米中対立、北朝鮮のミサイル開発、宇宙・サイバー領域の動向、WMD拡散、気候変動の影響について解説。
令和5年版 日本の防衛 防衛白書 ダイジェスト 第Ⅰ部 わが国を取り巻く安全保障環境 激化する米中中の戦略的競争、緊張感が高まる台湾情勢 中国は、台湾統一を「中華民族の偉大な復興を実現する 上での必然的要請」と位置づけており、台湾をめぐる問題 への米国の関与を強く警戒している。 2022年には、ペロシ米下院議長(当時)をはじめとする 議員が党派を超えて台湾を訪問、さらに、台湾との安全保障 協力を強化するための「台湾抗たん性強化法」が成立す るなど、米国は、政府・議会がともに、台湾への支援を一層 強化する方針を示している。 これに対し、中国は、台湾周辺での軍事活動をさらに活 発化させている。 ペロシ米下院議長訪台に伴う蔡英文総統との面会(2022年8月)【台湾総統府HP】 核・ミサイル開発を進展させる北朝鮮 北朝鮮は、近年、かつてない高い頻度で弾道ミサイルな どの発射を繰り返している。また、変則的な軌道で飛翔す る弾道ミサイルや「極超音速ミサイル」と称するミサイル などの発射を繰り返しているほか、戦術核兵器の搭載を念 頭に長距離巡航ミサイルの実用化も追求するなど、核・ミ サイル関連技術と運用能力の向上に注力している。 2022年10月には弾道ミサイルをわが国上空を通過させる形で 発射したほか、ICBM級弾道ミサイルの発射も繰り返して いる。こうした軍事動向は、わが国の安全保障にとって、 従前よりも一層重大かつ差し迫った脅威となっており、地 域と国際社会の平和と安全を著しく損なうものである。 北朝鮮が2022年11月に発射した新型ICBM級弾道ミサイル「火星17」型【朝鮮通信】 宇宙・サイバー・電磁波の領域や情報戦などをめぐる動向 科学技術とイノベーションの創出は、わが国の経済的・社会的発 展をもたらす源泉であり、技術力の適切な活用は、安全保障だけで なく、気候変動などの地球規模課題への対応にも不可欠である。各 国は、人工知能(AI)、量子技術、次世代情報通信技術など、将来の 戦闘様相を一変させる、いわゆるゲーム・チェンジャーとなり得る 先端技術の研究開発や、軍事分野での活用に力を入れてい る。また、サイバー空間、企業買収・投資を含む企業活動などを利 用し、先端技術に関する情報を窃取したうえで、軍事目的に使用 することなどが懸念されている。各国は、輸出管理や外国からの投資 にかかる審査を強化するとともに、技術開発や生産の独立性を高 めるなど、いわゆる「経済安全保障」の観点からの施策を講じて NATOサイバー演習「サイバー・コアリション2022」の様子【NATO HP】 いる。 宇宙・サイバー・電磁波の領域をめぐる動向 宇宙空間を利用した技術や情報通信ネットワークは、人々の生 活や軍隊にとっての基幹インフラとなっている。一方、中国やロ シアなどは、他国の宇宙利用を妨げる能力を強化し、国家や軍が サイバー攻撃に関与していると指摘されている。 各国は、宇宙・サイバー・電磁波領域における能力を、敵の戦 力発揮を効果的に阻止する攻撃手段として認識し、能力向上を 図っている。 米副大統領のDA-ASAT実験中止を含む宇宙政策の演説【DVDS】 「強い国家」を掲げるロシアと中国との戦略的連携 「強い国家」を掲げるロシアは、各種の新型兵器の開発・配備を進 めてきたが、ウクライナ侵略後は、兵員数の増加や部隊編制の拡 大改編を指向する動きも見せている。2022年は、兵員指揮参謀演 習「ヴォストーク2022」を兵員5万人以上、中国やインドなど計14 か国の参加を得て実施するなど、ウクライナ侵略を行う最中にあっ ても、極東において活発な軍事活動を継続している。中国との戦略的連 携を強化する動きもあり、度重なる、ロシアと中国の爆撃機の共同飛 行や艦艇の共同航行は、わが国に対する示威活動を明確に意図したも のであり、わが国と地域の安全保障上の観点から、重大な懸念である。 今後も、わが国を含むインド太平洋地域におけるロシア軍の動向につ いて、強い懸念を持って注視していく必要がある。 2022年9月、「ヴォストーク2022」を視察するプーチン大統領(中央)【ロシア大統領府HP】 大量破壊兵器の移転・拡散 大量破壊兵器及びその運搬手段となりうるミサイルの移転・拡 散は、冷戦後の大きな脅威の一つとして認識されてきた。近年、国 家間の競争や対立が先鋭化し、国際的な安全保障環境が複雑で厳 しいものとなる中で、軍備管理・軍縮・不拡散といった共通課題 への対応において、国際社会の団結が困難になっていくことが懸 念される。 気候変動が 安全保障や軍に与える影響 各国軍は、気候変動に影響されずに活動を継続するための抗た ん性確保に努めるとともに、気候変動に伴い発生する安全保障上