防衛大臣が令和5年版防衛白書について、国際情勢と日本の防衛政策の方向性を解説。
令和5年版防衛白書の刊行に寄せて 防衛大臣 浜田靖一 世界は歴史の分岐点を迎えています。国際社会は戦後最大の試練の時を迎え、新 たな危機の時代に突入しつつあります。 ロシアのウクライナ侵略は、国連安保理の常任理事国が、国際法を無視して主権 国家を侵略し、核・ミサイル戦力を含む軍事力の質・量 を急速に強化すると ともに、東シナ海、南シナ海において、力による一方的な現状変更やその試みを継 続・強化しています。そして、北朝鮮は、立て続けにミサイル発射を繰り返すなど、 核・ミサイル開発を急速に進展させています。 こうした中、先の戦争を経験し、戦後一貫して平和国家としての歩みを進めてき たわが国として、まず優先されるべきは、外交努力であることは言うまでもありません。 わが国は、法の支配を尊重し、いかなる紛争も、力の行使ではなく、平和 的・外交的に解決すべきであるとの方針を変えることはありません。同時に、国民 の命や暮らしを守り抜くうえでは、「自分の国は自分で守る」ための努力により、 抑止力を高めていく、つまり、相手に対して「日本を攻めても目標を達成できない」 と思わせることが不可欠です。 得るスタンド・オフ防衛能力や無人アセットなど将来の防衛力の中核となる分野の 強化、といった点を重視しつつ、防衛生産・技術基盤の強化などにも、しっかり取 り組んでいきます。 そして、どれだけ高度な装備品を揃えたところで、それを扱う「人」がいなければ 防衛力は発揮できません。自衛隊員は防衛力の中核です。隊員の生活・勤務環境 の改善をスピード感をもって進めていくとともに、処遇の向上を図ってまいります。 また、近年、防衛の分野においても、外交的な取組の重要性が増しています。私 は着任以来、様々な機会を捉えて、わが国唯一の同盟国である米国のオースティン 国防長官や、マールズ豪副首相兼国防大臣をはじめとした各国の国防大臣と協議を 重ね、協力・連携の強化に努めてまいりました。日米英による次期戦闘機の共同開発など、様々な協力を進めてまいります。 見解が異なる相手であっても、対話を通じた意思疎通の維持・強化を粘り強く図 り、信頼醸成と不測事態の回避を目指すことが重要です。こうした取組にも尽力し てまいります。 令和5年版防衛白書は、こうした観点から、わが国を取り巻く安全保障環境や防 衛省・自衛隊の活動・取組について記述しました。巻頭では、2013年(前国家安 全保障戦略策定時)以前と2022年(現国家安全保障戦略策定時)までの「変化」 に注目し、「激変する時代~10年の変化~」と題した特集記事に加え、「国家防衛 戦略」の内容を写真や図表を用いて簡潔に分かりやすく解説し、御理解を深めてい ただけるよう努めました。 国の防衛の取組は、国民の御理解と御協力を得るとともに、国際社会に対する高 い透明性をもって進めていくことがもっとも重要です。防衛白書は、こうした取組 において極めて重要な役割を担ってきました。この白書が、一人でも多くの方々に 読まれ、防衛省・自衛隊の活動や取組に対する御理解の一助となることを切に願っ ております。 昨年12月に閣議決定された、新しい国家安全保障戦略、国家防衛戦略、防衛力 整備計画では、このようなわが国の考え方や、そのための具体的な取組を明確にし ました。防衛省としては、現有装備品を最大限活用するための、可動率の向上や弾 薬の確保、主要な防衛施設の強靭化への投資の加速、また、反撃能力として活用し