金融の働きは経済成長に不可欠であり、デジタル技術活用や課題克服を通じて持続可能な成長を目指す。
はじめに 経済の成長や国民生活の向上に金融の働きは欠かせない。「金利のある世界」への移行や、動 き始めた「貯蓄から資産形成」への流れ、デジタル技術の発展により生み出される便利な金融サ ービス――金融の力で更なる価値を創造できる時代が、今、到来している。 企業が、成長に向けたストーリーを描き、金融機関や金融市場から資金を調達し、設備や人へ の投資を戦略的に行っていく――この金融の流れの更なる促進により、我が国の経済や雇用が 下支えられるとともに、企業・経済の成長の果実が家計に還元されることが重要である。 また、足元で、生成 AI などデジタル技術が目覚ましい進展を遂げている。金融機関による革 新的な技術の活用へのチャレンジを促し、利用者が便利で質の高い金融サービスに安心してア クセスし続けられる環境を整備していく必要がある。 他方で、我が国は、人口減少・少子高齢化という構造的な課題を抱えている。地域の事業者の 多くにとって、人手・後継者不足は深刻である上、足元の原材料費や人件費の上昇も経営を圧迫 している。デジタル化や設備更新による生産性向上や、事業承継による技術・顧客基盤の維持に 取り組む事業者を、金融機関が後押ししていくことが、金融機関自身が収益基盤を強化し持続可 能なビジネスモデルを確立するという観点からも重要である。 金融がこのように機能する前提として、金融機関や金融市場、これらを包含する金融システム の安定や公正性に対する、国内外のステークホルダーからの信頼を確保していく必要がある。 金融システムの総体的な安定性は保たれているが、国内外の物価動向やそれに呼応する金融 政策、各国の通商政策の影響については、見通せない部分が多い。金融機関は、こうした国内外 の経済環境・金融政策の変化や不確実性に加え、デジタル技術の更なる進展、サイバー攻撃等の 脅威、マネー・ローンダリング(以下、「マネロン」)対策の要請といった課題を踏まえて、経営 判断を的確に行っていく必要がある。また、金融機関や金融市場の公正性が疑われるような不祥 事も生じており、厳正な監督・検査や規制の改善を通じた対応が必要である。金融システムの安 定や公正性への信頼を確保することは、金融当局としての責務である。 こうした中で、2025 事務年度(2025 年 7 月~2026 年 6 月)は、以下の 3 つの施策を推し進 めていく。 1. 金融機能の更なる発揮を促し、持続的な成長に貢献する。 2. 金融システムの安定性や公正性・安全性への信頼を確保する。 3. 国民への貢献のために常に進化し続ける組織をつくる。 1