした動きに沿って低下し、銀行の貸出は、個人や非製造業向けを中心に増加している。このように金融緩和の効果は着実に実体経済に波及している(第1-3-1図 (1) (2) (3) (4))。 一方、イールドカーブのフラット化が進むことで、銀行の短期調達、長期貸出による利鞘が縮小している。こうした金融環境の変化は、金融機関にポートフォリオ・リバランスを促すことで、リスク資産への投資が進み、経済全体の成長を促す効果が期待できるが、イールドカーブのフラット化が進み過ぎると金融機関が利鞘をとれなくなり、その結果、金融機関の適切なリスクテイク行動を阻害し、金融仲介機能へ影響が出る可能性もある(第1-3-1 (5))。 こうしたことから、日本銀行は、2016年9月に「長短金利操作付き量的・質的金融緩和」を導入し、長短の金利水準を金融市場調節方針の操作目標とした26。本施策の導入後のイールドカーブをみると、短期金利がマイナスを維持する中、スティープ化も図られており、10年より長いところではプラスとなっている。以下では、こうした金融環境が家計や企業に対して与えた影響を概観する。 ●金利の低下等により住宅着工は増加 家計の住宅取得意欲は高まっており、住宅着工の動向をみると、2016年初から夏場にかけて大幅に増加しており、年換算で100万戸を超える月もあった(第1-3-2図 (1) (2))。その後、年末にかけてやや落ち着いたものの、1月に2020年東京大会向けの選手村の着工もあって100万戸を超えるなど、おおむね横ばいで推移している。 2016年度の着工を利用関係別にみると、持家、貸家及び分譲のすべてで増加しているが、特に、貸家の着工が大幅に増加した。金利低下のほか、2015年の相続税に係る税制改正の影響もあって、貸家建設のインセンティブが高まったことが指摘されており、個人の貸家業に対する貸出残高をみると、2017年3月時点で28兆円を超え、前年から1兆円程度増加している27(第1-3-2図 (3))。 我が国は、一世帯当たり人数の減少によって、人口減少下でも世帯数が増加しているが、2020年以降は世帯数も減少すると推計28されており、人口動態に沿って住宅ストックの調整が必要となる。最近の住宅ストックの積み上がりについて、住宅・土地統計調査を基に滅失率を推計し、一定の仮定の下、建築着工統計に基づいて試算してみると、世帯数の伸びに対して住宅ストックの伸びが大きくなっている可能性が示唆される(第1-3-2図 (4))。さらに地域別にみると、北海道では世帯数が減少しているのに対して住宅ストックは増加しており、その他地域においても世帯数の伸びに対して住宅ストックの伸びが大きい地域も見受けられる(付注1-3)。住宅に占める空き家の割合(空き家率)は、2003年に12.2%、2013年に13.5%と増 注 (26) 日本銀行(2017)を参照。 (27) 貸家建設の動向については安井・江尻(2017)を参照。 (28) 国立社会保障・人口問題研究所(2013)を参照。 70